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特表2022-538091自動車にとっての出口車線を検出するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】自動車にとっての出口車線を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20220824BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220824BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20220824BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G06T7/00 650A
G06T7/60 200J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576322
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020066256
(87)【国際公開番号】W WO2021001133
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】1907317
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キヤール, ラファエル
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC24
5L096BA04
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA51
(57)【要約】
本発明は、自動車にとっての出口車線を検出するための方法に関し、車載カメラにより取り込まれた画像内の、本走行車線(L)を横方向に区切っている右側(LR)のおよび左側(LL)の路面上の標示線を検出することと、検出された標示線に対する第1および第2のヨー角を決定することと、所定のしきい値との第1および第2のヨー角の比較に基づいて第1の、標準出口車線検出状態を与えることと、第1および第2のヨー角の変化の時間に関する微分値同士の間の比較ならびに第1または第2のヨー角の値が実質的にゼロに近い値に留まることの検証に基づいて第2の、同軸出口車線検出状態(EXIT_R)を与えることとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本走行車線の右手端(L)および左手端(L)に沿って位置する路面標示線によって横方向に境界を決められた前記本走行車線(L)に沿って車両が移動する際に前記車両に搭載されたカメラにより取り込まれる前記車両の前方からの一連の画像に基づいて、自動車(10)にとっての出口車線を検出するための方法であって、
前記画像内で、前記右手路面標示線(L)および前記左手路面標示線(L)を検出するためのステップと、
前記検出された右手路面標示線に対する前記車両の第1のヨー角、および前記検出された左手路面標示線に対する前記車両の第2のヨー角、を決定するためのステップと、
所定のしきい値と、前記第1のヨー角の値または前記第2のヨー角の値それぞれとの比較に従って、右側の標準出口車線(EXIT_STD_R)または左側の標準出口車線(EXIT_STD_L)それぞれの検出を表す、第1の出口車線検出状態を与えることができるステップと
を含む出口車線を検出するための方法において、
1番目に、前記第1および第2のヨー角の変化の時間に関する微分値同士の間の比較に従って、そして2番目に、前記第1のヨー角の値または前記第2のヨー角の値がそれぞれ実質的にゼロに近い値に留まることの検証に従って、それぞれが前記本走行車線(L)と同軸な右側の出口車線(EXIT_R)または左側の出口車線(EXIT_L)の検出を表す、第2の出口車線検出状態を与えることができるステップをさらに含むことを特徴とする、出口車線を検出するための方法。
【請求項2】
第2の検出状態が与えられると、前記第1の検出状態に処理優先権を認めるように前記第1の出口車線検出状態と前記第2の出口車線検出状態との間を調停することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のヨー角または前記第1のヨー角の前記変化の時間に関する前記微分値のそれぞれが、所定の最小マージンの追加で前記第1のヨー角または前記第2のヨー角の前記変化の時間に関する前記微分値のそれぞれよりも大きく、且つ前記第1のヨー角または前記第2のヨー角の前記値のそれぞれが所定の許容誤差しきい値内でゼロであるときに、右側のまたは左側の同軸出口車線それぞれに関する前記第2の出口車線検出状態が与えられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のヨー角または前記第2のヨー角の前記値のそれぞれが前記所定のしきい値よりも大きいときに、右側のまたは左側の標準出口車線それぞれに関する前記第1の出口車線検出状態が与えられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のまたは前記第2の出口車線検出状態に従って出口車線が検出された側で検出される前記路面標示線の位置を、補正するステップを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記出口車線が検出された側で検出される前記路面標示線の前記補正が、前記検出された出口車線に対して反対側で検出される前記路面標示線の前記位置、および、前記カメラを使用して取り込まれた前記走行車線幅の測定に従って、前記検出された出口車線の側の補正された路面標示線を再構成することから成ることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記走行車線幅の前記測定が、前記出口車線の前記検出の直前に取り込まれた測定値で固定された測定値から成ることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記検出された出口車線に対して前記反対側で検出される前記路面標示線、および、前記検出された出口車線の側の前記補正された路面標示線のそれぞれの前記位置に従って、前記車両の走行車線内の前記車両の横方向位置を補正するステップを含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
路面標示線によって横方向の境界を決められた本走行車線上を進んでいる自動車にとっての出口車線を検出するための装置であって、車両が装備したフロントカメラと協働するため、および、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するために適した、少なくとも1つの処理ユニットを備えることを特徴とする、出口車線を検出するための装置。
【請求項10】
少なくとも1つの車載フロントカメラと、請求項9に記載の装置とを備えることを特徴とする、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ、特に自動車に車載のカメラを使用して路面上の道路標示を検出することによって自動車の軌跡を制御する分野に関する。本発明は、とりわけ自動車にとっての出口車線の接近を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、有利には、自動運転自動車の自律性のレベルを管理するためのシステムの実装に適用される。上記自動運転自動車にとって、車両の環境において車両の位置決定を信頼性良く制御できることが不可欠である。特に、車両の軌跡を制御するという課題は、今日、車両の自律性の第1レベルの心臓部といえる。この第1レベルでは、運転者がハンドルまたはペダルを操作しない自動運転のフェーズ、すなわち、車両が自動化された方式で運転されるフェーズを可能にする。
【0003】
車両上の車載カメラからビデオストリームを検索するビデオ処理ユニットに実装されたアルゴリズムが、ビデオストリームから路面上の道路標示の線を抽出すること、路面上の道路標示に対する自動車の位置を検出すること、および検出された道路標示に対する車両の軌跡を補正することを可能にすることが知られている。「標示」により意味するものは、車道とは違う色の路面上の線であり、走行車線の一方の側の境界を決める線である。路面上の標示線は、実線であっても破線であってもよい。
【0004】
検出アルゴリズムにより使用される手法の大多数は、しかしながら、車両が沿って進んでいる本線に対して同軸出口と呼ばれるもの、すなわち、車両が沿って進んでいる本線に実質的に継続している減速車線を有する出口への接近などのある種の一般的で現実的な状況における弱さに悩まされる。本出願では、「本線に実質的に継続している減速車線」が意味するものは、出口車線が本線に接線で実質的に続くことである。
【0005】
今日、車両が沿って進んでいる本線に関するジャンクションのところでの出口車線の検出を、観察した線に対する車両のヨー角、すなわち、車線のそれぞれ左側の路面標示線および右側の路面標示線と車両の基準フレームとの間の角度の値、に基づいて設定することができる。このように、図1に図示したように、ψは、右側の標示線L1に対する車両10のヨー角であり、ψは、左側の標示線L2に対する車両のヨー角である。
【0006】
大部分の出口に関して、ヨー角の著しい増加を出口車線の側で観察することができる。例えば、右側の出口の始点で、右側のヨー角は鋭く増加する。このように、この出口を、所定のしきい値とヨー角ψを比較することによって検出できる。
【0007】
逆に、出口車線が本線に実質的に継続している場合には、これらの状況では、出口側のヨー角に鋭い増加がない限り、道路標示線の構成は、検出アルゴリズムを「だます」ことがある。これらの状況は、典型的には、ハイウェイ出口に導く減速車線またはハイウェイサービスエリアに導く減速車線に係わる。
【0008】
図2は、この問題を図解する例を示す。車両が沿って進んでいる本線は、1により表示された道路の右手車線Dであり、車両にとっての本走行車線の右側および左側を横方向に境界を決めている路面標示線2および3によって境界を決められる。この走行車線は、実質的に左へ曲がり、一方で、車両の直ぐ近くの先には、車線内の車両の現在の位置に対して車両にとっての本線Dに実質的に継続している減速車線4がある。右側でこの減速車線4の境界を決めている路面の出口車線5は、実質的に真直ぐであり、一方で、右側で本線Dの境界を決めている路面標示線3は、実質的に左へカーブする。言い換えると、ここでは、車載カメラによって提供されるデータを処理する検出アルゴリズムは、本線用の道路標示、すなわち、路面標示線2および3に対してデータから情報を通常抽出するはずであり、そして車両軌跡が実効的に路面標示線2および3の検出に基づき、したがって車両が本線に留まることを可能にするように車両軌跡に適用されるべき補正処理を決定するはずである。しかしながら、それぞれ、本線の路面標示線Dおよび減速車線4の構成のために、上記減速車線は、本線に実質的に継続して位置し、検出アルゴリズムは、本線の路面標示として減速車線4の出口車線5を間違って検出することがある。本線の路面標示線であるとしてこの線を誤って検出することにより、車両の軌跡に適用される補正処理は、この車両が本線を離れるようにさせ、減速車線に行かせることになるが、これは望まれる処理ではない。
【0009】
米国特許出願公開第2018156626号という文書は、車載カメラを使用して、車両が進んでいる車線の路面標示線を検出し追従することにより、およびハイウェイ入口車線または出口車線に近付くと、路面標示線が、車両により追従されるべき「正常な」ルートに従って依然として追従されるべきか否かを決定することにより、「正常なルート」に沿って車両の軌跡を制御することを可能にさせるシステムを開示する。より正確に、路面標示線の検出は、路面標示線の色についての情報に基づく。このように、「正常な」運転ルートに対応する所定の路面標示線の色についての情報に従って、検出される路面標示線の色が所定の路面標示線の色に関する情報と同一である場合には、検出された線は、追従され続けられ、そうでなければ、中断される。
【0010】
このように、路面標示線の検出が角度測定に基づかないので、このシステムは、同軸出口車線の接近に関係する線検出エラーに関して先験的に確実なはずである。しかしながら、ここでの検出は、欠点なしではない検出された路面標示線の色の解析を頼りにする。特に、次の道路標示線の追従および認識は、投影された影、まぶしい光、等を受け易い車上での画像の取込みの条件に依存することがあり、このように、精密な色解析の点からその使用を扱いにくくさせる。
【発明の概要】
【0011】
このように、本発明の狙いは、出口車線の接近を検出するための方法を提供することであり、これは、単純で確実な方式で、必要な場合には、車両がそれ自体の車線に留まるように車両の位置を補正できるように、車両にとっての本線と同軸である出口車線の接近を検出できることを特に可能にする。
【0012】
そのために、本発明は、車両が本走行車線の右手端および左手端に沿って位置する路面標示線によって横方向に境界を決められた本走行車線に沿って移動するにつれて上記車両に搭載されたカメラにより取り込まれた上記車両の前方からの一連の画像に基づいて自動車にとっての出口車線を検出するための方法であって、
前記画像内で、上記右手路面標示線および上記左手路面標示線を検出するためのステップと、
上記検出された右手路面標示線に対する上記車両の第1のヨー角、および上記検出された上記左手路面標示線に対する上記車両の第2のヨー角、を決定するためのステップと、
所定のしきい値との、上記第1のヨー角の値または上記第2のヨー角の値それぞれとの比較に従って、右側の標準出口車線または左側の標準出口車線それぞれの検出を表す、第1の出口車線検出状態を与えることができるステップと
を含む出口車線を検出するための方法において、
前記方法が、1番目に、上記第1および第2のヨー角の変化の時間に関する微分値同士の間の比較に従って、そして2番目に、上記第1のヨー角の値または上記第2のヨー角の値がそれぞれ実質的にゼロに近い値に留まることの検証に従って、それぞれが上記本走行車線と同軸な、右側の出口車線または左側の出口車線の検出を表す、第2の出口車線検出状態を与えることができるステップをさらに含むことを特徴とする、出口車線を検出するための方法に関する。
【0013】
このように、右側のおよび左側の検出された路面標示線に対する車両の2つのヨー角の変化に実行される検証試験のおかげで、第2の検出状態が、第1の検出状態によっては考慮されていない本走行車線に関する同軸出口車線と呼ばれるものを検出することを有利なことに可能にし、これは、標準出口車線と呼ばれるものに限定され、これに対して出口の側の車両のヨー角の所与のしきい値に対する単純な増加を観察することができる。このように、本出願では、「標準出口」という表現は、本走行車線とは同軸でない、すなわち、車両が沿って進んでいる本線に継続している減速車線を持たない出口を呼ぶ。
【0014】
このように、不明瞭な路面標示の場合には、典型的には本走行車線と同軸である出口車線に関して、本発明の方法は、誤ってこのような出口車線に入る車両の位置を補正する目的で確実な方式で出口車線を検出することを可能にする。
【0015】
本発明による出口車線の検出は、右側の出口車線および左側の出口車線の両方に対して適しており、これは、法令が左側を運転することを命じる国に対して設計されたものおよび法令が左側を運転することを命じる国に対して設計されたものの両方で、任意のタイプの車両に適用可能である多くの自由度の解を与える。
【0016】
有利なことに、方法は、第2の検出状態が与えられると、前記第1の検出状態に処理優先権を認めるように上記第1の出口車線検出状態と第2の出口車線検出状態との間を調停することを含む。
【0017】
有利なことに、それぞれ、右側のまたは左側の同軸出口車線に関する前記第2の出口車線検出状態は、それぞれ、上記第2のヨー角または上記第1のヨー角の上記変化の時間に関する上記微分値が、所定の最小マージンの追加で、それぞれ上記第1のヨー角または上記第2のヨー角の上記変化の時間に関する上記微分値よりも大きく、それぞれ、上記第1のヨー角または上記第2のヨー角の上記値が所定の許容誤差しきい値内でゼロであるときに与えられる。
【0018】
有利なことに、それぞれ、右側のまたは左側の標準出口車線についての前記第1の出口車線検出状態は、それぞれ、上記第1のヨー角または上記第2のヨー角の上記値が前記所定のしきい値よりも大きいときに与えられる。
【0019】
有利なことに、上記方法は、上記第1のまたは上記第2の出口車線検出状態に従って出口車線が検出されている側で検出される上記路面標示線の位置を、補正するステップを含む。
【0020】
有利なことに、上記検出された出口車線の側で検出された前記路面標示線の上記補正が、上記検出された出口車線に対して反対側で検出された上記路面標示線の上記位置および上記カメラを使用して取り込まれた上記走行車線幅の測定に従って、上記検出された出口車線の側の補正された路面標示線を再構成することから成る。
【0021】
有利なことに、上記走行車線幅の前記測定が、前記出口車線の上記検出の前の時刻に取り込まれた測定値で固定された測定値から成る。
【0022】
有利なことに、上記方法は、上記検出された出口車線に対して上記反対側で検出された上記路面標示線および上記検出された出口車線の側の上記補正された路面標示線のそれぞれの位置に従って上記車両の走行車線内の上記車両の横方向位置を補正するステップを含む。
【0023】
上記発明はまた、路面標示線によって横方向に境界を決められた本走行車線上を進んでいる自動車にとっての出口車線を検出するための装置に関し、上記装置は、車両が装備し、上に説明されたような方法の上記ステップを実施するためのフロントカメラと協働するために適した少なくとも1つの処理ユニットを備えることを特徴とする。
【0024】
上記発明はまた、自動車が、少なくとも1つの車載フロントカメラと、上に説明したような装置とを備えることを特徴とする自動車に関する。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、例示的であり非限定的な例により与えられ、そしてただ1つの下記の図を参照して与えられる下記の説明を読むことからより明確に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】右手および左手路面標示線に対する車両のヨー角の概念の模式図である。
図2】カメラに基づく線検出システムを誤らせる同軸出口車線と呼ばれるものに関するあいまいな路面標示の問題の模式図である。
図3】右側の同軸出口車線を検出する文脈において出口車線を検出する原理の模式図である。
図4】左側の同軸出口車線を検出する文脈において出口車線を検出する原理の模式図である。
図5】左側の標準出口車線を検出する文脈において出口車線を検出する原理の模式図である。
図6】右側の標準出口車線を検出する文脈において出口車線を検出する原理の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図3は、道路標示線、すなわち、本走行車線Lの右手端に沿って位置する右手路面標示線Lおよび本走行車線Lの左手端に沿って位置する左手路面標示線Lによって横方向に境界を決められた本走行車線Lに沿って進んでいる車両10の例示的な状況を模式的に示す。
【0028】
車両10は、「車線センタリング支援」との名称または頭字語LCAにより一般的に知られた支援システムを装備しており、上記システムは、道路標示線に対して自動車の位置を検出すること、車両の車線の中央に位置して車両を自動的に維持するように車両の軌跡を補正して、運転者のハンドル操作のタスクを軽減することから構成される。LCAシステムは、これゆえ、車両が軌跡を補正することが必要になると車両のステアリングコラムに作用する。
【0029】
LCAシステムは、車両の前方にある場面の画像を取り込むことを可能にするように、および自動車の前方の道路標示を検出できるように、車両の天井との接続部のところで、例えばフロントガラスの最上部に据え付けられた、またはそうでなければ車両の室内バックミラーの後ろに据え付けられた、自動車の前方に向けられたカメラを一般的に備える。
【0030】
これを行うために、カメラを用いて画像を取り込むステップはカメラに関連する処理ユニットがカメラにより提供される画像のストリームを検索するステップが続き、そして、特に、自動車10によって取られた走行車線Lに沿って位置する道路標示線を検出する画像処理技術を使用して画像のストリームを解析する。処理ユニットはまた、車両の両側で検出された道路標示線に対する車両の2つのヨー角の推定値を提供することにも適している。
【0031】
図3は、車両にとっての本走行車線Lに継続して延びる右手出口車線EXIT_Rを含む本線の分岐部を図示し、一方で本走行車線Lは分岐点で左へ枝分かれする。右手出口車線は、本走行車線と同軸の出口車線と呼ばれるものであり、すなわち、本線に実質的に継続している出口車線である。この同軸出口車線EXIT_Rは、道路標示線、すなわち、右手同軸出口車線EXIT_Rの右手端に沿って位置する右手路面標示線EXITおよび右手同軸出口車線EXIT_Rの左手端に沿って位置する左手路面標示線EXITによってそれ自体の横方向の境界を決められる。
【0032】
図3に図示されたこの分岐部の状況は、典型的には、所定のしきい値との車両のヨー角の値の比較に基づくカメラにより通常使用される検出アルゴリズムを「だます」傾向がある不明瞭な路面標示の構成を説明する。このように、検出の開始時に、右手同軸出口車線EXIT_Rに接近すると、車両カメラは、右手同軸出口車線EXIT_Rの右手端に沿って位置する右手路面標示線EXITを本線Lの路面標示として誤って検出することがあり、このことが結果として車両軌跡に適用される望まれない補正処理をもたらすことがあり、車両に右手同軸出口車線EXIT_Rを取らせるが、車両は、実際には、左へ曲がる本走行車線Lに留まるべきである。言い換えると、このタイプの同軸出口車線は、カメラに関係する従来の検出アルゴリズムによっては検出されず、このことがこのタイプの同軸出口車線を車両にとっての本走行車線であると誤って取らせる。
【0033】
この点について、本発明は、車両がその本走行車線に留まるように車両の軌跡を補正できるように、図3の例による右手同軸出口車線EXIT_Rなどのこのタイプの同軸出口車線を明確に検出する意図で第2の検出アルゴリズムの実装形態を提供する。一般に、この検出アルゴリズムは、1番目に、ある期間にわたって右側および左側の2つのヨー角の平均微分値を比較することによって、2番目に、出口車線の側で検出される道路標示線に対する車両のヨー角が実際にゼロであることを検証することによって同軸出口車線を検出するように設計される。
【0034】
このように、図3の例にこの一般原理を適用することにより、同軸出口車線検出アルゴリズムは、下記の2つの累積条件が、所定の許容誤差しきい値内で満足されるときに、すなわち、左側のヨー角が右側のヨー角よりも大きく増加し、右側のヨー角がゼロに近い値に留まるときに、右手同軸出口車線EXIT_Rの検出を表す検出状態を与えることができる。ゼロに近い値に留まらなければならない右側のヨー角に関するこの最後の条件は、左手出口車線の有効な検出のケースを除外すること可能にし、このケースでは右側のヨー角がゼロの近くのままではないはずである。
【0035】
車両が右手同軸出口車線に接近しているかどうかを決定するために同軸出口車線検出アルゴリズムによって実装されるこの二重の試験は、下記の二重の表記の形態を取ることができる:
[数式1]
ここで、
nDelay:左側ψのおよび右側ψの2つのヨー角の微分のために使用される期間を表している時間間隔の数;
k:時間間隔;
Margin:安全マージン、回避されるべきタイミングの悪い検出を可能にする;
ε:右側のヨー角のゼロ値を試験するための所定の許容誤差しきい値。
【0036】
上の基準(1)は、これゆえ、右手同軸出口車線と左手同軸出口車線との間を差別化することを可能にする。具体的に、右手同軸出口車線に関して、右側のヨー角ψは、小さいまたはそれどころかゼロであるだろう。これゆえ、右側のヨー角の値が所定の許容誤差しきい値εよりも小さいことが検証される。
【0037】
図3を参照してたった今説明してきた右側の同軸出口車線を検出する原理は、図4の例により図示されたように、左側の同軸出口車線を検出するための完全に対称的な応用例から利益を得る。
【0038】
このように、図4に図示された分岐部は、車両にとっての本走行車線Lに継続して延びる左手出口車線EXIT_Lを含み、一方で本走行車線Lは分岐点で右へ枝分かれする。この左手同軸出口車線EXIT_Lは、道路標示線、すなわち、左手同軸出口車線EXIT_Lの右手端に沿って位置する右手路面標示線EXITおよび左手同軸出口車線EXIT_Lの左手端に沿って位置する左手路面標示線EXITによってそれ自体の横方向に境界を決められる。
【0039】
同軸出口車線検出アルゴリズムは、そのときには、下記の2つの累積条件が、所定の許容誤差しきい値内で満足されるときに、すなわち、車両の右側のヨー角が左側のヨー角よりも大きく増加し、左側のヨー角がゼロに近いままであるときに、左手同軸出口車線EXIT_Lの検出を表す検出状態を与える。
【0040】
この状況では、左手同軸出口車線が接近しているかどうかを決定するために検出アルゴリズムによって実施される二重の試験は、下記の形態を取る:
[数式2]
【0041】
前の状況におけるように、基準(2)は、右手同軸出口車線と左手同軸出口車線との間で差別化することを可能にする。具体的に、左手同軸出口車線に関して、左側のヨー角ψは、小さいまたはそれどころかゼロであるだろう。これゆえ、左側のヨー角の値が所定の許容誤差しきい値εよりも小さいことが検証される。
【0042】
このように、左手同軸出口車線および右手同軸出口車線の検出は、基準(1)および(2)の適用のおかげで共存できない。具体的に、右側のヨー角および左側のヨー角の両者が同時にゼロになり、そして出口車線が同時に検出されることは不可能である。
【0043】
カメラは、これゆえ、所定のしきい値との、それぞれ右側のおよび左側の車両のヨー角の値の比較に従って出口車線を検出するように従来から意図されている第1の検出アルゴリズムに関係する。具体的に、大部分の「標準的な」出口車線に関して、出口車線の側で検出された線に対するヨー角の明瞭な増加が観察されることがある。このアルゴリズムは、したがって、右側のまたは左側の、同軸とは反対の「標準的な」出口車線の検出を表す第1の検出状態を与えることが可能である。この第1の検出アルゴリズムは、しかしながら、図3および図4の例に図示したような、それぞれ右側のおよび左側の同軸出口車線を検出することを不可能にし、これゆえ、上に説明したように実装される第2のアルゴリズムが、この目的のために提供された。
【0044】
言い換えると、車両が出会った分岐点のところでそれ自体の車線に留まるように車両の軌跡を補正するように意図されたLCAシステムのコントローラは、第1および第2の検出アルゴリズムによって与えられる検出状態に対応する多数のソースからの出口車線を検出するための情報を処理する。
【0045】
有利なことに、対策は、第1の検出アルゴリズムによって与えられる検出状態に処理優先権を認めるようにこれらの出口車線検出状態同士の間を調停するために行われる。第1の検出アルゴリズムによって与えられる検出状態に優先権を与えるこの調停は、既に存在する補正システムの逆行を回避することを可能にし、上記補正システムが第1の検出アルゴリズムによって与えられる右側のおよび左側の標準出口車線を検出するための情報に基づく。特に、第1の検出アルゴリズムによって与えられる検出状態に与えられた優先権は、誤検出の状況で終わることを回避することを可能にし、誤検出では、それぞれ右側のまたは左側の同軸出口車線が、左側のまたは右側の標準出口車線それぞれの代わりに誤って検出される。
【0046】
図5は、この調停の利点を図解している分岐部構成を説明する。分岐点は、ここでは、車両にとっての本走行車線Lに対して左側の標準出口車線EXIT_STD_Lを含み、その側では、左側の標準出口車線EXIT_STD_Lの左手端に沿って位置する道路標示線EXITに対する左側のヨー角の鋭い増加を観察できる。このケースでは、標準出口車線を検出するためのアルゴリズムは、これゆえ、左側の標準出口車線EXIT_STD_Lの検出を表す検出状態を実際に与える。同時に、両方の条件が満足される、すなわち道路標示線EXITに対する左側のヨー角が道路標示線Lに対する右側のヨー角よりも多く増加し、右側のヨー角がゼロに非常に近い値に留まるので、同軸出口車線検出アルゴリズムはまた、右側の同軸出口車線の検出を表す検出状態も規定する。しかしながら、最後の検出状態が左側の標準出口車線の検出状態よりも低い優先権しか持たないという理由で、この最後の検出状態は考えられない。このように、調停は、標準出口車線を検出するための第1のアルゴリズムからもたらされる検出が最初に考えられ、次いで検出状態が第1の検出アルゴリズムによって与えられなかった場合、言い換えると、標準出口車線が検出されなかった場合にだけ、同軸出口車線を検出するための第2のアルゴリズムからもたらされる検出が考えられることを命じる優先権体系に従って検出を考慮することを可能にする。
【0047】
2つのタイプの検出同士の間の調停のこの原理は、右側の標準出口車線が検出されるはずであるときに左側の同軸出口車線を検出することを避けることを可能にするために同じ方法で適用される。
【0048】
このように、図6は、右側の標準出口車線が軌跡を正しく補正することを可能にするために検出されるはずである分岐部構成を説明する。
【0049】
分岐点は、ここでは、車両にとっての本走行車線Lに対して右側の標準出口車線EXIT_STD_Rを含み、その側では、これゆえ、右側の標準出口車線EXIT_STD_Rの左手端に沿って位置する道路標示線EXITに対する右側のヨー角の鋭い増加を観察できる。このケースでは、標準出口車線を検出するためのアルゴリズムは、これゆえ、右側の標準出口車線EXIT_STD_Rの検出を表す検出状態を実際に規定する。同時に、両方の条件が満足される、すなわち道路標示線EXITに対する右側のヨー角が道路標示線Lに対する左側のヨー角よりも多く増加し、左側のヨー角がゼロに非常に近い値に留まるので、同軸出口車線検出アルゴリズムはまた、左側の同軸出口車線の検出を表す検出状態も規定する。しかしながら、調停のおかげで、最後の検出状態が、右側の標準出口車線の検出状態よりも低い優先権しか持たないという理由で、この最後の検出状態は考えられない。
【0050】
第1の検出アルゴリズムからもたらされる検出を最初に考えること、次いで第1のアルゴリズムが何も検出しなかった場合にだけ第2の検出アルゴリズムからもたらされる検出を命じる実施された調停からもたらされるこの優先権体系は、下記の形態を取ることができる、例えば、右側の出口車線の検出のケース、そこでは、detection_camera_rightが第1の標準出口車線検出アルゴリズムにより与えられる検出状態に対応し、そしてdetection_coaxial_rightが第2の同軸出口車線検出アルゴリズムにより与えられる検出状態に対応する:
Detection_right=detection_camera_rightOR[detection_coaxial_rightAND NOT(detection_camera_right)]
【0051】
このようにして、同軸出口車線を検出するための情報は、追加情報として処理され、第1の検出アルゴリズムによって返されなかった同軸出口車線を検出することを可能にする。
【0052】
今や右側のまたは左側の出口車線の検出が上に説明したこれらの分岐部状況のすべてで確実にされたので、道路標示線の位置は、車両がその本走行車線に留まることを確実にするために次に補正されるだろう。これを行うために、検出された出口車線の側で検出される路面標示線は、検出された出口車線に対して反対側で検出される路面標示線の位置およびカメラを使用して取り込まれた走行車線幅の測定値に従って検出される出口車線の側の補正された路面標示線を再構成することにより補正されるだろう。
【0053】
このように、本走行車線Lの横方向に境界を決める道路標示線LおよびLの検出がカメラに関係する画像処理ユニットにより実行されると、車両の基準フレーム内のカメラに対する路面標示線LおよびLのそれぞれの横方向位置もまた決定される。
【0054】
posおよびposが、車両の基準フレーム内のカメラに対するこれらの路面標示線のそれぞれの横方向位置であるとする。
【0055】
これらのそれぞれの横方向位置に基づいて、本走行車線Lの幅が計算される。LW(k)がこれらそれぞれの横方向位置の絶対値に基づいて時刻kにおいて計算された車線幅であるとする:
[数式3]
LW(k)=abs(pos)+abs(pos
【0056】
出口車線が検出されると直ぐに、左側でまたは右側で、上に述べた発明の原理に従って、このように決定された車線幅は、その以前の値で固定され、そして出口車線の終端が検出されるまでの時間にわたって維持される。このことが、信頼できる車線幅を維持することを可能にする。次に、検出された出口車線の側に位置する路面標示線が、反対側で検出された路面標示線の横方向位置および車線幅の固定値に基づいて再構成される。このようにして、再構成された路面標示線は、検出された出口車線に対して反対側で検出される路面標示線の変化に従うが、本走行車線の他方の側へ、ということは、路面標示線に基づいてLCAシステムを使用する車両の軌跡を制御することが望まれる路面標示線が位置する検出された出口車線の側へ移動される。言い換えると、検出された出口車線の側に位置する路面標示線に適用される補正は、カメラに対して反対側で検出された路面標示線を対称的にすることによって適用される。
【0057】
例えば、図3の例によれば、右側の同軸出口車線EXIT_Rが検出されると、出口車線EXIT_Rの側の本走行車線Lの境界を決めている右手路面標示線の位置は、次のように補正される、右側の同軸出口車線EXIT_Rの検出の始まりと終わりとの間の各々の時間間隔において:
[数式4]
posR,corrected(k)=pos(k)+LW(k-1)
ここで、posR,corrected(k)は、時刻kにおける右手標示線のカメラに対する補正された横方向位置であり、
pos(k)は、時刻kにおいて決定された左手路面標示線のカメラに対する横方向位置であり、
LW(k-1)は、右側の同軸出口車線の検出に先立つ時刻(k-1)において決定した車線幅である。
【0058】
この補正は、右側の検出された同軸出口車線EXIT_Rの側の本走行車線Lの境界を決めている図3にLR_correctedにより表示された右手路面標示線を再構成することを可能にする。
【0059】
この補正された右手路面標示線LR_correctedは、カメラに関して対称的であり、左手路面標示線Lの変化に従う。検出された出口車線の側に位置する線のこの補正は、車両の本走行車線Lの中央に車両を自動的に保つように、車両の軌跡を補正するために、このようにLCAシステムが正しい線基準、すなわちLR_correctedを有することを可能にする。
【0060】
図4図5、および図6で上に説明した例のケースでは、この線補正原理は、出口車線が検出されると直ぐに同様の方法で適用される。このように、これらのケースのすべてにおいて、検出された出口車線の側に位置する路面標示線が補正され、車両がその本走行車線に留まるように軌跡を補正することを可能にする。例えば、図5に図示した左側の標準出口車線の検出のケースでは、左側の標準出口車線EXIT_STD_Lは、第1の検出アルゴリズムによってそして上に述べた原理に従って実際に検出され、補正された左手路面標示線LL_correctedが再構成され、これはカメラに関して対称的であり、右手路面標示線Lの変化に従う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】