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▶ ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポールの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-30
(54)【発明の名称】肺癌の可能性を判定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20220823BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220823BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220823BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220823BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/574 A
G01N33/50 P
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576097
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 SG2020050343
(87)【国際公開番号】W WO2020256640
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】10201905757Q
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブーン・シェール・ゴ
(72)【発明者】
【氏名】リンジ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・フィー・エステル・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー・ヤン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法に向けられる。方法は、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、カタラーゼ(CAT)、C-X-Cモチーフケモカイン受容体4(CXCR4)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、及びサーファクタントタンパク質B(SFTPB)からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む。好ましい実施形態において、非小細胞肺癌(NSCLC)の存在は、健常対象と比較した、血漿由来エクソソームに基づく前記マーカーのレベルの増加に基づいて判定される。本開示は、これらのバイオマーカーに基づいて、肺癌に罹患した対象の肺癌進行又は抗癌療法に対する応答性を判定する工程に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、カタラーゼ(CAT)、C-X-Cモチーフケモカイン受容体4(CXCR4)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、及びサーファクタントタンパク質B(SFTPB)からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法。
【請求項2】
参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加は、対象における肺癌の存在の可能性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオマーカーは、核酸、タンパク質、又はペプチドである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
小胞はエクソソームである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
バイオマーカーのレベルは、抗体に基づく技法又はPCRに基づく技法を使用して判定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的サンプルから小胞集団を単離する工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
抗体を用いて小胞集団を検出する工程を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
抗体は、抗CD9抗体、抗CD63抗体、及び抗CD81抗体からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
生物学的サンプルは、血液、血清、又は血漿サンプルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)又は小細胞肺癌(SCLC)である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
NSCLC又はSCLCは早期NSCLC又は早期SCLCである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CAT、CXCR4、及びSFTPBのレベルを検出する工程を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象に対して胸部コンピューター断層撮影(CT)を実施する工程を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
肺癌を有することが見出だされた対象に抗癌療法を投与する工程を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における早期ステージ及び末期ステージの肺癌の存在を区別する工程、を含む、対象における肺癌の進行を判定する方法。
【請求項16】
(a)対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在を示す工程、並びに(b)対象に抗癌療法を投与する工程、を含む、対象における肺癌を検出する及び治療する方法。
【請求項17】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、(a)参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加又は変化がないことは、対象が抗癌療法に非応答性であることを示し、(b)参照と比較したバイオマーカーのレベルの減少は、対象が抗癌療法に応答性であることを示す工程、を含む、肺癌に罹患した対象の抗癌療法に対する応答性をモニターする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、バイオテクノロジーの分野に関する。特に、本開示は、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法、及び対象における肺癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、2018年には米国で約234,030件の新しい症例を有して、米国において診断された2番目に多いタイプの癌である。それは、男性及び女性の両方で、癌による死亡原因の第1位である。肺癌は、約70歳の平均年齢を有して、主に高齢の人々において診断される。
【0003】
現在の肺スクリーニング選択肢は、胸部x線、喀痰細胞診、及び胸部コンピューター断層撮影(CT)を含み、各々はそれらそれぞれの重み付き長所及び制約を有する。これらの手法の中で、喀痰細胞診は非侵襲的方法であるが、非常に乏しい検出率を有する。胸部x線に関しては、それも肺癌の早期検出に対して低い感度及び特異度を示す。低線量CTは高い感度を有するにもかかわらず、それは極めて乏しい特異度を有することが実証されており、約96%の偽陽性率をもたらす。低線量CTによって検出された患者の大多数は、侵襲的生検により偽陽性肺癌と実証されている。それ故、これら費用のかかる侵襲的ツールの臨床的有用性は、一部には高い発生率の良性結節に起因して、死亡率を改善する早期肺癌検出及び介入の促進において依然として議論の余地がある且つ不満足な状態のままであり、解釈を極めて厳しくしている。
【0004】
従って、上述の困難の1つ又は複数を克服する又は改良することが一般的に望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、カタラーゼ(CAT)、C-X-Cモチーフケモカイン受容体4(CXCR4)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、及びサーファクタントタンパク質B(SFTPB)からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法が本明細書において開示される。
【0006】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における早期ステージ及び末期ステージの肺癌の存在を区別する工程、を含む、対象における肺癌の進行を判定する方法も本明細書において開示される。
【0007】
(a)対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在を示す工程、並びに(b)対象に抗癌療法を投与する工程、を含む、対象における肺癌を検出する及び治療する方法も本明細書において開示される。
【0008】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、(a)参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加又は変化がないことは、対象が抗癌療法に非応答性であることを示し、(b)参照と比較したバイオマーカーのレベルの減少は、対象が抗癌療法に応答性であることを示す工程、を含む、肺癌に罹患した対象の抗癌療法に対する応答性をモニターする方法も本明細書において開示される。
【0009】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、単なる非限定的な例として以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エクソソームバイオマーカー発見ワークフローの図である。
図2】超遠心分離(UC)及びtotal exosome isolation kit(Invitrogen社)により単離されたヒト血漿(200μl)由来のエクソソームの特徴付けの図である。(A)プールされた健常ドナー(n=33)から富化された血漿エクソソームについてのそれぞれの電子顕微鏡写真、低倍率(80,000×、スケールバー=500nm)。挿入は、顕微鏡写真の拡大部を示している(200,000×、スケールバー=200nm)。(B)プールされた健常ドナー由来のそれぞれのエクソソーム富化調製物についての、NTAによる濃度(粒子/ml)及びサイズ分布(nm)プロファイル。(C)4種の陽性(+)エクソソームマーカー及び2種の陰性(-)エクソソームマーカーに対する、プールされた血漿エクソソーム及びプールされたエクソソーム枯渇血漿についてのそれぞれの免疫ブロット解析。トランスフェリン(TF)は、ローディング対照として働いた。健常、n=33;NSCLC早期、n=13;NSCLC末期、n=60。
図3A】定量的MSデータ品質の査定の図である。(A)3つのTMT技術的複製において定量化された重複タンパク質のベン図。
図3B】定量的MSデータ品質の査定の図である。(B)定量的データセット間の相関査定。三つ組の間の各タンパク質に対する測定された比のlog2散布図。
図4-1】図4。血漿エクソソームの免疫ブロット検証のグラフである。箱ひげ図で示される、早期ステージNSCLC(n=14);末期ステージNSCLC(n=14);及び健常個体(n=14)における、6種の候補エクソソームバイオマーカーの正規化された平均デンシトメトリー値(log2)。線は中央値を表し、箱は25~75パーセンタイルを表し、ひげは最大及び最小域を表し、点は個々の値を表す。対照及びNSCLC表現型の間の一元配置ANOVA比較。デンシトメトリー値は、トランスフェリン(ローディング対照)に対して正規化されている。略語:**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
図4-2】図4の続き。
図4-3】図4の続き。
図5A】受信者動作特性曲線(ROC)である。(A)NSCLC表現型と健常対象とを見分けるためのエクソソームタンパク質候補及び臨床的に使用中のマーカーについてのROC解析。(健常、n=167;早期NSCLC、n=64;全NSCLC、n=357)。
図5B】受信者動作特性曲線(ROC)である。(B)癌表現型と健常対象とを見分けるためのエクソソームタンパク質候補及び臨床的に使用中のマーカーについてのROC解析。(健常、n=167;乳房、n=113;結腸直腸、n=144;鼻咽頭、n=101)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法が本明細書において開示される。1つの実施形態において、方法は、対象における早期ステージ及び/又は末期ステージの肺癌の両方の存在の可能性を判定する。
【0012】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法が本明細書において開示される。
【0013】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在を検出する方法が本明細書において開示される。1つの実施形態において、方法は、対象における早期及び/又は末期ステージの肺癌の存在を検出する。
【0014】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加は、対象における肺癌の存在を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在を検出する方法が本明細書において開示される。
【0015】
理論によって拘束されることなく、本発明者らは、エクソソームを用いると、血液サンプルの全ての利点を有するが、バックグラウンド(他の疾患又は損傷に起因したマーカータンパク質の揺らぎ)及び血漿タンパク質からの干渉のない、血中における明確に規定された実体を見ることができることを見出だした。腫瘍細胞は、通常の増殖細胞よりもはるかに多くの循環エクソソームを放出することが公知であることから、この手法は、血漿中のNSCLC腫瘍由来エクソソームについての直接的な調べを最適に支持する。
【0016】
3又は4マーカーエクソソームパネルが、例えば毎年の検診において、並びに高リスク患者を規定するイメージングの前に使用され得る。パネルとの組み合わせで、高リスク臨床プロファイルを有するそうした患者は、胸部コンピューター断層撮影(CT)に進み得る。検査結果が低い確率の癌を示唆する者は、彼らのルーチン的経過観察の間に血漿マーカーを用いて再評価され得る。理論によって拘束されることなく、本発明のポイント・オブ・ケア診断パネルは、不要な心配、生検、及び/又は手術をもたらし得るスクリーニングCTに伴う偽陽性症例(約50%)を大幅に低下させ得;早期検出は、管理における適時調整される治療的ストラテジー、及びNSCLC予後の改善を可能にするであろう。
【0017】
1つの実施形態において、方法は、インビトロ又はエクスビボ法である。
【0018】
「肺癌の存在の可能性」という語句は、肺癌が対象に存在する可能性がどのくらいあるかを指す。参照と比較した1種又は複数のバイオマーカーのレベルの増加は、対象における肺癌の存在の可能性(すなわち、見込み又はリスク)を示し得る。これは、例えば、対象における肺癌の存在の、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は99%を上回る可能性であり得る。
【0019】
1つの実施形態において、対象由来の生物学的サンプルにおける、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択される小胞に結び付いた(又は結合した)バイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(又は増加)は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法が提供される。
【0020】
バイオマーカーは、タンパク質、ペプチドであり得る。バイオマーカーは、小胞の表面に結び付けられ得る又は結合され得る。代替的に、それは小胞内に含有され得る。代替的な実施形態において、バイオマーカーは核酸である。
【0021】
1つの実施形態において、バイオマーカーのレベルは、抗体に基づく技法又はPCRに基づく技法を使用して判定される。バイオマーカーは、例えば、小胞に結び付いている、結合している、又はその中に含有されているバイオマーカーの量を判定する、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、Luminexアッセイ、又はウェスタン免疫ブロッティング等、抗体に基づく技法を使用して検出され得る。抗体は、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体であり得る。抗体は、検出を可能にする検出可能な標識(蛍光性、発光性、又は酵素の標識等)に更にコンジュゲートされ得る。代替的に、抗体は、標識(蛍光性、発光性、又は酵素の標識等)にコンジュゲートされる二次抗体を使用して検出され得る。
【0022】
1つの実施形態において、バイオマーカーのレベルは、PCRに基づく技法を使用して判定される。小胞の解析は、当技術分野において公知の方法によるRNA配列解析を含み得る。例えば、RT-PCR解析のために、小胞は溶解され得、RNAは取り出され得る。サンプルにおける遺伝子のmRNAレベルを判定する方法は、当技術分野において周知である。例えば、mRNAレベルは、PCR、qPCR、qRT-PCR、RNAシーケンシング、マイクロアレイ解析、SAGE、MassARRAY技法、次世代シーケンシング、又はFISHによって判定され得る。代替的に、捕捉表面にある又は捕捉表面から放出された捕捉された小胞は、免疫細胞化学的及び他の蛍光イメージング技法を使用して解析され得る。小胞の解析は、PCR解析又はゲノムシーケンシング等、当技術分野において公知の技法を使用してDNA分子の存在を検出することも含み得る。
【0023】
フローサイトメトリー等の他の技法も使用され得る。代替的に、バイオマーカーは、質量分析を使用しても検出され得る。核酸バイオマーカー(ゲノムDNA又はmRNA等)は、PCRに基づく技法を使用しても検出され得る。
【0024】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、互換可能に使用され、天然に又は合成的に産生されたかどうかにかかわらず、ペプチド結合又は改変ペプチド結合を通じて連結されたアミノ酸(ジペプチド又はそれよりも大きいもの)の任意のポリマーを含む。本発明のポリペプチドは、炭水化物基等の非ペプチド性成分を含み得る。炭水化物及び他の非ペプチド性置換基は、ポリペプチドが産生される細胞によってポリペプチドに付加され得、細胞のタイプによって変わるであろう。ポリペプチドは、本明細書において、それらのアミノ酸骨格構造の観点から規定され;炭水化物基等の置換基は、一般的に指定されないが、とはいえ存在し得る。
【0025】
本発明の核酸は、mRNA等のRNAの形態、又は例えばクローニングによって獲得された若しくは合成的に産生されたcDNA及びゲノムDNAを含めたDNAの形態にあり得る。DNAは、二本鎖又は一本鎖であり得る。一本鎖DNA又はRNAは、センス鎖としても知られるコード鎖であり得る、又はそれは、アンチセンス鎖とも称される非コード鎖であり得る。
【0026】
本明細書において使用するとき、「抗体」という用語は、合成抗体、モノクローナル抗体、組み換えで産生された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド連結Fv(sdFv)(二重特異性sdFvを含む)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを含むが、それらに限定されるわけではない。本明細書において提供される抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性であり得る、又はそれを上回る多重特異性であり得る。
【0027】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」という用語は、核酸分子の相補鎖の同時プライマー伸長による特異的核酸配列のインビトロ増幅のための反応を意味する。言い換えれば、PCRとは、プライマー部位によって隣接された標的核酸の多コピー又は複製を作製するための反応であり、そのような反応は、以下の工程:(i)標的核酸を変性させる工程、(ii)プライマーをプライマー部位にアニーリングする工程、及び(iii)ヌクレオシド三リン酸の存在下で核酸ポリメラーゼによってプライマーを伸長する工程、の1回又は複数の反復を含む。通常、反応は、サーマルサイクラー機器において、各工程に対して最適化された種々の温度を循環する。特定の温度、各工程における継続時間、及び工程間の変化の速度は、当業者に周知の多くの因子に依存する。「PCR」という用語は、逆転写-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量PCR、マルチプレックスPCR等を含むがそれらに限定されない、反応の派生形態を包含する。
【0028】
1つの実施形態において、方法は、小胞集団に存在する、又は小胞に結び付いている、結合している、若しくはその中に含有されている、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む。1つの実施形態において、方法は、CAT、CXCR4、SOD3、又はSFTPBのレベルを判定する工程を含む。方法は、バイオマーカーのパネル(すなわち、2種以上のバイオマーカー)のレベルを判定する工程を含み得る。1つの実施形態において、方法は、i)CAT及びCXCR4、ii)CAT及びSOD3、iii)CAT及びSFTPB、iv)CXCR4及びSOD3、v)CXCR4及びSFTPB、又はvi)SOD3及びSFTPB、を含む2種のバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む。1つの実施形態において、方法は、i)CAT、CXCR4、及びSOD3、ii)CAT、CXCR4、及びSFTPB、iii)CAT、SOD3、及びSFTPB、又はiv)CXCR4、SOD3、及びSFTPB、を含む3種のバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む。1つの実施形態において、方法は、CAT、CXCR4、及びSFTPBを含む3種のバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む。1つの実施形態において、方法は、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBを含む4種のバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む。1つの実施形態において、方法は、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる4種のバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む。
【0029】
1つの実施形態において、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、及びSFTPBを含むバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(又は増加)は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法が提供される。方法は、SOD3のレベルを判定する工程を更に含み得る。
【0030】
1つの実施形態において、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBを含むバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(又は増加)は、対象における肺癌の存在の可能性を示す工程、を含む、対象における肺癌の存在の可能性を判定する方法が提供される。
【0031】
本明細書において言及されるバイオマーカーは、対象における肺癌の存在の可能性を判定するための、当技術分野において公知である他のバイオマーカーとの組み合わせで使用され得る。これらは、CA125、CEA、及び/又はCyfra-21を含む。
【0032】
方法は、生物学的サンプルから小胞集団を単離する工程を含み得る。小胞集団は、超遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、分画遠心分離、ナノ膜限外濾過、免疫吸着(immunoabsorbent)捕捉、アフィニティー精製、アフィニティー選択、マイクロ流体分離、又はその組み合わせを含む技法を使用して単離され得る。
【0033】
1つの実施形態において、小胞集団(又はエクソソーム集団)は、分画遠心分離、それに続く超遠心分離を用いて単離され得る(ゴールドスタンダードな方法である)。富化の他の方法は、密度勾配遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、濾過技法、ポリマーに基づく沈殿、免疫学的分離、及びふるい分けによる単離を含む。
【0034】
本発明の方法は、バイオマーカーのレベルの測定前に、小胞集団を単離する工程を含み得る。方法は、バイオマーカーのレベルの測定前に、小胞集団を溶解する工程を更に含み得る。小胞集団を溶解する方法は、当技術分野において公知である。例えば、小胞集団は、放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファー等の溶解バッファーを使用して溶解され得る。
【0035】
1つの実施形態において、方法は、抗体を用いて小胞集団を検出する工程を含む。例えば、これは、エクソソーム集団由来の表面マーカーを検出する工程を含み得る。これは、好ましくは、エクソソーム集団の単離、精製、及び/又は富化を可能にするであろう。本発明の目的上、それら全ての文法的形態にある「単離」及び「単離する」という用語は、エクソソームを、それらの環境、例えば血清若しくは血漿サンプル又は組織生検から分離する又は回収する行為に関する。それら全ての文法的形態にある「精製する」及び「精製」という用語は、(非エクソソーム性)夾雑物から所望のエクソソームを解放する行為に関する。それら全ての文法的形態にある「富化する」及び「富化」という用語は、エクソソームの割合をそれらそれぞれの溶媒中で増加させることを意味する。タンパク質は、エクソソーム表面マーカーとして特に想定されるが、脂質等の他の生体分子も考え得る。エクソソーム表面マーカーは、抗体によって認識され得る。1つの実施形態において、抗体は、抗CD9抗体、抗CD63抗体、及び抗CD81抗体からなる群から選択される。
【0036】
1つの実施形態において、方法は、ビーズコンジュゲート抗体を用いて小胞集団を単離する工程を含む(ELISAに基づくアッセイにおいて等)。ビーズコンジュゲート抗体は、遠心分離又は磁気分離(ビーズが磁気ビーズである場合)等の技法及び任意で1回又は複数の洗浄工程を使用して、任意の抗体結合小胞集団が生物学的サンプルから分離されるのを可能にする。1つの実施形態において、抗体は、抗CD9抗体、抗CD63抗体、及び抗CD81抗体からなる群から選択される。
【0037】
対象から獲得された生物学的サンプルは、任意の体液であり得る。例えば、生物学的サンプルは、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞(broncheoalveolar)洗浄液、精液(前立腺液を含む)、カウパー液若しくは先走り液、女性膣液、汗、糞便、毛髪、涙液、嚢胞液、胸膜液及び腹腔液、心嚢液、リンパ液、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経分泌物、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、排泄水(stool water)、膵液、副鼻腔(sinus cavities)からの洗浄液、気管支肺吸引物、又は他の洗浄液であり得る。生物学的サンプルは、胎児又は母体起源のものであり得る胚盤胞腔(blastocyl cavity)、臍帯血、又は母体循環も含み得る。生物学的サンプルは、小胞及び他の循環バイオマーカーが獲得され得る組織サンプル又は生検でもあり得る。
【0038】
多くの疾患(多くの癌等)に関して、侵襲的組織生検、それに続く組織病理学的又は分子的解析は、診断的ゴールドスタンダードと見なされる。そのような処置が高侵襲性の手術として又は低侵襲性の針穿刺として実施されるかどうかにかかわらず、組織生検は感染症のリスクを伴い、繰り返し適用され得ない。更に、コア及び針生検は、徹底的な診断解析のための十分な量の組織をもたらさないことが多く、帯状の病態生理学的組織変化を見逃しさえし得る。血液サンプルは容易に且つ繰り返し獲得され得るため、「液体生検」という概念は、伝統的組織生検を補完する低侵襲性のものとして期待されている。体液に分泌されると、小胞は、液体生検により超遠心分離を介して単離され得る。
【0039】
1つの実施形態において、生物学的サンプルは、液体生検のための体液である。1つの実施形態において、生物学的サンプルは、血液、血清、又は血漿サンプルである。1つの実施形態において、生物学的サンプルは、癌細胞又は循環腫瘍細胞(CTC)を含む。別の実施形態において、生物学的サンプルは、癌細胞又は循環腫瘍細胞由来の小胞を含む。
【0040】
本発明の方法は、小胞集団を査定することを含む、1つ又は複数の小胞を査定する工程を含み得る。本明細書において使用するとき、「小胞」とは、内側に空洞を含む、天然に存在する又は合成の小胞を指し得る。小胞は、内部空洞の内容物を取り囲む脂質二重層膜を含み得る。小胞は、リポソーム、エクソソーム、細胞外小胞、微小胞、アポトーシス小胞(又はアポトーシス小体)、液胞、リソソーム、輸送小胞、分泌小胞、ガス胞、基質小胞、又は多胞体を含み得る。小胞は、約1000nm若しくはそれ未満、約900nm若しくはそれ未満、約800nm若しくはそれ未満、約700nm若しくはそれ未満、約600nm若しくはそれ未満、約500nm若しくはそれ未満、約450nm若しくはそれ未満、約400nm若しくはそれ未満、約350nm若しくはそれ未満、約300nm若しくはそれ未満、約250nm若しくはそれ未満、約240nm若しくはそれ未満、約230nm若しくはそれ未満、約220nm若しくはそれ未満、約210nm若しくはそれ未満、約200nm若しくはそれ未満、約190nm若しくはそれ未満、約180nm若しくはそれ未満、約170nm若しくはそれ未満、約160nm若しくはそれ未満、約150nm若しくはそれ未満、約140nm若しくはそれ未満、約130nm若しくはそれ未満、約120nm若しくはそれ未満、約110nm若しくはそれ未満、約100nm若しくはそれ未満、約90nm若しくはそれ未満、約80nm若しくはそれ未満、約70nm若しくはそれ未満、約60nm若しくはそれ未満、約50nm若しくはそれ未満、約40nm若しくはそれ未満、約30nm若しくはそれ未満、約20nm若しくはそれ未満、又は約10nm若しくはそれ未満の寸法を有し得る。
【0041】
エクソソームとは、当技術分野において細胞外小胞、微小胞、又は微粒子とも称される、小胞の1タイプである。これらの小胞は、細胞の外部に、真核細胞によって放たれる又は原形質膜から出芽される。これらの膜小胞は、約10nm~約5000nmに及ぶ直径を有して、サイズが不均一である。細胞内多胞体のエクソサイトーシスによって放出される小さな小胞(直径がおよそ10~1000nm、好ましくは30~100nm)は、当技術分野において「エクソソーム」と称される。本明細書に記載される方法及び組成物は、全てのサイズの他の小胞に等しく適用可能である。
【0042】
構造的に、エクソソームは、mRNA、マイクロRNA(miRNA)、及び他のノンコーディングRNA、又は更に少量のDNA等の遺伝物質、脂質、並びに転写因子、サイトカイン、成長因子、及びその他を含むタンパク質を含めた、様々な生体分子の積み荷を運ぶ球体の二層のプロテオリピドとして記載され得る。
【0043】
1つの実施形態において、小胞はエクソソームである。別の実施形態において、小胞は循環エクソソームである。
【0044】
上で記載されるように、小胞は、更なる解析の前にサンプルから単離され得る(例えば、適切な抗体によって結合される表面マーカーを利用することによって)、又はサンプルから直接解析され得る(例えば、本明細書に記載される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを検出することによって)。「解析」は、概して、サンプルにおける小胞の量の定量化、及び/又は肺癌を指し示す1種若しくは複数のバイオマーカーのレベルを査定することを含み得る。
【0045】
「癌」及び「癌性」という用語は、一部には、無秩序な細胞成長によって典型的に特徴付けられる、哺乳類における生理学的状態を指す又は記載する。本明細書において使用するとき、「癌」という用語は、早期ステージ及び末期ステージの癌を含めた、非転移性及び転移性癌を指す。「前癌性」という用語は、典型的には癌に先行する又は癌に発展する状態又は成長を指す。「非転移性」によって、良性である、或いは原発部位にとどまり、リンパ系若しくは血管系に、又は原発部位以外の組織に浸透していない癌を意味する。一般的に、非転移性癌とは、ステージ0、I、又はIIの癌、及び時にはステージIIIの癌である任意の癌である。「早期ステージの癌」によって、侵襲性若しくは転移性ではない、又はステージ0、I、若しくはIIの癌として分類される癌を意味する。「末期ステージの癌」という用語は、一般的にステージIII又はステージIVの癌を指すが、ステージIIの癌又はステージIIの下位ステージの癌も指し得る。当業者であれば、早期ステージの癌又は末期ステージの癌のいずれかとしてのステージIIの癌の分類は、特定のタイプの癌に依存することを解するであろう。1つの実施形態において、癌は肺癌である。1つの実施形態において、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)又は小細胞肺癌(SCLC)である。
【0046】
1つの実施形態において、方法は、肺癌を有することが見出だされた対象を治療する工程を含む。
【0047】
本明細書に規定される方法は、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(増加)は、対象における肺癌の存在を示す工程、を含み得る。
【0048】
本明細書において言及される「参照」とは、同じ対象から採取された1種若しくは複数の非癌性サンプル、又は別の対象(例えば、癌に罹患していない健常対象)から採取された1種若しくは複数の非癌性サンプルであり得る。参照は、所定の値又は平均値でもあり得る。1つの実施形態において、本明細書に規定される方法は、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを参照と比較する工程を含む。
【0049】
本明細書において使用するとき、バイオマーカーに関する「増加」又は「増加した」という用語は、参照と比較した、バイオマーカーの統計的に有意で且つ測定可能な増加を指す。増加は、少なくとも約10%の増加、又は少なくとも約20%の増加、又は少なくとも約30%の増加、又は少なくとも約40%の増加、又は少なくとも約50%の増加であり得る。
【0050】
本明細書において使用するとき、バイオマーカーに関する「減少」又は「減少した」という用語は、参照と比較した、バイオマーカーの統計的に有意で且つ測定可能な減少を指す。減少は、少なくとも約10%の減少、又は少なくとも約20%の減少、又は少なくとも約30%の減少、又は少なくとも約40%の減少、又は少なくとも約50%の減少であり得る。
【0051】
1つの実施形態において、参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加は、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、51倍、52倍、53倍、54倍、55倍、56倍、57倍、58倍、59倍、60倍、61倍、62倍、63倍、64倍、65倍、66倍、67倍、68倍、69倍、70倍、71倍、72倍、73倍、74倍、75倍、76倍、77倍、78倍、79倍、80倍、81倍、82倍、83倍、84倍、85倍、86倍、87倍、88倍、89倍、90倍、91倍、92倍、93倍、94倍、95倍、96倍、97倍、98倍、99倍、若しくは100倍の増加、又はその間のどこかであり得る。
【0052】
1つの実施形態において、参照と比較した1種若しくは複数の、2種以上の、3種以上の、又は4種全てのバイオマーカーの増加は、対象における肺癌の存在を示す。
【0053】
1つの実施形態において、バイオマーカーのレベルの減少は、参照のレベルと比較して、0.9倍若しくはそれ未満、0.85倍若しくはそれ未満、0.8倍若しくはそれ未満、0.75倍若しくはそれ未満、0.7倍若しくはそれ未満、0.6倍若しくはそれ未満、0.55倍若しくはそれ未満、0.5倍若しくはそれ未満、0.45倍若しくはそれ未満、0.4倍若しくはそれ未満、0.35倍若しくはそれ未満、0.3倍若しくはそれ未満、0.25倍若しくはそれ未満、0.2倍若しくはそれ未満、0.15倍若しくはそれ未満、0.1倍若しくはそれ未満、又はその間のどこかを有するバイオマーカーを指し得る。
【0054】
本発明は、対象における肺癌の進行を判定する方法に向けられる。対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む、対象における肺癌の進行を判定する方法が本明細書において提供される。
【0055】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における早期ステージ及び末期ステージの肺癌の存在を区別する工程、を含む、対象における肺癌の進行を判定する方法も本明細書において提供される。方法は、肺癌がステージ0、I、II、III、及び/又はIVの癌であるかどうかの指示を提供し得る。1つの実施形態において、方法は、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団からSOD3のレベルを判定する工程を含む。
【0056】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加は、対象における早期ステージ及び末期ステージの肺癌の存在を区別する工程、を含む、対象における肺癌の進行を判定する方法が本明細書において提供される。
【0057】
本明細書において使用される「肺癌の進行を判定する」という用語は、肺癌が早期ステージ又は末期ステージの癌であるかどうかを判定することを指し得る。それは、肺癌がステージ0、I、II、III、及び/又はIVの癌であるかどうかも指し得る。
【0058】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団から、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む、抗癌療法後の対象における肺癌の予後を判定する方法も本明細書において提供される。
【0059】
(a)対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象における肺癌の存在を示す工程、並びに(b)対象に抗癌療法を投与する工程、を含む、対象における肺癌を検出する及び治療する方法も本明細書において開示される。
【0060】
1つの実施形態において、 (a)対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加は、対象における肺癌の存在を示す工程、並びに(b)対象に抗癌療法を投与する工程、を含む、対象における肺癌を検出する及び治療する方法が提供される。
【0061】
対象における肺癌を治療する方法も本明細書において開示される。方法は、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定することによって行われた検査結果に基づき得、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(又は増加)は、対象における肺癌の存在を示す。肺癌を治療する方法は、対象に抗癌療法を投与する工程を含み得る。
【0062】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルが判定されており、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(又は増加)は、対象における肺癌の存在を示す、対象における肺癌の治療における使用のための抗癌療法も本明細書において開示される。
【0063】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルが判定されており、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(又は増加)は、対象における肺癌の存在を示す、対象における肺癌の治療のための医薬の製造における抗癌療法の使用も本明細書において開示される。
【0064】
本明細書において使用される「治療する」又は「治療」という用語は、(1)障害の1つ若しくは複数の症状の出現を阻止すること若しくは遅延させること;(2)障害又は障害の1つ若しくは複数の症状の発生を阻害すること;(3)障害を軽減すること、すなわち障害又は障害の少なくとも1つ若しくは複数の症状の退縮を引き起こすこと;及び/或いは(4)障害の1つ若しくは複数の症状の重症度の減少を引き起こすこと、を指し得る。
【0065】
「投与する」という用語は、対象に抗癌療法を接触させる、適用する、又は提供することを指す。
【0066】
本明細書を通して使用される「対象」という用語は、ヒトを意味すると理解されるべきである、又は家畜若しくは伴侶動物であり得る。本発明の方法は、ヒトの治療のためのものであることが特に企図されるものの、それらは、イヌ及びネコ等の伴侶動物、並びにウマ、ウシ、及びヒツジ等の家畜、又は霊長類、ネコ科、イヌ科、ウシ科、及び有蹄動物等の動物園動物の治療を含めた、獣医学的治療にも適用可能である。「対象」は、人、患者、又は個体を含み得、任意の年齢又は性別のものであり得る。
【0067】
1つの実施形態において、方法は、肺癌を有することが見出だされた対象に抗癌療法を投与する工程を更に含む。抗癌療法は、化学療法、放射線療法、標的療法、免疫療法、又はその組み合わせを含み得る。化学療法は、例えばシスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル(タキソール)、アルブミン結合パクリタキセル(ナブパクリタキセル、アブラキサン)、ドセタキセル(タキソテール)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ビノレルビン(ナベルビン)、イリノテカン(カンプトサール(Camptosar))、エトポシド(VP-16)、ビンブラスチン、又はペメトレキセド(アリムタ)であり得る。方法は、手術によって対象を治療する工程も含み得る。
【0068】
対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程を含む、肺癌に罹患した対象の抗癌療法に対する応答性をモニターする方法も本明細書において開示される。参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化(増加又は減少等)は、対象が抗癌療法に応答性であることを示し得る。1つの実施形態において、参照と比較したバイオマーカーのレベルの減少は、対象が抗癌療法に応答性であることを示す。1つの実施形態において、参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加又は変化がないことは、対象が抗癌療法に非応答性であることを示す。
【0069】
1つの実施形態において、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、参照と比較したバイオマーカーのレベルの変化は、対象が抗癌療法に応答性であることを示す工程、を含む、肺癌に罹患した対象の抗癌療法に対する応答性をモニターする方法が提供される。
【0070】
1つの実施形態において、方法は、CAT、CXCR4、及びSFTPBのレベルを判定する工程を含む。
【0071】
1つの実施形態において、対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団における、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを判定する工程であって、(a)参照と比較したバイオマーカーのレベルの増加又は変化がないことは、対象が抗癌療法に非応答性であることを示し、(b)参照と比較したバイオマーカーのレベルの減少は、対象が抗癌療法に応答性であることを示す工程、を含む、抗癌療法に対する肺癌に罹患した対象の応答性をモニターする方法が提供される。
【0072】
対象における肺癌を検出するための組成物も本明細書において提供される。組成物は、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるタンパク質又はペプチドバイオマーカーに特異的に結合する抗体を含み得る。抗体は、任意で、検出可能な標識にコンジュゲートされ得る。
【0073】
本明細書に記載される組成物は、肺癌に罹患した対象等の対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団を更に含み得る。小胞集団は、任意で、溶解された小胞集団であり得る。
【0074】
対象における肺癌を検出するための、本明細書に規定される組成物の使用も本明細書において開示される。
【0075】
対象における肺癌を検出するためのキットも本明細書において提供される。キットは、CAT、CXCR4、SOD3、及びSFTPBからなる群から選択されるタンパク質又はペプチドバイオマーカーに特異的に結合する抗体を含み得る。1つの実施形態において、キットは、CAT、CXCR4、及びSFTPBに特異的に結合する抗体を含む。キットは、対象における肺癌を検出するための適切なバッファーを含み得る。キットは、対象由来の生物学的サンプルから小胞集団を単離するための成分を含み得る。キットは、肺癌に罹患した対象等の対象由来の生物学的サンプルから単離された小胞集団を更に含み得る。小胞集団は、任意で、溶解された小胞集団であり得る。
【0076】
本明細書及び後に続く記述を通して、文脈上別様に要されない限り、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、記述された整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群の内包を暗示するが、他の任意の整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群の除外を暗示するわけではないと理解されるであろう。
【0077】
任意の先行刊行物(又はそれに由来する情報)への又は公知である任意の事柄への本明細書における言及は、その先行刊行物(又はそれに由来する情報)若しくは公知の事柄が、本明細書が関する試みの分野における共通の一般常識の一部を形成するという承認、認可、又はいかなる形態の示唆でもなく、そのようなものとして受け取られるべきではない。
【0078】
当業者であれば、本明細書に記載される本発明は、具体的に記載されるもの以外の変形及び改変を受け得ることを解するであろう。本発明は、精神及び範囲に入る全てのそのような変形及び改変を含むことが理解されるべきである。本発明は、個々に又は集合的に、本明細書において言及される又は示される工程、特質、組成物、及び化合物の全て、並びに工程及び特質のうちの任意の2つ以上のありとあらゆる組み合わせも含む。
【0079】
例示の目的のみを意図され、以上に記載される一般性の範囲を限定することを意図されない以下の実施例を参照して、本発明のある特定の実施形態がここで記載されるであろう。
【実施例
【0080】
(実施例1)
血漿エクソソームプロテオーム解析のための、タンデム質量タグ(TMT)に基づく定量ワークフロー
循環エクソソームは、ヒトにおける事実上あらゆる病態生理学的態様へのそれらの関与及び関わりを考慮すると、非常に重要な生物学的実体(bioentity)である。発見フェーズにおいて、血漿エクソソームを、血漿複雑性を簡素化するのに有効であることが報告された長時間超遠心分離(PUC)(1)手法を使用して単離した。単一試薬において定量及び多重化解析の両方を与える化学的標識化手法であるTMT(2)を採用して、早期ステージNSCLC;末期ステージNSCLC;及び健常個体由来のプールされた血漿エクソソームについての差次的プロテオームを確立した。簡潔には、各サンプル群に関して、等濃度のプールされた血漿エクソソームタンパク質をトリプシンでタンパク質分解的に消化した。各それぞれの群由来のトリプシンペプチドをアイソバリック(isobaric)タグの1つで標識し、その後に、弱アニオン交換クロマトグラフィーを使用した一次元分画(first dimensional fractionation)が続いた。分画された標識ペプチドをLC-MS/MSによって解析し、サンプル間の特異的ペプチドの相対存在量を、ペプチド産物イオンスペクトルの126~131m/z領域におけるTMTレポーターフラグメントイオンの強度を比較することによって判定する。2つの生物学的複製及び3つの技術的複製を実施して、タンパク質発現の定量的変化の差についての確実性を増加させた。差次的定量プロテオミクス解析を、オープンソースの公的ツールを使用して実施し、関心対象の差次的に発現した(p<0.05)標的タンパク質を、広範な文献検索により並びにそれらの新規性及び癌進行との関連性に基づいて更に詳細に調べた。
【0081】
検証及び妥当性確認フェーズの両方におけるサンプル調製の容易性及び実行可能性を考えて、Invitrogen社製の商業的エクソソーム単離キットを使用してエクソソーム単離を実施した。最終選考に残った標的エクソソームタンパク質のウェスタン免疫ブロッティングによる検証解析を、直交(orthogonal)コホートからの個体の部分集合において実施した。疾患病期とは無関係に、早期及び末期ステージのNSCLCの両方と有意に関連した発現を有するタンパク質に妥当性確認のために優先順位を付けた。エクソソーム内容物における及び可溶性血漿における検証された候補についての酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による妥当性確認を、より大きな患者コホートにおいて十分に立証された癌バイオマーカーと並行して実施した。妥当性確認されたエクソソームマーカーの診断効率を、受信者動作特性(ROC)曲線解析から獲得された立証された曲線下面積(AUC)に基づいて評価した。最後に、多変量統計アルゴリズムを採用して、NSCLCと非癌個体とを識別することにおける多タンパク質シグネチャーパネルの予測値を判定した。
【0082】
2)血漿エクソソームの特徴付け
超遠心分離(UC)及びtotal exosome isolation kit(Invitrogen社)の両方から獲得された血漿エクソソーム富化調製物を、エクソソーム特徴付けに関する国際的指針に従って、TEM、NTA、及び免疫ブロット解析によって査定した。両エクソソーム富化調製物に関するTEM解析(図2A)は、エクソソームの典型的特徴と矛盾しない、直径が50~150nmのサイズの膜結合性球状小胞の単一及び凝集クラスターの共存を示した。NTAは、エクソソーム(50~150nm)及び小さな微小胞(150~1000nm)に対する予想サイズ域である、直径が40~500nmに及ぶ粒子サイズを有した、両エクソソーム富化調製物に対する平均サイズ分布を示す(図2B)。UC及びInvitrogen社キット調製物から検出された粒子の主なサイズ(モード)は、エクソソームの一般に認められるサイズ域内にあるそれぞれ56.6±1.3nm及び69.6±2.1nmであった。それに応じて、UC及びInvitrogen社キットから富化されたエクソソームの濃度は、1.74×109±3.00×108個粒子/ml及び2.23×109±8.00×107個粒子/mlであった。
【0083】
両方法からのエクソソームの回収の成功を、エクソソーム抽出後の枯渇した血漿調製物におけるそれらの非存在とともに、細胞質マーカーAlix及びTSG101並びに表面マーカーCD63及びCD9を含めた4種の一般的エクソソーム特異的マーカーについての免疫ブロット検出によって確認した(図2C)。細胞内タンパク質GM130及びカルネキシンを、精製評価のための陰性エクソソームマーカーとして選択し、両エクソソーム富化単離物におけるそれぞれのマーカーの非存在は、ゴルジ及び小胞体(ER)夾雑がないことを示し、一方で両陰性マーカーは、予想どおり全てのエクソソーム枯渇血漿調製物において検出された。しかしながら、他の細胞器官及び小胞による夾雑は、両エクソソーム富化単離物から除外され得ない。
【0084】
集合的に、これらの結果は、UC及びInvitrogen社法の両方を使用して、低い細胞器官の夾雑を有して、血漿由来エクソソームが高度に富化されたことを確証する。UC及びInvitrogen社エクソソーム単離法を、それぞれ、発見フェーズ及び検証/妥当性確認フェーズにおいてエクソソーム富化に採用した。
【0085】
3)定量的MSデータ品質の査定
【0086】
【表1】
【0087】
ランごとの技術的変動を、変動係数パーセンテージ(%CV)の観点から判定し、複製01(R01)、複製02(R02)、及び複製03(R03)において同定されたタンパク質及びPSMの数を、Table 1(表1)に要約されるように比較した。厳格なFDR<1%を使用すると、全ての三つ組にわたって観察されたタンパク質及びPSMの再現される同定における全体的%CVは<2%であり、これは最小限のランごとの技術的変動及び優れたシステム再現性に言い換えられる。
【0088】
図3Aに描写されるように、タンパク質の総数のおよそ77%(625種)を、三つ組の少なくとも2つにおいて定量化し、三つ組のLC-MS/MSラン間の優れたタンパク質相補性が示唆され、これらのタンパク質を更なる解析に使用した。図3Bにおいて、三つ組間での各タンパク質に対する測定されたペアの早期:対照相対比の有意な(p<0.05)相関は、定量的データセットの確実性及び信頼度を裏付けた。
【0089】
4)バイオマーカー候補選択基準及び検証解析
【0090】
【表2】
【0091】
本明細書において、プロテオミクスデータセットにおいて同定された公知の肺癌バイオマーカーがTable 3(表3)に列挙されている。以下のマーカーは臨床的に利用可能であるものの、それらは、肺癌に対する補足的な血液バイオマーカーとして限定された能力において現在使用されている。これらのタンパク質の倍変化の参照に基づいて、1.2倍変化のカットオフを本調査における発現の変更として見なした。次に、候補マーカーのリストを更に洗練するために、差次的に発現した候補を、以下の基準に基づいて選択した:(a)タンパク質は、95%信頼度を有する≧2種のペプチドに基づいて同定され、三つ組の少なくとも2つにおいて定量化されなければならない;(b)タンパク質は、少なくとも1.2倍変化を呈示する必要がある;及び(c)有意に(p<0.05)差次的に発現したタンパク質のみが検討される。これらのストリンジェントな基準を満たさないタンパク質は無視された。結果として、625種のタンパク質のコアリストから合計56種のエクソソームタンパク質が、対照と比べて、両NSCLC表現型において同時の差次的調節を呈示することが見出だされた。これらのタンパク質を、広範な文献検索により並びにそれらの新規性及び癌進行との関連性に基づいて更に詳細に調べ、10種のマーカー(Table III(表3))を、発見実験において使用されなかった個体の部分集合(早期ステージNSCLC、n=14;末期ステージNSCLC、n=14;及び健常個体、n=14)における免疫ブロッティングによって検証のために最終選考に残した。
【0092】
【表3】
【0093】
検証解析は、発見プロテオミクスデータセットと統計的に一致し、早期及び末期ステージNSCLCの両方と高度に関連した発現を有する6種のエクソソームタンパク質を持って戻り(図4)、これらのタンパク質は、臨床的妥当性確認フェーズに進むであろう。サーファクタントタンパク質B(SFTPB)は、肺組織においてのみ発現する肺特異的タンパク質であることが強調される。NSCLCバイオマーカーの選択におけるストラテジーは、候補タンパク質が、それぞれ、対照と比べて、早期及び末期ステージNSCLCの両方においてタンパク質発現の同時の有意な(p<0.05)増加を呈示するべきであるという点にある。このことは、早期ステージNSCLCを検出するために候補が確実に使用され得ることを保証すると考えられ、発現の増加は疾患進展とは無関係であることが示される。
【0094】
これら6種のマーカーの妥当性確認を、合計306人の個体(早期ステージNSCLC患者(n=53);末期ステージNSCLC患者(n=139);及び健常個体(n=114))に対して酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して実施した。6種の候補の中で、4種のマーカー(CAT、CXCR4、SOD3、SFTPB)は、発見及び検証フェーズの両方において報告されるように、健常対象及びNSCLC表現型の間で同程度の有意な(p<0.05)差次的発現を呈示し、受信者動作特性(ROC)曲線を使用して更に評価された。ELISA結果に基づくROC曲線をプロットして、エクソソーム内容物及び可溶性血漿の両方において、2種の十分に調査された癌マーカーと並行して、4種の候補マーカーの診断効率を比較した。健常対照及び早期ステージNSCLC(図5A)/全NSCLC症例の間の、各個々の候補及び4マーカー組み合わせパネルの識別能を、ROC曲線下AUCを使用して評価した。4マーカー組み合わせパネルは、NSCLCと非癌対照とを識別することにおいて、0.93という最も高いROC AUC値を呈示した。十分に調査された癌バイオマーカー(CEA、Cyfra21)と比較して、4マーカーパネル及び全ての単独マーカーは、NSCLCの診断に対するより大きな効力を所有した。これは、患者の血漿においてそれらそれぞれの可溶レベルを有するエクソソーム内の標的積み荷を比較する最初の肺癌調査である。これら4種のバイオマーカーは癌進行と関連付けられており、CAT、SOD3、及びSFTPBは抗腫瘍発生機能を付与し、CXCR4は腫瘍発生促進(pro-tumorigenic)機能を持つ。
【0095】
5)臨床的妥当性確認
臨床的妥当性確認において、患者をおよそ半分に分け、それぞれフェーズI及びフェーズII妥当性確認のために訓練群(n=279)及び妥当性確認試験セット(n=305)に割り当てた(Table IV(表4))。フェーズI妥当性確認において、訓練セットから獲得されたデータを使用して、組み合わせ受信者動作特性曲線(ROC)解析、又はNSCLCと非癌個体とを識別することにおける最終シグネチャーパネルの予測値を与えるように多変量モデルを訓練する。フェーズII妥当性確認において、試験セットから獲得されたデータを使用して、訓練されたモデルを妥当性確認する。
【0096】
【表4】
【0097】
検証フェーズにおいて選択された初回の6種の候補を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、訓練セットサンプル(早期ステージNSCLC患者(n=32);全NSCLC患者(n=133);及び健常個体(n=114))に対して評価した。6種の候補の中で、4種のマーカー(CAT、CXCR4、SOD3、SFTPB)は、発見及び検証フェーズの両方において報告されるように、健常対象及びNSCLC表現型の間で同程度の有意な(p<0.05)差次的発現を呈示した。これら4種のエクソソーム標的から獲得されたフェーズIの妥当性確認されたデータを、社内機械学習多変量モデル訓練に供して、早期NSCLCに対する3マーカーシグネチャーパネル(CAT、CXCR4、SFTPB)を最終的に導き出した(AUC=0.96;特異度=0.96;感度=0.91)。モデルへの調整なしで、試験セットサンプルから獲得されたフェーズII妥当性確認データは、モデルの予測を交差評価するために使用されるであろう。
【0098】
図5Aにおいて、フェーズI及びフェーズIIから獲得された妥当性確認された結果を使用して、ROCをプロットして、マッチしている患者のエクソソーム内容物及び可溶性血漿の両方において、3種の十分に調査された癌マーカー(CA125、CEA、Cyfra-21)と並行して、4種の候補の診断効率を評価し及び比較した。健常対照、早期ステージNSCLC、及び全NSCLC症例の間の、各個々の候補及び3マーカーシグネチャーパネルの識別能を、ROC曲線下AUCを使用して評価した。4種のエクソソームマーカーの各々に関して、合計167人の健常個体と、64人が早期症例である353人のNSCLC患者とを妥当性確認し、全マーカーがエクソソーム内容物において良好な予測値を示すが、血漿においてはそうではないことが示された。フェーズII妥当性確認データを含めて、3マーカーシグネチャーパネルは、早期NSCLCと非癌対照とを識別することにおいて、0.99(特異度=0.98;感度=0.97)という最も高いROC AUC値を呈示した。3種の十分に調査された癌マーカー(CA125、CEA、及びCyfra-21)と比較して、全ての単独マーカー及び3マーカーシグネチャーパネルは、NSCLCの診断に対するより大きな効力を所有した。
【0099】
加えて、各4種のエクソソームマーカー及び十分に調査された癌マーカーに対するELISA妥当性確認を、上位3種のよく見られる世界的な癌タイプを網羅する、乳癌(n=113)、結腸直腸癌(n=144)、及び鼻咽頭癌(NPC)(n=101)群に対して実施した(図5B)。十分に調査された癌マーカー(CA125、CEA、Cyfra-21)と比較して、単独の4種のマーカーは識別能をほとんど示さず、乳癌、結腸直腸癌、及びNPCに関して0.5~0.6に及ぶAUCを有し、4種のマーカーがNSCLC診断に実に特異的であることを示唆した。種々の癌表現型が、主張されるように実に忠実であり、3種全ての癌表現型はCyfra21-1(肺マーカー)に対しておよそ0.5のAUCを得点し、乳癌はCA 15-3(乳房マーカー)に対して0.877のAUCを得点し、結腸直腸癌は0.671のAUCを得点し(結腸直腸マーカー)、NPCは、予想どおり全ての十分に調査された癌マーカーに対して識別能を示さないことも示されている。
【0100】
シグネチャーパネルにおける3種のエクソソーム標的は癌進行と関連付けられており、CAT及びSFTPBは抗腫瘍発生機能を付与し、CXCR4は腫瘍発生促進機能を持つ。組み合わせて、3マーカーエクソソームシグネチャーは、不均一NSCLCの診断において多大な臨床的実用性を有する。
図1
図2
図3A
図3B
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5A
図5B
【国際調査報告】