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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-30
(54)【発明の名称】緩衝カムアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/18 20060101AFI20220823BHJP
   G06C 15/00 20060101ALI20220823BHJP
   G06F 1/04 20060101ALI20220823BHJP
   F16H 53/06 20060101ALI20220823BHJP
   F16H 25/16 20060101ALI20220823BHJP
   F16H 53/02 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
F16H25/18 A
G06C15/00
G06F1/04
F16H53/06
F16H25/16 A
F16H53/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021570544
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020031645
(87)【国際公開番号】W WO2021011055
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】16/509,550
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519063358
【氏名又は名称】シービーエヌ ナノ テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】CBN NANO TECHNOLOGIES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ライリー スリー,ジェームズ エフ.
【テーマコード(参考)】
3J030
3J062
【Fターム(参考)】
3J030EA02
3J030EA12
3J030EC02
3J062AA60
3J062AB31
3J062AC07
3J062AC08
3J062BA25
3J062BA26
3J062CA32
3J062CC13
3J062CC32
(57)【要約】
機械式コンピューティングシステムにクロック入力を提供するために特に適する緩衝カムアセンブリは、カム面とフォロアの間に緩衝部材を挟み込む。緩衝部材はカム面に係合する。又、緩衝部材は、カム面の不規則性から起因するフォロアの動きに与える影響を、大幅に低減するように機能する。緩衝部材は、フォロアの動きの出力波形を、所望の理想的な出力波形により近づけられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式コンピューティングシステムにおけるクロック信号を生成するカムアセンブリであって、
輪郭のあるカム面を有するカムと、
前記カム面と係合する緩衝部材と、
フォロア接触部を有するフォロアと、を備え、
前記フォロア接触部は、前記緩衝部材と係合するように配置され、
前記フォロア接触部は、前記フォロアの変位が前記機械式コンピューティングにおけるクロック信号を提供するように前記機械式コンピューティングシステムに結合され、
前記カム面は、前記カム面と前記フォロアとの間の相対運動が、緩衝部材前記カム面から前記緩衝部材を介して伝わる前記フォロアの相対変位を引き起こすように、前記フォロアに対して構成される、
カムアセンブリ。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記カム面と前記フォロアの前記フォロア接触部との間に介在する緩衝有効領域を有する、
請求項1に記載のカムアセンブリ。
【請求項3】
輪郭のあるカム面を有するカムと、
緩衝有効領域を有する緩衝部材と、
フォロア接触部を有するフォロアと、を備え、
前記緩衝有効領域は、前記カム面に接触し、前記カム面に対して移動可能であり、
前記カムが前記フォロアに対して移動する場合における前記カム面の輪郭によって前記緩衝有効領域が移動する場合に前記緩衝有効領域が変位するよう、前記フォロア接触部が前記緩衝有効領域に接触するように配置される、
カムアセンブリ。
【請求項4】
前記緩衝有効領域は、前記カム面が前記フォロワ接触部に対して移動する方向への移動が抑制される、
請求項2又は請求項3に記載のカムアセンブリ。
【請求項5】
前記緩衝有効領域は、前記カム面又は前記フォロア接触部よりも高い摩耗率を有する材料から形成される、
請求項2から請求項4の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項6】
前記カムが移動可能に取り付けられるフレームと、をさらに備え、
前記緩衝部材は、移動可能な態様で前記フレームに対して取り付けられる、
請求項4又は請求項5に記載のカムアセンブリ。
【請求項7】
前記緩衝部材は、前記フレームに対して並進可能に取り付けられる、
請求項6に記載のカムアセンブリ。
【請求項8】
前記緩衝部材は、前記フレームに対して枢動可能に取り付けられる、
請求項6に記載のカムアセンブリ。
【請求項9】
前記緩衝部材の少なくとも一部は剛性を有する、
請求項6から請求項8の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項10】
前記緩衝部材の少なくとも一部は可撓性を有する、
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項11】
前記緩衝有効領域は、前記カムが移動可能に取り付けられるフレームに対して伸縮的に移動可能である、
請求項2から請求項5の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項12】
前記緩衝有効領域は圧縮性を有する、
請求項2から請求項5の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項13】
前記緩衝有効領域は、前記フォロア接触部との係合にかかる厚さが20nm以下である、
請求項2から請求項5の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項14】
前記カム面は、前記フォロア接触部を少なくとも1つの停留期間の間に一定の位置に配置させるように構成される、
請求項1から請求項13の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項15】
カムとフォロアを備えるカムアセンブリの操作方法であって、
前記フォロアのフォロア接触部及び前記カムのカム面との間に緩衝部材の緩衝有効領域を挟み込み、前記緩衝有効領域が前記カムに対して移動可能であり、前記カム面の変位が前記フォロア接触部に伝わるようにするステップと、
前記カム面を前記フォロア接触部に対して移動させるステップと、
有するカムアセンブリの操作方法。
【請求項16】
前記フォロアを機械式コンピューティングシステムに結合して、少なくとも1つの前記機械式コンピューティングシステムのクロック信号を提供するステップと、
をさらに有する請求項15に記載のカムアセンブリの操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、移動するカムが、カムが動く場合(特に、機械式コンピューティングシステムのクロック信号としてカムアセンブリを使用する場合など、所望の出力波形を提供するためにカムアセンブリを使用する場合)にフォロアを変位させる輪郭のある面を有する、カムアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
カムアセンブリは、所定の運動パターンを別の運動パターンに変換するものとして、よく知られている。典型的な例として、カムは、モーターなどの動力源からの入力された力によって、フレーム又は足場に対して動く。カム面は、カム面に沿ってなぞるフォロア(カム面と係合する位置でフレームによって移動可能に支持される)を移動させるように構成される。カム面の輪郭(面、溝、またはそれに係合するフォロアの動きをガイドするように設計される他の構造であってもよい)は、フォロアが所望の出力パターンの動きを生成するようにフォロアを変位させる。例えば、偏心カム面を有するカムは、回転運動を、カムが回転する場合に偏心カム面によって変位されるフォロアの線形運動に変換できる。多くの場合、カムを使用して、定速回転や往復運動などの単純な運動を、フォロアの正弦波または台形波などの所望の出力波形に変換させる(フォロアの位置が変わらない停留期間が存在する可能性がある)。
【0003】
円周により変わる半径を有する外周カム面を有する回転カム、一定の半径を有するが回転軸に直交する方向に位置が変化するカム面を有する回転円筒形カム、軸に沿って前後に移動する往復カム、カム面がフレームに固定されるままでフォロアがカムに対して移動する固定カムなど、を含む様々なカム種類が当技術分野でよく知られている。基本的なカム設計のバリエーションも存在する。例えば、ほとんどのカムは、フォロア接触部が複数の対向接触点(カム面(1つ又は複数)の対向する部分がフォロアと接する)を有する共役カムとして作られる。
【0004】
所望の出力波形に基づいてカムの外形とフォロアの外形を組み合わせる方法は多数あり、そのようなアルゴリズムはよく知られている。例えば、異なる時間においてカムフォロアに異なる位置が与えられる場合、カム面上の異なる位置の間の曲線は、一定の速度又は一定の加速度を仮定して決定できる。又は、上記の場合、カム面上の異なる位置の間の曲線は、3次曲線、サイクロイド、高調波、台形波、正弦波、345多項式、4567多項式、又はその他の多くの曲線にしてもよい。カムの外形を作成するために、市販のソフトウェアを利用してもよい。例えば、Analytix Cams(Saltire Software、米国オレゴン州)は特にカム設計用であり、Autodesk InventorやAutoCAD(米国の登録商標、Autodesk、米国カリフォルニア州)などの一般的なプログラムにはカム設計及びシミュレーション機能がある。
【0005】
カムがぎくしゃくすることやカムがガチガチ音を立てることなどの問題は、カムの動作速度に大きく依存する。また、一部のカムの外形生成アルゴリズムの目的の1つは、これらの現象を最小限に抑えることである。しかし、カムがぎくしゃくすることやカムがガチガチ音を立てることはさておき、低速でも、結果として得られる出力波形の精度は、通常、カム面の滑らかさに依存する。これは、カム面の意図しない変動が、カムフォロア位置のノイズ又はその他の意図しない変動につながる可能性があるためである。この問題は通常、精密な機械加工やその他のステップ(研磨など)で回避される。これにより、カム面が滑らかになるが、製造の費用と労力も増加する。
【発明の概要】
【0006】
微細加工、マイクロリソグラフィー及びナノリソグラフィー、メカノ合成による分子製造などの微細加工技術を用いてカムアセンブリを製造する場合、カム面の不規則性(理想的な輪郭からの偏差よる場合を含む)に起因する不正確な出力波形が特に懸念され、カムアセンブリの製造精度を制限することになる(例:比較的大きな層と公差の両方又は何れかの一方による3D印刷)。このような場合、機械加工又は追加製造が可能な最小の形状寸法により、出力波形の精度(従って、効果的に識別できるカムフォロアの動きの大きさ)及び製造可能なカムアセンブリの最小サイズの両方の下限が設定される。
【0007】
ほとんどのカムの場合において、実際のカム面は、理想的な面又は理想的な輪郭に近似する。場合によっては、理想的な輪郭と実際の輪郭の偏差は、カムの動作にとって重要ではない。但し、他の場合、例えば、カム面が比較的不規則である場合(恐らく、最先端の機器より劣る装置で製造されているため、又は3D印刷など、最小の形状寸法が大きくなる可能性がある技術を介して製造されるため)、理想からの偏差は、操作上の問題を引き起こす可能性がある。これらの問題は、ガチガチ音を立てること、微小振動、熱、摩耗などである。又、カムが小さいほど、実際の輪郭と理想的な輪郭の間の絶対的な偏差(相対的な偏差ではなく)の許容範囲が狭くなる傾向がある。例えば、一般的で肉眼で見えるカムでは、0.01mm又は0.1mm以上の理想値からの変動は許容できる場合がある。しかし、MEMS(「微小電気機械システム」)又はNEMS(例えば、リソグラフィなど)技術、あるいは他の技術を用いて製造されたカムには、カム全体の幅が0.01mm又は0.1mm未満のものもあります。明らかに、上記のようなカムは、カム全体よりも大きい、理想値からの偏差を、許容できない。従って、少なくとも一部の状況において、偏差の絶対サイズより、カムのサイズに対する偏差の比率が重要である。分子スケールのカムでは、個々の原子が理想値からの大きな偏差を生じさせるのに十分な大きさであり得る。そのため、カムの実際の輪郭を理想的な輪郭に近づけることが不可能な場合がある。カム面のこれらの不規則性は、カムフォロアの望ましい動き又は波形に不規則性を引き起こす可能性がある。
【0008】
カム面の許容できる不規則性(生成される波形と所望の理想的な波形の偏差(凸凹)を意味する。偏差が小さいほど、波形はより正確であり、ほとんどの場合滑らかになる)がカムのサイズに関連することと同様に、出力波形の望ましい大きさ及び機構の他の動作特性(例えば、カムアセンブリに用いられる材料、及びカムアセンブリによって駆動される材料の質量、可撓性、及び圧縮性、動作速度及び抗力の量はすべて、カムの動作に影響を与える可能性がある)に照らして、波形の不規則性を考えられる。例えば、全体の大きさ(又は、低位置と高位置を持つカムの場合、離散的であることが望まれるカムフォロアの2つの位置の最小差)がオングストローム又はナノメートルの状態である場合、カム面の個々の原子は、全体の大きさに比べて、出力波形にかなりの不正確さが存在するほどの不規則性を引き起こす可能性がある。
【0009】
通常、不規則なカム面に係合するフォロアからの出力波形は、不正確さがランダムな変動、周期的なスパイク又は振動、又はその他のノイズにかかる影響など、何らかのメカニズムで不正確になる。これは、全体として、カムが全体的に粗い形状で正しい波形を生成しないことを意味するのではなく(こういう場合も生じ得るが)、寧ろ、全体的に粗い出力波形が生成される可能性は高いが、より高い周波数のノイズが波形全体に重なり、不正確さを引き起こすことである。不正確な波形は、そのようなカムアセンブリを使用する機械に望ましくない振動を引き起こし、望ましくないノイズ、過度の熱と摩耗、カムフォロアの不正確な配置、及びその他の問題を引き起こす可能性がある。カムアセンブリが、米国公報2017/0192748(出願人:Merkle、Freitasなど、「Mechanical Computing Systems」、米国特許公報20170192748、2015)で示されるように機械にかかるコンピューティング機構(又は、単一の論理要素、任意の数のビットのメモリストレージ要素、又はそれらの組み合わせのいずれかを含むことができるシステム、完全なコンピュータまで、一部の部品のみが機械式であるシステムを含む)にクロック信号を提供するように設計される場合、ここで参照すると、不正確な波形は、部品に応力を加えて熱を発生させる振動を引き起こす可能性があり、極端な場合には、計算にエラーを出す望ましくない状態の変化をもたらす可能性がある。例えば、ノイズにより、カムフォロアを「0」、すなわち非作動位置にあるべき場合においてカムフォロワを「1」、すなわち作動位置に押し込んだり、その逆を行ったり、さらには、0から1の中間の位置を許可されるべきではない場合において、そのような位置を採用することが挙げられる。
【0010】
カム面とフォロアのフォロア接触部の間に緩衝部材をはめ込ませることにより、カムとカムフォロアの出力波形をより正確にできる。緩衝部材は、フォロアから分離するか、固定するか、又はフォロアと統合してもよい。フォロア接触部は、カム面の相対運動によって変位するフォロアの部分である。説明のために、以下の説明において、フォロア接触部に対してカム面を移動させるようにカムがフレームに対して移動すると仮定する。緩衝部材は、カムフォロアに到達する前におけるカム面の理想値からの偏差を減らす(例えば、カム面の不規則的な箇所を埋めること又は不規則的な箇所を平均化ことによる)緩衝化を含む複数の機構によって、カムフォロアが目的の動きを生成する精度を高められる。
【0011】
カムアセンブリの形状とそれらの相対的な動きにおいて、カムフォロアをせん断応力の影響から隔離する、あるいは緩衝部材がカム面の移動方向に移動することを制限するというのは、緩衝部材がカムフォロアへ所望の変位を伝達する方向に自由に移動することはあっても。緩衝部材がカムの回転又はカムの並進に伴って引っ張られてはならない、ということである。寧ろ、緩衝部材は、カムの移動軸(又は、回転カムの場合、緩衝部材に接触するカムの部分に接する軸及びカム面の移動方向に沿った軸)にしっかり又は完全に固定される必要がある。緩衝部材がカム面の移動方向へ自由に動く場合、カム面の移動方向への緩衝部材の一部の動きは、せん断応力に関して避けられないか、又は無害であるかもしれない(平均的な利点はまだ存在)。しかし、緩衝部材がカム面の移動方向へ自由に動けば、緩衝部材は、せん断応力を実質的に減少させない場合があり、これは一般に好ましい。このように、絶対的な移動量や速度は適用例ごとに異なる可能性があるため、絶対的な移動量や速度を指定することはできない。しかし、重要なのは、緩衝部材がカム面の移動方向の動きに対して十分に安定するため、カム面とフォロアが直接接触している場合に存在するせん断応力が少なくとも減少することである。せん断応力の少なくとも50%の減少が好ましく、有意な減少と見なされる。一方、せん断応力の少なくとも90%の減少がより好ましく、せん断の少なくとも95%の減少が最も好ましいであろう。
【0012】
緩衝部材は、可撓性又は剛性、伸縮性又は非伸縮性、及び圧縮性又は非圧縮性を有してもよい。緩衝部材の異なる領域は異なる組成を有してもよく、材料は異なる方向で異なる動作をしてもよい(つまり、異方性を有してもよい)。様々な例示的な構成が本明細書に記載される。しかし、当業者は、本明細書の教示に基づいて、さらに多くの構成を明らかに想定できる。
【0013】
異なる材料特性は、カムアセンブリの機能における多くの側面で影響を与える可能性がある。例えば、緩衝部材の剛性又は可撓性の程度は、カム及びカムフォロアと接触する緩衝部材の表面積に影響を与える1つの要因であり得る。これは、カム面上の位置を平均化する緩衝部材の能力に影響を及ぼし得る。また、これは、抗力、支持荷重、熱伝達、摩耗率などにも影響を与える可能性がある。
【0014】
構成に関して、可撓緩衝部材は、カム面の輪郭に適合させることができ、カム面自体よりも理想的な輪郭に近いフォロアに運動を伝えられる可能性がある。可撓緩衝部材は、カムが移動可能に取り付けられるフレームに対して堅固に又は移動可能に保持されてもよい。硬直緩衝部材は、カム面とフォロワ接触部との間に挟まれた位置に留まりながら、硬直緩衝部材がカム面の輪郭を合わせて移動できるように、取り付け可動構造(例:設計に応じて、リニアレール又はロータリーベアリング)を必要とする傾向がある。
【0015】
緩衝部材は、伸縮性材料で(全体的又は部分的に)形成することと、フレームに伸縮的に取り付けられることの両方又は何れかの一方であってもよい。緩衝部材は、(全体的または部分的に)圧縮可能で平均化することができ、それによってカム面の不規則性を低減し、そのような不規則性の効果的な空間的平滑化と時間的平滑化の両方又は何れかの一方を提供する。従って、緩衝部材は、理想的な輪郭のより良い近似した状況を提供する。
【0016】
緩衝部材は、カム面とフォロアのフォロア接触部との間の交換可能な摩耗部として機能してもよい。優先的に摩耗することにより、カムが動くときに緩衝部材がカム面に摩耗される。これにより、緩衝部材の交換が可能になる。これは、カムやカムフォロアを交換するよりも望ましい可能性がある。
【0017】
ここで説明する例では、最も一般的な2つのタイプのカムである、線形往復カムとラジアルカムに焦点を当てる。但し、バレルカム、共役カム、固定カム(このような場合、通常の方向を除いてフォロアに対してほぼ静止したままになるように、緩衝部材がフォロアと一緒に移動することが好ましい)など、様々な種類のカムがある。本明細書の実施例及び教示により、当業者は、本発明の原理を任意の適切なタイプのカムに適用する方法を、把握できる。
【0018】
一の使用例において、カムアセンブリは、機械式コンピューティング機構又は機械式コンピューティングシステムにクロック信号を提供する。このような場合、フォロアは1つ又は複数のロジック回路に接続され、1つ又は複数のクロック入力にかかる移動を行う。典型的なコンピューティング適用例において、フォロアは2つの位置の間でクロック入力(場合によってはフォロアと統合される可能性がある)にかかる移動を行う。各位置には一定期間(「停留時間」)がある。ここでの教示を考えると、クロック入力が3つ以上の位置にかかる可能性があり、複数の同一又は異なる停留時間が存在する可能性がある。また、停留時間がまったくない可能性があり、そのようなシステムが複数のクロックを持ち、同期又は非同期で動作し、場合によってはクロックごとに様々なフェーズ数で動作する可能性がある。
【0019】
本明細書で説明及び図示される例示的なカムは、一般に、カム面に垂直なカムフォロア接触部を示す。これは一般的な配置であるが、必須の配置ではない。カム面(及び緩衝部材)に対するカムフォロア接触部の適切な方向で配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1及び図2は、作動軸に沿って前後に移動する往復カムを用いるカムアセンブリを示す。カムには、可撓緩衝部材が接触する輪郭のあるカム面がある。これは、カムの動きに垂直な方向に移動するフォロアを変位させるように機能する。図1は、カムがフォロアを最大の高さの位置に変位させるように配置された場合のカムアセンブリを示す。図2は、カムがフォロアを最小の高さの位置に変位させるように配置された場合のカムアセンブリを示す。緩衝部材の可撓性により、カム面とフォロアの間に挟み込まれた緩衝有効領域をカム面と一緒に移動させることができる。次に、緩衝部材は、カムが並進可能に取り付けられているフレーム(図示せず)に対して取り付けられるブロックによって支持される。
【0021】
図3及び図4は、図1及び図2のものと同様の出力波形を提供し得るが、フレームに回転可能に取り付けられるラジアルカムを用いるカムアセンブリを示す。
【0022】
図5及び図6は、図3及び図4に示されるカムアセンブリと同様のカム及びフォロアを用いる組立品を示す。しかし、これは、フォロアの変位の方向へ自由に動けるように、フレームに並進可能に取り付けられる剛性緩衝部材を用いる。緩衝部材は、回転するカム面の移動方向に垂直な動きのみに制限されるため、フォロアにせん断応力の影響が及ばないようにする。
【0023】
図7及び図8は、図3及び図4に示されるものと同様のカムアセンブリを示す。しかし、緩衝部材は弾力性(伸縮性)を有し、カム面の輪郭によって引き起こされる変位の変化に対応するために伸びる。
【0024】
図9は、図7及び図8に示されるものと同様のカムアセンブリを示す。しかし、可撓性で非伸縮性の緩衝部材がフレームに伸縮的に取り付けられる。
【0025】
図10は、カム面の不規則的な箇所に、部分的に一致するように圧縮できる圧縮可能な緩衝部材を用いるカムアセンブリを示す。
【0026】
図11は、図3及び図4に示されるものと同様のカムアセンブリを示す。しかし、緩衝部材の端部域が拡大され、カム面の動きによって引き起こされるせん断応力に対して緩衝部材をよりよく安定させる。
【0027】
図12は、フレームに枢動可能に取り付けられる剛性緩衝部材を備えるカムアセンブリを示す。
【0028】
図13は、フレームに並進可能に取り付けられるフォロアを有するカムアセンブリを示す。
【0029】
図14は、フレームに枢動可能に取り付けられるフォロアを有するカムアセンブリを示す。フォロア接触部は弧状の経路に沿って移動する。フォロア接触部の運動の主要成分がカムの回転軸に垂直であるように、枢軸からの半径は、カム面の輪郭に対して十分に大きい。従って、フォロア接触部は、並進運動の近似値を提供する。
【0030】
図15及び図16は、機械式コンピューティング機構のためのクロック信号を生成するカムアセンブリを示す。この例のカムは、停留周期のある波形を提供するように設計されるため、カムの2つの異なるセグメントが2つの異なる静的半径を持ち、遷移セグメントによって接続されるカム面を備える。この構成は、フォロアを2つの異なる位置の間で移動するように機能する。それぞれの停留時間は、対応する半径の弧の長さによって定義される。カム面とフォロアの間に可撓緩衝部材が挟み込まれる。フォロアは、論理回路の一部を形成するロックアンドバランス構造のバランス部に接続される。
【0031】
図17は、カム及びフォロアを有し、グラフェンのシートから形成され、並進可能にフレームに取り付けられる緩衝部材を用いる分子カムモデルアセンブリを示す。カムは、図15及び図16に示されるカムアセンブリの方法と同様の方法で、フォロアの2つの位置に停留周期を有する出力波形を提供するように構成される。
【0032】
図18は、図17に示されるカム及びフォロアから生じるシミュレートされた出力波形のグラフである。ノイズを確認するための拡大図において、この波形は、所望の理想的な波形とほぼ同じように見える(主な例外は、一部のコーナーのわずかなつぶれである)。
【0033】
図19は、図18に示される領域20に対応する波形出力の拡大グラフであるが、緩衝部材が使用されなかった場合に生じる波形を示す。
【0034】
図20は、緩衝部材を含む、図17に示されるカムアセンブリから生じる、図18に示されるグラフの領域20の拡大図である。緩衝部材は、フォロアをせん断応力やカム面の不規則性から隔離するように機能し、より正確な出力波形をもたらす。
【0035】
図21及び図22は、機械式シフトレジスタにクロック入力を提供するのに役立つ緩衝カムアセンブリの例を示す。セルは4つの異なる位相を使用してクロックされる。カムアセンブリには、4つの半径方向の位置に4つのフォロアがあり、それぞれがフォロアに関連付けられた緩衝部材を介して伝わるカムの動作によって移動する。これらの4つのフォロアは、4つのクロックフェーズを提供する。
【0036】
図23aから図23dは、機械式リンク論理ゲートにクロック入力を提供する緩衝カムアセンブリの例(2入力NORゲートが示される)を示す。これらの図は、4つの可能な入力位置と結果の出力を示す。
【0037】
図24は、機械式コンピューティングシステムのクロック入力として機能するように接続されるカムアセンブリの概略図である。カムアセンブリのフォロアは、一連の機械式コンピューティングユニットのクロック入力を提供する。
【0038】
図25は、コンピュータの構成要素の少なくとも一部に1つまたは複数のクロック入力を提供するためのカムベースのクロックを含むコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1及び図2は、カム並進軸104に沿ってフレーム(図示せず)に対して並進する線形往復カム102を使用するカムアセンブリ100の一例を示す。カム102は、段部108を備えた滑らかではないカム面106を有する。段部108は、製造プロセスから生じる。例えば、積層造形プロセス中に材料の個々の層を用いることによって形成され得る。また、段部108は、層内の材料を除去する機械加工又はエッチングプロセスの結果であり得るか、又は分子規模で、個々の原子の隆起を表すことができる。段部108(及び図1の後の図における段部)の明確で横方向に均一な表現は、概略的なものにすぎない。段部は、任意の方向に、不規則に、ランダムに、又は定期的であってもよい。説明のために、図において、段部108のサイズは誇張されている。段部108は、フォロア接触部112の所望の出力運動を提供するように選択された理想化された表面輪郭110にほぼ一致する。
【0040】
フォロア接触部112は、主にフォロア軸114に沿って移動するようにフレームに移動可能に取り付けられる。フォロア軸114は、カムアセンブリ100においてカム並進軸104に垂直である(本明細書で提供される説明全体を通して、例では、カムアセンブリの要素は通常または直交していると説明されることがよくある。当業者は、多くの場合、そのような直交性は必要ではなく、要素が互いに直交して配置されていなくても類似の配置を使用できることを理解すべきである)。フォロア接触部112は、ばね力、重力、磁気引力、静電引力、又は当業者に知られている他の手段によって、カム面106に向かって下向きにバイアスされる(適切な場合;ここで述べたように、すべての設計がバイアスを必要とするわけではない。この注意書きはここの傾きにかかるすべての言及に適用される)。共役カムなどの場合、バイアスは必要ない。別の例は、カムフォロアが取り付けられる機構がカムフォロアによって行われるのと同じ動きを自然にする場合である。このような場合、「バイアス」は単なるドラッグであり、カムは一定の速度で動作する(例えば、モーターによって駆動する場合)。カムフォロアとそれに取り付けられる機構は、抗力のために減速する傾向があり、カムフォロアをカムと(非常に軽くであったとしても)接触させたままにする。
【0041】
緩衝部材116は、カム面106及びフォロア接触部112との間に挟み込まれる。示される緩衝部材116は可撓性を有し、カム面106と係合する緩衝有効領域118を有する。また、示される緩衝部材116は、緩衝端部域120によってブラケットされ、次に、フレームに対して固定される緩衝ブレース122に取り付けられる。
【0042】
カム102が移動すると、カム面106の輪郭110は、フォロア軸114に沿ったその局所位置を変化させる。位置の変化は、緩衝有効領域118を移動させる。これは、緩衝有効領域118の動きをフォロア接触部112に伝え、フォロア接触部112をフォロア軸114に沿って変位させる。緩衝有効領域118は一部の段部108にまたがっており、少なくとも緩衝有効領域118のカムフォロアに面する側は段部108の形状に従った形状とはならない。そのため、緩衝有効領域118は、段部108を機械的に平均化するのに役立ち、各段部108がフォロア軸114を通過する場合に引き起こされる急激な変化を起こさず、理想化された輪郭110のような変化に従ってフォロア接触部112を移動させることができる。
【0043】
カム102の動きに対応するフォロア接触部112の所望の動きに応じて、様々な輪郭をカム面106に用いてもよい。図示の例において、輪郭110は、カム102の線形変位Xに対して、フォロア接触部112のほぼ正弦波の変位Dを提供するように選ばれる。示される理想的な輪郭110は、1未満の最大勾配D/Xで構成される(すなわち、輪郭110は、瞬間的なD/Xによって定義される勾配がカム面のどの位置でも1を超えないように選択される)。急な傾斜は垂直抗力に対するせん断応力の比率を増加させる。そのため、最大傾斜における勾配の制限は有用である可能性がある。但し、勾配に特定の上限値はない。カムは、特定の適用例において適切な場合、勾配が1より大きい部分を持つ輪郭を使用してもよい。
【0044】
図3及び図4は、カム軸154の周りを回転する回転カム152を用いるカムアセンブリ150を示す。この場合も、カム152は、理想化された輪郭160にほぼ一致する段部158を備えるカム面156を有する。フォロア接触部162は、カム面156が回転する場合に輪郭160から生じる位置の変化によりフォロア軸164に沿って移動するように配置される。輪郭160は、フォロア接触部162の所望の動きを提供するように選択される。
【0045】
カムアセンブリ150は、緩衝有効領域168を備える可撓緩衝部材166を有する。緩衝有効領域168は、カム面156とフォロア接触部162との間に挟み込まれる。また、緩衝有効領域168は、個々の段部158の位置の突然の変化に従うのではなく、理想的な輪郭160により近似する位置の変化に従ってフォロア接触部162を変位できるように、一部の段部158にまたがる働きをする。図4に示されるように、図示されるカム152の例の輪郭160は、カム面156の回転から生じる円周方向変位Xに対して、緩衝有効領域168を介してフォロア接触部162に伝えられる所望の半径方向変位Dを提供するように選択される。カムアセンブリ150において、輪郭160は、輪郭160の最大勾配ΔD/ΔXが1未満になるように選択される。
【0046】
図5及び図6は、図3及び図4に示されるカム152と同様のカム202を用いるカムアセンブリ200を示す。カムアセンブリ200は、フォロア軸208に沿って自由に並進するように、フレーム206に並進可能に取り付けられる剛性緩衝部材204を用いる。又、緩衝部材204と接触するような向きのフォロア接触部210もフォロア軸208に沿って移動する。緩衝部材204は、フォロア接触部210とカム面214とを係合する。緩衝部材204は、フォロア接触部210とカム面214の間に挟み込まれる緩衝有効領域212を有する。緩衝有効領域212は、それぞれがフレーム206の一部と並進的に係合する緩衝端部域216によってブラケットされる。
【0047】
緩衝部材204は、回転するカム面214の移動方向に垂直な動きのみ(この例において、傾斜する平行移動を使用できる)に拘束される。そのため、カム面214の動きによって引き起こされるせん断応力からフォロア接触部210が隔離される。フォロア接触部へのせん断応力の伝達を低減するため、緩衝有効領域が、カム面が移動する方向へ移動するの(すなわち、カム面の輪郭に起因する緩衝有効領域の位置でのカム面の変位の局所的な変化とは区別される、カムの回転又は並進によって提供されるものなど、カムの運動または相対運動によるカム面全体の動き)を抑制するため、代替の構造及び配置を使用できる。カムアセンブリ200において、緩衝有効領域212は、本質的に、フォロア接触部210が移動するのと同じ方向にのみ移動するように拘束される(当業者は、結合を回避するためにしばしば必要とされる公差のために、無視できる程度の軸外運動が本質的に許容され得ることを理解できる)。しかし、緩衝有効領域212の動きの制約が少ない場合においても、緩衝有効領域の動きが十分に制限されて、せん断応力のかなりの部分の伝達を回避して、フォロア接触部をそのような力から隔離する限り、有用な程度の抑制を提供できる。
【0048】
本明細書の教示から明らかなように、剛性緩衝部材204を使用する場合、複数の長所と短所がある。例えば、カム面に適合しない緩衝部材(例えば、凸状カム、又は凸状カムや凸状緩衝部材の曲率半径よりも大きい曲率半径を有するカム領域のいずれかを有する凸状緩衝部材)を使用する利点は、少なくとも一部の形状において、緩衝部材がカムと線又は点接触するだけであり、抗力を低減できることである。このようなシナリオの欠点は、カムとカムフォロアの間のすべての力が緩衝部材の小さな領域に集中することである。これにより、早期の摩耗や故障が発生する可能性がある。
【0049】
図7及び図8は、図3及び図4に示されるカムアセンブリ150と同様であるが、伸縮性を有する緩衝部材252を用いるカムアセンブリ250を示す。緩衝部材252は、フレームに固定され、伸びて、緩衝有効領域256が、カム260が回転する場合のカム面258の局所変位の変化に対応できるようにする端部域254を有する。伸縮性緩衝部材252の使用は、緩衝有効領域256がカム面258との接触を保つのに役立つ。緩衝部材252の伸縮変形が、カム260の回転に対して望ましくない抵抗を引き起こす可能性がある。又、高速の適用例において、緩衝部材252が急速に伸縮して加熱するため、及び/又は抗力がしばしば垂直力に比例することにより緩衝部材252がカム面258に対して引っ張られる力に起因するため、望ましくないエネルギー損失が発生する可能性がある。そうは言っても、多くの実装が本明細書に記載されており、本明細書の教示を与えられる当業者は、どの設計と特徴の両方又は何れかの一方が所与の目的によく適しているかが分かる。
【0050】
図9は、図7及び図8に示されるカムアセンブリ250の作用と同様の作用を提供するが、可撓性の非伸縮性緩衝部材272を用いるカムアセンブリ270を示す。カムアセンブリ270において、緩衝端領域274はそれぞれ、ばね276によってフレームに伸縮的に取り付けられ、緩衝有効領域278とカム面280との間の接触を保つ。しかし、緩衝部材272が伸縮性材料から製造されること、又は移動可能に取り付けられることを要しない。これは、ばねが伸縮性材料又は可動マウントと相互に排他的であることを意味する。ばねだけでなく、すべての設計選択の多くの組み合わせが可能であり、場合によっては望ましいものとなる。例えば、並進可能に取り付けられる緩衝部材と一緒にスプリングを使用する場合、有用な張力を提供できるが(例えば、緩衝部材が張力なしで可撓性が高すぎる場合)、緩衝部材はカムが動く場合に移動することができるため、その張力がカムの動きを妨げることはない。コイルばね276は、概念的な説明のみを目的として図9に示され、他の形態のばね又は他の伸縮性要素が多くの用途にとってより実用的であり得る。
【0051】
図10は、圧縮性材料から形成される緩衝有効領域304を有する緩衝部材302を使用するカムアセンブリ300を示す。圧縮性材料の使用は、緩衝有効領域304の第1緩衝面306が、カム面310上の一部の段部308に部分的に一致することを可能にする。また、圧縮性材料の使用は、カム面310が移動する場合に段部308によって引き起こされる位置の変化を効果的に吸収及び/又は平均化する。従って、これらの瞬間的な位置の変化は、フォロア接触部314によって係合される第2緩衝面312に直接伝達されない。寧ろ、緩衝有効領域304の圧縮性は、カム面310上の複数の段部308の位置を平均化するのに役立つ。この平均化効果は、理想的な波形に近い出力波形を実現するのに役立つ。
【0052】
滑らかな波形の利点の1つは、振動がないことである。多くの圧縮性材料(例:粘弾性特性を持つもの)又は装置(例:空気圧ショック)は、広範囲の周波数にわたって減衰効果を提供することによって振動を低減するのにも役立つ。しかし、多くの圧縮性材料又は装置は、過剰な発熱、緩衝部材の過剰な摩耗、又はその他の悪影響につながる場合、それは望ましくないことがよくある。ばねやその他の機構も振動減衰を提供でき、多くの場合、エネルギー散逸が少なくなるが、特定の周波数に合わせて調整する必要がある場合がある。
【0053】
図11は、図3及び図4に示されるカムアセンブリ150と同様であるが、所与の緩衝部材材料にかかるせん断応力に対してより大きな安定性を提供するように設計される緩衝部材352を用いるカムアセンブリ350を示す。これは一般に、(せん断応力の方向に)より伸縮性又は可撓性のある緩衝材を使用するほど、また、せん断力が大きいほど問題になる。緩衝部材352は、カム面356及びフォロア接触部358と係合する緩衝有効領域354を有し、フレームに固定されるブレース362に取り付けられる端部域360を有する。端部域360は、カム面356の移動方向に延長される。従って、端部域360は、カム面356との緩衝有効領域354の動きに対してより大きな抵抗を提供する。高くなった安定性は、緩衝有効領域354を所定の位置に維持するのを助け、フォロア接触部358をせん断応力から隔離するのに役立つ。
【0054】
図12は、図5及び図6に示されるカムアセンブリ200と同様の方法で、剛性緩衝部材372を用いるカムアセンブリ370を示す。しかし、緩衝部材372は、並進可能に取り付けられるのではなく、フレーム376に枢動可能に取り付けられる緩衝端部域374を有する。緩衝部材372は、緩衝枢軸378の周りを旋回して、緩衝有効領域380がカム面382によって変位されることを可能にする。緩衝有効領域380は、この変位をフォロア接触部384に伝達できる。緩衝部材372の動きは、本質的に、緩衝有効領域380がカム面382と係合する位置で、カム面382に対して直交するか又は実質的に傾斜する平面内で旋回することに限定される(許容誤差に起因するごくわずかな動きを無視する)。運動に対するこの制限は、緩衝有効領域380が、カム面382が移動する方向に移動するのを抑制するように作用する。従って、運動に対するこの制限は、カム面382の回転運動によって引き起こされるせん断応力からフォロア接触部384を隔離するのに役立つ。
【0055】
上で論じた例のようなカムアセンブリは、様々なフォロアを使用して、緩衝有効領域を介してカム面からフォロア接触部に伝達される変位を出力できる。図13及び図14は、フォロアの2つの典型的な例を示す。図13は、フレーム404に並進可能に取り付けられるフォロア402(部分的に示される)を有するカムアセンブリ400を示す。フレーム404は、カム面412の動きによって変位される緩衝部材410によって変位される場合に、フォロア軸408に沿って並進する際にフォロア402をガイドするフォロア通路406を有する。
【0056】
図14は、フォロア452がフレーム454に枢動可能に取り付けられるカムアセンブリ450を示す。フォロア452は、フォロア枢軸456を中心に旋回し、カム面460の動きによってフォロア接触部458を変位させ、緩衝部材462を介してフォロア接触部458に伝達することを可能にする。フォロア接触部458は、フォロア枢軸456の周りの弧状経路464に沿って変位する。フォロア452は、フォロア枢軸456からの弧状経路464の半径Rが、カム面460の半径方向変位DCSに対して大きくなるように構成できる。その結果、フォロア接触部358の結果として生じる運動は、フォロア変位軸466に垂直な運動Aの成分よりも著しく大きい、フォロア変位軸466に沿った運動Dの対応する成分を有する。このような構成において、フォロア接触部458の変位は、フォロア変位軸466に沿った並進運動に非常に近い。
【0057】
図15及び図16は、機械式コンピューティング機構502のクロック信号を生成するために用いられるカムアセンブリ500の1つの簡単な例を示し、その一部が図16に示される。カムアセンブリ500は、停留周期を伴う変位波形を提供するように輪郭が描かれたカム面506を備える回転カム504を用いる。ここで、フォロア508は、2つの位置のうちの1つの位置に一時的に留まる。そのような出力を提供するために、カム面506は、遷移セグメント516によって接続される2つの異なる半径(R1、R2)を有する弧である停留時間セグメント(512、514)を有する理想化された輪郭510(図15に示される)を有する。この輪郭510により、フォロア508は、2つの異なる位置の間で(遷移セグメント516の間に)移動される。それぞれの停留時間は、対応するセグメント(512、514)の弧の長さによって定義される(カム504の一定の回転速度を仮定する。場合によっては、不均一な運動速度を有するカムを使用できる)。可撓緩衝部材518は、カム面506とフォロア508との間に挟み込まれ、出力波形の不規則性を低減する。図16に示すように、フォロア508は、論理回路(同様のロックアンドバランス構造は、米国公報 2017/0192748の図22-28b、及び関連する出版物に示されている(著者はMerkle、Freitas、「Molecular Mechanical Computing Systems」 Institute for Molecular Manufacturing、2016; 「Mechanical computing systems using only links and rotary joints」、ASME Journal on Mechanisms and Robotics、2018)、すべて参照により本明細書に組み込まれる)の一部を形成するロックアンドバランス構造522のバランス部520に接続する。簡単な事項であるが、単一のバランス部への単純で直接旋回可能な接続が示される。しかし、当業者は、より複雑な接続スキームを使用できる。そして、複数の要素に分配されるクロック信号、及び/又はクロックサイクルの異なる位相で異なる要素に変位を提供するクロック信号を提供するように設計されてもよい。例えば、1つのカムが複数のフォロアを有することができる。その結果、1つのカムが多相クロッキングシステムを実行することができる(1つの例は、図21及び図22を参照して以下で説明される)。
【0058】
図16に示されるように、カム504は、カム面506が、そのより大きな半径(R2)の弧セグメント514が緩衝部材518と係合するように配置されるその回転の位置にある。セグメント514が緩衝部材518と係合する間、フォロア508に伝達された変位は、フォロア508を図示のように伸長位置に配置し、そこでバランス部520を押す。ロックアンドバランス構造522は、入力部(図16には示されていない)の位置に基づいて、2つのロックアセンブリ(524、526)の一方が動かず、他方が自由に動くように構成される。示される状況において、ロックアセンブリ524はロックされ、ロックアセンブリ526は自由に移動できるままである。従って、フォロア508の変位は、ロックアセンブリ524が所定の位置に留まっている間、バランス部520にロックアセンブリ526を変位させる。
【0059】
カム504の回転は、最終的に、カム面506を、緩衝部材518が遷移セグメント516の1つと係合し、次に、より小さな半径(R1)の弧セグメント512と係合する位置にもたらす。この位置において、フォロア508は、後退位置(図16に想像線で示されている)に傾かれる。そこで、ロックアンドバランス構造522への入力をリセットして、フォロア508がその伸長位置に移動する次のタイミングで2つのロックアセンブリ(524,526)のいずれが自由に移動するかを定義することができる。
【0060】
図17は、メカノ合成などによって個々の原子から製造されるカムアセンブリ600の部分分子モデルを示す。原子的に正確な構造の製造は、米国特許第8,171,568号、8,276,211号; 9,676,677号; 10,067,160号; 10,072,031号; 10,138,172号; 10,197,597号; 10,308,514号;及び10,309,985号に教示されており、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。カムアセンブリ600は、図15及び図16に示されるカム504のものと同様の理想化された輪郭を有するカム面604を備えるカム602を有する(カム602の一部の構造は、例示のために省略される)。カム面604は、個々の原子606によって形成される不規則性を有する。又、カムアセンブリ600は、カム面604とフォロア610との間に挟み込まれる緩衝部材608を有する。カム602及びフォロア610は、ダイアモンド及びその置換変種、カーボンナノチューブ及び他のフラーレン、窒化ホウ素、シリコン、炭化ケイ素、又は所望の剛性、抗力、熱伝導率及び当業者に明らかな他の特性を有する他の任意の材料などの材料で形成できる。緩衝部材608は、グラフェンの1つまたは複数の層などの可撓性材料でできる緩衝有効領域612を有する。グラフェンは、ダイアモンド又はカーボンナノチューブ(CNT)などの剛性材料であり得る緩衝端部域614によって囲まれる。緩衝端部域614は、フレーム616の部分に並進可能に係合するように設計され得る。また、フォロア610は、フレーム616に並進可能に取り付けられ得る。図17にかかるカムアセンブリを生成するために使用される例示的な分子モデルにおいて、カム602は六角形のダイアモンドの歪んだフープである。また、緩衝有効領域612はグラフェンリボン又はシートである。緩衝端部域614、フォロア610及び円筒形部分がこれらの要素が並進可能に係合するフレーム616は、すべてカーボンナノチューブである。グラフェンの単一シートが使用される、図示されるカムアセンブリ600の場合、緩衝有効領域612は、結果として約3.5Åの厚さを有する。しかし、場合によっては、3次元材料(例えば、ダイアモンド、シリコン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素など、異なる物質の層または混合物を含む)と同様に、複数の層を用いてもよい。従って、一般的な適用例において、分子的に組み立てられるカム及びフォロアの緩衝有効領域は、かなりの厚さを持つ可能性がある。例えば、1nm、2nm、5nm、10nm、20nm、又はそれ以上の厚さは、実用的な観点からは問題なく機能する。それらは、より薄い緩衝部材ほどコンパクトなカムアセンブリを可能にしない場合がある。少なくともこの範囲の上限付近では、そのような特徴的な寸法の装置の製造が標準的な集積回路製造の能力の範囲内にあるという利点がある。
【0061】
カム602がフレーム616(回転取り付け構造は示されていない)に対して回転すると、カム面604の輪郭は、図18に示されるように、時間の経過に伴うフォロア610の位置が波形618を規定するように、緩衝有効領域612及びフォロア610を変位させる。
【0062】
図18のグラフのデータは、分子動力学ソフトウェアを使用して、カムが回転する場合の図17のモデルの挙動をモデル化することによって生成される。図18の波形618は、時間の経過に伴う図17のフォロア610の動きを表す。図18の上部停留時間620は、図17のフォロア610の上部位置を表す。図18の下部停留時間622は、図17のフォロア610の下部位置を表す。位置はオングストロームで示され、時間はピコ秒で示される。このような分子モデリングは、GROMACS、LAMMPS、又はこの分野でよく知られている他の多くのソフトウェアプログラムのいずれかを使用して実行できる。「モーター」力を含む追加のコードを使用してカムを駆動することもできるが、例えば、車軸に巻き付けられるプレテンションポリマーを介してカムを回転させることによって、追加のコードを必要とせずに力を提供することもできる(図には示されていない)。出力波形がフォロアの上部停留位置まで上昇する、図18に示される領域20は、図20に拡大されて示される。図19は、出力波形の対応する部分を示す。
【0063】
図19は、緩衝部材608無しで、図17に示されるカム602及びフォロア610を使用することから生じるシミュレートされた出力波形の拡大部分のグラフである。図19の拡大部分は、図18に示される領域20に対応する。図19のグラフが示すように、原子606、せん断応力及び振動によって引き起こされるカム面604の不規則性は、波形全体にかなりの周期的ノイズが重ね合わされる波形をもたらす。
【0064】
図20は、図19のグラフに示されるのと同じ時間について、緩衝部材608を含むカムアセンブリ600から生じるシミュレートされた波形出力のグラフである(すなわち、図18の領域20によって示される期間)。緩衝部材608は、フォロア610をカム面604から隔離するように作用する。結果として得られる出力波形は、理想的な波形のより正確な近似の波形である。
【0065】
図21及び図22は、4セルシフトレジスタ702にクロック入力を提供することが示される4相緩衝カムアセンブリ700の一例を示す。図21及び図22に示される構造は、カムアセンブリから機械式コンピューティングシステムの構成要素にクロック入力運動を分配するための構造の一例を示す。カムアセンブリから機械式コンピューティングシステムの様々な構成要素に動きを伝達及び分配するための他の構造は、当業者には明らかである。
【0066】
図22によりよく示されるように、カムアセンブリ700は、4つのフォロア(706-1、706-2、706-3及び706-4)を動かすカム704を有する。図21に示すように、各フォロア(706-1、706-2、706-3及び706-4)は、シフトレジスタセル(710-1、710-2、710-3及び710-4)の関連するクロック入力(708-1、708-2、708-3及び708-4)に接続される。シフトレジスタセル(710-1、710-2、710-3及び710-4)は、参照により本明細書に組み込まれる米国公開第25-0192748号の図25-27に示されるシフトレジスタセルと同様の方法で機能することができる(他の機械的論理ユニットも同様に使用できる)。各フォロア(706-1、706-2、706-3及び706-4)は、カム704によって動かされ、動きは平滑化され、緩衝部材(712-1、712-2、712-3及び712-4)を介して伝達される。
【0067】
この例に示されるカム704は、図15~図17に示されるカム504及びカム602と同様の形状であり、2つの異なる半径(R1、R2)を有する表面弧セグメント(714、716)を有する。従って、カム704は、フォロア(706-1、706-2、706-3及び706-4)を2つの位置の間で移動させる。フォロア(706-1、706-2、706-3及び706-4)は、カム704の周りの4つの半径方向位置に配置される。従って、フォロア(706-1、706-2、706-3及び706-4)は、カム704が回転するにつれて、関連するクロック入力(708-1、708-2、708-3及び708-4)を4つの異なる位相で前進させるように移動される。
【0068】
フォロア(706-1、706-2、706-3及び706-4)は、カム704の回転軸に近づいたり離れたりする場合に異なる方向に動くように配置される。そのため、関連するクロック入力(708-1、708-2、708-3及び708-4)を適切な方向に移動するには、移動方向をリダイレクトする必要がある場合がある。例えば、フォロア706-1は、より小さな半径R1を有する表面弧セグメント714と係合すると、内側に(図21及び図22に示されるように右に)移動する。そして、フォロア706-1はクロック入力708-1に直接接続されるため、クロック入力708-1も右に移動し、セル710-1の現在ロックされていない要素を押して移動する。この例において、フォロア706-1は、アンカーブロック720-1に取り付けられる平行ピボットリンク718-1によってその動きが安定する。比較すると、フォロア706-2は垂直に配置され、フォロア706-2が弧セグメント714と係合する。そして、フォロア706-2は下向きに移動するが、クロック入力708-2は右に押されるように配置される(クロック入力708-1と同じ方向)。従って、この場合、動きの方向を変更する必要がある。この例において動きを方向転換するために、フォロア706-2は、ピボットリンク718-2によってアンカーブロック720-2に取り付けられるが、クロック入力延長部724-2にもピボット可能に接続されるピボット部材722-2によっても取り付けられる。そして、フォロア706-2の下向きの動きによって引き起こされるピボット部材722-2の旋回が、クロック入力延長部724-2を右に動かすように作用するように配置される。次に、クロック入力延長部724-2は、クロック入力708-2に直接接続され、セル710-2のいずれかの要素がロックされていないものを押して移動するために、それを右に移動させる。図示されないが、同様の方向転換構造を使用して、フォロア706-3及び706-4をそれぞれのクロック入力708-3及び708-4に接続できる。いずれの場合も、関連する緩衝部材(712-1、712-2、712-3、712-4)としてのフォロア(706-1、706-2、706-3、706-4)の半径方向の内側への移動は、より小さな半径の表面弧セグメント714と係合し、関連するクロック入力(708-1、708-2、708-3、708-4)を右に移動させる。同様に、関連する緩衝部材(712-1、712-2、712-3、712-4)がより大きな半径の表面弧セグメント716を使用すると、関連するクロック入力(708-1、708-2、708-3、708-4)を左に移動させる。当業者は、さらなる接続と連係スキームの両方又は何れかの一方を使用して、1つまたは複数のフォロアの動きを複数の要素に、及び/又は複数の方向に伝達できる。同様に、図21及び図22に示される例は、各フォロアの2つの位置が示される場合を示す。しかし、二進法の論理機能を提供するのに適しているため、当業者は、カム及び関連要素の適切な構成で、3つ重ね、4つ重ね、又はさらなる多状態の論理機構を使用できる。
【0069】
図23aから図23dは、別の例を示しており、クロックアセンブリ750が、機械式コンピューティング装置(この例においては、機械式リンク論理NORゲート754)に、クロック入力752を提供することを示す。NORゲート754は、第1入力部756及び第2入力部758、ならびに第1バランス部760及び第2バランス部762を有する。クロックアセンブリ750は、本明細書で論じられるカムアセンブリの方法で、緩衝部を介してフォロアの動きを制御する移動カムを有する。次に、フォロアは、第1バランス部760を押すように接続されるクロック入力752に接続されるか、又は一体的に形成される。第1入力部756の位置に応じて、そのような動きは、ゲートライン764(図23a及び図23cに示されるように、第1入力部756がその0位置にあり、ゲートライン764の下の破線矢印によって示される第1バランス部760の動きを伴う場合)によって第2バランス部762に伝達されるか、又は第1バランス部760がゲートライン764(図23b及び図23dに示されるように、第1入力部756がその1の位置にあり、第1バランス部760の動きがゲートライン764から離れて配置された破線の矢印によって示される場合)を動かさないように動く。同様に、第2入力部758の位置に基づいて、第2バランス部762は、ゲートライン764の動きに対応して動き、動きを出力ライン766に送信する(図23aに示されるように、第2入力部758がその0位置にある場合、出力ライン766の下の破線矢印によって示される第2バランス部762の動きを伴う場合)。又は、第2入力部758の位置に基づいて、第2バランス部762は、出力ライン766を動かさないように動く(図23cに示すように、第2入力部758がその1位置にあり、出力ライン766から離れた破線の矢印によって示される第2バランス部762の動きを伴う)。従って、クロック入力752の動きは、第1入力部756及び第2入力部758の両方がそれらの0位置にある場合にのみ出力ライン766に送信される(図23aに示されるように)。
【0070】
図24は、クロックとして機能する単一のカムアセンブリ800を示す概略図である。カムアセンブリ800は、バス804を移動させる出力フォロア802を有する。バス804は、次に、一連の第1レベル機械式論理ユニット808(これは、例えば、論理ゲート又はメモリセルである可能性がある)の第1レベルクロック入力806に接続される。入力の位置に基づいて、第1レベル機械式論理ユニット808のそれぞれは、第1レベル出力810を介して動きを送信する(ロジック出力1)か、又は送信しない(ロジック出力0)かのいずれかである。第1レベル出力810は、一連の第2レベル機械式論理ユニット812の入力として機能する。第2レベル機械式論理ユニット812は、同様に、そのような動きを(それらの入力の位置及びそれらの設計された論理機能に応じて)第2レベル出力814に送信するか、または送信しないかのいずれかである。図を単純にするために複数の線として示されないが、すべてのクロックロジックにはクロック線がある。従って、第1レベル出力810は、クロック入力806が第1レベル機械式論理ユニット808にクロック信号を提供するのと同様に、第2レベル機械式論理ユニット812へのクロック信号(おそらく異なる位相)を含むと想定できる。示されないが、所望の計算能力のために十分な計算及びメモリ機能を提供するために、さらなるレベルの論理を追加できる。一般に、任意の数の計算要素が存在し、任意の方法で接続されている可能性がある。
【0071】
図24のシステムは、動きを送信する(出力1)又は送信しない(出力0)かのいずれかとして説明されている。しかし、この表記は任意であり、容易に逆にすることができる。さらに、一部の機械式コンピューティングシステムには、0出力ラインと1出力ラインの両方があり、それぞれのラインがその値を通知するために移動する。一般に、機械式論理とメモリの多くの異なる実装が知られており、多くの異なるクロッキングスキームも知られている。図24は、当業者には明らかである、1つまたは複数の機械的コンピューティング要素にクロック信号を提供する1つまたは複数のクロックの任意の配置を概念的に表す。
【0072】
図25は、クロック入力がカムベースのクロック852によって提供される機械式コンピューティングシステム850を示す概略図である。カムベースのクロック852は、1つまたは複数のフォロア及び関連する緩衝部材を使用して、所望の波形を有する滑らかなクロック信号を提供する。示されるシステム850は、よく知られているハーバードアーキテクチャを採用する。多くの代替コンピュータシステムアーキテクチャは、当業者によく知られている。同様に、単一のクロック852が示されているが、複数のクロックを使用することができる。同期させることも、場合によっては非同期に動作させることもできる。同様に、クロックは、タイミングが実行される論理演算に依存するように、他のコンピュータコンポーネントから入力を受け取ることができる。図示されるクロック852は、制御ユニット854、算術論理ユニット856、入力/出力インターフェース858及びメモリ860内の論理要素を移動させるために分配される入力された力を提供する。機械式コンピューティングシステム850は、ハイブリッド電気機械式コンピュータを有してもよい。例えば、カムベースのクロックは、入力を電子的に処理できる。そのため、すべてのコンポーネントにクロック入力を供給する必要がない可能性がある。機械式コンピューティングシステム及びハイブリッドの機械式/電気式コンピューティングシステムの例は、当技術分野においてよく知られている。ハイブリッドの機械式/電気式コンピューティングシステムの例としては、バベッジの階差機関と分析エンジン、コンラッドゼウスのZ3電気機械コンピューティングシステム、論理を実行したりデータを保存したりするために、少なくとも部分的に、電子電圧ではなく機械要素の位置を使用する後続のコンピューティングシステムなどが挙げられる。
【0073】
本発明は特定の例を参照して説明される。しかし、本発明の利益を得るために他の方法、システム及び装置もあり得る。従って、添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書に含まれる特定の例の説明に限定しない。
【0074】
(参考文献)
Merkle, R.(著)、 Freitas, R.(著)、「Molecular Mechanical Computing Systems」、Institute for Molecular Manufacturing、2016
Merkle, R.(著)、 Freitas, R.(著)、「Mechanical computing systems using only links and rotary joints」、ASME Journal on Mechanisms and Robotics、2018
Merkle, R.(出願人)、 Freitas, R.(出願人)、米国特許出願 20170192748(公開番号)、 「Mechanical Computing Systems」、2015
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2021-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
円周により変わる半径を有する外周カム面を有する回転カム、一定の半径を有するが回転軸に直交する方向に位置が変化するカム面を有する回転円筒形カム、軸に沿って前後に移動する往復カム、カム面がフレームに固定されるままでフォロアがカムに対して移動する固定カムなど、を含む様々なカム種類が当技術分野でよく知られている。基本的なカム設計のバリエーションも存在する。例えば、ほとんどのカムは、フォロア接触部が複数の対向接触点(カム面(1つ又は複数)の対向する部分がフォロアと接する)を有する共役カムとして作られる。
トヨタ自動車の日本国の特開平04-153505号は、内燃機関の弁を制御するための回転カムを開示している。カムは、リフト部分とレスト部分との間に遷移があるカム面の境界部分に形成される窪みを有する。これらの窪みは、カムの残りの部分よりも低いヤング率を持つ材料で埋められ、部分間の境界での応力亀裂を低減する。
WilhelmSetteleのドイツ連邦共和国のDE10 2007 015467号は、パンチング及び曲げ機に適したカム機構、回転カム及び線形スライドフォロアを有する機構、カム面に接触するのに役立つ1つ又は複数のローラーを有するフォロアを開示している。本発明の機構において、フォロアは、カム面に接触するために旋回する「振り子レバー」に取り付けられる2つのローラーを有する。
ウィリアムD.ピアソンの米国特許第1,353,493号は、せん断応力を排除するために、回転カム、プランジャー及びカムとプランジャーとの間に挿入される緩衝板を有するアイレット装置を開示している。緩衝板は、プランジャーと平行に動くリフターロッドに回転可能に取り付けられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式の出力信号を提供するカムアセンブリであって、
輪郭のあるカム面を有するカムと、
前記カム面と接触し、前記カム面に対して移動可能な緩衝有効領域を有する緩衝部材と、
フォロア接触部を有するフォロアと、
を備え、
前記カム面は、理想化された輪郭から逸脱する製造上の制限に起因する典型的な不規則性を有し、
前記フォロア接触部は、前記緩衝有効領域と接触するように配置されることで、前記カムが前記フォロワーに対して移動する場合の前記カム面の輪郭による前記緩衝有効領域の変位によって変位する、
カムアセンブリ。
【請求項2】
前記緩衝有効領域は、前記カム面が前記フォロア接触部に対して移動する方向へ移動することが抑制される、
請求項1に記載のカムアセンブリ。
【請求項3】
前記緩衝有効領域は、前記カム面又は前記フォロア接触部よりも高い摩耗率を有する材料から形成される、
請求項1又は請求項2に記載のカムアセンブリ。
【請求項4】
前記カムが移動可能に取り付けられるフレームと、をさらに備え、
前記緩衝部材は、移動可能な態様で前記フレームに対して取り付けられる、
請求項2又は請求項3に記載のカムアセンブリ。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記フレームに対して並進可能に取り付けられる、
請求項4に記載のカムアセンブリ。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記フレームに対して枢動可能に取り付けられる、
請求項4に記載のカムアセンブリ。
【請求項7】
前記緩衝部材の少なくとも一部は剛性を有する、
請求項4から請求項6の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項8】
前記緩衝部材の少なくとも一部は可撓性を有する、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項9】
前記緩衝有効領域は、前記カムが移動可能に取り付けられるフレームに対して伸縮的に移動可能である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項10】
前記緩衝有効領域は圧縮性を有する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項11】
前記緩衝有効領域は、前記フォロア接触部との係合にかかる厚さが20nm以下である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項12】
前記カム面は、前記フォロア接触部を少なくとも1つの停留期間の間に一定の位置に配置させるように構成される、
請求項1から請求項11の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項13】
機械式コンピューティングシステムであって、
請求項1から12の何れかの1項に記載のカムアセンブリと、を備え、
前記フォロアの変位は、前記機械式コンピューティングシステムに少なくとも1つのクロック信号を提供する、
機械式コンピューティングシステム。
【請求項14】
理想的な輪郭から逸脱する製造上の制限に起因する典型的な不規則性を有する輪郭を含むカム面を備えるカムを提供するステップと、
フォロアを提供するステップと、
前記フォロアのフォロア接触部及び前記カム面との間に緩衝部材の緩衝有効領域を挟み込み、前記カム面の変位が前記フォロア接触部に伝わるよう、前記緩衝有効領域を前記カムに対して移動可能とするステップと、
前記カム面を前記フォロア接触部に対して移動させるステップと、を有し、
前記緩衝有効領域は、前記カム面の変位を前記フォロア接触部に伝達する場合、前記カム面の前記不規則性を平均化するように機能する、
機械式出力信号の提供方法
【請求項15】
前記フォロアを機械式コンピューティングシステムに結合して、前記機械式出力信号が前記機械式コンピューティングシステムに少なくとも1つのクロック信号を提供するステップと、
をさらに有する請求項14に記載の機械式出力信号の提供方法
【手続補正書】
【提出日】2022-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式の出力信号を提供するカムアセンブリであって、
輪郭のあるカム面を有するカムと、
前記カム面と接触し、前記カム面に対して移動可能な緩衝有効領域を有する緩衝部材と、
フォロア接触部を有するフォロアと、
を備え、
前記カム面は、理想化された輪郭から逸脱する製造上の制限に起因する典型的な不規則性を有し、
前記フォロア接触部は、前記緩衝有効領域と接触するように配置されることで、前記カムが前記フォロアに対して移動する場合の前記カム面の輪郭による前記緩衝有効領域の変位によって変位する、
カムアセンブリ。
【請求項2】
前記緩衝有効領域は、前記カム面が前記フォロア接触部に対して移動する方向へ移動することが抑制される、
請求項1に記載のカムアセンブリ。
【請求項3】
前記緩衝有効領域は、前記カム面又は前記フォロア接触部よりも高い摩耗率を有する材料から形成される、
請求項1又は請求項2に記載のカムアセンブリ。
【請求項4】
前記カムが移動可能に取り付けられるフレームと、をさらに備え、
前記緩衝部材は、移動可能な態様で前記フレームに対して取り付けられる、
請求項2又は請求項3に記載のカムアセンブリ。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記フレームに対して並進可能に取り付けられる、
請求項4に記載のカムアセンブリ。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記フレームに対して枢動可能に取り付けられる、
請求項4に記載のカムアセンブリ。
【請求項7】
前記緩衝部材の少なくとも一部は剛性を有する、
請求項4から請求項6の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項8】
前記緩衝部材の少なくとも一部は可撓性を有する、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項9】
前記緩衝有効領域は、前記カムが移動可能に取り付けられるフレームに対して伸縮的に移動可能である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項10】
前記緩衝有効領域は圧縮性を有する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項11】
前記緩衝有効領域は、前記フォロア接触部との係合にかかる厚さが20nm以下である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項12】
前記カム面は、前記フォロア接触部を少なくとも1つの停留期間の間に一定の位置に配置させるように構成される、
請求項1から請求項11の何れか1項に記載のカムアセンブリ。
【請求項13】
機械式コンピューティングシステムであって、
請求項1から12の何れかの1項に記載のカムアセンブリと、を備え、
前記フォロアの変位は、前記機械式コンピューティングシステムに少なくとも1つのクロック信号を提供する、
機械式コンピューティングシステム。
【請求項14】
理想的な輪郭から逸脱する製造上の制限に起因する典型的な不規則性を有する輪郭を含むカム面を備えるカムを提供するステップと、
フォロアを提供するステップと、
前記フォロアのフォロア接触部及び前記カム面との間に緩衝部材の緩衝有効領域を挟み込み、前記カム面の変位が前記フォロア接触部に伝わるよう、前記緩衝有効領域を前記カムに対して移動可能とするステップと、
前記カム面を前記フォロア接触部に対して移動させるステップと、を有し、
前記緩衝有効領域は、前記カム面の変位を前記フォロア接触部に伝達する場合、前記カム面の前記不規則性を平均化するように機能する、
機械式出力信号の提供方法。
【請求項15】
前記フォロアを機械式コンピューティングシステムに結合して、前記機械式出力信号が前記機械式コンピューティングシステムに少なくとも1つのクロック信号を提供するステップと、
をさらに有する請求項14に記載の機械式出力信号の提供方法。
【国際調査報告】