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特表2022-537675グループBアデノウイルスを含む組成物を精製する方法
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  • 特表-グループBアデノウイルスを含む組成物を精製する方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(54)【発明の名称】グループBアデノウイルスを含む組成物を精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20220822BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20220822BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C12N7/02
C12P21/00 C
C12N15/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572895
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2020067668
(87)【国際公開番号】W WO2020260374
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1909081.0
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515023121
【氏名又は名称】サイオクサス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】アルビス,サイモン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG32
4B064CA12
4B064CA19
4B064CC15
4B064CE06
4B064CE10
4B064CE11
4B064DA05
4B065AA95X
4B065AB04
4B065AB06
4B065BA01
4B065BD17
4B065BD18
4B065CA44
(57)【要約】
グループBアデノウイルスを含む組成物を精製する方法であって、例えば、該グループBアデノウイルスを含む組成物を、少なくとも180mScm-1の導電率、例えば、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、または290mScm-1の導電率を有するダイアフィルトレーション緩衝液を利用してダイアフィルトレーションに供する、精製ステップを含む、方法。本明細書に開示される精製方法を使用して得られた組成物も提供される。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞タンパク質から複製能力のあるグループBアデノウイルスを精製するための方法であって、
前記グループBアデノウイルスを含む組成物を、少なくとも180mScm-1の導電率、例えば、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、または290mScm-1の導電率を有するダイアフィルトレーション緩衝液を利用してダイアフィルトレーションに供する、精製ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記導電率が強電解質によって提供され、例えば、前記電解質が、イオン性塩などの塩(特に、水中に完全に溶解し、高度に解離する塩)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
宿主細胞タンパク質から複製能力のあるグループBアデノウイルスを精製するための方法であって、
前記グループBアデノウイルスを含む組成物を、高塩濃度のダイアフィルトレーション緩衝液を利用してダイアフィルトレーションに供する、精製ステップを含み、前記塩濃度が、例えば、少なくとも180mScm-1の導電率、例えば、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、または290mScm-1の導電率で、少なくとも2M、例えば、2.5M~5.5Mの範囲、例えば、3M、3.5M、4M、4.5Mまたは5M、特に4M、4.1M、4.2m、4.3M、4.4M、4.5M、4.6M、4.7M、4.8Mまたは4.9M、より具体的には4.3Mである、方法。
【請求項4】
前記緩衝液が、塩化物塩(例えば、Li、Na、Mg、K、Ca、Cs、およびNHから選択されるカチオンとの)、硫酸塩、およびそれらの組み合わせの水中で完全に溶解し、解離する任意の塩から選択される塩を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ダイアフィルトレーション緩衝液中の前記塩が、以下:アルカリ土類金属塩(NaCl、KCl、およびMgClなど)、酢酸ナトリウム、トリス、ビス-トリス、NaHPO、例えば、NaClまたはKCl、特にNaClのうちの1つ以上を含む、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイアフィルトレーション緩衝液が、メグルミン緩衝液、Gly-NaCl緩衝液、トリス緩衝液から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイアフィルトレーション緩衝液が、HEPES、例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60または70mMのHEPES、特に50mMのHEPESを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ダイアフィルトレーション濾過緩衝液が、7~9.8の範囲のpH、例えば、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、例えば、pH7.5である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ダイアフィルトレーションが、少なくとも300KDa以上、例えば、500kDaのMWCOの限外濾過膜を利用する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ダイアフィルトレーションが、1~3m/秒、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0m/秒の流量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ダイアフィルトレーションが、中空繊維カートリッジまたは平膜カセットフィルターを利用して実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
TFFが、一定体積法を使用して実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ダイアフィルトレーションが、少なくとも8ダイアボリューム、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18ダイアボリューム、例えば、11、12、13、14、または15ダイアボリューム、例えば、12ダイアボリュームの高塩ダイアフィルトレーション緩衝液を使用して実施される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ダイアフィルトレーションプロセスが、2つのステップ(すなわち、第1および第2のステップ)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセスの第1のステップが、高導電率ダイアフィルトレーション緩衝液を用いたダイアフィルトレーションである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセスの第2のステップが、最終製剤緩衝液を用いたダイアフィルトレーションである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
1つのみのダイアフィルトレーション緩衝液が利用される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アデノウイルスの組成物をクロマトグラフィー精製に供することを含む、さらなる精製ステップ、例えば、2つのクロマトグラフィーステップを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記クロマトグラフィーステップが、イオン交換クロマトグラフィー、例えば、アニオン交換クロマトグラフィーを利用し、例えば、前記アニオン交換クロマトグラフィーが、DEAE、TMAE、QAE、またはPEIを活用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アデノウイルスの精製ステップが、クロマトグラフィーを利用しない、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
エンドヌクレアーゼの添加後の粗細胞溶解物を濾過して、前記アデノウイルス組成物を清澄化し、例えば、前記フィルターが、デプスフィルター、例えば、4~2μmの仕様を有するデプスフィルター、例えば、CE35(Merck Millipore製)である、請求項41 43~5244のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
第2のフィルターが前記清澄化に利用され、例えば、前記第2のフィルターがデプスフィルター、例えば、1~0.4μmの仕様を有するデプスフィルターである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
例えば、前記ダイアフィルトレーションステップの前に実施される、前記アデノウイルス組成物を0.2μmフィルターに通すことを含む、濾過ステップを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グループBアデノウイルスを含む組成物を精製する方法、および該方法から得ることができる、精製された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、製薬分野では、ヒトに使用するための治療薬としてのウイルスの可能性を認識し始めたばかりである。これまで、ONXY-15由来のウイルス(ONYX Pharmaceuticals、Shanghai Sunway Biotechが買収した)は、限られた数の国において頭頸部がんでの使用が承認されている。しかしながら、現在臨床では数多くのウイルスが存在し、それらのウイルスの一部がヒトでの使用のために登録されるようになることが期待されている。
【0003】
1つ以上の治療法は、Ad11に由来するキメラ腫瘍溶解性アデノウイルスである、グループBアデノウイルスEnAd(以前はColoAd1として知られていた)に基づく(WO2005/118825ならびにその強化バージョンがWO2015/059303およびWO2016/174200に開示されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)。EnAdは、現在、結腸直腸がんの治療のための臨床試験中である。製造プロセスの一部として、ウイルスは、例えば細胞懸濁培養において、インビトロで哺乳動物細胞中で増殖される。ウイルスは、細胞溶解およびその後の精製によってこれらの細胞から回収される。これらのアデノウイルスベースの治療剤は、宿主細胞タンパク質を含まない純度のレベルで、かつ適正製造基準(GMP)に準拠した条件下で製造される必要がある。
【0004】
WO00/32754は、高度に精製されたアデノウイルスを調製するためのプロセスを開示している。そのPCT出願の図23および164頁の開示は以下のように要約することができる。
●Ad5(グループCアデノウイルス)は溶解緩衝液によってHEK293細胞から放出された。
●Ad5を含有する粗細胞溶解物は、2つの5ミクロンフィルターを通して濾過することにより清澄化された。
●次に、pH8の緩衝液である0.5Mトリス、1mM MgClを利用したダイアフィルトレーションによって、上清が約10倍に濃縮された。
●次に、これは、pH8の0.5Mトリス/HCl、1mM MgCl中のベンゾナーゼで処理されて、0.2ミクロンフィルターを通して濾過された。
●得られた組成物は、pH8の20mMトリス、1mM MgCl2、250mM(0.25M) NaClの溶出緩衝液を利用したSource15Q樹脂を利用して強アニオン交換クロマトグラフィーに供された。
●この精製組成物は濃縮され、ダイアフィルトレーションを使用して最終等張緩衝液に入れられた。
【0005】
アニオン交換クロマトグラフィーは、ジエチルアミノエチル基(DEAE)などの正に帯電した基を含有するイオン交換樹脂を使用して、それらの電荷に基づいて物質を分離するプロセスである。アデノウイルス産生の場合、アニオン交換クロマトグラフィーが、より高いpHレベルで負に帯電している宿主細胞内のタンパク質(宿主細胞タンパク質またはHCP)からアデノウイルスを精製するために使用される。2段階イオン交換クロマトグラフィーが、Brument et al,Molecular Therapy Vol.6,No.5,November 2002から知られている。
【0006】
しかしながら、本発明者らは、Ad11などのグループBアデノウイルスが、アニオン交換クロマトグラフィーによって宿主細胞タンパク質から適切に分離されていないことを見出した。図1Aは、アニオン交換クロマトグラフィーによって分析した場合のAd11ウイルスおよびAd5ウイルスの保持時間を示す。これらのウイルスは、x軸で約10対15の非常に異なる保持時間を有する。図1Bは、EnAdなどのAd11型のウイルスが、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して宿主細胞タンパク質とともに溶出することを示す。したがって、イオン交換クロマトグラフィーは現在、アデノウイルス精製のゴールドスタンダードであるが、グループBウイルス、例えば、EnAdなどのAd11型のウイルスは、Ad5などのグループCウイルスとは挙動が異なるため、効果的ではない。
【0007】
アデノウイルスのGMP製造の分野での研究の最先端は、主にAd5、すなわちグループCアデノウイルスで実施されてきた。
【0008】
本発明者らは、アデノウイルスの精製のための最適な条件およびプロセスが、アデノウイルスグループによって異なることを見出した。アデノウイルスは、クロマトグラフィー分析において、DNA相同性および/またはそれらのヘキソン、ファイバー、およびカプシドの特性に基づいて分類される。
【0009】
組換えアデノウイルス精製プロセスの開発を成功させるには、宿主細胞株とウイルスとの相互作用など、組換えウイルスを詳細に理解する必要がある。本質的に、プロセスには特定のウイルスのグループに応じた適応が必要である。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、グループBアデノウイルス、例えば、EnAdなどのAd11型のアデノウイルスが、緩衝液中の高濃度の塩を利用する本質的に1つのダイアフィルトレーションステップを使用して宿主細胞タンパク質から精製できることを見出した。これは、標準的な従来技術のプロセスを使用しては不可能であった。実施形態では、プロセスからイオン交換クロマトグラフィーを完全に省略することが可能である。
【0011】
したがって、グループBアデノウイルスを産生するために特別に調整された改良された精製プロセスが必要である。
【発明の概要】
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、グループBアデノウイルスベクターが、最終生成物中の汚染宿主細胞タンパク質のレベルを著しく低下させるプロセスによって精製され得ることを確立した。本開示は、以下の項に説明される。
【0013】
1.宿主細胞タンパク質から複製能力のあるグループBアデノウイルスを精製するための方法であって、
該グループBアデノウイルスを含む組成物を、少なくとも180mScm-1の導電率、例えば、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、または290mScm-1の導電率を有するダイアフィルトレーション緩衝液を利用してダイアフィルトレーションに供する、精製ステップを含む、方法。
【0014】
2.導電率が強電解質によって提供される、項1に記載の方法。
【0015】
3.電解質がイオン性塩などの塩(特に、水中に完全に溶解し、高度に解離する塩)である、項2に記載の方法。
【0016】
4.宿主細胞タンパク質から複製能力のあるグループBアデノウイルスを精製するための方法であって、
該グループBアデノウイルスを含む組成物を、高塩濃度のダイアフィルトレーション緩衝液を利用してダイアフィルトレーションに供する、精製ステップを含み、該塩濃度が、例えば、少なくとも180mScm-1の導電率、例えば、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、または290mScm-1の導電率で、少なくとも2M、例えば、2.5M~5.5Mの範囲、例えば、3M、3.5M、4M、4.5Mまたは5M、特に4M、4.1M、4.2m、4.3M、4.4M、4.5M、4.6M、4.7M、4.8Mまたは4.9M、より具体的には4.3Mである、方法。
【0017】
5.緩衝液が、塩化物塩(例えば、Li、Na、Mg、K、Ca、Cs、およびNHから選択されるカチオンとの)、硫酸塩、およびそれらの組み合わせの水中で完全に溶解し、解離する任意から選択される塩を含む、項3または4に記載の方法。
【0018】
6.ダイアフィルトレーション緩衝液中の塩が、以下:アルカリ土類金属塩(NaCl、KCl、およびMgClなど)、酢酸ナトリウム、トリス、ビス-トリス、NaHPO、例えば、NaClまたはKCl、特にNaClのうちの1つ以上を含む、項3または5に記載の方法。
【0019】
7.ダイアフィルトレーション緩衝液が、メグルミン緩衝液、Gly-NaCl緩衝液、トリス緩衝液から選択される、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
8.ダイアフィルトレーション緩衝液が、HEPES、例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60または70mMのHEPES、特に50mMのHEPESを含む、項7に記載の方法。
【0021】
9.ダイアフィルトレーション濾過緩衝液が、7~9.8の範囲のpH、例えば、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、例えば、pH7.5である、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
10.ダイアフィルトレーションが、500kDa、例えば、少なくとも300KDa以上のMWCOの限外濾過膜を利用する、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
11.ダイアフィルトレーションが、1~3m/秒、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0m/秒の流量を有する、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
12.ダイアフィルトレーションが、圧力に依存しないレジームである、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
13.ダイアフィルトレーションが、中空繊維カートリッジまたは平膜カセットフィルターを利用して実行される、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
14.TFFが、一定体積法を使用して実施される、項13に記載の方法。
【0027】
15.ダイアフィルトレーションが、少なくとも8ダイアボリューム、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18ダイアボリューム、例えば、11、12、13、14、または15ダイアボリューム、例えば、12ダイアボリュームの高塩ダイアフィルトレーション緩衝液を使用して実施される、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
16.ダイアフィルトレーションプロセスが、2つのステップ(すなわち、第1および第2のステップ)を含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
17.プロセスの第1のステップが、高導電率ダイアフィルトレーション緩衝液を用いたダイアフィルトレーションである、項16に記載の方法。
【0030】
18.プロセスの第2のステップが、最終製剤緩衝液を用いたダイアフィルトレーションである、項16または17に記載の方法。
【0031】
19.最終製剤緩衝液が、メグルミン緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、HEPESを含む、項18に記載の方法。
【0032】
20.最終製剤緩衝液が、5mM HEPESなどのHEPESを含む、項19に記載の方法。
【0033】
21.最終製剤緩衝液が、グリセロール、例えば20%m/vグリセロールを含む、項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
22.最終製剤緩衝液が、5mM HEPESおよび20%m/Vグリセロールからなる、項20または21に記載の方法。
【0035】
23.第2のダイアフィルトレーションステップが、少なくとも8ダイアボリューム、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18ダイアボリューム、例えば、15ダイアボリュームの最終製剤緩衝液を使用して実施される、項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
24.1つのみのダイアフィルトレーション緩衝液が利用される、項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
25.第1のダイアフィルトレーションステップが、複数のダイアフィルトレーション緩衝液を連続して利用する、項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
26.2、3または4つのダイアフィルトレーション緩衝液が利用され、例えば、2つのダイアフィルトレーション緩衝液が利用される、項25に記載の方法。
【0039】
27.利用される複数のダイアフィルトレーション緩衝液のうちの1つが、pH7.5の1M NaCl、50Mm HEPES、1.0%m/V Tween 20、1.0%m/Vグリセロールである、項26に記載の方法。
【0040】
28.最終製剤緩衝液のpHが、7~9.8の範囲、例えば、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、例えば、pH7.5である、項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
29.アデノウイルスの組成物をクロマトグラフィー精製に供することを含む、さらなる精製ステップを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
30.クロマトグラフィー精製ステップが、ダイアフィルトレーションの前である、項29に記載の方法。
【0043】
31.クロマトグラフィー精製ステップが、ダイアフィルトレーションステップの後である、項29に記載の方法。
【0044】
32.クロマトグラフィーステップが、イオン交換クロマトグラフィー、例えば、アニオン交換クロマトグラフィーを利用する、項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
33.アニオン交換クロマトグラフィーが、DEAE、TMAE、QAE、またはPEIを活用する、項32に記載の方法。
【0046】
34.クロマトグラフィーが、Sartobind(登録商標)IEX膜吸収カプセルを利用する、項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
35.利用される溶出緩衝液が、pH7.5の、450mM NaCl、50mM HEPES、1.0%m/V Tween 20である、項34に記載の方法。
【0048】
36.高性能液体クロマトグラフィー、例えば、CIMQA IEX2が利用される、項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
37.利用される溶出緩衝液が、pH7.8の、400mM NaCl、50mM トリス、2Mm MgCl、5%グリセロールである、項36に記載の方法。
【0050】
38.最終アデノウイルス製剤を調製するためのすべてのアデノウイルス精製ステップが、濾過ステップである、項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
39.アデノウイルス精製ステップが、クロマトグラフィーを利用しない、項1~28および38のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
40.アデノウイルスが複製された宿主細胞を溶解させて粗細胞溶解物を得るプレステップを含む、項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
41.溶解ステップが、溶解緩衝液を利用する、請求項40に記載の方法。
【0054】
42.溶解緩衝液が、少なくとも10%の界面活性剤を含む、請求項41に記載の方法。
【0055】
43.界面活性剤が、Tween-20などの非イオン性界面活性剤である、項42に記載の方法。
【0056】
44.10~50mMの範囲、例えば、20、30または40mM、特に20mMの濃度で塩をさらに含む、項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
45.溶解緩衝液が、メグルミン緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、HEPESを含む、項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
46.溶解緩衝液が、HEPESを含む、項45に記載の方法。
【0059】
47.HEPES濃度が、4.5M~5.5Mの範囲、例えば、5Mである、項46に記載の方法。
【0060】
48.溶解緩衝液が、7.75~8.25の範囲のpH、例えば、pH8である、項41~47のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
49.エンドヌクレアーゼ、例えば、ベンゾナーゼが、粗細胞溶解物に添加される、項40~48のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
50.アデノウイルスが、不活性緩衝液に移される、項49に記載の方法。
【0063】
51.不活性緩衝液が、例えば、0.75~1.25Mの範囲、例えば、1Mの高塩含有量を含む、項50に記載の方法。
【0064】
52.不活性緩衝液が、7.25~7.75の範囲のpH、例えば、pH7.5を有する、項50または51に記載の方法。
【0065】
53.エンドヌクレアーゼの添加後の粗細胞溶解物を濾過して、アデノウイルス組成物を清澄化する、項40~52のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
54.フィルターがデプスフィルターである、項53に記載の方法。
【0067】
55.利用されるデプスフィルターが、4~2μmの仕様、例えば、CE35(Merck Millipore製)を有する、項53または54に記載の方法。
【0068】
56.第2のフィルターが、清澄化に利用される、項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
57.第2のフィルターが、デプスフィルターである、項56に記載の方法。
【0070】
58.利用されるデプスフィルターが、1~0.4μmの仕様を有する、項57に記載の方法。
【0071】
59.アデノウイルス組成物を0.2μmフィルターに通すことを含む、濾過ステップを含む、項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【0072】
60.濾過ステップが、ダイアフィルトレーションステップの前に実施される、項59に記載の方法。
【0073】
61.グループBアデノウイルスが、式(I)の配列を含み、
5’ITR-B-B-B-B-B-B-B-3’ITR
式中、
が結合であるか、またはE1A、E1BもしくはE1A-E1Bを含み、
が、-E2B-L1-L2-L3-E2A-L4を含み、
が結合であるか、またはE3を含み、
が結合、または制限部位、1つ以上の導入遺伝子、もしくはその両方を含むDNA配列であり、
がL5を含み、
が結合、または制限部位、1つ以上の導入遺伝子、もしくはその両方を含むDNA配列であり、
が結合であるか、またはE4を含み、
またはBの少なくとも一方が結合ではない、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
62.Bが、導入遺伝子または導入遺伝子カセットを含む、項61に記載の方法。
【0075】
63.Bが、結合である、項61に記載の方法。
【0076】
64.Bが、導入遺伝子または導入遺伝子カセットを含む、項61~63のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
65.1つ以上の導入遺伝子または導入遺伝子カセットが、内因性または外因性プロモーター、例えば、内因性プロモーターの制御下にある、項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
66.導入遺伝子カセットが、E4および主要後期プロモーター、例えば、主要後期プロモーターからなる群から選択される内因性プロモーターの制御下にある、項65に記載の方法。
【0079】
67.導入遺伝子カセットが、
a.スプライスアクセプター配列、
b.内部リボソーム進入配列または高い自己切断効率の2Aペプチド、
c.コザック配列、および
d.それらの組み合わせと、から独立して選択される調節エレメントをさらに含む、項61~66のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
68.導入遺伝子カセットが、タンパク質コード配列の開始点にあるコザック配列を含む、項67に記載の方法。
【0081】
69.導入遺伝子カセットが、高自己切断効率2Aペプチドをコードする、項61~68のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
70.導入遺伝子カセットが、ポリアデニル化配列をさらに含む、項61~69のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
71.導入遺伝子カセットが、DNA配列の3’末端および/またはDNA配列の5’末端に制限部位をさらに含む、項61~70のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
72.少なくとも1つの導入遺伝子カセットが、単シストロン性mRNAをコードする、項61~71のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
73.少なくとも1つの導入遺伝子カセットが、多シストロン性mRNAをコードする、項61~72のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
74.導入遺伝子が、RNAi配列、ペプチドまたはタンパク質をコードする、項61~73のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
75.導入遺伝子が、抗体またはその結合断片をコードする、項74に記載の方法。
【0088】
76.抗体またはその結合断片が、OX40、OX40リガンド、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40リガンド、CD70、CD137、GITR、4-1BB、ICOS、ICOSリガンド、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、VISTA、B7-H3、B7-H4、HVEM、ILT-2、ILT-3、ILT-4、TIM-3、LAG-3、BTLA、LIGHT、CD160、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、例えば、CD40およびCD40リガンドに特異的である、項75に記載の方法。
【0089】
77.導入遺伝子が、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-9、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-33、IL-35、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-15、IL-21、IL-25、IL-1RA、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TGFβ、リンホトキシンα(LTA)およびGM-CSF、例えば、IL-12、IL-18、IL-22、IL-7、IL-15、IL-21、IFNγ、TNFα、TGFβおよびリンホトキシンα(LTA)を含む群から独立して選択されるサイトカインをコードする、項61~76のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
78.導入遺伝子が、IL-8、CCL5、CCL17、CCL20、CCL22、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CXCR3、CXCR4、CXCR5およびCRTH2、例えば、CCL5、CXCL9、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4およびCXCR4、またはそれらの受容体を含む群から独立して選択されるケモカインをコードする、項61~77のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
79.導入遺伝子が、レポーター遺伝子、例えば、ヨウ化ナトリウム共輸送体、細胞内金属タンパク質、HSV1-tk、GFP、ルシフェラーゼまたはエストロゲン受容体、例えば、ヨウ化ナトリウム共輸送体である、項61~78のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
80.アデノウイルスのE4orf4領域が非機能的であり、例えば、完全に欠失、部分的に欠失または短縮されている、項1~79のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
81.アデノウイルスのE2B領域がキメラであり、例えば、E2B領域が、第1のアデノウイルス血清型に由来する核酸配列および第2の異なるアデノウイルス血清型に由来する核酸配列を含み、該第1および第2の血清型は各々、アデノウイルスサブグループB、C、D、E、またはFから選択される、項1~80のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
82.アデノウイルスがAd11である、項1~81のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
83.アデノウイルスが、キメラEnAdである、項1~81のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
84.アデノウイルスが複製可能であり、例えば、複製能力がある、項1~83のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
85.アデノウイルスが、複製欠損性である、項1~83のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
86.項1~85のいずれか一項に記載の方法から得られた、または得ることができるアデノウイルス組成物。
【0099】
87.治療に使用するための、特にがんの治療に使用するための、項86に記載のアデノウイルス組成物。
【0100】
88.がんの治療に使用するための医薬の製造に使用するための、項86に記載のアデノウイルス組成物。
【0101】
89.項86において定義された治療有効量のアデノウイルス組成物を投与するステップを含む治療方法。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1A】アニオン交換クロマトグラフィーによるアデノウイルス5(Ad5)およびアデノウイルス11(Ad11)の分析分離を示すクロマトグラムである。
図1B】アニオン交換クロマトグラフィーのみでは、Ad11が宿主細胞タンパク質から分離されていないことを示すクロマトグラムである。
図2A】(A)は、アデノウイルスについての標準的な精製プロセスを示すフロー図であり、(B)は、グループBアデノウイルスベクターについての本開示の改変された精製プロセスを示すフロー図である。
図2B】同上。
図3図2Bに示す改変されたプロセスについての技術的な詳細を示す。
図4】アデノウイルスベクターについての本開示の1段階精製プロセスを示すフロー図を示す。
図5図4に示す1段階精製プロセスの技術的な詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図2Bおよび実施例2で定義されたステップを参照することにより、プロセスは、任意の好適な順序で実施することができ、例えば、以下のステップを含むか、またはそれから構成することができる。
【0104】
【表1】
【0105】
本明細書で使用される限外濾過は、粒子サイズの違いに基づいて液体組成物中の成分を分離するために膜を使用する分離プロセスを指す。この方法では、圧力および/または濃度勾配を使用して成分を分離する。膜の孔径を制御することにより、組成物中の成分を保持することができるか、または膜を通過させることができる。
【0106】
好適な膜には、例えば、少なくとも300KDa以上の分子を保持する500kDaのMWCO限外濾過膜が含まれる。
【0107】
本明細書で使用されるダイアフィルトレーションまたは緩衝液交換は、タンパク質の脱塩および溶媒交換に典型的に使用される限外濾過プロセスを指す。本開示の文脈におけるダイアフィルトレーションは、アデノウイルスを産生するために使用される培養培地から宿主細胞タンパク質および他の望ましくない汚染物質などの微細種を洗浄するために使用され、それによって、保持された種、すなわちアデノウイルスの精製溶液を生成する。
【0108】
ダイアフィルトレーションは、一定体積法としても知られる連続ダイアフィルトレーション、または不連続ダイアフィルトレーションのいずれかを使用して実施することができる。一定体積法では、濾液が生成されるのと同じ速度で、ダイアフィルトレーション緩衝液がサンプル供給リザーバーに添加される。これは、サンプル供給リザーバー内の溶液の体積は同じままであるが、宿主細胞タンパク質などの、膜を通過するのに十分小さい分子が洗い流されることを意味する。対照的に、不連続法では、サンプル溶液は最初に希釈され、次に濃縮されて開始体積に戻される。このプロセスは、リザーバーに残っている小分子が必要な濃度に達するまで、すなわち、サンプル溶液の望ましい純度が達成されるまで繰り返される。連続ダイアフィルトレーションは、典型的に、不連続ダイアフィルトレーションと比較して、開始溶液の「薬物」l分子濃度の同程度の減少を達成するために、より少ない濾液体積を必要とする。
【0109】
本明細書で使用される接線流濾過(TFF)またはクロスフロー濾過は、一部が膜(透過液)を通過するときに供給流が膜面に平行に通過し、残り(保持液)が供給リザーバーに戻されて再循環される限外濾過技術を指す。これは、供給流が膜面に垂直に供給され、流体のすべてを膜に通そうとするダイレクトフロー濾過(DFF)とは対照的である。TFF法では、サンプル溶液の流れは膜表面を横切り、膜を詰まらせるゲルを形成する可能性のある凝集分子を一掃し、膜の細孔よりも小さい分子が膜に向かって移動し、膜を通過することができる。したがって、TFF法は、サイズ分離に関してDFF法よりも高速で効率的である傾向がある。
【0110】
本明細書で使用されるダイアボリュームは、ダイアフィルトレーションステップ中に実施された洗浄の程度の尺度である。これは、保持液の体積と比較した、単位操作に導入されたダイアフィルトレーション緩衝液の体積に基づく。
【0111】
本明細書で利用されるダイアフィルトレーション緩衝液は、ダイアフィルトレーションプロセスで利用される生物学的緩衝液を指す。
【0112】
文脈が別段の指示をしない限り、溶出緩衝液は、クロマトグラフィーステップで利用される緩衝液を指す。
【0113】
本明細書で利用される溶解緩衝液は、ウイルスが増殖する宿主細胞を溶解させるのに好適な緩衝液を指し、一般に界面活性剤を含む。
【0114】
本明細書で利用される最終製剤緩衝液は、適切な条件下でアデノウイルスを保存するのに好適であり、かつ/またはヒトへの投与に好適である緩衝液を指す。
【0115】
本明細書で利用される濃度係数は、係数または倍増によって濃度を増加させるために、所定の溶質の体積が減少する場合を指す。
【0116】
本明細書で使用される生物学的緩衝液(単に緩衝液とも称される)は、アデノウイルスの構造的完全性またはそれらの複製能力に悪影響を与えることなく、ウイルスを懸濁または保存するのに好適な緩衝液を指す。今日使用されているほとんどの生物学的緩衝液はNE Goodと彼の研究チーム(Good et al.1966,Good&Izawa 1972,Ferguson et al.1980;”Good Buffers”)によって開発され、N置換タウリンまたはグリシン緩衝液を含む。以下の表1に、一般的に使用される生物学的緩衝液をいくつか列挙する。このリストは網羅的なものではなく、他の緩衝液も当業者に知られている。
【0117】
【表2】
【0118】
本明細書で利用される強電解質は、水中に溶解されるとカチオンおよびアニオンに分解する物質を指す。強電解質は完全にイオン化し、強酸、強塩基および塩の3つのカテゴリーに分類される。
【0119】
強酸には、HCl、HBr、Hl、HNO、HClOおよびHSOが含まれる。
【0120】
強塩基には、NaOH、KOH、LiOH、Ba(OH)およびCa(OH)が含まれる。
【0121】
本明細書で使用される塩は、ダイアフィルトレーション緩衝液としての使用に好適な任意の塩を指し、したがって、生物学的用途、特に生物学的緩衝液としての使用に好適な緩衝液である。そのような塩の例は当業者に公知であり、NaCl、トリス、ビス-トリスおよびNaHPOが含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
導電率は一般に、一定の距離が離れた2つの電極間の液体の抵抗を決定することによって測定される。導電率計は、OmegaおよびBaumerから入手できる。
【0123】
本明細書で利用されるアデノウイルスは一般に、文脈が別段の指示をしない限り、複製能力のあるアデノウイルスまたは複製欠損性、例えば、グループBウイルス、特に、Ad11、例えば、Ad11p(これらに由来するウイルスを含む)を指す。場合によっては、それは、複製能力のあるウイルスのみを指すのに利用される場合があり、これは文脈上明らかであろう。
【0124】
本明細書で利用されるサブグループB(グループBまたはタイプB)は、グループBアデノウイルス由来の少なくともファイバーおよびヘキソン、例えば、ファイバー、ヘキソンおよびペントンを有するウイルス、または例えば、実質的にグループBウイルス由来の全ゲノムなどの、グループBウイルス由来のカプシド全体を有するウイルスを指す。
【0125】
Enadenotucirev(EnAd)は、以前はColoAd1として知られている(WO2005/118825)、キメラ腫瘍溶解性アデノウイルスであり、Ad11p由来のファイバー、ペントンおよびヘキソンを有するので、これは、Ad11pに由来するグループBウイルスである。それは、Ad11pおよびAd3由来のDNAを含むキメラE2B領域を有する。EnAdでは、E3領域のほとんどすべておよびE4領域の一部(E4orf4)が欠失している。
【0126】
本明細書で利用されるEnAdはまた、1つ以上の導入遺伝子をコードするウイルスを含む。
【0127】
本明細書で利用されるアデノウイルスを製造するためのプロセスは、ウイルスが複製され、したがってウイルス粒子の数が増加するプロセスを指すことを意図している。特に、製造は、治療用製品を製剤化するために十分な数のウイルス粒子を提供することであり、例えば、1~9×10から1~9×1020以上の範囲の粒子を産生することができ、例えば、1~9×10から1~9×1015の範囲のウイルス粒子、特に、1~9×1010または1~9×1015のウイルス粒子を、10Lバッチから産生することができる。
【0128】
本明細書で利用されるグループBアデノウイルスを精製するためのプロセスは、そのプロセスが意図された目的に適合していることを必要とする。一実施形態では、プロセスによって精製されるウイルスは、EnAdなどのAd11である。
【0129】
本明細書で利用されるE3領域の一部が欠失している(E3領域で部分的に欠失している)とは、例えば、遺伝子のコーディング領域および/または非コーディング領域において、E3領域の少なくとも一部、例えば、1~99%の範囲が欠失している、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97または98%が欠失していることを指す。
【0130】
E3領域で完全に欠失した(本明細書ではすべて欠失したとも称される)とは、遺伝子のコーディング部分が完全に欠失していることを意味する。一実施形態では、遺伝子のコーディング部分および非コーディング部分が完全に欠失している。
【0131】
本明細書で利用されるE3は、アデノウイルスE3領域の一部または全部をコードするDNA配列(すなわち、タンパク質/ポリペプチド)を指し、E3遺伝子によってコードされるタンパク質が、例えば、野生型と同じ機能を有する(対応する未変異タンパク質)、野生型タンパク質と比較して向上した機能、野生型タンパク質と比較して機能がないなどの低下した機能を有し、あるいは、野生型タンパク質または必要に応じてそれらの組み合わせと比較して新しい機能を有する、などの保存的または非保存的アミノ酸変化を有するように変異されてもよい。
【0132】
本開示のウイルスは、E4領域において部分的に欠失していない。
【0133】
一実施形態では、Eorf4が欠失している。
【0134】
本明細書で利用される「E4領域の一部が欠失している」(E4領域で部分的に欠失している)とは、E4領域の少なくとも一部、例えば、1~99%の範囲が欠失している、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97または98%が欠失していることを意味する。
【0135】
E4領域に完全に存在するとは、E4が100%存在する、すなわち、何も除去されていないことを意味する。ただし、遺伝子は、塩基対の最大10%が置換される(しかし欠失されていない)ように変異されてもよく、または例えば、E4領域が導入遺伝子によって中断され得るように、中断されてもよい。したがって、本明細書で利用される100%完全は、ゲノム内の関連する位置に100%存在することを意味するが、遺伝子は多くが隣接または非隣接である。
【0136】
E4領域で完全に欠失した(本明細書ではすべて欠失したとも称される)とは、遺伝子のコーディング部分が完全に欠失していることを意味する。一実施形態では、遺伝子のコーディング部分および非コーディング部分が欠失している。
【0137】
本明細書で利用されるE4は、アデノウイルスE4領域をコードするDNA配列(すなわち、ポリペプチド/タンパク質領域)を指して、E4遺伝子によってコードされるタンパク質が、保存的または非保存的アミノ酸変化を有し、野生型と同じ機能(対応する未変異タンパク質)、野生型タンパク質と比較して向上した機能、野生型タンパク質と比較して機能がないなどの低下した機能を有し、あるいは、野生型タンパク質または必要に応じてそれらの組み合わせと比較して新しい機能を有するなど、変異されてもよい。
【0138】
E4領域は、ウイルス複製に関連するいくつかの機能を有してもよく、したがって、E4領域の削除などの修飾はウイルスのライフサイクルおよび複製に影響を及ぼしてもよく、したがって、例えば、パッケージング細胞が複製に必要とされてもよい。
【0139】
本明細書で利用している「由来する」は、例えば、DNA断片がアデノウイルスから得ることができるか、またはアデノウイルスに元来見出された配列に対応する場合を指す。この言語は、配列がどのようにして得られたのかを限定するように意図しておらず、例えば、本開示によるウイルスにおいて利用される配列が合成されてもよい。
【0140】
一実施形態では、誘導体は、元来のDNA配列に対してその全長にわたって100%の配列同一性を有し、すなわち、元来のDNA配列は関連するアデノウイルスのすべての部分であり得る。一例では、DNA配列は、カプシドタンパク質などのファイバーおよびヘキソンをコードする。
【0141】
一実施形態では、誘導体は、元来のDNA配列に対して95、96、97、98または99%の同一性または類似性を有する。
【0142】
一実施形態では、誘導体は、ストリンジェントな条件下で元来のDNA配列にハイブリダイズする。
【0143】
本明細書で使用する場合、「ストリンジェンシー」は、典型的に、約Tm(融解温度)-50℃(プローブのTmを5°下回る)からTmを約20℃~25℃下回るまでの範囲で起こる。・当業者が理解するように、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを使用して、同一のポリヌクレオチド配列を同定もしくは検出することができるか、または類似もしくは関連するポリヌクレオチド配列を同定もしくは検出することができる。本明細書で使用する場合、「ストリンジェントな条件」という用語は、配列間に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%の同一性がある場合に、ハイブリダイゼーションが一般に起こることを意味する。
【0144】
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」は、「ポリヌクレオチド鎖が塩基対形成を介して相補鎖と結合する(整列する)任意のプロセス」を含むものとする(Coombs,J.,Dictionary of Biotechnology,Stockton Press,New York,N.Y.,1994)。
【0145】
一実施形態では、本開示のウイルスは、導入遺伝子をさらに含む。
【0146】
一実施形態では、細胞への付着の欠如は、ウイルスのヘキソンおよびファイバーに関連している可能性がある。
【0147】
一実施形態では、本開示で利用されるアデノウイルスは腫瘍溶解性である。
【0148】
腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に優先的に感染し、例えば、それを溶解することにより細胞死を早めるか、またはがん細胞で選択的に複製するウイルスである。がん細胞に優先的に感染するウイルスは、正常な健康な細胞と比較して、がん細胞への高い感染率を示すウイルスである。
【0149】
一実施形態では、本開示のウイルスはキメラであり、例えば、少なくとも2つのアデノウイルスサブグループ(がんを引き起こすと考えられるサブグループAを除く)由来のゲノム配列を含む。一実施形態では、本開示のキメラアデノウイルスは、E2B領域においてキメラではない。
【0150】
複製能力のあるグループBアデノウイルスなどのアデノウイルスは、腫瘍細胞のパネルでの溶解能を調べることにより、特定の腫瘍型に対する優先度を評価でき、例えば、結腸腫瘍細胞株には、HT-29、DLD-1、LS174T、LS1034、SW403、HCT116、SW48、およびColo320DMが含まれる。任意の利用可能な結腸腫瘍細胞株が、そのような評価に同様に有用であろう。
【0151】
前立腺細胞株には、DU145およびPC-3細胞が含まれる。膵臓細胞株には、Panc-1細胞が含まれる。乳房腫瘍細胞株には、MDA231細胞株が含まれ、卵巣細胞株には、OVCAR-3細胞株が含まれる。造血細胞株には、RajiおよびDaudi Bリンパ球、K562赤芽球様細胞、U937骨髄様細胞、およびHSB 2 Tリンパ球が含まれるが、これらに限定されない。他の利用可能な腫瘍細胞株も同様に有用である。
【0152】
一実施形態では、本開示のウイルスは腫瘍溶解性である。非キメラであるものを含む腫瘍溶解性ウイルス(すなわち、腫瘍溶解性ウイルスはキメラであってもよいか、または非キメラであってもよい)、例えば、Ad11pなどのAd11は、これらの細胞株において同様に評価することができ、腫瘍溶解活性を有する。
【0153】
がん細胞において選択的に複製するウイルスは、p53遺伝子などの、複製するためのがん細胞において増加調節される遺伝子またはタンパク質を必要とするウイルスである。
【0154】
一実施形態では、本開示の腫瘍溶解性ウイルスはアポトーシス性であり、すなわち、プログラム細胞死を早める。一実施形態では、本開示の腫瘍溶解性ウイルスは細胞溶解性である。本開示のキメラ腫瘍溶解性アデノウイルスの細胞溶解活性は、代表的な腫瘍細胞株において決定することができ、例えば、サブグループCに属するアデノウイルス、好ましくはAd5が、標準物(すなわち、所定の1の効力)として使用されて、データが効力の尺度に変換される。細胞溶解活性を決定するための好適な方法は、MTSアッセイである(参照により本明細書に組み込まれるWO2005/118825の実施例4、図2を参照のこと)。一実施形態では、本開示の腫瘍溶解性アデノウイルスは、細胞壊死を引き起こす。
【0155】
一実施形態では、キメラ腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に対する治療指数が向上している。治療指数」または「治療域」は、正常(すなわち、非がん性)細胞株における同じアデノウイルスの効力で割られた関連するがん細胞株における本開示の腫瘍溶解性アデノウイルスの効力を割ることによって決定され得る、所与のアデノウイルスの腫瘍溶解性の可能性を示す数を指す。一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、結腸がん細胞、乳がん細胞、頭頸部がん、膵臓がん細胞、卵巣がん細胞、造血腫瘍細胞、白血病細胞、神経膠腫細胞、前立腺がん細胞、肺がん細胞、黒色腫細胞、肉腫細胞、肝臓がん細胞、腎がん細胞、膀胱がん細胞および転移性がん細胞を含む群から選択される1つ以上のがん細胞において向上した治療指数を有する。
【0156】
グループBウイルスには、Ad3、7、11、14、16、21、34、35、50、および55が含まれる。
【0157】
E2B領域は、アデノウイルスの既知の領域であり、ウイルスゲノムの約18%に相当する。それは、タンパク質IVa2、DNAポリメラーゼおよび末端タンパク質をコードすると考えられる。Ad11のSlobitski株(Ad11pと称される)では、これらのタンパク質は、それぞれゲノムシーケンスにおける5588-3964、8435-5067、10342-8438の位置にコードされ、E2B領域は10342-3950から実行される。E2B領域の正確な位置は、他の血清型では変わる可能性があるが、機能はすべて同じ一般的な組織を持っているために、これまでに調査されたすべてのヒトアデノウイルスゲノムで保存されている。
【0158】
一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、サブグループBヘキソンを有する。
【0159】
一実施形態では、ウイルスは、グループBアデノウイルス、例えば、Ad11由来のヘキソンおよびファイバーを有する。一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、A11pヘキソンなどのAd11ヘキソンを有する。一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、サブグループBファイバーを有する。1つでは、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、A11pファイバーなどのAd11ファイバーを有する。一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、同じ血清型に由来するファイバーおよびヘキソンタンパク質、例えば、Ad11、特に、Ad11pなどのサブグループBアデノウイルスを有する。
【0160】
一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、同じ血清型、例えば、Ad11、特に、Ad11p由来で、例えば、後者のゲノム配列の30811~31788、18254~21100および13682~15367の位置で見られる、ファイバー、ヘキソンおよびペントンタンパク質を有する。
【0161】
一実施形態では、本開示のウイルスのウイルスは、Ad11カプシド、例えば、Ad11pカプシドを有する。
【0162】
ウイルスが培養される(そして例えば複製される)哺乳動物細胞は、哺乳動物に由来する細胞である。一実施形態では、哺乳動物細胞は、HEK、CHO、COS-7、HeLa、Viro、A549、PerC6およびGMK、特にHEK293を含む群から選択される。
【0163】
一実施形態では、アデノウイルスは、複製可能であり、例えば、複製能力がある。
【0164】
本明細書で利用される複製可能は、宿主細胞内で複製することができるアデノウイルスである。一実施形態では、複製可能は、複製能力のある、かつ複製選択的なウイルスを包含する。
【0165】
本明細書で利用される複製能力のあるとは、例えば、欠陥のある細胞機構に依存することなく、野生型ウイルスによって必要とされるものに対して任意のさらなる補完を必要とすることなく、がん細胞などの、ヒト細胞内で複製することができるアデノウイルスを意味することを意図する。複製能力のあるウイルスは、E1領域(パッケージング細胞株とも称される)およびヘルパーウイルスの助けなしに複製できるウイルスによってコードされるものなどの、必須ウイルスタンパク質をコードする相補的細胞株の助けなしに製造することができる。
【0166】
本明細書で利用される複製選択的または選択的複製は、該がん細胞に特異的であるか、またはその中で上方制御されるエレメント、例えば、p53突然変異などの欠陥のある細胞機構を利用してがん細胞内で複製することができ、それによって健康/正常な細胞よりもある程度の選択性を可能にする、腫瘍溶解性ウイルスを意味することを意図する。
【0167】
一実施形態では、本開示のアデノウイルスは、複製能力がある。
【0168】
一実施形態では、本開示のアデノウイルスは、複製欠損性である。
【0169】
複製欠損ウイルスは、複製するためにパッケージング細胞株を必要とする。パッケージング細胞株は、ウイルスが不足しているものを補完する遺伝子を含む。
【0170】
一実施形態では、細胞は、接着培養または懸濁培養、特に懸濁培養で増殖される。
【0171】
本明細書で利用される哺乳動物細胞の培養は、細胞がエクスビボで制御された条件下で増殖されるプロセスを指す。好適な条件は当業者に知られており、37℃などの温度を含み得る。COレベルは、例えば、5%のレベルに維持するなど、制御される必要があり得る。同様の詳細は、J.M.DavisによるCulture of Animal Cells:A Manual of Basic Techniques and Specialised Applications Edition Six R.Ian Freshney,Basic Cell Culture(Practical Approach)Second Edition Editedのテキストに記載されている。
【0172】
通常、細胞は、アデノウイルスに感染する前に十分な数を生成するために培養される。これらの方法は、当業者に知られているか、または公開されたプロトコルもしくは文献で容易に利用可能である。
【0173】
一般に、細胞は商業規模、例えば、5L、10L、15L、20L、25L、30L、35L、40L、45L、50L、100L、200L、300L、400L、500L、600L、700L、800L、900、1000L、または同様の規模で培養される。
【0174】
哺乳動物細胞を培養するのに好適な培地には、Sigma-Aldrich製のEX-CELL(登録商標)培地、例えば、HEK293細胞用のEX-CELL(登録商標)293無血清培地、CHO細胞用のEX-CELL(登録商標)ACF CHO培地の無血清培地、CHO細胞用のEX-CELL(登録商標)302無血清培地、Lonza RMPI製のEX-CELL CD加水分解物融合培地補足物(HEPESおよびL-グルタミンを含むRMPI 1640、L-グルタミンを含むまたは含まないRMPI 1640、ならびにUltraGlutamineを含むRMPI 1640など)、MEMおよびDMEM、SFMII培地が含まれるが、これらに限定されない。
【0175】
一実施形態では、培地は無血清である。これは、規制当局への製造プロセスの登録を容易にするため、有利である。
【0176】
腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、Ad5などのベクターとして使用されるアデノウイルスの特性とは異なる特性を有し、これには、細胞溶解を必要とせずに培地から回収できるという事実が含まれる。したがって、理論に拘束されることを望まないが、ウイルスは細胞から出ていく機構を有するように見える。
【0177】
一実施形態では、培養時間は、感染後30~100時間の範囲、例えば、35~70時間、例えば、40、45、50、55、60または65時間である。
【0178】
一実施形態では、培養時間は、65、70、75、80、85、90、95時間以上である。
【0179】
一実施形態では、培養時間は、60~96時間の範囲である。
【0180】
一実施形態では、最大の総ウイルス産生は、感染後約60~96時間、例えば、70~90時間で達成される。
【0181】
細胞の培養は、灌流培養、流加培養、バッチ培養、定常状態培養、連続培養、または技術的に適切なものと同一の1つ以上の組み合わせ、特に灌流培養を利用することができる。
【0182】
一実施形態では、プロセスは、灌流プロセス、例えば、連続灌流プロセスである。
【0183】
一実施形態では、培養プロセスは、1回以上の培地交換を含む。これは、細胞の増殖、収量または同様のものを最適化するのに有益であり得る。培地交換を採用する場合、交換する培地からウイルス粒子を回収する必要があり得る。これらの粒子を主要なウイルスバッチと組み合わせて、ウイルスの収量を最適化することを保証することできる。同様の技術をまた、ウイルス回収を最適化するために灌流プロセスの培地で利用することもできる。
【0184】
一実施形態では、培養プロセスは、培地交換ステップを含まない。これは、ウイルス粒子が失われることはなく、したがって収量が最適化され得るため、有利であり得る。
【0185】
一実施形態では、培養プロセスは、1つ以上の細胞の添加または交換を含む。本明細書で利用される細胞の添加は、細胞の一部またはすべてを補充することを指し、交換は、死んだ細胞を除去し、新しい細胞を添加することを指す(必ずしもその順序である必要はない)。
【0186】
一実施形態では、培養中のアデノウイルスは、細胞当たり20~150粒子(ppc)の範囲、例えば、40~100ppc、特に50ppcの濃度である。
【0187】
100ppc未満、特に50ppcなどのウイルス濃度の低い値は、特に収集前に細胞生存率を測定する場合に、ウイルス濃度が高い培養物と比較して細胞生存率の増加をもたらし得るため、有利であり得る。
【0188】
細胞の生存率が低いと、細胞の溶解をもたらす可能性があり、これにより、細胞が酵素に曝露され得、時間の経過とともにウイルスを攻撃し得る。しかしながら、ある割合の細胞培養などの動的プロセスでは、通常、ごく一部の細胞が生存できない場合がある。これは一般的に、実際には重大な問題を引き起こさない。
【0189】
一実施形態では、細胞生存率は、プロセス中、例えば、ウイルスに感染したときの96時間の時点(すなわち、感染後96時間)で、約80~95%であり、例えば、83~90%の生存率である。
【0190】
一実施形態では、細胞生存率は、プロセス中、例えば、Ad11に感染したときの96時間の時点(すなわち、感染後96時間)で約80~90%である。例えば、85%の生存率。
【0191】
一実施形態では、培地および/または細胞は、定期的に補足または補充される。
【0192】
一実施形態では、細胞は、プロセス中、例えば、個別の時点もしくはある時点で、または連続的に収集される。
【0193】
一実施形態では、ウイルスの収集は、感染後約40、46、49、64、70、73、89もしくは96時間、またはそれらの組み合わせから選択される時点で実施される。
【0194】
プロセスの一実施形態では、哺乳動物細胞は、1~9×10vp/ml以上、例えば、1~9×10、1~9×10、1~9×10、1~9×10、1~9×10、特に1~5×10vp/mlまたは2.5~5×10vp/mlのウイルスの開始濃度で感染される。
【0195】
プロセスの一実施形態では、哺乳動物細胞は、約1~200ppc、例えば、40~120ppc、例えば、50ppcで1×10細胞/mlの開始濃度で感染される。
【0196】
本明細書で利用されるppcは、細胞当たりのウイルス粒子の数を指す。
【0197】
一実施形態では、プロセスは、約35~39℃、例えば37℃で実行される。
【0198】
一実施形態では、プロセスは、約4~6%のCO、例えば5%のCOで実行される。
【0199】
一実施形態では、キメラ腫瘍溶解性ウイルス粒子などのウイルスを含む培地を濾過して細胞を除去し、さらなる下流処理のための粗上清を提供する。一実施形態では、接線流濾過が利用される。
【0200】
一実施形態では、培地は、MilliporeのMillistak+(登録商標)PODディスポーザブルデプスフィルターシステムを利用して濾過される。これは、細胞培養を含む、様々な一次および二次清澄化用途に理想的である。
【0201】
Millistak+(登録商標)Podフィルターは、特定の用途の必要性を満たすために3つの異なるシリーズの培地グレードで利用可能である。Millistak+(登録商標)DE、CEおよびHC培地は、勾配密度マトリックスおよび正の表面電荷特性を通じて最適な性能を提供する。
【0202】
ウイルスは、所望の場合、このステップで最終緩衝液に製剤化することもできる。
【0203】
したがって、濾過ステップの一実施形態では、濃縮および調整されたアデノウイルス材料が、最終またはほぼ最終の製剤で提供される。
【0204】
一実施形態では、プロセスは、2つ以上の濾過ステップを含む。
【0205】
一実施形態では、下流処理は、Millistak+PODシステム35CEおよび50CEカセット、その後の直列のopticap XL10 express 0.5/0.2um膜フィルターを含む。
【0206】
イオン交換(IEX)クロマトグラフィーは、DNAに非常に強く結合し、典型的に、残留DNAが除去される場所である。イオン交換樹脂/膜はウイルスおよびDNAの両方に結合し、塩勾配溶出中、ウイルスは通常最初にカラムから溶出し(低塩勾配)、DNAと樹脂との相互作用はウイルスより強いので、DNAははるかに高い塩濃度で溶出される。
【0207】
一実施形態では、1つ以上のクロマトグラフィーステップは、例えば、BIA Separationsから入手可能なモノリス技術を利用する。モノリシックカラムは、明確に定義されたチャネルサイズ分布を有する高度に架橋された多孔質ポリメタクリレート材料を含む。
【0208】
一実施形態では、クロマトグラフィーは、イオン交換、例えば、2段階イオン交換である。交換は、例えば、GE Health BioSciences AB、cytivaおよびSartoriusから入手可能である。
【0209】
強力なイオン交換(Q SおよびSPなど)は、広範なpH範囲で実施される。Qは、pH7未満の等電点で「タンパク質」に結合する。
【0210】
弱いイオン交換(DEAE、ANXおよびCMなど)の交換能力は、pHによって異なる。
【0211】
Sartobind Qは、アデノウイルスの精製に好適な強力なイオン交換である。
【0212】
Source 15Q(cytiva製)は、研磨ステップ用に設計された高分子の強力なアニオン交換体であり、工業用途での使用に好適である。
【0213】
一実施形態では、少なくとも2つのクロマトグラフィーステップが実施され、例えば、少なくとも1つはイオン交換である。
【0214】
一実施形態では、少なくとも2つのイオン交換ステップが実施される。
【0215】
一実施形態では、少なくとも2つのクロマトグラフィーステップは、1つのイオン交換ステップおよび1つの液体クロマトグラフィーステップを含む。
【0216】
一実施形態では、精製後、調製されたウイルスは、80ng/mL未満、例えば、60ng/mL~10ng/mLの汚染DNAを含む。
【0217】
一実施形態では、実質的にすべての汚染DNA断片は、700塩基対以下、例えば、500bp以下、例えば、200bp以下である。
【0218】
一実施形態では、精製されたウイルス生成物中の残留ベンゾナーゼ含有量は、1ng/mL以下、例えば、0.5ng/mL以下である。
【0219】
一実施形態では、特にELISAアッセイによって測定された場合、20ng/mL以下、例えば、15ng/mL以下の精製されたウイルス生成物中の残留宿主細胞タンパク質含有量。
【0220】
一実施形態では、精製されたウイルス生成物中の残留tweenは、0.1mg/mL以下、例えば、0.05mg/mL以下である。
【0221】
一実施形態では、汚染DNA含有量が80ng/mL未満である、本開示による単離され、精製されたグループBアデノウイルスが提供される。
【0222】
一実施形態では、本開示の腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、1つ以上の導入遺伝子、例えば、治療用ペプチドまたはタンパク質配列をコードする1つ以上の導入遺伝子を含む。
【0223】
一実施形態では、ウイルスは、治療用ポリヌクレオチド、例えば、治療用RNA分子をコードする。
【0224】
一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスは、少なくとも1つの導入遺伝子をコードする。好適な導入遺伝子には、p53などのいわゆる自殺遺伝子;IL-2、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、GM-CSFまたはG-CSF、インターフェロン(例えば、IFN-αまたはβなどのインターフェロンI、IFN-γなどのインターフェロンII)、TNF(例えば、TNF-αまたはTNF-β)、TGF-β、CD22、CD27、CD30、CD40、CD120などのサイトカインをコードするポリヌクレオチド配列;モノクローナル抗体、例えば、トラスツザマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、エプラツズマブ、抗EGF抗体、抗VEGF抗体および抗PDGF抗体、抗FGF抗体をコードするポリヌクレオチドが含まれる。
【0225】
分子それ自体が腫瘍もしくは免疫応答を調節するように作用し、かつ治療的に作用する分子をコードするか、またはそのような分子の活性を直接的もしくは間接的に阻害、活性化もしくは増強する薬剤である、様々な異なる種類の導入遺伝子、およびそれらの組み合わせが想定される。このような分子には、タンパク質リガンドもしくはリガンドの活性結合断片、抗体(全長もしくは断片、例えば、Fv、ScFv、Fab、F(ab)’2またはより小さい特異的結合断片)、または他の標的特異的結合タンパク質もしくはペプチド(例えば、ファージディスプレイなどの技術によって選択され得るような)、天然もしくは合成結合受容体、リガンドもしくは断片、標的をコードする遺伝子の転写もしくは翻訳を調節する特定の分子(例えば、siRNAまたはshRNA分子、転写因子)が含まれる。分子は、それらの活性、安定性、特異性などを増強するために、他のペプチド配列との融合タンパク質の形態であってもよい(例えば、リガンドは、免疫グロブリンFc領域と融合して二量体を形成し、安定性を増強することができ、樹状細胞(例えば、抗DEC-205、抗マンノース受容体、抗デクチン)などの抗原提示細胞に対して特異性を有する抗体または抗体断片に融合することができる。導入遺伝子はまた、例えば、「挿入物を有するアデノウイルス」に感染した細胞の検出、腫瘍の画像化、またはリンパ液およびリンパ節の排出などに使用することができるレポーター遺伝子をコードすることができる。
【0226】
一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスに感染したがん細胞が溶解されて、導入遺伝子によってコードされるタンパク質を含み得る細胞の内容物が放出される。
【0227】
一実施形態では、プロセスは、cGMP製造プロセスなどのGMP製造プロセスである。一実施形態では、プロセスは、貯蔵に好適な緩衝液中でウイルスを製剤化するステップをさらに含む。一実施形態では、本開示は、本方法から得られた、または得ることができるウイルスまたはウイルス製剤に及ぶ。
【0228】
細胞溶解のための既知の方法は、例えば、1%のTween-20を含む溶解緩衝液を利用することを含み、複数回の凍結-解凍も、細胞溶解の日常的な方法である。プルモザイムも細胞溶解に利用することができる。細胞溶解の代替方法には、細胞懸濁液を、4℃で10分間、1000×gで遠心分離することが含まれる。細胞ペレットを1mlのEx-Cell培地5%グリセロールに再懸濁し、液体窒素中でペレットからの応答細胞を含むチューブを3~5分間凍結し、解凍するまで+37℃の水浴で解凍することによる凍結-解凍によって細胞からウイルスを放出する。通常、凍結および解凍ステップはさらに2回繰り返される。このサイクルは、細胞からウイルスを放出する。最後の解凍ステップの後、細胞残屑を、例えば、+4℃で20分間、1936×gの遠心分離によって除去し、宿主細胞DNAをベンゾナーゼで消化することによって除去する。
【0229】
本出願の文脈において、1つ以上の培地は交換可能に使用され得る。本明細書の文脈において、「含む(comprising)」は「含む(including)」と解釈されるべきである。
【0230】
特定の要素を含む本発明の態様は、関連する要素「からなる(consisting)」または「から本質的になる(consisting essentially)」の代替の実施形態にも及ぶことも意図する。技術的に適切な場合には、本発明の実施形態を組み合わせることができる。
【0231】
特許および出願などの技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0232】
本明細書に具体的かつ明示的に列挙されたいかなる実施形態も、単独で、または1つ以上のさらなる実施形態と組み合わせてのいずれかで、免責条項の原則を形成し得る。
【0233】
本出願は、2019年6月25日に出願され、参照により本明細書に組み込まれるGB1909081.0からの優先権を主張する。この優先権出願は、本明細書の修正の根拠として利用することができる。
【0234】
本発明は、例示のためだけにある以下の実施例においてさらに説明される。
【実施例
【0235】
実施例1-グループBアデノウイルスを精製するための標準的な精製プロセスの評価
図2Aは、アデノウイルスベクターの標準的な既知の精製プロセスを示す。EnAdウイルスを、この標準的な精製プロセスに供した。
【0236】
【表3】
【0237】
標準的なプロセスを使用して精製した後でも、最終生成物にはかなりの量の宿主細胞タンパク質が残っている。
【0238】
実施例2-グループBアデノウイルスのための改変された精製プロセス
図2Bは、L5領域とE4領域との間の導入遺伝子をコードするEnAdに関する本開示の改変された精製プロセスを示す。既知のプロセスのステップ4の後、新しいステップ5を追加した。新しいステップ5は、高塩含有量のダイアフィルトレーション緩衝液を使用したダイアフィルトレーションステップである。図3は、図2Bのプロセスの技術的な詳細を示す。
【0239】
【表4】
【0240】
改変された精製プロセスの終わりに、アデノウイルスおよび宿主細胞タンパク質を、上記の実施例1に記載された方法を使用して再び定量した。精製後の宿主タンパク質は定量限界を下回っていた。したがって、追加のダイアフィルトレーションプロセスを含めた結果として、最終生成物中の汚染宿主細胞タンパク質の量は、定量レベルを下回るまで劇的に減少した。
表2は、追加のダイアフィルトレーションステップを伴う精製プロセスの様々な時点で得られたウイルス粒子および宿主細胞タンパク質含有量を示す。
【0241】
【表5】
【0242】
実施例3-グループBアデノウイルスのための1段階精製プロセス
クロマトグラフィーステップを完全に省略する可能性を調査した。図4は、ステップ1および2(溶解、エンドヌクレアーゼ処理、不活性化、および清澄化)の後、脱濾過ステップのみを行う精製プロセスの設計を示す。このプロセスの技術的な詳細を図5に示す。このプロセスは、導入遺伝子をコードするEnAdウイルスを用いて実施した。
【0243】
ステップ1および2は、上記の実施例2で詳述した通りである。次に、ステップ2の後に、上記のステップ5で説明したようにダイアフィルトレーションが続く。結果を以下の表2に示す。
【0244】
【表6】
【0245】
見られ得るように、ダイアフィルトレーションステップのみを利用した宿主細胞タンパク質のレベルは、定量化のレベルを下回っていた。したがって、3つの異なる精製ステップを含む改変された精製プロセスと比較して、1段階の精製を使用して、同様の純度のレベルが達成された。したがって、これは、高純度の最終的なグループBアデノウイルス生成物を生成するために、クロマトグラフィーステップを省略できるか、またはダイアフィルトレーションステップと一緒に実施できるという良好な証拠を提供する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
【国際調査報告】