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特表2022-537925B細胞リンパ腫の療法に使用するためのPI3K阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】B細胞リンパ腫の療法に使用するためのPI3K阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20220824BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 31/5386 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C07D519/00 CSP
A61P35/02
A61K31/5386
A61K9/48
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/69
A61K31/519
A61K31/4184
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573185
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 GB2020051582
(87)【国際公開番号】W WO2021001650
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】1909468.9
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511183940
【氏名又は名称】カルス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウォード, ペネロペ
【テーマコード(参考)】
4C072
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C072MM10
4C072UU01
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C084AA19
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB27
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC39
4C086CB06
4C086CB22
4C086DA43
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。この化合物、またはその薬学的に許容される塩は、PI3K阻害剤として有用であり、したがって、療法に有用である。特に、この化合物、またはその薬学的に許容される塩は、B細胞リンパ腫の治療に実用性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞リンパ腫の治療に使用するための化合物またはその薬学的に許容される塩であって、以下の構造を有する、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化7】
【請求項2】
B細胞リンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性眼内リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症のうちの1つ以上である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療に使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
そのコハク酸塩として提供される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
1日当たり1回または2回投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
1日当たり少なくとも200mgの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
1日当たり最大400mgの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
1日当たり50~400mg、好ましくは1日当たり200~400mg、より好ましくは1日当たり200mgの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
経口的に、好ましくは食物と共に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
カプセル形状で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
従来の第一選択治療、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)のうちの1つ以上を含むレジメンによる治療を既に受けている患者に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
イブルチニブなどのBTK阻害剤および/またはベネトクラクスなどのBCL2阻害剤を既に受けている患者に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
治療が、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を、28~35日周期で投与することを含み、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが、毎日または1日2回、3週間または4週間前記患者に投与され、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが1週間投与されない、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物、および薬学的に許容される賦形剤を含む、B細胞リンパ腫の治療に使用するための医薬組成物。
【請求項15】
B細胞リンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性眼内リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症である、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
B細胞リンパ腫が、B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症である、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、トラメチニブなどのMEK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)からなる群から選択される少なくとも1つの第2の薬剤を、療法における同時、連続または別個の使用のための組み合わせ調製物として含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記第2の薬剤が、ボルテゾミブ、LY2584702、イブルチニブおよびセルメチニブから選択される、請求項14~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記第2の薬剤が、p70S6K阻害剤、BTKおよびTECファミリー阻害剤ならびにMEK1阻害剤から選択される、請求項14~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
少なくとも4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくはコハク酸塩と、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、トラメチニブなどのMEK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤とを、療法における同時、連続または別個の使用のための組み合わせ調製物として含む、キット。
【請求項21】
患者のB細胞リンパ腫を治療または予防する方法であって、治療有効量の請求項1~13のいずれか一項で定義される少なくとも1つの化合物もしくは請求項14~19のいずれか一項で定義される医薬組成物を前記患者に投与すること、または請求項20で定義されるキットを使用することを含む、方法。
【請求項22】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性眼内リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症を治療または予防するための請求項21に記載の方法。
【請求項23】
B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症を治療または予防するための請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物が、1日当たり50~400mg、好ましくは1日当たり200~400mg、より好ましくは1日当たり200mgの総用量で投与される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物が、1日当たり1回または1日当たり2回投与される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物が、従来の第一選択治療、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)のうちの1つ以上を含むレジメンによる治療を既に受けている患者に投与される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
B細胞リンパ腫を治療する方法は、それを必要とする患者であり、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩、例えばコハク酸塩を投与することを含む、方法。
【請求項28】
進行性または転移性B細胞リンパ腫を治療することを必要とする患者にそれを行う方法であって、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記患者は、別の療法の以前の投与後にB細胞リンパ腫が進行している、方法。
【請求項29】
前記別の療法の以前の投与が、進行性または転移性B細胞リンパ腫の療法である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記別の療法の以前の投与が、別の化学療法剤の投与である、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
化学療法剤の前記以前の投与が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、約200mg~約400mg、好ましくは200mgの総1日用量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンを経口投与することを含む、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、1日当たり1回または2回、約200mg~約400mg、好ましくは200mgの4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンを経口投与することを含む、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、B細胞リンパ腫の組織学的または細胞学的診断を有する、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、28~35日周期を含み、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが、前記患者に毎日または2回、3週間または4週間にわたって投与され、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが1週間投与されない、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
治療有効量の、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、トラメチニブなどのMEK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)からなる群から選択される少なくとも1つの第2の薬剤を、前記患者に投与することをさらに含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物および前記少なくとも1つの第2の薬剤の前記投与が、別個、連続的または同時である、請求項21~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
B細胞リンパ腫の治療に使用するための化合物またはその薬学的に許容される塩であって、前記化合物が、以下の式を有し、
【化8】
前記化合物が、200mgの総1日用量として投与され、前記化合物が、従来の第一選択治療、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)のうちの1つ以上を含むレジメンによる治療を既に受けている患者に投与される、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞リンパ腫を治療または予防するための4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩の使用に関する。この化合物は、以下の化学構造を有する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)は、一連の細胞プロセスを制御するシグナル伝達経路のネットワークの調節に関与する脂質キナーゼのファミリーを構成する。PI3Kは、それらの基質特異性に基づいて、クラスI、II、およびIIIという3つの異なるサブファミリーに分類される。クラスIA PI3Kは、3つの調節サブユニットp85α、p85βまたはp55δのうちのいずれか1つと複合体化したp110α、p110β、またはp110δ触媒サブユニットを有する。クラスIA PI3Kは、受容体型チロシンキナーゼ、抗原受容体、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、およびサイトカイン受容体によって活性化される。クラスIA PI3Kは、主にホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PI(3,4,5)P)を生成し、これは、下流の標的AKTを活性化するセカンドメッセンジャーである。AKTの生物学的活性化の結果には、腫瘍細胞の進行、増殖、生存および成長が含まれ、また、PI3K/AKT経路が多くのヒトのがんで調節不全であることを示唆する重要な証拠が存在する。さらに、PI3K活性は、内分泌学、心血管疾患、免疫障害および炎症に関連してきた。PI3K-p110δは、免疫細胞および炎症細胞の動員および活性化に重要な役割を果たすことが確立されている。PI3K-p110δは多くのヒト腫瘍でも上方調節され、腫瘍細胞の増殖および生存に重要な役割を果たす。p110δ活性を調節することができる化合物は、がんにおいて重要な治療用途を有する。
【0003】
治療の進歩にもかかわらず、いくつかの血液がん、特にB細胞リンパ腫に対しては、現在利用可能な治療は依然として不十分なままである。患者の大部分は療法の最初の選択に応答を示すが、多くの患者は疾患の寛解を達成できず、一部の患者は疾患の再発を経験する。結果として、これらの障害を軽減するための新薬、特に血液がんの発生および進行に関連する分子標的を調節する薬剤の設計および開発がかなり必要とされている。
本発明の化合物は、WO2015/121657として公開された国際特許出願において特徴付けられ、かつ記載された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/121657号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
化合物(4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエン)への参照、または薬学的に許容される塩への参照を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0006】
化学構造が示される場合、構造の正確性は化合物名よりも優先される。
【0007】
本発明は、B細胞リンパ腫の治療に使用するための化合物またはその薬学的に許容される塩に基づき、化合物は、以下の構造を有する。
【化2】
【0008】
B細胞リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性眼内リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症のうちの1つ以上であり得る。一実施形態では、この化合物は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療に使用するためのものである。
【0009】
本明細書で使用される場合、薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸または塩基との塩である。薬学的に許容される酸には、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸などの無機酸、およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸などの有機酸の両方が挙げられる。化合物は、好ましくは、そのコハク酸塩として提供される。
【0010】
使用のための化合物は、好ましくは、1日当たり1回または2回投与される。
【0011】
好ましくは、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたは薬学的に許容される塩は、好ましくは水と共に経口投与され、好ましくは患者が食物を消費した後に投与される。好ましい実施形態では、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたは薬学的に許容される塩は、患者が食物を摂取した後1時間以内に、約240mLの水と共に投与される。この目的のために、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたは薬学的に許容される塩は、カプセル形状で投与され得る。
【0012】
経口投与の場合、化合物は、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒として投与され得る。本発明の好ましい医薬組成物は、錠剤およびカプセルである。
【0013】
本発明の化合物はまた、抗菌剤などの、患者の正常な代謝以外のプロセスによる物質の分解を低減する薬剤、または患者上もしくは患者内で生きている共生もしくは寄生生物中に存在し得、かつ化合物を分解することができるプロテアーゼ酵素の阻害剤と共に、製剤化され得る。
【0014】
経口投与用の液体分散液は、シロップ、乳濁液および懸濁液であり得る。
【0015】
懸濁液および乳濁液は、担体として、例えば、天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有し得る。
【0016】
使用するための化合物は、好ましくは1日当たり少なくとも50mg、より好ましくは1日当たり100mg、さらにより好ましくは1日当たり150mg、最も好ましくは1日当たり200mgの用量で投与される。
【0017】
使用するための化合物は、1日当たり最大600mg、より好ましくは1日当たり最大500mg、さらにより好ましくは1日当たり最大400mg、さらにより好ましくは1日当たり最大300mg、最も好ましくは1日当たり最大200mgの用量で投与することができる。
【0018】
使用するための化合物は、1日当たり50~400mg、好ましくは1日当たり200~400mg、より好ましくは1日当たり200mgの用量で投与することができる。
【0019】
使用するための化合物は、カプセル形状で投与することができる。
【0020】
使用するための化合物は、従来の第一選択治療、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)のうちの1つ以上を含むレジメンによる治療を既に受けている患者に有利に投与される。使用するための化合物は、イブルチニブイブルチニブなどのBTK阻害剤および/またはベネトクラクスなどのBCL2阻害剤を既に受けている患者に有利に投与され得る。
【0021】
一実施形態では、治療は、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を、28~35日周期で投与することを含み、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが、毎日または1日2回、3週間または4週間投与され、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが1週間投与されない。
【0022】
本発明はまた、B細胞リンパ腫の治療に使用するための医薬組成物であって、上記で定義された4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンおよび薬学的に許容される賦形剤の実施形態を含む、医薬組成物を提供する。
【0023】
好ましくは、化合物は、少なくとも60%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、さらにより好ましくは99%鏡像異性的に純粋である。
【0024】
薬学的賦形剤は、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウムおよびラウリル硫酸ナトリウムのうちの1つ以上を含み得る。一実施形態では、医薬製剤は、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウムおよびラウリル硫酸ナトリウム、ならびにコハク酸塩としての4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンからなる。
【0025】
一実施形態では、医薬組成物は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性、リンパ腫、有毛細胞白血病、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性眼内リンパ腫、またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症のうちの1つ以上の治療に使用するためのものである。有利には、医薬組成物は、B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療に使用するためのものである。
【0026】
医薬組成物は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、トラメチニブなどのMEK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)からなる群から選択される少なくとも1つの第2の薬剤を、療法における同時、連続または別個の使用のための組み合わせ調製物として含み得る。好ましくは、第2の薬剤は、p70S6K阻害剤、BTKおよびTECファミリー阻害剤ならびにMEK1阻害剤から選択される。
【0027】
本発明はまた、少なくとも4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくはコハク酸塩、およびシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、トラメチニブなどのMEK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を、療法における同時、連続または別個の使用のための組み合わせ調製物として含む、キットを提供する。
【0028】
本発明はまた、患者のB細胞リンパ腫を治療または予防する方法であって、治療有効量の上記で定義される少なくとも1つの化合物もしくは上記で定義される医薬組成物を患者に投与すること、または上記で定義されるキットを使用することを含む、方法を提供する。
【0029】
この方法は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性眼内リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症を治療または予防するためのものであり得る。有利には、この方法は、B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症を治療または予防するためのものである。
【0030】
この方法は、化合物が、少なくとも1日当たり50mg、より好ましくは1日当たり100mg、さらにより好ましくは1日当たり150mg、最も好ましくは1日当たり200mgの用量で投与されることを提供し得る。
【0031】
この方法は、化合物が、1日当たり最大600mg、より好ましくは1日当たり最大500mg、さらにより好ましくは1日当たり最大400mg、さらにより好ましくは1日当たり最大300mg、最も好ましくは1日当たり200mgの用量で投与されることを提供し得る。
【0032】
この方法は、化合物が、1日当たり50~400mg、好ましくは1日当たり200~400mg、より好ましくは1日当たり200mgの用量で投与されることを提供し得る。
【0033】
使用するための化合物は、1日当たり1回、1日当たり2回、1日当たり3回、または1日当たり4回投与され得る。好ましくは、化合物は、1日当たり1回または2回投与され、より好ましくは、化合物は、1日当たり1回投与される。
【0034】
この方法は、化合物が、従来の第一選択治療、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)のうちの1つ以上を含むレジメンによる治療を既に受けている患者に投与されることを提供し得る。使用するための化合物は、イブルチニブイブルチニブなどのBTK阻害剤および/またはベネトクラクス療法などのBCL2阻害剤を既に受けている患者に有利に投与することができる。
【0035】
本発明はまた、B細胞リンパ腫を治療する方法は、それを必要とする患者であり、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩、例えばコハク酸塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0036】
本発明はまた、進行性または転移性B細胞リンパ腫を治療することを必要とする患者にそれを行う方法であって、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、患者は、別の療法の以前の投与後にB細胞リンパ腫が進行している、方法を提供する。
【0037】
この方法は、別の療法の以前の投与が、進行性または転移性B細胞リンパ腫の療法であることを提供し得る。
【0038】
この方法において、必要に応じて、別の療法の以前の投与は、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)のうちの1つ以上を含むレジメンによる治療などの別の化学療法剤の投与である。使用するための化合物は、イブルチニブイブルチニブなどのBTK阻害剤および/またはベネトクラクス療法などのBCL2阻害剤を既に受けている患者に有利に投与され得る。
【0039】
この方法では、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、約200mg~約400mg、好ましくは200mgの総1日用量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンを経口投与することを含み得る。
【0040】
この方法では、有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、1日1回または2回、約200mg~約400mg、好ましくは200mgの4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンを経口投与することを含み得る。
【0041】
好ましくは、患者は、B細胞リンパ腫の組織学的または細胞学的診断を有する。
有効量の4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、28~35日周期での投与を含み得、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが、毎日または2回、3週間または4週間患者に投与され、4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンが1週間投与されない。
【0042】
この方法は、治療有効量の、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはクロラムブシルなどの従来の細胞毒性剤、リツキシマブ、オビヌツズマブまたはイブリツモマブなどの薬物コンジュゲートを有するかまたは有しないCD20抗体、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、イブルチニブなどのBTK阻害剤、トラメチニブなどのMEK阻害剤、レナリドミドなどの免疫調節性イミド薬、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、放射線療法、免疫チェックポイントを調節する薬剤を含む抗腫瘍免疫を調節する薬剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどのPD(L)1標的剤、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤、OX40、LAG3、TIM3または他の免疫調節分子を標的とする薬剤)、二重特異性T細胞誘導療法、または細胞療法(例えば、養子T細胞療法、CAR-T療法)からなる群から選択される少なくとも1つの第2の薬剤を、患者に投与することをさらに含み得る。
【0043】
化合物および少なくとも1つの第2の薬剤の投与は、別個、連続的または同時であり得る。
【0044】
本発明はまた、B細胞リンパ腫の治療に使用するための化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、化合物は、以下の式を有し、
【化3】
化合物は、200mgの総1日用量として投与され、化合物は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンおよび/またはリツキシマブ療法のうちの1つ以上による治療を既に受けた患者に投与される。
【実施例
【0045】
臨床的カットオフ日に、再発または難治性のB細胞リンパ腫を有する21人の患者が、本研究において治療を受けた。6人の患者が登録されて1日当たり50mgで治療され、3人の患者が1日当たり100mgで治療され、7人の患者が1日当たり200mg、かつ、5人の患者が1日当たり400mgで治療された。
【0046】
登録された最初の患者は、50mgの4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエンでの治療を開始した。臨床的カットオフ日までの各コホートの各患者の進行を、表1および表2にまとめる。
【表1】
【表2】
【0047】
これまでの研究における有効性の結果の要約を表3に示す。対象01004、01013、01018および01020で完全奏効が認められ、対象01010、01011および01017で部分奏効、ならびに対象01006、01007、01009および01019で安定した疾患が報告された。応答データが報告された1日当たり200mg以上の用量で治療を開始する対象の間で、ORRは50%(6/12)である。少なくとも部分奏効を達成した患者には、緩徐進行型のNHL、MCL、およびDLBCLの患者が含まれていた。したがって、この薬剤が、以前の治療後に再発したリンパ腫の単剤療法として有効であるという証拠が存在する。
【0048】
【表3】
【0049】
研究からの画像形成の独立レビューが、ABX-CROによって実行された。この独立レビューは、研究現場(MD Anderson Cancer Center;MDACC)の評価とほぼ一致していた。独立レビューでは、単一の対象が異なって分類された(対象01018、MDACCによる完全奏効およびABX-CROによる部分奏効として分類;表4)。
【0050】
【表4】
【0051】
本発明の化合物の合成
【化4】
試薬および条件:1)KCO、グリコール酸エチル、DMF、115℃、2)(i)クロロスルホニルイソシアネート、CHCl2、0~10℃、次いで室温(ii)水、75℃(iii)NaOH、最高温度40℃、3)POCl、N,N-ジメチルアニリン、107℃、4)モルホリン、MeOH、室温、5)N,N-ジメチルアクリルアミド、PdCl(PPh、NaOAc、DMF、110℃、6)NaIO、OsO、THF、水、室温、7)インドール-4-ボロン酸ピナコールエステル、PdCl(PPh、炭酸ナトリウム、ジオキサン、水、102℃。
【0052】
i.エチル-3-アミノ-5-ブロモフロ[2,3-b]ピリジン-2-カルボキシレート
(g)下の10Lフラスコに、5-ブロモ-2-クロロピリジン-3-カルボニトリル(435g、2.0mol、1当量)、DMF(2790mL)および炭酸カリウム(553g、4.0mol、2当量)を添加した。これに続いて、グリコール酸エチル(208.2mL、2.2mol、1.1当量)を添加した。反応混合物を、一晩、115℃に加熱した。完了したら、反応混合物を室温に冷却し、水(13.1L)を添加し、これにより沈殿物が形成された。混合物を20分間撹拌し、次いで濾過した。得られた褐色の固体を50℃で乾燥し、EtO:ヘプタン(9:1、2.8L)中でスラリー化し、濾過して405.6gを得た。TBME(4.5L)を使用したソックスレー抽出によるさらなる精製により、生成物を黄色の固体(186g、34%)として得た。この手順を2回繰り返した。
【0053】
H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.53(d,J=2.0Hz,1H),8.07(d,J=2.0Hz,1H),5.00(br.s.,2H),4.44(q,J=7.0Hz,2H),1.44(t,J=7.0Hz,3H)。
【0054】
MS(ES)309(100%、[M+Na])、307(100%、[M+Na])。
【0055】
ii.12-ブロモ-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),10、12-テトラエン-4,6-ジオン
CHCl(5.5L)に溶解したエチル-3-アミノ-5-ブロモフロ[2,3-b]ピリジン-2-カルボキシレート(239.0g、0.84mol、1当量)に、クロロスルホニルイソシアネート(87.6mL、1.0mol、1.2当量)を0~10℃で滴加した。得られた反応物を30分間撹拌し、ストリッピングして乾固し、得られた固体を微粉末に粉砕した。固体に水(5.5L)を添加し、懸濁液を75℃で1時間加熱した。室温まで冷却した後、固体のNaOH(335g、8.4mol、10当量)を添加し、反応物を発熱させた(最高温度40℃)。反応物を0~10℃に冷却し、5M HCl(約1L)を使用してpHを5~6に調整した。反応物を30分間撹拌し、次いで濾過した。固体を水(2.3L)で洗浄し、引っ張って乾燥させた。さらに40℃の真空オーブン内で乾燥させて、生成物を褐色の固体(193g、76%)として得た。この手順を2回繰り返した。
【0056】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ:12.01(br.s.,1H),11.58(br.s,1H),8.72(d,J=2.0Hz,1H),8.59(d,J=2.0Hz,1H)。
【0057】
MS(ES)282(100%、[M+H])。
【0058】
iii.12-ブロモ-4,6-ジクロロ-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),3,5,10,12-ヘキサエン
12-ブロモ-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),10,12-テトラエン-4,6-ジオン(387g、1.27mol、1当量)にPOCl(6070mL)およびN,N-ジメチルアニリン(348mL、2.8mol、2.2当量)を添加した。混合物を107℃で10時間加熱した。一旦室温に冷却すると、トルエン(3x3.9L)を用いた真空共沸法で溶媒を除去した。得られた残留物を、CHCl(12.76L)と水(3.9L)との間で分配し、相を分離した。有機相を水(2x3.9L)で洗浄した。合わせた水溶液を、CHCl(7.7L)で逆抽出し、合わせた有機物を、MgSOで乾燥し、濾過し、ストリッピングして、生成物を褐色の固体として得た(429g、約定量)。
【0059】
H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.78(d,J=2.5Hz,1H),8.72(d,J=2.5Hz,1H)。
【0060】
iv.12-ブロモ-4-クロロ-6-(モルホリン-4-イル)-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),3、5、10、12-ヘキサエン
MeOH(8588mL)中の12-ブロモ-4,6-ジクロロ-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),3,5,10,12-ヘキサエン(419.3g、1.32mol、1当量)に、モルホリン(259mL、2.90mol、2.2当量)を室温で添加した。2時間撹拌した後、水(0.8L)を添加した。次いで、それを0~5℃に冷却し、さらに30分間撹拌した。得られた固体を、濾過し、水(5.2L)で洗浄し、引っ張って乾燥させた。CHCl/EtOAc(1:0~9:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによるさらなる精製により、所望の生成物(419g、84%)を得た。
【0061】
H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.66(d,J=2.0Hz,1H),8.62(d,J=2.0Hz,1H),4.07-4.21(m,4H),3.85-3.91(m,4H)。
【0062】
MS(ES)393(100%、[M+Na])、391(80%、[M+Na])。
【0063】
v.(2E)-3-[4-クロロ-6-(モルホリン-4-イル)-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),3、5、10、12-ヘキサエン-12-イル]-N,N-ジメチルプロプ-2-エナミド
12-ブロモ-4-クロロ-6-(モルホリン-4-イル)-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),3,5,10,12-ヘキサエン(60g、0.15mol、1当量)に、N,N-ジメチルアクリルアミド(16.7mL、0.15mol、1当量)、PdCl(PPh(3.4g、4.5mmol、0.03当量))およびDMF(1.2L)中のNaOAc(40g、0.45mol、3当量)を添加した。反応物を110℃で7時間加熱した。このプロセスを3回繰り返し、バッチを合わせた。一旦室温まで冷却すると、溶媒を真空で除去し、得られた残留物をCHCl(6.5L)と水(5.5L)との間で分配した。相を分離させ、水相をCHCl(2x4L)で抽出した。合わせた有機物をブライン(2x4L)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、ストリッピングした。得られた固体を、EtOAc/ヘプタン(1:1、0.8L)中で30分間スラリー化し、濾過し、洗浄し、EtOAc/ヘプタン(1:1、2×450mL)で洗浄した。さらに40℃の真空オーブン内で乾燥させると、所望の生成物をオレンジ色の固体(203.0g、86%)として得た。
【0064】
H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.70(s,2H),7.82(d,J=15.6Hz,1H),7.07(d,J=15.6Hz,1H),4.11-4.19(m,4H),3.85-3.93(m,4H),3.22(s,3H),3.11(s,3H)。
MS(ES)388(100%、[M+H])。
【0065】
vi.4-クロロ-6-(モルホリン-4-イル)-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),3,5,10,12-ヘキサエン-12-カルバルデヒド
(2E)-3-[4-クロロ-6-(モルホリン-4-イル)-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9)、2(7),3,5,10,12-ヘキサエン-12-イル]-N,N-ジメチルプロプ-2-エナミド(124.0g、0.39mol、1当量)を65℃でTHF(12.4L)に溶解した。一旦35℃に冷却すると、水(4.1L)、NaIO(205.4g、1.17mol、3当量)およびOsOBuOH中2.5重量%、80.3mL、2%)を添加した。混合物を室温で60時間撹拌した。反応物を0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、次いで濾過した。固体を水(545mL)で洗浄し、引っ張って乾燥させた。粗生成物をさらに2つのバッチ(2×118.3gスケール)と組み合わせ、水(6.3L)中、室温で30分間スラリー化した。固形物を濾過し、水(1.6L)で洗浄し、引っ張って乾燥させた。真空オーブン内でさらに乾燥させることにより、所望の生成物をピンク色の固体(260g、88%)として得た。
【0066】
H NMR(400MHz,CDCl:MeOD,9:1)δ:10.13(s,1H),9.04(d,J=2.0Hz,1H),8.91(d,J=2.0Hz,1H),3.99-4.13(m,4H),3.73-3.84(m,4H)。
【0067】
MS(ES)351(100%、[M+MeOH+H])。
【0068】
vii.4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2,4,6,10,12-ヘキサエン-12-カルバルデヒド
4-クロロ-6-(モルホリン-4-イル)-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロへ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(9),2(7),3,5,10,12-ヘキサエン-12-カルバルデヒド(164.4g、0.52mol、1当量)に、ジオキサン(16.4L)/水(5.8L)中のインドール-4-ボロン酸ピナコールエステル(376.0g、1.55mol、3当量)、PdCl(PPh(72.0g、0.10mol、2当量)および炭酸ナトリウム(110.2g、1.04mol、2当量)を添加した。反応混合物を1時間還流した。その後、反応混合物を60~70℃に冷却した。水(9.8L)、ブライン(4.9L)およびEtOAc(9.5L)を添加した。相を分離し、水相を、60~65℃で、EtOAc(3x9.5L)で抽出した。合わせた有機物を、MgSOで乾燥させ、濾過し、ストリッピングした。得られた固体を、CHCl(4.75L)中で30分間スラリー化し、濾過し、CHCl(3×238mL)で洗浄し、引っ張って乾燥させた。40℃の真空オーブン内でさらに乾燥させて、中間体Xを黄色の固体(135.7g、66%)として得た。
【0069】
H NMR(300MHz,CDCl)δ:11.27(br.s,1H),10.26(s,1H),9.16(d,J=2.3Hz,1H),9.11(d,J=2.3Hz,1H),8.18(d,J=7.5Hz,1H),7.58-7.67(m,2H),7.49(t,J=2.8Hz,1H),7.23(t,J=7.7Hz,1H),4.08-4.16(m,4H),3.83-3.90(m,4H)。
【0070】
MS(ES)432.0(100%、[M+MeOH+H])。
【0071】
4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエン(A)
【化5】
【0072】
無水CHCl(150mL)中の中間体X(7.00g、17.53mmol、1当量)、(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン塩酸塩(7.13g、52.58mmol、3当量)およびNaOAc(4.31g、52.58mmol、3当量)の懸濁液に、NaBH(OAc)(7.43g、35.06mmol、2当量)を添加した。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を、1N NaOH(100mL)で分液し、CHCl(3x200mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、ブライン(50mL)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥させ、溶媒を真空中で除去した。EtOAc/MeOH(1:0-7:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により、生成物A(本発明の化合物)を白色の固体(6.02g、71%)として得た。
【0073】
H NMR(300MHz,CDCl)δ:8.65(d,J=2.1Hz,1H),8.58(d,J=2.1Hz,1H),8.37(br.s.,1H),8.24(dd,J=7.5,0.9Hz,1H),7.62(td,J=2.6,0.8Hz,1H),7.53(d,J=8.1Hz,1H),7.37-7.41(m,1H),7.31-7.37(m,1H),4.47(s,1H),4.22-4.30(m,4H),4.18(d,J=8.1Hz,1H),3.98(d,J=2.3Hz,2H),3.91-3.97(m,4H),3.70(dd,J=7.9,1.7Hz,1H),3.53(s,1H),2.94(dd,J=10.0,1.5Hz,1H),2.64(d,J=10.2Hz,1H),1.97(dd,J=9.8,1.9Hz,1H),1.80(dt,J=9.8,1.1Hz,1H)。
【0074】
MS(ES)483.1(100%、[M+H])。
【0075】
4-(1H-インドール-4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-12-[(1S,4S)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-イルメチル]-8-オキサ-3,5,10-トリアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3、5、9、11-ヘキサエン;コハク酸(AS)
【化6】
化合物A(100.0グラム、207.2mmol)を、DCM(1.0L、10容量)およびEtOH(500mL、5容量)の混合物に溶解させた。溶液を、洗浄したP4フリットで濾過し、フリットをMC/EtOH 2:1(300mL、0.3容量)で洗浄した。別の容器で、コハク酸(26.92グラム、228.0mmol、1.10当量)をエタノール(1.0L、10容量)に溶解させた。溶液をP4フリットで濾過し、フリットをエタノール(200mL、2容量)で洗浄した。化合物Aの溶液を、洗浄した反応器に入れ、大気圧で13容量(Tend=41℃)に濃縮した。
【0076】
1.EtOH(5容量)を添加し、大気圧で蒸留した(Tend=49℃)。濃縮中に沈殿が始まった。
【0077】
2.EtOH(5容量)を添加し、大気圧で蒸留した(Tend=73℃)。
【0078】
3.追加の溶媒を除去した(Tend=75℃)。
【0079】
4.Milli-Q水(100mL、1容量)を添加し、T=76℃になるまで蒸留を続けた。
【0080】
コハク酸の濾過溶液を、化合物Aのエタノール中懸濁液に還流下で投入し、続いてmilli-Q水(50mL、0.5容量)を加え、その後、追加のmilli-Q水を添加した(1容量)。溶媒をゆっくりと蒸留しながら、懸濁液を5時間加熱還流した。次いで、懸濁液を室温まで冷却し、±10時間撹拌した。生成物を濾別し、EtOH(4×1容量)で洗浄した。フィルターケーキを、21時間、50℃で、真空オーブン内で、フィルター上で乾燥させて、生成物AS(本発明の化合物のコハク酸塩)を白色~淡黄色の固体として得た。収量:119.05グラム=198.2mmol=95.7%。
【0081】
H NMR(400MHz,DMF-d7)δ:11.32(br.s,1H),8.67(s,2H),8.29(d,J=7.4Hz,1H),7.70(m,1H),7.64(d,J=7.4Hz,1H),7.58(m,1H),7.28(t,J=7.4Hz,1H),4.39(m,1H),4.22(m,4H),4.04(m,3H),3.94(m,4H),3.61(m,2H),2.87(m,1H),2.57(m,5H),1.69(m,1H),1.51(m,1H)。
【0082】
MS(ES)483.2(100%、[M+H])。
【国際調査報告】