(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】多発性硬化症関連T細胞の除去のためのフィルター
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20220824BHJP
C07K 17/02 20060101ALI20220824BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20220824BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220824BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220824BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20220824BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220824BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220824BHJP
C12N 11/00 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
A61M1/36 165
C07K17/02
C07K17/00
C07K14/705
G01N33/68
G01N1/04 H
G01N33/48 M
C12N5/0783
C12N11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576828
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2020000541
(87)【国際公開番号】W WO2020260949
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521561592
【氏名又は名称】バイオイミュネイト テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カーメル, シガリット
(72)【発明者】
【氏名】シュタインガート, シモン
(72)【発明者】
【氏名】イツハイク, シュロモ
(72)【発明者】
【氏名】アマルテリー, ハダル
(72)【発明者】
【氏名】アルファシー, オムリ シュムエル
(72)【発明者】
【氏名】スニール, エルザ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
4B033
4B065
4C077
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA25
2G045BA13
2G045BB12
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045DA36
2G045FA36
2G045FA37
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB08
2G045FB12
2G052AA29
2G052AA30
2G052AA33
2G052EA03
2G052GA24
2G052GA29
2G052GA30
4B033NA16
4B033NB33
4B033NB57
4B033NC10
4B033NC13
4B033ND12
4B033NE02
4B033NG05
4B033NH10
4B065AA94X
4B065BC41
4B065BD14
4B065BD39
4B065CA44
4C077AA07
4C077BB02
4C077BB03
4C077BB04
4C077CC04
4C077CC07
4C077CC09
4C077DD01
4C077EE01
4C077JJ08
4C077JJ09
4C077JJ25
4C077MM03
4C077NN02
4C077PP08
4C077PP13
4C077PP15
4C077PP16
4C077PP18
4C077PP24
4H045AA30
4H045AA40
4H045BA09
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA34
4H045EA60
4H045FA83
(57)【要約】
全血からの病原性細胞の除去などの、生体液から標的成分を除去するための生物学的フィルターについて記載する。フィルターは不活性表面からなる媒体を含み、捕捉された物質は不活性表面上に配置され得る。フィルターは、自己免疫疾患または癌などの疾患に関連する病原性細胞などの標的細胞を選択的に認識、捕捉、および除去するように構成され得る。生物学的濾過に関連するデバイス、システム、装置、コンピューター可読媒体、および提供も本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を備えることを特徴とする生物学的フィルター:
不活性表面媒体。
前記不活性表面媒体上に配置されたヒト白血球抗原(HLA)タンパク質。
前記不活性表面媒体上の前記HLAタンパク質に結合した抗原ペプチド。
前記抗原ペプチドおよび前記HLAタンパク質は、抗原特異的T細胞受容体が前記抗原ペプチドおよび前記HLAタンパク質の複合体に結合することを可能にするように、T細胞が複合体と接触するときに選択され、それによって、特異的T細胞を複合体を介して前記不活性表面媒体に固定する。
【請求項2】
前記不活性表面媒体が、シート材、メッシュ構造、繊維、ゲル、液体、またはビーズをを含むことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
前記不活性表面媒体が、ポリスルホンまたはポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(Ultem)、またはトリタンを含むことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項4】
前記不活性表面媒体が、前記ポリスルホンを含むことを特徴とする請求項3記載のフィルター。
【請求項5】
前記不活性表面媒体が、高分子電解質をさらに含むことを特徴とする請求項4記載のフィルター。
【請求項6】
前記HLAタンパク質が、共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介して前記不活性表面媒体上に配置されることを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項7】
前記HLAタンパク質が、共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介して前記不活性表面媒体上に配置されることを特徴とする請求項6のフィルター。
【請求項8】
前記不活性表面媒体が、ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、ポリスチレン、アビジンおよび/またはストレプトアビジンを含むことを特徴とする請求項1のフィルター
【請求項9】
前記HLAタンパク質が、そのアンカー位置が、HLA結合溝の少なくとも幅だけ互いに離間するように、前記不活性表面媒体上に配置されることを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項10】
前記HLAタンパク質が、単量体または多量体を1つ以上含むことを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項11】
前記HLAタンパク質が、切断されていることを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項12】
前記HLAタンパク質が、C末端残基としてシステインを含むように設計されることを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項13】
前記C末端システインが、ペプチドリンカーを介してHLAタンパク質に連結されることを特徴とする請求項12のフィルター。
【請求項14】
前記HLAタンパク質が、HLA Iおよび/またはHLA IIであることを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項15】
前記HLAタンパク質が、患者に適合するようにHLA型を決定されることを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項16】
前記抗原ペプチドが、合成的に作製され、前記HLAタンパク質上にロードされ、前記抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合することができるHLA-ペプチド複合体を形成することを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項17】
前記HLAタンパク質が、組換え的に産生されることを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項18】
前記抗原ペプチドが、多発性硬化症に関連するタンパク質に由来することを特徴とする請求項1のフィルター。
【請求項19】
前記抗原ペプチドが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせから由来することを特徴とする請求項18のフィルター。
【請求項20】
前記抗原ペプチドが、MBP
87-99、MBP
85-99、MBP
83-96、MBP
217-231、MBP
88-102、MBP
282-296、PLP
91-110、PLP
131-151、PLP
283-252、PLP
263-277、PLP
58-72、PLP
13-27、OPALIN
46-60、OPALIN
27-41、OPALIN
127-141、MOG
210-224、MOG
29-43、MOG
176-190、MOG
225-239、OSP
74-88、OSP
114-128、MAG
8-22、MAG
467-481、MAG
529-543、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項19のフィルター。
【請求項21】
前記フィルターが、フィルター間に流体が流れるように構成された複数の層を備えることを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項22】
多発性硬化症関連T細胞の細胞減少のための以下を含む生物学的フィルターであるフィルター:
前記抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合するホスト材料としてのフィルター媒体。
前記ホスト材料が、ヒト白血球抗原(HLA)-ミエリン-ペプチド複合体を含み、ミエリン特異的T細胞受容体と結合するように選択され、それによってHLA-ミエリンペプチド複合体を認識するT細胞集団の特異的結合を可能にすることを特徴とする。
【請求項23】
前記HLA-ミエリン-ペプチド複合体が、各々前記抗原ペプチドおよび前記HLAタンパク質を含むことを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項24】
前記フィルター媒体が、不活性表面を含むことを特徴とする請求項22記載のフィルター。
【請求項25】
前記フィルター媒体が、前記ビーズを含むことを特徴とする請求項22記載のフィルター。
【請求項26】
前記フィルター媒体が、前記シート材を含むことを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項27】
前記フィルター媒体が、流体を含むことを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項28】
前記フィルター媒体が、前記ポリスルホンまたは前記ポリスルホン誘導体、前記ガラスマトリックス、前記シリコンマトリックス、前記ポリジメチルシロキサン(PDMS)、前記ポリカーボネート、前記ポリエーテルイミド(Ultem)、または前記トリタンを含むことを特徴とする請求項22記載のフィルター。
【請求項29】
前記フィルター媒体が、前記高分子電解質をさらに含むことを特徴とする請求項28記載のフィルター。
【請求項30】
前記HLA-ミエリン-ペプチド複合体が、共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介して前記不活性表面媒体上に配置されることを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項31】
前記HLA-ミエリン-ペプチド複合体が、マレイミド類似体を介して前記媒体上に配置されることを特徴とする請求項22記載のフィルター。
【請求項32】
前記不活性表面が、前記ポリエチレングリコール(PEG)または前記PEG誘導体、前記ポリスチレン、前記アビジンおよび/または前記ストレプトアビジンを含むことを特徴とする請求項24のフィルター
【請求項33】
前記HLA-ミエリン-ペプチド複合体が、複合体のアンカー位置が前記HLA結合溝の少なくとも幅だけ互いに離間されるように、前記フィルター媒体上に配置されることを特徴とする請求項22記載のフィルター。
【請求項34】
前記HLAタンパク質が切断されていることを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項35】
前記HLAタンパク質が、C末端残基として前記システインを含むように設計されることを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項36】
前記C末端システインが、前記ペプチドリンカーを介してHLAタンパク質に連結されることを特徴とする請求項35のフィルター。
【請求項37】
前記HLAタンパク質が、前記HLA Iおよび/または前記HLA IIであることを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項38】
前記HLAタンパク質が、患者に適合するように前記HLA型を決定されることを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項39】
前記ミエリンペプチドが、前記ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、前記ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、前記ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、前記オパリンタンパク質、前記オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、前記ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせから由来することを特徴とする請求項22のフィルター。
【請求項40】
前記抗原が、前記MBP
87-99、前記MBP
85-99、前記MBP
83-96、前記MBP
217-231、前記MBP
88-102、前記MBP
282-296、前記PLP
91-110、前記PLP
131-151、前記PLP
283-252、前記PLP
263-277、前記PLP
58-72、前記PLP
13-27、前記OPALIN
46-60、前記OPALIN
27-41、前記OPALIN
127-141、前記MOG
210-224、前記MOG
29-43、前記MOG
176-190、前記MOG
225-239、前記OSP
74-88、前記OSP
114-128、前記MAG
8-22、前記MAG
467-481、前記MAG
529-543、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項39のフィルター。
【請求項41】
前記フィルターが、フィルター間に流体が流れるように構成された複数の前記層を備えることを特徴とする請求項22記載のフィルター。
【請求項42】
前記ホスト材料が、非ミエリン性多発性硬化症関連タンパク質に由来する前記HLAタンパク質および前記抗原ペプチドの複合体をさらに含むことを特徴とする請求項22記載のフィルター。
【請求項43】
病原性T細胞を患者の血液から除去するための装置であって、以下を含む装置:
入口、白血球出口、および患者体内への他の画分の戻りを可能にし、全血の他の画分から白血球を分離することができる血液分離装置を保持するように構成された第1段階領域。
前記第1段階領域を通して患者から血液を運ぶための第1のポンプ。
前記ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含む前記生物学的フィルターを保持するように構成され、1つ以上の前記入口および1つ以上の前記出口を有し、前記第1段階領域および第2段階領域が、前記血液分離装置の前記白血球出口から前記生物学的フィルターの前記1つ以上の入口への流れを可能にするように配向された第2段階領域。
前記生物学的フィルターの1つ以上の出口から生物学的フィルターの1つ以上の前記入口に前記白血球を再循環させるための第2のポンプ。
前記第1段階領域および前記第2段階領域を通って血液を導くための複数の電気的に制御可能な弁。
以下のように構成された1つ以上のプロセッサー:
前記第1のポンプを制御して、一定量の前記白血球が分離され、第2段階領域に運ばれるまで、前記第1段階領域を通って血流が流れるようにする。
一定量の前記白血球が分離され、前記第2段階領域に運ばれる時の前記第1のポンプの無効化。
前記第2のポンプを有効にし、複数の前記弁を制御して、前記病原性T細胞を非病原性白血球から分離するのに十分な時間、前記生物学的フィルターを通して一定量の前記白血球を再循環させる。
前記非病原性白血球を患者体内に戻す。
【請求項44】
前記電気的に制御可能な複数の弁が、前記第2のポンプが活性化され、第2段階の前記生物学的フィルターを通して前記白血球の量を再循環させる間、前記白血球が患者体内に戻されることを防止するために、前記1つ以上のプロセッサーによって制御可能な1つ以上の前記弁を含むことを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項45】
前記電気的に制御可能な複数の弁が、第2のポンプが活性化され、第2段階の前記生物学的フィルターを介して前記白血球の量を再循環させる間、前記白血球が前記第1段階領域から前記第2段階領域へ移動することを防止するために、前記1つ以上のプロセッサーによって制御可能な1つ以上の前記弁を含むことを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項46】
前記1つ以上のプロセッサーが、複数の前記電気的に制御可能な弁を制御して、前記白血球を前記第2段階領域においてバッチで処理させ、前記白血球の第1バッチを前記第2段階領域で再循環させ、その後、前記1つ以上のプロセッサーが前記白血球の第2バッチを第2段階の前記生物学的フィルターに入れることを許可する前に、患者体内に戻すように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項47】
前記血液分離装置が、アフェレーシスを用いて血液を分離するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項48】
前記血液分離装置が、遠心分離を用いて血液を分離するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項49】
前記血液分離装置が、濾過を用いて血液を分離するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項50】
前記血液分離装置が、前記白血球を細胞特異的マトリックスに機械的に結合するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項51】
前記血液分離装置が、前記白血球と細胞特異的抗体との結合を可能にするように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項52】
前記血液混合装置をさらに含み、前記1つ以上のプロセッサーが、患者体内に戻す前に、全血の他の画分および/または前記非病原性白血球を混合するように前記血液混合装置を制御するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項53】
前記生物学的フィルターが、各層に前記ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を有する前記複数の層を含むことを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項54】
前記第2段階領域が、前記生物学的フィルターが前記第1のポンプ内に収集された画分の約3~50mlを含有することができるように大きさが調整されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項55】
前記蠕動ポンプが、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項56】
血液貯蔵チャンバーをさらに備え、患者からの血液は、前記血液分離装置内で分離する前に、前記血液貯蔵室チャンバーに貯蔵されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項57】
動脈圧制御ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項58】
前記1つ以上のプロセッサーが、全血の他の画分を患者に戻す前に、赤血球および生理食塩水を加えるために、前記1つ以上の弁を制御するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項59】
前記1つ以上のプロセッサーが、前記第2段階領域に抗凝固剤を供給するために、前記1つ以上の弁を制御するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項60】
前記生物学的フィルターが、前記病原性T細胞に選択的に結合するように構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項61】
患者の血液から前記病原性T細胞を除去するための、以下のように構成されることを特徴とするチューブセット:
全血の他の画分から前記白血球を分離するのに使用する前記血液分離装置を含み、前記入口、前記白血球出口、および血液分画出口を有する第1段階領域。
前記ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含有し、1つ以上の一次入口、1つ以上の一次出口、1つ以上の再循環入口、および1つ以上の再循環出口を有する生物学的フィルターを含む第2段階領域。
1つ以上の前記再循環出口と前記再循環入口とを相互接続する再循環ループ。
患者から前記第1段階領域の前記1つ以上の入口に血液を運ぶための1つ以上の血液吸引チューブ。
前記第1段階領域の前記白血球出口から前記第2段階領域の前記一次入口に血液を運ぶように構成される1本以上の中間チューブ。
患者体内に戻すために、前記第1段階領域の前記血液分画出口から血液画分を運搬するように構成される1本以上の第1段階バイパスチューブ。
患者に戻すために、前記第2段階領域の前記一次出口から前記白血球を運搬するように構成される1本以上の白血球返却チューブ。
【請求項62】
前記第2段階領域の前記一次入口および前記第2段階領域の前記再循環入口が共通であることを特徴とする請求項61記載のチューブセット。
【請求項63】
前記第2段階領域の前記一次出口および前記第2段階領域の前記再循環出口が共通であることを特徴とする請求項61記載のチューブセット。
【請求項64】
T細胞関連免疫疾患患者の治療レジメンを予測的に調整することを特徴とする、以下のように構成されるシステム:
以下のように構成された1つ以上のプロセッサー:
共通のHLAおよび疾患関連T細胞の活性化を引き起こす共通のペプチドを共有する複数の患者の治療に関連する第1のデータを受け取るように構成され、疾患のさらなる進行において、より多数の異なるペプチドが、より早期の時点よりも前記疾患関連T細胞を活性化することを踏まえ、前記第1のデータは、T細胞を活性化する共通のペプチドの経時的な進行を含む。
共通のHLAおよび共通のペプチドを有する、第1のペプチドセットが前記疾患関連T細胞の第1の亜集団を活性化し、第2のペプチドセットが前記疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化しない疾患の段階にある特定の患者に関連する第2のデータを受信する。
特定の患者における前記第2のペプチドセットが疾患のさらなる進行に対応することを、前記第1のデータを用いて決定する。
前記第2のペプチドセットが前記疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化する前に、特定の患者から前記第2のペプチドセットを除去するための改善措置を講じる。
【請求項65】
前記改善措置が、特定の患者から前記疾患関連T細胞の第2の亜集団を除去する命令を出力することを含むことを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項66】
前記改善措置が、前記第2のペプチドセットを含む前記フィルターを構築する際に使用するための情報を出力することを含むことを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項67】
前記第2のデータが、HLAタイピングおよび関連ペプチドに関する情報を分析することによって決定されることを特徴とする請求項64に記載のシステム。
【請求項68】
前記分析工程が、前記HLA複合体から前記ペプチドをストリッピングし、ペプチド配列を決定する工程を包含することを特徴とする請求項67記載のシステム。
【請求項69】
前記HLAタイピングが、血液分析に基づき、前記ペプチドに関する情報が組織特異的および疾患関連の生体液の分析に基づくことを特徴とする請求項67記載のシステム。
【請求項70】
前記分析工程が、脳脊髄液ペプチドデータを分析するステップを含むことを特徴とする請求項67記載のシステム。
【請求項71】
前記疾患のさらなる進行に対応する前記第2のペプチドセットの同定が、発症からの年数、神経症状評価尺度(EDSS)および治療を含む疾患関連パラメーターの比較、HLAタイピング分析、および対応する前記HLAタンパク質によって提示される前記ペプチドの分析を含むことを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項72】
前記第1のペプチドセットおよび前記第2のペプチドセットが、同じペプチドの変形形態であることを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項73】
前記第1のペプチドセットおよび前記第2のペプチドセットが、互いに異なることを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項74】
前記1つ以上のプロセッサーが、以下のように構成される請求項64のシステム。
前記疾患関連T細胞の追加の亜集団を活性化しない共通の追加のペプチドセットを同定する。
前記追加のペプチドセットが疾患のさらなる進行に対応することを決定する。
前記追加のペプチドセットが前記疾患関連T細胞の追加の亜集団を活性化する前に、患者から前記疾患関連T細胞の追加の亜集団を除去するための前記改善措置を講じる。
【請求項75】
前記改善措置が、前記疾患関連T細胞の前記追加の亜集団を除去する命令の出力を含むことを特徴とする請求項74記載のシステム。
【請求項76】
前記改善措置が、前記追加のペプチドセットを含む前記フィルターを構築する際に使用するためのデータを出力することを含むことを特徴とする請求項74記載のシステム。
【請求項77】
前記1つ以上のプロセッサーが、同定された前記追加のペプチドセットに基づいて患者の治療を調整するようにさらに構成されることを特徴とする請求項74記載のシステム。
【請求項78】
前記同定された前記第2のペプチドセットに基づいて前記患者の治療を調整することをさらに含むことを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項79】
前記改善措置が、前記疾患関連T細胞の第1の亜集団および前記疾患関連T細胞の第2の亜集団を同時に除去するために講じられることを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項80】
前記改善措置が、前記疾患関連T細胞の第1の亜集団、前記疾患関連T細胞の第2の亜集団、および前記疾患関連T細胞の追加の亜集団に対して同時に講じられることを特徴とする請求項74記載のシステム。
【請求項81】
前記免疫疾患が、多発性硬化症であり、前記T細胞が前記ミエリンまたはアクアポリンチャネルを含む非ミエリン中枢神経系タンパク質に対して活性化可能であることを特徴とする請求項64記載のシステム。
【請求項82】
前記ミエリンが、前記ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、前記ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、前記ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、前記オパリンタンパク質、前記オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、前記ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項81記載のシステム。
【請求項83】
前記ペプチドが、前記MBP
87-99、前記MBP
85-99、前記MBP
83-96、前記MBP
217-231、前記MBP
88-102、前記MBP
282-296、前記PLP
91-110、前記PLP
131-151、前記PLP
283-252、前記PLP
263-277、前記PLP
58-72、前記PLP
13-27、前記OPALIN
46-60、前記OPALIN
27-41、前記OPALIN
127-141、前記MOG
210-224、前記MOG
29-43、前記MOG
176-190、前記MOG
225-239、前記OSP
74-88、前記OSP
114-128、前記MAG
8-22、前記MAG
467-481、前記MAG
529-543、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項82記載のシステム。
【請求項84】
患者から特異的T細胞、病原性細胞、または非病原性細胞を除去する、以下を含むことを特徴とする方法:
特定の細胞を含む前記生体液の患者からの採取。
特定の細胞を媒体で捕捉するため、特定の細胞にのみ選択的に結合する媒体ホスト材料を通した前記生体液の体外流動。
捕捉された特定の細胞を除く前記生体液の患者体内に戻す。
【請求項85】
前記生体液が、全血または血液画分のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記生体液が、脳脊髄液を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項87】
前記生体液が、骨髄を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項88】
前記生体液が、滑液を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項89】
前記生体液が、肺胞洗浄から得られた流体を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項90】
前記生体液が、腹水を含むことを特徴とする請求項84記載の方法
【請求項91】
前記媒体が、前記不活性表面を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項92】
前記不活性表面が、前記ポリエチレングリコール(PEG)または前記PEG誘導体、前記ポリスチレン、前記アビジンおよび/または前記ストレプトアビジンを含むことを特徴とする請求項91記載の方法。
【請求項93】
前記媒体が、前記ポリスルホンまたは前記ポリスルホン誘導体、前記ガラスマトリックス、前記シリコンマトリックス、前記ポリジメチルシロキサン(PDMS)、前記ポリカーボネート、前記ポリエーテルイミド(Ultem)、または前記トリタンを1つ以上含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項94】
前記媒体が、前記ポリスルホンを含むことを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記フィルター媒体が、前記高分子電解質をさらに含むことを特徴とする請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記媒体が、前記シート材、前記液体、前記メッシュ構造、前記繊維、前記ゲル、または前記ビーズのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項97】
前記材料が、前記ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含み、各HLA-ペプチド複合体が前記HLAタンパク質および前記ペプチドを含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項98】
前記HLAタンパク質が、前記HLA Iおよび/または前記HLA IIまたはそれらの切断型を含むことを特徴とする請求項97記載の方法。
【請求項99】
前記HLAが、前記C末端にシステイン残基を含むようにさらに設計されることを特徴とする請求項97記載の方法。
【請求項100】
前記C末端システインが、前記ペプチドリンカーを介して前記HLAタンパク質に連結されることを特徴とする請求項99のフィルター。
【請求項101】
前記HLA-ペプチド複合体が、前記マレイミド類似体を介して前記媒体上に配置されることを特徴とする請求項97記載の方法。
【請求項102】
前記物質が、抗体を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項103】
前記生体液が、前記媒体を通して循環され、前記蠕動ポンプを用いて患者体内に戻されることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項104】
前記媒体が、流体を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項105】
前記特異的T細胞が、CD4+細胞またはCD8+細胞のうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項106】
前記T細胞が、自己免疫疾患に関連するタンパク質に由来する前記抗原ペプチドに特異的なT細胞受容体を含むことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項107】
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症であることを特徴とする請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記病原性細胞が、血液癌または固形癌を含む癌性疾患と関連することを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項109】
患者から前記病原性T細胞を選択的に除去するための個別化された前記生物学的フィルターを作製するための、以下のように構成されることを特徴とする方法:
患者の前記ヒト白血球抗原(HLA)型の同定。
患者の疾患に関連する前記1つ以上の免疫原性ペプチドの同定。
患者の決定された前記HLA型および前記1つ以上の免疫原性ペプチドに対応する組換え、合成、または内因的に産生/作製される前記HLA-ペプチド複合体。
前記生物学的フィルターの前記不活性表面媒体への前記HLA-ペプチド複合体の結合。
【請求項110】
前記HLA-ペプチド複合体が、前記HLAタンパク質および前記免疫原性ペプチドを含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項111】
前記HLA-ペプチド複合体が、組換え的に産生された前記HLAタンパク質および合成的に作製された前記免疫原性ペプチドを含むことを特徴とする請求項110記載の方法。
【請求項112】
前記HLA-ペプチド複合体が、組換え的に産生された前記HLAタンパク質および前記免疫原性ペプチドを含むことを特徴とする請求項110記載の方法。
【請求項113】
前記HLA-ペプチド複合体が、患者から内因的に得られることを特徴とする請求項110記載の方法。
【請求項114】
前記1つ以上の免疫原性ペプチドを同定する工程が、脳脊髄液を検査する工程を含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項115】
前記1つ以上の免疫原性ペプチドが、複数の免疫原性ペプチドを含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項116】
前記HLAタイピングが、前記血液分析によって同定され、前記ペプチド同定が、脳脊髄液分析または組織特異的疾患関連ペプチド分析のうちのいずれかによって決定されることを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項117】
前記フィルターが、前記シート材、前記液体、前記メッシュ構造、前記繊維、前記ゲル、または前記ビーズのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項118】
前記不活性表面媒体が、前記ポリスルホンまたは前記ポリスルホン誘導体、前記ガラスマトリックス、前記シリコンマトリックス、前記ポリジメチルシロキサン(PDMS)、前記ポリカーボネート、前記ポリエーテルイミド(Ultem)、または前記トリタンを1つ以上含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項119】
前記不活性表面媒体が、前記ポリスルホンを含むことを特徴とする請求項118記載の方法。
【請求項120】
前記不活性表面媒体が、前記高分子電解質をさらに含むことを特徴とする請求項119記載の方法。
【請求項121】
前記不活性表面媒体が、前記ポリエチレングリコール(PEG)または前記PEG誘導体、前記ポリスチレン、前記アビジンおよびまたは前記ストレプトアビジンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項122】
前記HLA-ペプチド複合体が、共有結合、非共有結合相互作用または吸着のうちの少なくとも1つを介して前記不活性表面媒体に結合されることを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項123】
前記HLA-ペプチド複合体が、前記マレイミド類似体を介して前記不活性フィルター表面に共有結合することを特徴とする請求項122記載の方法。
【請求項124】
前記フィルターが、フィルター間に流体が流れるように構成された前記複数の層を含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項125】
前記不活性表面媒体に結合した前記HLA-ペプチド複合体上に患者からの血液を流し、それによって病原性細胞を捕捉することをさらに含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項126】
前記病原性細胞が、白血病、急性白血病、癌、重症筋無力症(MG)、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症(MS)、真性赤血球増加症(PC、PCV)、血小板増加症、強皮症、1型糖尿病、乾癬、クローン病、または多発性硬化症のうちの少なくとも1つと関連することを特徴とする請求項125記載の方法。
【請求項127】
前記不活性表面媒体に結合した前記HLA-ペプチド複合体上を前記患者からの血液を流し、それによって骨髄増殖性疾患またはウイルス、細菌、真菌、または寄生性感染症のうちの少なくとも1つに関連する前記病原性細胞を捕捉することをさらに含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項128】
前記1つ以上の免疫原性ペプチドを同定する工程が、前記ペプチドを、疾患関連免疫原性ペプチドのデータベースおよび対応する前記HLAに対するそれらの結合親和性と比較する工程を含むことを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項129】
前記HLA型が、HLA Iおよび/またはHLA IIであることを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項130】
患者から前記病原性T細胞を選択的に除去するための個別化された前記生物学的フィルターを作製するための、以下のように構成されることを特徴とする方法:
患者の前記ヒト白血球抗原(HLA)型の同定。
患者の疾患に関連する前記1つ以上の免疫原性ペプチドの同定。
患者の同定された前記HLA型に対応する組換え的または内因的に産生される前記HLAタンパク質。
前記HLAタンパク質の前記不活性表面媒体への結合。
患者の疾患に関連する同定された前記1つ以上のペプチドの合成。
前記不活性表面媒体に結合した前記HLAタンパク質上の同定された前記ペプチドのロード。
【請求項131】
前記ロードおよび結合が連続的に起こることを特徴とする請求項130記載の方法。
【請求項132】
前記ロードおよび結合が実質的に同時に起こることを特徴とする請求項130記載の方法。
【請求項133】
患者を治療する、以下のように構成されることを特徴とする方法:
患者の前記ヒト白血球抗原(HLA)型の同定。
同定された前記HLAと共に患者においてT細胞受容体活性化を誘発する特異的疾患関連ペプチドの同定。
フィルターへのT細胞の結合のため、同定されたHLAに前記疾患関連ペプチドがロードされた複合体で構成された前記フィルターに患者の血液を体外で暴露させる。
結合したT細胞を除去した血液を患者体内に戻す。
【請求項134】
結合したT細胞を含む前記フィルターを分離剤に曝露してT細胞を除去し、除去したT細胞を計数する工程をさらに含むことを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項135】
前記T細胞が、蛍光活性化細胞選別(FACS)を含むフローサイトメトリーを用いて計数されることを特徴とする請求項134記載の方法。
【請求項136】
前記計数されたT細胞数に基づいて疾患の進行を推定することをさらに含むことを特徴とする請求項134記載の方法。
【請求項137】
前記計数されたT細胞数に基づき患者の治療を変更することをさらに含むことを特徴とする請求項134記載の方法。
【請求項138】
前記HLA-ペプチド複合体が、検出可能な標識に連結されていることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項139】
前記標識が、フルオロフォア、酵素、放射性同位元素、重金属、または核磁気共鳴マーカーのうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項138記載の方法。
【請求項140】
前記抗凝固剤を患者に投与する工程をさらに含むことを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項141】
前記特異的疾患関連ペプチドを同定する工程が、以下を含むことを特徴とする請求項133記載の方法:
患者の疾患に関連する前記1つ以上の免疫原性ペプチドの同定。
同定された1つ以上の前記免疫原性ペプチドと前記疾患関連免疫原性ペプチドのデータベースおよび患者の対応する前記HLA型に対するそれらの結合親和性との比較。
【請求項142】
前記HLAタンパク質が、組換え的に産生され、前記ペプチドが合成的に作製されることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項143】
前記HLAタンパク質およびペプチドが、組換え的に産生されることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項144】
前記HLAタンパク質およびペプチドが、患者から内因的に得られることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項145】
前記特異的疾患関連ペプチドが、自己免疫疾患、癌、または適応細胞性免疫応答を含む任意の他の疾患と関連することを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項146】
前記特異的疾患関連ペプチドが、多発性硬化症と関連することを特徴とする請求項145記載の方法。
【請求項147】
前記HLAが、前記単量体または前記多量体であることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項148】
前記HLAタイピングが、前記血液分析によって決定されることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項149】
前記HLAが、前記HLA Iおよび/または前記HLA IIであることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項150】
前記T細胞が、前記CD4+細胞または前記CD8+細胞のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項151】
前記方法が、患者に対して年間数回実施されることを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項152】
前記血液を前記患者体内に戻す前に、前記血液を栄養素または医薬組成物で富化されることをさらに含むことを特徴とする請求項133記載の方法。
【請求項153】
T細胞関連自己免疫疾患を有する患者を治療するための、以下により構成されることを特徴とする方法:
第1のT細胞によって誘発され、第2のT細胞によって誘発されない自己免疫疾患を有する特定の患者についての前記ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体データの取得。
特定の患者のHLA-ペプチド複合体データと、T細胞関連病理学を有する患者集団と関連する前記HLA-ペプチド複合体データとの比較。ここで、集団データは、前記第1のT細胞によって誘発される自己免疫疾患を有する人が、前記第2のT細胞によって誘発されるように経時的に進行することを示唆するエピトープ拡散情報を含む。
特定の患者の自己免疫疾患が前記第2のT細胞によって引き起こされる前に、特定の患者から前記第2のT細胞を取り除く。
【請求項154】
前記特定の患者について前記HLA-ペプチド複合体データを得る工程が、前記HLAタイピングおよび前記関連ペプチドの分析を含むことを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項155】
前記関連ペプチドを分析する工程が、前記HLA-ペプチド複合体からのペプチドの前記ストリッピングおよび前記ペプチド配列の決定を含むことを特徴とする請求項154記載の方法。
【請求項156】
前記HLAタイピングが、前記血液分析によって決定され、前記ペプチド分析が、前記脳脊髄液分析または前記組織特異的疾患関連ペプチド分析のうちのいずれかによって実施されることを特徴とする請求項154記載の方法。
【請求項157】
前記関連ペプチドを分析する工程が、前記脳脊髄液を検査する工程を含むことを特徴とする請求項154記載の方法。
【請求項158】
前記特定の患者の前記HLA-ペプチド複合体データを、T細胞関連病理学を有する患者集団と関連する前記HLA-ペプチド複合体データと比較することが、発症からの年数、症状、および治療を含む疾患関連パラメータの比較、前記HLAタイピング分析、および対応するHLAタンパク質によって提示されるペプチドの分析を含むことを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項159】
前記特定の患者の前記HLA-ペプチド複合体データと、T細胞関連病理を有する患者集団に関連する前記HLA-ペプチド複合体データとを比較することが、相互の前記HLA型を共有する患者を比較することを含むことを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項160】
前記エピトープ拡散が、分子内であることを特徴とすることを請求項153記載の方法。
【請求項161】
前記エピトープ拡散が、分子間であることを特徴とすることを請求項153記載の方法。
【請求項162】
以下により構成されることを特徴とする請求項153記載の方法:
時間の経過とともに自己免疫疾患を引き起こす可能性のある追加のT細胞群の同定。
特定の患者の自己免疫疾患が追加のT細胞群によって引き起こされる前に、特定の患者から前記追加のT細胞群のT細胞を除去する。
【請求項163】
同定された前記第2のT細胞に基づいて患者の治療を調整することをさらに含むことを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項164】
前記第2のT細胞の除去が、前記第2のT細胞のT細胞受容体への前記HLA-ペプチド複合体の結合を含むことを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項165】
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症であり、T細胞は前記ミエリンまたは前記アクアポリンチャネルを含む前記非ミエリン中枢神経系タンパク質に対して活性化可能であることを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項166】
前記ミエリンが、前記ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、前記ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、前記ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、前記オパリンタンパク質、前記オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、前記ミエリン関連糖タンパク質(MAG)を1つ以上含むことを特徴とする請求項165記載の方法。
【請求項167】
前記第2のT細胞が、前記生物学的フィルターにより除去されることを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項168】
前記第1のT細胞および前記第2のT細胞を同時に除去することをさらに含むことを特徴とする請求項153記載の方法。
【請求項169】
前記追加のT細胞群の細胞の除去が、前記追加のT細胞群の細胞のT細胞受容体への前記HLA-ペプチド複合体への結合を含むことを特徴とする請求項162記載の方法。
【請求項170】
前記追加のT細胞群の細胞が、前記生物学的フィルターによって除去されることを特徴とする請求項162記載の方法。
【請求項171】
前記第1のT細胞、前記第2のT細胞、および前記追加のT細胞群の細胞を同時に除去することをさらに含むことを特徴とする請求項162記載の方法。
【請求項172】
同定された前記追加のT細胞群に基づいて患者の治療を調整することをさらに含むことを特徴とする請求項162記載の方法。
【請求項173】
患者における疾患特異的病原性T細胞の量を推定する、以下のように構成されることを特徴とする方法:
患者から第1の生体液サンプルを採取する。
前記第1の生体液サンプル中の前記ヒト白血球抗原(HLA)の第1群から天然ペプチドをストリッピングする。
ストリッピングされた天然ペプチドの1つ以上の配列の同定。
前記天然ペプチドの中の1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を同定するために、同定された1つ以上の配列を既知の情報と比較する。
複数のHLA-ペプチド複合体を形成するために前記1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のペプチドである前記HLAの第2群へのロード。
複数の前記HLA-ペプチド複合体と第2の生体液サンプルとの接触。
前記第2の生体液サンプルと接触させた前記複数のHLA-ペプチド複合体について、前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量を測定する。
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する前記測定されたT細胞の量に基づいて、患者内の生体液量の前記疾患特異的病原性T細胞の量を推定する。
【請求項174】
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量を測定する前に、前記疾患特異的病原性T細胞に対する複数の前記HLA-ペプチド複合体の各々の結合親和性を測定、推定、または予測をさらに含むことを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項175】
前記疾患特異的病原性T細胞が前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合することを検証することをさらに含むことを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項176】
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する、前記測定されたT細胞の量に基づいて疾患の状態を評価することをさらに含むことを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項177】
前記疾患の状態を評価することが、前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する前記測定されたT細胞の量を、疾患を有する患者の集団から前記測定されたT細胞の量と比較することを含むことを特徴とする請求項176記載の方法。
【請求項178】
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する前記測定されたT細胞の量と、前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する以前に測定されたT細胞の量とを比較することによって、前記疾患の治療レジメンの有効性を評価することをさらに含むことを特徴とする請求項173に記載の方法。
【請求項179】
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する前記測定されたT細胞の量と、前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する前記以前に測定されたT細胞の量との比較に基づいて、前記治療レジメンを調整することをさらに含むことを特徴とする請求項178記載の方法。
【請求項180】
前記複数のHLA-ペプチド複合体を含む前記生物学的フィルターの作製工程をさらに含むことを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項181】
前記生物学的フィルターを作製する工程が、1つ以上の疾患特異的配列を共有する複数の前記ペプチドを合成する工程を含むことを特徴とする請求項180記載の方法。
【請求項182】
前記生物学的フィルターの作製が、HLAを合成する工程、合成されたHLAを、前記1つ以上の疾患特異的配列を共有する合成された複数の前記ペプチドと混合して合成された前記HLA-ペプチド複合体を形成する工程、および合成された前記HLA-ペプチド複合体を前記不活性表面媒体に適用する工程をさらに含むことを特徴とする請求項181記載の方法。
【請求項183】
前記HLAが、検出可能なマーカーに連結されていることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項184】
前記検出可能なマーカーが、前記フルオロフォア、前記酵素、前記放射性同位元素、前記重金属、または前記核磁気共鳴マーカーのうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項183記載の方法。
【請求項185】
前記複数のHLA-ペプチド複合体が、前記1つ以上の疾患特異的配列を共有する複数の合成的または組換え的に作製/産生された前記ペプチドを含むことを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項186】
前記HLA-ペプチド複合体が、前記1つ以上の疾患特異的配列を共有する、または患者から内因的に得られる複数の合成的または組換え的に産生された前記ペプチドを含むことを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項187】
前記ストリッピングされた天然ペプチドの1つ以上の配列が、質量分析計を用いて決定されることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項188】
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量が、フローサイトメトリーを用いて測定されることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項189】
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合する一定量のT細胞が、前記1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を共有する前記複数のペプチドを有することを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項190】
前記複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量が、複数の疾患特異的ペプチド配列を共有する前記複数のペプチドを含むことを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項191】
上記患者が多発性硬化症を有する場合、前記1つ以上の疾患特異的ペプチド配列が、ミエリン関連タンパク質に由来するペプチドの配列であることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項192】
前記患者が1型糖尿病を有する場合、前記1つ以上の疾患特異的ペプチド配列が、インスリンペプチドの配列、またはβ細胞タンパク質と関連する他のタンパク質であることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項193】
前記患者が重症筋無力症を有する場合、前記1つ以上の疾患特異的ペプチド配列が、アセチルコリン受容体ペプチドの配列であることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項194】
前記患者がクローン病を有する場合、前記1つ以上の疾患特異的ペプチド配列が、消化管ペプチドの配列であることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項195】
前記生体液が、全血、血液画分、脳脊髄液、滑液、肺胞洗浄液、腹膜洗浄、リンパ液、または骨髄であることを特徴とする請求項173記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願番号62/867,594(出願日:2019年6月27日)および米国仮特許出願番号62/875,193(出願日:2019年7月17日)の優先権を主張するものであり、それぞれの内容全体が参照により本出願に組み込まれている。
技術分野
【0002】
本開示は、一般に、生体液の成分を除去するための装置、システムおよび方法に関する。いくつかの用途において、装置、システムおよび方法は、限定されるものではないが、自己免疫疾患、癌、他の免疫系関連の障害または疾患、および移植に関連する合併症などの疾患に使用され得る。より詳細には、本開示は、患者の血液の細胞組成を改変することによって疾患を治療するための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
自己免疫疾患とは、免疫系が自己抗原を異物と認識するがゆえに体を攻撃してしまう病気である。これは、臓器特異的な疾患(例えば甲状腺や膵臓の病気)から全身性疾患(例えば全身性エリテマトーデス)まで、広い範囲の疾患で起こりうる。現在の自己免疫疾患の治療は、全身的な免疫抑制が中心であり、重大な副作用を伴うことがある上に、患者が感染症にかかりやすくなることもある。
【0004】
多発性硬化症(MS)は、程度はさまざまであるが中枢神経系(CNS)の有髄軸索を攻撃するので緩やかに進行して重大な身体障害を引き起こす、慢性進行性自己免疫疾患の一例である。多発性硬化症は患者のQOLを阻害する。実際に多発性硬化症患者の約30%が車椅子生活になったり、他の重度障害を負ったりすることになる。多発性硬化症患者は全世界に約300万人いる。米国だけでも、毎年1万人近くが新たに多発性硬化症と診断されており、経済的・社会的負担が増大している。ほとんどの患者では、この疾患は発作性障害として始まり、時が経つにつれて進行性障害へと進む。多発性硬化症には4つのパターンがある。Clinically Isolated Syndrome(CIS)は、神経症状が24時間以上続く初めての発作である。それ以上神経症状が出ない場合もあるが、後でCISが多発性硬化症の最初の兆候であったとわかる場合もある。別の多発性硬化症のパターンには再発寛解型多発性硬化症(RRMS)があり、寛解した後に急性発作が出るが疾患は進行しないことが特徴である。この病型が進行性になると、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)と呼ばれる。一次性進行型多発性硬化症(PPMS)は、最初から進行性である。
【0005】
現在の多発性硬化症の治療は主に薬理学的である。これらの治療は、毒性作用、全身的な免疫抑制、および発疹、発熱、悪寒、咳、胸痛、腹痛、下痢、紅潮、悪心、肺炎、進行性多発性白質脳症(PML 1:1000)、頭痛、うつ病、徐脈、リンパ球減少症、気管支炎、下痢、背部痛、重度の頭痛、高血圧、一過性徐脈、免疫抑制、そう痒症、腎機能障害、肝酵素増加、急性冠症候群(ACS)、肉腫(動物モデル例)および死亡などの種々の副作用を伴う傾向がある。薬理学的治療は発作の頻度をわずかに減少させるにすぎず、一般的には疾患の進行を恒久的に止めることはない。
【0006】
米国では、約3分ごとに新たな患者が血液癌または骨髄癌と診断されている。血液・骨髄癌の例としては、白血病、リンパ腫、骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、および骨髄増殖性腫瘍(MPN)がある。白血病、リンパ腫および骨髄腫の新規症例は、米国で新たに診断された癌症例の10%を占めると推定されている。成人T細胞白血病/リンパ腫のような高侵襲型を含む多くの型のリンパ腫および白血病は、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞およびBリンパ球のような白血球の新生物と関連している。近年、癌と闘うための免疫系の人工的刺激である癌免疫学は、手術、放射線療法および化学療法のような従来の治療法に代わる魅力的かつ革新的な代替法として提示されているが、このアプローチは、患者の免疫細胞自体が癌化している腫瘍の治療において、その可能性を十分に発揮できない可能性がある。
【0007】
前述の観点から、自己免疫疾患および癌のような衰弱性疾患の代替療法の必要性が依然として存在することは明白である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の諸態様の要旨
本開示のいくつかの態様は、生物学的フィルターに関する。開示された実施形態と一致して、生物学的フィルターは、不活性表面媒体、不活性表面媒体上に配置されたヒト白血球抗原(HLA)タンパク質、不活性表面媒体上のHLAタンパク質に結合した抗原ペプチドを含み得る。ここで、抗原ペプチドおよびHLAタンパク質は、抗原特異的T細胞受容体が抗原ペプチドおよびHLAタンパク質複合体に結合することを可能にするように選択され、それによって、T細胞が複合体と接触するとき、抗原特異的T細胞を複合体を介して不活性表面媒体に固定され得る。
【0009】
別の態様において、本開示は、多発性硬化症関連T細胞の細胞減少のために構成され得る生物学的フィルターに関する。フィルターは、抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合する物質を宿主するためのフィルター媒体を含み得、ここで、ホスト材料は、ミエリン特異的T細胞受容体と結合するように選択されたヒト白血球抗原(HLA)-ミエリン-ペプチド複合体を含み、それによってHLA-ミエリン-ペプチド複合体を認識するT細胞集団の特異的結合を可能にする。
【0010】
別の態様において、本開示は、病原性T細胞を患者の血液から除去するように構成され得る装置に関する。装置は、全血の他の分画から白血球を分離する血液分離装置を保持するように構成された第1段階領域であって、当該血液分離装置は、入口、白血球出口、および他の分画を患者に戻すことを可能にするように構成された血液分画出口を有する第1段階領域と、患者から第1段階領域を介して血液を搬送するための第1のポンプを備え得る。また、ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含む生物学的フィルターを保持するように構成され、1つ以上の入口および1つの出口を有する第2段階領域を備え、ここで、第1段階領域および第2段階領域は、血液分離装置の白血球出口から生物学的フィルターの1つ以上の入口への流れを可能にするように配向されている。装置は、生物学的フィルターの1つ以上の出口から生物学的フィルターの1つ以上の入口に白血球を再循環させるための第2のポンプと、血液を第1段階領域および第2段階領域に導くための複数の電気的に制御可能な弁を備え得る。装置のプロセッサーは、第1のポンプを制御して、一定量の白血球が分離されて第2段階領域に搬送されるまで、血液が第1段階領域を流れるようにし、一定量の白血球が分離されて第2ステージ領域に搬送されると、第1のポンプを停止させるように構成され得る。または、第2のポンプを作動させ、複数の弁を制御して、病原性T細胞と非病原性白血球を分離するのに十分な時間、生物学的フィルターを通して白血球の量を再循環させ、非病原性白血球を患者に戻すように構成され得る。
【0011】
別の態様において、本開示は、病原性T細胞を患者の血液から除去する際に使用するように構成され得るチューブセットに関する。チューブセットには、全血の他の分画から白血球を分離するのに使用するための血液分離装置を含まれ得、入口、白血球出口、および血液分画出口を有する第1段階領域、ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含む生物学的フィルターが含まれ得、1つ以上の一次入口、1つ以上の一次出口、1つ以上の再循環入口、および1つ以上の再循環出口を有する第2段階領域、1つ以上の再循環出口を再循環入口と相互接続する再循環ループ、患者からの血液を第1段階領域の1つ以上の入口に搬送するための1つ以上の血液取出チューブと、第1段階領域の白血球出口から第2段階領域の一次入口に血液を搬送するための1つ以上の中間チューブ、患者に戻すために第1段階領域の血液分画出口から血液画分を搬送するための1つ以上の第1段階バイパスチューブと、患者に戻すために第2段階領域の一次出口から白血球を搬送するための1つ以上の白血球リターンチューブとを備え得る。
【0012】
さらなる態様において、本開示は、T細胞関連免疫疾患を有する患者のための治療レジメンを予測的に調節するためのシステムを提供する。システムには、1つ以上のプロセッサーが含まれ得、共通のHLAおよび疾患関連T細胞の活性化を誘発する共通のペプチドを共有する複数の患者の治療に関連する第1のデータを受信するよう設定されている。ここで、第1のデータは、T細胞を活性化する共通のペプチドの経時的な進行を含み、疾患のさらなる進行時には、初期の時よりも多くの異なるペプチドが疾患関連T細胞を活性化することを特徴とする。また、共通のHLAおよび共通のペプチドを有する特定の患者に関連し、かつ第1のペプチドセットが疾患関連T細胞の第1の亜集団を活性化し、第2のペプチドセットが疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化しない疾患の段階にある第2のデータを受け取る。第1のデータを用いて、特定の患者における第2のペプチドセットが疾患の後期進行に対応することを決定する。そして、疾患関連T細胞の第2の亜集団を、第2のペプチドセットが疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化する前に、特定の患者から除去するための改善措置をとる。
【0013】
別の態様において、本開示は、患者から特異的T細胞、病原性細胞、または非病原性細胞を除去する方法に関する。この方法には、患者から生体液を取り出し、その生体液は、特定の細胞を含むことがある。また、特定の細胞のみに選択的に結合する媒体ホスト材料を通して生体液を体外流動させ、それによってその媒体で特定の細胞を補足、また、捕捉された特定の細胞が存在しない生体液を患者体内に戻すことが含まれ得る。
【0014】
さらにもう1つの態様において、本開示は、患者から病原性細胞を選択的に除去するための個人化された生物学的フィルターを生成する方法に関する。この方法は、患者のヒト白血球抗原(HLA)型を同定する工程、患者の疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドを同定する工程、患者の同定されたHLA型および1つ以上の免疫原性ペプチドに対応するHLA-ペプチド複合体を組換え的に、合成的に、または内因的に産生/作製する工程、およびHLA-ペプチド複合体を生物学的フィルターの不活性表面媒体に結合させる工程を含み得る。別の実施例において、患者から病原性細胞を選択的に除去するための個別化された生物学的フィルターを製造する方法が企図され、この方法は、患者のヒト白血球抗原(HLA)型を同定する工程、患者の疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドを同定する工程、患者の同定されたHLA型に対応するHLAタンパク質を組換え的または内因的に産生する工程、HLAタンパク質を不活性表面媒体に結合させる工程、患者の疾患に関連する1つ以上の同定されたペプチドを合成する工程、不活性表面媒体に結合したHLAタンパク質上に同定されたペプチドをロードする工程を含む。
【0015】
さらなる態様において、本開示は、患者を治療する方法に関する。この方法は、患者のヒト白血球抗原(HLA)型を決定する工程と、決定されたHLAと共に患者におけるT細胞受容体活性化を引き起こす特異的な疾患関連ペプチドを同定する工程と、同定されたHLA上にロードされた疾患関連ペプチドで構成された複合体で処理されたフィルターに患者の血液を体外暴露して、それによってT細胞のフィルターへの結合を引き起こす工程と、結合したT細胞を除去した状態で患者の血液に戻す工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、患者における自己免疫疾患を治療することに向けられ得る。例えば、本方法は、T細胞関連自己免疫疾患を有する患者を治療するステップに向けられ得、第1のT細胞によって引き起こされ、第2のT細胞によって誘発されない自己免疫疾患を有する特定の患者についてヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体データを取得する工程と、特定の患者のHLA-ペプチド複合体データを、T細胞関連病理を有する患者集団に関連するHLA-ペプチド複合体データと比較する工程、特定の患者の自己免疫疾患が第2のT細胞によって誘発される前に、特定の患者から第2のT細胞を除去する工程を含む。ここで、集団データは第1のT細胞によって誘発される自己免疫疾患を有する人が、時間の経過とともに第2のT細胞によって誘発されるようになることを示唆するエピトープ拡散情報を含む。
【0016】
なお、さらなる態様において、本開示は、患者における疾患特異的な病原性T細胞の量を推定する方法に関する。本方法には、患者から第1の生体液サンプルを得る工程と、第1の生体液サンプル中のヒト白血球抗原(HLA)の第1群から天然ペプチドをストリッピングする工程と、測定された1つ以上の配列を、天然ペプチド間の1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を同定するため既知の情報との比較をする工程と、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のHLA-ペプチド配列上に組み込み、複数のHLA-ペプチド複合体を第2の生体液サンプルと接触させる工程と、第2の生体液サンプルと接触させた複数のHLA-ペプチド複合体について、複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量を決定する工程、また、複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の測定量に基づき、患者内の生体液中の疾患特異的な病原性T細胞の量の推定を行う工程が含まれ得る。
【0017】
開示された実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の説明において部分的に説明され、一部は、説明から明らかであるか、または開示された実施形態の実施によって学習され得る。開示された実施形態の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された要素および組み合わせによって実現され、達成されるであろう。
【0018】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示および説明のみであり、請求項に記載された開示された実施形態を制限するものではないことを理解されたい。
【0019】
添付の図面は、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示のいくつかの実施形態を示しており、説明と共に、添付の請求項に記載された開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態と一致する例示的な生物学的フィルターアセンブリを示す。
【0021】
【
図2】
図2Aは、本開示の実施形態と一致する不活性表面媒体のシートを示す。
【0022】
図2Bは、本開示の実施形態と一致する不活性表面媒体の繊維を示す。
【0023】
図2Cは、本開示の実施形態と一致する不活性表面媒体のビーズを示す。
【0024】
図2Dは、本開示の実施形態と一致する不活性表面媒体のスポンジ状構造を示す。
【0025】
【
図3】
図3は、本開示の実施形態と一致する多層フィルターの例示的な層状配置を示す。
【0026】
【
図4】
図4は、本開示の実施形態と一致して、HLAタンパク質がそれに結合した不活性表面媒体の模式図である。
【0027】
【
図5】
図5は、本開示の実施形態と一致する不活性表面媒体にマレイミドリンカーを介して付着したHLAタンパク質の模式図である。
【0028】
【
図6】
図6は、多発性硬化症の分子病因の模式図である。
【0029】
【
図7】
図7Aは、本開示の実施形態と一致するPDMS媒体を示す。
【0030】
図7Bは、本開示の実施形態と一致するポリカーボネート媒体を示す。
【0031】
図7Cは、本開示の実施形態と一致する、Ultem媒体を示す。
【0032】
図7Dは、本開示の実施形態と一致するトリタン媒体を示す。
【0033】
【
図8】
図8は、本開示の実施形態と一致する多発性硬化症関連T細胞の細胞減少のための例示的な生物学的フィルターの模式図を示す。
【0034】
【
図9】
図9は、本開示の実施形態と一致するHLA IおよびHLA IIにそれぞれ結合したミエリンタンパク抗原の模式図を示す。
【0035】
【
図10】
図10は、本開示の実施形態と一致する患者の血液から病原性T細胞を除去するための例示的な2段階装置の模式図を示す。
【0036】
【
図11-1】
図11Aは、本開示の実施形態と一致する例示的なアフェレーシス血液分離装置の概略図を示す。
【0037】
【
図11-2】
図11Bは、本開示の実施形態と一致する例示的な遠心血液分離装置を示す。
【0038】
図11Cは、本開示の実施形態と一致する例示的な濾過血液分離装置を示す。
【0039】
【
図12-1】
図12Aは、本開示の実施形態と一致する患者の血液から病原性T細胞を除去するための例示的な2段階チューブセットの概略図を示す。
【0040】
【
図12-2】
図12Bは、本開示の実施形態と一致する2段階チューブセットの例示的な第2段階領域の概略図を示す。
【0041】
図12Cは、本開示の実施形態と一致する2段階チューブセットの例示的な第2段階領域の概略図を示す。
【0042】
図12Dは、本開示の実施形態と一致する2段階チューブセットの例示的な第2段階領域の概略図を示す。
【0043】
【
図13】
図13は、本開示のいくつかの実施形態と一致する方法を実装するために使用してもよいシステムの概略図である。
【0044】
【
図14】
図14は、本開示と一致する例示的な先行処理方法のブロック図である。
【0045】
【
図15】
図15は、本開示の実施形態と一致する生体液から特定の細胞を除去するための例示的な方法を示す。
【0046】
【
図16】
図16は、本開示の実施形態と一致する特定の細胞を捕捉する媒体ホスト材料の概略図を示す。
【0047】
【
図17】
図17Aは、本開示の実施形態と一致するHLA-ペプチド複合体をホストする媒体の概略図を示す。
【0048】
図17Bは、本開示の実施形態と一致する媒体ホスト抗体の概略図を示す。
【0049】
【
図18】
図18は、本開示の実施形態と一致する病原性細胞の選択的除去のための個別化された生物学的フィルターを製造する例示的方法の種々の工程をブロック形態で示す。
【0050】
【
図19】
図19は、本開示の実施形態と一致する患者の血液からT細胞を体外的に除去するためにHLA-ペプチド複合体を使用するための例示的方法をブロック形態で示す。
【0051】
【
図20】
図20Aは、本開示の実施形態と一致するHLA五量体の概略図を示す。
【0052】
図20Bは、本開示の実施形態と一致するHLA四量体の概略図を示す。
【0053】
【
図21】
図21Aは、本開示の実施形態と一致するフルオロフォアに連結されたHLA Iの概略図を示す。
【0054】
図21Bは、本開示の実施形態と一致する酵素に連結されたHLA IIの概略図を示す。
【0055】
【
図22】
図22Aは、本開示の実施形態と一致する結合したT細胞をフィルターから除去する工程の概略図を示す。
【0056】
図22Bは、本開示の実施形態と一致する蛍光活性化細胞選別のプロセスの概略図を示す。
【0057】
【
図23】
図23は、本開示の実施形態と一致するT細胞関連自己免疫疾患を有する患者を治療する例示的方法の種々の工程をブロック形態で示す。
【0058】
【
図24】
図24は、本開示の実施形態と一致するT細胞を除去するプロセスのフローチャートを示す。
【0059】
【
図25】
図25は、本開示の実施形態と一致する患者における病原性T細胞を推定する方法をブロック図で示す。
【0060】
【
図26】
図26は、開示された実施形態と一致する、in-vitroインキュベーション後のThy1.2によるリンパ節におけるT細胞の単一染色を示すFACSヒストグラムである。Thy1.2(LF4-H)の陽性染色は右下の象限(26.88%)に示されている。
【0061】
【
図27】図は、開示された実施形態と一致する、分離前のTリンパ球マーカー(Thy1.2-APC)によるMOG活性化T細胞の二重染色、および既にPE(タンパク質-PE)にコンジュゲートされたタンパク質(タンパク質-PE)についての染色を示すFACSヒストグラムである。
【0062】
【
図28】
図28Aおよび28Bは、開示された実施形態と一致するタンパク質複合体からの分離後にカラムに付着しなかったMOG活性化T細胞の数を示すFACSヒストグラムである。
【0063】
【
図29】
図29Aおよび29Bは、開示された実施形態と一致するタンパク質複合体との分離後のカラム内でのMOG活性化T細胞結合の数を示すFACSヒストグラムである。
【0064】
【
図30】
図30Aは、開示された実施形態と一致する還元(-DTT)および非還元(+DTT)条件での精製後のBIX.XX-GGCタンパク質の代表的なSDS-PAGEである。
【0065】
図30Bは、開示された実施形態と一致するBIX.XX-GGCタンパク質の代表的なCDスペクトルである。
【0066】
【
図31】
図31は、開示された実施形態と一致するシリコンウェハーコーティング手順の概略図を示す。
【0067】
【
図32】
図32Aは、開示された実施形態(AFM走査)と一致する1μm×1μmのフィールドでBIX.XX-GGCタンパク質でコーティングされたシリコンウェハーの概略的に示す。
【0068】
図32Bは、開示された実施形態(AFM走査)と一致する10μm×10μmのフィールドでBIX.XX-GGCタンパク質でコーティングされたシリコンウェハーの概略的に示す。
【0069】
【
図33】
図33A~33Dは、開示された実施形態と一致する、ラットEAEモデル(0~5のスケールでスコア化)における濾過後の臨床スコアを示すグラフであり、処置直後(
図33A)、処置後4日目(
図33B)、5日目(
図33C)、6日目(
図33D)の測定スコアを示す。
【0070】
【
図34】
図34A~34Dは、開示された実施形態と一致する、ラットEAEモデル(0~5のスケールでスコア化)における濾過後の発症日に合わせて調整した臨床スコアを示すグラフであり、処置直後(
図34A)、処置後4日目(
図34B)、5日目(
図34C)、6日目(
図34D)の測定スコアを示す。
【0071】
【
図35】
図35A~35Fは、開示された実施形態と一致するヒト由来PBMCの代表的なフローサイトメトリー分析である。
【0072】
【
図36】
図36は、開示された実施形態と一致する多発性硬化症患者由来のPBMCから特異的細胞の42%を除去した例示的濾過を示す表である。
【0073】
【
図37】
図37Aおよび37Bは、開示された実施形態と一致する捕捉された細胞を有するフィルター表面を示す。
【0074】
【
図38-1】
図38A~38Cは、開示された実施形態と一致するマウス細胞の濾過後のフィルター表面の拡大図である。
【0075】
【
図39】
図39は、開示された実施形態と一致する、膜組成物へのタンパク質結合の模式図である。
【0076】
【
図40】
図40A~40Cは、開示された実施形態と一致するポリスルホン-ポリアクリル酸(PAA)フィブリルの走査電子顕微鏡(SEM)の結果を示す。
【0077】
【
図41】
図41Aおよび42Bは、開示された実施形態と一致する原子間力顕微鏡(AFM)の結果であり、ポリスルホン-ポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド膜が単独の場合(
図41A)およびタンパク質でコーティングされた場合(
図41B)を示す。
【0078】
【
図42】
図42Aおよび42Bは、開示された実施形態と一致するタンパク質活性化シリコンシートの原子間力顕微鏡(AFM)の結果を示す。
【0079】
【
図43】
図43は、開示された実施形態と一致するタンパク質活性化PSfシートのX線光電子分光法(XPS)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
詳細説明
例示的実施形態は、添付の図面を参照して説明される。便宜上、同一の参照番号が図面全体にわたって使用され、同一または類似の部品を参照する。読者への注記として、この詳細な説明には、一連のトピック・見出しが含まれており、これはいかなる意味においても限定的ではない。むしろ、任意の見出しの下に提示された本開示の態様は、同じ見出しまたは異なる見出しの下に提示された任意の他の態様と共に実施することができることが意図されている。開示された原理の例および特徴を本明細書に記載するが、開示された実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、修正、適応、および他の形態の実装が可能である。また、「含む」および「有する」、および他の類似の形態は、意味において同等であり、これらのいずれかの単語の前に示される項目が、当該項目の網羅的な一覧であることを意味せず、記載された項目のみに限定されないことを意図している。また、本開示および添付の特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形「1つの」や「その」などは、複数の引例を含むことに留意されたい。さらに、本開示の一部は、実施例において、方法および構造を一緒に記載するが、本方法は、構造によって制限されず、構造は、本方法によって制限されないことを理解されたい。むしろ、本方法は、実施例で提供される構造以外の構造で実施することができ、構造は、記載された方法とは異なる方法で使用することができると考えられる。さらに、本明細書に方法が記載されている場合、そのような方法は、例えば1つ以上のプロセッサーを介してハードウェアで実装することができ、そのような方法はいずれも、コンピューター可読媒体を介してソフトウェアで実装されてもよいことを理解されたい。従って、本明細書の方法の開示は、同様に、各方法を実行するように構成された1つ以上のプロセッサー、ならびに1つ以上のプロセッサーに各方法を実行させるための命令を含む一時的でないコンピューター読み取り可能媒体の開示を構成することを意図している。
本開示の諸態様の概要
【0081】
本開示の態様は、生物学的物質の成分の除去を含むデバイス、装置、コンピューター可読媒体、システムおよび方法に関する。本明細書に開示された実施形態は、例えば、自己免疫疾患、癌(固形腫瘍および血液または骨髄癌を含む)、および/または移植後合併症、例えば移植片対宿主病(GVHD)のような疾患の治療に用いられ得る。本開示の実施形態には、特定のMHCまたはHLA分子を利用し、HLA溝上に疾患特異的ペプチドをロードし、任意のタイプの生体液からのT細胞受容体(TCR)認識に基づいて疾患特異的病原性T細胞クローンを同定し、捕捉し、除去する生物学的フィルターが含まれ得る。
【0082】
本明細書で使用される「主要組織適合性複合体」(MHC)は、免疫系、特にT細胞が異物を認識するのを助ける細胞の表面に見出されるタンパク質をコードする遺伝子群である。MHCタンパク質はすべての高等脊椎動物に見られる。ヒトでは、この複合体は「ヒト白血球抗原」(HLA)系とも呼ばれている。開示全体を通じて、用語MHCおよびHLAは互換的に使用される。HLAタンパク質は、典型的には、個体の免疫系の調節に関与し、ヒト細胞の表面に見出される。例えば、HLAタンパク質は、個体内の異物、非自己物質を認識し、それらの物質を中和する免疫応答を開始することによって機能し得る。個体の免疫応答を開始または刺激するために、外来の非自己物質をHLA複合体に組み込み、個体の免疫系に提示することができる。それぞれの個体は、HLAタンパク質の特定のセット、つまり型をもっている。いくつかの実施形態において、個体のHLA型は、認証された臨床検査室における標準的な検査技術を用いて同定され得る。例えば、個体のHLA型の同定には、個体から採取された血液サンプルを分析することが含まれ得る。あるいは、個体のHLA型は、他の適切な手段によって同定されてもよい。
【0083】
本明細書中で使用される場合、「病原性」とは、細胞を指す場合、病原性細胞および細胞断片、ならびにその除去が患者の臨床状態を改善し得る他の粒子の両方を包含する。病原性細胞の非限定的な例は、多発性硬化症患者のミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対して反応性のT細胞、同種または自家移植に対する免疫応答を刺激するT細胞、および疾患に関連する生体液中に豊富に存在する分泌粒子または細胞である。病原性細胞という用語は、健康な細胞の数が異常に多い状態をも意味する。
【0084】
ある実施形態において、本開示と一致する生物学的フィルターは、HLA単量体または多量体(例えば、二量体、四量体、五量体、デキストラマー)を可溶性形態(例えば、HLA IまたはHLA II)に組み込むことができ、それは、完全な形態(すなわち、完全なポリペプチド)または切断された形態(すなわち、切断されたポリペプチド)であり得、任意の種類の捕捉部分(例えば、ペプチドまたはそのエピトープ)に付着し得る。他の例では、これらの分子を静脈内注射して、特異的T細胞クローンを認識し、捕捉し、除去され得る。注射の1~数時間後に、患者は、この開示と一致する固有のフィルターを用いて、任意の濾過機に接続され得る。フィルターには、HLA単量体または多量体に結合した小捕捉分子と反応する特別な表面/分子/試薬が含まれ得る。これは、フィルターによる血液からのかなりの量の(または実質的に全ての)HLA単量体または多量体の捕捉をもたらすことができる。残りの血液成分は、無傷で患者に戻すことができる。
【0085】
本明細書に記載される方法は、HLA-ペプチド複合体を任意の表面または媒体フィルターに固定することなく、T細胞受容体(TCR)認識に基づく特異的T細胞クローンを同定し、捕捉し、除去することを含み得る。例えば、HLA分子は、表面または物理的フィルター媒体以外の溶液または他の媒体中で提供され得る。
【0086】
T細胞および自己免疫疾患
【0087】
免疫系はT細胞を含むいくつかの種類の細胞から構成されている。ある種のT細胞は、多発性硬化症(MS)やインスリン依存性糖尿病(IDDM)などの自己免疫疾患を媒介することもある。どちらの疾患でも、特定の臓器が損傷を受ける。多発性硬化症の場合、ミエリンとよばれる中枢神経系(CNS)の重要な成分が損傷の標的であるが、IDDMではインスリンを産生する膵臓が、体がもはやインスリンを産生できなくなるまで損傷を受ける。これらの損傷は、免疫系が自己タンパク質を病原体(非自己)として誤って認識することで起こる。
【0088】
自己免疫疾患の患者の末梢血、特に多発性硬化症患者では、末梢T細胞の量が健常者と比較して高いことが観察され得る。さらに、多発性硬化症患者のT細胞は活性化閾値が低く、増殖率が高く、生存率が高い。
【0089】
これらの観察結果を踏まえて、本開示のいくつかの実施形態では、患者の血液から疾患特異的な病原性T細胞を除去することを追求している。これらの特異的T細胞は、組織損傷および疾患状態に直接関与するT細胞である。多発性硬化症の場合、この除去は、疾患の進行を有意に遅らせ、多発性硬化症患者の神経組織損傷を予防するために実施される。フィルターによるこれらのT細胞の捕捉は、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるT細胞上に発現する特別な受容体の存在に基づいている。有害なT細胞は、ミエリンの成分(すなわちペプチド)を認識するT細胞受容体によって特徴づけられる。T細胞のT細胞受容体によるミエリンペプチドの認識および結合は、このペプチドがHLA複合体上に結合することで達成され得る。従って、開示された実施形態と一致する生物学的フィルターには、ミエリンペプチドが結合したHLA複合体分子の層が含まれ得る。病気の進行に関与する有害なT細胞はフィルターに結合し、フィルターから除去される。この濾過技術は、多発性硬化症のような疾患を治療するための非薬理学的解決策を提供し、より一般的には、生物学的物質の他の成分を除去するために使用されてもよい。
【0090】
例えば、本開示と一致する同様の分離ベースの治療法は、他の自己免疫疾患の治療に使用されてもよい。本明細書に開示される実施形態を用いて治療することができるそのような他の自己免疫疾患の例としては、アカラシア、アジソン病、成人スチル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM型腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫病(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索性および神経性ニューロパチー(AMAN)、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、慢性炎症性脱髄性多発性神経炎(CIDP)、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、Churg-Strauss症候群(CSS)または好酸球性肉芽腫症(EGPA)、瘢痕性類天疱瘡,、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、Devic病(視神経脊髄炎)、円板状ループス、Dressler症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎(EoE)、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞炎、心筋炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病(HSP)、妊娠ヘルペスまたは妊娠性類天疱瘡(PG)、化膿性汗腺炎(HS)(ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、封入体筋炎(IBM)、間質性膀胱炎(IC)、若年性関節炎、若年性糖尿病または1型糖尿病またはインスリン依存型糖尿病(IDDM)、若年性筋炎(JM)、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、蜂巣炎性結膜炎、線状IgA水疱症(LAD)、ループス、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、混合性結合組織病(MCTD)、ムーレン潰瘍、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(Mucha-Habermann病)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)またはMMNCB、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼類天疱瘡、視神経炎、パリンドローム性リウマチ(PR)、レンサ球菌感染症に関連する小児自己免疫性神経精神疾患(PANDAS)、腫瘍性小脳変性(PCD)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、Parry-Romberg症候群、扁平部炎(末梢性ぶどう膜炎)、Parsonage-Turner症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲性脳脊髄炎、悪性貧血(PA)、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多腺性症候群I型・II型・III型、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆(PRCA)、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性ジストロフィー、再発性多発軟骨炎、レストレスレッグス症候群(RLS)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎,、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性精子・形成障害・精巣炎、Stiff-person症候群(SPS)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、Susac症候群、交感性眼炎(SO)、高安動脈炎、側頭動脈炎・巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、Tolosa‐Hunt症候群(THS)、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎(UC)、未分化結合組織病(UCTD)、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、フォークト‐小柳‐原田病がある。一実施形態において、自己免疫疾患は、多発性硬化症、重症筋無力症、1型糖尿病、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、およびランバート・イートン症候群から選択される。
【0091】
本開示と一致する生体液の濾過ベースの治療は、固形腫瘍を含む種々の癌の治療にも適用することができるが、その中でも特に、白血病、リンパ腫、骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、真性赤血球増加症などの血液癌または骨髄癌の治療に適用することができる。
【0092】
いくつかの開示された実施形態は、白血病、急性白血病(AL)、他の癌、免疫系関連疾患および障害、アレルギー、アナフィラキシー、喘息、移植後拒絶反応(GVHDを含む)、移植後状態、重症筋無力症(MG)、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症(MS)、真性赤血球増加症(PCV)、血小板増加症、他の骨髄増殖性疾患、および病理学的細胞表面に発現するウイルス感染の治療に使用され得る。
生物学的フィルター
【0093】
本開示のいくつかの態様は、生物学的フィルターおよび生物学的フィルターを生成する方法を含むフィルターに関する。しかしながら、最も広い意味での開示の態様は、生物学的フィルターに限定されないことに留意されたい。むしろ、前述の開示のいくつかの態様は、フィルターを含まず、開示の他の態様は、生物学的フィルター以外のフィルターに適用され得る。
【0094】
「生物学的フィルター」という用語は、一般に、形態にかかわらず、生物学的メカニズムを用いて生体液から生物学的物質を除去する任意の媒体を指す。一例として、このようなフィルターは、タンパク質のような有機分子を含んでもよい。生物学的物質の除去は、結合または反応などの任意の生物学的または化学的プロセスを介して起こり得る。そのようなメカニズムの1つは、分子結合を含み得る。フィルターは、除去機能が可能な任意の適切な形態を有し得る。例えば、フィルターは、生体液成分が結合、接着またはその他の反応をする1つまたは複数のシートの材料の形態、またはそれを含むように構成され得る。または、メッシュ、繊維、ゲル、ビーズ、足場、または生物学的濾過のために構成された表面積を有する任意の他の物質を含むが、これらに限定されない同様の効果をもたらす他の構造を含むように構成され得る。このようなフィルターは、細胞、タンパク質、核酸、脂質、多糖類、または任意の他の生物学的物質を捕捉するように構成され得る。例えば、フィルターは、フィルターが達成するように設計された機能に応じて、タンパク質を含むか、または病原性細胞または非病原性細胞を認識し捕捉するタンパク質で固定され得る。いくつかの実施形態において、病原性細胞は、自己構造および物質を認識し、それらを攻撃する以外は、非病原性細胞と同じ役割を有し得る。一例として、フィルターは、多数の疾患に関連する多数の病原性細胞のうちの1つ以上を除去するように設計されてもよい。例えば、フィルターは、病原性リンパ球を除去するように設計されてもよい。
【0095】
非限定的な例として、
図1は、ハウジング104と、生体液流入108をハウジング104に導くための入口ポート106と、生体液をハウジングから導出するための出口ポート110とを含む生物学的フィルター102を示すが、これに限定されない。濾過媒体114は、後述するように、ハウジング内に収容することができる。ハウジング104は、円筒形として示されているが、ハウジングは、任意の適切な形状であってもよく、任意の適切な材料で構成されてもよい。
【0096】
開示された実施形態と一致して、フィルターは不活性表面媒体を含んでもよい。「不活性」という用語は、一般に、非特異的粒子、例えば、非所定の細胞または可溶性粒子を変化せず、吸収せず、または反応しない物質または材料を指す。本明細書中で使用される場合、「媒体」という用語には、細胞に選択的に結合する材料のベース、支持体、またはアンカーとして機能することができる任意の物質が含まれ得る。言い換えれば、媒体は、細胞に選択的に結合する物質を「ホスト」する。いくつかの例示的な実施形態において、不活性表面媒体は、ポリスルホンを含み得る。他の例示的な実施形態では、不活性表面媒体は、ポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、トリタン、または上記ないしは他の物質の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、不活性表面媒体は、高分子電解質を単独で、または上記で特定された別の材料または他の物質ないしは材料と組み合わさった形態でさらに含み得る。他の実施形態では、不活性表面媒体は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG誘導体、ポリスチレン、アビジンまたはストレプトアビジンのうちの少なくとも1つを含み得る。あるいは、フィルターの表面は、ある程度または高度に吸収性であってもよく、または非特異的粒子と反応性であってもよい。
【0097】
図2A~2Dは、
図1の濾過媒体114のような濾過媒体を形成するために使用され得る不活性表面媒体の構造のいくつかの非限定的な例を示す。
図2Aは、不活性表面媒体のシート202を示す。2Bは、不活性表面媒体の繊維204を示す。2Cは、不活性表面媒体のビーズ206を示す。
図2Dは、不活性表面媒体のスポンジ状構造208を示す。他の固体、半固体、または流体物質は、それらが濾過媒体のためのベースとして働くことができる限り、不活性表面媒体として使用することができる。
【0098】
特定の実施形態において、フィルターは、その間に流体が流れるように構成された複数の層を含み得る。意図された濾過機能を達成するために、流体が濾過媒体の十分な部分に接触し得る限り、任意の層状構造を使用してもよい。従って、
図2A~2Dを参照すると、例えば、シート202、繊維204、ビーズ206、または間隙を有するスポンジ状構造208の部分の層化は、それらの間の流体の流れを可能にするように構成された複数の層の非限定的な例である。スポンジ状構造208の場合、間隙の両側の部分は、本開示の意味における別個の層と考えることができる。
【0099】
隣接する層の部分は、互いに接触してもよく、または、例えば、足場によって互いに離間されてもよい。
図3は、その間に流体が流れることを可能にする間隔を置いた層の例を提供し、ハッチングされた領域302は、濾過媒体を表し、ハッチングされていない領域304は、流体が流れることができる領域を表す。領域304は、構造における実質的な空隙であってもよく、または、その中に流体が流れることを可能にする多孔質またはチャネル構造を含んでもよい。
図3に示すように、多層フィルターの層は、実質的に平坦であってもよく、輪郭形成されてもよく、またはチャネル化された行および列のマトリクス内に配置されてもよい。ここでもまた、構造が、濾過媒体との接触を介して流体を濾過することを可能にすることができる限り、特定の構造は、本開示の最も広い意味において必ずしも重要ではない。
【0100】
ハウジングまたは濾過媒体の容積は、所望の用途の仕様に応じて、任意のサイズであってもよい。いくつかの実施形態において、ハウジングまたは濾過媒体は、1サイクル以上の濾過を可能にし、生物学的物質のバッチがそれを通って循環または再循環することを可能にするようなサイズであり得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、ハウジングおよびフィルターは、細胞などの生体液の成分を損傷することなく生体液の流れを可能にするように構成され得る。例えば、フィルターは、そこを流れる生体液にせん断力を加えないように構成されてもよい。他の実施形態において、フィルターは、流体投与時の圧力調整を調整するように設計され得る。特定の実施形態において、フィルターは、流体への曝露時に圧力の蓄積または圧力の低下を防止するように構成され得る。いくつかの実施形態において、フィルターの足場は、流れの妨害を実質的に防止するような大きさにされ得る。例えば、足場は、血液凝固、血小板、およびタンパク質凝集体などの流体成分が、流動を阻止するか、またはハウジングないしはフィルターの一部の領域に優先的に集まるのを阻止するような大きさにすることができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、濾過は、生体サンプルを2つ以上のフィルターにかけることを含み得る。例えば、2つ以上のフィルターは互いに直列または並列に接続されてもよい。特定の実施形態において、マルチフィルターシステムにおける各フィルターは、特定の細胞型を捕捉するように設計され得、従って、生体サンプルをシステムに付す際に、複数の細胞型の捕捉を可能にする。一例として、2つのフィルターを有するマルチフィルターシステムにおいて、第1のフィルターは、CD8+ T細胞を捕捉するように設計することができ、第2のフィルターは、CD4+ T細胞を捕捉するように設計することができる。これらは、フィルターの意図された設計に依存して、生物学的成分のホストを捕捉するようにフィルターを設計することができるので、例示的な目的のためだけの例である。
【0103】
いくつかの実施形態において、生物学的物質の濾過は、体外または個体の外側で実施し得る。一例として、濾過は、個体の静脈から流体を引き出し、フィルターに流体を通過させ、流体を閉回路内の個体の別の静脈または同じ静脈のいずれかに戻すことによって行うことができる。別法として、濾過は、個体からサンプルを採取し、臨床検査室でサンプルを濾過し、濾過されたサンプルを個体に戻すことを含むことができる。別の実施形態において、フィルターは、個体の体内の血管に留置し得る。このようなフィルターは、ステントをホスト媒体として機能させ、HLA-ペプチド複合体を例えばホスト媒体に結合させて、血管ステントに組み込んでもよい。このようなステントベースの生物学的フィルターは、バルーンカテーテルを介して一時的に展開されてもよく、または自己拡張性であってもよく、ステントは、その濾過能力が枯渇した後に取り外し可能である。留置された場合、フィルターは、例えば、リンパ器官または任意の他の器官に近接して配置し得る。さらなる実施形態において、留置されたフィルターは、細胞に連続的に結合し、交換され得る。例えば、ポートは、患者の脈管構造内に設けられてもよく、取り外し可能なフィルターは、ポートを介してアクセス可能であってもよい。例えば、隔壁は、フィルターが交換されたときに病原体が最終的に除去されることを可能にする病原体を捕捉する、置き換え可能な生物学的フィルター構成要素を有してもよい。別の例では、生物学的フィルターは、患者の体内に留置され、提案された移殖可能な人工腎臓と同様の方法で患者の脈管構造に接続され得る。そのようないくつかの実施形態では、フィルターは、フィルターが断続的に置き換えられた状態で、長期間にわたって留置され得る。代わりに、または追加的に、より頻繁な交換の必要性を最小限にするために、生物学的フィルターを身体内で改良してもよい。追加のHLA-ペプチド複合体の注射を介して、例えば、新鮮な複合体を、既に留置されたフィルター媒体に結合させてもよい。このようにして、すでに留置された濾過媒体から追加の濾過能力を達成し得る。さらに別の実施形態において、携帯型フィルターは、患者によって装着され、または持ち運ばれてもよく、または、外部ポンプの使用の有無にかかわらず、フィルターを通る体外血流を可能にするために、睡眠中に患者のベッドに隣接して配置され得る。これらの実施形態のいずれも、臨床結果を達成するために使用することができ(例えば、疾患症状を軽減するための病原体の除去)、または特定の病原体または細胞レベルを測定する血液検査を実施するために使用されてもよい。
【0104】
従って、フィルターは、外部要素を含んでもよい。一例として、外部要素は、意図された濾過目的のためにフィルター媒体を保持することができる限り、円筒形、円柱形、または任意の他の適切な形態で成形されてもよい。外部要素は、ポリスチレンのような生体適合性材料で作ることができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、生物学的フィルターは、不活性表面媒体上に配置されたヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を含み得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、HLAタンパク質は、内因性HLAタンパク質から改変される。例えば、HLAタンパク質は、単量体または多量体のうちの少なくとも1つ、および他の修飾および付加、例えば、単一のアミノ酸、一連のアミノ酸、HLAタンパク質サブユニット、または複数のサブユニットを含み得る。いくつかの実施形態において、HLAタンパク質は、その全長から切断または短縮され得る。切断されたHLAタンパク質は、例えば、切断されたタンパク質のいずれかの末端に1つ以上の追加アミノ酸残基を加えることによって、さらに修飾され得る。非限定的な例として、切断されたHLAタンパク質は、C末端残基としてシステインを加えることによって変化させることができる。
【0107】
HLAタンパク質は、組換え的に産生され得る。別法として、またはさらに、HLAタンパク質は、患者などの個体から内因的に得ることができる。特定の実施形態において、組換え的に設計されたHLAタンパク質は、患者のタンパク質と類似の組換えタンパク質を含み得る。例えば、HLAタンパク質は、患者に適合するようにHLA型を決定できる。いくつかの実施形態において、HLAタンパク質は、HLA IまたはHLA IIであり得る。いくつかの実施形態において、組換え的に設計されたHLAタンパク質は、後に提示され得る内因性または合成ペプチドへの結合のためのペプチド結合溝を含み得る。
【0108】
HLAタンパク質は、前述したように、不活性表面媒体上に配置され得る。配置は、不活性表面媒体へのHLAタンパク質の結合、接着、アンカー、化学反応、または任意の他の態様の付着を介して起こり得る。例えば、フィルターの表面は、HLAタンパク質と反応するために、特定の分子的および化学的特性を可能にするように化学的に設計され得る。例えば、HLAタンパク質は、共有結合、非共有結合相互作用、または吸着によって、不活性表面媒体上に配置され得る。非共有結合相互作用の例としては、静電相互作用、ファンデルワールス力、π効果、および疎水効果が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、HLAタンパク質は、アナログを介してフィルターの表面に結合し得る。例として、HLAタンパク質は、マレイミド類似体を介して不活性表面上に配置されてもよい。他の実施形態において、HLAタンパク質は、マレイミド類似体を介してフィルターの表面に共有結合的に結合し得る。特定の実施形態において、HLAタンパク質は、HLAタンパク質によるフィルター表面の最大飽和を可能にするために、過剰量の溶液中でフィルターの表面に導入され得る。特定の実施形態において、HLAタンパク質は、チオール結合、ジスルフィド結合、アミン結合、または任意の他の適切な官能基の結合を介してフィルターの表面に結合し得る。あるいは、HLAタンパク質は、フィルターの表面、例えばシステイン残基に共有結合的に結合し得る。
【0109】
概略的に示された
図4の不活性表面媒体402は、それに付着したHLAタンパク質404を含む。付着メカニズムは、前述したように、任意のメカニズムであってもよく、一方、
図4にビーズとして示されているように、不活性媒体はHLAタンパク質404が結合され得る任意の形態であってもよく、
図2A~2Dに示されている形態を含むが、これらに限定されない。あるいは、不活性表面媒体402は、流体分子であってもよく、HLAタンパク質404は、流体分子上に配置されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、HLAタンパク質のアンカー位置がHLA結合溝の少なくとも幅だけ互いに離間されるように、HLAタンパク質は不活性表面上に配置され得る。この間隔によって、T細胞はHLAタンパク質に結合することができる。そして、このような間隔がフィルター表面全体で維持されれば、フィルターの効率を最大にすることができる。一例として、
図5に示されるHLAタンパク質504は、マレイミドリンカー506を介して不活性表面媒体502に付着する。この実施例では、表面媒体502は、ポリスルホン508およびポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド510を含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、抗原ペプチドは、不活性表面媒体上のHLAタンパク質に結合し得る。「ペプチド」という用語は、一般に、2つのアミノ酸の間のペプチド結合によって一緒に結合された、アミノ酸の短鎖(例えば、30個以下のアミノ酸、25個のアミノ酸、20個のアミノ酸、または15個のアミノ酸)を指す。いくつかの実施形態において、ペプチドは、標準的な手順によって合成され得る。特定の実施形態において、ペプチドは、手動または自動的方法のいずれかによって化学的に合成され得る。あるいは、ペプチドは、フルオレニルメトキシカルボニル保護基化学によって合成され得る。
【0112】
「抗原ペプチド」または「免疫原性ペプチド」という用語は、一般に、免疫応答を誘導するためのペプチドの潜在的可能性を指す。ペプチドの抗原性または免疫原性は、標準的な手段によって測定され得る。いくつかの実施形態において、抗原ペプチドは、HLAタンパク質上にロードされて、HLA-ペプチド複合体を形成する。例として、ロードは、タンパク質-ペプチド結合を介して起こり得る。特に、HLAタンパク質は、タンパク質-ペプチド結合を起こすことを可能にするペプチド結合溝を有する。ペプチド結合溝は、HLA Iではα1とα2、HLA IIではa1-b1という2つのタンパク質サブユニットによって形成される。ペプチド結合溝が形成されると、抗原ペプチドは、ペプチド結合溝と抗原ペプチドとの間のアミノ酸残基相互作用によってHLAタンパク質に結合し得る。例示的な相互作用には、水素結合、イオン相互作用、疎水性相互作用、およびパイスタッキングが含まれる。抗原ペプチドはHLAペプチド結合溝と結合し、HLA-ペプチド複合体が形成され得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、抗原ペプチドは、患者において疾患と関連し得、HLAタンパク質上にロードされて、抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合することができるHLA-ペプチド複合体が形成し得る。例えば、上述のように、ロード後、抗原ペプチドは、個体の免疫系のT細胞によって認識され、T細胞への攻撃を開始し得る。これらの例では、HLAタンパク質と複合体を形成する抗原ペプチドは、抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合し得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、抗原ペプチドおよびHLAタンパク質は、T細胞が複合体と接触すると、抗原特異的T細胞受容体が抗原ペプチドおよびHLAタンパク質複合体に結合することを可能にするように選択され、それにより、複合体を介して不活性表面媒体に特異的T細胞を固定する。T細胞は、複合体と所望のT細胞との間の相互作用を可能にする空間を介してHLA-ペプチド複合体と接触する。接触は、血流のような流体の流れ、または血漿ないしは特定の血液細胞のような血液の成分を介して起こり得る。この認識は、特異的HLA-ペプチド複合体と相互に作用する特異的T細胞受容体を発現する所望のT細胞のみが高度に特異的に結合することに基づいている。
【0115】
「抗原特異的T細胞受容体」という用語は、一般に、特定の抗原に結合するT細胞の表面上の受容体タンパク質を指す。T細胞はその表面に特異的なT細胞受容体をもっており、特異的T細胞が特異的抗原に結合し、他のT細胞は同じ抗原に結合するのではなく、別の抗原に結合する。この過程は一般に選択的結合と呼ばれる。T細胞と、特異的抗原のみを認識する受容体との関係は、T細胞と抗原特異的受容体との選択的結合を可能にし、特異的抗原のみを結合させる。いくつかの実施形態において、不活性表面媒体上に配置されたHLA-ペプチド複合体は、特異的T細胞受容体に結合するように選択された抗原ペプチドを含む。抗原特異的T細胞受容体が選択的に結合し、HLA-ペプチド複合体と複合体を形成すると、特異的T細胞は複合体を介して不活性表面媒体に固定される。
【0116】
いくつかの実施形態において、疾患関連抗原ペプチドは、自己ペプチド、または個体に特異的な非外来性ペプチドであり得る。特定の実施形態において、抗原ペプチドは、合成的に作製され得る。抗原ペプチドの合成は、手動または自動で行うことができる。例えば、抗原ペプチドは、フルオレニルメトキシカルボニル保護基(Fmoc)化学を用いて合成的に作製できる。抗原ペプチドはまた、組換え的に産生され得る。組換え的に産生された抗原ペプチドは、天然に存在するペプチドと類似していてもよく、またはそれらは改変されていてもよい。特定の実施形態では、抗原ペプチドは、HLAタンパク質とフレーム内で組換え的に産生してもよい。例えば、本発明の態様に従ってHLAタンパク質を組換え的に産生するために使用されるのと同じプラスミドを使用して、抗原ペプチドを組換え的に産生することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、疾患関連抗原ペプチドは、個体の損傷した組織/器官に特異的なタンパク質を含み得る。例えば、このようなペプチドは、中枢神経系の細胞に由来し得る。特定の実施例において、そのようなペプチドは、個体の中枢神経系において軸索を取り囲むミエリン鞘の一部を形成するものを含み得る。あるいは、疾患関連抗原ペプチドは、大部分またはすべての細胞型に共通のタンパク質を含み得る。一例として、このようなペプチドには、細胞質、細胞骨格、核、または膜タンパク質が含まれ得る。
【0118】
抗原ペプチドは、種々の疾患と関連し得る。例えば、抗原ペプチドは、多発性硬化症に関連するタンパク質に由来し得る。そのような抗原ペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせから由来し得る。特定の実施形態において、抗原ペプチドは、MBP87-99、MBP85-99、MBP83-96、MBP217-231、MBP88-102、MBP282-296、PLP91-110、PLP131-151、PLP283-252、PLP263-277、PLP58-72、PLP13-27、OPALIN46-60、OPALIN27-41、OPALIN127-141、MOG210-224、MOG29-43、MOG176-190、MOG225-239、OSP74-88、OSP114-128、MAG8-22、MAG467-481、MAG529-543、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0119】
疾患関連抗原ペプチドは、標準的な方法によって同定または分析され得る。いくつかの実施形態において、同定されたペプチドは、定量化され得る。あるいは、そのようなペプチドのアミノ酸配列を同定してもよい。このようなペプチドは、ペプチドに関する関連情報を導出するために抗原のデータベースと比較することができる。例えば、特定のHLAに対するペプチドの結合親和性を測定することができる。従って、抗原ペプチドの同定または分析は、HLA複合体に対するペプチド結合親和性を含む疾患関連抗原ペプチドのデータベースとペプチドを比較することを含み得る。特定の実施形態において、ペプチドの同定または分析は、罹患個体の組織から採取されたHLA複合体から分離されたペプチドを検査することを含み得る。例えば、罹患した個体の脳脊髄液由来のペプチドを検査することができる。あるいは、またはさらに、罹患した個体からの組織を採取してもよい。連結された、またはロードされたペプチドとのHLA複合体の集団が、罹患した個体の細胞から単離され得る。次いで、ペプチドは、例えば化学的手段によって、HLA複合体から分離され得る。次いで、分離されたペプチドを配列決定し、個体の特定の疾患に関連付けるために、頻度について分析することができる。これらのメカニズムを使用して、前述したように、フィルターは、特定の個人の疾患を治療するために個別化することができる。
多発性硬化症関連T細胞の細胞縮小のための生物学的フィルター
【0120】
開示された実施形態と一致して、上記の生物学的フィルターは、特定の細胞の細胞縮小のために使用され得る。例えば、フィルターは、病原性細胞または非病原性細胞の細胞縮小のために使用することができる。本明細書中で使用される場合、「細胞縮小」という用語は、一般に、特定の細胞、または細胞群が組成物から除去され、かくして、細胞の総集団におけるそれらの相対的パーセンテージを低下させる手順を指す。この切除は、固有の細胞サブセットの特異的認識、言い換えると、異なる生物学的または物理的特性を有する異なる細胞間を識別することができない標準的技術を適用するのではなく、特異的なクローン性の細胞減少によって達成される。いくつかの実施形態において、細胞は、T細胞を含む。例えば、フィルターは、疾患に関連する、またはタンパク質またはペプチドの特定の構造の認識に関連する病原性T細胞を除去するように構成され得る。特定の実施形態において、生物学的フィルターは、多発性硬化症関連T細胞の細胞減少のために使用され得る。
【0121】
開示されたフィルターは、患者に使用することができる。本明細書中で使用される場合、「患者」という用語は、疾患または他の苦痛を有する被験体を指す場合がある。患者は、ヒトまたは任意の他の哺乳動物であり得る。いくつかの実施形態において、特異的T細胞を除去する方法が企図される。「特異的T細胞」という用語は、特定のT細胞抗原受容体を発現するT細胞群、T細胞の特異的クローンを指す。特定のT細胞抗原を発現するT細胞群は、例えば、その群が患者の苦痛を引き起こすかまたはそれ以外の影響を与えるものとして同定される場合、除去のために標的化され得る。他の実施形態において、特異的T細胞は、複数のT細胞群を含み得、ここで、各群は、異なるT細胞抗原受容体を発現し、異なるT細胞抗原受容体を発現する群は、除去のために標的化され得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、特定のT細胞抗原受容体または標的化される受容体を発現しないT細胞は、除去され得ない。本発明者らに理解されるように、「T細胞」という用語は、胸腺で発達し、免疫応答において中心的役割を果たす任意の種類のリンパ球を含み得る。いくつかの実施形態において、特異的T細胞は、1つ以上のヘルパーCD4+ T細胞、細胞傷害性CD8+ T細胞、ナイーブT細胞、記憶T細胞、調節性CD4+ T細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞および/またはγδT細胞を含み得る。あるいは、またはさらに、特異的T細胞は、CD4+細胞またはCD8+細胞のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0123】
標的T細胞は、病原性であっても非病原性であってもよい。病原性T細胞は非病原性T細胞と同様の役割を果たす可能性があるが、病原性T細胞は自己構造と物質を認識し、それらを攻撃し得る。「病原性」という用語は、上記で定義される。病原性細胞を標的とし、除去することによって、患者の疾患を緩和し得る。非病原性T細胞は、例えば、特定の系列が、現在の非病原性T細胞が将来病原性になる可能性がある点まで進化すると予想される場合には、除去のために標的化されてもよい。従って、非病原性細胞の能動的除去では、疾患の後の発現が予防され得る。
【0124】
病原性細胞は、上記の自己免疫疾患の任意の1つまたは任意の組み合わせと関連し得る。特定の実施形態では、病原性細胞は、多発性硬化症(MS)、ループス、セリアック病、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛、強皮症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、円形脱毛症、血管炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己炎症性疾患、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン症候群、抗リン脂質症候群(APS)、視神経脊髄炎(NMO)、腫瘍随伴症候群、原発性胆管炎、スティッフパーソン症候群(SPS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、または側頭動脈炎を含むが、これらに限定されない自己免疫疾患と関連し得る。特定の実施形態において、自己免疫疾患は多発性硬化症である。
【0125】
複数の研究から、適応免疫系が多発性硬化症の分子病理発生に強く関与していることが示されている。
図6に示すように、ミエリンなどの中枢神経系タンパク質由来の自己抗原は免疫系の活性化を引き起こし、T細胞、B細胞、マクロファージなどの細胞が血液脳関門を通過して浸潤し、炎症、脱髄、グリオーシス、神経軸索変性を引き起こす。現在のところ、この疾患を治癒できる治療法はない。
【0126】
フィルターの態様は、抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合する媒体ホスト材料を含み得る。上述のように、「媒体」という用語は、細胞に選択的に結合する物質のベース、支持体、またはアンカーとして機能することができる任意の物質を含み得る。結合材料は媒体に固定されているので、細胞が結合材料に結合すると、細胞は結合材料が固定されている媒体上に効果的に捕捉される。細胞に選択的に結合する物質は、フィルターの意図された使用に依存して変化し得る。一例として、媒体上の結合材料は、細胞、タンパク質、核酸、脂質、多糖類、または任意の他の生物学的物質を捕捉するように構成することができる。媒体の詳細は、本明細書の他の段落で議論され、重複を避けるために繰り返されない。本明細書中で使用される「選択的結合」とは、標的が位置する環境から除去されるように標的が選択的に結合する、任意の生物学的または化学的プロセスを指す。広い意味で、結合は、標的細胞を除去させる組み合わせ、接着、カップリング、または反応の任意のプロセスを包含する。
【0127】
固体、半固体または流体を含む多くの種類の表面媒体を使用することができる。固体または半固体の場合、媒体は任意の形態を有することができる。
図2A~2Dに提供される例は、シート材、繊維、ビーズ、およびスポンジ様材料を含む。他の例としては、メッシュ構造、液体およびゲルが挙げられる。同様に、媒体の構成は、意図された用途に応じて変更してもよい。単なる例として、媒体は、不活性、非合成、合成、ポリマー、高性能熱可塑性、ポリスルホン、ポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(Ultem)、トリタン、高分子電解質、ポリアクリル酸、またはポリ(2-アミノエチル)アクリルアミドの1つまたは複数の方法で特徴付けることができる。代わりに、または追加的に、媒体は、約5~40質量パーセントで存在するポリアクリル酸、約60~95質量パーセントで存在するポリスルホン;ポリスチレン、ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、分子間架橋可能なPEGの6本腕星形分子を生成することによって最大化されるPEG密度、および/またはアビジン、ストレプトアビジン、またはそれらの任意の形態を含んでもよい。繰り返しになるが、これらは単なる例であり、最も広い意味で本開示を制限すると考えるべきではない。
【0128】
模式的に、
図7A~7Dは、本開示の実施形態と一致する媒体の非限定的な例を示す。
図7Aは、PDMS材料を示す。
図7Bは、ポリカーボネート材料を示す。
図7CはUltem材料を示す。
図7Dはトリタン材料を示す。
【0129】
媒体は、細胞などの生物学的物質に選択的に結合し、捕捉する結合材料をホストすることができる。例えば、細胞は、病原性T細胞であり得、共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介することを含めて、任意の方法で媒体に付着し得る。非共有相互作用には、水素結合、イオン相互作用、疎水性相互作用、またはパイ積層が含まれる。特定の実施形態において、結合材料は、タンパク質を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、タンパク質は、抗体を含み得る。特定の実施形態において、タンパク質は、ヒト白血球抗原(HLA)を含み得る。結合材料は、特異的細胞にのみ選択的に結合し得るが、結合材料は、最初に、ホスト媒体に結合し得る。従って、「特異的細胞にのみ選択的に結合する」という語句の使用は、細胞(または他の生物学的物質)の捕捉プロセスの選択的結合を指し、結合を介して起こる可能性があるホスト媒体を結合材料に接続するメカニズムのことではない。
【0130】
いくつかの実施形態において、選択的に結合するホスト材料は、HLAを含む。HLAはペプチドに結合してHLA-ペプチド複合体を形成し得る。HLA-ペプチド複合体は、生体物質(例えば、T細胞)上の特異的エピトープを認識し得る。特定の実施形態において、HLAに結合したペプチドは、疾患に関与するタンパク質に由来し得る。1つの例において、結合材料は、ミエリン特異的T細胞受容体と結合するように選択されたHLA-ミエリン-ペプチド複合体を含み、それによって、HLA-ミエリン-ペプチド複合体を認識するT細胞集団の特異的結合を可能にする。HLA-ミエリン-ペプチド複合体は、共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介することを含めて、任意の方法で媒体のフィルター上に配置することができる。本明細書中で使用される場合、「配置する」という用語は、一般に、選択されるタンパク質が、化学反応(または他の機構)を介して所望の表面に接続し得るプロセスを指すことができる。表面は、それがタンパク質と反応するために、特異的な分子的および化学的特性を付与するように化学的に設計することができる。この配置は、表面を目的のタンパク質を含む溶液に、好ましくはタンパク質による表面の最大飽和を可能にする過剰量で導入するときに生じ得る。
【0131】
例として、媒体がアビジン、ストレプトアビジンまたはそれらの任意の変異体を含み得る場合、捕捉材料は、媒体の表面上のアビジン、ストレプトアビジン、またはそれらの変異体と相互作用し得るビオチンに連結され得、それによって、捕捉材料を媒体に固定する。別の実施例において、媒体は、捕捉材料上の官能基と相互作用し得る遊離カルボキシル基、アミン基、マレイミド基、または任意の他の官能基を含み、それによって捕捉材料を媒体に固定し得る。さらに別の実施例では、媒体は、ポリスルホンとポリアクリル酸とのブレンドを含み、捕捉材料は、ポリアクリル酸のカルボキシル基を介して媒体に結合するタンパク質である。さらに、ポリスルホンおよびポリアクリル酸の混合物は、アミン基を含むように修飾され得、タンパク質は、アミン基との反応を介して媒体に結合し得る。さらなる実施例において、ポリスルホンとポリアクリル酸とのブレンドは、マレイン酸、マレイミド基またはそれらの類似体を含むように改質され得る。マレイン酸、マレイミド基またはその類似体は、炭水化物リンカーで延長することができる。捕捉材料は、マレイン酸、マレイミド基またはそれらの類似体との反応を介して媒体に結合し得る。特定の実施形態では、HLA-ペプチド複合体は、マレイン酸、マレイミドまたはマレイミド類似体を介して媒体上に配置される。
【0132】
概略的に、
図8は、T細胞群806上のT細胞受容体を認識するHLA-ミエリン-ペプチド複合体804を含む媒体802を示す。媒体802は、シート形態で示され、
図2A-2Dに示される形態を含むが、これらに限定されない任意の形態であってもよい。
【0133】
上述のように、「ヒト白血球抗原」(HLA)という用語は、一般に、個体の主要組織適合性(MHC)遺伝子複合体によってコードされるタンパク質のシステムまたは複合体を指す。ヒトでは3種類のHLAタンパク質が発見されている。それらはHLA I、HLA II、HLA IIIである。これら3種類のHLAタンパク質は、構造的、発現パターン、標的認識など、さまざまな形で異なっている。本明細書中で使用される場合、「HLA I」という用語は、一般に、α鎖およびβ2-ミクログロブリン鎖から構成され、すべての有核細胞において発現され、in vivoでCD8+ T細胞と相互作用するHLAクラスを指す。本明細書中で使用される場合、「HLA II」という用語は、一般に、α鎖およびβ鎖から構成され、抗原提示細胞中で発現され、in vivoでCD4+ T細胞と相互作用するHLAクラスを指す。HLAタンパク質は、典型的には、個体の免疫系の調節に関与し、ヒト細胞の表面に見出される。例えば、HLAタンパク質は、個体内の異物、非自己物質を認識し、それらの物質を中和する免疫応答を開始することによって機能し得る。個体の免疫応答を開始または刺激するために、外来の非自己物質をHLA複合体に組み込み、個体の免疫系に提示することができる。それぞれの個体は、HLAタンパク質の特定のセット、つまり型をもっている。いくつかの実施形態において、個体のHLA型は、認証された臨床検査室における標準的な検査技術を用いて同定され得る。例えば、個体のHLA型の同定は、個体から採取された血液サンプルを分析することを含み得る。あるいは、個体のHLA型は、他の適切な手段によって同定されてもよい。本明細書中で使用される場合、「HLAタイピング」という用語は、一般に、生物のHLAセットが決定されるプロセスを指す。例えば、HLAタイピングは、DNA配列決定、微小リンパ球毒性アッセイ、または患者の1つ以上のHLA型を同定するオリゴヌクレオチドプローブへのDNAハイブリダイゼーションを介して行うことができる。例えば、HLAタイピングには、特異的HLAタンパク質を標的とする抗体の検査が含まれ得る。HLAタイピングのためのいくつかの方法は、DNAに基づく方法を用いてHLA対立遺伝子および対立遺伝子群を定義する。臨床応用に応じて、異なるDNAベースの分子技術を用いることができる。いくつかのHLAタイピング手順は、逆SSO(rSSO)またはSBT(Sequence Based Typing)を含み得る。HLA型を同定するために使用することができる任意の技術は、本開示の範囲内である。多くの臨床検査室がHLAタイピングサービスを実施し、本開示の意味におけるHLA型を同定することは、タイピング手順を実行すること、または、手順を実行して結果を返す検査室に体液サンプルを送ることを含み得る。いくつかの実施形態において、捕捉材料は、HLAタンパク質を含んでもよく、HLA-ペプチド複合体を形成するためのペプチドをさらに含み得る。HLA-ペプチド複合体は、例えばマレイン酸、マレイミドまたはその類似体を介して媒体上に配置することができる。いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、特定のT細胞群上のT細胞受容体を認識することができ、それによって、媒体上のT細胞を捕捉され得る。他の実施形態では、複数の異なるHLA-ペプチド複合体は、それぞれ、複数の異なるT細胞群上の異なるT細胞受容体または異なるT細胞クローンを認識し得る。
【0134】
「T細胞受容体」(TCR)という用語は、一般に、T細胞の表面に見られるタンパク質複合体を指す。遺伝子組換えにより、TCRは顕著な多様性を示し、各タイプのT細胞受容体はHLAに結合した特異的抗原ペプチドを認識し、それによってin vivoで免疫系の他の成分を活性化するシグナルカスケードを開始する。
【0135】
いくつかの実施形態において、免疫原性ペプチドは、例えば、自己免疫疾患を含む種々の疾患と関連し得る。疾患関連免疫原性ペプチドは、前述のように標準的な方法によって同定または分析することができる。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は多発性硬化症を指す。例えば、免疫原性ペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないミエリンタンパク質に由来し得る。前述のように、免疫原性ペプチドの例示的実施形態は、MBP87-99、MBP85-99、MBP83-96、MBP217-231、MBP88-102、MBP282-296、PLP91-110、PLP131-151、PLP283-252、PLP263-277、PLP58-72、PLP13-27、OPALIN46-60、OPALIN27-41、OPALIN127-141、MOG210-224、MOG29-43、MOG176-190、MOG225-239、OSP74-88、OSP114-128、MAG8-22、MAG467-481、MAG529-543、またはそれらの組み合わせを含む。別法または追加的に、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)およびミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)を含むが、これらに限定されない、他のミエリン関連タンパク質に由来するHLAタンパク質およびペプチド複合体を利用することもできる。いくつかの実施形態において、多発性硬化症関連非ミエリンタンパク質に由来するペプチドと複合体化されたHLAタンパク質もまた、企図される。一例として、このような抗原ペプチドは、アクアポリンチャネルタンパク質、αB-クリスタリン、トランスアルドラーゼ-H、S-100(105)、および2'、3'-環状ヌクレオチド-3'-ホスホジエステラーゼ(CNPアーゼ)から誘導され得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体中のHLAタンパク質は、患者に適合するようにHLA型を同定し得る。前述のように、HLAタイピングは、DNA配列決定、微小リンパ球毒性アッセイ、またはDNAのオリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されない方法を用いて実施することができる。例えば、ゲノムDNAは、生物から精製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅し、次いで、生物のHLA型を同定するために配列同定し得る。別の実施例では、ゲノムDNAを個体から精製し、PCRを用いて増幅し、配列特異的プローブとハイブリダイゼーションし得る。いくつかの実施形態において、配列特異的プローブは、化学発光を使用して二本鎖の検出を可能にするために蛍光色素に結合し得る。いくつかの実施形態において、個々の生物体のHLA型を同定し、同じ型のHLAタンパク質が、生物学的フィルターにおいて使用するために組換え的に産生される。
【0137】
抗原ペプチドはHLAタンパク質のペプチド結合溝を介してHLAタンパク質と複合体を形成する。本明細書中で使用される場合、「ペプチド結合溝」という用語は、一般に、抗原ペプチドの結合を容易にするHLAタンパク質内の領域を指す。様々な長さの抗原ペプチドがHLAタンパク質に結合し得る。例として、抗原ペプチドは、8~10個のアミノ酸または13~18個のアミノ酸を含み得る。
【0138】
概略的に、
図9は、ミエリン由来抗原ペプチドに結合したHLA IおよびHLA IIタンパク質を示し、ここで、ミエリン由来抗原ペプチド902は、HLAペプチド結合溝904に隣接して示されている。
【0139】
いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、組換え的に設計され得、または患者などの個体から内因的に得ることができる。いくつかの実施形態において、HLAタンパク質は、HLA Iおよび/またはHLA IIを含む。例として、HLA-ペプチド複合体のHLAタンパク質は、遺伝子的にまたはin vitroのいずれかでさらに修飾され得る。例えば、HLAタンパク質は切断され、C末端システインを生じ得る。HLA-ペプチド複合体は、媒体上のマレイミドまたはその類似体と反応し、それによってHLA-ペプチド複合体を媒体に固定し得る。好ましい実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、複合体のアンカー位置が、HLA結合溝の少なくとも幅だけ互いに離間されるように、フィルター媒体上に配置される。
【0140】
特定の実施形態において、フィルターは、前述したように、および
図2A~2Dを参照して、その間に流体が流れるように構成された複数の層を含み得る。
隣接する層の一部は、互いに接触してもよく、または、例えば、上述し、
図3に示すように、足場によって互いに離間されてもよい。
患者の血液から病原性T細胞を除去するための装置
【0141】
本開示のいくつかの態様は、患者の血液から病原性T細胞を除去するための装置、例えば、上述のように1つ以上の生物学的フィルターを組み込む装置を含み得る。この装置は、患者が定期的な体外血液治療を受けることができる腎臓透析センターにある点で類似した、外来診療所のような医療施設に設置されてもよい。患者を効率的に治療するために、これらの外来診療所には、特異的な病原性T細胞を除去することができる装置が設置されてもよい。この手順は、例えば、2段階プロセスを実装する装置を使用して行われてもよい。従って、この開示と一致して、病原性T細胞を患者の血液から除去するための種々の装置を提供してもよい。前述したように、病原性T細胞は、特定の疾患と相関するものであり得る。例えば、「病原性T細胞」は、疾患、障害、または自己免疫疾患、癌、および移植後合併症などの他の異常な医学的状態を引き起こす細胞であり得る。装置に使用されるフィルターは、これらの特異的な病原性T細胞を捕捉して血液からそれらを除去し、それによって疾患の症状を緩和するように設計することができる。
【0142】
非限定的な例として、
図10は、入口導管1028によって供給される患者の血液から病原性T細胞を除去するための装置1000の概略図である。入口導管1028は、患者の針またはシャントを介して患者に直接接続されてもよい。あるいは、入口導管1028は、血液リザーバーに接続されてもよい。装置は、意図された用途および特定の機能要件に応じて、様々な構成を有することができる。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、このような装置は、全血の他の画分から白血球を分離することができる血液分離装置を保持するように構成された第1段階領域を含んでもよく、当該血液分離装置は、患者体内への他の画分の戻りを可能にするように構成された入口、白血球出口、および血液分画出口を有する。本明細書中で使用される場合、「第1段階領域」という用語は、血液の少なくとも別の画分からの血液の1つ以上の画分の分離、より具体的には、白血球を全血の他の画分から分離することに関連する装置の一部を指す。分離は、血液成分の分割を達成する任意の機械的、化学的または他の手段を使用する血液分離装置を介して達成し得る。すなわち、分離装置は、後の濾過のために白血球を分離することができる限り、いかなる特定の原理にも限定されない。
【0144】
1つの実施例において、血液分離装置は、血液を少なくとも2つの部分に機械的に分離させるためのアフェレーシスまたは他の遠心機能を促進するように構成され得る。従って、第1段階は、血液容器の回転に関連する構成要素を含んでもよい。これらの構成要素は、モーターによって駆動される回転アセンブリと、血液容器を握るための機械的構造とを含み得る。血液容器自体は、使い捨てチューブセットの一部であってもよい。
【0145】
血液分離装置の入口は、血液がその段階に入る位置とすることができる。例えば、それは、第1段階に全血を供給するための使い捨てチューブを保持または収容するように構成された領域または構造内に配置されてもよい。同様に、白血球出口および血液分画出口は、それぞれ、第1の領域から白血球および他の血液画分を別々に運ぶための使い捨てチューブを保持または収容するように構成された領域または構造内に配置されてもよい。より詳細に後述するように、白血球(またはT細胞を含有するその画分)は濾過に進み、一方、他の血液画分は、直接的に、または中間収集チャンバーを介して、患者体内に戻るように指定し得る。第1段階は、使い捨てチューブセットに関連して上述されているが、いくつかの構成では、導管および/または分離装置タは、使い捨て可能である必要はない。
【0146】
図10の例示的な装置1000は、第1段階領域1002を含み、血液分離装置1004は、
入口領域1006、血液細胞出口領域1008、および血液分画出口領域1010を有してもよい。使い捨てチューブセットが使用される場合、血液分画出口導管1012の上流部分は、血液分画出口セクション1010を通過して、血液分画(白血球を除く)をY接合部1037から1039出口を通って患者体内に戻してもよい。これは、患者の脈管構造への流動接続を介して、または患者に戻る前に最初に血液をチャンバー内に貯蔵することによって行うことができる。同様に、白血球導管1023の上流端は、白血球出口領域1008を通過して濾過段階に搬送してもよい。
【0147】
一例として、血液分離装置1004は、アフェレーシス、遠心分離、または濾過を用いて血液を分離するように構成されてもよい。言い換えると、血液分離装置は、アフェレーシスシステム、遠心分離システム、または濾過システムであってもよく、各々の例が
図11A~11Cに示されている。
図11に示される例示的なアフェレーシスシステム1100Aでは、全血は、入口導管1102を介して回転容器1112に入り、血漿1104、白血球1106、および赤血球1108に層別してもよい。次いで、
図10中の白血球出口1008に接続可能な出口導管1110を介して白血球1106を抽出し、血液濾過領域1014の入口領域1018に白血球を供給してもよい。
【0148】
図11Bに示される例示的な遠心分離システム1100Bでは、遠心力は、先のアフェレーシスシステムの実施形態と同様に、全血1112の成分を血漿1114、赤血球1116、および白血球および血小板1118に分離するために加えられる。
図11Cに示される例示的な濾過システム1100Cでは、複数の細胞捕捉構造1124と、全血細胞1122と血漿1126とを一緒に分離する複数のフィルター1128とを含む。
【0149】
いくつかの実施形態と一致して、第1のポンプは、患者から第1段階領域を通って血液を運ぶために提供されてもよい。第1のポンプは、血液を第1段階領域に送り込むために、第1段階の入口領域の上流に配置されてもよい。あるいは、第1のポンプは、負圧を通して血液を第1段階に入らせるために第1段階の下流に配置されてもよい。任意の形態のポンプを使用することができるが、好ましい実施形態では、ポンプは蠕動ポンプであり得る。一例として、蠕動ポンプ1021は、入口導管1028から第1段階1002へ血液を搬送するため、
図10に示すように設けられてもよい。
【0150】
開示された実施形態と一致して、ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含む生物学的フィルターを保持するように構成され、1つ以上のフィルター入口領域および1つ以上のフィルター出口領域を有し、ここで、第1段階領域および第2段階領域が、血液分離装置の白血球出口領域から生物学的フィルター第2段階領域の1つ以上の入口への流れを可能にするように配向された第2段階領域を提供し得る。本明細書中で使用される場合、用語「第2段階領域」は、濾過に関連する装置の一部を指す。例えば、第2段階領域は、生物学的フィルターを保持するように構成された装置の領域であってもよい。ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含む生物学的フィルターは、本明細書においてより詳細に記載され、従って、この実施形態の考察において繰り返されない。第2段階領域に保持されたフィルターは、第1段階の白血球出口に流路接続する入口を有する。T細胞は白血球画分に含まれるため、この構成は、フィルターの有効性を最大にすることができ、他の画分が濾過の標的を含まないことが知られているときに、他の画分の血液をフィルターに導入する必要をなくす。非白血球画分はフィルターに入ることができ、もしこのようなことが起これば、システムはそれでも機能するが、効率は低い。
【0151】
一例として、
図10は、ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含み、1つ以上の入口1018および1つ以上の出口1020を有する生物学的フィルター1016を保持するように構成された第2段階領域1014を示す。第1段階領域1002および第2段階領域1014は、血液分離装置1004の白血球出口1008から生物学的フィルター1016の入口1018への流れを可能にするように配向される。本明細書に記載されるような生物学的フィルターおよびHLA-ペプチド複合体の全ての実施形態は、第2段階領域1014における使用に適している。T細胞の濾過に関して本明細書に記載されたのと同じ原理は、他の生物学的物質の濾過に適用することができ、本開示の範囲内であると考えられる。
【0152】
一実施形態において、生物学的フィルターは、
図3の層などの複数の層、および
図2A~2Dのような本明細書に記載される多層生物学的フィルターの他の実施形態を含み得る。生物学的フィルターの各層は、その上にヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含み得、複合体に曝される表面積が大きいほど、フィルターはより効率的である。一実施形態において、生物学的フィルター1016は、疾患特異的病原性T細胞などの病原性T細胞に選択的に結合するように構成され得る。「選択的に結合する」とは、特異的T細胞受容体を有する特異的T細胞がその標的ペプチド(エピトープ)を同定するためには、ペプチドがHLAタンパク質に結合しなければならないことを意味する。例えば、生物学的フィルター1016は、複合体中のペプチドが多発性硬化症のような種々の疾患と関連し得る抗原ペプチドであるヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含み得る。多発性硬化症に関連する抗原ペプチドは、前述の例示的タンパク質に由来し得る。抗原ペプチドの例は、以前にも記載されている。
【0153】
開示された実施形態と一致して、生物学的フィルターの1つ以上の出口から生物学的フィルターの1つ以上の入口へ白血球を再循環させるための第2のポンプが提供されてもよい。第2のポンプの機能は、生物学的フィルター1016を複数回通過させる能力を白血球に提供することである。通過するたびに、より多くの病原性T細胞がフィルターに結合する。再循環は、システムの設計仕様を達成するのに十分な病原性T細胞を除去するのに十分な時間継続し得、これは、それ自体、特定の患者のためのフィルターのタイプおよび治療パラメータに依存し得る。
【0154】
一例として、
図10の装置1000は、生物学的フィルターの出口1020から生物学的フィルターの入口1018へ白血球を再循環させるための第2のポンプ1022を含んでもよい。第1のポンプ1021と同様に、第2のポンプ1022は蠕動ポンプでもよい。再循環を可能にするために、電子的に制御可能な弁1027および1029は、ポンプ1022の作動が再循環を引き起こすように、フィルター1016を分離してもよい。値1027および1029は、後述するように、コントローラー1030によって調整されてもよい。
【0155】
特定の実施形態において、第2段階領域1014は、生物学的フィルター1016が約3~50mlの白血球画分を含有し得るような大きさである。
図10の装置は、血液をバッチで処理し得る。白血球のバッチが第1段階から第2段階まで通過した後、後述するように、第2段階におけるバッチ処理が完了するまで、流動は第2段階に制限されてもよい。
【0156】
開示された実施形態と一致して、血液を第1段階領域および第2段階領域を通って導くための複数の電子的に制御可能な弁を提供してもよい。電子的に制御可能な弁は、電気信号に応答して流体の流れを調節する任意の装置を含んでもよい。従って、「複数の電気的に制御可能な弁」とは、それぞれ、患者の全血、白血球、非病原性白血球、および/または全血の他の画分(すなわち、血漿、赤血球)の流れを調節、指示または制御する2つ以上の電気的に制御可能な弁を指す。例えば、生物学的フィルター1016がその作業を行っている間、追加の白血球がフィルターに入るのを防止するために、1つ以上の弁を使用してもよい。全ての実施形態において、生物学的フィルターを通る再循環は必要とされないが、再循環が使用される場合、弁を使用してフィルターを隔離し、白血球を再循環させてもよい。
【0157】
図10の例を参照すると、装置1000は、前述したように、弁1027および1029を含んでもよい。同様に、蠕動ポンプ1021は、停止すると、弁として効果的に機能し得る。
【0158】
開示された実施形態は、1つ以上のプロセッサーを含み得る。「1つ以上のプロセッサー」は、1つ以上の入力に対して論理演算を行う電気回路を有する任意の物理デバイスまたはデバイス群を構成し得る。例えば、1つ以上のプロセッサーは、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロチップ、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、中央処理装置(CPU)の全部または一部、グラフィックス処理装置(GPU)、デジタル信号プロセッサー(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、サーバー、仮想サーバー、または命令を実行しまたは論理演算を実行するのに適した他の回路を含む1つ以上の集積回路(IC)を含んでもよい。1つ以上のプロセッサーによって実行される命令は、例えば、コントローラーと一体化された、またはコントローラーに組み込まれたメモリに予めロードされてもよく、または別個のメモリに格納されてもよい。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク、光ディスク、磁気媒体、フラッシュメモリ、他の永久メモリ、固定メモリ、揮発性メモリ、または命令を記憶することができる任意の他の機構を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上のプロセッサーは、2つ以上のプロセッサーを含み得る。各プロセッサーは、類似の構造を有してもよく、またはプロセッサーは、互いに電気的に接続されているか、または切断されている異なる構造を有してもよい。例えば、プロセッサーは、別個の回路であってもよいし、単一の回路に集積されていてもよい。複数のプロセッサーが使用される場合、プロセッサーは、独立してまたは共同して動作するように構成されてもよい。プロセッサーは、電気的、磁気的、光学的、音響的、機械的、またはそれらが相互作用することを可能にする他の手段によって結合されてもよい。一例として、
図10にプロセッサー1030が示されている。単一ブロックとして模式的に図示されているが、プロセッーサー1030は、装置1000内の複数の場所に共通して配置され、または広がる単一のプロセッサーまたは複数のプロセッサーを含んでもよい。さらに、通信ネットワークを介してアクセス可能な場所など、いくつかのまたはすべての処理機能を装置1000から遠隔で実行してもよい。
【0159】
いくつかの実施形態と一致して、1つ以上のプロセッサーは、一定量の白血球が分離され、第2段階領域に運ばれるまで、第1段階領域を通って血流が流れるように第1のポンプを制御するように構成されてもよい。1つ以上のプロセッサーは、ポンプおよび弁に電子信号を送ることによって、ポンプおよび弁のような構成要素を制御するように構成されてもよい。これらの信号は、装置を治療プロトコールに適合させるために、1つ以上のプロセッサーによって送信されてもよい。例えば、1つ以上のプロセッサーは、分離のために血液を第1段階に送り、分離された白血球を濾過のために第2段階に流すことを可能にするために、有効化シグナルをポンプに送信してもよい。
【0160】
一例として、
図10に示されているプロセッサー1030は、一定量の白血球が分離され、第2段階領域1014に運ばれるまで、第1段階領域1002を通って血流が流れるように、第1のポンプ1021を制御するように構成されてもよい。プロセッサー1030はまた、分離を発生させるために血液分離装置1004を制御してもよい。例えば、血液分離装置1004が、遠心分離チャンバーまたはコンパートメントを回転させるためのモーター(図示せず)と関連付けられている場合、プロセッサー1030は、そのモータを制御することができる。血液が分離すると、白血球は、白血球出口領域1008から出て、導管1023を介して生物学的フィルター1016に入ることができる。電子的に制御可能な弁1027は、第2段階領域1014への白血球の流出を調節するために、導管1023の経路内に配置されてもよい。ポンプ1021の力は、白血球導管1023を通って白血球を流れさせることができる。あるいは、またはさらに、別のポンプ(図示せず)を白血球導管1023内に配置して、第2段階領域1014への白血球の流れを促進してもよい。
【0161】
いくつかの開示された実施形態において、1つ以上のプロセッサーは、白血球の量が分離され、第2段階領域に運ばれるときに、第1のポンプを停止するように構成されてもよい。第1のポンプの停止は、第2段階の生物学的フィルターの濾過能力が限られている場合に用いることができる。このように、生物学的濾過は、任意の所与のバッチの濾過中に、追加の新規白血球が生物学的フィルターに導入されないバッチにおいて行ってもよい。これを達成するために、第2段階における生物学的フィルターが一旦容量に達した後、プロセッサーは、生物学的フィルターに追加の白血球を供給するポンプ(または弁を閉じる)を停止させてもよい。これはまた、追加の白血球がフィルターに入るのを防ぐために、生物学的フィルターの入口側の弁を閉じることで行うこともできる。プロセッサーは、プロセッサーによって実行されるプログラムに基づいて、生物学的フィルターに入る白血球の量を制限してもよい。このプログラムは、例えば、流量センサーまたは量センサーのようなシステムからのフィードバックに依存させてもよい。例えば、流量センサーは、第2段階に通過する白血球の容積がフィルターのターゲットパラメータ内にあるかどうかを決定してもよい。または、第1段階または第2段階の容積センサーは、分離された白血球の容積が標的パラメータに到達したときを検出してもよい。
【0162】
いくつかの別の変形形態において、第1段階に供給するポンプは、第2段階領域の生物学的フィルターの容量に達した後でも、血液分離装置と共に作動し続け得る。このような変形形態において、ポンプは、生物学的フィルターに供給するための次のバッチの白血球を調整するために、引き続き運転し得る。従って、ポンプの停止は、第2段階におけるバッチ濾過の開始と同時に発生する必要はない。さらに、白血球のための緩衝リザーバー(図示せず)は、濾過のために準備された分離された白血球を保持してもよい。第2段階には、緩衝リザーバーを介して白血球が供給してもよい。ある時点において、新しいバッチの濾過の開始と同時に、バッチが濾過されている間に、または濾過の最後のバッチの間に、第1段階に供給されるポンプは、第2段階における濾過が進行中であるにもかかわらず、1つ以上のプロセッサーによって停止されてもよい。
【0163】
一例として、
図10に示されているプロセッサー1030は、血液分離装置1004によって分離された白血球の量が生物学的フィルター1016の容量と一致した後、またはシステムの動作パラメータに適合した後、第1のポンプ1021を停止させてもよい。これは、例えば、第1段階1002に関連付けられたセンサー1033によって検出してもよい。センサー1033は、血液分離装置1004内の採取された白血球(またはその関連画分)の容積、または血液分離装置1004を出た白血球の量を検出してもよい。量がシステムパラメーターを満たす場合、生物学的フィルター1016へのさらなる白血球の流れを制限してもよい。上述のように、ポンプ1021は、第2段階1014において濾過が同時に発生する少なくともある時間の間、運転を継続させてもよい。ポンプ1021が濾過中に動作し続ける場合、プロセッサー1030は、白血球が生物学的フィルター1016に入るのを防止するために、弁1027を閉じるようにプログラムされてもよい。
【0164】
いくつかの実施形態において、1つ以上のプロセッサーは、第2のポンプを作動させ、複数の弁を制御して、病原性T細胞を非病原性白血球から分離するのに十分な時間、生物学的フィルターを通して白血球の量を再循環させるように構成され得る。特に、システムが、複数の白血球通過を必要とするフィルターと共に使用するように設計される場合、十分な量の病原性T細胞を除去するために、バイパスループを設けて、フィルターを通して白血球を再循環させることができる。これは、第2段階の両側に弁を設け、バイパスループにポンプを設置して、白血球を生物学的フィルターの出口から生物学的フィルターの入口に循環させることで実現できる。本明細書で使用される弁は、従来の弁、または、流動を防止する任意の構造であり得る。場合によっては、非作動ポンプを通る流量が制限されている場合、非作動ポンプはこの目的のための弁とみなすことができる。1つ以上のプロセッサーは、生物学的フィルターを取り囲む弁を閉じ、再循環ポンプを特定の使用ケースまたは設計パラメータと一致する期間運転するようにプログラムしてもよい。例えば、再循環時間は、フィルターのサイズ/容量、所望の濾過量、およびフィルターの状態の関数であってもよい。例えば、フィルターが老化するにつれて、所望の目標を達成するために、より多くの再循環が必要となり得る。プロセッサーにより、既に濾過された白血球の量またはフィルターが使用された時間を追跡してもよく、これらのパラメーターまたはフィルターの健康を示す任意の他のパラメーターのいずれかの関数として再循環時間を増加させてもよい。
【0165】
図10の例に示すように、プロセッサー1030は、生物学的フィルター1016の上流および下流で、それぞれ弁1027および1029を制御するように構成されてもよい。これらの弁の両方が閉じられ、ポンプ1022がプロセッサー1030によって起動されると、白血球は、生物学的フィルター1016を介して再循環する。弁1029が省略される場合、ポンプ1031は、流路を妨げるため、弁とみなされてもよい。同様に、弁1027は、ポンプが停止されたときに弁を構成するポンプと置き換えてもよい。
【0166】
また、1つ以上のプロセッサーは、非病原性白血球を患者体内に戻すように構成されてもよい。これは、患者の動静脈系に接続されたチューブセットに生物学的フィルターを移すことによって直接に実現させるか、または濾過された白血球を容器に供給することによって間接的に生じさせ、そこから白血球を後に患者体内に戻してもよい。
【0167】
非病原性白血球の戻りは、一例として、
図10の装置を用いて実施してもよい。プロセッサー1030によって実装される再循環プログラムに従った後、弁1029を開き、ポンプ1031を作動させて、濾過された白血球を生物学的フィルター1016から移してもよい。ポンプ1031は、治療された白血球導管1035を介して治療された白血球を患者に戻す蠕動ポンプであってもよい。必要とされる皮膚穿刺針または他のカニューレの数を最小限にするために、Y接合部1037を使用して、血液分画出口導管1012によって運ばれる血液画分および導管1035によって運ばれる濾過された白血球の両方が、単一の静脈を介して患者体内に戻すようにしてもよい。
【0168】
開示された実施形態は、第2のポンプが有効になり、第2段階の生物学的フィルターを通して白血球の量を再循環させる間、白血球が患者体内に戻されることを防止するために、1つ以上のプロセッサーによって制御可能な1つ以上の弁を含み得る。弁として作用する任意の弁または他の構造を使用して、再循環中に白血球を患者体内に戻すのを防止してもよい。一例として、弁1029は、生物学的フィルター1016を介した白血球の再循環中に白血球が患者に戻るのを防止するために、制御装置1030によって閉じられてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態において、第2のポンプが有効になり、第2段階の生物学的フィルターを介して白血球の量を再循環させる間、白血球が第1段階領域から第2段階領域へ移動することを防止するために、1つ以上のプロセッサーによって制御可能な1つ以上の弁が含まれ得る。前述したように、白血球のバッチが第2段階で濾過される場合、白血球の生物学的フィルター1016へのさらなる流入を制限することが好ましい場合がある。これは、生物学的フィルターがすでにその容積容量にある場合には、特に好ましい。第2段階領域への流れを制限する任意の構造は、弁と見なしてもよい。一例として、白血球導管1023内の弁1027は、プロセッサー1030によって閉じられると、白血球が第2段階領域に移動するのを防ぐような構造の一つである。同様に、白血球導管1023の経路内のポンプ(図示せず)も、プロセッサー1030によって停止される場合、弁として作用し得る。
【0170】
さらに、本開示のいくつかの実施形態によれば、1つ以上のプロセッサーは、複数の電気的に制御可能な弁を制御して、白血球を第2段階領域においてバッチで処理させ、白血球の第1バッチを第2段階領域で再循環させ、その後、1つ以上のプロセッサーが白血球の第2バッチを第2段階の生物学的フィルターに入ることを可能にする前に、患者体内に戻すように構成されてもよい。前述したように、このバッチ処理は、フィルターを1回通過するだけで病原性T細胞を十分に除去することができないフィルターを使用する場合に有利であり得る。フィルターの出口からフィルターの入口へのバイパスを含めることによって、白血球はフィルターを複数回通過し、病原性T細胞の除去を増加させることができる。これは、
図10の例では、再循環プロセス中に弁1027および1029を閉じ、再循環ポンプ1022を作動させるように構成されたコントローラ1030によって容易に実施され得る。十分な再循環に続いて、プロセッサー1030によってタイミングを合わせることができ、弁1029を開き、ポンプ1031を作動させて、濾過された白血球のバッチを患者に戻してもよい。次いで、プロセッサー1030は、弁1027を開き、ポンプ1021または別のポンプ(図示せず)のいずれかを白血球導管1023の経路内で作動させて、追加の白血球細胞を第2段階領域1014内に導入してもよい。バッチが第2段階から放出される前に、プロセッサー1030は、さらなる白血球の分離の必要性を予測し得、生物学的フィルター1016が白血球の前のバッチから排出された後、分離された白血球が生物学的フィルター1016への移送の準備が整うように、ポンプ1021および血液分離装置1004に関連する機構を有効にしてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のプロセッサーは、全血の他の画分を患者に戻す前に、赤血球および生理食塩水を加えるために、1つ以上の弁を制御するように構成され得る。これは、赤血球および/または生理食塩水を血液画分に供給するための1つ以上のリザーバー(図示せず)への装置の接続を介して起こり得る。例えば、
図10では、制御可能な弁が、1つ以上のリザーバー(図示せず)に接続され得る分画血液出口導管1012の経路に含まれてもよい。コントローラー1030は、赤血球および/または生理食塩水を分画血液出口導管1012(またはいくつかの他の場所)に導入して、戻ってくる全血画分と共に患者に送達するように、追加された弁を調節してもよい。
【0171】
同様に、1つ以上のプロセッサーは、第2段階領域に抗凝固剤を供給するために、1つ以上の弁を制御するように構成されてもよい。抗凝固薬は、再循環プロセス中の血栓形成を防止するのに有益である。一例として、抗凝固剤リザーバー(図示せず)は、プロセッサー1030によって制御される計量弁(図示せず)を備えて、導管1023または1024に関連して流れるように配置されてもよい。
【0172】
いくつかの開示された実施形態において、血液混合装置をさらに含み得、ここで、1つ以上のプロセッサーは、患者体内に戻る前に、全血の他の画分および/または非病原性白血球を混合するように血液混合装置を制御するように構成される。血液混合装置の例としては、全血の他の画分および/または非病原性白血球を、その中に含まれる成分または細胞を破壊することなく穏やかに振盪または攪拌するボルテックスミキサーのようなミキサーが挙げられる。このようなデバイスは、Y接合部1037の下流に含まれてもよく、または、
図10の例では、Y接合部1037の代わりに含まれてもよい。さらに別の実施例では、開示された実施形態は、動脈圧制御ユニット(図示せず)を含み得る。このような装置は、血液またはその成分が患者体内に戻されるときに、血圧の適切な調節を確実にするために使用され得る。それもまた、
図10中のY接合部1037に近接して、システムの下流端上に配置し、プロセッサー1030により制御してもよい。
【0173】
開示された実施形態はまた、患者の血液から病原性T細胞を除去する際に使用するためのチューブセットを含み得る。このようなチューブセットは、使い捨て可能であってもよく、チューブセグメントおよび他の使い捨て可能な構成要素を含んでもよい。あるいは、チューブセットまたはその一部、例えば生物学的フィルターは、同じ患者で再利用可能であってもよい。チューブセットは、血液分離装置、白血球出口、および血液分画出口を含む1つ以上の第1段階領域を含んでもよい。チューブセットはまた、ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含有し、1つ以上の一次入口、1つ以上の一次出口、1つ以上の再循環入口、1つ以上の再循環出口を有する生物学的フィルターを含む第2段階領域を含んでもよい。チューブセット内の再循環ループは、1つ以上の再循環出口を再循環入口に相互接続してもよい。1本以上の血液吸引チューブは、第1段階領域の1つ以上の入口に患者体内から血液を運搬するように構成されてもよい。1本以上の中間チューブは、第1段階領域の白血球出口から第2段階領域の一次入口に血液を運ぶように構成されてもよい。1本以上の第1段階バイパスチューブは、患者体内に戻すために、第1段階領域の血液分画出口から血液画分を運搬してもよい。そして、少なくとも1本の白血球返却チューブは、患者に戻すために、第2段階領域の一次出口から白血球を運搬するように構成されてもよい。
【0174】
図12Aは、患者の血液から病原性T細胞を除去する際に使用するためのチューブセット1200の一例を提供する。一貫性のために、
図10の構成要素などは、同一の参照番号を共有する。チューブセット1200は、以下の方法で接続された血液分離装置1004および生物学的フィルター1016を含んでもよい。入口導管1028は、血液分離装置1004の入口を接続する。入口導管1028の反対の遠位端には、入口導管を血液源に接続するための何らかの形態のコネクター(図示せず)が配置されてもよい。一実施形態において、コネクターは針であり得、別の実施形態では、リザーバーまたは患者から血液を採取するためのルアーコネクターまたは任意の他の種類のコネクターまたはカニューレであり得る。血液分離装置は、2つ以上の出口、1つは白血球用であり、1つ以上の出口を有してもよい。分画血液出口導管1012は、血液画分を患者体内に戻すために、血液分画出口に接続される。血液分離装置1004を含むチューブセットの領域は、チューブセットの第1段階領域とみなしてもよい。白血球導管1023は、生物学的血液フィルター1016の入口に接続され、再循環ループ1024は、生物学的フィルター1016の出口を同じフィルターの入口に接続する。処理された白血球導管1035は、処理された白血球を患者に戻すために、生物学的血液フィルターの出口に接続される。生物学的フィルター1016を含むチューブセットの領域は、チューブセットの第2段階領域とみなしてもよい。
【0175】
導管1035および1012は、導管1028と同様に、患者に血液成分を直接戻すために、または患者に間接的に戻すためにリザーバーに戻すために、前述のものと同じタイプのコネクター/針/カニューレのうちの1つを含んでもよい。あるいは、
図12Aに示すように、導管1012、1035は、前述のように、Y接合部1037の出口端上でコネクタに接続されるY接合部1037に接続されてもよい。
【0176】
チューブセットの導管は、可撓性プラスチック製であってもよく、チューブが血液を治療するための装置に使用される蠕動ポンプのレース内に適合するようなサイズであってもよい。
【0177】
図12Aは、一例に過ぎず、本開示内で変形形態が考えられる。生物学的フィルター(すなわち、第2段階領域)および再循環入口の一次入口は、共通であってもよい。例えば、
図12Bは、一対の入口導管および一対の出口導管は、それぞれ共通のフィルター入口および出口を共有する。各導管は、一意の入口で接続されてもよく、または単一の入口を供給する接合部に接続されてもよいことを理解されたい。生物学的フィルター接続の別の例示的な変形形態が、
図12B~12Dに示されている。
【0178】
単一の生物学的フィルターのみが
図10に示されている。2つ以上のフィルターを用いて、処理プロセスの速度を上げてることができると考えられる。複数のフィルターの実施形態では、単一の血液分離装置が2つ以上のフィルターを供給し得る。あるいは、複数の血液分離装置を使用してもよい。単一の血液分離装置に接続された複数のフィルターの場合、1023のような複数の白血球導管が複数のフィルターを供給してもよい。この実施形態では、関連する治療装置は、生物学的フィルターの各々への血液の流れを制御する弁システムを含んでもよい。この弁システムは、各白血球導管上に別個の制御可能な弁を含んでもよく、各弁はプロセッサー1030によって制御される。
【0179】
実施形態にかかわらず、各導管の長さは、血液分離装置1004および生物学的血液フィルター1016が、図のポンプ1021、1022、および1031のような、介在された蠕動ポンプ内に適合するのに十分な導管長を有する関連装置上のそれぞれの第1段階領域および第2段階領域内の予め割り当てられた位置をとることを可能にするような大きさとしてもよい。
T細胞関連免疫疾患患者の治療レジメンを予測的に調整するシステム
【0180】
本開示は、将来病原性となり得るT細胞が、例えば、本明細書中に記載される生物学的フィルターを使用することによって、予測され、予防的に除去され得る予防手段が企図される。この目的のために、本開示は、T細胞関連免疫疾患を有する患者のための治療レジメンを予測的に調節するためのシステムを提供する。病原性となる可能性のあるT細胞が同定されると、既に疾患の治療を受けている患者は、疾患の将来の進行をその発生前に止めることができるように、その治療レジメンを適宜調整することができる。本開示は、T細胞関連免疫疾患の治療レジメンを調整する例を提供するが、その最も広い意味での開示の態様は、T細胞関連免疫疾患に限定されないことに留意されたい。むしろ、前述の原則は、他の疾患を治療するためにも適用され得る。
【0181】
本開示による「システム」という用語は、データにアクセスし、処理することができる1つ以上のプロセッサーを含む任意のデバイスまたはデバイス群を含み得る。最も広い意味で、システムは、プロセッサーによって特徴付けられ得る。または、システムは、複数のコンポーネントを有し得る。例えば、システムは、適切にプログラムされたコンピューターであってもよく、コンピューターは、少なくとも処理ユニットおよびメモリユニットを含む。1つ以上のコンピュータープログラムをメモリユニットにロードすることができ、処理ユニットによって実行することができる。ロードされたプログラムは、コンピューターにコマンドを実行させ得る。本開示は、さらに、本開示の1つ以上の方法を実行するために、機械によって実行可能な命令のプログラムを実体的に具現化する機械可読メモリを企図している。例えば、コンピュータープログラム製品は、一時的でないコンピューター読み取り可能媒体に具現化され、1つ以上のプロセッサーによって実行可能であり、コンピュータープログラム製品は、1つ以上のプロセッサーにコマンドを実行させるための命令を含む。本開示はまた、適切にプログラムされたコンピューターが、1つ以上の入力デバイスおよび/または1つ以上の出力デバイスに接続され得るシステムを意図している。例示的なシステムは、フローサイトメーターに接続されたコンピューター、またはT細胞のような細胞を計数、仕分け、および検出するシステム、生体液からHLA、抗原ペプチド、および/またはHLA-ペプチド複合体を単離する液体クロマトグラフィーシステムのようなタンパク質クロマトグラフィーシステム、および/または蛍光異方性、ITC、光散乱技術または適切な吸収分光システムのような患者におけるT細胞およびHLA-ペプチド複合体の結合を検出および測定するシステムを含み得る。本開示のシステムに接続され得る例示的な出力装置は、疾患進行の可能性を医学専門家に通知する際に有用であり得るディスプレイの1つ以上、ネットワークを介してそのような通知を送信することができる送信機、患者用にカスタマイズされたフィルターを作製するための命令を出力するためのインターフェース、または生物学的フィルターを作製するための3Dプリンターまたは他の機械を含み得る。
【0182】
システムは、治療レジメンを調整するように構成されてもよい。「治療レジメン」には、任意の一連の治療が含まれ得る。例えば、患者から特定のタイプのT細胞を除去するための治療レジメンに関連して、生物学的フィルターを選択するか、またはカスタムデザインを行ってもよい。治療レジメンへの調整には、除去の標的となるT細胞の数または除去の標的となるT細胞の種類を1つ以上変更することが含まれ得る。このような調整は、後述するように、より詳細に予測的に行うことができる。別の実施例として、治療レジメンは、定義された期間、投与量、投与経路(例えば、経口、静脈内など)、および/または疾患を治癒し、および/または患者の健康を改善するためにその症状を管理または緩和するように設計された1つ以上の治療剤またはデバイスを含み得る。例えば、治療レジメンは、経口投与される医薬品を含んでもよく、これには、経口組成物(例えば、錠剤、カプセル、溶液)中の有効成分の特定の投与量を、特定の頻度(例えば、8時間毎、12時間毎)、特定の期間(例えば、6週間、12週間)で、患者が薬物を投与される際の特定の状態(例えば、摂食状態、絶食状態)で行うことが必要となる。前述の処方例は、例示のためにのみ提供され、それらは、相互に排他的であってもなくてもよいし、そうでなくてもよい。
【0183】
いくつかの開示された実施形態によれば、システムは、1つ以上のプロセッサーを含んでもよい。「1つ以上のプロセッサー」という用語は、左記に定義した通りであり、1つ以上の入力に対して論理演算を行う電気回路を有する任意の物理デバイスまたはデバイス群を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上のプロセッサーは、2つ以上のプロセッサーを含み得る。前述したように、各プロセッサーは、同様の構造を有してもよく、またはプロセッサーは、互いに電気的に接続されているかまたは切断されており、別個の回路であってもよく、または単一の回路に集積されていてもよい、異なる構造を有していてもよい。複数のプロセッサーが使用される場合、プロセッサーは、独立してまたは共同して動作するように構成されてもよく、互いに同時配置されてもよく、または互いに離れて配置されてもよく、電気的、磁気的、光学的、音響的、機械的、またはそれらが相互作用することを可能にする他の手段によって組み合わせられていてもよい。
【0184】
一例として、
図13は、1つ以上のプロセッサー1314を有するシステム1312を示す。単一ブロックとして概略的に図示されているが、プロセッサー1314は、システム1312内の複数の場所に共通して配置され、または広がる単一のプロセッサーまたは複数のプロセッサーを含んでもよい。プロセッサー1314は、ネットワーク1318を介して1つ以上のサーバー1316に接続されてもよい。代替的に、または追加的に、プロセッサー1314は、ネットワーク1318のプロセッサー側のデータ記憶装置またはメモリ(図示せず)に接続されてもよい。このような状況では、サーバー1316は、システムの一部として必要とされないか、またはローカルメモリによって増強されてもよい。処理機能の一部または全部は、1つ以上のプロセッサー1314から遠隔で、またはシステム1312から遠隔で実行されてもよい。
【0185】
開示された実施形態と一致して、1つ以上のプロセッサーは、疾患関連T細胞の活性化を引き起こす共通のHLAおよび共通のペプチドを共有する複数の患者の治療に関連する第1のデータを受信するように構成されてもよい。第1のデータは、例えば、疾患関連T細胞の活性化を引き起こす共通のHLAおよび共通のペプチドを共有する患者において疾患がどのように進行したかの特定のパターンに関する情報を含んでもよい。さらに、または代替として、第1のデータは、そのような共通性を共有する患者が1つ以上の治療レジメンにどのように反応したかに関する情報を含んでもよい。例えば、第1のデータは、共通性を共有する患者が、治療の経過中または疾患の進行中に、以前に不活化されたT細胞が活性化されていた可能性を反映している可能性がある。第1のデータには、活性化しそうなT細胞を除去するのに効果的な治療法に関する情報を含んでもよい。さらに、第1のデータは、特定の患者における特定の疾患進行の確率を確認することができる確率および/または情報を含んでもよい。第1のデータはまた、遺伝子情報、現在または過去の疾患または状態に関する情報、またはその他の健康または生物学的に関連する情報など、複数の患者に関する他の患者関連情報を含んでもよい。「治療に関連する第1のデータ」は、患者が経験した症状の変化、血液化学の変化、または他の生物学的影響のような、医学的状態に対する現在の治療レジメンの効果に関連する情報を含んでもよい。
【0186】
一例として、第1のデータは、
図14のブロック1412に反映されるように受信されてもよい。第1のデータは、
図13に示すように、1つ以上のサーバー1416に格納されてもよく、および/またはデータ構造体に格納されてもよい。本開示と一致するデータ構造は、データ値の任意の収集およびそれらの間の関係を含み得る。データは、直線的、水平的、階層的、関係的、非関係的、一次元的、多次元的、操作的、順序付けられていない様式、オブジェクト指向の様式、集中的な様式、分散的な様式、カスタムな様式、またはデータアクセスを可能にする任意の様式で格納され得る。非限定的な例として、データ構造は、アレイ、連想アレイ、リンクリスト、バイナリツリー、バランスツリー、ヒープ、スタック、キュー、セット、ハッシュテーブル、レコード、タグ付きユニオン、ERモデル、およびグラフを含み得る。例えば、データ構造は、データ格納/検索のためのXMLデータベース、RDBMSデータベース、SQLデータベース、またはNoSQL代替物、例えば、MongoDB、Redis、Couchbase、Datastax Enterprise Graph、Elastic Search、Splunk、Solr、Cassandra、Amazon DynamoDB、Scylla、HBase、およびNeo4Jを含み得る。 データ構造は、開示されたシステムのコンポーネントまたはリモートコンピューティングコンポーネント(例えば、クラウドベースのデータ構造)であってもよい。データ構造内のデータは、隣接または非隣接メモリに格納されてもよい。さらに、本明細書で使用するデータ構造は、情報を共存させることを必要としない。これは、例えば、同一または異なるエンティティによって所有または操作され得る複数のサーバーに分散され得る。従って、本明細書で単数形で使用される「データ構造」という用語は、複数のデータ構造を含む。
【0187】
サーバー1416のような1つ以上のネットワークアクセス可能なサーバーに第1のデータを記憶することは、例えばネットワーク1418がインターネットを含む場合、第1のデータの第1の項目をインターネットを介して多くのソースから集約することを可能にさせ得る。異なる患者からの第1のデータの量が増加するにつれて、システムの予測精度は増加する可能性が高い。あるいは、第1のデータは、特にプロセッサー1414に関連付けられたメモリデバイスにローカルに記憶されてもよい。第1のデータがどこに記憶されているかにかかわらず、プロセッサー1414によって受信されてもよく、プロセッサー1414は、本明細書でより詳細に説明する機能を実行することができる。
【0188】
「疾患関連T細胞の活性化を引き起こす共通のHLAおよび共通のペプチドを共有する複数の患者」とは、そのデータ予測がなされ得る患者集団(例えば、約10人未満、約20人、約50人、約100人、約500人、約1,000人、約5,000人、約10,000人、約25,000人、約50,000人、約75,000人、約100,000人など、または10~100,000以上の、任意の整数の人数含む)を指すことができ、通常、同一のT細胞関連免疫疾患またはその同一カテゴリーに罹患し、特異的T細胞(およびその特異的T細胞受容体)がHLA-ペプチド複合体(あらゆる種類の細胞由来の)によって提示される対応するペプチドと遭遇すると、一連の生化学的カスケードが起こり、T細胞が活性化され、自己免疫応答などの異常な免疫応答を含む特異的標的(ペプチド)に対する防御または免疫攻撃が実行され得る。
【0189】
開示された実施形態と一致して、データは、T細胞を経時的に活性化する共通のペプチドの進行を含んでもよく、疾患のさらなる進行では、より多くの異なるペプチドが疾患関連T細胞を早期よりも多く活性化する。例えば、疾患の進行の初期段階では、より少数のペプチド群が疾患の引き金となるT細胞を活性化することがある。しかし、この疾患を引き起こすT細胞を活性化するペプチドのリストは、時間の経過とともに変化したり、増殖することがある。このような進行は、定の患者に特有ではなく、その群に共通の疾患誘発ペプチドの進行を有する患者の群全体にわたって示され得る。受信されるデータは、そのような情報を含んでもよい。従って、本開示によるシステムは、病気がその進行に伴って変化し、病原性T細胞が後に異なるまたは追加のペプチドによって活性化され得るため、患者における疾患を効果的に治療し得ない治療レジメンを改善することを目的とし得る。このような状況において、治療に関連するデータは、複数の患者に共通であり、疾患の1つ以上の異なるステージで患者の疾患関連病原性T細胞を活性化するペプチドに関する情報を含んでもよい。疾患関連T細胞を活性化する共通のHLAおよび共通のペプチドを共有する複数の患者は、各々が同一の疾患を共有するだけでなく、疾患を引き起こすT細胞を活性化する同一または類似のペプチドを共有する個人であってもよい。
【0190】
いくつかの実施形態において、共通のHLAおよび共通のペプチドを有する特定の患者に関連する第2のデータを受信するように構成され得る1つ以上のプロセッサーであって、第1のペプチドセットが疾患関連T細胞の第1の亜集団を活性化し、第2のペプチドセットが疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化しない疾患の段階にある1つ以上のプロセッサーが構成され得る。第2のデータを受信することは、特定の患者に関するデータにアクセスすることを含み得る。特定の患者は治療の対象であり得、医学専門家は、将来、特定の患者が疾患の進行の結果として現在T細胞を活性化していない特定のペプチドがT細胞を活性化し得る疾患進行の対象となるかどうかを決定することに関心を有するであろう。第2のデータは、例えば、特定の患者において疾患を現在引き起こしているペプチドを特徴付ける情報を含んでもよい。または、特定の患者がまだ疾患の症状を呈していない場合、第2のデータは、特定の患者のT細胞を活性化すると予想されるペプチドに関する情報を含んでもよい。代替的に、または追加的に、第2のデータは、特定の患者のHLA型に関する情報、または疾患に相関する可能性のある任意の他の生物学的または健康情報を含んでもよい。
【0191】
一例として、
図10のブロック1414に示されるように、第2のデータが受信され得、第2のデータは、特定の患者のT細胞活性化特性に関連する。
図13の例示的実施形態では、第2のデータを、プロセッサー1314が受信し得る。このような受信は、医療専門家がプロセッサー1314によるアクセスのためにデータをメモリに入力した場合、またはネットワークを介してインポートされたデータの結果として発生し得る。第2のデータは、患者の医学的状態を特徴付けるために使用される分析医用機器から受信される情報を含んでもよい。これは、例えば、プロセッサー1314と医療機器(図示せず)との間のデータ接続を介して起こり得る。いくつかの実施形態において、第2のデータは、プロセッサー1314によって受信された様々な種類のデータを含み得る。これらのデータは、患者のペプチド、HLA、および特定の患者に関する他の生物学的または健康情報に関する情報を含み得る。
【0192】
特定の実施形態において、第2のデータは、HLAタイピングおよび関連ペプチドに関連する情報を分析することによって決定され得る。HLA型および関連ペプチドを同定するために利用することができる方法および技術、ならびにその後のデータ分析は、本開示の実施例8に記載された手順を含むが、これに限定されない。例えば、HLAタイピングは、口腔スワブDNA検査または血液分析のいずれかに基づき得、ここで、ペプチドに関する情報は、組織特異的および疾患関連の生体液の分析に基づき得る。別の実施例では、関連ペプチドの分析は、HLA複合体からのペプチドのストリッピングおよびペプチド配列の決定を含み得る。患者のHLAに結合されたペプチドの除去は、ペプチドとHLAとの間の相互作用を破壊するために生体液のpH値を変化させるなどのタンパク質化学技術、DMSOなどの薬剤を用いたペプチドの変性を含む、いくつかの異なる方法によって達成することができる。いくつかの実施形態において、特定の患者が多発性硬化症を有する場合、関連ペプチドに関連するデータを分析することは、脳脊髄液ペプチドデータを分析することを含み得る。患者が多発性硬化症などのT細胞関連免疫疾患を有する場合、本明細書に提供されるシステムおよび方法は、T細胞を除去するための治療レジメンを予測的に調整させ得る。多発性硬化症の場合、レジメンの調整は、ミエリン由来のペプチド、またはアクアポリンチャネルを含む非ミエリン中枢神経系タンパク質に関連して実施してもよい。ミエリンは、単一のタンパク質よりむしろタンパク質の混合物を含み得、免疫原性ペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせのタンパク質を含み得る。ミエリンペプチドの非限定的な例としては、前述の例示的ペプチドが挙げられる。
【0193】
生合成後、タンパク質はしばしば翻訳後修飾を受ける。同様に、HLA-ペプチド複合体中のHLAに結合するペプチドは、リン酸化およびグリコシル化のような翻訳後修飾を受けたタンパク質から誘導され得るか、または1つ以上の突然変異(例えば、アミノ酸置換、欠失、挿入)を含み得るか、または切断され得る。従って、本開示の開示された実施形態は、第1のペプチドセットおよび第2のペプチドセットが同一ペプチドの変異体であり得るシステムの実施形態を含む。「同一ペプチドの変異体」は、上記のように修飾および突然変異を受け得る同一ペプチドのコピーを含み得る。あるいは、第1のペプチドセットおよび第2のペプチドセットは、互いに異なり得る。第2のペプチドセットに対して不活性である疾患関連T細胞の患者の第2の亜集団の除去に加えて、開示された実施形態は、第1のペプチドセットに対して活性である疾患関連T細胞の患者の第1の亜集団の除去をさらに含み得る。本開示は、疾患関連T細胞の第1および第2の亜集団が除去される方法によって限定されない。例えば、疾患関連T細胞の第1の亜集団および疾患関連T細胞の第2の亜集団を同時に除去するために、改善措置を講じてもよい。あるいは、疾患関連T細胞の第1の亜集団および疾患関連T細胞の第2の亜集団を順次除去するために、例えば疾患関連T細胞の第2の亜集団、次いで疾患関連T細胞の第1の亜集団、またはその逆を除去するための改善措置を講じてもよい。
【0194】
開示された実施形態は、特定の患者における第2のペプチドセットが疾患のさらなる進行に対応することを、第1のデータセットを用いて特定することを含み得る。例えば、第1のデータセットに反映された1人以上の患者から得られたデータは、特定の患者において現在疾患を引き起こしていない他のペプチド(第2のセット)が、将来的に疾患を引き起こす可能性があるという、疾患進行の可能性を示すかもしれない。最も単純な方法では、これは、進行現象を示す単一の患者を特定することによって決定され得る。より信頼性の高い予測のためには、第1のデータに情報が反映されている個人の群が進行を示すことを決定することが有益であろう。
【0195】
代替実施形態において、追加の情報を使用して、特定の患者における第2のペプチドセットが疾患のさらなる進行に対応することを決定するのを支援し得る。必要ではないが、追加情報には、疾患の進行と相関する他の因子に関するデータを含めてもよい。例えば、第1のデータセットは、集団に関する多数の情報、および集団内の個人に関連する生物学的および健康情報を含めてもよい。第1のデータ上で実行される機械学習アルゴリズムは、1つ以上の生物学的または健康情報と特定の疾患進行との間の関係を同定し得る。このようにして、人工知能を通して、予測の精度を高めることができる。
【0196】
機械学習アルゴリズムまたはモデルは、訓練例を用いて訓練することができる。このような機械学習アルゴリズムのいくつかの非限定的な例は、分類アルゴリズム、データ回帰アルゴリズム、セグメンテーションアルゴリズム、サポートベクトルマシン、ランダムフォレスト、隣接アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、人工ニューラルネットワークアルゴリズム、畳み込みニューラルネットワークアルゴリズム、再帰ニューラルネットワークアルゴリズム、線形機械学習モデル、非線形機械学習モデル、アンサンブルアルゴリズムなどを含み得る。例えば、訓練された機械学習アルゴリズムは、予測モデル、分類モデル、回帰モデル、クラスタリングモデル、セグメンテーションモデル、人工ニューラルネットワーク(深いニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰ニューラルネットワークなど)、ランダムフォレスト、サポートベクトルマシンなどの推論モデルを含み得る。いくつかの実施例において、訓練例は、例示的な入力と、例示的な入力に対応する所望の出力とを含み得る。さらに、いくつかの実施例において、訓練例を使用する訓練機械学習アルゴリズムは訓練された機械学習アルゴリズムを生成することができ、訓練された機械学習アルゴリズムは訓練例に含まれない入力に対する出力を推定するために使用され得る。いくつかの実施例において、機械学習アルゴリズムを訓練するエンジニア、科学者、プロセスおよび機械は、検証例および/または試験例をさらに使用し得る。例えば、検証例および/または試験例は、例示的な入力に対応する所望の出力と共に入力を含み、訓練された機械学習アルゴリズムおよび/または中間的に訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、検証例および/または試験例の例示的な入力に対する出力を推定し、推定された出力を対応する所望の出力と比較し、訓練された機械学習アルゴリズムおよび/または中間的に訓練された機械学習アルゴリズムを、比較の結果に基づいて評価することができる。いくつかの実施例において、機械学習アルゴリズムは、パラメータおよびハイパーパラメータを有し得、ここで、ハイパーパラメータは、人によって手動で、または機械学習アルゴリズムの外部のプロセス(例えば、ハイパーパラメータ検索アルゴリズム)によって自動的に設定され、機械学習アルゴリズムのパラメータは、訓練例に従って機械学習アルゴリズムに従って設定される。いくつかの実装形態において、ハイパーパラメータは、訓練例および検証例に従って設定され、パラメータは、訓練例および選択されたハイパーパラメータに従って設定される。
【0197】
いくつかの実施形態では、訓練された機械学習アルゴリズム(訓練された機械学習モデルとも呼ばれる)を使用して、入力を分析し、出力を生成することができる。いくつかの実施例において、訓練された機械学習アルゴリズムは、入力を与えられたときに推定出力を生成する推論モデルとして使用され得る。例えば、訓練された機械学習アルゴリズムは、分類アルゴリズムを含んでもよく、入力は、サンプルを含んでもよく、推定された出力は、サンプルの分類(推測されたラベル、推測されたタグなど)を含んでもよい。別の実施例では、訓練された機械学習アルゴリズムは、回帰モデルを含み得、入力は、サンプルを、推定された出力は、サンプルについての推定値を含み得る。さらに別の実施例では、訓練された機械学習アルゴリズムは、クラスター化モデルを含んでもよく、入力は、サンプルを含んでもよく、推定された出力は、サンプルの1つ以上のクラスターへの割り当てを含み得る。さらなる実施例では、訓練された機械学習アルゴリズムは分類アルゴリズムを含み得、入力は画像を、推測された出力は画像に示されたアイテムの分類を含み得る。いくつかの実施例において、訓練された機械学習アルゴリズムは、1つ以上の公式および/または1つ以上の関数および/または1つ以上のルールおよび/または1つ以上の手順を含み、入力は、公式および/または関数および/またはルールおよび/または手順への入力として使用され、推測される出力は、公式および/または関数および/またはルールおよび/または手順の出力(例えば、公式および/または関数および/またはルールおよび/または手順の出力のうちの1つを選択する、公式および/または関数および/またはルールおよび/または手順の出力の統計的尺度を使用するなど)に基づき得る。
【0198】
いくつかの実施形態において、人工ニューラルネットワークは、入力を分析し、対応する出力を生成するように構成され得る。このような人工ニューラルネットワークのいくつかの非限定的な例には、浅い人工ニューラルネットワーク、深い人工ニューラルネットワーク、フィードバック人工ニューラルネットワーク、フィードフォワード人工ニューラルネットワーク、オートエンコーダ人工ニューラルネットワーク、確率的人工ニューラルネットワーク、時間遅延人工ニューラルネットワーク、畳み込み人工ニューラルネットワーク、反復人工ニューラルネットワーク、長期記憶人工ニューラルネットワークなどが含まれる。いくつかの実施例では、人工ニューラルネットワークを手動で構成され得る。例えば、人工ニューラルネットワークの構造を手動で選択することができ、人工ニューラルネットワークの人工ニューロンのタイプを手動で選択することができ、人工ニューラルネットワークのパラメータ(人工ニューラルネットワークの人工ニューロンのパラメータなど)を手動で選択することができ得る。いくつかの実施例では、機械学習アルゴリズムを使用して、人工ニューラルネットワークが構成され得る。例えば、ユーザーは、人工ニューラルネットワークおよび/または機械学習アルゴリズムのためのハイパーパラメータを選択することができ、機械学習アルゴリズムは、ハイパーパラメータおよび訓練例を使用して、例えば、勾配降下法、確率的勾配降下法、ミニバッチ勾配降下法、逆伝搬法を使用して、人工ニューラルネットワークのパラメータを決定することができる。いくつかの実施例では、2つ以上の他の人工ニューラルネットワークを単一の人工ニューラルネットワークに結合することによって、2つ以上の他の人工ニューラルネットワークから人工ニューラルネットワークが作成され得る。最も広い意味では、第1のデータを使用して、特定の患者における第2のペプチドセットが疾患のさらなる進行に対応することを決定するには、機械学習または人工知能を必要としない。
【0199】
一例として実装されるように、第1のデータを用いて、特定の患者における第2のペプチドセットが疾患のさらなる進行に対応することを決定することは、
図14のブロック1416で起こり得る。この機能は、一例として、
図13中のプロセッサー1314を使用して達成され得る。その場合、第1のデータセットは、サーバー1316上に配置され得、プロセッサー1314は、関連データを検索し、決定に到達し得る。あるいは、プロセッサー1314を使用して、ネットワーク1318を介して特定の患者に関する情報をサーバー1316に、またはサーバー1316に関連付けられた1つ以上のプロセッサー(図示せず)に送信してもよい。このようにして、追加の関連情報を含み得る決定は、プロセッサー1314から離れた位置で行われてもよく、プロセッサー1314に戻されてもよい。
【0200】
決定を行うプロセッサーがどこに位置するかにかかわらず、疾患関連T細胞をまだ活性化していない第2のペプチドセットが、後にそうすると予測されることが、実際に疾患の後期段階と関連していることを確認するように構成することができる。この決定は、例えば、疾患関連T細胞をまだ活性化しないペプチドを、疾患のより進行した段階の既知のバイオマーカーと比較することによって行うことができる。例えば、多発性硬化症は、本明細書に記載されるように、3つの主なパターンに分けることができる。
【0201】
いくつかの実施形態において、第2のペプチドセットが疾患の後期進行に対応することを決定することは、発症からの年数、神経症状評価尺度(EDSS)および治療を含む疾患関連パラメーターの比較、HLAタイピング分析;および対応するHLAタンパク質によって提示されるペプチドの分析を含み得る。これらの疾患関連パラメータは、特にそのような因子が疾患パターンと相関する場合、疾患の進行を予測するのに役立つ因子である可能性がある。相関は、前述したように、機械学習によって同定することができる。
【0202】
1人以上の患者において、疾患関連T細胞をまだ活性化していないペプチドが確認されれば、特定の患者における疾患のさらなる進行を防止するための措置を講じ得る。システムの実施形態では、これは、1つ以上のプロセッサーの助けを借りて実行され得る。例えば、1つ以上のプロセッサーは、第2のペプチドセットが疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化する前に、患者から疾患関連T細胞の第2の亜集団を除去するための改善措置を講じるように構成されてもよい。「改善措置」を講じることには、予防戦略の策定を含み得る。例えば、本開示による生物学的フィルターは、これらの細胞が体内の特定の標的に向かって活性化される前であっても、患者の循環から病原性T細胞を除去することを可能にする予防療法として使用することができる。この場合、改善措置を講じることは、特定の患者に対するそのようなフィルターの特性を決定することを含み得る。さらに、または代替的に、改善措置を講じることは、そのような特徴情報をディスプレイに出力すること、そのような特徴情報をネットワークを介して医療専門家または組織に送信すること、特定の患者のためのフィルター構造を可能にするためにフィルター製造業者に特性情報を送信すること、または生物学的フィルターを構成する機械またはシステムに関連するメモリに特性情報を出力することのうちの1つ以上を含み得る。
【0203】
一例として、改善措置は
図14のブロック1418に示されており、プロセッサー1314(またはインターネットのようなネットワークを介してアクセスされる別のプロセッサー)によって実装されてもよい。ある意味では、改善措置は、ディスプレイ1320のようなディスプレイ上に疾患進行に関する情報を表示することを含み得る。
【0204】
改善措置は、同定された第2のペプチドセットに基づいて患者の治療を調整することを含み得る。一実施形態において、調整は、医療機関が適切な処置をとることができるように、治療プロトコル変更の必要性を医療機関に通知することを含み得る。別の実施形態では、調整することは、機械が、以前に患者と共に使用されたフィルターからの患者治療の変化を反映する生物学的フィルターを作製することを可能にする命令を開発することを含み得る。
【0205】
従って、ある意味では、改善措置は、単に、疾患関連T細胞の第2の亜集団を除去する命令を出力することを含み得る。このような命令は、コマンドを実行するためにコンピューターによって読み取り可能なコンピュータープログラムを使用して生成してもよい。命令は、さらなる翻訳を必要とする形態で提供されてもよく、または、第2のペプチドセットを含むフィルターを構築する際に使用するためのデータの出力を含んでもよい。
【0206】
いくつかの開示された実施形態と一致して、1つ以上のプロセッサーをさらに構成して、疾患関連T細胞を活性化しない追加の共通ペプチドセットを同定し、追加のペプチドセットが疾患のさらなる進行に対応することを決定し、追加のペプチドセットが疾患関連T細胞の追加の亜集団を活性化する前に、疾患関連の亜集団を患者から除去するための改善措置を講じてもよい。例えば、病気の進行は、経時的に2回以上変化する場合がある。すなわち、疾患が進行するにつれて、第1セットおよび第2セット以外の追加のペプチドセットがT細胞活性化を誘発するか、または誘発することが予想され得る。このような場合、本発明の実施形態は、これらの追加のペプチドセットを同定し、T細胞を活性化する機会を有する前にそれらを除去するための改善措置を講じることができる。追加のペプチドを用いて講じられる改善措置は、第2のペプチドセットを用いて講じられるものと同様であってもよい。従って、いくつかの実施形態において、治療は、同定された追加のペプチドセットに基づいて調整され得る。これは、前述したように、疾患関連T細胞の追加の亜集団を除去するための命令を出力することによって起こり得る。このような命令は、コンピューターによってコマンドを実行するために読み取り可能なコンピュータープログラムを使用して、上述のような1つ以上の出力装置またはシステムに生成されてもよい。さらなる実施例において、1つ以上のプロセッサーは、追加のペプチドセットを含むフィルターを構築する際に使用するためのデータを出力することを含む改善措置を行うようにさらに構成され得る。疾患関連T細胞を活性化しないが、疾患の進行に伴って活性化する可能性のある追加の共通ペプチドセットは、第1および/または第2のペプチドセットと共に、または後に除去され得る。一実施形態において、改善措置は、疾患関連T細胞の第1、第2および追加の亜集団を同時に除去するために講じられる。
【0207】
上述の実施形態は、治療を予測的に調節するためのシステムに関連して説明されているが、システムへの参照は、例示的な目的に過ぎないことを理解されたい。同じ原理は、本開示の範囲内である方法またはコンピューター可読媒体で実装され得る。例えば、
図14に示すプロセスは、プロセッサーまたはシステムを使用せずに、または異なるシステムを使用して発生させ得る。同様に、
図14に示されたプロセスおよび本明細書中の関連する記載は、1つ以上のプロセッサーにそのような方法を実行させるための命令を含むコンピューター可読媒体で実装され得る。
患者からT細胞を除去する方法
【0208】
開示された実施形態は、患者から細胞を除去する方法、またはより一般的には、生体液から細胞を除去する方法を含み得る。流体は、約40以上の生体液のいずれであってもよい。本明細書中で使用される場合、「生体液」という用語は、ヒトなどの哺乳動物の体に由来する体液または流体を指す。生体液の非限定的な例には、全血、血清、血漿、脳脊髄液、滑液、肺胞洗浄液、膵液、胃腸洗浄液、腹膜洗浄液、リンパ液、骨髄、羊水、精液、胸水、母乳、心膜液、唾液、糞便、胆汁、および尿が含まれる。
【0209】
除去された細胞は、除去の意図された目的に応じて、T細胞、非T細胞、病原性細胞、または非病原性細胞であり得る。細胞除去の目的の1つの非限定的な例は、疾患を誘発することが知られているかまたは疑われる特定の細胞を除去することを含み得る。誘発細胞を除去することによって、この疾患は緩和される可能性がある。
【0210】
そのような方法は、標的細胞を含む生体液を患者から採取することを含み得る。次いで、特定の細胞を含有する生体液を、特定の細胞のみに選択的に結合する媒体ホスト材料を通して体外流動させることができる。このようにして、特定の細胞を媒体に捕捉することができ、捕捉されない残りの生体液を患者体内に戻すことができる。また、このようにして、患者の血液または他の生体液中の標的細胞を除去することができる。
【0211】
例示的目的のために、試薬および器具は、いくつかの実施例に関連して以下に記載される。実施例、試薬および器具は、例示的なものに過ぎないことを理解されたい。
【0212】
開示された方法は、患者に使用することができる。「患者」という用語は、ヒトまたは他の哺乳動物を含み得る。いくつかの実施形態において、特異的T細胞を除去する方法が企図される。用語「特異的T細胞」も以前に記載されている。
【0213】
いくつかの実施形態において、特定のT細胞抗原受容体または標的化される受容体を発現しないT細胞は、除去され得ない。上述の「T細胞」という用語は、胸腺で発達し、免疫応答において中心的役割を果たす任意のタイプのリンパ球を含み得る。いくつかの実施形態において、特異的T細胞は、1つ以上のヘルパーCD4+ T細胞、細胞傷害性CD8+ T細胞、記憶T細胞、調節性CD4+ T細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞および/またはγδT細胞を含み得る。あるいは、またはさらに、特異的T細胞は、CD4+細胞またはCD8+細胞のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0214】
標的T細胞は、病原性であっても非病原性であってもよい。病原性T細胞は非病原性T細胞と同様の役割を果たす可能性があるが、病原性T細胞は自己構造と物質を認識し、それらを攻撃し得る。本明細書中で使用される場合、「病原性細胞」という用語は、疾患または他の苦痛と関連し得る内因性または外来性のいずれかの任意の細胞を指す。病原性細胞を標的とし、除去することによって、患者の疾患を緩和し得る。非病原性T細胞は、例えば、特定の系列が、現在の非病原性T細胞が将来病原性になる可能性がある点まで進化すると予想される場合には、除去のために標的化されてもよい。従って、非病原性細胞の能動的除去では、疾患の後の発現が予防され得る。
【0215】
病原性細胞は、本明細書に記載される自己免疫疾患のいずれか1つと関連し得る。特定の実施形態では、病原性細胞は、多発性硬化症、ループス、セリアック病、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛、強直性脊椎炎、1型糖尿病、円形脱毛症、血管炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己炎症性疾患、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン症候群、抗リン脂質症候群(APS)、視神経脊髄炎(NMO)、腫瘍随伴症候群、原発性胆管炎、スティッフパーソン症候群(SPS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、または側頭動脈炎を含むが、これらに限定されない自己免疫疾患と関連し得る。
【0216】
その他の実施形態において、病原性細胞は、血液癌などの癌疾患と関連し得る。血液癌には、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その他の血液細胞癌などがある。その他の実施形態において、癌疾患は固形であり得る。固形癌には、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌、前立腺癌、または組織に形成される他の固形腫瘍などがある。
【0217】
特異的T細胞、病原性細胞、または非病原性細胞を除去する方法は、患者から生体液を採取することを含み得る。生体液が血液を含む場合、本明細書における血液への言及は、全血または血液画分のいずれかを含み得る。本明細書中で使用される場合、「血液」という用語は、栄養および酸素を含む物質を細胞に輸送し、代謝老廃物を細胞から遠ざけて輸送する、ヒトおよび他の生物に存在する体液を指す。本明細書中で使用される「血液画分」という用語は、全血の下位成分を指す。血液画分には、血漿、白血球、赤血球、および血小板の1つ以上が含まれ得る。生体液には、脳脊髄液(CSF)も含まれ得る。本明細書中で使用される場合、「脳脊髄液(CSF)」とは、脳および脊髄中に見出される透明で無色の液体を指す。いくつかの実施形態において、生体液は、骨髄を含み得る。本明細書中で使用される場合、「骨髄」という用語は、骨の海綿状または海綿状部分に見出され、白血球、赤血球および血小板を生成し得る半固形組織を指す。その他の実施形態において、生体液は、滑液を含み得る。本明細書中で使用される場合、「滑液」という用語は、滑膜関節の腔内に見出され、関節表面に潤滑性を提供し得る非ニュートン流体を指す。その他の実施形態において、生体液は、肺胞洗浄から得られた流体を含み得る。本明細書中で使用される場合、「肺胞洗浄液」は、肺に導入され、続いて採取される流体を指す。いくつかの実施形態において、生体液は、腹水を含み得る。本明細書中で使用される場合、「腹水」という用語は、腹腔内の液体を指し、腹壁および骨盤腔を裏打ちする組織を潤滑することができる。従って、本明細書中で使用される場合、生体液に関連する用語「図面」は、患者から生体液を除去するための任意の機構を指す。
【0218】
この概念は、
図15のブロック1502における例として伝えられ、ここで、生体液は、一般に、患者から採取されたものとして示される。患者から生体液を採取す津このようなプロセスは、例えば、吸引および/またはドレナージを含み得る。吸引には、微生物からの液体の吸引による除去が含まれ、例えば、針またはカテーテルを介して実施され得る。生体液が血液である場合、血液は、針を静脈に挿入することによって除去され得、針は、収集容器またはチューブセットに接続される。
【0219】
開示された実施形態は、さらに、特定の細胞のみに選択的に結合し、それによって媒体で特定の細胞を捕捉する媒体ホスト材料を通して、生体液を体外流動させることを含み得る。用語「媒体」および「選択的結合」は、以前に記載された。
図15のブロック1504において、生体液がホスト媒体を通して体外流動する場合、特定の細胞(または他の実施形態では、他の標的物質)は、標的物質(例えば、特定の細胞)を捕捉するために、任意の方法で優先的に付着し得る。広い意味で、結合は、標的細胞を除去させる組み合わせ、接着、カップリング、または反応の任意のプロセスを包含する。
【0220】
固体、半固体または流体を含む多くの種類の表面媒体を使用することができる。固体または半固体の場合、媒体は任意の形態を有することができる。
図2A~2Dで先に提供される例は、シート材、繊維、ビーズ、およびスポンジ様材料を含む。他の例としては、メッシュ構造、液体およびゲルが挙げられる。しかし、これらは例にすぎない。この方法は、特定のホスト材料に関係なく実施することができる。
【0221】
同様に、媒体の構成は、意図された用途に応じて変更してもよい。単なる例として、媒体は、不活性、非合成、合成、ポリマー、高性能熱可塑性、ポリスルホン、ポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(Ultem)、トリタン、高分子電解質、ポリアクリル酸、またはポリ(2-アミノエチル)アクリルアミドの1つまたは複数の方法で特徴付けることができる。代わりに、または追加的に、媒体は、約5~40質量パーセントで存在するポリアクリル酸、約60~95質量パーセントで存在するポリスルホン;ポリスチレン、ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、分子間架橋可能なPEGの6本腕星形分子を生成することによって最大化されるPEG密度、および/またはアビジン、ストレプトアビジン、またはそれらの任意の形態を含んでもよい。繰り返しになるが、これらは単なる例であり、最も広い意味で本開示を制限すると考えるべきではない。
【0222】
図16は、不活性表面1604を有する媒体の例示的実施形態を示す概略図である。一例として、不活性表面はストレプトアビジンを含み得る。媒体1604は、シートとして示されるが、
図2A~2Dに示される形態を含むが、これらに限定されない任意の形態であってもよい。
【0223】
図16に示すように、媒体1604は、細胞1606などの生物学的物質に選択的に結合し、捕捉する結合材料1608をホストしてもよい。例えば、細胞1606は、病原性T細胞であり得、共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介することを含めて、任意の方法で媒体に付着し得る。非共有相互作用には、水素結合、イオン相互作用、疎水性相互作用、またはパイ積層が含まれる。特定の実施形態において、結合材料1608は、タンパク質を含み得、この場合、参照番号1608は、タンパク質を示し得る。いくつかの実施形態において、結合材料1608は抗体を含み、この場合、参照番号1608は抗体を示し得る。例えば、抗体は、生物学的物質(例えば、細胞1606)上の特異的エピトープを認識することができ、それによって、生物学的物質を捕捉し、それを媒体上に固定することができる。本明細書中で使用される用語「抗体」は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fabc、Fvフラグメント、または任意の他の抗原結合フラグメント、またはそれらの抗原結合抗体部分を含み得る。特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはその抗原結合断片もしくは抗原結合部分を含み得る。媒体は、複数の異なる生物学的物質上の複数の異なる抗原を認識する複数の異なる抗体を含み得る。
【0224】
結合材料1608は、特異的細胞にのみ選択的に結合し得るが、結合材料1608は、最初に、ホスト媒体1604に結合し得る。従って、「特異的細胞にのみ選択的に結合する」という語句の使用は、細胞(または他の生物学的物質)の捕捉プロセスの選択的結合を指し、結合を介して起こる可能性があるホスト媒体1604を結合材料1608に接続するメカニズムのことではない。
【0225】
いくつかの実施形態において、選択的に結合するホスト材料は、ヒト白血球抗原(HLA)を含む。HLAはペプチドに結合してHLA-ペプチド複合体を形成し得る。1つの実施例において、HLA-ペプチド複合体は、生体物質(例えば、T細胞)上の特異的エピトープを認識し得る。例として、媒体がアビジン、ストレプトアビジンまたはそれらの任意の変異体を含み得る場合、捕捉材料は、媒体の表面上のアビジン、ストレプトアビジン、またはそれらの変異体と相互作用し得るビオチンに連結され得、それによって、捕捉材料を媒体に固定する。別の実施例では、媒体は、捕捉材料上の官能基と相互作用し得る遊離カルボニル基、アミン基、マレイミド基、または任意の他の官能基を含み、それによって捕捉材料を媒体に固定し得る。さらに別の実施例では、媒体は、ポリスルホンとポリアクリル酸とのブレンドを含み、捕捉材料は、ポリアクリル酸のカルボキシル基を介して媒体に結合するタンパク質である。さらに、ポリスルホンおよびポリアクリル酸の混合物は、アミン基を含むように修飾され得、タンパク質は、アミン基との反応を介して媒体に結合し得る。さらなる実施例において、ポリスルホンとポリアクリル酸とのブレンドは、マレイン酸、マレイミド基またはそれらの類似体を含むように改質され得る。マレイン酸、マレイミド基またはその類似体は、炭水化物リンカーで延長することができる。捕捉材料は、マレイン酸、マレイミド基またはそれらの類似体との反応を介して媒体に結合し得る。
【0226】
概略図として、HLA-ペプチド複合体1704および抗体1708を含む媒体1706を含む媒体1702が
図17A~17Bに示されている。媒体1702および1706は、シート形態で示されるが、
図2A~2Dに示される形態を含むが、これらに限定されない任意の形態であってもよい。
【0227】
いくつかの実施形態において、捕捉材料は、HLAタンパク質を含んでもよく、HLA-ペプチド複合体を形成するためのペプチドをさらに含み得る。HLA-ペプチド複合体は、例えばマレイン酸、マレイミドまたはその類似体を介して媒体上に配置することができる。
【0228】
いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、組換え的に設計され、発現し得る。例えば、HLAタンパク質は、融合タンパク質またはタグを含むように設計してもよい。別の実施例において、HLAタンパク質は、C末端にシステイン残基を含むように設計され得る。いくつかの実施形態において、HLAタンパク質は、ペプチドリンカーを介してC末端システインに連結し得る。あるいは、HLA-ペプチド複合体は、患者のような個体から内因的に得ることができる。いくつかの実施形態において、HLAタンパク質は、HLA Iおよび/またはHLA IIを含む。いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体のHLAタンパク質は切断され得る。特定の実施形態において、切断は、C末端システインをもたらす。HLA-ペプチド複合体は、媒体上のマレイミドまたはその類似体と反応し、それによってHLA-ペプチド複合体を媒体に固定し得る。特定の実施形態において、組換え的に設計され発現されたHLA複合体は、個体のタンパク質と類似の組換えタンパク質を含み得る。好ましい実施形態において、組換え的に設計され発現されたまたは内因性HLA複合体は、I型またはII型HLAタンパク質を含み得る。いくつかの実施形態において、組換え的に設計されたHLAタンパク質は、後に提示され得る内因性または合成ペプチドへの結合のためのペプチド結合溝を含み得る。特定の実施形態において、装填される内因性または合成されたペプチドは、疾患関連免疫原性ペプチドであり得る。いくつかの実施形態において、特異的T細胞は、本明細書に記載される例示的自己免疫疾患のいずれか1つを含む自己免疫疾患に関連するタンパク質に由来する抗原ペプチドに特異的なT細胞受容体を含む。特定の実施形態において、自己免疫疾患は、多発性硬化症、1型糖尿病、重症筋無力症、またはクローン病を含み得る。いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、T細胞群上の特異的T細胞受容体を認識することができ、それによって、T細胞を捕捉し得る。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD4+および/またはCD8+ T細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、複数の異なるHLA-ペプチド複合体を含み得、各々は、複数のT細胞群上の異なるT細胞受容体を認識し得る。
【0229】
媒体を通して生体液を体外流動させる工程は、一度、媒体を通して生体液を流動させる工程、または生体液を複数回または一定期間連続的に再循環させる工程を含み得る。いずれの1回の通過においても、生体液の全容積は、除去されるべき細胞を十分な割合結合するのに十分なフィルター表面に接触しない可能性があるため、複数回の通過が必要とされ得る。もちろん、再循環の量は、もしあれば、特定のフィルター設計および特定の使用例の機能であると言える。
【0230】
開示された実施形態はまた、捕捉された細胞が存在しない生体液を患者体内に戻すことを含み得る。細胞を体内に戻す工程は、所望の量の標的細胞がフィルターによって除去されることを確実にするために、十分な時間が経過した後に起こり得る。
図15のブロック1506において、細胞は、任意の方法で戻され得る。例えば、それらは、フィルターの出口から患者へ延びるチューブセットを介して戻されてもよく、または、例えば、細胞は、後に採取され、戻されてもよい。フィルターの効率を容易にするために、例えば血液の場合、血液はまず最初の分離を経て、T細胞を含有する血液の一部を、含有しない部分から分離してもよい。次いで、T細胞部分は、生物学的フィルターを通して循環させることができ、残りの部分は、直ちに患者体内に戻されるか、または後に戻すために保持してもよい。
【0231】
これらのプロセスは、1つまたは複数の蠕動ポンプ、および1つまたは複数のリザーバーを使用することによって容易にすることができる。特定の実施形態において、生体液は、患者体内に戻る前に富化され得る。例として、帰還前に栄養素または医薬組成物を添加してもよい。
患者から病原性細胞を選択的に除去するための個別化された生物学的フィルターを作製するための方法
【0232】
いくつかの開示された実施形態は、患者から病原性細胞を除去するための個別化された生物学的フィルターを作製する方法に関する。このような生物学的フィルターは、本明細書に開示される実施形態によると、T細胞のような病原性細胞によって引き起こされる患者の疾患を治療するのに有用であり得る。または、体内の自己タンパク質を攻撃し、それらの細胞の活性化および自己タンパク質および細胞の破壊を引き起こす病原性細胞を、特異的免疫原性ペプチドを含むHLA-ペプチド複合体を含有する生物学的フィルターを用いて除去し得る。HLA-ペプチド複合体を誘発する疾患は患者によって異なることがあるので、フィルターは、特定の患者の生物学に個別化され得る。例えば、分析は、患者の1つ以上のHLA型を同定し、1つ以上の病原性ペプチドの同一性を同定するために、患者に対して実施してもよい。次いで、患者の疾患に特有のHLA-ペプチド複合体を用いてフィルターを構築することができ、それによって、フィルターを患者に個別化してもよい。あるいは、種々のフィルターを、一般的な組み合わせのHLA-ペプチド複合体と共に保管し、適切なフィルターを患者の分析が行われた後に選択してもよい。このようなフィルターは、患者独自のHLA-ペプチド複合体の組み合わせに合わせて保管場所から特別に選択して取り付けられ、本開示の意味における個別化フィルターと考えられる。後述するように、この開示と一致する生物学的フィルターは、不活性フィルター表面媒体に結合したHLA-ペプチド複合体を含み得る。この実施例および他の実施例は、以下により詳細に議論される。
【0233】
フィルターは、除去機能が可能な任意の適切な形態を有し得る。例えば、それは、生体液成分が結合、接着、または反応する1つ以上のシート材の形態で、またはそれを含むように構成されてもよく、または同様の効果をもたらす他の構造であってもよい。そのような構造は、例えば、メッシュ、繊維、ゲル、ビーズ、足場、または生物学的濾過のために構成された表面積を有する任意の他の材料を含んでもよい。
【0234】
本開示の実施形態と一致する生物学的フィルターは、細胞、タンパク質、核酸、脂質、多糖類、または任意の他の生物学的物質を捕捉するように構成されてもよい。例えば、フィルターは、フィルターが達成するように設計された機能に応じて、タンパク質を含むか、または病原性細胞または非病原性細胞を認識し捕捉するタンパク質で固定され得る。いくつかの実施形態において、病原性細胞は、自己構造および物質を認識し、それらを攻撃する以外は、非病原性細胞と同じ役割を有し得る。一例として、フィルターは、多数の疾患に関連する多数の病原性細胞のうちの1つ以上を除去するように設計されてもよい。例えば、フィルターは、病原性リンパ球を除去するように設計されてもよい。
【0235】
いくつかの開示された実施形態と一致して、個別化された生物学的フィルターを作製する方法には、患者のHLA型を同定することを含み得る。特定の患者に対するHLAタイピングは、前述のように、患者の1つ以上のHLA型を同定する任意の手技を用いて実施され得る。従って、患者のHLA型の同定は、一般に、例として
図18のブロック1812に反映されるように、HLA型が得られる方法またはそれが得られる生体液に限定されない。そのような流体の例には、非限定的に、血液、脳脊髄液、またはHLAタイピングが決定され得る任意の他の適した体液が含まれ、これには、本明細書中に先に記載された生体液の全ての例が含まれる。
【0236】
いくつかの実施形態において、個別化された生物学的フィルターを作製する方法は、患者の疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドを同定すること、または患者の疾患に関連する免疫原性ペプチドによって認識され、活性化される細胞の1つ以上のクローンを同定することを含み得る。「ペプチド」という用語は、一般に、ペプチド結合によって互いに結合したアミノ酸の短鎖を指す。ペプチドの免疫原性は、標準的な手段によって測定してもよい。1つ以上の免疫原性ペプチドを同定するための1つの例示的プロセスにおいて、患者から採取された流体サンプルを処理して、流体から細胞を分離することができる。次いで、細胞を溶解して、タンパク質画分を収集してもよい。これにより、細胞によって発現されるすべてのタンパク質の混合物が生じ、多くのHLA-ペプチド複合体が集合し得る。次いで、免疫沈降は、HLA複合体に結合することが知られているタンパク質混合物に抗体を導入することによって、タンパク質画分上で行うことができる。このようにして、HLA複合体は、他のタンパク質から分離され得る。次に、HLA-ペプチド複合体上でペプチドストリッピングを行い、HLAからタンパク質を解離させることができる。次いで、質量分析を、特定の疾患に関連するペプチドを同定するために、解離されたそれぞれのペプチド上で行ってもよい。より詳細には、質量分析は、各ペプチドについての決定配列を明らかにする。次いで、これらの配列を、疾患に連結されたタンパク質に関連することが既知である配列と比較することができる。例えば、配列を検索エンジンに入力して、関連するペプチドが病気と関連しているかどうかを決定することができる。例えば、多発性硬化症の場合、ミエリン関連タンパク質が同定されるであろう。最も広い意味で、本開示の実施形態は、特定の疾患関連ペプチドを同定するための特定のメカニズムに限定されない。従って、
図18のブロック1814は、一般に、特定の実施方法を指定することなく、疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドを同定することを意味する。
【0237】
より特異的なHLA-ペプチド複合体の群は、患者のHLAに対して最も強力な結合親和性を有するペプチドを同定するためにバイオインフォマティクスデータベースを使用することによって同定し得る。一旦これら最有力候補が同定されると、試験表面または試験表面群を構築し、合成されたHLA-ペプチド複合体が結合され得る別個の領域でアンカーすることができる。その後、末梢血単核細胞(PBMC)と呼ばれる患者の血液画分を試験表面領域上で染色する。この過程によって、どのHLA-ペプチド複合体がT細胞に結合するかが明らかになり、あるクローンからのT細胞の血中濃度が決定され得る。例えば、PBMCを標識し、蛍光透視法のようなプロセスを用いることによって、各試験領域に結合するT細胞の容積を測定してもよい。最も高い結合シグナル伝達領域に関連するHLA-ペプチド複合体は、除去される末梢T細胞の量を反映している可能性がある。有意な結合は、患者のための個別化された治療フィルターに含まれるべきHLA-ペプチド複合体を示す。
【0238】
特定の実施形態において、複数の疾患関連免疫原性ペプチドを同定または分析され得る。例えば、一連のHLA-ペプチド複合体は、疾患を引き起こすものとして同定してもよい。もしそうであれば、そのような複合体の多くは、それらがどの程度疾患を誘発するかを決定するために試験することができる。いくつかの実施形態において、同定されたペプチドは、定量化され得る。もしそうであれば、閾値(例えば、試験においてT細胞に結合する容量)を満たすものを、フィルターに使用するために選択することができる。ペプチドの同定は、アミノ酸配列決定によって達成することができる。さらに、そのようなペプチドを疾患関連免疫原性ペプチドのデータベースと比較して、ペプチドに関する関連情報を得ることができる。例えば、本明細書でより詳細に議論されるように、患者において発現される特定のHLAに対するペプチドの結合親和性は、市販または公的に入手可能なデータベースの使用によって決定され得る。いくつかの実施形態において、特定のHLAに対するペプチドの結合親和性が定量化され得る。結合親和性を定量することにより、最も高い結合親和性を有するペプチド-HLAの組み合わせを選択することができ、それによって生物学的フィルターの設計の指針とすることができる。
【0239】
従って、いくつかの実施形態において、免疫原性ペプチドの同定または分析は、HLA複合体に対するペプチド結合親和性を含む疾患関連免疫原性ペプチドのデータベースとペプチドを比較することを含み得る。患者のHLA型が分析に含まれる場合、このような比較は、その患者の疾患を引き起こすHLA-ペプチド複合体のプールを狭めるのに役立つであろう。
【0240】
特定の実施形態において、ペプチドの同定または分析は、脳脊髄液分析または組織特異的疾患関連分析を介して決定され得る。例として、罹患した個体からの組織を採取することができる。連結された、またはロードされたペプチドとのHLA複合体の集団が、罹患した個体の細胞から単離され得る。次いで、ペプチドは、例えば化学的手段によって、HLA複合体から分離され得る。次いで、分離されたペプチドを配列決定し、個体の特定の疾患に関連付けるために、頻度について分析することができる。患者の疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドのそのような同定は、一般に、他の同定方法の中でも、
図18中のブロック1814に反映される。
【0241】
個別化された生物学的フィルターを作製する方法は、患者の決定されたHLA型および1つ以上の免疫原性ペプチドに対応する組換え的または内因的に産生されるHLA複合体を含み得る。HLA型は、HLA IまたはHLA IIまたはその両方を含み得る。生成される特定の複合体は、患者によって発現されるHLAと、同定された1つ以上の免疫原性ペプチドとの間の結合親和性の分析に基づいてもよい。HLAおよび免疫原性ペプチドの1つ以上の組み合わせを、産生/作製のために選択することができる。HLA複合体の内因性産生は、患者から内因性HLA複合体を得ることを含み得る。HLA複合体の組換え的な産生には、目的の組換えDNAを、DNAをmRNAに転写し、mRNAを、組換えHLA複合体に対応するアミノ酸配列に翻訳することができるシステムに組み込むことが含まれ得る。DNAプラスミドの例は、pET-21d (+) または任意の他の利用可能な発現ベクターであり、タンパク質産生のために大腸菌(例えばBL21またはB834株)などの細菌発現系にトランスフェクトすることができる。他の発現系としては、昆虫細胞、哺乳動物細胞、無細胞発現系、または任意の他の適切な系が挙げられるが、これらに限定されない。組換えHLA複合体は、内因性HLA複合体から変化され得る。患者のHLA型に対応するHLA複合体の産生/作製は、一例として、
図18のブロック1816に反映される。
【0242】
いくつかの実施形態において、HLA複合体は、HLAタンパク質および免疫原性である抗原ペプチドを含み得る。本明細書に記載されているように、同定され得る免疫原性ペプチドは、患者の疾患と関連し得る。HLA複合体は、患者から内因的に得られ得る。HLA複合体は、組換え的に産生されたHLAタンパク質および上記の記載に従って免疫原性ペプチドを含み得る。HLA複合体は、組換え的に産生されたHLAタンパク質および/または合成的に作製された免疫原性ペプチドを含み得る。免疫原性ペプチドは、標準的な方法によって合成することができる。特定の実施形態において、免疫原性ペプチドは、手動または自動的方法のいずれかによって化学的に合成され得る。特定の実施形態において、免疫原性ペプチドは、フルオレニルメトキシカルボニル保護基化学によって合成され得る。
【0243】
本開示の態様は、さらに、患者の疾患に関連する1つ以上の同定されたペプチドを合成することを含み得る。例えば、疾患が多発性硬化症である場合、そのようなペプチドは、個体の中枢神経系の軸索を取り囲むミエリン鞘の一部を形成するペプチドを含み得る。あるいは、疾患関連ペプチドは、大部分またはすべての細胞型に共通のタンパク質を含み得る。一例として、このようなペプチドには、細胞質、細胞骨格、核、または膜タンパク質が含まれ得る。
【0244】
個別化された生物学的フィルターを作製する方法は、生物学的フィルターの不活性フィルター表面へのHLA複合体の結合を含んでもよい。開示された実施形態と一致して、フィルターは、HLA複合体が結合され得る不活性物質を含んでもよい。用語「不活性」は前述の通りである。いくつかの実施形態において、フィルターは、1つ以上のポリスルホン、ポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、トリタン、または上記または他の物質の組み合わせを含み得る。他の例示的実施形態において、フィルターは、ポリスルホンを含む。フィルターは、高分子電解質または任意の高分子添加剤を、単独で、または上記で同定された他の材料または他の物質もしくは材料と組み合わせて、さらに含み得る。他の実施形態では、不活性フィルター表面は、ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、ポリスチレン、アビジンまたはストレプトアビジンのうちの少なくとも1つを含み得る。あるいは、フィルターの表面は、ある程度または高度に吸収性であってもよく、または非特異的粒子と反応性であってもよい。
【0245】
特定の実施形態において、フィルターは、その間に流体が流れるように構成された複数の層を含み得る。
図3に記載された構造のような任意の層状構造は、意図された濾過機能を達成するために、流体が濾過媒体の十分な部分に接触し得る限り、任意の層状構造を使用してもよい。
【0246】
HLA複合体は、標的T細胞のTCRがHLA-ペプチド複合体に結合することを可能にする任意のメカニズムによって、不活性フィルター表面に結合し得る。結合は、不活性フィルター表面へのHLA複合体の接着、アンカー、化学反応、または任意の他の態様の付着を介して起こり得る。例えば、不活性フィルター表面は、HLA複合体と反応するために、特定の分子的および化学的特性を可能にするように化学的に設計することができる。HLA複合体は、例えば、共有結合、非共有結合相互作用、または吸着によって、不活性フィルター表面上に配置することができる。非共有結合相互作用の例としては、静電相互作用、ファンデルワールス力、π効果、および疎水効果が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、HLA複合体は、アナログを介して不活性フィルター表面に結合し得る。例として、HLA複合体は、マレイミド類似体を介して不活性表面上に配置することができる。その他の実施形態において、HLA複合体は、マレイミド類似体を介してフィルターの表面に共有結合的に結合し得る。特定の実施形態において、HLA複合体は、HLA複合体によるフィルター表面の最大飽和を可能にするために、過剰量の溶液中で不活性フィルター表面に導入され得る。特定の実施形態において、HLA複合体は、チオール結合、ジスルフィド結合、アミン結合、または任意の他の適切な官能基の結合を介して不活性フィルター表面に結合し得る。あるいは、HLA複合体は、不活性フィルター表面、例えばシステイン残基に共有結合的に結合し得る。このような不活性フィルター表面へのHLA複合体の結合は、一例として、
図18のブロック1818に反映される。
【0247】
本発明のいくつかの態様において、個別化された生物学的フィルターを作製する方法は、挿入フィルター表面に結合したHLA複合体上に同定されたペプチドをロードすることをさらに含み得る。ペプチドをHLAタンパク質上にロードして、本明細書に先に記載したようにHLA-ペプチド複合体を形成することができる。
【0248】
同定されたペプチドをHLA複合体にロードするタイミングおよび不活性フィルター表面へのHLA複合体の結合は、特定の実装の要件に応じて変更され得る。いくつかの実施形態において、ロードおよび結合は、連続的に起こる。すなわち、同定されたペプチドを、不活性表面物質に結合する前に最初にHLA複合体上にロードするか、またはHLA複合体を不活性表面物質に最初に結合させ、その後、ペプチドをロードするかのいずれかである。他の実施形態において、ロードおよび結合は、実質的に同時に起こる。
【0249】
個別化された生物学的フィルターを使用して、患者から病原性細胞を選択的に除去し得る。前述したように、患者からの病原性細胞の除去は、任意の生物学的または化学的プロセスを介して起こり得る。いくつかの実施形態において、これは、不活性フィルター表面に結合したHLA複合体上に患者からの血液を流し、それによって病原性細胞を捕捉することを含み得る。病原性細胞は、病原性細胞への結合、接着、または反応を含む任意の手段によって、不活性フィルター表面に結合したHLA複合体によって捕捉され得る。個別化された生物学的フィルターは、HLAタンパク質複合体がコーティングされたステントを留置し、血管内、または体内の任意の場所に挿入する形で実装されてもよい。定期的にステントを除去することができる。生物学的フィルターは、ストレプトアビジンまたは任意の他の化学物質でコーティングすることができ、ビオチンと結合したHLAタンパク質複合体を血液に注入した後、ビオチンストレプトアビジンの特異的結合によりHLA複合体を除去するために、患者をアフェレーシス装置に接続する。非限定的な例として、病原性細胞は、本明細書に開示される自己免疫疾患、癌(固形腫瘍または血液癌)、および移植後合併症のいずれか1つと関連し得る。一実施形態において、病原性細胞は、白血病、急性白血病、癌、重症筋無力症(MG)、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症(MS)、真性赤血球増加症(PC、PCV)、血小板増加症、強皮症、1型糖尿病、乾癬、クローン病、または多発性硬化症のうちの少なくとも1つと関連し得る。本発明の他の態様において、生物学的フィルターは、骨髄増殖性疾患またはウイルス、細菌、真菌または寄生性感染症のうちの少なくとも1つに関連する病原性細胞を捕捉するために使用され得る。
患者の疾患を治療する方法
【0250】
いくつかの開示された実施形態は、患者の治療およびその方法に関する。いくつかの実施形態において、患者の治療は、患者に個別化された薬剤を提供または選択肢を提供することを指し得る。いくつかの実施形態において、患者は、疾患について治療され得る。例えば、患者は、血液または固形癌のいずれかの種々の癌に対して治療され得る。あるいは、いくつかの実施形態において、患者は、自己免疫疾患について治療され得る。自己免疫疾患に関連して、治療は患者の免疫系のダウンレギュレーションを伴うことがある。あるいは、自己免疫疾患の治療には、1つ以上の損傷を引き起こす物質を標的とし、それらを患者の身体から除去することを含み得る。いくつかの実施形態において、損傷誘発物質は、病原性細胞であり得る。本開示は、治療のための特定の疾患の例を提供するが、その最も広い意味での開示の態様は、特定の疾患に限定されないことに留意されたい。むしろ、前述の原則は、本明細書に記載される1つ以上の変化するメカニズムの治療に適した任意の疾患に適用することができる。
【0251】
本開示のいくつかの実施形態は、患者のヒト白血球抗原(HLA)型を同定することを含み得る。HLAタイピングのための適切な方法および技術が本明細書に記載される。本開示の一実施形態において、患者のHLA型を同定することは、単に、患者から流体サンプルを採取し、流体サンプルをHLAタイピングのために検査室に送ることを含み得る。別の実施形態では、患者のHLA型を決定することは、患者から得られた流体サンプル上でHLAタイピングを行うことを含み得る。いずれの場合も、最終的には、患者の少なくとも1つの、好ましくは多くの、または全てのHLA型を得ることが目標である。本明細書に記載されているように、ヒト体内のHLAには2つの型、すなわちHLA IおよびHLA IIがある。集団中には何千ものHLAが存在するが、ヒトはそれぞれ、主要なHLAI型の対3つ(A、B、C)および2型の対5つ(DP、DM、DO、DQ、DR)を含む6つのHLAを有する。例として、HLAタイピングは、前述のように、DNAシーケンシング、微小リンパ球毒性アッセイ、またはDNAのオリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションのような方法を用いて実施することができる。上記は、本開示の実施形態が、患者のHLA型を同定する任意の特定のメカニズムに限定されないことを理解した上でのみ実施例として提供される。従って、
図19のブロック1902は、一般に、患者のHLA型を同定する工程を示す。
【0252】
いくつかの実施形態において、個体のHLA型の同定は、個体から採取された血液サンプルを分析することを含み得る。あるいは、個体のHLA型の同定は、患者から得られた別の生体液を分析することを含み得る。いくつかの開示された実施形態は、患者の決定されたHLA型と共に、患者においてT細胞受容体の活性化を引き起こす特異的な疾患関連ペプチドを同定することを含み得る。疾患関連ペプチドは、自己ペプチド、または個人に特異的な非外来ペプチド、または自己ペプチドと交差反応する外来ペプチドであり得る。本明細書中で使用される場合、「自己ペプチド」という用語は、一般に、患者において内因的に発現されるタンパク質の分解から生成されるペプチドを指す。
【0253】
本明細書中で使用される場合、「T細胞受容体」(TCR)という用語は、一般に、T細胞の表面に見られるタンパク質複合体を指す。遺伝子組換えにより、TCRは顕著な多様性を示し、各タイプのT細胞受容体はHLAに結合した特異的抗原ペプチドを認識する。本明細書中で使用される場合、「T細胞受容体の活性化」という用語は、一般に、HLA-ペプチド複合体へのT細胞受容体の結合に続いて、in vivoで免疫系の他の成分を活性化するシグナルカスケードの開始を指す。
【0254】
疾患関連ペプチドは、個体の免疫系のT細胞によって認識され、T細胞への攻撃を開始することができる。例えば、疾患関連ペプチドは、HLA-ペプチド複合体によって提示され得る。さらなる実施形態において、提示されたペプチドは、その後、T細胞受容体によって認識され得、それによって、T細胞受容体は、HLA-ペプチド複合体に結合し得る。いくつかの実施形態において、T細胞受容体は、特異的ペプチドのみを認識し得る。あるいは、T細胞受容体は複数のペプチドを認識し得る。いくつかの実施形態において、特異的ペプチドのT細胞認識は、1つ以上のシグナル伝達をもたらし得る。さらなる実施形態において、特異的ペプチドのT細胞認識およびシグナル伝達は、それらのペプチドに特異的なT細胞の活性化をもたらし得る。例えば、特異的T細胞の活性化は、T細胞の分化活性化およびクローン増殖を含むが、これらに限定されない、一連の事象を開始し得る。ある種の疾患においては、T細胞は個体の自己ペプチドを認識することによって活性化され、その結果、それらのT細胞は個体内の特定の組織に移動し攻撃する。
【0255】
疾患関連ペプチドは、様々な方法で同定され得る。本発明者らに理解されるように、1つ以上の免疫原性ペプチドの同一性を決定することは、例えば、患者の生体液からHLA-ペプチド複合体を調達する工程、HLAタンパク質からペプチドを解離する工程、および質量分析またはエドマン分解のような方法を用いてペプチドを分析する工程を含み得る。さらに、このようなペプチドは、ペプチドに関する関連情報を導出するために抗原のデータベースと比較することができる。いくつかの実施形態において、特定のHLAに対するペプチドの結合親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)または水晶振動子マイクロバランス分析(QCMA)、電気化学分析などの方法、またはバイオセンサーを用いて測定され得る。疾患関連ペプチドを同定するために関与する例示的な手順は、上述される。
【0256】
前述したように、疾患関連ペプチドは、自己免疫疾患、癌、または自己免疫疾患、癌(固形腫瘍および血液癌)のいずれか1つを含む適応細胞性免疫応答を含む任意の他の疾患、および本明細書に開示された移植後合併症のような種々の疾患と関連し得る。例えば、疾患関連ペプチドは、自己免疫疾患および癌を含む、患者の先天性または適応性免疫応答のいずれかを含む医学的状態と関連し得る。疾患関連ペプチドは、適応免疫応答の体液性または細胞性アームと関連し得る。例えば、疾患関連ペプチドは、白血病、急性白血病、重症筋無力症(MG)、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症(MS)、真性赤血球増加症(PCV)、血小板増加症、強皮症、1型糖尿病、乾癬、またはクローン病のような、自己免疫疾患、癌(固形腫瘍および血液癌)および移植後合併症のいずれか1つと関連し得る。他の実施形態において、疾患関連ペプチドは、骨髄増殖性疾患またはウイルス、細菌、真菌または寄生虫感染のうちの少なくとも1つと関連し得る。
【0257】
いくつかの開示された実施形態と一致して、特定の疾患関連ペプチドを同定することは、1つ以上の免疫原性ペプチドを同定し、それを疾患関連免疫原性ペプチドのデータベースおよび決定された患者の対応するHLA型にに対するそれらの結合親和性と比較することを含み得る。データベースには、文献から得られた情報または複数の個体の試験に基づいて収集された情報を含むが、これらに限定されない、いずれかの供給源からのリンキングペプチドおよびそれらのHLAに対する結合親和性からの情報を追加することができる。データベースは、局所的に維持されてもよく、ネットワークを介してアクセスされる遠隔サーバー上に提供されてもよく、または任意の方法で第三者によって提供されてもよい。前述したように、バイオインフォマティクスやビッグデータ分析は、同定されたペプチドのうち、血液の分析から以前に同定されたHLAに強力な親和性を有するものを予測するために使用され得る。本開示の実施形態に関連して使用され得るバイオインフォマティクスデータベースの一例は、IEDB.orgを介して利用可能なIEDBデータベースを含み得る。他の例としては、IMGT(imgt.org)およびSYFPEITHI(syfpeithi.de)がある。このようなシステムは、特定のHLAに対する特定のペプチドの結合親和性を決定するために、ユーザーが問い合わせを行うことを可能にする。データベースと比較することによって特定の疾患関連ペプチドを同定するには、各インスタンスにおけるデータベースへのアクセスを必要としない。例えば、データベースは、事前に照会されてもよく、HLA-ペプチド親和性のリストは、各照会についてデータベースに直接アクセスする必要がないようにコンパイルされてもよい。この場合、コンパイルされたリストは、本開示の実施形態の目的上、それ自体のデータベースであるとみなすことができる。
【0258】
いくつかの実施形態において、データベースは、実行された医療専門家およびその患者から得られたデータに基づいて、定期的に更新され得る。任意の所与の標的患者について、1つ以上の疾患関連ペプチドを同定、分析、または定量化することができる。また、本開示の態様は、決定されたHLAの構築物上に装填された疾患関連ペプチドから構成された複合体で処理されたフィルターに患者の血液を体外曝露し、それによってHLA-ペプチド複合体を認識するT細胞受容体とT細胞のフィルターへの結合を引き起こすことを含み得る。体外暴露には、体外の血液を治療するあらゆる機序が関与し得る。例えば、それは、個人の静脈から血液を採取し、フィルターの特定の構造にかかわらず、血液をフィルターに曝すことによって実行できる。
【0259】
血液が曝されるフィルターは、選択されるタンパク質が、化学反応(または他の機構)を介して所望の表面に接続され得るように処理され得る。表面は、それがタンパク質と反応するために、特異的な分子的および化学的特性を付与するように化学的に設計することができる。処置または配置は、表面を目的のタンパク質を含む溶液に、好ましくはタンパク質による表面の最大飽和を可能にする過剰量で導入するときに生じ得る。一例として、この目的のために、本明細書に記載される1つ以上の例示的フィルターを使用することができる。最も広い意味では、本開示のいくつかの実施形態は、体外曝露の特定の機構に限定されず、従って、
図19のブロック1906において、体外曝露は、一般に、特定の機構または特定のフィルターを参照することなく反映される。
【0260】
本開示の実施形態と一致して、フィルターは、HLA-ペプチド複合体を含むように設計または構成することができる。例えば、ある疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドをHLAタンパク質に結合させて、HLA-ペプチド複合体を形成してもよい。特定の実施形態において、HLAタンパク質は、組換え的に産生され得、ペプチドは、合成的に産生され得る。例えば、HLAタンパク質遺伝子配列を含むDNA構築物を細胞発現系に挿入することができ、その後、目的のHLAタンパク質が発現する。別の実施例では、ペプチドは、フルオレニルメトキシカルボニル保護基化学を含む標準的方法によって合成され得る。他の実施形態では、HLAタンパク質およびペプチドの両方は、標準的な手順を用いて組換え的に産生され得る。あるいは、または追加的に、HLA-ペプチド複合体は、患者のような個体から内因的に得ることができる。
【0261】
HLAタンパク質は、単量体および/または多量体を含む任意の形態であり得る。本明細書中で使用される場合、「単量体」という用語は、一般に、患者において天然状態で見出され、単一のペプチドに結合するHLAタンパク質を指す。本明細書中で使用される場合、「多量体」という用語とは、一般に、1つのペプチドに結合することができるユニット中の各単量体と、単一のユニットを形成するためのいくつかのHLA単量体の連結を指す。例として、各HLA単量体をビオチン分子に連結させ、ストレプトアビジンと混合することができる。各ストレプトアビジン分子はビオチンに対する4つの結合部位を有するので、合計4つのビオチン化HLA単量体をストレプトアビジンに連結させ、それによって四量体を形成することができる。別の実施例では、各HLA単量体はα-ヘリックスモチーフに連結され、各々がHLA単量体に連結された個々のα-ヘリックスは、コイルドコイルモチーフを形成するために集合し、それによって複数のHLAモノマーを連結して多量体を形成し得る。いくつかの実施形態において、HLA多量体を利用することは、多量体中の各HLA-ペプチドユニットがT細胞上のT細胞受容体に個別に結合し得るので、HLA-ペプチド複合体に対するT細胞の親和性を増加させ得る。
【0262】
概略図として、HLA-ペプチド五量体を
図20Aに示す。五量体は、ペプチド2008に結合したHLA単量体2006に連結したαヘリックス204が集合してコイルドコイルモチーフを形成するときに形成される。五量体は、フルオロフォア2002にさらに連結させることができる。
図20Bは、HLA-ペプチド四量体を示す。四量体は、ビオチン分子を各HLA-ペプチド複合体に連結させ、複合体をストレプトアビジン2010と混合することによって形成される。
【0263】
いくつかの実施形態において、HLAタンパク質は、HLA Iおよび/またはHLA IIタンパク質を含み得る。
【0264】
いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、検出可能な標識に連結し得る。検出可能な標識は、HLA複合体またはその成分を識別することを可能にするマーカーであり得る。検出可能な標識の非限定的な例としては、フルオロフォア、酵素、放射性同位元素、重金属、または核磁気共鳴マーカー、または電気化学的標識が挙げられる。そのようなマーカーは、HLAタンパク質および/またはペプチドと結合することができる。いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、2つ以上の検出可能な標識に連結し得る。
【0265】
図21Aは、フルオロフォア2104に連結されたHLA Iタンパク質2102の概略図を示す。
図21Bは、ペプチドリンカー2108を介して酵素2110に連結されたHLA IIタンパク質2106を示す。
【0266】
本開示の態様は、結合したT細胞を除去した状態で患者血液に戻すことを含み得る。患者に戻される血液への言及は、戻される血液の一部または全部の成分を含み得る。例えば、治療のために患者から血液を抽出した後、血液成分を分離することができ、一部は患者体内に戻すことができ、他のものは戻さないことができる。本明細書で使用されるように、患者体内へ血液を戻すことは、両方のシナリオを包含する。本明細書中の他の位置で議論されるように、血液は段階的に処理してもよく、血液分離された血液成分は、再結合され得、同時に患者体内に戻されてもよい。あるいは、血液成分を連続的に戻すこともできる。最も広い意味で、本開示の実施形態は、いくつかの成分が最終的に戻される限り、患者体内に戻される特定のタイミングまたは特定の血液成分の群に限定されない。従って、
図19のブロック1908は、一般に、結合したT細胞を除去した状態で患者血液に戻すことを意味する。
【0267】
いくつかの実施形態において、除去されたT細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、または記憶T細胞を含み得る。例えば、除去されたT細胞は、CD4+またはCD8+ T細胞、またはその両方を含み得る。いくつかの態様において、患者の血液は、患者体内に戻される前に、材料により富化することができる。例えば、材料は、栄養剤または医薬組成物、またはその両方であってもよい。
【0268】
開示された体外濾過および結合したT細胞の除去方法は、所与の年の間に患者に対して1回以上実施され得る。特定の実施形態において、プロセスは、患者の必要性に応じて、所与の年の間に患者に対して数回実施され得る。
【0269】
いくつかの実施形態において、結合したT細胞をフィルターから分離することを可能にするために、結合したT細胞を含むフィルターを標準的な分離剤に供し得る。特定の実施形態において、除去されたT細胞が計数され得る。例として、結合したT細胞の分離は、物理的、化学的、または生物学的手段を介して実行することができる。好ましい実施形態において、分離方法は、分離されたT細胞またはフィルターを損傷し得ない。結合したT細胞を除去するために、任意の適切な分離剤を使用してもよい。いくつかの実施形態において、T細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を介して計数され得る。一般に、T細胞を計数するための任意の適切な方法を用いることができる。
【0270】
概略図として、
図22Aは、フィルター2206上に配置されたHLA-ペプチド複合体2204からT細胞2202を除去する方法を示す。
図22Bは、FACSプロセスの概略図を示す。
【0271】
特定の実施形態において、計数されたT細胞数を用いて、特定のT細胞数に依存する特定の疾患の進行が推定され得る。例えば、連続計数で数えられたT細胞数の減少が示された場合、このような傾向は、疾患が寛解の形であることを示し得る。いくつかの実施形態において、計数されたT細胞の数を用いて、特定の疾患に苦しむ患者を治療する最善の方法を決定し得る。一例として、計数されたT細胞の数を使用して、例えば、患者と共に使用される次のフィルターの設計を変更することによって、患者の治療を変更することができる。
【0272】
この開示と一致して、抗凝固剤を患者に投与してもよい。「抗凝固剤」という用語は、一般に、血液の凝固を防ぐのを助ける抗凝血剤または任意の薬剤を指す。一般に、任意の適切な抗凝固剤を患者に投与することができる。
T細胞関連自己免疫疾患を有する患者を治療するための方法
【0273】
本開示は、T細胞関連自己免疫疾患を有する患者を治療する方法に関する。これには、活性化T細胞によって引き起こされる疾患が進行するにつれて、まだこの疾患を引き起こしていない1つまたは複数のT細胞群が、将来、この疾患を引き起こす可能性が高いと予測することが効果的に関与し得る。ある種のヒト白血球抗原(HLA)タンパク質や、同じような特徴をもつ他のタンパク質に対する、ある種のペプチドの既知のデータや親和性に基づいて予測されれば、まだこの疾患を引き起こしていない追加のT細胞を、問題を引き起こす前に除去することができる。このようなプロセスの一例は、
図24に概要的に反映される。この実施例および他の実施例は、以下により詳細に議論される。
【0274】
本開示は、T細胞関連自己免疫疾患を治療する方法の例を提供するが、その最も広い意味での開示の態様は、T細胞関連自己免疫疾患に限定されないことに留意されたい。むしろ、前述の原則は、他の疾患を治療するためにも適用され得る。
【0275】
「治療」という用語は、患者の医学的状態を改善する試みにおけるプロセスの実施を指す。いくつかの開示された実施形態と一致して、これは、T細胞関連自己免疫疾患に苦しむ患者に対する個別化医療の提供を含み得る。
【0276】
開示された実施形態と一致して、T細胞関連自己免疫疾患を有する患者を治療する方法は、多発性硬化症の患者を治療することを含んでもよく、ここで、T細胞はミエリンまたはアクアポリンチャネルを含む非ミエリン中枢神経系タンパク質に対して活性化可能である。多発性硬化症はT細胞関連自己免疫疾患であり、T細胞は中枢神経系のタンパク質を活性化して攻撃し得、その結果、多種多様な神経症状を引き起こす。活性化は、T細胞上のT細胞受容体が中枢神経系タンパク質由来のペプチドを認識するときに起こる。T細胞受容体がペプチドに出会うと、T細胞は活性化過程を経て中枢神経系に移動し、免疫応答を開始する。ある場合には、T細胞がミエリンに向かって活性化され、その結果、脳および脊髄における脱髄プロセスが生じる。ミエリンは、脳、視神経、脊髄の神経線維を取り囲む保護鞘である。ミエリン鞘がこれらの活性化T細胞によって損傷を受けると、神経インパルスが遅くなったり止まったりし、神経学的な問題を引き起こす。いくつかの実施形態において、ミエリンは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせ、ないしはその他のミエリン関連タンパク質を1つ以上含み得る。アクアポリンチャネルは、アクアポリンまたは水チャネルと呼ばれることもあり、生体細胞の膜に孔を形成し、主に細胞間の水の輸送を促進する主要な内在性タンパク質の大きなファミリーに由来する内在性膜タンパク質である。
【0277】
いくつかの実施形態と一致して、T細胞自己免疫疾患を有する患者を治療する方法は、自己免疫疾患を有する特定の患者についてHLA-ペプチド複合体データを得ることを含んでもよい。「ヒト白血球抗原」(HLA)という用語は、一般に、個体の主要組織適合性(MHC)遺伝子複合体によってコードされるタンパク質のシステムまたは複合体を指す。HLAタンパク質は、典型的には、個体の免疫系の調節に関与し、ヒト細胞の表面に見出される。例えば、HLAタンパク質は、個体内の異物、非自己物質を認識し、それらの物質を中和する免疫応答を開始することによって機能し得る。
【0278】
「HLA-ペプチド複合体データ」とは、患者由来のHLAタンパク質の特異的対立遺伝子によって提示されるペプチドの一部または全部の特徴付けを指すことができる。各ペプチドは、特定のHLAタンパク質に対して異なる結合親和性を有する。
【0279】
HLA-ペプチド複合体データは、特定の患者のHLA-ペプチド複合体の分析を通して得られ得、そして特定の患者におけるHLA-ペプチド複合体の量を決定することを含み得る。従って、
図23のボックス2312に反映された「取得」は、そのような分析を実行すること、または同じまたは別の当事者によって以前に実行されたそのような分析のデータにアクセスすることのうちの一つ以上を含み得る。患者のHLA-ペプチド複合体データの定量分析は、各々が異なるペプチド上にロードされた単一タイプのHLAタンパク質ラインの構築を含み得る。HLAタンパク質は、HLAタンパク質に別々にロードされた1~100の異なるミエリンまたは非ミエリンペプチドを構成し得る。患者からの10~100mlのヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CSFE)のような蛍光マーカーで染色することができる。細胞からマーカーを洗浄した後、PBMCを、表面にアンカーされたHLAタンパク質と共に15~40分間インキュベートすることができる。表面からPBMCを洗浄した後、HLHが異なる各複合体中の細胞数の定量化を、蛍光単位の強度によって測定することができる。定量は、光反応などの任意の他の方法で測定することができる。HLA-ペプチド複合体データの定量分析はまた、患者の抗原提示細胞(APC)から除去されるストリッピングされたペプチドの直接分析を含み得る。ストリッピングは、種々の時間にわたってPBMCを酸溶液と混合することによって実行することができ、その結果、HLA溝上にロードされたペプチドのストリッピング反応が生じる。次いで、ペプチドを質量分析のために採取して、ペプチドの配列または量を決定することができる。
【0280】
特定の患者のためのHLA-ペプチド複合体データを得ることは、HLAタイピングおよび関連ペプチドの分析を含み得る。HLAタイピングは、血液分析のうちの少なくとも1つを介して決定することができ、ペプチド分析は、脳脊髄液(CSF)分析または組織特異的疾患関連ペプチド分析のうちの少なくとも1つを介して行うことができる。より具体的には、関連ペプチドを分析することは、特定の患者の脳脊髄液を検査することを含み得る。ストリッピング分析は、脳脊髄液(CSF)から行うことができる。
【0281】
本明細書中で使用される場合、用語「血液の分析」は、全血または全血の画分を分析することを指すことができる。血液画分は、より小さく、特異的な血液成分を指し得る。いくつかの実施形態において、血液画分は、血漿、白血球、赤血球、血清、または血液の任意の他の特異的成分を含み得る。本明細書中で使用される場合、「脳脊髄液(CSF)」とは、脳および脊髄中に見出される透明で無色の液体を指す。
【0282】
血液、脳脊髄液、または他の組織特異的サンプルは患者から得られ、分析され得る。例えば、関連ペプチドの分析は、HLA複合体からのペプチドのストリッピングおよびペプチド配列の決定を含み得る。ペプチドは、任意の適切な手段によってHLA複合体から除去することができる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、化学的手段によってHLA複合体から除去され得る。ペプチドの配列決定は、ペプチドのアミノ酸組成および順序を同定することを含み、当技術分野で周知の手段によって行うことができる。一旦患者に関するそのようなデータが収集されると、それは記録に保存され、その後、この開示と一致する方法を実施する目的で取得され得る。
【0283】
本開示のいくつかの実施形態に関連して、得られた(HLA)-ペプチド複合体データは、第1のT細胞によって誘発され、第2のT細胞によって誘発されない自己免疫疾患を有する患者に関連し得る。T細胞関連自己免疫疾患では、ある種のT細胞亜型は疾患の初期段階で活性化されるが、第2のT細胞亜型は疾患の後期段階で活性化されることがある。このような第2のT細胞亜型は、第1のT細胞亜型による早期の攻撃の結果、後に活性化され、より多くのタンパク質構造が露出し、第2のT細胞亜型が動員され得る。非限定的な例として、同一のHLAタイピングを有する2名の患者の比較において、第1の患者は新たに診断された患者であり、第2の患者はより進行した患者であり、より進行した患者は、疾患を引き起こすより多くの活性化T細胞亜型を有することが想定される。
【0284】
特定の実施形態において、患者を治療する方法は、自己免疫疾患を経時的に引き起こす可能性のある追加のT細胞群を同定することを含み得る。例えば、疾患の進行を予測するためにHLAタイピングおよび関連ペプチド分析を用いて、追加のT細胞群を同定することができる(例えば、現在は疾患を誘発していないが、将来的には疾患を誘発すると予想されるT細胞群を同定する)。ある種の第1のT細胞亜型は疾患の初期段階と関連している可能性があり、第2のT細胞亜型は疾患の後期段階と関連している可能性があるが、自己免疫疾患は2つの関連T細胞亜型に限定する必要はない。類似したHLAタイピングおよびペプチド分析を示した患者から得られたデータの歴史的解析により、3つ以上のT細胞亜型の同定が可能であろう。
【0285】
特定の患者についてHLA-ペプチド複合体が得られると、患者を治療する方法は、特定の患者のHLA-ペプチド複合体データと、T細胞関連病理を有する患者の集団に関連するHLA-ペプチド複合体データとの比較を含み得、ここで、集団データは、第1のT細胞によって誘発された自己免疫疾患を有する人が、第2のT細胞によって誘発されるように経時的に進行することを示唆するエピトープ拡散情報を含む。このような比較は、
図23のブロック2314の例として反映される。自己免疫疾患は特有のT細胞関連病理を有するため、同一の自己免疫疾患を有する患者は、疾患の経過にわたって同様のT細胞関連病理を有する可能性がある。さらなる実施例として、特定の患者データと集団データとの間でHLA-ペプチド複合体データを比較することは、相互のHLA型を共有する患者を比較することを含み得る。集団データは、個体群からのHLA関連分析を追跡するデータベースから経時的に収集することができる。このような情報は、データベースに保存することができ、関連する医学界がアクセスできるようにすることができる。このデータにアクセスすることにより、医師は、特定の患者においてT細胞活性化がどのように進化するかを予測することができる。
【0286】
より具体的には、特定の患者のHLA-ペプチド複合体データと、T細胞関連病理学を有する患者集団と関連するHLA-ペプチド複合体データとを比較することは、発症からの年数、症状、および治療を含む疾患関連パラメータの比較、HLAタイピング分析、および対応するHLAタンパク質によって提示されるペプチドの分析を含み得る。特定の患者のHLA-ペプチド複合体データと、類似したT細胞関連病理を有する患者の集団データとを比較することにより、自己免疫疾患が特定の患者に対してどのように進行しているかを決定し、特定の患者に対する将来のエピトープ拡散を予測することが可能であろう。
【0287】
「エピトープ拡散」という用語は、一般に、最初の免疫応答を超えたエピトープ特異性の多様化を指す。自己免疫疾患は、最初の免疫応答が向けられる固有のエピトープを有し得るが、標的エピトープは、疾患の進行に伴って、広がり、他の標的に多様化し得る。このエピトープ拡散情報は、特定の自己免疫疾患に関する集団のHLA-ペプチド複合体データに含まれ得る。エピトープ拡散の時間および速度は、自己免疫疾患と患者集団との間で変動し、数日、数週間、数ヵ月、または数年を含み得る。ある種の自己免疫疾患またはHLA-ペプチド複合体を有する集団では、エピトープ拡散は分子内または分子間であり得る。分子内拡散には、同じ抗原上の他の部位へのエピトープの拡散が含まれる。分子間エピトープの拡散には、エピトープが他の抗原に拡散することが含まれる。集団HLA-ペプチド複合体データ内のエピトープ拡散情報は、第1のT細胞によって誘発される自己免疫疾患を有する患者が、第2のT細胞または追加のT細胞によって誘発されるように経時的に進行するかどうかを示唆し得る。予想されるエピトープ拡散のそのような特定は、一例として
図23のブロック2316に反映される。
【0288】
いくつかの実施形態において、この方法は、特定の患者の自己免疫疾患が第2のT細胞(または追加のT細胞)によって誘発される前に、特定の患者から第2のT細胞(または追加のT細胞)を除去することを含み得る。第2のT細胞または追加のT細胞の除去は、生体物質から第2のT細胞を分離するために利用可能な任意の手段によって達成され得る。疾患誘発性T細胞を捕捉するための生物学的フィルターの使用を用いる、いくつかの非限定的な例が本明細書で提供される。これらの例では、患者の血液は、現在疾患を誘発するT細胞だけでなく、疾患が進行するにつれて将来疾患を誘発すると予想されるT細胞についても濾過され得る。このような積極的除去は、一例として、
図23のブロック2318に反映される。
【0289】
図24は、自己免疫疾患を引き起こす前に第2のT細胞を除去する例示的なプロセスを示す。例示のように、ノード2412において、疾患が第1のタイプのT細胞によって活性化された後、2414において拡散したエピトープは、ノード2416において、第2のタイプのT細胞の活性化および動員を引き起こす。これらの第2のT細胞は、患者において自己免疫応答を誘発または悪化させ得る。しかしながら、第2のT細胞が、ノード2420において患者の自己免疫応答を引き起こす前に、それらは、ノード2418において患者から除去される。
【0290】
第2のT細胞の除去には、第2のT細胞のT細胞受容体へのHLA-ペプチド複合体の結合が含まれ得る。同様に、追加のT細胞の除去には、追加のT細胞のT細胞受容体へのHLA-ペプチド複合体の結合が含まれ得る。
【0291】
いくつかの実施形態において、第2のT細胞および追加のT細胞は、本明細書に記載されているような生物学的フィルターによって除去される。フィルターは、T細胞の特定のタイプまたは亜集団、または複数のタイプのT細胞を除去するために構築され得る。例えば、1つのフィルターが複数のHLA複合体に結合して、複数のタイプのT細胞を除去し得る。例えば、
図12A~12Dにおいて、生物学的フィルターは、異なるT細胞に結合するための単一のフィルター上に異なるHLA複合体を含有し得る。あるいは、フィルターは、特定のT細胞に特異的であってもよい。このような実施形態において、白血球は、単一の治療中に複数のタイプのT細胞を除去するために、複数のフィルターを通して直列に循環され得る。従って、例えば、
図12A~12Dにおいて、2つ以上のフィルター1016は、最も遠い下流フィルター出口から最も遠い上流フィルター入口まで白血球を再循環させる再循環ループ1024と直列に配置されてもよい。あるいは、患者は、異なるT細胞を除去するための異なるフィルターを用いて、各々複数の治療を受けることができる。
【0292】
患者を治療する方法は、さらに、同定された第2のT細胞および/または追加のT細胞に基づいて治療を調節することを含み得る。前述の「治療」という用語は、特にこの文脈において、病原性T細胞を血液から除去するプロセスを指すことができる。例えば、これは、一般に、病的細胞もしくは細胞断片の枯渇、または患者における病的細胞もしくは細胞断片の量の少なくとも減少のために設計されたプロセスを指すことができる。治療の調整には、同定された第2のT細胞および/または追加のT細胞の除去を容易にするために、病原性T細胞除去プロセスを適応させることが含まれ得る。これは、血液からそれらを除去するために、第2および/または追加のT細胞のT細胞受容体に結合するように設計されたHLA-ペプチド複合体を含むように生物学的フィルターを変更または改変することが含まれ得る。治療の調整は、代替的に、または追加的に、医薬品または生物学的製剤の投与、血漿交換、および/または理学療法などの他の治療選択肢の実装を含んでもよい。
【0293】
ある態様において、患者を治療する方法は、患者の自己免疫疾患を誘発または悪化させる前に、第2のT細胞を除去することを含むが、いくつかの実施形態において、本方法は、第1のT細胞および第2のT細胞を同時に除去することを含み得る。同様に、この方法は、第1のT細胞および追加のT細胞を同時に除去することを含み得る。本開示の実施形態は、患者からこれらのT細胞を除去することによって、第2のT細胞または追加のT細胞によって誘発される自己免疫疾患を有する患者を治療するために使用され得るが、第1のT細胞も、患者における自己免疫疾患を誘発し得る。従って、第1のT細胞を第2のT細胞または追加のT細胞と同時に除去することが有益であると考えられる。第1のT細胞の除去は、第2のT細胞または追加のT細胞の除去と同様の手段を用いて達成され得る。例えば、第1のT細胞の除去には、第1のT細胞のT細胞受容体へのHLA-ペプチド複合体の結合が関与し得る。さらに、第1のT細胞は、生物学的フィルターによって除去され得る。
哺乳類における病原性T細胞数の推定方法
【0294】
疾患の進行を追跡する過程、または生物学的フィルターを作製する過程の一部などの状況において、患者における疾患特異的な病原性T細胞の量を推定することは有用であり得る。病気の引き金となるT細胞の量を一般的に知ることは、T細胞を除去するための生物学的フィルターの設計に役立つ。そして、ある時点での体内の病原性T細胞の量を大まかに知ることによって、病気の進行を追跡することができる。病原性T細胞の増加は、疾患が進行していることを示す傾向があり、減少は寛解を示す傾向がある。この目的のために、本開示のいくつかの実施形態は、患者における疾患特異的病原性T細胞の量を推定する方法を含む。本明細書中で使用される場合、疾患特異的な病原性T細胞数を推定する際の「推定する」という用語は、分類推定(例えば、最小、低、中、高、極めて高い)から概略推定(例えば、概略の数値推定)からより正確な数値推定までの範囲の予測が含まれ得る。推定値は、色の変化、輝度レベル、またはアッセイまたはマーカーの使用によって生じるような色の強度に基づいてもよい。推定は、蛍光透視または細胞計数のような手順に基づいてもよい(例えば、マシンビジョン技術を介して)。推定は、患者から取り出したサンプルのex vitro評価に基づいてもよい。このようなサンプルは、血液、脳脊髄液、または任意の他の生体液または物質を含み得る。推定は、例として、患者または患者中の様々なT細胞亜型を含む多数のT細胞を反映することができ、そのような評価は、患者から採取された新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)に、疾患特異的タンパク質およびペプチドを装填した特定のHLAを接触させることに基づき得る。これら2つの成分(PBMCおよびHLAタンパク質複合体)のインキュベーションは、生体液または物質中に存在する特異的T細胞サブタイプを誘引させ得る。
【0295】
本開示の実施形態によれば、患者における疾患特異的病原性T細胞の量を推定する方法は、患者から第1の生体液サンプルを得ることを含み得る。生体液の非限定的な例には、全血、血清、血漿、脳脊髄液、滑液、肺胞洗浄液、膵液、胃腸洗浄液、腹膜洗浄液、リンパ液、骨髄、羊水、精液、胸水、母乳、心膜液、唾液、糞便、胆汁、および尿がある。
【0296】
患者から生体液を得ることは、例えば、収集容器またはチューブセットに接続され得る針またはカテーテルなどの装置による吸引および/または排液を含み得る。そのような方法および技術は、全血、脳脊髄液、滑液、肺胞洗浄液、腹膜洗浄、リンパ液、または骨髄などの生体液と共に使用され得る。しかしながら、消化管洗浄液および尿のような生体液は、体液が体外に排泄されるときに、採取によって非侵襲的に得ることができる。本開示の実施形態は、その最も広い意味で、特定の種類の生体液または生体液サンプルを得る特定の方法に限定されない。従って、
図25の例示的方法2500におけるブロック2502は、サンプルが得られることを示すが、それほど限定されるものではない。例えば、サンプルは、単に、サンプルを採取した別の者からそれを受け取ることによって得ることができる。
【0297】
疾患特異的な病原性T細胞の数が推定される患者は、自己免疫疾患、癌、または移植後の合併症または本明細書に記載される状態に罹患している場合がある。たとえば、多発性硬化症、1型糖尿病、重症筋無力症、クローン病などが挙げられる。生体液を得ることの背後にある目的は、病原性T細胞によって認識される疾患特異的ペプチドまたは抗原ペプチドを同定することであるため、病理学的部位に局在する生体液、または病理学的部位の近傍(例えば、病理学的部位から10~20mm以内)にある生体液を得ることが望ましい場合がある。例えば、患者が中枢神経系が障害されている多発性硬化症患者である場合、選択する適切な生体液は、脳脊髄液であってもよいが、それに限定されるものではない。患者が腸管系を侵すクローン病に罹患している場合、選択すべき適切な生体液は消化管洗浄液であるが、それに限定されるものではない。
【0298】
開示された実施形態において、第1の生体液サンプル中のヒト白血球抗原(HLA)の第1の群から天然ペプチドをストリッピングすることをさらに含み得る。患者のHLAに結合した天然ペプチドのストリッピングは、ペプチドとHLAとの間の相互作用を破壊するために生体液のpH値を変化させるなどのタンパク質化学技術、DMSOなどの薬剤を用いたペプチドの変性を含む、いくつかの異なる方法によって達成され得る。一例として、生体液サンプルが患者から得られた後、サンプル中の細胞は、例えば、遠心分離によって分離することができ、その後、細胞画分は、ペレットとして採取することができる。回収された細胞画分は、溶解前に適当な緩衝液中で再構成することができる。機械的破壊(例えば、フレンチプレス)、液体均質化、高周波音波(例えば、超音波処理)、凍結/解凍サイクルおよび手動研削、並びに化学的溶解(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムまたはSDS)のような種々の細胞溶解技術を使用することができる。細胞溶解手順は、HLAに結合された天然ペプチドを含む細胞内のタンパク質を放出するために、細胞膜の破壊をもたらし得る。
【0299】
次に、HLA-天然ペプチド複合体は、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような技術を用いてタンパク質のプールから単離することができ、ここで、タンパク質混合物は、極性、電荷、疎水性、分子量または特定のリガンドに対する親和性のような特性に基づいて、個々のタンパク質に分画される。別法として、HLA-天然ペプチド複合体は、免疫沈降を用いて単離してもよい。免疫沈降は、例えば、HLA複合体に結合することが知られているタンパク質混合物抗体に導入することによって行うことができる。そのような抗体には、例えば、抗HLA抗体、抗HLA I型抗体(A、BおよびC)、抗HLA I型A抗体、抗HLA II型抗体(DR、DP、DQ)、抗HLA DR抗体、抗HLA DRb15:01抗体、および免疫沈降を促進する他の抗体が含まれ得る。従って、免疫沈降は、細胞から放出されたタンパク質およびペプチドの残りから、種々のHLAおよび種々の結合した天然ペプチドの混合物の分離をもたらす。
【0300】
HLAからの天然ペプチドの除去は、本方法で後に使用されるHLAの完全性を保存するために選択的に行うことができ、例えば、ペプチドとHLAとの間の相互作用は、ペプチドの化学的特性の変化のために、HLAだけでなくペプチドの化学的特性の変化のために破壊され、HLAだけが変性されるが、HLAは変性されない。あるいは、HLAからのペプチドの除去を普遍的に行うことができ、HLAの元の特性は後に回復する。HLAからの天然ペプチドの除去は、病原性および非病原性ペプチドの混合物を生じ得る。
図25のブロック2504に一般に反映されるように、天然ペプチドをHLAから除去し得る。HLAからペプチドをストリッピングするための多くの方法があり、本開示は、いずれの特定のプロセスにも限定されないので、ブロック2504におけるストリッピングは、いずれの特定のプロセスにも限定されない。
【0301】
いくつかの開示された実施形態は、ストリッピングされた天然ペプチドの1つ以上の配列を決定することを含み得る。HLAから取り除かれた天然ペプチドの配列は、質量分析法およびエドマン分解のようなペプチド配列決定技術によって、タンパク質シークエンテーター(シークエンサー)を用いて決定され得る。配列決定は、各ペプチドについての固有のコードまたは識別子を生じ得る。他の実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、患者から内因的に誘導され得る。最も広い意味で、開示された実施形態は、配列決定を実施する特定の方法に限定されない。従って、
図25のブロック2506では、1つ以上の配列を決定することは、特定の配列決定方法に限定されない。実際、本明細書で使用される1つ以上の配列決定は、ラボで使用されるプロセスに関わらず、配列結果を返す臨床検査室にサンプルを送ることを含む。典型的には、必ずしもそうではないが、多くの異なるペプチドをHLAから除去し、それらの配列を決定することができる。
【0302】
いくつかの開示された実施形態において、天然ペプチドの中の1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を決定するために、決定された1つ以上の配列を既知の情報と比較することが含まれ得る。「疾患特異的配列」を有するペプチドは、現在知られているか否かを問わず、疾患に影響を及ぼす任意のペプチドを指す。このようなペプチドは既に疾患に影響を与えることが知られているかもしれないし、影響の知識はバイオインフォマティクスやその他の分析によって将来的に同定されるかもしれない。さらに、疾患特異的配列を有するペプチドは、配列が未知であるが後に決定されるペプチドを含む。前述したように、各ペプチドは、例えばコードまたは他の識別子として反映された、それ自身の固有の配列を有し得る。次いで、天然ペプチドの配列を既知の情報と比較することができる。本明細書で使用する場合、「既知の情報」とは、以前に決定された構造または関係を反映する任意のデータが含まれ得る。例えば、バイオインフォマティクスおよびビッグデータ分析を用いて、配列決定された天然ペプチドを、疾患と相関することが既に知られているペプチド配列とを比較することができる。
【0303】
例えば、そのような分析は、疾患に関連するタンパク質(例えば、多発性硬化症の場合のミエリン関連タンパク質)に関連する既知の参照配列、またはその配列に関連することが知られている疾患症状のような他の情報と、天然ペプチドとを比較することができる。天然ペプチドのうち、1つ以上の疾患特異的なペプチド配列を決定するために、ストリッピングされた天然ペプチドペプチドの1つ以上の配列を参照配列と比較するため、NCBI BLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)のようなバイオインフォマティクスツール、または一次生物学的配列情報を比較するための任意の他のアルゴリズムおよびプログラムを使用することができる。これらの供給源には、タンパク質またはペプチドのアミノ酸配列を含んでもよい。1つ以上の問い合わせアミノ酸配列を、参照アミノ酸配列のライブラリまたはデータベースと比較し、特定の閾値を超える問い合わせ配列に類似するライブラリ配列を同定することによって、一致を決定することができる。本明細書中で使用される場合、「参照配列」という用語は、既知の疾患特異的ペプチドの生物学的配列情報を指す。
図25のブロック2508は、一般に、天然ペプチドの決定された配列と既知の情報との比較を示す。前述したように、比較を行う多くの方法があるため、ブロック2508は、特定の方法を指定しない。最も広い意味で、比較は、決定された配列を分析のために第三者機関に送ることによって実施し得る。
【0304】
いくつかの開示された実施形態は、複数のHLA-ペプチド複合体を形成するために、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のペプチドである、HLAの第2の群へのロードを含み得る。「疾患特異的配列」を有するペプチドは、現在知られているか否かを問わず、疾患に影響を及ぼす任意のペプチドを指す。このようなペプチドは既に疾患に影響を与えることが知られているかもしれないし、影響の知識はバイオインフォマティクスやその他の分析によって将来的に同定されるかもしれない。さらに、疾患特異的配列を有するペプチドは、配列が未知であるが後に決定されるペプチドを含む。ロードされたペプチドは、例えば、前述の比較プロセス中に決定された最上位の病原性ペプチドとして選択してもよい。HLAへのペプチドのロードに関与する方法および技術は、本明細書に記載されており、繰り返しを回避するために再び言及されない。HLAの第2の群は、第1の群と同じであってもよく、または異なるグループであってもよい。ロードされる疾患特異的ペプチドのコピーは、分子生物学的方法および技術を用いて組換え的に産生することができる。いくつかの実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、1つ以上の疾患特異的配列を共有する複数の合成的または組換え的に産生/作製されたペプチドを含み得る。他の実施形態において、HLA-ペプチド複合体は、患者から内因的に得られ得る。最も広い意味で、開示された実施形態は、ペプチドをHLAにロードする特定のメカニズムに限定されない。従って、
図25のブロック2510において、ロードは一般に、特定のロード機構を参照することなく示される。
【0305】
いくつかの開示された実施形態において、複数のHLA-ペプチド複合体を第2の生体液サンプルと接触させることがさらに含まれ得る。例えば、HLA-ペプチド複合体は、異なるそれぞれのHLA-ペプチド複合体が別々の領域に位置する、1つ以上の試験ストリップまたは表面などの媒体に結合され得るか、またはそうでなければ堆積され得る。血液、脳脊髄液、または本明細書中に開示される任意の他の物質のような生物学的物質は、試験領域上で染色することができる。あるいは、生体液を試験領域上に流してもよい。これにより、生物学的物質中のT細胞受容体が、試験領域中のHLA-ペプチド複合体に結合し得る。結合するT細胞の量は、特定のT細胞の特定のHLA-ペプチド複合体への結合親和性の機能性であり得る。生物学的サンプルは、様々な方法でHLA-ペプチド複合体と接触させることができるため、
図25の2512は、一般に、特定の接触方法を指定しない接触を指す。最も広い意味で、接触させることは、本明細書中で使用される「接触させる」という語句の意味に合致する臨床検査室に委託することができる。
【0306】
開示された実施形態ではまた、第2の生体液サンプルと接触させた複数のHLA-ペプチド複合体について、複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量を決定することを含み得る。前述したように、T細胞受容体に対するHLA-ペプチド複合体の結合親和性は、特定のHLA-ペプチド複合体試験領域に結合するT細胞の量によって明らかにされ得る。各領域に結合するT細胞の量は、様々な方法で定量できる。細胞は、より正確な定量化のために計数することができ、マーカーは、一般に、カラーインジケーターまたは強度測定によって結合したT細胞の量を示すために使用することができる。細胞の量を定量する多くの方法が使用可能であり、従って、
図25のブロック2514は、一般に、特定のメカニズムを特定せずに決定することを指す。最も広い意味では、判断には分析のための資料を第三者機関に送るだけでよい。
【0307】
いくつかの実施形態において、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する同定されたT細胞の量に基づいて、疾患特異的な病原性T細胞の量が、患者内の生体液量で推定され得る。例えば、一般的な意味で、前述の試験領域上の結合T細胞の量は、患者の血液、脳脊髄液、または他の体液または物質中の疾患特異的T細胞の量の一般的な指標として役立つことができる。本明細書で使用されるように、推定は、分類推定および数値推定の両方を包含する。分類推定には、高値や低値などの指標が含まれる。数値推定は、数や容積のような推定された定量化を提供し得る。このような推定値は、試験領域で検出されたT細胞の量から求めることができる。その量は、相関を介して、患者の生体液量のT細胞の量を推定することによって、拡張され得る。一般に、推定は、
図25のブロック2516に反映され、実行方法に関わらず、分類および数値推定のすべての形式が網羅される。推定の過程の一部または全部を行う第三者に物質を送付することは、本明細書で使用する推定の範囲内である。
【0308】
いくつかの開示された実施形態において、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する一定量のT細胞は、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のペプチドを有する。別の実施形態では、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する量のT細胞は、複数の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のペプチドを含む。
【0309】
開示された実施形態はまた、検出および定量化されるために、検出可能なマーカーに連結し得るHLAを含み得る。適切な検出可能なマーカーの例としては、フルオロフォア、酵素、放射性同位元素、重金属、および核磁気共鳴マーカーのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0310】
患者における疾患特異的病原性T細胞の量を推定する方法は、上述のステップに加えて、1つ以上のステップを組み込むことによって変えることもできる。例えば、バイオインフォマティクスおよび「Immune Epitope Database and Analysis Resource」(iedb.org)のようなビッグデータ分析を用いて、決定された疾患特異的ペプチドのうち、単離され同定された患者の生体液サンプル中のHLAに強い親和性を有するものを予測し、特定のHLAに対する特異的ペプチドの結合親和性を決定することができる。患者のHLAに対して強い親和性を有することが予測される疾患特異的ペプチドのリスト、およびそれらのそれぞれの予測される結合親和性は、特定のHLAペプチド対に対して、および/またはHLAならび疾患特異的ペプチドの異なる組み合わせに対して作成することができる。以下でさらに議論するように生物学的フィルターを構築する場合、閾値を超える結合親和性を有するHLA-ペプチド複合体(例えば上位10個のHLA-ペプチド複合体)に焦点を当てることができる。従って、疾患特異的病原性T細胞の量を推定する例示的方法には、複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量を決定する前に、疾患特異的病原性T細胞に対する複数のHLA-ペプチド複合体の各々の結合親和性の測定、推定または予測工程をさらに含み得る。実際の結合親和性の測定または推定は、表面プラズモン共鳴(SPR)および水晶振動子マイクロバランス分析(QCMA)のような技術、またはQCMA概念または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)に基づくセンサーを用いて行うことができる。
【0311】
疾患特異的病原性T細胞の量を推定する別の例示的方法には、疾患特異的病原性T細胞が複数のHLA-ペプチド複合体に結合していることを検証する工程をさらに含み得る。検証は、例えば、結合した疾患特異的ペプチドをHLA-ペプチド複合体から除去し、ペプチドの配列決定を行うこと(最も正確)、または結合した疾患特異的ペプチドの分子量を評価し(例えば、質量分析、光散乱技術(SLS、MALS)またはSDS-PAGE電気泳動)、測定された分子量を、正しい疾患特異的ペプチドの既知の分子量と比較することによって行うことができる。
【0312】
いくつかの開示された態様によれば、疾患特異的な病原性T細胞の量を推定する方法は、さらに、疾患特異的な病原性T細胞の推定量に基づいて、患者の疾患の進行、状態、またはステータスの評価、または治療レジメンの有効性の評価、または患者が治療レジメンにどの程度反応しているかの評価を含み得る。一例として、疾患特異的病原性T細胞の量を推定する方法には、さらに、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する決定されたT細胞の量に基づいて疾患の状態を評価する工程が含まれ得る。一実施形態において、疾患の状態を評価することは、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する決定されたT細胞の量を、疾患を有する患者の集団から決定されたT細胞の量と比較することを含み得る。疾患特異的病原性T細胞の量を推定する別の例示的方法には、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する決定されたT細胞の量と、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する以前に決定されたT細胞の量とを比較することによって、疾患の治療レジメンの効力を評価する工程をさらに含み得る。このような評価は、治療レジメンが患者のニーズに応じて調整され得るという点で有益である。例えば、HLA-ペプチド複合体に結合したT細胞の量が減少していない場合、薬剤の用量を増加させることによって、または全く新しい治療レジメンに変更することによって、治療レジメンを調整することができる。あるいは、HLA-ペプチド複合体に結合したT細胞の量が良好に減少した場合には、薬剤の投与量を減らすことができ、または治療レジメンを完全に中止することができる。従って、いくつかの開示された実施形態は、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する決定されたT細胞の量と、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する以前に決定されたT細胞の量との比較に基づいて、治療レジメンを調整することを含み得る。
【0313】
さらに別の実施例において、疾患特異的病原性T細胞の量を推定する方法は、複数のHLA-ペプチド複合体を含む生物学的フィルターの作製をさらに含み得る。生物学的フィルターの作製は、例えば、本明細書に記載される技術を用いて、1つ以上の疾患特異的配列を共有する複数のペプチドを合成することを含み得る。生物学的フィルターを作製することには、例えば、HLAを合成する工程、合成されたHLAと、1つ以上の疾患特異的配列を共有する合成された複数のペプチドとを混合して合成HLA-ペプチド複合体を形成する工程、および合成HLA-ペプチド複合体を生物学的フィルターの不活性表面媒体に塗布する工程がさらに含まれ得る。HLA-ペプチド複合体を生物学的フィルターの不活性表面媒体に適用またはアンカーすることに関与する方法および技術は、上述されている。上述のように、T細胞を捕捉する種々のHLA-ペプチドの組合せを同定することができ、それらの結合親和性を測定し、推定し、または予測することができる。結合親和性に基づいて、疾患特異的病原性T細胞に対する最も高い結合親和性を有するHLA-ペプチド複合体を合成して、フィルターに取り込むことができる。
【0314】
特定の実施形態において、生物学的フィルターを作製する前に、試験キットが提供され得る。試験キットは、試験ストリップを含んでもよく、ここで、各HLA-ペプチド複合体(全ての異なる組み合わせ)は、ガラスまたはシリコンのような試験表面(または異なる試験表面)の異なる領域に固定されてもよい。好ましくは、各領域が独特のHLA-ペプチド複合体を含有し得るように、1つのHLA-ペプチド複合体型のみを、各表面領域または表面の一部にアンカーできる。これにより、特定の患者に最も関連するHLA-ペプチド複合体の試験が可能になる。血液のような生体液を用いて、各領域を染色し、関連するHLA-ペプチド複合体へのT細胞の結合を引き起こすことができる。次に、各領域に結合したT細胞を、例えば、自動分光光度計リーダーを用いてカウントまたは推定することができる。
【0315】
上述のように、本開示の方法およびシステムは、自己免疫疾患、癌、および移植後の合併症または状態を含む疾患(本明細書に開示されたこれらの疾患および状態の1つを含む)を含む、多数の疾患を有する患者に使用することができる。特定の実施形態において、患者は多発性硬化症を有し得、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列はミエリン関連タンパク質に由来するペプチドの配列である。別の実施形態では、患者は1型糖尿病を有し得、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列は、インスリンペプチドの配列、またはβ細胞タンパク質と関連する他のタンパク質であり得る。患者は重症筋無力症を有し得、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列はアセチルコリン受容体ペプチドの配列であり得る。別の実施形態では、患者はクローン病を有し得、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列は、肝臓、膵臓、結腸、直腸、胃、胆嚢、または小腸および大腸に由来し得る消化管ペプチドの配列であり得る。
【実施例】
【0316】
実施例
実施例1~7の概要
実施例1~7に記載された実験は、多発性硬化症(MS)マウスモデルにおける概念の証明、すなわち、溶液中の種々の白血球の抽出物から脱髄を引き起こすT細胞の特定集団を認識し捕捉するタンパク質の能力を実証し、そのような分離の質を測定することができるように設計された。
図27は、染色された右上腹部(RUQ)のペプチドMOGを認識するT細胞の割合(%)を表し、5.15%であった。この画分はペプチドMOGを認識する受容体をもつT細胞の数を表しており、比較的少ない。正常な条件下では、T細胞クローンの1つがT細胞集団全体のごく一部を構成する(Lythe et al.J. Theor.Biol., 2016, 389:214‐224)。しかしながら、増殖アッセイにおいてMOGが存在すると、MOGを認識するT細胞をより高い割合で受け取ることができるようになり、その結果、
図27の割合が5.15%となった。
【0317】
認識および分離手順に続いて、反対の傾向、すなわち、タンパク質複合体(市販のHLA四量体)に結合しなかった細胞の混合物中の特異的T細胞の割合の減少、および対照的に、これらのタンパク質複合体に結合する細胞集団中のこれらの特異的有害T細胞の割合の増加が認められた。これらの結果を
図28A、28Bおよび29A、29Bに示す。
図28Aおよび28Bでは、RUQは5.15%から0.77%および0.56%へと有意に低下した。対照的に、図カラム内の細胞集団を調べる29Aおよび29Bでは、最初の分離後のカラム内の特異的T細胞の割合は5.82%であった(
図29A RUQを参照)。この数は、
図27で得られた割合(5.15%)に非常に近く、1回の分離でさえ、有害なT細胞の全量が得られ、形成されたタンパク質-T細胞が安定であることが証明された。この一連の結果は、この方法で使用したタンパク質が、種々の細胞集団からの特異的T細胞を認識し、捕獲し、非常に高い効率であることを立証する。この結果は、この方法で使用されるタンパク質が、様々な白血球集団からの特異的な病原性T細胞の認識および捕捉において、非常に特異的かつ効率的であることを立証するものである。このT細胞の特異的除去は、処置群における実験的自己免疫性脳脊髄炎を予防した。
実施例1:マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の誘導
【0318】
マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデル。マウスにおける自己免疫制脳炎は、ヒトの多発性硬化症を模倣する動物モデルとして広く用いられている。自己免疫性脳炎は、6~7週齢のマウス6匹に、完全フロイントアジュバントで乳化したMOGと呼ばれるミエリン成分と、誘発日および48時間後に投与した百日咳毒素を注射することにより誘導した。MOGの注射は、ヒトの多発性硬化症の徴候に似た神経学的欠損を引き起こすことができる特異的T細胞を誘導する。9日後、腹部リンパ節を摘出し、白血球(WBC)を産生した。細胞は、特異的サイトカインであるIL-2、IL-12およびIL-23とMOGの存在下、37℃のCO2インキュベーターで共培養された。サイトカインとMOGは、MOGのみを認識するTリンパ球の増殖因子として一緒に作用した。
実施例2:EAEの養子移入
【0319】
前工程からの増殖細胞を、1. 分離なしの細胞(「現状有姿」の細胞)、および2. 有害なT細胞を分離後の細胞の2つの群に分けた。これらの細胞の分離は、以下の方法で行われた。
【0320】
a. 蛍光色素分子PEに結合した標的タンパク質とのインキュベーション。
【0321】
b. 蛍光色素分子PEを認識する細胞磁気ビーズに加える。この工程は、PE-タンパク質-T細胞-磁性ビーズの複合体をもたらした。
【0322】
b.からの複合体を、次いで、PE-タンパク質-T細胞-磁気ビーズのみが結合するカラム内を通過させた。この手順を2回繰り返した。
【0323】
第1群の細胞を3匹のマウス(対照群)に注射し、第2群の細胞を3匹のマウス(処置群)に注射した。有害細胞を分離し、第2群から取り除いた。
実施例3:in vitroによるインキュベーション後のリンパ節におけるT細胞数の評価
【0324】
リンパ節内には、B細胞やマクロファージなど、さまざまな種類の白血球が存在する。フローサイトメトリー分析装置を用いて、細胞の認識を行った。Tリンパ球のみの独特なマーカーであるThy1.2を用いて、抽出物中のTリンパ球の割合(%)を推定した。
図26は、Thy1.2による単一染色を用いた結果を示す。Thy1.2(LF4-H)の染色陽性がグラフの右下四分円に表示される。従って、抽出物中の細胞の26.88%はTリンパ球であることが明らかとなった。非Tリンパ球は左下腹部(72.99%)に出現した。この染色はPEタンパク質を加える前に行われたので、左右の上腹部は無関係である。検査した細胞は、カラムによる最初の分離前にリンパ節内の白血球であった。
実施例4:分離前のMOG活性化T細胞数の評価
【0325】
次に、細胞を、
図26と同じTリンパ球マーカー(Thy1.2-APC)、およびすでにPEに結合しているタンパク質に結合する第2のマーカー(タンパク質-PE)で二重染色した。二重染色された細胞は、
図2の右上腹部に出現した。検査した細胞は、カラムによる最初の分離前のリンパ節内の白血球であった。
図2に診られるように、5.15%の細胞、すなわちタンパク質に結合しているTリンパ球の二重染色を行った。左上腹部の染色(12.08%)は、タンパク質のみの陽性染色である。
実施例5:2回の分離後のMOG活性化T細胞数の評価
【0326】
次に、特異的T細胞を単離するためにMOG-PE複合体を用いて、カラム内で細胞集団を分析した。分離の効率をモニタリングするため、タンパク質複合体をカラムを2回通過させた(
図28A:1回目、
図28B:2回目)。これらの2回の試験の各々において、新しいカラムを使用し、カラムを通過する細胞画分(すなわち、カラムに結合しない画分)を分析した。カラム内の磁性ビーズによって保持された二重染色細胞をフローサイトメトリー分析に供し、その結果を
図28Aおよび28Bに示す。
実施例6:カラム内のMOG活性化T細胞数の評価(2回の分離)
【0327】
カラムに結合する細胞集団もまた、特異的T細胞の単離について同じ手順に従って分析した。上述のように、複合体をカラムを2回通過させた(
図29A:1回目、
図29B:2回目)。
図29Aおよび29Bは、第1カラム内の細胞についての結果(
図29A)、および第2カラム内の細胞の結果(
図29B)を示す。
実施例7:前臨床結果
【0328】
健康なマウスに細胞を注射した9日後、双方の群のスコアは次のとおりであった。
【0329】
対照群1:3匹のマウスは、1、1、および1.5の臨床スコアとなった(スコアの詳細については以下の表1を参照)。平均臨床スコアは1.2であった。
【0330】
処置群2:有害なT細胞の除去に続き、細胞を投与されたマウスの臨床スコアは0、0、および0であった(スコアの詳細については以下の表1を参照)。平均臨床スコアは0であった。
【0331】
重要な注意事項:EAEをMOGで誘導し、次いで健康なマウスに細胞を移すことは、本格的な疾患ではなく、むしろ軽症の疾患をもたらすことが予め知られていた。これが、対照群1の疾患に関して、より高いスコアが観察されなかった理由である。
表1:実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の臨床徴候の評価
【表1】
実施例8:多発性硬化症患者を対象とした観察臨床試験
【0332】
本試験の目的は、多発性硬化症および他の自己免疫疾患のない被験者と比較して、白血球(多発性硬化症患者における白血球)の特別な亜集団を特徴付け、定量化することであった。
【0333】
本試験の主な目的は、多発性硬化症患者のHLA型とその特異な多発性硬化症関連ペプチドレパートリーを決定するために、多発性硬化症患者のパイロットデータベースを確立することであった。このデータセットは、採血された患者から特定の白血球を認識し捕捉し、各患者から採取した特異的な多発性硬化症関連白血球を定量することができる、独自の生物学的プローブの設計を可能にするために蓄積された。
【0334】
採血:適格であることが確認された計60名の患者(多発性硬化症および他の自己免疫疾患のない者10名、新規に診断された20名、および既知の多発性硬化症患者30名)の本試験への参加が勧められた。3群とも少なくとも1回の来院を行っており、採血時には、倫理委員会が記載し承認したプロトコールに従って、HLAタイピングおよびin vitroアッセイのための細胞保存のために、血液サンプルを組織タイピング検査室に送付した。HLA遺伝子型タイピングの結果を記録し、各HLA遺伝子型の存在量を算出した。
【0335】
PBMC精製:血液サンプルの検査室への到着後、サンプルはPBMCの分離および精製のために、または濾過手順のための全血として使用された。末梢血単核細胞(PBMC)は、円形核を有する任意の末梢血細胞である。これらの細胞はリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)と単球から成り、赤血球と血小板は核をもたず、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)は多葉核をもつ。ヒトでは、リンパ球がPBMC集団の大部分を占め、次いで単球、およびわずかな割合の樹状細胞である。PBMCを抽出し、UNISEPチューブ(Novamed、イスラエル)標準プロトコールを用いて精製し、将来の分析のために無血清凍結培地(Biological Industry、イスラエル)に-80℃で保存した。
実施例9~12の概要
【0336】
実施例9~12は、病原性T細胞の認識、捕捉、および除去に関与するタンパク質の構築、発現、精製、および特徴付けを記載する。
実施例9:タンパク質のin silico構築
【0337】
ヒト、ラット、およびマウス種由来のMHCクラスII分子の配列アラインメントは、本明細書に記載されるタンパク質研究の出発点を提供した。前述の通り(Burrows et. al., Protein Eng., 1999, 12(9):771-778; Chang et. al., J. Biol.Chem., 2001, 276(26):24170-24176)、ヒト、ラットおよびマウスの病原性細胞除去タンパク質の発現ベクターを設計した。
【0338】
各タンパク質は、将来の実験動物モデルおよびその遺伝的背景(系統)に従って特別に設計された。ヒト組換えタンパク質(BI2.002)については、多発性硬化症患者において最も良く見られる対立遺伝子であるため、HLAクラスII:DRB*1501β1サブユニットをDRA*0101α1サブユニットに融合させて使用した。マウス(BI4.001)およびラット(BI3.002)について、ヒトDR1501:0101配列との相同配列:C57 BL6 MHCクラスII I-Ab β1α1サブユニットおよびMHCクラスII RT1l β1α1(対応する)を用いた。
【0339】
30アミノ酸のhuMBP-(85-99)-ペプチド、続いてリンカー配列、カートリッジを、β1鎖のArg-5とPro-6の間のβ1α1コード配列に挿入した。最後に、本発明者らは、3つのアミノ酸、すなわち、3つの全てのタンパク質のC末端における2つのグリシンおよびシステインをコードする9つのヌクレオチドを加えた。
【0340】
BIX.XX-GGCタンパク質をコードする遺伝子を、Genescript(米国)により合成的にpET21d(+)発現ベクターのNcoI/XhoI制限部位にクローン化し、BL21(DE3)コンピテント発現ホスト(BioLab)に形質転換した。
実施例10:発現およびin vitroフォールディング
【0341】
pET21d+/BI X.XX-GGCベクターを、タンパク質発現のためにE. coli BL21(DE3)コンピテント細胞(BioLab、イスラエル)に形質転換した。イソプロピルb‐D‐チオガラクトシド(IPTG)(BioLab、イスラエル)の添加により組換えタンパク質産生を誘導し、遠心分離により回収した。
【0342】
病原性細胞除去タンパク質の適切なフォールディングには、ジスルフィド結合の形成が必要であった。適切なフォールディングのためにジスルフィド結合を必要とするタンパク質は、封入体としても知られる凝集体を形成する傾向がある。ジスルフィド結合が不安定になりやすいサイトゾルの還元環境によって、細菌細胞質ゾルのタンパク質凝集体が形成される。病原性細胞除去タンパク質を抽出するために、細胞ペレットをマイクロ流動化装置を用いて溶解し、病原性細胞除去タンパク質を含む非可溶性封入体を遠心分離により沈降させた。
【0343】
ミスフォールドタンパク質を含むペレットを変性させ、タンパク質アニオン交換クロマトグラフィー(AIEX)カラムを用いて精製し、低速多段階透析プロセスで再フォールディングが行われた。精製タンパク質の最終収量は、15~30mg/Lのバクテリア培養物を円偏光二色性を用いて分析した。AIEXカラムに直線的に結合した多角度光散乱(MALS)の質量分析は、HISタグ付きタンパク質が溶液中の単量体であることを示す(データは示さず)。
実施例11:クーマシー染色
【0344】
ゲルをInstantBlue Coomassie染色溶液(Expedeon)で染色し、ChemiDoc XRS+カメラ(Bio-Rad)で露光した。
【0345】
還元条件下でのSDS-PAGEのクーマシー染色は、BIタンパク質が85~95%純度のレベルにあることを示す(
図30A +DTT)。還元条件下では、すべてのBIタンパク質は単量体としてSDS PAGEで動く。しかしながら、非還元条件ゲルでは、単量体病原性細胞除去タンパク質の画分は約50%であり、残りはほとんどが二量体である(
図30B -DTT)。これらの二量体は、還元されたシステイン残基(タンパク質鎖の末端)のジスルフィド結合によって生じるので、このシステイン残基は表面結合に必須であるので、これらの二量体は表面に結合する能力を失う。
実施例12:円偏光二色性(CD)および熱遷移測定および分析
【0346】
病原性細胞除去タンパク質のCDスペクトルを0.1 cmの光路長、石英キュベット(Hellma、ドイツ、マルハイム)中でJ‐810分光偏光計(Jasco)を用いて記録した。全ての測定はPBSで行った。データは、PBSのベースライン減算後、モル楕円率として提示される。提示されたスペクトルは、260~190nmにおけるスキャン5回の平均であった。二次構造はオンラインDICHROWEBソフトウェアを用いて推定した。安定性試験のために、変性曲線を作成するため、全ての病原性細胞除去タンパク質について、4~90℃の間のいくつかの温度範囲で220nmでのCDシグナルを記録した。
【0347】
文献によると、円偏光二色性測定は、タンパク質がこれらのタンパク質に期待される二次構造を示すことを示している(Chang et. al., J. Biol.Chem., 2001, 276(26):24170-24176、
図30B)。タンパク質の大部分はβシートとαへリックスの組み合わせを含んでいる。変性曲線によれば、すべてのタンパク質の融点(Tm)は実験温度(25℃または37℃)よりも高く、すべてのタンパク質が安定であり、その構造はこれらの温度でそのままであることが示された。
実施例13~15の概要
【0348】
実施例13~15は、BI X.XXX-GGCタンパク質によるシリコンウエハーの表面修飾、表面特性解析、および修飾されたシリコンウエハーの原子間力顕微鏡法を記載する。
実施例13:表面改質
【0349】
図31にあるように、シリコン基質ウエハーを、三段階反応でBI X.XXX-GGCタンパク質でコーティングした。最初に、ウエハーを3‐アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、次いで4‐マレイミド酪酸スルホ‐N‐スクシンイミジルエステル(sGMBS)架橋剤でコーティングし、最後に、タンパク質を病原性細胞除去タンパク質のC末端のシステインチオール基を介してアミノシラン官能化ゲート窒化物表面に共有結合させた。最後に、各タンパク質でコーティングされたウエハーを、タンパク質層であるスクロース保護層でコーティングした。
実施例14:表面特性解析
【0350】
シリコンのBrewster角度(75°)付近の角度可変分光エリプソメーター(VB-200 VASE、Woollam Co.)で楕円偏光測定を行った。
【0351】
エリプソメトリー測定は、単量体の直径に対応する、APTES層厚が約6~8ÅのGMBS層厚、および、タンパク質コーティングされたシリコンスライド(APTES+GMBS+タンパク質)の最終厚が、マウスBI X.XX-GGCタンパク質について~25Å、ラットBI X.XX-GGCタンパク質について~40Å、ヒトBI X.XX-GGCタンパク質について~50Åであることを示した(データは示さず)。
実施例15:原子間力顕微鏡(AFM)
【0352】
原子間力顕微鏡(AFM)測定を、BI X.XX‐GGCタンパク質でコーティングした最終シリコンウエハー製品のためのシリコンチップ(MSNL10、公称チップ半径~2nm、Bruker)を有するAFMカンチレバー(Nano‐Wizards 3、JPK Instruments、ドイツ、ベルリン)で行った。
【0353】
AFM分析は、ラットBI X.XXX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドおよびヒトBI XX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドが非常に密で均一な層でコーティングされていることを示し、従って、凝集を伴わないフィルターへの完全なタンパク質結合能力を示した(
図32A~32Bのイラストを参照)。マウスBI X.XXX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドはAFM測定で低密度を示した。
実施例16~17の概要
【0354】
実施例16および17は、体外血液濾過のための前臨床プロトタイプのin vitro試験を記載する。
実施例16:PBMCおよび全血(WB)濾過
【0355】
各濾過ユニットの組立前に、各濾過ウエハーをTDWで洗浄し、N2(g)またはO2(g)で乾燥させて、スクロース層を除去した。濾過装置を蠕動ポンプに組み立てた後、ヘパリンを補充した生理食塩水でチューブを洗浄した。患者からの全血または5mlの血液から精製されたPBMCのいずれか5mlを含むチューブを濾過装置に接続し、蠕動ポンプを用いて閉じた円を確立し、そこで血液/PBMCを1ml/分の流速で1時間循環させた。濾過プロセスがフィルターユニットに到達後、PBMCおよび血液をさらに分析するために採取した。
実施例17:環境走査型電子顕微鏡(ESEM)
【0356】
全てのスキャンは、FEI環境走査型電子顕微鏡Quanta 200(米国FEI)を用いて行った。より良好なスキャンコントラストを達成するために、サンプルのいくつかは、Polaron SC7640スパッタコータ0(Quorum Technologies Ltd.)を用いて、スキャン前に金/金-パラジウムコーティングでコーティングした。スキャンは、PBMCまたは全血サンプルでのインキュベーション/濾過後に、タンパク質被覆シリコンウエハー上で実施した。
実施例18~23の概要: 多発性硬化症ラット/マウスモデルを用いた前臨床体外血液濾過
【0357】
実施例18~23は、げっ歯類多発性硬化症モデル(マウスおよびラット)に適用した場合の、病原性細胞除去タンパク質でコーティングされたシリコンウエハーを有する生物学的フィルターの濾過能力を示す。
実施例18:前臨床プロトタイプの設計および組立
【0358】
病原性細胞除去タンパク質でコーティングされたシリコンウエハーを用いた体外血液濾過を可能にするフローチャンバーを備えた生物学的フィルターを構築し、それらの濾過能力を評価した。最初に、濾過装置に接続可能な動物モデルを選択した。マウスおよびラットは、多発性硬化症の研究に使用される最も一般的な動物モデルである。しかし、濾過装置の血液量制限のため、濾過日に最小重量160gのLewisラットを用いてラットモデルが選択された。動物の最小の大きさは、動物に致死的な影響を引き起こすことなく、濾過のために十分な血液を取り出すことを可能にした。
【0359】
前臨床プロトタイプは、2つの異なる源(PBMC、全血または2匹の動物)を同時に濾過する2つの別々の濾過ユニットを含んでいた。プロトタイプは、3つの重要な部品、ベースプレートと2つの濾過ヘッドを有していた。各ヘッドサブユニットには、フィルターを保持するためのソケット、および医療チューブの高速かつ効率的な組立のためのルアーロックコネクターを備えた入口および出口ポートが含まれた。ベースおよびヘッドは、生体適合性および十分な強度特性の両方を有するポリエーテルイミド(ULTEM 1000)から作製した。すべてのプロトタイプサブユニットは、コンピューター数値制御(CNC)フライス盤を用いて成形し、各濾過手順の前に組み立て、シールした。濾過ユニットをTygon(登録商標)およびPharmed(登録商標)チューブを介してMinipuls 3(Gilson)蠕動ポンプに接続し、効率的な血液/体液の被験体への流れを可能にした。
実施例19:動物モデル、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、およびEAEの臨床評価
【0360】
C57BL/6JOlaHsdマウスは、Jackson Laboratory(米国メイン州バーハーバー)由来のEnvigo(イスラエル)から供給された。マウスは、研究における動物の使用に関する承認された規則に従って動物ケア施設で飼育された。LEW/SsNHsdラットは、米国メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所から得られた核コロニーからENVIGOによって供給された。7~10週齢の雌ラットを用いた。すべての動物は、研究および国家倫理委員会における動物の使用に関するヘルシンキ宣言に記載された原則に従って世話し、取り扱った。
【0361】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は最も一般的な動物モデルであり、新規治療戦略の有効性のための「原理証明」モデルとしてしばしば役立つ。EAEの誘導は、適応免疫系を含む多くの臨床的および病態生理学的特徴を共有するため、多発性硬化症疾患の神経炎症経路を検討するために特に有用である。EAEモデルは、多くの動物(例えば、マウス、ラット、ミニブタ、モルモット、ニワトリ、霊長類)で誘導できるが、その実装の容易さと迅速で頑健な結果のために、マウスモデルを用いた。EAEは、抗原を運ぶ構造(細胞やミエリン鞘など)の炎症や破壊を誘導する脳特異的抗原に対する免疫系反応を利用し、多発性硬化症患者で観察されるものと同等の多発性硬化症様の病理学的特徴をもたらす。
【0362】
マウスモデルでは選択した抗原および完全フロイントアジュバント(CFA)(マウスモデルではMOG35-55ペプチド(Ray Biotech Inc.、米国)、ラットモデルではg.pMBP68-82(Genscript、米国)からなるエマルジョンを皮下注射し、免疫日および2日後に百日咳毒素を腹腔内注射した。
【0363】
脳脊髄炎誘発後、動物を毎日観察した。EAEの臨床徴候は導入後12~16日に出現した。臨床疾患のスコアは、0-麻痺なし、0.5-尾張力の低下、1-尾の麻痺、1.5-後肢不全麻痺、協調運動不能、2.5-後肢片麻痺、2.5-両後肢麻痺、両前肢の脱力、3-両後肢麻痺、前肢片麻痺、3.5-両後肢麻痺、両前肢麻痺、4-切迫状態の四肢麻痺動物、5-死亡とした。
【0364】
血液濾過法の安全性と忍容性も評価した。10匹のEAEラットを異なる日(4日目、6日目、8日目、4日目+8日目)に濾過し、5匹の未処置EAEラットと比較した。濾過後30日までの間に、濾過の結果としての死亡例は認められなかった。体重減少は対照群と同程度であり、血液生化学的検査および血液学的検査パラメータの変化は濾過後に観察されなかった。
【0365】
安全性評価試験に基づき、表2に示す5群に分けてn = 34のラットを用いた予備的パイロット臨床試験を実施した。
表2:予備的パイロット臨床試験におけるラット群
【表2】
【0366】
全群で死亡は報告されなかった。体重減少は全群で同程度であり、血液検査では差は認められなかった(データは示さず)。
【0367】
疾患活動性は8日目から自然寛解まで評価した。無処置ラットと比較して、偽濾過を受けたラットでは疾患活動性の改善は見られなかった(
図33A)。4日目の濾過は、より軽度の疾患誘導を示し、14日目のピークはより低かった(それぞれ、1.5±0.28対2.06±0.2)(
図33B)。6日目の1時間の単回濾過では、同じ発症およびピークまでの時間が示されたが、16日目、対照群の48時間前に有意に速い回復が認められ、16日目および17日目のp値はどちらもp<0.01であった(
図33D)。5日目に濾過された動物は、未処置群(
図33C)と同様の結果を示し、疾患進行のピークへのわずかな非有意なシフトを示した。
【0368】
興味深いことに、臨床スコアの結果を分析するもう1つの方法がある。疾患の発症はラットによって異なるので(8~14日目)、発症日を動物ごとに別々に決定し、この日を0日目に設定することが一般的である(Pollak et. al., Neuroimmunology 2003; Lange et. al.Ann Rheum Dis 2005; Ringheim G.E et. al.Frontiers in Neurology, 4.2013により前述)。全ての3群が、未処置動物と比較してピークスコアの減少を示したことが明らかとなり(表3および
図34A~34D)、この手順が
図33A~33Dで観察されたよりも大きな効果を有することを示唆している。
表3:発症日別の比較分析。
【表3】
実施例19:血液生化学的検査および血液学的検査
【0369】
ラットから後眼窩洞穿刺により血液を採取し、EAE誘導後4日および濾過後48時間に2回採血を行った。血液および血清を、全血血液学および化学パネルのために、米国医学研究所(イスラエル)より分析に送付した。
実施例20:体外血液濾過
【0370】
LEW/SsNHsdラットを、全濾過手順中イソフルラン麻酔器を用いてイソフルラン/O2混合物で麻酔した。27Gカニューレ、採血のための動脈カニューレ、および血液貯留のための静脈カニューレを用いて、動物当たり2つの尾部カニューレを作成した。各ラットは、動脈カニューレ挿入を介して濾過装置入口ポートに接続され、濾過装置への血液の流れを可能にし、血液は出口ポートを介して蠕動ポンプへと流れ込み、この蠕動ポンプは、0.8~1ml/分の流量で静脈カニューレ挿入を介して被験動物体内に血液を戻した。
【0371】
処置中に動物が循環血液量減少性ショックまたは血液凝固を起こさないように、濾過ユニットおよびチューブセットをヘパリン処理生理水(ヘパリン25単位/mlを補充した0.9%塩化ナトリウム注射液)で予め洗浄した。
実施例21:マウスにおけるEAE誘導およびPBMC富化
【0372】
研究開発ニーズのために細胞を得るより堅牢で複雑性の少ない方法を確立するために、多発性硬化症のためのマウスモデルをより実行可能な資源として使用した。EAEは、C57/6JOLAHsd雌マウス(上述)に誘導され、脾細胞の単離および活性化のために脾臓が摘出された。疾患の誘導はペプチド特異的であり、マウスMOG35-55を脳脊髄炎誘発ペプチドとして用いて、同じペプチドを、IL-2、IL-12およびIL-23の存在下で72時間、Tヘルパー細胞の特異的クローンのin vitro濃縮および増加に用いた。
実施例22:FACS
【0373】
フローサイトメトリー取得は、サンプル当たり約1~2 x 106細胞の染色のための標準プロトコルを用いて、BD FACS-Can to II上で実施した。各サンプルについて少なくとも250,000件の事象を記録し、FCS express version 6.0(De Novoソフトウェア)を用いてデータ解析を行った。FACS標識に使用される全ての抗体および四量体を下記の表4に列挙する。
実施例23:蛍光顕微鏡
【0374】
細胞の2Dフィルターへの付着を可視化するために、抗体(表4)を、免疫組織化学染色に関する製造業者の推奨に従って、濾過後の生物学的フィルター上に適用した。ライカ共焦点イメージングシステムSP5を用いて表面を可視化した。
表4:分析に用いた抗体および四量体の一覧。
【表4】
実施例24および25の概要
【0375】
実施例24および25は、ヒト患者における観察的臨床研究を記載する。
【0376】
免疫系は従来より、先天性免疫と適応免疫とに大別される。先天性免疫は非特異的であり、病原体に対する防御の第一線となるが、適応免疫は特異的な反復性によるものであると考えられている。適応免疫は、細胞性と体液性の両方の成分から構成されている。B細胞は抗体を介して可溶性の形で特異的標的を認識するが、T細胞は有核細胞(I型)または抗原提示細胞(II型)によって発現されたHLA分子上に提示されたときにのみ標的を認識する。
【0377】
自己免疫疾患では、免疫系は自己抗原を異物と同定し、臓器特異的(例えば甲状腺または膵臓)から全身性疾患(例えば全身性エリテマトーデス)まで、広範囲の疾患において身体を攻撃する。自己免疫疾患の現在の治療法は、重大な副作用を伴い、個体をより感染症にかかりやすくさせる、全般的かつ一般的な免疫抑制に焦点が当てられている。
【0378】
従って、多発性硬化症(MS)の文脈において、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、ミエリン関連タンパク質を認識し、多発性硬化症における疾患の開始および進行に関与する特異的T細胞を除去することを目的とする。本明細書に記載される生物学的フィルターの実施形態は、多発性硬化症患者の末梢血からこれらの標的細胞を認識し、捕捉し、除去することができる。
【0379】
最初の課題は捕捉タンパク質の発現と精製であった。ヒトDRと相同なHLAII型組換えタンパク質を設計し、以下の実施例に記載するように発現させた。T細胞と抗原提示細胞(APC)の間の生理学的相互作用に基づいて、これらのペプチドがロードされたタンパク質は、関連するクローンの対応するT細胞受容体を認識し、それに結合することができる。
【0380】
次の課題は、生体適合性表面へのタンパク質の固定であった。上述したように、均一な単分子層を標的タンパク質でコーティングすることに成功した。全ての光学的および生化学的バリデーションは、層厚測定のための偏光解析を含めて陽性であった。
【0381】
細胞懸濁液のリアルタイムライブ濾過を示すために、サンプルを循環させる蠕動ポンプに接続した2Dフィルターを埋め込んだプロトタイプデバイスを設計した。このプロトタイプデバイスは、前臨床実験および本明細書に記載される血液濾過プラットフォーム技術のex-vivoヒト血液バリデーションの両方で使用された。記載した前臨床実験において、この方法は、ナイーブおよびEAE誘導ラットのいずれにおいても安全であり、忍容性があることが示された。ラットを用いた概念実証実験でも、次のような所見が確認された。
【0382】
1.濾過を行うためには、少なくとも1.5時間、ラットを麻酔下に置かなければならない。強調しておきたいのは、より長い麻酔期間は生存の重要な危険因子であり、従って、関連するT細胞のより効率的な除去を達成するために、この時間をさらに延長すべきではない。
【0383】
2.装置のプロトタイプは、予備的なプロトタイプであり、流れの制限と空気への曝露の可能性があり、いずれも濾過の質に影響を及ぼす可能性がある。
【0384】
3.蓄積されたデータから、PBMCのみがフィルターに接触するPBMCの濾過よりも全血濾過の有効性が低いことが観察された。多発性硬化症患者由来のヒトPBMCについて実施された実験は、濾過後1時間以内であっても、はるかに有効であった(
図35A~35F、
図36)。
図11A~11Fでは、第一リンパ球を前方および側方散乱に従ってゲーティングした。次に、FITC標識CD19細胞(B細胞を表す)をAPC標識CD4+細胞(ヘルパーT細胞を表す)に対し除外し、最終的にPE陽性(ヘルパーT細胞亜集団全体の中のクローン特異的Tヘルパー細胞を表す)を算出した。ここでは、同一患者における濾過前のPBMC(
図35A~35C)および濾過後のPBMC(
図35D~35F)の比較を示す。
【0385】
従って、ラットにおける全血濾過は濾過に対して効率が低いと考えられる。
【0386】
4.疾患誘導後4日目の濾過では、5日目または6日目と比較して優位性が示されたが、5日目および6日目には、ほとんどのT細胞が循環系から中枢神経系へ移動し、疾患を誘導した。4日目の濾過では、フィルターは中等度の影響を引き起こすEAE関連T細胞のかなりの割合を循環から除去することができた。
【0387】
実施例24および25は、ex vivoでのアプローチを検証し、プロトタイプデバイスが、濾過の1時間以内に6人の異なる多発性硬化症患者由来のPBMCを濾過することにより、40%を超える特異的T細胞クローンを除去する能力を示した。これは、記載されているように、サイトメトリー分析によって検証された。
【0388】
ex vivoおよびin vivoの両実験から、ヒトにおけるより適切なアプローチは、PBMC画分の作製から始まり、その後、生物学的フィルターを用いた特異的な多発性硬化症関連T細胞除去およびフィルター処理されたPBMCの患者への再配置、従って、患者の免疫系の完全性を維持する白血球除去処置を含むことが示唆される。
実施例24:多発性硬化症患者のHLA遺伝子型タイピング
【0389】
この時点までに、計26名の被験者が本方法に記載された観察臨床試験に登録された。そのうち、新たに多発性硬化症と診断された被験者が8名(A群)、3年以上多発性硬化症と診断された被験者が16名(B群)、自己免疫の既往がない対照被験者が2名(C群)であった。このコホートの主な目的は、HLA I型およびII型ハプロタイプに関するデータを試験群間で入手し、これらの被験者からPBMCの凍結検体の小規模なリザーバーバイオバンクを設置することであった。生物学的フィルターへの特異的結合の評価のために必要な場合、細胞を解凍した。異なるHLAI型(A、BおよびC)およびII型(DRおよびDQ)の対立遺伝子頻度の主な中間要約を以下の表5および6に示す。例えば、DRb15:01は米国の多発性硬化症患者の30~50%に認められることが明らかとなっており(Hollenbach et al.J Autoimmun., 2015, 64:13-25)、イスラエル系ユダヤ人では同じく17~24%で認められ(Kwon et al., Arch Neurol., 1999, 56(5):555-560)、一般(非多発性硬化症被験者)集団と比較して有病率が高いという結果が示された。
【0390】
これまでのところ、このコホートの25%の多発性硬化症被験者が「悪名高い」対立遺伝子(対立遺伝子頻度12.5%)を保有しており、採取したPBMCをフィルター性能の評価に使用した。前述は、単なる例である。他の標的タンパク質は、収集されたデータと、多発性硬化症患者の標的遺伝子群に関して文献で利用可能な既知のデータとを組み合わせて決定することができる。
表5:多発性硬化症患者におけるHLA I型対立遺伝子頻度(N = 24)
【表5】
表6:多発性硬化症患者におけるHLA II型対立遺伝子頻度(N = 24)
【表6】
実施例25:多発性硬化症患者の血液濾過の検証
【0391】
これまでに26名の被験者が観察臨床試験に登録された。そのうち6名の被験者が標的対立遺伝子DRb15:01を発現した。本明細書に記載される血液濾過技術のex vivoバリデーションを実施するために、これらの被験者から血液を採取した。病院からのヘパリン化血液の到着時に、血液の一部をPBMC分離のために採取し、残りをそのまま使用した。同時に、サンプル、全血(WB)およびPBMC精製画分の両方を、蠕動ポンプを用いて1ml/分の一定流速でプロトタイプチャンバーを通して1時間循環させた。フローサイトメトリーを用いた分析のために、サンプルを濾過前後に採取した。
【0392】
HLA II型、DRb15:01に提示された、ヒトMBP85-99に対するT細胞受容体を発現するT細胞に対してのみ特異的に結合特異的に結合することができる市販の四量体(表4参照)を使用した。これにより、除去対象の特異的な標的T細胞を検出することが可能になった。CD4+ T細胞全体における特異的細胞の割合の減少は、手順中にプロトタイプフィルターによるそれらの細胞の認識、捕捉および除去を示す。FACS分析は、単離されたPBMC画分の1時間の濾過後に平均42%(21%~65%の範囲)の標的細胞の除去を示した(対応するサンプルについてのT試験はp<0.01であった、
図35A~35F)。加えて、同時に、PBMCの濾過に起因する全B細胞亜集団および全ヘルパーT細胞亜集団のいずれにおいても、有意な変化は認められなかった。
【0393】
全血のin vitroでの濾過は、濾過手順の技術的限界、血液の空気への暴露、血液成分のデバイスへの非特異的結合(フィルター表面自体を除く)、および濾過後の全血サンプルへのFACS分析の実施限界のため、非特異的な結果を与えた。
【0394】
2例(204、211、
図36参照)において、クローン特異的CD4+ T細胞の最も高い濾過前レベルが示された。興味深いことに、これらの被験者はタイサブリでの治療下にあった。タイサブリはインテグリンα4に結合し、インテグリンα4を遮断することによって末梢血から中枢神経系へのリンパ球の遊走を阻止する。これらの状況から、タイサブリとの併用療法は、濾過の効力および有効性を誘発する可能性があることが示唆される。
【0395】
全血またはPBMCで濾過した後、ヒトBIX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドを水で洗浄し、金でコーティングし、ESEMで分析した。結果は、直径が6~9nmであるフィルターへの細胞の結合、および直径が12nmであるいくつかのより大きな細胞の結合を示した(
図37Aおよび37B)。
図37Aは、被験者全血で濾過した後のヒトBIX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドのSEM写真である。
図37Aは、被験者PBMCによる濾過後のヒトBIX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドのSEM写真である。
【0396】
別の実験では、濾過後、フィルターをRPMIで洗浄し、CD4(T細胞マーカー)、CD19(B細胞マーカー)に対する抗体、およびHLA複合体を認識する特異的T細胞を染色するための四量体で染色した。結果は、T細胞のフィルターへの結合を示し、特異的T細胞も同様に同定された(データは示さず)。EAEマウス脾細胞から抽出した2~4 x 10
6個の細胞をRPMI培地(Biological industries、イスラエル)で希釈し、マウスBIX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライド上で1.5時間濾過した。スライドをPBSおよび水で洗浄し、乾燥し、ESEM測定のために金でコーティングした。ESEMは、直径6~8ミクロンの細胞のフィルターへの結合を示した。健康なマウスの脾細胞から抽出した細胞をインキュベートしたところ、EAE誘導マウスの細胞と比較してフィルターへの結合はほとんど示されず、フィルターの特異性が示された(
図37Aおよび37Bの画像参照)。
【0397】
共焦点顕微鏡測定のために、細胞とインキュベーションした後、スライドをPBSで洗浄し、次に、MHC II複合体を認識する特異的T細胞を染色するために市販の染色された四量体で染色した(
図38A~38C)。
図38Aは、EAEマウスの脾細胞から抽出した細胞を濾過した後のBIX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドのESEM写真である。
図38Bは、健康なマウスの脾細胞から抽出した細胞を濾過した後のBIX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドのESEM写真である。
図38Cは、EAEマウスの脾細胞から抽出した細胞を濾過した後のBIX.XX-GGCタンパク質被覆シリコンスライドの四量体染色の共焦点顕微鏡写真である。
実施例26:生体分子および生体学的物質を捕捉するためのポリスルホン/高分子電解質ベースのポリマーマトリックスの調製
【0398】
この実施例では、高性能熱可塑性ポリマー(例えば、ポリスルホンおよび誘導体)と高分子電解質(例えば、ポリアクリル酸およびポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド)との組み合わせを含むマトリックスを、ポリアクリル酸(PAA)(5~40%)およびポリスルホン(PSf)(60~95%)の可溶性の混和性ブレンドから作製した。マトリックスは、薄膜、フィラメント、中空繊維、または水溶液にアクセス可能な任意の他のポリマー構造であり得る。固体表面を凝固させて作製した後、PAAのカルボキシル基は、他の化学的または生体的分子または巨大分子と相互作用する他の官能基(例えば、アミンまたはマレイミド基)に直接相互作用し得るか、または形質転換され得、特定の要素(例えば、タンパク質、細胞または他の成分)を捕捉するための最終表面を生成/設計することができる。
【0399】
ポリスルホン-ポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド膜(フィルムまたは繊維)の調製:乾燥/湿潤静的技術は、中空繊維膜を製造するために使用される調製技術であり、その概略図を
図39に示す。この図において、膜フィルム/繊維は、ポリスルホンとポリアクリル酸との重合体の組み合わせからなり、製造中にポリ(2-アミノエチル)アクリルアミドに改質され、さらに、特定の様式で目的のタンパク質と共有結合するマレイミドリンカーで活性化される。最初に、キャスティング溶液を以下のように調製した:8%の添加剤(PAA)を乾燥DMF(ジメチルホルムアミド)に100℃で溶解し、溶液を磁気撹拌機を用いて500rpmで2時間撹拌し、均一な溶液が得られた。並行して、16%の固体PSを乾燥した純粋なDMF溶媒に溶解した。均一混合物を得た後、PSを滴下してPAA溶液に添加した。混和性混合物が形成されるまで、混合物質を100℃、700rpmで攪拌した。次に、混合物が混和性混合物となるまで40℃に維持した超音波処理槽に溶液全体を導入した。混合溶液を調製するために使用された混合物組成物の割合(%)は、最終生成物の強度要件に依存して変化した。ポリアクリル酸(PAA)の5~40重量%をポリスルホン(PSf)と混合した。PSf-PAA混合物を、水濡れガラスシート上のシリンジを通して、または水浴中に押し込み、一方、ピンセットで平行に引っ張って繊維を作製した。ガラスシートは、Milli-Q水(18.3MΩ・cm)で18℃または生理的溶液で湿らせることができる。この方法を用いて、0.2~0.3μm幅の繊維を中空繊維として作製した。中間孔の厚さは、PSf-PAA混合物中のPAAの割合によって決定した。25% PAAについては、孔の直径は~200ミクロンであり、33% PAAについては、直径は~100ミクロンであった(
図41A~41C)。25% PAAからなる繊維(
図41Aおよび41B)または33% PAA(
図41C)は幅200~300ミクロンの中空繊維構造を作る。
【0400】
PSf-PAAのフィルムはまた、18℃の温度で十分な量(スライドを完全に覆う)のMilli-Q水(18.3MΩ・cm)を含む凝固浴中に、ガラスシート上に落とされたブレンド溶液を浸漬することによって、記載されたPSf-PAA混合物から作製することができ、この混合物から、非常に薄いフィルムも、接着層としてアミノプロピルトリエトキシシランを有するガラスまたはシリコンベースシート上に担持されたスピンコーターを用いて作製することができる(DMF溶液中の両方の成分の最終濃度は0.5~3%w/v)。膜/繊維は水で洗浄し、使用するまで保管する。次いで、PSf-PAA膜/繊維をエチレンジアミンと反応させて、PAAのカルボキシル基の代わりに官能性アミン基を生成し、PSf-ポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド繊維/フィルムを作製する。繊維および中空繊維を作製するための異なるプロトコルが文献で入手可能である(例えば、Choi et al, European Polymer Journal, 2010, 46(8):1713-1725)。ここで採用されている手順は、その使いやすさと、特別な施設や特別な設備を必要としないという事実のために採用された。
【0401】
リンカー伸長を伴うマレイミド活性化:スルフォ‐N‐スクシンイミジル4‐マレイミドブチレート(sGMBS)をマレイミドリンカーとして利用した。sGMBSは、末端に活性エステルを有する炭水化物であり、ポスリスルホン-ポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド膜上のアニム求核基と相互に作用する。sGMBSナトリウム塩をPBS(pH = 7.2)に使用直前に1mMの濃度に溶解し、ポリスルホン-ポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド膜を用いて25℃で18~22時間インキュベートした。
【0402】
タンパク質-マレイミド相互作用:目的のタンパク質(例えばHLA由来タンパク質)は、タンパク質末端(例えばC末端)で還元されたシステイン残基を有する特定の生物(例えば、細菌、酵母、昆虫または哺乳動物細胞)において組換えタンパク質として産生される。PBS(pH = 7.2)で希釈した純粋なタンパク質10μMを、マレイミド官能基で活性化したポリスルホン-ポリ(2-アミノエチル)アクリルアミド膜と共に25℃で2時間インキュベートしたところ、表面にタンパク質の単層が形成され(
図41A、41B、42A、42B、43)、厚さは約40~50オングストローム(シリコンスライドのAFMとエリプソメーターで測定)で、タンパク質とマトリックスの間には安定したチオエーテル結合がある。
図18Aは、高密度タンパク質の単層のAFMトポグラフィーを示す。
図18Bは、タンパク質被覆シリコンスライドから記録されたAFMプロファイルグラフであり、4.5nmの層厚を示す。
図19のグラフは、以下の3つのサンプル、PSf不活性化、タンパク質1を有するPSf活性化シート、およびタンパク質2を有するPSf活性化シート(ヒトGGCタンパク質の2つの変異体)を示す。どちらのタンパク質活性化PSfシートも、約163.5 eVにピークを示し、構造化された機能性タンパク質にのみ現れるジスルフィド結合(S-S)に対応する。
【0403】
タンパク質被覆膜活性:これらの共有結合的に修飾されたタンパク質膜は、生物学/生化学/医学分野のいくつかの応用に利用できる。これは、タンパク質パートナー/標的(例えば、他のタンパク質、細胞、または他の生体または非生体分子)を定量し、特徴付けるための分析試験に用いることができる。パートナーとのタンパク質相互作用に基づいて、特定の医薬用途、例えば、特定の細胞とタンパク質被覆膜との相互作用に依存するアフェレーシスまたは透析特殊フィルターを適用することができ、患者の血流または血液の画分(PBMCなど)からそれらの細胞を除去することができる。
【0404】
実施例を含む前述の説明は、例示の目的のために提示されている。これは網羅的なものではなく、開示された正確な形態または実施形態に限定されるものではない。実施形態の変更および適応は、開示された実施形態の明細書および実施形態の考察から明らかとなるであろう。例えば、ある構成要素は互いに結合されていると記載されているが、そのような構成要素は、互いに統合されていてもよく、または任意の適切な方法で分散されていてもよい。
【0405】
さらに、本明細書には例示的な実施形態が記載されているが、この範囲は、本開示に基づいて、等価な要素、修正、省略、組み合わせ(例えば、様々な実施形態にわたる態様)、適応および/または変更を有する任意のおよびすべての実施形態を含む。特許請求の範囲の要素は、特許請求の範囲で使用されている言語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書中に記載されている実施例または出願の手続中に記載されている実施例に限定されず、これらの実施例は非排他的であると解釈されるべきである。さらに、開示された方法の手順は、手順を並べ替える、および/または手順を挿入または削除することを含む、任意の方法で修正することができる。
【0406】
本開示の特徴および利点は、詳細な明細書から明らかであり、従って、添付の請求の範囲は、開示の真の精神および範囲内に入るすべてのシステムおよび方法を網羅することが意図されている。本明細書中で使用されるように、数が明示されていない場合、「1つ以上」を意味する。同様に、複数系の使用は、与えられた文脈において明確でない限り、必ずしも複数を意味しない。「および」または「または」のような用語は、特に別段の指示がない限り、「および/または」を意味する。さらに、本開示を検討することにより、多数の修正および変形が容易に発生するので、開示を図示し説明した正確な構成および動作に限定することは望ましくなく、従って、すべての適切な修正および等価物が、本開示の範囲内とし、用いることができる。
【0407】
開示された実施形態は、フィルター、装置、システム、コンピューター可読媒体または方法に関連して実装されているか否かにかかわらず、以下の箇条書きで示された特徴のいずれかを単独で、または1つ以上の他の箇条書きで示された特徴と組み合わせて含み得る:
●不活性表面媒体
●不活性表面媒体上に配置されたヒト白血球抗原(HLA)タンパク質
●不活性表面媒体上のHLAタンパク質に結合した抗原ペプチド
●T細胞が複合体と接触する時に抗原特異的T細胞受容体が抗原ペプチドおよびHLAタンパク質の複合体に結合し、特異的T細胞を複合体を介して不活性表面媒体に固定することを可能にする選択された抗原ペプチドおよびHLAタンパク質
●シート材、メッシュ構造、繊維、ゲル、液体、またはビーズを含む不活性表面媒体
●ポリスルホンまたはポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(Ultem)、またはトリタンを含む不活性表面媒体
●ポリスルホンを含む不活性表面媒体
●高分子電解質を含む不活性表面媒体
●共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介して不活性表面媒体上に配置されたHLAタンパク質
●マレイミド類似体を介して不活性表面上に配置されたHLAタンパク質
●ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、ポリスチレン、アビジンおよび/またはストレプトアビジンを含む不活性表面媒体
●HLAタンパク質のアンカー位置が、HLA結合溝の少なくとも幅だけ互いに離間するように、不活性表面媒体上に配置されたHLAタンパク質
●単量体または多量体を1つ以上含むHLAタンパク質
●切断されたHLAタンパク質
●C末端残基としてシステインを含むように操作されたHLAタンパク質
●ペプチドリンカーを介してHLAタンパク質に連結したC末端システイン
●患者に合致するようにHLA型が決定されたHLAタンパク質
●抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合することができるHLA-ペプチド複合体を形成するためにHLAタンパク質上に合成的に作製され負荷される抗原ペプチド
●組換え的に産生されたHLAタンパク質
●多発性硬化症に関連するタンパク質由来の抗原ペプチド
●前記抗原ペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせから由来する
●前記抗原ペプチドは、MBP87-99、MBP85-99、MBP83-96、MBP217-231、MBP88-102、MBP282-296、PLP91-110、PLP131-151、PLP283-252、PLP263-277、PLP58-72、PLP13-27、OPALIN46-60、OPALIN27-41、OPALIN127-141、MOG210-224、MOG29-43、MOG176-190、MOG225-239、OSP74-88、OSP114-128、MAG8-22、MAG467-481、MAG529-543、またはそれらの組み合わせである
●フィルター間の流体の流れを可能にするように構成された複数の層を含むフィルター
●抗原特異的T細胞受容体に選択的に結合する物質をホストとするためのフィルター媒体
●ヒト白血球抗原(HLA)-ミエリン-ペプチド複合体を含み、ミエリン特異的T細胞受容体と結合するように選択され、それによってHLA-ミエリンペプチド複合体を認識するT細胞集団の特異的結合を可能にする、フィルターホスト材料
●各々抗原ペプチドおよびHLAタンパク質を含むHLA-ミエリン-ペプチド複合体
●不活性表面を含むフィルター媒体
●ビーズを含むフィルター媒体
●シート材を含むフィルター媒体
●流体を含むフィルター媒体
●ポリスルホンまたはポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(Ultem)、またはトリタンを含むフィルター媒体
●高分子電解質を含むフィルター媒体
●共有結合、非共有結合相互作用または吸着を介してフィルター媒体上に配置されたHLA-ミエリン-ペプチド複合体
●マレイミド類似体を介して媒体上に配置されたHLA-ミエリン-ペプチド複合体
●マレイミド類似体を介して媒体上に配置されたHLA-ミエリン-ペプチド複合体
●複合体のためのアンカー位置が、HLA結合溝の少なくとも幅だけ互いに離間されるようにフィルター媒体上に配置されたHLA-ミエリン-ペプチド複合体
●HLA Iおよび/またはHLA IIのいずれかであるHLAタンパク質の使用
●非ミエリン性多発性硬化症関連タンパク質に由来するHLAタンパク質および抗原ペプチドの複合体を含むホスト材料
●全血の他の画分から白血球を分離することができる血液分離装置を保持するように構成された第1段階領域
●入口、白血球出口、および他の画分の患者体内への戻りを可能にするように構成された血液分画出口を有する血液分離装置
●第1段階領域を通して患者から血液を運ぶための第1のポンプ
●ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含む生物学的フィルターを保持するように構成された第2段階領域
●1つ以上の入口および1つ以上の出口を有し、第1段階領域および第2段階領域が、血液分離装置の白血球出口から生物学的フィルターの1つ以上の入口への流れを可能にするように配向された第2段階
●生物学的フィルターの1つ以上の出口から生物学的フィルターの1つ以上の入口に白血球を再循環させるための第2のポンプ
●第1段階領域および第2段階領域を通して血液を導くための複数の電気的に制御可能な弁
●第1のポンプを制御して、一定量の白血球が分離され、第2段階領域に運ばれるまで、血液が第1段階領域を通って流れるように設定された1つ以上のプロセッサー
●一定量の白血球が分離され、第2段階領域に運ばれる時の第1のポンプの無効化
●第2のポンプを有効にし、複数の弁を制御して、病原性T細胞を非病原性白血球から分離するのに十分な時間、生物学的フィルターを通して一定量の白血球を再循環させる
●非病原性白血球の患者体内への戻し
●1つ以上のプロセッサーによって制御可能な複数の電気的に制御可能な弁は、第2のポンプが活性化され、第2段階の生物学的フィルターを通して一定量の白血球を再循環させる間、白血球が患者体内に戻されることを防止する
●1つ以上のプロセッサーによって制御可能な1つ以上の電子的に制御可能な弁は、第2のポンプが活性化され、第2段階の生物学的フィルターを介して一定量の白血球を再循環させる間、白血球が第1段階領域から第2段階領域へ移動することを防止する
●1つ以上のプロセッサーが、複数の電気的に制御可能な弁を制御して、白血球を第2段階領域においてバッチで処理させ、白血球の第1バッチを第2段階領域で再循環させ、その後、1つ以上のプロセッサーが白血球の第2バッチを第2段階の生物学的フィルターに入ることを可能にする前に、患者体内に戻すように構成される
●アフェレーシスを用いて血液を分離するように構成された血液分離装置
●遠心分離を用いて血液を分離するように構成された血液分離装置
●濾過を用いて血液を分離するように構成された血液分離装置
●白血球を細胞特異的マトリックスに機械的に結合するように構成された前記血液分離装置
●白血球と細胞特異的抗体との結合を可能にするように構成された血液分離装置
●前記1つ以上のプロセッサーが、患者体内に戻す前に、全血および/または非病原性白血球の画分を混合する血液混合装置を制御するように構成される、血液混合装置
●各層が、その上にヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を有する、複数の層からなる生物学的フィルター
●生物学的フィルターが収集された血液画分の約3~50mlを含有し得るサイズの第2段階領域
●前記第1のポンプおよび第2のポンプのうちの少なくとも1つが蠕動ポンプである
●血液分離装置内で分離する前に前記患者からの血液を貯蔵する血液貯蔵チャンバー
●動脈圧制御ユニット
●患者に全血の他の画分を戻す前に赤血球および生理食塩水を加えるために1つ以上の弁を制御するように構成された1つ以上のプロセッサー
●段階領域に抗凝固剤を供給するために1つ以上の弁を制御するように構成された1つ以上のプロセッサー
●病原性T細胞に選択的に結合するように構成された生物学的フィルター
●患者の血液から病原性T細胞を除去するためのチューブセット
●全血の他の画分から白血球を分離するのに使用する血液分離装置を有し、入口、白血球出口、および血液分画出口を有する第1段階領域を含むチューブセット
●ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含有し、1つ以上の一次入口、1つ以上の一次出口、1つ以上の再循環入口、および1つ以上の再循環出口を有する生物学的フィルターを含む第2段階領域を有するチューブセット
●1つ以上の再循環出口と再循環入口とを相互接続する再循環ループを有するチューブセット
●患者から第1段階領域の1つ以上の入口に血液を運ぶための1つ以上の血液吸引チューブ
●第1段階領域の白血球出口から第2段階領域の一次入口に血液を運ぶための1つ以上中間チューブ
●患者体内に戻すために第1段階領域の血液分画出口から血液画分を運ぶための1つ以上の第1段階バイパスチューブ
●患者体内に戻すために第2段階領域の一次出口から白血球を運ぶための1つ以上の白血球戻りチューブ
●第2段階領域の再循環入口と共通である第2段階領域の一次入口
●第2段階領域の再循環出口と共通である第2段階領域の一次出口
●共通のHLAおよび疾患関連T細胞の活性化を引き起こす共通のペプチドを共有する複数の患者の治療に関連する第1のデータを受け取るように構成された1つ以上のプロセッサーであって、疾患のさらなる進行において、より多数の異なるペプチドが、より早期の時点よりも疾患関連T細胞を活性化することを踏まえ、第1のデータが、T細胞を活性化する共通のペプチドの経時的な進行を含む1つ以上のプロセッサー
●共通のHLAおよび共通のペプチドを有する特定の患者に関連する第2のデータを受信するように構成され得る1つ以上のプロセッサーであって、患者は第1のペプチドセットが疾患関連T細胞の第1の亜集団を活性化し、第2のペプチドセットが疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化しない疾患の段階にある
●特定の患者におけるペプチドの第2のセットが疾患のさらなる進行に対応することを第1のデータを使用して決定するように構成された1つ以上のプロセッサー
●第2のペプチドセットが疾患関連T細胞の第2の亜集団を活性化する前に、特定の患者から疾患関連T細胞の第2のあ集団を除去するための改善措置を講じるのを補助するように構成された1つ以上のプロセッサー
●特定の患者から疾患関連T細胞の第2の亜集団を除去する命令を出力する
●将来有害な状態を引き起こすと予想される第2のペプチドセットを含むフィルターを構築する際に使用するための情報を出力する
●HLAタイピングおよび関連ペプチドに関する情報の分析
●HLA複合体からのペプチドのストリッピングおよびペプチド配列の決定
●血液分析に基づくHLAタイピングおよび前記ペプチドに関する情報が組織特異的および疾患関連の生体液の分析に基づくHLAタイピング
●脳脊髄液ペプチドデータの分析
●発症からの年数、症状、治療などの疾患関連パラメータの比較、HLAタイピング分析、および対応するHLAタンパク質によって提示されるペプチドの分析
●同じペプチドの変異体である第1のペプチドセットおよび第2のペプチドセット
●互いに異なる第1のペプチドセットおよび第2のペプチドセット
●疾患関連T細胞を活性化しない共通ペプチドの追加のセットを同定するように構成された1つ以上のプロセッサー
●ペプチドの追加のセットが疾患のさらなる進行に対応することの決定
●追加のペプチドセットが疾患関連T細胞の追加の亜集団を活性化する前に、患者から疾患関連T細胞の追加の亜集団を除去すること
●疾患関連T細胞の追加の亜集団を除去する命令の出力
●追加のペプチドセットを含むフィルターの構築に使用するためのデータの出力
●同定された追加のペプチドセットに基づいて患者の治療を調整するように構成された1つ以上のプロセッサー
●同定された第2のペプチドセットに基づく患者の治療の調整
●疾患関連T細胞の第1の亜集団および疾患関連T細胞の第2の亜集団の同時除去
●疾患関連T細胞の第1の亜集団、疾患関連T細胞の第2の亜集団、および疾患関連T細胞の追加の亜集団の同時除去
●ミエリン由来のペプチドまたはアクアポリンチャネルを含む非ミエリン中枢神経系タンパク質に焦点を当てた多発性硬化症の治療
●ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはそれらの組み合わせから由来するペプチドに焦点を当てる
●MBP87-99、MBP85-99、MBP83-96、MBP217-231、MBP88-102、MBP282-296、PLP91-110、PLP131-151、PLP283-252、PLP263-277、PLP58-72、PLP13-27、OPALIN46-60、OPALIN27-41、OPALIN127-141、MOG210-224、MOG29-43、MOG176-190、MOG225-239、OSP74-88、OSP114-128、MAG8-22、MAG467-481、MAG529-543、またはそれらの組み合わせに由来するペプチドに焦点を当てる
●特定の細胞を含む生体液の患者からの採取
●特定の細胞を媒体で捕捉するため、特定の細胞にのみ選択的に結合する媒体ホスト材料を通した生体液の体外流動
●捕捉された特定の細胞を除く生体液を患者体内に戻す
●全血または血液画分の少なくとも1つを生物学的に濾過する
●脳脊髄液の生物学的濾過
●骨髄の生物学的濾過
●滑液の生物学的濾過
●肺胞洗浄から得た液体の生物学的濾過
●腹水の生物学的濾過
●ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、ポリスチレン、アビジンおよび/またはストレプトアビジンを含む不活性表面
●ポリスルホンまたはポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(Ultem)、またはトリタンを1つ以上含む生物学的濾過媒体
●ポリスルホンを含む生物学的濾過媒体
●高分子電解質を含む生物学的濾過媒体
●シート材、液体、メッシュ構造、繊維、ゲル、またはビーズのうちの1つ以上を含む生物学的濾過媒体
●ヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体を含む生物学的濾過媒体であって、各前記HLA-ペプチド複合体がHLAタンパク質およびペプチドを含む
●HLA Iおよび/またはHLA II、またはそれらの切断型を含むHLAタンパク質を含む生物学的濾過媒体
●C末端にシステイン残基を含むように設計されたHLAを含む生物学的濾過媒体
●マレイミド類似体を介して媒体上に配置されたHLA-ペプチド複合体を含む生物学的濾過媒体
●抗体を含む生物学的濾過媒体
●生体液は生物学的濾過媒体を通して循環され、蠕動ポンプを用いて患者体内に戻される
●生物学的濾過媒体は流体を含む
●生物学的に濾過された特異的T細胞は、CD4+細胞またはCD8+細胞の1つ以上を含む
●自己免疫疾患に関連するタンパク質由来の抗原ペプチドに特異的なT細胞受容体で、T細胞を捕捉するように構成された生物学的フィルター
●多発性硬化症を治療するように構成された生物学的フィルター
●血液癌または固形癌を含む癌性疾患に関連する病原性細胞を捕捉するように構成された生物学的フィルター
●生物学的フィルターの構築の一部としての患者のヒト白血球抗原(HLA)型の同定
●患者の疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドの同定
●患者の決定されたHLA型および1つ以上の免疫原性ペプチドに対応する組換え、合成、または内因的に産生/作製されるHLA-ペプチド複合体
●生物学的フィルターの不活性表面媒体へのHLA-ペプチド複合体の結合
●HLAタンパク質および免疫原性ペプチドを含むHLA-ペプチド複合体の作製
●組換え的に産生されたHLAタンパク質および合成的に作製された免疫原性ペプチドを含むHLA-ペプチド複合体の作製
●HLA-ペプチド複合体の作製には、組換え的に産生されたHLAタンパク質および免疫原性ペプチドが含まれる
●患者から内因的に得られたHLA-ペプチド複合体の採取
●免疫原性ペプチドを同定するための脳脊髄液の検査
●複数の免疫原性ペプチドを同定するための脳脊髄液の検査
●血液分析および脳脊髄液分析または組織特異的疾患関連ペプチド分析のうちの少なくとも1つによって決定されたペプチドの同定によって決定されたHLAタイピング
●シート材、液体、メッシュ構造、繊維、ゲル、またはビーズのうちの1つ以上を含む生物学的フィルター
●ポリスルホン、ポリスルホン誘導体、ガラスマトリックス、シリコンマトリックス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(Ultem)、またはトリタンを1つ以上含む不活性表面媒体
●ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、ポリスチレン、アビジンまたはストレプトアビジンのうち1つ以上を含む不活性表面媒体
●マレイミド類似体を介して不活性フィルター表面に共有結合したHLA-ペプチド複合体
●病原性細胞を捕捉するために不活性表面媒体に結合するHLA-ペプチド複合体上に患者からの血液を流す
●白血病、急性白血病、癌、重症筋無力症(MG)、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症(MS)、真性赤血球増加症(PC、PCV)、血小板増加症、強皮症、1型糖尿病、乾癬、クローン病、または多発性硬化症のうちの少なくとも1つと関連する病原性細胞を捕捉するための生物学的フィルターの使用
●骨髄増殖性疾患またはウイルス、細菌、真菌、または寄生性感染のうちの少なくとも1つに関連する病原性細胞を捕獲する工程をさらに含む不活性表面媒体に結合したHLA-ペプチド複合体上に患者からの血液を流す
●前記1つ以上の免疫原性ペプチドの同定が、ペプチドを疾患関連免疫原性ペプチドのデータベース、および対応するHLAに対するそれらの結合親和性との比較を含む
●前記HLA型がHLA Iおよび/またはHLA IIである
●患者のヒト白血球抗原(HLA)型を同定することを含む方法
●患者の疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドの同定
●患者の同定されたHLA型に対応する組換え的または内因的に産生されるHLAタンパク質
●HLAタンパク質の不活性表面媒体への結合
●患者の疾患に関連する同定された1つ以上のペプチドの合成
●不活性表面媒体に結合したHLAタンパク質上の同定されたペプチドのロード
●不活性表面媒体に結合したHLAタンパク質を同時にロードおよび結合する
●不活性表面媒体に結合したHLAタンパク質を順次ロードおよび結合する
●同定されたHLAと共に患者においてT細胞受容体活性化を誘発する特異的疾患関連ペプチドの同定
●フィルターへのT細胞の結合のため、同定されたHLAに疾患関連ペプチドがロードされた複合体で構成されたフィルターに患者の血液を体外で暴露させる
●結合したT細胞を除去した血液を患者体内に戻す
●結合したT細胞を含むフィルターを分離剤にさらしてT細胞を除去し、除去したT細胞を計数する
●蛍光活性化細胞選別(FACS)を含むフローサイトメトリーを用いた計数されたT細胞
●計数されたT細胞数に基づいた疾患進行の推定
●T細胞数に基づいた患者の治療の変更
●HLA-ペプチド複合体を検出可能な標識に連結
●フルオロフォア、酵素、放射性同位元素、重金属、または核磁気共鳴マーカーのうち1つ以上を含む標識にHLA-ペプチド複合体を連結する
●生物学的濾過中の抗凝固剤の投与
●患者の疾患に関連する1つ以上の免疫原性ペプチドの同定
●同定された1つ以上の免疫原性ペプチドと疾患関連免疫原性ペプチドのデータベースおよび患者の対応するHLA型に対するそれらの結合親和性との比較
●合成的に作製されたペプチドへの組換え的に産生されたHLAペプチドの結合
●HLAタンパク質と組換え的に産生されたペプチドとの結合
●患者から内因的に得られ、生物学的フィルターを作製するために使用されるHLAタンパク質およびペプチド
●生物学的フィルターに組み込まれた特異的な疾患関連ペプチドは、自己免疫疾患、癌、または適応細胞性免疫応答を含む任意の他の疾患と関連する
●生物学的フィルターに組み込まれた疾患関連ペプチドが多発性硬化症と関連する
●生物学的フィルター中のHLA単量体または多量体
●HLA型は血液分析により同定する
●CD4+細胞またはCD8+細胞の少なくとも1つを捕捉するように設計された生物学的フィルター
●患者に対する年間数回の生物学的濾過の実施
●生物学的に濾過された血液を患者に戻す前に、栄養素または医薬組成物で血液を富化する
●第1のT細胞によって誘発され、第2のT細胞によって誘発されない自己免疫疾患を有する特定の患者についてのヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体データの取得
●特定の患者のHLA-ペプチド複合体データと、T細胞関連病理学を有する患者集団と関連するHLA-ペプチド複合体データとの比較であって、ここで、集団データは、第1のT細胞によって誘発される自己免疫疾患を有する人が、第2のT細胞によって誘発されるように経時的に進行することを示唆するエピトープ拡散情報を含む
●特定の患者の自己免疫疾患が、現在疾患を引き起こしていない第2のT細胞によって引き起こされる前に、患者から第2のT細胞を除去する
●特定の患者のためのHLA-ペプチド複合体データの取得には、HLAタイピングおよび関連ペプチドの分析が含まれる
●HLA型が、血液分析によって同定され、ペプチド分析は、脳脊髄液分析または組織特異的疾患関連ペプチド分析のうちの少なくとも1つによって実施される
●関連ペプチドの分析は脳脊髄液の検査を含む
●特定の患者のHLA-ペプチド複合体データを、T細胞関連病理学を有する患者集団と関連するHLA-ペプチド複合体データと比較することであって、発症からの年数、症状、および治療を含む疾患関連パラメータの比較、HLAタイピング分析、および対応するHLAタンパク質によって提示されるペプチドの分析を含む
●特定の患者のHLA-ペプチド複合体データと、T細胞関連病理を有する患者集団に関連するHLA-ペプチド複合体データとを比較することであって、相互のHLA型を共有する患者を比較することを含む
●分子間または分子内エピトープ拡散
●自己免疫疾患を引き起こす可能性のある3つ以上のT細胞群を特定し、疾患を引き起こす前にそれらを取り除く
●特定の患者の自己免疫疾患が追加のT細胞群によって引き起こされる前に、特定の患者から追加のT細胞群のT細胞を除去する
●同定された第2のT細胞に基づく患者の治療の調整
●第2のT細胞の除去に、第2のT細胞のT細胞受容体へのHLA-ペプチド複合体の結合が含まれる
●前記自己免疫疾患は多発性硬化症であり、T細胞はミエリンまたはアクアポリンチャネルを含む非ミエリン中枢神経系タンパク質に対して活性化可能である
●前記ミエリンは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)、オパリンタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)を1つ以上含む
●生物学的フィルターを用いて2種類以上のT細胞を除去する
●第1のT細胞と第2のT細胞の同時除去
●追加のT細胞群の細胞の除去には、追加のT細胞群の細胞のT細胞受容体へのHLA-ペプチド複合体の結合が含まれる
●前記追加のT細胞群の細胞が、生物学的フィルターによって除去される
●第1のT細胞、第2のT細胞、および追加のT細胞群の細胞の同時除去
●将来的に損傷を引き起こすと予測される追加のT細胞群に基づいて患者の治療を調整する
●第1の生体液サンプル中におけるヒト白血球抗原(HLA)の第1群からの天然ペプチドのストリッピング
●ストリッピングされた天然ペプチドの1つ以上の配列決定
●患者からストリッピングされ、除去された1つ以上のペプチド配列と、天然ペプチドの中の1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を決定するための既知の情報との比較
●複数のHLA-ペプチド複合体を形成するために1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のペプチドであるHLAの第2群へのロード
●複数のHLA-ペプチド複合体と第2の生体液サンプルとの接触
●第2の生体液サンプルと接触させた複数のHLA-ペプチド複合体について、複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量を測定する
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合する測定されたT細胞の量に基づいて、患者内の生体液量の疾患特異的病原性T細胞の量を推定する
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量を測定する前に、疾患特異的病原性T細胞に対する複数のHLA-ペプチド複合体の各々の結合親和性を測定、推定、または予測する
●正しい疾患特異的病原性T細胞が複数のHLA-ペプチド複合体に結合することの検証
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合する決定されたT細胞の量に基づく疾患の状態の評価
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合する測定されたT細胞の量と、疾患を有する患者の集団から測定されたT細胞の量との比較
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合する測定されたT細胞の量と、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する、以前に測定されたT細胞の量とを比較することによって疾患の治療レジメンの効力を評価する
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合する測定されたT細胞の量と、複数のHLA-ペプチド複合体に結合する、以前に測定されたT細胞の量との比較に基づいて治療レジメンを調整する
●複数のHLA-ペプチド複合体を含む生物学的フィルターの作製
●生物学的フィルターの作製が、1つ以上の疾患特異的配列を共有する複数のペプチドを合成することを含む
●生物学的フィルターの作製が、さらに、HLAを合成する工程、合成されたHLAを、1つ以上の疾患特異的配列を共有する合成された複数のペプチドと混合して合成されたHLA-ペプチド複合体を形成する工程、および合成されたHLA-ペプチド複合体を不活性表面媒体に適用する工程を含む
●HLAと検出可能なマーカーとの連結
●検出可能なマーカーが、フルオロフォア、酵素、放射性同位元素、重金属、および核磁気共鳴マーカーのうち1つ以上を含む
●複数のHLA-ペプチド複合体が、1つ以上の疾患特異的配列を共有する複数の合成的または組換え的に産生/作製されたペプチドを含む
●HLA-ペプチド複合体が、1つ以上の疾患特異的配列を共有する、または患者から内因的に得られる複数の合成的または組換え的に産生されたペプチドを含む
●質量分析計を用いて、ストリッピングされた天然ペプチドの1つ以上の配列を同定する
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合するT細胞の量が、フローサイトメトリーを用いて測定される
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合する一定量のT細胞が、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のペプチドを有する
●複数のHLA-ペプチド複合体に結合する一定量のT細胞が、複数の疾患特異的ペプチド配列を共有する複数のペプチドを含む
●患者が多発性硬化症を有する場合、前記1つ以上の疾患特異的ペプチド配列はミエリン関連タンパク質に由来するペプチドの配列である
●前記患者が1型糖尿病を有する場合、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列は、インスリンペプチドの配列、またはβ細胞タンパク質と関連する他のタンパク質である
●前記患者が重症筋無力症を有する場合、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列はアセチルコリン受容体ペプチドの配列である
●前記患者がクローン病を有する場合、1つ以上の疾患特異的ペプチド配列は消化管ペプチドの配列である
●前記生体液が、全血、血液画分、脳脊髄液、滑液、肺胞洗浄液、腹膜洗浄、リンパ液、または骨髄である
【0408】
他の実施形態は、本明細書に開示された実施形態の明細書および実施形態の考察から明らかであろう。本明細書及び実施例は、例示のみとして考慮されることが意図されており、開示された実施形態の真の範囲及び精神は、特許請求の範囲によって示されている。
【国際調査報告】