(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】不飽和カルボン酸無水物を蒸留により精製する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/44 20060101AFI20220825BHJP
C07C 57/07 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C07C51/44
C07C57/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576950
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020067660
(87)【国際公開番号】W WO2020260371
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ブレル
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006BC51
4H006BC52
4H006BS80
(57)【要約】
本発明は、一般式(I)R-C(O)-O-C-(O)-R[式中、Rは、炭素原子2~12個を有する不飽和有機基である]の不飽和カルボン酸無水物を蒸留により除去する方法に関し、前記不飽和カルボン酸無水物は、側流抜取りからガス状で排出され、かつ前記不飽和カルボン酸無水物の噴霧された液状循環流中で凝縮される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
R-C(O)-O-C-(O)-R (I)
[式中、Rは、炭素原子2~12個を有する不飽和有機基である]の不飽和カルボン酸無水物を蒸留により除去する方法であって、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物を、側流抜取りからガス状で排出し、かつ前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の噴霧された液状循環流中で凝縮させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物が、(メタ)アクリル酸無水物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の液状循環流の温度が、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の凝縮温度よりも低いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の液状循環流の温度が、マイナス50℃(-50℃)~200℃であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の液状循環流の温度が、マイナス10℃(-10℃)~50℃であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の除去中の圧力が、1mbar~500mbar(絶対圧)であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の除去中の圧力が、1mbar~100mbar(絶対圧)であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の蒸留による除去を、上方部分、中央部分及び下方部分を有する精留塔中で実施し、かつ前記側流抜取りが、前記中央部分に又は前記中央部分より下方に、位置していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記精留塔が、前記側流抜取りを調整する測定点及び調整点を有し、かつ前記測定点及び調整点が、好ましくは前記側流抜取りより上方に位置していることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記側流抜取りが、温度調整弁を介して調整されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の蒸留による除去を、重合防止剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記重合防止剤が、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、フェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(TEMPOL)、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、パラ置換フェニレンジアミン、例えばN,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、1,4-ベンゾキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-α-(ジメチルアミノ)-p-クレゾール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、又はこれらの重合防止剤の2種以上の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重合防止剤を、前記塔の頂部で添加することを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和カルボン酸無水物を蒸留により除去する方法に関する。
【0002】
従来技術
欧州特許第2032518号明細書(EP-2032518 B1)には、カルボン酸無水物を連続的に製造する方法が記載されており、ここで、該カルボン酸無水物は、好ましくは精留塔の中央領域と下方領域との間の、側流で得られる。
【0003】
中国特許出願公開第107963966号明細書(CN-107963966 A)には、メタクリル酸無水物を製造するための装置が記載されており、ここで、該メタクリル酸無水物は、精留塔の底部の出口で得られる。
【0004】
挙げた方法の欠点は、純粋なメタクリル酸無水物を得るために、その目的生成物を、プロセス安定剤を含めた高沸点副成分から分離するための、さらなる精製及び蒸留工程をその後に行わなければならないことである。
【0005】
したがって、本発明の対象は、さらなる精製工程を省くことができ、かつその目的生成物(すなわち不飽和カルボン酸無水物)が高純度な形で得られる、不飽和カルボン酸無水物を除去するための簡素化された方法を提供することである。さらに、該方法は、該目的生成物の重合が回避されることを保証すべきである。
【0006】
発明の要約
前記対象は、蒸留による精製中に、該不飽和カルボン酸無水物が、側部抜取りによりガス状で排出され、かつ冷却された液状流中で凝縮(「急冷」)され、ここで、この液状流は、前記不飽和カルボン酸無水物の液状循環流であることで、達成される。
【0007】
結果として、不純物は排除される、それというのも、前記の蒸留による精製装置からのガス状流は、該液状流よりも実質的に純粋であり、かつ前記のガス状の目的生成物(該不飽和カルボン酸無水物)の純度を低下させうるさらなる助剤は使用されないからである。
【0008】
したがって、本発明は、
一般式(I)
R-C(O)-O-C-(O)-R (I)
[式中、Rは、炭素原子2~12個を有する不飽和有機基である]の不飽和カルボン酸無水物を蒸留により除去する方法に関するものであって、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物が、側流抜取りからガス状で排出され、かつこの一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の噴霧された液状循環流中で凝縮されることによって特徴付けられる。
【0009】
発明の詳細な説明
上記に定義されるような一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物は、好ましくは(メタ)アクリル酸無水物である。(メタ)アクリル酸無水物の用語は、メタクリル酸無水物及びアクリル酸無水物の化合物を含む。
【0010】
本発明に関連して、「循環流」の用語は、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物を除去するために操作する装置、又はそれに関連した装置における、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物のあらゆる循環を意味するものと理解される。
【0011】
本発明による方法には、あらゆる蒸留による精製装置、例えば、上方部分、中央部分及び下方部分を有する精留塔を使用することができる。
【0012】
好ましくは、該精留塔は、5~50の分離段を有する。本発明において、分離段の数は、段塔におけるその段効率により乗じられたトレーの数又は規則充填塔若しくは不規則充填物を含む塔の場合における理論分離段の数を意味するものと理解されるべきである。
【0013】
トレーを含む精留塔におけるトレーの例は、バブルキャップトレー、シーブトレー、トンネルトレー、バルブトレー、スリットトレー、シーブスリットトレー、シーブバブルキャップトレー、ノズルトレー、遠心トレーを含み、不規則充填物を含む精留塔における不規則充填物の例は、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドルを含み、かつ規則充填物を含む精留塔における規則充填物の例は、Mellapak(Sulzer)、Rombopak(Kuehni)及びMontz-Pak(Montz)タイプ及び触媒バッグを含む規則充填物、例えばKatapak(Sulzer)を含む。
【0014】
トレーの領域、不規則充填物の領域及び/又は規則充填物の領域の組合せを含む精留塔が同様に使用されてよい。
【0015】
不規則充填物及び/又は規則充填物を含む精留塔を使用することが好ましい。該精留塔は、そのために適したあらゆる材料から製造されてよい。これらは、とりわけ、ステンレス鋼及び不活性材料を含む。
【0016】
好ましくは、該精留塔は、1~500mbarの絶対圧力で、好ましくは1~100mbarの絶対圧力での真空下で操作される。該精留塔の底部での温度は、支配的な系統圧力(the prevailing system pressure)の結果である。
【0017】
低沸点不純物は、該精留塔の頂部から取り出され、その際に、高沸点不純物は、該精留塔の底部から排出される。該目的生成物(すなわち前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物)は、該精留塔の中央領域より下方の側部抜取りで好ましくは排出される。
【0018】
該精留塔は、その他の装置、例えば物質分離用のさらなる装置及び/又は反応器と相互に接続されていてよい。反応領域は、該精留塔内に位置していてもよい。該精留塔は、異なる課題を果たす2以上の分離セグメントに細分されていてもよい。
【0019】
本発明による方法には、取付部品を介して前記の蒸留による精製装置に連結され、大気に対して密閉された容器を有する装置が好ましくは使用される。この容器は、冷却要素を伴わず、好ましくは冷却要素(熱交換器として)を伴って、構成されていてよい。該装置は、前記の液状の目的生成物(前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物)が取り出される流出ラインも有し、該目的生成物は好ましくは熱交換器を経てさらに冷却され、かつ入口ラインを経て該装置に部分的に返送される(再循環流)。
【0020】
好ましくは、ノズルは、該入口ラインの末端部に位置しており、前記の液状の目的生成物が、該容器中へスプレーされ、ひいては負圧を発生させて、前記のガス状の目的生成物(前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物)を、前記の蒸留による精製装置からより良好に凝縮させることができる。該容器における前記の循環する液状の目的生成物の充填レベルは常に維持され、これは好ましくは、自動的に調整される充填レベル測定を用いて達成される。過剰の液状の目的生成物は、パイプラインを経て取り出され、かつ目的生成物容器中に捕集される。
【0021】
該容器を前記の蒸留による精製装置と接続する、使用される取付部品は、手動で、好ましくは自動的に調整される、弁、ボール弁又はフラップであってよい。この場合における調整量(regulating variable)として、前記の蒸留による精製装置内に位置している測定点及び調整点、好ましくは温度測定点が使用される。該測定点は、該容器を前記の蒸留による精製装置と接続する取付部品、又は該側流抜取りより上方に、同じ高さに又はより下方に、好ましくはより上方に位置していてよい。好ましくは、該側流抜取りは、温度調整弁により調整される。
【0022】
該装置は、測定機器(例えば圧力及び温度センサ)又はのぞきガラスに使用することができる、さらなる接続部を有していてもよい。該装置は、そのために適したあらゆる材料から製造されてよい。これらは、とりわけ、ステンレス鋼及び不活性材料を含む。
【0023】
前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の望ましくない重合を回避するために、重合防止剤が任意に添加される。使用されうる好ましい重合防止剤は、とりわけ、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、フェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(TEMPOL)、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、パラ置換フェニレンジアミン、例えばN,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、1,4-ベンゾキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-α-(ジメチルアミノ)-p-クレゾール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン又はこれらの重合防止剤の2種以上の混合物を含む。
【0024】
該防止剤は、好ましくは、該塔の頂部で計量供給される。
【0025】
高沸成分、例えば添加された防止剤は、常用の方法により、例えば薄膜型蒸発装置又は蒸発された物質を該精留塔にリサイクルし、かつ蒸発されない高沸成分を排出するこの課題を実施するための類似の装置により、該塔の底部から排出することができる。
【0026】
本発明による方法は、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物が、高純度で、望ましくない重合による損失なしで単純な分離により得られることを可能にし、ここで、所望の場合には、その後に貯蔵用の重合防止剤を用いて、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物の重合を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【0028】
本発明による方法の実施態様は、
図1に模式的に示される。
【0029】
精製されうる一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物(1)は、精留塔(2)の下方部分に達する。ここでは、分離領域(2a)において、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物よりも低沸点である成分(3)は除去される。該精留塔の分離領域(2b)において、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物は、前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物よりも高沸点である成分(4)から分離される。前記の一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物は、分離領域(2a)と(2b)との間においてガス状で側流抜取りから温度調整弁(5)を経て取り出され、ついで、噴霧された液状の目的生成物(すなわち、該循環流に由来する一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物)の容器中で直接凝縮される。前記の液状の目的生成物は、ポンプ(7)を用いて該容器(6)にリサイクルされる。熱交換器(8)は、前記の液状の目的生成物を冷却する。該目的生成物は、該充填レベルにより制御されて該循環から取り出され(9)、かつ目的生成物容器に供給される。
【0030】
以下の例は、本発明による方法を説明するが、それらに限定されない。
【実施例】
【0031】
例1:メタクリル酸無水物の精製
一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物としてのメタクリル酸無水物の精製を、
図1による精留塔の下方部分において実施した。
【0032】
該精留塔は、分離領域(2a)において12の分離段及び分離領域(2b)において8の分離段を有する。この塔は、100mmの内径を有しており、かつSulzerからの規則充填物、タイプCY(分離領域2a)及びMontzからの規則充填物、タイプBSH 400(分離領域2b)を備えていた。その塔底における圧力は35mbarであった。定常条件で、164℃(底部)~66℃(分離領域2aの上端)の温度プロファイルを設定した。該側部抜取り(分離領域2aと2bとの間)でのメタクリル酸無水物の流出及びその底部蒸発器の加熱蒸気容量を、前記のそれぞれの領域において温度調整した。
【0033】
フェノチアジンをプロセス安定剤として使用し、これを、酢酸中に溶解させて該精留塔へのリターンフローに、その塔頂を経て添加した。流下薄膜型蒸発器は蒸発器として働いた。
【0034】
該側流抜取りで、ガス状メタクリル酸無水物は、すでに存在する噴霧された液状メタクリル酸無水物中に凝縮された。該容器における圧力は25mbar(絶対圧)であり;該弁(5)より前の該抜取りの位置での該精留塔における圧力は、30mbar(絶対圧)であった。該液状メタクリル酸無水物を、冷ブラインで運転されたチューブコイル式熱交換器(8)で、10℃の温度に冷却した。99.7%の純度(GC分析)を有する無色澄明(白金-コバルト色数5)のメタクリル酸無水物を、その出口ラインを経て取り出した。
【0035】
例2:アクリル酸無水物の精製
一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物としてのアクリル酸無水物の精製を、例1に説明されたような
図1による精留塔の同じ下方部分において実施した。その塔底における圧力は35mbarであった。定常条件で、164℃(底部)~54℃(分離領域2aの上端)の温度プロファイルを設定した。該側部抜取り(分離領域2aと2bとの間)でのアクリル酸無水物の流出及びその底部蒸発器の加熱蒸気容量を、前記のそれぞれの領域において温度調整した。フェノチアジンをプロセス安定剤として使用し、これを、酢酸中に溶解させて、該精留塔へのリターンフローに、その塔頂を経て添加した。流下薄膜型蒸発器は蒸発器として働いた。
【0036】
該側流抜取りで、ガス状アクリル酸無水物は、すでに存在する噴霧された液状アクリル酸無水物中に凝縮された。該容器における圧力は25mbar(絶対圧)であり;該弁(5)より前の該抜取りの位置での該精留塔における圧力は、30mbar(絶対圧)であった。該液状アクリル酸無水物を、冷ブラインで運転されたチューブコイル式熱交換器(8)で、10℃の温度に冷却した。99.7%の純度(GC分析)を有する無色澄明(白金-コバルト色数6)のアクリル酸無水物を、その出口ラインを経て取り出した。
【0037】
比較例1:メタクリル酸無水物の精製
一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物としてのメタクリル酸無水物の精製を、
図2による精留塔の下方部分において実施した。
【0038】
該精留塔は、分離領域(2a)において12の分離段及び分離領域(2b)において8の分離段を有する。この塔は、100mmの内径を有しており、かつSulzerからの規則充填物、タイプCY(分離領域2a)及びMontzからの規則充填物、タイプBSH 400(分離領域2b)を備えていた。その塔底における圧力は35mbarであった。定常条件で、164℃(底部)~66℃(分離領域2aの上端)の温度プロファイルを設定した。該側部抜取り(分離領域2aと2bとの間)でのメタクリル酸無水物の流出及びその底部蒸発器の加熱蒸気容量を、前記のそれぞれの領域において温度調整した。
【0039】
フェノチアジンをプロセス安定剤として使用し、これを、酢酸中に溶解させて、該精留塔へのリターンフローに、その塔頂を経て添加した。流下薄膜型蒸発器は蒸発器として働いた。
【0040】
液状メタクリル酸無水物を、該側流抜取りで取り出した。該液状メタクリル酸無水物を、冷ブラインで運転されたチューブコイル式熱交換器(8)で、10℃の温度に冷却した。99.2%の純度(GC分析)を有する澄明な淡黄色液体(白金-コバルト色数35)としてメタクリル酸無水物を、その出口ラインを経て取り出した。
【0041】
比較例2:アクリル酸無水物の精製
一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物としてのアクリル酸無水物の精製を、比較例1に説明されたような
図2による精留塔の同じ下方部分において実施した。
【0042】
その塔底における圧力は35mbarであった。定常条件で、164℃(底部)~54℃(分離領域2aの上端)の温度プロファイルを設定した。該側部抜取り(分離領域2aと2bとの間)でのアクリル酸無水物の流出及びその底部蒸発器の加熱蒸気容量を、前記のそれぞれの領域において温度調整した。フェノチアジンをプロセス安定剤として使用し、これを、酢酸中に溶解させて、該精留塔へのリターンフローに、その塔頂を経て添加した。流下薄膜型蒸発器は蒸発器として働いた。
【0043】
液状アクリル酸無水物を、該側流抜取りで取り出した。該液状アクリル酸無水物を、冷ブラインで運転されたチューブコイル式熱交換器(11)で、10℃の温度に冷却した。99.1%の純度(GC分析)を有する澄明な淡黄色液体(白金-コバルト色数38)としてアクリル酸無水物を、その出口ラインを経て取り出した。
【符号の説明】
【0044】
1 精製されうる一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物、 2 精留塔、 2a、2b 分離領域、 3 一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物よりも低沸点である成分、 4 一般式(I)の不飽和カルボン酸無水物よりも高沸点である成分、 5 温度調整弁、 6 容器、 7 ポンプ、 8 熱交換器、 9 目的生成物の取り出し
【国際調査報告】