(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】二重熱成形カニューレ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/174 20210101AFI20220824BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20220824BHJP
A61M 60/411 20210101ALI20220824BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61M60/174
A61M60/237
A61M60/411
A61M25/00 560
A61M25/00 610
A61M25/00 622
A61M25/00 504
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577312
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020039640
(87)【国際公開番号】W WO2020264174
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】タオ ズォンホン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077CC04
4C077DD10
4C077DD21
4C077EE01
4C077KK21
4C077PP14
4C077PP24
4C267AA04
4C267AA05
4C267BB02
4C267BB13
4C267BB16
4C267BB38
4C267BB40
4C267BB42
4C267DD10
4C267GG05
4C267GG23
4C267GG24
4C267GG32
4C267GG36
4C267HH01
(57)【要約】
血液ポンプアセンブリで使用するための補強カニューレを提供するためのシステムおよび方法。補強カニューレは、1つまたは複数の熱成形された補強端部分を備える。熱成形された補強端部分は、カニューレの中間部分よりも高い剛性を有し得、それによって、カニューレが作用応力を受けたときにカニューレ本体の中間部分がカニューレ端部よりも容易に伸張および屈曲することが可能になり、カニューレ端部にかかる応力および張力が低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングおよびロータを有し、モータによって動作するように構成された、ポンプと、
前記モータまたは前記ポンプハウジングに連結された遠位端を有する細長いカテーテルと、
前記ポンプハウジングの遠位端と接続する近位端、少なくとも1つの遠位開口部を備えた遠位端、を有するカニューレであって、長手方向の長さを有し、かつ
前記カニューレの前記長手方向の長さに沿って延在し、内側材料を含む、熱成形された内層、
形状記憶材料を有し、前記内層の外径にわたって配置された、コイル、
前記内層および前記コイルの上に前記長手方向の長さに沿って延在し、外側材料を含む、熱成形された外層、ならびに
前記カニューレの前記近位端で前記外層を覆って延在し、第1の補強材料を含みかつ前記カニューレの第1の補強部分を形成する、熱成形された第1の外端部補強層であって、前記カニューレの前記第1の補強部分が、中間部分の少なくとも2倍の剛性を有し、前記中間部分が、前記カニューレの前記第1の補強部分の遠位にある、熱成形された第1の外端部補強層
を含む、前記カニューレと
を含む、血管内血液ポンプシステム。
【請求項2】
前記カニューレの前記第1の補強部分が、前記カニューレの前記中間部分の少なくとも4倍の剛性を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記カニューレの前記遠位端に配置された、熱成形された第2の外端部補強層をさらに含み、前記第2の外端部補強層が、第2の補強材料を含みかつ前記カニューレの第2の補強部分を形成し、前記中間部分が、前記カニューレの前記第2の補強部分の近位にある、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の補強材料が、前記第2の補強材料と同じである、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記カニューレの前記遠位端が流入ケージと接続する、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の外端部補強層の厚さが、遠位方向に先細になる、請求項1~5のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の外端部補強層の厚さが、遠位方向に先細になる、請求項3~5のいずれか一項記載のシステム。
【請求項8】
前記内側材料が、ポリエステルポリウレタンである、請求項1~7のいずれか一項記載のシステム。
【請求項9】
前記外側材料または前記第1の補強材料の少なくとも一方が、ポリエーテルポリウレタンである、請求項1~7のいずれか一項記載のシステム。
【請求項10】
前記内側材料が、約45D~65Dの範囲の硬度を有する、請求項1~9のいずれか一項記載のシステム。
【請求項11】
前記外側材料が、約75A~95Aの範囲の硬度を有する、請求項1~10のいずれか一項記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の補強材料が、約55D~75Dの範囲の硬度を有する、請求項1~11のいずれか一項記載のシステム。
【請求項13】
前記内側材料の硬度と前記第1の補強材料の硬度とが、等しいか、またはほぼ等しい、請求項1~12のいずれか一項記載のシステム。
【請求項14】
前記コイルが、前記外層に埋め込まれている、請求項1~13のいずれか一項記載のシステム。
【請求項15】
前記形状記憶材料が、ニチノールまたは銅アルミニウム合金の少なくとも一方を含む、請求項1~14のいずれか一項記載のシステム。
【請求項16】
前記カニューレの前記中間部分の外径が、前記カニューレの前記第1の補強部分の外径よりも小さく、
前記カニューレの前記中間部分が、前記内層、前記コイル、および前記外層を含み、
前記カニューレの前記第1の補強部分が、前記内層、前記コイル、前記外層、および前記第1の外端部補強層を含む、
請求項1~15のいずれか一項記載のシステム。
【請求項17】
前記カニューレが患者の心臓の大動脈弁を越えて延在し前記カニューレの前記遠位端が前記患者の心臓の左心室内にあり前記カニューレの前記近位端が前記患者の心臓の大動脈内にあるように、前記カニューレが前記患者の心臓内に配置されるように構成されている、請求項1~16のいずれか一項記載のシステム。
【請求項18】
以下の工程を含む、カニューレを製造するための方法:
マンドレルの上に前記カニューレの内層を熱成形する工程であって、前記内層が、内側材料と、内径および外径とを含む、工程;
前記内側材料の前記外径にわたって形状記憶コイルを配置する工程;
前記内層および前記コイルの上に前記カニューレの外層を熱成形する工程であって、前記外層が、長手方向の長さに沿って延在しかつ外側材料を含む、工程;ならびに
前記カニューレの前記第1の補強部分を形成するために、前記カニューレの近位端で前記外層を覆って延在するように第1の外端部補強層を熱成形する工程であって、前記カニューレの前記第1の補強部分が前記カニューレの中間部分の少なくとも2倍の剛性を有し、前記中間部分が前記カニューレの第1の補強部分の遠位にある、工程。
【請求項19】
前記カニューレを、血管内血液ポンプのポンプハウジングおよび流入ケージに接合する工程をさらに含み、前記ポンプハウジングが、ロータを少なくとも部分的に囲むように構成されている、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記カニューレの遠位端が前記流入ケージに接合され、前記カニューレの近位端が前記ポンプハウジングに接合される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記カニューレの前記遠位端を前記流入ケージに接合することが、
前記カニューレの前記遠位端と前記流入ケージの間の界面にエポキシを適用すること、および
前記エポキシを熱硬化させること
を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記カニューレの前記近位端を前記ポンプハウジングに接合することが、
前記カニューレの前記近位端と前記ポンプハウジングの間の界面にエポキシを適用すること、および
前記エポキシを熱硬化させること
を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記内層を熱成形する工程が、
前記内側材料を含む内側押出スリーブを前記マンドレル上に配置すること、
前記内側押出スリーブの周りに第1の熱収縮チューブを配置すること、
前記スリーブを軟化させるためおよび前記熱収縮により前記スリーブに対して前記マンドレルの方向に力を加えさせるために、前記内側押出スリーブおよび前記熱収縮チューブを加熱すること、ならびに
前記第1の熱収縮チューブを取り外すこと
を含む、請求項18~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記外層を熱成形する工程が、
前記外側材料を含む外側押出スリーブを前記内層および前記コイルの上に配置すること、
前記外側押出スリーブの周りに第2の熱収縮チューブを配置すること、
前記スリーブを軟化させるためおよび前記熱収縮により前記スリーブに対して前記内層および前記コイルの方向に力を加えさせるために、前記スリーブおよび前記熱収縮チューブを加熱して、前記コイルを前記外側材料に埋め込むこと、ならびに
前記第2の熱収縮チューブを取り外すこと
を含む、請求項18~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記カニューレの前記第1の補強部分が、前記カニューレの前記中間部分の少なくとも4倍の剛性を有する、請求項18~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記カニューレの前記第2の補強部分を形成するために、前記カニューレの前記遠位端で前記外層を覆って延在するように第2の外端部補強層を熱成形する工程をさらに含み、前記中間部分が前記カニューレの第2の補強部分の近位にある、請求項18~25のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組み入れられる、2019年6月28日に出願された米国特許出願第62/868,476号の優先権を主張する。加えて、本出願は、「Thermoform Cannula with Variable Cannula Body Stiffness」と題する米国特許出願公開第2017/0215918号、および「Radiopaque Cannula Marker」と題する米国特許第8,795,576号にも関連し、どちらも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
心臓内血液ポンプを備えたアセンブリなどの血管内血液ポンプアセンブリが、心臓から動脈に血液を送達するために心臓に導入されることがある。血管内血液ポンプは、カテーテル法などによって、心臓処置中に血管系を通して経皮的に導入することができる。一部の血液ポンプは、心臓の左側を補助するように設計されており、心臓の左心室から血液を引き込み、その血液を、カニューレを通して大動脈に排出する。心臓の左側を補助する一部の血液ポンプは、カテーテル法により、大腿動脈を通って上行大動脈に入り、大動脈弁を越えて、左心室に導入される。一部のシステムは、心臓の右側を補助するように設計されており、血液ポンプは静脈を通り、静脈系(例えば、大静脈)を通して心臓の右側に導入される。血液ポンプシステムはまた、鎖骨下動脈および/または頸動脈を通して外科的に植え込まれ得るか、または挿入されることもある。血管を通して血液ポンプアセンブリを患者に挿入する間、患者の蛇行した経路または石灰化した解剖学的構造を通して血液ポンプを前進させることが困難な場合がある。
【0003】
これらの蛇行した経路に起因する、ポンプの導入を伴う複雑な状況は、場合によっては、血液ポンプアセンブリに、または患者に損傷を引き起こす可能性がある。例えば、右心臓処置では、血液ポンプが(例えば、下大静脈と肺動脈の間にまたがる)右心に向かう右心内の蛇行した経路を進む際に損傷が起こり得る。いくつかの例では、血液ポンプのカニューレは、心臓に向かう経路および心臓内を進む際にポンプにかかる負荷の大部分を担う。例えば、右心血液ポンプのカニューレは、その配置の結果として引き伸ばされまたは曲げられることがある。同様に、カニューレとポンプの流入構成要素および流出構成要素との間の様々な界面も引き伸ばされ、または曲げられて、血液ポンプに損傷を引き起こす可能性がある。公知の血液ポンプアセンブリには、Abiomed, Inc.によるImpella(登録商標)ポンプが含まれる。Impella(登録商標)ポンプシステムは、一般に、カテーテルと、ポンプと、ポンプのロータを駆動する電源と、心臓弁を越えるためのカニューレと、非外傷性延長部とを含む。Impella(登録商標)ポンプは、左心または右心を補助するために患者に導入され得る。
【発明の概要】
【0004】
概要
本明細書に記載されるシステム、方法、および装置は、血液ポンプの挿入および動作中に受ける力に耐えるように構成された、血液ポンプアセンブリで使用するための補強カニューレを提供する。本技術のいくつかの局面では、補強カニューレは、カニューレの中間部分よりも剛性の高い少なくとも1つの熱成形された補強端部分を有する二重熱成形カニューレである。熱成形された外端部補強層は、カニューレが作用応力を受けたときに、カニューレ端部ではなくカニューレ本体をより容易に伸張させ、それにより、カニューレ端部とカニューレ端部それぞれの隣接する構成要素との間の界面にかかる応力が低減される。よって、熱成形された外端部補強層とも呼ばれる熱成形された補強端部分は、カニューレのための張力緩和セクションとして機能し得る。
【0005】
熱成形された外端部補強層は、カニューレと血液ポンプアセンブリのその他の構成要素の1つとの間の界面に配置され得る。例えば、熱成形された外端部補強層は、カニューレの遠位端と遠位構成要素(例えば、血液流入ケージ)の間の界面、またはカニューレの近位端とポンプハウジングの間の界面、またはその両方に配置され得る。熱成形された外端部補強層は、血液ポンプアセンブリのその他の構成要素からのカニューレの分離を防止するのに役立ち得る。熱成形された外端部補強層はまた、カニューレとその他の構成要素(例えば、カニューレの遠位に配置された血液流入ケージ)の間の界面における強度を改善し得る。
【0006】
熱成形された外端部補強層は、カニューレの外層の中間部分よりも高いデュロメータ硬さを有し得る。いくつかの実装形態では、熱成形された外端部補強層は、カニューレの中間部分の少なくとも2倍の剛性を有する。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層は、カニューレの中間部分の約1.5倍~5.5倍の剛性を有する。いくつかの実装形態では、熱成形された外端部補強層は、カニューレの中間部分の約2倍~約5倍の剛性を有する。さらなる実装形態では、熱成形された外端部補強層は、カニューレの中間部分の約3倍~約4倍の剛性を有する。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層は、カニューレの中間部分の約3.5倍の剛性を有する。
【0007】
加えて、カニューレ本体の1つまたは複数の層もまた、熱成形プロセスを使用して形成され得る。カニューレの中間部分に熱成形層を組み込むことにより、その長さに沿ってカニューレにさらなる構造補強が与えられ得る。さらに、カニューレ本体の1つまたは複数の層を熱成形することは、接合領域が短いポンプのカニューレの製造歩留まりを高めるのに役立ち得る。
【0008】
本技術のいくつかの局面によれば、心臓内に挿入するための血管内血液ポンプシステムは、ロータと、ポンプハウジングを通して流体を搬送するための、ポンプハウジング内に配置された1つまたは複数のブレードとを有するポンプを含む。駆動システムもモータおよび駆動系と共に含まれる。モータは、電線によって給電される内蔵モータであり得るか、またはポンプとモータとをつなぐ駆動ケーブルを有する外部モータであり得る。血液ポンプシステムは、ポンプを患者の体外の外部制御システムにつなぎ、駆動ケーブルまたは電線が通ることになる細長いカテーテルをさらに有する。カニューレは、ポンプハウジングの遠位に配置され、ポンプハウジングの遠位端と接続する。本明細書で使用される場合、「遠位」とは、血液ポンプの操作者から離れて患者に向かう方向を指す。同様に、「近位」とは、血液ポンプの操作者に向かい患者から離れる方向を指す。カニューレは、長さ、近位端、中間部分、および遠位端を有する。カニューレの遠位端は、カニューレから遠位に延在する流入ケージの近位端に取り付けられており、流入ケージの遠位端は、遠位非外傷性突出部に取り付けられている。流入ケージは、カニューレと遠位非外傷性突出部とを離間させ、血液は流入ケージを通過してカニューレに流入する。
【0009】
カニューレは、少なくとも3つの同心円筒層、すなわち、内層、補強層、および外層で構成され得る。各層は、カニューレの長さに沿って長手方向に延在し、カニューレの遠位端からカニューレの近位端までカニューレの本体を画定する。外層は、内層を取り囲む補強層を取り囲む。3つの同心層、特に内層は、カニューレの長さに沿って延在する管腔をさらに画定する。カニューレ本体の内層および外層は、熱成形され得る。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層が、カニューレの遠位端および近位端の少なくとも一方のカニューレの外層の上に配置される。熱成形された外端部補強層と熱成形された内層および外層との組み合わせは、カニューレ本体に構造的安定性を与え、かつ、患者の脈管構造へのカニューレの挿入および動作中にカニューレがせん断力を受けるときに、熱成形された端部補強層-カニューレ本体の層ではなく-がカニューレの張力緩和セクションとして機能することを可能にする。
【0010】
いくつかの実装形態では、カニューレは、カニューレの長さに沿って延在する熱成形された内層で構成される。内層は、内側材料を含み、内径および外径を有する。いくつかの実装形態では、内層の外径は、約1Fr~5Frである。他の実装形態では、内層の外径は、約2Fr~4Frである。特定の実装形態では、内層の外径は、約3Frである。特定の実装形態では、内層の半径方向厚さは、約0mm~約0.2mmである。さらなる実装形態では、内層の半径方向厚さは、約0.05mm~約0.15mmである。いくつかの実装形態では、内層の半径方向厚さは、約0.1mmである。さらなる実装形態では、外層は、約0mm~約0.15mmの半径方向厚さを有する。特定の実装形態では、外層は、約0.075mm~約0.125mmの半径方向厚さを有する。特定の実装形態では、外層は、約0.1mmの半径方向厚さを有する。それぞれの層の厚さを調整して、カニューレの所与の総厚を得ることができる。特定の実装形態では、カニューレの総半径方向厚さは、約0mm~約0.5mmである。いくつかの実装形態では、カニューレの総半径方向厚さは、約0.15mm~約0.35mmである。さらなる実装形態では、カニューレの総半径方向厚さは、約0.3mmである。いくつかの実装形態では、カニューレの中間部分の外径は、約17Fr~約22Frである。特定の実装形態では、カニューレの中間部分の外径は、約18Fr~約21Frである。さらなる実装形態では、カニューレの中間部分の外径は、約19.5Frである。
【0011】
固定外径の外層を有するカニューレの場合、カニューレの長さに沿った所与の長手方向点における材料の量を、製造プロセス中に内層の半径方向厚さ(例えば、外径および/または内径)を調整することによって調整することができる。カニューレの長さに沿った長手方向点に存在する材料の量を調整すると、その点の剛性が変化し、より多くの材料を有する点はより剛性が高くなり、より少ない材料を有する点はより剛性が低くなる。よって、カニューレの長さに沿って所望の剛性プロファイルを形成するために、カニューレの長さに沿った所与の点が所望の剛性の材料の量を有するように、内層の半径方向厚さを調整することができる。
【0012】
加えて、カニューレは、形状記憶材料で作られたコイルと共に構成され得、コイルは、内層の外径にわたって配置され得る。カニューレは、カニューレの長さに沿って延在しかつ内層およびコイルの上に配置された、熱成形された外層をさらに有し得る。特定の実装形態では、コイルは、外層に埋め込まれる。さらなる実装形態では、コイルが含む形状記憶材料は、ニチノールまたは銅アルミニウム合金の少なくとも一方である。カニューレの外層は、外側材料を含む。特定の実装形態では、外側材料はポリウレタンを含む。いくつかの実装形態では、外側材料はTexin(登録商標)を含む。Texinは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。いくつかの実装形態では、内側材料はポリウレタンを含む。他の実装形態では、内側材料はTexin(登録商標)を含む。ポリウレタンが内層および/または外層に使用される場合、それはポリエーテルまたはポリエステルを含み得る。特定の実装形態では、内側材料と外側材料とは同じである。
【0013】
いくつかの実装形態では、内層は、カニューレ本体の遠位端および近位端の少なくとも一方で外層を越えて長手方向に延在する。内層のこれらの長い部分は、それぞれ、遠位内側突出部および近位内側突出部と呼ばれる。遠位内側突出部を有する実装形態では、外層の端部に熱成形された外端部補強層を追加することにより、カニューレの長さに沿って連続した補強プロファイルが形成され得る。特定の実装形態では、遠位内側突出部および近位内側突出部の少なくとも一方が、約1センチメートル~約5センチメートルの長さを有する。他の実装形態では、遠位内側突出部および近位内側突出部の少なくとも一方が、約2センチメートル~約4センチメートルの長さを有する。特定の実装形態では、遠位内側突出部および近位内側突出部の少なくとも一方が、約3センチメートルの長さを有する。
【0014】
加えて、カニューレは、第1の熱成形された外端部補強層をさらに備え得る。いくつかの実装形態では、第1の熱成形された外端部補強層は、カニューレの近位端でカニューレの外層を覆って延在する。他の実装形態では、第1の熱成形された外端部補強層は、カニューレの長さに沿って連続した補強プロファイルを形成するように、外層よりも長い近位内層の近位部分を覆って延在する。第1の熱成形された外端部補強層は、補強材料を含み、カニューレとポンプハウジングの間に補強セクションを形成し得る。第1の熱成形された外端部補強層は、患者の体内への血管内血液ポンプシステムの経皮的挿入中にカニューレに加えられる力に起因するポンプハウジングとカニューレの間の分離の可能性を低減するように構成され得る。血液ポンプアセンブリが患者の心臓内の適所にあるとき、カニューレは、カニューレの遠位端が左心室内に配置されカニューレの近位端が大動脈内に配置されるように、患者の大動脈弁を越えて延在してもよい。
【0015】
特定の実装形態では、カニューレは、第2の熱成形された外端部補強層をさらに含む。いくつかの実装形態では、第2の熱成形された外端部補強層は、カニューレの遠位端で外層の上に配置される。他の実装形態では、第2の熱成形された外端部補強層は、カニューレの長さに沿って連続した補強プロファイルを形成するように、遠位内側突出部を覆って延在する。そのような実装形態では、遠位の熱成形された外端部補強層は、補強材料を含む。いくつかの実装形態では、カニューレの遠位端は流入ケージと接続し、遠位の熱成形された外端部補強層は、カニューレと流入ケージの間の界面にカニューレの第2の補強セクションを形成する。遠位の熱成形された外端部補強層を有する実装形態では、遠位の熱成形された外端部補強層は、経皮的挿入中にカニューレに加えられる力に起因する流入ケージとカニューレの間の分離の可能性を低減する張力緩和セクションとして機能し得る。
【0016】
いくつかの実装形態では、補強層の半径方向厚さは、先細になる。例えば、近位の熱成形された外端部の半径方向厚さは、遠位方向の厚さが減少するように先細であり得る。他の実装形態では、遠位の熱成形された外端部補強層の半径方向厚さは、遠位方向の厚さが減少するように先細であり得る。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層の両方の半径方向厚さは、遠位方向の厚さが減少するように先細であり得る。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層の少なくとも一方の半径方向厚さは、約1ミリメートル厚から0に近い最小厚まで先細である。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層の少なくとも一方の半径方向厚さは、約0.7ミリメートル厚から0近くまで先細になる。さらなる実装形態では、熱成形された外端部補強層の少なくとも一方の半径方向厚さは、約0.4ミリメートル厚から0近くまで先細になる。
【0017】
いくつかの実装形態では、内層は内側材料を含み、外層は外側材料を含み、熱成形された外端部補強層は補強材料を含む。特定の実装形態では、内側材料と外側材料とは同じ材料を含む。いくつかの実装形態では、内側材料と外側材料の少なくとも一方はポリウレタンである。さらなる実装形態では、内側材料はポリエステルポリウレタンである。他の実装形態では、内側材料はポリエーテルウレタンである。特定の実装形態では、外側材料と補強材料の少なくとも一方はポリエーテルポリウレタンである。いくつかの実装形態では、内側材料と外側材料の少なくとも一方はTexin(登録商標)である。ポリマーが、熱収縮中のその挙動に基づいて選択されてもよい。さらに、カニューレで使用するために選択される特定のポリマーが、その特定の機械的特性のために選択されてもよい。例えば、選択されるポリマーは、カニューレが応力を受けるときに、カニューレ本体が熱成形された外端部補強層よりも容易に曲がるような剛性を有し得る。
【0018】
いくつかの実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の約0.5倍~3倍の剛性を有する。他の実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の約1倍~約2.75倍の剛性を有する。さらなる実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の約1.5倍~約2.5倍の剛性を有する。特定の実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の2.5倍未満の剛性を有する。カニューレの補強部分およびカニューレの中間部分の剛比は、様々な剛性の1つまたは複数の熱成形された外端部補強層を組み込むことによって調整することができる。加えて、剛比は、以下の範囲に包含される様々な剛性を有する材料を組み込むことによっても調整することができる。カニューレの補強部分およびカニューレの中間部分の剛比は、さもなくばカニューレの補強部分とカニューレの中間部分の間の剛性の大きな差に起因して生じるであろうねじれの可能性を低減するように、有利に選択することができる。
【0019】
熱成形された外端部補強層は、カニューレの中間部分の材料よりも高い剛性を有する材料を含み得る。さらに、熱成形された外端部補強層の形状は、熱成形された外端部補強層と中間部分の間の所望の剛比を達成するように調整することができる。例えば、熱成形された外端部補強層は、約0~約0.3mmの半径方向厚さを有し得る。さらなる実装形態では、熱成形された外端部補強層の半径方向厚さは、約0.05mm~約0.15mmである。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層の半径方向厚さは、約0.075mm~約0.125mmである。さらなる実装形態では、熱成形された外端部補強層の半径方向厚さは、約0.1mm未満である。加えて、熱成形された外端部補強層は、様々な長さを有し得る。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層の長さは、約1センチメートル~約3センチメートルである。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層の長さは、約2センチメートルである。いくつかの実装形態では、熱成形された外端部補強層の長さは、約3mm~約9mmである。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層の長さは、約5mm~約7mmである。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層の長さは、約6mmである。カニューレの形状および材料によるカニューレの剛性の可変性の少なくとも1つの利点は、カニューレの長さに沿った剛性プロファイルを調整できることである。例えば、所与の処置は、処置の挿入角度に基づいて特定の剛性のカニューレを必要とし得る。処置の挿入角度は、患者の解剖学的構造および挿入部位に基づいて変化し得る。よって、カニューレの形状および材料は、所与の処置に望ましいカニューレの長さに沿った特定の剛性プロファイルをもたらすように調整され得る。
【0020】
特定の実装形態では、内側材料は、約45D~約65Dの内側材料硬度を有する。他の実装形態では、内側材料は、約50D~約60Dの内側材料硬度を有する。さらなる実装形態では、内側材料は、約55Dの内側材料硬度を有する。いくつかの実装形態では、外側材料は、約75A~約95Aの外側材料硬度を有する。他の実装形態では、外側材料は、約80A~約90Aの外側材料硬度を有する。さらなる実装形態では、外側材料は、約85Aの外側材料硬度を有する。いくつかの実装形態では、補強材料の硬度は、内側材料の硬度よりも約1等級~約3等級高い。特定の実装形態では、補強材料の硬度は、内側材料の硬度よりも約2等級高い。特定の実装形態では、補強材料は、約45D~約65Dの補強硬度を有する。他の実装形態では、補強材料は、約50D~約60Dの補強硬度を有する。さらなる実装形態では、補強材料は、約55Dの補強硬度を有する。特定の実装形態では、内側硬度と補強硬度とは、等しいかまたはほぼ等しい。内側材料、外側材料、および補強材料の相対硬度は、カニューレが応力を受けるときに熱成形された外端部補強層が張力緩和セクションとして機能するように選択され得る。
【0021】
いくつかの実装形態では、カニューレの中間部分は、カニューレの一方または両方の補強部分の外径よりも小さい外径を有する。カニューレの中間部分の外径は、カニューレ本体の許容可能な剛性を得るために、ある範囲の直径に及ぶように構成され得る。いくつかの実装形態では、補強外端層の外径は、カニューレの中間部分の平均外径よりも大きい。特定の実装形態では、カニューレの中間部分の外径は約2Fr~約7Frであり、カニューレの補強部分の外径は約3Fr~約8Frである。他の実装形態では、カニューレの中間部分の外径は約3Fr~約6Frであり、カニューレの補強部分の外径は約4Fr~約7Frである。特定の実装形態では、カニューレの中間部分の外径は約4Fr~5Frであり、カニューレの補強部分の外径は約5Fr~6Frである。
【0022】
特定の実装形態では、カニューレの中間部分は、内層と、コイルと、外層とを有するように構成され、カニューレの補強部分は、カニューレの端部領域の一方または両方に熱成形された外端部補強層をさらに含む、中間部分からのカニューレの延長部である。
【0023】
内層と補強端部領域とを有するカニューレを製造するための方法も企図されている。一実装形態では、カニューレは、内層をマンドレルの上に熱成形する工程と、内層の外径にわたって形状記憶コイルを配置する工程と、カニューレの外層を、カニューレの長さに沿って延在するように、内層およびカニューレのコイルの上に熱成形する工程とによって製造される。次いで、外端部補強層が、カニューレの近位端でカニューレの外層を覆って延在するように熱成形される。熱成形された外端部補強層は、カニューレとポンプハウジングの間にカニューレの補強セクションを形成する。熱成形された外端部補強層は、患者の体内への血管内血液ポンプシステムの経皮的挿入中のポンプハウジングとカニューレの間の分離を防止するのに役立つように構成され得る。加えて、カニューレの補強セクションは、カニューレとポンプハウジングの間の界面におけるカニューレの剛性を高めるように構成される。いくつかの実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の約1.5倍~5.5倍の剛性を有する。他の実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の約2倍~約5倍の剛性を有する。さらなる実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の約3倍~約4倍剛性を有する。特定の実装形態では、カニューレの補強部分は、カニューレの中間部分の約3.5倍の剛性を有する。別の実装形態では、血液ポンプアセンブリで使用するためのカニューレを製造するための方法は、ロータを少なくとも部分的に囲むように構成されたポンプアセンブリのポンプハウジングと、ポンプアセンブリの流入ケージとに接合されたカニューレを備える。そのような実装形態では、方法は、流入ケージをカニューレの遠位端に接合する工程と、ポンプハウジングをカニューレの近位端に接合する工程とをさらに含む。さらなる実装形態では、流入ケージをカニューレの遠位端に接合する工程とポンプハウジングをカニューレの近位端に接合する工程の少なくとも一方が、接合されるべき構成要素にエポキシを適用する工程と、エポキシを熱硬化させる工程とを含む。
【0024】
特定の実装形態では、内層を熱成形する工程は、内側押出スリーブをマンドレル上に配置する工程と、内側押出スリーブの周りに第1の熱収縮チューブを配置する工程とを伴う。次いで、熱収縮チューブおよび内側押出スリーブは、スリーブを軟化させ、熱収縮チューブにスリーブに対してマンドレルの方向に圧縮力を加えさせるために加熱される。次いで、第1の熱収縮チューブが取り外される。
【0025】
他の実装形態では、外層を熱成形する工程は、外側材料を含む外側押出スリーブを内層およびコイルの上に配置する工程と、続いて外側押出スリーブの周りに第2の熱収縮チューブを配置する工程とを含む。次いで、熱収縮チューブおよび外側押出スリーブは、スリーブを軟化させ、第2の熱収縮チューブにスリーブに対して内層およびコイルの方向に圧縮力を加えさせて、コイルを外側材料に埋め込ませるために加熱される。続いて、第2の熱収縮チューブが取り外される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
上記その他の目的および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて考察すれば明らかになるであろう。図面において、同様の参照符号は全体を通して同様の部分を指す。
【0027】
【
図1】本開示の局面による、その近位端に熱成形された外端部補強層を有する例示的な血液ポンプアセンブリを示す図である。
【
図2】本開示の局面による、熱成形された外端部補強層を有する血液ポンプアセンブリで使用するためのカニューレを示す例示的な断面図である。
【
図3】本開示の局面による、2つの熱成形された外端部補強層を有する例示的な血液ポンプアセンブリを示す図である。
【
図4】本開示の局面による、補強カニューレを製造するための例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本明細書に開示されるシステム、方法、および装置の全体的な理解を提供するために、特定の例示的な実装形態について説明する。本明細書に記載される実装形態および特徴は、血液ポンプアセンブリに関連した使用について具体的に説明されているが、教示は、他のポンプおよび他のタイプの医療機器に適合および適用され得ることが理解されよう。
【0029】
図1に、モータ106およびロータ104を備えるポンプ102と、ポンプハウジング108と、遠位端112を有するカテーテル110と、近位端116、遠位端118、中間部分120、長さ124、熱成形された内層126、コイル128、内層外径130、熱成形された外層132を有するカニューレ114と、熱成形された外端部補強層134と、非外傷性延長部136とを有する例示的な血液ポンプアセンブリ100を示す。ポンプ102のロータ104は、ポンプ102を通して流体を搬送するための少なくとも1つのブレード(図示されず)を備える。ポンプハウジング108は、ロータ104の少なくとも1つのブレードを取り囲む。カニューレ114の近位端116は、ポンプハウジング108に連結され、カニューレ114の遠位端118は、それ自体が柔軟な非外傷性延長部136に連結された血液流入ケージ122に連結されている。延長部136は、ポンプ102が患者内に配置されたときに、整流領域として機能することによってポンプ102を安定させるのに役立ち得る。いくつかの実装形態では、延長部136はピグテールである。
【0030】
カニューレ114は、
図2に関して以下に示されるのと同じ構造を有し得る。それに関して、
図1のカニューレ114は、カニューレ114の長さ124に沿って延在する熱成形された内層126を備え、内層126は内側材料を含む。加えて、カニューレ114は、熱成形された内層126の上に配置された、形状記憶材料を含むコイル128を備える。カニューレ114は、長さ124に沿って延在する熱成形された外層132をさらに備える。外層は、外側材料を含む。熱成形された外端部補強層134は、カニューレ114の近位端116でカニューレ114の外層を覆って延在する。熱成形された外端部補強層134は、補強材料を含む。さらに、熱成形された外端部補強層134は、カニューレ114とポンプハウジング108の間の接合部にさらなる安定性を提供する。
【0031】
いくつかの実装形態では、熱成形された外端部補強層134は、カニューレ114の中間部分120の少なくとも2倍の剛性を有する。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層134は、カニューレ114の中間部分120の約1.5倍~5.5倍の剛性を有する。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層134は、カニューレ114の中間部分120の約2倍~約5倍の剛性を有する。さらなる実装形態では、熱成形された外端部補強層134は、カニューレ114の中間部分120の約3倍~約4倍の剛性を有する。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層134は、カニューレ114の中間部分120の約3.5倍の剛性を有する。
【0032】
前述のように、特定の実装形態では、内側材料は、約45D~約65Dの硬度を有する。他の実装形態では、内側材料は、約50D~約60Dの硬度を有する。さらなる実装形態では、内側材料は、約55Dの硬度を有する。いくつかの実装形態では、外側材料は、約75A~約95Aの硬度を有する。他の実装形態では、外側材料は、約80A~約90Aの硬度を有する。さらなる実装形態では、外側材料は、約85Aの硬度を有する。特定の実装形態では、補強材料は、約45D~約65Dの硬度を有する。他の実装形態では、補強材料は、約50D~約60Dの硬度を有する。さらなる実装形態では、補強材料は、約55Dの硬度を有する。特定の実装形態では、内側材料の硬度と補強材料の硬度とは、等しいか、またはほぼ等しい。
【0033】
カニューレの補強部分およびカニューレの中間部分の剛比は、カニューレの長さに沿って所望の剛性プロファイルをもたらすように調整することができる。剛比は、様々な剛性の1つまたは複数の熱成形された外端部補強層を組み込むことによって調整することができる。熱成形された外端部補強層は、カニューレの中間部分よりも高い剛性を有する材料を含み得る。剛比は、上記の範囲に包含される様々な剛性を有する材料を組み込むことによってさらに調整することができる。加えて、熱成形された外端部補強層の形状を、所望の剛比を達成するように調整することもできる。例えば、熱成形された外端部補強層134は、約0.05mm~約0.15mmの半径方向厚さを有し得る。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層134の半径方向厚さは、約0.1mm未満である。加えて、熱成形された外端部補強層134は、様々な長さを有し得る。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層134の長さは、約1センチメートル~約3センチメートルである。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層134の長さは、約2センチメートルである。いくつかの実装形態では、熱成形された外端部補強層134の長さは、約3mm~約9mmである。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層134の長さは、約5mm~7mmである。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層134の長さは、約6mmである。一般に、異なる挿入方法および挿入角度を必要とする異なる処置は、カニューレの長さに沿って特定の剛性プロファイルを有するカニューレを要求し得る。例えば、肥満患者への血液ポンプアセンブリの大腿部挿入では、低体重の患者よりも血管が挿入点に対して深いために、ねじれに悩まされることがある。そのような場合、肥満患者の処置で挿入されるカニューレの遠位端および近位端の補強を高めることが望ましい場合がある。
【0034】
図2に、
図1のカニューレ114のような、熱成形された外端部補強層を有する血液ポンプアセンブリで使用するためのカニューレ200の例示的な長手方向部分断面図を示す。
図2のカニューレ200は、内層202と、コイル204と、外層206と、熱成形された外端部補強層208と、近位端210と、中間部分212と、遠位端214とを有する。内層202は、外径216を有する。内層202は、内側材料を含む。同様に、外層206は、外側材料を含む。いくつかの実装形態では、内側材料はポリウレタンである。いくつかの実装形態では、外側材料はポリウレタンである。そのような場合、内側材料および/または外側材料のポリウレタンは、ポリエーテルまたはポリエステルを含み得る。コイル204は形状記憶材料を含み、コイル204は内層202の上に配置される。形状記憶材料は、ニチノールまたは銅アルミニウム合金であり得る。熱成形された外端部補強層208は、カニューレ200の近位端210で外層206を覆って延在する。熱成形された外端部補強層208は、補強材料を含み、カニューレ200が、例えば、ポンプハウジング(例えば、
図1のポンプハウジング108)に連結されている箇所またはその付近で補強セクションを形成する。
【0035】
いくつかの実装形態では、熱成形された外端部補強層208は、カニューレ200の中間部分212の約1.5倍~5.5倍の剛性を有する。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層208は、カニューレ200の中間部分212の約2倍~5倍の剛性を有する。さらなる実装形態では、熱成形された外端部補強層208は、カニューレ200の中間部分212の約3倍~約4倍の剛性を有する。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層208は、カニューレ200の中間部分212の約3.5倍の剛性を有する。熱成形された外端部補強層208および中間部分212の様々な剛比の少なくとも1つの利点は、処置中にカニューレによって横断される脈管構造の蛇行に応じて、処置のために特定の剛性プロファイルを有するカニューレを選択できることである。
【0036】
カニューレ200の長さに沿って所望の剛性プロファイルを得るために、これらの要素の一方または両方の形状を変えることによって、カニューレ200の熱成形された外端部補強層208および中間部分212の剛比を調整することができる。例えば、熱成形された外端部補強層208の半径方向厚さを増加させることによって、熱成形された外端部補強層208の剛性をより高くすることができる。加えて、中間部分212の半径を減少させることによって、中間部分212の剛性を熱成形された外端部補強層208よりも低くすることもできる。さらに、中間部分212および熱成形された外端部補強層208の剛比を、内層202の外径216を変更することによって調整することができる。例えば、内層202の同じ厚さおよび外層206の同じ外径を維持しながら内層202の外径216を増加させると、屈曲する中間部分212内の材料が少なくなるため、中間部分212の剛性が低くなる。逆に、内層202の同じ厚さおよび外層206の同じ外径を維持しながら内層202の外径216を減少させると、屈曲する中間部分212内の材料の量が多くなるため、中間部分212の剛性が大きくなる。加えて、中間部分212と熱成形された外端部補強層208の剛比を、様々な剛性を有する材料を組み込むことによって調整することもできる。カニューレ200の中間部分212と熱成形された外端部補強層208の剛比を調整することができることの少なくとも1つの利点は、所与の処置に特に適した所望の剛性プロファイルをカニューレ200の長さに沿って実装できることである。
【0037】
図3に、モータ306およびロータ304を備えるポンプ302と、ポンプハウジング308と、遠位端312を有するカテーテル310と、近位端316、遠位端318、中間部分320、遠位開口部340、長さ324、熱成形された内層326、コイル328、内層外径330、熱成形された外層332を有するカニューレ314と、近位の熱成形された外端部補強層334と、遠位の熱成形された外端部補強層336と、非外傷性延長部338と、流入ケージ322とを有する例示的な血液ポンプアセンブリ300を示す。
図1の熱成形された外端部補強層134と同様に、近位の熱成形された外端部補強層334は、カニューレ314の近位端316でカニューレ314の外層を覆って延在し、補強材料を含む。近位の熱成形された外端部補強層334は、カニューレ314とポンプハウジング308の間の界面またはその付近でカニューレ314にさらなる安定性を提供し得る。同様に、遠位の熱成形された外端部補強層336も、カニューレ314の遠位端318でカニューレ314の外層を覆って延在し、近位の熱成形された外端部補強層334に使用される補強材料と同じかまたは異なり得る補強材料を含む。遠位の熱成形された外端部補強層336は、カニューレ314と流入ケージ322の間の界面またはその付近でカニューレ314にさらなる安定性を提供し得る。
【0038】
近位の熱成形された外端部補強層334は外径342を有し、中間部分320は外径344を有する。いくつかの実装形態では、中間部分320の外径344は、近位の熱成形された外端部補強層334の外径342よりも小さい。同様に、遠位の熱成形された外端部補強層336も外径346を有する。いくつかの実装形態では、中間部分320の外径344は、遠位の熱成形された外端部補強層334の外径346よりも小さい。
【0039】
いくつかの実装形態では、近位の熱成形された外端部補強層334および遠位の熱成形された外端部補強層336の少なくとも一方が、カニューレ314の中間部分320の約1.5倍~5.5倍の剛性を有する。他の実装形態では、近位の熱成形された外端部補強層334および遠位の熱成形された外端部補強層336の少なくとも一方が、カニューレ314の中間部分320の約2倍~5倍の剛性を有する。さらなる実装形態では、近位の熱成形された外端部補強層334および遠位の熱成形された外端部補強層336の少なくとも一方が、カニューレ314の中間部分320の約3倍~4倍の剛性を有する。特定の実装形態では、近位の熱成形された外端部補強層334および遠位の熱成形された外端部補強層336の少なくとも一方が、カニューレ314の中間部分320の約3.5倍の剛性を有する。前述のように、カニューレの補強部分およびカニューレの中間部分の剛比は、カニューレの補強部分および中間部分の形状および材料を変えることによって、カニューレの長さに沿って所望の剛性プロファイルを得るために調整することができる。既に述べたように、異なる挿入方法および挿入角度を必要とする異なる処置は、異なる剛性プロファイルを有するカニューレを要求し得る。
【0040】
図4に、カニューレを製造する例示的な方法400を示す。カニューレは、例えば、
図1~
図3に関連して上述されたカニューレのいずれかであり得る。方法400は、まず、内側材料、内径、および外径を含む内層がマンドレル上に熱成形される工程402を含む。続いて、工程404は、内側材料の外径にわたって形状記憶コイルを配置することを含む。次いで、工程406は、コイルおよび内層の上に外層を熱成形することを含み、外層はカニューレの長さに沿って延在するように構成される。外層は、外側材料を含む。
【0041】
工程408は、カニューレの端部で外層を覆って延在するように外端部補強層を熱成形することを含む。外端部補強層は、補強材料を含み、カニューレの補強セクションを形成する。例えば、補強材料は、
図1および
図2に示されるようにカニューレの近位端に施され、カニューレとカニューレの近位端が接合されるポンプの部分との間の(例えば、カニューレとポンプハウジングの間の)界面またはその付近のカニューレの剛性を高めるように構成され得る。そのような場合、この方法は、熱成形された外端部補強層を血液ポンプアセンブリのポンプハウジングに接合する工程をさらに含み得る。同様に、補強材料は、
図3に示されるようにカニューレの遠位端に施され、カニューレとカニューレの遠位端が接合されるポンプの部分との間の(例えば、カニューレと流入ケージの間の)界面またはその付近のカニューレの剛性を高めるように構成され得る。そのような場合、この方法は、熱成形された外端部補強層を血液ポンプアセンブリの流入ケージに接合する工程をさらに含み得る。
【0042】
いくつかの実装形態では、熱成形された外端部補強層は、血液ポンプアセンブリのカニューレの中間セクションの約1.5倍~約5.5倍の剛性を有する。他の実装形態では、熱成形された外端部補強層は、血液ポンプアセンブリのカニューレの中間セクションの約2倍~約5倍の剛性を有する。特定の実装形態では、熱成形された外端部補強層は、血液ポンプアセンブリのカニューレの中間セクションの約3倍~約4倍の剛性を有する。さらなる実装形態では、熱成形された外端部補強層は、血液ポンプアセンブリのカニューレの中間セクションの約3.5倍の剛性を有する。熱成形された外端部補強層は、硬化するエポキシを適用することによってポンプハウジングまたは流入ケージに接合され得る。
【0043】
前述のように、内層を熱成形する工程は、内側材料を含む内側押出スリーブをマンドレル上に配置する工程と、続いて内側押出スリーブの周りに第1の熱収縮チューブを配置する工程とを含む。次いで、熱収縮チューブおよび内側押出スリーブは、スリーブを軟化させ、熱収縮チューブにスリーブに対してマンドレルの方向に圧縮力を加えさせるために加熱される。次いで、第1の熱収縮チューブが取り外される。同様に、外層を熱成形する工程も、外側材料を含む外側押出スリーブを内層およびコイルの上に配置する工程と、続いて外側押出スリーブの周りに第2の熱収縮チューブを配置する工程とを含む。次いで、熱収縮チューブおよび外側押出スリーブは、スリーブを軟化させ、熱収縮チューブにスリーブに対して内層およびコイルの方向に圧縮力を加えさせて、コイルを外側材料に埋め込ませるように加熱される。続いて、第2の熱収縮チューブが取り外される。
【0044】
以上の説明は、単に本技術の原理を例示するためのものである。よって、本明細書に記載される装置および方法を、限定ではなく例示を目的として提示された、記載の実装形態以外によって実施することができる。
【0045】
加えて、開示の特徴は、本明細書に記載されている1つまたは複数の他の特徴との(複数の従属的組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)任意の組み合わせまたは部分的組み合わせとして実装されてもよい。以上で説明または例示された様々な特徴は、それらの任意の構成要素を含めて、他のシステムに結合または統合されてもよい。さらに、本技術の精神から逸脱することなく、特定の特徴が省略されるか、または実装されなくてもよい。
【国際調査報告】