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特表2022-537870自動化された原動機付き車両についての行動オプションを選択する走行システム及び方法
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  • 特表-自動化された原動機付き車両についての行動オプションを選択する走行システム及び方法 図1
  • 特表-自動化された原動機付き車両についての行動オプションを選択する走行システム及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】自動化された原動機付き車両についての行動オプションを選択する走行システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220824BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20220824BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20220824BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220824BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/09
B60W30/095
B60W60/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556331
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2019079165
(87)【国際公開番号】W WO2020200500
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019108142.4
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】フープマン・コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】クヴェチュリヒ・ニルス
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ・イェンス
(72)【発明者】
【氏名】アルトホフ・ダーニエール
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BC01
3D241CC01
3D241CC08
3D241CD09
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DC25Z
3D241DC30Z
3D241DC31Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】車両のセンサにとって視認可能でない範囲が存在する、自動化された原動機付き車両についての行動オプションの選択を改善する。
【解決手段】自車両300の周囲における実際の交通状況を検出し、自車両300のセンサの実際の視野FOVを特定し、視野FOVにない、自車両300の周囲における範囲OC1~OC2について、仮想的な交通参加者401についての出現確率に依存して、自車両300の周囲における範囲での仮想的な交通参加者401をシミュレーションし、あり得る未来の各交通状況における仮想的な交通参加者401の空間的な位置を特定し、仮想的な交通参加者401との自車両300のあり得る仮想的な衝突に依存して評価を行い、これに依存して、第1の時間ステップの間の行動オプションのうち1つを選択し、選択された行動オプションを実行する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機付き車両(300)のための自動化された走行を行う走行システムであって、該走行システムが、
-原動機付き車両(300)の周囲における実際の交通状況(100)を検出する(200)ように、
-実際の交通状況(100)における原動機付き車両(300)の少なくとも1つのセンサの実際の視野(FOV)を特定するように、
-少なくとも1つのセンサの実際の視野(FOV)にない、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲(OC1~OC2)について、仮想的な交通参加者(401)についての出現確率に依存して、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者(401)をシミュレーションするように、
-第1の時間ステップの間の実際の交通状況(100)に基づいて、自車両(300)の長手方向ガイド及び/又は横方向ガイドに関する少なくとも2つの代替的な行動オプション(130,131)を考慮に入れる(210)ように、
-行動オプション(130,131)について、第1の時間ステップの間のそれぞれ少なくとも1つのあり得る未来の交通状況(101~105)を各行動オプションの結果として特定する(220)ように、
-少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)が実際の交通状況(100)における少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)の空間的な位置に基づいて移動するように、あり得る未来の各交通状況(101~105)における少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)の空間的な位置を特定するように、
-あり得る未来の各交通状況(101~105)について、少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)との自車両(300)のあり得る仮想的な衝突に依存して評価を行う(250)ように、
-これに依存して、第1の時間ステップの間の行動オプション(130,131)のうち1つを選択する(260)ように、及び
-選択された行動オプション(130,131)を実行する(270)ように
構成されていることを特徴とする走行システム。
【請求項2】
仮想的な交通参加者(401)についての出現確率が、少なくとも1つのセンサの実際の視野(FOV)にない、原動機付き車両(300)の周囲における範囲(OC1~OC2)の空間的な大きさに依存していることを特徴とする請求項1に記載の走行システム。
【請求項3】
走行システムが、
-少なくとも1つのあり得る未来の交通状況(101~105)について、あり得る未来の交通状況(101~105)における原動機付き車両(300)の少なくとも1つのセンサの仮想的な視野を特定するように、及び
-少なくとも1つのセンサの仮想的な視野にない、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲について、仮想的な交通参加者(401)についての出現確率に依存して、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者(401)をシミュレーションするように
構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行システム。
【請求項4】
仮想的な交通参加者(401)の走行方向における仮想的な交通参加者(401)の先端部が、少なくとも1つのセンサの視野(FOV)にない、原動機付き車両(300)の周囲における範囲(OC1~OC2)の縁部に直接存在するように仮想的な交通参加者(401)をシミュレーションするように、走行システムが構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の走行システム。
【請求項5】
走行方向における長手軸線に沿った仮想的な交通参加者(401)の長さが無限であると仮定されるように仮想的な交通参加者(401)をシミュレーションするように、走行システムが構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の走行システム。
【請求項6】
あり得る未来の交通状況(101~105)における少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)の空間的な位置が仮想的な交通参加者(401)の一定の速度に依存して特定されるように走行システムが構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の走行システム。
【請求項7】
仮想的な交通参加者(401)の一定の速度が、あり得る未来の各交通状況(101~105)において実際に許容される最高速度よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の走行システム。
【請求項8】
走行システムが、
-第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況(101~105)のうち少なくとも1つについて、自車両(300)の長手方向ガイド及び/又は横方向ガイドについての1つ又は複数の行動オプション(132,133)を、第2の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況(104)に基づいて特定する(230)ように、
-第2の時間ステップの間の各行動オプション(132,133)について、第2の時間ステップの間の少なくとも1つのあり得る未来の交通状況(106~109)を、第2の時間ステップの間の各行動オプション(132,133)の結果として特定する(240)ように、
-少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)が、第1の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況(101~105)における少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)の空間的な位置に基づいて移動するように、第2の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況(101~105)における少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)の空間的な位置を特定する(245)ように、
-第2の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況(106~109)について、少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)との自車両(300)のあり得る仮想的な衝突に依存して評価が行われる(250)ように、並びに
-第1の時間ステップの間の行動オプション(130,131)を、第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況(101~105)の評価に依存して、及び少なくとも1つの第2の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況(106~109)の評価に依存して選択する(260)ように
構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の走行システム。
【請求項9】
走行システムが、
-第2の時間ステップの間の少なくとも1つのあり得る未来の交通状況(106~109)について、あり得る未来の交通状況(106~109)における原動機付き車両(300)の少なくとも1つのセンサの仮想的な視野を特定するように、及び
-少なくとも1つのセンサの仮想的な視野にない、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲について、出現確率に依存して、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者(401)をシミュレーションするように
構成されていることを特徴とする請求項8に記載の走行システム。
【請求項10】
自車両(300)の長手方向ガイドについての行動オプション(130~133)が、自車両(300)の速度の低減であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の走行システム。
【請求項11】
原動機付き車両(300)のための自動化された走行を行う方法であって、該方法が以下のステップ:
-原動機付き車両(300)の周囲における実際の交通状況(100)を検出する(200)ステップ、
-実際の交通状況(100)における原動機付き車両(300)の少なくとも1つのセンサの実際の視野(FOV)を特定する(203)ステップ、
-少なくとも1つのセンサの実際の視野(FOV)にない、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲(OC1~OC2)について、仮想的な交通参加者(401)についての出現確率に依存して、原動機付き車両(300)の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者(401)をシミュレーションする(207)ステップ、
-第1の時間ステップの間の実際の交通状況(100)に基づいて、自車両(300)の長手方向ガイド及び/又は横方向ガイドに関する少なくとも2つの代替的な行動オプション(130,131)を考慮に入れる(210)ステップ、
-行動オプション(130,131)について、第1の時間ステップの間のそれぞれ少なくとも1つのあり得る未来の交通状況(101~105)を各行動オプションの結果として特定する(220)ステップ、
-少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)が実際の交通状況(100)における少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)の空間的な位置に基づいて移動するように、あり得る未来の各交通状況(101~105)における少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)の空間的な位置を特定する(225)ステップ、
-あり得る未来の各交通状況(101~105)について、少なくとも1つの仮想的な交通参加者(401)との自車両(300)のあり得る仮想的な衝突に依存して評価を行う(250)ステップ、
-これに依存して、第1の時間ステップの間の行動オプション(130,131)のうち1つを選択する(260)ステップ、及び
-選択された行動オプション(130,131)を実行する(270)ステップ
を含んでいることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機付き車両のための自動化された走行を行う走行システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「自動化された走行」という用語は、本明細書の範囲では、自動化された長手方向ガイド(運転)及び横方向ガイド(運転)を伴う走行又は自動化された長手方向ガイド及び横方向ガイドを伴う自動走行と理解され得る。「自動化された走行」という用語は、適宜の自動化度合いを有する自動化された走行を含む。例示的な自動化度合いは、支援された走行、部分自動化された走行、高度に自動化された走行又は完全に自動化された走行である。当該自動化度合いは、ドイツ連邦道路交通研究所(BASt)によって規定された(BASt刊行物「Forshung kompakt」、2012年11月発行参照)。支援された走行では、運転者が長手方向ガイド及び横方向ガイドを継続的に行う一方、システムは、それぞれ他の機能をある程度の限度において担う。部分自動化された走行(TAF)では、システムがある程度の期間において、及び/又は特別な状況において長手方向ガイド及び横方向ガイドを担い、運転者は、支援された走行の場合のようにシステムを継続的に監視する必要がある。高度に自動化された走行(HAF)では、運転者がシステムを継続的に監視する必要なく、システムがある程度の期間において長手方向ガイド及び横方向ガイドを担うが、運転者は、ある程度の時間、車両ガイド(運転)を担うことができるようになっている必要がある。完全に自動化された走行(VAF)では、システムが、特別な使用事例のために、全ての状況における走行を自動的に実行し、当該仕様事例のためには運転者はもはや必要ない。BAStの定義による上述の4つの自動化度合いは、規格SAE J3016(SAE:Society of Automotive Engineering)のSAEレベル1~4に対応している。例えば、BAStによる高度に自動化された走行(HAF)は、SAE J3016のレベル3に対応している。また、SAE J3016では、最高の自動化度合いとして更にSAEレベル5が設けられており、当該SAEレベル5は、BAStの定義には含まれていない。SAEレベル5は運転者なしの走行に対応しており、当該走行では、システムが走行中全体において人間の運転者のように全ての状況を実行することができ、一般的に運転者はもはや不要である。
【0003】
原動機付き車両についての自動化された走行を行う方法が知られている。当該方法は、原動機付き車両がその周囲をセンサを用いて検出し、検出されたセンサデータに依存して車両が制御されることに基づいている。
【0004】
ただし、原動機付き車両の周囲における範囲は、例えば当該範囲が障害物によって隠されることで、センサにとって識別可能でないことがあり得る。
【0005】
当該隠された範囲は、自動化された車両制御にとって問題である。なぜなら、場合によっては車両制御にとって重要な他の交通参加者が当該範囲内に存在するか否かを一義的に決定可能でないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、周囲において原動機付き車両のセンサにとって視認可能でない範囲が存在する、自動化された原動機付き車両についての行動オプションを選択するための改善されたアプローチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該課題は、従属請求項の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。独立請求項に従属する請求項の追加的な特徴は、独立請求項の特徴なしに、又は独立請求項の特徴の一部との組合せにおいてのみでも、固有の、及び独立請求項の全ての特徴の組合せから独立した発明を形成することができ、当該発明は、独立請求項、分割出願又は後出願の対象に対して行われ得ることを指摘しておく。このことは、独立請求項の特徴のうち1つから独立した発明を形成し得る、明細書に記載された技術的な示唆についても同様に当てはまる。
【0008】
本発明の第1の態様は、原動機付き車両のための自動化された走行を行う走行システムに関するものである。
【0009】
走行システムは、原動機付き車両の周囲における実際の交通状況を検出するように構成されている。
【0010】
特に、実際の交通状況は、自車両のほかに少なくとも1つの別の交通参加者を含む。
【0011】
実際の交通状況は、特に、自車両、交通参加者及び/又は交通インフラに関する空間的な情報を含むことができる。これは、例えば、自車両若しくは交通参加者の位置及び/又は向きであり得る。
【0012】
これに代えて、又はこれに加えて、実際の交通状況は、特に、交通参加者又は交通インフラの状態についての動的な情報も含むことができる。これは、例えば、交通参加者のウインカ(方向指示器)の作動状態又は交通インフラとしての交通信号の現在の状態であり得る。
【0013】
実際の交通状況の検出は、特に原動機付き車両のセンサ、例えばカメラ、レーザスキャナ及び/又は超音波センサを用いて行われることができる。
【0014】
交通参加者は、特に、原動機付き車両、自転車運転者、歩行者又は任意の他の交通参加者であり得る。
【0015】
さらに、走行システムは、実際の交通状況における原動機付き車両の少なくとも1つのセンサの実際の視野を特定するように構成されている。
【0016】
このとき、少なくとも1つのセンサの視野は、基本的には、センサの構造方式に基づいて生じるとともに、原動機付き車両の周囲における物体によって制限される。例えば、原動機付き車両の周囲における静的な、あるいは静止した物体、例えば走行路又は交通インフラの近傍の縁部構造物が視野を制限することがある。
【0017】
これに代えて、又はこれに加えて、動的な物体、例えば他の交通参加者が視野を制限することがある。
【0018】
走行システムは、例えば範囲が原動機付き車両の周囲における静的な、又は動的な物体によって隠されていることにより、少なくとも1つのセンサの実際の視野にない、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲について、仮想的な交通参加者についての出現確率に依存して、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者をシミュレーションするように構成されている。
【0019】
したがって、仮想的な交通参加者は、ある程度の確率をもって少なくとも1つの範囲において仮定される。
【0020】
さらに、走行システムは、自車両の長手方向ガイド及び/又は横方向ガイドに関する少なくとも2つの代替的な行動オプションを第1の時間ステップの間の実際の交通状況に基づいて考慮に入れるように構成されている。
【0021】
行動オプションは、特に、原動機付き車両の速度を変更し、例えば原動機付き車両の速度を増大又は低減する行動オプションであり得る。
【0022】
これに代えて、又はこれに加えて、行動オプションは、原動機付き車両の速度を変更しない行動オプションであってもよい。
【0023】
これに代えて、又はこれに加えて、行動オプションは、走行車線における原動機付き車両の側方の向きを変更する行動オプションであり得る。
【0024】
行動オプションは、特に、実際の交通状況における原動機付き車両を操作可能な、原動機付き車両の長手方向ガイドに影響を与える可能性を記述する。例えば、原動機付き車両の行動オプションは、原動機付き車両の駆動性能及び物理法則によって制限されている。
【0025】
このとき、行動オプションは、特に、あらかじめ規定された行動オプションについての量に基づき選択され、例えばパラメータ化されることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、行動オプションは、あらかじめ設定されることなく自由に算出されることも可能である。
【0026】
特に、行動オプションの数は、計数可能に制限されている。例えば、走行システムは、10より少ない、25より少ない、又は50より少ない行動オプションを考慮に入れるように構成されている。
【0027】
各行動オプションについて、第1の時間ステップの間の少なくとも1つのあり得る未来の交通状況が各行動オプションの結果として特定される。
【0028】
あり得る未来の交通状況は、特に、現時点ではまだ実際に存在しない仮定の交通状況であり得る。当該交通状況は、特に、実際の交通状況と比較可能に、自車両、交通参加者及び/又は交通インフラについての空間的な情報を含むことができる。
【0029】
これに代えて、又はこれに加えて、あり得る未来の交通状況は、交通参加者又は交通インフラの状態についての動的な情報も含むことができる。
【0030】
第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況は、特に、確率的な方法を用いて、実際の交通状況に基づいて導出されることが可能である。このために、例えば、第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通における選択された交通参加者の空間的な位置を、ランダムベクトルを用いて、実際の交通状況における選択された交通参加者の空間的な位置に基づいて算出することが可能である。
【0031】
第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況においては、特に、実際の交通状況における自車両の空間的な位置に基づいて自車両の長手方向ガイドに関する行動オプションの実行が仮定されるように、自車両の空間的な位置を特定することが可能である。
【0032】
そのほか、走行システムは、少なくとも1つの仮想的な交通参加者が少なくとも1つの仮想的な交通参加者の空間的な位置から実際の交通状況において移動するように、あり得る未来の各交通状況における少なくとも1つの仮想的な交通参加者の空間的な位置が特定されるように構成されている。
【0033】
あり得る未来の各交通状況について、少なくとも1つの仮想的な交通参加者との自車両のあり得る仮想的な衝突に依存して評価が行われ、評価は、特に自車両のリスクポテンシャルの評価及び/又は走行快適性の評価を含んでいる。
【0034】
自車両の長手方向ガイドに関する行動オプションのうちの1つは、第1の時間ステップの間の当該評価に依存して選択される。このとき、特に、割り当てられる交通状況が自車両のできる限り小さなリスクポテンシャル及び/又はできる限り高い走行快適性を示す行動オプションを選択することができる。
【0035】
自車両の長手方向ガイドに関する選択される行動オプションは、これに基づき実行される。
【0036】
走行システムは、特に、あり得る未来の各交通状況について、あり得る未来の各交通状況に関連する少なくとも1つのコスト値を特定することで評価が行われるように構成されている。
【0037】
ここで、コスト値は、特に自車両及び/又は別の交通参加者の空間的な位置又は向きに依存して算出されることが可能である。
【0038】
これに代えて、又はこれに加えて、コスト値は、特に自車両、少なくとも1つの交通参加者及び/又は交通インフラの少なくとも1つの物体の互いに対する空間的な比率に依存しても算出されることができる。例えば、コスト値は、自車両と交通参加者の間の空間的な距離を記述することができる。このとき、他の影響量が同一であれば、大きなコスト値は小さな空間的な距離について特徴的であり得るとともに、小さなコスト値は大きな空間的な距離について特徴的であり得る。したがって、コスト値は、例えば自車両についてのリスクポテンシャルを表すことができる。
【0039】
特に、走行システムは、あり得る未来の各交通状況をもたらす少なくとも1つの行動オプションに依存して、特に自車両のブレーキ過程及び/又は加速過程に依存してコスト値を算出するように構成されている。例えば、大きなコスト値は、原動機付き車両の速度の量的に大きな変化について特徴的であり得る。これに代えて、小さなコスト値は、原動機付き車両の速度の量的に小さな変化について特徴的であり得る。
【0040】
これに代えて、又はこれに加えて、コスト値は、例えば原動機付き車両の加速度の変化についても特徴的であってよく、自車両に作用する加速度の符号の変化も、また加速度の変化の量も考慮に入れることが可能である。したがって、コスト値は、例えば自車両の走行快適性を表すことができるか、又はこれに依存し得る。
【0041】
特に、走行システムは、あり得る未来の各交通状況自体に依存して、特にあり得る未来の各交通状況における交通参加者との自車両の衝突に依存してコスト値を算出するように構成されている。例えば、大きなコスト値は、交通参加者との自車両の衝突について特徴的であり得る。衝突について特徴的な当該大きなコスト値は、例えば衝突を伴わない他の全てのコスト値よりも少なくとも1つのオーダーだけ大きくてよい。
【0042】
これに代えて、又はこれに加えて、特に自車両と交通参加者の間の衝突リスクもコスト値へ(考慮に)入れられることができる。例えば、大きなコスト値は衝突リスクについて特徴的であることができ、衝突リスクについてのコスト値は、実際の衝突についてのコスト値よりも小さいことがあり得る。
【0043】
特に、走行システムは、あり得る未来の各交通状況が交通参加者の少なくとも1つのあり得る移動に依存して特定されるように構成されている。
【0044】
交通参加者のあり得る移動は、特に交通参加者の自由度に依存して算出されることが可能である。交通参加者が例えば原動機付き車両であれば、その移動可能性は、とりわけその最大の操舵角及び駆動性能によって制限されている。これに代えて、交通参加者が歩行者であれば、その移動可能性は、動力化された交通参加者に比して小さなその移動速度によって制限されている。
【0045】
交通参加者の少なくとも1つのあり得る移動に依存したあり得る未来の交通状況の特定によって、特に、物理学の限度内で現実に生じ得る実際にあり得る未来の交通状況のみが考慮される。
【0046】
これに代えて、又はこれに加えて、交通参加者のあり得る移動は、特に交通参加者自身の状態に依存して算出されることが可能である。交通参加者が例えば原動機付き車両であれば、交通参加者のウインカの作動に基づき、交通参加者が曲がること、及びどの方向へ曲がるかを推定することが可能である。
【0047】
交通参加者の少なくとも1つのあり得る移動に依存した当該あり得る未来の各交通状況の特定は、特に、これにより、あり得る未来の交通状況の数が理論的にあり得る未来の全ての交通状況の数に比して少ないことがあり得るという考えに基づいている。これにより、自車両の長手方向ガイドに関する行動オプションの本発明による選択をより効率的に行うことが可能である。
【0048】
特に、走行システムは、あり得る未来の各交通状況について、あり得る未来の各交通状況の発生確率について特徴的な量を算出し、これに依存して行動オプションを選択するように構成されている。
【0049】
あり得る未来の各交通状況の発生確率は、特に、交通参加者がその空間的な位置及び/又はその状態を変化させる確率に依存して算出されることが可能である。
【0050】
例えば、環状交差路(ロータリ、ラウンドアバウト)における交通状況では、交通参加者としての原動機付き車両が次の可能な出口で環状交差路を離脱する確率を考慮することが可能である。
【0051】
当該確率を特定するために、例えば原動機付き車両の空間的な向きを評価することが可能である。原動機付き車両の前部が環状交差路の次の可能な出口の方向へ向いていれば、例えば、原動機付き車両が環状交差路を離脱する確率は、原動機付き車両が環状交差路を離脱しない確率よりも高い。
【0052】
これに代えて、又はこれに加えて、あり得る未来の各交通状況の発生確率は、特に、交通インフラの物体がその状態を変化させる確率に依存して算出されることが可能である。
【0053】
例えば、交通信号においては、交通信号の現在の状態が長ければ長いほど、状態変更についての確率が時間とともに上昇すると仮定されることが可能である。
【0054】
交通状況の発生確率は、特に時間にも依存し得る。したがって、あり得る未来の各交通状況は、時間とともに確率がより上昇し得るか、又は確率がより低下し得る。例えば、車両は、車両が複数のターニング可能性(右左折等)を有する交差点へ移動し得る。車両が当該交差点からまだ離れていれば、各ターニング可能性は本質的に同一の確率であり得る。しかし、車両が当該交差点へ入り、交差点の出口の方向へ向くと、このターニング可能性は、残りの他のターニング可能性よりも高い確率であると仮定されることが可能である。
【0055】
特に、走行システムは、あり得る未来の交通状況について特徴的な量をあり得る未来の各交通状況の評価についての重みとして用いるように構成されている。
【0056】
したがって、特に、交通状況が同一の評価を有している限り、第2のあり得る未来の交通状況に比して高い発生確率を有する第1のあり得る未来の交通状況は、第2のあり得る未来の交通状況よりも大きく評価されることが可能である。
【0057】
有利な一実施形態では、仮想的な交通参加者についての出現確率が、少なくとも1つのセンサの実際の視野にない、原動機付き車両の周囲における範囲の空間的な大きさに依存している。
【0058】
例えば、出現確率は、仮定される交通密度に依存して特定されることができるため、出現確率は、少なくとも1つのセンサの実際の視野にない、原動機付き車両の周囲における範囲の空間的な延長と仮定される交通密度の積として得られる。
【0059】
別の有利な一実施形態では、走行システムが、少なくとも1つのあり得る未来の交通状況について、あり得る未来の交通状況における原動機付き車両の少なくとも1つのセンサの仮想的な視野を特定するように、及び少なくとも1つのセンサの仮想的な視野にない、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲について、仮想的な交通参加者についての出現確率に依存して、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者をシミュレーションするように構成されている。
【0060】
特に、走行システムは、少なくとも1つのセンサの仮想的な視野にない、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲を、他の時間ステップの間の少なくとも1つのセンサの仮想的な視野にない、原動機付き車両の周囲における範囲又は少なくとも1つのセンサの実際の視野にない、原動機付き車両の周囲における範囲と関連付けるように構成されている。
【0061】
そして、特に、他の時間ステップの対応する範囲に仮想的な交通参加者がシミュレーションされなかった場合に、仮想的な交通参加者は、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲において、仮想的な交通参加者についての出現確率に依存してシミュレーションされることが可能である。
【0062】
有利な一実施形態では、仮想的な交通参加者の走行方向における仮想的な交通参加者の先端部が、少なくとも1つのセンサの視野にない、原動機付き車両の周囲における範囲の縁部に直接存在するように仮想的な交通参加者をシミュレーションするように、走行システムが構成されている。
【0063】
有利な一実施形態では、走行方向における長手軸線に沿った仮想的な交通参加者の長さが無限であると仮定されるように仮想的な交通参加者をシミュレーションするように、走行システムが構成されている。
【0064】
例えば、当該仮定は、走行方向における長手軸線に沿った仮想的な交通参加者の長さを非常に大きく、特に現実の交通参加者よりもかなり大きく選択することで実現され得る。したがって、走行方向における長手軸線に沿った仮想的な交通参加者の長さは、例えば10mより長く、25mより長く、又は100mより長くてよい。
【0065】
別の有利な一実施形態では、あり得る未来の交通状況における少なくとも1つの仮想的な交通参加者の空間的な位置が仮想的な交通参加者の一定の速度に依存して特定されるように走行システムが構成されている。
【0066】
特に、仮想的な交通参加者の一定の速度が、あり得る未来の各交通状況において実際に許容される最高速度よりも大きい。例えば、仮想的な交通参加者の一定の速度は、実際に許容される最高速度の少なくとも120%又は少なくとも130%であり得る。
【0067】
特に、走行方向における長手軸線に沿った仮想的な交通参加者の長さが無限であると仮定されるように仮想的な交通参加者をシミュレーションするように、走行システムが構成されているという有利な実施形態と、仮想的な交通参加者の一定の速度があり得る未来の交通状況における実際に許容される最高速度より大きいという有利な実施形態の組合せによって、妥当な「ワーストケース」予期を行うことが可能であるという相乗効果が得られる。
【0068】
当該「ワーストケース」予期の利点は、少なくとも1つのセンサの視野にない、原動機付き車両の周囲における範囲に対する仮想的な交通参加者の位置及び速度に関して、仮想的な交通参加者の位置及び速度についてのあらゆるあり得る状態をカバーすることが可能であることにある。
【0069】
別の有利な一実施形態では、走行システムが、当該あり得る未来の交通状況のうち少なくとも1つについて、自車両の長手方向ガイド及び/又は横方向ガイドについての少なくとも1つの行動オプションを、第2の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況に基づいて特定するように構成されている。
【0070】
ここで、少なくとも1つの第2の時間ステップは、第1の時間ステップにつづくものである。特に、1つより多くの第2の時間ステップであってよく、当該別のつづく時間ステップは、第2の時間ステップと同等である。したがって、本明細書では、第2の時間ステップのみを明示的に言及する。
【0071】
第2の時間ステップの間の自車両の長手方向ガイドについての少なくとも1つの行動オプションは、特に第1の時間ステップの間の行動オプションと同様に特定されることが可能である。このとき、第2の時間ステップの間の行動オプションの特定は、実際の交通状況の代わりにあり得る未来の交通状況が特定のための初期状況である点で、第1の時間ステップの間の行動オプション特定とは異なっている。
【0072】
第2の時間ステップの間の各行動オプションについて、第2の時間ステップの間の少なくとも1つのあり得る未来の交通状況が第2の時間ステップの間の各行動オプションの結果として特定される。
【0073】
少なくとも1つの第2の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況は、特に、第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況と同様に特定されることが可能である。
【0074】
したがって、第2の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況が第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況に基づいて導出され得ることにより、特に、互いに連続するあり得る未来の交通状況の連鎖(チェーン)及び/又はツリーを得ることができる。
【0075】
第2の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況において、少なくとも1つの仮想的な交通参加者の空間的な位置は、少なくとも1つの仮想的な交通参加者が、第1の時間ステップの間の実際の交通状況とあり得る未来の交通状況の間の仮想的な交通参加者の移動と同様に、第1の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況における少なくとも1つの交通参加者の空間的な位置から移動するように特定される。
【0076】
第2の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況について、評価が、特に第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況の評価の実行と同様に、少なくとも1つの仮想的な交通参加者との自車両のあり得る仮想的な衝突に依存して行われる。
【0077】
第1の時間ステップの間の行動オプションは、例えば第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況の評価に依存して、及び少なくとも1つの第2の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況の評価に依存して選択される。
【0078】
このとき、特に、第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況の評価及び第2の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況の評価は、あらゆるあり得る未来の交通状況が行動オプションを用いて互いに結び付けられたツリー構造に依存して行われることが可能である。
【0079】
例えば、第1の時間ステップの間の各行動オプションについては、行動オプションから直接的に、及び/又は間接的に推定され得るあらゆるあり得る未来の交通状況の評価の値の合計を特定することができる。この結果として、ある程度の時間的な範囲について最良に評価された行動オプションを選択することが可能である。
【0080】
これに代えて、例えば、第1の時間ステップの間に、自車両の長手方向ガイドについての行動オプションも選択することができ、当該行動オプションから、あり得る未来の交通状況のツリー構造における最良に評価された経路が開始される。
【0081】
別の有利な一実施形態では、走行システムが、第2の時間ステップの間の少なくとも1つのあり得る未来の交通状況について、あり得る未来の交通状況における原動機付き車両の少なくとも1つのセンサの仮想的な視野を特定するように、及び少なくとも1つのセンサの仮想的な視野にない、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲について、出現確率に依存して、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者をシミュレーションするように構成されている。
【0082】
別の有利な一実施形態では、自車両の長手方向ガイドについての行動オプションは、自車両の速度の変化である。原動機付き車両の速度の変化は、特に、リスクポテンシャルの低減及び例えば他の交通参加者との衝突リスクの低減につながり得る。
【0083】
本発明の第2の態様は、原動機付き車両のための自動化された走行を行う方法に関するものである。
【0084】
方法の1つのステップは、原動機付き車両の周囲における実際の交通状況の検出である。
【0085】
方法の別の1つのステップは、実際の交通状況における原動機付き車両の少なくとも1つのセンサの実際の視野を特定することである。
【0086】
方法の別の1つのステップは、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者を、少なくとも1つのセンサの実際の視野にはない、原動機付き車両の周囲における少なくとも1つの範囲に対する仮想的な交通参加者についての出現確率に依存してシミュレーションすることである。
【0087】
方法の別のステップは、自車両の長手方向ガイド及び/又は横方向ガイドに関する少なくとも2つの代替的な行動オプションを第1の時間ステップの間の実際の交通状況に基づいて考慮に入れることである。
【0088】
方法の別の1つのステップは、第2の時間ステップの間のそれぞれ少なくとも1つのあり得る未来の交通状況を、第2の時間ステップの間の各行動オプションの結果として特定することである。
【0089】
方法の別の1つのステップは、少なくとも1つの仮想的な交通参加者が少なくとも1つの仮想的な交通参加者の空間的な位置から実際の交通状況において移動するように、あり得る未来の各交通状況における少なくとも1つの仮想的な交通参加者の空間的な位置を特定することである。
【0090】
方法の別の1つのステップは、あり得る未来の各交通状況について、少なくとも1つの仮想的な交通参加者との自車両のあり得る仮想的な衝突に依存して評価を行うことである。
【0091】
方法の別の1つのステップは、これに依存して、第1の時間ステップの間の行動オプションのうち1つを選択することである。
【0092】
方法の別の1つのステップは、選択された行動オプションを実行することである。
【0093】
本発明の第1の態様の本発明による走行システムについての上述の形態は、相応する態様で、本発明の第2の態様の本発明による方法についても当てはまる。ここでは、及び各請求項では明確に記述されていない本発明の第2の態様での本発明による方法の有利は実施例は、上述の、又は各請求項に記載された、本発明の第1の態様での本発明による走行システムの有利な実施例に対応する。
【0094】
以下に、本発明を、添付の図面を参照しつつ実施例に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】交通状況及び行動オプションから成る例示的なツリー構造を示す図である。
図2】本発明による走行システムの機能についてのフローチャートを例示的に示す図である。
図3a】別の交通参加者を有する例示的な交通状況を示す図である。
図3b】確率の例示的な推移を示す図である。
図4】仮想的な交通参加者を有する例示的な交通状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図1には、交通状況100~109及び行動オプション130~133から成る例示的なツリー構造が示されている。
【0097】
実際の交通状況100は、ツリー構造のルートノードとなっている。実際の交通状況100は、例えば、自車両300の空間的な位置と、例えば他の原動機付き車両又は歩行者のような複数の追加的な交通参加者310の空間的な位置とを記述する(位置については図3a参照)。
【0098】
実際の交通状況100を起点として、第1の時間ステップの間の自車両300の長手方向ガイドについての2つの異なる行動オプション130,131が自車両(原動機付き車両)300に提供される。当該行動オプションは、例えば、例えば加速操作又はブレーキ過程のように、原動機付き車両300の速度の変化を生じさせることが可能である。
【0099】
自車両300が行動オプション130を実行しても、これのみによってはまだ交通状況は生じない。なぜなら、行動オプション130に基づいてのみでは、第1の時間ステップの間に追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化をまだ推定することができないためである。この理由から、例示的なツリー構造は、補助ノード120~123を含んでいる。
【0100】
補助ノード120を起点として、例えば、推測統計的なプロセスを用いて、又は追加的な交通参加者310の移動自由度の評価によって、第1の時間ステップの間の追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化についての異なる仮定140~142を行うことができる。当該仮定は、例えば、仮定された、実際のものではないセンサ値として解釈されることができる。
【0101】
追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化についての仮定140~142及び自車両300の行動オプション130に基づき、第1の時間ステップの間の様々なあり得る未来の交通状況101~103が生じる。
【0102】
自車両300が行動オプション131を実行すると、追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化について同様に仮定143,144を行うことが可能である。当該仮定143,144は、仮定140~142とは例えば異なっていてよいが、少なくとも部分的に同一の仮定であってもよい。
【0103】
追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化についての仮定143,144及び自車両300の行動オプション131に基づき、第1の時間ステップの間の様々なあり得る未来の交通状況104,105が生じる。
【0104】
第1の時間ステップにつづく第2の時間ステップの間には、例えば、あり得る未来の交通状況104から新たに2つの行動オプション132,133が自車両300に提供される。
【0105】
自車両300が第2の時間ステップにおいて行動オプション132を実行すると、第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況104に基づき、第2の時間ステップの間の追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化について新たに仮定145,146を行うことが可能である。
【0106】
追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化についての仮定145,146及び自車両300の行動オプション132に基づき、第2の時間ステップの間の様々なあり得る未来の交通状況106,107が生じる。
【0107】
自車両300が第2の時間ステップにおいて行動オプション133を実行すると、第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況104に基づき、第2の時間ステップの間の追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化について同様に仮定147,148を行うことが可能である。
【0108】
追加的な交通参加者310の空間的な位置の変化についての仮定147,148及び自車両300の行動オプション133に基づき、第2の時間ステップの間の様々なあり得る未来の交通状況108,109が生じる。
【0109】
図2には、本発明による走行システムの機能についてのフローチャートが例示的に示されている。
【0110】
ここで、ステップ200では、自車両300の周囲における実際の交通状況100が、例えば自車両300のセンサシステムを用いて検出される。
【0111】
ステップ203では、実際の交通状況100における、原動機付き車両(自車両)300の少なくとも1つのセンサの実際の視野FOVが特定される。
【0112】
このとき、少なくとも1つのセンサの視野は、基本的には、センサの構造方式に基づいて生じるとともに、原動機付き車両の周囲における物体400、例えば原動機付き車両の周囲における静的又は動的な物体400によって制限される。
【0113】
つづいて、ステップ207では、原動機付き車両300の周囲における少なくとも1つの範囲OC1~OC2における仮想的な交通参加者401が、少なくとも1つのセンサの実際の視野にはない、原動機付き車両300の周囲における少なくとも1つの範囲OC1~OC2に対する仮想的な交通参加者300についての出現確率に依存してシミュレーションされる。
【0114】
実際の交通状況100に基づいて、ステップ210では、第1の時間ステップの間の自車両300の長手方向ガイドに関する少なくとも2つの択一的な行動オプション130,131が考慮に入れられる。当該行動オプションは、例えば、あり得る行動オプションのあらかじめ規定された量に基づき選択されることが可能である。
【0115】
当該行動オプションは、例えば、自車両300の速度の上昇130及び自車両300の速度の低減131であってよい。
【0116】
当該各行動オプションのために、ステップ220では、第1の時間ステップの間のあり得る未来の交通状況101~105が特定される。行動オプション130,131に割り当てられたあり得る未来の交通状況101~105は、特に、他の交通参加者310のそれぞれ異なる空間的な位置を記述することができる。
【0117】
このとき、他の交通参加者310の空間的な位置は、特に、他の交通参加者310の監視可能なあり得る運動が仮定されることで算出されることが可能である。交通参加者310が例えば環状交差路にある場合、当該交通参加者310の監視可能なあり得る運動は、次の出口での環状交差路からの離脱144又は環状交差路における残留143である。監視可能なあり得る両運動143,144には、例えばあり得る未来の交通状況104,105のうちそれぞれ1つが含まれ得る。
【0118】
ステップ225では、少なくとも1つの仮想的な交通参加者401が少なくとも1つの仮想的な交通参加者401の空間的な位置から実際の交通状況100において移動するように、あり得る未来の各交通状況101~105における少なくとも1つの仮想的な交通参加者401の空間的な位置が特定される。
【0119】
これにつづくステップ230では、第2の時間ステップの間の自車両300の長手方向ガイドに関する行動オプション132,133が考慮に入れられる。このとき、当該行動オプション132,133は、例えば、第1の時間ステップのあり得る未来の交通状況104に基づいている。
【0120】
当該各行動オプション132,133のために、ステップ240では、ステップ220と同様に、あり得る未来の交通状況106~109が、他の交通参加者310の監視可能なあり得る運動145~148に基づいて特定される。
【0121】
ステップ245では、少なくとも1つの仮想的な交通参加者401が少なくとも1つの仮想的な交通参加者401の空間的な位置から第1の時間ステップの間のそれぞれあり得る未来の交通状況101~105において移動するように、第2の時間ステップの間のあり得る未来の各交通状況108~109における少なくとも1つの仮想的な交通参加者401の空間的な位置が特定される。
【0122】
ステップ250では、全てのあり得る未来の交通状況101~109が評価され、このとき、第1の時間ステップのあり得る未来の交通状況101~105も、また第2の時間ステップのあり得る未来の交通状況106~109も評価される。
【0123】
当該評価には、特に、例えば他の交通参加者310に対する自車両300の間隔のような、あり得る未来の交通状況101~109の特性を入れる(入力する)ことが可能である。他の交通参加者310に対する自車両300の大きな間隔が非常に安全な状態であると解釈され得るため、当該大きな間隔は、比較的ポジティブに評価され得る。これに対して、例えば、他の交通参加者310との自車両300の衝突は、比較的ネガティブに評価され得る。
【0124】
例えばコスト関数を用いて評価が行われれば、コスト値は、例えば、他の交通参加者310に対する自車両300の間隔とは相反し得る。したがって、大きな間隔は、小さなコスト値につながる。この場合、交通参加者310との自車両300の衝突は、例えば非常に高いコスト値につながり得る。
【0125】
これに代えて、又はこれに加えて、未来の各交通状況101~109へつながる行動オプション130~133も評価に入れられ得る。特に、このために、自車両300の走行快適性への行動オプション130~133の影響を特定することが可能である。例えば、自車両300の速度の量的に大きな変化は、走行快適性に関して同様にネガティブに評価され得る。例えば、この場合、比較的大きなコスト値があり得る未来の交通状況101~109の評価へ入れられ得る。これに代えて、自車両300の速度の量的に小さな変化時には、比較的小さなコスト値のみがあり得る未来の交通状況101~109の評価へ入れられることが可能である。
【0126】
これに代えて、又はこれに加えて、特に、あり得る未来の交通状況101~109の発生確率も、例えば重みファクタの形態で、あり得る未来の交通状況101~109の評価へ入れることができる。これにより、非常にありそうなあり得る未来の交通状況101~109は、ありそうのないあり得る未来の交通状況101~109よりも大きな行動オプション130,131への影響を有し得るという事情を考慮に入れることが可能である。
【0127】
ステップ260では、ステップ250に依存して、第1の時間ステップの間の行動オプションが選択される。このために、特に、各行動オプション130,131のために、行動オプション130,131に帰するあり得る未来の交通状況の評価を組み合わせることが可能である。例えば、第1の行動オプション130のために、第1の行動オプションに帰するあり得る未来の交通状況101~103の評価を合計することが可能である。第2の行動オプション131のために、同様に、第2の行動オプションに帰するあり得る未来の交通状況104~109の評価を合計することが可能である。
【0128】
評価が例えばコスト値であれば、第1の時間ステップの間に、合計された最も小さなコスト値を有する行動オプション130,131を選択することができる。
【0129】
特に、選択されたあり得る未来の交通状況107において別の交通参加者310との自車両300の衝突が生じ得る場合には、このことは、自車両300の長手方向ガイドに関する行動オプション130,131の選択に大きな影響を有し得る。例えば、衝突により、他の全てのあり得る未来の交通状況101~106、108、109よりも少なくとも1つのオーダーだけ大きな非常に大きなコスト値があり得る未来の交通状況107に割り当てられていれば、これにより、選択されたあり得る未来の交通状況107へつながり得る行動オプション131の選択が非常にあり得ることとなる。
【0130】
特に、これにより、ツリー構造において、別の交通参加者310との自車両300の衝突があり得る少なくとも1つのあり得る未来の交通状況107があれば、暗示的に、本発明による走行システムは、比較的慎重で、及び/又は自車両300の速度を低減する行動オプション130,131を選択することにつながる。
【0131】
同様に、自車両300の速度を低減する行動オプション130,131は、例えば、あり得る実際の衝突の発生までの期間を延長するという効果を有しており、これにより、同様に、別の交通参加者310との実際の振舞いのより正確な特定のためにより長い時間が得られる。
【0132】
ステップ270では、ステップ260において選択された、第1の時間ステップの間の行動オプション130,131が実行される。このとき、選択された行動オプション130,131が設定されるように、自車両300の長手方向ガイドが影響を受ける。例えば、自車両300の速度を上昇130及び低減131することが可能である。
【0133】
実際に第2の時間ステップに入ると、本発明による走行システムは、特にステップ200で開始して新たに実行されることができ、実際の交通状況100は、その間に明らかに変化している。しかし、これに代えて、又はこれに加えて、第1の時間ステップの間の個別の推移ステップの少なくとも中間結果を、走行システムが含むメモリチップにメモリすることが可能であるとともに、実際の第2の時間ステップにおける走行システムの新たな実行時に再利用することが可能である。
【0134】
図3aには、本発明による走行システムを説明するための例示的な交通状況が示されている。
【0135】
ここで、自車両300は交差点の手前にあり、当該交差点には、別の交通参加者としての車両310が左方から入ってくる。
【0136】
自車両300は、例えば、走行路301における交差点を横切ろうと(通過しようと)している一方、自車両300にとって、別の交通参加者301が走行路311における交差点を横切るのか、又は別の交通参加者310が走行路312において右折するのか一義的に特定できない。
【0137】
図3bには、本発明による走行システムによって評価可能な確率の例示的な時間推移が示されている。曲線321は、時間に依存する、別の交通参加者310が走行路311における交差点を直進して横切る確率を表し、曲線322は、時間に依存する、別の交通参加者310が走行路312において右折する確率を表している。横軸に記入された時間の経過において、別の交通参加者310についての、時点t=9秒までにあり得る両移動経路311,312が本質的に同様にあり得るものとして現れるように、走行システムによって評価可能な確率が変化する。時点t=9秒からは、別の交通参加者310が交差点を横切る経路311のほうをとる確率321が急速に増大する。
【0138】
これについての理由は、例えば、別の交通参加者310が既に交差点の非常に近くにあり、いまだにウインカを作動させていないこと、又は状況の伸展に基づきその振舞いを認識可能でなければならないことであり得る。これに基づき、別の交通参加者310が直進走行しようとしていることを推定することが可能である。
【0139】
交差点を直接横切る交通参加者310の移動経路311は、交通参加者310との自車両300の衝突が差し迫ったあり得る未来の交通状況107に至り得る。
【0140】
当該あり得る未来の交通状況107は、例えば非常に大きなコスト値を有するため、本発明による走行システムは、時点t=9秒まで高い確率で、あり得る未来の交通状況107に至ることがない行動オプション130,131を傾向的に選択260する。当該行動オプション130,131は、傾向的に、原動機付き車両300の速度を少なくとも上昇させない行動オプション130,131である。特に、別の行動オプションが明らかになるまでに、待機する振舞いを得るための、原動機付き車両の速度を低減する行動オプション130,131である。
【0141】
図4には、仮想的な交通参加者を有する例示的な交通状況が示されている。
【0142】
ここで、自車両300は実際の交通状況(100)として、合流部の手前、すなわちこれを越えて続かない連続する道路との道路の合流部の手前に位置している。
【0143】
このとき、原動機付き車両300の自動化された走行のための本発明による走行システムは、原動機付き車両300の周囲における当該実際の交通状況100を検出200し、実際の交通状況100における、原動機付き車両300の少なくとも1つのセンサの実際の視野FOVを特定するように構成されている。
【0144】
このとき、道路縁部における物体400は、少なくとも1つのセンサの視野FOVを制限する。
【0145】
したがって、走行システムは、少なくとも1つのセンサの実際の視野FOVにない、原動機付き車両300の周囲における少なくとも1つの範囲OC1~OC2について、仮想的な交通参加者401についての出現確率に依存して、原動機付き車両300の周囲における少なくとも1つの範囲における仮想的な交通参加者401をシミュレーションするように構成されている。
【0146】
そのほか、走行システムは、第1の時間ステップの間の実際の交通状況100を基礎として、自車両300の長手方向ガイド及び/又は横方向ガイドに関する少なくとも2つの択一的な行動オプション130,131、例えば速度の維持又は速度の低減を考慮に入れるように構成されている。
【0147】
走行システムは、当該行動オプション130,131について、第1の時間ステップの間のあり得る未来のそれぞれ少なくとも1つの交通状況101~105を各行動オプション130,131の結果として特定する。
【0148】
そのほか、走行システムは、少なくとも1つの仮想的な交通参加者401が少なくとも1つの仮想的な交通参加者401の空間的な位置から実際の交通状況100において移動するように、あり得る未来の各交通状況101~105における少なくとも1つの仮想的な交通参加者401の空間的な位置が特定されるように構成されている。
【0149】
例えば、仮想的な交通参加者は、一定の速度で合流部へ移動し得る。
【0150】
したがって、走行システムは、当該それぞれあり得る未来の交通状況101~105について、少なくとも1つの仮想的な交通参加者401との自車両300のあり得る仮想的な衝突に依存して評価を行う250ように構成されている。
【0151】
例えば、このとき、速度の維持から生じるあり得る仮想的な交通状況は、速度の低減から生じるあり得る仮想的な交通状況よりも「悪い」と評価され得る。なぜなら、この場合、仮想的な交通参加者401との自車両300の衝突のリスクがより大きいためである。
【0152】
走行システムは、これに依存して、第1の時間ステップの間の行動オプション130,131のうち1つを選択し260、選択された行動オプション130,131を実行する270。
【0153】
例えば、走行システムは、「より良い」と評価される、あり得る仮想的な交通状況に至る行動オプション130,131を選択する。
【0154】
当該過程の連続的で時間的に周期的な反復により、場合によっては、少なくとも1つのセンサの実際の視野FOVにない、原動機付き車両300の周囲における少なくとも1つの範囲OC1~OC2にある実際の別の交通参加者との自車両300の衝突を防止するために、例えば原動機付き車両300の速度が必要な規模だけ低減される。
【0155】
ただし、原動機付き車両300の速度は、必要な規模を超えて低減されない。なぜなら、その間に原動機付き車両300の前進移動により範囲OC1~OC2が小さくなり、これにより、仮想的な交通参加者401との原動機付き車両300の衝突リスクが低下し、そのため、例えば、原動機付き車両の速度を低減しない行動オプションが「より良い」と評価されるためである。このことは、特に、評価時に別の基準、特に目標速度からの原動機付き車両300の速度の差を考慮することで得られる。例えば、目標速度からの原動機付き車両300の速度の差は、評価へネガティブに入れられ、これにより、仮想的な交通参加者401との自車両300の衝突のリスクがないか、又は当該リスクがわずかのみである場合に、原動機付き車両は、目標速度に到達するように試みる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
【国際調査報告】