(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】D1ポジティブアロステリックモジュレーターとしての置換されたテトラヒドロイソキノリン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 401/06 20060101AFI20220824BHJP
A61K 31/4725 20060101ALI20220824BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220824BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220824BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220824BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C07D401/06 CSP
A61K31/4725
A61P43/00 111
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/20
A61P17/02
A61P29/00
A61P25/24
A61P25/02 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575050
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2020068181
(87)【国際公開番号】W WO2021001286
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレーデ、アンヌ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB04
4C063CC15
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC30
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA20
4C086ZA22
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、式(I)による化合物に関するものであり、
【化1】
これは、D1のポジティブアロステリックモジュレーターであり、従ってD1受容体が関与する疾患の治療のための医薬として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。
【化1】
【請求項2】
2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]‐1‐[(1S)‐5‐[(1S)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐イル]エテノンであり、式(IA)で表される請求項1に記載の式(I)の化合物。
【化2】
【請求項3】
治療に使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
D1受容体が関与する疾患及び/又は障害の治療及び/又は予防に使用するための、請求項1に定義された式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
統合失調症における認知症状及び陰性症状、神経遮断療法に関連する認知機能障害、軽度認知機能障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病及びその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病性認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病の薬物依存症、睡眠障害、アパシー、外傷性脊髄損傷、又は神経因性疼痛の治療及び/又は予防に使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
パーキンソン病及びその他の運動障害、アルツハイマー病、又は統合失調症における認知症状及び陰性症状の治療に使用するための、請求項1に定義された式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
請求項1で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項8】
D1ポジティブアロステリックモジュレーターの投与が適応となる疾患の治療及び/又は予防のための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、上記方法。
【請求項9】
統合失調症における認知症状及び陰性症状、神経遮断薬治療に関連した認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病及びその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病性認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病薬物中毒、睡眠障害、アパシー、外傷性脊髄損傷又は神経因性疼痛の治療及び/又は予防のための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、上記方法。
【請求項10】
パーキンソン病及びその他の運動障害、アルツハイマー病、又は統合失調症における認知症状及び陰性症状の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロイソキノリン誘導体及び治療におけるその使用に関するものである。特に本発明は、薬理学的に活性な置換されたテトラヒドロイソキノリン誘導体に関するものである。
【0002】
本化合物は、D1ポジティブアロステリックモジュレーターとして作用し、したがってD1受容体が関与する疾患の治療薬として有用である。
【背景技術】
【0003】
モノアミンであるドーパミンは、2つのGPCRファミリーを介して作用し、運動機能、報酬メカニズム、認知プロセス、及びその他の生理的機能を調節する。具体的には、ドーパミンD1とD5を含むD1様受容体(主にGs Gタンパク質に結合し、それによりcAMPの産生を促進する)と、D2、D3、D4受容体を含むD2様受容体(Gi/q Gタンパク質に結合し、cAMPの産生を抑制する)を介して、ドーパミンが神経細胞に作用している。これらの受容体は、脳のさまざまな部位に広く発現している。特にD1受容体は、多くの生理機能や行動プロセスに関与している。例えば、D1受容体は、シナプス可塑性、認知機能、目標指向の運動機能に加え、報酬プロセスにも関与している。D1受容体は、様々な生理的・神経学的プロセスに関与していることから、統合失調症の認知・陰性症状、古典的な抗精神病薬治療に関連する認知障害、衝動性、多動性注意障害(ADHD)、パーキンソン病及び関連する運動障害、ジストニア、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、加齢に伴う認知機能の低下、軽度認知障害(MCI)、薬物中毒、睡眠障害、無気力など、様々な疾患に関与していると考えられる。
【0004】
D1受容体を標的とした経口投与可能な低分子化合物の開発は困難であることがわかっている。これまでに開発されたD1アゴニストは、一般的にカテコール部位を特徴としており、そのためその臨床使用は侵襲的な治療に限られていた。また、ドーパミン受容体のサブタイプ(例:ドーパミンD1とD5)の間では、リガンド結合部位の相同性が高いため、十分な選択性を得ることは困難であった。また、D1アゴニストには、ジスキネジアや低血圧などを含むがそれには限定されない、潜在的に限定的な副作用と関連している。
【0005】
そのため、D1受容体を調節する新しい薬剤を設計する必要がある。
GPCRのアロステリックモジュレーターの同定は、受容体のメカニズムを理解するためのツールとして、また治療薬としての可能性を秘めており、大きな関心を集めている。GPCRは、細胞表面に存在する受容体の中で最大のファミリーであり、市販されている多くの医薬品は、これらの受容体が介在するシグナル伝達経路を直接活性化又は遮断する。しかし、一部のGPCR(ペプチド受容体など)では、サブタイプ間でリガンド結合部位の相同性が高いため(例えば、ドーパミンD1とD5、D2とD3など)、低分子の開発や十分な選択性を得ることが困難であることがわかっている。そのため、薬物研究の多くは、オルトステリックな天然アゴニストとは異なる部位を標的とする小分子の同定に移行している。これらの部位に結合するリガンドは、GPCRのコンフォメーションを変化させ、受容体の機能をアロステリックに調節する。アロステリックリガンドは、親和性及び/又は有効性に影響を与えることにより、内因性リガンドの作用を増強(ポジティブアロステリックモジュレーター:PAM)又は減弱(ネガティブアロステリックモジュレーター:NAM)させる能力を含む、多様な活性を有している。アロステリックモジュレーターは、サブタイプの選択性だけでなく、直接的な効果や本質的な有効性がないこと、ネイティブな伝達物質が放出されている場所やタイミングでその効果を増強するだけであること、アゴニストに常にさらされることで生じる脱感作を誘発する傾向が少ないこと、標的に関連する副作用を誘発する傾向が少ないことなど、創薬の観点から他の潜在的な利点があると考えられる。
【0006】
本発明による化合物は、D1受容体に対するD1アゴニスト又は内因性リガンドの効果をアロステリックなメカニズムで増強するので、D1ポジティブアロステリックモジュレーター(D1 PAM)である。
【0007】
本発明に係る化合物は、D1 PAMであることから、D1受容体が関与する疾患や障害の治療及び/又は予防に有益である。このような疾患としては、統合失調症における認知・陰性症状、神経遮断療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病及びその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病性認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物依存症、睡眠障害、アパシー、外傷性脊髄損傷又は神経因性疼痛などが挙げられる。
【0008】
国際特許出願WO2013/051869A1は、NK2アンタゴニストである特定の3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐イル誘導体を開示している。
【0009】
国際特許出願WO2008/109336A1は、ヒスタミンH3受容体のモジュレーターである特定のテトラヒドロイソキノリン化合物を開示している。
【0010】
国際特許出願WO2014/193781A1は、パーキンソン病又は統合失調症に伴う認知機能障害の治療に有用であると考えられる特定の3,4‐ジヒドロイソキノリン‐2(1H)‐イル誘導体を開示している。
【0011】
国際特許出願WO2016/055479は、D1受容体が役割を果たす疾患の治療に有用な置換3,4‐ジヒドロイソキノリン‐2(1H)‐イル誘導体及びその類縁体を開示している。
【0012】
国際特許出願WO2019/204418は、D1ポジティブアロステリックモジュレーターであり、パーキンソン病やその他の運動障害、アルツハイマー病、統合失調症、注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療に有用であると考えられる特定のピラゾ‐テトラヒドロイソキノリン誘導体を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、運動障害や認知障害など、選択的D1アゴニストを用いた治療で従来見られた副作用を軽減しつつ、優れた薬物動態学的及び薬力学的特性を兼ね備えた強力なD1ポジティブアロステリックモジュレーターの開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、式(I)の2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]‐1‐[5‐[2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐イル]エテノン
【化1】
又はその薬学的に許容される塩を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による化合物は、共に係属している国際特許出願WO2016/055479の一般的な範囲に包含される。しかし、そこには、上に描かれているような式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の具体的な開示はない。
【0016】
本発明はまた、治療に使用するための、上記で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、D1受容体が役割を果たしている疾患及び/又は障害の治療及び/又は予防に使用するための、上記で定義した式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩も提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、統合失調症における認知症状及び陰性症状、神経遮断療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病及びその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病性認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病薬物依存症、睡眠障害、アパシー、外傷性脊髄損傷又は神経因性疼痛の治療及び/又は予防に使用するための、上記で定義した式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
この局面の特定の実施形態において、本発明は、パーキンソン病及びその他の運動障害、アルツハイマー病、又は統合失調症における認知症状及び陰性症状の治療に使用するための、上記で定義した式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0020】
したがって、1つの特定の局面において、本発明は、パーキンソン病及び他の運動障害の治療に使用するための、上記で定義した式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0021】
さらなる局面では、本発明は、D1受容体が役割を果たしている疾患及び/又は障害の治療及び/又は予防に有用な医薬品の製造のための、上記で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0022】
別のさらなる局面では、本発明は、統合失調症における認知症状及び陰性症状、神経遮断療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病及びその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病性認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物依存症、睡眠障害、アパシー、外傷性脊髄損傷、神経因性疼痛の治療及び/又は予防に有用な医薬品の製造のための、上記で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0023】
この局面の特定の実施形態では、本発明は、パーキンソン病及びその他の運動障害、アルツハイマー病、又は統合失調症における認知症状及び陰性症状の治療に有用な医薬品の製造のための、上記で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供するものである。
【0024】
ある特定の局面では、本発明は、パーキンソン病及び他の運動障害の治療に有用な医薬品の製造のための、上記で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供するものである。
【0025】
本発明はまた、D1ポジティブアロステリックモジュレーターの投与が適応となる疾患の治療及び/又は予防のための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、上記で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0026】
別の局面では、本発明は、統合失調症における認知症状及び陰性症状、神経遮断薬治療に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病及びその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病性認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物中毒、睡眠障害、アパシー、外傷性脊髄損傷又は神経因性疼痛の治療及び/又は予防のための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、上記で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0027】
この局面の特定の実施形態では、本発明は、パーキンソン病及びその他の運動障害、アルツハイマー病、又は統合失調症における認知症状及び陰性症状の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に、上で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0028】
ある特定の局面において、本発明は、パーキンソン病及びその他の運動障害の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に、上記で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0029】
薬剤に使用する場合、式(I)の化合物の塩は、薬学的に許容される塩となる。しかし、他の塩は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の調製に有用であり得る。薬学的に許容される塩の選択及び調製の基礎となる標準的な原理は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,ed.P.H.Stahl&C.G.Wermuth,Wiley‐VCH,2002に記載されている。式(I)の化合物の適切な薬学的に許容される塩には、例えば、式(I)の化合物の溶液と薬学的に許容される酸の溶液とを混合することによって形成され得る酸付加塩が含まれる。
【0030】
式(I)や以下の式に含まれる個々の原子は、実際には天然に存在する同位体のいずれかの形で存在していてもよいが、最も豊富な同位体が好ましいことを理解していただきたい。同様に、式(I)又は以下に示す式中の個々の水素原子は、1H、2H(重水素)又は3H(トリチウム)原子、好ましくは1Hとして存在してもよい。同様に、式(I)又は以下に示す式中の個々の炭素原子は、12C、13C又は14C原子、好ましくは12Cとして存在してもよい。
【0031】
本発明は、上記式(I)の化合物の溶媒和物をその範囲に含む。そのような溶媒和物は、一般的な有機溶媒又は水で形成することができる。
【0032】
また、本発明は、上記式(I)の化合物の共結晶もその範囲に含まれる。「共結晶」という技術用語は、結晶性化合物の中に中性分子成分が一定の化学量論的比率で存在している状態を表すために用いられる。医薬用共結晶の調製は、医薬活性成分の結晶形に変更を加えることを可能にし、それにより、意図された生物学的活性を損なうことなく、その物理化学的特性を変化させることができる(Pharmaceutical Salts and Co‐crystals,ed.J.Wouters&L.J.Wouters&L.Quere,RSC Publishing,2012を参照)。)
【0033】
本発明による化合物は、異なる多形の形態で存在してもよい。上記の式では明示的に示されていないが、そのような形態は本発明の範囲に含まれることが意図されている。
【0034】
また、本発明は、式(I)の化合物のプロドラッグ形態、及びその様々なサブスコープとサブグループをその範囲内に含む。
【0035】
式(I)の化合物は、2つの不斉中心を含むため、それに応じてジアステレオマーが存在する可能性がある。本発明は、このようなジアステレオ異性体のすべて、及びそれらの任意の割合での混合物の使用にも及ぶものと理解されるべきである。したがって、式(I)は、別段の記載又は表示がない限り、すべての個々の立体異性体及びその可能な混合物を表すことを意図している。
【0036】
本発明の特定の局面では、式(IA)の2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]‐1‐[(1S)‐5‐[(1S)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐イル]エテノン
【化2】
又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0037】
もちろん、上述の治療上の適応症や疾患における活性は、特定の適応症について及び/又は一般的な臨床試験のデザインにおいて、当業者に知られている方法で適切な臨床試験を実施することによって決定することができる。
【0038】
疾患の治療には、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を1日あたりの有効量で使用し、医薬組成物の形で投与することができる。
【0039】
したがって、本発明は、上記の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と関連させて含む医薬組成物も提供する。
【0040】
本発明による医薬組成物を調製するには、当業者に知られている従来の医薬配合技術に従って、式(I)の化合物の1つ又は複数又はその医薬的に許容される塩を、医薬用希釈剤又は担体と密接に混合する。
【0041】
適切な希釈剤や担体は、経口、直腸、非経口、鼻腔内など、目的の投与経路に応じてさまざまな形態をとることができる。
【0042】
本発明による医薬組成物は、例えば、経口、非経口、すなわち、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、吸入、鼻腔内に投与することができる。
【0043】
経口投与に適した医薬組成物は、固体又は液体であり、例えば、錠剤、ピル、ドラジェ、ゼラチンカプセル、溶液、シロップ、チューイングガムなどの形態とすることができる。
【0044】
そのために、活性成分を不活性な希釈剤や、デンプンやラクトースなどの非毒性の薬学的に許容される担体と混合することができる。任意で、これらの医薬組成物は、微結晶性セルロース、トラガカントガム、ゼラチンなどの結合剤、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤、スクロース、サッカリンなどの甘味料、又は着色料、又はペパーミント、サリチル酸メチルなどの香料を含むこともできる。
【0045】
また、本発明は、活性物質を制御された方法で放出することができる組成物も意図している。非経口投与に使用できる医薬組成物は、水性又は油性の溶液又は懸濁液のような従来の形態であり、一般にアンプル、使い捨て注射器、ガラス又はプラスチック製のバイアル、又は輸液容器に入っている。
【0046】
これらの溶液や懸濁液には、有効成分のほかに、注射用水、生理食塩水、油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶媒などの無菌希釈剤、ベンジルアルコールなどの抗菌剤、アスコルビン酸や重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウムやデキストロースなどの浸透圧調整剤を任意に配合することができる。
【0047】
これらの医薬品は、薬剤師が日常的に使用している方法で調製される。
【0048】
特定の症状の予防又は治療に必要な本発明で使用する化合物の量は、選択した化合物及び治療を受ける患者の状態によって異なる。しかし、一般的には、1日の投与量は0.05~3000mg、非経口組成物の場合は通常0.5mg~1000mgの範囲であり得る。
【0049】
本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩は、単独で投与しても(単剤療法)、L‐ドーパと組み合わせて投与しても(併用療法)よい。本発明に係る式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、患者の運動障害を改善するのに必要なL‐ドーパの用量の一部を単独で、又は併用して、L‐ドーパの投与に伴うジスキネジアの治療に有用であり得る。例えば、本発明による式(I)の化合物を、患者に投与されるL‐ドーパの用量の一部分と一緒に使用したり、L‐ドーパの代わりに単独で使用した場合、本発明による式(I)の化合物は、厄介なジスキネジアを誘発することなく、運動障害に対して有効であると考えられる。従って、本発明による化合物は、運動機能障害及びレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)の治療に有用であると考えられる。
【0050】
従って、1つの特定の局面において、本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジア(LID)の治療に有用な、式(I)の化合物も提供する。
【0051】
本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩は、単独で投与してもよいし、他の薬学的活性成分と組み合わせて投与してもよい。
【0052】
式(I)の化合物は、式(II)の中間体と式(III)の中間体を反応させることを含むプロセスによって調製することができる。
【化3】
【0053】
次に、中間体(III)の塩酸塩を、(2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)又は当業者に知られている他のカップリング剤の存在下、適切な溶媒、例えばジメチルホルムアミド中で、過剰の塩基、例えばN,N‐ジイソプロピルエチルアミンを用いて、式(II)の中間体と反応させる。
【0054】
式(III)の中間体は、Yがハロゲン、例えばブロモを表す式(IV)の中間体と、市販のフルオロアセトンとの反応を含むプロセスによって調製することができる。
【化4】
【0055】
この反応は、当業者に知られている方法に従って、例えばn‐BuLiの存在下で、適切な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で、低温で金属‐ハロゲン交換によって好都合に行われる。
【0056】
上記の反応において、式(III)及び(IV)の中間体のアミノ基は、一般に、さらなる試薬と反応させる前に、当業者に知られている方法に従って、まず適切な保護基、例えばtert‐ブトキシカルボニル基で保護される。
【0057】
式(IIIa)の中間体は、式(V)の中間体の反応を含むプロセスによって調製することができる。
【化5】
式中、Yは上で定義されている通りである。
【0058】
この反応は、適切な還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウムの存在下で、適切な溶媒、例えばエタノール中で、低温で、当業者に知られている方法に従って行われるのが好都合である。
【0059】
式(V)の中間体は、式(VI)の中間体の反応を含むプロセスによって調製することができる。
【化6】
式中、Yは上で定義されている通りである。
【0060】
この反応は、適切な溶媒、例えばメタノール中、硫酸の存在下で、室温で行うのが好ましい。
【0061】
式(VI)の中間体は、市販の中間体(VII)の反応を含むプロセスによって調製することができる。
【化7】
式中、Yは上で定義されている通りである。
【0062】
この反応は、塩化オキサリルの存在下で、適切な溶媒、例えばジクロロメタンを用いて、低温で行い、その後、室温で塩化第二鉄を添加するのが好ましい。
【0063】
式(II)の中間体は、式(VIII)で表される中間体の反応を含む多段階プロセスによって調製することができる。
【化8】
式中
R
1は、水素、‐CH
2OH、‐COOR
a、又は上で定義したYを表す。
R
2は‐COOR
aを表す。
R
aは、水素又はC
1‐6アルキルを表す。
【0064】
第一段階では、R1が水素を表し、Raがメチルを表す式(VIII)の中間体を、適切な溶媒、例えばジクロロメタン中で、酸化剤、例えばm‐クロロ過安息香酸(m‐CPBA)と低温で反応させて、対応するN‐オキシドを得る。
【0065】
第二段階では、第一段階の結果として得られたN‐オキシドを、オキシ臭化リンと反応させて、R1が上で定義されたYを表し、Raがメチルを表す式(VIII)の対応する中間体を得る。
【0066】
第3のステップでは、R1が上で定義されたYを表す式(VIII)の中間体を、塩基、例えばN,N‐ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、遷移金属触媒、例えば1,4‐ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン‐パラジウム(II)クロリドの存在下で、一酸化炭素と反応させて、R1が‐COORaを表し、Raがメチルを表す式(VIII)の対応する中間体を得る。この反応は、高温高圧で行うのが好ましい。
【0067】
続いて、後者の中間体のR1のエステル基を対応するアルコールに還元し、続いてR2のエステル基を対応するカルボン酸に加水分解して、式(II)の中間体を得る。この反応は、当業者によく知られた方法と、添付の実施例でさらに詳しく説明した方法に従って行われる。
【0068】
R1が水素を表し、Raがメチルを表す式(VIII)の中間体は、添付の実施例に記載されている方法に類似した方法、又は当業者に知られている標準的な方法で調製することができる。
【0069】
本発明による化合物の調製のための上述のプロセスのいずれかから生成物の混合物が得られた場合、目的の生成物は、適切な段階で、分取HPLCなどの、又は適切な溶媒系と組み合わせた、例えばシリカ及び/又はアルミナを利用したカラムクロマトグラフィーなどの、従来の方法によって、そこから分離することができる。
【0070】
本発明による化合物の調製のための上述のプロセスが、立体異性体の混合物を生じさせる場合、これらの異性体は、従来の技術によって分離することができる。特に、式(I)の化合物の特定のエナンチオマーを得ることが望まれる場合には、これはエナンチオマーを分離するための任意の適切な従来の手順を用いて、エナンチオマーの対応する混合物から生成することができる。例えば、式(I)のエナンチオマーの混合物(例えばラセミ体)と、適切なキラル化合物(例えばキラル塩基)を反応させることにより、ジアステレオマーの誘導体(例えば塩)を製造することができる。次に、ジアステレオマーを結晶化などの任意の方法で分離し、ジアステレオマーが塩である場合には酸で処理するなどして、目的のエナンチオマーを回収することができる。別の分離プロセスでは、キラルHPLCを用いて式(I)のラセミ体を分離することができる。さらに、必要に応じて、上述のプロセスの1つで適切なキラル中間体を使用して、特定のエナンチオマーを得ることができる。また、特定のエナンチオマーは、エナンチオマー特異的な酵素的生体変換、例えば、エステラーゼを用いたエステル加水分解を行い、その後、エナンチオマー的に純粋な加水分解された酸のみを未反応のエステル対掌体から精製することによって得ることができる。本発明の特定の幾何学的異性体を得ることが望まれる場合、中間体又は最終製品に、クロマトグラフィー、再結晶、及びその他の従来の分離手順を使用することもできる。あるいは、酸又は塩基の存在下で、当業者に知られている方法、又は添付の実施例に記載されている方法に従って、非所望のエナンチオマーを所望のエナンチオマーにラセミ化してもよい。
【0071】
上記の合成過程では、関与する分子のいずれかの感受性の基や反応性の基を保護することが必要及び/又は望ましい場合がある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry,ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973;及びT.W.Greene&P.G.M. Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons,3rd edition,1999に記載されているような、従来の保護基を用いて達成することができる。保護基は、その後の任意の好都合な段階で、当技術分野で知られている方法を用いて除去することができる。
【0072】
本発明による式(I)の化合物は、ドーパミンD1受容体を直接活性化するのではなく、D1アゴニスト又はD1受容体に対する内因性リガンドであるドーパミンの作用をアロステリックなメカニズムで増強するので、D1ポジティブアロステリックモジュレーター(D1 PAM)である。
【0073】
ドーパミン及びその他のD1アゴニストは、それ自体でドーパミンD1受容体を直接活性化する。
【0074】
ドーパミンが存在しない場合(「活性化アッセイ」)と、ドーパミンが存在する場合(「増強アッセイ」)に、本発明に係る化合物の効果を測定するアッセイが設計されている。
【0075】
活性化アッセイでは、均質時間分解蛍光(HTRF;Homogeneous Time Resolved Fluorescent)アッセイにおけるサイクリックアデノシンモノホスファート(cAMP)の産生の刺激を測定し、内因性アゴニストであるドーパミンの濃度上昇によるcAMPの最大増加を100%活性化と定義した。
【0076】
テストしたところ、実施例による式(I)の化合物は、10μMの濃度で存在する場合、(ドーパミンの最大応答と比較して)約20%未満の活性化をもたらすという点で、有意な直接アゴニスト様効果を欠いている。
【0077】
増強アッセイでは,低閾値濃度のドーパミンによって生成されるcAMPレベルを増加させる化合物の能力を測定する。使用したドーパミン濃度([EC20])は、ドーパミン濃度を上げたときの最大反応(100%)に対して、20%の刺激を与えるように設計されている。この増強効果を測定するために、ドーパミンの[EC20]に合わせて化合物の濃度を上げてインキュベートし、cAMP産生の増加として増強効果を測定し、cAMPレベルの増強効果の50%をもたらす化合物の濃度を測定する。
【0078】
cAMP HTRFアッセイでテストしたところ、実施例に従った式(I)の化合物は、pEC50の値が約6.5より大きく、D1ポジティブアロステリックモジュレーターであることがわかった。
【0079】
GABAA受容体の阻害は、発作やてんかんと密接な関係があることが知られている。そのため、D1ポジティブアロステリックモジュレーターであると同時に、そのような影響を最小限に抑える化合物の開発が望まれている。
【0080】
本明細書に記載のGABA‐A受容体阻害アッセイで試験した場合、式(I)の化合物は、10μMの濃度の式(I)の化合物で測定したGABAA受容体の阻害率が約20%以下であることを示した。
【0081】
治療用の化合物を開発する際に直面し得る問題は、特定の化合物がCYP450酵素を阻害する能力である。このような酵素の阻害は、そのような化合物や、それと一緒に患者に投与される可能性のある他の化合物の曝露に影響を与え、それによってそれぞれの安全性や有効性を変化させる可能性がある。従って、このような阻害の可能性を最小限に抑えた化合物を開発することが望ましい。
【0082】
本発明による式(I)の化合物のCYP450阻害能は、本発明による化合物の濃度を増加させてインキュベートしたヒト肝細胞におけるCYP450活性の潜在的な減少を測定することによって試験されている。
【0083】
本特許出願に記載されているプロトコルに従って、1及び20μMの濃度でCYP3A4阻害アッセイで試験した場合、本発明による式(I)の化合物は、約40%未満、理想的には約30%未満の阻害を示す。
【0084】
治療用の化合物を開発する際には、体内に投与された後の排泄について把握しておくことが重要である。
【0085】
クリアランスとは、その情報を提供するパラメータであるが、それは対象となる化合物が完全に除去された血漿(又は血液)の体積を時間単位で表したものだからである。これは通常、ml/min/kg又はL/hで表される。この値を生理的な血流(例:肝臓の血流)と比較することで、クリアランスが低いか、中程度か、高いかを評価することができる。
【0086】
クリアランスが低い場合は、分布容積に応じて、低用量を必要とし、比較的長い作用時間が得られると考えられる。クリアランスが高い場合は、やはり分布容積に応じて、高用量が必要となり、作用時間は比較的短くなると考えられる。
【0087】
一般的にクリアランスは、本明細書に記載されているプロトコルに従って、主な排泄経路が代謝であると仮定し、肝細胞培養とスケーリング計算を用いて評価される。肝細胞から評価される固有のクリアランスは、μl/min/106細胞で表される。
【0088】
本明細書に記載のクリアランスアッセイで試験した場合、本発明に係る式(I)の化合物は、有利にも約10μl/分/106細胞未満のクリアランスを示す。
【0089】
cAMP HTRF アッセイ
化合物をテストした特定の条件を以下に示す。
【0090】
a.方法 D1 細胞培養
細胞は、5%CO2の加湿雰囲気下、37℃で培養した。細胞は,10%ウシ胎児血清(BioWhittaker(登録商標),Lonza,Verviers,Belgium)、400μg/mLゲネチシン(GIBCO(登録商標))、100IU/mLペニシリン及び100IU/mLストレプトマイシン(Pen‐Strep solution,BioWhittaker(登録商標))を含むDMEM‐F12+GlutaMAX(商標)‐I培地(GIBCO(登録商標),Invitrogen,Merelbeke,Belgium)で培養した。ドーパミンD1受容体を発現するLMtk(Ltk‐)マウス線維芽細胞(BioSignal Inc,Montreal,Canada,現Perkin Elmer)は、効率的にカップリングし、強固な機能的応答を与えることが示されているので、これを使用した(Watts et al,1995)。
【0091】
b.cAMPアッセイ
細胞内サイクリックアデノシンモノホスファート(cAMP)の変化の測定は、CisBio社(Codolet,France)のHTRF cAMPダイナミックアッセイキットを用いて行った。このアッセイは、均質な時間分解蛍光法を用いて、細胞が産生するネイティブなcAMPと色素d2で標識したcAMPとの競合に基づいている。トレーサーの結合は、クリプト酸で標識した抗cAMP抗体によって決定される。化合物単独の効果(アゴニズム)はドーパミンの非存在下でアッセイを行うことにより測定し、一方、ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)としての化合物の効果はEC20濃度のドーパミンの存在下で測定した。イソブチルメチルキサンチン(Sigma社、最終0.1mM)、ドーパミン(最終1.1nM)の存在下及び非存在下で濃度を変化させた試験化合物(通常10-9.5M~10-4.5M)を含む最終体積20μLのHBSS(Lonza社、カルシウム、マグネシウム、HEPES緩衝液20mM、pH7.4)中で、細胞(ウェルあたり20,000個)を384プレートに入れて、室温で1時間インキュベートする。その後、メーカーの指示に従い、溶解バッファー中のd2検出試薬(10μL)と、溶解バッファー中のクリプト酸試薬(10μL)を加えて反応を終了し、細胞を溶解する。これを室温でさらに60分間インキュベートし、レーザー励起のEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer,Zaventem,Belgium)を用いて、メーカーの指示に従ってHTRF蛍光発光比の変化を測定した。すべてのインキュベーションは二回行い、結果はドーパミンに対する濃度効果曲線と比較した。(10-11Mから10-6M)。
【0092】
c.データ分析
Excel及びPRISM(GraphPad Software)を用いてデータを解析し、4パラメータロジスティック式(DeLean et al,1978)を用いてpEC50及びErelを求めた。Erelは、被験物質の最大反応から基底状態を差し引いた値を、ドーパミンで得られた反応を100%とした場合の相対的な割合で表したものである。
【0093】
化合物のpEC50は、cAMPレベルの50%の増強をもたらす化合物の濃度の-log10である。
【0094】
Erelは相対的な有効性を示すもので、濃度を上げたドーパミンで生じる最大反応と比較して、化合物で生じる最大増強%として定義される(1のErel=ドーパミンの最大反応)。
【0095】
本アッセイで試験する場合、式(Ia)の化合物のpEC50値は約6.9、式(Ib)の化合物のpEC50値は約6.7であった。
【0096】
式(Ia)の化合物が示す対応するErelは約64%、式(Ib)の化合物が示す対応するErelは約61%である。
【0097】
GABA
A
受容体細胞の自動パッチクランプ試験
ヒトGABAA受容体α1、β2、及びβ2サブユニットを安定的に発現させたCHO‐K1細胞を用いた。細胞はトリプシンを用いて採取し、無血清培地で室温に維持した。試験前に細胞を洗浄し,細胞外液に再懸濁した。
【0098】
パッチクランプ試験
ヒトGABAA(α1β2γ2)チャネルの実験は,自動パッチクランプアッセイ(IonFlux(商標)HT)を用いて行った。化合物は3つの濃度(0.1,1,10μM)で3~4個の細胞で試験した。GABAA電流を記録するための外部溶液は、塩化ナトリウム137mM、塩化カリウム4mM、塩化カルシウム1.8mM、塩化マグネシウム1mM、HEPES10mM、グルコース10mMで構成された。外部溶液と内部溶液の両方をNaOH又はKOHで滴定し、それぞれ7.35又は7.3のpHを得た。内部ピペット液は、フッ化カリウム70mM、塩化カリウム60mM、塩化ナトリウム70mM、HEPES5mM、EGTA5mM、及びマグネシウムATP4mMを含んでいた。化合物を希釈するために使用したビヒクルの最終濃度は、各ウェルで0.33%のDMSOとした。ビククリン(0.032~100μM)をポジティブコントロールの阻害剤として使用した。アゴニストとしてGABA(15μM)を使用した。すべての記録は、-60mVの保持電位から得られた。
【0099】
化合物の添加順序は以下の通りであった。ベースライン反応を確立するためにEC80濃度のGABAを1回添加した。化合物の各濃度を30秒間適用した後、化合物の存在下で15μMのGABAを2秒間添加した。このプロセスを、次の昇順の濃度の化合物で繰り返した。単一濃度の化合物の存在下でのGABA添加に応じたピーク内向き電流を測定した。すべての化合物のデータは,15μMのGABAを2秒間添加することで誘発されるベースラインのピーク電流で正規化した。
【0100】
上述のアッセイでテストした場合、10μMの濃度で、式(Ia)の化合物は、約13%のGABAA受容体の阻害率を示す。
【0101】
上述のアッセイでテストした場合、10μMの濃度で、式(Ib)の化合物は、約20%のGABAA受容体の阻害率を示す。
【0102】
凍結保存されたヒトミクロソームを用いたin vitroでのCYP3A4阻害能の評価
ヒトミクロソームアッセイの目的は、特異的なCYP3A4基質であるミダゾラムと共存させた後のCYP3A4活性を測定することにより、式(I)の化合物の阻害能を明らかにすることにある。
【0103】
この目的のために、凍結保存されたヒトミクロソーム(ドナーをプールしたもの)を、最終濃度が0.25mg/mlになるように48ウェルのコラーゲンコートプレートに分割する。その後、UCB化合物を1μM及び20μMの濃度で2回に分けてウェルに添加する。30分のインキュベーション後、ミダゾラムを2.5μMの濃度で添加する。15分後、アリコートを取り出し、内部標準物質を含む同量のメタノールに入れる。サンプルを2500rpm、4℃で20分間遠心分離する。上澄み液のアリコートを脱イオン水で希釈し、一般的なLC MS/MS法を用いて1‐ヒドロキシミダゾラムの濃度を定量する。
【0104】
濃度は、同じ濃度でのミダゾラムインキュベートの後に得られた濃度と比較しているが、UCB化合物のプレインキュベーションは行っていない。結果は阻害率(%)で表した。
【0105】
本発明による式(Ia)の化合物は、20μMの濃度で約28%、1μMの濃度で約20%のCYP3A4の阻害率を示す。
【0106】
アザムリン アッセイ
凍結保存されたヒト肝細胞(20人のドナーのプール、Celsis/IVT/BioreclamationのBSUバッチ)を提供者の情報に従って解凍した。(トリパンブルー排除による)生存率は75%より上であった。プレインキュベーション(2x10個6の肝細胞/mLの肝細胞懸濁液250μL)は、グルタミン2mMとHepes15mMを含むWilliam培地を用いて、48ウェルプレートで+37℃のインキュベーター(5%CO2)内で、穏やかな攪拌(振動攪拌機Titramax 100,約300rpm)の下、30分間行った。プレインキュベーション後、UCB化合物(1μM)又はミダゾラム(ポジティブコントロール)を含む250μLの培養液(上記組成参照)を肝細胞に添加してインキュベーションを開始した。培養液中のUCB化合物の最終濃度は0.5μMである。細胞懸濁液は、2回のインアウトピペッティングにより迅速に再ホモジナイズした。0分,30分,60分,120分,180分,240分培養した後,50μlの培養液を,内部標準物質として1μMのケトコナゾールを含む50μLの氷冷したアセトニトリルが入った96ウェルプレートの適切なウェルに移して反応を停止した。各サンプリングの前に、細胞インキュベートを2回のインアウトピペッティングで再度ホモジナイズした。
【0107】
サンプルはLC‐MS‐MSバイオ分析法により分析し、UCB化合物の濃度が測定する。濃度対時間のプロファイルをフィッティングして、μl/min/106細胞で表される固有のクリアランス(Clint)を決定する。
【0108】
異なる濃度のヒト肝細胞懸濁液でインキュベートした場合、本発明による式(Ia)の化合物の固有のクリアランス(Clint)は約8.8μl/min/106細胞に等しく、式(Ib)の化合物の固有のクリアランス(Clint)は約9.2μl/min/106細胞である。
【0109】
以下の実施例は、本発明による式(I)の化合物の調製を説明するものである。
【実施例】
【0110】
例
略語/繰り返し登場する試薬
ACN:アセトニトリル
cAMP:サイクリックアデノシンモノホスファート
ブライン:飽和塩化ナトリウム水溶液
nBu:n‐ブチル
tBu:tert‐ブチル
CHO:チャイニーズハムスター卵巣
m‐CPBA:3‐クロロ過安息香酸
CYP450:シトクロムP450
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N‐ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EC20/50:最大反応の20%/50%をもたらす濃度
EGTA:エグタズ酸
Erel:相対的有効性
ES+:エレクトロスプレー陽イオン化
Et:エチル
EtOH:エタノール
Et2O:ジエチルエーテル
EtOAc:酢酸エチル
GABA:γ‐アミノ酪酸
h:時間
HEPES:4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペラジンエタンスルホン酸
HPLC:高圧液体クロマトグラフィー
HTRF:均質時間分解蛍光
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
MeOH:メタノール
min.:分
NMR:核磁気共鳴
iPrOH:イソプロパノール
rt:室温
SFC:超臨界流体クロマトグラフィー
TEA:トリエチルアミン
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
IUPAC名はBiovia Draw 16.1を用いて決定している。
【0111】
分析方法
空気や水分の影響を受けやすい試薬を含む反応はすべて、乾燥した溶媒やガラス器具を用いて、窒素又はアルゴン雰囲気下で行った。市販の溶媒や試薬は、必要に応じて無水溶媒(一般にはAldrich Chemical Company社のSure‐Seal(商標)製品やACROS Organics社のAcroSeal(商標))を含め、通常はさらに精製せずに使用した。一般的には、反応後に薄層クロマトグラフィー、HPLC、又は質量分析を行った。
【0112】
HPLC分析は、Waters XBridge MS C18,5pm,150X4.6mmカラムを搭載したAgilent 1100シリーズHPLCシステムを用いて実施した。グラジエントは、100%溶媒A(水/ACN/ギ酸アンモニウム溶液 85/5/10(v/v/v))から100%溶媒B(水/ACN/ギ酸アンモニウム溶液 5/85/10(v/v/v))まで6分間で行い、100%Bでのホールドは5分間とした。流速は、6分間は8mL/min、2分間は3mL/minで増加し、3分間は3mL/minで保持する。APIソースの直前で1/25のスプリットを使用する。クロマトグラフィーは45℃で行われる。ギ酸アンモニウム溶液(pH~8.5)は、ギ酸アンモニウム(630mg)を水(1L)に溶解し、水酸化アンモニウム30%(500μL)を加えて調製する。
【0113】
当業者であれば、異なる分析条件を用いれば、LCデータで異なる保持時間が得られることは明らかであろう。
【0114】
LCMSモードでの質量分析の測定は以下のように行う。
【0115】
‐ 塩基性の溶出については、以下の方法で分析を行う。
LCMS分析には,QDA Waters社製のシンプルな四重極型質量分析計を使用する。この質量分析計には,ESI源と,ダイオードアレイ検出器(200~400nm)を備えたUPLC Acquity Hclassが搭載されている。データは、塩基性の溶出を用いたポジティブモードでm/z 70から800までのフルMSスキャンで取得される。逆相分離は、塩基性溶出用のWaters Acquity UPLC BEHC18 1.7μm(2.1x50mm)カラムを用いて45℃で行われる。水/ACN/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)(溶媒A)及びACN/水/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)(溶媒B)でグラジエント溶出を行う。注入量:1μL。MSで全流速。
【0116】
【0117】
【0118】
‐酸性の溶出の場合は、以下の方法で分析を行う。
LCMS分析には,QDA Waters社製のシンプルな四重極型質量分析計を使用する。この質量分析計には,ESI源と,ダイオードアレイ検出器(200~400nm)を備えたUPLC Acquity Hclassが搭載されている。データは、酸性溶出液を用いたポジティブモードで、m/z 70から800までのフルMSスキャンで取得される。逆相分離は、酸性溶出用のWaters Acquity UPLC HSS T3 1.8μm(2.1x50mm)カラムを用いて、45℃で行われる。水/ACN/TFA(95/5/0.5mL/L)(溶媒A)とACN(溶媒B)でグラジエント溶出を行う。注入量:1μL。MSで全流速。
【0119】
【0120】
【0121】
粗原料は、順相クロマトグラフィー、(酸性又は塩基性)逆相クロマトグラフィー、キラル分離、再結晶により精製することができる。
【0122】
通常の逆相クロマトグラフィーは、シリカゲルカラム(100:200メッシュのシリカゲル、又はInterchim社のPuriflash(登録商標)‐50SIHC‐JPカラム)を用いて行う。
【0123】
分取逆相クロマトグラフィーは以下のように行う。
LCMS精製には、SQD又はQM Watersトリプル四重極型質量分析計を使用するLCMS精製(基本モード、LCMS分取)を用いる。このスペクトロメーターには、ESI源と、ダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えた分取型LCコントローラWaters四重極ポンプが搭載されている。
【0124】
MSパラメータ:ESIキャピラリー電圧3kV。コーン及びエクストラクタ電圧10。ソースブロック温度120℃。脱溶媒和温度300℃。コーンgaz流速30L/h(窒素)、脱溶媒和気体流速650L/h。データは、ポジティブモードでm/z100から700までのフルMSスキャンで、酸性又は塩基性の溶出で取得される。
【0125】
LCパラメータ:逆相分離は、XBridge prep OBD C18カラム(5μm,30x50mm)(塩基性溶出)を用いてrtで行われる。勾配溶出は、水(溶媒A)、ACN(溶媒B)、水中の重炭酸アンモニウム8g/L+500μL/L NH4OH 30%(溶媒C)で行う(pH~8.5)。HPLCの流速35mL/min~60mL/min、注入量:1mL。分割比は,MSに対して±1/6000とした。
【0126】
【0127】
粗原料は、順相クロマトグラフィー、(酸性又は塩基性)逆相クロマトグラフィー、キラル分離、再結晶により精製することができる。
【0128】
生成物は最終的な分析や生物学的試験に提出する前に、一般的に真空下で乾燥した。
【0129】
すべてのNMRスペクトルは、250MHz、300MHz、400MHz又は500MHzで得られた。
【0130】
1.中間体(II)‐2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]酢酸の調製
【化9】
【0131】
1.1 3,5‐ジクロロ‐4‐メチル‐ピリジンa2の調製
LDA(1.86L、THF中の2M溶液、3.72mol)とTHF(5.0L)を窒素下の反応器に投入する。3,5‐ジクロロ‐4‐メチル‐ピリジンa1(500g、3.38mol)を-20℃で加え、混合物を-10℃で30分間撹拌する。反応物を-70℃まで冷却し、ヨウ化メチル(815g、5.74mol)を加える。混合物を室温まで温め、4時間撹拌する。この全体的な手順は、同じサイズの4つのバッチで並行して行われ、それらは一緒に作業される。混合物を0℃に冷却し、水(5L)でクエンチし、10分間撹拌する。水相を酢酸エチル(2×3L)で抽出し、合わせた有機相をブライン(10L)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮する。粗生成物を-70℃のエタノール(4L)から再結晶により精製し、3,5‐ジクロロ‐4‐メチル‐ピリジンa2を黄色の固体として得る(1.5kg、収率68.5%)。
【0132】
1.2 メチル2‐(3,5‐ジクロロ‐4‐ピリジル)アセタート‐中間体a3の調製
3,5‐ジクロロ‐4‐メチル‐ピリジンa2(375g、2.31mol)とDMF(1.87L)を反応器に投入し、混合物を15℃まで冷却する。カリウムtert‐ブトキシド(779g、6.94mol)を窒素下で10~15℃で加え、混合物を15℃で30分間撹拌する。炭酸ジメチル(730g、8.10mol)を10‐15℃で加え、混合物を30℃で4時間撹拌する。この全体的な手順は、同じサイズの4つのバッチを並行して行い、それらは一緒に作業される。混合物を0℃に冷却し、水(10L)で反応をクエンチし、10分間撹拌する。反応混合物をろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル(2L)で2回洗浄する。水相を酢酸エチル(3L)で2回抽出し、合わせた有機相をブライン(5L)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して、メチル2‐(3,5‐ジクロロ‐4‐ピリジル)アセタートa3を黒褐色の液体として得た(1.3kg、収率63.8%)。これをさらに精製することなく次のステップで使用する。
【0133】
1.3.メチル2‐(3,5‐ジクロロ‐1‐オキシド‐ピリジン‐1‐イウム‐4‐イル)アセタート‐中間体a4の調製
メチル2‐(3,5‐ジクロロ‐4‐ピリジル)アセタートa3(650g、2.95mol)とジクロロメタン(3.25L)を反応器に入れる。窒素下0℃でm‐CPBA(1.27kg、5.91mol、純度80%)を加え、混合物を25℃で5時間撹拌する。この全体的な手順は、一緒に作業する同じサイズの2つのバッチで並行して実施される。混合物を0℃に冷却し、水(4L)で反応をクエンチし、10分間撹拌する。反応混合物をろ過し、フィルターケーキをジクロロメタン(3L)で2回洗浄する。水相をジクロロメタン(2L)で2回抽出し、合わせた有機相をNa2S2O3の飽和溶液(15L)で3回、ブライン(10L)で2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル20:1~1:1)で精製し、メチル2‐(3,5‐ジクロロ‐1‐オキシド‐ピリジン‐1‐イウム‐4‐イル)アセタートa4を黄色の固体として得る(900g、収率64.2%)。
【0134】
1.4.メチル2‐(2‐ブロモ‐3,5‐ジクロロ‐4‐ピリジル)アセタート‐中間体a5の調製
メチル2‐(3,5‐ジクロロ‐1‐オキシド‐ピリジン‐1‐イウム‐4‐イル)アセタートa4(900g,3.81mol)とアセトニトリル(8L)を20℃の反応器に投入する。オキシ臭化リン(POBr3,1.09kg,3.81mol)を窒素下、0℃で加え、混合物を25℃で12時間撹拌する。この全体的な手順を別のバッチ(1.64molスケール)にも並行して行い、2つを一緒に作業する。混合物を0℃に冷却し、水(3L)で反応をクエンチし、10分間撹拌する。水相を酢酸エチル(2L)で2回抽出する。合わせた有機相をブライン(5L)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル50:1~1:1)で精製し、メチル2‐(2‐ブロモ‐3,5‐ジクロロ‐4‐ピリジル)アセタートa5をオフホワイトの固体として得る(503g、収率43%)。
【0135】
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ8.32(s,1H),4.07(s,2H),3.75(s,3H)
【0136】
1.5.メチル3,5‐ジクロロ‐4‐(2‐メトキシ‐2‐オキソエチル)ピリジン‐2‐カルボキシラート‐中間体a6の調製
メタノール(60mL)中のメチル2‐(2‐ブロモ‐3,5‐ジクロロ‐4‐ピリジル)アセタートa5(3g、10.03mmol)の溶液に、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(2.42mL、14.6mmol)及び1,4‐ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンパラジウム(II)クロリド(91mg、0.15mmol)を加えた。反応器を窒素で3回フラッシュした後、5バールの一酸化炭素で加圧(3回フラッシュ)し、混合物を80℃で3時間加熱した。反応混合物を室温でセライト上でろ過し、減圧下で溶媒を除去した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。(Biotage SNAP Ultra 25g、溶離液:酢酸エチル:ヘキサン1:1)。溶媒を真空下で除去して、3,5‐ジクロロ‐4‐(2‐メトキシ‐2‐オキソエチル)ピリジン‐2‐カルボキシラートa6を黄色の液体として得た(1.84g、収率66%)。
【0137】
LCMS(MH+):278
1H NMR(400MHz,DMSO‐d6)δ8.75(s,1H),4.12(s,2H),3.93(s,3H),3.68(s,3H).
【0138】
1.6.メチル2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]アセタート‐中間体a7の調製
THF(10mL)中のメチル3,5‐ジクロロ‐4‐(2‐メトキシ‐2‐オキソエチル)ピリジン‐2‐カルボキシラートa6(305mg,1.09mmol)の溶液に、室温で水素化ホウ素ナトリウム(124mg,3.29mmol)を加え、反応混合物を室温で18時間撹拌させた。反応混合物をろ過し、真空下で溶媒を除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP Ultra 25g、溶離液:ジクロロメタン:メタノール100:0~90:10)で精製した。溶媒を真空下で除去し、メチル2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]アセタートa7を固体として得た(139mg、収率50%)。
【0139】
LCMS(MH+):250
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.51(s,1H),4.78(s,2H),4.04(s,2H),3.74(s,3H).OHプロトンは観測されなかった。
【0140】
1.7.中間体(II)‐2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]酢酸の調製。
THF(1.1L)と水(110mL)の混合液中のメチル2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]アセタートa7(98.1g、392mmol)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(25.2g、589mmol)を加えた。得られた混合物を室温で18時間撹拌した後、真空下で濃縮した。残留物をトルエン(3×250mL)と共沸させて、2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]酢酸(II)を流動性のあるオフホワイトの粉末として得た(92.6g、収率100%)。この製品は、さらに精製することなく次のステップに使用した。
【0141】
1H NMR(400MHz,DMSO‐d6)δ8.54(s,1H),4.62(s,2H),2.46(s,2H).2つのOHプロトンは見られなかった。
【0142】
2.中間体(III)の調製
(1R)‐1‐フルオロ‐2‐[(1S)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩a14‐(R,S)及び(1S)‐1‐フルオロ‐2‐[(1S)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩a14‐(S,S)の調製
【化10】
【0143】
2.1.中間体(VI)‐7‐ブロモ‐10b‐メチル‐6,10b‐ジヒドロ‐5H‐[1,3]オキサゾロ[2,3‐a]イソキノリン‐2,3‐ジオンa9の調製
DCM(1.5L)中のN‐[2‐(2‐ブロモフェニル)エチル]アセトアミドa8(市販品、106.5g、439.8mmol)の溶液に、0℃で塩化オキサリル(72mL、838.7mmol)を滴下して加えた。この混合物を0℃で2時間撹拌した後、rtに温めて3時間撹拌した。その後、反応混合物を0℃に冷却し、塩化第二鉄(86g、530.2mmol)を2回に分けて加えた。反応混合物をrtまで温め、rtで一晩撹拌し、DCM(2.5L)で希釈した後、0℃で12Mのアンモニア濃厚溶液(200mL)でクエンチした。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して、108gの7‐ブロモ‐10b‐メチル‐6,10b‐ジヒドロ‐5H‐[1,3]オキサゾロ[2,3‐a]イソキノリン‐2,3‐ジオンa9を褐色の固体として得、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
【0144】
収率(粗):83%。
LCMS(ES+):296/298(M+H+).
【0145】
2.2.中間体(V)‐5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリンa10の調製
MeOH(1.5L)中の7‐ブロモ‐10b‐メチル‐6,10b‐ジヒドロ‐5H‐[1,3]オキサゾロ[2,3‐a]イソキノリン‐2,3‐ジオンa9(108g,364.72mmol)の懸濁液に、rtで硫酸(75mL)を滴下して加えた。反応混合物を65℃で一晩攪拌した後、0℃で15Mのアンモニア濃厚溶液(300mL)でクエンチした。混合物を真空下で濃縮し、水(300mL)を加えた。水性層をDCM(1L)で6回抽出した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して、86.44gの5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリンa10を褐色の固体として得たが、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
【0146】
収率(粗):定量的
HPLC(基本モード):RT4.75分、純度87%。
【0147】
2.3.中間体(IV)‐5‐ブロモ‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリンa11の調製
EtOH(2L)中の5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリンa10(86.44g,385.9mmol)の溶液に、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(13.2g,349mmol)を分注で加えた(13*1g)。混合物を0℃で2時間撹拌した後、5NのHCl水溶液(250mL)を0℃で加えた。反応混合物をrtで一晩撹拌した後、EtOHを真空下で濃縮した。DCM(1L)を加え、混合物を0℃で6Mアンモニア濃厚溶液(400mL)でクエンチした。有機層をDCM(500mL)で2回抽出し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して、83gの5‐ブロモ‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリンa11を茶色の固体として得た。これはさらに精製することなく次のステップに使用した。
【0148】
収率(粗):95%。
HPLC(基本モード):RT4.53分、純度80%。
【0149】
2.4.tert‐ブチル5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリン‐2(1H)‐カルボキシラート‐中間体a12、a12‐S及びa12‐Rの調製
DCM(1L)中の5‐ブロモ‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリンa11(78g,345mmol)の溶液に、0℃でTEA(160mL,1136mmol)を加えた。続いて、DCM(250mL)中のジ‐tert‐ブチルジカーボナート(65g,294.8mmol)の溶液を0℃で滴下して加えた。反応混合物をrtで一晩撹拌し、水(100mL)でクエンチした。有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。残渣をMeOH/n‐ヘキサン(1:2、450mL)の混合液で2回トリチュレートし、63gのtert‐ブチル5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリン‐2(1H)‐カルボキシラートa12(収率:56%、HPLC(基本モード):RT6.59分、純度98%)を白色固体として得た。
ラセミ体tert‐ブチル5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリン‐2(1H)‐カルボキシラートa12のキラル分離(SFC,Whelko 01(R,R),50*227mm,360mL/min,220nm,25℃,溶離液:20%iPrOHから)により、
‐25.1gのtert‐ブチル(1S)‐5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリン‐2(1H)‐カルボキシラートa12‐Sを固体として得た。
【0150】
収率:22%。
HPLC(基本モード):RT6.59分、純度91%。
キラル分析(LC,Whelko‐01(R,R),250*4.6mm,1mL/min,220nm、30℃、溶離液:iPrOH/n‐へプタン/DEA 50/50/0.1) RT4.86分,97.7%ee.
‐固体として29.3gのtert‐ブチル(1R)‐5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロイソキノリン‐2(1H)‐カルボキシラートa12‐R。
【0151】
収率:26%。
HPLC(基本モード):RT6.59分、純度98%。
キラル分析(LC,Whelko‐01(R,R),250*4.6mm,1mL/min,220nm,30℃,溶離液:iPrOH/n‐へプタン/DEA50/50/0.1)RT5.62min,92.4%ee.
【0152】
2.5.tert‐ブチル(1S)‐5‐[(1R)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐カルボキシラート中間体a13‐(S,R)とtert‐ブチル(1S)‐5‐[(1S)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐カルボキシラート‐中間体a13‐(S,S)の調製
tert‐ブチル(1S)‐5‐ブロモ‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐カルボキシラートa12‐S(7g,21.45mmol)を-78℃の乾燥テトラヒドロフラン(107mL)に溶解し、n‐BuLi(32.93mmol)を滴下して加え、混合物を-78℃で10分間撹拌した。フルオロアセトン(4.78mL,64.2mmol)を加え、混合物をrtで1時間撹拌した。反応混合物を1N塩酸水溶液(350mL)でクエンチした後、ジクロロメタンで3回抽出した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィー(基本モード、標準LC)で精製した。キラル分離(LC,chiralpak IC,80*380mm,300mL/min,220nm,30℃,溶離液:ヘプタン中の10%iPrOH)により、
‐ベージュ色の固体として、1.137gのtert‐ブチル(1S)‐5‐[(1R)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐カルボキシラートa13‐(S,R)を得た。
【0153】
収率:16
LCMS(ES+):268.0(M‐tBu+H+).
キラル分析(LC,Whelko‐01(R,R),150*4.6mm,1.5mL/min,220nm,30℃,溶離液:iPrOH/n‐ヘプタン/DEA 10/90/0.1):RT2.37分,100%ee.
‐ベージュ色の固体として、1.074gのtert‐ブチル(1S)‐5‐[(1S)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐カルボキシラートa13‐(S,S)
【0154】
収率:15%
LCMS(ES+):268.0(M‐tBu+H)+.
キラル分析(LC,Whelko‐01(R,R),150*4.6mm,1.5mL/min,220nm,30℃,溶離液:iPrOH/n‐ヘプタン/DEA 10/90/0.1)。RT2.72分,100%ee.
【0155】
2.6.(1R)‐1‐フルオロ‐2‐[(1S)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩a14‐(R,S)及び(1S)‐1‐フルオロ‐2‐[(1S)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩‐中間体a14‐(S,S)の調製
tert‐ブチル(1S)‐5‐[(1R)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐カルボキシラートa13‐(S,R)(1.137g,3.516mmol)を、rtでジオキサン(18mL)に溶解した。ジオキサン中のHClの4N溶液(8.8mL、35mmol)を加えた。この混合物をrtで一晩攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮して、950mgの(1R)‐1‐フルオロ‐2‐[(1S)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩a14‐(R,S)をベージュ色の固体として得た。
【0156】
収率(粗):定量的
LCMS(ES+):224.0(M+H)+.
(1S)‐1‐フルオロ‐2‐[(1S)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩a14‐(S,S)
化合物a14‐(S,S)は、tert‐ブチル(1S)‐5‐[(1S)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐カルボキシラートa13‐(S,S)を出発物質として、同様の方法に従って合成することができる。
【0157】
収率(粗):定量的
LCMS(ES+):224(M+H)+.
【0158】
3.式(I)の化合物の調製
3.1.式(Ia)の化合物‐2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]‐1‐[(1S)‐5‐[(1S)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐イル]エタノンの調製
【化11】
【0159】
DMF(6mL)中の2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]酢酸A(112mg,0.476mmol)と(2S)‐1‐フルオロ‐2‐[(1S)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩a14‐(S,S)(136mg,0.524mmol)の溶液に、(2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU、217mg、0.571mmol)を加えた。次に、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(0.24mL,1.43mmol)を室温で加え、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を水でクエンチし、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下で溶媒を除去して粗生成物を得た。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(基本モード)で精製し、真空下で溶媒を除去して、2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]‐1‐[(1S)‐5‐[(1S)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐イル]エタノン1(116mg、収率55%)を固体として得た。
【0160】
LCMS。441(MH+)
1H NMR(400MHz,DMSO‐d6)δ8.59(2s,1H,ロータマー),7.37‐7.09(m,3H),5.48(m,1H),5.34(m,2H),4.72‐4.53(m,3H),4.53‐4.25(m,1.3H),4.25‐4.03(m,1.7H),4.02‐3.69(m,2H),3.48(m,0.7H),3.38‐3.33(m,0.3H 部分的に水のシグナルの下),3.31‐3.07(m,1H),1.60(d,J=6.7Hz,1H),1.53(m,3H),1.37(d,J=6.7Hz,2H).
【0161】
3.2. 2‐[3,5‐ジクロロ‐2‐(ヒドロキシメチル)‐4‐ピリジル]‐1‐[(1S)‐5‐[(1R)‐2‐フルオロ‐1‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐エチル]‐1‐メチル‐3,4‐ジヒドロ‐1H‐イソキノリン‐2‐イル]エタノンの式(Ib)の化合物の調製
表題の化合物は、(2S)‐1‐フルオロ‐2‐[(1R)‐1‐メチル‐1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン‐5‐イル]プロパン‐2‐オール塩酸塩a14‐(S,R)から、式(Ia)の化合物で説明したのと同様の手順で調製した。
【0162】
LCMS:441(MH+)
1H NMR(400MHz,DMSO‐d6)δ8.58(2s,1H,2つのロータマー),7.42‐7.07(m,4H),5.47(s,1H,ロータマー),5.41‐5.24(m,2H),4.85‐4.66(m,1H),4.57‐4.24(m,2H),4.09(s,3H),4.01‐3.70(m,2H),3.58‐3.19(m,1H 部分的に水のシグナルの下),1.59(d,J=6.7Hz,1H),1.53(m,3H),1.36(dd,J=6.8,2.0Hz,2H).
【国際調査報告】