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特表2022-538295IZM-5結晶化固体および同固体の調製のための方法
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  • 特表-IZM-5結晶化固体および同固体の調製のための方法 図1
  • 特表-IZM-5結晶化固体および同固体の調製のための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】IZM-5結晶化固体および同固体の調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/26 20060101AFI20220825BHJP
   C01B 37/00 20060101ALI20220825BHJP
   C01G 9/00 20060101ALI20220825BHJP
   C01G 19/00 20060101ALI20220825BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20220825BHJP
   C07F 3/06 20060101ALI20220825BHJP
   C07F 19/00 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
C07D211/26
C01B37/00
C01G9/00 B
C01G19/00 A
C07F7/22 V CSP
C07F3/06
C07F19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577375
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020066567
(87)【国際公開番号】W WO2020260063
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1907098
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】フェカン アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス フランコ ラケル
【テーマコード(参考)】
4G047
4G073
4H048
4H049
4H050
【Fターム(参考)】
4G047AA04
4G047AB02
4G047AC03
4G047AD03
4G073AA03
4G073BA52
4G073BA65
4G073BA76
4G073BB44
4G073BD01
4G073BD07
4G073CD01
4G073CD04
4G073CZ60
4G073FB50
4G073FC04
4G073FC25
4G073FD01
4G073FD24
4G073GA01
4G073GA03
4G073UA01
4G073UB60
4H048AA01
4H048AA02
4H048AB90
4H048AC90
4H048VB10
4H049VN03
4H049VP11
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB90
4H050AC90
(57)【要約】
本発明は、IZM-5と呼ばれ、無水換算で、モルに関して表され、かつ、以下の一般式:SnZn(式中、Rは、少なくとも1種の窒素性有機種を示し;Sは硫黄を示し、「a」は、Snで表記されるスズのモル量0.1~5であり;「b」は、Znで表記される亜鉛のモル量0.2~8であり;「c」は、窒素性有機種Rのモル量0~4である)によって定義される化学組成を含んでいる結晶化固体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水換算で、モルに関して表され、かつ、以下の一般式:
SnZn:cR
式中:
Rは、少なくとも1種の窒素性有機体を示し;
Sは、硫黄であり;
「a」は、Snで表記されるスズのモル量0.1~5であり;
「b」は、Znで表記される亜鉛のモル量0.2~8であり;
「c」は、窒素性有機体Rのモル量0~4である
によって定義される化学組成を含んでいる結晶性固体。
【請求項2】
「c」は、0.2~4である、請求項1に記載の結晶性固体。
【請求項3】
前記固体は、下記の表に列挙されるラインを少なくとも含んでいるX線回折パターンを呈する、請求項2に記載の結晶性固体。
【表1】
表中、VSt=非常に強い;St=強い;m=中間;w=弱い
【請求項4】
「a」は、1~4である、請求項1~3のいずれか1つに記載の結晶性固体。
【請求項5】
「b」は、0.2~2である、請求項1~4のいずれか1つに記載の結晶性固体。
【請求項6】
「c」は、0.5~3である、請求項2~5のいずれか1つに記載の結晶性固体。
【請求項7】
Rは、少なくとも2個の窒素原子を含んでいる有機化合物である、請求項1~6のいずれか1つに記載の結晶性固体。
【請求項8】
Rは、1,3-ビス(4-ピペリジニル)プロパンである、請求項7に記載の結晶性固体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の結晶性固体を調製するための方法であって、以下の工程:
i) Snで表記されるスズの少なくとも1種の源、Znで表記される亜鉛の少なくとも1種の源、Sで表記される硫黄の少なくとも1種の源、Rで表記される少なくとも1種の窒素性有機化合物を混合して、前駆体ゲルを得る工程;
ii) 工程i)の終結の際に得られた前記前駆体ゲルの熱処理を、120℃~250℃の温度で、2日~21日の期間にわたって行う工程
を含む、方法。
【請求項10】
工程i)の混合物は、以下のモル組成:
Sn/Zn:少なくとも0.1;
S/(Sn+Zn):0.1~20;
R/(Sn+Zn):0.1~20
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程i)の混合物は、前駆体ゲル得るためにSOLVで表記される少なくとも1種の溶媒も含み、該溶媒は、少なくとも1種の水性化合物(Aで表記される)および/または少なくとも1種の有機化合物(Oで表記される)を含み、前記混合物は、以下のモル組成:
Sn/Zn:少なくとも0.1;
S/(Sn+Zn):0.1~20;
R/(Sn+Zn):0.1~20;
SOLV/(Sn+Zn):10~1000;
A/O:0.01~10
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
スズの源は、酢酸スズSn(CHCO、スズ tert-ブトキシドSn(OC(CH、四塩化スズSnCl、スズ ビス(アセチルアセトナート)ジクロリド(CHCOCH=C-(O)CHSnCl、酸化スズSnO、金属形態のスズSnから選ばれる、請求項9~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
亜鉛の源は、塩化亜鉛ZnCl、酢酸亜鉛Zn(CHCO、硫酸亜鉛ZnSO、硝酸亜鉛Zn(NO、酸化亜鉛ZnO、金属形態の亜鉛Znから選ばれる、請求項9~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
硫黄の源は、元素硫黄SまたはS、硫化ナトリウムNaS、硫化カリウムKS、硫化リチウムLiS、硫化アンモニウムS(NH、ジメチルジスルフィドCHSSCHから選ばれる、請求項9~13のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以降においてIZM-5と称する金属硫化物をベースとする新結晶性固体、さらには同固体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性ミクロ細孔材料、例えば、ゼオライトまたはシリコアルミノリン酸塩は、石油産業において触媒、触媒担体、吸着剤または分離剤として広く用いられている固体である。種々の組成の多くのミクロ細孔性の結晶構造が発見されたが、精製および石油化学の産業および触媒方法は、一般に、適用、例えば、気体の精製または分離、炭素ベースの実体物の転化その他のための特定の特性を呈する新しい結晶性の構造を常時捜索している。
【0003】
ゼオライトは、圧倒的多数の結晶性構造を構成する。過去40年にわたって合成されたゼオライトの中で、所定数の固体により、吸着および触媒反応の分野において相当な進歩を達成することが可能となった。これらの中で、言及がなされてよいのは、Yゼオライト(特許文献1)およびZSM-5ゼオライト(特許文献2)である。ゼオライトを包含し、各年に合成される新しいモレキュラーシーブスの数は、一定的に増大している。発見された異なるモレキュラーシーブスのより完全な説明のために、以下の参考書を参照することが有用であってよい:非特許文献1。
【0004】
これらのミクロ細孔結晶性構造の全ての中で、P. Fengら(非特許文献2)は、四価金属構造元素(ガリウム、スズおよびゲルマニウム)および場合による三価金属構造元素(インジウム)の硫化物をベースとするこのタイプの第1の材料を発見した。これは、UCR-20と名称付けられ、“Atlas of Zeolite Framework Types”においてRWY構造コードによって参照される。
【0005】
それ以来、他の結晶性硫化物材料は、文献(非特許文献3)において主張されており、三価金属(ICF-21、ICF-22、ICF-24、ICF-25およびICF-27)、三価および四価の金属(ICF-5およびICF-17)をベースとする構造的要素、より最近では三価および二価の構造的要素をベースとする構造的要素を含有している(非特許文献4および5)。
【0006】
しかしながら、従来技術において用いられている金属は、希少なおよび/または高価なおよび/または有毒な構造要素、例えば、Ga、Ge、InさらにはCdを含有している。
【0007】
本発明は、亜鉛およびスズを構造要素として含有しており、特定のX線回折パターンを呈する新しい特定の結晶性固体を提供することを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3130007号明細書
【特許文献2】米国特許第3702886号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ch. Baerlocher, L. B. McCuskerおよびD. H. Olson著、“Atlas of Zeolite Framework Types”、第6改訂版、2007年、Elsevier
【非特許文献2】P. Fengら著、Science、2002年、第298巻、p2366
【非特許文献3】P. Feng著、Nature、2003年、第426巻、p.428
【非特許文献4】S. Dehnenら著、Inorg. Chem.、2009年、第48巻、p.1689
【非特許文献5】P. Fengら著、J. Am. Chem. Soc.、2015年、第137巻、p.6184
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の主題)
本発明の主題は、無水換算で、モルに関して表され、以下の一般式:
SnZn:cR
式中:
Rは、少なくとも1種の窒素性有機体(entity)を示し;
Sは、硫黄であり;
「a」は、Snで表記されるスズのモル量0.1~5であり;
「b」は、Znで表記される亜鉛のモル量0.2~8であり;
「c」は、窒素性有機体Rのモル量0~4である
によって定義される化学組成物を含んでいる結晶性固体にある。
【0011】
好ましくは、「c」は、0.2~4である。
【0012】
好ましくは、前記固体が有するX線回折パターンは、下記表に列挙されるラインを少なくとも含んでいる。
【0013】
【表1】
表中、VSt=非常に強い;St=強い;m=中間;w=弱い
【0014】
好ましくは、「a」は、1~4である。
【0015】
好ましくは、「b」は、0.2~2である。
【0016】
好ましくは、「c」は、0.5~3である。
【0017】
好ましくは、Rは、少なくとも2個の窒素原子を含んでいる有機化合物である。
【0018】
より優先的には、Rは、1,3-ビス(4-ピペリジニル)プロパンである。
【0019】
本発明による別の主題は、本発明による結晶性固体を調製するための方法であって、以下の工程:
i) Snで表記されるスズの少なくとも1種の源、Znで表記される亜鉛の少なくとも1種の源、Sで表記される硫黄の少なくとも1種の源、少なくとも1種のRで表記される窒素性有機化合物を混合して前駆体ゲルを得る工程;
ii) 工程i)の終結の際に得られた前記前駆体ゲルの熱処理を120℃~250℃の温度で、2日~21日の期間にわたって行う工程
を含む方法に関する。
【0020】
好ましくは、工程i)の混合物は、以下のモル組成:
Sn/Zn:少なくとも0.1;
S/(Sn+Zn):0.1~20;
R/(Sn+Zn):0.1~20
を含む。
【0021】
好ましくは、工程i)の混合物は、SOLVで表記される少なくとも1種の溶媒も含み、この溶媒は、Aで表記される少なくとも1種の水性化合物およびOで表記される少なくとも1種の有機化合物を含んでおり、前記混合物は、以下のモル組成:
Sn/Zn:少なくとも0.1;
S/(Sn+Zn):0.1~20;
R/(Sn+Zn):0.1~20;
SOLV/(Sn+Zn):10~1000;
A/O:0.01~10
を含んでいる。
【0022】
好ましくは、スズの源は、酢酸スズSn(CHCO、スズ tert-ブトキシドSn(OC(CH、四塩化スズSnCl、スズ ビス(アセチルアセトナート)ジクロリド(CHCOCH=C-(O)CHSnCl、酸化スズSnO、金属形態にあるスズSnから選ばれる。
【0023】
好ましくは、亜鉛の源は、塩化亜鉛ZnCl、酢酸亜鉛Zn(CHCO、硫酸亜鉛ZnSO、硝酸亜鉛Zn(NO、酸化亜鉛ZnO、金属形態にある亜鉛Znから選ばれる。
【0024】
好ましくは、硫黄の源は、元素硫黄SまたはS、硫化ナトリウムNaS、硫化カリウムKS、硫化リチウムLiS、硫化アンモニウムS(NH、ジメチルジスルフィドCHSSCHから選ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(図面の説明)
本発明による方法の他の特徴および利点は、以下に説明される添付の図面を参照しながら非限定的な典型的実施形態の以下の説明を読めば明らかになるだろう。
【0026】
図1は、本発明による合成方法における構造化剤として用いられた有機化合物の例の化学式を示す。
【0027】
図2は、実施例1により得られた金属硫化物ベースの結晶性IZM-5固体のX線回折(XRD)パターンを示す。x軸は、角度2シータ(2θ)の値を度で示し、y軸は、相対強度Irelを示し、これは、100の値がx線回折パターンの最も強いラインに割り当てられる場合の相対強度のスケールに関連して与えられる。
【0028】
(本発明の説明)
本発明の主題は、新しい固体にあり、これは、IZM-5と呼ばれ、新しい結晶構造を呈する。前記固体は、無水換算で、モルに関して表され、以下の一般式:
SnZn:cR
式中:
Rは、少なくとも1種の窒素性有機体を示し;
Sは、硫黄であり;
「a」は、Snで表記されるスズのモル量0.1~5であり;
「b」は、Znで表記される亜鉛のモル量0.2~8であり;
「c」は、窒素性有機体Rのモル量0~4である
によって定義される化学組成を呈する。
【0029】
本発明による結晶性固体IZM-5が有しているX線回折パターンは、有利には、下記表2に列挙されるラインを少なくとも含む。この新しい結晶性固体IZM-5は、非常に特定的なラインを含んでいる新しい結晶構造を有する。
【0030】
この回折パターンは、銅Kα放射(λ=1.5406Å)による従来の粉体法を用いる回折計による放射線結晶学的分析によって得られる。角度2θによって示される回折ピークの位置に基づいて、サンプルに特有の格子面間隔(interlattice spacings)dhklがブラッグの法則によって計算される。dhkl上の誤差Δ(dhkl)の測定は、ブラッグの法則によって2θの測定に割り当てられる絶対誤差Δ(2θ)の関数として計算される。±0.02°に等しい絶対誤差Δ(2θ)は一般的に受け入れられる。dhklの各値に割り当てられる相対強度Irelは、対応する回折ピークの高さにより測定される。本発明によるIZM-5結晶性固体のX線回折パターンは、下記表2に与えられるdhklの値のところにラインを少なくとも含む。dhklの列において、格子間距離の平均値をオングストローム(Å)で示す。これらの値のそれぞれは、測定誤差Δ(dhkl)±0.6Å~±0.01Åを割り当てられなければならない。
【0031】
【表2】
【0032】
表中、VSt=非常に強い;St=強い;m=中間;w=弱い。
【0033】
相対強度Irelは、100の値がX線回折パターンの最も強いラインに割り当てられる相対強度スケールに関して与えられる:w<10;10≦m<15;15≦St<50;VSt≧50。
【0034】
前記固体IZM-5は、無水換算で、モルに関して表され、以下の一般式:SnZn:cR
式中:
「a」は、Snの相対モル量0.1~5、好ましくは1~4であり;
「b」は、Znの相対モル量0.2~8、好ましくは0.2~2であり;
「c」は、窒素性有機体Rのモル量0~4、好ましくは0.2~4、より優先的には0.5~3である
によって定義される化学組成を呈する。
【0035】
本発明の主題は、結晶性固体IZM-5を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
i) Snで表記されるスズの少なくとも1種の源、Znで表記される亜鉛の少なくとも1種の源、Sで表記される硫黄の少なくとも1種の源、Rで表記され、構造化剤とも呼ばれる少なくとも1種の窒素性有機化合物、好ましくは、1,3-ビス(4-ピペリジニル)プロパン、および場合によるSOLVで表記される少なくとも1種の溶媒であって、少なくとも1種の水性化合物(Aで表記される)および/または少なくとも1種の有機化合物(Oで表記される)を含むものを混合して前駆体ゲルを得る工程であって、前記混合物は、優先的には、以下のモル組成:
Sn/Zn:少なくとも0.1、好ましくは少なくとも1、より好ましくは2~200;
S/(Sn+Zn):0.1~20、好ましくは1~10;
R/(Sn+Zn):0.1~20、好ましくは1~10;
SOLV/(Sn+Zn):0~1000、好ましくは10~500、好ましくは10~400、より好ましくは20~400;
A/O:0.01~10、好ましくは0.1~8、好ましくは0.2~5;
を呈する、工程;
ii) 工程i)の終結の際に得られた前記前駆体ゲルの熱処理を、120℃~250℃の温度で、2日~21日の期間にわたって行う工程
を含んでいる方法にもある。
【0036】
好ましくは、工程i)において得られた混合物は、以下のモル組成:
Sn/Zn:少なくとも0.1;
S/(Sn+Zn):0.1~20;
R/(Sn+Zn):0.1~20
を含む。
【0037】
好ましくは、工程i)の混合物はSOLVで表記される溶媒も含み、前記混合物は、以下のモル組成:
Sn/Zn:少なくとも0.1;
S/(Sn+Zn):0.1~20;
R/(Sn+Zn):0.1~20;
SOLV/(Sn+Zn):10~1000
を含む。
【0038】
本発明による方法によると、Rは、少なくとも1個の窒素原子を有している窒素性有機化合物であり、好ましくは、Rは、2個の窒素原子を含み、前記化合物は、工程i)の実施のために反応混合物に有機構造化剤として組み入れられる。優先的には、Rは、窒素性化合物1,3-ビス(4-ピペリジニル)プロパンである。結晶性固体IZM-5のための構造化剤として用いられる前記窒素性有機体は、当業者に知られているあらゆる方法によって合成され得る。
【0039】
本発明による方法によると、スズの少なくとも1種の源は、工程i)の反応混合物において用いられ、スズ元素を含んでおりかつこの元素を混合物中に活性な形態で放出することができるあらゆる化合物であり得る。スズの源は、好ましくは、酢酸スズSn(CHCO、スズ tert-ブトキシドSn(OC(CH、四塩化スズSnCl、スズ ビス(アセチルアセトナート)ジクロリド(CHCOCH=C-(O)CHSnCl、酸化スズSnO、金属形態スズである。
【0040】
本発明による方法によると、亜鉛の少なくとも1種の源は、工程i)の反応混合物において用いられ、亜鉛元素を含んでおりかつこの元素を混合物中に活性な形態で放出することができるあらゆる化合物であり得る。亜鉛の源は、好ましくは、塩化亜鉛ZnCl、酢酸亜鉛Zn(CHCO、硫酸亜鉛ZnSO、硝酸亜鉛Zn(NO、酸化亜鉛ZnO、金属形態の亜鉛Znである。
【0041】
本発明による方法によると、硫黄の少なくとも1種の源は、工程i)の反応混合物において用いられ、硫黄元素を含んでおりかつこの元素を混合物中に活性な形態で放出することができるあらゆる化合物であり得る。硫黄の源は、好ましくは標準の温度および圧力の条件下に固体または液体である。硫黄の源は、好ましくは、元素硫黄SまたはS、硫化ナトリウムNaS、硫化カリウムKS、硫化リチウムLiS、硫化アンモニウムS(NH、ジメチルジスルフィドCHSSCHである。
【0042】
本発明による方法によると、場合による少なくとも1種の溶媒は、工程i)の反応混合物において用いられ、水性および/または有機性の化合物であり得る。1種の変形例によると、溶媒は、水性化合物および有機化合物からなる。水性化合物は、水HOから選ばれてよく、有機化合物は、標準の温度および圧力の条件下に液体である化合物から選ばれてよく、アルコール(好ましくはエタノール、イソプロパノール)、ジオール(好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール)、トリオール(好ましくはグリセロールまたはプロパン-1,2,3-トリオール)、有機硫黄(好ましくはジメチルスルホキシドすなわちDMSO)、または有機窒素化合物(好ましくはジメチルホルムアミドすなわちDMF)のタイプのものである。
【0043】
別の変形例によると、追加の溶媒は、結晶性固体IZM-5を調製するための方法において何ら用いられず、金属前駆体および硫黄所持前駆体の可溶化を可能にする標準の温度および圧力の条件下にそれが液体の形態にある場合にそれはRで表記される窒素性有機体である。
【0044】
本発明による方法の工程i)は、ゲルと呼ばれ、かつスズの少なくとも1種の源、亜鉛の少なくとも1種の源、硫黄の少なくとも1種の源、少なくとも1種の窒素性有機体R、および場合による溶媒を含有している反応混合物を調製することからなる。前記反応剤の量は、このゲル上に結晶性固体IZM-5としてのそれの結晶化をそれの粗製合成形態で可能にする組成を授与するように上記に指し示されるように調節される。
【0045】
混合工程i)は、均一な混合物が得られるまで、好ましくは15分以上の時間にわたって、好ましくは当業者に知られているあらゆるシステムによって、低いまたは高いせん断速度で撹拌しながら行われる。工程i)の終わりに、均一な前駆体ゲルが得られる。
【0046】
本発明による方法の前記工程i)の間に反応混合物に種を加えて、結晶の形成のために要求される時間および/または全結晶化時間を短縮するようにすることは有利であってよい。前記種は、不純物を抑えて結晶性固体IZM-5の形成も促進する。このような種は、結晶性固体、とりわけ固体IZM-5結晶を含む。結晶種は、一般的に、反応混合物において用いられるスズ前駆体および亜鉛前駆体の全重量に対して0.01重量%~10重量%の割合で加えられる。
【0047】
工程i)の間に反応混合物の熟成を実施した後に、本発明による方法の熱処理ii)を行って、不純物を抑えて結晶性固体IZM-5の結晶のサイズを制御することは有利であってよい。前記熟成は、不純物を抑えて結晶性固体IZM-5の形成も促進する。本発明による方法の工程i)の間の反応混合物の熟成は、周囲温度または20~100℃の温度で撹拌しながらまたは撹拌せずに、有利には30分~48時間の時間にわたって行われてよい。
【0048】
本発明による方法の工程ii)によると、工程i)の終わりに得られた前駆体ゲルは、熱処理に付され、この熱処理は、優先的には、120℃~250℃の温度で2日~21日の期間にわたって結晶性固体IZM-5が形成されるまで行われる。
【0049】
ゲルは、有利には、自発反応圧力下に、場合によってはガス、例えば窒素の添加を伴い、120℃~250℃、好ましくは140℃~210℃の温度に固体IZM-5の結晶がその粗製合成形態で形成されるまで置かれる。
【0050】
結晶化を得るために要求される時間は、ゲル中の反応剤の組成、撹拌および反応温度に応じて一般的には1日~数月の範囲にわたる。好ましくは、結晶化時間は、2日~21日、好ましくは5日~15日の範囲にわたる。
【0051】
反応は、一般的に、撹拌しながらまたは撹拌なしで、好ましくは撹拌しながら行われる。用いられて良い撹拌システムは、当業者に知られているあらゆるシステム、例えば、カウンタブレード付き傾斜ブレード、撹拌ターボミキサまたはアルキメデススクリューである。
【0052】
反応の終わりに、本発明による調製方法の前記工程ii)を行った後、IZM-5固体から構成された固相は、好ましくは、ろ過され、洗浄され、次いで乾燥させられる。好ましくは、洗浄工程は、エタノールまたは合成のために用いられる溶媒により行われることになる。乾燥処理は、一般的に、20℃~150℃、好ましくは60℃~100℃の温度で、5時間~24時間の期間にわたって行われる。
【0053】
前記乾燥工程の終わりに、得られたIZM-5固体は、表1に列挙されたラインを少なくとも含んでいるX線回折パターンを有しているものである。
【0054】
工程ii)の後、場合によっては上記のろ過、洗浄および乾燥の工程の後に、ミクロ多孔性部を解放するために有機体Rを抽出する工程が当業者に知られているあらゆる方法によって実施されてよい。好ましくは、この工程は、単独のまたは混合物としての、空気下、酸素下、水素下、HS下あるいは不活性ガス、例えば、N下に100℃~1000℃の熱処理を用いて行われ得る。この抽出は、実体物、例えば、NH 、アルカリ、アルカリ土類の金属または任意の金属カチオンとのイオン交換によってもなされ得る。
【0055】
有機体Rの抽出の後に、本発明による結晶性固体IZM-5は、吸着剤として、例えば、汚染制御のために、またはモレキュラーシーブとして分離のために用いられ得る。
【0056】
(実施例)
本発明は、以下の実施例によって例証されるが、これらの実施例は、決して限定的ではない。
【0057】
(実施例1:本発明に合致するIZM-5固体の調製)
二酸化スズ(SnO、純度99重量%、Sigma-Aldrich)0.228gを、硝酸亜鉛(Zn(NO・6HO、純度99重量%、Alfa Aesar)0.146gと混合した。続いて、硫黄(S、純度99.98重量%、Aldrich)0.277gおよび1,3-ビス(4-ピペリジル)プロパン(化合物R、純度97重量%、Aldrich)2.001gを、先の混合物に加える。終わりに、エチレングリコール(純度99.8重量%、VWR)11.2mLおよび脱イオン水3.7mLを組み入れ、合成ゲルの撹拌(250rpm)を30分にわたって維持した。次いで、前駆体ゲルを、均一化の後に、オートクレーブに移す。オートクレーブを閉にし、次いで、12日にわたって190℃で静的条件下に加熱する。得られた結晶性の生成物をろ過し、エタノールにより洗浄し、その後、100℃で終夜乾燥させる。粗製固体合成生成物をX線回折によって分析し、固体IZM-5からなることを確認した。粗製IZM-5合成固体について生じた回折パターンを図2に与える。生成物が有しているSn/Znモル比は、ICP-MSによって決定されるように5.7である。元素分析は、以下のモル組成を与える:Sn3.4Zn0.6:1.1R
(実施例2:本発明に合致するIZM-5固体の調製)
二酸化スズ(SnO、純度99重量%、Sigma-Aldrich)0.293gを、硝酸亜鉛(Zn(NO・6HO、純度99重量%、Alfa Aesar)0.141gと混合した。続いて、硫黄(純度99.98重量%、Aldrich)0.267gおよび1,3-ビス(4-ピペリジル)プロパン(化合物R、純度97重量%、Aldrich)2.002gを、先の混合物に加える。終わりに、エチレングリコール(純度99.8重量%、VWR)11.5mLおよび脱イオン水3.6mLを組み入れ、合成ゲルの撹拌(250rpm)を30分にわたって維持する。次いで、前駆体ゲルを、均一化の後に、オートクレーブに移す。オートクレーブを閉にし、次いで、12日にわたって190℃で静的条件下に加熱する。得られた結晶性の生成物をろ過し、エタノールにより洗浄し、次いで、100℃で終夜乾燥させる。粗製固体合成生成物をX線回折によって分析し、IZM-5固体からなることを確認したが、痕跡量のSnOを伴っていた。生成物が有しているSn/Znのモル比は、ICP-MSによって決定されるように5.8である。元素分析は、以下のモル組成を与える:Sn3.5Zn0.6:1R。
【0058】
(実施例3:本発明に合致するIZM-5固体の調製)
金属スズ(Sn、純度99重量%、Sigma-Aldrich)0.240gを、硝酸亜鉛(Zn(NO・6HO、純度99重量%、Alfa Aesar)0.144gと混合した。続いて、硫黄(S、純度99.98重量%、Aldrich)0.276gおよび1,3-ビス(4-ピペリジル)プロパン(化合物R、純度97重量%、Aldrich)2.000gを、先の混合物に加える。終わりに、エチレングリコール(純度99.8重量%、VWR)11.2mLおよび脱イオン水3.7mLを組み入れ、合成ゲルの撹拌(250rpm)を30分にわたって維持する。次いで、前駆体ゲルを、均一化の後に、オートクレーブに移す。オートクレーブを閉にし、次いで、12日にわたって190℃で静的条件下に加熱する。得られた結晶性の生成物をろ過し、エタノールにより洗浄し、次いで、100℃で終夜乾燥させる。粗製固体合成生成物を、X線回折によって分析し、IZM-5固体からなることを確認したが、痕跡量のSnを有していた。生成物が有しているSn/Znのモル比は、ICP-MSによって決定されて5.9である。元素分析は、以下のモル組成を与える:Sn3.7Zn0.6:0.95R。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明による合成方法における構造化剤として用いられた有機化合物の例の化学式を示す。
図2】実施例1により得られた金属硫化物ベースの結晶性IZM-5固体のX線回折(XRD)パターンを示す。
図1
図2
【国際調査報告】