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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】電気化学的表面処理
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20220824BHJP
   C25F 7/00 20060101ALI20220824BHJP
   C25F 1/06 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G21F9/28 571A
G21F9/28 571E
G21F9/28 521
C25F7/00 K
C25F7/00 V
C25F1/06 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576484
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 GB2020051547
(87)【国際公開番号】W WO2020260888
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1909090.1
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521349255
【氏名又は名称】シー-テック イノベーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ベル,ロバート
(57)【要約】
2つ以上の流体噴流または流れが、対象物の表面に衝突するように配置され、電流が、1つの流体流路を通り、対象物を通り、ついで第2の流体流路を通って流れる、表面から材料を電気化学的に除去する方法および装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の流体噴流または層流が、表面に衝突するように配置されること、および電流が、少なくとも1つの噴流または流れにおける1つの流体流路を通って金属性対象物へ、前記対象物材料を通って、そして少なくとも1つの第2の噴流または層流における第2の流体流路を通って前記金属性対象物から遠ざかるように流れることを特徴とする、導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項2】
2つ以上のコヒーレントな流体噴流または層流が、導電性金属性対象物材料の共通の表面に衝突するように配置される、請求項1に記載の金属性導電性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項3】
前記材料が放射性核種を含む、請求項1または2に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項4】
前記表面からの材料除去の深さが、両端の値を含め0.001ミリメートルと10ミリメートルの間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面からの材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項5】
前記電気化学的材料除去が単回の通過で行われる、または前記材料が、一連の逐次処理で除去される、請求項1から4のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項6】
前記流体経路の断面積より大きな表面の処理が、前記表面にわたって1つまたは複数の前記噴流の接触点を移動させることによって実現される、請求項1から5のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項7】
前記表面上の前記衝突点の平均移動速度が、1秒間に流体経路の直径の0.01倍と10倍の間であって、両端の値が含まれる、請求項6に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項8】
前記印加される電流がDCバイアスを伴うAC波形の形態である、請求項1から7のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項9】
前記印加されるDCバイアスを伴うAC波形の周波数が、両端の値を含め5Hzと2000Hzの間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項10】
前記流体噴流中の電流密度が、1平方メートル当たり100アンペアと10万アンペアの間である、請求項1から9のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項11】
前記コヒーレントな流体噴流の流体流路の軌跡が発散している、請求項1から10のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項12】
前記電気化学的材料除去が一連の逐次処理で行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項13】
前記流体が、前記対象物に隣接する容積内に、可動性の封止材を用いて収容される、請求項1から12のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項14】
前記電流が、絶縁型変圧器の二次側から受け渡され、前記電流が、少なくとも1つの噴流の1つの流体経路を通り、前記対象物材料を通り、少なくとも1つの第2の噴流の第2の流体流路を通って帰還し、前記二次変圧器に帰還する、請求項1から13のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項15】
前記噴流または層流中の流体が、多孔質材料を用いて、表面に衝突した後に表面に隣接して収容される、導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項16】
前記電解質流が衝突する点の移動が、自動的に所定の方法で制御される、請求項1から15のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項17】
前記電解質流が衝突する点の移動が、処理されている前記表面の特性の測定によってリアルタイムで決定される、請求項1から16のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項18】
前記コヒーレントな噴流を形成する流体の速度が0.15m/sと50m/sの間である、請求項1から17のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項19】
前記電解質の電気抵抗率が1Ωメートル未満であることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項20】
前記電解質の電気抵抗率が0.2Ωメートル未満であることを特徴とする、請求項19に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項21】
前記電解質が、硝酸を含む水溶液から形成される、請求項1から20のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する方法。
【請求項22】
金属性導電性対象物の表面に衝突するように配置された、電解質の2つ以上のコヒーレントな流体噴流または層流であって、少なくとも1つの前記流体噴流または層流と、前記対象物とを通る、および少なくとも1つの別の前記流体噴流または流れの経路を通る電流経路を提供する流体噴流または層流を含み、さらに前記表面に近接する出口に前記電解質流を供給する可撓性で電気的絶縁性の材料の導管と、前記電解質に電流を導入する、前記導管または出口内の電極とを有する、放射性核種を含む材料を導電性金属性対象物の表面から電気化学的に除去する装置。
【請求項23】
前記流体と接触している前記電極の露出表面積が前記流体噴流の断面積の5%以上である、請求項22に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項24】
前記電極が、炭素系導体、または金属性導体、または表面コーティングを塗布された金属性導体から形成される、請求項22または23に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項25】
前記電極の表面が、白金、金、ステンレス鋼、クロム、ニッケル、タンタル、オスミウム、イリジウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムレニウム、ハフニウム、ニオブジルコニウム、チタン、マンガンのうちの1つまたは複数から形成される、請求項24に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項26】
少なくとも1つの電極が有孔表面またはメッシュから構成される、請求項22から25のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項27】
前記電極が電気的絶縁性の筐体内で支持される、請求項25から26のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項28】
前記電気的絶縁性の筐体が、流体流調整の手段、多数の平行チューブ、または有孔板を収容する、請求項27に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項29】
前記流体流調整の手段、多数の平行チューブ、または有孔板が、前記電極の一部または全体を形成する、請求項28に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項30】
前記コヒーレントな流体噴流の1つまたは複数がオリフィス板によって形成される、請求項22から29のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項31】
前記コヒーレントな流体噴流の1つまたは複数が、5mmと100mmの間の半径を有する円形のオリフィス板によって形成される、請求項30に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項32】
前記コヒーレントな流体噴流の1つまたは複数が、環状のスロットまたは部分的に環状のスロットによって形成される、請求項22から29のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【請求項33】
1つまたは複数の前記電極が、電気的絶縁性の筐体内に収容される環、チューブ、ワイヤ、またはロッドから構成される、請求項22から33のいずれか一項に記載の導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的表面処理に関する。その主な用途は、放射性核種によって汚染された表面である。
【背景技術】
【0002】
金属表面の除染は、金属を放射性核種と接触させて汚染させる原子力産業を含め、産業界でよく見られる問題である。汚染された金属には、ダクト、配管、グローブボックス、貯蔵容器、攪拌装置などの機械部品が含まれる場合がある。放射性化学種を含有する媒体と金属が接触すると、簡単なすすぎや洗浄では除去できない幾分かの放射能が表面上に残るが、これは、放射性元素が表面と反応したか、そうでなければ表面から内部に少し浸透したからである。金属の表面から内部に直接に、およびまたは金属中に伝搬する亀裂に沿って、表面内部への拡散が生じている場合がある。その結果、表面に付随する放射能が存在する。
【0003】
したがって、対象物の表面から放射能汚染を除去することが望ましい。そうした材料の分級を下げることができれば、原子力発電所の廃炉では実用上の少なからぬ利点があるが、それは、作業者へのリスクを下げつつ、そして高レベル放射性廃棄物の貯蔵の必要性を下げつつ、汚染された材料の大部分を取り扱うことができるからである。
【0004】
汚染された材料の取り扱いは、作業者がその材料に近づけなかったり、長時間その傍にいることができなかったりするので課題となることが多く、これは、近さの度合が作業者の許容放射線被曝量に影響を及ぼすせいである。したがって、この汚染に対処するために追加の予防措置と方法、および施設が必要であり、その目的は、汚染を除去し、健康への危険を最小限に抑え、除染された金属を回収して従来のリサイクル工程を通じて再使用することである。
【0005】
さらなる課題は、表面汚染が静的なものではなく、表面処理に応答して変化し得るということである。いくつかの実例では、汚染された表面層を除去した後、汚染が「再び汗をかく」、つまり、表面の放射能が除染処理後に減少し、その後、増加することが見出されている。これは、新たに形成された表面に表面下層から化学種が拡散する結果である。このことは、いかなる除染工程をも効果的に制御できることが必要であることを示している。
【0006】
この問題に対処する従来の手段は、対象物全体の物理的な除去と廃棄である。この方法の明らかな欠点は、廃棄または貯蔵されることになる汚染された材料の量が多くなること、そして一般的な使用に向けたいかなる材料であってもリサイクルを通じて回収される可能性が全くないことである。
【0007】
第2の手段は、米国特許第5268128号(ウエスチングハウス(WESTINGHOUSE))1993年12月7日「汚染された粒子状材料を浄化する方法および装置(Method and apparatus for cleaning contaminated particulate material)」に記載されているとおり、放射能汚染が最終的にスラグ内にあるような運転条件で製錬所を使用することであり、スラグは、米国特許第2013296629A号(韓国核燃料会社(KEPCO NUCLEAR FUEL CO LIMITED))2013年11月7日に記載されているとおりに溶融除染を使用する放射性金属廃棄物の処理と組み合わせて、分離した後に無期限に貯蔵し、さらに金属の大部分を非汚染ストリームとして回収し再利用することができる。この工程は商業的に運用されている。この手法が不利なのは、大規模な施設が必要なことであり、その施設自体、幅広い管理対策が必要である。
【0008】
したがって、金属性対象物の大部分をそれ以上の予防措置なしにリサイクルできるようにして材料を除染する手段のあることが望ましい。これは、危険性を低減しつつ解体や廃炉の作業を実行できるよう、例えば容器にその場で適用することもできるうえ、再使用のために、より多くの材料を回収する目的で解体後に適用することもできる。
【0009】
一つの方法は、酸化膜や他の堆積層を含め、汚染された金属層を化学的に溶解させることである。課題は、この汚染された層を完全に溶解させると同時に、汚染されていない基材金属が、有限の制御できる量でしか溶解しないようにすることである。酸処理が、軟鋼、304ステンレス鋼を含むステンレス鋼に、そして他の材料に使用されている。硝酸は、原子力産業で広く使用されており、その理由は、対象となる汚染物質の硝酸塩としての高い溶解度、そして304ステンレス鋼の硝酸に対する良好な耐食性である。その放射能汚染物は、例えば英国セラフィールド社(Sellafield)の強化アクチニド除去プラント(Enhanced Actinide Removal Plant(EARP))で使用されているとおり、沈殿やフロック形成を含む標準的な手段により硝酸から回収されている。
【0010】
金属表面の他の化学的処理は、金属加工品産業において公知であり、この場合、金属の熱処理によって酸化物表面層が生じ、この層は、さらなる処理工程が実行され得る前に除去しなければならないものである。酢酸(したがって「酸洗」という用語が使用される)、硫酸、ならびにその他または追加の薬剤、例えば軟鋼用の塩酸およびステンレス鋼用のフッ化水素酸、またはフッ化水素酸/硝酸混合物の使用を含め様々な化学処理が公知である。これらの処理は、核除染に使用することは好ましくなく、その理由は、下流の排水処理プラントのステンレス鋼構造物と相性が悪いことである。
【0011】
溶解剤として硝酸を使用する場合の制限は、溶解反応が遅いことであり、そのため、必要とされる大量の酸試薬を処理するには比較的大規模なプラントが必要になる。反応速度は、塩化物、フッ化物などの錯化剤、およびクエン酸、シュウ酸、およびエチレンジアミン四酢酸などの有機錯化剤を添加することにより増加させることができる。これらの薬剤は、表面汚染物との反応速度を増加させるが、その代償として、より腐食性が高くて従来の原子力排水処理プラントでは処理できない液体を生成し、この液体は、そのプラントの構造物に使用されている金属に対して腐食性がある。
【0012】
表面除染の別の方法は、米国特許第7384529B号(USエナジー(US ENERGY))2008年6月10日「放射性金属を電気化学的に除染する方法(Method for electrochemical decontamination of radioactive metal)」に記載されており、この場合、導電性の電解質浴を用いて、汚染された物品に電流を流す。電気化学的デスケーリング法(または「電気酸洗」)は、金属加工で広く使用されている。この方法は、化学的方法よりも表面除去速度が非常に大きいという、化学的方法に勝る顕著な利点を有する。実用上の結果として、電気化学的処理では、化学的処理よりも非常に少量の酸試薬しか必要としない。さらなる利点は、電気化学的工程が容易に制御できることであり、これは、電気化学的工程が電流通過のレベルにすぐに応答し、この電流が、印加される電位によって決まるからある。しかし、電気化学的工程は、対向電極を被加工物の近くに配置できる幾何学形状の場合にしか効果的でないという点で、大きな欠点を有する。この理由は、液体で浸した系では、電流が電解質を通って、流体に接触している表面全体に流れることができて、電気化学的効果が、対向電極から離れて、均一な表面上に速やかに広がることになるか、または最も低抵抗の経路を与える点に集中することになるためである。
【0013】
米国特許第2003075456A号(コリンズら(COLLINS ET AL))2003年4月24日には、DCバイアスを伴うAC波形を用いると、酸化膜で被覆された広範囲の金属を、DCバイアスなしのAC波形を用いた場合よりもさらに速やかにデスケーリングできることが示されている。また、DCバイアスの極性を周期的に反転させることが有利であることも示された。金属の表面上の酸化膜の除去または浄化は、AC波形にDCバイアスを印加した方が、AC電流のみを使用した場合と比較してさらに高速であることが示された。浄化の機構には、汚染された層の幾分かの溶解、下地の金属が溶解する幾分かのアンダーカット、界面での気泡の生成に起因する幾分かのスクラビング作用が関与する。
【0014】
DCバイアスを伴うACによって酸化膜の破壊を速めることが可能になるが、その理由は、溶解が起こる電位範囲では、DC電流だけでは表面の不動態化、または酸素の放出と孔食のいずれかが起こる一方、AC電流だけでは溶解効果が低減するためである。DCバイアスを伴うAC電流によって、局所的な孔食を最小限にしつつ最適な溶解が得られることが見出されている。
【0015】
電気化学は、これまで非金属とともに使用されており、ブラッドレーら(Bradley et al)の成果(米国特許第3075902号)では、表面に接触させた定常噴流を、半導体の厚さと痩せの局所的な測定に使用できることが示されている。この開示から、残存材料の厚さの測定は、特定の厚さの材料をエッチングするのに使用される工程において基本的特徴であることが教示される。測定工程は、半導体ウェーハの厚さを通して2つの電極間の電気抵抗を監視することによって実現される。この測定方法は、導電性金属には好適ではなく、この場合、電解質の抵抗が金属性導体よりも一桁大きいので、抵抗の変化を通じて厚さを決定することは不可能である。
【0016】
対象物に衝突しその対象物に電流を運ぶ電解質の噴流またはストリームを使用する、表面の電気化学的処理が公知である。この方法には、電気メッキ、電鋳、電解エッチング、電解加工、切削、および電解研磨への応用がある。
【0017】
電解加工に使用する場合には、電解質の衝突噴流を使用することで、他の方法では製造が困難な形状の加工が可能になる。ノズルの異なる構造、流れる液体ストリームに電流を導入する異なる手段、対象物に対して相対的なヘッドまたはその逆の支持と移動に適った異なる機械的配置、電解質を収集、再循環、ろ過する異なる手段、異なる電気極性と波形を用いる、装置の様々な構成が公知である。これらの用途に共通するのは、対象物への電解質の単一流と、給電装置から電解質を通って対象物に流れ、対象物から配線系を通って給電装置に帰還する電流経路とを使用することである。
【0018】
電気化学的表面除染の目的に衝突噴流を使用することは有利であり、その理由は、処理される表面を電解質で浸す必要がなくなること、処理されている領域の空間的制御性の程度を高められること、そして電解質から熱を、そして対象物からガスを速やかに除去する効果的な手段が得られることにある。大型容器の内面を処理する場合には、このことは、容器を液体で浸す必要がなく、使用される電解質はさらに少量でよいことを意味する。衝突噴流のこうした使用は、対象物と対向電極を電解質の浴に浸漬させ、両者の間に電流を流す、表面の電気化学的除染の発展型である。
【0019】
金属性表面をエッチングする目的で衝突噴流を使用するシステムには、原子力発電所の表面層から放射能汚染を除去する目的など、様々な分野での応用がある。そのようなシステムでは、対象物は、除染されることになる表面であって1つの電極を構成しており、第2の電極は、ノズルもしくは管類の構造の一部における電解質のストリームの、またはそのかわりにノズルを脱出する前の電解質のストリームのいずれかに接触している。
【0020】
この方法が不利なのは、処理されている表面が電気回路の一部を形成しており、回路を閉じるには良好な電気接続が対象物に形成される必要があることである。接続が不十分であると、工程の有効性が損なわれる。電解質噴流を、汚染された容器や配管の一部に沿って走査するまたは移動させる場合、例えば、その領域に手が届きにくく、遠隔操作される装置によらなければならない状況では、この電気接続を形成する必要がないことが有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
導電性金属性対象物の表面から材料を電気化学的に除去する本発明によれば、2つ以上の流体噴流または層流が、表面に衝突するように配置されること、および電流が、少なくとも1つの噴流または流れにおける1つの流体流路を通って金属性対象物へ、対象物材料を通って、そして少なくとも1つの第2の噴流または層流における第2の流体流路を通って金属性対象物から遠ざかるように流れることを特徴としている。
【0022】
この配置は、対象物に直接電気的接続をする必要がないという点において、それまでのシステムに勝る利点を有する。液体噴流装置は、対象物に近接させてもよく、そして処理は、いかなる電気的接続の必要性もなしに行い得る。
【0023】
この新しい配置では、材料の電気化学的除去は、1つまたは複数の噴流が衝突する1つまたは複数の点で陽極過程を通じて生じ、陰極過程は、1つまたは複数の付加的な電解質噴流が衝突する点で生じる。対象物に対する給電装置の極性は、周期的に交番させるように選択的に行って、2つ以上の噴流の衝突点で起こる電気化学的効果が陽極と陰極の間で交番するようにしてもよい。印加される電流と電圧の波形は、DCバイアスを伴うAC波形、または他のいずれかの好適な波形を使用するなどにより、電気化学的効果を最適化するように有利に調整してもよい。異なる周波数の交流電流を使用してもよい。
【0024】
対象物の表面のところで使用されることになる電流密度は、様々な要因に依存することになり、1平方センチメートル当たり0.1アンペアから1平方センチメートル当たり100アンペアを上回る範囲である場合がある。処理速度を最大限にすることと、電解質における熱および対象物の表面のところでのガスの生成を最小限にすることとの間で好適なバランスをとることのできる、中間の電流密度が好ましい場合がある。
【0025】
2つ以上の噴流を用いてもよい。流路の数が2つより多い場合、1つ以上の流路を、一方向に流れる電流用の流路に指定し、残りの流路を反対方向に流れる電流用の流路に指定することになる。
【0026】
変圧器は絶縁型であり、一般的なやり方のとおり、二次回路のどの部分も接地されていない。その配置は、液体噴流を通じて行う以外に対象物へのいかなる電気的接続も不要にするものであり、さらにまた、流体噴流を通るもの以外に対象物からの可能な電流経路がないこと、したがって、意図された作業領域から離れた場所で望ましくない電気化学的効果が生じる可能性がないことを意味する。
【0027】
対象物の表面のところで使用されることになる電流密度は、様々な要因に依存することになり、1平方センチメートル当たり0.1アンペアから1平方センチメートル当たり100アンペアを超える範囲である場合がある。処理速度を最大限にすることと、対象物の表面のところでの電解質とガスにおける熱の生成を最小限にすることとの間で好適なバランスをとることのできる中間の電流密度が好ましい場合がある。
【0028】
本発明の別の態様では、放射性核種を含む材料を導電性金属性対象物の表面から電気化学的に除去する装置は、金属性導電性対象物の表面に衝突するように配置された、電解質の2つ以上のコヒーレントな流体噴流または層流であって、少なくとも1つの流体噴流または層流と、対象物とを通る、および少なくとも1つの別の流体噴流または流れの経路を通る電流経路を提供する流体噴流または層流を含み、さらに、表面に近接する出口に電解質流を供給する可撓性で電気的絶縁性の材料の導管と、電解質に電流を導入する、導管または出口内の電極とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、容器内部を表面処理するように構成された本発明の例示的な一実施形態を模式的に例示しており;
図2図2は、本発明による方法および装置によって内部を除染される容器の内面の模式的断面であり;そして
図3図3は、汚染された表面に電解質の噴流を向けて発射する1つの出口と接続ダクトの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1では、電解質の2つのコヒーレントな流体噴流または層流1Aおよび1B(2つより多く与えてもよいが、簡単にするために追加の噴流は省略されている)は、導電性材料を含む対象物11の放射性核種で汚染された表面10上の異なる点1Cで衝突するように配置されている。噴流は、管3を通じて電解質の供給源に接続されたダクト2の出口7から噴出し、電解質は、好適な流体の流れを維持するのに充分な圧力で管を通じて圧送される。この図では、出口7はノズルを含むが、オリフィス板やスロットであってもよい。一実装では、出口は、5mmと100mmの間の半径を有する円形のオリフィス板であった。別の実装では、コヒーレントな流体噴流は、各出口7における環状スロットまたは部分的に環状のスロットによって形成された。
【0031】
絶縁型変圧器4は、変圧器の二次巻線5から1つの噴流1Aの流体流路を通り、対象物11を通り、第2の第2の噴流1Bを通って帰還し、二次巻線5に戻る電流経路を用いて電力を供給するように配置される。
【0032】
巻線5を通る二次回路のどの部分も接地されていない結果、変圧器4は絶縁型となっている。これは、変圧器の巻線5の片側が対象物11に接続される可能性のある、一般的な既存の実用例とは対照的である。これとは対照的に、本発明では、対象物11への電気的接続は、表面10を通る噴流1A、1Bのみである。その結果、噴流1Aおよび1Bを通る以外に対象物11からの可能な電流経路がなく、意図された作業領域から離れた場所で望ましくない電気化学的効果が起こる可能性はない。
【0033】
金属性表面から電気化学的に材料を除去する目的で衝突噴流1Aおよび1Bを使用することには、原子力発電所の表面層から放射能汚染を除去する目的など、様々な分野での応用がある。
【0034】
スポンジ8または他の多孔質媒体を使用することで、衝突点の近傍における流体ストリームの流れを制御して、表面10の作業領域から離れたところへの液体の望ましくない飛散や分布を低減させてもよく、また作業領域の近傍に流れを局在化させてもよい。
【0035】
可撓性封止材9を、表面10の作業領域の周りの一部または全体に配置することで、少なくとも部分的に飛沫を収容してもよく、そして電解質が表面10に衝突した後にこれを誘導して収集する手助けとしてもよい。
【0036】
環状の部分的に環状のスロットなどの成形された開口部を使用して、機構の周りの流れを局在化させてもよい。
【0037】
対象物11の表面10に衝突した電解質は、内部容器の最下点のところで、さもなければ管に沿って、好適な収集点12に流れることになる。
【0038】
電流は、様々な手段によって、例えば導電性ノズル7によって、またはダクト2内の電極によって、または電解質噴流がノズルをいったん出ると電解質噴流内の電極によって、噴流1Aおよび1Bに導入されてもよく、いずれの場合でも前記電極は、配線6によって二次コイル5の各側に接続されている。電解質流に電流を付与する材料は、それがノズルまたは管構造の一部であろうと、ノズルまたは管構造の外部であろうと、電気化学的工程によって消費されない材料であることが好ましい。
【0039】
電解質を出口7に運ぶダクト2および管類3は、プラスチックなどの絶縁材料であり、管類3は、配管に沿った1つの液体ストリームからもう一方の液体ストリームへの流路の電気抵抗が、噴流の流路を通したそして被加工物を通した電気抵抗よりかなり大きくなるよう充分な長さのものである。
【0040】
ダクト2および出口7は、ダクトやノズルが対象物に接触しても問題が生じないように、ゴムなどの可撓性で電気的絶縁性の材料であってもよい。この実例では、電解質流に電流を付与する電極は、ダクト2内になければならない。
【0041】
記載の実施形態では、金属性表面から材料が除去されるのは典型的には、両端の値を含め0.001ミリメートルと10ミリメートルの間である。これは、単回の通過で行う、または2回以上の通過で行うことが可能である。
【0042】
典型的には、表面上の噴流の衝突点の時間平均移動速度は、1秒間に流体経路の直径の0.01倍と10倍の間であり、両端の値は含まれる。
【0043】
印加波形は、DCバイアスを伴うAC波形であり、その周波数は、両端の値を含め5Hzと2000Hzの間であった。流体噴流における好ましい電流密度は、1平方メートルあたり100アンペアと10万アンペアの間であり、両端の値は含まれる。
【0044】
変圧器4は絶縁型であり、一般的なやり方のとおり、二次回路のどの部分も接地されていない。その配置は、液体噴流を通じて行う以外に対象物11へのいかなる電気的接続も不要にするものであり、さらにまた、流体噴流を通るもの以外に対象物11からの可能な電流経路がないこと、したがって、意図された作業領域から離れた場所で望ましくない電気化学的効果が生じる可能性がないことを意味する。
【0045】
対象物11の表面10に複数の噴流または層流が衝突する点どうしの間の距離は、それらの点どうしの間の対象物11の電気抵抗が、操作要件を満たすような表面処理速度を与えるようなものとなるように、配置されることになる。典型的には、これは、電解質噴流または流れが衝突する点どうしの間の対象物11の電気抵抗が、それらの2点間の金属の表面のところに存在する電解質液体の電気抵抗より小さいことを意味するが、これは必ずしも常にそうである必要はない。このことは例えば、特に手の届きにくい場所の処理では、工程の電気的効率が犠牲にされて、手が届くという幾何学的利便性のほうが優先されるということである場合があり、そして、対象物の表面10上で電解質に沿った伝導に起因してさらなる電力が失われても許容される。
【0046】
電解質流1A、1Bの空間的方向および衝突する点1Cは、処理されている対象物の幾何学形状に適うように最適化してもよい。配列状にした噴流または拡がった噴流を使用してもよい。管の外部を処理するには、噴流を、例えば環状または部分的環状の形状に配置してもよい。容器の内部を処理するには、噴流を、例えば多数の方向に放射状に広がる形状に配置してもよい。
【0047】
対象物11の表面10上での噴流または層流1A、1Bが衝突する点1Cの移動は、表面処理の所定のプロファイルが得られるように予めプログラムされてもよい。移動を制御するプログラムは、汚染レベル、または必要な表面除去の深さと、処理の強さに及ぼす適用の幾何学形状効果との両方を考慮してもよい。電解質噴流または層流1Aおよび1Bの自動制御された移動は、処理が実行される前の調査で、またはリアルタイムでなされる、処理されている表面の特性の測定結果、例えば、存在する放射能のレベル、またはその光反射率、または他の適切な測定可能な特性によって制御されてもよい。
【0048】
処理される表面上の多数の噴流または層流1Aおよび1Bの移動は、所定レベルの表面処理または除去が実現されるようにして制御されてもよい。このレベルは、問題となっている基材の事前の放射線学的評価によって決定されていてもよい。
【0049】
高圧の電解質噴流または層流または噴流を、記載の電気化学的効果に加えて機械的な表面処理効果を提供するために有利に使用してもよく、これは実質的に圧力洗浄の効果を構成する。これは、除去する必要のあるオイルまたはグリースまたは粒子状物質または塗料または他の材料などの表面汚染物がある場合に、有用である。固体粒子状物質を随意に液体電解質中に分散させて、付加的な研磨浄化効果を得てもよい。
【0050】
電極筐体(例示の実施形態では筐体はダクト2である)に収容されている電極から対象物11の表面10までの連続的でコヒーレントな流体経路の生成は、システムの動作に不可欠である。出口7と処理されている表面10との間で噴流または流れが破壊されたり、液滴を形成したりすると、流体経路の抵抗が顕著に変化することになる。コヒーレントな流れの生成は、電極筐体(ダクト2)内での流れ調整を用いて実現され、導管に由来する速度変動を低減させる。これは、好ましくは、速度変動の小さい流体噴流を生成するオリフィス板、ノズル、またはスロットである出口7に先立って、ダクト2の断面の拡大により流れの速度を減少させることと、圧力低下を制御し流れを直線化することとによって、実現される。コヒーレントな噴流は好ましくは、自由空間において1メートルより長い連続した経路を有するが、実用的な電圧制限により、好ましい動作距離は0.5メートル以下に制限される。
【0051】
電極は好ましくは、導電性の良好な安定した材料である。好適なのは、炭素系導体、または金属性導体、または表面コーティングを塗布された金属性導体である。好ましくは、金属性導体または金属表面コーティングは、白金、金、ステンレス鋼、クロム、ニッケル、タンタル、オスミウム、イリジウム、パラジウムを含む群から選択される金属を含む。
【0052】
流体と接触している電極の露出表面積は理想的には、流体噴流の断面積の5%以上である。電極は、流体が出口7から出る前に電解質と接触しており、好ましくは、筐体(ダクト2)内の局在化した電流密度を低減させるサイズとされる。電極の実用的な配置としては、電気的絶縁性の筐体(例示の実施形態ではダクト2でもある)に取り付けられた有孔表面またはメッシュなどが挙げられる。電気的絶縁性の筐体内で、環などの、流路の縁部分を形成する電極。電気的絶縁性の筐体内で、チューブやロッドなどの、流路に挿入される電極。流れをも画定する噴流脱出口のところまたはその近傍にある電極オリフィス板。電極と、電極としても機能する材料から作られた流れ調整装置との組み合わせ。
【0053】
電気的絶縁性の筐体は、多数の平行チューブや有孔板などの流体流調整手段を含むものとすることができる。電気的絶縁性の筐体内の平行チューブおよび/または有孔板は、その筐体内の電極の一部または全体を形成することもできる。
【0054】
電極は、流体が出口7から出る前に電解質と接触しており、好ましくは、筐体(ダクト2)内の局在化した電流密度を低減させるサイズとされる。電極は、電極筐体(ダクト2)内に位置する環もしくは円筒として、または好ましくはメッシュもしくは多孔板として形成されてもよく、または出口7もまた電極とすることもできる。
【0055】
記載の方法および装置は、汚染された表面の広範囲の幾何学形状を処理するのに適用可能である。これは、管の内部および外部、容器の内部および外部、様々な種類の構造物、例えばバルブ、管マニホールド、支持構造、個別構成成分、または表面処理を必要とするいかなる表面をも含む。この方法は、汚染の局所的ホットスポットの処理に適している。
【0056】
図2は、円筒状の容器21の処理を例示しており、処理は、容器21の内面に向けられた2つの電解質噴流22を用いるものである。2つの電解質噴流22は矢印として示され、発散する経路を有する。ノズルは23(本実施形態ではこれらが図1の出口7の機能を実行する)として示され、ノズルへの電解質供給は、24(これが図1のダクト2の機能を実行する)として示されている。
【0057】
断面より大きい構成成分の表面を処理する目的では、表面への流体噴流の衝突点1Cを移動させる。移動の速度は、噴流衝突の領域のサイズ、印加される電流密度に比例し、除去されることになる材料の深さに間接的に比例する。移動は、表面の特徴および採用された制御方法に応じて、連続的、段階的、またはラスタ形式とすることができる可能性がある。
【0058】
なお、図1および図2には、それぞれ2つの噴流または層流1Aおよび1B、22が示されているが、多数の噴流または層流を用いることもできる。
【0059】
図1では、噴流または層流1Aおよび1Bは、平行になるものとして示されているが、本発明者らは、図2に示すとおりの発散する噴流が、円筒状容器およびダクトの内側などの凹面に向けられると、表面を増速させることを見出した。同様に、収束させた噴流は、円筒状容器の外側などの凸面の浄化を増速させることができる。
【0060】
コヒーレントな噴流または層流を形成する流体の最良の流速は、0.15m/sと50m/sの間であることが見出された。
【0061】
電解質は導電性流体であることが望ましく、導電性が高まると、必要な電圧は低下する。流体の電気抵抗率は、1Ωメートル未満、好ましくは0.2Ωメートル未満であることが望ましい。
【0062】
所定の面積を処理するのに必要な液量を最小にし、除去された金属の沈殿を防ぐために、溶解した金属は電解質中で、幾分かの溶解度を有することが好ましい。
【0063】
電解質は、基材を化学的にいかようにも大きく溶解させたり局所的に損傷をいかようにも大きく生じさせたりしないこと、そして電気化学的処理の時間全体にわたって腐食が最小になることが好ましい。ステンレス鋼およびほとんどのニッケル合金については、硝酸が好ましい選択肢であり、これは、化学的腐食速度が高くなく、この酸が好適には導電性であるためである。
【0064】
原子力産業に由来する放射能汚染の処理には、硝酸または硝酸塩を使用することが有利であり、これは、多くの放射性ヌクレオチドが可溶性であって、公知の廃棄物処理ルートと相性がよいことが多いからである。
【0065】
図3は、出口7(図1中)についての1つの配置を例示している。
【0066】
図3では、流体は、導管31(例えば図1の管類3)を通って、電気的絶縁性の筐体32(例えば図1のダクト2)に入る。電気的絶縁性の筐体の脱出面に向かって、配列状の流れ調整チューブ33がある。ついで電解質流体は、多孔プレート電極34を通過する。これは、電気的接続部35を通じて給電装置に接続されている。ついで流体は、第2の電気的絶縁性の筐体36を通過した後、オリフィス板37の孔を通って出口7を出る。オリフィス板はまた、給電装置への随意の接続部38を有する。
【実施例
【0067】
例示の実施形態を使用する使用例
実施例1
304ステンレス鋼シートの試料を、シート試料表面から50mm離し、90mm空けて配置した2つの噴流を使用して処理した。硝酸(30%w/w)を、直径25mmの各ノズルを通して圧送し、3200リットル/時の速度の噴流を形成した。各ノズル内の電極に、絶縁された給電装置により160Vで通電すると、ステンレス鋼の対象物を通過する電流と2つの噴流から形成された回路に25Aの電流が流れ、絶縁された給電装置から試料へのいかなる直接的接触もなく、またステンレス鋼試料が接地された場合では、接地に流れるいかなる電流もなかった。試料を15分間処理したが、その間に2つの噴流/試料の接触領域から3.2gの質量が失われた。これは、金属溶解に対する電流効率が50%であることに相当する。
【0068】
実施例2
304ステンレス鋼シートの試料を、シート試料表面から50mm離して配置した2つの噴流を使用して処理した。硝酸(30%w/w)を、直径25mmの各ノズルから圧送し、3200リットル/時の速度の噴流を形成した。各ノズルの電極に、絶縁された給電装置により160Vで通電すると、ステンレス鋼の対象物を通過する電流と2つの噴流から形成された回路に25Aの電流が流れ、絶縁された給電装置から試料へのいかなる直接的接触もなく、またステンレス鋼試料が接地された場合では、接地に流れるいかなる電流もなかった。噴流の1つは、一定速度で表面を水平に横断し、噴流が表面を横切る経路に沿って、表面から20ミクロンの材料を除去した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】