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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20220825BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20220825BHJP
   F01D 17/14 20060101ALI20220825BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F02B39/00 E
F02B37/24
F01D17/14 C
F01D25/24 E
F01D25/24 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577927
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020068099
(87)【国際公開番号】W WO2020260633
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1909345.9
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521567697
【氏名又は名称】カミンズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cummins Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ハスラー,クレイグ スチュアート ソーンヒル
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ニコラス ケネス
【テーマコード(参考)】
3G005
3G071
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA15
3G005EA16
3G005FA05
3G005FA45
3G005GA04
3G005GB24
3G005GB87
3G005GB88
3G005GC04
3G005GC08
3G071DA01
(57)【要約】
タービン軸を中心に回転するように支持されたタービンホイールと、第1の流体源からの第1の排気ガス流を受けるための第1のボリュートと、第2の流体源からの第2の排気ガス流を受けるための第2のボリュートとを含むタービンハウジングであって、第1のボリュートと第2のボリュートは、仕切壁によって分離されている、タービンハウジングと、タービンホイールを取り囲み、第1のボリュートと第2のボリュートに流体的に接続された入口通路であって、第1の壁部材と、第1の壁部材の反対側の第2の壁部材との間に少なくとも部分的に画定され、第1の壁部材が、入口通路の大きさを変えるためにタービン軸に沿って移動可能である入口通路と、を含み、仕切壁の先端がタービン軸に対して第1の半径(R1)を画定し、入口通路内に位置する第1の壁部材の半径方向最外部がタービン軸に対して第2の半径(R2)を画定し、第1の半径(R1)が第2の半径(R2)よりも少なくとも約1%大きい、可変形状タービンが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変形状タービンであって、
タービン軸を中心に回転するように支持されたタービンホイールと、
第1の流体源からの第1の排気ガス流を受けるための第1のボリュートと、第2の流体源からの第2の排気ガス流を受けるための第2のボリュートとを含むタービンハウジングであって、第1のボリュートと第2のボリュートは、仕切壁によって分離されている、タービンハウジングと、
タービンホイールを取り囲み、第1のボリュートと第2のボリュートに流体的に接続された入口通路であって、第1の壁部材と、第1の壁部材の反対側の第2の壁部材との間に少なくとも部分的に画定され、第1の壁部材が、入口通路の大きさを変えるためにタービン軸に沿って移動可能である入口通路と、を含み、
仕切壁の先端がタービン軸に対して第1の半径(R1)を画定し、入口通路内に位置する第1の壁部材の半径方向最外部がタービン軸に対して第2の半径(R2)を画定し、
第1の半径(R1)が第2の半径(R2)よりも少なくとも約1%大きい、
可変形状タービン。
【請求項2】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも少なくとも約2%大きい、
請求項1に記載の可変形状タービン。
【請求項3】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも少なくとも約4%大きい、
請求項1または2に記載の可変形状タービン。
【請求項4】
タービンハウジングは、タービン軸に概ね平行に延びる舌部を画定し、
第1の半径は、舌部の先端によって画定される半径と実質的に等しい、
請求項1-3のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項5】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも、最大約40%大きい、
請求項1-4のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項6】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも、最大約25%大きい、
請求項1-5のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項7】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも、最大約15%大きい、
請求項1-6のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項8】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも、最大約10%大きい、
請求項1-7のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項9】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも、最大約8%大きい、
請求項1-8のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項10】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも、最大約7%大きい、
請求項1-9のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項11】
第1の壁部材は、軸方向に延びる1つまたは複数のノズルベーンを有するノズルキャリアである、
請求項1-10のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項12】
第1の壁部材は、1つ以上のノズルベーンを受け入れるための1つ以上のスロットを有するシュラウドプレートである、
請求項1-10のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項13】
第2の壁部材は、入口通路の大きさを変化させるように、タービン軸に沿って移動可能である、
請求項1-12のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項14】
第1の壁部材は、タービン軸に対して半径方向の流体の流れを遮断するように構成された実質的に連続した円周面を含んでいる、
請求項1-13のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項15】
入口通路は、タービン軸に平行な方向の幅を画定し、
仕切壁の先端は、入口通路の幅の軸方向中点と実質的に整列する、
請求項1-14のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項16】
第1および第2のボリュートは非対称である、
請求項1-14のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項17】
入口通路は、タービン軸に平行な方向の幅を画定し、
仕切壁の先端は、第1の壁部材がタービンハウジングに対して面一の位置にあるときの第1の壁部材と、入口通路の幅の軸方向中点との間に配置される、
請求項1-14のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項18】
入口通路は、タービン軸に平行な方向の幅を画定し、
仕切壁の先端は、第2の壁部材と、入口通路の幅の軸方向中点との間に配置される、
請求項1-14のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項19】
タービン軸線Aを含む平面に対して測定した第1のボリュートの断面積は、該平面に対して測定した第2のボリュートの断面積よりも小さい、
請求項16に記載の可変形状タービン。
【請求項20】
第1のボリュートの断面積は、第2のボリュートの断面積の約70%~約90%である、
請求項19に記載の可変形状タービン。
【請求項21】
第1のボリュートは、第1のボリュートの入口を画定し、第2のボリュートは、第2のボリュートの入口を画定し、第1のボリュート入口と第2のボリュート入口とは、タービン軸に対して実質的に同じ方位角で整列する、
請求項1-20のいずれか1つに記載の可変形状タービン。
【請求項22】
第1のボリュート入口と第2のボリュート入口との間の仕切壁の一部は、タービン軸に概ね直交する方向に延びる、
請求項17に記載の可変形状タービン。
【請求項23】
第1のボリュート入口と第2のボリュート入口との間の仕切壁の一部は、タービン軸に対して概ね平行な方向に延びる、
請求項17に記載の可変形状タービン。
【請求項24】
請求項1-23のいずれか1つに記載の可変形状タービンを含むターボチャージャ。
【請求項25】
可変形状タービン用のタービンハウジングであって、
第1のシリンダバンクから第1の排気ガス流を受け入れるための第1のボリュートと、
第2のシリンダバンクから第2の排気ガス流を受け入れるための第2のボリュートであって、第1のボリュートと第2のボリュートは、周方向に延びる先端を有する仕切壁によって分離されている、第2のボリュートと、を含み、
仕切壁の先端がタービン軸に対して第1の半径(R1)を画定し、タービンの軸方向に可動な壁部材がタービン軸とタービンの入口通路内に位置する可動壁部材の半径方向最外部との間で第2の半径(R2)を画定し、
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも少なくとも約1%大きい、
タービンハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンに関する。特に、仕切壁で仕切られた2つの入口ボリュート(volute)を有する可変形状タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気口に大気圧以上の圧力(ブースト圧)で空気を供給する装置として、ターボチャージャがよく知られている。従来のターボチャージャは、タービンハウジング内の回転軸に取り付けられた排気ガス駆動のタービンホイールで構成されている。タービンホイールが回転することで、シャフトの他端に取り付けられたコンプレッサホイールがコンプレッサハウジング内で回転する。コンプレッサホイールは、圧縮空気をエンジンのインテークマニフォルドに供給し、エンジン出力を増加させる。ターボチャージャのシャフトは、従来から、タービンホイールハウジングとコンプレッサホイールハウジングの間に接続された中央軸受ハウジング内に配置された、適切な潤滑システムを含むジャーナル軸受およびスラスト軸受によって支持されている。
【0003】
既知のターボチャージャでは、タービンステージは、中にタービンホイールが取り付けられるタービンチャンバ、タービンチャンバの周囲に配置された対向する壁の間に画定された円周方向に延びる入口通路、入口通路の周囲に配置された入口ボリュート、およびタービンチャンバから延びる出口通路を含む。これらの通路とチャンバは、入口ボリュートに流入した加圧された排気ガスが、入口通路からタービンを経由して出口通路に流れ、タービンホイールを回転させるように連通している。また、入口通路にノズルベーンと呼ばれる羽根を設け、入口通路を流れるガスをタービンホイールの回転方向へ偏向させることにより、タービン性能を向上させることも知られている。
【0004】
タービンには、固定形状型と可変形状型がある。可変形状型タービンは、固定形状型タービンとは異なり、入口通路の形状を変化させ、ある質量流量の範囲内でガス流速を最適化し、変化するエンジン要求に応じてタービンの出力を変化させることができる。
【0005】
「スイングベーン式」可変形状タービンでは、ノズルベーンの角度を調整することで、入口通路の全体面積を制御することができる。「ムービングウォール式」可変形状タービンでは,軸方向に移動可能な壁部材が入口通路の1つの壁を画定する。この可動壁部材の入口通路の対向する壁に対する位置は、入口通路の軸方向幅を制御するように調節可能である。したがって、例えば、タービンを通るガス流量が減少すると、入口通路の幅を減少させてガス速度を維持し、タービン出力を最適化することができる。いくつかの構成では、可動壁部材は、複数のノズルベーンを支持するノズルリングであってもよい。別の構成では、ノズルリングは固定され、可動壁部材は、ノズルベーンを受けるための複数のスロットを含むシュラウドプレートであってもよい。
【0006】
タービンには、単式と多連式がある。単式タービンは、通常、内燃機関から排出される排気ガスすべてを受け入れる単一の入口ボリュートを含む。多連式タービンは、複数のボリュートを含み、内燃機関の異なるシリンダバンクからの排気ガスを別々に受け入れるのが一般的である。多連式タービンの1つの形態として、2つのボリュートがタービン軸の周りに互いに角度を合わせて周方向に延びる「ツインエントリー」タービンがある。このようなツインエントリータービンでは、ボリュートを互いに分離するために仕切壁が使用される。
【0007】
マルチエントリータービンでは、別のシリンダバンクにより、異なる入口ボリュート内の排気ガス流に過渡的な圧力パルスが発生する。多くの場合、第1のボリュートが高圧になると、隣接する第2のボリュートは低圧になる。2つのボリュートの圧力差が十分に大きいと、第1のボリュート(高圧)からの排気ガスが仕切壁を越えて第2のボリュート(低圧)へ流出することになる。この高圧ガスが第2のボリュート内に存在すると、流体閉塞を形成し、次の排気ガスサイクルで第2のボリュートを通過する排気ガスの流れを阻害し、エンジンが必要とするポンピング作業を増加させ、エンジンのエネルギー損失をもたらす可能性がある。次の排気ガスサイクルでは、第2のボリュート内の高圧ガスが隔壁を越えて第1のボリュート内に流出し、第1のボリュート内に流体閉塞を形成する可能性がある。このような異なるボリュート間の流体相互作用は「クロストーク」と呼ばれる。
【0008】
クロストークが発生するために必要な2つのボリュート間の相対的な圧力差は、仕切壁の長さを長くして、2つの流体流ができるだけ長く互いに分離されるようにすることで増やすことができる。しかし,可変形状タービンの場合、仕切壁の存在が可変形状機構の動きを妨げる可能性があり、現実的ではないことが多い。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの目的は、上述したものに限らず、周知のタービンの1つ以上の欠点を回避または軽減することである。また、改良されたまたは代替の可変形状タービンを提供することも本発明の目的である。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、
タービン軸を中心に回転するように支持されたタービンホイールと、
第1の流体源からの第1の排気ガス流を受けるための第1のボリュートと、第2の流体源からの第2の排気ガス流を受けるための第2のボリュートとを含むタービンハウジングであって、第1のボリュートと第2のボリュートは、仕切壁によって分離されている、タービンハウジングと、
タービンホイールを取り囲み、第1のボリュートと第2のボリュートに流体的に接続された入口通路であって、第1の壁部材と、第1の壁部材の反対側の第2の壁部材との間に少なくとも部分的に画定され、第1の壁部材が、入口通路の大きさを変えるためにタービン軸に沿って移動可能である、入口通路と、を含み、
仕切壁の先端がタービン軸に対して第1の半径(R1)を画定し、入口通路内に位置する第1の壁部材の半径方向最外部がタービン軸に対して第2の半径(R2)を画定し、
第1の半径(R1)が第2の半径(R2)よりも少なくとも約1%大きいことを特徴とする、可変形状タービンが提供される。
【0011】
第1および第2の流体源は、内燃機関の別々のシリンダバンクであってもよい。第1及び第2のシリンダバンクは、過渡的にパルス化された圧力プロファイルを有する排気ガスを排出することがあり、この排気ガスは第1及び第2のボリュートに送達される。過渡的な圧力パルスのために、使用中、第1のボリュート内の排気ガスの圧力は、第2のボリュート内の排気ガスの圧力と異なることが多い。第1と第2のボリュートの圧力差が大きくなるとき(つまり、ある閾値以上になるとき)、圧力の高い方のボリュートから圧力の低い方のボリュートに流体が流出することになる。これを「クロストーク」という。仕切壁を越えてこぼれた流体は高圧の閉塞を作るので、次のエンジンサイクルでは流体の閉塞を克服するためにエンジンのシリンダ出力の一部が吸収される。したがって、2つのボリュート間のクロストークは、エンジンが発生する出力量を減少させるので、可能であればクロストークの発生を回避することが望ましい。
【0012】
クロストークの発生を軽減する、あるいは回避する方法として、クロストークが発生し始める2つのボリュートの間の圧力差の閾値を大きくすることが考えられる。これは、2つのボリュート内の流体流をできるだけ長い間、互いに分離しておくことで達成される。したがって、可動壁型可変形状タービンでは、仕切壁を、第1の壁部材(すなわち、可動壁部材であり、これは、入口通路を遮断するように調整可能な壁部材であるため)まで可能な限り延ばすことが望ましい。しかし、第1の壁部材が軸方向に移動して吸気通路の大きさを変化させたときに、仕切壁の先端が第1の壁部材の最外周部に近すぎると、第1の壁部材が一方のボリュートの出口を完全に閉塞してしまうことがわかっている。これにより、排気ガスがボリュート内に閉じ込められ、閉塞したボリュートに関連するシリンダバンクに大きな背圧が発生する。この背圧により、エンジンブレーキがかかり、エンジンシステム全体の出力が低下する結果となる。
【0013】
仕切壁の先端を、入口通路内の第1の壁部材の半径方向最外部から一定量離間させると、第1の壁部材の閉塞効果を低減できることがわかっている。特に、第1の半径R1(タービン軸に対する仕切壁の先端の半径)が第2の半径R2(タービン軸に対する入口通路内の第1の壁部材の半径方向最外部の半径)よりも少なくとも約1%大きい場合に、閉塞効果が低減すると判断されている。第1の半径R1と第2の半径R2がそのような比率であるとき、第1の壁部材が一方のボリュートの出口を実質的に覆っているときでさえも、第1の壁部材の半径方向最外部と仕切壁の先端との間に、実質的に塞がれたボリュートからの流体が通過するための適切な隙間があることが保証され、同時にクロストーク閾値圧力が許容レベルを超えていることを確かにすることができる。
【0014】
2つのボリュートを通る流れをより均一にし、エンジンの出力低下を回避するために、第1の壁部材によるボリュートの閉塞を減らすことが一般に望ましいが、場合によっては、部分的閉塞の効果を、エンジンシステムの他の構成要素を駆動するために利用することができる。例えば、一方のボリュートの部分的な閉塞による圧力上昇を利用して、入口通路の上流で部分的に閉塞したボリュートに流体的に接続された配管を介して排気ガスの再循環を駆動することができる。仕切壁の先端が第1の壁部材の外側に近いほど、閉塞したボリュート内の圧力が高くなり、したがって、部分的閉塞の、排気ガス再循環の駆動への有効性がより高くなる。しかしながら、第1の半径(R1)が第2の半径(R2)よりも一般に1%未満だけ大きい場合、流体閉塞のエンジン出力への有害な影響が大きすぎることがわかっている。したがって、第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも少なくとも約1%大きいことが望ましい。
【0015】
「仕切壁の先端」とは、仕切壁のタービン軸に対する最内周部を意味する。特に、先端は、タービン軸を囲む概ね円形の線に外接してもよい。
【0016】
「入口通路内に配置された第1の壁部材の半径方向最外部」とは、入口通路内に含まれる第1の壁部材のうち、タービン軸から最も遠い距離を画定する部分のことである。これは、入口通路の外側に位置する第1の壁部材のいかなる部分の半径も含むことを意図していない。このように、第1の壁部材のうち入口通路の外側にある部分は、第2の半径よりも大きな半径を有する部分を含んでもよい。
【0017】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも少なくとも約1.5%、約2%、または約4%大きくてもよい。
【0018】
タービンハウジングは、タービン軸に概ね平行に延びる舌部を画定してもよく、第1の半径は、舌部の先端によって画定される半径と実質的に等しくてもよい。特に、タービンハウジングの舌部は、流体の流れの方向において第1及び第2のボリュートの入口部分及びボリュートの端部を分離するタービンハウジングの部分であってもよい。仕切壁の先端が舌部の先端と整列する場合、仕切壁は、ノズルリング(すなわち、第1又は第2の壁部材によって支持され得る任意のノズルベーン)に入るときの流体の循環に影響を与え得るような舌部の形状調整をする必要なく高いクロストーク圧力閾値を引き起こすのに十分な大きさである。しかしながら、いくつかの実施形態において、第1の半径は、舌部の先端によって画定される半径よりも大きくても小さくてもよい。
【0019】
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも最大で約40%、25%、16%、15%、10%、9%、8%または7%大きくてもよい。仕切壁の先端と第1の壁部材の半径方向最外部との間の半径方向距離を大きくすると、クロストークが発生し始める閾値圧力が減少し始める。そのため、第1の半径R1は、第2の半径R2よりも最大で約40%大きくすることが望ましいことが分かっている。第1の半径R1と第2の半径R2がこのような割合であると、第1の壁部材の半径方向最外部と仕切壁の先端との間に流体が通過するのに十分な隙間が確保され、同時にクロストーク閾値圧力が許容レベル以下に低下しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、舌部の先端によって定義される半径は、第2の半径(R2)よりも約25%大きく、したがって、第1の半径(R1)が第2の半径(R2)よりも最大で約25%大きい場合、これは、仕切壁の先端が舌部の先端と整列する実施形態を表していてもよい。第1の半径R1は、第2の半径R2よりも、約1%、1.5%、2%、又は4%から、約7%、8%、10%、25%、又は40%までの範囲内の量だけ大きくてもよい。
【0020】
第1の壁部材は、軸方向に延びる1つまたは複数のノズルベーンを有するノズルキャリアであってもよい。そのような実施形態において、第2の壁部材は、ノズルリングのノズルベーンのうちの1つ又は複数を受け入れるための1つ又は複数のスロットを有するシュラウドプレートであってもよい。代替的に、第1の壁部材は、1つ以上のノズルベーンを受け入れるための1つ以上のスロットを有するシュラウドプレートであってもよい。そのような実施形態では、第2の壁部材は、1つ以上の軸方向に延びるノズルベーンを含むノズルキャリアであってもよい。
【0021】
第2の壁部材は、タービン軸に沿って移動可能であり、入口通路の大きさを変化させることができる。すなわち、第1の壁面部材と第2の壁面部材の両方が軸方向に移動可能であってもよい。
【0022】
第1の壁部材は、タービン軸に対して半径方向の流体の流れを遮断するように構成された実質的に連続した円周面を含んでいてもよい。第1の壁部材の円周面は、ボリュートからタービンホイールへ向かう半径方向の流体の通過を阻止する障壁を形成する。このように、円周面は、入口通路の流路面積を調整し、タービンホイールに入る排気ガスの速度を制御するように、第1の壁部材が入口通路の少なくとも一部を効果的に遮断することができることを保証する。円周面は、例えば、ノズルリングの環状フランジであってもよい。
【0023】
入口通路は、タービン軸に平行な方向の幅を画定してもよく、仕切壁の先端は、入口通路の幅の軸方向中点と実質的に整列してもよい。すなわち、仕切壁の先端は、第1及び/又は第2の壁部材が完全に開いた位置にあるときに、第1及び第2の壁部材の間の中点で入口通路を軸方向に分断してもよい。仕切壁の先端を入口通路の軸方向中点に整列させることにより、第1のボリュートから入口通路への流れのための面積と、第2のボリュートから入口通路への流れのための面積とがほぼ等しくなるようにすることができる。このため、両ボリュートの出口での流量条件(定格圧力と速度)が同じになり、入口通路を通る流量が可能な限り均等になる。
【0024】
あるいは、第1のボリュートと第2のボリュートは非対称である。特に、仕切壁の先端は、第1の壁部材がタービンハウジングに対して面一の位置にあるときの第1の壁部材と、入口通路の幅の軸方向中点との間に配置されてもよい。すなわち、仕切壁の先端は、第1の壁部材が開放位置にあるときに、第2の壁部材よりも第1の壁部材に近い位置にあってもよい。あるいは、仕切壁の先端は、第2の壁部材と入口通路の幅の軸方向中点との間に配置されていてもよい。特に、第2の壁部材が可動である場合、仕切壁の先端は、第2の壁部材がタービンハウジングと同一平面上にあるときと、吸気通路の幅の軸方向中点との間に位置してもよい。先端が第2の壁部材よりも第1の壁部材に近い場合、または第1の壁部材よりも第2の壁部材に近い場合には、先端の幅が狭い側のボリュートが第1の壁部材によって部分的に塞がれやすくなる。これは、部分的に塞がれたボリュートに高い背圧を発生させて、部分的に塞がれたボリュートから排気ガスの再循環を駆動するのに有益である。しかしながら、先端が第1の壁部材から半径方向に離間しているため、ボリュートは完全に塞がれることはなく、したがって、エンジン性能に悪影響がおよぶことはない。
【0025】
タービン軸線Aを含む平面に対して測定した第1のボリュートの断面積は、当該平面に対して測定した第2のボリュートの断面積よりも小さくてもよい。特に、第1のボリュートの断面積は、第2のボリュートの断面積の約70%~約90%であってもよい。あるいは、第2のボリュートの断面積は、第1のボリュートの断面積よりも同じ量だけ小さくてもよい。
【0026】
第1のボリュートは、第1のボリュートの入口を画定してもよく、第2のボリュートは、第2のボリュートの入口を画定してもよい。第1のボリュート入口と第2のボリュート入口は、タービン軸線に対して実質的に同じ方位角で整列してもよい。すなわち、第1のボリュート入口及び第2のボリュート入口は、タービン軸線に対して共通の角度位置に配置される。
【0027】
第1のボリュート入口と第2のボリュート入口との間の仕切壁の一部は、タービン軸に概ね直交する方向に延びてもよい。すなわち、タービンハウジングへの入口の仕切壁の部分は、タービン軸線に対して概ね半径方向に延びてもよい。あるいは、第1のボリュート入口と第2のボリュート入口との間の仕切壁の一部は、タービン軸線に対して概ね平行な方向に延びてもよい。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る可変形状タービンを含むターボチャージャが提供される。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、可変形状タービン用のタービンハウジングが提供され、該タービンハウジングは、
第1のシリンダバンクから第1の排気ガス流を受け入れるための第1のボリュートと、
第2のシリンダバンクから第2の排気ガス流を受け入れるための第2のボリュートであって、第1のボリュートと第2のボリュートは、周方向に延びる先端を有する仕切壁によって分離されている、第2のボリュートと、を含み、
仕切壁の先端がタービン軸に対して第1の半径(R1)を画定し、タービンの軸方向に可動な壁部材がタービン軸とタービンの入口通路内に位置する可動壁部材の半径方向最外部との間で第2の半径(R2)を画定し、かつ
第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも少なくとも約1%大きい。
【0030】
本発明の第1の態様の任意の特徴は、本発明の第2の態様または第3の態様に適用されてもよい。特に、第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも少なくとも約1.5%、2%又は4%大きくてもよく、及び/又は、第1の半径(R1)は、第2の半径(R2)よりも最大で約7%、8%、9%、10%、15%、16%、25%、若しくは40%大きくてもよい。
【0031】
以下、本発明の実施形態について、添付の概略図を参照して、説明するが、例示的でしかない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、周知の可変形状ターボチャージャの軸方向断面図である。
図2図2は、本発明の可変形状ターボチャージャの部分的な軸方向断面図である。
図3図3は、クロストーク圧力閾値と、仕切り壁の先端とタービンのノズルリングの外側フランジとの間の相対的な間隔と、の関係を示すチャートである。
図4図4は、クロストーク圧力閾値と、仕切り壁の先端とタービンのノズルリングの外側フランジとの間の異なる間隔の質量流量比と、の関係を示すチャートである。
図5図5は、本発明に係るタービンハウジングの模式的断面図である。
図6図6は、軸方向に分離したボリュート入口を有する本発明に係るタービンハウジングの実施形態の模式的斜視図である。
図7図7は、半径方向に分離したボリュート入口を有する本発明に係るタービンハウジングの別の実施形態の模式的斜視図である。
図8図8は、本発明に係る、仕切り壁が入口流路に対して非対称に配置された一実施形態のタービンハウジングの模式的な部分軸方向断面図である。
図9図9は、本発明に係る、タービンボリュートが異なる断面エリアを画定する一実施形態のタービンハウジングの模式的な部分軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、これは、中央軸受ハウジング3によって相互接続された可変形状タービンハウジング1およびコンプレッサハウジング2を含む周知の可変形状ターボチャージャを示している。ターボチャージャシャフト4は、タービンハウジング1から軸受ハウジング3を通ってコンプレッサハウジング2まで延びている。タービンホイール5は、タービンハウジング1内で回転するようにシャフト4の一端に取り付けられており、コンプレッサホイール6は、コンプレッサハウジング2内で回転するようにシャフト4の他端に取り付けられている。シャフト4は、軸受ハウジング3内に配置された軸受アセンブリ上でタービン軸線Aを中心に回転する。
【0034】
タービンハウジング1は、内燃機関(図示せず)からのガスが送られる入口ボリュート7を画定する。排気ガスは、入口ボリュート7から環状入口通路9及びタービンホイール5を介して軸方向出口通路8へ流れる。入口通路9は、一般に「ノズルリング」と呼ばれる環状の第1の壁部材11の半径方向壁の面10によって片側に画定され、反対側には、ノズルリング11に面した入口通路9の壁を形成する、一般に「シュラウド」と呼ばれる環状の第2の壁部材12によって画定される。ノズルリング11は、タービン軸線Aに沿って移動可能である。シュラウド12は、タービンハウジング1の環状凹部13の開口を覆っている。タービン軸線Aは、ターボチャージャの中心軸線である。
【0035】
ノズルリング11は、周方向に等間隔に並んだノズルベーン14を支持し、その各々は入口通路9を横切って延びる。ベーン14は、入口通路9を通って流れるガスをタービンホイール5の回転方向へ偏向させるように方向付けられている。ノズルリング11が環状シュラウド12に近接しているとき、ベーン14は、シュラウド12に適切に構成されたスロットを通って、凹部13の中に突出する。
【0036】
ノズルリング11の位置は、米国特許第5、868、552号明細書に開示されたタイプのアクチュエータアセンブリによって制御される。アクチュエータ(図示せず)は、ヨーク15に連結されたアクチュエータ出力軸(図示せず)を介してノズルリング11の位置を調整するように動作可能である。ヨーク15は、順に、ノズルリング11を支持する軸方向に延びる作動ロッド16に係合する。従って、アクチュエータ(例えば空気圧式又は電気式でもよい)の適切な制御により、ロッド16の軸方向位置、ひいてはノズルリング11の軸方向位置を制御することができる。
【0037】
タービンホイール5の速度は、環状の入口通路9を通過するガスの速度に依存する。入口通路9に流入するガスの質量が一定の場合、ガス速度は入口通路9の幅の関数であり、幅はノズルリング11の軸方向位置を制御することによって調整可能である。図1は、環状の入口通路9が全開の状態を示している。ノズルリング11の面10をシュラウド12に向かって移動させることにより、入口通路9を最小に閉じることができる。
【0038】
ノズルリング11は、タービンハウジング1に設けられた環状キャビティ19内に延びる軸方向に延びる半径方向内側及び外側環状フランジ17、18を有する。内側及び外側シールリング20及び21は、ノズルリング11を環状キャビティ19の内側及び外側環状面に対してそれぞれシールする一方で、ノズルリング11が環状キャビティ19内でスライドすることを可能にするために提供される。内側シールリング20は、キャビティ19の半径方向内側の環状面に形成された環状溝内に支持され、ノズルリング11の内側環状フランジ17に押し付けられている。外側シールリング20は、キャビティ19の半径方向外側の環状面に形成された環状溝内に支持され、ノズルリング11の外側環状フランジ18に押し付けられている。
【0039】
入口ボリュート7から出口通路8へ流れるガスは、タービンホイール5を通過し、その結果、シャフト4にトルクが加わり、コンプレッサホイール6が駆動される。コンプレッサハウジング2内のコンプレッサホイール6の回転は、空気入口22に存在する周囲空気を加圧し、加圧された空気を空気出口ボリュート23に送り出し、そこから内燃機関(図示せず)に供給される。
【0040】
図2は、本発明に係る可変形状タービンの一部を拡大した図である。タービンハウジング1は、仕切壁26によって分離された第1入口ボリュート24及び第2入口ボリュート25を画定している。第1のボリュート24は、内燃機関(図示せず)の第1シリンダバンクから排気ガスを受け、第2のボリュート25は、内燃機関の第2シリンダバンクから排気ガスを受ける。
【0041】
仕切壁26は、タービン軸線Aから第1の半径R1だけ離間した先端28を画定している。仕切壁26の先端28は、仕切壁26の頂点によって画定され、仕切壁26のタービン軸線Aに最も近い位置にある部分である。先端28は、タービン軸線Aと同心の概ね円形の線を周回する。仕切壁26の先端28は、入口通路9の軸方向の中点と実質的に整列している。すなわち、先端28は、ノズルリング11が最も開いた位置にあるとき(すなわち、ノズルリング11の面10がノズルリング11側のタービンハウジング1の側壁30と同一平面上にあるとき)、シュラウドプレート12とノズルリング11の面10の間のほぼ中間の位置に配置される。図2において、ノズルリング11は、部分的に作動した位置に示されている。仕切壁26の先端28を入口通路9の軸方向中点に合わせることによって、これにより、第1のボリュート24から入口通路9への流れのための面積が、第2のボリュート25から入口通路9への流れのための面積とほぼ等しくなるようにすることができる。さらに、第1のボリュート24の断面積は、第2のボリュート25の断面積と実質的に等しい。このように、入口通路9を通る流れは、可能な限り均等である。
【0042】
ノズルリング11の外側フランジ18は、概して軸方向に延び、タービン軸線Aから第2の半径R2だけ離間している。外側フランジ18は、入口通路9内に配置されるノズルリング11の半径方向に最も外側の部分を画定する。使用中、ノズルリング11が作動されると、外側フランジ18は、入口通路9を横切って延び、第1のボリュート24及び/又は第2のボリュート25からの流体のタービン軸線Aに対して半径方向への流れを実質的に遮断する障壁として機能する。したがって、遮断された流体はノズルリング11の端面10とシュラウドプレート12の間で画定される空間へ強制的に軸方向に移動させられる。
【0043】
各シリンダバンクは、過渡的に脈動する状態の排気ガスを発生させ、各シリンダバンクから排出される排気ガスの圧力は時間的に変動することになる。使用中、しばしば、第1のボリュート24内の排気ガスの圧力と、第2のボリュート25内の排気ガスの圧力とが異なることがある。第1のボリュート24内の圧力が第2のボリュート25内の排気ガスの圧力よりもある閾値以上大きい場合、第1のボリュート24からの高圧の排気ガスが仕切壁26を越えて第2のボリュート25に流出する。第2のボリュート25内の高圧ガスは、第2のボリュート25からタービンホイール5への流体の供給を妨げる流体閉塞を形成するので、流体閉塞を克服するためにエンジンに要求されるポンピング仕事量が増大し、エンジンが生成する出力量を減少させることになる。このような一方のボリュートから他方のボリュートへの高圧ガスの流出は「クロストーク」と呼ばれ、それが発生し始める第1及び第2のボリュート24、25の間の圧力の相対差は「クロストーク圧力閾値」と呼ばれる。
【0044】
クロストークの発生と影響は、クロストーク圧力閾値ができるだけ大きくなるようにタービンハウジング1の形状を選択することで最小化することができる。これは、第1のボリュート24内の流体流を第2のボリュート25内の流体流からできるだけ長く離間させることによって可能となる。この関係は、図3にグラフで示されており、半径が38mmで第2の半径R2が59mmのタービンホイール5を有する例のタービンについて、y軸上に第1及び第2のボリュート24、25間の圧力差の比としてクロストーク圧力閾値を、x軸上に第1の半径R1と第2の半径R2との間のパーセントサイズ差(すなわち分数R1/R2をパーセント値として表わしたもの)を示している。特に、クロストーク圧力閾値比は、第1のボリュート24内の流体の圧力(P1)の第2のボリュート25内の流体の圧力(P2)に対する比である。第1の半径R1の値が第2の半径R2の値に近づくと、クロストーク圧力閾値が増加することが分かる。すなわち、仕切壁26の先端28がノズルリング11の外側フランジ18に近いほど、クロストーク圧力閾値は増加する。
【0045】
しかし、仕切壁26の先端28がノズルリング11の外側フランジ18に近すぎると、ノズルリング11の作動時に第2のボリュート25が外側フランジ18によって完全に塞がれてしまうことがあることが判明している。第2のボリュート25が塞がれると、第2のボリュート25内の流体が閉じ込められ、エンジンに大きな背圧が作用する原因となる。これにより、エンジンブレーキが発生し、その結果、内燃機関によって生成されるパワーが減少する。さらに、第2のボリュート25からの流体が全くタービンホイール5に渡らないため、タービンの効率も低下する。したがって、ノズルリング11の外側フランジ18と仕切壁26の先端28との間にある程度の間隔を維持しつつ、高いクロストーク圧力閾値を維持することが望ましい。
【0046】
第2のボリュート25が塞がれているか否かは、第1のボリュート24を通る質量流量:
【0047】
【数1】
と第2のボリュート26を通る質量流量:
【0048】
【数2】
の質量流量比、すなわち比:
【0049】
【数3】
を測定することによって判断することができる。質量流量比が1に等しいとき、第1及び第2のボリュート24、25を通る質量流量は等しい。しかし、第2のボリュート25が閉塞されるか制限されると、第2のボリュート25を通る質量流量は低下し、質量流量比:
【0050】
【数4】
が増加することになる。したがって、クロストーク圧力閾値が十分に高いことを保証しつつ、質量流量比をできるだけ1に近づけることが望ましい。
【0051】
図4は、2例のタービンについて、仕切壁26の形状を変えた場合の質量流量比:
【0052】
【数5】
とクロストーク圧力閾値の関係を示している。第1の例のタービンは、タービン軸線Aに対して軸方向に測定した幅が4.3mmの入口通路9を有し、第2の例のタービンは、タービン軸線Aに対して軸方向に測定した幅が1.6mmの入口通路9を有する。両方の例のタービンはともに、38mmのタービンホイール5と59mmの第2の半径R2とを有している。グラフ上の各データ点の横にあるレーベルは、第2の半径R2に対する第1の半径R1の比(すなわち、仕切壁26の先端28とノズルリング11の外側フランジ18との間の相対的間隔)を示している。このデータは、面10が仕切壁26の先端28と整列している場合のノズルリング11の位置(すなわち、ノズルリング11の外側フランジ18が第2のボリュート25を効果的に「閉塞」しているとき)を表している。第1の半径R1が第2の半径R2よりも0.8%だけ大きいとき(すなわち、仕切壁26の先端28とノズルリング11の外側フランジ18との間隔が比較的狭い場合)、質量流量比:
【0053】
【数6】
は比較的高く、したがって、第2のボリュート25から流れ出ることがノズルリング11により阻害されていることが分かる。さらに、第1の半径R1が第2の半径R2よりも16.1%大きい場合(すなわち、仕切壁26の先端28とノズルリング11の外側フランジ18との間隔が比較的大きい場合)、クロストーク圧力閾値が比較的低く、クロストークが発生しやすいことが分かる。しかし、第1の半径R1が第2の半径R2より4.2%又は7.6%大きい場合、質量流量比:
【0054】
【数7】
は比較的小さく保たれつつも、クロストーク圧力閾値が比較的高くなる。これは、クロストークを低減又は防止する必要性と、第2のボリュート26を通る高流量を維持する必要性との間の良好な妥協点を表している。
【0055】
実験を通して、第1の半径R1は第2の半径R2より少なくとも約1%大きくあるべきであることが判明している。これは、クロストークの防止に関して、と同時に、エンジンの性能に影響を与えないように、第2のボリュート25を通る十分な流量を可能にする最高の性能を示すものである。さらに、ノズルリング11による第2のボリュート25の閉塞を低減することが一般に望ましいが、場合によっては、部分的な閉塞によって生じる圧力上昇を有用な仕事に利用することが可能である。例えば、第2のボリュート25は、入口通路9の上流にある配管によって(タービンハウジング1に取り付けられているか、タービンハウジング1の上流にあるかに関わらず)排気ガス再循環システムに流体的に接続されていてもよい。使用中に頻繁に作動し得るノズルリング11の作動時には、ノズルリング11は、第2のボリュート25内に高い圧力を生じさせ、これは排気ガス再循環を駆動するために使用できる。しかしながら、第1の半径R1の値が第2の半径R2の値に近すぎる場合、閉塞の量は、エンジンによって生成される出力の量に悪影響を及ぼすことになる。第1の半径R1が第2の半径R2よりも少なくとも約1%大きければ、エンジンへの悪影響を回避できることが判明している。
【0056】
図2の実施形態において、第1の半径R1は、第2の半径R2よりも約10%大きい。好ましくは、第1の半径R1は、第2の半径R2よりも約10~15%以下だけ大きくてもよい。これにより、第2のボリュート25を通る流れが実質的に妨げられることなく、比較的高いクロストーク圧力閾値が提供されることが確かとなる。第1の半径R1は、第2の半径R2よりも、約1%~約40%、約1%~約25%、約2%~約16%、約2%~約8%、約2%~約7%、約4%~約8%、約4%~約7%、又は約9%~約16%の範囲のいずれかだけ大きいことが好ましい。また、第1の半径R1は、第2の半径R2よりも約5%又は約6%大きくてもよい。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態に係るタービンハウジング1の断面図である。タービンハウジング1は、タービン軸線Aに対して概ね軸方向に延びる舌部40を含む。舌部40は、内燃機関から流体を受け取る第1及び第2のボリュート24、25の入口と、流体の流れ方向における第1及び第2のボリュート24、25の端部との間に画定されている。舌部40は、舌部40のタービン軸線Aに対して半径方向に最も内側の点となる先端42を含む。舌部40の先端42は、タービン軸線Aに対する第3の半径R3を画定する。第3の半径R3は、第2の半径R2(ノズルリング11の最外周部の半径)よりも約25%大きい。図示の実施形態では、(仕切壁26の先端28の)第1の半径R1は、(舌部40の先端42の)第3の半径R3よりも小さくなっている。これは、舌部40の形状を仕切壁26の存在を考慮して調整する必要がなく、したがって、第1および第2のボリュート24、25から入口通路9への流体の循環に影響がないことを意味するので、第1の半径R1が第3の半径R3以下であることが好ましい。しかしながら、代替の実施形態では、第1の半径R1(仕切壁26の先端28の半径)は、第3の半径R3(舌部40の先端42の半径)より大きくてもよいことが理解される。
【0058】
図6は、本発明の一実施形態に係るタービンハウジング1を示す。タービンハウジング1は、上流側のダクト(例えば、内燃機関から導かれる配管)にタービンハウジング1を取り付けるための取り付けフランジ32を含む。タービンハウジング1は、第1のボリュート24の入口である第1のボリュート入口34を画定し、第2のボリュート25の入口である第2のボリュート入口36をさらに画定する。第1のボリュート入口34及び第2のボリュート入口36は、タービン軸に関して実質的に同じ方位角で整列されている。すなわち、第1のボリュート入口34と第2のボリュート入口36は、タービン軸線Aに関して同一平面上で、かつ同一角度位置に配置される。仕切壁26は第1のボリュート入口34を第2のボリュート入口36から分離する。第1のボリュート入口34と第2のボリュート入口36とを分離する仕切壁26の部分は、タービン軸線Aに対して概ね直交する方向に延びている。これにより、タービンハウジング1は、2つのシリンダバンクからのダクトがタービン軸線Aに関して互いに軸方向に隣接して配置されているツインエントリーシステムでの使用に適している。代替の構成が図7に示されており、第1のボリュート入口34と第2のボリュート入口36との間の仕切壁26の部分はタービン軸線Aに対して概ね平行に延びている。これにより、タービンハウジング1は、2つのシリンダバンクからのダクトがタービン軸線Aに対して互いに半径方向に離れて配置されるツインエントリーシステムでの使用に適している。一般に、取り付けフランジ32、第1及び第2のボリュート入口34、36は、排気ガスの供給のための上流ダクトに接続できるような、任意の適切な構成を有してもよいことは明らかである。
【0059】
図2を参照すると、仕切壁26は、第1及び第2のボリュート24、25が非対称であるように、タービン軸線Aに対して斜めに傾いていることが分かる。第1のボリュート24は、第1のボリュートセントロイド42を画定し、第2のボリュート25は、第2のボリュートセントロイド44を画定する。タービンハウジング1の形状及び仕切壁26の曲がりにより、タービン軸線Aに対する第1のボリュートセントロイド42の半径は、タービン軸線Aに対する第2のボリュートセントロイド44の半径よりも小さい。概念的には、両方のボリュート24、25が同じソースにさらされる場合、両方のセントロイド42、44を流れる流体の線速度はほぼ等しくなる(しかし実際には、各ボリュートは異なるシリンダバンクにさらされる)。各ボリュート24、25内の排気ガスはタービン軸線Aの周りを循環するため、タービン軸線Aに関する流体の角運動量は保存される。第1のボリュートセントロイド42の半径は第2のボリュートセントロイド44の半径よりも小さいので、第1のボリュート42内の流体は、第2のボリュート25内の流体よりも入口通路9に移動する際の半径変化が小さい。そのため、第1のボリュート24から入口通路9に入る流体のタービン軸線A周りの角速度は、第2のボリュート25から入口通路9に入る流体のタービン軸線A周りの角速度よりも小さくなっている。そのため、2つのボリュート24、25の流動条件が異なり、エンジンに異なる背圧を作用させることになる。そのため、ボリュート24、25間の流動条件のバランスをよくするために、タービンハウジング1の形状をさらに調整することが必要となる場合がある。
【0060】
例えば、上述したタービンの仕切壁26の先端28は、入口通路9の軸方向中点と実質的に整列しているが、代替実施形態では、仕切壁26の先端28は、シュラウドプレート12またはノズルリング11側の側壁30により近く整列してもよいことが理解される。すなわち、先端28は、非対称の位置に移動させることができる。図8は、このような本発明の一実施形態を示すものである。入口通路9は、側壁30とシュラウドプレート12との間でタービン軸方向の幅38を画定する(なお、図8では、分かりやすくするためにシュラウドプレート12は省略されている)。仕切壁26の先端28は、幅38の半分以上の距離40だけ側壁30から離間している。距離40は、幅38の約62%であり、幅38の約55%~約70%の範囲内であることが好ましい。このように、第1のボリュート24から入口通路9への流れのための面積は、第2のボリュート25から入口通路9への流れのための面積よりも小さくなっている。
【0061】
第1のボリュート24の出口面積を小さくすることで、第1のボリュート24を流れる流れが制限され、第1のボリュート24の圧力が上昇することになる。第1のボリュート24の圧力の増加は、2つのボリュート24、25の間の流れの状態を均衡させるために利用することができる。さらに、増加した圧力は、例えば排気ガス再循環のため(すなわち、排気ガス再循環ラインを第1のボリュート24と流体連通して配置することによって)など、エンジンシステムの他の部分を駆動するために利用することができる。
【0062】
好ましくは、先端28が側壁30とシュラウドプレート12との間の非対称な位置に移動される場合、先端28もタービン軸線Aに半径方向に近づくように(すなわち、第1の半径R1の値を小さくするように)移動されるべきである。図7の実施形態では、第1の半径R1は、第2の半径R2よりも約9%大きい。代替の実施形態では、第2のボリュート25を使用して排気ガス再循環を駆動できるように、仕切壁26の先端28を対応する量だけ側壁30に近づけることができることが理解される。
【0063】
好適な非対称タービンの形状の他の例を図9に示す。図9において、第1のボリュート24の断面積は、第2のボリュート25の断面積より小さい。第1及び第2のボリュート24、25の断面積は、タービン軸線Aを含む共通の平面で測定した第1及び第2のボリュート24、25の面積である。特に、第1のボリュート24の断面積は第2のボリュート25の断面積の約84%、好ましくは第2のボリュート25の断面積の約70%~90%である。第1のボリュート24の断面積が小さいので、第1のボリュート24内の流体はバルク速度が大きくなる。特に、第1のボリュートセントロイド42における流体速度は、第2のボリュートセントロイド44における流体速度より大きい。したがって、第1のボリュート24の断面積を調整することにより、先端28の近傍で第1のボリュート24から流出する流体の出口圧力および流速を、第2のボリュート25から流出する流体の圧力および流速とより近くに一致させることが可能である。したがって、クロストークの発生可能性をより少なくすることができる。
【0064】
上述したタービンは2つのボリュート24、25のみを含んでいるが、本発明の代替実施形態では、タービンは2つ以上のボリュート、例えば3つ以上のボリュートを含み得ることが理解される。各隣接する一対のボリュートは、各仕切壁26の先端28がタービン軸線Aから測定した半径が本明細書に記載の範囲のうちの1つに入るかぎり、仕切壁26によって分離されてもよい。
【0065】
上述したタービンは、可動ノズルリング11と固定シュラウドプレート12とを含むが、代替実施形態では、シュラウドプレート12は、入口通路9の軸方向幅を変えるためにタービン軸線Aに沿って移動可能であってもよいことが理解される。さらにさらなる実施形態では、ノズルリング11及びシュラウドプレート12の両方は、入口通路9の軸方向幅を変化させるために、タービン軸線Aに沿って独立して又は協同して可動であってよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】