(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ニッケル鉄触媒材料、その製作方法および水電解による水素製造、液体太陽燃料製作におけるその使用
(51)【国際特許分類】
B01J 23/755 20060101AFI20220822BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20220822BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20220822BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220822BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20220822BHJP
C25B 11/061 20210101ALI20220822BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20220822BHJP
C25B 11/077 20210101ALI20220822BHJP
【FI】
B01J23/755 M
C01B3/02 H
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B11/052
C25B11/061
C25B11/03
C25B11/077
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575023
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2019094802
(87)【国際公開番号】W WO2020252820
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】201910520816.X
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ツァン▼
(72)【発明者】
【氏名】安 秀瑞
(72)【発明者】
【氏名】姚 ▲ティン▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 集杰
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC68A
4G169BC68B
4K011AA22
4K011AA48
4K011AA50
4K011AA67
4K011BA02
4K011BA08
4K011BA10
4K011DA01
4K021AA01
4K021DB13
4K021DB19
4K021DC03
(57)【要約】
本発明はニッケル鉄触媒材料、その製作方法および水電解水素製造や液体太陽燃料製作におけるその使用を開示している。この材料は可溶性鉄塩を原料として、穏やかな条件下で変性ニッケルベース上にて得られ、産業アルカリ水電解のような厳しい条件下で使用できるニッケル鉄触媒材料を作り出した。前記ニッケル鉄触媒材料はニッケル金属ベースと、鉄元素とニッケル元素を含有する触媒活性層を含む。本発明のニッケル鉄触媒材料を使用することによって、水の分解反応を促し、産業アルカリ水電解による1m
3水素製造に要るエネルギー消耗を4.4KWHから4.01KWHに下げることができ、これによって、太陽エネルギーからメタノールへの変換量を9.7%向上することができる。このニッケル鉄触媒材料は、製作工程が簡単で、原価が低く、産業ニーズに応じた拡張製作を実現し易い。このプロセスを利用すれば、太陽エネルギーを貯蔵と輸送に便利である通常燃料に変換することができ、エネルギー問題と環境問題の解決に新しいルートを提供することができるので、極めて大きな経済的利益と社会的効果がある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル金属ベースと、+3価超の鉄元素を含み、且つゼロ価のニッケル元素がない触媒活性層を含む、ことを特徴とするニッケル鉄触媒材料。
【請求項2】
前記触媒活性層は、前記ニッケル金属ベース表面に付着される、ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル鉄触媒材料。
【請求項3】
前記ニッケルベースは、ニッケルシートニッケルワイヤメッシュ、ニッケルフォームまたはニッケル粉末から選択される少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル鉄触媒材料。
【請求項4】
前記触媒活性層において、鉄元素とニッケル元素とのモル比はFe/Ni=2~50:100である、ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル鉄触媒材料。
【請求項5】
前記触媒活性層において、鉄元素とニッケル元素とのモル比はFe/Ni=7~18:100である、ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル鉄触媒材料。
【請求項6】
前記触媒活性層の厚みは300~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル鉄触媒材料。
【請求項7】
少なくとも、前記ニッケル金属ベースを鉄イオン含有の溶液中に浸漬して静置した後、洗浄・乾燥を経て、前記ニッケル鉄触媒材料を得るステップを含む、ことを特徴とするニッケル鉄触媒材料の製作方法。
【請求項8】
前記ニッケル金属ベースを先ず水素含有雰囲気中に入れて処理した後、鉄イオン含有の溶液中に浸漬して静置する、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素含有雰囲気中には、不活性ガスが含まれ、
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンから選択される少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ニッケルベースを水素含有の雰囲気中に入れて100~400℃の温度範囲にて0.25~6時間処理する、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ニッケルベースを水素含有の雰囲気中に入れて200~300℃の温度範囲にて1~3時間処理する、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンの濃度は1~15mMである、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンの濃度は3~12mMである、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンの濃度は5~10mMである、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンはFe
2+および/またはFe
3+である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記鉄イオン含有の溶液は、使用の前に先ず不活性ガスによるバブリング処理を行う、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記静置温度は20~70℃、静置時間は0.5~20時間である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記静置温度は30~60℃、静置時間は2~10時間である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記静置温度は40~50℃、静置時間は3~6時間である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~6のいずれかに記載のニッケル鉄触媒材料、請求項7~19のいずれかに記載の方法によって製作される触媒材料のアルカリ溶液中における加水分解の触媒による酸素発生反応への使用。
【請求項21】
陽極と陰極をアルカリ電解液中に入れて、水電解によって水素および/酸素を製作し、
前記陽極は、陽極触媒剤を含み、前記陽極触媒剤は請求項1~6のいずれかに記載の前記ニッケル鉄触媒材料、請求項7~19のいずれかに記載の前記方法によって製作されるニッケル鉄触媒材料から選択される少なくとも一つであり、
前記陰極は、陰極触媒剤を含み、前記陰極触媒剤は金属ニッケル、ニッケルとモリブデン、タングステン、鉄、プラチナ中の少なくとも一つとで形成される合金から選択される少なくとも一つである、
ことを特徴とする水電解による水素および/または酸素の製造方法。
【請求項22】
前記アルカリ電解液にはアルカリ金属の水酸化物中の少なくとも一つが含まれる、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アルカリ電解液には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム中の少なくとも一つが含まれる、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記アルカリ電解液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は1~6mol/Lである、ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記アルカリ電解液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は5~6mol/Lである、ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記水電解温度は25~90℃である、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記水電解温度は60~90℃である、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも
a)太陽光発電システムを利用して太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させるステップ、
b)ステップa)で得られた電気エネルギーを水の電気分解に使用して、水素を製作するステップ、および
c)ステップb)で得られた水素と二酸化酸素との反応によってメタノールを製作するステップステップを含み、
ステップb)に記載の水電解に使用される方法は請求項21~27のいずれかの方法から選択される、
ことを特徴とする液体太陽燃料の製作方法。
【請求項29】
ステップa)に記載の太陽光発電システムは、シリコンベース光発電システムやヒ化ガリウム光発電システム、テルル化カドミウム光発電システム、銅インジウムガリウムセレン光発電システムから選択される少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリーン再生可能エネルギー利用の技術分野に関し、具体的にはニッケル鉄触媒材料およびその製作方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源の使い過ぎによって、環境汚染と生態環境の悪化が日に日に深刻化されており、特に温室効果ガス二酸化炭素の排出によって、グローバル気候の変化や異常気象の多発を招来し、人類の生存に不可欠な地球の生態環境に対する直接の脅威となっている。従って、再生可能エネルギーおよび炭素資資源の清潔化利用が空前重要視されている。
【0003】
メタノールは太陽エネルギーによって生じ、太陽エネルギーは化学エネルギーの形式でメタノール分子中に保存されるので、太陽エネルギーを利用して二酸化炭素と水で合成したメタノールを太陽燃料と呼ぶ。また、メタノールは通常液体形態で存在するので、液体太陽燃料とも呼ばれている。それと同時に、メタノールは重要な化学中間体でもあり、メタノールを原料として、さらにガソリンやディーゼル、オレフィン、芳香油などの上質燃料と化学品を製造することができる。
【0004】
液体太陽燃料の製作中、CO2は通常化石燃料の排出から由来し、水素由来の清潔性と製作に要るエネルギー消耗の高低は、液体太陽燃料の清潔性、持続可能性および原価の決定的な要素となっている。現在、世界上のおよそ95%の水素製造は、依然として化石資源の再調整技術によるが、これはエネルギーの構成を根本的に変え、環境汚染を軽減することはできない。利用太陽エネルギーを利用して、水を分解して水素を得る方法は炭素のゼロ排出を基本的に実現することができる。現在、産業アルカリ水電解による水素製造設備は原価が適当であって、100m3~1000m3規模の水素製造を実現することができ、産業化の水素化反応のニーズを満たすことができるものの、この技術が直面している問題は水素製造に要るエネルギー消耗が大きいということであって、水素の利用と更なる変換の経済性を直接制限している。
【0005】
液体太陽燃料の製造において、触媒剤の触媒性能はこの技術の更なる展開の決定的な要素となっている。現在、承認または開示されているアルカリ水電解触媒剤に関する多くの特許と文章は、まだ実験室条件(1M KOH、室温)の研究中に留まっており、本当の意味での産業化アルカリ水電解設備の運行条件(5.5~6M KOH、60~90℃)には触れていない。そのため、産業化実際運行条件に適する安価、高効率、性能が安定した電気触媒材料を開発することは非常に高い産業上の利用価値がある。そして、特許と文章中に報道されているニッケル鉄触媒材料は、通常外部からニッケル・鉄化合物および他の原料を導入して反応物とし、高温水の熱または電気化学法を利用してベース上にニッケル・鉄材料(CN201810044072、CN201711203589、CN201611122593)を生長させたものである。これらの製作方法は使用される原材料が多く、プロセスが複雑であり、エネルギー消耗が多いため、大規模の産業化製造はなかなか難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の重要な改進は、表面変性のニッケルベースをベースとして、穏やかな低温条件下で可溶性鉄塩だけの反応物を使用して産業化の高温、強アルカリ生産条件に適する新型高活性ニッケル鉄触媒材料を製作することができるということである。既存の産業アルカリ水電解触媒材料に比べて、このネッケル・鉄材料の使用は水電解段階の単位水素製造におけるエネルギー消耗を効果的に低下することができ、産業化条件下で長い時間安定した運行を保持することができるので、水電解による水素製造のエネルギー効率と全体の液体太陽燃料生産プロセスにおける太陽エネルギーを利用してメタノール燃料を製作する生産効率を大きく向上することができる。
【0007】
本発明はニッケル鉄触媒材料やその製作方法および水電解による水素製造と液体太陽燃料生産中へのその使用を提供することを目的とする。その核心技術内容は、指向的に現行の大規模産業化アルカリ水電解による水素製造条件に注目しており、簡単且つ穏やかな条件で新型の高活性ニッケル鉄触媒材料を製作するとともに、水の電気分解および液体太陽燃料の生産工程に使用することによって、水電解による水素製造のエネルギー消耗を著しく低下し、工程全体の太陽エネルギー変換効率を向上することができる。そのうち、この新型水の電気分解触媒剤の製作は変性ニッケルベース上にて実現される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記ニッケル鉄触媒材料は、ニッケル金属ベースと、+3価超鉄元素と、ノンゼロ価ニッケル元素を含有する触媒活性層を含む。
【0009】
好ましくは、前記触媒活性層は前記ニッケル金属ベース表面に付着される。
【0010】
好ましくは、前記ニッケルベースは、ニッケルシートニッケルワイヤメッシュ、ニッケルフォームまたはニッケル粉末から選択される少なくとも一つである。
【0011】
好ましくは、前記触媒活性層において、鉄元素とニッケル元素とのモル比はFe/Ni=2~50:100であり、さらに好ましくは、鉄元素とニッケル元素とのモル比の上限は1:2、2:5、3:10、1:5中から選択され、鉄元素とニッケル元素とのモル比の下限は1:10、1:20、1:50中から選択される。
【0012】
好ましくは、前記触媒活性層において、鉄元素とニッケル元素とのモル比はFe/Ni=7~18:100であり、さらに好ましくは、鉄元素とニッケル元素とのモル比の上限は9:50、4:25、7:50中から選択され、鉄元素とニッケル元素とのモル比の下限は3:25、1:10、7:100中から選択される。
【0013】
好ましくは、前記触媒活性層の厚みは300~500nmである。
【0014】
前記ニッケルベースの外観形態は鉄元素を導入してニッケル・鉄材料を形成した後も著しい変化がなく、ニッケルベースの表面には、はっきりと目に見えるナノ形態/粒子が形成されていなかった。
【0015】
本出願のもう一つの面において、少なくとも、前記ニッケル金属ベースを鉄イオン含有の溶液中に浸漬して静置した後、洗浄・乾燥を経て、前記ニッケル鉄触媒材料を得るステップを含む、ニッケル鉄触媒材料の製作方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記ニッケル鉄触媒材料の製作方法は、少なくとも
(1)ニッケル金属ベースを水素含有雰囲気中に入れて処理して、ネッケル金属ベースの前駆体を得る段階、および
(2)前記ニッケルベース前駆体を鉄イオン含有の溶液中に浸漬して静置した後、洗浄・乾燥を経て、前記ニッケル鉄触媒材料を得るステップを含む。
【0017】
好ましくは、段階(1)において、前記水素含有雰囲気中には不活性ガスが含まれる。
【0018】
水素または水素と不活性ガスとの混合ガスはいずれも本出願に使用することができる。本分野の技術者は実際の需要に応じて、適当な水素含有雰囲気を選択することができる。好ましくは、前記水素含有雰囲気は水素と不活性ガスとの混合ガスであり、前記水素と前記不活性ガスとの体積比は1~50:100である。
【0019】
好ましくは、前記水素と前記不活性ガスとの体積比の上限は1:2、2:5、3:10中から選択され、前記水素と前記不活性ガスとの体積比の下限は1:5、1:10、1:100中から選択される。
【0020】
好ましくは、前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンから選択される少なくとも一つである。
【0021】
好ましくは、段階(1)は、前記ニッケルベースを水素含有の雰囲気中に入れて100~400℃の温度範囲にて0.25~6時間処理する。
【0022】
好ましくは、段階(1)は、前記ニッケルベースを水素含有の雰囲気中に入れて200~300℃の温度範囲にて1~3時間処理する。
【0023】
好ましくは、段階(2)において、前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンの濃度は1~15mMである。
【0024】
好ましくは、段階(2)において、前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンの濃度は3~12mMである。
【0025】
好ましくは、段階(2)において、前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンの濃度は5~10mMである。
【0026】
好ましくは、段階(2)において、前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンはFe2+および/またはFe3+である。
【0027】
好ましくは、段階(2)において、前記鉄イオン含有の溶液中には鉄の硝酸塩、鉄の塩化塩または鉄の硫酸塩中の少なくとも一つが含まれる。
【0028】
好ましくは、段階(2)において、前記鉄イオン含有の溶液は、使用の前に先ず不活性ガスによるバブリング処理を行う。
【0029】
好ましくは、段階(2)において、前記静置温度は20~70℃、静置時間は0.5~20hである。
【0030】
好ましくは、段階(2)において、前記静置温度は30~60℃、静置時間は2~10hである。
【0031】
好ましくは、段階(2)において、前記静置温度は40~50℃、静置時間は3~6hである。
【0032】
本出願のもう一つの面において、上記いずれかのニッケル鉄触媒材料や上記いずれかの方法によって製作されるニッケル鉄触媒材料がアルカリ溶液中における水分解による酸素発生反応中への使用を提供する。
【0033】
本出願のもう一つの面において、陽極と陰極をアルカリ電解液中に入れて、水電解によって水素および/酸素を製作することを特徴とする水電解による水素製造および/または酸素製造の方法を提供する。そのうち、
【0034】
前記陽極は陽極触媒を含み、前記陽極触媒は上記いずれかのニッケル鉄触媒材料や上記いずれかの方法によって製作されたニッケル鉄触媒材料から選択される少なくとも一つである。
【0035】
前記陰極は陰極触媒を含み、前記陰極触媒は金属ニッケルやニッケルとモリブデン、タングステン、鉄、プラチナ中の少なくとも一つによって形成された合金中の一つから選択される。
【0036】
好ましくは、前記アルカリ電解液にはアルカリ金属の水酸化物中の少なくとも一つが含まれる。
【0037】
好ましくは、前記アルカリ電解液には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム中の少なくとも一つが含まれる。
【0038】
好ましくは、前記アルカリ電解液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は1~6mol/Lである。
【0039】
好ましくは、前記アルカリ電解液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は5~6mol/Lである。
【0040】
好ましくは、前記水電解温度は25~90℃である。
【0041】
好ましくは、前記水電解温度は60~90℃である。
【0042】
本出願のもう一つの面において、前記方法は少なくとも
a)太陽光発電システムを利用して太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させる段階、
b)段階a)で得られた電気エネルギーを水の電気分解に使用して、水素を製作する段階、および
c)段階b)で得られた水素と二酸化酸素との反応によってメタノールを製作するステップを含む、
ことを特徴とする液体太陽燃料の製作方法を提供する。
【0043】
段階b)に記載の水の電気分解に使用される方法は、上記いずれかの水電解による水素および/または酸素製造方法から選択される。
【0044】
上記方法において、第一段階では太陽エネルギーを利用して水を分解して水素を製作し、第二段階では得られた水素と炭素含有化合物を反応させて化学品または燃料を製作し、例えば、二酸化炭素との反応によってメタノールなどに変換させる。このプロセスは水と二酸化炭素を循環利用することができ、分散的な太陽エネルギーの長期間保存と利用がもっと便利になる。技術工程全体は、主に、(1)太陽光発電システム、(2)水電解による水素製造システム、(3)二酸化炭素への水素添加による燃料合成システムからなる三つのシステムを含む。その反応式は以下のとおりである。
【化1】
【0045】
上記システム中に発生する反応:
(1)光発電システムは太陽エネルギーの輻射を受けて電気エネルギーを発生し、水の電気分解システムを駆動して水素を製造する。
(2)水の電気分解設備の内部に装着される陽極は前記ニッケル・鉄触媒剤であり、陰極は金属ニッケルやニッケルとアルミニウム、モリブデン、タングステン、鉄、プラチナ中の少なくとも一つによって形成される合金中の少なくとも一つであり、アルカリ液体は、補給水ポンプによって水電気分解設備に入れられて循環し、陰極と陽極上にて水の分解反応が発生し、それぞれ水素と酸素が生成される。製造された水素と酸素は異なるガス通路を通じて、それぞれ水素・酸素の分離中に入り、ガスの混合による不安全要素を効果的に避けることができる。
(3)水の電気分解設備によって製造された水素は所要の比例によって、ガス混合タンク中にて二酸化炭素と混合された後、増圧装置によって所要の圧力に上げて反応タワーに入り、二酸化炭素水素添加触媒剤の作用によって、反応が発生され、メタノールなどの産物が生成される。産物は凝縮器を経て分離タンクに入り、液体産物(メタノールと水)は凝縮されて分離タンク内に保存され、未変換且つ完全に反応されていないガス(二酸化炭素と水素および一酸化炭素)は増圧装置を経て混合タンクに入り、再び反応タワーに入って利用且つ変換される。
【0046】
最後に、PVシステムや水の電気分解システムおよび二酸化炭素水素添加システムによって、太陽輻射エネルギーを水素と液体メタノールに変換させる。
【0047】
既存技術中、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させる太陽光発電システムは、いずれも本発明の技術手段に使用することができる。好ましくは、段階(a)に記載の太陽光発電システムは、シリコンベース光発電システムやヒ化ガリウム光発電システム、テルル化カドミウム光発電システム、CIGS 光発電システムから選択される少なくとも一つである。
【0048】
既存技術中、水素と二酸化炭素との反応によってメタノールを製作する工程や設備および触媒剤はいずれも本発明の技術手段に使用することができる。好ましくは、段階(c)中、水素と二酸化炭素との反応によってメタノールを製造する触媒剤はCuOZnOAl2O3、ZnOZrO2、In2O3ZrO2、CdOZrO2、ZnOCr2O3、In2O3Cr2O3またはCdOCr2O3から選択される少なくとも一つである。
【発明の効果】
【0049】
1)本発明に記載のニッケル鉄触媒材料がニッケルネットをベースとする場合、強アルカリ・高温(30%水酸化カリウム、80℃)の産業アルカリ水電気分解システムにおいて、ただの180mVの反応過電圧だけで10mA cm-2の電流密度を実現することができ、市販のIr/C触媒剤の440mV過電圧と市販のニッケルネット触媒剤の240mV過電圧に比べてはるかに低い。ニッケル・鉄ネット触媒材料を市販のニッケルネットに取って代わって、ラネーニッケルを陰極とする電解槽の中で水の分解反応を駆動する時に、システムの250mA cm-2電流密度下での作動電圧を162mVも低下させることができ、1立方メートル水素製造のエネルギー消耗を0.39KWH-1も下げることができ、長い時間活性を失わずに安定した運行を保つことができる。
2)本発明に記載のニッケル鉄触媒材料は再生可能なエネルギーである太陽エネルギーで水を分解して水素を製造して、得られた水素と二酸化炭素との反応によってメタン―ルに変換させる。工程全体は太陽エネルギーからメタノールへの変換を実現し、再生可能なエネルギーの変換と利用をさらに推進することができる。また、再生可能なエネルギーを導入して水を電気分解して水素を製造することによって、炭素資源の循環変換利用を実現することができる。
3)この新型ニッケル・鉄ネット陽極触媒剤と市販のラネーニッケル陰極触媒剤を産業アルカリ水電解装置に組み立てて、液体太陽燃料の製造工程に使用すると、太陽エネルギーからメタノールへの産出量をおよそ9パーセントほど向上することができ、優れた安定性が得られる。この方法は反応条件が穏やかで、合成の工程が簡単であり、規模化生産と普及に有利であるため、優れた応用前景を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】比較例1中のサンプルD1
#と実施例1中のサンプル1
#が三電極条件下での性能試験グラフである。
【
図2】比較例1中のサンプルD1
#と実施例1中のサンプル1
#がそれぞれラネーニッケル陰極触媒材料で組み立てられた二電極電気分解セルの水分解性能グラフである。
【
図3】実施例1中のサンプル1
#とニッケルベースの走査電子顕微鏡写真を比較したものである。
【
図4】実施例1中のサンプル1
#とラネーニッケル陰極触媒材料で組み立てられた二電極電気分解セルの安定性作動グラフである。
【
図5】実施例2中のサンプル2
#が三電極条件下での性能試験グラフである。
【
図6】実施例3中のサンプル3
#が三電極条件下での性能試験グラフである。
【
図7】実施例4中のサンプル4
#が三電極条件下での性能試験グラフである。
【
図8】実施例1中のサンプル1
#の触媒活性層中のニッケル元素のXPS Ni2pスペクトラムである。
【
図9】実施例1中のサンプル1
#の触媒活性層中の鉄元素のXPS Ni2pスペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、実施例はただの例示的なものであり、制限するものではない。特別の説明がない限り、実施例中の原料は特別の処理をしておらず、いずれも市販の商品を直接使用することができ、分析機器はメーカーの推奨パラメータを使用する。
【0052】
実施例の工程に使用される太陽エネルギー発電装置の発電量はQ=10MWであり、アルカリ水電解による水素製造装置と二酸化炭素水素添加装置がカップリングされている。そのうち、二酸化炭素水素添加装置はZnOZrO
2触媒剤を使用し、反応は5MPa、330℃、GHSV=24000mLh
-1g
-1条件下で行われ、二酸化炭素の変換率は11%、メタノールの選択性は80%であり、反応式
【化2】
と理想的なガス状態の方程式の計算によって、標準状態下で、1立方メートルH
2の1回循環は約0.03立方メートルのCO
2をメタノールに変換することができる。また、市販のアルカリ水電解による水素製造装置(280セットの作業面積が1.6m
2である電解室を組み立ててなる)を使用して、濃度30%KOHと80℃条件下で、1m
3水素の生産に要るエネルギー消耗をPKWとする場合、カップリング発電量がQ=10MWである太陽エネルギー発電装置の1時間当たりに変換できるCO2の体積Vは以下計算式:
【数1】
によって算出される。
【0053】
実施例中、市販のアルカリ水電解による水素製造装置やニッケルネットおよびラネーニッケルは、いずれも蘇州競立製▲チン▼設備有限公司から購入される。
【0054】
実施例中、三電極分析はGarmy社のINTERFACE 5000型電気化学ワークステーションを使用する。
【0055】
実施例中、サンプルの形態と表面元素の分析はエネルギースペクトラム付きQuanta 200 FEG型走査電子顕微鏡で測定する。
【0056】
実施例中、サンプルのXPS分析はVG ESCALAB MK2型X線エネルギー分散型分光計(EDS)で測定する。
【0057】
(比較例1)
市販のアルカリ水電解産業装備中にニッケルネットとラネーニッケルを用いてそれぞれ陰極と陽極とし、強アルカリ・高温(30%KOH、80℃)条件下での水電解性能を測定して、基本参照の比較例とする。
【0058】
(1)市販のアルカリ水電解産業装備中に60メッシュのラネーニッケル陰極触媒剤を使用し、1M NaOH溶液中に24h浸し、脱イオン水で溶液が中性になるまで洗い流し、室温にて乾燥する。
【0059】
(2)市販のアルカリ水電解産業装備中に60メッシュのニッケルネット陽極触媒剤を直接使用し、サンプルD1#とする。
【0060】
(3)三電極システムにおいて、ラネーニッケルを対電極としてサンプルD1
#の水酸化活性を測定するが、その結果は
図1に示す(強アルカリ30%KOH、室温)とおりである。酸素が発生し始まる過電圧は270mVであり、1000mA・cm
-2電流密度に達するには650mVの過電圧が要る。
【0061】
(4)サンプルD1
#を陽極とし、ラネーニッケルを陰極として、それをアルカリ水電解による水素製造装置中に組み立てるとともに、電解槽の作業グラフを(強アルカリ30%KOH、高温80℃)作成したが、その結果は
図2に示すとおりである。単一電解セルは1.985Vの電圧で250mA・cm
-2電流密度を実現していた。
【0062】
市販のアルカリ水電解による水素製造装備がラネーニッケルとニッケルネットを陰/陽極とする場合、1m3水素の製造に要るエネルギー消耗は約4.4KWHであった。
【実施例1】
【0063】
市販のニッケルネットをベースとして、新型ニッケル・鉄陽極触媒剤を製作し、市販のラネーニッケル陰極を使用して、強アルカリ高温(30%KOH、80℃)条件下で水の電気分解を行なう。
【0064】
(1)市販のアルカリ水電解産業装備中に60メッシュのラネーニッケル陰極触媒剤を使用し、1M NaOH溶液中に24h浸し、脱イオン水で溶液が中性になるまで洗い流し、室温にて乾燥する。
【0065】
(2)ニッケル・鉄陽極触媒剤を製作する。
(2-1)市販のアルカリ水電解装備において、60メッシュのニッケルネットをチューブ式炉中に入れて、水素:アルゴンの体積比1:10である安定した雰囲気の中で、400℃下で5h保温し、室温まで冷すことによって、特定の表面物質を有するニッケルネットベースを得る。
(2-2)反応溶液を調製する。塩化鉄を水に溶かして10mM/Lの透明の溶液を調製する。
(2-3)低温化学バス。段階(2-1)中の特定の表面物質を有するニッケルネットを段階(2-2)の安定した反応溶液中に浸し、システム全体を50℃にて6h静置する。
(2-4)電極板を洗い流す。(2-3)中にて静置したニッケルネットを取り出して、大量の水で充分洗浄し、電極板を吹き乾すか自然条件下で乾かして、ニッケル・鉄のネット状触媒剤を得るが、サンプル1#と表記する。走査電子顕微鏡でサンプル1#に対する形態特徴化を行い、電子分光法EDXでニッケル・鉄酸化物活性層の元素構成を測定したが、その結果、サンプル1#中、ニッケル・鉄酸化物活性層の厚みは約300~500nm、構成原子比は約Fe/Ni=10~15:100であった。
【0066】
(3)三電極システムにおいて、ラネーニッケルを対電極とし、サンプル1
#陽極の水酸化活性(強アルカリ30%KOH、室温)を測定したが、その結果は
図1に示すとおりである。サンプル1
#の酸素が発生し始まる過電圧は134mAであり、1000mA・cm
-2電流密度に達するにはわずか380mVだけの過電圧が要る。比較例1中のサンプルD1
#に比べて、酸素が発生し始まる過電圧は136mAも下がり、1000mA・cm
-2電流密度に要る過電圧は270mVも下がっていた。
【0067】
(4)サンプル1#を陽極、ラネーニッケルを陰極として、アルカリ水電解水素製造装置中に組み立てて、電解槽の作業グラフを(強アルカリ30%KOH、高温80℃)作成したが、その結果は
図2に示すとおりである。本実施例中のサンプル1
#とニッケルベース走査顕微鏡写真との比較図は
図3に示すとおりである。これから見れば、反応終了後、ベースの表面外観の形態には著しい変化がなかった。単一電解セルが250mA・cm
-2電流密度を実現するために要る電圧は1.823Vまで下がっている。このサンプル1
#/ラネーニッケルを組み立ててなる電解水素製造装置は、500mA・cm
-2の高電流密度の下で、依然として優れた作業安定性を示していた。
図4を参照。比較例1中のサンプルD1
#に比べて、本発明に記載の新型ニッケル・鉄ネット触媒剤を使用すると、アルカリ水電解装置の単位水素製造のエネルギー消耗を約ΔP=0.39KWHを低下することができた。
【0068】
上記データの計算によって、この工程と新型ニッケル・鉄ネット触媒剤を使用すると、10MW PV設備ごとに1時間当たり約75m3のCO2をメタノールに変換させることができる。比較例1に比べて、1時間当たり二酸化炭素の変換量を9.7%向上することができる。その結果は表1に示すとおりである。
【0069】
【実施例2】
【0070】
金属ニッケルベースに表面物質の変性を実施せず、直接鉄元素を導入してニッケル・鉄触媒剤を製作して、比較例とする。
【0071】
(1)ニッケル・鉄ネット陽極触媒剤を製作する。
(1-1)反応溶液を調製する。塩化鉄を水に溶かして10mM/Lの透明の溶液を調製する。
(1-2)低温化学バス。市販のアルカリ水電解産業装置中に60メッシュのニッケルネットを段階(1-1)中の安定した反応液中に浸し、システム全体を50℃にて6h静置する。
(1-3)電極板を洗い流す。(1-2)中にて静置後のニッケルネットを取り出して、大量の水で充分洗浄し、電極板を吹き乾すか自然条件下で乾かして、ニッケル・鉄のネット状触媒剤を得るが、サンプル2#と表記する。走査電子顕微鏡でサンプル2#に対する形態特徴化を行い、電子分光法EDXでニッケル・鉄酸化物活性層の元素構成を測定したが、その結果、サンプル2#中、ニッケル・鉄酸化物活性層の厚みは約100~200nm、構成原子比は約Fe/Ni=8~12:100であった。
【0072】
(2)三電極システムにおいて、ラネーニッケルを対電極とし、サンプル2
#陽極の水酸化活性(強アルカリ30%KOH、室温)を測定したが、その結果は
図5に示すとおりである。サンプル2
#の酸素が発生し始まる過電圧は310mAであって、サンプル1
#に比べて、酸素が発生し始まる過電圧が176mA増え、380mVの過電圧でわずか25mA・cm
-2だけの電流密度を実現できた。
【0073】
これは表面物質の変性をしていない金属ニッケルベース上に生長されたニッケル・鉄陽極触媒剤は、水分解による酸素発生の触媒活性を良く体現できないということを実証する。
【実施例3】
【0074】
鉄元素を導入してニッケル・鉄触媒剤を製作する時に、反応温度を上げて、比較例とする。
【0075】
(1)ニッケル・鉄ネット陽極触媒剤を製作する。
(1-1)市販のアルカリ水電解産業装備中において、60メッシュのニッケルネットをチューブ式炉中に入れて、水素:アルゴンの体積比1:10である安定した雰囲気の中で、400℃下で5h保温し、室温まで冷すことによって、特定の表面物質を有するニッケルネットベースを得る。
(1-2)反応溶液を調製する。塩化鉄を水に溶かして10mM/Lの透明の溶液を調製する。
(1-3)低温化学バス。市販のアルカリ水電解産業装置中に60メッシュのニッケルネットを段階(1-2)中の安定した反応液中に浸し、システム全体を85℃にて6h静置する。
(1-4)電極板を洗い流す。(1-3)中にて静置後のニッケルネットを取り出して、大量の水で充分洗浄し、電極板を吹き乾すか自然条件下で乾かして、ニッケル・鉄のネット状触媒剤を得るが、サンプル3#と表記する。走査電子顕微鏡でサンプル3#に対する形態特徴化を行い、電子分光法EDXでニッケル・鉄酸化物活性層の元素構成を測定したが、その結果、サンプル3#中、ニッケル・鉄酸化物活性層の厚みは約1000~1200nm、構成原子比は約Fe/Ni=15~18:100であった。
【0076】
(2)三電極システムにおいて、ラネーニッケルを対電極とし、サンプル3
#陽極の水酸化活性(強アルカリ30%KOH、室温)を測定したが、その結果は
図6に示すとおりである。サンプル3
#の酸素が発生し始まる過電圧は270mAであって、サンプル1
#に比べて、酸素が発生し始まる過電圧が136mA増え、380mVの過電圧でわずか210mA・cm
-2だけの電流密度を実現できた。しかし、性能は実施例2中の金属ニッケルベースに表面物質変性をしなかったサンプル2
#より優れていた。
【実施例4】
【0077】
第一鉄塩溶液を用いて反応とサンプル製作を実施する。
【0078】
(1)ニッケル・鉄ネット陽極触媒剤を製作する。
(1-1)市販のアルカリ水電解産業装備中において、60メッシュのニッケルネットをチューブ式炉中に入れて、水素:アルゴンの体積比1:10である安定した雰囲気の中で、400℃下で5h保温し、室温まで冷すことによって、特定の表面物質を有するニッケルネットベースを得る。
(1-2)反応溶液を調製する。塩化鉄を水に溶かして10mM/Lの透明の溶液を調製する。
(1-3)低温化学バス。市販のアルカリ水電解産業装置中に60メッシュのニッケルネットを段階(1-2)中の安定した反応液中に浸し、システム全体を50℃にて6h静置する。
(1-4)電極板を洗い流す。(1-3)中にて静置後のニッケルネットを取り出して、大量の水で充分洗浄し、電極板を吹き乾すか自然条件下で乾かして、ニッケル・鉄のネット状触媒剤を得るが、サンプル4#と表記する。走査電子顕微鏡でサンプル4#に対する形態特徴化を行い、電子分光法EDXでニッケル・鉄酸化物活性層の元素構成を測定したが、その結果、サンプル4#中、ニッケル・鉄酸化物活性層の厚みは約200~300nm、構成原子比は約Fe/Ni=7~10:100であった。
【0079】
(2)三電極システムにおいて、ラネーニッケルを対電極とし、サンプル4
#陽極の水酸化活性(強アルカリ30%KOH、室温)を測定したが、その結果は
図7に示すとおりである。サンプル4
#の酸素が発生し始まる過電圧は230mAであって、300mA・cm
-2電流密度を実現するためにはわずか330mVだけの過電圧が必要であった。比較例1のサンプルD1
#に比べて、酸素が発生し始まる過電圧が40mV下がっていた。
【実施例5】
【0080】
図8は実施例1中サンプル1
#の触媒活性層中のニッケル元素XPS Ni2pスペクトラムを示しており、
図9は実施例1中サンプル1
#の触媒活性層中の鉄元素XPS Fe2pスペクトラムを示しており、特徴化結果によれば、触媒活性層には+2,+3および+3価超の鉄元素を含有し、触媒活性層には+2、+3価のニッケル元素を含有しており、その存在形式はNiO、Ni(OH)
2、NiOOHであって、金属ニッケルベース上にあっものの、XPSデータには0価ニッケルのシグナルがなかった。
【0081】
以上の説明は、ただの本出願の幾つかの実施例であり、本出願に対する如何なる制限にもならない。本出願では最良の実施例を上記のとおり挙げているが、本出願を制限するものではなく、本分野に詳しい技術者が本出願の技術手段の範囲を離れずに、上記技術内容を利用して、実施したある程度の変動または修飾は、いずれも同様の等価実施例と見なされ、いずれも技術手段の範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
実施例の工程に使用される太陽エネルギー発電装置の発電量はQ=10MWであり、アルカリ水電解による水素製造装置と二酸化炭素水素添加装置がカップリングされている。そのうち、二酸化炭素水素添加装置はZnOZrO
2触媒剤を使用し、反応は5MPa、330℃、GHSV=24000mLh
-1g
-1条件下で行われ、二酸化炭素の変換率は11%、メタノールの選択性は80%であり、反応式
【化2】
と理想的なガス状態の方程式の計算によって、標準状態下で、1立方メートルH
2の1回循環は約0.03立方メートルのCO
2をメタノールに変換することができる。また、市販のアルカリ水電解による水素製造装置(280セットの作業
区域の直径が1.6
mである電解室を組み立ててなる)を使用して、濃度30%KOHと80℃条件下で、1m
3水素の生産に要るエネルギー消耗をPKWとする場合、カップリング発電量がQ=10MWである太陽エネルギー発電装置の1時間当たりに変換できるCO2の体積Vは以下計算式:
【数1】
によって算出される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
(1)ニッケル・鉄ネット陽極触媒剤を製作する。
(1-1)市販のアルカリ水電解産業装備中において、60メッシュのニッケルネットをチューブ式炉中に入れて、水素:アルゴンの体積比1:10である安定した雰囲気の中で、400℃下で5h保温し、室温まで冷すことによって、特定の表面物質を有するニッケルネットベースを得る。
(1-2)反応溶液を調製する。塩化第一鉄を水に溶かして10mM/Lの透明の溶液を調製する。
(1-3)低温化学バス。市販のアルカリ水電解産業装置中に60メッシュのニッケルネットを段階(1-2)中の安定した反応液中に浸し、システム全体を50℃にて6h静置する。
(1-4)電極板を洗い流す。(1-3)中にて静置後のニッケルネットを取り出して、大量の水で充分洗浄し、電極板を吹き乾すか自然条件下で乾かして、ニッケル・鉄のネット状触媒剤を得るが、サンプル4#と表記する。走査電子顕微鏡でサンプル4#に対する形態特徴化を行い、電子分光法EDXでニッケル・鉄酸化物活性層の元素構成を測定したが、その結果、サンプル4#中、ニッケル・鉄酸化物活性層の厚みは約200~300nm、構成原子比は約Fe/Ni=7~10:100であった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル金属ベースと、+3価超の鉄元素と、且つゼロ価のニッケル元素がない触媒活性層とを含
み、
前記触媒活性層は、前記ニッケル金属ベース表面に付着され、
前記ニッケルベースは、ニッケルシート、ニッケルワイヤメッシュ、ニッケルフォームまたはニッケル粉末から選択される少なくとも一つであり、
前記触媒活性層において、鉄元素とニッケル元素とのモル比はFe/Ni=2~50:100である、
ことを特徴とするニッケル鉄触媒材料。
【請求項2】
前記触媒活性層において、鉄元素とニッケル元素とのモル比はFe/Ni=7~18:100である、ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル鉄触媒材料。
【請求項3】
前記触媒活性層の厚みは300~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル鉄触媒材料。
【請求項4】
少なくとも、前記ニッケル金属ベースを鉄イオン含有の溶液中に浸漬して静置した後、洗浄・乾燥を経て、前記ニッケル鉄触媒材料を得るステップを含
み、
前記ニッケルベースを水素含有の雰囲気中に入れて100~400℃の温度範囲にて0.25~6時間処理した後、引き続き鉄イオンを含有する溶液中に浸して静置し、
前記水素含有雰囲気中には、不活性ガスが含まれ、前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンから選択される少なくとも一つであり、
前記鉄イオン含有溶液における鉄イオンはFe
2+
および/またはFe
3+
であり、
前記鉄イオン含有溶液中における鉄イオンの濃度は1~15mMであり、
前記静置温度は20~70℃、静置時間は0.5~20時間である、
ことを特徴とするニッケル鉄触媒材料の製作方法。
【請求項5】
前記ニッケルベースを水素含有の雰囲気中に入れて200~300℃の温度範囲にて1~3時間処理
し、
前記鉄イオン含有溶液中の鉄イオンの濃度は3~12mMであり、
前記静置温度は30~60℃、静置時間は2~10時間である、
ことを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記鉄イオン含有溶液中の鉄イオンの濃度は5~10mMであ
り、
前記鉄イオン含有の溶液は、使用の前に先ず不活性ガスによるバブリング処理を行い、
前記静置温度は40~50℃、静置時間は3~6時間である、
ことを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~
3のいずれかに記載のニッケル鉄触媒材料、請求項
4~
6のいずれかに記載の方法によって製作される触媒材料のアルカリ溶液における加水分解の触媒による酸素発生反応への使用。
【請求項8】
陽極と陰極をアルカリ電解液中に入れて、水電解によって水素および/酸素を製作し、
そのうち、
前記陽極は、陽極触媒剤を含み、前記陽極触媒剤は請求項1~
3のいずれかに記載の前記ニッケル鉄触媒材料、請求項
4~
6のいずれかに記載の前記方法によって製作されるニッケル鉄触媒材料から選択される少なくとも一つであり、
前記陰極は、陰極触媒剤を含み、前記陰極触媒剤は金属ニッケルやニッケルとモリブデン、タングステン、鉄、プラチナ中の少なくとも一つとで形成される合金から選択される少なくとも一つであ
り、
前記アルカリ電解液にはアルカリ金属水酸化物中の少なくとも一つが含まれ、
前記アルカリ電解液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は1~6mol/Lであり、
前記水電解温度は25~90℃である、
ことを特徴とする水電解による水素および/または酸素の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ電解液には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム中の少なくとも一つが含まれ
、
前記アルカリ電解液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は5~6mol/Lであり、
前記水電解温度は60~90℃である、
ことを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも
a)太陽光発電システムを利用して太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させるステップ、
b)ステップa)で得られた電気エネルギーを水の電気分解に使用して、水素を製作するステップ、および
c)ステップb)で得られた水素と二酸化酸素との反応によってメタノールを製作するステップを含み、
ステップb)に記載の水電解に使用される方法は請求項
8または9に記載の方法から選択され
、
ステップa)に記載の太陽光発電システムは、シリコンベース光発電システムやヒ化ガリウム光発電システム、テルル化カドミウム光発電システム、銅インジウムガリウムセレン光発電システムから選択される少なくとも一つである、
ことを特徴とする液体太陽燃料の製作方法。
【国際調査報告】