(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】誘導コイルのエアギャップを調整するための電磁調理器、方法、およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
H05B6/12 308
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568405
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019062692
(87)【国際公開番号】W WO2020228964
(87)【国際公開日】2020-11-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513121384
【氏名又は名称】ベステル エレクトロニク サナイー ベ ティカレト エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラゾル イルファン
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA22
3K151BA23
3K151CA63
(57)【要約】
誘導コイル(110)と、支持構造(120)と、強磁性部材(141)と、非強磁性部材(142)とを備える電磁調理器(100)が提供される。誘導コイル(110)は、変化電流が入力され、対応する変化電磁場を生じるよう構成される。支持構造(120)は、強磁性体(130)を誘導コイル(110)の上方で支持し、強磁性体(130)が対応する変化電磁場内に配置されて誘導コイル(110)と磁気的に結合され、誘導コイル(110)と強磁性体(130)との間の相互インダクタンスを決定するよう構成される。強磁性部材(141)と非強磁性部材(142)とは、支持構造(120)と誘導コイル(110)との間に位置し、誘導コイル(110)と強磁性体(130)との間の相互インダクタンスに基づき対応する変化電磁場内を選択的に移動するよう構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁調理器(100)であって、
変化電流を受け、対応する変化電磁場を生じるよう構成される誘導コイル(110)と、
強磁性体(130)を前記誘導コイル(110)の上方で支持し、前記強磁性体(130)が前記対応する変化電磁場内に配置されて前記誘導コイル(110)と磁気的に結合され、前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスを決定するよう構成される支持構造(120)と、
前記支持構造(120)と前記誘導コイル(110)との間に位置するよう構成される強磁性部材(141)および非強磁性部材(142)とを備え、
前記強磁性部材(141)および/または前記非強磁性部材(142)は、前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の前記相互インダクタンスに基づき前記対応する変化電磁場内を選択的に移動するよう構成されることを特徴とする電磁調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁調理器(100)であって、前記強磁性部材(141)と前記非強磁性部材(142)とは、水平および/または鉛直に移動するよう構成されることを特徴とする電磁調理器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電磁調理器(100)であって、前記強磁性部材(141)は前記対応する変化電磁場内を移動して前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の前記相互インダクタンスを増加させ、前記非強磁性部材(142)は前記対応する変化電磁場内を移動して前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の前記相互インダクタンスを減少させることを特徴とする電磁調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電磁調理器(100)であって、前記強磁性部材(141)は、前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値が、前記強磁性部材(141)の変位前の前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値よりも高くなる位置まで前記対応する変化電磁場内を移動することを特徴とする電磁調理器。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電磁調理器(100)であって、前記非強磁性部材(142)は、前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値が前記非強磁性部材(142)の変位前の前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値よりも低くなる位置まで前記対応する変化電磁場内を移動することを特徴とする電磁調理器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電磁調理器(100)であって、前記誘導コイル(110)は前記強磁性体(130)に近接または離隔移動するよう構成されることを特徴とする電磁調理器。
【請求項7】
電磁調理器の操作方法であって、
誘導コイル(110)で変化電流を受ける工程と、
前記誘導コイル(110)において対応する変化電磁場を生成する工程と、
支持構造(120)において、強磁性体(130)を前記誘導コイル(110)の上方で支持し、前記強磁性体(130)が前記対応する変化電磁場内に配置されて前記誘導コイル(110)と磁気的に結合され、前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスを決定する工程と、
前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の前記相互インダクタンスに基づき前記支持構造(120)と前記誘導コイル(110)との間に位置するよう構成される強磁性部材(141)および/または非強磁性部材(142)を前記対応する変化電磁場内で選択的に移動させる工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、強磁性部材(141)および/または非強磁性部材(142)を選択的に移動させる工程は、
前記強磁性部材(141)に前記対応する変化電磁場内を移動させて前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の前記相互インダクタンスを増加させる工程と、
前記非強磁性部材(142)に前記対応する変化電磁場内を移動させて前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の前記相互インダクタンスを減少させる工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の方法であって、強磁性部材(141)を選択的に移動させる工程は、
前記強磁性部材(141)を、前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値が、前記強磁性部材(141)の変位前の前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値よりも高くなる位置まで、前記対応する変化電磁場内を移動させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載の方法であって、非強磁性部材(142)を選択的に移動させる工程は、
前記非強磁性部材(142)を、前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値が前記非強磁性部材(142)の変位前の前記誘導コイル(110)と前記強磁性体(130)との間の相互インダクタンスの値よりも低くなる位置まで、前記対応する変化電磁場内を移動させる工程を含むことを特徴とする電磁調理器。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の方法であって、前記強磁性部材(141)と前記非強磁性部材(142)とは、水平および/または鉛直に移動するよう構成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の方法であって、前記誘導コイル(110)は前記強磁性体(130)に近接または離隔移動するよう構成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
コンピュータプログラム製品であって、装置上で実行されたとき、請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成されるようなプログラム命令を備えることを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、誘導コイルのエアギャップを調整するための電磁調理器、方法、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
変化電流(varying electric current)を誘導コイルに流すことで、コイルに対応する変化電磁場(varying electromagnetic field)を生じさせる電磁調理器が知られている。この変化電磁場は、調理用容器が誘導コイルに非常に近接して配置された際に、強磁性の調理用容器等の中に可変渦電流を誘導し、これにより調理用容器および、結果として調理用容器の内容物を加熱する。
【0003】
US4467162Aは、加熱対象となる帯磁性材料の容器が置かれるトッププレートと、鉄製のボトムプレートと、トッププレートとボトムプレートとの間の空間に配置される加熱コイルと、非帯磁性金属材料からなり加熱コイルとボトムプレートとの間の空間に配置される遮蔽プレート部材とを備える誘導加熱装置を開示する。このプレート部材は、加熱コイルから発せられる磁力線を遮蔽するという利点があるものの、固定位置にあり、加熱コイルとボトムプレートとの間に配置され、一種類の材料(すなわち非帯磁性材料)からなる点で不利である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される第一の側面によれば、誘導コイルと、支持構造と、強磁性部材と、非強磁性部材とを備える電磁調理器が提供されてもよい。誘導コイルは、変化電流を受け、対応する変化電磁場を生じるよう構成される。支持構造は、誘導コイルの上方で強磁性体を支持し、強磁性体が対応する変化電磁場中に位置し誘導コイルと磁気的に結合して誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスを決定するよう構成される。強磁性部材と非強磁性部材とは、支持構造と誘導コイルとの間に位置し、誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスに基づき対応する変化電磁場内を選択的に移動するよう構成される。
【0005】
したがって、強磁性および/または非強磁性部材を変化電磁場内に挿入することで誘導コイルと強磁性体との間のエアギャップを変化させ、これにより誘導コイルと強磁性体との間の磁気的結合を変化させ、かつ、選択的に挿入することで調整可能に変化させることになる。
【0006】
第一の側面の一例において、強磁性部材と非強磁性部材とは、水平および/または鉛直に移動するよう構成されてもよい。
【0007】
第一の側面の一例において、強磁性部材は対応する変化電磁場内を移動することで誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスを増加させてよく、非強磁性部材は対応する変化電磁場内を移動することで誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスを減少させてもよい。
【0008】
第一の側面の一例において、強磁性部材は対応する変化電磁場内を、誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値が、強磁性部材の変位前の誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値よりも高くなる位置まで移動してもよい。
【0009】
第一の側面の一例において、非強磁性部材は対応する変化電磁場内を、誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値が、非強磁性部材の変位前の誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値よりも低くなる位置まで移動してもよい。
【0010】
第一の側面の一例において、誘導コイルは、強磁性体に近接または離隔移動するよう構成されてもよい。
【0011】
本明細書に開示される第二の側面によれば、電磁調理器を操作する方法が提供されてもよい。この方法は、誘導コイルで変化電流を受ける工程と、誘導コイルにおいて対応する変化電磁場を生成する工程と、支持構造において、強磁性体を誘導コイルの上方で支持し、強磁性体が対応する変化電磁場内に配置されて誘導コイルと磁気的に結合され、誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスを決定する工程と、誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスに基づき支持構造と誘導コイルとの間に位置するよう構成される強磁性部材および/または非強磁性部材を対応する変化電磁場内で選択的に移動させる工程とを含んでもよい。
【0012】
第二の側面の一例において、強磁性部材および/または非強磁性部材を選択的に移動させる工程は、強磁性部材に対応する変化電磁場内を移動させて誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスを増加させる工程と、非強磁性部材に対応する変化電磁場内を移動させて誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスを減少させる工程とを含んでもよい。
【0013】
第二の側面の一例において、強磁性部材を選択的に移動させる工程は、強磁性部材を、誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値が、強磁性部材の変位前の誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値よりも高くなる位置まで、対応する変化電磁場内を移動させる工程を含んでもよい。
【0014】
第二の側面の一例において、非強磁性部材を選択的に移動させる工程は、非強磁性部材を、誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値が非強磁性部材の変位前の誘導コイルと強磁性体との間の相互インダクタンスの値よりも低くなる位置まで、対応する変化電磁場内を移動させる工程を含んでもよい。
【0015】
第二の側面の一例において、強磁性部材と非強磁性部材とは、水平および/または鉛直に移動するよう構成されてもよい。
【0016】
第二の側面の一例において、誘導コイルは強磁性体に近接または離隔移動するよう構成されてもよい。
【0017】
本明細書に開示される第三の側面によれば、コンピュータプログラム製品であって、装置上で実行されたとき、第二の側面および第二の側面の例のいずれかにかかる方法を実行するよう構成されるようなプログラム命令を備えるコンピュータプログラム製品が提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本願開示の理解を促進し、実施形態がどのように実施されるかを示すため、例示的に添付図面が参照される。
【0019】
【
図1】本願開示にかかる電磁調理器の一例を模式的に示す。
【
図2】強磁性調理器具に近接および離隔移動する加熱コイルの例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願開示は、間接的な放射、対流、または熱伝導によるのではなく、強磁性調理器具の直接的誘導加熱を用いる電磁調理に関する。
【0021】
一般に、電磁調理器は、強磁性調理器具の下方に配置され、変化電流が流れることで対応する変化電磁場を生成するコイル(誘導コイルまたはワークコイルとしても知られる)を備える。強磁性調理器具が誘導コイルに近接配置されると、変化電磁場によって強磁性調理器具中に対応する可変の起電力(emf)が誘導される。このemfは、強磁性調理器具とコイルとの間の相互インダクタンスと、コイルを流れる変化電流の変化率との関数である。誘導された渦電流は、強磁性調理器具の抵抗内を流れ、ジュール効果によって熱を放散することで、強磁性調理器具を加熱する。強磁性調理器具の抵抗は、その透磁率(μ)、およびその抵抗率(ρ)、並びにコイルの励起周波数によるため、比較的高い透磁率と抵抗率とを有する強磁性調理器具により十分な熱を発生させることができる。
【0022】
図1を参照すると、本願開示にかかる電磁調理器100の例が概略的に示されている。
【0023】
電磁調理器100は、誘導加熱部材としての誘導コイル110と、支持構造120と、強磁性部材141と、非強磁性部材142とを備えてもよい。
【0024】
例えば銅線等からなってもよい誘導コイル110は、変化電流を受け、対応する変化電磁場を生じるよう構成される。
【0025】
例えばセラミック材料等からなってもよい支持構造120は、誘導コイル110の上方の強磁性体130を支持するよう構成される。
【0026】
例えば鋳鉄およびある種の鋼鉄の合金からなってもよい強磁性体130は、対応する変化電磁場内の支持構造120上に配置されて、トランスの一次コイルと二次コイルとの間の結合と同様に誘導コイル110と磁気的に結合される。強磁性体130は料理用深鍋、ソースパン、フライパン等の調理用容器であってよい。
【0027】
鉄、コバルト、ニッケル、これらの合金、希土類金属などの帯磁性材料からなる強磁性部材141と、銅、アルミニウム等の非帯磁性材料からなる非強磁性部材142とは、支持構造120と誘導コイル110との間に位置するよう構成される。強磁性部材141と非強磁性部材142とは、例えば任意の形状(例えば、矩形、正方形、円形など)の板であってよく、水平面または支持構造120に対して傾斜面上に配置されてもよい。
図1中の矢印で示されるように、強磁性部材141と非強磁性部材142とは、水平および/または鉛直に移動可能であり、誘導コイル110と強磁性体130との間の対応する変化電磁場内を移動可能なよう構成される。
【0028】
誘導コイル110と強磁性体130との間の相互インダクタンスにより、互いの間の磁気的結合を定量的に表すことができる。相互インダクタンスが高いほど、磁気的結合が強い。逆に、相互インダクタンスが低いほど、磁気的結合が弱い。
【0029】
誘導コイル110が強磁性体130に対して近接および離隔移動する
図2を参照すると、誘導コイル110と強磁性体130との間の相互インダクタンスが互いの相対位置に応じて変化することがわかる。言い換えると、誘導コイル110と強磁性体130との間のギャップが小さいほど互いの間の磁気的結合が強くなり、かつ相互インダクタンスが高くなるように、相互インダクタンスが互いの間のエアギャップに応じて変化する。逆に、誘導コイル110と強磁性体130との間のギャップが大きくなるほど、互いの間の磁気的結合と相互インダクタンスは低くなる。
【0030】
例示的実施形態において、強磁性体130は誘導コイル110の上方の支持構造120上に配置され、誘導コイル110によって生じる変化電磁場内にある。そして、誘導コイル110と強磁性体130との間の相互インダクタンスは、各強磁性体130が固有の磁気的特性を有するということに基づき、測定により決定される。この決定は、例えば、電磁調理器100内のコントローラ(図示略)によって行われてもよい。決定された相互インダクタンスの値に基づき、強磁性部材141および/または非強磁性部材142は、誘導コイル110と強磁性体130との間の対応する変化電磁場内でそれぞれの位置に選択的に移動可能とされてもよい。強磁性および非強磁性部材141、142の各位置への変位は、例えば、電磁調理器100内部のコントローラによって制御されてもよい。
【0031】
具体的に、強磁性部材141は、強磁性部材141の変位に先立って決定される相互インダクタンスが比較的小さい場合、誘導コイル110と強磁性体130との間の相互インダクタンスを増加させるために対応する変化電磁場内を水平および/または鉛直に移動するよう構成される。強磁性体130の強磁性(例えば、透磁率、抵抗率等)が比較的低く、強磁性体130が(例えば調理するのに)十分な熱を発生するのを妨げる場合がありうる。誘導コイル110と強磁性体130との間に強磁性部材141を挿入することにより、互いの間のエアギャップの誘電特性を変化させることができる。
【0032】
強磁性および非強磁性部材141、142の変位に先立って決定される相互インダクタンスを、以下では基準相互インダクタンス値として呼称する場合がある。
【0033】
強磁性部材141は、ある位置で測定された相互インダクタンスの値が上記の基準相互インダクタンス値を超えるまで相互インダクタンスが増加した時点で、所定位置に到達したものとしてよい。例示的実施形態において、強磁性部材141の変位時の基準相互インダクタンス値よりも高い目標相互インダクタンスを規定し、ある位置で測定された相互インダクタンスの値がこの目標相互インダクタンスの値と等しい、または近くなった時に、強磁性部材141が所定位置に到達したものとしてもよい。
【0034】
一方、非強磁性部材142は、非強磁性部材142の変位に先立って決定される相互インダクタンスが比較的大きい場合、誘導コイル110と強磁性体130との間の相互インダクタンスを減少させるため、対応する変化電磁場内を水平および/または鉛直に各位置まで移動するよう構成される。強磁性体130の強磁性(例えば、透磁率、抵抗率等)が比較的高く、過熱および結果として材料の損傷が生じる場合がありうる。誘導コイル110と強磁性体130との間に非強磁性部材142を挿入することにより、互いの間のエアギャップの誘電特性を変化させることができる。
【0035】
非強磁性部材142は、ある位置で測定された相互インダクタンスの値が上記の基準相互インダクタンス値よりも小さくなるまで相互インダクタンスの値が減少した際に、所定位置に到達したものとしてもよい。例示的実施形態において、非強磁性部材142の変位時の基準相互インダクタンス値よりも低い目標相互インダクタンスを規定して、ある位置で測定された相互インダクタンスの値がこの目標相互インダクタンスの値と等しい、または近いときに非強磁性部材142が所定位置に到達したとしてもよい。
【0036】
この位置は相互インダクタンスの測定結果に基づき決定されるものの、別の例示的実施形態において、強磁性体130の加熱測定結果に基づいてもよい。例えば、強磁性体130の加熱が基準加熱値よりも小さい場合、強磁性部材141は、ある位置で測定された加熱値が基準加熱値を超えるまで加熱が増加したときに所定位置に到達したものとしてもよい。一方、強磁性体130の加熱が基準加熱値を超えた場合、非強磁性部材142は、ある位置で測定された加熱値が基準加熱値よりも小さくなるまで加熱が減少したときに所定位置に到達したものとしてもよい。目標相互インダクタンスと同様、目標加熱値をこれにならって規定してもよい。
【0037】
例示的実施形態において、電磁調理器100は複数の異なる強磁性部材141と複数の異なる非強磁性部材142とを備えてもよい。誘導コイル110と対応する強磁性体130との間の最初に決定された相互インダクタンスの値に基づき、これら異なる強磁性および非強磁性部材141、142の内の一つ以上の部材が選択的に対応する変化電磁場内を移動してよい。これにより、目標相互インダクタンスの値をより正確に取得することができる。
【0038】
図面を参照して本明細書に記載された実施形態の少なくともいくつかの側面は、処理システムまたはプロセッサによって実行されるコンピュータプロセスを含むが、本発明は、本発明を実施可能なコンピュータプログラム、特に通信手段(carrier)上または内のコンピュータプログラムにも及ぶ。このプログラムは、非一時的なソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形式の中間ソースコードおよびオブジェクトコード、またはその他任意の本発明にしたがった処理の実施に使用するのに適切な非一時的形式であってよい。通信手段は、プログラムを搬送可能な任意の実態または装置であってよい。例えば、通信手段は、ソリッドステートドライブ(SSD)または他の半導体ベースのリードアクセスメモリ(RAM)、コンパクトディスク(CD)ROMもしくは半導体ROMなどのリードオンリーメモリー(ROM)、フロッピーディスクまたはハードディスクなどの磁気記録媒体、光学メモリー装置一般などの記憶媒体を含んでもよい。
【0039】
本明細書に記載される例は、本発明の実施形態の説明的事例として理解されるべきである。別の実施形態および事例も想定される。任意の一例または実施形態に関連して記載された任意の特徴は、単独で、または他の特徴と組み合わせて利用可能である。さらに、任意の一例または実施形態に関連して記載された任意の特徴は、他の例または実施形態の一つ以上の特徴と組み合わせて、または他の例または実施形態と組み合わせても利用可能である。さらに、本明細書に記載されない等価物または変形例も、請求項に定義される本発明の範囲内で利用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】