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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】水氷形成検出装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/02 20060101AFI20220824BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20220824BHJP
   G01K 5/56 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F25D21/02 F
F25B47/02 570M
G01K5/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570752
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019064135
(87)【国際公開番号】W WO2020239230
(87)【国際公開日】2020-12-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513121384
【氏名又は名称】ベステル エレクトロニク サナイー ベ ティカレト エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウスル ムトル
(72)【発明者】
【氏名】ヤリン ネブザット
【テーマコード(参考)】
3L046
【Fターム(参考)】
3L046AA02
3L046AA05
3L046FA04
3L046MA04
3L046MA05
(57)【要約】
基板(122)上の水氷の形成を検出するための装置(10)は、第1の永久磁石(204)と第2の永久磁石(206)を有する。磁石(204、206)は離間しつつ、一方の磁石(204)のN極が他方の磁石(206)のS極に対向して配置される。容器(200)は永久磁石(204、206)の間の空間内に水体(202)を含む。磁石の少なくとも一方(204)は容器(200)内で可動である。熱導体構成(208)は基板(122)と容器(200)内の水体(202)の間で熱を伝導する。熱が容器(200)内の水体(202)から基板(122)に伝導され、水体(202)の温度が下がって水の密度が最大となる温度を下回ると、水体の体積が増加し、第1及び第2の永久磁石(204、206)は互いに離間するように駆動される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の水氷形成検出装置であって、
離間されつつ、通常は互いに引き合うように一方の磁石のN極が他方の磁石のS極と対向して配置される第1の永久磁石と第2の永久磁石と、
前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石の間の空間内に水体を含み、
その内部において前記永久磁石の少なくとも一方は前記永久磁石の他方に対し移動可能な容器と、
前記基板と前記容器内の前記水体間で熱を伝導するための熱導体構成とを備え、
それにより、使用時に前記熱導体構成によって熱が前記容器内の水体から前記基板に伝導され、前記水体の温度が下がり水の密度が最大になる温度を下回ると、前記水体の体積が増加し、前記第1及び第2の永久磁石は互いに離間するように駆動される水氷形成検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記水体を含む前記容器は断熱性である装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の装置であって、前記第1及び第2の永久磁石間の距離が閾値距離を超えるように前記第1の及び第2の永久磁石が駆動されると作動するスイッチを備える装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、前記閾値距離は、前記容器内の前記水体が凍結するときのみ前記スイッチを作動させる距離である装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の装置であって、前記スイッチは第1の導電体と第2の導電体とを備え、前記第1の導電体は前記一方の移動可能な永久磁石と共に移動するように前記一方の移動可能な永久磁石に対して固定され、前記第2の導電体は前記他方の永久磁石に対して固定され、それにより、前記第1及び第2の永久磁石間の前記距離が前記閾値距離を超えると、前記第1の導電体と前記第2の導電体が互いに接触し前記スイッチを作動させる装置。
【請求項6】
霜が付きやすい基板と、
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置とを備え、
前記装置の前記熱導体構成は前記基板と熱接触し、前記基板と前記装置の前記容器内の前記水体の間で熱を伝導する機器。
【請求項7】
請求項6に記載の機器であって、前記装置は請求項3から5のいずれか一項に記載の装置であり、前記スイッチの作動によりヒータが作動して前記基板の除霜を行うように構成される機器。
【請求項8】
請求項7に記載の機器であって、前記装置は請求項5に記載の装置であり、前記ヒータは前記装置の前記第1の導電体及び前記第2の導電体で構成される機器。
【請求項9】
請求項8に記載の機器であって、前記第1及び第2の導電体の接触時に前記第1及び第2の導電体に通電されるとき、前記第1及び第2の導電体から前記基板に熱を伝達するための第2の熱伝達構成を備える機器。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の機器であって、前記機器は冷却機器であり、前記基板は前記冷却機器にわたって冷媒を運ぶパイプである機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水氷形成検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結や霜付きしやすい装置や機器、すなわちその一部に氷が蓄積しやすい又はその傾向がある装置や機器は多い。例として、具体的には冷凍庫や冷蔵庫等を含む冷却機器や、空調設備等が挙げられる。
【0003】
いわゆる霜取り不要の冷凍庫や冷蔵庫といった冷却機器は、氷の蓄積を防ぐ様々な方法を採用している。このような方法の一例では、周期的に冷凍庫や冷蔵庫を加熱し、内部に形成されていると思われる氷を溶かす。例えば、冷凍庫や冷蔵庫の氷が蓄積しやすい部分は、8又は10時間程度毎に5又は10分程度の間加熱されてもよい。この処理は氷が実際に形成されているかどうかを考慮しておらず、不経済で効率が悪い場合がある。
【0004】
霜取り不要の冷却機器の別の例は、例えば温度や湿度を測定しうる1つ以上の電子センサや、当該センサの出力に基づいて、いつ除霜が必要であるかを判定するマイクロコントローラに依存する。このような構成は複雑であり、マイクロコントローラのプログラミングを必要とし、また、確実ではないと思われる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示される第1の態様によれば、基板上の水氷形成検出装置が提供され、当該装置は、
離間されつつ、通常は互いに引き合うように一方の磁石のN極が他方の磁石のS極と対向して配置される第1の永久磁石と第2の永久磁石と、
前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石の間の空間内に水体を含み、
その内部において前記永久磁石の少なくとも一方は前記永久磁石の他方に対し移動可能な容器と、
前記基板と前記容器内の前記水体間で熱を伝導するための熱導体構成とを備え、
それにより、使用時に前記熱導体構成によって熱が前記容器内の水体から前記基板に伝導され、前記水体の温度が下がり水の密度が最大になる温度を下回ると、前記水体の体積が増加し、前記第1及び第2の永久磁石は互いに離間するように駆動される。
【0006】
このような装置は、氷の形成を検出又は除霜処理を制御するために、電子センサやマイクロコントローラあるいは他のプロセッサ等を必要としない。したがって、当該装置は比較的シンプルで製造コストがかからない。
【0007】
一例において、前記水体を含む前記容器は断熱性である。
【0008】
一例において、当該装置は、前記第1及び第2の永久磁石間の距離が閾値距離を超えるように前記第1の及び第2の永久磁石が駆動されると作動するスイッチを備える。
【0009】
一例において、前記閾値距離は、前記容器内の前記水体が凍結するときのみ前記スイッチを作動させる距離である。
【0010】
一例において、前記スイッチは第1の導電体と第2の導電体とを備え、前記第1の導電体は前記一方の移動可能な永久磁石と共に移動するように前記一方の移動可能な永久磁石に対して固定され、前記第2の導電体は前記他方の永久磁石に対して固定され、それにより、前記第1及び第2の永久磁石間の前記距離が前記閾値距離を超えると、前記第1の導電体と前記第2の導電体が互いに接触し前記スイッチを作動させる。
【0011】
この例において、前記第1の及び第2の導電体は、互いに接触すると、熱を提供して前記基板の除霜を行うために使用可能な電気抵抗ヒータを形成してもよい。すなわち、当該装置は、前記基板上の氷の形成を検出するとともに、氷を検出すると自動的に除霜処理を実行して氷解することができる。
【0012】
霜が付きやすい基板と、
上記のような装置とを備え、
前記装置の前記熱導体構成は前記基板と熱接触し、前記基板と前記装置の前記容器内の前記水体との間で熱を伝導する機器が提供される。
【0013】
上記のように前記装置がスイッチを備える一例において、前記装置は前記スイッチの作動によりヒータが作動して前記基板の除霜を行うように構成される。
【0014】
上記のように前記スイッチの作動によりヒータが作動するように前記装置が構成される一例において、前記ヒータは前記装置の前記第1の導電体及び前記第2の導電体で構成されてもよい。
【0015】
一例において、当該機器は、前記第1及び第2の導電体の接触時に電力が前記第1及び第2の導電体を通過するとき、前記第1及び第2の導電体から前記基板に熱を伝達するための第2の熱伝達構成を備える。
【0016】
一例において、当該機器は冷却機器であり、前記基板は前記冷却機器にわたって冷媒を運ぶパイプである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の理解を促し、かつ、実施形態がどのように実施されうるかを示すために、例として以下の添付図面が参照される。
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係る装置の一例及び冷却機器の一例を概略的に示す。
図2図1の装置のより詳細な一部透視図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
用語「冷却機器」は、具体的には冷凍庫や冷蔵庫等を含むものとして本明細書で使用されるだろう。また、本明細書で使用される用語「冷却機器」は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、空調設備や、霜が付きやすい他の装置ないし機器、特に冷媒の流れに依存する装置ないし機器を含んでもよい。
【0020】
本開示の例において、永久磁石の磁力と、温度が(約)4°Cを下回る及び/又は0°Cで凍結し氷を形成すると水は膨張するという事実とを利用した、基板上の水氷の形成を検出する装置が提供される。この装置は、除霜処理を制御するために電子センサやマイクロコントローラ、あるいは他のプロセッサ等を必要としない。いくつかの例では、この装置にはヒータを作動させるスイッチも構成する、及び/又は、装置自体がヒータとして作動してもよい。
【0021】
次に図面を参照すると、図1は、冷却機器100の一例に接続される、本開示の一実施形態に係る装置10の一例を概略的に示す。本例では、冷却機器100は冷蔵庫又は冷凍庫である。いくつかの例では、冷却機器は、空調設備、又は、凍結しやすいあるいは一部が凍結しやすい他の機器であってもよい。
【0022】
冷却機器100は、蒸気圧縮冷却サイクルを実施し、冷却機器100内の空間110を冷やす。具体的には、本例において、蒸気圧縮冷却サイクル(以下でさらに詳細に記載)が実施され、0°C未満に空間110の冷凍庫部111を冷やす。また、空間110の他の部分も、冷凍庫部111の温度や冷却機器100のレイアウトに応じて冷やされることになる。いずれにしても、冷凍庫部111は、食品等の物質が入れられて凍結されうる、空間110の小区分でもある。より一般的には、冷却機器100がこのような冷凍庫部を有しない場合であっても、蒸気圧縮冷却サイクルが用いられて冷却機器100の空間110を冷やしてもよい。
【0023】
冷却機器100は、空間110(例えば、冷却機器の食品保存部)の内部を冷やすための選択された冷媒を含む配管120の閉回路を備える。具体的には、配管120の回路は、冷凍庫部111内に配置される内側部分122と空間110の外に配置される外側部分124とを有する。
【0024】
冷凍庫部111の内部からの熱を吸収すると、内側部分122で蒸発するような蒸発温度を有する冷媒が選択される。このため、内側部分122はしばしば蒸発部122と呼ばれる。
【0025】
蒸発した冷媒を圧縮し、その温度を著しく上昇させるように圧縮部123が設けられる。高圧で高温の冷媒蒸気は、圧縮部123から配管120の「熱い」外側部分124を通過する。外側部分124は冷却サイクルにおける凝縮部として機能し、熱を環境(例えば冷却機器100が配置される部屋)に伝達する。熱の伝達が向上するようにヒートシンク又はファンが設けられてもよい。熱の伝達により、外側部分124における冷媒蒸気の少なくとも一部が凝縮され、液状に戻る。
【0026】
冷やされて少なくとも一部が液状になっている高圧の冷媒は、冷媒の圧力を下げて膨張させ冷やす膨張弁121に移動する。そして、低圧で低温の冷媒は、冷却サイクルにおける蒸発部として機能する冷凍庫部111内の蒸発部122を通過し、冷凍庫部111の内部から熱を吸収する。その結果、蒸発部122を通過する冷たい冷媒液は、圧縮部123に移動する前に蒸発して冷却サイクルを完了する。
【0027】
圧縮部123は低出力DCモータによって駆動されてもよく、回路の外側部分124において要求される冷媒蒸気圧や温度、及び、回路の蒸発部122によって要求される冷却率に応じて選択される。
【0028】
配管120の蒸発部122によって冷凍庫部111内で生成された低温により、空気中からの湿気が蒸発部122に凍結し、時間と共に氷層が蓄積される。蒸発部122上及び/又は冷却機器100の他の部分における氷の蓄積(「霜」とも呼ぶ)は、さもなければ(例えば食品の)保存に使用できたであろう冷凍庫部111や冷却機器100の他の部分内の空間を塞ぎ、冷却機器100の効率性を低下させてしまうため好ましくない。冷却機器の使用者は、氷が溶ける程度まで冷凍庫部111が温まるようにし、その後に、それによって生じた液体水を除去することにより、周期的に手動で冷却機器100の「除霜」を行ってもよい。
【0029】
周知の冷却機器の中には、氷層を溶かすことにより冷凍庫部の除霜を行うために、冷凍庫部を手短に加熱するための加熱抵抗器や他の加熱要素等の構成を有するものがある。このような周知の冷却機器では、実際にどれだけ霜が蒸発部に蓄積しているかに関わらず、除霜処理が自動的かつ周期的に任意のサイクルで行われてもよい。この処理は氷が実際に形成されているかどうかを考慮しておらず、不経済で効率が悪い場合がある。霜取り不要の冷却機器の別の例は、例えば温度や湿度を測定しうる1つ以上の電子センサや、当該センサの出力に基づいて、いつ除霜が必要であるかを判定するマイクロコントローラに依存する。このような構成は複雑であり、マイクロコントローラのプログラミングを必要とし、また、確実ではないと思われる。
【0030】
本開示の一例によれば、装置10は、冷却機器100の一部における氷すなわち「霜」の形成を検出するために用いられる。本例において、装置10は、特に蒸発部122上の氷の形成を検出するために用いられるが、他の部分上の氷の形成を検出するために用いることができる。この装置10の例は、電子センサやコントローラ等を必要としない。
【0031】
特に図2を参照し、同図は装置10のより詳細な一部透視図を概略的に示す。装置10は、水体202を含む容器200を有する。容器200は中空の筒体である。容器200の壁部は断熱性である。容器200は、例えばプラスチック材から形成されてもよい。
【0032】
容器200は2つの永久磁石204、206を収容する。磁石204、206は水体202によって互いに離間される。磁石204、206は、反対極が互いに対向するように配置される。すなわち、一方の磁石204のN極は他方の磁石206のS極に対向する。このように、磁石204、206は互いに引きつけ合う傾向がある。磁石204、206の少なくとも一方は、容器200内で移動可能である。図示される例では、図中一番上の磁石204が容器200内で移動可能である。(ここでの「上」及び「下」等への言及は、図面を参照する際の便宜上のものである。一般に、上側の磁石204が垂直に上下に移動可能な垂直な向きが最も都合よくかつ有効であるが、装置10は他の向きに配置されてもよい。)本例において、他方の磁石206は容器200内で移動しないように固定されている。したがって、通常は、水体202によって離間して保持される磁石204、206を一つに引き寄せる磁力により、磁石204、206は互いに向かって付勢される。
【0033】
装置10は、本例では冷却機器100の蒸発部122である基板又は霜が付きやすい部分と熱連通している。具体的には、水体202は蒸発部122と熱連通している。図示される例では、これは水体202と蒸発部122の間を延出する第1の熱導体構成208によって実現される。図示される例では、熱導体構成208は、銅やアルミニウム等といった熱伝導性が高い金属棒等で形成される。本具体例では、熱導体構成208は、装置10の本体から延出し、蒸発部122周りでクランプ可能な2つのクランプアームからなるクランプ部210を有する。同様に熱伝導性が高い金属等から形成されてもよい別の熱導体212が、クランプ部210から装置10の本体内に延出し、水体202と熱接触する。熱導体212は、例えば、容器200の壁部の開口や貫通孔を通過して水202に接触してもよい。代案として、容器200の壁部(通常は断熱性である)は、熱伝導性のパネルやインサート等を有してもよく、熱導体212は当該熱伝導部に接触している。
【0034】
使用時、もし氷が蒸発部122上に生じている場合、容器200内の水202から熱導体構成208及び熱導体212によって熱が伝導される。これにより、水202の温度が下がる。周知のように、氷点の0°C(標準気圧において)より少し上の(約)4°Cで最大密度となる点で、水はやや独特である。したがって、容器200内の水202の温度が約4°Cを下回ると、水202の体積が増加する。これにより、磁石204、206は駆動され離間する。さらに、同様に周知のように、水は0°Cで凍結し氷を形成すると、その体積が約9%程度かなり著しく増大する。したがって、容器200内の水202の温度が0°Cに下がると、水202の凍結によって永久磁石204、206が比較的大幅に離間するように駆動される(特に、好適とされるように、容器200の壁部が硬質の場合、最大約9%程度離間が大きくなる)。いずれにしても、永久磁石204、206の離間する動きは、蒸発部122上に氷が形成されていることを示す可能性がある。なお、このことは(電子又は同様の)温度センサや湿度センサ等を必要とすることなく達成されることに留意されてもよい。
【0035】
このように、ここまで説明してきた装置10は、本例において冷却機器100の蒸発部122である基板上の氷の形成を検出するように作動する。装置10はさらに、蒸発部122上の氷を溶解又は氷解するために蒸発部122の加熱がその後実施されるように構成されてもよい。このため、装置10は、可動の磁石204が閾値距離分移動するとスイッチが作動されるように構成されることができる。例えば水202の温度が4°Cと0°Cの間のいずれかまで下がることに対応し、閾値距離は小さくてもよい。あるいは、例えば水202の温度が0°Cに下がり、それにより水202が凍結しているときに対応し、閾値距離は幾分大きくてもよい。
【0036】
このため、装置10は2つの導電体214、216を有する。2つの導電体214、216は、例えばニクロム(NiCr、ニッケル-クロム)や白銅すなわちコッパー-ニッケル(CuNi)といった金属から形成されてもよい。第1の導電体214は、可動の磁石204と共に移動するように、(例えば、可動の磁石204に直接接続されることにより)可動の磁石204に対して固定される。第2の導電体216は他方の磁石206に対して固定される。第2の導電体216は第1の導電体214に対向して、第1の導電体214の移動経路内に配置される。それに加え、水202の温度が比較的高い(氷が蒸発部122上に形成されていないことを示す)とき、2つの導電体214、216は通常互いに離間している。導電体214、216の間の距離は、水202の温度が下がると、一例では水202が凍結すると、可動の磁石204の移動により第1の可動の導電体214が駆動され第2の導電体216に接触させる距離である。2つの導電体214、216こうした接触は、スイッチを閉じる効果を有する。
【0037】
例えば、2つの導電体214、216は、蒸発部122又は少なくともその付近に接触するヒータ(図示されず)に接続された電気回路の一部であってもよい。2つの導電体214、216が互いに接触すると、これを用いてヒータのスイッチをオンにすることができ、そして蒸発部122上に形成されている氷を溶かす。
【0038】
別の例では、2つの導電体214、216が互いに接触するとき、装置10自体が蒸発部122上に形成されている氷を溶かすための電気抵抗ヒータを構成してもよい。例えば、2つの導電体214、216は、電力源の両側に接続され、当該電力源と共に電気回路を形成してもよい。2つの導電体214、216が互いに接触することで回路が閉じられ、これにより2つの導電体214、216に通電され、2つの導電体214、216を加熱する。
【0039】
図2に示される別の例では、装置10は、2つの導電体214、216に用いられる材料と同じでもよい導電性材料から形成される主外側ハウジング218を有する。水202及び2つの永久磁石204、206用の容器200はハウジング218内に固定される。電力源220は、一方でハウジング218に接続され、他方で第1の(可動の)導電体214に接続される。電力源220は、最終的にAC主電源から電力を得てもよい。電力源220の第1の導電体214への接続は、第1の導電体214がハウジング218内を前後に移動する際に接続が維持されるように、ハウジング218の壁部の細長いスロット222を介する。2つの導電体214、216が互いに接触することで、電力源220を備える回路が閉じられる。本例では、これによりハウジング218と第1及び第2の導電体214、216が温められる。
【0040】
直近の2つの例のいずれにおいても、第1及び第2の導電体214、216並びに任意でハウジング218が温まると、この熱が蒸発部122上の氷を溶かすために用いられる。
【0041】
これら直近2つの例において第1及び第2の導電体214、216並びに任意でハウジング218から蒸発部122に熱を伝達する際、多くの選択肢が考えられる。一例では、熱が対流によって伝達されるように装置10が単純に蒸発部122の近くに設置される。あるいは又は加えて、装置10はハウジング218と蒸発部122の間に延出する第2の熱導体構成224を有してもよい。第1の熱導体構成208と同様に、第2の熱導体構成224は、装置10から延出し、蒸発部122周りでクランプ可能な2つのクランプアームからなるクランプ部226を有してもよい。これにより、熱が対流により蒸発部122まで移動可能となり、より速くより効率的な氷解が実現されてもよい。蒸発部122に熱を移動させるためのこのような第2の熱導体構成がいつくかあってもよい。これは、蒸発部122に霜が付きやすい特定の部分がいつくかある場合、当該部分により限定的に熱を送ることができるため、特に有用と考えられる。一方で、蒸発部122をより全体的に加熱した方がよい場合も考えられる。その場合、蒸発部122に熱が熱伝導されない可能性があり、代わりに熱が対流により伝達される。
【0042】
いずれにしても、ひとたび蒸発部122上の氷が溶け、温度が上昇して0°Cを上回ると、第1の熱導体構成208により熱が蒸発部122から容器200内の「水」(現在は氷)体202に伝達される。これにより容器200内の氷202が溶かされ、体積が減少する。2つの磁石204、206間の引力により可動の磁石204が、固定された磁石206に向かって引っ張られ、2つの導電体214、216の接触が断たれる。これにより、外部ヒータであっても装置10により構成されるヒータであっても、ヒータのスイッチがオフとなる。
【0043】
このように、装置10は、本例では冷却機器の蒸発部122であるが他の例では冷却機器又は他の機器における別の部分又は構成要素であってもよい、基板上の氷の形成の検出を可能にする。このことは、電子センサやマイクロコントローラないし他のプロセッサ等を必要とすることなく実現される。また、一例において、装置10は氷を溶かすために氷を加熱するためのヒータを構成、又は、少なくともヒータのスイッチを構成し、当該ヒータは基板上での氷の形成が検出されると自動的にスイッチがオンになり氷を溶かす。
【0044】
図示される例において、第1の導電体214は球状又は少なくとも半球状であり、第2の導電体216はそれに対応して半球状である。これにより、第1及び第2の導電体214、216間に広範で大きな接触面積が実現される。あるいは、第1及び第2の導電体214、216は、筒状等の別の形状であってもよい。
【0045】
装置10は主に冷蔵庫や冷凍庫といった冷却機器100における蒸発部122上の氷の形成を検出し、除霜を行う際に使用されるものとして説明された。前述のように、装置10は、例えば、空調設備や、熱交換器ないし凍結の傾向がある他の部分を有する他の機器を含む、他の用途で用いられてもよい。
【0046】
さらに、装置10は、例えば容器200内の液体202が水であると記載された。分かるように、これは、凍ると体積が普通は減るのに対して、一定質量の水は氷ると体積が増えるという、いわゆる水の「特異な」性質の一つに依存する。凍ると、又は、凍らないとしても少なくとも温度がある一定の温度から別の温度に下がると、体積が増える物質は他にもある。このような物質には、溶解シリカ、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマスが含まれる。具体的な用途や関連温度に応じて、水の代わりに又は他に、このような物質を容器200内で用いることが可能と思われる。
【0047】
本明細書に記載される例は、本発明の実施形態の説明を目的とした例として理解されるものである。さらなる実施形態及び実施例が予想される。いずれかの例又は実施形態に関連して記載される特徴事項は、単独で使用されてもよいし、他の特徴事項と組み合わせて使用されてもよい。加えて、いずれかの例又は実施形態に関連して記載される特徴事項は、他の例又は実施形態の1つ以上の特徴事項と組み合わせて用いられてもよく、又、他の例又は実施形態と組み合わせて用いられてもよい。さらにまた、本明細書で記載されない均等物及び変形例もまた、特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内で採用されてもよい。
図1
図2
【国際調査報告】