(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】無針送達用の固形剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20220825BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220825BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220825BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220825BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220825BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220825BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220825BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220825BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220825BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220825BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220825BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/10
A61P37/02
A61K45/00
A61K9/20
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/42
A61K47/38
A61K47/34
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/16
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577404
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 GB2020051541
(87)【国際公開番号】W WO2020260882
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518139339
【氏名又は名称】エネシ・ファーマ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】グラント,デヴィッド・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マグレガー,クリス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD09
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD38
4C076DD42
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE38
4C076EE41
4C076FF04
4C084AA17
4C084NA08
4C084ZB072
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZB33
4C084ZB35
(57)【要約】
本開示は、0.01~60%(w/w)の一つ又は複数の治療及び/又は予防薬;及び40.0%~99.99%(w/w)のデキストランを含む無針送達のための固形剤に関する。本発明はさらに、固形剤の錠剤の製造法及びその特別な医学的使用、特にワクチンとしての用途にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無針送達のために少なくとも約80MPaの圧縮強度を有する固形剤であって、
0.01~60%(w/w)の少なくとも一つの治療及び/又は予防薬;及び
40.0%~99.99%(w/w)のデキストラン
を含む固形剤。
【請求項2】
無針送達のために少なくとも約80MPaの圧縮強度を有する固形剤であって、
0.01~25.0%(w/w)の少なくとも一つの治療及び/又は予防薬;
少なくとも25.0%(w/w)のデキストラン;及び
少なくとも50%(w/w)の、少なくとも一つ、又は二つ以上の組合せの、デキストラン以外の異なる賦形剤
を含む固形剤。
【請求項3】
少なくとも50~74%(w/w)の、一つ、又は二つ以上の組合せのデキストラン以外の賦形剤を含む、請求項2に記載の固形剤。
【請求項4】
賦形剤(一つ又は複数)が、トレハロース、マンニトール及びCMCから選ばれる、請求項2又は3に記載の固形剤。
【請求項5】
少なくとも0.5%(w/w)の滑沢剤をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項6】
少なくとも一つの薬剤が免疫原である、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項7】
少なくとも一つの薬剤が、免疫付与のための生物学的又は化学的製剤である、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項8】
少なくとも一つの薬剤が、ベクター、タンパク質、サブユニットタンパク質、DNA、RNA、トキソイド、又は多糖-抗原コンジュゲート及びチェックポイント阻害薬から選ばれる生物学的又は化学的製剤である、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項9】
結合剤、増量剤、安定剤又はそれらの組合せをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項10】
一つ又は複数のアジュバントをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項11】
固形剤が、40~99%、49.5~99%、50~99%、51~99%、63~99%、66~99%、74~99%又は82~99%(w/w)の範囲のデキストランを含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項12】
デキストランが、10kDa以上、又は10kDa~110kDa、好ましくは70kDaの平均分子量を有する等級から選ばれる、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項13】
選択されたデキストランが、0.5%~6%(w/w)の水、好ましくは1%~5%、さらに好ましくは1%~4%の水を含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項14】
固形剤が、錠剤又はマイクロ錠剤であり、及び/又は好ましくは細長い、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項15】
固形剤が、2:1~6:1、好ましくは約4:1の長さ対幅の比を有する、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項16】
固形剤が、0.5mm~2mm、好ましくは0.75mm~1.2mm、最も好ましくは約0.85mmの幅を有する、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項17】
固形剤が、1.7~12mm、好ましくは2~6mm、さらに好ましくは約4mmの長さを有する、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項18】
錠剤又はマイクロ錠剤が、22.5°~90°の内角を有する尖端を有する、請求項14に記載の固形剤。
【請求項19】
メチオニン、システイン、ヒスチジン、クエン酸、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、塩化カリウム、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、アルブミン、マンニトール、トレハロース、スクロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩又はそれらの組合せの一つ又は複数をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項20】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項21】
製剤が、最大5%(w/w)の滑沢剤を含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項22】
製剤がさらにCMCを好ましくは10~50%(w/w)の範囲で含み、さらに好ましくは、製剤が36%~50%(w/w)のCMCを、任意に9~39%(w/w)のマンニトールと共に含む、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項23】
一つ又は複数の疾患又は障害の治療又は予防に使用するための前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項24】
疾患又は障害が、がん、黄熱病、狂犬病、ジフテリア、破傷風、ヘモフィルス・インフルエンザ菌B型(Hib)、百日咳、肺炎球菌性疾患、髄膜炎菌性疾患、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HTV、HSV2/HSV1、インフルエンザ(A、B及びC型)、パラインフルエンザ、ポリオ、RSV、ライノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)、炭疽病、胃腸炎、エンテロウイルス疾患、麻疹、おたふく風邪、水痘帯状疱疹、腺熱、呼吸器疾患、風疹、ヒトT細胞リンパ腫I型(HTLV-I)、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、ポックスウイルス病、コレラ、日本脳炎、ジカ、チクングニア熱、コウモリリッサウイルス、Q熱、リフトバレー熱、ヘンドラウイルス、野兎病、ニパウイルス、ラッサ熱、腸チフス、クリミア・コンゴ出血熱、エボラ、ペスト及びシゲラ、又は獣医学的疾患、例えば、口蹄疫(血清型O、A、C、SAT-1、SAT-2、SAT-3、及びAsia-1を含む)、コロナウイルス、ブルータング、ネコ白血病、鳥インフルエンザ、ヘンドラ及びニパウイルス、ペスチウイルス、イヌパルボウイルス及びウシウイルス性下痢ウイルスの一つ又は複数から選ばれるか又はそれらに関連する、請求項23に記載の固形剤。
【請求項25】
固形剤が、ワクチン、好ましくは単回投与ワクチンとして使用されるためのものである、前記請求項のいずれかに記載の固形剤。
【請求項26】
治療又は予防が、無針送達デバイスの使用を含む、請求項23、24又は25に記載の固形剤。
【請求項27】
無針ワクチン接種の方法における、前記請求項のいずれかに記載の固形剤の使用。
【請求項28】
黄熱病、狂犬病、ジフテリア、破傷風、ヘモフィルス・インフルエンザ菌B型(Hib)、百日咳、肺炎球菌性疾患、髄膜炎菌性疾患、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HTV、HSV2/HSV1、インフルエンザウイルス(A、B及びC型)、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、RSVウイルス、ライノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含むレンチウイルス、ノーウォークウイルス、エンテロウイルス、アストロウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、アデノウイルス、呼吸器疾患、風疹、ヒトT細胞リンパ腫I型ウイルス(HTLV-I)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、ポックスウイルス及びワクシニアウイルス、コレラ、日本脳炎ウイルス、ジカウイルス、チクングニアウイルス、コウモリリッサウイルス、Q熱、リフトバレー熱ウイルス、ヘンドラウイルス、野兎病、ニパウイルス、ラッサ熱、腸チフス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、エボラウイルス、ペスト及びシゲラによる感染に対する、又は口蹄疫(血清型O、A、C、SAT-1、SAT-2、SAT-3、及びAsia-1を含む)、コロナウイルス、ブルータング、ネコ白血病ウイルス、鳥インフルエンザ、ヘンドラ及びニパウイルス、ペスチウイルス、イヌパルボウイルス及びウシウイルス性下痢ウイルスなどの獣医学的疾患に対する無針ワクチン接種の方法における、前記請求項のいずれかに記載の固形剤の使用。
【請求項29】
ワクチンの種類が、弱毒化(生)ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドワクチン、サブユニット又は精製抗原ワクチン、コンジュゲートワクチン、ネオ抗原ワクチン、RNAワクチン、DNAワクチン、異種“ジェンナー”ワクチン、同種ワクチン、組換えベクターワクチンから選ばれる、前記請求項のいずれかに記載の固形剤を含むワクチン。
【請求項30】
前記請求項のいずれかに記載の固形剤又はワクチンを含む錠剤の製造法であって、
固形剤の成分を乾燥粉末形で混合し;
該粉末をダイで圧縮し;そして
該固形剤をおよそ25~40℃で少なくとも24時間乾燥させる
ことによって製造する方法。
【請求項31】
固形剤の成分を乾燥粉末形で混合する工程が、デキストランを固形剤のその他の成分の一つ又は複数と共に噴霧乾燥又は凍結乾燥することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一つの治療及び/又は予防薬と、デキストランと、そして少なくとも一つの賦形剤とを含む固形剤を含む錠剤の製造法であって、該方法は、
固形剤の成分を乾燥粉末形にして混合し(デキストランは噴霧乾燥によって少なくとも一つの賦形剤と混合される);
該粉末をダイで圧縮し;そして
該固形剤をおよそ25~40℃で少なくとも24時間乾燥させる
ことを含む方法。
【請求項33】
ダイが、好ましくは直径0.5mm~2mm、好ましくは0.75mm~1.2mm、最も好ましくは0.85mmのマイクロ錠剤を製造するように構成されている、請求項30、31又は32に記載の方法。
【請求項34】
乾燥工程が、およそ25℃~40℃で、5日~11日間、真空下、好ましくは10mbarで乾燥させることを含む、請求項30~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
乾燥が、およそ25℃、10mbarで、少なくとも5日間である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
疾患又は障害の治療又は予防法であって、前記方法は、必要な対象に、治療上有効な量の前記請求項1~26のいずれかに定義された固形剤を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原などの治療薬又は予防薬(治療又は予防薬)を無針送達するための新規固形剤(solid dose formulations)、そしてさらに前記固形剤を含む錠剤の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療又は予防薬の一般的な投与経路は、針と注射器による液剤の非経口送達である。非経口送達は、他の経路では通常吸収されにくい及び/又は迅速な送達を必要とする治療又は予防薬に使用される。
【0003】
針を介した非経口送達に伴う不利益として、患者に不快感や痛みが随伴すること及び使用済み鋭利物(used sharps)によって引き起こされる健康リスクなどが挙げられる。
治療又は予防薬の大部分は難溶性であるので、次善の製剤を製造することになりがちである。さらに、それらは典型的には固体剤形中よりも液体剤形中で不安定である。
【0004】
固形剤は液剤の代用として開発されてきたが、これらは典型的には大部分が経口投与用に製造されている。
治療又は予防薬を含む固形剤が非経口投与用に開発される場合、それらは針の助けを借りて送達されることを今も意図されることがある。そのような固形剤は、無駄のない製造法(リーン生産方式)や投与後の制御溶解の達成を目的として製造される。従って、そのような固形剤の機械的強度スペックは、単に工程内管理として製造の一貫性を確保し、輸送中及び投与前や投与中の取扱い時に固形剤を維持することに向けられたものに過ぎない。
【0005】
出願人は以前、上記のような非経口送達及び液剤の両方に付随する様々な欠点を克服するために、治療用又は予防用化合物を固形剤で非経口送達するための無針デバイスを開発している。そのようなデバイスは、EP1427464、EP1545662、EP1855755及びWO2016/124903など、本出願人の以前の特許公報に開示されている。
【0006】
そのような無針技術の基本的要件は、EP2129366に開示されているように、治療又は予防薬を含み、皮膚を貫通する十分な機械的強度と患者の快適さのために適切なサイズ及び形状を有する固体剤形を製造することである。例えば、出願人は以前にWO2017/068351に記載されている固形剤組成物を開発した。それは、とりわけカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)を含むもので、湿式ペースト押出法を用いた後に乾燥及び所望形状に切断して製造された場合、少なくとも80MPaの十分な機械的強度を有し、前述の無針送達デバイスと適合性があると決定された。
【0007】
当該技術分野では非経口投与を可能にするために十分な機械的強度を有する固形剤を製造しようとして他の製造法も使用されている。例えば、EP1173151(Novo Nordisk)及びWO2011/042542(Azurebio)に記載されているものなど。
【0008】
錠剤圧縮は経口投与に適切な固形剤の一般的な製造法であるが、それは通常は非経口投与時の患者の快適さには適切でないサイズ及び形状のものであろう。文献には試験中の直径1mmの錠剤の例があるが、そのような製剤は典型的には機械的強度が不十分なため、無針非経口送達には適さない。“直径1mm及び2mmのミニ錠剤の開発(Development of mini-tablets with 1 mm and 2 mm diameter)”, Tissenら,International Journal of Pharmaceutics 416(2011)164-170。
【0009】
そこで、無針非経口送達用の固形剤の製造に有用な新規方法を提供することが今もなお非常に望ましい。
本発明は、新規固形剤とその改良された製造に関連する方法を提供する必要性から導き出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1427464号
【特許文献2】欧州特許第1545662号
【特許文献3】欧州特許第1855755号
【特許文献4】国際特許公開第2016/124903号
【特許文献5】欧州特許第2129366号
【特許文献6】国際特許公開第2017/068351号
【特許文献7】欧州特許第1173151号
【特許文献8】国際特許公開第2011/042542号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Tissenら,International Journal of Pharmaceutics 416(2011)164-170
【発明の概要】
【0012】
本発明は、無針送達のために80MPa以上の圧縮強度を有する固形剤に関し、該固形剤は、0.01~60%(w/w)の治療及び/又は予防薬;及び少なくとも40.0%~99.99%(w/w)のデキストランを含む。
【0013】
重要なことは、無針投与に適切であるために、該固形剤は、皮下送達中にかかる応力に耐え、固形剤内部に提供されている活性物質の注入を成功させるために、本明細書中に記載される機械的強度を持たねばならない。該固形剤はとりわけ少なくとも一つの薬剤を含む組成物を包含できる。
【0014】
驚いたことに、当該技術の錠剤処方で通常見られるよりはるかに高い上記範囲に定義されるデキストランのパーセンテージを有する本発明の組成物は、無針投与に必要な機械的及び構造的完全性、すなわち80MPa以上の圧縮強度を達成する。
【0015】
出願人は、当該技術分野の刊行物には今までそのように高い機械的強度を達成する錠剤の製造に関するデータがほとんど乃至全く提供されていないと考えており、特にその点が本願で対処される技術的問題に特有の箇所である。これは、典型的な錠剤化/製剤で使用される賦形剤が一般的に意図される目的のために少量しか使用されていない場合に特に当てはまる。
【0016】
出願人は、デキストランが(治療及び/又は予防薬を除いて)その製剤の実質的な成分又は物質を提供する新規製剤を開発した。デキストランが40.0~99.99%(w/w)の範囲で存在する場合、デキストランは、得られる固形剤に、特に送達機構に関して、重要で有用な特徴を付与する。上記範囲に定義されているような比較的高いデキストランの割合が、無針非経口送達に必要とされる重要な強度パラメーターを、錠剤処方、特にマイクロ錠剤処方において付与することが分かった。このことは無針送達において特に当てはまり、そのために本発明は極めて有用であると考えられる。
【0017】
態様において、デキストランは全組成物の40%以上を提供する(w/w)。例えば、製剤は、典型的には、例えば、40~99%、49.5~99%又は50~99%の範囲のデキストランを含む。
【0018】
特に、デキストランは、51~99%(w/w)のデキストラン、63~99%(w/w)のデキストラン、好ましくは66~99%(w/w)のデキストラン、74~99% (w/w)のデキストラン又は82~99%(w/w)のデキストランなど、大部分を占めることができる。一部の場合、製剤は、90%、95%、97%、98%、99%、99.90%又は99.99%までの範囲上端点のデキストランを含みうる。これは範囲の任意の下端点と組み合わせることができ、そのように開示される。
【0019】
発明者らはさらに、技術的問題は、0.01%(w/w)の少なくとも一つの治療及び/又は予防薬を含む固形剤は無針送達に適切な少なくとも約80MPaの圧縮強度を保持できる、という別の新規で発明的な方法で解決できると結論付けた。
【0020】
発明者らは、少なくとも25.0%(w/w)のデキストランが少なくとも一つの異なる賦形剤又は異なる賦形剤の組合せと共に存在していれば、得られる組成物/製剤の圧縮強度は強度試験の間維持できることを示すのに成功した。しかしながら、これには製剤時に使用される賦形剤(一つ又は複数)の注意深い選択と組合せが必要であり、自由裁量による選択ではない。典型的には、デキストランと一つの異なる賦形剤との組合せ、又はデキストランと更なる賦形剤の組合せとの組合せは、同じ技術的問題を解決し、無針送達に十分な圧縮強度を有する組成物を得るために、固形剤の少なくとも90~99%を構成する。
【0021】
従って、本発明は、0.01%~75.0%(w/w)の少なくとも一つの治療及び/又は予防薬;少なくとも25.0%(w/w)のデキストラン;及び少なくとも50%(w/w)の少なくとも一つ、又は二つ以上の組合せの、デキストランを除く異なる賦形剤を含む、無針送達のために少なくとも約80MPaの圧縮強度を有する固形剤に拡張される。態様において、少なくとも一つの異なる賦形剤、又は組み合わされた二つ以上の賦形剤(デキストランを除く)は50%~74%(w/w)の範囲にある。言い換えれば、デキストラン成分を含まない異なる賦形剤又は異なる賦形剤の全組合せは、組成物の50%~74%(w/w)を構成する。態様において、デキストランを除く賦形剤(一つ又は複数)はおよそ74%を構成する。これらは好ましくはマンニトール及び/又はトレハロース及び/又はCMCから選ばれる。
【0022】
任意に、本明細書中に記載されているいずれかの発明の製剤は、少なくとも0.5%(w/w)の滑沢剤を含んでいてもよい。一部の実施例において、該滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム又はポリエチレングリコール(PEG)又はリシンから選ぶことができる。滑沢剤は典型的には少なくとも0.5%~1%(w/w)で提供されるが、5%まで可能である。滑沢剤は、例えば錠剤化又はマイクロ錠剤化工程中の製造しやすさを改善し、製剤がプレスから吐出される際(例えば最小限の吐出力で)、一貫した信頼できる製品(output)の提供を助けることができる。
【0023】
態様において、製剤は一つ又は複数の賦形剤を含むことができ、該賦形剤は、結合剤、増量剤又はそれらの組合せから選ばれる。
実施例において、一つ又は複数の賦形剤は、メチオニン、システイン、ヒスチジン、クエン酸、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、塩化カリウム、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、アルブミン、マンニトール、トレハロース、スクロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリ乳酸(PLA)のいずれかから選ばれる。選択は、得られる製剤に更なる利益を提供するために、これらの賦形剤とその他の賦形剤の組合せを含むこともできる。
【0024】
特に、CMCも製剤中に存在しうる。デキストランの割合の範囲の下端点、およそ40%以上が使用される場合、製剤の最小圧縮強度(80MPa)は、デキストランと組み合わせた一定パーセンテージのCMC、例えば50%のCMCを含めることによって維持できると考えられている。
【0025】
製剤は、高レベル、例えば少なくとも49.5%(w/w)のデキストランが使用され、マンニトールなどの一つ又は複数の他の賦形剤が存在する場合、低レベル、例えば10%~50%(w/w)のCMCを含みうる。デキストランとCMCの組合せは、デキストランが50%(w/w)以上存在する場合に特に有益である。場合によっては、特定比率のマンニトールなどの更なる賦形剤の添加も圧縮強度の維持を可能にする。10%~50%のCMCが使用されている実施例において、少なくとも
一部の実施例において、固形剤は一単位用量を提供する。従って、製剤は、投与者の技術によって生ずる変動を排除し、各回ごとに一貫した投与の達成を保証する。
【0026】
さらに、組成物を異なる等級のデキストランを用いて製造し、圧縮強度に対するこれらの影響を試験した(平均分子量(mw)範囲1kDa~110kDa)。特に、利用されるデキストランは、10kDa以上、10kDa~110kDa、又は好ましくは約70kDaの平均分子量を有する等級から選ぶことができる。なぜならば、これらの態様は少なくとも80MPaの圧縮強度を保持するからである。従って、すべてのそのような等級は、本明細書中に記載されているタイプの無針送達デバイスによって送達される固形剤の製造に使用することができる。
【0027】
特に好都合なのは、そのような固形剤は、最適な無針送達にとって望ましい寸法にサイズ調整された場合に必要な強度を確実に保持できるということである。態様において、固体剤形はマイクロ錠剤であり、無針送達技術の利益は、剤形のサイズを増大したり、その組成を本開示を越えて変更する必要なく、十分に保持できる。態様において、固形剤は細長く;好ましくは、長さ対幅の比が6:1~2:1の範囲である。そのような比率はより容易に送達される固形剤を可能にする。態様において、固形剤の幅は2mm以下、好ましくは0.85mmであり、及び/又は固形剤の長さは2~6mm、好ましくは4mmである。
【0028】
一部の態様において、固形剤の形状は、送達の容易性をさらに改善するために、22.5°~90°の内角を有する尖端を含む。大部分の態様において、固形剤の全質量は7mg以下である。
【0029】
好適な態様において、薬剤は、抗原又はその他の免疫刺激生物学的成分などの、免疫付与のための生物学的製剤である。
態様において、少なくとも一つの薬剤は、ベクター、タンパク質、サブユニットタンパク質、DNA、RNA、トキソイド、又は多糖-抗原コンジュゲート及びチェックポイント阻害薬から選ばれうる。
【0030】
好適な態様において、製剤はゆえにワクチンを含みうる。ワクチンの種類は、弱毒化(生)ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドワクチン、サブユニット又は精製抗原ワクチン、コンジュゲートワクチン、ネオ抗原ワクチン、RNAワクチン、DNAワクチン、異種“ジェンナー”ワクチン、同種ワクチン、及び組換えベクターワクチンから選ぶことができる。
【0031】
製剤がワクチンを含む場合、製剤はさらに、免疫応答を刺激し、ワクチンをより効果的にするのに役立ちうる一つ又は複数のアジュバントを含みうる。従来の弱毒化ワクチン製剤にアジュバントを加えるのは、抗原に対する特異的免疫応答を増強、促進及び延長することを目的としている。生合成組換え体を使用する精製サブユニット又は合成ワクチンは、所望の免疫応答を誘発するためのアジュバントを含みうる。
【0032】
安定剤は、ワクチンがその効果を保管中から投与まで維持するのを助けるために使用されうる。ワクチンの安定性は、特に低温流通体系(コールドチェーン)が信頼できない場合、必須である。不安定であると抗原性の喪失を招きかねない。ワクチンの安定性に影響を及ぼす幾つかの因子は、温度及び酸性度又はアルカリ度(pH)である。細菌ワクチンは、タンパク質及び炭水化物分子の加水分解及び凝集によって不安定になりうる。安定剤は、MgCl2(OPV用)、MgSO4(麻疹ワクチン用)、ラクトース-ソルビトール及びソルビトール-ゼラチンなどでありうる。
【0033】
一部の態様において、一つ(又は複数)の賦形剤は、凍結乾燥又は噴霧乾燥によってデキストランとブレンド又は組み合わされ、その後の錠剤のような固体剤形への加工に適切な粉末をまず形成する。
【0034】
更なる側面において、本発明は、状態、疾患又は障害の治療又は予防における医薬として使用するための上記態様のいずれかに記載の製剤に関する。
一部の態様において、該製剤は、HPVウイルスに関連又は起因するがん、例えば、肛門がん、口腔咽頭がん、女性の子宮頸がん、外陰がん及び膣がん、そして男性の陰茎がんの治療に使用するためのものである。
【0035】
一部の実施例において、該製剤は、ワクチンを含むか、又はヒトもしくは動物の疾患、疾病又は感染を予防又は治療するためにワクチン接種を構築するために使用される。一部の実施例において、疾患又は障害は、がん、黄熱病、狂犬病、ジフテリア、破傷風、ヘモフィルス・インフルエンザ菌B型(Hib)、百日咳、肺炎球菌性疾患、髄膜炎菌性疾患、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HTV、HSV2/HSV1、インフルエンザ(A、B及びC型)、パラインフルエンザ、ポリオ、RSV、ライノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)、炭疽病、胃腸炎、エンテロウイルス疾患、麻疹、おたふく風邪、水痘帯状疱疹、腺熱、呼吸器疾患、風疹、ヒトT細胞リンパ腫I型(HTLV-I)、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、ポックスウイルス病、コレラ、日本脳炎、ジカ、チクングニア熱、コウモリリッサウイルス、Q熱、リフトバレー熱、ヘンドラウイルス、野兎病、ニパウイルス、ラッサ熱、腸チフス、クリミア・コンゴ出血熱、エボラ、ペスト及びシゲラ、又は獣医学的疾患、例えば、口蹄疫(血清型O、A、C、SAT-1、SAT-2、SAT-3、及びAsia-1を含む)、コロナウイルス、ブルータング、ネコ白血病ウイルス、鳥インフルエンザ、ヘンドラ及びニパウイルス、ペスチウイルス、イヌパルボウイルス及びウシウイルス性下痢ウイルスから選ばれるか又はそれらに関連もしくは起因するものである。
【0036】
一部の態様において、ワクチンは多価ワクチン又は混合ワクチンである。例えば、本発明は、二つ以上の異なるタイプの疾患又はウイルスによる感染、例えば、麻疹、おたふく風邪及び風疹の治療に使用できる(例えばMMRワクチン)。
【0037】
一部の態様において、ワクチンは、弱毒化(生)ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドワクチン、サブユニット又は精製抗原ワクチン、コンジュゲートワクチン、ネオ抗原ワクチン、RNAワクチン、DNAワクチン、及び組換えベクターワクチンから選ばれる。適切なベクターの例は、アデノウイルス、麻疹ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)及びレンチウイルスベクターなどである。
【0038】
好適な態様において、薬剤が予防薬である場合、予防は、状態、疾患又は障害に対する免疫付与である。
他の関心ある疾患は、MERS(呼吸器)、ラッサ、ニパ、リフトバレー熱、チクングニア、ペスト、ジカ、シゲラ及びインフルエンザなどでありうる。
【0039】
本発明のワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HTV、HSV2/HSV1、インフルエンザウイルス(A、B及びC型)、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、RSVウイルス、ライノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス、エンテロウイルス、アストロウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、ヒトT細胞リンパ腫I型ウイルス(HTLV-I)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、ポックスウイルス及びワクシニアウイルスの一つ又は複数を含むウイルスによる感染を予防又は治療するために使用できる。
【0040】
ワクチンはさらに、口蹄疫(血清型O、A、C、SAT-1、SAT-2、SAT-3、及びAsia-1を含む)、コロナウイルス、ブルータング、ネコ白血病ウイルス、鳥インフルエンザ、ヘンドラ及びニパウイルス、ペスチウイルス、イヌパルボウイルス及びウシウイルス性下痢ウイルスなどの多数の獣医学的疾患に対する適切な免疫応答を提供するためにも使用できる。
【0041】
一部の態様において、ワクチンは、サブユニット、結合型又は多価又は混合ワクチンである。
本発明はさらに、状態、疾患又は障害の治療又は予防法にも関し、前記方法は、必要な対象に、治療上有効な量の前記請求項のいずれかに定義された製剤を投与することを含む。一部の態様において、例えば組成物がワクチンで、薬剤が予防薬である場合、疾患の予防法は免疫付与を含む。そこで、有用なことに、本発明は、患者の従順なワクチン接種を行える新規の効率的で効果的な手段を可能にする。治療法は、本明細書中にリストアップされているようないずれかの疾患のための又は前記疾患に関連するいずれかのウイルスに対するワクチン接種を含みうる。
【0042】
さらになお、本明細書中に記載されている発明はさらに、無針送達に使用される場合に必要とされる特性要件を保持する錠剤の新規製造法にも関する。特に、本発明は、前記請求項のいずれかに記載の固形剤を含む錠剤を、固形剤の成分を乾燥粉末形で混合し;該粉末をダイで直接圧縮し;そして該固形剤を25℃~40℃の温度で少なくとも24時間乾燥させることによって製造する方法に関する。
【0043】
態様において、上記方法は、マイクロ錠剤、好ましくは細長いマイクロ錠剤を製造するためのものである。態様において、ダイは、直径0.5~2mm、好ましくは0.75mm~2mm、最も好ましくは0.85mmのサイズを有する錠剤を製造するように構成されている。直径の大きい錠剤は、被接種者が感じる感覚を増大させ、この種の投与に関連する患者の従順性(応諾性)を低下させうるので望ましくないであろう。
【0044】
ダイ自体が細長く、及び/又は0.5mm~2mm、好ましくは0.75mm~1.2mmの直径を有しうる。さらに好ましくは、ダイは直径約0.85mmである。
一部の実施例において、乾燥工程は、およそ25℃~40℃で、1日~11日間、真空下での乾燥を含む。一部の実施例において、乾燥はおよそ10mbar及び/又はおよそ25℃で行われる。発明的方法の好適な態様において、成分の混合は、圧縮工程の前に、デキストランを製剤の一つ又は複数のその他の成分と共に噴霧乾燥又は凍結乾燥することを含みうる。
【0045】
本発明はさらに、少なくとも一つの治療及び/又は予防薬と、デキストランと、そして少なくとも一つの賦形剤とを含む固形剤を含む錠剤の新規製造法に関し、該方法は、固形剤の成分を乾燥粉末形にして混合し(デキストランは少なくとも一つの賦形剤と噴霧乾燥によって混合される);該粉末をダイで圧縮し;そして該固形剤をおよそ25~40℃で少なくとも24時間乾燥させることを含む。
【0046】
従って、本発明の方法は、マイクロ錠剤の態様において、無針送達に十分な機械的強度を有する特に有用な錠剤を提供する。本発明はさらに、疾患又は障害の治療又は予防法にも関し、前記方法は、必要な対象に、記載のような又は本発明に従って製造された治療上有効な量の固形剤を投与することを含む。
【0047】
次に、本発明の一定の側面及び態様を、実施例により、本明細書中の表/図面も参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、CMC含量(%)を変化させた場合のデキストラン含量(%)に対してプロットされた直径2mmの錠剤の圧縮応力(MPa)を示す。
【
図2】
図2は、デキストランとCMCのパーセンテージ%(w/w)の変化が、得られる直径2mmの錠剤の平均圧縮強度(MPa)にどのような影響を及ぼすかの等高線図を示す。
【
図3A】
図3Aは、組成物のパーセンテージ(w/w)としてのデキストラン濃度が、異なる賦形剤(トレハロース)との組合せによって得られる直径1mmの錠剤の平均圧縮強度(MPa)と吐出力(kg)に及ぼす影響を示す。
【
図3B】
図3Bは、組成物のパーセンテージ(w/w)としてのデキストラン濃度が、異なる賦形剤(マンニトール)との組合せによって得られる直径1mmの錠剤の平均圧縮強度(MPa)と吐出力(kg)に及ぼす影響を示す。
【
図3C】
図3Cは、組成物のパーセンテージ(w/w)としてのデキストラン濃度が、異なる賦形剤(CMC)との組合せによって得られる直径1mmの錠剤の平均圧縮強度(MPa)と吐出力(kg)に及ぼす影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
デキストランと他の成分が錠剤強度に及ぼす影響
異なる賦形剤に応じてデキストランが組成物のパーセンテージとして変化した場合の最終錠剤の圧縮強度に及ぼす影響を理解することが望ましい。
【0050】
この目的のために、29.7%、49.5%及び99%のデキストランを含む異なるブレンドの組成物を、1%の滑沢剤、フマル酸ステアリルナトリウム(SSF)と、CMCと共に錠剤化した。
【0051】
必要な場合、組成物を100%(w/w)に構成するための賦形剤としてマンニトールを使用した。
99%CMCと1%滑沢剤の比較組成物も試験した。得られた錠剤は、10mbarの真空オーブン中40℃で24時間乾燥させた後、圧縮強度について試験した。
【0052】
データは、デキストランが組成物内でブレンドに対して望ましい影響を及ぼし、単独でも、一部の実施例においてはCMC及び又はマンニトールとの組合せでも、錠剤に望ましい圧縮強度(少なくとも80MPa)を一貫して付与し、その強度の改善又は維持に役立ってることを示している。
【0053】
99%デキストランは、本発明で必要とされる強度を大幅に上回る強度148MPa(80MPaと比較して)を提供していることが示され、この成分がこの種の無針固形剤に有用な特定強度をもたらしていることが確認された。これに対し、CMC又はマンニトールは、単独では得られる錠剤に本願で必要とされる強度をはるかに下回る不十分な圧縮強度しか付与しなかった。
【0054】
さらに、グラフ解析の補外曲線から、66%のデキストランは単独で技術的に許容可能な圧縮強度80MPaを保持するのに十分なようである。
グラフ解析から、CMCは(場合によってはマンニトールと組み合わせて)デキストランと組み合わせれば許容可能な圧縮強度を保持できることが確認される。しかしながら、CMCとデキストランのみを特定のパーセンテージで組み合わせた場合、圧縮強度は維持又は増強できる。
【0055】
しかしながら、そのような組合せは、デキストランを単独で高パーセンテージで使用することによって達成される乾燥後の強度に到達せず、CMCは最終試験錠剤組成物における主要な強度付与因子ではないことが強く示唆される(特に
図2に関連して)。
【0056】
以下の表に、結果と共に、
図1又は
図2に提供されているグラフの曲線から所望強度(80MPa)が選択された場合の動作範囲(working range)のパーセンテージも(グラフから)推定して示す。
【0057】
【0058】
圧縮強度に対するデキストラン濃度
さらに、以下の表に示されているように下記組成を有する下記製剤を製造した。
【0059】
【0060】
異なる賦形剤に応じてデキストラン濃度が組成物のパーセンテージとして変化する場合の圧縮強度に及ぼす影響を理解することが望ましい。上記組成物のブレンドは1mmダイで錠剤化された。
【0061】
25℃で5日間の真空乾燥後、各錠剤をその圧縮強度について試験した。
データは、組成物内のデキストランの実質的パーセンテージが固形剤に一貫して望ましい圧縮強度(少なくとも80MPa)を付与していることを示している。また、データは、一定の態様において、デキストラン70の含量が25%(w/w)ほどの低さでも十分な機械的強度を付与できることも示している。
図3では、デキストランと組み合わされた第二の賦形剤に関わりなく、デキストラン含量が増加すると平均吐出力(kg)が減少することを示す明白な傾向を見ることができる。
【0062】
加工における賦形剤の選択
吐出力は、打錠機から圧縮錠剤を吐出するために必要な力である。吐出には、ダイ壁と圧密体表面との間の接着を剥離することが必要となる。錠剤が打錠機から吐出される際、錠剤とダイ壁間の摩擦によって熱が発生する。この熱の吸収は結合形成を招く。吐出力を低減し、取出し後の錠剤欠陥のリスクを削減するために、潤滑が必要である。適切な無針固形剤をヒトに非経口的に投与する目的のために、非経口的に許容可能な打錠用滑沢剤を見つけることが必要であった。認定された滑沢剤はステアリン酸マグネシウム(MgS)であった。錠剤化工程で最も一般的に使用されている滑沢剤の一つであるフマル酸ステアリルナトリウム(SSF)と比べてMgSを配合されたデキストラン70の(ダイからの)吐出力を比較することが望ましいと考えられた。滑沢剤は、それ以外は純粋なデキストランを含むブレンド全体の0.5から5.0%の範囲の量で試験された。得られた製剤のブレンドは、2mmのダイで錠剤化され、得られた錠剤の吐出力が測定された。
【0063】
【0064】
MgSを含む錠剤の吐出力はSSFを用いて製造されたものと同等であるので、MgSは製造の種類及び目的に適切な有用な代用品であると考えられた。これらの結果は、MgSが、示されたパーセンテージ範囲全体で、錠剤製造のための特に適切な滑沢剤であることを示唆している。
【0065】
デキストランの等級
デキストランは、酵素デキストランスクラーゼによって触媒される反応で、スクロースのα-d-グルコピラノシル部分の重合によって製造されるグルコポリサッカライドファミリーの総称である。共通の特徴は、(1→6)結合α-d-グルコピラノシル単位の優位性である。
【0066】
デキストランはいくつかの異なる等級で入手できる。平均分子量70kDaのデキストランが良好な圧縮強度を提供することは上に示されている。本実施例では更なる等級のデキストランを試験した。
【0067】
デキストランと1%のステアリン酸マグネシウムからなる製剤を直径2mmで錠剤化し、40℃で24時間乾燥させた。圧縮強度試験は乾燥後に実施した。
【0068】
【0069】
結果は、平均分子量1kDaのデキストランを除く試験された全等級とも少なくとも約80MPaの所望圧縮強度を達成できることを示した。
加工技術
さらに、製剤の成分の混合法など、加工工程が強度に及ぼす影響をチェックするために、二つの更なる実施例を以下のように用意した。ただし、それらの混合には噴霧乾燥工程を使用した。
【0070】
【0071】
基本の固形剤組成物は、デキストランとトレハロース又はリゾチームと共に1%(w/w)の滑沢剤も含んでいた。錠剤は直径0.85mmで成形された。得られた錠剤を10mbarの真空オーブン中40℃で5日間乾燥させた。
【0072】
これらの実施例で平均圧縮強度を試験し、優れていると考えられたことから、噴霧乾燥は、錠剤化工程時に賦形剤をデキストランと混合する際に非常に好影響を有しうることが示唆された。
【0073】
圧縮強度、乾燥及び水分含量
平均分子量70kDaのデキストランと1%ステアリン酸マグネシウムからなる製剤を直径2mmで錠剤化した。
【0074】
得られた錠剤に様々な乾燥条件を設定した。
・室温
・10mbarの真空オーブン中25℃
・10mbarの真空オーブン中40℃
・乾燥剤入り密封容器中25℃
各乾燥条件について得られた圧縮強度及び水分含量を下記時点で評価した。
【0075】
・1日
・5日
・11日
【0076】
【0077】
結果は、試験されたすべての条件で、錠剤の水分含量とその圧縮強度との間には明白な反比例関係があることを示している。2mm錠剤の場合、5日間及び11日間の乾燥は、すべての乾燥条件で十分な圧縮強度を有する錠剤をもたらした。
【0078】
さらに、平均分子量70kDaのデキストランと1%ステアリン酸マグネシウムからなる製剤を直径1.2mmで錠剤化した。得られた錠剤を10mbarの真空オーブン中40℃で24時間乾燥させたところ、80MPaを超える圧縮強度を持つことが分かった。
【0079】
【0080】
結果は、温度、乾燥期間、及び方法がこの種の固形錠剤の製造時の所与の乾燥工程に関係することを明らかに示している。適切な条件が選択されなければ、得られる圧縮強度に悪影響がもたらされうる。
【0081】
錠剤サイズ
出願人は異なる直径のダイを用いて錠剤も製造した。
錠剤は、2mm(対照)、1.2mm(上記実施例参照)又は0.85mmダイのいずれかで圧縮された。次に、錠剤を10mbarで24時間、特定の温度で乾燥させた。錠剤の圧縮強度は乾燥の前及び後に実施された。
【0082】
【0083】
試験されたどちらの直径の圧縮強度も依然として80MPaを上回った。従って、十分な圧縮強度の錠剤が直径2.0mm未満、特に0.85~2.0mmの範囲で得られることが観察され、該組成物が、無針送達注射のための適切性を保持するマイクロ錠剤の製造に使用できることを示している。
【0084】
態様において、デキストラン含量の多い組成物は、錠剤製造法に有益な低吐出力をもたらす。高い吐出力は、取出し後の錠剤欠陥のリスクの高さと関連するので、これらのリスクを確認及び軽減するための尺度として使用できる。さらに、高い吐出力は、製剤にスティッキング及び/又はピッキングのリスクがあることを示す。それは製剤がいかに良く潤滑されているかの尺度になる。潤滑不良は、ピッキング、スティッキング及びキャッピングのような錠剤欠陥をもたらすが、過剰潤滑は錠剤硬度を低下させる。最後に、高い吐出力は機械的摩耗の増加も招きうる。
【0085】
実施例において、デキストランは、範囲の下端、例えばデキストラン25~49%(w/w)で提供されてよく、錠剤バルク(の残り部分)は、様々な賦形剤、例えば、トレハロース、マンニトール、又はCMCの群から選ばれる賦形剤で、及び/又は少なくとも50~74%(w/w)の範囲で補われてよい。
【0086】
製剤が40%未満又は30%未満のデキストランを含み、賦形剤がデキストランと組み合わされている実施例では、その比率が、固体組成物の無針送達に必要な最小圧縮強度を達成するための機械的強度を維持又は強化すると考えられている。
【0087】
場合によっては、
図3A及び3Bに示されているように、例えば40%(w/w)未満のデキストランを含む製剤は、異なる賦形剤と適切な比率で少なくとも25%(w/w)存在する場合、依然として十分な機械的強度を示すことができる。これは、特に異なる賦形剤がトレハロース及びマンニトールの群から選ばれる場合に示された。そのような実施例では、第二の賦形剤がデキストランとのバルク組成物の大部分を構成している。
【0088】
実施例では、製剤は、少なくとも27%のデキストラン、さらに詳しくは、少なくとも28%(w/w)のデキストランと少なくとも70%(w/w)の前記第二の賦形剤を含む。選択される賦形剤は、少なくとも80MPaの圧縮強度を達成するために、
図3Aに示されているようにトレハロースでありうる。
【0089】
実施例では、製剤は、少なくとも25%のデキストラン(w/w)と少なくとも73%(w/w)の更なる賦形剤を含む。例えば、選択された賦形剤がマンニトールの場合、
図3Bに示されているように、少なくとも80MPaの圧縮強度を達成することが可能である。
【0090】
実施例では、賦形剤は、追加的に又は代替的に、MgCl2、MgSO4、ラクトース-ソルビトール、ソルビトール-ゼラチン又はトリス-EDTAなどの安定剤、ポビドン、デンプン、ゼラチン又はアルギン酸などの結合剤、又はマンニトール、スクロース、CMC、トレハロース、PLGA、PVP、PVA又はPLAなどの増量剤でありうる。
【0091】
場合によっては、
図3Cに示されているように、デキストランを49%以上含む製剤例は、更なる賦形剤と適切な比率で組み合わされた場合、依然として十分な機械的強度を示す。このことは、特に第二の賦形剤(デキストランに加えて)がCMCである場合に示されている。
【0092】
製剤化されたAPI組成物を用いた圧縮強度試験
少なくとも一つの治療及び/又は予防薬が圧縮強度にどのような影響を及ぼすのか(あるとすれば)を理解することは欠かせない。
【0093】
この特性がAPIの包含によって変わるかどうかを評価するために、0.125%、0.250%及び0.625%のAPI(w/w)(ワクチン)と共に製剤化された異なるブレンドの組成物を、89%のデキストラン(w/w)及び1%の滑沢剤(w/w)と共に錠剤化した。これらの製剤の製造には、錠剤化工程の前にワクチンを含む全粉末の10%を凍結乾燥することが含まれた。
【0094】
下記組成を有する下記製剤を以下の表に掲載のように製造した。
【0095】
【0096】
得られた錠剤は直径1mmで、100kgの圧縮力を用いて製造された。全錠剤とも10mbar、25℃で5日間乾燥させ、80MPaを超える圧縮強度を有することが分かった。
【0097】
データは、0.125%~0.625%(w/w)の範囲内のワクチンは、バルクのデキストラン含量が89%(w/w)、マンニトール含量が2.0%(w/w)、PVP含量が0.20%(w/w)、スクロース含量が1%(w/w)及びMgS含量が1%(w/w)である場合、圧縮強度に認められるような影響を与えていないことを示している。
【0098】
従って、出願人は、本発明の組成物のいずれも、API、例えばワクチンベースのAPIと共にうまく製剤化でき、圧縮強度を維持できるので、無針送達に適切な固形剤が得られるという結論に達した。
【国際調査報告】