(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】ガラスセラミックおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 10/02 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
C03C10/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576452
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020039720
(87)【国際公開番号】W WO2020264229
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,アレクサンドラ ライ チン カオ アンドリューズ
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB01
4G062CC04
4G062CC10
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB04
4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062ED02
4G062ED03
4G062ED04
4G062EE01
4G062EF01
4G062EG01
4G062FA01
4G062FB01
4G062FB02
4G062FC02
4G062FC03
4G062FD01
4G062FE01
4G062FE02
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062FL02
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ04
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM12
4G062NN02
4G062NN05
4G062NN33
4G062QQ20
(57)【要約】
xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含むガラスセラミック。このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まないことがあり、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在しない。さらに、そのガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有することがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックにおいて、
xが1以下である、(Mg
xZn
1-x)Al
2O
4を含む第1の結晶相、および
正方晶ZrO
2を含む第2の結晶相、
を含み、
前記ガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、
前記ガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有する、
ガラスセラミック。
【請求項2】
前記ガラスセラミックが、
約90超のCIELAB L
*値、
約-0.2から約0.2のCIELAB a
*値、および
約-0.1から約0.8のCIELAB b
*値、
の内の少なくとも1つを有し、
L
*、a
*、およびb
*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される、請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項3】
約0.02%(質量)未満のFe
2O
3、および
約0.5未満の全鉄含有量(Fe
2++Fe
3+)に対するFe
2+含有量の比、
の少なくとも一方をさらに含む、請求項1または2記載のガラスセラミック。
【請求項4】
約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO
2、および
約2%(酸化物のモル)超のNa
2O、
の少なくとも一方をさらに含む、請求項1から3いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項5】
前記ガラスセラミックが、
少なくとも約10%(質量)の結晶化度、および
約20nm未満の前記第1の結晶相の微結晶サイズ、
の少なくとも一方をさらに有する、請求項1から4いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項6】
前記ガラスセラミックが、
バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度、および
共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率、
の少なくとも一方をさらに有する、請求項1から5いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項7】
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、
350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および
400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値、
の内の少なくとも1つをさらに有する、請求項1から6いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項8】
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、
350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、
400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、
450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および
500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、
の内の少なくとも1つをさらに有する、請求項1から7いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項9】
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に関する約0.5吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、
350nmの波長を有する光に関する約0.15吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、および
500nmから800nmの波長を有する光に関する約0.1吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、
の内の少なくとも1つをさらに有する、請求項1から8いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項10】
前記ガラスセラミックが、
約35%から約60%のSiO
2、
約13%から約30%のAl
2O
3、
約0%から約20%のZnO、
約0.1モル%から約10%のZrO
2、および
約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)、
を含むガラスセラミック前駆体組成物から誘導される、請求項1から9いずれか1項記載のガラスセラミック。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2019年6月27日に出願された米国仮特許出願第62/867529号の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、電子機器用のカバーガラスまたは筐体として使用するのに適したガラスセラミックに関する。より詳しくは、本開示は、可視光に対して透明であり、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まないことがあるガラスセラミックに関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスセラミックは、多くの消費者向け電気製品の様々なディスプレイおよび表示装置によく見られる。例えば、携帯電話、音楽プレーヤー、電子書籍リーダー、ノートパッド、タブレット、ラップトップコンピュータ、現金自動預払機、および他の類似の装置を含む多くのタッチスクリーン製品に、化学強化されたガラスセラミックが好まれている。電子機器のディスプレイおよび筐体を形成するために使用されるこの材料は、典型的に、電子機器の最終用途に関連する機械的要件を満たすように選択される。例えば、電子機器のディスプレイ用のカバーガラス材料として使用するのに選択されるには、ガラスセラミックは、十分な硬度、耐引掻性、および透明性を有するべきである。ガラスセラミックがイオン交換過程を使用して強化される能力も望ましい。それに加え、環境と費用の観点から、ガラスセラミックが、ヒ素、スズ、アンチモン、および/またはセシウムなどの材料を含まないことが、多くの場合、望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、透明であり、電子機器のディスプレイまたは筐体として使用するのに適した機械的性質を有し、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まないガラスセラミックが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様によれば、ガラスセラミックは、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含む。このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、そのガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有する。
【0006】
本開示の態様によれば、ガラスセラミックは、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含む。このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、そのガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有する。このガラスセラミックは、約35%から約60%のSiO2、約13%から約30%のAl2O3、約0%から約20%のZnO、約0%から約10%のZrO2、および約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)を含むガラスセラミック前駆体組成物から誘導される。
【0007】
本開示の態様によれば、ガラスセラミックを製造する方法は、約35%から約60%のSiO2、約13%から約30%のAl2O3、約0%から約20%のZnO、約0%から約10%のZrO2、および約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)を含む組成物からガラスセラミック前駆体を形成する工程を有してなる。このガラスセラミック前駆体は加熱されて、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含むガラスセラミック物品を形成する。このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在しない。このガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の透過率により特徴付けられる。
【0008】
態様(1)によれば、ガラスセラミックが提供される。このガラスセラミックは、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含む。このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在しない。このガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有する。
【0009】
態様(2)によれば、前記ガラスセラミックが、約90超のCIELAB L*値、約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および約-0.1から約0.8のCIELAB b*値の内の少なくとも1つを有し、ここで、L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される、態様(1)のガラスセラミックが提供される。
【0010】
態様(3)によれば、約35%から約60%(酸化物のモル)のSiO2をさらに含む、態様(1)または(2)のガラスセラミックが提供される。
【0011】
態様(4)によれば、約0.02%(質量)未満のFe2O3、および約0.5未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比の少なくとも一方をさらに含む、態様(1)から(3)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0012】
態様(5)によれば、約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および約2%(酸化物のモル)超のNa2Oの少なくとも一方をさらに含む、態様(1)から(4)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0013】
態様(6)によれば、前記ガラスセラミックがBaOを実質的に含まず、BaOは0.01%(酸化物のモル)未満である、態様(1)から(5)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0014】
態様(7)によれば、前記ガラスセラミックが、少なくとも約10%(質量)の結晶化度をさらに有する、態様(1)から(6)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0015】
態様(8)によれば、前記第1の結晶相が、約20nm未満の微結晶サイズによりさらに特徴付けられる、態様(1)から(7)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0016】
態様(9)によれば、前記ガラスセラミックが、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する、態様(1)から(8)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0017】
態様(10)によれば、前記ガラスセラミックが、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する、態様(1)から(9)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0018】
態様(11)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(1)から(10)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0019】
態様(12)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(1)から(11)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0020】
態様(13)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に関する約0.5吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、350nmの波長を有する光に関する約0.15吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、および500nmから800nmの波長を有する光に関する約0.1吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(1)から(12)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0021】
態様(14)によれば、ガラスセラミックが提供される。そのガラスセラミックは、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含む。このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在しない。そのガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有し、さらに、このガラスセラミックは、約35%から約60%のSiO2、約13%から約30%のAl2O3、約0%から約20%のZnO、約0.1モル%から約10%のZrO2、および約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)を含むガラスセラミック前駆体組成物から誘導される。
【0022】
態様(15)によれば、前記ガラスセラミックが、約90超のCIELAB L*値、約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および約-0.1から約0.8のCIELAB b*値の内の少なくとも1つをさらに有し、ここで、L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される、態様(14)のガラスセラミックが提供される。
【0023】
態様(16)によれば、約0.02%(質量)未満のFe2O3、および約0.5未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比の少なくとも一方をさらに含む、態様(14)または(15)のガラスセラミックが提供される。
【0024】
態様(17)によれば、約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および約2%(酸化物のモル)超のNa2Oの少なくとも一方をさらに含む、態様(14)から(16)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0025】
態様(18)によれば、前記ガラスセラミックがBaOを実質的に含まず、BaOは0.01%(酸化物のモル)未満である、態様(14)から(17)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0026】
態様(19)によれば、xがゼロより大きい、態様(14)から(18)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0027】
態様(20)によれば、前記ガラスセラミックが、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する、態様(14)から(19)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0028】
態様(21)によれば、前記ガラスセラミックが、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する、態様(14)から(20)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0029】
態様(22)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(14)から(21)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0030】
態様(23)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(14)から(22)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0031】
態様(24)によれば、ガラスセラミックを製造する方法が提供される。この方法は、約35%から約60%のSiO2、約13%から約30%のAl2O3、約0%から約20%のZnO、約0.1モル%から約10%のZrO2、および約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)を含む組成物からガラスセラミック前駆体を形成する工程、およびこのガラスセラミック前駆体を加熱して、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含むガラスセラミック物品を形成する工程を有してなる。このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、よって、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、このガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の透過率により特徴付けられる。
【0032】
態様(25)によれば、SiO2の原材料源が、0.002%(質量)未満のFe2O3を含む、態様(24)の方法が提供される。
【0033】
態様(26)によれば、前記ガラスセラミック前駆体を加熱する工程が、少なくとも約30分の期間に亘り少なくとも約750℃の温度で加熱する工程を含む、態様(24)または(25)の方法が提供される。
【0034】
態様(27)によれば、前記ガラスセラミックが、約0.02%(質量)未満のFe2O3、および約0.2未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比の少なくとも一方をさらに含む、態様(24)から(26)のいずれか1つの方法が提供される。
【0035】
態様(28)によれば、前記ガラスセラミック前駆体組成物が、約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および約2%(酸化物のモル)超のNa2Oの少なくとも一方をさらに含む、態様(24)から(27)のいずれか1つの方法が提供される。
【0036】
態様(29)によれば、ガラスセラミックが提供される。そのガラスセラミックは、ケイ酸塩ガラス相、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含む。このガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有する。このガラスセラミックは、約90超のCIELAB L*値、約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および約-0.1から約0.8のCIELAB b*値の内の少なくとも1つを有し、ここで、L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される。
【0037】
態様(30)によれば、前記ガラスセラミックが、少なくとも約10%(質量)の結晶化度をさらに有する、態様(29)のガラスセラミックが提供される。
【0038】
態様(31)によれば、前記第1の結晶相が、約20nm未満の微結晶サイズによりさらに特徴付けられる、態様(29)または(30)のガラスセラミックが提供される。
【0039】
態様(32)によれば、前記ガラスセラミックが、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する、態様(29)から(31)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0040】
態様(33)によれば、前記ガラスセラミックが、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する、態様(29)から(32)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0041】
態様(34)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(29)から(33)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0042】
態様(35)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(29)から(34)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0043】
態様(36)によれば、前記ガラスセラミックが、300nmの波長を有する光に関する約0.5吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、350nmの波長を有する光に関する約0.15吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、および500nmから800nmの波長を有する光に関する約0.1吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度の内の少なくとも1つをさらに有する、態様(29)から(35)のいずれか1つのガラスセラミックが提供される。
【0044】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載されたような態様を実施することによって認識されるであろう。
【0045】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、説明に過ぎず、請求項の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示しており、説明と共に、様々な実施の形態の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本開示のこれらと他の特徴、態様、および利点は、添付図面を参照して、本開示の以下の詳細な説明が読まれたときに、よりよく理解される。
【
図1】本開示の態様による、ここに開示された物品のいずれかを組み込んだ例示の電子機器の平面図
【
図2】本開示の態様による例示のガラスセラミックおよび比較のガラスセラミックに関する、波長の関数としての軸方向透過率のプロット
【
図3】本開示の態様による例示のガラスセラミックおよび比較のガラスセラミックに関する、波長の関数としての吸光度のプロット
【
図4】本開示の態様による例示のガラスセラミックおよび比較のガラスセラミックに関する、波長の関数としてのヘイズのプロット
【
図5】本開示の態様による例示のガラスセラミック前駆体とガラスセラミックおよび比較のガラスセラミック前駆体とガラスセラミックに関する、CIELAB色空間の色度a
*およびb
*のプロット
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の詳細な説明において、限定ではなく説明の目的のために、具体的詳細を開示する例示の実施の形態が、本開示の様々な原理の完全な理解を与えるために述べられている。しかしながら、本開示の恩恵を受けた当業者には、本開示は、ここに開示された具体的詳細から逸脱する他の実施の形態において実施されることがあることが明白であろう。さらに、本開示の様々な原理の説明を分かりにくくしないように、周知のデバイス、方法および材料の説明が省かれることがある。最後に、適用できる場合には、同様の参照番号が同様の要素を指す。
【0048】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程を特定の順序で行うことを必要とすると解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に挙げていない場合、またはそれらの工程が特定の順序に限定されるべきことが、請求項または説明において他に具体的に述べられていない場合、順序がいかようにも暗示されることは決して意図されていない。このことは、工程の配列または操作の流れ;文法構成または句読法に由来する明白な意味;明細書に記載された実施の形態の数またはタイプに関する論理事項を含む、解釈に関するどの可能性のある非表現基準にも適用される。
【0049】
ここに用いられているように、「および/または」という用語は、2つ以上の項目のリストに使用される場合、列挙された項目のいずれか1つをそれ自体で使用することができる、または列挙された項目の内の2つ以上のどの組合せを利用しても差し支えないことを意味する。例えば、組成物が、成分A、B、および/またはCを含有すると記載されている場合、その組成物は、Aのみを、Bのみを、Cのみを、AとBを組合せで、AとCを組合せで、BとCを組合せで、またはAとBとCを組合せで、含有し得る。
【0050】
本開示の変更が、当業者と、本開示を行うまたは使用する者に想起されるであろう。したがって、図面に示され、先に記載された実施の形態は、説明目的のためだけであり、本開示の範囲を限定する意図はなく、本開示の範囲は、均等論を含む特許法の原則にしたがって解釈されるように、以下の特許請求の範囲によって定義されることが理解されよう。
【0051】
本開示の目的に関して、「バルク」、「バルク組成」および/または「全体の組成」という用語は、物品全体の全体組成を含むことが意図され、これは、結晶相および/またはセラミック相の形成によりバルク組成と異なることがある「局所組成」または「局部組成」とは区別されることがある。
【0052】
「から形成される」という用語は、を含む、から実質的になる、またはからなるの1つ以上を意味し得る。例えば、特定の材料から形成された成分は、その特定の材料を含み得る、その特定の材料から実質的になり得る、またはその特定の材料からなり得る。
【0053】
ここに用いられているように、「物品」、「ガラス物品」、「セラミック物品」、「ガラスセラミック」、「ガラス要素」、「ガラスセラミック物品」という用語は、ガラスおよび/またはガラスセラミック材料から全体がまたは部分的に製造された任意の物品を含むように、交換可能に、かつ最も広い意味で、使用されることがある。
【0054】
ここに用いられているように、「ガラス状態」は、結晶化せずに、剛性状態に冷却された溶融の生成物である、本開示の物品内の無機非晶相材料を称する。ここに用いられているように、「ガラスセラミック状態」は、ガラス状態およびここに記載されたような「結晶相」および/または「結晶性沈殿」の両方を含む、本開示の物品内の無機材料を称する。
【0055】
ここに用いられているように、「透過」、「透過率」、「光透過率」および「全光線透過率」は、本開示において交換可能に使用され、吸収、散乱および反射を考慮した、外部透過または透過率を称する。フレネル反射は、ここに報告された透過および透過率値から差し引かれない。それに加え、特定の波長範囲に亘り言及されたどの全光線透過率も、具体的な波長範囲に亘り測定された全光線透過率値の平均として与えられる。
【0056】
基板の弾性率(ヤング率とも称される)は、ギガパスカル(GPa)の単位で与えられる。基板の弾性率は、基板のバルク試料に対する共鳴超音波スペクトロスコピーによって決定される。
【0057】
特に明記のない限り、全ての組成は、バッチ配合されたままのモルパーセント(モル%)で表される。当業者に理解されるように、様々な溶融成分(例えば、フッ素、アルカリ金属、ホウ素など)は、成分の溶融中に、異なるレベルの蒸発(例えば、蒸気圧、溶融時間および/または溶融温度の関数として)に曝されるであろう。それゆえ、そのような成分に関する「約」という用語は、ここに与えられたバッチ配合されたままの組成と比べて、最終物品を測定したときに、約0.2モル%以内の値を包含することが意図されている。先のことを念頭に置いて、最終物品とバッチ配合されたままの組成との間の実質的な組成等量が予測される。
【0058】
ここに用いられているように、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、および他の数量と特徴が、正確ではなく、正確である必要はないが、必要に応じて、許容差、変換係数、丸め、測定誤差など、並びに当業者に公知の他の要因を反映して、近似であるおよび/またはそれより大きいか小さいことがあることを意味する。値または範囲の端点を記載する上で「約」という用語が使用される場合、本開示は、言及されているその特定値または端点を含むと理解されるべきである。明細書において数値または範囲の端点に「約」が付いていようとなかろうと、その数値または範囲の端点は、「約」により修飾されたものと、「約」により修飾されていないものの2つの実施の形態を含むことが意図されている。範囲の各々の端点は、他方の端点に関してと、他方の端点とは関係なくの両方において有意であることがさらに理解されよう。
【0059】
ここに用いられているように、「実質的に含まない」という言語は、組成、バッチ、溶融物、または物品の成分を記載するために使用される場合、その組成、バッチ、溶融物、または物品中に能動的に添加またはバッチ配合されていない成分であるが、汚染物質として、および/または任意の測定または分析技術に起因する不確実性の固有の程度により、約0.01%(酸化物のモル)未満の少量で存在するかもしれない成分を称する。
【0060】
本開示の態様は、ガーナイト-スピネルまたはガーナイト結晶相および正方晶ZrO2結晶相を含み、透明であり、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まないガラスセラミックに関する。ここに用いられているように、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まないという句は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在しないヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを称する。ガーナイトおよびガーナイト-スピネルガラスセラミックは、大抵、これらの材料を、ディスプレイ用のカバーガラスとして、または電子機器の筐体材料として使用するのに適したものとする機械的性質(例えば、硬度および弾性率)を示す。一般に、電子機器のディスプレイ用のカバーガラスとして使用される材料は、ディスプレイの外観および性能への障害を最小にするために、高度の透明性および低レベルの色を示すことが望ましい。従来のスピネル-ガーナイトガラスセラミックは、多くの場合、ガラスセラミックの透明性を高め、色を低下させるために、ヒ素、スズ、アンチモン、および/またはセシウムなどの脱色剤を使用する。ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムは、典型的に、ガラスセラミックを形成する上で、清澄剤としても使用される。しかしながら、ある用途において、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの使用を避けることが望ましいであろう。本開示の態様は、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含み、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを使用せずに、透明であり、色が薄い、ガラスセラミックを提供する。ここに用いられているように、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの記述用語は、結晶相を記載するために使用される場合、議論目的のためだけに使用され、記載された結晶相の形成に関してどの特定の順序も暗示しない。それに加え、本開示のガラスセラミックは、イオン交換可能でもあり得、これにより、ガラスセラミックの最終用途の要件に応じて、必要なときに、ガラスセラミックを化学的に強化することができる。
【0061】
図1を参照すると、ここに開示されたガラスセラミックは、その非限定例に、消費者向け電子機器(携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム、腕時計などのウェアラブルデバイス等を含む)、建築デバイス物品、輸送デバイス物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品デバイス物品、またはある程度の透明性、耐引掻性、耐摩耗性、またはその組合せの恩恵を受ける任意のデバイス物品がある、ディスプレイを有するデバイス物品(または表示装置物品)などのデバイス物品に組み込まれることがある。ここに開示されたガラスセラミックのいずれかを組み込んだ例示のデバイス物品が、
図1に示されている。詳しくは、
図1は、前面104、背面106、および側面108を有する筐体102を備えた消費者向け電子機器100を示す。この機器100は、筐体102の少なくとも部分的に内部にありまたは完全に中にあり、少なくとも制御装置、メモリ、および筐体102の前面104にあるまたはそれに隣接するディスプレイ110を含む電気部品(図示せず)を備える。機器100は、ディスプレイ110と少なくとも部分的に重なるように、筐体102の前面104にあるまたはその上にあるカバー基板112を備え得る。1つの態様によれば、カバー基板112は、ここに開示されたガラスセラミックのいずれかを含むことがある。いくつかの態様において、筐体102および/またはカバー基板112の少なくとも一部は、本開示の態様によるガラスセラミックを含む。
【0062】
本開示のガラスセラミックは、第1の結晶相、第2の結晶相、および残留ガラス相を含む。第1の結晶相は、質量でガラスセラミックの大部分を占める結晶相としてここに定義される、主結晶相であることがある。したがって、第2の結晶相は、第1の結晶相の質量パーセントより小さい、ガラスセラミックの質量パーセントで存在するであろう。いくつかの態様において、このガラスセラミックは、1つ以上の追加の結晶相を含むことがある。
【0063】
第1の結晶相は、xが1以下(≦1)である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む。この結晶相(MgxZn1-x)Al2O4は、0<x≦1の場合、ガーナイト-スピネル固溶体と称されることがある。xが0の場合、第1の結晶相は純粋なガーナイトである。いくつかの態様において、xは1以下である、xは0.9以下である、xは0.8以下である、xは0.7以下である、xは0.6以下である、xは0.5以下である、xは0.4以下である、xは0.3以下である、xは0.2以下である、xは0.1以下である、xは0と等しい、またはこれらの値の間のxの任意の値である。
【0064】
第2の結晶相は正方晶ジルコニア(ZrO2)を含む。ZrO2は、下記により詳しく記載されるように、ガラスセラミック前駆体で提供される。どの特定の理論で束縛するものでもないが、正方晶ZrO2結晶相は、セラミック化中に(MgxZn1-x)Al2O4結晶相の前に結晶化し、(MgxZn1-x)Al2O4結晶相の核形成部位として働くであろうと考えられる。さらに、そのガラスセラミック前駆体中にTiO2が含まれる場合、TiO2が正方晶ZrO2相に入り込むと考えられる。
【0065】
第1と第2の結晶相の一方または両方は、約20nm未満の微結晶サイズを有することがある。いくつかの態様において、第1と第2の結晶相の一方または両方は、約20nm未満、約15nm未満、約10nm未満、または約5nm未満の微結晶サイズを有することがある。例えば、第1と第2の結晶相の一方または両方は、約1nmから約20nm、約1nmから約15nm、約1nmから約10nm、約1nmから約5nm、約5nmから約20nm、約5nmから約15nm、約5nmから約10nm、約10nmから約20nm、または約10nmから約15nmの微結晶サイズを有することがある。いくつかの例において、第1の結晶相は、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、またはこれらの値の間の任意のサイズである微結晶サイズを有することがある。いくつかの例において、第2の結晶相は、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、またはこれらの値の間の任意のサイズである微結晶サイズを有することがある。どの理論によっても束縛されるものではないが、より小さい微結晶サイズが、より大きい微結晶サイズと比べて、ガラスセラミックの透明性を増すと考えられる。ここに用いられている微結晶サイズは、特に明記のない限り、5から80度の走査により、粉末x線回折(XRD)解析によって決定される。この微結晶サイズは、相同定および定量分析に利用されるソフトウェアパッケージである、MDI Jadeで利用できるシェラーの式の関数を使用して推定した。しかしながら、微結晶サイズを決定するための異なる方法および器具類を、任意の必要な調整を行って、利用することもできることが理解されよう。
【0066】
本開示のガラスセラミックは、少なくとも約10質量%の全結晶化度により特徴付けることができる。ここに用いられているように、全結晶化度は、ガラスセラミック中に存在する全ての結晶相の質量%の合計を称する。いくつかの態様において、本開示のガラスセラミックは、少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約35質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約45質量%、または少なくとも約50質量%の全結晶化度を有する。例えば、本開示のガラスセラミックは、約10質量%から約50質量%、約10質量%から約45質量%、約10質量%から約40質量%、約10質量%から約35質量%、約10質量%から約30質量%、約10質量%から約25質量%、約10質量%から約20質量%、約10質量%から約15質量%、約15質量%から約50質量%、約15質量%から約45質量%、約15質量%から約40質量%、約15質量%から約35質量%、約15質量%から約30質量%、約15質量%から約25質量%、約15質量%から約20質量%、約20質量%から約50質量%、約20質量%から約45質量%、約20質量%から約40質量%、約20質量%から約35質量%、約20質量%から約30質量%、約20質量%から約25質量%、約25質量%から約50質量%、約25質量%から約45質量%、約25質量%から約40質量%、約25質量%から約35質量%、約25質量%から約30質量%、約30質量%から約50質量%、約30質量%から約45質量%、約30質量%から約40質量%、約30質量%から約35質量%、約35質量%から約50質量%、約35質量%から約45質量%、約35質量%から約40質量%、または約40質量%から約50質量%の全結晶化度を有する。いくつかの例において、本開示のガラスセラミックは、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、約35質量%、約40質量%、約45質量%、約50質量%、またはこれらの値の間の任意の全結晶化度値の全結晶化度を有する。どの理論によって限定されるものではないが、本開示のガラスセラミックの全結晶化度は、このガラスセラミックに、硬度や弾性率などの所望の機械的性質を与えるのに寄与するのに十分に高いが、所望の透明性を与えるのに十分に低いと考えられる。このガラスセラミックの全結晶化度は、第1と第2の結晶相の微結晶サイズに関して先に記載されたように収集されたXRDデータのリートベルト定量分析により決定される。このリートベルト定量分析法は、XRDデータをモデル化するために最小二乗法を用い、次いで、同定された相に関して公知の格子および倍率に基づく試料中の相の濃度を決定する。しかしながら、全結晶化度を決定するための異なる方法および器具類を、任意の必要な調整を行って、利用することもできることを理解すべきである。
【0067】
本開示のガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対する少なくとも80%の軸方向透過率を有し得る。ここに用いられているように、本開示のガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも80%の軸方向透過率を示す場合、透明であると称される。いくつかの態様において、本開示のガラスセラミックは、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%の380nmから760nmの波長を有する光に対する軸方向透過率、またはこれらの値の間の任意の%の軸方向透過率を有し得る。いくつかの例において、本開示のガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の、350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の、400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の、450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の、および/または500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率を有する。
【0068】
軸方向透過率は、全光線透過率から拡散透過率を差し引くことによって決定される。全光線透過率は、150mmの積分球を備えたPerkin Elmer Lambda 950 UV/IVS/NIR分光偏光計で測定することができる。試料を球の入射窓に搭載し、広角散乱光を収集することができた。全光線透過率データを、球の射出窓の上にある標準Spectralon(登録商標)反射率ディスクで収集した。オープンビーム基線測定に対して全光線透過率のパーセントを計算した。軸方向透過率を決定するための異なる方法および器具類を、任意の必要な調整を行って、利用することもできることが理解されよう。
【0069】
本開示のガラスセラミックは、380nmから800nmの波長を有する光に関する約0.2吸光度単位毎ミリメートル(任意単位/mm)未満の低い吸光度によっても特徴付けることができる。例えば、本開示のガラスセラミックは、380nmから800nmの波長を有する光に関して、約0.2任意単位/mm未満、約0.15任意単位/mm未満、約1.0任意単位/mm未満、約0.75任意単位/mm未満、約0.5任意単位/mm未満、約0.25任意単位/mm未満、または約0.15任意単位/mm未満の吸光度を有し得る。いくつかの例において、本開示のガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に関する約0.5任意単位/mm未満の、350nmの波長を有する光に関する約0.15任意単位/mm未満の、および/または500nmから800nmの波長を有する光に関する約0.1任意単位/mm未満の吸光度を有し得る。試料の吸光度値は、式:吸光度=(2-Log10(全光線透過率の%))/(試料厚)にしたがう透過率の測定値から決定した。
【0070】
本開示のガラスセラミックは、380nmから800nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値によっても特徴付けることができる。ここに用いられているように、材料のヘイズ値は、入射光の角度から2.5度を超えて逸れる光の透過パーセントとして定義される。いくつかの例において、本開示のガラスセラミックは、380nmから800nmの波長を有する光に関する、約0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、約0.2%未満のヘイズ値によって特徴付けることができる。例えば、本開示のガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および/または400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値により特徴付けることができる。どの理論によっても束縛されるものではないが、材料のヘイズ値が増加するにつれて、材料が、材料を通る視認性を妨げる程度も増加するであろう。例えば、本開示のガラスセラミックが電子機器のディスプレイに使用される場合、ヘイズは、そのガラスセラミックディスプレイを通る反射光線および/または透過光線の散乱のために、ぼやけた画像および/または光強度の損失をもたらし得る。一般に、光学用途において視覚の明瞭さおよび/または輝度に悪影響(光損失による)を与えないように、ヘイズを最小にすることが望ましい。試料のヘイズ値は、式:%ヘイズ=(T拡散補正/T全光線)*100にしたがう透過率の測定値から決定した。T拡散補正は、正透過率を除去するように補正された拡散透過率であり、T全光線は、全光線透過率である。
【0071】
いくつかの態様において、本開示のガラスセラミックは、実質的に無色であり得る。ここに用いられているように、本開示のガラスセラミックは、色座標a*が、約-0.2から約0.2の値を有し、色座標b*が、約-0.1から約0.8の値を有し、L*値が約90より大きい場合、実質的に無色であると考えられる。CIELAB色空間における0のL*値は、最も濃い黒を表し、100のL*値は、最も明るい白を示す。色空間におけるa*色座標は、緑-赤色成分を表し、負のa*値は緑に対応し、正のa*値は赤に対応する。色空間におけるb*色座標は、青-黄色成分を表し、負のb*値は青に対応し、正のb*値は黄に対応する。a*およびb*値が原点に近いほど、ガラスセラミックの色は、観察者にとって、より中間に見える。高いL*値と組み合わされた中間色は、本開示のガラスセラミックの実質的に無色の外観に寄与し得る。
【0072】
本開示の材料に関する色座標a*およびb*並びに明度L*は、積分球を備えたUV/VIS/NIR分光偏光計を使用して測定した。測定は、10度の入射角でD65光源により、2nm間隔で、380nmから760nmの波長に亘り行った。材料の色座標を決定するために、任意の必要な調整を行って、他の作業光領域および光源も使用することができる。CIE系における色空間を決定するための手順は、「Standard practice for computing the colors of objects by using the CIR system」(ASTM E308-08)により詳しく記載されている。
【0073】
本開示のガラスセラミックは、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8ギガパスカル(GPa)超の最大硬度を有し得る。例えば、このガラスセラミックは、8GPa超、9GPa超、10GPa超、11GPa超、12GPa超、13GPa超、14GPa超、または15GPa超の硬度を有し得る。いくつかの例において、そのガラスセラミックは、約8GPaから約15GPa、約8GPaから約14GPa、約8GPaから約13GPa、約8GPaから約12GPa、約8GPaから約11GPa、約8GPaから約10GPa、約9GPaから約15GPa、約9GPaから約14GPa、約9GPaから約13GPa、約9GPaから約12GPa、約9GPaから約11GPa、約9GPaから約10GPa、約10GPaから約15GPa、約10GPaから約14GPa、約10GPaから約13GPa、約10GPaから約12GPa、約10GPaから約11GPa、約11GPaから約15GPa、約11GPaから約14GPa、約11GPaから約13GPa、約11GPaから約12GPa、約12GPaから約15GPa、約12GPaから約14GPa、約12GPaから約13GPa、約13GPaから約15GPa、約13GPaから約14GPa、または約14GPaから約15GPaの硬度を有し得る。例えば、そのガラスセラミックは、約8GPa、約9GPa、約10GPa、約11GPa、約12GPa、約13GPa、約14GPa、約15GPa、またはこれらの値の間の任意の硬度値の硬度を有し得る。
【0074】
本開示のガラスセラミックの硬度は、ナノインデンターで測定され、特に明記のない限り、ギガパスカル(GPa)で報告されている。このナノインデンターによる測定は、Agilent G200ナノインデンターで実施されるような連続剛性測定法を使用し、ダイヤモンド製バーコビッチチップを用いて行った。この連続剛性測定法では、試料表面に荷重が加えられているときの、チップに重畳された小さい正弦波変位信号(45Hzで1nmの振幅)を利用し、荷重、深さ、および接触剛性が連続的に決定される。どの理論によっても束縛されるものではないが、本開示のガラスセラミックの硬度は、少なくとも一部には、その中に含まれる、第1の結晶相の(MgxZn1-x)Al2O4相、および第2の結晶相の正方晶ZrO2相の硬度によるであろうと考えられる。
【0075】
本開示のガラスセラミックは、約90GPaから約120GPaの弾性率を有することがある。いくつかの例において、本開示のガラスセラミックは、90GPa超、95GPa超、100GPa超、105GPa超、110GPa超、115GPa超、または120GPa超の弾性率を有する。いくつかの例において、その弾性率は、約90GPaから約120GPa、約90GPaから約115GPa、約90GPaから約110GPa、約90GPaから約105GPa、約90GPaから約100GPa、約95GPaから約120GPa、約95GPaから約115GPa、約95GPaから約110GPa、約95GPaから約105GPa、約95GPaから約100GPa、約100GPaから約120GPa、約100GPaから約115GPa、約100GPaから約110GPa、約100GPaから約105GPa、約105GPaから約120GPa、約105GPaから約115GPa、約105GPaから約110GPa、約110GPaから約120GPa、約100GPaから約115GPa、約115GPaから約120GPaである。例えば、その弾性率は、約90GPa、約95GPa、約100GPa、約105GPa、約106GPa、約107GPa、約108GPa、約109GPa、約110GPa、約111GPa、約112GPa、約113GPa、約114GPa、約115GPa、約120GPa、またはこれらの値の間の任意の弾性率値であり得る。本開示のガラスセラミックの弾性率は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題する、ASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術によって決定され、特に明記のない限り、GPaで報告されている。
【0076】
本開示のガラスセラミックは、このガラスセラミックの構造的完全性に悪影響を及ぼさずに、約800℃までの温度でガラスセラミックの追加の加工を可能にするのに十分に高い歪み点および徐冷点を有することがある。この追加の加工としては、イオン交換などの化学強化が挙げられるであろう。これらの高い加工温度は、追加の加工に必要な時間を減少させることなどによって、追加の加工の効率を増すことがある。いくつかの例において、歪み点は、約900℃以下であることがある。例えば、歪み点は、約750℃から約900℃、約800℃から約900℃、約8250℃から約900℃、約850℃から約900℃、約750℃から約850℃、約800℃から約850℃、約825℃から約850℃、約750℃から約825℃、または約800℃から約825℃であることがある。いくつかの例において、その歪み点は、約800℃、約810℃、約820℃、約821℃、約822℃、約823℃、約824℃、約825℃、約840℃、約841℃、約842℃、約843℃、約844℃、約845℃、約846℃、約847℃、約848℃、約849℃、約850℃、またはこれらの値の間の任意の歪み点であることがある。歪み点は、熱安定性の改善およびイオン交換処理のより広い潜在的な温度範囲を可能にすることがある。歪み点が低すぎると、ガラスセラミックの追加の加工は、難しくなるであろう。歪み点が高すぎると、前駆体ガラスセラミックの製造が困難になるであろう。
【0077】
本開示のガラスセラミックは、SiO2およびAl2O3並びに必要に応じて、ZnO、ZrO2、およびMgOの内の1つ以上を含むガラスセラミック前駆体から誘導することができる。追加の随意的な成分としては、TiO2、Na2O、およびBaOが挙げられるであろう。このガラスセラミックおよびガラスセラミック前駆体の構成成分の量は、特に明記のない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられる。本開示のガラスセラミック前駆体は、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず(すなわち、0.01モル%未満でしか存在しない)、それゆえ、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まないガラスセラミックを形成することができる。
【0078】
本開示のガラスセラミック前駆体は、ガラス相がケイ酸塩(例えば、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ソーダ石灰)であるように約35%から約60%(酸化物のモル)の量でSiO2を含み得る。例えば、SiO2は、約35モル%から約60モル%、約35モル%から約55モル%、約35モル%から約50モル%、約35モル%から約45モル%、約35モル%から約40モル%、約40モル%から約60モル%、約40モル%から約55モル%、約40モル%から約50モル%、約40モル%から約45モル%、約45モル%から約60モル%、約45モル%から約55モル%、約45モル%から約50モル%、約50モル%から約60モル%、約50モル%から約55モル%、または約55モル%から約60モル%の量で存在し得る。いくつかの例において、SiO2は、約35モル%、約40モル%、約45モル%、約50モル%、約51モル%、約52モル%、約53モル%、約54モル%、約55モル%、約56モル%、約57モル%、約58モル%、約59モル%、約60モル%の量、またはこれらの値の間のSiO2の任意の量で存在し得る。どの理論によっても束縛されるものではないが、純粋なSiO2は、比較的低い熱膨張係数を有し、アルカリを含まないが、高い融点を有する。このガラスセラミック前駆体中のSiO2の濃度が高すぎると、SiO2の濃度が高いほど、ガラスを溶融する難しさが増し、転じて、ガラスセラミック前駆体の成形性が悪影響を受けるであろうから、ガラスセラミックを形成するために使用される前駆体ガラス組成物の成形性が低下するであろうと考えられる。
【0079】
ガラスセラミック前駆体は、約13%から約30%(酸化物のモル)の量でAl2O3を含むことがある。例えば、Al2O3は、約13モル%から30モル%、約15モル%から約30モル%、約18モル%から約30モル%、約20モル%から約30モル%、約22モル%から約30モル%、約24モル%から約30モル%、約26モル%から約30モル%、約13モル%から28モル%、約15モル%から約28モル%、約18モル%から約28モル%、約20モル%から約28モル%、約22モル%から約28モル%、約24モル%から約28モル%、約26モル%から約28モル%、約13モル%から約26モル%、約15モル%から約26モル%、約18モル%から約26モル%、約20モル%から約26モル%、約22モル%から約26モル%、約24モル%から約26モル%、約13モル%から約24モル%、約15モル%から約24モル%、約18モル%から約24モル%、約20モル%から約24モル%、約22モル%から約24モル%、約13モル%から約22モル%、約15モル%から約22モル%、約18モル%から約22モル%、約20モル%から約22モル%、約13モル%から約20モル%、約15モル%から約20モル%、または約18モル%から約20モル%の量で存在し得る。いくつかの例において、Al2O3は、約13モル%、約15モル%、約18モル%、約19モル%、約20モル%、約21モル%、約22モル%、約24モル%、約26モル%、約28モル%、約30モル%の量、またはこれらの値の間のAl2O3の任意の量で存在し得る。どの理論によっても束縛されるものではないが、Al2O3は、ガラス溶融物中の四面体配位のために、ガラスセラミックを形成するために使用されるガラスセラミック前駆体の粘度を増加させることがあり、これにより、Al2O3の量が多すぎると、ガラスセラミック前駆体組成物の成形性が低下するであろう。しかしながら、Al2O3の濃度が、ガラス組成物中のSiO2の濃度およびアルカリ酸化物の濃度に対して釣り合わされている場合、Al2O3は、前駆体溶融物の液相温度を低下させ、それによって、液相粘度を向上させ、フュージョン成形法などの特定の成形法との前駆体組成物の適合性を改善することができる。このガラスセラミック前駆体中のAl2O3は、ガラスセラミックを形成するために前駆体がセラミック化されるときに、ガーナイト-スピネル結晶相を形成するのに必要なアルミニウムも提供する。
【0080】
本開示のガラスセラミック前駆体は、ZnOも含むことがある。この前駆体中のZnOは、ガラスセラミックを形成するために前駆体がセラミック化されるときに、ガーナイト-スピネル結晶相を形成するのに必要な亜鉛を供給する。このガラスセラミック前駆体は、存在する場合には、約0%から約20%(酸化物のモル)のZnOを含むことがある。例えば、そのガラスセラミック前駆体は、約0モル%から約20モル%、約2.5モル%から約20モル%、約5モル%から約20モル%、約7.5モル%から約20モル%、約10モル%から約20モル%、約12.5モル%から約20モル%、約15モル%から約20モル%、約17.5モル%から約20モル%、0モル%から約17.5モル%、約2.5モル%から約17.5モル%、約5モル%から約17.5モル%、約7.5モル%から約17.5モル%、約10モル%から約17.5モル%、約12.5モル%から約17.5モル%、約15モル%から約17.5モル%、0モル%から約15モル%、約2.5モル%から約15モル%、約5モル%から約15モル%、約7.5モル%から約15モル%、約10モル%から約15モル%、約12.5モル%から約15モル%、0モル%から約12.5モル%、約2.5モル%から約12.5モル%、約5モル%から約12.5モル%、約7.5モル%から約12.5モル%、約10モル%から約12.5モル%、0モル%から約10モル%、約2.5モル%から約10モル%、約5モル%から約10モル%、約7.5モル%から約10モル%、0モル%から約7.5モル%、約2.5モル%から約7.5モル%、約5モル%から約7.5モル%、0モル%から約5モル%、約2.5モル%から約5モル%、または約2.5モル%から約5モル%のZnOを含むことがある。いくつかの例において、そのガラスセラミック前駆体は、約0モル%、約2.5モル%、約5モル%、約7.5モル%、約10モル%、約12.5モル%、約15モル%、約17.5モル%、約20モル%、またはこれらの値の間のZnOの任意の量でZnOを含むことがある。
【0081】
本開示のガラスセラミック前駆体は、MgOをさらに含むことがある。この前駆体中のMgOは、本開示のガラスセラミックを形成するために前駆体がセラミック化されるときに、スピネル固溶体含有結晶相を形成するのに必要なマグネシウムを供給する。このガラスセラミック前駆体は、約0.01%から約20%(酸化物のモル)のMgOを含み得る。例えば、MgOは、約0.01モル%から約20モル%、約0.1モル%から約20モル%、約1モル%から約20モル%、約5モル%から約20モル%、約10モル%から約20モル%、約15モル%から約20モル%、約0.01モル%から約15モル%、約0.1モル%から約15モル%、約1モル%から約15モル%、約5モル%から約15モル%、約10モル%から約15モル%、約0.01モル%から約10モル%、約0.1モル%から約10モル%、約1モル%から約10モル%、約5モル%から約10モル%、約0.01モル%から約5モル%、約0.1モル%から約5モル%、約1モル%から約5モル%、約0.01モル%から約0.1モル%、約0.01モル%から約1モル%、または約0.1モル%から約1モル%で存在し得る。いくつかの例において、MgOは、約0.01モル%、約0.02モル%、約0.03モル%、約0.04モル%、約0.05モル%、約1モル%、約2モル%、約5モル%、約8モル%、約9モル%、約10モル%、約11モル%、約12モル%、約13モル%、約14モル%、約15モル%、約16モル%、約17モル%、約18モル%、約19モル%、約20モル%、またはこれらの値の間のMgOの任意の量で存在し得る。
【0082】
本開示のガラスセラミック前駆体は、ZrO2も含む。この前駆体中のZrO2は、ガラスセラミックを形成するために前駆体がセラミック化されるときに、正方晶ZrO2結晶相を形成するためのジルコニウムを供給する。それに加え、ZrO2は、核形成剤の機能を果たすことがあり、ある場合には、前駆体組成物中の唯一の核形成剤であることがある。このガラスセラミック前駆体は、約0.01%から約10%(酸化物のモル)のZrO2を含み得る。例えば、ZrO2は、約0.01モル%から約10モル%、約0.1モル%から約10モル%、約1モル%から約10モル%、約2モル%から約10モル%、約5モル%から約10モル%、約8モル%から約10モル%、約0.01モル%から約8モル%、約0.1モル%から約8モル%、約1モル%から約8モル%、約2モル%から約8モル%、約5モル%から約10モル%、約0.01モル%から約5モル%、約0.1モル%から約5モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、約0.01モル%から約2モル%、約0.1モル%から約2モル%、約1モル%から約2モル%、約0.01モル%から約1モル%、または約0.1モル%から約1モル%の量で存在し得る。いくつかの例において、ZrO2は、約0.01モル%、約0.1モル%、約1モル%、約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%、約6モル%、約7モル%、約8モル%、約9モル%、約10モル%、またはこれらの値の間のZrO2の任意の量で存在し得る。
【0083】
本開示のガラスセラミック前駆体は、1種類以上の核形成剤を含むことがある。その核形成剤は、ガラスセラミックを形成するために利用される前駆体組成物中の核の形成を促進すると考えられる。いくつかの例において、核形成剤により、ガラスセラミックが、別の核形成工程を必要とせずに、セラミック化する。核形成剤は、ZrO2、TiO2、Eu2O3、Ta2O5、および/またはLa2O3から選択されることがある。先に述べたように、いくつかの例において、ZrO2が唯一の核形成剤である。他の例において、前駆体組成物中に、代わりのまたは追加の核形成剤が使用されることがある。いくつかの例において、ガラスセラミック前駆体中の核形成剤の総量は、約1モル%以上、約2モル%以上、約3モル%以上、約4モル%以上、約5モル%以上、またはそれより多いなど、0モル%以上の量であることがある。いくつかの例において、ガラスセラミック前駆体中の核形成剤の総量は、約5モル%以下、約4モル%以下、約3モル%以下、約2モル%以下、約1モル%以下、またはそれより少ないなど、約6モル%以下の量であることがある。例えば、ガラスセラミック前駆体中の核形成剤の総量は、約0モル%から約6モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約4モル%、約1モル%から約3モル%、または約2モル%から約5モル%の量であることがある。いくつかの例において、ガラスセラミック前駆体中に存在する核形成剤の総量は、約0.01モル%、約1モル%、約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%、約6モル%、またはこれらの値の間の全核形成剤の任意の量である。
【0084】
本開示のガラスセラミック前駆体は、核形成剤としてTiO2を含むことがある。どの理論によっても束縛されるものではないが、TiO2の量が多すぎると、結果として得られたガラスセラミックは、望ましくなく着色した外観を有することがある。TiO2は、黄または茶の外観を有するガラスセラミックに寄与し得る。ガラスセラミックの黄または茶に着色された外観には、Ti4+からTi3+への還元が原因であろうと考えられる。いくつかの例において、ガラスセラミック前駆体中のTiO2の量は、約0%から約4%(酸化物のモル)であることがある。例えば、TiO2は、約0モル%から約4モル%、約0.01モル%から約4モル%、約0.05モル%から約4モル%、約0.1モル%から約4モル%、約0.5モル%から約4モル%、約1モル%から約4モル%、約2モル%から約4モル%、約3モル%から約4モル%、約0モル%から約3モル%、約0.01モル%から約3モル%、約0.05モル%から約3モル%、約0.1モル%から約3モル%、約0.5モル%から約3モル%、約1モル%から約3モル%、約2モル%から約3モル%、約0モル%から約2モル%、約0.01モル%から約2モル%、約0.05モル%から約2モル%、約0.1モル%から約2モル%、約0.5モル%から約2モル%、約1モル%から約2モル%、約0モル%から約1モル%、約0.01モル%から約1モル%、約0.05モル%から約1モル%、約0.1モル%から約1モル%、約0.5モル%から約1モル%、約0モル%から約0.5モル%、約0.01モル%から約0.5モル%、約0.05モル%から約0.5モル%、約0.1モル%から約0.5モル%、約0モル%から約0.1モル%、約0.01モル%から約0.1モル%、または約0.05モル%から約0.1モル%の量で存在することがある。いくつかの例において、TiO2は、約0モル%、約0.01モル%、約0.05モル%、約0.1モル%、約0.5モル%、約1モル%、約2モル%、約3モル%、約4モル%の量、またはこれらの値の間のTiO2の任意の量で存在することがある。いくつかの例において、このガラスセラミック前駆体は、TiO2を実質的に含まないか、または含まない。
【0085】
前記ガラスセラミック前駆体は、1種類以上のアルカリ金属酸化物を含むことがある。このアルカリ金属酸化物は、イオン交換過程などによって、本開示のガラスセラミックの化学強化を促進させることができる。ガラスセラミック前駆体中のアルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、およびK2O、並びにCs2OおよびRb2Oを含む他のアルカリ金属酸化物)の合計は、「R2O」と称されることがあり、R2Oは、モル%で表されることがある。いくつかの例において、そのガラスセラミック前駆体は、Li2OとNa2Oの組合せ、Na2OとK2Oの組合せ、Li2OとK2Oの組合せ、またはLi2O、Na2O、およびK2Oの組合せなど、アルカリ金属酸化物の混合物を含むことがある。いくつかの例において、そのガラスセラミック前駆体は、Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有する。このガラスセラミック前駆体中にアルカリ金属酸化物の混合物を含ませると、本開示のガラスセラミックの化学強化中にイオン交換が促進されるであろう。どの理論によっても束縛されるものではないが、アルカリ金属酸化物は、セラミック化の際に、ガラスセラミックの残留ガラス相中に入ると考えられる。
【0086】
前記ガラスセラミック中のリチウムの存在は、イオン交換過程を促進させることができ、前駆体組成物の軟化点を低下させることもある。いくつかの例において、その前駆体組成物は、約0%から約5%(酸化物のモル)の量でLi2Oを含む。例えば、Li2Oは、約0モル%から約モル%、約0モル%から約5モル%、約0モル%から約4モル%、約0モル%から約3モル%、約0モル%から約2モル%、約0モル%から約1モル%、約1モル%から約5モル%、約1モル%から約4モル%、約1モル%から約3モル%、約1モル%から約2モル%、約2モル%から約5モル%、約2モル%から約4モル%、約2モル%から約3モル%、約3モル%から約5モル%、約3モル%から約4モル%、または約4モル%から約4モル%の量で存在し得る。いくつかの例において、Li2Oは、約0モル%、約1モル%、約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%の量、またはこれらの値の間のLi2Oの任意の量で存在する。いくつかの例において、この前駆体組成物は、Li2Oを実質的に含まない。
【0087】
Na2Oも、本開示のガラスセラミックのイオン交換性を促進させることがある。Na2Oは、前駆体組成物の融点を低下させ、前駆体組成物の成形性を改善することもできる。ガラスセラミック前駆体は、約2%(酸化物のモル)超の量でNa2Oを含み得る。いくつかの例において、Na2Oは、約2モル%から約10モル%、約2モル%から約9モル%、約2モル%から約8モル%、約2モル%から約7モル%、約2モル%から約6モル%、約2モル%から約5モル%、約2モル%から約4モル%、約3モル%から約10モル%、約3モル%から約9モル%、約3モル%から約8モル%、約3モル%から約7モル%、約3モル%から約6モル%、約3モル%から約5モル%、約3モル%から約4モル%、約4モル%から約10モル%、約4モル%から約9モル%、約4モル%から約8モル%、約4モル%から約7モル%、約4モル%から約6モル%、約4モル%から約5モル%、約5モル%から約10モル%、約5モル%から約9モル%、約5モル%から約8モル%、約5モル%から約7モル%、約5モル%から約6モル%、約6モル%から約10モル%、約6モル%から約9モル%、約6モル%から約8モル%、約6モル%から約7モル%、または約7モル%から約10モル%の量で存在する。例えば、Na2Oは、約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%、約6モル%、約7モル%、約8モル%、約9モル%、約10モル%の量、またはこれらの値の間のNa2Oの任意の量で存在し得る。
【0088】
必要に応じて、前記ガラスセラミック前駆体は、BaOを含むことがある。どの理論によっても束縛されるものではないが、前記ガラスセラミック中にBaOを含ませると、ガラスセラミック中の残留ガラス相の屈折率が増すであろう。BaOは、溶融中の系の酸化状態を維持するのを促進するために前駆体に添加されることがあり、これにより、TiO2が組成物中に存在する場合、Ti4+からTi3+への還元が妨げられるであろう。BaOは、TiO2の存在のために、ガラスセラミックの望ましくない着色を防ぐように働くであろうと考えられる。いくつかの例において、そのガラスセラミック前駆体は、約0%から約2%(酸化物のモル)の量でBaOを含むことがある。例えば、BaOは、約0モル%から約2モル%、約0モル%から約1.5モル%、約0モル%から約1モル%、約0モル%から約0.5モル%、約0.5モル%から約2モル%、約0.5モル%から約1.5モル%、約0.5モル%から約1モル%、約1モル%から約2モル%、約1モル%から約1.5モル%、または約1.5モル%から約2モル%の量で存在することがある。いくつかの例において、BaOは、約0モル%、約0.5モル%、約1モル%、約1.5モル%、約2モル%、またはこれらの値の間のBaOの任意の量で存在する。いくつかの例において、前駆体組成物は、BaOを実質的に含まない。
【0089】
前記ガラスセラミック前駆体は、本開示のガラスセラミックが少量の鉄を有するように少量の鉄を含むことができる。どの理論によっても束縛されるものではないが、そのガラスセラミック前駆体組成物中の少量の酸化鉄(Fe2O3)は、ここに記載されたように、透明かつ実質的に無色であるガラスセラミックの形成を促進させると考えられる。それゆえ、本開示の1つの態様によれば、酸化鉄は、構成成分として、そのガラスセラミック前駆体に意図的に添加されない。しかしながら、酸化鉄は、そのガラスセラミック前駆体組成物の他の成分の内の1つの原材料源中の不純物として少量存在するか、または汚染物質として存在することがある。例えば、少量のFe2O3はガラスセラミック前駆体を形成するために使用されるSiO2中に存在することがあり、その量は、SiO2の供給源に応じて様々であろう。本開示の1つの態様によれば、SiO2の原材料源、および不純物としてFe2O3を導入することのある任意の他の成分は、ガラスセラミック前駆体および/または形成されるガラスセラミックに所望の鉄含有量を与えるように選択されることがある。
【0090】
本開示の1つの態様によれば、前記ガラスセラミック前駆体中に存在するFe2O3の量は、約0.02%(質量)未満である。例えば、Fe2O3は、約0.02質量%未満、約0.01質量%未満、約0.005質量%未満、約0.002質量%未満、または約0.001質量%未満の量でそのガラスセラミック前駆体中に存在し得る。いくつかの例において、Fe2O3は、約0質量%から約0.02質量%、約0質量%から約0.01質量%、約0質量%から約0.005質量%、約0質量%から約0.002質量%、約0質量%から約0.001質量%、約0.001質量%から約0.02質量%、約0.001質量%から約0.01質量%、約0.001質量%から約0.005質量%、約0.001質量%から約0.002質量%、約0.002質量%から約0.02質量%、約0.002質量%から約0.01質量%、約0.002質量%から約0.005質量%、約0.005質量%から約0.02質量%、約0.005質量%から約0.01質量%、または約0.01質量%から約0.02質量%の量でそのガラスセラミック前駆体中に存在し得る。例えば、Fe2O3は、約0質量%、約0.001質量%、約0.002質量%、約0.003質量%、約0.004質量%、約0.005質量%、約0.006質量%、約0.007質量%、約0.008質量%、約0.009質量%、約0.01質量%、約0.02質量%の量、またはこれらの値の間のFe2O3の任意の量でそのガラスセラミック前駆体中に存在し得る。
【0091】
本開示の1つの態様において、前記ガラスセラミック前駆体は、約0.5未満の全鉄含有量(全鉄含有量は、Fe2++Fe3+と定義されるFe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比を含む。例えば、全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比は、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、約0.2未満、または約0.1未満であり得る。いくつかの例において、そのガラスセラミック前駆体における全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比は、約0.1から約0.5、約0.1から約0.4、約0.1から約0.3、約0.1から約0.2、約0.2から約0.5、約0.2から約0.4、約0.2から約0.3、約0.3から約0.5、約0.3から約0.4、または約0.4から約0.5である。いくつかの例において、そのガラスセラミック前駆体における全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比は、約0.5、約0.4、約0.3、約0.2、約0.1、またはこれらの値の間の任意の比である。
【0092】
本開示の1つの態様によれば、セラミック化後のガラスセラミック中に存在するFe2O3の量は、約0.02%(質量)未満である。例えば、Fe2O3は、約0.02質量%未満、約0.01質量%未満、約0.005質量%未満、約0.002質量%未満、または約0.001質量%未満の量でそのガラスセラミック中に存在し得る。いくつかの例において、Fe2O3は、約0質量%から約0.02質量%、約0質量%から約0.01質量%、約0質量%から約0.005質量%、約0質量%から約0.002質量%、約0質量%から約0.001質量%、約0.001質量%から約0.02質量%、約0.001質量%から約0.01質量%、約0.001質量%から約0.005質量%、約0.001質量%から約0.002質量%、約0.002質量%から約0.02質量%、約0.002質量%から約0.01質量%、約0.002質量%から約0.005質量%、約0.005質量%から約0.02質量%、約0.005質量%から約0.01質量%、または約0.01質量%から約0.02質量%の量でそのガラスセラミック中に存在し得る。例えば、Fe2O3は、約0質量%、約0.001質量%、約0.002質量%、約0.003質量%、約0.004質量%、約0.005質量%、約0.006質量%、約0.007質量%、約0.008質量%、約0.009質量%、約0.01質量%、約0.02質量%の量、またはこれらの値の間のFe2O3の任意の量でそのガラスセラミック中に存在し得る。
【0093】
本開示の1つの態様において、前記ガラスセラミックは、セラミック化後に、約0.5未満の全鉄含有量(全鉄含有量は、Fe2++Fe3+と定義されるFe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比を含む。例えば、全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比は、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、約0.2未満、約0.1未満、約0.05未満、約0.01未満、約0.005未満、または約0.001未満である。いくつかの例において、そのガラスセラミックにおける全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比は、約0.001から約0.5、約0.001から約0.4、約0.001から約0.3、約0.001から約0.2、約0.001から約0.1、約0.001から約0.005、約0.005から約0.5、約0.005から約0.4、約0.005から約0.3、約0.005から約0.2、または約0.005から約0.1である。いくつかの例において、そのガラスセラミックにおける全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比は、約0.5、約0.4、約0.3、約0.2、約0.1、約0.05、約0.01、約0.009、約0.008、約0.007、約0.006、約0.005、約0.004、約0.003、約0.002、約0.001、またはこれらの値の間の任意の比である。
【0094】
本開示によるガラスセラミックを製造するための例示のガラスセラミック前駆体組成物が、下記の表1に示されている。表1は、本開示による、材料の組合せ、および範囲で示されたそれぞれの量を特定している。表1のガラスセラミック前駆体組成物は、ここに述べられた本開示の態様による追加の成分を含むことがある。
【0095】
【0096】
本開示のガラスセラミックは、先に述べたように、表1のガラスセラミック前駆体組成物から誘導されることがあり、どの適切な成形法によって成形されてもよく、その非限定例として、スロット成形法、フロート成形法、圧延法、およびフュージョン成形法が挙げられる。例えば、本開示のガラスセラミック前駆体は、フュージョンドロー法を使用して成形されることがある(すなわち、フュージョン成形可能である)。従来のフュージョンドロー法では、溶融したガラス原材料を受け入れるための通路を有する延伸槽が使用される。その通路は、通路の両側で通路の長さに沿って上部が開いた堰を有する。通路が溶融材料で満たされると、溶融ガラスは堰から溢れる。その溶融ガラスは、重力により、2つの流れるガラス膜として、延伸槽の外面を下方に流れる。延伸槽のこれらの外面は、延伸槽の下のエッジで接合するように、下方と内方に延在している。2つの流れるガラス膜がこのエッジで合わさって、融合し、1つの流れるガラス物品を形成する。このフュージョンドロー法は、通路を越えて流れる2つのガラス膜が互いに融合するので、結果として得られたガラスの外面のいずれも、装置のどの部分とも接触しないという利点を提示する。それゆえ、フュージョンドロー法により製造されたガラス物品の外面は、接触しないために、一般に、滑らかかつ平らであると考えられ、多くの場合、追加の研削や研磨を必要とせずに使用することができる。別の例では、ここに記載されたガラスセラミック前駆体は、スロットドロー法によって成形されることがある。このスロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法において、溶融した原材料ガラスは、延伸槽に供給される。この延伸槽の底には、開いたスロットがあり、このスロットには、スロットの長さに延在するノズルがある。溶融ガラスは、スロット/ノズルを通って流れ、連続したガラス物品として、徐冷領域へと下方に延伸される。
【0097】
本開示のガラスセラミックは、適切な条件下で、ここに記載されたガラスセラミック前駆体をセラミック化することによって、形成することができる。いくつかの例において、セラミック化過程は、前駆体中に結晶核を形成するために別の核形成処理段階を含まない。別の核形成処理段階がないために、製造過程を簡単にでき、エネルギーおよび/または時間が節約されるであろう。いくつかの例において、そのセラミック化過程は、所望であれば、微結晶サイズの制御を促進するために、ガラスセラミック前駆体を加熱して、結晶核を形成する工程を含む、核形成処理段階を含んでも差し支えない。
【0098】
セラミック化は、前記ガラスセラミック前駆体を、少なくとも約750℃、少なくとも約800℃、少なくとも約850℃、少なくとも約900℃、少なくとも約950℃、少なくとも約1000℃、少なくとも約1050℃、または少なくとも約1100℃の温度に加熱することによって、行うことができる。いくつかの例において、このセラミック化は、約750℃から約1100℃、約800℃から約1100℃、約850℃から約1100℃、約900℃から約1100℃、約950℃から約1100℃、約1000℃から約1100℃、約1050℃から約1100℃、約750℃から約1050℃、約800℃から約1050℃、約850℃から約1050℃、約900℃から約1050℃、約950℃から約1050℃、約1000℃から約1050℃、約750℃から約1000℃、約800℃から約1000℃、約850℃から約1000℃、約900℃から約1000℃、約950℃から約1000℃、約750℃から約950℃、約800℃から約950℃、約850℃から約950℃、約900℃から約950℃、約750℃から約900℃、約800℃から約900℃、約850℃から約900℃、約750℃から約850℃、または約800℃から約850℃の温度で起こる。例えば、セラミック化は、約750℃、800℃、850℃、900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃の温度、またはこれらの値の間の任意の温度で起こり得る。
【0099】
セラミック化中の加熱は、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも約4時間、少なくとも約4.5時間、少なくとも約5時間、少なくとも約5.5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約6.5時間、少なくとも約7時間、少なくとも約7.5時間、少なくとも約8時間、少なくとも約8.5時間、少なくとも約9時間、少なくとも約9.5時間、または少なくとも約10時間の所定の期間に亘り行うことができる。例えば、セラミック化中の加熱は、約30分から約1時間、約30分から約2時間、約30分から約3時間、約30分から約4時間、約30分から約5時間、約30分から約6時間、約30分から約7時間、約30分から約8時間、約30分から約9時間、約30分から約10時間、約1時間から約2時間、約1時間から約3時間、約1時間から約4時間、約1時間から約5時間、約1時間から約6時間、約1時間から約7時間、約1時間から約8時間、約1時間から約9時間、約1時間から約10時間、約2時間から約3時間、約2時間から約4時間、約2時間から約5時間、約2時間から約6時間、約2時間から約7時間、約2時間から約8時間、約2時間から約9時間、約2時間から約10時間、約3時間から約4時間、約3時間から約5時間、約3時間から約6時間、約3時間から約7時間、約3時間から約8時間、約3時間から約9時間、約3時間から約10時間、約4時間から約5時間、約4時間から約6時間、約4時間から約7時間、約4時間から約8時間、約4時間から約9時間、約4時間から約10時間、約5時間から約6時間、約5時間から約7時間、約5時間から約8時間、約5時間から約9時間、約5時間から約10時間、約6時間から約7時間、約6時間から約8時間、約6時間から約9時間、約6時間から約10時間、約7時間から約8時間、約7時間から約9時間、約7時間から約10時間、約8時間から約9時間、または約8時間から約10時間の所定の期間に亘り行うことができる。いくつかの例において、セラミック化中の加熱は、約30分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、約6.5時間、約7時間、約7.5時間、約8時間、約8.5時間、約9時間、約9.5時間、約10時間の所定の期間、またはこれらの値の間の任意の期間に亘り行うことができる。
【0100】
セラミック化過程が別の核形成処理段階を含む場合、その核形成処理段階は、前記ガラスセラミック前駆体を、少なくとも約700℃、少なくとも約750℃、少なくとも約800℃、少なくとも約850℃、少なくとも約900℃、少なくとも約950℃、少なくとも約1000℃の温度で熱処理する工程を含み得る。例えば、その熱処理工程は、約700℃から約1000℃、約700℃から約950℃、約700℃から約900℃、約700℃から約850℃、約700℃から約800℃、約800℃から約1000℃、約800℃から約950℃、約800℃から約900℃、約800℃から約850℃、約850℃から約1000℃、約850℃から約950℃、約850℃から約900℃、約900℃から約1000℃、または約900℃から約950℃の温度で起こり得る。いくつかの例において、核形成処理段階は、ガラスセラミック前駆体を、約700℃、約750℃、約800℃、約850℃、約900℃、約950℃、約1000℃の温度、またはこれらの値の間の任意の温度で熱処理する工程を含み得る。
【0101】
この核形成処理段階中の熱処理工程は、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、または少なくとも約4時間の所定の期間に亘り起こり得る。例えば、核形成処理段階中の処理は、約30分から1時間、約30分から約2時間、約30分から約3時間、約30分から約4時間、約1時間から約2時間、約1時間から約3時間、約1時間から約4時間、約2時間から約3時間、約2時間から約4時間、または約3時間から約4時間の所定の期間に亘り起こり得る。いくつかの例において、核形成処理段階中の処理は、約30分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間の所定の期間、またはこれらの値の間の任意の期間に亘り起こる。
【0102】
本開示のガラスセラミックは、どの適切な過程を使用して化学強化されてもよい。一例において、本開示のガラスセラミックは、イオン交換過程で化学強化される。例えば、本開示のガラスセラミックは、ガラスセラミックをイオン交換溶液の浴中に浸漬すること、ガラスセラミックにイオン交換溶液を吹き付けること、またはガラスセラミックにイオン交換溶液を他のやり方で物理的に施すことによって、イオン交換溶液に曝露することができる。ガラスセラミックが曝露される際に、イオン交換溶液は、いくつかの例によれば、約400℃から約500℃、約410℃から約490℃、約420℃から約480℃、約430℃から約470℃、または約440℃から約460℃の温度であることがある。いくつかの例において、その温度は、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、約500℃、またはこれらの値の間の任意の温度である。
【0103】
前記ガラスセラミックは、約4時間から約48時間の期間に亘りイオン交換溶液に曝露されることがある。例えば、そのガラスセラミックは、約4時間から約48時間、約8時間から約48時間、約12時間から約48時間、約16時間から約48時間、約20時間から約48時間、約24時間から約48時間、約30時間から約48時間、約36時間から約48時間、約40時間から約48時間、約4時間から約40時間、約8時間から約40時間、約12時間から約40時間、約16時間から約40時間、約20時間から約40時間、約24時間から約40時間、約30時間から約40時間、約36時間から約40時間、約4時間から約36時間、約8時間から約36時間、約12時間から約36時間、約16時間から約36時間、約20時間から約36時間、約24時間から約36時間、約30時間から約36時間、約4時間から約30時間、約8時間から約30時間、約12時間から約30時間、約16時間から約30時間、約20時間から約30時間、約24時間から約30時間、約4時間から約24時間、約8時間から約24時間、約12時間から約24時間、約16時間から約24時間、約20時間から約24時間、約4時間から約20時間、約8時間から約20時間、約12時間から約20時間、約16時間から約20時間、約4時間から約16時間、約8時間から約16時間、約12時間から約16時間、約4時間から約12時間、約8時間から約12時間、または約4時間から約8時間の期間に亘りイオン交換溶液に曝露されることがある。いくつかの例において、そのガラスセラミックは、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、約40時間、約48時間の期間、またはこれらの値の間の任意の期間に亘りイオン交換溶液に曝露されることがある。
【0104】
イオン交換過程が行われた後、ガラスセラミックの表面の組成は、形成されたままのガラスセラミック(すなわち、イオン交換過程を経る前のガラスセラミック)の組成と異なるであろうことを理解すべきである。これは、例えば、Na+またはK+などのより大きいアルカリ金属イオンと交換されている、例えば、Li+またはNa+などの形成されたままのガラス中のアルカリ金属イオンの一種から生じる。しかしながら、ガラス物品の深さの中心またはその近くのガラスセラミックの組成は、実施の形態において、イオン交換過程により最小にしか変化させられず、形成されたままのガラスセラミックと実質的に同じまたは同じ組成を有することがある。
【実施例】
【0105】
以下の実施例は、本開示の実施の形態により与えられる様々な特徴および利点を記載しており、本開示の態様および特許請求の範囲を限定する意図は決してない。
【0106】
実施例1
下記の表2に示された前駆体組成を有するガラスセラミック前駆体を調製し、ガラスセラミックを形成するために使用した。表2に示されたガラスセラミック前駆体およびガラスセラミックの性質は、ここに記載された過程にしたがって決定した。各ガラスセラミック前駆体は、室温から700℃まで5℃/分の昇温速度で、その後、700℃から950℃まで1℃/分の昇温速度で加熱が行われる、4時間に亘る950℃での加熱を含むセラミック化スケジュールにしたがって処理した。
【0107】
【0108】
下記の表3は、異なる波長での実施例1A~1Cおよび比較例1の各々に関する屈折率データを含む。
【0109】
【0110】
実施例1A~1Cのデータは、SnO2およびAs2O3などの従来の脱色剤がなくとも、本開示のガラスセラミックが実質的に無色である能力を示す。比較例1と比べると、実施例1A~1Cは、わずかな色しか示さず、同様の機械的性質(例えば、硬度および弾性率)を示しつつ、SnO2を実質的に含まない。比較例1は、SnO2の存在下でさえ、低いa*およびb*を有する(実質的に無色の外観を示す)実施例1A~1Cと比べて、茶色っぽい色合い(1を超えるb*値により示される)の薄くはない色を示す。比較例2は、実施例1Aの色と類似の低レベルの色を示すが、比較例2は、As2O5を含み、それゆえ、ヒ素を実質的に含まないわけではない。実施例1A~1Cは、ガラスセラミックが、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まない場合でさえ、ガラスセラミックが実質的に無色である能力を示す。実施例1A~1Cは、比較例1と比べて、類似の硬度値および弾性率値を示し、それゆえ、硬度および弾性率などの機械的性質に悪影響を及ぼさずに、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムが添加されていない状態で、実質的に無色の外観を有するガラスセラミックを調製するために本開示の態様を使用できることを示す。
【0111】
図2は、実施例1A(「Ex.1A」)、比較例1(「Comp.Ex.1」)、およびガーナイト-スピネル固溶体結晶相を含まない比較のガラスセラミックの比較例3(「Comp.Ex.3」)に関する、波長の関数としての軸方向透過率のパーセントのプロットである。実施例1Aは、0.89mm厚の試料であり、比較例1は、0.84mm厚の試料であり、比較例3は、0.8mm厚の試料であった。
図2のデータにより示されるように、実施例1A(SnO
2を含まない)は、350nmと1000nmの間の波長について、比較例1(SnO
2を含む)と比べて、類似かまたはより高いレベルの軸方向透過率を有する。比較例3を形成するために使用した前駆体ガラスセラミック組成が、下記の表4に示されている。比較例3の比較のガラスセラミックは、44質量%のLS2結晶相、44質量%の葉長石、および12質量%のガラス相を含み、30nmから60nmの粒径を有する。
【0112】
【0113】
図3は、実施例1A(「Ex.1A」)、比較例1(「Comp.Ex.1」)、および比較例3(「Comp.Ex.3」)に関する、波長の関数としての吸光度のプロットである。
図3に示されるように、実施例1Aは、350nmから1000nmの波長について、比較例1と比べて、類似かまたはより低い吸光度を示す。吸光度データは、経路長の差について補正された。
【0114】
図4は、実施例1A(「Ex.1A」)、比較例1(「Comp.Ex.1」)、および比較例3(「Comp.Ex.3」)に関する、波長の関数としてのヘイズパーセントのプロットである。
図4に示されるように、実施例1Aは、350nmから800nmの波長について、比較例1と比べて、類似かまたはより低いヘイズ値を有した。
【0115】
図2~4は、ガラスセラミックがヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まない場合でさえ、本開示のガラスセラミックが、電子機器におけるディスプレイとしての用途に望ましい光学的性質(例えば、高い透過率、低い吸光度、および低いヘイズ)を有する能力を示す。本開示のガラスセラミックは、脱色剤としてヒ素またはスズを含むガラスセラミックと比べて、ガラスセラミックの機械的性質(例えば、硬度および弾性率)に対する影響が最小かまたは改善されて、所望の光学的性質を示す。
【0116】
実施例2
下記の表5の前駆体組成を有するガラスセラミック前駆体を調製し、ガラスセラミックを形成するために使用した。表5に示されたガラスセラミック前駆体およびガラスセラミックの性質は、ここに記載された過程にしたがって決定した。各ガラスセラミック前駆体は、室温から700℃まで5℃/分の昇温速度で、その後、700℃から950℃まで1℃/分の昇温速度で加熱が行われる、4時間に亘る950℃での加熱を含むセラミック化スケジュールにしたがって処理した。
【0117】
【0118】
実施例2A(「Ex.2A」)、比較例4(「Comp.Ex.4」)、および比較例5(「Comp.Ex.5」)の色空間データが、
図5に纏められている。実施例2Aおよび比較例5は、類似のガラスセラミック前駆体組成物から形成されているが、比較例5は、従来の清澄剤かつ脱色剤であるSnO
2も含んでいる。比較例4のガラスセラミックを形成するために使用した前駆体組成は、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを含まないが、多量のTiO
2など、本開示の組成から外れた他の成分を含んでいる。それに加え、比較例4は、実施例2Aおよび比較例5を形成するために使用したSiO
2源よりも多いFe
2O
3含有量を有するSiO
2源を使用して調製した。
【0119】
表5に示され、
図5にグラフで表されたデータは、実施例2Aの例示の組成物が、ガラスセラミック前駆体(セラミック化前)としてわずかな色しか示さず、ガラスセラミック(セラミック化後)としてさえ、そのわずかな色を維持することを示す。対照的に、比較例4は、セラミック化前でさえある程度の色(2.39のb
*値からも分かる)を示し、その色は、ガラスセラミックの高いa
*およびb
*値(茶色っぽい色合いに対応する)からも分かるように、セラミック化後に増す。どの理論によっても束縛されるものではないが、ガラスセラミック前駆体中の鉄含有量の差は、実施例2Aおよび比較例4のガラスセラミックの色の差に少なくとも一部は関与するであろうと考えられる。比較例4におけるTiO
2の増加した量は、セラミック化後のガラスセラミックにより示されたより高い色の値にも寄与するであろう。比較例5は、セラミック化前にはほとんど色を示さないが、その試料の色は、比較例5のガラスセラミックにおける高いb
*値から明らかなように、セラミック化後に著しく増す。セラミック化の前後の実施例2Aと比較例5との間の色の差は、清澄剤(SnO
2など)がない状態でのセラミック化後のガラスセラミックの色のシフトが小さいことを示す。
【0120】
以下の非限定態様が、本開示により含まれる。
【0121】
本開示の第1の態様によれば、ガラスセラミックは、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含み、このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、このガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有する。
【0122】
本開示の第1の態様によれば、本開示の第2の態様において、そのガラスセラミックは、約90超のCIELAB L*値、約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および約-0.1から約0.8のCIELAB b*値の内の少なくとも1つを有し、ここで、L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される。
【0123】
本開示の第1の態様または第2の態様によれば、本開示の第3の態様において、そのガラスセラミックは、約35%から約60%(酸化物のモル)のSiO2を含む。
【0124】
本開示の第1から第3の態様のいずれかによれば、本開示の第4の態様において、そのガラスセラミックは、約0.02%(質量)未満のFe2O3、および約0.5未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比の少なくとも一方をさらに含む。
【0125】
本開示の第1から第4の態様のいずれかによれば、本開示の第5の態様において、そのガラスセラミックは、約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および約2%(酸化物のモル)超のNa2Oの少なくとも一方をさらに含む。
【0126】
本開示の第1から第5の態様のいずれかによれば、本開示の第6の態様において、そのガラスセラミックは、BaOを実質的に含まず、BaOは0.01%(酸化物のモル)未満である。
【0127】
本開示の第1から第6の態様のいずれかによれば、本開示の第7の態様において、そのガラスセラミックは、少なくとも約10%(質量)の結晶化度をさらに有する。
【0128】
本開示の第1から第7の態様のいずれかによれば、本開示の第8の態様において、前記第1の結晶相は、約20nm未満の微結晶サイズによりさらに特徴付けられる。
【0129】
本開示の第1から第8の態様のいずれかによれば、本開示の第9の態様において、そのガラスセラミックは、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する。
【0130】
本開示の第1から第9の態様のいずれかによれば、本開示の第10の態様において、そのガラスセラミックは、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する。
【0131】
本開示の第1から第10の態様のいずれかによれば、本開示の第11の態様において、そのガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値の内の少なくとも1つをさらに有する。
【0132】
本開示の第1から第11の態様のいずれかによれば、本開示の第12の態様において、そのガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率の内の少なくとも1つをさらに有する。
【0133】
本開示の第1から第12の態様のいずれかによれば、本開示の第13の態様において、そのガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に関する約0.5吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、350nmの波長を有する光に関する約0.15吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、および500nmから800nmの波長を有する光に関する約0.1吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度の内の少なくとも1つをさらに有する。
【0134】
本開示の第14の態様によれば、ガラスセラミックは、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含み、このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、そのガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有し、さらに、このガラスセラミックは、約35%から約60%のSiO2、約13%から約30%のAl2O3、約0%から約20%のZnO、約0.1モル%から約10%のZrO2、および約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)を含むガラスセラミック前駆体組成物から誘導される。
【0135】
本開示の第14の態様によれば、本開示の第15の態様において、そのガラスセラミックは、約90超のCIELAB L*値、約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および約-0.1から約0.8のCIELAB b*値の内の少なくとも1つをさらに有し、ここで、L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される。
【0136】
本開示の第14または第15の態様によれば、本開示の第16の態様において、約0.02%(質量)未満のFe2O3、および約0.5未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比の少なくとも一方をさらに含む。
【0137】
本開示の第14から第16の態様のいずれかによれば、本開示の第17の態様において、約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および約2%(酸化物のモル)超のNa2Oの少なくとも一方をさらに含む。
【0138】
本開示の第14から第17の態様のいずれかによれば、本開示の第18の態様において、そのガラスセラミックは、BaOを実質的に含まず、BaOは0.01%(酸化物のモル)未満である。
【0139】
本開示の第14から第18の態様のいずれかによれば、本開示の第19の態様において、xはゼロより大きい。
【0140】
本開示の第14から第19の態様のいずれかによれば、本開示の第20の態様において、そのガラスセラミックは、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する。
【0141】
本開示の第14から第20の態様のいずれかによれば、本開示の第21の態様において、そのガラスセラミックは、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する。
【0142】
本開示の第14から第21の態様のいずれかによれば、本開示の第22の態様において、そのガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値の内の少なくとも1つをさらに有する。
【0143】
本開示の第14から第22の態様のいずれかによれば、本開示の第23の態様において、そのガラスセラミックは、300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率の内の少なくとも1つをさらに有する。
【0144】
本開示の第24の態様によれば、ガラスセラミックを製造する方法は、約35%から約60%のSiO2、約13%から約30%のAl2O3、約0%から約20%のZnO、約0.1モル%から約10%のZrO2、および約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)を含む組成物からガラスセラミック前駆体を形成する工程、およびこのガラスセラミック前駆体を加熱して、xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および正方晶ZrO2を含む第2の結晶相を含むガラスセラミック物品を形成する工程を有してなり、このガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、よって、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、このガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の透過率により特徴付けられる。
【0145】
本開示の第24の態様によれば、本開示の第25の態様において、SiO2の原材料源が、0.002%(質量)未満のFe2O3を含む。
【0146】
本開示の第24から第25の態様のいずれかによれば、本開示の第26の態様において、前記ガラスセラミック前駆体を加熱する工程は、少なくとも約30分の期間に亘り少なくとも約750℃の温度で加熱する工程を含む。
【0147】
本開示の第24から第26の態様のいずれかによれば、本開示の第27の態様において、そのガラスセラミックは、約0.02%(質量)未満のFe2O3、および約0.2未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比の少なくとも一方をさらに含む。
【0148】
本開示の第24から第27の態様のいずれかによれば、本開示の第28の態様において、そのガラスセラミック前駆体組成物は、約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および約2%(酸化物のモル)超のNa2Oの少なくとも一方をさらに含む。
【0149】
本開示の精神および様々な原理から実質的に逸脱せずに、本開示の上述した実施の形態に、多くの変更および改変が行われるであろう。そのような改変および変更の全ては、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲により保護されることが意図されている。
【0150】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0151】
実施形態1
ガラスセラミックにおいて、
xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および
正方晶ZrO2を含む第2の結晶相、
を含み、
前記ガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、
前記ガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有する、
ガラスセラミック。
【0152】
実施形態2
前記ガラスセラミックが、
約90超のCIELAB L*値、
約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および
約-0.1から約0.8のCIELAB b*値、
の内の少なくとも1つを有し、
L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される、実施形態1に記載のガラスセラミック。
【0153】
実施形態3
約35%から約60%(酸化物のモル)のSiO2、
をさらに含む、実施形態1または2に記載のガラスセラミック。
【0154】
実施形態4
約0.02%(質量)未満のFe2O3、および
約0.5未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比、
の少なくとも一方をさらに含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0155】
実施形態5
約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および
約2%(酸化物のモル)超のNa2O、
の少なくとも一方をさらに含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0156】
実施形態6
前記ガラスセラミックがBaOを実質的に含まず、BaOは0.01%(酸化物のモル)未満である、実施形態1から5のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0157】
実施形態7
前記ガラスセラミックが、少なくとも約10%(質量)の結晶化度をさらに有する、実施形態1から6のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0158】
実施形態8
前記第1の結晶相が、約20nm未満の微結晶サイズによりさらに特徴付けられる、実施形態1から7のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0159】
実施形態9
前記ガラスセラミックが、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する、実施形態1から8のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0160】
実施形態10
前記ガラスセラミックが、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0161】
実施形態11
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、
350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および
400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態1から10のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0162】
実施形態12
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、
350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、
400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、
450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および
500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態1から11のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0163】
実施形態13
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に関する約0.5吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、
350nmの波長を有する光に関する約0.15吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、および
500nmから800nmの波長を有する光に関する約0.1吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態1から12のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0164】
実施形態14
ガラスセラミックにおいて、
xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および
正方晶ZrO2を含む第2の結晶相、
を含み、
前記ガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、
前記ガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有し、
前記ガラスセラミックは、
約35%から約60%のSiO2、
約13%から約30%のAl2O3、
約0%から約20%のZnO、
約0.1モル%から約10%のZrO2、および
約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)、
を含むガラスセラミック前駆体組成物から誘導される、ガラスセラミック。
【0165】
実施形態15
前記ガラスセラミックが、
約90超のCIELAB L*値、
約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および
約-0.1から約0.8のCIELAB b*値、
の内の少なくとも1つをさらに有し、
L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される、実施形態14に記載のガラスセラミック。
【0166】
実施形態16
約0.02%(質量)未満のFe2O3、および
約0.5未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比、
の少なくとも一方をさらに含む、実施形態14または15に記載のガラスセラミック。
【0167】
実施形態17
約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および
約2%(酸化物のモル)超のNa2O、
の少なくとも一方をさらに含む、実施形態14から16のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0168】
実施形態18
前記ガラスセラミックがBaOを実質的に含まず、BaOは0.01%(酸化物のモル)未満である、実施形態14から17のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0169】
実施形態19
xがゼロより大きい、実施形態14から18のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0170】
実施形態20
前記ガラスセラミックが、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する、実施形態14から19のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0171】
実施形態21
前記ガラスセラミックが、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する、実施形態14から20のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0172】
実施形態22
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、
350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および
400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態14から21のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0173】
実施形態23
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、
350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、
400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、
450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および
500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態14から22のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0174】
実施形態24
ガラスセラミックを製造する方法において、
約35%から約60%のSiO2、
約13%から約30%のAl2O3、
約0%から約20%のZnO、
約0.1モル%から約10%のZrO2、および
約0.01%から約20%のMgO(酸化物のモル)、
を含む組成物からガラスセラミック前駆体を形成する工程、および
前記ガラスセラミック前駆体を加熱して、
xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および
正方晶ZrO2を含む第2の結晶相、
を含むガラスセラミック物品を形成する工程、
を有してなり、
前記ガラスセラミックは、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムを実質的に含まず、よって、ヒ素、スズ、アンチモン、およびセシウムの各々は、0.01%(酸化物のモル)未満でしか存在せず、
前記ガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の透過率により特徴付けられる、方法。
【0175】
実施形態25
SiO2の原材料源が、0.002%(質量)未満のFe2O3を含む、実施形態24に記載の方法。
【0176】
実施形態26
前記ガラスセラミック前駆体を加熱する工程が、少なくとも約30分の期間に亘り少なくとも約750℃の温度で加熱する工程を含む、実施形態24または25に記載の方法。
【0177】
実施形態27
前記ガラスセラミックが、
約0.02%(質量)未満のFe2O3、および
約0.2未満の全鉄含有量(Fe2++Fe3+)に対するFe2+含有量の比、
の少なくとも一方をさらに含む、実施形態24から26のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
実施形態28
前記ガラスセラミック前駆体組成物が、
約0%から約4%(酸化物のモル)のTiO2、および
約2%(酸化物のモル)超のNa2O、
の少なくとも一方をさらに含む、実施形態24から27のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態29
ガラスセラミックにおいて、
ケイ酸塩ガラス相、
xが1以下である、(MgxZn1-x)Al2O4を含む第1の結晶相、および
正方晶ZrO2を含む第2の結晶相、
を含み、
前記ガラスセラミックは、380nmから760nmの波長を有する光に対して少なくとも約80%の透過率を有し、
前記ガラスセラミックは、
約90超のCIELAB L*値、
約-0.2から約0.2のCIELAB a*値、および
約-0.1から約0.8のCIELAB b*値、
の内の少なくとも1つを有し、
L*、a*、およびb*の各々は、380nmから760nmの波長範囲でD65光源により10度の入射角(AOI)で測定される、ガラスセラミック。
【0180】
実施形態30
前記ガラスセラミックが、少なくとも約10%(質量)の結晶化度をさらに有する、実施形態29に記載のガラスセラミック。
【0181】
実施形態31
前記第1の結晶相が、約20nm未満の微結晶サイズによりさらに特徴付けられる、実施形態29または30に記載のガラスセラミック。
【0182】
実施形態32
前記ガラスセラミックが、バーコビッチナノインデンターで測定して、約8GPaから約15GPaの最大硬度をさらに有する、実施形態29から31のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0183】
実施形態33
前記ガラスセラミックが、共鳴超音波スペクトロスコピーを使用して測定して、約90GPaから約120GPaの弾性率をさらに有する、実施形態29から32のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0184】
実施形態34
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に関する約0.7%未満のヘイズ値、
350nmの波長を有する光に関する約0.5%未満のヘイズ値、および
400nmから800nmの波長を有する光に関する約0.3%未満のヘイズ値、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態29から33のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0185】
実施形態35
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に対する少なくとも約30%の軸方向透過率、
350nmの波長を有する光に対する少なくとも約65%の軸方向透過率、
400nmの波長を有する光に対する少なくとも約80%の軸方向透過率、
450nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、および
500nmから800nmの波長を有する光に対する少なくとも約85%の軸方向透過率、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態29から34のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0186】
実施形態36
前記ガラスセラミックが、
300nmの波長を有する光に関する約0.5吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、
350nmの波長を有する光に関する約0.15吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、および
500nmから800nmの波長を有する光に関する約0.1吸光度単位/ミリメートル(任意単位/mm)未満の吸光度、
の内の少なくとも1つをさらに有する、実施形態29から35のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【符号の説明】
【0187】
100 消費者向け電子機器
102 筐体
104 前面
106 背面
108 側面
110 ディスプレイ
112 カバー基板
【国際調査報告】