(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】特に宇宙船の放射線検出器用低温冷却器
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20220824BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
F25B9/00 311
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576901
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 FR2020051123
(87)【国際公開番号】W WO2020260842
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521562599
【氏名又は名称】レア リキード,ソシエテ アノニム プア レテュード エ レクスプロワタスィヨン デ プロセデ ジョルジュ クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バタワース ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】シャサン クレモン
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA07
5E322DA02
5E322DA04
5E322FA01
5E322FA04
(57)【要約】
本発明は、主に、低温領域と、低温領域が内部に配置された熱伝達流体の回路と、冷却すべき装置と熱交換するように構成された利用熱交換器とを有する低温冷却器に関し、この冷却器は、低温領域に流体的に接続された少なくとも1つの受動型の逆流防止弁を有し、熱交換器は、熱伝達流体の流れ方向において逆流防止弁の下流に配置された少なくとも1つの第1流体入口を備え、熱伝達流体が低温領域の端部から循環することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの圧力及び流量波発生器(110)と、
低温領域(121)を有する少なくとも1つのコールドフィンガー(120)であって、圧力及び流量波発生器(110)が流体的に接続されているコールドフィンガー(120)と、
少なくとも1つの熱伝達流体回路(130)と、
冷却すべき少なくとも1つの装置と熱交換するように構成された少なくとも1つの利用熱交換器(140)と、
を備えた低温冷却器(100)であって、
少なくとも、
回路(130)内に配置された第1逆止弁(150)及び第2逆止弁(151)であって、前記第1逆止弁及び第2逆止弁(150、151)のうちの少なくとも1つの逆止弁(150、151)が受動型の逆止弁であり、コールドフィンガー(120)に流体的に接続されている第1逆止弁(150)及び第2逆止弁(151)と、
前記少なくとも1つの利用熱交換器(140)であって、熱伝達流体の循環方向において前記第1逆止弁(150)の下流に配置された少なくとも1つの第1流体入口(141)と、熱伝達流体の循環方向において前記第2逆止弁(151)の上流に配置された少なくとも1つの第1流体出口(142)とを備えた利用熱交換器(140)と、
を有することを特徴とする低温冷却器。
【請求項2】
請求項1に記載の低温冷却器において、
2つのうちの少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの逆止弁(150,151)が、1つの、または直列に接続された複数のテスラダイオードを有する低温冷却器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の低温冷却器において、
利用熱交換器(140)が、複数の流体出口(142,144,146)に関連する複数の入口(141,143,145)を有する低温冷却器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の低温冷却器において、
低温領域(121)が、熱伝達流体が循環する少なくとも1つの第1熱交換領域(125)を有する低温冷却器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の低温冷却器において、
利用熱交換器(140)が、複数の流体出口(142,144,146)に関連する複数の入口(141,143,145)を有し、
低温領域(121)が、熱伝達流体が循環する少なくとも1つの第1熱交換領域(125)を有し、
利用熱交換器(140)の第1流体出口(142)が、低温領域(121)の第1熱交換領域(125)に流体的に接続され、該第1流体出口(142)は、熱伝達流体の循環方向において低温領域(121)の第1熱交換領域(125)の上流に配置されている低温冷却器。
【請求項6】
請求項1または2に記載の低温冷却器において、
利用熱交換器(140)が、複数の流体出口(142,144,146)に関連する複数の入口(141,143,145)を有し、
低温領域(121)が、熱伝達流体が循環する少なくとも1つの第1熱交換領域(125)を有し、
さらに、
利用熱交換器(140)の第1流体出口(142)が、低温領域(121)の第1熱交換領域(125)に流体的に接続され、該第1流体出口(142)は、熱伝達流体の循環方向において低温領域(121)の第1熱交換領域(125)の上流に配置され、
及び/または、
利用熱交換器(140)の第2流体入口(143)が、低温領域(121)の第1熱交換領域(125)に流体的に接続され、該第2流体入口(143)は、熱伝達流体の循環方向において低温領域(121)の端部(121)の第1熱交換領域(125)の下流に配置されている低温冷却器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の低温冷却器において、
熱交換領域を形成する少なくとも1つの熱伝達流体入口(141,143,145)と熱伝達流体出口(142,144,146)とをそれぞれが有する複数の利用熱交換器を備えている低温冷却器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の低温冷却器において、
熱伝達流体の循環方向において第1逆止弁(150)の下流に配置され、且つ低温領域(121)のレベルで抽出された圧力及び流量波を平滑化するように構成された少なくとも1つの第1バッファタンク(152)を備えている低温冷却器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の低温冷却器において、
熱伝達流体の循環方向において第2逆止弁(151)の上流に配置され、且つ低温領域(121)のレベルに到達する圧力及び流量波を平滑化するように構成された少なくとも1つの第2バッファタンク(153)を備えている低温冷却器。
【請求項10】
請求項8または9に記載の冷却器において、
2つのバッファタンクの少なくとも1つは、熱伝達流体回路の一部によって構成されている冷却器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の冷却器において、
前記冷却器(100)がパルス管式またはスターリング式であることを特徴とする冷却器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の冷却器において、
コールドフィンガー(120)が、前記熱伝達流体回路(130)と流体的に通じていることを特徴とする冷却器。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1つに記載の冷却器において、
コールドフィンガー(120)が前記熱伝達流体回路(130)と流体的に通じておらず、熱伝達流体回路(130)の低温端部に接続された小型の圧力及び流量波発生器(110)を有することを特徴とする冷却器。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1つに記載の冷却器において、
コールドフィンガー(120)が、前記熱伝達流体回路(130)と流体的に通じておらず、圧力・流量波発生器(110)とコールドフィンガー(120)とを流体的に接続するT型直接分岐部(160)を有することを特徴とする冷却器。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の冷却器において、
冷却すべき複数の装置と熱交換するように構成された複数の利用熱交換器を有する冷却器。
【請求項16】
少なくとも1つの放射線検出器と、請求項1から15のいずれか1つに記載の低温冷却器(100)とを備えた空間装置であって、
冷却器の利用熱交換器(140)が放射線検出器を冷却するように構成されている空間装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「クライオクーラー」と呼ばれる低温冷却器の技術分野に関する。本発明は、より詳細には、例えば人工衛星や宇宙探査機などの宇宙船において冷却を必要とする放射線検出器や他の要素を冷却するための低温冷却器を対象とする。
【背景技術】
【0002】
スターリング式やガスチューブ式の低温冷却器は、「作動ガス」と呼ばれる気体が所定の圧力で充填されたシステムであり、気体に圧力及び流量波(pressure and flow-rate wave)を発生させるピストンを備えている。この圧力及び流量波は、システムのコールドフィンガーを低温にするために使用される。
【0003】
このように、低温冷却器は、例えば圧縮機などの圧力及び流量波発生器と、コールドフィンガーとを有する。圧力及び流量波発生器は、コールドフィンガー内で圧力及び流量波を伝達し、それによって、例えば人工衛星の放射線検出器などの冷却すべき部材を冷却するために、コールドフィンガーの低温領域において、-200℃程度及びさらに低い所定温度に下がる低温を発生させることができる。
【0004】
宇宙の分野では、故障を直すための介入は非常に困難である。したがって、この問題を解決する安全な方法は、一方が機能しながら他方は最初のひとつが故障した場合のみに機能する、2つの低温冷却器を実装することである。この方法の大きな欠点は、第1冷却器が機能している間は第2冷却器が機能しないにもかかわらず、そのコールドフィンガーには熱伝導性が残ることであり、その理由は、どちらかの冷却器が故障した場合に冷却器を確実に切り替えるために、それらの低温領域が熱的に接続されていなければならないからである。しかし、第2冷却器のコールドフィンガーにおける熱伝導性に関するすべては、動作中の第1冷却器のコールドフィンガーを介する。1つの解決策として、熱供給を回避するために第2冷却器の低温領域を切り離すことが考えられる。
第2冷却器の低温領域を切り離すために、各冷却器の各低温領域をサーマルループと呼ばれる熱的閉回路内に配置し、その熱的閉回路において低温領域と被冷却部材との間で熱伝達流体を循環させる解決策が知られている。この構成では、第2冷却器の低温領域が配置されたサーマルループが非作動状態のままで熱供給が生じないように、1つのサーマルループのみを選択的に作動させることができる。これらのサーマルループのそれぞれには、熱伝達流体をループ内で循環させるための機械的なサーキュレータタイプの要素を含ませることができる。したがって、これらのサーキュレータの1つを作動させることにより、そのサーキュレータを含むサーマルループが作動する。
【0005】
熱伝達流体を循環させる別の方法として、ループを圧力及び流量波発生器の出口に逆止弁の系統により接続し、交互の圧力及び流量波を連続した流れに整流する方法がある。この構成において、冷却器の作動ガスはループ内の熱伝達流体と同種であり、言い換えると作動ガスと熱伝達流体は同一である。作動ガスは熱伝達流体と流体的に通じている。圧力及び流量波発生器の機能が停止した場合、ループ内の熱伝達流体の流れが止まり、それに関連する低温領域が熱的に絶縁される。この構成では、「熱抽出(hot-extraction)」と呼ばれる圧力及び流量波発生器と低温領域とを結ぶ伝達ラインからの熱伝達流体の抽出が、熱伝達流体が高温の時に行われた後に、この熱伝達流体が「対向流」熱交換器に搬送され、その後に、低温領域に熱的に接続された熱交換器に流入する。熱伝達流体が冷却されると、熱伝達流体は利用交換器を通過した後に、搬送ラインから再び低温領域に向かって下降する作動ガスを冷却するために対向流交換器内を上昇する。この構成では、極めて高温のガスが低温部に直接送られるのを回避できるが、対向流熱交換器を使用する必要があり、そのことによって、対向流熱交換器における大きな圧力損失、熱交換器での放熱による大きな損失、及び低温領域を接続する複雑な流体回路などの問題が生じるおそれがある。特許文献1には、この原理に基づいて動作するシステムが記載されているが、その目的は低温領域への熱伝達の最適化であり、使われていない低温冷却器の熱絶縁ではない。
【0006】
特許文献2には、振動波エンジンまたは冷凍機が記載されている。熱伝達ガスループは、エンジンまたは冷凍機の本体内の作動ガスと流体的に通じている。熱伝達ガスループ内の少なくとも1つの流体ダイオードは、作動ガスから発生する振動流に重なる連続流成分を生成する。一般に、ガスループの寸法と流体ダイオードの位置は、ガスループを共振させるように選択される。作動ガスから熱伝達ガスループへの抽出は、エンジンまたは冷蔵庫の高温交換器(高温抽出)の近くまたは低温熱交換器(低温抽出)の近くで行うことができる。第2の熱伝達流体は、ガスループの外側部分と熱的に接している。特許文献2によれば、共振ループは、非常に高い周波数のパルス管または非常に長いループにのみ適しているようである。さらに、ガスループは、ガスループへの、またはガスループからの熱伝達のために第2の熱伝達流体と交換する。説明されているガスループは、高出力エンジンまたは冷凍機の熱交換容量を大きくするように構成され、使われていないコールドフィンガーの熱絶縁手段には相当しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許第100557345号明細書
【特許文献2】米国特許第6,637,211号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述の問題のすべてまたは一部を解消することであり、特に、対向流交換器を使用せずに、そして共振システムによって課される幾何学的及び周波数的な制約を受けずに、ここに記載されたものよりも有利な熱伝達流体の抽出を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明の対象は低温冷却器であり、この低温冷却器は、
少なくとも1つの圧力及び流量波発生器と、
低温領域を有する少なくとも1つのコールドフィンガーであって、圧力及び流量波発生器が流体的に接続されているコールドフィンガーと、
少なくとも1つの熱伝達流体回路と、
冷却すべき少なくとも1つの装置と熱交換するように構成された少なくとも1つの利用熱交換器と、を備え、
少なくとも、
回路内に配置された第1逆止弁及び第2逆止弁であって、前記第1逆止弁及び第2逆止弁のうちの少なくとも1つの逆止弁が受動型の逆止弁であり、コールドフィンガーに流体的に接続されている第1逆止弁及び第2逆止弁と、
前記少なくとも1つの利用熱交換器であって、熱伝達流体の循環方向において前記第1逆止弁の下流に配置された少なくとも1つの第1流体入口と、熱伝達流体の循環方向において前記第2逆止弁の上流に配置された少なくとも1つの第1流体出口とを備えた利用熱交換器と、
を有することを特徴とする。
【0010】
有利なことに、本発明の構成によれば、冷却器の圧力及び流量波発生器によって発生した圧力及び流量波の一部が低温領域のレベルで抽出され、それによって高温抽出よりも有利な低温抽出が可能になる。さらに、この構成では、熱的な接続と熱的な遮断の両方を組み合わせることが可能になる。また、この構成では、従来技術の構成においてほとんど不可能であった、例えば15K程度の低温での動作も可能になる。そして、この構成では、冷却すべき装置の利用熱交換器に冷熱を容易に分配できる。
【0011】
有利なことに、前述の特許文献2とは逆に、熱交換流体は利用側と直接に熱交換する。
【0012】
さらに、本発明によれば、熱伝達流体回路は、コールドフィンガーを利用側から熱的に遮断するために使用され、その結果、使用していない冷却器から生する熱負荷を制限できる。
【0013】
本発明の特徴によれば、第1逆止弁と第2逆止弁は受動型の逆止弁である。
【0014】
本発明において、「受動型の逆止弁」は、いかなる可動要素も用いずに一方向への流体の循環を推進するように形状が定められた構成の受動的な逆止弁のことである。
【0015】
本発明の特徴によれば、2つのうちの少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの逆止弁が、1つの、または直列に接続された複数のテスラダイオードを有する。
【0016】
米国特許第1,329,559号明細書に記載されているように、テスラダイオードの利点は、非対称のインピーダンスを有することであり、したがって、通過する流体の流れは非対称で、流体、好ましくは気体を逆方向以外の方向に通過させることを可能にする。さらに、テスラダイオードを使用すると、機械式の弁とは異なり、部品の摩耗に起因する信頼性や欠陥に関する問題が生じないため、特に宇宙探査機及び宇宙船への適用において特に信頼性が高い。
【0017】
本発明の特徴によれば、第1逆止弁は、低温領域における圧力及び流量波の正の偏位運動中に、熱伝達流体の通過を可能にするように構成された逆止弁である。
【0018】
圧力及び流量波発生器は、熱伝達流体に、ほぼ平均圧力値の所定の周波数の圧力振動を発生させる。したがって、この平均圧力に対して、連続した正と負の圧力の偏位運動が発生する。
【0019】
本発明の特徴によれば、第2逆止弁は、低温領域における圧力及び流量波の負の偏位運動中に熱伝達流体の通過を可能にするように構成された逆止弁である。
【0020】
本発明の特徴によれば、利用熱交換器は、複数の流体出口に関連する複数の入口を有する。
【0021】
本発明の特徴によれば、利用熱交換器は、少なくとも1つの第2流体入口、第2流体出口、第3流体入口及び第3流体出口を有する。
【0022】
本発明の特徴によれば、低温領域は、熱伝達流体が循環する少なくとも1つの第1熱交換領域を有する。
【0023】
本発明の特徴によれば、低温領域は複数の熱交換領域を有する。
【0024】
有利には、低温領域は、低温領域の少なくとも1つの第1熱交換領域を統合する低温領域熱交換器を有する。
【0025】
本発明の特徴によれば、低温領域は複数の低温領域熱交換器を有する。
【0026】
本発明の特徴によれば、第1逆止弁の出口は、利用熱交換器の第1入口に流体的に接続される。
【0027】
本発明の特徴によれば、利用熱交換器の第1流体出口が、低温領域の第1熱交換領域に流体的に接続され、該第1流体出口は、熱伝達流体の循環方向において低温領域の第1熱交換領域の上流に配置されている。
【0028】
本発明の特徴によれば、利用熱交換器の第2流体入口は、低温領域の第1熱交換領域に流体的に接続され、この第2流体入口は、熱伝達流体の循環方向において低温領域の第1熱交換領域の下流に配置される。
【0029】
本発明の特徴によれば、利用熱交換器の第2流体出口は、低温領域の第2熱交換領域に流体的に接続され、この第2流体出口は、熱伝達流体の循環方向において低温領域の第2熱交換領域の上流に配置される。
【0030】
本発明の特徴によれば、利用熱交換器の第3流体入口が、低温領域の第2熱交換領域に流体的に接続され、この第3流体入口は、熱伝達流体の循環方向において低温領域の第2熱交換領域の下流に配置される。
【0031】
本発明の特徴によれば、利用熱交換器の第3流体出口が、第2逆止弁に流体的に接続され、この熱交換器の第3流体出口は、熱伝達流体の循環方向において第2逆止弁の上流に配置される。
【0032】
本発明の特徴によれば、第1逆止弁と第2逆止弁は、低温領域に直通ラインで流体的に接続されている。
【0033】
本発明の特徴によれば、冷却器は、熱交換領域を形成する少なくとも1つの熱伝達流体入口と熱伝達流体出口とをそれぞれが有する、複数の、例えば3つの利用熱交換器を備える。
【0034】
低温領域の熱交換領域と利用熱交換器とにおいて熱伝達流体の循環を可能にすることには、利用熱交換器と低温領域とにおける1つの単一通路と比較して、冷却能力が最適化される効果がある。したがって、熱伝達流体の流量が同じであれば、熱伝達効率は3倍になる。
【0035】
言い換えると、低温領域は、熱交換を最適化するために、熱交換領域をより多くしてもより少なくしてもよい(交換領域の数は0以上)。一般に、利用熱交換器は、低温領域よりも1つ多い熱交換領域を有することになる。
【0036】
本発明の特徴によれば、冷却器は、熱伝達流体の循環方向において第1逆止弁の下流側に配置され、且つ熱伝達流体が回路内で連続的に流れるように、第1逆止弁によって整流された圧力及び流量波を平滑化するように構成された少なくとも1つの第1バッファタンクを有する。
【0037】
本発明の特徴によれば、冷却器は、熱伝達流体の循環方向において第2逆止弁の上流に配置され、且つ低温領域によって再注入される前に第2逆止弁によって整流された圧力及び流量の波を平滑化するように構成された少なくとも1つの第2バッファタンクを有する。
【0038】
本発明の特徴によれば、第1タンク内の熱交換流体の圧力は、第2バッファタンク内の熱伝達流体の圧力よりも高い。
【0039】
本発明の特徴によれば、低温領域と利用熱交換器との間で伝達される熱量は、熱伝達流体の流れの質量流量に熱伝達流体の比熱を乗じたものに、低温領域と熱交換器との間の温度差を乗じたものに等しい。有利なことに、低温領域の圧力が上昇すると熱伝達流体の一部が第1バッファタンクに注入される。低温領域の圧力が低下すると第2バッファタンクから熱伝達流体が吸い込まれて2つのバッファタンクの間に圧力差が生じ、この圧力差によって熱伝達流体が回路内を循環する。
【0040】
本発明の特徴によれば、熱伝達流体は気体であり、好ましくはヘリウムである。
【0041】
本発明の特徴によれば、2つのバッファタンクの少なくとも1つは、熱伝達流体回路の一部によって構成される。
【0042】
実際には、熱伝達流体回路の一部を局所的に大きくすることでバッファタンクを構成してもよい。
【0043】
本発明の特徴によれば、低温冷却器はパルス管式またはスターリング式の冷却器である。
【0044】
本発明において、「スターリングエンジンまたは冷却器」は、外燃機関(external energy engine)または冷却器のことである。主流体は、定容加熱、等温膨張、定容冷却、等温圧縮の4つの行程を有するサイクルを受ける気体である。
【0045】
本発明の特徴によれば、低温領域と利用熱交換器の間の熱結合部は、長さが0.5メートルより大きく、好ましくは1メートルと3メートルの間の長さを有するとよい。
【0046】
本発明の特徴によれば、冷却器は、冷却すべき複数の装置と熱交換するように構成された複数の利用熱交換器を有する。
【0047】
一実施形態によれば、コールドフィンガーは、前記熱伝達流体回路と流体的に通じている。
【0048】
他の実施形態によれば、コールドフィンガーは、前記熱伝達流体回路と流体的に通じておらず、冷却器は、熱伝達流体回路の低温端部に接続された小型の圧力及び流量波発生器を有する。
【0049】
他の実施形態によれば、コールドフィンガーは、前記熱伝達流体回路(130)と流体的に通じておらず、冷却器は、圧力及び流量波発生器とコールドフィンガーとを流体的に接続するT型直接分岐部を有する。
【0050】
また、本発明は、少なくとも1つの放射線検出器と、本発明に係る低温冷却器とを備えた空間装置(spatial set)を対象とし、利用熱交換器が放射線検出器を冷却するように構成されている。
【0051】
放射線検出器は、赤外線、X線、ガンマ線、高周波放射線、または他の種類の電磁放射線もしくは粒子線の検出器にすることができる。
【0052】
本発明は、非限定的な例として提示されるとともに添付の概略図を参照して説明される、本発明に係る実施形態に関する以下の説明によって、よりよく理解されるものである。添付の図面は概略図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る低温冷却器の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態に係る低温冷却器の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3実施形態に係る低温冷却器の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第4実施形態に係る低温冷却器の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の第5実施形態に係る低温冷却器の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第6実施形態に係る低温冷却器の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の第7実施形態に係る低温冷却器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明に係る低温冷却器100は、
図1から
図5に示されているように、実施形態にかかわらず、圧力及び流量波発生器と、低温領域121を有するコールドフィンガー120と、熱伝達流体回路130と、冷却すべき装置(図示せず)と熱量を交換するように構成された少なくとも1つの利用熱交換器140、241、242とを備えている。冷却すべき装置は、有利には、人工衛星または宇宙探査機に統合されるように構成された電磁放射線または粒子線の検出器で構成できる。
【0055】
実施形態にかかわらず、低温冷却器100は、第1逆止弁150と第2逆止弁151とを備える。第1逆止弁150及び第2逆止弁151は、回路130内の低温領域121の両側に配置されている。
【0056】
図示の例では、冷却器100の回路の実施形態に関わらず、第1逆止弁及び第2逆止弁は、例えばテスラダイオードのような受動型の逆止弁である。第1逆止弁150及び第2逆止弁151は、直通ライン131によって低温領域121に流体的に接続されている。
【0057】
図1,2,4,5に示された実施形態では、コールドフィンガー120は、圧力波発生器110の先端の低温領域121と、圧力波発生器110の基部の高温端部122とを有する。コールドフィンガー120の本体には、周囲に再生器124が配置されたパルス管123が配置されている。
【0058】
さらに、圧力及び流量波発生器110と低温領域120とを流体的に接続する移送ライン101が設けられている。
【0059】
図3に示す実施形態では、低温領域121は、実質的に再生器124とパルス管123の間に配置されている。したがって、低温領域は中央に位置する。
【0060】
第2及び第5実施形態によれば、低温領域121は、それぞれで熱伝達流体が循環する第1熱交換領域125及び第2熱交換領域126を有する。
【0061】
有利には、低温領域121は、低温領域121の第1熱交換領域125及び第2熱交換領域126を統合した低温領域熱交換部を有する。
【0062】
図1では、第1実施形態に係る回路130を有する本発明に係る低温冷却器100が示されている。この第1実施形態では、熱伝達流体は以下のように循環する。流体は、低温領域121を第1及び第2逆止弁150,151に接続する直通ライン131から始まって、好ましい循環方向へ向かう流路を有する第1逆止弁150へ向かって流れるので、流体は好ましくはこの方向へ循環する。流体は、回路130内の流体の圧力を平滑化するように構成された第1バッファタンク152に到達する。熱伝達流体は、冷却すべき装置と交換するように構成された利用熱交換器140の第1流体入口141へ向かう。流体は、第1出口142を通って交換器140から流出し、交換器から出てくる流体の圧力を再び平滑化するように構成された第2バッファタンク153へ向かう。その後、流体は、循環方向が第1逆止弁150と同じに構成された第2逆止弁151を通過する。
【0063】
この構成では、動作時の熱伝導は実質的に0.12W/Kである。
【0064】
図2では、第2実施形態に係る回路130を有する本発明に係る低温冷却器100が示されている。この第2実施形態では、熱伝達流体は以下のように循環する。流体は、低温領域121を第1及び第2逆止弁150,151に接続する直通ライン131から始まって、好ましい循環方向へ向かう流路を有する第1逆止弁150の方へ流れるので、流体は好ましくはこの方向へ循環する。流体は、回路130内の流体の圧力を平滑化するように構成された第1バッファタンク152に到達する。熱伝達流体は、冷却すべき装置と交換するように構成された熱交換器140の第1流体入口141へ向かう。流体は、第1出口142を通って交換器140から流出し、低温領域121の第1熱交換領域125へ向かう。流体は、第1交換領域125を通過すると、再び交換器140に向かって第2入口143へ流入して第2出口144から流出し、低温領域121の第2の熱交換領域126へ向かう。流体は、第2熱交換領域126を通過すると、再び交換器140に向かって第3入口142へ流入して第3出口146から流出し、交換器140から流出する流体の圧力を平滑化するように構成された第2バッファタンク153へ向かう。その後、流体は、循環方向が第1逆止弁150と同じに構成された第2逆止弁151を通過する。
【0065】
この構成では、熱伝達流体が熱交換器140内を3回通過するため、冷却器の起動/停止の熱伝導比が1750より小さくて、動作時の熱伝導性が0.35W/Kまで増加する。
【0066】
また、冷却器の性能を向上させるために、熱伝達流体が熱交換器140の中を6回以上通過することも可能である。熱伝導性が直線的に変化し、冷却器の起動/停止の熱伝導比が1800で、0.72W/K程度の動作時の熱伝導性を期待できる。
【0067】
図3には、第3実施形態に係る回路130を備えた本発明に係る低温冷却器100が示されている。この第3実施形態は、第1及び第2逆止弁150,151の間に直通ライン131を有していない点で、
図1,
図2,
図4及び
図5に示された実施形態とは異なる。熱伝達流体は、低温領域121の全体を循環する。
【0068】
第4実施形態では、熱伝達流体は、直通ライン131から第1逆止弁150に向かって循環する。流体は、回路130内の流体の圧力を平滑化するように構成された第1バッファタンク152に到達する。次に、熱伝達流体は、冷却すべき第1の装置と交換するように構成された利用熱交換器140の第1流体入口141へ向かう。流体は、第1出口142を通って交換器140から流出する。次に、熱伝達流体は、冷却すべき第2の装置と交換するように構成された第2利用熱交換器241の第1流体入口341へ向かう。流体は、第1出口342を通って交換器241から流出する。次に、熱伝達流体は、冷却すべき第3の装置と交換するように構成された第3利用熱交換器242の第1流体入口441へ向かう。流体は、第1出口442を通って交換器242から流出する。最後に、熱伝達流体は、交換器から流出する流体の圧力を再び平滑化するように構成された第2バッファタンク153に向かう。その後、流体は、第1逆止弁150と循環方向が同じに構成された第2逆止弁151を通過する。
【0069】
第5実施形態では、熱交換流体は、直通ライン131から第1逆止弁150に向かって循環する。流体は、回路130内の流体の圧力を平滑化するように構成された第1バッファタンク152に到達する。次に、熱伝達流体は、冷却すべき第1の装置と交換するように構成された利用熱交換器140の第1流体入口141へ向かう。流体は、第1出口142を通って交換器140から流出し、低温領域121の第1熱交換領域125へ向かう。流体は、第1交換領域125を通過すると、次に、冷却すべき第2の装置と交換するように構成された第2利用熱交換器241の第1流体入口341へ向かう。流体は、第1出口342を通って交換器241から流出し、低温領域121の第2熱交換領域126へ向かう。流体は、第2交換領域126を通過すると、次に、冷却すべき第3の装置と交換するように構成された第3利用熱交換器242の第1流体入口441へ向かう。流体は、第1出口442を通って交換器242から流出する。最後に、熱伝達流体は、交換器から流出する流体の圧力を再び平滑化するように構成された第2バッファタンク153へ向かう。その後、流体は、循環方向が第1逆止弁150と同じに構成された第2逆止弁151を通過する。
【0070】
図6に模式的に示されている第6実施形態では、本発明に係る低温冷却器100は、コールドフィンガー120が前記熱伝達流体回路130と流体的に通じていない点と、熱伝達流体回路130の低温端部に流体的に通じる小型の圧力及び流量波発生器を有する点で、先に説明した実施形態とは異なる。
【0071】
図7に模式的に示されている第7実施形態では、本発明に係る低温冷却器100は、コールドフィンガー120が前記熱伝達流体回路130と流体的に通じていない点と、前記圧力及び流量波発生器とコールドフィンガー120とを流体的に接続するT型直通分岐部160を有する点で、先に説明した実施形態とは異なる。冷却器の電源を入れるとすぐに加熱スイッチが作動する。
【0072】
この統合は、冷却器への影響が最も少ないことに留意すべきである。もちろん、本発明は、添付の図に記載され示された実施形態には限定されない。本発明は、その範囲から逸脱することなく、特に様々な要素の構成に関して、または技術的に等価なもので置き換えることによって、変更することが可能である。
【国際調査報告】