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特表2022-5382703-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミドのアナログ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミドのアナログ
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/12 20060101AFI20220825BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20220825BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C07D417/12
C07D417/14
A61K31/506
A61P1/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/00
A61P15/00
A61P25/00
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577052
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067828
(87)【国際公開番号】W WO2020260463
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182797.1
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(71)【出願人】
【識別番号】514298139
【氏名又は名称】バイエル・ファルマ・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンチェ・ロットマン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・マルティン・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】カイ・テーデ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・アントニー・ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ウルスラ・ガンツァー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ロトゲリ
(72)【発明者】
【氏名】エリーザベト・プーク
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB08
4C063BB09
4C063CC62
4C063CC73
4C063DD29
4C063EE01
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA081
4C084ZA361
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA811
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC82
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、一般式(I)のP2X3阻害剤化合物:
(式中、R1およびR2は本明細書に定義される通りである)、前記化合物を調製する方法、前記化合物を調製するのに有用な中間体化合物、前記化合物を含む医薬組成物および組み合わせ、ならびに単一薬剤としてまたは他の有効成分と組み合わせて、疾患、特に神経原性障害を治療または予防するための医薬組成物を製造するための前記化合物の使用を網羅する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載および定義される一般式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
R1はメチルを表し、
R2は、同じもしくは異なり、OHおよび-COOHからなる群から独立して選択される2つの置換基で置換されたC3~C4-アルキル、または1個のO原子を有し、任意の炭素原子において、同じもしくは異なり、オキソおよびOHからなる群から独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換された5員ヘテロシクロアルキルを表す)
またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、塩またはこれらの混合物。
【請求項2】
R1がメチルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2が場合によりOHおよびCOOHで置換されたC3-アルキルを表す、
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R2が場合により2つのOHで置換されたC4-アルキルを表す、
請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R2がC(CH2OH)(CH22OHを表す、
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R2が、任意の炭素原子において、OHで置換されたテトラヒドロフラニルを表す、
請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R1がメチルを表し、
R2がC(CH2OH)(CH22OHを表す、
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
3-{[(2R)-1,4-ジヒドロキシブタン-2-イル]オキシ}-5-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド、
rel-3-{[(3R,5R)-5-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3-イル]オキシ}-5-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド、
{[(3R,5R)-5-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3-イル]オキシ}-5-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド、
{[(3R,5S)-5-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3-イル]オキシ}-5-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド、
(3R)-4-ヒドロキシ-3-[3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-({(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}カルバモイル)フェノキシ]ブタン酸、
2-{3-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-5-({(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}カルバモイル)フェニル}-1,3-チアゾール-5-カルボン酸
またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、塩またはこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
疾患の治療に使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、水和物、溶媒和物もしくは薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物。
【請求項10】
前記疾患が神経原性障害、例えば化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する尿生殖器、胃腸、呼吸器、心血管疾患、および疼痛関連疾患である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
疾患を予防または治療するための医薬品を調製するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、水和物、溶媒和物もしくは薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用。
【請求項12】
前記尿生殖器疾患が、月経困難症、性交疼痛症、子宮内膜症、腺筋症、子宮内膜症関連疼痛、子宮内膜症関連増殖、骨盤過敏症、排尿障害、排便障害からなる群から選択される、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記尿生殖器疾患が、膀胱下尿道閉塞、尿失禁状態、膀胱容量の減少、排尿頻度の増加、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、膀胱過敏症、良性前立腺肥大、前立腺肥大症、前立腺炎、排尿筋反射亢進、骨盤過敏症、尿道炎、前立腺炎、前立腺痛、膀胱炎、間質性膀胱炎、特発性膀胱過敏症、過活動膀胱、および過活動膀胱に関連する症状(前記症状は、頻尿、夜間多尿、尿意切迫または切迫性尿失禁である)からなる群から選択される、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記呼吸器疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支痙攀、肺線維症、急性咳嗽、ならびに慢性特発性咳嗽および慢性難治性咳嗽を含む慢性咳嗽からなる群から選択される、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に記載の一般式(I)化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物と、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項16】
さらなる有効成分が、咳抑制剤、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、混合経口避妊薬(COC)、GnRAHアンタゴニスト、選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)、プロゲステロンアンタゴニスト、P2X3阻害剤、NK1阻害剤およびニコチン性アセチルコリンモジュレーターからなる群から選択される、請求項15に記載の医薬組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に記載および定義される一般式(I)の化合物、前記化合物を調製する方法、前記化合物を調製するのに有用な中間体化合物、前記化合物を含む医薬組成物および組み合わせ、ならびに単一薬剤としてまたは他の有効成分と組み合わせて、疾患、特に神経原性障害を治療または予防するための医薬組成物を製造するための前記化合物の使用を網羅する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、P2X3受容体を阻害する一般式(I)の1,3-チアゾール-2-イル置換ベンズアミド化合物に関する。
【0003】
P2Xプリン受容体3は、ヒトにおいてP2RX3遺伝子によってコードされるタンパク質である(Garcia-Guzman M、Stuhmer W、Soto F(1997年9月).「Molecular characterization and pharmacological properties of the human P2X3 purinoceptor」.Brain Res Mol Brain Res 47(1~2):59~66)。この遺伝子の産物は、ATPのプリン受容体のファミリーに属する。この受容体は、リガンド依存性イオンチャネルとして機能し、ATP誘発侵害受容器活性化を伝達する。
【0004】
P2Xプリン受容体は、ATPによって活性化されるリガンド依存性イオンチャネルのファミリーである。今日まで、P2X1~7を含むこのファミリーの7つのメンバーがクローニングされている[Burnstock 2013、front Cell Neurosci 7:227]。これらのチャネルは、ホモマーおよびヘテロマーとして存在し得る[Saul 2013、front Cell Neurosci 7:250]。ATPなどのプリンは、重要な神経伝達物質として認識されており、それぞれの受容体を介して作用することによって、種々の生理学的および病態生理学的役割に関与している[Burnstock 1993、Drug Dev Res 28:196~206;Burnstock 2011、Prog Neurobiol 95:229~274;Jiang 2012、Cell Health Cytoskeleton 4:83~101]。
【0005】
P2Xファミリーのメンバーの中でも、特に、P2X3受容体は侵害受容の重要な媒介物質として認識されている[Burnstock 2013、Eur J Pharmacol 716:24~40;North 2003、J Phyiol 554:301~308;Chizh 2000、Pharmacol Rev 53:553~568]。これは、侵害受容感覚ニューロンのサブセットにおいて脊髄後根神経節で主に発現される。炎症の間に、P2X3受容体の発現が増加し、P2X3受容体の活性化が末梢神経を感作させると記載されている[Fabretti 2013、front Cell Neurosci 7:236]。
【0006】
侵害受容におけるP2X3受容体の顕著な役割は、急性、慢性および炎症性疼痛についてのマウスおよびラットモデルを含む種々の動物モデルで記載されている。P2X3受容体ノックアウトマウスは、疼痛反応の低下を示す[Cockayne 2000、Nature 407:1011~1015;Souslova 2000、Nature 407:1015~1017]。P2X3受容体アンタゴニストは、疼痛および炎症性疼痛の異なるモデルで抗侵害受容作用を示すことが示されている[Ford 2012、Purin Signal 8(Suppl 1):S3~S26]。P2X3受容体は、異なる侵害刺激を統合することも示されている。PGE2、ET-1およびドーパミンによって誘発される痛覚過敏は全て、ATPの放出およびP2X3受容体の活性化を介して媒介されることが示されている[Prado 2013、Neuropharm 67:252~258;Joseph 2013、Neurosci 232C:83~89]。
【0007】
侵害受容および慢性疼痛と急性疼痛の両方を伴う疼痛関連疾患におけるその顕著な役割に加えて、P2X3受容体は、過活動膀胱および慢性咳嗽を含む尿生殖器、胃腸および呼吸器系の状態および障害に関与することが示されている[Ford 2013、front Cell Neurosci 7:267;Burnstock 2014、Purin Signal 10(1):3~50]。ATP放出がこれらの2つの例で上皮細胞から生じ、これがP2X3受容体を活性化し、膀胱および肺の筋肉の収縮をそれぞれ誘発し、早すぎる排尿または咳嗽をもたらす。
【0008】
P2X3サブユニットは、P2X2サブユニットとホモ三量体だけでなく、ヘテロ三量体も形成する。P2X3サブユニットおよびP2X2サブユニットはまた、舌、その中の味蕾を神経支配する神経線維でも発現される[Kinnamon 2013、front Cell Neurosci 7:264]。生理学的状況では、P2X3および/またはP2X2サブユニットを含む受容体は、舌からの味覚(苦味、甘味、塩味、うま味および酸味)の伝達に関与している。最近のデータは、抗侵害受容効果を達成するためにP2X3ホモマー受容体のみを遮断することが重要である一方で、P2X3ホモマー受容体とP2X2/3ヘテロマー受容体の両方の非選択的遮断が味覚認識の変化をもたらし、非選択的P2X3およびP2X2/3受容体アンタゴニストの治療的使用を制限し得ることを示している[Ford 2014、purines 2014、要約書15頁]。そのため、P2X3とP2X2/3受容体を区別する化合物が極めて望ましい。
【0009】
イオンチャネル(P2X3ホモマー)ならびにP2X2およびP2X3サブユニットで構成されるイオンチャネル(P2X2/3ヘテロ三量体)を含む共にP2X3サブユニットを遮断する化合物は、P2X3およびP2X2/3非選択的受容体アンタゴニストと呼ばれる[Ford、Pain Manag 2012]。臨床第II相試験は、P2X3アンタゴニストであるAF-219が、舌を介して味覚に影響を及ぼすことによって処置された対象で味覚障害をもたらすことを実証している[例えば、Abdulqawiら、Lancet 2015;Strandら、2015 ACR/ARMP年次総会、要約2240]。この副作用は、P2X2/3チャネル、すなわちヘテロ三量体の遮断に起因する[A.Ford、London 2015 Pain Therapeutics Conference、議会報告]。P2X2およびP2X3サブユニット欠損ノックアウト動物は、味覚低下および味覚喪失さえ示すが[Fingerら、Science 2005]、P2X3サブユニット単一ノックアウトは、味覚に関して表現型の軽度な変化を示すまたは変化を示さない。さらに、2つの異なるニューロン集団がP2X2とP2X3サブユニットまたはP2X3サブユニットのみを発現する膝神経節で記載されている。リッコメーター(lickometer)を介して人工甘味料に対する味覚嗜好性を評価するインビボ設定では、極めて高い遊離血漿レベル(>100μM)でのみ、味に対する効果が観察され、P2X3サブユニットを発現している集団よりもむしろP2X2およびP2X3サブユニットを発現している集団が味覚において主要な役割を果たすことを示している[Vandenbeuchら、J Physiol.2015]。したがって、改変された味覚認識が患者の生活の質に重大な影響を及ぼすので、P2X3-ホモマー受容体選択的アンタゴニストは、非選択的受容体アンタゴニストに対して優れているとみなされ、第II相試験中のドロップアウト率増加によって示される、慢性治療中の不十分な患者のコンプライアンスの課題の解決策となると考えられる[Strandら、2015 ACR/ARMP年次総会、要約2240およびA.Ford、London 2015 Pain Therapeutics Conference、議会報告]。
【0010】
交感神経系(SNS)活動およびノルエピネフリン(NE、ノルアドレナリンとしても知られる)などの交感神経因子の増加が、一般に心血管疾患(CVD)の発生に関与している(Grassiら、Circ Res、2015、116(6):976~990)。心不全(HF)およびCVDの一般的な併存疾患は、自律神経失調と呼ばれる交感神経緊張の増加および副交感神経緊張の低下にも関連している。まとめると、臨床研究は、自律神経失調を患っている患者が、運動耐容能の低下、中枢性睡眠時無呼吸の発生率の上昇、不整脈の発生率の上昇、および死亡率の増加を有することを示している(Joyner、J Physiol、2016、549(14):4009~4013)。自律神経失調は、状態の病因に関係なく、HFおよびCVD患者の死亡率の独立予測因子であり、末梢化学受容器などの求心性入力の慢性的な病理学的過剰活性化によって引き起こされる。
【0011】
近年の前臨床研究および臨床研究は、頚動脈小体末梢化学反射が自律神経失調に関連する心血管疾患の標的とみなされるべきであることを実証している(Del Rioら、J Am Coll Cardiol、2013、62(25):2422~2430;McBrydeら、Nat Commun、2013、4:2395;Niewinskyら、Int J Cardiol、2013、168(3):2506~2509;Patonら、Hypertension、2013、61(1):5~13;Marcusら、J Physiol、2014、592(2):391~408;Del Rioら、Exp Physiol、2015、100(2):136~142)。化学反射過敏症は、遺伝子修飾、慢性間欠性低酸素症、心筋梗塞、急速な心室ペーシング、遺伝的心筋症、および圧負荷を含む様々な病因によるCVDの動物モデルで実証されている。
【0012】
化学反射感受性の増加は、最適に治療されたHF患者の40~60%で観察される(Giannoniら、J Am Coll Cardiol、2009、53(21):1975~1980;Niewinskiら、J Card Fail、2013、19(6):408~415)。化学反射過敏症はまた、覚醒中の不安定な換気制御、運動中の換気機能不全、睡眠関連呼吸障害、チェーン・ストークス呼吸、持続性心房細動、および発作性心室性頻拍、および血圧の圧反射調節障害の高い罹患率と関連している(Ponikowskiら、Circulation.2001.104(5):544~549;Corraら、Circulation、2006、113(1):44~50;Giannoniら、Clin Sci(Lond).2008.114(7):489~497;Despasら、J Hypertens、2012、30(4):753~760;DempseyおよびSmith、Adv Exp Med Biol.2014.758:343~349;Andradeら、Biomed Res Int.2015.467597;FlorasおよびPonikowski、Eur Heart J、2015、36(30):1974~1982b;Grassiら、Circ Res、2015、116(6):976~990)。
【0013】
心血管疾患(CVD)の場合、頚動脈小体(頚動脈小体)のタイプIおよびタイプIIのグロムス細胞からのATP放出を含む神経伝達物質の放出が、低酸素に対する生理学的応答に関与している。近年の研究(Pijackaら、Nat Med、2016、22(10):1151~1159)は、自然発症高血圧ラットの頚動脈小体におけるP2X3の過剰発現が、末梢化学反射の持続性活性化を増加させ、増加した交感神経系活動および自律神経失調をもたらすことを実証している(Pijackaら、Nat Med、2016、22(10):1151~1159)。したがって、P2X3の遮断を、持続性活動または過敏性末梢化学反射に関連するCVDの治療の選択肢とみなすことができるだろう。
【0014】
1,3-チアゾール-2-イル置換ベンズアミド化合物は、国際公開第2016/091776号パンフレットに開示されている。国際公開第2016/091776号パンフレットに開示される化合物は、高いP2X3受容体阻害、およびさらにはP2X2/3受容体に対する選択性を示す。
【0015】
さらなる未公開特許出願、すなわちPCT/EP2019/062329およびPCT/EP2019/062332は、心血管疾患および慢性咳嗽の治療における国際公開第2016/091776号パンフレットの化合物の使用を開示している。
【0016】
しかしながら、上記先行技術は、本明細書で定義される本発明の一般式(I)の特定のチアゾール置換ベンズアミド化合物、あるいは本明細書に記載および定義され、以下で「本発明の化合物」およびその薬理学的活性と呼ばれるその異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、水和物、溶媒和物もしくは塩またはこれらの混合物を記載していない。
【0017】
本発明の化合物が驚くべきかつ有利な特性を有することがここで分かり、このことが本発明の基礎を構成している。
【0018】
特に、本発明の化合物は、驚くべきことに、P2X3受容体を有効に阻害することが分かったので(そのデータは生物学的実験節に示される)、例えば疼痛関連障害などの神経原性障害を治療または予防するために使用することができる。それに加えて、本発明の化合物は、例えば、先行技術に記載されているものに近いP2X3受容体での阻害有効性およびP2X2/3受容体に対する選択性に加えて、好ましい溶解度および/または適切な代謝安定性を有する好ましい薬理学的プロファイルを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2016/091776号パンフレット
【特許文献2】PCT/EP2019/062329
【特許文献3】PCT/EP2019/062332
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Garcia-Guzman M、Stuhmer W、Soto F(1997年9月)「Molecular characterization and pharmacological properties of the human P2X3 purinoceptor」.Brain Res Mol Brain Res 47(1~2):59~66
【非特許文献2】Burnstock 2013、front Cell Neurosci 7:227
【非特許文献3】Saul 2013、front Cell Neurosci 7:250
【非特許文献4】Burnstock 1993、Drug Dev Res 28:196~206
【非特許文献5】Burnstock 2011、Prog Neurobiol 95:229~274
【非特許文献6】Jiang 2012、Cell Health Cytoskeleton 4:83~101
【非特許文献7】Burnstock 2013、Eur J Pharmacol 716:24~40
【非特許文献8】North 2003、J Phyiol 554:301~308
【非特許文献9】Chizh 2000、Pharmacol Rev 53:553~568
【非特許文献10】Fabretti 2013、front Cell Neurosci 7:236
【非特許文献11】Cockayne 2000、Nature 407:1011~1015
【非特許文献12】Souslova 2000、Nature 407:1015~1017
【非特許文献13】Ford 2012、Purin Signal 8(Suppl 1):S3~S26
【非特許文献14】Prado 2013、Neuropharm 67:252~258
【非特許文献15】Joseph 2013、Neurosci 232C:83~89
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
溶解、溶解度および腸透過性が固体経口剤形からの薬物吸収の速度および程度を支配するので、前記物理化学的および薬物動態学的特性を改善することが大いに望ましい。
【0022】
本発明の意味における好ましい溶解度は、先行技術から知られている化合物と比較して、必要な用量での化合物のより優れた溶解を意味する。化合物の溶解挙動の改善は、前記化合物のより優れた腸吸収および経口バイオアベイラビリティをもたらす。ヒトにおける70%超の高い経口バイオアベイラビリティは、治療効果を達成するために所望される場合、高投与量での化合物の投与を確実にする。
【0023】
本発明の意味における肝ミクロソームにおける適切な代謝安定性は、より長い半減期および同じ用量での化合物のより高い曝露をもたらす低い肝臓クリアランスに関して、ヒトインビボでのより優れた薬物動態特性を意味する。より低いクリアランスは、70%の最大経口バイオアベイラビリティをもたらす、肝臓血流の30%未満(およそ0.4L/時間/kgのより低い)のヒト血液クリアランスを意味する。
【0024】
P2X3受容体調節に依存する疾患(例えば、疼痛)に対する治療効果を達成するために、血中濃度に関する化合物の曝露は、そのIC80値の範囲内でなければならない。前記関係は、代謝安定性が高いほど、化合物の半減期が長くなって投与間隔中に有効な血中濃度が維持されるという仮定に基づいている。したがって、化合物の半減期が長いほど、患者にとっての用量が低くなり、治療間隔は長くなる。ヒトにおける長い半減期は、12時間超を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
第1の態様によると、本発明は、本明細書に記載および定義される一般式(I)の化合物
【化1】
(式中、
R1はメチルを表し、
R2は、同じもしくは異なり、OHおよび-COOHからなる群から独立して選択される2つの置換基で置換されたC3~C4-アルキル、または1個のO原子を有し、任意の炭素原子において、同じもしくは異なり、オキソおよびOHからなる群から独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換された5員ヘテロシクロアルキルを表す)
またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、塩またはこれらの混合物を網羅する。
定義
【0026】
「置換されている」という用語は、存在している状況下で指定された原子の通常の結合価を超えないという条件で、指定された原子または基上の1個または複数の水素原子が指示される基から選択されるものによって置き換えられていることを意味する。置換基および/または変数の組み合わせは許容される。
【0027】
「場合により置換された」という用語は、置換基の数が0に等しいまたは0と異なり得ることを意味する。特段の指示がない限り、場合により置換された基が、任意の利用可能な炭素または窒素原子上で水素原子を非水素置換基で置き換えることによって収容され得るだけの任意の置換基で置換されることが可能である。一般に、存在する場合、任意の置換基の数が、1、2、3、4または5、特に1または2であることが可能である。
【0028】
本明細書で使用する場合、例えば本発明の一般式(I)の化合物の置換基の定義における「1つまたは複数」という用語は、「1、2、3、4または5、特に1または2」を意味する。
【0029】
本明細書で使用する場合、オキソ置換基は、二重結合を介して炭素原子に結合している酸素原子を表す。
【0030】
「含む」という用語は、本明細書において使用される場合、「からなる」を含む。
【0031】
本文中で、いずれかの項目が「本明細書で言及される」と言及されている場合、それは本文のどこにでも言及され得ることを意味する。
本文で言及される用語は、以下の意味を有する:
【0032】
「C3~C4-アルキル」という用語は、3個または4個の炭素原子を有する直鎖または分岐の飽和一価炭化水素基、例えばプロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、メチルプロピルまたはその異性体を意味する。特に、前記基はブチル基である。より具体的には、前記基はメチルプロピル基であり、さらにより具体的には1-メチルプロピル基である。
【0033】
「5員ヘテロシクロアルキル」という用語は、1個または2個の環ヘテロ原子Oを含む、合計5個の環原子を有する単環式飽和複素環を意味する。
【0034】
前記ヘテロシクロアルキル基は、これに限定されないが、例えば、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキソラニル、1,2-オキサゾリジニルまたは1,3-オキサゾリジニルであり得る。
【0035】
一般式(I)の化合物が同位体変異体として存在することが可能である。そのため、本発明には、一般式(I)の化合物、特に一般式(I)の重水素含有化合物の1または複数の同位体変異体が含まれる。
【0036】
化合物または試薬の「同位体変異体」という用語は、そのような化合物を構成する、不自然な比率の1または複数の同位体を示す化合物と定義される。
【0037】
「一般式(I)の化合物の同位体変異体」という用語は、そのような化合物を構成する、不自然な比率の1またはそれ以上の同位体を示す一般式(I)の化合物と定義される。
【0038】
「不自然な比率」という表現は、そのような同位体のその自然存在比よりも高い比率を意味する。この文脈に適用される同位体の自然存在比は、「Isotopic Compositions of the Elements 1997」、Pure Appl.Chem.、70(1)、217~235、1998に記載されている。
【0039】
そのような同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の安定した放射性の同位元素、例えば、それぞれ、2H(重水素)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、17O、18O、32P、33P、33S、34S、35S、36S、18F、36Cl、82Br、123I、124I、125I、129Iおよび131Iが挙げられる。
【0040】
本明細書において指定される障害の処置および/または予防に関して、一般式(I)の化合物の1または複数の同位体変異体は、好ましくは重水素を含む(「一般式(I)の重水素含有化合物」)。1または複数の放射性同位元素、例えば、3Hまたは14Cなどが組み込まれている一般式(I)の化合物の同位体変異体は、例えば薬剤および/または基質組織分布研究に有用である。これらの同位体は、その組み込みの容易さおよび検出性のために特に好ましい。18Fまたは11Cなどのポジトロン放出同位体は、一般式(I)の化合物に組み込まれることができる。一般式(I)の化合物のこれらの同位体変異体は、インビボイメージング用途に有用である。一般式(I)の重水素含有および13C含有化合物は、前臨床または臨床研究の状況において質量分析で使用されることができる。
【0041】
一般式(I)の化合物の同位体変異体は、前記試薬同位体変異体の代わりに試薬、好ましくは重水素含有試薬を用いることによって、当業者に公知の方法、例えば本明細書中のスキームおよび/または例に記載される方法などによって一般的に調製することができる。重水素化の望ましい場所に応じて、一部の例では、D2Oの重水素は、化合物に直接組み込まれるか、またはそのような化合物を合成するのに有用な試薬に組み込まれることができる。重水素ガスも重水素を分子に組み込むために有用な試薬である。オレフィン結合およびアセチレン結合の接触重水素化は、重水素の組み込みのための迅速な経路である。金属触媒(すなわち、Pd、Pt、およびRh)は、重水素ガスの存在下で、炭化水素を含有する官能基において重水素を水素に直接交換するために使用され得る。種々の重水素化試薬および合成構築ブロックは、例えばC/D/N Isotopes、ケベック州、カナダ、Cambridge Isotope Laboratories Inc.、Andover、MA、米国およびCombiPhos Catalysts,Inc.、Princeton、NJ、米国などの企業から商業的に入手可能である。
【0042】
「一般式(I)の重水素含有化合物」という用語は、1または複数の水素原子が1または複数の重水素原子によって置き換えられていて、一般式(I)の化合物の各々の重水素化された位置での重水素の存在比が、約0.015%である重水素の自然存在比よりも高い、一般式(I)の化合物として定義される。特に、一般式(I)の重水素含有化合物において、一般式(I)の化合物の各々の重水素化された位置での重水素の存在比は、1または複数の前記位置で10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%よりも高い、好ましくは90%、95%、96%または97%よりも高い、さらにより好ましくは98%または99%よりも高い。各々の重水素化された位置の重水素の存在比が、他の1または複数の重水素化された位置の重水素の存在比とは無関係であることが理解される。
【0043】
1または複数の重水素原子を一般式(I)の化合物に選択的に組み込むことは、分子の物理化学的性質(例えば、酸度[C.L.Perrin,et al.,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,4490]、塩基性度[C.L.Perrin et al.,J.Am.Chem.Soc.,2005,127,9641]、親油性[B.Testa et al.,Int.J.Pharm.,1984,19(3),271])および/または代謝プロファイルを変えることがあり、親化合物と代謝産物の比、または生じる代謝産物の量に変化をもたらすことがある。そのような変化は、結果としてある特定の治療上の利点となることがあり、それゆえに一部の状況で好ましいことがある。代謝産物の比率が変化している、代謝および代謝切り替えの割合の低下は報告されている(A.E.Mutlibら、Toxicol.Appl.Pharmacol.、2000、169、102)。親薬物および代謝産物への曝露におけるこれらの変化は、一般式(I)の重水素含有化合物の薬動力学、忍容性および効力に関して重要な結果を有し得る。一部の例では、重水素置換は、望ましくないかまたは有毒な代謝産物の形成を減らすかまたは無くし、望ましい代謝産物の形成を強化する(例えばNevirapine:A.M.Sharmaら,Chem.Res.Toxicol.,2013,26,410;Efavirenz:A.E.Mutlibら,Toxicol.Appl.Pharmacol.,2000,169,102)。その他の例では、重水素化の主な効果は、全身クリアランスの比率を低下させることである。結果として、化合物の生物学的半減期は増加する。有望な臨床上の利益には、ピーク値の低下およびトラフ値の増加を伴う、同様の全身曝露を維持する能力が含まれるであろう。これは、特定の化合物の薬物動態/薬力学の関係に応じて、副作用の低下および効力の増強という結果をもたらし得る。ML-337(C.J.Wenthurら,J.Med.Chem.,2013,56,5208)およびオダナカチブ(K.Kassahunら,国際公開第2012/112363号パンフレット)がこの重水素効果の例である。代謝速度の低下が全身クリアランス速度を変えることなく薬物の曝露を増加させるさらに他のケースが報告されている(例えばロフェコキシブ:F.Schneiderら、Arzneim.Forsch./Drug.Res.、2006、56、295;テラプレビル:F.Maltaisら、J.Med.Chem.、2009、52、7993)。この効果を示す重水素化薬物は、投薬の要件の減少(例えば望ましい効果を実現するための用量数を低下または投薬量の低下)を減らすことがあり、かつ/あるいは、代謝産物量の低下を生じることがある。
【0044】
一般式(I)の化合物は、代謝を攻撃する、複数の可能性のある場所を有することがある。物理化学的性質および代謝プロファイルに対する上記の効果を最適化するため、ある特定のパターンの1個または複数の重水素-水素交換を有する、一般式(I)の重水素含有化合物を選択することができる。特に、一般式(I)の1個または複数の重水素含有化合物の1個または複数の重水素原子は、炭素原子と結合していて、かつ/または、例えばシトクロムP450などの酵素を代謝するための攻撃の場所である、一般式(I)の化合物の位置に位置している。
【0045】
化合物、塩、多形、水和物、溶媒和物などの語の複数形が本明細書で使用される場合、これは、単一の化合物、塩、多形、異性体、水和物、溶媒和物なども意味するとみなされる。
【0046】
「安定な化合物」または「安定な構造」により、反応混合物からの有用な程度の純度までの単離、および有効な治療剤への製剤化を生き延びるのに十分に堅牢である化合物が意味される。
【0047】
本発明の化合物は、場合により種々の所望の置換基の位置および性質に応じて、1個または複数の不斉中心を含む。1個または複数の不斉炭素原子が、(R)または(S)配置で存在し、単一の不斉中心の場合にはラセミ混合物、複数の不斉中心の場合にはジアステレオマー混合物をもたらし得ることが可能である。特定の例では、所与の結合、例えば、指定される化合物の2個の置換芳香環を接合する中心結合の周りの回転が制限されるために非対称が存在することも可能である。
【0048】
好ましい化合物は、より望ましい生物学的活性をもたらすものである。本発明の化合物の分離された、純粋なまたは部分的に精製された異性体および立体異性体あるいはラセミまたはジアステレオマー混合物も本発明の範囲に含まれる。このような材料の精製および分離は、当技術分野で知られている標準的技術によって達成することができる。
【0049】
光学異性体は、従来法によるラセミ混合物の分割、例えば、光学活性酸もしくは塩基を用いたジアステレオ異性体塩の形成または共有結合性ジアステレオマーの形成によって得ることができる。適当な酸の例には、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジトルオイル酒石酸およびカンファースルホン酸がある。ジアステレオ異性体の混合物は、当技術分野で知られている方法、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶によって、その物理的および/または化学的違いに基づいて個々のジアステレオマーに分離することができる。その後、光学活性塩基または酸を分離したジアステレオマー塩から遊離させる。光学異性体の別の分離法は、エナンチオマーの分離を最大化するために選択してもよい、従来の誘導体化を用いるまたは用いない、キラルクロマトグラフィー(例えば、キラル相を使用するHPLCカラム)の使用を含む。キラル相を使用する適切なHPLCカラムは商業的に入手可能であり、例えば、数ある中でもDaicelによって製造されたもの、例えばChiracel ODおよびChiracel OJがあり、これらは全て日常的に選択可能である。誘導体化を用いるまたは用いない酵素分離も有用である。本発明の光学活性化合物はさらに、光学活性出発物質を利用したキラル合成によっても得ることができる。
【0050】
異性体の異なる型を互いに識別するために、IUPAC Rules Section E(Pure Appl Chem 45、11~30、1976)が参照される。
【0051】
本発明は、単一の立体異性体として、または任意の比の立体異性体、例えば、(R)-または(S)-異性体の任意の混合物として本発明の化合物の全ての可能な立体異性体を含む。本発明の化合物の単一の立体異性体、例えば、単一のエナンチオマーまたは単一のジアステレオマーの単離は、任意の適当な先行技術の方法、例えば、クロマトグラフィー、特にキラルクロマトグラフィーによって達成される。
【0052】
さらに、本発明の化合物は、本発明の化合物の少なくとも1個の窒素が酸化されているという点で定義されるN-オキシドとして存在することができる。本発明は、全てのこのような可能なN-オキシドを含む。
【0053】
本発明はまた、本発明の化合物の有用な形態、例えば、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、塩、特に薬学的に許容される塩、および/または共沈物を網羅する。
【0054】
本発明の化合物は水和物または溶媒和物として存在することができ、本発明の化合物は例えば、化合物の結晶格子の構造要素として極性溶媒、特に水、メタノールまたはエタノールを含む。極性溶媒、特に水の量が、化学量論比または非化学量論比で存在することが可能である。化学量論的溶媒和物の場合、例えば、水和物、半-、(セミ-)、一-、セスキ-、二-、三-、四-、五-等溶媒和物、または水和物がそれぞれ可能である。本発明は、全てのこのような水和物または溶媒和物を含む。
【0055】
さらに、本発明の化合物が、遊離型で、例えば、遊離塩基もしくは遊離酸もしくは双性イオンとして存在する、または塩型で存在することが可能である。塩は任意の塩、有機または無機付加塩のいずれか、特に薬学で習慣的に使用される、または例えば本発明の化合物を単離もしくは精製するために使用される任意の薬学的に許容される有機または無機付加塩であり得る。
【0056】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の無機または有機酸付加塩を指す。例えば、S.M.Bergeら「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.1977、66、1~19を参照されたい。
【0057】
本発明の化合物の適切な薬学的に許容される塩は、例えば、十分に塩基性の、鎖中または環内に窒素原子を有する本発明の化合物の酸付加塩、例えば、無機酸または「鉱酸」、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、重硫酸、リン酸または硝酸による酸付加塩、または有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸、ショウノウ酸、ケイヒ酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、パモ酸、ペクチニン酸、3-フェニルプロピオン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタリンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸またはチオシアン酸による酸付加塩であり得る。
【0058】
さらに、十分に酸性である本発明の化合物の別の適切な薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムもしくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム、マグネシウムもしくはストロンチウム塩、またはアルミニウムもしくは亜鉛塩、またはアンモニアまたは1~20個の炭素原子を有する有機第一級、二級もしくは三級アミン、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-メチルモルホリン、アルギニン、リジン、1,2-エチレンジアミン、N-メチルピペリジン、N-メチル-グルカミン、N,N-ジメチル-グルカミン、N-エチル-グルカミン、1,6-ヘキサンジアミン、グルコサミン、サルコシン、セリノール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、4-アミノ-1,2,3-ブタントリオールに由来するアンモニウム塩、または1~20個の炭素原子を有する四級アンモニウムイオン、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ(n-プロピル)アンモニウム、テトラ(n-ブチル)アンモニウム、N-ベンジル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、コリンもしくはベンザルコニウムによる塩である。
【0059】
当業者であれば、請求される化合物の酸付加塩を、いくつかの既知の方法のいずれかを介して化合物と適当な無機酸または有機酸の反応によって調製することが可能であることをさらに認識するだろう。あるいは、本発明の酸性化合物のアルカリおよびアルカリ土類金属塩は、種々の既知の方法を介して本発明の化合物を適当な塩基と反応させることによって調製される。
【0060】
本発明は、単一の塩として、または任意の比の前記塩の任意の混合物として本発明の化合物の全ての可能な塩を含む。
【0061】
本文中、特に実験節において、本発明の中間体および実施例の合成について、化合物を対応する塩基または酸による塩型として言及する場合、それぞれの調製および/または精製工程によって得られる前記塩型の正確な化学量論的組成は、ほとんどの場合、未知である。
【0062】
特に指定しない限り、例えば、「塩酸塩」、「トリフルオロアセテート」、「ナトリウム塩」または「x HCl」、「x CF3COOH」、「x Na」などの塩に関する化学名または構造式の接尾辞は、塩型を意味し、塩型の化学量論は指定されていない。
【0063】
合成中間体もしくは実施例化合物またはこれらの塩を、(定義する場合)未知の化学量論的組成の水和物などの溶媒和物として、調製および/または精製工程によって得た場合にもこれが同様に当てはまる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「インビボ加水分解性エステル」という用語は、カルボキシまたはヒドロキシ基を含む本発明の化合物のインビボ加水分解性エステル、例えば、ヒトまたは動物体内で加水分解して親酸またはアルコールを生成する薬学的に許容されるエステルを意味する。カルボキシについての適当な薬学的に許容されるエステルには、例えば、アルキル、シクロアルキルおよび置換されていてもよいフェニルアルキル、特にベンジルエステル、C1~C6アルコキシメチルエステル、例えば、メトキシメチル、C1~C6アルカノイルオキシメチルエステル、例えば、ピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、C3~C8シクロアルコキシ-カルボニルオキシ-C1~C6アルキルエステル、例えば、1-シクロヘキシルカルボニルオキシエチル;1,3-ジオキソレン-2-オニルメチルエステル、例えば、5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オニルメチル;およびC1~C6-アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば、1-メトキシカルボニルオキシエチルが含まれ、前記エステルは本発明の化合物中のいずれかのカルボキシ基で形成されることが可能である。
【0065】
ヒドロキシ基を含む本発明の化合物のインビボ加水分解性エステルには、無機エステル、例えば、リン酸エステルおよび[α]-アシルオキシアルキルエーテルおよびエステルのインビボ加水分解の結果として分解して親ヒドロキシ基を与える関連化合物が含まれる。[α]-アシルオキシアルキルエーテルの例としては、アセトキシメトキシおよび2,2-ジメチルプロピオニルオキシメトキシが挙げられる。ヒドロキシについてのインビボ加水分解性エステル形成基の選択には、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置換ベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカルボネートエステルを与える)、ジアルキルカルバモイルおよびN-(ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル(カルバメートを与える)、ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルが含まれる。本発明は全てのこのようなエステルを網羅する。
【0066】
さらに、本発明は、本発明の化合物の全ての可能な結晶型または多形を、単一多形としてまたは任意の比の2種以上の多形の混合物として含む。
【0067】
さらに、本発明は、本発明による化合物のプロドラッグも含む。「プロドラッグ」という用語は、ここでは、それ自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、体内での滞留時間中に本発明による化合物に(例えば、代謝的にまたは加水分解的に)変換される化合物を示す。
【0068】
第1の態様の第2の実施形態によると、本発明は、R1がメチルを表す、式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0069】
第1の態様の第3の実施形態によると、本発明は、R2がOHの2つの基で置換されたC4-アルキル、または1個のO原子を有し、任意の炭素原子において、同じもしくは異なり、オキソおよびOH基から選択される1つもしくは2つの置換基で置換された5員ヘテロシクロアルキルを表す、上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0070】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、R2がOHもしくは-COOHの2つの基によって同一にもしくは異なって置換されたC3-アルキル、または1個のO原子を有し、任意の炭素原子において、同じもしくは異なり、オキソおよびOHからなる群から選択される1つもしくは2つの置換基で置換された5員ヘテロシクロアルキルを表す、上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0071】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、R2がOHおよびCOOHで置換されたC3-アルキルを表す、上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0072】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、R2が2つのOH基で置換されたC4-アルキルを表す、上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0073】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、R2が-CH(CH2OH)(CH22OHを表す、上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0074】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、R2が、任意の炭素原子において、同じもしくは異なり、オキソおよびOH基から選択される1つもしくは2つの置換基で置換されたテトラヒドロフラニルを表す、上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0075】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、R2が、
場合により、任意の炭素原子において、1つのOHで置換された
式(II)のテトラヒドロフラニル基
【化2】
を表し、
*が上記の酸素原子を介した、前記基と分子の残りの結合点を示す、
上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0076】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、R2がテトラヒドロフラニル基の炭素原子5においてOHで置換された式(II)のテトラヒドロフラニル基を表す、上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0077】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、
R1がメチルを表し、
R2が、任意の炭素原子において、1つのOHで置換されたテトラヒドロフラニルを表す、
上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0078】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、
R1がメチルを表し、
R2が、炭素原子5において、OHで置換されたテトラヒドロフラニルを表す、
上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0079】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、
R1がメチルを表し、
R2がCH(CH2OH)(CH22OHを表す、
上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0080】
第1の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、
R1がメチルを表し、
R2がCH(CH2OH)(CH2COOH)を表す、
上記の一般式(I)の化合物、
ならびにその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、ならびにこれらの混合物を網羅する。
【0081】
第1の態様の特定のさらなる実施形態では、本発明は、「本発明の第1の態様のさらなる実施形態」という見出しの下で、上記の実施形態の2つ以上の組み合わせを網羅する。
【0082】
本発明は、上記一般式(I)の化合物の本発明の任意の実施形態または態様内の任意の部分的組み合わせを網羅する。
【0083】
本発明は、一般式の中間体化合物の本発明の任意の実施形態または態様内の任意の部分的組み合わせを網羅する。
【0084】
本発明は、下記の本文の実施例節で開示される一般式(I)の化合物を網羅する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
一般式(I)の本発明による化合物を化合物(III)から出発して調製することができる。化合物(III)、すなわち3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミドの合成は、国際公開第2016/091776号パンフレットに記載されている。
【0086】
式(I)の化合物は、スキーム1に示されるように、化合物(III)の直接的な化学的または微生物学的操作によって調製することができる。
【0087】
例えば、R2が、1個のO原子を有し、場合により、任意の炭素原子において、同じまたは異なり、オキソおよびOHからなる群から独立して選択される1つまたは2つの置換基で場合により置換された5員ヘテロシクロアルキルの意味を有し、R1がメチルまたは-COOHの意味を有する式(I)の化合物は、ピリジンなどの溶媒中、三塩化鉄の存在下で有機ヒドロペルオキシドを化合物(III)と撹拌することによって製造することができる。
【0088】
あるいは、国際公開第2016/091776号パンフレットに開示される方法を適用して、一般式(I)の化合物を製造することができる。
【0089】
さらに、R2が、場合により、同じまたは異なり、OHおよび-COOHからなる群から独立して選択される1つまたは2つの置換基で置換されたC3~C4-アルキルの意味を有する式(I)の化合物は、25~30℃の間の温度で、微生物増殖培地中での化合物(III)とアクチノバクテリア(Actinobacteria)のインキュベーションによって製造することができる。
【0090】
以下に記載されるスキームおよび手順は、本発明の一般式(I)の化合物への合成経路を示すが、限定的であることを意図していない。具体例を以下の段落で説明する。
【0091】
一般式(I)の化合物を調製するための2つの経路をスキーム1に記載する。
【化3】
【0092】
スキーム1:一般式(I)の化合物を調製するための経路(式中、R1は上記の一般式(I)について示される意味を有する):
a)25~30℃の間の温度で、増殖培地中でのストレプトマイセス(Streptomyces)による微生物学的合成を通した、場合により、同じまたは異なり、OHおよび-COOHからなる群から独立して選択される2つの置換基で置換されたC3~C4-アルキルの意味を有するR2を有する式(I)の化合物の調製。
b)1個のO原子を有し、任意の炭素原子において、同じまたは異なり、オキソおよびOHからなる群から独立して選択される1つまたは2つの置換基で置換された5員ヘテロシクロアルキルの意味を有するR2を有する式(I)の化合物の調製ピリジン中tert-ブチルヒドロペルオキシドと組み合わせた三塩化鉄(III)による化学合成。
【0093】
第2の態様によると、本発明は、培養培地中で微生物を培養し、この培養物を一般式(III)の化合物と共にインキュベートし、形成された一般式(I)の化合物を培地から単離する、上に定義される一般式(I)の化合物を調製する方法を網羅する。
【0094】
第2の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、上に定義される一般式(I)の化合物を調製する方法であって、培養培地中で微生物としてのアクチノバクテリア(Actinobacteria)を培養するステップと、この培養物を一般式(III)の化合物と共にインキュベートするステップと、形成された一般式(I)の化合物を培地から単離するステップとを含む方法を網羅する。
【0095】
第2の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、上に定義される一般式(I)の化合物を調製する方法であって、培養培地中で微生物としてのストレプトマイセス(Streptomyces)細菌を培養するステップと、この培養物を一般式(III)の化合物と共にインキュベートするステップと、形成された一般式(I)の化合物を培地から単離するステップとを含む方法を網羅する。
【0096】
第2の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、上に定義される一般式(I)の化合物を調製する方法であって、培養培地中で微生物としてのストレプトマイセス・ロゼオクロモゲナス(Streptomyces roseochromogenus)を培養するステップと、この培養物を一般式(III)の化合物と共にインキュベートするステップと、形成された一般式(I)の化合物を培地から単離するステップとを含む方法を網羅する。
【0097】
第2の態様のさらなる実施形態によると、本発明は、上に定義される一般式(I)の化合物を調製する方法であって、培養培地中で微生物としてのストレプトマイセス・アルブルス(Streptomyces albulus)を培養するステップと、この培養物を一般式(III)の化合物と共にインキュベートするステップと、形成された一般式(I)の化合物を培地から単離するステップとを含む方法を網羅する。
【0098】
本発明の一般式(I)の化合物は、当業者に知られている任意の方法によって、任意の塩、好ましくは本明細書に記載される薬学的に許容される塩に変換することができる。同様に、本発明の一般式(I)の化合物の任意の塩は、当業者に知られている任意の方法によって、遊離化合物に変換することができる。
【0099】
本発明の一般式(I)の化合物は、データによって裏付けられなければ共に予測され得なかった作用および薬物動態プロファイルの有益な薬理学的スペクトルを実証する。驚くべきことに、本発明の化合物は、P2X3受容体を有効に阻害することが分かっており、そのため、前記化合物を、ヒトおよび動物における疾患、好ましくは神経原性障害の治療または予防に使用することが可能である。
【0100】
本発明の化合物は、薬理学的機構を阻害、遮断、低減、減少等するために利用することができる。この方法は、障害を治療するのに有効な量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、異性体、代謝産物、水和物、溶媒和物もしくはエステルを、ヒトを含む、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む。
【0101】
特に、本発明の化合物は、化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する尿生殖器、胃腸、呼吸器、心血管疾患、ならびに疼痛関連疾患、状態および障害などの神経原性障害の治療および/または予防に適している。
【0102】
したがって、本発明の化合物は、以下の疾患を治療および/または予防するための医薬品に使用することができる:
・月経困難症(原発性および続発性月経困難症)、性交疼痛症、子宮内膜症、腺筋症、子宮内膜症関連疼痛、子宮内膜症関連増殖、骨盤過敏症、および子宮内膜症関連症状からなる群から選択される婦人科疾患および関連症状(前記症状は特に、排尿障害または排便障害である);
・膀胱下尿道閉塞、尿失禁状態、膀胱容量の減少、排尿頻度の増加、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、膀胱過敏症、良性前立腺肥大、前立腺肥大症、前立腺炎、排尿筋反射亢進、骨盤過敏症、尿道炎、前立腺炎、前立腺痛、膀胱炎、間質性膀胱炎、特発性膀胱過敏症、過活動膀胱、および過活動膀胱に関連する症状からなる群から選択される尿路疾患状態および関連症状(前記症状は、頻尿、夜間多尿、尿意切迫または切迫性尿失禁である);
・急性、慢性、炎症性および神経性疼痛からなる群から選択される疼痛;
・腰痛、外科的疼痛、内臓痛、歯痛、歯周炎、月経前疼痛、子宮内膜症関連疼痛、線維性疾患に関連する疼痛、中枢神経系疼痛、口腔灼熱症候群による疼痛、火傷による疼痛、偏頭痛、群発性頭痛による疼痛、神経傷害による疼痛、神経炎による疼痛、神経痛、中毒による疼痛、虚血性傷害による疼痛、間質性膀胱炎による疼痛、がん疼痛、ウイルス、寄生虫または細菌感染症による疼痛、外傷性神経傷害による疼痛、外傷後傷害(骨折およびスポーツ傷害を含む)による疼痛、三叉神経痛による疼痛、細線維神経障害による疼痛、糖尿病性神経障害に関連する疼痛、帯状疱疹後神経痛、慢性腰痛、頸部痛、幻肢痛、骨盤痛症候群、慢性骨盤痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、胃腸膨張に関連する疼痛、慢性関節炎痛および関連神経痛、ならびにがんに関連する疼痛、モルヒネ耐性疼痛、化学療法に関連する疼痛、HIVおよびHIV治療誘発性神経障害;ならびに痛覚過敏、異痛症、機能性腸障害(過敏性腸症候群など)および関節炎(骨関節炎、関節リウマチおよび強直性脊椎炎など)からなる群から選択される疾患または障害に関連する疼痛からなる群から選択される炎症性疼痛;
・痛覚過敏、異痛症、機能性腸障害(過敏性腸症候群を含む)、痛風、関節炎(骨関節炎、関節リウマチおよび強直性脊椎炎を含む)、口腔灼熱症候群、火傷、偏頭痛または群発性頭痛、神経傷害、外傷性神経傷害、外傷後傷害(骨折およびスポーツ傷害を含む)、神経炎、神経痛、中毒、虚血性傷害、間質性膀胱炎、がん、三叉神経痛、細線維神経障害、糖尿病性神経障害、慢性関節炎および関連神経痛、HIVおよびHIV治療誘発性神経障害、掻痒、創傷治癒障害および関節の変性を含む骨格の疾患からなる群から選択される疼痛関連疾患または障害;
・てんかん、部分発作および全般発作;
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支痙攀、肺線維症、急性咳嗽、ならびに慢性特発性咳嗽および慢性難治性咳嗽を含む慢性咳嗽からなる群から選択される呼吸器障害;
・過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、胆石疝痛および他の胆汁障害、腎疝痛、下痢型IBS、胃食道逆流症、胃腸膨満、およびクローン病からなる群から選択される胃腸障害;
・アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、脳虚血および外傷性脳損傷からなる群から選択される神経変性障害;
・化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する呼吸障害、チェーン・ストークス呼吸、中枢性睡眠時無呼吸および閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患、高血圧、抵抗性高血圧、および心不全;
・心筋梗塞、脂質障害;
・掻痒。
【0103】
本発明はまた、神経原性障害を治療する方法、特に上記の疾患および障害を治療する方法を提供する。
【0104】
これらの障害はヒトにおいてよく特徴づけられているが、他の哺乳動物でも類似の病因で存在し、本発明の医薬組成物を投与することによって治療することができる。
【0105】
本文で使用される「治療すること」または「治療」という用語は、慣習的に使用され、例えば、神経原性障害または疾患などの疾患または障害の状態と戦う、これを緩和する、低減する、軽減する、改善する目的での対象の管理または介護である。
【0106】
本発明の化合物は、神経原性疾患、状態および障害の治療および予防、すなわち予防に使用することができる。
【0107】
本発明の化合物は、特に、化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する尿生殖器、胃腸、呼吸器、心血管疾患、ならびに疼痛関連疾患、状態および障害の治療および予防、すなわち予防に使用することができる。
【0108】
さらなる態様によると、本発明は、疾患、特に神経原性障害の治療または予防に使用するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物を網羅する。
【0109】
本発明による化合物の医薬活性は、P2X3阻害剤としてのそれらの活性によって説明することができる。
【0110】
さらなる態様によると、本発明は、疾患、特に神経原性障害、特に化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する尿生殖器、胃腸、呼吸器、心血管疾患、ならびに疼痛関連疾患、状態および障害を治療または予防するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0111】
本文で使用される「尿生殖器疾患、状態および障害」という用語は、慣習的に、例えば、尿生殖器系の疾患、状態および障害について使用される。特に、これは、女性骨盤器官の疾患、女性生殖器の障害および泌尿器系の疾患について本文で使用される。換言すれば、本文で使用される「尿生殖器疾患、状態および障害」という用語は、慣習的に、例えば婦人科疾患および尿路疾患、状態および障害について使用される。
【0112】
さらなる態様によると、本発明は、疾患、特に婦人科疾患、特に月経困難症(原発性および続発性月経困難症)、性交疼痛症、子宮内膜症、腺筋症、子宮内膜症関連疼痛、子宮内膜症関連増殖、骨盤過敏症、および子宮内膜症関連症状(前記症状は特に、排尿障害または排便障害である)を予防または治療するための、上記の式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0113】
さらなる態様によると、本発明は、疾患、特に尿路疾患状態、特に膀胱下尿道閉塞、尿失禁状態、膀胱容量の減少、排尿頻度の増加、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、膀胱過敏症、良性前立腺肥大、前立腺肥大症、前立腺炎、排尿筋反射亢進、骨盤過敏症、尿道炎、前立腺炎、前立腺痛、膀胱炎、間質性膀胱炎、特発性膀胱過敏症、過活動膀胱、および過活動膀胱に関連する症状(前記症状は、頻尿、夜間多尿、尿意切迫または切迫性尿失禁である)を治療または予防する方法における、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0114】
さらなる態様によると、本発明は、疼痛関連疾患、状態および障害を予防または治療するための医薬組成物、好ましくは医薬品を調製するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0115】
本文で使用される「疼痛関連(pain-related)疾患、状態および障害」または「疼痛関連(pain-associated)疾患、状態および障害」および同様の用語は、慣習的に、例えば、急性、慢性、炎症性および神経性疼痛疾患、状態ならびに障害に使用される。
【0116】
さらなる態様によると、本発明は、疼痛関連疾患、状態および障害、特に急性、慢性、炎症性および神経性疼痛障害、特に腰痛、外科的疼痛、内臓痛、歯痛、歯周炎、月経前疼痛、子宮内膜症関連疼痛、線維性疾患に関連する疼痛、中枢神経系疼痛、口腔灼熱症候群による疼痛、火傷による疼痛、偏頭痛、群発性頭痛による疼痛、神経傷害による疼痛、神経炎による疼痛、神経痛、中毒による疼痛、虚血性傷害による疼痛、間質性膀胱炎による疼痛、がん疼痛、ウイルス、寄生虫または細菌感染症による疼痛、外傷性神経傷害による疼痛、外傷後傷害(骨折およびスポーツ傷害を含む)による疼痛、三叉神経痛による疼痛、細線維神経障害による疼痛、糖尿病性神経障害に関連する疼痛、帯状疱疹後神経痛、慢性腰痛、頸部痛、幻肢痛、骨盤痛症候群、慢性骨盤痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、胃腸膨張に関連する疼痛、慢性関節炎痛および関連神経痛、ならびにがんに関連する疼痛、モルヒネ耐性疼痛、化学療法に関連する疼痛、HIVおよびHIV治療誘発性神経障害;ならびに痛覚過敏、異痛症、機能性腸障害(過敏性腸症候群など)および関節炎(骨関節炎、関節リウマチおよび強直性脊椎炎など)からなる群から選択される疾患または障害に関連する疼痛からなる群から選択される炎症性疼痛を予防または治療するための医薬組成物、好ましくは医薬品を調製するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0117】
さらなる態様によると、本発明は、疾患、特に呼吸器障害、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支痙攀、肺線維症、急性咳嗽、ならびに慢性特発性咳嗽および慢性難治性咳嗽を含む慢性咳嗽を予防または治療するための医薬組成物、好ましくは医薬品を調製するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0118】
さらなる態様によると、本発明は、疾患、特に胃腸障害、特に過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、胆石疝痛および他の胆汁障害、腎疝痛、下痢型IBS、胃食道逆流症、胃腸膨満、およびクローン病を予防または治療するための医薬組成物、好ましくは医薬品を調製するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0119】
さらなる態様によると、本発明は、疾患を予防または治療するための、特にP2X3受容体の活性の増加に関連する呼吸障害、チェーン・ストークス呼吸、中枢性睡眠時無呼吸および閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患、高血圧、抵抗性高血圧、および心不全を治療するための医薬組成物、好ましくは医薬品を調製するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0120】
さらなる態様によると、本発明は、疾患、特に疼痛関連疾患または障害、特に痛覚過敏、異痛症、機能性腸障害(過敏性腸症候群を含む)、痛風、関節炎(骨関節炎、関節リウマチおよび強直性脊椎炎を含む)、口腔灼熱症候群、火傷、偏頭痛または群発性頭痛、神経傷害、外傷性神経傷害、外傷後傷害(骨折およびスポーツ傷害を含む)、神経炎、神経痛、中毒、虚血性傷害、間質性膀胱炎、がん、三叉神経痛、細線維神経障害、糖尿病性神経障害、慢性関節炎および関連神経痛、HIVおよびHIV治療誘発性神経障害、掻痒、創傷治癒障害および関節の変性を含む骨格の疾患を予防または治療するための医薬組成物、好ましくは医薬品を調製するための、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の使用を網羅する。
【0121】
さらなる態様によると、本発明は、有効量の上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物および塩、特にその薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物を使用して、疾患、特に神経原性障害、特に化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する尿生殖器、胃腸、呼吸器、心血管疾患、ならびに疼痛関連疾患、状態および障害を治療または予防する方法を網羅する。
【0122】
さらなる態様によると、本発明は、上記の一般式(I)の化合物、またはその立体異性体、互変異性体、N-オキシド、水和物、溶媒和物、塩、特に薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物と、1種または複数の賦形剤、特に1種または複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物、特に医薬品を網羅する。適当な剤形のこのような医薬組成物を調製するための従来手順を利用することができる。
【0123】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1種の化合物を、慣習的に1種または複数の薬学的に適した賦形剤と一緒に含む医薬組成物、特に医薬品、および上述の目的のためのその使用を網羅する。
【0124】
本発明による化合物が全身および/または局所活性を有することが可能である。この目的のために、これらを適当な様式で、例えば、経口、非経口、肺、経鼻、舌下、舌、頬側、直腸、膣、真皮、経皮、結膜、耳経路を介して、またはインプラントもしくはステントとして投与することができる。
【0125】
これらの投与経路のために、本発明による化合物を適切な投与形態で投与することが可能である。
【0126】
経口投与のために、本発明による化合物を、本発明の化合物を迅速におよび/または改変された様式で送達する当分野で公知の剤形、例えば錠剤(非コーティングまたは例えば、遅延溶解するもしくは可溶性である腸溶性もしくは制御放出コーティングによるコーティング錠)、経口崩壊錠、フィルム/ウエハー、フィルム/凍結乾燥物、カプセル剤(例えば、硬質または軟質ゼラチンカプセル)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット、粉末、乳剤、懸濁液、エアロゾール剤または溶液に製剤化することが可能である。本発明による化合物を結晶形態および/または非晶形態および/または溶解形態で前記剤形に組み込むことが可能である。
【0127】
非経口投与は、吸収ステップを回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内もしくは腰椎内)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮もしくは腹腔内)達成することができる。非経口投与に適した投与形態は、とりわけ、溶液、懸濁液、乳剤、凍結乾燥物または無菌粉末の形態の注射および点滴用製剤である。
【0128】
他の投与経路に適した例には、吸入のための医薬形態[とりわけ、粉末吸入器、ネブライザー]、点鼻薬、点鼻液または鼻腔スプレー;舌、舌下または頬側投与のための錠剤/フィルム/ウエハー/カプセル剤;坐剤;点眼薬、眼軟膏、眼浴、眼球インサート、点耳剤、耳スプレー、耳散剤、耳リンス、耳タンポン;膣カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、乳剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチなど)、ミルク、ペースト、フォーム、粉剤、インプラントまたはステントがある。
【0129】
本発明による化合物を、言及される投与形態に組み込むことができる。これは、薬学的に適切な賦形剤と混合することによって、それ自体は既知の様式で行うことができる。薬学的に適切な賦形剤には、とりわけ、以下が含まれる
・充填剤および担体(例えば、セルロース、微結晶セルロース(例えば、Avicel(登録商標)など)、ラクトース、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム(例えば、Di-Cafos(登録商標)など)、
・軟膏基剤(例えば、ワセリン、パラフィン、トリグリセリド、ワックス、ウールワックス、ウールワックスアルコール、ラノリン、親水性軟膏、ポリエチレングリコール)、
・坐剤用の基剤(例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、硬質脂肪)、
・溶媒(例えば、水、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコール、中鎖長トリグリセリド脂肪油、液体ポリエチレングリコール、パラフィン)、
・界面活性剤、乳化剤、分散剤または湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、レシチン、リン脂質、脂肪アルコール(例えばLanette(登録商標)など)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Span(登録商標)など)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(登録商標)など)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド(例えば、Cremophor(登録商標)など)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、グリセロール脂肪酸エステル、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)など)。
・緩衝剤、酸および塩基(例えば、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム溶液、炭酸アンモニウム、トロメタモール、トリエタノールアミン)、
・等張剤(例えば、グルコース、塩化ナトリウム)、
・吸着剤(例えば、高分散性シリカ)、
・増粘剤、ゲル形成剤、増ちょう剤および/または結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、カルボマー、ポリアクリル酸(例えば、Carbopol(登録商標)など);アルギン酸塩、ゼラチン)、
・崩壊剤(例えば、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース-ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、Explotab(登録商標)など)、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロース-ナトリウム(例えば、AcDiSol(登録商標)など))、
・流動調節剤、潤滑剤、滑剤および離型剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、高分散性シリカ(例えば、Aerosil(登録商標)など))、
・コーティング材料(例えば、糖、シェラック)および急速にまたは改変された様式で溶解するフィルムまたは拡散膜用のフィルム形成剤(例えば、ポリビニルピロリドン(例えば、Kollidon(登録商標)など))、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、例えば、Eudragit(登録商標))、
・カプセル材料(例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、
・合成ポリマー(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標)など)、ポリビニルピロリドン(例えば、Kollidon(登録商標)など)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールならびにこれらのコポリマーおよびブロックコポリマー)、
・可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリアセチル、フタル酸ジブチル)、
・浸透促進剤、
・安定剤(例えば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどの抗酸化剤)、
・保存剤(例えばパラベン、ソルビン酸、チオメルサール、塩化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジン、安息香酸ナトリウム)、
・着色剤(例えば、酸化鉄、二酸化チタンなどの無機顔料)、
・香味剤、甘味剤、香味および/または臭気マスキング剤。
【0130】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明による化合物を、慣習的に1種または複数の薬学的に適した賦形剤と一緒に含む医薬組成物、および本発明によるそれらの使用に関する。
【0131】
別の態様によると、本発明は、特に、神経原性障害、特に化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する尿生殖器、胃腸、呼吸器、心血管疾患、ならびに疼痛関連疾患、状態および障害を治療および/または予防するための、少なくとも1種の本発明の一般式(I)の化合物と少なくとも1種または複数のさらなる有効成分とを含む、医薬組み合わせ、特に医薬品を網羅する。
【0132】
特に、本発明は、
・ 1種または複数の第1の有効成分、特に上に定義される一般式(I)の化合物と、
・ 神経原性障害、化学受容器感受性の増加によって引き起こされる自律神経失調に関連する尿生殖器、胃腸、呼吸器、心血管疾患、ならびに疼痛関連疾患、状態および障害の治療に適した、1種または複数のさらなる有効成分と
を含む、医薬組み合わせを網羅する。
【0133】
本発明における「組み合わせ」という用語は、当業者に知られているように使用され、組み合わせが固定した組み合わせ、固定していない組み合わせまたはパーツキット(kit-of-parts)であることが可能である。
【0134】
本発明における「固定した組み合わせ」は、当業者に知られているように使用され、例えば、第1の有効成分、例えば1種または複数の本発明の一般式(I)の化合物およびさらなる有効成分が1つの単位投与量または単一実体中に一緒に存在する組み合わせとして定義される。「固定した組み合わせ」の1つの例は、第1の有効成分およびさらなる有効成分が同時投与用の混和物、例えば、製剤中に存在する医薬組成物である。「固定した組み合わせ」の別の例は、第1の有効成分およびさらなる有効成分が混和していないが一単位中に存在する医薬組み合わせである。
【0135】
本発明における固定していない組み合わせまたは「パーツキット」は、当業者に知られているように使用され、第1の有効成分およびさらなる有効成分が2つ以上の単位中に存在する組み合わせとして定義される。固定していない組み合わせまたはパーツキットの1つの例は、第1の有効成分およびさらなる有効成分が別々に存在する組み合わせである。固定していない組み合わせまたはパーツキットの成分を、別々に、順次、同時に、同時発生的にまたは時差的交互的に(chronologically staggered)投与することが可能である。
【0136】
本発明の化合物は、唯一の医薬剤として、または組み合わせが許容できない有害効果をもたらさない1種または複数の他の医薬有効成分との組み合わせで投与することができる。本発明はまた、このような医薬組み合わせを網羅する。例えば、本発明の化合物は、既知のホルモン治療剤と組み合わせることができる。
【0137】
本発明の化合物を、P2X3受容体に関連するまたはP2X3受容体によって媒介される疾患の治療および/または予防のために既に承認されているまたはまだ開発中の治療薬または有効成分と組み合わせることができる。このような治療剤または有効成分は、例えば、それだけに限らないが、5-(2,4-ジアミノピリミジン-5-イルオキシ)-4-イソプロピル-2-メトキシベンゼンスルホンアミド(ゲーファピキサント/MK-7264/AF-219)、(5-(5-ヨード-2-イソプロピル-4-メトキシフェノキシ)ピリミジン-2,4-ジアミン(AF-353)、5-[2-イソプロピル-4-メトキシ-5-(メチルスルホニル)フェノキシ]ピリミジン-2,4-ジアミン(AF-130)、2-[[4-アミノ-5-(5-ヨード-4-メトキシ-2-プロパン-2-イルフェノキシ)ピリミジン-2-イル]アミノ]プロパン-1,3-ジオール(AF-906)および(S)-メチル2-((2-(2,6-ジフルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)メチル)モルホリン-4-カルボキシレート(BLU-5937/NEO 5937)である。
【0138】
本発明の化合物は、他の標的に関連する、疾患の治療および/または予防のために既に承認されているか、または未だ開発中の治療剤または有効成分、例えばNK1阻害剤、例えば2-(R)-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-(S)-((8aS)-6-オキソヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル)ピペリジン-1-カルボン酸[1-(R)-(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)エチル]メチルアミド(オルベピタント)、3-[(3aR,4R,5S,7aS)-5-{(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}-4-(4-フルオロフェニル)オクタヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロペンタ-2-エン-1-オン(セルロピタント)、またはニコチン性アセチルコリンモジュレーター、例えばN-(2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド(ブラダニクリン/ATA-101)と組み合わせることができる。
【0139】
特に、本発明の化合物は、ホルモン避妊薬と組み合わせて、または併用して投与することができる。ホルモン避妊薬は、例えば、混合経口避妊薬(COC)もしくはプロゲスチン単剤ピル(POP)、またはホルモン含有装置、例えば、植込錠、パッチもしくは膣内リングとして、経口、皮下、経皮、子宮内または膣内経路を介して投与することができる。
【0140】
COCには、それだけに限らないが、エストロゲン(エストラジオール)とプロゲストーゲン(プロゲスチン)との組み合わせを含む、避妊薬または避妊法が含まれる。エストロゲン部分は、COCエチニルエストラジオールのほとんどに含まれる。いくつかのCOCは、エストラジオールまたは吉草酸エストラジオールを含有する。
【0141】
前記COCは、プロゲスチンノルエチノドレル、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、酢酸エチノジオール、ノルゲストレル、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、デソゲストレル、ゲストデン、ドロスピレノン、ジエノゲストまたは酢酸ノメゲストロールを含有する。
【0142】
避妊薬には、例えば、それだけに限らないが、エチニルエストラジオールとドロスピレノンの両方を含有するYasmin、Yaz;レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含有するMicrogynonまたはMiranova;エチニルエストラジオールおよびデソゲストレルを含有するMarvelon;エチニルエストラジオールおよびジエノゲストを含有するValette;エチニルエストラジオールおよび酢酸クロルマジノンを含有するBelaraおよびEnriqa;有効成分として吉草酸エストラジオールおよびジエノゲストを含有するQlaira;ならびにエストロジオールおよびノルメゲストロール(normegestrol)を含有するZoelyが含まれる。
【0143】
POPは、合成プロゲストーゲン(プロゲスチン)のみを含有し、エストロゲンを含有しない避妊ピルである。これらは口語的にミニピルとして知られている。
【0144】
POPには、それだけに限らないが、デソゲストレルを含有するCerazette;レボノルゲストレルを含有するMicrolutおよびノルエチンドロンを含有するMicronorが含まれる。
【0145】
他のプロゲステロン単剤形態は、子宮内避妊具(IUD)、例えば、レボノルゲストレルを含有するMirena、または注射剤、例えば、酢酸メドロキシプロゲステロンを含有するDepo-Provera、または植込錠、例えば、エトノゲストレルを含有するImplanonである。
【0146】
本発明の化合物との組み合わせに適した避妊効果を有する他のホルモン含有装置は、膣リング、例えば、エチニルエストラジオールおよびエトノゲストレルを含有するNuvaring、または経皮システム、例えば、避妊パッチ、例えば、エチニルエストラジオールおよびゲストデンを含有するOrtho-EvraまたはApleek(Lisvy)である。
【0147】
本発明の好ましい実施形態は、上記のCOCまたはPOPまたは他のプロゲスチン単剤形態ならびに膣リングまたは避妊パッチと組み合わせた一般式(I)の化合物の投与である。
【0148】
尿路疾患を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、以下の適応症において治療剤として施用することができる任意の物質と組み合わせて、または併用して投与することができる:
【0149】
膀胱出口閉塞;膀胱容量の減少、排尿頻度の増加、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁または膀胱過敏症などの尿失禁状態;良性前立腺肥大;前立腺肥大症;前立腺炎;排尿筋反射亢進;過活動膀胱および過活動膀胱に関連する症状(前記症状は、特に、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫または尿失禁である);骨盤過敏症;尿道炎;前立腺炎;前立腺痛;膀胱炎、特に間質性膀胱炎;特発性膀胱過敏症に関連する尿路疾患状態。
【0150】
過活動膀胱および過活動膀胱に関連する症状を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、行動療法、例えば、食事、生活習慣または膀胱訓練と独立にまたはこれに加えて、抗コリン薬、例えば、オキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トロスピウム、フェソテルジン;βー3アゴニスト、例えば、ミラベグロン;神経毒、例えば、オナボツリヌス毒素A;または抗うつ薬、例えば、イミプラミン、デュロキセチンと組み合わせて、または併用して投与することができる。
【0151】
間質性膀胱炎を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、行動療法、例えば、食事、生活習慣または膀胱訓練と独立にまたはこれに加えて、ペントサン、例えば、elmiron(登録商標);NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)、非選択的NSAIDS、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナク、アスピリン、ナプロキセン、ケトプロフェン、インドメタシン;ならびにCox-2選択的NSAIDS、例えば、パレコキシブ、エトリコキシブ、セレコキシブ;抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン、イミプラミン;または抗ヒスタミン薬、例えば、ロラタジンと組み合わせて、または併用して投与することができる。
【0152】
婦人科疾患を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、以下の適応症において治療剤として施用することができる任意の物質と組み合わせて、または併用して投与することができる:
月経困難症(原発性および続発性月経困難症を含む);性交疼痛症;子宮内膜症;子宮内膜症関連疼痛;子宮内膜症関連症状(前記症状は、特に、月経困難症、性交疼痛症、排尿障害または排便障害である)。
【0153】
月経困難症(原発性および続発性月経困難症を含む);性交疼痛症;子宮内膜症および子宮内膜症関連疼痛を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、疼痛薬、特に、NSAIDS、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナク、アスピリン、ナプロキセン、ケトプロフェン、インドメタシン;ならびにCox-2選択的NSAIDS、例えば、パレコキシブ、エトリコキシブ、セレコキシブと組み合わせてまたは併用して;あるいは排卵阻害治療、特に上記のCOCまたは避妊パッチ、例えば、Ortho-EvraまたはApleek(Lisvy)と組み合わせて;あるいはプロゲストーゲン、例えば、ジエノゲスト(Visanne)と併用して;あるいはGnRH類似体、特に、GnRHアゴニストおよびアンタゴニスト、例えばリュープロレリン、ナファレリン、ゴセレリン、セトロレリクス、アバレリクス、ガニレリクス、デガレリクスと併用して;あるいはアンドロゲン:ダナゾールと併用して投与することができる。
【0154】
子宮内膜症および子宮内膜症関連疼痛を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、GnRHアンタゴニスト、例えばElagolix、LinzagolixまたはRelugolixと組み合わせて、併用して投与することができる。
【0155】
子宮内膜症および子宮内膜症関連疼痛を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)またはプロゲステロンアンタゴニスト、例えばビラプリサン、ウリプリスタル酢酸エステル、テラプリストンまたはミフェプリストンと組み合わせて、または併用して投与することができる。
【0156】
疼痛または疼痛症候群と関連する疾患を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、以下の適応症において治療剤として施用することができる任意の物質と組み合わせて、または併用して投与することができる:
疼痛関連疾患または障害、例えば、痛覚過敏、異痛症、機能性腸障害(過敏性腸症候群など)および関節炎(骨関節炎、関節リウマチおよび強直性脊椎炎など)、口腔灼熱症候群、火傷、偏頭痛または群発性頭痛、神経傷害、外傷性神経傷害、外傷後傷害(骨折およびスポーツ傷害を含む)、神経炎、神経痛、中毒、虚血性傷害、間質性膀胱炎、三叉神経痛、細線維神経障害、糖尿病性神経障害、慢性関節炎および関連神経痛、HIVおよびHIV治療誘発性神経障害。
【0157】
本発明の化合物は、炎症性疾患、炎症性疼痛または全身神経性疼痛状態を治療することを意図した他の薬理学的薬剤および化合物と組み合わせることができる。
【0158】
既に承認され市販されている周知の医薬品に加えて、本発明の化合物を、PTGES(プロスタグランジンEシンターゼ)の阻害剤、IRAK4の阻害剤(インターロイキン-1受容体関連キナーゼ4)およびプロスタノイドEP4受容体(プロスタグランジンE2受容体4)のアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0159】
特に、本発明の化合物を、炎症性疾患、炎症性疼痛または全身性神経性疼痛状態を治療することを意図したおよび/または子宮内膜増殖および子宮内膜症関連症状を妨害する薬理学的子宮内膜症薬、すなわちアルド・ケト還元酵素阻害剤1C3(AKR1C3)およびプロラクチン受容体の機能的遮断抗体と組み合わせて投与することができる。
【0160】
慢性咳嗽および慢性咳嗽に関連する症状を治療および/または予防するために、本発明の化合物を、咳抑制剤、例えば、デキストロメトルファン、ベンゾナテート、コデインまたはヒドロコドン;好酸球性気管支炎、COPDまたは喘息を治療するための吸入剤、例えば、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、テオフィリン、イパトロピウムブロミド、モンテルカストまたはサルブタモール;呑酸を治療するために使用されるプロトンポンプ阻害剤などの薬物、例えば、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラニチジン、ファモチジン、シメチジン;および機能調整剤、例えば、メトクロプラミド;鼻または局所グルココルチコイド、例えば、フルチカゾンまたはモメタゾンまたはトリアムシノロン;または経口抗ヒスタミン薬、例えば、ロラタジン、フェキソフェナジンまたはセチリジンと組み合わせて、または併用して投与することができる。
【0161】
本発明の化合物は、がんの治療、予防または管理を意図した他の薬理学的薬剤および化合物と組み合わせることができる。
【0162】
特に、本発明の化合物は、131I-chTNT、アバレリクス、アビラテロン、アクラルビシン、Ado-トラスツズマブ・エムタンシン、アファチニブ、アフリベルセプト、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アレンドロン酸、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミホスチン、アミノグルテチミド、ヘキシルアミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アンセスチム、アネトールジチオールチオン、アンギオテンシンII、アンチトロンビンIII、アプレピタント、アルシツモマブ、アルグラビン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、アザシチジン、バシリキシマブ、ベロテカン、ベンダムスチン、ベリノスタット、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ビサントレン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、ホリナートカルシウム、レボホリナートカルシウム、カペシタビン、カプロマブ、カルボプラチン、カーフィルゾミブ、カルモフール、カルムスチン、カツマキソマブ、セレコキシブ、セルモロイキン、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロルマジノン、クロルメチン、シドフォビル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸、クロファラビン、コパンリシブ、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デプレオチド、デスロレリン、デクスラゾキサン、塩化ジブロスピジウム、ジアンヒドロガラクチトール、ジクロフェナク、ドセタキセル、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン+エストロン、ドロナビノール、エクリズマブ、エドレコロマブ、酢酸エリプチニウム、エルトロンボパグ、エンドスタチン、エノシタビン、エンザルタミド、エピルビシン、エピチオスタノール、エポエチンα、エポエチンβ、エポエチンζ、エプタプラチン、エリブリン、エルロチニブ、エソメプラゾール、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、ファドロゾール、フェンタニル、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、フォルメスタン、ホスアプレピタント、フォテムスチン、フルベストラント、ガドブトロール、ガドテリドール、ガドテル酸メグルミン、ガドベルセタミド、ガドキセト酸、硝酸ガリウム、ガニレリクス、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、グルカルピダーゼ、グルトキシム、GM-CSF、ゴセレリン、グラニセトロン、顆粒球コロニー刺激因子、ヒスタミン二塩酸塩、ヒストレリン、ヒドロキシカルバミド、I-125種、ランソプラゾール、イバンドロン酸、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イミキモド、インプロスルファン、インジセトロン、インカドロン酸、インゲノールメブテート、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、イオビトリドール、イオベングアン(123I)、イオメプロール、イピリムマブ、イリノテカン、イトラコナゾール、イキサベピロン、ランレオチド、ラパチニブ、ラソコリン、レナリドミド、レノグラスチム、レンチナン、レトロゾール、リュープロレリン、レバミソール、レボノルゲストレル、レボチロキシンナトリウム、リスリド、ロバプラチン、ロムスチン、ロニダミン、マソプロコール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メラルソプロール、メルファラン、メピチオスタン、メルカプトプリン、メスナ、メタドン、メトトレキサート、メトキサレン、アミノレブリン酸メチル、メチルプレドニソロン、メチルテストステロン、メチロシン、ミファムルチド、ミルテホシン、ミリプラチン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モガムリズマブ、モルグラモスチム、モピダモール、モルヒネ塩酸塩、モルヒネ硫酸塩、ナビロン、ナビキシモルス、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトレキソン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネララビン、ネリドロン酸、ニボルマブペンテトレオチド、ニロチニブ、ニルタミド、ニモラゾール、ニモツズマブ、ニムスチン、ニトラクリン、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オクトレオチド、オファツムマブ、オマセタキシン・メペサクシネート、オメプラゾール、オンダンセトロン、オプレルベキン、オルゴテイン、オリロチモド、オキサリプラチン、オキシコドン、オキシメトロン、オゾガミシン、p53遺伝子治療、パクリタキセル、パリフェルミン、パラジウム103種、パロノセトロン、パミドロン酸、パニツムマブ、パントプラゾール、パゾパニブ、ペグアスパラガーゼ、PEG-エポエチンβ(メトキシPEG-エポエチンβ)、ペンブロリズマブ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンα-2b、ペメトレキセド、ペンタゾシン、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルフルブタン、ペルホスファミド、ペルツズマブ、ピシバニル、ピロカルピン、ピラルビシン、ピキサントロン、プレリキサフォル、プリカマイシン、ポリグルサム、リン酸ポリエストラジオール、ポリビニルピロリドン+ヒアルロン酸ナトリウム、ポリサッカリドK、ポマリドミド、ポナチニブ、ポルフィマーナトリウム、プララトレキサート、プレドニムスチン、プレドニソン、プロカルバジン、プロコダゾール、プロプラノロール、キナゴリド、ラベプラゾール、ラコツモマブ、塩化ラジウム223、ラドチニブ、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラモセトロン、ラムシルマブ、ラニムスチン、ラスブリカーゼ、ラゾキサン、レファメチニブ、レゴラフェニブ、リセドロン酸、レニウム186エチドロン酸塩、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、ロムルチド、ロニシクリブ、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、サツモマブ、セクレチン、シプロイセルT、シゾフィラン、ソブゾキサン、グリシジダゾールナトリウム、ソラフェニブ、スタノゾロール、ストレプトゾシン、スニチニブ、タラポルフィン、タミバロテン、タモキシフェン、タペンタドール、タソネルミン、テセロイキン、テクネチウム(99mTc)ノフェツモマブメルペンタン、99mTc-HYNIC-[Tyr3]-オクトレオチド、テガフール、テガフール+ギメラシル+オテラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、テトロホスミン、サリドマイド、チオテパ、チマルファシン、サイロトロピンアルファ、チオグアニン、トシリズマブ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラベクテジン、トラマドール、トラスツズマブ、トラスツズマブ・エムタンシン、トレオスルファン、トレチノイン、トリフルリジン+チピラシル、トリロスタン、トリプトレリン、トラメチニブ、トロホスファミド、トロンボポエチン、トリプトファン、ウベニメクス、バラチニブ、バルルビシン、バンデタニブ、バプレオチド、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ビスモデギブ、ボリノスタット、ボロゾール、イットリウム-90ガラス微粒子、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ゾレドロン酸、ゾルビシンと組み合わせて投与することができる。
【0163】
さらに、本発明の化合物は、がん関連疼痛および慢性疼痛を治療するための周知の有効成分と組み合わせることができる。このような組み合わせには、それだけに限らないが、NSAIDS(非選択的NSAIDS、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナク、アスピリン、ナプロキセン、ケトプロフェンおよびインドメタシン;およびCox-2選択的NSAIDS、例えば、パレコキシブ、エトリコキシブおよびセレコキシブ)、ステップIIオピオイド(例えば、リン酸コデイン、デキストロプロポキシフェン、ジヒドロコデイン、トラマドール)、ステップIIIオピオイド(例えば、モルヒネ、フェンタニル、ブプレノルフィン、オキシモルホン、オキシコドンおよびヒドロモルホン);およびがん疼痛を治療するために使用される他の医薬品、例えば、ステロイド(デキサメタゾンおよびメチルプレドニゾロンなど);ビスホスホネート(例えば、エチドロネート、クロドロネート、アレンドロネート、リセドロネートおよびゾレドロネート);三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、イミプラミンおよびドキセピン);クラスI抗不整脈薬(例えば、メキシレチンおよびリドカイン);抗痙攣薬(例えば、カルバマゼピン、ガバペンチン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、プレガバリン、トピラマート、アルプラゾラム、ジアゼパム、フルラゼパム、ペントバルビタールおよびフェノバルビタール)が含まれる。
【0164】
哺乳動物において上で識別された状態の治療を決定するための標準的毒性試験および標準的薬理学的アッセイ、ならびにこれらの結果とこれらの状態を治療するために使用される既知の有効成分または医薬品の結果との比較による、神経原性の治療に有用な化合物を評価するために知られている標準的実験室技術に基づいて、本発明の化合物の有効投与量を各所望の適応症を治療するために容易に決定することができる。これらのうちのある状態の治療で投与されるべき有効成分の量は、使用される特定の化合物および投与量単位、投与様式、治療期間、治療される患者の年齢および性別、ならびに治療される状態の性質および程度などの考慮事項により広く変化し得る。
【0165】
投与されるべき有効成分の総量は、一般的に約0.001mg/kg~約200mg/kg体重/日、好ましくは約0.01mg/kg~約50mg/kg体重/日に及ぶ。臨床的に有用な投与スケジュールは、1~3回/日投与~4週間に1度投与に及ぶ。さらに、患者が一定期間薬剤を投与されない「休薬日」が、薬理学的効果と耐容性との間の全体的なバランスに有益となることが可能である。単位投与量が約0.5mg~約400mgの有効成分を含むことが可能であり、1日1回もしくは複数回または1日1回未満投与することができる。静脈内、筋肉内、皮下および非経口注射を含む注射による投与、ならびに注入技術の使用のための平均1日投与量は、好ましくは0.01~200mg/kg総体重となる。平均1日直腸投与レジメンは、好ましくは0.01~200mg/kg総体重となる。平均1日膣投与レジメンは、好ましくは0.01~200mg/kg総体重となる。平均1日局所投与レジメンは、好ましくは1日1~4回、0.1~200mg投与される。経皮濃度は、好ましくは0.01~200mg/kgの1日量を維持するのに必要とされるものとなる。平均1日吸入投与レジメンは、好ましくは0.01~100mg/kg総体重となる。
【0166】
当然、各患者のための具体的な初期および継続投与レジメンは、主治診断医により決定される状態の性質および重症度、使用される具体的な化合物の活性、患者の年齢および全身状態、投与期間、投与経路、薬剤の排泄率、薬剤の組み合わせなどによって変化する。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくは組成物の所望の治療様式および投与回数は、従来の治療試験を用いて当業者によって確認され得る。
【0167】
特定の薬理学的または薬学的特性について試験する方法は当業者に周知である。
【0168】
本明細書に記載される実施例の試験実験は本発明を説明するのに役立つが、本発明は示される例に限定されない。
【0169】
実験節
選択された化合物の1H-NMRデータを1H-NMRピークリストの形態で列挙する。その中では、各シグナルピークについて、δ値(ppm)を与え、引き続いて、シグナル強度を丸括弧中に報告する。異なるピークのδ値-シグナル強度のペアはカンマで分離する。そのため、ピークリストを、一般的な形態:δ1(強度1)、δ2(強度2)、...、δi(強度i)、...、δn(強度n)で記載する。
【0170】
鋭いシグナルの強度は、印刷されたNMRスペクトルのシグナルの高さ(cm)に相関する。他のシグナルと比べると、このデータはシグナル強度の実際の比に相関し得る。ブロードなシグナルの場合、2つ以上のピーク、またはスペクトルに示される最も強いシグナルと比べたその相対強度と合わせたシグナルの中心を示す。1H-NMRピークリストは古典的な1H-NMR読み取りと同様であるので、通常は、古典的なNMR解釈で列挙される全てのピークを含む。さらに、古典的な1H-NMRプリントアウトと同様に、ピークリストは溶媒シグナル、特定の標的化合物の立体異性体に由来するシグナル、不純物のピーク、13Cサテライトピークおよび/またはスピニングサイドバンドを示すことができる。立体異性体のピークおよび/または不純物のピークは、典型的には標的化合物(例えば、90%超の純度を有する)と比べて低い強度で示される。このような立体異性体および/または不純物は特定の製造方法に典型的であり得るので、これらのピークが「副産物指紋」に基づいて製造方法の再現を識別するのに役立ち得る。既知の方法(MestReC、ACDシミュレーションまたは経験的に評価した期待値の使用)によって標的化合物のピークを計算する専門家は、場合によりさらなる強度フィルタを用いて、必要とされる標的化合物のピークを単離することができる。このような操作は古典的な1H-NMR解釈でのピークピッキングと同様であるだろう。ピークリストの形態のNMRデータの報告の詳細な説明は、「特許出願中のNMRピークリストデータの引用」(http://www.researchdisclosure.com/searching-disclosures、研究の開示データベース番号605005、2014、2014年8月1日参照)中に見出すことができる。研究の開示データベース番号605005に記載されるピークピッキング手順で、パラメータ「MinimumHeight」は1%~4%の間で調整することができる。しかしながら、測定化合物の化学構造に応じておよび/または濃度に応じて、パラメータ「MinimumHeight」を1%未満に設定することが合理的となる場合もある。
【0171】
化学名は、ACD/LabsのACD/Nameソフトウェアを使用して作成した。いくつかの場合、商業的に入手可能な試薬の一般的に受け入れられている名称をACD/Name作成名の代わりに使用した。
【0172】
以下の表1は、本文中で説明しない限り、この段落および実施例節で使用される略語を列挙する。他の略語は、それ自体当業者にとって慣例の意味を有する。
【0173】
表1:略語
以下の表は、本明細書で使用される略語を列挙している。
【0174】
【表1A】
【表1B】
【0175】
本出願に記載される本発明の種々の態様を以下の実施例によって示すが、これらは本発明を限定することを何ら意図していない。
【0176】
本明細書に記載される実施例の試験実験は本発明を説明するのに役立つが、本発明は示される例に限定されない。
【0177】
実験節-一般的な部分
その合成が実験部に記載されていない全ての試薬は、商業的に入手可能である、または既知の化合物である、または当業者によって既知の方法により既知の化合物から形成され得る。
【0178】
本発明の方法により製造された化合物および中間体は精製を必要とし得る。有機化合物の精製は当業者に周知であり、同化合物を精製するいくつかの方法が存在し得る。いくつかの場合、精製は必要でない場合もある。いくつかの場合、結晶化によって化合物を精製することができる。いくつかの場合、適当な溶媒を用いて不純物を撹拌することができる。いくつかの場合、例えば、予備充填シリカゲルカートリッジ、例えば、Biotage SNAPカートリッジKP-Sil(登録商標)またはKP-NH(登録商標)をBiotage自動精製装置システム(SP4(登録商標)またはIsolera Four(登録商標))および溶離液(ヘキサン/酢酸エチルまたはDCM/メタノールの勾配など)と組み合わせて使用して、クロマトグラフィー、特にフラッシュカラムクロマトグラフィーによって化合物を精製することができる。いくつかの場合、例えば、ダイオードアレイ検出器および/またはオンラインエレクトロスプレーイオン化質量分析計を備えるWaters自動精製装置を適当な予備充填逆相カラムおよび溶離液、例えば、トリフルオロ酢酸、ギ酸またはアンモニア水などの添加剤を含み得る水およびアセトニトリルの勾配と組み合わせて使用して、分取HPLCによって化合物を精製することができる。
【0179】
一部の例では、上記のような精製方法によって、例えば、十分に塩基性または酸性の官能性を有する本発明の化合物を塩の形態で、十分に塩基性の本発明の化合物の場合は例えばトリフルオロ酢酸塩またはギ酸塩を、あるいは、十分に酸性の本発明の化合物の場合は例えばアンモニウム塩を得ることができる。この種の塩を、当業者に知られている種々の方法によって、それぞれその遊離塩基もしくは遊離酸型に変換することができるし、後の生物学的アッセイに塩として使用することもできる。単離され、本明細書に記載される本発明の化合物の具体的な形態(例えば、塩、遊離塩基など)は必ずしも具体的な生物学的活性を定量化するために前記化合物を生物学的アッセイに適用することができる唯一の形態ではないことを理解すべきである。
【0180】
実験節-実施例
実施例1:
{[(3R,5R)-5-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3-イル]オキシ}-5-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミドおよび{[(3R,5S)-5-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3-イル]オキシ}-5-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド
【化4】
3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル] エチル}ベンズアミド(200mg、0.42mmol)および塩化鉄(III)(56mg、0.21mmol)の混合物を反応容器に添加し、ピリジンを添加し(2ml))、水中tert-ブチルヒドロペルオキシド70%混合物(239μl、1.67mmol)を滴加した。反応容器を密封し、反応物をRTで48時間撹拌したままにした。飽和エチレンジアミン四酢酸溶液(モノナトリウム塩、15ml)を添加し、混合物をRTで10分間撹拌した。ブラインを添加し、水相をジクロロメタン(100ml)で抽出し、有機相を撥水フィルタに通すことによって乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。標記化合物(2.4mg、1.2%収率)を、Labomatic HD5000、Labocord-5000;Gilson GX-241、Labcol Vario 4000システムとChiralpak ID 5μ 250x30mmカラムを使用して精製することによって得た。ヘキサン:エタノールの移動相を、40.0ml/分の流量で、15分間にわたって25~50%(エタノール)の勾配で使用し、UV波長325nmを使用して検出した。
【0181】
分析HPLC方法:
装置:Waters自動精製MS SingleQuad;カラム:Waters XBrigde C18 5μ 100x30mm;溶離液A:水+0.1体積%ギ酸(99%)、溶離液B:アセトニトリル;勾配:0~5.5分5~100%B;流量70ml/分;温度:25℃;DADスキャン:210~400nm。LC-MS:Rt=1.10分;495,27(M+H)
1H NMR(600 MHz,DMSO-d6)δ ppm 1.59-1.63(m,3 H)2.13-2.21(m,1 H)2.39-2.45(m,1 H)2.52-2.55(m,3 H)2.77(t,J=6.10 Hz,1 H)3.32(s,1 H)3.38-3.50(m,1 H)3.79(q,J=6.10 Hz,1 H)3.84-3.99(m,1 H)3.88(d,J=10.30 Hz,1 H)3.95(dd,J=9.92,3.43 Hz,1 H)4.10-4.15(m,1 H)4.96(t,J=5.34 Hz,1 H)5.06-5.35(m,1 H)5.09-5.17(m,1 H)5.24-5.33(m,1 H)5.38-5.60(m,1 H)5.41-5.44(m,1 H)5.55(q,J=4.58 Hz,1 H)6.20-6.34(m,1 H)6.25(d,J=4.58 Hz,1 H)6.30(d,J=4.96 Hz,1 H)7.47-7.55(m,1 H)7.59-7.71(m,1 H)7.81(m,1 H)7.91-7.94(m,1 H)9.10-9.20(m,3 H)
1H-NMR(600 MHz,DMSO-d6)delta[ppm]:-0.006(0.83),0.005(0.72),0.785(0.50),0.797(0.89),0.810(0.61),0.825(0.44),0.836(0.44),0.842(0.61),0.854(1.16),0.865(0.78),1.008(0.66),1.032(2.05),1.043(2.33),1.086(0.78),1.146(0.94),1.157(1.77),1.170(0.94),1.182(0.55),1.207(0.61),1.234(3.16),1.259(0.94),1.262(1.44),1.285(0.39),1.296(0.72),1.590(1.38),1.602(12.35),1.614(11.35),1.835(0.55),1.858(0.61),2.163(1.27),2.168(2.44),2.174(2.05),2.177(2.33),2.183(1.38),2.386(1.22),2.389(1.66),2.391(1.27),2.421(0.44),2.520(4.76),2.523(6.59),2.525(5.65),2.544(1.49),2.614(1.27),2.617(1.72),2.619(1.27),2.759(0.61),2.769(1.22),2.779(0.61),3.321(0.44),3.377(0.50),3.784(0.83),3.793(0.78),3.873(1.99),3.890(2.10),3.942(0.50),3.948(0.50),3.959(0.55),3.964(0.55),4.112(1.55),4.119(1.94),4.128(1.72),4.136(1.49),4.142(0.50),4.956(0.78),5.101(0.44),5.110(0.39),5.248(1.22),5.255(1.16),5.261(0.61),5.273(0.55),5.285(1.88),5.297(2.66),5.308(1.66),5.320(0.44),5.426(0.55),5.539(0.83),5.547(1.72),5.553(1.77),5.561(0.83),6.242(0.94),6.250(0.94),6.291(3.27),6.299(3.21),7.334(0.44),7.433(0.44),7.474(1.83),7.478(3.04),7.480(2.66),7.492(3.88),7.495(4.15),7.499(1.88),7.503(1.11),7.505(1.16),7.509(0.61),7.622(0.72),7.624(0.66),7.642(0.55),7.650(4.82),7.652(4.93),7.677(0.72),7.679(0.72),7.707(0.44),7.710(0.66),7.713(0.50),7.793(0.66),7.819(0.44),7.822(0.66),7.927(4.21),7.929(5.31),7.931(2.77),8.243(0.50),8.245(0.83),8.248(0.50),8.321(0.78),9.110(2.38),9.121(16.00),9.130(2.93),9.170(2.10),9.182(2.66),9.194(0.83),10.078(0.94).
13C NMR(151 MHz,DMSO-d6)δ ppm 0.18 11.77 20.83 20.88 37.81 38.95 40.08 40.19 40.26 40.59 45.35 56.86 69.83 70.30 76.43 77.55 78.81 79.03 79.24 97.48 97.58 114.66 115.75 117.53 118.82 120.64 134.78 134.84 135.07 135.10 136.21 136.23 140.40 141.88 153.65 153.89 156.81 156.84 157.51 164.27 164.30 165.11 165.15
【0182】
実施例2:
3-{[(2R)-1,4-ジヒドロキシブタン-2-イル]オキシ}-5-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド
【化5】
【0183】
前培養物の生成
ストレプトマイセス・ロゼオクロモゲナス(Streptomyces roseochromogenus)(CBS 41563)のDMSO凍結培養物(0.2mL)を、水酸化ナトリウム溶液(水中16%)でpH 7.2に調整し、121℃で20分間滅菌した、D-(+)-グルコース一水和物(10 g L-1)、酵母エキス(1 g L-1)、牛肉エキス(1 g L-1)およびトリプトース(2g L-1)からなる無菌増殖培地(20mL)を含有する100mL三角フラスコに添加した。接種後、混合物を回転シェーカー(165rpm)上27℃で48時間振盪した。この前培養物(10mL/フラスコ)を、同じ無菌増殖培地(同じ条件下で調製した1フラスコ当たり100mL)を含有する2つの500mL三角フラスコに添加し、フラスコを回転シェーカー(rpm 165)上27℃で72時間振盪した。
【0184】
生体内変換:
500 mL三角フラスコの前培養物(50mL/フラスコ)を、水酸化ナトリウム溶液でpH 7.2に調整したD-(+)-グルコース一水和物(10g L-1)、酵母エキス(1g L-1)、牛肉エキス(1g L-1)およびトリプトース(2g L-1)からなる無菌増殖培地(1L)を含有する1L Biostat Q発酵槽に添加した。121℃で30分間滅菌したシリコーン油(0.05mL)およびPluronic(登録商標)PE 8100(0.05mL)を添加した。DMF(2mL)に溶解した化合物(III)、すなわち3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド(25.0mg、0.052mmol)を添加し、培養物を、2.0 L/分の通気速度を用いて27℃で220rpmで撹拌した。培養物を、800rpmまでの撹拌速度によって調節された15%の酸素分圧で撹拌した。72時間後、培養物を収穫した。
500 mL三角フラスコの前培養物(それぞれ50mL)を、水酸化ナトリウム溶液でpH 7.2に調整したD-(+)-グルコース一水和物(10g L-1)、酵母エキス(1g L-1)、牛肉エキス(1g L-1)およびトリプトース(2g L-1)からなる無菌増殖培地(発酵槽当たり1L)をそれぞれ含有する2つの1L Biostat Q発酵槽に添加した。121℃で30分間滅菌したシリコーン油(0.05mL)およびPluronic(登録商標)PE 8100(0.05mL)を添加した。5時間後、DMF(2mL)に溶解した化合物(III)、すなわち3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド(25.0mg、0.052mmol)を添加し、培養物を、2.0 L/分の通気速度を用いて27℃で220rpmで撹拌した。培養物を、800rpmまでの撹拌速度によって調節された15%の酸素分圧で撹拌した。59または67時間後、培養物を収穫した。
生体内変換の3つの培養ブロスを合わせ、4-メチル-2-ペンタノンで抽出した。有機層を濃縮して油(0.71g)を得て、これをメタノール(10mL)中50℃で撹拌した。得られた固体を濾別し、濾液を濃縮して油(0.30g)を得た。
別の前培養物を前記のように生成した。
500 mL三角フラスコの前培養物(50mLまたは100mL)を、水酸化ナトリウム溶液でpH 7.2に調整したD-(+)-グルコース一水和物(10g L-1)、酵母エキス(1g L-1)、牛肉エキス(1g L-1)およびトリプトース(2g L-1)からなる無菌増殖培地(発酵槽当たり1L)をそれぞれ含有する2つの1L Biostat Q発酵槽に添加した。121℃で30分間滅菌したシリコーン油(0.05mL)およびPluronic(登録商標)PE 8100(0.05mL)を添加した。5時間後、DMF(2mL)に溶解した化合物(III)、すなわち3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド(25.0mg、0.052mmol)を添加し、培養物を、2.0 L/分の通気速度を用いて27℃で220rpmで撹拌した。培養物を、800rpmまでの撹拌速度によって調節された15%の酸素分圧で撹拌した。47時間後、培養物を収穫した。
500 mL三角フラスコの前培養物(100mL)を、水酸化ナトリウム溶液でpH 7.2に調整したD-(+)-グルコース一水和物(10g L-1)、酵母エキス(1g L-1)、牛肉エキス(1g L-1)およびトリプトース(2g L-1)からなる無菌増殖培地(1L)を含有する1L Biostat Q発酵槽に添加した。121℃で30分間滅菌したシリコーン油(0.05mL)およびPluronic(登録商標)PE 8100(0.05mL)を添加した。DMF(2mL)に溶解した化合物(III)、すなわち3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド(25.0mg、0.052mmol)を添加し、培養物を、2.0 L/分の通気速度を用いて27℃で220rpmで撹拌した。培養物を、800rpmまでの撹拌速度によって調節された15%の酸素分圧で撹拌した。12時間後、グルコース水溶液(20%、1g/時間)を添加した。さらに10時間後、グルコース水溶液(20%、2g/時間)を添加した。52時間後、培養物を収穫した。
500 mL三角フラスコの前培養物(100mL)を、水酸化ナトリウム溶液でpH 7.2に調整したD-(+)-グルコース一水和物(10g L-1)、酵母エキス(1g L-1)、牛肉エキス(1g L-1)およびトリプトース(2g L-1)からなる無菌増殖培地(1L)を含有する1L Biostat Q発酵槽に添加した。121℃で30分間滅菌したシリコーン油(0.05mL)およびPluronic(登録商標)PE 8100(0.05mL)を添加した。5時間後、DMF(2mL)に溶解した化合物(III)、すなわち3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド(25.0mg、0.052mmol)を添加し、培養物を、2.0 L/分の通気速度を用いて27℃で220rpmで撹拌した。培養物を、800rpmまでの撹拌速度によって調節された15%の酸素分圧で撹拌した。16時間後、グルコース水溶液(20%、2g/時間)を添加した。47時間後、培養物を収穫した。
生体内変換の4つの培養ブロスを合わせ、4-メチル-2-ペンタノンで抽出した。有機層を濃縮して油(0.91g)を得て、これをメタノール(20mL)中50℃で撹拌した。得られた固体を濾別し、濾液を濃縮して油(0.75g)を得た。
2つの粗生成物を合わせ、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール勾配)および分取HPLCによってさらに精製すると、標記化合物(21.0mg、純度90%、収率10%)が得られた。
【0185】
分取キラルHPLC方法:
機器:Waters自動精製システム;カラム:Waters XBrigde C18 5μ 100×30mm;溶離液A:水+0.2体積%アンモニア水(32%)、溶離液B:アセトニトリル;勾配:0.00~0.50分30%B(25~70mL/分)、0.51~5.50分30~40%B(70mL/分)、DADスキャン:210~400nm。
【0186】
分析キラルHPLC法:
機器:Waters Acquity UPLCMS SingleQuad;カラム:Acquity UPLC BEH C18 1.7μm、50x2.1mm;溶離液A:水+0.1体積%ギ酸(99%)、溶離液B:アセトニトリル、勾配:0~1.6分1~99%B、1.6~2.0分99%B;流量0.8mL/分;温度:60℃;DADスキャン:210~400nm。
LC-MS:Rt=1.00分;MS(ESIpos):m/z=497[M+H]
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ[ppm]=1.61(d,3H),1.70-1.91(m,2H),3.43-3.55(m,2H),3.56-3.61(m,2H),4.37-5.15(m,2H),4.55-4.65(m,1H),5.30(br d,1H),7.55(dd,1H),7.62-7.66(m,2H),7.90(t,1H),9.09-9.14(m,2H),9.14-9.22(m,1H).
以下の株の様々な野生型株をスクリーニングすると、標記化合物の形成が示された:
DSMZ:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen
ATCC:アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関
NRRL:ARS培養コレクション
IFO=NBRC:独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
CBS:Centraalbureau voor Schimmelculture、オランダ
【0187】
【表2A】
【表2B】
【0188】
実施例3
(3R)-4-ヒドロキシ-3-[3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-({(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}カルバモイル)フェノキシ]ブタン酸
【化6】
【0189】
前培養物の生成
ストレプトマイセス・アルブルス(Streptomyces albulus)(DSMZ 40492)のDMSO凍結培養物(0.2mL)を、水酸化ナトリウム溶液(水中16%)でpH 7.2に調整し、121℃で20分間滅菌した、D-(+)-グルコース一水和物(10g/L)、酵母エキス(1g/L)、牛肉エキス(1g/L)およびトリプトース(2g/L)からなる無菌増殖培地(20mL)を含有する100mL三角フラスコに添加した。接種後、混合物を回転シェーカー(165rpm)上27℃で48時間振盪した。この前培養物(8mL/フラスコ)を、同じ無菌増殖培地(同じ条件下で調製した1フラスコ当たり1000mL)を含有する2つの2000mL三角フラスコに添加し、フラスコを回転シェーカー(rpm 165)上27℃で48時間振盪した。
【0190】
生体内変換:
2000mL三角フラスコの前培養物(1000mL/フラスコ)を、水酸化ナトリウム溶液(水中16%)でpH 7.2に調整した脱塩水中D-(+)-グルコース一水和物(4g/L)、酵母エキス(4g/L)、麦芽エキス(10g/L)からなる無菌増殖培地(8.3L)を含有する10L発酵槽に添加した。121℃で40分間滅菌したシリコーン油(0.5mL)およびPluronic(登録商標)PE 8100(0.5mL)を添加した。DMF(10mL)に溶解した化合物(III)、すなわち3-(5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル)-5-[(3R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ]-N-{(1R)-1-[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル]エチル}ベンズアミド(250mg、522μmol)を8時間後に添加し、培養物を、3.0 L/分の通気速度を用いて27℃で300rpmで撹拌した。培養物を、800rpmまでの撹拌速度によって調節された15%の酸素分圧で撹拌した。91時間後、培養物を収穫した。
培養ブロスを4-メチル-2-ペンタノンで17時間抽出し、濃縮して油(4.20g)を得て、これをメタノール中50℃で撹拌した。得られた固体を濾別し、濾液を濃縮して油(3.64g)を得た。培養ブロスを再度4-メチル-2-ペンタノンで20時間抽出し、濃縮して油(1.47g)を得て、これをメタノール中50℃で撹拌した。得られた固体を濾別し、濾液を濃縮して油(0.85g)を得た。合わせた粗生成物を、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール+0.1%アンモニア勾配)および分取HPLCによって精製すると、標記化合物の2つのバッチ(20.0mgおよび17.6mg)が得られた。
【0191】
分析キラルHPLC法:
機器:Waters Acquity UPLCMS SingleQuad;カラム:Acquity UPLC BEH C18 1.7μm、50x2.1mm;溶離液A:水+0.2体積%アンモニア水(32%)、溶離液B:アセトニトリル、勾配:0~1.6分1~99%B、1.6~2.0分99%B;流量0.8mL/分;温度:60℃;DADスキャン:210~400nm。
【0192】
バッチ1についての分取HPLC法:
機器:Waters自動精製システム;カラム:Waters XBrigde C18 5μ 100×30mm;溶離液A:水+0.2体積%アンモニア水(32%)、溶離液B:アセトニトリル;勾配:0.00~0.50分17%B(25~70mL/分)、0.51~10.00分17~37%B(70mL/分)、DADスキャン:210~400nm。
【0193】
バッチ2についての分取HPLC法:
機器:Waters自動精製システム;カラム:Waters XBrigde C18 5μ 100×30mm;溶離液A:水+0.2体積%アンモニア水(32%)、溶離液B:アセトニトリル;勾配:0.00~0.50分7%B(25~70mL/分)、0.51~10.00分7~27%B(70mL/分)、DADスキャン:210~400nm。
【0194】
両バッチについての追加の分取HPLC法:
装置:Waters自動精製システム;カラム:XBrigde C18 5μ、100x30mm;溶離液A:水+0.1体積%ギ酸;溶離液B:アセトニトリル;勾配:0.0~0.5分25%B(35~70mL/分)、0.5~5.5分25~70%B;流量70mL/分;温度:25℃;DADスキャン:210~400nm。
LC-MS:Rt=0.98分;MS(ESIpos):m/z=511[M+H]
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ[ppm]=1.60(d,3H),2.53-2.62(m,1H),2.67-2.75(m,1H),3.54-3.64(m,2H),4.77-4.84(m,1H),5.29(quin,1H),7.55(dd,1H),7.60-7.63(m,1H),7.64(d,1H),7.91(t,1H),9.11(s,2H),9.18(d,1H),12.3(s,1H).
1H-NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ[ppm]:1.594(6.62),1.612(6.62),2.518(4.49),2.522(2.74),2.539(16.00),2.563(0.93),2.583(1.50),2.604(1.45),2.678(0.52),2.684(1.33),2.695(1.52),2.724(0.93),2.736(0.82),3.547(0.41),3.559(0.48),3.576(1.87),3.588(3.23),3.600(1.97),3.616(0.44),3.629(0.41),4.791(0.78),4.803(0.96),4.811(0.89),4.823(0.76),5.276(0.95),5.294(1.45),5.312(0.95),7.542(1.84),7.546(2.37),7.548(2.56),7.552(2.19),7.612(2.26),7.616(2.76),7.622(1.97),7.643(4.86),7.646(4.88),7.914(2.52),7.918(4.39),7.921(2.35),9.114(12.72),9.173(1.80),9.191(1.76).
【0195】
実験節-生物学的アッセイ
実施例を選択された生物学的アッセイで1回または複数回試験した。2回以上試験した場合、データは平均値または中央値のいずれかとして報告し、ここで
・平均値は算術平均値とも呼ばれ、得られた値の和÷試験した回数を表し、
・中央値は昇順または降順で並べた場合の値の群の中央の数を表す。設定されたデータの値の数が奇数の場合、中央値は中央の値になる。設定されたデータの値の数が偶数の場合、中央値は2つの中央の値の算術的平均となる。
【0196】
実施例を1回または複数回合成した。2回以上合成した場合、生物学的アッセイのデータは、1つまたは複数の合成バッチの試験から得られたデータセットを利用して計算される平均値または中央値を表す。
本発明の化合物のインビトロ活性を以下のアッセイで実証することができる:
P2X3受容体活性を測定するための細胞内インビトロアッセイ
【0197】
組換え細胞株を使用して本発明の化合物のP2X3受容体におけるアンタゴニスト活性の決定を実施した。これら細胞株は、元々チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株に由来する(Tjio J.H.;Puck T.T.、1958、J.Exp.Med.108:259~271)。細胞株をヒトP2X3受容体および補因子セレンテラジンによる再構成後、カルシウム結合に依存して発光するカルシウム感受性発光タンパク質であるミトコンドリアphotina(登録商標)で安定的にトランスフェクトする[Bovolenta S、Foti M、Lohmer S、Corazza S.、J Biomol Screen.2007年8月;12(5):694~704]。photina(登録商標)発光シグナルの強度は、アゴニスト結合時の受容体活性化のレベルに対応する。阻害剤は、その効力および濃度に応じてシグナルを減少させるであろう。適切なルミノメーター[Milligan G、Marshall F、Rees S、Trends in Pharmacological Sciences 17、235~237(1996)]を用いて生物発光を検出した。
【0198】
試験手順:
アッセイの前日に、細胞を384ウェルマイクロタイタープレート中の培養培地(DMEM/F12(PAN、P04-41451)、10%FCS)に蒔き、細胞インキュベーター(湿度96%、5% v/v CO2、30℃)中で維持する。アッセイ当日に、培地を、5μg/mlセレンテラジンを含有する2mM Ca-tyrode緩衝液(20mM HEPES、130mM NaCl、5mM KCl、5mM NaHCO3、2mM MgCl2、pH7.4)に交換する。プレートを37℃(湿度96%、5%v/v CO2)で3時間インキュベートする。インキュベーション後、様々な濃度の試験物質を、EC50濃度のアゴニストα,β-メチレン-ATPを添加する前に、マイクロタイタープレートのウェルに10分間入れる。得られた光シグナルをルミノメーターで直ちに測定する。
【0199】
実施例を1プレート当たり4連で試験し、平均値を使用して、ヒトP2X3受容体におけるIC50値および最大阻害率を決定した。
【0200】
【表3】
【0201】
溶解度
実施例を水性媒体(pH 6.5)への溶解度について試験した。実施例を、上記プロトコルに従って1回または複数回合成した。2回以上合成した場合、溶解度アッセイのデータは、1つまたは複数の合成バッチの試験から得られたデータセットを利用して計算される平均値または中央値を表す。
【0202】
水性薬物溶解度を決定するためのハイスループットスクリーニング法は、Thomas OnofreyおよびGreg Kazan、Performance and correlation of a 96-well high throughput screening method to determine aqueous drug solubility、Millipore Corporation Application Note、2003;Lit.No.AN1731EN00に基づく。
【0203】
アッセイを96ウェルプレートフォーマットで実行した。各ウェルに個々の化合物を充填した。
【0204】
全てのピペット操作ステップは、ロボットプラットフォームを使用して実施した。
【0205】
DMSO中10ミリモル濃度の薬物溶液100μlを真空遠心分離によって濃縮し、DMSO 10μl中で分解した。リン酸緩衝液pH6.5 990μlを添加した。DMSOの含量は1%に達する。マルチタイタープレートを振盪機に置き、室温で24時間混合した。懸濁液150μlを濾過プレートに移した。真空マニホールドを使用して濾過した後、濾液を水とDMSOの1:1混合物により1:400および1:8000に希釈した。薬物のDMSO中10mM溶液20μlを含む第2のマイクロタイタープレートを較正に役立てた。2つの濃度(1.25nMおよび2.5nM)をDMSO/水1:1に希釈することによって調製し、較正に使用した。濾液および較正プレートをHPLC-MS/MSによって定量した。
【0206】
クロマトグラフィー条件は以下の通りであった:
HPLCカラム:Ascentis Express C18 4.6×30mm 2.7μm
注入体積:1μl
流量:1.5ml/分
移動相:A:水/0.05%HCOOH
B:アセトニトリル/0.05%HCOOH
0分→95%A 5%B
0.75分→5%A 95%B
2.75分→5%A 95%B
2.76分→95%A 5%B
3分→95%A 5%B
【0207】
質量分析ソフトウェア(AB SCIEX:Discovery Quant 2.1.3およびAnalyst 1.6.1)を使用して、試料-および較正注入の面積を決定した。検量線から内挿することによって、溶解度値を得た。
【0208】
国際公開第2016/091776号パンフレットの実施例11と比較して有意に改善した実施例1、2および3の溶解度を表3に示す。
【0209】
【表4】
【0210】
代謝安定性
実施例を、ヒト肝ミクロソームにおけるその代謝安定性について試験した。実施例を1回または複数回測定した。2回以上測定した場合、代謝安定性アッセイのデータは、1つまたは複数の合成バッチの試験から得られたデータセットを利用して計算される平均値または中央値を表す。
【0211】
1μMの試験化合物のジメチルスルホキシド(DMSO)およびアセトニトリル中溶液を100mMリン酸緩衝液、pH7.4(NaH2PO4×H2O+Na2HPO4×2H2O)中の肝ミクロソーム懸濁液中、タンパク質濃度0.5mg/ml、37℃でインキュベートすることにより、インビトロでの代謝安定性を測定した。ミクロソームを、リン酸緩衝液、pH7.4中8mMグルコース-6-リン酸、4mM MgCl2;0.5mM NADPおよび1IU/ml G-6-P-デヒドロゲナーゼを含有する補助因子ミックスを添加することによって活性化した。その後、試験化合物を最終体積1mLでインキュベーションに添加することによって、代謝アッセイを直ちに開始した。有機溶媒を0.01%以下のジメチルスルホキシド(DMSO)および1%以下のアセトニトリルに限定した。インキュベーション中、ミクロソーム懸濁物を580rpmで連続的に振盪し、一定分量を2、8、16、30、45および60分にとり、これに等体積の冷メタノールを直ちに添加した。試料を-20℃で一晩凍結し、その後3000rpmで15分間遠心分離し、上清をLCMS/MS検出を備えるAgilent 1200 HPLCシステムによって分析した。
【0212】
試験化合物の半減期を濃度-時間プロットから決定した。半減期から、固有クリアランスを計算した。追加のパラメータである肝血流、特定の肝臓重量およびミクロソームタンパク質含量と一緒に、肝臓インビボ血液クリアランス(CL)および最大経口バイオアベイラビリティ(Fmax)を異なる種について計算した。肝臓インビボ血液クリアランス(CL血液)および最大経口バイオアベイラビリティ(Fmax)を、以下の式:CL’固有[ml/(分*kg)]=kel[1/分]/((mgタンパク質/インキュベーション体積[ml])*fu,inc)*(mgタンパク質/肝重量[g])*(特異的肝重量[g肝臓/kg体重]);CL血液よく攪拌[L/(h*kg)]=(QH[L/(h*kg)*fu,血液*CL’固有[L/(h*kg)])/(QH[L/(h*kg)+fu,血液*CL’固有[L/(h*kg)]);Fmax=1-CL血液/QHを用いておよび以下のパラメータ値:QH(肝血流量):1.32L/h/kg(ヒト)、2.1L/h/kg(イヌ)、4.2L/h/kg(ラット);特異的肝重量:21g/kg(ヒト)、39g/kg(イヌ)、32g/kg(ラット);ミクロソームタンパク質含量:40mg/g;fu,incおよびfu,血液を1とみなし、Fu,incはインキュベーション実験における未結合画分(すなわち、非タンパク質結合画分)でありfu,血液は血液中の未結合画分である、を用いて計算した。
【0213】
国際公開第2016/091776号パンフレットの実施例11と比較して有意に改善した本発明の実施例2および3の代謝安定性を表4に示す。
【0214】
【表5】
【国際調査報告】