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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】コンバータ回路付きアーク炉電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/10 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
H02M5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577567
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020062153
(87)【国際公開番号】W WO2020259900
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182897.9
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュタイマー、ペーター・カール
【テーマコード(参考)】
5H750
【Fターム(参考)】
5H750AA01
5H750CC02
5H750CC03
5H750CC11
5H750CC14
5H750CC16
5H750FF02
5H750GG04
5H750GG12
(57)【要約】
電気アーク炉(10)用の電源システム(12)が、電気グリッド(22)に接続可能なAC入力(20)と、アーク炉(10)の少なくとも1つの電力電極(14)に供給するためのAC出力(24)と、を備える。電源システム(12)は、AC入力(20)とAC出力(24)との間に相互接続されたコンバータ回路(46a、46b、46c)を更に備える。コンバータ回路(46a、46b、46c)は、キャパシタ(108)と、コンバータ回路(46a、46b、46c)の回路入力(56)と回路出力(58)との間にキャパシタを直列接続するための半導体スイッチ(104)と、を有する少なくとも1つのコンバータセル(64)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気アーク炉(10)用の電源システム(12)であって、前記電源システム(12)は、
電気グリッド(22)に接続可能なAC入力(20)と、前記電気アーク炉(10)の少なくとも1つの電力電極(14)に供給するためのAC出力(24)と、ここにおいて、前記AC入力(20)は、少なくとも2つの相(28a、28b、28c)を有しており、前記AC出力(24)は、少なくとも2つの相(30a、30b、30c)を有しており、
前記AC入力(20)と前記AC出力(24)との間に相互接続された複数のコンバータ回路(46a、46b、46c)と、ここにおいて、1つのコンバータ回路(46a、46b、46c)が、前記AC入力(20)のそれぞれの相(28a、28b、28c)と、又は前記AC出力(24)のそれぞれの相(30a、30b、30c)と相互接続されており、
を備え、
各コンバータ回路(46a、46b、46c)は、キャパシタ(108)と、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)の回路入力(56)と回路出力(58)との間に前記キャパシタを直列接続するための複数の半導体スイッチ(104)と、を有する少なくとも1つのコンバータセル(64)を備え、
前記電源システムは、前記コンバータ回路の前記少なくとも1つのコンバータセル(64)をバイパス状態に切り替えることと、バイパススイッチ(60)を閉じることと、のうちの少なくとも1つによって、各コンバータ回路(46a、46b、46c)をバイパス状態に切り替えるように適合されており、前記バイパススイッチ(60)は、前記コンバータ回路の前記少なくとも1つのコンバータセル(64)と並列に接続されており、且つ前記回路入力(56)及び前記回路出力(58)を接続及び切断するように適合されている、電源システム(12)。
【請求項2】
前記コンバータセル(64)の前記複数の半導体スイッチ(104)は、2つの並列接続されたハーフブリッジ(102)を形成し、それらの中点(106)が、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間に接続されており、
前記キャパシタ(108)は、前記ハーフブリッジ(102)に並列に接続されている、
請求項1に記載の電源システム(12)。
【請求項3】
各コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間に直列に接続された複数のコンバータセル(64)を備える、請求項1又は2に記載の電源システム(12)。
【請求項4】
前記バイパススイッチ(60)は、半導体スイッチ(68)で構成されているか、又は、前記バイパススイッチ(60)は、機械スイッチである、請求項1~3のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項5】
インダクタ(66)が、前記少なくとも1つのコンバータセル(64)と直列に接続されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項6】
更なるインダクタ(62)が、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間でバイパススイッチ(60)と直列に接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項7】
前記AC入力(20)と前記コンバータ回路(46a、46b、46c)との間に相互接続された変圧器(26)、又は
前記コンバータ回路(46a、46b、46c)と前記AC出力(24)との間に相互接続された変圧器(26)、又は
一次側及び/又は二次側において中性点(112)に接続された巻線(110)を有する変圧器(26)、ここにおいて、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記中性点(112)に接続されているものであり、
を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項8】
前記AC入力(20)と相互接続された高調波フィルタ(36)を更に備え、
前記高調波フィルタ(36)は、少なくとも2つのフィルタ構成要素(36a、36b、36c、36d)を備え、その各々は、フィルタキャパシタ(38)とフィルタインダクタ(40)とを備え、その各々は、AC入力電圧の別の高次高調波に適合されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項9】
前記AC入力(20)に相互接続された能動誘導性リアクトル(32)、ここにおいて、前記能動誘導性リアクトル(32)は、前記AC入力(20)に接続されたバイパススイッチ(76)及びインダクタ(78)を備えるものであり、及び/又は
前記AC入力(20)に相互接続された補償コンバータ(34)、
を更に備え、
前記能動誘導性リアクトル(32)及び/又は前記補償コンバータ(34)は、前記AC入力(20)におけるフリッカを最小化するように制御される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電源システム(12)を制御するための方法であって、前記方法は、
前記少なくとも1つの電力電極(14)に供給される電極電流を決定することと、
前記電極電流が所定の電流に調整されるように、前記少なくとも1つのコンバータセル(64)を制御することと、を備え、
前記コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記コンバータセル(64)をバイパス状態に切り替えることと、前記バイパススイッチ(60)を閉じることと、のうちの少なくとも1つによって、バイパス状態に切り替えられる、方法。
【請求項11】
前記電源システム(12)の前記AC入力(20)におけるフリッカを決定することと、
前記フリッカが低減されるように、前記コンバータセル(64)を制御することと、
を更に備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電源システム(12)の起動中に、バイパススイッチ(60)を閉じることによって、前記コンバータセル(64)をバイパスすることと、
前記AC入力(20)と前記AC出力(24)との間に接続された変圧器(26)の通電後に、前記電極電流を調整するために前記コンバータセル(64)を制御すること及び前記バイパススイッチ(60)を開くことと、
を更に備える、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンバータ回路(46a、46b、46c)における過電圧及び/又はサージ電流を検出することと、
前記過電圧及び/又はサージ電流が検出されたときに、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)をバイパス状態に切り替えることによって、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)を保護することと、
を更に備える、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電源システム(12)と、
請求項11~13のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合された制御装置(54)と、
金属材料を受容するための容器(16)と、
前記電源システム(12)から電流が供給されたときに、前記金属材料を溶融させるための電力電極(14)と、
を備える電気アーク炉(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク炉の分野に関する。特に、本発明は、電気アーク炉用の電源システム、電源システムを制御するための方法、及びそのような電源システムを有するアーク炉に関する。
【背景技術】
【0002】
電気アーク炉は、多くの場合、変圧器を介してACグリッドに直接接続されている。この場合、動作中に電極電流を制限することは困難であり得、これは、電極の使用及び生産性を制限し得る。加えて、この場合、変圧器は、しばしば用いられる高価な負荷時タップ切換システムを必要とし得、アーク炉は、ACグリッド内におけるフリッカを発生させ得る。従って、フリッカ問題を軽減するために、追加の静止型無効電力補償装置が必要となり得る。
【0003】
欧州特許第0589544(B1)号明細書及び米国特許第6603795(B2)号明細書には、並列インダクタの有無にかかわらず、直列接続された逆並列サイリスタを用いて電極電流をクリップするように適合されたアーク炉電源が示されている。これにより、アーク炉の生産性が向上され得る。しかしながら、電流をクリップすることによって、アーク炉の内部抵抗が必要以上に増大され得、これは、アーク炉の効率を低減させ得る。
【0004】
米国特許出願公開第2011/176575(A1)号明細書は、整流器とインバータとで構成されたAC-ACコンバータ付きの三相アーク炉用の電源システムに関する。整流器及びインバータは、セルキャパシタを有する直列接続されたコンバータセルを備える。
【0005】
欧州特許出願公開第2947766(A1)号明細書も、アーク炉用の電源に関する。電源は、コンバータユニットを有するコンバータシステムを備え、コンバータユニットの各々は、直列接続されたコンバータセルで構成された主モジュールを備える。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、制御可能な電極電流及び高い効率を有するアーク炉電源を提供することである。
【0007】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。更なる例示的な実施形態は、従属請求項及び以下の説明から明らかである。
【0008】
本発明の第1の態様は、電気アーク炉用の電源システムに関する。電気アーク炉は、電流によって生成されるアークを用いて金属材料を溶融又は精錬するように適合された装置であり得る。電流は、中AC電気グリッドとアーク炉の電極との間に接続され得る電源システムによって生成される。電源システムはまた、中AC入力電圧を電極に供給される低AC出力電圧に変換する変圧器を備え得る。
【0009】
中電圧は、1kV~20kVの電圧であり得る。低電圧は、1kV未満の電圧であり得る。電極を通る電流は、1000Aよりも高くなり得ることに留意されたい。
【0010】
電源システムは、いくつかの相、例えば3つの相を有する多相システムであり得る。入力電圧は、例えば、50又は60Hzの三相電圧であり得る。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、電源システムは、電気グリッドに接続可能な、1つ以上の相を備え得るAC入力と、アーク炉の少なくとも1つの電力電極に供給するための、1つ以上の相を備え得るAC出力と、を備える。AC入力は、3つの相を備え得る。また、AC出力も、3つの相を備え得る。AC入力は、3つの相等の少なくとも2つの相を有し、及び/又は、AC出力は、3つの相等の少なくとも2つの相を有する。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、電源システムは、AC入力とAC出力とを相互接続するコンバータ回路を備える。コンバータ回路は、電圧源インバータ、即ち、エネルギー貯蔵部としてキャパシタを有するコンバータであり得るか、又はそれを備え得る。上記及び以下で説明されるようなコンバータ回路は、AC入力又はAC出力の各相において相互接続されている。多相システムの場合、変圧器の前又は後の電源側の全ての相にコンバータ回路が設けられ得る。
【0013】
各コンバータ回路は、キャパシタと、コンバータ回路の回路入力と回路出力との間にキャパシタを直列接続するための半導体スイッチと、を有する少なくとも1つのコンバータセルを備え得る。コンバータセルは、電源システムの相に相互接続された浮動コンバータセルであり得る。
【0014】
各コンバータ回路及び/又はコンバータセルは、電圧源インバータであり得、これは、電源システムの主電力の約10%~15%を処理するように適合され得る。
【0015】
コンバータ回路及び/又はコンバータセルにより、電源システムを通る電力潮流(power flow)が制御され得、オプションとして短絡回路電流が制限され得る。特に、電源装置を通る電流は、特定の定義された電流に制御及び/又は調整され得、これは、電源システムによって生成され得る最大電流よりも低く及び/又は高くなり得る。より高い電流が、電流ブーストにより生成され得る。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、コンバータセルの半導体スイッチは、2つの並列接続されたハーフブリッジを形成し、それらの中点が、回路入力と回路出力との間に接続されている。ハーフブリッジは、それらの間に中点が設けられた2つの直列接続された半導体スイッチを備え得る。2つの並列にされたハーフブリッジは、フルブリッジと見なされ得る。半導体スイッチは、IGCT及び/又はIGBTであり得る。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、キャパシタは、ハーフブリッジに並列に接続されている。このようにして、キャパシタは、回路入力と回路出力との間の電流経路から切断され得、及び/又はこの電流経路に接続され得る。更に、キャパシタは、電流経路に対して逆方向に接続され得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、各コンバータ回路は、回路入力と回路出力との間に直列に接続された複数のコンバータセルを備える。これらのコンバータセルの各々は、上記及び以下で説明されるように設計され得る。このようにして、コンバータ回路の電圧定格が向上され得る。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、各コンバータ回路は、制御可能なバイパススイッチを備え、これは、少なくとも1つのコンバータセルと並列に接続されており、且つ回路入力と回路出力とを接続及び切断するように適合されている。バイパススイッチが開いているとき、コンバータ回路を通る電流は、回路入力から回路出力へと少なくとも1つのコンバータセルを通ってのみ流れ得、その逆もまた同様である。バイパススイッチが閉じている場合、電流はまた、回路入力からバイパススイッチを通って回路出力へと流れ得、その逆もまた同様である。バイパススイッチにより、コンバータセルは、バイパスされ得、及び/又は、過電流及び/又は過電圧から保護され得る。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、バイパススイッチは、半導体スイッチで構成されている。例えば、バイパススイッチは、IGBT、IGCT等のような、1つ以上のトランジスタ又はサイリスタを備え得る。バイパス機能は、コンバータセルの半導体スイッチ(IGCT等)によって実現され得、その結果、別個のバイパスが必要とされなくなり得る。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、バイパススイッチは、双方向スイッチである。これは、2つの単方向半導体スイッチを互いに逆並列に接続することによって達成され得る。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、バイパススイッチは、2つの逆並列サイリスタ等の2つの逆並列半導体スイッチを備える。サイリスタは、アーク炉の電源において通常存在するような大電流をスイッチングするように適合されている。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、バイパススイッチは、機械スイッチである。機械スイッチは、その入力を切断及び接続するために駆動装置によって作動される機械的構成要素を備え得る。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、インダクタは、少なくとも1つのコンバータセルと直列に接続され得る。一般に、オプションの1つ以上の受動リアクタンス(キャパシタ、インダクタ、及び/又はリアクトル等)が、コンバータセルと直列に接続され得、及び/又はバイパススイッチと並列に接続され得る。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、更なるインダクタが、回路入力と回路出力との間でバイパススイッチと直列に接続され得る。更なるインダクタは、バイパススイッチが開いているとき、コンバータ回路を通る電流から減結合され得る。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、更なるインダクタは、少なくとも1つのコンバータセル、及び/又は少なくとも1つのコンバータセルと直列に接続されているインダクタ、キャパシタ等のような受動リアクタンスと並列に接続されている。バイパススイッチが閉じられたとき、バイパススイッチを通る電流が、更なるインダクタも通って流れ得る。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのコンバータセルと直列に接続されているインダクタが、更なるインダクタよりも高いインダクタンスを有する。例えば、インダクタは、更なるインダクタよりも少なくとも10倍高いインダクタンスを有し得る。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、電源システムは、変圧器を更に備え、これは、電源システムのAC入力とAC出力との間に相互接続されている。既に説明されたように、多相変圧器であり得る変圧器は、より高いAC入力電圧をより低いAC出力電圧に変換し得る。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、変圧器は、AC入力とコンバータ回路との間に相互接続され得る。換言すれば、コンバータ回路は、電源システムの高電圧側及び/又は変圧器の一次側に設けられ得る。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、変圧器は、コンバータ回路とAC出力との間に相互接続され得る。換言すれば、コンバータ回路は、電源システムの低電圧側及び/又は変圧器の二次側に設けられ得る。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、変圧器は、一次側及び/又は二次側において中性点に接続された巻線を有し、ここで、コンバータ回路は、中性点に接続されている。コンバータ回路は、一端において星形接続され(star-connected)、且つ他端で巻線に接続されている3つの相部分を備え得る。これらの相部分の各々は、上記及び以下で説明されるような単相コンバータ回路のように設計され得る。
【0032】
要約すると、コンバータ回路は、変圧器の一次側、二次側、一次側内及び/又は二次側内に接続され得る。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、電源システムは、AC入力に相互接続された高調波フィルタを更に備える。高調波フィルタを用いて、アーク炉の構成要素によって生成され得るAC入力電圧内の高次高調波がフィルタ除去され得る。高調波フィルタは、少なくとも2つのフィルタ構成要素を備え得、その各々は、フィルタキャパシタとフィルタインダクタとを備え、その各々は、供給電圧、即ち、AC入力電圧の別の高次高調波に適合されている。
【0034】
高調波フィルタは、AC入力と並列に接続された容量性フィルタ及び/又は誘導性フィルタであり得る。多相システムの場合、高調波フィルタ構成要素は、AC入力の相を星形接続し得る。また、直列接続されたフィルタは、AC入力に相互接続され得ることに留意されたい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、電源システムは、AC入力に相互接続された能動誘導性リアクトルを更に備え、ここで、能動誘導性リアクトルは、AC入力に接続されたバイパススイッチ及びインダクタを備える。能動誘導性リアクトルのバイパススイッチは、例えば、2つの逆並列サイリスタを有する、コンバータ回路のバイパススイッチとして設計され得る。多相システムの場合、能動誘導性リアクトルは、リアクトル分岐を有し得、これは、AC入力の相を星形接続している。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、電源システムは、AC入力に相互接続された補償コンバータを更に備える。補償コンバータは、電圧源ベースのSTATCOMであり得る。多相システムの場合、補償コンバータは、コンバータ分岐を有し得、これは、AC入力の相を星形接続している。
【0037】
能動誘導性リアクトル及び/又は補償コンバータは、電源システムの制御装置によって制御され得、並びに/又は電源システムを通る電力フローの変動を補償するために、及び/若しくはAC入力における電圧変動を補償するために使用され得る。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、能動誘導性リアクトル及び/又は補償コンバータは、AC入力におけるフリッカを最小化するように制御される。フリッカは、電気グリッドへのアーク炉の共通接続点において最小化され得る。フリッカ低減は、アーク炉への電力フローの制御に加え、第2の制御目的であり得る。しかしながら、追加及び/又は代替として、フリッカはまた、コンバータ回路の少なくとも1つのコンバータセルを用いて制御され得る。
【0039】
電気グリッドにおけるフリッカは、グリッドの電圧における変動であり得、AC入力における電圧測定値に基づいて決定され得る。標準規格IEC61000-4-15は、フリッカを推定するための方法及び/又は式を提供する。
【0040】
本発明の更なる態様は、上記及び以下で説明されるような電源システムを制御するための方法及び制御装置に関する。上記及び以下で説明されるような方法の特徴は、上記及び以下で説明されるような制御装置及び/又は電源システムの特徴であり得ることを理解されたい。制御装置は、方法を自動的に実行するように適合され得る。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、方法は、少なくとも1つの電極に供給される電極電流を決定することと、電極電流が公称電流等の定義された電流に調整されるように、少なくとも1つのコンバータセルを制御することと、を備える。電源システムを通る電流は、入力側及び/又は出力側で制御装置によって測定され得る。そこから、電極電流が決定され得る。例えば、溶融プロセスの段階及び/又は溶融材料の量に依存し得る、電極に供給されるべき必要な電力に応じて、定義された電流が提供され得、制御装置は、電極電流をこの電流に調整し得る。定義された電流は、例えば、電源システムにおける測定値に基づいて、制御装置によって提供され得る。この方法は、電流制御、電流制限及び/又は電流ブーストを可能にする。定義された電流は、電流制御、電流制限及び/又は電流ブーストが実現されるように決定され得る。
【0042】
電源システムを通る電力フローは、AC入力電圧(即ち、AC入力における電圧)と、AC出力電圧(即ち、少なくとも1つの電極に印加されるAC出力における電圧)との間の位相シフトを制御する及び/又はそれに影響を与えることによって、制御され得る。この位相シフトは、少なくとも1つのコンバータセルを制御することによって調整され得る。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、方法は、電源システムのAC入力におけるフリッカを決定することと、フリッカが低減されるようにコンバータセルを制御することと、を更に備える。フリッカは、コンバータ回路を用いて能動的に制御され得る。従って、(上記及び以下で説明されるような)補償コンバータは、省略され得るか、又は少なくとも小型化され得る。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、方法は、電源システムの起動中に、バイパススイッチを閉じることによって、コンバータセルをバイパスすることと、AC入力とAC出力との間に接続された変圧器の通電後に、電極電流を調整するためにコンバータセルを制御すること及びバイパススイッチを開くことと、を更に備える。このようにして、電源システムを電気グリッドに接続しているときに、変圧器によって発生したサージ電流はバイパスされ得、コンバータセルは、起動中に保護され得る。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、方法は、コンバータ回路における過電圧及び/又はサージ電流を検出することと、過電圧及び/又はサージ電流が検出されたときに、コンバータ回路をバイパス状態に切り替えることによって、コンバータ回路を保護することと、を更に備える。バイパス状態は、コンバータセル又は少なくともセルキャパシタ等のコンバータセルの構成要素が、バイパスされる状態であり得る。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、コンバータ回路は、コンバータセルをバイパス状態に切り替えることによって、バイパス状態に切り替えられる。バイパス状態では、セルキャパシタは、コンバータセルの入力から切断され得る。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、コンバータ回路は、バイパススイッチを閉じること及び/又は開くことによって、バイパス状態に切り替えられる。バイパススイッチは、例えば、起動中及び/又は過渡動作中に、過電圧及び/又はサージ電流からコンバータ回路を保護するために使用され得る。コンバータ回路における電圧及び/又は電流は、制御装置によって測定され得、制御装置はまた、これらの値を、過電圧及び/又はサージ電流を示す閾値と比較し得る。対応する値が閾値を超えるとき、保護機能がアクティブ化され得る。例えば、バイパススイッチは、コンバータセル及びオプションの直列接続されたリアクトルの両端の電圧を低減させるために、並びに/又はこれらの構成要素を通る電流を低減させるために、閉じられ得る。故障状況が終了すると、バイパススイッチは、その初期状態に戻り得る。
【0048】
本発明の更なる態様は、上記及び以下で説明されるような電源システムを備える電気アーク炉に関する。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、電気アーク炉は、金属材料を受容するための容器、及び/又は電源システムから電流が供給されたときに、金属材料を溶融させるための電力電極を更に備える。電力電極はまた、金属材料までの電極の距離を調整するように適合された機械的機構を有し得る。
【0050】
電気アーク炉はまた、上記及び以下で説明されるような方法を実行するように適合された電源システムのための制御装置を備え得る。電源システムの制御装置はまた、電極と金属材料とを備えるシステムのインピーダンスを調整するために電極を移動させるための機械的機構を制御し得る。タップ切換器のより少ない使用及び/又はより少ない電極移動が予期される。タップ切換器は、除去されることさえ可能である。
【0051】
本発明のこれら及び他の態様は、以下で説明される実施形態から明らかになり、またそれらを参照して解明されるであろう。
【0052】
本発明の主題は、添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、以下の本文により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本発明の一実施形態によるアーク炉の概略回路図を示す。
図2図2は、本発明の更なる実施形態によるアーク炉の概略回路図を示す。
図3図3は、図1及び図2のアーク炉のためのコンバータ回路の概略回路図を示す。
図4図4は、図1及び図2のアーク炉のための更なるコンバータ回路の概略回路図を示す。
図5図5は、図1及び図2のアーク炉のための直列接続されたコンバータセルの概略回路図を示す。
図6図6は、図1及び図2のアーク炉のためのコンバータ回路を有する変圧器の概略回路図を示す。
図7図7は、図1及び図2のアーク炉のための補償コンバータの概略回路図を示す。
図8図8は、図1及び図2のアーク炉のための能動誘導性リアクトルの概略回路図を示す。
図9図9は、図1及び図2のアーク炉を制御するための方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面において使用されている参照符号及びそれらの意味は、参照符号のリストにおいて要約形式で列挙されている。原則として、図中では、同一の部分には同じ参照符号が付与されている。
【0055】
図1及び図2は、電源システム12を有するアーク炉10を示し、電源システム12は、アーク炉10の電極14に電力を供給する。電極14は、金属材料を収容するように適合された容器16内に設けられ得る。電極14に電流が供給されると、電気アークが発生し、金属材料が溶融される。電極は、機械アクチュエータ18を用いて容器内で移動され得る。このようにして、アーク長が制御され得る。
【0056】
電源システム12は、AC入力20で電気グリッド22に接続されており、AC出力24で電極14に供給する。AC入力20及びAC出力24は、変圧器26によって直流的に分離されており、ここで、変圧器の一次側26aが、AC入力20に接続されており、変圧器26の二次側26bが、AC出力24に接続されている。変圧器26は、電気グリッド22からの中AC電圧を、AC出力24における低AC電圧に変換する。両方の電圧は、50Hz又は60Hzの周波数を有し得る。
【0057】
図1及び図2に示されるように、電源システム12は、三相システムであり得る。AC入力電圧は、3つの成分を有し得、電源システム12は、変圧器26の一次中電圧側26aにおいて、3つの相28a、28b、28cを有し得る。示されるように、電源システム12はまた、変圧器26の二次低電圧側26bにおいても、3つの相30a、30b、30cを有し得る。しかしながら、一次側26aにも二次側26bにも、異なる数の相が存在することも可能である。例えば、変圧器26が二次側26bにおいて3つより多くの巻線を有して設計されているとき、相の数が両側26a、26bで異なることも可能である。
【0058】
アーク炉10によって発生したフリッカを制御するために使用される、能動誘導性リアクトル32及び/又は補償コンバータ34が、AC入力20に相互接続及び/又は接続され得る。能動誘導性リアクトル32及び/又は補償コンバータ34は、AC入力20に並列に接続され得る。構成要素32、34は、図7及び図8に関して以下でより詳細に説明される。
【0059】
更に、高調波フィルタ36が、AC入力20に相互接続及び/又は接続され得る。高調波フィルタ36は、AC入力20に並列に接続され得る。高調波フィルタ36は、いくつかのフィルタ構成要素36a、36b、36c、36dを備え得、その各々は、AC入力20におけるAC電圧から特定の高次高調波をフィルタ除去するように適合されている。例えば、フィルタ構成要素36a、36b、36c、36dは、5次、7次、11次及び13次の高次高調波をフィルタ除去するように適合され得る。フィルタ構成要素36a、36b、36c、36dの各々は、LCフィルタであり得、直列に接続され得るキャパシタ38とインダクタ40とを備え得る。3つの相28a、28b、28cを有する本ケースのシステムでは、フィルタ構成要素36a、36b、36c、36dの各々は、各相についてキャパシタ38とインダクタ40とを備え得、これらは、星形接続されている。
【0060】
また、AC入力20に直列接続されているラインフィルタ42が存在し得、このラインフィルタ42は、各相28a、28b、28cに直列接続されているインダクタ44を備え得る。
【0061】
図1に示されるように、電源システム12は、一次側の各相28a、28b、28cに直列接続されたコンバータ回路46a、46b、46cを更に備え得る。図2に示されるように、代替又は追加として、コンバータ回路46a、46b、46cは、二次側の各相30a、30b、30cに直列接続され得る。コンバータ回路46a、46b、46cは、電流制限、電流ブースト、及び/又は電力制御のために使用され、図3図5に関してより詳細に説明される。
【0062】
受動フィルタ/リアクトル48が、回路46a、46b、46cと変圧器26との間に接続されること、及び/又は、受動フィルタ/リアクトル50が、変圧器26とAC出力24との間に接続されることが可能であり得る。このような受動フィルタ/リアクトル48(又は50)は、3つの星形接続されたインダクタ52を備え得、その各々は、電源システム12の一次側(又は二次側)の相28a、28b、28c(又は30a、30b、30c)に接続されている。
【0063】
図1及び図2はまた、アーク炉と電源システム12とを制御するための制御装置54を示す。制御装置54は、AC入力電圧、AC入力電流、コンバータ回路46a、46b、46cと変圧器との間の中間電圧及び中間電流、AC出力電圧並びにAC出力電流等の、電源システム12内の電圧及び/又は電流からの測定値を受信し得る。これらの量は全て、多相の量(multi-phase quantities)であり得る。
【0064】
これらの測定値と、公称電極電流、電極14に供給される公称電力、最大フリッカ等のような公称量とに基づいて、制御装置は、電極14の移動を制御し得、即ち、機械アクチュエータ18、能動誘導性リアクトル32、補償コンバータ34及びコンバータ回路46a、46b、46cを制御し得る。これについても、以下でより詳細に説明される。
【0065】
図3は、同じように設計され得るコンバータ回路46a、46b、46cのうちの1つを示す。コンバータ回路46a、46b、46cは、それがそれぞれの相28a、28b、28c、30a、30b、30cにおいて相互接続されている回路入力56と回路出力58とを備える。
【0066】
コンバータ回路46a、46b、46cは、バイパススイッチ60と、コンバータセル64と、コンバータセル64に直列に接続されたオプションのインダクタ66と、を備え得る。バイパススイッチ60及びコンバータセル64は、入力56と出力58との間に並列接続されている。バイパススイッチ60はオプションであり、コンバータ回路は、オプションでインダクタ66と共にコンバータセル64のみを備え得ることに留意されたい。コンバータセルスイッチは、コンバータセル64のバイパス機能及び/又はバイパス状態を実現し得る。
【0067】
一般に、バイパススイッチ60は、制御可能な双方向スイッチであり得る。制御装置54は、バイパススイッチ60を開く(導通する)又は閉じる(切り離す)ように制御し得る。
【0068】
図3は、機械バイパススイッチを示す。図4では、バイパススイッチは、半導体スイッチ68で構成されている。バイパススイッチ60は、2つの逆並列サイリスタ68で構成され得る。更に、インダクタ62がバイパススイッチ60と直列接続され得ることが示される。インダクタ62は、インダクタ66より少なくとも10倍小さいインダクタンスを有し得る。
【0069】
図5は、直列接続されたコンバータセル64を示し、これは、コンバータ回路46a、46b、46cの入力56と出力58との間に直列接続され得る。また、コンバータセル64の直列接続は、インダクタ66と直列接続され得る。コンバータセル64はまた、3レベルフルブリッジタイプのものであり得、及び/又は3レベルフルブリッジを備え得る。更に、直列接続は、図3及び図4に示されるように、バイパススイッチ60及び/又はインダクタ62と並列に接続され得る。
【0070】
各コンバータセル64は、2つの並列ハーフブリッジ102で構成されているフルブリッジ100を備え得る。各ハーフブリッジ102は、例えば、逆並列ダイオードを有する、IGBT及び/又はIGCT等の2つの直列接続された半導体スイッチ104を備える。中点106が、各ハーフブリッジ102の半導体スイッチ104間に設けられている。コンバータセル64の中点106は、入力56と出力58との間の電流経路に相互接続されている。コンバータセルキャパシタ108が、ハーフブリッジ102に並列に接続されている。制御装置54の制御を介して、半導体スイッチ104は、キャパシタ108を中点106から切断し、また、キャパシタを2つの方向においてこれらの中点106に接続するように切り替えられ得る。加えて、半導体スイッチ104は、2つの冗長なゼロ状態を選択するように切り替えられ得、これは、キャパシタ108をバイパスする。これらのゼロ状態は、コンバータセル64のバイパス状態と見なされ得る。
【0071】
図3及び図4のコンバータセル64は、図5のコンバータセル64のうちの1つのように設計され得ることに留意されたい。
【0072】
図6は、コンバータ回路46a、46b、46cがどのように電源12に相互接続され得るかについての更なる実施形態を示す。図6は、変圧器26の一次側26a、又は代替として、二次側26bを示す。変圧器26の一次側26a又は二次側26bは、3つの巻線110を備え、これらは、中性点112を介して星形接続されている。図6では、各巻線110は、コンバータ回路46a、46b、46cを介して、中性点112に接続されている。図6のコンバータ回路46a、46b、46cは、図3図5のコンバータ回路のように設計され得る。図7は、能動誘導性リアクトル32及び/又は補償コンバータ34をより詳細に示す。能動誘導性リアクトル32の場合、各分岐70は、図5に示されるようなものであり得る。分岐70は、一端において星形接続され、且つ他端で相28a、28b、28cのうちの1つに接続され得る。
【0073】
補償コンバータ34の場合、各分岐70は、例えば、キャパシタの形態で、内部エネルギー貯蔵部を有するコンバータ(能動制御可能なブリッジコンバータ等)であり得る。分岐70は、静止型無効電力補償装置を形成し得、これは、制御装置54によって制御され得る。
【0074】
図8は、能動誘導性リアクトル32の相を示す。能動誘導性リアクトル32は、入力72と出力74とを備える。バイパススイッチ76及びインダクタ78は、入力72と出力74との間に直列接続されている。バイパススイッチ76は、2つの逆並列サイリスタ82で構成されている制御可能な双方向スイッチである。
【0075】
図9は、制御装置54によって自動的に実行され得る方法のフロー図を示す。
【0076】
ステップS10において、電源システム12の起動中に、コンバータ回路46a、46b、46cのコンバータセル64は、バイパススイッチ60を閉じることによってバイパスされる。電源システム12は、そのAC入力20で電気グリッド22に接続されており且つ通電されている。例えば、電源システム12のAC入力側における電流及び/又は電圧を測定することによって測定され得る、変圧器26の通電後、バイパススイッチ60が開かれ得、及び/又は、コンバータセル64が、電極電流を調整するために制御され得る。
【0077】
ステップS12において、制御装置54は、電源システム12における1つ以上の電流及び/又は1つ以上の電圧を測定する。これらの電圧又は電流は、AC入力電圧、AC入力電流、コンバータ回路46a、46b、46cと変圧器26との間の中間電圧及び/若しくは中間電流、AC出力電圧並びに/又はAC出力電流であり得る。
【0078】
測定量から、電極14に供給される電極電流が決定され得る。例えば、電極電流は、AC出力電流として直接測定され得、又は他の測定量から推定され得る。
【0079】
コンバータ回路46a、46b、46cのコンバータセル64は、電極電流が公称電流に調整されるように制御される。公称電流は、外部制御ループによって提供され得、又は、例えば、動作条件及び/又は電極14に供給されるべき電力に依存して、制御装置54自体によって決定され得る。
【0080】
ステップS14において、コンバータ回路46a、46b、46cにおける過電圧及び/又はサージ電流が、測定量に基づいて、制御装置によって検出される。故障が検出された等の場合、制御装置54は、バイパススイッチ60を開くこと及び/又は閉じることによって、バイパススイッチ60を用いてコンバータ回路46a、46b、46cを保護する。
【0081】
ステップS16において、制御装置54はまた、測定量から、例えば、AC入力電圧から、フリッカ値を決定する。次いで、能動誘導性リアクトル32及び/又は補償コンバータ34は、フリッカ値を最小化するように制御装置54によって制御され得る。
【0082】
また、コンバータ回路46a、46b、46cの更なる制御目的は、フリッカを最小化することであり得、コンバータ回路46a、46b、46c及びそれらのコンバータセル64は、それに応じて制御され得る。この場合、フリッカ制御は、コンバータ回路46a、46b、46cでのみ実行され得る。
【0083】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されてきたが、このような例示及び説明は、例示的又は実例的であって、限定的ではないと見なされるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の参酌から、請求項に記載の発明を実施する当業者によって理解及び実施され得る。特許請求の範囲において、「備える」という単語は、他の要素又は工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外するものではない。単一のプロセッサ若しくは制御装置又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されるいくつかのアイテムの機能を果たし得る。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0084】
[参照符号のリスト]
10 アーク炉
12 電源システム
14 電極
16 容器
18 機械アクチュエータ
20 AC入力
22 電気グリッド
24 AC出力
26 変圧器
26a 一次側
26b 二次側
28a 一次側相
28b 一次側相
28c 一次側相
30a 二次側相
30b 二次側相
30c 二次側相
32 能動誘導性リアクトル
34 補償コンバータ
36 高調波フィルタ
36a フィルタ構成要素
36b フィルタ構成要素
36c フィルタ構成要素
36d フィルタ構成要素
38 フィルタキャパシタ
40 フィルタインダクタ
42 ラインフィルタ
44 フィルタインダクタ
46a コンバータ回路
46b コンバータ回路
46c コンバータ回路
48 受動フィルタ及び/又はリアクトル
50 受動フィルタ及び/又はリアクトル
52 フィルタインダクタ
54 制御装置
56 回路入力
58 回路出力
60 バイパススイッチ
62 インダクタ
64 コンバータセル
66 インダクタ
68 サイリスタ
70 分岐
72 入力
74 出力
76 バイパススイッチ
78 インダクタ
82 サイリスタ
100 フルブリッジ
102 ハーフブリッジ
104 半導体スイッチ
106 中点
108 セルキャパシタ
110 変圧器巻線
112 中性点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気アーク炉(10)用の電源システム(12)であって、前記電源システム(12)は、
電気グリッド(22)に接続可能なAC入力(20)と、前記電気アーク炉(10)の少なくとも1つの電力電極(14)に供給するためのAC出力(24)と、ここにおいて、前記AC入力(20)は、少なくとも2つの相(28a、28b、28c)を有しており、前記AC出力(24)は、少なくとも2つの相(30a、30b、30c)を有しており、
前記AC入力(20)と前記AC出力(24)との間に相互接続された複数のコンバータ回路(46a、46b、46c)と、ここにおいて、1つのコンバータ回路(46a、46b、46c)が、前記AC入力(20)のそれぞれの相(28a、28b、28c)と、又は前記AC出力(24)のそれぞれの相(30a、30b、30c)と相互接続されており、
前記AC入力(20)と前記AC出力(24)との間に接続された変圧器(26)と、
を備え、
各コンバータ回路(46a、46b、46c)は、キャパシタ(108)と、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)の回路入力(56)と回路出力(58)との間に前記キャパシタを直列接続するための複数の半導体スイッチ(104)と、を有する少なくとも1つのコンバータセル(64)を備え、
前記電源システム(12)は、前記電源システム(12)の起動中に、バイパススイッチを閉じることによって、各コンバータ回路(46a、46b、46c)をバイパス状態に切り替えるように適合されており、前記バイパススイッチは、前記コンバータ回路の前記少なくとも1つのコンバータセル(64)と並列に接続されており、且つ前記回路入力(56)及び前記回路出力(58)を接続及び切断するように適合されており
前記電源システム(12)は、前記変圧器(26)の通電後に電極電流を調整するために前記コンバータセル(64)を制御し、前記バイパススイッチ(60)を開くように適合されている、電源システム(12)。
【請求項2】
前記コンバータセル(64)の前記複数の半導体スイッチ(104)は、2つの並列接続されたハーフブリッジ(102)を形成し、それらの中点(106)が、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間に接続されており、
前記キャパシタ(108)は、前記ハーフブリッジ(102)に並列に接続されている、
請求項1に記載の電源システム(12)。
【請求項3】
各コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間に直列に接続された複数のコンバータセル(64)を備える、請求項1又は2に記載の電源システム(12)。
【請求項4】
前記バイパススイッチは、半導体スイッチ(68)で構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項5】
バイパス機能は前記コンバータセル(64)の半導体スイッチにより実現される、請求項1~4のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項6】
前記バイパススイッチ(60)は、機械スイッチである、請求項1~3のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項7】
インダクタ(66)が、前記少なくとも1つのコンバータセル(64)と直列に接続されている、請求項1~のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項8】
更なるインダクタ(62)が、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間でバイパススイッチ(60)と直列に接続されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項9】
前記変圧器(26)は、前記AC入力(20)と前記コンバータ回路(46a、46b、46c)との間に相互接続され、又は
前記変圧器(26)は、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)と前記AC出力(24)との間に相互接続され、又は
前記変圧器(26)は、一次側及び/又は二次側において中性点(112)に接続された巻線(110)を備え、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記中性点(112)に接続されている、請求項1~のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項10】
前記AC入力(20)と相互接続された高調波フィルタ(36)を更に備え、
前記高調波フィルタ(36)は、少なくとも2つのフィルタ構成要素(36a、36b、36c、36d)を備え、その各々は、フィルタキャパシタ(38)とフィルタインダクタ(40)とを備え、その各々は、AC入力電圧の別の高次高調波に適合されている、請求項1~のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項11】
前記AC入力(20)に相互接続された能動誘導性リアクトル(32)、ここにおいて、前記能動誘導性リアクトル(32)は、前記AC入力(20)に接続されたバイパススイッチ(76)及びインダクタ(78)を備えるものであり、及び/又は
前記AC入力(20)に相互接続された補償コンバータ(34)、
を更に備え、
前記能動誘導性リアクトル(32)及び/又は前記補償コンバータ(34)は、前記AC入力(20)におけるフリッカを最小化するように制御される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の電源システム(12)を制御するための方法であって、前記方法は、
前記少なくとも1つの電力電極(14)に供給される電極電流を決定することと、
前記電極電流が所定の電流に調整されるように、前記少なくとも1つのコンバータセル(64)を制御することと、
前記電源システム(12)の起動中に、前記バイパススイッチを閉じることによって前記コンバータセル(64)をバイパスすることと、
前記AC入力(20)と前記AC出力(24)との間に接続された変圧器(26)の通電後に前記電極電流を調整するために前記コンバータセル(64)を制御し、前記バイパススイッチ(60)を開くことと、を備え、
前記コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記コンバータセル(64)をバイパス状態に切り替えることと、前記バイパススイッチ(60)を閉じることと、のうちの少なくとも1つによって、バイパス状態に切り替えられる、方法。
【請求項13】
前記電源システム(12)の前記AC入力(20)におけるフリッカを決定することと、
前記フリッカが低減されるように、前記コンバータセル(64)を制御することと、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記コンバータ回路(46a、46b、46c)における過電圧及び/又はサージ電流を検出することと、
前記過電圧及び/又はサージ電流が検出されたときに、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)をバイパス状態に切り替えることによって、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)を保護することと、
を更に備える、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~1のいずれか一項に記載の電源システム(12)と、
請求項1~1のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合された制御装置(54)と、
金属材料を受容するための容器(16)と、
前記電源システム(12)から電流が供給されたときに、前記金属材料を溶融させるための電力電極(14)と、
を備える電気アーク炉(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されてきたが、このような例示及び説明は、例示的又は実例的であって、限定的ではないと見なされるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の参酌から、請求項に記載の発明を実施する当業者によって理解及び実施され得る。特許請求の範囲において、「備える」という単語は、他の要素又は工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外するものではない。単一のプロセッサ若しくは制御装置又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されるいくつかのアイテムの機能を果たし得る。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 電気アーク炉(10)用の電源システム(12)であって、前記電源システム(12)は、
電気グリッド(22)に接続可能なAC入力(20)と、前記電気アーク炉(10)の少なくとも1つの電力電極(14)に供給するためのAC出力(24)と、ここにおいて、前記AC入力(20)は、少なくとも2つの相(28a、28b、28c)を有しており、前記AC出力(24)は、少なくとも2つの相(30a、30b、30c)を有しており、
前記AC入力(20)と前記AC出力(24)との間に相互接続された複数のコンバータ回路(46a、46b、46c)と、ここにおいて、1つのコンバータ回路(46a、46b、46c)が、前記AC入力(20)のそれぞれの相(28a、28b、28c)と、又は前記AC出力(24)のそれぞれの相(30a、30b、30c)と相互接続されており、
を備え、
各コンバータ回路(46a、46b、46c)は、キャパシタ(108)と、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)の回路入力(56)と回路出力(58)との間に前記キャパシタを直列接続するための複数の半導体スイッチ(104)と、を有する少なくとも1つのコンバータセル(64)を備え、
前記電源システムは、前記コンバータ回路の前記少なくとも1つのコンバータセル(64)をバイパス状態に切り替えることと、バイパススイッチ(60)を閉じることと、のうちの少なくとも1つによって、各コンバータ回路(46a、46b、46c)をバイパス状態に切り替えるように適合されており、前記バイパススイッチ(60)は、前記コンバータ回路の前記少なくとも1つのコンバータセル(64)と並列に接続されており、且つ前記回路入力(56)及び前記回路出力(58)を接続及び切断するように適合されている、電源システム(12)。
[2] 前記コンバータセル(64)の前記複数の半導体スイッチ(104)は、2つの並列接続されたハーフブリッジ(102)を形成し、それらの中点(106)が、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間に接続されており、
前記キャパシタ(108)は、前記ハーフブリッジ(102)に並列に接続されている、
[1]に記載の電源システム(12)。
[3] 各コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間に直列に接続された複数のコンバータセル(64)を備える、[1]又は[2]に記載の電源システム(12)。
[4] 前記バイパススイッチ(60)は、半導体スイッチ(68)で構成されているか、又は、前記バイパススイッチ(60)は、機械スイッチである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
[5] インダクタ(66)が、前記少なくとも1つのコンバータセル(64)と直列に接続されている、[1]~[4]のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
[6] 更なるインダクタ(62)が、前記回路入力(56)と前記回路出力(58)との間でバイパススイッチ(60)と直列に接続されている、[1]~[5]のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
[7] 前記AC入力(20)と前記コンバータ回路(46a、46b、46c)との間に相互接続された変圧器(26)、又は
前記コンバータ回路(46a、46b、46c)と前記AC出力(24)との間に相互接続された変圧器(26)、又は
一次側及び/又は二次側において中性点(112)に接続された巻線(110)を有する変圧器(26)、ここにおいて、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記中性点(112)に接続されているものであり、
を更に備える、[1]~[6]のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
[8] 前記AC入力(20)と相互接続された高調波フィルタ(36)を更に備え、
前記高調波フィルタ(36)は、少なくとも2つのフィルタ構成要素(36a、36b、36c、36d)を備え、その各々は、フィルタキャパシタ(38)とフィルタインダクタ(40)とを備え、その各々は、AC入力電圧の別の高次高調波に適合されている、[1]~[7]のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
[9] 前記AC入力(20)に相互接続された能動誘導性リアクトル(32)、ここにおいて、前記能動誘導性リアクトル(32)は、前記AC入力(20)に接続されたバイパススイッチ(76)及びインダクタ(78)を備えるものであり、及び/又は
前記AC入力(20)に相互接続された補償コンバータ(34)、
を更に備え、
前記能動誘導性リアクトル(32)及び/又は前記補償コンバータ(34)は、前記AC入力(20)におけるフリッカを最小化するように制御される、
[1]~[8]のいずれか一項に記載の電源システム(12)。
[10] [1]~[9]のいずれか一項に記載の電源システム(12)を制御するための方法であって、前記方法は、
前記少なくとも1つの電力電極(14)に供給される電極電流を決定することと、
前記電極電流が所定の電流に調整されるように、前記少なくとも1つのコンバータセル(64)を制御することと、を備え、
前記コンバータ回路(46a、46b、46c)は、前記コンバータセル(64)をバイパス状態に切り替えることと、前記バイパススイッチ(60)を閉じることと、のうちの少なくとも1つによって、バイパス状態に切り替えられる、方法。
[11] 前記電源システム(12)の前記AC入力(20)におけるフリッカを決定することと、
前記フリッカが低減されるように、前記コンバータセル(64)を制御することと、
を更に備える、[10]に記載の方法。
[12] 前記電源システム(12)の起動中に、バイパススイッチ(60)を閉じることによって、前記コンバータセル(64)をバイパスすることと、
前記AC入力(20)と前記AC出力(24)との間に接続された変圧器(26)の通電後に、前記電極電流を調整するために前記コンバータセル(64)を制御すること及び前記バイパススイッチ(60)を開くことと、
を更に備える、[10]又は[11]に記載の方法。
[13] 前記コンバータ回路(46a、46b、46c)における過電圧及び/又はサージ電流を検出することと、
前記過電圧及び/又はサージ電流が検出されたときに、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)をバイパス状態に切り替えることによって、前記コンバータ回路(46a、46b、46c)を保護することと、
を更に備える、[10]~[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14] [1]~[10]のいずれか一項に記載の電源システム(12)と、
[11]~[13]のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合された制御装置(54)と、
金属材料を受容するための容器(16)と、
前記電源システム(12)から電流が供給されたときに、前記金属材料を溶融させるための電力電極(14)と、
を備える電気アーク炉(10)。
【国際調査報告】