(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(54)【発明の名称】寄生虫防除のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/40 20060101AFI20220822BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20220822BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20220822BHJP
A01N 65/38 20090101ALI20220822BHJP
【FI】
A01N43/40 102
A01P7/04
A01P7/02
A01N65/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572858
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2020067706
(87)【国際公開番号】W WO2020260392
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ホエング ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノフ ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】カミンスキ カクペル
(72)【発明者】
【氏名】マズロフ アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】ショルデレット ウェーバー サンドラ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC01
4H011AC02
4H011AC04
4H011BB09
4H011BB22
(57)【要約】
本発明は、その最も広い態様において、たばこ植物の抽出物を含む製剤および/または本明細書に提供される式Iの化合物、特にアナタビンを含む製剤、ならびに外部寄生虫、特に昆虫の寄生を減少させるためのその対応する使用に関する。また、本発明の濃縮抽出物および/または製剤を調製するための方法、ならびに本明細書に提供される抽出物および/または製剤を使用して、外部寄生虫を制御するための方法も本明細書に提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部寄生虫の寄生を減少させるのに使用のための、好ましくは、外部寄生虫の寄生を減少させるために防虫剤として使用のための、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶であって、
【化1】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化2】
は、二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶。
【請求項2】
外部寄生虫寄生の治療における使用のための、好ましくは、外部寄生虫寄生の治療における外部寄生虫撲滅薬としての使用のための、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶であって、
【化3】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化4】
は、二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶。
【請求項3】
外部寄生虫の寄生を減少させるための、好ましくは、外部寄生虫の寄生を減少させるために防虫剤としての、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用であって、
【化5】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化6】
は、単結合または二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用。
【請求項4】
外部寄生虫寄生の治療のための、好ましくは、外部寄生虫寄生の治療のための外部寄生虫撲滅薬としての、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用であって、
【化7】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化8】
は、単結合または二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用。
【請求項5】
Rが、水素またはC
1-C
3アルキルを表し、
好ましくは、Rは水素を表す、請求項1または請求項2に記載の使用のための化合物、または請求項3または請求項4に記載の使用。
【請求項6】
【化9】
が二重結合を表す、請求項1~2および5のいずれか一項に記載の使用のための化合物、または請求項3~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物が、アナタビン、S-(-)アナタビン、R-(+)アナタビン、S-(-)アナタビンとR-(+)アナタビンとの混合物、またはS-(-)アナタビンおよびR-(+)アナタビンのラセミ体である、請求項1~2および5~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物、または請求項3~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
式Iaの化合物用に濃縮されたたばこ抽出物を含む、外部寄生虫の寄生を減少させるための製剤。
【化10】
式Ia
【請求項9】
外部寄生虫撲滅薬として使用するための請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
防虫剤として使用するための請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
前記たばこ抽出物が、主要アルカロイドがニコチンではないNicotiana tabacumの品種から生成される、請求項8に記載の製剤または使用のための製剤。
【請求項12】
前記化合物が、アナタビン、S-(-)アナタビン、R-(+)アナタビン、S-(-)アナタビンとR-(+)アナタビンとの混合物、またはS-(-)アナタビンおよびR-(+)アナタビンのラセミ体である、請求項8もしくは11に記載の製剤、または請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項13】
前記たばこ抽出物中の式Iaの前記化合物の含有量が、未処理のたばこ植物よりも高い、請求項8、11および12のいずれか一項に記載の製剤、または請求項9~12のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項14】
式Iaの前記化合物が、式Iaの化合物の特異的な濃縮をもたらす少なくとも一つのステップを含む方法によって取得される、請求項13に記載の製剤または使用のための製剤。
【請求項15】
本発明の前記抽出物に含まれる式Iの前記化合物の相対含有量が、1%、または1%~2%、または少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%増加する、請求項13または請求項14に記載の製剤または使用のための製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その最も広い態様において、たばこ植物の抽出物を含む製剤および/または本明細書に提供される式Iの化合物、特にアナタビンを含む製剤、ならびに外部寄生虫、特に昆虫および/またはクモ類の寄生を減少させるためのその対応する使用に関する。また、本発明の濃縮抽出物および/または製剤を調製するための方法、ならびに本明細書に提供される抽出物および/または製剤を使用して、外部寄生虫を制御するための方法も本明細書に提供される。
【背景技術】
【0002】
動物またはヒトに寄生虫が寄生することは、非常に望ましくない。ヒトまたは動物、例えば、ウマ、イヌ、およびネコはすべて、多数の内部および外部寄生虫の宿主としての役目を果たすことができる。寄生虫の存在は、不快感、健康と遂行能力の低下、さらには死にさえもつながりうる。例えば、米国で毎年数百万匹のイヌやネコがノミ、マダニ、ダニの治療を受けている。ノミ、マダニ、およびダニの寄生は、ペットおよびヒトに大きな不快感を与え、病気を媒介する。
【0003】
いくつかの種類の殺虫剤は、寄生虫の駆除に有効である。例えば、ピレスロイド、有機リン酸エステル、有機カルバミン酸塩、およびフェニルピラゾールは、動物の寄生虫寄生を治療するために使用される。新たに発見されたイソキサゾリンクラスは、イヌおよびネコの外部寄生虫防除のために最近発売された。抗寄生虫剤を製剤化する様々な方法が当技術分野で公知である。これらの製剤には、経口治療薬、栄養補助食品、粉末、スプレー、局所用治療薬(例えば、浸すおよび注ぐ)、およびシャンプーが含まれる。これらの製剤の各々は、寄生虫の駆除にいくらかの効力を有するが、製剤は概して、合成殺虫剤または防虫剤を含む。合成殺虫剤は、ヒトおよび動物に有害な環境影響を引き起こすことが知られている。同様に、ピレスリンは、キクの花から抽出されるが、加工および規格化は困難である。
【0004】
天然殺虫剤、すなわち、天然植物精油を活性成分として含む殺虫剤は、スプレー、粉末、または液体の形態で、天然殺虫剤を保護したい場所または領域に塗布することで、アリ、ゴキブリ、およびノミなどの家に寄生する虫を殺すことが知られ、米国特許第5,439,690号、第5,693,344号、第6,114,384号、および第6,531,163号に開示されているとおりである。
【0005】
天然化合物または抽出物も、当技術分野で説明され、例えば、Jufri et al.(2016) International Journal of PharmTech Research 9,No.7,pp.140-145がある。
【0006】
さらに、たばこ(ニコチアナ属種)の葉、粉末、抽出物、または燻蒸剤は、医療的および獣医的に重要な農業害虫または寄生虫を防除するために、何世紀にもわたって使用されてきた。しかし、たばこの主要なアルカロイドであるニコチンに関する安全性の懸念と、より特異的で強力な合成殺虫剤の発見により、ニコチン系製品は現在市販されていない。合成ネオニコチノイドは、ニコチンと構造的に関連があり、農業用および獣医用殺虫剤として広く使用されている。しかし、たばこ関連のアルカロイドとは異なり、合成ネオニコチノイドは、昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に対する選択性が高く、脊椎動物のニコチン性受容体への結合は低い。その独自の物理化学的特徴(光安定性、非揮発性、および親水性)は、殺虫剤としての成功だけでなく、環境の広範囲な汚染につながる過剰な使用も説明する。ネオニコチノイドは、現在、生態系の存続にとって主要な懸念となっている。花粉を運ぶ動物、水中生物および土壌生物への影響が実証され、毒性プロファイルもかつて認識されていたよりも問題が多いことから、農業におけるその使用を制限または全面的に禁止し、世界的な合成殺虫剤の使用から脱却するための取り組みが推し進められている。
【0007】
たばこの主要アルカロイドであるニコチンまたは構造的に関連する合成ネオニコチノイドの使用に関連する懸念を考慮すると、異なる作用機序のためニコチンまたは合成ネオニコチノイドよりも安全性プロファイルが良好であり、より環境に優しい解決策を提供する、ヒトおよび/または動物の外部寄生虫の防除に使用するための天然由来の化合物および組成物に対するニーズは依然として存在する。
【0008】
上記の技術的問題の解決策は、本明細書に提供される実施形態および特許請求の範囲において特徴付けられる。
【0009】
したがって、本発明は特に、以下の実施形態に関する。
【0010】
1.式Iaの化合物用に濃縮されたたばこ抽出物を含む、外部寄生虫の寄生を減少させるための製剤。
【化1】
式Ia
2.外部寄生虫の寄生を減少させるための式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用であって、
【化2】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化3】
は、単結合または二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用。
3.Rが、水素またはC
1-C
3アルキルを表す、実施形態2に記載の使用。
4.Rが、水素を表す、実施形態2または3に記載の使用。
5.
【化4】
が、二重結合を表す、実施形態2~4のいずれか一つに記載の使用。
6.外部寄生虫が、ノミ、マダニ、およびダニを含む、昆虫またはクモ類由来である、実施形態1に記載の製剤または実施形態2~5のいずれか一つに記載の使用。
7.化合物が、アナタビン、S-(-)アナタビン、R-(+)アナタビン、S-(-)アナタビンとR-(+)アナタビンとの混合物、またはS-(-)アナタビンおよびR-(+)アナタビンのラセミ体である、実施形態1または6に記載の製剤、または実施形態2~6のいずれか一つに記載の使用。
8.製剤が、請求項1に記載のとおりである、実施形態2~7のいずれか一つに記載の使用。
9.たばこ抽出物が、Nicotiana tabacum、Nicotiana glutinosa、Nicotiana glauca またはNicotiana debneyiから生成される、実施形態1、6または7のいずれか一つに記載の製剤。
10.Nicotiana tabacumがPMT、TN90またはITB683である、実施形態9に記載の製剤。
11.Nicotiana tabacumが品種PMT、TN90、K326、StellaまたはITB683である、実施形態9に記載の製剤。
12.たばこ抽出物が、主要アルカロイドがニコチンではないNicotiana tabacumの品種から生成される、実施形態9に記載の製剤。
13.製剤または化合物が、局所用製剤、シャンプー組成物、洗浄組成物、または治療組成物の形態で塗布される、実施形態1に記載の製剤、または実施形態2~8のいずれか一つに記載の使用。
14.局所用製剤、シャンプー組成物、洗浄組成物、または治療組成物が、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、発泡体、パッチ、粉末、固体、スポンジ、テープ、蒸気、ペースト、チンキ、またはスプレーの形態である、実施形態13に記載の製剤または使用。
15.製剤または化合物が、哺乳類、特にヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、またはヒツジに塗布される、実施形態13または14に記載の製剤または使用。
16.製剤または化合物が、物体または布地に塗布される、実施形態1に記載の製剤または実施形態2に記載の使用。
【0011】
本発明はさらに、以下の態様に関する。
【0012】
態様1:
外部寄生虫の寄生を減少させるのに使用のための、好ましくは、外部寄生虫の寄生を減少させるために防虫剤として使用のための、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶であって、
【化5】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化6】
は、二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶。
態様2:
外部寄生虫寄生の治療における使用のための、好ましくは、外部寄生虫寄生の治療における外部寄生虫撲滅薬としての使用のための、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶であって、
【化7】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化8】
は、二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶。
態様3:
外部寄生虫の寄生を減少させるための、好ましくは、外部寄生虫の寄生を減少させるために防虫剤としての、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用であって、
【化9】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化10】
は、単結合または二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用。
態様4:
外部寄生虫寄生の治療のための、好ましくは、外部寄生虫寄生の治療のための外部寄生虫撲滅薬としての、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用であって、
【化11】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化12】
は、単結合または二重結合を表す、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶の使用。
態様5:
Rが、水素またはC
1-C
3アルキルを表し、好ましくは、Rが水素を表す、態様1もしくは態様2に記載の使用のための化合物、または態様3もしくは態様4に記載の使用。
態様7:
【化13】
が二重結合を表す、態様1~2および5~6のいずれか一つに記載の使用のための化合物、または態様3~6のいずれか一つに記載の使用。
態様8:
外部寄生虫が、ノミ、マダニ、およびダニを含む、昆虫またはクモ類由来である、態様1~2および5~7のいずれか一つに記載の使用のための化合物、または態様3~7のいずれか一つに記載の使用。
態様9:
化合物が、アナタビン、S-(-)アナタビン、R-(+)アナタビン、S-(-)アナタビンとR-(+)アナタビンとの混合物、またはS-(-)アナタビンおよびR-(+)アナタビンのラセミ体である、態様1~2および5~8のいずれか一つに記載の使用のための化合物、または態様3~8のいずれか一つに記載の使用。
態様10:
化合物が、局所用製剤、シャンプー組成物、洗浄組成物、または治療組成物の形態で塗布される、態様1~2および5~9のいずれか一つに記載の使用のための化合物、または態様3~9のいずれか一つに記載の使用。
態様11:
局所用製剤、シャンプー組成物、洗浄組成物、または治療組成物が、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、発泡体、パッチ、粉末、固体、スポンジ、テープ、蒸気、ペースト、チンキ、またはスプレーの形態である、態様10に記載の使用のための化合物、または態様10に記載の使用。
態様12:
化合物または局所用製剤が、哺乳類、特にヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマまたはヒツジに塗布される、態様1~2および5~11のいずれか一つに記載の使用のための化合物、または態様3~11のいずれか一つに記載の使用。
態様13:
化合物が物体または布地に塗布される、態様1および5~11のいずれか一つに記載の使用のための化合物、または態様4~11のいずれか一つに記載の使用。
態様14:
式Iaの化合物用に濃縮されたたばこ抽出物を含む、外部寄生虫の寄生を減少させるための製剤。
【化14】
式Ia
態様15:
外部寄生虫撲滅薬として使用するための態様14に記載の製剤。
態様16:
防虫剤として使用するための態様14に記載の製剤。
態様17:
たばこ抽出物が、Nicotiana tabacum、Nicotiana glutinosa、Nicotiana glauca またはNicotiana debneyiから生成される、態様14に記載の製剤、または態様15または16に記載の使用のための製剤。
態様18:
Nicotiana tabacumの品種が、PMT、TN90、K326、StellaまたはITB683、好ましくはPMT、TN90またはITB683である、態様17に記載の製剤または使用のための製剤。
態様19:
たばこ抽出物が、主要アルカロイドがニコチンではないNicotiana tabacumの品種から生成される、態様17に記載の製剤または使用のための製剤。
態様20:
外部寄生虫が、ノミ、マダニ、およびダニを含む、昆虫またはクモ類由来である、態様14および17~19のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~19のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様21:
化合物が、アナタビン、S-(-)アナタビン、R-(+)アナタビン、S-(-)アナタビンとR-(+)アナタビンとの混合物、またはS-(-)アナタビンおよびR-(+)アナタビンのラセミ体である、態様14および17~20のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~20のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様22:
製剤が、局所用製剤、シャンプー組成物、洗浄組成物、または治療組成物の形態で塗布される、態様14および17~21のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~21のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様23:
局所用製剤、シャンプー組成物、洗浄組成物、または治療組成物が、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、発泡体、パッチ、粉末、固体、スポンジ、テープ、蒸気、ペースト、チンキ、またはスプレーの形態である、態様22に記載の製剤、または態様22に記載の使用のための製剤。
態様24:
製剤が、哺乳類、特にヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマまたはヒツジに塗布される、態様14および17~23のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~23のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様25:
製剤または化合物が、物体または布地に塗布される、態様14および17~24のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~24のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様26:
たばこ抽出物中の式Iaの化合物の含有量が、未処理のたばこ植物よりも高い、態様14および17~25のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~25のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様27:
式Iaの化合物が、式Iaの化合物の特異的な濃縮をもたらす少なくとも一つのステップを含む方法によって取得される、態様26に記載の製剤または使用のための製剤。
態様28:
本発明の抽出物に含まれる式Iの化合物の相対含有量が、1%増加する、態様26または態様27に記載の製剤または使用のための製剤。
態様29:
本発明の抽出物に含まれる式Iの化合物の相対含有量が、1%~2%増加する、態様26または態様27に記載の製剤または使用のための製剤。
態様30:
本発明の抽出物に含まれる式Iの化合物の相対含有量が、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%増加する、態様26または態様27に記載の製剤または使用のための製剤。
態様31:
たばこ抽出物が、たばこ抽出物中の式Iaの化合物の含有量が、たばこ抽出物が取得される未処理のたばこ植物よりも少なくとも1%高いという点で濃縮されている、態様14および17~30のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~30のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様32:
たばこ抽出物が、たばこ抽出物中の式Iaの化合物の含有量が、Nicotiana tabacum Stella種の未処理のたばこ植物よりも少なくとも1%高いという点で濃縮されている、態様14および17~31のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~31のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
態様33:
たばこ抽出物が、Nicotiana tabacum Stella種の4カ月齢の植物の葉を、60℃および相対湿度70%で24時間乾燥させ、その後粉砕して、粉砕した葉1g当たり1回10mlのメタノールを用いて、60℃の温度で抽出することによって得られた抽出物よりも、式Iaの化合物を少なくとも1重量%多く含有するという点で濃縮されている、態様14および17~32のいずれか一つに記載の製剤、または態様15~32のいずれか一つに記載の使用のための製剤。
【0013】
このように、本発明は式Iaの化合物用に濃縮されたたばこ抽出物を含む外部寄生虫の寄生を減少させるための製剤に関する。
【化15】
式Ia
これは、式Iの化合物の特定の例である。
【化16】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化17】
は、単結合または二重結合を表す。
【0014】
本発明の文脈において、外部寄生虫とは、他の生物(宿主生物)のうろこ、羽根、毛髪などの皮膚または外被に様々な期間生息する生物、および特に血を吸うなど他の生物に栄養を依存する生物を包含することが理解される。すなわち、外部寄生虫という用語は、マダニおよびノミなどの比較的長期間宿主生物の皮膚または外被上に残留する生物、ならびに断続的外部寄生虫と呼んでもよい、蚊およびツェツェバエなどの比較的短期間宿主上に残留する生物の両方を含む。
【0015】
発明者らは、驚くべきことに、式Iの化合物、特にアナタビンが、外部寄生虫、特にノミ、マダニ、およびダニ、特にマダニを含む、昆虫またはクモ類の寄生の減少において改善された効果を有することを、予想外に発見した。添付の実施例に示されるように、式Iの化合物、特にアナタビンの効果は、たばこ抽出物中に含まれる最も効果的な防虫剤として先行技術で考えられているニコチンの効果よりも特に改善されている。したがって、本発明は特に、式Iaの化合物、特にアナタビンの存在のために濃縮されたたばこ抽出物を含む、外部寄生虫の寄生を減少させるための製剤に関する。
【0016】
図3aおよび
図3bに示すように、本発明者らは驚くべきことに、アナタビンがその塩基形態で、HClの塩形態よりも有意に優れた蚊の防虫剤であることを発見した。したがって、アナタビンが本発明における遊離塩基として使用されることが好ましい。
【0017】
本発明において、「濃縮された」とは、本発明のたばこ抽出物を含む製剤における式Iaの化合物、特にアナタビンの含有量が、当業者によって期待される含有量と比較して、特に当技術分野で公知のたばこ抽出物中に存在する平均含有量と比較して増加することを意味する。発明者らは、驚くべきことに、式Iaの化合物、特にアナタビンが、ニコチンまたはニコチン濃縮抽出物と比較して、防虫剤/外部寄生虫撲滅薬、好ましくは防虫剤としてより高い有効性を示すことを発見したので、式Iaの化合物、特にアナタビンの存在のために濃縮された本発明のたばこ抽出物を含む製剤は、外部寄生虫、特に昆虫および/またはマダニの寄生を減少させる上で、驚くほど高い有効性を有する。
【0018】
用語「濃縮された」は、たばこ抽出物中の式Iaの化合物の含有量が、たばこ抽出物が取得される未処理のたばこ植物よりも少なくとも1%高いことを示すことが好ましい。用語「濃縮された」は、たばこ抽出物が、Nicotiana tabacum種Stella品種の未処理のたばこ植物よりも少なくとも1%高いたばこ抽出物中の式Iaの化合物の含有量を有することを示すことがさらに好ましい。用語「濃縮された」は、たばこ抽出物が、Nicotiana tabacum種のStella品種の4カ月齢の植物の葉を特許請求されたたばこ抽出物を調製するために使用したのと同じ条件下で、同じ溶媒を使用して抽出することによって得られた抽出物よりも、式Iaの化合物を少なくとも1重量%多く含有することを示すことがさらに好ましい。用語「濃縮された」は、たばこ抽出物が、Nicotiana tabacum Stella種の4カ月齢の植物の葉(伝統的に完全に成熟するまで栽培されることが好ましく、トッピング工程(開花部分の除去)にかけられることが好ましい)を、60℃および相対湿度70%で24時間乾燥させ、その後粉砕して、粉砕した葉1g当たり1回10mlのメタノールを用いて、60℃の温度で抽出することによって得られた抽出物よりも、式Iaの化合物を少なくとも1重量%多く含有することを示すことがさらに好ましい。葉の抽出は、以下のように実施されることが好ましい。すべての植物の葉を、60℃および相対湿度70%で24時間オーブン乾燥させ、ガラスビーズで400rpm、8時間振とうすることによって粉砕する。選択したたばこの品種/種ごとに、2gの粉砕した葉の粉末を50mLのガラス瓶に入れる。20mLのメタノール(例えば、高性能液体クロマトグラフィーグレード、99.9%以上の純度、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を、60℃で粉砕した葉に添加する。次いで、混合物を30分間超音波処理(例えば、Branson 3510-DTH Ultrasonic Cleaner、Danbury、CT、USA)し、濾紙(125mmφ、セルロース紙、好ましくは、Whatman(登録商標)Maidstone、UK)を保持するフィルターカラムにデカントする。濾液を20mLのメタノールで超音波処理し、再度濾過する。次いで、得られた濾液を回転エバポレーターに入れ、溶媒を除去し、残りの抽出物をさらに16時間(すべての水が取り除かれるまで)凍結乾燥する(例えば、Labconco cat.no.7934030、Kansas City、MO、USA)。
【0019】
さらに、用語「濃縮された」は、たばこ抽出物中の式Iaの化合物の含量と、抽出物中のニコチンの含量との質量比が、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、なおより好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは1.0以上、さらになおより好ましくは2.0以上、またはなお4.0以上であることを示し得る。
【0020】
本発明において、外部寄生虫の寄生を減少させることは、本発明の製剤もしくは化合物の防虫活性、および/または本発明の製剤もしくは化合物の殺傷活性を介して達成され得る。したがって、本発明の製剤または化合物は、昆虫および/またはマダニなどの外部寄生虫に対する防虫活性および殺傷活性の両方、または防虫活性もしくは殺傷活性を有し得る。防虫および/または殺傷活性は、本明細書に提供される方法、特に本明細書の以下の実施例のセクションで採用される方法を使用して決定され得る。本発明内では、活性成分を含まず、かつ同一のアッセイ方法を適用する対照と比較した場合、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の寄生減少が達成されることが好ましい。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は、外部寄生虫、特に昆虫および/またはマダニ、好ましくは昆虫の防除のための、式Iの化合物、またはその塩もしくは結晶、特にアナタビンの使用に関し、式Iは以下の通りであり、
【化18】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化19】
は、単結合または二重結合を表す。
【0022】
C1-C5アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル(アミル)、2-ペンチル(sec-ペンチル)、3-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル(イソ-ペンチルまたはイソ-アミル)、3-メチルブタ-2-イル、2-メチルブタ-2-イル、および2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)が挙げられる。
【0023】
本発明において、Rは水素またはC1-C3アルキルを表すことが好ましい。
【0024】
Rが水素を表すことが、さらに好ましい。
【0025】
加えて、または代替的に、
【化20】
が二重結合を表すことが好ましい。
【0026】
本明細書で使用される化合物、または本発明の製剤に含まれる化合物は、純粋な形態であるか、または例えば、好適な賦形剤もしくは添加剤と組み合わされ得る。
【0027】
本発明のより具体的な実施形態では、化合物はアナタビンである。本発明では、アナタビンはラセミ体であってもよく、または一つのエナンチオマー形態がエナンチオマー過剰で存在してもよい。したがって、アナタビンは、S-(-)アナタビンまたはR-(+)アナタビンであってもよく、または両方のエナンチオマー形態の間の任意の比で存在してもよい。
【0028】
本発明の一実施形態では、本明細書に提供される式Iaの化合物、特にアナタビンは、植物からの抽出物の形態で提供される。本発明の特定の実施形態では、植物はたばこである。
【0029】
本発明において、たばこ植物は、Nicotiana tabacum、Nicotiana glutinosa、Nicotiana glauca、またはNicotiana debneyi種であることが好ましい。Nicotiana tabacumは、TN90、ITB683、またはPMTたばこ植物であることが特に好ましい。Nicotiana tabacumは、好ましくはK326またはStellaたばこ植物であってもよい。
【0030】
また、たばこ抽出物は、主要アルカロイドがニコチンではないNicotiana tabacumの品種から生産されることも好ましい。
【0031】
本明細書で使用される場合、PMTは、ニコチンの生合成が改変され、その結果、ニコチンの生産量が減少し、式Iの化合物の量が増加した突然変異体たばこ植物を指す。ニコチン生合成は、補因子としてS-アデノシルメチオニンを使用する酵素、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ(PMT)によって、ポリアミン、プトレシンのN-メチルプトレシンへのメチル化から始まる。これは、前駆体代謝物をニコチン生合成に関与させる最初のステップである。PMT酵素は、酵素分類システムによりEC 2.1.1.53に分類される。たばこゲノムには、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、名付けてPMT la、PMT lb、PMT2、PMT3、およびPMT4をコードする五つの遺伝子があることが知られている。これらのPMT遺伝子の任意の一つまたは複数の活性を有利に使用して、本発明の抽出物の出発源を提供できるたばこ植物が企図されている。これらのPMT遺伝子の任意の一つまたは複数の活性は、特にRNAiなどのアンチセンスヌクレオチドなどの組換えDNA技術によって減少させることができる。あるいは、従来の育種は、ニコチンの生産が少ないこれらの遺伝子のいずれか一つまたは複数に突然変異を有する突然変異体植物の(突然変異誘発による)生成、スクリーニング、および繁殖に適用することができる。遺伝子組み換え法によって生成された突然変異体たばこ植物(PMT)の使用、または安定的な突然変異体たばこ植物の使用は、本発明に包含される。PMTたばこ植物の例は、参照により本明細書に組み込まれるWO2015157359に記載されている。
【0032】
本発明では、式Iの化合物、特にアナタビン、または抽出物としての式Ia、または本発明の製剤は、局所用製剤の形態で塗布してもよい。
【0033】
当業者は、様々な局所用製剤を認識する。しかしながら、本発明では、局所用製剤は、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、発泡体、パッチ、粉末、固体、スポンジ、テープ、蒸気、ペースト、またはチンキの形態であることが好ましい。局所用製剤はさらに、注ぐ、塗る、および吹きかける製剤などの液体製剤から選択され得ることが好ましい。
【0034】
したがって、本発明の一実施形態では、化合物は、哺乳類、特にヒト、イヌ、ネコ、ウシ、またはウマの皮膚に塗布される。
【0035】
本発明の化合物、抽出物、製剤は、広範な寄生虫に対して有効であるが、本発明内では、寄生虫は、外部寄生虫、特に節足動物門由来の外部寄生虫、より具体的には、ノミ、マダニ、およびダニを含む、昆虫またはクモ類由来の外部寄生虫であることが好ましい。
【0036】
したがって、本発明の一実施形態では、本発明の化合物、抽出物、または製剤を、殺虫剤または外部寄生虫撲滅薬として使用することが提供される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の化合物、抽出物、または製剤を、昆虫防虫剤または外部寄生虫防虫剤として使用することが提供される。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、たばこ植物の抽出物を含む製剤を提供する方法に関し、方法は、(a)たばこ植物の葉の粉砕された粉末を取得する工程と、(b)抽出用の溶媒(一実施形態ではメタノール)を粉砕された粉末に添加する工程と、(c)(b)で取得される混合物を任意に超音波処理する工程と、(d)混合物を濾過する工程であって、工程(d)は、複数回繰り返されることが好ましく、濾過する工程と、(e)(d)で得られる濾液を蒸発させる工程と、(f)任意で抽出物を凍結乾燥する工程と、を含む。
【0039】
また、本明細書では、上記で提供される方法によって得られた抽出物を含む製剤も提供される。
【0040】
本発明のさらなる態様および実施形態は、この説明が続くにつれて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、マダニ防虫試験の概略図である。30~60匹のマダニの幼虫を、円形アリーナ(8.96cm
2)の非処理領域に配置し、表面の四分円の一つ(2.25cm
2)は処理されている。1分後、処理された領域および処理されていない領域におけるマダニの分布を、2分間測定する。防虫/抑止効果は%で表される:100%は、マダニが処理表面を完全に回避したことを意味する。毒性は、同じセットアップで8分間にわたって測定され、死亡率は、8分間の開始と終了の間の運動性の減少率で表される。用量は、化合物または抽出物がウェルの底部に堆積するので、表面単位(m
2)当たりの量(mgまたはモル濃度)として表される。純粋な化合物:マイクロモル/m
2での用量、抽出物:マイクログラム/m
2での用量。試験を三回に分けて実施した。
【
図2A】
図2は(A)R.sanguineusの幼虫、(B)R.sanguineusの成虫、および(C)マダニの若虫に対する八つのたばこ葉抽出物の防虫活性を示す。各濃度については、三つの試験複製物の有効性の中央値が示されている。N,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)を陽性対照として使用し、8.5mg/m
2でのみ試験し、防虫に加えて試験濃度で観察されたマダニノックダウン活性の割合を示した。処理されたウェルにマダニが放出されてから一分後に始めて二分間、防虫を監視した。ノックダウンを、マダニ放出の一分後と九分後との間の運動性の差として決定した。
【
図2B】
図2は(A)R.sanguineusの幼虫、(B)R.sanguineusの成虫、および(C)マダニの若虫に対する八つのたばこ葉抽出物の防虫活性を示す。各濃度については、三つの試験複製物の有効性の中央値が示されている。N,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)を陽性対照として使用し、8.5mg/m
2でのみ試験し、防虫に加えて試験濃度で観察されたマダニノックダウン活性の割合を示した。処理されたウェルにマダニが放出されてから一分後に始めて二分間、防虫を監視した。ノックダウンを、マダニ放出の一分後と九分後との間の運動性の差として決定した。
【
図2C】
図2は(A)R.sanguineusの幼虫、(B)R.sanguineusの成虫、および(C)マダニの若虫に対する八つのたばこ葉抽出物の防虫活性を示す。各濃度については、三つの試験複製物の有効性の中央値が示されている。N,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)を陽性対照として使用し、8.5mg/m
2でのみ試験し、防虫に加えて試験濃度で観察されたマダニノックダウン活性の割合を示した。処理されたウェルにマダニが放出されてから一分後に始めて二分間、防虫を監視した。ノックダウンを、マダニ放出の一分後と九分後との間の運動性の差として決定した。
【
図3a】
図3はアナタビンの、HCl塩およびその塩基形態としての、蚊の防虫性アッセイからのデータを示す。
【
図3b】
図3はアナタビンの、HCl塩およびその塩基形態としての、蚊の防虫性アッセイからのデータを示す。
【0042】
別途定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。
【0043】
エナンチオマー過剰を特徴付けるのに使用される用語「約」は、別途指示がない場合、所与の数値に対して±4%を意味する。各々の発明の実施形態において、「約」は削除することができる。
【0044】
「好ましくは」という用語は、本発明に必須ではないが、改善された技術的効果をもたらす可能性があり、したがって望ましいが必須ではない特徴または実施形態を記述するために使用される。
【0045】
本明細書に記載の数値に関しては、別段の明白な記載がない限り、数値の小数点第二位は、その精度の度合いを示すことが好ましい。したがって、他の誤差マージンが与えられない限り、最大マージンは、小数点第二位を四捨五入することによって確認することが好ましい。したがって、2.5の値は、好ましくは、2.45~2.54の誤差マージンを有する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、とりわけ、式Iaの化合物用に濃縮されたたばこの抽出物を含む外部寄生虫の寄生を減少させるための製剤に関する。
【化21】
式Ia
【0047】
これは、式Iの化合物の特定の例である。
【化22】
式I
式中、
Rは、水素またはC
1-C
5アルキルを表し、
【化23】
は、単結合または二重結合を表す。
【0048】
式Iaを含む式Iの化合物は、キラル炭素原子を含有し、従って、例えば、以下の式I-1およびI-2に示される立体化学を有し得る。
【化24】
I-1
および
【化25】
I-2
式Iに関して定められた定義が適用される。
【0049】
以下において、別段の記載がない限り、本発明の抽出物を含む製剤に関する限り、式Iの化合物に関する文献は、式Iaの化合物に関するものとみなされる。しかしながら、本発明による使用の文脈では、式Iの化合物に関する文献は、その塩または結晶を含む式Iの化合物全般、好ましくは式Iaの化合物に関するものとして理解されるべきである。
【0050】
抽出物は、上記式Iaの化合物、特に、たばこ抽出物中のアナタビンの含有量が、未処理のたばこ植物よりも高い場合、本発明の意味の範囲内で「濃縮された」とみなされる。したがって、本発明のたばこ抽出物は、式Iaの化合物、特にアナタビンの特異的な濃縮をもたらす少なくとも一つの工程を含む方法によって得られる。
【0051】
式Iaの化合物、特にアナタビンは、その含有量が増加する限り、任意の程度で濃縮されてもよい。例えば、濃縮は1%であってもよく、これは、本発明の抽出物に含まれる式Iの化合物、特にアナタビンの相対含有量が、1、例えば、1%から2%に増加することを意味する。本発明において、濃縮は少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%であることが好ましい。
【0052】
本発明において、式Iの化合物はアナタビンであることが好ましい。当業者が認識するように、アナタビンは、二つのエナンチオマー形態、SおよびRアナタビンで存在し得る。本発明の抽出物または製剤中に含有されるアナタビンは、R-(+)アナタビンおよびS-(-)アナタビンの任意の全体的な比の範囲で存在してもよく、あるいは、(R)-(+)アナタビンのエナンチオマー過剰として表され、これは驚くべきことに、S-(-)アナタビンとしてさらに効果的であることが示されている。
【0053】
本明細書で使用される場合、R-(+)アナタビンおよびS-(-)アナタビンの「比」は、別段の明示的な記載がない限り、R-(+)アナタビンおよびS-(-)アナタビンの重量比を指すことが理解されるべきである。R-(+)アナタビンおよび/またはS-(-)アナタビンの溶媒和化合物を使用する場合、溶媒はこの計算では無視される。言い換えれば、R-(+)アナタビンおよびS-(-)アナタビンの比は、以下のように計算される。
【数1】
【0054】
当業者に公知のように、キラリティーのみが異なる化合物の比は、R-(+)アナタビンおよびS-(-)アナタビンの場合のように、当該技術分野で公知のいくつかの方法で決定することができ、限定されるものではないが、キラル支持体を使用するクロマトグラフィー、偏光の回転の偏光測定、キラルシフト試薬を使用する核磁気共鳴分光法、またはモッシャー酸などのキラル化合物を使用する化合物の誘導体化とそれに続くクロマトグラフィーまたは核磁気共鳴分光法が含まれる。エナンチオマーは、当業者に公知の方法によって混合物からさらに単離することができ、この方法には、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、および共結晶中に存在する特定の水素結合相互作用の形成を利用する、キラル共結晶化技術による、ラセミ体、すなわちアナタビンの直接分別結晶化が含まれる(Springuel GR,et al.,2012;および米国特許第6,570,036号を参照)。有用な共結晶化パートナーには、マンデル酸、リンゴ酸、酒石酸、およびその誘導体のエナンチオマーが含まれる。またはエナンチオマーは、不斉合成によって調製することができる。例えば、Eliel and Wilen,1994を参照のこと。
【0055】
本発明の組成物のR-(+)アナタビンおよびS-(-)アナタビン(キラル純度とも呼ぶことができる)の比はまた、そのエナンチオマー過剰(ee)として表すこともでき、典型的かつ好ましくは、キラルHPLCで決定され、以下の式で計算される。
ee=(AR-AS)/(AR+AS)×100%、
式中、試料溶液のHPLCクロマトグラムにおいて、ARは、R-(+)アナタビンのピーク面積であり、ASは、S-(-)アナタビンのピーク面積である。
【0056】
式Iaの化合物、特にアナタビンは、本発明の抽出物もしくは製剤中、または溶媒和化合物もしくは共結晶として本明細書に提供される使用中に存在し得る。
【0057】
この点で、本発明において、「溶媒和化合物」とは、一つまたは複数の溶媒分子と、R-(+)アナタビンまたはS-(-)アナタビンのいずれかの会合または複合体を指す。溶媒和化合物を形成する溶媒の例としては、以下に限定されないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが挙げられる。用語「水和物」は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0058】
「共結晶」は、周囲条件下で、その純粋な形態で固体である、少なくとも二つの異なる化合物を含有する結晶構造を指す。少なくとも二つの異なる化合物は、R-(+)アナタビンおよび/またはS-(-)アナタビン、および/または本明細書に提供される組成物または抽出物の任意のさらなる成分を含み得る。共結晶は、中性の分子種から作られ、すべての種は結晶化後も中性のままである。さらに、典型的には、それらは二つ以上の構築化合物が定義された化学量論比で存在する、結晶性均質相材料であることが好ましい。これに関して、Wang Y and Chen A,2013;およびSpringuel GR,et al.,2012;および米国特許第6,570,036号を参照されたい。R-(+)アナタビンおよびS-(-)アナタビンは、任意の多形の形態であってもよいことが理解されるべきである。このような共結晶を調製するための様々な共結晶および技術が、王立化学会が2012年に発行し、Johan WoutersおよびLuc Quereによって編集されたRSC Drug Discovery、Pharmaceutical Salts and Co-crystalsの特に15章および16章に記載されている。共結晶形成剤の好ましい例は、本参照の表16.1に開示されているものである。さらにより好ましい共結晶には、α-ヒドロキシ酸、α-ケト酸、および/またはα-ケトアミドと、本明細書に開示される(R)対(S)比のアナタビンエナンチオマーとの共結晶が含まれる。α-ヒドロキシ酸の例としては、アトロラクチン酸、ベンジル酸、4-クロロマンデル酸、クエン酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、ピルビン酸エチル、ガラクツロン酸、グルコノラクトン、グルクロン酸、グルクロノラクトン、グリコール酸、2-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシヘキサン酸、2-ヒドロキシヘプタン酸、2-ヒドロキシオクタン(hydroxyactanoic)酸、2-ヒドロキシノナン酸、2-ヒドロキシデカン酸、2-ヒドロキシウンデカン酸、4-ヒドロキシマンデル酸、3-ヒドロキシ-4-メトキシマンデル酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシマンデル酸、α-ヒドロキシアラキドン酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシラウリン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシパルミチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、3-(2’-ヒドロキシフェニル)乳酸、3-(4’-ヒドロキシフェニル)乳酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メチル乳酸、ピルビン酸メチル、ムチン酸、α-フェニル酢酸、α-フェニルピルビン酸、ピルビン酸、サッカリン酸、酒石酸およびタルトロン酸が挙げられる。ケト酸の例としては、2-ケトエタン酸(グリオキシル酸)、2-ケトエタン酸メチル、2-ケトプロパン酸(ピルビン酸)、2-ケトプロパン酸メチル(ピルビン酸メチル)、2-ケトプロパン酸エチル(ピルビン酸エチル)、2-ケトプロパン酸プロピル(ピルビン酸プロピル)、2-フェニル-2-ケトエタン酸(ベンゾイルギ酸)、2-フェニル-2-ケトエタン酸メチル(ベンゾイルギ酸メチル)、2-フェニル-2-ケトエタン酸エチル(ベンゾイルギ酸エチル) 、3-フェニル-2-ケトプロパン酸(フェニルピルビン酸)、3-フェニル-2-ケトプロパン酸メチル(フェニルピルビン酸メチル)、3-フェニル-2-ケトプロパン酸エチル(フェニルピルビン酸エチル)、2-ケトブタン酸、2-ケトペンタン酸、2-ケトヘキサン酸、2-ケトヘプタン酸、2-ケトオクタン酸、2-ケトドデカン酸および2-ケトオクタン酸メチルが挙げられる。α-ケトアミドの例としては、上述の実施例のいずれか一つを、一級アミンまたは二級アミンと反応させることによって得られる任意の化合物が挙げられる。
【0059】
また、本発明の抽出物、化合物、または製剤は、寄生虫である昆虫、特に外部寄生虫の防除に使用するため、特にこれの寄生を減少させるために提供される。したがって、本発明は、特に、外部寄生虫、特に節足動物門由来の外部寄生虫、より具体的には、ノミ、マダニ、およびダニなどを含む、昆虫またはクモ類由来の外部寄生虫の寄生を減少させるための、本明細書に提供される抽出物、化合物、または製剤の使用に関する。
【0060】
本発明の文脈において、昆虫は特にノミであり得る。しかしながら、本発明では、用語「昆虫」は、以下の目の昆虫を含む: チョウ目、甲虫目、同翅目、異翅目、双翅目、アザミウマ目、バッタ目、シラミ目、ノミ目、ハジラミ目、シミ目、等翅目、チャタテムシ目、およびハチ目。しかし、本発明は、特に、ヒトまたは動物を悩ませ、病原体を運ぶもの、例えば、イエバエ、オーストラリアブッシュフライ、秋のイエバエ、ヒメイエバエ、ニクバエ、ヒツジキンバエ、ウシバエ、キスジウシバエ、クロバエ(Chrysomyia chloropyga)、ヒトヒフバエ、ラセンウジバエ、ウマバエ、ヒツジバエ、サシバエ、ノサシバエなどのハエ、および長角亜目、例えば、ユスリカ、ヌカカ科、ブユ科、フレボトマ(Phlebotoma)属およびルツォミヤ属を含むチョウバエ科、例えばネコノミおよびイヌノミ(ネコおよびイヌのノミ)、ケオピスネズミノミ、ヒトノミ、デルマトフィルスペネトランス(Dermatophilus penetrans)などのノミ、ヘマトピナス属、ソレノポテス属、ケモノホソジラミ属、ヒトジラミなどの吸血シラミ(シラミ目)、ヒツジ(ダマリナ) ハジラミおよびウシハジラミなどのハジラミ(ハジラミ目)、サシバエおよびウシアブ (アブ科)、ゴマフアブなどのゴマフアブ(Haematopota)属、タバヌス・ニグロビタツス(Tabanus nigrovittatus)などのアブ属、クリソプス・カエキュチエンス(Chrysops caecutiens)などのメクラアブ属、ツェツェバエ属などのツェツェバエ、迷惑な昆虫、特に、チャバネゴキブリ、コバネゴキブリ、およびワモンゴキブリなどのゴキブリに関する。
【0061】
本発明の文脈では、クモ類の外部寄生虫は、特にダニおよびマダニを含む、ダニ目の外部寄生虫であってもよい。ダニの代表は、例えば、ニワトリダニ、ヒゼンダニ、ヒツジキュウセンヒゼンダニ、およびヒツジツメダニ属である。代表的な公知のマダニは、例えばウシマダニ属、キララマダニ属、カクマダニ属(Anocentor)、カクマダニ属(Dermacentor)、チマダニ属、イボマダニ属、マダニ属、リピセンター属(Rhipicentor)、マルガロプス属、コイタマダニ属、ナガヒメダニ属、オトビウス属、およびヒメダニ属などであり、好ましくは、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの家畜を含む温血動物、ニワトリ、七面鳥、ガチョウなどの家禽、ミンク、キツネ、チンチラ、ウサギなどの毛皮を有する動物、ならびにイヌおよびネコなどのコンパニオン動物に寄生するが、ヒトにも寄生する。
【0062】
マダニは、硬いマダニと柔らかいマダニに分けられ得る。硬いマダニは、一匹、二匹、または三匹の宿主動物に寄生することによって特徴付けられる。それらは、通りかかった宿主動物に付着し、血液または体液を吸う。満腹になったメスのマダニは、宿主動物から落下し、幼虫がふ化する床またはその他の保護された場所の適切なひび割れに大量の卵(2000~3000)を産む。これらはまた、宿主動物を探して、そこから血液を吸う。一匹の宿主動物にのみ寄生するマダニの幼虫は、二回脱皮して若虫となり、選択した宿主から離れることなく、最終的には成虫となる。二匹または三匹の宿主動物に寄生するマダニの幼虫は、血液を摂食した後、局所環境で脱皮し、マダニの若虫または成虫として第二または第三の宿主を探して、その血液を吸う。
【0063】
マダニは、世界中で多くのヒトおよび動物の疾患を媒介し、広めている。その経済的影響から、最も重要なマダニの属は、ウシマダニ属、コイタマダニ属、マダニ属、イボマダニ属、キララマダニ属、およびカクマダニ属である。これらはウイルス性、細菌性(リケッチアおよびスピロヘータ(Spyrochete)を含む)、および原生動物疾患の媒介体であり、マダニ麻痺症およびマダニ中毒症を引き起こす。一匹のマダニでさえ、その唾液が摂取中に宿主動物に入り込むと、麻痺を引き起こす可能性がある。マダニによって引き起こされる疾患は、通常、いくつかの宿主動物に寄生するマダニによって媒介される。このような疾患、例えば、アナプラズマ症、エーリキア症、バベシア症、タイレリア症、および心水病は、世界中の多数の飼育動物および家畜の死亡または障害の原因となっている。温暖な気候の多くの国では、マダニ属のマダニが、慢性的に有害なライム病の病原体を、野生動物からヒトに感染させる。疾患の感染以外にも、マダニは家畜生産における大きな経済的損失の原因となっている。損失は宿主動物の死に限定されるものではなく、毛皮の損傷、成長の低下、乳量の減少、および肉の価値の低下も含まれる。動物に対するマダニ寄生の有害な影響は長年知られており、マダニ防除プログラムを使用して大きな進歩を遂げてきたが、これまで、これらの寄生虫を防除または排除する完全に満足のいく方法は発見されておらず、さらにマダニはしばしば化学活性成分に対する耐性を発達させてきた。
【0064】
家畜およびペットへのノミの寄生も同様に、十分に解決されていないか、または相当な費用でしか解決できない問題を、所有者に依然として示している。マダニと同様に、ノミはやっかいなだけでなく、疾患の媒介体でもある。例えば、ここでは、治療が困難なイヌの重篤な皮膚疾患であるノミアトピー性皮膚炎(FAD)について言及する。ノミは、宿主動物から宿主動物へ、および動物飼育係へ、特に、例えば、地中海、米国南部などの暖かく湿った気候地域で、様々な真菌性疾患を伝染させる可能性がある。特にリスクが高いのは、免疫システムが弱まっている人や、免疫システムがまだ完全には発達していない子供である。それらの複雑なライフサイクルのために、ノミの防除のための公知の方法のいずれも完全に満足のいくものではなく、特に、ほとんどの公知の方法は、基本的に、毛皮の中のノミの成虫の防除を目的としているため、動物の毛皮の中だけでなく、床、カーペット、動物の寝具、椅子、庭、および感染した動物が接触するその他のすべての場所に存在する、ノミの様々な若年期には全く手つかずである。ノミの治療は高価であり、長期間継続しなければならない。
【0065】
成功するには、通常、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの感染した動物だけでなく、感染した動物が頻繁に出入りするすべての場所を同時に処理することにかかっている。
【0066】
このような複雑な手順は、考察中の式Iの化合物の特定の利点が、それらが非常に有効であると同時に、温血動物に対して毒性が非常に低いために、本発明の式(I)の化合物では不要である。
【0067】
本発明による式(I)の化合物は、同じ活性範囲を有する他の物質、もしくは寄生虫駆除剤、または他の活性改善物質と混合されて、さらに改善されたまたはより長続きする作用を達成し、その後塗布され得る。
【0068】
活性成分は、多くの場合、温血動物に塗布され、もちろん皮膚と接触するため、適切な製剤賦形剤は、化粧品で公知の賦形剤および投与形態である。これらは、溶液、エマルション、軟膏、クリーム、ペースト、粉末、スプレーなどの形態で投与され得る。
【0069】
本発明による式(I)の化合物は、吹きかける、浸す、または注ぐ技術を含む、局所用投与に適した任意の技術によって動物への塗布用に製剤化され得る。さらなる好ましい塗布技術としては、外部寄生虫に対する長期にわたる保護を提供することを目的とした、ブレスレット、カラー、または耳標(ウシ用)などの徐放装置が挙げられる。
【0070】
本発明による式(I)の化合物は、好ましくは、ガン、スプレーなどのアプリケータ装置を使用して動物の皮膚の外部に塗布されるか、または動物が浸漬製剤の浴槽に浸漬される。
【0071】
特に、適切な製剤は、液体形態またはエアロゾル形態で塗布され得る。エアロゾル形態は、液体またはガスを噴霧剤として使用してもよい。これらには、例えば、プロパン、ブタン、ジメチルエーテル、CO2、またはハロゲン化低級アルキルガス(例えば、ハロゲン化C1-C4アルキル)、およびそれらの二つ以上の混合物などのスプレー缶に必要な従来の噴霧剤ガスが含まれる。
【0072】
特に、本発明による式(I)の化合物は、寄生領域に直接的に噴霧したり、または固体支持体に結合されたり、または徐放性材料に封入したりされ得るように製剤化される。
【0073】
固体支持体は、コンパニオン動物上の一般的な外部寄生虫と戦うように設計されたカラーの形態で提供されてもよい。これらのカラーは、通常、活性物質の5~40%を含有するプラスチック材料のマトリクスからなり、長期間にわたって活性成分の放出を可能にする。したがって、これらのカラーは、外部寄生虫に対する長期的な保護を保証する。
【0074】
ウシ、ウマ、ロバ、ラクダ、イヌ、ネコ、家禽、ヒツジ、ヤギなどの家畜またはペットへの投与については、いわゆる「注ぐ」または「塗る」製剤も適しており、これらの液体または半液体の製剤は、毛皮または羽毛の小さな領域にのみ塗布するだけでよく、拡散オイルまたは他の拡散添加剤の割合により、他に何もしなくても毛皮や羽毛全体で自ら分散し、領域全体で活性化するという利点を有する。
【0075】
もちろん、無生物の材料、例えば、衣類またはイヌおよびネコのバスケット、厩舎、カーペット、カーテン、居住区、温室などは、前述の製剤で処理されてもよく、したがって寄生虫の寄生から保護され得る。
【0076】
ヒトへの塗布については、例えば香水などの心地よい香りのエッセンスを加えて、塗布をより魅力的にすることができる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の化合物または本発明の抽出物は、局所用製剤の形態で塗布される。
【0078】
したがって、本発明によれば、式Iの化合物、特にアナタビンを含む製剤が提供される。
【0079】
特定の実施形態では、式Iの化合物は、リポソームに配置されてもよい。本発明によれば、リゾリン脂質などの任意のリン脂質および/またはリン脂質誘導体を利用して、式Iの化合物を封入するためのリポソームを形成してもよい。適切なリン脂質および/またはリン脂質誘導体には、これらに限定されないが、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG-ホスファチジルエタノールアミン、PVP-ホスファチジルエタノールアミン、その組み合わせなどが挙げられる。
【0080】
一部の実施形態では、卵またはダイズに由来するレシチンは、リン脂質として利用され得る。かかるレシチンには、American Lecithin Company、Oxford、CTのPHOSPHOLIPON(登録商標)85G、PHOSPHOLIPON(登録商標)90G、およびPHOSPHOLIPON(登録商標)90H(PHOSPHOLIPON(登録商標)90Gの完全水素化バージョン)として市販されているものが含まれる。他の適切なレシチンには、日興化学のLECINOL S-10(登録商標)レシチンが含まれる。
【0081】
上記のリン脂質またはその誘導体は、式Iの化合物または式Iを含む代替的製剤を含有するリポソームを形成するために利用され得る。実施形態では、高いホスファチジルコリン含量を有するレシチンを利用して、リポソームを形成し得る。一部の実施形態では、利用され得る高ホスファチジルコリンレシチンは、リノール酸ベースのホスファチジルコリンを最低約85%含有する大豆由来レシチンであるPHOSPHOLIPON(登録商標)85Gを含む。このレシチンは使いやすく、他の特別な添加剤を添加することなく、低いプロセス温度(約20℃~約55℃)でサブミクロンのリポソームを生成することができる。PHOSPHOLIPON(登録商標)85Gは、ホスファチジルコリンに加えて、およそ5~7%のホスファチジン酸を含有する。ホスファチジン酸は、結果として生じる製剤に負の表面電荷を与え、処理時間および処理エネルギーを減少させ、安定した形態の形成を助ける。
【0082】
一部の実施形態では、追加の成分を製剤と組み合わせて、全体的なレオロジー特性および加工特性を改善し、保存中の微生物学的完全性を保証することができる。かかる構成要素には、限定されるものではないが、吸収剤、消泡剤、酸性化剤、アルカリ剤、緩衝液、抗菌剤、抗酸化剤(例えば、トコフェロール、BHT、ポリフェノール、フィチン酸)結合剤、生物学的添加剤、キレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム、EDTA四ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、等)、変性剤、防腐剤(例えば、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、等) 還元剤、可溶化剤、溶媒、粘度調整剤、湿潤剤、増粘剤、およびそれらの組み合わせが含まれる。これらの追加成分は、分散液の約0.001重量%~約10重量%、実施形態では分散液の約0.1重量%~約1重量%の量で存在し得る。
【0083】
製剤に添加され得る好適な湿潤剤の例としては、ポリオールおよびポリオール誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール(本明細書では、1,2-ペンタンジオールと呼ばれることもある)、イソプレングリコール(1,4-ペンタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、エリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、ポリエチレングリコール、例えばPEG-4、PEG-6、PEG-7、PEG-8、PEG-9、PEG-10、PEG-12、PEG-14、PEG-16、PEG-18、PEG-20、その組み合わせ、糖および糖誘導体(フルクトース、グルコース、マルトース、マルチトール、マンニトール、イノシトール、ソルビトール、ソルビチルシランジオール、スクロース、トレハロース、キシロース、キシリトール、グルクロン酸およびその塩)、エトキシ化ソルビトール(ソルベス-6、ソルベス-20、ソルベス-30、ソルベス-40 およびそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、HYDROLITE-5(登録商標)ペンチレングリコール(Symrise GmbHから市販)などの市販の1,2-ペンタンジオールが利用されてもよい。他の実施形態では、プロピレングリコールを利用してもよい。利用する場合、かかる湿潤剤は、分散液の約0.1重量%~約20重量%、実施形態では分散液の約3重量%~約10重量%の量で存在し得る。
【0084】
一部の実施形態では、フェノキシエタノールなどの防腐剤、およびブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、および/またはプロピレングリコールなどの湿潤剤の両方が、製剤に添加されてもよい。実施形態では、ペンチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールは、湿潤性を提供し、フェノキシエタノールと組み合わせた時に濃縮物の保存を補助し得る。フェノキシエタノールおよびペンチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール混合物は、水溶性および非揮発性であるべきである。
【0085】
式Iの化合物は、濃縮物の約10重量%~濃縮物の約30重量%、実施形態では濃縮物の約18%重量%~濃縮物の約26重量%、一部の実施形態では濃縮物の約21%重量%~濃縮物の約22%の量で、得られた濃縮物中に存在し得る。濃縮物中のリン脂質の量は、濃縮物の約1重量%~濃縮物の約20重量%、実施形態では、濃縮物の約4重量%~濃縮物の約12重量%であり得、残りは、溶媒、湿潤剤、および防腐剤である。
【0086】
得られた製剤は、直接的に投与されてもよく、または実施形態では、任意の許容可能な担体と組み合わされてもよい。本明細書で使用される場合、用語「許容可能な担体」および「複数の許容可能な担体」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしに、合理的な利益/リスク比に見合って、ヒトまたは動物の組織と接触して使用するのに好適であり、その意図される使用に有効である化合物、ならびにそれらの化合物の塩および生体適合性誘導体を指す。本明細書で使用される場合、薬学的に許容可能な担体には、水を含む任意のすべての溶媒、分散液媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、安定化賦形剤、吸収促進剤または遅延剤、ポリマー結合剤およびポリマー接着剤を含むポリマー、それらの組み合わせなどが含まれる。かかる材料は、使用される用量および濃度において、レシピエントにとって非毒性であるべきであり、TRIS-HCI、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩およびその他の有機酸塩などの緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、ポリアルギニンなどの低分子量(約10残基未満)のペプチド、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリジノンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニンなどのアミノ酸、セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの対イオン、および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)および/またはポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0087】
こうした媒体および薬剤の使用は、当業者の範囲内である。追加的な活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0088】
実施形態では、上記担体は、単独でまたは組み合わせて利用されて、担体システムを形成してもよい。好適な担体システムは、当業者の用途の範囲内であり、限定されるものではないが、ローション、クリーム、ゲル、エマルション、分散液、固体、固体スティック、半固体、エアロゾルまたは非エアロゾル発泡体、スプレー、セラム、経皮接着剤パッチシステム、それらの組み合わせなどを含み得る。実施形態では、リポソームは、リポソーム濃縮物中にあってもよく、上述の透過促進剤と共に導入されてもよい。実施形態では、透過促進剤は、本開示の組成物を形成するためにリポソーム濃縮物に添加される水相中に存在し得る。実施形態では、製剤は、経皮送達に使用できる。
【0089】
したがって、式Iの化合物は、最終組成物、実施形態では、ローション、クリーム、または上述の任意の他の適切な形態中に、組成物の約0.5重量%~約20重量%、実施形態では、組成物の約0.75重量%~約10重量%、他の実施形態では、組成物の約1重量%~約7.5重量%、他の実施形態では、組成物の約1.25重量%~約5重量%、他の実施形態では、組成物の約1.5重量%~約3重量%の量で存在してもよい。他の実施形態では、式Iの化合物は、最終組成物、実施形態では、ローション、クリーム、または上述の任意の他の適切な形態中に、組成物の約0.2重量%~約50重量%、好ましくは組成物の約5重量%~約50重量%、実施形態では、組成物の約10重量%~約50重量%の量で存在してもよい。
【0090】
例えば、一部の実施形態では、ローションまたはクリームは、油相を含んでもよく、油相は、次に、エモリエント、脂肪アルコール、乳化剤、それらの組み合わせなどを含んでもよい。例えば、油相は、C12-15 安息香酸アルキル(Finetex Inc.(Edison,NJ)からFINSOLV(商標)TNとして市販されている)、カプリン酸-カプリル酸トリグリセリド(HulsからMIGLYOL(商標)812として市販されている)などのエモリエントを含み得る。利用され得る他の適切なエモリエントには、植物由来のオイル(コーンオイル、紅花油、オリーブオイル、マカダミアンナッツオイルなど)、カプリン酸塩、リノール酸塩、ジリノール酸塩、イソステアリン酸塩、フマル酸塩、セバシン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩などの各種合成エステル類、合成中鎖トリグリセリド、シリコーンオイルまたはポリマー、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ラウリルアルコール、およびそれらの組み合わせなどの脂肪アルコール類、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG-100、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリルSE、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの脂肪酸の中和物または部分中和物を含む乳化剤、脂肪酸を含む植物油抽出物、セテアレス-20、セテス-20、PEG-150ステアレート、PEG-8ラウレート、PEG-8オレエート、PEG-8ステアレート、PEG-20ステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-150ジステアレート、PEG-8ジステアレート、それらの組み合わせなど、または当業者の範囲内で皮膚のエモリエント効果のために使用される他の非極性の化粧品または薬学的に許容される材料、それらの組み合わせなどが含まれる。
【0091】
エモリエント、C12-15安息香酸アルキルは、エモリエント性および展延性のために含まれてもよい。存在する場合、エモリエントは、総組成物の約0.2重量%~約15重量%、実施形態では、総組成物の約2重量%~約6重量%の量で存在し得る。セチルアルコールおよびステアリルアルコールなどのアルコールを添加して、クリームにボディまたはテクスチャを付与してもよい。セチルアルコールとステアリルアルコールの両方が利用される場合、セチルアルコールとステアリルアルコールとの比は、約2:1~約1:2であり得、ワックス状アルコールが、全組成物の約1~約6重量パーセントを占め、実施形態では、全組成物の約2重量%~約4重量%を占める。
【0092】
上述のように、この油相はまた、乳化剤を含んでもよい。適切な乳化剤としては、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG-100、ステアリン酸グリセリルSE、ステアリン酸グリセリルクエン酸塩、それらの組み合わせなどを含むが、これらに限定されない。実施形態では、ステアリン酸の組み合わせは、乳化剤として油相で利用されてもよい。例えば、ステアリン酸グリセリルおよびステアリン酸PEG-100混合物(実施形態では、ICI AmericasからARLACEL(登録商標)165として市販されているステアリン酸グリセリルおよびポリエチレングリコール100ステアリン酸の混合物)を、乳化剤として用いて、水中油(o/w)エマルションを形成してもよい。こうした組み合わせでは、ステアリン酸PEG-100は、一次乳化剤として作用し、ステアリン酸グリセリルは、共乳化剤として作用する場合がある。乳化剤は、総組成物の約2重量%~約8重量%、実施形態では総組成物の約3重量%~約5重量%の量で存在し得る。
【0093】
この油相で上述した乳化剤とエモリエントとの重量比は、約10:1~約1:2、一部の実施形態では約2:1~約1:1であり得る。
【0094】
存在する場合、油相は、約5重量%~約20重量%のローションまたはクリーム、実施形態では、約8重量%~約15重量%のローションまたはクリームの量で存在してもよい。上述のリポソームで形成されたローションまたはクリームは、水相も含み得、これは実施形態では、上述の透過促進剤、ならびに、湿潤剤および防腐剤を含む、上述の第二の相を形成するために組み合わされた品目を含み得る。したがって、実施形態では、本明細書に記載のリポソームを有するローションまたはクリームの形成に利用される水相は、上述の第二の相を含み得る。さらに、実施形態では、本明細書では粘度剤と称される場合もある、粘度調整剤を加えて、ローションおよび/またはクリームに所望の粘度を提供することが望ましい場合がある。
【0095】
水相に添加され得る適切な粘度剤は、アニオン性ポリマーおよび非イオン性ポリマーを含む水溶性ポリマーを含む。有用なポリマーには、CTFA名がCARBOMERの架橋アクリル酸ポリマーなどのビニルポリマー、プルラン、マンナン、スクレログルカン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、アカシアガム、アラビアガム、トラガカント、ガラクタン、カロブガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、カラゲニン、ペクチン、アミロペクチン、寒天、クインスシード(マルメロミル)、デンプン(米、コム、ジャガイモ、小麦)、藻類コロイド(藻類抽出物)、デキストラン、サクシノグルカンなどの微生物ポリマー、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン系ポリマー、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンなどのアクリレートポリマー、ならびにベントナイト、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ラポナイト、ヘクトナイト、および無水ケイ酸などの無機水溶性物質が含まれる。前述の組み合わせは、実施形態で使用されてもよい。一部の実施形態では、CARBOMER 940などのCARBOMERを粘度剤として添加して、クリーム配合物のレオロジー特性を制御し、一次エマルションに安定性を加えてもよい。
【0096】
利用される場合、粘度剤は、組成物の約0.1重量%~約2重量%、実施形態では、組成物の約0.25重量%~約0.6重量%の量で存在し得る。
【0097】
あるいは、水相は、グリコール、ポリオール、乳酸塩、アミノ酸、ペプチド、糖類、尿素、PCAナトリウム、ヒアルロン酸、もしくはそれらの塩などの他の可溶性湿潤剤、または当業者の範囲内で、任意の他の適切な湿潤剤、または水溶性もしくは水分散性の保湿剤を含有してもよい。湿潤剤と透過促進剤と防腐剤と粘度剤との重量比は、約20:10:1:1~約10:20:1:1、一部の実施形態では、約15:10:2:1~約10:15:1:1とすることができる。
【0098】
したがって、上述のように、本開示のローションおよび/またはクリームを形成するために利用される水相は、水、湿潤剤、防腐剤、粘度剤、および透過促進剤を含み得る。例えば、実施形態では、適切な水相は、グリセリン、ペンチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール、エトキシジグリコール、フェノキシエタノール、水、およびCARBOMER 940の組み合わせを含み得る。
【0099】
一部の実施形態では、粘度剤は、上述の湿潤剤中で分散液として水相に、任意選択的に水との組み合わせで、任意選択的に上述の防腐剤との組み合わせで添加されてもよい。例えば、実施形態では、CARBOMER 940は、水、プロピレングリコール、およびフェノキシエタノールの混合物中に分散された、CARBOMER940を含有する2%の分散液などの分散液として添加されてもよい。このCARBOMER 940分散液は、バッチ製造工程で別々に作製されてもよい。CARBOMER940などの粘度剤が別個の分散液として水相に加えられる場合、湿潤剤と防腐剤と水との重量比は、約0.3:2:0.05:10~約0.5:1:0.2:10、一部の実施形態では約0.1:0.5:0.05:9~約0.2:1:0.1:9であり得る。
【0100】
存在する場合、水相は、約60重量%~約80重量%のローションまたはクリーム、実施形態では、約63重量%~約71重量%のローションまたはクリームの量で存在してもよい。
【0101】
一部の実施形態では、本明細書では中和相または緩衝相と称され得る第三の相も、クリームまたはローションの形成に添加されてもよい。こうした相の成分は、これらに限定されないが、水;トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2メチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、2-アミノブタノールを含むアミン;水酸化ナトリウム;水酸化カリウム;乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、ナトリウムまたはカリウム一、二、もしくは三リン酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどの塩;乳酸、クエン酸、リン酸、ホウ酸などの酸;その組み合わせなどを含み得る。水は、この相における他の成分の溶媒および希釈剤として作用し得る。トリエタノールアミンなどのアミンは、CARBOMERアクリル酸コポリマーなどの水相における酸成分の中和剤として作用する場合があり、乳酸ナトリウム溶液(水中60%w/w)などの追加の塩、および乳酸などの追加の酸を緩衝系として添加して、クリームの最終pHを約4.8~約6、一部の実施形態では約5~約5.5(皮膚の自然なpH範囲内)に調整および維持することができる。実施形態では、水相のCARBOMER 940アクリルコポリマーまたは類似の材料が完全に中和され、その粘度の可能性を十分に発揮する必要があるため、約5以上のpHが有用であり得る。
【0102】
実施形態では、トリエタノールアミンなどのアミンの適量は、最終組成物の約0.5重量%~約2重量%、実施形態では、最終組成物の約1重量%~約1.5重量%の量で存在するように添加され得る。乳酸ナトリウムなどの適切な量の塩は、最終組成物の約0.5重量%~約3重量%、実施形態では、最終組成物の約1重量%~約1.5重量%の量で存在するように添加されてもよい。実施形態では、乳酸などの適切な量の酸は、最終組成物の約0重量%~約1重量%、一部の実施形態では、最終組成物の約0.25重量%~約0.75重量%、一部の実施形態では、最終組成物の約0.5重量%の量で存在するように添加されてもよい。中和剤および/または緩衝剤は、最終組成物の約0.01重量%~約10重量%、実施形態では、最終組成物の約2重量%~約4重量%の量で存在するように添加されてもよい。
【0103】
存在する場合、中和相は、約0.1重量%~約15重量%のローションまたはクリーム、実施形態では、約5重量%~約8重量%のローションまたはクリームの量で存在してもよい。
【0104】
実施形態では、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレイン酸塩などを含むがこれに限定されない、他の可溶性成分も添加されてもよい。添加され得る他の緩衝剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリメタミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、クエン酸、酢酸、乳酸、および乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸リチウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸銀、乳酸銅、乳酸鉄、乳酸マンガン、乳酸アンモニウムを含む乳酸の塩、それらの組み合わせなどが挙げられる。これらの添加剤は、油相、水相、中和相、色素、それらの組み合わせなどを含む、クリームまたはローションを形成する際に利用される上述の任意の相に添加され得る。
【0105】
実施形態では、上述の製剤の使用は、様々な濃度で式Iの化合物を有する様々な組成物の製造を調整することを可能にし得る。例えば、実施形態では、投与のための最終組成物中の式Iの化合物の量よりも約10倍~約15倍高い濃度で式Iの化合物を有してもよい。製造については、濃縮物の大きなバッチが製造されてもよく、その後、濃縮物の複数の部分を利用して、様々な濃度で生物活性剤を有する複数の組成物を製造してもよい。これは、本発明の組成物中の式Iの化合物の濃度を調整する際に大きな柔軟性を可能にする。
【0106】
得られたクリーム、ローションなどは、長い保存寿命を有することができ、すなわち、少なくとも約2年間、実施形態では、約2~約10年の保存中、安定であり続けることができる。
【0107】
本発明の特定の実施形態によれば、洗浄組成物またはシャンプー組成物、特に、式Iの化合物、特にアナタビンを含む、ヒトを含む動物用の洗浄剤またはシャンプーが提供される。組成物は、任意で、少なくとも一つの湿潤剤または保湿剤、少なくとも一つの界面活性剤、少なくとも一つの皮膚コンディショナー、少なくとも一つのヘアコンディショナー、少なくとも一つの洗浄剤、少なくとも一つのスクラブ剤、少なくとも一つの油、少なくとも一つの抗酸化剤、少なくとも一つの防腐剤、少なくとも一つのエモリエント(無痛化剤)、少なくとも一つの収斂剤、芳香剤、および水を含み得る。
【0108】
シャンプーで使用できる一部の湿潤剤はまた、ヘアコンディショナーおよび/または皮膚コンディショナーとして機能することができる。使用できるいくつかの界面活性剤はまた、ヘアコンディショナーとして、および/または起泡力増進剤として、および/または洗浄剤として機能することができる。使用できる一部のヘアコンディショナーは、皮膚コンディショナーとしても機能し得る。使用できる油の中には、皮膚コンディショナーとして機能するものもある。使用できるエモリエントの中には、皮膚コンディショナーとして機能するものもある。使用できる抗酸化剤の中には、皮膚コンディショナーとして機能するものもある。使用できる収斂剤の中には、皮膚コンディショナーとして機能するものもある。
【0109】
任意で、組成物は、粘度調整剤、例えば塩化ナトリウムを使用して製剤化されてもよい。任意で、一定レベルのpHを維持する必要がある場合、組成物は、任意の一般的に使用される緩衝系を使用して製剤化されてもよい。例えば、クエン酸を使用してpHを調節することができる。
【0110】
組成物中の保湿剤の総濃度は、組成物全体の約1~10質量%とすることができる。使用できる保湿剤の一部の非限定的な例には、グリセリン、ハチミツ、および藻類抽出物が含まれる。使用できる保湿剤のその他の非限定的な例には、尿素、乳酸ナトリウム、およびグリシンまたはヒスチジンなどの一部のアミノ酸が含まれる。
【0111】
組成物中の洗浄剤の総濃度は、組成物全体の約25~40質量%とすることができる。使用できる洗浄剤のいくつかの非限定的な例としては、ラウレート硫酸ナトリウム、およびPEG-80ソルビタンラウレートが挙げられる。
【0112】
組成物中の界面活性剤の総濃度は、組成物全体の約10~20質量%とすることができる。使用できる界面活性剤のいくつかの非限定的な例には、オレフィンC14-16スルホン酸ナトリウム、コカンホジ酢酸二ナトリウム、およびPEG-80ソルビタンラウレートが含まれる。
【0113】
組成物中の皮膚コンディショナーの総濃度は、組成物全体の約2~15質量%とすることができる。使用できる皮膚コンディショナーのいくつかの非限定的な例には、グリセリン、小麦アミノ酸、ラヴァンデュラ・アンガスティフォリア(ラベンダー)抽出物、トリオレイン酸PEG-120メチルグルコース、ハチミツ、ペニーロイヤルミント抽出物、キューカミス・サティヴァス(キュウリ)果実抽出物、チャノキ葉抽出物、カモミール・エキス(カミツレ)花抽出物、ロスマリナス・オフィシナリス(ローズマリー)葉抽出物、トコフェロール酢酸エステル、藻類抽出物、およびハマメリス(マンサク)が含まれる。
【0114】
組成物中のヘアコンディショナーの総濃度は、組成物全体の約2~10質量%とすることができる。使用できるヘアコンディショナーのいくつかの非限定的な例には、グリセリン、コカンホジ酢酸二ナトリウム、および小麦アミノ酸が含まれる。
【0115】
組成物中のスクラブ剤の総濃度は、組成物全体の約0.1~1質量%とすることができる。使用できるスクラブ剤の一つの非限定的な例は、ブロメラインである。
【0116】
組成物中の油の総濃度は、組成物全体の約0.1~2質量%とすることができる。使用できる油のいくつかの非限定的な例には、lavandula angustifolia(ラベンダー)抽出物およびcedrus atlantica(シダーウッド)樹皮油が含まれる。
【0117】
組成物中の抗酸化剤の総濃度は、組成物全体の約0.1~3質量%とすることができる。使用できる抗酸化剤のいくつかの非限定的な例としては、メラレウカ・アルテルニフォリア(ティーツリー)葉油、チャノキ葉抽出物、およびトコフェロール酢酸エステルが挙げられる。
【0118】
組成物中の防腐剤の総濃度は、組成物全体の約0.1~1質量%とすることができる。使用できる防腐剤の一部の非限定的な例としては、メチルイソチアゾリノン、およびメチルクロロイソチアゾリノンが挙げられる。
【0119】
組成物中のエモリエントの総濃度は、組成物全体の約0.1~2質量%とすることができる。使用できるエモリエントのいくつかの非限定的な例には、トリオレイン酸PEG-120メチルグルコース、およびキューカミス・サティヴァス(キュウリ)果実抽出物が含まれる。
【0120】
組成物中の収斂剤の総濃度は、組成物全体の約0.1~1質量%とすることができる。使用できる収斂剤の非限定的な一例が、ハマメリス(マンサク)である。
【0121】
上述の要件を満たす任意の組成物は、当業者に公知の一般的な配合技術を使用して調製することができる。例えば、上述の成分は、互いに混合され、続いて水が加えられ、例えば、急速攪拌を用いることによって、水性組成物を形成することができる。あるいは、別個の容器中の各成分は、水に予備的に溶解されるか、そうでなければ、水と混合して、それぞれが別個の容器に収容される複数の水性システムを得ることができる。次いで、すべての容器の内容物を、例えば、攪拌または振とうすることによって組み合わせて、最終組成物を形成することができる。
【0122】
所望される場合、当業者は、組成物を形成する成分を混合する他の方法を設計することができる。選択される混合方法にかかわらず、当業者であれば、組成物中の各成分の濃度が上述の限界を満たすように、かかる量の各成分を提供するであろう。
【0123】
動物の治療のための方法がさらに提供される。組成物は、上述の手順に従って調製することができ、任意選択で動物を洗浄する。次いで、組成物は、外部寄生虫に対する保護を必要とする動物の皮膚に局所的に塗布することができる。組成物の動物の皮膚への塗布には、様々な方法を使用できる。例えば、組成物は、従来の手動ポンプを使用して噴霧することができる。あるいは、組成物は、エアロゾル調製のための一般的に公知の方法を使用してエアロゾルを形成するように製剤化されてもよい。当業者であれば、組成物を塗布するための他の方法を考案することができる。
【0124】
本発明はまた、寄生、特に、外部寄生虫である昆虫またはクモ類を含む、昆虫またはクモ類による寄生から対象を保護する方法を提供する。方法は、一実施形態では、式Iの化合物、特にアナタビンを含む治療組成物と、対象の表面と接触させること、またはこれを被覆することを含み得る。対象の表面と接触させるか、またはこれを覆うことは、例えば、本発明の治療組成物を含む噴霧装置を使用することによって達成され得る。そのため、本発明はまた、例えば、布地または衣服などの、昆虫忌避物体またはクモ類忌避物体を提供する。布地は、布地の繊維に吸収された昆虫忌避分子を有する。布地は、衣服での使用に適しており、より具体的には、昆虫、特に外部寄生虫への曝露のリスクがある個人によって着用されるように設計された保護衣での使用に適している。本発明の防虫剤化合物は、限定されるものではないが、式Iの化合物を含有する浴槽に繊維または布地を浸漬すること、繊維または布地にスプレーを提供すること、または繊維もしくは布地を洗浄することを含む様々な方法で、布地に組み込まれてもよい。本発明では、外部寄生虫による寄生を減少させるという所望の効果を達成するために、繊維または布地に対する本発明の製剤の量は、当業者によって変化させられ得る。本発明では、繊維または布地上の本発明の製剤または化合物の少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100μmol/m2の濃度を達成するのに十分な量を使用することが好ましい。さらに、本発明では、繊維または布地上の本発明の製剤または化合物の最大300μmol/m2の量を使用することが好ましい。特に、0.1日間~30日間、具体的には1時間~48時間、最も具体的には4時間~8時間、外部寄生虫に対する保護を達成するのに十分な量を使用することが好ましい。
【0125】
さらなる実施形態では、式Iの化合物、特にアナタビンを含む本発明の局所用製剤は、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、発泡体、パッチ、粉末、固体、スポンジ、テープ、蒸気、ペースト、またはチンキの形態であってもよい。さらなる例は、溶液などの液体の形態のアナタビンである。
【0126】
以下の実施例は、実施例の内容に限定することなく、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0127】
1.生物体
1.1 たばこ植物
ニコチアナ種および品種の説明を表1に示す。選択は、発明者のデータおよび文献から以前に知られていたアルカロイド含有量、ならびに施設で入手可能な植物に基づいて行われた。
表1:植物の特徴および関連する粗抽出物の種類
【表1】
【0128】
1.2 バイオアッセイ用マダニ
R.sanguineusは、満腹のメスまたは餌を与えられていない成虫のマダニとして、Ecto Services Inc.(Henderson、NC、USA)から購入した。産卵および幼虫の発育のために、メスを28℃および相対湿度80%で維持した。孵化した幼虫と成虫のマダニを、使用時まで同じ環境条件下で飼育した。
Ixodes ricinus の若虫は、Insect Service GmbH(ドイツ、ベルリン)で購入し、使用時まで28℃および相対湿度80%で維持した。
【0129】
2.植物の栽培
N.tabacum TN90およびK326栽培品種ならびにN.glauca、N.glutinosa、およびN.debneyiの種子を、発明者らの種子貯蔵庫から入手した。遺伝子組み換えTN90株PMT(06TN2048)は、Altria Client Services LLC(Richmond、VA、USA)から入手した。PMT株は、特許WO2015157359A1に記載されるアグロバクテリウムを介した形質転換を使用して生産された。種子を土壌含有の浮遊トレイに播種した。よく成長した苗木を5-Lの鉢に移し、完全に成長するまで16/8時間の人工明/暗光周期で栽培した。
【0130】
開花時には、すべての植物が花を切り取られた。花を切り取った二週間後、代表的な、完全に成長した葉を各植物からサンプリングした。すべてのサンプルを、直ちにメタノールでの粗抽出物の調製に使用した。
【0131】
野外での栽培については、N.tabacum Stella(バーレーたばこ)およびN.tabacum ITB 683(バージニアたばこ)の種子を、地元の供給源から得て、土壌含有の浮遊トレイに播種し、温室で栽培し、たばこ農業慣行に従って野外に移植した。スイス西部(Vaud州)では、1ha当たり24,000の密度で苗木を植えた。花を切り落とした2週間後に、完全に成熟した植物から葉のサンプルを採取し、粗メタノール抽出物の調製のために直ちに実験室に輸送した。
【0132】
3.粗抽出物の調製
すべての植物の葉を、60℃で24時間オーブン乾燥し、ガラスビーズで400rpmで8時間振とうすることによって粉砕した。選択したたばこの品種/種ごとに、2gの粉砕した葉の粉末を50-mLのガラス瓶に入れた。20ミリリットルのメタノール(HPLCグレード、純度99.9%以上、Sigma-Aldrich、セントルイス、MO、USA)を粉砕した葉に添加した。次いで、混合物を30分間超音波処理(Branson 3510-DTH Ultrasonic Cleaner、Danbury、CT、USA)し、Whatman(登録商標)濾紙(125mmφ、セルロース紙、Maidstone、UK)を保持するフィルターカラムにデカントする。濾液を20mLのメタノールで超音波処理し、再び濾過した。次いで、得られた濾液を回転エバポレーターに入れ、溶媒を除去し、残りの抽出物をさらに16時間、すべての水が取り除かれるまで凍結乾燥した(Labconco cat.no.7934030、Kansas City、MO、USA)。メタノール溶解性葉の抽出物は、同じ抽出手順に従って、AnalytiCon Discovery GmbH(Potsdam、ドイツ)で、または内部で調製した。
【0133】
4.たばこ粗抽出物中のアルカロイドの定量
質量分析(UHPLC-MS)と組み合わせた超高速液体クロマトグラフィーによるピリジンアルカロイド(ニコチン、ノルニコチン、アナタビン、アナバシン、コチニン、およびミオスミン)分析用のサンプルは、約25mgの粗抽出物を水/メタノール(3:7、内部標準として500ng/mLのキノリンを使用;5mL)に溶解し、濾過し(細孔径0.2μmのFisherbrand(商標)滅菌PESシリンジフィルター、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)、抽出混合物で1:200に希釈することによって調製した。六つのアルカロイドすべての同時測定を、Q-Exactive質量分析計(Thermo Fisher Scientific)に結合されたUltimate 3000 UHPLCシステムで行った。クロマトグラフィー分離は、Acquity HSS T3カラム(1.7μm、100×2.1mm、Waters、Milford、MA、USA)で行い、カラム温度を45℃に設定した。溶離液は、水中の酢酸アンモニウム(10mM;pH8.9;溶離液A)およびメタノール中の酢酸アンモニウム(10mM;溶離液B)を、勾配(0分10% B;0.25分10% B;4.25分98% B;5.25分98% B;流量:0.5mL/分)として適用した。注入量は5μLであった。ニコチン、ノルニコチン、アナバシン、アナタビン、コチニン、およびミオスミンを、それぞれ3.89、2.76、3.27、3.36、2.62、および3.47分間溶出し、正エレクトロスプレーイオン化後に[M+H]+偽分子イオンとして検出した。各標的アルカロイドの濃度を、乾燥質量1グラム当たりのミリグラムで表した。粗抽出物中の標的アルカロイドのモル濃度を、マダニ防虫試験で使用される粗抽出物の濃度について計算し、以下の式に従って1平方メートル当たりのマイクロモルで表した:
【0134】
5.化合物
5.1 たばこアルカロイド
たばこの純粋なアルカロイドを、マダニ防虫/ノックダウン接触試験で使用して、たばこ葉抽出物で観察された活性を特徴付けた。(S)-ニコチン、(S)-ノルニコチン、(S)-アナバシン、(S)-コチニン、およびミオスミンの標準を、Sigma-Aldrichから購入した。(S)-および(R)-アナタビンエナンチオマーを、WuXi AppTec Co.,Ltd.(中国、上海)(表2)によって合成した。
表2:選択されたたばこアルカロイド。MW、分子量
【表2】
【0135】
ラセミアナタビンを、Deo and Crooks(1996)Tetrahedron Letters 37(8)、pp.1137-1140に記載される修正手順に従って得た。(S)-および(R)-エナンチオマーを、キラル超臨界流体クロマトグラフィーによって分離し、アルカロイド安定性を改善するために塩酸塩に変換した。
【0136】
アルカロイドの保存溶液を、使用直前にエタノール中の20ミリモル(mM)溶液として調製した。保存溶液は、長期保存のために暗所で22℃に維持した。
【0137】
5.2 バイオアッセイ陽性対照
バイオアッセイで使用される陽性対照N-N-ジエチル-m-トルアミド[DEET]を、Merck(Kenilworth、NJ、USA)から入手した。
【0138】
6.バイオアッセイ
バイオアッセイ中の抽出物の濃度は、生物のDMSO耐性の上限、または特定のバイオアッセイの制約に従って選択した。陽性対照を、それらの最小有効濃度で試験した。
【0139】
6.1 マダニ防虫/ノックダウン接触試験
アッセイを使用して、試験化合物または抽出物の防虫/抑止力を評価する。試験には、副次的評価項目としてのノックダウン有効性の予備的評価が含まれる。ノックダウンは、通常、死に先行する中毒および麻痺の状態として定義することができる(Wickham et al.(1974)Pesticide Science 5(5):657-664)。この試験は、適切な宿主ハンチング部位を見つけるために生息地を探索するマダニの探索行動と、防虫剤または刺激性物質で処理された領域を回避する傾向に依存する。マダニノックダウンは、曝露期間の終了時に死んだマダニと生きているマダニの数を収集し計数することによってではなく、定義された期間にわたる総運動性の減少として表される。
【0140】
植物抽出物またはメタノール(抽出物)もしくはエタノール(アルカロイド)で希釈した合成純粋アルカロイドを、6ウェルプレートのウェルの底部に堆積させた。各ウェルの底面の四分円(2.54cm2)の一つのみを処理した。溶媒を蒸発させた。したがって、植物抽出物の最終濃度はmg/m2で、または合成アルカロイドについては、1平方メートル当たりのマイクロモル(μmol/m2)で表した。植物抽出物に適用された最終濃度は、893(R.sanguineusの成虫のみ)、446、141、44.6、14.1、および4.46mg/m2、ならびに純粋なアルカロイドについては300、100、30、10、および3μmol/m2であった。約50匹のR.sanguineusマダニの幼虫、および正確に5匹のR.sanguineusの成虫、または5匹のI.ricinusの若虫を、各ウェルの未処理領域に添加した。陽性(DEET、市販のマダニ防虫剤)および陰性(メタノールまたはエタノール)対照を並行して評価した。試験された各濃度を、三つ以上の試験複製で実行した。加熱プレート上で1分間インキュベーションした後、処理された四分円および未処理の各四分円におけるマダニの動きの頻度を、機械視覚によって記録した。未処理表面上のマダニの動きは、未処理の三つの四分円上の動きの中央値として計算された。抑止を推定するために、1分間の前曝露期間後に、R.sanguineusの幼虫については2分間、R.sanguineusの成虫およびI.ricinusの若虫については3分間にわたって記録を行った。ノックダウン効果を評価するために、記録を9分間に延長した(1分間の前期曝露間から開始し、さらに8分間継続)。
【0141】
抑止活性を以下のように計算した:
抑止の割合=1-(処理領域での動き/未処理領域での動き)×100。
【0142】
処理領域で記録された総運動と未処理領域で記録された運動との間の50%の差は、有意であるとみなされた。
【0143】
マダニノックダウン効果を同様に計算した:
ノックダウン率=1-(撮像期間終了時の動き/撮像期間開始時の動き)×100。
【0144】
1分間の前曝露の間に記録された総運動と、9分間の記録で測定された総運動との間の50%の差は、有意であるとみなされた。
【0145】
6.2 統計分析
たばこ粗抽出物で観察された寄生虫駆除活性の反復測定の中央値を、統計分析に使用した(SAS 9.2、SAS Institute Inc.、NC、USA)。最初のステップとして、多重共線性分析が実施され、さらなる統計分析でコチニンが除外された。次いで、線形モデルを使用して、予測子ならびにそれらの二次相互作用を段階的に包含し、観察された有効性におけるアルカロイドの役割を予測した。
【0146】
7.結果
7.1 たばこ抽出物中の選択されたアルカロイドの定量
N.tabacum品種を含むニコチアナ属の種は、様々な程度でアルカロイドを蓄積する。多数のたばこ成分(炭水化物、アミノ酸、ピリジンアルカロイド、色素、イソプレノイド、テルペノイド、カルボン酸、ポリフェノール、ステロール、および無機化合物)の中で、アルカロイドは、ニコチンの抗寄生虫歴のために特に関心を呼んでいる。アルカロイドがマダニに対して観察される生物学的活性において役割を果たすかどうか、またどのアルカロイドがこの有効性に関与するかを理解するために、UHPLC-MSを使用して選択されたたばこ植物(ニコチン、ノルニコチン、アナバシン、アナタビン、コチニン、およびミオスミン)中の主要なピリジンアルカロイドを定量化した(表3)。
表3:たばこ抽出物中のピリジンアルカロイド濃度を、粗抽出物重量1グラム当たりのミリグラムとして表した
【表3】
括弧内の値は、測定された全てのアルカロイドの組成比を示す。各植物抽出物中の主要なピリジンアルカロイドの値は、太字で示す。
【0147】
ニコチンは、N.tabacumの野外栽培されたStellaおよびITB 683の粗抽出物、ならびに温室栽培されたTN90およびK326の品種における主要なアルカロイドであった。アナタビンは、遺伝子組み換えN.tabacum TN90 PMT系統の粗抽出物中の主要なアルカロイドであったが、ニコチンもこの品種(18.1%)に存在した。ノルニコチン(4.78mg/g)の最高濃度は、N.glutinosa抽出物(Glutinosa)中で測定されたが、ニコチン(11.02mg/g)がこの抽出物中の主要なアルカロイドであった。アナバシンの最高濃度は、N.glauca抽出物(Glauca、5.02mg/g)中に見られたが、ニコチンがこの抽出物中に同様の量および割合で存在した。N.debneyi抽出物(Debneyi、0.88mg/g)中の全測定アルカロイドの一部として、アナバシンも比較的高濃度であったが、ニコチンが主要化合物(6.57mg/g)であった。
【0148】
抗マダニ活性について試験されたたばこ粗抽出物中の主要なアルカロイドの潜在的な役割を理解するために、純粋なアルカロイド(S)-ニコチン、(S)-ノルニコチン、(S)-アナバシン、ならびに(S)-および(R)-アナタビンを用いて、マダニ防虫剤/ノックダウンバイオアッセイにおける全用量曲線反応を分析した。このアッセイに対して適切な濃度範囲を確立するために、各抽出物希釈で測定された各アルカロイドの量(4.46~893mg/m2)をモル濃度に変換した。粗抽出物中のアルカロイド濃度範囲は、1-596μmol/m2のニコチン、0.14-28.8μmol/m2のノルニコチン、0.024~27.6μmol/m2のアナバシン、および0.5-93μmol/m2のアナタビンであった。
【0149】
7.2 たばこ葉粗抽出物を用いた寄生虫バイオアッセイ
八つのたばこ葉抽出物はすべて、いくつかの希釈で、R.sanguineusの幼虫に対して有意な防虫活性を示した(
図3A)。五つの抽出物(Stella、K326、TN90、ITB 683、およびGlauca)は、陽性対照DEETと同等か、それよりも低い最小有効濃度を有していた。さらに、StellaおよびTN90は、446mg/m
2の濃度で、マダニの幼虫の74%および77%をそれぞれ急速にノックダウンした。同じ濃度で、二つの他の抽出物、K326およびITB 683は、マダニの42%および48%をそれぞれノックダウンした。
【0150】
すべての抽出物の濃度曲線応答は、ベル形状であり、最も高い濃度(446mg/m2)が最も効果的ではなかった。抽出物の半分が示すノックダウン活性は、防虫記録中のマダニの運動性に影響を与え、防虫の評価に偏りがあった可能性があるが、この効果はノックダウン活性のない抽出物でも観察された。バイオアッセイでは、マダニは脱出の可能性のない閉鎖領域に限定された。高濃度では、試験ウェルの一つの四分円に堆積したたばこ抽出物は、ウェルのより大きな部分に影響を与え、その複数の成分の蒸気圧によっては、ウェルの総雰囲気を飽和させる可能性がある。露出したマダニは、出口を見つけることなくこの刺激的な環境を逃れようとするため、処理された表面を含むウェル内でより多くの動きが発生する。
【0151】
これらの良好な結果に基づいて、八つのたばこ葉抽出物を、R.sanguineusの成虫(
図2B、表6および表7)およびI.ricinusの若虫(
図2C)に対してさらに試験し、他のマダニの段階および種に対するそれらの活性スペクトルを評価した。
【0152】
R.sanguineusの成虫マダニ(
図2B)では、抽出物の防虫活性は、幼虫で観察されたものよりも概して低かった(
図2A)。六つの抽出物、K326、TN90、ITB 683、Glutinosa、Glauca、およびDebneyiは、893mg/m
2の最高濃度で有意な防虫を示した。有効性中央値に基づく最小有効濃度は、TN90では141mg/m
2、K326およびITB 683では44.6mg/m
2、ならびにGlaucaでは14mg/m
2であった。マダニノックダウンは、Stella抽出物では三つの濃度(893~44.6mg/m
2)で、TN90では893および446mg/m
2で観察された。マダニノックダウンはまた、Glauca抽出物およびDebneyi抽出物でも14mg/m
2および44.6mg/m
2でそれぞれ生じた。
【0153】
I.ricinusの若虫マダニバイオアッセイ(
図2C)では、わずかな抽出物しか有意なマダニの防虫を示さなかった。StellaおよびK326は、446mg/m
2で活性であり、TN90は44.6mg/m
2で活性であった。さらに、Glutinosaは、二つの濃度(446および141mg/m
2)にわたって境界活性を示した。逆に、Stella、K326、TN90、およびITB683では試験した最高濃度446mg/m
2で、マダニノックダウンが非常に高く(89%~99.8%)、マダニの70パーセントは依然として141mg/m
2のTN90葉抽出物によって影響を受けていた。
【0154】
7.3 R.sanguineusの幼虫に対する選択された純粋なアルカロイドのマダニ防虫/ノックダウン有効性
(S)-ニコチン、(S)-ノルニコチン、(S)-アナバシン、およびアナタビン(S)および(R)異性体を、300、100、30、10、および3μmol/m2で試験し、八つのたばこ葉抽出物で測定された濃度のほとんどをカバーした。コチニンおよびミオスミンは、抽出物の総アルカロイド含量の1.3%以下を構成するため、試験の対象としなかった(表3を参照)。三つの独立した試験セットを三重に生成した(表4)。(S)-アナバシンを除くすべての純粋なアルカロイドは、R.sanguineusの幼虫に対して300μmol/m2で防虫活性を示した。興味深いことに、(S)-アナバシンは100μmol/m2でより活性が高く、中央値で58%の活性であった。(S)-ノルニコチンは、試験された最高濃度の300μmol/m2でのみ活性であった(81%の活性)。(R)-アナタビン(30μmol/m2で62%、100μmol/m2で84%)および(S)-アナタビン(30μmol/m2で54%、100μmol/m2で86%)を用いて、最良のマダニ防虫効果を観察した。30μmol/m2では、(S)-ニコチンおよび(R)-アナタビンは、それぞれ55%および62%の防虫を発揮した。これらの結果は、同じ濃度の陽性対照DEETの効果と類似しており、DEETの活性率の中央値は、30μmol/m2で64%であった。しかしながら、DEETは、10μmol/m2でアナタビンの二つの異性体よりも高い活性を維持しており、中央値は57%であった((R)-および(S)-アナタビンの中央値はそれぞれ34%および38%)。
【0155】
(S)-ニコチンおよび(R)-アナタビンは、R.sanguineusの幼虫を300μmol/m
2で効果的にノックダウンした(中央値はそれぞれ95%および53%)(表4)。100μmol/m
2では、(R)-アナタビンの活性の中央値は依然として55%であったが、ニコチンの中央値は37%で、有意性限界を下回った。他の純粋なアルカロイドでは、他の顕著なマダニノックダウン効果は観察されなかった。
表4:R.sanguineusマダニの幼虫に対する純粋なたばこアルカロイドの防虫およびノックダウン活性
【表4】
Q1、データセットの第一の四分位数(25%)。Q3、データセットの第三の四分位数(75%)。N、試験反復数。nd、未決定。最小有効濃度は、計算された活性の中央値が活性の有意性限界(50%)よりも大きい、より小さな濃度である。活性の有意性限界を超える割合の値は太字で示される。
【0156】
7.4 葉抽出物のマダニの防虫/ノックダウン活性におけるたばこ主要アルカロイドの寄与、統計分析
たばこ植物のアルカロイド含有量は、植物の品種、バッチ、温室での栽培条件、場所、大気汚染、および野外品種の気象条件、保管および乾燥条件などの多くの要因によって影響を受ける。これらの植物に由来する粗葉抽出物は、成分間の相互作用が未知の非常に複雑な混合物である。全てが、バイオアッセイで観察される変動に寄与し、葉抽出物の個々の成分の役割の評価を非常に困難にしている。これらの限界を念頭に置き、マダニ防虫/ノックダウンバイオアッセイで観察された活性における、八つの異なるたばこ葉抽出物で定量化された主要アルカロイドの仮定上の寄与を調査した。R.sanguineusの幼虫および成虫、ならびにI.ricinusの若虫マダニのバイオアッセイからのデータを組み合わせて、線形統計モデルを使用して分析した。葉抽出物の活性に対するマダニ種および段階の影響も評価した。三つの複製内の変動性のため、マダニ防虫およびノックダウンの統計分析には中央値を使用した。
【0157】
ノックダウン活性を予測するために使用される線形モデルでは、ニコチンはモデルの分散の35%を説明し、葉抽出物のノックダウン活性と有意に相関していた(p<0.0001)。マダニ種および段階はモデルにわずかな影響を与え、分散の2.3%しか説明しなかった(p<0.05)。防虫を予測するために使用される線形モデルでは、試験された抽出物で観察された活性に主に影響を与えるものとしてアルカロイドは特定されなかった。しかしながら、マダニ種および段階は、抽出物の防虫活性に著しい影響を与え、モデル分散の51%を占めた(p<0.0001)。
【0158】
ニコチンについては、モデルの結果は、純粋なアルカロイドで得られた結果と一致していたが、R.sanguineusマダニの幼虫に対してのみ試験した(表4を参照)。純粋な(S)-ニコチンは、同じマダニ種および段階(TN90:77%、40.5mg/m2ニコチン;Stella:74%、48.3mg/m2ニコチン;K326:42%、21.8mg/m2ニコチン;ITB 683:48%、17.3mg/m2ニコチン)に対して446mg/m2で致死効果を及ぼしている粗抽出物でも観察されたように、300μmol/m2(48.7mg/m2)でダニの幼虫の95%を、100μ/m2(16.2mg/m2)で37%をノックダウンした。高レベルのニコチンを含有する葉抽出物のノックダウン効果も、R.sanguineusの成虫(StellaおよびTN90)およびI.ricinusの若虫(Stella、K326、TN90、およびITB 683)に対して、446mg/m2で観察された。
【0159】
純粋な化合物としての(R)-アナタビンは、300および100μmol/m2で有意なノックダウン活性を示したが、アナタビンは、葉抽出物で観察された効果に影響を及ぼすことがモデルでは特定されなかった。アナタビンは、二つの別個のエナンチオマーとして統計モデルでは分析されなかったが、ラセミ体としてこのアルカロイドは、Stellaでは13.1μmol/m2、TN90では11.1μmol/m2、ITB 683では7.9μmol/m2、K326では5.35μmol/m2を占めるに過ぎず、葉抽出物濃度が893mg/m2であり、すなわち、純粋なアルカロイドの最小有効濃度限界の10倍を下回っていた。さらに、アナタビンを豊富に含むPMT葉抽出物において、同じ理由により、特定のノックダウン効果は観察されなかった。
【0160】
防虫に関して、抽出物の最小有効濃度は、R.sanguineusの幼虫で4.7mg/m2未満~44.6mg/m2の範囲であった。純粋な化合物として試験されたアルカロイドは、一般的に、粗抽出物で測定したものと同等の濃度では活性ではなかった(粗抽出物の最小阻害濃度での対応するアルカロイドのモル濃度:3μmol/m2ニコチン、0.45μmol/m2ノルニコチン、0.14μmol/m2アナバシン、および4.7μmol/m2アナタビン)。葉抽出物によって発揮される防虫は、R.sanguineusの成虫に対して3~10倍低く、I.ricinusの若虫に対してバイオアッセイの有意性限界に達することはほとんどなかったため、葉抽出物と純粋なアルカロイドとの間の活性の比較はできなかった。マダニ種と段階による感度の差異は、統計モデルによっても強く指摘された。
【0161】
試験された純粋なアルカロイドの中で、(S)-アナタビンおよび(R)-アナタビンは、R.sanguineusの幼虫に対して、最も低い最小有効濃度を示し、これはDEETのそれに近いものであった。(R)-アナタビンはまた、300および100μmol/m
2でマダニを有意にノックダウンした。
表5 アルカロイド化合物の有効性(アナタビン*HCl、N=3、表4に示すデータのサブセット)
【表5】
表6:たばこ抽出物の有効性(1)
【表6】
表7:たばこ抽出物の有効性(2)
【表7】
【0162】
8.アナタビン化合物の蚊防虫性アッセイ
本発明の化合物をエタノールと混合して、表面に塗布し、乾燥させることができる組成物を作製する。表面を本発明の化合物で処理し、乾燥させた後、ヒトの体温に加熱し、成虫のAedes aegypti蚊による暖かい表面上への蚊の着地数および総滞在時間を自動的に機械視覚によって記録して、各化合物の防虫性を測定する。
【0163】
(暖かい表面への個々の着地数に基づく)防虫性は、対照の減少率として表され、ビヒクル溶媒のみで処理された暖かい表面に着地する蚊の平均数がカウントされる。100%は、暖かい表面上に蚊が着地していないことを意味する。
【0164】
暖かい表面上にまだ着地している蚊については、暖かい表面上での滞在時間も記録され、ビヒクル溶媒のみで処理されたとき、同じ暖かい表面上での蚊の平均滞在時間に対応する、対照の割合として表される。100%は、蚊が処理された暖かい表面上で、ビヒクル溶媒のみで処理された暖かい表面上と同じ時間を過ごしたことを意味する。
【0165】
各化合物/用量を、18.9cm2の表面を使用し、化合物(プラセボ)を含まない、または化合物を希釈した100マイクロリットルの溶液を表面に広げ、試験前に乾燥させて、三回試験した。三回の平均誤差および標準誤差を計算する。対照(ビヒクル溶媒のみを使用)は、エタノールで実行される。同じ蚊の集団が、最初にビヒクル溶媒で処理された暖かい表面に、次いで化合物で処理された表面に曝露される。試験化合物を含む溶液の濃度を調整して、化合物の処理用量が表中の表面単位面積当たりの最終濃度範囲に従うことを確実にした。
【0166】
表7および
図3aおよび
図3bは、アナタビンをHCl塩としておよびその塩基形態で試験した結果を示す。驚くべきことに、その塩基形態のアナタビンは、HCl塩形態よりも著しく優れた蚊防虫剤である。これはまた、そのHCl塩形態のアナタビンと比較して、その塩基形態のアナタビンで処理された表面上で、蚊の滞在時間がはるかに短いことによっても表される。
表7
【表8】
【国際調査報告】