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特表2022-538016医療用容器の処理に関連するデータを追跡するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】医療用容器の処理に関連するデータを追跡するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20220824BHJP
   A61J 1/00 20060101ALI20220824BHJP
   G06K 19/08 20060101ALI20220824BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20220824BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20220824BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20220824BHJP
   G06Q 10/08 20120101ALI20220824BHJP
【FI】
A61J1/05 313Z
A61J1/00 430
G06K19/08
G06K19/06 009
G06K19/07 230
G16H10/00
G06Q10/08 306
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575413
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2020068303
(87)【国際公開番号】W WO2021001325
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19305896.3
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セドリック リヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ウーヴラード
【テーマコード(参考)】
4C047
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
4C047AA01
4C047AA05
4C047AA27
4C047AA34
4C047BB01
4C047BB11
4C047BB26
4C047CC03
4C047DD01
4C047DD22
4C047DD25
4C047DD26
4C047DD27
4C047DD33
4C047GG24
5L049CC51
5L099AA00
(57)【要約】
本開示は、パッケージングの第1の層(1, 2)内に受け入れられるように適合された複数の医療用容器(100)の処理に関連するデータを追跡するためのシステムに関し、システムは、 - 各医療用容器(100)の材料上および/または材料内に実装され、および各それぞれの医療用容器用の対応する固有デバイス識別子(UDI)を表す少なくとも1つのマーク(103)、 - パッケージングの第1の層上および/またはパッケージングの第1の層内に含まれる遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品(21)であって、当該遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、パッケージングの第1の層内に受け入れられる各医療用容器のUDIを記憶するため、および医療用容器の処理に関連するデータを書き込みおよび/または読み取るために構成される、電子部品、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージングの第1の層(1,2)内に受け入れられるように適合された複数の医療用容器(100)の処理に関連するデータを追跡するためのシステムであって、前記システムは、
- 各医療用容器(100)の材料上および/または材料内に実装され、および各それぞれの医療用容器のための対応する固有デバイス識別子(UDI)を表す少なくとも1つのマーク(103)、
- 前記パッケージングの第1の層上および/または前記パッケージングの第1の層内に含まれる遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品(21)であって、前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、前記パッケージングの第1の層内に受け入れられる各医療用容器の前記UDIを記憶するため、および前記医療用容器の処理に関連するデータを書き込むおよび/または読み取るために構成される、電子部品(21)、
を含むことを特徴とするデータを追跡するためのシステム。
【請求項2】
前記パッケージングの第1の層は、ネスト(2)またはタブ(1)、好ましくはネストであることを特徴とする、請求項1に記載のデータを追跡するためのシステム。
【請求項3】
前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、前記パッケージングの第1の層に関連する対応する固有デバイス識別子(UDI)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のデータを追跡するためのシステム。
【請求項4】
前記医療用容器の処理に関連するデータを記憶するために構成されたデータ記憶システムをさらに含み、前記データは、各医療用容器の前記UDIに、および任意選択的に、前記パッケージングの第1の層の前記UDIに、関連付けられることを特徴とする請求項3に記載のデータを追跡するためのシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのマーク(103)は、光学的であり、好ましくは、前記少なくとも1つのマークは、バーコードのような1Dマーク、データマトリックス(登録商標)またはQRコード(登録商標)のような2Dマーク、および文字列からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデータを追跡するためのシステム。
【請求項6】
前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、RFIDタグ、超広帯域リアルタイムロケーションシステム(RTLS)、Wi-Fi(登録商標)対応モジュール、Bluetooth(登録商標)対応モジュール、ZigBee(登録商標)対応モジュール、および赤外線対応モジュールからなる群から選択され、好ましくは、前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、RFIDチップおよび前記チップに接続されたアンテナを含むRFIDタグであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のデータを追跡するためのシステム。
【請求項7】
パッケージングの第1の層内に受け入れられるように適合された複数の医療用容器の処理に関連するデータを追跡するための方法であって、前記方法は、
a) 複数の医療用容器を処理するための材料を提供する工程、
b) 前記医療用容器の製造の第1の工程中に、各医療用容器の前記材料上および/または前記材料内にマークを実装する工程であって、前記マークは、各それぞれの医療用容器のための対応する固有デバイス識別子(UDI)を符号化する工程、
を含み、および前記医療用容器の各製造工程中に、以下の工程、
c) 前記医療用容器の前記製造工程に関連するデータおよび/または各医療用容器のそれぞれの物理的データをデータ記憶システムに書き込む工程であって、前記書き込まれたデータは、各それぞれの医療用容器の前記UDIに関連付けられる工程、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
d) マークが実装された前記医療用容器を、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品を含む前記パッケージングの第1の層内に配置する工程、
e) 前記パッケージングの第1の層上および/または前記パッケージングの第1の層内に含まれる前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品における各医療用容器の前記UDIの書き込みの工程、
をさらに含み、および、前記パッケージングの第1の層の各処理工程中に、以下の工程
f) 前記パッケージングの第1の層の前記各処理工程に関連するデータを、前記データ記憶システムに、および任意選択的に、前記パッケージングの第1の層内に含まれる前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品に、書き込む工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記医療用容器のマーキングが、ラベリング、エナメル焼結、インクジェット印刷、ピコ秒レーザーマーキングまたはフェムト秒レーザーマーキングのようなレーザーマーキング、ドロップオンデマンド印刷、またはドットピーンマーキングによって行われることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記医療用容器の前記製造工程は、以下のうちの少なくとも1つであってもよいことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の方法:
i) 前記医療用容器用の原材料として使用されるガラス杖を切断、洗浄、および成形する工程、
ii) 前記医療用容器用の原材料として使用されるプラスチックを成形する工程、
iii) 前記医療用容器のスケール印刷工程、
iv) 前記医療用容器に針を組み立てる工程、
v) 前記医療用容器の洗浄工程、
vi) 前記医療用容器のシリコーン処理、
vii) 前記医療用容器に先端キャップを組み立てる工程、
viii) 前記医療用容器の目視検査。
【請求項11】
工程c)および/または工程f)で書き込まれる前記データは、設定、日付、ステーション識別子、外部温度、原材料バッチ番号、制御結果などであることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記データ記憶システムは、少なくとも1つのコンピュータサーバーおよび/または少なくとも1つの記憶ドライブを含むことを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記パッケージングの第1の層の以下の処理工程のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の方法:
- 前記パッケージングの第1の層の、および前記パッケージングの第1の層に配置された前記医療用容器の各々の、滅菌工程、
- 前記医療用容器の各々の打栓工程、
- 中間保管および/または輸送のための前記パッケージングの第1の層の保管工程。
【請求項14】
前記パッケージングの第1の層は、ネストであり、および前記パッケージングの第1の層の処理は、以下の工程のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項13に記載の方法:
- 前記パッケージングの第1の層内に配置された各医療用容器を医薬組成物で充填する工程、
- 前記パッケージングの第1の層を検査スポットに運搬する工程であって、そこで前記医療用容器の各々は検査されてもよい、工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ、バイアルまたはカートリッジのような1つまたは複数の医療用容器の処理に関連するデータを追跡するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、医療用容器は、1つのサイトで製造されおよび別のサイトで充填される場合は、1つのサイトから別のサイトに移送されなければならず、または、それほど多くはないが、それらが同一のサイトで製造されおよび充填される場合は、充填されると別のサイトに配達されなければならない。
【0003】
この移送(transportation)のために、容器は通常、グループ化トレイまたはネスト(以下「ネスト」)、パッケージングタブ(以下「タブ」)、および好ましくはシーリングカバーおよびプラスチックバッグ(以下「ヘッダーバッグ(header bag)」)を含むパッケージに入れられて、無菌状態(sterility)を保証する。ネストおよびタブ、ならびに任意選択的にシーリングカバーおよびヘッダーバッグの組み合わせは、以下「パッケージング」として言及され、一方、「タブ」という用語は空のタブに対応する。
【0004】
ネストは、受け入れられる容器の種類によって、様々な形状を有し得る。それは、フランジを備える容器の円筒形本体を受け入れるためのチムニーによって同軸的に囲まれ得るまたは囲まれ得ない開口部を含むことができ、これらのフランジはチムニーの上端にもたれる。あるいはまた、ネストは、タブの底と接触するであろうカートリッジを受け入れるための特定の開口部を有し得る。別の実施形態では、ネストは、フランジのない容器を受け入れるための底が閉じたチムニーを有し得え、ネストはまた、弾性材料(resilient material)製であり得、および容器が摩擦的に維持される開口部を有し得る。
【0005】
したがって、ネストは、汚染または破損のリスクなしに、複数の容器を同時に簡単に保管(storing)および移送するために作られたものである。さらに、この保管および移送手段は、容器の製造から製薬業界によるそれらの最終的な充填および保管まで、使用および再利用され得る。
【0006】
タブは、シーリングカバーの封止(sealing)のために、その上部開口部と同じ高さである周辺外側フランジを含む。タブはまた、ネストを支持するために、外側フランジの下に位置する周辺内側フランジを含む。使用時に、ネストは、シーリングカバーで封止されたタブ内に配置され、および全体は、ヘッダーバッグ内に封入されて(enclosed)滅菌される。次に、一連のパッケージは、箱、例えば段ボールまたはプラスチックの箱の中に、2つの一連のパッケージングの間に中間シートが配置された状態で、ボトムアップで積み重ねられてもよく、一連のものは、複数のパッケージングの列として定義される。
【0007】
目的地で受け取られると、パッケージは箱から取り出され、およびボトムダウンにひっくり返され、ヘッダーバッグは開かれ、タブはヘッダーバッグから取り出されおよび封止が解かれる。次に、ネストは、そこから取り出され、および容器は、充填および/または取り扱いされ得る。
【0008】
以下「処理(processing)」として言及される、医療用容器の製造、移送、および充填に関する主要なポイントは、医療用容器の追跡、すなわち、メーカー(manufacturer)におけるそれらの製造から、ネスト内および次いでタブ内におけるそれらのパッケージングを含み、通常はメーカーの最終顧客におけるそれらの充填およびさらには処理まで、処理チェーンの至る所で、医療用容器の各々を識別するための能力である。医療用容器の追跡はまた、それらの最終的な使用に至るまで、例えば、患者への注入(injection)、およびさらにはそれらの廃棄(disposal)まで有利である可能性がある。
【0009】
医療用容器の追跡を実現するための解決策が提案されている。
【0010】
第1の解決策は、医療用容器にデータタグまたはラベルでマーキングすることからなる。各データタグは容器ごとに異なり、それによって、各容器を個別に追跡することを可能にする。
【0011】
顧客は、例えば、実装が非常に難しい可能性のあるカラーラベリングを使用することによって、および/またはラインクリアランスまたは容器の手動調整(reconciliation)中に面倒な手動手順を実行することによって、容器レベルでのトレーサビリティを保証してもよい。特に、カラーラベリングは、フランジに近い容器の外径でのみ実行され得、および滅菌操作中に劣化する可能性が非常に高い。
【0012】
さらに、容器がタブ内またはネスト内にパッケージ化される場合、容器のマーキングは見えず、そのようなネストは、一般に、顧客による容器の処理中にコンベヤーとして使用される。したがって、顧客はマーキングを見ることができず、および容器を識別することができず、これは容器の追跡を厳しく制限し、および所与の組成物が間違った容器に充填される場合、容器の充填中にエラーを引き起こす可能性がある。
【0013】
第2の解決策は、医療用容器を運ぶネストにマーキングすることからなり、前記容器にはマークされない。
【0014】
しかしながら、容器がネスト内に配置される前は、容器レベルでのトレーサビリティはない。その上、容器の品質チェックを行いおよびそれらを組成物で充填するために顧客が医療用容器をネストから取り外すと、容器のトレーサビリティが失われる。結果として、顧客は、正しい容器が正しい組成物で充填されていることを保証することができず、これは、組成物で治療されるべき患者に深刻な結果を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、パッケージングのネスト内に受け入れられるように適合された1つまたは複数の医療用容器の処理に関連するデータを追跡するためのシステムを提供することを目的とし、これは、通常はメーカーの最終顧客における、ネスト内および次いでタブ内へのそれらのパッケージング、それらの充填およびさらなる処理、ならびに、さらに典型的には、例えば医薬生成物の注入のための、医療用容器の使用中のイベント、およびそれらの廃棄を含む、メーカーにおけるそれらの製造から処理チェーン全体にわたって前記医療用容器の各々を効率的に追跡することを可能にする。
【0016】
この目標を達成するために、本発明の目的は、パッケージングの第1の層に受け入れられるように適合された複数の医療用容器の処理に関連するデータを追跡するためのシステムであり、システムは以下を含む。
- 各医療用容器の材料上および/または材料内に実装され、および各それぞれの医療用容器のための対応する固有デバイス識別子(unique device identifier)(UDI)を表す少なくとも1つのマーク、
- パッケージングの第1の層上および/またはパッケージングの第1の層内に含まれる遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品であって、前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、パッケージングの第1の層内に受け入れられる各医療用容器のUDIを記憶(storing)するため、および医療用容器の処理に関連するデータを書き込むおよび/または読み取るために構成される。
【0017】
特に医療用容器のためのパッケージングは、容器を外部環境から分離する複数の層を含んでいてもよい。前記層のいくつかは、空気、流体、および/または容器の無菌性に影響を及ぼし得る任意の汚染物質に対するバリアを形成するように構成されてもよい。前記層のいくつかは、医療用容器を、それらの完全性(integrity)に影響を与える可能性のある衝撃および/または振動から保護するように構成されてもよい。本テキストにおいて、「第1の層」は、医療用容器に近いパッケージングの層を示す。特に、前記第1の層は、医療用容器を取り巻く大気と接触している。前記第1の層はまた、時系列順に(chronologically)、パッケージングプロセスで使用される第1の層の1つである。
【0018】
「上および/または内部に含まれる(comprised on and/or within)」という表現は、部品(component)が、任意の適当な手段(例えば、オーバーモールドされた、ラベル付けされた、接着された(glued)、クリップ、ネジ等のような機械的固定手段によって組み立てられた、など)によって、パッケージングの第1の層内に含まれていてもよく、および/またはパッケージングの第1の層に取り付けられていてもよいことを意味する。
【0019】
本発明のデータを追跡するためのシステムは、医療用容器のマーキングを組み合わせることにより、プロセスの最初の工程から、最終的なパッケージング工程での医薬品の顧客までの薬物容器の完全なトレーサビリティを可能にし、各医療用容器の前記マーキングは、固有デバイス識別子(UDI)を含み、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品はネストに埋め込まれている。
【0020】
医療用容器のマーキングは、それらの製造中に、材料上、または前記医療用容器のバルク材料内に付される。好ましくは、医療用容器のマーキングは、前記医療用容器のバルク内に付される。このマーキングは堅牢であり、および医療用容器の製造中に、可能な限り早期に付されてもよい。
【0021】
本テキストにおいて、「バルク材料(bulk material)」は、医療用容器の本体またはキャップを構成する材料に対応する。材料は、ガラス、プラスチック、ゴム、または熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0022】
本テキストにおいて、「堅牢(robust)」という用語は、マーキングが医療用容器の製造プロセスのいかなる段階にも耐える(resist to)であろうことを意味する。
【0023】
したがって、データを追跡するために提案されるシステムは、ネストの遠隔で読み取り可能および書き取り可能な電子部品に前記容器が実質上(virtually)統合(aggregated)されるので、視覚的な読み取りの制約なしに、容器のトレーサビリティを組み合わせる。さらに、ネストUDIは、RFIDタグのような遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品の無線技術を介してそれが読み取られ得るので、視覚的な読み取りの制約なしに、アクセス可能である。
【0024】
データを追跡するためのシステムの他の任意選択的な特徴(optional features)によると、
- パッケージングの第1の層は、ネストまたはタブ、好ましくはネストであり、
- 遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、パッケージングの第1の層に関連する対応する固有デバイス識別子(UDI)を含む。
- データを追跡するためのシステムは、医療用容器の処理に関連するデータを記憶するために構成されたデータ記憶システムをさらに含み、前記データは、各医療用容器のUDIに、および任意選択的にパッケージングの第1の層のUDIに、関連付けられる。
- 少なくとも1つのマークは光学的であり、好ましくは、バーコードのような1Dマーク、データマトリックス(Data Matrix)(登録商標)またはQRコード(登録商標)のような2Dマーク、および文字列(text)からなる群から選択される。
- 遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、RFIDタグ、超広帯域リアルタイムロケーションシステム(RTLS)、Wi-Fi(登録商標)対応(-enabled)モジュール、Bluetooth(登録商標)対応モジュール、ZigBee(登録商標)対応モジュール、および赤外線対応モジュールからなる群から選択され、好ましくは遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、RFIDチップおよびチップに接続されたアンテナを含む、RFIDタグである。
【0025】
本発明の別の目的は、パッケージングの第1の層内に受け入れられるように適合された複数の医療用容器の処理に関連するデータを追跡するための方法であり、前記方法は、以下の工程、
a) 複数の医療用容器を処理するための材料を提供する工程と、
b) 医療用容器の製造の第1の工程中に、各医療用容器の材料上および/または材料内にマークを実装する工程であって、前記マークは、各それぞれの医療用容器の対応する固有デバイス識別子(UDI)を符号化する、工程と、
を含み、および
医療用容器の各製造工程中に、以下の工程、
c) 医療用容器の製造工程に関連するデータおよび/または各医療用容器の個々の物理的データをデータ記憶システムに書き込む工程であって、前記書き込まれたデータは、各それぞれの医療用容器のUDIに関連付けられる、工程
をさらに含む。
【0026】
データを追跡するための方法の他の任意選択的な特徴(features)によると、
- 方法は、
d) マークが実装された医療用容器を、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品を含むパッケージングの第1の層に配置する工程、
e) パッケージングの第1の層上および/またはパッケージングの第1の層内に含まれる遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品における各医療用容器のUDIの書き込みの工程、
をさらに含み、
および、パッケージングの第1の層の各処理工程中に、以下の工程、
f) パッケージングの第1の層の前記各処理工程に関連するデータを、データ記憶システムに、および任意選択的に、パッケージングの第1の層内に含まれる遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品に、書き込む工程、
をさらに含む。
【0027】
- 医療用容器のマーキングは、ラベリング、エナメル焼結(sintering)、インクジェット印刷、ピコ秒レーザーマーキングまたはフェムト秒レーザーマーキングのようなレーザーマーキング、ドロップオンデマンド印刷、またはドットピーンマーキングによって行われる。
【0028】
- 医療用容器の製造工程は、以下のうちの少なくとも1つであってもよい。
i) 医療用容器用の原材料として使用されるガラス杖(glass cane)を切断、洗浄、および成形する工程、
ii) 医療用容器用の原材料として使用されるプラスチックを成形する工程(molding)、
iii) 医療用容器をスケール印刷する工程、
iv) 医療用容器に針を組み立てる工程、
v) 医療用容器を洗浄する工程、

vi) 医療用容器をシリコーン処理する工程、
vii) 医療用容器に先端キャップ(tip cap)を組み立てる工程、
viii) 医療用容器を視覚的に検査する工程。
【0029】
- 工程c)および/または工程f)で書き込まれるデータは、設定(setting)、日付(date)、ステーション識別子(station identifier)、外部温度(external temperature)、および/または原材料バッチ番号(raw material batch number)から選択される。
【0030】
- データ記憶システムは、少なくとも1つのコンピュータサーバーおよび/または少なくとも1つの記憶ドライブを含む。
【0031】
- パッケージングの第1の層の処理工程は、以下のもののうちの少なくとも1つであってもよい。
- パッケージングの第1の層およびパッケージングの第1の層に配置された医療用容器の各々を滅菌する工程、
- 医療用容器の各々に栓をする工程(stoppering)、
- 中間保管(intermediate storage)および/または輸送(shipment)のためにネストをタブ内に保管する工程。
【0032】
いくつかの実施形態では、パッケージングの第1の層はネストであり、およびパッケージングの第1の層の処理は、以下の工程のうちの少なくとも1つをさらに含む。
- パッケージングの第1の層内に配置された各医療用容器を医薬組成物で充填する工程。
- パッケージングの第1の層を検査スポットに運搬する工程であって、そこで医療用容器の各々は検査されてもよい、工程。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面に基づいて、以下の説明で開示される。
図1】ネストおよびタブを含む医療用容器用のパッケージングの部分切断図(partial cut)である。
図2】医療用容器の処理の典型的なワークフローを示す図である。
図3A】先端キャップにマークされたバーコードを含む医療用容器を表す図である。
図3B】医療用容器の本体にマークされたQRコード(登録商標)を含む医療用容器を表す図である。
図4】RFIDタグおよび温度センサーを含むネストの部分図である。
図5】メーカーのプラントでの医療用容器の処理の典型的なワークフローである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、パッケージングの第1の層内に受け入れられるように適合された少なくとも1つの医療用容器の処理に関連するデータを追跡するためのシステムに関する。
【0035】
医療用容器は、シリンジ、バイアル、またはカートリッジであってもよい。医療用容器は、バレルおよびバレルの先端を覆うキャップを含んでいてもよい。
【0036】
パッケージングの第1の層は、少なくとも1つの医療用容器を、決定された位置および/または配向に維持するように構成されたネスト、またはそのようなネストを含むタブであってもよい。好ましい実施形態によれば、第1の層はネストである。
【0037】
図1は、そのようなパッケージングの実施形態を示す。
【0038】
パッケージングは、タブ1を含み、これは一般にプラスチック材料製であり、これは、複数の医療用容器100を封入するように構成されている。タブは、底部10と、タブの底部から上部開口部12まで延びる周壁11と、を備える。周辺フランジ13は、周壁11の上部から外向きに延びる。周辺フランジは、タブを封止的に(sealingly)閉鎖するためにシーリングカバー(不図示)に対して封止されるように構成されている。
【0039】
有利には、医療用容器100は、タブ内において垂直に配置されてもよく、すなわち、医療用容器のバレルの長手方向軸は、垂直方向(これは重力の方向である)に延在し、バレルの開口部は、タブの上部に向けられる。したがって、この配向において、医療用容器は、タブ内に留まりながら、医薬組成物で充填され得、それにより、医療用容器の取り扱いを最小限にする。
【0040】
その目的のために、医療用容器100は、ネスト2内に配置されてもよく、これは、それぞれの医療用容器を受け入れおよびそれを垂直方向に維持するように構成された複数の案内穴(guiding holes)20を含む。タブ1は、ネスト2を支持するように構成された周辺内部リム14を含む。
【0041】
他の実施形態(示されない)では、医療用容器は、タブ内で異なる配向に、例えば水平方向に配置されてもよいが、この配向は、医療用容器をタブ内において直接的に充填することを可能にしないので、あまり好ましくない。
【0042】
「処理(processing)」という用語は、メーカーによるそれらの製造およびパッケージングの第1の層内におけるそれらの配置から、医療用容器が顧客によって検査された後の顧客による最終的なパッケージングまでの、医療用容器に関与する工程を指す。「メーカー処理(manufacturer processing)」として言及される処理の第1の部分Mは、メーカーによって実行され得、「顧客処理(customer processing)」として言及される処理の第2の部分Cは、顧客によって、または連続的に、複数の顧客によって実行され得る。この処理はまた、医療用容器を含むパッケージングの第1の層の、メーカーから顧客への移送Tを含む(図2を参照)。メーカー処理で実行される工程および顧客処理で実行される工程は、下文において、より詳細に説明される。
【0043】
本発明は、医療用容器の明確かつ完全なトレーサビリティを、メーカーによるそれらの製造および第1の層内におけるパッケージングから最終的なパッケージング工程での顧客まで、およびさらには医療用容器の廃棄まで、保証することを目的とする。
【0044】
そうするために、本発明は、前記少なくとも1つの医療用容器に特有である識別子でマークされた少なくとも1つの医療用容器をこれらのマークされた医療用容器を受け入れるように意図されたパッケージングの第1の層に埋め込まれた遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品と組み合わせるデータを追跡するためのシステムを提供する。
【0045】
より詳細には、データを追跡するためのシステムは、各医療用容器に関連付けられた少なくとも1つのマークを含み、前記医療用容器の製造プロセス中に各医療用容器上に実装され、および遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、パッケージングの第1の層に埋め込まれる。
【0046】
図3Aおよび図3Bは、バレル101とバレルの先端を覆うキャップ102とを含む医療用容器100の実施形態を示す。
【0047】
各医療用容器は、対応するマーク103で実装される。このマークは、対応する固有デバイス識別子、頭字語(acronym)UDIを表し、これは他のものの中でそれぞれの医療用容器の識別を可能にする。このように、各容器は、その容器に特有の情報を含む固有のおよびそれぞれのUDIを含み、ならびにしたがって、医療用容器の処理全体の間に追跡され得る。
【0048】
好ましくは、マークは、1次元(1D)マーク、2次元(2D)マーク、または文字列からなる群から選択される。有利には、マーク103は、バーコード(図3Aを参照)、データマトリックス、QRコード(登録商標)(図3Bを参照)または文字列からなる群から選択される。有利には、マークはデータマトリックスである。データマトリックスは、2次元の高密度バーコード記号であり、これは、医療用容器のバレルのような小さな領域に大量の情報またはデータを統合することを可能にする。そのため、データマトリックスは、医療用容器のマーキングに特に適する。
【0049】
マーキングのタイプは、好ましくは、ラベリング、エナメル焼結、インクジェット印刷、ピコ秒レーザーマーキングまたはフェムト秒レーザーマーキングのようなレーザーマーキング、ドロップオンデマンド印刷、またはドットピーンマーキングの中から選択される。
【0050】
このマークは、医療用容器の材料の表面上、または医療用容器のバルク材料内に実装されてもよい。好ましくは、マークは、医療用容器のバルク材料内に実装される。医療用容器がバレル101とバレルの先端を覆うキャップ102とを含む場合、マークは、キャップ102のバルク材料上またはキャップ102のバルク材料中に(図3Aを参照)および/またはバレル101のバルク材料上またはバレル101のバルク材料中に(図3Bを参照)形成されてもよい。
【0051】
パッケージングの第1の層上および/またはパッケージングの第1の層内に含まれる、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、そこに含まれることが意図される医療用容器の処理に関連するデータを読み取りおよび書き込むように構成される。前記遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品はまた、パッケージングの第1の層に関連する対応する固有デバイス識別子(UDI)を含んでいてもよい。
【0052】
遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、RFIDタグ、超広帯域リアルタイムロケーションシステム(RTLS)、Wi-Fi(登録商標)対応モジュール、Bluetooth(登録商標)対応モジュール、ZigBee(登録商標)対応モジュール、および赤外線対応モジュールを含む群から選択されてもよい。好ましくは、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、RFID(無線周波数識別)タグである。前記RFIDタグは、RFIDチップとチップに接続されたアンテナとを含む。RFIDタグはそれ自体が知られており、および例えば、対象物に接着され得る自己接着性(self-adhesive)ラベルの形で、または、対象物、特には本発明によるパッケージングの第1の層に、例えばオーバーモールド(overmolding)によって組み入れられてもよい自立型(self-supported)デバイスの形で、非常に容易に使用可能である。
【0053】
実施形態によれば、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、パッケージングの第1の層に埋め込まれる。パッケージングの第1の層に埋め込まれた電子部品によって、ネストは完全にまたは少なくとも部分的に、電子部品が外部環境から保護されおよびしたがって損傷を受けたり取り外されたりされ得ないように、電子部品を包み込むことが理解されるべきである。そのため、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、物理的にアクセスされ得ず、これは、特に、医療用容器を含むネストのメーカーから顧客への移送の間、またはエチレンオキシドや蒸気滅菌のような滅菌プロセスの間に処理の工程から生じ得るあらゆる損傷を防止する。
【0054】
実施形態によれば、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、プロセッサおよび/または少なくとも1つのセンサーに関連付けられ、これらもまた、パッケージングの第1の層に埋め込まれる。センサーは、温度センサー、圧力センサー、湿度センサー、および動きセンサー(movement sensor)のうちの1つまたは複数の中から選択されてもよい。遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、さらに、上記の要素に電力を供給するためのバッテリ、およびデータを記憶するためのメモリと関連付けられてもよい。遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、医療用容器の処理中にネストの位置を突き止めるためにGPSモジュール(全地球測位システム)にさらに関連付けられてもよい。
【0055】
センサーは、温度、圧力、湿度、および動き(movement)データのような、それらそれぞれの機能(fucntion)に関連する物理的データを入力し、および医療用容器の処理中に対応する信号をプロセッサに出力するように構成される。信号の処理後、データはメモリに記憶され、および/またはデータ記憶システムに転送されてもよい。
【0056】
図4は、RFIDタグ21および温度センサー22を含むネスト2の実施形態を示す。RFIDタグおよび温度センサーは、例えば、ネストのプラスチック材料にオーバーモールドすることによって、または例えば接着剤を使用して、ネストの上面または下面に取り付けられることによって、ネストの材料内に含まれてもよい。
【0057】
好ましい実施形態によれば、データを追跡するためのシステムは、各医療用容器のUDIに関連するデータ、ネストのUDIに関連するデータ、および/または遠隔で読み取り可能および書き込み可能に書き込まれるデータが記憶されてもよいデータ記憶システムをさらに含む。
【0058】
好ましくは、データ記憶システムは、コンピュータサーバーおよび/または記憶ドライブを含む。有利には、データストレージシステムは、いくつかのコンピュータサーバーおよび/またはいくつかの記憶ドライブを含んでいてもよい。
【0059】
記憶ドライブの場合、メーカーはメーカー処理データを記憶ドライブに転送し、および記憶ドライブを顧客に提供してもよい。したがって、顧客は記憶ドライブにアクセスしてデータをレビューしてもよく、それによって、顧客が標準(standards)とのメーカー処理の適合性(conformity)をチェックすることを可能にする。
【0060】
コンピュータサーバーの場合、メーカーはメーカー処理データをサーバーに転送してもよい。次に、顧客はサーバーにアクセスして、特に適合性チェックのために、データをレビューしてもよい。顧客はまた、顧客処理データをサーバーに転送してもよい。
【0061】
メーカーによって顧客に与えられたデータへのアクセスは、顧客が記憶データシステムに記憶されたデータ全体にアクセスできることを意味する全体的であってもよく、または顧客が記憶データシステムに記憶されたデータの一部のみにアクセスできることを意味する部分的であってもよい。
【0062】
さらに、データのレビューに加えて、顧客はこれらのデータを使用しおよびそれらを顧客チェーンに実装してもよい。
【0063】
第1の実施形態によれば、コンピュータサーバーは、メーカーと顧客との間で共有される。メーカーと顧客は互いにデータを交換してもよい。
【0064】
第2の実施形態によれば、メーカーは、メーカーサーバーと呼ばれる第1のサーバーにアクセスしてもよく、顧客は、顧客サーバーと呼ばれる第2のサーバーにアクセスしてもよい。メーカーは、メーカー処理データをメーカーサーバーに転送し、およびこれらのデータまたはそれらの一部を顧客サーバーに転送してもよい。次に、顧客は顧客サーバーにアクセスしてこれらのデータをレビューしてもよい。顧客は、顧客処理データを顧客サーバーに転送し、およびこれらのデータまたはそれらの一部をメーカーサーバーに転送してもよい。
【0065】
コンピュータサーバーの例は、「クラウド」タイプのものであってもよい。
【0066】
本発明はまた、ネストに受け入れられるように適合された複数の医療用容器の処理に関連するデータを追跡するための方法に関し、前記方法は、
a) 工程M1: 複数の医療用容器を処理するための材料を提供する工程、
b) 工程M2: 医療用容器の製造の第1の工程中に、各医療用容器の材料上および/または材料内にマークを実装する工程であって、前記マークは、各それぞれの医療用容器のための対応する固有デバイス識別子(UDI)を符号化する、工程、
の工程(図5を参照)を含み、およびさらに、医療用容器の各製造工程中に、以下の工程、
c) 工程M3: 医療用容器の製造工程に関連するデータおよび/または各医療用容器の個々の物理的データをデータ記憶システムに書き込む工程であって、前記書き込まれたデータは、各それぞれの医療用容器のUDIに関連付けられる、工程、
を含む。
【0067】
上で説明したように、工程M2は、ラベリング、エナメル焼結、インクジェット印刷、ピコ秒レーザーマーキングまたはフェムト秒レーザーマーキングのようなレーザーマーキング、ドロップオンデマンド印刷、またはドットピーンマーキングによって、好ましくはレーザーマーキングによって実施されてもよい。
【0068】
工程M3の前に、付加的な比較工程が実施されてもよい。前記比較工程は、比較された医療用容器が、求められたもの、例えば製造注文(manufacturing order)で識別されたものであることを保証するために、各医療用容器のUDIに関連するデータを参照識別子と比較することを可能にする。比較工程がネガティブであろうとなかろうと(whether)、別の比較工程が存在してもよい。比較工程がポジティブであろうとなかろうと(whether)、工程c)が実施されてもよい。
【0069】
工程M3は、医療用容器の各製造工程中に存在してもよい。したがって、工程M3は、製造工程の最初、途中、または最後のいずれかに存在してもよい。
【0070】
工程M3の間に、製造工程および医療用容器のUDIに関連する任意のデータは、データ記憶システムに書き込まれてもよい。これらのデータは、設定(settings)、日付、ステーション識別子、外部温度、原材料バッチ番号、およびまた、好ましくは、バルクプロセス中に制御カメラによって提供される寸法上および外観上(cosmetic)の欠陥、使用される装置のタイプなどであってもよい。
【0071】
本発明の方法は、以下の工程(図5を参照)をさらに含んでいてもよい。
d) 工程M4: 遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品を含むネスト内に、マークが実装された医療用容器を配置する工程。
e) 工程M5: ネストに含まれる遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品に各医療用容器のUDIを書き込む工程。
【0072】
本発明の方法は、ネストの各処理工程中に、以下の工程をさらに含んでいてもよい。
f) 工程M6: データ記憶システムに、および任意選択的に、ネストに含まれる遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品に、ネストの前記各処理工程に関連するデータを書き込む工程。
【0073】
本発明の方法において、医療用容器の製造工程は、以下の工程のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい:切断工程、洗浄工程、ガラス杖を形成する工程、または医療用容器のための原料として使用されるプラスチック材料を成形する工程、容積スケールのようなスケールの印刷工程、ガラス杖のアニーリング工程、医療用容器の洗浄工程、シリコーン処理(siliconization)、医療用容器のバレルへの針を含む先端の組み立て工程、針への先端キャップの組み立て工程、および医療用容器の目視検査(visual inspection)。これらの工程は、任意選択的にフランジおよび先端、ならびに任意選択的に、印刷された容積スケールを備える、医療用容器バレルをもたらす。得られた医療用容器は、ネスト内に配置される準備ができている。
【0074】
医療用容器のマーキングが製造工程のいずれかの前に実施されてもよい場合でも、前記マーキングは、好ましくは、アニーリング工程の後に実施される。
【0075】
有利には、UDIを表すマークは、医療用容器の材料上および/または医療用容器の材料内に、好ましくは医療用容器の材料内に、実装されてもよい。好ましくは、マーキングは、考えられる技術的制限(例えば、マーキングの耐熱性)を考慮に入れて、製造プロセスにおいてできるだけ早く実行される。例えば、フェムト秒レーザーでマーキングが行われるとき、フェムト秒レーザーのマーキングはアニーリング温度に持ちこたえられないので、マーキングはアニーリングの後に行われる。しかしながら、エナメル焼結の場合は、マーキングはアニーリングの前に行われてもよい。
【0076】
好ましい実施形態によれば、マークは、医療用容器の材料内にフェムト秒レーザーでレーザーマーキング(laser-marked)される。針が医療用容器に組み立てられることが意図されるとき、主にそのような方法でマーキングはできるだけ早く実行されそれによって容器の変形をできるだけ早く追跡することを可能にするので、マーキングはアニーリング後であるが針の組み立て前に実行される。
【0077】
成形工程およびアニーリング工程中に、データ記憶システムに書き込まれ、およびバレルUDIにリンクされるデータは、
- 成形ステーション(forming station)に関連するデータ:機械設定、寸法制御(dimensional control)、日付、製造ステーション識別子、外部温度、原材料バッチ番号、
- アニーリング工程に関連するデータ:アニーリングオーブン温度プロファイル、日付など、
- 針組立品/中間パッケージングに関連するデータ:使用される接着剤(glue)のタイプ、接着プロセスの主要なプロセス入力変数、外観および寸法制御の結果、
を含んでいてもよい。
【0078】
これら第1の製造工程の後、医療用容器は、洗浄工程(cleaning step)において、水のような適当な流体で洗浄される。好ましくは、注入用水(頭字語WFI)中に使用される水、これは、食品、化学、および製薬業で一般的に使用されている。注入用水は、粒子およびバクテリアを含まない精製水である。
【0079】
次に、洗浄された医療用容器は、シリコーン処理工程の対象とされる。
【0080】
より詳細には、医療用容器のバレルの内部はシリコーン処理(siliconized)されており、これは、バレルの少なくとも内面へのシリコーンの薄膜の堆積からなる。
【0081】
次に、先端キャップは、針を覆うように、医療用容器の先端に組み立てられてもよい。
【0082】
これらの製造工程中に、データ記憶システムに書き込まれるデータは、
- 製造ステーションに関連するデータ:洗浄、滅菌、および/または組み立てを実行するための、使用される装置のタイプ、および好ましくはそれらの設定、日付、製造ステーション識別子、外部温度、原材料バッチ番号、
- 洗浄工程に関連するデータ:使用される洗浄流体の種類、洗浄流体の温度、洗浄時間、洗浄サイクルの数、
- シリコーン処理工程に関連するデータ:使用されるシリコーンのタイプ、シリコーン処理の温度、シリコーンの流量、シリコーン処理時間、
を含んでいてもよい。
【0083】
本発明の方法の工程M4は、マークが実装された医療用容器をネスト内に配置する工程を含む。
【0084】
ネストは、少なくとも1つの遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品を含む。遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品は、好ましくはネストに埋め込まれており、これはその劣化を防止する。有利には、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品はまた、ネストに関連するUDIを含んでいてもよい。
【0085】
工程M5の間、すなわち、医療用容器がすべてネスト内に配置されたとき、リーダー/ライターは、ネストに埋め込まれた遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品に、医療用容器の各々に関連するすべてのUDIを書き込む。
【0086】
次に、工程M6は、ネストの各処理工程中に存在してもよい。したがって、工程M6は、ネストの処理工程の最初、途中、または最後のいずれかに存在してもよい。工程M6の間に、ネストの処理工程に関連するデータは、記憶装置(storage device)からネストの遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品に転送されてもよい。それにより、ネストは、前記ネストでのそれらのパッケージングに至るまでの医療用容器の処理に関連するすべての情報を含んでいてもよい。これらのデータはまた、以前に使用されたものとは異なる別の記憶装置に転送されてもよい。
【0087】
ネストの処理工程は、以下のうちの少なくとも1つであってもよい。
- ネストのおよびネスト内に配置された医療用容器の各々の滅菌、
- ネスト内に配置された各医療用容器を医薬組成物で充填する工程、
- 医療用容器の各々の打栓工程(stoppering)、
- ネストを、医療用容器の各々が検査されてもよい検査スポットに運ぶ工程、
- 中間保管および/または輸送のためにネストをタブ内に保管する工程。
【0088】
上記の工程は、メーカーの場所または顧客の場所のいずれかで実施されてもよい。
【0089】
有利には、ネストはタブ内に位置付けられてもよく、およびフィルムは、タブを閉じるように、ネストを含むタブの上部開口部を覆うように配置される。フィルムは、良好な機械的抵抗(mechanical resistance)およびシール性(sealing properties)を示す任意の適当な材料であってもよい。ポリエチレンのフィルム、特にポリエチレン繊維から作られた不織布合成材料であるタイベック(Tyvek)(登録商標)は、その目的に特に適している。
【0090】
タブは1つまたは複数のヘッダーバッグ内に配置され、これらは次いで封止される。次に、ヘッダーバッグは、ラベルが付されたケース内に配置され、およびケースはパレット上に置かれる。
【0091】
典型的には、パッケージングの第1の層の処理工程に関与するデータは、
- パッケージングステーションに関連するデータ: ネスト内への容器の配置、タブ内へのネストの配置、およびヘッダーバッグ内へのタブの配置を実行するために使用される装置のタイプおよび好ましくはそれらの設定、日付、製造ステーション識別子、外部温度、原材料バッチ番号、
- ネスト内への容器の配置に関連するデータ: ネストの特徴、
- タブ内へのネストの配置に関連するデータ: タブの特徴、フィルムの構成材料のようなフィルムの特徴、
- ヘッダーバッグ内へのタブの配置に関連するデータ: ヘッダーバッグの特徴、
を含んでいてもよい。
【0092】
次に、パレットは、それらを滅菌するために、滅菌チャンバーに移動されてもよい。滅菌は、好ましくは、エチレンオキシドまたは蒸気を用いて実施される。
【0093】
存在する場合、パッケージングの第1の層のセンサーは、医療用容器の滅菌に関連する物理的データを記録してもよい。センサーデータと呼ばれるこれらの物理的データは、例えば、温度、湿度、圧力、および露出時間(exposition time)を含んでいてもよい。センサーデータと呼ばれるこれらのデータは、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品から記録装置に転送されてもよい。
【0094】
パッケージングの第1の層の処理工程の任意のときに、パッケージングの第1の層の遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品タグに含まれるデータは、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品から、記憶装置に転送されてもよい。
【0095】
これらのデータは、
- パッケージングの第1の層のUDI、および/または、
- パッケージングの第1の層に含まれる医療用容器のUDI、および/または、
- 医療用容器の製造工程に関連するデータ、および/または、
- パッケージングの第1の層の処理工程に関連するデータ、
を含んでいてもよい。
【0096】
そのため、メーカーおよび顧客は、上記のデータのうちのいくつか、または上記のデータのすべてへのアクセスを有していてもよく、およびしたがって、それらは、メーカー処理全体の間の、医療用容器のおよびパッケージングの第1の層の完全なトレーサビリティを有していてもよい。
【0097】
存在する場合、パッケージングの第1の層のセンサーは、メーカーから顧客への医療用容器の輸送(shipping)に関連する、すなわちメーカーから顧客への移送の間の物理的データを記録してもよい。これらの物理的データは、例えば、温度、湿度、振動を含む。
【0098】
顧客は、医療用容器のファイリング(filing)前に品質テストを実施してもよい。テストに合格した容器は、不合格である容器がリジェクトされようとなかろうと、充填(filling)工程に進んでもよい。
【0099】
品質プロセスデータは、標準を考慮して医療用容器の適合性を判断するために顧客によって実施されるテストに関連するデータを含む。
【0100】
顧客は、それらを医薬組成物で充填することができるようにするために、タブの開梱(unpacking)に進んでもよい。医療用容器を含むネストは、充填チェーン(filling chain)に直接位置付けられてもよい。
【0101】
これらの工程に関与するデータは、
- ファイリングステーションに関連するデータ: ファイリングを実行するために使用される装置のタイプおよび好ましくはそれらの設定、日付、ファイリングステーション識別子、外部温度、
- 医薬組成物に関連するデータ: 医薬組成物のタイプ、温度、圧力、粘度、
を含んでいてもよい。
【0102】
顧客は、充填された医療用容器をネストから取り外し、医療用容器の目視品質検査を行い、および検査された医療用容器をネスト内に戻してもよい。
【0103】
本発明による医療用容器およびパッケージングの対応する第1の層の両方の二重マーキングは、それが、前記医療用容器がパッケージングの第1の層から分離されたときに、医療用容器と、パッケージングのそれらの対応する第1の層と、のトレーサビリティを維持することを可能にするので、ここで特に有用である。
【0104】
目視テスト(visual tests)に合格した容器はネスト内に戻されてもよく、一方、不合格である容器はリジェクトされる。
【0105】
この工程に含まれるデータは、
- 医療用容器の更新されたステータス(アクセプトされた/リジェクトされた)、
- 標準を考慮して医療用容器の適合性を判断するために顧客によって実施される目視テストに関連するデータ、
を含んでいてもよい。
【0106】
目視検査テストに合格した医療用容器は、使用または移送前に低温環境(cold environment)で保管されてもよい。
【0107】
保管のために、医療用容器は、ネストから「第2のネスト」と呼ばれる別のネストに移送されてもよく、これはまた、医療用容器のUDIを記憶するため、および医療用容器の処理に関連するデータの書き込みおよび/または読み取りのために構成された遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品(例えば、RFIDタグ)を含んでいてもよい。
【0108】
存在する場合、ネストのセンサーは、医療用容器の低温保管(cold storage)に関連する物理的データを記録してもよい。これらのセンサーデータは、例えば、温度、湿度、圧力、および保管に入れた日付と出した日付(in and out storage date)を含む。
【0109】
ネストを含むタブは、二次的なパッケージングプラントに移送されてもよい。
【0110】
存在する場合、ネストのセンサーは、タブがコールドチェーン(cold chain)から外れているときに、医療用容器の移送に関連する物理的データを記録してもよい。これらのセンサーデータは、例えば、温度、湿度、および圧力を含む。
【0111】
適切な場合には、センサーデータは、遠隔で読み取り可能および書き込み可能な電子部品から記憶装置に転送される。
【0112】
次に、医療用容器は、それらのネストから取り外され、および次に、二次的なパッケージング内にパッケージ化されてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】