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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】基板処理装置におけるプラズマ
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
C23C16/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576429
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 FI2019050494
(87)【国際公開番号】W WO2020260743
(87)【国際公開日】2020-12-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510275024
【氏名又は名称】ピコサン オーワイ
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ホルム ニクラス
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
(57)【要約】
基板処理装置及び関連する方法。反応室(130)及びプラズマ引き込みライン(115)を有する。プラズマ引き込みラインは堆積ターゲット(160)のためにプラズマ種を反応室130へ供給する。プラズマ引き込みラインは、ガスの速度を速めるように構成されたインレット部(110)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室と;
堆積ターゲットのために前記反応室内へプラズマ種を導入するためのプラズマ引き込みラインと;
を備え、前記プラズマ引き込みラインは、ガスの速度を速めるように構成されたインレット部を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記インレット部は、前記引き込みラインよりも小さな内径を有するチューブ部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インレット部は化学的に不活性なチューブ状の部品である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記インレット部は電気的に絶縁性であるチューブ状の部品である、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記インレット部は、インナーチューブと、前記インナーチューブを囲む外側部分又はアウターチューブとを有する、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記反応室を少なくとも部分的に囲む真空室を備える、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
ガス速度を増加させるための収束ノズル構成又は収束-拡大ノズル構成を有する、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記反応室内で基板表面に連続自己飽和表面反応を遂行する、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
基板処理装置において、堆積ターゲットのために、プラズマ引き込みラインを通じて反応種を反応室内に導入することと;
インレット部によって、前記プラズマ引き込みライン内でガス速度を増加させることと;
を含む、方法。
【請求項10】
前記インレット部は、前記引き込みラインよりも小さな内径を有するチューブ部を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インレット部は化学的に不活性なチューブ状の部品である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記インレット部は電気的に絶縁性であるチューブ状の部品である、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記インレット部は、インナーチューブと、前記インナーチューブを囲む外側部分又はアウターチューブとを有する、請求項9から12のいずれかに記載のオフ法。
【請求項14】
前記反応室を真空室で囲むことを含む、 請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記反応室内の基板表面に連続自己飽和表面反応を遂行することを含む、 請求項9から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して基板処理方法及び基板処理装置に関する。より詳細には、本発明はプラズマ強化型原子層堆積(Plasma-Enhanced Atmic Layer Deposition, プラズマALD,PEALDとも称される)装置に関する。ただしそれに限られない。
【発明の背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。ここに開示される反応装置の構造は、例えば、米国特許第9,095,869号明細書を参照することにより理解することができる。
【0003】
原子層堆積(ALD)のような化学堆積方法において、表面反応のために必要な追加のエネルギーを提供するために、プラズマが使用されることができる。しかし、プラズマ源を使用することは、堆積反応装置にある要求事項や特定の課題を生じうる。そのような課題の一つは、プラズマ中の反応種(reactive species)は限られた寿命しか持たないということである。
【摘要】
【0004】
本発明のある実施形態の課題は、プラズマの限られた寿命に対処すること、又は、少なくとも既存技術に対する代替手段を提供することである。
【0005】
本発明の第1の例示的態様によれば、基板処理装置が提供される。この装置は、反応室と、堆積ターゲットのために前記反応室内へプラズマ種を導入するためのプラズマ引き込みラインとを備え、前記プラズマ引き込みラインは、ガスの速度を速めるように構成されたインレット部を有する。
【0006】
実施形態によっては、前記装置はプラズマ源を備える。実施形態によっては、前記プラズマ源は前記インレット部の上流に位置する。実施形態によっては、前記プラズマ源はプラズマ源チューブ(プラズマ源を超えて進むチューブ)を有する。実施形態によっては、プラズマ種はプラズマ源チューブの中で生成される。実施形態によっては、前記インレット部と前記プラズマ源チューブは同心の部品である。
【0007】
実施形態によっては、前記装置は、前記堆積ターゲットのために前記反応室にプラズマ種を導入するためのプラズマ引き込みラインを、前記プラズマ源と前記堆積ターゲットの間に有する。
【0008】
実施形態によっては、前記堆積ターゲットは前記反応室内に位置する。実施形態によっては、前記堆積ターゲットは基板である。実施形態によっては、前記堆積ターゲットは基板の束である。実施形態によっては、前記堆積ターゲットはウェーハである。実施形態によっては、前記基板の束の中の基板は縦方向に向いている。
【0009】
実施形態によっては、前記インレット部は、前記プラズマ源と前記反応室の間に位置する。実施形態によっては、前記プラズマ源は離れて位置するプラズマ源である。実施形態によっては、前記プラズマ源は前記反応室の外側に位置する。
【0010】
実施形態によっては、前記プラズマ種はガス状のプラズマを含む。実施形態によっては、前記プラズマ種はラジカルを含む。実施形態によっては、前記プラズマ種はイオンを含む。
【0011】
実施形態によっては、前記インレット部は前記プラズマ引き込みライン内で中央部に位置する。実施形態によっては、前記インレット部は、前記プラズマ引き込みライン内の他の部品よりも狭い内径を有する。実施形態によっては、前記プラズマ引き込みラインは前記インレット部内で、その内径が最小になる。実施形態によっては、前記インレット部は前記プラズマ引き込みライン内における最も狭い流路幅を提供する。
【0012】
実施形態によっては、前記インレット部は、インレットライナーと、前記インレットライナーのためのホルダーとを備える形態を有する。実施形態によっては、前記インレットライナーはチューブ状の要素である。実施形態によっては、前記インレットライナーは可視光に対して透明である。実施形態によっては、前記インレットライナーは化学的に不活性である。実施形態によっては、前記インレットライナー(インナーチューブ)は電気的に絶縁性である。実施形態によっては、前記インレット部はアウターチューブ又は外側部品に囲まれたインナーチューブを有する。実施形態によっては、前記インナーチューブと前記アウターチューブは同心の部品である。実施形態によっては、前記インナーチューブと前記アウターチューブはリング状の断面を有する。実施形態によっては、前記インナーチューブと前記アウターチューブとは互いに対してぴったりはまっている。実施形態によっては、前記外側部品又は前記アウターチューブは前記インナーチューブのためのホルダーを形成する。実施形態によっては、前記外側部品又は前記アウターチューブは電気的に導電性である。実施形態によっては、前記外側部品又は前記アウターチューブには適切な電位、例えばシステムのグランド(GND)が適用される。実施形態によっては、前記インレット部は2つのパイプ部品の間に取り付けられる。
【0013】
実施形態によっては、前記インレット部は着脱可能な部品である。実施形態によっては、前記インレットチューブは着脱可能な部品である。実施形態によっては、前記インレット部は、ガス速度を上げるための急激な狭窄部又は狭窄構造を有するプラズマ引き込みラインを提供する。実施形態によっては、前記インレット部は、ステップ状に流路が狭くなるプラズマ引き込みラインを提供する。実施形態によっては、前記インレット部の後に、前記反応室へ向かって広がっていく拡大空間が続く。実施形態によっては、前記プラズマ源から前記反応室への流路は、前記インレット部と前記拡大空間との間の接続部において又は当該接続部に接して、ステップ状に拡大していく(幅が広くなっていく)。実施形態によっては、前記インレット部は駆動されない部品であり、例えば弁ではない。実施形態によっては、前記インレット部は受動的な部品である(すなわち能動的な部品ではない)。実施形態によっては、前記インレット部の直後の(又はすぐ下流の)前記プラズマ引き込みライン(拡大空間)の断面積は、前記インレット部の直前の(又はすぐ上流の)前記プラズマ引き込みライン(プラズマ源チューブ)の断面積よりも大きい。
【0014】
実施形態によっては、前記反応室は真空室で囲われる。
【0015】
実施形態によっては、プラズマ反応ガスがRF(無線周波数)放射によって励起される。実施形態によっては、プラズマ反応ガスがマイクロ波放射によって励起される。実施形態によっては、前記プラズマ反応ガスは、噴射されることなくプラズマ源に供給される。実施形態によっては、オプションとして、前記プラズマ反応ガスはキャリアガス及び/又は不活性ガスと一緒に、前記プラズマ源チューブ内に噴射されることなく、プラズマ源に供給される。従って、オプションとして、前記プラズマ反応ガスはキャリアガス及び/又は不活性ガスと一緒に、(通常の)パイプラインに沿って、(すなわち特別の噴射部を使わずに、)前記プラズマ源チューブに導かれる。実施形態によっては、前記パイプラインは少なくとも1つの弁(又はプラズマ反応パルス弁)を有する。
【0016】
実施形態によっては、前記プラズマ引き込みラインは、プラズマ形成部を備え縦型のプラズマ源チューブを有する。実施形態によっては、前記プラズマ引き込みラインは前記プラズマ形成部及び前記狭窄部に沿う縦方向の経路を有する。
【0017】
実施形態によっては、前記装置は、ガス速度を上げるために、収束ノズル構成又は収束-拡大ノズル構成を有する。
【0018】
実施形態によっては、前記装置は、前記反応室内の基板表面に連続自己飽和表面反応を遂行する。実施形態によっては、前記装置はプラズマアシスト型ALDを遂行するように構成される。
【0019】
本発明の第2の例示的側面によれば、方法が提供される。この方法は、基板処理装置において、堆積ターゲットのために、プラズマ引き込みラインを通じて反応種を反応室内に導入することと、インレット部によって、前記プラズマ引き込みライン内でガス速度を増加させることとを含む。
【0020】
実施形態によっては、ジェットノズルインレットライナーが設けられる。実施形態によっては、前記ジェットノズルインレットライナーはチューブ状の要素である。実施形態によっては、前記ジェットノズルインレットライナーの内径は、ガス導入部のための他の部品の内径よりも本質的に小さい。前記ジェットノズルインレットライナーの内部でガス速度が増加することが観察された。これは、前記ジェットノズルインレットライナーの断面が、プラズマ源チューブや反応室の断面よりも小さいからである。ガス速度の増加は、例えば、チョーク流れ効果に基づいてもよい。ガス速度は、インレットライナー内で増加するのみならず、インレットライナーの下流の比較的長い距離に亘って増加することが観察された。また、堆積ターゲットの近くに至っても、ガス速度の増加が観察された。得られたジェットフローは、プラズマ源から堆積ターゲットまでの配送時間を最小化する。実施形態によっては、ジェットフローは周囲ガスと接触する。従って、固体部材との接触面の範囲は小さくて済む。これは、反応種(又はプラズマ種)の堆積ターゲットへの配送を改善する。というのも、反応種の平均寿命が長くなるからである。
【0021】
実施形態によっては、前記インレット部は、前記引き込みラインよりも小さな内径を有するチューブ状の部品である。実施形態によっては、前記インレット部は化学的に不活性なチューブ状部品である実施形態によっては、前記インレット部は化学的に電気的に絶縁性のチューブ状部品である実施形態によっては、前記インレット部はインナーチューブを囲む、アウターチューブ又は外側部品を有する。
【0022】
実施形態によっては、前記方法は、前記反応室を真空室で囲むことを含む。
【0023】
実施形態によっては、前記方法は、前記反応室内の基板表面に連続自己飽和表面反応を遂行することを含む。
【0024】
様々な捉え方や実施形態を紹介してきたが、これらは発明の範囲を限定するために提示されたものではない。上述の実施形態は、本発明の実施にあたり使用され得る特定の態様やステップを説明するために用いられたに過ぎない。実施形態によっては、特定の例示的側面を参照してのみ提示されるかもしれない。いくつかの実施形態は他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。該実施形態は適宜組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明を、単なる例示を用いて、かつ添付図面を参照して、以下に説明する。
図1】ある実施形態に従う装置を示す。
図2】別の実施形態に従う装置を示す。
図3図2の装置の装填位置を示す。
図4】ある実施形態に従うインレット部を示す。
図5】ある実施形態に従う装置におけるガス速度のシミュレーション結果を示す。
図6】ある例示的実施形態に従う、収束ノズル構成を有する装置の概略図である。
図7】ある例示的実施形態に従う、収束-発散ノズル構成を有する装置の概略図である。
【詳細説明】
【0026】
以下の説明において、一例として、原子層堆積(ALD)技術が用いられる。
【0027】
ALD成長メカニズムの基本は当業者の知るところである。ALDは、少なくとも2種類の反応性前駆体種を少なくとも1つの基板に連続的に導入することに基づく、特殊な化学的堆積法である。基本的なALD堆積サイクルは4つの逐次的工程、すなわち、パルスA、パージA、パルスB、及びパージB、から構成される。パルスAは第1の前駆体蒸気から構成され、パルスBは別の前駆体蒸気から構成される。パージAおよびパージBでは、反応空間から気体の反応副産物や残留反応物分子をパージ(除去)するために、不活性ガスと真空ポンプが用いられる。堆積シーケンスは少なくとも1回の堆積サイクルにより構成される。所望の厚さの薄膜またはコーティングが生成されるまで堆積サイクルが繰り返されるように、堆積シーケンスが組まれる。堆積サイクルは、簡単にすることも、さらに複雑にすることもできる。例えば、堆積サイクルは、パージステップによって区切られた3回以上の反応物蒸気パルスを含むことができる。また、パージステップのいくつかは省略することもできる。例えばPEALD(プラズマALD) のような、ここで議論されるプラズマアシスト型ALDは、1つ又は複数の堆積ステップが、表面反応のために必要な追加のエネルギーをプラズマの供給を通じて提供することによってアシストされる。または、プラズマアシスト型ALDは、反応前駆体のいずれかがプラズマエネルギーによって代替されうる。後者の場合、単一前駆体によるALDプロセスを導く。従って、パルスシーケンス及びパージシーケンスは個々のケースに応じて異なりうる。これらの堆積サイクルは、論理演算装置またはマイクロプロセッサによって制御される、時間的な堆積シーケンスを形成するものである。ALDによって成長した薄膜は緻密でピンホールがなく、かつ均一の厚さを有する。
【0028】
基板処理工程に関して述べると、通常少なくとも1枚の基板が、時間的に離間した複数の前駆体パルスに反応器(又は反応室)内で曝される。それによって、連続自己飽和表面反応で材料が基板表面に堆積される。本出願の記述において、ALDという用語は、全ての適用可能はALDベース技術や、例えば次のALDの亜類型のような、等価又は密接に関連したあらゆる技術を含むものとする。MLD(Molecular Layer Deposition,分子層堆積)、例えばPEALD(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition,プラズマALD)のようなプラズマアシスト型ALD(plasma-assisted ALD)、フラッシュ改良型ALD(flash enhanced ALD)又は光ALDとして知られる光改良型ALD(photon-enhanced ALD)。
【0029】
しかし、本発明はALD技術に限定されない。本発明は広く様々な基板処理装置に生かすことができ、例えば、化学蒸着(CVD)反応装置や、原子層エッチング(ALE)反応装置のようなエッチング装置に利用することもできる。
【0030】
図1は、ある実施形態に従う装置100を示す。装置100は基板処理装置であり、例えばプラズマアシスト型ALDリアクターであることができる。装置100は反応室130及び引き込みライン(又は引き込み部)115を有する。引き込みライン115は、反応室130内に位置する堆積ターゲット160のために、プラズマ(例えばガス状のプラズマ)を導入する。堆積ターゲット160は基板(又はウェーハ)であってもよく、又は基板の束であってもよい。
【0031】
装置100は更に、真空ポンプ150へと繋がる排気ライン145を備える。反応室130の形状はおよそ、底部が丸みを帯びた円筒形であってもよい。しかし、その他の適切な形状であってもよい。実施形態によっては、排気ライン145は反応室130の丸みを帯びた底部に位置する。真空ポンプ150は反応室130に真空を提供する。実施形態によっては、装置は反応室130の周囲に外室又は真空室140を有する。真空室140と反応室130との間の中間領域に不活性シールドガスが供給されてもよい。この中間領域の圧力は、ポンプによって、反応室130内に行き渡る圧力に比して高いレベルに維持されてもよい。真空ポンプ150と同じポンプ、又は別のポンプが、中間領域からの(不活性ガスの)流出量を制御するために使用されてもよい。
【0032】
反応室内へのプラズマの引き込み115は、プラズマ源(又は離れて設置されるプラズマ源)から行われる。プラズマの引き込みは反応室130の上側から行われる。プラズマ種はプラズマ源チューブ125から下方へと移動してくる。実施形態によっては、プラズマ源チューブ125は引き込みライン115の一部を形成する。引き込みライン115は、ガスの速度を速めるように構成されたインレット部110を有する。実施形態によっては、インレット部110はプラズマ源チューブ125の下流に位置する。実施形態によっては、インレット部110は、インレット部110の上流のプラズマ源チューブ125よりも狭い内径を有するチューブ状の部品である。実施形態によっては、プラズマ源チューブ125はプラズマ源の一部を形成する。実施形態によっては、プラズマ源チューブ125とインレット部110との間に別のパイプ部が存在してもよい。
【0033】
プラズマ種がインレット部110に入るとその速度が増す。それによって、堆積ターゲット160への配達時間が短くなる。
【0034】
インレット部110は、インナーチューブ112と、インナーチューブ112を囲む外側部分又はアウターチューブ111とで形成されてもよい。アウターチューブは例えば金属材で作られてもよい。材料の例はアルミニウムや鉄である。アウターチューブは導電性であってもよい。インナーチューブは化学的に不活性であってもよい。実施形態によっては、インナーチューブ112は石英で作られてもよい。実施形態によっては、インナーチューブ112はサファイアで作られてもよい。インナーチューブは電気的に絶縁性であってもよい。アウターチューブ111は、その底部に内側に突出した形状を有してもよく、インナーチューブ112はその上に載置されうる。またアウターチューブ111はその上部に外側に突出した形状を有してもよく、それによってインレット部110をパイプ間に(固定手段113等も用いて)固定してもよい。インナーチューブ112はアウターチューブ111のインレットライナーであってもよい。インナーチューブ112はジェットノズルインレットライナーを形成してもよい。
【0035】
実施形態によっては、インレット部110は、その上部にプラズマ種をインナーチューブ112内に受け入れるための流入開口部を有する。インナーチューブ112は、インレット部110の最下部の出口へとプラズマ種が下方に流れるための、まっすぐな円筒形の経路を提供する。インレット部110は、速度が増したプラズマ種を、インナーチューブ112の内部から反応室130の内部へ放出する。実施形態によっては、図1に示されるように、プラズマ種が反応室内部に放出される際に、プラズマ種は、流路のステップ状の拡大を経験する。このため、実施形態によっては、この拡大後の流路は、横側が反応室130の円筒壁で画定される。
【0036】
図2は、ある実施形態に従う装置200を示す。装置200及びその動作は、概ね装置100に一致する。そこで、これまでの説明も参照されたい。しかし、図2に示される実施形態は、基板の装填及び取り出しに関して、図1の実施形態にはない特徴を有する。
【0037】
変形可能な引き込み部221が、インレット部110と堆積ターゲット160との間に位置する。変形可能な引き込み部221は、(例えばプラズマアシスト型ALDによる)基板処理のために閉じた状態を有し、基板の装填のために開いた状態を有する。閉じた状態では、引き込み部221は伸長した形状を有してもよく、開いた状態では短縮した形状を有してもよい。閉じた状態は図2に描かれており、開いた状態は図3に描かれている。
【0038】
変形可能な引き込み部221は入れ子状の副部品又はリング部品のセットを有しており、これらの部品は互いの中で嵌合するように動くことができるようになっている。図2及び図3に描かれる例では、副部品の数は2である。副部品201及び202は伸縮可能な構造を形成する。図2及び図3に示される例示的実施形態では、上部の副部品201は真空室140の壁に取り付けられている。取付部は真空室140の天井壁に設けられてもよく、実施形態によってはその他の適切な位置に設けられてもよい。別の実施形態では、上部の副部品はインレット部110の出口部に取り付けられてもよい。インレット部110から反応室130内部へと徐々に広がっていく流路は、前述のステップ状の拡大に代えて、このようにして提供されてもよい。実施形態によっては、図2及び図3に示されるように、下部の副部品202は、図2に描かれるように、下部副部品202と反応室130(又は反応室壁)との間の接続部を閉じたり、図3に描かれるように、反応室130内へ基板を装填するための隙間を提供したりする。
【0039】
図3に描かれるように、昇降機190の伸縮軸が、変形可能な引き込み部221に取り付けられるか接続している。昇降機190は変形可能な引き込み部221を制御する。基板260(又は基板の束)は、開いた状態に縦方向に変形している引き込み部221により形成された装填のための隙間を通じて、装填機(エンドエフェクタや装填ロボット等)によって、装填ポート205から反応室130内へ装填される。
【0040】
プラズマ種は、プラズマ源チューブ125を通って、またインレット部を通って増加して速度で、プラズマ源からインレット部110の出口へと鉛直流として進み、それから堆積ターゲット160へと徐々に広がっていく流路を進む。
【0041】
実施形態によっては、保護用の不活性ガス流235がインレット部110の周りに下向きに提供される(図2参照)。
【0042】
図4は、ある実施形態に従うインレット部110を示す。インレット部110は、インナーチューブ又はインレットライナー112を収容するアウターチューブ111を有する。オプションとして、インレット部110は、少なくとも1つの側面に、アウターチューブ111を径方向に貫通するがインナーチューブ112には達しない開口部114を有する。開口部114は、横方向からプラズマを観察するための要素である。実施形態によっては、開口部114内に圧力センサ118が配される。
【0043】
図5は、ある実施形態に従う装置におけるガス速度のシミュレーション結果を示す。この装置は図1-3を用いて説明してきたタイプの装置であり、特に図2-3を用いて説明してきたタイプの装置である。従って装置は、プラズマ源チューブ125及びそれに続くインレット部を有し、インレット部は図示されているインナーチューブ112を有し、インレット部の内径はチューブ125の内径よりも狭い。インレット部の後には、反応室130内の堆積ターゲット160に向かって広がっていく空間(部分121等)が続く。シミュレーションために、プラズマ源チューブ125の内径は22mm、インナーチューブ112の内径は15mmとした。ガス速度の増加はチューブ112内で観察されただけではなく、部分121の下流までの比較的長い距離に亘って観察され、堆積ターゲット160の近くにおいても観察された。
【0044】
図6は、別の実施形態に従う装置の概略図である。この実施形態においては、インレット部110(前に説明した図1-4も参照)は、収束するノズル構成605によって実装される。図6に描かれる実施形態においては、プラズマ反応物(又はプラズマ種)は、矢印601で描かれるように、ノズル部112'に入る。ノズル部112'は、上に説明したインナーチューブ又はインレットライナー112と同様のものでもよいが、形状や直径が変化しない流路である変わりに、ノズル部112'は収束する流路を提供する。例えばノズル部112'は、内部に収束する流路を形成する、上下逆さまに配された円錐台112'を含んでもよい。ガスの速度は、ノズル部112'により提供される収束流路内で加速される。ノズル部112'の反応室端において、流路は段階的な拡張を呈する。この部分において、プラズマ種は増加した速度で(反応室130内の)堆積ターゲット160へと放出される(矢印602参照)。プラズマ以外の前駆体の反応室130内への引き込みは、別の経路を通じて行われる。すなわち、収束ノズル構成605を通過しない経路を通じて行われる。実施形態によっては、プラズマ以外の前駆体の反応室130内への引き込みは、(収束ノズル構成605の下流において、)反応室130の1つ又は複数の側壁から行われる。プラズマ種の反応室への流れの方向は反応室の頂部からである。
【0045】
図7は、別の実施形態に従う装置の概略図である。この実施形態では、装置は、収束ノズル構成605の代わりに、収束-拡大ノズル構成705を有する。図7に描かれる実施形態においては、プラズマ反応物(又はプラズマ種)は、矢印701で描かれるように、ノズル部112''に入る。ノズル部112''はノズル部112'に似ているが、ノズル部112''は、ノズル部112'により提供される単なる収束路の代わりに、収束路の後は広がっていく(拡大していく)流路を提供する。実施形態によっては、収束路部及び拡大路部は、これらの間に、流路のステップ状の拡大を提供する連絡部を有する。このステップ状の拡大は、流路の側壁との衝突によるプラズマの再結合を防ぐためである。例えば、ノズル部112''は、収束する流路を提供する、上下逆さまに配された円錐台を備えてもよく、またそれに続いて、広がっていく(拡大する)流路を内部に形成する別の円錐台を221'を有してもよい。ガスの速度は、ノズル部112''により提供される収束流路内で加速される。収束路と拡大路との連絡部において、プラズマ種は増加した速度で(反応室130内に位置する)堆積ターゲット160へと放出される(矢印702参照)。プラズマ以外の前駆体の反応室130内への引き込みは、別の経路を通じて行われる。すなわち、収束-拡大ノズル構成705を通過しない経路を通じて行われる。実施形態によっては、プラズマ以外の前駆体の反応室130内への引き込みは、(収束-拡大ノズル構成705の下流において、)反応室130の1つ又は複数の側壁から行われる。プラズマ種の反応室への流れの方向は反応室の頂部からである。収束-拡大ノズル構成705によれば、超音速のガスジェットさえも可能となる。
【0046】
図6図7に示された実施形態により紹介した、収束ノズル構成や収束-拡大ノズル構成は、その他の実施形態にも適用可能である。同様に、他の実施形態の特徴も、図6図7に示された実施形態にも適用可能である。
【0047】
本件において開示される1つ又は複数の実施例の技術的効果のあるものを以下に示す。ただし、これらの効果は特許請求の範囲および解釈を制限するものではない。技術的効果の一つは、堆積ターゲットへの反応種の送達の改善である。別の技術的効果は、金属部分と反応プラズマ種との間に化学的耐性のあるバリアを形成することである。
【0048】
以上の説明により、本発明の特定の実装および実施形態の非限定例を用いて、発明者によって現在考えられている、本発明を実施するための最良の形態の完全かつ有益な説明を提供した。しかしながら、当業者には明らかであるように、上述の実施形態の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段を用いて、他の実施形態に実装することができる。
【0049】
さらに、以上に開示した本発明の実施形態の特徴は、対応する他の特徴を用いることなく用いられてもよい。然るに、以上の説明は、本発明の原理を説明するための例に過ぎず、それを限定するものではないと捉えるべきである。よって、本発明の範囲は添付の特許請求のみによって制限されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室と;
堆積ターゲットのために前記反応室内へプラズマ種を導入するためのプラズマ引き込みラインと;
を備え、前記プラズマ引き込みラインは、ガスの速度を速めるように構成されたインレット部を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記インレット部は、前記引き込みラインよりも小さな内径を有するチューブ部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インレット部は化学的に不活性なチューブ状の部品である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記インレット部は電気的に絶縁性であるチューブ状の部品である、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記インレット部は着脱可能なチューブ状のインレットライナーを備える、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記インレット部は、インナーチューブと、前記インナーチューブを囲む外側部分又はアウターチューブとを有する、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記反応室を少なくとも部分的に囲む真空室を備える、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項8】
ガス速度を増加させるための収束ノズル構成又は収束-拡大ノズル構成を有する、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記反応室内で基板表面に連続自己飽和表面反応を遂行する、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項10】
基板処理装置において、堆積ターゲットのために、プラズマ引き込みラインを通じて反応種を反応室内に導入することと;
インレット部によって、前記プラズマ引き込みライン内でガス速度を増加させることと;
を含む、方法。
【請求項11】
前記インレット部は、前記引き込みラインよりも小さな内径を有するチューブ部を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インレット部は化学的に不活性なチューブ状の部品である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記インレット部は電気的に絶縁性であるチューブ状の部品である、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記インレット部は着脱可能なチューブ状のインレットライナーを備える、請求項10から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記インレット部は、インナーチューブと、前記インナーチューブを囲む外側部分又はアウターチューブとを有する、請求項10から14のいずれかに記載のオフ法。
【請求項16】
前記反応室を真空室で囲むことを含む、 請求項10から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記反応室内の基板表面に連続自己飽和表面反応を遂行することを含む、 請求項10から16のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】