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▶ ルートロニック エレクトロニッシェ バウエレメンテ ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】節足動物に影響を与えるための方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/28 20110101AFI20220825BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20220825BHJP
   A01K 29/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A01M29/28
G01N27/02 E
A01K29/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576709
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020067905
(87)【国際公開番号】W WO2020260501
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】102019117088.5
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019121833.0
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】521559614
【氏名又は名称】ルートロニック エレクトロニッシェ バウエレメンテ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マングラー、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
2B121
2G060
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121DA06
2B121DA17
2B121DA19
2B121DA23
2B121EA21
2G060AA15
2G060AF04
2G060AF06
2G060HC13
2G060KA09
(57)【要約】
本発明は、電磁放射線10が少なくとも1つの放射体14から放射される、電磁放射線によって節足動物に影響を与えるための方法に関する。電磁放射線10の特性18が、節足動物12のモデルである少なくとも1つの電子等価回路によって生成されることにより、対応する節足動物が反応する、対応する信号及び/又は信号パターンを迅速に、簡単に、且つ体系的に決定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線(10)によって節足動物(12)に影響を与えるための方法であって、特性を有する電磁放射線(10)が少なくとも1つの送信器(14)によって放射され、前記電磁放射線(10)の前記特性(18)が少なくとも1つの等価電子回路の助けを借りて決定され、前記等価回路が節足動物の少なくとも1つの感覚付属器(16)及び/又は少なくとも1つの感覚特性のモデルであることを特徴とする方法。
【請求項2】
- 少なくとも1つのパルスを送信するステップと、
- 前記送信パルスの周波数スペクトルを検出するステップと、
- 前記送信パルスの前記周波数スペクトルの少なくとも1つの周波数成分を決定し、前記周波数成分を整定時間に変換するステップと、
- 前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含むグループから少なくとも1つの要素を決定するステップと、
- 前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの決定された要素と等価であり、0≦Rの抵抗値R及び0≦CのキャパシタンスCを有する少なくとも1つの未知のRC回路を有する、前記少なくとも1つの電子等価回路を選択するステップと、
- 少なくとも1つの現在既知のRC回路としての前記RC回路の時定数に対応する、前記送信パルスの前記周波数スペクトルの前記周波数成分から計算された前記整定時間に基づいて前記少なくとも1つの未知のRC回路を決定するステップと、
- 前記節足動物(12)に影響を与えるために重要な少なくとも1つのRC回路を決定するステップと
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの重要なRC回路を決定するために、電圧振幅は、前記既知のRC回路を用いて決定された前記少なくとも1つの整定時間に応じて正規化され、好ましくはDRT分析によって正規化され、前記正規化された電圧振幅に基づいて決定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パルスの時間推移が、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの重要なRC回路の前記時定数を変化させることによって前記節足動物(12)をトレーニングするステップを特徴とする、請求項2から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
- 前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループから少なくとも1つの要素を決定するステップと、
- 少なくとも1つのパルスを送信するとき、前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの要素の周波数挙動を識別してグラフ表示するステップと、
- 少なくとも1つのパルスを送信するとき、等価回路の周波数挙動を識別してグラフ表示するステップと、
- 前記等価回路の前記グラフ表示された周波数挙動を、前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの要素の前記グラフ表示された周波数挙動と比較し、グラフ・パターンの類似性を決定するステップと、
- 前記決定された類似性に基づいて、前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの要素と等価である前記少なくとも1つの電子等価回路を選択するステップと
を特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グラフ表示がナイキスト線図において提供されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モデルは、前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び/又は感覚特性の以下の物理的効果及び/又は生化学的効果、すなわち、
- 前記節足動物の触角のモデルである、ブラシ電極のモデル、
- 前記節足動物の多孔質の感覚子毛のモデルである、多孔質電極のモデル、
- イオン拡散を記述する、一般的な拡散のモデル、
- 非透過性壁(NPW)の拡散のモデル、
- 理想的なリザーバの拡散のモデル、
- 前記節足動物の表面及び/又は内部構造のトモグラフィ・データから屈曲度係数を計算するためのモデル、
- 前記節足動物の前記表面及び/又は前記内部構造のトポグラフィ・データから前記屈曲度係数を計算するためのモデル
の少なくとも1つに関連付けられることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記等価回路の前記少なくとも1つのRC回路を決定するために、少なくとも1つの伝送線モデル(20)が使用されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数の等価回路が直列に接続されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電子等価回路の助けを借りて少なくとも1つのインピーダンス・スペクトルが決定されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記インピーダンス・スペクトルは、前記節足動物(12)のトモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データの助けを借りて決定されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記伝送線モデル(20)が、以下の伝送線路モデル、すなわち、
- 多孔質電極の伝送線モデル、
- 多孔質材料の伝送線モデル、
- 一般的な拡散の伝送線モデル、
- 非透過性壁及び理想的なリザーバにおける拡散の伝送線モデル
の少なくとも1つに分割されることを特徴とする、請求項9から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記電磁放射線(10)の前記特性(18)に関するさらなるパラメータを決定するために、前記伝送線モデル(20)の少なくとも1つの微分方程式が解かれることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記使用される伝送線モデル(20)は、少なくとも1つの他の伝送線モデル及び/又は単純化された等価回路の助けを借りて検証及び/又は適応されることを特徴とする、請求項5から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
任意の非線形関数が、少なくとも1つのデータベースと組み合わせた代替方法によってモデル化されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Goertzelアルゴリズムを組み込んだ少なくとも1つの離散フーリエ変換(DFT)が、マイクロコントローラに基づく方法のストレージ効率の良い使用のために使用されることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの参照モデルに基づいて制御システム(50)によって前記微分方程式を解くことが、チェック及び/又は適応され、前記参照モデルが、好ましくは、経験的データ及び/又は既に決定されたモデルのデータから決定されることを特徴とする、請求項15から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記電磁放射線(10)の前記特性(18)がメモリに記憶されることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記電磁放射線(10)の前記特性(18)が、少なくとも1つのキャリア信号(22)若しくは少なくとも1つのディザ信号で変調されるか、又は少なくとも1つのディザ信号でさらに変調される少なくとも1つのキャリア信号(22)で変調されることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記電磁放射線(10)の前記特性(18)は、周波数分割多重化信号(FDM)及び時分割多重化信号(TDM)に基づく、組み合わされた多周波数パターン生成器(24)を用いて生成され、空気中での少なくとも1つのコロナ放電をシミュレーションし、その時間推移が少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを有する、少なくとも1つのバースト・パルスを有することを特徴とする、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記特性(18)は、いかなる高調波及び/若しくは低調波の相関も有さず、並びに/又は素数ベースであり、並びに/又は高調波及び/若しくは低調波のいかなる整数の倍数若しくは係数も有さないことを特徴とする、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
電磁放射線(10)によって節足動物(12)に影響を与えるためのデバイス(100)であって、前記デバイス(100)は、特性を有する前記電磁放射線(10)を放射する少なくとも1つの送信器(14)を有し、前記電磁放射線(10)の前記特性(18)を決定するための手段として少なくとも1つの等価電子回路が設けられ、前記等価回路は、節足動物の少なくとも1つの感覚付属器(16)及び/又は少なくとも1つの感覚特性のモデルであることを特徴とする、デバイス(100)。
【請求項24】
- 少なくとも1つのパルスを送信するための手段(40)と、
- 前記送信パルスの周波数スペクトルを検出するための手段(42)と、
- 前記送信パルスの前記周波数スペクトルの少なくとも1つの周波数成分を決定するための手段(44)、及び前記周波数成分を整定時間に変換するための計算手段(46)と、
- 前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループから少なくとも1つの要素を決定するための手段と、
- 前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの決定された要素と等価であり、0≦Rの抵抗値R及び0≦CのキャパシタンスCを有する少なくとも1つの未知のRC回路を含む、前記少なくとも1つの電子等価回路を選択するための選択手段(50)と、
- 少なくとも1つの現在既知のRC回路としての前記RC回路の時定数に対応する、前記送信パルスの前記周波数スペクトルの前記周波数成分から計算された前記整定時間に基づいて前記少なくとも1つの未知のRC回路を決定するための手段(52)と、
- 前記節足動物(12)に影響を与えるために重要な少なくとも1つのRC回路を決定するための手段と
を有することを特徴とする、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記少なくとも1つの重要なRC回路を決定するための前記手段は、前記既知のRC回路を用いて決定された前記少なくとも1つの整定時間に応じて電圧振幅を正規化するための正規化手段(48)を含むことを特徴とする、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記パルスを送信するための前記手段(40)は、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを送信するように構成されることを特徴とする、請求項24又は25に記載のデバイス。
【請求項27】
- 前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループから少なくとも1つの要素を決定するための手段と、
- 少なくとも1つのパルスを送信するとき、前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの要素の周波数挙動を識別するための手段及びグラフ表示するための手段と、
- 少なくとも1つのパルスを送信するとき、等価回路の周波数挙動を識別するための手段及びグラフ表示するための手段(54)と、
- 前記等価回路の前記グラフ表示された周波数挙動を、前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの要素の前記グラフ表示された周波数挙動と比較し、グラフ・パターンの類似性を決定するための手段(56)と、
- 前記決定された類似性に基づいて、前記節足動物(12)の前記感覚付属器(16)及び前記感覚特性を含む前記グループからの前記少なくとも1つの要素と等価である前記少なくとも1つの電子等価回路を選択するための選択手段と
をさらに備えることを特徴とする、請求項23から26までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
グラフ表示手段が、ナイキスト線図において前記グラフ表示を提供するように構成されることを特徴とする、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
周波数分割多重化信号(FDM)及び時分割多重化信号(TDM)に基づく、組み合わされた多周波数パターン生成器(24)が、設けられ、前記電磁放射線(10)の前記特性(18)を生成することを特徴とする、請求項23から28までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記電磁放射線(10)の前記特性(18)をメモリから前記デバイス(100)に転送可能であるか、又は前記デバイス(100)内に設定されるように構成される手段(34)が設けられることを特徴とする、請求項23から29までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記特性(18)は、空気中での少なくとも1つのコロナ放電をシミュレーションする、少なくとも1つのバースト・パルスを有し、前記バースト・パルスの時間推移は、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを有することを特徴とする、請求項23から30までのいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2019年6月25日に出願された独国特許出願第10 2019 117 088.5号、及び2019年8月13日に出願された独国特許出願第10 2019 121 833.0号に基づき、それらの優先権を主張するものであり、それらの開示の全体がここで本出願の主題に明示的に組み込まれている。
【0002】
本発明は、以下の研究に基づいている。
【0003】
節足動物の行動パターンをディープ・ラーニングするための、多周波数励起を用いた等価回路モデルに基づく、節足動物のセンサ構造の代替モデル化のための方法。
【0004】
内容
・目的の定義
・序論及び動機付け
・節足動物の感覚機能
・節足動物の感覚機能のスコアリング・モデル
・システムの基本的な機能原理
・行動パターンに影響を与えるためのパラメータ
・周波数分割多重化信号(FDM)と時分割多重化信号(TDM)とを結合する刺激信号発生器
・節足動物のマルチ・センサ・システムの等価回路モデル(ECM:equivalent circuit model)
・伝送線モデル(TLM:transmission line model)への変換
・TLMの分割及び感覚特性の対応付け
・インピーダンス・スペクトルを計算するための数学的原理
・タウ係数計算によるトポグラフィ分析及びトモグラフィ分析
・センサ・モデルのパラメータ抽出
・モデル・ベースの適応制御システムによる機械学習
・神経機能の適用
・抽出されたパラメータ及びパラメータの適応に対する、フィードバック・ループを用いたディープ・ラーニング
【0005】
インピーダンス分光法は、特に電気化学システム及び生化学システムの特徴付け及び分析のための、認識された非侵襲的測定技法である。現在、インピーダンス分光法は、実験室条件下で順調に使用されており、組込みシステムにおける広範な工業的且つ商業的な用途は、まだ達成されていない。ヒト、動物、及び、特に節足動物などの、生化学システムにおけるこの方法の適用は、困難である。課題の1つは、汎用的に適用可能であるが、より低いメモリ要件を有する自律組込みリアル・タイム・システムに依然として適している、人工知能に基づく、拡張可能なモデル化アルゴリズム及びディープ・ラーニング・アルゴリズムを見出すことである。この文書は、節足動物の行動パターンをディープ・ラーニングするための、多周波数励起を用いた等価回路モデルに基づく、節足動物のセンサ構造の代替モデル化のための方法について説明している(参照文献7)。
【0006】
本方法は、節足動物の非線形インピーダンス・モデル及び相関行動のパラメトリック表現及びノン・パラメトリック表現のためのロバストで汎用的に適用される方法について説明する。
【0007】
ソフトウェア及びハードウェアの工業化のためには、節足動物の励起のための信号発生器の実装がマイクロコントローラ・ベースのシステムにおいて実現することができることが重要である。オンライン/クラウド接続を伴う又は伴わない商業用途における、インピーダンス分光法、及び励起のためのその信号発生器の確立は、同一の数学的アルゴリズム及び手順のセットに従って理想的に動作するアルゴリズムを必要とする。
【0008】
汎用的に適用可能なモデルは、特に多数の節足動物に関して極めて重要である。3次元表現は、通常、生化学システムのインピーダンスを示すために使用される。ターゲット指向アルゴリズムは、例えば、Z実数、Z虚数、周波数、時間、整定時間(settling time)、緩和時間、温度、空気圧、及び湿度に応じて、任意の種類のパラメトリック表現をサポートすべきである。この手順は、節足動物に影響を与えて刺激し、限られた数のパラメータによってアルゴリズムを適応させて、その使用を様々な綱の節足動物に拡張することを可能にする(参照文献7)。
【0009】
この方法は、1つだけのアルゴリズムにより、任意の数の異なる非線形モデルを記述することを目的とする、いわゆるビッグ・データ・アプローチから発展した。
【0010】
認識されている数学的方法及び物理的方法からの様々なアプローチの特別な組合せによって、節足動物の特定の行動に影響を与え刺激することができる、新しい最適化されたアルゴリズムを開発することが可能になった。
【0011】
節足動物の生化学的センサ
節足動物の代表として、蚊の実例を用いてセンサ特性を説明する。嗅覚反応は、主に、触角、小顎鬚、口の部分(吻及び唇弁からなる)及びふ節に位置する、嗅覚ニューロン(OSN:olfactory sensory neuron)の活性化によって誘発される。これらの感覚付属器は、揮発性及び不揮発性の臭気又はフェロモン、温度、湿度、無害又は有害な接触、及び重力などの、極めて異なる外部刺激を知覚して、節足動物が刺激を知覚する、複雑な一連の異なる手段を活性化することができる。
【0012】
節足動物の電気的特性及び生化学的特性並びに励起のモデル化は、大きな課題である。定義されたパラメータに基づく非線形の動的特性の定義は、極めて複雑なプロセスである。実験的に決定された結果を現在のモデルと比較するために、節足動物は、定義された可能な限り安定な動作条件に維持されなければならない。実験室条件下で、これは、依然として特定の技術的努力によって可能であるが、実際には、モバイル・デバイス又はポータブル・デバイスなどの組込みシステム内で、ある点までしか可能ではない。4つの特徴が、課題に関して実際の条件下での節足動物の典型的な活動について説明する。
【0013】
第1に、変動性、すなわち、活動変化及び動的変化、変化速度、並びに節足動物環境が変化する外部の影響が存在する。第2の課題は、測定データ及び関連データの不確かさ、イベントの予測可能性の欠如、イベント及び節足動物に対するそれらの影響の知識及び理解の欠如である。第3に、いくつかのパラメータが同時に節足動物に影響を与え、偏差を、定義された原因に直接帰することを不可能にするので、複雑さは、現実的な問題である。第4及び最後の特徴は、節足動物の様々な状態の誤った解釈及び定義の欠如につながり得る、曖昧さである。この背景に対して、研究プロジェクトは、ロバストであって、暗黙的に問題を単純化し、単純化された問題を定義されたステップに分解する、一般的に受け入れられた適用可能なアルゴリズムを開発し始めた。
【0014】
以下は、本方法の主題及び内容、並びに本方法の保護を構成する。
・本発明者らが節足動物のデータ及び行動パターンを理解することを可能にし、頻度パターンのアルゴリズムを自動的に改善する使用可能な知見をもたらすソフトウェア・フレームワーク
・組込みシステムにおける機械学習及びディープ・ラーニング・アルゴリズムの使用
・節足動物行動と、励起信号の周波数パターンとの間の相関
・等価回路モデル(ECM)に基づく神経系の挙動のパラメータ化
・特に、等価回路をモデル化するための伝送線モデルTLMの使用
・経験的に決定されたデータからインピーダンス・スペクトルを決定するための、無限フォークト・モデルなどの、単純化された等価回路の使用
・適応周波数パターンによる非侵襲的な神経節刺激
・節足動物の感覚受容体の固有振動に影響を与える適応周波数パターンによる非侵襲的な刺激
・定位相要素CPE(constant phase element)及び無限フォークト回路などの、パラメータの正規化による凝縮されたECM及びモデル・パラメータの使用
・化学的、生物学的及び物理的な特性を分解することによる、節足動物のセンサ構造及び神経系の単純化。節足動物の統合された感覚特性は、複雑なセンサ構造を解き明かすために分割される
・インピーダンス・スペクトルにおける節足動物の感覚特性の分析及び表現
・ナイキスト線図、緩和時間分布(DRT:distribution relaxation time)法、位相角及び周波数に依存するインピーダンスを用いて、複雑なプロセスを解き明かすための、異なるインピーダンス表現の使用
・像関数Y(ω)及び元の関数y(t)を分析するためのフーリエ変換及び高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)、特に逆フーリエ変換(逆変換)の使用
・特に2つ以上の励起周波数を使用する、信号分析のためのGoertzelアルゴリズムを組み込んだマイクロコントローラに基づくアルゴリズムのストレージ効率の良い使用のための離散フーリエ変換DFTの使用
・時間的に連続した信号の分析、並びに像の下関数F(s)及び元の関数又は上関数f(t)の分析のためのラプラス変換、特に逆変換、逆ラプラス変換の使用
・時間離散信号の分析のためのz変換及びそれらの逆Z変換の使用
・スペクトル内の重要な極値点を記述するための、時間関数、周波数関数、及び特にインピーダンス・スペクトルの2次元分析又は3次元分析としてのベクトル分析の使用
・クラウド接続性を有さない又は有するMCUベースのシステムにおける実装方法の説明
・節足動物の定義された行動パターン(例えばリラックス・モード又は睡眠モード)を強制するために、又は感覚受容体の機能に影響を与えるために、周波数パターンによって節足動物を励起するための参照モデルの生成
・無線送信による周波数パターン、又はデバイスの内部に組み込まれたマイクロコントローラによってそれ自体を計算された周波数パターンの更新及び適応
・コロナ放電・放電パルス・シミュレーションのシミュレーション用のトリチェル・パルスの発生
・マイクロコントローラ・ベースのPWM変調器によるトリチェル・パルス・シーケンス及びバースト・パルス・シーケンスの生成
・イオン化プロセスのシミュレーションのための周波数パターンの生成及びその時間推移
・ベクトル分析を用いたインピーダンス・スペクトルの関数グラフに基づく周波数パターンの適応
・周波数パターンの汎用的に適応可能な生成及び無線ベースのネットワークにおける使用
・行動パターンに影響を与えるためのパラメータの決定並びに環境ベースの依存性及び物理的依存性
・節足動物のマルチ・センサ・システムのための等価回路モデル(ECM)、特に伝送線モデルTLMの使用
・分割されたセンサ・モデルのパラメータ抽出
・トモグラフィ及びトポグラフィの画像データを記述及び分析するための屈曲度係数の使用
・節足動物のセグメント化され且つ凝縮されたECMセンサ・モデルを励起するための、時分割多重化(TDM)、周波数分割多重化(FDM)、及びディザ信号からの組合せ
・異なる地域における異なるタイプの節足動物をカバーするための機械学習のためのアルゴリズムの拡張
・インピーダンス・スペクトルにおける曲線群の分析、並びに勾配及びベクトルによる曲線の適応
・変化した環境条件及び異なるタイプの節足動物に対するアルゴリズムの自動適応のためのディープ・ラーニング用のアルゴリズムの拡張
・これらにより、これらからいわゆる参照モデル及び参照モデル化を定義するためにソフトウェア・アルゴリズムを改善する実装可能な知見が得られる
・特にDRT(緩和時間分布)分析の場合に、時定数及び励起周波数パターンを経験的に決定するための無限フォークト・モデルの使用
【0015】
節足動物の行動分析は、複雑である。それを効果的に操作するためには、節足動物に影響を与える、実際の環境、測定、及びパラメータの完全な概説が必要である。AIベースのアルゴリズム及び説明された手順に基づいて、特定の連続的なプログラムの変更なしに、節足動物のセンサ・システム及び神経系に特に影響を与える認知機能を実行することが可能である。
【0016】
この結果、以下のように、さらなる知見が得られる。
・それぞれの環境において節足動物を理解すること
・節足動物が感じるような感覚
・疾患に対するより効果的且つ適応性のある保護
・全ての国の全ての区域の機能的アルゴリズム
【0017】
図1 目標は、イベントに先立ってアルゴリズムを適応させるための予測分析又は予測解析である。
【0018】
図2 記述的分析から、予測データを介し、ディープ・ラーニングまでの3つのステップ。
【0019】
動機付け
本プロジェクトの動機付け:
アジアの蚊であるヒトスジシマカは、極めて侵略的な種であり、世界的な健康にとって極めて重要である、いくつかのアルボウイルス(例えば、デング熱、チクングニア、ジカ)及び寄生生物(例えば、ディロフィラリア)の潜在的なキャリアである(参照文献1 Lombardoら)。ヒトスジシマカの雌は、他の種と比較して、ヒト及び動物にとって特に危険な行動、すなわち、宿主の広範な探索、並びに極めて攻撃的な刺咬行動を示す。宿主の探索、摂食、交尾、又は産卵などのいくつかの複雑な行動は、嗅覚刺激に基づき、これらは、主に、触角、小顎鬚、及び口の部分などの特別な頭部付属器の上に位置する、いくつかの感覚ニューロンに基づき、それらによって刺激される。
【0020】
図3 節足動物の実例
【0021】
アジアの蚊は、いくつかのヒト病原性アルボウイルスの攻撃的な日中刺咬性のキャリアである(参照文献1)。ヒトスジシマカは、世界の侵入種ワースト100の1つとして記載されている(Global Invasive Species Database、http://www.issg.org/database/)。ヒトの健康に対する影響は、実際に、その天然の分布領域(東南アジア)からのヒトスジシマカの急速且つ激しい世界的な広がり、並びに様々な特徴、とりわけ特に栄養行動、休眠、及び媒介能力によるその生態適応性に依存する。環境から得られ、嗅覚及び他の化学感覚の様式によって知覚される生物学的シグナルは、宿主の探索、摂食、交尾、産卵、及び防虫剤の摂取などの行動パターンの適応において中心的な役割を果たす。嗅覚応答は、主に、触角、小顎鬚、口の部分(吻及び唇弁からなる)及びふ節の上で見出される、嗅覚ニューロン(OSN:olfactory sensory neuron)の活性化によって誘発される。これらの感覚付属器は、揮発性及び不揮発性の臭気又はフェロモン、温度、湿度、無害又は有害な接触、及び重力などの、極めて異なる外部刺激を知覚して、蚊が刺激を知覚する、複雑な一連の異なる手段を活性化することができる。化学的刺激の知覚、すなわち化学感覚知覚は、香り分子及びフェロモンなどの様々な揮発性化合物によって選択的に活性化される化学感覚ニューロンに基づく。末梢性嗅覚シグナル伝達の基礎となる分子成分は、いくつかの細胞内関係及び細胞外関係を含む。嗅覚因子の複雑さは、様々な効果及び/又は多様性とともに、蚊の種の特定の行動の刺激に直接寄与する。受容体中心の観点から、節足動物におけるケモセンサは、概して3つの遺伝子ファミリーの異なる代表に基づいており、これらは主にOSNにおいて発現され、これらは、嗅覚付属器、すなわち嗅覚受容体(OR:olfactory receptor)、味覚受容体(GR)、及びイオンチャネル型受容体(IR:ionotropic receptor)上の特定の感覚子内に位置する。匂い物質及び化合物は、感覚刺毛(sensillar pore)を通って表皮を横断し、したがって、水性の感覚子リンパ(aqueous sensillar lymph)に到達する。
【0022】
したがって、それらは、認識され、OSN-樹状突起膜(OSN-dendritic membrane)上のそれらの対応する特定の受容体に輸送される。これは、補助細胞のネットワークによって分泌され、節足動物の感覚子の基部に位置する、多様な数の細胞外匂い物質結合タンパク質(OBP:odorant binding protein)及びフェロモン結合タンパク質(PBP:pheromone binding protein)によって行われる。OSN及び他の感覚ニューロン並びに関連する補助細胞の受皿となる異なるタイプの化学感覚子が存在し、これらは、節足動物の感覚付属器上に分布する。
【0023】
図4 強調された触角(FA、赤色でマークされている)及び小顎鬚(FP、画像の上部)を有する雌の頭部(参照文献1 Lombardoら)、雄の頭部(MH)、雌の節足動物の身体全体(FB、画像の下部)の概略図。
【0024】
図5 対のサンプル比較。雌の触角、小顎鬚、及び雄の頭部の間の比較の対を示す比例ベン図。P<0.001の有意性を有するedgeR閾値(表参照)に従って、雌の身体と比較された各サンプル中で強調されている遺伝子のサブセットが、互いに比較された。重複(及び相対数)は、2つ以上の組織において様々に分布している遺伝子のサブセットを表す。
【0025】
雌のネッタイシマカの触角の概要
ネッタイシマカは、極めてヒト寄生しやすい節足動物であり、世界中でデング熱及び黄熱病の伝染の原因である。この疾患キャリアの刺咬行動及び宿主選択行動は、他の節足動物と同様に、嗅覚によって大きく影響され、これは、Gタンパク質共役受容体シグナル・カスケードによって改善されるはずである。ここで、ネッタイシマカにおける最初の又は最も重要な嗅覚受容体であるAaOr7タンパクの同定及び特徴付けについて言及する。この受容体は、ガンビエハマダラカ(アフリカ熱帯におけるマラリア・キャリア)において同定された、さらなる嗅覚受容体であるAgOr7、並びにキイロショウジョウバエ及び他の節足動物において以前に同定されたいくつかの嗅覚受容体による極めて高い主要なアミノ酸保存を示す。これは、成熟した化学感覚組織、並びにネッタイシマカのいくつかの生活及び発育段階に反映される。成熟した嗅覚系内では、AaOr7タンパクは、特にほとんどの触角及び小顎鬚感覚子に含まれており、吻の感覚子のサブセットにも含まれている。これは、嗅覚及び味覚センサとしてのAaOr7の役割と一致し、AaOr7及びそのオーソロジーが、節足動物の全ライフ・サイクルの間の化学感覚プロセスにとって極めて重要であり得るという仮説を支持する(参照文献4)。
【0026】
図6:ネッタイシマカの雌の触角の画像(参照文献4)
(A)雌の触角の第1の鞭毛部分において、AaOr7固有のマーキングは、遠位3分の1(右側、矢印によって示される)に限定され、ここで、マーキングされた神経細胞体及び突出している樹状突起のセットを見ることができる。
(B、C)AaOr7固有のマーキングは、遠位部分の実例である触角全体に沿って観察された(おそらく9~11個)。
(D、E)が図示される。AaOr7マーキングは樹状突起内で見ることができ、毛状感覚子が励起される(中空矢印)が、溝付きのペグ感覚子は励起されない(実線矢印)。光学顕微鏡画像、AaOr7((参照文献4)のマゼンタ)、神経((参照文献4)の緑色)、及び核固有((参照文献4)の青色)のマーキング(B、D)、並びにAaOr7固有のマーキングの対応する個々の画像(C、E)の組合せ。マーキングされる色は、(参照文献4)を参照。
【0027】
図7:雌の小顎鬚(頭状のペグ感覚子、A、B)上、及び唇弁T2感覚子(C、D)上のAaOr7固有のマーキング。(A)AaOr7((参照文献4)のマゼンタ)、神経((参照文献4)の緑色)、及び核((参照文献4)の青色)のマーキングの合成画像。(B)(A)内の枠の拡大図。(C)マーキング、すなわち、AaOr7((参照文献4)のマゼンタ)、神経((参照文献4)の緑色)、及び核((参照文献4)の青色)のマーキングが、これらの感覚子における樹状構造を想起させ、非常に弱いが、再現可能に見ることができる、雌の唇弁の先端の光学部分(2μm)の合成画像。(D)(C)の枠の拡大図。マーキングされる色は、(参照文献4)を参照。
【0028】
化学感覚組織における転写産物頻度(transcript frequency)分布
組織固有の転写産物の対応付けが、サンプル間の対における比較によって評価された。統計的検証を行うために、倍率変化(FC:Fold Change)、対数値、及び障害発見率(FDR:fault detector rate)が、edgeRで計算された。表において、雌の身体全体と比較された化学感覚組織(雌の触角、雌の小顎鬚、及び雄の頭部)の頻度の増加を示す転写産物(以下、遺伝子と呼ぶ)が選択され、これらが互いに比較される。雌の触角(620個のコンティグ)及び雌の小顎鬚(268個のコンティグ、表1及び図8)における高度に増幅された遺伝子のサブセットを規定するために、規定された統計的FDR閾値(P<0.001)が使用された。これらの基準内で、171個のコンティグが、雌の身体と比較された雄の頭部において豊富になり、これは、性別固有の頻度プロファイルを示す(図8)。
【0029】
【表1】
【0030】
図8 化学感覚遺伝子の発現の差分分析(DE:Differentiated analysis of expression)。ボルケーノ・プロットは、対比較におけるコンティグの相対的な発現を示す。
【0031】
x軸は、組織間のlogFC(倍率変化)を表す。y軸は、フィッシャーの正確確率検定によって計算されたp値(偽発見率)の負のlog10を示す。
a.雌の身体と触角との比較。
b.雌の身体と小顎鬚との比較。
c.雌の身体と雄の頭部との比較。プロットでは、様々に発現されたコンティグ(P<0.05、logFC<-2及び>2)のみが示されている((参照文献1)の灰色の点)、OBP黒色、OR赤色((参照文献1)内)、GR緑色((参照文献1)内)、及びIR青色((参照文献1)内)。マーキングされた色。
【0032】
【表2】
【0033】
スコアリング・モデルを用いて、匂い結合タンパク質(OBP:odor-binding protein)、嗅覚受容体(OR)、及びイオンチャネル型受容体(IR)を分析し、グループ化し、データ・モデルを単純化することができる。高いTPM値を用いて、化学感覚知覚に関与するタンパク質及び受容体の対応付けを分析することができる。
【0034】
匂い結合タンパク質(OBP)、及び、雌の触角(FA:female antenna)、雌の小顎鬚(FP:female palp)、雄の頭部(MH:male head)、雌の身体(FB:female body)内の分布
【0035】
図9 ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおける匂い結合タンパク質(OBP)。左領域、頻度プロファイル:以下で説明される、強度スケール(青色から黄色への色の連続は、高TPM値から低TPM値までのレベルを示す、(参照文献1)参照)、(色は、黒色から灰色を経て白色まで、灰色で示される)。FAは雌の触角、FPは雌の小顎鬚、MHは雄の頭部、及びFBは雌の身体。割り振られたOBP名、ヒトスジシマカにおけるID(提供される場合はVectorBase ID AALFxxxxxxxx、又はトランスクリプトームにおけるコンティグID)、システインの数、OBPサブ・ファミリー、ネッタイシマカの推定されたオルソログの名称及びID、並びに同一性のパーセンテージを見ることができる。
【0036】
嗅覚受容体(OR)、及び、雌の触角(FA)、雌の小顎鬚(FP)、雄の頭部(MH)、雌の身体(FB)内の分布。
【0037】
図10 ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおける嗅覚受容体(OR)。左領域、頻度プロファイル:以下で説明される、強度スケール(青色から黄色への色の連続は、高TPM値から低TPM値までのレベルを示す、(参照文献1)参照)、(色は、黒色から灰色を経て白色まで、灰色で示される)。FAは雌の触角、FPは雌の小顎鬚、MHは雄の頭部、及びFBは雌の身体。
【0038】
イオンチャネル型受容体(IR)、及び、雌の触角(FA)、雌の小顎鬚(FP)、雄の頭部(MH)、雌の身体(FB)内の分布。
【0039】
図11 ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおけるイオンチャネル型受容体(IR)。左領域、頻度プロファイル:以下で説明される、強度スケール(青色から黄色への色の連続は、高TPM値から低TPM値までのレベルを示す、(参照文献1)参照)、(色は、黒色から灰色を経て白色まで、灰色で示される)。FAは雌の触角、FPは雌の小顎鬚、MHは雄の頭部、及びFBは雌の身体。
【0040】
イオンチャネル型受容体(IR)は、イオンチャネル型グルタミン酸受容体(iGluR:ionotropic glutamate receptor)の大型の分岐したサブ・ファミリーである(参照文献2)(Abuinら)。それらは、化学感覚知覚、温度感覚知覚、及び湿度感覚知覚において重要な役割を果たす。それらのiGluR親ファミリー(parent family)のシナプス標的機構と同様に、IR複合体は、広く発現される共受容体、及び感覚繊毛における位置特定において選択的に発現される「チューニング(tuning)」受容体から形成されると主張されている。受容体の細胞外リガンド結合ドメイン(LBD:ligand-binding domain)は、感覚特異性を規定するが、共受容体におけるこのドメインの役割は不明である。N-グリコシル化位置を含むLBD内の共受容体固有の配列が同定された。分子遺伝学的分析及び細胞生物学的分析の組合せによって、本発明者らは、この位置が嗅覚ニューロンにおけるIR複合体の構築には重要でないが、いくつかの(全てではないが)IR複合体の小胞体放出には不可欠であることを示す。このデータは、細胞内輸送の制御の間のIR-共受容体LBDの重要な役割を示す。それらは、IR複合体の化学量論及び構造に関する新しい知見を提供し、この感覚受容体ファミリーの輸送の調節における予想外の不均一性をカバーする。
【0041】
図12 IR-共受容体は、iGluR、IR-共受容体、及びチューニング-IRのドメイン構造の細胞内輸送(A)図における役割を有する(参照文献2)(Abuinら)。
【0042】
図13 様々な嗅覚感覚子及び他の感覚構造の分布を示すショウジョウバエの第3の触角部分の(C)図。オレンジ色の枠は、(D)でより詳細に見ることができる個々の感覚子を示す。ピンク色の枠は、E~Fに示されるおおよその視野を示し、チューニング受容体IR64aを発現する小嚢内のIR8aニューロンを含む(参照文献12)。((D)の表面感覚子と同様の全体構造を有する小嚢内の感覚子は示されていない)。(D)嗅覚ニューロン(OSN)の解剖学上の主要な特徴の概略図。毛小皮及び繊毛の枝の形態は、様々な感覚子クラスの間で変化する(注:ほとんどの感覚子は、1本の毛につき2つ以上のニューロンを含む)(参照文献2)(Abuinら)。
【0043】
味覚受容体(GR)、及び、雌の触角(FA)、雌の小顎鬚(FP)、雄の頭部(MH)、雌の身体(FB)内の分布。
【0044】
図14:ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおける味覚受容体(GR)。左領域、頻度プロファイル:以下で説明される、強度スケール(青色から黄色への色の連続は、高TPM値から低TPM値までのレベルを示す、(参照文献1)参照)、(色は、黒色から灰色を経て白色まで、灰色で示される)。FAは雌の触角、FPは雌の小顎鬚、MHは雄の頭部、及びFBは雌の身体。
【0045】
感覚遺伝子の頻度プロファイル及び雌と雄との間の分布
図15 ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおける感覚遺伝子の頻度プロファイル。頻度プロファイル:以下で説明される、強度スケール(青色から黄色への色の連続は、高TPM値から低TPM値までのレベルを示す、(参照文献1)参照)、(色は、黒色から灰色を経て白色まで、灰色で示される)。遺伝子名及びコンティグID(利用可能な場合、VectorBaseコード)も見ることができる。
【0046】
qPCR検証
qPCR検証は、触角(a)と小顎鬚(b)の両方の11個の遺伝子の転写頻度の相関について説明する。
【0047】
図16 qPCR検証。qPCR及びRNA seqによって示される、触角(a)と小顎鬚(b)の両方の11個の遺伝子の転写頻度の相関。頻度は、qPCRアプローチとRNA seqアプローチの両方の、グループの中央値を超える各サンプル値の比(倍率変化、FC)として定義される。両方の技法に関して、スピアマン検定及びピアソン検定の統計的評価が実施され、その結果が図に示される。
【0048】
節足動物の感覚能力
節足動物の感覚能力は、分離された個別のセンサによって説明することもできる。物理的な観点から、節足動物の複雑なセンサ構造を再現するために、統合されたセンサ特性を有する多数のセンサが必要である。予備的な生物学的調査は、定義されたセンサ特性、並びに、感覚遺伝子の頻度プロファイル、及び雄と雌との間の分布の明確な割振りが存在することを示した。これらは、確率論に基づく数学的モデルを構築するための理想的な前提条件である。
【0049】
物理的センサは、以下のものを含む。
・空気又は環境のイオン化センサ
・味覚センサ
・ケモセンサ
・ガスセンサ/呼吸センサ
・空気質センサ
・CO2センサ
・空気圧センサ
・温度センサ
・湿度センサ
・飛行時間センサ
・赤外線センサ
・UVセンサ
・加速度計
・音センサ
・位置及び距離測定
【0050】
異なるタイプの節足動物は、異なる感覚能力、並びに、感覚能力の異なる頻度及び分布を有する。
【0051】
本方法の説明
序論
インピーダンス分光法は、特に電気化学システム及び生化学システムの特徴付け及び分析のための、認識された非侵襲的測定技法である。現在、インピーダンス分光法は、実験室条件下で順調に使用されており、組込みシステムにおける広範な工業的且つ商業的な用途は、まだ達成されていない。ヒト、動物、及び、特に節足動物などの、生化学システムにおけるこの方法の適用は、困難である。課題の1つは、汎用的に適用可能であるが、より低いメモリ要件を有する自律組込みリアル・タイム・システムに依然として適している、人工知能に基づく、拡張可能なモデル化アルゴリズム及びディープ・ラーニング・アルゴリズムを見出すことである。この文書は、節足動物の行動パターンをディープ・ラーニングするための、多周波数励起を用いた等価回路モデルに基づく、節足動物のセンサ構造の代替モデル化のための方法について説明している(参照文献7)。本方法は、節足動物の非線形インピーダンス・モデル及び相関行動のパラメトリック表現及びノン・パラメトリック表現のためのロバストで汎用的に適用される方法について説明する。
【0052】
ソフトウェア及びハードウェアの工業化のためには、節足動物の励起のための信号発生器の実装がマイクロコントローラ・ベースのシステムにおいて実現することができることが重要である。オンライン/クラウド接続を伴う又は伴わない商業用途における、インピーダンス分光法、及び励起のためのその信号発生器の確立は、同一の数学的アルゴリズム及び手順のセットに従って理想的に動作するアルゴリズムを必要とする。
【0053】
汎用的に適用可能なモデルは、特に多数の節足動物に関して極めて重要である。3次元表現は、通常、生化学システムのインピーダンスを示すために使用される。ターゲット指向アルゴリズムは、例えば、Z実数、Z虚数、周波数、時間、整定時間、緩和時間、温度、及び湿度に応じて、任意の種類のパラメトリック表現をサポートすべきである。この手順は、節足動物に影響を与えて刺激し、限られた数のパラメータによってアルゴリズムを適応させて、その使用を様々な綱の節足動物に拡張することを可能にする(参照文献7)。
【0054】
この方法は、1つだけのアルゴリズムにより、任意の数の異なる非線形モデルを記述することを目的とする、いわゆるビッグ・データ・アプローチから発展した。
【0055】
認識されている数学的方法及び物理的方法からの様々なアプローチの特別な組合せによって、節足動物の特定の行動に影響を与え刺激することができる、新しい最適化されたアルゴリズムを開発することが可能になった。
【0056】
図50 節足動物をモデル化するための等価回路図のための単純化されたプロセス構造。
【0057】
図50は、本発明の単純化されたモデル化プロセスを示す。経験的調査に基づいて、時間領域及び周波数領域における信号が、節足動物の励起のために生成される。励起プロセスは、マルチスペクトル信号を生成するために、TDMとFDM法の組合せを使用する。これから、無限フォークト・モデルなどの単純化された等価回路図ECMが生成され、これは、異なる時定数を有する無限RC組合せの直列接続を表す。生成された周波数パターン及び単純化されたECMを使用して、インピーダンス・スペクトルが導出される。DRT分析によって、節足動物の特性周波数及び時定数が決定される。節足動物の既存のトモグラフィ・データ及びトポグラフィ・データは、インピーダンス・スペクトルの生成を単純化する。異なる励起周波数を有する新しい周波数パターンが、DRTスペクトルの分析から導出される。これらのパターンは、新規の改善されたインピーダンス・スペクトルを決定するために使用され、この新規の構造化された伝送線モデルから、境界値条件を考慮して導出される。次いで、新しく作られたTLMは、後続の反復プロセス又は近似プロセスに使用することができる。
【0058】
システムの基本的な機能原理
基本的な物理的、生物学的、及び生化学的な機能原理は、既に特許(参照文献8)、(参照文献9)、(参照文献10)、(参照文献11)に記載されている知識及び調査に基づいている。ここで、キャリア信号上に変調され、次いでアンテナによって放射される周波数パターンが生成される。節足動物は、触角、小顎鬚、頭部、及び身体、並びに、他の感覚付属器などの異なる感覚付属器にチューニングされた異なる信号を受信する。信号は、付属器の感覚機能を混乱させるか、又はそれに影響を与え、したがって、節足動物の行動も混乱させるか、又は影響を与える。
【0059】
図17 システムの単純化された機能
【0060】
行動パターンに影響を与えるためのパラメータ
複数の感覚特性、並びにそれらの物理的及び生化学的な機能により、節足動物の全ての感覚特性を可能な限り刺激するために、様々な頻度パターンが必要である。これらの周波数パターンは、同時に一斉に送信されるか、又は順次にかわるがわる送信されてもよい。ここで、節足動物のトポロジ及び物理的構造は、感覚付属器が刺激される鍵である。異なるタイプの節足動物の刺激には、異なる周波数パターンも必要である。図18は、異なるタイプの節足動物及び感覚付属器の異なる刺激に関する単純化された原理を示す。ここで、任意の数の変調周波数を有する任意の数nのキャリア周波数が生成される。これにより、周波数パターンに対して異なる刺激信号を生成する任意の可能性が得られる。
【0061】
図19:様々な節足動物を刺激するために、異なるサブキャリア変調器が使用される。
【0062】
生成には、周波数分割多重化信号(図20)と、時分割多重化信号(図21)との組合せが使用される。各周波数部分及び時間部分は、異なるパラメータ(図23)を有し、さらに、定義されたディザ信号で重畳又は変調することができる(図24図25、及び図26)。
【0063】
周波数領域における分析の場合、したがって、異なるタイプの節足動物及び異なる感覚付属器を刺激するための刺激周波数を示す周波数成分が存在する。
【0064】
図22:異なる節足動物に対する結合されたベースバンド変調信号の周波数スペクトルの簡略図。
【0065】
図23:FDM及びTDMに基づく、組み合わされた多周波数パターン発生器の周波数可変及び時間可変のフレーム及び構造の簡略図。
【0066】
ディザ信号を生成するために、異なる原理を使用することができる。図24図25、及び図26は、ディザ信号変調に関する既知の原理を示す。
【0067】
図24:規定された信号振幅のPWMパルス上に印加されるディザ信号。
【0068】
図25:規定された周波数を有するPWMパルス上の位相変調ディザ信号。
【0069】
図26:PWM変調ディザ信号を用いた信号の拡張(参照文献12)。
【0070】
これらの方法は、当業者には知られている。
【0071】
周波数パターン及びパルス発生器を生成するための重要なパラメータは、以下の通りである。
・HFキャリア周波数 サブGHz、MHz、GHz範囲
・変調周波数
・サブHz、Hz範囲-緩和挙動
・1Hzの低周波数から、数百kHz~約1MHzまでの周波数パターン範囲
・変調のタイプ PWM、FM、AM、PFM、TDM、FDM
・可変パルス・シーケンスの生成
・可変緩和時定数(DRT分析プロセス)
・可変パルス立ち上がり時間
・可変緩和時間
・可変ワーキング・サイクル
・TDM信号及びFDM信号における変調ディザ信号、又はTDM信号、FDM信号、及びディザ信号の組合せにおける変調ディザ信号
・等差数列におけるディリクレの素数定理に基づく時間及び周波数のパターン
・時間シーケンス及び周波数シーケンスは、いかなる高調波又は低調波の相関も有さない。すなわち、周波数スペクトルにおける高調波成分及び低調波成分は、一斉に同時に送信される全てのシーケンスにおいて異なる
・全ての時間シーケンス及び周波数シーケンスは、素数ベースであるか、又は高調波及び低調波の整数の倍数又は因数を有さない。これは、キャリア周波数及び変調周波数にも当てはまる
・任意の他の周波数パターンも、複数の種類の節足動物の用途のために使用することができる
・パルス・シーケンスは、規定された緩和時間撮像シーケンスを形成する(τ領域)
・ディザ信号シーケンスの変調及びパルス・パターンにおけるディザ信号の重畳
・パルス矩形信号を用いたトリチェル・パルス・シーケンスのシミュレーション。
・確率的バースト・パルス・シーケンスの生成
・コロナ放電・放電パルス・シミュレーションのシミュレーション用のトリチェル・パルスの発生
・マイクロコントローラ・ベースのPWM変調器によるトリチェル・パルス・シーケンス及びバースト・パルス・シーケンスの生成
【0072】
節足動物のマルチセンサ・システム及び感覚付属器の等価回路モデル(ECM)
システム・シミュレーション及びシステム同定は、科学及び工学における共通の問題である。電気化学及び生化学の分野では、これは、多孔質電極などのシステム及び拡散などの機構にとって特に重要である。これらは、工学的適用及び生化学システムの説明に関連する。そのようなシステムの電気的挙動を記述するモデルは、概略的、物理的、化学的、及び生物学的なアプローチだけでなく、等価回路にも基づく。導体の単純化されたモデル及びパラメータの空間分布が、本明細書で使用されることがある。ナイキスト線図は、システムの様々な励起周波数におけるインピーダンス挙動のよく知られた表現である。
【0073】
多くの異なる等価回路モデルが利用可能であるため、本発明者らの場合には節足動物である、特定の用途に適したモデルの選択は、極めて難しい。したがって、モデル類似性を特定することは、個々の機構のより十分な理解を可能にし、数学的計算の数を低減し、モデル評価を単純化し、したがって複雑さを低減する。
【0074】
節足動物の感覚モデルを説明するために、感覚行動及び感覚応答を記載しなければならない。節足動物の生化学的モデルを単純化するために、一般化された送電線モデルに関するインピーダンスのより一般的な図が使用される。伝送線モデルは、様々な物理的及び生化学的なプロセスを記述し、正規化表現を介してそれらを数学的に単純化するための汎用的に適用可能なモデルとして適している。
【0075】
この方法では、様々な電気化学システム及び生化学システムの解を得るために、様々な境界条件が適用される。等価回路モデル(ECM)は、物理的及び生化学的な効果を記述し、最終的に凝縮されたECMを得るために、ここでは6つのサブモデルに分割される。しかし、この方法は拡張可能であるので、任意の数のサブモデルを使用することができる。様々な物理的及び電気化学的な効果に関する伝送線境界条件の使用は、確立された手順である。本発明者らの場合、本発明者らは、特定の生化学的な効果を有する節足動物の感覚付属器に関するモデルについて説明した。これが、本発明の主要部分である。
【0076】
簡単にするために、本発明者らは、この実例において、ここでは6つのサブモデルを規定した。節足動物の感覚特性は、さらなるモデルによって補完することができ、又は、ECMモデルの数を低減するために、単一の感覚特性のみをモデル化することができる。
【0077】
この実例では、本発明者らは、以下の6つのモデルを区別する。
1.節足動物の触角のモデルである、ブラシ電極のモデル。
2.多孔質の感覚子毛のモデルである、多孔質電極のモデル。
3.イオン拡散のモデルである、一般的な拡散のモデル。
4.非透過性壁(NPW:non-permeable wall)の拡散のモデル。
5.理想的なリザーバの拡散のモデル。
6.節足動物表面のトモグラフィ・データからの屈曲度係数の計算モデル。
【0078】
個々のモデルへの感覚特性の対応付けは、インピーダンス・モデル方程式の曖昧さを分析し、低減し、又はさらには除去するという利点を有する。曖昧さの除去は、非線形パラメータ最適化技法のロバスト性を改善することに加えて、インピーダンス挙動に影響を与えるモデル・パラメータの分析を単純化する。序論で先に説明した確率の助けによる相関及び調査の結果は、モデルの直接的及び間接的な対応付けを可能にする。
【0079】
節足動物表面のトモグラフィ・データからの屈曲度係数の計算モデルは、多孔質媒体を通る流路内の屈曲、エッジ密度、及び画像ベースの微細構造データから生じる拡散輸送の見かけの減少を定量化する。屈曲度係数、並びに、体積分率、表面積、及び3次元構造を効率的に計算するための十分に確立された数学的ツール(参照文献5)が存在する。これらの数学的ツールは、元々、電気化学における電極微細構造の理解を向上させるために開発されたが、屈曲度係数は、1世紀以上にわたって、地球科学、光学、及び生物学を含む様々な分野において注目されてきた。屈曲度係数を近似するために相関を使用することは、依然として一般的であるが、近年、3D撮像技術の利用可能性の増大により、量をより直接的に計算することに対する注目が高まってきている。これは、高い計算能力を必要とすることなく、現代のトモグラフィに典型的な大きいデータセットに適用される、高速且つ正確な計算を可能にする。
【0080】
物理的及び化学的なアプローチではなくECM(等価回路モデル)は、極めて類似した結果をもたらすが、出発点は、多少異なる。電荷キャリアを考慮すると、物理的、化学的、及び生化学的なアプローチが好ましい。対照的に、ECMは、電気システムの挙動を研究するのにより適している。類似性により、混合されたアプローチも可能である(参照文献6)。ECMは、モデル同定のプロセスを単純化することができる。伝送線モデルの要素及びパラメータを適切に選択することによって、システムの異なる挙動、及び電気化学システムのフラクタル構造も同定することが可能である。等価回路の適用は、線形システムに限定されない。図27の2チャネル伝送線の要素は、非線形の電圧及び電流依存性を示すことができる。パラメータは、位置に依存する場合もある。この場合、インピーダンスを計算するために、数値的方法が必要とされることが多い。
【0081】
一般的な伝送線モデルの微分方程式を解くための説明されたアプローチ(参照文献6)は、同じ方法を用いて多くの異なるシステムのインピーダンスのシミュレーションを可能にする。様々な境界条件の使用により、同じモデルを用いて様々なシステムのシミュレーションが可能になる。インピーダンスの値を変化させることにより、異なる条件下での1つのシステムのシミュレーションが可能になり、異なるシステムのシミュレーションも可能になる。適切なパラメータを用いて、電気化学的アプローチからのモデルとの相関が表される。本方法は、異なるモデル間の相関、例えば、拡散モデルと多孔質電極モデルとの間の類似度を識別することを可能にする。
【0082】
モデル開発の重要な側面は、モデルの挙動に対するモデル・パラメータの影響である。これは、モデル化されたシステムを完全に理解するために必要であり、測定値からパラメータを決定するためにも必要である。この場合、曖昧さの識別は、パラメータの数を低減し、同じ挙動につながるパラメータ・セットを決定するために必須である。より少ないパラメータは、常に、モデルのより十分な理解を可能にする。さらに、インピーダンス測定値から曖昧なパラメータ・セットを区別することは不可能である。曖昧なパラメータ・セットを区別するために、追加の情報が常に必要とされる。この情報は、他の測定方法によって得られなければならない。例えば、拡散プロセスにおいて、拡散係数及び濃度は、幾何学的形状及び反応条件が正確にわかっている場合にのみ、インピーダンス測定値から決定することができる。多孔質電極の場合、これは、極めて類似している。インピーダンス測定値から、7つのパラメータのうち4つしか得ることができない。曖昧さの識別は、異なるパラメータの商、積、差、及び和を決定することによって達成することができ、これらは、より少数の他のパラメータによって置き換えることができる。一般に、これは、パラメータの数の減少につながる。残りのパラメータは、スケーリング及び構造パラメータとして分類することができる。スケーリング・パラメータは、軸、例えば、周波数又はインピーダンス軸のみをスケーリングする。例えば、図示された拡散モデルは、スケーリング・パラメータのみを有する。構造パラメータは、モデル挙動の構造、例えば、多孔質電極モデルにおける45°勾配の形状に影響を与える。モデルのこの処理は、どのパラメータがインピーダンス測定値から決定され得るかを本発明者らが分析することを可能にする。さらに、それは、本発明者らが、インピーダンス挙動におけるパラメータの影響を完全に理解することを可能にする。主な利点は、多くの異なる機構を研究するために単一のモデル化方法を使用することである。
【0083】
等価回路モデルを複素平面に組み込むことによって、又は緩和時間分布(DRT)を分析することによって(参照文献7)、節足動物における様々な物理的、電気化学的、及び生化学的なプロセスのインピーダンスに対する相対的寄与を研究し、説明し、切り離すことが可能である。これは、インピーダンス・スペクトル中のいわゆる注目点をダイナミック・レンジで示し、節足動物の異なるインピーダンス挙動を明確に区別する方法である。
【0084】
一般的な伝送線モデル(TLM)
一般的な伝送は、上記に示した等価回路を用いて説明することができる(参照文献6)。さらに、複数のこれらの一般的な等価回路のカスケード接続又は直列接続を用いて、さらにより複雑なシステムをモデル化することができる。
【0085】
図27 一般的な伝送線モデル
電流及び電圧に関する等価回路及びキルヒホッフの法則を参照する微分方程式は、次のように解かれる。
(χ)=I(χ+Δχ)+U(χ)Δχ
(χ+Δχ)=I(χ)+U(χ)Δχ
0=U(χ)+I(χ)Δχ-U(χ+Δχ)-I(χ)Δχ
式(1)、(2)、(3)
【0086】
通常の微分方程式を用いて、システムの以下の値が決定される。
【数1】

ここで、複素伝搬定数は、次のように定義される。
【数2】
【0087】
【表3】
【0088】
式(1)~(7)の一般に有効な解によれば、任意の所望の物理的効果をTLMによって記述することができる。ここで、境界条件を考慮しなければならない。以下の表は、境界条件及び物理的効果を記述する。これらの境界条件を用いて、未知の積分定数C、C、及びCを決定することができる。
【0089】
【表4】
【0090】
したがって、境界条件の考慮の下での物理的及び生化学的な効果の限界設定が可能である。したがって、4つのTLMモデルへの分割、より具体的には、多孔質電極、多孔質材料、一般的な拡散、並びに非透過性壁及び理想的なリザーバ内への拡散が得られる。
【0091】
図27a~図27d 異なる物理的効果に関するTLMモデルの限界設定。
【0092】
図28 ソースによる多孔質電極モデルにおけるプロセスの説明(参照文献13)。
【0093】
多孔質電極及び伝送線モデルのインピーダンス計算(参照文献6)
【0094】
図27a 多孔質電極の伝送線モデル。
【0095】
図30 a)~d) 多孔質電極に関する積分定数c=1である式4による多孔質モデルのインピーダンス。
【0096】
【数3】
【0097】
多孔質材料及び伝送線モデルのインピーダンス計算
図27b 多孔質材料の伝送線モデル。
【0098】
境界条件の考慮の下で、多孔質材料のインピーダンスは、次のように計算することができる。
【数4】
【0099】
一般的な拡散及び伝送線モデルのインピーダンス計算
拡散に関するインピーダンスを決定するために、境界条件の考慮及び適用の下で、多孔質電極について同様のアプローチが使用される。
【0100】
図27c イオン拡散の伝送線モデル。
【0101】
ここで、インピーダンスに関する式(10)が適用される。
【数5】
【0102】
境界条件 =0の下で、電気伝送線及び一般的な拡散に関する既知の方程式が得られる。
【数6】
【0103】
非透過性壁及び理想的なリザーバの拡散並びに伝送線モデルのインピーダンス計算
【0104】
図27d 非透過性壁及び理想的なリザーバにおける拡散の伝送線モデル。
【0105】
図34 式12及び13による拡散モデルのインピーダンス。
【0106】
【数7】
【0107】
ここで、式(14)が適用される。
N,diff=R’el
式(14)
【0108】
細孔形状
異なる細孔形状及び細孔構造(開放及び閉鎖された細孔形状)のインピーダンス挙動は、インピーダンス・スペクトル(ナイキスト線図)において明確に表すことができる。インピーダンス挙動は、様々な範囲の特定のトモグラフィ及びトポグラフィの細孔構造に関するシミュレーションを示す。これらの知見は、節足動物及びそれらの励起信号のTLMモデル化に直接使用することができる。
【0109】
各シミュレーションに関して、ω×2-4~ω×211の周波数範囲において特性周波数が選択された。
【数8】
【0110】
ここで、開放系では、Lは、刺激された表面への方向における制御された体積(CV:controlled volume)の長さであり、閉鎖系では、Lは、最長の細孔経路の先端までのシミュレーションされた表面の最大侵入距離に等しい。各周波数において、インピーダンスZは、刺激濃度(concentration stimulus)の振幅(全ての場合において1)と、内部境界層における複素拡散流束との間の比として計算され、式(16)による、単純な比較のための正規化インピーダンス~Zは次の通りである。
【数9】

開放系では、Aは、流れ方向のCV境界層の全面積であり、閉鎖系では、Aは、「達成可能な平均面積」であり、これは、細孔網の拡散深さにおいて達成することができる代数平均として定義される。この相関公式を使用すると、これは、開放系の低周波数の交点では、それがτ/εに等しいことを意味し、これは、異なる構造の特徴付けと比較に特に役立つ。
【0111】
単一の閉鎖した細孔形状のシミュレーション
図35 Keiserらによって研究された、5つの単一の閉鎖した細孔構造に関する、2D(左)及び3D(右)のインピーダンス・スペクトルのシミュレーション(参照文献14)、(参照文献16)。内側のより小さな図面は、式(16)を用いて主軸に関して正規化されたスペクトルを示す。ここで、直線的な細孔(1)の場合と同様に、全てのスペクトルがある値に収束し、したがって、細孔の5つの構造が明確に区別されることがわかる。
【0112】
単一の開放した細孔形状
図36 全てが同じ細孔体積及び屈曲度係数、並びに均一の方向の刺激信号を有する、7つの単一の開放した細孔形状のインピーダンス・スペクトルのシミュレーション(参照文献14)
図37 左:フラクタル次元が、開放した境界層を有するシェルピンスキーのカーペットによって増加する、2Dフラクタルのインピーダンス・スペクトルのシミュレーション、及び小さい画像内の正規化された表現
図38 右:フラクタル次元が増加する、2つの2Dフラクタルのインピーダンス・スペクトルのシミュレーション。ここで、ピタゴラスの木が、閉じた構造に関して示されている。
図39 細孔の異なる構造を有するセットのインピーダンス挙動。lは細孔の長さであり、λは形状因子である(参照文献15)
【0113】
インピーダンス・スペクトル、特に正規化されたインピーダンス・スペクトルの分析及びシミュレーションから、異なる細孔形状及び細孔構造は、グラフ分析及び数学的分析において典型的な挙動パターンを表すことがわかる。したがって、異なる細孔構造に対する分析及び周波数適応は、当業者によって容易に実施される。ベクトル分析を用いると、例えば、異なる連続関数を記述する、パラメータ依存の位置ベクトルを決定することができる。
【0114】
図40 de Levieの信号侵入効果による細孔内への正弦波信号の減衰挙動(参照文献15)。5つの異なる値は、細孔内への異なる距離における信号を示す。この典型的な減衰挙動は、節足動物における周波数パターンの信号合成において考慮されなければならない。
【0115】
節足動物の触角の基本モデルとしてのブラシ電極のインピーダンス・スペクトル
De Levieは、定位相要素(CPE)として表されるインピーダンス挙動の表現を示す。ここで、異なるインピーダンス・スペクトルへの適応は、インピーダンスのx軸(実数成分)上の曲線の平行移動によって行われる。この抽象化及び単純化は、節足動物の触角のモデル化に極めて役立つ。
【0116】
図41 3つの異なる電解質濃度に対する周波数の関数としての複素領域におけるde Levieのブラシ電極の典型的なインピーダンス挙動。
図42 直列抵抗RS(0→∞の)及び累積分布抵抗値Ωを有する多孔質電極の複素領域におけるインピーダンス挙動の特性。
【0117】
正規化された値及び異なる伝送線モデルの典型的な挙動を使用することによって、機械学習(ディープ・ラーニング)アルゴリズムを、数学的方法、特に確率変数の使用によって適用することができる。
【0118】
個々のモデルへの感覚特性の対応付けは、インピーダンス・モデル方程式の曖昧さを分析し、低減し、又はさらには除去するという利点を有する。曖昧さの除去は、インピーダンス挙動に影響を与えるモデル・パラメータの分析を単純化し、さらに非線形パラメータ最適化技法のロバスト性を改善する。序論で先に説明した確率の助けによる相関及び調査の結果は、モデルの直接的及び間接的な対応付けを可能にする。
【0119】
したがって、ナイキスト線図では、挙動パターン及び周波数パターンの適応は、2次元表現で既に推定することができる。ベクトル・ジオメトリ及び曲線の説明を用いると、数学的関数の分析が可能である。45°の位相角を有する定位相要素CPEを用いたモデル化(節足動物の触角のモデル化)の考慮の下で、インピーダンス・スペクトル分析のさらなる単純化が可能である。さらに、パラメータ依存の位置ベクトルは、ベクトル分析を用いて決定することができ、例えば、異なる連続関数を記述する。
【0120】
いわゆるライブラリー法による代替プロセスは、微分方程式を使用しない、マイクロコントローラ・ベースのアプリケーションにおける実装のための試験アプローチである。これは、特に2次元又は3次元空間における分析方法において使用される。DRT法(緩和時定数分布)を使用することにより、マイクロコントローラ内のプログラム・サイズを極めて低減することができる(参照文献7)。
【0121】
DRT法によるインピーダンス・スペクトルの変換及び分析
DRTスペクトルの分析は、確立された方法に発展した。DRT分析では、極値点は、時定数τ=R×Cへの依存性において極めて十分に表すことができる。DRT法では、インピーダンス・データは、時定数τの分布に依存する関数に変換される。本方法は、インピーダンス・モデルのフィッティング・プロセスの単純化も可能にし、したがって、周波数パターンの適応及び信号合成の単純化も可能にする。
【0122】
DRT法の利点は、等価回路の正確な知識なしに、挙動パターンが解釈しやすいことである。ここで、無限フォークト・モデル化と組み合わせたDRT法の使用は、単純化された等価回路モデルを作るための節足動物を用いた試験において経験的に決定されたデータからの試験方法である。したがって、ディープ・ラーニング・プロセスでは、より迅速な適応及び解釈が可能である。DRTスペクトルは、関数曲線において重要な最大値、最小値、及び転換点を示す。関数曲線のこれらの極値点のみを監視することによって、極めて限られた数の周波数依存の測定点のみが、節足動物のインピーダンス特性を記述することができる。
【0123】
図29 異なる緩和時間を有する簡略化されたDRTスペクトルを示す。この関数は、いわゆるライブラリー法(参照文献7)による適切な代替方法を用いてメモリ空間を極めて節約するように記述することができるので、微分方程式の使用は必ずしも必要ではない。数学的関係は、ここでは、例えば、スペクトルの虚数部分におけるゼロ点において理解されるべきである。
【0124】
DRT法を使用するために、等価回路(図43)では通常、無限フォークト回路が使用され、そのインピーダンスは、次に記載される式(17)のようになる。
【数10】
【0125】
図43 特定のシステムを特徴付ける、整定時間τの分布関数としてのG(τ)を有する無限フォークト回路の等価回路。物理的単位Gは、Ωs-1に定められる。
R/Qに関して、式(18)に従って、以下の相関が適用される。
【数11】

ここで、τR/Q=(RQ)1/α
式(19)
【0126】
無限フォークト回路
パラメータR、Q、及びαの所与のセットに関して、G(τ)を決定することが可能である。ピークの横軸は、回路の時定数τR/Qを示し、ピークにおけるG値は、次の式(20)のように記述される。
【数12】
【0127】
図44 式(20)によるR/Q回路の理論的DTRを示す。
インピーダンス・スペクトルの拡張された表現及び分析は、ナイキスト線図に加えて、以下の表現でもある。周波数fの関数としての虚数成分の値、周波数fの関数としての位相角、第3の任意のパラメータに依存する3D表現としてのDRT分析、又は拡散プロセスを記述するためのタウ係数の決定。
【0128】
図45 多孔性の粒子の合成束のインピーダンス・スペクトルのシミュレーション。実線は、開放構造を示し、破線は、閉鎖構造を示す。比較として、開放構造に関するDRTスペクトルを、小さいグラフ内に示す。
【0129】
節足動物のトポグラフィ及びトモグラフィの感覚データからの拡散輸送の決定
いわゆるタウ係数の決定は、微細構造データに基づいて、屈曲及びねじれ且つ蛇行した不均質な幾何学的形状及び構造における拡散輸送の低減を決定するための極めて効率的な方法である。序論で説明したように、節足動物の十分な画像情報は、研究から提供され、タウ係数を用いて記述することができる。
この効果は、以下の項、いわゆる屈曲度係数Τ又は巻込み係数(entanglement factor)を用いて、次の式(21)のように記述される。
【数13】

ここで、εは、伝導相(conductive phase)Dの体積成分であり、Deffは、多孔質体積を通る有効拡散挙動である。ここで、極限値が考慮され、値=1又は≧1である。(参照文献14)、(参照文献5)。図6及び図7は、トモグラフィ・データ及びトポグラフィ・データを示す。
【0130】
拡散インピーダンスに対する細孔構造の効果
図46 内側及び外側に異なる表面状態を有する3つの単一微細構造に関する対数周波数の関数としての位相角のシミュレーション。
【0131】
異なる表現方法(図46)によって、微細構造の異なる特定の特性を明白に表現することができる。レイヤ・モデルの構造設計に関する間接的な結論は、曲線の連続から引き出すことができ、これは、次いで、節足動物のモデル化においてパラメータ及び変数の低減につながる。パラメータ依存の位置ベクトルは、ベクトル分析を用いて決定することができ、例えば、異なる連続関数を記述する。
【0132】
確率計算による数学的分析及びデータ分析のための統計的方法
確率計算及び統計の数学的方法は、通常、マイクロコントローラ内にソフトウェア・アルゴリズムを実装する目的で、データ量を低減するために、データ処理及びデータ分析に使用される。
【0133】
これらの方法は、当業者には知られており、データ低減及びインピーダンス特性曲線のモデル化のために、定義された方法が使用される。これらは、確率密度関数の使用、再帰フィルタ、ベイズ・フィルタ、及び特に粒子フィルタの使用を含み、これらは、オンライン又は機械学習のための逐次モンテ・カルロ法に適している。粒子フィルタは、パラメータ・フリーのモデル化、提案された基底関数の予測としての推定、目的関数と提案された関数との間の補正及び重み付けに適しており、より多くのサンプル(サンプル値)が処理されるほど、結果が改善されるという利点を有する。したがって、より十分でより迅速なモデル・フィッティング、及び測定値と提案値との間のより十分な近似が達成される。粒子フィルタの使用における主要なステップは、提案された分布を使用した個々の測定値(粒子)のサンプリング、重要性の重み付け、及び再サンプリング、すなわち分布に適合しないサンプルの置き換えである。サンプルが多く存在するほど、推定はより十分になる。式(22)は、数学的相関を記述する。
【数14】
【0134】
ディープ・ラーニング・プロセスの基本機能
節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス及び方法構造
図47 節足動物の異なる参照モデルをトレーニングするためのディープ・ラーニング・プロセスの基本機能。
【0135】
節足動物の参照モデル化では、閉じた制御回路の所望の伝達挙動が、参照モデルの助けを借りて特定される。第1の参照モデルは、例えば、経験的研究に基づくことができる。図47は異なる参照モデルをトレーニングするための制御システムの一般的なブロック図を示す。本システムは、内部の閉じたフィードバック制御回路、及び適応に関与する外部回路からなる。制御パラメータの適応は、例えば、勾配法を用いた品質基準に基づいて、又は他の既知の数学的方法に基づいて行われる。
【0136】
節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス
4つの主なプロセス・ステップが、節足動物の参照モデル化に関して以下に説明される。特定の節足動物のモデル化に必要でない場合、個々のプロセス・ステップを省略するか、又は一部のみを使用することもできる。微分方程式を解くために、当業者に知られている様々な方法があるが、ここでは説明しない。ニューラル・ネットワーク、確率、及び確率論を使用する当業者に既知の方法も、それらが十分に知られているので、説明されない。
【0137】
図48aによる節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ1
受容体の位置特定
参照モデル化の第1のステップでは、節足動物の感覚器官、特に感覚表面及び空間が決定される。蚊の実例(図5)を使用すると、これらは、雌では、触角、小顎鬚、及び身体であり、雄では、頭部である。他のタイプの節足動物は、他の又はさらなる感覚表面及び空間、又は翼、上顎、ふ節、若しくは脚などの身体部分を有する。異なる生化学的特性及び物理的特性を有する感覚受容体は、これらの身体部分上に位置する。
【0138】
感覚特性の分割/クラスタ化
感覚特性は、機械的変化、味、匂い、香り、音、化学的感知、温度、及びフェロモンを感知するための図15に示される受容体を含む。それらは、例えば、イオン化プロセスに基づく部分放電の検出と同様に、イオン化のための、したがって気体、液体、及び固体物質の導電性のための感覚特性も含む。図8は、統計的方法の助けを借りて決定された化学感覚遺伝子の発現の差分分析を示す。
【0139】
神経機能の使用
スコアリング・モデル及び神経機能の助けを借りて、これらを使用してパラメータを決定することができる。特に、モンテ・カルロ法を使用するとき、経験的に決定された結果及び生化学的データは、未知のパラメータを決定するための近似プロセスに役立つ。当業者には知られている数学的モデルであるOLAPモデル及びALEX Netモデルも、多くの受容体及び生化学的特性の構造化に適している。
【0140】
電気化学的モデルへの変換
生化学的結果を用いて、センサ及び受容体は、ここで、それらの生化学的特性、トポグラフィ特性、及びトモグラフィ特性に分解され、次いで、生化学的プロセスから等価回路モデル(ECM)に変換される。ここで、節足動物内のトポロジ・プロセス、トモグラフィ・プロセス、及び生化学的プロセスは各々、ECMに対応付けられる。これらは、例えば、多孔質電極、多孔質材料、多孔質材料の材料パラメータ、電極挙動の記述、ブラシ電極、物質及びプロセスの拡散、物質及びプロセスにおけるイオン化、又はさらなる電気化学的プロセスを含む。
【0141】
伝送線モデルの使用
次のステップでは、一般に有効なECMが使用される。伝送線モデル(TLM)は、多くの生化学的プロセス及び電気化学的プロセスをモデル化するのに適しており、プロセス及び手順の抽象化にも使用される。異なるTLMの数は、必要なモデル・フィッティングに依存する。TLMは、モデルをより正確に再現するためにカスケーディング(直列接続)することもできる。
【0142】
極限値を考慮した微分方程式の解
インピーダンス・モデルの計算のために、図28に記載されるように、クラスタへの分割が、様々なTLMに関して行われる。複雑さ及び数学的相関のパラメータを低減するために、極限値の考慮もある。TLMは、微分方程式の助けを借りて記述され、分析は、フーリエ変換及びラプラス変換並びにそれらの逆変換を使用して、画像領域、時間領域、又は周波数領域において行われる。
【0143】
図48bによる節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ2
使用されたモデルの検証及び可能な適応
次のステップでは、使用されたモデルが検証され、必要に応じて適応される。これは、図28の4つのモデルとは異なるTLMベース・モデルが、モデル化に使用されることを意味する。これは、特に生化学システムにおいて、開放した構造又は閉鎖した構造(例えば、開放した細孔又は閉鎖した細孔)の考慮が、トモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データに基づいてインピーダンス・モデルを再現するために重要であるためである(図37参照)。
【0144】
インピーダンス・モデルの曖昧さの識別
節足動物の受容体を励起するための周波数スペクトルは、極めて大きい。したがって、多周波数励起は、結果の曖昧さにつながり得る。異なる生化学的プロセスは、異なる周波数範囲で監視及び分析されなければならない。明白な対応付けが可能でない場合、いくつかのパラメータは、トポグラフィ・データ及び/若しくはトモグラフィ・データの使用によって簡略化することができ、並びに/又は直接決定することができる。
【0145】
インピーダンス・パラメータの正規化
正規化されたインピーダンス・パラメータの助けを借りて、一般に有効なモデルを各タイプの節足動物に関して定義することができる。0及び/又は∞に向かう極限値の考慮とともに、ソフトウェアにおけるパラメータ適応は単純化されるが、それは、適応が以前に決定された値に対してのみであるからである。
【0146】
微分方程式を回避するための代替方法
マイクロコントローラ・ベースのシステムにおける微分方程式を回避し、必要なメモリ空間を低減するのに、任意の非線形関数を極めて効率的にモデル化するために、例えば、マイクロコントローラ内のルックアップ・テーブルに非線形関数の連続を記憶するために、代替方法が、関数ライブラリーと組み合わせて使用される(参照文献7)。
【0147】
図48cによる節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ3(トポグラフィ・モデル化及びトモグラフィ・モデル化)
トポグラフィ分析及びトモグラフィ分析
図6図7図13から推測することができるように、節足動物のトポグラフィ分析及びトモグラフィ分析は、全体としての相関を理解するための試験手段である。図16図37図38図39図40図45、及び図46は、インピーダンス・スペクトルにおける構造のシミュレーション結果及び対応付けについて説明する。モデル構造の対応付けは、受容体の位置特定及び生化学的特性によって、主要なステップ1及び2に記載されるように行われる。細孔形状のシミュレーションは、トポグラフィ・データ及びトモグラフィ・データ、さらには極限値の考慮に基づいて対応付けることができ、単純化された2次元又は3次元の表現及び数学的モデルにおいて処理される。
【0148】
タウ係数の決定
ここで、屈曲度係数τ(タウ係数)の計算は、微細構造の画像データを記述するための科学の分野で知られている手段である。タウ係数の決定は、微細構造データに基づいて、屈曲及びねじれ且つ蛇行した不均質な幾何学的形状及び構造における拡散輸送の低減を決定するための極めて効率的な方法である。
【0149】
励起信号の侵入深さの計算
励起信号の侵入深さは、タウ係数の助けを借りて記述することができる(参照文献5)。節足動物の特定の解剖学的構造を考慮することができる。次いで、タウ係数からの結果を使用して、節足動物のシステム記述におけるパラメータを低減させることができる。
【0150】
図48dによる節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ4
適応制御システムによる制御パラメータの決定
図44は、適応制御システムに基づくディープ・ラーニング・プロセスの原理について説明する。これは、特に、他のタイプの節足動物のさらなる参照モデルをトレーニングするために使用される。
【0151】
参照モデル及びそのパラメータの適応
モデル・パラメータの適応は、以前の結果に基づいて、又は節足動物及びそれらの行動パターンの監視によって行われる。
【0152】
節足動物の行動パターンの監視
節足動物の活動的行動は、励起によって影響を受け、これは、最終的に、人間による監視によって、又は、カメラ・ベースの監視若しくは他の適切な光学センサ、例えば赤外線若しくはFIR飛行時間センサによって検出される。
【0153】
関数ライブラリーへのモデルの記憶
監視結果とともに、モデルは、対応する周波数パターンとともにメモリに記憶され、したがってデータ処理システムによって学習される。
【0154】
参照文献:
(参照文献1)Deciphering the olfactory repertoire of the tiger mosquito Aedes albopictus、Fabrizio Lombardo1、Marco Salvemini2、Carmine Fiorillo1、Tony Nolan3、Laurence J.Zwiebel4、Jose M.Ribeiro5及びBruno Arca1、2017年
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(参照文献6)Generalization of transmission line models for deriving the impedance of diffusion and porous media、Uwe Troltzsch,Olfa Kanoun、Chemnitz University of Technology,Chair for Measurement and Sensor Technology,Reichenhainer Straβe 70,09126 Chemnitz,Germany、2012年
(参照文献7)Robust and Universal Modeling Algorithm for Impedance Spectroscopy in Embedded Systems、Andreas Mangler;Technische Universitat Chemnitz,Chair Measurement and Sensor Technology、Jil Jasmin Ehnis、RUTRONIK Elektronische Bauelemente GmbH ISPRINGEN,Germany IWIS Conference 2017 Chemnitz 2017年
(参照文献8)WO2012/094768A1 タイトル:DEVICE THAT EFFECTIVELY AND CONSTANTLY PROTECTS PEOPLE FROM BLOOD-SUCKING ARTHROPODS AND THUS PREVENTS THE SPREAD OF THE EPIDEMIC DISEASES MALARIA,YELLOW FEVER,AND DENGUE FEVER、Kurt Stell、2012年7月19日
(参照文献9)WO2016/165035A1、METHOD AND DEVICE FOR PRODUCING ELECTROMAGNETIC FIELDS THAT INFLUENCE THE NERVOUS SYSTEM OF INSECTS、Kurt Stell、2016年10月20日
(参照文献10)WO2018/104135A1、METHOD AND DEVICE FOR INFLUENCING INSECTS、Kurt Stell、2018年6月14日
(参照文献11)WO99/55151、Device providing protection against insect bites without modifying the ecological balance、Kurt Stell、1999年4月27日
(参照文献12)Extension of Pulsewidth Modulation From Carrier-Based to Dither-Based、Shiang-Hwua Yu、Ting-Yu Wu、Sing-Han Wang、発行:IEEE Transactions on Industrial Informatics(Volume:9,Issue:2,2013年5月)1029~1036頁、出版日:2012年9月24日、ISSN Information:INSPEC Accession Number:13220087、DOI:10.1109/TII.2012.2220555、発行者:IEEE
(参照文献13)J.P.Meyers、M.Doyle、R.M.Darling、J.Newman、Journal of the Electrochemical,Society 147(2000)2930頁
(参照文献14)Simulated impedance of diffusion in porous media、Samuel J.Coopera,、Antonio Berteib、Donal P.Fineganc,d、Nigel P.Brandonb、Electrochimica Acta 251(2017)681~689頁、2017年7月27日オンラインで入手可能
(参照文献15)E.Barsoukov、J.R.Macdonald、Impedance Spectroscopy:Theory,Experiment,and Applications,2nd Edition,(2005)
(参照文献16)H.Keiser、K.D.Beccu、M.A.Gutjahr、Abschatzung der porenstruktur poroser elektroden aus impedanzmessungen,Electrochimica Acta 21(1976)539~543頁
【0155】
この基礎から進めて、本発明を以下により詳細に説明する。本発明は、電磁放射線によって節足動物に影響を与えるための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0156】
文献WO99/55151A1(参照文献11)は、虫刺されから保護するためのデバイスについて説明している。このデバイスは、ヒトの皮膚上を伝播する異なる周波数の振動を生成する発振器を有する。昆虫が皮膚の表面に座ると、振動は、昆虫の感覚子によって知覚され、昆虫の感覚細胞によって刺激流に変換される。したがって、個体を噛むという昆虫の意図が中断され、昆虫は皮膚の表面から離れる。
【0157】
文献WO2012/094768A1(参照文献8)は、吸血の節足動物から個体を保護し、したがって、伝染病の蔓延を防止するデバイスを開示している。このデバイスは、基本的に2つのマイクロプロセッサ及び2つの送信器を有し、これらは、様々なパルス及びパルス・シーケンス周波数を送信する。パルス・キャリア信号は、送信器の出力段に結合されたアンテナによって電磁波の形態で放射される。565kHzの雷放電チャネルの中間周波数スペクトルが、キャリア周波数として選択される。保護ゾーンは、5マイクロワットの放射送信電力によって確立され、約2メートルの範囲内の個体を節足動物から保護する。したがって、雷などの外部の影響は、信号としてシミュレーションされ、節足動物によって知覚され、節足動物における自動飛行応答を開始させる。
【0158】
WO2016/165035A1(参照文献9)は、一体化されたアンテナによって、互いに180度だけ位相シフトされた2つの変調及びパルス化された電磁波を放射する、2チャネル・パルス・パターン送信器によって昆虫が影響を受ける、デバイス及び方法を開示している。したがって、2つの電磁場が生成され、これらの電磁場は、昆虫の食道上神経節及び食道下神経節に位置するニューロン、並びに昆虫の中枢及び末梢神経系に位置するニューロンに影響を与え、この結果、これらのニューロンが不活発になり、その結果、昆虫はヒトの皮膚に侵入することができない。
【0159】
電磁放射線によって昆虫に影響を与えるための方法及びデバイスは、WO2018/104135A1(参照文献10)に開示されている。送信器は、対応するパルスを含む電磁放射線としてアンテナを介して放射されるパルスを有するアンテナ・フィードの時間推移を生成する。アンテナ・フィードは、バースト又はパケット又はパルスの一斉印加(salvo)を有し、バーストの直接連続するパルス間の時間間隔は、5マイクロ秒から9マイクロ秒の範囲内にあり、バーストの持続時間は、少なくとも0.1ミリ秒である。
【0160】
文献ALFAIFI、Bandarら、Computer simulation analyses to improve radio frequency(RF) heating uniformity in dried fruits for insect control、Innovative Food Science & Emerging Technologies、2016、37.Jg.、125~137頁では、様々なサンプル内の不均一な温度分布を最小化するために、異なるサンプル形状の加熱への様々な電極構成の影響が調べられている。この目的のために、様々なサンプル形状における温度がシミュレーションされる。ここでの目的は、昆虫などの害虫が最大限に除去されるように、温度によって食品を処理することである。
【0161】
文献WANG、Shaojinら、Dielectric Properties of Fruits and lnsect Pests as related to radio frequency and Microwave treatments、Biosystems Engineering、2003、85.Jg.、no.2、201~212頁は、電子シミュレーション又はインピーダンス・モデルによる、昆虫に影響を与えるための放射特性の決定に関する。誘電特性は、昆虫及び食品などの異なるサンプルの様々な周波数及び温度において測定され、侵入深さ及び損失係数が計算される。
【0162】
引用された先行技術における全ての方法及びデバイスに共通する特徴は、決定された(経験的に決定された)パルス及びパルス幅が、送信器によって電磁放射線として送信されることである。節足動物がヒトに刺さないように反応する、対応するパルス・シーケンスを決定するために、各節足動物(例えば、昆虫、クモ、毛虫)に関して新しい経験的研究を行わなければならない。したがって、様々な節足動物の行動に影響を与えるための様々なパルス・シーケンスを決定するために、時間のかかる集中的な試験を各節足動物に関して行わなければならない。先行技術は、体系的なアプローチについて説明していない。
【発明の概要】
【0163】
この先行技術から進んで、以下の発明の目的は、電磁放射線によって節足動物(例えば、昆虫、クモ、毛虫)に影響を与えるための方法及びデバイスを提供することであり、その方法及びデバイスの助けを借りて、節足動物が反応する対応する信号及び/又は信号パターンを、節足動物の各々に関して迅速に、容易に、且つ体系的に決定することができる。
【0164】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法、及び請求項23の特徴を有するデバイスによって達成される。
【0165】
有利な改善は、従属請求項の対象である。特許請求の範囲に別個に記載された特徴は、技術的に実現可能な方法で互いに組み合わせることができ、記載の実質的事項の説明によって、及び本発明のさらなる変形形態が示されている図面の詳細によって補完することができる。
【0166】
節足動物をそれらの感覚器官に関して調べることは、生物学において知られている。したがって、例えば、節足動物の感覚器官、特に感覚表面及び空間の位置特定を得ることができる。例えば、蚊の場合、これらは、雌では、触角、小顎鬚、及び身体であり、雄では、頭部である。他のタイプの節足動物は、他の又はさらなる感覚表面及び空間、又は翼、上顎、ふ節、若しくは脚などの身体部分を有する。様々な物理特性、生化学特性、及び/又は感覚特性を有する、物理的感覚付属器及び/又は生化学的感覚付属器が、これらの身体部分上に位置する。感覚付属器の位置特定は、上述のように生物学から知られており、そこから、例えば、対応する文献から得ることができる。
【0167】
節足動物の物理的感覚付属器及び/又は生化学的感覚付属器は、例えば、機械的変化、味、匂い、香り、音、化学的感知、温度、及びフェロモンを感知するためなどのセンサ及び/又は受容体を含む。それらは、例えば、イオン化プロセスに基づく部分放電の検出と同様に、イオン化のための、したがって気体、液体、及び固体物質の導電性のための感覚付属器も含む。
【0168】
これらの感覚付属器は、異なる信号及び/又は信号パターンに反応し、例えば、節足動物は、対応する信号及び/又は信号パターンによって、例えば電磁放射線の形態で、影響を受ける可能性があり、その結果、節足動物は、例えば飛び立つか、又は不活発になる。ここで、対応する信号及び/又は信号パターンは、節足動物の少なくとも1つの特定の感覚付属器及び/又は少なくとも1つの感覚特性に向け、次いで、それに応じて節足動物に影響を与える。
【0169】
電磁放射線によって節足動物に影響を与えるための本発明による方法では、電磁放射線は、少なくとも1つの送信器によって放射される。電磁放射線の特性、例えば電磁放射線の時間推移は、少なくとも1つの等価電子回路(ECM)の助けを借りて本発明に従って確立されるが、等価回路は、節足動物のモデルである。したがって、対応する節足動物が反応する信号及び/又は信号パターンを、迅速に、容易に、且つ体系的に得ることができ、等価電子回路は、節足動物のモデルの基礎として使用される。したがって、節足動物が反応する信号及び/又は信号パターンの経験的決定は、必要なくなる。むしろ、節足動物に影響を与えるための信号及び/又は信号パターンを決定するための体系的なアプローチが提供される。
【0170】
ECMは、例えば、オーム抵抗体、インダクタ、及びキャパシタなどとは異なる構成及び/又は要素を有する、電気的に等価な回路である。これらの要素は、要望に応じて相互接続することができる。等価回路における複素抵抗は、これら3つの要素のうちの少なくとも1つからなる複素ネットワークを表す。
【0171】
電磁放射線の特性は、ここでは様々な要因に依存してもよく、例えば、時間、空間、又は周波数に基づく依存性が考えられる。しかし、原理的には、電磁放射線を記述及び/又は特徴付けることができる、さらなる要因が考えられる。
【0172】
(数学的及び電気技術的な)ECMは、物理的、化学的、及び/又は生化学的なアプローチの代わりに極めて類似した結果をもたらすが、出発点は多少異なる。物理的、化学的、及び/又は生化学的なアプローチは、電荷キャリアの考慮のために好ましい。対照的に、ECMは、電気システムの挙動を調べるのにより適している。類似性により、混合されたアプローチも可能である。ECMは、モデル同定のプロセスを単純化することができる。ECMの使用は、線形システムに限定されない。
【0173】
正確且つ標的化された影響を与えるために、モデルは、有利にも、節足動物の少なくとも1つの感覚付属器及び/又は少なくとも1つの感覚特性を記述する。節足動物の感覚能力は、分離された個別のセンサによって説明することもできる。物理的な観点から、節足動物の複雑なセンサ構造を再現するために、統合されたセンサ特性を有する多数のセンサが必要である。物理的センサの実例は、空気又は環境のイオン化センサ、味覚センサ、化学センサ、ガスセンサ/呼吸センサ、空気質センサ、CO2センサ、空気圧センサ、温度センサ、湿度センサ、飛行時間センサ、赤外線センサ、UVセンサ、加速度計、及び音センサである。予備的な生物学的調査は、定義されたセンサ特性及び感覚遺伝子の頻度プロファイルの明確な割振り、並びに雄と雌との間のセンサの分布及び配置が存在し、したがって、節足動物の感覚能力が、例えば、複数の物理的センサによって説明することができることを示した。異なる種類の節足動物は、異なる感覚能力、並びに、感覚能力の異なる頻度及び分布を有する。
【0174】
複数の感覚特性並びにそれらの物理的機能及び/又は生化学的機能により、節足動物の全ての感覚付属器及び/又はそれらの感覚特性を可能な限り刺激するために、異なる信号及び/又は信号パターン、例えば周波数パターンが必要である。これらの周波数パターンは、同時に一斉に送信されるか、又は順次送信されてもよい。例えば、節足動物のトポロジ及び/又は物理的構造は、ここでは、感覚付属器が刺激される鍵である。異なるタイプの節足動物の刺激には、異なる周波数パターンも必要である。
【0175】
節足動物の感覚付属器及び/又は感覚特性の電気的挙動について説明するために、等価電子回路が、節足動物のモデルとして使用される。伝送線モデル(TLM)は、ECMとして汎用的に適用可能である。複数のTLMの直列接続により、任意の所望のカスケード・モデルを構築することができる。無限フォークト・モデルは、直列に接続されたTLMの助けを借りて構築することもできる。節足動物の感覚付属器の物理的効果及び/又は生化学的効果は、等価電子回路によって説明することができる。節足動物の感覚付属器は、例えば、節足動物の触角、感覚子毛、又は身体である。しかし、節足動物に応じて、さらなる感覚付属器も考慮され得る。
【0176】
複素平面においてECMを使用することによって、又は緩和時間分布(DRT)を分析することによって、有利にも、節足動物における様々な物理的、電気化学的、及び/又は生化学的なプロセスのインピーダンスに対する相対的寄与を調べ、説明し、切り離すことが可能である。これは、インピーダンス・スペクトル中のいわゆる注目点をダイナミック・レンジで表し、節足動物の異なるインピーダンス挙動を明確に区別する方法である。ナイキスト線図又はDRTスペクトルなどの異なる表現方法は、スペクトル内の重要な点を示す。これらの重要な点は、節足動物の生化学的特性及び/又は物理的特性並びに行動パターンに対応付けられる。
【0177】
等価回路は、節足動物の少なくとも1つの感覚付属器及び/又は少なくとも1つの感覚特性である。したがって、異なる感覚付属器及び/又は感覚特性を有する異なる節足動物に関する異なるモデル及び/又は等価回路を得ることが可能である。原理的には、任意の数のモデルを使用し、互いにともに分析することができる。さらに、モデル及び/又は電気的等価回路の数を低減させるために、節足動物の感覚付属器及び/若しくは感覚特性をさらなるサブモデルによって補完することができ、又は、個々の感覚付属器及び/若しくは感覚特性のみをモデル化することができる。
【0178】
節足動物に影響を与えるための信号及び/又は信号パターンを有利にも迅速に決定するために、少なくとも1つのパルス、好ましくは例えばトリチェル・パルスが最初に送信されることが好ましい。しかし、パルスは、原理的には任意のパルスであってよい。次いで、送信パルスの周波数スペクトルが検出される。次に、送信パルスの周波数スペクトルの少なくとも1つの周波数成分が、例えばフーリエ変換によって決定され、周波数成分は、整定時間に変換される。少なくとも1つの要素は、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループから決定される。次いで、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも決定された要素と等価であり、0≦Rの抵抗値R及び0≦CのキャパシタンスCを有する少なくとも1つの未知のRC回路を有する、少なくとも1つの電子等価回路が選択される。ここで、少なくとも1つの未知のRC回路は、少なくとも1つの現在既知のRC回路としてのRC回路の時定数に対応する、送信パルスの周波数スペクトルの周波数成分から計算された整定時間に基づいて決定される。次いで、節足動物に影響を与えるために重要な少なくとも1つのRC回路が決定される。
【0179】
少なくとも1つの重要なRC回路を決定するために、電圧振幅は、既知のRC回路によって決定された少なくとも1つの整定時間に応じて正規化されるのが好ましい。次いで、正規化された電圧振幅に基づいて、決定が行われる。正規化は、好ましくは、DRT分析によって実行され、したがって、有利にも、迅速且つ単純な決定をもたらす。したがって、パターン認識によるグラフによる決定も可能である。
【0180】
パルスの時間推移は、電磁放射線の特性を迅速且つ簡単に決定するために、有利にも、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを含むことが好ましい。
【0181】
節足動物は、少なくとも1つの重要なRC回路の時定数を変化させることによってトレーニングされることが好ましい。したがって、電磁放射線の特性を決定するために、有利にも、全てのRC回路ではなく、重要なRC回路の周波数のみを変更することが可能である。
【0182】
決定された重要なRC回路に関する有利な妥当性チェック又はさらに代替的な決定のために、少なくとも1つの要素が、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループから最初に決定されることが好ましい。次いで、少なくとも1つのパルスの送信中に、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素の周波数挙動が識別され、グラフで表される。少なくとも1つのパルスの送信中の等価回路の周波数挙動も同様に識別され、グラフで表される。次いで、等価回路のグラフ表示された周波数挙動が、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素のグラフ表示された周波数挙動と比較され、グラフ・パターンの類似性が決定される。次に、決定された類似性に基づいて、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素と等価である、少なくとも1つの電子等価回路の選択を行うことができる。
【0183】
グラフ表示は、特に明確な表現のためにナイキスト線図の形態で提供されることが好ましい。
【0184】
有利にも、インピーダンス・モデル方程式の曖昧さを分析し、低減し、又はさらには除去するために、モデル又はサブモデルが、節足動物の感覚付属器及び/又は感覚特性の少なくとも1つの物理的効果及び/又は生化学的効果が対応付けされる。例えば、ブラシ電極のモデル又はサブモデルは、節足動物の触角を記述し、多孔質電極のモデル又はサブモデルは、節足動物の多孔質の感覚子毛を記述し、一般的な拡散のモデル又はサブモデルは、イオン拡散を記述する。さらに、効果は、例えば、非透過性壁の拡散及び/又は理想的なリザーバの拡散のモデル又はサブモデルによって説明される。さらなるモデル又はサブモデルは、例えば、節足動物の表面及び/又は内部構造のトモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データから屈曲度係数を計算するためのモデルである。インピーダンス挙動に影響を与えるモデル・パラメータの分析は、曖昧さの除去によって同様に単純化され、加えて、非線形パラメータ最適化技法のロバスト性が改善される。
【0185】
例えば、節足動物表面のトモグラフィ・データからの屈曲度係数(=タウ係数)の計算モデルは、多孔質媒体を通る流路の屈曲、エッジ密度、及び画像ベースの微細構造データから生じる拡散輸送の見かけの減少を定量化する。体積分率、表面積、及び3次元構造と同様に、タウ係数を効率的に計算するための、タウ係数計算などの確立された数学的ツールが存在する。励起信号の侵入深さは、タウ係数の助けを借りて記述することができる。したがって、節足動物の特定の解剖学的構造を考慮することができる。タウ係数の計算は、微細構造画像データに基づいて、屈曲及びねじれ且つ蛇行した不均質な幾何学的形状及び構造における拡散輸送の低減を決定するための極めて効率的な方法である。次いで、タウ係数からの結果を使用して、節足動物のシステム記述におけるパラメータを低減させることができる。例えば、屈曲度係数を近似するために、相関を使用することができる。しかし、近年、3D撮像技法の利用可能性の増大により、量をより直接的に計算することに対する注目が高まってきている。したがって、現代のトモグラフィに典型的な大きいデータセットを、高い計算能力を必要とすることなく、迅速且つ正確に使用することができる。
【0186】
節足動物の感覚特性は、さらなるモデルによって補完することができるか、又は、電子等価回路モデルの数を低減させるために、個々の感覚特性のみをモデル化することができる。曖昧さを除去することによって、インピーダンス挙動に影響を与えるモデル・パラメータの分析は、単純化され、加えて、非線形パラメータ最適化技術のロバスト性が改善される。確率の助けによる、先に説明した相関及び試験の結果は、モデルの直接的及び間接的な対応付けを可能にする。
【0187】
有利にも、伝送線モデル(TLM)の一般に有効な解が利用可能であり、したがって、例えば、任意の物理的効果及び/又は生化学的効果をTLMによって記述することができるので、等価回路を生成するために、少なくとも1つのTLMが使用される。したがって、TLMは、ECMとして汎用的に適用可能である。TLMを使用することにより、任意の等価回路を生成することができるが、それは、例えば、個々の複素数要素Zxに関して、境界条件を仮定することもできるからである(例えば、Zx=0又はZx=∞)。例えば、TLMとしてECMを使用するか、又は、抵抗体、キャパシタ、又はインダクタなどの、複素数要素から形成された別のECM回路構造を使用することが可能である。TLMの要素及びパラメータ、例えば、様々な抵抗体、キャパシタ、コイル、インピーダンス、電流及び/又は電圧の正しい選択により、システムの様々な挙動、さらに物理的システム及び/又は電気化学的システムのフラクタル構造を識別することが可能である。TLMの要素は、例えば、非線形の電圧及び電流の依存性を有し得る。さらに、パラメータは、例えば、位置依存又は周波数依存であり得る。この場合、インピーダンスを計算するために、数値的方法が必要とされることが多い。例えば、一般的なTLMの微分方程式を解くことにより、同じ方法を使用して多くの異なるシステムのインピーダンスのシミュレーションが可能になる。様々な境界条件の使用により、同じモデルを使用して様々なシステムのシミュレーションが可能になる。インピーダンスの値の変化により、異なる条件下での1つのシステムのシミュレーションが可能になり、異なるシステムのシミュレーションも可能になる。電気化学的アプローチからのモデルとの相関は、適切なパラメータによって表される。したがって、異なるモデル間の相関、例えば、拡散モデルと多孔質電極モデルとの間の類似度の識別が可能になる。サブモデルに分割された電子等価回路が、TLMによって記述されることも考えられる。
【0188】
原理的には、等価回路(ECM)は、例えば、節足動物のモデルを記述するための電気技術的アプローチを表すが、一般的な送電線モデルTLMは、ECM又はモデルを記述するための一般に有効な数学的アプローチを表す。一般的なTLMは、等価回路において一般に有効な複素数要素を使用することによって従来のECMを抽象化する。ECMは、モデルを記述するために、例えば、対応する要素、例えば、抵抗体、キャパシタ、及び/又はコイルを有する(電気技術的な)回路図を使用するが、TLMは、一般に有効なアプローチであり、ここで、一般に、複素数要素が、方程式系を単純化するために選択される。したがって、微分方程式に対する解は、TLMの助けを借りて数学的観点から単純化される。境界条件は、節足動物の電気化学的プロセス及び生化学的プロセスの単純化されたモデル化のためのECM及び/又はモデルを記述するために使用される。したがって、モデルに関する情報は、ECM及び/又はTLMを用いて得ることができる。特に拡散プロセスを記述するとき、節足動物のシステム・シミュレーション及びシステム同定を単純化するために、多孔質感覚子毛などの多孔質構造体に関して異なるモデリングを適用しなければならない。同様に、変換によって、ECMの電気技術的記述と、TLMの数学的記述との間で変更することが可能である。無限フォークト・モデル(ECM)の助けを借りたモデル化は、節足動物の緩和挙動を記述する周波数パターンの経験的決定のための単純化されたモデル化方法である。
【0189】
等価回路の考えられる最も有利な普遍的表現及び使用のために、少なくとも1つの伝送線モデルを使用して、等価回路の少なくとも1つのRC回路を決定することが好ましい。
【0190】
有利にも、さらにより複雑なシステムをモデル化するために、且つ/又は、モデルをさらにより正確に再現するために、少なくとも2つ以上の等価回路が直列に接続される。したがって、例えば、複数の感覚付属器及び/又は感覚特性、例えば様々な感覚子毛及び様々な数の触角を有する節足動物を、モデル化することができる。複数のECMを直列に接続することにより、任意の所望のカスケード・モデルを構築することができる。例えば、無限フォークト・モデルは、直列に接続されたECMの助けを借りて構築することもできる。したがって、さらに、複数の伝送線モデルが直列に配置される、凝縮された電子等価回路を実現することが可能である。凝縮された等価回路の実例は、無限フォークト・モデル又は定位相要素(CPE)を使用するモデルによって提供される。
【0191】
節足動物のモデルを記述するために、TLMとともに、少なくとも1つの境界条件が使用される場合、有利にも、様々なシステムのシミュレーションを同じモデルを用いて実行することができる。したがって、境界条件の考慮の下で、節足動物の感覚付属器及び/又は感覚特性の物理的効果及び/又は生化学的効果を限定することが可能である。例えば、様々な電流及び/又は電圧が、節足動物の触角又は感覚子毛を記述するためのTLMに生じる。
【0192】
有利にも、単純化されたモデルの場合、境界条件は、例えば、0及び/又は無限に向かう、少なくとも1つのインピーダンスの少なくとも1つの境界を考慮し、それによって、TLMは、単純化された等価回路に変換される。したがって、有利にも、より容易に且つより少ない計算量でモデルを記述及び/又は計算することが可能である。
【0193】
少なくとも1つのインピーダンス・スペクトルが等価回路又は単純化された等価回路の助けを借りて決定される場合、関連の注目点は、したがって、有利にも、このスペクトルから迅速且つ容易に抽出することができる。例えば、無限フォークト・モデルなどの単純化された等価回路によって、経験的に決定されたデータからインピーダンス・スペクトルを決定することが可能である。例えば、インピーダンス・スペクトルは、経験的な等価回路から決定することもできる。
【0194】
有利にも、より正確な結果のために、インピーダンス・スペクトルは、トモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データの助けを借りて決定される。例えば、トモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データは、対応する文献から得ることができる。例えば、インピーダンス・スペクトルは、経験的なECM並びにトモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データから作ることができる。
【0195】
インピーダンス・スペクトル及び少なくとも1つの分析、例えば、DRT分析(緩和時定数分布)を用いて、有利にも節足動物をターゲットとした影響に関して、電磁放射線の特性の少なくとも1つのパラメータ、例えば、少なくとも1つの特性周波数及び/又は時定数を決定することが可能である。しかし、原理的には、電圧、電流、又は時間推移などの他のパラメータも考えられる。例えば、DRT分析などの分析の助けを借りて節足動物の行動に影響を与えるために、無限フォークト・モデルなどの経験的なECMから特性周波数を決定することが考えられる。
【0196】
有利にも改善された影響を与えるのに、少なくとも1つの新しいインピーダンス・スペクトルを生成し、そこから少なくとも1つの新しいTLMを導出するために、少なくとも1つの新しいパラメータ(例えば、励起周波数)が、例えばDRT分析を用いて、特性(例えば、特性周波数及び/又は時定数)の少なくとも1つのパラメータの助けを借りて、例えば、このパラメータから導出される。例えば、DRTスペクトル及び特徴的な整定時間を有する緩和挙動から、節足動物の感覚付属器のECMを作り、DRT分析の助けを借りてさらなる特性周波数及び/又は時定数を決定し、そこから新しい励起周波数を導出し、次いでここから新しいインピーダンス・スペクトルを生成し、そこから構造化された新しいTLMを導出することが可能である。
【0197】
節足動物の感覚付属器の物理的効果及び/若しくは生化学的効果、並びに/又は感覚効果の限界設定を有利に達成するために、TLMは、以下の分割された伝達線モデル、すなわち、多孔質電極に関するTLM、多孔質材料に関するTLM、一般的な拡散に関するTLM、並びに/又は非透過性壁及び理想的なリザーバ(IR:ideal reservoir/NPW:non-permeable wall)内への拡散に関するTLMのうちの少なくとも1つに分割される。全てのTLMが使用されるか、又は、1つ、2つ、3つ、若しくは4つのTLMのみが使用されることも考えられる。同様に、例えば、節足動物の触角を記述するブラシ電極のモデル又はサブモデルは、多孔質電極に関するTLMによって記述され、節足動物の多孔質の感覚子毛は、多孔質材料に関するTLMによって記述され、イオン拡散は、一般的な拡散のTLMによって記述され、非透過性壁の拡散及び/又は理想的なリザーバの拡散は、IR/NPW拡散のTLMによって記述されることが考えられる。
【0198】
微分方程式は、TLMを記述する。本方法を、例えば異なる綱の節足動物まで有利に拡張するために、TLMの少なくとも1つの微分方程式が解かれて、電磁放射線の特性に関するパラメータ、例えば、電流、電圧、周波数、時間依存性を決定する。分割されたTLMの場合、例えば、各TLMを解くことができる。例えば、解は、インピーダンス挙動の表現の形態で、例えば、ナイキスト線図の形態で表すことができる。しかし、原理的には、例えば、画像、時間、周波数、電流、及び/又は電圧の領域における表現の形態で、解の他の表現も考えられる。フーリエ変換、ラプラス変換、及び/又はそれらの逆変換などの変換によって、様々な表現の間で変更することもできる。例えば、ナイキスト表現から、電磁放射線の特性、例えば、電磁放射線の時間推移を直接示す周波数曲線の形態の表現に変更することができる。例えば、フーリエ変換、ラプラス変換、及び/又はそれらの逆変換を使用することにより、分析は、例えば、画像領域、時間領域、又は周波数領域において実行することができる。
【0199】
より迅速且つより正確な解を得るために、微分方程式は、少なくとも1つの境界条件を使用して解かれる。様々な境界条件の使用により、有利にも、同じモデルを用いて様々なシステムのシミュレーションが可能になる。境界条件は、例えば、温度、圧力、及び/又は湿度などの固定されたパラメータの指定によって与えられる。例えば、温度が一定であると仮定することによって、複雑な温度依存性を除去することができる。しかし、原理的には、対応するシステムにおいて生じるさらなるパラメータも考えられる。数学的相関の複雑さ及びパラメータも、境界条件によって低減される。少なくとも1つの境界条件を使用して微分方程式を解くことにより、例えばDGLベースの曲線の説明の助けを借りたグラフ分析を用いて、節足動物の特徴的な性質を同定し、したがって、新しい周波数パターンの決定を単純化することができる。
【0200】
微分方程式の解の特に有利な表現は、インピーダンス・スペクトル表現、例えばナイキスト表現である。インピーダンス・スペクトルは、例えば、注目点が迅速に識別できるので、解を明確に表し、それを迅速に分析することを可能にする。したがって、微分方程式の解は、好ましくは、インピーダンス・スペクトルで表現及び/又は分析することができる。したがって、例えば、インピーダンス挙動又は節足動物の触角のモデルとしてのブラシ電極のインピーダンス挙動に対する細孔形状(例えば、開放/閉鎖した細孔)の影響は、極めて容易に分析することができる。しかし、他の影響、例えば、節足動物の触角の幾何学的形状の影響も分析することができる。
【0201】
使用されるTLMは、少なくとも1つの他のTLM及び/又は単純化されたECMの助けを借りて検証及び/又は適応され、それによって、有利にも、より正確な結果を達成することができる。例えば、上述の分割された4つのモデルからの他のパラメータ及び/若しくは要素を有する別のTLMが、この目的のために使用され、又は、例えば、無限フォークト・モデルが基礎として使用される。
【0202】
有利にも、インピーダンス・モデル方程式の曖昧さを分析し、低減し、又はさらには除去するために、節足動物の対応する感覚付属器へのTLMの明白な対応付けのためのTLMのパラメータが決定される。曖昧さの除去は、インピーダンス挙動に影響を与えるモデル・パラメータの分析を単純化し、さらに非線形パラメータ最適化技法のロバスト性を改善する。確率の助けによる、先に説明した相関及び試験の結果は、モデルの直接的及び間接的な対応付けを可能にする。特に、単純化されたRCモデルの整定時間は、相関する周波数パターンを生成するための十分な可能性を提供する。したがって、例えば、節足動物の感覚特性へのECMの直接的な対応付けを達成することができる。
【0203】
節足動物の感覚付属器を励起するための周波数スペクトルは、極めて大きい。したがって、多周波数励起は、結果の曖昧さにつながり得る。異なる物理的プロセス及び/又は生化学的プロセスは、異なる周波数範囲で監視及び分析されなければならない。明白な対応付けが可能でない場合、いくつかのパラメータは、トポグラフィ・データ及び/若しくはトモグラフィ・データの使用によって簡略化することができ、並びに/又は、例えば微分方程式によって直接決定することができる。したがって、TLMのパラメータは、例えば、対応する文献から、節足動物のトポグラフィ・データ及び/又はトモグラフィ・データを使用することによって簡略化及び/又は直接決定することができる。例えば、構造体が多孔質であるか、透過性であるか、又は半透過性であるかにかかわらず、トモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データの助けを借りて、対応付けを行うことができる。したがって、次に、特定のTLMは、トモグラフィ情報及び/又はトポグラフィ情報に対応付けることができる。したがって、モデルの複雑さは、低減することができる。
【0204】
有利にも各種類の節足動物に関する一般に有効なモデルを定義し、モデルを比較するために、インピーダンス・パラメータなどのパラメータが正規化される。例えば、ナイキスト線図において、パラメータは、他のパラメータ及び/又はデータとのより十分な比較可能性が提供されるように、一般に値1に正規化される。パラメータの正規化により、例えば、異なる節足動物に対して一般に有効なECMを作ることが可能である。
【0205】
例えば、ソフトウェアにおけるパラメータ適応の単純化のために、パラメータは、有利にも、極限値分析を用いて適応される。例えば、適応は以前に決定された値に対してのみであるので、ゼロに向かう又は無限に向かう極限値分析によって、単純化が達成される。
【0206】
例えば、マイクロコントローラ・ベースのシステムにおける微分方程式を回避し、必要なメモリ空間を低減するのに、例えば、任意の所望の非線形関数を極めて効率的にモデル化するために、例えば、マイクロコントローラ内のルックアップ・テーブルに非線形関数のプロファイルを記憶するために、代替方法が、少なくとも1つのデータベースと組み合わせて使用される。この代替方法において、非線形関数は、例えば、指数関数、ガウス関数、又は線形関数によって部分的に置き換えられる。したがって、任意の所望の非線形関数は、マイクロコントローラのメモリ空間を節約するように記憶することができ、複雑な微分方程式を回避することができる。例えば、特に2つ以上の励起周波数を使用する、信号評価のためのGoertzelアルゴリズムを組み込んだマイクロコントローラに基づくアルゴリズムのメモリ効率の良い使用のために、離散フーリエ変換(DFT)が使用されることも考えられる。
【0207】
少なくとも1つの離散フーリエ変換(DFT)が、マイクロコントローラに基づいて、有利にも本方法のメモリ効率の良い使用のためにGoertzelアルゴリズムを組み込んで使用される。したがって、大型で強力な計算ユニットを使用する必要がなくなるように、本方法及び/又は得られたアルゴリズムをマイクロコントローラ上のメモリ空間を節約するように実装することが可能である。
【0208】
有利にも微分方程式の解を実際の節足動物に使用することができ、且つ/又はモデルを実際の条件に適応させることができるように、微分方程式の解は、少なくとも1つの参照モデルに基づく制御システム、例えば、ディープ・ラーニング・プロセスなどの自己適応システム又は適応制御システムによってチェック及び/又は適応される。したがって、他のタイプの節足動物に関するさらなる参照モデルを有利にもトレーニングし得ることが可能である。参照モデルは、例えば、経験的データ及び/又は既に確立されたモデルからのデータを含むことができる。
【0209】
モデルからのデータが(まだ)知られていない場合、参照モデルは、経験的データから決定することができる。原理的には、経験的データ及び/又は(予め決定された)モデルのデータから参照モデルを決定することも可能である。
【0210】
電磁放射線の特性を送信器に迅速且つ容易に利用可能にするために、電磁放射線の特性は、メモリ、例えばデータベース又はクラウドに記憶される。例えば、送信器が、例えば、Wi-Fi、Bluetooth、赤外線、又は他のデータ・ネットワークによって、ワイヤレスでメモリから電磁放射線の特性を受信することが可能である。送信器は、例えば、別の送信器に特性を転送することもできる。しかし、受信及び送信の他の可能性も考えられる。送信器の位置に応じて、この位置に位置する節足動物に対する電磁放射線の特性が、メモリから、例えばワイヤレスで送信され、その後に送信器によって送信されることも考えられる。
【0211】
有利にも電磁放射線をより広い範囲にわたって放射することができるように、電磁放射線の特性、例えば時間推移は、少なくとも1つのキャリア信号を用いて変調される。原理的には、例えば、サブメガヘルツ、メガヘルツ、及びギガヘルツの範囲のキャリア周波数が考えられる。さらに、PWM、FM、AM、PFM、TDM、及びFDMなどの異なるタイプの変調が考えられる。
【0212】
有利にもより広い範囲の電磁放射線を実現するように、電磁放射線の特性、例えば時間推移は、少なくとも1つのディザ信号を用いて変調される。
【0213】
有利にも電力を節約し、電磁放射線のより広い範囲及び改善された送信電力を実現するために、キャリア信号は、さらに少なくとも1つのディザ信号を用いて変調される。したがって、キャリア信号上に第3の周波数を変調することが可能である。ディザ変調は、例えば、時間表現上の周波数において前後にシフトされる時間ウィンドウによって記述することができる。例えば、変調されたディザ信号は、TDM及びFDM信号において、又は、TDM、FDM、及びディザ信号からの組合せで生成することができる。
【0214】
異なるタイプの節足動物のシミュレーション及び/又は刺激のために、異なる周波数パターンも必要である。有利にも、任意の異なる刺激信号を生成するために、電磁放射線の特性、例えば時間推移は、周波数分割多重化信号(FDM)及び時分割多重化信号(TDM)に基づく多周波数パターン発生器を用いて生成される。FDMの場合、周波数は、全時間にわたって送信される。対照的に、TDMの場合、全周波数スペクトルは、一定の時間間隔にわたって送信される。FDMとTDMとの組合せは、極めて広い範囲の時間期間において、極めて広い範囲の周波数を送信することを可能にする。したがって、電磁放射線の任意の所望の特性を生成することができる。
【0215】
有利にも節足動物のさらなる効果的な刺激を実現するために、電磁放射線の特性は、少なくとも1つのバースト・パルスを含み、このバースト・パルスは、空気中での少なくとも1つのコロナ放電をシミュレーションし、その時間推移は、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを含む。
【0216】
有利にも節足動物への影響の効果の増大のために、この特性は、いかなる高調波及び/又は低調波の相関も有さない。したがって、例えば、一斉に同時に送信される全てのシーケンスに関して、周波数スペクトルにおける高調波成分と低調波成分との間で区別が行われる。時間領域及び/又は周波数領域において同時に送信される周波数の特性は、いかなる高調波及び/又は低調波の相関も有さないことも考えられる。
【0217】
影響の効果をさらに増大させるために、この特性は、素数ベースである。したがって、この特性は、高調波及び/又は低調波のいかなる整数の倍数及び/又は係数も有さない。
【0218】
特に効果を増大させるために、この特性は、等差数列におけるディリクレの定理に基づいている。ディリクレの定理は、整数論の数学的サブフィールドからの記述であり、些細な理由のために不可能ではない場合、数列が無限に多くの素数を含むことを述べている。
【0219】
さらに、この目的は、電磁放射線によって節足動物に影響を与えるためのデバイスによって達成される。この場合、デバイスは、電磁放射線を放射する少なくとも1つの送信器を含む。電磁放射線の特性は、少なくとも1つの等価電子回路の助けを借りて作られ、ここで、等価回路は、節足動物のモデルである。デバイスの実例は、リストバンド又はデバイスであり、これらは、例えば、屋内又は屋外に、例えば、日除け上に取り付けることができる。
【0220】
デバイスはまた、少なくとも1つの等価電子回路の電磁放射線の特性を決定するための手段として意図され、ここで、等価回路は、節足動物の少なくとも1つの感覚付属器及び/又は少なくとも1つの感覚特性のモデルである。
【0221】
節足動物に影響を与えるための信号及び/又は信号パターンを有利にも迅速に決定するために、デバイスはまた、好ましくは、少なくとも1つのパルスを送信するための手段と、送信されたパルスの周波数スペクトルを検出するための手段と、送信されたパルスの周波数スペクトルの少なくとも1つの周波数成分を決定するための手段と、周波数成分を整定時間に変換するための計算手段と、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループから少なくとも1つの要素を決定するための手段と、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの決定された要素と等価であり、0≦Rの抵抗値R及び0≦CのキャパシタンスCを有する少なくとも1つの未知のRC回路を含む、少なくとも1つの電子等価回路を選択するための選択手段と、少なくとも1つの現在知られているRC回路としてRC回路の時定数に対応する、送信されたパルスの周波数スペクトルの周波数成分から計算される少なくとも1つの未知のRC回路を決定するための手段と、節足動物に影響を与えるのに重要な少なくとも1つのRC回路を決定するための手段とを含む。
【0222】
有利にも迅速且つ簡単な決定のために、少なくとも1つの重要なRC回路を決定するための手段は、好ましくは、既知のRC回路を用いて決定された少なくとも1つの整定時間に応じて電圧振幅を正規化するための正規化手段を含む。
【0223】
有利にも電磁放射線の特性の迅速且つ簡単な決定のために、パルスを送信するための手段は、好ましくは、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを送信するように構成される。
【0224】
決定された重要なRC回路に関する有利な妥当性チェック又は代替的な決定のために、デバイスは、好ましくは、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループから少なくとも1つの要素を決定するための手段と、少なくとも1つのパルスを送信するとき、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素の周波数挙動を識別する手段、及びグラフ表示するための手段と、少なくとも1つのパルスを送信するとき、等価回路の周波数挙動を識別する手段、及びグラフ表示するための手段と、等価回路のグラフ表示された周波数挙動を、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素のグラフ表示された周波数挙動と比較し、グラフ・パターンの類似性を決定するための手段と、決定された類似性に基づいて、節足動物の感覚付属器及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素と等価である少なくとも1つの電子等価回路を選択するための選択手段とを含む。
【0225】
有利にも、特に明確な表現のために、したがって、さらにパターン認識の処理のために、グラフ表示手段は、好ましくは、ナイキスト線図におけるグラフ表示を実行するように構成される。
【0226】
有利にも、TLMに関して一般に有効な解が存在し、例えば、任意の所望の物理的効果及び/又は生化学的効果を同様にTLMによって記述することができるので、等価回路は、少なくとも1つのTLMの助けを借りて生成される。
【0227】
有利にも任意の周波数及び/又は任意の長さの周波数を送信し、したがって異なる綱の節足動物に対処するために、周波数分割多重化信号(FDM)及び時分割多重化信号(TDM)に基づいて、電磁放射線の特性、例えば時間推移を生成する、組み合わされた多周波数パターン発生器が提供される。
【0228】
例えば、場所に応じて異なる節足動物に関して変数を使用するために、電磁放射線の特性、例えば時間推移を、メモリから、例えばデータベース又はクラウドからデバイスに転送することができる手段が提供される。例えば、Wi-Fi、Bluetooth、赤外線、又は他のデータ・ネットワークなどによるワイヤレス転送が考えられる。しかし、他の転送可能性も考えられる。
【0229】
例えば、対応する転送手段がないか、又はデータ・ネットワークがないために、メモリからの転送が可能でない場合、マイクロコントローラなどの手段が提供され、それによって、電磁放射線の特性をデバイス内で生成し、例えば、計算することができる。原理的には、電磁放射線の特性を生成することができる、他の手段も可能である。
【0230】
節足動物へのより強力且つより効率的な影響のために、この特性は、大気中のコロナ放電のシミュレーションのための少なくとも1つのトリチェル・パルス・シーケンスを含む。
【0231】
有利にも節足動物のさらなる効果的な影響のために、この特性は、少なくとも1つのバースト・パルスを含み、このバースト・パルスは、空気中での少なくとも1つのコロナ放電をシミュレーションし、その時間推移は、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを含む。
【0232】
さらなる利点は、従属請求項、及び好ましい例示的な実施例の以下の説明から明らかになるであろう。特許請求の範囲に別個に説明された特徴は、技術的に実現可能な方法で互いに組み合わせることができ、記載の説明情報によって、及び本発明のさらなる変形形態が示されている図の詳細によって補完することができる。
【図面の簡単な説明】
【0233】
図1】イベントに先立ってアルゴリズムを適応させるための予測分析又は予測解析の図である。
図2】記述的分析から、予測データを介し、ディープ・ラーニングまでの3つのステップの図である。
図3】節足動物の実例の図である。
図4】感覚付属器の実例、すなわち、強調された(暗い)触角(FA)及び小顎鬚(FP)を有する雌の頭部(参照文献1)、雄の頭部(MH)、雌の節足動物の身体全体(FB)の概略図である。
図5】対のサンプル比較、すなわち、比例ベン図である。
図6】雌のネッタイシマカの触角の図である(参照文献4)。
図7】雌のネッタイシマカの小顎鬚、雌の小顎鬚(頭状のペグ感覚子、A、B)及び唇弁T2感覚子(C、D)上のAaOr7固有のマーカーの図である。
図8】化学感覚遺伝子の発現の差分分析(DE)の図である。
図9】ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおける匂い結合タンパク質(OBP)の図である。
図10】ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおける嗅覚受容体(OR)の図である。
図11】ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおけるイオンチャネル型受容体(IR)の図である。
図12】IR-共受容体CRELの図である。
図13】様々な嗅覚感覚子及び他の感覚構造の分布を示すショウジョウバエの第3の触角部分の図であり、(D)は、(C)の詳細を示す図である。
図14】ヒトスジシマカのトランスクリプトームにおける味覚受容体(GR)の図である。
図15】ヒトスジシマカの感覚遺伝子の頻度プロファイルの図である。
図16】qPCR検証の図である。
図17】システムの単純化された機能の図である。
図18】異なる節足動物及び感覚付属器の異なる刺激のための方法の単純化された機能原理の図である。
図19】感覚付属器の刺激のための単純化された機能原理の図である。
図20】周波数分割多重化信号(FDM)の図である。
図21】時分割多重化信号(TDM)の図である。
図22】異なる節足動物に対する結合されたベースバンド変調信号の周波数スペクトルの簡略図である。
図23】組み合わされた多周波数パターン発生器の周波数可変及び時間可変のフレーム及び構造の簡略図である。
図24】規定された信号振幅のPWMパルス上に印加されるディザ信号の図である。
図25】規定された周波数を有するPWMパルス上の位相変調ディザ信号(左)と、ディザ変調のないPWM信号(右)の図である。
図26】PWM変調ディザ信号を用いた信号の拡張(参照文献12)の図である。
図27】一般的な伝送線モデル(TLM)の図である。
図27a】多孔質電極のTLMの図である。
図27b】多孔質材料のTLMの図である。
図27c】イオン拡散のTLMの図である。
図27d】非透過性壁及び理想的なリザーバにおける拡散のTLMの図である。
図28】多孔質電極モデルにおけるプロセスの説明(参照文献13)の図である。
図29】節足動物のECMの異なる緩和時間(整定時間)を有するDRTスペクトルの図である。
図30a図27aのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、c2=1である式4による多孔質モデルのインピーダンスの図である。
図30b図27aのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、c2=1である式4による多孔質モデルのインピーダンスの図である。
図30c図27aのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、c2=1である式4による多孔質モデルのインピーダンスの図である。
図30d図27aのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、c2=1である式4による多孔質モデルのインピーダンスの図である。
図31】正のトリチェル・パルス(この場合に、測定及びシミュレーションされたパルス)の時間推移の図である。
図32】負のトリチェル・パルス(この場合に、測定及びシミュレーションされたパルス)の時間推移の図である。
図33】トリチェル・パルス・シーケンス(この場合に、測定及びシミュレーションされたパルス)の時間推移の図である。
図34a図27dのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、式12及び13による拡散モデルのインピーダンスの図である。
図34b図27dのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、式12及び13による拡散モデルのインピーダンスの図である。
図34c図27dのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、式12及び13による拡散モデルのインピーダンスの図である。
図34d図27dのTLMの微分方程式の解のグラフ表示、式12及び13による拡散モデルのインピーダンスの図である。
図35】5つの単一の閉鎖した細孔構造に関する、2D(左)及び3D(右)のインピーダンス・スペクトルのシミュレーション(参照文献14)、(参照文献16)の図である。
図36】全てが同一の細孔体積及び屈曲度係数、並びに均一の方向の刺激信号を有する、7つの単一の開放した細孔形状のインピーダンス・スペクトルのシミュレーション(参照文献14)の図である。
図37】2Dフラクタルのインピーダンス・スペクトルのシミュレーションの図である。
図38】2つの2Dフラクタルのインピーダンス・スペクトルのシミュレーションの図である(ここで、ピタゴラスの木が、閉じた構造に関して示されている)。
図39】細孔の異なる構造を有するセットのインピーダンス挙動の図である(lは細孔の長さであり、ラムダは形状因子である(参照文献15))。
図40】de Levieの信号侵入効果による細孔内への正弦波信号の減衰挙動(参照文献15)の図である。
図41】電解質濃度に対する周波数の関数としての複素領域におけるde Levieのブラシ電極の典型的なインピーダンス挙動の図である。
図42】直列抵抗値RS(0→∞の)及び累積分布抵抗値Ωを有する多孔質電極の複素領域におけるインピーダンス挙動の特性の図である。
図43】無限フォークト回路の等価回路の図である。
図44】式(20)によるR/Q回路の理論的DTRの図である。
図45】多孔性の粒子の合成束のインピーダンス・スペクトルのシミュレーションの図である。
図46】3つの単一の微細構造に関する対数周波数の関数としての位相角のシミュレーションの図である。
図47】制御システム(節足動物の異なる参照モデルをトレーニングするためのディープ・ラーニング・プロセスの基本機能)の図である。
図48a】節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ1の図である。
図48b】節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ2の図である。
図48c】節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ3の図である。
図48d】節足動物の参照モデル化のためのプロセス・シーケンス・ステップ4の図である。
図49】本発明による方法の単純化された機能原理の図である。
図50】単純化されたモデル化プロセスの図である。
図51】様々な感覚付属器の等価回路の図である。
図52】様々な感覚付属器の等価回路の図である。
図53】様々な感覚付属器の等価回路の図である。
図54】様々な感覚付属器の等価回路の図である。
図55】変換された等価回路の様々なモデルの図である。
図56】ベクトル及びスカラによるDRTインピーダンス・スペクトルの特徴的な性質の説明の図である。
図57】正のトリチェル・パルスの等価モデルの図である。
図58】一連の針状パルスが、図57によるトリチェル・パルスを生成する図である。
図59】可変時間ウィンドウを有するパルス・パターン信号の図である。
図60】可変サブ時間ウィンドウを有するパルス・パターン信号の図である。
図61】タウ時定数スペクトルの図である。
図62】本発明によるデバイス、測定デバイス、及びMatlabを有するPCの概略図である。
図63】携帯電話における、本発明によるデバイスの統合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0234】
ここで、本発明を、添付の図面を参照して実例としてより詳細に説明する。しかし、例示的な実施例は、実例にすぎず、本発明の概念を特定の構成に限定することを意図するものではない。本発明について詳細に説明する前に、本発明は、デバイスの様々な構成要素又は様々な方法ステップに限定されないことに留意すべきであり、それは、これらの構成要素及び方法が、多様であり得るからである。本明細書で使用される用語は、特定の実施例について説明することを意図しているにすぎず、限定するようには使用されない。さらに、単数形又は不定冠詞が明細書又は特許請求の範囲において使用される場合、より広い文脈がそうでないことを明確に示さない限り、これは、複数のこれらの要素にも関連する。
【0235】
生物学から、例えば、節足動物(例えば、昆虫、クモ、毛虫)のセンサ特性を決定することができることが知られている。対応する感覚付属器の位置特定も可能である。これを以下に説明する。
【0236】
例えば、節足動物の嗅覚応答は、主に、例えば、触角、小顎鬚、口の部分(吻及び唇弁からなる)及びふ節の上で見出される、嗅覚ニューロン(OSN)の活性化によって誘発される。これらの感覚付属器は、揮発性及び不揮発性の匂い又はフェロモン、温度、湿度、無害又は有害な接触、及び重力などの、極めて異なる外部刺激を知覚して、節足動物が刺激を知覚する、複雑な一連の異なる手段を活性化することができる。化学的刺激の知覚、すなわち化学感覚知覚は、香り分子及びフェロモンなどの様々な揮発性化合物によって選択的に活性化される化学感覚ニューロンに基づく。末梢性嗅覚シグナル伝達の基礎となる分子成分は、いくつかの細胞内関係及び細胞外関係を含む。嗅覚因子の複雑さは、様々な効果及び/又は多様性とともに、節足動物の種の特定の行動の刺激に直接寄与する。受容体中心の観点から、節足動物における化学センサ技術は、概して3つの遺伝子ファミリーの異なる代表に基づいており、これらは主にOSNにおいて発現され、これらは、嗅覚付属器、すなわち、例えば、嗅覚受容体(OR)、味覚受容体(GR)、及びイオンチャネル型受容体(IR)上の特定の感覚子内に位置する。匂い物質及び化合物は、感覚刺毛を通って表皮を横断し、したがって、水性の感覚子リンパに到達する。
【0237】
したがって、それらは、認識され、OSN-樹状突起膜上のそれらの対応する特定の受容体に輸送される。これは、補助細胞のネットワークによって分泌され、節足動物の感覚子の基部に位置する、多様な数の細胞外匂い物質結合タンパク質(OBP)及びフェロモン結合タンパク質(PBP)によって行われる。OSN及び他の感覚ニューロン並びに関連する補助細胞の受皿となる異なるタイプの化学感覚受容体が存在し、これらは、節足動物の感覚付属器上に分布する。
【0238】
図4は、節足動物12の感覚付属器16の実例、すなわち、雌の触角、雌の小顎鬚、雌の身体、及び雄の頭部を示す(参照文献1より)。原理的には、節足動物に応じて、他の及び/又はさらなる感覚付属器16も存在する。
【0239】
例えば、ネッタイシマカは、極めてヒト寄生しやすい節足動物であり、世界中でデング熱及び黄熱病の伝染の原因である。この疾患キャリアの刺咬行動及び宿主選択行動は、他の節足動物と同様に、嗅覚によって大きく影響され、これは、Gタンパク質共役受容体シグナル・カスケードによって改善されるはずである。ここで、ネッタイシマカにおける最初の又は最も重要な嗅覚受容体であるAaOr7の同定及び特徴付けについて言及する。この受容体は、ガンビエハマダラカ(アフリカ熱帯におけるマラリア・キャリア)において同定された、さらなる嗅覚受容体であるAgOr7、並びにキイロショウジョウバエ及び他の節足動物において以前に同定されたいくつかの嗅覚受容体による極めて高い主要なアミノ酸保存を示す。これは、成熟した化学感覚組織、並びにネッタイシマカのいくつかの生活及び発育段階に反映される。成熟した嗅覚系内では、AaOr7タンパクは、特にほとんどの触角及び小顎鬚感覚子に含まれており、吻の感覚子のサブセットにも含まれている。これは、嗅覚及び味覚センサとしてのAaOr7の役割と一致し、AaOr7及びそのオーソロジーが、節足動物の全ライフ・サイクルの間の化学感覚プロセスにとって極めて重要であり得るという仮説を支持する。
【0240】
図6A図6Eは、雌のネッタイシマカの触角を示し((参照文献4)参照)、ここで、図6B及び図6Dは、光学顕微鏡画像、AaOr7、神経のマーキング、及び核固有のマーキングの組合せを示し、図6C及び図6Eは、AaOr7固有のマーキングの対応する個々の画像を示す。図6Aでは、雌の触角の第1の鞭毛部分が示され、ここで、AaOr7固有のマーキングは、遠位3分の1(右側、矢印によって示される)に限定され、ここで、マーキングされた神経細胞体及び突出している樹状突起のセットを見ることができる。AaOr7固有のマーキングが、触角全体に沿って観察された(図6B図6C)。図6D及び図6Eには、遠位部分の実例が示されている。AaOr7マーキングは、毛状感覚子(図6D図6Eの中空矢印)を励起する樹状突起内で見ることができるが、溝付きのペグ感覚子(図6D図6Eの実線矢印)は見ることができない。
【0241】
図7A図7Dは、図6A図6Eと同様に、雌のネッタイシマカの雌の小顎鬚を示す((参照文献4)参照)。図7A及び図7Bは、雌の小顎鬚(頭状のペグ感覚子)上のAaOr7固有のマーキングを示し、図7C及び図7Dは、唇弁T2感覚子上のAaOr7固有のマーキングを示す。図7Aは、AaOr7マーキング、神経のマーキング、及び核マーキングを有する合成画像を示す。図7Bは、図7Aの枠の拡大図を示す。図7Cは、マーキングが、これらの感覚子における樹状構造を想起させ、非常に弱いが、再現可能に見ることができる、雌の唇弁の先端の光学部分(2μm)の合成画像を示す。図7Dは、図7Cの枠の拡大図を示す。
【0242】
したがって、嗅覚センサ又は嗅覚受容体の、雌のネッタイシマカの触角又は小顎鬚への明確な位置特定は、図6A図6E及び図7A図7Dから見ることができる。原理的には、そのような試験は、他の節足動物においても実行することができ、その結果、これらの試験に基づいて対応付けを行うことができる。
【0243】
例えば、スコアリング・モデルを用いて、匂い結合タンパク質(OBP)、嗅覚受容体(OR)、及びイオンチャネル型受容体(IR)を分析し、グループ化し、データ・モデルを単純化することができる。高いTPM値を用いて、ケモセンサに関与するタンパク質及び受容体の対応付けを分析することができる。図15は、ヒトスジシマカにおける感覚遺伝子の頻度プロファイルを示し、暗から明への推移は、高いTPM値から低いTPM値までを示す。遺伝子名及びコンティグID(利用可能な場合、VectorBaseコード)も見ることができる。したがって、スコアリング・モデルを用いて、個々の感覚付属器の正確な位置特定、及び対応する物理的特性及び/又は生化学的特性への対応付けを行うことができる。図15からわかるように、雌の触角は、例えば、ここで実際には感度を有さない雄の触角とは対照的に、雑音を検出することに関与する(図15の第4の「ブロック」)。
【0244】
節足動物12の感覚能力は、例えば、分離された別個のセンサを用いて説明することもできる。物理的に言えば、節足動物12の複雑なセンサ構造を再現するために、統合されたセンサ特性を有する複数のセンサが必要である。上述の予備的な生物学的調査は、定義されたセンサ特性及び/又は受容体特性の節足動物12の感覚付属器16への明確な対応付けがあることを示した。同様に、感覚遺伝子の頻度プロファイルによって、雌と雄との間に明確な分布が存在する。物理的センサは、例えば、空気又は環境のイオン化センサ、味覚センサ、ケモセンサ、ガスセンサ/呼吸センサ、空気質センサ、CO2センサ、空気圧センサ、温度センサ、湿度センサ、飛行時間センサ、赤外線センサ、UVセンサ、加速度計、音センサ、位置及び距離測定センサ、並びにさらなるセンサを含む。
【0245】
図49は、電磁放射線10によって節足動物12に影響を与えるための基本的な機能原理を示す。ここで、電磁放射線10は、送信器14によって放射される。節足動物12は、異なる感覚付属器16、例えば、触角、小顎鬚、頭部及び身体、並びに他の感覚付属器16及び/又は感覚特性に合わせた電磁放射線10を受ける。電磁放射線10は、感覚付属器16の感覚機能を混乱させるか、又は影響を与え、したがって、節足動物12の行動も混乱させるか、又は影響を与える。例えば、異なる物理的特性及び/又は生化学的特性を有する、節足動物12の感覚付属器16は、最初に生物学から位置特定される。
【0246】
複数の感覚特性並びにその物理的機能及び/又は生化学的機能により、節足動物12の全ての感覚特性を可能な限り刺激するために、異なる信号及び/又は信号パターン、例えば、周波数パターンが必要である。これらの周波数パターンは、例えば、同時に一斉に送信されるか、又は順次にかわるがわる送信されてもよい。例えば、節足動物12のトポロジ及び物理的構造は、ここでは、感覚付属器16及び/又は感覚特性が刺激される鍵である。異なるタイプの節足動物を刺激するために、電磁放射線10の異なる特性18の形態の異なる周波数パターン、例えば、電磁放射線の異なる時間推移の異なる周波数パターンが必要である。電磁放射線の特性は、ここでは様々な要因に依存する可能性があり、例えば、時間、空間、又は周波数に基づく依存性が考えられる。しかし、原理的には、電磁放射線を記述及び/又は特徴付けることができる、さらなる要因が考えられる。
【0247】
図18には、異なるタイプの節足動物12及び感覚付属器16の異なる刺激に関する単純化された原理が示されている。ここで、例えば、任意の数nの特性18、例えば、任意の数の変調周波数を有する電磁放射線10の時間推移が生成される(図19)。これは、電磁放射線10の特性18に対する、異なる刺激信号を生成するための任意の数の可能性をもたらす。原理的には、電磁放射線10の特性18が変調されないことも考えられる。図18では、電磁放射線10の対応する特性18は、節足動物又は感覚付属器16及び/若しくは感覚特性に応じて受け取られ、節足動物12の行動に影響を与える。
【0248】
生物学から先に得られた物理的結果及び/又は生化学的結果を用いて、感覚付属器16は、例えば、それらの物理的特性、生化学的特性、トポグラフィ特性、及びトモグラフィ特性に分解され、物理的プロセス及び/又は生化学的プロセスの等価回路(ECM)への変換が続く。ここで、各ECMは、例えば、節足動物12内のトポロジ・プロセス、トモグラフィ・プロセス、物理的プロセス、及び/又は生化学的プロセスに対応付けられる(例えば、図27及び図27a~図27d参照)。これらは、例えば、多孔質電極、多孔質材料、多孔質材料の材料パラメータ、電極挙動の記述、ブラシ電極、物質及びプロセスの拡散、物質及びプロセスにおけるイオン化、又はさらなる電気化学的プロセスを含む。図45は、異なるトモグラフィ特性及びトポグラフィ特性、特に開放した構造及び閉鎖した構造のインピーダンス・スペクトルの特徴的性質に関する、インピーダンス・スペクトル、及びDRTスペクトルも示す。したがって、等価回路は、節足動物のモデルとみなすことができる。
【0249】
次に、モデルは、節足動物12の少なくとも1つの感覚付属器16及び/又は少なくとも1つの感覚特性を記述する。次いで、節足動物に影響を与えることができる、電磁放射線10の特性18は、モデル及び/又は等価回路の助けを借りて決定することができる。原理的には、モデルは、節足動物12の全体、又は節足動物12の全ての感覚付属器16及び/若しくは感覚特性も記述することが考えられる。モデルは、2つ以上の、例えば、異なる節足動物12及び/若しくは節足動物のタイプ、又はそれらの感覚付属器及び/若しくは感覚特性を記述することも考えられる。単純化のために、好ましい例示的な実施例では、モデルは、節足動物の少なくとも1つの感覚付属器及び/又は少なくとも1つの感覚特性を記述する少なくとも1つのサブモデルに分割される。例えば、節足動物12の触角は、1つのサブモデルによって記述することができるが、節足動物12の感覚子毛は、別のサブモデルによって記述することができる。原理的には、任意の数のサブモデルを使用することができる。
【0250】
特に好ましい例示的な実施例では、少なくとも1つのモデル又はサブモデルは、節足動物12の感覚付属器及び/又は感覚特性の以下の物理的効果及び/又は生化学的効果の少なくとも1つに対応付けられる。
・節足動物の触角のモデルである、ブラシ電極のモデル、
・節足動物の多孔質の感覚子毛のモデルである、多孔質電極のモデル、
・イオン拡散を記述する、一般的な拡散のモデル、
・非透過性壁(NPW)の拡散のモデル、
・理想的なリザーバの拡散のモデル、
・節足動物の表面及び/又は内部構造のトモグラフィ・データから屈曲度係数を計算するためのモデル、
・節足動物の表面及び/又は内部構造のトポグラフィ・データから屈曲度係数を計算するためのモデル。
しかし、原理的には、節足動物12の感覚付属器の物理的効果及び/又は生化学的効果のモデル又はサブモデルへのさらなる対応付けが考えられる。
【0251】
さらなる特に好ましい例示的な実施例では、等価回路を生成するために、少なくとも1つの伝送線モデル(TLM)20が使用される。図27は、一般的なTLM20を示す。TLM20を使用することにより、任意の等価回路を生成することができるが、それは、例えば、個々の複素数要素Zxに関して、境界条件を仮定することもできるからである(例えば、Zx=0又はZx=∞)。
【0252】
複雑なシステムをモデル化するために、さらなる例示的な実施例では、少なくとも2つ以上の等価回路を直列に接続することができる。直列接続により、さらに、モデルの結果は、より正確になる。原理的には、任意の数の等価回路を直列に接続することができる。凝縮されたECMの実例は、定位相要素(CPE)及び無限フォークト回路である。
【0253】
好ましい例示的な実施例では、節足動物12のモデルを記述するために、少なくとも1つの境界条件が、TLM20とともに使用される。記述された表4では、図27のTLMの境界条件の実例が示される。
【表5】

例えば、多孔質の感覚子毛のモデルである多孔質電極の境界条件は、x=0の場合、I=I、I=0であり、x=IeIの場合、I=0、I=Iである。原理的には、モデルに応じて、さらなる境界条件も可能である。さらに、TLM20の境界条件を用いて、節足動物12のモデルによって記述される感覚付属器16及び/又は感覚特性をモデル化することも可能である。
【0254】
さらに、境界条件は、例えば、ゼロ及び/又は無限に向かう、少なくとも1つのインピーダンスの少なくとも1つの境界を考慮することができ、それによって、TLM20は、単純化された等価回路に変換される。したがって、例えば、その他の(複雑な)等価回路を単純化することができ、それによって、解をより迅速且つより容易に見出すことができる。
【0255】
さらなる例示的な実施例では、単純化された等価回路の助けを借りて、少なくとも1つのインピーダンス・スペクトルを決定することが考えられる。その際、無限フォークト・モデルなどの単純化された等価回路は、例えば、経験的に決定されたデータからインピーダンス・スペクトルを決定するために使用することができる。例えば、図45は、異なるトモグラフィ特性及びトポグラフィ特性に関するインピーダンス・スペクトル及びDRTスペクトルを示し、特に、開放した構造及び閉鎖した構造に関するインピーダンス・スペクトルの特徴的な性質が示されている。ECMからインピーダンス・スペクトルを決定するために、例えば、緩和時間分布(DRT)法が存在する。DRT法は、いかなるモデルの仮定も前提としないが、全ての時定数をマッピングするための無限に長いフォークト・ネットワーク(Cと並列のR)(図43)のみを前提とする。このアプローチにより、全ての線形時不変(LTI:linear time-invariant)対応スペクトルをマッピングすることが可能である。DRT法は、試料のスペクトルにおける、時定数τ=RCを有するRC並列回路の緩和挙動との相関の探索である。そのような挙動が存在する場合、DRT法は、したがって、関連する限界周波数におけるディラック・パルスを示す。しかし、信号は、逆変換の前に、例えば、高速フーリエ変換(FFT)によって、画像領域からフィルタリングされなければならないので、DRT法における完全な相関の場合にも、緩和プロセスの時定数の分布が存在する。対数適用におけるこの分布が、非対称に周波数f=(2πτ)-1を超えて最大になる場合、fの近傍におけるさらなるプロセスが仮定され得る。
【0256】
さらなる好ましい例示的な実施例では、インピーダンス・スペクトルは、より正確な結果のためにトモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データの助けを借りて決定される。例えば、トモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データは、対応する文献から得ることができる。図35図39は、例えば、特定のトモグラフィ細孔構造及びトポグラフィ細孔構造のインピーダンスを示す。例えば、インピーダンス・スペクトルは、経験的なECM並びにトモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データから作ることができる。
【0257】
特に好ましい例示的な実施例では、有利にも節足動物をターゲットとした影響に関して、インピーダンス・スペクトル及び少なくとも1つの分析、例えばDRT分析(緩和時定数分布)を用いて、電磁放射線10の特性18の少なくとも1つのパラメータ、例えば少なくとも1つの特性周波数及び/又は時定数を決定することが可能である。図29には、複数の時定数タウ及び関連する周波数が示されている。しかし、原理的には、電圧、電流、又は時間推移などの他のパラメータも考えられる。したがって、例えば、節足動物の行動に影響を与えるための特性周波数が、無限フォークト・モデルなどの経験的なECMから、DRT分析などの分析の助けを借りて決定されることが考えられる。
【0258】
有利にも改善された影響を与えるのに、少なくとも1つの新しいインピーダンス・スペクトルを生成し、そこから少なくとも1つの新しいTLMを導出するために、少なくとも1つの新しいパラメータ(例えば、励起周波数)が、例えばDRT分析(図50)を用いて、特性(例えば、特性周波数及び/又は時定数)の少なくとも1つのパラメータの助けを借りて、例えば、このパラメータから導出される。例えば、DRTスペクトル及び特徴的な整定時間を有する緩和挙動から、節足動物の感覚付属器のECMを作り、DRT分析の助けを借りてさらなる特性周波数及び/又は時定数を決定し、そこから新しい励起周波数を導出し、次いでここから新しいインピーダンス・スペクトルを生成し、そこから構造化された新しいTLMを導出することが可能である。
【0259】
さらなる好ましい例示的な実施例では、TLM20は、以下の分割されたTLM20の少なくとも1つを含む。
・多孔質電極のTLM、
・多孔質材料のTLM、
・一般的な拡散のTLM、
・非透過性壁及び理想的なリザーバにおける拡散のTLM。
【0260】
図27a~図27dは、実例として、異なる物理的効果及び/又は生化学的効果の様々なTLMを示す。図27aは、多孔質電極のTLMを示す。図27bは、多孔質材料のTLMを示す。図27cは、一般的な拡散のTLMを示す。図27dは、非透過性壁及び理想的なリザーバの拡散のTLMを示す。例えば、TLMにおいて複数の物理的効果及び/又は生化学的効果を組み合わせることも可能である(例えば、図27d参照)。図27dでは、非透過性壁の拡散及び理想的なリザーバの拡散が、1つのTLM内に組み合わされている。
【0261】
TLM20は、一般に例えば微分方程式によって記述される。さらなる好ましい例示的な実施例では、電磁放射線10の特性18のパラメータを決定するために、TLM20の少なくとも1つの微分方程式が解かれる。式23は、図27の一般的なTLMの解を示す。
(χ)=I(χ+Δχ)+U(χ)Δχ
(χ+Δχ)=I(χ)+U(χ)Δχ
0=U(χ)+I(χ)Δχ-U(χ+Δχ)-I(χ)Δχ
式23
【0262】
式23を用いて、例えば、式24で表されるシステムの値が決定される。
【数15】

ここで、複素遅延定数は、式25で定義される。
【数16】

使用される記号及びそれらの単位は、以下の意味を有する。
【表6】

したがって、例えば、表4の境界条件を用いて未定積分定数C、C、及びCを決定することが可能である。
【0263】
さらなる好ましい例示的な実施例では、微分方程式は、少なくとも1つの境界条件を使用して解かれる。例えば、図27のTLM又は式23の微分方程式を解くために、表4の多孔質電極の境界条件が使用されるので、式26の多孔質電極のTLMを解くことができる。
【数17】
【0264】
インピーダンスに関して、次いで、図30a~図30dに示される図式解が、異なる積分定数に関して得られ、この実例では、C=1である。したがって、式27のインピーダンスの解が、多孔質材料に関して得られる。
【数18】
【0265】
一般的な拡散に関して、式28に示されるインピーダンスが得られる。
【数19】

この場合、Z=0を用いて、式29に示されるインピーダンスの解が得られる。
【数20】
【0266】
非透過性壁及び理想的なリザーバの拡散に関して、式30及び式31に示されるインピーダンスの解が得られる。
【数21】

ここで、式30は、開放時出力(open output)に対するインピーダンスの推移を示し、式31は、閉鎖時出力(closed output)に対するインピーダンスの推移を示し、さらに、その関係が式32に示される。
N,diff=R’el
式32
【0267】
図34a~図34dは、式30及び31によるインピーダンスの図式解を示す。
【0268】
例えば、図30a~図30d及び図34a~図34dにおける推移は、適切な変換によって、例えば、フーリエ変換、ラプラス変換、及び/又はそれらの逆変換によって得ることができ、それにより、例えば、画像領域、時間領域、及び/又は周波数領域における分析が可能になる。したがって、好ましい例示的な実施例では、微分方程式、例えば、式26、30、及び/又は31の解は、インピーダンス・スペクトルにおいて表され、且つ/又は分析される。例えば、異なる細孔形状及び細孔構造(開放及び/又は閉鎖した細孔形状)のインピーダンス挙動は、インピーダンス・スペクトル、例えばナイキスト線図において明確に表され、したがって、インピーダンス・スペクトルにおける微分方程式の解と比較することができる。これらの知見は、節足動物12及びその励起信号のTLMモデル化に直接適用可能である。励起周波数に関する結論は、DRTスペクトルにおける結果を用いて直接出すことができる。さらに、図38及び図45に示される特性曲線プロファイルが、直接適用可能である。DRT法は、いかなるモデルの仮定も前提としないが、全ての時定数をマッピングするための無限の長さのフォークト・ネットワーク(Cと並列のR)(図43)のみを前提とする。このアプローチにより、全ての線形時不変(LTI)対応スペクトルをマッピングすることが可能である。DRT法は、試料のスペクトルにおける、時定数τ=RCを有するRC並列回路の緩和挙動との相関の探索である。そのような挙動が存在する場合、DRT法は、したがって、関連する限界周波数におけるディラック・パルスを示す。しかし、信号は、逆変換の前に、高速フーリエ変換(FFT)によって、画像領域からフィルタリングされなければならないので、DRT法における完全な相関の場合にも、緩和プロセスの時定数の分布が存在する。対数適用におけるこの分布が、非対称に周波数f=(2πτ)-1を超えて最大になる場合、fの近傍におけるさらなるプロセスが仮定され得る。
【0269】
DRTスペクトルでは、無限フォークト・ネットワークに関する整定時間(緩和時間)が見える。相関公式f=(2πτ)-1に基づいて、励起周波数に関する結論を引き出すことができる。例えば、図38は、異なる多孔質構造を有するナイキスト・スペクトルを示す。同様に、図45は、ナイキスト・スペクトルを示し、小さい方形画像内に、それに相関するDRTスペクトルを示す。
【0270】
特定のトモグラフィ細孔構造及びトポグラフィ細孔構造を有する図35図39のシミュレーションにおけるインピーダンス挙動は、異なる特性を示し、図35は、単一の閉鎖した細孔形状を示し、図36は、単一の開放した細孔形状のシミュレーションを示す。図37及び図38は各々、2Dフラクタルのインピーダンス・スペクトルのシミュレーションを示す。図39では、細孔の異なる構造を有するセットのインピーダンス挙動が示され、ここで、lは細孔の長さであり、ラムダは形状因子である。インピーダンス・スペクトル、特に正規化されたインピーダンス・スペクトルの分析及びシミュレーションから、グラフ分析及び数学的分析における異なる細孔形状及び細孔構造が、典型的な挙動パターンを表すことがわかる。したがって、様々な細孔構造に対する評価及び周波数適応を容易に行うことができる。原理的には、例えば、異なる連続関数を記述するパラメータ依存の位置ベクトルも、例えば、ベクトル分析の助けを借りて決定することができる。したがって、電磁放射線10の特性18は、節足動物の細孔形状に応じて適応させることができる。
【0271】
さらなる好ましい例示的な実施例では、使用されるTLM20は、少なくとも1つの他のTLMの助けを借りて検証及び/又は適応される。例えば、周波数パターンなどの形態の経験的に決定されたモデルを、検証に使用することができる。図50に示されるように、新しいTLMモデルは、例えば、経験的に決定された周波数パターン及び無限フォークト・モデルの使用から生成することができる。例えば、図27a~図27dの4つのモデルとは異なるTLMベース・モデルが、モデル化に使用されることも考えられる。特に物理的システム及び/又は生化学的システムにおいて、例えば、開放又は閉鎖した構造(例えば開放した細孔又は閉鎖した細孔)に関する考慮は、トモグラフィ・データ及び/又はトポグラフィ・データに基づいてインピーダンス・モデルを再現するために重要であり、例えば、図37を参照されたい。
【0272】
節足動物12の感覚付属器16及び/又は感覚特性を励起するための周波数スペクトルは、極めて大きい。したがって、多周波数励起は、結果の曖昧さにつながり得る。異なる物理的プロセス及び/又は生化学的プロセスは、異なる周波数範囲で監視及び分析することができる。したがって、さらなる好ましい例示的な実施例では、節足動物の対応する感覚付属器へのTLMの一意の対応付けのためのTLMのパラメータが決定される。例えば、図29は、節足動物の構造の再現としての特徴的な整定時間を有する緩和挙動のスペクトル分布(整定時間の分布、DRT)を有するDRTスペクトルを示す。このスペクトルは、図50の第1のステップにおいて経験的に決定され、その結果、節足動物は、周波数パターンを用いて励起されたとき、受動的挙動(刺咬なし、休眠状態)を示した。節足動物のトポグラフィ及び/又はトモグラフィの解剖図及び構造により、特定の周波数を対応付けることができる。図50は、単純化されたモデル化プロセスを示す。単純化された等価回路及び周波数パターンは、経験的調査から決定される。これらの周波数パターンは、広帯域スペクトルを有し得る。ここから、インピーダンス・スペクトルが導出される。特性周波数及び時定数は、DRT分析の助けを借りて決定される。このDRTスペクトルから、新しい励起周波数が導出される。次に、これらは、新しいインピーダンス・スペクトルを決定するために使用され、そこから新しい構造化された伝送線モデルが導出される。
【0273】
一意の対応付けが可能でない場合、特に好ましい例示的な実施例では、例えば、TLMのいくつかのパラメータは、例えば、節足動物のトポグラフィ・データ及び/又はトモグラフィ・データを使用することによって、単純化された方法及び/又は直接的な方法で決定することができる。例えば、節足動物のトポグラフィ・データ及び様々な細孔形状のインピーダンス・シミュレーションによって、対応するパラメータを決定することができる。例えば、異なる細孔特性(例えば、図38参照)は、曲線の説明及び/又は微分方程式の助けを借りて対応付けることができる。
【0274】
好ましい例示的な実施例では、パラメータは正規化される。一般に、各タイプの節足動物に関する有効なモデルは、正規化されたパラメータ、例えばインピーダンス・パラメータの助けを借りて定義することができる。相対的な偏差又は変化は、例えば、参照因子1に対するインピーダンス・スペクトルの正規化によって十分に決定することができ、したがって、分析中に明確に識別可能である。
【0275】
例えば、ゼロ及び/又は無限大に向かう極限値の考慮とともに、例えば、使用されるソフトウェアにおけるパラメータ適応は単純化されるが、それは、適応が以前に決定された値に対してのみであるからである。したがって、さらなる例示的な実施例では、パラメータは、極限値を考慮して適応される。例えば、微分方程式内の項は、極限値を考慮して単純化される。これは、マイクロコントローラにおけるアルゴリズムの実装において重要である。
【0276】
特に好ましい例示的な実施例では、任意の非線形関数は、少なくとも1つのデータベース、例えば関数ライブラリーと組み合わせた代替方法によってモデル化される。代替方法では、関数グラフは、例えば、指数関数、ガウス関数、及び/又は線形関数によって部分的に置き換えられる。関数の一部としてのこの部分関数は、次に、ECMとして、例えば、抵抗体とキャパシタとの組合せとして表すことができる。したがって、例えば、マイクロコントローラ・ベースのシステムにおいて本方法を実施するとき、非線形関数の推移が、例えばマイクロコントローラ内のルックアップ・テーブルに記憶されるので、微分方程式が回避され、したがって、記憶空間を低減することができる。例えば、特に2つ以上の励起周波数を使用する、信号評価のためのGoertzelアルゴリズムを組み込んだマイクロコントローラに基づくアルゴリズムのメモリ効率の良い使用のために、離散フーリエ変換(DFT)が使用されることも考えられる。
【0277】
さらなる例示的な実施例では、少なくとも1つの離散フーリエ変換(DFT)が、マイクロコントローラに基づいて、有利にも本方法のメモリ効率の良い使用のためにGoertzelアルゴリズムを組み込んで使用される。したがって、大型で強力な計算ユニットを使用する必要がなくなるように、本方法及び/又は得られたアルゴリズムをマイクロコントローラ上のメモリ空間を節約するように実装することが可能である。
【0278】
好ましい例示的な実施例では、微分方程式の解は、少なくとも1つの参照モデルに基づいて、適応制御システム50、例えば自己適応制御システム50によってチェック及び/又は適応される。図47は、異なる参照モデルをトレーニングするための制御システム50の一般的なブロック図を示す。この適応は、例えば、以前の結果、並びに/又は節足動物及びそれらの行動パターンの監視に基づいて行うことができる。節足動物は、例えば、微分方程式を解くことによって得られる電磁放射線の特性によって励起される。この解は、参照モデルとして機能する。この励起は、節足動物の活動的行動に影響を与え、これは、最後に、例えば、ヒトによる監視又はカメラ若しくは他の適切な光学センサ、例えば、赤外線、又はFIR飛行時間センサによって検出される。本システムは、内部の閉じたフィードバック制御回路、及び適応に関与する外部回路を含む。制御パラメータは、例えば、勾配法を用いた品質基準、又は他の既知の数学的方法に基づいて適応される。節足動物の参照モデル化の間、閉じた制御回路の所望の伝達挙動が、参照モデルの助けを借りて特定される。第1の参照モデルは、例えば、経験的調査にも基づくことができる。図47は、可変制御パラメータΘのセットに基づいている適応制御のモデルを示す。被制御システムの入出力挙動が、節足動物の参照モデルに対応するように、適応則(制御パラメータ適応)によって、適応が行われる。操作される変数は、例えば、周波数パターンωである。この場合、コントローラは、例えば、励起信号の時間推移を適応させる。
【0279】
参照モデル、例えば第1の参照モデルは、例えば、経験的データ及び/又は先に既に決定された節足動物のモデルのデータに基づくことができる。したがって、参照モデルは、先に決定された節足動物のモデル及び/又は経験的データからのモデルであってもよく、これらは、ここで適応される。
【0280】
好ましい例示的な実施例では、電磁放射線の特性は、メモリ、例えばデータベース又は関数ライブラリーに記憶される。例えば、特性をワイヤレスでメモリに送信し、そこに記憶することができる。特性は、後にメモリから、例えばワイヤレスで送信することができる。
【0281】
図18の例示的な実施例では、電磁放射線10の特性18は、少なくとも1つのキャリア信号22を用いて変調される。原理的には、極めて広範囲の変調タイプ、例えば、PWM、FM、AM、PFM、TDM、FDMが可能である。図25(左及び右)は、各場合におけるPWM信号を示す。複数の変調方式を組み合わせることもできる。例えば、全ての変調周波数は、素数ベースである可能性があり、並びに/又は、高調波及び低調波の整数の係数及び/若しくは倍数を有さない可能性がある。周波数は、例えば、サブGHz、MHz、又はGHzの範囲にあり得る。
【0282】
さらなる例示的な実施例では、電磁放射線10の特性18は、特に、少なくとも1つのディザ信号を用いて変調されることが好ましい。したがって、有利にも、電磁放射線の特性の増大した範囲及び/又は送信電力を取得し、したがって、電力を節約することが可能である。より好ましくは、キャリア信号22は、少なくとも1つのディザ信号を用いてさらに変調される。図25(左)では、実例として、変調されたディザ信号を有するPWM信号を見ることができる。
【0283】
図23のさらなる例示的な実施例では、電磁放射線の特性は、周波数分割多重化信号(FDM)(図20)及び時分割多重化信号(TDM)(図21)に基づく、組み合わされた多周波数パターン生成器24を用いて生成される。したがって、周波数領域と時間領域の両方において、電磁放射線の任意の特性を生成することが可能である。対照的に、図20の周波数分割多重化信号(FDM)又は図21の時分割多重化信号(TDM)は、全時間にわたって特定の周波数範囲を生成すること、又は、それぞれ、一定の時間範囲のみにわたって複数の周波数を生成することを可能にするにすぎない。
【0284】
節足動物12へのより正確且つより効果的な影響のために、さらなる例示的な実施例において、電磁放射線10の特性18は、少なくとも1つのバースト・パルスを含み、このバースト・パルスは、空気中での少なくとも1つのコロナ放電をシミュレーションし、その時間推移は、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを含む。図31及び図32には、正及び負のトリチェル・パルスがそれぞれ示されている。コロナ放電は、大気圧での低電流ガス放電であり、例えば、電極又はワイヤにおいて局所的に高い電界強度を有する。図31は、正のトリチェル・パルス(測定及びシミュレーションされたパルス)の時間推移の実例を示し、図32は、負のトリチェル・パルス(測定及びシミュレーションされたパルス)の時間推移を示す。節足動物に関する経験的調査は、空気中でのコロナ放電をシミュレーションするそのようなパターンが、節足動物の行動に著しく影響を与えることを示した。図33は、測定及びシミュレーションされたパルスとしてのトリチェル・パルス・シーケンスの時間推移を示す。
【0285】
有利にも影響の効果の増大のために、特性18は、いかなる高調波及び/又は低調波の相関も有さない。したがって、例えば、一斉に同時に送信される全てのシーケンスに関して、例えば周波数スペクトルにおける高調波成分と低調波成分との間で区別が行われる。例えば、時間領域及び/又は周波数領域において同時に送信される周波数の特性は、いかなる高調波及び/又は低調波の相関も有さない。
【0286】
影響の効果をさらに増大させるために、特性18は、素数ベースである。したがって、特性18は、高調波及び/又は低調波のいかなる整数の倍数及び/又は係数も有さない。
【0287】
特に効果を増大させるために、特性18は、等差数列におけるディリクレの定理に基づいている。ディリクレの定理は、整数論の数学的サブフィールドからの記述であり、些細な理由のために不可能ではない場合、数列が無限に多くの素数を含むことを述べている。
【0288】
図49のさらなる例示的な実施例では、電磁放射線10によって節足動物12に影響を与えるためのデバイス100が示されており、デバイス100は、電磁放射線10の特性18を送信する少なくとも1つの送信器14を備え、電磁放射線10の特性18は、少なくとも1つの等価電子回路の助けを借りて生成され、等価回路は節足動物12のモデルである。
【0289】
さらなる例示的な実施例では、モデルは、節足動物12の少なくとも1つの感覚付属器16及び/又は少なくとも1つの感覚特性を記述する。
【0290】
好ましい例示的な実施例では、等価回路は、少なくとも1つのTLM20の助けを借りて生成される。一般に、TLMに対する有効な解が存在し、例えば、任意の所望の物理的効果及び/又は生化学的効果を同様にTLMを用いて記述することができる。
【0291】
例えば、図49の例示的な実施例のように、デバイス100は、電磁放射線10の特性を生成する多周波数パターン生成器24を備えることもできる。このデバイスは、変調器26、増幅器28、発振器30、及びアンテナ32をさらに任意で備えることができる。多周波数パターン生成器24は、電磁放射線10を生成し、次いで、信号は、変調器26及び/又は発振器30を用いて、例えば、PWM、FM、AM、PFM、TDM、FDM、又は他の変調タイプによって変調される。次に、信号は、増幅器28において増幅され、次いで、アンテナ32によって放射される。
【0292】
さらに、図49の好ましい例示的な実施例では、電磁放射線の特性を、メモリから、例えば、データベース又はクラウドから、デバイスに転送することができる手段34が提供される。原理的には、任意の所望の送信手段及び/又はタイプ、例えば、Wi-Fi、Bluetooth、赤外線、又は他のデータ・ネットワークなどのワイヤレス送信タイプを考慮することができる。
【0293】
図49のさらなる例示的な実施例では、電磁放射線10の特性を、例えばマイクロコントローラ又は計算ユニットを用いてデバイス100内で生成、例えば計算することができる手段36が提供される。
【0294】
さらに、特性18は、節足動物12へのより強力且つより効率的な影響のための、大気中でのコロナ放電のシミュレーションにおける少なくとも1つのトリチェル・パルス・シーケンス(図33)、(図31)、(図32)も含むことができる。
【0295】
要約すると、生物学者は、最初に、昆虫をその感覚器官に関して検査し、これらを分類する。これらの感覚器官又は感覚付属器は、極めて異なる刺激、例えば、揮発性及び不揮発性の匂い、香り分子、温度、湿度、又は味を知覚することができる。生物学者は、受容体を有する様々な感覚器官が、節足動物中のどこに位置するかを正確に知っている。
【0296】
さらに、調査の結果として、細胞構造がどのように見えるか、及びシグナル伝達に関する正確な相関が節足動物内でどのように生じるかは、生物学者に広く知られている。顕微鏡検査及び他の画像分析方法は、節足動物の構造形成に関する広く明白な情報を生物学者に提供してきた。さらに、生物学者は、どの遺伝子、遺伝子ファミリー、及び化学感覚ニューロンが、特定の感覚認知に関与しているかを知っている。
【0297】
したがって、生物学者は、節足動物の包括的なイメージの概略を示し、全ての感覚構造を決定する。生物学者は、細胞分岐、多孔質構造体、透過性及び半透過性の層及び膜、厚い領域、並びにシグナル伝達経路の収縮が正確に位置する場所、並びに拡散が起こり得る場所も知っている。これに基づいて、生物学者は、刺激のシグナル伝達経路及びシグナル伝達に関与するトポロジ特性を知っている。
【0298】
生物学者は、電磁放射線が、哺乳動物の治療に使用され、電磁放射線及びナノメートル範囲の光信号が、節足動物の行動に影響を与えることも知っている。
【0299】
電磁放射線が節足動物の行動に直接的及び間接的に影響を与えるという生物学者の知識に基づいて、本発明による結論、すなわち、電気等価回路の助けを借りて節足動物の複雑なトポロジを抽象化するために、電気等価回路を用いて感覚特性をモデル化することができるという結論が得られる。
【0300】
このことから、等価回路の使用が、節足動物に影響を与えるのに役立つことが得られる。
【0301】
触角及び触角器などの、いくつかの感覚器官は、電気工学の分野における構成要素に類似しているため、電気工学における解に近いことがわかってきた。これは、感覚器官を特に電気工学の要素に直接置き換えることが役立つという仮定をもたらす。例えば、触角器は、電気工学におけるブラシ電極と同じ生体力学的且つ光学的な構造を有する。このアプローチに基づいて、等価回路の選択が提供され、感覚器官に最も近いものに対応する等価回路が選択される。
【0302】
このように、等価回路への節足動物のトポロジの対応付けが行われる。
【0303】
図51図54は、適宜対応付けられた等価回路を有する節足動物の様々な感覚付属器の等価回路を列挙する。等価回路に関する生物学的知識の対応付けは、医療技術の現状に基づいて実現されてきた。導電率の表示、したがって電気抵抗率の表示、及び得られるインピーダンスの推移は、さらなる有用な仮定を形成する。
【0304】
しかし、この時点では、等価回路(図51図54)における抵抗及びキャパシタンスの値は未知である。
【0305】
例えば、フォークト・モデル、マックスウェル・モデル、ラダー・モデル、拡張ラダー・モデル、又はTLMモデル(図55)への等価回路(場合によっては直列に接続される)の変換が行われる。図55の全てのモデルは、等価に使用することができる。しかし、TLMモデルは、汎用的に適用可能である。「汎用的に適用可能」という用語は、等価回路は全て、又は、互いにどんな接続のしかたの等価回路であっても全て、TLMを用いて記述することができることを意味する。
【0306】
例えば、フォークト・モデル及びTLMモデルは、未知のシステムの導電率、インピーダンス、及び抵抗率の分析及び決定に適している。
この時点では、抵抗及びキャパシタンスの値も未知である。
【0307】
ここまでに決定された等価回路及び仮定にかかわらず、既知のトリチェル・パルス(又は任意の他のパルス)が、ここで、節足動物を照射するために送信されるか、又は最初に使用される。
【0308】
トリチェル・パルスは、自然界に広く生じる時間領域の信号である。特に、太陽は、電磁放射線を生成し、この電磁放射線は、空気中でのパルス放電につながる可能性があり、節足動物によって特にその大気環境の変化として知覚され得る。したがって、トリチェル・パルスは、原理的には節足動物によって知覚される自然のパルスであり、自然の変化をシミュレーションする。要するに、トリチェル・パルスは、本発明の範囲内にもある、節足動物が通信する言語又は信号である。したがって、パルス、特にトリチェル・パルスの使用は、節足動物に影響を与えるためのさらなる有用な仮定である。
【0309】
送信されるトリチェル・パルスは、周波数スペクトルを提供する。時間領域における信号の周波数スペクトルの分析に、例えば、フーリエ変換が使用される。ここで、フーリエ変換の助けを借りて、トリチェル・パルスの周波数成分も決定される。トリチェル・パルスなどのパルス放電の周波数成分は、周波数スペクトルにおいて特徴的に決定されなければならない。
【0310】
次いで、トリチェル・パルス内の決定された各特性周波数成分は、整定時間T(タウ)に変換される。この整定時間は、例えばフォークト・モデル(図29)の等価回路におけるRC回路の時定数に対応する。これは、この時点で、節足動物への関わりが、少なくとも1つの等価回路によって確立されることを意味する。したがって、決定された整定時間タウを使用して、好ましくは、等価回路における全てのRC回路の全ての時定数を決定することができる。ここで、周波数スペクトルにおける重要な各周波数は、RC回路の整定時間を表す。したがって、これは、さらに有用な仮定である。
【0311】
既に上述したように、生物学的構造体の導電率、したがって電気抵抗率、及びインピーダンスを表すために、抵抗体及びキャパシタから形成される等価回路が使用される。オームの法則及びキルヒホッフの法則に基づいて、電流、電圧、導電率、及び抵抗率の間には直接的な相関がある。この表現は、重要な影響変数を決定することになるとき、具体的には、RC回路の整定時間(x軸)に依存する周波数スペクトル(y軸)における正規化された振幅(電圧)の表現を決定することになるとき、極めて役立つ。
【0312】
ここで、電流、電圧、及び抵抗率の直接的な相関により、抵抗率の正規化された表現(y軸)が、RC回路の整定時間に依存して使用される。この表現は、DRT分析又はDRTインピーダンス・スペクトルと呼ばれる。DRT分析では、RC回路の抵抗率(複素インピーダンスの逆数)は、個々のRC回路の整定時間に関連して設定される。このため、DRT分析は、グラフ表示及び任意選択的に分析に使用される。DRTインピーダンス・スペクトルにおける異なる複素抵抗率により、重要なRC回路及び重要でないRC回路、したがって、節足動物に影響を与えるための影響変数が直接特定される。
【0313】
したがって、DRTインピーダンス・スペクトルは、節足動物との通信、又は節足動物の行動への影響、及び節足動物のインピーダンスのグラフ表示における最初の信号である。
【0314】
周波数/パルス・パターンの時定数の目標とする変化によって、節足動物をトレーニングすることが可能である。
【0315】
人工知能のアルゴリズムに基づくDRTインピーダンス・スペクトルのグラフ分析の助けを借りて、周波数/パルス・パターンは、決定された重要な時定数の選択的変化によって適応され得る。これは、実際には、節足動物が反応する正確な周波数が見出されるまでのトリチェル・パルスの変化に対応する。
【0316】
したがって、節足動物の特徴的な性質は、追加的又は代替的に、図式解によって表すこともできる。DRTスペクトルにおける抵抗率GR/Qのピーク値の大きさのみを監視することによって、重要な周波数を直接導出することができる。さらなる数学的可能性は、グラフ上のDRTインピーダンス・スペクトルにおけるスカラ場及びベクトル場又は直線探索法の使用である。したがって、分析のために、市販の従来のマイクロコントローラ及びルックアップ・テーブルを使用することが可能である。このように単純化された分析は、携帯電話などのモバイル通信デバイス上でも、数秒以内に実行することができ、モバイル通信デバイスは、次いで、決定された周波数成分を送信することもできる。
【0317】
このDRTインピーダンス・スペクトルから進んで、ここで、RC時定数が適応され、したがって周波数が適応される。
【0318】
妥当性をチェックし、上記を検証するための任意選択のステップとして、ナイキスト・インピーダンス・スペクトル(軌跡曲線表現)及び等価回路を用いた軌跡曲線の検証によって、グラフ分析をさらに実行することができる。
【0319】
いわゆるナイキスト・インピーダンス・スペクトルの画像領域における電気的複素ネットワーク(軌跡曲線)の分析は、節足動物などのシステムのトポロジ構造を有する等価回路の検証又は妥当性確認における多くの利点を提供し、しかしそれだけではなく、特に、妥当性をチェックするために使用される。上記で説明したステップが具体的に知られている場合、反対に、節足動物のトポロジは、周波数パターンのグラフ表示から結論付けることもでき、その逆もまた同様である。これは、任意選択で人工知能を使用した、パターン認識方法によって実行することができる。
【0320】
細胞構造の異なる幾何学的形状又は節足動物のトポロジ特性を、ナイキスト・インピーダンス・スペクトルにおける異なる曲線に直接対応付けることができる。図36図39は、曲線群、半円、直線、及び転換点を示し、これらは、幾何学的構造又は多孔質特性に応じて、グラフ分析において一意に対応付けられ得る。「正確な」特性又は「正確な」周波数は、むしろ、図29におけるDRTスペクトルにおいて、またナイキスト線図(図36 ff)として表すことができる。
【0321】
ナイキスト線図は、ナイキスト・インピーダンス・スペクトルの対応付けに基づいて、昆虫のトポロジの特定を可能にする。それはまた、電気技術者の知識を用いて生物学者の知識及び理解を検証するために使用される。したがって、時定数を拡大又は縮小することによって周波数/パルス・パターンを適応させる傾向分析を、結果として任意選択的に決定することができる。
【0322】
生物学的分析及び生化学的分析の基礎は、等価回路の理解のための前提条件である。様々な属性又はトポロジ特性が、個々の等価回路に分解され、分析される。例えば、多孔質の感覚子毛は、分岐した軸索と比較して、ここでは異なる電気的特性を有する。多孔性、透過性膜若しくは半透過性膜、拡散、ブラシ電極、又はイオン輸送などの特性は、固有の特性、及びナイキスト・インピーダンス・スペクトルにおける重要な特徴を有する。
【0323】
ブラシ電極(de Levie挙動)又は多数の感覚子毛は、二重層キャパシタに設けられる定位相要素CPEの特性を有する。これらの既知の特性(図41)に基づいて、等価回路の対応付けを単純化することができる。
【0324】
節足動物の体細胞及び軸索の構造にも同じことが当てはまる。ナイキスト・インピーダンス・スペクトルでは、定位相要素の特性を直接対応付けることができる(図38及び図39)。
【0325】
図62は、研究室において使用されるが、基本的に実際にも使用される、MatLabを含む測定デバイス及びPCを有するデバイスによる構造を示す。
【0326】
このデバイスは、少なくとも1つのパルス、好ましくはトリチェル・パルスを送信するための手段40を備える。これは、任意の種類の信号発生器であってもよい。次いで、パルスは、送信されたパルスの周波数スペクトルを検出するための手段42によって、例示的な実施例ではオシロスコープによって検出される。このように時間領域において決定された分析は、次に、送信パルスの周波数スペクトルの少なくとも1つの周波数成分を決定するための手段44としての周波数スペクトル分析器に転送される。周波数成分が決定される場合、少なくとも1つの周波数成分は、RC回路の時定数に対応する整定時間に基づいて、少なくとも1つの未知のRC回路を、任意選択的に同じ計算手段46によって、このように決定するために、計算手段46によって整定時間に変換することができる。これは、生物学からの知識、すなわち、感覚付属器16の構造と、電子等価回路を有する感覚特性との間の類似性の知識の適用を前提とする。
【0327】
好ましくは、正規化手段48による少なくとも1つの整定時間に応じた電圧振幅の正規化に続いて、重要なRC回路が、少なくとも1つの重要なRC回路を決定するための手段によって選択手段62によって選択され得る。この目的で、例えば、DRTインピーダンス・スペクトル及び人工知能に基づく分析を使用することができる。したがって、決定手段44は、節足動物12への影響に関して重要な少なくとも1つのRC回路を特定する。この選択は、必要に応じて検証60によって、例えば既知のインピーダンス・スペクトルを用いてナイキスト線図によって検証することができる。
【0328】
パルスを送信するための手段40は、少なくとも1つの正及び/又は負のトリチェル・パルスを送信するように構成される。
【0329】
代替的又は追加的に、少なくとも1つのパルスを送信するときの、節足動物12の感覚付属器16及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素の周波数挙動を識別するための手段及びグラフ表示するための手段56が、さらに設けられ、例えば図63によるクラウド・ソリューションによって少なくとも1つのパルスを送信するときの、等価回路の周波数挙動を識別するための手段及びグラフ表示するための手段54に結合され得る。等価回路のグラフ表示された周波数挙動は、クラウド又は識別手段56にも含まれ得る比較手段によって、節足動物12の少なくとも1つの要素のグラフ表示された周波数挙動と比較され、グラフ・パターン間の類似性が決定され得る。次いで、節足動物12の感覚付属器16及び感覚特性を含むグループからの少なくとも1つの要素と等価である少なくとも1つの電子等価回路を選択するための選択手段62は、決定された類似性に基づいて決定を行う。
【0330】
ここでも、検証60及び比較は、ナイキスト線図において実行することができる。
【0331】
傾向分析は、図62ではマイクロコントローラ又はPCによって実行されるが、これは、実際には図63に従ってクラウド・ベースの方法で実行することもできる。両方の場合において、信号は適応を受け、それに応じて、信号発生器が作動される。図63では、携帯電話50が、信号発生器として使用される。
【0332】
本記載は、添付の特許請求の範囲の均等物の範囲内にある、極めて広い範囲の修正、変更、及び適合を受けることができることは自明である。
【符号の説明】
【0333】
10 電磁放射線
12 節足動物
14 送信器
16 感覚付属器
18 特性
22 キャリア信号
24 多周波数パターン生成器
26 変調器
28 増幅器
30 発振器
32 アンテナ
34 手段
36 手段
40 送信手段
42 検出手段
44 決定手段
46 計算手段
48 正規化手段
50 携帯電話
52 RC回路決定手段
54 識別及びグラフ表示手段
56 比較手段
58 適応
60 検証
62 選択手段
100 デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図27a
図27b
図27c
図27d
図28
図29
図30a
図30b
図30c
図30d
図31
図32
図33
図34a
図34b
図34c
図34d
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48a
図48b
図48c
図48d
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
【国際調査報告】