(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】改変されたタンク設計を使用する最適化されたユーグレナ発酵の方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/12 20060101AFI20220825BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C12N1/12 A
C12M1/00 E
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577242
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 IB2020056135
(87)【国際公開番号】W WO2020261244
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521000666
【氏名又は名称】ノーブルジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル アダム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シャリーフ モスタファ ザヒド
(72)【発明者】
【氏名】ウプレティ ビザヤ
(72)【発明者】
【氏名】カスティリオーネ リー アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】シャパーニュ ポール-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】カレン ライアン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】バイラク アレクサンダー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ファロー スコット キャメロン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
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4B065AA83X
4B065AC09
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4B065BB10
4B065BB12
4B065BB14
4B065BB15
4B065BB20
4B065BB26
4B065BB29
4B065BC05
4B065BC13
4B065BC20
(57)【要約】
本明細書の態様は、従属栄養的に培養する方法に関する。本明細書の態様は、1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する培養培地中で微生物を培養する工程と;約2.0~約4.0のpHを維持する工程と;約20℃~約30℃の温度を維持する工程と;実質的に光のない環境を維持する工程とを含み、前記培養する工程が、3つの培養段階で行われる、ユーグレナ属(Euglena)の種の微生物、シゾキトリウム属(Schizochytrium)の種の微生物、またはクロレラ属(Chlorella)の種の微生物を従属栄養的に培養するための方法、システム、およびバイオリアクタを対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の糖と、1つまたは複数のアルコールと、1つまたは複数の油と、1つまたは複数の塩とを含有する培養培地中でユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)を培養する工程と;
約2.0~約4.0のpHを維持する工程と;
約20℃~約30℃の温度を維持する工程と;
実質的に光のない環境を維持する工程と
を含み、
該培養する工程が、3つの培養段階で行われる、
ユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する方法。
【請求項2】
前記3つの培養段階が、第1段階の培養と、第2段階の培養と、第3段階の培養とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の炭素源が、油、糖、アルコール、カルボン酸、フェルラ酸、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記カルボン酸が、クエン酸、シトラート、フマル酸、フマラート、リンゴ酸、マラート、ピルビン酸、ピルバート、コハク酸、スクシナート、酢酸、アセタート、乳酸、ラクタート、またはこれらの組み合わせである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の油が、植物油、大豆油、ココナツ油、オリーブ油、落花生油、魚油、アボガド油、パーム油、亜麻(flax)油、トウモロコシ油、綿実油、キャノーラ油、菜種油、ヒマワリ油、ゴマ油、ブドウ種子油、ベニバナ油、米ぬか油、プロピオナート、パーム核油、クフェア(cuphea)油、ナガミノアマナズナ(camelina sativa)油、カラシナ種子油、カシューナッツ油、オート麦油、ルピナス油、ケナフ油、キンセンカ(calendula)油、ヘンプ油、コーヒー油、亜麻仁油、ヘーゼルナッツ油、ユーフォルビア(euphorbia)油、カボチャ種子油、コリアンダー油、ツバキ油、米油、アブラギリ油、カカオ油、コプラ油、ケシ油、ヒマシ油、ピーカン油、ホホバ油、ヤトロファ(jatropha)油、マカダミア油、ブラジルナッツ油、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、ハチミツ、コーンシロップ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数のアルコールが、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の窒素源が、酵母抽出物、硫酸アンモニウム、グリシン、尿素、アラニン、アスパラギン、コーンスティープ、肝臓抽出物、ラブ・レムコ(lab lemco)、ペプトン、脱脂乳、豆乳、トリプトン、牛肉抽出物、トリシン、植物源ペプトン、エンドウ豆タンパク質、玄米タンパク質、大豆ペプトン、ジャガイモ煮汁、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の塩が、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸一カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム七水和物、塩化カルシウム、塩化カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記培養培地が、金属、ビタミン、およびこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記金属が、塩化鉄(III)、塩化マンガン、硫酸亜鉛、モリブデン酸ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、塩化銅、七モリブデン酸アンモニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ビタミンが、ビオチン(ビタミンB7)、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンK、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
最終湿潤細胞重量が5~250g/L(1.6~80g/L乾燥細胞重量)になるまで、前記ユーグレナ・グラシリスがバッチモードで増殖される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する前記方法が連続培養である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
ユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する前記方法が、24日サイクルで約270kgの乾燥細胞重量の生産速度をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項16】
第1段階の培養が、
ユーグレナ・グラシリスを取得することと;
最大培養容量を有するバイオリアクタに該ユーグレナ・グラシリスを移すことと;
細胞成長が制限されるレベルへと前記炭素源、前記窒素源、またはその両方が低下するまで、該ユーグレナ・グラシリスを培養することと
を含む、請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記炭素源がグルコースであり、かつ培養物のグルコースレベルが5g/L未満に低下する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
第2段階の培養が、第1段階の培養の後に前記バイオリアクタから培養物を取り出すことと、前記ユーグレナ・グラシリスのフェドバッチ培養を1回または複数回繰り返すこととを含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
第1段階の培養が1~7日間行われ、かつ第2段階の培養が1~7日間行われる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記ユーグレナ・グラシリスが、ある細胞密度まで培養される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記細胞密度が、第2段階の培養の完了時に、培養されたユーグレナ・グラシリスのgDCW/Lとして測定され、かつ第1段階の培養の終了時にgDCW/Lとして測定された細胞密度より少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、または2.5倍高い、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第3段階の培養が、
あるフィード流量で培養培地を前記バイオリアクタに頻繁にまたは連続的に添加することと;
前記フィード流量と同じ量で前記バイオリアクタから培養物を頻繁にまたは連続的に採取することと
を含む、請求項2記載の方法。
【請求項23】
第3段階の培養が、定常状態条件を達成することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
第3段階の培養が1~30日間行われる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第1段階の培養の生産性が、約0.1gDCW/L/h~約0.3gDCW/L/hである、請求項16記載の方法。
【請求項26】
第2段階の培養の生産性が、約0.5gDCW/L/h~約0.8gDCW/L/hである、請求項18記載の方法。
【請求項27】
第3段階の培養の生産性が、約0.4gDCW/L/h~約3.0gDCW/L/hである、請求項22記載の方法。
【請求項28】
従属栄養微生物を増殖させるための培養培地および成分を受けるように構成されたタンクと;
該タンク内に気体を導入して、該タンク内で該培養培地と微生物を混合するように構成された空気供給システムであって、低圧供給装置と高圧供給装置とを含む、該空気供給システムと
を備える、微生物を従属栄養的に増殖させるためのバイオリアクタ。
【請求項29】
前記気体が、圧縮空気、酸素、窒素、ヘリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項30】
前記低圧供給システムが、30ミクロン未満の孔径を有するスパージングストーンである、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項31】
前記高圧供給システムが、
気体の流れを前記タンク内に導くように構成され、かつ気体の流れの方向を変えるために旋回するように構成された、少なくとも1つのスプレーノズル
を含む、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項32】
気体の流れが約0.1L/分の速度である、請求項31記載のバイオリアクタ。
【請求項33】
前記空気供給システムが、前記タンク内に複数のゾーンを同時に作製するように構成されており、該複数のゾーンが、少なくとも1つの好気性ゾーンと少なくとも1つの嫌気性ゾーンとを含む、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項34】
前記高圧供給装置および前記低圧供給装置が独立して電子的に制御可能である、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項35】
前記タンクが、少なくとも3:1の高さ対直径のサイズ比を有する、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項36】
前記タンクが、約10リットル~約1,000,000リットルの容量を有する、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項37】
前記タンクが、約20℃~約35℃の温度を維持するように構成されている、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項38】
前記微生物が、ユーグレナ・グラシリス、ユーグレナ・サングイネア(Euglena sanguinea)、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)、ユーグレナ・ムタビリス(Euglena mutabilis)、ユーグレナ・アクス(Euglena acus)、ユーグレナ・ビリディス(Euglena viridis)、ユーグレナ・アナバエナ(Euglena anabaena)、ユーグレナ・ゲニクラタ(Euglena geniculata)、ユーグレナ・オキシウリス(Euglena oxyuris)、ユーグレナ・プロキシマ(Euglena proxima)、ユーグレナ・トリプテリス(Euglena tripteris)、ユーグレナ・クラミドフォラ(Euglena chlamydophora)、ユーグレナ・スプレンデンス(Euglena splendens)、ユーグレナ・テクスタ(Euglena texta)、ユーグレナ・インターメディア(Euglena intermedia)、ユーグレナ・ポリモルファ(Euglena polymorpha)、ユーグレナ・エレンベルギ(Euglena ehrenbergii)、ユーグレナ・アドハエレンス(Euglena adhaerens)、ユーグレナ・クララ(Euglena clara)、ユーグレナ・エロンガタ(Euglena elongata)、ユーグレナ・エラスチカ(Euglena elastica)、ユーグレナ・オブロンガ(Euglena oblonga)、ユーグレナ・ピスキフォルミス(Euglena pisciformis)、ユーグレナ・カンタブリカ(Euglena cantabrica)、ユーグレナ・グラニュラタ(Euglena granulata)、ユーグレナ・オブツサ(Euglena obtusa)、ユーグレナ・リムノフィラ(Euglena limnophila)、ユーグレナ・ヘミクロマタ(Euglena hemichromata)、ユーグレナ・バリアビリス(Euglena variabilis)、ユーグレナ・カウダタ(Euglena caudata)、ユーグレナ・ミニマ(Euglena minima)、ユーグレナ・コミュニス(Euglena communis)、ユーグレナ・マグニフィカ(Euglena magnifica)、ユーグレナ・テリコラ(Euglena terricola)、ユーグレナ・ベラタ(Euglena velata)、ユーグレナ・レプルサンス(Euglena repulsans)、ユーグレナ・クラバタ(Euglena clavata)、ユーグレナ・ラタ(Euglena lata)、ユーグレナ・ツベルクラタ(Euglena tuberculata)、ユーグレナ・カンタブリカ、ユーグレナ・アカスフォルミス(Euglena acusformis)、ユーグレナ・オステンデンシス(Euglena ostendensis)、クロレラ・アウトトロフィカ(Chlorella autotrophica)、クロレラ・コロニアルス(Chlorella colonials)、クロレラ・レウィニイ(Chlorella lewinii)、クロレラ・ミヌチシマ(Chlorella minutissima)、クロレラ・ピチュイタ(Chlorella pituita)、クロレラ・プルケロイデス(Chlorella pulchelloides)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ロタンダ(Chlorella rotunda)、クロレラ・シングラリス(Chlorella singularis)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラ・バリアビリス(Chlorella variabilis)、クロレラ・ボルティス(Chlorella volutis)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、シゾキトリウム・アグレガタム(Schizochytrium aggregatum)、シゾキトリウム・リマシナム(Schizochytrium limacinum)、シゾキトリウム・ミヌタム(Schizochytrium minutum)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項39】
前記バイオリアクタが、pH、溶存酸素、細胞密度、ルーメンレベル、グルコースレベル、温度、前記バイオリアクタ内の培養体積、窒素レベル(例えば、アンモニウム、グルタマート)、培地組成、バイオリアクタ排出ガス中の残留分子状酸素、バイオリアクタ排出ガス中の二酸化炭素レベル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるパラメータを測定するモニタリングシステムを有する、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項40】
前記低圧供給装置が、
第1の孔径を有する少なくとも1つのスパージャと、第2の孔径を有する少なくとも1つのスパージャとを含む、複数のスパージャ
を備え、該第2の孔径が該第1の孔径より大きい、請求項28記載のバイオリアクタ。
【請求項41】
前記第1の孔径が約5~10ミクロンであり、かつ前記第2の孔径が約20~70ミクロンである、請求項40記載のバイオリアクタ。
【請求項42】
前記複数のスパージャが、前記タンク内の異なる方向に延びる層中に配置されている、請求項40記載のバイオリアクタ。
【請求項43】
前記層が、前記タンクの底部付近に格子を形成する、請求項42記載のバイオリアクタ。
【請求項44】
並列に接続された複数のバイオリアクタであって、各バイオリアクタが個々のタンクを含む、該複数のバイオリアクタと;
培養培地と、微生物と、成分とを該バイオリアクタのタンクの各々に個別に提供するように構成された複数のインプットシステムと;
該バイオリアクタのタンクの各々の中に気体を導入するように構成された空気供給システムであって、低圧供給装置と高圧供給装置とを含む、該空気供給システムと
を備える、バイオマスを生産するためのシステム。
【請求項45】
前記気体が、圧縮空気、酸素、窒素、ヘリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項44記載のシステム。
【請求項46】
前記低圧供給システムが、30ミクロン未満の孔径を有するスパージングストーンである、請求項44記載のシステム。
【請求項47】
前記高圧供給システムが、
気体の流れを生成するように構成され、かつ気体の流れの方向を変えるために旋回するように構成された、ベンチュリノズル
である、請求項44記載のバイオリアクタ。
【請求項48】
気体の流れが約0.1L/分の速度である、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
前記低圧供給装置および前記高圧供給装置が、前記タンクの底部に配置されている、請求項44記載のシステム。
【請求項50】
前記高圧供給装置および前記低圧供給装置が独立して電子的に制御可能である、請求項44記載のシステム。
【請求項51】
前記複数のバイオリアクタの各タンクにそれぞれ結合された前記複数のインプットシステムおよび空気供給システムが、前記複数のバイオリアクタの各タンク内の成長条件を変化させるために独立して電子的に制御可能である、請求項44記載のシステム。
【請求項52】
前記各バイオリアクタが、pH、溶存酸素、細胞密度、ルーメンレベル、グルコースレベル、温度、前記バイオリアクタ内の培養体積、窒素レベル(例えば、アンモニウム、グルタマート)、培地組成、バイオリアクタ排出ガス中の残留分子状酸素、バイオリアクタ排出ガス中の二酸化炭素レベル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるパラメータを測定するモニタリングシステムを有する、請求項44記載のシステム。
【請求項53】
前記空気供給システムが、気体の流量および方向を変化させるために制御可能である、請求項44記載のシステム。
【請求項54】
前記空気供給システムが、前記複数のバイオリアクタの前記タンクの各々に対して少なくとも1つのスパージングストーンと少なくとも1つのノズルとを含む、請求項44記載のシステム。
【請求項55】
前記複数のインプットシステムおよび前記空気供給システムが、各タンク内に複数のゾーンを同時に作製するために独立して電子的に制御可能であり、該複数のゾーンは、少なくとも1つの好気性ゾーンと少なくとも1つの嫌気性ゾーンとを含む、請求項44記載のシステム。
【請求項56】
前記複数のバイオリアクタが、1つまたは複数のパイロットタンクと1つまたは複数の生産タンクとを備える、請求項44記載のシステム。
【請求項57】
前記1つまたは複数のパイロットタンクが約250~500Lであり、前記1つまたは複数の生産タンクが少なくとも15,000Lである、請求項56記載のシステム。
【請求項58】
1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の糖と、1つまたは複数のアルコールと、1つまたは複数の油と、1つまたは複数の塩とを含有する培養培地中で微生物を培養する工程と;
約2.0~約4.0のpHを維持する工程と;
約20℃~約30℃の温度を維持する工程と;
実質的に光のない環境を維持する工程と
を含み、
該培養する工程は、該培養培地を受けるように構成されたタンク内で行われ、該タンク内に気体を導入するように構成された空気供給システムが、該タンク内で該培養培地と微生物を混合することができ、該空気供給システムは、低圧供給装置および高圧供給装置を含む、
微生物を従属栄養的に培養する方法。
【請求項59】
前記1つまたは複数の炭素源が、油、糖、アルコール、カルボン酸、フェルラ酸、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記カルボン酸が、クエン酸、シトラート、フマル酸、フマラート、リンゴ酸、マラート、ピルビン酸、ピルバート、コハク酸、スクシナート、酢酸、アセタート、乳酸、ラクタート、またはこれらの組み合わせである、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記1つまたは複数の油が、植物油、大豆油、ココナツ油、オリーブ油、落花生油、魚油、アボガド油、パーム油、亜麻油、トウモロコシ油、綿実油、キャノーラ油、菜種油、ヒマワリ油、ゴマ油、ブドウ種子油、ベニバナ油、米ぬか油、プロピオナート、パーム核油、クフェア油、ナガミノアマナズナ油、カラシナ種子油、カシューナッツ油、オート麦油、ルピナス油、ケナフ油、キンセンカ油、ヘンプ油、コーヒー油、亜麻仁油、ヘーゼルナッツ油、ユーフォルビア油、カボチャ種子油、コリアンダー油、ツバキ油、米油、アブラギリ油、カカオ油、コプラ油、ケシ油、ヒマシ油、ピーカン油、ホホバ油、ヤトロファ油、マカダミア油、ブラジルナッツ油、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項62】
前記1つまたは複数の糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、ハチミツ、コーンシロップ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項63】
前記1つまたは複数のアルコールが、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項64】
前記1つまたは複数の窒素源が、酵母抽出物、硫酸アンモニウム、グリシン、尿素、アラニン、アスパラギン、コーンスティープ、肝臓抽出物、ラブ・レムコ、ペプトン、脱脂乳、豆乳、トリプトン、牛肉抽出物、トリシン、植物源ペプトン、エンドウ豆タンパク質、玄米タンパク質、大豆ペプトン、ジャガイモ煮汁、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項65】
前記1つまたは複数の塩が、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸一カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム七水和物、塩化カルシウム、塩化カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項66】
前記培養培地が、金属、ビタミン、およびこれらの組み合わせをさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項67】
前記金属が、塩化鉄(III)、塩化マンガン、硫酸亜鉛、モリブデン酸ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、塩化銅、七モリブデン酸アンモニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記ビタミンが、ビオチン(ビタミンB7)、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンK、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項66記載の方法。
【請求項69】
前記気体が、圧縮空気、酸素、窒素、ヘリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項70】
前記低圧供給システムが、30ミクロン未満の孔径を有するスパージングストーンである、請求項58記載の方法。
【請求項71】
前記高圧供給システムが、
気体の流れを前記タンク内に導くように構成され、かつ気体の流れの方向を変えるために旋回するように構成された、少なくとも1つのスプレーノズル
を含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
気体の流れが約0.1L/分の速度である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記空気供給システムが、前記タンク内に複数のゾーンを同時に作製するように構成されており、該複数のゾーンが、少なくとも1つの好気性ゾーンと少なくとも1つの嫌気性ゾーンとを含む、請求項58記載の方法。
【請求項74】
前記高圧供給装置および前記低圧供給装置が独立して電子的に制御可能である、請求項58記載の方法。
【請求項75】
前記タンクが、少なくとも3:1の高さ対直径のサイズ比を有する、請求項58記載の方法。
【請求項76】
前記タンクが、約10リットル~約1,000,000リットルの容量を有する、請求項58記載の方法。
【請求項77】
前記タンクが、約20℃~約35℃の温度を維持するように構成されている、請求項58記載の方法。
【請求項78】
前記微生物が、ユーグレナ・グラシリス、ユーグレナ・サングイネア、ユーグレナ・デセス、ユーグレナ・ムタビリス、ユーグレナ・アクス、ユーグレナ・ビリディス、ユーグレナ・アナバエナ、ユーグレナ・ゲニクラタ、ユーグレナ・オキシウリス、ユーグレナ・プロキシマ、ユーグレナ・トリプテリス、ユーグレナ・クラミドフォラ、ユーグレナ・スプレンデンス、ユーグレナ・テクスタ、ユーグレナ・インターメディア、ユーグレナ・ポリモルファ、ユーグレナ・エレンベルギ、ユーグレナ・アドハエレンス、ユーグレナ・クララ、ユーグレナ・エロンガタ、ユーグレナ・エラスチカ、ユーグレナ・オブロンガ、ユーグレナ・ピスキフォルミス、ユーグレナ・カンタブリカ、ユーグレナ・グラニュラタ、ユーグレナ・オブツサ、ユーグレナ・リムノフィラ、ユーグレナ・ヘミクロマタ、ユーグレナ・バリアビリス、ユーグレナ・カウダタ、ユーグレナ・ミニマ、ユーグレナ・コミュニス、ユーグレナ・マグニフィカ、ユーグレナ・テリコラ、ユーグレナ・ベラタ、ユーグレナ・レプルサンス、ユーグレナ・クラバタ、ユーグレナ・ラタ、ユーグレナ・ツベルクラタ、ユーグレナ・カンタブリカ、ユーグレナ・アカスフォルミス、ユーグレナ・オステンデンシス、クロレラ・アウトトロフィカ、クロレラ・コロニアルス、クロレラ・レウィニイ、クロレラ・ミヌチシマ、クロレラ・ピチュイタ、クロレラ・プルケロイデス、クロレラ・ピレノイドサ、クロレラ・ロタンダ、クロレラ・シングラリス、クロレラ・ソロキニアナ、クロレラ・バリアビリス、クロレラ・ボルティス、クロレラ・ブルガリス、シゾキトリウム・アグレガタム、シゾキトリウム・リマシナム、シゾキトリウム・ミヌタム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項79】
前記バイオリアクタが、pH、溶存酸素、細胞密度、ルーメンレベル、グルコースレベル、温度、前記バイオリアクタ内の培養体積、窒素レベル(例えば、アンモニウム、グルタマート)、培地組成、バイオリアクタ排出ガス中の残留分子状酸素、バイオリアクタ排出ガス中の二酸化炭素レベル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるパラメータを測定するモニタリングシステムを有する、請求項58記載の方法。
【請求項80】
前記低圧供給装置が、
第1の孔径を有する少なくとも1つのスパージャと、第2の孔径を有する少なくとも1つのスパージャとを含む、複数のスパージャ
を備え、該第2の孔径が該第1の孔径より大きい、請求項58記載の方法。
【請求項81】
前記第1の孔径が約5~10ミクロンであり、かつ前記第2の孔径が約20~70ミクロンである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記複数のスパージャが、前記タンク内の異なる方向に延びる層中に配置されている、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記層が、前記タンクの底部付近に格子を形成する、請求項82記載の方法。
【請求項84】
前記微生物が0.001~0.1h
-1の最大成長速度(μ
max)を有する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項85】
前記培養培地が、75日間の培養で最大300回入れ替わる、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項86】
約20rpm~約180rpmの撹拌速度で前記培養培地を撹拌することをさらに含む、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項87】
約0.2vvm~約1.0vvm、任意で約0.2vvmの空気流量で前記培養培地を撹拌することをさらに含む、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項88】
前記培養培地がハイブリッド培養培地を含む、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項89】
前記ハイブリッド培養培地が、任意で炭素源が補充された再利用培養培地を約10%~約75%含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記培養培地が、15%~約75%の変換効率を維持する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項91】
前記培養培地が、約30~75mg/glc/gDCW/h、任意で約40~55mg/glc/gDCW/hの比グルコース消費速度を有する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項92】
前記培養培地が約15%~約100%の溶存酸素(DO)値を有する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項93】
前記培養培地が約0.1~40mmol/L/hの酸素取り込み速度を有する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項94】
前記培養培地が、約10~30mgO
2/gDCW/h、任意で約14~20mgO
2/gDCW/hの比酸素消費速度を有する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項95】
前記培養培地が、約10~40mgCO
2/gDCW/h、最適には約20~25mgCO
2/gDCW/hの比CO
2発生速度を有する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【請求項96】
前記培養培地が約0.1~40mmol/L/hのCO
2発生速度を有する、請求項1記載の方法または請求項58記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月28日に出願された米国仮出願第62/868,343号、2019年6月28日に出願された米国仮出願第62/868,589号および2019年12月30日に出願された米国仮出願第62/954,837号の恩典を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
概要
本明細書に記載されている態様は、ユーグレナ属(Euglena)の種の微生物、シゾキトリウム属(Schizochytrium)の種の微生物、またはクロレラ属(Chlorella)の種の微生物を培養するための方法に関する。
【0003】
本明細書に記載されている態様は、従属栄養微生物を増殖させるための培養培地および成分を受けるように構成されたタンクと;前記タンク内に気体を導入して、前記タンク内で前記培養培地と微生物を混合するように構成された空気供給システムであって、前記空気供給システムは低圧供給装置と高圧供給装置とを含む、前記空気供給システムとを備える、微生物を従属栄養的に増殖させるためのバイオリアクタを対象とする。
【0004】
本明細書に記載されている態様は、1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する培養培地中でユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)を培養する工程と;約2.0~約4.0のpHを維持する工程と;約20℃~約30℃の温度を維持する工程と;実質的に光のない環境を維持する工程とを含み、前記培養する工程が、3つの培養段階で行われる、ユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する方法を対象とする。
【0005】
ユーグレナ・グラシリスは、単細胞鞭毛虫系統の原生生物であり、細胞成長のために炭素(例えば、グルコースおよびフルクトース)および窒素(例えば、コーンスティープリカー、酵母抽出物および無機窒素源)を容易に代謝し、様々な代謝産物(例えば、タンパク質、パラミロン/β-1,3グルカンおよび脂質)を産生することができる。バイオテクノロジーおよび食品産業におけるその独特の可能性のために、食品、飲料、栄養補給食品およびバイオ燃料生産において使用される多価不飽和脂肪酸、タンパク質およびパラミロンの生産のために、この微生物を大規模に培養するための研究が行われてきた。
【0006】
培地の最適化は、目標とする生成物の収量およびそれらの製造コストに影響を及ぼすので、バイオプロセスを開発するために極めて重要であることが実証されている。したがって、関心対象の生成物を産生しながら微生物の成長を支えるための培地成分を最適化することが大いに必要とされている。
【0007】
E. グラシリスは、フラスコ、光バイオリアクタおよびレースウェイポンドシステムにおいて光独立栄養的に(すなわち、光およびCO2の存在下での糖および他の有機分子の合成)中で増殖されてきた。しかしながら、開放型ポンドシステムは、汚染および培養パラメータの制御に限界があるため、ユーグレナの培養には適していない。同様に、光バイオリアクタにおいては、成長栄養素の濃度および培養パラメータを正確に維持することができるが、この微細藻類を大規模に増殖させるために光独立栄養アプローチを使用することは、スケールアップの技術的困難および大規模な光バイオリアクタを無菌的に稼働させるための高コストによって制限されている。ユーグレナの光栄養培養を通じたバイオマスの収量は光制限のために非常に低いので、従属栄養培養が工業的に選択される方法と考えられてきた。しかしながら、ベンチスケールで得られる高い収率と生産性を維持しながら、製造規模へと拡張可能であり得るより堅牢な発酵過程に対する大きなニーズがなお存在している。
【0008】
本発明は、当技術分野におけるこれらおよびその他の欠点を克服することに関する。
【0009】
したがって、本出願には、
1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する第1の培養培地中で、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップと;
1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する第2の培養培地とともに、前記ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をフェドバッチ培養する第2のステップと
を含む、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を従属栄養的に培養する方法が含まれる。
【0010】
別の態様において、本方法は、1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する第3の培養培地とともに微生物を連続培養する第3のステップをさらに含む。
【0011】
本明細書に記載されている態様の別の局面は、本明細書に記載されている培養培地である。
【0012】
本出願のさらに別の局面は、微生物を従属栄養的に増殖するためのバイオリアクタである。バイオリアクタは、従属栄養微生物を増殖させるための培養培地および成分を受けるように構成されたタンクと、前記タンク内に気体を導入して、前記タンク内で前記培養培地と微生物を混合するように構成された空気供給システムであって、前記空気供給システムは低圧供給装置と高圧供給装置とを含む、前記空気供給システムとを含む。
【0013】
本出願のなおさらなる局面は、バイオマスを生産するためのシステムである。このシステムは、並列に接続された複数のバイオリアクタであって、各バイオリアクタが個々のタンクを含む、前記複数のバイオリアクタと;培養培地と、微生物と、成分とを前記バイオリアクタタンクの各々に個別に提供するように構成された複数のインプットシステムと;前記バイオリアクタタンクの各々の中に気体を導入するように構成された空気供給システムであって、前記空気供給システムは低圧供給装置と高圧供給装置とを含む、前記空気供給システムとを含む。
【0014】
本出願のなおさらなる局面は、微生物を従属栄養的に培養する方法である。この方法は、1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の糖と、1つまたは複数のアルコールと、1つまたは複数の油と、1つまたは複数の塩とを含有する培養培地中で前記微生物を培養する工程と;約2.0~約4.0のpHを維持する工程と;約20℃~約30℃の温度を維持する工程と;実質的に光のない環境を維持する工程とを含み、前記培養する工程は、前記培養培地を受けるように構成されたタンク内で行われ、前記タンク内に気体を導入するように構成された空気供給システムが、前記タンク内で前記培養培地と微生物を混合することができ、前記空気供給システムは、低圧供給装置および高圧供給装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例3の発酵のE. グラシリス成長特性を示す。
【
図2】実施例4の発酵のE. グラシリス成長特性を示す。
【
図3】実施例6における100%新鮮培地対照を表す。各サイクルの時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、OD(600nm)、pHおよび細胞数(細胞/mL)を表す。
【
図4】実施例6におけるグルコースが補充された50%再利用ハイブリッド培地を表す。各サイクルの時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、OD(600nm)、pHおよび細胞数(細胞/mL)を表す。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、培地の栄養素プロファイルを表すグラフである。
図5Aは100%新鮮増殖培地を表すのに対して、
図5Bは、グルコースが補充された50%再利用ハイブリッド培地の経時的な栄養素レベルを表す。x軸は時間(hours)単位での時間を表し、サイクル1、2および3が示されている。y軸は、上清中のグルコース、アンモニウム、硫酸アンモニウムおよびカリウムのg/L単位での濃度を表す。
【
図6】実施例7における100%新鮮培地対照バイオリアクタを表す。各相のインキュベーション時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、OD(600nm)、pH、グルコース(g/L)および細胞数(細胞/mL)を表す。培養相(バッチ、フェドバッチまたは連続)が、図の下に表示されている。
【
図7】実施例7における再利用ハイブリッド培地バイオリアクタを表す。各相のインキュベーション時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、OD(600nm)、pH、グルコース(g/L)および細胞数(細胞/mL)を表す。培養相(バッチ、フェドバッチまたは連続)が、図の下に表示されている。
【
図8】ハイブリッド培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中の成長データを示す。
【
図9】ハイブリッド培地を使用したE. グラシリスの連続発酵についての主要な培養パラメータを示す。
【
図10】ハイブリッド培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中の給餌、採取、および生産性の傾向を示す。
【
図11】ハイブリッド培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中の排出ガスデータの傾向を示す。
【
図12】ハイブリッド培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中に収集された試料におけるCEDEXバイオアナライザによる代謝産物プロファイリングを示す。
【
図13】新鮮培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中対照の成長データを示す。
【
図14】新鮮培地を使用したE. グラシリスの対照連続発酵についての主要な培養パラメータを示す。
【
図15】新鮮培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中対照の給餌、採取、および生産性の傾向を示す。
【
図16】新鮮培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中対照の排出ガスデータの傾向を示す。
【
図17】新鮮培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中対照において収集された試料におけるCEDEXバイオアナライザによる代謝産物プロファイリングを示す。
【
図18】より低い酸濃度(0.0005~0.05g/L)を用いた48時間の終了時における変換効率(%重量)およびバイオマス収量/g炭素を示す棒グラフである。
【
図19】低酸濃度(0.0005~0.05g/L)を使用した48時間にわたる発酵中の酸の正味消費量を示す棒グラフである。
【
図20】低レベルの酸(0.0005~0.05g/L)での、経時的なグルコース濃度の変化を示すグラフである。
【
図21】グラフA~Eが経時的な酸濃度の変化を示す(より高い酸濃度、2~5g/L)(22A、ピルバート;22B、マラート;22C、ラクタート;22D、スクシナート;22E、フマラート)。
【
図22】グルコース(15g/L)含有培地中、低濃度およびより高濃度の酸の存在下での48時間の終了時における正味グルコース消費量の比較を示す棒グラフである。
【
図23】高レベルの酸(2~5g/L)での、経時的なグルコース濃度の変化を示すグラフである。
【
図24】より高濃度の酸を単独でまたはグルコースと組み合わせて使用した場合の発酵中の正味のバイオマス変化(g/L)を示すグラフである。
【
図25】より高い酸濃度を使用した場合に、発酵中に炭素源として酸のみまたはグルコースを加えた酸での、酸部分からのバイオマス寄与の比較を示す棒グラフである。
【
図26】発酵中にE. グラシリスによって消費される異なるインプットおよび潜在的なアウトプットによって利用される代謝経路の模式図である。
【
図27】
図27は、開示されている態様と一致する、複数のバイオリアクタタンクを含むバイオリアクタシステムの概略図である。
【
図28】開示されている態様と一致する、例示的なバイオリアクタタンクの概略断面図である。
【
図29】開示されている態様と一致する、
図28のバイオリアクタタンクと組み合わせて使用され得るスパージャグリッドの上面図である。
【
図30】大量生産バイオリアクタタンクにおいて微細なスパージャおよび粗いスパージャを使用した生産試験の結果を示す表である。
【
図31】実施例14における300Lバイオリアクタタンクを表す。稼働の時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、比消費速度(mg/g、DCW/h)を表す。生産性(g/L/h)および比成長速度(μ、1/h)。
【
図32】実施例14における300Lバイオリアクタタンクを表す。稼働の時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、グルコース濃度(g/L)、フィード速度(L/h)および体積(L)を表す。
【
図33】実施例14における300Lバイオリアクタタンクを表す。稼働の時間(h)はx軸上にあり、y軸は撹拌(RPM)、pH、DO(%)および気流(slpm)を表す。
【
図34】実施例14における7000Lバイオリアクタタンクを表す。バッチの時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、グルコース濃度(g/L)および総DCW(kg)を表す。
【
図35】実施例14における7000Lバイオリアクタタンクを表す。バッチの時間(h)はx軸上にあり、y軸はDCW(g/L)、比消費速度(mg/g、DCW/h)を表す。生産性(g/L/h)および比成長速度(μ、1/h)。
【
図36】実施例14における7000Lバイオリアクタタンクを表す。稼働の時間(h)はx軸上にあり、y軸は撹拌(RPM)、pH、DO(%)および気流(m
3/分)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
別段の指示がない限り、このセクションおよび他のセクションに記載されている定義および態様は、当業者によって理解されるように、これらの定義および態様が適切である本明細書に記載された本出願のすべての態様および局面に対して適用可能であることが意図される。
【0017】
本出願で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がなければ、複数の言及を含む。したがって、例えば、1つの「細胞」という表記は、単一の細胞の他に、同一のまたは異なる細胞の2つまたはそれより多くを含む。
【0018】
数値の直前に位置する場合の「約」という単語は、本開示の文脈が特に指示しない限り、またはかかる解釈と矛盾しない限り、その値のプラスまたはマイナス10%の範囲を意味し、例えば、「約50」は45~55を意味し、「約25,000」は22,500~27,500を意味するなどである。例えば、「約49、約50、約55」などの数値のリストでは、「約50」は、先行値および後続値との間の間隔の半分未満に及ぶ範囲、例えば49.5超~52.5未満を意味する。さらに、「約値未満」または「約値より大きい」という語句は、本明細書で提供される用語「約」の定義に照らして理解されるべきである。本明細書で使用される「実質的に」、「約」、および「およそ」などの程度の用語は、最終結果が著しく変化しないような、修飾された用語の妥当な量の逸脱を意味する。
【0019】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、列挙された項目が個別にまたは組み合わせて存在する、または使用されることを意味する。実際には、この用語は、列挙された項目の「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」が使用されまたは存在することを意味する。
【0020】
「バッチ」培養という用語は、成長が停止するまで、典型的には約2日間、細胞に培地のすべてを消費させる培養を指す。
【0021】
「含む(comprising)」という移行句は、「含む(including)」、「含有する」または「特徴とする」と同義であり、包括的または非限定的であって、列挙されていない追加の要素または方法ステップを排除しない。対照的に、「からなる」という移行句は、特許請求の範囲で指定されていない一切の要素、ステップ、または成分を除外する。「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特許請求された発明の指定された材料またはステップ、「および基本的かつ新規な(1つまたは複数の)特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。用語「含む」が移行句として使用される態様または特許請求の範囲において、そのような態様は、用語「含む」を、用語「からなる」または「から本質的になる」で置き換えることによっても想定され得る。
【0022】
「連続」培養という用語は、培養物からある量の細胞および培地が取り出され、細胞が採取され、新しい培地が、取り出されたものに取って代わる、培養の方法を指す。連続培養は、ユーグレナの最適化された生産および廃棄物の削減を可能にする。給餌は、消費速度に基づき、かつ成長と同じ速度での採取に基づき、これは、指数成長期を延長することを可能にし、すなわち、系内に投入される培地の量は、系から採取または取り出される量と一致する。連続系を使用することの利点は、大規模な生産であっても自動化することができ、ヒューマンエラーを制限することである。
【0023】
「遠心分離液(centrate)」という用語または「使用済み増殖培地」という語句は、細胞培養のために使用されたことがある培地、すなわち培養の開始時より低いレベルの成長成分をその中に有する培養培地を指す。使用済み増殖培地は、細胞を培養するために使用された後の培地中の炭水化物の含有量によっても決定される。
【0024】
ユーグレナ培養に関して本明細書で使用される「フィード」および「給餌」という用語は、培養物への栄養素含有培地の添加を指す。
【0025】
本明細書で使用される「バッチ発酵」という用語は、過程が完了するまで主要な基質または生成物流を添加または取り出すことなく、炭素源およびエネルギー源で満たされた容器内で微生物を培養する過程を指す。本明細書で使用される「バッチ培養」という用語は、バッチ発酵による培養を指す。
【0026】
本明細書で使用される「フェドバッチ発酵」という用語は、培養液を取り出すことなく、成長制限栄養素を含有するフィード溶液を頻繁にまたは連続的に供給される容器内で微生物を培養する過程を指す。したがって、培養物の体積は経時的に増加する。本明細書で使用される「フェドバッチ培養」という用語は、フェドバッチ発酵による培養を指す。
【0027】
「採取された培養物」という用語は、培養培地の一部または全部から分離された濃縮された細胞を指す。採取された培養物は、別のバイオリアクタに接種するために使用することができ、または単離されたバイオマスもしくは精製された油、タンパク質、βグルカン、もしくは他の成分を産生するための下流処理において使用することができる。
【0028】
例えばユーグレナ培養物に関して本明細書で使用される「採取する」という用語は、ユーグレナ細胞を培養培地の一部または全部から分離することを指す。「採取された培養物」という用語は、分離された、例えばユーグレナ細胞を指す。
【0029】
本明細書で使用される「適切な」という用語は、特定の化合物または条件の選択が、実行されるべき特定の合成操作および変換されるべき(1つまたは複数の)分子の同一性に依存することを意味するが、選択は十分に当業者の技能の範囲内である。
【0030】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間にあるそれぞれの介在する値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値が本開示内に包含されることが意図される。例えば、1mL~8mLという範囲が記載されている場合、2mL、3mL、4mL、5mL、6mLおよび7mL、ならびに1mLを超えるまたは1mLに等しい値の範囲および8mL未満または8mLに等しい値の範囲も明示的に開示されることが意図される。
【0031】
本出願の範囲を理解する上で、本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語およびその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの存在を指定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの存在を排除しない非限定的な用語であることを意図している。上記は、「含む(including)」、「有する」という用語およびこれらの派生語などの同様の意味を有する単語にも適用される。本明細書で使用される「からなる」という用語およびその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの存在を指定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの存在を排除する限定的な用語であることを意図している。本明細書で使用される「から本質的になる」という用語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップのみならず、特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものの存在を指定することを意図している。
【0032】
本明細書で使用される「従属栄養」、「従属栄養環境」という用語または派生語は、炭水化物、脂質、アルコール、カルボン酸、糖アルコール、タンパク質またはこれらの組み合わせなどの有機炭素の外来源から実質的に完全に栄養素を得るような条件下にある、ユーグレナを含む、微生物などの生物を指す。例えば、ユーグレナは、光が実質的に存在しない環境に存在する従属栄養生物である。
【0033】
本明細書で使用される用語「光栄養性」または派生語は、エネルギーを獲得するために光子捕捉を実行することができる条件下にその生物が存在する場合の、ユーグレナを含む微生物などの生物を指す。例えば、生物が光栄養性である場合、エネルギーを産生するために、生物は光合成を行う。
【0034】
本明細書で使用される「母培養物(mother culture)」という用語は、本明細書に記載されている実験条件とは独立したスケジュールで培地および細胞を取り出しまたは補充しながら、長期間連続的に増殖されている細胞の培養物を指す。
【0035】
「培養する(cultivate)」、「培養する(culture)」および「発酵させる」ならびにその変形は、培養条件の使用による、ユーグレナ・グラシリスなどの1つまたは複数の細胞の成長および/または繁殖の意図的な促進を意味する。意図された条件には、(直接的なヒトの介入のない)自然での微生物の成長および/または繁殖は含まれない。用語「増殖された」およびその変形は、意図された培養条件の使用による1つまたは複数の細胞の成長(細胞サイズ、細胞内容物および/または細胞活性の増加)および/または繁殖(有糸分裂を介した細胞数の増加)の意図的な促進を指す。成長と繁殖の両方の組み合わせは、増殖という用語で呼ばれ得る。1つまたは複数の細胞は、ユーグレナ・グラシリスなどの微生物の細胞であり得る。意図される条件の例には、組成が明らかな培地(pH、イオン強度および炭素源などの公知の特性を有する)の使用、指定された温度、酸素分圧、二酸化炭素レベル、およびバイオリアクタ内での成長が含まれる。
【0036】
「乾燥重量」および「乾燥細胞重量」は、水の相対的非存在下で測定された重量を意味する。例えば、乾燥重量で特定の成分の指定されたパーセンテージを含むとして微細藻類のバイオマスを表記することは、そのパーセンテージが、実質的にすべての水が除去された後のバイオマスの重量に基づいて計算されることを意味する。乾燥重量の1つの尺度は、1リットル当たりに生成されるグラム乾燥バイオマス(gDCW/L)である。
【0037】
「成長」は、固定された炭素源の細胞内油への変換による細胞重量の増加を含む、細胞サイズ、総細胞内容物、および/または個々の細胞の細胞質量もしくは重量の増加を意味する。
【0038】
「増加した脂質収量」は、例えば、培養物1リットル当たりの細胞の乾燥重量を増加させること、脂質を含有する細胞のパーセンテージを増加させること、および/または単位時間当たりの培養体積1リットル当たりの脂質の総量を増加させることによって達成することができる微細藻類の培養物の脂質/油生産性の増加を意味する。
【0039】
「微細藻類のバイオマス」、「藻類のバイオマス」および「バイオマス」は、微細藻類の細胞の成長および/または繁殖によって産生される材料を意味する。バイオマスは、細胞および/または細胞内内容物ならびに細胞外物質を含有し得る。細胞外物質には、細胞によって分泌される化合物が含まれるが、これに限定されない。
【0040】
「微細藻類の粉」は、微細藻類、例えばユーグレナの細胞を含む、ヒトの摂取に適した乾燥した粒子状組成物である。
【0041】
「微細藻類の油」および「藻類の油」は、トリアシルグリセロール(「TAG」)を含む、微細藻類の細胞によって産生される脂質成分のいずれをも意味する。
【0042】
「油」は、微細藻類、他の植物および/または動物を含む生物によって産生される任意のトリアシルグリセロール(またはトリグリセリド油)を意味する。「脂肪」と区別される「油」は、特に明記しない限り、通常の室温および圧力で一般に液体である脂質を指す。例えば、「油」には、大豆、菜種、キャノーラ、パーム、パーム核、ココナツ、トウモロコシ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、クフェア(cuphea)、落花生、ナガミノアマナズナ(camelina sativa)、カラシナ種子、カシューナッツ、オート麦、ルピナス、ケナフ、キンセンカ(calendula)、ヘンプ、コーヒー、亜麻仁、ヘーゼルナッツ、ユーフォルビア(euphorbia)、カボチャ種子、コリアンダー、ツバキ、ゴマ、ベニバナ、イネ、アブラギリ、カカオ、コプラ、ケシ、トウゴマの実、ピーカン、ホホバ、ヤトロファ(jatropha)、マカダミア、ブラジルナッツおよびアボガドならびにこれらの組み合わせに由来する油を含むが、これらに限定されない、植物に由来する野菜または種子油が含まれる。
【0043】
「増殖」は、成長と繁殖の両方の組み合わせを意味する。
【0044】
「繁殖」は、有糸分裂またはその他の細胞分裂による細胞数の増加を意味する。
【0045】
本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、光または構成要素の完全なまたはほぼ完全な欠如を指す。例えば、水を「実質的に含まない」組成物は、水を完全に欠如するか、または水をほぼ完全に欠如して、水を完全に欠如したかのように効果が同じである。
【0046】
体積による割合に関する「V/V」または「v/v」は、組成物の体積に対する組成物中の1つの物質の体積の比を意味する。例えば、5%v/vの微細藻類の油を含む組成物という表記は、組成物の体積の5%が微細藻類の油で構成され(例えば、100mm3の体積を有するような組成物は、5mm3の微細藻類の油を含有するであろう)、組成物の体積の残り(例えば、この例では95mm3)が他の成分で構成されることを意味する。
【0047】
重量による割合に関する「W/W」または「w/w」は、組成物の重量に対する組成物中の1つの物質の重量の比を意味する。例えば、5%w/wの微細藻類のバイオマスを含む組成物という表記は、組成物の重量の5%が微細藻類のバイオマスで構成され(例えば、100mgの重量を有するような組成物は、5mgの微細藻類のバイオマスを含有するであろう)、組成物の重量の残り(例えば、この例では95mg)が他の成分で構成されることを意味する。
【0048】
本明細書で使用され、gDCW/L/時間として測定される「バイオマス生産性」という用語は、1時間当たり培養物1リットル当たりに生成されるグラム乾燥バイオマスであり、体積生産性とも呼ばれる。
【0049】
本明細書で使用される「ケモスタティック発酵」、「ケモスタット発酵」または「連続発酵」という用語は、成長制限栄養素を含有するフィード溶液が培養物に連続的または半連続的に供給され、細胞、代謝産物、老廃物および任意の未使用栄養素を含有する流出溶液がそこから同時にまたは直ちにまたはその後すぐに採取される容器内で微生物を培養する過程を指す。この種の連続培養において増殖容器として使用される容器はケモスタットと呼ばれる。ケモスタット発酵では、フィード流量、基質濃度、pH、温度および酸素レベルが連続的に制御される。本明細書で使用される「ケモスタットで培養する」、「ケモスタット培養する」または「連続培養する」という用語は、ケモスタティック発酵、ケモスタット発酵または連続発酵による培養を指す。
【0050】
本明細書で使用される「グルコース制限培養」という用語は、培地中のグルコース濃度によって細胞成長が制限されている状態を指す。
【0051】
本明細書で使用される「滞留時間」という用語は、1バイオリアクタ体積のフィード培地がバイオリアクタ中に供給される時間/持続時間である。
【0052】
「比グルコース取り込み速度」という用語は、本明細書で使用される場合、1グラムの乾燥バイオマスを生成するために1時間でグルコース1グラムがどれだけ消費されるかを決定することによって測定される。比グルコース取り込み速度を決定するための式は、
である。
【0053】
「比成長速度」という用語は、本明細書で使用される場合、集団において細胞数が増加する速度である。比成長速度を決定するための式は、
である。最高速度はμ
maxと呼ばれ、その単位はh
-1である。
【0054】
「ウォッシュアウト」という用語は、本明細書で使用される場合、ケモスタット発酵中に、細胞が取り出されるよりも低い速度で細胞が複製している場合を指す。
【0055】
略号「DW」は、蒸留水を指す。
【0056】
略号「PW」は、精製水を指す。
【0057】
略号「RPM」は、1分当たりの回転数を指す。
【0058】
略号「VVM」は、1分当たり培養物の体積当たりの空気供給の体積を指す。
【0059】
略号「OUR」は、1時間当たり培養物1リットル当たり何モルのO2が消費されるかである酸素の取り込み/利用速度を指す。
【0060】
略号「CER」は、1時間当たり培養物1リットル当たり何モルのCO2が生成されるかである二酸化炭素の発生速度を指す。
【0061】
略号「RQ」は、呼吸商/係数を指し、呼吸商/係数とは、呼吸中に(例えば、ユーグレナによって)消費された酸素の体積に対する(例えば、ユーグレナによって)生成された二酸化炭素の体積の比である。
【0062】
略号「pO2」または「pO2」は、酸素の分圧を指し、液体媒体の上方のヘッド空間内の気相中の酸素の濃度である。
【0063】
略号「DO」は、溶存酸素を指し、液体培地中に溶解した酸素気体である。
【0064】
本明細書、実施例および特許請求の範囲において使用される特定の用語をここに集める。別段の定義がなければ、本開示において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野における当業者によって一般に理解されているものと同一の意味を有する。
【0065】
ここで、様々な局面について、以下でより詳細に説明する。しかしながら、そのような局面は、多くの異なる形態で具体化され得、本明細書に記載されている態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの態様は、本開示が十分かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。本発明の所与の局面、特徴、態様またはパラメータに対する選好および選択は、文脈上別段の指示がない限り、本発明の他のすべての局面、特徴、態様およびパラメータに対するすべての選好および選択と組み合わせて開示されているとみなされるべきである。
【0066】
ユーグレナ・グラシリスと命名された藻類の特定の種(以下、ユーグレナ)は、実験室研究および技術的応用の候補種としてしばしば使用される単細胞微細藻類の群に属する。ユーグレナは、ミトコンドリア、核およびリソソームなどの真核細胞に典型的な代表的特徴を有する。ユーグレナは、その長い鞭毛および大きな赤い眼点によってさらに特徴付けることができる。植物と同様に自身の栄養を産生することができる(独立栄養)他、動物のように外部の食物源を食べて消化することができる(従属栄養)ので、ユーグレナは極めて独特である。ユーグレナは、実証された多面的な研究用モデル生物である。栄養の単独または双方の様式を使用する自然の能力を最適化することを通じて、ユーグレナは、生産過程における重要なパラメータを調整することによって目標化合物を生産するように誘導することができる。微生物の自然の機構を強化し、迅速な成長および廃棄物の生成がほとんどない価値ある生産物の効率的な変換を促進するために、これらの重要な調整を使用することができる。
【0067】
ユーグレナ・グラシリスは、収率を最大化する目標アウトプットを生成するためにインプット成分の効率的な変換を介してその再利用される材料を利用することによって、産業コストを削減するための鍵である大量培養の可能性を有している。油およびタンパク質などの必須栄養補助食品の製品開発に特有の一組の条件を構築するために、炭素源および窒素源ならびに光および温度などの必須成長パラメータに関連するこれらの因子を操作することが可能である。環境状況で枠付けられた、これらの必須栄養素を大規模生産するためのユーグレナ・グラシリスの成長最適化は、藻類の培地リサイクルを通じて廃棄物を制限し、効率を最大化するのに役立つ。単純ではないが、工業規模での栄養素生産のための環境に優しい代替解決策の必要性が必要とされている。藻類およびその商業化された廃棄物は、この危機を解決するのに絶好の位置にあり、栄養補助食品の有望な栄養源としての役割を果たしつつ産業廃棄物フットプリントを削減する。
【0068】
ユーグレナ・グラシリスは、バブルカラムバイオリアクタ内で増殖培地を用いて、従属栄養的に増殖される。バブルカラムバイオリアクタは、液体内に気泡を形成するために底部での空気の散布を使用して液相中で浮遊生細胞を成長させるために使用される背の高い円筒形バイオリアクタである。気泡の発生により、混合のために必要な液体の乱流が生じる。バブルカラムバイオリアクタのアスペクト比、すなわち容器の直径に対する容器の高さの比は、典型的には4~6である。いくつかの態様において、ユーグレナ・グラシリス細胞培養物の産生またはシード培養物から商業生産規模への細胞拡大は、複数の成長サイクル段階で行われる。これは、発酵槽トレインを使用することによって、必要な細胞密度および体積までユーグレナ・グラシリス細胞培養物を複数の段階で増殖させることからなる。ユーグレナ・グラシリス細胞を増殖させるために使用される出発増殖培地は、成長および目標細胞組成を最適化するように配合される。出発増殖培地中の細胞濃度を増加させるために、濃縮培地成分の特有の組み合わせ、または同じタイプの組み合わされた濃縮培地成分の群、および/または個々の濃縮培地成分であり得る濃縮フィード培地がユーグレナ・グラシリスの培養物に供給される。ユーグレナ・グラシリスを成長させるために使用される増殖培地は、1つまたは複数の発酵性炭素源と、1つまたは複数の非発酵性炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、塩とミネラルの組み合わせと、ビタミンの組み合わせとを含む。発酵槽トレインは、合計12個のバブルカラムバイオリアクタ(2×250L、2×500L、8×20,000L)を備え、容量が増加する順序でシード発酵槽から大型の商業発酵槽へと直列に接続される。より小さい250Lおよび500Lのバブルカラムバイオリアクタはプラント領域内に配置され、実験室規模のユーグレナ・グラシリス培養物を実験室規模から中間規模に移すために使用され、後者は、プラント領域内に配置された20,000Lのバブルカラムバイオリアクタにおける商業的な最終段階規模のための接種材料またはシード培養物として機能する。20,000Lのバブルカラムバイオリアクタ中で成長サイクルが完了すると、まず培養物はサージタンクに移送され、次いで細胞分離のために大型分離板型遠心分離機に移送される。回収された細胞は、二次好気性もしくは嫌気性発酵段階でインキュベートされ、またはタンパク質もしくはβグルカン回収のために破壊される。一次発酵過程の主な機能は、1,3-βグルカン、タンパク質および脂質であるバルク成分の生成である。
【0069】
ユーグレナ・グラシリスの第1段階の培養
第1段階の培養段階は、250Lのバブルカラムバイオリアクタ中で100L~125Lの新鮮増殖培地を接種することから始まる。接種材料または出発培養物の体積は15L~25Lの範囲であり、実験室または500Lバブルカラムバイオリアクタ中で成長する培養物に由来し得る。
【0070】
培養物はバッチモードで増殖される、すなわち、培養細胞は、培養物とのいかなる外的相互作用もなしに、栄養素、特に主炭素源を消費している。炭素源の下限閾値に達したら、成長または細胞増殖を継続するために、濃縮増殖培地成分が培養物に供給される。濃縮増殖培地は、培養物の湿潤細胞重量濃度に基づいた、指数成長期中のユーグレナ・グラシリス細胞の比炭素源消費速度と一致する速度で培養物に供給される。ある特定の態様において、炭素源の下限閾値は、約2g/L~約10g/L、約3g/L~約9g/L、約4g/L~約8g/Lまたは約5g/L~約7g/Lである。ある特定の態様において、炭素源の下限閾値は、約6g/L~約14g/L、約7g/L~約13g/L、約8g/L~約12g/Lまたは約9g/L~約11g/Lである。
【0071】
濃縮炭素源は専用の濃縮炭素源フィードラインを通して供給され、濃縮窒素源は専用の濃縮窒素源フィードラインを通して供給され、濃縮塩源は専用の濃縮塩源フィードラインを通して供給される。これらの専用の濃縮成分フィードラインは、空気圧作動式の複座弁を介してバブルカラムバイオリアクタの主フィードラインに接続されている。複座弁は、2つの媒体成分供給流が交差混合のリスクなしに同じ弁を通って同時に流れることを可能にする。無菌/プロセス用水も、エリアへの自身の専用のフィードラインを有し、作動複座弁を介してバイオリアクタ主フィードラインに接続される。
【0072】
濃縮培地成分の給餌速度は、バブルカラムバイオリアクタに接続された主フィードライン上に設置された作動弁によって調節される。この弁は、弁のパルス周波数を制御し、その結果、バブルカラムバイオリアクタへの濃縮培地成分の給餌速度を制御するタイマーを備えたローカルプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に接続され、これによって作動される。培養物への濃縮増殖培地成分の給餌速度を調節するのは弁開口の頻度である。濃縮増殖培地成分フィードラインをバブルカラムバイオリアクタ主フィードラインに接続する複座弁の作動を介して分散制御システム(DCS)によって、濃縮培地成分が順に制御される。供給スケジュールによるエリア内の培養物の自動供給を実施することができる。
【0073】
濃縮増殖培地は、培養物の湿潤細胞重量濃度に基づいた、指数成長期中のユーグレナ・グラシリスの比炭素源消費と一致するように培養物に供給される。バイオリアクタ間の濃縮培地成分の移送および分配は、複座弁バンクを介して行われる。
【0074】
培養物の体積がバイオリアクタの最大作業体積の80~90%に達すると、バイオリアクタの内容物の一部または全体が、両容器を接続する蒸気滅菌済みステンレス鋼編み上げホース移送ライン(3/8インチ)を介して、次段階のバイオリアクタである500Lバブルカラムバイオリアクタに無菌的に移送される。いくつかの態様において、最終湿潤細胞重量は、5~250g/L(1.6~80g/L乾燥細胞重量)、5~80g/L(1.6~25.6g/L)または30~60g/L湿潤細胞重量(6.4~19.2g/L乾燥細胞重量)の範囲である。250Lバブルカラムバイオリアクタを約10psi~約15psiに加圧し、培養物が250Lバブルカラムバイオリアクタから500Lバブルカラムバイオリアクタに流れるように、無菌移送ホースラインへの弁を開く。
【0075】
ユーグレナ・グラシリスの第2段階の培養
第2段階の培養段階は、500Lのバブルカラムバイオリアクタ中で100L~200Lの新鮮増殖培地を接種することから始まる。接種材料培養物は15L~50Lの範囲であり、実験室または250Lバイオリアクタに由来する。出発培養物の体積は、典型的には110L~125Lである。
【0076】
培養物はバッチモードで増殖される、すなわち、培養細胞は、培養物との外的相互作用なしに、栄養素および主炭素源を消費している。炭素源の下限閾値に達したら、成長または細胞増殖を継続するために、濃縮増殖培地成分が専用のフィードラインを通じて供給される。濃縮増殖培地は、培養物の湿潤細胞重量濃度に基づいた、指数成長期中のユーグレナ・グラシリスの比炭素源消費速度と一致する速度で培養物に供給される。ある特定の態様において、炭素源の下限閾値は、約2g/L~約10g/L、約3g/L~約9g/L、約4g/L~約8g/Lまたは約5g/L~約7g/Lである。ある特定の態様において、炭素源の下限閾値は、約6g/L~約14g/L、約7g/L~約13g/L、約8g/L~約12g/Lまたは約9g/L~約11g/Lである。
【0077】
濃縮炭素源は専用の濃縮炭素源フィードラインを通して供給され、濃縮窒素源は専用の濃縮窒素源フィードラインを通して供給され、濃縮塩源は専用の濃縮塩源フィードラインを通して供給される。これらの専用の濃縮成分フィードラインは、空気圧作動式の複座弁を介してバブルカラムバイオリアクタに接続された主フィードラインに接続されている。無菌/プロセス用水も、それ自身の専用フィードラインを有する。
【0078】
濃縮培地成分の給餌速度は、バブルカラムバイオリアクタに接続された主フィードライン上に設置された作動弁によって調節される。この弁は、バブルカラムバイオリアクタへの濃縮培地成分のパルス周波数を制御するタイマーを備えたローカルプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に接続され、これによって作動される。培養物への濃縮増殖培地成分の給餌速度を調節するのは弁開口の頻度である。濃縮増殖培地成分フィードラインをバブルカラムバイオリアクタ主フィードラインに接続する複座弁の作動を介して分散制御システム(DCS)によって、濃縮培地成分が順に制御される。培養物の自動供給は、供給スケジュールによって制御することができる。
【0079】
濃縮増殖培地は、培養物の湿潤細胞重量濃度に基づいた、指数成長期中のユーグレナ・グラシリスの比炭素源消費と一致するように培養物に供給される。1つのエリアからバブルカラムバイオリアクタへの濃縮培地成分の移送および分配は、複座弁バンクを介して行われる。複座弁は、2つの媒体成分供給流が交差混合のリスクなしに同じ弁を通って同時に流れることを可能にする。
【0080】
培養物の体積がバイオリアクタの最大作業体積の80~90%に達すると、バイオリアクタの内容物の一部または全体が、遠心ポンプを備えた移送ライン(2インチのステンレス鋼パイプ)を介して20,000Lのバブルカラムバイオリアクタに無菌的に移送される。いくつかの例では、バイオリアクタの内容物の一部または全体は、小型開発バッチの処理のパイロットサイズ遠心分離機に無菌的に移送される。いくつかの態様において、最終湿潤細胞重量は、5~250g/L(1.6~80g/L乾燥細胞重量)、5~80g/L(1.6~25.6g/L)または30~60g/L湿潤細胞重量(6.4~19.2g/L乾燥細胞重量)の範囲である。500Lバイオリアクタを約10psi~約15psiに加圧し、500Lバイオリアクタから20,000Lに培養物を移送するために弁およびポンプを作動させる過程は、制御室内のDCS(分散制御システム)インターフェースから実行される。
【0081】
ユーグレナ・グラシリスの第3段階の培養
第3段階の培養段階は、500Lバイオリアクタからの培養物の400L~900Lの接種体積と、約3100L~3600Lの総体積に達するためのわずかに濃縮された新鮮培地の体積とから始まる。典型的には、培養物の開始体積は、約3400L~4100Lの培養物である。第3段階の培養は、約30/L~約100g/Lの湿潤細胞重量まで成長させる。
【0082】
主炭素源が下限閾値濃度に達するまで、培養物をバッチモードで成長させる。炭素源の下限閾値に達したら、濃縮炭素源、濃縮窒素源および濃縮塩が3つの別々の貯蔵容器から培養物に供給される。濃縮成長栄養素は、サンプリングの時点での培養物のグルコースレベルの速度およびユーグレナ・グラシリスの湿潤細胞重量濃度に基づいた、指数成長における湿潤細胞重量ベースでのユーグレナ・グラシリスの炭素源消費と一致するように、培養物に供給される。ある特定の態様において、炭素源の下限閾値は、約2g/L~約10g/L、約3g/L~約9g/L、約4g/L~約8g/Lまたは約5g/L~約7g/Lである。ある特定の態様において、炭素源の下限閾値は、約6g/L~約14g/L、約7g/L~約13g/L、約8g/L~約12g/Lまたは約9g/L~約11g/Lである。
【0083】
ユーグレナ・グラシリス細胞における細胞密度および必要とされる生成物組成も制御するために、培養物への濃縮培地または濃縮培地成分の任意の組み合わせの給餌の速度が調節される。培養物中の様々な増殖培地成分および細胞の組成は、バブルカラムバイオリアクタ上に設置されたオンラインプロセス分析プローブによって測定され得る。これらの出力は、同時に制御されてもよく、または制御されなくてもよい。
【0084】
濃縮培地または濃縮培地成分の任意の組み合わせの培養物への給餌の速度は、別個のパーソナルコンピュータ上に設置されたまたは分散制御システム(DCS)のモジュールとして設置された監視制御およびデータ収集(SCADA)システム中に実装された線形または非線形適応デジタルコントローラによって調節される。SCADAシステムは、オンライン分析プローブからまたはユーザインターフェース上のオペレータデータ入力を介して発酵過程データを収集することができる。
【0085】
SCADAは、非線形または線形リアルタイム適応制御アルゴリズムを実行して、細胞密度、細胞中の生成物組成、培養物中の重要な培地成分、pHおよび溶存酸素(DO)のオンライン出力測定に基づいて、ユーグレナ・グラシリスの培養物への濃縮培地または濃縮培地成分の任意の組み合わせの給餌速度および給餌スケジュールを計算および最適化する。培養物の細胞密度は、約0.1g湿潤細胞重量~約150g湿潤細胞重量である。細胞中の生成物組成は、約30%~約60%の炭水化物、約30%~約60%のタンパク質および約0%~約20%の油である。培養物中の重要な培地成分は、約0g/L~約40g/Lのグルコース、約0g/L~約5g/Lの酵母抽出物、約0g/L~約7g/Lの硫酸アンモニウム、約0g/L~約5g/Lのカリウムおよび約0g/L~約5g/Lのマグネシウムである。pHは、約2~約7である。溶存酸素濃度は、約0ppm~約10ppmである。ユーグレナ・グラシリスの培養物への濃縮培地または濃縮培地成分の任意の組み合わせの給餌の速度の調節は、複座弁バンクによって濃縮培地成分貯蔵容器に連結された各増殖培地成分群のための専用フィードラインを介して、および各増殖培地成分のためのバブルカラムバイオリアクタ専用フィードライン上の高分解能速度ポンプによって行われる。複座弁は、2つの媒体成分供給流が交差混合のリスクなしに同じ弁を通って同時に流れることを可能にする。弁バンクは、最小限の分配配管リソースを使用しながら、濃縮増殖培地成分を1つまたは複数のバブルカラムバイオリアクタに同時にかつ効率的に分配することができる。
【0086】
本明細書に記載されているいくつかの態様による培養培地中の溶存酸素(DO)は約15%~約100%である。いくつかの態様において、DO値は、約15%~約90%、約15%~約80%、約15%~約70%、約15%~約60%、約15%~約50%、約15%~約40%、約15%~約30%、約15%~約25%または約15%~約20%である。本明細書に記載されている方法のいくつかの態様において、比酸素消費量は、約10~30mgO2/gDCW/h、最適には14~20mgO2/gDCW/hである。本明細書に記載されている方法のいくつかの態様において、O2取り込み速度は0.1~40mmol/L/hである。本明細書に記載されている方法のいくつかの態様において、O2取り込み速度は0.1~20mmol/L/hである。本明細書に記載されている方法のいくつかの態様において、比CO2発生速度は、10~40mgCO2/gDCW/h、最適には20~25mgCO2/gDCW/hである。本明細書に記載されている方法のいくつかの態様において、CO2発生速度は0.1~40mmol/L/hである。本明細書に記載されている方法のいくつかの態様において、CO2発生速度は0.1~20mmol/L/hである。
【0087】
濃縮培地成分は、容量が1200L~10,000Lの培地貯蔵容器から弁バンクに、次いで主バイオリアクタに供給する専用の濃縮増殖培地成分フィードラインに移送される。
【0088】
濃縮培地栄養素は、培養物に順次パルス供給され、追い出し水(chase water)によって主フィードラインから追い出される。バイオリアクタ内の培養物の給餌は、自動パルス給餌スケジュールに基づいている。給餌スケジュールは、各濃縮培地栄養素および追い出し水のフィードパルス当たりの頻度および所定の体積が指定されている予め設定されたDCSレシピ内の一連の指示である。フィードスケジュールは、細胞密度および/または重要な培地成分レベルに基づく給餌の頻度である。培養物へのパルスフィード(または給餌イベント)のタイミングおよび時間は、DCSレシピ中に予め設定されている。給餌スケジュールは、予め計算された体積の濃縮増殖培地が投入される一連の自動化された指示である。予め計算された体積は、湿潤細胞重量濃度に基づいて供給計算機を用いて計算される。供給する濃縮増殖培地の体積は、単一のパルスでバイオリアクタ内の培養物に送達することができ、または複数のパルスで供給することができる。増殖培地が複数のパルスで供給されるときのパルスのタイミングは、オペレータをPLCにリンクするPLCユーザプログラムインターフェースに設定することができる。プログラムはPLCに統合されている。
【0089】
本開示は、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を従属栄養的に培養するための方法を含む。
【0090】
したがって、本出願には、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を従属栄養的に培養する方法であって、1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する第1の培養培地中で、前記ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップと;1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する第2の培養培地とともに、前記ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をフェドバッチ培養する第2のステップとを含む、方法が含まれる。
【0091】
一態様において、本方法は、1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する第3の培養培地とともにユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップをさらに含む。
【0092】
本明細書に記載されているすべての方法は、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物に適用可能である。一態様において、前記微生物は、ユーグレナ・グラシリス、ユーグレナ・サングイネア(Euglena sanguinea)、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)、ユーグレナ・ムタビリス(Euglena mutabilis)、ユーグレナ・アクス(Euglena acus)、ユーグレナ・ビリディス(Euglena viridis)、ユーグレナ・アナバエナ(Euglena anabaena)、ユーグレナ・ゲニクラタ(Euglena geniculata)、ユーグレナ・オキシウリス(Euglena oxyuris)、ユーグレナ・プロキシマ(Euglena proxima)、ユーグレナ・トリプテリス(Euglena tripteris)、ユーグレナ・クラミドフォラ(Euglena chlamydophora)、ユーグレナ・スプレンデンス(Euglena splendens)、ユーグレナ・テクスタ(Euglena texta)、ユーグレナ・インターメディア(Euglena intermedia)、ユーグレナ・ポリモルファ(Euglena polymorpha)、ユーグレナ・エレンベルギ(Euglena ehrenbergii)、ユーグレナ・アドハエレンス(Euglena adhaerens)、ユーグレナ・クララ(Euglena clara)、ユーグレナ・エロンガタ(Euglena elongata)、ユーグレナ・エラスチカ(Euglena elastica)、ユーグレナ・オブロンガ(Euglena oblonga)、ユーグレナ・ピスキフォルミス(Euglena pisciformis)、ユーグレナ・カンタブリカ(Euglena cantabrica)、ユーグレナ・グラニュラタ(Euglena granulata)、ユーグレナ・オブツサ(Euglena obtusa)、ユーグレナ・リムノフィラ(Euglena limnophila)、ユーグレナ・ヘミクロマタ(Euglena hemichromata)、ユーグレナ・バリアビリス(Euglena variabilis)、ユーグレナ・カウダタ(Euglena caudata)、ユーグレナ・ミニマ(Euglena minima)、ユーグレナ・コミュニス(Euglena communis)、ユーグレナ・マグニフィカ(Euglena magnifica)、ユーグレナ・テリコラ(Euglena terricola)、ユーグレナ・ベラタ(Euglena velata)、ユーグレナ・レプルサンス(Euglena repulsans)、ユーグレナ・クラバタ(Euglena clavata)、ユーグレナ・ラタ(Euglena lata)、ユーグレナ・ツベルクラタ(Euglena tuberculata)、ユーグレナ・カンタブリカ、ユーグレナ・アカスフォルミス(Euglena acusformis)、ユーグレナ・オステンデンシス(Euglena ostendensis)、クロレラ・アウトトロフィカ(Chlorella autotrophica)、クロレラ・コロニアルス(Chlorella colonials)、クロレラ・レウィニイ(Chlorella lewinii)、クロレラ・ミヌチシマ(Chlorella minutissima)、クロレラ・ピチュイタ(Chlorella pituita)、クロレラ・プルケロイデス(Chlorella pulchelloides)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ロタンダ(Chlorella rotunda)、クロレラ・シングラリス(Chlorella singularis)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラ・バリアビリス(Chlorella variabilis)、クロレラ・ボルティス(Chlorella volutis)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、シゾキトリウム・アグレガタム(Schizochytrium aggregatum)、シゾキトリウム・リマシナム(Schizochytrium limacinum)、シゾキトリウム・ミヌタム(Schizochytrium minutum)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様において、微生物はユーグレナ・グラシリスである。
【0093】
培地
本発明の態様は、1つまたは複数の発酵性炭素源と、1つまたは複数の非発酵性炭素源と、1つまたは複数の窒素源の組み合わせと、塩とミネラルの組み合わせと、ビタミンの組み合わせとを含有する培養培地を利用して、ユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する方法を対象とする。本発明の態様は、炭素源、窒素源および塩の組み合わせを含有する培養培地を利用してユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する方法を対象とする。記載された培養培地は、好気性代謝および嫌気性代謝の両方を含むユーグレナ・グラシリスの代謝能のすべてを利用する。油、糖、アルコール、有機窒素および無機窒素源の組み合わせは、インプットからアウトプットへのより高い変換および微生物のより速い成長をもたらす。
【0094】
複数の態様において、ユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する方法は、1つまたは複数の炭素源と、1つまたは複数の窒素源と、1つまたは複数の塩とを含有する培養培地中でユーグレナ・グラシリスを培養することを含む。
【0095】
複数の態様において、炭素源は、油、糖、アルコール、カルボン酸、フェルラ酸およびこれらの組み合わせから選択される。複数の態様において、油は、大豆、菜種、キャノーラ、パーム、パーム核、ココナツ、トウモロコシ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、クフェア、落花生、ナガミノアマナズナ、カラシナ種子、カシューナッツ、オート麦、ルピナス、ケナフ、キンセンカ、ヘンプ、コーヒー、亜麻仁、ヘーゼルナッツ、ユーフォルビア、カボチャ種子、コリアンダー、ツバキ、ゴマ、ベニバナ、イネ、アブラギリ、カカオ、コプラ、ケシ、トウゴマの実、ピーカン、ホホバ、ヤトロファ、マカダミア、ブラジルナッツまたはアボガドおよびこれらの組み合わせに由来する油である。一態様において、油はキャノーラ油である。糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、ハチミツ、コーンシロップおよびこれらの組み合わせから選択され得る。アルコールは、エタノール、メタノール、イソプロパノールおよびこれらの組み合わせから選択され得る。ある特定の態様において、炭素源はグルコースである。カルボン酸は、クエン酸、シトラート、フマル酸、フマラート、リンゴ酸、マラート、ピルビン酸、ピルバート、コハク酸、スクシナート、酢酸、アセタート、乳酸、ラクタートおよびこれらの組み合わせから選択され得る。好ましい態様において、炭素源は、グルコースと有機酸の組み合わせであり、有機酸は、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸およびフマル酸からなる群から選択される。
【0096】
複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約0.0005g/L~約0.05g/L、約0.005g/L~約0.5g/L、約0.05g/L~約1g/L、約0.5g/L~約5g/L、約1g/L~約10g/L、約5g/L~約50g/L、約10g/L~約45g/L、約15g/L~約40g/L、約20g/L~約35g/L、約5g/L~約20g/L、約5g/L~約15g/L、約5g/L~約10g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約15g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約10g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約5g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約2g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約1g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約0.5g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約0.1g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約0.05g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約0.005g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の作業濃度は、約0.0005g/Lの濃度である。
【0097】
複数の態様において、濃縮炭素源は、約55g/L~約500g/L、約60g/L~約450g/L、約65g/L~約400g/L、約70g/L~約350g/L、約75g/L~約300g/L、約80g/L~約250g/L、約95g/L~約200g/Lまたは約100g/L~約150g/Lの濃度である。複数の態様において、濃縮炭素源は、約300g/Lの濃度である。
【0098】
複数の態様において、窒素源は、酵母抽出物、硫酸アンモニウム、グリシン、尿素、アラニン、アスパラギン、コーンスティープ、肝臓抽出物、ラブ・レムコ(lab lemco)、ペプトン、脱脂乳、豆乳、トリプトン、牛肉抽出物、トリシン、植物源ペプトン、エンドウ豆タンパク質、玄米タンパク質、大豆ペプトン、MSG、アスパラギン酸、アルギニン、ジャガイモ煮汁(potato liquor)およびこれらの組み合わせから選択される。ある特定の態様において、窒素源は酵母抽出物である。ある特定の態様において、窒素源は硫酸アンモニウムである。ある特定の態様において、窒素源は、酵母抽出物と硫酸アンモニウムの組み合わせである。
【0099】
複数の態様において、窒素源の作業濃度は、約1g/L~約15g/L、約1.5g/L~約12.5g/L、約2g/L~約10g/L、約2.5g/L~約8.5g/L、約3g/L~約8g/L、約3.5g/L~約7.5g/L、約4g/L~約7g/L、約4.5g/L~約6.5g/Lまたは約5g/L~約6g/Lの濃度である。複数の態様において、窒素源の作業濃度は、約10g/Lの濃度である。複数の態様において、窒素源の作業濃度は、約5g/Lの濃度である。複数の態様において、窒素源の作業濃度は、約2g/Lの濃度である。
【0100】
複数の態様において、濃縮窒素源は、約34g/L~約100g/L、約36g/L~約190g/L、約38g/L~約180g/L、約40g/L~約170g/L、約42g/L~約160g/L、約44g/L~約150g/L、約46g/L~約140g/L、約48g/L~約130g/L、約50g/L~約120g/L、約52g/L~約110g/L、約54g/L~約100g/L、約56g/L~約90g/L、約58g/L~約80g/L、または約60g/L~約70g/Lの濃度である。複数の態様において、濃縮窒素源は、約50g/L~約250g/L、約55g/L~約240g/L、約65g/L~約220g/L、約75g/L~約200g/L、約80g/L~約190g/L、約85g/L~約180g/L、約90g/L~約170g/L、約95g/L~約160g/L、約100g/L~約150g/L、約105g/L~約140g/L、約110g/L~約130g/Lまたは約115g/L~約120g/Lの濃度である。複数の態様において、濃縮窒素源は、約48g/Lの濃度である。複数の態様において、濃縮窒素源は、約120g/Lの濃度である。
【0101】
複数の態様において、塩は、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸一カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム七水和物、塩化カルシウム、塩化カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、リン酸二カリウムおよびこれらの組み合わせから選択される。ある特定の態様において、塩は、リン酸一カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムおよびこれらの組み合わせである。好ましい態様において、塩は硫酸カルシウムである。
【0102】
複数の態様において、塩源の作業濃度は、約0.01g/L~約0.05g/L、約0.01g/L~約5g/L、約0.1g/L~約4.5g/L、約1g/L~約4g/L、約1.5g/L~約3.5g/Lまたは約2g/L~約3g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の作業濃度は、約0.01g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の作業濃度は、約0.025g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の作業濃度は、約0.05g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の作業濃度は、約0.1g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の作業濃度は、約1g/Lの濃度である。
【0103】
複数の態様において、濃縮塩源は、約0.5g/L~約50g/L、約1g/L~約45g/L、約1.5g/L~約40g/L、約2g/L~約35g/L、約2.5g/L~約30g/L、約3g/L~約25g/L、約3.5g/L~約20g/L、約4g/L~約15g/L、約4.5g/L~約10g/L、または約5g/L~約8.5g/Lの濃度である。複数の態様において、濃縮塩源は、約1g/Lの濃度である。複数の態様において、濃縮塩源は、約10g/Lの濃度である。
【0104】
複数の態様において、培養培地は金属をさらに含む。金属は、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化コバルト、モリブデン酸ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、塩化銅、硫酸銅、七モリブデン酸アンモニウムおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0105】
複数の態様において、培養培地はビタミン混合物をさらに含む。ビタミン混合物は、以下のものの組み合わせを含有する:ビオチン(ビタミンB7)、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンKおよびこれらの組み合わせ。
【0106】
複数の態様において、濃縮増殖培地は、約300g/L~約500g/Lのグルコース、約150g/Lの酵母抽出物、約48g/L~約200g/Lの硫酸アンモニウム、約10g/L~約200g/Lの一塩基性リン酸カリウム、約10g/L~約250g/Lの硫酸マグネシウムおよび約1g/L~約2g/Lの硫酸カルシウムを含む。
【0107】
複数の態様において、新鮮増殖培地は、約10g/L~約20g/Lのグルコース、約2g/L~約5g/Lの酵母抽出物、約2g/L~約7g/Lの硫酸アンモニウム、約1g/L~約5g/Lの一塩基性リン酸カリウム、約1g/L~約5g/Lの硫酸マグネシウムおよび約0.1g/L~約0.5g/Lの硫酸カルシウムを含む。
【0108】
複数の態様において、わずかに濃縮された新鮮培地は、新鮮増殖培地の濃度と濃縮培地の濃度の間の範囲である。
【0109】
複数の態様において、培養培地のpHは、約2.5~約4である。
【0110】
培養培地(増殖培地としても知られる)は、本明細書に記載の細胞を増殖または培養するために必要とされる成分を含む培地である。フィード培地は、栄養素を補充するために培養物に添加される成分を含む培地である。フィード培地は、作業濃度である、または培養物の希釈を制限するために成分の濃縮されたレベルである。フィード培地は、栄養素を補充するために培養物に添加される成分を含む培地である。フィード培地は、作業濃度である、または培養物の希釈を制限するために成分の濃縮されたレベルである。使用済み培地は、細胞培養のために使用されたことがある培地、すなわち培養の開始時より低いレベルの成長成分をその中に有する培養培地である。
【0111】
追加の培地は、培養培地、フィード培地、再利用される培養培地、使用済み培地、補充された培地およびこれらの組み合わせであり得る。培養培地(増殖培地としても知られる)は、細胞を増殖または培養するために必要とされる成分を含む培地である。培養培地は、増殖培地としても知られ得る。フィード培地は、栄養素を補充するために培養物に添加される成分を含む培地である。フィード培地は、作業濃度である、または培養物の希釈を制限するために成分の濃縮されたレベルである。フィード培地は、栄養素を補充するために培養物に添加される成分を含む培地である。使用済み培地は、細胞培養のために使用されたことがある培地、すなわち培養の開始時より低いレベルの成長成分をその中に有する培養培地である。
【0112】
使用済み培地は、細胞を培養するために使用された後の培地中の炭水化物の含有量によっても決定される。例えば、使用済み培地は、約50、40、30、20、15、10、8、7、6、5、4、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1g/L未満である、総炭水化物、個々の炭水化物(例えば、グルコース)または個々の炭水化物成分の任意の組み合わせ(例えば、グルコースおよびマルトース)を含有することができる。使用済み培地中の炭水化物の減少は、培養または培養サイクルの開始時の炭水化物の出発量のパーセンテージとして表すことができる。一態様において、使用済み培地は、培養または培養のサイクルの開始時の量から約15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001%未満の総炭水化物を含む。炭水化物に加えて、カルボン酸は、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物によって利用される別の炭素である。有用なカルボン酸としては、クエン酸、シトラート、フマル酸、フマラート、リンゴ酸、マラート、ピルビン酸、ピルバート、コハク酸、スクシナート、酢酸、アセタート、乳酸およびラクタートが挙げられる。一態様において、使用済み培地、再利用される培養培地またはハイブリッド培養培地は、約20、10、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1g/L未満のカルボン酸を含む。
【0113】
再利用される培養培地は、別の継代、サイクルのために細胞を培養するために、または異なる培養物、ロットもしくは株由来の細胞を培養するために使用される使用済み培地である。再利用される培養培地は、再利用される培養培地を源培養培地から分離することによって得られ、源培養培地は誘導期、指数期または定常期である。再利用される培養培地は専ら使用済み培地であり得る、または再利用される培養培地は、培養培地(新鮮増殖培地)と混合され得、および/もしくは使用済み培地において枯渇している1つまたは複数の成分を補充され得る。再利用される培養培地は、再利用される培養培地を源培養培地から分離することによって得ることができ、源培養培地は誘導期、指数期または定常期である。
【0114】
ハイブリッド培養培地(本明細書ではハイブリッド培地または再利用ハイブリッド培地とも呼ばれる)は、ある量の再利用培養培地(例えば、新鮮培地と再利用培養培地の混合物)を含有する培養培地である。いくつかの態様において、本明細書に記載されている方法に従って、ハイブリッド培養培地が使用される。いくつかの態様において、ハイブリッド培養培地は、約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99 2%、99.3%、99.4%、99.5%、99 6%、99.7%、99 8%、99 9%、または99.99%の再利用培養培地を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド培養培地は、約10%~約75%の再利用培養培地を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド培養培地には、任意で炭素源が補充される。本発明の態様に従って使用するための適切な培地は、2019年6月28日に出願され、2020年1月2日に国際公開公報第2020/003243号として公開された同時係属中のPCT/IB2019/055524号にも見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物および/またはクロレラ属種微生物は、本発明の方法に従ってバイオマスを繁殖させるために液体培地中で培養される。本発明の方法において、微細藻類の種は、1つもしくは複数の炭素源、1つもしくは複数の窒素源および/または1つもしくは複数の塩を含有する培地中で従属栄養的に増殖される。本明細書に記載されている培地成分(例えば、炭素源、窒素源および/または(1つまたは複数の)塩)の濃度または量は、このような成分の総濃度または量について、ならびに例えば炭素、窒素および/または(1つまたは複数の)塩の1つまたは複数の個々の源の濃度または量について想定される。例えば、以下に記載されるように、約0.0005g/L~約50g/Lの培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給され得る。具体的には、このような濃度には、培地中の総炭素源濃度のみならず、培地中の1つまたは複数の個々の炭素源の濃度(例えば、1つまたは複数の有機酸の濃度)が含まれる。
【0116】
複数の態様において、第1の培養培地、第2の培養培地および第3の培養培地の1つまたは複数の炭素源は、それぞれ、他とは独立して、油、糖、アルコール、カルボン酸、ジャガイモ煮汁、フェルラ酸およびこれらの組み合わせから選択される。複数の態様において、油は、大豆、菜種、キャノーラ、パーム、パーム核、ココナツ、トウモロコシ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、クフェア、落花生、ナガミノアマナズナ、カラシナ種子、カシューナッツ、オート麦、ルピナス、ケナフ、キンセンカ、ヘンプ、コーヒー、亜麻仁、ヘーゼルナッツ、ユーフォルビア、カボチャ種子、コリアンダー、ツバキ、ゴマ、ベニバナ、イネ、アブラギリ、カカオ、コプラ、ケシ、トウゴマの実、ピーカン、ホホバ、ヤトロファ、マカダミア、ブラジルナッツまたはアボガドおよびこれらの組み合わせに由来する油である。一態様において、油はキャノーラ油である。糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、ハチミツ、コーンシロップおよびこれらの組み合わせから選択され得る。アルコールは、エタノール、メタノール、イソプロパノールおよびこれらの組み合わせから選択され得る。ある特定の態様において、炭素源はグルコースである。カルボン酸は、クエン酸、シトラート、フマル酸、フマラート、リンゴ酸、マラート、ピルビン酸、ピルバート、コハク酸、スクシナート、酢酸、アセタート、乳酸、ラクタートおよびこれらの組み合わせから選択され得る。一態様において、第1の培養培地、第2の培養培地および第3の培養培地の1つまたは複数の炭素源は、それぞれ、他とは独立して、グルコース、デキストロース、フルクトース、糖蜜、グリセロールまたはこれらの組み合わせから選択される。
【0117】
複数の態様において、第1の培養培地、第2の培養培地および第3の培養培地の1つまたは複数の窒素源は、それぞれ、他とは独立して、酵母抽出物、硫酸アンモニウム、グリシン、尿素、アラニン、アスパラギン、コーンスティープ、肝臓抽出物、ラブ・レムコ、ペプトン、脱脂乳、豆乳、トリプトン、牛肉抽出物、トリシン、植物源ペプトン、エンドウ豆タンパク質、玄米タンパク質、大豆ペプトン、MSG、アスパラギン酸、アルギニン、ジャガイモ煮汁およびこれらの組み合わせから選択される。ある特定の態様において、窒素源は酵母抽出物である。ある特定の態様において、窒素源は硫酸アンモニウムである。ある特定の態様において、窒素源は、酵母抽出物と硫酸アンモニウムの組み合わせである。一態様において、第1の培養培地、第2の培養培地および第3の培養培地の1つまたは複数の窒素源は、それぞれ、他とは独立して、酵母抽出物、コーンスティープリカー、硫酸アンモニウムおよびグルタミン酸一ナトリウム(MSG)から選択される。
【0118】
複数の態様において、第1の培養培地、第2の培養培地および第3の培養培地の1つまたは複数の塩は、それぞれ、他とは独立して、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸一カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム七水和物、塩化カルシウム、塩化カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、リン酸二カリウムおよびこれらの組み合わせから選択される。ある特定の態様において、塩は、リン酸一カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムおよびこれらの組み合わせである。一態様において、第1の培養培地、第2の培養培地および第3の培養培地の1つまたは複数の塩は、それぞれ、他とは独立して、リン酸一カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムまたはこれらの組み合わせから選択される。
【0119】
複数の態様において、培地中の炭素源の濃度は、約0.0005g/L~約50g/L、約0.0005g/L~約45g/L、約0.0005g/L~約40g/L、約0.0005g/L~約35g/L、約0.0005g/L~約20g/L、約0.0005g/L~約15g/L、約0.0005g/L~約10g/L、約0.0005g/L~約8g/L、約0.0005g/L~約5g/L、約0.0005g/L~約1g/L、約0.0005g/L~約0.5g/L、約0.0005g/L~約0.05g/L、約0.0005g/L~約0.005g/L、0.005g/L~約50g/L、約0.005g/L~約45g/L、約0.005g/L~約40g/L、約0.005g/L~約35g/L、約0.005g/L~約20g/L、約0.005g/L~約15g/L、約0.005g/L~約10g/L、約0.005g/L~約8g/L、約0.005g/L~約5g/L、約0.005g/L~約1g/L、または約0.005g/L~約0.5g/L、0.05g/L~約50g/L、約0.05g/L~約45g/L、約0.05g/L~約40g/L、約0.05g/L~約35g/L、約0.05g/L~約20g/L、約0.05g/L~約15g/L、約0.05g/L~約10g/L、約0.05g/L~約8g/L、または約0.05g/L~約5g/Lである。複数の態様において、培地中の炭素源の濃度は、約0.05g/L~約50g/L、約0.05g/L~約45g/L、約0.05g/L~約40g/L、約0.05g/L~約35g/L、約0.05g/L~約20g/L、約0.05g/L~約15g/L、約0.05g/L~約10g/L、約0.05g/L~約8g/L、約0.05g/L~約5g/L、約0.05g/L~約1g/L、約0.05g/L~約0.5g/L、約1g/L~約50g/L、約1g/L~約45g/L、約1g/L~約40g/L、約1g/L~約35g/L、約1g/L~約20g/L、約1g/L~約15g/L、約1g/L~約10g/L、約1g/L~約8g/Lまたは約1g/L~約5g/Lである。複数の態様において、培地中の炭素源の濃度は、約5g/L~約50g/L、約10g/L~約45g/L、約15g/L~約40g/L、約20g/L~約35g/L、約5g/L~約20g/L、約5g/L~約15g/L、約5g/L~約10g/L。複数の態様において、炭素源の濃度は、約15g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約10g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約8g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約5g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約4g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約3g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約2g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約1g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約0.5g/Lの濃度である。複数の態様において、炭素源の濃度は、約0.05g/Lの濃度である。
【0120】
培養過程
一般に、給餌細胞培養は、バッチ、フェドバッチ、および連続培養という3つの培養スタイルに分類することができる。バッチ培養では、大量の栄養素(培地)が細胞の集団に添加される。次いで、培地中のインプットが枯渇し、細胞の所望の濃度に達するまで、および/または所望の生成物が産生されるまで、細胞を成長させる。この時点で、細胞を採取し、この過程を繰り返すことができる。フェドバッチ培養では、培地は一定速度で添加されるか、または細胞集団を維持するために必要に応じて成分が添加される。最大体積に達するか、または生成物形成に達したら、細胞の大部分を採取することができ、次いで次のサイクルを開始するために残りの細胞を使用することができる。フェドバッチは、発酵槽が満杯またはほぼ満杯になるまで継続することができる。満杯になったら、任意で目標密度になったら、フェドバッチ培養物の連続培養または半連続培養を開始することができ、その目標は、満杯の目標密度培養物を維持することである。あるいは、培養物の全部または大部分を採取することができ、任意で、別の培養を開始するために残りの培養物を使用することができる。連続培養中に、測定を行うためにおよび/または培養成分を採取するために一定体積の試料が一定の時間間隔で取り出され、等体積の新鮮培地が同時にまたは直ちにまたはその後すぐに(例えば、その後約1、約2、約3、約4、約5、約10、約15、約30、または約60分以内に)培養物に添加され、それによって栄養素濃度を即時に高め、細胞濃度を希釈する。連続培養では、培地への添加および培地からの取り出しが長期間にわたって行われ得る条件下で、細胞が培地中で培養される。したがって、栄養素、成長因子および空間は使い果たされない。連続培養は、バッチ発酵、フェドバッチ発酵またはこれらの組み合わせの後に行うことができ、あるいは直接接種することができる。
【0121】
一態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を従属栄養的に培養する方法は、バッチ、フェドバッチ、または連続である。別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を従属栄養的に培養する方法は、バッチである。別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を従属栄養的に培養する方法はフェドバッチである。別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を従属栄養的に培養する方法は連続である。
【0122】
一態様において、本方法は、光を実質的に含まない環境において微生物を従属栄養的に維持することを含む。別の態様において、本方法は、光を完全に含まない環境において微生物を従属栄養的に維持することを含む。
【0123】
培養物中の微生物の成長は、異なる段階:誘導期、対数(log)(対数(logarithmic))期または指数期、定常期および死滅期を経る。誘導期の間、微生物は成熟し、代謝的に活性であるが、活発に分裂または再生していない。対数期の間、微生物は分裂しており、倍加など、数が増加する。成長が制限されなければ、倍加は一定の速度で継続するので、細胞の数と集団増加の速度の両方が各連続期間とともに倍増する。このタイプの指数関数的成長の場合、細胞数の自然対数を時間に対してプロットすると直線が生成される。この線の傾きは、微生物の比成長速度であり、単位時間当たり細胞当たりの分裂数の尺度である。この線の傾きまたは微生物の比成長速度は、培養物の成長期に応じて0.01h-1~0.04h-1まで変化する。この成長の実際の速度(すなわち、線の傾き)は、細胞分裂事象の頻度および両方の娘細胞が生存する確率に影響を及ぼす成長条件に依存する。培地が栄養素を使い果たし、老廃物が濃縮されると、指数関数的な成長は継続できない。定常期の間、成長速度および死滅速度は等しいかまたは類似しており、これは成長曲線の水平な直線部分として示される。理論に縛られることを望むものではないが、これは、必須栄養素の枯渇および/または有機酸などの阻害性生成物の形成などの成長制限因子に起因し得る。死滅期では、例えば、栄養素の不足、微生物の耐性帯域を上回るもしくは下回るpHまたは他の有害な条件のために微生物が死滅する。
【0124】
微生物培養物が定常期に達すると、培養物中の微生物の濃度は飽和に達する。飽和は、光学密度、湿潤細胞重量、乾燥細胞重量、細胞数および/または時間を含む多数の測定によって決定される。
【0125】
本明細書に記載されている態様において、培養物または微生物は、0.001~0.1h-1である最大比成長速度(μmax、1/h)を有する。本明細書に記載されている態様において、培養物または微生物は、0.001~0.09、0.001~0.08、0.001~0.07、0.001~0.06、0.001~0.05、0.001~0.04、0.001~0.03、0.001~0.02、0.001~0.01、0.002~0.09、0.002~0.08、0.002~0.07、0.002~0.06、0.002~0.05、0.002~0.04、0.002~0.03、0.002~0.02、0.002~0.01h-1、0.003~0.09、0.003~0.08、0.003~0.07、0.003~0.06、0.003~0.05、0.003~0.04、0.003~0.03、0.003~0.02、0.003~0.01、0.004~0.09、0.004~0.08、0.004~0.07、0.004~0.06、0.004~0.05、0.004~0.04、0.004~0.03、0.004~0.02、0.004~0.01、0.005~0.09、0.005~0.08、0.005~0.07、0.005~0.06、0.005~0.05、0.005~0.04、0.005~0.03、0.005~0.02、0.005~0.0、0.006~0.09、0.006~0.08、0.006~0.07、0.006~0.06、0.006~0.05、0.006~0.04、0.006~0.03、0.006~0.02または0.006~0.01である(h-1)最大比成長速度(μmax、1/h)を有する。いくつかの態様において、培養物または微生物は、約0.004~0.062h-1である最大比成長速度(μmax、1/h)を有する。
【0126】
本明細書に記載されている態様において、給餌は、培養物中の細胞の消費速度に基づく。消費速度は、培地中の炭素源またはグルコースの量の尺度であり、細胞成長の減速をもたらす。消費データは、後期サイクル細胞はより少ない糖を使用することを示し、これらの細胞がより代謝的に活性でないことを示す。指数成長期の細胞の数を最大化するために、細胞成長と同じ速度で細胞が採取され、指数成長期を無期限に延長することを可能にする。
【0127】
連続培養では、培養物が容器から取り出される。培養物は、誘導期、指数期または定常期に取り出すことができる。一態様において、培養物は、誘導期、指数期または定常期に容器から取り出される。別の態様において、培養物は、誘導期に容器から取り出される。別の態様において、培養物は、指数期に容器から取り出される。別の態様において、培養物は、定常期に容器から取り出される。
【0128】
連続培養では、培養物は、時間間隔に基づいて容器から取り出すこともできる。一態様において、培養物は、培養の開始から、または培養のサイクルから、または以前の培地添加から、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60分、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60分で取り出される。
【0129】
連続培養では、培養物が容器から取り出された直後またはすぐ後に培地が添加される。一態様において、培地は、培養物の取り出しから、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、60、120、もしくは180分、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、60、120、もしくは180分で添加される。
【0130】
連続培養において、サイクルは、タンクまたはバイオリアクタの入れ替わりとして定義される。タンクまたはバイオリアクタ内では、成長に関する様々なパラメータが監視および制御される。これらには、温度、pH、酸素化レベルおよび撹拌が含まれる。バイオリアクタまたはタンクは、例えば、3L~20,000Lとすることができる。例えば、バイオリアクタまたはタンクは、3L~8L、36L、100Lおよび最大20,000Lであり得る。100,000Lまたはそれより大きいなど、より大きなタンクも可能である。一態様において、タンクは、少なくとも100L、1,000L、10,000L、または100,000Lである。別の態様において、タンクは、最大10,000L、100,000L、200,000L、500,000Lまたは1,000,000Lである。入れ替わりは、第1の培地などの1つの液体の容器を空にすること、および第2の培地などの第2の液体によって容器を充填することと定義される。その後空にして、充填することはそれぞれ、別の入れ替わりに相当する。例えば、2回の入れ替わり、2回入れ替わること、または2回入れ替わるとは、タンクが、2回、空にされて充填されたことを示す。連続培養の間には、源培地の実質的に等しい取り出しと添加が存在する。連続培養における1回の入れ替わりは、容器の体積が取り出され、容器内に補充された場合である。一態様において、本方法は、タンクまたはバイオリアクタ内での連続培養である。別の態様において、本方法は、最大10,000L、100,000L、200,000L、500,000L、または1,000,000Lのタンク内での連続培養である。別の態様において、本方法は、最大3L、5L、8L、10L、20L、30L、35L、36L、40L、または50Lのバイオリアクタ内での連続培養である。別の態様において、培地は、タンクまたはバイオリアクタ内で1日に1、2、3、または4回入れ替わる。別の態様において、培地は、75日間で最大300回入れ替わる。別の態様において、培地は、75日間で少なくとも75、150、225、または300回入れ替わる。別の態様において、本方法は、タンクまたはバイオリアクタ中での連続培養であり、最長約75日間、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を成長させる。別の態様において、本方法は、タンクまたはバイオリアクタ中での連続培養であり、最長約75日間、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を成長させ、培地は300回入れ替わる。特定の態様において、本方法は、タンク中での連続培養であり、最長約75日間、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を成長させ、培地は300回入れ替わる。
【0131】
フェドバッチおよび連続培養では、培地は培養物に添加される。培地は、誘導期、指数期および/または定常期に添加することができる。一態様において、培地は、誘導期、指数期または定常期に培養物に添加される。別の態様において、培地は誘導期に培養物に添加される。別の態様において、培地は指数期に培養物に添加される。別の態様において、培地は定常期に培養物に添加される。培養物に添加される培地の適切な成分は、本明細書において以下に詳細に記載される。
【0132】
フェドバッチおよび連続培養では、時間間隔に基づいて培地を培養物に添加することもできる。一態様において、培地は、培養もしくは培養のサイクルの開始からまたは以前の培地取り出しから、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60分、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60分で添加される。別の態様において、培地は、培養もしくは培養のサイクルの開始から、または以前の培地取り出しから、約10分、15分、30分、45分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、もしくは8時間、または多くとも10分、15分、30分、45分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、もしくは8時間で添加される。別の態様において、培地は、培養物が培養によって取り出されるのと概ね同じ速度で添加される。
【0133】
以下の実施例で論じられているように、微細藻類(例えば、ユーグレナ)のフェドバッチおよび連続培養中におけるカルボン酸(本明細書では有機酸とも呼ばれる)の補充が実証される。TCA回路中間体のこの補充(アナプレロティック補充とも呼ばれる)は、微細藻類培養の驚くべき著しく増加した生産性をもたらす。炭素源としての(1つまたは複数の)有機酸の使用は、増加した変換効率および増加した正味バイオマスをもたらし、微細藻類(例えば、ユーグレナ)におけるアミノ酸、パラミロン、ワックスエステル、抗酸化剤および/またはビタミンレベルの増加した産生をもたらすことができる。
【0134】
したがって、微細藻類(例えば、ユーグレナ)の培養物に少なくとも1つの有機酸を補充することによって、微細藻類(例えば、ユーグレナ)もしくはその培養物の、または微細藻類(例えば、ユーグレナ)もしくはその培養物による、変換効率、正味バイオマス、アミノ酸の産生、パラミロンの産生、ワックスエステルの産生、抗酸化剤の産生およびビタミンの産生の1つまたは複数を増加させる方法も包含される。
【0135】
本明細書で使用される「変換効率」という用語は、使用される源培地中の微生物によって消費される溶質の量によって生成されるバイオマスのパーセンテージを指す。一定量の培地成分でより多くのバイオマスが生成されると、変換効率はより高い。一定量の培地成分でより少ないバイオマスが生成されると、変換効率はより低い。したがって、より高い「変換効率」は、バイオマスへの溶質のより多い変換を表す。一態様において、培地、任意でハイブリッド培養培地、再利用される培養培地または補充された培地中の細胞の変換効率は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(重量バイオマス/重量溶質)である。本開示のいくつかの態様において、変換効率は、約15~約75%、約20~約75%、約25~約75%、約30~約75%、約35~約75%、約40~約75%、約45~約75%、約50~約75%、約55~約75%、約60~約75%、約70~約75%、約25~約75%である。いくつかの態様において、変換効率は、約30%~約60%である。
【0136】
上述のように、フェドバッチ培養および連続培養の間に、栄養素を補充するために、培地は培養物に添加される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約0.0005g/L~約50g/L、約0.0005g/L~約45g/L、約0.0005g/L~約40g/L、約0.0005g/L~約35g/L、約0.0005g/L~約20g/L、約0.0005g/L~約15g/L、約0.0005g/L~約10g/L、約0.0005g/L~約8g/L、約0.0005g/L~約5g/L、約0.0005g/L~約1g/L、約0.0005g/L~約0.5g/L、約0.0005g/L~約0.05g/Lまたは約0.0005g/L~約0.005g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約0.005g/L~約50g/L、約0.005g/L~約45g/L、約0.005g/L~約40g/L、約0.005g/L~約35g/L、約0.005g/L~約20g/L、約0.005g/L~約15g/L、約0.005g/L~約10g/L、約0.005g/L~約8g/L、約0.005g/L~約5g/L、約0.005g/L~約1g/Lまたは約0.005g/L~約0.5g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約0.05g/L~約50g/L、約0.05g/L~約45g/L、約0.05g/L~約40g/L、約0.05g/L~約35g/L、約0.05g/L~約20g/L、約0.05g/L~約15g/L、約0.05g/L~約10g/L、約0.05g/L~約8g/L、約0.05g/L~約5g/L、約0.05g/L~約1g/Lまたは約0.05g/L~約0.5g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約1g/L~約50g/L、約1g/L~約45g/L、約1g/L~約40g/L、約1g/L~約35g/L、約1g/L~約20g/L、約1g/L~約15g/L、約1g/L~約10g/L、約1g/L~約8g/L、約1g/L~約5g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約5g/L~約50g/L、約10g/L~約45g/L、約15g/L~約40g/L、約20g/L~約35g/L、約5g/L~約20g/L、約5g/L~約15g/L、約5g/L~約10g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約15g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約10g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約8g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約5g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、約4g/Lの培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約3g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約2g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約1g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約0.5g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、約0.05g/Lの培養培地またはフィード培地中の炭素源の濃度を与えるために、炭素源が培養物に供給される。適切な炭素源は上に記載されており、任意の組み合わせであり得る。いくつかの態様において、本開示の態様の方法の培養物は、30~75mg/glc/gDCW/h、任意で40~55mg/glc/gDCW/hの比グルコース消費速度を有する。
【0137】
複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、添加される(または補充される)炭素源としては、1つまたは複数の有機酸(例えば、クエン酸、シトラート、フマル酸、フマラート、リンゴ酸、マラート、ピルビン酸、ピルバート、コハク酸、スクシナート、酢酸、アセタート、乳酸およびラクタート)が挙げられる。複数の態様において、フェドバッチ培養および連続培養では、添加される炭素源は、1つまたは複数の有機酸からなる。本明細書に記載されている有機酸は、プロトン化された形態または脱プロトン化された形態のいずれかであり得る。
【0138】
複数の態様において、培地中の窒素源の濃度は、約1g/L~約15g/L、約1.5g/L~約12.5g/L、約2g/L~約10g/L、約2.5g/L~約8.5g/L、約3g/L~約8g/L、約3.5g/L~約7.5g/L、約4g/L~約7g/L、約4.5g/L~約6.5g/Lまたは約5g/L~約6g/Lである。複数の態様において、窒素源の濃度は、約10g/Lの濃度である。複数の態様において、窒素源の濃度は、約5g/Lの濃度である。複数の態様において、窒素源の濃度は、約2g/Lの濃度である。
【0139】
複数の態様において、培地中の塩源の濃度は、約0.01g/l~約0.05g/L、0.01g/l~約0.1g/L、約0.01g/L~約5g/L、約0.1g/L~約4.5g/L、約1g/L~約4g/L、約1.5g/L~約3.5g/Lまたは約2g/L~約3g/Lである。複数の態様において、塩源の濃度は、約0.01g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の濃度は、約0.025g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の濃度は、約0.05g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の濃度は、約0.1g/Lの濃度である。複数の態様において、塩源の濃度は、約1g/Lの濃度である。
【0140】
本発明の態様は、1つまたは複数の発酵性炭素源と、1つまたは複数の非発酵性炭素源と、1つまたは複数の窒素源の組み合わせと、塩とミネラルの組み合わせと、ビタミンの組み合わせとを含有する培養培地を利用して、ユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する方法を対象とする。本発明の態様は、炭素源、窒素源および塩の組み合わせを含有する培養培地を利用してユーグレナ・グラシリスを従属栄養的に培養する方法を対象とする。記載された培養培地は、好気性代謝および嫌気性代謝の両方を含むユーグレナ・グラシリスの代謝能のすべてを利用する。油、糖、アルコール、有機窒素および無機窒素源の組み合わせは、インプットからアウトプットへのより高い変換および微生物のより速い成長をもたらす。
【0141】
複数の態様において、第1の培養培地、第2の培養培地および/または第3の培養培地の任意の1つまたは複数は、他とは独立して、微量金属混合物およびビタミン混合物の1つまたは複数をさらに含む。
【0142】
複数の態様において、第1の培養培地は、微量金属混合物およびビタミン混合物の1つまたは複数をさらに含む。
【0143】
複数の態様において、第2の培養培地は、微量金属混合物およびビタミン混合物の1つまたは複数をさらに含む。
【0144】
複数の態様において、第3の培養培地は、微量金属混合物およびビタミン混合物の1つまたは複数をさらに含む。
【0145】
複数の態様において、微量金属混合物は、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化コバルト、モリブデン酸ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、塩化銅、硫酸銅、七モリブデン酸アンモニウムおよびこれらの組み合わせの1つまたは複数を含む。
【0146】
複数の態様において、培養培地はビタミン混合物をさらに含む。ビタミン混合物は、ビオチン(ビタミンB7)、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンKおよびこれらの組み合わせを含有する。
【0147】
複数の態様において、ビタミン混合物は、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンB6およびビタミンB7の1つまたは複数を含む。
【0148】
当業者は、発酵の1つの段階で利用される培養培地が、発酵の他の段階で利用される培養培地と同一であり得ること、または同一でないことがあり得ることを認識するであろう。したがって、例えば、第1の培養培地が発酵中に使用され、第2の培養培地が該発酵中に使用される場合、第1の培養培地と第2の培養培地は同じもしくは実質的に同じ配合物を有し得る、または第1の培養培地と第2の培養培地は異なる配合物を有し得る。同様に、本発明の方法の単一のステップ中に培養培地の複数の添加が行われる場合、各添加は、同じもしくは実質的に同じ培養培地または異なる培養培地のものであり得る。本明細書における培養培地の記述は、本発明の方法の任意のステップまたは段階の間に使用される任意の培養培地に適用される。
【0149】
培地のpHは、培養中の微生物の成長に影響を及ぼす。当業者は、硝酸、塩酸、硫酸およびクエン酸などの有機酸、または水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸および重炭酸ナトリウムなどの塩基で増殖培地のpHを容易に改変することができる。培地のpHは、約2~約8、約2.5~約5、約2.5~約4、約2.5~約3.5である。一態様において、培養培地は、約2~約8、任意で約2.5~約5、任意で約2.5~約4、任意で約2~約4のpHに維持される。
【0150】
バイオリアクタタンクシステム
開示されている態様は、能率化された(streamlined)効率的な発酵タンクを利用する、生産規模で微生物を成長させるためのバイオリアクタタンクシステム設計をさらに含む。生産材料の効率的な入れ替わりおよびすべてのインプットの代謝を促進する好気性/嫌気性ゾーンの作製を可能にするために、タンク設計は、エアノズル、スパージングストーン(スパージャとも呼ばれ、いくつかのスパージングストーンはマイクロスパージャと呼ばれる。)およびタンクアスペクト比のカスタマイズを含むがこれらに限定されない特徴を含む。いくつかの態様においては、タンク内側の好気性領域と、内容物を混合するのに十分な揚力(lift)とを作り出すために、スパージングストーンとエアノズルの両方が使用される。ノズルとスパージャの両方が使用されると、他の材料は損傷を受けやすいが、ユーグレナの生理は、ノズルシステムのより高い圧力を生存することができるようなものである。しかしながら、タンク設計は多くの他の材料にとって有益であり得るので、バイオリアクタタンクの態様はユーグレナの培養に限定されるものではないことを理解されたい。一般に、スパージャとノズルの両方を使用すると、発酵過程が改善され、より大きなアウトプットを生み出すのに役立つことが明らかとなった。
【0151】
図27は、複数のタンク200を含むバイオリアクタシステム100の概略図である。システム100は、藻類などのアウトプット微生物の形態でバイオマスを生産するように構成される。例えば、システム100は、ユーグレナを大規模に生産するように構成される。バイオリアクタシステム100は、例えば、培養培地、微生物および成分をバイオリアクタタンク200および/またはタンク群の各々に個別に提供するように構成された給餌システム250を備え得る。バイオリアクタシステム100は、バイオリアクタシステム100内のパラメータの監視を提供し、フィードバック制御を提供することなどによってバイオリアクタシステム100の1つまたは複数の機構を独立して制御するように構成された監視および制御システム300をさらに含む。
【0152】
例示的な態様において、生産システムは、互いに接続された複数のタンクを含み得る。例えば、バイオリアクタシステム100は、パイロット発酵タンク230および生産発酵タンク240を含み得る。パイロット発酵タンク230は、例えば、バイオマスの成長を開始するのに役立つ1つまたは複数の比較的小さいタンクを含み得る。パイロット発酵タンク230は、例えば、100Lタンク、250Lタンクおよび500Lタンクを含む3つのタンクの群を含み得る。給餌システム250は、炭素、塩および窒素などの材料をパイロット発酵タンク230に供給するフィードラインを含み得る。ライン252は、パイロットバイオリアクタ領域230から生産バイオリアクタ240に接種材料培養物を移送するために使用される。
【0153】
生産発酵タンク240は、複数の生産フィードライン254を介して給餌システム250に互いに直列および並列に接続された複数のタンク200のグループ/群242を含み得る。生産発酵タンク240は、パイロット発酵タンク230よりはるかに大きいサイズであり得る。例えば、生産発酵タンク240は、15,000L~25,000Lのサイズを有し得る。例えば、発酵タンク240は20,000Lのタンクであり得る。他の態様において、1つまたは複数の発酵タンク240は、50,000L、200,000L、500,000Lまたは1,000,000Lのタンクなどのより大きなサイズを有し得る。
【0154】
パイロット発酵タンク230は、大規模な成長およびアウトプットのために生産発酵タンク240に移送する前に、微生物の成長を実験室規模から中間規模にするために使用され得る。より大きな生産タンク中での成長サイクルの後、培養物は、例えば、サージタンクおよび細胞分離のための大型分離板型遠心分離機を含み得る生産後領域400に移送され得る。回収された細胞は、二次好気性もしくは嫌気性発酵段階でインキュベートされ得る、またはタンパク質もしくはβグルカン回収のために破壊され得る。いくつかの態様において、システム100は、タンク230と240の間に、サイズのより小さな中間生産タンク(図示せず)も含み得る。タンク230、240は、低圧または高圧タンクとして構成され得る。換言すれば、タンク230、240の動作圧力は、所望の成長パラメータに基づいて選択され得る。
【0155】
図28は、タンク200の1つのバイオリアクタの例示的な態様の概略図である。いくつかの態様において、タンク200は、バブルカラムバイオリアクタと考えられ得る。タンク200は、内部体積204を有するタンク本体202を含む。タンク200は、ユーグレナなどの微生物を増殖させるための培養培地および成分を受けるように構成される。タンク200は、タンク200内に気体を導入するように構成された空気供給システム210をさらに含む。気体は空気として記載されているが、空気供給システム210の構成要素(例えば、酸素、窒素、ヘリウムなど)を介して他の気体が導入され得ることを理解されたい。空気供給システム210は、内部体積204内で培養培地と微生物を混合し得る。
【0156】
例示的な態様において、空気供給システム210は、低圧供給装置212と高圧供給装置214の両方を含む。低圧供給装置212は、スパージングストーン216などの気泡発生装置であり得る。高圧供給装置214は、気体の流れをタンク200の内部体積204中に導くように構成されたスプレーノズル218であり得る。
【0157】
いくつかの態様において、タンク本体202は、微細藻類の最適な成長のために経済的に設計され得る。バブルカラムバイオリアクタの典型的なアスペクト比は4~6であるが、タンク200は、ユーグレナなどの微生物の成長のために約3のアスペクト比を含み得る。このアスペクト比は、酸素移動を最大化するためのより高いアスペクト比と、背の高いバブルカラムバイオリアクタを設置および動作させることによって発生するコストとの間のバランスである。経済的利益には、バイオリアクタを調達するための、およびバイオリアクタを収容する製造領域を構築するためのより低い資本コストが含まれる。より背の高いバイオリアクタは、背の高い建造物および一部の事例において可能性のある掘削穴を建築するために、より多くの建設資材(鉄骨梁、配管、断熱材など)を必要とする。閉鎖されたタンク内で微細藻類を増殖させる主な利点は、外部のレースポンドなどの開放系バイオリアクタとは異なり、望ましくない細菌、酵母および/または他の真菌による藻類の培養物の汚染のリスクがより低いことである。さらに、培養物の成長は、季節的変動による温度の乱れによって影響を受けない。最後だが重要なこととして、より背の低いバイオリアクタは、より背の高いバイオリアクタと比較して、洗浄すること、および予防的に保守管理することがより容易である。
【0158】
スパージングストーン216およびスプレーノズル218を含む空気供給システム210は、内部体積214の内部の材料を酸素化する酸素(または他の気体)気泡を生成するように構成された曝気システムであり得る。曝気システムは、例えば、複数のスパージングストーン216を含み得る。例示的な態様において、スパージングストーン216は、例えば20~30ミクロンの小さな孔径を有する。これらは、焼結ステンレス鋼から形成されたマイクロスパージャと考えることができる。より小さな孔径は、より大きな気泡表面積を提供し得、タンク内でのより大きな酸素移動を促進することが明らかとなった。タンク200は、
図29に示されるように、スパージャグリッド内に配置され得る複数のマイクロスパージャを含み得る。スパージャ216の第1の層は、スパージャ216Aの第2の層とは異なる方向に延び得る。例えば、いくつかのスパージャ216は、他のスパージャ216Aに対して垂直であり得る。スパージャ216は、スパージャ216Aとは異なる孔径を含み得る。
【0159】
スパージングストーン216およびスプレーノズル218を含む空気供給システム210は、タンク200内の材料を混合するように構成された撹拌システムおよびタンク200の内部の材料に酸素を提供するように構成された曝気システムであり得る。バイオリアクタにおけるバルク混合は、典型的には、羽根車、羽根車箱(gearbox)および駆動装置(モータ)からなる機械的撹拌器によって生成される。開示された態様によれば、バルク混合は、(例えば、細胞の脆弱性を理由に)機械的撹拌の代わりに、例示的な態様におけるスプレーノズル218を通じた空気撹拌によって提供される。しかしながら、いくつかの態様においては、混合をさらに促進するために、ある程度の機械的撹拌がシステム100において実施され得る。スプレーノズル218は、例えば、方向性バルク混合流を誘導するための生成された大きな方向空気ジェットによって、容器の全体的な乱流バルク混合を与えるベンチュリノズルであり得る。空気ジェットは、微生物細胞を損傷しない剪断速度を生成するように設計される。空気ジェット混合は、再循環ループを有する機械的に撹拌されるタンクまたは容器と比べて低いエネルギー投入量を必要とし得る。例示的な態様において、スプレーノズル218はスパージングストーン216の上方にあり、約45度の角度で上方を向いている。一態様において、ノズル218はスパージングストーン216の2フィート上にある。
【0160】
いくつかの態様において、スパージングストーン216は、タンク200の内部の混合にも寄与し得る。例えば、スパージングストーン216は、他のスパージャより大きな孔径を有するいくつかのスパージャを含み得る。より大きな孔径のスパージャは混合に寄与し得、一方、より小さな孔径のスパージャは高い酸素速度を提供することに注力し得る。例示的な態様において、スパージャ216の最上層は第1の方向に延び、約5~10ミクロンの孔径を含み、スパージャの最下層は第2の直角な方向に延び、約20~70ミクロンのより大きな孔径を含む。
【0161】
いくつかの態様においては、スプレーノズル218は、気体の流れの方向を変えるために旋回するように構成され得る。このようにして、混合をより正確に制御することができる。各スプレーノズル218は、約0.1L/分の速度で気体の流れを供給するように構成され得る。各スプレーノズル218は、タンク200の底部付近、好ましくはスパージャ216の上方に配置され得る。
【0162】
給餌システム250は、タンク200の内部体積204に材料を提供する。給餌システム250は、例えば、タンク200内の微生物(例えば、ユーグレナ)の成長のための1つまたは複数の成分を提供する複数の供給管210を含み得る。例えば、給餌システム250は、例えば、給水設備、藻類接種システム、(1つまたは複数の)無菌食餌成分システムおよび/または再利用培地システムを含み得る。いくつかの態様において、給餌システムの構成要素は独立して制御可能であり得る。いくつかの態様において、給餌システム250は、1つまたは複数のタンク200に供給する、1つまたは複数の、独立して制御可能なマニホールドを含み得る。いくつかの態様において、タンク200の各グループ242は、制御可能なマニホールドおよびフィードラインを含み得る。他の態様において、各タンク200(例えば、各タンク230および/または240)は、独立して制御可能であり得る関連するマニホールドを含み得る。
【0163】
給餌システム250は、様々な供給戦略の同時実施を可能にし、流体移送のボトルネックを低減する。濃縮培地成分の操作および混合は、ユーグレナ培養物に供給され、1つの標的生成物の生産を他の生成物より改善するために調整された組成を有する濃縮培地の流れの生成を可能にする。給餌システム250は、タンクより少ないフィードラインの実装および連続的採取システムへの不連続パルス供給をサポートする。これは、資本コストを削減しながら流体移送の柔軟性を高める複座弁バンクの設計および形状によって可能である。
【0164】
タンク200は、少なくともいくつかの態様においては、監視および制御システム300をさらに含む。監視システム300は、例えば、フィードバックコントローラ310およびインプットコントローラ320を含み得る。監視システム300は、タンク200の性能パラメータを示す信号を生成するように構成された1つまたは複数のセンサ330も含み得る。パラメータは、例えば、pH、溶存酸素(DO)、細胞密度、ルーメンレベル、グルコースレベル、温度、バイオリアクタ内の培養体積、窒素レベル(例えば、アンモニウム、グルタマート)、培地組成、バイオリアクタ排出ガス中の残留分子状酸素、バイオリアクタ排出ガス中の二酸化炭素レベルおよびこれらの組み合わせを含み得る。センサ330は、フィードバックコントローラ310に信号を提供し得る。フィードバックコントローラ310は、アウトプットをユーザおよび/またはインプットコントローラ320に提供し得る。インプットコントローラ320は、タンク200または給餌システム250のインプットパラメータを調整するための手動のまたは自動化された指示を受信し得る。例えば、インプットコントローラ320は、タンク200内への材料のフィード速度を調整し得る。別の例では、インプットコントローラ320は、空気圧、ノズル218の角度または別の給気パラメータを調整することなどによって、空気供給システム210を調整し得る。監視システム300は、タンク200内の温度を20℃~約35℃に維持するようにも構成され得る。
【0165】
ユーグレナの代謝は、微細藻類がいずれの状態にあるかに応じて、嫌気性または好気性のいずれかであることができる。代謝の観点に基づくと、インプットに関して、油とアルコールは嫌気性条件下で代謝される。残りのインプットは、好気性条件下で最も効率的に代謝される。発酵タンクの標準は、成長を支えるために好気性のみであるべきである。開示された態様は、タンク200内で好気性ゾーンと嫌気性ゾーンの両方を可能にする条件を提供する。例えば、スプレーノズル218によって引き起こされる空気の流れは、高混合のゾーン(例えば、ノズルの周囲)および低混合のゾーン(例えば、直線空気流および流れの方向を原因とする流れのない領域)を作り出し得る。高混合の領域は、低混合の領域より多くの酸素化を含み得る。その結果、タンク内の領域の一部は好気性状態のユーグレナを含み得、他のゾーンは嫌気性状態のユーグレナを含む。この二重状態アプローチは、ユーグレナの効率的な成長を促進することが明らかとされた。好気性状態と嫌気性状態の両方が、細胞中のβグルカン含有量の調節を可能にし、最適な細胞含有量を達成するのに役立つ。好気性および嫌気性の条件は、細胞のβグルカンおよび油の含有量に影響を及ぼす。完全な好気性条件は、グルコースからのβグルカンの生合成および油(ワックスエステル)のβグルカンへの変換を促進する。嫌気性条件は、βグルカンの油(ワックスエステル)への変換を引き起こす。容器内での好気性および嫌気性の共存は、細胞中の、したがって培養バイオマス中のβグルカンおよび油(ワックスエステル)含有量の調整を可能にする。
【0166】
本明細書に記載されている態様において、培地は、培養物が採取されるのと同じ速度で容器に入る。採取の間、細胞は培地から分離され、次いで過剰の使用された培地は元の容器中に戻される。実施され得る採取技術の例には、採取するための遠心分離、ディスクスタック、デカンタ、細胞分離のための膜脱水ステップ、重力もしくは化学的処理による沈降、または低剪断細胞分離器(精密濾過)が含まれる。培養物中への使用済み培地の再利用を可能にするために、連続ループは無菌である。例えば、採取された培地の使用可能な部分が捕捉され、滅菌のために加熱および/または濾過され得る。
【0167】
成長および採取過程は、サイクル入れ替わり(例えば、タンクが充填および使い果たされる回数、または連続時のタンクの体積が取り出されるとき)の許容を含む連続サイクルで行い得る。開示された態様と一致して、システム100は、高入れ替わり用に構成される。例えば、細胞が複製を増加させた場合には、入れ替わりは、1日に最大4回起こり得、または低複製の期間中には48時間ごとに1回起こり得る。適切な入れ替わりはまた、本明細書中に記載されている発酵の方法に関して本明細書中に上記されている。
【0168】
複数の態様において、本方法は、温度、撹拌および/または空気流量を制御することをさらに含む。発酵の温度は、約20℃~約30℃、任意で約28℃である。撹拌は、(例えば、培養容器内のスパージャおよび/またはノズルの使用による)機械的撹拌および/または曝気を含むがこれらに限定されない任意の適切な方法を使用して達成することができる。本明細書に記載されているこの態様および任意の他の態様による撹拌速度は、約20~約120rpm、任意で約50~約180、任意で約50rpm、および任意で約180rpm、任意で約60~約120rpm、任意で約70rpm~約100rpm、任意で約70rpm、任意で約100rpmである。本明細書に記載されているこの態様および任意の他の態様による空気流量は、約0.2~約1.0vvm、任意で約0.2vvmである。いくつかの態様において、温度は、本明細書に記載されている方法のステップを通じて一定を保ち得る。他の態様において、温度は、本明細書に記載されている方法のステップ中にまたはステップ間で変動し得る。
【0169】
別の態様において、本方法は、第1、第2および第3の発酵ステップの各々の間、約2.0~約4.0のpHを維持することと;前記第1、第2および第3の発酵ステップの各々の間、約20℃~約30℃の温度を維持することと;前記第1、第2および第3の発酵ステップの各々の間、実質的に光が存在しない環境を維持することとをさらに含む。任意で、pHは約2.8~約3.2であり、溶存酸素は約1ppm~約2ppmであり、温度は約27℃~約29℃である。
【0170】
一般的な成長条件
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップは、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞を得ることと;ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞を、最大培養容量を有するバイオリアクタに移送することと;細胞成長が制限されるレベルへと炭素源、窒素源、またはその両方が低下するまで、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞を培養することとを含む。
【0171】
別の態様において、炭素源はグルコースであり、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物は、グルコースレベルが細胞成長を制限するまで培養される。
【0172】
別の態様において、炭素源はグルコースであり、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物は、グルコースレベルが5g/L未満に低下するまで培養される。
【0173】
別の態様において、第2のステップは、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をフェドバッチ培養した後にバイオリアクタから培養物を取り出すことと、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をフェドバッチ培養するステップを1回または複数回繰り返すこととをさらに含む。
【0174】
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続的に培養する第3のステップは、第3の培養培地をフィード流量でバイオリアクタに頻繁にまたは連続的に添加することと;フィード流量と同じ量でバイオリアクタから培養物を頻繁にまたは連続的に採取することとを含む。
【0175】
ある特定の態様において、フィード流量は、頻繁なまたは連続的な給餌を通じて一定に保たれる。他の態様において、フィード流量は、頻繁なまたは連続的な給餌を通じて可変である。フィード流量は発酵全体を通じて変動し得るが、培養されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の総体積が、頻繁なまたは連続的な給餌の間、実質的に同じままであるように、フィード流量と連続的採取の速度は実質的に同じ量、速度で変動する。
【0176】
複数の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞を得ることは、微生物を培養することを含む。
【0177】
複数の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞を培養することは、約1×105細胞/mL~約5×107細胞/mL、任意で約1×105細胞/mL~約1×107細胞/mL、任意で約2×105細胞/mL~約5×106細胞/mL、任意で約2.5×105細胞/mL~約3×106細胞/mL、任意で約1.5×107~約2.5×107のユーグレナ・グラシリス細胞を増殖培地に接種することを含む。
【0178】
別の態様において、バッチ培養されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物に給餌する第2のステップの完了時に、培養されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物のgDCW/Lとして測定された細胞密度は、ユーグレナ・グラシリスをバッチ培養する第1のステップの終了時にgDCW/Lとして測定された細胞密度より少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、または2.5倍高い。
【0179】
別の態様において、バッチ培養されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を給餌する第2のステップの完了時に、培養されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物のgDCW/Lとして測定された細胞密度は、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップの終了時にgDCW/Lとして測定された細胞密度より少なくとも2.0倍高い。
【0180】
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップは、1~7日間行われ、バッチ培養されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を給餌する第2のステップは、1~7日間行われる。
【0181】
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップは、定常状態条件を達成することを含む。
【0182】
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップは1~30日間行われる。
【0183】
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップ中にgDCW/L/hとして測定される生産性は、0.1~0.3である。
【0184】
別の態様において、バッチ培養されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物に給餌する第2のステップ中にgDCW/L/hとして測定される生産性は、0.5~0.8である。
【0185】
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップ中にgDCW/L/hとして測定される生産性は、0.4~0.9である。別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップ中にgDCW/L/hとして測定される生産性は、0.4~0.9、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.5、3.0または4.0である。別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップ中にgDCW/L/hとして測定される生産性は、少なくとも0.9、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.5、3.0、または4.0である。
【0186】
別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップ、微生物をフェドバッチ培養する第2のステップ、およびユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップにわたってgDCW/L/hとして測定される総生産性は、0.4~0.9である。別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップ、微生物をフェドバッチ培養する第2のステップ、およびユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップにわたってgDCW/L/hとして測定される総生産性は、0.4~0.9、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.5、3.0または4.0である。別の態様において、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物をバッチ培養する第1のステップ、微生物をフェドバッチ培養する第2のステップ、およびユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を連続培養する第3のステップにわたってgDCW/L/hとして測定される総生産性は、少なくとも0.9、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.5、3.0、または4.0である。
【0187】
ユーグレナ・グラシリスの採取
培養体積がバイオリアクタの最大作業体積の80~90%に達したら、使用済み増殖培地からユーグレナ・グラシリス細胞を分離する前に、バイオリアクタの内容物の一部または全部はサージタンクまたは体積緩衝容器に無菌的に移される。培養はまた、連続モードで稼働され得る。すなわち、細胞培養物は、0.01~0.05h-1の範囲の希釈速度で連続的に移される。最終湿潤細胞重量、すなわち連続培養が開始される湿潤細胞重量は、典型的には、30~60g/L湿潤細胞重量(6.4~19.2g/L乾燥細胞重量)の範囲である。いくつかの態様において、最終湿潤細胞重量は、5~250g/L(1.6~80g/L乾燥細胞重量)、5~80g/L(1.6~25.6g/L)または30~60g/L湿潤細胞重量(6.4~19.2g/L乾燥細胞重量)の範囲である。生産バブルカラムバイオリアクタから出る培養物の体積速度(volumetric rate)を増加させるために、採取されるべきユーグレナ・グラシリスの培養物を含有するバブルカラムバイオリアクタは、加圧されてもよく、または加圧されなくてもよい。ユーグレナ・グラシリスの培養物はまた、容積式ポンプを使用することによって、採取するためにバブルカラムバイオリアクタの外に移送されることができる。
【0188】
ユーグレナ・グラシリスの細胞は、pHを調整するために、および細胞沈降を加速する細胞の凝集(flocculation)を誘導するために、リン酸などの濃酸または水酸化ナトリウムなどの濃塩基を添加することによって、サージ容器内に沈降させ得る。サージタンクが予め指定されたレベルまたは体積に達し、細胞が十分に凝集されたら、採取された培養物は、50L/分~60L/分の流量で、可変速遠心ポンプを備えた2インチ移送ラインを介してサージタンクから大規模分離板型遠心分離機に移送される。
【0189】
遠心分離から得られた細胞ペーストまたは細胞スラッジは、二次発酵バブルカラムバイオリアクタまたは細胞貯蔵タンクに移送され得る。遠心分離液(使用済み増殖培地)は、生産バブルカラムバイオリアクタに直接再循環させて戻すことができ、ならびに/または液体濾過および滅菌ユニットに移送することができる。濾過および滅菌された使用済み増殖培地は、必要になるまで予め滅菌された容器中に保存され、新たな増殖培地バッチ中に組み込まれてもよく、または組み込まれなくてもよい。
【0190】
ユーグレナ・グラシリス培養の全体的な規模拡大倍数は、ユーグレナ・グラシリスのシード250L培養からすべての商業規模のバブルカラムバイオリアクタの総合計容量を考慮すると、640倍である。8日の成長サイクルを仮定すると、推定される現行の生産速度は、24日サイクルで270kgの乾燥細胞重量である。これは、1年当たり2.6メートルトンのユーグレナ・グラシリス(乾燥重量ベース)である。
【0191】
本開示の局面は、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物もしくはクロレラ属種微生物の細胞および/または本明細書に記載されているユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物もしくはクロレラ属種微生物を培養する方法によって産生された生成物を採取することも含む。したがって、本発明の局面は、本明細書に記載されている方法に従って採取されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞および/または生成物、ならびにこのような採取されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞および/または生成物を含む組成物にも関する。
【0192】
ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞および/または生成物は、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物のバイオマス、ユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物のバイオマスの抽出物、およびユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物発酵の細胞内生成物と細胞外生成物の両方を企図する。このような採取されたユーグレナ細胞および/または生成物を含む組成物には、食品(すなわち、栄養源および/またはカロリー源として動物によって摂取されることが意図されるまたは予想される任意の組成物)、食品、食品添加物、食品サプリメント、化粧品、化粧品サプリメント、繊維(例えば、バイオプラスチック)、植物肥料、および/またはバイオ燃料が含まれるが、これらに限定されない。このような組成物には、粉(例えば、微細藻類の粉)、油(例えば、微細藻類の油)、栄養補助組成物(例えば、栄養補助食品、ビタミンサプリメント、タンパク質サプリメント、タンパク質粉末、油など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0193】
いくつかの態様において、本明細書に記載されているユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を培養する方法によって生産されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞は、他の培養の方法によって生産されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞と比較して、細胞中のタンパク質の増加した濃度を有する。藻類由来の高タンパク質バイオマスは、食品に含めるための有利な材料である。本発明の方法は、約20%~約60%、約25%~約55%、約30%~約50%および約35%~約45%からなる群から選択される乾燥細胞重量の%によって測定されるタンパク質の量を有するバイオマスも提供することができる。
【0194】
複数の態様において、本明細書に記載されているユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物を培養する方法によって生産されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞は、他の培養の方法によって生産されたユーグレナ属種微生物、シゾキトリウム属種微生物またはクロレラ属種微生物の細胞と比較して、細胞中の油の増加した濃度を有する。
【0195】
例示的な培地およびその成分、ならびに例示的な培養条件および方法も、本明細書の以下で示されている実施例に記載されている。以下の実施例は、本発明の態様を例示するために提供されるが、決してその範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0196】
実施例1:シード/バッチ培地の調製
49の異なる培地組成を試験してE. グラシリスの培地組成(炭素、窒素、塩、微量金属およびビタミン)を最適化するために、多数の振盪フラスコおよびバッチ発酵実験を行った。試験された炭素源には、グルコース(10、15、および20g/L)、フルクトース(10および20g/L)および糖蜜(10および20g/L)が含まれる。試験された窒素および他の成分には、酵母抽出物(2、5、10g/L)、エタノール(2、5、10g/L)、植物油(2、5、10g/L)、KH2PO4、MgSO4.7H2O、CaCl2、2H2O、微量金属およびビタミン、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。ハイブリッド培地も試験した。フェドバッチまたはケモスタット(連続給餌および採取)発酵のいずれかを通じてユーグレナバイオマス(gDCW/L/時間)の生産性を増大させることを目的として、特定の増殖培地におけるE. グラシリスの成長特性を決定するために、最初にバッチ発酵によってE. グラシリスの従属栄養培養を開始した。使用した増殖培地の組成を表1に示す。この増殖培地の組成は、振盪フラスコおよびバイオリアクタスケールの両方で実験的に最適化され、他の培地組成と比較して、標的生成物(すなわち、タンパク質、油およびパラミロン)の収量が改善されたE. グラシリスのより高い成長速度をもたらした。表1で言及されているビタミン混合物および微量金属混合物の組成が、それぞれ表2および表3に記載されている。
【0197】
【0198】
(表2)ビタミン混合物(2500×)の組成および調製
【0199】
(表3)微量金属混合物(2500×)および(500×)の組成および調製
【0200】
フェドバッチ発酵の場合、5倍濃縮シード/バッチ増殖培地をフィード培地として使用し、グルコースの濃度は75g/Lであった。フェドバッチ発酵を行うために、2.5Lのフィード培地を調製した。
【0201】
ケモスタット発酵の場合、3倍濃縮シード/バッチ増殖培地をフィード培地として使用し、グルコースの濃度は45g/Lであった。ケモスタット発酵を行うために、8Lのフィード培地を調製した。
【0202】
実施例2:シード接種材料の調製
表1に記載されているシード/バッチ培地をシード接種材料の調製のために使用した。E. グラシリスの母培養物(約2000万細胞/mL、1L振盪フラスコ中に200~500mL)は長期間にわたって維持されてきた。この培養物には、100mLのシード/バッチ培地が日常的に(4日に1回)供給される。母培養物の体積が500mLに達したら、300mLの培養物(細胞および培地)を振盪フラスコから採取し、得られた培養物(約200mL)に上記と同様の様式で供給を続ける。
【0203】
シード接種材料の調製の簡単な説明は以下の通りである:4日目に、E. グラシリスの母培養物に定期的に給餌する前に、150mLのシード/バッチ培地に母培養物からの50mLの培養ブロスを接種した。
【0204】
得られた培養物(約200mL)を28℃、150rpmで3~4日間培養した。
【0205】
培養の状態を顕微鏡法によって確認し、活発に移動する細長い細胞が接種に最良であることが実証される。
【0206】
得られた培養物の細胞密度を自動細胞計数器によって決定した。約1500万~2500万細胞/mLの細胞密度を有するシード接種材料は、バイオリアクタを接種するのに適している。
【0207】
実施例3:バッチおよびフェドバッチ発酵を含む多相発酵
方法
E. グラシリスの発酵は、以下に記載されるとおりの最初のバッチ発酵相、これに続く本明細書に記載されるとおりのフェドバッチ発酵相という2つのステップで行われた。
【0208】
E. グラシリスのバッチ発酵は、2.5Lのシード/バッチ培地を含有する5Lのバイオリアクタ中に200mLのシード接種材料を無菌的に移すことによって開始される。したがって、バッチ発酵の開始時の培養体積は2.7Lであった。発酵の開始時(「0」時間)の細胞密度は約1×106~2×106細胞/mLであるべきなので(または600nmでの光学密度(OD600またはOD600)は約0.5~1.0であるべきである、または湿潤細胞重量(WCW)は約2~4g/Lであるべきである)、シード接種材料の細胞密度は理想的には1500万~2500万細胞/mLに近接すべきである。バッチ発酵は、以下のパラメータの下で行った:28℃の温度、1M NaOHを使用して制御された3.2のpH、垂直の平らな刃(2枚)の羽根車を用いて70rpmで撹拌し、0.2vvmの空気流量およびDOはこの実行では制御されなかった。バッチ発酵中、「0」「24」「48」および「72」時間に、25~30mLの試料を1日に1回収集したグルコースは3日のバッチ発酵後にバイオリアクタ中で検出不能であったので、収集は72時間後に中止した。細胞形態/汚染を顕微鏡法によって確認し、自動細胞計数器、分光光度計(OD600)および湿潤細胞重量(遠心分離)によって細胞成長を監視した。バッチ発酵の完了後、すべての湿潤細胞バイオマス(WCW)を一晩凍結乾燥させて、バイオマスの乾燥細胞重量(DCW)を測定した。すべてのWCW値(g/L)をDCW値(g/L)に対してプロットして、相関係数、すなわち1WCW=0.32DCWを計算した。発酵ブロス中のグルコース濃度(g/L)をYSI自動分析装置によって測定した。バッチ発酵中に収集されたデータから、E. グラシリスの成長特性、すなわち比グルコース取り込み速度(qs、gglu/gDCW/時間)、グルコースに対する乾燥バイオマスの収量(Yxs、gDCW/gglu)および最大比成長速度(μmax、1/h)を計算した。
【0209】
バッチ発酵中、「0」「24」「48」および「72」時間に、25~30mLの試料を1日に1回収集したグルコースは3日のバッチ発酵後にバイオリアクタ中で検出不能であったので、収集は72時間後に中止した。細胞形態/汚染を顕微鏡法によって確認し、自動細胞計数器、分光光度計(OD600)および湿潤細胞重量(遠心分離)によって細胞成長を監視した。バッチ発酵の完了後、すべての湿潤細胞バイオマス(WCW)を一晩凍結乾燥させて、バイオマスの乾燥細胞重量(DCW)を測定した。すべてのWCW値(g/L)をDCW値(g/L)に対してプロットして、相関係数、すなわち1WCW=0.32DCWを計算した。発酵ブロス中のグルコース濃度(g/L)をYSI自動分析装置によって測定した。バッチ発酵中に収集されたデータから、E. グラシリスの成長特性、すなわち比グルコース取り込み速度(qs、gglu/gDCW/時間)、グルコースに対する乾燥バイオマスの収量(Yxs、gDCW/gglu)および最大比成長速度(μmax、1/h)を計算した。
【0210】
自動化された細胞計数の場合、製造業者によって提供された再使用可能なスライドの両側に10μLの試料をロードし、次いで、これをCountess II FL Automated Cell Counter中に挿入した。「オートフォーカス」は、機械/装置によって自動的に調整される。これが20~30秒後に行われると、「カウント」ボタンが押される。細胞数が500万細胞/mLを超える場合、試料を希釈した。
【0211】
分光光度計による600nmでの光学密度(OD)測定の場合、必要であれば、OD600値を0.2~0.7の間に保つために、試料を希釈した。DI/DWをブランクとして使用した。
【0212】
WCWの場合、25mLの試料を50mLのファルコンチューブに移し、予め秤量した。チューブを5000rpmで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを25mLのDI/DWで一回洗浄した。チューブを同じ設定で再度遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを含有するチューブを秤量した。
【0213】
(WCWを測定した後の)湿潤細胞を含有するチューブを-20℃(冷凍庫)で最低一晩保存した。試料を凍結乾燥機中で一晩乾燥させ、乾燥バイオマスをチューブ中で秤量した。
【0214】
グルコース濃度を以下のように決定した:上清の試料を採取し、試料中のグルコースの量を決定するためにYSI分析機器(YSI2950)によって測定した。より具体的には、エッペンドルフチューブ中の1.5mLの試料を10,000rpmで3分間遠心分離した。上清を収集し、YSI装置にロードした。機器は、0.05g/L~9g/Lの範囲のグルコースを検出することができる。機器は、実験試料中のグルコースを測定し、それを標準と比較して、存在するグルコースの量を決定する。
【0215】
最初のバッチ発酵相の間、グルコース濃度が5g/L未満に低下した後(すなわち、接種材料密度に応じて48~72時間の培養後)に、E. グラシリスのグルコース制限培養条件を維持するために、バイオリアクタ中に5×フィード培地を添加してフェドバッチ発酵相を開始した。フィード培地の流量(F(mL/時間))は、(式
を用いて計算された)特異的な基質取り込み速度(q
s=0.05gglu/gDCW/時間)、培養体積(V=L)、乾燥細胞密度(X=gDCW/L)(測定されたWCWに0.32の係数を乗じる)、およびフィード培地中のグルコースの濃度(S
f=75g/L)を考慮することによって計算した。比成長取り込み速度は一定のままであったが、細胞密度、培養体積およびグルコース濃度変数は発酵全体を通して変化する。したがって、フィード速度は発酵全体を通して変動した。フィード流量を計算するために使用される式は、
である。
【0216】
培養体積がその最大限界に達するまで、フィード培地をバイオリアクタ中に連続的に添加した。フェドバッチ発酵中の培養パラメータは、バッチ発酵で使用したものと同じであった。72時間の給餌後、バイオリアクタがほぼ満杯になったとき、培養を停止した。発酵ブロスを遠心分離によって採取し、タンパク質、油およびパラミロン含有量を決定するためにバイオマスを凍結乾燥した。発酵の終了時に総バイオマス濃度を測定した。バイオマスのタンパク質および油の含有量は、近赤外分光法(NIR)によって決定される。パラミロン(β-1,3-グルカン)は、βグリカンアッセイキット(Megazyme)によって決定される。
【0217】
結果
図1および表4は、実施例1に示されるように、炭素(グルコース)、窒素(硫酸アンモニウムおよび酵母抽出物)、種々の塩、ビタミンおよび微量金属を含有する最適化された培地の存在下で行われた発酵のE. グラシリス成長特性を示す。(上記のように)バッチ発酵を0時間目~72時間目の間に行い、フェドバッチ発酵を73時間目~144時間目の間に行った。本実験において、培養の開始時の細胞数、OD
600およびWCWは、それぞれ1.04×10
6細胞/mL、0.39および1.42g/Lと測定された(表4)。初期グルコース濃度は13.06g/Lであると決定された。72時間の培養後、バイオリアクタ内のグルコース濃度が1.73g/Lに低下した時点で、濃縮された(5倍の75g/Lのグルコースを含有するバッチ培地)フィード培地の供給を開始した。フェドバッチ培養時のフィード培地の流量(mL/時間)を上記式に基づいて算出した。72時間後、フィード培地を13.32mL/時間の流量で供給し、これを93.5時間および120時間でそれぞれ26.19mL/時間および43.37mL/時間に増加させた(表4)。培養の期間にわたる細胞密度および培養体積の増加のために、フィード速度が変化した。しかしながら、給餌速度を計算するために、基質取り込み速度を0.05gglu/gDCW/時間に一定に保った。
【0218】
フェドバッチ培養の終了時に、最終培養体積は約4.52Lに達し、乾燥細胞密度は26.25gDCW/Lであった。このフェドバッチ発酵の場合、バイオリアクタ内のグルコース濃度は、給餌中に2g/L未満に維持された。最初のバッチ相の間の生産性は0.129gDCW/L/時間であったが、グルコースは完全には消費されず、1.73g/Lのグルコースがバイオリアクタ内で、72時間で利用可能であった。それにもかかわらず、この発酵における生産性は、0.182gDCW/L/時間(全体)および0.656gDCW/L/時間(フェドバッチ相のみ)で、実施例3のバッチ発酵と比較して増加した。このフェドバッチ発酵の場合、バッチ発酵より約41.5%高い生産性(全体)が得られた。
【0219】
(表4)フェドバッチ発酵中のE. グラシリスの成長特性
【0220】
実施例4:バッチ、フェドバッチ、およびケモスタット発酵を含む多相発酵
方法
実施例3の発酵と同様に、E. グラシリスのこの多相発酵は複数のステップで実施され、第1のステップは実施例3に記載の初期バッチ発酵相であり、第2のステップは実施例3に記載のフェドバッチ発酵相であり、第3のステップは本明細書に記載のケモスタット発酵相であった。
【0221】
最初のバッチ発酵相の間、バイオリアクタ内のグルコースの濃度が5g/L未満に低下した後に、改善された細胞密度(15~20gDCW/L、バッチ相の終わりに測定されたバイオマスより約2倍高い)を伴って培養体積を増加させるために(バイオリアクタの体積の最大75~80%)、実施例3に記載されているとおりに計算されたフィード速度で、3×フィード培地をフェドバッチモードで添加した。2~3日のフェドバッチ給餌の後、バイオリアクタの体積がその最大限界(5Lの場合、3.75~4.0L)に達したときに、ケモスタット発酵(すなわち、連続的な給餌および採取)を開始した。希釈速度(D=0.025h
-1)および培養体積(V=3.75~4.0L)に基づいて、ケモスタット発酵中の給餌および採取速度(F(mL/時間))を計算した。フィード流量を計算するために使用される式は、
である。
【0222】
バッチ発酵によって最大成長速度(μmax)を計算した。ケモスタット発酵中、希釈速度(D)はμmax未満に維持すべきである。μmaxは約0.03~0.04h-1と計算されたので、ウォッシュアウトを回避するためにDを0.025h-1に設定した。Dに基づいて、フィード速度を計算した。
【0223】
ケモスタット発酵中、定常状態条件は、一般に、5~10滞留時間(rt=1/D)後に達成され、基質、生成物またはバイオマスの蓄積は起こらなかった。しかしながら、定常状態は、最大比成長速度(μmax)を下回るDにおいてのみ達成される。Dがμmaxを超えると、細胞のウォッシュアウトが起こる。ケモスタット発酵中にバイオリアクタの体積を一定に維持することは極めて重要であるため、ポンプ(給餌および採取)は適切に較正されなければならない。
【0224】
結果
図2は、典型的なバッチ発酵が0~48時間行われ、フェドバッチ発酵が49~96時間行われ、ケモスタット発酵が97~192時間行われたが、培地が171時間までに完全に消費されたE. グラシリスの発酵を示す。本発明者らは、最初に、実施例3に記載された手順に従ってバッチ発酵を開始した。本実験において、培養の開始時の細胞数、OD
600およびWCWは、それぞれ1.815×10
6細胞/mL、0.628および2.27g/Lと測定された(表5)。初期グルコース濃度は13.0g/Lであると決定された。しかしながら、48時間の培養後、バイオリアクタ内のグルコース濃度が3.39g/Lに低下した時点で、濃縮された(3倍の45g/Lのグルコースを含有するバッチ培地)フィード培地の供給を開始した。フェドバッチ培養時のフィード培地の流量(mL/時間)を式
に基づいて算出した。48時間後、フィード培地を17.93mL/時間の流量で供給し、これを72時間で36.6mL/時間に増加させた(表5)。培養の期間にわたる細胞密度および培養体積の増加のために、フィード速度が変動した。しかしながら、給餌速度を計算するために、基質取り込み速度を0.05gglu/gDCW/時間に一定に保った。
【0225】
(表5)実施例4の発酵中のE. グラシリスの成長特性
【0226】
実施例5:発酵モードの比較
バイオマス
一般に、フェドバッチ発酵は、培養の終了時に高い細胞密度をもたらす。他方、ケモスタット培養は、より高い生産性をもたらす。しかしながら、連続培養は、通常、清掃、滅菌および設定のための停止時間の短縮により、上流コストの低下をもたらす。表6に示されているように、本研究では、フェドバッチ発酵とケモスタット発酵の間でバイオマス生産性にあまり差は観察されなかった。フェドバッチ発酵の場合、生産性は0.656gDCW/L/時間であったが、ケモスタット中は0.56~0.74gDCW/L/時間であった。しかしながら、増加した希釈速度は、細胞成長速度を高めると予想され、したがって、ケモスタット発酵中により高い細胞密度および/または生産性をもたらし、それによってバイオマス生産性を増大させる。さらに、反復されるフェドバッチ発酵は、より高い細胞成長速度をもたらし得、したがってケモスタット発酵中により高い細胞密度および/または生産性をもたらし得る。驚くべきことに、バッチ発酵、フェドバッチ発酵およびケモスタット発酵の組み合わせは、ケモスタットにおける出発バイオマスを増加させ、したがって全体的な生産性を増加させた。
【0227】
【0228】
発酵生成物
表7に示されているように、異なる発酵モードは油およびタンパク質の産生にも影響を与えた。
【0229】
(表7)実施例5の発酵全体を通じた油およびタンパク質の産生
【0230】
実施例6:再利用される培養培地を使用した追加の発酵研究
バッチスタイルのバイオリアクタにおけるユーグレナの再利用培地培養の炭素源の補充中の栄養培地のモニタリング
本研究は、3Lバイオリアクタへの炭素源を補充した再利用培地のフラスコ規模の例の規模拡大を調査した。本実験では、グルコース、アンモニウム、硫酸アンモニウムおよびカリウムの使用率を見るために栄養素モニタリングも行われる。
【0231】
方法および材料
シード調製および再利用培地の生成
通気キャップを備えた2×500mLバッフル付きフラスコ中の150mLの新鮮培地中に母培養物からの50mLのE. グラシリス細胞を接種することによって、シード培養物を調製した。インキュベータシェーカ(28℃、120rpm)中に培養物を3日間保った。インキュベーションの最後に、表1~3(油なし)のとおりに、2.5Lの新鮮培地を含有する3Lバイオリアクタ中に細胞のすべてを接種した。リアクタ内の初期細胞数は、約1.5×106細胞/mLであることが明らかとなった。実施例3に記載されているYSI分析機器を使用して、グルコースレベルを試験した。
【0232】
実験全体を通じて、80rpmの羽根車速度および0.4vvmの空気流量で、バイオリアクタを28℃でインキュベートした。発酵の終了まで1M NaOHを連続的に添加することによって、使用した培地のpHを3.2に維持した。培地中のグルコースレベルが非常に低くなるまで(すなわち、≦1g/L)、実験を行った。72時間続いたこのサイクルをサイクル0とする。このサイクルの終わりに、発酵培地のすべて(約2.6L)を2×3Lの無菌ボトル中に採取した。生細胞を含有する200mLのこの培地を、次のサイクルを開始するための接種材料として使用した。生バイオマスを含有する約1600mLの培地を無菌遠心分離ボトル中で遠心分離(5000rpm、10分)して、次のサイクル(サイクル1またはC1)のために必要とされる再利用培地(使用済み培地)を生成した。同様のアプローチをC1の最後に繰り返し使用して、サイクル2(C2)およびその後の第3のサイクル(C3)のための使用済み培地およびシード接種材料を生成した。
【0233】
異なる発酵パラメータの分析のために、0時間、24時間、48時間、および該当する場合は72時間に、実験全体を通じて30mLの試料を両方のリアクタ(対照および再利用)から取り出した。5mLの試料を細胞数およびOD(600nm)の決定のために使用した。乾燥細胞重量(DCW)を以下のように重量測定法で決定した。25mLのバイオマスを50mLの予め秤量した遠心分離管に収集した。次いで、管を5000rpmで10分間遠心分離した。上清を分離し、DCWを計算するためにペレットを含有する管を凍結乾燥した。25mLの培地を遠心分離することによって得られた5mLの上清を15mLの予め秤量した管に添加し、凍結乾燥して溶質質量を決定した。同様に、5mLを使用してグルコース、アンモニウムおよびカリウムを決定し、存在する場合、残りの上清を廃棄した。
【0234】
再利用ハイブリッド培地の循環
実験の処理
発酵条件を上に列記されているように維持した。3サイクルの成長をサイクルあたり48時間で行い、200mLの接種材料を前のサイクルから維持して、次の培養物を繁殖させた(サイクル1からのシードをサイクル2の開始のために使用した)。
【0235】
対照
対照処理は、前述のように(油なし)、2.5Lの新鮮培地および200mLのシード培養物(接種材料)からなった。毎日無菌条件下で試料を採取して、細胞数、OD、グルコース濃度、アンモニウム濃度、カリウム濃度、乾燥細胞重量および乾燥上清重量を監視した。硫酸アンモニウム濃度は、それぞれの分子量に基づく硫酸アンモニウムとアンモニウム間の化学量論的関係である132/36をアンモニウムレベルのデータに乗ずることによって、培地中のアンモニウムレベルのデータを使用することによって得た。各サイクルの最後に、NIRを用いて脂質、タンパク質およびパラミロンを測定した。各サイクルの最後に得られたバイオマスを、次のサイクルを開始するための接種材料として使用した。
【0236】
再利用ハイブリッド培地
前のサイクルからの無細胞使用済み培地を次のサイクルのための無細胞使用済み培地として使用した、すなわち先行サイクルにおいて生成された無細胞使用済み培地をサイクル1のために使用し、サイクル1で生成された無細胞使用済み培地をサイクル2のために使用し、サイクル2から生成された無細胞使用済み培地をサイクル3のために使用した。1250mLの無細胞使用済み培地を無菌条件下でバイオリアクタ中に戻した。同様に、1250mLの新鮮培地をバイオリアクタ中に添加して、2.7Lの総体積にした(これには200mLの接種材料が含まれた)。毎日無菌条件下で試料を採取して、細胞数グルコース濃度、アンモニウム濃度、カリウム濃度、乾燥細胞重量および乾燥上清重量を監視した。硫酸アンモニウム濃度は、培地中のアンモニウムレベルのデータを使用することによって得た。硫酸アンモニウム濃度は、それぞれの分子量に基づく硫酸アンモニウムとアンモニウム間の化学量論的関係である132/36をアンモニウムレベルのデータに乗ずることによって、培地中のアンモニウムレベルのデータを使用することによって得た。グルコース、アンモニウムおよびカリウムレベルは、YSI2950装置で測定した。グルコースの代わりにアンモニウムおよびカリウムを標準として、グルコースと同じようにアンモニウムおよびカリウムのレベルを決定した。
【0237】
各サイクルの最後に、NIRを用いて脂質、タンパク質およびパラミロンを測定した。すべてのバイオマスは、以前と同様に無菌条件下で採取し、無細胞使用済み培地を遠心分離後に採取して、その後のサイクルにおいて新鮮培地と組み合わせて使用した。6×250mLの無菌遠心ボトル中にて、5000rpmで10分間遠心分離を行った。遠心分離の最後に、上清を無菌条件下で3Lの無菌ボトル中に収集した。次いで、1250mLの得られた上清を、等体積の新鮮ASAF6培地を含有するバイオリアクタ中に移した。
【0238】
データ解析
乾燥バイオマス重量
乾燥バイオマスは、試料から水分子を除去するために凍結乾燥されたバイオマスを指す。乾燥バイオマスの調製は上記のとおりであった。当業者は、バイオマスを乾燥させるのに適した様々な方法、例えば、オーブン乾燥が使用され得ることを容易に認識することができる。培養物の経時的な(日)乾燥細胞バイオマス重量は、細胞成長の尺度である。細胞成長は、より多くの細胞、すなわち複製によるものであり得る、または細胞中の組成の変化、すなわち細胞内での炭水化物、タンパク質もしくは脂質の生成によるものであり得る。
【0239】
乾燥上清重量
ペレット化細胞から上清をデカントし、凍結乾燥することによって、上清を上記実施例のペレット化細胞から除去した。この過程は、試料を真空下の凍結乾燥機に入れる前に、細胞上清を80℃で10分間~12時間凍結させることを含む。これにより、凍結した水分子が除去される。残っているのは、培地中に残された乾燥した溶質である。溶質は、化合物、すなわち培地からの成分の他、細胞からの潜在的な排泄物、すなわち老廃物である。経時的に、溶質レベルは、培地の成分、例えば主要な炭素源であるグルコースが使用されるにつれて減少する。
【0240】
効率の決定
変換効率は、培地効率の尺度である。変換効率は、生成されたバイオマスの量を培地中の消費された溶質の総量で割ったものとして定義される。生成されたバイオマスは、サイクル終了時のバイオマスの総質量を求め、開始時の培養物中の初期総バイオマスを差し引くことによって計算される。消費された溶質の総量は、開始時の培養物中の溶質の総量から最終日の総溶質を差し引いたものとして計算される。変換効率は以下のように決定される。
変換効率=(サイクルの終了時に生成された総バイオマス/サイクルの終了時に消費された総溶質)*100%
【0241】
生成された総バイオマス
サイクルあたりの総バイオマス生成量は以下のように決定される。
1サイクル当たりの生成された総バイオマス=サイクルの終了時の総乾燥バイオマス重量-サイクルの開始時の総乾燥バイオマス重量
【0242】
消費された総溶質
1サイクル当たりの消費された総溶質は、以下のように決定される。
1サイクル当たりの消費された総溶質=サイクルの開始時の初期溶質重量-サイクルの終了時の最終溶質重量
【0243】
全収率
全収率は、インプットのどれだけがバイオマスに変換されたかの尺度である。この計算では、サイクルで生成されるバイオマスの量は、各サイクルの終了時のグラムで表した乾燥バイオマスを、サイクルの開始時からのグラムで表した初期乾燥バイオマス重量によって減算することによって決定される。次いで、これをグラムで表した使用されたインプットの総質量、すなわち増殖培地中にあるすべての成分で割る。乾燥細胞重量は、乾燥バイオマス重量として定義される。全収率は、以下のようにして決定される。
全収率(gDCW/gインプット)=サイクルにおいて生成されたバイオマスの総質量(乾燥細胞重量)(gDCW)/使用されたインプットの総質量(gインプット)
【0244】
補充収率
補充収率(Supplement Yield)は全収率と同様に計算されるが、使用されたインプットの総質量の代わりに、新鮮培地の補充から得られるハイブリッド培地の総質量である。この計算では、サイクルで生成されるバイオマスの量は、各サイクルの終了時のグラムで表した乾燥バイオマスを、サイクルの開始時からのグラムで表した初期乾燥バイオマス重量によって減算することによって決定される。次いで、これをグラムで表した使用された補充されたインプットの総質量、すなわち加えられた新鮮増殖培地中にあるすべての成分で割る。乾燥細胞重量は、乾燥バイオマス重量として定義される。補充収率は以下のように決定される。
補充収率(gDCW/gSインプット)=サイクルにおける生成されたバイオマスの総質量(乾燥細胞重量)(gDCW)/サイクルにおける使用された新鮮増殖培地からのインプットの総質量(gSインプット)
【0245】
グルコースベースの収率
グルコースは主要な炭素源であり、質量に関して培地の2/3を占めるので、グルコース利用に関する収率も報告されている。これは、サイクルで生成された乾燥バイオマス重量を、そのサイクルで使用されたグルコースの量で割ったものとして定義される。これは、培養または増殖培地の質量(すなわち、グラム)またはグラム/リットル(濃度)のいずれかとして測定される。グルコースベースの収率(濃度)は、以下のように決定される。
グルコースベースの収率(濃度)=(サイクルの終了時の細胞の濃度(g/L)-サイクルの開始時の細胞の濃度(g/L))/(サイクルの開始時のグルコースの濃度(g/L)-サイクルの終了時のグルコースの濃度(g/L)
【0246】
結果および考察
表8および9は対照バイオリアクタの生データを表し、表10および11はハイブリッド培地バイオリアクタの生データを表す。細胞成長は、OD(600
nm)、細胞数および乾燥細胞重量によって決定した。一般に、OD、細胞数およびDCW(g/L)は、再利用培地バイオリアクタおよび対照の両方について経時的に増加した(
図3および
図4)。対照バイオリアクタ試料は、再利用培地測定値と比較してすべての場合でわずかにより高かったが、生成されたバイオマスの量については全体的に同等であった。
【0247】
(表8)3サイクルすべてにわたる、対照培地成長パラメータであるOD、細胞数、およびグルコース
【0248】
(表9)3サイクルすべてにわたる、対照培地成長パラメータである、バイオリアクタにおける、DCW(g/L)、残留溶質(g/L)、総DCW、総体積、および総溶質レベル
【0249】
(表10)3サイクルすべてにわたる、ハイブリッド培地成長パラメータであるOD、細胞数、およびグルコース
【0250】
(表11)3サイクルすべてにわたる、ハイブリッド培地成長パラメータである、バイオリアクタにおける、DCW(g/L)、残留溶質(g/L)、総DCW、総体積、および総溶質レベル
【0251】
対照およびハイブリッド培地バイオリアクタに対して、それぞれ栄養素プロファイルが
図5Aおよび
図5Bに示されている。グルコース消費は、100%新鮮増殖培地対照およびグルコースが補充された50%再利用培地の両方で48時間までに観察されたほぼ0g/Lレベルのグルコースの減少を示し、この傾向は全サイクルにわたって見られた(
図5Aおよび
図5B)。対照および再利用培地バイオリアクタの両方でアンモニウム濃度が経時的に減少し、3つのサイクルすべてでこの傾向が見られた。各サイクルの開始時の再利用バイオリアクタ中のアンモニウムの量は、新鮮増殖培地対照バイオリアクタ中における量よりも少なかった。硫酸アンモニウム濃度はアンモニウムレベルから推測されたので、対照および再利用培地バイオリアクタの両方で同様の傾向が観察された。再利用培地バイオリアクタ中の硫酸アンモニウム濃度は対照の約半分であり、各サイクルの終わりまでに細胞が増殖培地中の窒素の大部分を利用していることを示唆した。対照バイオリアクタでは、サイクル1および2においてカリウムレベルは変動し、サイクル1の24時間で最低レベルが見られ、サイクル1および2の48時間で最高レベルが見られた。しかしながら、サイクル3の48時間でカリウムレベルがほぼ0g/Lレベルまで減少した。再利用培地バイオリアクタ中のカリウムレベルは同様の変動を有し、サイクル1の24時間でカリウムのレベルが最も低く、サイクル1の48時間およびサイクル2の24時間でカリウムのレベルが最も高かった。サイクル3は、同じく、48時間までにカリウムのレベルがほぼ0g/Lになった。
【0252】
以下の表12に見られるように、新鮮培地対照およびグルコース補充50%再利用培地の両方について、すべてのサイクルに対して変換効率を計算した。グルコースが補充された50%再利用培地は、すべてのサイクルにわたって、新鮮培地対照(36%)と比較してより高い変換効率(43%)を有した。再利用培地は、サイクル2において48%で最も高い変換効率を有した。新鮮培地が対照効率であると仮定すると、グルコースが補充された50%再利用培地は、全体で119%%の効率で動作した。このバッチ例は、実施例3および4と同等であった、すなわち、本実施例は、再利用培地を調べて、変換効率に関して対照より高いhaver効率を有すること示したが、これは実施例3および4におけるバッチ相と類似している。
【0253】
(表12)バイオリアクタ規模の再利用培地実験の変換効率。細胞をバッチスタイルで増殖させ、レベルを100%新鮮培地対照のレベルと等しくなるようにグルコースを補充した。
【0254】
100%新鮮培地対照について、全収率およびグルコースベースの収率が表13に、グルコースが補充された50%再利用培地について、補充収率およびグルコースベースの収率が表14に以下で示されている。
【0255】
(表13)100%新鮮増殖培地の全収率およびグルコース濃度ベースの収率のまとめ
【0256】
(表14)グルコースが補充された50%再利用培地の補充収率およびグルコース濃度ベースの収率のまとめ
【0257】
100%新鮮増殖培地では、サイクルが進行するにつれて全収率が0.296から0.203に減少したが、サイクル1および2はかなり類似していた。サイクル1および2はそれぞれ0.60および0.59で同様であり、サイクル3で0.41に減少するので、グルコースベースの収率において同じ傾向が見られる。結果として、対照の平均全収率は0.263であり、グルコースベースの収率は0.54であった。
【0258】
これをグルコースが補充された50%再利用培地と比較すると、補充収率およびグルコースベースの収率はすべてのサイクルでより高い。補充収率はサイクルにわたって変動し、サイクル1が0.411、サイクル2が0.435、サイクル3が最低の0.306、全サイクルについての平均が0.384であった。再利用培地のグルコースベースの収率も、サイクル1の0.66、サイクル2の0.71およびサイクル3の0.50の間で変動し、すべてのサイクルについては0.62の平均であった。
【0259】
全体として、全収率およびグルコース濃度ベースの収率は、100%新鮮増殖培地よりグルコースが補充された50%再利用培地(ハイブリッド培地)においてより高かった。これは、補充されたインプットまたは使用されたグルコースの総量に基づく生成されたバイオマスの量が、50%グルコース補充ハイブリッド培地においてより多いことを示している。理論に縛られることを望むものではないが、ハイブリッド培養培地は、おそらくはユーグレナ細胞の独特の代謝のために、より高い収率を有する。酢酸、乳酸、フマル酸、マラート、ピルビン酸またはコハク酸などの、ユーグレナによって排泄され得る「老廃」生成物は、代謝することができ、成長源として有用であり得る。添加されたグルコースの量を考慮する場合でさえ、収率はハイブリッド培地において依然としてより大きく、バイオマスを生成するために、ユーグレナ細胞が、新鮮培養培地よりハイブリッド培地をよりよく利用することができることを示している。7.92Lで23.7gを生成した新鮮培地と比較して、ハイブリッド培地が7.92Lで28gのバイオマスを生成したので、このことは明らかである。
【0260】
NIRの結果に基づいて(表15)、各サイクルおよび条件においてバイオマス全体に明確な傾向が観察される。100%新鮮増殖培地対照と比較して、グルコースが補充された50%再利用培地バイオリアクタでは、パラミロン(β-1,3-グルカン)の量が増加した。これは、炭素対窒素比がより高くなり、ユーグレナにおける炭水化物、β-1,3-グルカンの配合を支えるためである。タンパク質に関しては、すべてのサイクルにわたって、100%新鮮増殖培地試料においてタンパク質のパーセンテージはより高かった。この培地中の炭素対窒素比は再利用培地条件よりも低かったので、これは予想される。脂質レベルは、各サイクルで、再利用条件と対照条件の間で同様であった。最少量の脂質は第1のサイクルにおいて観察され、サイクル2およびサイクル3では量が増加した。
【0261】
(表15)実施例6のハイブリッド培地および対照試料において収集されたバイオマスのNIR結果
【0262】
実施例7:バイオリアクタでの連続培養中に枯渇した炭素源を補充するために、ユーグレナの培養中に培地成分を監視することの使用
本研究では、3つの異なる成長様式、すなわちバッチ、フェドバッチ、および連続フィード様式のすべてを経るバイオリアクタにおいてグルコース補充培地を調査した。バッチ、フェドバッチ、および連続培養相中に、100%新鮮増殖培地を50%ハイブリッド培地と比較する。
【0263】
方法および材料
使用済み培地の調製(3日間のバッチ発酵)
シードの調製および再利用培地の生成は、実施例6に列記されているとおりに行った。
【0264】
その後のフィード様式のための再利用培地を生成するために、0.2Lの活発に成長しているユーグレナ・グラシリス細胞を、実施例6で概説した3Lの培地を含む2つの4Lフラスコ中に接種した。培地中のすべてのグルコースが0g/L付近に達するまで、バイオリアクタを28℃でインキュベートした。グルコース消費は、実施例3に概説されているのと同じ方法を使用して、YSI分析機器(YSI2950)によって測定した。アンモニウムおよびカリウムレベルは、YSI2950装置で測定した。グルコースの代わりにアンモニウムおよびカリウムを標準として、実施例3に記載されているグルコースと同じようにアンモニウムおよびカリウムのレベルを決定した。
【0265】
全体を通じて、0.4vvmの空気流量および80rpmの羽根車速度を維持した。1M NaOH溶液を使用して培地のpHを3.2に調整した。インキュベーションの終了時に、両バイオリアクタからバイオマスを無菌的に採取し、5000rpmで10分間遠心分離した。使用済み培地としても知られる5Lの得られた無細胞上清を10Lフラスコ中へ無菌的に移した。
【0266】
実験の処理
バッチ、フェドバッチ、および連続バッチ発酵条件下で培養成長を試験する2つの処理を行った。実験用のハイブリッド培地バイオリアクタおよび対照の新鮮増殖培地バイオリアクタとして指定された6Lバイオリアクタ中で、処理を行った。28℃、0.4vvm、80rpmの羽根車速度および1M NaOHの自動添加によって3.2に維持されたpHで、2つの培養物のそれぞれを増殖させた。実施例7に対して使用された培地組成が、以下の表16に概説されている。最初に、活発に成長しているユーグレナ・グラシリス細胞を接種することによって、1250mLの培地Aを含有する両リアクタ中でバッチ発酵を行った。48時間の最後に、ハイブリッド培地バイオリアクタに培地Dを2.5Lの最終作業体積まで供給した。同様に、対照バイオリアクタの場合には、培地Cを2.5Lの最終体積まで充填して使用した。これにより、さらに24時間実施したフェドバッチ発酵が開始された。フェドバッチの終了時に、ハハイブリッド培地バイオリアクタについては培地Dを使用し、対照バイオリアクタについてはCを使用することによって、作業体積をバイオリアクタ中で2.5Lに再調整した。75mL/時間の流量で、それぞれの培地を連続的に系内に供給した。連続的採取も、同様の流量(すなわち、75mL/時間)で両タンクに対して設定した。連続的発酵を5日間維持した。細胞数、乾燥細胞重量(DCW)、OD、溶質およびグルコース濃度(g/L)を測定するために、実験を通じて24時間ごとに無菌条件下で試料を収集した。グルコース消費は、実施例3に概説されているのと同じ方法によって、YSI分析機器(YSI2950)によって測定した。
【0267】
連続サイクルの終わりに、NIRを使用して脂質、タンパク質および炭水化物を決定した。炭水化物のパーセンテージを以下のように決定した。
100%-タンパク質(%)-脂質(%)=炭水化物のパーセンテージ
【0268】
【0269】
データ解析
乾燥バイオマス重量は、実施例6に概説されているとおりに行った。
【0270】
乾燥上清重量は、実施例6に記載されているとおりに行った。
【0271】
実施例6で決定されたさらなるパラメータも計算した。
【0272】
結果および考察
表17および18は対照バイオリアクタの生データを表し、表19および20はハイブリッド培地バイオリアクタの生データを表す。OD(600nm)、細胞数、乾燥細胞重量、グルコース消費およびpHによって、細胞成長を決定した(
図6および
図7)。対照培地およびハイブリッド培地の両方について、バッチバイオマスおよび細胞数はこのサイクルの終わりまで増加した。この後、フェドバッチの開始時にバイオマスおよび細胞数は減少し、次いで24時間までにわずかに増加した。100%新鮮培地対照については、乾燥細胞重量は120時間にわたって連続相の間一定のままであった。ハイブリッド培地バイオリアクタについては、乾燥細胞重量は、連続相において経時的にわずかに減少した。対照のODおよび細胞数は同じ傾向をたどったが、開始時には変動し、相の終わりまでには安定化していた。ハイブリッド培地バイオリアクタは、連続相の間に、ODおよび細胞数のより大きな変動を示した。これらの結果は、培地の取り出しおよび添加速度をハイブリッド培地バイオリアクタに対して最適化する必要はあるが、それでも実験を通じてバイオマスが生成されたことを示唆している。グルコース消費は、対照培地およびハイブリッド培地の両方で同様であり、バッチでは減少、フェドバッチでは増加し、連続相では一定のままであった。pHは、1M NaOHの添加によって調節されたので、両条件において一定を保った。
【0273】
(表17)培養の3つの相すべてにわたる、対照培地成長パラメータであるDCW(g/L)、600nmでのOD、細胞数、溶質、給餌速度、および添加された体積、リアクタ体積、および採取された体積
【0274】
(表18)各段階での、対照培地成長パラメータである、バイオリアクタ中の総DCW、採取されたバイオマス中の総DCW、連続では累積的である総DCW、リアクタ中の溶質、採取されたバイオマス中の溶質、およびバイオリアクタ中の総溶質
【0275】
(表19)培養の3つの相すべてにわたる、ハイブリッド培地成長パラメータであるDCW(g/L)、600nmでのOD、細胞数、溶質、給餌速度、および添加された体積、リアクタ体積、および採取された体積
【0276】
(表20)各段階での、ハイブリッド培地の成長パラメータである、バイオリアクタ中の総DCW、採取されたバイオマス中の総DCW、連続では累積的である総DCW、バイオリアクタ中の溶質、採取されたバイオマス中の溶質、およびバイオリアクタ中の総溶質
【0277】
NIRの結果を実施例7について表21に示す。バッチの間には、対照培地とハイブリッド培地の間で同様の結果が観察される。フェドバッチ相の間には、ハイブリッド培地試料では脂質の減少および炭水化物の増加が存在するのに対して、対照試料ではタンパク質の増加が存在する。連続相の間には、対照試料は経時的にタンパク質がわずかに増加するが、脂質は低下し、炭水化物については同様のままであった。ハイブリッド培地試料では、対照試料と比較した場合、対照条件と同様の傾向が観察されたが、脂質のわずかな増加を伴った。両条件は、5%未満の脂質、33~41%のタンパク質および59~64%の炭水化物を有していた。これは、連続発酵培養において、50%の再利用培地を含むハイブリッド培地を使用すると、100%新鮮増殖培地対照と同等のバイオマス組成を与えることを示唆している。また、これは、一定のフィード速度にわたって生産性を示した。次の例では、給餌速度は、12時間の時間枠ごとに細胞成長に適合される。
【0278】
(表21)実施例7の実験条件および時点におけるタンパク質、脂質および炭水化物含有量についてのNIR結果のまとめ
【0279】
中程度の長さの時間、すなわち3~4日は、短いサイクル長および長いサイクル長と比較してより高い変換効率を有する。また、中程度の長さの時間は、平均すると他のサイクル日数より優れた結果を与えるので、全サイクルを経時的に見ると、すなわち全サイクルの終わりには、より高い変換効率を有する。長いサイクル日数は、サイクル数が増加するにつれてより低い変換効率を有する。
【0280】
実施例8:対照操作と比較した、再利用/ハイブリッド培地を使用したユーグレナ・グラシリスの連続培養
1. 背景:
本実験では、ハイブリッド(再生)培地を用いた連続発酵を、バッチ、フェドバッチ、および連続形式の3ステップ過程において使用する。これらの結果を、ハイブリッド混合物の代わりに新鮮培地を添加する対照実験と比較する。
【0281】
2. 方法
2.1. 母培養物の維持およびシード接種材料の調製
表1~3に記載されているシード/バッチ/フィード培地を、母培養物の維持およびシード接種材料の調製のために使用した。ユーグレナ・グラシリスの母培養物[約20~40g/L湿潤細胞重量(WCW)、1L振盪フラスコ中の200~500mL培養ブロス]は、本発明者らの研究室で長期間にわたって維持されてきた。この培養物に、100mLのシード/バッチ/フィード培地を週に3回供給する。母培養物の体積が500mLに達したら、300mLの培養ブロスを振盪フラスコから採取し、得られた培養物(約200mL)に上記のように供給を続ける。
【0282】
シード接種材料の調製の簡単な説明は以下のとおりである。
【0283】
50mLのE. グラシリスの母培養物を500mL振盪フラスコ内の150mLのシード/バッチ/フィード培地に接種した。80μLの2500×ビタミン混合物も振盪フラスコ中に添加する。シード繁殖を28℃、150rpmで48~72時間行った。
【0284】
シード接種材料の状態を顕微鏡法によって確認し、活発に移動する細長い細胞が接種に最良であることが実証される。
【0285】
得られた培養物の細胞密度をWCWによって決定した(20mLの培養ブロスを遠心分離し、上清を捨て、細胞ペレットを秤量してWCWを決定した)。
【0286】
バイオリアクタ規模で発酵を開始するために、約20~40g/LのWCWの細胞密度を有するシード接種材料を使用する。
【0287】
2.2. 連続発酵
ユーグレナの成長のために再利用培地を使用することを目的として、新鮮なまたは通常の培地と比較して同様のまたはよりよいバイオマス収率および生産性を維持しながら、連続/ケモスタット発酵を本研究において行った。
【0288】
すべての培地および濃縮ストック溶液は、実験を開始する前に調製し、高圧滅菌した。実験全体(すなわち、母培養物の維持、シード繁殖および連続発酵)を通じて複合培地(すなわち、グルコース、酵母抽出物、硫酸アンモニウム、各種の塩、各種のビタミン、各種の微量金属塩、植物油を含有し、pHは3.2に調整される)を使用した。ビタミン混合物および微量金属混合物の組成はそれぞれ表2および3に記載されており、シード/バッチ/フィード/複合培地の組成は表1に示されている。
【0289】
連続発酵は、最初、培養モードでのバッチから開始された。発酵の開始時(「0」時間)での細胞濃度が約OD600(600nmでの光学密度):0.5~2.0またはWCW:2~4g/Lになるように、シード接種材料の細胞密度は、20~40g/LのWCWであるべきである。連続発酵の培養パラメータは以下のとおりである:28℃の温度、3.2のpH、ラシュトンタービン羽根車を用いて300~600rpmで撹拌、撹拌および空気を使用して0.4~2vvmの空気流量、および20%のDO/pO2。発酵中、30mLの試料を12時間ごとに定期的に収集した。試料採取直後に、顕微鏡法によって細胞形態、pHメータによってpH、分光光度計(OD600)および20mLの培養ブロスの遠心分離によって細胞密度(WCW)、YSIによってグルコース濃度について検体を分析した。CEDEXバイオアナライザおよびHPLCによって試料をさらに分析して、代謝産物の濃度を決定した。WCW測定を通じて得られた細胞ペレットを、これらの試料の乾燥細胞重量(DCW)が決定されるまで-80℃で凍結した。公知量の上清(すなわち、遠心分離によって細胞ペレットを取り出した後)を凍結乾燥することによって、培養ブロス中の総溶質濃度も測定した。
【0290】
発酵を36~48時間行った後、バイオリアクタ内のグルコース濃度は限定的であることが観察された(すなわち、0~5g/L)。フェドバッチモード(すなわち、フィード培地を一定の流量でバイオリアクタ内に供給した)を通じて培養をさらに2日間継続した後、培養を真の連続モード(すなわち、培養体積を一定に維持するために、同様の流量で連続給餌および採取)に切り替えた。バッチ相のグルコース濃度が5g/Lに近づいたら、バイオリアクタから培養ブロスを採取することなく、一定流量でフィード培地(すなわち、15g/Lのグルコースを含有する)を添加した。バッチ相の終了時における細胞密度(X=gDCW/L、最初にWCWとして測定され、0.32の係数を掛けたもの)および培養体積(V=L)および一定の比グルコース取り込み速度(q
s=0.07gglu/gDCW/時間)およびフィード培地中のグルコースの濃度(S
f=15g/L)に基づく指数関数的給餌式を使用して、フィード培地の流量(F、mL/時間)を計算した。フェドバッチ相におけるフィード流量を計算するために使用される式は以下のとおりである。
【0291】
連続発酵において使用されるハイブリッド培地を調製するために、連続発酵を開始するために、1.5Lの発酵ブロスを採取し、無菌的に遠心分離して再利用培地を回収した。回収したら、培地を新鮮培地(2500×ビタミン混合物は添加しなかった)と無菌的に混合する(1:1)。次いで、ハイブリッド培地を特定の希釈速度でバイオリアクタ中に添加して、連続発酵を開始した。本実験では、給餌を開始するために0.02h-1の希釈速度(D)が設定され、これは、その時点で細胞のウォッシュアウトが起こる臨界希釈(Dcrit)/最大比成長速度(μmax)より低い。発酵ブロスを連続的に採取し、一定の培養体積を維持するために、バイオリアクタ中で利用可能な金属浸漬管の一端を所定の体積マークに設定し、他端はシリコーンチューブに取り付け、予め設定された体積で発酵ブロスを連続的に引き出すために蠕動ポンプ中に挿入した。所定の希釈速度(D=0.02h-1)および培養体積(V=2.5L)に基づいて、連続発酵中のフィード速度(F、mL/時間)を計算した。連続相におけるフィード流量を計算するために使用される式は、F(mL/時間)=V.D.1000である。
【0292】
連続発酵の間、定常状態を達成し、一定の細胞密度を維持するために、フィード速度を12時間ごとに変更した。これは、連続相の間、フィード速度が一定であった実施例7とは異なる。目標とされる細胞密度(すなわち、フェドバッチ相の終了時におけるWCW、一定)、現在のフィード速度(すなわち、最後の12時間に、ハイブリッド培地が供給された速度)、現在の細胞密度(すなわち、測定される現在のWCW)に基づいて、フィード速度計算機を開発した。表22中の式[D=(B*C)/A]を使用して、12時間ごとの新しいフィード速度を計算した。10/18は、機器に関する変換係数である(すなわち、18ml/時間で10%)。それぞれの新しいフィード速度は、新しい速度を考慮するために希釈速度も同時に変更されることを意味した。採取された発酵ブロスの範囲は、12時間の時間幅で0.2L~1.86Lであった。
【0293】
(表22)連続発酵中に使用されるフィード速度計算機
【0294】
連続発酵相中に一定の細胞密度を維持することとは別に、別の主な目標は、ハイブリッド培地を使用してユーグレナバイオマスの生産性を増加させることであった。このため、最大比成長/臨界希釈速度より高い比成長/希釈速度でユーグレナを成長させることの効果(すなわち、細胞のどの程度までウォッシュアウトが観察されるか、代謝産物プロファイルに対する影響)の検討を開始した。Monodの式によれば、生物の比成長速度は通常、バイオリアクタ内の栄養素濃度とともに増加することが知られている。このため、濃グルコース溶液(200g/L)を12時間ごとに添加することによって、バイオリアクタ内でグルコース濃度を約10g/Lに調整した。表23中の式[D=(C-B)*(A/200)*1000]を使用して、バイオリアクタ中に給餌するために必要な濃グルコース溶液の量を決定した。
【0295】
(表23)連続発酵中に使用される濃グルコース添加の計算機
【0296】
3. 結果および考察
200mLのシード接種材料を調製したが、1.5Lのバッチ培地に100mLのみを添加した。バッチ相の開始時の培養体積は1.6Lであった。シード培養物を接種する前に、600μLの2500×ビタミン混合物(すなわち、1.5Lバッチ培地に対して必要とされるビタミンの量)を接種フラスコ中に添加した。発酵の「0」時間(すなわち、シード接種直後)での細胞密度は、OD600約2およびWCW約3.7g/Lであった(表24)。「0」時間でのグルコース濃度は、YSIによって13.5g/Lと決定されたが、バイオリアクタ中への100mLのシード接種材料の添加のために培地中のグルコース濃度が希釈されているので、これは15g/Lであると考えられた。36時間のバッチ培養後、バイオリアクタ内のグルコース濃度は5g/Lと測定され、細胞密度はOD600約12.57およびWCW約22.75g/Lまで増加された(表24)。発酵の開始時により高い濃度のシード接種材料を接種するという事実のために、本実験ではより速いグルコース消費速度が観察された。
【0297】
(表24)ハイブリッド培地を使用した連続発酵中のE. グラシリスの成長および培養条件
【0298】
しかしながら、バッチ相の終わりに(36時間に)、バイオリアクタ内の細胞密度をさらに増加させることができるように、52.1mL/時間の一定のフィード速度でフィード培地を添加し始めた。48時間にわたって合計2.5Lのフィード培地を添加して、4Lの培養体積に達した。本実験では、フィード速度を計算するために0.07gglu/gDCW/時間の比グルコース/基質取り込み速度が設定されたが、実験室において行われた以前のすべてのフェドバッチ実験に対しては、0.05gglu/gDCW/時間の値が検討された。比グルコース取り込み速度に対してより高い値を検討する理由は、細胞の最大成長速度で成長させるのに十分な量のグルコースを細胞に提供するためであった。このため、フェドバッチ相の終わりに(すなわち、培養の84時間に)、WCW約35g/Lの細胞密度が達成された(表24)。それにもかかわらず、72時間でWCW約38.6というより高い細胞密度が観察され(表24)、バイオリアクタ内でグルコースが利用できないために細胞密度が低下したことが確認された。さらに、このデータは、より高い値の比グルコース取り込み速度を検討した後でさえ、フェドバッチ相の間、残留グルコース濃度が低かったことを示している(表24)。この結果は、より高いグルコースの濃度を有するフィード培地を使用することを示唆している。
【0299】
フェドバッチ相の終わりに(84時間に)、バイオリアクタ内の培養体積が2.5Lであることを確認しながら、蠕動ポンプを使用して約1.5Lの発酵ブロスを無菌的に採取した。無菌性を確保するために、シリコーンチューブの一端をバイオリアクタ中で利用可能な浸漬管に接続し、他端を採取容器に接続した。次いで、採取された発酵ブロスを無菌的に無菌振盪フラスコに移し、遠心分離して再利用培地を回収し、1:1の比で新鮮フィード培地と混合した。次いで、0.02h-1の予め設定された希釈速度を満たすために、50mL/時間の速度でハイブリッド培地をバイオリアクタ中に添加し、バイオリアクタ内の培養体積を一定に維持するために同じ速度で発酵ブロスを採取した。本研究では、連続発酵の間、一定の細胞密度(すなわち、フェドバッチ相の終了時のWCW)を維持することを目標として、フィード速度を12時間ごとに変更した。しかしながら、84時間から204時間の培養の間、フィード速度は連続的に(50mL/時間から17.2mL/時間まで)減少したことが観察された(表25)。このために、それらの対応点での希釈速度も減少することが明らかとなった。それにもかかわらず、わずかな初期の試料採取点を除いて、細胞密度を初期値近くに維持することができた(84時間で35g/LのWCW)(表24)。
【0300】
84時間から204時間の培養の間、残留グルコース濃度はほぼ0であることが観察された(表24)。次いで、バイオリアクタ内で十分な量のグルコースが利用できないために細胞成長が妨げられたかどうかという問題を検討した。高い生産性を確保することが最重要の関心事であったので、約10g/Lのグルコースレベルを維持し、バイオリアクタ内の炭素源の不足のために細胞成長が制限されないことを確実にするために、濃グルコース(200g/L)を添加することを決定した。特定のフィード速度でハイブリッド培地とともに、濃グルコースを初めて204時間で添加した。結果として、各試料採取時間において約10g/Lのバイオリアクタ内グルコース濃度が維持されるとすぐに、フィード速度/希釈速度の増加が観察された。このアプローチの実施により、より高い細胞密度およびバイオマス生産性が最終的に達成された。最高の細胞密度約58g/LのWCW(表24)は発酵の252時間において測定され、最高の生産性は約2.3gWCW/L/時間(約0.74gDCW/L/時間)であった(表25)。より高い生産性(約2gWCW/L/時間)は、60時間(すなわち、276時間から336時間まで)維持された(表25)。さらに、細胞がゆっくりとウォッシュアウトされ、最終的に細胞密度およびバイオマス生産性を低下させることが観察された。
【0301】
図8は、ハイブリッド培地上での連続発酵中のユーグレナ・グラシリスの成長を示す。ここでは、ユーグレナの2つの主要な成長パラメータ(すなわち、WCW、OD
600)が、連続培養の過程にわたって、グルコース消費プロファイルとともに提示されている。約7.5g/Lのグルコースを含有すると推定されるハイブリッド培地が供給されているときに、十分な量のグルコースが利用できないために、細胞成長が72/84時間から204時間まで制限されることが明確に観察された。一般に、フェドバッチ給餌のためには、濃縮されたフィード(バッチ培地より5~50倍高いグルコース濃度)が使用される。この潜在する事実に気付いた後、濃グルコース溶液(すなわち、200g/L)を添加することによってバイオリアクタ内のグルコースを約10g/Lに維持した。グルコース給餌のために、細胞密度は204時間(34g/L)から252時間(57.8g/L)まで増加したが、細胞密度は再び低下し始めた(表24)。これは、より高い希釈速度としてハイブリッド培地を添加したことによって生じた可能性があり、その結果、細胞がウォッシュアウトされた。さらに、これらの結果は、バイオリアクタ内の残留グルコースレベルが252時間から増加し始めたことを示している。
【0302】
図9は、連続発酵中に関与する主要な培養パラメータのプロファイルを示す。本研究では、空気はpO
2/DOレベルを制御するためにのみ供給されたので、気体混合物は自動的に21%(すなわち、空気は約21%のO
2を含む)に維持された。pO
2/DOレベルを20%に制御するために、空気の添加(1~5L/分)および撹拌(300~600rpm)を通じたカスケード制御を検討した。培養は300rpmの撹拌速度で開始されたが、最小pO
2/DO要件(すなわち、20%)を満たすために、フェドバッチ、および連続給餌の間、ほぼその最大レベルまで増加した。同様に、発酵の過程中、空気流量を自動的に増加させた(
図11)。バイオリアクタを滅菌する前に空気を使用して溶存酸素プローブを100%に較正したので、すべての発酵は典型的には100%に近いpO
2/DOレベルに定められた(stated)。本実験のpO
2/DOプロファイルによれば、接種開始時のDOレベルは約65%であることが認められたが、これは重大な問題ではない。それにもかかわらず、バイオリアクタ内へのシード接種が行われると直ちに、DOレベルの急減(すなわち、5~10%)がしばしば観察されたことに言及する必要がある。このpO
2/DOプロファイルによれば、108時間から204時間まで、細胞がグルコースまたは任意の他の炭素源を奪われたことが明確に観察される。しかしながら、濃グルコースをバイオリアクタ中に供給することによってグルコース濃度が約10g/Lに維持されるとすぐに、設定点(すなわち、20%)に向かってDOレベルの緩やかな低下が観察された。それにもかかわらず、グルコース濃度を約10g/Lに維持した後でさえ、DOレベルの増加が372時間から再び観察された。これはおそらく、細胞中の代謝の変化に起因して生じた(すなわち、細胞の運動は極めて少なく、成長はほぼ停止した)。
【0303】
(表25)ハイブリッド培地での、E. グラシリスの連続発酵についての重要なパラメータおよびバイオマス生産性
【0304】
本研究では、フィード速度が一定であった実施例7とは異なり、連続相の間、バイオリアクタ内の細胞密度を一定に維持するために、実験全体を通じてフィード速度を変化させた。フェドバッチ相(36時間から84時間まで)の間、52.1mL/時間の一定のフィード速度で、フィード培地を添加した(表25)。しかしながら、連続的な給餌および採取を開始するために、50mL/時間のフィード速度(すなわち、培養体積は2.5Lであったので、0.02h
-1の希釈速度)を予め設定した。その後、フィード速度を12時間ごとに変更して、35g/LのWCWを維持した(すなわち、連続相の開始時の細胞密度)。
図10の結果は、フィード速度が84時間から204時間まで継続的に減少したことを示している。しかしながら、各試料採取点で約10g/Lのグルコース濃度をバイオリアクタ内で維持すると、フィード速度が上昇し始めた。それにもかかわらず、324時間の培養後、培養物により高いフィード速度で給餌し続けることは不可能であった。培養物は過剰給餌され、細胞は最終的にバイオリアクタからウォッシュアウトされたようである。本研究では、20日の期間にわたって合計29.2Lの発酵ブロスが採取されたが、連続的な給餌および採取は、2.5Lという驚くべき培養体積で開始された。これは、連続発酵を行うことの最も重要な利点の1つである。この顕著な成果に加えて、著しいバイオマス生産性が達成された。2.31gWCW/L/時間(0.74gDCW/L/時間)の生産性が達成され、これはハイブリッド培地によるこれまでの最高のバイオマス生産性である。バッチと比較した連続発酵の利点は、20日の間に採取されたバイオマスの量であった。量は毎日変動したが、高生産性の時間中には、容器を定常状態、すなわち35WCWg/Lに保つために、より多くのバイオマスが採取される。細胞密度に応じて12時間ごとにフィード速度を適合させるという変化のためにより高い生産性の可能性があり、細胞密度が増加していれば、本発明者らの希釈速度は増加した。同様に、バイオマスが減少している場合には、希釈速度またはフィード速度を減少させて、バイオマスをその定常状態に維持しようと努めた。以前は、希釈速度(フィード速度)は固定されており、本発明者らが時間を通じた成長の差に対して適応していなかったことを意味する。適応的給餌を有することによって、給餌は、実施例7のような以前の操作と比較して細胞成長に追いつき、生産性を増加させた。さらに、(204時間の時点後に)濃グルコースを添加したが、これは細胞バイオマスに対して直接的な影響を及ぼした。これらの変更は、以前に実証されたよりも多くのバイオマスをより高い生産性で採取することを可能にした。
【0305】
図11は、ハイブリッド培地を使用したE. グラシリスの連続発酵中の空気流および排出ガスプロファイルを示す。本研究では、カスケード方式で空気をバイオリアクタ内に供給した、すなわち、1~5L/分の空気流量を制御パネルに設定し、バイオリアクタ内の最小pO
2/DOレベル(すなわち、20%)を維持するために、システムがその必要条件を自動的に調整した。本研究は、細胞が指数関数的に成長しているフェドバッチ給餌相の間、最高レベルの空気(すなわち、3.9L/分)が必要であったことを示す。さらに、60時間の培養においても、撹拌速度は十分に高いことが観察されたが、撹拌速度が156時間において600rpmに増加されるまで、撹拌速度は最低レベル(すなわち、300rpm)まで低下した(表24)。しかしながら、これらの結果は、ハイブリッド培地がバイオリアクタ内に添加され始めるとすぐに、空気供給への需要が最小になったことを示している。これは、培地中で十分な量のグルコースが利用できないために起こり得る。それにもかかわらず、グルコースレベルがバイオリアクタ内で約10g/Lに維持されると直ちに空気供給は自動的に増加されたが、372時間の培養時には最低レベルまで再び低下した。空気流および排出ガスプロファイルに基づいて、372時間の培養後に細胞が不活性になったことは明らかである。しかしながら、OUR、CERおよびRQが増加した一方で、より大量の空気が必要とされ、その逆も同様であったので、これらの結果は、排出ガスデータ(すなわち、OUR、CER、およびRQ)がシステム内に供給される空気に依存することを示している。OURは、1時間当たり培養物1リットル当たり何モルのO
2が消費されるかである酸素の取り込み/利用速度を表す。CERは、1時間当たり培養物1リットル当たり何モルのCO
2が生成されるかである二酸化炭素の発生速度である。RQは、呼吸商/係数であり、呼吸商/係数とは、呼吸中にユーグレナによって消費された酸素の体積に対するユーグレナによって生成された二酸化炭素の体積の比である。しかしながら、OURプロファイルを見ると、ハイブリッド培地の連続給餌中にいくつかの負の値が得られた。これは、ガス混合物よりわずかに高い出口O
2値(すなわち、21%)を測定することに起因して生じた。連続的な給餌および採取の開始時(121~204時間)に負の値が得られたが、再利用培地(約7g/Lのグルコースを含有する)を給餌したために、バイオリアクタ内のグルコース濃度は極めて低かった。バイオリアクタ内のグルコース濃度が約10g/Lの維持グルコース濃度に達すると、細胞はグルコースを使用し始め、出口O
2(%)値は(酸素を使用して)減少し始め、出口CO
2(%)値は副産物として増加した(CO
2を生成する)。ユーグレナは微細藻類であるので、エネルギー源としてCO
2を使用し、O
2を産生する能力を有する。排出ガス分析の場合、出口O
2値が減少して、出口CO
2が増加し、逆もまた同様であるというのが共通の傾向である。純粋なCO
2がバイオリアクタ内に供給される一方で、有機炭素源がバイオリアクタ内で低下することの結果を決定するために、さらなる実験が必要とされる。
【0306】
理論に縛られることを望むものではないが、O2レベルの観察された増加およびCO2量の減少に対する1つの説明は、従属栄養性のユーグレナがストレスまたは炭素欠乏条件下でCO2を炭素源として利用することができるというものであり得、これは予想外である。これは、経路が存在すること、またはユーグレナ中のエネルギー生成経路が光条件下で見られる完全に機能的な葉緑体中のみならず、色素体中でも機能することができることを示唆している。比較として、炭素制限が存在しなかった対照実験では、O2に負の値は観察されなかった。さらに、従属栄養的に成長したE. グラシリス細胞はCO2を固定することができることが示された。これは、典型的には、制限栄養素条件下で行われ、TCA中間体を補充するための方法として機能し、特定のアミノ酸の生成をもたらすことができる。
【0307】
図12は、E. グラシリスの連続発酵中の代謝産物プロファイルを示す。このデータによれば、発酵の過程でCa+の消費はあまり観察されず、本実験で使用された複合培地からのCaSO
4の低下の可能性が示された。本発明者らの研究室によって行われた化学組成が明らかな培地(CDM)におけるCaSO
4最適化の結果も、この観察を確認した。このデータを見ると、バッチ相およびフェドバッチ相の間に、細胞がホスファートおよびマグネシウムの両方を消費したことが明確に観察される。しかしながら、両成分は、ハイブリッド培地がバイオリアクタ中に添加され始めるとすぐに蓄積することが見られた。したがって、グルコース濃度がバイオリアクタ内で約10g/Lに維持されると、両成分は急激に低下した。グルコースの添加による成長速度を満たすために、細胞はホスファートとマグネシウムの両方を急速に消費したと思われる。しかしながら、ホスファートおよびマグネシウムはいずれも、264時間から再び増加し始めた。それにもかかわらず、ホスファートレベルは372時間から再び減少したが、これは説明がつかない。スクシナート/コハク酸含有量も、HPLCによってすべての試料において分析した。これらの結果は、発酵の開始時、すなわち0時間で約0.4g/Lのスクシナートが存在したことを示している。理論に縛られることを望むものではないが、スクシナートは本発明者らの培地に添加されなかったが、酵母抽出物用であり得る。以前の実験では0.4g/Lが見られ、実験の過程でわずかな変動があった。本実験では、スクシナートのレベルは、発酵のいくつかの時点でわずかに低下したが、発酵の終わりまでに約0.4g/Lまで再び増加した。さらに、アセタート、ラクタート、エタノールおよびピルバート含有量をCEDEXによってすべての試料において分析した。しかしながら、結果は、これらがすべての試料において検出限界未満であることを示した。
【0308】
対照としてのユーグレナ・グラシリスの連続培養
1. 背景
本実験では、新鮮培地を用いた連続発酵を、バッチ、フェドバッチ、および連続形式の3ステップ過程において使用する。これらの結果を、新鮮培地の代わりにハイブリッド培地を添加した上記の再利用(ハイブリッド)実験と比較する。
【0309】
2. 方法
2.1. 母培養物の維持およびシード接種材料の調製
実施例8においてハイブリッド培地について上記したものと同じである。
【0310】
2.2. 連続発酵
培養の12時間ごとに希釈速度/フィード速度を変化させながら細胞成長/密度を一定のレベルに維持できるかどうかを調べるために、本研究では、連続/ケモスタット発酵を行った。細胞成長が一定の比成長速度で起こり、すべての培養パラメータ(すなわち、培養体積、溶存酸素濃度、栄養素および生成物濃度、pH、細胞密度など)が一定の状態を保つ定常状態を確立することを試みた最終目標を円滑に達成するために、本実験を開始する前に、すべての培地および関連するストック/試薬を調製した。実験全体(すなわち、母培養物の維持、シード繁殖および連続発酵)を通じて複合培地(すなわち、グルコース、酵母抽出物、硫酸アンモニウム、各種の塩、各種のビタミン、各種の微量金属塩、および植物油を含有し、pHは3.2に調整される)を使用した。ビタミン混合物および微量金属混合物の組成はそれぞれ表2および3に記載されており、シード/バッチ/フィード/複合培地の組成は表1に記載されている。
【0311】
連続発酵は、最初、バッチ培養モードから開始された。発酵の開始時(「0」時間)での細胞濃度が約OD600(600nmでの光学密度):0.5~2.0またはWCW:2~4g/Lになるように、シード接種材料の細胞密度は、20~40g/LのWCWであるべきである。連続発酵の培養パラメータは以下のとおりである:28℃での温度、pH3.2、300~600rpmでの撹拌、0.4~2vvmの空気流量および20%DO/pO2。発酵中、30mLの試料を12時間ごとに定期的に収集した。試料採取直後に、顕微鏡法によって細胞形態、pHメータによってpH、分光光度計(OD600)および公知量の培養ブロスの遠心分離によって細胞密度(WCW)、YSIによってグルコース濃度について試料を分析した。CEDEXバイオアナライザおよびHPLCによって試料をさらに分析して、代謝産物濃度を決定した。WCW測定を通じて得られた細胞ペレットを、これらの試料の乾燥細胞重量(DCW)が決定されるまで-80℃で凍結した。公知量の上清(すなわち、遠心分離によって細胞ペレットを取り出した後)を凍結乾燥することによって、培養ブロス中の総溶質濃度も測定した。
【0312】
バイオリアクタ内のグルコース濃度が制限的であることが観察されている間(すなわち、0~5g/L)、バッチモードとして36~48時間発酵を実行した後、フェドバッチモード(すなわち、フィード培地を一定の流量でバイオリアクタ内に供給した)を通じてさらに2日間培養を行った後、培養を真の連続モード(すなわち、培養体積を一定に維持するために、同様の流量で連続給餌および採取)に切り替えた。バッチ相のグルコース濃度が5g/Lに近づいたら、バイオリアクタから培養ブロスを採取することなく、一定流量でフィード培地(すなわち、15g/Lのグルコースを含有する。)を添加した。バッチ相の終了時における細胞密度(X=gDCW/L、最初にWCWとして測定され、0.32の係数を掛けたもの)および培養体積(V=L)および一定の比グルコース取り込み速度(qs=0.07gglu/gDCW/時間)およびフィード培地中のグルコースの濃度(Sf=15g/L)に基づく指数関数的給餌式を使用して、フィード培地の流量(F、mL/時間)を計算した。フェドバッチ相におけるフィード流量を計算するために使用される式は以下のとおりである。
F(mL/時間)×1000
【0313】
Monodの式によれば、生物の比成長速度は通常、バイオリアクタ内の栄養素濃度とともに増加することが十分に証明されている。さらに、上記の指数関数的給餌式によるフィード培地の連続添加の後でさえ、ユーグレナのフェドバッチ発酵中にバイオリアクタ内の限られたグルコースレベルが何回も観察されたので、培養の12時間ごとに濃グルコース溶液(200g/L)を添加することによってバイオリアクタ内のグルコース濃度を約10g/Lに維持することを決定した。これは、204時間の培養まで濃グルコースが給餌されなかったハイブリッド実施例とは異なる。表26中の式[h=(g-f)*(e/200)*1000]を使用して、フェドバッチおよび連続給餌相の間、バイオリアクタ中に給餌するために必要とされる濃グルコース溶液の量を決定した。
【0314】
(表26)フェドバッチおよび連続発酵中に使用される濃グルコース添加の計算機
【0315】
本実験では、本発明者らは、給餌を開始するために0.03h-1の希釈速度(D)を設定し、これは、その時点で細胞のウォッシュアウトが起こる臨界希釈(Dcrit)/最大比成長速度(μmax)より低い。ウォッシュアウトの防止を試みるために希釈速度を下げたので、これは、ハイブリッド培地実施例とは異なる。発酵ブロスを連続的に採取し、一定の培養体積を維持するために、バイオリアクタ中で利用可能な金属浸漬管の一端を所定の体積マークに設定し、他端はシリコーンチューブに取り付け、予め設定された体積で発酵ブロスを連続的に引き出すために蠕動ポンプ中に挿入した。所定の希釈速度(D=0.03h-1)および培養体積(V=2.5L)に基づいて、連続発酵中のフィード速度(F、mL/時間)を計算した。連続相におけるフィード流量を計算するために使用される式は、以下のとおりである。
F(mL/時間)=V.D.1000
【0316】
本研究では、連続発酵の間、定常状態を達成し、一定の細胞密度を維持するために、フィード速度を12時間ごとに変更した。一定の細胞密度を維持することとは別に、本発明者らの主な目標の1つは、ユーグレナバイオマスの生産性を増加させることであった。このため、最大比成長/臨界希釈速度より高い比成長/希釈速度でユーグレナを成長させることの効果(すなわち、細胞のどの程度までウォッシュアウトが観察されるか、代謝産物プロファイルに対する影響)を調べた。目標とされる細胞密度(すなわち、フェドバッチ相の終了時におけるWCW、一定)、現在のフィード速度(すなわち、最後の12時間に、フィード培地が供給された速度)、現在の細胞密度(すなわち、測定される現在のWCW)に基づいて、フィード速度計算機を開発した。表27中の式[d=(b*c)/a]を使用して、12時間ごとの新しいフィード速度を計算した。それにもかかわらず、フィード速度を変化させることにより希釈速度が同時に変化したことは明らかである。
【0317】
(表27)連続発酵中に使用されるフィード速度計算機
【0318】
3. 結果および考察
200mLのシード培養物を調製したが、1.5Lのバッチ培地に100mLのみを接種した。このため、バッチ相の開始時の培養体積は1.6Lであった。シード培養物を接種する前に、600μLの2500×ビタミン混合物(すなわち、1.5Lバッチ培地に対して必要とされるビタミンの量)を接種フラスコ中に添加した。発酵の「0」時間(すなわち、シード接種直後)での細胞密度は、OD600約1.36およびWCW約11.55g/Lであった(表28)。12時間の試料において決定されたWCWは3.6g/Lであったので、「0」時間の試料のWCWを測定する際に誤り(すなわち、おそらく遠心分離管から水が完全に除去されなかった)が存在した可能性があり、これはかなり合理的である。「0」時間でのグルコース濃度は、15g/Lであるはずであったが、YSIによって13.54g/Lであると決定された。これはおそらく、100mLのシード接種材料をバイオリアクタ中に接種したために培地中のグルコース濃度が希釈されたことによって起こる。しかしながら、36時間の培養後に(すなわち、バッチ相の終了時に)、バイオリアクタ内のグルコース濃度は7.63g/Lと測定され、細胞密度はOD600約8.89およびWCW約16.2g/Lまで増加された(表28)。
【0319】
(表28)ハイブリッド培地を使用した連続発酵中のE. グラシリスの成長および培養条件
【0320】
バッチ相の完了後、バイオリアクタ内のグルコース濃度が約5g/Lに近づくにつれて、フィード培地を52.1mL/時間の一定のフィード速度で添加した。48時間にわたって合計2.5Lのフィード培地を添加して、4Lの培養体積に達した。本実験では、フィード速度を計算するために0.07gglu/gDCW/時間の比グルコース/基質取り込み速度が設定されたが、本発明者らの実験室において行われた以前のすべてのフェドバッチ実験に対しては、0.05gglu/gDCW/時間の値が検討された。より高い値の比グルコース取り込み速度を検討する理由は、細胞の最大成長速度で成長させるのに十分な量のグルコースを細胞に提供するためであった。さらに、グルコースの不足のために細胞成長が制限されないように、濃グルコース溶液(200g/L)を12時間ごとに添加して、バイオリアクタ内のグルコース濃度を約10g/Lに維持した。このため、フェドバッチ相の終わりに(すなわち、培養の84時間に)、OD600約37.69およびWCW約57.85g/Lの細胞密度が達成された。さらに、それは、以前に行われた他のフェドバッチ発酵の細胞密度よりもはるかに高い細胞密度をもたらした。この結果は、培養の12時間ごとにバイオリアクタ内のグルコース濃度を約10g/Lに調整することによって生じた可能性がある。それにもかかわらず、このデータは、より高い比グルコース取り込み速度を検討し、バイオリアクタ内で約10g/Lグルコースを維持した後でさえ、フェドバッチ相の終了時の残留グルコース濃度が約1g/Lであったことを示す(表28)。この結果は、フェドバッチ培養の指数関数的給餌の間に約10g/Lのグルコースよりさらに高いグルコースを維持することを示唆している。
【0321】
フェドバッチ相の終わりに、バイオリアクタ内の培養体積が2.5Lであることを確認しながら、蠕動ポンプを使用して約1.5Lの発酵ブロスを採取した。無菌性を確保するために、シリコーンチューブの一端をバイオリアクタ中で利用可能な浸漬管に接続し、他端を採取容器に接続した。次いで、0.03h-1の予め設定された希釈速度を満たすために、75mL/時間の速度でフィード培地をバイオリアクタ中に添加し、培養体積を一定に維持するために同じ速度で発酵ブロスを採取した。連続給餌相の間、約50g/LのWCWの一定の細胞密度を維持することを目標としてフィード速度を12時間ごとに変更したが、発酵の84時間でのWCWは57.85g/Lであった。これは、フェドバッチ相の間に達成されたWCWによるものである。しかしながら、フィード速度は、84時間から168時間の培養中に連続的に(75mL/時間から180mL/時間に)増加することが観察された(表29)。実際には、フィード速度は、120時間の培養から180mL/時間より高くなると予想されたが、バイオリアクタに取り付けられたポンプの制約を考慮すると、上限は180mL/時間であった。
【0322】
これにより、発酵の144時間で約71.6g/LのWCWの細胞密度(表29)および約5gWCW/L/時間(約1.6gDCW/L/時間)の生産性(表29)が得られた。さらに、より高いレベルの生産性(約2gWCW/L/時間)が108時間(すなわち、発酵の96時間から204時間まで)維持された(表29)。これらのより高い細胞密度および生産性は、フェドバッチ相の開始からバイオリアクタ内のグルコース濃度を約10g/Lに調整することによって達成されたと当初仮定された。しかしながら、これらの生産性値は予想よりはるかに高く、この有望な結果は、ユーグレナのバッチ発酵によって以前に計算された成長特性データ(すなわち、最大比成長速度、収率など)と一致しなかった。それにもかかわらず、シリコーンチューブ(すなわち、このチューブを通じてフィード培地がバイオリアクタ中に添加された)が、バイオリアクタと接続された第2の給餌ボトルの誤ったポートに取り付けられたことに気付き(すなわち、各10Lボトル中に7Lの培地しか調製できなかったので、連続給餌中に給餌ボトルを交換しなければならなかった)、これは、フィード培地が25~30時間(すなわち、発酵のおよそ125時間から150時間まで)バイオリアクタ内に送り込まれなかったことを意味し、この誤りは25~30時間後に特定されたためである。しかしながら、その期間中に濃グルコース溶液(200g/L)が添加され、高い細胞密度と生産性をもたらした。バイオリアクタからの細胞のウォッシュアウトのために、より高い生産性測定基準をより長期間維持することはできなかった。このウォッシュアウトによって、細胞密度およびバイオマス生産性が低下した。
【0323】
図13は、連続培養の過程にわたって、グルコース消費プロファイルとともに、ユーグレナの2つの主要な成長パラメータ(すなわち、WCW、OD
600)を示す。本発明者らは、細胞密度(OD
600およびWCWの両方)が発酵の144時間まで増加し続け、その後発酵の終了まで減少し始めたことを明確に観察する。しかしながら、連続相の間、残留グルコース濃度は少なくとも約2g/Lであったので、これらの結果は、バイオリアクタ内でグルコースが利用できないために細胞がストレスを受けたわけではないことを示した。しかしながら、細胞密度は培養の156時間から急激に低下し、これはおそらく高いフィード速度でフィード培地を供給したことによるものであった。156時間に設定された希釈速度は0.072h
-1であり、ユーグレナの最大比成長速度(μ
max)よりはるかに高く、おそらくは、これが急速に細胞のウォッシュアウトをもたらした。このため、発酵の後期相の間に、バイオリアクタ内でより高いグルコースレベルが決定された。しかしながら、120時間での細胞密度(すなわち、OD
600およびWCW値の両方)が何故突然低下したかについての特定された理由は存在しなかった。
【0324】
図14は、連続発酵中に関与する主要な培養パラメータのプロファイルを示す。本研究では、大気はpO
2/DOレベルを制御するためにのみ供給されたので、気体混合物は21%(すなわち、空気は約21%のO
2を含む)に維持された。pO
2/DOレベルを20%に制御するために、空気の添加(1~5L/分)および撹拌(300~600rpm)を通じたカスケード制御を検討した。培養は300rpmの撹拌速度で開始されたが、最小pO
2/DO要件(すなわち、20%)を満たすために、フェドバッチおよび連続給餌の間、ほぼその最大レベルまで増加した。同様に、発酵の過程中、空気流量を自動的に増加または減少させた(
図16)。
図14は、細胞が発酵の132時間まで指数関数的パターンで成長していたことを明確に示す。フィード培地が高いフィード速度/希釈速度で供給され始めるとすぐに、細胞のウォッシュアウトが起こり、細胞のOURが低下し(
図16)、バイオリアクタ内の増加したpO
2/DOレベルをもたらした。この時間の間に細胞内で生じた他の代謝的変化が存在し得る。
【0325】
(表29)E. グラシリスの連続発酵についての重要なパラメータおよびバイオマス生産性
【0326】
本研究では、バイオリアクタ内の細胞密度を一定に維持するために、実験全体を通じてフィード速度を変更したが、これは、フィード速度が連続相中に一定に維持された実施例4からの改善である。フェドバッチ相(36時間から84時間まで)の間、52.1mL/時間の一定のフィード速度で、フィード培地を添加した(表29)。しかしながら、連続的な給餌および採取を開始するために、75mL/時間のフィード速度(すなわち、培養体積は2.5Lであったので、0.03h
-1の希釈速度)を予め設定した。その後、フィード速度を12時間ごとに変更して、50g/LのWCWを維持した(すなわち、連続相の開始時の細胞密度は、WCW約57.85g/Lであったが)。
図15の結果は、フィード速度が84時間から132時間まで継続的に増加したことを示している。しかしながら、フィード速度は発酵の192時間から急激に低下し始めた。生産性は156時間の培養から減少することが観察された。しかしながら、192時間の培養後に、培養物により高いフィード速度で給餌し続けることは不可能であった。培養物は過剰給餌され、細胞は最終的にバイオリアクタからウォッシュアウトされたようである。本研究では、13日の期間にわたって合計23Lの発酵ブロスが採取されたが、連続的な給餌および採取は、2.5Lの培養体積で開始された。これは、連続発酵を行うことの最も重要な利点の1つである。
【0327】
図16は、E. グラシリスの連続発酵中の空気流および排出ガスプロファイルを示す。本研究では、カスケード方式で空気をバイオリアクタ内に供給した、すなわち、1~5L/分の空気流量を制御パネルに設定し、バイオリアクタ内の最小pO
2/DOレベル(すなわち、20%)を維持するために、システムがその必要条件を自動的に調整した。本研究は、細胞が指数関数的に成長しているフェドバッチ給餌相の間、最高レベルの空気(すなわち、3.72L/分)が必要であったことを示す。さらに、培養の72時間においても、撹拌速度は十分に高いことが観察されたが、撹拌速度が96時間において600rpmに増加される前に、撹拌速度は若干低下した。これらの結果は、本発明者らが培養物を厳密に希釈し始めるとすぐに、空気供給の需要が最小であったことを示している。空気流および排出ガスプロファイルに基づいて、168時間の培養後に細胞が不活性になった。しかしながら、OUR、CERおよびRQが増加した一方で、より大量の空気が必要とされ、その逆も同様であったので、これらの結果は、排出ガスデータ(すなわち、OUR、CER、およびRQ)がシステム内に供給される空気に依存することを示している。
【0328】
図17は、E. グラシリスの連続発酵中の代謝産物プロファイリングを示す。このデータによれば、発酵の過程中にCa+の消費はほとんど観察されず(すなわち、培養の0時間での初期濃度と比較して、144時間後に約30%の消費)、これは複合培地からのCaSO
4の低下の可能性を示している。このデータを見ると、バッチ相およびフェドバッチ相の間に、細胞がホスファートおよびマグネシウムの両方を消費したことが観察された。しかしながら、両成分は発酵の144時間から(すなわち、連続給餌相の間に)蓄積していることが見られた。この結果は、おそらく高いフィード速度でフィード培地を添加したために生じた。これに加えて、代謝シフトが存在した可能性があり、ホスファートおよびマグネシウム消費速度の速度をより遅くした。スクシナート/コハク酸含有量も、HPLCによってすべての試料において分析した。これらの結果は、発酵の開始から約0.4g/Lのスクシナートが存在し、酵母抽出物に由来し得ることを示している。さらに、アセタート、ラクタート、エタノールおよびピルバート含有量をCEDEXによってすべての試料において分析した。しかしながら、結果は、これらがすべての試料において検出限界未満であることを示した。
【0329】
4. 結論
本研究は、実験室で使用された標準的な複合培地を使用して、様々な希釈速度/フィード速度でユーグレナの連続培養を行うことができることを確認した。目的は12時間ごとにフィード速度を変更することによって定常状態条件を確立することであったが、このデータは、12時間の試料採取時点を使用するのであれば、これを最適化する必要があることを示唆している。例えば、数時間ごとに追加の測定が行われるか、またはオンライン監視システムが使用されるのであれば、定常状態が可能であり得る。
【0330】
バイオリアクタ内にフィード培地を添加している間に誤りは存在したが、連続発酵を行うことにより、全体の生産性を5gWCW/L/時間(1.6gDCW/L/時間)に増加させることが可能であった。しかしながら、本研究を通じて達成された生産性測定基準はユーグレナのバッチ発酵を通じて以前に計算された成長特性データ(すなわち、最大比成長速度、収率など)と一致しなかったので、予想よりはるかに高かった。それにもかかわらず、より高いレベルの生産性(約2gWCW/L/時間)を108時間(すなわち、発酵の96時間から204時間まで)維持することが可能であった。これは、フィード様式を一定に保つことに代えた適応的なフィード様式によるものであり、これは次いでより高い細胞生産性をもたらす。これは、フィード速度が一定であった実施例4と、フィード速度が細胞成長に合致した本実施例との相違によって見ることができる。しかしながら、ここでは、この生産性をより長期間維持することができなかった。これは、最大成長速度(μmax)より高い希釈速度でフィード培地を添加したためであり、これにより、細胞のウォッシュアウトが急速にもたらされ、細胞密度および生産性を低下させた。
【0331】
全バイオマス収率は、各インプットベース(gDCW/gインプット)で計算され、約34%である。これは、バッチ発酵から以前に達成されたものと非常に類似している。しかしながら、この結果は、実験室で以前に行われたフェドバッチ実験で達成されたものよりかなり高い。フェドバッチ発酵における各インプットベースでのバイオマス収率が低い理由は、5倍濃グルコースとともに5倍濃度の塩が添加された5倍給餌培地を使用することである。
【0332】
物質収支
測定された別の局面は、発酵操作のためのインプットおよびアウトプットである。これには、酸素気体(O
2)inおよびout、二酸化炭素気体(CO
2)inおよびout、フィード材料(すなわち、フィード培地)の重量、新鮮な水inの重量、使用される再利用培地の重量、ならびにバイオマスoutの質量が含まれた。これらは、以下のように計算された。
式中、空気inのリットルは投入された空気の量であり、酸素気体inのパーセンテージは大気中の想定されるパーセンテージであり、理想気体の1モル当たりのリットルは22.4L/モルであり、O
2の分子量は32g/モルである。
【0333】
O
2Outは、以下のように計算される。
式中、空気inのリットルは投入された空気の量であり、酸素気体outのパーセンテージは、Blue Sense排出ガス分析装置によって測定され、理想気体の1モル当たりのリットルは22.4L/モルであり、O
2の分子量は32g/モルである。
【0334】
CO
2inは、以下の式によって測定される。
式中、空気inのリットルは投入された空気の量であり、二酸化炭素気体inのパーセンテージは大気中の想定されるパーセンテージであり、理想気体の1モル当たりのリットルは22.4L/モルであり、CO
2の分子量は44.01g/モルである。
【0335】
CO
2Outは、以下のように計算される。
式中、空気inのリットルは投入された空気の量であり、二酸化炭素気体outのパーセンテージは、Blue Sense排出ガス分析装置によって測定され、理想気体の1モル当たりのリットルは22.4L/モルであり、CO
2の分子量は44.01g/モルである。ユーグレナ乾燥バイオマス重量は、グラム単位の湿潤細胞重量に、湿潤細胞重量と乾燥細胞重量の比に基づく変換係数(0.32)を掛けた乾燥細胞重量(DCW)によって決定される。
【0336】
乾燥重量をベースとするフィードは、以下のように計算される。
式中、総培地乾燥重量は1リットル当たりのグラム単位での総培地の質量であり、総新鮮培地は添加された培地の体積であり、総グルコースフィード体積は添加された量であり、グルコースフィード濃度は1リットル当たりのグラム単位での添加されたグルコースの濃度である。
【0337】
添加されたフィードの量当たりの生成されたバイオマスの正味収率は、以下のように計算される。
式中、乾燥バイオマスの量はバイオマスの質量であり、フィードの量(乾燥重量)は、バイオマスを生成するために使用されたフィード(インプット、培地)の質量であり、値をパーセンテージとして与えるために100を掛ける。
【0338】
【0339】
さらに、生成されたバイオマスの量当たりの使用されたCO
2の量も以下のように計算される。
式中、CO
2の生成は、CO
2outとCO
2inの差であり、生成されたバイオマスの量で割って、バイオマス1kg当たりの産生されたCO
2の量を得る。
【0340】
以下の表30および31では、発酵操作(ハイブリッドおよび対照)のためのインプットおよびアウトプットの総量が表として記載されている。これらの数字から、正味収率、新鮮な水の使用およびバイオマスの単位当たりの生成されたCO2の量は以下のとおりである。
ハイブリッド: 正味収率=37%、新鮮な水の使用=52.2(L/バイオマスのkg)、バイオマス1kg当たりの生成されたCO2のkgは0.466である。
【0341】
これらの数字に意味を与えるために、再利用培地を添加しない対照操作を実施し、その発酵操作の数字は以下のとおりである。
対照: 正味収率=34%、新鮮な水の使用=68.2(L/バイオマスのkg)およびバイオマス1kg当たりの生成されたCO2のkgは0.410である。
【0342】
ハイブリッド培地操作と比較すると、対照の効率はより低く、生成されたバイオマス1kg当たりより多くの水を使用し、ハイブリッド培地の場合よりわずかに少ない二酸化炭素が生成された。これは、ハイブリッド培地アプローチが、そのインプットの使用においてより効率的であり、より少ない水を使用するが、対照連続実験と極めて類似したCO2量を生成することを示唆している。
【0343】
(表30)ハイブリッド培地発酵操作および対照発酵操作に対する物質収支計算インプット
【0344】
(表31)ハイブリッド培地発酵操作および対照発酵操作に対する計算のための物質収支アウトプット
【0345】
さらに、再利用培地は、ユーグレナの連続培養のために使用され得ると結論付けられる。これらの結論は、この発酵を一切中断することなく3週間実行できることが実証されたことに基づいて導き出される。しかしながら、細胞成長は、炭素および窒素源の利用可能性に依存する。ここでは、培地中で複合窒素源(すなわち、酵母抽出物)を用いた。グルコースプロファイルに基づいて、再利用培地のフェドバッチおよび初期連続給餌相のいずれの間においても、残留グルコースレベルが極めて低いことが観察された。このため、培養の204時間でグルコースを含めることを決定したが、これは、約10g/Lのグルコースを維持するためにバイオリアクタ中に濃グルコースを添加した場合に細胞成長パターンの変化を引き起こした。12時間ごとにフィード速度を変えることによって定常状態条件を確立することが望まれたが、このデータは、12時間の試料採取時点に基づくと、最適化される必要があることを示している。例えば、数時間ごとに追加の測定が行われれば、またはオンライン監視システムが使用されれば、定常状態が観察され得る。この点に関して何らかの結論を導き出す前に、十分な量のグルコースを含有する再利用培地を使用するさらなる実験が必要である。
【0346】
連続発酵を行うことによって、2.31gWCW/L/時間(0.74gDCW/L/時間)への全体的な生産性の増加が達成された。より高い生産性(約2gWCW/L/時間)は60時間(すなわち、276時間から336時間まで)しか維持されず、最大成長速度(μmax)より高い希釈速度でハイブリッド培地を添加することによって、細胞がゆっくりとウォッシュアウトされ、細胞密度および生産性を低下させた結果であると考えられる。
【0347】
本発明者らは、各インプットベースで全バイオマス収率(gDCW/gインプット)を計算したところ、約37%である。これは、バッチ発酵から以前に達成されたものと非常に類似している。しかしながら、この結果は、以前のフェドバッチ実験で以前に達成されたものよりもかなり高い。フェドバッチ発酵における各インプットベースでのバイオマス収率が低い理由は、5倍濃グルコースとともに5倍濃度の塩が添加された5倍給餌培地を使用することである。過剰な塩は、その時点でグルコースおよび/または窒素源のみが必要とされる場合に、成長を阻害し得る。
【0348】
物質収支の観点から、ハイブリッド培地操作は、より良好な効率を有し、対照よりも少ない水を使用したが、わずかに高いCO2産生を有した。ハイブリッド実施例は酸素も産生し、CO2をエネルギーに変換した可能性があることを示唆している。全体として、連続的なハイブリッド培地操作は、増大した生産性、効率を示し、全体としてより少ない水を使用した。
【0349】
実施例9:ユーグレナ成長に対する2つの濃度の有機酸の効果
本実施例では、グルコースの存在下および非存在下で、異なる濃度(低および高)の5つの異なる有機酸の効果を試験した。低レベルの有機酸は、低濃度の有機酸が培地中に見出されるハイブリッド培地アプローチにおいて再利用培地を使用した場合に見出される条件を模倣するために選択された。より高い濃度は、より高い濃度での影響および有機酸を炭素源として利用するユーグレナの選好性を調べるために選択された。代謝理論によれば、代謝への炭素源の進入点および炭素源が逐次的に使用されるかまたは同時利用されるか否かに基づいて、炭素源は2つのカテゴリーにグループ分けすることができる:グループA(実施例10参照)の源は、共通の進入点を通じて代謝に入り、細胞の選好性の順序で主に逐次的に代謝される-一般に異化産物抑制とされる過程(一般的には糖であるが、糖に限定されない)。グループB(実施例10参照)の源は、複数の点で代謝に入り、同時利用されて増加された成長速度および生成物(一般的には有機酸であるが、有機酸に限定されない)の増強された産生をもたらすことができる。
【0350】
方法
細胞培養物の調製は、前述のように行った。簡潔には、3mLの活発に成長しているE. グラシリスのシード接種材料を、実施例6で述べたように50mLの培地を含有する125mLフラスコ中に添加した。培地は、表32に示されているように炭素源の様々な組み合わせを含有していた。培地中の最終細胞数は約200万細胞/mLであった。
【0351】
発酵は、連続振盪(120rpm)しながら28℃で120時間行った。測定は、0時間、24時間、48時間および120時間に行った。0時間、48時間および120時間で、12mLの試料を採取した。試料を使用して、乾燥細胞重量(DCW)、光学密度(OD600)、細胞数、%固形分、グルコース、顕微鏡による細胞形態および有機酸濃度を測定した。24時間で、8mLの試料を固形分として取り出し、DCWを決定しなかった。
【0352】
分析方法
乾燥細胞重量(DCW)を実施例3に記載されているように重量測定法で決定した。グルコース濃度は、実施例3で決定したように測定した。
【0353】
有機酸:
1mLの採取されたバイオマスを遠心分離し(14000rpm;1分)、上清を得た。CEDEXを使用して、上清中に存在する酢酸、ピルビン酸および乳酸を決定した。上清中の分析された酸の濃度を、標準的な操作との比較によって決定した。
【0354】
5mLの上清を各処理から収集し、分析が行われ得るまで-80℃で保存した。0.2umフィルターおよび5ccシリンジを通して、2mLの試料をランニングバイアル中に濾過した。有機酸含有量は、HPLCを用いて検出した。DADおよびHPX-87HのAminex HPLCカラム(300×7.8mm)を備えたAgilent HPLC-1260インフィニティシステムを使用した。移動相は5mM硫酸であり、0.35mL/分の流速で、40℃で加熱された。DAD検出器を210nmに設定した。オートサンプラを介して0.2μmシリンジフィルターを通して濾過した後、10Lの試料を直接注入した。作成された標準検量線から得られた検量線を使用し、フマル酸、IC用マラート標準物質、IC用スクシナート標準物質、ピルビン酸(Sigma Aldrich)を使用して、個々の有機酸濃度を計算した。
【0355】
固形分%:
固形分は、重量測定により決定した。5mLのバイオマスを遠心分離し(5000rpm;10分)、予め秤量した15mLファルコンチューブ中に上清を移した。上清とともにチューブを再秤量し、次いで、LABCONCO真空凍結乾燥機を用いて-87℃で凍結乾燥した。乾燥過程の最後に、チューブおよび残留固体を秤量した。固形分は、以下の式を使用することによって決定した。
【0356】
OD:
1mLのバイオマスをキュベットに添加し、分光光度計を使用して600nmでODを測定した。
【0357】
【0358】
(表33)培地中に添加されたグルコースおよび/または酸の濃度。各処理は、2つ組で行った。
*コハク酸を含むいくつかの有機酸は、培地中に固有に存在し、したがって、検出される濃度に影響を及ぼし得る。
【0359】
結論
実験から得られた第1の結論:(i)ユーグレナ・グラシリスZは、炭素源として異なる種類の酸を利用することができ、(ii)グルコース含有培地への酸の補充は、ユーグレナ・グラシリスZのバイオマス生産を改善し、炭素源の同時利用を可能にすることができる。
【0360】
より低い濃度(0.0005g/L~0.05g/L)では、唯一の炭素としてまたはグルコース(15g/L)と組み合わせて試験された酸のいずれもが、ユーグレナ・グラシリスZの成長に対する阻害効果を示さなかった(表34参照)。陰性対照(グルコースなし)と比較して、酸単独のすべてが、20~100%の範囲の正味のバイオマス増加を与えた。グルコース単独(対照)と比較して、グルコースと組み合わせた乳酸およびフマル酸は、48時間の終わりに、それぞれ13.4%および7.5%高いバイオマスを与えた。この濃度(すなわち、0.05g/L)では、乳酸およびグルコース含有培地での変換効率およびバイオマス収量(g)/g炭素は、54.8%(グルコース対照よりも約8%高い)および1.35g/g炭素(すなわち、対照より約13%高い;
図18)であった。同様に、グルコース(15g/L)と組み合わせたフマル酸(0.0005g/L)は、グルコース単独(15g/L)と比較して21.9%高い変換効率を有した。フマル酸およびグルコースによって、このような優れた変換効率が見られたにもかかわらず、バイオマス収量(g)/g炭素は8.4%高いに過ぎなかった(
図18参照)。これは、系中に添加されたフマル酸の量(0.0005g/L)がグルコース(15g/L)と比較してはるかに少ないという事実によるものであった。そのため、フマル酸の完全な消費が存在し、バイオマス濃度の改善に寄与した場合でさえ、培地中のグルコース部分による寄与がフマル酸の効果を目立たなくした。
【0361】
すべての酸の消費は、以下のグラフから見ることもできる(
図19;表35参照)。有機酸のレベルは、ラクタートおよびピルバートに関しては48時間の終わりまでに検出することができず、これらの酸のレベルは、細胞によるグルコース取り込み速度に対して著しい影響を与えなかった。48時間の終わりまでにグルコースの約90%がすべての事例で消費され、かなり類似したレベルのグルコースがすべての事例で消費された(
図20参照)。表36、
図21、22に見られるように、より高濃度の酸添加で同様の結果が得られた。
【0362】
図19、20からは、48時間の終わりまでに、すべての酸が消費されたのに対して、いくらかのグルコースはなお残存していることも分かる。このことから、ユーグレナ・グラシリスZは、主要な炭素源(グルコース)が枯渇するのを待つというよりむしろ、グルコースとともに少量の酸を同時に消費すると結論付けることができる。
【0363】
有機酸単独の存在下では、有機酸は唯一の炭素源として消費される(
図19ならびに表34および35)。これは、グルコースと有機酸を別々の炭素源の群として特徴付ける報告された文献と一致する。組み合わせて添加されると、グルコースと有機酸は同時利用されることができ(表34および35;
図21)、この種の発酵はこれまでE. グラシリスにおいて十分には検討されてこなかった。E. グラシリス中にこの柔軟な代謝が存在することによって、成長および生成物のアウトプットを多種多様な炭素/窒素源に向けることが可能になる。
【0364】
(表34)より低い酸濃度を用いた48時間の終了時における正味のバイオマス変化(g/L)
【0365】
(表35)48時間にわたる発酵中の有機酸濃度(0.0005~0.05g/L)の変化(0.00は、検出限界を下回る数である)
【0366】
(表36)120時間にわたる発酵中の有機酸濃度(2~5g/L)の変化
【0367】
より高濃度の酸が培地単独中に添加された場合、ほとんどの酸は48時間の終了までに消費された(
図21;表36)。唯一の炭素源として、ピルバート(約2g/L)、マラート(約5g/L)、スクシナート(約5g/L)、ラクタート(約5g/L)またはフマラート(約5g/L)を含有する培地を使用して、48時間の終わりに、それぞれ0.90g/L、1.40g/L、2.20g/L、2.10g/Lおよび2.10g/Lの正味バイオマス培地が得られた。スクシナートおよびラクタートの場合、(48時間と比較して)それぞれ13.6%および9.5%の正味バイオマス濃度のさらなる改善が120時間の終わりまでに得られた(表37参照)。
【0368】
(表37)より高いレベルの酸(約2~5g/L)を単独でまたはグルコース(約15g/L)と組み合わせて添加した場合の発酵にわたるバイオマスの正味の変化
【0369】
より高いレベルの酸(約2~5g/L)をグルコース(約15g/L)とともに添加した場合、48時間の終わりでの全バイオマス濃度は、対照(グルコース単独)と比較してより高かった。15g/Lのグルコースを含有する培地中にリンゴ酸、コハク酸、乳酸およびフマル酸を補充すると、それぞれ4.6%、3.1%、1.5%および12.3%高いバイオマスが得られた(表37)。結果は、より低い酸の補充で得られたものとはわずかに異なっていた。より低い酸の補充(約0.0005~0.05g/L)では、リンゴ酸、乳酸およびフマル酸は、それぞれ-3%(低い)、13.4%(高い)および7.5%(高い)のバイオマス濃度を生成したが、より高い濃度(約5g/L)では、リンゴ酸、乳酸およびフマル酸は、グルコース対照と比較して、それぞれ4.6%、1.5%および12.3%多いバイオマスを生成した。このことから、グルコースとともに使用される酸の最適な濃度を決定することが重要であると結論付けることができる。
【0370】
最初の48時間の間の、より高濃度の酸の存在下でのグルコース消費は、より低濃度の酸のものと非常に類似していた(
図22参照)。
【0371】
実験から得られる第2の結論:ユーグレナは、グルコースと組み合わせて供給されると、炭素源としてグルコースと酸を一緒に消費することができる。
【0372】
より低い濃度の酸:既に上で論じたように、すべての酸の消費は、表36および36からも見ることができる。すべての酸は48時間の終わりまでに枯渇し、これらの酸のレベルは細胞によるグルコース取り込み速度に著しい影響を与えなかった。すべての事例で、約90%のグルコースが48時間の終わりまでに消費され、かなり類似したレベルのグルコースがすべての事例で消費された(
図20、23を参照)。
図19および20から、48時間の終わりまでに、すべての酸が消費されたのに対して、いくらかのグルコースはなお残存していることも分かる。このことから、ユーグレナ・グラシリスZは、主要な炭素源(グルコース)が枯渇するのを待つというよりむしろ、グルコースとともに少量の酸を同時に消費すると結論付けることができる。
【0373】
より高い濃度の酸では、48時間の終わりに、すべての事例において、いくらかのグルコースが培地中になお残存しているのに対して、一定のレベルまたはすべての酸がこの時間中に消費された。より低い濃度の酸と同様に、より高い濃度であっても、少量の酸がグルコースとともに同時に消費される(
図23参照)。
【0374】
実験から得られる第3の結論:(i)グルコース培地中でのより高濃度の酸では、成長は2つの相:グルコース顕著相(一次)および酸顕著相(二次)で起こる。(ii)グルコースでの一次成長の間に、ユーグレナ・グラシリスZは、いくらかの成長促進化合物を産生し得るか、または代謝経路が影響され得、これにより、二次成長の間、酸からのバイオマス産生が改善される。
【0375】
より高濃度のこれらの酸がグルコースとともに提供されると、ユーグレナ・グラシリスZは二相で炭素(グルコースおよび酸)を消費する。第1相、48時間の終わりには、ユーグレナ・グラシリスZはいくらかの量の酸とともにグルコースを消費する。第2相の間、48時間から120時間の間に、ユーグレナ・グラシリスZはその生存および成長のための炭素源として酸を利用する(
図24参照)。グルコースおよび酸消費プロファイルは、グルコースの大部分が48時間の終わりまでに消費されたことを示している(
図23)。また、この相の間に、いくらかの量の酸が消費された。消費されたグルコースおよび酸の量は、より低濃度の酸で得られたものと同様であった(表33および36、
図20、23)。グルコースが枯渇すると、48時間後、ユーグレナ細胞は、炭素源として酸を利用した(表36、
図24)。より高濃度の酸のみが供給されると、ユーグレナは直ちに炭素源としてより高濃度の酸を消費し始める。
【0376】
異なる濃度の酸を消費するユーグレナの能力をさらに理解するために、本発明者らは異なる濃度のフマル酸(2および5g/L)中で細胞を成長させた。本発明者らは、120時間の終わりまでに、いずれの事例においても、微生物がフマル酸のほとんどすべてを消費したことを見出した。各処理について、48時間および120時間での正味のフマル酸消費を決定した。グルコースと組み合わせて供給された場合の最初の48時間の間に消費されたフマル酸の量は約48~67%であったのに対して、フマル酸単独では約57~71%であった。120時間の終わりまでに、フマル酸は、グルコースとともに供給された場合に、両方の濃度で完全に利用された。しかしながら、単独で供給された場合には、フマル酸の最大77%が消費されたに過ぎなかった。このことから、グルコースの添加は、時間とともにフマル酸の完全な利用を補助することが分かる。
【0377】
2g/Lおよび5g/Lのフマル酸で得られた最大バイオマスは、極めて類似していた(すなわち、約1.5g/L)。このことから、本発明者らは、グルコースとともに使用されるフマル酸のレベルは、より低い濃度(すなわち、≦2g/L)で最適化されるべきであるということができる。このような最適化は、おそらく、グルコースとフマル酸のより良い相乗効果をもたらすであろう。これにより、その後、15g/Lのグルコース+5g/Lのフマル酸を含む培地を使用した場合に本発明者らが得たものと比較して、より高いまたは同様のレベルのバイオマスが得られるであろう。より低いレベルの酸を使用することによって、同様のまたはより高いレベルのバイオマスを得ることは、経済的な観点から常に好ましい。
【0378】
120時間で37.75%の変換効率を有するグルコース対照処理と比較して、フマル酸およびグルコースによる処理は、細胞の変換効率を増加させた。しかしながら、使用されるフマル酸濃度(すなわち、2g/Lまたは5g/L)にかかわらず、変換効率は同様のままであった。15g/Lのグルコース、2g/Lのフマル酸を用いた場合には、変換効率は57.4%であった。同様に、15g/Lのグルコース、5g/Lのフマル酸を用いた場合には、58.41%の変換効率が得られた。これは、グルコース含有培地へのフマル酸の添加が、バイオマスアウトプットへのインプットの効率的な変換を改善し得ることを示した。しかしながら、添加されるべき酸のレベルはさらに最適化されなければならない。
【0379】
より高濃度の酸が補充されたグルコース培地では、120時間の終わりに、酸からの総寄与は酸単独の寄与と比較してより高い(
図25)。これは、第1相の間に、グルコースが消費されると、酸からの成長をより効果的に支援するいくつかの他の成長促進化合物も放出されることを意味する。グルコースと組み合わせて供給されると、ほとんどの酸(コハク酸を除く)はよりよく消費、代謝され(酸からバイオマスへの産生)、有機酸濃度に基づくと、2つの炭素源は1つずつ逐次的に消費され得る(ジオーキシー)か、または同時に消費され得る(同時利用)ことを示している。120時間の終わりでの酸からの寄与を、発酵過程全体の間(すなわち、48時間または120時間)の最大の酸単独寄与と比較すると、ピルバート、リンゴ酸、乳酸およびフマル酸は、グルコースとともに供給された場合、72.73%、63.64%、5.56%および46.67%高い酸の寄与を有していたことが分かる。
【0380】
実施例10:発酵中のユーグレナ・グラシリスによるインプットの利用に関する代謝理論
ユーグレナが広範囲の条件で成長することを可能にするユーグレナの注目すべき代謝能力のために、ユーグレナは、生化学、生理学、進化、解剖学および工業的可能性の基本的な側面を理解するための科学的調査の主題となってきた。
【0381】
ユーグレナは、好気性および嫌気性条件において従属栄養的に(成長のための有機炭素源の取り込み)、混合栄養的に(成長のために異なるエネルギー源の混合物を使用すること)、および光独立栄養的に(専らCO2固定を介して炭素を得ること)エネルギーを利用することができ、今日のバイオテクノロジーで使用される微生物の中で類を見ない地位をユーグレナに与えている。
【0382】
ユーグレナの代謝的可塑性は、多様な環境条件下での生存を可能にする生化学的経路を獲得および/または進化させてきた10億年以上の進化の賜物である。これは、解糖、糖新生、トリカルボン酸サイクル(TCA)、ペントースリン酸経路(PPP)およびカルビンサイクルを含むがこれらに限定されない高等生物全体に見出されるすべての中心エネルギー系の存在および場合によっては重複によって強調される。さらに、ユーグレナは、脂肪酸およびワックスエステル、抗酸化剤アスタキサンチン、ビタミン、およびユーグレナ中の主要な貯蔵炭水化物であるパラミロンのための付加的な経路を有する。興味深いことに、ユーグレナは、炭素枯渇および/または無酸素条件での炭素源として、暗い従属栄養条件でCO2を固定するようである。
【0383】
この多様な代謝能力の結果、ユーグレナ培養用の原料は一見して無数に存在し、これに関して、非伝統的な原料を利用することには莫大な可能性が存在する。
【0384】
従属栄養発酵(好気性および/もしくは嫌気性バッチ発酵、好気性および/もしくは嫌気性フェドバッチおよび/もしくは反復フェドバッチ、好気性および/もしくは嫌気性連続発酵、ならびに/または好気性および/もしくは嫌気性再利用/バッチもしくは連続発酵を含むが、これらに限定されない)の間、インプットは、特定の天然産物の産生のために代謝される。天然産物としては、パラミロン、タンパク質、アミノ酸、ワックスエステル、脂肪酸およびビタミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0385】
従属栄養成長条件下では、炭素源は、解糖および/または糖新生および/またはワックスエステル代謝および/または脂肪酸代謝および/またはアミノ酸代謝および/またはタンパク質代謝および/またはパラミロン代謝を介して代謝される。一例として、ピルバートは、ミトコンドリア内で酸化および/または還元され、アミノ酸および/またはタンパク質および/または脂肪酸および/またはワックスエステルおよび/またはグルコースおよび/またはパラミロンおよび/またはビタミンの合成をもたらす。過剰な炭素は、ユーグレナ・グラシリスの主要な炭素貯蔵生成物、すなわちパラミロンおよび/またはワックスエステル中に隔離される(
図26)。最終生成物の量および比(パラミロン:脂肪酸:タンパク質:アミノ酸:ワックスエステル:ビタミン)は、成長中に利用される炭素:窒素比(C:N比)および/またはpH、温度、溶存酸素、溶存CO
2、曝気、採取技術および発酵技術(好気性および/もしくは嫌気性バッチ発酵、好気性および/もしくは嫌気性フェドバッチおよび/もしくは反復フェドバッチ、好気性および/もしくは嫌気性連続発酵、ならびに/または好気性および/もしくは嫌気性再利用/バッチもしくは連続発酵を含むが、これらに限定されない)を含むがこれらに限定されない成長パラメータによって支配される。例えば、高いC:N比は一般に、より多くの貯蔵生成物(パラミロンおよび/またはワックスエステル)をもたらし、低いC:N比は一般に、より多くのタンパク質、アミノ酸および脂肪酸をもたらす。代謝への炭素源の(1つまたは複数の)進入点および/または炭素源が逐次的に使用されるかもしくは同時利用されるか否かに基づいて、炭素源は2つのカテゴリーにグループ分けできることに注目すべきである:グループAの源(単糖、二糖および多糖を含むがこれらに限定されない)は、共通の(1つまたは複数の)進入点を通じて代謝に入り、細胞の選好性の順序で主に逐次的に代謝される-一般に異化産物抑制とされる過程(一般的には糖および炭水化物であるが、糖および炭水化物に限定されない)。グループBの源(有機酸を含むが、これに限定されない)は、複数の点で代謝に入り、グループAの源と同時利用されることができ、増加された成長速度および生成物(パラミロン、脂肪酸、タンパク質、アミノ酸、ワックスエステルおよびビタミンを含むが、これらに限定されない)の増強された産生をもたらす。
【0386】
実施例11:6Lバイオリアクタ中でのユーグレナ・グラシリスのフェドバッチ発酵
目的
本実験の主な目的は、E. グラシリスの高細胞密度培養のための指数関数的フェドバッチ給餌戦略を最適化することであった。さらに、2つの最も重要な成長パラメータ、すなわち、バッチおよびフェドバッチ両相でのユーグレナの収量および生産性を決定した。これに加えて、ユーグレナのバッチおよびフェドバッチ培養に対する物質(インプットおよびアウトプット)収支も計算した。
【0387】
材料および方法
シード接種材料の調製:シード繁殖のために増殖培地を使用した。約2~約3ヶ月間培養されてきたE. グラシリスの母培養物に、約100~200mLの増殖培地を3~4日ごとに1回供給した。50mLのこの母培養物を使用して、150mLの増殖培地を含有する500L振盪フラスコに接種する。さらに、0.08mLの2500倍ビタミンストックを培養物に添加する。得られた培養物(合計200mL)を28℃および150rpmで3日間培養する。3日目に、顕微鏡法によって接種材料の状態を確認し(活発に移動する細長い細胞が接種に最適である)、自動細胞計数器によって細胞密度を決定する。約25×106~30×106細胞/mLの細胞密度を有するシード接種材料が接種に適している。
【0388】
本研究では、15g/Lグルコースおよび5g/L酵母抽出物を含有する増殖基礎培地をバッチ培地として使用した。バッチ培養は、2.5Lバッチ培地から開始した。
【0389】
上記材料を2.5Lの体積に対して秤量し、それに応じて脱イオン水に溶解した。得られた培地を、適切な配管を用いて組み立てた3Lバイオリアクタ中に移した。次いで、バイオリアクタを121℃で30分間高圧滅菌処理した。培地を室温に冷却した時点で高圧滅菌が完了した後、1mLの2500倍ビタミンストック(新規)をバイオリアクタ中に無菌的に移した。
【0390】
本研究では、5倍濃縮バッチ培地をフィード培地として使用し、3Lのフィード培地をフェドバッチ発酵のために調製した。しかしながら、必要量の酵母抽出物は別々に最大500mLの脱イオン水に溶解し、ガラスボトルに移した。残りの材料を最大2495mLの脱イオン水に溶解し、3Lの給餌ボトルに移した。次いで、フィード培地を含有するすべてのボトルを121℃で30分間高圧滅菌処理した。培地を室温まで冷却した時点で高圧滅菌が完了した後、6mLの2500倍ビタミンストック(新規)および500mLの酵母抽出物溶液を無菌的に給餌ボトルに移した。
【0391】
フェドバッチ培養をバッチ発酵から開始した。3日間培養されたシード接種材料(200mL)を接種フラスコに移し、2.5Lのバッチ培地を含有するバイオリアクタ中に無菌的に接種した。バッチ培養開始時の細胞密度は約1×106~約3×106細胞/mLであることが観察された。
【0392】
典型的な羽根車によって70~100rpmで培養物を連続的に撹拌し、1L/分の空気(0.4vvm)を曝気した。1M NaOHを供給する(自動)ことによって、培養物のpHを3.2に維持した。純酸素をバイオリアクタ内に供給する(自動)ことによって、溶存酸素を20%に維持した。バイオリアクタから試料を毎日無菌的に収集した。細胞形態を顕微鏡によって確認し、自動細胞計数器、分光光度計(600nmでの光学密度)、湿潤細胞重量(遠心分離)および乾燥細胞重量(凍結乾燥)によって細胞成長を監視した。グルコース濃度は、YSI自動分析装置によって測定した。
【0393】
しかしながら、この時点でバイオリアクタ内のグルコース濃度が5g/L未満に低下したことが観察されたため、バッチ培養を48時間行った。次いで、指数関数的成長を維持するために、フィード培地(すなわち、バッチ培地の5倍濃縮)をバイオリアクタ中に供給することからフェドバッチ培養を開始した。比成長速度(μ=0.03h-1)、バイオマスの収量(Yxs=0.7gDCW/g)、48時間でのバイオリアクタ中のDCWの濃度(X=9~10gDCW/L)およびフィード培地中のグルコースの濃度(75g/L)を考慮することによって、給餌流量を計算した。給餌流量(mL/時間)は、バイオリアクタ内の細胞の濃度に基づいて変化する。フィード培地を最初に5.77mL/L/時間の速度で添加した。バイオリアクタ内のバイオマス濃度の増加に比例して、120時間の培養後に19.49mL/L/時間の最終速度まで給餌流量を毎日増加させた。合計3Lのフィード培地を3.5日間で供給した(48~130時間)。
【0394】
結果および結論
バッチ相中のユーグレナの収量および生産性は、0.35gDCW/gインプットおよび0.167g/L/時間であった。フェドバッチ発酵の場合、全収量は0.26 gDCW/gインプットに低下したが、生産性は増加した、すなわち0.18g/L/時間であった。最も興味深いことに、フェドバッチ相のみでの生産性は0.575 g/L/時間に増加し、フェドバッチ発酵の一般的な傾向である。
【0395】
給餌過程の最適化の場合には、このデータは、0.03h-1の比成長速度および0.7gDCW/gグルコースのバイオマス収量を使用考慮することによって、ユーグレナの成長速度を指数関数的に維持できることを示した。
【0396】
実施例12:タンク
バイオリアクタタンクシステムの例示的な態様を
図27に示す。このタンクは、開示された態様と一致する単なる例であり、他のタンクも本開示の範囲内に属することを理解されたい。一態様を
図28に示す。
図29は、
図28と組み合わせて使用することができる上面図のスパージャグリッドを示す。
【0397】
例示的なタンクは、ユーグレナの大規模培養のためのバブルカラムバイオリアクタを含み、ステンレス鋼製であり、合計最大許容体積は17,000Lであり、最大許容圧力は0.33バール(5psig)である。タンクは断熱されていないが、3つの加熱および冷却ジャケットシェルを備えている。バイオリアクタの構造および構成は、約4.3psigの圧力での103℃~107℃の飽和蒸気または過酢酸による製造容器の安全な滅菌サイクルを可能にする。タンクは、3のアスペクト比を有する。タンクは、合計18個のメクラ栓備品を有する。容器の底部にある2インチのメクラ栓は、培養物がそれを通じて採取物移送ラインに、最終的には分離板型遠心分離機に移送される容器ドレインまたは主採取ポートを構成する。バブルカラムバイオリアクタの上部には、合計6つのメクラ栓備品が存在する。タンクは、容器の高さの約3分の2で2インチのメクラ栓備品に接続された独立した主フィードラインを有する。濃縮培地、細胞接種材料および新鮮なプロセス用水は、この主フィードラインを介してバイオリアクタに供給される。
【0398】
タンクは、それを通じて清浄な圧縮空気が注入される1~3個のマイクロスパージャおよび2つのベンチュリノズルからなるデュアルスパージングモードで構成された内部曝気装置/混合システムを含む。曝気は、主に、マイクロスパージャによって行われ、マイクロスパージャはタンクの内部の培養物に酸素化を提供する。ノズルによって提供される酸素化は、マイクロスパージャによって提供されるものと比較して最小であると考えられる。マイクロスパージャは、焼結金属の平均多孔度に応じて十分な空気散布表面積を提供することによって、高い空気流量での細胞剪断(または損傷)を最小限に抑えるように設計されている。言い換えれば、マイクロスパージャは、ユーグレナの臨界値を下回る(例えば、マイクロスパージャの表面で生じる剪断による細胞損傷の値を下回る)気体進入速度を生成するように設計されている。粗いスパージャを横切るより低い圧力差は、より低い気体進入速度のために、再現性のある、より生産的な成長をもたらした。次に、より大きな生産発酵タンク(例えば、20,000Lのバイオリアクタ)中での細胞成長は、微細なスパージャのより小さな孔を通じたより高い気体進入速度によって以前は妨げられていた。
【0399】
例示的なバイオリアクタシステムの試験において、20,000Lのバイオリアクタにおけるユーグレナ・グラシリスの培養体積生産性は、3つの微細な空気スパージャを単一の粗いスパージャで置き換えることによって2倍増加した。微細なスパージャと粗いスパージャ間のより高い圧力差は、微細なスパージャを通じた気体進入速度は高すぎ、その結果、細胞をせん断して死滅させる局所的な乱流が生じ得ることを示唆している。
【0400】
ベンチュリノズルは、容器の全体的なバルク混合を提供し、タンクの内圧を調整または維持するのに役立つ。これらは主に酸素化のために使用されるが、マイクロスパージャは、細胞を効率的に再懸濁するためのバルク混合および上昇する流体流にも部分的に寄与する。内部ベンチュリノズルは、ユーグレナ培養物中の嫌気性ゾーンと好気性ゾーンから構成される不均一な好気状態体制をバブルカラムバイオリアクタ内に作り出すように調整される。嫌気性ゾーンおよび好気性ゾーンの生成は、例示的なバイオリアクタに基づく計算流体力学研究によって確認された。例えば、流体力学研究は、高混合のゾーンがノズルの周りに局在し、タンク中に低混合のゾーンも形成されることを示した。高混合のゾーンは高酸素化のゾーンであり、低混合のゾーンは低酸素化のゾーンであることを示す。これらのゾーンの存在は、タンク内の培養物中に不均一な好気状態体制を作り出す。
【0401】
給餌システムの一例では、3つのバイオリアクタの3つの平行な列または組に編成された9つの生産発酵タンクが存在し、
図27に示されているものなど、3つの高温液体フィード(HLF)ライン、すなわち、3つのバイオリアクタの各組に対して1つのフィードラインが存在する。この構成は、複数のバイオリアクタを同時に並行して給餌することを可能にする。貯蔵容器を弁バンクに接続するラインは、ポンプまたは加圧されたラインと、ライン内の濃縮培地成分の流量を監視および制御するための流量伝達装置(flow transmitter)とを備える。流量伝達装置は、フィード培地流量を監視し、必要に応じてポンプを制御する。流体移送の正確な監視および制御は、バイオリアクタ内で増殖する培養物への各濃縮培地成分の正確な体積の重要な送達を可能にする。濃縮培地成分の各々は、複座弁を介してバイオリアクタの組に給餌する3つのHLF移送ラインのすべてに接続する。濃縮炭素および濃縮窒素源は、ヘッドスペース加圧によっておよび/またはポンプを介してトレースタンク(trace tank)から弁バンクに移送される。
【0402】
実施例13:大規模生産およびスパージャ試験
ユーグレナ・グラシリスを成長させるために、(精密濾過された水の中に溶解されたg/Lで)10g/Lグルコース;5g/L酵母抽出物;2g/L(NH4)2SO4;1g/L KH2PO4;1g/L MgSO4;0.1g/L CaCl2;100Lの培地当たりに、19.6g/L FeCl3.6H2O;3.6g/LのMnCl2.4H2O;2.2g/L ZnSO4.7H2O;0.4g/L CoCl2.6H2O;0.3g/L Na2MoO4.2H2O;10g/L NaEDTA.2H2Oを含んだ(g/L)5mLの微量塩;および100Lの培地当たりに25g/L ビタミンB1;0.125g/L ビタミンB12;0.005g/L ビタミンB6;0.00025g/L ビタミンB7を含んだ(g/L)40mLのビタミンカクテルから構成された、改変された増殖培地を使用した。塩酸またはリン酸のいずれかを用いて培地のpHを3.2に調整する。
【0403】
500Lのバブルカラムバイオリアクタ中での培養のために、100Lの新鮮増殖培地に約18L~約24Lの接種材料培養物を接種した。出発乾燥細胞重量濃度は2~3g/Lの範囲であった。培養物を28℃でインキュベートし、気流は0.2~1.5scfm(5.6リットル/分~42.5リットル/分)の範囲であった。20,000Lのバブルカラムバイオリアクタでは、3900~4000Lの総出発培養体積となるように、3700Lの新鮮培地に、500Lのバブルカラムバイオリアクタから移された200~300Lの接種材料培養物が接種される。最初の乾燥細胞重量濃度は3~7g/Lの範囲であった。培養物を28℃でインキュベートし、気流は6~50scfm(170リットル/分~850リットル/分)の範囲であった。
【0404】
微細なスパージャおよび粗いスパージャを用いてユーグレナ・グラシリス培養物を成長させることの影響を検証するために、10インチ、10μmグレードのスパージャを組み立て、タンク底部に向かって下方に45°の角度を付け、3つの微細なスパージャが取り外された20,000Lのバブルカラムバイオリアクタ中に設置した。新しいタンク/スパージャ構成は、500Lのバイオリアクタのものを模倣した。試験の時点で、主な課題は、商業的および下流処理の開発目的で、より高いバイオマス生産性を達成することであった。したがって、これらの試験を生産スケジュールに統合した。
【0405】
スパージャでの気体進入速度は、バイオリアクタ内で増殖されたSf9およびNS0細胞株培養物の細胞死の主な要因であることが示され、この速度は圧力差の平方根に比例するので、圧力差は気体進入速度の間接的な測定値である。粗いスパージャおよび微細なスパージャを用いた曝気試験を500Lバイオリアクタで行った。表38の結果は、様々な流量での微細なスパージャにわたる圧力降下または圧力差(ΔP)が粗いスパージャのほぼ2倍であることを明らかにした。これは、微細なスパージャ細孔を通じた気体進入速度が、粗いスパージャ細孔を通じた速度よりも約2倍高いことを示唆している。
【0406】
粗いスパージャと比較して微細なスパージャ(0.5μm)の表面交換面積はより大きいにもかかわらず(1.35倍)、微細なスパージャでの空気注入は、すべての流量において圧力差を2倍にした。より高い圧力差は、微細なスパージャを通じた気体進入速度が粗いスパージャを通じた気体進入速度より大きいことを示し、微細なスパージャを備えたバイオリアクタにおける低い生産的成長を説明し得る。
【0407】
(表38)様々な空気流量での微細なスパージャと粗いスパージャの間の圧力差
注:ΔPは、スパージャにわたる圧力降下または圧力差である。
【0408】
試験培養は、粗いスパージャが設置され、3つの微細なスパージャが除去された20,000Lのバブルカラムバイオリアクタ中で行った。それぞれ2.2 gDCW/Lおよび2.7 gDCW/Lの初期細胞濃度を両方の培養物に接種した(
図30)。培養での192時間の培養後の総乾燥細胞重量は、500Lのバイオリアクタ中で観察された成長パターンと同様の指数関数的傾向に従って、それぞれ、135DCWkg(および183時間の培養で80.8kgDCW)に達した。さらに、いくつかの操作における細胞濃度は、15gDCW/Lおよび12.6gDCW/Lであった。他方、3つの微細なスパージャを備えたバイオリアクタ中での培養の総乾燥細胞重量は、192時間の培養後にそれぞれ23kgおよび14.9kgで最大総バイオマス収量に達し、最大細胞濃度はそれぞれ5.8gDCW/Lおよび3.46gDCW/Lに達した。
【0409】
1つの単一の粗いスパージャを備えたバイオリアクタ中での細胞成長は、120時間の培養後に3つの微細なスパージャすべてが使用されていた3つの微細なスパージャを用いた培養での細胞成長を上回った。この結果は、平均体積バイオマス生産性に基づくと、3つの微細な空気スパージャ構成より3~5倍生産性が高い。微細なスパージャを備えたバイオリアクタ中での平均体積生産性は、1つの粗いスパージャを備えたバイオリアクタ中での培養の0.0724g/L/hと比較して、それぞれ0.0149および0.0134g/L/hであった。これは、平均体積生産性の5.4倍の増加に相当する。さらに、粗いスパージャを備えた20,000Lのバイオリアクタ中での培養の体積生産性は、500Lのバイオリアクタ中でのものと同様であり、発酵の規模拡大が成功したことを示している。
図30は、粗いスパージャを使用する場合の改善された結果を示す、本実施例による例示的な培養結果を示す表である。
【0410】
実施例14:さらなる規模拡大
製造方法の概要
ユーグレナ・グラシリスバイオマスは、バッチ培養による大規模生産発酵槽中で生成される。全体的な培養手順は、3L振盪フラスコ中での2つの初期細胞拡大増殖ステップ、次いでシード(300L)発酵槽中でのステップ、およびその後の7000L発酵槽中でのバッチ培養を含む。培養方法の一般的な説明については、以下の表39を参照されたい。
【0411】
【0412】
1. 初期成長ステップ-振盪フラスコシード培養
振盪フラスコ(SF)ステップは、3Lの非バッフル付き振盪フラスコ中での2回の成長サイクルを含み、オービタルシェーカーの使用を必要とする。第1のSF成長サイクルは、実施例3に列挙されている条件下で48時間インキュベートされ、10個のSFでの第2のSF成長サイクルも同様の条件で48時間実施される。このステップには、通気された蓋を有する合計十二(12)個の3L非バッフル付きSFが必要である。
【0413】
2.1 一般的な手順
この成長ステップは、表40に列挙されている操作パラメータに従って実施されるべきフェドバッチ培養からなる。フィード速度スケジュールは、Noblegenオンラインフィード計算機を用いて実施される。Noblegenフィード速度計算機は、操作者がウェブページを通じて入力する試料入力から値を取得する。これはバッチの8時間ごとに行われ、関連する容器に対して次の適切なフィード速度を計算する。これは、社内で決定されたユーグレナ・グラシリスの成長に最適化された数式に基づいている。この計算で利用される値は、乾燥細胞重量、総体積および残留グルコースである。次いで、ウェブサイトは、次の給餌のために適切なフィード速度をどのようにすべきかを操作者に指示する。
【0414】
(表40)シード発酵槽(300L)のためのフェドバッチ発酵操作の仕様
【0415】
pHの制御は、1mol/L(40g/L)水酸化ナトリウムで行うことができる。シード培養時間は、達成された初期湿潤細胞重量に応じて5~6日の範囲であり得る。
【0416】
試料分析報告
試料および写真からのすべての分析結果は、データベースにアップロードされることになる。
【0417】
2.2 増殖培地
増殖培地配合物を表41に示す。
【0418】
(表41)シード培養のための(出発)増殖培地配合物
【0419】
中間発酵のために使用されるべき濃縮フィード培地配合物を以下の表42に記載する。
【0420】
(表42)シード(300L)発酵(のみ)のための濃縮フィード培地配合物
【0421】
3. 最終成長ステップ-バッチ発酵
3.1 発酵過程の仕様
ユーグレナ・グラシリスの大規模バッチ生産は、表43中の操作パラメータに従って、必要とされる細胞密度を達成するために実施されることになる。この成長サイクルの期間は2~3日である。このステップについては、pH制御は必要とされない。
【0422】
(表43)バッチ培養のための発酵操作の仕様(生産発酵槽)
【0423】
試料分析報告
試料および写真からのすべての分析結果は、分析用のデータベースにアップロードされることになる。
【0424】
3.2 一般的な手順
3.2.1 増殖培地配合物
ユーグレナバイオマスの生産のために使用されるべき増殖培地を表44に示す。このステップにおける出発培地の配合物は、(前の成長ステップにおけるような5g/Lの酵母抽出物および2g/Lの硫酸アンモニウムの代わりに)3g/Lの酵母抽出物および1.2g/Lの硫酸アンモニウムを含有することに注意されたい。これにより、必要であれば、フィード中の窒素源を増加または減少させることによって、タンパク質またはパラミロンの収量をさらに増加させるという選択が可能になる。
【0425】
(表44)大規模バッチ培養のための(出発)増殖培地配合物
【0426】
上記の増殖培地は、表44に示されている目標製品仕様を満たすように配合されている。
【0427】
3.2.3 接種ガイドライン
接種材料培養物は、シード発酵槽から生産発酵槽に移送されることになる。シード培養物は、過剰な細胞沈降および不均一な細胞流を回避するために、シード発酵槽から生産発酵槽への移送中に十分に混合されるべきである。接種材料を受けたブロスは、指定された温度に予め加温し、溶存酸素で完全に飽和させるべきである。接種材料の体積は、体積で5%~10%であるべきである。
【0428】
3.2.4 試料採取および分析試験
3.2.4.1 頻度および必要とされる試料
培養物の試料採取は、例えば、各時点で2×50mLの試料を用いて0時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間および48時間の培養中に、(最低でも)6~12時間ごとに行われるべきである。また、バッチの最後、すなわち48時間には、2×2Lの試料を採取する。各試料および写真からのすべての分析結果は、データベースにアップロードされることになる。各時点で2つの50mL試料を収集することになる:1つの試料は直ちに試験するために処理されるべきであり、第2の(2つ組)試料は外部分析用に返送するために直ちに凍結されるべきである。試料は、純度、細胞乾燥測定による細胞密度および発酵代謝産物の追跡について試験されることになる。分析されるべき代謝産物には、グルコース、カリウム、カルシウム、サルファート、ホスファート、スクシナート、ラクタートが含まれるが、これらに限定されない。グルコースは、常に測定される。
【0429】
3.2.5 採取ガイドライン
3.2.5.1 過程の説明
発酵の完了後、発酵槽ジャケットを通じた冷却水循環を使用してブロスを15℃に冷却する。下流処理への開始前に12時間を超えてブロスを静置する必要がある場合、細胞を不活性化するために、ブロスをバッチ低温殺菌すべきである。これは、直接の蒸気注入(最終温度60℃、45psig蒸気、60分間の保持時間)を使用して発酵槽中で達成され得る。次いで、発酵槽ジャケットを通じた冷却水循環を使用して、加熱ブロスを15℃に冷却する。両過程は、熱伝達操作の間、適切な撹拌を与えるべきである。理想的には、発酵および採取は、バッチ低温殺菌が必要でないように計画されるべきである。
【0430】
冷却されたブロスは、冷却された(15℃)ドロップタンク(drop tank)に移され、その後、バッチとして遠心分離フィードタンクに移される。次いで、10g-湿潤/L(概ね0.32%の乾燥固形分)の最終細胞密度になるように、遠心分離給餌中に都市水道水でブロスを(インラインで)希釈する。ノズルから収集された濃縮物は遠心分離フィードタンクに送り返され、ノズル流の中で5%の目標濃縮固形分が達成されるまで再循環ループを形成する。5%の固形分は、低温殺菌のために十分な材料を与える他、ノズル性能が検証されるまで遠心分離機内の限定的な濃度増大を与えるように予め選択された。上清およびボウル排出物は、ドレインに排出される。
【0431】
次いで、濃縮スラッジが低温殺菌(85℃、15秒保持時間)に送られる。すべての材料は低温殺菌装置廃棄物タンクに送られ、最終生成物試料(セクション3.2.5.2のスケジュールを参照)が低温殺菌装置排出試料ポートから収集される。収集された最終生成物は、乾燥、すなわち噴霧乾燥、ドラム乾燥、または他の許容され得る乾燥手段に送ることができる。
【0432】
3.2.5.2 試料採取要件
(1)製品および過程の品質をリアルタイムで確認し、(2)社内での最終製品品質試験のための分析用試料を提供するために、下流処理の間には、様々な試料が必要とされる。操作中に必要とされるリアルタイム試料採取としては、以下のものが挙げられる。
・水分分析(赤外線水分計(infrared balance)または類似のもの)
・顕微鏡分析(20~40倍の倍率)
【0433】
追加の試料は、定められた過程のポイントで採取し、試験完了後に発送するために直ちに凍結する必要がある。予備的な試料採取マトリックスとしては、以下のものが挙げられる。
・2×20Lバケット;ノズル遠心分離スラッジ、低温殺菌前(凍結され、発送され、その後、その場所で乾燥される)
・2×20Lバケット;ノズル遠心分離スラッジ、低温殺菌後(凍結され、発送され、その後、その場所で乾燥される)
・4×50mLファルコンチューブ;ノズル遠心分離スラッジ、低温殺菌前(凍結され、場所に発送される)
・4×50mLファルコンチューブ;ノズル遠心分離スラッジ、低温殺菌後(凍結され、その場所に発送される)
・4×50mLファルコンチューブ;ノズル遠心分離上清(凍結され、その場所に発送される)
・4×50mLファルコンチューブ;最終発酵ブロス(凍結され、その場所に発送される)
【0434】
結果および考察
2ステップ振盪フラスコの結果
第1のステップでは、28Cで48時間後に、DCWは5.15g/Lであり、約7.27gすなわち44%のグルコースを使用した。第2のステップは、8.94g/Lグルコースすなわち54.2%の増加したグルコース消費を有した。第2のステップの後、フラスコをプールし、10Lの総体積および18.24g/LのDCWを有するシード発酵槽に接種するために使用した。最終グルコースレベルも、2.89g/L、すなわち82.5%グルコース消費に低下した。
【0435】
300Lタンクシード発酵
15.2g/Lの最初のグルコースレベルおよび10.5(slpm)の最初の空気流量で、28C、pH3.25、15%溶存酸素(DO、ppm)で、300Lタンク中での発酵を培養した。撹拌速度は60~120rpmであった。5日間の発酵測定基準の概要は、表45および
図31~33に見出すことができる。以下の表45には、操作の発酵測定基準が表示されている。生産性は、操作の最初の60時間であるバッチ相、操作の残りの部分であるフェドバッチ相、および最終体積(L)に対するDXW(g)の変化を時間(h)の変化で割ったものに基づく全体の生産性で計算した。グルコース、RM(原材料)および酸素に基づく収率は、過去のデータの範囲内であった。
【0436】
(表45)300Lタンク内で実行された発酵測定基準。測定された測定基準には、時間、最終DCW、最終体積、生成された総DCW、消費されたグルコース、消費された酸素、供給された総RM、収率、および生産性が含まれた。
【0437】
図31から、比成長速度および比グルコース消費は、フェドバッチの間(すなわち、72時間マーク後)、安定していた。グルコースは1.2~3g/Lの間に維持され、呼吸商(RQ、生成されたmol CO
2/消費されたmol O
2)はかなり安定していた(
図32)。
図32から、体積生産性の傾向は、時間とともに増加することが示され、総バイオマスに比例する、すなわち、0.757gDCW/L/時間のピーク平均で128時間および144時間のピーク生産性が存在した。
図33は、DO%が減少するにつれて、180RPMの最大まで撹拌が増加したことを示す。気流は最後までかなり一定であり、100時間後にわずかに増加した。pHは発酵操作期間中かなり一定の状態を保った。
【0438】
7000Lタンク発酵
この操作では、
図34に見られるように、成長がほぼ直ちに始まったので、わずかな遅延時間しか存在しなかった。7000Lタンク中での操作の発酵測定基準が表46において観察される。初期pHは3.25に設定され、5~8%のDO%、28Cの温度、1500slpmの出発空気流量とし、初期グルコースレベルは15g/Lであった。収率は過去のデータよりわずかに高かったが、なお同程度のレベルであった。
【0439】
(表46)7000Lタンク内で実行された発酵測定基準。測定された測定基準には、時間、最終DCW、最終体積、生成された総DCW、消費されたグルコース、消費された酸素、供給された総RM、収率、および生産性が含まれた。
【0440】
この操作のピーク体積生産性は時間とともに増加し、総バイオマスに比例し、ピーク生産性は30時間から42時間の間であった(0.521gDCW/L/hのピーク平均(
図35))。全体の生産性は0.312g/L/hであり、これは300L操作時よりも高い平均であった。この操作の間には、RQもかなり安定していた。
【0441】
この発酵操作では、
図36に見られるように、20RPM~90RPMになるように撹拌を調整した。気流はかなり一貫していたが、pHおよびDOについては経時的に安定した低下が存在した。将来の操作は、DOをより高い一貫したレベルに維持して、細胞に対する酸素の利用可能性を向上させることを目指すであろう。
【0442】
300Lと7000L規模の操作間での成長測定基準の比較
表47は、2つのスケールサイズの操作間で、比グルコース消費量、比酸素消費量、比CO2発生速度およびRQをまとめる。このデータは、将来における生産収率の予測を補助するために使用される。7000Lはより高い消費量および発生速度を有したが、これはバイオマス生成がより高いために予想通りであった。
【0443】
(表47)300Lおよび7000L発酵操作の消費まとめデータ
【0444】
表48には、酸素取り込みおよび二酸化炭素発生速度が報告されている。一般に、酸素取り込み速度は、発酵操作の実現可能性を評価するために使用される測定基準とすることができるバイオリアクタシステムにおける酸素移動を示すのに役立つ。一般に、培養中の酸素制限についての懸念が存在しないので、より低い酸素取り込み数は肯定的に見られる。発生速度として二酸化炭素も有用であるが、そのレベルが低すぎるまたは高すぎる場合、低すぎる場合には細胞が最適に成長していないことを示唆し得、高すぎる場合には異常な操作を示唆し得る。
【0445】
(表48)最小O
2取り込み速度、最大O
2取り込み速度、O
2取り込み速度中央値(mmol/L/h)、最小CO
2発生速度、最大CO
2発生速度、およびCO
2発生速度中央値(mmol/L/h)に焦点を当てた、300Lタンクと7000Lタンク間での比較
【0446】
結論
本実施例は、別の設備でのおよび機械的撹拌を使用した本過程の使用を強調する。これは、傾斜培養から7,000Lタンク操作へと首尾よく規模拡大された。より高い細胞密度が存在する場合、培養の終了時により高い体積生産性が存在した。比グルコースおよびO2消費量のみならず、比CO2生成も、培養全体を通じてかなり一貫していた。成長プロファイルも過去のデータと同様であった。
【0447】
大規模発酵槽移送のモックを試験するために、接種材料を7000L発酵槽から128,000L規模の発酵槽に移送した。視覚的観察により、加圧され、遠心分離機に移された後に健康な細胞が示され、細胞溶解はほとんど存在しなかった。4400rpmのボウル速度、65psigの背圧、60分の排出器間隔、420~640L/分のフィード速度、9~11℃のフィード温度で、10個の1.2mmノズルおよび5個のブランクを有するノズル型分離板型遠心分離機を用いて採取を試験した。オンライン水洗浄を3:1の比で加えた。収集された採取物は、2.06から5.57への培養物のpHの上昇をもたらした可能性が最も高い細胞の溶解が存在したこと、および固形分濃度が倍増したことを示している。68L/分の流量、85℃2分間の保持温度および10℃の冷却温度で連続HTST低温殺菌装置によって、低温殺菌も試験した。運転中に観察される詰まりまたはコッキング(cooking)などの問題は存在しなかった。
【0448】
本明細書で引用されるすべての各特許、特許出願、刊行物および受託番号の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0449】
本開示は様々な態様を参照して開示されているが、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、他の態様およびこれらの変形が当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような態様および均等な変形を含むと解釈されることが意図される。
【国際調査報告】