(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】原位置赤外線及び紫外線光度計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20220826BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576660
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067803
(87)【国際公開番号】W WO2020260448
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521559234
【氏名又は名称】プロテア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【氏名又は名称】越柴 絵里
(72)【発明者】
【氏名】ドウ クリス
(72)【発明者】
【氏名】ハッチンソン ロビン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE11
2G059HH01
2G059HH03
2G059JJ02
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059KK01
2G059KK03
(57)【要約】
本発明は、試料ガスの組成を分析する光度計(30)に関する。光度計は、少なくとも2つのパルスが異なる波長のものである第1の複数の赤外線(IR)放射パルス(40)を試料ガスを通じてIR検出器(26)に導くように構成されたIR光源(20)を含む。光度計は、紫外線(UV)検出器(36)に伝達するための第2の複数のUV放射パルス(38)を生成するように構成されたUV光源(32)をさらに含み、第2の複数のパルスのうちの少なくとも2つは異なる波長のものである。経路選択構成(22、42~50)が、第2の複数のパルス(38)のうちの異なるパルスを試料ガス及びUV検出器(36)の一方に選択的に伝達するように構成される。光度計は、IR光源(20)、UV光源(32)、IR検出器(26)、UV検出器(36)及び経路選択構成(22、42~50)に結合された処理回路をさらに含む。処理回路は、(i)第2の複数のパルス(38)のうちの所与のUVパルスに使用すべき波長を選択し、(ii)IR検出器(26)及びUV検出器(36)の各々から複数の検出信号を受け取り、(iii)検出信号に基づいて試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定するように構成される。試料ガスの組成を分析する方法も開示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスの組成を分析する光度計であって、
前記試料ガスを通じて第1の複数の赤外線(IR)放射パルスをIR検出器に導くように構成されたIR光源と、
紫外線(UV)検出器に伝達するための第2の複数のUV放射パルスを生成するように構成されたUV光源と、
前記試料ガスを通じて前記第2の複数のパルスのうちの異なるパルスを前記UV検出器に選択的に伝達するように構成された経路選択構成と、
前記IR光源、前記UV光源、前記IR検出器、前記UV検出器及び前記経路選択構成に結合されて、(i)前記第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき波長を選択し、(ii)前記IR検出器及び前記UV検出器の各々から複数の検出信号を受け取り、(iii)前記検出信号に基づいて前記試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定するように構成された処理回路と、
を備えることを特徴とする光度計。
【請求項2】
前記第1の複数のパルスのうちの少なくとも2つは異なる波長のものである、請求項1に記載の光度計。
【請求項3】
前記第2の複数のパルスのうちの少なくとも2つは異なる波長のものである、請求項1又は請求項2に記載の光度計。
【請求項4】
前記経路選択構成は、半径方向に異なる位置に存在する少なくとも1つの内側環状スロット及び少なくとも1つの外側環状スロットを有する回転部材を含む、請求項1、2又は3に記載の光度計。
【請求項5】
前記経路選択構成は、第1のポート及び第2のポートを有する伝達ポストを含み、前記内側スロット及び前記外側スロットが前記第1のポート及び前記第2のポートにそれぞれ重なり合った時に、前記UV光源から前記第1のポート及び前記第2のポートへのUV放射の伝達が可能になる、請求項4に記載の光度計。
【請求項6】
前記経路選択構成は、前記UVパルスを前記試料ガスに導くために前記第1のポートを送信機/受信機モジュールの送信機部分に結合する第1の光経路をさらに含む、請求項5に記載の光度計。
【請求項7】
前記経路選択構成は、前記送信機/受信機モジュールの受信機部分を前記UV検出器に結合する第2の光経路をさらに含む、請求項6に記載の光度計。
【請求項8】
前記経路選択構成は、前記第2のポートを前記UV検出器に直接結合する第3の光経路をさらに含む、請求項6又は7に記載の光度計。
【請求項9】
前記第1の光経路、前記第2の光経路及び/又は前記第3の光経路は光導体を含む、請求項6、7又は8に記載の光度計。
【請求項10】
前記光導体のうちの少なくとも1つは光ファイバである、請求項9に記載の光度計。
【請求項11】
前記処理回路は、前記第2の複数のパルスのうちの前記パルスのタイミングを制御して、前記第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき前記波長を選択するように構成され、前記第1のポートを通過する連続パルス及び/又は前記第2のポートを通過する連続パルスは異なる波長のものである、請求項3及び5、又はこれらに従属するいずれかの請求項に記載の光度計。
【請求項12】
前記処理回路は、請求項3に従属する場合、前記第2の複数のパルスのうちの前記パルスの前記タイミングを制御し、及び/又は前記第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき前記波長を選択するように構成され、前記UV検出器によって受け取られる前記複数の検出信号は、
(i)前記UV光源から前記UV検出器に直接至るUV放射の経路に対応する基準読み取り値、
(ii)UV放射によって照明されていない前記試料ガスに対応する暗所読み取り値、及び/又は、
(iii)前記UV光源から前記試料ガスを介して前記UV検出器に至るUV放射の経路に対応する測定読み取り値、
を含む、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の光度計。
【請求項13】
請求項5に従属する場合、前記測定読み取り値は、前記内側スロットが前記第1のポートに重なり合うことに対応し、及び/又は前記基準読み取り値は、前記外側スロットが前記第2のポートに重なり合うことに対応し、及び/又は前記暗所読み取り値は、前記スロット及びポートが重なり合わないことに対応する、請求項12に記載の光度計。
【請求項14】
前記経路選択構成は、少なくとも一対の内側スロット及び/又は少なくとも一対の外側スロットを含む、請求項4又はこれに従属するいずれかの請求項に記載の光度計。
【請求項15】
所与の対では、前記内側スロット及び/又は外側スロットが前記回転部材の周囲で離間する、請求項14に記載の光度計。
【請求項16】
所与の対では、前記内側スロット及び/又は外側スロットが直径方向に対向する、
請求項14に記載の光度計。
【請求項17】
前記回転部材は、該回転部材上に複数のタイミング標識を含み、前記処理回路は、
(i)前記回転部材の回転中に標識検出器を過ぎる前記標識の通過を検出し、
(ii)前記検出された標識の通過に基づいて前記内側スロット及び/又は外側スロットの角度位置を決定する、
ように構成される、請求項4又はこれに従属するいずれかの請求項に記載の光度計。
【請求項18】
前記タイミング標識は、一次標識及び複数の二次標識を含む、請求項17に記載の光度計。
【請求項19】
前記タイミング標識は、前記回転部材の周囲で角度的に離間した複数の貫通孔又は切り欠きを含む、請求項17又は18に記載の光度計。
【請求項20】
前記タイミング標識は、前記回転部材の周囲で均等に角度的に離間した複数の貫通孔又は切り欠きを含む、請求項17、18又は19に記載の光度計。
【請求項21】
前記タイミング標識は、前記回転部材の周縁部に配置された切り欠きを含む、請求項17から20のいずれかに記載の光度計。
【請求項22】
前記一次標識は、前記二次標識よりも大きい、請求項18に記載の光度計。
【請求項23】
前記標識検出器は、光送信機/受信機を含む、請求項17から22のいずれかに記載の光度計。
【請求項24】
前記回転部材は、離間した複数のフィルタ要素を周囲に有するフィルタホイールを含み、前記フィルタ要素は、前記内側スロット及び/又は外側スロットとは異なる半径方向位置に配置される、請求項4又はこれに従属するいずれかの請求項に記載の光度計。
【請求項25】
試料ガスの組成を分析する方法であって、
請求項1から24のいずれかに記載の光度計を準備するステップと、
(i)前記IR検出器及び前記UV検出器の各々から複数の検出信号を受け取り、(ii)該検出信号に基づいて前記試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定する、ように前記処理回路を動作させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき波長を選択するように前記処理回路を動作させるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスモニタリング/分析法に関し、具体的には、赤外線(IR)測定と紫外線(UV)測定との組み合わせを有する改善された原位置光度計、及び試料ガスの組成を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス流中のガスの化学種及び濃度を決定するには、ガス流を分析することが必要となり得る。例えば、発電、焼却、輸送、鉄鋼生産などの用途では、通常は排ガスのガス分析が必要である。このような業界では、汚染レベルを低減するために、ガス状排出物のモニタリング範囲の縮小、及び測定装置の精度/感度を高めるための要件を推進している環境法令からの圧力がますます高まっている。
【0003】
ガス状汚染物質の排出をモニタするには、排気筒(すなわち、煙突)内の原位置に配置される先行技術の赤外線(IR)光度計を設けることが知られている。このようなシステムは、原位置連続排出モニタリングシステム(in-situ Continuous Emission Monitoring System:CEMS)と呼ぶことができる。既知のCEMSは、最大8つの光波長を利用して排気流中の最大で6つの異なるガスをモニタすることができ、モニタリングに使用される波長は検出すべきガスに依存する。CEMSは、特定のガスについては既知のガスフィルタ相関(Gas Filter Correlation:GFC)法を使用することもできる。
【0004】
図1(先行技術)に、既知の先行技術の原位置IR光度計の例を示し、全体的に8で指定する。図示の試料採取プローブ10は、光度計の本体14が排気筒(図示せず)の外側に存在するようにフランジ12まで排気筒に挿入される。プローブ10内には、焼結アセンブリを含む試料採取セル16が設けられる。プローブ10内のレンズ18も示す。本体14内には、ガスセル16内の排ガスにIR光を伝達するIR光源20が設けられる。IR光は、フィルタホイール22上に設けられた8つのフィルタのうちの、モータ24の制御下で選択されるフィルタを通過する。IR光は、ガス試料を通過して戻った後にIR検出器26上に入射する。この既知の光度計8は8つの波長を使用して、通常はガス毎に2つの波長(基準及び測定)を使用し、従って「二重波長単一ビーム(dual wavelength single beam)」検出の原理に基づいて機能する多成分装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知の原位置CEMSに関する問題点は、より狭いモニタリング範囲にわたってガス状排出物を測定する性能の限界に達している点である。このことは、排ガスを浄化(例えば、海水排煙脱硫(sea water Flue Gas Desulfurization:FGD)システムを使用して浄化)して二酸化硫黄(SO2)を除去した後に排気筒ガスの測定を行うのが困難な海洋排ガス浄化システム(marine Exhaust Gas Cleaning System:EGCS)では特に問題となり得る。例えば、通常、既知の原位置CEMSは、SO2については0ppm~150ppmの範囲の範囲測定を提供し、NO2については0ppm~300ppmの範囲の範囲測定を提供するが、これらの範囲は最新の法令を満たすほど十分に小さくない(すなわち、十分な精度/感度をもたらさない)。
【0006】
さらに、光度計を使用したガス測定のドリフトも既知の問題である。ドリフトを除去するには、「単一波長二重ビーム」及び「二重波長単一ビーム」という2つの異なる技法が知られている。「単一波長二重ビーム」法は、共通の光源及び検出器を使用し、ビームが2つの経路に分割される。一方の経路はガス試料を含む試料セルを通過し、他方の経路は空気を含む並列セルを通過する。各経路からの信号を比較することによって、特定のガスの濃度を計算することができる。「二重波長単一ビーム」法は、共通の光源及び検出器を使用し、試料セルを通じて基準波長及び測定波長が単一ビームとして二者択一的に送信される。各波長からの信号を比較することによって、特定のガスの濃度を計算することができる。一般に、ドリフトの低減又は回避においては「二重波長単一ビーム」よりも「単一波長二重ビーム」の方が効果的であると考えられている。
【0007】
本発明の広義の目的は、これまでに知られている装置及び方法の上述した不利点のうちの1つ又は2つ以上に対処することである。
【0008】
上述した問題点のうちの少なくともいくつかを低減又は最小化できる、試料ガスの組成を分析する光度計及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、試料ガスの組成を分析する光度計が提供される。光度計は、試料ガスを通じて第1の複数の赤外線(IR)放射パルスをIR検出器に導くように構成されたIR光源を含む。光度計は、紫外線(UV)検出器に伝達するための第2の複数のUV放射パルスを生成するように構成されたUV光源をさらに含む。経路選択構成が、試料ガスを通じて第2の複数のパルスのうちの異なるパルスをUV検出器に選択的に伝達するように構成される。光度計は、IR光源、UV光源、IR検出器、UV検出器及び経路選択構成に結合された処理回路をさらに含む。処理回路は、(i)第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき波長を選択し、(ii)IR検出器及びUV検出器の各々から複数の検出信号を受け取り、(iii)検出信号に基づいて試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定するように構成される。
【0010】
このような装置は、少なくとも実施形態では、UVモニタリングを使用したSO2の測定が、範囲測定に関する原位置IR光度計の性能を大幅に改善するという利点をもたらす。例えば、通常、本発明の原位置CEMSは、SO2では0ppm~30ppmの範囲の改善された範囲測定を可能にし、NO2では0ppm~30ppmの範囲内の範囲測定を可能にする。UVダイオードによってもたらされる利点としては、海洋産業において、海水排煙脱硫を使用する既知の海洋排ガス浄化システムによって浄化された後の排気筒ガスを測定して分析するために原位置IR光度計を使用できる点が挙げられる。このような改善された原位置赤外線光度計は、陸上ベースのFGD用途において装置がSO2をモニタする能力、又は陸上ベースの選択的触媒還元(SCR)用途において装置がNO2をモニタする能力を改善することもできる。なお、上記の項目(iii)については、試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度の決定が検出信号のレベル(すなわち、振幅、強度又は大きさ)に基づくと理解されるであろう。
【0011】
第1の複数のパルスのうちの少なくとも2つは異なる波長のものであることが好ましい。第2の複数のパルスのうちの少なくとも2つは異なる波長のものであることが好ましい。このような構成は、基準波長及び測定波長を提供し、「二重波長単一ビーム」検出法によって測定信号の安定性が改善されるという利点を有する。
【0012】
経路選択構成は、半径方向に異なる位置に存在する少なくとも1つの内側環状スロット及び少なくとも1つの外側環状スロットを有する回転部材を含むことが好ましい。経路選択構成は、第1のポート及び第2のポートを有する伝達ポストを含み、内側スロット及び外側スロットが第1のポート及び第2のポートにそれぞれ重なり合った時に、UV光源から第1のポート及び第2のポートへのUV放射の伝達が可能になることが好ましい。経路選択構成は、UVパルスを試料ガスに導くために第1のポートを送信機/受信機モジュールの送信機部分に結合する第1の光経路をさらに含むことが好ましい。経路選択構成は、送信機/受信機モジュールの受信機部分をUV検出器に結合する第2の光経路をさらに含むことが好ましい。経路選択構成は、第2のポートをUV検出器に直接結合する第3の光経路をさらに含むことが好ましい。
【0013】
1つの実施形態では、第1の光経路、第2の光経路及び/又は第3の光経路が光導体を含む。光導体のうちの少なくとも1つは光ファイバであることが好ましい。
【0014】
処理回路は、第2の複数のパルスのうちのパルスのタイミングを制御して、第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき波長を選択するように構成され、第1のポートを通過する連続パルス及び/又は第2のポートを通過する連続パルスは異なる波長のものであることが好ましい。
【0015】
1つの実施形態では、処理回路が、第2の複数のパルスのうちのパルスのタイミングを制御し、及び/又は第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき波長を選択するように構成され、UV検出器によって受け取られる複数の検出信号が、(i)UV光源からUV検出器に直接至るUV放射の経路に対応する基準読み取り値、(ii)UV放射によって照明されていない試料ガスに対応する暗所読み取り値、及び/又は(iii)UV光源から試料ガスを介してUV検出器に至るUV放射の経路に対応する測定読み取り値を含む。
【0016】
測定読み取り値は、内側スロットが第1のポートに重なり合うことに対応し、及び/又は基準読み取り値は、外側スロットが第2のポートに重なり合うことに対応し、及び/又は暗所読み取り値は、スロット及びポートが重なり合わないことに対応することが好ましい。
【0017】
1つの実施形態では、経路選択構成が、少なくとも一対の内側スロット及び/又は少なくとも一対の外側スロットを含む。所与の対では、内側スロット及び/又は外側スロットが回転部材の周囲で離間することが好ましい。所与の対では、内側スロット及び/又は外側スロットが直径方向に対向することが好ましい。
【0018】
1つの実施形態では、回転部材が回転部材上に複数のタイミング標識を含み、処理回路が、(i)回転部材の回転中に標識検出器を過ぎる標識の通過を検出し、(ii)検出された標識の通過に基づいて内側スロット及び/又は外側スロットの角度位置を決定するように構成される。タイミング標識は、一次標識及び複数の二次標識を含むことが好ましい。タイミング標識は、回転部材の周囲で角度的に離間した複数の貫通孔又は切り欠きを含むことが好ましい。タイミング標識は、回転部材の周囲で均等に角度的に離間した複数の貫通孔又は切り欠きを含むことが好ましい。タイミング標識は、回転部材の周縁部に配置された切り欠きを含むことが好ましい。一次標識は、二次標識よりも大きいことが好ましい。標識検出器は、光送信機/受信機を含むことが好ましい。
【0019】
回転部材は、離間した複数のフィルタ要素を周囲に有するフィルタホイールを含み、フィルタ要素は、内側スロット及び/又は外側スロットとは異なる半径方向位置に配置されることが好ましい。
【0020】
本発明の別の態様によれば、試料ガスの組成を分析する方法が提供される。方法は、添付の特許請求の範囲の請求項1から24のいずれかに記載の光度計を準備するステップを含む。方法は、(i)IR検出器及びUV検出器の各々から複数の検出信号を受け取り、(ii)検出信号に基づいて試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定する、ように処理回路を動作させるステップをさらに含む。
【0021】
方法は、第2の複数のパルスのうちの所与のUVパルスに使用すべき波長を選択するように処理回路を動作させるステップをさらに含むことが好ましい。
【0022】
本発明の代替特徴によれば、試料ガスの組成を分析するための光度計であって、試料セル内の試料ガスを通じて第1の複数の赤外線(IR)放射パルスをIR検出器に導くように構成されたIR光源と、試料ガスを通じて第2の複数の紫外線(UV)放射パルスをUV検出器に導くように構成されたUV光源と、IR光源、UV光源、IR検出器及びUV検出器に結合されて、(i)IR検出器及びUV検出器の各々から複数の検出信号を受け取り、(ii)検出信号に基づいて試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定するように構成された処理回路と、を含む光度計が提供される。
【0023】
本発明の代替特徴によれば、試料ガスの組成を分析するための光度計であって、試料ガスを通じて第1の複数の赤外線(IR)放射パルスをIR検出器に導くように構成されたIR光源と、試料ガスを通じて第2の複数の紫外線(UV)放射パルスをUV検出器に導くように構成されたUV光源と、IR光源、UV光源、IR検出器及びUV検出器に結合されて、(i)IR検出器及びUV検出器の各々から複数の検出信号を受け取り、(ii)検出信号に基づいて試料ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定するように構成された処理回路と、を含む光度計が提供される。
【0024】
本発明の代替特徴によれば、試料ガスの組成を分析するための光度計であって、試料ガスを通じて第1の複数の赤外線(IR)放射パルスをIR検出器に導くように構成されたIR光源と、試料ガスを通じて第2の複数の紫外線(UV)放射パルスをUV検出器に導くように構成されたUV光源と、IR光源、UV光源、IR検出器及びUV検出器に結合されて、(i)IR検出器及びUV検出器の各々から複数の検出信号を受け取り、(ii)IR検出器からの検出信号を使用して試料ガスの第1の成分の第1の濃度を決定し、(iii)UV検出器からの検出信号を使用して試料ガスの第2の成分の第2の濃度を決定し、(iv)検出信号に基づいて第2の成分の補正濃度を決定するように構成された処理回路とを含み、補正濃度は、第1の濃度に基づいて交差感受性について補正された第2の濃度である、光度計が提供される。
【0025】
本発明の1つの態様又は特徴のいずれかの好ましい又は任意の特徴は、本発明の他の態様又は特徴の好ましい又は任意の特徴とすることができる。とりわけ、添付の特許請求の範囲の請求項2~請求項26のうちのいずれかは、本発明の上記代替特徴のうちのいずれかに従属することができる。
【0026】
添付図面を参照しながらほんの一例として示す以下の好ましい実施形態の説明からは、本発明の他の特徴が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】既知のガス光度計の形態を示す図である(先行技術)。
【
図2】本発明の実施形態よる光度計の斜視図である。
【
図3】
図2の光度計を使用する経路選択構成の拡大図である。
【
図4】
図3に記載の経路選択構成の軸方向図である。
【
図5】本発明の実施形態による方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2、
図3及び
図4に、全体的に30で指定する、本発明の実施形態によるIR測定と紫外線(UV)測定との組み合わせを有する改善された原位置赤外線(IR)光度計を示す。
図2~
図4では、
図1の先行技術の構成と同様の特徴を同様の参照番号で示す。
図2及び
図3では、本体14内に、フィルタホイール22内の異なる半径方向位置に存在する2つの光スロット45、47のうちの一方を通じてガスセル16内の排ガスにUV光を伝達するUV光源32(例えば、UV発光ダイオード)が設けられる。2つの光スロット45、47は、フィルタホイール22の貫通孔であり、部分的に円形(すなわち、弓形)で細長い。UV光は、ガス試料を通過して戻った後にUV検出器36上に入射する。また、
図2には、UV検出器から生じるUV信号38、及びIR検出器26から生じるIR信号40も示す。また、上述したような8つの波長のうちの1つをIR光源20を使用して選択するフィルタホイール22の8つのフィルタ21も示す。
【0029】
図3及び
図4に示すように、フィルタホイール22が23で示すように回転すると、UV光源32が2対のスロット45、47を二者択一的に照明する。UV光は、2対のスロット45、47を通過した後に、支持体43上に取り付けられたピラー42に接続された2つの光ファイバ44、46に入射する。UV光は、回転するフィルタホイール22を通過した後に、2つの光ファイバ44、46を順に照明する。
図4に示すように、ピラー42は、互いに上下関係にある光ファイバ44、46の光ファイバ入射点を提供して、一方のUV光ビームが光ファイバ44を通じて検出器36に供給され、他方のUV光ビームが光ファイバ46を通じて送信機/受信機モジュール48に供給されるようにする。
図4に、光ファイバ44、46のピラー42に対するフィルタホイール22の配置を示す。
図4には、互いに直径方向に対向して、同様に互いに直径方向に対向するフィルタホイール22上の2つの光スロット47からオフセットされた、フィルタホイール22上の2つの光スロット45も示す。光スロット45は、光ファイバ44を介してUV検出器36にUVビームを供給するためのものであり、光スロット47は、送信機/受信機モジュール48へのUVビームのためのものである。送信機/受信機モジュール48はレンズピラーモジュールであり、ガスセル16内のガス試料を通じて光ファイバ46からのUV光を伝達し、(双方向矢印49で示すように)ガスセル16内のガス試料から反射されたUV光を受け取り、光ファイバ50を介してこれを検出器36に受け渡すように動作する。
【0030】
モータ24がフィルタホイール22を回転させると、UV光のための2つの光スロット45、47が、二者択一的に切り替えられる2つのUV光ビームを使用する可能性を提供する。UV光源32はSO2モニタリングのためのものであり、上述した「二重波長単一ビーム」法に必要な単一の光源及び検出器を使用する要件を満たす二重経路構成で、250nm~325nmの(280nm辺りを中心とすることができる)波長で動作する。
【0031】
UV光源32は、(一方が250nm~325nmで動作してSO2をモニタし、他方が350nm~450nmで動作してNO2をモニタする)連続的に切り替わって異なる波長で動作する2つのUVダイオードを含む。このようなIR能力と組み合わせたUVモニタリングのための構成は、2つのガス(すなわち、SO2及びNO2)のモニタリングを可能にするとともに、さらに低いNO2濃度をモニタすることもできるという利点をもたらす。
【0032】
UVシステム及びIRシステムの各々からのデータは、交差感受性(すなわち、NO2に対する水蒸気の影響)を補正するためにも使用される。この補正は、UV信号でNO2をモニタし、H2OのIR範囲を使用していずれかの交差感受性を補正することによって行われる。このように、UV能力とIR能力とを組み合わせると、UV能力又はIR能力のいずれかを単独で使用する場合と比べてモニタリングが改善される。
【0033】
UV信号38及びIR信号40の信号処理は、フィルタホイール22の外周上の既存の16個のタイミングスロット51を利用して(単複の)UV光源に対するUV光スロット45、47の位置を決定する分析器PCB(図示せず)上で実行される。UV光源32からのUVビームは、
図2~
図4に示す構成を使用して、試料セル16を通じて検出器36に直接二者択一的に送られる。このような構成では、UV検出器36又はUV光源32のいずれかによって引き起こされるあらゆるドリフトを除去することができる。このドリフトの除去は、フィルタホイール22内の2つのオフセットスロット45、47の一方のスロット45をガスセル16へのファイバ46と整列させ、他方のスロット47をUV検出器36へのファイバ44と整列させることによって達成される。UVパルスは、ガスセル16を介して(すなわち、ファイバ46で出力されてファイバ50で戻され)UV検出器36に、及び直接(すなわち、ファイバ44を介して)UV検出器36に、二者択一的に送られると理解されるであろう。UVビームのタイミング及び切り替えは、基準読み取り値、暗所読み取り値(dark reading)及び測定読み取り値をもたらすように、スロット45、47を含むフィルタホイール22を使用して行われる。マイクロプロセッサ装置(図示せず)を使用して全ての信号を電子的に合成して、数値グラフの形態を取ることができる測定読み取り値を必要に応じてディスプレイ(図示せず)上に提示する。
【0034】
上記では光ファイバ44、46、50の使用について説明したが、代替構成では、他のタイプの導波管又は光導体を使用して二重UV経路を達成することもできると理解されるであろう。また、UVモニタリング及びIRモニタリングの両方を実行する際には、フィルタホイール22が23で示すように連続して回転すると理解されるであろう。
【0035】
図5に、全体的に60で指定する本発明の実施形態による方法のステップを示す。これらのステップは、異なる順序で実行することもでき、必ずしも
図5に示す順序で実行しなくてもよいと理解されるであろう。
【0036】
最初に、例えば本明細書で上述した測定シナリオと同様に、ガスを分析すべき原位置に光度計を設ける(ブロック62)。処理回路(例えば、上述した分析器PCB(図示せず))がパルスのタイミング及び波長を制御し、方法は、上述したタイミング機構を使用して処理回路が所与のUVパルス(すなわち、測定UVパルス及び基準UVパルス)の波長を選択するステップ(ブロック64)に進む。1つの構成では、UV波長が動的に選択される。次に、IR光源からのIRパルス及びUV光源からのUVパルスをガスセル内の試料ガスに導く(ブロック66)。IR検出器及びUV検出器を使用して検出信号を受け取る(ブロック68)。最後に、処理回路が検出信号に基づいて試料ガスのガス成分の濃度を決定する(ブロック70)。
【0037】
本明細書で説明した構成は、ドリフト及びノイズに関して十分に許容できる性能を有する光度計を提供するとともに、1つの試料採取セル16のみを含む結合ユニットにおけるUV測定及びIR測定の使用を可能にする。UVダイオード32が狭い固定波長で動作するのに対し、IR測定との組み合わせは、装置が「原位置」ガス分析器内で従来の「二重ビーム」原理で幅広い波長範囲にわたって使用されることを可能にすると理解されるであろう。要約すると、本発明の実施形態は、
1.UV及びIRの組み合わせタイミングシステムを含むUV及びIRの組み合わせ光学系、
2.同じ試料セルにおけるUV及びIRの組み合わせ測定、
3.UV信号及びIR信号の組み合わせ信号処理、及び、
4.組み合わせ交差感受性補正、
を提供する。
【0038】
さらに、改善された原位置IR光度計は、先行技術のシステムを6チャネルから8チャネルに拡大するさらなる範囲能力(すなわち、2つの追加UVチャネル)を実現する。また、改善された原位置IR光度計はIR波長を解放し、これによっていくつかの用途のガス測定に関する妥協を低減する。
図1の先行技術の装置の主な制約は、利用可能な波長が8つしか存在せず、従って6つのガス化学種をモニタする際に、モニタすべきガスに依存して、各ガスに割り当てる波長に関して妥協を行う必要がある点である。それぞれが2つの波長スロットを占有する(GFCを使用した)NO及びCOのモニタリング、並びに(測定フィルタ及び広帯域フィルタ法を使用した)SO
2のモニタリングを行う際には、交差感受性補正のためにCO
2及びH
2Oをモニタする必要がある。
図1の先行技術の装置を使用すると2つのスロットしか残らないため、CO
2及びH
2Oには、理想的ではなく測定精度を損なう恐れがある固定参照番号(fixed reference number)を使用する必要がある。
図1の先行技術の装置を使用すると、しばしば測定フィルタが第2のガスのための基準フィルタとして1つのガスに使用され、これによって較正時間及び測定精度に著しく加わってしまう。
図2~
図4に示す本発明の実施形態を使用すると、UV SO
2チャネルが含まれていることによって2つのフィルタスロットがIR範囲のために解放される。このような構成は、本発明の装置にさらなる動作柔軟性をもたらすとともに、ガスモニタリングのための交差感受性補正も改善する。
【符号の説明】
【0039】
16 試料採取セル
20 IR光源
21 フィルタ
22 フィルタホイール
24 モータ
26 IR検出器
30 原位置赤外線(IR)光度計
32 UV光源
36 UV検出器
38 UV信号
40 IR信号
45、47 光スロット
【国際調査報告】