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特表2022-537987アポリポタンパク質Bアンタゴニスト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】アポリポタンパク質Bアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220824BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220824BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61P3/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P1/16
A61P13/12
A61P3/10
A61P7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574936
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 GB2020051573
(87)【国際公開番号】W WO2021001646
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】1909500.9
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1910526.1
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2000906.4
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548168
【氏名又は名称】アルゴノート アールエヌエー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】カーン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA54
4C086ZA75
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
本開示は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子を含み、分子のセンスまたはアンチセンスのいずれかのRNA部分の3’末端に共有結合した一本鎖DNA分子をさらに含む核酸であって、二本鎖阻害性RNAが高コレステロール血症の治療においてアポリポタンパク質Bを標的とする、核酸に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子であって、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第1の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第2の部分であって、前記一本鎖DNA分子の5’末端は、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の3’末端に共有結合しているか、または前記一本鎖DNA分子の5’末端は、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合しており、前記二本鎖阻害性RNAは、ヒトアポリポタンパク質Bタンパク質の部分をコードするセンスヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、前記一本鎖DNA分子は、その長さの少なくとも一部にわたって、前記一本鎖DNAの一部への相補的塩基対形成によってアニーリングして、二本鎖DNA構造を形成するように適合されたヌクレオチド配列を含む、第2の部分と、を含む、核酸分子。
【請求項2】
核酸分子であって、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第1の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第2の部分であって、前記一本鎖DNA分子の5’末端は、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の3’末端に共有結合しているか、または前記一本鎖DNA分子の5’末端は、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合しており、前記二本鎖阻害性RNAは、ヒトアポリポタンパク質Bタンパク質、またはその多型配列変異体の部分をコードするセンスヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、前記一本鎖DNA分子は、その長さの少なくとも一部にわたって、前記一本鎖DNAの一部への相補的塩基対形成によってアニーリングして、二本鎖DNA構造を形成するように適合されたヌクレオチド配列を含む、第2の部分と、を含む、核酸分子。
【請求項3】
前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の前記3’末端に共有結合している、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の前記3’末端に共有結合している、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記一本鎖DNA分子が、ヌクレオチド配列TCACCTCATCCCGCGAAGC(配列番号1)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、18~29ヌクレオチド長である、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109および110からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、111、113、115、117、119、121、123および125からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、112、114、116、118、120、122、124および126からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号7、配列番号36、配列番号111、配列番号113、配列番号115および配列番号119からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号60、配列番号72、配列番号89、配列番号100、配列番号108、配列番号114および配列番号118からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号7に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号60に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項14】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号111に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号112に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項15】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号117に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号118に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項16】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号55に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号108に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号47に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号100に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号36に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号89に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号19に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号72に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号115に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号116に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号113に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号114に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号119に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号120に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号113に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号114に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記核酸分子が、N-アセチルガラクトサミンに共有結合している、請求項1~23のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項25】
少なくとも1つの、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸分子を含む医薬組成物。
【請求項26】
高コレステロール血症を有するかまたはその素因がある対象の治療または予防における使用のための、請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸分子または医薬組成物。
【請求項27】
高コレステロール血症と関連する疾患の治療または予防における請求項26に記載の使用による核酸または医薬組成物。
【請求項28】
高コレステロール血症と関連する前記疾患が、家族性高コレステロール血症、卒中予防、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、大動脈狭窄、脳血管疾患、末梢動脈疾患、高血圧、代謝症候群、II型糖尿病、非アルコール性脂肪酸肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、バージャー病、腎動脈狭窄、高アポベータリポタンパク血症、脳血管アテローム性動脈硬化症、脳血管疾患および静脈血栓症からなる群から選択される、請求項27に記載の使用による核酸または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子を含み、分子のセンスまたはアンチセンスのいずれかのRNA部分の3’末端に共有結合した一本鎖DNA分子をさらに含む核酸であって、二本鎖阻害性RNAがアポリポタンパク質B(ApoB)を標的とする、核酸、当該核酸分子を含む医薬組成物、ならびにApoBのレベルの増加と関連する疾患、例えば高コレステロール血症の治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高コレステロール血症と関連する心血管疾患は、一般的な状態であり、心疾患ならびに高い死亡頻度および罹病率をもたらし、貧弱な食事、肥満、または遺伝性機能障害性遺伝子の帰結であり得る。例えば、家族性高コレステロール血症におけるような低密度リポタンパク質受容体(LDL受容体)またはアポリポタンパク質B(ApoB)における変異。コレステロールは、動物細胞における膜新生のために必須である。水溶性を欠くことは、コレステロールがリポタンパク質に付随して身体の至るところに輸送されることを意味する。アポリポタンパク質は、リン脂質、コレステロールおよび脂質と一緒に形成され、これは、血流を介した身体の様々な部分へのコレステロールなどの脂質の輸送を促進する。リポタンパク質はサイズに従って分類され、HDL(高密度リポタンパク質)、LDL(低密度リポタンパク質)、IDL(中間密度リポタンパク質)、VLDL(超低密度リポタンパク質)、およびULDL(超低比重リポタンパク質)リポタンパク質を形成し得る。
【0003】
リポタンパク質はその循環を通して組成を変化させ、様々な比率のアポリポタンパク質A(ApoA)、B(ApoB)、C(ApoC)、D(ApoD)またはE(ApoE)、トリグリセリド、コレステロールおよびリン脂質を含む。ApoBは、ULDLおよびLDLの主要なアポリポタンパク質であり、2つのアイソフォーム、apoB-48およびapoB-100を有する。両方のApoBアイソフォームは、1つの単一遺伝子によってコードされ、短い方のApoB-48遺伝子は、終止コドンの作製をもたらす残基2180でのApoB-100転写物のRNA編集の後に生成される。ApoB-100は、LDLの主要な構造タンパク質であり、細胞受容体のリガンドとして作用し、これは、例えばコレステロールの細胞中への輸送を可能にする。
【0004】
家族性高コレステロール血症は、希少疾患であり、血中のLDLコレステロール(LDL-C)のレベルの上昇から生じる。この疾患は、常染色体優性障害であり、ヘテロ接合状態(350~550mg/dL LDL-C)およびホモ接合状態(650~1000mg/dL LDL-C)の両方がLDL-Cの上昇をもたらす。家族性高コレステロール血症のヘテロ接合型は、人口のおよそ1:500である。ホモ接合状態はずっと稀であり、約1:1,000,000である。LDL-Cの正常レベルは、130mg/dLの領域にある。
【0005】
高コレステロール血症は、小児患者において特に急性であり、これは、早期に診断されない場合、冠動脈心疾患の加速および早死をもたらし得る。早期に診断および治療される場合、小児は正常な平均余命を有し得る。成人では、高いLDL-C(変異または他の要因のいずれかによる)は、アテローム性動脈硬化症のリスクの増加と直接的に関連し、これは、冠動脈疾患、卒中または腎臓の問題を導き得る。LDL-Cのレベルを低下させることは、アテローム性動脈硬化症および関連する状態のリスクを低下させることが知られている。LDL-Cレベルは、HMG-CoAレダクターゼを阻害することによってコレステロールのデノボ合成をブロックするスタチンの投与によって最初に低下され得る。いくらかの対象は、スタチンをエゼチミブ、コレスチポールまたはニコチン酸などの他の治療剤と組み合わせる併用療法の恩恵を受け得る。しかしながら、HMG-CoAレダクターゼの発現および合成は、スタチン阻害に応答して順応し、経時的に増加し、従って、有益な効果は、スタチン抵抗性が確立された後は、一時的または限定的に過ぎない。
【0006】
それゆえ、LDL-Cの上昇による心血管疾患を制御するために、単独で、または既存の治療アプローチとの組み合わせで使用することができる代替療法を特定することが所望されている。
【0007】
遺伝子機能を特異的に除去する技術は、低分子阻害性または干渉RNA(siRNA)とも呼ばれる二本鎖阻害性RNAの細胞中への導入を介するものであり、これは、siRNA分子に含まれる配列に相補的なmRNAの破壊をもたらす。siRNA分子は、互いにアニーリングして、二本鎖RNA分子を形成する、RNAの2つの相補鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖)を含む。siRNA分子は、典型的には(排他的にではないが)、除去しようとする遺伝子のエキソンに由来する。多くの生物は、siRNAの形成を導くカスケードを活性化することによって、二本鎖RNAの存在に応答する。二本鎖RNAの存在は、二本鎖RNAを、リボヌクレオタンパク質複合体の部分になるより小さなフラグメント(siRNA、約21~29ヌクレオチド長)にプロセシングするRNaseIIIを含むタンパク質複合体を活性化する。siRNAは、RNase複合体が、siRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNAを切断し、それによりmRNAの破壊をもたらすためのガイドとして作用する。
【0008】
ApoBは、LDL-Cの調節における治療的介入のための既知の標的である。例えば、アンチセンスRNAを使用することによってApoB合成をサイレンシングする試みが当技術分野で知られている。国際公開2006/053430、国際公開2008/109357、国際公開2014/076196、国際公開2010/076248、国際公開2015/071388、国際公開2011/000108および国際公開2008/118883を参照されたい。RNAiまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与に関する問題は、RNAi分子の長さまたは修飾非天然ヌクレオチドによって引き起こされる毒性である。さらに、アンチセンス技術は必ずしも安定な形質転換を生じないので、RNAiなどのアンチセンス構築物の安定性は変動し得る。
【0009】
本開示は、センスまたはアンチセンスのいずれかの阻害性RNAの3’末端に結合された短いDNA部分を含めることによって改変され、ヘアピン構造を形成し、ApoBをコードするヌクレオチド配列を参照して設計される二本鎖阻害性RNAを含む核酸分子に関する。参照によりその全体が組み込まれるUS8,067,572は、当該核酸分子の例を開示している。二本鎖阻害性RNAは、専らまたは主に天然ヌクレオチドを使用し、従来技術の二本鎖RNA分子が薬力学および薬物動態を向上させるために典型的に利用する修飾されたヌクレオチドまたは糖を必要としない。開示される二本鎖阻害性RNAは、潜在的により少ない副作用でApoBをサイレンシングする活性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開2006/053430
【特許文献2】国際公開2008/109357
【特許文献3】国際公開2014/076196
【特許文献4】国際公開2010/076248
【特許文献5】国際公開2015/071388
【特許文献6】国際公開2011/000108
【特許文献7】国際公開2008/118883
【発明の概要】
【0011】
発明の陳述
本発明の一態様によれば、核酸分子であって、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第1の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第2の部分であって、当該一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合しているか、または一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’に共有結合しており、二本鎖阻害性RNAは、ヒトアポリポタンパク質Bタンパク質の部分をコードするセンスヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、当該一本鎖DNA分子は、その長さの少なくとも一部にわたって、当該一本鎖DNAの一部への相補的塩基対形成によってアニーリングして、二本鎖DNA構造を形成するように適合されたヌクレオチド配列を含む、第2の部分と、を含む、核酸分子が提供される。
【0012】
本発明の一態様によれば、核酸分子であって、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第1の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第2の部分であって、当該一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合しているか、または一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’に共有結合しており、二本鎖阻害性RNAは、ヒトアポリポタンパク質Bタンパク質、またはその多型配列変異体の部分をコードするセンスヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、当該一本鎖DNA分子は、その長さの少なくとも一部にわたって、当該一本鎖DNAの一部への相補的塩基対形成によってアニーリングして、二本鎖DNA構造を形成するように適合されたヌクレオチド配列を含む、第2の部分と、を含む、核酸分子が提供される。
【0013】
「多型配列変異体」は、1個、2個、3個以上のヌクレオチドによって異なる配列である。アポB多型は当技術分野で知られており、そのいくつかは高コレステロール血症と関連する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合している。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’末端に共有結合している。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、ヌクレオチド配列TCACCTCATCCCGCGAAGC(配列番号1)を含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、10~40ヌクレオチド長である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、18~29塩基対長である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、21塩基対長である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNAは、配列番号2に示されるヌクレオチド配列を参照して設計される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号4に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本発明の別の実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む。
【0024】
本発明の別の実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109および110からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号27に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号47に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号80に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号100に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0027】
本発明の別の実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、111、113、115、117、119、121、123および125からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む。
【0028】
本発明の別の実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、112、114、116、118、120、122、124、および126からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号111に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号112に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号113に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号114に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号115に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号116に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号117に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号118に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号119に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号120に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号121に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号122に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号123に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号124に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号125に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号126に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0037】
本発明の別の実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号7、配列番号36、配列番号111、配列番号113、配列番号115および配列番号119からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号60、配列番号72、配列番号89、配列番号100、配列番号108、配列番号114および配列番号118からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号7に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号60に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号111に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号112に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号117に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号118に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号55に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号108に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号47に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号100に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号36に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号89に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号19に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号72に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号115に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号116に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号113に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号114に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号119に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号120に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号113に示されるセンスヌクレオチド配列および配列番号114に示されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、修飾された塩基、糖、ヌクレオチド間結合、またはその組み合わせを含む。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、当該核酸分子を細胞または組織に送達するように適合された担体分子に共有結合している。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、N-アセチルガラクトサミンに共有結合している。好ましくは、N-アセチルガラクトサミンは三分岐である。
【0053】
本発明の別の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、オリゴマンノース、オリゴフコース、またはN-アセチルガラクトサミン4-サルフェートに共有結合している。
【0054】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの本発明による核酸分子を含む医薬組成物が提供される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、当該組成物は、医薬担体および/または賦形剤をさらに含む。
【0056】
投与されるときに、本発明の組成物は、薬学的に許容される調製物で投与される。そのような調製物は、通常、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および任意選択でコレステロール低下剤などの他の治療剤を含み得、これは、本発明による核酸分子と別々に、または組み合わせが適合性である場合は併用調製物で投与され得る。
【0057】
本発明による核酸と他の異なる治療剤との組み合わせは、同時の、連続的な、または時間的に分離した投薬量として投与される。
【0058】
本発明の治療薬は、注射を含む任意の従来の経路によって、または経時的な漸進的注入によって投与され得る。投与は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、経皮または経上皮であり得る。
【0059】
本発明の組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、単独で、またはさらなる用量と一緒に、所望の応答をもたらす組成物の量である。心血管疾患などの疾患を治療する場合、所望の応答は、疾患の進行の阻害または逆転である。これは、一時的に疾患の進行を遅延させることのみを含み得るが、より好ましくは、持続的に疾患の進行を停止することを含む。これは、通常の方法によってモニターされ得る。
【0060】
そのような量は、もちろん、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター、治療の期間、同時治療の性質(ある場合)、特定の投与経路、および医療従事者の知識および専門知識内の同様の要因に依存する。これらの要因は当業者によく知られており、日常的な実験だけで対処され得る。一般に、個々の成分またはその組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断に従った最も高い安全な用量を使用することが好ましい。しかしながら、患者が、医学的理由、心理的理由または実質的に任意の他の理由で、より低い用量または許容用量を主張し得ることが当業者によって理解される。
【0061】
前述の方法において使用される医薬組成物は、好ましくは無菌であり、患者への投与のために適切な重量または容量の単位で所望の応答をもたらすために有効な量の本発明による核酸分子を含む。応答は、例えば、心血管疾患の退行および疾患症状の減少などを決定することによって測定され得る。
【0062】
対象に投与される本発明による核酸分子の用量は、様々なパラメーターに従って、特に使用される投与様式および対象の状態に従って選択され得る。他の要因には、所望される治療期間が含まれる。対象における応答が、適用される最初の用量で不十分である場合、より高い用量(または異なるより局所化された送達経路による有効により高い用量)が、患者の許容性が許す程度まで用いられ得る。本発明による核酸の検出方法が、治療を必要とする対象のために適切な投薬量の決定を容易にすることは明らかである。
【0063】
一般に、1nM~1μMの本明細書に開示される核酸分子の用量が、標準的な手順に従って一般に処方および投与される。好ましくは、用量は、1nM~500nM、5nM~200nM、10nM~100nMの範囲であり得る。組成物の投与のための他のプロトコルは当業者に知られており、ここで、用量、注射スケジュール、注射部位、投与様式などは前述から変動する。ヒト以外の哺乳動物への組成物の投与(例えば、試験目的または獣医治療目的のため)は、上記と実質的に同じ条件下で実施される。本明細書で使用される場合、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯動物を含む。
【0064】
投与されるときに、本発明の医薬調製物は、薬学的に許容される量で、薬学的に許容される組成物で適用される。「薬学的に許容される」という用語は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げない非毒性材料を意味する。そのような調製物は、通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および任意選択で他の治療剤、例えばスタチンを含み得る。医薬において使用されるときに、塩は薬学的に許容されるものであるべきであるが、薬学的に許容されない塩は、その薬学的に許容される塩を調製するために好都合に使用され得、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的および薬学的に許容される塩には以下の酸、塩酸、臭化水素酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製されるものが含まれるが、これらに限定されない。また、薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製され得る。
【0065】
組成物は、所望であれば、薬学的に許容される担体と組み合わされ得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトへの投与のために適切な1つ以上の適合性の固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。この文脈での「薬学的に許容される担体」という用語は、例えば、溶解性および/または安定性を促進するために、それとともに活性成分が組み合わされる、天然または合成の、有機または無機の成分を示す。医薬組成物の成分はまた、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用が存在しないような方法で、本発明の分子と、そして互いに、混合されることができる。
【0066】
医薬組成物は、塩の酢酸、塩のクエン酸、塩のホウ酸、塩のリン酸を含む適切な緩衝剤を含み得る。医薬組成物はまた、任意選択で、適切な防腐剤を含み得る。
【0067】
医薬組成物は、単位剤形で好都合に提供され得、薬学の技術分野でよく知られている方法のいずれかによって調製され得る。すべての方法は、活性剤を、1つ以上の副成分を構成する担体と合わせるステップを含む。一般に、組成物は、活性化合物を、液体担体、微細に分割された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に合わせ、次に、必要であれば、生成物を成形することによって調製される。経口投与のために適切な組成物は、各々が所定量の活性化合物を含む、カプセル、錠剤、トローチなどの個別の単位として提供され得る。
【0068】
非経口投与のために適切な組成物は、核酸の無菌の水性または非水性の調製物を好都合に含み、これは、好ましくは、レシピエントの血液と等張である。この調製物は、適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用する既知の方法に従って処方され得る。無菌の注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射用の溶液または懸濁液(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として)であり得る。用いられ得る許容される溶媒には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁媒質として従来用いられている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の刺激の少ない固定油が用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製において使用され得る。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与のために適切な担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAにおいて見出され得る。
【0069】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、当該医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる異なる治療剤を含む。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、スタチンである。
【0071】
スタチンは、LDL-Cの上昇を有する対象におけるコレステロールレベルを制御するために一般的に使用されている。スタチンは、罹患しやすい対象および心血管疾患を有する対象の予防および治療において有効である。スタチンの典型的な投薬量は5~80mgの領域にあるが、これは、高LDL-Cを患う対象のために必要とされる所望されるLDL-C低下のレベルおよびスタチンに依存する。しかしながら、スタチンの標的であるHMG-CoAレダクターゼの発現および合成は、スタチン投与に応答して順応し、したがって、スタチン療法の有益な効果は、スタチン抵抗性が確立された後は、一時的または限定的に過ぎない。
【0072】
好ましくは、当該スタチンは、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピトバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択される。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、エゼチミブである。任意選択で、エゼチミブは、少なくとも1つのスタチン、例えばシンバスタチンと組み合わされる。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、フィブラート、ニコチン酸、コレスチラミンからなる群から選択される。
【0075】
本発明のさらなる別の好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、治療抗体、例えば、エボロクマブ、ボコシズマブまたはアリロクマブである。
【0076】
本発明のさらなる態様によれば、高コレステロール血症を有するかまたはその素因がある対象の治療または予防における使用のための、本発明による核酸分子または医薬組成物が提供される。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、当該使用は、高コレステロール血症と関連する疾患の治療または予防である。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、高コレステロール血症と関連する当該疾患は、卒中予防、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、大動脈狭窄、脳血管疾患、末梢動脈疾患、高血圧、代謝症候群、II型糖尿病、非アルコール性脂肪酸肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、バージャー病、腎動脈狭窄、高アポベータリポタンパク血症、脳血管アテローム性動脈硬化症、脳血管疾患および静脈血栓症からなる群から選択される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、当該対象は、小児対象である。
【0080】
小児対象には、新生児(0~28日齢)、乳児(1~24月齢)、幼児(2~6歳)および思春期前(7~14歳)小児が含まれる。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態では、当該対象は、成人対象である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症である。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、家族性高コレステロール血症は、アポリポタンパク質B発現のレベルの上昇と関連する。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、当該対象は、スタチン療法に対して抵抗性である。
【0085】
本発明のさらなる態様によれば、高コレステロール血症を有するかまたはその素因がある対象を治療する方法であって、有効用量の本発明による核酸または医薬組成物を投与し、それにより高コレステロール血症を治療または予防することを含む、方法が提供される。
【0086】
本発明の好ましい方法では、当該対象は、小児対象である。
【0087】
本発明の別の好ましい方法では、当該対象は、成人対象である。
【0088】
本発明の好ましい方法では、高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症である。
【0089】
本発明の好ましい方法では、家族性高コレステロール血症は、ApoB発現のレベルの上昇と関連する。
【0090】
本発明の好ましい方法では、当該対象は、スタチン療法に対して抵抗性である。
【0091】
本発明のさらなる態様によれば、ApoBの上昇と関連する高コレステロール血症の診断および治療のための治療レジメンであって、
i)高コレステロール血症を有することの疑いがあるかまたは高コレステロール血症を有している疑いのある対象から生物学的サンプルを取得することと、
ii)サンプルを、アポリポタンパク質ポリペプチドに特異的な抗体または抗体フラグメントと接触させることと、
iii)当該生物学的サンプルにおける当該アポリポタンパク質BポリペプチドおよびLDL-Cの濃度を決定することと、
iv)LDL-C濃度が350mg/dL超である場合に、本発明による核酸分子または医薬組成物を投与することと、を含む、治療レジメンが提供される。
【0092】
典型的には、家族性高コレステロール血症疾患において、LDL-Cのレベルは、アポリポタンパク質Bにおける選択された変異についてヘテロ接合性である対象において350~550mg/dLであり、アポリポタンパク質Bにおけるホモ接合変異を保有する対象において650~1000mg/dLである。LDL-Cの正常レベルは、130mg/dLの領域にある。
【0093】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という単語、ならびにこれらの単語の変形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むがこれらに限定されない」ことを意味し、他の部分、添加物、成分、整数またはステップを除外することを意図しない(除外しない)。
【0094】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、別段文脈上の必要がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、別段文脈上の必要がない限り、明細書は、単数形だけでなく複数形も考慮していると理解すべきである。
【0095】
本発明の態様、実施形態または例と関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、それと非適合性でない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態または例に適用可能であると理解すべきである。
【0096】
本発明の実施形態をここで以下の図を参照して例としてのみで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1a】対照siRNA構築物と比較した、GalNAcコンジュゲートCrook抗マウスApoB siRNAのインビボ活性を示すグラフ。(a)5匹の成体雄性野生型C57BL/6マウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAの投与(1つの処置群)の96時間後に測定し、生理食塩水を投与した対照処置群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。結果は、対照と比較して、GalNAcコンジュゲートCrook siRNAを用いて処置したマウスにおける平均血漿ApoBレベルの実質的な低下を示す。しかしながら、おそらく小さなサンプルサイズ、および対照動物の間のApoBレベルの変動に起因して、有意性には至らない(p=0.11)。
図1b】対照siRNA構築物と比較した、GalNAcコンジュゲートCrook抗マウスApoB siRNAのインビボ活性を示すグラフ。(b)5匹の成体雄性野生型C57BL/6マウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAの投与(1つの処置群)の96時間後に測定し、siRNA構築物非コンジュゲート(GalNAcなし)ApoB Crook siRNAを投与した対照処置群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。結果は、Crookを有する対照非コンジュゲートsiRNAと比較して、このGalNAcコンジュゲートCrook siRNA処置群における血漿ApoBレベルの高度に有意な低下を示す(P=0.00435832)。
図2a-1】表2に列挙する40個のカスタムデュプレックスCrook siRNA(C1~C40)のインビトロスクリーニング。グラフは、40個のcrook siRNAの各々によるHepG2細胞におけるApoB mRNA発現の相対的ノックダウンを示す。個々のグラフは、表2に示す各々のsiRNAセンスおよびアンチセンスペア、C1~C20(センス鎖)、C21~40(アンチセンス鎖)からのデータを示す。40個のcrook siRNA分子の各々を、アッセイ開発段階において特定した条件を使用して、5つの用量(100nM、25nM、6.25nM、1.56nMおよび0.39nM)でHepG2細胞中に(4連で)リバーストランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に、細胞を溶解し、ApoB mRNAレベルをデュプレックスRT-qPCRによって決定した。各濃度の各siRNAについてのApoBの相対的ノックダウンを計算するために、発現をまずハウスキーピング参照遺伝子GAPDH mRNA発現に対して正規化し、次に対応するNEG対照(センスまたはアンチセンス)の5つの用量にわたる平均ApoB発現に対して正規化した。しかしながら、ApoB発現の低下がNEGセンス対照について観察され、それでsiRNA C1~C20についてのApoBのノックダウンは過小評価されている可能性があることに留意すべきである。40個すべてのsiRNAのApoBノックダウン効率を表3に示す。C13およびC23のsiRNAは、85%超のノックダウン効率を示す(25nMで)。
図2a-2】同上。
図2a-3】同上。
図2b-1】同上。
図2b-2】同上。
図2b-3】同上。
図2c-1】同上。
図2c-2】同上。
図2c-3】同上。
図2d】同上。
【0098】
表3は、インビトロApoB mRNA発現データ(図2(a~d))から編集したものであり、最も高いノックダウンパフォーマーを表の最上部にして、Crook siRNA(C1~C40)の順位を示す。C13およびC23のsiRNAは、85%超のノックダウン効率を示す(25nMで)。
【0099】
材料および方法
GalNAcコンジュゲートCrook抗マウスApoB siRNAのインビボ活性
肝臓への選択的siRNA送達を向上させるために、三分岐GalNAcコンジュゲートを、ホスホロアミダート結合を介してCrook-siRNAのパッセンジャー鎖に付着させた。
【0100】
以下に記載するApoB Crook-siRNAの非コンジュゲート(GalNAcなし)およびコンジュゲート(GalNAc)バージョンを、それぞれ静脈内(IV)および皮下(SC)経路によって成体雄性野生型(WT)C57BL/6マウスに投与して、相対的な血漿および組織曝露を調査した。さらに、対照GalNAcコンジュゲート非修飾siRNA(Crookなし)構築物を比較した。
【0101】
インビボApoB siRNA構築物
マウスにおけるApoBのインビボサイレンシングのために、以下の配列を使用した(以下の表2におけるC10に対応する。類似の配列が以前にインビボで成功していたので、これを選択した(Soutshek et al Nature 2004;432:173-178)。
Crook-siRNA 21mer-dsRNA構築物(1):抗マウスApoB-GalNAc
センス鎖:
5’-GUCAUCACACUGAAUACCAAU-d(tcacctcatcccgcgaagc)-3’-[Tri-GalNAc]
アンチセンス鎖:
5’-AUUGGUAUUCAGUGUGAUGAC-3’
最終的なGalNAcコンジュゲートの構造:
【化1】
【0102】
Crook-siRNA 21mer dsRNA構築物(2):非コンジュゲート抗マウスApoB
センス鎖(パッセンジャー)
5’-GUCAUCACACUGAAUACCAAU-d(tcacctcatcccgcgaagc)-3
アンチセンス鎖(ガイド)
5’-AUUGGUAUUCAGUGUGAUGAC-3
【0103】
用量選択のための理論的根拠は、科学文献において公開された以下の情報に基づいた。
GalNAcコンジュゲートsiRNAを、5mg/kgで皮下投与し、これは、遺伝子サイレンシングの必要とされるレベルをもたらすことが予想され、ここで、構造的に関連するsiRNAのED80は、2.5mg/kgであると報告されている(Soutschek et al.,2004)。これらの構造的に関連するsiRNAは、マウスにおいて25mg/kg(単回投与)まで許容された(Soutschek et al.,2004)。
【0104】
スポンサーのsiRNAの非コンジュゲートバージョンを、50mg/kg IVで投与する。SC用量と比較して10倍のIVでのこの増加は、非コンジュゲートsiRNAの肝臓の標的化における有効性がより低いことに起因する。さらに、SC投与と比較して、IVの後に肝臓においてより低いレベルのRNAが測定されることが、Soutschek et al(2004)によって報告されている。SCデポからのsiRNAのより遅い放出は、受容体-リガンド相互作用の可能性を増加させる曝露の延長、および組織中へのより大きな取り込みを導くと記述されている。類似の関連するsiRNAは、連続する3日間のIV投与で50mg/kgまでマウスによってよく許容されている(Nair et al.2014)。予防措置として、残りの動物に投薬する前に、15分の観察期間を第1の動物のIV投薬の間に置いて、試験物質が何らかの有害作用を引き起こすかどうかを決定する。
【0105】
マウスが、選択する種である。なぜなら、それは試験物質の安全性試験における毒物学の種の1つとして使用されているからである。マウスはまた、Crook-siRNA調製物の治療標的(ApoB)に関してヒトと非常に類似した代謝生理を持っている。この種において生成されたデータのヒトに対する意義を評価のために規制当局に許容される利用可能なかなりの量の公開されたデータが存在する。
【0106】
動物
20匹の健康な雄性動物(処置群当たり5匹のマウス)を提供するために十分なC57BL/6マウスを、承認された供給元から取得した。動物は、投薬時に20~30gの目標体重範囲にある。マウスに、尾部マーキングによって一意的に番号付けする。番号をランダムに割り当てる。ケージを、研究番号および動物番号を含む情報を与えるカードによってコード化する。研究部屋を、部屋番号および研究番号を含む情報を与えるカードによって特定する。受け取り時に、すべての動物を、不健康の外部兆候について検査した。不健康な動物を研究から除外した。動物を最低5日の期間気候順化させた。実行可能な場合、研究の科学的完全性を損なうことなしに、動物をできるだけ取り扱った。投薬開始前に福祉監査を実行して、研究のためのそれらの適合性を確実にした。
【0107】
マウスを、45~65%の相対湿度で、20~24℃の温度に恒温維持された部屋の中に維持し、毎日蛍光灯(名目上12時間)に曝露した。温度および相対湿度を毎日記録する。施設は、最低15回の空気交換/時間を与えるように設計されている。代謝ケージ中または手術からの回復時を除いて、マウスを、適切な寝床を含む適切な固体床ケージ中に、性別に従ってケージ当たり5匹まで収容した。
【0108】
ケージは、’Code of Practice for the Housing and Care of Animals Bred,Supplied or Used for Scientific Purposes’(Home Office,London,2014)に従っている。動物の環境および福祉の両方を高めるために、それらに木製Aspenチューブロックおよびポリカーボネートトンネルを与えた。サプライヤーは、使用したブロックの各バッチについて分析証明書を提供した。すべての動物は、5LF2 EU Rodent Diet 14%への自由接近を許可される。食餌のサプライヤーは、使用した各バッチについて特定の混入物およびいくつかの栄養素の濃度の分析を提供した。すべての動物は、ケージに取り付けられたボトルからの水道水への自由接近を許可された。水道水供給の定期的な分析を行う。
【0109】
本研究の一部として生きた動物に対して実施されるすべての手順は、United Kingdom National Law,the Animals(Scientific Procedures)Act 1986の規定に従う。
【0110】
すべての動物を、それらが健康であることを確実にするために、作業日の開始時と終了時に検査した。不健康の顕著な兆候を示すすべての動物を隔離した。瀕死の動物または関連する内務省認可によって課せられた重症度限界を超える危険にある動物を屠殺した。
【0111】
インビボ実験のための材料および方法
製剤の調製
試験物質を0.9%生理食塩水中で希釈して、それぞれ、ApoB Crook-siRNA GalNAc非コンジュゲートおよびコンジュゲートのIVおよびSC用量のための25mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度を提供した。試験物質が完全に溶解するまで、製剤を適切に穏やかにボルテックスした。得られた製剤(複数可)を目視検査のみによって評価し、それに従って分類した。
(1)清澄溶液
(2)濁った懸濁液、可視粒子なし
(3)可視粒子
使用後、製剤を名目上2~8℃で冷蔵保存した。
【0112】
投薬の詳細
各動物に、ApoB Crook-siRNA非コンジュゲートの単回IV用量、またはApoB Crook-siRNA GalNAcコンジュゲートの単回SC用量のいずれかを与えた。IV用量を、2mL/kgの容量で外側尾静脈中にボーラスとして投与した。SC用量を、5mL/kgの容量で皮下空間中に投与した。
群1:GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNA 5mg/kg用量
群2:非コンジュゲート(GalNAcなし)ApoB Crook siRNA 50mg/kg用量
群3:生理食塩水対照群
【0113】
体重
最低限でも、体重を、到着の翌日および用量投与の前日に記録した。必要であれば、追加の決定を行った。
【0114】
サンプル保存
適切な場合、サンプルに、以下を含む情報で一意的にラベルを付した:研究番号、サンプルタイプ、用量群、動物番号/Debraコード、(名目上)サンプリング時間、保存条件。サンプルを<-50℃で保存した。
【0115】
薬物動態調査
用量群の指定
動物を以下のように用量群に割り当てた。
【表1】
【0116】
血液サンプリング
一連の血液サンプル(名目上100μL、体重に依存)を、以下の時点、投薬後0、48、および96時間で、尾部切り込みによって収集した。動物を、ペントバルビタールナトリウムを使用して終末的に麻酔し、最終サンプル(名目上0.5mL)を心臓穿刺によって収集した。
【0117】
血液サンプルをK2EDTAマイクロキャピラリーチューブ(尾部切り込み)またはK2EDTA血液チューブ(心臓穿刺)に収集し、処理するまで氷上に置いた。血液を遠心分離して(1500g、10分、4℃)、分析のための血漿を得た。バルク血漿を、等容量の2つのアリコートに分けた。残存血液細胞を廃棄した。
【表2】
【0118】
予定した収集時間が許容される範囲外である場合、実際の血液収集時間を、任意のその後のPK分析において含めるために報告した。
【0119】
動物の運命
動物を、終末血液サンプリングの前にペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射を介して麻酔し、灌流および放血によって屠殺した。
【0120】
全身灌流を実行し、すべての動物をヘパリン処理生理食塩水溶液で4ml/分の速度で5分間フラッシュした(約20mLの総フラッシュ)。死亡を、呼吸、心拍および血流の不在によって確認した。動物の死骸を組織収集のために保持した。
【0121】
組織収集
肝臓を、すべての動物(群A~D)から取り出し、事前秤量したチューブ中に入れた。組織サンプルを、UltraTurraxホモジナイゼーションプローブを使用して、1部の組織に対して5部のRNAlaterを用いてホモジナイズした。以下の組織を、ApoB処置群(群AおよびC)の動物から切除し、事前秤量したポット中に入れた。
・脾臓
・脳
・心臓
・肺葉
・皮膚(鼠径部、約25mm
【0122】
収集後、組織の外表面をPBSでリンスし、ティッシュを使用してそっと軽くたたいて乾燥させた。組織を、秤量するまで最初に湿潤氷上に置き、次に組織を保存前にドライアイス上で瞬間凍結させた。組織を<-50℃(名目上-80℃)で保存する。
【0123】
APOBについてのイムノアッセイ
血漿ApoBレベルを、Elabscience Biotechnology Inc.の市販のマウスApoB検出キット(カタログ番号E-EL-M0132)を使用する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を介して測定した。血漿サンプルを分析前に-80℃で保存し、氷上で解凍し、13,000rpmで5分間遠心分離した後、アリコートをアッセイバッファー中で希釈し、ELISAプレートにアプライした。ApoBアッセイキットは、OD450で測定される比色測定読み出しをもたらすサンドイッチELISAを使用する。特定の時点(0時間および96時間)での各動物からのサンプルを2連でアッセイし、測定値を、キットとともに供給される標準曲線試薬に基づいて、血漿1ml当たりのApoBのマイクログラムとして記録した。すべてのデータポイントは、変動係数<20%で測定された。
【0124】
ApoB Crook siRNAのインビトロスクリーニング
HepG2リバーストランスフェクション
本研究において評価したカスタムライブラリの説明を表2に示す。Horizon Discoveryによって合成されたカスタムデュプレックスsiRNAを、UltraPure DNaseおよびRNase不含水中に再懸濁して、10μMのストック溶液を生成した。
・ストックsiRNAを、4×384ウェルアッセイプレート中に分注した。各アッセイプレート上に、10個のカスタムsiRNAと3個の対照(POS ApoB、NEGセンスおよびNEGアンチセンス)を分注して、100nMのアッセイプレートにおける最高最終濃度からの5点4倍希釈系列を生成した。ON-TARGETplus非標的化およびApoB siRNA対照を分注して、25nMの最終濃度とした。
・Lipofectamine RNAiMAX(ThermoFisher #13778075)をOptiMEM培地中で希釈した後、ウェル当たり10μLのLipfectamine RNAiMAX:OptiMEM溶液をアッセイプレートに添加した。ウェル当たりのRNAiMAXの最終容量は0.08μLであった。
・脂質-siRNAミックスを室温で30分間インキュベートした後、細胞に添加した。
・HepG2細胞をアッセイ培地(MEM GlutaMAX(GIBCO)10%FBS 1%Pen/Strep)中で希釈した後、4,000個のHepG2細胞を40μLの容量でアッセイプレートの各ウェル中に播種した。4連の技術的複製物をアッセイ条件ごとに播種した。
・細胞の評価の前に、プレートを加湿雰囲気中、37℃、5%COで72時間インキュベートした。
【0125】
ApoB/GAPDHデュプレックスRT-qPCR
・トランスフェクションの72時間後に、細胞を、Cells-to-CT 1-step TaqMan Kit(Invitrogen、4391851C)を使用して、RT-qPCR読み出しのために処理した。簡単に説明すると、細胞を50μlの冷PBSで洗浄し、次にDNaseIを含む20μlの溶解溶液中で溶解した。5分後に、溶解を、2μlのSTOP溶液を2分間添加することによって停止した。
・RT-qPCR分析のために、ウェル当たり3μlの溶解物を、384ウェルPCRプレート中にテンプレートとして11μlのRT-qPCR反応容量中で分注した。
・RT-qPCRを、GAPDH(VIC #4448486)およびApoB(FAM #4351368)用のTaqManプローブとともにThermoFisher TaqMan Fast Virus1-Step Master Mix(#4444434)を使用して実行した。
・RT-qPCRを、QuantStudio 6サーモサイクリング装置(Applied BioSystems)を使用して実行した。
・相対的定量(RQ)をΔΔCT法を使用して決定し、ここで、GAPDHを内部標準として使用し、発現の変化を参照サンプル(NEGセンスまたはNEGアンチセンスのいずれかのsiRNA処理細胞)に対して正規化した。
【0126】
統計
・このプロジェクトにおけるすべてのアッセイについて、4つの技術的複製物を各データポイントについて取得した。
・平均および標準誤差(SEM)を、ExcelまたはGraphpad Prismを使用して計算した。
・すべてのグラフを、Graphpad Prismを使用して生成した。
表1:ApoB crook siRNAの配列および対応する配列番号
【表3-1】
【表3-2】
【0127】
表2.40個のデュプレックスsiRNAのライブラリーがHorizon Discoveryによって合成された。この表は、各siRNAについてのRNAの両方の鎖の配列を示す。以下のDNA配列(dTdCdAdCdCdTdCdAdTdCdCdCdGdCdGdAdAdGdC)を、センス鎖(siRNA C1~C20、以下、センスsiRNAと呼ぶ)またはアンチセンス鎖(siRNA C21~C40、以下、アンチセンスsiRNAと呼ぶ)のいずれかの3’末端に付加した。
【表4】
【実施例
【0128】
実施例1
パイロットインビボマウス実験を実施して、GalNAcコンジュゲートCrook抗マウスApoB siRNAの活性を、対照siRNA構築物と比較して評価した。ApoB Crook siRNA(表2における配列C10;Covance)のコンジュゲート(GalNAc)および非コンジュゲート(GalNAcなし)バージョンを、それぞれ材料および方法の節において先に記載した皮下(SC)および静脈内(IV)経路によって成体雄性野生型(WT)C57BL/6マウスに投与した。
【0129】
血漿ApoBを、投薬の詳細の下で上記で詳述した、4つの処置群(群当たり5匹のマウス)において示すように、時間0(siRNA構築物の投与前)およびsiRNA構築物投与の96時間後にELISA(上記)によって測定した。
【0130】
各処置群の5匹のマウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を使用して、平均ApoB値+/-標準誤差(SEM)を計算した。GalNAcコンジュゲートCrook siRNAのSC投与の96時間後の血漿ApoBレベルの変化を、対照の(i)ビヒクル生理食塩水、または(ii)Crookを有する非コンジュゲートsiRNAのいずれかを与えたマウスにおけるレベルと比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。
【0131】
図1(a)を参照して、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAでの処置の96時間後のマウスの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、生理食塩水を投与した対照処置群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。結果は、対照と比較して、GalNAcコンジュゲートCrook siRNAで処置したマウスにおける平均血漿ApoBレベルの実質的な低下を示す。しかしながら、おそらく小さなサンプルサイズ、および対照動物の間のApoBレベルの変動に起因して、有意性には至らない(p=0.11)。
【0132】
図1(b)を参照して、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAの投与の96時間後に測定した血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、siRNA構築物非コンジュゲート(GalNAcなし)ApoB Crook siRNAで処置した対照群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。
結果は、Crookを有する対照非コンジュゲートsiRNAと比較して、このGalNAcコンジュゲートCrook siRNA処置群における血漿ApoBレベルの高度に有意な低下を示す(P=0.00435832)。
【0133】
重要なことに、このパイロットインビボ実験において使用した、選択したApoB Crook siRNA配列(表2におけるC10;Covance)は、インビトロApoB Crook siRNAスクリーニングの前に実行された。本発明者らのその後のインビトロデータ(実施例2)は、より高いApoB mRNAノックダウン(KD)効率を有する他のsiRNA配列が存在することを示しており(表3)、例えば、C23は、C10(74%)と比較して、25nMで89%のKDを与える。
【0134】
実施例2
図2(a~d)を参照して、HepG2細胞におけるアレイRNAiスクリーニングを実行して、ヒトApoB遺伝子を標的とする40個の「crook」siRNAのカスタムライブラリー(表2)を評価した。このライブラリー中のすべてのsiRNAは、センスRNA鎖(センスsiRNA)またはアンチセンスRNA鎖(アンチセンスsiRNA)に付加されたDNA伸長(または「crook」)を持っている。
【0135】
スクリーニングを実行する前に、HepG2リバーストランスフェクションのために適切な条件を特定した。まず、必須遺伝子を標的とするsiRNAを使用して、いくつかのトランスフェクション条件を評価した後、選択した条件を、ON-TARGETplus siRNAを使用したApoBの発現のノックダウン、ならびにApoBの遺伝子およびタンパク質の発現の分析のための分子検出ツールの評価に進めた。ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)およびデュプレックスリアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)アッセイを、それぞれタンパク質レベルおよびmRNAレベルでのApoB発現の変化を定量化するために開発した。スクリーニング段階において、40個のカスタムcrook siRNAを、5点用量範囲にわたって評価した。トランスフェクションの72時間後に、ApoB発現をデュプレックスRT-qPCRによって評価した。データをその関連する陰性対照(センスsiRNAについてはNEGセンス、アンチセンスsiRNAについてはNEGアンチセンス)に対して正規化した場合、少しの注目すべきものを例外として、ApoB発現のノックダウンは、同じRNA配列を共有するセンスsiRNAとアンチセンスsiRNAとの間で類似していた。しかしながら、ApoB発現の低下がNEGセンス対照について観察され、それでsiRNA C1~C20についてのApoBのノックダウンは過小評価されている可能性があることに留意すべきである。
【0136】
HepG2細胞を、アッセイ開発段階において特定した条件を使用して、siRNA対照と一緒に40個のカスタムcrook siRNA(20個のセンスsiRNAおよび20個のアンチセンスsiRNA)のライブラリーを用いてリバーストランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に、トランスフェクトした細胞におけるApoB mRNAレベルをデュプレックスRT-qPCRによって定量化し、ApoB mRNAレベルをハウスキーピング参照遺伝子GAPDH mRNAのレベルに対して正規化した(図2(a~d))。
【0137】
40個のカスタムcrook siRNA分子の評価はいくつかのアッセイプレートをカバーしたので、アッセイQCステップを実行できるように、各プレートにいくつかの対照を含めた。これらには、25nMで評価したApoBを標的とするON-TARGETplus(OT+)siRNAおよび対応非標的化対照、ならびにセンスおよびアンチセンスsiRNAのための陰性対照(それぞれNEGセンスおよびNEGアンチセンス)およびアルゴノート対照ApoB siRNA(POS ApoB)が含まれた。
【0138】
図2(a~d)を参照して、siRNA濃度の増加に伴うApoB発現の用量依存的な減少が、試験したsiRNAの大部分について観察されたが、しかしながら、観察されたノックダウンのレベルは、予想どおり、siRNA間で異なった。標的化siRNAによるApoBのノックダウンは、限定的なノックダウンが観察されたsiRNA C28およびC29を例外として、試験したすべてのsiRNAについてNEG対照よりも大きかった。
【0139】
表3を参照して、同じRNA配列を標的とするセンスおよびアンチセンスsiRNAを比較した場合、ノックダウンは類似していた。4つのsiRNAペアは、センスsiRNAとアンチセンスsiRNAとの間でノックダウン効率の相違を示すようであった。これらは、C3-C23、C8-C28、C9-C29、およびC13-C33であった。C3-C23を除いたこれらすべてについて、センスsiRNAはアンチセンスsiRNAよりも効率的であるようであったが、しかしながら、C8-C28およびC9-C29については、アンチセンスsiRNAはApoB発現をノックダウンしないようであった。
【0140】
25nMのsiRNAでの処理後のApoB mRNAレベルに基づいて全体に、以下のsiRNA、センスcrook siRNA C3およびC13ならびにアンチセンスcrook siRNA C23、C24、C30およびC36が最高のノックダウン効率を示す。C13およびC23は、この用量で85%超のノックダウン効率を示す唯一の2つのsiRNAである(表3を参照されたい)。
【0141】
表3 HepG2細胞におけるApoB Crook siRNA(C1~C40)のインビトロ活性。各siRNAを、ApoB mRNAノックダウン(KD)のパフォーマンスに従って順位付けし、最も高いKDを表の最上部にしている。
【表5-1】
【表5-2】
【0142】
参考文献
Nair,J.K.,Willoughby,J.L.,Chan,A.,Charisse,K.,Alam,M.R.,Wang,Q.,Hoekstra,M.,Kandasamy,P.,Kel’in,A.V.,Milstein,S.and Taneja,N.,2014.Multivalent N-acetylgalactosamine-conjugated siRNA localizes in hepatocytes and elicits robust RNAi-mediated gene silencing.Journal of the American Chemical Society,136(49),pp.16958-16961.
Soutschek,J.,Akinc,A.,Bramlage,B.,Charisse,K.,Constien,R.,Donoghue,M.,Elbashir,S.,Geick,A.,Hadwiger,P.,Harborth,J.and John,M.,2004.Therapeutic silencing of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs.Nature,432(7014),p.173.
図1a
図1b
図2a-1】
図2a-2】
図2a-3】
図2b-1】
図2b-2】
図2b-3】
図2c-1】
図2c-2】
図2c-3】
図2d
【配列表】
2022537987000001.app
【国際調査報告】