(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】階層構造を有するオムニフォビック表面ならびにそれらの製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
B32B 3/28 20060101AFI20220824BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20220824BHJP
A61L 31/08 20060101ALI20220824BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20220824BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20220824BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20220824BHJP
A61K 6/887 20200101ALI20220824BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20220824BHJP
B32B 5/16 20060101ALI20220824BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20220824BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20220824BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20220824BHJP
【FI】
B32B3/28
A61L31/04 110
A61L31/08
A61L31/12
A61L15/24 100
A61L27/16
A61K6/887
C08J7/04 A CER
C08J7/04 CET
C08J7/04 CEZ
B32B5/16
C08J7/00 302
C08J7/00 301
C12N1/20 A
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572059
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 CA2020050766
(87)【国際公開番号】W WO2020243833
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594073439
【氏名又は名称】マックマスター、ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】MCMASTER UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ソレイマニ,レイラ
(72)【発明者】
【氏名】マクラクラン,ロデリック
(72)【発明者】
【氏名】モエタケフ イマニ,サラ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユティン
(72)【発明者】
【氏名】ディダル,トヒッド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
4C089
4F006
4F073
4F100
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA90X
4B065CA44
4C081AA02
4C081AA12
4C081AB15
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4C081CE11
4C081DA03
4C081DC03
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4C089BC13
4C089BE01
4F006AA12
4F006AA15
4F006AB63
4F006AB67
4F006AB73
4F006AB76
4F006BA11
4F006BA17
4F006CA09
4F006EA01
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4F100AA05C
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4F100AK01A
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4F100AK52G
4F100AL09A
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4F100EJ85
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4F100JA03A
4F100JB05
4F100JB06C
4F100JC00
4F100JG01B
4F100JG05B
4F100JK17A
4F100YY00B
(57)【要約】
本出願は、オムニフォビック特性を提供する、ナノスケールおよびマイクロスケール構造の両方を有する階層構造材料を作製するために、それらの表面で物理的および化学的に改質される、オムニフォビック材料に関する。汚染物質をはじく可撓性フィルムを含む、階層構造を有するそのようなオムニフォビック表面の製造方法およびそれらの使用も、本出願に開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、前記ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料であって、前記材料が、マイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、前記少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む前記基材の一部分が、オムニフォビックである階層構造を形成する、材料。
【請求項2】
前記オムニフォビック分子層が、フルオロシラン、フルオロカーボン、フルオロポリマー、もしくはオルガノシラン、またはこれらの混合物を含むか、それらから本質的になるか、あるいはそれらからなる、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記オムニフォビック分子層が、フルオロシラン層または単層であり、次の式Iの1つ以上の化合物を使用して形成される、請求項1または2に記載の材料。
【化1】
(式中、
Xは、単結合であるか、またはC
1~6アルキレンであり、
nは、0~12の整数であり、
R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、加水分解性基である。)
【請求項4】
前記フルオロシランが、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル)シラン、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルトリエトキシシラン、または同様の組成のフルオロシランを含む、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
前記基材が、ポリマー、エラストマー、またはエラストマー複合体から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記基材が、収縮性ポリマー基材であり、例えば、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、および他の収縮性ポリマー、またはこれらの組み合わせおよびコポリマーからなる群から選択される材料である、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、誘電体、半導体、金属、ワックス、またはポリマー材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、コロイドシリカ、金、二酸化チタン、銀、キトサン、セルロース、アルギン酸塩、またはポリスチレンからなる群から選択される材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記基材と前記少なくとも1つのナノ粒子層との間、および/または前記少なくとも1つのナノ粒子層と前記少なくとも1つのオムニフォビック分子層との間に、接着促進層をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
前記接着促進層が、異なる反応性官能基を含む1つ以上のシランを使用して形成される、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
異なる反応性官能基を含む前記シランが、これらに限定されないが、アミノシラン、グリシドキシシラン、アルカンシラン、およびエポキシシランから選択される、請求項10に記載の材料。
【請求項12】
前記接着促進層が、次の式IIの1つ以上の化合物を使用して形成される、請求項9に記載の材料。
【化2】
(式中、
R
4、R
5およびR
6のうちの1つ以上は、OHまたは加水分解によりOHに変換される基であり、R
4、R
5およびR
6の残りのものは、C
1~6アルキルから選択され、
X
1は、リンカーであり、
R
7は、反応性官能基である。)
【請求項13】
前記接着促進層が、3-(トリメトキシシリル)プロピルアルデヒド、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、およびアミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)のうちの1つ以上を使用して形成される、請求項9に記載の材料。
【請求項14】
前記接着促進層が、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)を使用して形成される、請求項13に記載の材料。
【請求項15】
前記基材が、可撓性プラスチックフィルムを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の材料。
【請求項16】
室温で、ゴニオメーター(例えば、Future Digital ScientificによるOCA 20)、および自動注射器を使用して分注した水の液滴を使用して測定される、約145°~約160°、または約150°~約155°の水の静的接触角を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の材料。
【請求項17】
室温で、ゴニオメーター(例えば、Future Digital ScientificによるOCA 20)、およびピペットを使用して分注した全血液の液滴を使用して測定される、約130°~約160°、または約135°~約145°の全血液の静的接触角を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の材料。
【請求項18】
室温で、ゴニオメーター(例えば、Future Digital ScientificによるOCA 20)、およびピペットを使用して分注したヘキサデカンの液滴を使用して測定される、約110°~約140°、または約120°~約135°のヘキサデカンの静的接触角を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の材料。
【請求項19】
室温で、デジタル角度計(例えば、ROK)を使用して決定される、約1°~約10°、または約5°の水滑落角を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の材料。
【請求項20】
前記材料が、生物種を含む液体に対して反発性を示す、請求項1~19のいずれか一項に記載の材料。
【請求項21】
前記材料が、細菌およびバイオフィルム形成に対して反発性を示す、請求項1~19のいずれか一項に記載の材料。
【請求項22】
前記材料が、生体流体に対して反発性を示す、請求項1~19のいずれか一項に記載の材料。
【請求項23】
前記材料が、血液に対して反発性を示す、請求項1~19のいずれか一項に記載の材料。
【請求項24】
前記材料が、凝塊を減少させる、請求項1~19のいずれか一項に記載の材料。
【請求項25】
潤滑層をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項26】
前記潤滑層が、炭化水素液体、フッ素化有機液体、または過フッ素化有機液体を含む、請求項25に記載の材料。
【請求項27】
前記材料が、プラスチックラップフィルムとして使用される、請求項1~26のいずれか一項に記載の材料。
【請求項28】
階層構造を有する複数の一部分と、階層構造を有しない複数の一部分と、を含み、前記階層構造を有しない複数の一部分が、パターンで配列されている、請求項1~27のいずれか一項に記載の材料。
【請求項29】
パターンが、階層構造を有しない一部分の実質的に均等な間隔の列を含む、請求項28に記載の材料。
【請求項30】
前記階層構造を有しない一部分が、親水性である、請求項29に記載の材料。
【請求項31】
前記親水性の一部分が、前記階層構造を有する一部分においてウェルを形成し、そのようなウェルが、水性ベースのアッセイおよび生体物質に対するアッセイを実施するのに好適である、請求項30に記載の材料。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の材料を含む、デバイスまたは物品。
【請求項33】
前記材料が、前記デバイスまたは物品の表面上にある、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
前記表面の少なくとも一部分が、請求項1~31のいずれか一項に記載の材料を含む、表面を含む、デバイスまたは物品。
【請求項35】
前記材料が、前記物品またはデバイスの少なくとも一部分上にラップされる、請求項34に記載のデバイスまたは物品。
【請求項36】
前記しわが、前記材料を熱収縮させることによって形成され、熱収縮の前に、前記材料が、前記物品またはデバイスの少なくとも一部分上にラップされて、ラップ後に熱収縮が実施されて、前記物品またはデバイスと前記材料との間に密封を形成させる、請求項35に記載のデバイスまたは物品。
【請求項37】
前記デバイスまたは物品が、
-これらに限定されないが、プラスチックショッピングバッグ、シャワーカーテン、および子供の玩具(膨張式プール、およびスリップアンドスライド(slip and slides)の水用玩具など)を含む、ファウリングまたは汚染物質のために処分されるプラスチック材料、
-キーボード、マウス、公共のキオスク、ATM、サングラス、車のフロントガラス、カメラレンズ、太陽光パネル、および建築システム(ノブ/ラッチ、病院のベッドレール、窓、ハンドル)、公共のゴミ収集のハンドル、輸送物品(例えば、ポール、シート、ハンドル、ボタン、飛行機のトレイ)、食品サービスアイテム(まな板、カウンタートップ、食品保存容器、ハンドル、ドア、冷蔵庫内部、上流、下流、消費者をターゲットとしたもの)、トイレアイテム(トイレのシート、流しのハンドル)、および製造装置(例えば、表面、導管、タンク)、ならびに
-これらに限定されないが、手袋、スクラブ、およびフェイスマスクなどの保護服を含むウェアラブル物品、これらに限定されないが、遠心管、マイクロピペットチップ、およびマルチウェルプレートを含む消耗品研究装置、カニューレ、コネクタ、カテーテル、カテーテル、クランプ、スキンフック、カフ、開創器、シャント、針、毛細管、気管内管、人工呼吸器、人工呼吸器チューブ、薬物送達ビヒクル、注射器、顕微鏡スライド、プレート、フィルム、実験室作業表面、ウェル、ウェルプレート、ペトリ皿、タイル、ジャー、フラスコ、ビーカー、バイアル、試験管、チューブコネクタ、カラム、コンテナ、キュベット、ボトル、ドラム、バット、タンク、歯科用ツール、歯科用インプラント、バイオセンサ、生体電極、内視鏡、メッシュ、および創傷包帯から選択される、請求項34~36のいずれか一項に記載のデバイスまたは物品。
【請求項38】
階層構造を有する表面を有する材料を製造する方法であって、
a)表面層の酸化によって基材を活性化することと、
b)活性化した表面上に複数のナノ粒子を堆積させて、前記基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層を形成させることと、
c)前記表面をオムニフォビック分子を用いてコーティングして、少なくとも1つのオムニフォビック分子層を作製することと、
d)前記材料を処理してしわを形成させることと、を含み、
得られた表面がオムニフォビック特性を示す、方法。
【請求項39】
前記ポリマー基材を活性化した後、前記基材と前記少なくとも1つのナノ粒子層との間、および/または前記少なくとも1つのナノ粒子層と前記少なくとも1つのオムニフォビック分子層との間に、接着促進層を堆積させること、をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記基材が、前記基材の中、前記基材の上、または前記基材全体にわたりヒドロキシル基が導入されるように処理される、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記処理が、紫外線オゾンを用いるものである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記処理が、空気、酸素、二酸化炭素、またはアルゴンプラズマなどのプラズマである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記処理が、約30秒間~約10分間の時間にわたる、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記基材上のすべての前記層が、溶液ベースの技術を使用して堆積される、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記溶液ベースの技術が、好適な期間の間、適切な溶液中に沈めることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記基材が、約30分間~約5時間、または約1時間~約4時間、または約3時間、ほぼ室温にて、撹拌しながら沈められる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
各層の前記堆積後、前記基材が、洗浄され、乾燥される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記しわが、金型、レーザー加工、リソグラフィ、または他のマイクロ/ナノ製造技術を介して、前記材料に前記しわがもたらされるか、または移されるような条件下で、前記材料を加熱し、それ自体がしわ形成されている(例えば、微視的なしわを有する)金型に適用することによって形成される、請求項39~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記しわが、熱収縮によって形成される、請求項39~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記熱収縮が、約100℃~約200℃、約120℃~約160℃、または約135℃~約145℃の温度で、約1分間~約10分間、または約3分間~約7分間行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記材料を熱収縮させた後に、前記表面上に潤滑層を堆積させることをさらに含む、請求項39~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
d)の前に、対象物の周囲に可撓性プラスチックフィルムとして前記材料をラップすることをさらに含む、請求項39~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記材料が、階層構造を有する複数の一部分と、パターンで配列されている階層構造を有しない複数の一部分と、を含み、前記方法が、a)で活性化する前に、階層構造が望ましくない前記基材の前記一部分上にマスキング材料を配置することと、熱収縮d)の前に、前記マスキング材料を除去することと、をさらに含む、請求項39~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記マスキング材料が、ビニルである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記パターンが、前記基材が階層構造を有しない、スポットまたはウェルの平行な列である、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記スポットまたはウェルが、親水性である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
生体物質の、それに接触するデバイス上への接着、吸着、表面媒介性凝血塊形成、または凝塊を防止、低減、または遅延させる方法であって、
基材と、前記基材上に少なくとも1つのナノ粒子層と、前記ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を有する低接着表面を備える前記デバイスを提供することであって、前記基材がマイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、前記少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む前記基材が、オムニフォビックである階層構造を形成する、提供することと、
前記生体物質を前記低接着表面に接触させることと、を含む、方法。
【請求項58】
デバイスに接触する生体物質の、接着、吸着、表面媒介性凝血塊形成、または凝塊を防止、低減、または遅延させるためのデバイスであって、基材と、前記基材上に少なくとも1つのナノ粒子層と、前記ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を有する低接着表面を含み、前記基材がマイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、前記少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む前記基材が、オムニフォビックである階層構造を形成し、前記生体物質が前記表面からはじかれる、デバイス。
【請求項59】
カニューレ、コネクタ、カテーテル、カテーテル、クランプ、スキンフック、カフ、開創器、シャント、針、毛細管、気管内管、人工呼吸器、人工呼吸器チューブ、薬物送達ビヒクル、注射器、顕微鏡スライド、プレート、フィルム、実験室作業表面、ウェル、ウェルプレート、ペトリ皿、タイル、ジャー、フラスコ、ビーカー、バイアル、試験管、チューブコネクタ、カラム、コンテナ、キュベット、ボトル、ドラム、バット、タンク、歯科用ツール、歯科用インプラント、バイオセンサ、生体電極、内視鏡、メッシュ、創傷包帯、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項58に記載のデバイス。
【請求項60】
前記生体物質が、全血液、血漿、血清、汗、糞便、尿、唾液、涙、膣液、前立腺液、歯肉液、羊水、眼内液、脳脊髄液、精液、痰、腹水、膿、鼻咽頭液、創傷滲出液、房水、硝子体液、胆汁、耳垢、内リンパ液、外リンパ液、胃液、粘液、腹膜液、胸水、皮脂、嘔吐物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項57に記載の方法または請求項58もしくは59に記載のデバイス。
【請求項61】
基材と、前記基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、前記ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料。
【請求項62】
請求項61に記載の材料をデバイスまたは物品に適用する方法であって、前記材料を用いて前記物品またはデバイスをラップすることと、前記材料をしわ形成することと、を含む、方法。
【請求項63】
前記しわ形成が、熱収縮によるものであり、前記熱収縮が、前記材料を前記物品またはデバイスに成形または密封する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記しわ形成が、前記材料中にマイクロ構造およびナノ構造の形成を生じさせる、請求項62または63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年6月3日に出願された米国特許仮出願番号第62/856,392号からの優先権の利益を主張し、それらの内容は、参照により、それら全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、表面工学の分野に関する。特に、本出願は、階層構造を有するオムニフォビック表面、ならびにそれらの製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
水および低表面張力液体に対して高い接触角(>150°)および低い滑落角(<5°)を有する可撓性オムニフォビック表面は、様々な形態因子を有する多様な表面を有する基材上に適用され、液体汚染物質をはじくことができるため、非常に望ましい。オムニフォビック表面の液体反発性は、アンチバイオファウリング特性と言い換えることができ、医療デバイス、一般的な表面、自己洗浄表面、および食品包装(1~3)における使用に好適である。具体的には、オムニフォビック表面は、表面上の細菌汚染およびバイオフィルム形成を顕著に低減し、感染拡大のリスクを低減する。加えて、この表面は、ヒト組織と接する医療デバイスにおいて、血液接着および血栓形成を低減するために使用される(4~10)。潤滑剤注入表面(LIS)は、新たに開発されたクラスのオムニフォビック表面であり、これは、アンチバイオファウリング特性、および様々な表面張力を有する液体に対して極めて低い接着性を示す(11~15)。これにもかかわらず、LISがその反発性を維持するためには、それらの潤滑剤層は使用中もそのまま残さなければならず、フロー、洗浄、または潤滑剤の浸出の可能性がある潜在的なサイクリング(16)を伴う乾燥、開放空気、またはオペランド内の条件には適用されず、LISのオムニフォビック表面を使用することができる用途を大幅に制限する。
【0004】
液体注入表面の実際的制限を克服するために、階層的に組織化されたマイクロスケールおよびナノスケール構造を使用して、潤滑剤の使用なしで、構造(キャシー状態)内のエアポケットの閉じ込めにより(17~22)、水およびヘキサデカンの接触角がそれぞれ173.1および174.4という高いものを有する、高性能のオムニフォビック表面を開発するためのリエントラントテクスチャを作製することができる(23~27)。しかしながら、現在、階層オムニフォビック表面を開発するために使用されているいくつかの製造方法は、フォトリソグラフィ(28)、エマルジョンテンプレート(29)、エレクトロスピニング(28)、反応性イオンエッチング(26)、および電気化学的エッチング/陽極処理(30)などのプロセスに依存しており、これらは、広範囲および大量用途にて使用するためのスケールアップが困難である(31)。あるいは、レーザーアブレーション(32)およびマイクロ流体エマルジョンテンプレート(29)などの方法は、テクスチャ化されたオムニフォビック表面の製造に関与するスケーラビリティの課題を解決するために使用される。しかしながら、これらの方法に関与する物理的および化学的処理ステップは、薄いプラスチックラップのような様々な形態の多様な基材表面に、普遍的に適用できる可撓性フィルム表面の製造と適合しない(31)。
【0005】
しわ形成は、調整可能なマイクロスケールおよびナノスケールの特徴(33~35)を作製するために使用することができるボトムアップの製造プロセスであり、剛性層により改質された形状記憶ポリマー基材に歪みを適用することを含む(33、36~39)。このプロセスは、超撥水性(>163°の水接触角)(37)および撥油性(>101°のヘキサデカン接触角)(40)であり、滑落角が5°未満(37)であり得る、階層構造を有する表面を作製するために使用することができる。これらのしわ形成された表面を可撓性オムニフォビックのフィルム/ラップとして適用する際の課題は、これまでに、しわを作製するために必要な剛性層が、スパッタリング、スピンコーティング(36)、および電着(40)などの技術を使用して堆積されてきたことであり、これは、プラスチックラップとして使用可能な可撓性の薄いフィルムの製造における広範囲および大量生産には適用されない。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、プラスチックラップ材料を含む、様々な形態および可撓性の多様な基材に適用することができる、階層構造を有するオムニフォビック表面を有する収縮性ポリマー材料を開示する。階層構造は、ナノスケールおよびマイクロスケールの両方の特徴を有し、潤滑剤を使用することなく強固なオムニフォビシティを有する表面を提供し、これは、産業環境に好適なスケーラビリティのある、すべての溶液ベースの製造方法を使用して作製することができる。また、例えば、アッセイのためのツールとして有用な親水性、または二重撥水性-親水性ウェルを作製するために、階層構造におけるパターン化が導入される材料も開示される。
【0007】
要約すると、ポリマー材料は、例えば、紫外線オゾン(UVO)処理を使用して活性化され、ナノ粒子を用いて堆積されてナノスケールの特徴を提供し、次いで加熱されて、表面オムニフォビシティを提供する階層構造を形成する、しわ形成されたマイクロスケールの特徴を提供することができる。しわ形成の前に、表面はまた、フルオロシランなどのオムニフォビック分子により化学改質を受けてもよく、これは、表面エネルギーを低下させてオムニフォビシティをさらに増加させる。
【0008】
したがって、本出願は、基材と、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料を含む。
【0009】
本出願はまた、マイクロスケールのしわ形成を有する収縮性ポリマー基材、基材上に堆積した複数のナノ粒子、および複数のナノ粒子を有する基材上に堆積したフルオロシラン層、を含む階層構造を有する表面を有する材料であって、この表面がオムニフォビック特性を示す、材料も提供する。
【0010】
本出願にはまた、基材と、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料も含まれ、この材料は、マイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む基材の一部分が、オムニフォビックである階層構造を形成する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本出願はまた、基材と、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料を含む。いくつかの実施形態では、この材料は、デバイスまたは物品に適用され、しわ形成される。いくつかの実施形態では、しわ形成は、熱収縮によるものであり、熱収縮は、材料を物品またはデバイスに成形または密封する。いくつかの実施形態では、しわ形成は、材料中にマイクロ構造およびナノ構造の形成を生じさせる。
【0012】
一実施形態では、材料は、階層構造を有する複数の一部分を含み、複数の一部分は、パターンで配列されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、材料は、基材と、少なくとも1つのナノ粒子層との間、および/または少なくとも1つのナノ粒子層と、少なくとも1つのオムニフォビック分子層との間に、接着促進層をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、基材は、ポリマー基材である。いくつかの実施形態では、ポリマー基材は、収縮性ポリマー基材である。
【0015】
いくつかの実施形態では、オムニフォビック分子層は、フルオロシラン層である。
【0016】
いくつかの実施形態では、材料は、マイクロ構造および/またはナノ構造のしわを含む。
【0017】
一実施形態では、階層構造を有する表面または基材は、接触角および滑落角を測定することによって、高表面張力(例えば、水)および低表面張力(例えば、ヘキサデカン)液体に対する反発性を示す。さらなる実施形態では、階層構造を有する表面は、150°超の水接触角、110°超のヘキサデカン接触角、および5°を下回るまで低い滑落角を有する撥水性および撥油性を示す。そのようなオムニフォビック特性は、未改質ポリマー基材またはマイクロ構造もしくはナノ構造のいずれかのみであるポリマー表面を使用して観察されなかった。
【0018】
一実施形態では、階層構造を有するオムニフォビック表面は、血液付着、バイオフィルム形成、および細菌固着アッセイにおいて反発性を示した。一実施形態では、階層的に構造化された表面のオムニフォビシティは、アンチバイオファウリング特性が改善されたと言い換えることができる。
【0019】
一実施形態では、材料は、様々な表面張力を有する液体をはじき、血液接着を低減し、細菌汚染を低減するために、多様な表面に配置することができるプラスチック包装ラップとして使用可能な可撓性フィルムを含む。
【0020】
本出願はまた、階層構造を有する表面を有する材料を製造する方法であって、表面層の酸化によってポリマー基材を活性化することと、活性化された表面上に複数のナノ粒子を堆積させることと、表面をフルオロシランを用いてコーティングして少なくとも1つのフルオロシラン単層を作製することと、材料を熱収縮させて表面にしわを形成させることと、を含み、得られた表面がオムニフォビック特性を示す、方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本出願は、階層構造を有する表面を有する材料を製造する方法であって、
a)表面層の酸化によって基材を活性化することと、
b)活性化した表面上に複数のナノ粒子を堆積させて、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層を形成させることと、
c)表面をオムニフォビック分子を用いてコーティングして、少なくとも1つのオムニフォビック分子層を作製することと、
d)材料を処理してしわを形成させることと、を含み、
得られた表面がオムニフォビック特性を示す、方法を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法は、広範囲の用途および大規模生産に適したすべての溶液処理を含み、液体媒介汚染物質と接触するリスクを有する多様な表面に対して、その用途に可能性を与える。
【0023】
本出願はまた、生体物質の、それに接触するデバイス上への接着、吸着、表面媒介性凝血塊形成、または凝塊を防止、低減、または遅延させる方法であって、
基材と、基材上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を有する低接着表面を備えるデバイスを提供することであって、この表面がマイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む基材が、オムニフォビックである階層構造を形成する、提供することと、
生体物質を低接着表面に接触させることと、を含む、方法を含む。
【0024】
本出願はまた、基材と、基材上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオミンフォビック(ominphobic)分子層と、を有する低接着表面を含み、表面がマイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む基材が、オムニフォビックである階層構造を形成し、生体物質が表面からはじかれる、デバイスに接触する生体物質の接着、吸着、表面媒介性凝血塊形成、または凝塊を防止、低減、または遅延させるためのデバイスを含む。
【0025】
本出願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本出願の実施形態を示す一方で、例示としてのみ与えられ、特許請求の範囲は、これらの実施形態によって限定されるべきではなく、全体として説明と一致する最も広範な解釈を与えるべきであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本出願の実施形態は、添付の図面を参照して、ここでより詳細に説明される。
【
図1】パートc)に示される本出願の例示的な実施形態における、対応する走査型電子顕微鏡検査(SEM)イメージとともに、オムニフォビック表面およびラップを製造するための例示的なプロセスをa)およびb)に図示する、概略図を示す。
【
図2】本出願の例示的な実施形態における、X線光電子分光法(XPS)を使用する階層表面(PS-SiNP-収縮およびPO-SiNP-収縮)の化学的組成物を示す。
【
図3】本出願の例示的な実施形態における、PS-AuNP-平面およびPS-AuNP-収縮のSEMイメージを示す。
【
図4】a)静的接触角測定と(試験液体として水、ヘキサデカン、および血液を使用する)、b)水の液滴のはね返りのスロモーションイメージと(4ms間隔におけるPS-SiNP-収縮上の10μLの液滴)、ならびにc)本出願の例示的な実施形態における、前進接触角および後退接触角、接触角ヒステリシス、ならびに計算された滑落角と、によるオムニフォビシティの表面反発性および評価を示す。
【
図5】a)PS-平面から得られた値に対して正規化した、表面から溶液相に移動した血液の吸光度の決定と(グラフの挿入図は、新しいきれいな平坦のポリオレフィンの、ポリオレフィン上のPO-SiNP-収縮の血液付着アッセイを示す)、およびb)本出願の例示的な実施形態における定性的な血液染色評価(全血液中の30分間のインキュベートおよび2回洗浄後)と、によるオムニフォビック階層表面への血液付着の研究を示す。
【
図6】例示的なPS-AuNP-収縮のオムニフォビック階層表面に対する血液付着の血液反発性の研究を示す。a)血液によりインキュベートした表面から剥離した血液を含有する溶液の吸光度。吸光度を、PS-平面から得られた値に対して正規化した。PS-平面およびPS-AuNP-収縮のウェルの代表的なイメージを、図の右上に示す。2回の洗浄後に全血液中で30分間インキュベートした試料の代表的なイメージは、PS-SiNP-収縮試料について血液染色を示さないが、他の対照群は、それらの表面上にかなりの量の血液染色を示している。b)相対的な凝血塊の重量を、PS-平面に付着した凝血塊に対して正規化されるようにグラフ化した。試料の代表的なイメージは、凝固アッセイに曝露した後のものを示す。エラーバーは、少なくとも3つの試料の平均からの標準偏差を表す。c)PS-平面(i)、およびPS-AuNP-収縮(ii)上で実施した凝固アッセイのSEMイメージは、平面表面への血液付着を示す。スケールバーは、(i)では100μmであり、(ii)ではより大きなSEMイメージの10μmであり、挿入図では1μmである。
【
図7】a)S.aureusおよびb)P.aeruginosaを様々な表面上で、クリスタルバイオレットのバイオフィルムアッセイにより検証したバイオフィルム形成および細菌付着と(データはPS-平面に対して正規化される)、c)本出願の例示的な実施形態において対応するSEM画像と、を示し、より大きなSEMイメージのスケールバーは1μmであり、挿入図は200nmである。
【
図8】本出願の例示的な実施形態における、様々な表面上への、ファウリングのシミュレーションとしての相対的なアルギン酸塩の付着を示す。
【
図9】a)平面および階層化ラップ上のS.aureusおよびP.aeruginosaを使用した例示的なバイオフィルムアッセイのSEMイメージ、b)定量的な細菌付着アッセイ(平面および階層化ポリオレフィンラップ上のGFP発現E.coliのタッチアッセイを使用した)、c)様々な対象物(鍵およびペンなど)上の定性的かつ定量的な細菌付着アッセイ、およびd)タッチアッセイによる、処理した表面対未処理表面からの細菌の移動、e)本出願の例示的な実施形態における表面汚染のための凡例、を示し、より大きなSEMイメージのスケールバーは1μmであり、挿入図は200nmである。
【
図10】親水性ウェルを作製するためにマスキング方法を使用して、親水性パターンを導入した例示的な階層構造の表面を示す。a)(i)は平面(正方形の内側)および改質領域を有するパターン化されたウェルを示し、(ii)は青く染めた水に浸漬させた後のパターン化されたウェルを示し、水の液滴のデジタル化を示しており、(iii)はパターン化されたウェル上にてCy5標識抗IL-6抗体をデジタル化している;b)ウェル、およびH
2SO
4により処理したウェルの体積測定;c)IL-6アッセイを、アッセイ内容物を含む溶液中にウェルを浸漬させることによって親水性ウェルに実施した;d)2500pg/mLおよびIL-6なし(ブランク)によるアッセイ後のウェルの代表的な蛍光イメージ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
I.定義
特に指示がない限り、本セクションおよび他のセクションに記載される定義および実施形態は、それらが当業者によって理解されるように、それらが好適である、本明細書に記載される本出願のすべての実施形態および態様に適用可能であることが意図される。
【0028】
本出願の範囲を理解するために、本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語およびその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップの存在を特定するが、他の未記載の特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップの存在を除外しない、制限のない用語であることが意図される。上記はまた、「含む(including)」、「有する」という用語、およびそれらの派生語などの類似の意味を有する単語にも適用される。本明細書で使用される「からなる」という用語およびその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップの存在を特定するが、他の未記載の特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップの存在を除外する、制限のある用語であることが意図される。本明細書で使用される「から本質的になる」という用語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップ、ならびに特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップの基本的かつ新規の特性に本質的に影響を及ぼさないものの存在を特定することが意図される。
【0029】
本明細書で使用される「実質的に」、「約(about)」、および「約(approximately)」などの程度の用語は、最終結果が顕著に変化しないような、修飾された用語の妥当な量の偏差を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が、それが修飾する単語の意味を否定しない場合、修正された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0030】
本出願で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の参照を含む。
【0031】
「追加の」または「第2の」構成要素を含む実施形態では、本明細書で使用される場合、第2の構成要素は、他の構成要素または第1の構成要素と化学的に異なる。「第3の」構成要素は、他の構成要素、第1の構成要素、および第2の構成要素とは異なり、さらに列挙される構成要素または「追加の」構成要素も同様に異なる。
【0032】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、提示される項目が、個別に、または組み合わせて存在するか、あるいは個別に、または組み合わせて使用されることを意味する。実際には、この用語は、提示される項目の「のうちの少なくとも1つ」または「1つ以上」が、使用されるか、あるいは存在することを意味する。
【0033】
本明細書で使用される「室温」という用語は、約20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「しわ形成」という用語は、材料にしわを形成するための任意のプロセスを指す。
【0035】
本明細書で使用される「階層」という用語は、材料の表面上にマイクロスケールとナノスケールの両方の構造的特徴を有する材料を指す。
【0036】
材料に関して本明細書で使用される「オムニフォビック」という用語は、撥水特性(水および他の極性液体に対する低濡れ性)および撥油特性(低表面張力および非極性液体に対する低濡れ性)の両方を示す材料を指す。典型的には汚染物質は盛り上がって表面から転がり落ちるため、非常に高い接触角を有するそのようなオムニフォビック材料は、しばしば「自己洗浄」材料とみなされる。
【0037】
本明細書で使用される「収縮性ポリマー」または「熱収縮性ポリマー」という用語は、これらに限定されないがポリスチレンまたはポリオレフィンなどの事前に歪んだポリマー材料を指し、これは、材料をそのガラス転移温度を超える温度にさらすことにより収縮する。
【0038】
本明細書で使用される「反応性官能基」という用語は、別の原子または単一の原子の基と反応して、2つの基または原子間の化学結合を形成する原子または単一の原子の基(いわゆる「相補的官能基」)を指す。
【0039】
本明細書で使用される「と反応する」という用語は、一般に、化学結合の形成をもたらす電子の流れまたは静電荷の移動が存在することを意味する。
【0040】
本明細書で使用される「好適な」という用語は、特定の化合物または条件の選択が、実施される特定の合成操作、および変換される分子の同定により左右されるが、この選択は、当該技術分野で熟練した者の技量の範囲内にあることを意味する。本明細書に記載されるすべてのプロセス/方法のステップは、示される生成物を提供するのに十分な条件下で実施されるべきである。当業者は、例えば、反応溶媒、反応時間、反応温度、反応圧力、反応物比、および反応を無水または不活性雰囲気下で実施すべきか否かを含むすべての反応条件を変化させて、所望の生成物の収率を最適化することができ、それを実施することは彼らの技量の範囲内であることを理解するであろう。
【0041】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、直鎖または分岐鎖の、飽和アルキル基、すなわち、その末端のうちの1つに置換基を含有する飽和炭素鎖を意味する。参照されるアルキル基において可能な炭素原子の数は、数値接頭辞「Cn1~n2」によって示される。例えば、用語C1~4アルキルは、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0042】
本明細書で使用される「アルカン」という用語は、直鎖または分岐鎖の、飽和アルカン、すなわち、飽和炭素鎖を意味する。
【0043】
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、直鎖または分岐鎖の、飽和アルキレン基、すなわち、その末端のうちの2つに置換基を含有する飽和炭素鎖を意味する。参照されるアルキレン基において可能な炭素原子の数は、数値接頭辞「Cn1~n2」によって示される。例えば、用語C1~6アルキレンは、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。
【0044】
本明細書で使用される「ハロ」という用語は、ハロゲン原子を指し、F、Cl、BrおよびIを含む。
【0045】
本明細書で使用される「アミノ」という用語は、官能基NH2またはNHRaを指し、式中、Raは、C1~6アルキルである。
【0046】
本明細書で使用される「ヒドロキシル」という用語は、官能基OHを指す。
【0047】
II.本出願の材料
マイクロ構造、ナノ構造、または階層構造を有する表面を開発するための化学的および物理的表面改質の両方の包括的研究を通じて、フルオロシラン化階層構造は、150°超の水接触角、110°超のヘキサデカン接触角、および5°を下回るまで低い滑落角を有する優れた撥水性および撥油性を提供することが見出された。そのようなオムニフォビック特性は、マイクロ構造表面またはナノ構造表面では観察されなかった。理論に限定されるものではないが、オムニフォビシティは、低表面張力液体および高表面張力液体の両方に対して、安定したキャシー状態、および階層表面に接触する液体の真下に閉じ込められたより多くのエアポケットから生じる。
【0048】
したがって、本出願の一態様では、基材と、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料が含まれる。
【0049】
本出願の一態様では、マイクロスケールのしわ形成を有する収縮性ポリマー基材と、基材上に堆積された複数のナノ粒子と、複数のナノ粒子を有する基材上に堆積された少なくとも1つのフルオロシラン単層と、を含む、階層構造を有する表面を有する材料であって、表面がオムニフォビック特性を示す、材料が提供される。
【0050】
いくつかの実施形態では、階層構造は、マイクロ構造およびナノ構造を含む。いくつかの実施形態では、マイクロ構造は、収縮性ポリマー基材の表面のしわ形成から製造され、ナノ構造は、基材上に堆積された複数のナノ粒子から提供される。
【0051】
本出願にはまた、基材と、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料も含まれ、この材料は、マイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオミンフォビック分子層を含む基材の一部分が、オムニフォビックである階層構造を形成する。
【0052】
いくつかの実施形態では、オムニフォビック分子層が、フルオロシラン、フルオロカーボン、フルオロポリマー、もしくはオルガノシラン、またはこれらの混合物を含むか、それらから本質的になるか、あるいはそれらからなる。いくつかの実施形態では、オムニフォビック分子は、フルオロシラン層または単層である。
【0053】
いくつかの実施形態では、フルオロシラン層または単層は、次の式Iの1つ以上の化合物を使用して形成される。
【化1】
(式中、
Xは、単結合であるか、またはC
1~6アルキレンであり、
nは、0~12の整数であり、
R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、加水分解性基である。)
【0054】
加水分解性基は任意の好適な加水分解性基であり、その選択は当業者が行うことができる。いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3は、独立して、ハロまたは-O-C1~4アルキルである。いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3は、すべて独立してハロである。いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3は、すべて独立して-O-C1~4アルキルである。いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3は、すべてOEtである。いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3は、すべてClである。
【0055】
いくつかの実施形態では、Xは、C1~6アルキレンである。いくつかの実施形態では、Xは、C1~4アルキレンである。いくつかの実施形態では、Xは、-CH2CH2-である。
【0056】
いくつかの実施形態では、nは、3~12の整数である。いくつかの実施形態では、nは、3~8の整数である。いくつかの実施形態では、nは、4~6の整数である。いくつかの実施形態では、nは5である。
【0057】
いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3は、すべてClであり、Xは-CH2CH2-であり、nは5である。いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3は、すべてOEtであり、Xは-CH2CH2-であり、nは5である。
【0058】
いくつかの実施形態では、フルオロシラン層または単層は、これらに限定されないが、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル)シラン(TPFS)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロドデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルトリエトキシシラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、(ペンタフルオロフェニル)トリエトキシシラン、およびヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシルトリクロロシラン、ならびにそれらの混合物などの任意のフルオロカーボン含有シランを使用して形成される。
【0059】
いくつかの実施形態では、基材上に堆積されたフルオロシランは、これらに限定されないが、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル)シラン、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルトリエトキシシラン、または同様の組成のフルオロシランを含む。いくつかの実施形態では、フルオロシランは、市販品として入手可能である。いくつかの実施形態では、フルオロシランなどのオムニフォビック分子は、材料の表面エネルギーを低下させ、オムニフォビック特性を増加させる。
【0060】
いくつかの実施形態では、基材は、ポリマー、エラストマー、またはエラストマー複合体から選択される。いくつかの実施形態では、基材は、ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、収縮性ポリマーである。
【0061】
いくつかの実施形態では、収縮性ポリマーは、これに限定されないが、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、および他の収縮性ポリマー、またはこれらの組み合わせおよびコポリマーから選択される材料を含む。いくつかの実施形態では、基材は、事前に歪んだポリスチレンである。いくつかの実施形態では、基材は、ポリオレフィンである。いくつかの実施形態では、基材は、ポリオレフィンの薄い可撓性フィルムである。
【0062】
いくつかの実施形態では、例えば、基材は、ナノ粒子と反応するかまたはナノ粒子を引きつけるために、基材を活性化するように処理される。いくつかの実施形態では、基材は、基材の中、基材の上、または基材全体にわたりヒドロキシル基が導入されるように処理される。いくつかの実施形態では、処理は、これらに限定されないが、紫外線オゾン、または空気、酸素、二酸化炭素、もしくはアルゴンプラズマなどのプラズマを用いるものである。
【0063】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、誘電体、半導体、金属、ワックスまたはポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、これらに限定されないが、コロイドシリカ、金、二酸化チタン、銀、キトサン、セルロース、アルギン酸塩、またはポリスチレンからなる群から選択される材料を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、コロイドシリカまたは金を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、材料は、基材と、少なくとも1つのナノ粒子層との間、および/または少なくとも1つのナノ粒子層と、少なくとも1つのオムニフォビック分子層との間に、接着促進層をさらに含む。一実施形態では、接着促進化合物は、隣接層を構成する化合物と反応するか、またはそうでなければ、(例えば、静電的、イオン的、または他の引力によって)隣接層を構成する化合物を引きつけるように選択される。例えば、接着促進化合物は、収縮性ポリマー基材上のヒドロキシル基、ナノ粒子上のヒドロキシル基、ナノ粒子と会合する物質上の官能基、および/またはオムニフォビック分子層上の加水分解性基と反応するか、またはそうでなければ、引きつける官能基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、接着促進層、および基材、および少なくとも1つのナノ粒子層、および/または少なくとも1つのナノ粒子層と少なくとも1つのオムニフォビック分子層との間の相互作用は、当業者に既知であるように、pH、温度および濃度などの処理条件およびそれに応じて調整または最適化されたそれらの条件によって制御または影響され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、接着促進層は、異なる反応性官能基を含む1つ以上のシランを使用して形成される。いくつかの実施形態では、異なる反応性官能基を含むシランは、これらに限定されないが、アミノシラン、グリシドキシシラン、アルカンシラン、エポキシシランなどから選択される。いくつかの実施形態では、接着促進層は、次の式IIの1つ以上の化合物を使用して形成される。
【化2】
(式中、
R
4、R
5およびR
6のうちの1つ以上は、OHまたは加水分解によりOHに変換される基であり、R
4、R
5およびR
6の残りのものは、C
1~6アルキルから選択され、
X
1は、リンカーであり、
R
7は、反応性官能基である。)
【0066】
加水分解によりOHに変換される基は、任意の好適な加水分解基であり、その選択は当業者が行うことができる。いくつかの実施形態では、加水分解性基は、ハロまたは-O-C1~4アルキルである。
【0067】
いくつかの実施形態では、X1は、C1~C20アルキレン、C2~C20アルケニレン、またはC2~C20アルキニレンであり、これらの各々は、任意選択で、OまたはC(O)によって中断される。いくつかの実施形態では、X1は、C1~20アルキレンである。いくつかの実施形態では、Xは、C1~10アルキレンである。
【0068】
いくつかの実施形態では、R7は、これらに限定されないが、収縮性ポリマー基材上のヒドロキシル基、ナノ粒子上のヒドロキシル基、ナノ粒子と会合する物質上の官能基、および/またはフルオロシラン上の加水分解性基などの、隣接層に含まれる化合物と反応するか、またはそうでなければ、(例えば、静電的、もしくはイオン的、または他の引力によって)隣接層に含まれる化合物を引きつけるように選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、R
7は、アミノ基、エポキシド、グリシドキシ基(
【化3】
)、カルボン酸(CO
2H)、アルデヒド(COH)、エステル(CO2R
b、式中、R
bは、C
1~6アルキル、ベンジルなどである)、トシル基、ハロ、イソシアナト(NCO)などである。いくつかの実施形態では、R
7は、NH
2、CO
2Hまたはグリシドキシである。
【0070】
いくつかの実施形態では、接着促進層は、3-(トリメトキシシリル)プロピルアルデヒド、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、およびアミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)のうちの1つ以上を使用して形成される。いくつかの実施形態では、接着促進層は、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)を使用して形成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、材料は、基材と複数のナノ粒子との間にシランリンカー層をさらに含む。いくつかの実施形態では、シランリンカー層は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、階層構造を有する表面を有する材料は、撥水性および撥油性の両方を示す。いくつかの実施形態では、表面は、150°超の水接触角、110°超のヘキサデカン接触角、および5°未満の水滑落角を示す。そのようなオムニフォビック特性は、未改質ポリマー基材またはマイクロ構造もしくはナノ構造のいずれかのみであるポリマー表面を使用して観察されなかった。
【0073】
いくつかの実施形態では、本出願の材料は、室温で、ゴニオメーター(例えば、Future Digital ScientificによるOCA 20)、および自動注射器を使用して分注した水の液滴を使用して測定される、約145°~約160°、または約150°~約155°の水の静的接触角を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、本出願の材料は、室温で、ゴニオメーター(例えば、Future Digital ScientificによるOCA 20)、およびピペットを使用して分注した全血液の液滴を使用して測定される、約130°~約160°、または約135°~約145°の全血液の静的接触角を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、本出願の材料は、室温で、ゴニオメーター(例えば、Future Digital ScientificによるOCA 20)、およびピペットを使用して分注したヘキサデカンの液滴を使用して測定される、約110°~約140°、または約120°~約135°のヘキサデカンの静的接触角を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本出願の材料は、室温で、デジタル角度計(例えば、ROK)を使用して決定される、約1°~約10°、または約5°の水滑落角を有する。いくつかの実施形態では、材料は、潤滑層をさらに含む。いくつかの実施形態では、潤滑層は、炭化水素液体、フッ素化有機液体、または過フッ素化有機液体を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、本出願の材料は、当業者に既知であるような所望の用途に応じて、任意の厚さに作製することができる。いくつかの実施形態では、本出願の材料は、約0.001mm~約100mm、または約0.01mm~約50mmの厚さを有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、これらの階層表面が血液または細菌汚染物質と接した際に、それらのオムニフォビシティは、アンチバイオファウリング特性がより良好であると言い換え得ることが観察された。
【0079】
いくつかの実施形態では、表面は、生物種を含む液体に対して反発性を示す。生物種の非限定的例としては、細菌、真菌、ウイルスまたは疾患細胞、寄生細胞、がん細胞、外来細胞、幹細胞、および感染細胞などの微生物が挙げられる。生物種の非限定的な例にはまた、細胞小器官、細胞断片、タンパク質、核酸小胞、ナノ粒子、バイオフィルム、およびバイオフィルム構成要素などの生物種の構成要素も含まれる。
【0080】
いくつかの実施形態では、表面は、細菌およびバイオフィルム形成に対する反発性を示す。いくつかの実施形態では、細菌は、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、細菌は、Escherichia coli、Streptococcus種、Helicobacter pylori、Clostridium種、およびmeningococcusのうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、細菌は、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Helicobacter pylori、Pseudomonas aerugenosa、Neisseria meningitidis、Klebsiella aerogenes、Shigella sonnei、Brevundimonas diminuta、Hafnia alvei、Yersinia ruckeri、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Achromobacter xylosoxidans、Moraxella osloensis、Acinetobacter lwoffi、およびSerratia fonticolaのうちの1つ以上から選択されるグラム陰性細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、Listeria monocytogenes、Bacillus subtilis、Clostridium difficile、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、Streptococcus pyogenes、Mycoplasma capricolum、Streptomyces violaceoruber、Corynebacterium diphtheria、およびNocardia farcinicaのうちの1つ以上から選択されるグラム陽性細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、Pseudomonas aeruginosaまたはStaphylococcus aureusである。いくつかの実施形態では、バイオフィルムの固着は、約85%低減する。
【0081】
いくつかの実施形態では、表面は、ウイルスに対して反発性を示す。いくつかの実施形態では、ウイルスは、エンベロープウイルス、ノンエンベロープウイルス、DNAウイルス、一本鎖RNAウイルス、および/または二本鎖RNAウイルスである。いくつかの実施形態では、このウイルスは、ライノウイルス、ミクソウイルス(インフルエンザウイルスを含む)、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス(天然痘ウイルスを含む)、レオウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、脳心筋炎ウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、狂犬病ウイルス、およびレトロウイルス(HIVを含む)のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、ライノウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルス、ヘルペス、HIV、およびコロナウイルス、天然痘のうちの1つ以上から選択される。
【0082】
いくつかの実施形態では、表面は、生体流体に対して反発性を示す。生体流体の非限定的例としては、水、全血液、血漿、血清、痰、汗、膿、糞便、尿、唾液、涙、嘔吐物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、表面は、140°超の全ヒト血液の接触角を示す。いくつかの実施形態では、表面は、全血液に対して反発性を示す。いくつかの実施形態では、表面は、血液凝塊を減少させる。いくつかの実施形態では、血液接着は約93%低減する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本出願の材料は、粉塵などの粒子状物質に対して反発性を示す。
【0084】
さらに、本出願の可撓性材料が曲げられた場合、表面は、曲げられていない試料と同等の血液接触角を示し、異なる形態因子下でもそれらのオムニフォビック特性の保持を示す。これらの発見は、可撓性表面に対して顕著なオムニフォビック性能を示しており、これは、多様な材料に容易に配置されるという利点を有している。いくつかの実施形態では、材料は、可撓性プラスチックラップとして使用される。いくつかの実施形態では、材料は、包装材料として一般的に使用される可撓性ポリオレフィンラップを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、可撓性オムニフォビックのラップフィルムを含む本出願の材料は、これらに限定されないが、プラスチックショッピングバッグ、シャワーカーテン、および子供の玩具(膨張式プール、およびスリップアンドスライド(slip and slides)の水用玩具など)を含む、ファウリングまたは汚染物質のために処分されるプラスチック材料などのプラスチック表面を含む、任意のアイテム上に配置され得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、可撓性オムニフォビックのラップフィルムを含む本出願の材料は、これらに限定されないが、キーボード、マウス、公共のキオスク、ATM、サングラス、車のフロントガラス、カメラレンズ、太陽光パネル、および建築システム(ノブ/ラッチ、病院のベッドレール、窓、ハンドル)、公共のゴミ収集のハンドル、輸送(例えば、ポール、シート、ハンドル、ボタン、飛行機のトレイ)、食品サービスアイテム(まな板、カウンタートップ、食品保存容器、ハンドル、ドア、冷蔵庫内部、上流、下流、消費者をターゲットとしたもの)、トイレアイテム(トイレのシート、流しのハンドル)、および製造装置(例えば、表面、導管、タンク)を含む、生物種反発特性を含む撥水特性を必要とする任意の表面上に配置され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、本出願の材料および可撓性オムニフォビックのラップフィルムは、任意のヘルスケアおよび実験室の表面、個人用防護具および医療デバイス上に配置され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、本出願の材料および可撓性オムニフォビックのラップフィルムは、次の多様な表面上に配置され得る。病院環境における高リスク表面(例えば、外科用および医療デバイス)、食品包装(例えば、肉、農産物などの包装)、公共の場所における高接触表面(例えば、ドアノブ、エレベータボタンなど)、またはウェアラブル物品(例えば、手袋、時計など)。いくつかの実施形態では、オムニフォビックのプラスチックラップは、様々な表面張力を有する液体をはじき、血液接着を低減し、細菌汚染を低減するために使用される。いくつかの実施形態では、本出願の材料は、介在移動表面として機能することによって細菌の拡散を低減するのに有効である。「タッチアッセイ」を通じて、未処理の表面と比較して、汚染されたタッチから階層化ラップに移動する細菌の量が顕著に少ないことが実証される(15~20倍少ない)。これらの表面は、細菌の固着を大幅に低減することに加えて、ヒト皮膚などの別の表面への細菌の移動を低減する際に顕著な能力を示す。
【0089】
したがって、本出願は、本出願の材料を含むデバイスまたは物品をさらに含む。いくつかの実施形態では、材料は、デバイスまたは物品の表面上にある。したがって、本出願は、表面の少なくとも一部分が、基材と、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料であって、この材料が、マイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む基材の一部分が、オムニフォビックである階層構造を形成する、材料を含む、表面を含むデバイスまたは物品を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、材料は、物品またはデバイスの少なくとも一部分上にラップされる。いくつかの実施形態では、マイクロ構造およびナノ構造のしわは、材料を熱収縮させることによって形成され、熱収縮の前に、材料が、物品またはデバイスの少なくとも一部分上にラップされて、ラップ後に熱収縮が実施されて、物品またはデバイスと材料との間に密封を形成させる。
【0091】
いくつかの実施形態では、物品またはデバイスは、これらに限定されないが、手袋、スクラブ、およびフェイスマスクなどの保護服を含むウェアラブル物品;これらに限定されないが、遠心管、マイクロピペットチップ、およびマルチウェルプレートを含む消耗品研究装置、から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、デバイスは、カニューレ、コネクタ、カテーテル、カテーテル、クランプ、スキンフック、カフ、開創器、シャント、針、毛細管、気管内管、人工呼吸器、人工呼吸器チューブ、薬物送達ビヒクル、注射器、顕微鏡スライド、プレート、フィルム、実験室作業表面、ウェル、ウェルプレート、ペトリ皿、タイル、ジャー、フラスコ、ビーカー、バイアル、試験管、チューブコネクタ、カラム、コンテナ、キュベット、ボトル、ドラム、バット、タンク、歯科用ツール、歯科用インプラント、バイオセンサ、生体電極、内視鏡、メッシュ、創傷包帯から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本出願はまた、基材と、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む、材料を含む。いくつかの実施形態では、この材料は、デバイスまたは物品に適用され、しわ形成される。いくつかの実施形態では、しわ形成は、熱収縮によるものであり、熱収縮は、材料を物品またはデバイスに成形または密封する。いくつかの実施形態では、しわ形成は、材料中にマイクロ構造およびナノ構造の形成を生じさせる。いくつかの実施形態では、物品またはデバイスへの材料の成形は不可逆的であるため、材料は、洗浄条件下であっても物品またはデバイス上に残る。
【0093】
いくつかの実施形態では、材料は、階層構造を有する複数の一部分と、階層構造を有しない複数の一部分と、を含み、階層構造を有しない複数の一部分が、パターンで配列されている。いくつかの実施形態では、パターンは、階層構造を有しない一部分の実質的に均等な間隔の列を含む。いくつかの実施形態では、階層構造を有しない一部分は、親水性である。いくつかの実施形態では、親水性の一部分は、階層構造を有する部分においてウェルを形成し、そのようなウェルは、水性ベースのアッセイおよび生体物質に対するアッセイを実施するのに好適である。いくつかの実施形態では、生体物質は、血液、血漿、尿および唾液から選択される。
【0094】
III.本出願の方法
本出願はまた、階層構造を有する表面を有する材料を製造する方法であって、
a)表面層の酸化によって基材を活性化することと、
b)活性化した表面上に複数のナノ粒子を堆積させて、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層を形成させることと、
c)表面をオムニフォビック分子を用いてコーティングして、少なくとも1つのオムニフォビック分子層を作製することと、
d)材料を処理してしわを形成させることと、を含み、
得られた表面がオムニフォビック特性を示す、方法を含む。
【0095】
本出願の別の態様では、階層構造を有する表面を有する材料を製造する方法であって、表面層の酸化によって基材を活性化することと、活性化された表面上に複数のナノ粒子を堆積させて、基材の少なくとも一部分上に少なくとも1つのナノ粒子層を形成させることと、表面をオムニフォビック分子を用いてコーティングして、少なくとも1つのオムニフォビック分子層または単層を作製することと、材料を熱収縮させて表面にしわを形成させることと、を含み、得られた表面がオムニフォビック特性を示す、方法が提供される。
【0096】
いくつかの実施形態では、活性化する前に、基材は、活性化される基材の少なくとも一部を洗浄するように処理される。いくつかの実施形態では、洗浄は、任意の既知の手段、例えば、任意の既知の洗浄物質または処理によって行われる。いくつかの実施形態では、洗浄は、アルコール処理または洗浄によって行われる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本方法は、基材を活性化した後、基材と、少なくとも1つのナノ粒子層との間、および/または少なくとも1つのナノ粒子層と、少なくとも1つのオムニフォビック分子層との間に、接着促進層を堆積させることをさらに含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法は、ポリマー表面を活性化した後にナノ粒子を結着するように、表面をシランリンカー層で改質することをさらに含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本方法は、材料を熱収縮させた後に、表面上に潤滑層を堆積させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、潤滑層を堆積させることは、材料の表面上の摩擦を低減する。
【0100】
いくつかの実施形態では、例えば、基材は、ナノ粒子と反応するかまたはナノ粒子を引きつけるために、基材を活性化するように処理される。いくつかの実施形態では、基材は、基材の中、基材の上、または基材全体にわたりヒドロキシル基が導入されるように処理される。いくつかの実施形態では、処理は、これらに限定されないが、紫外線オゾン、または空気、酸素、二酸化炭素、もしくはアルゴンプラズマなどのプラズマを用いるものである。いくつかの実施形態では、処理は、表面の活性化が十分な程度まで進行するための時間(例えば、約30秒間~約10分間の時間)にわたる。
【0101】
いくつかの実施形態では、基材を活性化することは、紫外線オゾンまたはプラズマによる処理を含む。いくつかの実施形態では、プラズマ処理には、これらに限定されないが、空気、酸素、二酸化炭素、またはアルゴンプラズマの使用が含まれる。
【0102】
本出願のいくつかの実施形態では、基材上のすべての層は、例えば、好適な期間の間、適切な溶液中に沈めることによる、溶液ベースの技術を使用して堆積される。いくつかの実施形態では、基材は、約30分間~約5時間、または約1時間~約4時間、または約3時間、ほぼ室温にて、撹拌しながら沈められる。いくつかの実施形態では、各層の堆積後、基材は、洗浄され(例えば、水中での超音波処理による)、乾燥される。
【0103】
基材上のすべての層が溶液ベースの技術を使用して堆積されることは有利であるが、当業者は、基材上の層のうちの1つ以上が、これらに限定されないが、スピンコーティング、蒸着、フォトリソグラフィ、エマルジョンテンプレート、エレクトロスピニング、反応性イオンエッチング、および/または電気化学的エッチング/負極処理などの当技術分野で既知の代替的な堆積技術を使用して堆積され得ることを理解するであろう。
【0104】
いくつかの実施形態では、本方法は、予め形成された物品またはデバイスの表面を改質するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本出願の材料を使用して、上記の物品および/またはデバイスのいずれかの表面を改質する。いくつかの実施形態では、階層構造を有する表面を有する材料を製造する方法は、c)の後、材料を物品またはデバイスの表面上に適用し、続いて物品またはデバイスの表面上の材料を処理してしわを形成させることをさらに含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、材料をデバイスの物品の表面上に適用する前に、物品またはデバイスの表面を処理して表面を洗浄する。いくつかの実施形態では、洗浄は、任意の既知の手段、例えば、任意の既知の洗浄物質または処理によって行われる。いくつかの実施形態では、洗浄は、アルコール処理または洗浄によって行われる。
【0106】
いくつかの実施形態では、しわは、任意の既知のしわ形成プロセスを使用して形成される。いくつかの実施形態では、しわ形成プロセスは、材料にマイクロ構造を作製する任意のプロセスである。いくつかの実施形態では、しわ形成プロセスは、剛性な外層で改質された柔軟な基材を、面内の圧縮ひずみに暴露することと、または基材が引張ひずみの除去にさらされるときに曝露することと、を含む。剛性層および柔軟な基材の弾性率の不一致は、しわの形成をもたらす。いくつかの実施形態では、しわ形成プロセスは、材料を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、加熱は、約100℃~約200℃、約120℃~約160℃、または約135℃~約145℃の温度で、約1分間~約10分間、または約3分間~約7分間行われる。
【0107】
いくつかの実施形態では、しわは、それ自体がしわ形成されている(例えば、微視的なしわを有する)金型に、しわが金型を介して材料にもたらされるか、または移されるような条件下で、材料を適用することによって形成される。
【0108】
いくつかの実施形態では、しわは、レーザー加工、リソグラフィ、または他のマイクロ/ナノ製造技術によって形成される。
【0109】
いくつかの実施形態では、しわは、上記技術の組み合わせによって成形されて、形成される。
【0110】
いくつかの実施形態では、しわは、表面をしわ形成するために必要な長さの時間、材料を予熱したオーブン内に入れることを含む、材料の熱収縮によって形成される。いくつかの実施形態では、熱収縮は、約100℃~約200℃、約120℃~約160℃、または約135℃~約145℃の温度で、約1分間~約10分間、または約3分間~約7分間行われる。
【0111】
いくつかの実施形態では、本出願は、材料をデバイスまたは物品に適用する方法を含み、材料を用いて物品またはデバイスをラップすることと、材料をしわ形成することと、を含み、材料は、基材と、基材の少なくとも一部分上の少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上の少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、しわ形成は、熱収縮によるものであり、熱収縮は、材料を物品またはデバイスに成形または密封する。いくつかの実施形態では、しわ形成は、材料中にマイクロ構造およびナノ構造の形成を生じさせる。
【0113】
いくつかの実施形態では、本方法は、これらに限定されないが、手袋、スクラブ、およびフェイスマスクなどの保護服を含むウェアラブル物品上に、階層構造を有するオムニフォビック表面を作製するために使用される。いくつかの実施形態において、本方法は、これらに限定されないが、遠心管、マイクロピペットチップ、およびマイクロウェルプレートを含む消耗品研究装置上に、オムニフォビック表面を作製するために使用される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本方法は、材料を熱収縮させる前に、対象物の周囲に可撓性プラスチックフィルムとして材料をラップすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、材料を熱収縮させることは、表面をしわ形成するために必要な長さの時間、ヒートガンにより加熱することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、包装材料として一般的に使用される可撓性ポリオレフィンラップに適用される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本方法は、広範囲の用途および大規模生産に適したすべての溶液処理を含み、液体媒介汚染物質と接触するリスクを有する多様な表面に対して、その用途に可能性を与える。
【0116】
本出願はまた、生体物質の、それに接触するデバイス上への接着、吸着、表面媒介性凝血塊形成、または凝塊を防止、低減、または遅延させる方法であって、
基材と、基材上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を有する低接着表面を備えるデバイスを提供することであって、この表面がマイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む基材が、オムニフォビックである階層構造を形成する、提供することと、
生体物質を低接着表面に接触させることと、を含む、方法を含む。
【0117】
本出願はまた、基材と、基材上に少なくとも1つのナノ粒子層と、ナノ粒子層上に少なくとも1つのオムニフォビック分子層と、を有する低接着表面を含み、表面がマイクロ構造およびナノ構造のしわを含み、少なくとも1つのナノ粒子層および少なくとも1つのオムニフォビック分子層を含む基材が、基材から生体物質がはじかれるオムニフォビックである階層構造を形成し、それに接触する生体物質の接着、吸着、表面媒介性凝血塊形成、または凝塊を防止、低減、または遅延させるためのデバイスを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、デバイスは、任意のヘルスケアおよび実験装置、個人用防護具および医療デバイスから選択される。いくつかの実施形態では、デバイスは、カニューレ、コネクタ、カテーテル、カテーテル、クランプ、スキンフック、カフ、開創器、シャント、針、毛細管、気管内管、人工呼吸器、人工呼吸器チューブ、薬物送達ビヒクル、注射器、顕微鏡スライド、プレート、フィルム、実験室作業表面、ウェル、ウェルプレート、ペトリ皿、タイル、ジャー、フラスコ、ビーカー、バイアル、試験管、チューブコネクタ、カラム、コンテナ、キュベット、ボトル、ドラム、バット、タンク、歯科用ツール、歯科用インプラント、バイオセンサ、生体電極、内視鏡、メッシュ、創傷包帯、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0119】
いくつかの実施形態では、生体物質は、全血液、血漿、血清、汗、糞便、尿、唾液、涙、膣液、前立腺液、歯肉液、羊水、眼内液、脳脊髄液、精液、痰、腹水、膿、鼻咽頭液、創傷滲出液、房水、硝子体液、胆汁、耳垢、内リンパ液、外リンパ液、胃液、粘液、腹膜液、胸水、皮脂、嘔吐物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0120】
いくつかの実施形態では、材料は、階層構造を有する複数の一部分を含み、複数の一部分は、パターンで配列されている。
【0121】
いくつかの実施形態では、階層構造を有する複数の一部分と、パターンで配列されている階層構造を有しない複数の一部分と、を含む材料は、階層構造が望ましくない基材の一部分上にマスキング材料を配置することによって準備される。マスキング材料が所定の位置にある状態で、基材は、階層構造を有する表面を有する材料を製造するために上述のように処理されて、熱収縮の前に除去される。
【0122】
いくつかの実施形態では、マスキング材料は、ビニルシートなどのビニルである。いくつかの実施形態では、パターンは所望のパターンであり、当業者は、基材上で製造される階層構造を有することを避けるために、パターンにおいていかにマスキング材料を準備するかを知るであろう。いくつかの実施形態では、パターンは、基材が階層構造を有しない、スポットまたはウェルの単純な平行な列である。いくつかの実施形態では、スポットまたはウェルは、親水性である。いくつかの実施形態では、ウェルは、水性ベースのアッセイを行うのに好適である。いくつかの実施形態では、本出願の製造方法は、マルチウォールプレートとして好適な材料を提供する。
【実施例】
【0123】
以下の非限定的実施例は、本出願を例示するものである。
【0124】
実施例1.オムニフォビック表面を製造するための材料および方法
試薬.(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(99%)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルトリエトキシシラン(97%)、Ludox(登録商標)TMAコロイドシリカ、およびアルギン酸ナトリウム塩(アルギン酸ナトリウム)、クリスタルバイオレットをSigma-Aldrich(Oakville,Onatrio)から購入した。エタノール(無水)をCommercial Alchohols(Brampton,Ontario)から購入した。塩酸(36.5~38%)をCaledon(Georgetown,Ontario)から購入した。Milli-Qグレード水(18.2MΩ)を使用して、すべての溶液を調製した。LBブロス、粒状寒天、カザミノ酸を、Fisher Scientific(Canada)から購入した。20%グルコース溶液をTekNova(Canada)から購入した。氷酢酸をBioshop(Burlington,Ontario)から購入した。RFP-HUVECは、McMaster UniversityのP.Ravi Selvaganapathy博士の研究室によって寛大に提供された。自己接着性ビニルシート(FDC 4304)を、FDC graphic films(South Bend,Indiana)から購入した。
【0125】
しわ形成された表面の製造.事前に歪んだポリスチレン(PS、Graphix Shrink Film、Graphix、Maple Heights,Ohio)およびポリオレフィン(PO、Cryovac D-955)を、Robo Pro CE5000-40-CRPカッター(Graphtec America Inc.、Irvine,California)を使用して所望の基材サイズに切断した。基材をエタノール、milli-Q水で洗浄し、空気で乾燥させた。PSを、事前に温めた(4分間)UVOクリーナー(UVOCS モデルT0606B、Montgomeryville,Pennsylvania)に4分間入れ、POを、高RF出力設定のExpanded Plasma Cleaner(Harrick Plasma)内にて、1分間エアプラズマに供した。
【0126】
非フッ素化マイクロ構造の試料、UVO-収縮を作製するために、UVO処理したPSを、140℃で5分間予熱したオーブン(ED56、Binder、Tuttlingen,Germany)に基材を入れることによって、熱処理にかけた。フッ素化マイクロ構造の試料、FS-収縮を作製するために、インキュベートミニシェーカー(VWR International、Mississauga,Ontario)内にて、室温で、活性化した基材を、調製したフルオロシラン溶液中に撹拌しながら約3時間浸し、加水分解および縮合反応により、表面上にFS層を共有結合させた(41)。フルオロシランの堆積のために、体積比が3:1のエタノールとmilli-Q水との混合物を調製した。触媒量の塩酸(0.1重量%)を、0.5重量%のフルオロシランとともに溶液に添加した。使用前に、溶液を40°で1時間インキュベートした。フルオロシランの堆積は、オムニフォビックマイクロ構造およびナノ構造の織物を作製するために使用される手順と同様である(42)。コーティングの堆積後、基材をMilli-Q水中で超音波処理し、その後10分間、エタノール中で10分間超音波処理し、乾燥させた。
【0127】
PS-AuNP-平面、PS-AuNP-収縮、PS-SiNP-平面、およびPS-SiNP-収縮を作製するために、インキュベートミニシェーカー内にて、室温で、活性化したPS基材を、10%水性APTES中に撹拌しながら約3時間浸した(評価のよい試料についてのナノ粒子溶液のシード層を作製するため)。コーティングの堆積後、基材をMilli-Q水中で10分間超音波処理し、乾燥させた。一部のLudox TMAコロイドシリカを2部のmilli-Q水と10秒間ボルテックスすること(vertexing)によって、SiNP溶液を作製し、30分間超音波処理をした。AuNPを、他の箇所に記載されている手順(43)に従って合成し、使用するまで4℃で維持した。AuNP/SiNPの堆積(APTES処理後)のために、基材を両面テープを使用してペトリ皿に固定し、AuNP/SiNP溶液中に一晩浸した。アミノシラン上のアミン末端は、AuNPのクエン酸界面活性剤との静電相互作用(44)およびSiNPの負の表面電荷との静電相互作用を有し、表面上のナノ粒子の堆積を可能にした。堆積後、基材をMilli-Q水中で10分間超音波処理し、乾燥させた。AuNPを被覆した基材をフルオロシランでコーティングするために、基材を最初に、10%水性APTES中に撹拌しながら約3時間浸した。基材をmilli-Q水中で10分間超音波処理し、乾燥させた。AuNP表面のシラン処理後、基材を、調製したフルオロシラン溶液中に撹拌しながら約3時間置いた(PS-AuNP-平面)。SiNP表面を、APTES処理なしで、調製したフルオロシラン溶液中に同じ持続時間で置いた(PS-SiNP-平面)。次に、基材をmilli-Q水中で10分間超音波処理し、乾燥させた。このステップでは、平面の、ナノ粒子処理した試料が作製される(PS-AuNP-平面、およびPS-SiNP-平面)。マイクロ構造をナノ粒子処理した表面に加えるために、基材を140℃で5分間予熱したオーブン内に入れることによって、熱処理を行った(PS-AuNP-収縮、およびPS-SiNP-収縮)。
【0128】
パターン化された表面を、同様の方法で製造した。改質ステップの前に、ビニルマスクを(上述のように)清浄なPSシート上に置き、クラフトカッターで所望のパターンに切断した。次に、処理が必要とされる領域からビニルを除去し、試料を、ビニルマスクを付けたまま、UVO処理およびその後の処理に供した。最終のFS処理の後、ビニルマスクを除去し、試料を上述のように熱処理にかけた。未処理領域上の親水性を向上させるために、0.6μLの12MのH2SO4の液滴を未処理領域上に堆積させ、10分間インキュベートし、その後Milli-Q水で2回洗浄した。
【0129】
PO処理したラップを作製するために、活性化したラップを、一晩、前述のようにAPTES処理して、続いてMilli-Q水中で10分間超音波処理した。その後に、試料を(上記のように)SiNP溶液中に3時間浸し、続いて、(前述のように)フルオロシラン処理を3時間行った。次に、処理した表面をさらに、ヒートガン(Amtake HG6618)によって、または140℃で5分間予熱したオーブン内でインキュベートすることによって、熱収縮させた。収縮プロセスの前に処理したPOをラップするために、対象物をラップし、シーラーで密封し、さらにヒートガンにさらした。
【0130】
実施例2.オムニフォビック表面の特性評価
データのすべてのグラフ表示について、エラーバーは、少なくとも3つの試料の平均からの標準偏差を示す。
【0131】
表面の物理的特性評価.SEMイメージングは、JEOL 7000Fで実施した。イメージングの前に、試料を3nmの白金でコーティングした。接触角測定は、自動注射器によって分注した水の液滴(5μL)を用いて、および手でピペットを使用することによるヘキサデカン(5μL)を用いて、ゴニオメーター(OCA 20、Future Digital Scientific、Garden City,NY)上で行った。液滴接触角は、液滴の楕円曲線適合形状分析(ellipse curve fit shape analysis)によってイメージ処理ソフトウェア(Dataphysics SCA 20)により得た。滑落角測定は、自動サーボによって制御された角度を持つ自作の傾斜プラットフォームで行った。各値は、少なくとも3回の測定の平均とした。
【0132】
前進接触角および後退接触角.前進接触角および後退接触角は、液滴法にて、針を介してゴニオメーター(OCA 20、Future Digital Scientific、Garden City,NY)を使用して評価した。5μLの水を表面上に分注し、接触角を連続的にリアルタイムで測定した。次に、小滴の体積を、1μL/秒の速度で5μL増加させ、次に、1μL/秒で5μL減少させた。このサイクルを、2つの角度の正確な読み取り値を得るために、各試料に対して4回繰り返した。
【0133】
表面の化学的特性評価.X線光電子分光法(XPS)を使用して、階層構造の表面の化学的組成物を評価した。条件ごとに3つの試料を使用し、平均値を決定した。X線発生用にAlアノードソースを装備したPhysical Electronics(PHI)Quantera II分光計を使用して、XPSスペクトルを記録した(BioInterface Institute、McMaster University)。XPSの結果は、224eVのパスエネルギーを用いて取り出し角45°で得た。本機器のソフトウェアを使用して、炭素、酸素、フッ素、窒素、およびケイ素の原子濃度を計算した。
【0134】
全ヒト血液アッセイ.健常なドナーから全ヒト血液をBDヘパリン入りチューブに収集した。すべてのドナーは署名した書面による同意書を提供し、McMaster University Research Ethics Boardによって承認された。ゴニオメーターを使用して、室温で血液の液滴接触角を測定した。血液付着の程度は、各試料をヒト全血液に浸漬し、各基材をウェルに移して、700μLの水を添加することにより、各表面に付着した血液を再懸濁させることによって評価した。付着した血液が溶液中に移動することを確実にするために、試料をシェーカーに30分間置いた。各ウェル200μLを96ウェルに移し、SpectraMaxプレートリーダー上で波長450nmにて吸光度を測定した。再現性を確保するために、各条件につき6つの試料を評価した。また、試料を血液中で30分間インキュベートし、続いて水に2回浸漬させることにより洗浄し、表面の粘着性の程度を評価した。
【0135】
ファウリングをシミュレーションするためのアルギン酸塩アッセイ.milli-Q水中の1%w/vのアルギン酸ナトリウムの溶液を、一定速度で撹拌しながら作製した。アルギン酸塩溶液中で各試料をインキュベートし、続いて試料を計量することによって、異なる試料条件に対するアルギン酸塩接着の程度を評価した。付着したアルギン酸塩の量を計算するために、アルギン酸塩溶液に供する前に、試料も計量した。
【0136】
バイオフィルム付着アッセイ.Pseudomonas aeruginosa PAO1(P.aeruginosa)およびStaphylococcus aureus USA300 JE2(S.aureus)をLB寒天上に凍結から画線し、37℃で一晩増殖させた。これによる、LBブロス中の一晩培養物を、P.aeruginosaについて、0.4%グルコースと0.5%カザミノ酸を補充したMOPS最小培地(TekNova、United States)に1/100希釈し(45)、あるいはS.aureusについて、0.4%グルコースと3%NaClを補充したTSA培地に1/100希釈した(46)。単一の処理した表面または未処理表面を各ウェルに装入し、次いで、その後に2mLの細菌懸濁液で各ウェルを満たすことによって、24ウェルポリスチレンアッセイプレート(Corning、United States)を準備した。次に、アッセイプレートを、P.aeruginosaについては72時間、S.aureusについては24時間、振盪させずに37℃でインキュベートし、バイオフィルムを形成させた。インキュベート後、滅菌されたピンセットを使用して表面を各ウェルから取り出し、滅菌水で広範囲に洗浄して、浮遊性細菌細胞を除去した。表面に固着したバイオフィルムを0.1%のクリスタルバイオレットで染色し、次に30%の酢酸に可溶化した。細菌懸濁液、および可溶化したクリスタルバイオレットを、96ウェルマイクロタイタープレート(Corning、United States)に移し、Tecan Infinite m1000プレートリーダー(Tecan、United States)を使用して、600nmおよび570nmで光学密度(OD)を測定した。相対的なバイオフィルム付着は、付着したバイオフィルム(OD570)対培養密度(OD600)の比によって計算した。
【0137】
走査型電子顕微鏡検査-細菌バイオフィルム固定.S.aureusおよびP.aeruginosaのバイオフィルムを、前のセクションに記載されているようにして、ポリスチレンおよびポリオレフィン表面上で増殖させた。次に、試料を0.25%のグルタルアルデヒド溶液(カコジル酸ナトリウム緩衝液中)に入れて固定した。その後、試料を緩衝液ですすいだ後、四酸化オスミウムで染色した。次に、試料を、エタノール溶液を用いて25%(Milli-Q水中)~100%に順次脱水した。最後に、SEMによる検査の前に、試料を臨界点乾燥させ(Leica Microsystems、Wetzlar,Germany)、3nmの白金によりスパッタリングしてコーティングした。試料を、4keVの加速電圧で、JEOL 7000F(JEOL、Peabody,MA)を使用してイメージングした。GIMP(GIMP4.0)を使用して、イメージを人工着色し、細菌の認識を向上させた。
【0138】
細菌接触タッチアッセイ.高レベルのGFPを構成的に発現する、pUA66-GadBを包含しているEscherichia coli MG1655(E.coli)(47)の一晩培養物を、50μg/mlのカナマイシンを用いてLB中で増殖させた後、ペレット化した。次に、細胞を、培養物の元の体積の1/50に再懸濁して、濃縮された細胞懸濁液を作製した。室温で、磁気撹拌器を用いて3グラムの寒天を100mLの水に溶解させることによって、3%の寒天から寒天プラグを作製した。次に、20分間撹拌しながら温度を95℃に上げて、次に、溶液をペトリ皿に注ぎ室温にて冷却した。固化した時点で、直径約15mmのチューブを突き刺すことにより、冷却した寒天平板から寒天プラグを採取した。50倍濃縮E.coliの一晩培養物20μLを、バイオセーフティキャビネット内の層状空気流下で各寒天プラグに添加し、過剰の培地を寒天内に吸収させ、寒天上部に細菌の層を作製した。その後、細菌注入寒天プラグを、PS-平面、PS-SiNP-収縮、PO-平面、PO-SiNP-収縮の表面と10秒間接触させ、E.coliを移動させ、それらに粘着させた。次に、表面を、フルオレセインチャネルによるChemidocイメージングシステム(BioInterface Institute,McMaster University)を使用して分析した。
【0139】
ヒト皮膚への細菌移動.細菌接触タッチアッセイのセクションに記載されている同様の方法において、汚染されたPS-平面、PS-SiNP-収縮、PO-平面、PO-SiNP-収縮の表面をヒト皮膚とタッチさせて、細菌移動の程度を分析した。これは、OPTISOLVE(登録商標)により提供されたハンドヘルド蛍光リーダーによって行われ、様々な表面をイメージングし、それらの汚染の程度をリアルタイムで評価することが可能である。
【0140】
全ヒト血液凝固アッセイおよび走査型電子顕微鏡検査.血液凝血塊の反発特性を調査するために、1MのHEPES緩衝液中の500μLのクエン酸塩添加ヒト全血液、および500μLの25mMのCaCl2を、処理した試料および対照を含有する24ウェルに添加し、1時間インキュベートして、完全な凝血塊形成を可能にした。続いて、PBSを用いて試料を2回洗浄した。付着した凝血塊の量の定量を、凝固アッセイの前後に試料を計量することによって行った。次に、重量差を報告し、PS-平面に対して正規化した。試料を4%のホルムアルデヒド中で2時間固定し、3nmの白金でコーティングした。SEMにより、血液凝血塊の形成および血液細胞の固着の調査を実施した。
【0141】
パターン化されたオムニフォビック表面の液滴デジタル化および体積測定.パターン化された表面を青く染めた水に浸漬させ、親水性パターンに液滴を固着させた。また、表面を、親水性部位への液滴の固着を可能にする8:1000のCy5標識抗IL-6抗体中に浸漬させ、これをCy5チャネルによるChemidocイメージングシステム(BioInterface Institute,McMaster University)を用いて、ウェルをイメージングすることによって確認した。体積を、Digital Scientific OCA20ゴニオメーター(Garden City,NY,USA)のイメージ処理ソフトウェア(Dataphysics SCA 20)を使用して測定した。
【0142】
パターン化されたオムニフォビック表面上のIL6検出.パターン化された表面の親水性ウェルを、10%APTES溶液を用いて3時間処理し、続いてDI水中で10分間超音波処理した。次に、続けてこれを、1:100の割合で捕捉抗体と混合したEDC/NHS(0.1MのMES緩衝液中の2mMのEDCおよび5mMのNHS)中で処理して、カルボジイミド架橋反応を開始させ、1μlの溶液を各ウェルにピペットで注入し、一晩インキュベートした。その後、ウェルを2%のBSAによって1時間ブロックした。次に、試料を、基材上の溶液をデジタル化する、2500pg/mLのIL-6を含有する緩衝液中に浸漬させた。これらの液滴を1時間放置した後、TBSTおよびTBS中で洗浄した。これに続いて、表面を8:1000のCy5標識抗-IL6抗体中に浸漬させ、1時間インキュベートした後、TBSTおよびTBS中で最終洗浄を行った。IL6の結着は、Cy5チャネルによるChemidocイメージングシステム(BioInterface Institute,McMaster University)を用いて、ウェルをイメージングすることによって確認した。
【0143】
考察
階層構造を有するオムニフォビック表面
可撓性オムニフォビックのラップを作製するために、最初に、ナノスケールおよびマイクロスケールの寸法を有する特徴を組み合わせた、マイクロ構造、ナノ構造、および階層構造の、熱収縮性ポリマー基材への役割を調査した。マイクロ構造は、事前に歪んだポリスチレン(PS)基材の紫外線オゾン(UVO)活性化、続いて熱収縮によって生じさせた。この処理は、UVO処理によって引き起こされる表面層とバルクとの間の剛性差により、PS基材(UVO-収縮)上にしわの形成を生じさせる(
図1a)。表面活性化のない試料も収集し、表面の平面挙動を評価するために収縮した(PS-平面およびPS-収縮)。マイクロ構造の表面の別の変形として、UVO-収縮試料を、表面エネルギーを低下させるために一般的に使用されるプロセスであるフルオロシラン(FS)処理(FS-収縮)に供した(
図1a)(48)。ナノ構造は、
図1bに示されるように、UVO処理したPS上に堆積されたアミノシラン分子リンカーシード層の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)上に、評価のよい溶液からの22nmのコロイドシリカナノ粒子(SiNP)を堆積させることによって生じさせた。ナノスケール改質に続いて、SiNP上のヒドロキシル基によるフルオロシランの直接的な堆積が可能となるように、FS層を表面上に堆積させ(
図1b)、PS-SiNP-平面基材(
図1b)を得た。階層構造は、ナノ構造の試料(PS-SiNP-平面)をオーブン内で熱収縮させるか、またはヒートガンを使用して作製され、ナノ構造の表面上にマイクロスケールのしわの下層が作製されて(
図1b)、最適な反発性表面を得る。普遍的に適用できる材料として、ポリオレフィンラップを同様に処理して階層構造(PO-SiNP-収縮)を作製し、可撓性オムニフォビック表面を得た。対照試料として、新しいきれいな未改質ラップも調査した(PO-平面)。
【0144】
製造された表面の形態を、走査型電子顕微鏡検査(SEM)を使用して評価した(
図1c.i~viii)。
図1c.ivおよびvでは、UVO-収縮およびFS-収縮試料上のしわ形態のマイクロスケール構造を確認し、熱収縮UVO改質PSポリマーの座屈効果を検証した。しかしながら、UVO処理を受けなかったPS-収縮試料は、PS-平面(
図1c.i)およびPO-平面(
図1c.iii)表面と同様の平面形態(
図1c.ii)を維持した。PS-SiNP-平面試料上でナノスケール構造を観察し(
図1c.vi)、
図1c.viの挿入図によって検証されるように、APTES処理したPS上の、それらの評価のよいサイズとともにナノ粒子の層を示した。PS-SiNP-収縮およびPO-SiNP-収縮における階層構造を、
図1c.viiおよびviiiに示した。PO-SiNP-収縮は、PS-SiNP-収縮と比較して、サブミクロン範囲でより多くのしわを示し、これは、PO(95%)(49)の熱的に導入される歪みが、PS(40%)(34)と比較してより大きいことに起因し得る。フルオロシランによる化学的表面改質はSEMイメージでは見られなかったが、X線光電子分光法(XPS)を使用して階層表面について検証した(
図2)。この製造方法が他のタイプのナノ粒子に適用可能かどうかを試験するために、PS-SiNP-平面およびPS-SiNP-収縮と同等の作製方法において、12nmの金ナノ粒子(AuNP)を表面に組み込み、PS-AuNP-平面およびさらにPS-AuNP-収縮を得、製造方法およびSEMイメージを
図3に示した。熱収縮性ポリマー内に階層構造を組み込むことによって、様々な環境に適用可能であり、工業的な設定のために有望なバルク反発性フィルムを製造するための迅速で簡単な方法が提供される。
【0145】
開発した構造のオムニフォビシティを評価し、平面、マイクロ構造、ナノ構造、および階層表面の挙動を比較するために、milli-Qグレード水(表面張力72.75mJ/m2(50))、ヘキサデカン(表面張力27.76mJ/m2(50))、ヒト全血液(表面張力約55mJ/m2(8))、および様々なエタノール/水濃度などの様々な試験液体の静的接触角を測定した(
図4a)。ポリスチレン表面のPS-平面およびPS-収縮は、これらがそれぞれ78.9±1.3°および81±5°の水接触角を有するため、親水性特性(θ<90°)を示した。マイクロ構造表面のUVO-収縮およびFS-収縮、は撥水性であり、100±6°および125±4°の接触角を示し、これは、理論により制限されるものではないが、キャシーモデルによって説明することができる。FS-収縮で記録されたより高い水接触角は、より高いヤングの接触角およびキャシー接触角をもたらす表面自由エネルギーの低下に起因し得る。ナノテクスチャ化表面のPS-SiNP-平面は、135±4°の水接触角を示し、FS-収縮(125±4°)よりも高い水への反発性を有した。PS上のマイクロ構造、ナノ構造、およびFSによる化学改質の組み合わせは、150°(PS-SiNP-収縮の場合は155°)を超える撥水性を達成した。さらに、AuNP処理面(PS-AuNP-平面、およびPS-AuNP-収縮)でも同様の反発性傾向が観察された。長さスケール(階層構造)の数の増加は、固体-液体接触面積を減らすことによって接触角を増加させ、単一の長さスケール(マイクロ構造またはナノ構造)と比較して、下層の界面により多くの閉じ込められた空気を提供する(23)。これは、キャシーバクスターの関係式を再帰的に書き換えることによっても近似できる(23、51)。加えて、階層構造は、固体-液体-空気界面の安定性を改善し、構造内のエアポケットの充填を阻害することが示されている(20)。これは、FS改質と組み合わせた階層構造を有することにより、撥水性が約20°向上し、これらの表面を超撥水性の範囲内に位置づけることを実証する。
【0146】
オムニフォビシティの一般的な尺度として、ヘキサデカン接触角を測定することにより表面のオムニフォビシティを決定した。平面表面(PS-平面およびPS-収縮)は親油性であり、接触角が低すぎて正確に測定することができなかった。ヤングの関係式によると、同一表面に対する水とヘキサデカンの接触角を比較すると、ヘキサデカンの方が接触角が低い(表面張力が低い)ことが予測される。UVO-収縮試料上に存在するマイクロ構造は、表面の親油性を低下させなかったが、しかしながら、FS-収縮試料は、表面エネルギーを低下させるフルオロシラン化の影響により、親油性の程度を低下させた(26±7°)。PS-SiNP-平面の表面は、しわ形成された表面(UVO-収縮およびFS-収縮)と比較して、顕著に高いヘキサデカン接触角(55±3°)を明らかにした。ナノ粒子は、しわの凹状構造と比較して、低表面張力液体のためのリエントラントテクスチャおよびより効果的なキャシー状態を作り出す(20、23)。PS-SiNP-収縮試料で観察されたマイクロ構造とナノ構造の両方の組み合わせは、接触角が123±5°に達するような、撥油性の顕著な増加をもたらした。このタイプのオムニフォビシティは、超低表面張力(25.48mN/m(52))を有する最大70%のエタノールを用いても存在する。階層構造では、ナノ粒子の添加によりしわの凹テクスチャが変形し、マイクロ構造と比較して、表面張力のより低い液体への反発性を向上させることを可能にする。加えて、ナノ粒子とともにしわを有することは、液滴の下により高い割合の空気をもたらす。水とヘキサデカンの接触角測定から得られた発見は、階層構造が、マイクロ構造またはナノ構造表面と比較して水とヘキサデカンの接触角を高め、結果としてオムニフォビシティが改善されることを示している。
【0147】
自己洗浄およびアンチバイオファウリングのオムニフォビック表面
生物学的条件下にて、開発した表面の自己洗浄特性をさらに検証するために、各表面上の全ヒト血液の接触角を検査した。PS-SiNP-収縮(マイコおよびナノ構造表面)は、142±7°の高い接触角を維持した(
図4a)。これにより、階層構造の自己洗浄およびアンチバイオファウリングの挙動を予測する。
【0148】
加えて、反発性および接着性の測定値である表面の滑落角を測定した。
図4aに示すように、階層表面(PS-SiNP-収縮、PO-SiNP-収縮)について5°未満の滑落角を記録し、開発した表面上における水の液滴の接着性および移動性の低さを示した。低い滑落角(<5°)を有する階層表面から液滴が滑り落ちる能力は、しわの凹凸ならびにナノ粒子の存在に起因する(
図1c.vii、viii)。表面が傾斜するにつれて、表面の粗い性質により、液滴は順次小さな領域から外れていく(53)。これにより、より大きい表面で水の液滴と接触する対照群と比較して、より小さい接着力をもたらす。他のすべての対照群(
図4a)は、35°の滑落角を示したPOラップ(PO-平面)を除いて、滑落角を示さなかった。前進/後退接触角および得られる接触角ヒステリシスは、固体/液体界面積を低下させることにより、接触角ヒステリシスの低下をもたらすため、オムニフォビシティおよび反発性に関連する指標でもある(23、54)。PS-SiNP-収縮およびPO-SiNP-収縮にて観察された高い前進/後退接触角(約140°)および低い接触角ヒステリシス(約10°)(
図4c)は、これらの表面の低い滑落角(
図4c)およびはね返り挙動(
図4b)を可能にする。前進/後退接触角から計算された滑落角(PS-SiNP-収縮およびPO-SiNP-収縮の場合は2.5°および5.3°)は、測定された滑落角とよく一致している。低い接触角ヒステリシスおよび滑落角ならびに高い前進/後退接触角により、水が浮遊されたキャシー状態で保たれることが可能になり(37)、これは、自己洗浄、アンチファウリング特性を達成するのに関連している。PS-AuNP-収縮の表面もまた、5°未満の滑落角を示した。
【0149】
階層構造の特別なオムニフォビック性能を考慮して、これらの構造を、包装材料として一般的に使用される可撓性ポリオレフィンラップ(例えば、食品産業)上に実現させた。ポリスチレンと同様に、階層的に構造化されたポリオレフィンラップ(PO-SiNP-収縮)は、接触角154°を有する超撥水性、撥油性(ヘキサデカン接触角=124±2°)を示し、接触角144±5°を有する血液反発性を示した(
図4a)。さらに、材料が曲げられた場合、これらの表面は、曲げられていない試料と同等の血液接触角を示し、異なる形態因子下でもそれらのオムニフォビック挙動を示す。これらの発見は、可撓性表面に対して顕著なオムニフォビック性能を示しており、これは、多様な材料に容易に配置されるという利点を有している。
【0150】
血液付着アッセイを使用して、本明細書で開発した表面の反発性挙動を、血液が接触する医療デバイスおよびインプラントに関連する条件下にて評価した。このアッセイでは、表面を血液中に沈め、続いて水中で撹拌して、吸光度を測定することによって血液接着の程度を定量化した(
図5a)。この結果は、階層表面(PS-SiNP-収縮)が、元のポリスチレン表面(PS-平面およびPS-収縮)と比較して、血液付着を93%顕著に低下させることを明らかにした。さらに、PS-SiNP-平面およびFS-収縮の表面は、未処理試料と比較して、血液接着をそれぞれ57%および44%低下させた。これらを血液中で30分間インキュベートし、水により洗浄した後に、これらの表面もまた目視検査した(
図5b)。階層表面(PS-SiNP-収縮)の血液反発性は非常に明白であり、洗浄後も他のすべての表面は染色されたままであったが、階層表面には目に見える染色は含まれなかった。予想通り、これらの階層構造を可撓性POラップ上に作製することにより、同様の結果が得られた。階層POラップ(PO-SiNP-収縮)は、その平面(PO-平面)対照物と比較して、血液付着を85%低下させ、多様な材料上に配置できる可撓性表面を提供する。これらの実験は、オムニフォビシティの程度が血液反発性の程度を決定することを示し、階層表面の優れた反発性を裏付ける。
【0151】
PS-AuNP-収縮を使用した血液染色アッセイ(
図6a)では、表面をヘパリン入り血液中に沈め、続いてPBS中で撹拌して、吸光度を測定することによって血液接着の程度を定量化した(
図6a)。この結果は、階層表面(PS-AuNP-収縮)が、元のポリスチレン表面(PS-平面およびPS-収縮)と比較して、血液付着を90%顕著に低下させることを明らかにした。PS-FS-平面の表面は、血液接着の13%の増加を示し、これは、これらのクラスの表面の撥水性-撥水性相互作用に起因し、血液中に存在するタンパク質に対してそれらを付着させた可能性がある。さらに、PS-AuNP-平面の表面は、未処理試料と比較して、血液接着を29%低下させた。これらを血液中で30分間インキュベートし、水により洗浄した後に、これらの表面もまた目視検査した(
図6a)。階層表面(PS-AuNP-収縮)の血液反発性は非常に明白であり、洗浄後も他のすべての表面は染色されたままであったが、階層表面には目に見える染色は含まれなかった。表面の抗凝血特性を調査するために、それらをクエン酸塩添加全血液に供し、塩化カルシウムの導入によって凝固を開始した。各表面に付着した凝血塊の程度を、凝固アッセイの前後に表面を計量することによって検証した。
図6bに示されるように、階層構造の試料(PS-AuNP-収縮)は、これらのクラスの表面上の安定したキャシー状態により、凝血塊の付着を顕著に減少させた。一方で、平面およびナノ構造の表面は、凝血塊重量の増加を示した。血液細胞の蓄積および血液凝血塊の形成が顕著に少ない一方で、未改質表面は血液細胞の豊富な存在度を示したため、凝固アッセイはまた、
図6ciiに示されるSEMイメージによっても検証される。これらの実験は、オムニフォビシティの程度が血液反発性の程度を決定することを再び示し、階層表面の優れた反発性を裏付ける。
【0152】
血液付着の評価に加えて、様々な細菌接着アッセイを使用して、表面のアンチバイオファウリング挙動に対する開発した構造の効果を研究した(
図7)。Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、およびグラム陰性細菌、およびStaphylococcus aureus(S.aureus)、グラム陽性細菌のバイオフィルム形成を様々な表面上で評価し、マイクロ構造、ナノ構造、または階層構造がバイオフィルムの固着を低減するために顕著な効果を有するかどうかを調査した。P.aeruginosaおよびS.aureusは、それらが院内感染を引き起こし、薬剤耐性を発現し、それらのバイオフィルムの性質により様々な表面に付着するため、臨床的に関連性がある(4、55)。バイオフィルムの固着をシミュレーションするために、細菌の細胞外ポリマー物質(EPS)中の豊富な多糖類であるアルギン酸塩を使用したアッセイを実施した。未処理、フルオロシラン化、およびナノ粒子処理した表面はすべて、約同量のアルギン酸塩の固着を示し、約1の相対値を示しており、一方で、PS-AuNP-収縮およびPS-SiNP-収縮の表面は、そのアルギン酸塩付着において10倍超の低減を示した(
図8)(55、56)。バイオフィルムアッセイでは、表面を、バイオフィルム形成を促進する細菌懸濁液中に最初に懸濁し、クリスタルバイオレットを使用してそれらを染色し、クリスタルバイオレットを表面から脱着し、吸着測定を使用して、染色したバイオフィルムの量を定量化した(
図7a、b)。バイオフィルムアッセイから、階層構造が、S.aureusおよびP.aeruginosaの両方について、他の対照群と比較して、バイオフィルム形成を効果的に減少させることが明らかである(PS-平面と比較して約85%減少)。マイクロ構造(PS-FS-収縮)およびナノ構造(PS-SiNP-平面)の表面はまた、バイオフィルム形成を低減したが(S.aureusで66%および78%、P.aeruginosaで11%および62%)、それらは、バイオフィルムの減少を同じレベルで達成しなかった。血液付着アッセイにより観察されるように、アンチバイオファウリングは、オムニフォビシティと同じ傾向をたどる。理論により制限されるものではないが、これは、階層表面にキャシー状態が生じ、これらの表面上により多くのエアポケットおよびより少ないアンカー部位をもたらすことによって説明され得る。液体汚染物質と表面との間の相互作用の低減は、階層表面上のバイオフィルムの豊富な存在度および固着を低減し得る(3、4、7、57)。
【0153】
P.aeruginosaおよびS.aureusのバイオフィルムと階層表面との相互作用を視覚化するために、走査型電子顕微鏡検査(SEM)を、これらの表面上に形成された成熟バイオフィルム上で実施し、それらを平面のポリスチレン表面と比較した(
図7c)。これらのイメージは、未処理ポリスチレン表面(PS-平面)上の球状のS.aureus細菌の豊富な存在度および積み重ねを示すが、一方で階層テクスチャを加えると、付着したS.aureusの量が顕著に減少した(
図7c.ii)。加えて、桿菌であるP.aeruginosaのバイオフィルムは、未処理表面上では非常に明白であるが、しかしながら、これは階層(PS-SiNP-収縮)試料では顕著に減少した(
図7c.iv)。これらの発見は、定量的なクリスタルバイオレットアッセイと十分に一致し、階層試料のアンチバイオファウリング挙動を確認した。予想通り、階層構造が可撓性POラップの表面に実現されたとき、同じタイプのアンチバイオファウリング挙動が、バイオフィルムのSEMによって可視化された(
図9a.i~iv)。
【0154】
感染症の拡散の要因の1つは、細菌の介在表面への移動であり、これは、バイオフィルム生成または細菌のさらなる移動のためのニッチポイントとして機能するであろう。感染症の拡散を減少させるための表面の能力を評価するために、汚染された表面から清浄な表面への細菌の移動を定量化するようなタッチアッセイを設計した。このアッセイでは、GFP発現E.coliの培養物中に浸漬した寒天プラグを使用して、汚染されたヒト皮膚をシミュレーションした。平面および階層化可撓性ラップをこれらの寒天プラグと接触させ、これらの対応する蛍光を測定した(
図9b)。階層化ラップ(PO-SiNP-収縮)は、蛍光シグナルにおいて20倍の減少を示し、処理した表面に移動するE.coliが顕著に少ないことを示した。同様の実験を階層ポリスチレンの表面上で行い、平面表面と比較して処理した表面上の蛍光シグナルが15倍減少したことを示した。これらの結果は、これらの可撓性階層化ラップが、感染症を移動させる高いリスクをもたらす表面を覆うために保持されることが有望であることを示す。日常的な対象物への汚染を低減するための階層化ラップの適用性を実証するために、キーおよびペンを階層化ラップにより覆い、それらのアンチバイオファウリング性能を未処理のラップにより覆われた対象物と比較した(
図9c)。その後、ラップした対象物を、E.coli注入寒天プラグを用いたタッチアッセイに供し、細菌接着の程度を蛍光スキャナーによって評価した(
図9c)。高蛍光シグナルは、未処理のラップに対して観察され、それらの表面上にてGFP発現E.coliの量の増加を示した(
図9c.iii、v)。興味深いことに、階層化ラップにより覆われた対象物は、測定可能な蛍光シグナルをほとんどまたは全く示さなかった(
図9c.iv、vi)。加えて、細菌汚染の移動を停止させる表面の性能について調査した。この表面および対照表面をE.coli注入寒天プラグと「タッチ」させ、次いでヒトの指上にスタンプした。表面汚染レベルを評価するように設計されたハンドヘルド蛍光リーダーを使用して、階層表面および対照表面からヒト皮膚への細菌の移動をイメージングした(
図9dおよび9e)。これらのイメージは、ラップ内に階層構造を構築させることにより、汚染された表面から介在表面を通じたヒト皮膚への細菌の移動が顕著に減少することを明確に示している。階層化ラップが、歪み下で、異なる形態因子に適合しながら、それらの反発特性を保持していることも興味深いところである。
【0155】
階層オムニフォビック構造における平面親水性領域のパターン化
親水性パターンは、ベンチトップマスキング法(benchtop masking method)によって階層構造の表面に導入され、親水性ウェルは、
図10a.iに示されるように作製された。要約すると、ビニルマスクをポリスチレン表面上にパターン化し、続いて、方法セクションに記載されているような改質ステップによって進めた。ビニルのマスキングにより、結果として被覆領域がUVO処理に曝露されず、そのため、剛性層の形成を有しない。ビニルマスクはまた、その後のすべてのステップを通して基材上に残され、熱収縮の前に取り外される。この方法は、マスキングした領域下で平面形態を有する未処理ポリスチレン、および熱処理後の残りの表面の階層構造をもたらす(
図10a.i)。開発したウェルをH
2SO
4に曝露して、それらの親水性を高め、それらが、水の液滴、ならびに階層部位が水/抗体をはじいたことを示す蛍光染料(Cy5標識抗IL-6抗体、
図10a.iii)をデジタル化することを可能にした。パターン上の液滴の体積をさらに定量化して、ウェルからウェルへの一貫性を評価した。
図10bに示すように、体積は、ウェルの表面特性を変化させることによって制御され、H
2SO
4を用いてウェルを処理した場合に付着した水の量の増加を示した。また、比較的小さいエラーバーは、ウェルが、バイオセンシングアッセイを実施する際の関連因子である一定量の水を保持することを示す。
【0156】
パターン化された基材上のデジタル化された液滴の適用を実証するために、蛍光ベースのバイオセンシングアッセイを行った。このため、親水性ウェル上でのAPTES処理およびEDC-NHS化学によってIL-6アッセイを実施し、次いで、方法セクションに記載されるようなアッセイにおいて、溶液中にウェルを浸漬することによってIL-6アッセイを実施した。EDC-NHS化学を利用して、捕捉抗体を固定化し、IL-6の捕捉を可能にした。次いで、IL-6を、Cy5蛍光標識を有するストレプトアビジン-ビオチン系によって検出した。対照として、アッセイ中にIL-6を受けなかったブランク試料を含めた。次いで、蛍光強度を、Cy5チャネルを有する蛍光スキャナーによって測定した(
図10d)。
図10c、dに示されるように、ブランク溶液およびIL-6スパイク溶液の蛍光強度の間の有意な差は、デジタル化されたオムニフォビック表面が局所的検出および生物学的アッセイに使用され得ることを示す。
【0157】
本出願は、実施例を参照して記載されてきたが、特許請求の範囲は、実施例に記載される実施形態によって限定されるべきではなく、全体として記載と一致する最も広範な解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
【0158】
すべての刊行物、特許、および特許出願が、あたかもそれぞれの個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に、それら全体が参照により組み込まれると示さるがごとく、それら全体が同程度に参照により本明細書に組み込まれる。本出願における用語が、参照により本明細書に組み込まれる文献において異なる定義が見出される場合、本明細書に提供される定義は、その用語の定義として機能するものとする。
本出願において参照される全引用文献
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【国際調査報告】