(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(54)【発明の名称】被覆された構成部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 5/00 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
H01F5/00 E
H01F5/00 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575524
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2020066720
(87)【国際公開番号】W WO2020254379
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】102019208829.5
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ハイトマン
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ホルツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブアクハート
(57)【要約】
本発明は、被覆された構成部材(10)であって、熱伝導性の部材(20)と、この部材(20)の内側領域を満たす熱伝導性の被覆材(30)とを有する、被覆された構成部材(10)に関する。部材(20)は、部材(20)の内側領域を外側領域に接続する複数の開口(21)を有しており、この場合、被覆材(30)が開口(21)を満たしている。さらに本発明は、被覆された構成部材(10)を製造する方法にも関する。この方法では、複数の開口(21)を有する熱伝導性の部材(20)の内側領域に、被覆材(30)を、被覆材(30)が開口(21)に侵入するように充填する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性の部材(20)と、該部材(20)の内側領域を満たす熱伝導性の被覆材(30)とを有する、被覆された構成部材(10)であって、
前記部材(20)は、該部材(20)の前記内側領域を外側領域に接続する複数の開口(21)を有しており、該開口(21)を前記被覆材(30)が満たしていることを特徴とする、被覆された構成部材(10)。
【請求項2】
前記部材(20)はコイルポットである、請求項1記載の被覆された構成部材(10)。
【請求項3】
前記開口(21)は、金属薄板に孔として形成されている、請求項1または2記載の被覆された構成部材(10)。
【請求項4】
前記部材(20)は、金網として形成されている、請求項1または2記載の被覆された構成部材(10)。
【請求項5】
前記被覆材(30)はさらに、前記外側領域にも配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の被覆された構成部材(10)。
【請求項6】
前記開口(21)は、前記外側領域に面した端部に、それぞれ凹部(22)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の被覆された構成部材(10)。
【請求項7】
前記被覆材(30)により全体的に包囲された熱源(50)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の被覆された構成部材(10)。
【請求項8】
請求項7記載の被覆された構成部材(10)を製造する方法であって、複数の開口(21)を有する熱伝導性の部材(20)の内側領域に少なくとも1つの熱源(50)を配置し、次いで前記開口(21)に被覆材(30)が侵入するように、該被覆材(30)を前記部材(20)に充填する、方法。
【請求項9】
前記部材(20)を型(60)内に配置し、次いで前記部材(20)の外側領域を前記被覆材(30)が設定可能な厚さ(d)でもって被覆するように、前記被覆材(30)を前記型(60)に充填する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記開口(21)を外側領域においてカバー(70)により覆い、前記内側領域および前記開口(21)内の前記被覆材(30)が硬化してから、前記カバー(70)を再び除去する、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された構成部材に関する。さらに本発明は、被覆された構成部材を製造する方法にも関する。
【0002】
背景技術
損失熱が導出されねばならないパワーエレクトロニクスおよび電気機械における用途では、導電性の部材を部分的に被覆するために、熱伝導性の被覆材が用いられることが多い。通常、これらの被覆材は、例えば銅から成っていてもよい被覆・加熱されるべき部材とは異なる熱膨張係数を有している。このことは熱サイクルにおいて、導電性の部材からの被覆材の剥離または亀裂を招く恐れがあり、これは熱の導出を大幅に悪化させる。
【0003】
発明の開示
被覆された構成部材は、熱伝導性の部材と、この部材の内側領域を満たす熱伝導性の被覆材とを有している。この場合、内側領域とは、部材により少なくとも部分的に包囲される領域を意味する。これに対して、部材が内側領域全体を包囲することは必要とされていない。
【0004】
好適には、被覆材は、100体積パーセントの被覆材に対して少なくとも25体積パーセントのセラミック粒子を含んでおり、これにより、被覆材の良好な熱伝導性を保証することができる。セラミック粒子は、特に窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素およびこれらの混合物より成る群から選択されている。粒子が埋め込まれた被覆材のマトリックス材料は、任意に選択され得る。例えば、セメントマトリックスまたはポリママトリックスであってもよい。
【0005】
部材は、部材の内側領域を部材の外側領域に接続する複数の開口を有している。この場合、被覆材が開口を満たしている。被覆材が部材の構造体を通流し、あらゆる側から包囲するかまたは少なくとも開口内に侵入することにより、熱サイクルに際しても被覆材と部材との間に接触が生じたままになる。この場合、熱は、熱源から放熱用の被覆材を介して部材に送られてもよい。部材は、パワーエレクトロニクスにおいて使用されるような、例えばコイルポット、モジュールフレームまたはパワーバスバーであってもよい。コイルポットに基づく被覆された構成部材が特に良好に製造され得る。コイルポットの機能を損なうことなく、コイルポットに簡単に多数の開口を形成することができるからである。コイルポットは、コイルカップと解されてもよい。この場合、本発明の枠内でコイルポットという用語は、ポット状のコイルを意味する、もしくはコイルカップという用語は、カップ状のコイルを意味する。
【0006】
熱源は、部材により好適には少なくとも部分的に、特に好適には全体的に包囲されている。さらに熱源は、被覆材により好適には全体的に包囲されている。例えば熱源は、巻成された磁気コアであってもよい。磁気コアは、特にコイルポットの形態の構成部材内に配置されていてもよく、この場合、磁気コアを備えた熱交換用のコイルポットは被覆材で満たされている。
【0007】
構成部材の1つの実施形態では、部材は金網として形成されている。これにより、部材は自動的に多数の開口を有しており、開口の大きさは、金網の密度により調整され得る。
【0008】
構成部材の1つの別の実施形態では、開口は、金属薄板に孔として形成されている。この金属薄板は、例えば円筒形のコイルポットの周面を形成してもよい。金属薄板に孔として開口を形成することは、開口を、必要に応じて様々な幾何学形状に形成することができる、という利点を有している。
【0009】
被覆された構成部材の1つの実施形態では、被覆材はさらに、外側領域にも配置されている。この場合、内側領域の被覆材と外側領域の被覆材とは、開口内の被覆材を介して互いに結合されている。これにより、開口内の被覆材が両側から部材に押し当てられることになり、このことが、空隙や亀裂の形成を防ぐ。被覆された構成部材のこの実施形態は、開口の形状に関係なく、被覆材の相応する配置が行われることのみにより製造され得る。
【0010】
開口が孔として金属薄板に形成された、被覆された構成部材の1つの別の実施形態では、開口は、外側領域に面した端部に、それぞれ凹部を有している。これにより被覆材は、被覆材が部材の開口内と内側領域にのみ配置され、外側領域には配置されていない場合でも、部材から剥離することがないように、部材内に係止される。
【0011】
被覆された構成部材を製造する方法では、まず複数の開口を有する熱伝導性の部材を準備する。この部材内に、少なくとも1つの熱源を配置する。次いで、被覆材が開口内に侵入することができるように、構成部材に液状の形態の被覆材を充填する。被覆材が硬化すると、被覆された構成部材が得られる。この場合、硬化は、被覆材の組成に応じて様々な過程において追うことができる。被覆材としてセメント材が使用される場合、セメント材は例えば液力学的な凝固により硬化し得る。これに対して被覆材がポリマ材料である場合、ポリマ材料は例えば熱誘発または光誘発された架橋により硬化し得る。
【0012】
被覆材が部材の内側領域と開口内のみならず、部材の外側領域にも配置された、被覆された構成部材を製造しようとする場合、このことを実現する方法の1つの実施形態では、部材を型内に配置し、次いで部材の外側領域を被覆材が設定可能な厚さでもって被覆するように、被覆材を型に充填する。部材を越えて被覆材が張り出す前記厚さは、様々なパラメータ、特に被覆材および部材の熱膨張係数、被覆材の強度および弾性ならびに被覆されるべき部材の厚さ等に関連して設定され得る。部材が金網である場合、部材の厚さは例えば線材の太さに相当する。
【0013】
これに対して、開口が、外側領域に面した端部にそれぞれ凹部を有している、被覆された構成部材を製造する方法を用いようとする場合、この方法の1つの実施形態では、開口を外側領域において、まずカバーにより覆うことが想定されている。このカバーは、特に接着テープであってもよい。次いで液状の被覆材を部材の内側領域に充填し、これにより被覆材は、開口内に流入することはできるが、カバーに基づき開口から流出することはできなくなる。次いで、内側領域および開口内の被覆材が硬化してから、カバーを再び除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施例を図示すると共に、以下の説明においてより詳しく説明する。
【
図1】従来技術による被覆材を備えた熱伝導性の部材を示す横断面図である。
【
図2】本発明による方法の1つの実施例において、本発明による被覆された構成部材を得るために被覆材により被覆され得るコイルポットを示す図である。
【
図3】本発明による方法の1つの実施例における、被覆された構成部材の製造を示す横断面図である。
【
図4】本発明による方法の別の実施例における、被覆された構成部材の製造を示す横断面図である。
【
図5】本発明による被覆された構成部材の1つの実施例を示す等角投影図である。
【0015】
発明の実施例
図1では、パワーエレクトロニクス用に製造された従来の構成部材10が、コイルポットの形態の熱伝導性の部材20を有している。部材20の内側領域は、被覆材30で満たされており、被覆材30は、本実施例では50体積パーセントの酸化アルミニウム粒子を含む、アルミナセメントを基礎としたセメント材である。熱サイクルにより、被覆材30と部材20との間に空隙40が形成された、ということが認められる。これにより、熱源50として巻成された磁気コアから被覆材30を介して部材20に確実に熱を伝達することは、最早保証されていない。
【0016】
図2には、本発明の1つの実施例による被覆された構成部材10の製造に適したコイルポットの形態の熱伝導性の部材20が示されている。コイルポットは、一方の端部が開いた円筒の形状を有している。コイルポットの周面は銅板により形成され、銅板には複数の開口21が、実質的に円筒状の孔の形態で形成されている。
【0017】
図3には、本発明による方法の実施例において、前記コイルポットから本発明の第1の実施例による被覆された構成部材10が製造可能な方法が示されている。コイルポット内に熱源50(
図3には図示せず)を固定してから、コイルポットをシリコーン製の型60内に、コイルポットの周面がどこにおいても型60の内壁から等距離dを有しているように配置する。スペーサ(図示せず)により、コイルポットの底部の、型60の底部からの距離も、距離dに相当するということが保証される。次いで、
図1に示したセメント材に相当する液状のセメント材をコイルポットに充填する。セメント材は、コイルポットの内室から開口21を通って流出しひいてはコイルポットと型60との間の外側領域全体をも満たす。セメント材の硬化後に、セメント材は被覆材30を形成し、被覆材30は、部材20の内側領域を満たすと共に熱源50をコイルポットに熱的に結合する。被覆材30は、開口21を介してコイルポットの内側の被覆材30に結合された厚さdの外層でもってコイルポットを包囲する。これにより、被覆材30は内側と外側とにおいてコイルポットに係止され、その結果、熱サイクルにおける剥離または亀裂形成が排除されている。
【0018】
図4には、本発明による方法の第2の実施例における、本発明の第2の実施例による被覆された構成部材10の製造が示されている。このためには、その開口21が
図2に示したコイルポットの開口21とは異なるコイルポットの形態の、熱伝導性の部材20を用いる。第1の実施例における開口21が実質的に円筒状の孔であるのに対し、第2の実施例における開口は、部材20の内側領域に面した端部に同様に円筒状の部分を有しているが、ただしこの円筒状の部分は、外側領域に面した端部において凹部22に移行している。つまり、各開口21の横断面は、凹部22の領域において、内側から外側に向かって拡径している。全ての開口21は、接着テープの形態のカバー70により外側から閉じられている。第1の実施例と同様に、液状のセメント材を部材20の内室に充填する。セメント材は同様に開口21内へ流入するが、ただしカバー70に基づき開口21から流出することはない。セメント材の液力学的な凝固ひいては硬化後に、セメント材は部材20の内側領域と開口21内とに被覆材30を形成する。ここでカバー70を除去してもよい。この実施例でも、熱サイクルによる空隙や亀裂の形成が排除されている。開口21内の被覆材30は、凹部22の領域でそれぞれ部材20に係止されているからである。
【0019】
図5には、本発明による被覆された構成部材10の第3の実施例が示されている。この実施例では、部材20は金網の形態のコイルポットとして形成されており、金網は、本実施例では銅線から成っている。この場合、金網の網目が、部材20における開口21を形成している。熱源50としてのコイルコアが部材20内に配置されており、コイルコアの内側と外側とを包囲するように被覆材30が流し込まれており、被覆材30は、開口21を通って延在している。この実施例の被覆された構成部材10の製造は、第1の実施例の型内での製造法と同様に行うことができる。
【国際調査報告】