(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】コーティングされた電池セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/423 20210101AFI20220824BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20220824BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220824BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20220824BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20220824BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220824BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20220824BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220824BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220824BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01M50/423
H01M50/449
H01M50/403 D
H01M50/426
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/403 A
C08G73/10
B32B27/34
B32B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577308
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020068210
(87)【国際公開番号】W WO2021001300
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビーソ, マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ソルミ, マティルデ バレリア
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
5H021
【Fターム(参考)】
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK19B
4F100AK27B
4F100AK41A
4F100AK42A
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4F100AK57B
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4J043PA02
4J043QB15
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4J043YB15
4J043ZB47
5H021BB01
5H021BB12
5H021BB19
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
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5H021EE15
5H021EE17
5H021EE20
5H021EE34
5H021HH01
5H021HH07
(57)【要約】
本発明は、塩の形態のポリアミド-イミドポリマー、及びセパレータなどの電気化学セル構成要素の製造のためのその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおいて使用するためのコーティングされたセパレータの製造方法であって、
i)コーティングされていない基材層[層(P)]を準備する工程と、
ii)水性媒体と、少なくとも1種の塩形態のポリアミド-イミドポリマー(PAI-塩)とを含有する水性組成物(C)を準備する工程であって、前記PAI-塩が、一般式(R
PAI-a)、(R
PAI-b)、及び(R
PAI-c)のうちのいずれかの単位からなる群から選択される繰り返し単位R
PAIを50モル%より多く含むが、R
PAI-cが塩形態のポリアミド-イミド(PAI-塩)中の繰り返し単位の少なくとも30モル%を占めることを条件とする工程:
【化1】
(式中、
- Arは、三価の芳香族基であり;好ましくはArは以下の構造:
【化2】
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択され;
Xは、-O-、-C(O)-、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
n-からなる群から選択され、nは1~5の整数であり;
Xは、-O-、-C(O)-、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、及び-(CF
2)
p-からなる群から選択され;nは、1~5の整数であり;
Rは、
【化3】
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択される二価の芳香族基であり;
Yは、-O-、-S-、-SO
2-、-CH
2-、-C(O)-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
q-からなる群から選択され、qは0~5の整数であり;
Cat
+は、好ましくはアルカリ金属カチオンから選択される一価カチオンであり、より好ましくはNa
+、K+、及びLi
+から選択され、さらに好ましくはLi
+である);
iii)工程ii)で得られた前記組成物(C)を、前記基材層(P)の少なくとも一部に少なくとも部分的に塗布し、これにより少なくとも部分的にコーティングされた基材層を得る工程と、
iv)工程iii)で得られた前記少なくとも部分的にコーティングされた基材層を乾燥させてコーティングされたセパレータを得る工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記層(P)が多孔質基材である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記層(P)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、及びポリプロピレン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Cat
+がLi
+であり、前記PAI-塩がLiPAIである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記LiPAI中の前記繰り返し単位R
PAI-a、R
PAI-b、及びR
PAI-cが、それぞれ下記式の単位:
【化4】
である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記LiPAI中の前記繰り返し単位R
PAI-a、R
PAI-b、及びR
PAI-cが、それぞれ下記式の単位:
【化5】
である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記LiPAI中の前記繰り返し単位R
PAI-a、R
PAI-b、及びR
PAI-cが、それぞれ下記式の単位:
【化6】
である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
Cat
+がNa
+である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水性媒体が本質的に水を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物(C)が、少なくとも1種の湿潤剤及び/又は少なくとも1種の界面活性剤を更に含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物(C)が、1重量%~15重量%に含まれる総固形分を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(iii)において、工程(ii)で得られた前記組成物(C)が、キャスト、スプレーコーティング、回転スプレーコーティング、ロールコーティング、ドクターブレード、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング、及びスクリーン印刷、ブラシ、スキージ、泡付与装置、カーテンコーティング、真空コーティングから選択される技術によって、前記基材層(P)の少なくとも1つの部分に少なくとも部分的に塗布される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基材層(P)が組成物(C)の塗布前に予熱される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程iv)で得られた前記コーティングされたセパレータをホットプレスする工程を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって得られる、電気化学セルのためのコーティングされたセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月1日出願の欧州特許出願公開第19183737.6号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、塩の形態のポリアミド-イミドポリマー、及びセパレータなどの電気化学セル構成要素の製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、私たちの日常生活に欠かせないものになっている。持続可能な開発の観点では、電気自動車及び再生可能エネルギー貯蔵での使用がますます注目されているため、リチウムイオン電池は、より重要な役割を果たすことが期待されている。
【0004】
セパレータ層は電池の重要な構成要素である。これらの層は、電解質がここを通過できるようにしながら、電池の正極と負極との接触を防止する機能を果たす。更に、サイクル寿命及び電力などの電池性能属性は、セパレータの選択によって大きく影響を受ける可能性がある。
【0005】
現行の技術のリチウム二次電池では、6~30マイクロメートルの厚さを有するポリオレフィンベースの多孔質フィルムがセパレータとして使用されている。セパレータの材料のためには、いわゆるシャットダウン効果を確保するために、すなわち電池の熱暴走(異常加熱)温度以下でセパレータの樹脂を溶融させて細孔を塞ぐことによって電池の内部抵抗を高め、短絡時などの電池の安全性を向上させるために、低融点のポリエチレン(PE)を使用することができる。
【0006】
セパレータについては、例えば、多孔性を付与し、強度を向上させるために、一軸又は二軸延伸されたフィルムが使用される。伸びのためフィルムに歪みが生じ、その結果、高温にさらされると残留応力により収縮が起こる。収縮温度は、融点、つまりシャットダウン温度に非常に近い。そのため、ポリオレフィンベースの多孔質フィルムセパレータを使用する場合、充電異常等のため電池温度がシャットダウン温度に到達した際には、電池温度の上昇を防止するために直ちに電流を下げなければならない。細孔が十分に閉じておらず、すぐに電流を下げることができない場合には、電池の温度がセパレータの収縮温度まで上昇しやすく、内部短絡による熱暴走のリスクが生じる。
【0007】
熱収縮によって生じる短絡を防止するために、耐熱性樹脂の微孔フィルム又は不織布のセパレータを使用する方法が提案されてきた。例えば、欧州特許第3054502号明細書(旭化成株式会社)には、ポリオレフィン微孔フィルムと、ポリオレフィン微孔フィルムの少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆う熱可塑性ポリマーコーティング層とを有する多孔質フィルムから形成されたセパレータが開示されており、ここでの熱可塑性ポリマーコーティング層は、ジエンポリマー、アクリルポリマー、及びフッ素ポリマーからなる群から選択される熱可塑性ポリマーを含む。
【0008】
上述した耐熱性樹脂製のセパレータは、高温での寸法安定性が優れており、薄くすることができるが、いわゆるシャットダウン特性、すなわち細孔が高温で閉じる特徴を有しておらず、セパレータの異常時、特に外部短絡又は内部短絡によって電池温度が急激に上昇した場合に、十分な安全性を得ることができない。
【0009】
そのような問題を解決するための技術として、例えば、米国特許第9343719号明細書(三菱樹脂株式会社)には、多孔質ポリオレフィン樹脂フィルムの少なくとも1つの表面に積層された金属酸化物とポリマーバインダーとを含む多孔質層から製造されたセパレータが示されている。セパレータは、多孔質ポリオレフィン樹脂フィルムの少なくとも1つの表面に、金属酸化物と、ポリマーバインダーと、揮発性酸とを含むコーティング溶液を塗布することによって製造される。
【0010】
多孔質ポリオレフィン樹脂フィルムのコーティングとして使用するためのポリアミド-イミド(PAI)に基づく新しいバインダーが研究されてきた。しかしながら、ほとんどのPAIは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒にのみ溶解する。
【0011】
特開2016-081711号公報(TDK株式会社)には、マトリックスとしてのポリオレフィンを含む多孔質層と、多孔質層の少なくとも1つの面に積層されたPAI含有多孔質層とを含むセパレータが開示されており、積層体は、前記PAIのNMP溶液を前記ポリオレフィン上にキャストすることによって製造される。
【0012】
電池、特にリチウム電池の技術分野において、セパレータ基材材料に耐熱性及びシャットダウン機能を付与することができ、それと同時にセパレータ及び電池全体の重量を削減することができ、且つ水などの環境に優しい溶媒を含む組成物をコーティングすることによって作製される、コーティングされたセパレータを提供するという課題が存在すると感じられる。
【発明の概要】
【0013】
驚くべきことに、出願人は、少なくとも1種の塩の形態のポリアミド-イミドを含む水性組成物を用いて基材層を少なくとも部分的にコーティングすることによって電気化学セル用のセパレータを作製すると、前記問題を解決できることを見出した。
【0014】
したがって、第1の態様では、本発明は、電気化学セルにおいて使用するためのコーティングされたセパレータの製造方法に関し、前記方法は、
i)コーティングされていない基材層[層(P)]を準備する工程と、
ii)水性媒体と、少なくとも1種の塩形態のポリアミド-イミドポリマー(PAI-塩)とを含有する水性組成物(C)を準備する工程であって、前記PAI-塩が、一般式(R
PAI-a)、(R
PAI-b)、及び(R
PAI-c)のうちのいずれかの単位からなる群から選択される繰り返し単位R
PAIを50モル%より多く含むが、R
PAI-cが塩形態のポリアミド-イミド(PAI-塩)中の繰り返し単位の少なくとも30モル%を占めることを条件とする工程:
【化1】
(式中、
- Arは、三価の芳香族基であり;好ましくはArは以下の構造:
【化2】
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択され;
Xは、-O-、-C(O)-、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
n-からなる群から選択され、nは1~5の整数であり;
Xは、-O-、-C(O)-、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、及び-(CF
2)
p-からなる群から選択され;nは、1~5の整数であり;
Rは、
【化3】
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択される二価の芳香族基であり;
Yは、-O-、-S-、-SO
2-、-CH
2-、-C(O)-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
q-からなる群から選択され、qは0~5の整数であり;
Cat
+は、好ましくはアルカリ金属カチオンから選択される一価カチオンであり、より好ましくはNa
+、K+、及びLi
+から選択され、さらに好ましくはLi
+である);
iii)工程ii)で得られた前記組成物(C)を、前記基材層(P)の少なくとも一部に少なくとも部分的に塗布し、これにより少なくとも部分的にコーティングされた基材層を得る工程と、
iv)工程iii)で得られた前記少なくとも部分的にコーティングされた基材層を乾燥させてコーティングされたセパレータを得る工程と、
を含む。
【0015】
第2の態様では、本発明は、上で定義された方法によって得られる、電気化学セル用のコーティングされたセパレータに関する。
【0016】
第3の態様では、本発明は、上で定義したコーティングされたセパレータを含む、二次電池又はキャパシタなどの電気化学セルに関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の文脈において、「重量パーセント」(重量%)という用語は、成分の重量と混合物の総重量との間の比として計算される、混合物における特定成分の含有量を示す。ポリマー/コポリマーにおける特定のモノマーに由来する繰り返し単位に言及する場合、重量パーセント(重量%)は、ポリマー/コポリマーの総重量に対するこのようなモノマーの繰り返し単位の重量の間の比を示す。液体組成物の総固形分(TSC)に言及する場合、重量パーセント(重量%)は、液体中の全ての不揮発性成分の重量の間の比を示す。
【0018】
「セパレータ」という用語は、本明細書においては、電気化学セルにおける反対の極性の電極を電気的及び物理的に分離し、それらの間を流れるイオンに対して透過性である、多孔質の単層又は多層ポリマー材料を意味することを意図する。
【0019】
「電気化学セル」という用語は、本明細書においては、単層又は多層セパレータが上記電極の1つの少なくとも1つの表面に接着されている、正極、負極、及び液体電解質を含む電気化学セルを意味することを意図する。
【0020】
電気化学セルの非限定的な例としては、特に、電池、好ましくは二次電池、及び電気二重層キャパシタが挙げられる。
【0021】
本発明の目的においては、「二次電池」とは、再充電可能な電池を意味することを意図する。二次電池の非限定的な例としては、とりわけ、アルカリ又はアルカリ土類二次電池が挙げられる。
【0022】
「水性」という用語は、本明細書においては、水が示す物理的及び化学的特性を実質的に変化させない他の成分と組み合わされた純水及び水を含む媒体を意味することを意図する。
【0023】
本明細書の文脈において、「基材層」という用語は、本明細書においては、単一層からなる単層基材、又は互いに隣接した少なくとも2つの層を含む多層基材を意味することを意図する。
【0024】
層(P)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、及びポリプロピレン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、電気化学デバイスのセパレータに一般的に使用される任意の多孔質の基材又は布地によって製造することができる。好ましくは、層(P)はポリエチレン又はポリプロピレンである。
【0025】
層(P)の厚さは、特には限定されず、典型的には3~100μm、好ましくは5~50μmである。
【0026】
以下の式において、浮遊アミド結合は、アミドが環上の浮遊アミド結合に対して最も近い炭素のいずれかに結合していることができることを示す。言い換えると、各式において、
【化4】
は、
【化5】
の両方を表す。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、繰り返し単位にRPAI-cおけるCat+はLi+であり、PAI-塩はリチウムポリアミド-イミド(LiPAI)である。
【0028】
いくつかの実施形態では、LiPAI中の繰り返し単位R
PAI-aは、式:
【化6】
の少なくとも1つの繰り返し単位から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、LiPAI中の繰り返し単位R
PAI-bは、式:
【化7】
の少なくとも1つの繰り返し単位から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、LiPAI中の繰り返し単位R
PAI-cは、式:
【化8】
の少なくとも1つの繰り返し単位から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、LiPAI中の繰り返し単位R
PAI-a、R
PAI-b、及びR
PAI-cは、式:
【化9】
のそれぞれの単位である。
【0032】
好ましくは、LiPAI中の繰り返し単位R
PAI-cは、式:
【化10】
の単位である。
【0033】
いくつかの実施形態では、LiPAI中の繰り返し単位R
PAI-a、R
PAI-b、及びR
PAI-cは、式:
【化11】
のそれぞれの単位である。
【0034】
いくつかの実施形態では、LiPAI中の繰り返し単位R
PAI-a、R
PAI-b、及びR
PAI-cは、式:
【化12】
のそれぞれの単位である。
【0035】
いくつかの実施形態では、LiPAIは、1種より多く、例えば2種の、繰り返し単位R
PAI-a、R
PAI-b、及びR
PAI-cのそれぞれを含む。したがって、いくつかの態様では、LiPAIは、
a)下記式の繰り返し単位R
PAI-a:
【化13】
b)下記式の繰り返し単位R
PAI-b:
【化14】
c)下記式の繰り返し単位R
PAI-c:
【化15】
を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、PAI-塩は、50モル%未満、好ましくは49モル%未満、45モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、2モル%未満、1モル%未満のRPAI-a繰り返し単位を含む。いくつかの実施形態では、PAI-塩は、繰り返し単位RPAI-aを含まない。
【0037】
いくつかの実施形態では、PAI-塩は、70モル%未満、好ましくは60モル%未満、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、2モル%未満、1モル%未満の繰り返し単位RPAI-bを含む。
【0038】
好ましくは、PAI-塩は、少なくとも30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%の繰り返し単位RPAI-cを含む。最も好ましくは、PAI-塩中の全ての繰り返し単位は、繰り返し単位RPAI-cである。
【0039】
いくつかの実施形態において、モル比RPAI-a/(RPAI-b+RPAI-c)は、1.0以下、好ましくは0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下である。
【0040】
いくつかの実施形態では、モル比RPAI-c/(RPAI-a+RPAI-b)は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0以上である。例えば、モル比RPAI-c/(RPAI-a+RPAI-b)は、好ましくは2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、99よりも大きい。
【0041】
好ましい実施形態では、繰り返し単位RPAI-bの量は0~50モル%の範囲であり、繰り返し単位RPAI-cの量は50~100モル%の範囲である。
【0042】
PAI-塩中の繰り返し単位RPAI-b及びRPAI-cの相対量の決定は、任意の適した方法によって行うことができる。例えば繰り返し単位RPAI-aの量(イミド化度)はNMRによって評価することができ、繰り返し単位RPAI-b及びRPAI-cの量はNMR、元素分析、又は滴定によって評価することができる。
【0043】
PAI-塩は、酸1当量当たり300グラム超の酸当量(g/eq)を有する。好ましくは、PAI-塩は、325g/eq超、より好ましくは350g/eq超、最も好ましくは少なくとも375g/eq又はそれ以上の酸当量を有する。
【0044】
PAI-塩は水溶性である。本明細書で使用される「水溶性」又は「水に可溶性」は、PAI-塩の総重量に基づいてPAI-塩の少なくとも99重量%が、穏やかな撹拌で脱イオン水中に溶解して23℃で均質な溶液を形成することを意味する。
【0045】
いくつかの実施形態では、PAI-塩は、少なくとも1000g/モル、好ましくは少なくとも2000g/モル、より好ましくは少なくとも4000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。いくつかの実施形態では、PAI-塩は、最大10000g/モル、好ましくは最大8000g/モル、より好ましくは最大6000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。
【0046】
本発明で使用されるPAI-塩は、溶媒中の金属塩に対応するアミド酸基を中和することによって、対応するポリアミド-イミド(PAI)から調製することができる。
【0047】
本発明で使用されるLiPAIは、アミド酸基を溶媒中のリチウム塩で中和することによって対応するポリアミド-イミド(PAI)から調製することができる。
【0048】
本明細書において、「ポリアミド-イミド(PAI)」は、0~50モル%の、式:
【化16】
の少なくとも1種の繰り返し単位R
PAI-aと、
5~100モル%の、式:
【化17】
の少なくとも1種の繰り返し単位R
PAI-bと、
を含む任意のポリマーを意味するが、繰り返し単位R
PAI-aとR
PAI-bが、全体として、PAI中の50モル%超、好ましくは少なくとも60モル%、75モル%、90モル%、95モル%、99モル%の繰り返し単位を占めることを条件とし、Ar及びRは上で定義した通りである。
【0049】
ポリアミド-イミドポリマーは、商標TORLON(登録商標)PAIとしてSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.から入手可能である。
【0050】
PAIは、当該技術分野で公知の方法に従って製造することができる。例えば、PAIポリマーを調製するための方法は、英国特許第1,056,564号明細書、米国特許第3,661,832号明細書及び米国特許第3,669,937号明細書に詳細に開示されている。
【0051】
PAIは、トリメリット酸無水物及びトリメリット酸無水物一酸ハロゲン化物から選択される少なくとも1種の酸性モノマーと、ジアミン及びジイソシアネートから選択される少なくとも1種のコモノマーとの重縮合反応を含む方法によって製造することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の酸性モノマー対コモノマーのモル比は1:1である。
【0052】
トリメリット酸無水物一酸ハロゲン化物の中でも、トリメリット酸無水物一酸塩化物(TMAC)が好ましい:
【化18】
【0053】
重合したとき、酸性モノマーはイミド形態又はアミド酸形態のどちらかで存在し得る。
【0054】
コモノマーは、1つ又は2つの芳香環を含むことができる。好ましくは、コモノマーは、ジアミンである。より好ましくは、ジアミンは、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、及びそれらの組合せからなる群から選択される:
【化19】
【0055】
アルカリ金属塩は、アミド酸基を中和することができる任意の塩であってよい。
【0056】
LiPAIを調製するためのいくつかの実施形態において、リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、重炭酸リチウム、及びそれらの組合せからなる群から選択され、好ましくは炭酸リチウムである。
【0057】
溶媒は、アルカリ金属塩及び得られたPAI-塩を溶解することができる任意の溶媒であってよい。
【0058】
LiPAIを調製するためのいくつかの実施形態では、溶媒は、好ましくは、水、NMP、及びアルコール、例えば、メタノール、イソプロパノール、及びエタノールのうちの少なくとも1つから選択される。
【0059】
好ましくは、溶媒は、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、好ましくは1重量%未満のNMPを含有する。より好ましくは、溶媒はNMPを含有しない。最も好ましくは、溶媒は水である。
【0060】
好ましくは、溶媒中のアルカリ金属塩の濃度は、溶媒及びアルカリ金属塩の総重量に基づいて0.1~30重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは5~15重量%の範囲である。
【0061】
本発明で使用されるLiPAIは、酸基に対してリチウムを少なくとも0.75当量、1当量、1.5当量、2当量、2.5当量、3当量、4当量供給できる溶媒中のリチウム塩濃度を使用することによって調製される。
【0062】
溶媒中のリチウム塩の濃度は、好ましくは、酸基に対してリチウムを最大5当量、好ましくは最大4当量供給する。
【0063】
アルカリ金属塩、好ましくはリチウム塩、及びPAI(又はPAI-塩)の溶液は、好ましくは、50℃~90℃、好ましくは60℃~80℃、最も好ましくは65℃~75℃の範囲の温度まで、好ましくは数秒から6時間の範囲の時間、加熱される。
【0064】
上述した通りに得られたPAI-塩のpHは、好ましくは、塩の形態にされた後、少なくとも1種の酸の供給源を、例えば鉱酸又は有機酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸、安息香酸など)として、又は酸性部位を有するポリマーなどの酸生成種として、反応混合物に添加することによって下げられる。
【0065】
塩の形態にされた後、溶液中のPAI-塩の濃度は、PAI-塩と溶媒の総重量を基準として、好ましくは1~20重量%、好ましくは5~15重量%、最も好ましくは5~10重量%の範囲である。
【0066】
PAI塩は溶液から固体として単離することができ、また任意選択的に後の使用のために保管することができる。
【0067】
本発明で使用される組成物(C)は、上で定義した少なくとも1種のPAI-塩と、水性媒体とを含む。水性媒体は、好ましくは本質的に水を含む。
【0068】
組成物(C)は、例えば、少なくとも1種の湿潤剤及び/又は少なくとも1種の界面活性剤などの他の成分を更に含み得る。湿潤剤としては、多価アルコール及びポリオルガノシロキサンを挙げることができる。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、組成物(C)は、水と、少なくとも1種のLiPAIと、湿潤剤とを含有する。
【0070】
組成物(C)は、1つ以上の更なる添加剤を更に含み得る。
【0071】
組成物(C)における任意の添加剤には、特に、上記で詳述した粘度調整剤、消泡剤、非フッ素化界面活性剤などが含まれる。
【0072】
本発明の組成物(C)の総固形分(TSC)は、典型的には、組成物(C)の総重量に対して1~15重量%、好ましくは2~10重量%に含まれる。組成物(C)の総固形分は、特にPAI-塩と任意の固体の不揮発性の追加の添加剤とを含む、その全ての不揮発性成分の累加であると理解される。
【0073】
組成物(C)は、任意の適切な装置の中で撹拌しながら成分を混合して均一な混合物を得ることにより、当該技術分野で公知の任意の一般的な手順によって調製することができる。
【0074】
本発明の方法の工程iii)において、工程(ii)で得られる組成物(C)は、キャスト、スプレーコーティング、回転スプレーコーティング、ロールコーティング、ドクターブレード、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング、及びスクリーン印刷、ブラシ、スキージ、泡付与装置、カーテンコーティング、真空コーティングから選択される技術によって、前記基材層(P)の少なくとも1つの部分に少なくとも部分的に塗布される。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、組成物(C)で少なくとも部分的にコーティングされる基材層(P)は、組成物(C)の塗布前に予熱される。予熱は、好ましくは30~70℃の範囲の温度で行われる。
【0076】
基材層(P)を予熱することにより、後続の乾燥工程iv)において、組成物(C)中に存在する水性媒体のより迅速且つ改善された蒸発が可能になる。これにより、方法の最後にコーティングされたセパレータの欠陥を低下させることができる。
【0077】
基材層(P)の少なくとも一部への組成物(C)の塗布は、コーティングが0.5~100μm、好ましくは2~50μmの範囲の湿潤厚さを有する、少なくとも部分的にコーティングされた基材層を提供する量で行われる。
【0078】
本発明の方法の工程(iv)では、工程iii)で得られた少なくとも部分的にコーティングされた基材層は、好ましくは、20℃~200℃、好ましくは60℃~100℃に含まれる温度で乾燥される。
【0079】
乾燥工程iv)後の乾燥コーティングの厚さは、好ましくは約0.1~10μmの範囲、好ましくは1~5μmの範囲である。
【0080】
コーティングされたセパレータを作製するための本発明の方法は、工程iv)の後、コーティングされたセパレータをホットプレスする追加の工程を含み得る。
【0081】
ホットプレスは、加熱とプレスを同時に行う方法である。
【0082】
ホットプレスは、金属ロール、弾性ローラーを用いるロールプレス機、及び平板プレス機等を用いて行うことができる。ホットプレスの温度は、好ましくは60~110℃、より好ましくは70~105℃、特に好ましくは90~100℃である。
【0083】
ヒートプレスの圧力は、好ましくは0.1~10MPa、より好ましくは0.3~5MPa、更に好ましくは0.5~3MPaである。ホットプレスの適用時間は、ホットプレスに使用する装置に応じて数秒から50分間の範囲である。
【0084】
ホットプレスを行うための温度、圧力、時間範囲により、セパレータをしっかりと接着させることができる。
【0085】
第2の態様では、本発明は、上で定義した方法によって得られる電気化学セルのためのセパレータに関する。
【0086】
本発明者らは、本発明によるコーティングされたセパレータが、従来技術のセパレータと比較して、高温で改善された形状安定性を示すことを見出した。
【0087】
加えて、本発明のコーティングされたセパレータは、電池の安全性を改善するために非常に望ましいシャットダウン機能を有する。
【0088】
更なる態様では、本発明は、上で定義された少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを含む、二次電池又はキャパシタなどの電気化学セルに関する。
【0089】
更に別の実施形態では、本発明は、
- 正極と、
- 負極と
- コーティングされたセパレータと、
を含む二次電池であって、
コーティングされたセパレータが本発明のコーティングされたセパレータである、二次電池に関する。
【0090】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0091】
本発明を以下の実施例を参照して本発明についてより詳細に説明するが、これらは本発明を例示する目的で提供されているにすぎず、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例】
【0092】
実験の部
原材料
Solvay Specialty Polymers USA,LLCから入手可能なTorlon(登録商標)AI-50;
Aldrichから入手可能なトリメリット酸クロリド(TMAC)及びオキシジアニリン(ODA);
VWR International又はSigma Aldrichから入手可能なN-メチルピロリドン(NMP);
H2Oに溶解したAmetechからAmeponとして市販されているドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(TSC=28%)
ポリオレフィン基材(PO):Tonen(登録商標)F20BHEとして市販、PE系材料、20μm、空隙率45%。
BYK-349:BYKから市販されているポリエーテル側鎖及びシリコーン骨格。
【0093】
調製1:TMAC-ODA(50-50)PAIコポリマー
ODAモノマー(60.0g、0.3モル)を、オーバーヘッドメカニカルスターラーを備えた四口ジャケット付き丸底フラスコに入れた。NMP(250mL)をフラスコに入れ、混合物を窒素雰囲気下で穏やかに撹拌しながら10℃に冷却した。フラスコに加熱添加漏斗を取り付け、それにTMAC(64.0g、0.3モル)を入れ、最低100℃に加熱した。溶融したTMACを、NMP中のジアミンの溶液に激しく撹拌しながら40℃を超えない速度で添加した。添加が終了した後、外部加熱を利用して35~40℃に2時間維持した。追加のNMP(50mL)を添加し、反応混合物を500mLビーカー内に排出した。ポリマー溶液をステンレス鋼高剪断ミキサー内の水(4000mL)にゆっくりと添加した。沈殿したポリマーを濾過し、水で複数回洗浄して、残留溶媒及び酸副生成物を除去した。酸価滴定によって測定されるイミド化度は50モル%以下であった。
【0094】
調製2:リチウム化TMAC-ODA(50-50)コポリマー-5重量%ポリマー及び4当量のリチウム
オーバーヘッドメカニカルスターラーが取り付けられた四口ジャケット付き丸底フラスコに、脱イオン水(188mL)を入れた。炭酸リチウム(4.69g、0.067モル)を添加し、溶液を70℃に加熱した。激しく撹拌しながら、TMAC-ODA(50-50)PAI(20.7%固形分で60.5g)を、追加の添加の前にそれぞれの量を溶解できるように段階的に添加した。全ポリマーを反応器に入れた後、加熱を1~2時間続け、その時に均質な溶液を取り出した。
【0095】
調製3:リチウム化TMAC-ODA(50-50)コポリマー-湿潤剤を含む5重量%ポリマー及び4当量のリチウム
混合されている状態で、調製2の通りに調製した組成物に、5%の最終TSC(総固形分)を達成するために、SDS及びH2Oを添加した。組成物において、TSCの90%がポリマーであり、10%がSDSであった。
【0096】
実施例1
POをガラス支持体に固定した。POを50℃の温度の換気式オーブン内で予熱した。調製3で得た溶液のPOへのキャストを40μmの湿潤厚さで行い、1~2μmの最終乾燥コーティングを得た。コーティングの間、支持プレートを常に50℃に保った。乾燥は、換気式オーブン内で70℃で30分間行った。乾燥した後、POの2番目の面に対して同じ手順を繰り返した。
【0097】
実施例1a
コーティングされたセパレータを作製するために実施例1と同じ手順に従った。その後、コーティングされたPOを、95℃で25分間、1MPaでホットプレスした。
【0098】
実施例2
予熱の予備工程を回避した以外は実施例1と同じコーティングされたセパレータの作製手順に従った。
【0099】
実施例2a
コーティングされたセパレータを作製するために実施例2と同じ手順に従った。その後、コーティングされたPOを、95℃で25分間、1MPaでホットプレスした。
【0100】
実施例3
乾燥を室温で15時間行ったこと以外は実施例2と同じコーティングされたセパレータの作製手順に従った。
【0101】
実施例3a
実施例3と同じコーティングされたセパレータの作製手順に従った。その後、コーティングされたPOを、95℃で25分間、1MPaでホットプレスした。
【0102】
実施例4
POをガラス支持体に固定した。調製3で得た溶液のPO片面へのキャストを40μmの湿潤厚さで行い、1~2μmの最終乾燥コーティングを得た。乾燥は、換気式オーブン内で室温で15分間行った。
【0103】
実施例4a
実施例4と同じコーティングされたセパレータの作製手順に従った。その後、コーティングされたPOを、95℃で25分間、1MPaでホットプレスした。
【0104】
比較例1
POをガラス支持体に固定した。POを50℃の換気式オーブン内で予熱した。
【0105】
TSC85.7%としてのTorlon(登録商標)AI-50と、TSC14.3%としてのSDSとを含有する水性組成物のPOへのキャストを40μmの湿潤厚さで行い、1~2μmの最終乾燥コーティングを得た。コーティングの間、支持プレートを常に50℃に保った。乾燥は、換気式オーブン内で70℃で30分間行った。乾燥した後、POの2番目の面に対して同じ手順を繰り返した。
【0106】
比較例1a
比較例1と同じコーティングされたセパレータの作製手順に従った。その後、コーティングされたPOを、95℃で25分間、1MPaでホットプレスした。
【0107】
比較例2
POをガラス支持体に固定した。比較例1で得た溶液のPOへのキャストを40μmの湿潤厚さで行い、1~2μmの最終乾燥コーティングを得た。乾燥は、室温で15時間行った。乾燥した後、POの2番目の面に対して同じ手順を繰り返した。
【0108】
比較例2a
コーティングされたセパレータを作製するために比較例2と同じ手順に従った。その後、コーティングされたPOを、95℃で25分間、1MPaでホットプレスした。
【0109】
熱収縮試験:
実施例1~3並びに比較例1及び2の両面にコーティングしたセパレータ、並びに実施例1a~3a並びに比較例1a及び2aの両面にコーティングされたプレスされたセパレータを、熱収縮について試験した。試験は、6cm(キャスト方向=CD)及び5cm(横方向=TD)のサイズを有するコーティングされたPOの試験片を、130℃で1時間、換気式オーブンに入れて行った。試験後、セパレータの寸法CD及びTDを確認し、処理前の同じものと比較した。
【0110】
本発明のコーティングされたセパレータのキャスト方向(CD)及び横方向(TD)における収縮の測定値を、コーティングされていないPOのもの、及び非リチウム化PAI(AI-50)でコーティングされたPOと比較した。結果を表1に報告する。
【0111】
コーティングの品質:
上記実施例で作製したコーティングされたセパレータを、亀裂、ピンホール、又は不均一性などの欠陥の存在について視覚的に評価した。
【0112】
以下のスケールの値を適用した:
0=欠陥なし
1=軽微な欠陥
【0113】
【0114】
データは、本発明に従って作製された、実施例1~4及び1a~4aのコーティングされたセパレータが、PAIを含むコーティング及びコーティングされていないセパレータと比較して著しく低い熱収縮を示すことを実証している。コーティングされたセパレータをホットプレスした後であっても、値はほぼ安定なままであった。
【0115】
加えて、本発明に従って作製されたコーティングされたセパレータは、PAIを含むコーティングと比較して、熱収縮とコーティング中の欠陥の存在との間のより優れた折り合いを示す。
【0116】
接着性:
POへのコーティングの接着性を検証するために、実施例1の通りであるが片面だけコーティングして作製した、コーティングされたPOの剥離試験を行った。コーティングの表面に粘着テープを貼り、ダイナモメーターで300mm/分且つ180°で基材からコーティングを剥がし、サンプルから粘着テープを剥がすのに必要な力を測定した。剥離強さ:1032±107N/m。
【国際調査報告】