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特表2022-537902電気モータの状態を判定する方法、これに対応する電気モータ、およびファン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】電気モータの状態を判定する方法、これに対応する電気モータ、およびファン
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20220824BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H02P29/024
F04D27/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571051
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 DE2020200032
(87)【国際公開番号】W WO2020249167
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】102019208637.3
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オブスト、 ラファエル シモン
(72)【発明者】
【氏名】クルクマル、 マト マティアス
【テーマコード(参考)】
3H021
5H501
【Fターム(参考)】
3H021BA21
3H021CA01
3H021CA04
3H021EA05
3H021EA11
5H501AA08
5H501BB08
5H501DD08
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501LL01
5H501LL42
5H501LL53
(57)【要約】
ステータ(2)とこのステータ(2)に対して回転可能に取り付けられているロータ(3)とを備える電気モータの状態を判定する方法が開示される。ロータ(3)の回転動作により、電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の環境(15)に対する圧力差が電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)内側の空気空間(16)に生じる。ここで、電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の標準状態における圧力差は、ロータ(3)の実際の回転速度(n)に依存する。本方法は、空気空間(16)と電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の環境(15)との間の実際の圧力差(p)を測定するステップと、ロータ(3)の実際の回転速度(n)を測定するステップと、実際の圧力差(p)と実際の回転速度(n)とに基づいて電気モータの状態を示すパラメータ(k)を算出するステップと、パラメータ(k)を閾値と比較するステップと、パラメータ(k)と閾値との比較の結果に基づいて電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の状態を判定するステップと、を備える。さらに、本方法を実行する電気モータが開示され、電気モータは、ファンの一部であってよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(2)と前記ステータ(2)に対して回転可能に取り付けられているロータ(3)とを備える電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の状態を判定する方法において、
前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)内の空気空間(16)における前記ロータ(3)の回転動作により、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の環境(15)に対する圧力差(p)が生じ、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の標準状態における前記圧力差(p)が、前記ロータ(3)の実際の回転速度(n)に依存し、
前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)内の空気空間(16)と前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の環境(15)との間の実際の圧力差(p)を測定するステップと、
前記ロータ(3)の実際の回転速度(n)を測定するステップと、
前記実際の圧力差(p)と前記実際の回転速度(n)とに基づいて前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の状態を示すパラメータ(k)を算出するステップと、を備えることを特徴とする、判定する方法。
【請求項2】
前記パラメータ(k)が、閾値と比較され、
前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の状態が、前記パラメータ(k)と前記閾値との比較の結果に基づいて判定されることを特徴とする、請求項1に記載の判定する方法。
【請求項3】
前記パラメータ(k)が、前記実際の圧力差(p)と前記実際の回転速度(n)の二乗の商として算出されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の判定する方法。
【請求項4】
前記パラメータ(k)が、基準値に標準化され、
前記基準値が、前記電気モータの初期試運転時かつ/または前記電気モータの製造後の最終テスト時に、定められることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の判定する方法。
【請求項5】
前記実際の圧力差(p)が、絶対圧力センサ(21,27)により前記空気空間(16)に対する様々な実際の回転速度で測定される圧力値(p)に基づいて測定され、
第1測定が、前記電気モータ(1,1’’’)の静止時に行われ、
第2測定が、実際の回転速度が0でない時に行われることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の判定する方法。
【請求項6】
前記実際の圧力差(p)が、2つの絶対圧力センサを用いて測定され、
第1絶対圧力センサ(21,27)が、前記空気空間(16)の圧力にさらされ、
第2絶対圧力センサが、前記電気モータの環境(15)の圧力を示す空気圧を測定することを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の判定する方法。
【請求項7】
前記実際の圧力差(p)が、差圧センサ(22,31)を用いて測定され、
前記差圧センサ(22,31)の第1センサ面が、前記空気空間の圧力にさらされ、
前記差圧センサ(22)の第2センサ面が、前記電気モータ(1’,1’’,1’’’)の前記環境(15)の圧力にさらされることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の判定する方法。
【請求項8】
前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の前記判定された状態が、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の汚染および/または漏洩を表すことを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の判定する方法。
【請求項9】
測定期間における前記実際の圧力差を測定する際、複数の圧力差が測定され、前記実際の圧力差が、前記複数の圧力差を平均化することにより算出されることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の判定する方法。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の方法を実行するための電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)において、
ステータ(2)と前記ステータ(2)に対して回転可能に取り付けられるロータ(3)と前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)内に形成される空気空間(16)とを備え、
前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の標準状態における前記ロータ(3)が、その回転動作により、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の環境(15)に対する前記空気空間(16)の圧力差を生じさせ、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)は、圧力センサシステムと回転速度測定システムと評価ユニット(29)とを備え、
前記圧力センサシステムが、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の環境(15)と前記空気空間(16)との間の実際の圧力差を測定するように構成され、
前記回転速度測定システムが、前記ロータ(3)の実際の回転速度(n)を測定するように構成され、
前記評価ユニット(29)が、前記実際の圧力差と前記実際の回転速度とに基づいて前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)の状態を判定するように構成されていることを特徴とする、電気モータ。
【請求項11】
前記ロータ(3)と接続されている冷却ホイール(11)を特徴とし、前記冷却ホイール(11)が、前記空気空間(16)の前記圧力差を生じさせることを特徴とする、請求項10に記載の電気モータ。
【請求項12】
ステータロータリブおよび/またはラビリンス間隙を有する空気流出口(13)を特徴とし、
前記空気流出口(13)の汚染の度合が、前記空気空間(16)の実際の圧力差に影響を与えることを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の電気モータ。
【請求項13】
前記圧力センサシステムが、回転速度依存算出ユニットを有する絶対圧力センサ(21,27)、2つの絶対圧力センサ、または、差圧センサ(22,31)により構成されていることを特徴とする、請求項10~請求項12のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項14】
前記空気空間(16)が、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)内または前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)上に形成されている電子部品ハウジング(5)に形成され、
前記電子部品ハウジング(5)が、前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)のステータブッシング(4)上に形成されていることを特徴とする、請求項10~請求項13のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項15】
前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)が、ECモータ(電子整流式モータ)および/または外部ロータモータであることを特徴とする、請求項10~請求項14のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項16】
前記評価ユニット(29)によって得られた状態情報を、管理ユニットに伝送するように構成される通信ユニットを備えていることを特徴とする、請求項10~請求項15のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項17】
メモリ(30)を特徴とし、前記評価ユニット(29)によって得られた状態情報および/またはパラメータおよび/またはそれから導出されるさらなる変数が、前記メモリ(30)に格納されることを特徴とする、請求項10~請求項16のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項18】
前記電気モータ(1,1’,1’’,1’’’)のロータ(3)が、前記ファンのインペラと接続されていることを特徴とする、請求項10~請求項17のいずれか1項に記載の電気モータを備える、ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとこのステータに対して回転可能に取り付けられているロータとを備える電気モータの状態を判定する方法に関する。
また、本発明は、これに対応する電気モータおよびファンに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータの動作挙動とその期待寿命は、多くの要因に依存する。
1つの重要な要因は、電気モータ内、電気モータの部品上、および/または、その表面上に生じる温度である。
こうして、温度は、ロータの軸受の期待寿命に直接影響する。
軸受の耐用寿命は、軸受グリースの残留潤滑特性に大きく依存する。
軸受温度が10ケルビン上昇すると、軸受寿命が半減してしまうのは、温度が上昇し、それに伴い軸受グリースの粘度が低下すると、潤滑剤は、より簡単に軸受から流出可能となることによる。
また、電子部品も、過昇温の影響を受けることがある。
よって、電気モータにおいては、電気モータの十分な冷却を確保することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2018 211 838 A1
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2019 201 409 A1
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2019 201 412 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの場合、十分な冷却には、ステータに対するロータの回転動作により生じる通気効果により、十分な空気搬送となることが重要である。
粒子、例えば、粉塵は、不純物が高い割合で存在する動作環境、例えば、農業環境において、電気モータ内に堆積することがある。
これらにより、通気効果が低下するか、通気効果が完全に停止状態となる。
また、自然対流に起因する、特に、ステータの冷却フィンの冷却挙動も、悪影響を受ける。
このように、電気モータの冷却が損なわれることがあると、電気モータの早期故障が危惧される。
【0005】
電気モータの早期故障につながる可能性がある別の例として、漏洩がある。
電子部品が電気モータ内に配置されている場合、電子部品は、電気モータの周辺環境の影響に対して十分に封止され、例えば、水分浸透による腐食や短絡を防止すべきである。
エンドカバーの損傷、カバーのネジ接合が不十分であること、または、それ以外の漏洩部位を原因として、電子部品ハウジングに必要な封止性が失われてしまっている場合、水分浸透は、電子部品ハウジングに配置されている電子部品を破壊し、電気モータを破壊する場合がある。
また、この場合、通気効果も悪影響を受けるのは、空気搬送が、定められている経路をとらなくなるからである。
【0006】
上記例のいずれも、周知の方法を用いては、信頼性高く検出することができない。
しかし、信頼性高い検出は、予防措置、例えば、電気モータのメンテナンス、または、クリーニングなどを開始できるようにするために、望ましい。
また、この状態情報は、電気モータの期待寿命の予測を改善することができる。
【0007】
インペラに付着した汚れによる、ファンのアンバランスを検出するための方法が、特許文献1から知られている。
このアンバランスから、全体として、電気モータの汚染に関する一定の結論を引き出すことができる。
しかし、これら方法は、付着が実際にアンバランスの要因となった場合にのみ、用いることができるものである。
顕著なアンバランスを生じさせず、ロータの通気効果を妨げない汚染は、検出不可能である。
アンバランスが発生しても、電気モータの実際の汚染との相関関係は、経験値に基づいて、概略的にのみにしか定めることができない。
これら方法は、漏洩を検出するように構成されていない。
【0008】
したがって、本発明は、電気モータの状態を信頼性高く判定することが、わずかな労力で可能な、冒頭部で示したタイプの方法、電気モータ、および、ファンを構成し、さらに発展させるという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、請求項1の特徴により解決される。
これによると、本方法は、電気モータの環境に対する圧力差が、電気モータ内の空気空間におけるロータの回転動作により生じ、電気モータの標準状態における圧力差が、ロータの実際の回転速度に依存する。
本方法は、空気空間と電気モータの環境との間の実際の圧力差を測定するステップと、
ロータの実際の回転速度を測定するステップと、実際の圧力差と、実際の回転速度とに基づいて電気モータの状態を示すパラメータを算出するステップとを備える。
【0010】
電気モータに関して、上記課題は、請求項10の特徴により解決される。
これによると、本電気モータは、ステータ、このステータに対して回転可能に取り付けられているロータと、電気モータの内側に形成されている空気空間と、を備え、ロータが、電気モータの標準状態における回転動作により、電気モータの環境に対する空気空間の差圧を生じさせ、電気モータは、圧力センサシステムと回転速度測定システムと評価ユニットとをさらに備え、圧力センサシステムが、電気モータの環境と空気空間との間の実際の圧力差を測定するように構成され、回転速度測定システムが、ロータの実際の回転速度を測定するように構成され、評価ユニットが、実際の圧力差と実際の回転速度とに基づいて、電気モータの状態を判定するように構成されている。
【0011】
ファンに関して、上記課題は、請求項18の特徴により解決される。
これによると、本ファンは、本発明に係る電気モータと、電気モータのロータと接続されているインペラと、を備える。
【0012】
本発明によると、まず、ロータの回転動作により生じる通気効果により、電気モータの冷却を助長する空気搬送となるだけではないことが認められた。
むしろ、通気効果は、通常の場合、電気モータ内の様々な領域において、空気圧に影響を与えている。
その結果、少なくとも電気モータ内の領域(以下、空気空間とも称される)において、通気効果の程度を示す、電気モータの環境に対する圧力差が生成される。
この差圧から、電気モータの状態に関する結論を引き出すことができる。
【0013】
本発明によると、圧力センサシステムは、電気モータの環境に対する、電気モータ内の空気空間の実際の圧力差を測定するために用いられる。
ここで、この空気空間は、電気モータのロータの回転動作により上記圧力差が生じる、電気モータ内の領域である。
この圧力差は、標準状態におけるモータの実際の回転速度に依存し、標準状態は、新品で清浄な電気モータの状態であってよい。
したがって、実際の回転速度を測定すると、この場合には、実際の圧力差が測定されたことになる。
測定された実際の圧力差と測定された実際の回転速度とに基づいて、電気モータの状態を示すパラメータを算出する。
このパラメータは、例えば、電気モータの状態が標準状態から「どの程度乖離して」いるか、または、電気モータにどの程度の不正空気が吸引されているか、を示してよい。
このようにして、さらなる労力をほぼ要さずに状態を判定することを可能にする、方法および電気モータが得られる。
【0014】
空気空間の圧力差は、実際の回転速度だけでなく、エンジンの設計および空気空間の位置にも依存する。
例えば、空気空間は、通気効果により空気が流出する、電気モータ内の領域であってよい。
この場合、この空気空間には負圧が生じる。
その一方、空気空間は、通気効果が空気を押し入れる、電気モータ内の位置に形成されてもよい。
この場合、この空気空間には負圧が生じる。
これらの構成例は、圧力差が十分に大きく、合理的な労力により測定可能である限り、本発明に係る特徴に関連して用いられてよい。
【0015】
圧力差が電気モータの環境に対して測定されるという、「電気モータの環境」の用語は、電気モータによる空気圧または電気モータが動作するシステム(例えば、ファン)により、空気圧に関して、最も好ましい場合、影響を受けないか、せいぜいわずかに影響を受けるのみである、電気モータの外側領域を、一般に意味すると理解されるべきである。
よって、この「環境」は、冷却ホイールの影響を受ける領域、または、電気モータの空気流出口の直下領域であるべきではない。
その一方、環境の測定空気圧も、圧力差を測定する際の代表値を構成できるように、この領域は、電気モータから「離れすぎ」であるべきではない。
したがって、この領域は、電気モータからの距離が、好ましくは、100メートル以下、特に好ましくは、50メートル以下、最も好ましくは、10メートル以下であるべきである。
電気モータがファンの一部であり、このファンも、空気を通過させることにより、電気モータ内側の空気圧に影響を与える場合、この定義には例外が設けられてよい。
この場合、「電気モータの環境」とは、電気モータの直近であってよく、言い換えれば、電気モータの外面からの距離が50cm未満、好ましくは、20cm未満、さらに好ましくは、10cm未満であってよい。
このファンのインペラは、環境圧力、または、電気モータ内の動作空間の圧力に影響を与える場合があるため、インペラの影響を算出してもよい。
このために、例えば、特許文献2または特許文献3に記載されているデジタルツインのような、モデルのファンを用いてよい。
【0016】
原則的に、本発明に係る方法は、幅広く様々な状態を判定するために用いることができる。
重要な点は、判定される状態が、電気モータ内側の圧力比に影響を与え、電気モータ内の空気空間の圧力差を生じさせることである。
特に、状態が電気モータ内の通気効果に影響を与える場合が、一例として挙げられる。
判定される状態は、漏洩が空気空間の圧力に影響を与える場合、電気モータの通常の封止位置における漏洩を示してよい。
別の実施形態において、判定される状態は、電気モータ内の流路に対する影響を示してよい。
これは、汚染、例えば、粉塵、または、他の付着した汚れによって生じる場合がある。
その一方、そのような影響を構成するものとして、着氷や、空気流入口における汚染(例えば、吸引された落葉)も考えられる。
【0017】
電気モータの状態に関する十分な情報をパラメータからすでに読み取ることができる。
このパラメータは、例えば、パラメータの2つの考えられる記載を挙げると、電気モータが「7%汚染されている」ことや、「90%清浄である」ことを示してよい。
このパラメータは、上位のシステムに出力されてよく、例えば、熱モデルにおける汚染レベルとして用いられてよい。
その一方、さらなる構成において、パラメータは、電気モータの状態を、いくつかの種類の状態カテゴリー、例えば、いくつかの考えられる状態カテゴリーを挙げると、「標準状態」、「軽度汚染」、「重度汚染」、または、「漏洩」に分類するために用いられてもよい。
このさらなる実施形態において、パラメータは、閾値と比較され、状態カテゴリー、または、一般に、電気モータの状態は、パラメータと閾値との比較の結果に基づいて判定される。
複数の状態を検出し、互いに区別することができるように、複数の閾値を用いてもよい。
【0018】
閾値、および、それとの比較は、様々な構成で実装されてよい。
本質的に、構成は、どの状態を判定するか、そして、どのようにパラメータを算出するかに従う。
例えば、パラメータは、電気モータの汚染の度合を示し、閾値は、どの圧力差以下ならば電気モータが「標準状態」にあるとみなされ、どの圧力差を超えれば電気モータが「汚染」または「重度汚染」とみなされるかを示す。
別の実施形態において、パラメータは、試運転時、または、電気モータの製造後の最終テスト時に定められた、初期パラメータからの「距離」を示してよい。
この場合、閾値は、「標準状態」からどの程度の距離を許容範囲と考えてよく、どの程度の距離において対策を実行すべきかを示してよい。
望ましくない漏洩を状態として判定する場合、パラメータの回転速度の依存性を評価してよい。
回転速度の変化時にパラメータが変化しないか、または、微々たる変化のみである場合、言い換えれば、パラメータの変化が、様々な回転速度において閾値未満である場合、「漏洩」状態であると結論付けてよい。
【0019】
閾値は、一定で、予め定義された値として設けられてよい。
その一方、さらなる形態において、閾値は、さらなる構成条件に応じて調整される。
例えば、電気モータの設置位置は、電気モータの冷却に影響を与えるため、閾値調整に用いられてよい。
例えば、電気モータの負荷、または、一般的に言うと、動作点も、電気モータ内の温度に影響を与える。
電気モータに低い負荷トルクしかかからない場合、発生する廃熱は、少なくなることから、電気モータが比較的汚染されていても、まだ十分に放散可能である。
電気モータに比較的大きな負荷トルクがかかる場合、電気モータのわずかな汚染でさえ、電気モータの熱過負荷に至ることがある。
したがって、閾値を調整するために、電気モータの動作点を用いてよい。
電気モータの熱モデルを、この閾値調整に用いてよい。
一般に、閾値調整は、特許文献2または特許文献3に記載されているような、デジタルツインを用いて行われてよい。
【0020】
パラメータは、様々な構成で実装されてよい。
回転速度に対する圧力差の依存性が用いられるため、パラメータは、実際の圧力差および実際の回転速度に対する依存性を有することが重要である。
この依存性が具体的にどのようなものであるかは、本発明に係る方法にとって決定的ではない。
線形相関や、多項式相関または指数相関、異なる相関の商または組み合わせが、好適なパラメータであってよい。
実際の圧力差と実際の回転速度に加えて、他の変数、例えば、電気モータの動作中の早い時点に測定された圧力差や、電気モータの圧力特性曲線を、パラメータに用いてよい。
電気モータを、テスト回転速度、例えば、毎秒1000回転で動作させ、その際に、パラメータを、実際の圧力差に略換算することも考えられる。
特に好ましい実施形態において、パラメータは、実際の圧力差と、実際の回転速度の二乗の商として算出される。
【0021】
さらなる構成において、パラメータは、基準値に標準化されてよい。
このようにして、パラメータを、所定の範囲、例えば、0~1、または、0%~100%の範囲にあるように作成することができる。
基準値は、固定された数値であってよい。
その一方、基準値は、電気モータの回転速度に対する依存性を有することも考えられ、その場合、基準値およびパラメータは、回転速度に対する同一の依存性を有することが適切である。
基準値は、様々な方法で得ることができる。
このようにして、同一のタイプの新品の電気モータを、テストベンチで測定してよく、回転速度の依存基準値は、圧力差をそれぞれ回転速度とともに記録することで、作成することができる。
基準値が単一の数値である場合、基準値は、特定の回転速度、例えば、電気モータの定格回転速度における圧力差を測定することで、形成されてよい。
【0022】
基準値の使用において、基準値は、電気モータの初期試運転時、かつ/または、電気モータが製造された後の最終テスト時に、定められ、この電気モータは、本発明に係る方法が実施される電気モータである。
この構成は、同一のタイプの電気モータの製造ばらつきが、基準値に影響を与えないという有利な点を有する。
多くの場合、この構成は、さらなる労力を全く必要としないか、さらなる労力をわずかに必要とするのみであるのは、多数の電気モータが、目標挙動の準拠のために、例えば、起動挙動、耐振性、釣り合い良さ、または、エネルギー吸収性の準拠のために、製造後および/または初期試運転時に検査されるからである。
【0023】
原則的に、本発明に係る方法にとって、どのようにして実際の圧力差が測定されるかは、関連性がない。
電気モータ内の空気空間と電気モータの環境との間の圧力差を特定できることが、本質的である。
空気空間の内側を示す圧力値と電気モータの環境を示す圧力値とを測定し、互いに関連付けてよい。
その一方、実際の圧力差を、差圧センサを用いて直接的に測定することも考えられる。
一般に、圧力値は、空気圧のことを指す。
【0024】
空気空間の空気圧を測定する場合、これは、空気空間内に圧力センサを配置することにより行われてよい。
特に、空気空間が電子部品ハウジングにより形成され、電子部品が電子部品ハウジングに設けられている場合、圧力センサは、電子部品に一体化されてよい。
その一方、圧力ラインが、空気空間を測定空間と接続することにより、略同一の空気圧が、空気空間と測定空間に生じることも考えられる。
その場合、実際の圧力の測定は、測定室で行われる。
この実施形態は、圧力センサを電気モータの外部に配置することにより、既存の電気モータを、本発明に係る方法用に、簡単にレトロフィットすることもできるという有利な点を有する。
【0025】
特に単純な実施形態において、環境空気圧が評価される。
これは、環境空気圧を、例えば、初期セットアップ時に測定することにより、または、空気圧値を、セットアップ位置の様々な時点の様々な空気圧の平均として、算出することにより行われてよい。
その一方、環境空気圧は、空気空間の空気圧の測定時、または、それに近い時間に測定される。
【0026】
実際の圧力差を測定する実施形態において、1つの絶対圧力センサを用いて、電気モータの様々な回転速度における圧力値を検出し、これら圧力値は、空気空間内の空気圧を示すものである。
この実施形態において、圧力センサシステムは、絶対圧力センサと回転速度依存算出ユニットとにより構成される。
この実施形態は、電気モータの動的動作において、つまり、電気モータが、時間窓内、例えば、数秒内、数分内、15分内、または、1時間内において、少なくとも2つの、明らかに相異なる回転速度で、例えば、静止および毎分1,000回転、または、毎分100回転および毎分2,000回転で、動作される、適用例において有用である。
この場合、2つの効果が得られる。
第1に、環境空気圧は、通常、緩やかに変化するため、ある期間における環境空気圧の測定は、実際の環境空気圧にとって十分に正確である。
第2に、実際の圧力差が回転速度に依存するため、空気空間の空気圧は、回転速度が低くなればなるほど、環境空気圧に近似する。
したがって、第1測定は、電気モータの静止時(つまり、電気モータの回転速度が0または少なくとも略0の時)に行われ、第2測定は、実際の回転速度が0でない時に行われ、第2測定は、第1測定後に行われるべきであるが、必ずしもそうでなくてもよい。
ここでは、第1測定の測定値は、環境空気圧と等しいとされてよく、このようにして、第1測定の測定値と第2測定の測定値を比較することにより、実際の圧力差を測定してよい。
第2測定に関して、回転速度は、測定可能な圧力差を得るために十分に高い必要がある。
【0027】
第1測定と第2測定は、3時間以下、好ましくは、1時間以下、最も好ましくは、30分以下、離間しているべきである。
第1測定と第2測定との間の時間間隔の選択は、電気モータの適用例に応じて、行われてよい。
例えば、大きな閉鎖空間において電気モータが動作されている場合、環境空気圧が受ける影響は、小さな変化のみである可能性が高く、第1測定と第2測定との間の時間間隔は、大きく選択されてよい。
環境空気圧がドア、窓、もしくは、エアロックを開放すること、温度を大きく変化させること、または、他の作用による影響を受ける領域において電気モータが動作されている場合、より小さい時間間隔が推奨される。
この場合、30秒未満、例えば、5秒~20秒の時間間隔が好適であってよい。
【0028】
実際の圧力差を測定する別の実施形態において、2つの絶対圧力センサが用いられる。
第1絶対圧力センサは、空気空間の圧力にさらされ、第2絶対圧力センサは、電気モータの環境の圧力を示す空気圧にさらされる。
このようにして、第1絶対圧力センサの測定値と第2絶対圧力センサの測定値とを引き算することにより、実際の圧力差を構成することができる。
したがって、第1絶対圧力センサおよび第2絶対圧力センサは、圧力センサシステムを構成している。
【0029】
実際の圧力差を測定する別の実施形態において、差圧センサが、圧力センサシステムとして用いられる。
この場合、差圧センサの第1センサ面は、空気空間内において主要な空気圧に適用され、差圧センサの第2センサ面は、電気モータの近傍において主要な空気圧に適用される。
好適な差圧センサは、周知である。
この構成は、実際の圧力差が、測定値として直接的に取得可能であり、通常、実際の圧力差を求めるための算出ステップを必要としないという有利な点を有する。
【0030】
実際の圧力差、および/または、算出されたパラメータは、1つの時点で決定されてよく、電気モータの状態に関する結論を引き出し、任意の対策を開始するために用いられてよい。
その一方、誤判断や不正確な測定を回避するために、いくつかの実際の圧力差、および/または、いくつかのパラメータを求めること、そして、電気モータの状態を、平均化された実際の圧力差、および/または、平均化されたパラメータに基づいて判断することも考えられる。
【0031】
本発明に係る電気モータは、ステータと、このステータに対して回転可能に取り付けられているロータと、電気モータ内に形成されている空気空間と、を含む。
ロータは、その回転動作によって、電気モータの周辺環境に対する電気モータ内の空気空間の圧力差を生じさせる。
特に、圧力差は、電気モータが標準状態にある時に構成される。
標準状態は、例えば、実際に存在するものであってよく、初期試運転時に存在していたものであってもよい。
本発明に係る電気モータは、圧力センサシステムと回転速度測定システムと評価ユニットとをさらに備え、圧力センサシステムは、電気モータの環境と空気空間との間の実際の圧力差を測定するように構成されている。
回転速度測定システムは、ロータの実際の回転速度を測定するように構成され、実際の圧力差と実際の回転速度は、同時に、または、少なくとも迅速に(例えば、0.1秒以内、または、数秒以内)測定される。
評価ユニットは、実際の圧力差と実際の回転速度とに基づいて、電気モータの状態を判定するように構成されている。
本発明に係る電気モータは、本発明に係る方法を実行するように構成されている。
【0032】
本発明に係る方法および本発明に係る電気モータにとって、どのようにして実際の圧力差を生じさせるかは、関連性がない。
磁石またはロータ巻線パッケージを有するモータタイプに応じて、回転するロータハウジングにより生じる空気搬送は、測定可能な圧力差を生じさせるのに十分であってよい。
その一方、実際の圧力差は、ロータと接続されている冷却ホイールにより生じ、ロータが回転することで、冷却ホイールが(通常、同一の回転速度で)回転する。
そのような冷却ホイールは、空気を、電気モータの環境から電気モータのステータおよび/またはロータを通して搬送することにより、電気モータを冷却する。
比較的大量の空気が、そのような冷却ホイールを通して搬送され、容易に測定可能な実際の圧力差が生じる。
【0033】
代替的または追加的に、空気空間の実際の圧力差は、電気モータの空気流出口による影響を受けてよく、空気流出口は、ステータロータリブおよび/またはラビリンス間隙を用いて構成されてよい。
通気効果により搬送される空気が、空気流出口における電気モータから自由に流出できればできるほど、電気モータから熱をよりよく奪うことができる。
この空気搬送が、例えば、汚染度の高まりにより、阻害されればされるほど、冷却は、さらに阻害される。
この空気流出口、または、空気が電気モータから自由に流出する度合も、空気空間の実際の圧力差に影響を与える。
【0034】
空気空間は、電気モータの幅広く様々な位置に形成されてよい。
電気モータの通気効果により、空気空間に十分な圧力差が生じる限り、この空気空間を状態判定に用いてよい。
その一方、空気空間は、電気モータ内または電気モータ上に形成されている電子部品ハウジングに形成されている。
電子部品ハウジングは、好ましくは、電気モータのステータブッシング上に形成されている。
【0035】
電気モータを、様々な方法で拡張してよく、かつ/または、様々な技術を用いてよい。
重要な点は、ロータがステータに対して回転するように取り付けられ、ロータの動作により十分な通気効果が生じ、空気空間に圧力差が生じることである。
その一方、本発明に係る電気モータは、電子整流式モータ(ECモータ)および/または外部ロータモータである。
【0036】
取得した状態情報を用いるために、電気モータは、評価ユニットを用いて取得された状態情報を、管理ユニットに伝送するように構成されている通信ユニットを有してよい。
通信ユニットは、様々な方法で構成されてよく、幅広く様々な通信標準および技術を、データ伝送に用いてよい。
デジタル伝送技術、そして、アナログ伝送技術を用いてもよい。
伝送は、有線または無線であってよい。
並列伝送インタフェースまたは直列伝送インタフェースを用いてよい。
伝送は、パケット化されてよく、直接接続であってもよい。
一例として、以下に限定されることなく、Bluetooth、Bluetooth LE(Low Energy)、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)、Ethernet、RS485、Modbus、Profibus、CANbus、または、USB(Universal Serial Bus)の使用が参照される。
【0037】
管理ユニットも、様々な方法で構成されてよく、1つまたは複数の電気モータとともにシステムを構成する。
管理ユニットは、局所的(例えば、電気モータから50メートル以内)、または、遠隔的(例えば、電気モータから数キロメートル離間)に位置してよい。
管理ユニットは、所定の状態が達成された場合、警告メッセージを発行するように構成されてよく、例えば、電気モータのメンテナンスまたはクリーニングが開始される。
好ましくは、管理ユニットは、インダストリー4.0環境の一部である。
【0038】
メモリを電気モータに配置してよく、メモリは、取得された状態情報、および/または、パラメータ、および/または、それから導出されるさらなる変数を格納するように構成されている。
このメモリに格納する際、取得されたデータを各状態判定とともに格納してよい。
このようにして、状態判定を、定期的に、例えば、1時間毎に、12時間毎に、1日毎に、1週間毎に、または、1カ月毎にトリガしてよい。
間隔は、予想される状態変化の速度に応じてよい。
メモリに格納される情報を用いて、時間曲線を作成することにより、状態変化の性質に関する結論を引き出すことができる。
【0039】
本発明に係る電気モータは、ファンの一部であってよい。
この場合、ファンのインペラは、電気モータのロータと接続されている。
【0040】
本発明の特徴を具現化し、さらに発展させる様々な形態が存在する。
この目的のために、並行請求項を引用する請求項と、図面に基づく本発明の実施形態の説明とが、参照される。
本発明の実施形態の説明に関連して、本発明の実施形態およびさらなる構成についても、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、電子部品ハウジングに配置された絶対圧力センサを有する、本発明の第1実施形態に係る外部ロータ構成の電気モータの断面図。
図2図2は、空気搬送を示す矢印が付加された、図1の断面図。
図3図3は、電気モータの様々な状態に関する、回転速度の関数としての圧力差の図。
図4図4は、第1実施形態の差圧センサを有する、本発明の第2実施形態に係る外部ロータ構成の電気モータの断面図。
図5図5は、第2実施形態の差圧センサを有する、本発明の第3実施形態に係る外部ロータ構成の電気モータの断面図。
図6図6は、圧力ラインを介して電気モータ外側に配置された圧力センサを有する、本発明の第4実施形態に係る外部ロータ構成の電気モータの断面図を示す。
図7図7は、外部差圧センサを有する、図6の実施形態の変形の断面図。
図8図8は、本発明に係る方法の実施形態を実施するための構成の基本的な機能要素を示すブロック図。
図9図9は、電気モータの状態を特徴付けるパラメータの時間曲線の一例を示す図。
図10図10は、パラメータの時間曲線の別の一例の図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の第1実施形態に係る、外部ロータ構成の電気モータの断面図を示す。
明瞭化のため、本発明を理解するうえで重要ではない、いくつかの部材、例えば、ステータおよびロータの巻線パッケージ、そして、ほとんどのモータ電子部品については、図示を省略している。
電気モータ1は、スタータ2と、ロータ3とを備え、ステータ2およびロータ3は、上述のように、概略的にのみ示されている。
ステータ2は、ステータブッシング4の周りに配置されている。
モータ電子部品6が中に配置されている(図1では概略的のみ示されている)電子部品ハウジング5は、ステータブッシング4上に形成され、エンドカバー7により閉止されている。
ロータ3は、2つの軸受9,軸受10を用いて、モータ軸8を中心に回転するように取り付けられている。
冷却ホイール11は、ロータ3と接続され、電気モータ1を通して空気を搬送する。
モータハウジング12は、電気モータを包囲し、ラビリンス間隙に挿入され、これにより、ラビリンス間隙が、ステータブッシング4に形成される。
【0043】
図2は、ロータ3の回転時にどのように空気が移動するかを示す。
冷却ホイール11は、電気モータ1を通して空気を搬送し、この空気は、モータ軸8に関して回転対称である領域13において、モータハウジング12から流出する。
とりわけ、冷却ホイール11の回転動作により、空気が、電子部品ハウジングから、ステータブッシングに形成されている軸受チューブ14を通して吸引され、領域13に搬送される。
エンドカバー7が、電子部品ハウジング5を環境15から封止しているため、圧力差が電子部品ハウジング5に生じ、この場合は、負圧である。
この負圧は、ロータの回転速度nに依存する。
回転速度が高ければ高いほど、負圧は、より大きくなる。
この負圧は、いかに妨げられずに、通気効果により、空気が電気モータ1内を移動できるか、そして、いかに妨げられずに、空気が電気モータ1から領域13において流出できるか、に依存する。
よって、空気空間16は、電子部品ハウジング5に形成されている。
【0044】
図3は、回転速度の関数としての空気空間16の負圧に関する曲線を示す。
最上部の曲線17(実線)は、清浄なエンジンの場合の圧力曲線を示している。
これは、この場合、電気モータ内において、通気効果が、汚れの影響を全く受けていないか、ほぼ受けていないことを意味している。
この状態について、本明細書においては「標準状態」とも称される。
この曲線は、例えば、電気モータの初期コミッショニング時、または、電気モータの最終テスト時に測定されてよい。
第2曲線18(ダッシュ線)は、汚染されたエンジンを示し、第3曲線19(ダッシュ線)は、重度に汚染されたエンジンを示している。
汚れによる通気効果への影響が大きければ大きいほど、回転速度の関数としての圧力差が、より小さくなることがわかる。
曲線20(点線)は、エンドカバー7が、空気空間を十分に被覆していない、別の状態を示している。
その結果、通気効果により生じた負圧が、即座に、流入してきた空気により補償されていると考えられる。
実際、回転速度を上昇させても、負圧を形成できないことがわかる。
これにより、エンジンが「不正空気」を吸引していると結論付けることができる。
【0045】
空気空間16の圧力を測定するために、絶対圧力センサ21が、空気空間16に配置され、空気空間の空気圧を測定する。
図1の実施形態における絶対圧力センサ21は、モータ電子部品6の回路基板上に設けられている。
空気空間16と環境15との間の実際の圧力差は、環境15の空気圧が、空気空間16に、時点tにおける、回転速度n=0回転/分の状態で存在するという事実を用いて、検出される。
測定時点tにおける、回転速度n≠0回転/分の状態では、同一の絶対圧力センサ21が、電子部品ハウジング内の圧力を測定する。
このようにして、実際の圧力差を、時点tおよび時点tの、2つの測定圧力値から算出することができる。
【0046】
図4は、本発明の第2実施形態に係る電気モータ1’を示す。
この実施形態は、大部分において、第1実施形態と同様である一方で、ここでは、絶対圧力センサ21の代わりに、差圧センサ22が用いられている。
差圧センサ22は、第1接続部23と第2接続部24とを含む。
第1接続部23は、そこに入力された圧力を第1センサ面にガイドし、第2接続部24は、そこに入力された圧力を第2センサ面にガイドする。
差圧センサ22は、第1センサ面と第1センサ面との間の圧力差、したがって、第1接続部23に入力された圧力と第2接続部24に入力された圧力との間の圧力差を測定する。
この実施形態における第1接続部23は、空気空間16の空気圧により加圧される。
第2接続部24は、圧力ライン25およびフィードスルー26を介して環境15の空気圧により、加圧される。
このようにして、差圧センサ22は、空気空間16と環境15との間の実際の圧力差を、回転速度を変化させる必要なく、直接的に測定することができる。
ただし、この場合、回転速度は、0回転/分であってはならない。
【0047】
図5は、差圧センサ22も用いられる、本発明の第3実施形態に係る電気モータ1’’を示す。
ここでも、差圧センサ22の第1接続部23は、空気空間16の空気圧に適用される。
第2接続部24は、ステータブッシング4に対向する、差圧センサ22の側面に設けられ、ステータブッシング4を通してロータ空間と接触している。
また、この実施形態においても、差圧センサ22は、冷却ホイール11および/または領域13の汚染に依存する実際の圧力差を測定できる。
【0048】
図6は、本発明の第4実施形態に係る電気モータ1’’’を示す。
この実施形態は、他の実施形態と、大きく類似している。
その一方、ここでは、空気空間16内の絶対圧力センサ21,差圧センサ22の代わりに、「外部」圧力センサ27が用いられており、外部圧力センサ27は、フィードスルー26を通して、圧力ライン28を介して、空気空間16と接続されている。
空気空間16内の空気圧は、圧力ライン28を通した外部圧力センサ27における測定空間の空気圧と略等しいため、空気空間16を示す圧力値を外部圧力センサ27により測定することができる。
外部圧力センサ27により測定された圧力値は、その後、評価ユニット29に供給される。
【0049】
図7は、図6示される、本発明の第4実施形態に係る電気モータ1’’’の変形を示す。
ここで用いられている図4と同様の圧力センサシステムは、外部差圧センサ31により構成されている。
空気空間16の圧力は、外部差圧センサ31の第1接続部23に圧力ライン28を介して供給され、環境15の空気圧は、第2接続部24に適用される。
実際の圧力差の取得については、図4に示されている記載に対応している。
【0050】
図8は、本発明に係る方法の実施形態を実施するための構成の基本的な機能を含む、ブロック図を示す。
評価ユニット29は、絶対圧力センサ21,差圧センサ22,外部圧力センサ27,外部差圧センサ31、または、複数の圧力センサからの測定値を検出し、それらを、エンジン回転速度nと関連付ける。
したがって、評価ユニット29は、データ処理(通信)および評価(分析)の役割を果たしてよい。
メモリ30は、評価ユニット29と接続されており、実際の圧力差、回転速度、パラメータ、および/または、特定の状態を格納するために用いられてよい。
現在のセンサデータを分析する際、評価ユニット29は、メモリ30に格納されている値を参照してよい。
【0051】
評価ユニット29は、ECモータの組み込みマイクロプロセッサであってよいが、本発明の通信タスクおよび分析タスクは、外部の演算ユニットにより実行されてもよい。
一例として、制御装置、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)、ゲートウェイ、クラウドコンピュータなどである。
【0052】
以下の表は、負圧p(パスカル単位)とそれに関連する回転速度nに関する測定値を示す。
第1列は、測定日を含み、第4列は、パラメータkを含む。

パラメータkは、以下の表を用いて計算されたものである。
【0053】
【表1】
【0054】
パラメータのこれら値は、図9のグラフにプロットされている。
パラメータkは、エンジンの清浄度にとって重要な数字として理解されてよい。
このパラメータkの値が、小さければ小さいほど、電気モータの清浄度は、低くなり、または、その汚染度は高くなる。
【0055】
電気モータが2018年1月1日から稼働している場合において、パラメータk=0.419・10-4は、清浄なモータ、標準状態に対応する。
閾値は、これ以降は、標準状態がもはや存在しなくなる値として定義されてよい。
0.300および0.375の閾値は、例えば、0.300<k<0.375の場合、エンジンは「汚染」と分類され、k<0.300の場合、エンジンは「重度汚染」と分類される。
これは、エンジンが2018年3月1日までは「標準状態」であることを意味する。
2018年4月1日において、第1閾値は、初めて0.375を下回ることから、警告メッセージは、軽度汚染エンジンを示すものであってよい。
2018年8月1日において、第2閾値は、0.300を下回ることから、警告メッセージは、重度汚染エンジンを示すものであってよい。
【0056】
図10は、別の例を示す。
機械的損傷が2018年4月1日と2018年5月1日との間に発生したことにより、エンジンが不正空気を吸引した。
その結果、圧力差は、略0である。
この例において、「漏洩」の状態が、2018年5月1日に結論付けられる。
警告メッセージは、電気モータのメンテナンスをトリガしてよい。
【0057】
本発明に係る方法、電気モータ、および、ファンのさらなる形態に関しては、繰り返しを避けるため、本明細書の一般部分、および、添付の特許請求の範囲が参照される。
【0058】
最後に、上記実施形態は、特許請求される特徴を論じるためのみに用いられるものであって、それを実施形態に限定するものではない。
【符号の説明】
【0059】
1,1’,1’’,1’’’・・・電気モータ
2・・・ステータ
3・・・ロータ
4・・・ステータブッシング
5・・・電子部品ハウジング
6・・・モータ電子部品
7・・・エンドカバー
8・・・モータ軸
9・・・軸受
10・・・軸受
11・・・冷却ホイール
12・・・モータハウジング
13・・・領域(空気流出口)
14・・・軸受チューブ
15・・・環境
16・・・空気空間
17・・・清浄モータ曲線
18・・・汚染モータ曲線
19・・・重度汚染モータ曲線
20・・・「漏洩」モータ曲線
21・・・絶対圧力センサ
22・・・差圧センサ
23・・・第1接続部
24・・・第2接続部
25・・・圧力ライン
26・・・フィードスルー
27・・・外部圧力センサ
28・・・圧力ライン
29・・・評価ユニット
30・・・メモリ
31・・・外部差圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】