(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】2成分系の分析物を測定するための方法およびキットならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20220824BHJP
G01N 33/542 20060101ALI20220824BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220824BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
G01N33/542 A
C12Q1/686 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575946
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2020067493
(87)【国際公開番号】W WO2020260277
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521552626
【氏名又は名称】アクトーメ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー、クサバ
(72)【発明者】
【氏名】コルタイ、ペーター
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029FA10
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ79
4B063QR66
4B063QS28
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、2成分検出法を用いて分析物のパラメータを測定するための方法およびキットならびにそれらの使用に関する。特許請求される方法は、測定の測定可能な濃度範囲が拡張された分析物の希釈物の測定を含む。別の態様では、本発明は、分析物の希釈物の測定を用いる2成分系の成分の解離定数の決定に関する。本方法はまた、高度に並列した様式での、測定の測定可能な濃度範囲が拡張された分析物の希釈物の測定、成分の解離定数の決定、および2成分検出法のよりすぐれた定量を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分検出法を使用して、未知濃度の分析物を含む試料中の分析物の濃度を決定するための方法であって、
a.既知濃度で、非固定化の、分析物に特異的な2つの結合成分を提供し、前記分析物に特異的な2つの結合成分を前記分析物と接触させて、溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む、溶液中で2成分検出法を実施するステップと、
b.前記分析物の濃度に対する前記シグナルの依存性を反映する数学関数である前記2成分検出法のための非全単射分析物濃度の基準曲線(a non-bijective analyte concentration reference curve)を提供するステップと、
c.規定の希釈倍率を使用して前記試料の1つ以上の希釈物を調製するステップと、
d.前記2成分検出法を前記試料および前記1つ以上の希釈物に適用するステップと、
e.異なる分析物濃度での前記非全単射分析物濃度の基準曲線についての数学的適合のための制約入力(a constraining input)として、前記試料および前記1つ以上の希釈物において検出された前記シグナルを使用して前記分析物の濃度を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
2成分検出法において既知濃度の試料中の分析物を用いて、分析物に特異的な結合成分の解離定数を決定するための方法であって、
a.既知濃度で、非固定化の、分析物に特異的な2つの結合成分を提供し、前記分析物に特異的な2つの結合成分を前記分析物と接触させて、溶液中に形成される2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む、溶液中で2成分検出法を実施するステップと、
b.2成分/分析物複合体の濃度ならびに分析物および分析物に特異的な結合成分の濃度を反映する前記シグナルに依存して、分析物に特異的な2つの結合成分と分析物との解離定数(それぞれ、kd1およびkd2)の関係についての数学関数である、前記2成分検出法のための解離定数関係を提供するステップと、
c.前記試料および/または前記分析物に特異的な結合成分の1つ以上の希釈物を調製するステップと、
d.前記2成分検出法を前記試料および前記1つ以上の希釈物に適用するステップと、
e.異なる分析物濃度および/または分析物に特異的な結合成分濃度での前記解離定数関係についての数学的適合のための制約入力として、試料および1つ以上の希釈物において検出された前記シグナルを使用して、前記分析物に特異的な2つの結合成分の解離定数kd1およびkd2を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項3】
前記非全単射分析物濃度の基準曲線が、既知の分析物濃度の参照試料を提供し、前記参照試料の一連の既知希釈物を作製し、前記参照試料およびその各既知希釈物について前記2成分検出法を実行することによって実験的に得られ、および/または前記非全単射分析物濃度の基準曲線が、化学平衡および質量保存方程式を解くことによって解析的に算出されるか、または前記分析物に特異的な2つの各結合成分と前記分析物との解離定数の規定に基づいて数値解によって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記解離定数の関係が、化学平衡および質量保存方程式を解くことによって解析的に算出される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記分析物が、タンパク質、ペプチド、核酸セグメント、炭水化物、脂質、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、抗原、オリゴヌクレオチド、特異的受容体タンパク質、リガンド、分子、細胞、微生物、ならびにそれらの断片産物または組み合わせからなる群から選択され、および/または前記試料が2つ以上の異なる種類の分析物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分析物に特異的な2つの結合成分が、核酸、好ましくはRNAおよび/またはDNAオリゴヌクレオチド、抗体、ペプチド、タンパク質、アプタマー、分子インプリントポリマー、細胞またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、および/または異なる種類の分析物に特異的な2対以上の結合成分が使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記2成分法が、前記2成分/分析物複合体の濃度依存性シグナルを生成するために近接度に基づいたアッセイを用いることを含み、前記近接度に基づいたアッセイが、それらの近接度に依存して検出可能なシグナルを生成する分析物に特異的な2つの結合成分を使用し、および/または前記2成分法が、共鳴エネルギー移動アッセイ、好ましくはフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイもしくは生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイ、タンパク質相補性アッセイ(PCA)、AlphascreenもしくはDNA標識近接アッセイ、好ましくは近接ライゲーションアッセイ(PLA)もしくは近接伸長アッセイ(PEA)を用いることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記2成分検出法が、2成分/分析物複合体の濃度依存性シグナルを生成するために区画化アッセイを使用することを含み、前記シグナルが、単一の区画における前記分析物に特異的な2つの結合成分の存在を反映し、前記区画化アッセイが、好ましくは、エマルジョン滴法を使用し、前記エマルジョン中の各液滴が別個の区画を表し、より好ましくは、前記区画化アッセイがエマルジョンカップリングである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数の分析物が並列して決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記2成分検出法が、絶対分子数に基づく分析法を使用することを含み、および/または前記2成分検出法が、液滴デジタルPCRアッセイを使用することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記2成分検出法が、増幅可能な固有の核酸標識に会合する分析物に特異的な結合成分を使用することを含み、区画化アッセイを使用し、蛍光タグ付き増幅産物を使用して各区画に対して核酸増幅が行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記2成分検出法が、核酸分子を識別する-固有の分子識別子-バーコードを含む複数の分析物に特異的な結合成分を使用することを含み、区画化アッセイを使用し、核酸増幅が、連結分子を識別する-固有の分子識別子-核酸バーコードを生成する各区画に対して実行され、前記区画が、共通プールで再結合され、並列核酸配列決定技術が使用されて、前記2成分/分析物複合体の濃度依存性シグナルを生成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記並列核酸配列決定技術が、次世代配列決定技術(NGS)である、請求項11または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
2成分検出法を使用して分析物の濃度を決定するためのキットであって、
a.前記分析物に特異的な2つの結合成分を前記分析物を含有する溶液と接触させて、前記溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む2成分検出法を実施するための、既知濃度の、非固定化の、分析物に特異的な2つ以上の結合成分と、
b.分析物の濃度に対する前記シグナルの依存性を反映する数学関数である、前記2成分検出法のための非全単射分析物濃度の基準曲線についての参照データであって、非全単射分析物濃度の基準曲線が、増減する単調セグメントを示す、参照データと、
c.任意で、前記試料の1つ以上の希釈物を調製し、2成分検出法を前記試料および前記1つ以上の希釈物に適用するための使用説明書と、
d.試料中の分析物の濃度を決定するために、試料中および1つ以上の希釈物で検出されたシグナルを非全単射分析物濃度の基準曲線と比較する計算ステップを実行するように構成されたコンピュータ上で実行される場合のコンピュータプログラムと、
を含むキット。
【請求項15】
2成分検出法における解離定数を決定するためのキットであって、
a.前記分析物に特異的な2つの結合成分を分析物を含有する溶液と接触させて、前記溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む、2成分検出法を実施するための、分析物に特異的な既知濃度の、2つ以上の結合成分のための反応緩衝液と、
b.2成分/分析物複合体の濃度ならびに分析物および/または分析物に特異的な結合成分の濃度を反映する前記シグナルに依存して、kd1およびkd2の関係についての数学関数である、前記2成分検出法の解離定数関係についての参照データと、
c.任意で、前記試料の1つ以上の希釈物を調製し、規定の希釈倍率を使用して前記試料および前記1つ以上の希釈物に2成分検出法を適用するための使用説明書と、
d.異なる分析物および/または分析物に特異的な結合成分の濃度での前記解離定数関係についての数学的適合のための制約入力として、試料および1つ以上の希釈物中で検出された前記シグナルを使用して、前記分析物に特異的な2つの結合成分の解離定数kd1およびkd2を決定する計算ステップを実行するように構成されたコンピュータ上で実行される場合のコンピュータプログラムと、
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分検出法を使用して分析物のパラメータを測定する方法およびキットならびにそれらの使用に関する。特許請求される方法は、測定の測定可能な濃度範囲が拡張された分析物の希釈物の測定を含む。測定は、測定の所定の非全単射検量線に基づくものであり、それにより、測定ごとに2成分検出法の非全単射検量線を読み取る方法が提供される。これにより、分析物の濃度を算出するための数学的関係が、より広い測定範囲にわたって正確に決定される。別の態様では、本発明は、区画化2成分検出法における測定法の所定の非全単射検量線の適用に関する。さらに別の態様では、本発明は、区画化2成分検出法において同定された固有の分子成分を使用する測定法の所定の非全単射検量線の適用に関する。さらに別の態様では、本発明は、2成分法の分析物に特異的な結合成分の解離定数の決定に関する。特許請求される方法は、さらに並列様式での、測定の拡張された測定可能な濃度範囲、成分の解離定数の決定、および2成分検出法のよりすぐれた定量化に関する。
【0002】
本発明は、2成分検出法を使用して分析物のパラメータを測定する方法およびキットならびにそれらの使用に関する。本方法およびキットの適用も開示される。
【背景技術】
【0003】
関連技術の考察
具体的には、本方法およびキットは、2成分検出法を使用して分析物の濃度を決定するのに適しており、2成分検出法を使用したより大きい測定範囲およびその使用に関する。
【0004】
飽和効果または「フック効果」は、一般に、特異的な結合相手または分析物を捕捉するために使用される試薬成分の飽和を伴う検出系に共通の現象である。しかしながら、数学的背景は、1成分または2成分の検出法の場合で異なる。
【0005】
2成分検出系は、典型的には、2つの成分を適用して検出シグナルを生成する均一アッセイにおいて利用される。これらのアッセイの多くは、近接概念を適用し、分析物および成分を近接させてシグナルを生成する必要がある。FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、BRET(生物発光共鳴エネルギー移動)(Pfleger,Seeber,&Eidne,2006)、シアン蛍光タンパク質(CFP)-黄色蛍光タンパク質(YFP)対、PCA(タンパク質相補性アッセイ)(Morell,Ventura,&Aviles,2009)、Alphascreen(Taouji,Dahan,Bosse,&Chevet,2009)、およびDNA標識近接法(PLA-近接ライゲーションアッセイ、PEA-近接伸長アッセイ)(Soderberg et al.,2006)などの近接アッセイ技術、ならびにエマルジョンカップリングと呼ばれる近接度に基づかないアッセイは、2分子(2成分)検出系および検出法の代表例である。
【0006】
1成分検出系では、シグナルを生成するために、トレーサと呼ばれる1つのアッセイ成分のみが必要とされる。放射性トレーサまたは蛍光トレーサを含む濾過結合アッセイは、1成分検出系の良好な例である。1成分検出系を使用して得られた検量線は、飽和トレーサ濃度で得られたプラトー(一般に「フック」とも呼ばれる)で終わる典型的なS字形を示す。これらの曲線は飽和曲線とも呼ばれる。
【0007】
2分子検出系で作成された検量線は非定型である。これらの曲線は、非全単射であり、初濃度依存性シグナルの増加後に得られるプラトー後のシグナル減少(「フック効果」)を特徴とする。シグナルが低下し始める標的分子濃度の範囲は、フックポイントと呼ばれる。フックポイント未満では、アッセイ成分は標的分子によって徐々に飽和されていき、シグナル増加が測定される。フックポイントでは、両成分が標的分子で飽和し、最大シグナルが検出される。フックポイントを超えると、過剰な標的分子が成分を過飽和にし、それが会合を阻害し、漸進的なシグナル減少を引き起こす。
【0008】
従来技術では、すべての測定が2セグメント非全単射検量線の漸進的に飽和したセグメントの範囲で行われることを確実にするために、分析物濃度の測定を実行する前に、2セグメント非全単射検量線のフックポイントを決定する必要がある。過飽和は、一般に測定の失敗とみなされる。
【0009】
この要件の不履行は、決定値が非全単射検量線の分析物濃度に一意に対応しないため、誤った測定につながる可能性がある。
【0010】
そのような誤差を回避するために、典型的には、測定のダイナミックレンジは、非全単射検量線の漸進的に飽和したセグメントのダイナミックレンジに制限される。
【0011】
従来技術では、特にサンドイッチ免疫測定法においてフック効果に対処するいくつかのアプローチが知られている。
【0012】
Wuら、2018は、過剰な捕捉抗体および検出抗体によるサンドイッチ免疫測定法におけるフック効果の発生を考察しており、結果の誤解釈を回避するために試料の希釈を示唆している。
【0013】
特開平06109740号公報は、抗体-抗原反応を利用して試料中の標的成分を定量分析するための濁度測定免疫測定法(TIA)に関する。特開平06109740号公報では、既知の方法における過剰な抗原に対するプロゾーンの発生を考察しており、そのような場合、方法は、試料希釈で試験を繰り返している。改善点として、特開平06109740号公報には、濃度の異なる試料に対して2以上の検量線を得て、仮想曲線からの偏差に基づいて、どの較正曲線が適用可能であるかを決定することが示唆されている。しかしながら、特開平06109740号公報の開示は、規定の数学的関係からより広いアッセイのダイナミックレンジを可能にすることなく、プロゾーン効果を防止して偽陰性測定を回避することに概念的に制約されている。
【0014】
欧州特許出願公開第0576879号明細書は、医学的試料中の成分濃度を決定するための方法に関し、抗原過剰での免疫学的検出スキームにおけるフック効果、ならびに「Heidelberger-Kurve」と呼ばれる、結果として得られる非単調非全単射較正曲線が考察されている。欧州特許出願公開第0576879号明細書では、従来技術において、2つの異なる試料希釈物を使用して非単調較正曲線の不明確さを克服することが知られていることが開示されている。さらなる改善として、欧州特許出願公開第0576879号明細書では、測定された入力値を較正曲線の正しいレジメと相関させるための、学習アルゴリズムおよび多変量統計の使用が示唆されている。しかしながら、欧州特許出願公開第0576879号明細書は、沈殿アッセイにおけるシグナル伝達の分析に関するものであり、したがって、特に沈殿は不明確な化学量論による可変/多成分反応であるため、2成分アッセイに簡単に拡張することはできない。さらに、学習アルゴリズムを使用すると、結果は実験条件によって異なる可能性があり、実験条件ごとに異なる較正曲線が必要になる可能性がある。
【0015】
中国特許第106226516号明細書は、双曲線較正曲線を含む検出法に関し、フック効果に対処するための戦略も考察されている。中国特許第106226516号明細書では、較正前および較正後の曲線から変曲点で較正曲線を構築するために、等量の反応物質を用いて異なる濃度の分析物の標準物質の別反応を行うことが示唆されている。
【0016】
Binder et al 2008は、フック効果を考慮に入れ、対数差ならびに完全一致プローブ強度およびミスマッチプローブ強度の和を共処理することを含み得るGeneChipマイクロアレイ用の較正アルゴリズムを開示している。
【0017】
したがって、先行技術の教示を考慮すると、2成分検出アッセイを使用して分析物の濃度を決定するのに適した方法およびキットを提供するために改善の余地があり、この方法およびキットは、信頼性があり、効果的に、わずかな追加の労力で、そのような2成分検出アッセイのダイナミックレンジを広げ、近似方法を使用する必要性を排除する規定の数学的関係を提供することができる。
【0018】
別の態様では、本方法およびキットは、2成分検出法を使用して分析物結合成分の解離定数を決定するのに適しており、2成分検出法を使用して並列に解離定数を測定することおよびそれらの使用に関する。
【0019】
化学、生化学、医療技術および薬理学において、解離定数(Kd)は、より大きな複合体がより小さな成分に可逆的に解離する傾向を測定する特定型の平衡定数である(Friguet,Chaffotte,Djavadi-Ohaniance,&Goldberg,1985)。解離定数は会合定数の逆数である。2成分測定法の特例では、解離定数は、2つの成分と分析物の解離定数である。成分は抗体であり得るため、解離定数の決定には広い関心がある。
【0020】
従来技術において、解離定数を決定するためのいくつかのアプローチが知られている。
【0021】
Rossant ET AL 2015およびXiong Y.et al.(2017)は、FRET系アッセイを使用して親和性複合体の平衡パラメータ(Kd)を決定するためのアプローチを開示しているが、二元複合体に関するものである。
【0022】
Rey et al.2017では、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を分解するための強力なタンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)の設計における協同作用の役割が探索されている。Reyらは、BTKに対するPROTAC活性の最大化が、BTK:PROTAC:CRBNの三元複合体の最大化に関連することを提唱し、分析物として機能するPROTACライブラリーのメンバーならびにリガンドとしてのBTKおよびCRBNを含む該三元複合体のTR-FRET分析を開示しており、これらはFRET(ドナー/アクセプター)蛍光分子でそれぞれ標識されている。Reyらはさらに、分析物の濃度に対する三元複合体形成(および結果として生じるFRETシグナル)の非全単射曲線、ならびにPROTACとBTKまたはCRBNとの結合についての解離定数(KD値)を導出するための数値適合を開示している。
【0023】
欧州特許出願公開第2837937号明細書では、三元親和性複合体における結合平衡の数学モデルが開示されている。欧州特許出願公開第2837937号明細書では、「釣鐘状」結合曲線または「フック効果」を含む三元複合体形成の特徴が考察されている。平衡解離定数と分析物濃度、結合成分および/または三元複合体濃度の関係についての方程式も開示される。
【0024】
Rey et al.2017および欧州特許出願公開第2837937号明細書は、三元複合体形成における平衡パラメータの概算に対処し、フック効果の発生に言及しているが、これらの効果を適切に考慮する解決策を提供していない。
【0025】
欧州特許出願公開第1460414号明細書は、創薬プロセスにおける潜在的なリード抗体を同定するための均一系時間分解FRETアッセイに関する。欧州特許出願公開第1460414号明細書では、タンパク質-タンパク質相互作用を分析するためにHFRETアッセイを使用する例が開示されている。直接結合アッセイの欠点として、欧州特許出願公開第1460414号明細書では、未希釈試料のスクリーニングが、「フック」効果の結果として偽陰性の数を増加させ得ることが開示されている。該効果を制限するために、複数の試料希釈でのスクリーニングが提唱されているが、時間およびコストに影響を及ぼし得る。
【0026】
Zorbaらは、転写活性化ドメインp53とそのリガンドの相互作用を検出するために結合競合アッセイから改変された増幅型発光近接均一系アッセイ(AlphaLISA)の原理を開示している。Zorbaらは、過剰濃度でのフック効果の発生を考察し、回避に適した滴定を提唱している。
【0027】
Douglass et al.2013では、タンパク質-タンパク質相互作用をモニタリングし、AlphaScreenまたはAlphaLISAを含む阻害剤としての小分子を同定するための様々なアッセイが考察されている。Douglassらは、フック効果も考察しており、アッセイのフックポイントを回避するタンパク質濃度を選択するための滴定を示唆している。
【0028】
しかしながら、欧州特許出願公開第1460414号明細書、ZorbaおよびDouglassら、2013は、これらのアッセイにおける解離定数の概算に取り組んでいない。
【0029】
先行技術の教示に照らして、2成分検出法を使用して、特に並列様式またはハイスループット形式で解離定数を測定するのに適した改良された方法およびキットを提供することが望ましいであろう。
【0030】
さらに、従来技術における2成分検出法の解離定数を決定するための方法は複雑で高価であるが、特に並列様式では著しく制約されている。置換ELISA、蛍光偏光法、および表面プラズモン共鳴などの最も頻繁に使用される方法は、単独測定の並列化を必要とする。したがって、単純化された反応レベルの並列でありながら堅牢な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0031】
先行技術に照らして、本発明の根底にある技術的課題は、2成分検出を使用して分析物の濃度を決定するための、ならびに2成分検出法において分析物に特異的な結合成分の解離定数を決定するための代替手段および/または改良手段を提供することである。
【0032】
特に、本発明の目的は、2成分検出法を使用して分析物の拡張された範囲の濃度を測定する方法またはキットを提供することである。
【0033】
本発明の目的はまた、区画化2成分検出測定法を使用して分析物の濃度および分析物2成分複合体の解離定数を測定する方法およびキットならびにそれらの使用を提供することである。
【0034】
特に、本発明の目的は、区画化2成分検出法において、絶対定量化され、ダイナミックレンジが拡張された分析物の濃度を測定する方法および並列検出ならびにそれらの使用を提供することである。
【0035】
この目的は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって提供される。
【0036】
したがって、本発明は、
a.分析物に特異的な2つの結合成分を該分析物と接触させて、溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む、溶液中で2成分検出法を実施するための既知濃度で分析物に特異的な2つの結合成分を提供するステップ、
b.分析物の濃度に対する該シグナルの依存性を反映する数学関数である該2成分検出法のための分析物濃度の基準曲線を提供するステップであって、分析物濃度の基準曲線が全単射関数ではなく、好ましくは増減する単調セグメントを示す、ステップと、
c.規定の希釈倍率を使用して該試料の1つ以上の希釈物を調製するステップと、
d.該2成分検出法を該試料および該1つ以上の希釈物に適用するステップと、
e.異なる分析物濃度での該非全単射分析物濃度の基準曲線について数学的適合のための制約入力(a constraining input)として、試料および1つ以上の希釈物において検出された該シグナルを使用して試料中の分析物の濃度を決定するステップと、
を含む、2成分検出法を使用して、好ましくは未知濃度の分析物を含む試料中の分析物の濃度を決定するための方法に関する。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、2成分検出法を適用した後、分析物濃度の基準曲線のどの点が試料中の分析物濃度に対して適用可能であるかを決定するために、試料中および1つ以上の希釈物中で検出されたシグナルを分析物濃度の基準曲線と比較するステップを包含し、ここで、規定の希釈倍率が考慮される。いくつかの実施形態では、試料中の分析物濃度を決定することは、試料中の2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルを分析物濃度の基準曲線の適用可能点と比較することを含む。
【0038】
好ましくは、分析物に特異的な2つの結合成分ならびに分析物は、非固定化されて溶液中に存在し、その結果、2成分/分析物複合体も同様に溶液中で形成される。いくつかの実施形態では、本方法は、未知濃度の分析物を試料に提供するステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法はインビトロ方法であり、好ましくは、試料を提供するステップは、ヒトまたは動物の生体の外科治療または侵襲的治療を含まない。
【0039】
本発明の方法は、ダイナミックレンジが拡張された非区画化または区画化2成分検出法を使用して、既知分析物の未知濃度を決定することを可能にする。
【0040】
上述したように、可飽和2成分検出法の基準曲線は、いわゆるフックポイントによって分離された2つのセグメントを有する非全単射関数である。全単射関数とは、1対1の対応が可能であることを意味する。数学用語では、全単射関数とは、2つの集合の要素間の関数であり、一方の集合の各要素は、他方の集合の厳密に1つの要素と対になり、その逆も同様である。可飽和2成分検出法の基準曲線または検量線については、これは当てはまらない。2成分/分析物複合体の濃度形成を反映する同一のシグナルは、少なくとも2つの異なる分析物濃度をもたらし得る。したがって、2成分/分析物複合体の形成によって生成される同一の検出可能なシグナルは、2つの異なる実際の分析物濃度に起因し得る。
【0041】
したがって、不明確さを回避するために、従来技術では、分析物濃度の測定を実行する前に、2セグメント非全単射基準曲線のフックポイントを概算する手法がある。その後、測定は、典型的には、セグメントのうちの1つの範囲内でのみ実行されるため、ダイナミックレンジは大幅に制限される。
【0042】
本方法を使用すると、そのような制約が排除される。代わりに、本方法では、希釈倍率が既知である1つ以上の試料希釈物を調製し、2成分検出法を試料ならびに1つ以上の希釈物に適用する。2成分検出法を適用することは、好ましくは、該溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成するために、既知濃度の分析物に特異的な2つの結合成分を試料および1つ以上の希釈物と接触させることを意味する。
【0043】
本明細書で詳述するように、シグナルは様々な形態をとることができ、使用される2成分検出系および方法に依存する。例えば、FRETアッセイなどの近接アッセイの場合、シグナルとは、2成分/分析物複合体の形成を示すFRETドナー-アクセプター対からの蛍光シグナルを指し得る。エマルジョンカップリングなどの区画化2成分法の場合、シグナルとは、区画化された液滴中の期待ポアソン分布からの偏差に基づいて2成分/分析物複合体の存在を示す、蛍光タグ付きPCR産物を使用するddPCRまたはNGS配列決定から生じるシグナルも指し得る。
【0044】
2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルが試料ならびに1つ以上の希釈物で得られるため、シグナルおよび希釈倍率を使用して、分析物濃度の基準曲線のどの点が試料中の分析物濃度に適用可能であるかを決定することができる。この目的のために、試料および1つ以上の希釈物に起因するシグナルと基準曲線との比較を行う。
【0045】
図1に示すように、2成分検出法の基準曲線は、典型的には、より低い分析物濃度については単調増加セグメントを有し、より高い分析物濃度(飽和領域)については単調減少セグメントを有する釣鐘形曲線を示す。したがって、増減は、分析物濃度に応じたシグナルの変更に関する。
【0046】
試料および希釈物中で検出されるシグナルについて様々なシナリオを構想することができる。例えば、試料に起因するシグナルは、(より低い分析物濃度の)希釈物に起因するシグナルよりも高くなり得る。この情報から、両シグナルが単調増加セグメントに起因すること、または試料からのシグナルが単調減少セグメントに起因し、希釈物からのシグナルが単調増加セグメントに起因することのいずれかを推定することができる。2つのシナリオ間の差異は、試料と希釈物の希釈倍率を適合させることによって決定することができる(例3を参照)。
【0047】
希釈倍率に基づいて、試料の分析物濃度と1つ以上の希釈物の予想される濃度比が既知であることに留意されたい。
図1に示す曲線では、これは横軸の距離に対応する。
【0048】
有利なことに、分析物濃度の既知の差/比の2つのシグナルに対する数学的適合により、非全単射基準曲線上のシグナルの最適な位置決めが正確に行われ、その結果、適用可能な濃度を決定することが可能になる。換言すれば、既知の希釈倍率で複数のシグナルを検出するために試料を希釈することによって、得られたデータの数学的適合に対する追加の制約が提供され、これにより、試料に起因するシグナルの適用可能な対応濃度値を堅牢に推定することが可能になる。
【0049】
1つ以上の希釈物に起因するさらなるシグナルを決定することができ、その情報を使用して分析物濃度測定の精度を高めることができることに留意されたい。
【0050】
したがって、2成分法の非全単射数学的なシグナル濃度の関係、すなわち基準曲線または検量線を決定し、規定の分析物希釈物を使用して、2セグメント非全単射検量線のフックポイント決定の失敗を回避するために測定を制限することが可能である。したがって、典型例では、非全単射基準曲線の両セグメントで2成分法のシグナルのダイナミックレンジを使用することができる。従来技術の方法では、フックポイントからかなりの距離を残すことが重要であるため、これは、ダイナミックレンジの2倍をはるかに超える効果をもたらす。
【0051】
従来技術は、フック効果に関連する不明確さを回避するために希釈概念をある程度示唆しているが、本明細書に記載の方法は、好ましくは非全単射曲線の算出要件を考慮して濃度を決定することを可能にし、そのために好ましくは、数学的適合のための2つの独立入力が必要である。換言すれば、一般的な広義の希釈概念を超えて、本発明は、好ましくは数学的理解を提供し、これはさらなる重要な利点をもたらす。特に、好ましくは、全体の非全単射分析物濃度の基準曲線は、分析物の濃度を決定するための較正曲線として使用することができる。一般的に希釈概念は、不明確さを回避する測定を可能にする希釈を経験的に見出すことに制約されるが、該希釈は、非全単射曲線全体を較正曲線とみなさない。代わりに、本明細書に記載の方法は、好ましくは、2成分検出反応を使用して分析物濃度を決定するために、非全単射曲線を算出するための必須パラメータを提供し、非全単射曲線全体を較正曲線とみなし得る。
【0052】
一実施形態では、基準曲線は、既知の分析物濃度の参照試料を提供し、該参照試料の一連の既知希釈物を作製し、参照試料およびその既知の各希釈物について該2成分検出法を行うことによって実験的に得られる。
【0053】
有利なことに、所与の2成分検出法の基準曲線は、実験的に1回のみで決定されなければならない。この目的のために、所与の濃度の分析物に対して所定の親和性を有する成分を含む2成分検出系、ならびに既知の分析物濃度の参照試料が提供される。参照試料については、一連の希釈物が作製され、各希釈物に対して2成分検出法が適用されるため、所与の分析物濃度に対する2成分/分析物複合体の形成を反映する一連のシグナルが生成する。分析物濃度に対する2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルの実験的に得られる依存性は、本明細書に記載される使用のための基準曲線または検量線を形成するために補間され得る。
【0054】
しかしながら、解析的方法または数値シミュレーションによって基準曲線を提供することも可能である。
【0055】
一実施形態では、分析物濃度の基準曲線は、化学平衡および質量保存方程式を解くことによって解析的に算出されるか、または分析物に特異的な2つの各結合成分と分析物との解離定数の規定に基づいて数値解によって提供される。
【0056】
分析法または数値シミュレーションに基づく基準曲線の規定の実証が例1で提供される。
【0057】
一般に、基準曲線を提供するための分析法および数値的方法は、分析物に関して2成分検出法を規定するいくつかの追加パラメータを必要とする。特に、基準曲線を数値として提供するために、分析物に特異的な2つの各結合成分と分析物との解離定数を概算しなければならない。以下の例で詳述するように、本質的にこの情報を用いて、2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルの基準曲線を効率的かつ堅牢な方法で提供することができる。
【0058】
一実施形態では、本方法は、区画化2成分検出法を使用して分析物の濃度を決定するために使用することができ、区画化2成分検出法を用いたより大きい測定範囲およびその使用に関する。区画化2成分検出法は、分析物の絶対濃度を決定することができるため、非常に好ましい。
【0059】
典型的な区画化法は、水-油エマルジョン滴系を利用するデジタルPCR(ddPCR)(Quan,Sauzade,&Brouzes,2018)法である。液滴を水-油エマルジョン中に形成して、鋳型DNA分子を分離する仕切り(区画)を形成する。液滴は、PCR反応が起こるプレート内の個々の試験管またはウェルと本質的に同一機能を果たす。大規模な試料分割は、ddPCR技術の重要な態様である。
【0060】
ddPCR技術は、液滴が含有する鋳型分子のPCR増幅を支持し、個々のDNA鋳型分子に基づいてシグナルを生成するという点でデジタルである。PCRに続いて、各液滴を分析または読み取り、元の試料中のPCR陽性液滴の画分を決定する。次いで、これらのデータをポアソン統計を用いて分析して、元の試料中のDNA鋳型の絶対濃度を決定する。
【0061】
別の実施形態では、この方法を使用して、絶対定量の原理(Quan et al.,2018)を2成分測定法に適用することができる。分析物のシグナルは、区画化された分析物-2成分複合体の個々の分子の検出およびポアソン統計に基づくものであり、分析物-2成分複合体は、分子の濃度およびそれらの分析特性に基づく化学平衡、すなわち解離定数によって決定される。
【0062】
この実施形態では、数十、数千または数百万(またはさらに多くの数)の液滴の生成および2成分(bi-competent)検出法へのそれらの適用は、非区画化測定の場合のように単一の本質的に非線形のシグナルを使用するのではなく、絶対定量的で極めて線形的に、2成分法の主要なダイナミックレンジとして液滴数を有する単一の試料測定が得られることを意味する。それにより、バイコンピテント法を使用した分析物の濃度の検出に、区画化方法に固有の絶対定量性および統計的特徴をもたらす。これらの区画化手法は、2成分測定法の非全単射2セグメント基準曲線の拡張された範囲を提供し、測定の利用可能なダイナミックレンジを効果的に倍増するために、本明細書に記載の方法と組み合わせることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、通常、膨大な濃度差を有するため、多分析物測定に好ましい。そのような実施形態では、エマルジョンカップリングなどの区画化された適切な2成分法を使用して、同一試料中のDNAコピー数(少量)およびRNA/タンパク質コピー数(多量)を測定することができる(以下の例および欧州特許第3224360号を参照)。
【0064】
デジタル線形シグナル生成法を適用する場合、シグナル生成の原理に関して、区画数に上限はない。本明細書に記載の方法を使用することによる測定範囲の拡張により、区画化2成分法の特徴である感度および精度を維持しながら、2倍のシグナルベースのダイナミックレンジが測定に利用可能である。
【0065】
したがって、大規模な試料分割により、標的分析物において小さな倍数差の信頼できる測定が可能になるため、本明細書に記載の方法と組み合わせた区画化2成分法は、比類なき精度を提供する。これは、試料中の優勢な鋳型が稀少標的の検出を妨げないため、シグナルノイズ比を増加させる。方法の固有の高希釈が効果的なシグナル生成を妨害し得る物質を除去するため、区画化2成分法は、さらに低いシグナルドロップアウト誤差率を提供する。
【0066】
本発明によれば、上記の方法はまた、2成分/分析物複合体の解離定数を決定するのにも適している。
【0067】
別の態様では、本発明は、2成分検出法において、分析物に特異的な結合成分の解離定数を決定するための方法であって、
a.該分析物に特異的な2つの結合成分と該分析物を含む溶液とを接触させて、該溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む、2成分検出法を実施するための既知濃度で分析物に特異的な2つの結合成分を提供するステップと、
b.2成分/分析物複合体の濃度ならびに分析物および/または分析物に特異的な結合成分の濃度を反映する該シグナルに依存して、分析物に特異的な結合成分の解離定数の関係についての数学関数である、該2成分検出法のための解離定数関係を提供するステップと、
c.該試料または該分析物に特異的な結合成分の1つ以上の希釈物を調製するステップと、
d.該2成分検出法を該試料および該1つ以上の希釈物に適用するステップと、
e.異なる分析物濃度および/または分析物に特異的な結合成分濃度での該解離定数関係についての数学的適合のための制約入力として、試料および1つ以上の希釈物の検出された該シグナルを使用して、該分析物に特異的な2つの結合成分の解離定数を決定するステップと、
を含む方法に関する。
【0068】
本発明の方法は、既知の希釈倍率で1つ以上の試料希釈物を調製することによって2成分検出系の解離定数の決定を可能にし、2成分検出法を試料ならびに1つ以上の希釈物に適用する。分析物に特異的な結合成分の解離定数を決定するために2成分検出法を適用することは、好ましくは、該溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成するために、既知濃度の分析物に特異的な2つの結合成分を既知濃度の試料と接触させることを意味する。分析物に特異的な結合成分または試料のいずれかの濃度は希釈によって変化し、希釈倍率が既知の希釈物を提供する。試料中および1つ以上の希釈物中で検出されたシグナル、ならびに分析物および/または分析物に特異的な結合成分の濃度は、数学的適合のための制約入力として使用することができる。
【0069】
好ましくは、分析物に特異的な2つの結合成分ならびに分析物は、非固定化されて溶液中に存在し、その結果、2成分/分析物複合体も同様に溶液中で形成される。いくつかの実施形態では、本方法は、既知濃度の分析物を試料に提供するステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法はインビトロ方法であり、好ましくは、試料を提供するステップは、ヒトまたは動物の生体の外科治療または侵襲的治療を含まない。上記で詳述するように、シグナルは様々な形態をとることができ、使用される2成分検出系に依存する。例えば、FRETアッセイなどの近接アッセイの場合、シグナルとは、形成2成分/分析物複合体を示すFRETドナー-アクセプター対からの蛍光シグナルを指し得る。エマルジョンカップリングなどの区画化2成分法の場合、シグナルとは、区画化された液滴における期待ポアソン分布からの偏差に基づいて2成分/分析物複合体の存在を示すddPCRおよび/またはNGS配列決定から生じるシグナルも指し得る。
【0070】
例(例えば、例2、5および
図2を参照)に示すように、数学的適合のための制約入力として試料および1つ以上の希釈物で検出されたシグナルを使用すると、分析物に特異的な2つの結合成分と分析物との解離定数の堅牢な決定が可能になる。
【0071】
解離定数の関係は、化学平衡および質量保存方程式(例2、式3を参照)を解析的に解くことによって提供され得る。一般に、f(Kd1、c12、a0)=Kd2と記載することができ、式中、「Kd1」および「Kd2」は解離定数であり、「c12」は2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルによって決定される三元複合体の測定濃度であり、「a0」は分析物の既知濃度である。さらなる入力として、f(Kd1、c12、a0)=Kd2が分析物、および両2成分の濃度をさらに含むことができ、これも同様に知られている。これらの用語は、変動しない既知濃度の分析物に特異的な結合成分の場合に有効である。
【0072】
分析物に特異的な結合成分の濃度が変化する場合、解離定数関係の決定の別の有利な態様を提供することができ、f(Kd1、c12、b10、b20)=Kd2と記載することができ、式中、「Kd1」および「Kd2」は解離定数であり、「c12」は2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルによって決定される三元複合体の測定濃度であり、「b10」および「b20」は分析物に特異的な結合成分の既知濃度である。さらなる入力として、f(Kd1、c12、b10、b20)=Kd2は、分析物の濃度をさらに含むことができ、これも同様に知られている。これらの用語は、変動しない既知濃度の分析物の場合に有効である。
【0073】
結合成分の解離定数(「Kd1」および「Kd2」)を決定するために、式3を適用することができる。既知量の分析物、2成分および決定量の三元抗体/2成分複合体を含む2つ以上の溶液がある場合、2つのKdは例2に従って算出することができる。
【0074】
分析物を含む試料の異なる希釈物は、異なる濃度の「c12」に対応するため、「f」関数は異なる形態を有する(
図2を参照)。しかしながら、Kdは材料定数であるため、「f」関数のすべての形態は、Kd値の特定対によって満たされなければならない。
【0075】
実際には、Kd1およびKd2による解離定数関係をグラフ化すると、異なる既知濃度の曲線は、決定されるKdの適用可能な対である1点の近くで交差する(例2を参照)。換言すれば、数学的解は、好ましくは曲線間の交点を見出すことであり、これは、2成分検出法を試料および1つ以上の希釈物に適用することによって提供される異なる入力濃度によって変化する解離定数(Kd1-Kd2)の関係を反映している。
【0076】
一実施形態では、例えば分析物の異なる希釈物を提供することによって、様々な実験条件を使用して解離定数の2つ以上の関係を決定することは、これらの関係を満たす解離定数の値を決定するのに役立ち得る。
【0077】
好ましい実施形態では、測定誤差は異なる測定で混同されるため、統計モデルおよび/または他の数学的ツールを使用して解離定数の値を決定することができる。
【0078】
別の態様では、本方法は、2成分検出法を使用して並列に2成分検出法を用いて分析物結合成分の解離定数を決定することおよびその使用に適している。
【0079】
一実施形態では、分析物に結合する成分の解離定数を決定する方法は、絶対定量可能な区画化2成分検出法に基づくものである。
【0080】
本明細書に記載される方法の別の実施形態では、並列読み取り技術を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、次世代DNA配列決定が2成分読み出し技術として好ましい。特に、これらの2成分法は、検出原理の一部として固有のDNAシグナルを生成するDNA配列決定に基づく読み出しに適している。これらの方法には、近接ライゲーション、伸長アッセイおよびエマルジョンカップリングが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
別の実施形態では、2成分法が区画化2成分法である場合、DNA配列決定読み出しに基づく2成分測定法が好ましい。区画化条件下では、非区画化測定と比較して、固有のDNAシグナルの生成は不偏である。
【0082】
別の態様では、DNAシグナルの区画化生成は、固有の分子識別子(UMI)(Parekh,Ziegenhain,Vieth,Enard,&Hellmann,2017)の使用によってシグナル読み出しを可能にした不偏DNAシグナルを意味する。
【0083】
次世代配列決定技術を使用して試料中の異なるポリヌクレオチドの定量精度を改善するために様々な方法が開発されており、米国特許第5,213,961号に記載されている競合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および(Smith et al.,2009)に記載されている固有の分子識別子(UMI)を使用したディープバーコード配列決定などの方法が含まれる。
【0084】
固有の分子識別子または分子バーコードは、試料における2成分測定法の固有のDNAシグナルを定量するのに有利である。しかしながら、UMIが2回目以降の検出に関与する場合、同一UMIが異なる標的に導入され、計数誤差につながる可能性がある。また、元のUMI法は、理想的ではあるが非現実的な状況、すなわち、PCR技術と配列決定技術の両方が完全であり、誤差が導入されない状況に基づくものである。UMI戦略は、PCRおよび配列決定の両ステップが内在する標的およびUMI断片を誤差なしで報告するという仮定に基づいて機能する。これらの条件は、非区画化条件下で提供することは難しいが、区画化条件下で円滑に提供される。UMI標識成分は、区画化2成分測定法における区画あたり単一または少数の分子であり、これは、UMIバーコードを固有のDNAシグナルに効果的に組み込むことを意味する。
【0085】
別の態様では、固有のDNAシグナルを表す固有の分子識別子(UMI)を固有のDNAシグナルに組み込み、区画化2成分法でさらに増幅することができる。しかしながら、固有の分子識別子を使用しなければ、固有のDNAシグナルの定量化に偏りが生じる。増幅は、他のさらに増幅されていない固有のDNAシグナルに対するそれらの比を平衡化するために、特定の固有DNAシグナルに特異的であり得る。
【0086】
別の態様では、固有の分子識別子に組み込まれた固有のDNAシグナルを使用して、2つ以上の同一の結合部位を有する分析物または3つ以上の非同一の結合部位を有する分析物を検出することができる。これらの配置は、タンパク質または他の分子のような相互作用する分析物を検出するのに特に好ましい。
【0087】
別の態様では、該方法および並列読み取り技術を使用する2成分測定法のキットは、分析物の濃度および成分の解離定数の両方を並列に測定することができる。今日、次世代配列決定技術は、数十億の独立型読み取りを提供することができ、これらは読み出しの達成可能な並列処理に正比例する。
【0088】
さらなる一実施形態では、分析物は、タンパク質、ペプチド、核酸セグメント、炭水化物、脂質、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、抗原、オリゴヌクレオチド、特異的受容体タンパク質、リガンド、分子、細胞、微生物、ならびにそれらの断片産物または組み合わせからなる群から選択される。
【0089】
一実施形態では、分析物に特異的な2つの結合成分は、核酸、好ましくはRNAおよび/またはDNAオリゴヌクレオチド、抗体、ペプチド、タンパク質、アプタマー、分子インプリントポリマー、細胞またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
一実施形態では、試料は、2つ以上の異なる種類の分析物を含む。
【0091】
一実施形態では、2対以上の異なる種類の分析物に特異的な結合成分が使用される。
【0092】
本明細書に記載される方法の特別な利点は、同一アッセイに2種類以上の分析物(例えばDNA;RNA;タンパク質、相互作用するタンパク質およびそれらの化学修飾)および同様に2種類以上の結合成分を含めることさえ可能なことである。
【0093】
本明細書に記載される並列アプローチを使用して、異なる種類の分析物の分析物濃度、ならびに異なる種類の分析物に特異的な結合成分の解離定数を並列して決定することができる。
【0094】
一実施形態では、2成分法は、2成分/分析物複合体の濃度依存性シグナルを生成するために近接度に基づいたアッセイを使用することを含み、近接度に基づいたアッセイは、それらの近接度に応じて検出可能なシグナルを生成する分析物に特異的な2つの結合成分を使用する。
【0095】
一実施形態では、2成分法は、共鳴エネルギー移動アッセイ、好ましくはフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイまたは生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイ、タンパク質相補性アッセイ(PCA)、AlphascreenまたはDNA標識近接アッセイ、好ましくは近接ライゲーションアッセイ(PLA)または近接伸長アッセイ(PEA)を用いることを含む。
【0096】
一実施形態では、2成分検出法は、2成分/分析物複合体の濃度依存性シグナルを生成するために区画化アッセイを使用することを含み、シグナルは、単一区画内の分析物に特異的な2つの結合成分の存在を反映する。
【0097】
一実施形態では、区画化アッセイは、エマルジョン滴法を使用し、エマルジョン中の各液滴は別個の区画を表す。
【0098】
一実施形態において、区画化アッセイは、エマルジョンカップリングである。以下に詳細に記載されるように、エマルジョンカップリングとは、エマルジョン中の2重標識(2成分)の個々の三元分子複合体の検出に基づくデジタルアッセイ概念を指し、これは、例えば、蛍光タグ付きPCR産物を使用するデジタル液滴PCR(ddPCR)または次世代配列決定(NGS)によって同定することができる。
【0099】
有利なことに、そのようなアプローチは、堅牢かつ効率的な様式で分析物濃度の絶対定量および複数の分析物濃度の並列決定を可能にする。
【0100】
一実施形態では、2成分検出法は、絶対分子数に基づく分析法を用いることを含む。そのような絶対分子数に基づく分析法とは、好ましくは、デジタルPCRまたは次世代配列決定などのデジタル検出法を適用することを指す。
【0101】
一実施形態では、2成分検出法は、液滴デジタルPCRアッセイを使用することを含む。
【0102】
一実施形態では、2成分検出法は、固有の増幅可能な核酸標識に会合する分析物に特異的な結合成分を使用することを含み、区画化アッセイを使用し、核酸増幅は、蛍光タグ付き増幅産物を使用して各区画に対して行われる。
【0103】
好ましい実施形態では、核酸増幅はPCRであり、蛍光タグ付き増幅産物は蛍光タグ付きPCR産物である。
【0104】
分析物に特異的な結合成分(抗体対など)は、好ましくは、PCR増幅可能な固有のDNA標識によって標識され、すなわち、分析物に特異的な2つの結合成分、例えば、2つの抗体は、好ましくは、結合成分(例えば、抗体)を固有に同定する一本鎖DNAで標識され得る。標識された結合成分(例えば、抗体)は、2成分/抗体複合体の形成を可能にするために、試料または1つ以上の希釈物に添加される。
【0105】
その後、反応物は、好ましくは、例えば、20000超、好ましくは50000、100000超の希釈倍率によって、高度希釈されて、区画化時に、例えば、液滴への乳化によって、単一-複合体分離を達成する。
【0106】
核酸増幅のために、結合成分(例えば、抗体)に特異的で増幅可能な固有の核酸標識を認識する蛍光タグ付き増幅産物が使用される。例えば、結合成分を固有に同定する一本鎖DNAに相補的な蛍光タグ付きPCR産物、例えば、FAMまたはVIC標識リアルタイムPCRプローブを使用してもよい。
【0107】
核酸増幅は各区画、例えばエマルジョン滴で行われ、シグナルの読み出しは、区画の蛍光シグナル(fluorescence single)、例えば、液滴の「色」を検出することによって行われ得る。
【0108】
好ましくは、ddPCRが使用され、ddPCRの標準的評価に従って、液滴群は、液滴の蛍光シグナルに従って決定され得る。ここで、標識された結合成分(例えば、抗体)の数は、各反応(所与の標識についてすべての標識陽性液滴を計数し、すべての反応について同一規定の液滴群を使用すること)において決定される。さらに、(2つの異なる結合成分標識を有する)2重着色の数も決定される。
【0109】
三元2成分/分析物複合体が形成されない場合、標識抗体の分割はポアソン分布に従い、(単なる偶然に基づいて1つの区画に2つの結合成分を含む)算出可能な数の2重着色液滴が得られる。反応中に三元複合体が存在する場合、検出される(追加の三元複合体を含む)2重着色液滴の数は、ポアソン分布単独によって期待されるよりも多い。したがって、このような分析に基づいて、三元複合体の数を算出することができる。有利なことに、本実施形態は、形成される三元分析物複合体の絶対定量を可能にする。
【0110】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、複数の分析物が並列して決定される。
【0111】
一実施形態では、2成分検出法は、核酸バーコードを含む複数の分析物に特異的な結合成分を使用することを含み、区画化アッセイを使用し、核酸増幅は、連結核酸バーコードを生成する各区画に対して実行され、区画は、共通プールで再結合され、並列核酸配列決定技術が使用されて、該2成分/分析物複合体の濃度依存性シグナルを生成する。
【0112】
本明細書で使用される好ましい並列核酸配列決定技術は、次世代配列決定技術である。
【0113】
好ましい実施形態では、核酸バーコードを含む結合成分は、命名された抗体の種類に対する固有の標識および個々の分子に対する標識(固有の分子識別子-UMI)も含む、PCR増幅可能な固有のDNA標識で標識された抗体を指す(Parekh et al.,2017も参照)。このように標識された抗体は、2成分/抗体複合体の形成を可能にするために試料に添加される。
【0114】
連結された核酸バーコードを生成するために各区画に対して核酸増幅を実施することは、例えば、20000超、好ましくは50000超、より好ましくは100000超の希釈倍率で、核酸増幅前に試料を高度希釈することによって達成され得る。好ましい実施形態では、核酸増幅はPCRである。PCR試薬を添加して、単一-複合体分離および油中水型エマルジョン滴あたりの核酸増幅を達成することができる。この目的のために、液滴デジタルPCRの標準プロトコルが特に適し得る。
【0115】
その後、区画、例えばエマルジョン滴を共通プールで再結合させることができ、並列核酸配列決定技術を使用して抗体に特異的な2量体化UMI標識を評価することができる。本明細書において、標識抗体の数は、各反応において、所与の抗体に対するすべての固有のUMI標識を計数することによって決定することができる(計数は、例えば、所与の標識の状況において、所与の抗体に限定される)。起こり得る同一抗体の多重標識は、抗体あたり複数の標識が、同一液滴中で共局在化しているため、所与の抗体に特異的な標識状況で2重UMI標識2量体を示すため、優先的に2量体化された配列を使用して排除することができる。
【0116】
三元2成分/抗体複合体は、それらの2量体化2重UMI標識PCR産物(2つの異なる抗体特異的標識、ヘテロ2量体と呼ばれる)に基づいて、抗体多重標識に従って補正して計数することができる。
【0117】
三元複合体が形成されない場合、標識抗体の分割はポアソン分布に従い、液滴中に算出可能な数の三元複合体(ヘテロ2量体の検出に基づく)が得られる。反応中に三元複合体が存在する場合、検出されるヘテロ2量体の数は、純粋なポアソン分布によって期待されるよりも多い。この測定に基づいて、複合体の数を算出することができる。
【0118】
区画化2成分法では、固有のDNAシグナルの共局在化のためのコード化ステップとしてUMIを異なる標的に組み込むことが有利である。
【0119】
好ましい実施形態では、本発明は、好ましくは本明細書に記載の2成分検出法を使用して分析物の濃度を決定するための方法を実施するためのキットであって、
a.分析物に特異的な2つの結合成分を該分析物と接触させて、該溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む、2成分検出法を実施するための既知濃度の分析物に特異的な2つの結合成分と、
b.分析物の濃度に対する該シグナルの依存性を反映する数学関数である、2成分検出法のための分析物濃度の基準曲線であって、分析物濃度の基準曲線が、非全単射関数であり、増減する単調セグメントを示す、基準曲線と、
c.任意で、該試料の1つ以上の希釈物を調製し、2成分検出法を該試料および該1つ以上の希釈物に適用するための使用説明書と、
d.試料中の分析物の濃度を決定するために、試料中および1つ以上の希釈物で検出されたシグナルを分析物濃度の非全単射基準曲線と比較する計算ステップを実行するように構成されたコンピュータ上で実行される場合のコンピュータプログラムと、
を含むキットに関する。
【0120】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、好ましくは本明細書に記載の2成分検出法において解離定数を決定するための方法を実施するためのキットであって、
a.分析物に特異的な2つの結合成分を分析物と接触させて、該溶液中に形成された2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナルを生成することを含む、2成分検出法を実施するための既知濃度の分析物に特異的な2つの結合成分と、
b.2成分/分析物複合体の濃度ならびに分析物および/または分析物に特異的な結合成分の濃度を反映する該シグナルに依存して、分析物と分析物に特異的な結合成分の解離定数(それぞれ、Kd1およびKd2)の関係についての数学関数である、該2成分検出法の解離定数関係と、
c.任意で、該試料の1つ以上の希釈物を調製し、規定の希釈倍率を使用して該試料および該1つ以上の希釈物に2成分検出法を適用するための使用説明書と、
d.コンピュータプログラムであって、所与の分析物および/または分析物に特異的な結合成分の濃度での該解離定数関係についての数学的適合のための制約入力として、試料および1つ以上の希釈物中で検出された該シグナルを使用して、該分析物に特異的な2つの結合成分の解離定数kd1およびkd2を決定する計算ステップを実行するように構成されたコンピュータ上で実行される場合のコンピュータプログラムと、
を含むキットに関する。
【0121】
本明細書に記載の方法について開示されている技術的特徴は、そのような方法で使用するためのキットにも適用される。したがって、当業者は、本明細書中に記載される方法の好ましい特徴がキットの文脈において同様に有利に使用され得ることを認識するであろう。
【0122】
本発明の方法は、いくつかの実施形態では、ソフトウェア製品などのコンピュータプログラム製品にも関し得る。
【0123】
ソフトウェアは、一般的な計算装置で実行するように構成され得、本明細書に記載される方法のステップのうちの1つ以上を実行するように構成される。
【0124】
一実施形態では、コンピュータプログラムは、試料中の分析物の濃度を決定するために、試料中および1つ以上の希釈物中で検出されたシグナルを分析物濃度の基準曲線と比較する請求項1のステップe)、または本明細書に開示される計算ステップのさらに好ましい実施形態を実行するように構成され得る。
【0125】
一実施形態では、コンピュータプログラムは、試料中および1つ以上の希釈物中で検出された該シグナルを、所与の結合成分および分析物濃度での該解離定数関係についての数学的適合のための制約入力として使用して、該分析物に特異的な2つの結合成分の解離定数kd1およびkd2を決定する計算ステップを実行する請求項2のステップe)、または本明細書に開示される計算ステップのさらに好ましい実施形態を実行するように構成され得る。
【0126】
一実施形態では、2成分検出法の濃度基準曲線または2成分検出法の解離定数関係は、参照データの形態で提供され得る。
【0127】
本明細書では、2成分検出法の濃度基準曲線についての参照データは、好ましくは、該溶液中に形成された2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルの分析物濃度に対する依存性を反映する数学関数を提供することを可能にする任意のデータに関する。
【0128】
本明細書では、2成分検出法の解離定数関係についての参照データは、好ましくは、2成分/分析物複合体の濃度ならびに分析物および/または分析物に特異的な結合成分の濃度を反映するシグナルに依存して、分析物に特異的な結合成分と分析物との解離定数(それぞれ、kd1およびkd2)の関係についての数学関数を提供することを可能にする任意のデータに関する。
【0129】
典型的には、参照データは、制御装置のコンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体に保存されてもよい。業界で使用されている任意の形式が適切であり得る。参照データは、上述のように、試料中の分析物濃度または解離定数kd1およびkd2を決定するための計算ステップを実行するために、別個のファイルに保存されてもよく、および/またはコンピュータコードもしくはソフトウェアに(例えば、ソースコードに)統合されてもよい。
【0130】
したがって、本発明のコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品またはキットは、本明細書で提供される方法について記載される特徴も包含し、該特徴に直接関する。好ましいコンピュータベースの手法に関するさらなる詳細は、本明細書に記載される例および関連する参考文献で提供される。
【0131】
発明の詳細な説明
例に関して本発明を説明する前に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0132】
本明細書で使用される「試料」または「試料溶液」という用語は、好ましくは未知濃度の分析物を含む溶液を指す。試料の例としては、血清、血漿、尿、涙液、細胞、細胞混合物、細胞培養上清、または1つ以上の生物学的標的分子を含有する細胞溶解物などの生体液が挙げられる。さらに、試料は、分析物を可溶性にし、検出および定量に利用しやすくするために必要な任意のコンディショニング試薬(例えば、透過処理試薬)も含むことができる。そのようなコンディショニング試薬は、本明細書に記載される方法を実施する前後の任意の時点で試料に添加され得る。
【0133】
「分析物」という用語は、本発明の方法によって検出、定量またはアッセイされる物質を指す。典型的な分析物には、タンパク質、ペプチド、核酸セグメント、炭水化物、脂質、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、抗原、オリゴヌクレオチド、特異的受容体タンパク質、リガンド、分子、細胞、微生物、断片、産物およびそれらの組み合わせ、または付着部位、結合メンバーもしくは受容体(抗体など)を発現することができる任意の物質が含まれ得るが、これらに限定されない。分析物とは、該実体由来の複合体も指し得る。例えば、分析物は、複数の実体または分子から形成された凝集体または複合体、例えばタンパク質-タンパク質複合体を指し得、実体/分子の相互作用が関心対象である。
【0134】
「タンパク質」とは、より高レベルの三次および/または四次構造を産生するのに十分な鎖長のアミノ酸配列を意味する。「ペプチド」とは、好ましくは、より小さい分子量のタンパク質を指す。
【0135】
「核酸」という用語は、限定するものではないが、一本鎖または二本鎖形態のDNA、RNAおよびハイブリッドまたはその修飾変異体およびポリマー(「ポリヌクレオチド」)を含む任意の核酸分子を指す。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。別段示されない限り、特定の核酸分子/ポリヌクレオチドは、その保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明示された配列も暗に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって得ることができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。ヌクレオチドは、以下の標準略語によってその塩基によって示される。アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)、およびグアニン(G)。
【0136】
本明細書で使用される場合、「核酸増幅」という用語は、限られた量の核酸が、より大量の核酸が生成される生化学反応を受けるプロセスを指す。したがって、核酸増幅は、核酸配列のさらなるコピーの生成に関連し、一般に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)または当技術分野で周知の他の技術(例えば、Dieffenbach,C.W.and G.S.Dveksler(1995)PCR Primer,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.を参照)を使用して行われる。
【0137】
本明細書で使用される場合、「2成分検出法」または「2分子検出法」という用語は、分析物に特異的な2つの結合成分を使用し、該分析物に特異的な2つの結合成分を、分析物を含む溶液と接触させた場合に、2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルを決定する方法を指す。「2成分検出系」または「2分子検出系」という用語は、好ましくは、2成分検出法を実行するのに必要な成分または試薬を指す。これは、好ましくは既知濃度の単一または別個の溶液、および分析される分析物を含有する任意の試料溶液で提供される、好ましくは分析物に特異的な2つの結合成分を包含する。
【0138】
好ましくは、分析物に特異的な2つの結合成分および分析物は、非固定化されている、すなわち溶液中で提供され、その結果、2成分/分析物複合体も同様に溶液中で形成される。したがって、本明細書で使用される2成分検出法という用語は、好ましくは三元複合体の液相形成を指し、固相として固定化された(一次)捕捉結合剤および(2次)検出結合剤を含む一般的なサンドイッチ免疫測定法とは異なる。
【0139】
したがって、「非固定化」という用語は、好ましくは、(液体)溶液中で自由に拡散することができる分析物に特異的な結合成分などの成分を指し、その結果、該液体溶液中で等しく自由に拡散する分析物への結合反応速度は、本明細書に記載される溶液中の質量保存の法則および質量作用の法則についての方程式によって支配される。
【0140】
「分析物に特異的な結合成分」または「分析物に特異的な結合相手」という用語は、好ましくは結合対の1つのメンバーを指し、第2のメンバーは分析物であり、「結合対」という用語は、抗原/抗体またはハプテン/抗ハプテン系などの任意のクラスの免疫型結合対、また、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、葉酸/葉酸塩結合タンパク質、相補的DNA鎖または相補的RNA鎖などの相補的核酸セグメント、プロテインAまたはG/免疫グロブリンなどの任意のクラスの非免疫型結合対、ならびにマレイミドおよびハロアセチル誘導体を含むスルフヒドリル反応基、およびイソトリイソシアネート、スクシンイミジルエステルおよびハロゲン化スルホニルなどのアミン反応基などの共有結合を形成する結合対も含む。
【0141】
2成分検出法の結合成分は、好ましくは、分析物に対して結合能を有する任意の成分を指し得る。好ましい実施形態では、分析物に特異的な結合成分は、核酸、好ましくはRNAおよび/またはDNAオリゴヌクレオチド、抗体、ペプチド、タンパク質、アプタマー、分子インプリントポリマー、細胞またはそれらの組み合わせであり得る。
【0142】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、2重特異性抗体)、および抗体断片を網羅する。
【0143】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般にその抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、2重特異性抗体、線状抗体、一本鎖抗体分子、および抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0144】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、該集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。修飾語句の「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al,Nature 352:624-628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)に記載される技術を用いてファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。
【0145】
本明細書のモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一または相同であり、鎖の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに所望の生物活性を示す限り、そのような抗体の断片が含まれる(米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,Proc.NatL.Acad Sci.USA81:6851-6855(1984))。
【0146】
相補性決定領域(CDR)は、B細胞によって産生される免疫グロブリン(抗体)の可変鎖の一部であり、これらの分子はそれらの特異的抗原に結合する。分子の最も可変的な部分として、CDRは、免疫グロブリンによって生成される抗原特異性の多様性に重要である。免疫グロブリンの可変ドメインのアミノ酸配列上に、非連続的に配置された3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)が存在する。免疫グロブリンは典型的には2つの可変ドメイン(2つの異なるポリペプチド鎖、重鎖および軽鎖上)から構成されるため、抗原と集合的に接触することができる各抗原受容体に対して6つのCDRが存在する。
【0147】
さらに、全抗体の断片は、抗原に結合する機能を果たすことができる。結合断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片、(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward,E.S.et al,Nature341:544-546(1989))、(v)単離されたCDR領域、(vi)F(ab’)2断片であって、2つの連結されたFab断片を含む2価断片、(vii)VHドメインおよびVLドメインが、2つの該ドメインが会合して抗原結合部位を形成するのを可能にするペプチドリンカーによって連結されている、一本鎖Fv分子(scFv)(Bird et al,Science 242:423-426(1988);Huston et al,PNAS USA85:5879-5883(1988))、(viii)2重特異性一本鎖Fv2量体(PCT/US92/09965)ならびに(ix)「2重特異性抗体」、遺伝子融合によって構築された多価または多重特異性断片(国際公開第94/13804号、P.Hollinger et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993))がある。
【0148】
「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部または全部に特異的に結合し、抗原の一部または全部に相補的である領域を含む抗体の一部である。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定部分にのみ結合することができ、その部分はエピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメインによって提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含み得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、結合成分は、操作されたタンパク質足場に基づいてもよい。タンパク質足場は、目的の標的分子、すなわち分析物の結合部位を提供するように改変された安定で可溶性の天然タンパク質構造に由来する。操作されたタンパク質足場の例としては、限定されるものではないが、そのαヘリックスの2つに結合界面を提供するブドウ球菌プロテインAのZドメインに基づくアフィボディ(Nygren,P.A.(2008).FEBS J275(11):2668-76)、ベータバレル折り畳みの開口端に小さなリガンドの結合部位を組み込んだリポカリン由来のアンチカリン(Skerra,A.(2008)FEBS J275(11):2677-83)、ナノボディ、およびDARPinsが挙げられる操作されたタンパク質足場は、典型的には、抗体と同一の抗原性タンパク質に結合するように標的化される。短いペプチドもまた、標的タンパク質に結合するために使用され得る。フィロマーは、細菌ゲノムに由来する天然の構造化ペプチドである。そのようなペプチドは、タンパク質構造折り畳みの多様なアレイを表し、インビボでタンパク質-タンパク質相互作用を阻害/破壊するために使用することができる(Watt,P.M.(2006).Nat Biotechnol24(2):177-83)]。
【0150】
2成分検出法では、好ましくは、両方とも分析物に対する結合能を示す分析物に特異的な2つの結合成分が使用される。好ましくは、分析物に特異的な2つの結合成分は、分析物への結合について互いに競合しないが、成分の同時結合を可能にして2成分/分析物複合体を形成するように選択および設計される。前述のように、分析物は、複数の実体、例えばタンパク質-タンパク質複合体から形成された凝集体または複合体を指し得る。分析物に特異的な2つの結合成分の一方は、分析物複合体の一方の実体、例えば第1のタンパク質に結合し、他方は、分析物の第2の実体、例えば第2のタンパク質に結合し得る。それにより、2成分/分析物複合体は、両タンパク質の相互作用の場合にのみ形成され、次いで結合成分で標識される。
【0151】
いくつかの実施形態では、結合成分はアプタマーであり得る。アプタマーは、形状相補性および非共有化学結合の組み合わせによって高い親和性および特異性で標的分子を認識する合成オリゴヌクレオチド(DNAまたはRNA)である(Blank&Blind,Current Opin.Chem.Biol.,2005,9:336-342)。これらの人工リガンドは、インビトロで得られ、単なるイオン(例えば、Pb2+、Liu&Lu、2003、J Am Chem Soc、125、6642~6643)からヌクレオチド、小分子、タンパク質、ウイルス、および生物全体に至る細胞(Menger et al.,2006.Handbook of Experimental Pharmacology,359-373)に及ぶ多種多様な異なる分子クラスを認識するように開発され得る。高結合親和性アプタマーは、テオフィリン(Jenison et al.,1994.Science,263,1425-1429)、L-アルギニン(Geiger et al.,1996.Nucl.Acids Res.,24,1029-1036)、モエノマイシン(Schuerer et al.,2001.Bioorg.Med.Chem.,92,2557-2563)、17b-エストラジオール(Kim et al.,2007.Biosens.Bioelectron.,22,2525-2531)などの低分子量分子の検出だけでなく、とりわけ、トロンビン(トロンビン結合アプタマー、5’-GGTTGGTGTGGTTGG-3’)(Baldrich et al.,Anal Chem.2004,76,23,7053-63)、コレラ毒素またはHIV-1 tatタンパク質などのより大きな分子についても、周知のSELEX法(Ellington&Szostak,1990.Nature,346,818-822)によって選択されている(総説については、Tombelli et al.,2007,Biomolec Eng.,24,191-200を参照)。
【0152】
上述のアプタマーのいくつかは、マイクロプレート上またはバイオセンサートランスデューサ(QCM、SPR)表面上でのELISA様アッセイに使用されている。サンドイッチ系アッセイにおけるタンパク質PDGFの決定のために、アプタマー修飾AuNP比色系も開発されている(Huang et al.,2005,77,5735-5741)。
【0153】
本明細書で使用される場合、「分析物/2成分複合体」または「2成分/分析物複合体」という用語は、分析物と分析物に特異的な両結合成分とを含む三元複合体を指す。このような2成分/分析物複合体は、分析物を含む溶液に2成分検出法を適用する場合に形成される。より具体的には、2成分検出における2成分/分析物複合体の形成は、所与の溶液中の分析物の存在(および濃度)に直接反映する。分析物の実際の濃度を決定するために、2成分/分析物複合体の形成を使用するには、三元複合体の形成を反映するシグナルが得られるべきである。
【0154】
本明細書で使用される場合、「2成分/分析物複合体の濃度に依存するシグナル」または「2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナル」という表現は、形成された三元2成分/分析物複合体の量の推定を可能にする任意の数量化できる情報を指す。
【0155】
当然、シグナルは、適用される2成分検出法に依存する。例えば、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイが使用される場合、シグナルとは、FRETドナーが近接して励起ビームを吸収した場合にFRETアクセプターが放出する蛍光シグナルを指し得る。2成分系では、FRETアクセプターまたはFRETドナーは、好ましくは分析物に特異的な2つの結合成分と結合している。したがって、FRETドナー-アクセプターからの蛍光シグナルは、それぞれの結合成分が近接している場合のみであるため、シグナルは、三元2成分/分析物複合体の形成に直接反映する。
【0156】
同様に、PerkinElmerによって開発され、広く市販されているAlphascreen(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)は、さらなるプロトタイプの2成分検出法であり、シグナル生成は、生体共役反応用の官能基を提供するハイドロゲル層でコーティングされた「ドナー」および「アクセプター」ビーズの近接度に依存する。分子間の生物学的相互作用がビーズを近接させると、化学反応のカスケードが開始され、大きく増幅されたシグナルが生成する。レーザー励起時に、「ドナー」ビーズ中の光増感剤は周囲酸素をより励起した一重項状態に変換する。一重項状態の酸素分子は拡散して「アクセプター」ビーズ中の化学発光体と反応し、同一ビーズ内に含まれるフルオロフォアをさらに活性化する。フルオロフォアはその後、520nm~620nmで発光する。ビーズの官能基は、例えば、特異的抗体の形態で、分析物に特異的な2つの結合成分を表し得る。分析物および分析物に特異的な2つの成分を含有する三元複合体が形成される場合にのみ、ドナービーズおよびアクセプタービーズは近接しており、検出可能な蛍光シグナルが得られる。
【0157】
FRETアッセイまたはAlphascreenアッセイがドナーおよびアクセプターの近接度、ひいては分析物に特異的な結合成分に依存するため、そのようなアッセイは近接度に基づく検出アッセイと呼ばれる。2成分検出法の文脈における多くの異なる近接度に基づくアッセイが当技術分野で知られており、本明細書に記載の方法で使用され得る。
【0158】
本明細書で使用される場合、「近接度に基づく2成分検出法」という用語は、2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルが分析物に特異的な2つの結合成分の近接度に基づく任意のアッセイを指すものとする。統計学的に、分析物に特異的な2つの結合成分は、同一の三元複合体の一部を形成する場合、検出可能なシグナルを生じるために溶液中で近接している可能性が高い。
【0159】
近接度に基づく2成分法の非限定的な例には、共鳴エネルギー移動アッセイ、好ましくはフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイまたは生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイ、タンパク質相補性アッセイ(PCA)、AlphascreenまたはDNA標識近接アッセイ、好ましくは近接ライゲーションアッセイ(PLA)または近接伸長アッセイ(PEA)を用いる方法が含まれる。
【0160】
これらの近接アッセイ技術は、当技術分野で周知である。FRETまたはBRETのさらなる参考文献については、例えば、(Pfleger,Seeber,&Eidne,2006)、タンパク質相補性アッセイについては、Morell,Ventura,&Aviles,2009、Alphascreenについては、Taouji,Dahan,Bosse,&Chevet,2009、およびPLA(近接ライゲーションアッセイ)またはPEA(近接伸長アッセイ)などのDNA標識近接法については、Soderberg et al.,2006を参照のこと。
【0161】
近接度に基づくアッセイは、本明細書で使用されている「非区画化2成分検出方法」にとって特に好ましく、2成分検出法を指すものとし、この場合、2成分検出法を適用する際に試料溶液の区画化は行われない。いくつかの非区画化アッセイは、均一系アッセイとも呼ばれ得る。換言すれば、非区画化2成分法は、好ましくは、分析物および2成分を均一な反応溶液中で接触させるステップを含み、三元2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルを得るための検出ステップは、未結合成分または分析物を分離することなく、均一な試料溶液で実行することができる。
【0162】
特定の好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法は、区画化2成分検出法を用いる。本明細書で使用される場合、「区画化2成分検出法」という用語は、三元分析物/結合成分の形成を定量するために、分析物に特異的な結合成分を分析物と接触させた後に試料を区画化する2成分検出法を指すものとする。
【0163】
一般に、三元分析物/結合成分方法の形成なしでは、区画内に両結合成分が存在する可能性は低く、ポアソン分布に従うように、区画化2成分検出法は、溶液を小区画に区画化することに基づいている。
【0164】
区画化のために、異なるアッセイを構想することができる。例えば、エマルジョン滴法を使用して、エマルジョン(例えば、油中水)に液滴を形成することができ、各液滴は別個の区画を表す。区画化は、位置または物理的区画、または拡散律速環境を含み得る。
【0165】
本明細書で使用される「液滴」という用語は、好ましくは、第2の流体によって囲まれた第1の流体の単離部分を指す。第1の流体は、好ましくは、水、水性媒体、または緩衝液などの親水性流体を含み、好ましくは、2成分検出系または他の試薬が添加される試料溶液またはその1つ以上の希釈物を含む。第2の流体は、好ましくは、炭化水素、シリコーン油、鉱油、有機溶媒などの疎水性流体である。試料溶液を区画化するためのエマルジョン技術は、当技術分野において周知である。
【0166】
特に好ましい実施形態では、区画化2成分検出法はエマルジョンカップリングであり、これはエマルジョン中の2重標識(2成分)の個々の三元分子複合体の検出に基づくデジタルアッセイ概念を指し、例えば、液滴デジタルPCR(ddPCR)または次世代配列決定(NGS)によって同定することができる。
【0167】
液滴デジタルPCR(ddPCR)は、好ましくは、水-油エマルジョン滴技術に基づくデジタルPCRを行うための方法を指す。油滴は、各ウェルを真空にする液滴発生器を使用して作製することができる(例えば、Pinheiro et al.Analytical Chemistry84(2):1003-11を参照)。典型的には、試料は20,000個以上の液滴に分画されてもよく、鋳型分子のPCR増幅は個々の液滴で起こる。有利なことに、ddPCR技術は、ほとんどの標準TaqManプローブ系アッセイに使用されるものと同様の試薬およびワークフローを使用する。
【0168】
本明細書で使用される「次世代配列決定(NGS)」は、典型的には従来のサンガー手法よりもはるかに高いスループットを可能にする核酸配列決定用に最近開発された技術を包含するものとする(Schuster,Next-generation sequencing transforms today’s biology,Nature Methods 5:16-18(2008)、Metzker,Sequencing technologies the next generation.Nat Rev Genet.2010 January;11(1):31-46を参照。これらのプラットフォームは、クローン的に伸長されたまたは増幅されていない単一分子の核酸断片の配列決定を可能にし得る。特定のプラットフォームは、例えば、色素修飾プローブのライゲーション(環状ライゲーションおよび切断を含む)による配列決定、パイロシークエンシングおよび単一分子配列決定を含む。ヌクレオチド配列種、増幅核酸種およびそこから生成された検出可能な産物は、そのような配列分析プラットフォームによって分析することができる。本発明の方法では、次世代配列決定を使用して、例えば、以下に記載されるように2成分/分析物複合体の形成を評価するために、PCR増幅可能な固有のDNA標識を定量することができる。
【0169】
好ましい区画化2成分検出法としてのエマルジョンカップリングの詳細は、欧州特許第3224360号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
エマルジョンカップリングアッセイにおけるddPCR検出のために、PCR増幅可能な固有のDNA標識によって分析物に特異的な結合成分(抗体対など)を標識し、したがって標識された結合成分を試料(またはその希釈物、例えば、例3を参照)に添加する。
【0171】
試料の乳化前に、反応物を高度希釈し(約100,000倍)、PCR試薬を添加して、油中水型エマルジョン滴ごとの単一-複合体分離およびPCR増幅を達成する。ddPCRは、標準ddPCRプロトコルを用いて行うことができる。
【0172】
反応の評価は、蛍光タグ付きPCR産物を使用した(例えば、FAMまたはVIC標識リアルタイムPCRプローブを使用した)ddPCR反応における標識の分割に基づき得る。ddPCRにより、液滴群の標準的評価は、液滴の蛍光シグナルに従って決定され得る。ここで、標識された結合成分(例えば、抗体)の数は、各反応(所与の標識についてすべての標識陽性液滴を計数し、すべての反応について同一規定の液滴群を使用すること)において決定される。
【0173】
さらに、(2つの異なる結合成分標識を有する)2重着色の数も決定される。三元複合体がなければ、標識抗体の分割はポアソン分布に従い、(単なる偶然に基づいて1つの区画に2つの結合成分を含む)算出可能な数の2重着色液滴が得られる。三元複合体が反応中に存在する場合、検出される(追加の三元複合体を含む)2重着色液滴の数は、ポアソン分布によって期待されるよりも多い。
【0174】
この測定に基づいて、複合体の数を算出することができる(さらなる参照のために、例えば、欧州特許第3224360号またはKarakus et al.,2019を参照)。これにより、三元分析物複合体が絶対(分子数)定量される。
【0175】
エマルジョンカップリングアッセイにおける次世代配列決定検出のために、結合成分は、好ましくは、結合成分(例えば、抗体)に対して特異的な標識、および好ましくは、分子に対する個々の標識、すなわち、固有の分子バーコードまたは固有の分子識別子-UMI(Parekh et al.,2017を参照)も含むPCR増幅可能な固有のDNA標識によって標識され得る。標識された結合成分は、試料またはその希釈物に添加され得る(例3を参照)。
【0176】
結合成分、例えば、抗体の結合後、および試料の乳化前に、反応物を高度希釈し(例えば、約100,000倍)、PCR試薬を添加して単一-複合体の分離を達成することができる。PCR増幅は、油中水型エマルジョン滴ごとに行うことができる。ddPCRは、ddPCRプロトコルを用いて行うことができる。
【0177】
反応の評価は、エマルジョンカップリングの標準プロトコルに従って生成された結合成分、例えば、抗体に特異的な2量体化UMI標識のNGS読み取りに基づいてもよい。標識された結合成分、例えば、抗体の数は、各反応において、所与の結合成分、例えば、抗体に対するすべての固有のUMI標識を計数することによって決定され得る(係数は、所与の結合成分に限定される)。同一の結合成分、例えば抗体の起こり得る多重標識は、優先的に2量体化された配列(結合成分あたり複数の標識は、同一液滴中で共局在化するため、常に、所与の抗体に特異的な標識状況で2重UMI標識2量体が得られる)を使用して排除することができる。
【0178】
三元抗体/2成分複合体は、(ヘテロ2量体と呼ばれる2つの異なる結合成分(例えば、抗体)に特異的な標識の文脈において)それらの2量体化2重UMI標識PCR産物に基づいて計数される。上記の概念に従って、結合成分(例えば、抗体)の多重標識化用の補正を使用することができ、これは、所与の成分(例えば、抗体)に特異的な標識を有する2重UMI標識2量体を考慮に入れる。
【0179】
蛍光タグ付きPCR(液滴デジタルPCR)の場合と同様に、試料のさらなる評価を行うことができ、簡潔には三元複合体なしで、標識抗体の分割はポアソン分布に従い、液滴(偶然にただ2つの抗体を含む)中に(ヘテロ2量体の検出に基づく)算出可能な数の三元複合体が得られる。反応中に三元複合体が存在する場合、検出されるヘテロ2量体の数は、純粋なポアソン分布によって期待されるよりも多い。この測定に基づいて、複合体の数を算出することができる(欧州特許第3224360号、(Karakus et al.,2019))。これにより、三元複合体が絶対(分子数)定量される。
【0180】
試料の希釈は、試料に特異的なDNAバーコード(例えば、バーコード化プライマー)を使用して同一配列決定反応で測定することができ、抗体は識別可能な成分(例えば、抗体)に特異的な標識を有するため、多くの測定(異なる抗原に対して異なる抗体対を使用する)を並列して実行することができる。
【0181】
エマルジョンカップリングの実施形態では、結合成分は、複数の分析物の検出に適した結合成分のライブラリーとして提供されてもよい。これらの実施形態において、結合成分ライブラリーの各メンバーは、結合成分を同定するために使用することができる固有のヌクレオチド配列と会合し得る。
【0182】
「会合した」とは、エマルジョンカップリングの文脈において、複合体中の結合成分の存在が、本方法で生成された連結配列内の核酸配列の存在によって検出できることを意味し得る。ヌクレオチド配列は、結合成分に標識として付着し得るか、結合成分自体、例えば、アプタマーの一部であり得るか、または結合成分、例えば、ファージ内の核酸内に存在し得る。例えば、ライブラリーの各メンバーは、結合成分に付着しているヌクレオチド配列である固有のヌクレオチド配列で標識され得る。
【0183】
抗体または化合物などの結合成分にヌクレオチドを付着させる方法は、当技術分野で知られている。あるいは、結合成分ライブラリーがファージディスプレイライブラリーである場合、固有のヌクレオチド配列は、1つ以上のCDR領域またはディスプレイされた結合ドメインをコードする配列であり得る。例えば、ディスプレイされるアミノ酸配列をコードする配列をファージに既知の位置で挿入することによって、ディスプレイライブラリーを作製することができる。次いで、挿入配列を増幅するユニバーサルプライマーを使用して、結合配列を同定することができる。あるいは、結合成分がアプタマーであり得る場合、アプタマー自体が固有のヌクレオチド配列であり得る。
【0184】
ヌクレオチド配列はオリゴヌクレオチドであり得、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAを含み得る。結合剤または標的を標識するために使用されるヌクレオチドは、好ましくは5~150塩基長、例えば、10~40または40~80塩基長であり得る。核酸を形成するヌクレオチドは、分子の安定性を高めるため、その生物学的利用率を改善するため、または分子にさらなる活性を付与するために化学修飾され得る。例えば、ピリミジン塩基は、6位または8位で修飾されてもよく、プリン塩基は5位でCH3またはI、BrもしくはCIなどのハロゲンで修飾されてもよい。修飾またはピリミジン塩基には、2NH3、0-CH3、N-CH3およびN2-CH3も含まれる。2’位の修飾は糖修飾であり、典型的にはNH2、FまたはOCH3基を含む。修飾はまた、キャッピングなどの3’および5’修飾も含むことができる。
【0185】
あるいは、修飾ヌクレオチド、例えばモルホリノヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)およびペプチド核酸(PNA)を使用することができる。モルホリノオリゴヌクレオチドは、それぞれが6員モルホリン環に連結された4つの遺伝塩基(アデニン、シトシン、グアニンおよびチミン)のうちの1つを含有する異なるモルホリノサブユニットから構築される。サブユニットは、非イオン性ホスホロジアミデートのサブユニット間結合によって連結されて、モルホリノオリゴヌクレオチドを得る。LNAモノマーは、フラノース環の配座が、2’-0位を4’-C位に連結するメチレンリンカーによって制限されることを特徴とする。PNAは、骨格が糖ではなく偽ペプチドであるDNAの類似体である。
【0186】
ライブラリーの各メンバーは、固有のヌクレオチド配列と会合する、すなわち、各メンバーは、固有の検出可能な核酸識別標識を有し得る。好ましくは、固有の核酸識別標識が連結され得る。連結されたとは、連結プロセスが、適切なアッセイ条件下でのこれらの核酸識別標識の共局在化に基づいてランダムな多量体核酸産物を形成する潜在能力を有することを意味し得る。好ましくは、多量体産物は2量体である。適切なアッセイ条件は、標識の増幅を含み得、固有配列の特異的なコンセンサス増幅は、連結可能なアンプリコンを産生する。連結可能なアンプリコン、例えば成分に特異的な核酸の連結は、連結された識別標識を形成し、これは識別標識の共局在化情報をコードする。連結反応は、増幅に基づくか、または他の技術を含むことができる。増幅に基づく連結は、同一の結合能力を有するが、ポリメラーゼ伸長が可能な核酸2重鎖を形成する相補的5’タグまたは2量体リンカー配列を有する2つ以上の増幅プライマー対を利用することができる。タグまたは2量体リンカー配列とは、1つのプライマー対によって増幅された配列が第2のプライマー対によって増幅された配列にハイブリダイズすることを意味する。これにより、識別標識が連結される。
【0187】
識別標識、すなわち、タンパク質ディスプレイライブラリーおよび抗体ライブラリーなどのライブラリーで使用される関連する固有のヌクレオチド配列は、それらの生物学的バックグラウンドが異なり得るため、増幅および連結プロセスは、2つの異なるプライマー対に基づき、例えば、1つのプライマー対は、cDNAに基づく識別標識などの標的配列を増幅し、第2のプライマー対は、識別標識として使用される結合剤に特異的なヌクレオチド配列を増幅する。異なる標識の連結は、結合剤に特異的な情報を標的情報、例えば、ディスプレイcDNAによってコードされるタンパク質に連結することを可能にする。
【0188】
本発明の方法、キットまたは他のコンピュータ実装態様は、いくつかの実施形態において、プロセッサ、キーボードまたはマウスなどの入力デバイス、ハードドライブおよび揮発性メモリまたは不揮発性メモリなどのメモリ、ならびに本発明を機能させるためのコンピュータコード(ソフトウェア)を有する1つ以上の従来の計算装置を備えるおよび/または使用することができる。
【0189】
計算装置の構成要素は従来のものであってもよいが、デバイスは特定の実装ごとにカスタム構成されてもよい。コンピュータ実装法のステップまたはシステムは、任意の特定のアーキテクチャ、例えばパーソナル/マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、またはメインフレームシステム上で実行することができる。例示的なオペレーティングシステムには、Apple Mac OS XおよびiOS、Microsoft Windows、およびUNIX(登録商標)/Linux(登録商標)、SPARC、POWER、およびItanium系システム、およびz/Architectureが含まれる。本明細書に記載される方法のステップを実行するためのコンピュータコードは、限定されるものではないが、Python、C/C++、C#、Objective-C、Java、Basic/VisualBasic、MATLAB(登録商標)、Simulink、StateFlow、Lab View、またはアセンブラなどの任意のプログラミング言語またはモデルベースの開発環境で書き込むことができる。コンピュータコードは、回路基板、コントローラ、または本発明と併用される他のコンピュータハードウェアコンポーネントの製造業者に固有の専有コンピュータ言語で書かれたサブルーチンを含むことができる。
【0190】
本方法によって処理および/または作成される情報、すなわち三元2成分/分析物複合体の形成を反映するシグナルのデジタル表示は、業界で使用されている任意の種類のファイルフォーマットを使用することができる。任意の適切なコンピュータ可読媒体を利用することができる。コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、または半導体のシステム、装置、デバイス、または伝搬媒体であってもよいが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(一部の例示列挙)には、1つ以上の配線を有する電気的接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、光記憶装置、インターネットまたはイントラネットをサポートするものなどの伝送媒体、クラウドストレージまたは磁気記憶デバイスが含まれる。
【0191】
特許および非特許文献のすべての引用文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0192】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、指定しない要素の包含を受け入れる発現カセット、レポーターベクター、およびその各構成要素に関して使用される。
【0193】
「からなる」という用語は、本明細書に記載されるような発現カセット、レポーターベクターおよびその各構成要素を指し、実施形態の説明に列挙されていない任意要素を除外する。
【0194】
本発明は、添付の図面を参照することによって、より詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【
図1】
図1は、区画化された可飽和2成分プロセスのシミュレーションに基づく測定の拡張ダイナミックレンジの数学的背景の曲線および基本原理を示す。以下のパラメータを使用した。区画数=200000、インプット量=20マイクロL、乳化前の希釈倍率=192000、標的nMの濃度-変動、成分Aの濃度、nM=1、成分Bの濃度、nM=0.3、成分Aの解離定数=0.1nM、成分Bの解離定数=0.1nM、(1)分析物2成分、三元複合体(分子)の数、(2)-分析物を含まない2重陽性区画の数(ポアソンバックグラウンド)、(3)-標的を含む2重陽性区画の数(ポアソンバックグラウンド)、および(4)(1)と(3)の和。
【
図2】
図2は、成分の解離定数の決定を示す。シミュレーション結果のグラフ表示。異なる抗原(Ag)濃度(表示)、ならびに成分濃度がそれぞれ1nMおよび5nMでの式3の交点。液滴数:10000、希釈倍率10000および反応体積は20マイクロLである。これらの入力パラメータを使用して、化学平衡、ポアソン過程がシミュレーションされ、形成された三元複合体の数が決定された。式3を使用して算出されたKdの値は、入力としてシミュレーションに使用される値と同一である(例3を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0196】
例
例1
溶液中の質量作用の法則および質量保存の法則によれば、2つの結合成分(例えば、抗体)と分析物/標的分子(例えば、抗原)との可飽和2成分反応は、以下の連立方程式として表すことができる。
【数1】
式中、b10、b20は対応する解離定数(kd1、kd2)を有する全体的抗体(成分)濃度であり、a0は全体的抗原濃度であり、抗体および抗原は、遊離a、b1、b2またはc1、c2、c12結合状態のいずれかであり、式中、c12は、抗原の2成分(三元)複合体(例えば、結合した両抗体)である(比例するシグナル)。
【0197】
連立方程式1をa0について解くと、2つの累乗根
【数2】
が得られる。
【0198】
これらは両方とも、非全単射基準曲線による真の正根であり、すなわち、検出シグナル(c12)と分析物(a0)濃度の1対1対応を可能にしない。これらの分析物の全体濃度は反応に利用できず、それらの一部のみであることを考慮して、活性/不活性(結合能力に関して)抗原と抗体の比もこれらの方程式に加えることができる。これらの比は、例2に記載したものと同様の概念を用いて決定することができる。
【0199】
例2
エマルジョンカップリング(EC)技術を用いたKd決定のシミュレーション
抗原(Ag)と2つの異なるAg反応性抗体の反応(Ab1=5nMおよびAb2=1nM)を20マイクロリットル体積で、(Kd1=0.2nMおよびKd2=0.1nMのセットを用いて化学平衡および質量保存方程式(式1)に従って)シミュレーションした。シミュレーションされた反応体積を希釈し(1e+5倍)、ポアソン分布に基づくシミュレーションを用いて、反応物を100000個の液滴(総体積:20マイクロリットル)に選別した。すべての液滴は、封入された反応物に従って分類され、計数される。kd1-kd2関数(式3)は、3つの異なるAg濃度[a0]で、以下の入力、すなわち、Ag[a0]、Ab1[b10]、Ab2[b20]の総濃度で算出し、シミュレーションにより決定されたAg-Ab1-Ab2[c12]複合体を式に代入し、関数の交点を決定した(
図2参照)。
【数3】
【0200】
式3.Ag[a0]、Ab1[b10]、Ab2[b20]およびAg-Ab1-Ab2[c12]を式に代入する。[c12]の場合、その値はシミュレーションにより決定され、その他はシミュレーションの入力値である。
【0201】
図2は、異なるAg濃度での(上記の式を使用する)式3の曲線の交点を示す。算出されたKdの値は、入力としてシミュレーションに使用された値と同一である(上記参照)。
【0202】
シミュレーション結果によれば、式3の交点の決定によって、抗原の初期量、ならびに抗体濃度および分析物-2成分(三元)複合体の測定濃度から両Kdを算出することができる。実験では、ペアワイズ交差を実験Kdの近似として算出し、所与の値を統計手法、例えば混合ガウス分布などで処理する場合に有益である。
【0203】
入力パラメータのすべての組み合わせにより可解系が得られるわけではなく、抗原濃度を変えるだけでなく抗体の濃度も変えることによって、常に適切な条件を見出すことができることに留意すべきである。また、式(式3)のうちのただ1つで、個々の場合に決定される必要がある2つの正根が得られる。
【0204】
これらの分析物の全体濃度は反応に利用できず、それらの一部のみであることを考慮して、活性/不活性(結合能力に関して)抗原と抗体の比もこれらの方程式に加えることができる。これらの比は、より多くの希釈物を用いて決定することができ、例2に記載の概念を拡張する。
【0205】
例3
分析物濃度の例示的測定
未知濃度の既知分析物を含む試料が提供される。一例として、分析物はタンパク質であり、同様に一例として、EGFR(上皮増殖因子受容体)受容体変異体のHER2である。2成分法を用いて分析物を検出するために、Alphascreenが適用される。Alphascreenは、プロトタイプの2成分検出法であり、シグナル生成は、生体共役反応用の官能基を提供するハイドロゲル層でコーティングされた「ドナー」および「アクセプター」ビーズの近接度に依存する。分子間の生物学的相互作用がビーズを近接させると、化学反応のカスケードが開始され、大きく増幅されたシグナルが生成する。レーザー励起時に、「ドナー」ビーズ中の光増感剤は周囲酸素をより励起した一重項状態に変換する。一重項状態の酸素分子は拡散して「アクセプター」ビーズ中の化学発光体と反応し、同一ビーズ内に含まれるフルオロフォアをさらに活性化する。フルオロフォアはその後、520nm~620nmで発光する。生物相互作用に関与する官能基は、2つの抗体によって提供され、例示図であるErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)として、抗体は、ドナービーズおよびアクセプタービーズの表面にそれぞれコンジュゲートされる。ドナービーズおよびアクセプタービーズが試料に接触すると、抗体はHER2タンパク質に結合して三元複合体を形成し、これがドナービーズおよびアクセプタービーズを近接して保持し、上記の原理に従って検出可能な蛍光シグナルが得られる。
【0206】
HER2タンパク質分析物の未知濃度を測定するために、一連の異なる既知濃度のHER2タンパク質の既定シグナルと比較することができる。2成分アッセイのそのような基準曲線は、ほとんどの場合、2つの分析物濃度値に対応する特定のシグナル値、例えば非全単射基準曲線を特徴とする。したがって、曲線は、分析物濃度と検出シグナル間で1対1に対応できない。HER2の濃度を決定するために、未知量のHER2試料および決定されたシグナルから1つ以上の規定の希釈を行う。希釈物の各シグナルは、基準曲線と比較した場合、2つの対応する濃度を有する。推定濃度とそれらの規定の希釈倍率の比が等しくなければならないため、HER2試料の濃度を決定することができる。数学的には、f(x)=s1であり、式中、基準曲線関数f(x)は、濃度xの関数であり、s1は測定シグナルである。f(x)=s1は、2つの濃度x1またはx2で満たすことができる。しかしながら、f(x/c)=s2が決定される場合、xを決定することができ、式中、cは既定の希釈倍率であり、s2は測定シグナルである。同様に、上記のように、x3またはx4によって、f(x/c)=s2を満たすことができる。x1/x3またはx1/x4またはx2/x3またはx2/x4はcでなければならず、それらのうちの1つまたは2つのみがcに等しく、それらのうちの2つが等しい場合、同一のxのみで満たされ得ることが証明され、したがって、不明確さは解決され得る。例えば、s1=1000蛍光単位(FU)である場合、これは、仮説の基準曲線において100nM(x1)および5nM(x2)のHER2タンパク質に対応し、元のHER2試料を10倍希釈すると、2000(FU)シグナルが得られ、これは、仮説の基準曲線において90nM(x3)および10nM(x4)のHER2タンパク質に対応する。単にx1/x4=cとして、x1/x3=100/90またはx1/x4=100/10またはx2/x3=5/90またはx2/x4=5/10であり、結果はx=x1=100nMである。
【0207】
例4
区画化2成分法を使用した分析物濃度の例示的測定
未知濃度の既知分析物を含む試料が提供される。一例として、分析物はタンパク質であり、同様に一例として、EGFR受容体変異体のHER2であり、ErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)が検出試薬として、すなわち分析物に特異的な結合成分として使用される。区画化2成分法は、エマルジョンカップリング(欧州特許第3224360号、Karakus et al.)である。エマルジョンカップリングは、例えばddPCRによって同定される、エマルジョン中の2重標識(2成分)の個々の三元分子複合体の検出に基づくデジタルアッセイ概念である。ddPCR検出のために、ErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)を、PCR増幅可能な固有のDNA標識によって標識する。例3と同様に、試料を規定の倍率で希釈し、標識抗体を試料に添加する。試料の乳化前に、反応物を高度希釈し(約100,000倍)、PCR試薬を添加して、油中水型エマルジョン滴ごとの単一-複合体分離およびPCR増幅を達成する。ddPCRは、標準ddPCRプロトコル(Biorad QX200 ddPCR)を用いて行う。
【0208】
反応の評価は、蛍光タグ付きPCR産物(FAMまたはVIC標識リアルタイムPCRプローブの使用)を使用したddPCR反応における標識の分割に基づくものである。ddPCR標準評価によれば、液滴群は、液滴の蛍光シグナルに従って決定され、標識抗体の数は、各反応において決定される(所与の標識についてすべての標識陽性液滴を計数し、すべての反応について同一既定の液滴群を使用する)。さらに、2重着色(2つの異なる抗体標識を有する)の数も決定される。三元複合体(2つの抗体が結合したHER2タンパク質)がなければ、標識抗体の分割はポアソン分布に従い、(単なる偶然に基づいて2つの抗体を含む)算出可能な数の2重着色液滴が得られる。三元複合体が反応中に存在する場合、検出される(追加の三元複合体を含む)2重着色液滴の数は、ポアソン分布によって期待されるよりも多い。この測定に基づいて、複合体の数を算出することができる(さらなる参照のために、欧州特許第3224360号、Karakus et al.,2019を参照)。これにより、三元分析物複合体が絶対(分子数)定量される。式1によると、既知の解離定数および適用抗体の活性画分を用いて、分析物(HER2)の元の絶対濃度も算出することができる。しかしながら、式1は2つの累乗根を有し、それらのうちただ1つが濃度である。与えられた例3と同様の計算に従って、未知のHER2試料の正しい濃度を決定することができる(数値例については例3を参照)。
【0209】
例5
非区画化2成分アッセイにおける抗体の解離定数の例示的測定
既知濃度の既知分析物を含む試料が提供される。一例として、分析物はタンパク質であり、同様に一例として、EGFR受容体変異体のHER2であり、ErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)が例示試薬として使用される。2成分法は、例3に記載の希釈物および基準曲線を使用した例3と同様のAlphascreenである。Alphascreenシグナルと三元複合体の対応濃度との関係を決定するために、例4に記載される方法を、Alphascreen基準曲線測定と並列して使用することができる。これにより、Alphascreenシグナルに関連する三元複合体が絶対(分子数)定量される。抗体の解離定数(Kd)を算出するために、式3が適用され、2つ以上の分析物希釈物が既知量の分析物および決定量の三元複合体を有すると、後者は、三元複合体の濃度とAlphascreenシグナルの決定される対応関係を使用して決定される。2つのKdは、例2に従って算出することができる。数学的には、f(kd1、c12、a0)=kd2が適用され、式中、kd1およびkd2は解離定数であり、c12は分析物の三元複合体の測定濃度であり、aは分析物の濃度である。分析物の異なる希釈物は異なる濃度のc12に対応するため、「f」関数は異なる形態を有する。しかしながら、Kdは材料定数であるため、結果として、f関数のすべての形態は、Kd値の特定対によって満たされなければならず、該対は決定することができ、例2を参照されたい。
【0210】
例6
区画化2成分アッセイにおける抗体の解離定数の例示的測定
既知濃度の既知分析物を含む試料が提供される。一例として、分析物はタンパク質であり、同様に一例として、EGFR受容体変異体のHER2であり、ErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)が例示検出試薬、すなわち分析物に特異的な結合成分として使用される。区画化2成分法は、希釈物を使用する例4と同様に、検出デバイスとしてBiorad QX200 ddPCRを用いたエマルジョンカップリング(欧州特許第3224360号、(Karakus et al.,2019))であり、例4と同様に、三元複合体の数を算出することができる(欧州特許第3224360号、Karakus et al.,2019)。これにより、三元複合体が絶対(分子数)定量される。抗体の解離定数(Kd)を算出するために、式3が適用され、2つ以上の分析物希釈物が既知量の分析物、抗体および決定量の三元複合体を有すると、2つのKdは例2に従って算出することができる。数学的には、f(kd1、c12、a0)=kd2が適用され、式中、kd1およびkd2は解離定数であり、acは分析物の三元複合体の測定濃度であり、aは分析物の濃度である。異なる希釈は、「ac」の異なる(濃度)値に対応するため、f関数は異なる形態を有する。しかしながら、Kdは材料定数であるため、結果として、f関数のすべての形態は、Kd値の特定対によって満たされなければならず、該対は決定することができ、例2を参照されたい。
【0211】
例7
次世代配列決定を用いる区画化2成分法を使用した分析物濃度の例示的測定
未知濃度の既知分析物を含む試料が提供される。一例として、分析物はタンパク質であり、同様に一例として、EGFR受容体変異体のHER2であり、ErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)が検出試薬、すなわち分析物に特異的な結合成分として使用される。区画化2成分法は、エマルジョンカップリング(欧州特許第3224360号、Karakus et al.,2019)である。エマルジョンカップリングは、例えば次世代配列決定(NGS)によって同定される、エマルジョン中の2重標識(三元)の個々の分子複合体の検出に基づくデジタルアッセイ概念である。NGS検出のために、ErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)を、PCR増幅可能な固有のDNA標識(抗体に特異的な標識)によって標識し、これはまた、個々の標識分子に固有の分子バーコード(UMI)も同様に有する(Parekh et al.,2017)。例3と同様に、規定の分析物希釈物を作製し、標識抗体を試料に添加する。抗体結合後および試料の乳化前に、反応物を高度希釈して(約100,000倍)、単一-複合体分離を達成し、PCR試薬を添加し、ddPCRプロトコル(Biorad QX200 ddPCR)を使用して、ddPCRのような油中水型エマルジョン滴あたりのPCR増幅を行う。
【0212】
反応の評価は、エマルジョンカップリングの概念(欧州特許第3224360号)に従って産生された抗体に特異的な2量体化UMI標識のNGS読み取りに基づくものである。標識抗体の数は、各反応において、所与の抗体に対するすべての固有のUMI標識を計数することによって決定され(所与の抗体に特異的な標識状況に限定して計数する)、起こり得る同一抗体の多重標識は、優先的に2量体化された配列を用いて排除された(抗体あたり複数の標識は、同一液滴中で共局在するため、常に同一抗体に特異的な標識状況で2重UMI標識2量体を有する)。三元複合体は、それらの2量体化2重UMI標識PCR産物(ヘテロ2量体と呼ばれる2つの異なる抗体特異的標識)に基づいて、(抗体あたり複数の標識の効果を排除するための上記の概念に従い)抗体多重標識に従って補正して計数される。例4に従って、試料のさらなる評価を行い、簡潔には三元複合体がない場合は、標識抗体の分割はポアソン分布に従い、液滴(偶然にただ2つの抗体を有する)中の(ヘテロ2量体の検出に基づく)算出可能な数の三元複合体が得られる。反応中に三元複合体が存在する場合、検出されるヘテロ2量体の数は、純粋なポアソン分布によって期待されるよりも多い。この測定に基づいて、複合体の数を算出することができる(欧州特許第3224360号)。これにより、三元複合体が絶対(分子数)定量される。式1~2に従って、既知の解離定数および適用抗体の活性画分(後者は任意である)を用いて、分析物(HER2)の元の絶対濃度も算出することができる。しかしながら、式1~2は2つの累乗根を有し、それらのうちのただ1つが常に正しい。例3に記載されるように、希釈物を使用して、未知のHER2試料の正確な濃度を決定することができる(数値例については例3を参照)。試料の希釈物は、試料に特異的なDNAバーコード(例えば、バーコード化プライマー)を使用して同一配列決定反応で測定することができる。
【0213】
例8
次世代配列決定を使用した区画化2成分アッセイにおける抗体の解離定数の例示的測定
既知濃度の既知分析物を含む試料が提供される。一例として、分析物はタンパク質であり、同様に一例として、EGFR受容体変異体のHer2、抗体に特異的なUMI標識で標識されたErbB2/Her2抗体対(Novus Biologicals DP0061)である。区画化2成分法は、例7のように検出法としてNGSを使用し、希釈物および式1~2を使用するエマルジョンカップリング(欧州特許第3224360号)であった。三元複合体の数は算出することができる(欧州特許第3224360号)。これにより、三元複合体が絶対(分子数)定量される。抗体の解離定数(Kd)を算出するために、式3が適用され、2つ以上の分析物希釈物(これらは上記と部分的に同一希釈物であり得る)が既知量の分析物および決定される量の三元複合体を有すると、2つのKdは例2に従って算出することができる。数学的には、f(kd1、c12、a0)=kd2が適用され、式中、kd1およびkd2は解離定数であり、c12は分析物の三元複合体の測定濃度であり、a0は分析物の濃度である。異なる希釈物はc12の異なる(濃度)値に対応するため、f関数は異なる形態を有するが、Kdは材料定数であるため、f関数のすべての形態は、Kd値の特定対によって満たされなければならず、該対は決定することができ、例2を参照されたい。試料の希釈物は、試料に特異的なDNAバーコード(例えば、バーコード化プライマー)を使用して同一配列決定反応で測定することができる。
【0214】
これらの分析物の全体濃度は反応に利用できず、それらの一部のみであることを考慮して、活性/不活性(結合能力に関して)抗原と抗体の比もこれらの方程式に加えることができる。これらの比は、より多くの希釈物を用いて決定することができ、例8に記載の概念を拡張する。
【0215】
【国際調査報告】