(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極を製作する方法、および装置、ならびに当該スーパーキャパシタを製作するための方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/86 20130101AFI20220824BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20220824BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20220824BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20220824BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20220824BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20220824BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20220824BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220824BHJP
【FI】
H01G11/86
H01G13/00 391B
H01G11/62
H01G11/68
H01G11/70
H01G11/60
H01G11/52
H01G11/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576583
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067793
(87)【国際公開番号】W WO2020260444
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521186029
【氏名又は名称】ソルヴィオニック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リン,ロンイン
(72)【発明者】
【氏名】ファルガイラ,アナイス
(72)【発明者】
【氏名】アラヴナ,カロリナ
(72)【発明者】
【氏名】ファンティニ,セバスチアン
(72)【発明者】
【氏名】マルボスク,フランソワ
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AA14
5E078AB02
5E078BA04
5E078BA06
5E078BA12
5E078BA15
5E078BA44
5E078BB26
5E078BB27
5E078BB30
5E078BB33
5E078CA07
5E078CA21
5E078DA05
5E078DA19
5E078FA02
5E078FA13
5E078HA03
5E082AB09
5E082BC40
5E082MM40
5E082PP03
(57)【要約】
イオン性ポリマー電解質セパレータによって分離された2つの電極(アノード、カソード)を含む、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極を製作する方法であって、当該方法は、炭素材料(5)、イオン性液体(2)およびバインダ(4)を混合して得られる炭素ペースト(6)を製作し、電極(11)のための活物質(6)を、室温において得るステップと、活物質(6)を機械的に加工し、電極(11)を形成するステップと、を含む、方法、およびカソード電極と、電解質セパレータと、ノード電極とのスタックを含むスーパーキャパシタであって、カソード電極およびアノード電極は、集電器に電気的に接続されており、電解質セパレータは、イオン性液体を有するイオン性ポリマーを含み、電極は、イオン性液体電解質およびバインダと混合された炭素系活物質を含む、スーパーキャパシタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体を有するイオン性ポリマーを含む電解質セパレータによって分離された2つの電極(アノード、カソード)を含む、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極(11)を製作する方法であって、
炭素材料(5)、イオン性液体(2)、およびバインダ(4)を混合して得られる炭素ペースト(6)を製作し、前記電極(11)のための活物質(6)を、室温において得るステップ(II)と、
前記活物質(6)を機械的に加工し、前記電極(11)を形成するステップ(III)と、を含む、方法。
【請求項2】
前記電極形成ステップ(III)は、ペースト圧延技術を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペースト圧延技術は、カレンダー加工機を使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電極形成ステップは、ペースト3次元プリント技術を使用する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記電極形成ステップは、ペーストスタンプ技術を使用する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記電極形成ステップは、押出技術を使用する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電極形成ステップは、ジェットミル技術を使用する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
イオン性液体は、前記炭素材料(5)と前記バインダ(4)とを混合するためにも使用される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
結果物が得られるために不可欠な高品質[純度99.9%;H20≦20ppm;ハロゲン化物≦1ppm;リチウム、ナトリウム、およびカリウム化合物≦10ppm;有機窒素化合物≦10ppm;カラーテスト20-10ハーゼン]を有するイオン性液体は、
アルキルイミダゾリウム、アルキルピロリジニウム、モルホリニウム系物質、ピリジニウム系物質、ホスホニウム系物質、およびアンモニウム系物質のグループから選択されるカチオンと、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアンアミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、およびフルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)のグループから選択されるアニオンと、を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
加工済みの前記電極の電解質の質量%は、[60%~90%]の範囲に含まれる、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
イオン性ポリマーおよびイオン性液体(IL)から製作された電解質セパレータによって分離された2つの電極(アノード、カソード)を含む、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極を製作する装置であって、
炭素材料(5)、イオン性液体(2)、およびバインダ(4)を混合して得られる炭素ペースト(6)を製作し、前記電極のための活物質(6)を、室温において得るための手段(1)と、
前記活物質(6)を機械的に加工し、前記電極を形成するための手段(10)と、を含む、装置。
【請求項12】
前記形成手段(10)は、カレンダー加工機(7、8、9)を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実施することによって製作される、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極および電解質の組み合わせ。
【請求項14】
炭素系電極中の電解質%は、有利には[60%~90%]の範囲に含まれ得る、請求項11に記載の電極-電解質の組み合わせ。
【請求項15】
カソード電極と電解質セパレータとアノード電極とのスタックを含むスーパーキャパシタであって、
前記カソード電極およびアノード電極は、集電器に電気的に接続されており、
前記電解質セパレータは、イオン性液体(IL)を有するイオン性ポリマーを含み、
前記電極は、イオン性液体電解質(2)およびバインダ(4)と混合された炭素系活物質(5)を含む、スーパーキャパシタ。
【請求項16】
前記電解質セパレータのイオン性液体(IL)と前記電極のイオン性液体とが別個である、請求項13に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項17】
前記イオン性ポリマー電解質は、イオン性ポリマーおよびイオン性液体(IL)から製作されており、
イオン性ポリマーに対するイオン性液体の比率は、自立型電解質セパレータを得るように選択される、請求項13または14に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項18】
前記スーパーキャパシタは、特定の支持体の形状と合致するように適合化されている、請求項13から15のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項19】
前記支持体が柔軟である、請求項16に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項20】
前記集電器は、プリントまたは堆積された集電デバイスである、請求項13から17のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項21】
(i)室温において電極のための活物質を得るために、炭素材料、イオン性液体、およびバインダを混合して得られた炭素ペーストから形成される電極と、(ii)イオン性液体を有するイオン性ポリマーを含む電解質セパレータと、からスーパーキャパシタを製作する方法。
【請求項22】
請求項19に記載のスーパーキャパシタを製作する方法であって、
第1集電器を設けるステップと、
炭素材料、イオン性液体、およびバインダを混合して得られる第1炭素ペーストから、第1電極を前記第1集電器上に形成し、前記電極のための活物質を室温において得るステップと、
イオン性液体を有するイオン性ポリマーを含む電解質セパレータを、前記第1電極上に設けるステップと、
第2集電器を設けるステップと、
炭素材料、イオン性液体、およびバインダを混合して得られる第2炭素ペーストから、第2電極を前記第2集電器上に形成するステップと、
前記第2集電器、前記第2電極、前記電解質セパレータ、前記第1集電器、および前記第1電極を組み立てるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[本発明の分野]
本発明は、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極を製作する方法、および装置に関する。本発明はまた、当該イオン性液体スーパーキャパシタを製作するための方法、電極、電極と電解質との組み合わせ、およびスーパーキャパシタに関する。
【0002】
本発明の分野は、超高速電気化学的バッテリ、スーパーキャパシタ、または電気化学的キャパシタを含む。
【0003】
[技術的背景]
電気化学キャパシタにおける電荷蓄積は、電極材料の表面電荷と電解質のイオンとの間の静電引力に基づいている。多孔質炭素は、最大4000m2/gの、高比表面積を有するので、通常、電極の活物質として使用される。これらの細孔は、多大な細孔サイズ分布を有する。炭素の活性表面への、電解質イオンの接近は、多孔質ネットワークの屈曲度に起因して生じる、多孔質ネットワークの複数のボトルネックによって、低減され得る。また、イオン性液体(有機系電解質よりもわずかに粘性が高い)が使用される場合、堅固に巻かれたスーパーキャパシタ内に電解質を充填することは、困難である。当該電解質充填ステップは、通常、電気化学セルが組み立てられた後に行われ、時間を要する可能性がある。
【0004】
現在の技術の電解質においては、高い蒸気圧を有する可燃性の溶剤が使用される。このことは、温度変化環境下または高温下における、デバイス内の高圧増強を招く。
【0005】
デバイスのエネルギー密度は、集電器およびセパレータなど、デバイスに使用される材料(素材)の選択によって影響を受ける。これらの材料は、総重量を増加させるので、通常10kWh/kgのオーダーである全体的なエネルギー密度に直接影響し得る。
【0006】
WO2017091474A1Aには、スーパーキャパシタセルのための電極を製造するプロセスが開示されており、当該プロセスは、以下を含む:(A)液体電解質またはゲル電解質と混合された電極活物質および任意の導電性添加剤から成る複数の導電性多孔質層と複数の湿潤電極層とを調製するステップであって、当該導電性多孔質層は、相互接続された導電性経路および少なくとも80体積%の細孔を含むステップと、(B)所望の数の多孔質層および所望の数の湿潤電極層を交互に積層および一体化して、100μm以上(好ましくは200μmよりも大きい、より好ましくは400μmよりも大きい、さらに好ましくは600μmよりも大きい、最も好ましくは1,000μmよりも大きい)の厚さを有する電極を形成するステップと、を含む。
【0007】
US2017125175A1には、(i)二酸化炭素の活性化を使用して活性炭を処理するプロセスと、(ii)二酸化炭素を用いて処理された活性炭を電極材料として使用して製造され、したがって、高電圧において安定して動作可能なスーパーキャパシタと、が開示されている。本発明に係るスーパーキャパシタは、スーパーキャパシタを構成する電極および電解質の材料を改良した材料を含み、高電圧においてさえ、安定して動作するように最適化された電極特性を有する。
【0008】
WO2017065963A1には、スーパーキャパシタセルを製造するプロセスが開示されており、当該プロセスは、(a)導電性多孔質層をカソード材料含浸領域に連続的に供給するステップであって、当該導電性多孔質層は、相互接続された導電性経路、および少なくとも70体積%の細孔を含むステップと、(b)湿潤カソード活物質混合物(カソード活物質、および電解液に混合された任意の導電性添加剤を含有する)を、当該多孔質層の細孔に注入してカソード電極を形成するステップと、(c)同様の様式によってアノード電極を調製するステップと、(d)アノード電極、多孔質セパレータ、およびカソード電極を積層してスーパーキャパシタを形成するステップであって、当該アノード電極、および/または、当該カソード電極は、100μm以上の厚さを有し、および/または、当該アノード活物質または当該カソード活物質は、アノードまたはカソードにおける7mg/cm2以上の電極活物質の増量を構成するステップと、を含む。
【0009】
CN106548875Aには、全固体可撓性透明スーパーキャパシタと、その調製および応用とが開示されている。スーパーキャパシタは、可撓性の透明薄膜を電極として用い、電解質は固体ゲル電解質である。可撓性透明薄膜をスーパーキャパシタの単電極として用い、固体ゲル電解質として高分子ポリマーを用い、層毎の自己アセンブリと組み合わせ、かつ、レーザーエッチングまたはテンプレート法などの技術を用いて設計、製作、および組み立てを行うことにより、可撓性透明スーパーキャパシタが得られる。
【0010】
CN106531475Aには、スーパーキャパシタ電極の製造技術が開示されている。当該製造技術は、(i)原料を導電剤10質量%、バインダ(粘着剤)5質量%、活性炭85質量%に秤量し、当該原料を均等に混合し、脱イオン水を添加してペーストに調整するステップ、(ii)両面ローラ機を用いて圧延により膜を形成し、50~60℃において1~2時間真空乾燥して水分の一部を除去して半乾燥膜を得るステップ、および、(iii)まず、集電器表面に半乾燥膜を圧延して片面被覆電極を得て、次に、当該片面被覆電極の裏面に半乾燥膜を圧延して両面被覆電極を製作し、最後に、完全に乾燥した両面被覆電極を取り出して電極を製作するステップを含む。
【0011】
CN106449180Aには、グラフェンベースのスーパーキャパシタの比キャパシタンスを増加させる方法が開示されている。スーパーキャパシタの電極をグラフェンから調製し、理論上可能なキャパシタンスは、最大550F/gである。しかしながら、材料特性および調製技術などの要因のために、一般に、含有される比キャパシタンスは150~300F/gの範囲内である。当該方法においては、まず、液晶状態の酸化グラフェン溶液に塩化ナトリウムと尿素とをドープし、スクレーパを用いて塗工法により溶液から膜を製作する。そして、水熱還元後に得られる膜を、スーパーキャパシタの電極として採用する。添加された物質により、グラフェン膜の水熱還元プロセスにおいて、グラフェン層の黒鉛化積層が防止されうる。その結果、窒素ドーピングが行われ、水系電解質を用いた場合の比キャパシタンスを、比較的高いレベルである400F/gよりも大きくすることができる。
【0012】
WO2011014970A2には、スーパーキャパシタ様電子バッテリを製造するための方法が開示されている。スーパーキャパシタ様電子電池を製造するためのステップは、以下の通りである。基板上に第1集電器が形成される。当該第1集電器上に、第1電極が形成される。第1電極は、第1固体電解質と、第1導電材料とから形成される。第1導電材料は、第1固体電解質に含まれる可動イオンに不可逆である。当該第1導電材料は、パーコレーション限界を超える。電解質は、第1電極上に形成される。第2電極は、電解質上に形成される。第2電極は、第2固体電解質と、第2導電材料とから形成される。第2導電材料は、第2固体電解質に含まれる可動イオンに不可逆である。当該第2導電性材料は、パーコレーション限界を超える。第2集電器は、第2電極上に形成される。
【0013】
US20140035098A1には、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間に固体イオノゲル構造を含む固体スーパーキャパシタが開示されている。当該固体イオノゲル構造は、第1電極と第2電極との間の、直接的な電気的接触を防止する。さらに、当該固体イオノゲル構造は、第1電極および第2電極の内部の空隙を実質的に満たす。
【0014】
WO2006125901A2には、エネルギー貯蔵システムのための電極、その製造方法、および前記電極を含むエネルギー貯蔵システムが開示されている。より具体的には、当該発明は、所定の多孔度、純度、および粒径分布を有する活性炭をベースとする炭素質活物質の膜、ならびにポリマーバインダに関する。当該発明において、電極は集電器上に1つの前記コーティング膜を含み、スーパーキャパシタは前記電極のうちの少なくとも1つを含む。当該文献には、前述の膜、電極およびスーパーキャパシタを調製する方法も開示されている。
【0015】
WO2005088657A2には、集電器上の活性炭およびカーボンナノチューブに基づく電極の調製プロセス、および、前記電極を備えたスーパーキャパシタが開示されている。
【0016】
本発明の目的は、従来技術のスーパーキャパシタによって提供されるエネルギー密度と比較して、より高いエネルギー密度を有するスーパーキャパシタを得ることである。本発明の別の目的は、セル製造プロセスにおける電解質充填ステップを省略する、スーパーキャパシタのための電極の新規な加工方法を提案することである。当該方法は、いかなる揮発性溶剤をも使用することがないので、実施をより容易にするであろう。
【0017】
[本発明の概要]
当該目的は、イオン性ポリマー電解質セパレータによって分離された2つの電極(アノード、カソード)を含む、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極を製作する方法によって達成され、当該方法は以下のステップを含む:
-炭素材料、イオン性液体、およびバインダを混合して得られる炭素ペーストを製作し、前記電極のための活物質を、室温において得るステップ、および、
-前記活物質を機械的に加工して、前記電極を形成するステップ。
【0018】
前記炭素ペーストは、有利には、前記炭素ペーストの100%重量に対して、60~90重量%の電解質中に混合された少なくとも10~40重量%の前記炭素活物質と、0~10重量%の前記バインダと、を含んでよい。
【0019】
前記電極形成ステップは、ペースト3次元プリント技術またはペーストスタンプ技術を使用してよい。
【0020】
イオン性液体はまた、炭素材料をバインダと混合するために使用される。高品質のイオン性液体[純度99.9%;H20≦5ppm;ハロゲン化物≦1ppm;リチウム、ナトリウム、およびカリウム≦10ppm;有機窒素化合物≦10ppm;カラーテスト20-10ハーゼン]のみが、20~30Wh/kgの、増加したデバイスエネルギー密度を達成した。イオン性液体は、(i)アルキルイミダゾリウム、アルキルピロリジニウム系物質、モルホリニウム系物質、ピリジニウム系物質、およびアンモニウム系物質から構成されるカチオンと、(ii)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアンアミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、フルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)から構成されるアニオンと、を含んでいてよい。
【0021】
本発明に係るスーパーキャパシタは、カソード電極と電解質セパレータとアノード電極とのスタックを含んでよく、前記カソード電極および前記アノード電極は、集電器に電気的に接続されており、前記電解質セパレータは、イオン性液体を有するイオン性ポリマーを含み、前記電極は、イオン性液体電解質およびバインダと混合された炭素系活物質を含む。
【0022】
前記電解質セパレータは、電解質およびセパレータとしての2つの機能を有する。以下、当該前記電解質セパレータを、イオン性ポリマー電解質と称する。
【0023】
当該イオン性ポリマー電解質は、イオン性ポリマーおよびイオン性液体から構成されてよく、イオン性ポリマーに対するイオン性液体の比率は、自立型電解質セパレータを得るように選択される。
【0024】
前記電解質セパレータのイオン性液体と前記電極のイオン性液体とが別個であってもよい。
【0025】
本発明の別の態様によれば、前記イオン性ポリマー電解質から製作された前記セパレータによって分離された2つの電極(アノード、カソード)を含む、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための前記電極を製作する装置が提案され、当該装置は、:
-前記炭素材料、前記イオン性液体、および前記バインダを混合して得られる前記炭素ペーストを製作し、前記電極のための前記活物質を、室温において得るための手段と、
-前記活物質を機械的に加工し、前記電極を形成するための手段と、を含む。
【0026】
本発明はまた、本発明に係る方法を実施することによって製作される、イオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極および電解質の組合せに関する。
【0027】
本発明のスーパーキャパシタは、特定の支持体の形状に合致するように適合化されてもよく、当該支持体は柔軟であってよい。
【0028】
前記集電器は、集電デバイス上にプリントまたは堆積されてよい。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、(i)室温において電極のための活物質を得るように前記炭素材料、前記イオン性液体、および前記バインダを混合して得られる前記炭素ペーストから形成される前記電極と、(ii)前記イオン性液体を有する前記イオン性ポリマーを含む前記電解質セパレータと、から、前記スーパーキャパシタを製作する方法が提案されている。
【0030】
本発明に係る前記スーパーキャパシタを製作する方法は、以下のステップを含んでよい:
-前記第1集電器を設けるステップ、
-前記炭素材料、前記イオン性液体、および前記バインダを混合して得られる第1炭素ペーストから、第1電極を前記第1集電器上に形成し、前記電極のための活物質を室温において得るステップ、
-イオン性液体を有する前記イオン性ポリマーを含む前記電解質セパレータを、前記第1電極上に設けるステップ、
-第2集電器を設けるステップ、
-前記炭素材料、前記イオン性液体、および前記バインダを混合して得られる第2炭素ペーストから、第2電極を前記第2集電器上に形成するステップ、および、
-前記第2集電器、前記第2電極、前記電解質セパレータ、前記第1集電器、および前記第1電極を組み立てるステップ。
【0031】
前記電解質の電極に対する重量比率は、有利には[60%~90%]の範囲に含まれ得る。
【0032】
前記イオン性液体ポリマー電解質は、前記イオン性ポリマーと、ポリマーを含まない遊離イオン性液体とから構成されてよい。
【0033】
あるいは、イオン性液体ポリマー電解質は、イオン性ポリマーと、スタック全体に亘って遊離電導性電解質イオンを提供する遊離イオン性液体と、を有するイオン性液体ポリマーから構成されてもよい。
【0034】
当該遊離イオン性液体は、電極加工時にカソード(アノード)材料に水分を与えるために使用されている、イオン性液体であってよい。
【0035】
イオン性液体ポリマー電解質は、好ましくは10~50μmの厚さを有する。
【0036】
本発明の別の態様によれば、イオン性ポリマー電解質から構成されるセパレータによって分離される2つの電極(アノード、カソード)を備えるイオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極を加工する方法が提案され、当該方法は以下のステップを含む:
-前記イオン性液体電解質(IL)を、所定の最適化された比率において、粉末状の前記乾燥活物質に添加し、前記活物質に、前記イオン性液体電解質(IL)を含浸させるステップ、
-炭素ペーストを加工して、前記電極のためのイオン性液体含有活物質を得るステップ。
【0037】
本発明に係る方法は、イオン性液体電解質(IL)を複数回折り畳み、および/または、当該ペーストへと複数回混錬するステップをさらに含んでよく、当該折り畳みステップ、および/または、混錬ステップは、ミキサーに続いてカレンダー加工機もしくは3本ロールミルを用いる、またはジェットミルもしくは押出機を用いることによって実行されてよい。
【0038】
また、当該方法は、電極を加工するために必要とされるイオン性液体電解質の量を最適化するステップを含んでもよく、前記最適化ステップは、活物質の多孔質および/または層状ネットワークに捕捉された電解質の量の推定を含む。
【0039】
活物質の多孔質ネットワークに捕捉された電解質の量の推定は、イオン性液体電解質(IL)を有するセルを組み立てること、前記セルを循環させること、電極を隔離すること、および、前記電極を秤量することを含む、最適化試験を使用してよい。
【0040】
当該最適化試験は、前記電極を洗浄し、次いで、秤量前に前記電極を乾燥することを、さらに含んでもよい。
【0041】
炭素ペーストを加工するステップは、電極のための活物質として使用する準備が整えられたドウを得るために実行されてよい。
【0042】
本発明に係る方法は、(i)イオン性ポリマー電解質を製造し、後に前記イオン性ポリマー電解質を電極と共に組み立てて、デバイスを形成するステップと、(ii)前記イオン性液体ポリマー電解質を2つの前記電極の一方に直接的に接するように加工し、後に第2電極と共に組み立てて、デバイスを形成するステップと、をさらに含んでよい。
【0043】
本発明のさらに別の態様によれば、イオン性液体ポリマー電解質(IL)から構成されるセパレータによって分離された2つの電極(アノード、カソード)を備えるイオン性液体ベースのスーパーキャパシタのための電極を加工する装置が提案され、当該装置は:
-前記イオン性液体電解質(IL)を、所定の最適化された比率において、粉末状の前記乾燥活物質に添加し、前記活物質に、前記イオン性液体電解質(IL)を含浸させる手段を備え、
-また、前記イオン性液体電解質中(IL)の分散液として前記バインダを添加して、完全に溶剤を含まないようにする手段も備えてよく、
-炭素ペーストを加工して、前記電極のための活物質を含有するイオン性液体を得る手段も備えてもよい。
【0044】
炭素ペーストを加工する手段は、室温において複数の原料を共に混合することによって、有利に実行され得る。
【0045】
本発明に関しては、バインダ、活物質、およびイオン性液体電解質(IL)を含むカソード(アノード)活物質の混合物を混合するプロセスから開始する。混錬および混合によって前記混合物をドウへと加工する特定の段階の後にのみ、弾性結合ネットワークが確立された状態において、前記カソード(アノード)は、産業規模において、3本ロールミル、押出機、ジェットミルによって置き換えることが可能である、折り畳み方法、および/または、混錬方法によって、形成されてよい。
【0046】
異なる電解質および活物質の質量%は、各電極/電解質対に特有である。
【0047】
特に広い温度適用(-50℃~150℃)における調合の結果として、電解質は、少なくとも、イオン性液体であってもよいし、または、純粋なイオン性液体と比較して改善された物理化学的特性を有する、および/もしくは、共晶の、イオン性液体の混合物であってもよい。
【0048】
[定義]
イオン性液体:100℃未満の温度の溶融塩。
【0049】
イオン性ポリマー:ポリマー鎖中にカチオン性部位またはアニオン性部位の繰り返し単位を有するポリマー。
【0050】
ゲル電解質:硬質でない、半固体状態または半液体状態の電解質。
【0051】
[図面の説明]
図面は、本発明の実施形態の一部の例を詳細に描写し、特に:
・
図1は、本発明において使用される炭素ペーストを製作するための装置を示す;
・
図2は、
図1の炭素ペーストから電極を形成する装置を示す;
・
図3は、本発明に係る電極の製作方法のステップを示す;
・
図4は、スーパーキャパシタのアセンブリを、層毎に示す図である;
・
図5は、(A)YP80とEMITFSIとを用いて組み立てられた、新しい加工方法と従来の加工方法とを比較した、スーパーキャパシタセルのサイクリックボルタンメトリープロファイル、および、(B)電気化学インピーダンススペクトロスコピー(Electrochemical Impedance Spectroscopy,EIS)のプロットを示す;
・
図6は、新しい加工方法を用いて、YP80活性炭とEMITFSIとを用いて組み立てられたスーパーキャパシタセルの、定電流充電/放電プロファイルを描く;
・
図7は、(A)新しい加工方法を用いて、YP80活性炭とEMITFSIとを用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの電気化学的インピーダンススペクトロスコピープロファイル、および、(B)対応するサイクリックボルタンメトリープロファイルを示す;
・
図8は、(A)室温において、および、(B)65℃において、溶剤なしの様々なイオン性液体、溶剤なしの新たな加工方法、およびイオン性液体電解質セパレータを使用して、YP80活性炭を用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの電気化学的インピーダンススペクトロスコピープロファイルを示す;
・
図9は、室温において、異なるイオン性液体を用いた溶剤なしの加工方法を使用して、市販の活性炭YP80電極を用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの、サイクリックボルタンメトリープロファイル(デバイスエネルギー密度によって表されている)を示す;
・
図10は、溶剤なしの加工方法を使用して電極を製作するために、異なる市販の炭素材料(クラレ社製の活性炭YP80、ACS社のCNP0001およびGN1P005)を用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの正規化されたサイクリックボルタンメトリプロファイルを示す。
【0052】
[詳細な説明]
図1および
図3を参照する。最初のステップIの本質は、室温において、液体/ゲル調合物2を有する電解質、バインダ4、および活性炭材料5を、機械的混錬ブレード3を備えたポット1に注ぐことにある。当該ブレード3は、いかなる揮発性有機成分(Vilatile Organic Component,VOC)溶剤をも用いることなく、ポット1に注がれた成分の混合および混錬を確実にする(ステップII)。室温において実行される当該ステップIIの生成物は、炭素ドウ6である。
【0053】
図2および
図3を参照する。炭素ドウ6は、室温において、3本のロール7、8、9を含むカレンダー加工機10において加工され(ステップIII)、電極と電解質との組み合わせを構成するペーストリボン11を製作する(ステップIV)。
【0054】
電荷蓄積に寄与しない余分な体積の/過剰な材料を用いることなく、デバイスのエネルギー密度を効率的に増加させるために、表面積および体積の観点から十分に利用される材料によってデバイスが満たされることを確実にするために、実用的な電極加工方法は、電解質/電極比率の最適化を考慮に入れている。
【0055】
最適化のプロセスは、既知の質量の電極に必要な、ILの質量の決定から始まる。これは、特定のイオン性液体を有するセルを組み立て、高温のセルを、高電圧まで循環させることによる。次に、電極が分離され、秤量される。電極を超音波下においてアセトニトリルを用いて洗浄し、電極を真空乾燥し、電極の重量を測定すると、活物質の多孔質ネットワークに捕捉された電解質の量が明らかになり、これを本明細書においては電解質の最適重量と呼ぶ。
【0056】
電極加工ステップは以下を含む:
-最適化された質量%の電解質を炭素に導入するステップ、
-電解質(IL)中に分散された所定量のバインダを導入するステップ、
-電極材料を、電解質を用いて折り畳む、および/または、混練するステップ(例えば、ミキサマシン)、
-電極材料を含む電解質(IL)として使用される準備が整えられたドウへと加工される炭素ペーストスラリー、および、
-電解質含浸電極材料を、高温において真空乾燥するステップ。
【0057】
その後、電極は、スーパーキャパシタ内において使用される準備が整えられる。
【0058】
生産条件は、乾燥した空間、および応用的な使用に関しては、アルゴン環境を必要とする。
【0059】
本発明に係る電極加工は、バッテリ、および自動車用、航空用、宇宙用、携帯用のツールとロボットとのためのスーパーキャパシタのエネルギー密度および安全性を向上させるために使用され得る。
【0060】
また、本発明に係る加工を他のイオン性液体(但し、イオン性液体のみに限定されない)に適用し、グラフェンなどの他の電極材料を使用することによって、イオンゲルベースの電子肌(圧力/歪みセンサ、電気二重層トランジスタなど)、フレキシブルディスプレイ、ソフトアクチュエータ、およびウェアラブルの用途を見出し得る。
【0061】
電極加工は、イオン性液体のみに限定されず、特定のグライム、ゲルポリマー、UV硬化型モノマーなどの、他の不揮発性液体/ゲル電解質に適用されてよい。
【0062】
電極加工はまた、特定のグライム、炭酸、ニトリル、ゲルポリマー、UV硬化型モノマーなどの、他の不揮発性電解質成分を使用して、イオン性液体と組み合わせて使用されてよい。
【0063】
当該加工はまた、Gen1~30kWh/kg、およびGen2~50kW/kg、ならびにバッテリの電気化学に到達する目的において、電力およびエネルギー密度を改善するために、スーパーキャパシタの電気化学にも適用されてもよい。
【0064】
活物質には、オニオンライクカーボン(Onion Like Carbons, OLCs)、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes, CNTs)、マキシン(MXenes)、窒化ホウ素(Baron Nitrides, BN)、金属有機構造(Metal Organic Frameworks, MOFs)、グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラファイトおよび活性炭などの、0次元、1次元、2次元および3次元のイオン輸送およびイオン伝導性の物質(粉末形態にて存在する)が含まれる。
【0065】
物質はまた、異なるカテゴリーに由来する材料の組み合わせの結果として、それらのハイブリッドまたは2次元のヘテロ構造を含む。
【0066】
[実験結果]
スーパーキャパシタコインセル(CR2032)は、O2およびH2Oの量が0.5ppm未満のアルゴン雰囲気下にて、グローブボックス内において組み立てられる。電極は、活物質粉末(クラレ社製のYP80F、ACS Material社製のCNP00001およびGN1P0005)、電解質としてのイオン性液体(SOLVIONIC SA社製の5ppm未満の水)、およびバインダとしてのポリテトラフルオロエチレン(Fuel Cell Earth社、マサチューセッツ)の混合および混錬によって、室温において製作された。イオン性液体充填電極は、厚さ約200μmの11mmディスクに切断され、アルミニウム集電器上にラミネートされる。電極は、約30~40μmのイオン性ポリマー電解質セパレータ(SOLVIONIC SA社、トゥルーズ)によって分離された。次いで、電気化学的特性決定の前に、当該コインセルは、コインセルクリンパーによって密封された。
【0067】
電気化学インピーダンススペクトロスコピー(Electrochemical Impedance Spectroscopy,EIS)、サイクリックボルタンメトリー、および定電流サイクリング測定は、VMP3ポテンシオスタット(BioLogic社)を用いて実行された。EISは、約80kHz~約10mHzの周波数において、約5mVのRMSサイン波を印加することによって、0VのDCバイアスにおいて、2電極セルに対して実行された。0Vから上側電圧3V≦Ecell≦4Vまで、20mV/sにおいてセル電圧を印加および制御することにより、2電極セルにおける電流フィードバックを測定することによって、サイクリックボルタンメトリーが得られた。
【0068】
図5を参照する。1)溶剤なしのEMITFSIイオン性液体を用いた新しい加工方法、および、2)後にEMITFSIイオン性液体によって満たされる溶剤の存在下においての従来の加工方法、を用いる例が示されており、両者とも20mV/s、室温、および0~3.5Vの条件においてイオン性液体ポリマー電解質を用いている。セル電位に対する電流密度のサイクリックボルタンメトリープロファイルの両方は、同様の試験条件において容量性の挙動を示し、
図5Aにおいて、同一のセル特性を示している。イオン性液体ポリマー電解質セパレータを用いた新しい処理を使用して調製されたセルのサイクリックボルタンメトリープロファイルは、過剰な溶剤を使用する伝統的な/従来のプロセスよりも、良好な電気化学プロファイルを示した。
図5Bは、1)新しい電極加工方法+イオン性液体ポリマー電解質セパレータ、および、2)従来の加工方法および市販のセパレータを使用して、イオン性液体(YP80活性炭中のEMITFSI)を用いて組み立てられたコインセルの電気化学インピーダンススペクトロスコピープロファイルを示す。当該新しい方法は、従来の方法よりも低いインピーダンス値を有するセルを生成した。このことは、より低い等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance,ESR)およびより良い電力供給を意味する。
【0069】
図6を参照する。
図5に関してテストされたものと同一のスーパーキャパシタセルの、電流密度約5mA/cm
2、25℃、および0V~3.5Vの条件における、特性容量の線形定電流充放電プロファイルが示されている。放電曲線の傾きは、容量の計算に使用されている。無溶剤の新しい加工方法は、電極材料およびイオン性液体がより良好な湿潤性を示すことに起因して、スーパーキャパシタセルに蓄積される電荷の量を改善する。当該新しい方法により、電解質イオンが活物質の表面に拡散する時間が短縮され、より良好な性能に寄与する。イオン性液体ポリマー電解質セパレータと組み合わせてイオン性液体を使用することにより、同一の炭素材料において、117F/gから150F/gまでキャパシタンスは大幅に増加した。このことは、キャパシタンスの28%の増加と、デバイス比エネルギー密度の5倍の増加に相当する。
【0070】
図7は、先行する実施例におけるアニオンであるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[TFSI]とは異なるアニオンである、ビス(フルオロスルホニル)イミド[FSI]を用いた別の実施例の結果を示す。このことは、溶剤を用いないEMIFSIと、イオン性液体電解質セパレータとを用いた新しい電極加工方法の使用によって、低い電気化学インピーダンスが促進されていることを示す。
図7Aは、1)新しい電極方法、2)新しい電極加工方法+イオン性液体セパレータ、および、3)従来の加工方法および市販のセパレータを用いて、活性炭YP80中に、イオン性液体EMIFSIが存在する状態において組み立てられたコインセルの、電気化学インピーダンススペクトロスコピープロファイルを示す。当該新しい方法により、従来の方法よりも低いインピーダンス値を有するセルが生成された。このことは、より低い等価直列抵抗およびより良い電力供給を意味する。また、EMIFSIを用いた新しい加工方法の使用により、セルのESRは低下し、市販のセパレータをイオン性液体電解質セパレータによって置き換えることにより、以下の2つの顕著な改善をもたらした:1)ESRのさらなる低下、および、2)界面間(半円のより小さい直径)の電荷移動抵抗の大幅な低下。このことは、明らかに、電極とセパレータとの間の改善された界面接触、および電解質リザーバと電気バリアとの両方として機能するセパレータのイオン伝導性に起因している。このように、6kHzと比較してより高い周波数である15kHzにおいて起こる電荷移動において観察される通り、インピーダンスにおける2段階の改善は、電荷移動効率を大きく高める。高速電荷移動現象は、高周波数において発生する。その一方、電解質拡散などのより低速の現象は、より低い周波数において発生する。694mHzの折点周波数をもたらす45℃プロファイルは、拡散による現象の特性であるワールブルグ挙動に従う。新しい処理方法およびイオン性液体電解質セパレータを用いた場合のワールブルグ長が短いことは、電極の湿潤が、ワールブルグ長が長い場合と比較して速く起こることを示唆する。これらの知見は、改善されたクーロン効率、より低いESRに起因するより低い電力損失、およびより良好な電力供給を意味する。TFSIからFSIへのアニオンの変化は、より速い速度(ワールブルグ拡散の長さ短縮、および、より高い周波数)における電極の湿潤の達成をもたらした。
図7Bは、20mV/sのスキャン速度、25℃、および0V~3.5Vの条件における同一のセルの、対応するサイクリックボルタンメトリープロファイルを示す。溶剤を用いる従来の方法を用いたセルから記録されたサイクリックボルタンメトリープロファイルは、新しい方法に比べて長方形状ではないプロファイルを示す。長方形状のCVプロファイルは、理想的なスーパーキャパシタの特性である。
【0071】
図8におけるこれらのEISプロファイルは、カチオン、ピロリジニウム(PYR14)、アンモニウム(N113)、ピペリジニウム(PIP13)、イミダゾリウム(EMI)、アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、および、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミド(FST)の異なる組み合わせを有するイオン性液体が、室温(A)および65℃(B)において新しい処理方法に使用された場合、すべて容量性の挙動を示すことを表している。純粋なイオン性液体としては、PYR14TFSI、PIP13FSI、N1113TFSI、EMITFSI、EMIBF4、およびEMFSIが、共晶混合物としては、EMITFSI+N1113TFSIおよびEMITFSI+PYR14TFSIが、混合物としては、N1113TFSI+PCがある。
【0072】
カチオンおよびアニオンの異なる組み合わせを有する異なるイオン性液体が、市販の活性炭YP80において、室温において容量性の挙動を示すことが実証されている(
図9)。キャパシタンスは、循環するイオン性液体中において、4ボルトにおいて30Wh/kgに達した。このグラフは、室温における、同一のタイプの活性炭YP80、および異なるイオン性液体EMITFSI、EMIFSI、EMIBF4、N1113TFSI、PYR14TFSI、PIP13FSI、EMITFSI:PYR14FSI、およびN1113:PCの、室温におけるエネルギー密度を示す。
【0073】
グラフェンおよび2種類の活性化された材料(表1にソースが列挙されている)などの炭素材料、ならびにそれらの異なる割合の混合物が、スーパーキャパシタコインセル中に組み立てられ、そして試験された。異なる炭素材料、およびそれらの混合物は、
図10における容量性の挙動を示すことが示された。異なる炭素材料は、異なる重量密度を有するので、キャパシタンスは、それぞれの炭素システム/電解質システムの安定性に応じて、0Vから3.3~4Vの上限電圧まで室温において循環された、異なる炭素システム/電解質システムの電気化学プロファイルを集約するために、正規化されている。
【表1】
【0074】
[実験例1]
まず、
図4を参照する。カソードスタック(カソード積層体)1が形成された。まず、活物質活性炭(YP80)0.25gに対し、イオン性液体(EMITFSI、SOLVIONIC SA社)0.97gおよびバインダ(PTFE)0.013gが加えられ、それらは屋外において30分間混合およびドウへと混練され、カソードペースト1Bが形成された。次に、カソードの厚さが200μm程度になるように、炭素被覆アルミ箔(厚さ70μm)からなるカソード集電器1Aの一方の面において、カソードペースト1Bが圧延される。次に、積層されたカソードスタック1は、真空下の炉内において、80℃にて60分間乾燥される。最後に、その上に形成された、カソード活物質層1Bを含むカソード集電器1Aは、円板状(直径8mm)に切断された。
【0075】
次に、カソード1を形成するステップと同様のステップにより、アノード活物質層2Bがアノード集電器2Aの一方の面に形成され、アノードスタック(アノード積層体)2が円板状に形成された。
【0076】
その後、カソード活物質層1Bとアノード活物質層2Bとが市販のセパレータ3(Al
2O
3、Evonik)を挟んで対向するように、カソード1は、アノードスタック2に対して積層された。こうして、
図4に示すように、電気化学キャパシタ(MTI社製の密閉型C2032コインセル)が完成した。
【0077】
[実験例2]
市販のセパレータ3がイオン性液体ポリマー電解質セパレータに置き換えられ、かつ、電解質がイオン性液体の共晶混合物であることを除いて、実験例1と同様のステップにより、
図4の例と同様の電気化学キャパシタが形成された。
【0078】
まず、カソードスタック1が形成された。まず、活物質活性炭(YP80)0.25gに対し、イオン性液体(EMITFSI:PYR14FSIを1:1のモル比にて混合、両者ともSOLVIONIC SA社製)の共晶混合物0.76gとバインダ(PTFE)0.025gとが加えられ、混合され、カソードペースト1Bが形成された。次に、カソードスタック1を形成するステップと同様のステップにより、アノード活物質層2Bがアノード集電器2Aの一方の表面に形成され、アノードスタック2が円板状に形成された。
【0079】
次に、カソードおよびアノードと同一のイオン性液体を用いて、電解質セパレータ3が形成された。最初に、EMITFSIとPYR14FSIとの1:1モル比混合物(イオン性液体の共晶混合物)6gが、4gのpolyDDATFSI(SOLVIONIC SA社製)および5gのアセトニトリルに添加され、混合される。当該溶液は、ドクターブレードを用いて型枠に流し込まれ、屋外において120分間乾燥された。次に、得られた膜(メンブレン)は、真空下の炉内において、800℃にて一晩さらに乾燥される。次に、厚さ37μmの乾燥した電解質セパレータ3は、直径13mmの円板状に切断される。最後に、イオン性液体ポリマー電解質セパレータは、カソード上に積層される。その後、電解質セパレータ3を有するカソード活物質層1Bと、アノード活物質層2Bとがセパレータ3を挟んで対向するように、積層されたセパレータ3を有するカソードスタック1は、アノードスタック2に対して積層された。これにより、電気化学キャパシタ(MTI社製密閉型CR2032コインセル)が完成した。
【0080】
[実験例3]
カソード1B、アノード2B、およびセパレータ3に使用されたイオン性液体がPIP13FSI(SOLVIONIC SA社)であり、かつ、別の活性炭(CNP00001)が使用されたことを除いては、実験例2と同様のステップにより、
図4の例同様の電気化学キャパシタが形成された。電極層1および電極層2が形成される場合には、まず、活物質活性炭(CNP00001、ACS material社)0.25gに対して、イオン性液体PIP13FSI0.70gとバインダ(PTFE)0.025gとが添加され、屋外において30分間混合されドウへと混練された。
【0081】
[実験例4]
カソード1、アノード2、セパレータ3に使用されたイオン性液体がN1113TFSIであり、かつ、別の活性炭が使用されたことを除いては、実験例2と同様のステップにより、
図4の例と同様の電気化学キャパシタが形成された。電極層1Bおよび電極層2Bが形成される場合には、まず、グラフェン(GN1P0005、ACS Material社)0.100gに対して、イオン性液N1113TFSI2.56gとバインダ(PTFE)0.011gとが添加され、屋外において30分間混合され、ドウへと混練された。
【0082】
もちろん、本発明はこれまで説明した実施形態に限定されるものではなく、他の多くの電極加工装置の実施形態が提案され得る。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】本発明において使用される炭素ペーストを製作するための装置を示す。
【
図2】
図1の炭素ペーストから電極を形成する装置を示す。
【
図3】本発明に係る電極の製作方法のステップを示す。
【
図4】スーパーキャパシタのアセンブリを、層毎に示す図である。
【
図5A】YP80とEMITFSIとを用いて組み立てられた、新しい加工方法と従来の加工方法とを比較した、スーパーキャパシタセルのサイクリックボルタンメトリープロファイルを示す。
【
図5B】YP80とEMITFSIとを用いて組み立てられた、新しい加工方法と従来の加工方法とを比較した、スーパーキャパシタセルの電気化学インピーダンススペクトロスコピーのプロットを示す。
【
図6】新しい加工方法を用いて、YP80活性炭とEMITFSIとを用いて組み立てられたスーパーキャパシタセルの、定電流充電/放電プロファイルを描く。
【
図7A】新しい加工方法を用いて、YP80活性炭とEMITFSIとを用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの電気化学的インピーダンススペクトロスコピープロファイルを示す。
【
図7B】新しい加工方法を用いて、YP80活性炭とEMITFSIとを用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルのサイクリックボルタンメトリープロファイルを示す。
【
図8A】室温において、溶剤なしの様々なイオン性液体、溶剤なしの新たな加工方法、およびイオン性液体電解質セパレータを使用して、YP80活性炭を用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの電気化学的インピーダンススペクトロスコピープロファイルを示す。
【
図8B】65℃において、溶剤なしの様々なイオン性液体、溶剤なしの新たな加工方法、およびイオン性液体電解質セパレータを使用して、YP80活性炭を用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの電気化学的インピーダンススペクトロスコピープロファイルを示す。
【
図9】室温において、異なるイオン性液体を用いた溶剤なしの加工方法を使用して、市販の活性炭YP80電極を用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの、サイクリックボルタンメトリープロファイル(デバイスエネルギー密度によって表されている)を示す。
【
図10】溶剤なしの加工方法を使用して電極を製作するために、異なる市販の炭素材料(クラレ社製の活性炭YP80、ACS社のCNP0001およびGN1P005)を用いて組み立てられた、スーパーキャパシタセルの正規化されたサイクリックボルタンメトリプロファイルを示す。
【国際調査報告】