(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】HDAC6活性化マクロファージ、その組成物および使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0786 20100101AFI20220825BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220825BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220825BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220825BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220825BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220825BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220825BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20220825BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220825BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20220825BHJP
【FI】
C12N5/0786 ZNA
A61P11/00
A61P9/00
A61P1/16
A61P37/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K35/15 Z
A61K45/00
A61K41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577303
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 US2020040003
(87)【国際公開番号】W WO2020264437
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564478
【氏名又は名称】ザ ジョージ ワシントン ユニバーシティ, ア コングレッショナリー チャータード ノット-フォー-プロフィット コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】521564489
【氏名又は名称】メドスター ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビリャグラ, アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】アグダム, ニマ
(72)【発明者】
【氏名】ヌーネパル, サティシュ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065BD32
4B065BD34
4B065CA44
4C084AA11
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB64
4C087DA18
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA75
4C087ZB08
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)活性化マクロファージ、HDAC6活性化マクロファージを含む組成物、HDAC6活性化マクロファージを作製する方法、および治療有効量のHDAC6活性化マクロファージを投与することにより疾患、例えば、がんを処置する方法を提供する。一態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを提供する。別の態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを含む組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)活性化マクロファージ。
【請求項2】
請求項1に記載のHDAC6活性化マクロファージを含む組成物。
【請求項3】
前記HDAC6活性化マクロファージが、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記被験体が、哺乳動物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記被験体が、ヒトである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナイーブマクロファージが、同種異系マクロファージ、自家マクロファージ、または同種異系マクロファージおよび自家マクロファージの組合せである、請求項3から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナイーブマクロファージが、自家マクロファージである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
単離された前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、前記選択的HDAC6阻害剤による1回の処置を含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
単離された前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、前記選択的HDAC6阻害剤による2回またはそれよりも多い処置を含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
単離された前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、1種または複数のマクロファージ極性化剤による処置をさらに含む、請求項3から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記マクロファージ極性化剤が、リポ多糖(LPS)、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン-4もしくはインターロイキン-13、またはこれらの組合せを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、1種または複数の腫瘍抗原による処置をさらに含む、請求項3から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記1種または複数の腫瘍抗原が、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)もしくはp53、またはこれらの組合せを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式I:
【化16】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
6a、R
6b、R
6c、R
6dおよびR
6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリール、および必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~10員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式II:
【化17】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
7a、R
7b、R
7c、R
7dおよびR
7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリール、および必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~10員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式III:
【化18】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
4aおよびR
4bは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
R
4cおよびR
4dは独立して、水素およびメチルからなる群より選択され、
mは、0または1であり、
nは、1、2または3であり、
【化19】
は、単結合または二重結合を表す、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式IV:
【化20】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
5aおよびR
5cは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
nは、1、2または3である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記選択的HDAC6阻害剤が、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記選択的HDAC6阻害剤が、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも20倍選択的である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
HDAC6活性化マクロファージを産生する方法であって、被験体からナイーブマクロファージを単離するステップと、単離された前記ナイーブマクロファージをex vivoで選択的HDAC6阻害剤で処置するステップとを含む、方法。
【請求項21】
前記被験体が、哺乳動物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体が、ヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ナイーブマクロファージが、同種異系マクロファージ、自家マクロファージ、または同種異系マクロファージおよび自家マクロファージの組合せである、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ナイーブマクロファージが、自家マクロファージである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、前記選択的HDAC6阻害剤による1回の処置を含む、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、前記選択的HDAC6阻害剤による2回またはそれよりも多い処置を含む、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、1種または複数のマクロファージ極性化剤による処置をさらに含む、請求項20から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記マクロファージ極性化剤が、リポ多糖(LPS)、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン-4もしくはインターロイキン-13、またはこれらの組合せを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ナイーブマクロファージのex vivo処置が、1種または複数の腫瘍抗原による処置をさらに含む、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記1種または複数の腫瘍抗原が、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)もしくはp53、またはこれらの組合せを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式I:
【化21】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
6a、R
6b、R
6c、R
6dおよびR
6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリールおよび必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~10員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である、
請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式II:
【化22】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
7a、R
7b、R
7c、R
7dおよびR
7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリールおよび必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~10員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である、
請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式III:
【化23】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
4aおよびR
4bは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
R
4cおよびR
4dは独立して、水素およびメチルからなる群より選択され、
mは、0または1であり、
nは、1、2または3であり、
【化24】
は、単結合または二重結合を表す、
請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記選択的HDAC6阻害剤が、式IV:
【化25】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
5aおよびR
5cは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
nは、1、2または3である、
請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記選択的HDAC6阻害剤が、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記選択的HDAC6阻害剤が、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10またはHDAC11のうち1種または複数を阻害するよりも、少なくとも20倍高くHDAC6を阻害する、請求項20から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
請求項20から36のいずれか一項に記載の方法によって得られるHDAC6活性化マクロファージ。
【請求項38】
処置を必要とする被験体を処置する方法であって、治療有効量の請求項1に記載のHDAC6活性化マクロファージを前記被験体に投与するステップを含み、前記被験体が、がん、肺線維症、肝線維症または心臓線維症を有する、方法。
【請求項39】
処置を必要とする被験体を処置する方法であって、治療有効量の請求項2から19のいずれか一項に記載の組成物を前記被験体に投与するステップを含み、前記被験体が、がん、肺線維症、肝線維症または心臓線維症を有する、方法。
【請求項40】
前記被験体が、がんを有する、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
放射線療法、免疫チェックポイント遮断療法、光温熱療法または化学療法のうち1種または複数を前記被験体に投与するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記被験体が、肺線維症を有する、請求項38または39に記載の方法。
【請求項43】
前記被験体が、肝線維症を有する、請求項38または39に記載の方法。
【請求項44】
前記被験体が、心臓線維症を有する、請求項38または39に記載の方法。
【請求項45】
前記被験体が、ヒトである、請求項38から44のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)活性化マクロファージ、HDAC6活性化マクロファージを含む組成物、HDAC6活性化マクロファージを作製する方法、および治療有効量のHDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む医薬組成物を投与することにより疾患、例えば、がんを処置する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
マクロファージは、宿主の自然および適応免疫応答において重要な役割を果たす。マクロファージは、組織の恒常性の維持、修復、および感染との戦いに役立つ。マクロファージは、その表現型に基づく機能的不均一性を示す。マクロファージは、「M1」または「古典的活性化」および「M2」または「代替活性化」マクロファージに分類される。M2マクロファージは、TGFβおよびIL-10等の抗炎症性サイトカインを分泌し、これは一般に腫瘍に関連し、腫瘍成長、血管新生、腫瘍浸潤および遊走を促進することにより機能する。反対に、M1マクロファージは、IL-12およびTNFα等の炎症促進性サイトカインを分泌し、抗腫瘍機能を有する。M1マクロファージはまた、腫瘍微小環境(TME)を腫瘍関連抗原(TAA)について活発にスキャンし、これをCD8 T細胞に対して提示して、抗腫瘍免疫を誘発する。よって、TMEにおけるM1/M2マクロファージの比は、TMEにおける決定的役割を果たす。
【0003】
抗腫瘍免疫を増加させるために、TMEにおけるM2マクロファージを減少させるまたはM1マクロファージを増加させる治療戦略の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人は、予想外なことに、単離されたマクロファージが、選択的HDAC6阻害剤による処置によって、身体の外(ex vivo)で再プログラミングされ、抗腫瘍M1表現型に向かって極性化されることを発見した。このようなHDAC6活性化マクロファージを被験体に投与して、がんおよび他の疾患を処置することができる。
【0005】
一態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを提供する。
【0006】
別の態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを含む組成物を提供する。
【0007】
別の態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを作製する方法であって、被験体からナイーブマクロファージを単離するステップと、単離されたナイーブマクロファージをex vivoで選択的HDAC6阻害剤で処置するステップとを含む方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本開示は、処置を必要とする被験体を処置する方法であって、治療有効量のHDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む組成物を被験体に投与するステップを含み、被験体が、がん、肺線維症、肝線維症または心臓線維症を有する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、野生型またはHDAC6 KO(ノックアウト)マウス由来の骨髄由来マクロファージにおける、FACSによって測定された、OVAペプチドに由来し、MHCI-SIINFEKL特異的抗体によって検出された、SIINFEKL抗原レベルを示す折れ線グラフである。マクロファージは、ネクスツラスタット(Nexturastat)A(NextA)5μMで前処置し、次いで、24時間極性化した。
【0010】
【
図2】
図2は、NextAで前処置し、OVAペプチドと共に24時間インキュベートした野生型マウスに由来する極性化されたマクロファージにおける、MHCI-SIINFEKLレベルを示すグラフである。
【0011】
【
図3】
図3は、SM1-OVA(OVAペプチドを発現するSM1細胞)黒色腫細胞を5μM NextAで24時間処置した後の、MHCIおよびMHCI-SIINFEKLレベルを示す棒グラフである。MHCIおよびMHCI-SIINFEKLレベルは、FACSによって測定した。
【0012】
【
図4】
図4は、NextAによる処置なし、前処置および後処置による、M1表現型における極性化レベルを示す棒グラフである。
【0013】
【
図5】
図5は、NextAによる処置なし、前処置または後処置による、M2表現型における極性化レベルを示す棒グラフである。
【0014】
【
図6】
図6は、NextAで前処置されたまたは未処置のナイーブマクロファージ(M0)による、SM1マウス黒色腫モデルにおける腫瘍内移入療法における腫瘍サイズを示す折れ線グラフである。
【0015】
【
図7】
図7は、NextAで前処置されたまたは未処置のM1マクロファージによる、SM1マウス黒色腫モデルにおける腫瘍内移入療法における腫瘍サイズを示す折れ線グラフである。
【0016】
【
図8】
図8は、NextAで前処置されたまたは未処置のM2マクロファージによる、SM1マウス黒色腫モデルにおける腫瘍内移入療法における腫瘍サイズを示す折れ線グラフである。
【0017】
【
図9】
図9は、未処置のまたはHDAC6阻害剤で前処置されたM1およびM2マクロファージによる、M2表現型マーカーArg1の遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって検査した。
【0018】
【
図10】
図10は、未処置のまたはHDAC6阻害剤で前処置されたM1およびM2マクロファージによる、M2抗炎症性サイトカインIL-10の遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって検査した。
【0019】
【
図11】
図11は、未処置のまたはHDAC6阻害剤で前処置されたM1およびM2マクロファージによる、M2抗炎症性サイトカインTGFβの遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって検査した。
【0020】
【
図12】
図12は、未処置のまたはHDAC6阻害剤で前処置されたM1およびM2マクロファージによる、M1炎症促進性サイトカインIL-1Bの遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって検査した。
【0021】
【
図13】
図13は、未処置のまたはHDAC6阻害剤で前処置されたM1およびM2マクロファージによる、M1炎症促進性サイトカインTNFαの遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって検査した。
【0022】
【
図14】
図14は、25日間モニターされた、SM1黒色腫を生着させた20匹のマウスの腫瘍成長曲線を示す折れ線グラフである。
【0023】
【
図15】
図15は、抗腫瘍M1マクロファージと腫瘍サイズの負の相関を示す散布図である。
【0024】
【
図16】
図16は、腫瘍促進性(pro-tumor)M2マクロファージと腫瘍サイズの正の相関を示す散布図である。
【0025】
【
図17】
図17は、M1/M2マクロファージ比と腫瘍サイズを示す散布図である。M1/M2マクロファージ比は、腫瘍微小環境(TME)の免疫状態の指標である。
【0026】
【
図18】
図18は、SM1マウス黒色腫モデルにおける投薬レジメンを示す略図である。
【0027】
【
図19】
図19は、SM1マウス黒色腫モデルにおける、ビヒクル、M1マクロファージ、NextA、およびNextAで前処置されたM1マクロファージによる処置後の腫瘍サイズを示す折れ線グラフである。
【0028】
【
図20】
図20は、SM1マウス黒色腫モデルにおける、ビヒクル、M1マクロファージ、NextA、およびNextAで前処置されたM1マクロファージによる処置後の生存パーセンテージを示すカプランマイヤー生存グラフである。
【0029】
【
図21】
図21は、SM1マウス黒色腫モデルにおける、ビヒクル、およびHDAC6KO(ノックアウト)マウスに由来するM1マクロファージによる処置後の腫瘍サイズを示す折れ線グラフである。
【0030】
【
図22】
図22は、未処置のまたはHDAC6阻害剤(NextA)で前処置されたナイーブマクロファージM0による、M2抗炎症性サイトカインCCL2、TGF-βおよびIL-10の遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。
【0031】
【
図23】
図23は、未処置のまたはHDAC6阻害剤(NextA)で前処置されたナイーブマクロファージM0による、M1炎症促進性サイトカインIL-12、TNF-αおよびIL-1Bの遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。
【0032】
【
図24】
図24は、未処置のまたはNextAで前処置された、ナイーブマクロファージM0、M1、M2による、抗原提示およびプロセシング遺伝子TAP1、TAP2、TAPBPおよびERAP1を示す4個のグラフのパネルである。
【0033】
【
図25】
図25は、OVAペプチドを安定に発現するSM1細胞(SM1-OVA細胞)が、指し示されている時間で4Gyの放射線、NextAまたは組合せに曝露された場合の、MHCI-SIINFEKLレベルを示す4個の棒グラフのパネルである。MHC-I媒介性SIINFEKL抗原提示は、フローサイトメトリーによって測定した。
【0034】
【
図26】
図26は、OVAペプチドを安定に発現するSM1細胞(SM1-OVA細胞)が、ビヒクル、ならびにHDAC6阻害剤(NextA)および放射線処置の並び順に曝露された場合の、MHCI-SIINFEKLレベルを示す棒グラフである。MHC-I媒介性SIINFEKL抗原提示は、フローサイトメトリーによって測定した。
【0035】
【
図27】
図27は、マクロファージによる抗原交差提示のためのワークフローを示す略図である。
【0036】
【
図28】
図28は、骨髄由来M0(ナイーブ)マクロファージが、放射線曝露されたSM1-OVA細胞由来の馴化培地(CM)に曝露された場合の、FACSによって測定された、OVAペプチドに由来し、MHCI-SIINFEKL特異的抗体によって検出された、SIINFEKL抗原レベルを示すグラフである。
【0037】
【
図29】
図29は、骨髄由来M1マクロファージが、放射線曝露されたSM1-OVA細胞由来の馴化培地(CM)に曝露された場合の、FACSによって測定された、OVAペプチドに由来し、MHCI-SIINFEKL特異的抗体によって検出された、SIINFEKL抗原レベルを示すグラフである。
【0038】
【
図30】
図30は、骨髄由来M2マクロファージが、放射線曝露されたSM1-OVA細胞由来の馴化培地(CM)に曝露された場合の、FACSによって測定された、OVAペプチドに由来し、MHCI-SIINFEKL特異的抗体によって検出された、SIINFEKL抗原レベルを示すグラフである。
【0039】
【
図31】
図31は、NextA、ACY241、ACY1215およびACY738のHDAC1およびHDAC6活性を示す表である。
【0040】
【
図32】
図32は、HDAC阻害剤による処置後のPD-L1発現を示すウエスタンブロットである。
【0041】
【
図33】
図33は、ELISAによって測定された、NextAによる処置後のCD8+ T細胞由来のIFNレベルを示す棒グラフである。
【0042】
【
図34】
図34は、ビヒクルまたはNextAによる処置後のNK細胞由来の、細胞死誘導性グランザイム(Granyme)B、FasLおよびTRAILの発現を示す3個の棒グラフのパネルである。
【0043】
【
図35】
図35は、指し示されている濃度におけるHDAC阻害剤の細胞傷害を示す折れ線グラフである。
【0044】
【
図36】
図36は、指し示されている濃度におけるHDAC阻害剤の細胞傷害を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
I.本開示の組成物
一態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを提供する。
【0046】
別の態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを含む組成物を提供する。
【0047】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。別の態様では、被験体は、哺乳動物である。別の態様では、被験体は、ヒトである。別の態様では、ナイーブマクロファージは、同種異系マクロファージ、自家マクロファージ、または同種異系マクロファージおよび自家マクロファージの組合せである。別の態様では、ナイーブマクロファージは、同種異系マクロファージである。別の態様では、ナイーブマクロファージは、自家マクロファージである。
【0048】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤で1回ex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。
【0049】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤で2回またはそれよりも多くex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。
【0050】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、6時間またはそれ未満、例えば、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満、2時間もしくはそれ未満、1時間もしくはそれ未満、または30分間もしくはそれ未満にわたり、選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。
【0051】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤およびマクロファージ極性化剤でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。別の態様では、マクロファージ極性化剤は、リポ多糖(LPS)、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン-4もしくはインターロイキン-13、またはこれらの組合せを含む。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、マクロファージ極性化剤による処置の前に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、マクロファージ極性化剤による処置の後に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、選択的HDAC6阻害剤およびマクロファージ極性化剤で同時に処置される。別の態様では、マクロファージ極性化剤によるex vivo処置は、6時間またはそれ未満、例えば、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満、2時間もしくはそれ未満、1時間もしくはそれ未満、または30分間もしくはそれ未満にわたる。
【0052】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤および腫瘍抗原でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。別の態様では、抗原は、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼもしくは黒色腫関連抗原(MAGE)、p53、またはこれらの組合せを含む。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、腫瘍抗原による処置の前に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、腫瘍抗原による処置の後に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、選択的HDAC6阻害剤および腫瘍抗原で同時に処置される。別の態様では、腫瘍抗原によるex vivo処置は、6時間またはそれ未満、例えば、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満、2時間もしくはそれ未満、1時間もしくはそれ未満、または30分間もしくはそれ未満にわたる。
【0053】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤、マクロファージ極性化剤および腫瘍抗原でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。ナイーブマクロファージは、選択的HDAC6阻害剤、マクロファージ極性化剤および腫瘍抗原で、同時にまたはいずれかの順序で別個に処置することができる。例えば、ナイーブマクロファージは、先ず選択的HDAC6阻害剤、続いてマクロファージ極性化剤、続いて腫瘍抗原でex vivo処置することができる;ナイーブマクロファージは、先ずマクロファージ極性化剤、続いて選択的HDAC6阻害剤、続いて腫瘍抗原でex vivo処置することができる;ナイーブマクロファージは、先ず選択的HDAC6阻害剤、続いて腫瘍抗原、続いてマクロファージ極性化剤でex vivo処置することができる;等々。別の態様では、ex vivo処置は、選択的HDAC6阻害剤、マクロファージ極性化剤および腫瘍抗原であり、薬剤毎に独立して、6時間またはそれ未満、例えば、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満、2時間もしくはそれ未満、1時間もしくはそれ未満、または30分間もしくはそれ未満にわたる。
【0054】
HDAC6活性化マクロファージは、臨床使用のための医薬組成物または医薬として製剤化することができ、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含むことができる。よって、一態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージと、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤または希釈剤とを含む組成物を提供する。薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントは、当技術分野で公知である。
【0055】
組成物は、注射または注入を含むことができる、非経口、全身性、腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、眼内、結膜内(intraconjunctival)、腫瘍内、皮下、皮内、髄腔内、経口または経皮投与経路のために製剤化することができる。
【0056】
適した製剤は、滅菌または等張性培地、例えば、注射用の水(WFI)中にHDAC6活性化マクロファージを含むことができる。医薬および医薬組成物は、ゲル形態を含む流体中に製剤化することができる。流体製剤は、ヒトまたは動物の身体の選択された領域への注射または注入(例えば、カテーテルによる)による投与のために製剤化することができる。
【0057】
一態様では、HDAC6活性化マクロファージを含む組成物は、例えば、マクロファージ誘導性がん免疫療法のための腫瘍内または静脈内投与のために製剤化される。例えば、Mills et al., Cancer Research 76:513-516 (2016);Lee et al., J Control Release 240:527-540 (2016)を参照されたい。
【0058】
本開示に従って、薬学的に有用な組成物の産生のための方法が提供され、かかる産生方法は、本明細書に記載されている方法に従って産生されたHDAC6活性化マクロファージを単離/精製するステップ;および/または産生されたHDAC6活性化マクロファージを、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤もしくは希釈剤と混合するステップから選択される1つまたは複数のステップを含むことができる。
【0059】
例えば、本開示の一態様は、医薬または医薬組成物を製剤化または産生する方法であって、本明細書に記載されている方法に従って産生されたHDAC6活性化マクロファージを、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤または希釈剤と混合することにより、医薬組成物または医薬を製剤化するステップを含む方法に関する。
【0060】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式I:
【化1】
(式中、
R
6a、R
6b、R
6c、R
6dおよびR
6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリール、および必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~10員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0061】
別の態様では、本開示は、式I(式中、R6a、R6b、R6c、R6dおよびR6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~4アルキル、C1~4アルコキシおよびC1~4ハロアルキルからなる群より選択される)の化合物またはその薬学的に許容される塩である選択的HDAC6阻害剤を提供する。別の態様では、R6a、R6b、R6c、R6dおよびR6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシからなる群より選択される。
【0062】
別の態様では、本開示は、式I(式中、nは、1である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である選択的HDAC6阻害剤を提供する。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0063】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式II:
【化2】
(式中、
R
7a、R
7b、R
7c、R
7dおよびR
7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリール、および必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~10員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0064】
別の態様では、本開示は、式II(式中、R7a、R7b、R7c、R7dおよびR7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~4アルキル、C1~4アルコキシおよびC1~4ハロアルキルからなる群より選択される)の化合物またはその薬学的に許容される塩である選択的HDAC6阻害剤を提供する。別の態様では、R7a、R7b、R7c、R7dおよびR7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシからなる群より選択される。
【0065】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式II(式中、nは、1である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0066】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III:
【化3】
(式中、
R
4aおよびR
4bは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
R
4cおよびR
4dは独立して、水素およびメチルからなる群より選択され、
mは、0または1であり、
nは、1、2または3であり、
【化4】
は、単結合または二重結合を表す)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0067】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III(式中、mは、0であり、
【化4-1】
は、二重結合を表すことができる)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0068】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III(式中、mは、1であり、
【化4-2】
は、単結合である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0069】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III(式中、nは、1である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0070】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式IV:
【化5】
(式中、
R
5aおよびR
5cは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
nは、1、2または3である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0071】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式IV(式中、nは、1である)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0072】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、表1の化合物(下を参照)またはその薬学的に許容される塩である。
【0073】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォーム、例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10またはHDAC11よりも、少なくとも20倍選択的である。
【0074】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも100倍選択的である。
【0075】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも600倍選択的である。
【0076】
II.HDAC6活性化マクロファージを産生する方法
一態様では、本開示は、HDAC6活性化マクロファージを産生する方法であって、被験体からナイーブマクロファージを単離するステップと、単離されたナイーブマクロファージをex vivoで選択的HDAC6阻害剤で処置するステップとを含む方法を提供する。別の態様では、被験体は、哺乳動物である。別の態様では、被験体は、ヒトである。別の態様では、ナイーブマクロファージは、同種異系マクロファージ、自家マクロファージ、または同種異系マクロファージおよび自家マクロファージの組合せである。別の態様では、ナイーブマクロファージは、同種異系マクロファージである。別の態様では、ナイーブマクロファージは、自家マクロファージである。
【0077】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤で1回ex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。
【0078】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤で2回またはそれよりも多くex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。
【0079】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、6時間またはそれ未満、例えば、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満、2時間もしくはそれ未満、1時間もしくはそれ未満、または30分間もしくはそれ未満にわたり、選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。
【0080】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤およびマクロファージ極性化剤でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。別の態様では、マクロファージ極性化剤は、リポ多糖(LPS)、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン-4もしくはインターロイキン-13、またはこれらの組合せを含む。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、マクロファージ極性化剤による処置の前に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、マクロファージ極性化剤による処置の後に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、選択的HDAC6阻害剤およびマクロファージ極性化剤で同時に処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、6時間またはそれ未満、例えば、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満、2時間もしくはそれ未満、1時間もしくはそれ未満、または30分間もしくはそれ未満にわたり、マクロファージ極性化剤で処置される。
【0081】
別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、被験体から単離され、選択的HDAC6阻害剤および腫瘍抗原でex vivo処置されたナイーブマクロファージから産生される。別の態様では、抗原は、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、もしくは黒色腫(nelanoma)関連抗原(MAGE)、p53、またはこれらの組合せを含む。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、腫瘍抗原による処置の前に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、腫瘍抗原による処置の後に、選択的HDAC6阻害剤で処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、選択的HDAC6阻害剤および腫瘍抗原で同時に処置される。別の態様では、単離されたナイーブマクロファージは、6時間またはそれ未満、例えば、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満、2時間もしくはそれ未満、1時間もしくはそれ未満、または30分間もしくはそれ未満にわたり、腫瘍抗原で処置される。
【0082】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩である。上述を参照。別の態様では、R6a、R6b、R6c、R6dおよびR6eは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~4アルキル、C1~4アルコキシおよびC1~4ハロアルキルからなる群より選択される。別の態様では、R6a、R6b、R6c、R6dおよびR6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシからなる群より選択される。別の態様では、nは、1である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3であってもよい。
【0083】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩である。上述を参照。別の態様では、R7a、R7b、R7c、R7dおよびR7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~4アルキル、C1~4アルコキシおよびC1~4ハロアルキルからなる群より選択される。別の態様では、R7a、R7b、R7c、R7dおよびR7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシからなる群より選択される。別の態様では、nは、1である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0084】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩である。上述を参照。別の態様では、mは、0であり、
【化5-1】
は、二重結合である。別の態様では、mは、1であり、
【化5-2】
は、単結合である。別の態様では、nは、1である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0085】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式IVの化合物またはその薬学的に許容される塩である。上述を参照。別の態様では、nは、1である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0086】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0087】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォーム、例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10またはHDAC11よりも、少なくとも20倍選択的である。
【0088】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも100倍選択的である。
【0089】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも600倍選択的である。
【0090】
III.養子移入による疾患の処置
HDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む医薬組成物は、養子細胞療法に有用となり得る。養子細胞療法は、処置を必要とする被験体への細胞の導入を伴う。一部の事例では、細胞は、当該細胞が導入される被験体に由来する(自家細胞療法)。例えば、Moroni et al., Nature Medicine 25:1560-1565 (2019)を参照されたい。すなわち、細胞、例えば、マクロファージは、患者から得て、本明細書に記載されている方法に従って活性化し、次いで、同じ被験体に戻したものであってもよい。本明細書に開示されている方法は、異なる個体から得た細胞が被験体に導入される、同種異系細胞療法において使用することもできる。
【0091】
一態様では、本開示は、それを必要とする被験体における疾患または障害を処置または予防する方法であって、治療有効量のHDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む組成物を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。別の態様では、疾患または障害は、がん、肺線維症、肝線維症または心臓線維症である。
【0092】
別の態様では、本開示は、それを必要とする被験体における疾患または障害を処置または予防する方法であって、
【0093】
(a)被験体からナイーブマクロファージを単離するステップと、
【0094】
(b)ナイーブマクロファージを選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置して、HDAC6活性化マクロファージを産生するステップと、
【0095】
(c)HDAC6活性化マクロファージを被験体に投与するステップと
を含む方法を提供する。
【0096】
別の態様では、本開示は、それを必要とする被験体における疾患または障害を処置または予防する方法であって、
【0097】
(a)被験体からナイーブマクロファージを単離するステップと、
【0098】
(b)ナイーブマクロファージを選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置して、HDAC6活性化マクロファージを産生するステップと、
【0099】
(c)HDAC6活性化マクロファージをマクロファージ極性化剤で処置するステップと、
【0100】
(d)HDAC6活性化マクロファージを被験体に投与するステップと
を含む方法を提供する。
【0101】
別の態様では、本開示は、それを必要とする被験体における疾患または障害を処置または予防する方法であって、
【0102】
(a)被験体からナイーブマクロファージを単離するステップと、
【0103】
(b)ナイーブマクロファージを選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置して、HDAC6活性化マクロファージを産生するステップと、
【0104】
(c)HDAC6活性化マクロファージを腫瘍抗原で処置するステップと、
【0105】
(d)HDAC6活性化マクロファージを被験体に投与するステップと
を含む方法を提供する。
【0106】
別の態様では、本開示は、それを必要とする被験体における疾患または障害を処置または予防する方法であって、
【0107】
(a)被験体からナイーブマクロファージを単離するステップと、
【0108】
(b)ナイーブマクロファージを選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置して、HDAC6活性化マクロファージを産生するステップと、
【0109】
(c)HDAC6活性化マクロファージをマクロファージ極性化剤で処置するステップと、
【0110】
(d)HDAC6活性化マクロファージを腫瘍抗原で処置するステップと、
【0111】
(e)HDAC6活性化マクロファージを被験体に投与するステップと
を含む方法を提供する。
【0112】
一態様では、ナイーブマクロファージが単離される被験体は、HDAC6活性化マクロファージを投与される被験体である、すなわち、養子移入は、自家細胞の養子移入である。一部の態様では、ナイーブマクロファージが単離される被験体は、HDAC6活性化マクロファージが投与される被験体とは異なる被験体である、すなわち、養子移入は、同種異系細胞の養子移入である。
【0113】
一態様では、被験体における疾患または障害を処置または予防する方法は、次のステップのうち1つまたは複数を含む:被験体から生体試料を採取するステップ;生体試料からナイーブマクロファージを単離するステップ;ナイーブマクロファージを選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置するステップ;処置されたマクロファージをマクロファージ極性化剤で処置するステップ;HDAC6活性化マクロファージを収集するステップ;HDAC6活性化マクロファージをアジュバント、希釈剤または担体と混合するステップ;HDAC6活性化マクロファージまたはその組成物を被験体に投与するステップ。
【0114】
一態様では、処置/予防されるべき疾患または障害は、肺線維症である。
【0115】
別の態様では、処置/予防されるべき疾患または障害は、肝線維症である。
【0116】
別の態様では、処置/予防されるべき疾患または障害は、心臓線維症である。
【0117】
別の態様では、処置/予防されるべき疾患または障害は、がんである。HDAC6活性化マクロファージおよびHDAC6活性化マクロファージを含む医薬組成物は、がんを処置または予防することができる、例えば、がんの発症/進行を阻害する、がんの開始を遅延/予防する、腫瘍成長を低下/遅延/予防する、転移を低下/遅延/予防する、がんの症状の重症度を低下させる、がん細胞の数を低下させる、腫瘍サイズ/体積を低下させる、および/または生存(例えば、無進行生存)を増加させる。
【0118】
一態様では、がんは、固形腫瘍である。別の態様では、がんは、血液学的がんである。別の態様では、がんは、表2のがんのうちいずれか1種または複数である。
【表2-1】
【表2-2】
【0119】
例示的な血液学的がんは、これらに限定されないが、表3に収載されているがんを含む。別の態様では、血液学的がんは、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病(B細胞慢性リンパ球性白血病を含む)、または急性骨髄球性白血病である。
【表3】
【0120】
一態様では、HDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む組成物の投与は、「治療有効」または「予防有効」量で為され、これは、被験体に対して利益を示すのに十分である。
【0121】
投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、疾患または障害の性質および重症度に依存することになる。処置の処方、例えば、投薬量の決断等は、一般医師および他の医学博士の責任の内にあり、典型的には、処置されるべき疾患/障害、個々の被験体の状態、送達の部位、投与の方法、および医師に公知の他の因子を考慮に入れる。上で言及される技法およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsに見出すことができる。
【0122】
複数用量のHDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む医薬組成物を被験体に投与することができる。用量のうち1もしくは複数または各用量は、別の治療剤の同時または逐次投与を伴うことができる。
【0123】
複数用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30もしくは31日間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月間のうち1つとなるように選択され得る所定の時間間隔によって分けることができる。例として、用量は、7、14、21または28日(プラスマイナス3、2または1日)毎に1回与えることができる。
【0124】
別の態様では、本開示は、局所的放射線療法、免疫チェックポイント遮断療法、光温熱療法または化学療法のうち1種または複数を被験体に投与するステップをさらに含む方法を提供する。
【0125】
放射線療法
一態様では、本明細書に提供される方法は、放射線療法と組み合わせて、HDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む組成物を被験体に投与するステップを含む。本明細書に提供される方法は、被験体への治療線量の放射線の送達に使用される型、量、または送達および投与系によって限定されない。例えば、被験体は、光子照射療法、粒子線放射線療法、他の型の照射療法、およびこれらの組合せを受けることができる。一部の態様では、放射線は、線形加速器を使用して被験体に送達される。さらに他の態様では、放射線は、ガンマナイフを使用して送達される。
【0126】
放射線源は、被験体にとって外部または内部であってもよい。外部放射線療法は、最も一般的であり、例えば、線形加速器を使用して、高エネルギー放射線のビームを、皮膚を通して腫瘍部位に方向付けることを伴う。放射線のビームは腫瘍部位に局在化されるが、正常で健康な組織の曝露を回避することはほぼ不可能である。しかし、外部放射線は通常、被験体にとって耐容性が良い。内部放射線療法は、がん細胞を特異的に標的化する送達系(例えば、がん細胞結合リガンドに取り付けられた粒子を使用した)の使用を含む、ビーズ、ワイヤー、ペレット、カプセル、粒子その他等の放射線放出源を、身体の内側の、腫瘍部位にまたはその付近に植え込むことを伴う。かかる植込み物は、処置後に除去することができる、または不活性な状態で身体内に留置することができる。内部放射線療法の型は、これらに限定されないが、ブラキセラピー、組織内照射、腔内照射、放射免疫療法その他を含む。
【0127】
被験体は、放射線増感剤(例えば、メトロニダゾール、ミソニダゾール、動脈内Budr、静脈内ヨードデオキシウリジン(IudR)、ニトロイミダゾール、5-置換-4-ニトロイミダゾール、2H-イソインドールジオン、[[(2-ブロモエチル)-アミノ]メチル]-ニトロ-1H-イミダゾール-1-エタノール、ニトロアニリン誘導体、DNA親和性(affinic)低酸素選択的細胞毒、ハロゲン化DNAリガンド、1,2,4ベンゾトリアジンオキシド、2-ニトロイミダゾール誘導体、フッ素含有ニトロアゾール誘導体、ベンズアミド、ニコチンアミド、アクリジンインターカレーター、5-チオテトラゾール(thiotretrazole)誘導体、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール、4,5-ジニトロイミダゾール誘導体、ヒドロキシル化テキサフィリン(texaphrin)、シスプラチン、マイトマイシン、チラパザミン(tiripazamine)、ニトロソウレア、メルカプトプリン、メトトレキセート、フルオロウラシル、ブレオマイシン、ビンクリスチン、カルボプラチン、エピルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンデシン、エトポシド、パクリタキセル、熱(温熱療法)その他)、放射線保護物質(radioprotector)(例えば、システアミン、アミノアルキル二水素ホスホロチオエート、アミホスチン(WR 2721)、IL-1、IL-6その他)を必要に応じて受けることができる。放射線増感剤は、腫瘍細胞の死滅を増強する。放射線保護物質は、放射線の有害効果から健康な組織を保護する。
【0128】
放射線の線量が、容認できないマイナスの副作用を伴うことなく被験体によって耐容性が示される限りにおいて、いかなる型の放射線を被験体に投与してもよい。適した型の照射療法は、例えば、電離(電磁)照射療法(例えば、X線またはガンマ線)または粒子線放射線療法(例えば、高線エネルギー放射線)を含む。電離放射線は、電離の産生、すなわち、電子の獲得または損失に十分なエネルギーを有する粒子または光子を含む放射線として定義される(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,770,581号に記載されている通り)。放射線の効果は、臨床医によって少なくとも部分的に制御され得る。一態様では、放射線の線量は、最大標的細胞曝露および毒性低下のために分割される。
【0129】
一態様では、被験体に投与される放射線の総線量は、約0.01グレイ(Gy)~約100Gyである。別の態様では、約10Gy~約65Gy(例えば、約15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy、40Gy、45Gy、50Gy、55Gyまたは60Gy)が、処置の経過にわたり投与される。一部の態様では、放射線の全線量(complete dose)は、1日間の経過にわたり投与することができるが、総線量は、理想的には、分割され、数日間にわたり投与される。望ましくは、照射療法は、少なくとも約3日間、例えば、少なくとも3、4、5、7、10、14、17、21、25、28、32、35、38、42、46、52または56日間(約1~8週間)の経過にわたり投与される。したがって、放射線の1日線量は、およそ1~5Gy(例えば、約1Gy、1.5Gy、1.8Gy、2Gy、2.5Gy、2.8Gy、3Gy、3.2Gy、3.5Gy、3.8Gy、4Gy、4.2Gyまたは4.5Gy)または1~2Gy(例えば、1.5~2Gy)を含むことになる。放射線の1日線量は、標的化された細胞の破壊の誘導に十分となるべきである。ある期間にわたり伸ばされた場合、一態様では、放射線は、毎日は投与されず、これにより、動物が休息し、治療法の効果が実現されることを可能にする。例えば、一態様では、放射線は、処置の週毎に、連続した5日間に投与され、2日間は投与されず、これにより、1週間当たり2日間の休息を可能にする。しかし、他の態様では、放射線は、哺乳動物の応答性および何らかの潜在的な副作用に応じて、1日間/週、2日間/週、3日間/週、4日間/週、5日間/週、6日間/週または全7日間/週で投与される。放射線療法は、治療期間におけるいずれかの時点で開始することができる。一態様では、放射線は、1週目または2週目に開始され、治療期間の残っている持続時間にわたり投与される。例えば、放射線は、例えば、固形腫瘍を処置するために、6週間を含む治療期間の1~6週目または2~6週目に投与される。あるいは、放射線は、5週間を含む治療期間の1~5週目または2~5週目に投与される。しかし、これらの例示的な照射療法投与スケジュールは、本明細書に提供される方法を限定することが意図されるものではない。
【0130】
免疫チェックポイント遮断療法
一態様では、本明細書に提供される方法は、免疫チェックポイント遮断療法と組み合わせて、HDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む組成物を被験体に投与するステップを含む。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫系阻害剤チェックポイントを遮断する治療法である。免疫チェックポイントは、刺激性または阻害性であってもよい。阻害性免疫チェックポイントの遮断は、免疫系機能を活性化し、がん免疫療法に有用である。Pardoll, Nature Reviews. Cancer 12:252-64 (2012)。腫瘍細胞は、特異的T細胞受容体に結合すると、活性化されたT細胞をオフにする。免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍細胞がT細胞に結合することを防止し、これにより、T細胞は活性化されたままとなる。実際には、細胞性および可溶性構成成分による協調作用は、病原体およびがんによる傷害と戦う。免疫系経路のモジュレーションは、経路の少なくとも1種の構成成分の発現または機能活性の変化を伴うことができ、これは次いで、免疫系による応答をモジュレートする。米国特許出願公開第2015/0250853号。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、LAG3阻害剤、TIM3阻害剤、cd47阻害剤およびB7-H1阻害剤が挙げられる。よって、一態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、LAG3阻害剤、TIM3阻害剤およびcd47阻害剤からなる群より選択される。
【0131】
別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質(PD-1)阻害剤である。PD-1は、宿主の免疫系から逃れる腫瘍細胞の能力において中心的役割を果たすT細胞共阻害受容体である。PD-1と、PD-1のリガンドであるPD-L1との間の相互作用の遮断は、免疫機能を増強し、抗腫瘍活性を媒介する。PD-1阻害剤の例としては、PD-1に特異的に結合する抗体が挙げられる。特定の抗PD-1抗体は、これらに限定されないが、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、STI-A1014およびピジリズマブ(pidilzumab)を含む。抗PD-1抗体の利用可能性、産生方法、作用機序および臨床試験の全般的な考察については、米国特許出願公開第2013/0309250号、米国特許第6,808,710号、米国特許第7,595,048号、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,728,474号、米国特許第8,779,105号、米国特許第8,952,136号、米国特許第8,900,587号、米国特許第9,073,994号、米国特許第9,084,776号、およびNaido et al., British Journal of Cancer 111:2214-19 (2014)を参照されたい。
【0132】
別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1(B7-H1またはCD274としても公知)阻害剤である。PD-L1阻害剤の例としては、PD-L1に特異的に結合する抗体が挙げられる。特定の抗PD-L1抗体は、これらに限定されないが、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびBMS-936559を含む。利用可能性、産生方法、作用機序および臨床試験の全般的な考察については、米国特許第8,217,149号、米国特許出願公開第2014/0341917号、米国特許出願公開第2013/0071403号、WO2015036499、およびNaido et al., British Journal of Cancer 111:2214-19 (2014)を参照されたい。
【0133】
別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤である。細胞傷害性Tリンパ球抗原4としても公知のCTLA-4は、免疫系を下方調節するタンパク質受容体である。CTLA-4は、抗原提示細胞の共刺激分子と結合する「ブレーキ」として特徴付けられ、このことは、T細胞のCD28との相互作用を防止し、また、T細胞活性化を制約する明確に阻害性のシグナルを生成する。CTLA-4阻害剤の例としては、CTLA-4に特異的に結合する抗体が挙げられる。特定の抗CTLA-4抗体は、これらに限定されないが、イピリムマブおよびトレメリムマブを含む。利用可能性、産生方法、作用機序および臨床試験の全般的な考察については、米国特許第6,984,720号、米国特許第6,207,156号、およびNaido et al., British Journal of Cancer 111:2214-19 (2014)を参照されたい。
【0134】
別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG3阻害剤である。LAG3、リンパ球活性化遺伝子3は、T細胞恒常性(homeostatis)、増殖および活性化をモジュレートする負の共刺激(co-simulatory)受容体である。加えて、LAG3は、調節性T細胞(Treg)抑制機能に関与することが報告されている。LAG3分子の大部分は、細胞内で、微小管形成中心の近くに保持され、抗原特異的T細胞活性化の後でのみ誘導される。米国特許出願公開第2014/0286935号。LAG3阻害剤の例としては、LAG3に特異的に結合する抗体が挙げられる。特定の抗LAG3抗体は、これらに限定されないが、GSK2831781を含む。利用可能性、産生方法、作用機序および試験の全般的な考察については、米国特許出願公開第2011/0150892号、米国特許出願公開第2014/0093511号、米国特許出願公開第20150259420号、およびHuang et al., Immunity 21:503-13 (2004)を参照されたい。
【0135】
別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、TIM3阻害剤である。TIM3、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3は、TH1およびTC1 T細胞応答の持続時間および規模を限定するように機能する免疫チェックポイント受容体である。TIM3経路は、腫瘍組織における免疫抑制を構成する2種の報告された免疫細胞集団である機能障害性CD8+T細胞およびTregにおけるその発現のため、抗がん免疫療法のための標的と考慮される。Anderson, Cancer Immunology Research 2:393-98 (2014)。TIM3阻害剤の例としては、TIM3に特異的に結合する抗体が挙げられる。TIM3阻害剤の利用可能性、産生方法、作用機序および試験の全般的な考察については、米国特許出願公開第20150225457号、米国特許出願公開第20130022623号、米国特許第8,522,156号、Ngiow et al., Cancer Res 71: 6567-71 (2011)、Ngiow, et al., Cancer Res 71:3540-51 (2011)、およびAnderson, Cancer Immunology Res 2:393-98 (2014)を参照されたい。
【0136】
別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、CD47阻害剤である。Unanue, E.R., PNAS 110:10886-87 (2013)を参照されたい。
【0137】
用語「抗体」は、所望の生物活性を示す限りにおいて、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および少なくとも2種のインタクトな抗体から形成された多特異性抗体を含むように意図される。一態様では、抗体は、組換え遺伝子工学を用いて作製されたヒト化モノクローナル抗体である。
【0138】
免疫チェックポイント阻害剤の別のクラスは、阻害剤シグナルトランスダクションを引き起こすことなく、T細胞表面のPD-1受容体に結合しこれを遮断するポリペプチドを含む。かかるペプチドは、米国特許第8,114,845号に開示されている通り、B7-DCポリペプチド、B7-H1ポリペプチド、B7-1ポリペプチドおよびB7-2ポリペプチド、ならびにこれらの可溶性断片を含む。
【0139】
免疫チェックポイント阻害剤の別のクラスは、PD-1シグナル伝達を阻害するペプチド部分を有する化合物を含む。かかる化合物の例は、米国特許第8,907,053号に開示されている。
【0140】
免疫チェックポイント阻害剤の別のクラスは、浸潤性骨髄性細胞および腫瘍細胞によって発現されるインドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)等のある特定の代謝酵素の阻害剤を含む。IDO酵素は、T細胞における同化機能に必要なアミノ酸を枯渇させることにより、またはリンパ球機能を変更することができるサイトゾル受容体の特定の天然リガンドの合成により、免疫応答を阻害する。Pardoll, Nature Reviews. Cancer 12:252-64 (2012);Lob, Cancer Immunol Immunother 58:153-57 (2009)。特定のIDO遮断剤は、これらに限定されないが、レボ(levo)-1-メチルトリプトファン(typtophan)(L-1MT)および1-メチル-トリプトファン(1MT)を含む。Qian et al., Cancer Res 69:5498-504 (2009);およびLob et al., Cancer Immunol Immunother 58:153-7 (2009)。
【0141】
一態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、STI-A1110、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、STI-A1014、イピリムマブ、トレメリムマブ、GSK2831781、BMS-936559またはMED14736である。
化学療法
【0142】
一態様では、本明細書に提供される方法は、化学療法と組み合わせて、HDAC6活性化マクロファージを含む組成物またはHDAC6活性化マクロファージを含む組成物を被験体に投与するステップを含む。一態様では、化学療法は、表4に収載されている抗がん薬または抗がん薬組合せのうち1種を含む。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【0143】
光温熱療法
一態様では、本明細書に提供される方法は、光温熱療法と組み合わせて、HDAC6活性化マクロファージまたはHDAC6活性化マクロファージを含む組成物を被験体に投与するステップを含む。光温熱療法は、がんを含む様々な医学的状態の処置のために電磁放射線(殆どの場合、赤外波長内の)を使用する試みを指す。このアプローチは、光増感剤が特異的帯域光で励起される、光線力学的治療法の延長である。この活性化は、増感剤を励起状態にし、すると増感剤は次に、標的化された細胞を死滅させることになる振動エネルギー(熱)を放出する。光線力学的治療法とは異なり、光温熱療法は、標的細胞または組織と相互作用するために酸素を要求しない。現在の試験はまた、光温熱療法が、よりエネルギーが少なく、したがって、他の細胞および組織にとってより有害ではない、より長い波長の光を使用することができることを示す。
【0144】
光温熱療法のために現在調査されている目的の材料の大部分は、ナノスケールのものである。その裏にある重要な理由の1つは、ある特定のサイズ範囲(典型的には20~300nm)内の粒子により観察される増強された透過性および保持効果である。Maeda et. al., Journal of Controlled Release, 65 (1-2), 271-284 (2000)。この範囲内の分子は、腫瘍組織に優先的に蓄積することが観察されている。腫瘍は、形成されると、その成長に燃料をくべるために新たな血管を要求する;腫瘍内の/またはその付近のこのような新たな血管は、不十分なリンパ排出および無秩序な漏出性脈管構造等、通常の血管と比較して異なる特性を有する。これらの因子は、身体の残り箇所と比較して、腫瘍内に、有意により高い濃度のある特定の粒子をもたらす。この現象を活性標的化モダリティ(例えば、抗体)とカップリングすることが、近年、研究者によって調査されている。
【0145】
IV.定義
用語「HDAC6活性化マクロファージ」は、選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置されたナイーブマクロファージを指す。別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、先ず、選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置され、次いで、マクロファージ極性化剤および/または腫瘍抗原でex vivo処置される。別の態様では、HDAC6活性化マクロファージは、先ず、マクロファージ極性化剤および/または腫瘍抗原でex vivo処置され、次いで、選択的HDAC6阻害剤でex vivo処置される。
【0146】
用語「選択的HDAC6阻害剤」、「HDAC6選択的阻害剤」その他は、本明細書で使用される場合、細胞に基づくin vitroアッセイにおいて、1種または複数の他のヒストンデアセチラーゼアイソフォーム、例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10および/またはHDAC11よりも、ヒストンデアセチラーゼ6を優先的に阻害する化合物を指す。例えば、HDAC6 IC50=5nMおよびHDAC1 IC50 500nMを有する化合物は、HDAC1よりも100倍選択的である選択的HDAC6阻害剤である;HDAC6 IC50=5nM、HDAC1 IC50=500nMおよびHDAC3 IC50=50nMを有する化合物は、HDAC1よりも100倍選択的であり、HDAC3よりも10倍選択的である選択的HDAC6阻害剤である;等々。一態様では、選択的HDAC6阻害剤は、HDAC1よりもHDAC6を優先的に阻害する。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、HDAC1および1種または複数の他のHDACアイソフォームよりもHDAC6を優先的に阻害する。
【0147】
一態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約5倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約10倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約15倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約20倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約30倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約40倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約50倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約100倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約150倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約200倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約250倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約500倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約750倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約1000倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約2000倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、少なくとも約3000倍選択的である。細胞に基づくアッセイにおける他のHDACアイソフォームを上回るHDAC6選択性は、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。
【0148】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、約10倍~約3000倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、約20倍~約3000倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、約50倍~約3000倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、約100倍~約3000倍選択的である。別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、1種または複数の他のHDACアイソフォームよりも、約500倍~約3000倍選択的である。
【0149】
一態様では、HDAC6選択性は、Sf9細胞におけるバキュロウイルス発現系からの単離されたヒト組換え全長HDACを使用して決定される。アセチル化蛍光発生ペプチドは、検査されているHDACアイソフォームに依存して基質として使用される(例えば、p53の残基379~382に由来するもの)。http://www.reactionbiology.com/webapps/site/HDACAssay.aspx?page=HDACs&id=-%203を参照されたい。反応緩衝液は、50mM Tris-HCl pH8.0、127mM NaCl、2.7mM KCl、1mM MgCl2、1mg/mL BSAおよび最終濃度1%DMSOで構成されている。検査化合物は、DMSOにおいて酵素混合物へと送達され、5~10分間のプレインキュベーションに続いて、基質添加および2時間30℃のインキュベーションが為される。トリコスタチンAおよび現像剤が添加されて、それぞれ反応をクエンチし、蛍光を生成する。用量応答曲線が作成され、その結果得られたプロットからIC50値が決定される。Bergman et al., J Med Chem. 55:9891-9899 (2012)を参照されたい。選択的HDAC6阻害剤は、親化合物、およびそのいずれかの薬学的に許容される塩または溶媒和化合物を含むように意図される。
【0150】
一態様では、選択的HDAC6阻害剤は、Shen and Kozikowski, Expert Opinion on Therapeutic Patents 30:121-136 (2020)に開示されている化合物である。
【0151】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、Bergman et al., J Med Chem. 55:9891-9899 (2012)に開示されている化合物である。
【0152】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2014072714に開示されている化合物である。
【0153】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2016067040に開示されている化合物である。
【0154】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2016190630に開示されている化合物である。
【0155】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2019139921に開示されている化合物である。
【0156】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、米国特許出願公開第20150239869号に開示されている化合物である。
【0157】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2015054474に開示されている化合物である。
【0158】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017075192に開示されている化合物である。
【0159】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2018089651に開示されている化合物である。
【0160】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2014181137に開示されている化合物である。
【0161】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2016067038に開示されている化合物である。
【0162】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017208032に開示されている化合物である。
【0163】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2016168598に開示されている化合物である。
【0164】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2016168660に開示されている化合物である。
【0165】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017218950に開示されている化合物である。
【0166】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、米国特許出願公開第20160221973号に開示されている化合物である。
【0167】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、米国特許出願公開第20160222022号に開示されている化合物である。
【0168】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、米国特許出願公開第20160221997号に開示されている化合物である。
【0169】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2014178606に開示されている化合物である。
【0170】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2015087151に開示されている化合物である。
【0171】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2015102426に開示されている化合物である。
【0172】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2015137750に開示されている化合物である。
【0173】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2018189340に開示されている化合物である。
【0174】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2018130155に開示されている化合物である。
【0175】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017222950に開示されている化合物である。
【0176】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017222951に開示されている化合物である。
【0177】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017222952に開示されている化合物である。
【0178】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2016031815に開示されている化合物である。
【0179】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017014170に開示されている化合物である。
【0180】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017014321に開示されている化合物である。
【0181】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017033946に開示されている化合物である。
【0182】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2019027054に開示されている化合物である。
【0183】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2019166824に開示されている化合物である。
【0184】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2019110663に開示されている化合物である。
【0185】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017018803に開示されている化合物である。
【0186】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017018805に開示されている化合物である。
【0187】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017023133に開示されている化合物である。
【0188】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2017065473に開示されている化合物である。
【0189】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、WO2018183701に開示されている化合物である。
【0190】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式V:
【化6】
(式中、
Xは、
【化7】
からなる群より選択され、
R
1は、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択され、
R
2は、必要に応じて置換されたC
6~C
14アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、
R
3は、必要に応じて置換されたC
6~C
14アリール、必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールおよび-C(=O)NR
dR
eからなる群より選択され、
R
4a、R
4b、R
4eおよびR
4fは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキルおよびハロアルコキシからなる群より選択され、
R
4cおよびR
4dは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
4cおよびR
4dは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、-C(=O)-を形成し、
R
5a、R
5b、R
5cおよびR
5dは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキルおよびハロアルコキシからなる群より選択され、
Zは、-O-、-N(R
8)-、および-C(=O)-からなる群より選択されるか、または
Zは、存在せず、
R
8は、水素、C
1~4アルキル、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたC
6~C
14アリール、アラルキル、必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群より選択され、
mは、0、1または2であり、
nは、1、2、3、4、5または6であり、
【化7-1】
は、単結合または二重結合を表し、
R
a、R
b、R
dおよびR
eは独立して、水素、C
1~6アルキル、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたC
6~C
14アリール、必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換された3~12員のヘテロシクロを形成し、
R
dおよびR
eは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換された3~12員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルである)
を有する化合物である。
【0191】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式Vを有する化合物、ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和化合物であるが、ただし、Zが存在しない場合、R3が、二環式もしくは三環式C10~14アリール、二環式もしくは三環式9~14員のヘテロアリール、または-C(=O)NRdReであることを条件とする。
【0192】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式V(式中、Xは、X-1、X-2、X-3またはX-4であり、
Zは、-O-であり、
R1は、水素およびC1~4アルキルからなる群より選択され、
R2は、必要に応じて置換されたC6~C14アリールであり、
R3は、必要に応じて置換されたC6~C14アリールおよび必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールからなる群より選択され、
R4aおよびR4bは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキルおよびハロアルコキシからなる群より選択され、
R4cおよびR4dは独立して、水素およびC1~4アルキルからなる群より選択され、
R5a、R5b、R5cおよびR5dは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキルおよびハロアルコキシからなる群より選択され、
RaおよびRbは独立して、水素およびC1~6アルキルからなる群より選択されるか、または
RaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~7員のヘテロシクロを形成し、
Rcは、C1~4アルキルである)
を有する化合物、ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和化合物である。
【0193】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式V(式中、Xは、X-1である)を有する化合物である。別の態様では、R1は、水素である。別の態様では、R2は、必要に応じて置換されたフェニルである。別の態様では、R2は、必要に応じて置換された1-ナフチルである。別の態様では、R2は、必要に応じて置換された2-ナフチルである。別の態様では、R2は、アラルキルである。
【0194】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式V(式中、Xは、X-2である)を有する化合物である。別の態様では、Zは、-O-である。別の態様では、Zは、-N(R8)-である。別の態様では、Zは、-C(=O)-である。別の態様では、R3は、必要に応じて置換されたC6~C14アリールである。別の態様では、R3は、必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールである。別の態様では、R3は、-C(=O)NRdReである。別の態様では、Zは、存在せず、R3は、二環式もしくは三環式C10~14アリール、二環式もしくは三環式9~14員のヘテロアリール、または-C(=O)NRdReである。
【0195】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式V(式中、Xは、X-3である)を有する化合物である。
【0196】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式V(式中、Xは、X-4である)を有する化合物である。
【0197】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式V(式中、Xは、X-5である)を有する化合物である。
【0198】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式I:
【化8】
(式中、
R
6a、R
6b、R
6c、R
6dおよびR
6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリール、および必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~7員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である)
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0199】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式I(式中、R6a、R6b、R6c、R6dおよびR6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~4アルキル、C1~4アルコキシおよびC1~4ハロアルキルからなる群より選択される)を有する化合物である。別の態様では、R6a、R6b、R6c、R6dおよびR6eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシからなる群より選択される。
【0200】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式I(式中、nは、1である)を有する化合物である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0201】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式II:
【化9】
(式中、
R
7a、R
7b、R
7c、R
7dおよびR
7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NR
aR
b、-C(=O)NR
aR
b、-C(=O)R
c、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC
3~6シクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5または6員のヘテロアリール、および必要に応じて置換された5または6員のヘテロシクロからなる群より選択され、
R
aおよびR
bは独立して、水素およびC
1~4アルキルからなる群より選択されるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~7員のヘテロシクロを形成し、
R
cは、C
1~4アルキルであり、
nは、1、2または3である)
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0202】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式II(式中、R7a、R7b、R7c、R7dおよびR7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~4アルキル、C1~4アルコキシおよびC1~4ハロアルキルからなる群より選択される)を有する化合物である。別の態様では、R7a、R7b、R7c、R7dおよびR7eはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシからなる群より選択される。
【0203】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式II(式中、nは、1である)を有する化合物である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0204】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III:
【化10】
(式中、
R
4aおよびR
4bは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
R
4cおよびR
4dは独立して、水素およびメチルからなる群より選択され、
mは、0または1であり、
nは、1、2または3であり、
【化11】
は、単結合または二重結合を表す)
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0205】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III(式中、mは、0であり、
【化11-1】
は、二重結合を表す)を有する化合物である。
【0206】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III(式中、mは、1であり、
【化11-2】
は、単結合を表す)を有する化合物である。
【0207】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式III(式中、nは、1である)を有する化合物である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0208】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式IV:
【化12】
(式中、
R
5aおよびR
5cは独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~4アルキルおよびC
1~4アルコキシからなる群より選択され、
nは、1、2または3である)
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0209】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、式IV(式中、nは、1である)を有する化合物である。別の態様では、nは、2である。別の態様では、nは、3である。
【0210】
別の態様では、選択的HDAC6阻害剤は、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【0211】
本開示において、用語「マクロファージ極性化剤」は、本明細書で使用される場合、マクロファージを極性化する薬剤を指す。マクロファージ極性化は、マクロファージが、その微小環境からのシグナルに応答して異なる機能プログラムを採用するプロセスである。マクロファージの極性化は、その刺激持続時間および空間的局在化に関して、その活性化に依存して、多様な異質性機能および表現型を付与することができる。非限定的な例示的なマクロファージ極性化剤としては、これらに限定されないが、リポ多糖(LPS)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-10、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-18、インターロイキン-23、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、グルココルチコイド、リポテイコ酸(LTA)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、免疫複合体(IC)、インターロイキン-1β、アデノシン、またはこれらの組合せが挙げられる。例えば、Rubio et al., Clinical and Translational Oncology 21:391-403 (2019)を参照されたい。
【0212】
本開示において、用語「腫瘍抗原」は、本明細書で使用される場合、腫瘍細胞において産生されて宿主において免疫応答を引き起こし得る、抗原性物質を指す。腫瘍抗原は、2種のカテゴリーに分類することができる。一方のカテゴリーは、変異した癌遺伝子および腫瘍サプレッサー遺伝子の産物であり、他方のカテゴリーは、過剰発現されたまたは異常に発現された細胞タンパク質、発癌性ウイルスによって産生された腫瘍抗原、癌胎児性抗原、変更された細胞表面糖脂質および糖タンパク質、ならびに細胞型特異的分化抗原を含む、他の変異した遺伝子の産物である。非限定的な例示的な腫瘍抗原としては、これらに限定されないが、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)およびp53が挙げられる。
【0213】
本開示において、用語「ハロ」または「ハロゲン」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、-Cl、-F、-Brまたは-Iを指す。一態様では、ハロは、-Clまたは-Fである。一態様では、ハロは、-Clである。
【0214】
本開示において、用語「ニトロ」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、-NO2を指す。
【0215】
本開示において、用語「シアノ」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、-CNを指す。
【0216】
本開示において、用語「ヒドロキシ」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、-OHを指す。
【0217】
本開示において、用語「アルキル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、置換されていない直鎖または分枝鎖脂肪族炭化水素を指し、これは、1~12個の炭素原子を含有する、すなわち、C1~12アルキルである、または指定された炭素原子の数を含有する、例えば、メチル等のC1アルキル、エチル等のC2アルキル、プロピルまたはイソプロピル等のC3アルキル、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル等のC1~3アルキル、等々である。一態様では、アルキルは、C1~10アルキルである。別の態様では、アルキルは、C1~6アルキルである。別の態様では、アルキルは、C1~4アルキルである。別の態様では、アルキルは、直鎖C1~10アルキルである。別の態様では、アルキルは、分枝鎖C3~10アルキルである。別の態様では、アルキルは、直鎖C1~6アルキルである。別の態様では、アルキルは、分枝鎖C3~6アルキルである。別の態様では、アルキルは、直鎖C1~4アルキルである。別の態様では、アルキルは、分枝鎖C3~4アルキルである。別の態様では、アルキルは、直鎖または分枝鎖C3~4アルキルである。非限定的な例示的なC1~10アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、3-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルが挙げられる。非限定的な例示的なC1~4アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルおよびイソブチルが挙げられる。
【0218】
本開示において、用語「シクロアルキル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、1~3個の環を含有する飽和および部分的に不飽和の(1または2個の二重結合を含有する)環式脂肪族炭化水素を指し、これは、3~12個の炭素原子を有する、すなわち、C3~12シクロアルキルである、または指定された炭素の数を有する。一態様では、シクロアルキル基は、2個の環を有する。一態様では、シクロアルキル基は、1個の環を有する。別の態様では、シクロアルキル基は、C3~8シクロアルキル基から選択される。別の態様では、シクロアルキル基は、C3~6シクロアルキル基から選択される。非限定的な例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、デカリン、アダマンチル、シクロヘキセニル、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。
【0219】
本開示において、用語「必要に応じて置換されたシクロアルキル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、上に定義されているシクロアルキルが、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-SCH3、-SCF3、-NRaRb、-C(O)NRaRb、-C(=O)CH3、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、必要に応じて置換されたC3~8シクロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリールおよび必要に応じて置換されたヘテロシクロからなる群より独立して選択される1、2もしくは3個の置換基で置換されていることを意味する。一態様では、必要に応じて置換されたシクロアルキルは、2個の置換基で置換されている。別の態様では、必要に応じて置換されたシクロアルキルは、1個の置換基で置換されている。
【0220】
本開示において、用語「アルケニル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、1、2または3個の炭素-炭素二重結合を含有する、上に定義されているアルキル基を指す。一態様では、アルケニル基は、C2~6アルケニル基から選択される。別の態様では、アルケニル基は、C2~4アルケニル基から選択される。非限定的な例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、sec-ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられる。
【0221】
本開示において、用語「アルキニル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、1~3個の炭素-炭素三重結合を含有する、上に定義されているアルキル基を指す。一態様では、アルキニルは、1個の炭素-炭素三重結合を有する。一態様では、アルキニル基は、C2~6アルキニル基から選択される。別の態様では、アルキニル基は、C2~4アルキニル基から選択される。非限定的な例示的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、2-ブチニル、ペンチニル(pentynyl)およびヘキシニル(hexynyl)基が挙げられる。
【0222】
本開示において、用語「ハロアルキル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、1個または複数のフッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素原子によって置換されたアルキル基を指す。一態様では、アルキル基は、1、2または3個のフッ素および/または塩素原子によって置換される。別の態様では、ハロアルキル基は、C1~6ハロアルキル基である。別の態様では、ハロアルキル基は、C1~4ハロアルキル基である。非限定的な例示的なハロアルキル基としては、フルオロメチル、2-フルオロエチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチルおよびトリクロロメチル基が挙げられる。
【0223】
本開示において、用語「アルコキシ」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、末端酸素原子に結合した、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルケニルまたは必要に応じて置換されたアルキニルを指す。一態様では、アルコキシ基は、C1~4アルコキシ基から選択される。別の態様では、アルコキシ基は、C1~6アルコキシ基から選択される。別の態様では、アルコキシ基は、末端酸素原子に結合したC1~4アルキル、例えば、メトキシ、エトキシおよびtert-ブトキシから選択される。
【0224】
本開示において、用語「ハロアルコキシ」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、末端酸素原子に結合したC1~4ハロアルキルを指す。非限定的な例示的なハロアルコキシ基としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシおよび2,2,2-トリフルオロエトキシが挙げられる。
【0225】
本開示において、用語「アリール」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、6~14個の炭素原子を有する単環式、二環式または三環式芳香環系、すなわち、C6~C14アリールを指す。非限定的な例示的なアリール基としては、フェニル(「Ph」と省略)、1-ナフチル、1-ナフチル、フェナントリル、アントラシル(anthracyl)、インデニル、アズレニル、ビフェニル、ビフェニレニル(biphenylenyl)およびフルオレニル基が挙げられる。一態様では、アリール基は、フェニル、1-ナフチルまたは2-ナフチルから選択される。一態様では、アリールは、二環式または三環式C10~C14芳香環系である。
【0226】
本開示において、用語「必要に応じて置換されたアリール」は、それ自体でまたは別の基の一部として本明細書で使用される場合、上に定義されているアリールが、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-SCH3、-SCF3、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC3~12シクロアルキル、必要に応じて置換されたC6~C14アリール、必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールおよび必要に応じて置換された3~14員のヘテロシクロからなる群より独立して選択される1~5個の置換基で置換されていることを意味し、式中、RaおよびRbは独立して、水素およびC1~6アルキルからなる群より選択されるか、またはRaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~12員のヘテロシクロを形成し、Rcは、C1~4アルキルである。
【0227】
一態様では、必要に応じて置換されたアリールは、必要に応じて置換されたフェニルである。一態様では、必要に応じて置換されたフェニルは、4個の置換基を有する。別の態様では、必要に応じて置換されたフェニルは、3個の置換基を有する。別の態様では、必要に応じて置換されたフェニルは、2個の置換基を有する。別の態様では、必要に応じて置換されたフェニルは、1個の置換基を有する。非限定的な例示的な置換されたアリール基としては、2-メチルフェニル、2-メトキシフェニル、2-フルオロフェニル、2-クロロフェニル、2-ブロモフェニル、3-メチルフェニル、3-メトキシフェニル、3-フルオロフェニル、3-クロロフェニル、4-メチルフェニル、4-エチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、2,6-ジフルオロフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2-メチル、3-メトキシフェニル、2-エチル、3-メトキシフェニル、3,4-ジメトキシフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3,5-ジメチルフェニル、3,5-ジメトキシ、4-メチルフェニル、2-フルオロ-3-クロロフェニルおよび3-クロロ-4-フルオロフェニルが挙げられる。必要に応じて置換されたアリールという用語は、縮合された必要に応じて置換されたシクロアルキルおよび縮合された必要に応じて置換されたヘテロシクロ環を有する基を含むように意図される。非限定的な例は、次のものを含む。
【化13】
【0228】
本開示において、用語「ヘテロアリール」は、5~14個の環原子を有する単環式、二環式および三環式芳香環系、すなわち、5~14員のヘテロアリールを指し、その環のうち1個の少なくとも1個の炭素原子は、酸素、窒素および硫黄からなる群より独立して選択されるヘテロ原子で置き換えられている。一態様では、ヘテロアリールは、酸素、窒素および硫黄からなる群より独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を含有する。一態様では、ヘテロアリールは、3個のヘテロ原子を有する。別の態様では、ヘテロアリールは、2個のヘテロ原子を有する。別の態様では、ヘテロアリールは、1個のヘテロ原子を有する。非限定的な例示的なヘテロアリール基としては、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル(thianthrenyl)、フリル、ベンゾフリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾオキサゾニル(benzooxazonyl)、クロメニル(chromenyl)、キサンテニル(xanthenyl)、2H-ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリル、インダゾリル(indazolyl)、プリニル(purinyl)、イソキノリル、キノリル、フタラジニル(phthalazinyl)、ナフチリジニル(naphthyridinyl)、シンノリニル(cinnolinyl)、キナゾリニル、プテリジニル、4aH-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル(carbolinyl)、フェナントリジニル(phenanthridinyl)、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル(phenanthrolinyl)、フェナジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、フェノチアゾリル、イソキサゾリル(isoxazolyl)、フラザニルおよびフェノキサジニル(phenoxazinyl)が挙げられる。一態様では、ヘテロアリールは、チエニル(例えば、チエン-2-イルおよびチエン-3-イル)、フリル(例えば、2-フリルおよび3-フリル)、ピロリル(例えば、1H-ピロール-2-イルおよび1H-ピロール-3-イル)、イミダゾリル(例えば、2H-イミダゾール-2-イルおよび2H-イミダゾール-4-イル)、ピラゾリル(例えば、1H-ピラゾール-3-イル、1H-ピラゾール-4-イルおよび1H-ピラゾール-5-イル)、ピリジル(例えば、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イルおよびピリジン-4-イル)、ピリミジニル(例えば、ピリミジン-2-イル、ピリミジン-4-イルおよびピリミジン-5-イル)、チアゾリル(例えば、チアゾール-2-イル、チアゾール-4-イルおよびチアゾール-5-イル)、イソチアゾリル(例えば、イソチアゾール-3-イル、イソチアゾール-4-イルおよびイソチアゾール-5-イル)、オキサゾリル(例えば、オキサゾール-2-イル、オキサゾール-4-イルおよびオキサゾール-5-イル)、イソキサゾリル(例えば、イソキサゾール-3-イル、イソキサゾール-4-イルおよびイソキサゾール-5-イル)およびインダゾリル(例えば、1H-インダゾール-3-イル)から選択される。用語「ヘテロアリール」はまた、可能なN-オキシドを含むように意図される。非限定的な例示的なN-オキシドは、ピリジルN-オキシドである。
【0229】
一態様では、ヘテロアリールは、5または6員のヘテロアリールである。一態様では、ヘテロアリールは、5員のヘテロアリールである、すなわち、ヘテロアリールは、5個の環原子を有する単環式芳香環系であり、その環の少なくとも1個の炭素原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択されるヘテロ原子で置き換えられている。非限定的な例示的な5員のヘテロアリール基としては、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルおよびイソキサゾリルが挙げられる。
【0230】
別の態様では、ヘテロアリールは、6員のヘテロアリールである、例えば、ヘテロアリールは、6個の環原子を有する単環式芳香環系であり、その環の少なくとも1個の炭素原子は、窒素原子で置き換えられている。非限定的な例示的な6員のヘテロアリール基としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルが挙げられる。
【0231】
別の態様では、ヘテロアリールは、9~14員の二環式芳香環系であり、その環のうち1個の少なくとも1個の炭素原子は、酸素、窒素および硫黄からなる群より独立して選択されるヘテロ原子で置き換えられている。非限定的な例示的な9~14員の二環式芳香環系としては、次のものが挙げられる。
【化14】
【0232】
本開示において、用語「必要に応じて置換されたヘテロアリール」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、上に定義されているヘテロアリールが、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-SCH3、-SCF3、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC3~12シクロアルキル、必要に応じて置換されたC6~C14アリール、必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールおよび必要に応じて置換された3~14員のヘテロシクロからなる群より独立して選択される1~4個の置換基で置換されていることを意味し、式中、RaおよびRbは独立して、水素およびC1~6アルキルからなる群より選択されるか、またはRaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~12員のヘテロシクロを形成し、Rcは、C1~4アルキルである。一態様では、必要に応じて置換されたヘテロアリールは、1個の置換基を有する。いずれかの利用できる炭素または窒素原子が置換されてもよい。
【0233】
本開示において、用語「複素環」または「ヘテロシクロ」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、1、2または3個の環を含有する、飽和および部分的に不飽和の、例えば、1または2個の二重結合を含有する環式基を指し、これは、3~14個の環員(ring member)を有する、すなわち、3~14員のヘテロシクロであり、その環のうち1個の少なくとも1個の炭素原子は、ヘテロ原子で置き換えられている。各ヘテロ原子は独立して、酸化または四級化されていてもよい、酸素、スルホキシドおよびスルホンを含む硫黄、ならびに/または窒素原子からなる群より選択される。用語「ヘテロシクロ」は、環-CH2-が-C(=O)-で置き換えられている基、例えば、2-イミダゾリジノン等の環式ウレイド基、ならびにβ-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、ε-ラクタムおよびピペラジン-2-オン等の環式アミド基を含むように意図される。用語「ヘテロシクロ」はまた、縮合された必要に応じて置換されたアリール基を有する基、例えば、インドリニル(indolinyl)を含むように意図される。一態様では、ヘテロシクロ基は、1個の環ならびに1または2個の酸素および/または窒素原子を含有する5または6員の環式基から選択される。ヘテロシクロは、いずれかの利用できる炭素または窒素原子を介して、分子の残り箇所に必要に応じて連結されてもよい。非限定的な例示的なヘテロシクロ基としては、ジオキサニル(dioxanyl)、テトラヒドロピラニル、2-オキソピロリジン-3-イル、ピペラジン-2-オン、ピペラジン-2,6-ジオン、2-イミダゾリジノン、ピペリジニル、モルフォリニル、ピペラジニル、ピロリジニルおよびインドリニルが挙げられる。
【0234】
本開示において、用語「必要に応じて置換されたヘテロシクロ」は、それ自体でまたは別の基の一部として本明細書で使用される場合、上に定義されているヘテロシクロが、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、-SCH3、-SCF3、-NRaRb、-C(=O)NRaRb、-C(=O)Rc、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、ハロアルコキシ、必要に応じて置換されたC3~12シクロアルキル、必要に応じて置換されたC6~C14アリール、必要に応じて置換された5~14員のヘテロアリールおよび必要に応じて置換された3~14員のヘテロシクロからなる群より独立して選択される1~4個の置換基で置換されていることを意味し、式中、RaおよびRbは独立して、水素およびC1~6アルキルからなる群より選択されるか、またはRaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~12員のヘテロシクロを形成し、Rcは、C1~4アルキルである。
【0235】
本開示において、用語「アラルキル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、1、2または3個の必要に応じて置換されたアリール基で置換されたアルキル基を指す。一態様では、必要に応じて置換されたアラルキル基は、1個の必要に応じて置換されたアリール基で置換されたC1~4アルキルである。一態様では、アラルキル基は、1個の必要に応じて置換されたアリール基で置換されたC1またはC2アルキルである。一態様では、アラルキル基は、1個の必要に応じて置換されたフェニル基で置換されたC1またはC2アルキルである。非限定的な例示的なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、-CHPh2、-CH2(4-F-Ph)、-CH2(4-Me-Ph)、-CH2(4-CF3-Ph)および-CH(4-F-Ph)2が挙げられる。
【0236】
本開示において、用語「ヘテロアラルキル」は、それ自体でまたは別の基の一部として使用される場合、1、2または3個の必要に応じて置換されたヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。一態様では、ヘテロアラルキル基は、1個の必要に応じて置換されたヘテロアリール基で置換されたC
1~4アルキルである。一態様では、アラルキル基は、1個の必要に応じて置換されたヘテロアリール基で置換されたC
1またはC
2アルキルである。一態様では、ヘテロアラルキル基は、1個の必要に応じて置換されたヘテロアリール基で置換されたC
1またはC
2アルキルである。非限定的な例示的なヘテロアラルキル基としては、次のものが挙げられる。
【化15】
【0237】
用語「HDAC」は、タンパク質、例えば、ヒストンのN末端におけるリシン残基のε-アミノ基からアセチル基を除去する酵素のファミリーを指す。HDACは、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10およびHDAC11を含む、いずれかのヒトHDACアイソフォームとすることができる。HDACは、原生動物または真菌供給源に由来することもできる。
【0238】
用語「処置する」、「処置すること」、「処置」その他は、疾患もしくは状態および/またはそれに伴う症状を消失、低下、軽減、逆転および/または改善することを指す。排除されるものではないが、疾患または状態を処置することは、急性または慢性徴候、症状および/または機能不全の処置を含む、疾患、状態またはそれに伴う症状が完全に消失されることを要求しない。本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置すること」、「処置」その他は、疾患もしくは状態を有しないが、疾患もしくは状態の再発症または疾患もしくは状態の再発のリスクがあるまたはそれに対して感受性である被験体における疾患もしくは状態の再発症または以前に管理された疾患もしくは状態の再発の確率を低下させることを指す、「予防的処置」を含むことができ、したがって、「処置」は、再燃予防法または局面(phase)予防法も含む。用語「処置する」および同義語は、治療有効量の本開示の化合物を、かかる処置を必要とするヒトおよび獣医学的動物を含むがこれらに限定されない、個体、例えば、哺乳動物患者に投与することを企図する。処置は、例えば、症状を抑制するために、症候に向けることができる。処置は、短い期間に達成することができる、中期に向けることができる、または例えば、維持療法の文脈内で、長期処置とすることができる。
【0239】
用語「治療有効量」または「治療用量」は、本明細書で使用される場合、投与されたときに、目的の状態または疾患の処置のための活性成分(複数可)を、それを必要とする個体、例えば、ヒト患者に効果的に送達するのに十分な、活性成分(複数可)の量を指す。がんまたは他の増殖障害の場合、薬剤の治療有効量は、望まれない細胞増殖を低下させる(すなわち、ある程度まで遅らせ、好ましくは、停止する);がん細胞の数を低下させる;腫瘍サイズを低下させる;末梢臓器へのがん細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度まで遅らせ、好ましくは、停止する);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度まで遅らせ、好ましくは、停止する);ある程度まで、腫瘍成長を阻害する;標的細胞におけるHDACシグナル伝達を低下させる;および/またはある程度まで、がんに伴う症状のうち1つもしくは複数を軽減することができる。投与された化合物または組成物が、現存するがん細胞の成長を防止するおよび/またはそれを死滅させる程度まで、これを、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性とすることができる。
【0240】
本開示を記載する文脈における(特に、特許請求の範囲の文脈における)用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および同様の指示対象の使用は、他に特段の指示がなければ、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、本明細書に他に特段の指示がなければ、当該範囲内に収まる別個の値のそれぞれを個々に参照する簡便な方法として機能し、別個の値および部分範囲のそれぞれは、あたかも本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に提供されるありとあらゆる例または例示的な表現(例えば、「等」および「のような」)の使用は、他に特許請求されていなければ、本開示をより十分に説明することが意図され、本開示の範囲の限定ではない。本明細書における表現はいずれも、いずれかの特許請求されていない要素を本開示の実施に必須であると指し示すものとして解釈されるべきではない。
【0241】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、列挙されている数±10%を含む。よって、「約10」は、9~11を意味する。
【0242】
用語「被験体」は、本明細書で使用される場合、HDAC6活性化マクロファージによる処置を必要とするまたはその処置から利益を得ることができる、いずれかのヒトまたは哺乳動物を指す。かかる被験体の中でも、ヒトが何よりも先ず挙げられるが、本明細書に提供される方法および組成物は、そのように限定されることを意図していない。他の被験体は、獣医学的動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコその他を含む。一実施形態では、被験体は、ヒトである。一実施形態では、被験体は、哺乳動物である。
【0243】
選択的HDAC6阻害剤は、塩として存在することができる。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、本化合物の塩または双性イオン形態を指す。本化合物の塩は、化合物の最終単離および精製の際に調製することも、化合物を適したカチオンを有する酸と反応させることにより別個に調製することもできる。本化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸により形成される酸付加塩とすることができる。薬学的に許容される塩の形成に用いることができる酸の例としては、硝酸、ホウ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸等の無機酸、ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸およびクエン酸等の有機酸が挙げられる。選択的HDAC6阻害剤の塩の非限定的な例としては、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩(camphorsulfonate)、二グルコン酸塩(digluconate)、グリセロールリン酸塩、ヘミ硫酸塩(hemisulfate)、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、イセチオン酸塩、サリチル酸塩、メタンスルホン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩(naphthylenesulfonate)、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩(phenylproprionate)、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩(undecanoate)、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩が挙げられる。加えて、選択的HDAC6阻害剤に存在する利用できるアミノ基は、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピルおよび塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルならびにヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルおよびヨウ化ブチル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル;塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチルおよび塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチルおよび臭化ステアリルならびにヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチルおよびヨウ化ステアリル;ならびに臭化ベンジルおよび臭化フェネチルにより四級化することができる。本明細書に掲載する本開示の化合物のいかなる参照も、選択的HDAC6阻害剤と共に、その薬学的に許容される塩、溶媒和化合物または水和物を含むことが意図される。
【実施例】
【0244】
一般方法
細胞培養:SM1マウス黒色腫細胞を、University of California、Los AngelesのA.Ribas博士から得て、インキュベーター内で、RPMI 1640、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎仔血清において、37℃、5%CO2で培養した。
【0245】
遺伝子発現の定量的解析。QIAzol溶解試薬(Qiagen、79306)の製造業者の指示に従って、細胞から全RNAを単離した。NanoDrop One分光光度計(NanoDrop Technologies)を使用してRNA定量化を行った。260nmでの吸光度/280nmでの吸光度の比において1.9を超える試料を、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad、1708891)によるcDNA合成に使用した。1μgの全RNAから合成されたcDNAを、ヌクレアーゼ不含水で1:10希釈した。CFX96リアルタイムシステム(Bio-Rad)においてiQ SYBR Green Supermix(Bio-Rad、1708882)を使用して、定量的PCR解析を行った。2-ΔΔCt方法を使用して遺伝子発現解析を行い、標的mRNAレベルをGAPDH発現に対して正規化した。製造業者の指示の通りにサイクリング条件を使用した。行われた全実験において、融解曲線解析によって単一のPCR産物増幅を確認した。
【0246】
マウス。マウスを伴う動物実験は、The George Washington Universityの施設内実験動物委員会(Institutional Care and Use Committee)(IACUC)によって承認されたプロトコール(#A354)に従って行った。C57BL/6雌マウスは、Charles River Laboratories(Wilmington、Massachusetts、USA)から購入した。腫瘍植込み前に最低5回マウスからマウスへとin vivoで継代されたSM1腫瘍細胞を使用して、in vivo試験を行った。マウスに、100μLリン酸緩衝食塩水(PBS)(Corning、21-040-CV)に懸濁させた1.0×106個のin vivo継代されたSM1黒色腫細胞を皮下注射した。腫瘍が触知できるようになったら(腫瘍植込み約5日後)、前処置アームを開始した。ケージを異なる処置群にランダムに割り当て、マウスを被験物質またはビヒクル対照で処置した。対照群における腫瘍が、本出願人らのIACUCプロトコールに従った最大サイズに達するまで、マウスを処置した。ノギス測定を使用して腫瘍体積測定を隔日で行い、式L×W2/2を使用して計算した。毒性を考慮しつつ全動物試験を行い、本出願人らは、毒性の初期徴候について慣例的にモニターした。死亡率、体重および食物消費に重点を置いた。エンドポイントにおいて、肝毒性についての肝臓、脾腫および肺転移性小結節等、臓器の肉眼による目視検査を含む死後評価を条件毎に行った。Shen et al., J Med Chem. 62:8557-8577 (2019)。
【0247】
骨髄由来マクロファージ:マクロファージ単離のため、IACUC承認プロトコールに従って、6~12週齢C57BL/6マウス由来の骨髄を使用した。簡潔に説明すると、骨格筋を除去した後に、大腿骨および脛骨を単離した。非必須アミノ酸を追加補充したRPMI完全培地で骨髄を洗い流した。骨髄の単一細胞懸濁物を、ピペットでの吸引排出を繰り返すことにより調製し、20ng/mLのマウス組換えM-CSF(Biolegend)と共に37℃で4日間インキュベートして、マクロファージに分化させた。
【0248】
フローサイトメトリー:以前に記載されたプロトコールに従ってフローサイトメトリーを行った。Knox et al., Sci Rep. 2019 Oct 10;9(1):14824. doi: 10.1038/s41598-019-51403-6。簡潔に説明すると、IACUCプロトコールに従ってマウスを安楽死させ、腫瘍細胞を処理して、腫瘍消化緩衝液を用いて、フローサイトメトリーによる解析のための単一細胞懸濁物とした。次の抗体を使用して、異なる免疫細胞によって発現される細胞表面マーカーを染色した。全抗体は、他に指定がなければ、Biolegend(San Diego、CA)から購入した。骨髄性細胞表面マーカーを次に示す:APC抗マウスCD80(クローン16-10A1)、PE/Cy7抗マウスCD206(MMR)(クローンC068C2)、APC/Fire(商標)750抗マウスCD45.2(クローン104)、FITC抗マウスH-2(クローンM1/42)、Brilliant Violet 785(商標)抗マウスF4/80(クローンBM8)およびAlexa Fluor(登録商標)700抗マウスCD3(クローン17A2)。MHCIとSIINFEKL結合MHCIとの間を区別するために、本出願人らは、SIINFEKL結合APC抗マウスH-2Kb抗体(クローン25-D1.16)を使用した。BD Celestaにおいてマルチカラーフローデータ取得を行い、FlowJoソフトウェア(バージョン10.3)によりデータ解析を行った。GraphPad Prismソフトウェア(バージョン7.03)により統計解析を行った。
【0249】
(実施例1)
SIINFEKLペプチド提示およびXPTの効率
内在性ペプチドは通常、MHC-Iを介してCD8 T細胞に対して提示され、外因性(腫瘍等の他の細胞由来)ペプチドは、MHC-IIを介してCD4 T細胞に対して提示される。しかし、外因性ペプチドが、MHC-Iを介して提示される場合、これは、CD8 T細胞の活性化により抗腫瘍免疫をもたらす。この機序は、交差提示(XPT)と呼ばれる。交差提示は、過多のネオ抗原が生成される放射線療法に高度に関連する。抗原XPTにおけるHDAC6阻害の役割を理解するために、SIINFEKL(配列番号1)ペプチドモデルを使用した。SIINFEKLは、オボアルブミンのタンパク質分解性切断によって生成される8アミノ酸ペプチドであり、これは、小胞体においてMHC-Iに負荷され、T細胞受容体(TCR)に対する提示のために細胞表面に輸送される。SIINFEKLペプチドを負荷されたMHC-Iを認識する高度に特異的な抗体を利用して、抗原XPTの効率を決定した。
【0250】
極性化されたマクロファージが、増加する濃度のovaペプチドに曝露されると、M1マクロファージは、M0およびM2マクロファージと比較して、MHC-IによるSIINFEKLペプチドの交差提示がより優れていた。HDAC6ノックアウトマウスに由来するマクロファージは、SIINFEKL XPTの同様の増加を示したが、より高い効率ではあった。
図1。前処置NextAは、M1 XPTを増加させた。
図2。また、MHC IおよびSIINFEKL負荷MHC-Iの存在は、NextAで処置したSM1-OVAマウス黒色腫細胞において増加した。
図3。
【0251】
(実施例2)
HDAC阻害剤は、M2表現型に向けたマクロファージの極性化を減少させる
C57BL/6マウスの大腿骨および脛骨から単離された骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、M-CSFを用いてマクロファージに分化させた。これらのナイーブマクロファージは、NextAにより前処置し、LPS/IFNγによりM1マクロファージに、またはIL4/IL13によりM2マクロファージに極性化させた。フローサイトメトリーによって指し示される通り、NextA前処置は、M2マクロファージの極性化を減少させたが、M1マクロファージに影響を与えなかった。
図5および
図4を参照されたい。
【0252】
定量的リアルタイムPCRによる、遺伝子発現レベルでのM2極性化マーカーのさらなる検証は、腫瘍促進因子であるアルギナーゼI、IL-10およびTGFβが減少したことを指し示す。
図9、
図10および
図11。TNFαおよびIL-1B等、M1極性化マーカーおよび抗腫瘍、炎症促進性サイトカインの発現が増加した。
図12および
図13。これらのデータは、NextAによる前処置が、腫瘍微小環境(TME)における極性化因子に応答して、ナイーブマクロファージの細胞シグナル伝達およびプログラミングに影響を与えることを示唆する。
【0253】
(実施例3)
同系SM1マウス黒色腫モデルにおける養子移入療法
HDAC6阻害剤前処置ありまたはなしで、マウス骨髄から単離されたナイーブマクロファージのM1表現型に向けたex vivo極性化を行った。リン酸緩衝食塩水(対照群)、HDAC6阻害剤前処置ありの1×10
6個のM1マクロファージ、およびHDAC6阻害剤前処置なしの1×10
6個のM1マクロファージの腫瘍内植込みを含む3種の処置群。ナイーブおよびM2マクロファージのために同様の処置群をセットアップした。これらの試験のこれらのために、腫瘍免疫系を保持する同系SM1マウス黒色腫モデルを使用した。また、SM1マウス黒色腫細胞は、遺伝子変異数の観点でヒト黒色腫腫瘍に似ている。腫瘍サイズが5×5mmのときに、マウスナイーブ、M1およびM2マクロファージを用いた養子移入療法を行い、2cm直径の腫瘍サイズであるエンドポイントまで腫瘍を成長させた。
図6、
図7、
図8および
図14を参照されたい。
【0254】
M1マクロファージ治療群において、NextAによる前処置は、NextA前処置なしのM1マクロファージおよび対照群と比較して、腫瘍成長を抑制した。
図7。M2マクロファージ治療群において、腫瘍の成長は、マウスにとって害があり、大きい腫瘍サイズが原因で屠殺する必要があった。
図8。また、
図15および
図16は、M1/M2マクロファージ比が、TMEの免疫状態の指標であることを示す。腫瘍サイズと抗腫瘍M1マクロファージとの負の相関、および腫瘍促進性M2マクロファージと腫瘍サイズとの正の相関がある。
図17は、腫瘍サイズに対するM1/M2比相関を示す。これらの試験は、腫瘍内養子療法前のマクロファージのHDAC6阻害剤前処置が、抗腫瘍免疫をもたらすことを実証する。
【0255】
別個のSM1マウス黒色腫実験における治療レジメンを示す概略図を
図18に示す。M1+NextAは、ビヒクル群と比較した腫瘍サイズの減少を示す。
図19。生存解析は、M1+NextA群が、他の処置群と比較して、より優れた生存を有することを指し示す。
図20。HDAC6KOに由来するM1マクロファージも、腫瘍成長の減少を示し、マクロファージ機能におけるHDAC6の主要な役割を示唆する。
図21。
【0256】
(実施例4)
選択的HDAC6阻害剤で処置されたM0マクロファージは、M1マクロファージと同様である
選択的HDAC6阻害剤で処置されたM0マクロファージは、そのサイトカインプロファイルに関してM1マクロファージと同様である。
図22は、M2抗炎症性サイトカインTGFベータおよびIL10の発現が、選択的HDAC6阻害剤で処置されたM0マクロファージにおいて減少することを示す。
図23は、IL12、TNFアルファおよびIL1ベータ等のM1炎症促進性サイトカイン発現が、NextAによる処置の後に増加することを示す。
【0257】
(実施例5)
抗原提示およびプロセシング遺伝子の上方調節
図24は、TAP1、TAP2、TAPBPおよびERAP1等の抗原提示およびプロセシング遺伝子が、NextAによる処置の後にM0と比較してM1マクロファージにおいて増加することを示す。
【0258】
(実施例6)
放射線と組み合わせたHDAC6阻害
放射線およびHDAC6阻害の組合せは、時間依存性様式で抗原提示を増加させる。Ovaペプチドを安定に発現するSM1細胞は、4Gyの放射線、NextAまたは両者の組合せに曝露されると、フローサイトメトリーによって測定されるMHC-I媒介性SIINFEKL抗原提示の提示の時間依存性増加を示す。放射線とHDAC6阻害は、腫瘍細胞における抗原提示を増加させる。
図25。腫瘍細胞における有効な抗原提示のためのNextAおよび放射線処置の並び順を
図26に示す。
【0259】
(実施例7)
マクロファージにおける抗原交差提示
SM1-OVA細胞が、培地中にOVAペプチドを放出させる9~11Gyの放射線に曝露され、HDAC6阻害が、マクロファージにおける抗原交差提示を増加させる、マクロファージによる抗原交差提示に関するワークフローを示す概略図を
図27に示す。
【0260】
放射線曝露されたSM1-OVA細胞由来の馴化培地に曝露されたM0、M1およびM2 BMDM(骨髄由来マクロファージ)の交差提示、ならびにフローサイトメトリーによりAPC-MHC-I SIINFEKL抗体によって測定された抗原提示を
図28、
図29および
図30に示す。HDAC6阻害剤による処置は、マクロファージにおける抗原交差提示を増加させる。
【0261】
(実施例8)
選択的HDAC6阻害剤は、マクロファージにおける機能変化を誘導する
HDAC6に対して低い選択性を有するHDAC阻害剤は、HDAC6に対して高い選択性を有するHDAC阻害剤と比較して、腫瘍または免疫細胞において、それほど多くの免疫学的変化を誘導しない。例えば、それぞれ12および13倍のHDAC6選択性を有するACY1215およびACY241(
図31;Bergman et al., J Med Chem. 55:9891-9899 (2012);Santo et al., Blood 119:2579-2589 (2012);Huang et al., Oncotarget 8:2694-2707 (2017);Jochems et al., Neuropsychopharmacology 39:389-400 (2014)を参照)は、PD-L1の発現を低下させない(
図32)。選択的HDAC6阻害剤NextAは、マクロファージの腫瘍促進性M2表現型を低下させたが、部分的に選択的なHDAC6阻害剤のACY241は、M2を低下させなかった(データ図示せず)。マクロファージに対するHDAC6阻害剤の強い効果とは対照的に、樹状細胞、T細胞およびナチュラルキラー細胞におけるその役割は、in vitro処置の後の活性化マーカーの産生の欠如に基づき、最小限であると思われる。
図33および
図34。
【0262】
選択的HDAC6阻害剤は、非形質転換細胞において望まれない毒性を誘導し得る汎HDAC阻害剤、例えば、LBH589と比較して、より低い細胞性細胞傷害を有する。
図35。マクロファージは、HDAC阻害に対して特に感受性である。しかし、NextAは、5μMを超える高い細胞傷害を誘導した。
図36。
【0263】
本明細書(いずれかの添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に記載されている特色の全ておよび/またはそこで開示されているいずれかの方法のステップの全ては、かかる特色および/またはステップの少なくとも一部が相互排他的となる組合せを除く、いずれかの組合せで、上述の態様のいずれかと組み合わせることができる。
【0264】
前述の態様および例証が、いかなる点においても、本開示の範囲を限定することを意図しないこと、また、本明細書に提示されている特許請求の範囲が、本明細書に明確に提示されているか否かにかかわらず、あらゆる態様、実施形態および例証を包含することを意図することを理解されたい。
【0265】
本明細書に引用されているあらゆる特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】