(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-30
(54)【発明の名称】2つの重合性基を有する化合物と、多段ポリマーと、熱可塑性ポリマーとを含む組成物、その調製方法、その使用およびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
C08L 63/10 20060101AFI20220823BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20220823BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20220823BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220823BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20220823BHJP
C08L 67/06 20060101ALI20220823BHJP
C08F 285/00 20060101ALI20220823BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220823BHJP
C08F 283/01 20060101ALI20220823BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08L63/10
C08L33/00
C08L51/04
C08K3/013
C08K7/02
C08L67/06
C08F285/00
C08F290/06
C08F283/01
C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575949
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2020068107
(87)【国際公開番号】W WO2020260638
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルモゲン, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】クーファン, アリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッカ, ケヴィン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
4J002AA023
4J002BG013
4J002BG043
4J002BG053
4J002BN142
4J002BN212
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4J002EA036
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4J026FA07
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4J127FA05
4J127FA07
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4J127FA49
(57)【要約】
本発明は、2つの重合性基を有する化合物と、多段ポリマーと、熱可塑性ポリマーとを含む組成物、その調製方法およびその使用に関する。特に、本発明は、2つの重合性基を有する化合物と、多段プロセスによって作製されたポリマー粒子の形態の多段ポリマーと、(メタ)アクリルポリマーとを含む組成物に関する。より詳細には、本発明は、2つの重合性基を有する化合物と、少なくとも2段階を含む多段プロセスによって作製されたポリマー粒子と、(メタ)アクリルポリマーとを含むポリマー組成物、その調製方法、熱硬化性樹脂を含む耐衝撃性改良ポリマー組成物の作製におけるその使用、ならびにそれを含む組成物および物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
a1)ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む1段(A1)、
a2)ガラス転移温度が少なくとも60℃であるポリマー(A1)を含む1段(A2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)ガラス転移温度が少なくとも30℃である熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)と
を含む組成物(PC1)であって、
ポリマー(B1)が10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有し、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、組成物(PC1)。
【請求項2】
ポリマー(B1)が(メタ)アクリルポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリマー(B1)が、C1~C12アルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを少なくとも70重量%含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が1phrと15phrとの間であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が15phrと100phrとの間であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が21phrと100phrとの間であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が50phrとphrとの間であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物(PC1)が、25℃で1mPa・sと1,000Pa・sとの間の粘度を有する液体であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
多段ポリマー(MP1)が15nmと900nmとの間の重量平均粒径を有するコア/シェル粒子であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが15,000g/molと150,000g/molとの間であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが30,000g/molと200,000g/molとの間であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリマー(B1)が式(1)
[式中、R
1はHまたはCH
3から選択され、R
2はHであるか、またはCもしくはHではない少なくとも1つの原子を有する脂肪族もしくは芳香族ラジカルである。]
を有する官能性コモノマーを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
成分(LC1)が、25℃で0.5mPa・sと10Pa・sとの間の粘度を有する液体であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
成分(LC1)が、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)を追加的に含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)が、(メタ)アクリルモノマー、アリルモノマーまたはスチレン系モノマーから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)が、1~10個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ならびに二官能性(メタ)アクリレート、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびグリコール構造を有するジ(メタ)アクリレート、ならびに多官能性(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)がスチレンを含まないことを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)がスチレンベースのモノマーを含まないことを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)および(PG2)が炭素二重結合であることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)および(PG2)がα,β-不飽和カルボニル基であることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)および(PG2)が、アクリレート基、メタシレート基、またはマレイン酸、イタコン酸もしくはフマル酸を含む縮合生成物から選択されることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
化合物(C1)がビニルエステルまたは不飽和ポリエステルであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
化合物(C1)がビニルエステルであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
化合物(C1)が不飽和ポリエステルであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の10重量%と20重量%との間に相当することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物(PC1)を製造するための方法であって、
i)
a)
a1)ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む1段(A1)、
a2)ガラス転移温度が少なくとも60℃であるポリマー(A2)を含む1段(A2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含む組成物(Ci)を提供する工程、ならびに
ii)組成物(Ci)を、組成物(PC1)中に存在する少なくとも1つの他の成分または化合物を含む組成物(Ciia)と混合する工程、ならびに
iii)任意選択的に、工程ii)で得られた組成物を、工程ii)でまだ添加されていない、組成物(PC1)中に存在する他の成分または化合物と混合する工程
を含む、方法。
【請求項27】
請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物(PC1)を製造するための方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(A1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度がを有するポリマー(A2)を含む1階(A2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物(Ci)を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を含む組成物(Ciib)を提供する工程、
iii)成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間である比率で、成分a)、b)およびc)を含む組成物(Ci)および(Ciib)を混合する工程
を含む、方法。
【請求項28】
組成物(PC1)の調製時間を短縮するための方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(A1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(A2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物(Ci)を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を含む組成物(Ciib)を提供する工程、
iii)成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5と100phrとの間となるような比率で、成分a)、b)およびc)を含む組成物(Ci)および(Ciib)を混合する工程
を含む、方法。
【請求項29】
組成物(Ciia)および(Ciib)が、
ポリエポキシド、または
ポリエポキシド(polyepoxid)および二重結合を有する有機酸、または
ビニルエステル、または
ビニルエステルおよびモノマー(M1)もしくはモノマーの混合物(Mx)、
不飽和ポリエステル、または
不飽和ポリエステルおよびモノマー(M1)もしくはモノマーの混合物(Mx)
を含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
組成物(Ciia)および(Ciib)がポリエポキシドを含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
組成物(Ciia)および(Ciib)が、ポリエポキシド(polyepoxid)および二重結合を有する有機酸を含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
組成物(Ciia)および(Ciib)がビニルエステルを含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
組成物(Ciia)および(Ciib)がビニルエステルと、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)とを含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
組成物(Ciia)および(Ciib)が不飽和ポリエステルを含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
組成物(Ciia)および(Ciib)が、不飽和ポリエステルと、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)とを含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)が、(メタ)アクリルモノマー、アリルモノマーまたはスチレン系モノマーから選択されることを特徴とする、請求項29、31、33または35に記載の方法。
【請求項37】
モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)がスチレンベースのモノマーを含まないことを特徴とする、請求項29、31、33または35に記載の方法。
【請求項38】
モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)が、1~10個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ならびに二官能性(メタ)アクリレート、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびグリコール構造を有するジ(メタ)アクリレート、ならびに多官能性(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートから選択されることを特徴とする、請求項29、31、33または35に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物(PC1)を製造するための方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(A1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(A2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を提供する工程、
iii)成分a)、b)およびc)を混合する工程
を含む、方法。
【請求項40】
工程iii)において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計の比率が15phrと100phrとの間であることを特徴とする、請求項26から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
工程iii)において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計の比率が21phrと100phrとの間であることを特徴とする、請求項26から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
工程iii)において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計の比率が50phrと100phrとの間であることを特徴とする、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
工程iii)の混合が0℃と50℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項26から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
工程iii)の混合が10℃と30℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項26から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
提供される多段ポリマー(MP1)が、水銀ポロシメトリーで測定した際の総圧入量が少なくとも1.2ml/gであるポリマー粉末の形態であることを特徴とする、請求項26から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
提供される多段ポリマー(MP1)が、水銀ポロシメトリーで測定した際の総圧入量が1.2ml/gと10ml/gとの間であるポリマー粉末の形態であることを特徴とする、請求項26から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
提供される多段ポリマー(MP1)が、10μmを超える細孔サイズに対して最大85%のポリマー粉末の相対的増分圧入を有するポリマー粉末の形態であることを特徴とする、請求項26から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物、または請求項26から47のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物の、耐衝撃性改良ポリマー組成物(PC2)調製における使用。
【請求項49】
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(A1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(A2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)からのユニットを含むポリマー(P2)と
を含むポリマー組成物(PC2)であって、
ポリマー(B1)が、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有し、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)の100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、ポリマー組成物(PC2)。
【請求項50】
ポリマー(P2)が熱硬化性ポリマーであることを特徴とする、請求項49に記載のポリマー組成物(PC2)。
【請求項51】
繊維または鉱物充填剤などの他の成分を含むことを特徴とする、請求項49または50に記載のポリマー組成物(PC2)。
【請求項52】
接着剤として、より好ましくは構造用接着剤として、またはポリマー複合材料における;あるいはコーティング、装飾鋳物、フローリング、ポリマーコンクリート、固体表面、人工大理石などの用途、または海洋用途、建築および建設、風力エネルギー用途における、請求項49から51のいずれか一項に記載のポリマー組成物(PC2)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの重合性基を有する化合物と、多段ポリマーと、熱可塑性ポリマーとを含む組成物、該組成物の調製方法および該組成物の使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、2つの重合性基を有する化合物と、多段プロセスによって作製されたポリマー粒子の形態の多段ポリマーと、(メタ)アクリルポリマーとを含む組成物に関する。
【0003】
より詳細には、本発明は、2つの重合性基を有する化合物と、少なくとも2段階を含む多段プロセスによって作製されたポリマー粒子と、(メタ)アクリルポリマーとを含むポリマー組成物、該ポリマー組成物の調製方法、熱硬化性樹脂を含む耐衝撃性改良ポリマー組成物作製における該ポリマー組成物の使用、および該ポリマー組成物を含む組成物および物品に関する。
【背景技術】
【0004】
今日の物品の多くは、ポリマー材料から製造されているか、またはポリマーもしくはポリマー組成物を含んでいる。これらの物品は、使用中の機械的応力に耐える必要がある。したがって、これらの物品は耐衝撃性を改良する必要がある。
【0005】
ポリマー材料の1つのクラスは、熱硬化性ポリマーであり、例えば、接着剤またはポリマー複合材料に使用される。
【0006】
熱硬化性ポリマーは、架橋された三次元構造からなる。例えば、架橋は、いわゆるプレポリマー内の反応性基を硬化させることによって得られる。例えば、硬化は、材料を恒久的に架橋および固化させるためにポリマー鎖を加熱することによって得ることができる。
【0007】
ポリマー熱硬化性複合材料を調製するために、プレポリマーは、ガラスビーズもしくは繊維などの他の成分、または濡らすもしくは含浸した後に硬化される他の成分と混合される。熱硬化性ポリマー用のプレポリマーまたはマトリックス材料の例は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシまたはフェノール系のものである。
【0008】
いったん硬化した熱硬化性樹脂は、寸法安定性、機械的強度、電気絶縁性、耐熱性、耐水性および耐薬品性の観点から優れた特性を有する。そのような熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂である。しかしながら、そのような硬化樹脂は、破壊靭性が小さく、脆い。
【0009】
広い温度範囲にわたって十分な機械的性能を保証し、得るために、熱硬化性ポリマーマトリックスの衝撃性能を向上させなければならない。
【0010】
耐衝撃性改良剤の一形態は、多段プロセスによって製造される多段ポリマーとも呼ばれるコアシェル粒子であり、少なくとも1段はゴム様ポリマーを含む。その後、粒子は、最終製品の耐衝撃性を向上させるために、複合材料用の脆性ポリマー、または構造用接着剤の段階の1つに組み込まれる。
【0011】
しかしながら、これらの種類の多段ポリマーは、すべての種類の樹脂またはポリマー、あるいはモノマーにおいてさえ、特に均一な分布で、および/または妥当な時間で少量または大量を、分散させるのが容易ではない。例えば、不飽和ポリエステルまたはビニルエステルなどの硬化性樹脂だけでなく、複合材料および構造用接着剤用のポリマー相またはモノマーの他の前駆体においても容易ではない。
【0012】
十分な衝撃性能を有するためには、多段ポリマーの良好な均一分散が必要である。分散体には、適度な安定性(ポットライフ)も必要である。
【0013】
本発明の目的は、必要な用途に適した粘度を有しながら均一で安定な、多段ポリマーおよび熱可塑性ポリマーを含む、硬化した熱硬化性強化ポリマーの調製に適した組成物を提案することである。
【0014】
本発明の付加的な目的はまた、熱硬化性ポリマーの前駆体、多段ポリマーおよび熱可塑性ポリマーを含む、硬化した熱硬化性ポリマーの調製に適した組成物であって、容易かつ迅速に調製することができる組成物を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、必要な用途に適した粘度を有しながら均一で安定な、熱硬化性ポリマーの前駆体、多段ポリマーおよび熱可塑性ポリマーを含む、硬化した熱硬化性ポリマーの調製に適した組成物を製造する方法を提案することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、十分な衝撃特性を備える、硬化した強化ポリマー組成物を製造する方法である。
【0017】
本発明の目的は、多段ポリマーを含む、硬化した熱硬化性ポリマーの調製に適した組成物の調製時間が短縮された方法を提案することである。
【0018】
さらに付加的な目的は、十分な衝撃特性を有する耐衝撃性改良硬化ポリマー、または十分な衝撃および接着強度特性を有する接着剤組成物を提案することである。
【0019】
発明の背景
先行技術
文献WO2016/102666において、多段ポリマーを含む組成物および該組成物の調製方法が開示されている。該組成物は、質量平均分子量が100,000g/mol未満の(メタ)アクリルポリマーも含む。
【0020】
文献WO2016/102682において、多段ポリマー組成物および該組成物の調製方法が開示されている。多段ポリマーは、質量平均分子量が100,000g/mol未満の(メタ)アクリルポリマーを含む最終段階を含む。
【0021】
文献EP2441784A1において、ポリマー微粒子を含むビニルエステル組成物が開示されている。ポリマー微粒子は、芳香族ビニルモノマーとビニルシアンモノマーとを含むシェルを備えるコアシェルポリマーである。
【0022】
文献EP1632533において、変性エポキシ樹脂を製造するプロセスが記載されている。ゴム粒子を分散させる有機媒体と粒子とを接触させるプロセスによって、エポキシ樹脂組成物の中にゴム様ポリマー粒子が分散されている。
【0023】
文献WO2019/011984において、樹脂組成物が開示されている。樹脂組成物は、樹脂系、硬化剤系および粒子系を含む。粒子系は多段ポリマーである。
【0024】
先行技術文献のいずれにおいても、特許請求されたような組成物またはプロセスは開示されていない。
【発明の概要】
【0025】
驚くべきことに、
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)と
を含む組成物(PC1)であって、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、組成物(PC1)は、熱硬化性ポリマーのポリマーマトリックス材料の前駆体に容易に分散させることができることが見出された。
【0026】
驚くべきことに、
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)と
を含む組成物(PC1)であって、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、組成物(PC1)は、良好な安定性を有し、長期間にわたって均一に保たれることもまた見出された。長期間とは、23℃で少なくとも2週間を意味し、均一とは、各成分間で著しい分離が起こらないことを意味する。
【0027】
驚くべきことに、組成物(PC1)を製造する方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度が、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含む組成物(Ci)を提供する工程、ならびに
ii)組成物(Ci)を、組成物(PC1)中に存在する少なくとも1つの他の成分または化合物を含む組成物(compostion)(Ciia)と混合する工程、ならびに
iii)任意選択的に、工程ii)で得られた組成物を、工程ii)でまだ添加されていない、組成物(PC1)中に存在する他の成分または化合物と混合する工程
を含む、方法により、安定で均一な組成物を調製することが可能となり、また、成分b)を含まない組成物と比較して、組成物(PC1)の調製時間を短縮することも可能となることもまた見出された。
【0028】
驚くべきことに、組成物(PC1)を製造する方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を提供する工程、
iii)成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計の比率が0.5と100phrとの間で、成分a)、b)およびc)を混合する工程、を含む、方法により、成分b)を含まない組成物と比較して、組成物(PC1)の調製時間が短縮された方法がもたらされることもまた見出された。
【0029】
驚くべきことに、
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)a)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%である前記熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)と
を含む組成物(PC1)であって、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間である組成物(PC1)における、ガラス転移温度が少なくとも30℃であり、質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間である熱可塑性ポリマー(B1)の使用により、成分b)を含まない組成物と比較して、組成物(PC1)の調製時間が短縮されることもまた見出された。
【0030】
驚くべきことに、ポリマー組成物(PC2)を製造する方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物(Ci)を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を含む組成物(Ciib)を提供する工程、
iii)成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計の比率が0.5phrと100phrとの間で、成分a)、b)およびc)を混合する工程、iv)混合物を重合または硬化させる工程
を含む、方法により、十分な強化および/または衝撃特性を有するポリマー組成物がもたらされることもまた見出された。
【0031】
驚くべきことに、
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)からのユニットを含むポリマー(P2)と
を含むポリマー組成物(PC2)であって、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、ポリマー組成物(PC2)は、十分な強化特性を有することもまた見出された。
【発明を実施するための形態】
【0032】
第1の態様によれば、本発明は、
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)と
を含む組成物(PC1)であって、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、組成物(PC1)に関する。
【0033】
第2の態様によれば、本発明は、組成物(PC1)を製造する方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含む組成物(Ci)を提供する工程、ならびに
ii)組成物(Ci)を、組成物(PC1)中に存在する少なくとも1つの他の成分または化合物を含む組成物(Ciia)と混合する工程、ならびに
iii)任意で、工程ii)で得られた組成物を、工程ii)でまだ添加されていない、組成物(PC1)中に存在する他の成分または化合物と混合する工程
を含む、方法に関する。
【0034】
第3の態様において、本発明は、組成物(PC1)を製造する方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物(Ci)を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を含む組成物(Ciib)を提供する工程、
iii)成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間である比率で、成分a)、b)およびc)を含む組成物(Ci)および(Ciib)を混合する工程、を含む、方法に関する。
【0035】
第4の態様において、本発明は、組成物(PC1)の調製時間を短縮する方法であって、
i)
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度、および、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、10,000g/molと500,000g/molとの間の質量平均分子量Mwを有する熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物(Ci)を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を含む組成物(Ciib)を提供する工程、
iii)成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計の比率が0.5phrと100phrとの間で、成分a)、b)およびc)を混合する工程
を含む、方法に関する。
【0036】
第5の態様において、本発明は、
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)からのユニットを含むポリマー(P2)と
を含むポリマー組成物(PC2)であって、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、ポリマー組成物(PC2)に関する。
【0037】
第6の態様によれば、本発明は、
a)
a1)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1段(SA1)、
a2)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(A2)を含む1段(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)と
を含む組成物(PC1)の、耐衝撃性改良ポリマー組成物(PC2)調製における使用であって、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする、使用に関する。
【0038】
使用される「ポリマー粉末」という用語は、ナノメートル領域の粒子を含む一次ポリマーの凝集によって得られる、少なくとも1μm領域の粉末粒を含むポリマーを指す。
【0039】
使用される「一次粒子」という用語は、ナノメートル領域の粒子を含む球状ポリマー粒子を指す。好ましくは、一次粒子は、50nmと500nmとの間の重量平均粒径を有する。
【0040】
使用される「粒径」という用語は、球形と見なされる粒子の体積平均径を指す。
【0041】
使用される「熱可塑性ポリマー」という用語は、加熱されると液体に変わるか、より液状になるか、またはより粘性が低くなり、加熱および加圧によって新しい形状をとることができるポリマーを指す。本発明の範囲において、熱可塑性ポリマーは、依然として熱成形することができる場合、架橋することもできる。
【0042】
使用される「熱硬化性ポリマー」という用語は、軟質、固体または粘性状態のプレポリマーから製造され、硬化により不融性、不溶性のポリマーネットワークへと不可逆的に変化するポリマー(例えば、少なくとも2つの反応性基を有するオリゴマーもしくはモノマー、またはその両方の混合物)を指す。
【0043】
使用される「ポリマー複合材料」という用語は、少なくとも1つのタイプの相ドメインが連続相であり、少なくとも1つの成分がポリマーである複数の異なる相ドメインを含む多成分材料を指す。
【0044】
使用される「共重合体」という用語は、ポリマーが少なくとも2つの異なるモノマーからなることを指す。
【0045】
使用される「多段ポリマー」とは、多段重合プロセスによって連続的に形成されるポリマーを指す。好ましいのは、第1のポリマーが第1の段階のポリマーであり、第2のポリマーが第2の段階のポリマーである多段乳化重合プロセスであり、すなわち、組成が異なる少なくとも2段階により、第2のポリマーが、第1のエマルジョンポリマーの存在下での乳化重合によって形成される。
【0046】
使用される「(メタ)アクリル」という用語は、すべての種類のアクリルおよびメタクリルモノマーを指す。
【0047】
使用される「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、(メタ)アクリル)ポリマーが、本質的に(メタ)アクリルポリマーの50重量%以上を構成する(メタ)アクリルモノマーを含むポリマーを含むことを指す。
【0048】
使用される「乾燥」という用語は、残留水の比率が1.5重量%未満、好ましくは1.25重量%未満であることを指す。
【0049】
使用される「総圧入量」という用語は、ISO 15901-1:2016に従って液体水銀が圧入した総量を指す。この量は累積(cummulated)され、分析結果により、加えられた圧力または細孔径に応じた累積圧入量がml/g(cm3/g)で示される。総圧入量は、最大加圧で圧入した量であり、最小の細孔にも対応する。
【0050】
使用される「増分圧入(incremental intrusion)」という用語は、2つの特定の圧力または2つの細孔サイズの間においてml/gで圧入される量を指す。この増分圧入は、総圧入量に対してvol%で表すこともできる。
【0051】
使用される「phr」という用語は、重量百分率を指す。例えば、組成物中の化合物Bを考慮した化合物Aの1phrは、1kgの化合物Aが化合物Bを考慮して100kgに添加されるか、または存在することを意味する。
【0052】
本発明において、範囲がx~y(xからyまで)と言うことにより、この範囲の上限および下限が含まれ、少なくともxであって最大yに相当することを意味する。
【0053】
本発明において、範囲がxとyとの間(xとyとの間)と言うことにより、この範囲の上限および下限が除外され、x超およびy未満に相当することを意味する。
【0054】
本発明による組成物(PC1)に関して、該組成物は好ましくはポリマー組成物である。
【0055】
ポリマー組成物(PC1)は、a)多段ポリマー(MP1)と、b)熱可塑性ポリマー(B1)と、c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)とを含み、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5phrと100phrとの間であることを特徴とする。
【0056】
多段ポリマー(MP1)は、a1)ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む1段階(SA1)、およびa2)ガラス転移温度が少なくとも60℃であるポリマー(A2)を含む1段階(SA2)を含む。
【0057】
ガラス転移温度が少なくとも30℃である熱可塑性ポリマー(B1)。
【0058】
組成物(PC1)の成分b)は、a)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当する。a)およびb)のみをベースとする組成物を、組成物(Ci)と呼ぶ。好ましくは、組成物(Ci)の成分b)は、a)およびb)のみをベースとする組成物の最大35重量%に相当し、より好ましくは最大30重量%、さらにより好ましくは30重量%未満、有利には25重量%未満、より有利には20重量%未満に相当する。
【0059】
組成物(Ci)の成分b)は、a)およびb)のみをベースとする組成物の0.5重量%超に相当する。好ましくは、組成物(Ci)の成分b)は、a)およびb)のみをベースとする組成物の1重量%超に相当し、より好ましくは2重量%超、さらにより好ましくは4重量%超、有利には8重量%超、より有利には10重量%超に相当する。
【0060】
成分b)は、a)およびb)のみをベースとする組成物の0.5重量%と40重量%との間に相当する。好ましくは、成分b)は、a)およびb)のみをベースとする組成物の5重量%と35重量%との間に相当し、より好ましくは6重量%と30重量%との間、さらにより好ましくは7重量%と30重量%未満との間、有利には7重量%と25重量%未満との間、より有利には10重量%と20重量%未満との間に相当する。
【0061】
組成物(PC1)または組成物(Ci)のうちの少なくとも成分a)は、多段ポリマー(MP1)の一部である。
【0062】
少なくとも成分a)は、少なくとも2段階(SA1)および(SA2)を含む多段プロセスによって得られ、2つのポリマー(A1)および(A2)により多段ポリマー(MP1)が形成される。
【0063】
組成物(PC1)において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計は、0.5phrと100phrとの間である。好ましくは、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計は、1phrと100phrとの間である。
【0064】
組成物(PC1)の、第1のより好ましい実施形態において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計は1phrと50phrとの間であり、さらにより好ましくは1phrと25phrとの間であり、さらにより好ましくは1phrと20phrとの間、有利には1phrと15phrとの間である。
【0065】
組成物(PC1)の、第2のより好ましい実施形態において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計は2phrと100phrとの間であり、さらにより好ましくは5phrと100phrとの間であり、さらにより好ましくは10phrと100phrとの間、有利には15phrと100phrとの間である。
【0066】
組成物(PC1)の、第3のより好ましい実施形態において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計は15phrと100phrとの間であり、さらにより好ましくは17phrと100phrとの間であり、さらにより好ましくは19phrと100phrとの間、有利には21phrと100phrとの間である。
【0067】
組成物(PC1)の、第4のより好ましい実施形態において、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計は20phrと100phrとの間であり、さらにより好ましくは30phrと100phrとの間であり、さらにより好ましくは40phrと100phrとの間、有利には50phrと100phrとの間である。
【0068】
一実施形態において、組成物(PC1)は液体である。その場合、組成物(PC1)の粘度は1mPa・sと1,000Pa・sとの間である。粘度は25℃で測定される。粘度は動的粘度である。剪断減粘性があると思われる場合、動的粘度の値は1 1/秒の剪断速度で取得される。粘度はレオメーターを用いて測定される。
【0069】
好ましくは、液体組成物(PC1)の粘度は、25℃の温度および1 1/秒の剪断速度で5mPa・sと900Pa・sとの間、より好ましくは10mPa・sと800Pa・sとの間である。
【0070】
本発明による組成物(PC1)の多段ポリマー(MP1)は、各ポリマー組成が異なるポリマー(A1)および(A2)をそれぞれ含む少なくとも2段階(SA1)および(SA2)を有する。
【0071】
多段ポリマー(MP1)は、好ましくは、球状粒子と見なされるポリマー粒子の形態である。これらの粒子は、コア/シェル粒子とも呼ばれる。第1の段階(SA1)によりコアが形成され、第2の段階(SA2)によりシェルが形成される。任意で、後続のすべての段階により、追加の各シェルが形成される。コア/シェル粒子とも呼ばれるそのような多段ポリマー(MP1)が好ましい。
【0072】
コア/シェル粒子は、15nmと900nmとの間の重量平均粒径(直径)を有する。好ましくは、ポリマーの重量平均粒径は20nmと800nmとの間、より好ましくは25nmと600nmとの間、さらにより好ましくは30nmと550nmとの間、またさらにより好ましくは35nmと500nmとの間、有利には40nmと400nmとの間、より有利には75nmと350nmとの間、有利には80nmと300nmとの間である。ポリマーコア/シェル粒子自体を凝集させて、そのようなポリマーコア/シェル粒子を多く含むポリマー粉末を得ることができる。
【0073】
多段ポリマー(MP1)は、ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む少なくとも1段階(SA1)と、ガラス転移温度が60℃を超えるポリマー(A2)を含む少なくとも1段階(SA2)とを含む多層構造を有する。
【0074】
任意の変形形態では、多段ポリマー(MP1)はまた、ガラス転移温度が30℃を超えるポリマー(B1)を含む段階(SB1)をすでに含むことができる。この任意の変形形態において、組成物(Ci)の成分b)は、本発明の組成物の成分a)と組み合わされる。この変形形態については、プロセス部分でより詳しく説明する。
【0075】
好ましくは、段階(SA1)は、少なくとも2段階中の第1の段階であり、ポリマー(A2)を含む段階(SA2)は、ポリマー(A1)を含む段階(SA1)、または別の任意の中間層にグラフトされる。
【0076】
さらなる変形形態では、段階(SA1)の前に別の段階があり得、その結果、段階(SA1)もまた、例えばシード上の、1つのシェルとなる。
【0077】
第1の実施形態において、ガラス転移温度が10℃未満または10℃以下であるポリマー(A1)は、アルキルアクリレートに由来するポリマーユニットを少なくとも50重量%含み、段階(SA1)は、多段ポリマー(MP1)または多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である。言い換えれば、ポリマー(A1)を含む段階(SA1)は、多段ポリマー(MP1)またはポリマー粒子のコアである。
【0078】
第1の好ましい実施形態のポリマー(A1)に関して、ポリマー(A1)は、アクリルモノマーに由来するポリマーユニットを少なくとも50重量%含む(メタ)アクリルポリマーである。好ましくはポリマー(A1)の60重量%、より好ましくは70重量%がアクリルモノマーである。
【0079】
ポリマー(A1)中のアクリルモノマー(momonomer)ユニットは、C1~C18アルキルアクリレートまたはそれらの混合物から選択されるモノマーを含む。より好ましくは、ポリマー(A1)中のアクリルモノマーは、C2~C12アルキルアクリルモノマーまたはそれらの混合物のモノマーを含む。さらにより好ましくは、ポリマー(A1)中のアクリルモノマーは、C2~C8アルキルアクリルモノマーまたはそれらの混合物のモノマーを含む。
【0080】
ポリマー(A1)は、ポリマー(A1)のガラス転移温度が10℃未満である限り、アクリルモノマーと共重合可能な1つまたは複数のコモノマーを含むことができる。
【0081】
ポリマー(A1)中の1つまたは複数のコモノマーは、好ましくは、(メタ)アクリルモノマーおよび/またはビニルモノマーから選択される。
【0082】
最も好ましくは、ポリマー(A1)のガラス転移温度が10℃未満である限り、ポリマー(A1)のアクリルまたはメタクリルコモノマーは、メチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびそれらの混合物から選択される。
【0083】
特定の実施形態において、ポリマー(A1)は、ブチルアクリレートのホモポリマーである。
【0084】
より好ましくは、C2~C8アルキルアクリレートに由来するポリマーユニットを少なくとも70重量%含むポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-100℃と10℃との間、さらにより好ましくは-80℃と0℃との間、有利には-80℃と-20℃との間、より有利には-70℃と-20℃との間である。
【0085】
第2の好ましい実施形態において、ガラス転移温度が10℃未満であるポリマー(A1)は、イソプレンまたはブタジエンに由来するポリマーユニットを少なくとも50重量%含み、段階(A)は、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である。言い換えれば、ポリマー(A1)を含む段階(SA1)は、ポリマー粒子のコアである。
【0086】
例として、第2の実施形態のコアのポリマー(A1)は、イソプレンホモポリマーまたはブタジエンホモポリマー、イソプレン-ブタジエン共重合体、最大98重量%のビニルモノマーとイソプレンとの共重合体、および最大98重量%のビニルモノマーとブタジエンとの共重合体を挙げることができる。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート、またはブタジエンもしくはイソプレンであり得る。好ましい実施形態において、コアはブタジエンホモポリマーである。
【0087】
より好ましくは、イソプレンまたはブタジエンに由来するポリマーユニットを少なくとも50重量%含むポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-100℃と10℃との間、さらにより好ましくは-90℃と0℃との間、有利には-85℃と0℃との間、最も有利には-80℃と-20℃との間である。
【0088】
第3の好ましい実施形態において、ポリマー(A1)は、シリコーンゴムベースのポリマーである。例えば、シリコーンゴムはポリジメチルシロキサンである。より好ましくは、第2の実施形態のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-150℃と0℃との間、さらにより好ましくは-145℃と-5℃との間、有利には-140℃と-15℃との間、より有利には-135℃と-25℃との間である。
【0089】
ポリマー(A2)に関して、二重結合を有するモノマーおよび/またはビニルモノマーを含むホモポリマーおよび共重合体を挙げることができる。好ましくは、ポリマー(A2)は(メタ)アクリルポリマーであり、(メタ)アクリルモノマーに由来する50重量%を超えるモノマーユニット、および任意でスチレンコモマー(commoner)としての(メタ)アクリルモノマーであるコモマー(commoner)、例えばスチレンを含む。
【0090】
好ましくは、ポリマー(A2)は、C1~C12アルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを少なくとも70重量%含む。さらにより好ましくは、ポリマー(A2)は、C1~C4アルキルメタクリレートモノマーおよび/またはC1~C8アルキルアクリレートモノマーを少なくとも80重量%含む。
【0091】
最も好ましくは、ポリマー(A2)のガラス転移温度が少なくとも60℃である限り、ポリマー(A2)のアクリルまたはメタクリルモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびそれらの混合物から選択される。
【0092】
有利には、ポリマー(A2)は、メチルメタクリレートに由来するモノマーユニットを少なくとも70重量%含む。
【0093】
好ましくは、ポリマー(A2)のガラス転移温度Tgは60℃と150℃との間である。ポリマー(A2)のガラス転移温度は、より好ましくは80℃と150℃との間、有利には90℃と150℃との間、より有利には100℃と150℃との間である。
【0094】
好ましくは、多段ポリマー(MP1)のポリマー(A2)は、前段階で製造されたポリマー(A1)にグラフトされる。
【0095】
特定の実施形態において、ポリマー(A2)は架橋されている。
【0096】
一実施形態において、ポリマー(A2)は、官能性コモノマーを含む。官能性共重合体は、アクリル酸もしくはメタクリル酸、これらの酸から誘導されるアミド、例えば、任意で四級化されている、ジメチルアクリルアミド、2-メトキシ-エチルアクリレートもしくはメタクリレート、2-アミノエチルアクリレートもしくはメタクリレートなど;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、水溶性ビニルモノマー、例えば、N-ビニルピロリドン、またはそれらの混合物から選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/mol~10,000g/molの範囲の分子量を有する。
【0097】
熱可塑性ポリマー(B1)に関して、熱可塑性ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwは、10,000g/molと500,000g/molとの間である。
【0098】
熱可塑性ポリマー(B1)は、10,000g/molを超える、好ましくは10,500g/molを超える、より好ましくは11,000g/molを超える、さらにより好ましくは12,000g/molを超える、有利には13,000g/molを超える、より有利には14,000g/molを超える、さらに有利には15,000g/molを超える質量平均分子量Mwを有する。
【0099】
熱可塑性ポリマー(B1)は、500,000g/mol未満、好ましくは450,000g/mol未満、より好ましくは400,000g/mol未満、さらにより好ましくは400,000g/mol未満、有利には350,000g/mol未満、より有利には300,000g/mol未満、さらにより有利には250,000g/mol未満、最も有利には200,000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する。
【0100】
好ましくは、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwは、10,500g/molと450,000g/molとの間、より好ましくは11,000g/molと400,000g/molとの間、さらにより好ましくは12,000g/molと350,000g/molとの間、有利には13,000g/molと300,000g/molとの間、より有利には14,000g/molと250,000g/molとの間、最も有利には15,000g/molと200,000g/molとの間である。
【0101】
第1のより好ましい実施形態において、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwは、15,000g/molと300,000g/molとの間、より好ましくは15,000g/molと200,000g/molとの間、さらにより好ましくは15,000g/molと190,000g/molとの間、有利には15,000g/molと180,000g/molとの間、より有利には15,000g/molと160,000g/molとの間、最も有利には15,000g/molと150,000g/molとの間である。
【0102】
第2のより好ましい実施形態において、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwは、15,000g/molと450,000g/molとの間、より好ましくは18,000g/molと400,000g/molとの間、さらにより好ましくは20,000g/molと350,000g/molとの間、有利には22,000g/molと300,000g/molとの間、より有利には25,000g/molと250,000g/molとの間、最も有利には30,000g/molと200,000g/molとの間である。
【0103】
好ましくは、ポリマー(B1)は、(メタ)アクリルモノマーを含む共重合体である。より好ましくは、ポリマー(B1)は(メタ)アクリルポリマーである。さらにより好ましくは、ポリマー(B1)は、C1~C12アルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを少なくとも70重量%含む。有利には、ポリマー(B1)は、C1~C4アルキルメタクリレートモノマーおよび/またはC1~C8アルキルアクリレートモノマーを少なくとも80重量%含む。
【0104】
好ましくは、ポリマー(B1)のガラス転移温度Tgは30℃と150℃との間である。ポリマー(B1)のガラス転移温度は、より好ましくは40℃と150℃との間、有利には45℃と150℃との間、より有利には50℃と150℃との間である。
【0105】
好ましくは、ポリマー(B1)は架橋されていない。
【0106】
好ましくは、ポリマー(B1)が多段ポリマーの一部である場合、ポリマー(B1)はポリマー(A1)または(A2)のいずれにもグラフトされていない。これは、ポリマー(B1)の調製に使用される1つまたは複数のモノマーが、架橋剤またはグラフト架橋剤を含まないことを意味する。しかし、ポリマー(B1)の一部が前段階のポリマーに結合しているものを除外することはできない。前段階から依然として存在している架橋またはグラフト化の反応性基による、またはポリマー鎖の絡み合いによるものである。ポリマー(B1)は、少なくとも部分的に、溶媒での抽出により回収することができる。
【0107】
ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定される。ポリマー(B1)が多段ポリマーの一部である場合、溶媒で抽出して分子量を測定することができる。あるいは、ポリマー(B1)は、前段階の存在なしでも同じ条件下で合成することができ、抽出工程を回避しながら、測定用の「純粋な」ポリマー(B1)が得られる。
【0108】
一実施形態において、ポリマー(B1)はまた、官能性コモノマーを含む。
【0109】
官能性コモノマーは、式(1)
[式中、R
1はHまたはCH
3から選択され、R
2はHであるか、またはCもしくはHではない少なくとも1つの原子を有する脂肪族もしくは芳香族ラジカルである]
を有する。
【0110】
好ましくは、官能性モノマーは、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸、これらの酸から誘導されるアミド、例えば、任意で四級化されている、ジメチルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレートまたはメタクリレート、2-アミノエチルアクリレートまたはメタクリレートなど;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/mol~10,000g/molの範囲の分子量を有する。
【0111】
第1の好ましい実施形態において、ポリマー(B1)は、メチルメタクリレートを80重量%~100重量%、好ましくはメチルメタクリレートを80重量%~99.9重量%、およびC1~C8アルキルアクリレートモノマーを0.1重量%~20重量%含む。有利には、C1~C8アルキルアクリレートモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、またはブチルアクリレートから選択される。
【0112】
第2の好ましい実施形態において、ポリマー(B1)は、官能性モノマーを0重量%と50重量%との間で含む。好ましくは、メタ)アクリルポリマー(B1)は、官能性モノマーを0重量%と30重量%との間、より好ましくは1重量%と30重量%との間、さらにより好ましくは2重量%と30重量%との間、有利には3重量%と30重量%との間、より有利には5重量%と30重量%との間、最も有利には5重量%と30重量%との間で含む。
【0113】
好ましくは、第2の好ましい実施形態の官能性モノマーは、(メタ)アクリルモノマーである。官能性モノマーは、式(2)または(3)
[式(2)および(3)の両方において、R
1は、HまたはCH
3から選択される。式(2)において、YはOであり、R
5はHであるか、またはCもしくはHではない少なくとも1つの原子を有する脂肪族もしくは芳香族ラジカルである。式(3)において、YはNであり、R
4および/またはR
3はHまたは脂肪族もしくは芳香族ラジカルである]を有する。
【0114】
好ましくは、官能性モノマー(2)または(3)は、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸、これらの酸から誘導されるアミド、例えば、任意で四級化されている、ジメチルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレートまたはメタクリレート、2-アミノエチルアクリレートまたはメタクリレートなど;ホスホネートまたはホスフェート基を含むアクリレートまたはメタクリレートモノマー、アルキルイミダゾリジノン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/mol~10,000g/molの範囲の分子量を有する。
【0115】
多段ポリマー(MP1)またはコア/シェルポリマー粒子は、少なくとも2段階を含む多段プロセスによって得られる。組成物(PC1)の少なくとも成分a1)および成分a2)は、多段ポリマー(MP1)の一部である。
【0116】
好ましくは、段階(SA1)の間に製造される、ガラス転移温度が10℃未満であるポリマー(A1)は、段階(SA2)の前に製造されるか、または多段プロセスの第1の段階である。
【0117】
好ましくは、段階(SA2)の間に製造される、ガラス転移温度が60℃を超えるポリマー(A2)は、多段プロセスの段階(SA1)の後に製造される。
【0118】
第1の好ましい実施形態において、ガラス転移温度が少なくとも30℃である熱可塑性ポリマー(B1)は、ポリマー(B1)のポリマー粒子をもたらすプロセスによって製造される。これらのポリマー(B1)粒子の重量平均粒径(直径)は、15nmと900nmとの間である。好ましくは、ポリマー(B1)粒子の重量平均粒径は20nmと800nmとの間、より好ましくは25nmと600nmとの間、さらにより好ましくは30nmと550nmとの間、またさらにより好ましくは35nmと500nmとの間、有利には40nmと400nmとの間、より有利には75nmと350nmとの間、有利には80nmと300nmとの間である。ポリマー粒子自体は、多段ポリマー(MP1)粒子と一緒に凝集させて、そのような両方のポリマー粒子を多く含むポリマー粉末を得ることができる。これにより、成分a)およびb)を含む組成物(Ci)が得られる。
【0119】
第2の好ましい実施形態において、ガラス転移温度が少なくとも30℃であるポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子、言い換えれば多段ポリマー(MP1)の外層である。
【0120】
段階(SB1)の間に製造される、ガラス転移温度が30℃を超えるポリマー(B1)は、多段プロセスの段階(SA2)の後に製造される。段階(SA1)と段階(SA2)との間、および/または段階(SA2)と段階(SB1)との間に、追加の中間段階が存在する可能性がある。これにより、成分a)およびb)を含む組成物(Ci)も得られる。
【0121】
ポリマー(B1)の少なくとも一部は、前の層で製造されたポリマーにグラフトされるか、または前の層のポリマー鎖と絡み合わせることができる。ポリマー(A1)および(A2)をそれぞれ含む2段階(SA1)および(SA2)しかない場合、ポリマー(B1)の一部をポリマー(A2)にグラフトされるか、またはポリマー(A2)の鎖と絡み合わせることができる。
【0122】
一実施形態において、ポリマー(B1)の少なくとも50重量%がグラフトされる。
【0123】
別の実施形態において、ポリマー(B1)の50重量%未満がグラフトされる。
【0124】
さらに別の実施形態において、ポリマー(B1)の20重量%未満がグラフトされる。
【0125】
さらに別の実施形態において、ポリマー(B1)の5重量%と60重量%との間がグラフトされる。
【0126】
さらに別の実施形態において、ポリマー(B1)の5重量%未満がグラフトされる。
【0127】
さらに別の実施形態において、ポリマー(B1)の0重量%がグラフトされる。
【0128】
ポリマー(B1)用の溶媒での抽出、および抽出前後の重量測定により、グラフト化されていない量を求めることによって、グラフト化の比率を求めることができる。
【0129】
ポリマー(B1)およびポリマー(A2)は、これらのポリマーの組成が非常に近く、特性のいくつかが重複している場合でも、同じポリマーではない。本質的な違いは、ポリマー(A2)が常に多段ポリマー(MP1)の一部であるということである。先に説明したように、ポリマー(B1)も多段ポリマーの一部であり得る実施形態が存在するが、ポリマー(B1)は多段ポリマー(MP1)に自発的にグラフトされない。
【0130】
各ポリマーのガラス転移温度Tgは、例えば、熱機械分析としての動的方法によって推定することができる。
【0131】
ポリマー(A1)および(A2)それぞれの試料を得るために、多段プロセスによってではなく、単独でこれらを調製し、各段階の各ポリマーのガラス転移温度Tgを個別に、より容易に推定および測定することができる。ガラス転移温度Tgの推定および測定を容易にするために、ポリマー(B1)を抽出することができる。
【0132】
組成物(PC1)の成分(LC1)に関して、成分(LC1)は好ましくは液体である。
【0133】
粘度は、25℃で0.5mPa・sと10Pa・sとの間である。好ましくは、粘度は、1mPa・sと10Pa・sとの間、より好ましくは10mPa・sと10Pa・sとの間、さらにより好ましくは50mPa・sと10Pa・sとの間、有利には100mPa・sと10Pa・sとの間である。(LC1)の粘度は動的粘度である。剪断減粘性があると思われる場合、動的粘度の値は1 1/秒の剪断速度で取得される。粘度はレオメーターを用いて測定される。
【0134】
成分(LC1)はまた、いくつかの化合物(そのうち1つは、少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1))の混合物であり得る。
【0135】
成分(LC1)または液体成分(LC1)は、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)をさらに含むことができる。モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)は、少なくとも1つの炭素二重結合を含む。
【0136】
モノマー(M1)は、(メタ)アクリルモノマー、アリルモノマーもしくはスチレン系モノマー、または(Mx)についてはそれらの混合物から選択することができる。
【0137】
変形形態では、モノマー(M1)は、(メタ)アクリルモノマー、アリルモノマー、または(Mx)についてはそれらの混合物から選択することができる。
【0138】
好ましくは、モノマー(M1)は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、1~10個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ならびに二官能性(メタ)アクリレート、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびグリコール構造を有するジ(メタ)アクリレート、ならびに多官能性(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのから選択される。
【0139】
第1のより好ましい実施形態において、モノマー(M1)は、1~10個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ならびに二官能性(メタ)アクリレート、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびグリコール構造を有するジ(メタ)アクリレート、ならびに多官能性(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートから選択される。
【0140】
第2のより好ましい実施形態において、モノマー(M1)、または(Mx)についてそれらの混合物は、スチレンを含まない。
【0141】
第3のより好ましい実施形態において、モノマー(M1)、または(Mx)についてそれらの混合物は、スチレンベースのモノマーを含まない。
【0142】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)および(PG2)は、好ましくは炭素二重結合である。
【0143】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)および(PG2)は、より好ましくは、α,β-不飽和カルボニル基である。
【0144】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)および(PG2)は、アクリレート基、メタシレート(methacylate)基、またはマレイン酸、イタコン酸もしくはフマル酸を含む縮合生成物から選択することができる。
【0145】
好ましくは、化合物(C1)はビニルエステルまたは不飽和ポリエステルである。
【0146】
第1のより好ましい実施形態において、化合物(C1)はビニルエステルである。ビニルエステルは通常、ポリエポキシド(エポキシ樹脂など)を、エチレン性不飽和二重結合含有モノカルボン酸、例えば、(メタ)アクリル酸などと反応させることによって得られる反応生成物であり、その主鎖においてポリエポキシドと同じ骨格を有し、その分子内に不飽和二重結合が存在するため硬化可能である。骨格は、好ましくは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、脂肪族エステル、脂肪族エーテル、および芳香族エステルタイプの骨格からなる群から選択される1つまたは複数のタイプの骨格である。
【0147】
第2のより好ましい実施形態において、化合物(C1)は不飽和ポリエステルである。不飽和ポリエステルは、少なくとも1つの二塩基性有機酸またはその無水物と、少なくとも1つの多価アルコールとの反応生成物である。
【0148】
任意で、成分(LC1)は、ラジカル重合開始剤を含むことができる。例えば、有機過酸化物を添加することができる。
【0149】
本発明は、組成物(PC1)を製造する方法にも関する。
【0150】
本発明による組成物(PC1)を製造する第1の好ましい方法に関して、前記方法は、
i)a)
a1)ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む1段階(SA1)、
a2)ガラス転移温度が少なくとも60℃であるポリマー(A2)を含む1段階(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)ガラス転移温度が少なくとも30℃であり、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間である熱可塑性ポリマー(B1)と
を含む組成物(Ci)を提供する工程、ならびに
ii)組成物(Ci)を、組成物(PC1)中に存在する少なくとも1つの他の成分または化合物を含む組成物(Ciia)と混合する工程、ならびに
iii)任意で、工程ii)で得られた組成物を、工程ii)でまだ添加されていない、組成物(PC1)中に存在する他の成分または化合物と混合する工程
を含む。
【0151】
組成物(Ciia)は、
- ポリエポキシド、または
- ポリエポキシド(polyepoxid)および二重結合を有する有機酸、または
- ビニルエステル、または
- ビニルエステルおよびモノマー(M1)もしくはモノマーの混合物(Mx)、
- 不飽和ポリエステル(polyster)、または
- 不飽和ポリエステルおよびモノマー(M1)もしくはモノマーの混合物(Mx)
を含むことができる。
【0152】
工程iii)において任意で添加される他の成分または化合物は、モノマー(M1)もしくはモノマーの混合物(Mx)、または重合開始剤である。モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)は、これらのモノマーが組成物(Ciia)中に存在せず、工程iiで添加されていない場合、工程iii)で添加され、あるいは、これらのモノマーが工程ii)の組成物(Ciia)中に存在する場合、追加のモノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)が工程iii)で添加される。
【0153】
第1の好ましい実施形態において、組成物(Ciia)は、ポリエポキシドを含む。
【0154】
第2の好ましい実施形態において、組成物(Ciia)は、ポリエポキシド(polyepoxid)および二重結合を有する有機酸を含む。
【0155】
第3の好ましい実施形態において、組成物(Ciia)はビニルエステルを含む。
【0156】
第4の好ましい実施形態において、組成物(Ciia)は、ビニルエステルと、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)とを含む。
【0157】
第5の好ましい実施形態において、組成物(Ciia)は、不飽和ポリエステルを含む。
【0158】
第6の好ましい実施形態において、組成物(Ciia)は、不飽和ポリエステルと、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)とを含む。
【0159】
組成物(PC1)を製造する第1の好ましい方法の工程ii)およびiii)では、少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を添加および形成する。
【0160】
好ましくは、工程i)~iii)は、記載された順序で行われる。
【0161】
本発明による組成物(PC1)を製造する第2の好ましい方法に関して、前記方法は、
i)a)
a1)ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む1段階(A1)、
a2)ガラス転移温度が少なくとも60℃であるポリマー(A2)を含む1段階(A2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)ガラス転移温度が少なくとも30℃であり、成分b)がa)およびb)をベースとする組成物の最大40重量%に相当するように、質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間である熱可塑性ポリマー(B1)と
を含む組成物(Ci)を提供する工程、ならびに
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)、または化合物(C1)の1つもしくは複数の前駆体を含む組成物(Ciib)提供する工程、
iii)i)の組成物をii)の組成物と混合する工程
を含む。
【0162】
組成物(Ciib)は、
- ポリエポキシド、または
- ポリエポキシド(polyepoxid)および二重結合を有する有機酸、または
- ビニルエステル、または
- ビニルエステルおよびモノマー(M1)もしくはモノマーの混合物(Mx)、
- 不飽和ポリエステル、または
- 不飽和ポリエステル(poleyster)およびモノマー(M1)もしくはモノマーの混合物(Mx)
を含むことができる。
【0163】
組成物(PC1)を製造する第2の好ましい方法はまた、他の成分または化合物を添加する任意の追加の工程iv)を含むことができる。
【0164】
好ましくは、工程i)~iii)は、記載された順序で行われる。
【0165】
第1の好ましい実施形態において、組成物(Ciib)は、ポリエポキシドを含む。
【0166】
第2の好ましい実施形態において、組成物(Ciib)は、ポリエポキシド(polyepoxid)および二重結合を有する有機酸を含む。
【0167】
第3の好ましい実施形態において、組成物(Ciib)はビニルエステルを含む。
【0168】
第4の好ましい実施形態において、組成物(Ciib)は、ビニルエステルと、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)とを含む。
【0169】
第5の好ましい実施形態において、組成物(Ciib)は、不飽和ポリエステルを含む。
【0170】
第6の好ましい実施形態において、組成物(Ciib)は、不飽和ポリエステルと、モノマー(M1)またはモノマーの混合物(Mx)とを含む。
【0171】
本発明による組成物(PC1)を製造する方法の第3の好ましい方法に関して、前記方法は、
i)a)
a1)ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む1段階(SA1)、
a2)ガラス転移温度が少なくとも60℃であるポリマー(A2)を含む1段階(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)ガラス転移温度が少なくとも30℃である熱可塑性ポリマー(B1)と
を含むポリマー組成物を提供する工程、
ii)c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を含む成分(LC1)を提供する工程、
iii)成分a)、b)およびc)を混合する工程
を含む。
【0172】
化合物(C1)は、ポリエポキシド、ビニルエステルまたは不飽和ポリエステルである。
【0173】
第1の好ましい実施形態において、化合物(C1)はポリエポキシドである。
【0174】
第2の好ましい実施形態において、化合物(C1)はビニルエステルである。
【0175】
第3の好ましい実施形態において、化合物(C1)は不飽和ポリエステルである。
【0176】
より好ましい実施形態において、化合物(C1)はビニルエステルである。
【0177】
すべての実施形態における各成分の混合は、撹拌によって行うことができる。撹拌は撹拌機で行う。
【0178】
混合工程の重要な条件は温度である。好ましくは、混合工程の温度は、0℃と50℃との間、より好ましくは5℃と45℃との間、さらにより好ましくは10℃と40℃との間、最も好ましくは10℃と35℃との間、有利には10℃と30℃との間である。
【0179】
混合工程に必要な時間は、ガラス転移温度が少なくとも30℃である熱可塑性ポリマー(B1)を含まない組成物と比較して短い。
【0180】
混合時間は、好ましくは120分未満であり、有利には90分未満(ラボスケール)である。このパラメータは、使用量の影響を受ける。同じ比率の成分の場合、すべての量で絶対量を小さくすると、時間が短くなる可能性がある。
【0181】
組成物(PC1)を製造する異なる方法では、好ましくは、水銀ポロシメトリーで測定した際の総圧入量が少なくとも1.2ml/gであるポリマー粉末POW1の形態の多段ポリマー(MP1)または組成物(Ci)を使用する。
【0182】
ポリマー粉末POW1の空隙率は、前記ポリマー粉末POW1の質量(g)あたりにおける水銀のミリリットル(ml)での総圧入量または総累積(cuumulative)圧入(累積圧入量)として表される。これは、標準ISO 15901-1:Evaluation of pore size distribution and porosity of solid materials by mercury porosity and gas adsorption-Part 1:mercury porosityに従って測定される。細孔サイズ径(pore size diameter)が0.005μmになるまで、総累積圧入が考慮される。
【0183】
ポリマー粉末POW1は、最大10ml/gの総圧入量または総累積圧入を有する。好ましくは、本発明のポリマー粉末POW1の総圧入量または総累積圧入は、1.2ml/gと10ml/gとの間である。
【0184】
増分圧入(増分圧入量)は、2つの特定の細孔径の間の体積である。増分圧入は、同様にml/gでの絶対値として、または総圧入量または総累積圧入のパーセンテージとしての相対値として表すことができる。好ましくは、ポリマー粉末POW1は、10μmを超える(10μmより大きい)細孔サイズに対して最大85%の相対的増分圧入を有する。好ましくは、ポリマー粉末POW1は、10μmを超える(10μmより大きい)細孔サイズに対して少なくとも0.9ml/gの累積圧入を有する。
【0185】
本発明はまた、組成物(PC1)の使用に関する。組成物(PC1)は、強化ポリマー組成物(PC2)の調製に使用される。
【0186】
ポリマー組成物(PC2)は、成分(LC1)の、少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)を重合させることによって調製される。化合物(C1)の重合後、ポリマー(P2)が得られる。
【0187】
本発明は、
a)a1)ガラス転移温度が10℃未満のポリマー(A1)を含む1段階(SA1)、
a2)ガラス転移温度が少なくとも60℃であるポリマー(A2)を含む1段階(SA2)
を含む多段ポリマー(MP1)と、
b)ガラス転移温度が少なくとも30℃である熱可塑性ポリマー(B1)と、
c)少なくとも2つの重合性基(PG1)および(PG2)を有する化合物(C1)からのユニットを含むポリマー(P2)と
を含むポリマー組成物(PC2)であって、ポリマー(B1)の質量平均分子量Mwが10,000g/molと500,000g/molとの間であり、成分b)がa)およびb)のみをベースとする組成物の最大40重量%に相当し、成分c)100phrに対する成分a)およびb)の合計が0.5と100phrとの間であることを特徴とする、ポリマー組成物(PC2)に関する。
【0188】
ポリマー(P2)は熱硬化性ポリマーである。
【0189】
ポリマー組成物(PC2)は、任意で繊維または鉱物充填剤などの他の成分を含むことができる。好ましくは、ポリマー組成物(PC2)の他の成分は、繊維または鉱物充填剤から選択される。その場合、ポリマー組成物(PC2)はポリマー複合材料である。
【0190】
ポリマー組成物(PC2)は、接着剤として、より好ましくは構造用接着剤として、またはポリマー複合材料における、あるいはコーティング、装飾鋳物、フローリング、ポリマーコンクリート、固体表面、人工大理石などの用途、または海洋用途、建築および建設、風力エネルギー用途に使用することができる。
【0191】
評価方法
ガラス転移温度
ポリマーのガラス転移(Tg)は、熱機械分析を実現できる装置で測定される。Rheometrics Companyによって提案されたRDAII「RHEOMETRICS DYNAMI CANALYSER」を使用した。熱機械分析では、温度、ひずみ、または加えられた変形に応じて、試料の粘弾性変化を正確に測定する。ひずみは0.1%である。温度範囲は-125℃と150℃との間で、温度は2℃/分で変化する。装置は、温度変動の制御されたプログラムの間、ひずみを固定したまま、試料の変形を継続的に記録する。結果は、温度に応じて、弾性率(G’)、損失率、およびtanδを描画することによって得られる。Tgは、tanδの導関数(derived)が0に等しい点の、tanδ曲線で読み取られる最高温度値である。
【0192】
分子量
ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定される。キャリブレーションにはポリスチレン標準を使用する。ポリマーを1g/Lの濃度でTHFに溶解する。クロマトグラフィーカラムは修飾シリカを使用する。流量は1ml/分で、示差屈折率検出器を使用する。
【0193】
粒径分析
多段重合後の一次粒子の粒径を、Zetasizerを用いて測定する。回収後のポリマー粉末の粒径を、MALVERNのMalvern Mastersizer3000を用いて測定する。微粒子の重量平均粉末粒径、粒径分布および比率の推定には、0.5~880μmの範囲を測定する300mmレンズを備えたMalvern Mastersizer3000装置を使用する。
【0194】
空隙率
ポリマー粉末POW1の空隙率は、前記ポリマー粉末POW1の質量(g)あたりにおける水銀のミリリットル(ml)での総圧入量または総累積(ccumulative)圧入(累積圧入量)として表される。これは、標準ISO 15901-1:Evaluation of pore size distribution and porosity of solid materials by mercury porosity and gas adsorption-Part 1:mercury porosityに従って測定される。
【実施例】
【0195】
原料:
成分(LC1)として、Aliancys社による市販の樹脂ATLAC 430、ATLAC 590およびATLAC P600が使用される。
【0196】
多段ポリマー(MP1)は、以下の合成に従って製造される:第1の段階(SA1)-ポリマータイプ(A1)の重合:20リットルの高圧反応器に、脱イオン水116.5部、乳化剤である牛脂脂肪酸のカリウム塩0.1部、1,3-ブタジエン21.9部、t-ドデシルメルカプタン0.1部、およびp-メンタン(menthane)ヒドロペルオキシド0.1部を、イニシャルケトルチャージとして投入した。溶液を撹拌しながら43℃まで加熱し、その時点でレドックス系触媒溶液(水4.5部、テトラピロリン酸ナトリウム0.3部、硫酸第一鉄0.004部およびデキストロース0.3部)を投入し、効率的に重合を開始した。次いで、溶液をさらに56℃まで加熱し、この温度で3時間保持した。重合開始から3時間後、第2のモノマーチャージ(BD77.8部、t-ドデシルメルカプタン0.2部)、追加の乳化剤の半量、および還元剤チャージ(脱イオン水30.4部、乳化剤である牛脂脂肪酸のカリウム塩2.8部、デキストロース0.5部)、および追加の開始剤(p-メンタン(menthane)ヒドロペルオキシド0.8部)を8時間にわたって連続的に添加した。2回目のモノマー添加の完了に続いて、残りの乳化剤、還元剤チャージおよび開始剤をさらに5時間にわたって連続的に添加した。重合開始から13時間後、溶液を68℃まで加熱し、重合開始から少なくとも20時間が経過するまで反応させて、ポリブタジエンゴムラテックスR1を生成した。得られたポリブタジエンゴムラテックス(A1)は、固形分を38%含有し、約160nmの重量平均粒径を有していた。
【0197】
第2の段階(SA2)-ポリマータイプ(A2)の重合:3.9リットルの反応器に、固形分ベースで、ポリブタジエンゴムラテックスR1 75.0部、脱イオン水37.6部、およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部を投入した。溶液を撹拌し、窒素でパージし、77℃まで加熱した。溶液が77℃に達したとき、メチルメタクリレート22.6部、ジビニルベンゼン1.4部およびt-ブチルヒドロペルオキシド開始剤0.1部の混合物を70分にわたって連続的に添加し、続いて80分間保持した。保持時間の始まりから30分後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.1部を一度に反応器へと添加した。80分の保持時間の後、安定化エマルジョンをグラフト共重合体ラテックスに添加した。安定化エマルジョンは、脱イオン水3.2部(グラフト共重合体の質量に基づく)、オレイン酸0.1部、水酸化(hydroxyde)カリウム0.1部およびオクタデシル-3-(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.9部を混合することによって調製した。得られたコアシェルポリマー(A1+A2)は、約180nmの重量平均粒径を有していた。次いで、最終多段ポリマー(MP1)を回収し、ポリマー組成物を凝固および乾燥させて、コア/シェル-1の粉末が得られた。
【0198】
好ましい実施形態によれば、ガラス転移温度が少なくとも30℃である熱可塑性ポリマー(B1)は、多段ポリマー(MP1)への追加の段階として作製される-ポリマー組成物タイプC1の重合:ポリマー(B1)の合成:半連続プロセス:脱イオン水に依然として分散しているコアシェルポリマー(A1+A2)10,000g、FeSO4 0.01g、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩0.032g(脱イオン水10gに溶解)、脱イオン水110gに溶解したナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート3.15g、および乳化剤である牛脂脂肪酸のカリウム塩21.33g(水139.44gに溶解)、を撹拌しながら反応器に投入し、コア-シェルポリマーを除いて(exept)、添加された原料が完全に溶解するまで混合物を撹拌した。真空窒素パージを3回連続して実施し、反応器を低真空下に置いた。次いで、反応器を加熱した。同時に、メチルメタクリレート1,066.7gおよびn-オクチルメルカプタン10.67gを含む混合物を30分間窒素脱気した。反応器を63℃に加熱し、その温度に維持する。次いで、ポンプを使用して、モノマー混合物を180分で反応器に導入した。並行して、ter-ブチルヒドロペルオキシド5.33g(脱イオン水100gに溶解)の溶液を導入する(同じ添加時間)。これらのラインを水50gおよび20gですすいだ。次いで、反応混合物を80℃の温度に加熱し、次いで、モノマーの添加が終了した後、重合が完了するように60分間放置した。反応器を30℃まで冷却した。共重合体B1の質量平均分子量は、Mw=28,000g/molである。
【0199】
次いで、多段ポリマー(MP1)およびポリマー(B1)からなる最終ポリマー組成物を回収し、ポリマー組成物を凝固および乾燥させて、コア/シェル-2の力(power)が得られた。
【0200】
成分の混合:成分(LC1)100gを、アルミニウム製のレシピエントに入れる。すでに熱可塑性ポリマー(B1)を含んでいるかどうかにかかわらず、さまざまな量の粉末の形態の多段ポリマー(MP1)を添加する。150~200rpmの速度で60分間撹拌する。
【0201】
レオロジー:組成物の粘度は、Anton Parrレオメーターで測定される。25℃でコーンプレート型(モジュールCP-50)が使用される。
【0202】
分散試験:粉末状の成分MP1またはMP1+B1 5重量%を成分LC195%に添加する。標準状態では、分散ブレードを使用して100~200RPMでの混合を適用する。60分後、分散体の外観は、分散していない粉末粒子(小さい粒)の存在、粉末粒子の凝集、単相または二相分散、および気泡の存在に応じて評価される。分散が悪い場合は、500RPMで60分間の追加混合を適用した。成分MP1またはMP1+B1の量についても同じ手順が実行される。
【0203】
機械的試験用パーツを製造するための試料調製:標準的なBPO/アミン系(過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン)硬化剤を使用した。室温で約30分のゲル化時間を得るために用量が選択された。
【0204】
機械的評価:破断点伸び、引張強度、およびヤング率などの引張特性を、ISO 527規格に準拠した、50kNセルを備えたZWICK Z050 TH AllroundLineを使用して評価した。
【0205】
重ね剪断評価:EN 1465規格に準拠した、50kNセルを備えたZWICK Z050 TH AllroundLineを使用して評価した。基材にはアルミ板を使用した。
【0206】
【0207】
本発明に基づく組成物(化合物b)の熱可塑性ポリマー(B1)を含む)は、異なる化合物c)に対して容易かつ速く調製することができる。得られた分散体は発明的に均一である。
【0208】
表2において、本発明による組成物から得られたポリマーについて、強化性の大幅な向上が観察される。亀裂成長抵抗K1cおよび破壊靭性G1cにより示されるように、破壊靭性は大幅に向上する。
【国際調査報告】