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特表2022-537813集積素子のための光ナノ構造リジェクタ及び関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-30
(54)【発明の名称】集積素子のための光ナノ構造リジェクタ及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20220823BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/64 B
G02B6/122 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575305
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2020038415
(87)【国際公開番号】W WO2020257445
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/863,635
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】カビリ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ビン
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】プレストン、カイル
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
【テーマコード(参考)】
2G043
2H147
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA06
2G043FA03
2G043JA02
2G043LA03
2H147AB04
2H147AB05
2H147BF02
2H147BF03
2H147BF04
2H147BG04
2H147CA08
2H147CA11
2H147EA13C
2H147FA05
2H147FA09
2H147FC08
(57)【要約】
フォトニックバンドギャップ光ナノ構造に関する装置と方法を説明する。このような光学ナノ構造は、禁止されるフォトニックバンドギャップ又は容認されるフォトニックバンドを示し得て、第一の波長の放射を拒絶し(例えば、遮断し、又は減衰させ)、他方で第二の波長の放射の透過は許可するために使用され得る。フォトニックバンドギャップ光ナノ構造の例には、1、2、又は3次元への周期性又は準周期性と少なくとも2次元での構造変動を有する周期及び準周期構造が含まれる。このようなフォトニックバンドギャップ光学ナノ構造は、フォトダイオードと、フォトダイオードが受け取った放射を分析するように配置されたCMOS回路構成と、を含む集積素子内に形成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の表面を有する基板と、
前記基板上に形成された複数のピクセルと、
を含む集積素子であって、
前記複数のピクセルの少なくとも幾つかは、
サンプルを受けるように構成された反応チャンバと、
前記反応チャンバから発せられた発光放射を検出するように構成されたセンサと、
励起放射を前記反応チャンバに結合するように構成された導波路と、
前記導波路と前記センサとの間に設置された光ナノ構造と、を含み、前記光ナノ構造は、前記基板の前記第一の表面に実質的に平行な平面内の構造変動を含むようにパターニングされ、前記第一の表面の実質的な法線方向に前記光ナノ構造に入射する前記励起放射の少なくとも一部を拒絶する、集積素子。
【請求項2】
前記構造変動は、前記平面内の少なくとも1次元において周期的又は準周期的である、請求項1に記載の集積素子。
【請求項3】
前記光ナノ構造はフォトニックバンドギャップを示す、請求項1又は請求項2に記載の集積素子。
【請求項4】
前記構造変動は前記平面内の2次元において周期的又は準周期的である、請求項1~3の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項5】
前記構造変動は150nm~500nmの周期性を示す、請求項1~4の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項6】
前記光ナノ構造は、前記構造変動内に欠如するか又は有意に異なる周期成分を持たない、請求項1~5の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項7】
前記光ナノ構造は、第一の屈折率を有する誘電材料の第一の複数の離散領域を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項8】
前記誘電材料の前記第一の複数の離散領域は、前記平面内で、100nm~300nmの幅を示す、請求項7に記載の集積素子。
【請求項9】
前記光ナノ構造は、前記誘電材料の第二の複数の離散領域を含み、前記誘電材料の前記第一及び第二の複数の離散領域は前記基板の前記第一の表面に垂直な方向に沿って相互に離間される、請求項7又は請求項8に記載の集積素子。
【請求項10】
前記誘電材料の前記第一及び第二の複数の離散領域は、前記平面に平行な方向に沿って相互にずらされている、請求項9に記載の集積素子。
【請求項11】
前記誘電材料の前記第一の複数の離散領域は、前記第一の屈折率とは異なる第二の屈折率を有する材料の領域によって分離される、請求項7~10の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項12】
前記誘電材料の前記第一の複数の離散領域は、前記平面に垂直な方向に延びる、請求項7~11の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項13】
前記誘電材料の前記第一の複数の離散領域は、前記基板の前記第一の表面に垂直な方向に沿って、100nm~300nmの高さを示す、請求項12に記載の集積素子。
【請求項14】
前記反応チャンバと前記センサとの間に設置された虹彩をさらに含む、請求項1~13の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項15】
前記反応チャンバと前記センサとの間に設置され、前記センサへの前記発光放射の集光を増大させる光学素子をさらに含む、請求項1~14の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項16】
前記光学素子は、誘電材料の円板であって、同じ波長の前記発光放射に関して、前記円板を取り囲む材料の第二の屈折率とは異なる第一の屈折率を有する円板を含む、請求項15に記載の集積素子。
【請求項17】
基板上に形成された導波路から、第一の波長を有する励起放射を前記導波路に近接して形成された反応チャンバに結合することと、
前記反応チャンバからの発光放射を光ナノ構造を通じてセンサへと通過させることであって、前記光ナノ構造は、前記基板の第一の表面に実質的に平行な平面内で構造変動を含むようにパターニングされ、前記発光放射は前記第一の波長とは異なる第二の波長を有して、前記反応チャンバ内の少なくとも1つのエミッタの前記励起放射による励起に応じて生成される、通過させることと、
前記光ナノ構造を用いて前記励起放射の少なくとも一部を拒絶することと、
を含む、集積素子の動作方法。
【請求項18】
前記光ナノ構造を通過する前記発光放射の少なくとも一部を前記基板上に形成されたセンサで検出することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記励起放射の一部を拒絶することは、前記励起放射の前記一部を前記光ナノ構造で反射させることを含む、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第一の波長は前記光ナノ構造のフォトニックバンドギャップ内にある、請求項17~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第二の波長は前記光ナノ構造の前記フォトニックバンドギャップ外にある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記構造変動は前記平面内の少なくとも1次元において周期的又は準周期的である、請求項17~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記構造変動は前記平面内の2次元において周期的又は準周期的である、請求項17~22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応チャンバからの前記発光放射を虹彩を通じて通過させることをさらに含む、請求項17~23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記励起放射を前記虹彩で拒絶することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記発光放射を前記反応チャンバと光ナノ構造との間に位置付けられた誘電体円板で集束させることをさらに含む、請求項17~25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
第一の表面を有する基板上に複数のピクセルを、前記複数のピクセルの少なくとも幾つかが反応チャンバとセンサを有するように形成することと、
前記複数のピクセルの前記少なくとも幾つかにおいて導波路を形成することと、
前記複数のピクセルの前記少なくとも幾つかにおいて前記導波路と前記センサとの間に光ナノ構造を形成することと、を含み、前記光ナノ構造を形成することは、
第一の誘電材料を、前記基板の前記第一の表面に実質的に平行な平面内に構造変動を含むようにパターニングすることを含む、集積素子の製造方法。
【請求項28】
第一の誘電材料をパターニングすることは、前記第一の誘電材料において周期又は準周期パターンを形成することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第一の誘電材料を構造変動を含むようにパターニングすることは、前記第一の誘電材料をエッチングして、前記第一の誘電材料に空洞を形成することを含む、請求項27又は請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記空洞に前記第一の誘電材料とは異なる第二の誘電材料を充填することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光ナノ構造を用いて、集積素子内の不要な放射を削減することに関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルの分析に使用される計測器の分野では、微細加工チップが多数の分析物又は検体(1つ又は複数のサンプル内に含まれる)を並行して分析するために使用され得る。幾つかのケースで、光励起放射がチップ上の別々の分析が行われる複数の離散部位に送達される。励起放射は、各部位にある検体、検体に付着した蛍光体、又は検体との相互作用に関わる蛍光体を励起させ得る。励起に応答して、放射が部位から発出され得、発せられた放射がセンサにより検出され得る。発光放射から得られた部位に関する情報、又は発光放射がなかったことは、その部位にある検体の特性を特定するために使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、光ナノ構造を用いて、集積素子内の不要な放射を削減することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
フォトニックバンドギャップ光ナノ構造に関する装置と方法を説明する。このような光ナノ構造は、禁止されるフォトニックバンドギャップ又は受容されるフォトニックバンドギャップを示し得て、第一の波長の放射を拒絶し(例えば、放射の大部分を遮断し、又は減衰させ)、他方で第二の波長の放射の透過を許可するために使用され得る。フォトニックバンドギャップ光ナノ構造の例には、2又は3次元の構造変動と1、2、又は3次元の周期性又は準周期性を有する周期及び準周期構造が含まれる。このようなフォトニックバンドギャップ光ナノ構造は、光センサ、例えばフォトダイオード、CCDフォトダイオードアレイ、CMOSフォトダイオードアレイ、イメージセンサアレイ、蛍光センサアレイ等を含む集積素子の中に形成され得る。ある例示的な実施形態において、フォトニックバンドギャップ光ナノ構造は、検体を分析するための機器と共に使用することができ、光検出は検体に送達された光励起に応答して検体により発せられた放射を分析するために使用される。フォトニックバンドギャップ光ナノ構造は、これに関して、背景ノイズに寄与する1つ又は複数の波長バンド内の特定の放射を削減し、他方で有益な信号を含む波長バンド内の放射の透過は可能にするために有益であり得、それによって信号対ノイズ比が改善される。
【0005】
幾つかの実施形態は、第一の表面を有する基板と、基板上に形成された複数のピクセルと、を含む集積素子に関する。複数のピクセルの少なくとも幾つかは、サンプルを受けるように構成された反応チャンバと、反応チャンバから発せられた放射を検出するように構成されたセンサと、励起放射を反応チャンバに結合するように構成された導波路と、導波路とセンサとの間に設置された光ナノ構造と、を含む。光ナノ構造は、基板の第一の表面に平行な平面内の構造変動を含むようにパターニングされ、第一の表面への法線方向に光ナノ構造に入射する励起放射の少なくとも一部を拒絶する。
【0006】
幾つかの実施形態において、構造変動は、平面内の少なくとも1次元に周期的又は準周期的である。
幾つかの実施形態において、光ナノ構造はフォトニックバンドギャップを示す。
【0007】
幾つかの実施形態において、構造変動は平面内の2次元に周期的又は準周期的である。
幾つかの実施形態において、構造変動は150nm~500nmの周期性を示す。
幾つかの実施形態において、光ナノ構造は、構造変動内に欠如するか又は有意に異なる周期成分を持たない。
【0008】
幾つかの実施形態において、光ナノ構造は、第一の屈折率を有する誘電材料の第一の複数の離散領域を含む。
幾つかの実施形態において、誘電材料の第一の複数の離散領域は、平面内で、100nm~300nmの幅を示す。
【0009】
幾つかの実施形態において、光ナノ構造は、誘電材料の第二の複数の離散領域を含み、誘電材料の第一及び第二の離散領域は基板の第一の表面に垂直な方向に沿って相互に離間される。
【0010】
幾つかの実施形態において、誘電材料の第一及び第二の離散領域は、平面に平行な方向に沿って相互にずらされている。
幾つかの実施形態において、誘電材料の第一の複数の離散領域は、第一の屈折率とは異なる第二の屈折率を有する材料の領域によって分離される。
【0011】
幾つかの実施形態において、誘電材料の第一の複数の離散領域は、平面に垂直な方向に延びる。
幾つかの実施形態において、誘電材料の第一の複数の離散領域は、基板の第一の表面に垂直な方向に沿って、100nm~300nmの高さを示す。
【0012】
幾つかの実施形態において、集積素子は、反応チャンバとセンサとの間に設置された虹彩をさらに含む。
幾つかの実施形態において、集積素子は、反応チャンバとセンサとの間に設置された、センサへの発光放射の集光を増大させる光学素子をさらに含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、光学素子は、誘電材料の円板であって、同じ波長の発光放射に関して、円板を取り囲む材料の第二の屈折率とは異なる第一の屈折率を有する円板を含む。
【0014】
幾つかの実施形態は、集積素子の動作方法に関する。方法は、基板上に形成された導波路から、励起放射であって、第一の波長を有する励起放射を導波路に近接して形成された反応チャンバに結合することと、反応チャンバからの発光放射を光ナノ構造を通じてセンサへと通過させることであって、光ナノ構造は、基板の第一の表面に平行な平面内で構造変動を含むようにパターニングされ、発光放射は第一の波長とは異なる第二の波長を有して、反応チャンバ内の少なくとも1つのエミッタの励起放射による励起に応答して生成される、通過させることと、光ナノ構造を用いて励起放射の少なくとも一部を拒絶することと、を含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、方法は、光ナノ構造を通過する発光放射の少なくとも一部を基板上に形成されたセンサで検出することをさらに含む。
幾つかの実施形態において、励起放射の一部を拒絶することは、励起放射のその部分を光ナノ構造で反射させることを含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、第一の波長は光ナノ構造のフォトニックバンドギャップ内にある。
幾つかの実施形態において、第二の波長は光ナノ構造のフォトニックバンドギャップ外にある。
【0017】
幾つかの実施形態において、構造変動は平面内の少なくとも1次元において周期的又は準周期的である。
幾つかの実施形態において、構造変動は平面内の2次元において周期的又は準周期的である。
【0018】
幾つかの実施形態において、方法は、反応チャンバからの発光放射を虹彩を通じて通過させることをさらに含む。
幾つかの実施形態において、方法は、励起放射を虹彩で拒絶することをさらに含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、方法は、発光放射を反応チャンバと光ナノ構造との間に位置付けられた誘電体円板で集束させることをさらに含む。
幾つかの実施形態は、集積素子の製造方法に関する。方法は、第一の表面を有する基板上に複数のピクセルを、複数のピクセルの少なくとも幾つかが反応チャンバとセンサを有するように形成することと、複数のピクセルのその少なくとも幾つかの中に導波路を形成することと、複数のピクセルのその少なくとも幾つかの中の導波路とセンサとの間に光ナノ構造を形成することと、を含む。光ナノ構造を形成することは、第一の誘電材料を、基板の第一の表面に平行な平面内に構造変動を含むようにパターニングすることを含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、第一の誘電材料をパターニングすることは、第一の誘電材料中に周期又は準周期パターンを形成することを含む。
幾つかの実施形態において、第一の誘電材料を、構造変動を含むようにパターニングすることは、第一の誘電材料をエッチングして、第一の誘電材料内に空洞を形成することを含む。
【0021】
幾つかの実施形態において、方法は、空洞に第一の誘電材料とは異なる第二の誘電材料を充填することをさらに含む。
幾つかの実施形態において、方法は、複数のピクセルの少なくとも幾つかの中に導波路を形成する前に平坦化プロセスステップを実行することをさらに含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、導波路を形成することは、少なくとも第一の材料と同じ材料を使って導波路を形成することを含む。
本願の教示の前述及びその他の態様、実装、行為、機能、特徴、及び実施形態は、以下の説明と添付の図面からよりよく理解できる。
【0023】
当業者であれば、本明細書で説明する図面は例示を目的としているすぎないことがわかるであろう。場合により、本発明の各種の態様は本発明の理解を促進するために誇張又は拡大して示されている場合があると理解されたい。図中、様々な図面を通じて、同様の参照文字は概して、同様の特徴、機能的に類似する、及び/又は構造的に類似する要素を指す。図面は必ずしも正確な縮尺によるのではなく、教示の原理を図解することに主眼が置かれている。図面は本願の教示の範囲をいかなるようにも限定しないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1-1】幾つかの実施形態による、集積素子のピクセルにおける構造の例を図解する略図である。
図1-2】幾つかの実施形態による例示的な光ナノ構造のスペクトル応答を示すプロットである。
図1-3A】幾つかの実施形態による、1次元(x方向)に周期的であり、少なくとも2次元(x及びz)において構造変動を有する光ナノ構造の例を示す上面図である。
図1-3B】幾つかの実施形態による、複数の層を含む光ナノ構造の例を示す立面図である。
図1-3C】幾つかの実施形態による、2次元に周期的な光ナノ構造の例を示す上面図である。
図1-3D】幾つかの実施形態による、2次元に周期的な光ナノ構造の他の例を示す斜視図である。
図1-3E】幾つかの実施形態による、1次元に準周期的な光ナノ構造の例を示す上面図である。
図1-3F】幾つかの実施形態による、2次元に準周期的な光ナノ構造の例を示す上面図である。
図1-4A】幾つかの実施形態による、電場が第一の波長で計算される、図1-1の構造内の励起放射の例示的な電場を示すプロットである。
図1-4B】幾つかの実施形態による、電場が第二の波長で計算される、図1-1の構造内の反応チャンバから発せられ得る発光放射の例示的な電場を示すプロットである。
図1-5】幾つかの実施形態による、2種類の光ナノ構造の入射角に関する光拒絶を示すプロットである。
図2-1】幾つかの実施形態による、集積素子のピクセルにおける構造の他の例を示す略図である。
図2-2】図2-1の構造を示し、幾つかの実施形態による発光放射の光線を含む。
図2-3】幾つかの実施形態による、集積素子のピクセルにおける構造の他の例を示す略図である。
図3】幾つかの実施形態による集積素子の例示的な構造の切欠き図を描く。
図4-1A】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1B】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1C】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1D】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1E】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1F】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1G】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1H】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1I】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-1J】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2A】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2B】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2C】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2D】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2E】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2F】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2G】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2H】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2I】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図4-2J】幾つかの実施形態による光ナノ構造の例示的な製造方法に関連する構造を描く。
図5-1A】幾つかの実施形態による、小型モードロックレーザモジュールを含む分析器のブロック図である。
図5-1B】幾つかの実施形態による、分析器に組み込まれた小型モードロックレーザモジュールを描く。
図5-2】幾つかの実施形態による光パルストレインを描く。
図5-3】幾つかの実施形態による、1つ又は複数の導波路を介したパルスレーザにより光学励起できる平行反応チャンバの例を描き、さらに各チャンバの対応する検出器を示す。
図5-4】幾つかの実施形態による、導波路からの反応チャンバの光学励起を図解する。
図5-5】幾つかの実施形態による、集積された反応チャンバ、光導波路、及び時間ビニング受光素子のさらに詳細な部分を描く。
図5-6】幾つかの実施形態による、反応チャンバ内で起こり得る生理学的反応の例を描く。
図5-7】異なる減衰特性を有する2種類の蛍光体の放出確率曲線を描く。
図5-8】幾つかの実施形態による蛍光発光の時間ビニング検出を描く。
図5-9】幾つかの実施形態による時間ビニング受光素子を描く。
図5-10A】幾つかの実施形態による、サンプルからの蛍光発光のパルス励起と時間ビニング検出を描く。
図5-10B】幾つかの実施形態による、サンプルのパルス励起の繰り返しの後の様々な時間ビンにおける累積蛍光性光子数のヒストグラムを描く。
図5-11A】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
図5-11B】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
図5-11C】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
図5-11D】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
図6-1A】幾つかの実施形態による、光ナノ構造の設計で使用される第一の例示的なシリコン富化窒化物材料の波長に関する屈折率と減衰係数のグラフを描く。
図6-1B】幾つかの実施形態による、光ナノ構造の設計で使用される第二の例示的なシリコン富化窒化物材料の波長に関する屈折率と減衰係数のグラフを描く。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特徴と利点は、以下の詳細な説明を図面と共に読めばより明らかとなるであろう。図面を参照しながら実施形態を説明する際、方向を表す参照用語(「上方」、「下方」、「上」、「下」、「左」、「右」、「水平」、「縦」等)が使用される場合がある。このような用語は、読者が通常の向きで図面を見るための手掛かりにすぎないものとする。これらの方向を表す用語は、具現化される機器の特徴の、好ましい又は唯一の向きを表すものではない。機器は、他の向きを用いて具現化されてもよい。
【0026】
I.光ナノ構造リジェクタを有する集積素子
光ナノ構造リジェクタの実施形態を以下に、主としてサンプルを分析する機器に関連して説明する。しかしながら、独創的な実施形態はサンプルを分析する機器のみに限定されない。光ナノ構造リジェクタは、光イメージングデバイス、光センサ、半導体レーザ、又は発光ダイオード等、他の用途にとっても有益であり得る。
【0027】
サンプルを分析するための機器は常に改良されており、機器全体を小型化するのに役立つことのできる微細加工されたコンポーネント(例えば、電子チップ、光電子チップ、マイクロ流体チップ)を内蔵し得る。分析対象のサンプルとしては、空気(例えば、有害ガスの漏出、燃焼副産物、又は有毒化学物質を検知する)、水又はその他の摂取可能な液体、食品サンプル、及び被検者から採取した生体サンプル(血液、尿等)を含めることができる。幾つかのケースでは、サンプルを分析するためのポータブルのハンドヘルド型機器を有することが望ましく、それによって技師又は医療関係者は、作業が必要な現場に機器を容易に運び、サンプルを素早く正確に分析することができる。臨床現場では、ヒト遺伝子の配列特定や全血球数分析のような、より複雑なサンプル分析のために、デスクトップサイズの機器が望まれ得る。
【0028】
例えば、どちらも参照によって本願に援用される米国特許出願公開第2015/0141267号明細書及び米国特許第9,617,594号明細書に記載されているもののような高度な分析器では、使い捨て集積素子(「チップ」及び「使い捨てチップ」とも呼ばれる)を使って、大量並行サンプル分析を実行し得る。使い捨て集積素子は、パッケージされた生体光電子チップを含み得て、その上に1つのサンプル又は異なるサンプルの並行分析を行うための反応チャンバを有する多数のピクセルを存在させることができる。例えば、生体光電子チップ上の、反応チャンバを有するピクセルの数は、約10,000~約10,000,000とすることができる。幾つかの実施形態において、使い捨てチップは、高度な分析機器の貯蔵部内に取り付けられ、機器内の光学及び電子コンポーネントとインタフェースし得る。使い捨てチップは、新たなサンプル分析を行うたびに使用者が容易に交換できる。
【0029】
図1-1は、例えば生体光電子チップのピクセルに含められ得る幾つかのコンポーネントを描く簡略図である。サンプル分析機器において、ピクセルは基板1-105上に形成された反応チャンバ1-130、光導波路1-115、光ナノ構造1-135、及びセンサ1-122を含むことができる。導波路1-115は、離れた光源からの光エネルギをピクセルに輸送し、励起放射を反応チャンバ1-130に提供することができる。導波路1-115により輸送された励起放射は、幾つかの実施形態においては、エバネッセント結合を介して反応チャンバ1-130に結合され得る。矢印1-140は、導波路1-115からの励起放射の反応チャンバ1-130への結合を描く。励起放射は、反応チャンバ1-130内にある1つ又は複数の分析物を励起させ得る。分析物から発せられた放射は、センサ1-122により検出できる。矢印1-142は、下方向に伝播する発光放射を描く(発光光線は他の角度で発せられ得る)。幾つかの実施形態によれば、センサ1-122からの信号、又はそれがないことは、反応チャンバ1-130内の分析物の有無に関する情報を提供できる。幾つかの実装形態において、センサ1-122からの信号は、反応チャンバ1-130内にある分析物の種類を識別できる。
【0030】
サンプル分析のために、1つ又は複数の分析物を含むサンプルが、反応チャンバ1-130の貯蔵部に置かれ得る。例えば、サンプルは反応チャンバ1-130の上方の貯蔵部又はマイクロ流体チャネルの中に、サンプルが反応チャンバと接触するように設置され得る。幾つかのケースで、サンプルは反応チャンバ1-130を含む処理済みの表面上に小滴として印刷され得る。サンプル分析中、分析対象のサンプルからの少なくとも1つの分析物が反応チャンバ1-130に入り得る。幾つかの実装形態において、導波路1-115から送達された励起放射1-140により励起されると分析物そのものが蛍光を発し得る。幾つかのケースでは、分析物は1つ又は複数のリンクされた蛍光分子を担持し得る。また別のケースでは、分析物は反応チャンバ1-130内にすでに存在する発光体を消光させ得る。蛍光実体が反応チャンバに入り、励起放射により励起されると、蛍光実体は励起放射とは異なる波長の放射を発することができ、それがセンサ1-122により検出される。
【0031】
本発明者らは、導波路1-115に沿って進む励起放射の一部が導波路1-115から離れて放射し得、ある状況で、センサ1-122により受け取られて検出され得る(導波路から直接か、反射及び/又は散乱によるかを問わない)ことに気付き、そのように認識した。励起放射の検出は、発光放射の検出を妨害し、信号対ノイズ比を低下させ得る。それが今度は素子がサンプルを分析又は同定する能力を低下させる可能性がある。
【0032】
導波路1-115から離れた励起エネルギの放射(矢印1-144により示される)は、導波路自体からの散乱によって生じ得、それは導波路の側壁の表面粗さに、又は導波路内、導波路の隣接材料との界面、若しくは隣接材料内のその他の欠陥の存在に起因し得る。追加的又は代替的に、励起エネルギは、導波路のコアの屈折率と導波路のクラッドの屈折率の差が無限であり、それによってセンサ1-122に向かって延びるエバネッセント場を発生させることにより導波路から離れて放射し得る。
【0033】
本発明者らは、光ナノ構造1-135等の光リジェクタを導波路1-115とセンサ1-122との間に介在させることによって、励起放射の検出が減少し、それゆえ信号対ノイズ比が改善することに気付き、そのように認識した。光ナノ構造は、信号とノイズを、励起放射と発光放射との固有波長の差に基づいて区別するように構成され得る。光ナノ構造は、励起放射1-144を拒絶し(例えば、遮断し、又はその大部分を減衰させ)、他方で発光放射1-142を透過させて、センサ1-122に到達させるように設計され得る。幾つかのケースで、光ナノ構造1-135に入射し、センサ1-122に向かって進む発光放射1-142の大部分が光ナノ構造を透過する。幾つかの実施形態において、光ナノ構造は、少なくとも1つのフォトニックバンドギャップを示すように設計された光ナノ構造を含み得て、それによって光ナノ構造1-135に入射し、フォトニックバンドギャップ内の波長を有する光エネルギは拒絶される。
【0034】
本発明者らは、フォトニックバンドギャップ光リジェクタが、1、2、又は3次元の周期性と少なくとも2次元の構造変動を有する周期(又は準周期)光ナノ構造を形成することによって実現され得ることに気付き、そのように認識した。幾つかの実施形態において、周期性(又は準周期性)により、光の伝播が禁止されるスペクトルバンド(フォトニックバンドギャップ)が生じ得る。その特性は、周期固相結晶の内部で禁止される特定の波長を有するブロッホ波に似ている。禁止されるバンドギャップ内で、光ナノ構造に入射した放射は弱め合うように干渉し、その結果、拒絶される。幾つかの実施形態において、光ナノ構造は、励起放射の波長が禁止されるフォトニックバンドギャップ内であり、他方で、発光放射の波長が禁止されるフォトニックバンドギャップ外となるように設計され得る。その結果、発光放射は透過し、励起放射は反射される。幾つかの実装形態において、発光放射の大部分は透過し、励起放射の大部分は反射される。幾つかの実装形態において、発光放射の75%~95%が透過し、励起放射の75%~95%が反射される。幾つかの実装形態において、発光放射の85%~99%が透過し、励起放射の85%~99%が反射される。
【0035】
幾つかの実施形態によれば、反対の動作が得られ得て、それによって光ナノ構造は受容されるフォトニックバンド(禁止されるフォトニックバンドギャップではない)を示すように設計される。これらの実施形態において、受容されるフォトニックバンド内の波長は透過し、他方で受容されるバンド外の波長は拒絶される。幾つかのこのような実施形態において、光ナノ構造は、励起放射の波長が受容されるフォトニックバンド外にあり、他方で発光放射の波長が受容されるフォトニックバンド内にあるように設計され得る。その結果、フォトニックバンドギャップ光ナノ構造に関して前述した量にしたがって、発光放射は(少なくとも部分的に)透過し、励起放射は(少なくとも部分的に)反射される。
【0036】
前述のように、本明細書に記載されている種類の光ナノ構造は、図1-1において説明した構造を有する集積素子に関連した使用に限定されない。より一般的には、本明細書に記載の光ナノ構造の実施形態は、1つ若しくは複数の波長又は1つ若しくは複数の波長範囲を拒絶することが望まれ、且つ、1つ若しくは複数の波長又は1つ若しくは複数の波長範囲の透過を許可することが望まれる用途において使用され得る。その他の考え得る内容の中で、本明細書に記載の光ナノ構造は、光通信システム、光イメージングシステム、ライダシステム等と共に使用され得る。
【0037】
図1-2は、幾つかの実施形態による例示的な光ナノ構造のスペクトル応答のシミュレーションを示すプロットである。特に、図1-2は、波長に関する、例示的な光ナノ構造に関連する反射係数(1-202)、透過係数(1-204)、及び吸収係数(1-206)を描いている。反射係数は、反射された放射のパワーと入射放射のパワーとの比を表す。透過係数は、透過した放射のパワーと入射放射のパワーとの比を表す。吸収係数は、吸収されたパワーと入射放射のパワーの比を表す。図1-2に示されるように、この光ナノ構造は、約515nm~約550nmの禁止されるフォトニックバンドギャップ(1-201)を示す。禁止されるフォトニックバンドギャップ1-201内の波長について、透過係数1-204は0.1未満であり、これは入射パワーの10%未満が光ナノ構造を透過することを示している。残りのパワーは反射されるか、又は吸収されるかの何れかである。この場合、入射パワーの50%~80%が反射され、パワーの残りは吸収される。例示的な光ナノ構造の詳細を以下に示す。
【0038】
禁止されるフォトニックバンドギャップ1-201の外の波長の場合、より多くの量の入射パワーが光ナノ構造を透過できる。例えば、570nmより大きい波長では、入射パワーの50%以上が透過できる。600nmより大きい波長では、入射パワーの90%以上が透過できる。幾つかの実施形態において、光ナノ構造は、励起放射の波長がフォトニックバンドギャップ1-201内であり、発光放射の波長がフォトニックバンドギャップ1-201外であるように設計され得る。このナノ構造に関する1つの具体的な例において、励起放射の波長は510nm~550nmであり得、発光波長は560nm~700nmとすることができる。励起及び発光波長のその他の値もまた、異なる波長範囲のフォトニックバンドギャップを有するように設計される光ナノ構造について可能である。フォトニックバンドギャップは、有限のバンドギャップを有し得る。バンド幅は例えば、150nm未満、100nm未満、50nm未満、又は30nm未満であり得る。
【0039】
図1-2でプロットされた結果に関して、例示的なナノ構造は2次元周期光ナノ構造であった(その例は図1-3Dに示される)。ナノ構造は、酸化シリコンの材料単層の中に形成された窒化シリコンポストの立方構造として配置された。ポストの周期性p3は250nmであり、ポスト幅w3は140nmであった。層の厚さは125nmであった。
【0040】
フォトニックバンドギャップ1-201のスペクトル位置とフォトニックバンドギャップ内及び外の係数の値は、ナノ構造の異なる構造的特徴(例えば、周期性、材料、ポストの幅又は線の幅、ポストの形状等)に依存し得、これについては後で詳しく説明する。幾つかの実施形態において、光ナノ構造の特徴は、分析対象のサンプルの種類及び/又は利用可能な励起源とエミッタの種類に応じて調整され得る。幾つかの実施形態において、構造的特徴は、フォトニックバンドギャップ内の入射放射の、幾つかの実施形態では両端の値を含む25%~15%、幾つかの実施形態では両端の値を含む15%~10%、幾つかの実施形態では両端の値を含む10%~5%、さらに幾つかの実施形態では両端の値を含む5%~1%がナノ構造を透過するように調整され得る。幾つかのケースで、フォトニックバンドギャップ内の入射放射の1%未満がナノ構造を透過する。幾つかの実施形態において、構造的特徴は、フォトニックバンドギャップ外の入射放射の、ある実施形態では両端値を含む50%~75%、幾つかの実施形態では両端の値を含む75%~90%、幾つかの実施形態では両端の値を含む90%~95%、及びさらに幾つかの実施形態では両端の値を含む95%~99%が光ナノ構造を透過するように調整され得る。幾つかのケースで、フォトニックバンドギャップ外の入射放射の99%超が光ナノ構造を透過する。
【0041】
図1-2のスペクトル応答は、禁止されるフォトニックバンドギャップを示し、それによってフォトニックバンドギャップ内の波長の放射は拒絶され、フォトニックバンドギャップ外の波長の放射は透過するように設計された光ナノ構造に関する。代替的に、光ナノ構造は、受容されるフォトニックバンドを示し、それによって受容されるフォトニックバンド内の波長の放射は透過し、受容されるフォトニックバンド外の波長の放射は拒絶されるように設計され得る。1つのこのようなナノ構造のスペクトル応答(図1-2には示されていない)は、受容されるフォトニックバンド内で高い透過係数(例えば、幾つかの実施形態では両端の値を含む50%~75%、幾つかの実施形態では両端の値を含む75%~90%、幾つかの実施形態では両端の値を含む90%~95%、さらに幾つかの実施形態では両端の値を含む95%~99%)と、受容されるフォトニックバンド外で低い透過係数(例えば、幾つかの実施形態では両端の値を含む25%~15%、幾つかの実施形態では両端の値を含む15%~10%、幾つかの実施形態では両端の値を含む10%~5%、さらに幾つかの実施形態では両端の値を含む5%~1%)を示し得る。このような光ナノ構造は、励起放射の波長が受容されるフォトニックバンド外にあり、発光放射の波長が受容されるフォトニックバンド内にあるように設計され得る。
【0042】
再び図1-1を参照すると、反応チャンバ1-130は透明又は半透明層1-110の中に形成され得る。反応チャンバの深さは、幾つかの実施形態によれば50nm~1μmであり得る。反応チャンバ1-130の最小径は、幾つかの実施形態において50nm~300nmであり得る。反応チャンバ1-130がゼロモード波長として形成されると、最小径は幾つかのケースで50nm未満でさえあり得る。大型の分析物を分析する場合、最小径は300nmより大きくし得る。反応チャンバは、光導波路1-115の上方に位置付けられ得、それによって反応チャンバの底部は導波路1-115の最上部の上方最大500nmにあり得る。透明又は半透明層1-110は、幾つかの実施形態によれば、酸化物又は窒化物から形成でき、それによって光導波路1-115からの励起放射と反応チャンバ1-130からの発光放射は例えば、10%を超えて減衰されることなく、透明又は半透明層1-110を通過する。
【0043】
幾つかの実装形態において、基板1-105上に形成され、基板と光導波路1-115との間に位置付けられた1つ又は複数の追加の透明又は半透明層1-137が存在できる。これらの追加の層は酸化物又は窒化物から形成され得、幾つかの実装形態では、透明又は半透明層1-110と同じ種類の材料であってよい。光ナノ構造1-135は例えば、これらの追加の層1-137の中の、導波路1-115とセンサ1-122との間に形成され得る。光導波路1-115の底部からセンサ1-122との間の距離は、500nm~10μmとすることができる。
【0044】
各種の実施形態において、基板1-105は半導体基板、例えばシリコンを含み得る。しかしながら、幾つかの実施形態ではその他の半導体材料も使用され得る。センサ1-122は半導体フォトダイオードを含み得て、これは基板1-105上でパターニングされ、形成される。センサ1-122は、相互接続1-170を介して基板上のその他の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路構成に接続され得る。
【0045】
光ナノ構造1-135は、禁止されるフォトニックバンドギャップ又は受容されるフォトニックバンドを示すように配置され得る。前述のように、フォトニックバンドギャップ又は受容されるバンドのスペクトル位置は、励起放射を拒絶し、発光放射をナノ構造からセンサ1-122へと通過させるように選択され得る。幾つかの実施形態において、光ナノ構造1-135は、基板の表面(例えば、表面1-107)に平行な平面(図1-1のxy-平面)内で構造変動と周期性を含むようにパターニングされる。幾つかの実施形態において、光ナノ構造1-135は、xy平面内で周期的(又は準周期的)である構造変動を有し得る。構造変動は、1次元、例えばx軸若しくはy軸に沿って、又は2次元、例えばx軸及びy軸に沿って周期的(又は準周期的)であり得る。幾つかの実施形態において、構造変動は、異なる屈折率の2つ以上の材料を含み得る。
【0046】
幾つかの実施形態による、1次元の周期性と少なくとも2次元の構造変動を有する光ナノ構造の例が図1-3Aに示されている。ある実装形態の1次元構造において、バーはy方向に有限の距離にわたり延在し得て、これは周期性又はピッチP1よりはるかに大きい。幾つかの実装形態において、y方向に延びる距離は、関心対象領域(例えば、反応チャンバ1-130の直径、導波路1-115の幅、又はセンサ1-122の直径)よりはるかに大きい。図1-3Aは、基板1-105の表面1-107に平行又は実質的に平行な1つの軸(この例ではx軸)に沿って周期的である光ナノ構造を示す。この例では、光ナノ構造1-135はx軸に沿って周期的に交互の2つの材料(1-302及び1-304)を含む。材料1-302及び1-304は発光放射の波長での異なる屈折率及び/又は励起放射の波長での異なる屈折率を有する。幾つかの実施形態において、光ナノ構造には、構造変動内に周期性のない、又は周期性が大きく異なるコンポーネントがない。幾つかの実施形態において、3つ以上の材料が使用され得て、周期的パターンに配置され得る(例えば、2つの材料か交互であるか、又は図のパターンに第三の材料が周期的に追加される)と理解すべきである。
【0047】
本明細書に記載の実施形態による光ナノ構造を形成するために、何れの適当な材料1-302及び1-304も使用され得る。例示的な材料としては、誘電及び導電材料の一方又は両方が含まれるが、これらに限定されない。このような誘電及び導電材料の例には、シリコン(アモルファス、ナノ結晶、マイクロ結晶、単結晶、又は多結晶、ドープ又は非ドープ)、窒化シリコン、シリコンカーバイド、酸化シリコン、及びその合金又は混合物(シリコン富化窒化物及び/又は窒素ドープシリコンその他)、空気、ポリマ、アルミニウム、銅、窒化チタン、タングステン、酸化チタン、ゲルマニウム、タンタル等が含まれる。1つの例において、材料1-302はシリコンを含み、材料1-304は窒化シリコンを含む。他の例において、材料1-302はシリコンを含み、材料1-304は酸化シリコンを含む。他の例において、材料1-302はシリコンを含み、材料1-304はポリマを含む。他の例において、材料1-302は窒化シリコンを含み、材料1-304は酸化シリコンを含む。他の例において、材料1-302は窒化シリコンを含み、材料1-304は空気を含む。他の組合せもまた可能である。
【0048】
本発明者らは、性能を最適化するために光ナノ構造1-135の設計には特定の材料が使用され得ることを発見し、これには固有のn(屈折率)とk(消光係数)を有するシリコン富化窒化物材料が含まれる。このような材料は、例えば光ナノ構造の設計の中でフィルタとして使用され得、又は本明細書に記載されているように光ナノ構造1-135を形成するために使用され得る。これらの材料の非限定的な例には、シリコン富化窒化物材料が含まれる。シリコン富化窒化物材料の2つの例であるシリコン富化窒化物Iとシリコン富化窒化物IIの特徴がそれぞれ図6-1A及び6-1Bのグラフの中に示されている。各グラフでは、波長に対する材料にn及びk値が示されている。
【0049】
図1-3Aに示される例において、光ナノ構造1-135はx軸に沿って周期的に繰り返されるニットセルを含む。ユニットセルが繰り返される周期性(P1)は、幾つかの実施形態では150nm~2μm、幾つかの実施形態では150nm~1μm、幾つかの実施形態では150nm~500nm、幾つかの実施形態では150m~400nm、幾つかの実施形態では150nm~300nm、幾つかの実施形態では200nm~300nm、幾つかの実施形態では230nm~270nm、又は幾つかの実施形態では240nm~260nmであり得る。その他の範囲もまた可能である。第一の材料1-302のx軸に沿った幅(W1)は、幾つかの実施形態では50nm~1μm、幾つかの実施形態では50nm~500nm、幾つかの実施形態では100nm~500nm、幾つかの実施形態では100m~300nm、幾つかの実施形態では150nm~300nm、幾つかの実施形態では100nm~250nm、幾つかの実施形態では150nm~250nm、幾つかの実施形態では100nm~150nm、幾つかの実施形態では150nm~200nm、幾つかの実施形態では130nm~150nm、又は幾つかの実施形態では130nm~140nmであり得る。幾つかの実施形態において、周期性P1及び幅W1は、結果として得られる光ナノ構造のスペクトル応答が励起放射を拒絶し、発光放射を透過させるように選択され得る。例えば、P1及びW1は、選択された励起放射の固有波長が禁止されるフォトニックバンドギャップ内にあり、結果として得られる発光放射の固有波長が禁止されるフォトニックバンドギャップ外にあるように、又は発光放射の波長が受容されるフォトニックバンド内にあり、励起放射の波長が受容されるフォトニックバンド外にあるように選択され得る。
【0050】
材料1-302及び1-304は光ナノ構造の中に、何れの適当な方法でも形成され得、例えば図4-1A~4-1Jに関連して後述する製造プロセスが使用される。幾つかの実施形態において、材料1-302及び1-304は、1つ又は複数のリソグラフィステップを通じて、例えば適当に設計されたフォトマスクとフォトリソグラフィプロセスを使ってパターニングされ得る。幾つかの実施形態において、材料1-302は、図1-3Aの例に示されるように、y軸に沿って延びる複数のバーを含むが、それ以外の形状及び方位もまた可能である。
【0051】
幾つかの実施形態において、光ナノ構造1-135は、周期的又は準周期的に配置された複数の材料層を含み得る。複数の層を有することにより、幾つかの実施形態において、光ナノ構造の透過及び/又は反射係数を改善し得る。例えば、複数の層を有することによって、禁止されるフォトニックバンドギャップ内の反射係数が増大し、禁止されるフォトニックバンドギャップ外の透過係数が増大し得るか、又は受容されるフォトニックバンド内の透過係数が増大し、受容されるフォトニックバンド外の反射係数が増大し得る。
【0052】
図1-3Bは、幾つかの実施形態による、周期的に配置された複数の材料層を有するナノ構造の例示的な立面図を示す。この例は、z方向に積み重ねられた4つの層を有する光ナノ構造を示すが、他の何れの適当な数の層も使用され得る。多層光ナノ構造において、各層は基板1-105の表面1-107に垂直な軸に沿った(例えば、z軸に沿った)異なる位置に形成され得る。各層は、1次元に周期的(例えば図1-3Aに示される)、又は幾つかのケースで2次元に(例えば、x軸及びy軸に素って)周期的であるパターニングされた材料1-302、1-304を含み得る。図1-3Bの光ナノ構造は、第一の材料(例えば、誘電材料又は導電材料)の第一の複数の離散領域(1-302)と、異なる屈折率を有する第二の材料(誘電材料、導電材料、又は空気)の第二の複数の離散領域(1-304)を含む。
【0053】
幾つかの実施形態において、1つの層の離散領域は他の層の離散領域に関してずらされている。例えば、図1-3Bのこの例示的な光ナノ構造では、第一及び第三の層の各々は、x軸に沿って第二及び第四の層に関してずらされている。
【0054】
多層光ナノ構造の各層の高さ(H1)又は厚さは、幾つかの実施形態では50m~1μm、幾つかの実施形態では50nm~500nm、幾つかの実施形態では100nm~500nm、幾つかの実施形態では100nm~300nm、幾つかの実施形態では150nm~300nm、幾つかの実施形態では100nm~250nm、幾つかの実施形態では150m~250nm、幾つかの実施形態では100nm~150nm、幾つかの実施形態では150nm~200nm、幾つかの実施形態では120nm~150nm、幾つかの実施形態では120nm~140nm、幾つかの実施形態では120nm~130nm、又は幾つかの実施形態では130nm~140nmであり得る。その他の範囲もまた可能である。異なる層は異なる高さを有し得る。代替的に、全ての層が基本的に同じ高さを有し得る。
【0055】
幾つかの実施形態において、光ナノ構造は、ある平面内で2次元に周期的又は準周期的な構造変動を有し得る。ある平面内で2次元に構造変動を有する光ナノ構造の例が図1-3C及び1-3Dに描かれている。図1-3Cの例では、第二の材料1-314の列が第一の材料1-312の領域により相互から分離されている。第一及び第二の材料1-312、1-314は、材料1-302、1-304に関して上で述べた材料の何れでもあり得る。図1-3Cの例では、第二の材料1-314は第一の材料1-312より低い屈折率の値を有し得る。図1-3Dの例では、第一の材料1-322の列は第二の材料1-324の領域により相互から分離されている。第一及び第二の材料1-322、1-324は、材料1-302、1-304に関して上で述べた材料の何れでもあり得る。図1-3Dの例において、第二の材料1-324は第一の材料1-322より高い屈折率の値を有し得る。
【0056】
図1-3C及び図1-3Dに描かれる例において、x軸に沿った周期性(P2及びP3)は図1-3Aに関して上で述べた範囲のうちの何れの中の値も有し得る。同様に、y軸に沿った周期性は、周期性は、図1-3Aに関して上で述べた範囲のうちの何れの中の値も有し得る。平坦な2次元光ナノ構造のユニットセル内に1つの材料から形成された特徴は、例えば正方形、長方形、多角形、三角形、円、又は不規則と、何れの適当な形状も有し得る。x軸に沿った構造的特徴の幅(W2及びW3)は、図1-3Aに関して上で述べた範囲のうちの何れの中の値も有し得る。同様に、y軸に沿った構造的特徴の幅も、図1-3Aに関して上で述べた範囲のうちの何れの中の値も有し得る。幾つかの実施形態において、図1-3C又は図1-3Dに示されるもののような平坦な2次元の光ナノ構造の複数の層は、z軸に沿ったスタックに形成され得る。層は、図1-3Bの配置と同様にずらされていてよい。各層の高さ(H3)は図1-3Bに関連して上で述べた範囲のうちの何れの中の値も有し得る。
【0057】
1次元に周期的な光ナノ構造と比較して、2又は3次元に周期的なものでは、追加の設計パラメータが提供される。その結果、2又は3次元に周期的な光ナノ構造は、所望のスペクトル応答を創出する上でのより大きなフレキシビリティが提供される。例えば、幾つかの実施形態において、2又は3次元に周期的な光ナノ構造は、フォトニックバンドギャップ内若しくは受容されるフォトニックバンド内でのより平坦なスペクトル応答、及び/又はフォトニックバンドギャップ若しくは受容されるフォトニックバンドの縁部におけるより急峻なロールオフを有する。より急峻なロールオフは、透過係数と反射係数の差がより大きくなることと、発光波長がフォトニックバンドギャップ又は受容されるバンドの縁に近くなることにつながる可能性がある。
【0058】
図1-3A、1-3B、1-3C、及び1-3Dに関連して説明した例は、1又は2次元の周期性を示す。追加的又は代替的に、準周期光ナノ構造は、禁止されるフォトニックバンドギャップ又は受容されるフォトニックバンドにより特徴付けられるスペクトル応答を実現するために使用され得る。その中に記載されている種類の準周期光ナノ構造は、幾つかの実施形態によれば、2つ以上の交互のビルディングブロックを含み得る。準周期光ナノ構造の例には、フィボナッチ数列に基づく1次元フォトニック構造(図1-3Eに示される)、ベローズ構造に基づく2次元フォトニック構造(図1-3Fに示される)、正二十面体準結晶構造を有する3次元フォトニック構造、トゥエ・モース数列に基づく1、2、又は3次元フォトニック構造、周期二倍配列に基づく1、2、若しくは3次元フォトニック構造、ルディン-シャピロ数列に基づく1、2、又は3次元フォトニック構造、カントール数列に基づく1、2、又は3次元フォトニック構造及びその他が含まれる。幾つかのこのような構造では、これらが並進対称性を持たないにもかかわらず、フォトニックバンドギャップ又は受容されるバンドでのスペクトル応答が得られ得る。本明細書に記載した種類の周期構造は、決定論的に非周期的であり得る。
【0059】
図1-1を再び参照すると、導波路1-115とセンサ1-122との間に光ナノ構造が存在することにより、励起放射1-144が拒絶され、他方で発光エネルギ1-142は透過することになり得る。励起放射1-144は、導波路1-115から直接到来する、及び/又は機器の他の表面から散乱し得る。本発明者らは、本願の実施形態の光ナノ構造が、例えば多層誘電干渉フィルタより、広い角度範囲からの励起放射1-144の透過を減らすことにおいて、より有効である可能性があることに気付き、そのように認識した。
【0060】
図1-4A及び1-4Bは、図1-1に描かれているものと同様の例示的な構造を有する集積素子に関して計算された例示的な電場パターンを描く。しかしながら、シミュレーションの中にマイクロディスクが含められ、導波路1-115と光ナノ構造1-135の間に位置付けられている。マイクロディスクについては、後で詳しく説明するが、発光放射をセンサ1-122上に集束させるのに役立つ。このシミュレーションでは、導波路1-115と光ナノ構造は、酸化シリコンにより取り囲まれた窒化シリコンを含む。光ナノ構造は、図1-3Dに示されるもののような立方晶を有する単層平坦2次元ナノ構造として形成される。第一の材料1-322は、窒化シリコンから形成され、第二の材料1-324は酸化シリコンから形成される。例えば、ピッチP3は260nmであり、幅W3は160nmであり、層の厚さH3は125nmである。
【0061】
この例示的なシミュレーションでは、励起放射は532nmの固有波長(λ=λexcitation)を有し、発光放射は572nmの固有波長(λ=λemission)を有する。他の実施形態では、他の光ナノ構造パラメータ(周期性、幅、厚さ等)及び/又はその他の波長(例えば、620nm~650nmの範囲の発光波長を生成するための500nm~540nmの励起波長を含む)が使用され得る。電場パターンは、マックスウェルの方程式を解く(例えば、有限差分時間ドメイン分析を使用する)ソフトウェアを使い、励起及び発光放射について以下の初期条件でのシミュレーションドメイン内で計算した:1)外部光源からのλ=λexcitationでの放射がシングルモード導波路1-115に結合され、2)反応チャンバ1-130内でλ=λemissionの放射が生成される。
【0062】
λ=λexcitationについて図1-4Aに示されるように、電場の多くの部分が導波路1-115内に閉じ込められ、これは励起放射を反応チャンバ1-130に送達する。しかしながら、励起放射の電場のかなりの量が、導波路に関係するエバネッセント場並びに導波路の壁及び反応チャンバを含むピクセル内のその他の構造からの散乱によって、導波路1-115の下方に延びる。光ナノ構造1-135は、励起電場のほとんどを導波路へと戻すように反射させることができる。光ナノ構造1-135がないと、電場はセンサ1-122に到達し、背景ノイズに寄与し得る。このような結果は、それによって検出システムの信号対ノイズ比が低下する可能性があるため、望ましくない。光ナノ構造を導波路1-115とセンサ1-122との間に使用することにより、センサ1-122に隣接する領域内の電場の大きさの実質的な縮小につながる。その結果、検出される励起エネルギの量が大幅に削減される。
【0063】
図1-4Bに示されるように、反応チャンバ1-130からセンサに向かって進むλ=λemissionの発光放射はほとんどが光ナノ構造1-135を透過し、センサ1-122へと進むことができる。前述のように、マイクロディスク145は発光放射をセンサ1-122に集束又は集光させるのを助ける。
【0064】
本発明者らはさらに、励起放射がある状況において異なる入射角で光ナノ構造1-135に当たり得ることに気付いた。これは、その他の考え得る理由の他に、励起放射がピクセル内の構造で何度も反射し、散乱してから光ナノ構造に当たることに起因し得る。この問題に気付き、本発明者らは、本願の実施形態の光ナノ構造の有利な特徴が、例えば、多層干渉フィルタより広い範囲の入射角にわたる放射を拒絶できることであると認識した。
【0065】
他の種類の光リジェクタと比較して、本明細書に記載の種類の光ナノ構造によれば、広い範囲の入射角にわたる光の拒絶が提供される。単層の光ナノ構造の場合、この挙動は、(1又は2次元の)周期又は準周期構造変動がxy平面内に存在することによる。図1-5は、関心対象の波長における2種類の光学的構造に関連する拒絶比を入射角(水平軸)に関してプロットしたものを示すグラフである。拒絶比は、光学構造を透過した固有発光波長(この例では572nm)の発光放射の量を光学構造を透過した固有励起波長(この例では532nm)の励起放射の量で割った比である。発光放射と励起放射について同じ量のパワーが光学構造に入射する。入射角は、光学構造の平坦面の法線に関して測定される。
【0066】
第一の拒絶比曲線1-501は、23の層を有し(ただし、10~50層、10~40層、20~50層、又は20~40層等、他の何れの数の層も使用され得る)、z軸に沿って屈折率が交互である多層干渉フィルタについてプロットされている。この光学構造はxy平面内に構造変動を示さない。それゆえ、各xy平面において屈折率は均一である。この光学構造の拒絶比は20°未満で比較的高いが、20°を超える入射角では大きく低下する。この低下は、約22°より大きい角度で光学構造に当たる励起放射のかなりの量が光学構造を透過して、センサ1-122での背景信号に寄与する可能性があることを意味する。
【0067】
第二の拒絶比曲線1-502は、平面内構造変動を有する本願の実施形態の例示的な単層光ナノ構造についてプロットされた。例示的な光ナノ構造は、酸化シリコンに埋め込まれた窒化シリコンの基本的に立方コラムを有する立方格子を有する。コラムの幅は140nmであり、x及びyの両方向への周期性は250nmである。層の厚さは125nmである。図1-5に示されるように、拒絶比は45°未満の全ての角度について約10より大きい。したがって、この光学ナノ構造は、多層干渉フィルタより、入射角の広い範囲にわたり励起放射をより良く拒絶できる。
【0068】
集積素子のピクセルに含められ得る光学構造の他の例が図2-1に示されている。幾つかの実装形態によれば、1つ又は複数の虹彩層2-110がセンサ1-122の上方に形成され得る。虹彩層2-110は、減光材料を通る開口又は穴2-112を含み得る。減光材料には、金属、ポリマ、半導体、又は虹彩層2-110に入射した励起放射のほとんどを拒絶する(例えば、吸収及び/又は反射する)何れの材料も含まれ得る。減光材料はまた、幾つかのケースでは発光放射も拒絶し得る。穴2-112は、反応チャンバ1-130からの発光を、虹彩層2-110を通ってセンサ1-122に到達させることができ、他方で、減光材料は他の方向から(例えば、隣接するピクセルから、又は散乱した励起放射から)の放射を遮断し、又は減衰させることができる。例えば、虹彩層2-110は、広い入射角での散乱励起放射を遮断し、又は減衰させて、センサ1-122に当たって背景ノイズに寄与しないようにすることができる。幾つかの実施形態において、虹彩層2-110は導電材料で形成され、基板1-105上、又はその上方で形成される回路構成のための電位基準平面又は設置平面を提供してよい。幾つかの実施形態では、虹彩層2-110は誘電材料から形成され得る。虹彩層内の穴2-112は、正方形、長方形、円板、楕円、多角形等、何れの適当な形状にもし得る。
【0069】
図2-1の例では、2つの虹彩層2-110が含められている。1つの虹彩層は、導波路1-115と光ナノ構造1-135との間に設置される。他の虹彩層は光ナノ構造1-135とセンサ1-122との間に設置される。しかしながら、理解すべき点として、他の何れの適当な数の虹彩層及び位置も使用され得る。幾つかのケースでは、1つの虹彩層が使用され得、反応チャンバ1-130と光ナノ構造1-135との間又は光ナノ構造1-135とセンサ1-122との間に位置付けられ得る。
【0070】
幾つかの実施形態において、集光光学素子2-160が、反応チャンバから発せられた発光放射をセンサ上に集光させるために使用され得る。図2-1の例において、集光光学素子2-160は反応チャンバ1-130と光ナノ構造1-135との間に位置付けられているが、その他の配置もまた可能である。幾つかの実施形態によれば、集光光学素子2-160は発光放射の波長で透過性を有し、集光光学素子2-160を取り囲む材料の屈折率とは異なる(例えば、それより高い)屈折率を有する1つ又は複数の材料で製作され得る。このようにして、集光光学素子2-160は、反応チャンバ1-130からの発光放射をある程度集束させることができる。幾つかの実施形態において、光学素子2-160は円板(例えば、マイクロディスク)の形状とし得、それによって回転対称が得られる。光学素子2-160は、円板の中心がz軸に沿って反応チャンバ1-130の中心と整列するように位置付けられ得る。幾つかの実施形態において、反応チャンバ1-130、光学素子2-160、虹彩2-112、及びセンサ1-122は、z軸に素って相互にアラインメントがとられ得る。
【0071】
幾つかの実施形態によれば、本明細書に記載の種類の機器は、材料の堆積とパターニングの連続ステップにより、集積素子のためのチップ内に複数のレベルを構築することで製作され得る。幾つかの実装形態において、集積素子のためのチップは、2つの基板又はウェハを相互に結合することにより得られ得る。例えば、集積素子(そのピクセルにおける例示的構造が図2-1に描かれる)は、生体光学基板1-100から形成され得、これはアラインメントをとってCMOS基板1-101に結合することができる。例示的な生体光学基板1-100は複数のピクセルを含むことができ、各ピクセルは反応チャンバ1-130、導波路1-115、光ナノ構造1-135、及び任意選択として、1つ又は複数の虹彩層2-110及び1つ又は複数の光学素子2-160を有する。例示的なCMOS基板1-101は、センサ1-122を(例えばピクセルごとに)有する複数の対応するピクセルと、センサにより生成された信号を処理するための回路構成とを含むことができる。層2-202は導電層又は半導体層を示し、これらは信号のルーティング及び/又は処理に使用され得る。
【0072】
幾つかの実施形態による、1対の虹彩層2-110と集光光学素子2-160の効果が図2-2に描かれている。図のように、z軸に実質的に平行に発せられた光線は、虹彩層の開口をまっすぐに通過する。z軸から実質的に逸れる角度で発せられた光線は、虹彩層2-110のうちの1つにより拒絶される。より小さい角度で発せられた光線は、光学素子2-160により集束される。その結果、反応チャンバ1-130から発せられた放射はセンサ1-122上に集光され、このようにして信号対ノイズ比が増大する。
【0073】
集積素子のピクセルに含められ得る構造の他の例が図2-3に示されている。幾つかの実装形態によれば、1つ又は複数の減光層2-150は、その上に反応チャンバ1-130が形成され得る層1-110の上の形成され得る。減光層2-150は、1つ又は複数の金属層から形成され得る。幾つかのケースで、減光層2-150は、半導体及び/又は酸化物層を含み得る。減光層2-150は、光導波路1-115からの励起放射が反応チャンバ1-130の上方のサンプルへと進み、サンプル内の蛍光体を励起させるのを減少又は阻止し得る。それに加えて、減光層2-150は、反応チャンバの上方からの外部放射がセンサ1-122へと通過するのを防止できる。反応チャンバの外部からの発光は、望ましくない背景放射及び信号ノイズに寄与する可能性がある。減光層2-150は、本明細書に記載の実施形態の何れとも使用され得る。
【0074】
幾つかの実施形態による使い捨てチップのための例示的な構造3-100が図3に示されている。使い捨てチップ構造3-100は、半導体基板3-105を有し、基板上に形成された複数のピクセル3-140を含む生体光電子チップ3-110を含み得る。各ピクセル3-140は、図1-1~図2-3に関連して前述したような光ナノ構造の構造と実施形態を有し得る。幾つかの実施形態において、導波路3-115の行(又は列)があり得、これは励起放射をピクセル3-140の行(又は列)に提供する。図1-1の導波路1-115は、幾つかの実装形態において、このような導波路の何れの1つとしての役割も果たし得る。励起放射は、例えば光ポート3-150を通じて導波路へと結合され得る。幾つかの実施形態において、格子カプラは、生体光電子チップ3-110の表面上に形成されて、集束されたビームからの励起放射を複数の導波路3-115に接続される1つ又は複数の受光導波路に結合し得る。
【0075】
使い捨てチップ構造3-100は、チップ3-110上のピクセル領域の周囲に形成される壁3-120をさらに含み得る。壁3-120は、チップを支持するプラスチック又はセラミック製ケーシングの一部であり得る。壁3-120は少なくとも1つの貯蔵部3-130を形成し得、その中に少なくとも1つのサンプルが設置されて、生体光電子チップ3-110の表面上の反応チャンバ1-130と直接接触し得る。壁3-120は、貯蔵部3-130内のサンプルが、例えば光ポート3-150及び格子カプラを含む領域に流れ込むのを阻止し得る。幾つかの実施形態において、使い捨てチップ構造3-100は、使い捨てチップの外面上の電気コンタクトとパッケージ内の相互接続をさらに含み得て、生体光電子チップ3-110上の回路構成とそのチップが取り付けられる機器内の回路構成との間の電気接続を確立できる。
【0076】
前述のように、光ナノ構造1-135は、図3に描かれる使い捨てチップ3-100のみに限定されない。光ナノ構造1-135の例示的な実施形態は、フォトセンサアレイを有するイメージングチップ等、他のチップに含まれ得る。このようなイメージングチップは、カメラ、ビデオカメラ、スマートフォン、及び光検出アレイで使用され得る。
【0077】
II.光ナノ構造の製造方法
図4-1A~4-1Jは、光の構造(例えば、前述の光ナノ構造の何れか1つ)の製造方法に関連する例示的な構造を示す。図4-1Aに描かれる処理ステップにおいて、基板4-100が提供されるか、又は得られて、その上にリソグラフィステップが実行され得る。基板4-100は、基板4-100上にすでに形成された幾つかの構造を含み得る。例えば、基板4-100は、図1-1又は図2-1に示される構造の一部を光ナノ構造1-135の下に含み得る。幾つかの実施形態において、基板4-100はバルク半導体基板を含み得るが、幾つかの実装形態では、その他の種類のバルク基板が使用され得る。
【0078】
幾つかの実施形態によれば、第一の材料層4-102は、図4-1Bに示されるように、基板4-100上に堆積され、又は成長させられ得る。第一の材料層4-102は、例えば物理気相成長法(PVD)、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD)、高密度プラズマ(HDP)PECVD、又はスパッタリングにより堆積させ得る。第一の材料層4-102は、アモルファスシリコン、窒化シリコン、窒化チタン、酸化チタン及び、光ナノ構造1-135に関して前述したその他の考え得る材料、すなわちシリコン富化窒化物I及びシリコン富化窒化物II等、特定のn(屈折率)とk(消光係数)を有するシリコン富化窒化物を含み得る。その後、図4-1Cに示されるように、フォトレジスト層4-104を第一の材料層4-102上に堆積させて、フォトリソグラフィによる露光及び現像プロセスを使ってパターニングすることができる。図4-1Dに示されるように、パターニングされたフォトレジスト層4-104をエッチマスクとして使用して、第一の材料層4-102を、フォトレジストが除去された領域においてエッチングし、第一の材料層4-102の中に空洞を形成することができる。残っているフォトレジストは、クリーニングステップ中に基板から除去され得る。エッチングされた第一の材料層4-102の残りの構造は、複数の材料領域4-106を含み得て、これは例えば、図1-3A~図1-3Fに関連して前述した単層構造のうちの1つにしたがって配置され得る。材料領域4-106は、例えば光ナノ構造1-135のコラムを形成し得る。
【0079】
幾つかの実装形態において、図4-1Eに示されるように、第二の材料層4-108(第一の材料層とは異なる屈折率を有する)を材料領域4-106の上に堆積させることができる。第二の材料層4-108は、何れの適当な成膜方法、例えばPVD、PECVD、HDP PECVD、又はスパッタリングによっても堆積され得る。第二の材料層4-108は、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタン、酸化チタン及び、光ナノ構造1-135に関して前述したその他の考え得る材料、すなわちシリコン富化窒化物I及びシリコン富化窒化物II等、特定のn(屈折率)とk(消光係数)を有するシリコン富化窒化物を含み得る。幾つかのケースで、第二の材料層4-108は、材料領域4-106間の領域を埋める。幾つかの実装形態によれば、第二の材料層4-108は、例えば化学機械研磨(CMP)を通じて平坦化され得、その結果、図4-1Fに示されるように平坦面が得られる。しかしながら、幾つかのケースでは、1つ又は複数の層を第二の材料層4-108の上に堆積させて、第二の材料層4-108の平坦化ステップを実行しなくてもよい。幾つかの実施形態において、図4-1Fに描かれる構造は光ナノ構造1-135を形成し、例えば図1-3A~図1-3Fに関連して前述した単層構造のうちの1つにしたがって配置され得る。
【0080】
任意選択により、1つ又は複数の追加の層が光ナノ構造に追加され得、それによって例えば図1-3Bの配置が得られる。図4-1G~図4-1Jは、幾つかの実施形態による第二のナノ構造層を形成するためのステップに関連する構造を描く。追加の層は、同様のステップを使って形成され得る。幾つかの実装形態において、図4-1Gに描かれるように、第三の材料層4-110を第二の材料層4-108上に堆積又は成長させることができる。第三の材料層4-110は、例えばPVD、PECVD、HDP PECVD、又はスパッタリングにより堆積され得る。第三の材料層4-110は、アモルファスシリコン、窒化シリコン、窒化チタン、酸化チタン及び、光ナノ構造1-135に関して前述したその他の考え得る材料、すなわちシリコン富化窒化物I及びシリコン富化窒化物II等、特定のn(屈折率)とk(消光係数)を有するシリコン富化窒化物を含み得る。幾つかの実装形態において、第三の材料層4-110は、第一の材料層4-102と同じ材料とし得る。幾つかの実施形態によれば、フォトレジスト層4-112は、第三の材料層4-110の上に堆積させて、フォトリソグラフィによる露光及び現像プロセスを使ってパターニングすることができる。図4-1Hに示されるように、パターニングされたフォトレジスト層4-112をエッチマスクとして使用して、第三の材料層4-110を、フォトレジストが除去された領域においてエッチングすることができる。残っているフォトレジストは、エッチングの後に基板から除去できる。結果として得られた構造には、複数の材料領域4-114が含まれる。
【0081】
次に、第四の材料層4-116を材料領域4-114の上に、例えばPVD、PECVD、HDP PECVD、又はスパッタリングにより堆積され得る。幾つかのケースで、第四の材料層4-116は、図4-1Iに描かれているように、材料領域4-114間の領域を埋める。幾つかの実施形態によれば、第四の材料層4-116は、第三の材料層4-110の屈折率とは異なる屈折率を有する材料で製作され得る。第四の材料層4-116は、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタン、酸化チタン及び、光ナノ構造1-135に関して前述したその他の考え得る材料、すなわちシリコン富化窒化物I及びシリコン富化窒化物II等、特定のn(屈折率)とk(消光係数)を有するシリコン富化窒化物を含み得る。幾つかのケースで、第四の材料層4-116は、第二の材料層4-108と同じ材料とし得る。幾つかの実装形態によれば、第四の材料層4-116は、例えばCMPプロセスステップを使って平坦化でき、それによって図4-1Jに描かれているような平坦面が得られる。他の実装形態では、1つ又は複数の層を第四の材料層4-116の上に堆積させて、第四の材料層の平坦化ステップを実行しなくてもよい。
【0082】
光ナノ構造の他の例示的な製造方法に関連する構造のその他の例が図4-2A~図4-2Jに描かれる。この製造方法は、幾つかの点において、図4-1A~図4-1Jの製造方法と同様である。しかしながら、図4-1A~図4-1Jの製造方法と異なり、材料領域を形成するためのエッチングマスクとして二重マスク層4-104/4-103及び4-112/4-111が使用される。基板4-100と層4-102、4-104、4-106、4-108、4-110、4-112、4-114、及び4-116は、図4-1A~図4-1Jに関連して説明したものと同じ特徴を有し得る。二重マスク層(2層レジストと呼ばれることもある)は、幾つかのケースで、1層のフォトレジストと比較して改善されたエッチング感度又は改善されたパターニングフィデリティを提供できる。幾つかの実施形態において、マスク層の1つ(例えば、4-103、4-111)は、例えば金属、酸化物、窒化物、半導体から形成される、いわゆる「ハードマスク」を含み得る。
【0083】
光ナノ構造1-135の例示的な形成方法は、図4-2Aに描かれるように、基板4-100を得ることを含み得る。図4-1Aに関連して前述したように、基板はパターニングされた構造を含み得る。第一の材料層4-102は、前述のように、基板4-100上に堆積又は成長させられ得る。追加的に、第一のレジスト層4-103は、図4-2Bに描かれるように、第一の材料層4-102上に堆積させることができる。第一のレジスト層4-103は、ポリマではなく硬質材料であり得る。例えば、第一のレジスト層4-103は、酸化シリコン、窒化シリコン、タンタル及びその他の考え得る材料、すなわちシリコン富化窒化物I及びシリコン富化窒化物II等、特定のn(屈折率)とk(消光係数)を有するシリコン富化窒化物を含み得る。1つの例によれば、第一の材料層4-102は窒化シリコンであり得、第一のレジスト層4-103は酸化シリコンであり得るが、他の材料の組合せも使用できる。図4-2Cに描かれるように、フォトレジスト層4-104(第二のレジスト層)がその後、第一のレジスト層4-103上に堆積されて、フォトリソグラフィによる露光及び現像プロセスを使ってパターニングされ得る。パターニングされたフォトレジスト層4-104を第一のエッチマスクとして使用して、図4-2Dに描かれるように、第一のレジスト層4-103をフォトレジストが除去された領域内でエッチングして、パターンをフォトレジストから第一のレジスト層4-103に転写することができる。このエッチングステップ中、及び/又はその後、フォトレジスト層4-104は除去され得る。
【0084】
第一のレジスト層4-103をエッチマスクとして使用して、第一の材料層4-102を第一のレジスト層4-103が除去された領域でエッチングして、第一の材料層4-102内に空洞を形成することができる。エッチングプロセスにより、図4-2Eに描かれるように、材料領域4-106が残る。幾つかのケースで、残っている第一のレジスト層4-103は基板から除去され得る。他のケースでは、残っている第一のレジスト層は、図4-2Eに示されるように、材料領域4-106上に残され得る。幾つかのケースで、第一のレジスト層は、第一の材料層4-102及び第二の材料層4-108よりはるかに薄いものであり得、光ナノ構造4-135の性能にそれほど影響を与えない。幾つかの実装形態において、第一のレジスト層4-103は第二の材料層4-108と同じ材料であり得る。エッチングした材料領域4-106を形成した後、図4-2Fに描かれているように、第二の材料層4-108を材料領域4-106上に堆積させることができる。第二の材料層は、材料領域4-106間の領域を埋め得る。幾つかのケースで、第二の材料層4-108は、例えばCMPによって平坦化され得る。図4-2Fの構造は、図1-3A~図1-3Fに関連して前述した単層光ナノ構造1-135を形成し得る。
【0085】
任意選択により、1つ又は複数の追加の層が光ナノ構造に追加されてよく、それによって例えば図1-3Bの配置が得られる。図4-2G~図4-2Jは、幾つかの実施形態による第二のナノ構造層を形成するステップに関連する構造を描く。追加の層は、同様のステップを使って形成され得る。例えば、第三の材料層4-110は、図4-2Gに描かれているように、第二の材料層4-108上に堆積又は成長させることができる。その後、第一のレジスト層4-111を第三の材料層4-110の上に堆積させることができ、フォトレジスト層4-112を第一のレジスト層4-111上に堆積させることができる。フォトレジスト層は、フォトリソグラフィによる露光及び現像プロセスを使ってパターニングできる。図4-2Hについて前述し、描かれたように、フォトレジスト層4-112は、フォトレジスト層が除去された領域において第一のレジスト層4-111をエッチングするためのエッチマスクを提供でき、第一のレジスト層は、第三の材料層4-110をエッチングするためのエッチマスクを提供できる。残りのフォトレジスト4-112は、第三の材料層4-110のエッチング中又はその後、除去され得る。第三の材料層4-110をエッチングすることにより、材料領域4-114が形成される。第四の材料層4-116は、材料領域4-114の上に堆積させることができ、図4-2Iに描かれるように、材料領域4-114間の空間を埋め得る。幾つかの実施形態によれば、第四の材料層4-116は、図4-2Jに描かれるように、平坦化され得る。
【0086】
図4-1H及び図4-2Hの図は、第二の材料領域4-114が第一の材料領域4-106上方に形成されて、第二の材料領域4-114の底部が第一の材料領域4-106の最上部から縦方向に離間され、これらの底部と最上部との間に第二の材料4-108の均一な層があることを示している。しかしながら、幾つかの実装形態においては、これらの底部と最上部との間に空間がなくてもよい。例えば、第二の材料層の平坦化ステップにより、第一の材料領域4-106の最上部の上の第二の材料層4-108のほとんど又は全部が除去され得、それによって第二の材料領域4-114の底部は、第一の材料領域4-106の最上部と基本的に同じ高さとなる。
【0087】
III.例示的な生体分析応用
集積半導体を使用して、高度な分析機器で使用される使い捨てチップ上の反応チャンバから発せられた放射の検出を改善できる例示的な生体分析応用について説明する。機器の受容部に取り付けられると、使い捨てチップは、高度な分析器内の光学及び電子装置と光学的及び電子的に通信できる。機器は、外部インタフェースのためのハードウェアを含み得て、チップからのデータを外部ネットワークに通信できる。実施形態において、「光学」という用語は紫外、可視、近赤外、及び短波長赤外スペクトルバンドを指し得る。様々な種類の分析を各種のサンプルについて実行できるが、以下の説明は遺伝子配列特定について述べている。しかしながら、本発明は遺伝子配列特定のために構成された機器に限定されない。
【0088】
概して、図5-1Aを参照すると、ポータブルの高度な分析器5-100は、機器5-100の中に交換可能モジュールとして取り付けられ、又はそれ以外に連結される1つ又は複数のパルス光源5-108を含むことができる。ポータブル分析器5-100は、光結合システム5-115と分析システム5-160を含むことができる。光結合システム5-115は光学コンポーネント(これには例えば、以下のコンポーネントの中の何れも含まないか、その中の1つ、又はその中の複数のコンポーネントを含み得る:レンズ、ミラー、光学フィルタ、減衰器、ビームステアリングコンポーネント、ビーム成形コンポーネント)の何れかの組合せを含むことができ、パルス光源5-108から出力された光パルス5-122に対して動作し、これを分析システム5-160に結合するように構成できる。分析システム5-160は、光パルスをサンプル分析のための少なくとも1つの反応チャンバへと方向付け、1つ又は複数の光信号(例えば、蛍光、後方散乱放射)を少なくとも1つの反応チャンバから受信し、受信した光信号を表す1つ又は複数の電気信号を生成するように配置された複数のコンポーネントを含むことができる。幾つかの実施形態において、分析システム5-160は、1つ又は複数の受光素子を含むことができ、また、受光素子からの電気信号を処理するように構成された信号処理電子部品(例えば、1つ又は複数のマイクロコントローラ、1つ又は複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、1つ又は複数のデジタルシグナルプロセッサ、ロジックゲート等)も含み得る。分析システム5-160はまた、外部機器(例えば、機器5-100を1つ又は複数のデータ通信リンクを介して接続できるネットワーク上の1つ又は複数の外部機器)とのデータの送受信を行うように構成されたデータ伝送ハードウェアも含むことができる。幾つかの実施形態において、分析システム5-160は、分析対象の1つ又は複数のサンプルを保持する生体光電子チップ5-140を受けるように構成できる。
【0089】
図5-1Bは、小型パルス光源5-108を含むポータブル分析器5-100のさらに詳細な例を描く。この例において、パルス光源5-108は小型の受動モードロックレーザモジュール5-110を含む。受動モードロックレーザは、自律的に光パルスを生成でき、外部からのパルス信号の印加は行われない。幾つかの実装において、モジュールは機器のシャーシ又はフレーム5-102に取り付けることができ、機器の外部ケーシングの中に位置付けられ得る。幾つかの実施形態によれば、パルス光源5-108は、光源を動作させ、光源5-108からの出力ビームに対して操作を行うために使用可能な追加のコンポーネントを含むことができる。モードロックレーザ5-110は、レーザキャビティ内の、又はレーザキャビティに連結された、レーザの縦周波数モードのフェーズロックを誘導する素子(例えば、可飽和吸収体、音響光学モジュレータ、カーレンズ)を含み得る。レーザキャビティは、一部にキャビティエンドミラー5-111、5-119により画定できる。このような周波数モードロックの結果、レーザのパルス動作が可能となり(例えば、キャビティ内パルス5-120はキャビティエンドミラー間で前後に跳ね返る)、部分的に透過性を有する一方のエンドミラー5-111からの出力光パルス5-122のストリームを生成する。
【0090】
幾つかのケースで、分析器5-100は取外し可能なパッケージ式生体光電子又は光電子チップ5-140(「使い捨てチップ」とも呼ばれる)を受けるように構成される。使い捨てチップは、例えば図4に描かれているような生体光電子チップ3-110を含むことができ、これは複数の反応チャンバ、光励起エネルギを反応チャンバに送達するように配置された集積光学コンポーネント、及び反応チャンバからの蛍光発光を検出するように配置された集積受光素子と、を含む。幾つかの実装において、チップ5-140は毎回使用後に処分することができ、他の実装では、チップ5-140は2回以上再使用することもできる。チップ5-140が機器5-100により受けられると、これはパルス光源5-108及び分析システム5-160内の装置と電気的及び光学的に通信できる。電気通信は、例えばチップのパッケージ上の電気コンタクトを通じてなされ得る。
【0091】
幾つかの実施形態において、図5-1Bを参照すると、使い捨てチップ5-140は、追加的な機器電子部品を含むことのできるプリント回路基板(PCB)等の電子回路基板5-130上に(例えば、ソケット接続を介して)取り付けることができる。例えばPCB 5-130は、電力、1つ又は複数のクロック信号、及び制御信号を光電子チップ5-140に提供するように構成された回路構成、及び反応チャンバから検出された蛍光発光を表す信号を受信するように配置された信号処理回路構成を含むことができる。幾つかの実装において、光電子チップから返されたデータは、一部又は全体が機器5-100上の電子部品により処理できるが、データはネットワーク接続を介して1つ又は複数のリモートデータプロセッサに伝送され得る。PCB 5-130はまた、チップからの、光電子チップ5-140の導波路に結合される光パルス5-122の光学結合及びパワーレベルに関するフィードバック信号を受信するように構成された回路構成も含むことができる。フィードバック信号は、パルス光源5-108と光学システム5-115の一方又は両方に提供されて、光パルス5-122の出力ビームの1つ又は複数のパラメータを制御することができる。幾つかのケースでは、PCB 5-130は、光源及び光源5-108内の関連する回路構成を動作させるためのパワーをパルス光源5-108に提供し、又は送ることができる。
【0092】
幾つかの実施形態によれば、パルス光源5-108は、小型のモードロックレーザモジュール5-110を含む。モードロックレーザは、利得媒質5-105(幾つかの実施形態において、これはソリッドステート材料とすることができる)、出力カプラ5-111、及びレーザキャビティエンドミラー5-119を含むことができる。モードロックレーザの光キャビティは、出力カプラ5-111とエンドミラー5-119により範囲を画定できる。レーザキャビティの光軸5-125は、1つ又は複数の折り返し(ターン)を有して、レーザキャビティの長さを長くし、所望のパルス繰り返し周波数を提供することができる。パルス繰り返し周波数は、レーザキャビティの長さ(例えば、光パルスがレーザキャビティ内を往復する時間)により決まる。
【0093】
幾つかの実施形態において、レーザキャビティ内に、ビーム成形、波長選択、及び/又はパルス形成のための追加の光学素子(図5-1Bでは図示せず)が存在し得る。幾つかのケースでは、エンドミラー5-119は可飽和吸収体ミラー(SAM:saturable-absorber mirror)を含み、これは縦キャビティモードの受動モードロックを誘導し、その結果、モードロックレーザのパルス式動作が得られる。モードロックレーザモジュール5-110は、利得媒質5-105を励起するためのポンプ源(例えば、レーザダイオードであり、図5-1Bでは図示せず)をさらに含むことができる。モードロックレーザモジュール5-110のさらなる詳細は、2017年12月15日に出願された「小型モードロックレーザモジュール」と題する米国特許出願第15/844,469号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0094】
レーザ5-110がモードロックされると、キャビティ内パルス5-120はエンドミラー5-119と出力カプラ5-111との間で循環することができ、キャビティ内パルスの一部は、出力カプラ5-111を通じて出力パルス5-122として伝送できる。したがって、出力パルス5-122のトレインは、図5-2のグラフに示されているように、キャビティ内パルス5-120がレーザキャビティ内で出力カプラ5-111とエンドミラー5-119との間で前後に跳ね返る際に出力カプラにおいて検出できる。
【0095】
図5-2は、出力パルス5-122の時間強度プロファイルを示しているが、図は正確な縮尺によらない。幾つかの実施形態において、発出パルスのピーク強度値はほぼ同等であり得、プロファイルはガウス時間プロファイルを有し得るが、sech型プロファイル等のその他のプロファイルも使用可能であり得る。幾つかのケースで、パルスは対称の時間プロファイルを有し得るが、その他の時間形状も有し得る。各パルスの持続時間は、図5-2に示されるように、全幅半値(FWHM)値により特徴付けられ得る。モードロックレーザの幾つかの実施形態によれば、超短光パルスのFWHM値は100ピコ秒(ps)未満とすることができる。幾つかのケースで、FWHM値は約5ps~約30psとすることができる。
【0096】
出力パルス5-122は、規則的な間隔Tだけ分離できる。例えば、Tは出力カプラ5-111とキャビティエンドミラー5-119との間の往復時間により決定できる。幾つかの実施形態によれば、パルス分離間隔Tは約1ns~約30nsとすることができる。幾つかのケースで、パルス分離間隔Tは約5ns~約20nsとすることができ、これは約0.7メートル~約3メートルのレーザキャビティの長さ(ほぼレーザキャビティ内の光軸5-125の長さ)に対応する。実施形態において、パルス分離間隔はレーザキャビティ内の往復時間に対応し、それによって3メートルのキャビティ長さ(往復距離6メートル)により得られるパルス分離間隔Tは約20nsとなる。
【0097】
幾つかの実施形態によれば、所望のパルス分離間隔Tとレーザキャビティ長さは、チップ5-140上の反応チャンバの数、蛍光発光特性、及びデータを光電子チップ5-140から読み出すためのデータハンドリング回路構成の速度の組合せにより決定できる。実施形態において、異なる蛍光体は、それらの異なる蛍光減衰速度又は特徴的寿命によって区別できる。したがって、選択された蛍光体をそれらの異なる減衰速度間で区別するための適正な統計を収集するのに十分なパルス分離間隔Tをとる必要がある。それに加えて、パルス分離間隔Tが短すぎると、データハンドリング回路構成は、多くの反応チャンバにより収集されている大量のデータを処理しきれない。約5ns~約20nsのパルス分離間隔Tは、約2nsの減衰速度を有する蛍光体及び約60,000~10,000,000の反応チャンバからのデータを扱うのに適している。
【0098】
幾つかの実装によれば、ビームステアリングモジュール5-150は、パルス光源5-108からの出力パルスを受信することができ、少なくとも光電子チップ5-140の光カプラ(例えば、格子カプラ)上の光パルスの位置と入射角を調整するように構成される。幾つかのケースで、パルス光源5-108からの出力パルス5-122はビームステアリングモジュール5-150によって操作されて、追加的又は代替的に、光電子チップ5-140上の光カプラにおけるビームの形状及び/又はビームの回転を変化させることができる。幾つかの実装において、ビームステアリングモジュール5-150はさらに、光カプラへの出力パルスのビームの集光及び/又は偏光調整を提供することができる。ビームステアリングモジュールの一例は、2016年5月20日に出願された、「パルスレーザ及び生体分析システム」と題する米国特許出願第15/161,088号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。ビームステアリングモジュールの他の例は、別の、2016年12月16日に出願された、「小型ビーム成形及びステアリングアセンブリ」と題する米国特許出願第62/435,679号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0099】
図5-3を参照すると、パルス光源からの出力パルス5-122は、例えば生体光電子チップ5-140上の1つ又は複数の光導波路5-312に結合できる。幾つかの実施形態において、光パルスは、格子カプラ5-310を介して1つ又は複数の導波路に結合できるが、幾つかの実施形態では光電子チップ上の1つ又は複数の光導波路の端への結合を使用できる。幾つかの実施形態によれば、光パルス5-122のビームの格子カプラ5-310とのアラインメントを支援するために、クワッドディテクタ5-320を半導体基板5-305(例えば、シリコン基板)上に位置付けることができる。1つ又は複数の導波路5-312及び反応チャンバ又は反応チャンバ5-330は、基板、導波路、反応チャンバ、及び受光素子5-322間に誘電体層(例えば、二酸化シリコン層)を挟んで、同じ半導体基板に集積できる。
【0100】
各導波路5-312は、反応チャンバ5-330の下に、反応チャンバに結合された光パワーを導波路に沿って均等化するためのテーパ付き部分5-315を含むことができる。減縮テーパによって、より多くの光エネルギを導波路のコアの外側に印加して、反応チャンバとの結合を増大させ、反応チャンバへの光結合に関する損失を含む導波路に沿った光損失を補償することができる。第二の格子カプラ5-317を各導波路の端に位置付けて、光エネルギを集積されたフォトダイオード5-324へと方向付けることができる。集積されたフォトダイオードは、導波路に結合されたパワーの量を検出し、検出された信号を、例えばビームステアリングモジュール5-150を制御するフィードバック回路構成に提供することができる。
【0101】
反応チャンバ5-330又は反応チャンバ5-330は、導波路のテーパ付き部分5-315と整列させ、タブ5-340で引っ込めることができる。各反応チャンバ5-330のための半導体基板5-305上に受光素子5-322を位置付けることができる。幾つかの実施形態において、半導体吸収体(図5-5では光フィルタ5-530として示されている)は、導波路と各ピクセルにおける受光素子5-322との間に位置付けられ得る。金属コーティング及び/又は多層コーティング5-350は、反応チャンバ内にない蛍光体(例えば、反応チャンバ上の溶液中に分散している)の光学的励起を防止するために、反応チャンバの周囲及び導波路の上に形成できる。金属コーティング及び/又は多層コーティング5-350は、タブ5-340の縁より高くして、各導波路の入力及び出力端における導波路5-312内の光エネルギの吸収損失を低減させ得る。
【0102】
光電子チップ5-140上に、導波路、反応チャンバ、及び時間ビニング受光素子の複数の行が存在し得る。例えば、幾つかの実装では128行があり、各々が512の反応チャンバを有し、全体で65,536の反応チャンバとすることができる。その他の実装は、これより少ない、又は多い反応チャンバを含み得、その他のレイアウト構成を含み得る。パルス光源5-108からの光パワーは、チップ5-140への光カプラ5-310と複数の導波路5-312との間に位置付けられた1つ又は複数のスターカプラ若しくはマルチモード干渉カプラを介して、又は他の何れかの手段によって、複数の導波路に分散させることができる。
【0103】
図5-4は、導波路5-315のテーパ付き部分内の光パルス5-122から反応チャンバ5-330への光エネルギ結合を示している。図は、光波の電磁場シミュレーションから作成されており、導波路の寸法、反応チャンバの寸法、異なる材料の光学特性、及び導波路5-315のテーパ付き部分の反応チャンバ5-330からの距離が考慮されている。導波路は例えば、二酸化シリコンの周囲媒質5-410の中に窒化シリコンで形成できる。導波路、周囲媒質、及び反応チャンバは、2015年8月7日に出願された、「分子を探査、検出、及び分析するための集積素子」と題する米国特許出願第14/821,688号明細書に記載された微細加工プロセスにより形成できる。幾つかの実施形態によれば、エバネッセント光波場5-420は、導波路により運ばれた光エネギを反応チャンバ5-330に結合する。
【0104】
反応チャンバ5-330内で起こる生物学的反応の非限定的な例が図5-5に描かれている。この例は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が伸長する標的核酸の相補鎖に逐次的に取り込まれる様子を描く。逐次的な取込みは反応チャンバ5-330内で起こることができ、高度な分析器により検出されて、DNA配列を特定できる。反応チャンバは、約150nm~約250nmの深さと、約80nm~約160nmの直径を有することができる。メタライゼーション層5-540(例えば、基準電位のためのメタライゼーション)は、受光素子5-322の上方でパターニングして、隣接する反応チャンバ及びその他の望ましくない光源からの迷光を拒絶する絞り又は虹彩を提供できる。幾つかの実施形態によれば、重合酵素5-520を反応チャンバ5-330内に位置付ける(例えば、チャンバの底部に付着させる)ことができる。重合酵素は、標的核酸5-510(例えば、DNAから得られた核酸の一部)を取り込み、伸張する核酸の相補鎖を配列して、DNA 5-512の伸長鎖を生成することができる。異なる蛍光体で標識されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、反応チャンバの上方及びその中の溶液中に分散させることができる。
【0105】
標識されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体5-610が伸長する核酸の相補鎖の中に取り込まれると、図5-6に描かれるように、1つ又は複数の付着した蛍光体5-630は、導波路5-315から反応チャンバ5-330に結合された光エネルギのパルスにより繰り返し励起させることができる。幾つかの実施形態において、1つ又は複数の蛍光体5-630は、1つ若しくは複数のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体5-610に何れかの適当なリンカ5-620により付着できる。取込みイベントは最大約100msの時間にわたり継続し得る。この時間中、モードロックレーザからのパルスによる蛍光体の励起から得られる蛍光発光のパルスは、例えば時間ビニング受光素子5-322により検出できる。幾つかの実施形態において、各ピクセルに、信号処理(例えば、増幅、読出し、ルーティング、信号前処理等)のための1つ又は複数の追加の集積電子素子5-323が存在し得る。幾つかの実施形態によれば、各ピクセルは蛍光発光を透過させ、励起パルスからの放射の透過を減少させる少なくとも1つの光フィルタ5-530(例えば、半導体吸収体)を含むことができる。幾つかの実装では、光フィルタ5-530を使用しなくてもよい。異なる発光特性(例えば、蛍光減衰速度、強度、蛍光波長)を有する蛍光体を異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させ、DNA 5-512の鎖が核酸を取り込んでいる間の異なる発光特性を検出し、区別することによって、伸長するDNA鎖の遺伝子配列の特定が可能となる。
【0106】
幾つかの実施形態によれば、サンプルを蛍光発光特性に基づいて分析するように構成された高度な分析器5-100は、異なる蛍光分子間の蛍光寿命及び/又は強度の差、及び/又は異なる環境における同じ蛍光分子の寿命及び/又は強度の差を検出できる。説明のために、図5-7は2つの異なる蛍光発光確率曲線(A及びB)をプロットしており、これらは例えば2つの異なる蛍光分子からの蛍光発光を表すことができる。曲線A(破線)を参照すると、短又は超短光パルスにより励起された後、第一の分子からの蛍光発光の確率p(t)は図のように時間と共に減衰し得る。幾つかのケースで、光子発出確率の経時的減少は、減衰指数関数p(t)=PAo-t/τ1により表すことができ、式中、PAoは初期発光確率、τは第一の蛍光分子に関する、発光減衰確率を特徴付ける時間パラメータである。τは、第一の蛍光分子の「蛍光寿命」、「発光寿命」、又は「寿命」と呼ばれてよい。幾つかのケースでは、τの値は蛍光分子の局所的環境によって変更できる。他の蛍光分子は、曲線Aに示されるものとは異なる発光特性を有することができる。例えば、他の蛍光分子は、1つの指数関数型減衰とは異なる減衰プロファイルを有する可能性があり、その寿命は半減期の値又はその他の何れかのメトリクスにより特徴付けることができる。
【0107】
第二の蛍光分子は、図5-7の曲線Bについて描かれているように、急激な減衰プロファイルp(t)を有し得るが、測定可能な程度に異なる寿命τを有する。図の例において、曲線Bの第二の蛍光分子の寿命は曲線Aの寿命より短く、発光確率p(t)は、第二の蛍光分子の励起後まもなくは、曲線Aより高い。異なる蛍光分子は、幾つかの実施形態において、約0.1ns~約20nsの寿命又は半減期の値を有する可能性がある。
【0108】
蛍光発光寿命は、異なる蛍光分子の有無を見分けるため、及び/又は蛍光分子がさらされる異なる環境若しくは条件を見分けるために使用できる。幾つかのケースでは、蛍光分子を寿命(例えば、発光波長ではない)に基づいて見分けることにより、分析器5-100の様々な面を単純化できる。例えば、波長区別光学系(例えば、波長フィルタ、各波長の専用検出器、異なる波長の専用パルス光源、及び/又は回折光学系)は、蛍光分子を寿命に基づいて見分ける場合、その数を減らすか、排除できる。幾つかのケースで、1つの固有波長で動作する1つのパルス光源を使って、光スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能な程度に異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起させることができる。同じ波長領域で発光する異なる蛍光分子を励起させ、見分けるために、異なる波長で動作する複数の光源ではなく、1つのパルス光源を使用する分析システムは、操作と保守をより単純に、且つより小型とすることができ、また、より低コストで製造できる。
【0109】
蛍光寿命分析に基づく分析システムには特定の利点があり得るが、分析システムにより得られる情報量及び/又は検出の正確さは、追加の検出技術を使用できるようにすれば高められる。例えば、幾つかの分析システム5-160は追加的に、蛍光波長及び/又は蛍光強度に基づいてサンプルの1つ又は複数の特性を見分けるように構成できる。
【0110】
再び図5-7を参照すると、幾つかの実施形態によれば、異なる蛍光寿命は蛍光分子の励起後の蛍光発光イベントを時間ビニングするように構成された受光素子を用いて区別できる。時間ビニングは、受光素子のための1つの電荷蓄積サイクル中に行うことができる。電荷蓄積サイクルとは読出しイベント間の間隔であり、その間に光生成キャリアが時間ビニング受光素子のビンの中で蓄積される。発光イベントの時間ビニングによって蛍光寿命を特定する概念は、図5-8において図表により紹介されている。tの直前の時間tで、ある蛍光分子又は同じ種類(例えば、図5-7の曲線Bに対応する種類)の蛍光分子の集合が短又は超短光パルスにより励起される。分子の集合が大きい場合、発光強度は、図5-8に描かれているように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有する可能性がある。
【0111】
しかしながら、1つの分子又は少数の分子の場合、蛍光光子の発出は、この例について図5-7の曲線Bの統計にしたがって起こる。時間ビニング受光素子5-322は、発光イベントから生成されたキャリアを個別の時間ビンに蓄積できる。これらのビンは図5-8に示されているが、実施形態においてはこれより少ないビン又はこれより多いビンが使用され得る。ビンは蛍光分子の励起時間tに関して時間的に分解される。例えば、第一のビンは時間tとtの間の間隔中に生成されたキャリアを蓄積でき、時間tにおける励起イベントの後発生する。第二のビンは、時間tとtの間の間隔中に生成されたキャリアを蓄積でき、第三のビンは時間tとtの間の間隔中に生成されたキャリアを蓄積できる。多数の発光イベントを加算する際、時間ビン内で蓄積されたキャリアは図5-8に示される減衰強度曲線を概算でき、ビニングされた信号を使って、異なる蛍光分子又は蛍光分子が置かれる異なる環境を区別できる。
【0112】
時間ビニング受光素子5-322は、2015年8月7日に出願された「受光光子の時間ビニングのための集積素子」と題する米国特許出願第14/821,656号明細書及び2017年12月22日に出願された、「直接ビニングピクセルを有する集積受光素子」と題する米国特許出願第15/852,571号明細書に記載されており、両出願の全体を参照によって本願に援用する。説明のために、時間ビニング受光素子の非限定的な実施形態が図5-9に描かれている。1つの時間ビニング受光素子5-322は、光子吸収/キャリア生成領域5-902と、キャリア吐出しチャネル5-906と、複数のキャリア蓄積ビン5-908a、5-908bを含むことができ、これらは全て半導体基板上に形成される。キャリア輸送チャネル5-907は、光子吸収/キャリア生成領域5-902とキャリア蓄積ビン5-908a、5-908bとの間に接続できる。図の例では、2つのキャリア蓄積ビンが示されているが、それより多くても少なくともよい。キャリア蓄積ビンに読出しチャネル5-910を接続することができる。光子吸収/キャリア生成領域5-902、キャリア吐出しチャネル5-906、キャリア蓄積ビン5-908a、5-908b、及び読出しチャネル5-910は、半導体に局所的にドーピングを行い、及び/又は隣接する絶縁領域を形成して、受光容量、キャリアの閉じ込め、及び輸送を提供することができる。時間ビニング受光素子5-322はまた、基板上に形成された複数の電極5-920、5-921、5-922、5-923、5-924を含むこともでき、これらは素子内にキャリアを輸送するための電場を素子内に生成するように構成される。
【0113】
動作時に、パルス光源5-108(例えば、モードロックレーザ)からの励起パルス5-122の一部は、時間ビニング受光素子5-322の上方の反応チャンバ5-330に送達される。当初、一部の励起放射光子5-901は光子吸収/キャリア生成領域5-902に到達し、キャリアを生成し得る(薄い影付きの円として示される)。また、ある程度の蛍光発光光子5-903も存在し得、これらは励起放射光子5-901と共に到達して、対応するキャリアを生成する(濃い影付きの円として示される)。当初、励起放射により生成されるキャリアの数は蛍光発光により生成されるキャリアの数と比較して多すぎる可能性がある。時間間隔|t-t|に生成された初期キャリアは、例えば第一の電極5-920によりキャリア吐出しチャネル5-906へとゲーティングされ、拒絶できる。
【0114】
その後の時点で、ほとんどの蛍光発光光子5-903が光子吸収/キャリア生成領域5-902に到達してキャリア(濃い影付きの円として示される)を生成し、それが反応チャンバ5-330からの蛍光発光を表す有益で検出可能な信号を提供する。幾つかの検出方法によれば、その後の時点で第二の電極5-921と第三の電極5-923をゲート制御して、その後の時点で(例えば、第二の時間間隔|t-t|中に)生成されたキャリアを第一のキャリア蓄積ビン5-908aへと方向付けることができる。続いて、その後の時点で(例えば、第三の時間間隔|t-t|中に)第四の電極5-922と第五の電極5-924をゲート制御して、キャリアを第二のキャリア蓄積ビン5-908bへと方向付けることができる。電荷蓄積はこのようにして、多数の励起パルスについて励起パルス後に続けられ、かなりの数のキャリアと信号レベルを各キャリア蓄積ビン5-908a、5-908bに蓄積できる。その後の時点で、信号はビンから読み出すことができる。幾つかの実装において、各蓄積ビンに対応する時間間隔はサブナノ秒の時間スケールであるが、幾つかの実施形態では(例えば、蛍光体がより長い減衰時間を有する実施形態では)それより長い時間スケールを使用できる。
【0115】
励起イベント(例えば、パルス光源からの励起パルス)後のキャリアの生成及び時間ビニングのプロセスは、1つの励起パルス後に1回行うことも、又は時間ビニング受光素子5-322の1回の電荷蓄積サイクル中に複数の励起パルス後に複数回繰り返すこともできる。電荷蓄積の完了後、キャリアは、読出しチャネル5-910を介して蓄積ビンから読み出すことができる。例えば、適当なバイアスシーケンスを電極5-923、5-924及び少なくとも電極5-940に印加して、蓄積ビン5-908a、5-908bからキャリアを取り出すことができる。電荷蓄積及び読出しプロセスは、光電子チップ5-140上での大量並行動作で行うことかでき、その結果、データフレームが得られる。
【0116】
図5-9に関して説明した例は複数の電荷蓄積ビン5-908a、5-908bを含んでいるが、幾つかのケースでは、その代わりに1つの蓄積ビン5-908aを使用できる。例えば、時間ビニング受光素子5-322には1つのビン1だけがあってよい。このようなケースでは、1つの蓄積ビン5-908aを可変時間ゲート方式で動作させて、異なる励起イベント後に異なる時間間隔を見ることができる。例えば、第一の一連の励起パルス内のパルス後に、蓄積ビン5-908aのための電極をゲート制御して、第一の時間間隔中(例えば、第二の時間間隔|t-t|中)に生成されたキャリアを収集でき、蓄積された信号は第一の所定のパルス数の後に読み出すことができる。同じ反応チャンバでの次の一連の励起パルス内のパルスの後、蓄積ビン5-908aのための同じ電極をゲート制御して、異なる間隔中(例えば、第三の時間間隔|t-t|中)に生成されたキャリアを収集でき、蓄積された信号は、第二の所定のパルス数の後に読み出すことができる。キャリアは、必要であれば、その後の時間間隔中に同様の方法で収集できる。このようにして、励起パルスが反応チャンバに到達した後の異なる期間中の蛍光発光に対応する信号レベルを1つのキャリア蓄積ビンを使って生成できる。
【0117】
励起後の異なる時間間隔についてどのように電荷蓄積が行われるかにかかわらず、読み出される信号は、例えば蛍光発光減衰特性を表すビンのヒストグラムを提供することができる。例示的なプロセスは図5-10A及び図5-10Bに示されており、この場合、2つの電荷蓄積ビンが反応チャンバからの蛍光発光を取得するために使用されている。ヒストグラムのビンは、反応チャンバ5-330における蛍光体の励起後の各時間間隔中に検出された光子の数を示すことができる。幾つかの実施形態において、ビンの信号は、図5-10Aに描かれるように、多数の励起パルスの後に蓄積される。励起パルスは、時間te1、te2、te3、...teNで発生させることができ、これらはパルス間隔時間Tだけ分離される。幾つかのケースで、反応チャンバ内で観察されている1回のイベント(例えば、DNA分析における1回のヌクレオチド取込みイベント)に関する電子蓄積ビンへの信号蓄積中に、10~10の励起パルス5-122(又はその一部)を反応チャンバに印加できる。幾つかの実施形態において、1つのビン(ビン0)は、各光パルスで送達される励起エネルギの振幅を検出するように構成でき、(例えば、データを正規化するための)基準信号として使用され得る。他のケースでは、励起パルス振幅は安定で、信号取得中に1回又は複数回特定されて、各励起パルス後に特定されなくてよく、その結果、各励起パルス後にビン0の信号取得は行われない。このような場合、図5-9に関連して前述したように、励起パルスにより生成されたキャリアは、拒絶し、光子吸収/キャリア生成領域5-902から廃棄できる。
【0118】
幾つかの実装において、図5-10Aに示されるように、励起イベント後、蛍光体から発せられる光子は1つだけであり得る。時間te1における最初の励起イベントの後、時間tf1での発出光子は第一の時間間隔内(例えば、時間tからtの間)に発生し得るため、結果として得られる電子信号は第一の電子蓄積ビン(ビン1に寄与する)内に蓄積される。時間te2でのその後の励起イベント中、時間tf2での発出光子は、第二の時間間隔内(例えば、時間tからtの間)に発生し得るため、その結果として得られる電子信号はビン2に寄与する。次の、時間te3での励起イベントの後、光子は第一の時間間隔内に発生する時間tf3において発出される。
【0119】
幾つかの実装において、各励起パルスを反応チャンバ5-330で受信した後に蛍光光子は発出及び/又は検出されないかもしれない。幾つかのケースでは、反応チャンバに送達される10,000の励起パルスごとに反応チャンバで検出される蛍光光子は1つと少ない可能性がある。モードロックレーザ5-110をパルス光源5-108として実装する1つの利点は、モードロックレーザが、高いパルス繰り返し周波数(例えば、50MHz~250MHz)で高い強度と高速ターンオフ時間を有する短い光パルスを生成できることである。このような高いパルス繰り返し周波数では、10ミリ秒の電荷蓄積間隔内の励起パルスの数は50,000~250,000であり得、その結果、検出可能な信号を蓄積できる。
【0120】
多数の励起イベント及びキャリア蓄積後、時間ビニング受光素子5-322のキャリア蓄積ビンを読み出して、反応チャンバに関する多値信号(例えば、2つ以上の値のヒストグラム、N次ベクトル等)を提供できる。各ビンの信号値は、蛍光体の減衰速度に依存する可能性がある。例えば、また図5-8を再び参照すると、減衰曲線Bを有する蛍光体は、減衰曲線Aを有する蛍光体より、ビン1対ビン2の信号比が高くなる。ビンからの値を分析し、較正値と、及び/又は相互に比較することにより、存在する特定の蛍光体を特定できる。配列特定の用途の場合、蛍光体の識別により、例えば伸長するDNA鎖に取り込まれるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を特定できる。その他の用途では、蛍光体の識別により、その蛍光体にリンクされ得る関心対象の分子又は検体の識別情報を特定できる。
【0121】
信号分析の理解をさらに助けるために、蓄積された複数のビンの値は、例えば図5-10Bに描かれるようなヒストグラムとしてプロットすることができ、又はベクトル若しくはN次空間内の位置として記録することができる。4つのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体にリンクされた4種類の蛍光体に関する多値信号(例えば、較正ヒストグラム)のための較正値を取得するために、較正ランを別々に実行することができる。一例として、較正ヒストグラムは図5-11A(Tヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)、図5-11B(Aヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)、図5-11C(Cヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)、及び図5-11D(Gヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)のようになり得る。測定された多値信号(図5-10Bのヒストグラムに対応する)を較正多値信号と比較することにより、伸長するDNA鎖に取り込まれているヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の識別情報「T」(図5-11A)を特定できる。
【0122】
幾つかの実装において、異なる蛍光体を区別するために、蛍光強度を追加的又は代替的に使用できる。例えば、幾つかの蛍光体は、それらの減衰速度は同様であるかもしれないものの、有意に異なる強度で発光するか、又はその励起確率において有意な差(例えば、少なくとも約35%の差)を有し得る。ビニングされた信号(ビン5-3)を測定された励起エネルギ及び/又はその他の取得信号に対応させることにより、異なる蛍光体を強度レベルに基づいて区別することを可能にすることができる。
【0123】
幾つかの実施形態において、同じ種類の異なる数の蛍光体を異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体にリンクさせることができ、それによってヌクレオチドを蛍光体の強度に基づいて識別できる。例えば、2つの蛍光体を第一のヌクレオチド(例えば、「C」)又はヌクレオチド類似体にリンクさせることができ、4つ以上の蛍光体を第二のヌクレオチド(例えば、「T」)又はヌクレオチド類似体にリンクさせることができる。蛍光体の数の違いにより、異なるヌクレオチドに関連する励起及び蛍光体発光確率に違いがあり得る。例えば、信号蓄積間隔中に「T」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体にはより多くの発光があり得、それによってビンのみかけ上の強度は「C」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体より有意に高い。
【0124】
ヌクレオチド又は他の何れかの生物学的若しくは化学的検体を蛍光体減衰速度及び/又は蛍光体強度に基づいて区別することによって、分析器5-100内の光学励起及び検出システムを簡素化することができる。例えば、光励起は、単波長光源(例えば、複数の光源又は複数の異なる固有波長で動作する1つの光源ではなく、1つの固有波長を生成する光源)で実行できる。それに加えて、異なる波長の蛍光体を区別するために、検出システムの中で波長差別光学系及びフィルタが不要となり得る。また、各反応チャンバについて、1つの受光素子を使って異なる蛍光体からの発光を検出できる。
【0125】
「固有波長」又は「波長」という語句は、放射の限定されたバンド幅内の中央又は主要波長(例えば、パルス光源により出力される20nmのバンド幅の中の中央又はピーク波長)を指すために使用される。幾つかのケースでは、「固有波長」又は「波長」は、光源により出力される放射の全バンド幅内のピーク波長を指すためにも使用され得る。
【0126】
その発光波長が約560nm~約900nmの蛍光体は、時間ビニング受光素子(これは、シリコンウェハ上にCMOSプロセスを使って製作できる)により検出されるべき十分な量の蛍光を提供できる。これらの蛍光体は、遺伝子配列特定の用途の場合のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体等の関心対象の生物学的分子にリンクさせることができる。この波長範囲での蛍光発光はシリコンベースの受光素子において、より長い波長の蛍光より高い応答性で検出できる。それに加えて、この波長範囲での蛍光体及び関連するリンカは、伸長するDNA鎖へのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の取込みを妨害しない。幾つかの実装において、その発光波長が約560nm~約660nmの範囲内である蛍光体は、単波長光源で光学的に励起させることができる。この範囲の例示的な蛍光体は、マサチューセッツ州ウォルサムのテルモ・フィッシャ・サイエンティフィック社から入手可能なAlexa Fluor 647である。より短波長(例えば、約500nm~約650nm)での励起エネルギは、約560nm~約900nmの波長で発光する蛍光体を励起するために使用され得る。幾つかの実施形態において、時間ビニング受光素子は、例えばGe等の他の物質を受光素子の能動領域に取り入れることによって、反応チャンバからのより長い波長の発光を効率的に検出できる。
【0127】
IV.結論
以上、高度な分析システム5-100のためのシステムアーキテクチャの幾つかの実施形態の様々な面を説明したが、当業者であれば様々な代替案、変更、及び改良を容易に着想するであろうと理解されたい。このような代替案、変更、及び改良は、本開示の一部とされるものとし、本発明の主旨と範囲に含まれるものとする。本願の教示は様々な実施形態や例に関して説明されているが、本願の教示がこれらの実施形態又は例に限定されることは意図されていない。反対に、本願の教示は当業者であればわかるように、各種の代替案、改良、及び等価物を包含する。
【0128】
本発明の様々な実施形態を説明し、図解したが、当業者であれば、記載されている機能を実行し、並びに/又は成果及び/若しくは利点の1つ又は複数を得るためのその他の様々な手段及び/又は構造を容易に想定し、それらの改変及び/又は変更の各々は記載されている独創的な実施形態の範囲に含まれるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、記載されている全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例であることが意図され、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、この独創的な教示がそのために利用される具体的な1つ又は複数の用途に依存することが容易にわかるであろう。当業者は、記載されている具体的な独創的な実施形態に対する多くの等価物に気付き、慣例的な実験のみを使ってそれを確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例として提示されているにすぎず、付属の特許請求項及びその等価物の範囲内で、独創的な実施形態は、具体的に記載され、特許請求されているもの以外の方法でも実施し得ると理解されたい。本開示の独創的な実施形態は、記載されている個々の特徴、システム、システムのアップグレード、及び/又は方法の各々に関していてよい。それに加えて、このような特徴、システム、及び/又は方法の2つ以上の何れの組合せも、そのような特徴、システム、システムのアップグレード、及び/又は方法が相互に矛盾しなければ、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0129】
さらに、本発明の幾つかの利点が示されているが、本発明の全ての実施形態が記載されている全ての利点を含んでいるとはかぎらないと理解すべきである。幾つかの実施形態は、有利であると記載されている何れかの特徴を実現しないかもしれない。したがって、上記の説明と図面は例示のためにすぎない。
【0130】
本願中で引用されている全ての文献及び同様の資料は、限定ではなく特許、特許出願、記事、書籍、論文、及びウェブページを含め、かかる文献及び同様の資料のフォーマットにかかわらず、それらの全体を参照によって本願に援用することを明記する。援用した文献及び同様の資料の1つ又は複数が本願と、定義された用語、用語の用法、記載されている技術又はその他において異なっているか矛盾している場合、本願を優先させる。
【0131】
使用されている項目の見出しは単に整理上の目的のためであり、記載されている主旨をいかなる方法でも限定しないと解釈するものとする。
また、記載されている技術は方法として具現化されてよく、そのうちの少なくとも一例を紹介した。方法の中で実行される行為は、何れの適当な順序で行われてもよい。したがって、実施形態は、幾つかの行為を、例示的な実施形態では逐次的な行為として示されていたとしても同時に実行することを含めて、示されているものとは異なる順序で行為が実行される実施形態も構成し得る。
【0132】
定義され、使用されている全ての定義は、その定義された用語の辞書上の定義、参照によって本願に援用されている文献の中の定義、及び/又は通常の意味より優先されると理解すべきである。
【0133】
多数の値と範囲が明細書及び特許請求の範囲の中で概数若しくは正確な値又は範囲として記されているかもしれない。例えば、幾つかのケースで、「約」、「ほぼ」、及び「実質的に」という用語がある値に関して使用されているかもしれない。このような言い方は、示された値の他、その値のプラス及びマイナスの合理的量のばらつきも包含することが意図されている。例えば、「約10~約20」という語句は、幾つかの実施形態においては「正確に10~正確に20」を、幾つかの実施形態では「10±δ1~20±δ2」を意味することが意図される。ある値に関するばらつきδ1、δ2の量は、幾つかの実施形態ではその値の5%未満、幾つかの実施形態ではその値の10%未満、さらには幾つかの実施形態ではその値の20%未満であってもよい。数値のより広い範囲が示される場合、例えば、2桁以上の差のある範囲の場合、ある値のばらつきδ1、δ2の量は、50%と高い場合もあり得る。例えば、動作可能範囲が2~200にわたる場合、「約80」は、40~120の値を含んでいてもよく、その範囲は1~300と大きくてもよい。正確な値が意図される場合は「正確に」という用語が使用され、例えば「正確に2~正確に200」とされる。
【0134】
「隣接する」という用語は、相互の近隣内(例えば、2つの要素のうちの大きい方の横又は縦の寸法の約5分の1未満の距離以内)に配置された2つの要素を指してよい。幾つかのケースで、隣接する要素間に介在する構造又は層があってもよい。幾つかのケースでは、隣接する要素は、介在する構造又は要素がなく、相互に直接隣接していてもよい。
【0135】
不定冠詞(a、an)は、明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、明確な別段のことわりがないかぎり、「少なくとも1つの」という意味であると理解すべきである。
「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、それと共に記載された要素の「何れか又は両方」、すなわち、あるケースでは共同で存在し、他のケースでは離接的に存在する要素を意味すると理解すべきである。「及び/又は」と共に列挙される複数の要素も同じように、すなわちそれと共に記載される「1つ又は複数の」要素として解釈すべきである。任意選択により、「及び/又は」の句により具体的に明示される要素以外にも、具体的に明示された要素に関係するか無関係かを問わず、他の要素が任意選択により存在し得る。それゆえ、非限定的な例とて、「A及び/又はB」との言い方は、「~を含む」というは非限定型な文言と共に使用された場合、1つの実施形態においてはAのみ(任意選択によりB以外の要素を含む)、他の実施形態ではBのみ(任意選択によりA以外の要素を含む)、また別の実施形態ではAとBの両方(任意選択により他の要素を含む)等を指すことができる。
【0136】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるかぎり、「又は」は上述の「及び/又は」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、列挙された項目を分ける際、「又は」又は「及び/又は」は包含的に、すなわち、複数の要素又はそのリストのうち少なくとも1つだけでなく複数も含み、任意選択により列挙されていない追加の項目も含むと解釈するものとする。明確にこれに反することを示す用語、例えば「~の1つのみ」、又は「~のうちの正確に1つ」又は、特許請求の範囲で使用される場合は「~からなる」等の用語のみが、複数の要素又はそのリストのうちの正確に1つの要素を含むことを意味する。一般に、「又は」という用語が使用される場合、排他性を示す用語、例えば「何れか」、「~の一方」、「~のうちの1つのみ」、又は「~のうちの正確に1つ」等の用語と共に使用された場合のみ、排他的な選択肢を示す(すなわち、「両方ではなく一方又は他方」)と理解されるものとする。「基本的に~からなる」とは、特許請求の範囲の中で使用される場合、特許法の分野で使用されているその通常の意味を有するものとする。
【0137】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるかぎり、1つ又は複数の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という語句は、その要素のリスト内の要素のうちの何れか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に挙げられたひとつひとつの全ての要素の少なくとも1つを含むとはかぎらず、その要素のリストの中の要素の何れの組合せも排除しないと理解すべきである。この定義により、「少なくとも1つの」という語句が指す要素のリスト内で具体的に明示された要素以外の要素も、具体的に明示されたこれらの要素に関係するか無関係かを問わず、任意選択により存在してよい。それゆえ、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、等価的に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は等価的に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むAがあり、Bは存在しないこと(及び任意選択により、B以外の要素を含む)、他の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むBがあり、Aは存在しないこと(及び任意選択によりA以外の要素を含む)、また別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むAと、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むBがある(任意選択により、その他の要素を含む)等を指すことができる。
【0138】
特許請求の範囲の中及び上記の明細書の中で、あらゆる移行句、例えば「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を担持する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含む(containing)」、「~を含む(involving)」、「~を保持する(holding)」、「~で構成される(composed of)」等は、非限定型として、すなわち、~を含むがこれらに限定されないことを意味すると理解されるものとする。移行句「~からなる(consisting of)」及び「基本的に~からなる(consisting essentially of)」だけがそれぞれ限定型又は半限定型移行句であるものとする。
【0139】
特許請求項は、その旨が明記されていないかぎり、記載された順序又は要素に限定されないように解釈すべきである。当業者であれば、付属の特許請求項の主旨と範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更を加えることができると理解すべきである。以下の特許請求項及びその等価物の主旨と範囲内に含まれる全ての実施形態が特許請求される。
図1-1】
図1-2】
図1-3A】
図1-3B】
図1-3C】
図1-3D】
図1-3E】
図1-3F】
図1-4A】
図1-4B】
図1-5】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1A】
図4-1B】
図4-1C】
図4-1D】
図4-1E】
図4-1F】
図4-1G】
図4-1H】
図4-1I】
図4-1J】
図4-2A】
図4-2B】
図4-2C】
図4-2D】
図4-2E】
図4-2F】
図4-2G】
図4-2H】
図4-2I】
図4-2J】
図5-1A】
図5-1B】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図5-7】
図5-8】
図5-9】
図5-10A】
図5-10B】
図5-11A】
図5-11B】
図5-11C】
図5-11D】
図6-1A】
図6-1B】
【国際調査報告】