IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司の特許一覧

特表2022-537926負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
<>
  • 特表-負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池 図1
  • 特表-負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池 図2
  • 特表-負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20220824BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573201
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2021096485
(87)【国際公開番号】W WO2021239063
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202010470772.7
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ハイフイ
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ジュンフイ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,タオ
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュエキン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA00
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB29
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA14
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本出願は、負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池を提供する。負極材料は、第1グラファイトコアと、第1グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、複合被覆層が第1グラファイトコアの表面に形成された第2グラファイト内層と、第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、第2グラファイト内層が微結晶グラファイトである。調製方法は、第1グラファイトと第2グラファイトとを混合して被覆処理を行い、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトを得るステップと、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得るステップとを含み、第2グラファイトが微結晶グラファイトである。本出願に係る負極材料は、複合被覆層における第2グラファイト内層と無定形炭素外層との協働作用を利用することにより、容量が高く、不可逆容量が低く、出力性能が優れる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1グラファイトコアと、前記第1グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、前記複合被覆層が前記第1グラファイトコアの表面に形成された第2グラファイト内層と、前記第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、前記第2グラファイト内層が複数の微結晶グラファイトを含む
ことを特徴とする負極材料。
【請求項2】
前記第1グラファイトコアは、
a.前記第1グラファイトコアが、天然グラファイトを含むこと、
b.前記第1グラファイトコアが、球形化された天然グラファイトであること、
c.前記第1グラファイトコアのメジアン径が2.0μm~30.0μmであること、
d.前記天然グラファイトの粉体タップ密度が0.4g/cm~1.0g/cmであること、
e.前記天然グラファイトにおける固定炭素の含有量(質量%)が99.9%以上であること、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記微結晶グラファイトは、
a.前記微結晶グラファイトの少なくとも一部が前記第1グラファイトコア内に嵌入されていること、
b.第1グラファイトコアのメジアン径と前記微結晶グラファイトのメジアン径との比が5:1~50:1であること、
c.前記微結晶グラファイトのメジアン径が0μm~2μmであり、且つ0μmを含まないこと、
d.前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量が99.9%以上であること、
e.前記微結晶グラファイトの粉体タップ密度が0g/cm~0.5g/cmであり、且つ0g/cmを含まないこと、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極材料。
【請求項4】
a.前記負極材料のメジアン径が2μm~32μmであり、且つ2μmを含まないこと、
b.前記負極材料の比表面積が0.5m/g~20.0m/gであること、
c.前記負極材料の粉体タップ密度が0.5g/cm~1.3g/cmであること、
d.前記複合被覆層の厚さが0μm~5μmであり、且つ0μmを含まないこと、
e.前記無定形炭素外層の厚さが0nm~500nmであり、且つ0nmを含まないこと、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の負極材料。
【請求項5】
第1グラファイトと第2グラファイトとを混合して被覆処理を行い、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトを得るステップと、
第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得るステップと、を含み、
前記第2グラファイトが微結晶グラファイトである
ことを特徴とする負極材料の調製方法。
【請求項6】
a.前記微結晶グラファイトの少なくとも一部が前記第1グラファイト内に嵌入されること、
b.前記第1グラファイトが球形化された天然グラファイトであること、
c.前記第1グラファイトのメジアン径が2.0μm~30.0μmであること、
d.前記第1グラファイトが球形化された天然グラファイトであり、前記天然グラファイトにおける固定炭素の含有量(質量%)が99.9%以上であること、
e.第1グラファイトのメジアン径と前記微結晶グラファイトのメジアン径との比が5:1~50:1であること、
f.前記微結晶グラファイトのメジアン径が0μm~2μmであり、且つ0μmを含まないこと、
g.前記負極材料のメジアン径が2μm~32μmであり、且つ2μmを含まないこと、
h.前記負極材料の比表面積が0.5m/g~20.0m/gであること、
i.前記負極材料の粉体タップ密度が0.5g/cm~1.3g/cmであること、
j.前記複合被覆層の厚さが0μm~5μmであり、且つ0μmを含まないこと
の条件のa~jの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
第1グラファイトと第2グラファイトとを混合して被覆を行う前に、前記方法は、
酸性水溶液を用いて微結晶グラファイトに対して、前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量を99.9%以上にするように精製することをさらに含む
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項8】
微結晶グラファイトに対して精製するステップは、
微結晶グラファイトに対して、微結晶グラファイト顆粒のメジアン径を0μm~2μm且つ0μmを含まない範囲に収めるように粉砕処理を行うことと、
酸性水溶液を用いて前記微結晶グラファイトに対して、前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量を99.9%以上にするように精製することと、を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
a.前記酸性水溶液における酸が無機酸であること、
b.前記酸性水溶液における酸が無機酸であり、前記無機酸がHCl、HF、HSO及びHNOのうちの少なくとも1種を含むこと、
の条件のa~bの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の調製方法。
【請求項10】
a.前記第1グラファイトと前記第2グラファイトとの質量比が(80~100):(0~20)であり、且つ第2グラファイトの質量が0ではないこと、
b.前記第1グラファイトと前記第2グラファイトとの質量比が(90~100):(1~10)であること、
c.融合機を利用して被覆処理を行い、前記融合機の回転速度が500r/min~3000r/minであること、
d.融合機を利用して被覆処理を行い、前記融合機のカッター間の間隔幅が0.01cm~0.5cmであること、
e.前記被覆処理の時間が10min~120minであること、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の調製方法。
【請求項11】
第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得るステップは、
第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと無定形炭素前駆体とを混合し、保護性雰囲気下で炭化処理を行い、負極材料を得ることを含む
ことを特徴とする請求項5~10のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
a.前記第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと前記無定形炭素前駆体との質量比が(80~100):(0~20)であり、且つ無定形炭素前駆体の質量が0ではないこと、
b.前記第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと前記無定形炭素前駆体との質量比が(80~100):(2~20)であること、
c.前記無定形炭素前駆体が、ピッチ及び/又は樹脂を含むこと、
d.前記無定形炭素前駆体がピッチを含み、前記ピッチがコールタールピッチ、石油ピッチ、改質ピッチ及び中間相ピッチのうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記無定形炭素前駆体が樹脂を含み、前記樹脂がフェノール樹脂、エポキン樹脂及びフルフラール樹脂のうちの少なくとも1種を含むこと、
f.前記混合の時間が5min以上であること、
g.前記保護性雰囲気の気体が、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
h.前記炭化処理の温度が800℃~1400℃であること、
i.前記炭化処理の時間が1h~72hであること、
j.前記炭化処理の昇温速度が20.0℃/min以下であること、
の条件のa~jの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得た後、前記方法は、
前記負極材料に対して、前記負極材料のメジアン径を2.0μm~30.0μmに収めるように破砕、篩分及び消磁を行うことをさらに含む
ことを特徴とする請求項5~12のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項14】
微結晶グラファイトを取って、固定炭素含有量を99.9%以上にするように酸性水溶液を用いて精製するステップと、
天然グラファイトと前記微結晶グラファイト粉末とを(90~100):(1~10)の質量比で混合し、10min~120minの被覆処理を行い、微結晶グラファイトにより被覆された天然グラファイトを得るステップと、
前記微結晶グラファイトにより被覆された天然グラファイトと無定形炭素前駆体とを(80~100):(2~20)の質量比で混合し、保護性ガス雰囲気下で、1.0℃/min~5.0℃/minの昇温速度で800℃~1400℃まで昇温させ、1h~24hの炭化処理を行い、前記負極材料を得るステップと、を含む
ことを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか1項に記載の負極材料又は請求項5~14のいずれか1項に記載の調製方法で調製できた負極材料を含む
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月28日に中国専利局に提出された、出願番号が2020104707727であり、名称が「複合被覆負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池」である中国出願に基づいて優先権を主張し、そのすべての内容が、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、負極材料の技術分野に属し、負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、作動電圧が高く、サイクル使用寿命が長く、環境にやさしく、迅速に充放電可能などの面での優れた性能を有し、製造コストもますます低減しているため、3C(デジモノ)製品、動力装置、エネルギー貯蔵装置などの分野で応用がますます広くなる。現在、市販のリチウムイオン電池は主に黒鉛系負極材料を採用し、電源、マイルドハイブリッド自動車、電動工具などの起動、停止に対して、リチウムイオン電池が高レート充放電の性能が求められるため、負極材料により高い出力性能が求められる。従来技術では、一般的に人造黒鉛又はハードカーボン材料を高出力負極材料として採用していたが、人造黒鉛又はハードカーボンには、エネルギー密度が低く、コストが高いデメリットを有する。
【0004】
従来の1種の高出力炭素被覆人造黒鉛負極材料は、石炭系生コークスを原料として、改質熱処理及び常温黒鉛化処理を行ったあと、さらにピッチによる被覆改質を行って得た負極材料製品であり、反応抵抗がより小さくて材料の低温性能及び出力特性が向上したが、該方法で調製できた人造黒鉛負極材料は、電力密度が低く、コストが比較的に高い。
【0005】
もう1種のハンバーガー構成を有する複合被覆型グラファイト負極材料は、精製、球状化された天然グラファイトをコアとし、顆粒表面に機械製炭微粒子が結着される複合被覆構造を有する材料である。製造プロセスとして、まず、コーキング値の低い改質ピッチを用いて、天然グラファイトコアの表面に対して被覆処理を行って該材料の「核」を調製し、そして、機械製炭微粒子及びコーキング値の高い改質ピッチを加え、高速分散造粒を経て「核」部分を包み、その微視的形態が「ハンバーガー」に類似し、最後に、熱処理を経て複合被覆型グラファイト負極材料を得る。しかしながら、該方法で調製できた人造黒鉛負極材料は、電力密度が低く、コストが比較的に高い。
【0006】
このため、出力性能が優れ、エネルギー密度が高く、コストが安価で、将来の応用可能性が期待されている負極材料の開発が急務である。
【発明の概要】
【0007】
従来技術の上記問題に対して、本出願は、負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池を提供する。本出願に係る負極材料は、容量が高く、初回クーロン効率が高く、レート性能がよく、出力性能が優れ、調製プロセスが簡単で、コストが安価である。
【0008】
上記の目的を達成するため、本出願は、下記の技術案を用いる。
【0009】
第1局面において、本出願は、負極材料を提供する。前記負極材料は、第1グラファイトコアと、前記第1グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、前記複合被覆層が前記第1グラファイトコアの表面に形成された第2グラファイト内層と、前記第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、前記第2グラファイト内層が複数の微結晶グラファイトを含む。
【0010】
上記の案において、本出願に係る負極材料は、主に複合被覆層における第2グラファイト内層と無定形炭素外層との共働作用を利用することにより、複合被覆負極材料は、容量が高く、不可逆容量が低く、出力性能が優れる。第2グラファイトが微結晶グラファイトである場合、内層の微結晶グラファイトと外層の無定形炭素との共働作用の効果がよく、内層の微結晶グラファイトの1g当たりの容量が比較的に高いので、被覆層の1g当たりの容量を向上させることができ、外層の無定形炭素の不可逆容量が低いので、被覆層の初回効率を向上させることができる。微結晶グラファイトと無定形炭素とが複合した被覆層は、単一の無定形炭素被覆層に対して、より高い比容量とより高い無秩序度を有するとともに、単一被覆層で不可逆容量が高く又は1g当たりの容量が低いなどの欠陥を克服し、天然グラファイトの出力性能を大幅に向上させることができる。
【0011】
第1局面において、選択可能な実施形態として、前記第1グラファイトコアは、天然グラファイトを含む。前記第1グラファイトコアは、
a.前記第1グラファイトコアが、天然グラファイトを含むこと、
b.前記第1グラファイトコアが、球形化された天然グラファイトであること、
c.前記第1グラファイトコアのメジアン径が2.0μm~30.0μmであること、
d.前記天然グラファイトの粉体タップ密度が0.4g/cm~1.0g/cmであること、
e.前記天然グラファイトにおける固定炭素の含有量(質量%)が99.9%以上であること、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす。
【0012】
第1局面において、選択可能な実施形態として、前記微結晶グラファイトは、
a.前記微結晶グラファイトの少なくとも一部が前記第1グラファイトコア内に嵌入されていること、
b.前記第1グラファイトコアのメジアン径と前記微結晶グラファイトのメジアン径との比が5:1~50:1であること、
c.前記微結晶グラファイトのメジアン径が0μm~2μmであり、且つ0μmを含まないこと、
d.前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量が99.9%以上であること、
e.前記微結晶グラファイトの粉体タップ密度が0g/cm~0.5g/cmであり、且つ0g/cmを含まないこと、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす。
【0013】
第1局面において、選択可能な実施形態として、
a.前記負極材料のメジアン径が2μm~32μmであり、且つ2μmを含まないこと、
b.前記負極材料の比表面積が0.5m/g~20.0m/gであること、
c.前記負極材料の粉体タップ密度が0.5g/cm~1.3g/cmであること、
d.前記複合被覆層の厚さが0μm~5μmであり、且つ0μmを含まないこと、
e.前記無定形炭素外層の厚さが0nm~500nmであり、且つ0nmを含まないこと、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす。
【0014】
第2局面において、本出願は、負極材料の調製方法を提供する。前記負極材料の調製方法は、
第1グラファイトと第2グラファイトとを混合して被覆処理を行い、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトを得るステップと、
第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得るステップと、を含み、
前記第2グラファイトが微結晶グラファイトである。
【0015】
上記の案において、被覆プロセスを用いて第1グラファイトコアに複合被覆層を形成し、プロセスが簡単で、原料コストが安価で、工業上の量産に適し、調製できた複合被覆負極材料は、容量が高く、不可逆容量が低く、出力性能が優れる。
第2局面において、選択可能な実施形態として、前記負極材料は、
a.前記微結晶グラファイトの少なくとも一部が前記第1グラファイト内に嵌入されること、
b.前記第1グラファイトが球形化された天然グラファイトであること、
c.前記第1グラファイトのメジアン径が2.0μm~30.0μmであること、
d.前記第1グラファイトが球形化された天然グラファイトであり、前記天然グラファイトにおける固定炭素の含有量(質量%)が99.9%以上であること、
e.第1グラファイトのメジアン径と前記微結晶グラファイトのメジアン径との比が5:1~50:1であること、
f.前記微結晶グラファイトのメジアン径が0μm~2μmであり、且つ0μmを含まないこと、
g.前記負極材料のメジアン径が2μm~32μmであり、且つ2μmを含まないこと、
h.前記負極材料の比表面積が0.5m/g~20.0m/gであること、
i.前記負極材料の粉体タップ密度が0.5g/cm~1.3g/cmであること、
j.前記複合被覆層の厚さが0μm~5μmであり、且つ0μmを含まないこと、
の条件のa~jの少なくとも1つを満たす。
【0016】
第2局面において、選択可能な実施形態として、第1グラファイトと第2グラファイトとを混合して被覆を行う前に、前記方法は、
酸性水溶液を用いて微結晶グラファイトに対して、前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量を99.9%以上にするように精製することをさらに含む。
第2局面において、選択可能な実施形態として、微結晶グラファイトに対して精製するステップは、
微結晶グラファイトに対して、微結晶グラファイト顆粒のメジアン径を0μm~2μm且つ0μmを含まない範囲に収めるように粉砕処理を行うことと、
酸性水溶液を用いて前記微結晶グラファイトに対して、前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量を99.9%以上にするように精製することと、を含む。
【0017】
第2局面において、選択可能な実施形態として、前記方法は、
a.前記酸性水溶液における酸が無機酸であること、
b.前記酸性水溶液における酸が無機酸であり、前記無機酸がHCl、HF、HSO及びHNOのうちの少なくとも1種を含むこと、
の条件のa~bの少なくとも1つを満たす。
【0018】
第2局面において、選択可能な実施形態として、前記方法は、
a.前記第1グラファイトと前記第2グラファイトとの質量比が(80~100):(0~20)であり、且つ第2グラファイトの質量が0ではないこと、
b.前記第1グラファイトと前記第2グラファイトとの質量比が(90~100):(1~10)であること、
c.融合機を利用して被覆処理を行い、前記融合機の回転速度が500r/min~3000r/minであること、
d.融合機を利用して被覆処理を行い、前記融合機のカッター間の間隔幅が0.01cm~0.5cmであること、
e.前記被覆処理の時間が10min~120minであること、
の条件のa~eの少なくとも1つを満たす。
【0019】
第2局面において、選択可能な実施形態として、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得るステップは、
第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと無定形炭素前駆体とを混合し、保護性雰囲気下で炭化処理を行い、負極材料を得ることを含む。
【0020】
第2局面において、選択可能な実施形態として、前記方法は、
a.前記第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと前記無定形炭素前駆体との質量比が(80~100):(0~20)であり、且つ無定形炭素前駆体の質量が0ではないこと、
b.前記第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと前記無定形炭素前駆体との質量比が(80~100):(2~20)であること、
c.前記無定形炭素前駆体が、ピッチ及び/又は樹脂を含むこと、
d.前記無定形炭素前駆体がピッチを含み、前記ピッチがコールタールピッチ、石油ピッチ、改質ピッチ及び中間相ピッチのうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記無定形炭素前駆体が樹脂を含み、前記樹脂がフェノール樹脂、エポキン樹脂及びフルフラール樹脂のうちの少なくとも1種を含むこと、
f.前記混合の時間が5min以上であること、
g.前記保護性雰囲気の気体が、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
h.前記炭化処理の温度が800℃~1400℃であること、
i.前記炭化処理の時間が1h~72hであること、
j.前記炭化処理の昇温速度が20.0℃/min以下であること、
の条件のa~jの少なくとも1つを満たす。
【0021】
第2局面において、選択可能な実施形態として、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得た後、前記方法は、
前記負極材料に対して、前記負極材料のメジアン径を2.0μm~30.0μmに収めるように破砕、篩分及び消磁を行うことをさらに含む。
【0022】
第2局面において、選択可能な実施形態として、前記方法は、
微結晶グラファイトを取って、固定炭素含有量を99.9%以上にするように酸性水溶液を用いて精製するステップと、
天然グラファイトと前記微結晶グラファイト粉末とを(90~100):(1~10)の質量比で混合し、10min~120minの被覆処理を行い、微結晶グラファイトにより被覆された天然グラファイトを得るステップと、
前記微結晶グラファイトにより被覆された天然グラファイトと無定形炭素前駆体とを(80~100):(2~20)の質量比で混合し、保護性ガス雰囲気下で、1.0℃/min~5.0℃/minの昇温速度で800℃~1400℃まで昇温させ、1h~24hの炭化処理を行い、前記負極材料を得るステップと、を含む。
【0023】
第3局面において、本出願は、上記の第1局面に記載の負極材料又は上記の第2局面に記載の調製方法で調製できた負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0024】
従来技術に比べて、本出願は下記の有益効果を有する。
(1)本発明に係る複合被覆負極材料は、主に複合被覆層における第2グラファイト内層と無定形炭素外層との共働作用を利用することにより、複合被覆負極材料は、容量が高く、不可逆容量が低く、出力性能が優れる。第2グラファイトが微結晶グラファイトである場合、内層の微結晶グラファイトと外層の無定形炭素との共働作用の効果がよく、内層の微結晶グラファイトの1g当たりの容量が比較的に高いので、被覆層の1g当たりの容量を向上させることができ、外層の無定形炭素の不可逆容量が低いので、被覆層の初回効率を向上させることができる。微結晶グラファイトと無定形炭素とが複合した被覆層は、単一の無定形炭素被覆層に対して、よりも高い比容量とより高いの無秩序度を有するとともに、単一被覆層で不可逆容量が高く又は1g当たりの容量が低いなどの欠陥を克服し、天然グラファイトの出力性能を大幅に向上させることができる。
(2)本発明に係る調製方法は、被覆プロセスを用いて第1グラファイトコアに複合被覆層を形成し、プロセスが簡単で、原料コストが低く、工業上の量産に適し、調製できた複合被覆負極材料は、容量が高く、不可逆容量が低く、出力性能が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本出願の実施例による負極材料の模式的構成図である。
図2】本出願の実施例による負極材料の調製方法のプロセスのフローチャートである。
図3】本出願の実施例1で調製できた負極材料のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願をよりよく説明し、本出願の技術案を簡単にするため、以下、本出願をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本出願の簡単な例にすぎず、本出願の保護範囲を表したり限定したりするものではなく、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずる。
【0027】
下記は、本出願の代表的な実施例であり、本出願を限定するものではない。
【0028】
第1局面において、図1に示すように、一実施形態による負極材料は、第1グラファイトコア100と、前記第1グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、前記複合被覆層が、前記第1グラファイトコア100の表面に形成された第2グラファイト内層200と、前記第2グラファイト内層200の表面に形成された無定形炭素外層300とを含み、前記第2グラファイト内層200が複数の微結晶グラファイト210を含む。
【0029】
上記の負極材料は、複合被覆層における第2グラファイト内層200と無定形炭素外層300との共働作用を利用することにより、容量が高く、不可逆容量が比較的に低く、出力性能が優れる。微結晶グラファイトは、粒径が比較的に小さく、結晶配列の無秩序度が高く、無定形炭素と結合して形成された複合被覆層における炭素構造の無秩序度が高くて、表面にリチウムイオンの輸送通路が多くなり、リチウムイオンの輸送経路が短いため、出力性能が優れる。
【0030】
そして、第2グラファイトである微結晶グラファイトは、出力性能が優れ、1g当たりの容量が比較的に高いが、その表面に欠陥が多く、不可逆容量が比較的に高いため、単独に天然グラファイトの被覆層として使用すれば、初回効率が低いという欠陥がある。無定形炭素は、単独に天然グラファイトの被覆層として使用すれば、天然グラファイトの初回効率を高めることができるが、無定形炭素の1g当たりの容量が比較的に低くため、天然グラファイトを被覆した構成のエネルギー密度が低下してしまう。このため、微結晶グラファイトと無定形炭素とを併用して複合被覆層を形成することにより、両方の共働作用が十分に発揮され、内層の微結晶グラファイトの1g当たりの容量が比較的に高いので、複合被覆層の1g当たりの容量を高めることができ、外層の無定形炭素の不可逆容量が低いので、複合被覆層の初回効率を向上させることができる。このようにして、負極材料は、高い容量、比較的に低い不可逆容量及び優れた出力性能を有する。
【0031】
下記は、本出願の選択可能な技術案にすぎず、本出願に係る技術案を限定するものではない。下記の選択可能な技術案を採用すれば、本出願の技術的目的及び有益効果をよりよく達成、実現することができる。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の負極材料において、前記微結晶グラファイト210の少なくとも一部が第1グラファイトコア100内に嵌入され、第2グラファイト内層200の少なくとも一部が第1グラファイトコア100内に嵌入されているように形成される。このような被覆形式によれば、微結晶グラファイト210の少なくとも一部が第1グラファイトコア100内に嵌入され、より強固な構成を形成することができ、微結晶グラファイト210が第1グラファイトコア100に嵌入しなく、微結晶グラファイト210が直接第1グラファイトコア100の表層に形成された構成に対して、上記の微結晶グラファイト210と第1グラファイトコア100との間に、より強固且つ緊密な結合が形成され、微結晶グラファイトが第1グラファイトコア100に嵌入されない場合に生じた微小な隙間に起因して材料の内部抵抗が比較的に大きい問題を避けることができる。本出願で得られた負極材料は、容量が高く、不可逆容量が比較的に低く、出力性能が優れる。
【0033】
本実施形態による負極材料において、無定形炭素層300は前記第1グラファイトコア100の表面にも形成され、つまり、第1グラファイトコア100の、第2グラファイト内層200により被覆されない部分の表面が無定形炭素層300に被覆される。
【0034】
本実施形態による負極材料において、前記第1グラファイトコアは、天然グラファイトを含む。さらに、前記第1グラファイトコア100が球形化された天然グラファイトである。具体的に、鱗片状の天然グラファイトが球形化処理されて得たものであってもよい。
【0035】
前記第1グラファイトコア100のメジアン径D50は、2μm~30.0μmであり、具体的に、3.0μm、5.0μm、8μm、10.0μm、15.0μm、18μm、20.0μm、25.0μm、28μm、30.0μmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。出願人は、多数回の試験から、第1グラファイトコアのメジアン径を2.0μm~30.0μmの範囲内に収める場合、負極材料の出力性能、エネルギー密度などの電気化学的性能の向上に寄与することがわかった。調製コスト及びプロセスの難易度を考慮すると、さらに好ましくは、前記第1グラファイトコア100のメジアン径D50が3.0μm~20.0μmであり、さらに好ましくは、前記第1グラファイトコアのメジアン径D50が6.0μm~15.0μmである。
【0036】
本出願の選択可能な技術案として、前記天然グラファイトの粉体タップ密度は0.4g/cm~1.0g/cmであり、具体的に、0.4g/cm、0.5g/cm、0.6g/cm、0.7g/cm、0.8g/cm、0.9g/cm又は1.0g/cmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。出願人は、多数回の試験から、天然グラファイトの粉体タップ密度を上記範囲内に収める場合、負極材料のエネルギー密度の向上に寄与することがわかった。
【0037】
本出願の選択可能な技術案として、前記天然グラファイトにおける固定炭素の含有量(質量%)は99.9%以上である。固定炭素の含有量(質量%)が99.9%以上である天然グラファイトを採用すれば、調製できた負極材料は、高い容量、比較的に低い不可逆容量、及び優れた出力性能、サイクル性能、高い初回効率などの電気化学的性能を有する。
【0038】
本出願の選択可能な技術案として、第2グラファイト内層は微結晶グラファイトであり、前記微結晶グラファイトが、微細な天然グラファイト結晶によって構成された緻密な集合体であり、土状グラファイト又は無定形グラファイトとも呼ばれる。
【0039】
本出願の選択可能な技術案として、第1グラファイトコア100のメジアン径と前記微結晶グラファイト210のメジアン径との比は5:1~50:1であり、具体的に、5:1、10:1、15:1、20:1、30:1、35:1、40:1、45:1又は50:1などであってもよい。第1グラファイトコア100のメジアン径と微結晶グラファイト210のメジアン径との比を上記範囲内に収める場合、粒径のより小さい微結晶グラファイト210が第1グラファイトコア100内に嵌入され、より安定な構成と形成することができる。そして、微結晶グラファイトの優れた出力性能及び比較的に高い1g当たりの容量を利用して第1グラファイトの欠陥を改善することにより、負極材料は、容量が高く、不可逆容量が比較的に低く、出力性能が優れる。
【0040】
さらに、前記微結晶グラファイト210のメジアン径は、0μm~2μmであり、且つ0μmを含まなく、具体的に、0.5μm、0.8μm、1.0μm、1.2μm、1.5μm、1.8μm又は2.0μmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。微結晶グラファイトのメジアン径を上記範囲内に収める場合、微結晶グラファイトは、粒径が比較的に小さく、結晶配列の無秩序度が高いため、リチウムイオンの輸送経路を効果的に短縮することができ、そして、出力性能が優れ、1g当たりの容量が比較的に高い。
【0041】
本出願の選択可能な技術案として、前記微結晶グラファイト210の粉体タップ密度は、0g/cm~0.5g/cmであり、且つ0g/cmを含まない。
【0042】
本出願の選択可能な技術案として、前記微結晶グラファイト210の固定炭素含有量が99.9%以上である。微結晶グラファイトの炭素含有量が99.9%以上となれば、負極材料の電気化学的反応過程での副反応の発生が抑えられ、不可逆容量が減少し、出力性能、サイクル性能、レート性能が向上する。
【0043】
本出願の選択可能な技術案として、前記無定形炭素外層300の厚さは、0nm~500nmであり、且つ0nmを含まない。無定形炭素が単独に第1グラファイトコア(天然グラファイト)、微結晶グラファイトの被覆層として使用すれば、材料の初回効率を高めることができるが、無定形炭素の1g当たりの容量が比較的に低くて、天然グラファイトを被覆した構成のエネルギー密度が低下してしまう。無定形炭素の厚さが厚すぎると、負極材料の1g当たりの容量が比較的に低く、厚すぎるソフトカーボン被覆層であれば、負極材料の内部抵抗の増大を招いて、出力性能が影響される。
【0044】
本出願の選択可能な技術案として、前記複合被覆層の厚さは、0μm~5μmであり、且つ0μmを含まない。第1グラファイトコアの表面の複合被覆層があるため、負極材料の初回効率、サイクル性能、レート性能を向上させることができる。
【0045】
本出願の選択可能な技術案として、前記負極材料のメジアン径は、2.0μm~32.0μmであり、且つ2μmを含まなく、具体的に、2.4μm、5.0μm、10.0μm、15.0μm、20.0μm、25.0μm又は30.0μmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。負極材料のメジアン径を上記範囲内に収める場合、負極材料のサイクル性能的の向上に寄与できる。好ましくは、前記負極材料のメジアン径は、3.0μm~20.0μmであり、さらに好ましくは、6.0μm~15.0μmである。
【0046】
本出願の選択可能な技術案として、前記負極材料の比表面積は、0.5m/g~20.0m/gであり、具体的に、0.5m/g、0.8m/g、10.0m/g、15.0m/g、18.5m/g、20.0m/gなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。負極材料の比表面積を上記範囲内に収める場合、負極材料のサイクル安定性の向上に寄与できる。前記負極材料の比表面積は、1.0m/g~10.0m/gであることが好ましい。
【0047】
本出願の選択可能な技術案として、前記負極材料の粉体タップ密度は、0.5g/cm~1.3g/cmであり、具体的に、0.5g/cm、0.8g/cm、1.0g/cm、1.1g/cm又は1.3g/cmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。前記負極材料の粉体タップ密度は、0.7~1.0g/cmであることが好ましい。
【0048】
第2局面において、本出願は、負極材料の調製方法を提供する。図2に示すように、前記調製方法は、下記のステップを含む。
ステップS100は、第1グラファイトと第2グラファイトとを混合して被覆処理を行い、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトを得る。ここで、前記第2グラファイトが微結晶グラファイトである。
ステップS200は、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得る。
【0049】
本出願に係る調製方法で調製できた負極材料は、第1グラファイトコア100と、前記第1グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、前記複合被覆層が前記第1グラファイトコアの表面に形成された第2グラファイト内層200と、前記第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層300とを含み、第2グラファイト内層200が複数の微結晶グラファイト210を含む。
【0050】
本出願に係る調製方法は、微結晶グラファイトで第1グラファイトの表面を被覆し、微結晶グラファイトの優れた出力性能及び比較的に高い1g当たりの容量を利用して第1グラファイトの欠陥を改善し、さらに、無定形炭素による被覆を経て、より強固な第1グラファイト-微結晶グラファイト-無定形炭素層の構成を形成する。したがって、負極材料は、容量が高く、不可逆容量が比較的に低く、出力性能が優れる。微結晶グラファイトの粒径が比較的に小さく、結晶配列の無秩序度が高く、無定形炭素と結合して形成された複合被覆層における炭素構造の無秩序度が高く、表面の、リチウムイオンの輸送通路が多くなり、リチウムイオンの輸送経路が短いため、出力性能が優れる。そして、この調製方法は、簡単で、原料コストが安価で、調製プロセスが環境に優しくて、量産に適する。
【0051】
以下、本案による調製方法を詳細に説明する。
【0052】
ステップS100は、第1グラファイトと第2グラファイトとを混合して被覆処理を行い、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトを得る。ここで、前記第2グラファイトが微結晶グラファイトである。
【0053】
本出願の選択可能な技術案として、前記第1グラファイトが球形化された天然グラファイトである。具体的に、鱗片状の天然グラファイトが球形化処理されて得られたものであってもよい。前記天然グラファイトにおける固定炭素の含有量(質量%)が99.9%以上である。
【0054】
前記第1グラファイトのメジアン径D50は、2μm~30μmであり、具体的に、2.0μm、5.0μm、8μm、10.0μm、15.0μm、18μm、20.0μm、25.0μm、28μm、30.0μmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。第1グラファイトのメジアン径を上記範囲内に収める場合、負極材料のレート性能、出力性能、サイクル性能の向上に寄与できる。調製コスト及びプロセスの難易度を考慮すると、好ましくは、前記第1グラファイトのメジアン径D50が3.0μm~20.0μmであり、さらに好ましくは、前記第1グラファイトのメジアン径D50が6.0μm~15.0μmである。
【0055】
本出願の選択可能な技術案として、第2グラファイトが微結晶グラファイトであり、前記微結晶グラファイトが、微細な天然グラファイト結晶によって構成された緻密な集合体であり、土状グラファイト又は無定形グラファイトとも呼ばれる。
【0056】
さらに、ステップS100の前に、前記方法は、
酸性水溶液を用いて微結晶グラファイトに対して、前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量を99.9%以上にするように精製するステップをさらに含む。
具体的に、前記微結晶グラファイトに対して精製するステップは、
微結晶グラファイトに対して、微結晶グラファイト顆粒のメジアン径を0μm~2μm且つ0μmを含まない範囲に収めるように粉砕処理を行うことと、
酸性水溶液を用いて前記微結晶グラファイトに対して、前記微結晶グラファイトの固定炭素含有量を99.9%以上にするように精製することと、を含む。
【0057】
なお、微結晶グラファイトに、Fe、Co、Cu、Ni、Al、Cr、Znなどの微量元素及びSiOなどの不純物が大量に含まれており、これらの不純物の存在により、微結晶グラファイトは、不可逆容量が増大し、初回効率が比較的に低く、サイクル性能、レート性能、安全性能が影響される。このため、微結晶グラファイトに対して酸洗精製を行う必要があり、微結晶グラファイトにおける微量元素、SiOなどの不純物を除去して、その固定炭素含有量を99.9%以上にすることにより、微結晶グラファイトの初回効率、サイクル性能、レート性能、安全性能を改善する。また、微結晶グラファイトの比表面積が大きいことは、その初回効率が低い要因の1つとなっている。微結晶グラファイトの表面に1層の無定形炭素層を被覆することにより、微結晶グラファイトの比表面積を減少させ、その初回効率を効果的に向上させることができる。このため、本出願は、先に酸洗精製を行い、そして無定形炭素層で被覆するプロセスを採用することにより、微結晶グラファイトにおける不純物を洗い、負極材料の初回クーロン効率を改善して、負極材料のサイクル性能を向上させることができる。
【0058】
任意選択で、第1グラファイト100のメジアン径と微結晶グラファイト210のメジアン径との比は、5:1~50:1であり、具体的に、5:1、10:1、15:1、20:1、30:1、35:1、40:1、45:1又は50:1などであってもよい。第1グラファイトコア100のメジアン径と微結晶グラファイト210のメジアン径との比を上記範囲内に収める場合、粒径のより小さい微結晶グラファイト210が第1グラファイトコア100内に嵌入され、より安定な構成を形成することができる。そして、微結晶グラファイトの優れた出力性能及び比較的に高い1g当たりの容量を利用して第1グラファイトの欠陥を改善することにより、負極材料は、容量が高く、不可逆容量が比較的に低く、出力性能が優れる。
【0059】
さらに、前記微結晶グラファイト210のメジアン径は、0μm~2μmであり、且つ0μmを含まなく、具体的に、0.5μm、0.8μm、1.0μm、1.2μm、1.5μm、1.8μm又は2.0μmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。微結晶グラファイトのメジアン径を上記範囲内に収める場合、微結晶グラファイトは、粒径が比較的に小さく、結晶配列の無秩序度が高いため、リチウムイオンの輸送経路を効果的に短縮することができ、そして、出力性能が優れ、1g当たりの容量が比較的に高い。
【0060】
任意選択で、前記酸性水溶液における酸は無機酸である。具体的な実施例において、前記無機酸はHCl、HF、HSO及びHNOのうちの少なくとも1種を含む。
【0061】
本出願の選択可能な技術案として、前記第1グラファイトと第2グラファイトとの質量比は(80~100):(0~20)であり、且つ第2グラファイトの質量が0ではなく、具体的に、80:1、90:1、100:1、80:10、100:10、90:10、80:20又は100:20などであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。なお、第1グラファイトが第2グラファイトに対して多すぎる場合、微結晶グラファイトが天然グラファイト顆粒の表面を完全に覆うことができなく、微結晶グラファイトが天然グラファイトに比べて優れた出力性能及び比較的に高い1g当たりの容量を有するため、微結晶グラファイトの含有量が少なすぎると、出力性能が劣る。第1グラファイトが第2グラファイトに対して少なすぎると、高い不可逆容量を招いてしまう。好ましくは、前記第1グラファイトと第2グラファイトとの質量比は(90~100):(1~10)である。
【0062】
本出願の選択可能な技術案として、ステップS100における混合は混合機で行われる。前記混合機は、VC混合機、三次元混合機、三偏心混合機、横型混合機、プラウシェアミキサー(Ploughshareミキサー)、円錐混合機又はV字型混合機を含むが、第1グラファイトと第2グラファイトとを均一に混合できればよく、ここで限定されない。
【0063】
本出願の選択可能な技術案として、融合機を利用して被覆処理を行う。被覆処理の過程において、前記融合機の回転速度を500r/min~3000r/minにコントロールし、具体的に、500r/min、1000r/min、1500r/min、2000r/min、2500r/min又は3000r/minなどにしてもよい。前記融合機のカッター間の間隔幅は、0.01cm~0.5cmであり、具体的に、0.01cm、0.05cm、0.1cm、0.2cm、0.3cm、0.4cm又は0.5cmなどであってもよい。
【0064】
本出願の選択可能な技術案として、前記被覆処理の時間は、10min~120minであり、例えば、10min、30min、50min、80min、100min又は120minなどである。
【0065】
本出願において、融合の方法により微結晶グラファイトを第1グラファイトコアに被せる。融合機の回転速度、カッター間の間隔幅及び処理時間などのプロセスパラメーターをコントロールすることにより、微結晶グラファイトが天然グラファイトの表面に均一沈殿して形成することに寄与できるので、微結晶グラファイトの優れた出力性能及び比較的に高い1g当たりの容量を利用して天然グラファイトの欠陥を改善する。そして、融合のプロセスを採用するため、微結晶グラファイトが第1グラファイトコアに強固に嵌入され、さらに、後の無定形炭素被覆を経て、より強固なグラファイトコア-微結晶グラファイト-無定形炭素層の構成が形成される。微結晶グラファイトと無定形炭素により複合被覆層が形成され、両方の共働作用を十分発揮し、したがって、負極材料は、容量が高く、初回効率が高く、出力性能が優れる。
【0066】
ステップS200は、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトに対して炭素被覆を行い、負極材料を得る。
【0067】
具体的に、ステップS200は、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと無定形炭素前駆体とを混合し、保護性雰囲気下で炭化処理を行い、負極材料を得ることを含む。
【0068】
本出願の選択可能な技術案として、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと無定形炭素前駆体との質量比は、(80~100):(0~20)であり、且つ無定形炭素前駆体の質量が0ではなく、具体的に、80:1、90:1、100:1、80:10、100:10、90:10、80:20又は100:20などであってもよい。なお、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトが無定形炭素前駆体に対して多すぎる場合、複合被覆層における炭素含有量が低下し、不可逆容量が高くなってしまう。第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトが無定形炭素前駆体に対して少なすぎると、第2グラファイトの表面を被覆した炭素層が厚くなりやすく、リチウムイオンの輸送経路が長くなって、電池容量の低下を招く。好ましくは、前記第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと前記無定形炭素前駆体との質量比は(80~100):(2~20)である。
【0069】
本出願の選択可能な技術案として、前記無定形炭素前駆体は、ピッチ及び/又は樹脂を含む。前記ピッチは、コールタールピッチ、石油ピッチ、改質ピッチ及び中間相ピッチのうちの少なくとも1種を含む。前記樹脂は、フェノール樹脂、エポキン樹脂及びフルフラール樹脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0070】
同様に、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと無定形炭素前駆体との混合は混合機で行われる。前記混合機は、VC混合機、三次元混合機、三偏心混合機、横型混合機、プラウシェアミキサー、円錐混合機又はV字型混合機を含むが、第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと無定形炭素前駆体とを均一に混合できればよく、ここで限定されない。
【0071】
第2グラファイトにより被覆された第1グラファイトと無定形炭素前駆体とを十分均一に混合させることを保証するため、混合時間が、5min以上であり、具体的に、5min、10min、15min又は20minなどであってよいが、ここで限定されない。
【0072】
本出願の選択可能な技術案として、前記保護性雰囲気の気体は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0073】
本出願の選択可能な技術案として、前記炭化処理は、ローラーハース窯、プッシャー窯、トンネル窯、チューブ炉、箱型炉又は回転炉で行われる。
【0074】
具体的に、炭化処理の温度は、800℃~1400℃であり、具体的に、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃又は1400℃などであってもよい。
【0075】
前記炭化処理の時間は、1h~72hであり、具体的に、1h、10h、20h、30h、40h、50h、60h、70h又は72hなどであってもよいが、1h~24hであることが好ましい。
【0076】
前記炭化処理の昇温速度は、20.0℃/min以下であり、具体的に、20.0℃/min、15.0℃/min、10.0℃/min、5.0℃/min又は1.0℃/minなどであってもよいが、1.0℃/min~5.0℃/minであることが好ましい。
【0077】
なお、炭化処理の温度、時間及び昇温速度などのプロセスパラメーターをコントロールすることにより、無定形炭素前駆体により第2グラファイト内層の表面において無定形炭素外層を均一に形成することに寄与し、第2グラファイト内層と無定形炭素外層との共働作用を利用することにより、負極材料は、容量が高く、不可逆容量が比較的に低く、出力性能が優れる。
【0078】
さらに、ステップS200の後、前記方法は、
前記負極材料に対して、前記負極材料のメジアン径を2.0μm~30.0μmに収めるように破砕、篩分及び消磁を行うことをさらに含む。
【0079】
任意選択で、前記破砕に利用する設備は、分級機内蔵型衝撃式粉砕機、渦流式気流粉砕機、レイモンドミル、融合機及びサンドミルのうちの少なくとも1種を含む。前記篩分に利用する設備は、超音波振動ふるい機又は、気流式篩を含む。前記消磁に利用する設備は、消磁器を含む。
【0080】
本出願の選択可能な技術案として、前記方法は、
微結晶グラファイトを取って、固定炭素含有量を99.9%以上にするように酸性水溶液を用いて精製するステップと、
天然グラファイトと前記微結晶グラファイト粉末とを(90~100):(1~10)の質量比で混合し、10min~120minの被覆処理を行い、微結晶グラファイトにより被覆された天然グラファイトを得るステップと、
前記微結晶グラファイトにより被覆された天然グラファイトと無定形炭素前駆体とを(80~100):(2~20)の質量比で混合し、保護性ガス雰囲気下で、1.0℃/min~5.0℃/minの昇温速度で800℃~1400℃まで昇温させ、1h~24hの炭化処理を行い、前記負極材料を得るステップと、を含む。
【0081】
第3局面において、本出願は、上記の第1局面に記載のシリコン酸素複合負極材料又は上記の第2局面に記載の調製方法で調製できたシリコン酸素複合負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0082】
以下、複数の実施例を用いて本出願の実施例をさらに説明する。しかし、本出願の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されず、保護範囲内において、適切に変更して実施してもよい。
【0083】
実施例1
本実施例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)固定炭素含有量が90%である微結晶グラファイトを取って、気流粉砕機を利用して粉砕し、メジアン径D50が0.8μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt%、6.8wt%及び12wt%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイトを得た。
(2)メジアン径D50が8.5μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、上記の純化された微結晶グラファイトとを取って、98:3の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2000r/minにし、カッター間の間隔幅を0.1cmにし、処理時間を20minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(3)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトとメジアン径D50が2.5μmであるピッチ粉末とを96:4の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、そしてローラーハース窯内に入れ、窒素ガスを導入し、4.0℃/minの昇温速度で1150.0℃まで昇温させて6.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が9.1μmである負極材料を得た。
【0084】
本実施例で調製できた負極材料は、球状天然グラファイトコアと、球状天然グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、複合被覆層が、天然グラファイトコアの表面に形成された、第2グラファイト内層とする微結晶グラファイト被覆層と、第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、微結晶グラファイト被覆層の少なくとも一部が天然グラファイトコア内に嵌入されている。負極材料のメジアン径が9.1μmであり、複合被覆層の厚さが0.6μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.82g/cmであり、比表面積が4.33m/gであった。
【0085】
本実施例で調製できた複合被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0086】
図3は、本実施例で調製できた複合被覆負極材料の走査型電子顕微鏡写真であり、該写真からわかるように、本実施例で調製できた複合被覆負極材料の顆粒は、略球状又は塊状を呈し、表面に無秩序度の比較的に高い複合被覆層を有する。
【0087】
実施例2
本実施例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)固定炭素含有量が80%である微結晶グラファイトを取って、気流粉砕機を利用して粉砕し、メジアン径D50が1.0μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt.%、6.8wt.%及び12wt.%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイト粉末を得た。
(2)メジアン径D50が8.9μmであり、タップ密度が0.72g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、上記の純化された微結晶グラファイト粉末とを取って、96:4の質量比で三次元混合機に入れ、1h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2500r/minにし、カッター間の間隔幅を0.05cmにし、処理時間を30minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(3)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトとメジアン径D50が2.8μmであるピッチ粉末とを94:6の質量比で三次元混合機に入れ、1h混合し、そしてローラーハース窯内に入れ、窒素ガスを導入し、2.0℃/minの昇温速度で1200.0℃まで昇温させて4.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が9.7μmである複合被覆負極材料を得た。
【0088】
本実施例で調製できた負極材料は、球状天然グラファイトコアと、球状天然グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、複合被覆層が、天然グラファイトコアの表面に形成された、第2グラファイト内層とする微結晶グラファイト被覆層と、第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、微結晶グラファイト被覆層の少なくとも一部が天然グラファイトコア内に嵌入されている。負極材料のメジアン径が9.7μmであり、複合被覆層の厚さが0.8μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.83g/cmであり、比表面積が3.57m/gであった。
【0089】
本実施例で調製できた複合被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0090】
実施例3
本実施例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)固定炭素含有量が90%である微結晶グラファイトを取って、サンドミルを利用して粉砕し、メジアン径D50が0.5μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt.%、6.8wt.%及び12wt.%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイト粉末を得た。
(2)メジアン径D50が8.6μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、上記の純化された微結晶グラファイト粉末とを取って、98:2の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2000r/minにし、カッター間の間隔幅を0.05cmにし、処理時間を20minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(3)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトとメジアン径D50が5.8μmであるフェノール樹脂粉末とを94:6の質量比で円錐混合機に入れ、1h混合し、そして箱型炉内に入れ、アルゴンガスを導入し、1.0℃/minの昇温速度で1050.0℃まで昇温させて4.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が9.8μmである複合被覆負極材料を得た。
【0091】
本実施例で調製できた負極材料は、球状天然グラファイトコアと、球状天然グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、複合被覆層が天然グラファイトコアの表面に形成された、第2グラファイト内層とする微結晶グラファイト被覆層と、第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、微結晶グラファイトの少なくとも一部が天然グラファイトコア内に嵌入されている。負極材料のメジアン径が9.8μmであり、複合被覆層の厚さが1.2μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.85g/cmであり、比表面積が4.37m/gであった。
【0092】
本実施例で調製できた複合被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0093】
実施例4
本実施例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)固定炭素含有量が90%である微結晶グラファイトを取って、気流粉砕機を利用して粉砕し、メジアン径D50が1.1μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt%、6.8wt%及び12wt%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイト粉末を得た。
(2)メジアン径D50が6.8μmであり、タップ密度が0.68g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、上記の純化された微結晶グラファイト粉末とを取って、96:4の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、1h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2500r/minにし、カッター間の間隔幅を0.05cmにし、処理時間を20minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(3)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトと、メジアン径D50が2.8μmであるピッチ粉末と、メジアン径D50が4.7μmであるフェノール樹脂粉末とを94:3:3の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、1h混合し、そして箱型炉内に入れ、アルゴンガスを導入し、1.5℃/minの昇温速度で1150.0℃まで昇温させて4.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が8.2μmである複合被覆負極材料を得た。
【0094】
本実施例で調製できた負極材料は、球状天然グラファイトコアと、球状天然グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、複合被覆層が天然グラファイトコアの表面に形成された、第2グラファイト内層とする微結晶グラファイト被覆層と、第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、微結晶グラファイト被覆層の少なくとも一部が天然グラファイトコア内に嵌入されている。負極材料のメジアン径が8.2μmであり、複合被覆層の厚さが1.4μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.71g/cmであり、比表面積が4.81m/gであった。
【0095】
本実施例で調製できた複合被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0096】
実施例5
本実施例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)固定炭素含有量が90%である微結晶グラファイトを取って、気流粉砕機を利用して粉砕し、メジアン径D50が2.0μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt%、6.8wt%及び12wt%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイト粉末を得た。
(2)メジアン径D50が14.1μmであり、タップ密度が0.85g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、上記の純化された微結晶グラファイト粉末とを取って、90:10の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、1h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を3000r/minにし、カッター間の間隔幅を0.5cmにし、処理時間を10minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(3)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトと、メジアン径D50が2.8μmであるピッチ粉末と、メジアン径D50が4.7μmであるフェノール樹脂粉末とを80:10:10の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、1h混合し、そして箱型炉内に入れ、アルゴンガスを導入し、5℃/minの昇温速度で1400.0℃まで昇温させて1.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が16.5μmである複合被覆負極材料を得た。
【0097】
本実施例で調製できた負極材料は、球状天然グラファイトコアと、球状天然グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、複合被覆層が天然グラファイトコアの表面に形成された、第2グラファイト内層とする微結晶グラファイト被覆層と、前記第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、微結晶グラファイト被覆層の少なくとも一部が天然グラファイトコア内に嵌入されている。負極材料のメジアン径が16.5μmであり、複合被覆層の厚さが2.4μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.97g/cmであり、比表面積が2.07m/gであった。
【0098】
本実施例で調製できた複合被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0099】
実施例6
本実施例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)固定炭素含有量が90%である微結晶グラファイトを取って、サンドミルを利用して粉砕し、メジアン径D50が0.6μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt%、6.8wt%及び12wt%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイト粉末を得た。
(2)メジアン径D50が3.6μmであり、タップ密度が0.45g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、上記の純化された微結晶グラファイト粉末とを取って、99:1の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000r/minに調整し、0.5h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を500r/minにし、カッター間の間隔幅を0.01cmにし、処理時間を120minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(3)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトとメジアン径D50が4.1μmであるフェノール樹脂粉末とを98:2の質量比で円錐混合機に入れ、1h混合し、そして箱型炉内に入れ、アルゴンガスを導入し、1.0℃/minの昇温速度で800.0℃まで昇温させて24.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が4.3μmである複合被覆負極材料を得た。
【0100】
本実施例で調製できた負極材料は、球状天然グラファイトコアと、球状天然グラファイトコアを被覆する複合被覆層とを含み、複合被覆層が天然グラファイトコアの表面に形成された、第2グラファイト内層とする微結晶グラファイト被覆層と、第2グラファイト内層の表面に形成された無定形炭素外層とを含み、微結晶グラファイト被覆層の少なくとも一部が天然グラファイトコア内に嵌入されている。負極材料のメジアン径が4.3μmであり、複合被覆層の厚さが0.7μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.50g/cmであり、比表面積が12.10m/gであった。
【0101】
本実施例で調製できた複合被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0102】
比較例1
本比較例において、実施例1におけるメジアン径D50が8.5μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、比表面積が6.94m/gであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトを取って、被覆、改質処理を行わずに、直接篩分、消磁を行って、得られたメジアン径D50が8.5μmである天然グラファイト負極材料で比較した。
【0103】
本比較例で得られた天然グラファイト負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0104】
比較例2
本比較例において、実施例1におけるメジアン径D50が8.5μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、メジアン径D50が2.5μmであるピッチ粉末とを取って、96:4の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、そしてローラーハース窯内に入れ、窒素ガスを導入し、4.0℃/minの昇温速度で1150.0℃まで昇温させて6.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が8.9μmである被覆負極材料を得た。
【0105】
本比較例で得られた負極材料は、球状天然グラファイトコアと、コアを被覆する被覆層とを含み、前記被覆層が無定形炭素のみからなり、被覆層の厚さが0.4μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.83g/cmであり、比表面積が4.01m/gであった。
【0106】
本比較例で得られた被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0107】
比較例3
本比較例における微結晶グラファイトで天然グラファイトを被覆した負極材料の調製方法は下記の通りであった。
(1)固定炭素含有量が90%である微結晶グラファイトを取って、気流粉砕機を利用して粉砕し、メジアン径D50が0.8μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt.%、6.8wt.%及び12wt.%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイト粉末を得た。
(2)メジアン径D50が8.5μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、上記の純化された微結晶グラファイト粉末とを取って、98:3の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000r/minに調整し、0.5h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2000r/minにし、カッター間の間隔幅を0.1cmにし、処理時間を20minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得、そして篩分、消磁を経て、メジアン径D50が8.6μmである被覆負極材料を得た。
【0108】
本比較例による負極材料は、球状天然グラファイトコアと、コアを被覆する被覆層とを含み、前記被覆層が微結晶グラファイトのみからなり、被覆層の厚さが0.1μmであり、負極材料の粉体タップ密度が0.71g/cmであり、圧縮密度(compacted density)が8.55g/cmであった。
【0109】
本比較例で得られた被覆負極材料の性能の測定結果は、表1に示される。
【0110】
比較例4
本比較例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)メジアン径D50が8.5μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、メジアン径D50が0.8μmである微結晶グラファイトとを取って、98:3の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2000r/minにし、カッター間の間隔幅を0.1cmにし、処理時間を20minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(2)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトをHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt%、6.8wt%及び12wt%である)に入れて精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(3)純化された微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトとメジアン径D50が2.5μmであるピッチ粉末とを96:4の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、そしてローラーハース窯内に入れ、窒素ガスを導入し、4.0℃/minの昇温速度で1150.0℃まで昇温させて6.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が9.3μmである負極材料を得た。
【0111】
比較例5
本比較例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)メジアン径D50が8.5μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトと、メジアン径D50が0.8μmであり、酸洗精製が行われない微結晶グラファイトとを取って、98:3の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2000r/minにし、カッター間の間隔幅を0.1cmにし、処理時間を20minにして、微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトを得た。
(2)微結晶グラファイトにより被覆された球状天然グラファイトとメジアン径D50が2.5μmであるピッチ粉末とを96:4の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、そしてローラーハース窯内に入れ、窒素ガスを導入し、4.0℃/minの昇温速度で1150.0℃まで昇温させて6.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が9.0μmである負極材料を得た。
【0112】
比較例6
本比較例において、下記の方法で複合被覆負極材料を調製した。
(1)固定炭素含有量が90%である微結晶グラファイトを取って、サンドミルを利用して粉砕し、メジアン径D50が1.0μmである微結晶グラファイト粉末を得、微結晶グラファイト粉末をHFとHNOとHClとの混合酸水溶液(HFとHNOとHClとの質量濃度がそれぞれ6.2wt%、6.8wt%及び12wt%である)に入れて、固定炭素含有量を99.9%にするように精製し、そして中性まで水洗いし、乾燥し、純化された微結晶グラファイト粉末を得た。
(2)メジアン径D50が8.5μmであり、タップ密度が0.75g/cmであり、固定炭素含有量が99.9%である球状天然グラファイトとメジアン径D50が2.5μmであるピッチ粉末とを取って、96:4の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、そしてローラーハース窯内に入れ、窒素ガスを導入し、4.0℃/minの昇温速度で1150.0℃まで昇温させて6.0h保温し、室温まで自然冷却させ、破砕、篩分、消磁を行い、メジアン径D50が8.9μmである無定形炭素により被覆された天然グラファイトを得た。
(3)メジアン径D50が8.9μmである無定形炭素により被覆された天然グラファイトとメジアン径D50が0.8μmである微結晶グラファイトとを取って、98:3の質量比でVC混合機に入れ、回転速度を3000.0r/minに調整し、0.5h混合し、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を得た。上記の天然グラファイトと微結晶グラファイトとの混合粉末を融合機に入れ、回転速度を2000r/minにし、カッター間の間隔幅を0.1cmにし、処理時間を20minにして、微結晶グラファイトにより被覆された、無定形炭素により被覆された天然グラファイトを得、そして消磁、篩分を行って、メジアン径D50が9.0μmである負極材料を得た。
【0113】
測定方法
下記の方法で、各実施例及び比較例による負極材料を測定した。
Quantachrome社のAutoTapタップ密度計を利用して、タップ密度を測定した。
米国Micromeritics社のTristar3000全自動比表面積及び細孔分布測定装置を利用して、材料の比表面積を測定した。
Malvern社のレーザー粒度測定装置MS2000を利用して、材料の粒径範囲及び原料顆粒の平均粒径を測定した。
日立社のS4800走査型電子顕微鏡を利用して、サンプルの表面形態、顆粒のサイズなどを観察した。
【0114】
下記の方法で、出力性能を測定した。固形分を40%にコントロールするように、負極材料と導電剤と分散剤と粘着剤とを94.5:1.5:2:2の質量比で溶剤に溶解させて混合し、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥して負極片を調製した。そして、従来の成熟したプロセスで調製された三元系正極片、1mol/LのLiPF/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)の電解液、Celgard2400のセパレーター及びシェルを、従来の生産プロセスで18650円筒型の単電池になるように組み立てた。円筒型電池の充放電評価及び電力測定は、米国Arbin社のLBT-ML電池モジュール評価システムで行われた。円筒型電池の化成、キャパシティグレーディングを経た後、日本電動車両協会規格JEVS D713 2003『ハイブリッド電気自動車用密閉形ニッケル・水素電池の出力密度および入力密度試験方法』に従って室温下で電力密度を測定した。
【0115】
測定結果は下記の表に示される。
【表1】
【0116】
上記の実施例及び比較例から分かるように、実施例1~6に記載の方法で調製できた負極材料を使用したリチウムイオン電池は、いずれの電力密度も比較例に記載の方法で調製できた負極材料を使用したリチウムイオン電池より優れ、また、実施例による方法で得られた負極材料は、可逆容量が高く、初回クーロン効率が高い性能を有する。
【0117】
比較例1に記載の方法で調製できた負極材料は、被覆改質が行われなく、その可逆容量が比較的に高かったが、初回クーロン効率及び電力が実施例1に対して低かった。
比較例2に記載の方法で調製できた負極材料は、無定形炭素被覆のみが行われ、初回クーロン効率が向上したが、可逆容量及び電力密度が実施例1に対して低かった。
比較例3に記載の方法で調製できた負極材料は、微結晶被覆のみが行われ、電力密度が向上したが、その初回クーロン効率が実施例1に対して低かった。
比較例4に記載の方法で調製できた負極材料は、その可逆容量、初回クーロン効率が低下した。その原因として、酸洗精製が被覆の後に行われ、酸洗精製の過程において、微結晶グラファイトが球状天然グラファイトから脱落し、微結晶グラファイトが球状天然グラファイトの表面に均一に嵌入することができなく、無定形炭素により被覆したあとに複合被覆層を形成しにくいため、材料の可逆容量、初回クーロン効率が低下してしまった。
【0118】
比較例5に記載の方法で調製できた負極材料は、その可逆容量及び初回クーロン効率が低下した。その原因として、微結晶グラファイトに対して精製処理が行われなく、微結晶グラファイトにおいて微量元素及びSiOなどの不純物が含まれ、これらの不純物の存在により、微結晶グラファイトの不可逆容量が増大し、その初回効率が低くなり、レート性能が低下してしまった。
【0119】
比較例6に記載の方法で調製できた負極材料の複合被覆層の内層が無定形炭素層であり、複合被覆層の外層が微結晶グラファイト層であり、即ち、負極材料の構成が天然グラファイトコア-無定形炭素層-微結晶グラファイトの構成であり、負極材料の可逆容量及び初回クーロン効率が実施例に対して低下した。その原因として、微結晶グラファイトと天然グラファイトとが強固且つ緊密に結合されなく、天然グラファイトと微結晶グラファイトとの間にわずかな隙間があって、材料の内部抵抗が比較的に大きく、無定形炭素と微結晶グラファイトとの間に物理的な嵌合しかなく、微結晶グラファイトが最外層であるため、微結晶グラファイトの脱落しが生じやすく、強固な構成に形成できなくて、その可逆容量、初回クーロン効率及びレート性能が劣る。
【0120】
なお、本出願は、上記の実施例を用いて本出願の詳細なプロセスの設備及びプロセスの流れを説明したが、上記の詳細なプロセスの設備及びプロセスの流れに限定されない。つまり、本出願の実施が必ずしも上記の詳細なプロセスの設備及びプロセスの流れに依存するとは限らない。当業者による、本出願に対する任意の改良、本出願に係る製品の各原料に対する均等置換及び補助成分の添加、具体的な形態の選択なども、本出願の保護範囲及び開示範囲に属する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】