(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】炭酸塩結合圧縮物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/24 20060101AFI20220824BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20220824BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20220824BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20220824BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20220824BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B28B11/24
C04B40/02
C04B18/08 Z
C04B18/10 A
C04B18/14 F
B28B3/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576437
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2020068002
(87)【国際公開番号】W WO2020260568
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521557654
【氏名又は名称】オービックス プロダクションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン メヘレン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ファン ミールロー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】マイェル,ニック
【テーマコード(参考)】
4G054
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G054AA01
4G054AA20
4G054BA01
4G054BA29
4G054DA02
4G055AA01
4G055BA02
4G055BA42
4G112RA02
4G112RC00
(57)【要約】
炭酸塩結合圧縮物を製造する方法であって、この方法は、粒子状の炭酸化可能な材料を提供する工程と、粒子状材料を圧縮して圧縮体を形成する工程と、この圧縮体を炭酸化する工程と、を含む。圧縮体の炭酸化は、0.5バール未満の炭酸化ガス中において低二酸化炭素分圧で、開始され、続いて少なくとも1時間継続され、その後、圧縮体の炭酸化は、0.5バール超である炭酸化ガス中において高二酸化炭素分圧で、少なくとも8時間継続される。低二酸化炭素分圧及び高二酸化炭素分圧による2段階で炭酸化することによって、所定の炭酸化時間内、特に約24時間の炭酸化時間内に、炭酸化圧縮体のより高い圧縮強度を達成することができ、これにより、毎日新しい圧縮体を炭酸化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸塩結合圧縮物を製造するための方法であって、以下の工程:
-粒子状炭酸化可能材料を準備する工程と;
-前記粒子状材料を圧縮して、圧縮体を形成する工程と;
-二酸化炭素を含有するガスを用いて所定の期間にわたり前記圧縮体を炭酸化して炭酸塩を生成し、これにより、前記圧縮体を前記炭酸塩結合圧縮物に変換する工程と;
を含み、
前記圧縮体の炭酸化が開始され、続いて前記ガス中の低二酸化炭素分圧で少なくとも1時間継続され、その後、前記圧縮体の炭酸化が前記ガス中の高二酸化炭素分圧で少なくとも8時間継続され、前記低二酸化炭素分圧が0.5バール未満であり、前記高二酸化炭素分圧が0.5バール以上である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記圧縮体の炭酸化を開始した後、前記圧縮体の前記炭酸化が、前記ガス中の前記低二酸化炭素分圧で少なくとも1.5時間継続されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧縮体の炭酸化を開始した後、前記圧縮体の炭酸化が、前記ガス中の前記低二酸化炭素分圧で、16時間未満、好ましくは12時間未満、より好ましくは8時間未満継続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮体の炭酸化が、前記ガス中の前記高二酸化炭素分圧で、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも16時間継続されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記低二酸化炭素分圧を有する前記ガスが、5バール未満、好ましくは3バール未満、より好ましくは2バール未満、最も好ましくは1.5バール未満の圧力であり、前記圧力が、好ましくは大気圧以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記高二酸化炭素分圧を有する前記ガスが、5バール未満、好ましくは3バール未満、より好ましくは2バール未満の圧力であり、前記圧力が、好ましくは前記大気圧以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記低二酸化炭素分圧が、0.45バール未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記低二酸化炭素分圧が、0.05バール超、好ましくは0.1バール超、より好ましくは0.15バール超であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記高二酸化炭素分圧が、0.6バール超、好ましくは0.7バール超、より好ましくは0.75バール超であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の期間が、32時間未満、具体的には28時間未満、より具体的には24時間以下を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記所定の期間が、16時間超、具体的には18時間超、より具体的には20時間超を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記圧縮体の炭酸化が、50℃未満、好ましくは45℃未満、より好ましくは40℃未満の温度を有する前記ガスを用いて開始されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記圧縮体の炭酸化が、20℃超、好ましくは25℃超、より好ましくは35℃超である温度を有する前記ガスを用いて開始されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮体の炭酸化中に、前記ガスの温度が、50℃超、好ましくは55℃超、より好ましくは60℃超である温度まで上昇されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子状材料が、金属製造プロセスからの炭酸化可能なスラグ、リン製造からのスラグ、ボトムアッシュ及び/又はフライアッシュを含み、前記粒子状材料が、好ましくは製鋼スラグ、特にステンレス鋼スラグを含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の工程:粒子状炭酸化可能材料を提供する工程と;粒子状材料を圧縮して、圧縮体を形成する工程と;二酸化炭素を含有するガスを用いて所定の期間にわたり前記圧縮体を炭酸化して炭酸塩を生成し、これにより、前記圧縮体を炭酸塩結合圧縮物に変換する工程と;を含む、炭酸塩結合圧縮物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
副生産物として炭酸化可能材料を製造する、様々な工業的製造プロセスが存在する。これらの副生産物とは、例えば、フライアッシュ、ボトムアッシュ(特に、都市ごみ焼却ボトムアッシュ)、並びにリンの製造中に産生されるスラグ、又は亜鉛、銅、並びに鉛及び鉄、若しくは鋼などの、鉄合金若しくは非鉄合金の製造中に産生されるスラグである。また、特に酸化カルシウムを含有する場合、例えば製鋼炉からのエアフィルタからのダストも、炭酸化可能である。これらの副生産物のいくつかは、異なる用途に使用することができる。溶鉱炉スラグは、例えば道路建設、及びまた、セメントの製造にも使用することができる。高い中和値を有する一般的な製鋼スラグ(例えば、LDスラグ)などのいくつかのスラグはまた、例えば、土壌改良剤としても使用することができる。しかしながら、ボトムアッシュ及びステンレス鋼スラグなどの他の材料は、それらの浸出挙動の観点から問題となるかなりの量の重金属を含有する。
【0003】
これらの家庭及び産業廃棄物材料の経済的及び環境的両方の影響を制限するためには、これらの材料を処理する方法、すなわち、これらの廃棄材料を経済的に価値のある材料に変換する方法を開発する試みがますますなされている。これらの廃棄材料の多くはアルカリ性であり、酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウム、並びに酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムなどの、炭酸化可能物質を含む。他の物質、例えば廃棄材料に含有されるケイ酸カルシウムもまた、炭酸化可能であり得る。これらの物質の炭酸化は、良好な機械的品質を有する材料を得ることを可能にすることが知られている。更に、炭酸化はまた、重金属などの汚染物質の浸出を防止するのに役立ち得る。
【0004】
例えば、WO-A-2007/096671では、建設用材料として機能し得る二次粒状物を製造するために、回転ドラム中の廃棄物の加速炭酸化を進めることが提案されている。WO-A-2009/024826では、金属の抽出又は処理からの廃棄物に対して、同様のプロセスが提案されている。これらのプロセスによって得られた材料では、廃棄物中に存在する石灰の炭酸化は、石灰マトリックスを形成し、廃棄物に含有される重金属の浸出の減少と、機械的強度の向上との両方を確実にする。
【0005】
ステンレス鋼スラグは、比較的大量のクロムを含有し、また多くの場合ニッケル及び/又はモリブデンも含有する、特定のグループのスラグである。EP-B-0837043、EP-B-1055647、及びEP-B-1146022に開示されているように、ステンレス鋼スラグの浸出問題は、製鋼スラグを粉砕し、そこから価値のあるステンレス鋼粒子を除去し、そして残りの粉砕スラグの異なる画分を、例えばコンクリート又はアスファルト中の細骨材又は粗骨材として、限られた用途で適用することによって、解決することができる。しかしながら、そのより高いγケイ酸二カルシウム(γ-C2S)含有量のために、これらの粉砕された製鋼スラグのより微細画分(0~0.5mm)は高い吸水特性を有し、したがってコンクリート又はアスファルト用途に使用するのに適していない。
【0006】
粉砕されたステンレス鋼スラグのより粗画分から除去された微粉体の高吸水率を低減して、これらの粗画分だけでなく微粉体もまたコンクリート又はアスファルトに使用できるようにするために、WO2009/090219は、これらの微粉体を比較的低い圧力下において凝集させ、続いて炭酸化することを提案している。このようにして、吸水特性が低く、コンクリート又はアスファルトに使用するのに必要な強度を有する骨材を製造することができた。
【0007】
粒子状の炭酸化可能材料、特に0~0.5mmのサイズを有する粉砕されたステンレス鋼スラグの微粉体から出発して、より価値のある建設用材料を製造するための別の炭酸化方法は、WO-A-2009/133120に開示されている。この方法では、粒子状材料は最初に5~65MPaの比較的高い圧縮圧力で圧縮され、得られた圧縮体は、続いて、比較的高い温度及び圧力下において炭酸化される。このようにして、比較的高い圧縮強度を有する炭酸化圧縮体を製造することができる。圧縮体の気孔率及び固有透磁率を制御することによって、及び数時間(より具体的には、高圧力及び高温度において18時間)炭酸化することによって、182kg/cm2(=17.8MPa)の圧縮圧力で圧縮された0~500μmの微細なステンレス鋼スラグ画分を用いて、26~66MPaの圧縮強度が得られた。この従来技術の方法の欠点は、比較的小さなブロックが炭酸化された(62×62×32mm及び120×55×46mm)という事実にもかかわらず、高いガス圧、つまり5バールを超える圧力が必要とされ、これによりプロセスは非常に費用がかかることである。
【0008】
US2017/0073270は、炭酸塩結合建築用ブロックが、スラグ砂と製鋼スラグバインダとの混合物から出発して製造される、炭酸化方法を開示している。例「Sample Building Product1」では、鋼スラグバインダは、非常に高い塩基性度(39.08重量%CaO対12.47重量%SiO2)を有するEAFスラグとBOFスラグとの混合物であり、その結果、製鋼スラグバインダは、二酸化炭素と容易に反応して必要な炭酸塩を生成することができる非常に大量の遊離石灰を含む。混合物は、約62重量%の製鋼スラグバインダ及び約38重量%のスラグ砂を含有した。混合物を最初に12MPaの高圧縮圧力で圧縮し、その後、圧縮体を乾燥させ、1.5バールの一定圧力に保った二酸化炭素で24時間炭酸化した。炭酸化チャンバに入れる前に、二酸化炭素ガスを22℃に加熱した。
【0009】
炭酸化工程後、炭酸化ブロックを更に35日間水和させて、その圧縮強度を高めた。高圧縮圧力、大量のバインダ、非常に長い炭酸化時間、及び生成した比較的大量の炭酸塩(6.6%CO2取込み)にもかかわらず、22.8MPaの圧縮強度でしかなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO-A-2007/096671
【特許文献2】WO-A-2009/024826
【特許文献3】EP-B-0837043
【特許文献4】EP-B-1055647
【特許文献5】EP-B-1146022
【特許文献6】WO2009/090219
【特許文献7】WO-A-2009/133120
【特許文献8】US2017/0073270
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、所定の炭酸化時間内、特に、毎日新しい圧縮体を炭酸化することができるように、約24時間の炭酸化時間内に、圧縮され炭酸化された圧縮体のより高い圧縮強度の獲得を可能にする、炭酸塩結合圧縮物を製造するための新規方法を提供することである。
【0012】
この目的のために、本発明の方法は、前記圧縮体の炭酸化が開始され、続いて前記ガス中の低二酸化炭素分圧で少なくとも1時間継続され、その後、前記圧縮体の炭酸化が前記ガス中の高二酸化炭素分圧で少なくとも8時間継続され、前記低二酸化炭素分圧は0.5バール未満であり、前記高二酸化炭素分圧は0.5バール以上であることを特徴とする。
【0013】
二酸化炭素分圧とは、圧縮体を炭酸化するために使用されるガス中の二酸化炭素の分圧として定義される。このガスが完全に二酸化炭素からなる(consists of)場合、二酸化炭素の分圧は、このガスの全圧に等しい。実際には、しかしながら、ガスとは通常、複数のガスの混合物である。特に、ガスは、二酸化炭素リッチな空気からなり(consists of)得る。そして、このようなガス中の二酸化炭素分圧は、このガスの全圧、及びこのガスに含有される二酸化炭素の体積パーセントによって決定される。示されている圧力は絶対圧力である。
【0014】
本発明者らは、最初に低二酸化炭素分圧で炭酸化し、続いてそれよりも高い二酸化炭素分圧で炭酸化することにより、同じ期間内、特に24時間の炭酸化時間内に、より高い圧縮強度を達成できることを見出した。より高い二酸化炭素分圧、すなわち炭酸化チャンバ内のより高い二酸化炭素濃度及び/又は炭酸化チャンバ内のより高いガス圧力は、炭酸化プロセスを加速し、したがってより多くの炭酸塩を生成することが知られている。例えばEP2276714Bの
図7に示されるように、より高い炭酸塩含有量は、炭酸化物のより高い圧縮強度と更に相関している。本発明によれば、圧縮体を最初に低二酸化炭素分圧で炭酸化し、続いてより高い二酸化炭素分圧で炭酸化すると、驚くべきことに、炭酸化物の圧縮強度が高くなった。実験は、例えば、0~500μmの粒径及び5~11%の間で変化する含水量を有する微細ステンレス鋼スラグバインダが、4MPaの比較的小さい圧力でスラグバインダを圧縮し、0.4バールの二酸化炭素分圧(大気圧で40体積%のCO
2)で、最初に2時間、続いて0.8バールの二酸化炭素分圧(大気圧で80体積%のCO
2)で18時間、圧縮物を炭酸化することによって、US2017/0073270で得られた約22MPaの上記圧縮強度よりもかなり高い46~54MPaの圧縮強度を有する炭酸化物を製造することを可能にしたことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記圧縮体の炭酸化を開始した後、その炭酸化は、前記ガス中における前記低二酸化炭素分圧で少なくとも1.5時間継続される。本発明に係る方法の更なる実施形態では、前記圧縮体の炭酸化を開始した後、その炭酸化は、前記ガス中の前記低二酸化炭素分圧で、16時間未満、好ましくは12時間未満、より好ましくは8時間未満継続する。前記ガス中の低二酸化炭素分圧を有する圧縮体の炭酸化は、したがって、炭酸化を開始した後、1~16時間、好ましくは1.5~12時間、より好ましくは1.5~8時間、最も好ましくは1.5~6時間、好ましくは行われる。
【0016】
これらの実施形態の利点は、炭酸化期間の充分な時間が高二酸化炭素分圧を有するガスでより多くの炭酸塩を生成するために残っているが、一方で炭酸化圧縮体の強度が改善される点である。
【0017】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記圧縮体の炭酸化は、前記ガス中の前記高二酸化炭素分圧で、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも16時間継続することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記低二酸化炭素分圧を有する前記ガスは、5バール未満、好ましくは3バール未満、より好ましくは2バール未満、最も好ましくは1.5バール未満の圧力であり、前記圧力は、好ましくは大気圧以上である。本発明に係る方法の一実施形態では、前記高二酸化炭素分圧を有する前記ガスは、5バール未満、好ましくは3バール未満、より好ましくは2バール未満であり、前記圧力は、好ましくは大気圧以上である。
【0019】
本明細書において、ガス圧又はガス分圧は、絶対圧力である。これらの実施形態で示される比較的低い圧力は、高圧に耐える必要のない人工気候室で炭酸化を行うことができ、これは、好ましくは部分真空が生成される必要がないという点で有利である。したがって、必要な炭酸化設備に過度に高い投資をすることなく、大量製造が可能である。
【0020】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記低二酸化炭素分圧は、0.45バール未満である。
【0021】
二酸化炭素分圧が低いほど、炭酸化速度は遅くなる。本発明によれば、圧縮体をより遅い炭酸化速度で最初に炭酸化した場合、より強い炭酸化物を得ることができることが分かった。
【0022】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記低二酸化炭素分圧は、0.05バール超、好ましくは0.1バール超、より好ましくは0.15バール超である。
【0023】
この実施形態の利点は、炭酸化工程の初期段階中にこのような二酸化炭素分圧を使用することによって、高い圧縮強度を達成できると共に、初期低圧炭酸化段階の所要時間を短縮することができる点である。
【0024】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記高二酸化炭素分圧は、0.6バール超、好ましくは0.7バール超、より好ましくは0.75バール超である。
【0025】
この実施形態の利点は、炭酸化工程の第2段階中のガス内の二酸化炭素分圧が高いほど、炭酸塩がより迅速に生成し、必要な圧縮強度が達成される点である。したがって、換言すれば、炭酸化工程の期間を短縮することができ、又は同じ炭酸化期間内により高い圧縮強度を達成することができる。
【0026】
本発明に係る方法の一実施形態では、圧縮体が炭酸化される所定の期間は、32時間未満、具体的には28時間未満、より具体的には24時間以下を含む。
【0027】
このような短い炭酸化時間により、高い製造能力を達成することができる。特に、夜間シフト作業を手配する必要なく、毎日新たな量の炭酸化物を製造することが可能である。
【0028】
本発明に係る方法の一実施形態では、圧縮体が炭酸化される所定の期間は、16時間超、具体的には18時間超、より具体的には20時間超を含む。
【0029】
このような炭酸化期間は、本発明に従って圧縮体を炭酸化する場合、すなわち低二酸化炭素分圧とそれに続く高二酸化炭素分圧で圧縮体を炭酸化する場合、比較的高い圧縮強度を達成することを可能にする。
【0030】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記圧縮体の炭酸化は、50℃未満、好ましくは45℃未満、より好ましくは40℃未満の温度を有する前記ガスを用いて開始される。
【0031】
このようなより低い初期温度の利点は、炭酸化速度がより遅くなり、そしてより高い圧縮強度を達成することができる点である。
【0032】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記圧縮体の炭酸化は、20℃超、好ましくは25℃超、より好ましくは35℃超の温度を有する前記ガスを用いて開始される。
【0033】
このような高温を用いることによって、圧縮体の炭酸化がより早く開始し、したがって短期間で充分に高い圧縮強度を得ることができる。
【0034】
本発明に係る方法の一実施形態では、前記圧縮体の炭酸化中に、前記ガスの温度は、50℃超、好ましくは55℃超、より好ましくは60℃超である温度まで上昇する。好ましくは、前記ガスの温度は、95℃未満、より好ましくは90℃未満に維持される。
【0035】
発熱性水和/炭酸化反応により、温度は炭酸化プロセス中に自動的に上昇する。特に炭酸化工程の第2段階中におけるより高い温度は、炭酸化プロセスを更に加速するが、しかしながら、達成され得る圧縮強度に悪影響を及ぼすことはない。
【0036】
本発明に係る方法の一実施形態では、粒子状材料は、金属製造プロセスからの炭酸化可能なスラグ、リン製造からのスラグ、ボトムアッシュ及び/又はフライアッシュを含み、粒子状材料は、好ましくは製鋼スラグ、特にステンレス鋼スラグを含む。
【0037】
本発明に係る方法の一実施形態では、圧縮されて前記圧縮体を形成する粒子状材料は、乾燥重量で、少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%の含水量を有する。
【0038】
炭酸化工程に必要な水の最小量は、特に乾燥重量で少なくとも1%であるが、一方でより高い含水量は、圧縮体のより高いグリーン強度(green strength)を達成するのに有利である。
【0039】
本発明の他の特徴及び利点は、いくつかの特定の実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【0040】
本発明は、概して、粒子状の炭酸化可能な材料を圧縮及び炭酸化することによって、炭酸塩結合圧縮物を製造する方法に関する。
【0041】
「粒子状材料」又は「粒状材料」という表現は、ばらばらになった粒子からなる(consists of)任意の材料を指す。これらの粒子は、「粒子状材料」という表現が粗い又は細かい粒だけでなく、非常に細かい粒、特に粉末も包含するように、異なるサイズの粒子であり得る。
【0042】
粒子状材料は、炭酸化可能な1つの粒子状材料からなって(consist of)もよく、又は炭酸化可能な少なくとも1つの第1の粒子状材料と、炭酸化可能であってもなくてもよい少なくとも1つの第2の粒子状材料との混合物からなり(consist of)得る。炭酸化可能でない粒子状材料は、例えば、海砂又は川砂など天然砂を含む。
【0043】
粒子状材料の粒度分布、又は第1の粒子状材料と第2の粒子状材料との混合物の粒度分布は、より高い充填密度、又は言い換えればより小さい全気孔率を達成するように選択されることが好ましい、なぜなら、これにより、より高い圧縮強度を得ることができるからである。炭酸化工程前の圧縮体の圧縮強度、すなわち圧縮体のグリーン強度、及び炭酸化圧縮体の圧縮強度は、欧州規格EN12390-3:2009に従って決定される。
【0044】
炭酸化可能な粒子状材料は、すなわち全体としての炭酸化可能な材料、又は第1の特定の材料と第2の特定の材料との上記混合物の場合、第1の粒子状材料及び/又は第2の粒子状材料が炭酸化可能である場合、第1の粒子状材料及び/又は第2の粒子状材料は、好ましくは副生産物又は廃棄物を含む。炭酸化可能な粒子状材料は、特に少なくとも8.3のpHを有し、少なくとも1つのアルカリ土類金属の供給源、特にカルシウムの供給源を含む。炭酸化可能な材料のpHは、粒子状材料が4.5の液体/固体比で18時間浸漬された脱塩水のpHとして定義される。炭酸化可能な材料は、異なる結晶相及び非晶相を含有してもよく、好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属ケイ酸塩相、特に結晶性ケイ酸二カルシウムを含有する。
【0045】
炭酸化可能な粒子状材料はまた、好ましくは酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを含み、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの総量は、好ましくは乾燥重量で少なくとも1%、より好ましくは乾燥重量で少なくとも2%である。また、酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを含有してもよい。これらの酸化物及び水酸化物は、非晶形及び/又は結晶形、特に、ポルトランダイト(Ca(OH)2)、遊離石灰(CaO)、ブルーサイト(Mg(OH)2)の形態、及びペリクレース(MgO)の形態であり得る。これらはまた、様々な比のマグネシウム及びカルシウム、並びに酸素を含む、非晶形又は結晶形で存在し得る。最初に、これらは高温下において生成されることが多いため、新たに生成された炭酸化可能材料は、通常、水酸化物を含有せず、酸化物のみを含有し、水酸化物は、炭酸化可能材料のエイジング(風化)時又は炭酸化工程中に形成される。空気はまた、少量の二酸化炭素を含有するので、炭酸化可能な材料のエイジングの際に、水酸化物の一部が(自然炭酸化によって)炭酸塩へと更に変換される。
【0046】
多種多様な炭酸化可能材料が、本発明に係る方法に従って処理されるのに適している。好適な炭酸化可能な材料は、例えば、ボトムアッシュ、より具体的には、廃棄物、特に都市廃棄物の焼却中に生成されるボトムアッシュ(すなわち、都市ごみ焼却ボトムアッシュ)である。フライアッシュ、特に非石炭フライアッシュも炭酸化可能であり、更に、製鋼炉、特に電気アーク炉からのフィルタダスト(EAFフィルタダスト)も炭酸化可能である。しかしながら、最も好ましい炭酸化可能材料は、金属製造プロセス(銑鉄、鋼、ステンレス鋼の製造、及び銅及び亜鉛などの非鉄金属の製造)及びリンの製造から生じる、スラグ材料である。使用される炭酸化可能材料は、好ましくは非水硬性、又は実質的に非水硬性の材料である。非水硬性材料は、水との反応によって(特に、CSH形成によって)そのような沈降性マトリックスを生じることができないので、固体物は、この材料の炭酸化によって依然として製造することができる。
【0047】
スラグ材料は高炉スラグであってもよいが、好ましくは製鋼スラグ、より好ましくはステンレス鋼製造スラグである。製鋼スラグは、転炉スラグ(LDスラグなど)又は電気アーク炉スラグ(EAFスラグ)であってもよい。一般的な製鋼スラグは、クロム及びニッケルなどの重金属を含有しないか、又は少量しか含有せず、したがってステンレス鋼スラグで生じるような浸出の問題がない。ステンレス鋼スラグは、一般に、3000mg/kgを超えるクロム、通常は更に5000mg/kgを超えるクロムを含有する。これらはまた、ニッケル、より具体的には300mg/kgを超える、特に400mg/kgを超える、しばしば500mg/kgを超えるニッケルを含有し得る。これらの炭酸化可能なスラグを炭酸化することによって、これらの重金属の浸出を低減又は防止することさえできる。
【0048】
製鋼スラグ、特にステンレス鋼スラグは、通常、粒状材料を製造するために粉砕され、粒状材料から金属画分をリサイクルできる。粉砕されたステンレス鋼スラグの粗画分は、アスファルトのコンクリート中の粗骨材又は細骨材として使用することができる。微細画分、特に0~500μmの画分は、しかしながら、吸水特性が高すぎるため、これらの用途には適していない。微細画分、すなわち、いわゆる微粉体は、実際には、βケイ酸二カルシウム(β-C2S)の一部がγ多形で更に変換される場合、液体スラグの凝固中に生成される大量のγケイ酸二カルシウム(γ-C2S)を含有する。生じた膨張に起因して、亀裂が形成され、高い吸水特性を有するいわゆる落下スラグ(falling slag)が生成される。特に乾燥重量で少なくとも3%、より具体的には乾燥重量で少なくとも5%、更により具体的には乾燥重量で少なくとも7%のγ-C2Sを含有するこのステンレス鋼スラグ材料は、本発明の方法において、好ましくは粒子状材料として、又は粒子状材料の1つとして使用される。
【0049】
本発明の方法では、粒子状の炭酸化可能な材料は、圧縮体を製造するために最初に圧縮される。これは、金型内に材料を入れ、その中の材料を振動又は加圧することによって行うことができる。炭酸化可能な材料を圧縮した後、製造された圧縮体は、二酸化炭素を含有するガスによって炭酸化され、それにより、圧縮体を炭酸塩結合圧縮物に変換する炭酸塩を生成する。
【0050】
圧縮体を金型から取り出し、圧縮体を炭酸化チャンバ内に配置する。このチャンバは、比較的高いガス圧が加えられるオートクレーブであってもよい。しかしながら、本発明に係る方法では、炭酸化工程は、好ましくは、より低いガス圧、特に、5バール未満、好ましくは3バール未満、より好ましくは2バール未満、最も好ましくは1.5バール未満の全ガス圧で行われる。炭酸化工程は、特に、大気圧で行うことができる。したがって、より安価な人工気候室を、炭酸化チャンバとして使用することができる。
【0051】
圧縮体は、好ましくは16~32時間、より好ましくは18~28時間、最も好ましくは20~24時間にわたり炭酸化される。実際には、毎日新たな量の圧縮体を炭酸化することができるように、最大24時間の総炭酸化時間が好ましい。
【0052】
炭酸化圧縮体の圧縮強度は、粒子状材料の性質及び粒度分布、圧縮度(すなわち、気孔率)、並びに炭酸化反応によって炭酸化圧縮体内に生成される炭酸塩の量などの、数多くの要因に依存する。同じ期間内に、より高い温度及びより高い二酸化炭素分圧で、より多くの炭酸塩を生成することができる。
【0053】
しかしながら、本発明によれば、所定の炭酸化期間内に、可能な限り多くの炭酸塩を生成することによってではなく、最初に、炭酸化工程の初期段階中に、炭酸化チャンバ内の低二酸化炭素分圧でよりゆっくりと圧縮体を炭酸化し、続いて、炭酸化工程の次の段階中に高二酸化炭素分圧でより迅速に圧縮体を炭酸化することによって、より高い圧縮強度を達成できることが分かった。
【0054】
本発明に係る方法では、圧縮体の炭酸化が開始され、続いて圧縮体の炭酸化は、炭酸化チャンバ内における低二酸化炭素分圧で少なくとも1時間継続され、その後、炭酸化チャンバ内における高二酸化炭素分圧で少なくとも8時間継続される。低二酸化炭素分圧は0.5バール未満であり、一方で、高二酸化炭素分圧は0.5バール以上である。
【0055】
圧縮体の炭酸化は、周囲空気よりも高い二酸化炭素含有量を有する炭酸化チャンバ内において、圧縮体がガスと接触した瞬間から開始される。続いて、圧縮体が炭酸化チャンバ内で低二酸化炭素分圧を提供するガスと接触した場合、炭酸化工程の次の段階が開始する。通常、圧縮体は、特に炭酸化チャンバ内に二酸化炭素ガスを供給することによって、二酸化炭素分圧が供給された後に、最初に炭酸化チャンバに入れられる。低二酸化炭素分圧での炭酸化段階の間、二酸化炭素含有量又は対応する分圧を監視することができ、二酸化炭素分圧を必要な範囲内に維持するために、追加の二酸化炭素を炭酸化チャンバに供給することができる。二酸化炭素は炭酸化工程中に消費されるので、通常は炭酸化チャンバ内に補充されるべきである。高二酸化炭素分圧で炭酸化段階を開始するために、追加の二酸化炭素を炭酸化チャンバに供給して、炭酸化チャンバ内の二酸化炭素分圧を増加させることができる。
【0056】
上記実施形態では、炭酸化チャンバ内の圧力を一定に保つことができ、二酸化炭素分圧は、炭酸化チャンバ内に含有されるガス中の二酸化炭素含有量を変化させることによって変更される。
【0057】
炭酸化チャンバ内のガスはまた、低二酸化炭素含有量を有するガスを含有する第1の容器に、続いてより高い二酸化炭素含有量を有するガスを含有する第2の容器にリサイクルすることができる。このようにして、炭酸化チャンバを開放して炭酸化チャンバから炭酸化圧縮体を取り出す際に、大気中への二酸化炭素の損失を回避又は低減することができる。あるいは、炭酸化工程の終了時、炭酸化チャンバ内の二酸化炭素含有量は、炭酸化圧縮体を炭酸化チャンバから除去する前に、最初に低下させることができる。
【0058】
低二酸化炭素含有量を有するガスは、煙道ガスであってもよい。大気圧で、その煙道ガス内の二酸化炭素分圧が炭酸化工程の第1の段階のためには充分に高くない場合、煙道ガスの圧力を上昇させることができる。0.4バールの二酸化炭素分圧が必要とされ、煙道ガスが20体積%の二酸化炭素を含有する場合、その煙道ガスは、炭酸化チャンバ内で約2バールの圧力にされるべきである。
【0059】
また、圧縮体が、低二酸化炭素分圧が維持される第1のゾーンを通って導かれ、続いて、高二酸化炭素分圧が維持される第2のゾーンを通って導かれる、連続炭酸化システムも提供することができる。そのようなシステムは、特に、ガスがシステムから逃げるのを回避するために、様々なゾーンが大気圧にある場合に行うことができる。
【0060】
圧縮体を炭酸化するために使用されるガスの二酸化炭素含有量を調節することによって二酸化炭素分圧を調節する代わりに、又はこれに加えて、より高い二酸化炭素分圧が必要な場合にそのガスの圧力を増加させることもまた可能である。これは、炭酸化チャンバ内において、炭酸化チャンバが密閉されている場合に、追加の炭酸ガスを添加してその分圧を低二酸化炭素分圧から高二酸化炭素分圧に上昇させることで、自動的に得られ得る。炭酸化工程の第1の段階が大気圧で行われる場合、炭酸化工程の第2の段階は、約0.5バール又は二酸化炭素圧力を加えることによって、1.5バールで行うことができる。
【0061】
炭酸化工程の第1の段階、すなわち低二酸化炭素分圧での圧縮体の炭酸化は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも1.5時間かかる。好ましくは、この第1の段階は、特に炭酸化チャンバ内の二酸化炭素分圧を、16時間未満以内、好ましくは8時間未満以内、より好ましくは6時間未満以内に増加させることによって停止される。その後、炭酸化工程の第2の段階、すなわち高二酸化炭素分圧での圧縮体の炭酸化は、少なくとも8時間、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも16時間かかる。
【0062】
本発明によれば、第1の炭酸化段階中に炭酸化チャンバ内に加えられる低二酸化炭素分圧は、0.5バール未満、好ましくは0.45バール未満である。このような低二酸化炭素分圧は、圧縮体の比較的遅い炭酸化をもたらし、これは、次の炭酸化段階において、炭酸化チャンバ内に、より高い二酸化炭素分圧をもたらすことによって炭酸化が加速された場合であっても、炭酸化圧縮体に、より大きな強度を与える炭酸塩を生成することが分かった。
【0063】
炭酸化工程の第1の段階中に、必要な強度増加炭酸塩を生成するために、炭酸化チャンバ内でのその第1の炭酸化段階中に提供される低二酸化炭素分圧は、好ましくは0.05バール超、より好ましくは0.1バール超、最も好ましくは0.15バール超である。低い炭酸化分圧は、したがって、好ましくは0.05~0.5バールの間、好ましくは0.1~0.45バールの間、最も好ましくは0.15~0.4バールの間に含まれる。
【0064】
炭酸化工程の第2の段階中に、必要量の炭酸塩を生成するために、炭酸化チャンバ内でのその第2の炭酸化段階中に提供される高二酸化炭素分圧は、0.5バール超、好ましくは0.6バール超、より好ましくは0.7バール超、最も好ましくは0.75バール超である。高い炭酸化分圧は、好ましくは5バール未満、より好ましくは3バール未満、更により好ましくは2バール未満、最も好ましくは1.5バール未満である。したがって、高い炭酸化分圧は、好ましくは0.5~5バールの間、好ましくは0.6~3バールの間、最も好ましくは0.7~2バールの間に含まれる。
【0065】
炭酸化ガスの温度もまた、炭酸化速度に影響を及ぼす。より高い温度は炭酸化を加速させ、一方でより低い温度はより遅い炭酸化をもたらす。
【0066】
第1の炭酸化段階において、炭酸化プロセスは充分に遅くなければならないので、圧縮体の炭酸化は、50℃未満、好ましくは45℃未満、より好ましくは40℃未満の温度の炭酸化ガスで好ましくは開始される。炭酸化プロセスを充分に迅速に開始するために、圧縮体の炭酸化は、20℃超、好ましくは25℃超、より好ましくは35℃超の温度を有する炭酸化ガスで好ましくは開始される。第2の炭酸化段階の間、炭酸化ガスの温度は、50℃超、好ましくは55℃超、より好ましくは60℃超の温度まで、好ましくは上昇されるか、又は上昇させることが可能である。好ましくは、この温度は、圧縮体に含有される水の沸騰を回避するために、95℃未満、又は、炭酸化チャンバ内で優勢な圧力での水の沸点よりも少なくとも10℃低く維持されるべきである。
【実施例】
【0067】
実施例1
ステンレス鋼スラグ材料を、0~35mmの粒径に粉砕し、10~35mmの画分と0~10mmの画分とに分離した。0~10mmの画分を、0~2mmの画分と2~10mmの画分とに分離した。
【0068】
0~2mmの画分から鋼粒子を除去し、画分を、0.5~2mmの粗砂分と0~0.5mmの細砂分とに分離した。
【0069】
細砂分を乾燥し、その含水量(総重量%で表す)を、表1に示す値に調節した。圧縮体を、100%の細砂分を用いて0.4MPaの圧縮圧力で作製した。炭酸化は、大気圧、すなわち約1バールの絶対圧力で行った。圧縮体を炭酸化するために使用されるガスは、空気をCO2で富化することによって得られたガスの混合物である。圧縮体を炭酸化するために使用されるガス(富化空気)のCO2含有量は、体積パーセントで示される。圧縮体を炭酸化するために使用されるガスの全圧は、このガス(この場合、主に、CO2、N2、及びO2)に含有される異なるガスの分圧の合計に等しいので、このガス中における二酸化炭素分圧は容易に決定することができ、そのガス中のCO2の体積パーセントにガスの全圧を乗じたものに等しい。本実施例では、圧縮体を炭酸化するために使用されるガスの全圧は約1バールに等しく、そのため、このガスが40体積%のCO2を含有する場合(第1の炭酸化段階)、このガス中の二酸化炭素分圧は約0.4バールに等しく、一方で、このガスが80体積%のCO2を含む場合(第2の炭酸化段階)、このガス中の二酸化炭素分圧は約0.8バールに等しかった。
【0070】
【0071】
細砂分の比較的高い反応性のために、高い圧縮強度は、20時間の総炭酸化時間後に得られた。これらの圧縮強度は、US2017/0073270の例「Sample Building Product1」で得られた圧縮強度よりも、はるかに高かった。この例では、反応性製鋼スラグバインダもまた使用され、同様の含水量であるが、一方で、12MPaのはるかに高い圧縮圧力が適用され、これは通常、気孔率の減少に起因してより高い圧縮強度をもたらすはずであるという事実にもかかわらず、得られた炭酸化建築用ブロックは、22.8MPaの圧縮強度しか有していなかった。
【0072】
実施例2
この実施例では、実施例1で使用されたものと同じ0~0.5mmの細砂分を、0.5~2mmの砂画分、及び2~10mmの画分からふるい分けられた2~6mmの画分と共に使用した。
【0073】
【0074】
比較例では、純CO2ガスが、1.5バールのより高い圧力で、より長い期間、つまりわずか20時間ではなく24時間にわたって使用されたという事実にも関わらず、2段階炭酸化プロセスにより、比較例よりも高い圧縮強度が得られたことが分かる。
【0075】
実施例3
この実施例では、実施例1で使用されたものと同じ0~0.5mmの細砂分を、0.5~2mmの砂分と共に使用した。
【0076】
【0077】
比較例では、純CO2ガスが、1.5バールのより高い圧力で、より長い期間、つまりわずか22時間ではなく24時間にわたって使用されたという事実にも関わらず、2段階炭酸化プロセスにより、比較例よりも高い圧縮強度が得られたことが分かる。
【国際調査報告】