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特表2022-538253連結剤としての使用のためのビス(2-ハロアセトアミド)化合物および抗体、半抗体、および抗体断片を含む得られた生成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】連結剤としての使用のためのビス(2-ハロアセトアミド)化合物および抗体、半抗体、および抗体断片を含む得られた生成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/54 20060101AFI20220825BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220825BHJP
   C07C 233/43 20060101ALI20220825BHJP
   C07C 247/04 20060101ALI20220825BHJP
   C07C 237/32 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C07C233/54 CSP
C07K16/00
A61K47/68
C07C233/43
C07C247/04
C07C237/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576793
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067922
(87)【国際公開番号】W WO2020260514
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1909103.2
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514007092
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ バース
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アルカワジャ,バヤン
【テーマコード(参考)】
4C076
4H006
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB81
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM72
4H006BM73
4H006BM74
4H006BP10
4H006BT32
4H006BV25
4H006BV72
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA51
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA50
(57)【要約】
複数のチオール基、特に、限定されないが、ペプチド鎖中のシステインアミノ酸のチオール基を化学的に架橋するためのリンカーとしての使用のためのビス(2-ハロアセトアミド)化合物、さらには、連結剤としてのそれらの使用、ならびに前記リンカーに結合されたチオール基を有する抗体、半抗体、および抗体断片を含む得られた生成物(例えば、抗体-タンパク質コンジュゲートおよび抗体-薬物コンジュゲート)、ならびに前記コンジュゲートおよび生成物(式I)を作製する方法が記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
各Xは、独立してF、Cl、Br、またはIであり、
は、H、COOR、CONH、CONHR、CONR 、CONHL、またはCONRLであり、
Lは、存在する場合、反応性基Rを末端とする鎖であり、
各Rは、存在する場合、C1~4アルキルから独立して選択され、
nは、0、1、2、または3であり、
各Rは、存在する場合、F、Cl、Me、CF、OMe、およびOCFから独立して選択されるか、またはRは、Rについて定義されたとおりの基である)
のリンカー化合物またはその塩。
【請求項2】
Lが、Rを末端とするポリエーテルまたはポリチオエーテルであり、Rが、N、C≡C結合を含む基、保護アミン、脱離基、および式(H):
【化2】
(式中、
各Xは、独立してF、Cl、Br、またはIであり、
nは、0、1、2、または3であり、
各Rは、存在する場合、F、Cl、Me、CF、OMe、およびOCFから独立して選択されるか、またはRは、請求項1でRについて定義されたとおりの基である)
の部分から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが0である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、BrまたはIである、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
式(IIa)、(IIb)、または(IIc):
【化3】
(式中、
Xは、BrまたはIであり、
は、H、COOMe、CONH、またはCONHLである)
の化合物である、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
式(IVa)、(IVb)、または(IVc)
【化4】
(任意選択で、式中、
各XはBrであるか、
各XはIであるか、または
2つのX、一方のアリーレンはBrであり、2つのXまたは他方のアリーレンはIである)
の化合物である、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
例(1)~(18):
【化5】
から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
ヒンジ領域の重鎖-重鎖内システイン残基を架橋するリンカー残基を含む半抗体であって、リンカー残基が、2つのXがチオール基によって置き換えられている請求項1から7のいずれかに記載の部分である、半抗体。
【請求項9】
重鎖と軽鎖を架橋するリンカー残基を含む単官能化抗体であって、リンカー残基が、2つのXがチオール基によって置き換えられている請求項1から7のいずれかに記載の部分である、単官能化抗体。
【請求項10】
2つのXがチオール基によって置き換えられている請求項1から7のいずれかに記載の部分であるリンカー残基を含むチオ架橋fab抗体断片。
【請求項11】
リンカー残基が、式(IXa)、(IXb)、(IXc)、または(IXd):
【化6】
(式中、Xは、BrまたはIであり、
mは、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択され、----は、タンパク質鎖への結合点を表す)の部分である、請求項10に記載のチオ架橋fab抗体断片。
【請求項12】
重鎖と軽鎖を架橋するリンカー残基を含む単官能化抗体を生成するための方法であって、リンカー残基が、2つのXがチオール基によって置き換えられている式(Ia)の部分であり、前記方法が、完全に還元された抗体を、約1~1.1当量の式Ia:
【化7】
(式中、XはBrであり、好ましくは、nは0である)のリンカー化合物を用いて処理するステップを含む方法。
【請求項13】
重鎖と軽鎖を架橋するリンカー残基を含む単官能化抗体を生成するための方法であって、リンカー残基が、2つのXがチオール基によって置き換えられている請求項1から7のいずれかに記載の部分であり、前記方法が、
(i)約1~1.1当量の還元剤を使用して抗体を還元することによって部分的に還元された抗体を準備するステップと、次に
(ii)前記部分的に還元された抗体を、請求項1から7のいずれか一項に記載のリンカー化合物を用いて処理するステップと
を含む方法。
【請求項14】
ヒンジ領域の重鎖-重鎖内システイン残基を架橋するリンカー残基および重鎖と軽鎖を架橋するリンカー残基を含む半抗体を生成する方法であって、リンカー残基が、2つのXがチオール基によって置き換えられている請求項1から7のいずれかに記載の部分であり、前記方法が、完全に還元された抗体を、少なくとも4当量の請求項1から7のいずれか一項に記載のリンカー化合物を用いて処理するステップを含む方法。
【請求項15】
リンカー残基が、ヒンジ領域の-HC-HC内システイン残基を架橋する式(Ib)の部分である半抗体を生成する方法であって、完全に還元された抗体を、約2~2.2当量の式(Ib):
【化8】
(式中、XはIであり、好ましくは、nは0であり、かつ/または好ましくは、R基および2つのハロアセトアミド基は、1,3,5配置に置かれる)のリンカー化合物を用いて処理することを含み、任意選択で、約2~2.2当量の式(Ib)のリンカー化合物を用いた完全に還元された抗体の処理後に、本発明に記載の追加のリンカー化合物を用いて処理するステップを含む方法。
【請求項16】
ヒンジ領域の重鎖-重鎖内システイン残基を架橋する第1のリンカー残基および軽鎖と重鎖を架橋する第2のリンカー残基を有するヘテロ-二官能化半抗体を生成する方法であって、各リンカー残基が、2つのXがチオール基によって置き換えられている請求項1から7のいずれかに記載の部分であり、前記方法が、
(i)部分的に還元された抗体を、請求項1から7のいずれかに記載の第1のリンカー化合物を用いて処理し、第1のコンジュゲートを生成するステップと、次に
(ii)前記第1のコンジュゲートをさらに還元し、還元コンジュゲートを生成するステップと、次に
(iii)前記還元コンジュゲートを、請求項1から7のいずれかに記載の第2のリンカー化合物を用いて処理し、前記ヘテロ-二官能化半抗体コンジュゲートを生成するステップとを含み、前記第1と第2のリンカー化合物が異なる、方法。
【請求項17】
リンカー化合物のうちの少なくとも1つがLを含み、方法が、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または蛍光標識もしくは放射性標識から選択される追加の部分を結合するステップを含む、請求項12から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
Fab-MabまたはFab-タンパク質コンジュゲートを生成する方法であって、還元されたか、もしくは部分的に還元された抗体またはタンパク質を、請求項10または請求項11に記載のチオ架橋fab抗体断片を用いて処理するステップを含む方法。
【請求項19】
が、H、COOMe、CONH、またはCONHLであり、nが0である、請求項12から18のいずれかに記載の方法、または請求項8から11に記載の抗体、半抗体、もしくは抗体断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチオール基、特に、限定されないが、ペプチド鎖中のシステインアミノ酸のチオール基を化学的に架橋するための化合物としてのビス(2-ハロアセトアミド)誘導体の使用に関する。
【0002】
したがって、本発明は、連結化合物としての使用のためのアリールビス(2-ハロアセトアミド)化合物、前記リンカーに結合されたチオール基を有する抗体、半抗体、および抗体断片コンジュゲート、前記リンカーに結合されたチオール基を有する抗体、半抗体、および抗体断片を含む生成物(例えば、抗体-タンパク質コンジュゲートおよび抗体-薬物コンジュゲート)、ならびに前記コンジュゲートおよび生成物を作製する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、最先端の抗体を基にした治療的手法のうちの1つである。したがって、これらは、この20年間にわたって大いに注目を集めてきた。ADCは、細胞毒性薬を特異的な悪性細胞または組織へと移動させるビヒクルとして採用されるモノクローナル抗体(mAb)を含む。血漿安定性抗体薬物コンジュゲートを実現するためのADCの構築には、特異的なリンカー特性が必要とされる。
【0004】
第一世代のADCの構築には、その抗体内のアミノ酸残基、主にシステインおよびリジンアミノ酸の固有の求核官能性が利用された。システインを基にしたコンジュゲートを生成するために、鎖間ジスルフィド結合の前還元ステップが必要とされる。免疫グロブリンG抗体(IgG)のIgG1サブクラスは、ヒト血清中で最も多いサブクラスであり、mAbを基にした治療法で採用される最も一般的な種類である。IgGは、合計4つの鎖間ジスルフィド結合を有し、2つの鎖間ジスルフィド結合は、重鎖/軽鎖(HC/LC)の間であり、2つの鎖間ジスルフィド結合は、ヒンジ領域の重鎖/重鎖(HC/HC)の間である。
【0005】
多くの研究が、mAbの構造および最適な抗原結合を維持するだけでなく、さらにmAbsのエフェクター機能を保有するための4つの鎖間ジスルフィド結合の重要性を示してきた。重鎖間ジスルフィド結合が欠如している変異IgGが試験された際に、キメラマウス/ヒトIgGにおける補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)の低減が認められた。
【0006】
半抗体の有用性がますます認識されている一方で、IgGの4つの鎖間ジスルフィド結合の部分的な還元でさえも、その補体結合機能およびCDCにおける劇的な低減を招く結果となることが見出されている。
【0007】
ジスルフィド結合が、適切な折り畳み、構造、およびより重要な点として、mAbの機能を維持するために必須であるとすれば、mAbコンジュゲートの構築前に組換え抗体の還元後の構造を維持することは必須である。mAbの還元後の構造を維持し、規定のコンジュゲーション手法を維持するために、mAbの複雑で高価な遺伝子再構築を回避する試みにおいて、Abzenaは、還元された鎖間ジスルフィド結合の再架橋に基づく、均質で安定したADCの生成に関する新規手法を(ThioBridge(登録商標)技術)開発した。
【0008】
ThioBridge(登録商標)技術は、3-炭素橋を形成しているmAbの還元された鎖間ジスルフィド結合を再アニールするビス-スルホン系試薬であり、そうすることによって、ThioBridge(登録商標)は、抗体の還元後のジスルフィド構造を維持する。利用可能な還元ジスルフィド結合は、最初に、この還元ジスルフィド結合のチオレート基に対するマイケル付加によって開始され、続いて、第2のマイケルアクセプター(α-β不飽和カルボニル)を生成するp-トルエンスルフィン酸の脱離を生じる、連続した付加-脱離機序を介して架橋される。次に、隣位のチオレート基が、第2のマイケル付加を介して反応し、システインの2つのチオール間に3-炭素結合を形成する。
【0009】
ビス-スルホンリンカーを使用する主な目的が、ADCのより良い血漿安定性を実現することであることから、増強された血漿安定性は、マレイミド結合を使用した蛍光標識トラスツズマブを、蛍光標識ビス-アルキル化トラスツズマブと比較することによって評価された。後者は、高濃度のアルブミン存在下で、(マレイミド結合抗体と比較して)5日間にわたる顕著な血清安定性を示した。
【0010】
さらに、トラスツズマブのADCの構築において、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を有するビス-スルホン試薬を使用することは、トラスツズマブのHER2受容体に対する結合活性を完全に保持し、HER2陽性細胞株における強力な増殖抑制活性を示したことが確認されている。
【0011】
ビス-反応性マレイミドリンカーは、ビス-チオスクシンアミド結合を得るための2-炭素橋を介したジスルフィド再架橋剤として開発された。ビス-反応性マレイミド誘導体の高速反応速度は、ビス-スルホン誘導体に比べて、タンパク質のより高い構造完全性およびより広い反応pH範囲(6~8)を提供する。
【0012】
ビス-スルホン試薬およびジブロモマレイミド誘導体は、還元ジスルフィドのための最も速く、最も確立された再架橋試薬とみなされている。それにもかかわらず、各々は、関連した欠点を有する。これらには、試薬の難水溶性および還元ジスルフィド結合と還元状態下の不対システイン残基の間の選択性の欠如が含まれる。架橋は、重鎖-軽鎖および重鎖-重鎖にわたる両方において可能であり、生成物が混合物となる。
【0013】
このため、抗体におけるスルフィド架橋に取って代わるさらなるリンカーを発見することに関心が持たれている。
他の骨格の例には、2-炭素橋を介したジスルフィド結合を架橋するジブロモピリダジンジオンのようなピリダジンジオンを基にした化合物が含まれる。ジ-TCEP置換ジチオフェノールピリダジンジオンも使用されており、還元剤および安定した架橋剤の両方として同時に機能することが可能である。他の手法は、追加の官能性の受け入れを可能にするために、クリック可能な化学的性質を、ピリダジンジオンを基にしたリンカーに導入した。
【0014】
EP3335734は、チオエーテルを形成するための脱離基の置き換えを介して抗-薬物コンジュゲートを形成するために使用され得るリンカーに結合された薬物部分の使用に関する。例えば、アウリスタチンE(MMAE)およびアウリスタチンFは、アミドカップリングを介してリンカーに結合された。ハーセプチン-リンカー-薬物単位は開示されている。
【0015】
再架橋戦略は、mAbの明確に定義された還元後の構造を維持しつつ、還元mAbへの反応性官能基の導入を可能にする洗練された手法であると考えられている。この分野における最近の進歩および多大な研究努力にもかかわらず、2-および3-炭素橋のいずれかの形成を介した前述の再架橋手法は、さらなる対処を必要とする実用上の制限を未だに有する。これには、低い収率および生成される生成物が混合物であることが含まれる。
【0016】
本発明は、上記の留意点を考慮に入れて考案された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、次世代の再架橋剤としてアリールビス(2-ハロアセトアミド)誘導体を提供する。これらのビス-ハロアセトアミド誘導体は、上記のとおり、従来の再架橋において有用性を有するが、完全mAbのヘテロ再架橋(2つ以上の異なる再架橋リンカーの結合)および半抗体コンジュゲートの生成において特に有用であり得る。
【0018】
完全に架橋された抗体(150KDa)を得るために、重鎖-軽鎖および重鎖-重鎖の鎖間ジスルフィド結合を完全に架橋することに、できる限り重点をおいた前述の(背景技術を参照)再架橋方法は、意図された生成物としての半抗体(75KDa)の構築における潜在的利点を見落としてきた。例えば、半抗体は、エンドソームリサイクリングおよび腫瘍浸透において有用性を有する場合がある。加えて、本発明者らが知る限りでは、従来の再架橋手法は、重鎖-重鎖と重鎖-軽鎖ジスルフィド結合の間に特段の選択性が認められなかった。したがって、ヘテロ二機能性mAbを得るための部位選択的タンパク質標識化は、過去に未解決の課題であった。
【0019】
これらの問題に対処することが、本発明の目的である。
リンカー化合物
第1の側面において、本発明は、ビス-(2-ハロアセトアミド)モチーフを有するリンカー化合物を提供する。リンカーは、抗体構造におけるスルフィド架橋を再架橋(連結)すること、および/または半抗体を形成するために重鎖間というよりも、重鎖内を連結することに適している。これらの連結された抗体構造は、「コンジュゲート」と呼ばれる。
【0020】
したがって、第1の側面において、本発明は、式(I):
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、
各Xは、独立してF、Cl、Br、またはIであり、
は、H、COOR、CONH、CONHR、CONR 、CONHL、またはCONRLであり、
Lは、存在する場合、反応性基Rを末端とする鎖であり、
各Rは、存在する場合、C1~4アルキルから独立して選択され、
nは、0、1、2、または3であり、
各Rは、存在する場合、F、Cl、Me、CF、OMe、およびOCFから独立して選択されるか、またはRは、Rについて定義されたとおりの基である)のリンカー化合物またはその塩を提供する。
【0023】
Lが存在する場合、鎖には、ポリエーテルまたはポリチオエーテルが適切である。
好ましくは、Xは、Cl、Br、またはI、より好ましくは、BrまたはIである。これは、ブロモ基およびヨード基が、クロロ基よりも優れた脱離基であるためである。
【0024】
各Rは、存在する場合、F、Cl、Me、CF、OMe、およびOCFから独立して選択されるか、またはRは、Rについて定義されたとおりの基である。RがRについて定義されたとおりの基である場合、好ましくは、nは1である。言い換えると、リンカー化合物は、Rについての定義に従った2つの基を有する場合がある。
【0025】
好ましくは、各Rは、存在する場合、F、Cl、Me、CF、OMe、およびOCFから独立して選択される。
各Rは、存在する場合、C1~4アルキルから独立して選択され、好ましくは、メチルまたはエチルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0026】
ハロアセトアミド基は、互いに対してオルトまたはメタ位に適切に配置される。例えば、リンカー化合物は、式(Ia)または(Ib):
【0027】
【化2】
【0028】
の化合物であってもよい。
式(Ia)のリンカー化合物は、オルトまたは1,2-と呼ばれることがあり、一方、式(Ib)のリンカー化合物は、メタまたは1,3-と呼ばれることがある。
【0029】
好ましくは、nは0である。すなわち、Rは存在しない。
好ましくは、式(Ib)の化合物において、R基および2つのハロアセトアミド基は、1,3,5配置に置かれる。
【0030】
したがって、リンカー化合物は、式(IIa)、(IIb)、または(IIc):
【0031】
【化3】
【0032】
の化合物であってもよい。
がHである場合、式(IIa)および(IIc)の化合物は同等であると理解されるであろう。
【0033】
式IIaのリンカー化合物は、3,4-置換と称される。式(IIb)のリンカー化合物は、3,5-置換と称される。式(IIc)のリンカー化合物は、2,3-置換と称される。これらの名称は、RがHではない場合に通常使用される。
【0034】
リンカー化合物において、Rは、H、COOR、CONH、CONHR、CONR 、CONHL、またはCONRLであり、Lは、存在する場合、反応性基R(-S-R)を末端とするスペーサーSであり、各Rは、存在する場合、C1~4アルキルから独立して選択され、好ましくは、メチルまたはエチルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0035】
本発明の好ましい化合物において、Rは、H、COOR、CONH、またはCONHLであり、より好ましくは、H、COOMe、CONH、またはCONHLである。
L基
Lは、反応性基を末端とする鎖である。このように、追加の官能性は、反応性基における反応を介して、コンジュゲートに導入され得る。反応性基は、Rと呼ばれることがある。
【0036】
言い換えると、Lは-S-Rであってもよい(式中、Sはスペーサーであり、Rは反応性基である)。
スペーサーSは、例えば、最大32原子長のポリエーテルまたはチオエーテルであってもよい。例えば、スペーサーSは、10~32原子長、例えば、10~23原子長のポリエーテルまたはチオエーテルであってもよい。
【0037】
例えば、スペーサーSは、ポリエチレングリコールであってもよい。したがって、いくつかの態様において、スペーサーSは、式:
【0038】
【化4】
【0039】
(式中、----は結合点である)のポリエーテルである。
言い換えると、スペーサーは、PEG鎖であってもよい。mは、2、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択されてもよい。いくつかの場合において、mは、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択される。いくつかの場合において、mは、3、4、5、6、および7から選択される。mが3であり、mが7であるスペーサーは、本明細書で例示されており、好ましい場合がある。
【0040】
は反応性基である。Rは、式(H)の頭部基、または別の分子を結合する目的のために、続いて置き換えられ得るか、もしくは修飾され得る任意の基であってもよい。頭部基という用語は、本明細書で使用する場合、式(H)
【0041】
【化5】
【0042】
(式中、X、R、およびnは、上記で定義されたとおりであり、----は、結合点を表す)に記載のアリールビス(2-ハロアセトアミド)部分を指すか、または式(I)~(VII)の任意の化合物における対応する部分を指す。
【0043】
上記の式(I)のための選択肢および選好性は、式(H)に適用される。したがって、Rは、(Hi)または(Hii):
【0044】
【化6】
【0045】
に記載の部分であってもよい
好ましくは、XはBrまたはIである。好ましくは、nは0である。好ましくは、(Hi)における配置は1,3,4(さらに任意のR基)である。
【0046】
リンカー化合物が、スペーサーSによって結び付けられた2つのアリーレンビスハロアセトアミド頭部基を含む場合、これらのアリーレンビスハロアセトアミド頭部基は、同じ場合か、または異なる場合がある。
【0047】
言い換えると、式(H)、または別の分子を結合する目的のために、続いて置き換えられ得るか、もしくは修飾され得る任意の基である場合がある。例えば、Rは、-N(アジド)、アルキニル(例えば、-C≡C-HまたはC≡C結合を含有する他の基、例えば、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)置換基)、保護アミン(例えば、NHBoc、NHFmoc、NHCbzのようなNHP基)、脱離基、または式(H)の部分、好ましくは、Rは、N(アジド)、アルキニル(例えば、-C≡C-H)、または式(H)の部分であってもよい。
【0048】
適切な脱離基は、当業者には明らかであろうし、例えば、-I、-Br、-Cl、-OH、-OP、-O-アリール(例えば、フェノキシド脱離基)、-OTs、-OMs、-SP、-S-C1~4アルキル、-OSO-C1~4アルキルを含むことがある。
【0049】
Pは保護基である。適切な保護基は、当該分野で既知であり、例えば、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版)(Peter G.M.Wuts、Theodora W.Greene)中に記載されており、この内容は参照によって組み込まれる。
【0050】
いくつかの態様において、Rは、-NまたはC≡C結合、例えば、-C≡C-HもしくはDBCOを含有する基である。これらの場合、その化合物は、当該分野で既知の方法を用いたクリックケミストリーによる反応に適している。-NおよびDBCOは、クリックケミストリーが銅触媒を使用することなく達成され得るため、好まれる場合がある。
【0051】
いくつかの態様において、Rは-Nである。アジド基は、クリックケミストリー反応で使用されることがあり、アミンを脱マスキングするために還元されることがある。
したがって、リンカー化合物は、式(III):
【0052】
【化7】
【0053】
(nが0ではない場合、nR基は式(I)におけるとおり存在することがあり、好ましくは、nは0である)の化合物であってもよい。
例えば、リンカー化合物は、式(IIIa)または(IIIb):
【0054】
【化8】
【0055】
(nが0ではない場合、nR基は式(I)におけるとおり存在することがあり、好ましくは、nは0である)の化合物であってもよい。
好ましくは、式(IIIa)における位置化学的配置は1,3,4である。
【0056】
いくつかの態様において、Rは式(H)の部分である。式(I)から(VII)に関する上記のすべての選好性および選択肢は、同等に適用する。
したがって、リンカー化合物は、式(IVa)、(IVb)、または(IVc):
【0057】
【化9】
【0058】
(nが0ではない場合、nR基は式(I)におけるとおり存在することがあり、好ましくは、nは0である)の化合物であってもよい。
好ましくは、式(IVa)および(IVc)(左手の頭部基)における位置化学的配置は1,3,4である。X基は、同じ場合か、または異なる場合がある。いくつかの態様の、各XはBrまたはIである。いくつかの態様において、2つのX、一方のアリーレンはBrであり、2つのXまたは他方のアリーレンはIである。
【0059】
式(IV)の化合物は、チオ架橋fAbコンジュゲートの調製において有用であることがあり、次にこれは、追加の部分、例えば、実施例10に示される抗体にコンジュゲートされ得る。
【0060】
いくつかの態様において、Lは存在しない。言い換えると、Rは、H、COOR、CONH、CONHR、およびCONR から選択され、好ましくは、Rは、H、COOR、およびCONHから選択され、最も好ましくは、Rは、H、COOMe、およびCONHから選択される。
【0061】
いくつかの態様において、RはHである。したがって、リンカー化合物は、式(Va)または(Vb):
【0062】
【化10】
【0063】
の化合物であってもよい。
いくつかの態様において、RはCOORである。したがって、リンカー化合物は、式(VIa)、(VIb)、または(VIc):
【0064】
【化11】
【0065】
(nが0ではない場合、nR基は式(I)におけるとおり存在することがあり、好ましくは、nは0である)の化合物であってもよい。
好ましくは、RはMeである。
【0066】
いくつかの態様において、Rは、以下の図中のCONH、CONHR、またはCONR (すべてCONRで表される)である。したがって、リンカー化合物は、式(VIIa)、(VIIb)、または(VIIc):
【0067】
【化12】
【0068】
(nが0ではない場合、nR基は式(I)におけるとおり存在することがあり、好ましくは、nは0である)の化合物であってもよい。
いくつかの態様において、本明細書に記載される任意の式の化合物における各Xは、クロロである。
【0069】
いくつかの態様において、本明細書に記載される任意の式の化合物における各Xは、ブロモである。
いくつかの態様において、本明細書に記載される任意の式の化合物における各Xは、ヨードである。
本発明の例示的なリンカー化合物
例示的なリンカー化合物1~18は、以下に示される。化合物1、2、3、4、5、6、および7は、メチルエステルで置換された式(VIa)、(VIb)、および(VIc)の化合物である。化合物8、9、10、11、12、および13は、RがHである化合物である。これらは、式(Va)および(Vb)の化合物である。
【0070】
化合物14、15、16、17、および18は、アリール環からのポリエチレングリコール(PEG)鎖ペンダントを含む。これは、スペーサーSに相当する。このスペーサーは、使用される場合、第2のアリールビス(2-ハロアセトアミド)部分を末端とすることがあり(例えば、化合物18)、これは式(IVa)の化合物である。または、このスペーサーは、さらなる反応に適している異なる基(本明細書でRと称される)を末端とすることがあり、これは、前記ハロアセトアミド基のハロゲンよりもチオール置換に対するそれ自体の反応性が低い。この後者のタイプにおいて、化合物は、直交的に活性化されると考えられ得る。このアリールビス(2-ハロアセトアミド)基は、2つのチオール基間に架橋を形成することがあり、次に、そのスペーサー末端基は、別の化合物と反応するか、または脱マスキングし、さらに反応して、抗体、抗体断片、薬物、および/もしくは他のタンパク質のさらなるチオール基、または抗体、抗体断片、薬物、および/もしくは他のタンパク質の異なる官能基と結合する。化合物14、15、16、および17において、その末端基はアジドであり、これらの化合物は、式(IIIa)および(IIIb)の化合物である。
【0071】
いくつかの態様において、本発明のリンカー化合物は:
【0072】
【化13】
【0073】
から選択される。
コンジュゲート
さらなる側面において、本発明は、本明細書に記載のリンカーを有する抗体、半抗体、または抗体断片を提供することがある。これらは、抗体コンジュゲート、半抗体コンジュゲート、または抗体断片コンジュゲートと呼ばれることがある。
【0074】
リンカーは、通常、抗体構造中のジスルフィド架橋の還元によって生成される2つのチオールを架橋する。この架橋は、重鎖-軽鎖架橋、重鎖-重鎖架橋である場合か、またはリンカーが、同じ重鎖上内に架橋を形成する場合がある。
【0075】
したがって、本発明は、----が抗体鎖への結合点を示す式(VIII):
【0076】
【化14】
【0077】
(式中、すべての置換基は本明細書に記載のとおりであり、リンカーは任意選択で式(I)~(VII)のうちの任意の式中に描かれているとおりである場合がある)に記載のモチーフを含むコンジュゲートを提供することがある。これらの構造のそれぞれに対する選好性は、同等に適用する。
【0078】
モチーフは、本明細書に記載のリンカー化合物の残基であると考えられ、すなわち、反応後に残っているリンカー化合物の構造である。言い換えると、「リンカー」または「残基」は、ハロゲン化物脱離基の置き換え後に残っている部分である。いくつかの態様において、本発明の任意のコンジュゲートのリンカーは、例示的な化合物1~18のうちの任意の1つの残基である。
【0079】
図1は、本発明の特定のコンジュゲート構造を概略的に示す。図1(1)は、重鎖と軽鎖を再架橋するリンカーおよび重鎖間というよりも、重鎖内ジスルフィドを連結する第2の(同一の)リンカーを有する半抗体を示す。図1(3)は、それらのリンカーが異なる半抗体コンジュゲートを示す。これは、ヘテロ-二官能化半抗体を指すことがある。図1(2)は、単独のリンカーが重鎖-軽鎖を架橋している全長抗体であるコンジュゲートを示す。そのリンカーが、(特許請求の範囲において「L」と定義される)反応性基を末端とする鎖を有する場合に、そのリンカーは、さらにクロスカップリングさせるため、例えば、三特異性抗体または抗体-タンパク質コンジュゲートを生成するために直交的に活性化され得る。図1(4)および図1(8)を参照すること。リンカーの頭部基部分は、同じ場合か、または異なる場合があると理解されるであろう。図1(5)は、図1(1)に示される構造と化学的に同一であるが、その半抗体が観察され得る物理的状態を示す。図1(6)は、図1(3)に示される構造と化学的に同一であるが、これもその半抗体が観察され得る物理的状態を示す。図1(7)は、2つのリンカーが重鎖-軽鎖を架橋する全長抗体であるコンジュゲートを示す。
【0080】
このため、いくつかの態様において、本発明は、式(VIII)に記載のリンカーまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する抗体を含む生成物を提供することがある。
このため、いくつかの態様において、本発明は、式(VIII)に記載のリンカーまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する半抗体を含む生成物を提供することがある。言い換えると、本発明は、同じ重鎖上の2つのスルフィド部分内を架橋する式(VIII)に記載のリンカーまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する半抗体を提供することがある。
【0081】
いくつかの態様において、本発明は、重鎖上の2つのスルフィド部分内を架橋する上記で定義された式(VIII)に記載のリンカー、および重鎖と軽鎖を架橋する式(VIII)に記載の追加のリンカーを有する半抗体を提供する。式(VIII)のこれらのリンカーは、同じ場合(図1(1))か、または異なる(図1(3))場合がある。
【0082】
このため、いくつかの態様において、本発明は、式(VIII)に記載のリンカーまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する抗体断片を含む生成物を提供することがある。
【0083】
いくつかの態様において、本発明は三重特異性抗体に関する。このように、特異的なFab-Mabコンジュゲートは生成され得る(図1の(4)を参照)。
したがって、いくつかの態様において、本発明は、チオ架橋Fabを提供する。言い換えると、式(VIII)に記載のリンカー化合物または本明細書に記載の任意のリンカーによって再架橋されたFab断片である。好ましくは、リンカー化合物はLを含む。例えば、それは、式(IIIa)、(IIIb)、(IVa)、(IVb)、または(IVc)のリンカー化合物であってもよい。
【0084】
言い換えると、本発明は、チオ架橋Fabであって、その架橋が式(IXa)、(IXb)、または(IXc)
【0085】
【化15】
【0086】
(式中、----がタンパク質鎖への結合点を表し、mは、2、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択される)の架橋である、チオ架橋Fabを提供し得る。いくつかの場合において、mは、3、4、5,6,7,8,9,および10から選択される。いくつかの場合において、mは、3、4、5,6,および7から選択される。mが3であるか、またはmが7であることは、好ましい場合がある。
【0087】
いくつかの態様において、本発明は、薬物および/またはタンパク質もしくは他の化合物(例えば、蛍光標識または放射性標識)に結合される抗体コンジュゲート、半抗体コンジュゲート、または抗体断片コンジュゲート(例えば、チオ架橋Fab)を提供することがある。このような化合物は、本明細書で生成物と呼ばれることがある。本発明の生成物を作製する方法に関するさらなる考察は、以下を参照すること。したがって、いくつかの態様において、本発明は、生成物であって、そのリンカー化合物がLを含み、Rが抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または蛍光標識もしくは放射性標識によって取って代わられる、生成物を提供する。
【0088】
いくつかの態様において、本発明は、上記の式(IXa)に示されるとおりのリンカーモチーフを含む生成物を提供する(式中、X基は、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または蛍光標識もしくは放射性標識によって取って代わられる)。例えば、各Xは、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、またはポリペプチドのチオール基によるX脱離基の置き換えの結果として生じるS-----によって取って代わられることがある。
方法
さらなる態様において、本発明は、コンジュゲートを作製する方法および本明細書に記載のコンジュゲートを含む生成物を提供することがある。
【0089】
したがって、さらなる側面において、本発明は、コンジュゲートを形成する方法、還元または部分的還元をもたらすTCEPのような還元剤を用いて抗体、半抗体、または抗体断片を処理するステップ、その後、対応するコンジュゲートを得るために、還元されたか、もしくは部分的に還元された抗体、半抗体、または抗体断片を、本明細書に記載される任意の式に記載のリンカー化合物を用いて処理するステップを含む方法に関する。
【0090】
適切には、還元ステップ後に、反応は、リンカー化合物の添加前にクエンチされる。これは、何らかの残留TCEPとリンカー化合物との反応を防ぐ。適切なクエンチング剤は、Kantnerら[2017]に記載のペンタ-PEGアジドである。
抗体コンジュゲート
いくつかの態様において、本発明は、図1(2)に示される単官能化抗体を生成するための方法に関する。すなわち、重鎖と軽鎖を架橋する単独のリンカーを有するコンジュゲートである。これは:
(i)TCEPのような還元剤を用いた抗体の部分的還元、続く本明細書に記載の式(I)~(VII)のうちの任意の1つに記載のリンカー化合物を用いて処理するステップ、または
(ii)重鎖-軽鎖の選好的な再架橋のための、本発明の特定のリンカー化合物の選択性を利用するステップ
によって得ることができる。
【0091】
したがって、本発明は、式(VIII)に示されるモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する単官能化抗体を生成する方法であって、部分的に還元された抗体を、本明細書に記載の式(I)~(VII)のうちの任意の1つに記載のリンカー化合物を用いて処理することを含む方法を提供することがある。いくつかの態様において、方法は、約1~1.1当量、例えば、約1.1当量のTCEPのような還元剤を使用して抗体を還元することによって、部分的に還元された抗体を準備するステップをさらに含む。このような生成物は図1(1)に示される。
【0092】
いくつかの態様において、本発明の方法は、それぞれ式(VIII)に示される2つのモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する二官能化抗体を生成する方法であって、部分的に還元された抗体を、本明細書に記載の式(I)~(VII)のうちの任意の1つに記載のリンカー化合物を用いて処理するステップを含む方法を提供することがある。少なくとも2当量のリンカー化合物が使用されるであろう。通常、このリンカー化合物は、2当量を上回って提供されるであろう。いくつかの態様において、方法は、約2~2.2当量、例えば、約2.2当量のTCEPのような還元剤を使用して抗体を還元することによって、部分的に還元された抗体を準備するステップをさらに含む。
【0093】
いくつかの態様において、リンカー化合物は、RがCOORまたはHである化合物である。上記のとおり、本発明者らは、軽鎖-重鎖架橋に対して、非置換リンカーが好ましい場合があることを認めた。したがって、いくつかの方法において、化合物は、式(Va)または(Vb)、好ましくは、(Va)の化合物である。すなわち、RはHであり、nは0である。好ましくは、Xはブロモである。したがって、リンカーは、化合物9および12から選択されてもよく、好ましくは、化合物12であってもよい。
【0094】
他の態様において、リンカー化合物は、RがCOOR、好ましくは、COOMeである化合物である。したがって、いくつかの方法において、化合物は、式(VIa)、(VIb)、または(VIc)、好ましくは、(VIa)の化合物である。すなわち、RはCOOMeであり、nは0である。好ましくは、Xはブロモである。したがって、リンカーは、化合物2および5から選択されてもよく、好ましくは、化合物5であってもよい。
【0095】
いくつかの態様において、RはLを含む。例えば、Rは、脱マスキングされ、薬物部分、追加の抗体、半抗体、もしくは抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または他の化合物にコンジュゲートされ得る直交官能化に起因する、リンカー化合物14、15、16、17、および18、好ましくは、リンカー化合物14、15、16、および17におけるとおりCONHLであってもよい。このため、方法は、追加の部分、例えば、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または他の化合物(例えば、蛍光標識または放射性標識)を結合するステップをさらに含んでもよい。このような方法において、図1(4)および図1(8)に示される構造が生成されることがあり、図1(4)は、2つの頭部基が同じである場合に得られる生成物を明示し、図1(8)は、2つの頭部基が異なる場合に得られる生成物を明示する。
【0096】
いくつかの態様において、図1(2)に示される単官能化抗体を生成するための方法は、選択的に部分的に還元された抗体を用いて開始される。これらの方法は、本発明の特定のリンカー化合物、特に、重鎖-軽鎖を再架橋するための式(Ia)のオルト化合物であるリンカー化合物の選好性を利用する。Xは、BrおよびIから選択されてもよく、好ましくは、XはBrである。
【0097】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、式(VIII)に示されるモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する単官能化抗体を生成するための方法であって、完全に還元された抗体を、約1~1.1当量の式Iaのリンカー化合物を用いて処理することを含む方法を提供する。いくつかの態様において、XはBrである。
【0098】
好ましくは、リンカー化合物は式(IIa)の化合物である。
いくつかの態様において、リンカー化合物は、RがCOORまたはHである化合物である。上記のとおり、本発明者らは、軽鎖-重鎖架橋に対して、非置換リンカーが好ましい場合があること認めた。したがって、いくつかの方法において、化合物は、式(Va)の化合物である。すなわち、RはHであり、nは0である。したがって、第1のリンカーは、化合物12であってもよい。
【0099】
他の態様において、リンカー化合物は、RがCOOR、好ましくは、COOMeである化合物である。したがって、いくつかの方法において、化合物は、式(VIa)の化合物である。すなわち、RはCOOMeであり、nは0である。したがって、第1のリンカーは、化合物5であってもよい。
【0100】
いくつかの態様において、RはLを含む。例えば、Rは、脱マスキングされ、薬物部分、追加の抗体、半抗体、もしくは抗体断片、またはタンパク質にコンジュゲートされ得る直交官能化に起因する、リンカー化合物16、17、および18、好ましくは、リンカー化合物16または17におけるとおりCONHLであってもよい。このため、方法は、追加の部分、例えば、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または他の化合物(例えば、蛍光標識または放射性標識)を結合するステップをさらに含んでもよい。
半抗体コンジュゲート
いくつかの態様において、方法は、同じ重鎖にあるスルフィド部分内を架橋するリンカーモチーフを有する半抗体を生成する(例は図1(1)および(3)に示される)。
【0101】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、ヒンジ領域の-HC-HC内システイン残基を架橋する式(VIII)に記載のモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する半抗体(いわゆる、半抗体コンジュゲート)を生成する方法であって、完全に還元された抗体を、本明細書に記載の式(I)~(VII)のうちの任意の1つに記載のリンカー化合物を用いて処理することを含む方法を提供する。このような半抗体は図の標識されたHC-LCであり、例えば、図5を参照すること。
【0102】
本発明者らは、過剰(4当量以上)な本明細書に記載のオルトおよびメタ化合物の両方を用いた主な生成物は、式(VIII)に記載の2つのモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する半抗体コンジュゲートであることを認めた。したがって、半抗体生成物は、図1(1)に示されるとおり、2つの同じリンカーを含み、1つ目は重鎖にあるスルフィド部分内を架橋し、2つ目は重鎖と軽鎖を架橋する。
【0103】
オルト化合物を用いた場合、認められる副生成物は少ない。したがって、リンカー化合物は、好ましくは、式(Ia)の化合物、例えば、式(IIa)または(IIc)の化合物であってもよい。好ましくは、nは0である。化合物は、式(IIIa)、(IVa)、(Va)、(VIa)、(VIc)、(VIIa)、または(VIIc)、好ましくは、(IIIa)、(IVa)、(Va)、(VIa)、または(VIIa)の化合物であってもよい。
【0104】
好ましくは、XはBrまたはI、好ましくは、Brである。
いくつかの態様において、リンカー化合物は、化合物2、5、9、12、16、および17、好ましくは、化合物5および12から選択される。
【0105】
リンカー化合物は、少なくとも4当量、例えば、少なくとも5当量の化学量論で提供され、例えば、約8当量が提供されることがある。
リンカー化合物が、4当量未満、例えば、約1~1.1または2~2.2当量の化学量論で提供される場合、本発明者らは、本発明の化合物における位置選択性を認めた。例えば、本発明者らは、メタ化合物、特にXがIであるメタ化合物における-HC内の架橋に対する明確な選好性を認めた。
【0106】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、ヒンジ領域の-HC-HC内システイン残基を架橋する式(VIII)に記載のモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーを有する半抗体を生成する方法であって、完全に還元された抗体を、本明細書に記載の式(Ib)のリンカー化合物を用いて処理することを含む方法を提供する。
【0107】
好ましくは、nは0である。すなわち、リンカー化合物は、式(IIb)の化合物である。例えば、リンカー化合物は、式(IIIb)、(IVb)、(IVc)、(Vb)、または(VIb)、好ましくは、(IIIb)、(IVb)、(IVc)、(Vb)、または(VIb)の化合物であってもよい。
【0108】
好ましくは、XはIまたはBr、最も好ましくは、Iである。
好ましくは、Rは、H、COOMe、CONH、またはCONHLである。
いくつかの態様において、リンカー化合物は、化合物2、3、9、10、14、および15、好ましくは、化合物3、10、および15から選択される。
【0109】
リンカー化合物のうちの少なくとも1つがLを含む場合、方法は、追加の部分、例えば、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または他の化合物(例えば、蛍光標識または放射性標識)を結合するステップを含むことがある。化合物15は、好ましい例である。
【0110】
いくつかの態様において、リンカー化合物の量は、約2~2.2当量である。次に、方法は、HC-LCジスルフィドを再架橋するステップをさらに含んでもよい。この再架橋は、可能な場合、酸化によって、またはより好ましくは、半抗体を、本発明に記載の追加のリンカー化合物を用いて処理することによってジスルフィド架橋を生成することがある。この後者の場合、リンカー化合物は、本明細書に記載の任意のリンカー化合物であってもよく、図1(3)に示されるコンジュゲートを作成するために、半抗体コンジュゲートあたり約1~1.1当量以上、すなわち、完全に還元された抗体あたり約2~2.2当量以上で使用されることがある。
【0111】
いくつかの態様において、方法は、(図1(3)に示されるとおり)重鎖にあるスルフィド部分内を架橋するリンカーおよび重鎖と軽鎖を架橋する異なるリンカーを有する半抗体を生成する。
【0112】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、重鎖と軽鎖を架橋する式(VIII)に記載のモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーである第1のリンカーを有し、ヒンジ領域の-HC-HC内システイン残基を架橋する式(VIII)に記載のモチーフまたは本明細書に記載の任意のリンカーである第2のリンカーを有するヘテロ-二官能化半抗体を生成する方法であって、
(i)部分的に還元された抗体を、本明細書に記載の式(I)~(VII)のうちの任意の1つに記載の第1のリンカー化合物を用いて処理し、第1のコンジュゲートを生成するステップと、次に
(ii)前記第1のコンジュゲートをさらに還元し、還元コンジュゲートを生成するステップと、次に
(iii)前記還元コンジュゲートを、式(I)~(VII)のうちの任意の1つに記載の第2のリンカー化合物を用いて処理し、前記ヘテロ-二官能化半抗体コンジュゲートを生成するステップとを含み、前記第1と第2のリンカー化合物が異なる、方法を提供する。
【0113】
いくつかの態様において、第1および第2のリンカー化合物のうちの1つはL基を含む。言い換えると、リンカー化合物のうちの少なくとも1つは、式(III)(例えばIIIaまたはIIIb、好ましくは、IIa)、(IVa)、(IVb)、または(IVc)(好ましくは、IVb)の化合物であってもよい。好ましくは、第2のリンカー化合物は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IVa)、(IVb)、および(IVc)、より好ましくは、(IIb)および(IIIb)におけるとおりLを含む。例えば、第2のリンカー化合物は、化合物14、15、16、および17から選択されてもよく、好ましくは、化合物15であってもよい。
【0114】
いくつかの態様において、第1のリンカー化合物は、Lを含まない。いくつかの態様において、第1のリンカー化合物は、RがCOORまたはHである化合物である。本発明者らは、軽鎖-重鎖架橋に対して、非置換リンカー化合物が好ましい場合があることを認めた。したがって、いくつかの方法において、リンカー化合物は、式(Va)または(Vb)、好ましくは、(Va)の化合物である。すなわち、RはHであり、nは0である。好ましくは、Xはブロモである。したがって、第1のリンカー化合物は、化合物9および12から選択されてもよく、好ましくは、化合物12であってもよい。
【0115】
リンカー化合物のうちの少なくとも1つがLを含む場合、方法は、追加の部分、例えば、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または他の化合物(例えば、蛍光標識または放射性標識)を結合するステップを含むことがある。
【0116】
いくつかの態様において、第1のリンカー化合物は、RがCOOR、好ましくは、COOMeである化合物である。したがって、いくつかの方法において、リンカー化合物は、式(VIa)、(VIb)、または(VIc)、好ましくは、(VIa)の化合物である。すなわち、RはCOOMeであり、nは0である。好ましくは、Xはブロモである。したがって、第1のリンカー化合物は、化合物2および5から選択されてもよく、好ましくは、化合物5であってもよい。
【0117】
いくつかの態様において、方法は、約2~2.2当量、例えば、約2.2当量のTCEPのような還元剤を使用して抗体を部分的に還元することによって、部分的に還元された抗体を準備するステップをさらに含む。
【0118】
いくつかの態様において、前記コンジュゲートをさらに還元するステップは、約2~2.2当量、例えば、約2.2当量のTCEPのような還元剤を使用する。
適切には、還元ステップ後に、反応は、リンカー化合物の添加前に、例えば、ペンタ-PEGアジドを使用してクエンチされる。
【0119】
いくつかの態様において、本発明は、ヘテロ-二官能化半抗体コンジュゲートを生成する方法であって、完全に還元された抗体を、XがBrである式(Ia)に記載の第1のリンカー化合物およびXがIである式(Ib)の第2のリンカー化合物を用いて処理するステップを含む方法を提供する。第1および第2のリンカー化合物は、同時に加えられてもよい。第1のリンカー化合物は、重鎖と軽鎖を再架橋し、第2のリンカー化合物は、ヒンジ領域の-HC-HC内システイン残基を架橋する。生成物は、図1(3)に示され、L1は第1のリンカーを表し、L2は第2のリンカーを表す。いくつかの態様において、第1のリンカー化合物は、式(IIa)に記載の化合物であり、第2のリンカー化合物は、式(IIb)に記載の化合物である。
Fabコンジュゲート
いくつかの態様において、本発明は、安定したチオ架橋fAbコンジュゲートを生成するための方法に関する。すなわち、本明細書に記載の式(VIII)のリンカーによって連結された軽鎖および消化された(切断された)重鎖を含む生成物である。
【0120】
fAb出発物質は、市販で得られるか、当該分野で説明される方法を用いた、例えば、パパインを使用する抗体の消化によって得られ得る。Andrew&Titus[2000]を参照すること。
【0121】
チオ架橋fAbコンジュゲートを生成する方法は、
(i)fAb断片を還元し、還元fAb前駆体を生成するステップと、次に
(ii)前記還元fAb前駆体を、本明細書に記載の式(I)~(VII)のうちの任意の1つに記載のリンカー化合物を用いて処理し、前記チオ架橋fAbコンジュゲートを生成するステップと
を含んでよい。
【0122】
好ましくは、リンカー化合物は、追加の官能化/コンジュゲーションのためのL基を含む。すなわち、RはLを含む。例えば、Rは、リンカー化合物14、15、16、17、および18、好ましくは、化合物18におけるとおりCONHLであってもよい。
【0123】
言い換えると、リンカー化合物は、式(III)(好ましくは、IIIa)、(IVa)、(IVb)、または(Vc)(好ましくは、VIa)の化合物であってもよい。最も好ましくは、リンカー化合物は、式(IVa)、(IVb)、または(IVc)、好ましくは、(IVa)の化合物である。XはBrであってもよく、好ましくは、XはBrである。
【0124】
このため、方法は、コンジュゲートされた生成物、例えば、fAb-mAbまたはfAb-タンパク質生成物を形成するために、還元されたか、もしくは部分的に還元された抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または他の化合物を、前記チオ架橋fAbコンジュゲートを用いて処理することをさらに含んでもよい。
【0125】
本発明者らは、本明細書に記載の方法において、反応のpHが約7.5である場合、選択性が改善されることを認めた。したがって、本明細書に記載のいくつかの方法において、pHは、約8を下回り、好ましくは、約6~約8の間、最も好ましくは、約7.5である。好ましいpH値は、より高い収率をもたらすことが認められた。本発明者らは、反応がさらに完了に向かい、恐らく、高いpHでは試薬の加水分解および低いpHではより低い反応性の結果となる(チオールプロトン化のため)ことに注目している。
【0126】
いくつかの態様において、本明細書に記載の任意の方法における抗体は、トラスツズマブおよびリツキシマブから選択される。
本発明は、記載の側面および好ましい特徴の組合せを含み、このような組合せが明らかに許容されないか、または明確に回避される場合を除く。
【0127】
本発明の原理を例証する態様および実験は、添付の図面を参照してこれより論じられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0128】
図1】本発明に記載の特定のコンジュゲート生成物の代表的な図形であって、ラベルL1およびL2は、ジスルフィドにおいて再架橋するか、または内部架橋する頭部基を表記し、黒い曲線は、スペーサーを示す図形である。天然ジスルフィドは、黒点で繋がる黒線によって示される。
図2】メチルエステル誘導体化された3,4-および3,5-リンカー化合物の水溶液安定性の比較を示す図である。
図3】エステルおよびアミド誘導体化されたアリールビス-ハロアセトアミドリンカーの水溶液安定性の間の比較を示す図である。
図4】リン酸緩衝水溶液(100mM、pH7.5)中、グルタチオン(2.2当量)存在下におけるビス-ハロアセトアミド誘導体14~17の残存パーセンテージを示す図である。
図5】様々な化学量論下で、過剰なリンカー化合物2、5、8、および12を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析を示す図である。図説のために実施例4を参照すること。
図6】様々なpH下で、過剰なリンカー化合物2、5、8、および12を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析を示す図である。図説のために実施例5を参照すること。
図7】リンカー化合物3、6、10、および13を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析を示す図である。図説のために実施例6を参照すること。
図8】リンカー化合物14、15、16、および17を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析を示す図である。図説のために実施例7を参照すること。
図9】リンカー化合物3、6、9、および12を用いた完全に還元されたリツキシマブの架橋に関するSDS-PAGE分析を示す図である。図説のために実施例8を参照すること。
図10】化合物2、5、9、および12を用いた部分的に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析を示す図である。図説のために実施例9を参照すること。
図11】リンカー化合物5および15用いた逐次法を用いた二官能性架橋に関するSDS-PAGE分析(a)および生成物の略図(b)を示す図である。図説のために実施例9を参照すること。
図12-1】チオ架橋Fab誘導体の略図(a)、イピリムマブ-fAbを用いた部分的に還元されたTmabのコンジュゲーションに関するSDS-PAGE分析(b)(図説のために実施例10を参照)、および本発明に記載の三重特異性mAbの略図(c)を示す図である。図説のために実施例12を参照すること。
図12-2】チオ架橋Fab誘導体の略図(a)、イピリムマブ-fAbを用いた部分的に還元されたTmabのコンジュゲーションに関するSDS-PAGE分析(b)(図説のために実施例10を参照)、および本発明に記載の三重特異性mAbの略図(c)を示す図である。図説のために実施例12を参照すること。
図13-1】化合物15および17を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析(a)、化合物15からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(b)、および化合物17からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(c)を示す図である。図説のために実施例11を参照すること。
図13-2】化合物15および17を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析(a)、化合物15からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(b)、および化合物17からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(c)を示す図である。図説のために実施例11を参照すること。
図13-3】化合物15および17を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析(a)、化合物15からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(b)、および化合物17からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(c)を示す図である。図説のために実施例11を参照すること。
図13-4】化合物15および17を用いた完全に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析(a)、化合物15からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(b)、および化合物17からの反応生成物の質量分析を使用した特性評価(c)を示す図である。図説のために実施例11を参照すること。
図14】スフェロイドモデルの共焦点顕微鏡検査を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0129】
本発明の側面および態様は、添付の図面を参照してこれより論じられるであろう。さらなる側面および態様は、当業者にとって明白であろう。本文に言及されたすべての文献は、参照により本明細書に組み込まれている。
化合物の安定性
本発明のリンカー化合物は、水中で望ましい安定性を有し、容易には加水分解されない。
【0130】
pH=7のリン酸緩衝液中で保存されるビス(2-ハロアセトアミド)安息香酸メチルの水溶液安定性に著しい差異が認められた。概して、3,5-化合物(メタ配置)は、2,3-および3,4-化合物(オルト配置)よりもはるかに安定していた。興味深いことに、安定性は、化合物の各基内のハロゲン化物脱離基と直接相関することはなかった。3,4-置換安息香酸における安定性は、I<Br<Cl(最も安定)の順であった。3,5-置換安息香酸における安定性は、Br<Cl<I(最も安定)の順であった。
【0131】
興味深いことに、アリールがアミド基を有する(すなわち、Rがアミドである)場合、ハロゲン化物安定性における普通の傾向に反して、ヨードは、対応するブロモ化合物より安定している。
【0132】
アミド基を有する化合物において、オルトおよび対応するメタ化合物の安定性はより類似していた。エステル官能基をアミド官能基と交換することは、ハロゲン化物安定性における傾向を逆転させ(ヨード-はブロモ-より安定している)、2,3-修飾は、1,3-修飾と類似の安定性を有していた。L基の存在は、溶解性を改善する。
【0133】
非置換化合物(RがH)は、エステル誘導体と同じ安定性の傾向を示したが、概して、安定性がより低い。いずれの特定の理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、誘導的な電子供与性基/メソメリー的な(mesomerically)電子吸引性基Rの存在が安定性を高めることがあると考えている。したがって、記載されるいくつかの化合物、コンジュゲート、および方法において、RはHではない。
【0134】
すべてのものが、使用にあたって十分に安定している。
チオールに対する反応性
ペプチドであるグルタチオンを含む小さなチオールに対する化合物の相対的な反応性が評価された(pH=7、室温)。ビス-(2-クロロアセトアミド)は、ブロモ-またはヨード-誘導体より著しく遅い反応速度を示す。3,4-ビス-Cl化合物(4)は、3,5-ビス-Cl化合物(1)より著しく速く反応することが認められた。いずれの特定の理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、オルトおよびメタ化合物の反応性および安定性における差異は、各化合物の3D構造における差異に起因する場合があると推測する。3,5-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸メチル(1)は、平面の立体配座を有すると予測される。このため、立体障害は、(S2機構を介した)ハロゲンに結合された炭素におけるチオレートの背面攻撃を遅らせ得る。これは、3,4-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸メチル(4)のようなオルト化合物のより大きな反応性を説明し得る。化合物(4)は平面ではなく、背面攻撃においてより接近しやすい炭素を提供し得る。
【0135】
したがって、本明細書に記載されるいくつかの化合物、コンジュゲート、および方法において、リンカー化合物は、式(VIb)の化合物ではないように選択されることがある。
【0136】
クロロ-誘導体はチオールと反応し、実行可能な連結化合物であるが、本明細書に記載の実施例では、反応速度がより速いため、主にブロモ-およびヨード-アセトアミドが使用される。言い換えると、好ましくは、XはBrまたはIである。
すべてのものが、本発明の方法で使用されるために十分な反応性がある。
【0137】
化合物の選択性
エステルおよびアミド置換化合物および非置換アリーレン化合物では、トラスツズマブと反応した場合に、オルト-およびメタ-置換リンカー化合物におけるチオール架橋のパターンが異なる。
【0138】
リンカー化合物が過剰に提供される場合、この反応は、1つが重鎖内(H-H)ジスルフィドを架橋する2つのリンカーに結合された半抗体生成物を生成する。本発明者らは、メタ(すなわち、1,3-ビス-(2-ハロアセトアミド)-)配置を有するリンカー化合物は、より多くのLC-LCおよびH-H間が生成されることで、より多く副生成物を生成することを認めた。したがって、抗体が完全に還元され、リンカーが過剰に(4当量以上)提供される場合、式(Ia)のオルトリンカー化合物を使用することが望ましいことがある。
【0139】
しかし、本発明者らは、オルトがより少ない「副生成物」(LC-LC、-HC間)をもたらす一方で、メタ化合物は、-HC内結合の選好性および半抗体の生成を有することを認めた。したがって、完全に還元された抗体を4当量未満のリンカーで処理する場合、半抗体コンジュゲートの生成のためには、メタ化合物(すなわち、式(Ib)のリンカー化合物)を使用することが望ましい。
【0140】
本発明者らは、位置化学的構造に関係なく、アリールビス(2-ヨードアセトアミド)化合物(XはI)は、対応するアリールビス(2-ブロモアセトアミド)化合物(XはBr)よりも-HC内連結に対する高い選好性を示すことにも注目した。したがって、半抗体コンジュゲート(図1中(1)および(3))の選好的な生成のためには、XがIである化合物が好まれる。
【0141】
HC-LCコンジュゲート(すなわち、重鎖と軽鎖を架橋しているリンカーを有する抗体)の生成において、本発明者らは、オルト化合物がより高い選択性を示すことを認めた。したがって、完全に還元された抗体を4当量未満のリンカー化合物で処理する場合、単官能化HC-LC抗体コンジュゲート(すなわち、1つのリンカーが重鎖と軽鎖を架橋している)の生成のためには、オルト化合物(すなわち、式(Ia)のリンカー化合物)を使用することが望ましい。
【0142】
本発明者らは、位置化学的構造に関係なく、アリールビス(2-ブロモアセトアミド)化合物(XはBr)は、対応するアリールビス(2-ヨードアセトアミド)化合物(XはI)よりもHC-LC連結に対する高い選好性を示すことも認めた。したがって、HC-LC抗体コンジュゲート(図1中(2))の選好的な生成のためには、XがBrである化合物が好まれる。
【0143】
化学量論量およびほぼ化学量論(わずかに過剰な)量の還元剤が使用される場合、コンジュゲートにおけるリンカーの位置は、ジスルフィド架橋還元の位置選択性によって決定され得る。
【0144】
本発明者らは、化合物が単独のHC-LCジスルフィド架橋の選択的な還元を経て、mAbあたり1つのHC-LCコンジュゲートを生成することを認めた。このように部分的に還元された抗体を使用する反応において、非置換アリーレンリンカーは、反応をより良好に進行することが示された。4当量未満の還元剤が使用される場合、HC-LCコンジュゲートの生成において非置換アリーレンリンカーは好ましい場合がある。
【0145】
実施例11は、この位置選択性の良い例示を提供する。完全に還元されたTmab(還元された4つのジスルフィド)は、2当量のみのリンカー化合物で処理された。3,4-化合物(X=I)は、LC-HCに対する高い選好性を示し、-HC内架橋に対する選好性はほぼない。3,5-化合物(X=I)は、-HC内に対する高い選好性を示し、ほぼすべてのHCが1つのリンカーを有するが、2つのリンカーを用いたHC-LCコンジュゲートも形成する(これは、1つのリンカーを有する最初の-HC内生成物は、次に、別のリンカーと反応してLCを結合することが可能であることを意味する)。1つのリンカー分子のみを含有するHC-LC生成物は認められなかった。
【0146】
本発明者らは、これらの選好性が、本明細書に記載のリツキシマブに関する実施例によって、他のmAbにまで及ぶと考えている。
このため、リンカー化合物の選択性を利用することで、完全に還元されたmAbを、限られた量(4当量未満)の本発明の任意のリンカー化合物を用いて処理することによって、トラスツズマブのようなmAbの部位選択的な単官能化を得ることが可能であることが認識されているであろう。本発明は、連続する還元とリンカー化合物を用いた処理を介するか、または異なる部位選択性を有するリンカー化合物の混合物を使用して複数のmAbを同時にヘテロ-二官能化することによってのいずれかで、mAbのヘテロ-二官能化を達成する可能性をさらに示す。
【0147】
コンジュゲートの安定性
ジアセトアミド化合物の位置化学は、そのコンジュゲート(本発明のリンカーを含む抗体、半抗体、および抗体断片)の安定性に小さな差異がある。この3,4-連結コンジュゲートは、2,3-および3,5-連結コンジュゲートよりわずかに安定している。すべてのジアセトアミドコンジュゲーション生成物は、グルタチオンを用いたマレイミドのコンジュゲーション生成物より著しく安定していることが認められた。ジチオトレイトール(DTT)の存在下で保存した場合、すべてのコンジュゲートは、DTTなしで保存されたサンプルと同程度の安定性を示す。
【0148】
定義
抗体
抗体という用語は、当該分野で十分に理解されており、免疫グロブリン(Ig)と同意語である。ヒトでは、5種類の抗体、IgG、IgA、IgM、IgE、およびIgDがある。抗体という用語は、すべての種類を含むことが意図されるが、本明細書における抗体の種類は、もっぱらIgGであろうことが認識されているであろう。本発明者らは、IgGアイソタイプの間に共通の特徴を認め、例えば、IgG1およびIgG4を試験し、リンカー化合物および生成物に対する同等の選択性を認めた。抗体という用語は、モノクローナル抗体を包含することが意図されることも当業者にとって明白であろう。実施例は、モノクローナル抗体であるトラスツズマブ、イピリムマブ、およびリツキシマブを使用する。これらのモノクローナル抗体は、場合によって好まれることがあるが、本発明がそられに限定されることを意図するものではないことは、理解されるべきである。
【0149】
本明細書で使用する場合、文脈上別段の指示がない限り、抗体という用語は、全体の抗体、つまり、Y-配置の単量体形態である両重鎖および両軽鎖を指す。
【0150】
半抗体
半抗体という用語は、当該分野で理解されており、重鎖-軽鎖ペアを述べるために本明細書で使用される。
【0151】
抗体断片
本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、抗体断片という用語は、抗体の可変領域から生成され得る抗原架橋断片を指す。このため、抗体断片という用語は、F(ab’)、Fab、Fab’、およびFv抗体断片を包含することが意図される。抗体断片は、目的に応じて選択されるであろうが、適切な抗体断片の選択および連結は、当業者の能力の範囲内であることは理解されるであろう。特に好ましい断片は、Fab断片である。
【0152】
いくつかの態様において、本発明は三重特異性抗体に関する。このように、特異的なFab-Mabコンジュゲートは生成され得る(図1の(4)および(8)参照)。
抗体コンジュゲート
「コンジュゲート」という用語は、本明細書で使用する場合、生成物中の本発明に記載のリンカーの存在を指す。このリンカーは、抗体、半抗体、または抗体断片に結合される。結合され得るリンカーは、2つの鎖を再架橋する場合があるか、または重鎖間というよりも、重鎖内ジスルフィドを連結する場合がある。
【0153】
リンカーは、追加の部分、例えば、抗体、半抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、薬物、または他の化合物(例えば、蛍光標識または放射性標識)に結合することがある。例えば、リンカー化合物18のようなリンカー化合物は、チオール架橋を再架橋することができる2つのビス(ハロアセトアミド)頭部基を含み、そのため、例えば、mAbタンパク質コンジュゲートの形成のために使用され得るが(実施例10参照)、リンカー化合物14、15、16、および17は、例えば、クリックケミストリーまたはアミドカップリングを介して、追加の部分を結合するために使用され得るアジドを含む。
【0154】
本明細書に記載のコンジュゲートが追加の部分と連結される場合、「コンジュゲート生成物」という用語が使用される。コンジュゲート生成物の例には、fAb-mAbコンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲート、mAb-タンパク質コンジュゲート、および標識されたコンジュゲート(例えば、mAb-フルオロフォアコンジュゲート)が含まれる。
【0155】
タンパク質またはポリペプチド
本発明のリンカーは、例えば、mAb-タンパク質コンジュゲートを生成するために使用され得る。タンパク質という用語は、抗体、半抗体、または抗体断片を包含するが、本明細書で使用する場合、この用語は、非抗体タンパク質を包含することが意図される。ポリペプチドという用語は、短鎖のアミノ酸を指す。これは、例えば、リンカー化合物14、15、16、および17のアジド部分を介して(還元およびペプチドカップリングを介して)コンジュゲートされ得るか、または化合物18の使用を介して直接導入され得る。多くのポリペプチド薬物は、当該分野で既知であり、本発明の方法および生成物において有用である場合がある。
【0156】
略語
当該分野において、抗体命名法の大文字は変化することは理解されるであろう。以下の定義は、以下の一覧で使用されている大文字と小文字の組合せに限定されることを意図するものではない。
【0157】
Ab-抗体
Mab/mAb-モノクローナル抗体
TCEP-トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(HCl塩とし供給されることが多い)。
【0158】
Tmab/TmAb-トラスツズマブ
IFab/IfAb-イピリムマブのFabフラグメント
Imab/ImAb-イピリムマブ
前述の説明、以下の特許請求の範囲、もしくは添付の図面で開示された特徴、それらの具体的な形態または開示された機能を実行するための手段、もしくは開示された結果を得るための方法もしくは工程の用語で表現された特徴は、必要に応じて、このような特徴を個別に、または任意の組合せで、多様なその形態における本発明を理解するために利用され得る。
【0159】
本発明は、上述の例示的な態様によるコンジュゲーションにおいて説明されているが、この開示が与えられる場合、多くの同等の修正および変形は、当業者にとって明白であろう。したがって、上記の本発明の例示的な態様は、例示的であり、限定しないとみなされる。記載の態様に対する種々の変更は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行われることがある。
【0160】
あらゆる疑念を回避するために、本明細書で提供されるすべての理論的説明は、読者の理解を高める目的のために提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれかによって束縛されることを望まない。
【0161】
本明細書で使用されたすべての項の見出しは、組織化の目的のみのためであり、記載の主題を限定するとみなされるべきではない。
以下に続く特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上別段の解釈を要する場合を除き、単語「含む(comprise)」および「含む(include)」、ならびに「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」および「含んでいる(including)」のような変化形は、定めた整数またはステップまたは整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の整数またはステップまたは整数もしくはステップの群を除外することを意味するのではないと理解されるであろう。
【0162】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことは留意するべきである。範囲は、本明細書において「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表現されることがある。このような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値から、および/または別の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の態様を形成することは理解されるであろう。数値に関連する「約」という用語は、任意的であり、例えば、±10%を意味する。
【実施例
【0163】
実施例1
3,5-ビス(2-ハロアセトアミド)安息香酸メチルの一般的合成
本発明の化合物を連結する3,5-ビス(2-ハロアセトアミド)安息香酸メチルは、以下の一般的合成に従って作製され得る(式中、必要に応じて、XはBrまたはClである)。
【0164】
【化16】
【0165】
化合物1
2-塩化クロロアセチル(1.35g、12.04mmol、2当量)を、3,5-ジアミノ安息香酸メチル(1g、6.02mmol)の冷却したDCM溶液に滴下して加えた。この混合物を加温して、室温で2時間撹拌した。得られた溶液を、水、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で留去してアセトアミド(1)を淡黄色の固体として得た(1.7g、89%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 8.31 (s, 2H, NH), 8.20 (s, 1H, Ar), 7.93 (s, 2H, Ar), 4.16 (s, 2H, 2x CH2), 3.88 (s, 3H, Me). 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 165.82, 164.10, 137.58, 131.88, 117.45, 115.56, 52.45, 42.71.ESI-HRMS:予測値C1212ClNa(M+Na)=m/z341.0066。実測値:m/z341.0077。
【0166】
化合物2
3,5-ジアミノ安息香酸メチル(1.0g、6.02mmol)を、DMF(10mL)に溶解し、10分間にわたって撹拌しながら臭化ブロモアセチル(2.4当量、1.26mL、14.45mmol)を滴下して加えた。溶液を24時間撹拌放置し、次に、酢酸エチルで150mLにメスアップし、水(4×30mL)およびブライン(30mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。この溶媒を減圧下で留去し、淡橙色の結晶を得た(2)(1.86g、収率76%)。1H NMR, 400 MHz, CDCl3: δ 9.48 (s, 1H), 8.1 (s, 1H), 7.9 (s, 2H) 3.88 (s, 4H), 3.77 ppm (s, 3H); 13C NMR, 500MHz, CDCl3: δ166.3, 165.0, 138.8, 131.2, 116.5, 115.1, 52.1, 26.8 ppm;HRMS-ESI:計算値C12H12N2O4Br2+:406.9237;実測値:406.9261。
【0167】
化合物3
KI(1.56g、9.43mmol、2当量)を、3,5-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸メチル(1)(1g、3.14mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を3時間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去してアセトアミド(3)を黄色の固体として得た(1g、63%)。1H NMR (CD3COCD3, 500 MHz): δ 9.91 (s, 1H), 8.20 (s, 1H), 8.16 (s, 2H), 4 (s, 4H), 3.89 (s, 3H). 13C NMR (CD3COCD3, 126 MHz): δ 166.82, 166.09, 140.01, 127.53, 131.52, 115.56, 114.00, 51.85, -0.00.HRMS:予測値C1213(M+H)=m/z502.8969、実測値:m/z502.8959。
3,4-ビス(2-ハロアセトアミド)安息香酸メチルの合成
本発明の化合物を連結する3,4-ビス(2-ハロアセトアミド)安息香酸メチルは、以下の一般的合成に従って作製され得る(式中、必要に応じて、XはBrまたはClである)。
【0168】
【化17】
【0169】
化合物4
2-塩化クロロアセチル(1.35g、12.04mmol、2当量)を、3,4-ジアミノ安息香酸メチル(1g、6.02mmol)の冷却したDCM溶液に滴下して加えた。この混合物を加温して、室温で2時間撹拌した。得られた溶液を、水、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で留去してアセトアミド(X)を淡黄色の固体として得た(1.5g、79%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.84 (s, 1H, NH), 8.54 (s, 1H, NH), 8.04 (d, J = 2 Hz, 1H, Ar), 7.94 (dd, J = 8.4, 2 Hz, 1H, Ar), 7.75 (d, J = 8.4 Hz, 1H, Ar), 4.19 (d, J = 12 Hz, 4H, 2 x CH2), 3.88 (s, 3H, Me). 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 165.82, 164.10, 137.58, 131.88, 117.45, 115.56, 52.45, 42.71.ESI-HRMS:予測値C1212ClNa(M+Na)=m/z341.0066。実測値:m/z341.0086。
【0170】
化合物5
2-臭化ブロモアセチル(2.91g、14.44mmol、2.4当量)を、室温で、3,4-ジアミノ安息香酸メチル(1.0g、6.02mmol、1.0当量)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液に滴下して加えた。この反応混合物を、室温で24時間撹拌し続けた。約150mLの酢酸エチルを加えて溶液とし、これを蒸留水で3回、飽和塩化アンモニウムで1回洗浄し、MgSOで乾燥させ、残留溶媒を減圧下で留去して、3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)を帯黄色の粉末として得た(2.40g、98%)。さらに、DCMを用いた再結晶化を行った。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 8.75 (s, 1H, NH), 8.47 (s, 1H, NH), 8.05 (s, 1H, Ar), 7.98 (d, J = 8 Hz, 1H, Ar), 7.77 (d, J = 8 Hz, 1H, Ar), 4.07 (s, 2H, CH2), 4.04 (s, 2H, CH2), 3.91 (s, 3H, CH3). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ167.79, 167.15, 165.31, 134.72, 128.82, 127.21, 126.40, 124.76, 52.43, 29.11.Esi-HRMS:予測値C1212Br(M+H)=m/z404.9091、実測値:m/z404.9130。
【0171】
化合物6
KI(1.56g、9.43mmol、2当量)を、3,4-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸メチル(4)(1g、3.14mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を3時間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去してアセトアミド(6)を黄色の固体として得た(1g、63%)。1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 9.73 (s, 1H), 9.61 (s, 1H), 8.02 (1H), 7.80 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.65 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 3.86 (s, 4H). 13C NMR (CDCl3, 126 MHz): δ 167.79, 167.15, 165.94, 127.53, 127.36, 126.65, 124.22, 52.11, -0.74, -1.0.HRMS:予測値C1213(M+H)=m/z502.8969、実測値:m/z502.8959。
【0172】
化合物7
2,3-ジアミノ安息香酸(1.0g、6.57mmol、1当量)を、10mLの無水メタノール(MeOH)に溶解し、濃縮HSOを4滴加えてpH=1に酸性化した。反応液を50℃に加熱し、撹拌しながら72時間還流した。続いて、生成物を炭酸ナトリウムで中和し、減圧下で濃縮した。次に、残留溶液を、蒸留水で3回、飽和塩化アンモニウムで1回洗浄し、MgSOで乾燥させ、過剰な溶媒を減圧下で留去して、2,3-ジアミノ安息香酸メチルを暗褐色の固体として得た(0.70g、64%)。次に、2-臭化ブロモアセチル(0.58g、2.88mmol、2.4当量)を、室温で、2,3-ジアミノ安息香酸メチル(0.2g、1.20mmol、1.0当量)の無水DCM溶液に滴下して加えた。反応フラスコを、室温で24時間撹拌し続けた。次に、得られた溶液を、蒸留水で3回、濃縮塩化アンモニウムで1回洗浄し、MgSOで乾燥させ、過剰な溶媒を減圧下で留去して、2,3-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(7)を帯黄色の固体として得た(0.38g、78%)。1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 10.70 (s, 1H, NH), 9.07 (s, 1H, NH), 7.92 (d, J = 8 Hz, 2H, Ar), 7.38 (t, J = 8 Hz, 1H, Ar), 4.09 (s, 2H, CH2), 3.99 (s, 2H, CH2), 3.95 (s, 3H, CH2). 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ167.33, 166.17, 164.80, 131.99, 128.79, 126.38, 122.61, 52.89, 29.28, 28.61.ESI-HRMS:予測値C1212Br(M+H)=m/z406.9237、実測値:m/z406.9251。
【0173】
化合物8
2-塩化クロロアセチル(9.3g、84mmol、6当量)を、ベンゼン-1,3-ジアミン(1.5g、14mmol)の冷却したNaOH(0.55M)水溶液に滴下して加えた。この混合物を加温して、室温で一晩撹拌した。得られた析出物を濾過し、水で5~6回洗浄し、高真空下で完全に乾燥させてアセトアミド(8)を白色の固体として得た(0.97g、27%)。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 10.34 (s, 2H, NH), 7.96 (t, J = 2.0 Hz, 1H, Ar), 7.37- 7.25 (m, 3H, Ar), 4.25 (s, 4H, 2 x CH2). 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz): δ 164.61, 138.82, 129.14, 114.81, 110.36, 45.53.ESI-HRMS:予測値C1010ClNa(M+Na)=m/z283.0012。実測値:m/z283.0049。
【0174】
化合物9
2-臭化ブロモアセチル(2.05g、10.2mmol、2.2当量)を、ベンゼン-1,3-ジアミン(0.5g、4.6mmol)およびTEA(1.35g、13.3mmol、2.2当量)の冷却したDCM溶液に滴下して加えた。得られた析出物を濾過し、水で5~6回洗浄した後にエーテルで洗浄した。この固体化合物を、高真空下で乾燥させてアセトアミド(9)を淡黄色の固体として得た(2.48g、77%)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ 10.42 (s, 2H, 2 X NH), 7.96 (t, J = 2.0 1H, Ar), 7.37-7.24 (m 3H, Ar), 4.04 (s, 4H, 2 X CH2). 13C NMR (DMSO-d6, 126 MHz): δ 164.79, 138.95, 129.14, 114.72, 110.17, 30.36.ESI-HRMS:予測値C1010BrNa(M+Na)=m/z370.9001。実測値:m/z370.9039。
【0175】
化合物10
KI(1.3g、7.7mmol、4当量)を、N,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(8)(0.50g、1.9mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を3時間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去してアセトアミド(10)を黄色の固体として得た(0.63g、74%)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ 10.36 (s, 2H, NH), 7.92 (t, J = 2.0 Hz, 1H, Ar), 7.33-7.22 (m, 3H, Ar), 3.83 (s, 4H, 2 X CH2). 13C NMR (DMSO-d6, 126 MHz): δ 166.56, 139.18, 129.10, 114.36, 109.86, 1.58.HRMS:予測値C1010Na(M+Na)=m/z466.8724、実測値:m/z466.8758。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間、8.89分間、純度、93.4%。
【0176】
化合物11
2-塩化クロロアセチル(9.3g、84mmol、6当量)を、ベンゼン-1,2-ジアミン(1.5g、14mmol)の冷却したNaOH(0.55M)水溶液に滴下して加えた。この混合物を加温して、室温で一晩撹拌した。得られた析出物を濾過し、水で5~6回洗浄し、得られた固体化合物を、高真空下で完全に乾燥させてアセトアミド(11)を白色の固体として得た(1.8g、51%)。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 9.69 (s, 2H, NH), 7.55 (dd, J = 7.4, 3.7 Hz, 2H, Ar), 7.23 (dd, J = 6.1, 3.5, 2 Hz, 2H, Ar), 4.34 (s, 4H, 2 x CH2). 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 165.12, 130.17, 125.61, 125.08, 43.19.ESI-HRMS:予測値C1010ClNa(M+Na)=m/z283.0012。実測値:m/z283.0010。
【0177】
化合物12
2-臭化ブロモアセチル(2.05g、10.2mmol、2.2当量)を、ベンゼン-1,2-ジアミン(0.50g、4.6mmol)およびTEA(1.30g、10.2mmol、2.2当量)の冷却したDCM溶液に滴下して加えた。得られた析出物を濾過し、水で5~6回洗浄した後にエーテルで洗浄した。この固体化合物を、真空下で乾燥させてアセトアミド(12)を黄色の固体として得た(1.87g、58%)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ 9.71 (s, 2H, NH), 753 (dd, J = 7.5, 3.7 Hz, 2H, Ar), 7.23 (dd, J = 6.0, 3.5 Hz 2H, Ar), 4.13 (s, 4H, 2 X CH2). 13C NMR (DMSO-d6, 126 MHz): δ 165.14, 130.27, 125.56, 124.93, 30.14.ESI-HRMS:予測値C1010BrNa(M+Na)=m/z370.9001。実測値:m/z370.9012。
【0178】
化合物13
KI(1.3g、7.7mmol、4当量)を、N,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(11)(0.50g、1.9mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を3時間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去してアセトアミド(13)を黄色の固体として得た(0.63g、45%)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ 9.63 (s, 2H, NH), 7.49 (dd, J = 7.4, 3.7 Hz, 2H, Ar), 7.20 (dd, J = 6.1, 3.5 Hz, 2H, Ar), 3.90 (s, 4H, 2 X CH2). 13C NMR (DMSO-d6, 126 MHz): δ 166.92, 130.42, 125.35, 124.70, 1.49.HRMS:予測値C1010Na(M+Na)=m/z466.8724。実測値:m/z466.8770。
【0179】
化合物14
3,5-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸(19)の合成
【0180】
【化18】
【0181】
2-塩化クロロアセチル(1.62g、14.5mmol、2.2当量)を、3,4-ジアミノ安息香酸(1.0g、6.6mmol)の冷却したTHF溶液に滴下して加えた。この混合物を加温して、室温で2時間撹拌した。得られた析出物を濾過し、水で5~6回洗浄し、次に、高真空下で完全に乾燥させてアセトアミド(19)を淡黄色の固体として得た(1.8g、90%)。1H NMR (CD3COCD3, 400 MHz): δ 9.64 (s, 2H, NH), 8.24 (d, J = 78.3 Hz, 3H, Ar), 4.30 (s, 4H, CH2). 13C NMR (CD3COCD3, 101 MHz) δ 166.91, 140.07, 132.58, 117.11, 115.48, 44.07.ESI-HRMS:予測値C11Cl(M-H)=m/z302.9939。実測値:m/z302.9956。
3,5-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸2,5-ジオキソピロリジン-1-イル(20)の合成
【0182】
【化19】
【0183】
EDC.HCl(0.63g、3.3mmol、1.1当量)のDMF(5mL)溶液を、室度で、酸(19)(1g、3mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(0.38g、3.3mmol、1.1当量)の撹拌されているTHF溶液に加えた。次に、反応液を室温で2時間撹拌した後に、減圧下で濃縮した。得られた残渣をEtOAcに溶解し、水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で留去して泡状の固体を得た。この粗製物を、析出(EtOAc/石油エーテル)によってさらに精製してアセトアミド(20)を黄色の固体として得た(0.75g、57%)。1H NMR (CD3COCD3, 400 MHz,): δ 9.78 (s, 2H, NH), 8.34 (d, J = 64.1 Hz, 3H, Ar), 4.32 (s, 4H, 2 x ClCH 2CO), 2.99 (s, 4H, COCH2CH2CO). 13C NMR (CD3COCD3, 101 MHz): δ 170.86, 170.43, 170.37, 165.95, 162.44, 140.81, 127.32, 117.21, 117.15, 44.06, 26.40.ESI-HRMS:予測値C1513ClNa(M+Na)=m/z424.0074。実測値:m/z424.0106。
2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタン-1-アミン(22)
【0184】
【化20】
【0185】
PhP(0.54g、2.1mol、1当量)のエーテル(5mL)溶液を、トリ-PEGアジド(21)(0.50g、2.1mmol)のHCl(5%、5mL)水溶液に滴下して加え、この混合物を24時間撹拌放置した。次に、エーテルを減圧下で除去し、PhPオキシドが水層中に検出されなくなるまで、水層をDCMで抽出した。水層をpH=12に調整し、アジド連結アミンをDCMで水層から抽出した。このDCM溶液を合わせたものを、減圧下で留去してアジド連結アミン(22)を薄黄色の液体として得た(0.25g、56%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 3.65 - 3.53 (m, 11H), 3.44 (td, J = 5.2, 1.3 Hz, 2H), 3.41 - 3.22 (m, 3H), 2.79 (td, J = 5.3, 1.4 Hz, 2H). 13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ 73.41, 70.65, 70.60, 70.58, 70.23, 69.95, 50.63, 41.75.ESI-HRMS:予測値C19(M+H)=m/z219.1452。実測値:m/z219.1464。
N,N’-(5((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(23)
【0186】
【化21】
【0187】
2-(2-アジドエトキシ)エタン-1-アミン(22)(0.34g、1.6mmol、1.3当量)を、活性化エステル(20)(0.50g、1.2mmol)の無水THF溶液に加えた。次に、反応混合物を室温で1時間撹拌した後に、減圧下で濃縮した。得られた残渣をDCMに溶解し、水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で留去した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(5%~20%MeOH/DCM)によってさらに精製してアジド連結アセトアミド(23)を白色の固体として得た(0.39g、62%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz,): δ 8.78 (s, 2H, NHCH), 8.02 (s, 1H, Ar), 7.68 (s, 2H, Ar), 7.20 (d, J = 8.8 Hz, 1H, CONHCH2), 4.13 (s, 4H, 2 x ClCH 2CO), 3.75 - 3.41 (m, 14H), 3.27 (t, J = 5.0 Hz, 2H, CH2 CH2N3). 13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ166.77, 164.69, 137.88, 135.96, 115.04, 114.31, 70.57, 70.51, 70.47, 70.24, 69.84, 69.55, 50.57, 42.96, 40.08.ESI-HRMS:予測値C1513ClNa(M+Na)=m/z424.0074。実測値:m/z424.0106。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:6.54分間、純度:99.3%。
N,N’-(5-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(14)
【0188】
【化22】
【0189】
KBr(1.4g、12mmol、6当量)を、N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(23)(1.0g、2.0mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を4日間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(50%~70%アセトン/クロロホルム)によってさらに精製してアジド連結アセトアミド14を黄色の固体として得た(0.6g、51%)。1H NMR (CDCl3, 500 MHz,): δ 8.79 (s, 2H, 2 x NHCH), 7.96 (s, 1H, Ar), 7.67 (s, 2H, Ar), 7.10 (s, 1H, NHCH), 3.95 (s, 4H, BrCH 2CO), 3.84 - 3.44 (m, 14H), 3.27 (t, J = 5.0 Hz, 2H, CHCH2N3). 13C NMR (CDCl3,126 MHz): δ 167.04, 164.62, 138.22, 135.84, 114.87, 114.14, 70.67, 70.59, 70.55, 70.36, 69.94, 69.59, 50.64, 40.24, 29.42.ESI-HRMS:予測値C1927Br(M+H)=m/z593.0353。実測値:m/z593.0344。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、40%MeCN:60%水。280nmで検出。保持時間:6.52分間、純度:99.4%。
【0190】
化合物15
N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(15)
【0191】
【化23】
【0192】
KI(1.0g、8.0mmol、4当量)を、N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(23)(1.0g、2.0mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を3時間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(50%~70%アセトン/クロロホルム)によってさらに精製してアジド連結アセトアミド(15)を黄色の固体として得た(1.19g、88%)。1H NMR (CD3COCD3, 500 MHz): δ 9.98 (s, 2H, 2 x NHCH), 7.93 (d, J = 3.7 Hz, 3H, Ar), 7.69 (d, J = 5.3 Hz, 1H, CONHCH2), 3.95 (s, 4H, ICH 2CO), 3.60 - 3.11 (m, 16H). 13C NMR (CD3COCD3, 126 MHz): δ 170.49, 167.51, 140.48, 137.24, 114.46, 113.41, 71.14, 70.58, 51.42, 40.42, 1.34.ESI-HRMS:予測値C1927Cl(M+H)=m/z505.1364。実測値:m/z505.141600。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:10.31分間、純度:97.8%。
【0193】
化合物16
3,4-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸(24)
【0194】
【化24】
【0195】
2-塩化クロロアセチル(1.62g、14.5mmol、2.2当量)を、3,4-ジアミノ安息香酸(1.0g、6.6mmol)の冷却したTHF溶液に滴下して加えた。この混合物を加温して、室温で2時間撹拌した。得られた析出物を濾過し、水で5~6回洗浄し、得られた固体化合物を、高真空下で完全に乾燥させてアセトアミド(24)を白色の固体として得た(1.8g、90%)。1H NMR (DMF-d7, 500 MHz): δ 10.09 (d, J = 20.4 Hz, 2H, NH), 8.30 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar), 8.00 - 7.83 (m, 2H, Ar), 4.45 (d, J = 7.7 Hz, 4H, CH2). 13C NMR (126 MHz, DMF-d7): δ 166.86, 166.02, 165.84, 135.31, 129.94, 128.03, 127.15, 127.00, 124.12, 43.64, 43.56.ESI-HRMS:予測値C1111ClNa(M+Na)=m/z305.0090。実測値:m/z305.0092。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:4.38分間、純度:93%。
3,4-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸2,5-ジオキソピロリジン-1-イル(25)
【0196】
【化25】
【0197】
EDC.HCl(0.63g、3.3mmol、1.1当量)のDMF(5mL)溶液を、室度で、酸(24)(1g、3mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(0.38g、3.3mmol、1.1当量)の撹拌されているTHF溶液に加えた。次に、反応混合物を室温で2時間撹拌した後に、減圧下で濃縮した。得られた残渣をEtOAcに溶解し、水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で留去して泡状の固体を得た。この粗製物を、析出(EtOAc/石油エーテル)によってさらに精製してアセトアミド(25)を黄色の固体として得た(0.6g、45%)。1H NMR (CD3COCD3, 400 MHz): δ 9.51 (d, J = 16.2 Hz, 2H, NH), 8.34 (s, 1H, Ar), 8.18 - 7.89 (m, 2H, Ar), 4.38 (s, 4H, 2 x ClCH 2CO), 2.98 (s, 4H, COCH2CH2CO). 13C NMR (CD3COCD3, 100 MHz): δ 170.48, 166.85, 166.31, 161.95, 138.26, 130.66, 129.04, 128.65, 125.21, 122.83, 43.88, 26.39.ESI-HRMS:予測値C1513ClNa(M+Na)=m/z424.0074。実測値:m/z424.0094。
N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(26)
【0198】
【化26】
【0199】
2-(2-アジドエトキシ)エタン-1-アミン(22)(0.34g、1.6mmol、1.3当量)を、活性化エステル(25)(0.50g、1.2mmol)の無水THF溶液に加えた。次に、反応混合物を室温で1時間撹拌した後に、減圧下で濃縮した。得られた残渣をDCMに溶解し、水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で留去した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(5%~20%MeOH/DCM)によってさらに精製してアジド連結アセトアミド(26)を白色の固体として得た(0.25g、40%)。1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 9.05 (s, 2H, 2 x NHCH), 7.66 (s, 1H, Ar), 7.58 - 7.40 (m, 2H, Ar), 7.14 (t, J = 5.4 Hz, 1H, CONHCH2), 4.15 (d, J = 10.6 Hz, 4H, 2 x ClCH 2CO), 3.69 - 3.46 (m, 14H), 3.26 (t, J = 5.0 Hz, 2H, CH2CH 2 N3). 13C NMR (CDCl3, 126 MHz): δ166.29, 166.09, 165.49, 132.96, 132.74, 129.15, 125.57, 125.10, 124.86, 70.63, 70.60, 70.51, 70.24, 69.94, 69.65, 50.63, 42.91, 42.68, 40.01.ESI-HRMS:予測値C1927Cl(M+H)=m/z505.1364。実測値:m/z505.1365。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:6.76分間、純度:99.8%。
N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(16)
【0200】
【化27】
【0201】
KBr(1.4g、12mmol、6当量)を、N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(26)(1.0g、2.0mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を4日間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(50%~70%アセトン/クロロホルム)によってさらに精製してアジド連結アセトアミド16を白色の固体として得た(0.5g、43%)。1H NMR (CDCl3, 500 MHz,): δ 9.02 (s, 1H, NHCH), 8.96 (s, 1H, NHCH), 7.79 (d, J = 2.0 Hz, 1H, Ar), 7.70 - 7.60 (m, 2H, Ar), 7.15 (s, 1H, CONHCH2), 4.09 (d, J = 12.2 Hz, 4H, BrCH 2CO), 3.78 - 3.50 (m, 14H), 3.37 (t, J = 5.0 Hz, 2H, CHCH2N3). 13C NMR (CDCl3,126 MHz): δ 166.31, 165.79, 165.13, 133.28, 132.55, 132.28, 125.68, 125.14, 124.79, 70.64, 70.62, 70.52, 70.26, 69.96, 69.63, 50.65, 40.10, 29.71, 29.09, 28.71.ESI-HRMS:予測値C1927Br(M+H)=m/z593.0353。実測値:m/z593.0344。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:7.62分間、純度:99.1%。
【0202】
化合物17
N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(17)
【0203】
【化28】
【0204】
KI(1.0g、8.0mmol、4当量)を、N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-クロロアセトアミド)(26)(1.0g、2.0mmol)の無水アセトン(20mL)溶液に加えた。この混合物を3時間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(50%~70%アセトン/クロロホルム)によってさらに精製してアジド連結アセトアミド(17)を黄色の固体として得た(1g、73%)。1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 9.30 (s, 1H, 2 x NHCH), 9.17 (s, 1H, NH), 7.61 (s, 1H, Ar), 7.41 (s, 1H, CONHCH2), 7.27 (s, 2H, Ar), 3.93 (d, J = 10.8 Hz, 4H, 2 x ICH 2CO), 3.75 - 3.48 (m, 14H), 3.36 (t, J = 5.0 Hz, 2H, CH2CH 2N3). 13C NMR (CDCl3, 126 MHz): δ170.97, 168.13, 166.49, 129.71, 125.31, 125.01, 70.48, 70.31, 70.24, 69.73, 50.60, 40.09, -0.33, -0.53.ESI-HRMS:予測値C1927(M+H)=m/z689.0076。実測値:m/z689.0108。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:9.10分間、純度:96.2%。
【0205】
化合物18
3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン-1,23-二トシレート(27)
【0206】
【化29】
【0207】
4-トルエンスルホニルクロリド(1.33g、7.02mmol、2.6当量)を、無水ピリジン(0.51g、6.5mmol、2.4当量)および3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン-1,23ジオール(1.0g、2.7mmol)の無水DCM(10mL)溶液に加え、この混合物を、室温のN下で一晩撹拌放置した。次に、溶液を減圧下で濃縮し、標準的な後処理(EtOAc)を行った。次に、得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(40~80%EtOAc/石油エーテル)によって精製して3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン-1,23-二トシレート(27)を無色の油状物として得た(1.1g、60%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.81 - 7.68 (m, 4H, Ar), 7.34 - 7.26 (m, 4H, Ar), 4.23 - 4.01 (m, 4H, 2x SO2OCH 2), 3.70 - 3.48 (m, 28H), 2.39 (d, J = 1.5 Hz, 6H, CHCCH 3). 13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ 144.74, 132.87, 129.77, 127.92, 70.67, 70.54, 70.49, 70.44, 69.20, 68.60, 21.60.ESI-HRMS:予測値C304713(M+H)=m/z679.2453。実測値:m/z679.2448。
1,23-ジアジド-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン(28)
【0208】
【化30】
【0209】
アジ化ナトリウム(2g、30mmol、10当量)を、二トシレート(27)(2.0g、3.0mmol)のDMF溶液に加え、この混合物を80℃で一晩撹拌した。次に、混合物を減圧下で濃縮してDMFを除去し、この生成物を、酢酸エチルを使用して(3×20mL)抽出した。次に、有機抽出液を飽和ブライン溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮してジアジド(28)を無色の油状物として得た(1g、80.6%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 3.66 - 3.54 (m, 28H), 3.36 - 3.28 (m, 4H, 2x N3CH2). 13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ 13C NMR δ 70.62, 69.96, 50.60.ESI-HRMS:予測値C1633(M+H)=m/z421.2405。実測値:m/z421.2466。
1,23-ジアミノ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン(29)
【0210】
【化31】
【0211】
トリフェニルホスフィン(1.87g、7.14mmol、3当量)を、ジアジド(28)(1.0g、2.4mmol)の撹拌されている無水THF溶液に少しずつ加えた。この反応液を室温で一晩撹拌した。水(50mL)を加え、反応液を、室温で一晩撹拌放置した。THFを減圧下で留去し、反応液を濾過し、次に、この濾液をDCM(3×100mL)で洗浄してホスフィンオキシドを除去した。この濾液を、減圧下で留去してジアミノ-PEG(29)を黄色の油状物として得た(0.50g、57%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz,): δ 3.58 (dd, J = 2.4, 1.1 Hz, 24H), 3.44 (t, J = 5.2 Hz, 4H, 2x NH2CH2CH 2O), 2.80 (t, J = 5.2 Hz, 4H, 2x NH2CH 2CH2O), 1.67 (s, 4H, 2x NH 2). 13C NMR (CDCl3,101 MHz,): δ 73.27, 70.48, 70.18, 41.68.ESI-HRMS:予測値C1637(M+H)=m/z369.2600。実測値:m/z369.2850。
N,N’,N’’,N’’’-((5,8,11,14,17,20,23-ヘプタオキサ-2,26-ジアザヘプタコサンジオイル)ビス(ベンゼン-4,1,2-トリイル))テトラキス(2-クロロアセトアミド)(30)
【0212】
【化32】
【0213】
1,23-ジアミノ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン(29)(150mg、0.407mmol)を、活性化エステル(25)(409mg、1.02mmol、2.5当量)の無水THF無水溶液に加えた。次に、反応混合物を室温で2時間撹拌した後に、減圧下で濃縮した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(5%~20%MeOH/DCM)によって精製してアセトアミド(30)を白色の固体として得た(340mg、89%)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz,): δ 9.81 (d, J = 25.2 Hz, 4H), 8.54 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 7.98 (s, 2H), 7.73 (d, J = 1.4 Hz, 4H), 4.35 (d, J = 9.3 Hz, 8H), 3.64 - 3.45 (m, 28H), 3.41 (q, J = 5.9 Hz, 4H).13C NMR (DMSO-d6,126 MHz): δ 172.72, 165.38, 165.20, 165.17, 133.26, 131.12, 129.13, 124.98, 124.59, 123.79, 69.71, 69.56, 68.83, 43.28, 43.21.ESI-HRMS:予測値C3853Cl13(M+H)=m/z941.2419。実測値:m/z941.2451。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:5.83分間、純度:98%。
N,N’,N’’,N’’’-((5,8,11,14,17,20,23-ヘプタオキサ-2,26-ジアザヘプタコサンジオイル)ビス(ベンゼン-4,1,2-トリイル))テトラキス(2-ヨードアセトアミド)(18)
【0214】
【化33】
【0215】
KI(176mg、1.06mmol、10当量)を、N,N’,N’’,N’’’-((5,8,11,14,17,20,23-ヘプタオキサ-2,26-ジアザヘプタコサンジオイル)ビス(ベンゼン-4,1,2-トリイル))テトラキス(2-クロロアセトアミド)(30)(100mg、0.106mmol)の無水アセトン(400mL)の混合溶液に加えた。この混合物を3時間還流した。得られた混合物を濾過し、溶媒を減圧下で留去した。この粗製物を、シリカゲルクロマトグラフィー:(50%~70%アセトン/クロロホルム)によって精製してアセトアミド(18)を白色の固体として得た(130mg、93.5%)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz,): δ 9.62 (d, J = 16.8 Hz, 4H), 8.31 (d, J = 4.9 Hz, 3H), 7.98 (s, 2H), 7.84 - 7.59 (m, 4H), 3.98 (d, J = 7.0 Hz, 8H), 3.75 - 3.30 (m, 32H). 13C NMR (DMSO-d6,126 MHz): δ 167.18, 167.09, 165.31, 133.53, 130.78, 129.30, 124.57, 124.29, 123.34, 69.64, 68.87, 1.67, 1.59.ESI-HRMS:予測値C385213Na(M+Na)=m/z1330.9669。実測値:m/z1330.9765。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(0.75mL/分)、35%MeCN:65%水。280nmで検出。保持時間:9.55分間、純度:98%。
【0216】
実施例2
水溶液安定性
エステルおよびアミド官能化リンカー化合物の安定性が測定され、比較された。
【0217】
最初の実験において、4日間にわたるリンカー化合物1~6の水溶液安定性が観察された。10%DMF-d7存在下のリン酸緩衝液(100mM、pH7.5)中における安定性は、H NMR溶媒抑制法を使用して測定された。このデータは、オルト-置換されている(1,2-)ジ-ハロアセトアミドが、メタ-置換されている(1,3-)ものより低い水溶液安定性を有することを示している。図2を参照すること。
【0218】
次に、エステルおよびアミド官能化アリールビス-ハロアセトアミドリンカーの水溶液安定性の比較が、4日間にわたるビス-ハロアセトアミド誘導体(2、3、5、6および14~16)の残存パーセンテージを求めることよって行われた。再び、最終濃度が10%のDMF-d7を用いたリン酸緩衝液(100mM、pH7.5)中における安定性が、溶媒抑制法を使用して評価された。図3を参照すること。
【0219】
驚くべきことに、本発明者らは、エステル官能基をアミド官能基と交換することは、ハロゲン化物安定性における傾向を逆転させ(ヨード-はブロモ-より安定している)、3,4-修飾は、3,5-修飾と類似の安定性を有することを認めた。
【0220】
実施例3
アミノ酸のチオール側鎖との反応性
本発明のリンカー化合物の反応性は、グルタチオンとの反応によって試験された。以下の代表的な反応が説明される。類似の反応が、アミド官能化リンカー化合物を用いて実施された。
グルタチオンと3,5-ビス(2-ハロアセトアミド)安息香酸メチルの反応性
【0221】
【化34】
【0222】
グルタチオン(290mg、0.943mmol、3当量)を、リン酸ナトリウム緩衝水溶液(100mM、pH7.5、8mL)に溶解した。3,5-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸メチル(1)(100mg、0.314mmol)をTHF(2mL)に溶解し、グルタチオン水溶液に徐々に加え、室温で一晩維持した。続いて、反応液を減圧下で濃縮し、C-18クロマトグラフィー(100%HO~20%MeCN/HO)によって精製して生成物4.17を粘着性の固体として得た(0.20mg、74%)。1H NMR (D2O, 500 MHz): δ 7.73 (s, 1H, Ar), 7.56 (s, 2H, Ar), 4.57-4.54 (m, 2H, 2 x NHCHCO), 3.79 (s, 3H, OMe), 3.73 - 3.63 (m, 6H, 2 x NHCH 2COOH, CH2CHNH2), 3.40 (s, 4H, 2 x SCH 2CO), 3.13-2.89 (m, 4H, 2 x SCH 2CH), 2.43 (t, J = 8 Hz, 4H, 2 x CH2CH 2CO), 2.06-2.01 (m, 4H, 2 x CH 2CH2CO). 13C NMR (126 MHz, D2O): δ 176.17, 174.81, 174.00, 171.69, 170.39, 167.65, 137.89, 130.43, 117.32, 54.11, 52.92, 52.89, 43.42, 36.24, 33.77, 31.37, 26.19.HRMS:予測値C324416Na(M+Na)=m/z883.2209。実測値:m/z883.2187。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(1mL/分)、10%MeCN:90%水:0.1%TFA。214nmで検出。保持時間:36.39分間、純度:99%。
グルタチオンと3,4-ビス(2-ハロアセトアミド)安息香酸メチルの反応性
【0223】
【化35】
【0224】
グルタチオン(290mg、0.943mmol、3当量)を、リン酸ナトリウム緩衝水溶液(100mM、pH7.5、8mL)に溶解した。3,4-ビス(2-クロロアセトアミド)安息香酸メチル(4)(100mg、0.314mmol)をTHF(2mL)に溶解し、グルタチオン水溶液に徐々に加え、室温で一晩維持した。続いて、反応液を減圧下で濃縮し、C-18クロマトグラフィー(100%HO~20%MeCN/HO)によって精製して生成物(32)を粘着性の固体として得た(0.17mg、63%)。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 8.00 (s, 1H, Ar), 7.93 (dd, J = 8.5, 2 Hz, 1H, Ar), 7.63 (d, J = 8.5 Hz, 1H, Ar), 4.70-4.56 (m, 2H, 2 x NHCHCO), 3.86 (s, 3H, OMe), 3.76-3.65 (m, 6H, 2 x NHCH 2COOH, CH2CHNH2), 3.52-3.45 (m, 4H, 2 x SCH 2CO), 3.15-2.90 (m, 4H, 2 x SCH 2CH), 2.47-2.43 (m, 4H, 2 x CH2CH 2CO), 2.07 -2.02 (m, 4H, 2 x CH 2CH2CO). 13C NMR (126 MHz, D2O): δ 176.11, 174.88, 173.88, 171.63, 171.22, 167.95, 135.56, 128.79, 128.22, 128.04, 125.81, 54.08, 52.90, 52.81, 43.35, 35.72, 35.52, 33.85, 33.79, 31.36, 26.09.HRMS:予測値C324416Na(M+Na)=m/z883.2209。実測値:m/z883.2187。HPLC:カラム:HiQ Sil HS(150×4.60mm)。移動相:アイソクラティック:(1mL/分)、10%MeCN:90%水:0.1%TFA。214nmで検出。保持時間:14.25分間、純度:99%。
グルタチオンと2,3-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチルの反応性
【0225】
【化36】
【0226】
グルタチオン(0.11g、3.66mmol、3当量)を、6mLのリン酸緩衝液0.1M pH=7に溶解し、4mLの2,3-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(7)(0.05g、1.22mmol、1当量)のTHF溶液に加えた。この混合物を、室温で24時間撹拌し続けた。得られた生成物を逆相カラム(C18)を使用して精製し、10%アセトニトリル/水を用いて得られた画分から生成物を得た(0.05g、48%)。
アミド官能化化合物の比較
本発明者らは、グルタチオン(2.2当量)の存在下のリン酸緩衝水溶液(100mM、pH7.5)中におけるビス-ハロアセトアミド誘導体14~17の残存パーセンテージを求めることによって、本発明の種々のリンカー化合物の反応性を比較した。図4を参照すること。
【0227】
本発明者らは、加水分解(水との反応)における3,4-と3,5-アミド修飾誘導体の間に差異がないにもかかわらず、グルタチオンのチオールとそれらの反応の間に著しい差異があることを認めた。3,4-修飾誘導体は、3,5-修飾化合物よりもチオールとの反応が速い。
エステル化合物は、非常に速やかに反応するため、反応速度を測定することができなかった。
【0228】
実施例4
ブロモアセトアミドリンカーのトラスツズマブとの反応
リンカー化合物2、5、9、および12を、様々な化学量論下でトラスツズマブと反応させ、SDS-PAGEを使用して反応生成物を分析した。
【0229】
【化37】
【0230】
ビス-ブロモアセトアミドリンカーとのこの反応は、Tris.HCl緩衝液(100mM、0.15mM NaCl、5mM EDTA、pH7.5)中の完全に還元されたTmab(0.034mM)を使用した。Tmab(0.033mM)を、5当量のTCEPを用いて室温で2時間還元した。
【0231】
この分析および属する生成物は、図5に示される。
L:タンパク質ラダー、
レーン1:5当量の3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)と共にインキュベートされたTmab
レーン2:8当量の3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)と共にインキュベートされたTmab
レーン3:5当量の3,5-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(2)と共にインキュベートされたTmab
レーン4:8当量の3,5-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(2)と共にインキュベートされたTmab
レーン5:5当量のN,N’-(1,2-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(12)と共にインキュベートされたTmab
レーン6:8当量のN,N’-(1,2-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(12)と共にインキュベートされたTmab
レーン7:5当量のN,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(9)と共にインキュベートされたTmab
レーン8:8当量のN,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(9)と共にインキュベートされたTmab。
【0232】
図説:HC:重鎖、LC:軽鎖、LC-LC:軽鎖ホモ二量体、HC-HC:重鎖ホモ二量体。タンパク質試料を還元SDS-PAGE(4~12%ゲル)で分解した。
本発明者らは、オルト-(1,2-および3,4-)とメタ-(1,3-および3,5-)置換連結化合物の間でチオール架橋のパターンが異なることを認めた。過剰な(5または8当量)リンカーを使用する場合、メタ-置換リンカーは、より多くのLC-LC(47kDa)およびHC-HC(106kDa)が生成されるため、選択性がより低い。すべての反応における主な生成物は、半抗体コンジュゲートである、2つのリンカーが結合したHC-LC(75kDa)である。
【0233】
リンカー化合物5(標識されたHC-LC)との反応における生成物は、質量分析法によって分析された。3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)で架橋されたTmabは、74,528.03Daに主なピークを示し、74KDa領域におけるスペクトルの拡大によって、74,528.03Daおよび74,689.24Da(グリコフォーム)に主なピークが示された。粗反応生成物の質量分光分析は、2つのリンカーが結合しており、1つのリンカーはヒンジ領域の-HC-HC内システイン残基を架橋していることを明確にした。
【0234】
図1(1)は、鎖内重鎖-重鎖および重鎖-軽鎖(標識されたHC-LC)の2つの再架橋されたジスルフィド結合で生成された半抗体の略図を示す。図1(5)は、図1(1)に示される構造と化学的に同一であるが、半抗体に認められ得る物理的状態を表す。サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、この生成物は、150kDaの分子量を有するようにみえるであろうが、各共有結合構造は、図1(1)に表されるように、75kDa(半抗体)の質量を有する。
【0235】
非官能化リンカー化合物12との反応における反応生成物の分析は、2つのリンカーが結合しており、この場合も1つのリンカーはヒンジ領域の-HC-HC内システイン残基を架橋していることを明確にした。
【0236】
N,N’-(1,2-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(12)で架橋されたTmabのデコンボリューションスペクトルによるタンパク質MS。架橋されたTmabのMSスペクトルは、74,572.57Daに主なピークを示す一方で、74KDa領域におけるスペクトルの拡大によって、74,572.57Daおよび74,410.91Daに主なピークが示された。
【0237】
実施例5
ビス-(2-ブロモアセトアミド)-リンカーの選択性におけるpHの影響
化合物を連結するビス-(2-ブロモアセトアミド)との反応におけるpHの影響は、ビス-ハロアセトアミドリンカーと共にインキュベートされたTris.HCl緩衝液(100mM、0.15mM NaCl、5mM EDTA、pH6、7.5、または8)中の完全に還元されたTmab(0.033mM)の架橋に関するSDS-PAGE分析を実施することによって、検討された。Tmab(0.033mM)を、5当量のTCEPを用いて室温で2時間還元した。
【0238】
この分析および属する生成物は、図5に示される。
L:タンパク質ラダー、
レーン1、5、および9:5当量の3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)と共にインキュベートされたTmab、
レーン2、6、および10:5当量の3,5-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(2)と共にインキュベートされたTmab、
レーン3、7、および11:5当量のN,N’-(1,2-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(12)と共にインキュベートされたTmab、
レーン4、8、および12:5当量のN,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(9)と共にインキュベートされたTmab、
HC:重鎖、LC:軽鎖、LC-LC:軽鎖ホモ二量体、HC-HC:重鎖ホモ二量体。タンパク質試料を還元SDS-PAGE(10%ゲル)で分解した。
【0239】
pH=7.5において、最高レベルのコンジュゲーションが達成された。すべての事例において、オルト-(1,2-および3,4-)置換リンカー化合物は、メタ-(1,3-および3,5-)修飾リンカー化合物より選択性が高い(LC-LCおよび-HC-HC間がより少ない)。
【0240】
実施例6
過剰なビス-(2-ヨードアセトアミド)リンカーのトラスツズマブとの反応
リンカー化合物3、6、10、および13を、過度にトラスツズマブと反応させ、この反応生成物を、SDS-PAGEを使用して分析した。
【0241】
【化38】
【0242】
ビス-ヨードアセトアミドリンカーとのこの反応は、Tris.HCl緩衝液(100mM、0.15mM NaCl、5mM EDTA、pH7.5)中の完全に還元されたTmab(0.033mM)を使用した。Tmab(0.033mM)を、5当量のTCEPを用いて室温で2時間還元した。
【0243】
この分析および属する生成物は、図7に示される。
L:タンパク質ラダー、
レーン1:Tmab対照(非還元色素)、
レーン2:Tmab対照(還元色素)、
レーン3:5当量の3,4-ビス(2-ヨードアセトアミド)安息香酸メチル(6)と共にインキュベートされたTmab、
レーン4:5当量の3,5-ビス(2-ヨードアセトアミド)安息香酸メチル(3)と共にインキュベートされたTmab、
レーン5:5当量のN,N’-(1,2-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(13)と共にインキュベートされたTmab、
レーン6:5当量のN,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(10)と共にインキュベートされたTmab、
HC:重鎖、LC:軽鎖、LC-LC:軽鎖ホモ二量体、HC-HC:重鎖ホモ二量体。タンパク質試料を還元SDS-PAGE(10%ゲル)で分解した。
【0244】
HC:重鎖、LC:軽鎖、LC-LC:軽鎖ホモ二量体、HC-HC:重鎖ホモ二量体。タンパク質試料を還元SDS-PAGE(10%ゲル)で分解した。
類似したブロモリンカー化合物の場合と同様の選択性が認められた。
【0245】
実施例7
アミド置換リンカーのトラスツズマブとの反応の選択性
アミド官能化リンカー化合物14、15、16、および17のトラスツズマブとの反応が検討された。
【0246】
【化39】
【0247】
5当量のTCEPを用いて室温で一晩還元されたTris.HCl緩衝液(0.5M、pH7.5、5mM EDTA)中のTmab(0.013mM)の架橋に関するSDS-PAGE分析は、図8に示される。
L:ラダー、
レーン1:5当量の16と共にインキュベートされたTmab、
レーン2:5当量の14と共にインキュベートされたTmab、
レーン3:5当量の17と共にインキュベートされたTmab、
レーン4:5当量の15と共にインキュベートされたTmab。
【0248】
化合物17リンカーで再架橋されたTmabのデコンボリューションスペクトルによるタンパク質MSは、75,059.82Daに主なピークを示し、半抗体生成物に対する2つのリンカーの結合を明確にした。
【0249】
実施例8
他のモノクローナル抗体との選択性
ビス-ブロモアセトアミドリンカーを用いたTris.HCl緩衝液中の完全に還元されたリツキシマブ(0.035mM)の架橋に関するSDS-PAGE分析は、図9に示される。リツキシマブ(0.035mM)を、5当量のTCEPを用いて室温で2時間還元した。
L:タンパク質ラダー、
レーン1:5当量の3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(6)と共にインキュベートされたRmab、
レーン2:5当量の3,5-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(3)と共にインキュベートされたRmab、
レーン3:5当量のN,N’-(1,2-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(12)と共にインキュベートされたRmab、
レーン4:5当量のN,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(9)と共にインキュベートされたRmab。
【0250】
HC:重鎖、LC:軽鎖、LC-LC:軽鎖ホモ二量体、HC-HC:重鎖ホモ二量体。タンパク質試料を還元SDS-PAGE(10%ゲル)で分解した。
同様の選択性および反応生成物がトラスツズマブとの反応に認められた。1,2-化合物は、75kDaにおいてHC-LC生成物のより有効な形成と共に、LC-LCおよびHC-HC生成物がより少ないことを示す。このため、トラスツズマブを使用して認められた結果は、抗体に関する妥当な代表例と判断され得る。
【0251】
実施例9
抗体の選択的官能化
本発明者らは、リンカーの選択性が、トラスツズマブのような抗体を選択的に単官能化すること、およびヘテロ-二官能化することに利用され得ることを実証した。
【0252】
トラスツズマブの位置選択的官能化が検討された。図10は、ビス-ブロモアセトアミドリンカーを用いたTris.HCl緩衝液(100mM、0.15mM NaCl、5mM EDTA、pH6、7.5、または8)中の部分的に還元されたTmabの架橋に関するSDS-PAGE分析を示す。Tmabを、1.1当量のTCEPを用いて4℃で2時間還元し、1.1当量の各リンカーと共に室温で一晩インキュベートした。
L:タンパク質ラダー、
レーン1、9、および17:1当量の3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)、
レーン2、10、および18:1.1当量の3,5-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(2)、
レーン3、11、および19:1.1当量のN,N’-(1,2-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(12)、
レーン4、12、および20:1.1当量のN,N’-(1,3-フェニレン)ビス(2-ブロモアセトアミド)(9)。
【0253】
レーン5~8、13~16、および21~24は、上記と同じ順番であるが、非還元状態下(非還元色素)で行われた同じ反応を示している。
HC:重鎖、LC:軽鎖、LC-LC:軽鎖ホモ二量体、HC-HC:重鎖ホモ二量体。タンパク質試料を還元SDS-PAGE(10%ゲル)で分解した。
【0254】
75kDaおよび50kDaにおけるバンドの強度が同程度であることは、mAbあたり1つのHC-LCコンジュゲートを生成するために、単一のジスルフィド架橋が選択的に官能化されたことを示唆する。言い換えると、単官能化である。非官能化リンカー12および9は、非還元状態下において、より低い分子量のバンドがあまり見られないことから、反応が大いに進行したことを示唆しており、より良い結果を出すようである。
【0255】
連続する部分的還元、インキュベーション、さらなる還元、およびインキュベーションを介して、トラスツズマブの選択的ヘテロ-二官能化が達成された。図11aは、逐次法を使用したTris.HCl緩衝液(100mM、0.15mM NaCl、5mM EDTA、pH7.5)中のTmab(0.033mM)の二官能性架橋に関するSDS-PAGEを示す。Tmab(0.033mM)を、2.2当量のTCEPを用いて2時間還元し、2.2当量の3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)と共に室温で一晩インキュベートした(レーン1)。次に、官能化Tmab(0.033mM)を、2.2当量のTCEPを用いてさらに2時間還元し、4当量のN,N’-(5-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(15)と共に室温で一晩インキュベートした(レーン2)。
【0256】
タンパク質試料を還元SDS-PAGE(10%ゲル)で分解した。
デコンボリューションスペクトルによるタンパク質MSは、1分子のリンカー5および1分子のリンカー15との反応に相当する74,711.99Daに主なピークを示す。
【0257】
これは、2つの異なるリンカーの逐次的な付加を介してヘテロ-二官能化半抗体を形成する能力の実証である。
この構造は、図11bで形式的に表される。リンカー5は、抗体の軽鎖と重鎖を連結するジスルフィドの再架橋を示す。リンカー15は、本明細書では「鎖内」再架橋として言及され、抗体のヒンジ領域を形成する2つのチオールを連結している。
【0258】
実施例10
安定したチオ架橋Fab誘導体の形成およびmAb-タンパク質コンジュゲートの選択的調製
本発明のリンカー化合物は、安定したチオ架橋Fab誘導体を形成することが可能である。続いて、これらは、還元されたか、もしくは部分的に還元された抗体または他のタンパク質にコンジュゲートされ得る。
【0259】
最初に、IFabを、コンジュゲーションTris.HCl緩衝液(pH7.5)に緩衝液を交換し、Amicon(登録商標)ウルトラ-0.5mL(3KDa)遠心式フィルターを使用して(5mg/mL、0.1μmol)に希釈した。TCEPの原液(4.0mg/mL、0.042mmol、14mM)を、同じコンジュゲーション緩衝液で調製した。IFabを、TCEP(IFabに対して2当量)と共に室温で1時間インキュベートすることによって還元した。次に、ペンタ-PEGアジドを使用した1時間のTCEPのクエンチングステップを続けて実施した。
【0260】
還元IFabを、ビス-o-ジヨードアセトアミド(PEG)リンカー18(10μLの原液(7mg/mL)、5当量)と共に室温で3時間インキュベートした。
過剰な試薬を、プロテインAカラム(1mL HisTrap、FF)を使用した迅速な精製ステップを用いて除去し、部分的に還元されたTmabとのコンジュゲーション前に官能化IFab溶液から過剰なリンカーを除去した。結合緩衝液Tris.HCl(20mM、500mM NaCl、pH7.4)を使用してFab画分を回収し、次に、この回収された画分を、Amicon(登録商標)ウルトラ-15mL(3KDa)遠心式フィルターを使用して濃縮し、最終的にコンジュゲーション緩衝液に緩衝液を交換した。
【0261】
IfAb対照(非還元)のデコンボリューションしたタンパク質MSスペクトルは、47,636.32Daに主なピークを示したが、ビス-o-ジヨードアセトアミド(PEG)リンカー(18)を有する官能化IfAbのデコンボリューションしたタンパク質MSスペクトルは、48,690.90Daに主なピークを示し、官能化が生じたことを明確にした。概略構造として図12aに示される。
【0262】
Tmabを、Tris.HCl(100mM、150mM NaCl、5mM EDTA、pH7.5)に緩衝液を交換し、Amicon(登録商標)ウルトラ-0.5mL(10KDa)遠心式フィルターを使用して(5.0mg/mL、0.03μmol)に希釈した。Tmabを、TCEP(Tmabに対して1.1当量)と共に4℃で2時間インキュベートすることによって還元した。次に、官能化IFab(Tmabに対して4当量)を、還元されたTmabに加え、室温で一晩放置した。次に、反応生成物の精製のために、superdexカラム(HiLoad16/600、Superdex200pg、GE Healthcare)を使用してSECを実施した。カラムに充填する前に、試料を20,000gで10分間遠心分離した。コンジュゲートを含有する回収された画分を、コンジュゲーション緩衝液に緩衝液を交換し、0.45μm濾過膜を使用して滅菌した。
【0263】
図12bを参照すること。
L:タンパク質ラダー
レーン1:対照として1.1当量の3,4-ビス(2-ブロモアセトアミド)安息香酸メチル(5)と共にインキュベートされたTmab、
レーン2:IfAbコンジュゲート、
レーン3:サイズ排除クロマトグラフィーを実施する前の、75KDaバンド(半抗体)の顕著な減少と共に、コンジュゲートの正確な推定質量である約125KDaを示す、室温で一晩行われたIfAbとのTmabコンジュゲーション、
レーン4:サイズ排除カラム精製によって回収された画分(F6~G2)、
レーン5:サイズ排除カラム精製によって回収された画分(G4~G13)、
レーン6:サイズ排除カラム精製によって回収された画分(H1~H7)。
【0264】
レーン4および5は、望ましいmAb-fAbコンジュゲートを含有する(レーン5には若干のHC-HC不純物)。この抗体コンジュゲートの略図は、図12cに示される。これは、mAb-タンパク質コンジュゲートまたは三官能性モノクローナル抗体とも呼ばれることがある。本発明者らは、その選択的調製およびプロテインAカラムにおけるAKTA精製に対する安定性を実証した。
【0265】
実施例11
チオ架橋化合物の選択性は、それら位置化学によって異なる:オルト置換対メタ置換。
完全に還元されたTmab(4当量)を、2当量のみのビス-ヨードアセトアミドリンカー15および17それぞれと共にインキュベートした場合の化合物15および17の選択性が評価された。SDS-PAGE分析を用いて反応生成物を分解し(図13aに示される)、タンパク質MSによってさらに特徴付けた(図13bおよびcに示される)。
【0266】
最初に、Tmabを、Tris.HCl緩衝液(pH7.5)に緩衝液を交換し、Amicon(登録商標)ウルトラ-0.5mL(10KDa)遠心式フィルターを使用して(5mg/mL、34μM、1mL)に希釈した。Tmabを、TCEP(Tmabに対して4当量)と共に4℃で2時間インキュベートすることによって還元した。この還元タンパク質を、各反応に対して試料100μLに等分した。N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(17)の原液を、DMF中の最終濃度(1.0mg/mL、1.4μmol、1.4mM)に調製した。17の使用液(0.68mg/mL)を、DMFを用いた連続希釈によって調製した。2当量の17の使用液(7μL、Tmab一定量に対して2当量)を、還元タンパク質に加えて、室温で一晩維持した。化合物15のTmabとの反応のための類似の手順に従った。
【0267】
アジド修飾ビス-ヨードアセトアミド化合物15および17は、興味深い選択性を示した。メタ置換化合物15との反応のSDS-PAGE分析は、TmabのHC(内部架橋された半抗体)が存在する主なタンパク質生成物であることを示した(図13a、レーン2)。タンパク質MSを用いた特徴付けは、このHCタンパク質生成物が、重鎖-重鎖内ジスルフィドの再架橋を介した、1分子の15とのコンジュゲーションを受けていることを明確にした(図13b)。
【0268】
これに対し、オルト置換化合物17は、SDS-PAGE分析によって認められた顕著な量のより高い分子量の生成物を伴う、重鎖-軽鎖ジスルフィド結合を架橋することに対するより高い選好性を示した(図13a、レーン1)。タンパク質MSを用いた特徴付けは、このタンパク質生成物が、1分子の17を用いたHC-LCジスルフィド再架橋を受けていることを明確にした(図13c)。重要な点として、MS分析は、残存するHCタンパク質が未変性であり、化合物17とのいかなる検出可能なコンジュゲーションも受けていないことも明らかにした。
【0269】
図13aは、150mM NaClおよび5mM EDTAを含有するTris.HCl緩衝液(100mM、pH7.5)中のTmab(5mg/mL、34μM)であって、4当量のTCEP(136μM)で還元され、各ビス-ヨードアセトアミドリンカー(6.8μM、2当量)と共に室温で一晩インキュベートされたTmabを架橋することにおける、ビス-ヨードアセトアミドリンカーの選択性を評価するSDS-PAGEゲル(10%)を示す。
L:タンパク質ラダー、
レーン1:2当量のN,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)-エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(17)と共にインキュベートされたTmab、
レーン2:2当量のN,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(15)と共にインキュベートされたTmab、
2当量のN,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(15)(図13b)および
N,N’-(4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-1,2-フェニレン)ビス(2-ヨードアセトアミド)(17)(図13c)を用いて架橋されたTmabのデコンボリューションしたタンパク質MSスペクトル。
【0270】
参考文献
多くの出版物は、本発明および本発明の属する最新技術をより完全に説明し、開示するために上述されている。これらの参考文献の完全な引用は、以下に提示される。これらの参考文献のそれぞれの全体は、本明細書に組み込まれる。
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保護基ならびにそれらの合成および使用の考察に関しては、Peter G.M.WutsおよびTheodora W.Greene、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、2006年、Wiley-Blackwellを参照すること。
【0271】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14
【国際調査報告】