(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】遠心マイクロ流体チップ、キットおよびオンチップガス供給システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220826BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220826BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220826BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20220826BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20220826BHJP
【FI】
G01N35/00 D
G01N37/00 101
C12M1/00 A
C12M3/00 A
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574813
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2020056095
(87)【国際公開番号】W WO2020261229
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マリック, リディヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレス, テオドール
(72)【発明者】
【氏名】クライム, リヴィウ
(72)【発明者】
【氏名】ダウド, ジャマル
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058DA09
2G058EA17
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029DA04
4B029GA08
4B029GB09
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4B065AA93X
4B065AC14
4B065AC20
4B065CA24
4B065CA46
(57)【要約】
チップ上のチャンバがチップの別のチャンバに加湿制御、またはより一般的にはガス組成制御を提供することを可能にする遠心マイクロ流体チップが提供される。これは、低コストで効率的な遠心デバイス、例えば、マルチポート空気圧チップコントローラ、シングルまたはマルチポート空気圧スリップリング、および空気圧スリップリングを備えた関節式遠心ブレードを使用するマイクロ流体インキュベーションを可能にする。デバイスは、細胞培養、微生物試験、または制御された微小環境を有する生物学的試料からの化学種の生成のために使用されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心マイクロ流体チップであって、
各々が0.1μL~1mLの容積、および基準軸位置に関して規定された公称充填ラインを有する複数のマイクロ流体チャンバと、
各チャンバを相互接続する複数のマイクロ流体チャネルと、
各ポートが一つ又は複数のチャンバと流体連通する複数のポートと、
を備え、
前記チャンバの1つは、チャンバ1、2、3、および少なくとも1つのポートにチャネルを介して接続された調節済みチャンバであり、
チャンバ1は、その充填ラインまたはそれより上のポートからの第1の開口部と、第1のチャネルへの第2の開口部とを有し、前記第1のチャネルは、その充填ラインより下の前記チャンバ1を前記調節済みチャンバに接続し、
チャンバ2は、その充填ラインまたはそれより上のポートからの第1の開口部と、その充填ラインまたはそれより上の第2のチャネルへの第2の開口部と、充填ラインの下のいずれの相互接続チャネルまたはポートへの開口部も有さず、前記第2のチャネルは、チャンバ2のいずれの部分よりも基準軸に近接して延びる経路セグメントをみ、その充填ラインより上の調節済みチャンバとその充填ラインより上の前記チャンバ2とを接続し、前記第2のチャネルは、バルブを有さず、毛細管流は収縮を測定せず、
チャンバ3は、その充填ラインの上方に、ポートへの第1の開口部と、第3のチャネルへの第2の開口部とを有し、前記第3のチャネルは、前記チャンバ3を、前記調節済みチャンバの充填ラインの下方の前記調節済みチャンバに接続する、チップ。
【請求項2】
遠心マイクロ流体チップであって、
各々が0.1μL~1mLの体積を有する複数のマイクロ流体チャンバと、
各チャンバを相互接続する複数のマイクロ流体チャネルと、
各ポートが一つ又は複数のチャンバと流体連通する複数のポートと、
を備え、
前記チャンバの1つは調節済みチャンバであり、前記調節済みチャンバは、チャンネルを介してチャンバ1およびチャンバ2に接続され、少なくとも1つのポートに直接接続されており、
チャンバ1は、チャンバ1の充填ラインの上方のポートからの第1の開口部と、第1のチャネルへの第2の開口部とを有し、前記第1のチャネルは、前記チャンバ1を、その充填ラインよりもチャンバ1の軸遠位点に近接して、前記調節済みチャンバの充填ラインの上方の前記調節済みチャンバに接続し、
チャンバ2は、前記チャンバ2のための充填ラインを画定する余水吐開口部、充填ラインの上方のポートからの第1の開口部、充填ラインの上方の第2のチャネルへの第2の開口部、および充填レベルより下の任意のチャネルへの開口部も有さず、
前記第2のチャネルは、経路セグメントをみ、前記経路セグメントは、前記調節済みチャンバまたはチャンバ2のいずれかよりも前記チップの基準軸位置に近接して延び、かつ前記調節済みチャンバに接続する、チップ。
【請求項3】
前記チップの基準軸位置は、前記チャンバの上方の区域内部にあり、前記チップの頂端から2L未満であり、前記チップの中心線から0.65L未満である(Lはチップの長さ)、請求項1又は2に記載のチップ。
【請求項4】
前記チップの前記基準軸位置は、前記チャンバの上方の区域内部にあり、前記チップの頂縁部から3/2L未満であり、前記チップの中心線から0.5L未満である(Lはチップの長さ)、請求項1又は2に記載のチップ。
【請求項5】
前記チップの前記基準軸位置は、前記チャンバの上方の区域内部にあり、前記チップの頂縁部からL未満であり、前記チップの中心線から0.5W未満である(Lはチップの長さ、Wはチップの幅)、請求項1又は2に記載のチップ。
【請求項6】
前記基準軸位置は、前記チャンバ2の2つの開口部の中点を通る2本の線の間にあり、前記2本の線は、前記2つの開口部の垂直二等分線によって二等分され、それぞれ、前記垂直二等分線に対して30°および-30°の角度をなす、請求項3~5のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項7】
前記チップの前記基準軸位置は、P1および前記第2のチャネルへの開口部から分離され、これらの分離は、2の係数以下であり、前記チャンバ2の前記充填ラインは、前記充填ラインより下のチャンバ2の容積の少なくとも33%の容積をむ、請求項1~5のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項8】
前記充填ラインは、チャンバ2の前記容積の少なくとも50%または60%または66%または70%または75%をむことが好ましい、請求項7に記載のチップ。
【請求項9】
前記チャンバ2内の前記充填ラインの表面積は、チャンバ1の表面積よりも少なくとも2倍、より好ましくは4倍、より好ましくは10倍大きい、請求項1~8のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項10】
前記調節済みチャンバおよびチャンバ2のうちの少なくとも1つは、前記チップの他のどのチャンバまたはチャネルよりも大きいエッチング深さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項11】
前記チャンバ2の形状は、その液体含有物の自由表面積の変化が10%未満となり、前記充填ラインからの前記液体含有物の容積が10%減少する、請求項1~10のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項12】
前記調節済みチャンバは、異なる遠心分留物を抽出するために前記充填ラインを越えて異なる軸方向距離にある出口チャネルへの複数の開口部を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項13】
ポートのサブセットは、アドレス指定可能な空気圧作動のために提供され、これらのポートは、同時クランプシール接続のために前記チップの縁部に沿って整列される、請求項1~12のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項14】
前記チャンバ2の前記ポートは、密封された供給管に結合するのに適した形態を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項15】
前記調節済みチャンバは、微生物または細胞の支持体、前記第2のチャネルおよび基準軸位置への前記開口部と同一線上にあるガストラップであって、ガスが液体中に拡散する間にガス気泡を保持するために、前記基準軸位置と前記開口部との間に置かれる、ガストラップ、のうちの1つを備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項16】
熱吸収および分配材料が、前記調節済みチャンバおよび前記チャンバ2のうちの1つに隣接して提供される、請求項1~15のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項17】
2つの別々にアドレス指定可能な帯域の材料が、前記調節済みチャンバおよびチャンバ2を独立して加熱するために提供される、請求項16に記載のチップ。
【請求項18】
前記チップは被覆され、遠心機の加圧キャリアガス供給源に結合された前記チップの少なくとも1つの空気でアドレス可能なポートと共に前記遠心機に装着するように適合されたマイクロ流体カートリッジを形成する、請求項1~17のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項19】
前記第2のチャネルは、その充填ラインより下方の開口部で前記調節済みチャンバと合流する、請求項1~18のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項20】
前記第2のチャネルは、毛細管効果および流体力学的抵抗が無視できる自由流動を受けやすく、親水性コーティングも疎水性コーティングも有していない、請求項1~19のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項21】
各チャンバ1は、各調節済みチャンバの軸近位側に位置され、任意のチャンバ3は、各調節済みチャンバの軸遠位側に位置される、請求項1~20のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項22】
前記チップは、適当なガス不透過性層を有する熱可塑性、熱可塑性エラストマ、またはPDMSから構成される、請求項1~21のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項23】
前記チップは熱可塑性エラストマで構成され、前記チップの1つ以上のポートが前記チップ内部の空気圧バルブを作動させるために使用される、請求項1~21のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項24】
前記空気圧バルブは、常閉バルブ、常開バルブ、または開いた状態、閉じた状態、半永久的に閉じた状態のトライステートバルブである、請求項23に記載のチップ。
【請求項25】
前記第2のチャネル以外の3つ以上のチャネルは、それぞれの軸近位セグメントを有し、前記調節済みチャンバを、前記チップの前記面に垂直な傾斜軸を中心とする前記チップの傾斜角度が、前記調節済みチャンバとこれらのチャンバのうちの1つとの間の流体移動を可能にするように選択された形状、位置、および充填ラインを有するそれぞれのチャンバに接続する、請求項1~24のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項26】
45°未満の傾斜角度の範囲は、前記調節済みチャンバと前記3つのそれぞれのチャンバとの間を連続的に移動するのに十分である、請求項25に記載のチップ。
【請求項27】
前記第1のチャネルは、流体力学的収縮および計量チャンバを備える、請求項1~26のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載のチップを備えたキットであって、
前記チップ上に搭載するための液体と、
遠心マイクロ流体チップコントローラのうちの1つに結合するように適合されたチップ形態カートリッジと組み合わされた一つ又は複数のカートリッジ形成要素と、
空気圧スリップリングを備えた遠心ブレード、または、空気圧スリップリングを備えた関節式遠心ブレードと、
カートリッジ、前記チップ、またはチップ支持体に適用するための材料であって、前記調節済みチャンバを熱制御するための組成および寸法を有する材料と、
チャンバ2と、
または、それらの充填ラインの下にあるこれらのうちの一つの一部と、
を伴う、キット。
【請求項29】
前記液体は、前記チャンバ2の揮発性液体含有物、前記調節済みチャンバの為の生物学的サンプルを有する、または有する可能性のある液体、チャンバ1の為の一つ又は複数の試薬、緩衝液、または溶液、のうちの一つをむ、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記キットは、組み立てられ、前記遠心マイクロ流体チップコントローラ、空気圧スリップリング付き遠心ブレード、または、空気圧スリップリングを備えた関節式遠心ブレードに装着される、請求項28又は29に記載のキット。
【請求項31】
前記チャンバの1つにその充填ラインまで液体が有されている、請求項1~27のいずれか一項に記載のチップを備えた遠心マイクロ流体システム。
【請求項32】
前記チャンバの1つに有される前記液体は、チャンバ2の揮発性液体含有物、前記調節済みチャンバ内に生物学的サンプルを有する、または有する可能性のある液体、またはチャンバ1内の一つ又は複数の試薬、緩衝液、または溶液、である、請求項31に記載の遠心マイクロ流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、一般に、遠心マイクロ流体チップのチャンバへの制御されたガス供給に関し、特に、調節済みチャンバと、それに結合された3つのリザーバを一定のレイアウトで有するチップに関するが、このレイアウトでは、1つのリザーバがガスを調節済みチャンバに供給し、別のリザーバが液体を供給し、第3のリザーバが調節済みチャンバからの出力を受けることを可能にする。
【0002】
【発明の背景】
【0003】
[0002]マイクロ流体処理には多くの利点がある。試料や試薬の節約的な使用、非常に狭い空間での試験/反応/培養などがある。多くの用途において、コンディショニングされたチャンバの組成、および場合によっては液相と固相の両方の組成(温度および/または圧力)を制御する必要がある。たとえば、微生物学的試験、生成または反応チャンバにおいて、調節済みチャンバ内の微生物(細胞、細胞小器官、細菌、ウイルス、古細菌、真菌、原虫、オルガノイド、または小さな組織生検)、または上記のいずれかを潜在的に有する食物または水性試料は、液体(栄養素、触媒、または反応物)を供給可能であり、同時に、ガスの組成、温度および圧力を制御して、微生物を処理、試験、処理、またはインキュベートする。
【0004】
[0003]そのため、調節済みチャンバは、基本的な研究(細胞生物学、生化学、生理学、生態学、進化)だけでなく、微生物による合成が困難な種の細胞生成にも必要である。特に、細胞ベースのアッセイを自動化し、統合することは、薬物スクリーニング、臨床診断および細胞ベースの治療に必要である。
【0005】
[0004]従来のマイクロタイタープレート法は労働集約的であり、大型で高価なロボット式液体処理システムを使用せずに自動化することは困難である。非常に低い流体容積の操作を容易にし、従って細胞培養アッセイの小型化に成功するために、種々のラブオンチップ(lab on chip)マイクロ流体システムが開発されている。
【0006】
[0005]細胞捕捉、細胞ベースのアッセイおよび検出を統合しながら、前述の問題の幾つかを克服し、連続的な細胞培養およびインキュベーションを可能にするために、過去20年間にわたって多くのマイクロ流体システムが開発されてきた[Halldorsson,S., Lucumi, E., Gomez-Sjoberg, R. & Fleming, R. M. T. Advantages and challenges of microfluidic cell culture in polydimethylsiloxane devices.Biosens. Bioelectron.63, 218-231 (2015)]。マイクロ流体システムは、細胞培養を小型化し、試薬消費を低減し、従って、アッセイの全体的なコストを低減する。また、それらは、細胞外対細胞内液体積の比を減少させる能力を有し、細胞外微小環境の正確な操作を可能にして、外部刺激に対する細胞応答の遅れを減少させ、それによってアッセイ時間を短縮する[Kane,K. I. W. et al. Automated microfluidic cell culture of stem cell derived dopaminergic neurons in Parkinson’s disease.bioRxiv 209957 (2017)]。さらに、小型化された細胞培養は、幾何学的に閉じ込められた小さなフットプリント内での多重化を可能にし、並行して複数の条件の実験的複製またはスクリーニングを可能にする[Reichen,M., Veraitch, F. S. & Szita, N. Development of a Multiplexed Microfluidic Platform for the Automated Cultivation of Embryonic Stem Cells.J. Lab. Autom. 18, 519-529 (2013)]。最後に、マイクロ流体デバイスは、流体操作のための本質的に閉じたチャネルおよびチャンバを有するので、それらは、細胞培養培地の持続灌流および栄養素および刺激物質の送達を可能にしながら、蒸発の影響を最小限にすることができる[Nakatani,E. et al. Compartmentalized microfluidic perfusion system to culture human induced pluripotent stem cell aggregates.J. Biosci. Bioeng. 124, 234-241 (2017); Khoury,M. et al. A microfluidic traps system supporting prolonged culture of human embryonic stem cells aggregates.Biomed. Microdevices 12,1001-1008 (2010)]。
【0007】
[0006]これらの開発にもかかわらず、従来技術のマイクロ流体デバイスを使用する気相調節は、チップの雰囲気と容易にガスを交換する透過性マイクロ流体チップを使用することをむので、マイクロ流体の利点の一部は、まだ実現されていない。これは、これらのチップを大きな補助機器(インキュベータ、シリンジポンプなど)に入れることを直接要求することにつながる。実際、文献に記載されているマイクロ流体システムのほとんどは、培養チャンバにCO2緩衝媒体を供給するために外部シリンジポンプの使用に依存しており、デバイス操作の全体的な複雑さを増大させ、それらの実際の適用を制限する[Kyu Byun,C., Abi-Samra, K., Cho, Y.-K.& Takayama, S.Pumps for microfluidic cell culture. Electrophoresis 35, 245-257 (2014); Takano,A., Tanaka, M. & Futai, N.On-chip CO2 incubation for pocket-sized microfluidic cell culture.Microfluid. Nanofluidics 12,907-915 (2012)]。さらに、これらのデバイスは、ガス微小環境の制御を可能にするその透明性、生体適合性およびガス透過性のために、PDMSを用いて作製される[Torino,S. et al. PDMS-Based Microfluidic Devices for Cell Culture. Inventions 3, 65 (2018)]。PDMSデバイスは学術研究において豊富であるが、この材料は、スケーラブルな製造とは適合しないので、PSおよびCOCのような生体適合性の硬質熱可塑性物質が普及している医薬および臨床研究をむ産業においては、ほとんど使用されない。硬質熱可塑性プラスチックは、PDMSよりも数桁低いガス透過性を有する。さらに、PDMSはタンパク質および小分子を吸収することができ、一部のアッセイ結果を偏らせる。チップが加湿器チャンバ内にない限り、PDMSのガス透過性は、時間の経過とともに試料の蒸発をもたらすことができる。長期の細胞培養を必要とする用途には、常に湿度制御が必要である。実際、文献における実験のほとんどは、加湿された細胞培養インキュベータ内部でPDMSチップを使用し、「ラボオンチップ」を「実験室内のチップ」に低減する。
【0008】
[0007]先行技術の研究者、たとえば、Bunge,F.,van den Drische,S.&Vellekoop,M.J.は、この正確な問題に取り組んでろ、PDMSをまないマイクロ流体細胞培養は、陽極酸化アルミニウムの多孔質膜を通して統合されたガス供給を伴う。マイクロデバイス20、98(2018)は、細胞を成長させるために、インキュベータ内でチップを支持するための改良されたガス透過性培地を提供するように動機付けられた。
【0009】
[0008]遠心マイクロ流体チップでなくてもよいが、本クレームと共通の一部の、または幾つかの構造的特徴を有してもよい先行技術のチップは、US 2009/246082、WO2018/215777、US 2018/364270、US 2017/173589、US 2016/214105、US 2008/226504、US 2018/313765、JP 2003344421、EP 2332653、CN 107460122、US 7452726、およびUS 10252267である。
【0010】
[0009]従って、コンパクトであり、好ましくはチップの材料組成の制限がほとんどない(例えば、大量製造技術、不活性、低コストの形成および封止などに適合する)、液体栄養補給およびその調節済みチャンバ内でのガス供給制御を可能にするように設計された遠心マイクロ流体チップが必要である。特に、チップは、遠心マイクロ流体チップの調節済みチャンバへのガス供給を、透過性膜を通過することなく、したがって他の揮発性物質の吸収および脱着を受けることなく、直接制御することを可能にする。
【発明の概要】
【0011】
[0010]全てのタイプのマイクロ流体チップにおいて、チャンバを提供することは非常に一般的であり、チャンバ内に細胞または微生物支持構造体を有する可能性があり、チャンバは、チャンバを栄養補給または灌流するための一つ又は複数の液体供給リザーバ、および廃棄物リザーバから流体を受けるための一つ又は複数の廃棄物リザーバと接続されているが、マイクロ流体リザーバを適応させて、調節済みチャンバの為にガスを供給するオンチップコントローラとして機能させるという考えは、特に、空気圧制御を伴う遠心マイクロ流体の状況においては、知られていなかった。これは、H2O、CO2、O2、N2、CH2、CO、CH3などをどのように制御するかという問題に対する驚くほどエレガントな解決策であり、膜を通過しないようにする。
【0012】
[0011]この溶液は、遠心マイクロ流体デバイスに特有の様式で、調節されたチャンバ(CC)に接続されたガス供給源(GS)リザーバを提供することをむ。結合はチャネルを通して行われ、チャネルはGSリザーバまたはCCのいずれよりもチップの基準軸に近い方を通過する。これは、それらの間で液体を導くことに対して、チャネルを一般的に適さないものにし、不必要に問題を生じさせる。しかしながら、それは液体に対して優れた障壁となり、気体に対してはほとんど障壁とならない。従って、GSリザーバ内の反応性液体または固体前駆体、または揮発性液体は、それ自体はCC内に移動可能ではないが、ガス生成物は移動可能である。ガスの発生は、GSリザーバの温度を制御することによって外部的に制御されてもよい。この発生を、GSリザーバのポートから、チャネルを通って、CCまで、およびCCポートを介してチップから出る制御された流量と調整して、CCガス濃度を制御する。
【0013】
[0012]流量を制御するために、GSポートおよびチャネルへの開口部の両方が、GSリザーバの充填ラインより上方にあり、これは、チャネルへの液体の引き込み(entrainment)を排除するためである。ここで、充填ラインは、「完全な」流体の凹凸面(meniscus)を与える又は得るときの、チャンバ/リザーバの液体有物の自由面であると理解される。もちろん、チャンバは過充填される可能性があり、これは、チャンバを特定のプロトコルまたは動作に適さないようにしたり、またはチャンバを完全に使用不可能にしたりする可能性がある。充填ラインは、通常、充填されていないチップの消えないマーキングではないが、1-実際に画定することができること、2-チップベンダーが提供する説明書に記載されたチップのチャンバの容積によって製品内で識別することができること、または、3-以下の手がかり(cues)を考慮した検査によって明らかにすることができる。a)GSポートの位置及びチャネルに開口している位置、b)その他の全ての機能的に接続されたリザーバの入口、出口及びポートに対する位置、c)CC内部の材料を支持するための装置の位置、例えば、充填ラインで、又はその下で材料を支持すると自然に仮定されるセル支持体。充填ラインは幾何学的に線ではなく、チップの回転軸から放射される遠心力によって定義されることに注意されたい。チップが「オンエッジ」回転のために設計されている場合、すなわちチップの頂縁部が遠心機の軸と平行である場合、第1のアークは、チャンバの厚さ方向にあり、本質的に無視することができ、その結果、全てのチャンバは、充填ラインとして本質的に平行な幾何学的ラインを有することに留意されたい。チップの他の可能性のある配向は、軸が垂直であり、チップの面の法線からオフセットされ、この場合、全てのチャンバの充填ラインは、本質的に、同じ軸からのそれぞれの円弧である。
【0014】
[0013]回転軸は、チップを見るだけで定義されてもされなくてもよいが、チャネル相互接続およびチャンバに対するチャネルの位置が与えられれば、そのチャンバの機能的観点と一致して、軸に対して動作可能な範囲の位置を提供する手がかりが存在する。従って、チップの全体的で意図的な見方は、機能的な結果のために整列されかつ相互接続された4つ以上のチャンバを有するほぼ全ての場合において、可能な回転軸の狭いバンドを提供し、狭いバンド内部で、各チャンバに対する充填ラインを規定する。さらに、チップの軸がチップ自体から遠く離れていないので、チップに印加される遠心場の勾配が大幅に減少し、遠心機のモーメントが増加して、より低い勾配を達成するためにより高いトルクを必要とするという事実などの合理的な制限がある。そのため、チップの軸は、一般に、チップの長さの2倍未満だけチップから分離されると予想される。
【0015】
[0014]また、本発明は、出願人の同時係属中の国際公開第2015/181725号に教示されているように、またはその背景において教示されているように、回転軸に平行な軸上で傾斜するように設計されたチップの可能性をむ(その内容は、法律および慣行によって許可され、かつ他の全ての管轄区域において当該技術分野で公知であると推定される場合には、参照により本明細書に組み込まれる)。そうである場合、チャンバの充填ラインは、チップのベースラインポーズ(存在する場合)、または中間の動作範囲におけるバランスのとれたポーズにおける充填ラインを指す。このようなチップは、傾斜角度に応じて流体を保持または分配する非毛細管駆動の蛇行チャネルを使用することによって識別可能である。
【0016】
[0015]チャネルは、CCの充填ラインの上方または下方のいずれかで、GSリザーバをCCに結合することができる。充填ラインより下方にガスを供給することによって、ガスは、より効率的にCCの液体有物に溶解し、充填ラインより上方のCCへのガス送達と比較して、ガスをCCに「泡立たせる」ためにより高い圧力が必要とされる。バブリングは、有利にはCC量を混合することができ、または幾つかの細胞の培養において所望されるように細胞の付着または沈降を妨げることができる。バブリングは、本出願人の同時係属WO2015/132743およびその先行技術の部分に教示されており、これはまた、遠心マイクロ流体のための好ましいマルチチャネル空気圧制御アーキテクチャを教示する(その内容は、その内容が、法律および慣行によって許可され、かつ他のすべての管轄区域において当該技術分野において公知であると推定される場合に、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0017】
[0016]ガスのGSリザーバでの流れへの拡散、または流れからCCの有物への拡散を促進するために(特にバブリングを使用しない場合)、ガスとの接触の表面積(充填ライン)を拡大してもよい。CCまたはGSリザーバの幅は、それぞれの充填ラインまたはその近くで最大であってよい。より大きな効果を得るために、CCおよび/またはGSリザーバのエッチング深さは、チャネルおよびチップの幾つかの他のリザーバのエッチング深さよりも実質的に大きくてもよい。候補基準軸位置は、他の候補のものと比較して、CCおよびGSリザーバの充填ライン表面積に依存する可能性が高い場合も低い場合もある。
【0018】
[0017]チップの充填ラインが点検によって確認できることを合理的に期待するために、さらに、種々の用途に対して機能的であるチップを作るために、チップは、少なくとも第1の緩衝液または試薬供給源(SUP)リザーバ、および第1の出力(OUT)リザーバ(例えば、従来の廃棄物リザーバ、上清、またはCCの遠心的に単離された画分(fraction))に結合されたCCに限定される。ほとんどの実施形態において、2つ以上のSUPおよびOUTリザーバが好ましい。SUPリザーバは、その充填ラインの下方で、好ましくは、軸に対してSUPリザーバの遠位面で、SUPリザーバと合流するSUPチャネルを介してCCに結合される。SUPチャネルは、CC充填ラインより上方の任意の場所でCCに結合することができる。OUTリザーバは、OUTチャネルによってCCに結合され、これは、収集された試料を優先して、充填ラインの上方のOUTリザーバと、充填ラインの下方のCCと合流する。たとえば、OUTリザーバがCCの充填容積に対して小さい容積を有する場合、それは、ある量の遠心分離の後/その間に、充填容積の頂面をスキムするように設計されるか、またはそうでなければ、CCの遠位壁および充填ラインの中間の対応する点から異なる画分を抽出してもよい。
【0019】
[0018]幾つかの用途において、かなりの量のガスの送達を必要とするか、またはガス送達が非効率的であり、長期間にわたって送達される場合がある。例えば、細胞インキュベーション研究は、数時間または数日を要することがある。その場合、GSリザーバの充填ラインより下方の材料で多くのガスを生成する必要があり、GSリザーバの充填容積を大きくすることが望ましい。遠心マイクロ流体チップ設計の空間的制約は、一般に、充填容積の間のトレードオフを必要とする一方で、充填ラインにおいて十分な表面積を提供し、また、使用中の流れにおける濃度低下が極端でないように、GSレザーバが空になるにつれて自由表面積が徐々に失われることを可能にする。
【0020】
[0019]そのようなものとして、チップは、それを遠心機に装着し、それを、システム(例えば、出願人の国際公開第2015/132743号明細書に教示されているシステムおよび単一チャネル空気スリップリングをむそこに特定された先行技術に教示されているシステム)と結合することによって使用されるが、このシステムは、制御された流量をGSポートに供給し、CCポートを介してチップから供給するように適合されている。
【0021】
[0020]WO2015/132743は、回転ステージ上にプログラム可能な電気機械式バルブを有する遠心チップコントローラ、およびバルブの動作を指示するためのバルブの電子コントローラを教示するが、回転ステージは、制御された空気圧を空気圧インターフェースを介してチップの専用の圧力ポートに加えることを可能にする。各圧力ポートは、ポンプまたは通常の大気圧(ベント)から正または負の圧力を加えるようにプログラムすることができる。ポンプは、細胞培養に必要なCO2のような特定のガス環境をカートリッジに提供するために、ガスボンベのようなガス供給源に接続可能であるか、または空気を供給するポンプに接続可能である。遠心チップコントローラを使用して発生された圧力差は、カートリッジ上の任意の能動要素を統合する必要なしに、バルブ形成、フロースイッチング、(遠心力に対して流体を移動させる)逆ポンピング、またはオンデマンドの気泡ベースの混合などの種々の流体機能の実行を可能にする。
【0022】
[0021]クレームの写しは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
[0022]本発明の更なる特徴は、以下の詳細な説明の過程で説明されるか、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明をより明確に理解するために、添付の図面を参照して、その実施形態を実施例として詳細に説明する。
【
図1】
図1は、マルチポート空気圧制御マイクロ流体チップコントローラと共に使用するように適合された、本発明の実施形態として提供される遠心マイクロ流体チップの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1のチップの変形例であり、1つのチャネル内に代替の空気圧バルブ構成体を有し、チップの基準軸方向位置の限界を図示する。
【
図3】
図3は、
図1のチップの変形例であって、単一ポートの空気で制御されたマイクロ流体チップコントローラと共に使用するように適合されたものであるか、またはチップ表面に垂直な軸上でのチップの旋回を提供する関節付きブレードホルダを有する空気圧スリップリングである。
【
図4】
図4は、
図1のチップの変形例であって、単一ポートの空気で制御されたマイクロ流体チップコントローラまたは流体で制御された計量および分配システムを備えた空気圧スリップリングと共に使用するように適合されている。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態として提供されるチップまたは変形例の調節済みチャンバの概略図であり、ここで、微生物支持構造体は、調節済みチャンバの充填ラインの下に提供される。
【
図6】
図6は、
図5の実施形態の変形例であって、調節済みチャンバに送られるガスの拡散効率を高めるためにガストラップが設けられている。
【
図7】
図7Aは、本発明を実証するのに使用されるプロトタイプチップを示す写真であり、それぞれ、本発明を実証するのに使用される2つのカートリッジのパターン化されたチップ表面のレイアウトを示す。
図7Bは、本発明を実証するのに使用されるプロトタイプチップを示す写真であり、本発明を実証するのに使用される2つのカートリッジのパターン化されたチップ表面のレイアウトを示す。
図7Cは、本発明を実証するのに使用されるプロトタイプチップを示す写真であり、本発明を実証するのに使用される2つのカートリッジのパターン化されたチップ表面のレイアウトを示す。
図7Dは、本発明を実証するのに使用されるプロトタイプチップを示す写真であり、インキュベーションプロセスの前の充填されたカートリッジを示す。
図7Eは、本発明を実証するのに使用されるプロトタイプチップを示す写真であり、インキュベーションプロセスの後の充填されたカートリッジを示す。
【好ましい実施形態の説明】
【0025】
[0031]本明細書では、所与の濃度、ならびに場合によっては圧力および温度のガスの供給によるチャンバの調節を必要とするプロセスにおいて使用するための特定の価値を有する遠心マイクロ流体チップが記載される。可能性のある汚染の問題またはオフチップ供給の要件を回避し、マイクロ流体システムを単純化するために、ガス供給は、チップの単一のリザーバから提供されるように適合され、このリザーバは、その充填ラインの下に揮発性または他のガス生産性液体容積を有するように適合される。液体容積を局所的に加熱することによって、ガスの直接供給をチップ上に提供することができ、ガスが空気圧スリップリングまたは実質的な温度勾配を横切る他の経路を介して直接供給された場合に生じ得る凝縮または分離の問題を回避する。
【0026】
[0032]
図1は、本発明の一実施形態による遠心マイクロ流体チップ10の第1の実施形態を示す。本実施形態は、出願人の同時係属中の国際公開第2015/132743号の教示に従って提供されるような、チップ10の複数(5個または6個)の独立した(すなわち、任意の組のポートを任意の時点で制御することができる)または選択的に(すなわち、任意の1つを制御することができるが、一度に1つのみ)制御されたポートを有する遠心システムと共に使用するのに特に適している。ポートはそれぞれのチャンバに対して局所的に示されているが、一般に、整列を容易にするために、全てのポートをチップ10の共通縁部に沿って配列することにはほとんど欠点がなく、また、個々の管の手動結合を不要にするために、チップの共通インターフェース設計の一部とすることができる。
【0027】
[0033]チップ10は、細胞培養若しくは組織成長のために、または生きた組織、細胞小器官、微生物若しくは試料の成長若しくは試験のために、調節済みチャンバ(CC)13を有する。CC13は、供給源(SUP)リザーバ12、出口(OUT)リザーバ14/15、およびガス供給源(GS)リザーバ11をむ、それに流体的に結合された多数のリザーバを有する。各リザーバ12、14/15、11は、CC13に結合するためのそれぞれのチャネル(SUP17、OUT18/19、GS16)を有する。各リザーバは、CC13(P3)と同様に、液体装填のためのそれぞれのポート(P2、P4/P5、P1)を有する。アッセイプロトコルまたはマイクロ流体プロセスによって必要とされるように、正または負の圧力を付加するために、同じポートをベントに使用してもよく、または空気圧源で各チャンバに個別にアドレス指定してもよい。GSリザーバ11は、GSリザーバ11が加湿を中断することなく連続的に補充できるように、揮発性液体を供給するための別個のポートP6および空気圧源に結合するためのポートP1を有してもよい。これは、WO2015/132743に教示されているように、オフチップ装填によって実行することができる。好ましくは、ポートP6は、GSリザーバ11からの排気を提供しないように、使用中の揮発性液体でプラグ接続される。
【0028】
[0034]ポートP6、または任意選択的にSUPリザーバ12も、遠心マイクロ流体プラットフォームのための出願人の同時係属中の米国特許第62/760256号明細書”WORLD-TO-CHIP AUTOMATED INTERFACE”に教示されているように、静止した非接触の点滴送達システムによって供給可能である。GSリザーバ11は加圧されたチャンバであるので、P1を通る蒸発損失と同様に、P1のキャリアガスとP7の液体の両方の流量に対する独立した制御にいくらか注意する。特に、これは、液体プラグでP7をブロックし、P7の開口部に実質的な流体抵抗またはバルブを提供することによって達成することができる。SUPリザーバ12に対して、P2は、二重流れの問題を緩和する必要も、加圧を維持する必要もなく使用可能である。
【0029】
[0035]GSリザーバ(11)は、たとえば、細胞のインキュベーションまたは増殖過程を通してCC13の湿度を維持するために、または充填ラインより上の CC13内部のガス組成を制御するために、CC13にガスを供給する。GSリザーバ11は、CC13の充填ライン20の下方または上方のいずれかで、GSチャネル16を介してCC13に接続される。充填ラインより下方にある場合は、ポートP1でより高い圧力を供給して、CC13の液体含有物を通してガスを押し出す(その結果、「気泡バブリング」が生じる)。これの利点は、気泡の表面積が大きく、液体内部のガスの溶解が高くなることである。GSリザーバ11から出力されるガスが、P1からP3への加圧された流れを提供するキャリアガスよりも高い溶解速度を有する場合、ガスのより高い効率の送達を行うことができる。バブリングは混合を促進し、微生物または細胞の沈降または付着を回避することができる。渦を混合することは、幾つかの細胞培養にとって不利である場合があり、これらは、気泡から細胞骨格/支持体を保護し、気泡を細胞から離れるように向ける障壁によって回避可能である。あるいは、示されるように、CC13の液体有物の(充填ライン20において又はそれより下方での)自由表面間の拡散が、液体有物をガスに供給するために依拠されてもよい。
【0030】
[0036]チャネル16は、GSリザーバ11の充填ライン20より上方の任意の場所で、その頂部または側部のいずれかで、GSリザーバ11と合流することができる。原理的には、チャネル15は、充填ライン20の下方でGSリザーバ11と合流して、効率的なガス引き込み(entrainment)に関して同様の利点を達成することができるが、バブリング中のチャネル16の液体閉塞を防止するために、保護手段が必要とされる。なぜなら、この経路における障害物は不便であり、水性液体などのほとんどの液体のバブリングは、これらの障害物を生じさせる可能性があるからである。GSチャネル16は蛇行チャネルであり、チャネル16は液体を導くことを意図していないが、ガス輸送に対して最小抵抗を供給するので、高い流体力学的抵抗を有するか、または実質的にゼロであってもよい。高い流体力学的抵抗が提供される場合、それは、装填中にチャネル16に入る液体のリスクを防止または低減することが可能であり、これは、遠心分離の前に行われる。流体抵抗が低い場合、チャネル16のいかなる一時的な封鎖も、より少ない圧力および時間で除去することができる。従って、GSチャネル16は、GSリザーバ11への開口部付近を除いて、より低い流体抵抗を有してもよい。
【0031】
[0037]GSチャネル16は、当技術分野で周知のサイフォンバルブに類似した蛇行構造を規定するが、サイフォンバルブに関連するほとんどの問題を必ずしも有するとは限らない。チャネル16は、サイフォンバルブの信頼できる作動に不可欠である特定の親水性または流体力学的抵抗を有さない。したがって、厳密な寸法制御および表面機能化は不要である。しかし、蛇行経路は、GSリザーバ11またはCC13よりもチップの回転軸またはその基準軸に近いセグメント16aをむ。平行線であるGSリザーバ11およびCC13に示される充填ライン20を考慮すると、シャフトは、チップ10の頂縁部に対して推定的に平行であるが、
図2を参照して示されかつ説明されるように、チップ10は、充填ラインの形状に影響を及ぼす位置の範囲内に位置される軸を中心に回転するために均等に配備され得る。これは、ポートP1およびチャネル16への開口部の位置とともに、遠心力の下でCC13へと駆動されるGSリザーバ11からの液体からガードする。
【0032】
[0038]SUPチャネル17は、充填ライン20の上方で、SUPリザーバ12の軸方向遠位点からCC13まで延びる。ポートP2は、SUPリザーバ12の軸近位点から延びる。このように、リザーバ12の充填ラインは、リザーバの頂縁部でもよい。SUPリザーバ12の過充填のリスクはない。SUPチャネル17は、好ましくは低い流体力学的抵抗を有するチャネルであり、それに拘わらず、一度プライミングされると、遠心分離下でのその液体有物の急速な分配を回避するために、(CC13に対して)連続的に負圧に供される。
【0033】
[0039]OUTチャネル18, 19は両方とも、CC13から、充填ライン20の下方で、それぞれのOUTリザーバまで延びるように示されている。OUTリザーバ14は、上清(supernatant)のためのものであり、所望の遠心分離特性に関連する充填ラインに関して特定の位置(典型的には、細胞デトリタスおよび粒子が高速遠心分離の間に収集し得る位置より上)を有するが、上清の所望の容積を収集するのには十分に低い。OUTチャネル18は、その充填ライン20でリザーバ14と合流する。OUTリザーバ14は、CC13の充填ラインの軸近位にあるので、それに上清を引き寄せる唯一の方法は、逆ポンピングを用いることであり、上清の慣性を克服するために、CC13に対して十分に負のP4の圧力を加える。上清チャンバが過剰に満たされている場合、遠心分離下にある間に単にP4での圧を解放することによって、過剰な液体が確実にCC13に戻る。そのようなチャネル18は、低流体力学的チャネルであることが好ましい。
【0034】
[0040]OUTチャネル19は、廃棄物リザーバ15の軸近位点に通じるOUTリザーバ15はCC13の軸遠位にあり、チャネル19は低い流体力学的抵抗を有するので、たとえば、チャネル19が(CC13に対して)プライミングされるまでP5における圧力を減少させ、次いで、過剰な液体が抽出された後に圧力を増加させて、CCを空にすることを防止することによって、過剰な液体有物を抽出して、新鮮な緩衝物のための余地を作ることができる。OUTチャネル19内の液体がサイフォンの上方に後退すると、P5での圧力が解放され、液体はCC13に戻る。
【0035】
[0041]また、
図1は、任意選択的にGSリザーバ11に組み込まれる余水吐11bも例示しているが、全ての特徴付けにおいて本発明に必須ではない。余水吐11bは、チャンバの充填レベルの、容易に識別可能なマーカーである。過剰充填を回避するために、余水吐を追加的または代替的にCC13にめることができる。
図3に関して以下に説明するように、関節式遠心ブレードで使用するために設計された実施形態において、関節式遠心ブレードの動作がチャンバの充填レベルに特に敏感であり得るので、余水吐が特に好ましい。
【0036】
[0042]余水吐11bの主な利点は、GSリザーバ11の過剰な充填がチップ10の機能に影響を与えないようにすることである揮発性流体が遠心分離に先立ってGSリザーバ11内に供給され、かつ揮発性流体の高精度計量を提供することが望ましくないか、または好都合でない場合、または更に揮発性流体が蒸発速度に対して十分な精度で制御されない速度で連続的に供給される場合、遠心分離が適用されると同時に/その間に、余水吐11bは、過剰な流体を隣接するリザーバ内に吸引する。したがって、GSチャネル16を閉塞するリスクを有することなく、充填容積の僅かな誤差に対処することができる。従って、余水吐11bの使用は、揮発性液体の容積を増大させ、これは、閉塞のリスクを増大させることなく、又は揮発性液体25の慎重な計量を必要とすることなく使用することができる。
【0037】
[0043]任意に表現されるチップの幾つかの特性がある。各リザーバ/チャンバのサイズ、形状、配向およびレイアウト(相対位置)は、図示されるようである必要はない。一般に、GSリザーバ11の形状は、液体が充填ライン20より下方の容積の20%から100%の間を占める場合に、液体有物の自由表面の表面積の低い変動を提供することが好ましい。これは、GSリザーバ11内の容積が、CC13に引き込まれるガス生成から低下するにつれて、ガス生成および同伴の速度が感知できるほど変化しないことを確実にする。さらに、GSリザーバ11がチップ10のディープエッチング構造であり、他のチャンバよりも大きな表面積を占めることができるように、比較的高い自由表面積が好ましい場合がある。GSリザーバ11は軸近位のCC13を示しているが、これは逆にすることもできるし、軸から等間隔にすることもできる。
【0038】
[0044]CC13は、液体有物の高い自由表面積を提供するために、比較的大きく、また好ましくは深く示されている。しかしながら、GSチャネル16が充填レベルより下方のCC13と合流する場合、CCは、自由表面積制約を回避して、充填ラインより上方の遙かに少ない容積を必要とする。CC13が設計されるプロセスに依存して、それは多くの異なる特徴を有することができる。それは、完全に充填ラインの下に細胞、微生物または組織のトラップ、足場(scaffolds)または支持体を有してもよく、または自由表面での細胞培養を提供してもよい。
【0039】
[0045]チップ動作中、CC13内部の圧力および温度を独立して制御することが望ましい場合がある。温度制御は、当該技術分野で周知の様々なオンチップ及びオフチップ加熱システムによって達成することができる。マイクロ流体デバイスにおける加熱のための多くの技術が、文献[V.ミラレス、A・Huerre、F.Malloggi、M.-C. Jullien, “A Review of Heating and Temperature Control in Microfluidic Systems”:Techniques and Applications,2013,vol.3]に記載されている。オフチップ加熱技術には、ペルチェ素子、抵抗素子、レーザダイオード(アルゴンイオンレーザ、赤外線レーザ)などがある。オンチップ技術には、薄いメタライゼーション層(金、白金、銅、クロム)を使用する集積マイクロヒータ、抵抗素子としてマイクロチャネルに埋め込まれた液体金属、および小型化されたマイクロ波加熱素子がまれる。この要望に従って、金属などのコーティングまたは埋め込み材料をCC13(および任意選択的にリザーバ12,14)内に適用して、加熱されるべき容積を横切る熱の吸収、保持、および分布を補助することができる。この容積は、少なくとも60%が、CC13または充填ラインより下方のCC13、またはそれに加えて、一つ又は複数のSUPリザーバと整列してもよく、好ましくは、GSリザーバ11の任意の部分を除外して、GSリザーバ11およびCC13の独立した熱制御を可能にする。チップ内部から加熱する代わりに、吸収材料および導電材料をチップの裏に塗布してもよく、またはチップの材料と一体化してもよい。後者の場合、材料は、好ましくは、(GSリザーバ11から離れた)チップ上の他の場所にある場合よりも、容積の周りで少なくとも10倍以上吸収するので、チップ10の環状ストリップを横切るレーザ、ダイオード、渦電流または同様の源による熱の付加が、これらの独立に制御された熱ゾーンの1つを選択的に加熱する。最後に、材料は、チップのための意図された装着位置に沿って、チップのための支持体上に提供されてもよい。より高い精度の温度制御を提供するために、材料とチップとの間の間隔に対する幾らかの注意は、たとえば、熱結合流体またはクランプを介して制御されるべきである。
【0040】
[0046]圧力制御は、ガスのスループットと同様に、全てのポートでの圧力を同時に制御し、フリーベントされたチップポートをチップの加圧限界内に提供しないことによって行うことができる。同様に、圧力変動は、ポートで供給される圧力をパルス化することによってCC13に供給することができる。
【0041】
[0047]細胞培養または幾つかの他の生物学的プロセスについては、35-40℃、より好ましくは36-39℃、37-38℃または約37.5℃での加熱が、CC13にとって理想的である。GSリザーバ11を通る空気流のCO2又は湿度の制御は、室温と35-40℃との間で温度を制御することをむのが便利である。本発明の用途の1つは、CC13を通過する空気を加湿して、多くの生物学的試料研究で必要とされるように、ガス交換を必要とする水性液体を有する暖かいチャンバ内での蒸発損失を防止することである。GSリザーバ11内の水を加熱し、キャリアガス流量を制限することによって、充填ライン20の上方でCC13を通過する流れは、蒸発損失を大幅に低減するのに十分な高湿度を有する。
【0042】
[0048]適切な遠心マイクロ流体コントローラによって遠心機に装着されたチップ10は、遠心分離が連続的である間に、様々な機能を実行することができる。たとえば、生物学的試料がCC13に装填され、GSリザーバ11およびSUPリザーバ12が装填されると、遠心分離を開始することができる。遠心分離速度が閾値より上方である間、各リザーバ中の液体は、それぞれの充填ラインにあるか、またはそれより下方にある。要求に応じて、またはスケジュールされたプロトコルに従って、空気圧作動正圧(CC13に対して)をポートP2で供給して、SUPリザーバ12からCC13に一部の流体を移送することができる。CC13に移送された培地の点滴に基づく計量は、所定の間隔でP2において負の圧力の中間にある短い正の圧力パルスを付加することによって達成することができる。あるいは、アッセイ要件に従って、全ての培地を一度に移送することができる。
【0043】
[0049]チップ10は、異なる速度で、異なる時点で遠心分離することができる。たとえば、細胞をCC13の底に沈降させるために、またはその支持体に沈降させるために、または溶解後に別個の異なる構造に分離するために、高い速度を使用してもよく、インキュベーション期間中に低い速度を使用してもよい。CC13からの液体有物は、ポートP5に負圧を加えることによって、サイホンチャンネル19を介して廃棄物15に移送させることができ、またはチャネル18(ポートP4で負圧)を介して上清チャンバ14に移送される。
【0044】
[0050]チップ10は、以下のうちの1つ以上と共にキットの一部として供給されてもよい。GSレザーバ11のための揮発性液体有物25、CC13のための生物学的試料26を有する、または潜在的に有する液体、一つ又は複数の試薬、緩衝液、SUPリザーバ14のための溶液などの流体供給源;チップ10と組み合わされた1つ以上のカートリッジ形成要素であって、チップコントローラに、直接遠心ブレードに、関節付きブレードに、または空気圧スリップリングを備えた遠心機に容易に結合されるカートリッジを形成するもの;カートリッジ、チップ、またはチップ支持体に適用するための材料であって、充填ラインの下方のGSリザーバ11、CC13のうちの1つ、またはこれらのうちの1つの一部に対して熱制御を提供するように寸法決めされた材料。特に、流体を有するチップ10は、
図1にも図示されるマイクロ流体システムである。このチップ10は、ポートP1-P7をチップコントローラまたは空気スリップリングの圧力供給ラインに結合するのを容易にするためのカバー蓋、カートリッジ、または他の構造要素を有することができる。
【0045】
[0051]
図2は、
図1のチップの変形例の概略図であり、チップの回転の軸が予想される3つの好ましい区域、およびその軸の選択から生じる5つの特定の充填ラインを示す。本明細書において、本発明の異なる変形例および実施形態の特徴に関連する同様の参照番号は、同様の特徴を特定し、それらの説明は、相違に留意しない限り、本明細書では繰り返さない。
【0046】
[0052]
図2の変形例は、ポートP7がP2の代わりに空気圧バルブ21を介して移送を制御するために提供されるという点で、D1のものと示されるように、単に異なる。そのようなP2は、(P6と同様に)チップのベントまたは装填経路であるが、SUPリザーバ12からCC13へ液体を計量または選択的に移送するために必要とされない。典型的には、空気圧バルブは、TPEまたは他の弾性材料から構成されるチップに埋め込むことができる。TPEは、熱可塑性プラスチックよりも高いガス透過性を有することができ、特に薄い場合には、その透過性は、典型的には、PDMSよりもはるかに低く、典型的には、生成されたときに満足なガスバリアを提供する。マイクロ流体チャンバ(少なくとも11および13)の内側または背面上のいずれかで、蒸気バリアでコーティングして、これらのチップを本発明で使用できるようにすることが有用であり得る。
図1のチップ10は、非多孔質または低ガス透過性で構成されてもよいが、バルブ21を有するパターン化されたフィルム、
図2の方が柔らかい。チップを形成し、ボンディングしてデバイスを形成する際のTPEの利点は、出願人の米国特許第9238346号明細書に説明されており、埋め込み型TPEバルブの利点は、移送および計量を制御するためのより単純なプロセスをむ。
【0047】
[0053]P7は、バルブ21を作動させるのに適した能動圧源を必要とする。バルブ21は、常閉バルブ、常開バルブ、または開いた状態、閉じた状態、および半永久的に閉じた状態を有するトライステートバルブであってよい。空気圧バルブは、出願人(米国特許第9435490号、PCT/IB2019/051731号、米国特許第9238346号)に教示されているようにすることができる。バルブ21の圧力マニホールドの分離が幾分概略的に示されており、それはチャネル16よりもチャネル17に遙かに近く、従って、チャネル16はその中にバルブを有さず、このマニホールドの加圧によって実質的に影響されないことに留意されたい。
【0048】
[0054]
図2ではチャネル17のみがバルブによって制御されるように示されているが、別の変形例ではチャネル18および19がバルブで調節される。多数のバルブが使用される場合、レイアウトは、当該技術分野において従前通り、並列空気圧制御層を提供することによって単純化することができる。
【0049】
[0055]好ましくは、チップ10の基準軸位置は、チップ10の頂縁部バンド22内部または上方に位置され、このバンド22は、頂縁部から頂縁部に近接したチャンバまで矩形として延びる。典型的には、遠心マイクロ流体チップは、3-20cm(最も一般的には4-18cm、4-8または12-18cm、または約5、10または15cm)の長さ(L)を有し、基準軸位置は、頂縁部から1-5cm以内である。しかしながら、チップが遠心的に装着されたコントローラを有する場合、それは、この軸からチップを変位させる機械類を有してもよく、その結果、チップ10の頂縁部上の高さ2L×幅1.3Lの第1のボックスaの頂縁部バンドの内部にあってもよい。より好ましくは、軸は、バンド22または第2のボックスbの内部にあり、これは、中心に置かれた頂縁部において、高さ1.5L、幅Lである。最も好ましくは、軸は、バンド22または第3のボックスc内にあり、これは、並進の底縁部が元のチップ位置の頂縁部に合致するように、チップ10の並進によって覆われる。ボックスのスケーリングは、見やすくするために垂直方向に圧縮されていることに留意されたい。
【0050】
[0056]ボックスa、b、cは、軸が位置される空間の境界を形成するが、チップ10は、具体的には、軸基準位置への手がかり(cue)を有する。最初の手がかりは、GSリザーバ10のポートP1およびチャネル16への開口部によって見出される。これらの2点は幾何学的垂直二等分線l1を有し、基準位置の最適場所はl1上にある。この最適な場所は、どちらの開口部もブロックしない最大充填容積に対応する。たとえば、延長されたインキュベーション期間が必要であり、GSリザーバ10内の揮発性液体の連続的補充(例えば、P6を介して)が回避される場合には、一般に、最大容積が望まれる。他の状況において、ガス送達の効率が主要な関心事であってもよい。用途によっては、2点の中点を通る線で囲まれた各ボックスa、b、cまたはストリップ22のサブセットが、l1から+/-45°、より好ましくは+/-30°、+/-20°、+/-15°、+/-12°、および+/-10°の角度で優先される。
【0051】
[0057]基準軸の場所が充填ラインに及ぼす影響は、充填ライン20a-fのサンプリングによって示される。l1の屈折は、ボックスのスケーリングの人為結果であり、本明細書に示される各充填ラインは、凹凸面によって引き起こされる補正を有することなく、基準軸からの円の弧によって示されることに留意されたい。充填ライン20aは、最適で好ましい基準軸位置における充填ラインを示すが、この充填ラインは、チップの頂縁部の(ラインl1が屈折する)中心にある。形式的には、軸までの距離を増加させることによって、非常に高い充填容積を達成することができるが、20aは、軸上の好ましい点である。なぜなら、チップが軸に近いほど、遠心力場が高くなり、遠心機のブレード上のモーメントが低くなるからである。充填ライン20aは理想的であるが、充填ライン20b-eの各々は、充填ラインより下方に適度に高い容積を与える代替物を示す。各充填ラインの2つの特徴は、充填ラインに関連付けられた基準軸位置の2つのパラメータに対応し、充填ラインの曲率は、充填ラインの軸までの距離を決定し(例えば、20eは、チップを中心とした頂縁部から2L上方に基準軸位置を有し、一方、20dの基準軸位置は頂縁部にある)、充填ライン上の任意の2点の垂直二等分線は、その軸を通る(したがって、20bの基準軸はチップの右側にあり、20dの基準軸はチップの左側にある)。
【0052】
[0058]充填ライン20b-eの各々は、図面を明確に見ることができるように、それらの最大充填ラインよりも十分に下方に示されている(全てが最大充填ラインで示されている場合、それらのラインを区別することは困難である)。従って、充填ライン20a、c、d、eの各々は、明らかに、GSリザーバ11の容積の60%を超える充填容積を有する同心充填ラインを許容する。充填ライン20bは、右側のボックスaの限界に基準軸位置を有する。この軸位置は、GSリザーバ11のほぼ40%の充填容積を有する充填ラインを許容することができ、幾つかの用途に対して許容可能であるが、2つの点とチップ10の頂縁部との間の角度が与えられると、チップ中心から左(ボックスaの左底)への等しいオフセットが充填ライン20fを生成し、これは、あらゆる点で望ましくない。非常に少量の揮発性液体(10%未満)が得られるので、非常に迅速に補充する必要があり、キャリアガス流と相互作用する比較的小さな自由表面を提供し、その結果、引き込みが制限され、自由表面は、有される液体の容積の変化に伴って劇的に収縮し、自由表面は、生成されたガスを除去するためにキャリアガス流に対して有利に位置決めされない。その結果、このGSリザーバ11の機能的空間最適化は、この基準軸位置に対して不十分である。20fの基準軸位置は、ボックスaの左底角部である。曲線c1は、充填ライン20fの軸位置のような軸位置を大まかに境界画定するボックスa、b、cの上に描かれ、充填ライン20fは、リザーバ11の容積に対して少なくとも40%の充填容積を許容しない。
【0053】
[0059]
図3は、出願人の同時係属中の国際公開第2015/181725号に教示されているような、関節式ブレードプラットフォーム上で動作するように設計されたチップを概略的に示し、その従来技術は
図3に示されている。
図3の変形例は、以下の点で
図1とは異なっている。
A)ポートP1-P5は、チップが25°-35°傾斜したときに液体有物が放出されないように、それぞれのチャンバを中心とする。B)GSリザーバ11は、P1およびチャネル16への入口を有する形状を有し、これは、非常に高い正または負の傾斜を必要とし、それを通るガス流のためのいずれかの開口を妨害する。C)送るチャンバが、その送られるチャンバの軸近位であるという点で、リザーバの構成体は遠心標準的である。D)チャネルは傾斜角選択的分配のためにサイフォンセグメントを有する。
【0054】
[0060]B)に関しては、GSリザーバ11からの液体がP1またはチャネル16への開口部を塞がないことを確実にするために、GSリザーバ11の形状は、これら2つの開口部に対して狭い頂端部を有し、液体に対してより大きな膨らみ(belly)を有する。この構成体は、2つの開口部が互いに接近することを可能にし、それは、開口部の1つが所与の容積の液体によってブロックされる角度変動を独立に低減する。液体プラグの移動距離および(最初は遠心に逆らう)方向はより小さく、P1はチャネル16よりも加圧キャリアガス供給源に近いので、P1への開口部の閉塞の結果はチャネル16の閉塞の結果よりも小さい。なお、P1の開口部を塞ぐことは避けることが好ましい。
【0055】
[0061]2つの開口部を互いに接近させることは、これらの開口部の間に多くのガスを引き込まない短い経路を招く構成体のように見えるかもしれないが、実際には、チャンバ内のガスの循環は、より多数の循環経路をもたらす他の設計とは対照的に、良好な引込みを生じさせることが期待される単純な対流パターンを有する設計によって促進される。
【0056】
[0062]C)に関して、チャネル17, 18, 19の軸近位セグメントは、傾斜角選択的分配に必要とされるそれぞれの設計された量だけ、それらのそれぞれの接続されたチャンバ(12-15)の軸近位縁部よりも軸に近い。GSリザーバ11およびCC13に示された充填ライン20から推測される軸は、例示のためにチップ10の頂縁部に平行であると仮定される(ただし、チップは、様々な軸位置で使用可能である)。(チップ10の右上隅に示されるが、典型的にはチップから外れており、概して基準軸位置(ストリップ22、または
図2のボックスa、b、c)に対して境界が画定されたのと同じ領域内にある)軸25を中心にチップを傾斜させるが、好ましくは、示されるように基準軸位置から離れているか、または基準軸位置に対して直交している。チャネルの軸近位セグメント、ならびにチャンバの形状、位置および充填容積を上昇または低下させることによって、流体移送が起こる傾斜角度を、関節機構に対する制御に適合するように、および丈夫で信頼性のあるプロトコルを提供するように、変化させることができる。チャネルの軸近位セグメントを選択することによって、角度範囲間の角度間隔を提供して、2つ以上のチャンバ間の重複および同時移送を回避することができる。とは言うものの、例えばCC13の過剰充填を避けるために、同時移送が望ましい場合がある。傾斜は、回転軸が傾斜軸25と平行である(かつ空間的に離れている)場合、チップ10の回転速度を変化させることによって提供されてもよい。
【0057】
[0063]
図3に示されるように、チップ10は、傾斜軸25から矢印で示されるように、充填ライン20に垂直に向けられた遠心力を伴って、基準傾斜配向にある。チャネル19をプライミングするのに必要な時間の間、約-30°-35°(角度範囲25a)の傾斜角度は、CC13の有物物の上清レザーバ14への移送を生じさせるのに有効である。チップが移送のための傾斜角にあるとき、容積の約2/3がCC13の開口部またはそれより上方にリザーバ14に存在し、この画分は完全に分配される。同様に、基準配向から約20-25°の傾斜角範囲25bは、CC13の残りの全ての液体有物の廃棄15への移送をもたらす。従って、チャネル18,19は、低い流体力学的抵抗、非毛管、フローチャネルである。
【0058】
[0064]D)に従って、チャネル17は、
図1の変形例に関して、2つの部分を有するように修正される:サイフォン構造17aと大径セグメント17bとを有する。SUPチャネル17内に流体力学的直径の大きな段部を設けることによって、流れを離散化することが可能であり、SUPリザーバ12からCC13への部分的な移送を容易にすることが可能である。サイフォンセグメント17aをプライミングするのに十分な期間、(リザーバ12の瞬間充填容積に依存する)最小角度5-15°だけ傾けることによって、液体が分配される。サイフォン構造17aを通る流量を制限することによって、流れを緩やかにすることができる。範囲25cの最小角度よりも小さい傾斜角度を戻すことによって、移送は停止する。所望の間隔で傾斜を繰り返すことによって、所望のプロトコルに従って、追加のバッファ、試薬または他の供給源をCC13に供給することができる。関連する角度範囲でCC13に過充填ポートを配置することにより、P3を妨害するリスクを有することなく、またはOUTリザーバ14への移送中に漏れを生じるリスクを有することなく、CC13の過充填を防止することができる。また、この変形チャネル17は、
図1の実施形態において、
図2に示されるバルブ21の代わりに、空気圧ポートP2に対するより高い巧妙な処理(finesse)制御の代わりに空気圧制御と共に使用することができることに留意されたい。
【0059】
[0065]従って、使用時には、(例えば、細胞培養培地)をP2を介してSUPリザーバ12、CC13内の生物学的試料、およびGSリザーバ11内の揮発性液体に装填することにより、チップを基準角度で遠心分離し、次いで、遠心分離中に正または負の角度で傾斜させることができる。傾斜角度が角度範囲25cを超えて上昇し、チャネルセグメント17aをプライミングするのに十分な長さに維持されるたびに、主に角度が維持される持続時間に依存する容積が分配される。傾斜角度が範囲25a未満に低下するたびに、最小レベルを超える容積が上清としてOUTリザーバ14に分配される遠心分離は、典型的には、生物学的試料を最小レベル未満の容積まで沈降させる。最後に、CC13からの全ての液体は、カートリッジを範囲25bにおいて、またはそれを超えて傾斜させることによって、サイホンチャネル18を介して廃棄物15に移送することができる。
【0060】
[0066]好ましくは、オフチップである任意の熱制御要素は、インキュベーションまたは他の熱的に制御されたプロセスが流体移送ステップのために停止する必要がないように、チップ傾斜を通してそれぞれの加熱量と合わされたままである。そのようなものとして、熱制御のための任意のオフチップ金属または同様の材料を、チップと共に傾斜するチップホルダまたはカートリッジ上に提供することができる。
【0061】
[0067]
図4は、遠心プラットフォーム、たとえば、P1のみに圧力を供給する空気圧スリップリングを用いて作動するように設計された変形例のチップ10の概略図である。全てのポートP2-5は、単に装填ポートおよびベントとして使用される。
図4のチップ10は、
図1のチップ10と以下の点で異なる。第2のOUTリザーバ14は設けられず、SUPリザーバ12の代わりに、受動的な流体計量および増分流体移送システムが使用される。受動的な計量システムは、出願人の特許開示WO2013/003935に教示されており、流体力学的抵抗チャネル17a’を介して計量チャンバ12bに結合された大容積リザーバ12aを備える。チャネル17a’は、遠心分離速度の実質的な変化によってもほとんど変化しない遅い移送を提供し、供給される流体の特定の粘度、接触角、および密度に対して設計される。この流体は、一定の速度で計量チャンバ12b内に蓄積される。チャンバ12bが閾値レベルまで充填されると、サイフォンチャネル17b’がプライミングされ、チャンバ12b内の流体が一度にCC13内に放出される。チャネル17b’は、無視できる流体抵抗を有してもよく、放出は非常に速いプロセスであるか、または代替的に、液体がゆっくりとCC13に導入されるように、CC13への開口部付近に流体狭窄部を有してもよい。これは、たとえば、チャンバ12bがCC13と共に加熱されない場合、急激な化学的変化または温度変化を回避するのに好ましい場合がある。狭窄部が17b’及びCC13の開口部に設けられる場合、狭窄部は、チャネル17a’よりも実質的に短い送達遅延を有さなければならず、さもなければ、チャンバ12bは機能を提供しない。大容積リザーバ12aから直接CC13に連続的な点滴供給を提供することができる。
【0062】
[0068]
図5は、複数の細胞支持構造体28が提供される、
図1-
図4の実施形態のCC13の概略図である。細胞支持構造体28は、好ましくは、同じチップ10内に形成された微細加工されたピラーであり、当技術分野で周知の方法で細胞付着を促進するために、多孔性であってもよく、機能化されてもよく、またはコーティングされてもよい。
【0063】
[0069]
図6は、CC13の変形例であり、ここで、GSチャネル16がCC13の底部からCC13と合流し、GSリザーバ11からのキャリアガスおよび引込みガスをバブリング方式でCC13に供給する。CC13は、気泡を収集し、バブリングによって生じた渦から細胞支持構造28を遮蔽するため、または気泡をCC13を横切ってより均一に分配するために、ガストラップ29を有してもよい。キャリアガスの送達速度が十分に低い場合、ガストラップ29内に収集されたガスは、トラップがオーバーフローする前に溶解して、液体有物26への高効率ガス送達を提供することができる。
【実施例】
【0064】
[0070]出願人は、細胞培養デバイスに必要な全ての機能性を有する「生体適合性」ポリマーチップを設計し、試験した。チップは機能化またはコーティングを有することなく生体適合性を達成する。ガス交換はGSリザーバによって提供され、細胞培養条件チャンバは、制御された加湿雰囲気(制御されたガス微小環境)を提供された。これは、デバイス製造のための熱可塑性ポリマーの使用を実証するもので、通常はガス不透過性であり、ガス交換条件を作り出す一方で、PDMSおよびTPEへの依存を回避する。本発明は、チップの設計および使用によって実証される。この実証は、出願人のWO2015/132743の能力を利用して、液体およびガスを培養チャンバに導入し、細胞を妨害することなくそれらを灌流/混合する。チップをインキュベータに入れることなく、マイクロ流体チップ上での長期細胞培養を可能にする、信頼性のあるマイクロスケールインキュベーションチャンバが効果的に生成される。8ポートマイクロ流体チップコントローラを用いて、チップ上での細胞培養を実証した。このようなコントローラは、他の細胞インキュベーションプラットフォームでは現在利用できない他のユニークな機能のホストを提供するように適合させることができ、遠心力と空気圧を併用して培養中に細胞にかかるせん断応力を正確に制御することがまれる。最後に、血液および他の臨床的に関連する試料からの細胞単離などの試料調製をむ、完全なアッセイ統合のための更なるチャンバおよびチャネルを用いて培養チップを容易に開発することができる。
【0065】
[0071]提案したプラットフォームの応用は、細胞から解放されたインターフェロンγ(IFNγ)が潜在結核感染(LTBI)のような感染症診断応用の文脈の中で特性化できるように、末梢血単核細胞(PBMC)の自動培養とコンディショニング(活性化/刺激)に対して実証されている。この目的のために、本発明者らは、以下の能力を有する遠心マイクロ流体チップコントローラによって操作されるマイクロ流体チップを設計し、作製し、試験した:(1)2つの別個のチャンバでPBMCを単離培養する。(3)PBMCを刺激し、マイトジェンとともに6時間インキュベートする。(3)その後のアッセイへの接続のために、馴化培地(conditioned media)を分離する。
【0066】
[0072]
図7に示されるマイクロ流体カートリッジは、5つの要素のパネルである。
図7A、
図7B、
図7Cは、それぞれ、作製および試験されたチップの2つの層のレイアウトである。複合レイアウト図(7A)に示すように、チップの頂面(7B)と底面(7C)の両方がパターン化され、パターンはスルーホール(ビア)によって相互接続された。チップを操作して2つの細胞培養チャンバ(CC)に持続灌流の二酸化炭素を供給し、CO
2/加湿チャンバ(GSリザーバ)からの6時間の培養および刺激中の(水和による)蒸発を防いだ。ペルチェ加熱素子は、チップ支持体上に集積され、細胞培養およびCO
2加湿器チャンバの温度を37℃に維持するために使用された。遠心分離機を通して、チップコントローラから5%CO
2キャリアガス流をチップに供給した。CO
2供給ラインをチップコントローラの空気圧ポンプに接続し、CO
2を加熱加湿器チャンバ(水を有するGSリザーバ)に連続的にポンプで送り、チップ内の適切な培養チャンバへの灌流を可能にした。また、カートリッジは、それぞれのCCに結合された別々の培養培地チャンバ(SUPリザーバ)、ならびに上清および廃棄チャンバを備える。
【0067】
[0073]マイクロ流体カートリッジをCNC微細加工を用いてCOC熱可塑性ポリマ中に作製した。特定の用途の容積要件に依存して、チップは、熱エンボス加工または射出成形を用いて生体適合性熱可塑性ポリマから作製される可能性が高く、細胞トラップなどの培養チャンバ内の更なる構造のエッチングを可能にすることに出願人は留意する。チャンバおよびチャネルをチップの両面にエッチングし、(接着剤または溶媒接合を考慮したが)平坦なCOC基板を用いて熱ボンディングによって密封してカートリッジを形成した。
【0068】
[0074]写真7Bは、2つの細胞培養CCを示すが、各CCは、ポートとCCの間に蛇行経路を有するそれぞれのポートを有し、各CCは、CCおよびそれらのポートの上に位置された共通の加湿チャンバ(GSリザーバ)への(狭窄またはバルブを有さない)チャネルを有する。これらのチャネルの各々は、CCまたはGSリザーバのいずれよりもチップの基準軸位置の近くを通過する。加湿器チャンバは、単一のポートを有し、これは、チャンバに水を装填するために、次いでキャリアガス供給ポートとして使用される。写真7Cは、それぞれのCCに対するそれぞれの上清(OUTリザーバ)および培地培養(SUPリザーバ)を示す。
【0069】
[0075]カートリッジをチップコントローラに装着し、以下のように操作した。まず、細胞培養CCをそれぞれの培地に懸濁したPBMCで満たし、1つの培養培地チャンバ(SUPリザーバ)を分裂促進物質(mitogen)を添加した培地(PHA、50mM)で満たし、もう1つを細胞培養培地のみで満たす。加湿器チャンバ(GSリザーバ)に水を満たし、カートリッジを細胞培養および刺激のためにチップコントローラ上に置いた。最初にプラットフォームを高回転速度(500-700RPM)で遠心分離し、全ての細胞をCCの底に沈降させることによって試料から細胞を単離した。最初の遠心分離に続いて、上清を廃棄物に除去し、培地を制御用の新鮮な培地および刺激用のマイトジェンをむ培地と交換する。刺激全体を通して、(~300RPM)速度での遠心分離および37℃での加熱を、連続的な5%CO2灌流下で行う。これを6時間続けた。刺激後、細胞を再び高頻度で遠心分離し、刺激された細胞解放および制御を有する上清を、その後の分析のために、それらのそれぞれの上清チャンバに圧力を加えることによって移動させる。
【0070】
[0076]上清をELISAキットを用いて分析し、解放されたIFNγの濃度を測定し、その結果を標準プレート培養を用いて得た結果と比較した。細胞培地のみを用いた6時間培養は、マイクロ流体カートリッジについて45pg/mlの平均IFNγ濃度を生じ、これは、標準プレートを用いて得た67pg/mlより僅かに低い。この差は、6時間の実験中に一定回転により細胞機能が抑制されたためと考えられた。それにもかかわらず、得られた結果は、抽出された上清中のIFNγを測定するための分析センサの潜在的な下流統合を可能にする自動化細胞培養および刺激アッセイの成功した実施を示す。細胞は、脱水やCO2潅流の欠如に影響されなかった。
【0071】
[0077]構造に固有の他の利点は、当業者には明らかである。実施形態は、本明細書に例示的に記載されており、特許請求される本発明の範囲を限定することを意味するものではない。前述の実施形態の変形例は、当業者には明らかであり、本発明者は、以下の請求項に包されることを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心マイクロ流体チップであって、
各々が0.1μL~1mLの容積、および基準軸位置に関して規定された公称充填ラインを有する複数のマイクロ流体チャンバと、
各チャンバを相互接続する複数のマイクロ流体チャネルと、
各ポートが一つ又は複数のチャンバと流体連通する複数のポートと、
を備え、
前記チャンバの1つは、チャンバ1、2、3、および少なくとも1つのポートにチャネルを介して接続された調節済みチャンバであり、
チャンバ1は、その充填ラインまたはそれより上のポートからの第1の開口部と、第1のチャネルへの第2の開口部とを有し、前記第1のチャネルは、その充填ラインより下の前記チャンバ1を前記調節済みチャンバに接続し、
チャンバ2は、その充填ラインまたはそれより上のポートからの第1の開口部と、その充填ラインまたはそれより上の第2のチャネルへの第2の開口部と、充填ラインの下のいずれの相互接続チャネルまたはポートへの開口部も有さず、前記第2のチャネルは、チャンバ2のいずれの部分よりも基準軸に近接して延びる経路セグメントを含み、その充填ラインより上の調節済みチャンバとその充填ラインより上の前記チャンバ2とを接続し、前記第2のチャネルは、バルブを有さず、毛細管流は収縮を測定せず、
チャンバ3は、その充填ラインの上方に、ポートへの第1の開口部と、第3のチャネルへの第2の開口部とを有し、前記第3のチャネルは、前記チャンバ3を、前記調節済みチャンバの充填ラインの下方の前記調節済みチャンバに接続する、チップ。
【請求項2】
遠心マイクロ流体チップであって、
各々が0.1μL~1mLの体積を有する複数のマイクロ流体チャンバと、
各チャンバを相互接続する複数のマイクロ流体チャネルと、
各ポートが一つ又は複数のチャンバと流体連通する複数のポートと、
を備え、
前記チャンバの1つは調節済みチャンバであり、前記調節済みチャンバは、チャンネルを介してチャンバ1およびチャンバ2に接続され、少なくとも1つのポートに直接接続されており、
チャンバ1は、チャンバ1の充填ラインの上方のポートからの第1の開口部と、第1のチャネルへの第2の開口部とを有し、前記第1のチャネルは、前記チャンバ1を、その充填ラインよりもチャンバ1の軸遠位点に近接して、前記調節済みチャンバの充填ラインの上方の前記調節済みチャンバに接続し、
チャンバ2は、前記チャンバ2のための充填ラインを画定する余水吐開口部、充填ラインの上方のポートからの第1の開口部、充填ラインの上方の第2のチャネルへの第2の開口部、および充填レベルより下の任意のチャネルへの開口部も有さず、
前記第2のチャネルは、経路セグメントを含み、前記経路セグメントは、前記調節済みチャンバまたはチャンバ2のいずれかよりも前記チップの基準軸位置に近接して延び、かつ前記調節済みチャンバに接続する、チップ。
【請求項3】
前記チップの前記基準軸位置は、前記チャンバの上方の区域内部にあり、前記チップの頂縁部から3/2L未満であり、前記チップの中心線から0.5L未満である(Lはチップの長さ)、
または、
前記チャンバの上方の区域内部にあり、前記チップの頂縁部からL未満であり、前記チップの中心線から0.5W未満である(Lはチップの長さ、Wはチップの幅)、または、
前記チャンバ2の2つの開口部の中点を通る2本の線の間にあり、前記2本の線は、前記2つの開口部の垂直二等分線によって二等分され、それぞれ、前記垂直二等分線に対して30°および-30°の角度をなす、または、
P1および前記第2のチャネルへの開口部から分離され、これらの分離は、2の係数以下であり、前記チャンバ2の前記充填ラインは、前記充填ラインより下のチャンバ2の容積の少なくとも33%の容積を含む、
請求項1又は2に記載のチップ。
【請求項4】
前記チャンバ2内の前記充填ラインの表面積は、チャンバ1の表面積よりも少なくとも2倍、より好ましくは4倍、より好ましくは10倍大きい、
または、
前記調節済みチャンバおよびチャンバ2のうちの少なくとも1つは、前記チップの他のどのチャンバまたはチャネルよりも大きいエッチング深さを有する、または、
前記チャンバ2の形状は、その液体含有物の自由表面積の変化が10%未満となり、前記充填ラインからの前記液体含有物の容積が10%減少する、
請求項
1~3のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項5】
前記調節済みチャンバは、異なる遠心分留物を抽出するために前記充填ラインを越えて異なる軸方向距離にある出口チャネルへの複数の開口部を備え、
微生物または細胞の支持体、または、前記第2のチャネルおよび基準軸位置への前記開口部と同一線上にあるガストラップであって、ガスが液体中に拡散する間にガス気泡を保持するために、前記基準軸位置と前記開口部との間に置かれる、ガストラップを備える、
請求項
1~4のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項6】
熱吸収および分配材料が、前記調節済みチャンバおよび前記チャンバ2のうちの1つに隣接して提供され、
2つの別々にアドレス指定可能な帯域の材料が、前記調節済みチャンバおよびチャンバ2を独立して加熱するために提供される、請求項
1~5のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項7】
前記チップは被覆され、遠心機の加圧キャリアガス供給源に結合された前記チップの少なくとも1つの空気でアドレス可能なポートと共に前記遠心機に装着するように適合されたマイクロ流体カートリッジを形成する、請求項
1~6のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項8】
前記第2のチャネル以外の3つ以上のチャネルは、それぞれの軸近位セグメントを有し、前記調節済みチャンバを、前記チップの前記面に垂直な傾斜軸を中心とする前記チップの傾斜角度が、前記調節済みチャンバとこれらのチャンバのうちの1つとの間の流体移動を可能にするように選択された形状、位置、および充填ラインを有するそれぞれのチャンバに接続
し、
オプションとして、45°未満の傾斜角度の範囲は、前記調節済みチャンバと前記3つのそれぞれのチャンバとの間を連続的に移動するのに十分である、請求項
1~7のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項9】
前記第1のチャネルは、流体力学的収縮および計量チャンバを備える、請求項
1~8のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項10】
請求項
1~9のいずれか一項に記載のチップを備えたキットであって、
前記チップ上に搭載するための液体と、
遠心マイクロ流体チップコントローラのうちの1つに結合するように適合されたチップ形態カートリッジと組み合わされた一つ又は複数のカートリッジ形成要素と、
空気圧スリップリングを備えた遠心ブレード、または、空気圧スリップリングを備えた関節式遠心ブレードと、
カートリッジ、前記チップ、またはチップ支持体に適用するための材料であって、前記調節済みチャンバを熱制御するための組成および寸法を有する材料と、
チャンバ2と、
または、それらの充填ラインの下にあるこれらのうちの一つの一部と、
を伴う、キット。
【請求項11】
前記キットは、組み立てられ、前記遠心マイクロ流体チップコントローラ、空気圧スリップリング付き遠心ブレード、または、空気圧スリップリングを備えた関節式遠心ブレードに装着される、請求項
10に記載のキット。
【請求項12】
前記チャンバの1つにその充填ラインまで液体が含まれて
おり、
前記チャンバの1つに含有される前記液体は、チャンバ2の揮発性液体含有物、前記調節済みチャンバ内に生物学的サンプルを含有する液体、またはチャンバ1内の一つ又は複数の試薬、緩衝液、または溶液である、請求項
1~9のいずれか一項に記載のチップを備えた遠心マイクロ流体システム。
【国際調査報告】