(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】多環式芳香族炭化水素を含有するHNBR加硫物
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20220824BHJP
C08K 5/03 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K5/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576102
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020068345
(87)【国際公開番号】W WO2021001343
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・リーバー
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ダーフィト
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC111
4J002EA066
4J002FD026
4J002GJ02
4J002GM01
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、水素化ニトリルゴム(HNBR)及び少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素(PAH)を含む加硫物、並びにベルト、ガスケット又はホースとしてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの加硫水素化ニトリルゴム(HNBR)を100重量部、及び
(b)少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素(PAH)を1~12重量部未満
含む加硫物。
【請求項2】
多環式芳香族炭化水素(b)の量が、加硫水素化ニトリルゴム(a)100重量部に対して1~10重量部である、請求項1に記載の加硫物。
【請求項3】
多環式芳香族炭化水素(b)の量が、加硫水素化ニトリルゴム(a)100重量部に対して2~5重量部である、請求項1又は2に記載の加硫物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素が、ナフタレン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、フェナレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[c]フルオレン、インデノ[1,2,3-cd]ピレン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ペンタセン、ペンタフェン、コロネン、コラヌレン、オバレン、ヘキサセン、ヘプタフェン、ヘプタセン、トリフェニレン、トリナフチレン及びスーパーフェナレン、好ましくはアントラセン及びフェナントレン、又はそのいずれかの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項5】
前記加硫水素化ニトリルゴム(a)が、モノマー単位として、α,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位、共役ジエン単位、任意に1つ又は複数の更なるモノマー単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項6】
前記加硫水素化ニトリルゴム(a)におけるα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位の量が、前記加硫水素化ニトリルゴム(a)におけるすべてのモノマー単位の総量に対して、10~60重量%、好ましくは20~50重量%、より好ましくは30~45重量%の範囲である、請求項5に記載の加硫物。
【請求項7】
前記加硫水素化ニトリルゴム(a)における共役ジエン単位の量が、前記加硫水素化ニトリルゴム(a)におけるすべてのモノマー単位の総量に対して、40~90重量%、好ましくは50~80重量%、より好ましくは55~70重量%である、請求項5又は6に記載の加硫物。
【請求項8】
前記加硫水素化ニトリルゴムは、1つ又は複数の更なるモノマー単位として、カルボン酸単位、カルボン酸エステル単位、ジカルボン酸モノエステル単位、PEGアクリレート単位又はその混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項9】
前記加硫水素化ニトリルゴム(a)における更なるモノマー単位の量が、前記加硫水素化ニトリルゴム(a)におけるすべてのモノマー単位の総量に対して0~50重量%、好ましくは0.1~40重量%、より好ましくは0.5~30重量%及び最も好ましくは1~10重量%である、請求項4~7のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項10】
有機媒体と接触する自動車構成部品としての、請求項1~9のいずれか一項に記載の加硫物の使用。
【請求項11】
前記自動車構成部品が、ベルト、ガスケット又はホースのうちの少なくとも1つから選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記有機媒体が、オイル又は燃料のうちの少なくとも1つから選択される、請求項10又は11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの加硫水素化ニトリルゴム(HNBR)と、少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素(PAH)とを含む加硫物に関する。本発明はさらに、自動車構成部品における加硫物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ニトリルゴム(HNBR)は、アクリロニトリルとブタジエンの合成水素化ゴムコポリマーである。HNBRは一般に、オイルに対して耐性であり、広い温度範囲にわたる特性を示す。HNBRは、ベルト、ガスケット及びホースなどの自動車用途で使用することができる。
【0003】
HNBRは、多環式芳香族炭化水素(PAH)を含有しないとみなされる(非特許文献1)。
【0004】
(特許文献1)及び(特許文献2)の両方に、軟化剤を含むベルト及びホースのためのゴム組成物の使用が開示されている。その軟化剤は、Directive 76/769/EECに従って多環式芳香族を含有しない。
【0005】
(特許文献3)には、ポリマー材料、例えばHNBRで製造された本体を有する駆動ベルトが開示されている。駆動ベルトはPAHを含有しない。
【0006】
(特許文献4)には、強化充填剤又は少なくとも1種類の顔料としてカーボンブラックを含有するポリマー物品が開示されている。カーボンブラックは高い比率でPAHを含有する。
【0007】
(特許文献5)には、水素化カルボキシル含有ニトリルゴム(HXNBR)と、3個以上の縮合環、例えば、2-アミノアントラセン、1-アミノピレン、1,6-ジアミノ-9-ピレン及び3-アミノ-9-エチルカルバゾールを有するアミノ化PAH0.5~5phrと、を含むゴム組成物が開示されている。(特許文献5)には、HXNBR成分に対するアミノ化PAHの効果は開示されていない。
【0008】
しかしながら、先行技術からのHNBR加硫物は、十分なバランスのとれた引張り応力の安定性を欠いており、望ましくない破断点伸を示す。先行技術からのHNBR加硫物は、老化のために、硬度の保持も望ましくない。
【0009】
したがって、先行技術からのHBNRに伴う前述の問題の少なくとも一部を克服する必要がある。
【0010】
老化後に、向上した低い硬度プロファイルを有し、引張り応力及び破断点伸びに関する変化がごく穏やかな、HNBR加硫物を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2010/012531A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2012/084377A1号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2011/128122A2号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第3327073A1号明細書
【特許文献5】国際公開第2017/217203A1号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】EMG Report June 2017,page20,table2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の問題は、少なくとも本発明によって克服される。
【0014】
意外なことに、これらの問題は、低い硬度を有し、且つ老化しても、引張り応力及び破断点伸びの低下がごく穏やかな、多環式芳香族炭化水素(PAH)を含むHNBR加硫物によって解決されることが見出された。
【0015】
第1の態様において、本発明は:
(a)少なくとも1つの加硫水素化ニトリルゴム(HNBR)を100重量部;
(b)少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素(PAH)を1~12重量部未満;
含む加硫物に関する。
【0016】
更なる態様において、本発明は、有機媒体と接触する自動車構成部品としての加硫物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明及びその利点の完全な理解のために、以下の詳細な説明が参照される。
【0018】
本明細書に開示される詳細な説明の様々な態様及び実施形態は、本発明を製造及び使用する特定の方法を説明するものであり、特許請求の範囲及び詳細な説明を考慮に入れた場合に本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。本発明の異なる態様及び実施形態からの特徴は、本発明の異なる態様及び実施形態からの特徴と組み合わせられ得ることも理解されよう。
【0019】
第1の態様において、本発明は:
(a)少なくとも1つの加硫水素化ニトリルゴム(HNBR)を100重量部;
(b)少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素(PAH)を1~12重量部未満;
含む加硫物に関する。
【0020】
ニトリルゴム(NBR)とは、少なくとも1つのα,β-不飽和ニトリル単位と、少なくとも1つの共役ジエン単位とのゴムコポリマーを意味する。ニトリルゴムはさらに、少なくとも1つの共重合性モノマーを含み得る。
【0021】
水素化ニトリルゴム(HNBR)は、少なくとも1つの共役ジエンのC=C二重結合がある程度水素化されている、相当するNBRを意味する。
【0022】
加硫水素化ニトリルゴムは、当技術分野で公知の方法によって加硫されているHNBRを意味する。適切な加硫方法は以下に指定される。
【0023】
コポリマーは、複数のモノマー単位を有するポリマーを意味する。ターポリマーは、3つのモノマー単位を有するポリマーを意味する。
【0024】
HNBRは、50~100%、好ましくは90~100%、より好ましくは95~100%及び最も好ましくは99~100%の範囲の水素化度を有する。
【0025】
HNBRコポリマーは、少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位と、少なくとも1つの共役ジエンモノマー単位と、更なるモノマー単位と、を含むコポリマーを意味する。HNBRコポリマーの水素化度の程度は、記載の程度の通りであることができる。
【0026】
その少なくとも1つのα,β-不飽和ニトリル単位が、既知のα,β-エチレン性不飽和ニトリル、又はその混合物、例えば(C3~C5)-α,β-エチレン性不飽和ニトリル(アクリロニトリル)、α-ハロアクリロニトリル(α-クロロアクリロニトリル及びα-ブロモアクリロニトリル)、α-アルキルアクリロニトリル(メタクリロニトリル、エタクリロニトリル)によって提供される。その少なくとも1つのα,β-不飽和ニトリル単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はその混合物によって提供されることが好ましい。その少なくとも1つのα,β-不飽和ニトリル単位は、アクリロニトリルによって提供されることが最も好ましい。
【0027】
少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位の量は、水素化ニトリルゴム(a)中のすべてのモノマー単位の総量100重量%に対して、10~60重量%、好ましくは20~50重量%、より好ましくは30~45重量%の範囲であり得る。
【0028】
その少なくとも1つの共役ジエン単位は、既知のジエン、又はその混合物、例えばC4~C12ジエン(1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン)によって提供することができる。少なくとも1つの共役ジエン単位は1,3-ブタジエン及びイソプレンによって提供されることが好ましい。少なくとも1つの共役ジエン単位は1,3-ブタジエンによって提供されることが最も好ましい。
【0029】
少なくとも1つの共役ジエン単位の量は、水素化ニトリルゴム(a)中のすべてのモノマー単位の総量100重量%に対して、40~90重量%、好ましくは50~80重量%及びより好ましくは55~70重量%の範囲であり得る。
【0030】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位は、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルによって、より好ましくはアクリロニトリルから提供され、その少なくとも1つの共役ジエン単位は、イソプレン又は1,3-ブタジエンによって、より好ましくは1,3-ブタジエンから提供される。
【0031】
水素化ニトリルゴムは、モノマー単位の総量100重量%に対して、0~50重量%、好ましくは0.1~40重量%、より好ましくは0.5~30重量%及び最も好ましくは1~10重量%の量で、共重合性モノマーから誘導される1種又は複数種の更なるモノマー単位を含有し得る。その場合には、他のモノマー単位の量が、すべてのモノマー単位の合計量が常に100重量%となるように適切な手法で低減される。
【0032】
使用される共重合性モノマーから誘導される更なるモノマー単位は、カルボキシル含有共重合性モノマー、例えばα,β-不飽和(モノ)カルボン酸又はそのエステル、α,β-不飽和ジカルボン酸又はそのモノエステル若しくはジエステル、又は相当する無水物若しくはそのアミドによって提供され得る。
【0033】
α,β-不飽和(モノ)カルボン酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選択され得る。
【0034】
α,β-不飽和ジカルボン酸は、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸から選択され得る。
【0035】
α,β-不飽和ジカルボン酸無水物は、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物及びメサコン酸無水物から選択され得る。
【0036】
本発明による好ましい水素化ニトリルゴムは、以下の、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルによって提供される少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位、イソプレン又は1,3-ブタジエンによって提供される少なくとも1つの共役ジエン単位、アクリル酸又はメタクリル酸によって提供される共重合性モノマーから誘導される更なるモノマー単位を含み得る。
【0037】
α,β不飽和(モノ)カルボン酸エステルは:
・アルキル(メタ)アクリレート、特にC4~C18-アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはn-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシル(メタ)アクリレート;
・アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、特にC4~C18-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC4~C12-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはメトキシエチル(メタ)アクリレート;
・ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特にC4~C18-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC4~C12-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
・シクロアルキル(メタ)アクリレート、特にC5~C18-シクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC6~C12-シクロアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート;
・アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート、特にC6~C12-アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC7~C10-アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはメチルシクロペンチル(メタ)アクリレート及びエチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;
・アリールモノエステル、特にC6~C14-アリールモノエステル、好ましくはフェニル(メタ)アクリレート又はベンジル(メタ)アクリレート;
・アミノ含有α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル、例えばジメチルアミノメチルアクリレート又はジエチルアミノエチルアクリレート;
から選択され得る。
【0038】
α,β-不飽和(モノ)カルボン酸エステルとしては、
・アルキル、特にC4~C18-アルキル、好ましくはn-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシル、より好ましくはマレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノ-n-ブチル、シトラコン酸モノ-n-ブチル、イタコン酸モノ-n-ブチル、最も好ましくはマレイン酸モノ-n-ブチル、
・アルコキシアルキル、特にC4~C18-アルコキシアルキル、好ましくはC4~C12-アルコキシアルキル、
・ヒドロキシアルキル、特にC4~C18-ヒドロキシアルキル、好ましくはC4~C12-ヒドロキシアルキル、
・シクロアルキル、特にC5~C18-シクロアルキル、好ましくはC6~C12-シクロアルキル、より好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチル、シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチル、イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル及びイタコン酸モノシクロヘプチル、
・アルキルシクロアルキル、特にC6~C12-アルキルシクロアルキル、好ましくはC7~C10-アルキルシクロアルキル、より好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル及びマレイン酸モノエチルシクロヘキシル、フマル酸モノメチルシクロペンチル及びフマル酸ノエチルシクロヘキシル、シトラコン酸モノメチルシクロペンチル及びシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル及びイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・アリールモノエステル、特にC6~C14-アリールモノエステル、好ましくはマレイン酸モノアリール、フマル酸モノアリール、シトラコン酸モノアリール又はイタコン酸モノアリール、より好ましくはマレイン酸モノフェニル又はマレイン酸モノベンジル、フマル酸モノフェニル又はフマル酸モノベンジル、シトラコン酸モノフェニル酸又はシトラコン酸モノベンジル、イタコン酸モノフェニル又はイタコン酸モノベンジル、
・不飽和ポリアルキルポリカルボキシレート、例えばマレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、ジメチルイタコン酸又はイタコン酸ジエチル;
から選択される、α,β-不飽和モノアルキルジカルボキシレートが挙げられる。
【0039】
本発明による好ましい水素化ニトリルゴムは、以下の、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルによって、より好ましくはアクリロニトリルから提供される少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位、イソプレン又は1,3-ブタジエンによって、より好ましくは1,3-ブタジエンから提供される少なくとも1つの共役ジエン単位、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート、好ましくはC1~C4-アルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはブチルアクリレートによって提供される、共重合性モノマーから誘導される更なるモノマー単位を含み得る。
【0040】
共重合性モノマーから誘導される更なるモノマー単位は、一般式(I):
【化1】
によるPEGアクリレートから誘導されるポリエチレングリコール(PEG)アクリレート単位であり、
上記式中、R=水素又は分岐状若しくは未分岐C
1~C
20-アルキル、好ましくはC
2~C
20-アルキル、より好ましくはエチル、ブチル又はエチルヘキシルであり、
n=1~12、好ましくは2~8、より好ましくは2~5、最も好ましくは2又は3であり、
R
1=水素又はCH
3-である。
【0041】
好ましいPEGアクリレートモノマー単位は、以下の式No.1~8のPEGアクリレートから誘導され、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12、好ましくは2、3、4、5、6、7又は8、より好ましくは2、3、4又は5及び最も好ましくは2又は3である:
【0042】
【0043】
これらのPEGアクリレートは、アルケマ社(Arkema)から商品名サートマー(Sartomer)(登録商標)で、エボニック社(Evonik)から商品名Visiomer(登録商標)で、又はシグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich)から購入することができる。
【0044】
PEGアクリレートモノマー単位の量は、すべてのモノマー単位の総量100重量%に対して、0~50重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~50重量%の範囲であり得る。
【0045】
本発明による好ましい水素化ニトリルゴムは、以下の、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルによって、より好ましくはアクリロニトリルから提供される少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位と、イソプレン又は1,3-ブタジエンによって、より好ましくは1,3-ブタジエンから誘導される共役ジエン単位と、一般式(I)(nは2~8である)のPEGアクリレートから、より好ましくは一般式(I)(nは2又は3である)のPEGアクリレートから誘導される更なるモノマー単位と、を含み得る。
【0046】
使用される共重合性モノマーから誘導される更なるモノマー単位は:
・芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α-メチルスチレン及びビニルピリジン、
・フッ素含有ビニルモノマー、好ましくはフルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-フルオロメチルスチレン、ビニルペンタフルオロベンゾエート、ジフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレン、又はその他
・α-オレフィン、好ましくはC2~C12オレフィン、例えばエチレン、1-ブテン、4-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン又は1-オクテン、
・非共役ジエン、好ましくはC4~C12ジエン、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、4-シアノシクロヘキセン、4-ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン又はその他
・1-又は2-ブチンなどのアルキン、
・共重合性酸化防止剤、例えばN-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンナミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリン、
・架橋性モノマー、例えばジビニルベンゼンなどのジビニル成分、
によって提供され得る。
【0047】
本発明による好ましい水素化ニトリルゴムは、以下の:
・アクリロニトリルモノマー単位20~45重量%、
・1,3-ブタジエンモノマー単位30~70重量%、
・PEG-2アクリレートモノマー単位又はPEG-3アクリレートモノマー単位10~25重量%
を含み得る。
【0048】
本発明による好ましい水素化ニトリルゴムは、以下の:
・少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位、好ましくはアクリロニトリル20~45重量%
・少なくとも1つの共役ジエン、好ましくは1,3-ブタジエン30~70重量%
・PEGアクリレートモノマー単位,好ましくはエトキシトリエチレングリコールメタアクリレート又はブトキシジエチレングリコールメタアクリレート10~25重量%
を含み得る。
【0049】
水素化ニトリルゴムは通常、平均分子量(Mn)10000~2000000g/mol、好ましくは50000~1000000g/mol、より好ましくは100000~500000g/mol及び最も好ましくは150000~300000g/molを有する。
【0050】
水素化ニトリルゴムは通常、1.5~6、好ましくは2~5、より好ましくは2.5~4の範囲の多分散性指数(PDI=Mw/Mn、Mwは重量平均分子量である)を有する。
【0051】
水素化ニトリルゴムは通常、10~150、好ましくは20~120、より好ましくは25~100の範囲のムーニー粘度(100℃でのML1+4)を有する。
【0052】
本発明による水素化ニトリルゴムは、当技術分野で公知の方法に従って製造される。この方法は、少なくとも1つのα,β-不飽和ニトリル単位、少なくとも1つの共役ジエン単位、任意に上記の少なくとも1つの共重合性モノマーのニトリルブチルゴム成分の提供を含み、次いでそれらは重合されてニトリルブチルゴムが形成される。これに続いて、水素化ニトリルゴムを得るために、相当するニトリルブチルゴムが水素化される。
【0053】
水素化前に、NBRが複分解(国際公開第A02/100941号パンフレット及び国際公開第A02/100905号パンフレットに開示される)にかけられて、NBRの分子量が低減され得る。
【0054】
多環式芳香族炭化水素(PAH)とは、縮合有機芳香族環(少なくとも2つの芳香族環)を意味する。PAHは置換されていてもよいし、又は未置換でもよい。
【0055】
PAHは、ナフタレン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、フェナレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[c]フルオレン、インデノ[1,2,3-cd]ピレン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ペンタセン、ペンタフェン、コロネン、コラヌレン、オバレン、ヘキサセン、ヘプタフェン、ヘプタセン、トリフェニレン、トリナフチレン及びスーパーフェナレン(superphenalene)、又はそのいずれかの混合物のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0056】
PAHは、アントラセン及びフェナントレンから選択されることが好ましい。
【0057】
H(X)NBRが酸性基を含む場合には、PAHのアミン(存在する場合)はHNBR酸性基と反応して、アミドを形成し、硬度の不要な増加を引き起こし得ることから、PAHは非アミノ化PAHであることがさらに好ましい。
【0058】
本発明による加硫物は、加熱空気老化での低い硬度及び破断点伸び(EB)の適度な変化を有する。
【0059】
本発明による加硫物が多環式芳香族炭化水素1重量部未満を有する場合には、低い硬度を示すが、加熱空気老化すると破断点伸び(EB)の明らかな低下を示す。
【0060】
本発明による加硫物が多環式芳香族炭化水素を12重量部以上有する場合には、加熱空気老化での破断点伸びの穏やかな変化を有するが、高い硬度を有する。高い硬度を有する加硫物は、加工が難しく、したがって、すべての用途に適しているわけではない。
【0061】
加硫物は、少なくとも1つの更なる添加剤を含み得る。その更なる添加剤としては:水素化ニトリルゴム自体でカバーされたポリマー、充填剤、充填剤活性化剤、オイル、特にプロセスオイル、鉱油又はエクステンダー油、可塑剤、促進剤、多官能性架橋剤、老化安定剤、加硫もどり安定剤、光安定剤、オゾン分解防止剤、酸化防止剤、離型剤、凝固遅延剤、粘着付与剤、発泡剤、安定剤、染料、顔料、ワックス、樹脂、増量剤、充填剤、例えば硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、合成グラファイト、テフロン(登録商標)(Teflon)(後者は好ましくは粉末状)、シリケート、カーボンブラック、シリカ、熱分解法シリカ、シリカ、シラン処理シリカ、天然物、例えばアルミナ、カオリン、珪灰石、有機酸、加硫遅延剤、金属酸化物、有機繊維及びガラス製無機繊維を含む繊維、脂肪族及び芳香族ポリアミド(ナイロン(Nylon)(登録商標)、アラミド(Aramid)(登録商標))で製造されたコード、布地、繊維、ポリエステル及び天然繊維製品、及び繊維パルプ、加硫活性化剤、更なる重合性モノマー、二量体、三量体又はオリゴマー、不飽和カルボン酸の塩、例えばジアクリル酸亜鉛(ZDA)、メタクリル酸亜鉛(ZMA)及びジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)、液体アクリレート又はゴム産業で既知の他の添加剤(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D-69451 Weinheim,1993,volA 23 “Chemicals and Additives”,p.366-417)が挙げられる。
【0062】
有用な充填剤-活性化剤としては、有機シラン、例えばビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン又は(オクタデシル)メチルジメトキシシランが挙げられる。更なる充填材活性化剤は、例えば、界面-活性化剤、例えば分子量74~10000g/molを有するトリエタノールアミン又はエチレングリコールである。充填剤-活性化剤の量は通常、水素化ニトリルゴム(a)100重量部に対して0~10重量部である。
【0063】
有用な老化安定剤は、特に過酸化物加硫において最低数のラジカルを捕捉する安定剤である。これらは特に、オリゴマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)、クミル化(cumylated)ジフェニルアミン(CDPA)、4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾール(MB2)又は4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMB2)の亜鉛塩である。さらに、立体障害フェノールなどの既知のフェノール系老化安定剤、又はフェニレンジアミンをベースとする老化安定剤を使用することも可能である。記載の老化安定剤の組み合わせ、好ましくはZMB2又はMB2とCDPAの組み合わせ、より好ましくはMB2とCDPAの組み合わせを使用することも可能である。
【0064】
老化安定剤は通常、水素化ニトリルゴム100重量部に対して0.1~5重量部、好ましくは0.3~3重量部の量で使用される。
【0065】
有用な離型剤の例としては、飽和若しくは部分不飽和脂肪酸及びオレイン酸、又はその誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪アルコール又は脂肪酸アミドの形態をとる)、及び金型表面に適用可能な製品、例えば低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、フルオロポリマーをベースとする製品、及びフェノール樹脂をベースとする製品が挙げられる。
【0066】
離型剤は、水素化ニトリルゴム(a)100重量部に対して0.2~10重量部、好ましくは0.5~5重量部の量でブレンド成分として使用される。
【0067】
芳香族ポリアミド(アラミド)での強化と同様に、米国特許第A-4,826,721号明細書の教示に従って、ガラス強度メンバーでの加硫物の強化も可能である。
【0068】
本発明の加硫物は、少なくとも1つの水素化ニトリルゴムと、少なくとも1つの架橋剤、好ましくは少なくとも1つの過酸化物架橋剤とを含む加硫性組成物の加硫によって、好ましくは成形法において製造される。加硫は、少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素(b)の存在下にて行われ得るか、或いは加硫後/又は加硫物に、少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素(b)が添加される。
【0069】
過酸化物架橋剤は、好ましくは有機過酸化物、より好ましくはジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサ-3-イン2,5-ジヒドロペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、t-ブチルパーベンゾエート、ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート及び/又は1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、及び最も好ましくはジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンである。
【0070】
加硫は、好ましくは100~250℃、より好ましくは120~250℃及び最も好ましくは130~250℃の範囲の温度で行われる。この目的のために、加硫性組成物は、カレンダー、ロール又は押出機を用いて更なる加工にかけられる。次いで、プレス、オートクレーブ、熱空気システム、又は自動マット加硫システム(「Auma」)と呼ばれるシステムにおいて、予備成形された素材(mass)を加硫する。
【0071】
加硫時間は通常、1分~24時間、好ましくは2分~1時間である。加硫物の形状及びサイズに応じて、完全な加硫を達成するために、再加熱による第2加硫が必要な場合がある。
【0072】
本発明の加硫物は、老化しても低い硬度、並びに引張り応力及び破断点伸びが保持される。
【0073】
更なる態様において、本発明は、有機媒体と接触する自動車構成部品としての前述の加硫物の使用に関する。
【0074】
その自動車構成部品は、ベルト、ガスケット又はホースのうちの少なくとも1つであり得る。
【0075】
その有機媒体は、オイル又は燃料の少なくとも1つから選択される。
【0076】
本発明は、以下の非制限的な実施例によって実証される。
【実施例】
【0077】
使用される材料
(a)HNBR1 アクリロニトリル(ACN)39重量%及びブタジエン(BD)61重量%を有する水素化ニトリルゴム(HNBR);ムーニー粘度:70;残留二重結合含有量:≦0.9;ARLANXEOからTherban(登録商標)3907として市販されている。
(a)HNBR2 アクリロニトリル(ACN)30.7重量%及びエトキシトリエチレングリコールメタアクリレート(PEG3)14.6重量%、及びブタジエン(BD)54.7重量%を有する水素化ニトリルゴム(HNBR)
(b)フェナントレン CAS番号:85-01-8(シグマ・アルドリッチ社)
Perkadox(登録商標)14-40 Akzo Nobel Polymer Chemicals BVから市販されている、シリカ担持ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン40%
Corax(登録商標)N330 ASTMカーボンブラック:Orion Engineered Carbonから入手可能である。
Rhenofit(登録商標)DDA-70 30%シリカに結合された70%スチレン化ジフェニルアミン;Lanxess Deutschland GmbHから入手可能である。
Vulkanox(登録商標)ZMB2 4-及び5-メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール;Lanxess Deutschland GmbHから入手可能である。
Maglite(登録商標)MgO CP Hallから入手可能な酸化マグネシウム
TAIC70% KETTLITZ-TAIC 70;架橋助剤;Kettlitz-Chemie GmbH&Co.KGから入手可能である。
【0078】
試験法
架橋特性(MDR)
MDR(可動ダイレオメーター)加硫プロファイル及びそれと関連する分析データをASTM D5289-95に準拠して、Monsanto MDR 2000レオメーターで測定した。
【0079】
硬度測定(H)
ASTM-D2240-81に準拠して、デュロメーターでショアA硬度を測定した。
【0080】
破断点伸び(EB)及び引張り強さ(TS)
室温にてDIN53504に準拠して、S2試験片で加硫物の破断点伸び及び引張り強さを測定する。
【0081】
【0082】
加硫性混合物をプレスにおいて180℃にて15分間加硫した。
【0083】
【0084】
S’最小は、架橋等温線の最小トルクである。
S’最大は、架橋等温線の最大トルクである。
ΔS’ S’最大とS’最小の差
t50:最終転化の50%に達した時点
t90:最終転化の90%に達した時点
t95:最終転化の95%に達した時点
【0085】
【0086】
加硫物V4及びV6、つまり最も多い量のPAH12重量部を有する加硫物は非常に高い硬度を有する。80ShAを超える、かかる高い硬度は、加工性を複雑にするため、望ましくない。
【0087】
【0088】
加硫物V1、V2、V3及びV5は、期待された硬度の穏やかな上昇を有するが、最終的な硬度値はまだ、許容可能なマージン内である。
【0089】
21日間(熱空気)老化した後の加硫物V4は全く意外なことに、硬度の予想外の減少を有する。同様に7日間老化(加熱空気)した後の加硫物V6は、硬度の予想外の減少を有する。HNBR加硫物は、例えばガスケットとして使用した場合に軟らかくなり、したがって密閉力が失われ、そのため使い物にならなくなることから、硬度の減少は特に好ましくない。
【0090】
1重量部以上のPAH値の効果は、老化した場合に、破断点伸びがごく穏やかにのみ低下することである。対照的に、PAHを含有しない加硫物V1は、破断点伸びの不利益な低下を有し、そのため、かかる加硫物を実際に使用することは不可能となる。
【0091】
したがって、本発明及びその利点が説明されるが、本明細書に記載の種々の態様及び実施形態は、本発明を製造及び使用する具体的な方法を単に例証するものであることを理解されたい。
【0092】
本発明の種々の態様及び実施形態は、添付の特許請求の範囲及び上記で詳述される明細書を考慮に入れた場合に、本発明の範囲を制限しない。
【0093】
特許状(letters patent)による保護が望まれるものは、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】