(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】生理学的状態の検出のためのイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20220826BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20220826BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/33 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576644
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067755
(87)【国際公開番号】W WO2020260422
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521559049
【氏名又は名称】チエングドウ シンセンス テクノロジー カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バウアー、フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ミュイール、ディラン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127BB05
4C127FF02
4C127GG09
4C127GG16
(57)【要約】
本発明は、イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム100と、人間の検出された生理学的信号に基づいて、その人間の生理学的状態を検出するための方法とに関し、本システムは、少なくとも以下の構成要素、すなわち、生理学的信号を検出し、その生理学的信号を、その生理学的信号を示すセンサー信号112に変換するように構成及び配置された少なくとも1つのセンサー111-1と、少なくとも1つのセンサー111-1からのセンサー信号112を受信し、センサー信号112を離散イベントの少なくとも1つの時系列に変換するように構成及び配置された信号変換モジュール120と、イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク中に配置された複数の人工イベント駆動型スパイキング・ニューロン131-1、131-Nを含む人工ニューロン集団140であって、ニューロン集団140が、イベントを受信するように構成及び配置され、ニューロン集団140が、受信されたイベントに基づいて人間の生理学的状態を認識するように配置され、ニューロン集団140が、イベントの1つ又は複数の処理された時系列を与えるように構成された、人工ニューロン集団140と、ニューロン集団140からのイベントを受信し、人工ニューロン集団140から受信されたイベントは、生理学的信号が、生理学的状態を示す特徴を含むことを示すときに、トリガ信号180を出力するように配置及び構成された、状態検出モジュール150とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の検出された生理学的信号に基づいて、前記人間の生理学的状態を検出するためのイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)であって、前記イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)は、少なくとも以下の構成要素、すなわち、
- 生理学的信号を検出し、前記生理学的信号を、前記生理学的信号を示すセンサー信号(112)に変換するように構成及び配置された少なくとも1つのセンサー(111-1)と、
- 前記少なくとも1つのセンサー(111-1)からの前記センサー信号(112)を受信し、前記センサー信号(112)を離散イベントの少なくとも1つの時系列に変換するように構成及び配置された信号変換モジュール(120)であって、特に、イベントの生成が、前記システムの前記構成要素を同期させるためのグローバル同期クロックとは無関係である、信号変換モジュール(120)と、
- 人工ニューロン信号変換モジュールと、
- イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク中に配置された複数の人工イベント駆動型スパイキング・ニューロン(131-1、131-N)を含む集団(140)であって、前記ニューロン集団(140)が、イベントを受信するように構成及び配置され、前記ニューロン集団(140)が、前記受信されたイベントに基づいて前記人間の前記生理学的状態を認識するように配置された、集団(140)と、
- 前記ニューロン集団(140)からの前記イベントを受信し、前記生理学的信号が前記生理学的状態を示す特徴を含むことを、前記人工ニューロン集団(140)から受信された前記イベントが示すときに、トリガ信号(180)を出力するように配置及び構成された、状態検出モジュール(150)と
を備え、前記ニューロン集団(140)が、前記状態検出モジュール(150)にイベントの1つ又は複数の処理された時系列を与えるように構成された、イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項2】
イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)が、イベント駆動型スパイキング人工ニューロン(133-1、133-M)の少なくとも第1のレイヤを含むイベント駆動型信号拡張モジュール(130)を備え、前記信号拡張モジュール(130)が、前記信号変換モジュール(120)からのイベント(13-1、13-N)の前記少なくとも1つの時系列を受信し、ニューロン(133-1、133-M)の前記第1のレイヤによって、イベントの各時系列から離散イベント(134-1、134-M)の複数の出時系列を生成し、特に、前記複数の出時系列を前記人工ニューロン集団(140)に与えるように構成及び配置された、請求項1に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項3】
前記信号拡張モジュール(130)中のニューロン(133-1、133-M)の前記第1のレイヤがフィードフォワード構成のみにおいて配置及び構成された、請求項2に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項4】
前記ニューロン集団(140)が再帰型ニューラル・ネットワーク、特に、純再帰型ネットワークとして配置され、特に、前記ニューロン集団(140)中の前記ニューロン(131-1、131N)が、第2のレイヤ、特に、人工ニューロンのただ1つの第2のレイヤ中に配置された、請求項1から3までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項5】
前記状態検出モジュール(150)が人工ニューロン(131-1、131-N)の第3のレイヤを含み、特に、前記第3のレイヤがフィードフォワード構成のみにおいて構成及び配置され、特に、前記第3のレイヤが、イベントの前記1つ又は複数の処理された時系列から前記生理学的状態を検出するようにトレーニングされた、請求項1から4までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項6】
前記システム(100)は、前記信号変換モジュール(120)に複数のセンサー信号を与える生理学的信号を検出するように構成及び配置された複数のセンサー(111-1)を備え、特に、各センサー(111-1)は、前記複数のセンサーのうちの残りのセンサーが検出するように構成及び配置された前記生理学的信号とは異なる生理学的信号を検出するように構成及び配置された、請求項1から5までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項7】
前記システム(100)は、前記少なくとも1つの検出された生理学的信号から複数の生理学的状態を識別するように構成された、請求項1から6までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項8】
前記変換モジュール(120)によって受信された各センサー信号について、前記信号変換モジュール(120)が、イベントの少なくとも2つの時系列を生成し、特に、イベントの第1の時系列は、前記センサー信号が増加したことを示し、イベントの前記少なくとも2つの時系列のうちの第2の時系列は、前記センサー信号が低減したことを示し、前記信号変換モジュール(120)が、イベントの前記少なくとも2つの時系列を前記信号拡張モジュール(130)及び/又は前記人工ニューロン集団(140)に与えるように構成及び配置された、請求項1から7までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項9】
前記ニューロン集団(140)の前記ニューロン(131)がイベントのための入力バスを備え、前記入力バス(1310)が、各ニューロン(131)によって含まれるイベント・フィルタに接続され、前記イベント・フィルタが、前記入力バス(1310)から受信された選択されたイベントのための前記ニューロン(131)のニューロン状態を更新するように構成され、前記ニューロン(131)は、前記ニューロン(131)の前記ニューロン状態が事前定義されたしきい値を上回るか又は下回るときに、イベントを生成するように構成されたイベント生成器をさらに備える、請求項1から8までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項10】
前記ニューロン集団の各ニューロン(131)が、前記ニューロン状態の更新につながる、入来イベントの頻度に基づいて、及び/又は、前記ニューロン状態の更新につながる、前記ニューロン状態に対する入来イベントの累積効果に基づいて、前記ニューロン(131)のイベントの出力頻度を調整するように構成及び配置されたバランサ(1317)を備える、請求項9に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項11】
前記システム(100)は、外部の特にコンピュータ化されたシステム(200)に接続されているか又は接続可能であり、前記状態検出モジュール(150)が、前記外部システム(200)に前記トリガ信号(180)を与えるにように構成された、請求項1から10までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項12】
前記システム(100)は、前記少なくとも1つのセンサーからの前記センサー信号を記憶するように構成された信号ストレージ(160)を備え、生理学的状態が検出されると、前記生理学的状態を示す前記センサー信号の少なくとも一部分が前記外部システム(200)に与えられる、請求項11に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載のシステムを使用して、生理学的信号から生理学的状態を検出するための方法であって、前記方法は、
- 特に、人間からの、シミュレーションによって生成された又は前記少なくとも1つのセンサーを用いて記録された生理学的信号を与えるステップであって、前記センサーが、前記生理学的信号を示すセンサー信号を生成する、生理学的信号を与えるステップと、
- 前記信号変換モジュールを用いて、特にルベーグ変換によって、前記センサー信号を離散イベントの少なくとも1つの時系列に変換するステップと、
- イベントの前記少なくとも1つの時系列を前記ニューロン集団に与えるステップと、
- 前記ニューロン集団において、イベント駆動型様式で前記少なくとも1つの時系列を処理し、それによってイベントの少なくとも1つの処理された時系列を生成するステップと、
- イベントの前記少なくとも1つの処理された時系列を前記状態検出モジュールに与えるステップと、
- 前記状態検出モジュールにおいて、前記少なくとも1つの処理された時系列から前記生理学的状態が検出されたときに、トリガ信号を生成するステップと、
- 前記検出された生理学的状態について通知するためになど、前記トリガ信号を外部システムに与えるステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記方法は、
- 前記変換モジュールによって生成された前記少なくとも1つの時系列を前記信号拡張モジュールに与えるステップと、
- 前記信号拡張モジュールにおいて、イベントの各受信された時系列について、イベントの複数の時系列を生成し、前記複数の時系列を前記ニューロン集団に与えるステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、
- 前記少なくとも1つのセンサー信号を記録するステップと、前記生理学的状態が検出された場合、
- 前記少なくとも1つのセンサー信号の少なくとも一部分を前記外部システムに与えるステップと
をさらに含み、前記一部分が、前記検出された生理学的状態を示す前記センサー信号の一部を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出された生理学的信号に基づいて人間の生理学的状態を識別するためのイベント駆動型(event-driven)スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム、並びに生理学的状態を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの病的状態は、被験者からの測定された生理学的信号を検査することによって検出され得る。たとえば、病理学的な心臓の状態は、被験者の心臓の電気的活動によって生じた信号を検査することによって検出され得る。心筋の収縮を生じさせるために使用される電気信号を検出することができる、1つ又は複数の同時電気記録が時々使用される。代替的に、光センサー又は他のセンサーは、心臓の収縮を反映する、身体を通る血流中の圧力波を測定し得る。これらのセンサー信号は、使用されるセンサーにかかわらず、バイオグラム(biogram)と総称される。バイオグラムは、したがって、1つのセンサー信号又は複数のセンサー信号を含む。
【0003】
熟練した専門家によるセンサー信号(たとえば、ECGトレースのセット)の検査及び診断は、病的状態を診断するために重要であるが、大いに時間がかかる。この理由で、センサー信号は、しばしば、診療所又は病院において、病理学的な問題が疑われるときにのみ記録される。一方、連続監視は、病的状態が医学的に極めて重要になる前に、病的状態を潜在的に検出することができる。
【0004】
当技術分野で知られているセンサー信号分析のためのシステムは、しばしばフォンノイマン(von Neumann)型計算システムとして知られている、クロックベースの計算に依拠する。これらのシステムは、クロックベースの処理ユニットを含んでいる、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、中央処理ユニット又はCPU、画像処理ユニット又はGPU、或いはASICとして実装され得る。フォンノイマン型プロセッサは、データ及び(メモリとも呼ばれる)プログラム・ストレージとは物理的に別個の計算を実行する。フォンノイマン型プロセッサは、したがって、メモリからデータをフェッチし、メモリからプログラム命令をフェッチし、データと命令とを実行モジュール(又は「ALU:arithmetic logic unit」とも呼ばれる算術論理ユニット)に移動し、要求された計算を実行し、次いで結果をメモリに戻さなければならない。メモリとALUとの間でデータ及び命令を移動することにより重大な時間コスト及びエネルギー・コストが生じる。
【0005】
Dasら著、「Unsupervised Heart-rate Estimation in Wearables With Liquid States and A Probabilistic Readout」、ARXIV.ORG、CORNELL UNIVERSITY LIBRARY、201 OLIN LIBRARY CORNELL UNIVERSITY ITHACA、NY14853、2017年7月18日(2017-07-18)、XP081279151、001:10.1 016/J.NEUNET.2017.12.015は、人間の心拍を検出するためのシステムを開示しており、前記システムは、センサーと、センサーの検出された心拍をスパイク・イベントのストリームに符号化するためのスパイク・エンコーダと、イベントのストリーム中の心拍を検出するように構成されたスパイキング・ニューロン・ネットワークとを備える。しかしながら、スパイク符号化は、同期させられたクロックベースのシステムに基づくので、本論文において採用されている技術は、生理学的状態を示す心拍信号の形状又は信号の他の特徴の決定など、生理学的信号のより詳細な分析を可能にしない。このことは、今度は、しかしながら、センサーからの元の信号を再構成することを可能にせず、そのことは、クロックベースの手法に関連する情報の損失により、センサー信号のより詳細な分析が実行され得ないことを意味する。センサー信号のより多くの情報とより深い分析とを必要とする生理学的状態の決定は、したがって、前記システムによっては不可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dasら著、「Unsupervised Heart-rate Estimation in Wearables With Liquid States and A Probabilistic Readout」、ARXIV.ORG、CORNELL UNIVERSITY LIBRARY、201 OLIN LIBRARY CORNELL UNIVERSITY ITHACA、NY14853、2017年7月18日(2017-07-18)、XP081279151、001:10.1 016/J.NEUNET.2017.12.015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フォンノイマン型プロセッサの欠点を克服するシステムを提供すること、及び、生理学的信号の分析のためのデバイスを提供することである。本目的は、請求項1に記載の特徴を有するシステムと、請求項13に記載の特徴を有する方法とによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
有利な実施例はサブクレームに記載されている。
【0009】
請求項1によれば、人間の生理学的状態を検出し、特に、検出された生理学的信号に基づいて人間の生理学的状態を識別し、特に、人間から記録されたフォトプレチスモグラム(photoplethysmogram)信号中の病的状態を識別するためのイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システムは、少なくとも以下の構成要素、すなわち、
- 心拍、心拍数、又は心拍数変動性などの血管活動など、生理学的信号を検出し、その生理学的信号を、その生理学的信号を示す、特に電気的なセンサー信号に変換するように構成及び配置された少なくとも1つのセンサーと、
- 少なくとも1つのセンサーからのセンサー信号を受信し、特に、センサー信号、及び/又はセンサー信号の導関数などのセンサー信号の関数を、特にルベーグ(Lebesgue)サンプリングすることによって、センサー信号を、離散イベント、特にバイナリ・イベントの少なくとも1つの時系列に特に非同期的に変換するように構成及び配置された信号変換モジュールであって、特に、各イベントが、センサー信号の増加若しくは低減、及び/又はしきい値を上回ること若しくは下回ることなど、センサー信号の変化を示す、信号変換モジュールと、
- イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク中に配置された複数の人工イベント駆動型スパイキング・ニューロンを含む人工ニューロン集団であって、ニューロン集団が、イベント、特にイベントの1つ又は複数の時系列を受信するように構成及び配置され、ニューロン集団が、特に、受信されたイベントに基づいて人間の生理学的状態を認識するようにトレーニングされるように配置された人工ニューロン集団と、
- 特に、ニューロン集団からの出力バスを介して、イベント、特にイベントの1つ又は複数の時系列を受信するように配置及び構成され、特に、検出された生理学的信号のうちの少なくとも1つが、生理学的状態を示す特徴を含むことを、イベント、特にイベントの1つ又は複数の処理された時系列が示すときに、トリガ信号を出力するようにトレーニングされた、状態検出モジュールと
を備え、ニューロン集団が、状態検出モジュールにイベントの1つ又は複数の処理された時系列を与えるように構成される。
【0010】
フォンノイマン・ベースの計算とは対照的に、本発明によるシステムは、特に、ニューロン集団中の各ニューロンが基本的な計算及びメモリ・ユニットであるので、分散メモリ手法を取る。
【0011】
計算及びメモリは、したがって、ネットワーク・システムにわたって物理的に分散され、それにより、特に、データを処理することに関連する時間コスト及びエネルギー・コストが最小になる。
【0012】
さらに、本発明によるシステムは、特に、パイプライン処理を実行するように構成され、時系列からのイベントが、特にニューロン集団を含む計算パイプラインを通して徐々に移動され、各計算構成要素、すなわちニューロンが、同じ計算を、ただし異なるイベントに対して繰り返し実行する。結果として、命令をフェッチすることに関連する時間コスト及びエネルギー・コストが最小になる。
【0013】
特に、各構成要素又はモジュールは、特に、前記構成要素又はモジュールに関連するタスクのために特別に構成されたハードウェア構成要素であることに留意されたい。
【0014】
本発明によるこのシステムは、さらに、それが低電力ウェアラブル・デバイス中の実装に適合するように、フォンノイマン型システムと比較して極めて低い電力消費量と、コンパクトなサイズとを提供しながら、センサー信号の連続的なリアルタイム監視及び統合された局所分析を可能にする。
【0015】
「イベント駆動型」という用語は、イベント及び情報をクロック同期様式ではなくイベントごとに処理する、すなわち、イベントがシステムの構成要素に与えられたときに、前記構成要素が、システムの構成要素を同期させるためのグローバル同期クロックとは無関係に、イベントを処理することを開始し、特に、イベントを出力するように構成された、システムを特に指す。
【0016】
このことにより、少なくとも1つのセンサーの信号中に含まれる情報の正確な再構成、したがって、信号中の検出可能であり得る生理学的状態に関する、信号の単なる検出を超えた信号の分析が可能になる。
【0017】
本明細書の文脈における「イベント駆動型」という用語は、したがって、特に、同期イベント生成モジュールによって使用されるクロック・サイクルに依存しない、イベントの非同期生成及び処理を特に指す。
【0018】
「非同期」という用語は、いかなるクロックベース又はサイクルベースの処理もない、システムの処理方式を特に指す。たとえば、センサーからの入来信号は、信号変換モジュールによってイベントに変換され、信号変換モジュールによるイベント生成に関連付けられる時間は、タイマーによってクロックされず、又は循環させられない。
【0019】
結果として、信号変換モジュールによって生成され得るイベントの時系列から、信号の完全な情報をイベントのストリームに符号化することが可能である。クロックベースのシステムでは、ストリーム中の事前定義されたイベント間隔は、センサーからの信号の完全な情報を符号化することを可能にしない。
【0020】
本発明の別の一実施例によれば、信号変換モジュールは、信号の完全な情報がイベントのストリームに符号化されるように、少なくとも1つのセンサーの信号を変換する。
【0021】
特に、信号変換モジュールは、非同期様式でイベントを生成するように構成される。
【0022】
本発明の別の一実施例によれば、信号変換モジュールは、イベント生成が完全に非同期的であるように、非同期的動作モジュールである。
【0023】
本発明の別の一実施例によれば、人工ニューロン集団及び状態検出モジュールは、非同期様式でイベントを処理するように構成される。
【0024】
本発明の別の一実施例によれば、人工ニューロン集団及び状態検出モジュールはシステムの非同期的動作構成要素である。本発明の別の一実施例によれば、システムによって含まれるすべての構成要素は、非同期様式でイベントを処理するように構成される。
【0025】
本発明の別の一実施例によれば、システムのすべての構成要素がシステムの非同期的動作構成要素である。
【0026】
特に、イベントが構成要素によって受信されない場合、前記構成要素は、イベントが受信されるまで非アクティブのままである。
【0027】
「生理学的状態」という用語は、人間の生理学的状態を示す、特に特異的な性質を呈する状態を特に指す。
【0028】
したがって、生理学的状態は、実際に、心臓発作など、病的状態であり得るが、ワークアウト中の身体運動など、非病的状態でもあり得る。
【0029】
特に、生理学的状態を示す特徴は、形状情報、信号の周波数情報、振幅、又はそれらの任意の組合せを含み、特に、生理学的状態を示す特徴は、少なくとも1つのセンサーの信号の完全な情報に依拠する。
【0030】
センサー信号は、人間から記録されたフォトプレチスモグラム信号を含むことができるが、EEG信号、心電図(cardiogram)、又は人間において検出された他の信号をも含むことができる。
【0031】
少なくとも1つのセンサーは、生理学的信号について示すセンサー信号を出力する。そのような出力信号は、たとえば、生理学的信号のためのコーディングを行うデジタル電圧信号、又は、生理学的信号に基本的に比例するアナログ電圧信号であり得る。
【0032】
センサーは、たとえば、
- 加速度計、
- 慣性測定ユニット(IMU:inertial measurement unit)、
- フォトプレチスモグラフ(photoplethysmograph)など、光学センサー、
- EEG
のうちの少なくとも1つであり得る。
【0033】
信号変換モジュールは、少なくとも1つのセンサー信号の和又は差を計算するように構成された計算要素を含み得る。特に、信号変換モジュールは、各々が、特に複数のセンサーからのセンサー信号を受信し、そのセンサー信号をイベントの複数の時系列に変換するように構成された、1つ又は複数の信号変換ユニットを備える。
【0034】
信号変換モジュール、特に各信号変換ユニットは、センサー信号をイベントの1つ又は複数の時系列に変換するように構成され得、特に、イベントの時系列は、センサー信号の増加又は低減を検出することによって生成され、センサー信号の増加又は低減が検出されるたびに、変換モジュール、特に変換ユニットによってイベントが生成される。
【0035】
各信号変換ユニットは、イベントへの変換の前にセンサー信号をフィルタ処理するための同調可能なバンドパス・フィルタをさらに含み得、すなわち、変換はセンサー信号の関数に基づく。
【0036】
「ルベーグ・サンプリング」という用語は、サンプリング時間が、サンプリングされるべきセンサー信号に依存する、信号のための不均一の、特に、非周期的なサンプリング方式を特に指す。ルベーグ・サンプリングは、センサー信号が複数の事前定義された信号レベルのうちの1つを横切るたびに、センサー信号がサンプリングされることを特徴とする、信号レベルトリガ型サンプリング方法である。したがって、信号の情報は、生成されるイベントの頻度において、より正確には、イベント間の時間間隔において符号化される。
【0037】
サンプリングされる、すなわち、変換されるセンサー信号は、特にバイナリ信号であり、それにより送信帯域幅が縮小する。
【0038】
人工ニューロン集団中に含まれるニューロンは、イベント駆動型ニューロンであり、本明細書の文脈ではニューロン・デバイスとも呼ばれる。
【0039】
各ニューロンは、システムによって含まれるイベント・バスを介して、イベントの少なくとも1つの時系列からのイベントを受信し得る。
【0040】
特に、イベントの複数の時系列が人工ニューロン集団によって受信された場合、各ニューロンは、どのイベント、特にどの時系列が前記ニューロンによって処理されるべきであるか、すなわち、どのイベントがニューロンのニューロン状態を変更し得るかを示す、アドレスのリストをさらに含み得る。ニューロンのニューロン状態は、特に、ニューロン中に記憶されたイベント駆動型の値であるが、連続的に更新されるアナログ又はデジタル値でもあり得る。
【0041】
リストの各アドレスは、ニューロンがイベントを発する可能性を増加又は減少させること、すなわち、ニューロン状態を増加又は低減させること、及び、特に、イベントがニューロンに及ぼす影響の強さ、すなわち、イベントを発する可能性がどの程度まで増加又は減少するか、すなわち、ニューロン状態が、イベントに応答してどのくらい変更されるかに関して、時系列のイベントが、ニューロン、特にニューロン状態に正の影響を及ぼすのか負の影響を及ぼすのかに関する情報に関連付けられ得る。
【0042】
人工ニューロン集団中に含まれるニューロンは、受信されたイベントの加算をさらに実装し得、しきい値条件が満たされたときに、出力イベントを発し得る。この加算によりニューロン状態が変更される。
【0043】
イベント駆動型人工ニューロン集団は複数のイベント駆動型ニューロンを含み、ニューロンは、本明細書の文脈ではイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワークとも呼ばれる、コネクティビティ・ネットワーク中に構成される。コネクティビティ・ネットワークは、イベント駆動型ニューロン集団中のニューロン内及びニューロン間の接続を含み得る。
【0044】
本発明の別の一実施例によれば、イベント駆動型人工ニューロン集団は、入力バスに接続され、前記入力バスを介して、イベントの少なくとも1つの時系列からのイベントを受信するように構成される。
【0045】
さらに、本発明の別の一実施例によれば、人工ニューロン集団は、出力バスに接続され、前記イベント出力バスを介して、ニューロンによって生成されたイベントを送るように構成され、特に、処理された時系列は前記出力バスを介して送られる。
【0046】
本発明のまた別の一実施例によれば、人工ニューロン集団は、内部バスと相互接続され、前記内部バスを介して、生成されたイベントを送り、分配するように構成される。
【0047】
特に、内部バスは、再帰型(recurrent)ネットワーク構成をもつニューロン集団を与えるために働く。
【0048】
代替的に、本発明の別の一実施例によれば、入力バス、内部バス、及び/又は出力バスは、単一のバス中に含まれ、前記単一のバスを共有している。
【0049】
バス及びイベントの時系列はいくつかの方法で実装され得る。たとえば、イベントの各時系列は独立した信号経路として実装され得る。
【0050】
代替的に、各時系列は、バス上でシグナリングされるべきアドレスに関連付けられ得、各時系列は、その場合、共有バスとして働く。バスは、その場合、多重化されたデータ・バスとして実装され得、他のデバイスは、多重化されたバス上の適切なアドレスをリッスンする。
【0051】
本発明の別の一実施例によれば、ニューロン集団は、特に、生理学的信号が、生理学的状態を示す特徴を含むかどうかを決定するために、状態検出モジュールが検出することを可能にする複数のイベントを含む、動的状態を生成することによって、生理学的状態を認識する。
【0052】
状態検出モジュールは1つ又は複数のニューロンを含み得、それらのニューロンの各々は、1つ又は複数のセンサー信号中の特定の生理学的状態の検出に関連付けられる。
【0053】
これらの生理学的状態は、病理学的な又は名目上の医学的状態の存在をシグナリングするか、或いは、前に詳述した注目する他の状態の存在をシグナリングし得る。
【0054】
状態検出モジュールによって送られたトリガ信号は、特に、検出された生理学的状態の検出及び特性を外部システムに示す。
【0055】
トリガ信号は、検出された生理学的状態の発生を外部システムにシグナリングするように特に設計される。
【0056】
本発明の別の一実施例によれば、イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システムは、イベント駆動型スパイキング人工ニューロンの少なくとも第1のレイヤを含むイベント駆動型信号拡張モジュールを備え、信号拡張モジュールは、信号変換モジュールからのイベント、特にイベントの少なくとも1つの時系列を受信し、入来イベントを処理するニューロンの第1のレイヤによって、たとえば異なるセンサーからの各イベントから、特にイベントの各入時系列から、複数の発信イベント、特にイベントの複数の出時系列を生成し、特に、複数の発信イベント、又はイベントの時系列を人工ニューロン集団に与えるように構成及び配置される。
【0057】
「レイヤ」という用語は、当業者によって理解されるように、人工ニューラル・ネットワーク中のレイヤを表す少なくとも1つの電子回路を特に指す。
【0058】
本発明の別の一実施例によれば、拡張モジュールは、非同期様式でイベントを処理するように構成される。
【0059】
本発明の別の一実施例によれば、拡張モジュールはシステムの非同期的動作構成要素である。
【0060】
イベント駆動型信号拡張モジュールは、変換モジュールから受信されたイベントの1つ又は複数の時系列を処理し、これらを複数の出時系列に構成し得る。複数の時系列は、特に、入力バスを介して人工ニューロン集団に送られる。人工ニューロン集団において、イベント、特にイベントの時系列は、特に、前に詳述したように、さらなる処理のためにニューロンにアドレス・リストによってルーティングされる。
【0061】
したがって、イベントの選択された時系列中に含まれるイベントは、特にアドレス・リストによって、1つ又は複数のイベント駆動型ニューロンに利用可能にされ得る。各イベント駆動型ニューロンは、組み合わせられて処理された時系列になり得る、イベント、又はイベントの時系列を生成し得る。
【0062】
本発明の別の一実施例によれば、信号拡張モジュール中のニューロンの第1のレイヤはフィードフォワード構成のみにおいて配置及び構成される。
【0063】
本実施例によれば、イベントの処理は、厳密にフィードフォワード様式で行われ、すなわち、第1のレイヤによって処理されたイベントは、第1のレイヤにフィードバックされず、人工ニューロン集団に与えられる。したがって、第1のレイヤは再帰型レイヤとして構成されない。
【0064】
本発明の別の一実施例によれば、人工ニューロン集団は、再帰型ニューラル・ネットワーク、特に、純再帰型ネットワークとして配置され、特に、ニューロン集団中のニューロンは、第2のレイヤ中、特に、人工ニューロンのただ1つの第2のレイヤ中に配置される。この実施例は、本システムに効率的なネットワーク構造を与える。
【0065】
本発明の別の一実施例によれば、状態検出モジュールは人工ニューロンの第3のレイヤを含み、特に、第3のレイヤはフィードフォワード構成のみにおいて配置及び構成される。
【0066】
第3のレイヤは、本システムが生理的状態を選択的に認識するように構成されるように、本システムの動作のために特に必要とされる。
【0067】
本発明の別の一実施例によれば、第3のレイヤは、人工ニューロン集団から受信されたイベントから、特に、イベントの複数の処理された時系列から生理学的状態を検出するようにトレーニングされる。
【0068】
本発明の別の一実施例によれば、本システムは、信号変換モジュールに複数のセンサー信号を与える生理学的信号を検出するための複数のセンサーを備え、特に、各センサーは、複数のセンサーのうちの残りのセンサーが検出するように構成及び配置された生理学的信号とは異なる生理学的信号を検出するように構成及び配置される。
【0069】
この実施例では、人間から収集された複数の生理学的信号を監視することが可能であり、それにより、本システムは生理学的状態検出のためにより敏感でロバストになる。
【0070】
その上、この実施例は、複数のタイプの分析を同時に実行することを可能にする。たとえば、慣性センサーからの歩行認識と同時に、PPGセンサーからの心拍分析を実行する。
【0071】
特に、1つのセンサーが故障した場合、この実施例によるシステムは、残りのセンサーによって検出された信号によって与えられる冗長性により、依然として動作可能である。
【0072】
本発明の別の一実施例によれば、本システムは、少なくとも1つの検出された生理学的信号から複数の生理学的状態を識別するように構成される。
【0073】
この実施例は、多種多様な適用例を可能にする。特に、本実施例によれば、人工ニューロン集団は複数のニューロン・ユニットを含み、各ユニットは、異なる生理学的状態についてのイベント、又はイベントの時系列を処理するようにトレーニングされる。
【0074】
本発明の別の一実施例によれば、信号変換モジュール、信号拡張モジュール、人工ニューロン集団、及び/又は状態検出モジュールは、単一の、特にウェアラブルの、特にバッテリー駆動型デバイス中に含まれる。
【0075】
この実施例は、生理学的状態の検出を可能にするコンパクトなデバイスを提供する。
【0076】
本発明の別の一実施例によれば、少なくとも1つのセンサーは、人間の血管活動からプレチスモグラム信号を生成するように構成された光学センサーである。
【0077】
光学センサーは、非侵襲的検出機能を与え、心拍数又はパルスなど、生理学的信号を確実に監視する。
【0078】
本発明の別の一実施例によれば、特に、信号変換モジュールは、少なくとも1つのセンサーから信号変換モジュールにセンサー信号を送信するように構成及び配置された変換モジュール入力バスを備え、特に、変換モジュール入力バスはセンサーを変換モジュールに接続し、変換モジュールによって受信された各センサー信号について、信号変換モジュールは、イベントの2つの時系列を生成し、特に、イベントの2つの時系列のうちの第1の時系列は、センサー信号が増加したことを示し、イベントの2つの時系列のうちの第2の時系列は、センサー信号が低減したことを示し、信号変換モジュールは、イベントの少なくとも2つの時系列を信号拡張モジュール及び/又は人工ニューロン集団に与えるように構成及び配置される。
【0079】
本発明の別の一実施例によれば、ニューロン集団のニューロンはイベントのための入力バスを備え、入力バスは、各ニューロンによって含まれるイベント・フィルタに接続され、イベント・フィルタは、入力バスから受信された選択されたイベントのためのニューロンのニューロン状態を更新するように構成され、ニューロンは、ニューロンのニューロン状態が事前定義されたしきい値を上回るか又は下回るときに、イベントを生成するように構成されたイベント生成器をさらに備える。
【0080】
入力バスのいくつかの実施例及び特徴は本明細書中の前述の実施例において詳述されている。
【0081】
イベント・フィルタは、前記ニューロンによって処理されるべきである時系列のイベントの選択が達成されるように、アドレス・リストを特に含む。
【0082】
たとえば、イベント・フィルタが、ニューロンによって処理されるべきであるイベントを識別した場合、前記イベントは、特にニューロン状態を変更する。イベント生成器はニューロンのニューロン状態を監視し、変更されたニューロン状態が事前定義された又はトレーニングされたしきい値を上回るか又は下回る場合、イベント生成器はイベントを生成する。前記イベントは、次いで、ニューロン集団中の他のニューロンによってさらに処理される(たとえば内部バス・ルーティング)か、又は、状態検出モジュールに送られる(たとえば出力バス・ルーティング)。
【0083】
本発明の別の一実施例によれば、ニューロン集団の各ニューロンは、ニューロン状態の更新につながる、入来イベントの頻度に基づいて、及び/又は、ニューロン状態の更新につながる、ニューロン状態に対する入来イベントの累積効果に基づいて、ニューロンのイベントの出力頻度を調整するように構成及び配置されたバランサを備える。
【0084】
これにより、本システムは、よりロバストになり、ニューロン活動オーバーフローを防ぐことが可能になる。
【0085】
本発明の別の一実施例によれば、状態検出モジュールは、トリガ信号を生成するように構成されたトリガ・ユニットを備え、トリガ・ユニットは、検出された生理学的状態の識別を行うためになど、検出された生理学的状態についての情報を与えるように構成される。
【0086】
本発明の別の一実施例によれば、本システムは、外部の特にコンピュータ化されたシステムに接続されるか又は接続可能であり、状態検出モジュールは、トリガ信号を外部システムに与えるように構成される。
【0087】
そのような外部のコンピュータ化されたシステムは、スマート・ウォッチなどのスマート・デバイス、病院などの医療施設の中央コンピュータを含み得る。
【0088】
特に、中央コンピュータは、生理学的状態についてのトリガ信号が受信された場合、医療従事者に通知するように構成される。
【0089】
本発明の別の一実施例によれば、本システムは、複数のセンサー信号からのセンサー信号、それぞれ、少なくとも1つのセンサーからのセンサー信号を記憶するように構成された信号ストレージを備え、生理学的状態が検出されると、生理学的状態を示すセンサー信号の一部分が外部システムに与えられる。
【0090】
この実施例により、当業者は、たとえば、検出された生理学的状態の検証のために、センサー信号部分を再評価することが可能になる。
【0091】
信号ストレージは、記録バッファとして特に構成され、センサー信号の少なくとも一部分の記録を保持し得る。このバッファは、それがいくつかの事前定義された時間期間にわたってセンサー信号の最新の部分の記録を常に含んでいるように、常に更新され得る。記録バッファは、さらに、現在記録されているセンサー信号を戻すために、外部システムによって照会され得る。代替的に、記録バッファは、現在記録されているセンサー信号を外部システムに送るために状態検出モジュールによって制御され得る。
【0092】
「コンピュータ化されたシステム」という用語又は同様の用語は、1つ又は複数のプログラムに従って動作可能であるか又は動作する1つ又は複数のプロセッサを備える装置を示す。本発明によるシステムは一般にイベント駆動型ニューロン・システムに関するが、前記システムは通常のコンピュータ化されたシステム又はコンピュータに接続され得る。
【0093】
適用可能な場合、「コンピュータ」という用語又はそれのシステムは、特に、そのようなコンピュータがシステムの外部デバイスであるとき、場合によっては、メモリ又は通信ポートなど、追加の要素を含む、汎用プロセッサ若しくはマイクロプロセッサ、RISCプロセッサ、又はDSPなど、当技術分野の通常のコンテキストとして本明細書で使用される。随意に又はさらに、「コンピュータ」という用語又はそれの派生語は、与えられた若しくは組み込まれたプログラムを実行することが可能であり、並びに/又は、データ記憶装置、及び/若しくは、入力及び出力ポートなど、他の装置を制御すること及び/若しくはそれらにアクセスすることが可能である装置を示す。「コンピュータ」という用語は、接続された、及び/又はリンクされた、及び/又は別様に通信する、場合によっては、メモリなど、1つ又は複数の他のリソースを共有する、複数のプロセッサ又はコンピュータをも示す。
【0094】
本発明に記載の問題は、さらに、特に本発明によるシステムを使用して、生理学的信号から生理学的状態を検出するための方法によって解決され、本方法は、
- 特に、人間からの、シミュレーションによって生成された又は少なくとも1つのセンサーを用いて記録された生理学的信号を与えるステップであって、センサーが、生理学的信号を示すセンサー信号を生成する、生理学的信号を与えるステップと、
- 信号変換モジュールを用いて、特にルベーグ変換によって、センサー信号を離散イベントの少なくとも1つの時系列に変換するステップと、
- イベントの少なくとも1つの時系列をニューロン集団に与えるステップと、
- ニューロン集団において、イベント駆動型様式で少なくとも1つの時系列からのイベントを処理するステップであって、少なくとも1つの処理された時系列が人工ニューロン集団によって生成される、少なくとも1つの時系列からのイベントを処理するステップと、
- 処理された時系列のイベントを状態検出モジュールに与えるステップと、
- 状態検出モジュールにおいて、処理された時系列から生理学的状態が検出されたときに、トリガ信号を生成するステップと、
- 検出された生理学的状態について通知するためになど、トリガ信号を外部システムに与えるステップと
を含む。
【0095】
本発明による方法はコンピュータ実装方法であり得る。
【0096】
本発明によるシステムについて開示及び定義された特徴の用語及び定義は、対応する様式で方法に適用し、本発明による方法について開示及び定義された特徴の用語及び定義は、対応する様式でシステムに適用する。
【0097】
本方法及び本システムは、スマート・ウォッチなどのスマート・デバイスに少なくとも部分的に実装され得る。本方法は、その場合、スマート・デバイスを携帯している人間に警告し、センサー信号、すなわち、センサー信号、特に、検出された生理学的状態を含む部分を記憶させ、並びに/又は、検出された生理学的状態の統計を収集及び/若しくは表示し得る。
【0098】
本方法及び本システムはまた、医療施設における患者のヘルス・ケアのためのウェアラブル・デバイス中に少なくとも部分的に実装され得る。本方法は、その場合、医療上の警告を発し、及び/又は、診断のためにセンサー信号を医療従事者に送り得る。さらに、本方法は、後の診断のためにセンサー信号を記憶し、生理学的状態の統計を収集し得る。
【0099】
本方法の別の一実施例によれば、本方法は、
- 変換モジュールによって生成された少なくとも1つの時系列を信号拡張モジュールに与えるステップと、
- 信号拡張モジュールにおいて、イベントの各受信された時系列について、イベントの複数の時系列を生成し、前記複数の時系列をニューロン集団に与えるステップと
をさらに含む。
【0100】
本方法のまた別の一実施例によれば、本方法は、
- 少なくとも1つのセンサー信号を記録するステップと、生理学的状態が検出された場合、
- 少なくとも1つのセンサー信号の少なくとも一部分を外部システムに与えるステップと
をさらに含み、シーケンスは、検出された生理学的状態を示すセンサー信号部分を含む。
【0101】
問題は、さらに、コンピュータ化されたデバイス上で実行されたとき、デバイスにコンピュータ実装可能な方法ステップを実行させるコンピュータ・プログラム・コードを含むコンピュータ・プログラムによって解決される。
【0102】
特に、例示的な実施例について図とともに以下で説明する。図は、特許請求の範囲に添付され、示されている実施例の個々の特徴と本発明の態様とを説明するテキストを伴う。図に示され、及び/又は図の前記テキスト中で述べられている各個々の特徴は、本発明によるデバイスに関係する請求項中に(分離された様式でも)組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】本発明によるイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム、及び外部システムとのそれの対話の概略図を示す図である。
【
図2】信号変換モジュールの概略図を示す図である。
【
図4】信号拡張モジュールの概略図を示す図である。
【
図6】イベント駆動型ニューロン集団の概略図を示す図である。
【
図7】状態検出モジュールの概略図を示す図である。
【
図8】記録されたセンサー信号中の病理学的又は他の生理学的状態を検出するための方法のためのフローチャートを示す図である。
【
図9】イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システムを構成するための方法を示す図である。
【
図10】センサー信号と生理学的状態の検出とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
図1は、生理学的信号中の病理学的又は他の状態を検出するためのイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム100を概略的に示す。生理学的信号は、検出された生理学的信号をセンサー信号に変換する1つ又は複数のセンサーによって検出され、これらのセンサー信号は総称してバイオグラムとも呼ばれる。
【0105】
システム100は、生体信号感知ユニット110と、信号変換モジュール120と、信号拡張モジュール130と、イベント駆動型人工ニューロン集団140と、状態検出モジュール150と、記録バッファ160とを含む。
【0106】
システム100は、検出された状態についての情報170を送ることによって、及び/又は、生理学的状態が検出されたことを示す1つ又は複数のトリガ信号180を送ることによって、外部システム200と通信するように構成される。システム100はまた、記録されたバイオグラム(すなわち記録されたセンサー信号)161又はそれの一部分を外部システム200に伝達し得る。
【0107】
外部システム200は、たとえば、記録されたセンサー信号161又はそれの一部分を送信させるために、システム100の動作を制御するために制御及び構成信号210を送り得る。
【0108】
生体信号感知ユニット110は、明細書の文脈において感知デバイスとも呼ばれる、いくつかのセンサー111-1...111-Nを含んでいることがある。これらの感知デバイス111の各々は、いくつかの生理学的信号、たとえば、(一般的に「ECG」又は「EKG」として知られている)心拍によって生じる電圧変化、又は血液酸素化レベルを検出する。
【0109】
各感知デバイス111は、(特に電気波形信号の形態における)センサー信号112を信号変換モジュール120に送り得、また、センサー信号112のコピーを、記録バッファ160として形成され得る信号ストレージに送り得る。
【0110】
図2は、信号変換モジュール120の概略的な一実施例を示す。
【0111】
信号変換モジュール120は、センサー111-1...111-Nからのセンサー信号112-1...112-Nを受信し得る。
【0112】
信号変換モジュール120は、2つ以上のセンサー信号112間の和又は差を計算するように構成された、いくつかの信号組合せユニット121-1...121-Mをさらに含み得る。
【0113】
信号変換モジュール120は、受信されたセンサー信号をバイナリ・デジタル・イベントの1つ又は複数の時系列に変換する、いくつかの信号変換ユニット122-1...122-Lをさらに含み得る。イベントの時系列は、バイナリ値のみをとるデジタル信号である。イベントの時系列はイベント・ストリームとも呼ばれる。
【0114】
各信号変換ユニットは、イベント・ストリームのシリーズをイベント・バス122-1...122-Lとして出力し得る。
【0115】
信号変換モジュール120は、代替的に、信号組合せユニット121-1...121-Mなしに、又は、信号組合せユニットをバイパスするオプションとともに実装され得る。
【0116】
【0117】
変換モジュール120によって含まれる信号変換ユニットは、組合せユニット121-1...121-Mによって処理されたセンサー信号又は処理されていないセンサー信号112-1、...112-Nであり得る、入力信号1220を受信し得る。センサー信号のような入力信号は、アナログ波形、たとえばアナログ電圧信号であり得る。
【0118】
信号変換ユニット122は、入力信号1220の特定の周波数帯域を増幅又は抑制し得る、同調可能なバンドパス・フィルタ1221をさらに含んでいることがある。別の一実施例では、バンドパス・フィルタはバイパスされ得、その場合、それは入力信号1220を修正しない。また別の一実装形態では、隣接する信号変換ユニットからのバンドパス・フィルタは、入力信号1220のフィルタ処理を容易にするために信号12211及び12212を使用して接続され得る。
【0119】
信号変換ユニット122は、入力信号1220がしきい値を上回った又は下回ったときをシグナリングし得る、比較器1222-1及び1222-2をさらに含み得る。
【0120】
信号変換ユニット122は、比較のための基準値を維持するデバイス1223をさらに含み得る。基準値1223は、ステップ値1224の加算又は減算を用いて、バンドパス・フィルタ1221によって出力された現在値に対して比較される。ステップ値1224は、加算1225-1又は減算1225-2によってバンドパス・フィルタ1221からの信号と組み合わせられる。
【0121】
一方の比較器1222-1は、したがって、フィルタ処理された入力信号1221が電流基準値1223を固定ステップ1224だけ上回って増加したときを検出することによって動作し得る。
【0122】
比較器は、イベントを生成し、そのイベントを第1のイベント・ストリーム1226-1中に放出することによって応答し得る。比較器1222-1がイベントを放出したとき、基準値1223は、それの記憶された値をステップ値1224だけ増加させ得る。
【0123】
同様に、他方の比較器ユニット1222-2は、フィルタ処理された入力信号1221が電流基準値1223を固定ステップ1224だけ下回って低減したときを検出することによって動作し得る。比較器は、イベントを生成し、そのイベントを第2のイベント・ストリーム1225-2中に放出することによって応答し得る。
【0124】
比較器1222-2がイベントを放出したとき、基準値1223は、それの記憶された値をステップ値1222だけ減少させ得る。
【0125】
第1のイベント・ストリーム1225-1中のイベントは、したがって、フィルタ処理された入力信号の増加をシグナリングし得る。同様に、第2のイベント・ストリーム1225-2中のイベントは、したがって、フィルタ処理された入力信号の減少をシグナリングし得る。
【0126】
別の一実施例では、比較器1222-1及び1222-2は個々のステップ値1224にそれぞれひも付けられ得る。
【0127】
別の一実施例では、比較器1222-1及び1222-2は、積分されたフィルタ処理された信号1221がしきい値を通過したときに、イベントが生成され、放出されるように、リーキー積分器(leaky integrator)をもつデバイスによって置き換えられ得る。
【0128】
【0129】
信号拡張モジュール130は、組み合わせられてすべての入力イベント・ストリームを含むイベント・バス132になる、イベントの入時系列とも呼ばれる、いくつかの入力イベント・ストリーム13-1...13-Nを受信し得る。
【0130】
信号拡張モジュール130は、ニューロン・デバイス133-1...133-Mとも呼ばれるいくつかのイベント駆動型ニューロンをさらに含み得、ニューロン・デバイス133-1...133-Mの各々はイベント・バス132からの入力を受信し、ニューロン・デバイス133-1...133-Mの各々は、本明細書ではイベントの出時系列とも呼ばれる出力イベント・ストリーム133-1...133-Mを生成し得る。
【0131】
図5はイベント駆動型ニューロン・デバイス131の一実施例を示す。
【0132】
イベント駆動型ニューロン・デバイス131は、いくつかのイベント・ストリーム1310-1...1310-Nを含み得るイベント・バス1310を入力として受信し得る。
【0133】
イベント駆動型ニューロン・デバイス131は、構成可能なイベント・フィルタ1311と、ニューロンの現在の状態を維持する状態ユニット1314と、スパイク生成ユニット1315と、バランサ・ユニット1317とをさらに備え得る。
【0134】
構成可能なイベント・フィルタ1311は、(アドレス1312-1...1312-Mを含む)アドレスのリスト1312を含んでいることがある。構成可能なイベント・フィルタは、アドレス・リスト1312中に含まれるアドレスにそれぞれ関連付けられる、1313-1...1313-Mと番号付けされたアドレス関連構成のリスト1313をさらに含んでいることがある。アドレスのリスト1312は、イベント・バス1310中のイベント・ストリームに対応するアドレスを保持し得る。
【0135】
構成可能なイベント・フィルタ1311はイベント・バス1310を連続的に監視し得る。
【0136】
アドレス・リスト1312によって含まれるアドレス1312-1...1312-Mに一致するイベントがイベント・ストリーム上で発生したとき、イベント・フィルタ1311はニューロン1314の現在の状態を更新する。アドレスがイベントに一致する場合、対応する関連付けられた構成が使用される。
【0137】
使用される構成は、イベント・フィルタ1311に様々な方法でニューロン状態1314を更新させ得る。たとえば、イベント・フィルタは、単に、指定された値をすぐに加算するか又はニューロン状態から減算し得る。別の一実施例では、イベント・フィルタ1311は、事前定義された時間関数に従って、時間とともに変化する値の加算又は減算を引き起こし得る。別の一実施例では、イベント・フィルタ1311は、現在のニューロン状態1314に比例する値を加算又は減算し得る。
【0138】
ニューロン状態1314は様々な方法で実装され得る。一実施例では、ニューロン状態は、記憶されたアナログ又はデジタル値からなる。別の一実施例では、ニューロン状態1314は、連続的な減算又は小さい数の乗算によって時間とともに減少し得る。同様に、ニューロン状態1314は時間とともに増加し得る。
【0139】
イベント駆動型ニューロンはイベント生成ユニット1315をさらに含み得る。イベント生成ユニットは、ニューロン1314の現在の状態が事前定義されたしきい値を通過したとき、イベントを生成し、放出し得る。イベント生成ユニットは出力イベント・ストリーム1318中にイベントを放出し得る。一実装形態では、出力イベント1316も現在のニューロン状態1314を修正し得る。
【0140】
たとえば、出力イベント1316は、事前定義された値への現在の状態のリセットを引き起こし得る。別の一実施例では、出力イベント1316は、事前定義された値だけのニューロン状態1314の減算を引き起こし得る。
【0141】
別の実施例では、イベント駆動型ニューロン131は、出力イベント1316が放出されると、ニューロンが、「不応期(refractory period)」として知られている時間期間中、さらなる出力イベントを放出しないように構成され得る。
【0142】
イベント駆動型ニューロンはバランサ1317をさらに含み得る。バランサ・ユニットは、イベント生成ユニット1315からのイベントを受信し、イベント・フィルタ1311の動作を修正し得る。一実施例では、バランサ1317は構成リスト1313中の構成を修正し得る。たとえば、バランサは、ニューロン状態1314を修正するために使用される値の弱化又は強化を引き起こし得る。
【0143】
別の一実施例では、バランサ1317は、イベント生成ユニット1315の作動を修正するためにイベント生成ユニット1315に信号1318を送り得る。たとえば、バランサ1317は、イベントを放出するためにイベント生成ユニット1315によって使用されるしきい値を上げる又は下げるか、或いは、ニューロンの不応期を修正し得る。
【0144】
バランサ1317は、出力イベント1316をカウントすることと、出力イベントのレートが平均して一定のままであることを保証するように試みることとによって動作し得る。別の一実施例では、バランサは、ニューロン状態1314を監視することと、ニューロン状態が平均して一定のままであることを保証するように試みることとによって動作し得る。別の一実施例では、バランサ1317は、イベント・フィルタ1311を監視し、ニューロン状態1314に対するイベント・フィルタの総合効果が平均して一定のままであることを保証するように試み得る。別の一実施例では、バランサは、イベント・フィルタの出力が平均して一定のままであることを保証し得る。
【0145】
図6はイベント駆動型ニューロン集団140の一実施例を示す。
【0146】
イベント駆動型ニューロン集団140は、入力イベント・バスとも呼ばれる、イベントのための入力バス141と、いくつかのイベント駆動型ニューロン・デバイス131-1...131-Nと、内部イベント・バスとも呼ばれる、イベントのための内部バス142と、出力イベント・バスとも呼ばれる、イベントのための出力バス143とからなり得る。
【0147】
イベント駆動型ニューロン・デバイス131の実施例は前の段落で詳述されている。
【0148】
イベント駆動型ニューロン131は、入力イベント・バス141から入力イベントを受信し、出力イベント・バス143に出力イベントを送り得る。イベント駆動型ニューロン131はまた、それらの出力イベントを内部イベント・バス142にコピーし得る。ニューロン131はまた、ニューロン集団131が集団中の他のユニットからのイベントに応答し得るように、内部イベント・バス142からの入力を受信し得る。
【0149】
【0150】
状態検出モジュールは、入力イベント・バス151と、各ニューロン・デバイスが131-1...131-Nと番号付けされた、イベント駆動型ニューロン・デバイス131-1...131-Nのセット152と、トリガ生成ユニット153と、内部イベント・バス154と、検出された状態についての情報155を搬送するように構成された出力バスと、トリガ信号156を搬送するように構成された出力バスとからなり得る。状態検出モジュールは、外部システム200と通信するようにさらに構成され得る。
【0151】
イベント駆動型ニューロン・デバイスのセット152は、入力イベント・バス151から入力イベントを受信し、内部イベント・バス154に出力イベントを送る。ニューロンのセットは、各ニューロンが入力センサー信号112中の状態に対応するように構成され得る(たとえば
図2を参照のこと。)。そのような実施例の下では、各ニューロンからのイベントは、対応する状態が入力センサー信号112中に検出されたことを示すであろう。
【0152】
別の実施例では、152中の複数のニューロンが入力センサー信号112中の1つの状態に対応し得る。そのような実施例の下では、前記複数のニューロンからのイベントは、対応する状態が検出されたことを示すであろう。
【0153】
別の実施例では、152中のニューロンは、入力センサー信号152中の1つの状態に対応し得るが、状態の検出の肯定又は否定のいずれかのエビデンスをシグナリングし得る。そのような実施例の下では、前記複数のニューロンからのイベントは、対応する状態の検出のための肯定的エビデンスを示し得、他のニューロンからのイベントは、対応する状態の検出の否定のエビデンスをシグナリングし得る。
【0154】
別の実施例では、152中のニューロンは、それぞれ1つ又は複数のニューロンからなるいくつかの「レイヤ」中に、レイヤ内及びレイヤ間の接続とともに配置され得る。この実装形態では、最終レイヤの出力は内部イベント・バス154上にイベントを放出し得る。
【0155】
状態検出モジュール150はトリガ生成ユニット153をさらに含み得る。
【0156】
トリガ生成ユニットは、内部イベント・バス154からの入力を受信し、検出された状態についての情報155を示す信号、並びにトリガ信号156を生成し得る。
【0157】
トリガ生成ユニット153は、入力センサー信号112中の状態の検出をシグナリングする、内部イベント・バス154上のイベントを待つことによって動作し得る。状態が検出されたとき、トリガ生成ユニット154は、たとえば、信号線の電圧を上げること又は下げることによって、外部システム200にトリガ信号を送り得る。トリガ生成ユニットはまた、状態情報バス上の検出された状態についての情報155を外部システム200に送り得る。
【0158】
トリガ生成ユニット153は、イベント駆動型ニューロン・デバイス152のうちの1つがイベントを放出するとすぐに、トリガを送り得る。別の実施例では、トリガ検出ユニットは、ニューロン152からのイベントを、検出のためのあらかじめ定義されたしきい値に達するまで積分し、次いで、トリガ信号を送り得る。別の実施例では、トリガ生成ユニット153は、積分の前に、内部イベント・バス154上のイベントの時間フィルタ処理を実行し得る。別の実施例では、トリガ生成ユニット153は、セット152中のイベント駆動型ニューロン・デバイスによってシグナリングされた、状態の検出の肯定及び否定のエビデンスを収集し得る。
【0159】
別の実施例では、トリガ生成ユニット153は、その状態を検出したことを肯定するエビデンスの現在の重みを示す、各可能な状態についての値を維持し得る。この実施例では、トリガ生成ユニットは、1つの状態についての最も高い値がすべての他の状態についての値よりも十分に高い、たとえば10倍高いときに、トリガ信号156を送り得る。別の実施例では、トリガ信号を生成するためのしきい値を評価する前に、ソフトマックス(soft-max)などの演算が状態値のセットにわたって実行され得る。
【0160】
トリガ生成ユニット153は、さらに、外部システム200に状態情報155を送り得る。一実施例では、状態情報は、検出された状態の識別情報についての情報からなり得る。別の実施例では、状態情報は、検出された状態についてのエビデンスの強度を含み得る。一実施例では、状態情報155は、トリガ信号156が生成されたときにのみシグナリングされ得る。
【0161】
別の実施例では、状態情報155は、どの状態が、現在、エビデンスの最も高い量を有するかを継続的にシグナリングし得る。
【0162】
一実施例では、最も多くのエビデンスをもつ状態を選択するために、エビデンス値にわたる最大値(maximum)などの数学演算、又はソフトマックス演算がトリガ生成ユニット153によって使用され得る。別の実施例では、すべての状態についての現在のエビデンスが外部システム200に送られ得る。
【0163】
本発明によるシステム100の一実施例では、本システムは、特にどこか他の場所に常駐し得る外部システムを除いて、単一のカスタムデザイン・シリコン・チップによって実装され得る。別の実施例では、システム100は、別個に実装されたシステムの様々なサブシステムとともに、いくつかの別個の電子構成要素によって実装され得る。たとえば、センサー111-1、特にセンサー・ユニット110は、システム100の残りとは別個に実装され得る。別の実例では、センサー信号ストレージ、たとえば記録バッファ160は、本システムの残りとは別個に実装され得る。別の実装形態では、システム100の部分は、CPU又はGPUなど、計算システムによってシミュレートされ得る。
【0164】
図8は、本発明によるシステム100を使用して、センサー信号中の生理学的状態を検出するための方法1000を示す。
【0165】
動作1010において、
図1を参照すると、特に感知ユニット110中に含まれる少なくとも1つのセンサー111-1は、検出された生理学的信号を示すセンサー信号112を生成し、その信号を信号変換モジュール120に送る。
【0166】
動作1020において、
図2を参照すると、信号変換モジュール120は、センサー信号112を、そのセンサー信号を符号化するイベントのセット123に変換する。これらの符号化されたイベントは信号拡張モジュール130に送られる。
【0167】
動作1030において、
図4を参照すると、センサー信号を符号化するイベントは、信号拡張モジュール130によって重み付けされ、組み合わせられ得る。信号拡張モジュール中のニューロン133は、特に、入力イベント、すなわち、変換モジュールから与えられたイベントの一連の非線形組合せを実行し、入力イベント131と、出力イベント134、すなわち、信号拡張モジュールによって生成されたイベントとの間のイベント・ストリームの数及び複雑さを増加させる。出力イベント134はイベント駆動型ニューロン集団140に送られる。
【0168】
本明細書全体にわたって、「入力イベント」など、「入力」という用語が組み合わせられた用語は、たとえば、モジュール、ユニットなど、対応する構成要素に関して、受信された入力、受信されたイベント、又はイベントの受信されたストリームを特に指すことに留意されたい。
【0169】
さらに、本明細書全体にわたって、「出力イベント」など、「出力」という用語が組み合わせられた用語は、たとえば、モジュール、ユニットなど、対応する構成要素に関して、出力、送られたイベント、又はイベントの送られたストリームを特に指すことに留意されたい。
【0170】
したがって、第1のデバイスの出力イベントは、後続のデバイスのための入力イベントとして、又は、再帰型ネットワーク・アーキテクチャにおいて、同じデバイスのための入力としてさえ働き得る。
【0171】
動作1040において、イベント駆動型ニューロン集団140は信号拡張モジュール130からの出力イベントを受信し得る。上記の段落で詳述したように、受信された出力イベントは、ニューロン集団に関して入力イベントと呼ばれる。イベント駆動型ニューロン集団140は、それが、しばらくの間持続するイベントの複雑なパターンを用いて入力イベントに応答するように構成され得る。この進行中のアクティビティは、次いで、ニューロン集団140の動的状態が即時入力と過去入力との間の複雑な組合せになるように、ニューロン集団において新たに受信された入力イベントによって摂動させられ得る。イベント駆動型ニューロン集団によって生成された出力イベント143は入力イベント151として状態検出モジュールに送られる。
【0172】
動作1050において、イベント駆動型ニューロン集団140の動的状態は状態検出モジュール150によって監視される。
図7を参照すると、状態検出モジュール中のニューロンは、イベント駆動型ニューロン集団140の即時の動的状態が、事前構成された状態に一致したときに、イベント154に応答する。状態検出モジュール150内で、イベント154は、入力センサー信号112中の特定の状態の検出の肯定又は否定のエビデンスを暗示するように取られる。トリガ生成ユニット153内で、動作1060の下で、各生理学的状態を検出したことのエビデンスが記憶され、積分される。
【0173】
動作1070において、再び
図7を参照すると、トリガ生成ユニットは、状態を肯定する十分なエビデンスが存在するかどうかをテストし得る。生理学的状態を肯定するエビデンスが、事前定義されたしきい値を上回る場合、動作1080の下で、トリガ信号が生成され、外部システム200に送られ得る。
【0174】
動作1082において、現在の生理学的状態についての情報が外部システム200に送られる。一実施例では、動作1080におけるトリガ信号の生成はまた、生理学的状態情報を送信させ得る。別の実施例では、状態情報は、連続的に、間欠的に、又は外部システム200からの要求があり次第、送信され得る。
【0175】
動作1084において、
図1を参照すると、記録バッファ160は、記録されたセンサー信号161のセットを外部システム200に送信するために使用され得る。一実装形態では、動作1080におけるトリガ信号の生成は、記録されたセンサー信号161又はそれの一部分を外部システム200に送信させ得る。別の実施例では、記録されたセンサー信号161の送信は外部システム200の制御下にあり得る。
【0176】
図8に示された方法1000は、連続的に繰り返して実行されるように特に設計される。
【0177】
図9は、本発明によるシステム100を構成するための方法1100を示す。
【0178】
動作1110において、特に
図1を参照すると、少なくとも1つのシミュレートされた又はあらかじめ記録されたセンサー信号が、検出されたセンサー信号112の代わりにシステム100に提示され得る。別の実施例では、又は代替的に、特に
図2を参照すると、信号変換モジュール120から出力イベント・バス123の代わりにイベントの時系列が提示され得る。
【0179】
動作1120において、特に
図6を参照すると、イベント駆動型ニューロン集団140によって生成されたイベントが収集され得る。
【0180】
動作1130において、検出されることが望まれる各生理学的状態について、生理学的状態に対応するイベント駆動型ニューロン集団140の動的状態を識別するためになど、動作1120において収集されたイベントのパターンは、それらがどの生理学的状態に対応するかに従ってグループ化される。
【0181】
動作1130の一実施例では、単一の動的状態が、検出されるべき各生理学的状態について選択され、検出されるべき各生理学的状態に関連付けられ得る。このことは、たとえば、所与の生理学的状態について収集されたすべての動的状態にわたる平均動的状態を計算することによって行われ得る。代替的に、他の数学演算、たとえば、メジアン又は他の演算が、動的状態を選択するために使用され得る。
【0182】
動作1130の別の実施例では、検出されることが望まれる各状態について、いくつかの動的状態が選択され得る。このことは、たとえば、単一の状態について収集された動的状態のクラスタ化分析を実行することと、代表的な動的状態としていくつかのクラスタを選定することとによって実行され得る。
【0183】
動作1130の別の実施例では、特に、前の段落で説明した実施例に加えて、検出されるべき生理学的状態のいずれか又はすべての不在に対応する動的状態が選択され得る。このことは、たとえば、動的状態を識別するために「最大マージン」分類器を使用することによって、又は、本明細書の前の段落で説明した技法によって実行され得る。
【0184】
動作1140において、
図7を参照すると、動作1130において選択された動的状態が検出されると、各ニューロンがイベントを放出するように、ニューロン152のための構成が選定される。動作1130のための実施例の下で、1つ又はいくつかのニューロン150は、検出されるべき単一の生理学的状態に対応し得る。いくつかの実施例では、生理学的状態を否定するエビデンスが存在するときに、選択されたニューロンがイベントを放出するように、ニューロン152のための構成が選定され得る。これらの構成は、たとえば、選定された動的状態の線形スケーリングである、各ニューロンについてのアドレス・リスト及び構成リストを設定することによって選定され得る。別の実施例では、構成リスト中の重み付けを決定するために、線形又は非線形回帰技法などの技法が使用され得る。また別の実施例では、構成リストのために正の重みと負の重みとが別個に考慮され得る。別の実施例では、最大マージン最適化技法などを実行することによって重みが選定され得る。
【0185】
動作1150において、特に
図7を再び参照すると、値の増加が、対応する生理学的状態の検出を肯定するエビデンスの増加を示すように、検出されるべき各生理学的状態についての値がトリガ生成ユニット153によって生成されるように、ニューロン152によって放出されたイベントを組み合わせるために、重みのセットが選択され得る。この動作1150は、線形又は非線形回帰技法によって、又は別の最適化技法によって実行され得る。
【0186】
動作1160において、生理学的状態の検出をシグナリングするために、トリガ生成ユニット150のためのしきい値が選定される。これは、すべての生理学的状態のための単一のしきい値であり得るか、又は各生理学的状態についての個々のしきい値であり得る。これらのしきい値は、たとえば、真の検出及び真の拒否が最大化され、フォールス・ポジティブ及びミスが最小化されるように、シミュレートされたセンサー信号下でシステム100全体の挙動を評価することと、トリガ生成ユニット153内のエビデンス値に関するしきい値を探索することとによって選定され得る。
【0187】
図10は、本発明によるシステムの一実施例を示す。
図10の上側パネルでは、ECGセンサー・システムによって検出されるECGトレースの形態の検出されたセンサー信号の数秒のシーケンスが示されている。ECG信号が、状態検出ユニットにおいて、信号変換モジュールと、入力拡張モジュールと、イベント駆動型ニューロン集団とによって処理された後に、状態検出ユニット中のニューロンは、ECGトレースにおける異常、したがって生理学的状態を示す、強いスパイクのシーケンス(下側パネル、「検出された異常」と標示された灰色のボックス)を呈している。センサー信号中の対応するシーケンスも、第2のパネルの上の(「異常拍動」と標示された)対応するボックス化領域によって示されている。状態検出ユニット中のニューロンの出力がトリガ生成しきい値(下側パネル中の点線)を上回る際、生理学的状態が検出されたことを示す信号が状態検出ユニットによって発行される。この信号は、次いで、外部システムのための警告又は情報の目的のために働くことができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の検出された生理学的信号に基づいて、前記人間の生理学的状態を検出するためのイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)であって、前記イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)は、少なくとも以下の構成要素、すなわち、
- 生理学的信号を検出し、前記生理学的信号を、前記生理学的信号を示すセンサー信号(112)に変換するように構成及び配置された少なくとも1つのセンサー(111-1)と、
- 前記少なくとも1つのセンサー(111-1)からの前記センサー信号(112)を受信し、前記センサー信号(112)を離散イベントの少なくとも1つの時系列に変換するように構成及び配置された信号変換モジュール(120)であって、イベントの生成が、前記システムの前記構成要素を同期させるためのグローバル同期クロックとは無関係である、信号変換モジュール(120)と、
- イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク中に配置された複数の人工イベント駆動型スパイキング・ニューロン(131-1、131-N)を含む人工ニューロン集団(140)であって、前記ニューロン集団(140)が、イベントを受信するように構成及び配置され、前記ニューロン集団(140)が、前記受信されたイベントに基づいて前記人間の前記生理学的状態を認識するように配置された、人工ニューロン集団(140)と、
- 前記ニューロン集団(140)からの前記イベントを受信し、前記生理学的信号が前記生理学的状態を示す特徴を含むことを、前記人工ニューロン集団(140)から受信された前記イベントが示すときに、トリガ信号(180)を出力するように配置及び構成された、状態検出モジュール(150)と
を備え、前記ニューロン集団(140)が、前記状態検出モジュール(150)にイベントの1つ又は複数の処理された時系列を与えるように構成された、イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項2】
イベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)が、イベント駆動型スパイキング人工ニューロン(133-1、133-M)の少なくとも第1のレイヤを含むイベント駆動型信号拡張モジュール(130)を備え、前記信号拡張モジュール(130)が、前記信号変換モジュール(120)からのイベント(13-1、13-N)の前記少なくとも1つの時系列を受信し、ニューロン(133-1、133-M)の前記第1のレイヤによって、イベントの各時系列から離散イベント(134-1、134-M)の複数の出時系列を生成し、前記複数の出時系列を前記人工ニューロン集団(140)に与えるように構成及び配置された、請求項1に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項3】
前記信号拡張モジュール(130)中のニューロン(133-1、133-M)の前記第1のレイヤがフィードフォワード構成のみにおいて配置及び構成された、請求項2に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項4】
前記ニューロン集団(140)が再帰型ニューラル・ネットワーク、前記ニューロン集団(140)中の前記ニューロン(131-1、131N)が、第2のレイヤに配置された、請求項1から3までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項5】
前記状態検出モジュール(150)が人工ニューロン(131-1、131-N)の第3のレイヤを含み、前記第3のレイヤがフィードフォワード構成のみにおいて構成及び配置され、特に、前記第3のレイヤが、イベントの前記1つ又は複数の処理された時系列から前記生理学的状態を検出するようにトレーニングされた、請求項1から4までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項6】
前記システム(100)は、前記信号変換モジュール(120)に複数のセンサー信号を与える生理学的信号を検出するように構成及び配置された複数のセンサー(111-1)を備え、各センサー(111-1)は、前記複数のセンサーのうちの残りのセンサーが検出するように構成及び配置された前記生理学的信号とは異なる生理学的信号を検出するように構成及び配置された、請求項1から5までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項7】
前記システム(100)は、前記少なくとも1つの検出された生理学的信号から複数の生理学的状態を識別するように構成された、請求項1から6までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項8】
前記変換モジュール(120)によって受信された各センサー信号について、前記信号変換モジュール(120)が、イベントの少なくとも2つの時系列を生成し、イベントの第1の時系列は、前記センサー信号が増加したことを示し、イベントの前記少なくとも2つの時系列のうちの第2の時系列は、前記センサー信号が低減したことを示し、前記信号変換モジュール(120)が、イベントの前記少なくとも2つの時系列を前記信号拡張モジュール(130)及び/又は前記人工ニューロン集団(140)に与えるように構成及び配置された、請求項1から7までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項9】
前記ニューロン集団(140)の前記ニューロン(131)がイベントのための入力バスを備え、前記入力バス(1310)が、各ニューロン(131)によって含まれるイベント・フィルタに接続され、前記イベント・フィルタが、前記入力バス(1310)から受信された選択されたイベントのための前記ニューロン(131)のニューロン状態を更新するように構成され、前記ニューロン(131)は、前記ニューロン(131)の前記ニューロン状態が事前定義されたしきい値を上回るか又は下回るときに、イベントを生成するように構成されたイベント生成器をさらに備える、請求項1から8までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項10】
前記ニューロン集団の各ニューロン(131)が、前記ニューロン状態の更新につながる、入来イベントの頻度に基づいて、及び/又は、前記ニューロン状態の更新につながる、前記ニューロン状態に対する入来イベントの累積効果に基づいて、前記ニューロン(131)のイベントの出力頻度を調整するように構成及び配置されたバランサ(1317)を備える、請求項9に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項11】
前記システム(100)は、外部のコンピュータ化されたシステム(200)に接続されているか又は接続可能であり、前記状態検出モジュール(150)が、前記外部システム(200)に前記トリガ信号(180)を与えるにように構成された、請求項1から10までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項12】
前記システム(100)は、前記少なくとも1つのセンサーからの前記センサー信号を記憶するように構成された信号ストレージ(160)を備え、生理学的状態が検出されると、前記生理学的状態を示す前記センサー信号の少なくとも一部分が前記外部システム(200)に与えられる、請求項11に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載のシステムを使用して、生理学的信号から生理学的状態を検出するための方法であって、前記方法は、
- 人間からの、シミュレーションによって生成された又は前記少なくとも1つのセンサーを用いて記録された生理学的信号を与えるステップであって、前記センサーが、前記生理学的信号を示すセンサー信号を生成する、生理学的信号を与えるステップと、
- 前記信号変換モジュールを用いて、ルベーグ変換によって、前記センサー信号を離散イベントの少なくとも1つの時系列に変換するステップと、
- イベントの前記少なくとも1つの時系列を前記ニューロン集団に与えるステップと、
- 前記ニューロン集団において、イベント駆動型様式で前記少なくとも1つの時系列を処理し、それによってイベントの少なくとも1つの処理された時系列を生成するステップと、
- イベントの前記少なくとも1つの処理された時系列を前記状態検出モジュールに与えるステップと、
- 前記状態検出モジュールにおいて、前記少なくとも1つの処理された時系列から前記生理学的状態が検出されたときに、トリガ信号を生成するステップと、
- 前記検出された生理学的状態について通知するためになど、前記トリガ信号を外部システムに与えるステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記方法は、
- 前記変換モジュールによって生成された前記少なくとも1つの時系列を前記信号拡張モジュールに与えるステップと、
- 前記信号拡張モジュールにおいて、イベントの各受信された時系列について、イベントの複数の時系列を生成し、前記複数の時系列を前記ニューロン集団に与えるステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、
- 前記少なくとも1つのセンサー信号を記録するステップと、前記生理学的状態が検出された場合、
- 前記少なくとも1つのセンサー信号の少なくとも一部分を前記外部システムに与えるステップと
をさらに含み、前記一部分が、前記検出された生理学的状態を示す前記センサー信号の一部を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記システム(100)がチップ上に実装されている、請求項1から12までのいずれか一項に記載のイベント駆動型スパイキング・ニューラル・ネットワーク・システム(100)。
【国際調査報告】