(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ディープラーニングに基づいて組織アブレーションを計画する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20220824BHJP
A61B 18/00 20060101ALI20220824BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20220824BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220824BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B18/00
G06N3/02
G06T7/00 612
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564245
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020067777
(87)【国際公開番号】W WO2020260433
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オウベル,エスタニスラオ
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
【テーマコード(参考)】
4C160
5L096
【Fターム(参考)】
4C160JJ01
4C160JJ11
4C160JK01
4C160KK01
5L096AA09
5L096BA06
5L096BA13
5L096FA02
5L096FA06
5L096FA64
5L096FA66
5L096GA51
5L096HA11
(57)【要約】
本発明は、患者(30)の解剖学的関心領域(31)における組織(32)をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画する方法(100)及びそのための装置に関する。解剖学的関心領域の術前画像(50)と計画パラメータ(P)のセットとに基づき、他の患者に対する解剖学的関心領域における組織をアブレーションする同様の外科処置にそれぞれ対応する学習要素を用いて事前にトレーニングされたニューラルネットワークにより、シミュレートされた画像(51)が生成される。各学習要素は、患者の解剖学的関心領域の術前画像(50)と、この患者に対して外科処置で使用された計画パラメータ(P)と、外科処置後のこの患者の解剖学的領域の術後画像(52)とを含む。術前画像(50)における治療対象のセグメント化された領域(33)と比較するために、シミュレートされた画像(51)において、推定されたアブレーション領域(34)をセグメント化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(30)の解剖学的関心領域(31)における組織(32)をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画する方法(100)であって、
前記解剖学的関心領域(31)の術前画像(50)の取得(101)と、
計画パラメータ(P)のセットの決定(102)と、
を含み、前記方法(100)が、
推定されたアブレーション領域(34)が表されるシミュレートされた画像(51)の生成(103)であって、前記シミュレートされた画像が、前記術前画像(50)、前記計画パラメータ(P)及びニューラルネットワーク(40)に基づいて生成され、前記ニューラルネットワークが、複数の学習要素で事前にトレーニングされており、各学習要素が、他の患者の解剖学的関心領域における同様の組織アブレーション外科処置にそれぞれ対応し、各学習要素が、前記他の患者の前記解剖学的関心領域の術前画像(50)と、当該他の患者に対して前記外科処置で使用された計画パラメータ(P)と、前記外科処置後の当該他の患者の前記解剖学的領域の術後画像(52)とを含み、前記シミュレートされた画像(51)により、前記外科処置後に得られる可能性がある結果を観察することが可能になる、生成(103)
を含むことを特徴とする、方法(100)。
【請求項2】
前記シミュレートされた画像(51)に表される推定されたアブレーション領域(34)のセグメント化(104)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記シミュレートされた画像(51)に表される前記推定されたアブレーション領域(34)の各ボクセルに、前記ボクセルに対応する組織のX線密度を表す、「X線密度値」と称する値を関連付けることによる、前記アブレーション処置に対する組織反応の決定をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記推定されたアブレーション領域(34)の前記セグメント化(104)が、前記推定されたアブレーション領域(34)の各ボクセルが所定閾値を超えるX線密度値に関連するように実施される、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記推定されたアブレーション領域(34)の輪郭の各点に対して、前記輪郭に対して垂直な方向におけるこの点の前記X線密度値の勾配が所定閾値を超えることの検査をさらに含むことを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記外科処置がアブレーションすることを目的とする前記組織(32)に対応する治療対象の領域(33)の前記術前画像(50)におけるセグメント化(105)と、
前記シミュレートされた画像に表される前記推定されたアブレーション領域(34)の、前記治療対象の領域(33)との比較(106)と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記推定されたアブレーション領域(34)の前記輪郭が前記治療対象の領域(33)の前記輪郭を完全に取り囲む場合、及び、前記推定されたアブレーション領域(34)の前記輪郭の各点に対して、この点と前記治療対象の領域(33)の前記輪郭との間の最短距離が所定の値の範囲内にある場合に満足される、妥当性条件に関する検査(107)をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記妥当性条件に関する前記検査(107)の結果が否定的である場合、前記方法(100)が、前記推定されたアブレーション領域(34)が前記妥当性条件を満足させる計画パラメータの新たなセットの決定(108)を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記方法(100)が、前記妥当性条件が満足される計画パラメータのいくつかの新たなセットの決定(109)のステップと、前記計画パラメータの新たなセットから、前記推定されたアブレーション領域(34)が最小寸法を示す計画パラメータの最適なセットの特定(110)のステップとを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記解剖学的関心領域が肝臓である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記アブレーション対象の組織が腫瘍である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記計画パラメータ(P)が、以下の要素、すなわち、
病理のタイプと、
治療のタイプと、
前記治療に使用すべき医療器具のタイプと、
前記治療に使用すべき前記医療器具の位置及び/又は向きと、
前記医療器具に特有の治療パラメータと、
前記外科処置中に実施すべき治療の回数と、
の中からの1つ又は複数の要素を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記1つのプロセッサ又は複数のプロセッサを、ニューラルネットワーク(40)を使用して、一方では、アブレーション対象の組織(32)を含む患者(30)の解剖学的関心領域(31)の術前画像(50)と、他方では、計画パラメータ(P)とから、推定されたアブレーション領域(34)が表されるシミュレートされた画像(51)を生成するように構成する、プログラムコード命令のセットを含み、前記ニューラルネットワークが、複数の学習要素で事前にトレーニングされるように適合され、各学習要素が、他の患者の解剖学的関心領域における同様の組織アブレーション外科処置にそれぞれ対応し、各学習要素が、前記他の患者の前記解剖学的関心領域の術前画像(50)と、当該他の患者に対して前記外科処置で使用された計画パラメータ(P)と、前記外科処置後の当該他の患者の前記解剖学的領域の術後画像(52)とを含むことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
患者(30)の解剖学的関心領域(31)における組織(32)をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画するための装置(10)であって、前記装置(10)が、
前記解剖学的関心領域の術前画像(50)と、計画パラメータ(P)のセットと、ニューラルネットワーク(40)とに基づいてシミュレートされた画像(51)を生成し、前記ニューラルネットワークが、複数の学習要素で事前にトレーニングされるように適合され、各学習要素が、他の患者の解剖学的関心領域における同様の組織アブレーション外科処置にそれぞれ関連付けられ、各学習要素が、前記他の患者の前記解剖学的関心領域の術前画像(50)と、当該他の患者に対して前記外科処置で使用された計画パラメータ(P)と、前記外科処置後の当該他の患者の前記解剖学的領域の術後画像(52)とを含む
ように構成された制御ユニット(11)を備えることを特徴とする、装置(10)。
【請求項15】
前記制御ユニット(11)が、前記シミュレートされた画像(51)に表される推定されたアブレーション領域(34)をセグメント化するようにさらに構成されている、請求項14に記載の装置(10)。
【請求項16】
前記制御ユニット(11)が、前記シミュレートされた画像(51)に表される前記推定されたアブレーション領域(34)の各ボクセルに、前記ボクセルに対応する組織のX線密度を表す、「X線密度値」と称する値を関連付けるようにさらに構成されている、請求項15に記載の装置(10)。
【請求項17】
前記制御ユニット(11)が、前記推定されたアブレーション領域(34)の各ボクセルが、所定閾値を超えるX線密度値に関連付けられるように、前記推定されたアブレーション領域(34)をセグメント化するように構成されている、請求項16に記載の装置(10)。
【請求項18】
前記制御ユニット(11)が、前記推定されたアブレーション領域(34)の輪郭の各点に対して、前記輪郭に対して垂直な方向におけるその点の前記X線密度値の勾配が所定閾値を超えることを検査するように構成されている、請求項16又は17に記載の装置(10)。
【請求項19】
前記制御ユニット(11)が、前記術前画像(50)において、前記外科処置がアブレーションすることを目的とする前記組織(32)に対応する治療対象の領域(33)をセグメント化するように、及び前記シミュレートされた画像(51)に表される前記推定されたアブレーション領域(34)を、前記治療対象の領域(33)と比較するように、さらに構成されている、請求項14~18のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項20】
前記制御ユニット(11)が、前記推定されたアブレーション領域(34)の前記輪郭が前記治療対象の領域(33)の前記輪郭を完全に取り囲む場合、及び、前記推定されたアブレーション領域(34)の前記輪郭の各点に対して、その点と前記治療対象の領域(33)の前記輪郭との間の最短距離が所定の値の範囲内にある場合に満足される、妥当性条件を検査するようにさらに構成されていることを特徴とする、請求項19に記載の装置(10)。
【請求項21】
前記制御ユニット(11)が、前記妥当性条件が満足される計画パラメータの1つ又は複数の新たなセットを決定するように、及びこれらの計画パラメータの新たなセットから、前記推定されたアブレーション領域(34)が最小寸法を示す計画パラメータの最適なセットを特定するように、さらに構成されていることを特徴とする、請求項20に記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、低侵襲組織アブレーション医療処置の分野に属する。特に、本発明は、患者の解剖学的関心領域における組織をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
患者の解剖学的関心領域(例えば、肺、腎臓又は肝臓)における組織(例えば、腫瘍)をアブレーションすることを目的とする外科処置を準備するために、医師は、一般に、術前画像に基づいて処置を計画する。術前画像は、例えば、コンピュータ断層撮影(又はCTスキャン)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、ポジトロン断層撮影(PET又はPETスキャン)等によって得られる。
【0003】
組織のアブレーションは、さまざまな方法、すなわち、熱又は冷気(高周波、マイクロ波、凍結療法)、レーザ、エレクトロポレーション、集束超音波等によって実施することができる。また、アブレーション治療に対してさまざまなタイプの医療器具(針、プローブ、電極等)を使用することができる。
【0004】
従来、例えば肝細胞癌又は転移のある可能性がある患者の解剖学的関心領域における組織を、特定の医療器具によりアブレーションすることを目的とする外科処置の計画は、前記機器の製造業者によって提供される医療器具データに基づく。例えば、特定のアブレーション針であって、針内を循環する電流から組織の細胞を破壊するのに好適な針の場合、前記針の製造は、印加される電力、治療時間等、種々の治療パラメータに対して得られる可能性がある、アブレーションゾーンの寸法、形状、及び針の端部に対する位置を示す。
【0005】
しかしながら、特定の治療パラメータのセットに対して、製造業者によって示されるアブレーションゾーンは、生体外(ex vivo)測定から決定され、同じ治療パラメータを用いて患者に対して生体内(in vivo)で実際に得られたアブレーションゾーンに常に対応するとは限らない。
【0006】
いくつかの組織アブレーション計画方法は、外科処置の結果をシミュレートするモデリングにも基づく。例えば、アブレーション対象の組織の性質に基づき(例えば、腫瘍の表現型に基づき)、組織内の熱拡散又は導電性等の特性を推定して、アブレーションの結果をシミュレートすることができる。別の例によれば、アブレーションの結果は、アブレーション対象の組織内に又はその組織に近接して位置する血管による冷却効果を考慮することにより推定される。そして、想定されるモデルに基づき、医療器具製造業者データに訂正を施すことができる。
【0007】
しかしながら、こうした方法は、これらのモデリングが、当業者により重要であるとみなされる何らかの要素の選択によって限定されるため、依然として不正確であることが多い。さらに、これらの方法では、組織のいくつかの特性を測定するために、患者の解剖学的関心領域への医療用具の挿入(例えば、組織の電気インピーダンスを測定するための電極の挿入)が必要であることがある。
【0008】
また、外科処置が、いくつかの異なる針を使用する可能性があって、いくつかの治療を同時に又は連続して必要とする場合、従来の計画方法では、得られるアブレーション領域が、各針及び各治療に対してそれぞれ推定されたアブレーションゾーンの結合体に対応するとみなされる。今では、それは常に当てはまるとは限らない。いくつかの治療を適用するという事実は、実際には、各治療に対して得られるアブレーションゾーンに影響を及ぼす可能性がある。また、これらの従来の方法では、一般に、特定の治療パラメータのセットで特定の針に対して得られるアブレーションゾーンは常に同一であるとみなされる。この場合もまた、それは不完全な推定でしかない。得られるアブレーションゾーンは、実際には、針と使用される治療パラメータとのみではなく、患者の解剖学的構造の特定の特性によっても決まる。
【0009】
米国特許出願公開第2018/0028261A1号は、医師が腫瘍のアブレーション領域を決定するのを支援する方法を開示している。この方法は、腫瘍をアブレーションしなければならない患者の解剖学的構造の術前医用画像を取得するステップを含む。腫瘍は、術前画像においてセグメント化され、画像が機械学習アルゴリズムによって分析されて、術前医用画像においてアブレーション領域が決定される。
【0010】
この文献では、腫瘍のすべてをアブレーションすることは概して誤りであり、したがって、アブレーション対象の腫瘍の部分を適切に選択することが最良であると考えられている。腫瘍の最も血管化した部分が、優先的にアブレーションすべき最も危険な部分である。米国特許出願公開第2018/0028261A1号に開示されている方法は、優先的にアブレーションすべき腫瘍の部分を特定するために、腫瘍に存在する血管をマッピングすることを提案している。その文献に記載されている方法の目的は、腫瘍を部分的にただし最適に「カバーする」ようにいくつかの同一のアブレーションゾーンの位置決めを最適化することである。
【0011】
しかしながら、その文献は、特定の治療パラメータのセットに対する推定されたアブレーションゾーンは、患者に固有である何らかのパラメータにより実際に得られたアブレーションゾーンとは異なる可能性があるという問題には対処していない。反対に、その文献によって開示されている方法では、所与のアブレーション器具による所与の治療パラメータのセットに対する推定されたアブレーションゾーンは、常に同じである。その文献によって開示されている方法では、いくつかの同一のアブレーション器具が使用され、推定されたアブレーション領域は、各機器に対してそれぞれ推定されたアブレーションゾーンの結合体に対応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、特定の治療パラメータのセットに対して実際に得られるアブレーション領域を容易に且つ正確に推定することを可能にする、患者の解剖学的関心領域における組織のアブレーションを計画する方法が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明の目的は、特定の患者に対する所定の処置の間に得られるアブレーション領域を正確に推定することを可能にする解決法を提案することにより、従来技術の欠点、特に上記に示した欠点のすべて又は一部を軽減することである。
【0014】
このために、第1態様によれば、本発明は、患者の解剖学的関心領域における組織をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画する方法を提案する。本方法は、
- 解剖学的関心領域の術前画像の取得のステップと、
- 計画パラメータのセットの決定のステップと、
- 推定されたアブレーション領域が表されるシミュレートされた画像の生成のステップであって、前記シミュレートされた画像が、術前画像、計画パラメータ及びニューラルネットワークに基づいて生成され、前記ニューラルネットワークが、複数の学習要素で事前にトレーニングされており、各学習要素が、他の患者の解剖学的関心領域における同様の組織アブレーション外科処置にそれぞれ対応し、各学習要素が、前記他の患者の解剖学的関心領域の術前画像と、当該他の患者に対して前記外科処置で使用された計画パラメータと、外科処置後の当該他の患者の解剖学的領域の術後画像とを含み、前記シミュレートされた画像により、外科処置後に得られる可能性がある結果を観察することが可能になる、ステップと、
を含む。
【0015】
したがって、ニューラルネットワークの学習要素は、術前画像と、計画パラメータのセットと、術後画像とによって形成されたデータのトリプレットに対応する。
【0016】
術前画像及び術後画像は、例えば、医用撮像装置により、例えば、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴、超音波、3次元回転血管造影、ポジトロン断層撮影等により得られる。術前画像は、アブレーション外科処置が実施される前に得られる。術後画像は、アブレーション外科処置が実施された後に得られる。
【0017】
ニューラルネットワークの学習フェーズ中、各学習要素に対して、ニューラルネットワークは、特定の術前画像に対する術後画像において特定の計画パラメータを用いて実際に得られるアブレーション領域を学習する。したがって、ニューラルネットワークは、特定の術前画像から、計画パラメータの特定のセットに対して、実際に得られることになるアブレーション領域を正確に推定するようにトレーニングされる。このように推定されたアブレーション領域は、コンピュータ生成画像上に表される。
【0018】
こうした対応により、アブレーション領域の予測を行うために、患者の解剖学的関心領域の医用画像に含まれる情報のすべてを考慮することができる。したがって、本発明による方法では、従来技術の従来の方法とは対照的に、アブレーション領域の予測が所与の患者に特有である。
【0019】
ニューラルネットワークの何らかの学習要素に関連する外科処置によっては、いくつかの医療器具の使用が必要であった場合がある。したがって、ニューラルネットワークは、関連する術後画像を分析することにより、処置中にいくつかの医療器具が使用されるという事実の、得られる結果に対する影響を学習することができる。
【0020】
本発明による方法では、患者のいかなる生体内測定も不要である。したがって、外科処置の開始前に計画を実施することができる。それにより、医師が、処置を準備するためにより多くの時間をかけることができる。
【0021】
特定の実装形態では、本発明は、単独で、又はすべての技術的に可能な組合せに従って、以下の特徴のうちの1つ又は複数をさらに含むことができる。
【0022】
特定の実装形態では、本方法は、シミュレートされた画像に表される推定されたアブレーション領域のセグメント化を含む。推定されたアブレーション領域のセグメント化により、前記アブレーション領域の寸法を規定し、例えば、その領域を、術前画像において特定される治療対象の領域と比較することができる。
【0023】
特定の実装形態では、本方法は、シミュレートされた画像に表される推定されたアブレーション領域の各ボクセルに、前記ボクセルに対応する組織のX線密度を表す、「X線密度値」と称する値を関連付けることによる、アブレーション処置に対する組織反応の決定をさらに含む。組織反応が決定される好ましい実装形態では、術前画像はコンピュータ断層撮影(又はCTスキャン)によって得られる。
【0024】
「ボクセル」という語は、「体積(volume)」及び「要素(element)」という語の併合及び短縮によって形成されている。ボクセルは、3次元デジタル画像におけるピクセルの同義語である。使用される画像が2次元である場合、ボクセルという用語はピクセルという用語に置き換えることができる。ボクセルにより、測色情報と、必要な場合は、デジタル画像の基本部分に対する他の情報とを格納することができる。
【0025】
「X線密度」は、電磁放射線、特にX線が、特定の材料を通過することができない、相対的な程度を意味するように理解される。アブレーション領域のボクセルが低いX線密度値に関連するほど、前記ボクセルに対応するアブレーション領域の部分が破壊されている。したがって、「アブレーション処置に対する組織反応」は、治療対象の組織の各部分がアブレーションされた割合の表現を意味するように理解される。例えば、X線密度値が所定の第1閾値を超えるアブレーション領域のボクセルは、少なくとも50%破壊された、治療対象の組織の部分に対応する(これは、治療に対する比較的低い組織反応に対応する)。別の例によれば、X線密度が所定の第2閾値未満であるアブレーション領域のボクセルは、90%超破壊された、治療対象の組織の部分に対応する(これは、治療に対する比較的強い組織反応に対応する)。したがって、シミュレートされた画像に基づいて、治療に対する組織の推定された反応をマッピングすることができる。
【0026】
特定の実装形態では、推定されたアブレーション領域のセグメント化は、前記アブレーション領域の各ボクセルが所定閾値を超えるX線密度値に関連付けられるように実施される。
【0027】
特定の実装形態では、本方法は、推定されたアブレーション領域の輪郭の各点に対して、前記輪郭に対して垂直な方向におけるこの点のX線密度値の勾配が所定閾値を超えることの検査をさらに含む。
【0028】
こうした対応により、特に、アブレーション領域の輪郭が鮮明であるか否かを検査することができる。アブレーション領域の輪郭は、治療された領域と治療されていない組織との境界を示す。この輪郭の鮮明度は、アブレーションの質を表す。
【0029】
特定の実装形態では、本方法は、外科処置がアブレーションすることを目的とする組織に対応する治療対象の領域の術前画像におけるセグメント化と、シミュレートされた画像に表される推定されたアブレーション領域の、術前画像に表される治療対象の領域との比較とをさらに含む。
【0030】
こうした対応により、推定されたアブレーション領域が、マージンが大きすぎることなく十分なマージンで治療対象の領域をカバーするか否かを検査することができる。それにより、特に、想定される計画パラメータが妥当であるか否かを検査することができる。
【0031】
特定の実装形態では、本方法は、推定されたアブレーション領域の輪郭が治療対象の領域の輪郭を完全に取り囲む場合、及び、推定されたアブレーション領域の輪郭の各点に対して、この点と治療対象の領域の輪郭との間の最短距離が所定の値の範囲内にある場合に満足される、妥当性条件に関する検査をさらに含む。
【0032】
特定の実装形態では、妥当性条件に関する検査の結果が否定的である場合(すなわち、妥当性条件が満足されない場合)、本方法は、推定されたアブレーション領域が妥当性条件を満足させる計画パラメータの新たなセットの決定を含む。
【0033】
特定の実装形態では、本方法は、妥当性条件が満足される計画パラメータのいくつかの新たなセットの決定のステップと、計画パラメータの新たなセットから、推定されたアブレーション領域が最小寸法を示す計画パラメータの最適なセットの特定のステップとをさらに含む。
【0034】
特定の実装形態では、解剖学的関心領域は肝臓である。
【0035】
特定の実装形態では、アブレーション対象の組織は腫瘍である。
【0036】
特定の実装形態では、計画パラメータは、以下の要素、すなわち、
- 病理のタイプと、
- 治療のタイプと、
- 治療に使用すべき医療器具のタイプと、
- 治療に使用すべき医療器具の位置及び/又は向きと、
- 医療器具に特有の治療パラメータと、
- 外科処置中に実施すべき治療の回数と、
の中からの1つ又は複数の要素を含む。
【0037】
第2態様によれば、本発明は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、1つのプロセッサ又は複数のプロセッサを、ニューラルネットワークを使用して、一方では、アブレーション対象の組織を含む患者の解剖学的関心領域の術前画像と、他方では、計画パラメータとから、推定されたアブレーション領域が表されるシミュレートされた画像を生成するように構成する、プログラムコード命令のセットを含む、コンピュータプログラム製品に関する。ニューラルネットワークは、複数の学習要素で事前にトレーニングされるように適合され、各学習要素は、他の患者の解剖学的関心領域における同様の組織アブレーション外科処置にそれぞれ対応し、各学習要素は、前記他の患者の解剖学的関心領域の術前画像と、当該他の患者に対して前記外科処置で使用された計画パラメータと、外科処置後の当該他の患者の解剖学的領域の術後画像とを含む。
【0038】
第3態様によれば、本発明は、患者の解剖学的関心領域における組織をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画するための装置に関する。本装置は、前記解剖学的関心領域の術前画像と、計画パラメータのセットと、ニューラルネットワークとに基づいて、シミュレートされた画像を生成するように構成された制御ユニットを備える。ニューラルネットワークは、複数の学習要素で事前にトレーニングされるように適合され、各学習要素は、他の患者の解剖学的関心領域における同様の組織アブレーション外科処置にそれぞれ関連付けられる。各学習要素は、前記他の患者の解剖学的関心領域の術前画像と、当該他の患者に対して前記外科処置で使用された計画パラメータと、外科処置後の当該他の患者の解剖学的領域の術後画像とを含む。
【0039】
特定の実施形態では、本発明は、単独で、又はすべての技術的に可能な組合せに従って、以下の特徴のうちの1つ又は複数をさらに含むことができる。
【0040】
特定の実施形態では、計画装置の制御ユニットは、シミュレートされた画像に表される推定されたアブレーション領域をセグメント化するようにさらに構成されている。
【0041】
特定の実施形態では、計画装置の制御ユニットは、シミュレートされた画像に表される推定されたアブレーション領域の各ボクセルに、前記ボクセルに対応する組織のX線密度を表す、「X線密度値」と称する値を関連付けるようにさらに構成されている。
【0042】
特定の実施形態では、制御ユニットは、前記推定されたアブレーション領域の各ボクセルが、所定閾値を超えるX線密度値に関連付けられるように、推定されたアブレーション領域をセグメント化するように構成されている。
【0043】
特定の実施形態では、制御ユニットは、推定されたアブレーション領域の輪郭の各点に対して、前記輪郭に対して垂直な方向におけるその点のX線密度値の勾配が所定閾値を超えることを検査するように構成されている。
【0044】
特定の実施形態では、制御ユニットは、術前画像において、外科処置がアブレーションすることを目的とする組織に対応する治療対象の領域をセグメント化するように、及びシミュレートされた画像に表される推定されたアブレーション領域を、治療対象の領域と比較するように、さらに構成されている。
【0045】
特定の実施形態では、制御ユニットは、推定されたアブレーション領域の輪郭が治療対象の領域の輪郭を完全に取り囲む場合、及び、推定されたアブレーション領域の輪郭の各点に対して、この点と治療対象の領域の輪郭との間の最短距離が所定の値の範囲内にある場合に満足される、妥当性条件を検査するようにさらに構成されている。
【0046】
特定の実施形態では、制御ユニットは、妥当性条件が満足される計画パラメータの1つ又は複数の新たなセットを決定するように、及びこれらの計画パラメータの新たなセットから、推定されたアブレーション領域が最小寸法を示す計画パラメータの最適なセットを特定するように、さらに構成されている。
【0047】
図の説明
本発明は、非限定的な例として与えられる以下の説明を読み、以下を表す
図1~
図10を参照して、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明による外科処置を計画するための装置の概略図である。
【
図2】アブレーション対象の組織を含む患者の解剖学的関心領域の術前画像の概略図である。
【
図3】推定されたアブレーション領域がセグメント化された、計画装置によって生成されたシミュレートされた画像の概略図である。
【
図4】患者の解剖学的関心領域の、前記解剖学的関心領域の組織をアブレーションした外科処置の後の、アブレーション領域がセグメント化された術後画像の概略図である。
【
図5】患者の解剖学的関心領域における組織をアブレーションすることを目的とする処置を計画する方法の主なステップの概略図である。
【
図6】治療対象の領域がセグメント化された、患者の解剖学的関心領域の術前画像の概略図である。
【
図7】本発明による計画方法の特定の実装形態の概略図である。
【
図8】本発明による計画方法の別の特定の実装形態の概略図である。
【
図9】本発明による計画方法を実施するニューラルネットワークのトレーニングの図である。
【
図10】本発明による計画方法を実施するためのニューラルネットワークによるシミュレートされた画像の生成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
これらの図において、図の間で同一の参照符号は、同一又は同様の要素を示す。明確にするために、表されている要素は、別段の規定のない限り、必ずしも正確な縮尺ではない。
【0050】
発明の実施形態の詳細な説明
図1は、概して、患者30の解剖学的関心領域における組織をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画するための装置10を表す。
【0051】
本明細書において以降、非限定的な例として記載する状況は、解剖学的関心領域が肝臓であり、アブレーション対象の組織が腫瘍である場合である。しかしながら、本発明は、皮膚病変、静脈、神経、心臓組織、食道組織又はさらには子宮線維腫等、アブレーションしなければならない他のタイプの組織にも適用可能であることが留意されるべきである。また、本発明は、例えば、腎臓、肺等、他の解剖学的関心領域にも適用可能である。
【0052】
計画装置10は、1つ又は複数のプロセッサを備える制御ユニット11と、外科処置計画方法のステップの少なくとも一部を実施するために実行すべきプログラムコード命令のセットの形態で、コンピュータプログラム製品が格納されている、記憶手段12(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスク等)とを備える。別法として又はさらに、制御ユニットは、計画方法の前記ステップを実施するのに好適な、1つ又は複数のプログラマブルロジック回路(FGPA、PLD等)、及び/又は1つ又は複数のカスタム集積回路(ASIC)、及び/又は一組のディスクリート電子部品等を含む。
【0053】
言い換えれば、制御ユニット11は、計画方法のステップを実施するようにソフトウェア(専用コンピュータプログラム製品)及び/又はハードウェア(FPGA、PLD、ASIC、ディスクリート電子部品等)によって構成されている、計画装置20の手段に対応する。
【0054】
計画装置10は、使用者が装置10に計画パラメータを供給し及び/又は装置10によって生成された画像又はデータを表示するのを可能にする、グラフィカルインタフェース13も備えることができる。
図1において考慮するとともに例示する例では、グラフィカルインタフェース13はタッチスクリーンに対応する。しかしながら、グラフィカルインタフェースは、キーボード、マウス、画面等、他のデバイスを使用して生成することも可能である。
【0055】
計画装置10は、入力データとして、計画パラメータのセットと、患者30の解剖学的関心領域の術前画像とを使用する。計画装置10は、機械学習アルゴリズムを実施して、これらの入力データから、推定されたアブレーション領域が表されているシミュレートされた画像を生成する。本説明において以降、例として且つ非限定的に、使用される機械学習アルゴリズムはニューラルネットワークであるものとして論ずる。
【0056】
計画パラメータは、例えば、治療対象の病理のタイプ(例えば、肝細胞癌又は転移)、アブレーションの治療のタイプ(高周波、マイクロ波、レーザ、エレクトロポレーション、凍結療法等)、治療を実施する医療器具のタイプ、治療時の医療器具の位置及び向き、治療パラメータ(時間、出力等)を示す。計画パラメータは、外科処置を準備する医師によってグラフィカルインタフェース13上に示される。
【0057】
術前画像は、医用撮像装置20により、例えば、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴、超音波、3次元回転血管造影、ポジトロン断層撮影等により得られる。アブレーション対象の組織と、解剖学的関心領域とは、術前画像において可視である。医用撮像装置20は、計画装置10とは別個の装置であり得る。しかしながら、計画装置20と医用撮像装置20とが合わせて1つの同じ物理的エンティティを形成することに支障はない。計画装置20及び医用撮像装置20が別個である場合、計画装置10に術前画像を送信することができる。例えば、術前画像は、デジタル化された後、無線通信手段により計画装置10に送信される。別の例によれば、デジタル化された術前画像は、USB(ユニバーサルシリアルバス)タイプの周辺デバイスによって計画装置10に供給することができる。
【0058】
ニューラルネットワークは、学習要素で事前にトレーニングされ、各学習要素は、他の患者に対して以前実施された解剖学的関心領域における同様の組織アブレーション外科処置にそれぞれ対応する。各学習要素は、前記他の患者の解剖学的関心領域の術前画像と、当該他の患者に対して前記外科処置のために使用された計画パラメータと、外科処置の後の当該他の患者の解剖学的関心領域の術後画像とを含む。言い換えれば、ニューラルネットワークは、特定の術前画像に対する術後画像において特定の計画パラメータで実際に得られるアブレーション領域を「学習する」ことによってトレーニングされる。
【0059】
ニューラルネットワークの学習要素が、外科処置が計画された患者と同じ患者に対して実施された過去の外科処置に対応することに支障はないことが留意されるべきである(したがって、「他の患者」という用語は、厳密な意味で解釈されるべきではない)。
【0060】
好ましくは、ニューラルネットワークの学習要素の術前医用画像は、外科処置を計画するための入力データとして使用された術前医用画像と同じタイプである。
【0061】
学習要素を形成するために使用される、又は計画方法に対する入力として使用される医用画像は、医用撮像装置20によって直接得られる画像に対応することができる。しかしながら、こうした医用画像が、医用撮像装置20によって得られる画像の一部のみに対応することに支障はない。言い換えれば、例えば、ニューラルネットワークに、主に患者の解剖学的関心領域、又は治療対象の組織が位置する前記解剖学的関心領域の部分を表す医用画像を提供するように、医用撮像装置20によって得られる画像を再構成することを想定することができる。
【0062】
図2は、アブレーション対象の組織32を含む解剖学的関心領域31の術前画像50を概略的に表す。こうした術前画像50は、例えば、外科処置を計画するために入力データとして使用される術前画像に対応する。別の例によれば、こうした術前画像50は、ニューラルネットワークをトレーニングするために使用される学習要素に属することができる。
【0063】
図3は、推定されたアブレーション領域34がセグメント化された、計画装置10によって生成されたシミュレートされた画像51を概略的に表す。
図3において考慮するともに例示する例では、シミュレートされた画像51は、計画装置10により、
図2に表す術前画像50を入力データとして取得することによって生成された。
【0064】
図4は、組織32をアブレーションした外科処置の後の解剖学的関心領域31の術後画像52を概略的に表す。こうした術後画像52は、
図1の術前画像50と組み合わされて、ニューラルネットワークをトレーニングするために使用される学習要素を形成するために使用することができる。
図4に表す術後画像52において、外科処置の後に実際に得られたアブレーション領域35がセグメント化されている。しかしながら、外科処置の後に実際に得られたアブレーション領域35のこのセグメント化は、術後画像52をニューラルネットワークの学習要素を形成するために使用することができるために必須ではない。さらに、ニューラルネットワークの学習要素を形成するために使用される画像をセグメント化しないことが好ましい。
【0065】
画像のセグメント化に対して種々の方法がある。「セグメント化」は、目的が、事前定義された基準に従って画像において領域又は輪郭を画定することである、画像処理操作を意味することが理解される。これらの方法は、当業者には既知であると考えられる。推定される又は実際に得られるアブレーション領域をセグメント化することにより、前記アブレーション領域の寸法を定義することができる。
【0066】
図5は、患者30の解剖学的関心領域31における組織32をアブレーションすることを目的とする外科処置を計画する方法100の主なステップを概略的に表す。
【0067】
計画方法100は、
- 解剖学的関心領域31の術前画像50の取得101のステップと、
- 計画パラメータのセットの決定102のステップと、
- 入力として術前画像50と計画パラメータとを取得することによる、且つ先行してトレーニングされたニューラルネットワークを使用することによる、シミュレートされた画像51の生成103のステップと、
- ニューラルネットワークによって生成されたシミュレートされた画像51に表される推定されたアブレーション領域34のセグメント化104のステップと、
を含む。
【0068】
術前画像の取得101のステップは、例えば、医師により、
図1を参照して記載した撮像装置20を使用して実施される。
【0069】
計画パラメータのセットの決定102のステップは、例えば、入力により、医師により、実施すべき外科処置に関連するパラメータ(病理のタイプ、治療のタイプ、使用される医療器具のタイプ、医療器具の位置及び向き、治療パラメータ等)の、
図1を参照して記載した計画装置10のグラフィカルインタフェース13を介して実施される。しかしながら、これらのパラメータのうちのいくつかが自動的に決定されることに支障はない。例えば、医療器具の最適な位置及び向きは、学習アルゴリズムによって自動的に決定することができる。
【0070】
シミュレートされた画像51の生成103のステップと推定されたアブレーション領域34のセグメント化104のステップとは、例えば、計画装置10の制御ユニット11において実施されるニューラルネットワークによって実施される。
【0071】
生成されるシミュレートされた画像51により、医師は、計画方法100に対する入力データとして提供された計画パラメータを使用する場合、外科処置の後に得る可能性がある結果を観察することができる。
【0072】
推定されたアブレーション領域34は、アブレーション対象の組織に対応する治療対象の領域と比較してより大きいか又は小さい寸法を有する可能性がある。
【0073】
シミュレートされた画像51において表される推定されたアブレーション領域34のセグメント化104のステップは、本発明に対して必須ではないため、任意選択的であることが留意されるべきである。特に、アブレーション領域は、実施されている前記推定されたアブレーション領域34のセグメント化なしに、シミュレートされた画像51において医師により特定可能であり得る。
【0074】
図6は、アブレーション対象の組織32に対応する治療対象の領域33がセグメント化されている、
図2の術前画像50に対応する術前画像50’を概略的に表す。推定されたアブレーション領域34の寸法を、治療対象の領域33の寸法と比較することが有利である。実際に、ここでは、治療対象の領域の一部を形成していない健康な組織の最大部分を破壊しないために、アブレーション領域の寸法を最小限にしながら、治療対象の領域が十分に治療によってカバーされていることを確認することが最良である。
【0075】
図7は、本発明による計画方法100の特定の実装形態の主なステップを概略的に表す。
図5を参照して上述したステップに加えて、
図7に示す特定の実装形態は、
- 外科処置がアブレーションすることを目的とする組織32に対応する治療対象の領域33の術前画像50におけるセグメント化105のステップと、
- シミュレートされた画像に表される推定されたアブレーション領域34の、治療対象の領域33との比較106のステップと、
- 妥当性条件に関する検査107のステップと、
を含む。
【0076】
例えば、推定されたアブレーション領域34の輪郭が、治療対象の領域33の輪郭を完全に取り囲む場合、及び、推定されたアブレーション領域34の輪郭の各点に対して、この点と治療対象の領域33の輪郭との間の最短距離が、所定の値の範囲内にある場合、妥当性条件は立証される。例えば、所定の値の範囲は、5ミリメートル~10ミリメートルにある値に対応する。しかしながら、他の妥当性条件を想定することができ、そうした妥当性条件は、本発明の単なる変形となり得る。
【0077】
妥当性条件に関する検査107の結果が否定的である場合、医師は、例えば、計画パラメータを変更し、別のシミュレーションを実行するように判断する場合がある。
【0078】
別の例によれば、
図7に示すように、方法100は、推定されたアブレーション領域34が妥当性条件を満足させる計画パラメータの新たなセットの、計画装置10による、自動的な決定108のステップを含むことができる。決定ステップ108は、例えば、計画データの空間の最適化及び探究の従来の方法によって実施される。
【0079】
図8は、本発明による計画方法100のさらに別の特定の実装形態を表す。この特定の実装形態では、計画方法100は、計画パラメータのいくつかの新たなセットの決定のステップ109を含む。
図8に示すように、計画パラメータの新たなセットの各々に対して、シミュレートされた画像の生成103のステップと、推定されたアブレーション領域のセグメント化104のステップと、治療対象の領域と推定されたアブレーション領域との比較106のステップと、妥当性条件の検査107のステップとが実施される。方法100は、次に、妥当性条件を立証する計画パラメータの新たなセットからの、計画パラメータの最適なセットの特定110のステップを含む。例えば、計画パラメータの最適なセットは、妥当性条件を立証しながら、推定されたアブレーション領域34が最小の寸法を示す計画パラメータに対応する。したがって、それにより、外科処置中にアブレーションされる健康な組織の量を最小限にすることができる。
【0080】
図8において、計画パラメータの新たなセットが、平行して、決定され、その後検証されることが留意されるべきである。しかしながら、計画パラメータの新たなセットが順に反復して決定されることに支障はない。必要な場合は、先行して決定された計画パラメータの別の新たなセットに応じて、及び/又は、医師が最初に選択した計画パラメータに応じて、計画パラメータの新たなセットを決定することができる。
【0081】
ニューラルネットワークによって生成されるシミュレートされた画像51において、推定されたアブレーション領域を決定するとともにセグメント化する、異なる方法を想定することができる。
【0082】
第1方法によれば、推定されたアブレーション領域は、術前画像50の上に重ねられて生成された画像51を形成する二値画像によって表される。この場合、推定されたアブレーション領域の外側に位置する二値画像の各ボクセルは、ゼロ値に関連付けられ、推定されたアブレーション領域の内側に位置する各ボクセルは、一定の非ゼロ値に関連付けられる。値が非ゼロであるボクセルは、二値画像において特定の色で現れる。一方で、値がゼロであるボクセルは、透明であり、術前画像の上に重ねられたときに、生成された画像に対して影響を及ぼさない。要点を繰り返すと、使用される画像が2次元である場合では、ボクセルという用語はピクセルという用語に置き換えることができる。
【0083】
第2方法によれば、推定されたアブレーション領域は、アブレーション処置に対する解剖学的関心領域31の組織反応に応じて、シミュレートされた画像51においてセグメント化される。このために、アブレーション処置に対する組織反応は、ニューラルネットワークにより、シミュレートされた画像51に表される推定されたアブレーション領域34の各ボクセルに、前記ボクセルに対応する組織のX線密度を表す、「X線密度値」と称する値を関連付けることによって決定される。
【0084】
X線密度は、電磁放射線、例えば、医用撮像装置20によって生成されたX線が、患者の解剖学的関心領域31の組織を通過することができない、相対的な程度を表す(撮像装置によって放出されるX線の目的は、腫瘍をアブレーションすることではなく、本明細書で考察する「X線密度値」は、放射線療法パラメータとは無関係であることが留意されるべきである)。ニューラルネットワークによって、シミュレートされた画像51に表されるアブレーション領域は、概して壊死領域に対応し、それは、画像上では、アブレーションされなかった患者の解剖学的関心領域の部分よりも、低いX線密度値を提示する。アブレーション領域のボクセルが低いX線密度値に関連するほど、前記ボクセルに対応するアブレーション領域の部分が破壊されている。したがって、「アブレーション処置に対する組織反応」は、治療対象の組織の各部分がアブレーションされた割合の表現を意味するように理解される。例えば、X線密度値が所定の第1閾値を超えるアブレーション領域のボクセルは、少なくとも50%破壊された、治療対象の組織の部分に対応する。別の例によれば、X線密度値が所定の第2閾値未満であるアブレーション領域のボクセルは、90%超破壊された、治療対象の組織の部分に対応する。したがって、シミュレートされた画像から、治療に対する組織の推定された反応をマッピングすることができる。
【0085】
そして、推定されたアブレーション領域34のセグメント化104は、例えば、前記推定されたアブレーション領域の各ボクセルが所定の閾値を超えるX線密度値に関連付けられるように、実施することができる。したがって、それにより、アブレーション領域のセグメント化の輪郭内に位置するいかなる組織も、一定の所望の割合(例えば、90%超)を超えて破壊されたことを確実にすることができる。
【0086】
ボクセルに関連するX線密度値は、例えば、ハウンズフィールド(Hounsfield)尺度に基づいて規定される。
【0087】
特定の実装形態では、計画方法100は、推定されたアブレーション領域34の輪郭の各点に対して、前記輪郭に対して垂直な方向におけるこの点のX線密度値の勾配が所定閾値を超えることを検査するステップを含む。この勾配は、輪郭に対して垂直な方向において、考慮される点のX線密度の変化性を表す(「輪郭に対して垂直な方向」は、考慮される点を通過する輪郭との接線に対して直角である方向を意味するように理解される)。こうした対応により、特に、アブレーション領域の輪郭が鮮明か否かを検査することが可能になる。アブレーション領域の輪郭は、治療された領域と治療されていない組織との境界を示す。この輪郭の鮮明度は、アブレーションの質を表す。推定されたアブレーション領域34の輪郭のある点において、勾配が高いほど、アブレーション領域とアブレーションされていない健康な組織とのX線密度値の変化が大きくなる。
【0088】
アブレーション領域を表す医用画像上に、アブレーション領域を包囲する小さい厚さのリングの形状の白色形状を観察することができる場合がある。このリングが存在するか否かは、アブレーションの質を表すことができる。推定されたアブレーション領域34の各点において勾配を計算し、この勾配を所定閾値と比較することにより、アブレーションの質の推定の信頼性を向上させることができる(例えば、勾配が輪郭のすべての点において閾値を超える場合、医用画像において白色リングが裸眼に直接可視でない場合であっても、アブレーションは良質であるとみなすことができる)。
【0089】
好ましい実施形態では、ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークである。畳み込みニューラルネットワークは、画像認識に特に適している。こうしたニューラルネットワーク40を、
図9及び
図10に概略的に表す。ニューラルネットワーク40は、人工ニューロンのいくつかの層を含む。畳み込み関数を通して画像の限定された部分を処理する処理ニューロンと、出力プーリングニューロンとがある。処理層の出力のセットにより、次の層のための基礎としての役割を果たす中間画像を再構築することができる。ニューラルネットワーク40はまた、先行する層の出力のすべてへの結合を有する全結合層41と、出力においてシミュレートされた画像51が生成される予測層42とを含む。特に、シミュレートされた画像51の各ボクセルにX線密度値を割り当てることを可能にするのは、予測層42である。
【0090】
図9は、ニューラルネットワーク40のトレーニングフェーズ(又は学習フェーズ)を概略的に示す。ニューラルネットワークは、学習要素でトレーニングされ、各学習要素は、患者の解剖学的関心領域における組織アブレーション外科処置にそれぞれ対応する。各学習要素は、患者の解剖学的関心領域の術前画像50と、その患者に対する外科処置に使用された計画パラメータPと、外科処置後のその患者の解剖学的関心領域の術後画像52とを含む。
【0091】
あり得る計画パラメータPの中でも、以下を挙げることができる。
- 病理のタイプρ:例えば、病理は、肝細胞癌又は転移であり得る。パラメータρに対する特定の値に、特定のタイプの病理を関連付けることができる。
- 治療タイプτ:組織のアブレーションは、例えば、マイクロ波、高周波、凍結療法、エレクトロポレーション、レーザ、集束超音波等によって実施することができる。パラメータτに対する特定の値に、特定のタイプの治療を関連付けることができる。
- 医療器具の位置(例えば、針の先端の位置)の座標x、y、z:それらは、所定の基準系(例えば、術前画像の基準系)によって表すことができる。
- 考慮される基準系における医療器具の向き(例えば、針の向き)を表す角度α、β、γ。
- 医療器具のタイプλ:パラメータλに対する特定の値に、特定のタイプの医療器具(モデル、製造業者等)を関連付けることができる。
- 治療パラメータε:治療のタイプに基づいて、異なる治療パラメータ、例えば治療出力又は時間を定義することができる。
【0092】
いくつかの治療がいくつかの医療器具により同時に実施される場合、計画パラメータPは、P=[ρ1,τ1,x1,y1,z1,α1,β1,γ1,λ1,ε1,…,ρN,τN,xN,yN,zN,αN,βN,γN,λN,εN]の形で書くことができる(Nは治療の番号を表す)。
【0093】
トレーニング中、各学習要素に対して、ニューラルネットワーク40は、各ニューロンに対して、計画パラメータPに結合された術前画像50に基づいて術後画像52に可能な限り類似するシミュレートされた画像51を得るのを可能にする、重みのセット及びバイアスのセットを決定する。
【0094】
シミュレートされた画像51における推定されたアブレーション領域34は、ニューラルネットワーク40により、費用関数全体を計算するために使用される損失関数を使用することによって、術後画像52の実際のアブレーション領域と比較される。そして、最適化プロセスが、この費用関数全体を最小化する重み及びバイアスパラメータを探索する。最適化プロセスは反復的に実施することができる。
【0095】
好ましくは、学習要素は、想定されるすべての病理及びすべての治療をカバーする過去の処置に対応する。
【0096】
図10は、患者の解剖学的関心領域における組織アブレーション処置のためのニューラルネットワーク40による計画フェーズを概略的に示す。ニューラルネットワーク40は、患者の前記解剖学的関心領域の術前画像50と、医師が想定した計画パラメータPとを入力として受け取る。ニューラルネットワークは、アブレーション領域を変更する可能性がある、関心組織及びその付近を記述する術前画像50の特性を選択する。次いで、ニューラルネットワークにより、推定されたアブレーション領域を表すシミュレートされた画像51が生成される。それにより、シミュレートされた画像51に表される推定されたアブレーション領域を、術前画像50’に表される治療対象の領域と比較することが可能である。推定されたアブレーション領域が満足のいくものではない場合(例えば、治療対象の領域のすべてをカバーしていない場合、又はそうした領域を過剰なマージンでカバーしている場合)、医師により、又は計画装置10により自動的に、新たな計画パラメータを定義することができる。そして、満足のいく推定されたアブレーション領域を得るのを可能にする計画パラメータのセットを決定することができる。これらのパラメータは、後に、外科処置が行われる日に、使用される。計画パラメータは、例えば、医療処置中に医師を支援する医療ロボットを構成するために使用することができる。いくつかのパラメータ、特に、医療器具の位置及び向きに関連付けられたパラメータは、必要な場合、外科処置を計画するために使用される術前画像50と、外科処置中に得られる術中画像との再位置合せを使用して調整することができる。
【0097】
本発明による計画方法100は、患者に対するいかなる手術ステップも含まないことが留意されるべきである。これは、実際に計画方法100であり、適切に計画された外科処置は、計画方法100の後に、場合により数日後に、行われる。また、ニューラルネットワークのトレーニングフェーズは、他の患者に対して実施された外科処置の後に実施される。これらの外科処置は、ニューラルネットワークのトレーニングフェーズの一部を形成するものとみなされるべきではない。
【0098】
ニューラルネットワーク40は、アブレーションを完了するために適用する必要がある追加の治療を規定するために、すでに部分的にアブレーションされた組織が可視である画像を、入力として取得することができることも留意されるべきである。したがって、いくつかの治療を連続して実施しなければならない処置の場合、本発明による方法を数回反復して、最初に計画された治療を毎回精緻化することができる。
【0099】
上記説明は、本発明が、そのさまざまな特徴及びその利点を通して、本発明に対して設定された目的を達成することを明確に示す。特に、患者の解剖学的関心領域の医用画像に含まれる情報のすべてが、アブレーション領域の予測を行うために考慮される。したがって、アブレーション領域の予測は、所与の患者に対して完全に特有である。さらに、ニューラルネットワークは、処置においていくつかの医療器具を使用した場合の影響を学習して、こうした場合に得られるアブレーション領域をより正確に推定することができる。さらに、本発明による計画方法は、患者の生体内測定が不要であり、それにより、医師が、処置を準備するためにより多くの時間をかけることができるために、外科処置の開始前に計画を実施することができる。治療に対する組織反応を推定することにより、アブレーションの結果をさらに正確に予測することができる。
【国際調査報告】