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特表2022-538433増強された部分配列多様性を有するペプチドライブラリ及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】増強された部分配列多様性を有するペプチドライブラリ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/04 20060101AFI20220826BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20220826BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220826BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220826BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220826BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
C07K1/04
C40B40/10
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C07K7/08
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577274
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2020040007
(87)【国際公開番号】W WO2020264441
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,666
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/867,765
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518160540
【氏名又は名称】ロシュ シークエンシング ソリューションズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グッドリッジ ローレン
(72)【発明者】
【氏名】リャミチェブ ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】パテル ジガー
(72)【発明者】
【氏名】ピナパティ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァン エリック
(72)【発明者】
【氏名】リッチモンド トッド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA34
2G045DA20
2G045DA36
2G045FB12
2G045GC15
4B029AA07
4B029BB15
4B029CC03
4H045AA50
4H045BA16
4H045BA17
4H045EA50
(57)【要約】
本技術は、所与の固定ライブラリ形式で他の方法で利用可能であるよりも有意に多くのモチーフの探索及び試験のためのペプチド配列のライブラリを設計するための手法を提供する。この技術には、N-merペプチド配列に埋め込まれた複数のx-merが含まれ、ここで、N及びxは整数であり、Nはxよりも大きい。この手法は、単一のN-merペプチドフィーチャにおける複数の特有のx-merペプチドの表現を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のペプチドフィーチャであって、前記ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、前記少なくとも1つのペプチドが長さNのアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、前記複合領域がk個の異なる要素を表し、前記異なる要素のそれぞれが長さxのアミノ酸の定義された配列を有する、前記複数のペプチドフィーチャ
を含む、操作されたペプチドライブラリであって、
x、N、及びkは整数であり、
xはN未満であり、
kは少なくとも2であり、
前記操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数は、KEngであり、
前記操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、
EngはFより大きい、
前記操作されたペプチドライブラリ。
【請求項2】
kが方程式、k=N-x+1によって定義される、請求項1に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項3】
Engが少なくとも0.8*k*Fである、請求項1又は2に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項4】
Engが少なくとも0.9*k*Fである、請求項1~3のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項5】
Engが少なくとも0.95*k*Fである、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項6】
Engが少なくとも0.99*k*Fである、請求項1~5のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項7】
Engが少なくとも10*Fである、請求項1~6のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項8】
Engが少なくとも20*Fである、請求項1~7のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項9】
Engが、F個のペプチドフィーチャを有するランダムペプチドライブラリによって表される長さxのアミノ酸の配列を有するランダム要素の総数KRndよりも大きく、前記ランダムペプチドライブラリの前記ペプチドフィーチャのそれぞれが、少なくとも1つのランダムペプチドを含み、前記少なくとも1つのランダムペプチドが長さNのアミノ酸のランダム配列を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項10】
前記複合領域のうちの選択された1つにおける前記要素のそれぞれが、前記複合領域内の隣接する各要素と少なくとも1アミノ酸重複している、請求項1~9のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項11】
前記複数のペプチドが標的プロテオームの少なくとも90%を表す、請求項1~10のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項12】
前記複数のペプチド中の前記ペプチドのそれぞれが12アミノ酸~16アミノ酸の長さである、請求項1~11のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項13】
Nが少なくとも7アミノ酸である、請求項1~12のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項14】
Nが少なくとも10アミノ酸である、請求項1~13のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項15】
Nが少なくとも15アミノ酸である、請求項1~14のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項16】
xが少なくとも5である、請求項1~15のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項17】
xが6である、請求項1~16のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項18】
ペプチドバインダーを同定するための方法であって、
請求項1~17のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリと第1のサンプルを接触させることと、
ペプチドの第1のサブセットから前記複数のペプチドのうちの少なくとも1つを選択することと
を含む、前記ペプチドバインダーを同定するための方法。
【請求項19】
前記操作されたペプチドライブラリとの前記第1の相互作用の第1のシグナル出力特性を検出することと、
前記第1のシグナル出力に基づいて前記少なくとも1つのペプチドを選択することと
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のシグナル出力が、フルオロフォア励起発光を介して得られる蛍光強度であり、前記蛍光強度が、
i)第1の複数のペプチドに関連する第1のサンプル及び第2のサンプルのうちの一方の構成要素の存在量、並びに
ii)第1の複数のペプチドに対する、第1のサンプル及び第2のサンプルのうちの一方の前記構成要素の結合親和性
のうちの少なくとも1つを反映する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数のペプチドフィーチャであって、前記ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、前記少なくとも1つのペプチドが少なくとも15のアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、前記複合領域が10の異なる要素を表し、前記異なる要素のそれぞれが6アミノ酸の定義された配列を有する、前記複数のペプチドフィーチャ
を含む、操作されたペプチドライブラリであって、
前記操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数は、KEngであり、
前記操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、
Engは少なくとも9.5*Fである、
前記操作されたペプチドライブラリ。
【請求項22】
前記ペプチドのそれぞれが固体支持体に結合している、請求項1~17又は21のいずれか一項に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項23】
前記固体支持体がビーズ及びチップのうちの一方である、請求項22に記載の操作されたペプチドライブラリ。
【請求項24】
増強された部分配列多様性を有する操作されたペプチドライブラリであって、該操作されたペプチドライブラリが、
複数のペプチドフィーチャであって、前記ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、前記少なくとも1つのペプチドが長さNのアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、前記複合領域がk個の異なる要素を表し、前記異なる要素のそれぞれが長さxのアミノ酸の定義された配列を有する、前記複数のペプチドフィーチャ
を含み、
x、N、及びkは整数であり、
xはN未満であり、
kは少なくとも2であり、
前記操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数は、KEngであり、
前記操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、
KEngはFより大きく、
Fに対するKEngの比率は、部分配列多様性の尺度であり、
前記各複合領域内の前記k個の異なる要素のそれぞれは、同じ複合領域の他の異なる要素のそれぞれと比べて特有の配列を有し、
前記複合領域のそれぞれの前記定義された配列は、ランダム要素の総数KRndの平均部分配列多様性に対する最大の部分配列多様性のために選択され、
前記ランダム要素が、F個のペプチドフィーチャを有するランダムペプチドライブラリによって表される長さxのアミノ酸の配列を有し、前記ランダムペプチドライブラリの前記ペプチドフィーチャのそれぞれが、少なくとも1つのランダムペプチドを含み、前記少なくとも1つのランダムペプチドが長さNのアミノ酸のランダム配列を有する、
前記増強された部分列多様性を有する操作されたペプチドライブラリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月27日に出願された米国特許出願第62/867,765号及び第62/867,666号の利益を主張し、その内容が任意及び全ての目的で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、バイオマーカを探索するための合成ペプチドの設計及び選択に関し、より具体的には、増強された部分配列多様性を有するペプチドライブラリ及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペプチドは、アミノ酸モノマー単位間のアミド結合の形成によって部分的に組み立てられた生物学的ポリマーである。一般に、ペプチドは、サイズ(例えば、モノマー単位の数又は分子量)、複雑性(例えば、ペプチドの数、補酵素、補助因子、又は他のリガンドの存在)等の因子に基づいて、それらのタンパク質対応物から区別され得る。結合モチーフ、エピトープ、ミモトープ、疾患マーカ等を同定するための実験的手法は、入手又は操作がより困難であり得るより大きな又はより複雑なタンパク質の代わりに、ペプチドを使用することに成功することができる。結果として、ペプチドの研究及びそれらのペプチドを合成する可能性は、生物科学及び医学において大きな関心の対象である。
【0004】
in vivo及びin vitro翻訳システムの両方を含むペプチドの合成、並びにペプチド固相合成法等の有機合成経路のためのいくつかの方法が存在する。ペプチド固相合成法は最初のアミノ酸を、ビーズ、顕微鏡スライド、又は別の同様の表面等の固体表面に結合させる技術である。その後、後続のアミノ酸が最初のアミノ酸に段階的に付加されてペプチド鎖を形成する。ペプチド鎖は固体表面に付着しているため、洗浄工程、側鎖修飾、環化、又は他の処理工程等の操作は、ペプチド鎖を別の場所に維持して実行することができる。
【0005】
ペプチド固相合成法の近年の進歩は、単一の表面(例えば、約75mmx約25mmの顕微鏡スライド)上のアレイに数百万の特有なペプチドフィーチャ(feature)を並列に組み立てるための自動合成プラットフォームを導いた。そのようなペプチドアレイの有用性は、少なくとも部分的に、ペプチド配列の多様性を同時に探索する能力に依存している。既存の手法は何百万もの異なる配列の探索を可能にすることができるが、探索できる特有の配列の数は、例えば単一のアレイ、ビーズ、チップ、又は別の固体支持体上の反応部位によって本質的に限られる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、マイクロアレイ上に固定化されたペプチドの包括的な集団の中で、小さなペプチドに対する標的タンパク質の重複結合を同定することと、次いで単離されたコアヒットペプチドの1回以上の成熟のラウンドを実行することと、続いて成熟ペプチドのN-末端及びC-末端の伸長の1回以上のラウンドを実行することと、を含む方法によって同定された、生物学的に関連するタンパク質に対する一連のペプチドバインダーを提供する。
【0007】
一態様では、本技術は、複数のペプチドフィーチャであって、ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、少なくとも1つのペプチドが長さNのアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、複合領域がk個の異なる要素を表し、異なる要素のそれぞれが長さxのアミノ酸の定義された配列を有する、複数のペプチドフィーチャを含む、操作されたペプチドライブラリに関し、ここで、x、N、及びkは整数であり、xはN未満であり、kは少なくとも2であり、操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数はKEngであり、操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、KEngはFよりも大きい。いくつかの実施形態では、k=N-x+1である。
【0008】
いくつかの実施形態では、複数のペプチドは、標的プロテオームの少なくとも約90%を表す。本明細書に記載の操作されたペプチドライブラリは、増強された部分配列多様性を有し得る。
【0009】
一態様では、操作されたペプチドライブラリは、複数のペプチドフィーチャであって、ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、少なくとも1つのペプチドが長さNのアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、複合領域がk個の異なる要素を表し、異なる要素のそれぞれが長さxのアミノ酸の定義された配列を有する、複数のペプチドフィーチャを含み得、ここで、x、N、及びkは整数であり、xはN未満であり、kは少なくとも2であり、操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数はKEngであり、操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、KEngはFよりも大きく、Fに対するKEngの比率は部分配列多様性の尺度であり、各複合領域内のk個の異なる要素のそれぞれは、同じ複合領域の他の異なる要素のそれぞれと比べて特有の配列を有し、各複合領域の定義された配列は、ランダム要素KRndの総数についての平均部分配列多様性に対する最大部分配列多様性のために選択され、ランダム要素は、F個のペプチドフィーチャを有するランダムペプチドライブラリによって表される長さxのアミノ酸の配列を有し、ランダムペプチドライブラリの各ペプチドフィーチャは少なくとも1つのランダムペプチドを含み、少なくとも1つのランダムペプチドは長さNのアミノ酸のランダム配列を有する。
【0010】
本技術はまた、複数のペプチドフィーチャであって、ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、少なくとも1つのペプチドが少なくとも15アミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、複合領域が10の異なる要素を表し、異なる要素のそれぞれが6アミノ酸の定義された配列を有する、複数のペプチドフィーチャを含む、操作されたペプチドライブラリを提供し、ここで、操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数はKEngであり、操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、KEngは少なくとも9.5*Fである。
【0011】
別の態様では、本技術は、ペプチドバインダーを同定するための方法に関し、方法は、第1のサンプルを本明細書に記載の操作されたペプチドライブラリと接触させることと、ペプチドの第1のサブセットから複数のペプチドのうちの少なくとも1つを選択することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ペプチドバインダー探索のためのペプチドアレイを表す概略図である。
図2図2は、本開示によるペプチドバインダーを同定するための方法の一例である。
図3図3は、固体支持体上に固定化されたペプチドの集団を含む成熟アレイの一実施形態を表す概略図であり、ここで、各ペプチドは、成熟コアヒットペプチド配列を含む。
図4図4は、ペプチドバインダーを同定するための方法の一実施形態を表す概略図である。
図5図5Aは、対照ペプチドの同定及び特性決定のためのペプチドフィーチャの集団を含むペプチドアレイの一実施形態を表す概略図である。図5Bは、複数の受容体分子に対するペプチドフィーチャの曝露後の図5Aのペプチドアレイの一実施形態を表す概略図である。図5Cは、受容体分子への検出可能なタグの結合後の図5Bのペプチドアレイの一実施形態を表す概略図である。
図6図6は、1アミノ酸分解又は4アミノ酸分解のいずれかでタイリングされた16-merペプチドを表す概略図であり、1アミノ酸分解でタイリングされた16-merペプチドで表される、例示的なタンパク質配列EGVKLTALNDSSLDLSMDSDNSMSV(配列番号85)の一部のタイリングを示す表を含む。
図7図7は、1アミノ酸分解でタイリングされた15-merペプチドを表す概略図であり、複合15-merペプチドが10の6-mer要素又は部分配列をどのように表すことができるかを示している。
図8図8は、DFWHGDTCKVTQFDQペプチド、DsbA_1_WT(配列番号85)の単一置換プロットを示す。各ペプチドの位置は、21本の棒(20のアミノ酸のそれぞれに対して1本の棒、及び欠失(最後の棒))で表される。各棒の高さは、シグナル強度の中央値を示す。
図9図9は、(Biacore)SAチップ上に固定化されたビオチン標識DsbAに対する、DsbA_l_WT、DFWHGDTCKVTQFDQ-NH2(配列番号85)の結合を示す。
図10図10は、蛍光シグナル強度及び結合親和性の比較を示す。
【0013】
以下の詳細な説明全体を通して、図から図への同様の部分を説明するために、同様の番号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.概要
上記のように、様々な状況において、ペプチド固相合成法によって調製されたペプチドの集団を提供することが有用であり得る。ペプチドアレイの場合、多様なペプチド配列を同時に探索する能力は、様々な用途において望ましい。既存の手法は何百万もの異なる配列の探索を可能にすることができるが、探索できる特有の配列の数は、例えば単一のアレイ、ビーズ、チップ、又は別の固体支持体上の利用可能な反応部位又はフィーチャの数によって本質的に限られる。これら及び他の課題は、本開示による、増強された部分配列多様性を有するペプチドライブラリによって克服され得る。
【0015】
以下で定義されるように、以下の用語が全体を通して使用される。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、要素を記載する文脈において(特に、後続の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示語等の単数形冠詞は、本明細書において別段の記載がないか、又は文脈によって明確に矛盾することがない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するよう解釈されるものとする。本明細書の値の範囲の列挙は、別段本明細書で示されない限り、その範囲内に収まる各別の値を個々に参照する簡略表記法として機能するようにのみ意図されており、各別個の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法は全て、本明細書において別段の記載がない限り、又は文脈によって明確に矛盾することがない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で提供されるいずれかの及び全ての例、又は例示的な言語表現(例えば、「等」)の使用は単に、実施形態をより良好に明らかにするよう意図されており、別段の記載がない限り、特許請求の範囲に制限を与えるものではない。本明細書におけるいかなる言語表現も、請求されていないあらゆる要素を不可欠なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0017】
本明細書で使用される際、「約(about)」は当業者に理解され、使用される文脈に応じてある程度変化する。当業者には明らかでない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を考慮すると、「約(about)」はその特定の用語のプラス又はマイナス10%を意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「操作されたペプチドライブラリ」は、所与の固定ライブラリ形式で他の方法で利用可能であるよりも有意に多くのモチーフの探索及び試験を可能にするように設計及び合成されたペプチド配列のライブラリである。既知の合成手法を使用して調製されたペプチドのライブラリは、ペプチド又はペプチドフィーチャの数(例えば、マイクロアレイの場合)及びアミノ酸のペプチドの全長を含むパラメータによって定められる。しかし、所与のライブラリ形式で提供されるよりも多くの数のペプチドをスクリーニングすることが望ましい場合は、必要なライブラリサイズを提供するために複数のライブラリを作製しなければならない。例えば、全ての可能な6-merのライブラリは、20又は6400万の特有なペプチドのペプチドライブラリサイズを必要とするであろう。単一のペプチドライブラリでこの配列空間のより大部分を探索できるようにするために、複数のx-merがN-merペプチド配列に埋め込まれる設計手法が開発され、ここで、N及びxは整数であり、Nはxより大きい。一態様では、この手法は、単一のN-merペプチドフィーチャにおける複数の特有のx-merペプチドの提示を提供する。一例では、約300万のペプチドフィーチャ空間で3000万を超える特有の6-merペプチドモチーフの合成が達成された。この手法は、前述のライブラリを抗菌標的DsbAに対してスクリーニングすることによって検証されている。
【0019】
最初に、ペプチド合成に利用可能な約300万のフィーチャを有する例示的アレイを考慮する。この例示的アレイは、最大300万の特有のペプチドの合成に対応することができる。本明細書で使用される場合、「特有のペプチド」という用語は、ペプチドの固定集団内の各ペプチドが、集団内の他の各ペプチドと比較して特有のアミノ酸配列を有することを意味する。例えば、2つのペプチドが少なくとも1つのアミノ酸が互いに異なる場合、その2つのペプチドは特有である。
【0020】
上記の例を続けると、20の標準アミノ酸全ての使用を考慮すると、調製できる特有の5-merペプチドの数は、20、すなわち320万の特有の5-merペプチド配列である。したがって、約300万のフィーチャを有するアレイは、20の標準アミノ酸ビルディングブロックから調製された5-merペプチド配列の全てではないにしても大部分に対応することができる。そのような包括的な5-merペプチドは、様々な標的に対するペプチドバインダーを同定するための有用性を有することが実証されている(例えば、「Specific Peptide Binders to Proteins Identified via Systematic Discover,Maturation,and Extension Process」と題された、米国特許出願第15/132,951号を参照されたい)。しかし、場合によっては、長さが5アミノ酸を超えるコアバインダー配列を提供することが有用であり得る。このような場合、特有の6-、7-、8-、9-、10-、11-、12-、13-、14-、15-、16-、17-、18-、19-、20-mer、又はそれを超えるペプチドのアレイを提供することが望ましい場合がある。
【0021】
より長いペプチドの使用を検討する場合、単一のアレイ上に表すことができる特有のアミノ酸配列の数は、利用可能なフィーチャの数によって大きく制約される。20の標準アミノ酸全てから調製された6-merペプチドの場合、調製できる特有の6-merペプチドの数は、20、すなわち6400万の特有の6-merペプチド配列である。300万のフィーチャの制約を考えると、単一のアレイは、全ての可能な特有の6-merペプチド配列の最大で約4.7%を表すことができる。あるいは、6400万の可能な全ての6-mer配列を表すためには、各アレイが300万の特有のフィーチャを有する22の別個のアレイが必要となるであろう。この手法は、選択状況下で実行可能であり得るが、7アミノ酸以上の長さを有するペプチドに移行する場合、この手法は実行不可能となる。
【0022】
一態様では、ペプチドのサブセットを選択することが可能であり得る。例えば、ヒトゲノムに存在する6-merペプチド配列のみを考慮することが可能であり得るが、ヒト標的のバインダー探索に関連する、ヒトゲノムには見られない配列が存在することが以前に示されている(少なくともPatel A,Dong JC,Trost B,Richardson JS,Tohme S,et al.(2012)Pentamers Not Found in the Universal Proteome Can Enhance Antigen Specific Immune Responses and Adjuvant Vaccines.PLoS ONE 7(8):e43802.doi:10.1371/journal.pone.0043802を参照されたい)。したがって、所与のプラットフォームのフィーチャ容量を増加させる必要なしに、特有のペプチド配列の表現を増加させるために、新しい手法が必要である。
【0023】
この目標に向けて、本発明者等は、各ペプチドが全長Nを有し、Nがxより大きいペプチドのアレイを調製することにより、単一のアレイ上に表されるx-merペプチド配列の有効数を増加させることが可能であるという驚くべき発見をした。図8に目を向けると、15-merのペプチドの例が、各ブロックが単一のアミノ酸を表す一連の15ブロックとして示されている。15-merのペプチドは、1アミノ酸タイリング分解を有する一連の重複する6-merの要素に分解できる複合配列を定義する。効果的に、15-merペプチド配列は、最大10の特有の6-merペプチド配列を提供する。300万のフィーチャを有するアレイの場合、最大3000万の特有の6-merペプチド配列を表す最大300万の15-merペプチドを調製することができる(すなわち、3000万の15-merペプチドフィーチャのそれぞれに対して10の6-merペプチド)。この手法は、複数のx-mer要素を表す長さNの任意の複合ペプチドに一般化することがすることができる。更に、x-mer要素が1アミノ酸タイリング分解と重複する必要はない。タイリング分解は、2アミノ酸以上の重複になるように変更することができるか、又はx-mer要素が全く重複しない場合がある。
【0024】
一実施形態では、操作されたペプチドライブラリは、複数のペプチドフィーチャを含む。各ペプチドフィーチャは、少なくとも1つのペプチドを含み、少なくとも1つのペプチドは、長さNのアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含む。複合領域は、k個の異なる要素を表し、各異なる要素(k)は、長さxのアミノ酸の定義された配列を有する。特に、x、N、及びkは整数であり、xは必然的にN未満である。いくつかの場合ではxがNより少なくとも1小さく(すなわち、x≦N-1)、kは少なくとも2である。いくつかの実施形態では、kは少なくとも3、4、又は5である。操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数は、KEngとして定義でき、操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数は、Fとして定義することができ、ここで、KEngはFよりも大きい。上記の例では、KEngは少なくとも0.8*k*Fであり、これは、15-mer複合配列によって集合的に表されるx-merペプチド要素の少なくとも80%が特有であることを示す。実施形態のいずれかでは、KEngは少なくとも0.85*k*Fであり得る。実施形態のいずれかでは、KEngは少なくとも0.9*k*Fであり得る。実施形態のいずれかでは、KEngは少なくとも0.95*k*Fであり得る。実施形態のいずれかでは、KEngは少なくとも0.99*k*Fであり得る。実施形態のいずれかでは、KEngは少なくとも0.999*k*Fであり得る。使用する手法に応じて、KEngは少なくとも0.8*k*F、0.85*k*F、0.95*k*F、0.9*k*F、0.99*k*F、0.999*k*F、又はこれを超えるものとすることがすることができる。
【0025】
(N及びxに選択された数に応じて)特有のx-mer要素のみを表す少なくとも300万のN-mer配列を同定することは計算上困難であり得るが、発明者等は更に、表されたx-merが完全に特有なペプチド配列の集団に接近する、N-merペプチドの選択を可能にする効率的なアルゴリズムを発見した。本開示によれば、アルゴリズム的手法を使用して、比較的短時間でN-mer複合配列のセットを調製することができる。このアルゴリズムは、汎用スクリプト言語であるPerlを使用して開発された。アルゴリズムは、利用可能なアミノ酸のリストからN-merペプチドの各位置のアミノ酸をランダムに選択することによってペプチドを生成する。次いで、アルゴリズムは新しく生成されたペプチドをタイリングし、可能な全てのx-mer要素の存在を同定し、これらは、アルゴリズムが遭遇した要素のリストに追加される。次に、新しいN-merペプチドを生成し、上記と同じタスクを実行するが、遭遇した要素のリストにすでに存在するx-mer要素に遭遇した場合は、新しく生成されたN-merペプチドは破棄される。このプロセスは、ユーザが指定した数のN-merペプチドに到達するまで繰り返される。更に、アルゴリズムは、各x-mer要素を認識した回数を追跡し、所与の要素の許容される繰返しの数を定義するためのユーザ制御を許可する。
【0026】
特に、このアルゴリズムは非常に用途が広く、x<Nである限り、任意のN-merペプチド及びx-mer要素に使用することができる。本開示において、15-mer複合ペプチド及び6-mer要素の非限定的な例が調査された。この手法を使用すると、3000万を超える特有の6-merペプチド配列を表す約300万の15-merペプチドを生成することができ、これは、20の標準アミノ酸全てから調製された全ての可能な特有の6-mer配列の半分弱を表す。次いで、説明したアルゴリズムを使用して同定された300万+15-merペプチドのそれぞれで、単一のペプチドアレイを合成し、そのアレイを効果的に使用して、標的DsbAに対するバインダーを同定した。異なる5-merペプチドが合成された各フィーチャを有する300万のフィーチャのアレイ(すなわち、15-merアレイとは対照的に5-merアレイ)を使用することは、本開示による15-merアレイの使用と比較して、DsbAに対する所望の特性を有するバインダーを同定するには不十分であったことを理解されるべきである。
【0027】
本手法は、増強された部分配列多様性を有するペプチドライブラリを調製するために効果的であることを更に理解されるべきである。すなわち、特有なN-merペプチド配列のセットを調製するために多くの手法が利用可能である。例えば、特有の15-merペプチドのリストは、部分配列(すなわち、N-merの全体的な配列によって表されるx-mer要素)を考慮せずに、各ペプチドが次のペプチドと異なる場合に簡単に生成することができる。表1を参照して、部分配列の組成に関係なく、6つのそのような特有な15-merペプチドのセットを調製した。次に、得られたペプチドを分析して、そこに表されている特有の6-merペプチドの数を同定した。可能な6-merペプチドの最大数は、約300万の15-merペプチドで表すことができる特有の6-merペプチドの最大数を示す。次に、実際の特有の6-merペプチドの数は、6つのセットのそれぞれについてランダムに調製された特有の15-merペプチド配列のリストによって最終的に表された特有の6-merの数を正確に示す。最後の縦列は、6-merの可能な最大数と比較した、表された6-merの百分率を示す。6つの全ての場合で、15-merペプチドが可能な最大数の約73.6%を表したと決定された。
【0028】
(表1)比較方法によって調製されたランダムに特有の15-merペプチド配列によって表される特有な6-mer
【0029】
表1に示されるデータとは対照的に、開示された手法を使用することにより、15-merペプチドの集団によって表される6-merペプチド配列の多様性を100%近くに増加させることが可能であった。特に、開示されたアルゴリズムは、30,325,760の特有の6-merペプチド配列を表す同数の15-merペプチド、又は本手法で可能な最大数の特有の6-merの99.6%を得ることができた。理論に制限されることなく、各N-merペプチド内の局所的な多様性を増加させることにより、所与のペプチドアレイ上に表される全体的な配列の多様性を増加させることが可能であり、それにより所与の標的に対するペプチドバインダーを効果的に同定する能力を高めることができると仮定される。表2は、一連のN-merアレイのx-mer表現を更に示す。
【0030】
(表2)本発明の方法によって調製されたランダムに特有のN-merペプチド配列によって表される特有のX-mer
【0031】
表2では、最初の行(5-merアレイ)は、メチオニンを除く20の標準アミノ酸全てから調製された全ての5-mer配列を含む5-merの設計を表す。この手法は、20の標準アミノ酸全てから調製された全ての可能な5-mer配列の94.9%を表す合計3,035,196の特有なペプチドを提供する。各ペプチドの長さは5アミノ酸に制限されているため、アレイは必ずしも6-merのペプチド配列を表すわけではない。2番目のアレイは、ヒトプロテオーム全体にタイリングされた16-merペプチドを含む。この設計は、20の標準アミノ酸全てから調製された全ての可能な5-merペプチドの73.3%を表す。特に、ヒトプロテオームは20の標準アミノ酸全てから調製された全ての可能な5-merペプチド配列を含まないため、この数は100%よりはるかに少ない。この設計の各16-merペプチドは、最大11の特有な6-mer要素を表すことがすることができるが、設計は6-merに最適化されておらず、単にヒトプロテオームを表したものであるため、可能な全ての6-merペプチド配列の12.4%しか表されていない。
【0032】
ここで、3行目の「疑似6-mer」設計を考慮して、特有性及び部分配列多様性の両方について選択された15-mer配列のアレイを、本明細書に開示される方法に従って調製した。この設計は更にメチオニンの使用を排除した。得られたライブラリは、約300万のフィーチャを有する単一のアレイを使用して、20の標準アミノ酸全てから調製された全ての可能な5-mer配列の77.4%、及び20の標準アミノ酸全てから調製された全ての可能な6-mer配列の47.4%を表した。特に、この最終的な手法は、包括的な15-mer複合ペプチドの6-mer要素の部分配列多様性を大幅に拡大する。
【0033】
いくつかの実施形態では、Nは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、Nは、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、Nは6~20のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、Nは7~16のアミノ酸である。
【0034】
いくつかの実施形態では、xは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19である。いくつかの実施形態では、xは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14である。いくつかの実施形態では、xは5~19のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、xは5~12のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、xは6~14のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、xは6~10のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、xは6~9のアミノ酸である。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数のペプチドは、少なくとも約80%、85%、90%、又は95%を表す。いくつかの実施形態では、複数のペプチドは、標的プロテオームの約80~100%、85~100%、90~100%、95~100%、80~99.9%、85~99.9%、90~99.9%、95~99.9%、80~99%、85~99%、90~99%、又は95~99%を表す。
【0036】
本開示によるペプチドアレイの適用については、概して、複数のバインダー配列に対して親和性を有する受容体の存在下で、ペプチドフィーチャの集団を探索することによってペプチド集団を評価することが有用である。受容体は、所与のペプチド配列又はフィーチャを特異的に結合させることができる任意のペプチド、タンパク質、抗体、小分子、又は他の同様の構造体を含む。一般に、受容体が特定のペプチド又はペプチドフィーチャに結合しているかどうかを決定するために、受容体の側面が検出可能であるべきである。例えば、受容体自体は、蛍光顕微鏡で検出可能なフルオロフォアを含み得る。あるいは(又は更に)、受容体は、蛍光抗体等の二次分子によって結合され得る。更なる手法もまた、本開示の範囲内に含まれるであろう。
【0037】
上記のように、受容体は、既知のバインダー配列又は親和性配列に結合するか、又はそうでなければ相互作用することができる。バインダー配列の一例は、定義されたアミノ酸配列又はモチーフである。定義されたアミノ酸配列は、合成ペプチド集団内の全長ペプチドの少なくとも一部を表すことができる。しかし、バインダー配列はそれ自体が全長ペプチドであり得る。例えば、「Strep-tag」として知られる8つのアミノ酸ペプチド配列Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lysは、タンパク質ストレプトアビジンの操作された形態に対して特有の親和性を示す。本開示によれば、Strep-tagは、所与のペプチドのN-末端又はC-末端のいずれかに組み込むことができ、あるいはペプチド内の中間点に組み込むことさえできる。その後、Strep-tagバインダー配列からなる(又はそれを含む)ペプチドを含むペプチド集団は、ストレプトアビジン受容体によって結合され得る。次に、ストレプトアビジンのStrep-tag配列への結合は、様々な技術を使用して検出することができる。バインダー配列の更なる例は、ヘキサヒスチジンタグ(Hisタグ)、FLAGタグ、カルモジュリン結合ペプチド、共有結合であるが分離可能なペプチド、タンパク質Cタグの重鎖等を含む。代替(又は追加)のバインダー配列-受容体の対もまた、本開示の範囲内である。
【0038】
本明細書に開示されるようなバインダー配列を引き続き参照すると、各バインダー配列は、特定の又は定義されたアミノ酸配列を有するであろう。バインダー配列は、少なくとも3つのアミノ酸を含むことができる。本明細書に開示される例示的なバインダー配列は、約5のアミノ酸~約12のアミノ酸を含む。しかし、5つ未満又は12を超えるアミノ酸を有するバインダー配列も使用することができる。特定のバインダー配列における各アミノ酸の位置は、N-末端([N])又はC-末端([C])のいずれかにおける開始を定義することができる。例えば、前述のStrep-tagバインダー配列におけるアミノ酸の位置は、[N]-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-[C]として定義することができる。したがって、アミノ酸ヒスチジン(His)の位置は、Strep-tagバインダー配列のN-末端から3番目のアミノ酸として定義される。特に、上記のように、Strep-tagバインダー配列は、N-末端及びC-末端のいずれか又は両方で1つ又は複数の追加のアミノ酸に隣接することができる。
【0039】
本開示による方法は、受容体と第1の制御ペプチドフィーチャとの相互作用のシグナル出力特性を検出することを更に含む。シグナル出力を検出する工程は、受容体の存在下又は非存在下で、ペプチドの集団内の1つ又は複数のペプチド又はペプチドフィーチャの測定可能な側面をモニタリングするか、そうでなければ観察する任意の方法を含み得る。シグナル出力の例には、光出力(例えば、発光)、電気出力、化学出力等、及びそれらの組合わせが含まれる。結果として、シグナル出力を検出する工程は、任意の好適な機器を使用して、シグナル出力を測定、記録、又そうでなければ観察することを含み得る。機器の例は、蛍光顕微鏡、デジタルカメラ等の光学的及びデジタル検出機器を含む。いくつかの実施形態では、シグナル出力の検出は、1つ又は複数の波長の光による励起、熱操作、1つ又は複数の化学試薬の導入、これらと同等のもの等、並びにこれらの組合わせ等の摂動を更に含む。特に、合成ペプチド集団は、非天然アミノ酸、アミノ酸誘導体、又は他のモノマー単位等の代替ビルディングブロックを全て含むように合成される、ペプチドフィーチャの集団を含むことができる。
【0040】
II.ペプチド
本開示の様々な実施形態によれば、ペプチド(例えば、対照ペプチド、ペプチドバインダー配列)が開示される。各ペプチドは、本明細書に記載されるように、2つ以上の天然又は非天然アミノ酸を含む。本明細書に記載の実施例では、ペプチドの線状形態が示されている。しかし、当業者は、例えば、Albert et alの2014年12月19日に出願された、米国特許公開第2015/0185216号に開示されているように、N-末端をC-末端と反応させることによって、ペプチドを環状形態に変換できることを直ちに理解するであろう。したがって、この技術の実施形態は、環状ペプチド及び線状ペプチドの両方を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「オリゴペプチド」、及び「ペプチドバインダー」という用語は、アミノ酸から構成される有機化合物を指し、これらは、線状鎖(隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって互いに結合される)、環状形態(内部部位を使用して環化される)、又は拘束性形態(例えば、頭-尾の環化形態の「大員環」)で配置され得る。「ペプチド」又は「オリゴペプチド」という用語はまた、より短いポリペプチド、すなわち、50未満のアミノ酸残基から構成される有機化合物を指す。本明細書で使用される大員環化合物(又は拘束性ペプチド)は、約500ダルトン~約2000ダルトンのペプチド等の環状小分子を説明するためのその慣習的な意味で使用される。
【0042】
「天然アミノ酸」又は「標準アミノ酸」という用語は、タンパク質に通常見出され、タンパク質生合成に使用される20のアミノ酸の1つ、及び翻訳中にタンパク質に組み込むことができる他のアミノ酸(ピロリシン及びセレノシステインを含む)を指す。20の天然アミノ酸には、ヒスチジン(His;H)、アラニン(Ala;A)、バリン(Val;V)、グリシン(Gly;G)、ロイシン(Leu;L)、イソロイシン(Ile;I)、アスパラギン酸(Asp;D)、グルタミン酸(Glu;E)、セリン(Ser;S)、グルタミン(Gln;Q)、アスパラギン(Asn;N)、スレオニン(Thr;T)、アルギニン(Arg;R)、プロリン(Pro;P)、フェニルアラニン(Phe;F)、チロシン(Tyr;Y)、トリプトファン(Trp;W)、システイン(Cys;C)、メチオニン(Met;M)、及びリジン(Lys;K)のL-立体異性体が含まれる。「20の全てのアミノ酸」という用語は、上記の20の天然アミノ酸を指す。
【0043】
「非天然アミノ酸」という用語は、標準的な遺伝暗号によってコードされるものでないか、又は翻訳中にタンパク質に組み込まれるものではない有機化合物を指す。したがって、非天然アミノ酸には、20の全てのアミノ酸のD-立体異性体、20の全てのアミノ酸のベータ-アミノ類似体、シトルリン、ホモシトルリン、ホモアルギニン、ヒドロキシプロリン、ホモプロリン、オルニチン、4-アミノ-フェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、α-アミノイソ酪酸、N-メチル-アラニン、N-メチル-グリシン、ノルロイシン、N-メチル-グルタミン酸、tert-ブチルグリシン、α-アミノ酪酸、tert-ブチルアラニン、2-アミノイソ酪酸、α-アミノイソ酪酸、2-アミノインダン-2-カルボン酸、セレノメチオニン、デヒドロアラニン、ランチオニン、γ-アミノ酪酸、及びアミン窒素がモノ又はジアルキル化されているそれらの誘導体を含むがそれだけに限定されない、アミノ酸又はアミノ酸の類似体が含まれる。
【0044】
本開示の実施形態によれば、ペプチドは、支持体表面(例えば、マイクロアレイ、ビーズ等)に固定化されて提示される。いくつかの実施形態では、対照ペプチドとして使用するために選択されたペプチドは、任意選択で、1回以上のラウンドの伸長及び成熟化プロセスを経て、本明細書に開示される対照ペプチドを得ることができる。
【0045】
III.マイクロアレイ
本明細書に開示されるペプチドは、オリゴペプチドマイクロアレイを使用して生成することができる。本明細書で使用される場合、「マイクロアレイ」という用語は、固体又は半固体の支持体の表面上のフィーチャの二次元配置を指す。単一のマイクロアレイ、又は場合によっては複数のマイクロアレイ(例えば、3、4、5、又はそれを超えるマイクロアレイ)を1つの固体支持体上に配置することができる。固定次元の固体支持体の場合、マイクロアレイのサイズは、固体支持体上のマイクロアレイの数に依存する。すなわち、固体支持体当たりのマイクロアレイの数が多いほど、固体支持体に適合するためにアレイは小さくなくてはならない。アレイは任意の形状に設計できるが、正方形又は長方形として設計することが望ましい。直ちに使用できる製品は、固体又は半固体の支持体(マイクロアレイスライド)上のオリゴペプチドマイクロアレイである。
【0046】
「ペプチドマイクロアレイ」又は「オリゴペプチドマイクロアレイ」又は「ペプチドチップ」又は「ペプチドエピトープマイクロアレイ」という用語は、マイクロアレイ、すなわち、固体表面、例えば、ガラス、炭素複合体又はプラスチックアレイ、スライド、又はチップ上に配置されるペプチドの集団又はコレクションを指す。
【0047】
「フィーチャ」という用語は、マイクロアレイの表面上の定義された領域を指す。フィーチャは、ペプチド(すなわち、ペプチドフィーチャ)、核酸、炭水化物等のような生体分子を含む。1つのフィーチャには、他のフィーチャと比較して、異なる配列又は方向等、異なる特性を有する生体分子が含まれる。フィーチャのサイズは、2つの要因、i)アレイ上のフィーチャの数(アレイ上のフィーチャの数が多いほど、各単一のフィーチャは小さくなる)、ii)1つのフィーチャの照射に使用される個別にアドレス指定可能なアルミニウムミラー要素の数によって決定される。1つのフィーチャの照射に使用されるミラー要素の数が多いほど、各単一のフィーチャは大きくなる。アレイ上のフィーチャの数は、マイクロミラー装置に存在するミラー要素(ピクセル)の数によって制限される場合がある。例えば、Texas Instruments,Inc.(Dallas,Tex.)の最先端のマイクロミラー装置は、現在420万のミラー要素(ピクセル)を含んでおり、したがってそのような例示的なマイクロアレイ内のフィーチャの数は、この数によって制限される。しかし、他のマイクロミラー装置ではより高密度のアレイが可能である。
【0048】
「固体又は半固体支持体」という用語は、有機分子が、結合形成によって付着され得るか、あるいは共有結合又は特定の官能基を介した複合体形成等の電子的又は静的相互作用によって吸収され得る、表面領域を有する任意の固体材料を指す。支持体は、ガラス上のプラスチック、ガラス上の炭素等の材料の組合わせとすることができる。機能的表面は、単純な有機分子であり得るが、コポリマー、デンドリマー、分子ブラシ等を含むこともできる。
【0049】
「プラスチック」という用語は、有機分子が、共有結合形成によって結合され得るか、あるいは官能基を介した結合形成等の電子的又は静的な相互作用によって吸収され得るように、官能化された表面を有する有機ビルディングブロック(モノマー)のホモ又はヘテロコポリマー等の合成材料を指す。好ましくは、「プラスチック」という用語は、オレフィンの重合に由来するポリマーであるポリオレフィンを指す(例えば、エチレンプロピレンジエンモノマーポリマー、ポリイソブチレン)。最も好ましくは、プラスチックは、TOPAS(登録商標)又はZEONOR/EX(登録商標)のような定義された光学特性を備えたポリオレフィンである。
【0050】
「官能基」という用語は、化学分子の一部を形成し、それ自体が特徴的な反応を経、分子の残りの部分の反応性に影響を与える、原子の多数の任意の組合わせを指す。典型的な官能基には、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、カルボニル、アミノ、アジド、アルキニル、チオール、及びニトリルが含まれるが、これらに限定されない。潜在的に反応性の官能基には、例えば、アミン、カルボン酸、アルコール、二重結合等が含まれる。好ましい官能基は、アミノ基又はカルボキシル基等のアミノ酸の潜在的に反応性の官能基である。
【0051】
オリゴペプチドマイクロアレイを製造するための様々な方法が当技術分野で知られている。例えば、既製ペプチドのスポッティング又は試薬のスポッティングによるin situ合成(例えば、膜上)は、既知の方法を例示する。より高密度のペプチドアレイを生成するために使用される他の既知の方法は、いわゆるフォトリソグラフィ技術であり、この場合、所望の生体高分子の合成設計は、光等の電磁放射への曝露時に、それぞれの次の成分(アミノ酸、オリゴヌクレオチド)に対する結合部位を放出する、好適な光分解性保護基(PLPG)によって制御される(Fodor et al.,(1993)Nature 364:555-556;Fodor et al.,(1991)Science 251:767-773)。最新式では、2つの異なるフォトリソグラフィ技術が知られている。1つ目はフォトリソグラフィマスクであり、合成表面の特定の領域に光を向けて、PLPGの局所的な脱保護を行うために使用される。「マスク付き(Masked)」の方法は、基板と係合し、基板とマウントとの間に反応空間を提供するマウント(例えば、「マスク」)を利用するポリマーの合成を含む。そのような「マスク付き」アレイ合成の例示的な実施形態は、例えば、米国特許第5,143,854号及び第5,445,934号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。しかし、この技術の潜在的な欠点は、比較的低い全体的な収率及び高いコストをもたらす多数のマスキング工程の必要性を含み、例えば、長さがわずか6アミノ酸のペプチドの合成は、100を超えるマスクを必要とし得る。第2のフォトリソグラフィ技術は、いわゆるマスクレスフォトリソグラフィであり、この場合、光は合成表面の特定の領域に向けられ、マイクロミラー装置等のデジタル投影技術によるPLPGの局所的な脱保護を行う(Singh-Gasson et al.,Nature Biotechn.17(1999)974-978)。したがって、そのような「マスクレス」アレイ合成は、時間及び費用のかかる露光マスクの製造の必要性を排除する。本明細書に開示されるシステム及び方法の実施形態は、上記の様々なアレイ合成技術のいずれかを含むか、又は利用することができることを理解されたい。
【0052】
オリゴペプチドマイクロアレイのフォトリソグラフィベースの合成の基礎を提供するPLPG(光分解性保護基)の使用は、当技術分野でよく知られている。フォトリソグラフィベースの生体高分子合成に一般的に使用されるPLPGは、例えば、α-メチル-6-ニトロピペロニル-オキシカルボニル(MeNPOC)(Pease et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:5022-5026)、2-(2-ニトロフェニル)-プロポキシカルボニル(NPPOC)(Hasan et al.(1997)Tetrahedron 53:4247-4264)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)(Fodor et al.(1991)Science 251:767-773)及び2-ニトロベンジルオキシカルボニル(NBOC)である。
【0053】
アミノ酸は、オリゴペプチドマイクロアレイのフォトリソグラフィペプチド固相合成法に導入されており、光分解性アミノ保護基としてNPPOCで保護されており、ガラススライドが支持体として使用された(米国特許公開第20050101763号)。NPPOCで保護されたアミノ酸を使用する方法は、全ての(1つを除く)保護されたアミノ酸の光で照射した際の半減期が、特定の条件下で約2~3分の範囲内であるという欠点がある。対照的に、同じ条件下で、NPPOCで保護されたチロシンはほぼ10分の半減期を示す。合成プロセス全体の速度は最も遅いサブプロセスに依存するため、この現象により、合成プロセスの時間が3~4倍増加する。付随して、成長するオリゴマーへの光生成ラジカルイオンによる損傷の程度は、増加する過剰な光線量要件と共に増加する。
【0054】
当技術分野の技術者の1人によって理解されるように、ペプチドマイクロアレイは、数千(又は本開示の場合、数百万)のペプチド(複数のコピーで提示されるいくつかの実施形態)が、固体支持体(いくつかの実施形態では、ガラス、炭素複合材料、又はプラスチックチップ又はスライドを含む)に結合又は固定化される。
【0055】
いくつかの実施形態では、ペプチドマイクロアレイは、受容体、抗体、酵素、ペプチド、オリゴヌクレオチド等のような目的のサンプルに曝露される。目的のサンプルに曝露されたペプチドマイクロアレイは、1つ又は複数の洗浄工程を経、次いで、検出プロセスにかけられる。いくつかの実施形態では、アレイは、目的のサンプルを標的とする抗体(例えば、抗IgGヒト/マウス又は抗ホスホチロシン又は抗myc)に曝露される。通常、二次抗体は、蛍光スキャナで検出できる蛍光標識でタグ付けされている。他の検出方法は、化学発光、比色定量、又はオートラジオグラフィである。他の実施形態では、目的のサンプルは、ビオチン化され、次いで、フルオロフォアに結合したストレプトアビジンによって検出される。更に他の実施形態では、目的のタンパク質は、Hisタグ、FLAGタグ、Mycタグ等の特定のタグでタグ付けされ、タグに特異的なフルオロフォア結合抗体で検出される。
【0056】
マイクロアレイスライドをスキャンした後、スキャナは20ビット、16ビット、又は8ビットの数値画像をタグドイメージファイルフォーマット(*.tif)で記録する。tif画像により、スキャンしたマイクロアレイスライド上の各蛍光スポットの解釈及び定量化が可能になる。この定量的データは、マイクロアレイスライド上で測定された結合イベント又はペプチド修飾に関する統計分析を実行するための基礎である。検出されたシグナルの評価及び解釈のために、ペプチドスポット(画像に表示)及び対応するペプチド配列の割り当てを実行する必要がある。
【0057】
ペプチドマイクロアレイは、ペプチドがその上にスポットされているか、又はin situ合成によって表面に直接組み立てられているスライドである。ペプチドは、理想的には化学選択的結合を介して共有結合し、相互作用プロファイリングと同じ方向のペプチドを導く。代替手順は、非特異的な共有結合及び接着性固定化を含む。
【0058】
本開示の特定の一実施形態によれば、特定のペプチドバインダーは、基板上でのペプチドバインダープローブの製造において、マスクレスアレイ合成を使用して同定される。そのような実施形態によれば、使用されるマスクレスアレイ合成は、最大290万の特有のペプチドの超高密度ペプチド合成を可能にする。290万の各フィーチャ/領域は、全長ペプチドを生成する可能性のある最大107の反応部位を有する。より小さなアレイも設計することができる。例えば、システインを除く19の天然アミノ酸を使用した全ての可能な5-merペプチドの包括的なリストを表すアレイは、2,476,099のペプチドを有する。他の例では、アレイは、非天然アミノ酸及び天然アミノ酸を含み得る。システイン及びメチオニンを除く18の天然アミノ酸の全ての組合わせを使用することによる5-merペプチドのアレイも使用することができる。更に、アレイは他のアミノ酸又はアミノ酸二量体を除外することができる。いくつかの実施形態では、アレイは、同じアミノ酸の任意の二量体又はより長い反復、並びにHR、RH、HK、KH、RK、KR、HP、及びPQ配列を含む任意のペプチドを除外して、1,360,732の特有なペプチドのライブラリを作製するように設計され得る。より小さなアレイは、アレイデータから引き出された結論の信頼性を高めるために、同じアレイ上に各ペプチドの複製を有し得る。
【0059】
様々な実施形態では、本明細書に記載のペプチドアレイは、ペプチドアレイの固体支持体に結合した、少なくとも1.0×10、1.2x10、1.4x10、1.6x10、1.8x10、2.0x10、1.6x10、1.8x10、2.0x10のペプチド、及び/又は最大約1.0x10、5.0x10、8.0x10、1.0x10のペプチド、又はその間の任意の数若しくは範囲のペプチドを有し得る。本明細書に記載のように、特定の数のペプチドを含むペプチドアレイは、単一の固体支持体上の単一のペプチドアレイを意味することができ、又はペプチドを分解し、複数の固体支持体に結合させて、本明細書に記載のペプチドの数を得ることができる。
【0060】
そのような実施形態に従って合成されたアレイは、線状又は環状形態(本明細書に記載)で、N-メチル又は他の翻訳後修飾等の修飾の有無にかかわらず、ペプチドバインダーの探索のために設計することができる。(本明細書で更に詳細に説明するように)アレイは、潜在的なヒットのN-末端及びC-末端で反復スクリーニングを実行することにより、ブロック手法を使用して潜在的なバインダーを更に伸長するために設計することもできる。理想的な親和性のヒットが探索されると、成熟アレイ(本明細書で更に説明)の組合わせを使用して更に成熟させることができ、これは天然及び非天然の両方の様々なアミノ酸の組合わせの挿入、欠失及び置換分析を可能にする。
【0061】
本開示のペプチドアレイは、本技術の特定のバインダー又はバインダー配列を同定するため、並びに対照ペプチドの設計及び選択に使用するためのバインダー配列の成熟及び伸長のために使用される。
【0062】
IV.ペプチドバインダーの探索
一態様では、本開示は、新規なバインダーの探索を提供する。ここで図1を参照すると、本開示の一実施形態によれば、ペプチドアレイ100は、数百、数千、数万、数十万、更には数百万のペプチド102の集団を含むように設計され得る。いくつかの実施形態では、ペプチド102の集団は、ペプチド102が集合的に、タンパク質全体、遺伝子、染色体、又は目的のゲノム全体(例えば、ヒトプロテオーム)でさえも表すように構成することができる。更に、ペプチド102は、特定の基準に従って構成することができ、それにより、特定のアミノ酸又はモチーフが除外される。更に、ペプチド102は、ペプチド102のそれぞれが同一の長さを含むように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、アレイ基板104上に固定化されたペプチド102の集団は全て、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、11-、又は更に12-mers、又はそれを超えるものを含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチド102はまた、それぞれがN-末端配列(N-末端106)又はC-末端配列(C-末端108)を含み得、ここで、各ペプチド102は、特定かつ同一の長さ(例えば、3-、4-、5-、6-、7-、又は更に8-mer、又はそれを超えるもの)のN-末端配列及びC-末端ペプチド配列の両方を含む。特に、アレイ上の特定の位置にあるペプチドの配列は既知である。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドアレイ100は、最大290万のペプチド102の集団を含むように設計され、290万のペプチド102が、アレイ基板104に固定化された、ゲノムの全ての可能な5-merプローブペプチド110の包括的なリストを表すように構成される。いくつかのそのような実施形態では、5-merプローブペプチド110(アレイの290万のペプチドを含む)は、20のアミノ酸のうちの1つ又は複数を除外し得る。例えば、ペプチドの異常なフォールディングを制御するのを助けるために、Cysを除外することがすることができる。アミノ酸Metは、プロテオーム内の稀なアミノ酸として除外することができる。他の選択的除外は、同じアミノ酸の2以上のアミノ酸の反復(電荷及び疎水性相互作用等の非特異的相互作用の制御を支援するため)であるか、又はHis-Pro-Glnが既知のストレプトアビジン結合モチーフである、His-Pro-Gln配列からなるものである、特定のアミノ酸モチーフ(例えば、ストレプトアビジンバインダーの場合)である。図1を引き続き参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、5-merプローブペプチド110は、上記のアミノ酸又はアミノ酸モチーフのうちの1つ又は複数を除外し得る。この技術の一実施形態は、最大290万のペプチド102の集団を含むペプチドアレイ100を含み、ここで、ペプチド102の5-merプローブペプチド110部分は、ヒトゲノム全体を表す。一例では、5-merプローブペプチド110は、アミノ酸Cys及びMetを含まず、2以上のアミノ酸のアミノ酸反復を含まず、アミノ酸モチーフHis-Pro-Glnを含まない。この技術の別の実施形態は、ヒトゲノム全体によってコードされるタンパク質含有を表す、5-merプローブペプチド110を含む最大290万のペプチド102を含むペプチドアレイを含み、5-merプローブペプチド110はアミノ酸Cys及びMetを含まず、2以上のアミノ酸のアミノ酸反復を含まない。
【0064】
更なる実施形態によれば、図1に示されるように、ペプチドアレイ100の最大290万のペプチド102の集団を含む各5-merプローブペプチド110は、N-末端106及びC-末端108のそれぞれにおいて、5サイクルのゆらぎ(wobble)合成で合成され得る。本明細書で使用される場合、「ゆらぎ合成」は、目的の5-merプローブペプチド110のN-末端又はC-末端に位置するペプチドの配列(一定又はランダムのいずれか)の(本明細書に開示される任意の手段による)合成を指す。図1に示されるように、N-末端106又はC-末端108のいずれかにおけるゆらぎ合成を含む特定のアミノ酸は、「Z」によって表される。様々な実施形態によれば、ゆらぎ合成は、N-末端106又はC-末端1-8に任意の数のアミノ酸又は他のモノマー単位を含み得る。例えば、N-末端106及びC-末端108のそれぞれは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれを超える(例えば、15~20)アミノ酸を含むことができる。更に、ゆらぎ合成は、同じ又は異なる数のゆらぎ合成アミノ酸を有するN-末端及びC-末端を含み得る。
【0065】
様々な実施形態によれば、N-末端106及びC-末端108のゆらぎオリゴペプチド組成物は、アミノ酸組成に関して、及びアミノ酸比又は濃度に関して柔軟である。例えば、ゆらぎオリゴペプチド組成物は、2つ以上のアミノ酸の混合物を含み得る。柔軟なゆらぎ混合の例示的な実施形態は、3:1(Gly:Ser)の比率のGly及びSerのゆらぎオリゴペプチド組成物を含む。柔軟なゆらぎ混合物の他の例には、等濃度(例えば、等比)のアミノ酸Gly、Ser、Ala、Val、Asp、Pro、Glu、Leu、Thr、等濃度(例えば、等比)のアミノ酸Leu、Ala、Asp、Lys、Thr、Gln、Pro、Phe、Val、Tyr、及びそれらの組合わせが挙げられる。他の例には、等濃度の20の標準アミノ酸のいずれかを含む、N-末端106及びC-末端108のゆらぎオリゴペプチド組成物が含まれる。
【0066】
本明細書に開示されるように、様々な実施形態のゆらぎオリゴペプチド合成は、ランダム及び指向性合成アミノ酸の組合わせを有するアレイ上にペプチドを生成することを可能にする。例えば、アレイ上のオリゴペプチドプローブは、以下のフォーマット、ZZZZZ-[5-mer]-ZZZZZ(Zは、特定のゆらぎアミノ酸混合物からのアミノ酸である)のペプチド配列を有する組み合わされた15-merペプチドを含み得る。別の態様では、ZZZZZは5Zと略記することができるが、nZは、ゆらぎアミノ酸混合物を含むアミノ酸のセットから選択されるn連続アミノ酸に対応する。
【0067】
いくつかの実施形態では、フィーチャは、約10のペプチドを含有していてもよい。いくつかのそのような実施形態では、各フィーチャの集団の複雑性は、ゆらぎ混合物の複雑性に応じて変化し得る。本明細書に開示されているように、半指向性合成でゆらぎ合成を使用してこのような複雑性を作製することにより、最大1012の特有な配列に多様性を有するペプチドを使用して、アレイ上のバインダーのスクリーニングを可能にする。ストレプトアビジンのバインダースクリーニングの例を以下に示す。しかし、前立腺特異抗原、ウロキナーゼ、又は腫瘍壊死因子等の追加のタンパク質標的もまた、記載された方法及びシステムに従って可能である。
【0068】
リンカー(例えば、N-末端106及びC-末端108)は長さが変化する可能性があり、任意選択的であることが更に発見された。いくつかの実施形態では、5Zリンカーの代わりに、3Z又は1Zリンカーを使用することができる。そのような実施形態では、Zは、20全てのアミノ酸のランダム混合物を使用して合成することができる。1Zリンカーを使用する場合、又はリンカーを使用しない場合、同じ標的が追加の5-merバインダー配列を生成できることが発見された。リンカーの長さを変更するか、又はリンカーを削除すると、例えば元の5Zリンカーを使用することでは見出されなかった追加のペプチドバインダーが特定されることが発見された。
【0069】
実際に図1を参照すると、ペプチドアレイ100は、それに固定化されたペプチド102の集団(例えば、ヒトプロテオーム全体を表す5-merの集団等)を有する反応性表面114(例えば、反応性アミン層)を有する固体支持体112を含むアレイ基板104を含む。そのような実施形態による、ペプチド102の集団を含む例示的な5-merペプチドは、アミノ酸Cys及びMetのいずれも含まず、2以上のアミノ酸のアミノ酸反復を含まず、アミノ酸モチーフHis-Pro-Glnを含まない。図1に示される実施形態によれば、ヒトプロテオーム全体を表すペプチド102の集団は、ペプチド102の集団を含む1,360,732の個々のペプチドを含むであろう。いくつかの実施形態では、複製又は反復は、同じアレイ上に配置され得る。例えば、単一の複製を含むペプチド102の集団は、2,721,464の個々のフィーチャを含むであろう。更に、ペプチド102はそれぞれ、N-末端及びC-末端のゆらぎ合成オリゴペプチド(すなわち、N-末端106及びC-末端108)を含む。一例では、N-末端106及びC-末端108はそれぞれ5つのアミノ酸を有し、各アミノ酸は3:1(Gly:Ser)の比率のGly及びSerの混合物からランダムに選択される。N-末端106及びC-末端108を形成するゆらぎオリゴペプチドは、省略されるか、又は20の全ての標準アミノ酸、非天然アミノ酸(例えば、6-アミノヘキサン酸)、又はそれらの組合わせのランダム混合物から選択される単一のアミノ酸で置き換えることができる。いくつかの実施形態は、非アミノ酸部分(例えば、ポリエチレングリコール)を含むことができる。
【0070】
ここで一般的に図2を参照すると、ペプチドアレイ(例えば、図1に示されるペプチドアレイ100)を調製するためのプロセス200は、ペプチドバインダー探索の工程202を含む。工程202の一例では、ペプチドアレイは、(標準的なマイクロアレイの慣行と同様に)濃縮され精製された目的のタンパク質に曝露され、それにより、目的のタンパク質は、ペプチドの集団(例えば、図1に示されるようなペプチド102の集団)の1つ又は複数と結合するか、そうでなければ相互作用し得る。一態様では、目的のタンパク質は、集団を構成するペプチドの集団の別の1つとは独立して、ペプチドの集団の選択された1つに結合し得る。目的のタンパク質への曝露後、ペプチドバインダーへの目的のタンパク質の結合は、例えば、報告可能な標識(例えば、ペルオキシダーゼ)が付着している抗体(タンパク質に特異的)にアレイを曝露することによってアッセイされる。アレイ上の各位置の各5-merのペプチド配列が既知であるため、特定の5-merペプチドへのタンパク質の結合の配列(及び結合強度)をグラフ化、定量化、又は比較対照することができる。集団を構成するペプチドへのタンパク質結合を比較するそのような方法の1つは、White et al.(Standardizing and Simplifying Analysis of Peptide Library Data,Chem.Inf.Model.,2013,53(2),pp493-499)によって説明されるもの、及び本明細で表されるもの等の、原則に基づく分析分布ベースクラスタリングで結合を検討することである。本明細書に例示されるように、タンパク質-5-mer結合のクラスタリング(別名、「ヒット」、原則に基づく分析分布ベースクラスタリングに示される)は、重複するペプチド配列を有する5-merを示す。以下でより詳細に示されるように、(各クラスターの)重複するペプチド配列から、「コアヒット」ペプチド配列(例えば、アレイの顕著なタンパク質-ペプチド結合イベントによって共有されるペプチド配列)が同定され得るか、又は更なる評価のために少なくとも仮説が立てられ、構築される。一態様では、本明細書に例示されるようなアレイは、複数のコアヒットペプチド配列を同定し得る。更に、コアヒットペプチド配列は、例えば、原則に基づく分析分布ベースクラスタリング中に重複及び隣接する配列を同定する可能性があるため、ペプチドの集団を含む5-merペプチドバインダーよりもより多くのアミノ酸を含むことが可能である。
【0071】
V.ペプチド成熟化
図2を引き続き参照すると、(本明細書に開示、記載及び例示されるペプチドバインダー探索202のプロセスを通じて)コアヒットペプチド配列の同定時に、プロセス200の工程204はペプチド成熟化を含み、これによってコアヒットペプチド配列が各コアヒットペプチドの位置で様々な方法(アミノ酸置換、欠失、及び挿入を介して)で修飾されて、適切なコアヒット配列を更に最適化又は検証する。例えば、いくつかの実施形態によれば(例えば、コアヒットペプチド配列が所与の数のアミノ酸を含む場合)、成熟アレイが生成される。本開示によれば、成熟アレイは、コアヒットペプチドの集団をそれに固定化し、それにより、コアヒットペプチド中の各アミノ酸は、各位置でアミノ酸置換を経る。
【0072】
ヒット成熟化又はペプチド成熟化204のプロセスを更に説明するために、例示的又は仮想コアヒットペプチドを、アミノ酸配列-M-を有する5-merペプチドからなるものとして説明する。本開示によれば、ヒット成熟化204は、位置1、2、3、4、及び5におけるアミノ酸置換、欠失、及び挿入のいずれか、あるいはいずれか又は全ての組合わせを含み得る。例えば、仮想コアヒットペプチド-M-に関して、本開示の実施形態は、位置1のアミノ酸Mが他の19のアミノ酸のそれぞれで置換されていることを含み得る(例えば、A-、P-、V-、Q-等)。各位置(2、3、4、及び5)はまた、他の19のアミノ酸のそれぞれで置換されたアミノ酸Mを有し得る(例えば、位置2での置換は、M-、M-、M-、M-等に類似するであろう)。(アレイ上に固定化された)ペプチドは、1つ又は複数の置換、欠失、挿入、又はそれらの組合わせを含むコアヒットペプチドを含むように作製されることを理解されたい。
【0073】
プロセス200のいくつかの実施形態では、ペプチド成熟化の工程204は、二重アミノ酸置換ライブラリの調製を含む。二重アミノ酸置換は、他の19のアミノ酸のそれぞれによる第2の位置におけるアミノ酸の置換と組み合わせて、第1の位置のアミノ酸を変更することを含む。このプロセスは、第1及び第2の位置の全ての可能な組合わせが組み合わされるまで繰り返される。例として、アミノ酸配列-M-の5-merペプチドを有する仮想コアヒットペプチドに戻って参照すると、位置1及び2に関する二重アミノ酸置換は、例えば、位置1におけるM→P置換、次に位置2における20のアミノ酸全ての置換(例えば、-P-、-P-、-P-、-P-等)、位置1におけるM→V置換、次に位置2における20のアミノ酸全ての置換(例えば、-V-、-V-、-V-、-V-等)、位置1におけるM→A置換、次に位置2における20のアミノ酸全ての置換(例えば、-A-、-A-、-A-、-A-等)を含み得る。
【0074】
本開示によるペプチド成熟化の工程204のいくつかの実施形態では、コアヒットペプチドの各アミノ酸位置のアミノ酸欠失を実施することができる。アミノ酸の欠失には、コアヒットペプチド配列を含むペプチドの調製が含まれるが、コアヒットペプチド配列から単一のアミノ酸を削除することを含む(したがって、各位置のアミノ酸が削除されるペプチドが作製される)。例として、アミノ酸配列-M5-の5-merペプチドを有する仮想コアヒットペプチドに戻って参照すると、アミノ酸欠失は、以下の配列、-M-、M-、-M-、-M-、及び-M-を有する一連のペプチドを調製することを含むであろう。仮想5-merのアミノ酸欠失に続いて、5つの新しい4-merが作製されることに留意する必要がある。本開示のいくつかの実施形態によれば、アミノ酸置換又は二重アミノ酸置換スキャンは、生成された新しい4-merそれぞれに対して実行することができる。
【0075】
[0001]上記のアミノ酸欠失スキャンと同様に、本明細書に開示されるペプチド成熟化の工程204のいくつかの実施形態は、アミノ酸挿入スキャンを含み得、それにより、20のアミノ酸のそれぞれが、コアヒットペプチドの全ての位置の前後に挿入される。一例として、アミノ酸配列-Mの5-merペプチドを有する仮想コアヒットペプチドに戻って参照すると、アミノ酸挿入スキャンは以下の配列、-XM-、-MXM-、-MXM-、-MXM-、-MXM-、及び-MX-(Xは、20の天然アミノ酸又は特定の定義されたアミノ酸のサブセットから選択された個々のアミノを表し、これにより、ペプチド複製がそれぞれの20のアミノ酸又は定義されたアミノ酸のサブセットに対して作製される)。
【0076】
上記のアミノ酸置換ペプチド、二重アミノ酸置換ペプチド、アミノ酸欠失スキャンペプチド及びアミノ酸挿入スキャンペプチドはまた、N-末端及びC-末端ゆらぎアミノ酸配列の一方又は両方を含み得ることも理解されるべきである(図1のN-末端106及びC-末端108について説明したものと同様)。図1に記載のN-末端及びC-末端ゆらぎアミノ酸配列(N-末端106及びC-末端108)と同様に、N-末端及びC-末端ゆらぎアミノ酸配列は、わずか1のアミノ酸又は15又は20ものアミノ酸を含み得、N-末端ゆらぎアミノ酸配列は、C-末端ゆらぎアミノ酸配列と同じ長さ、より長い、又はより短い可能性がある。別の態様では、N-末端ゆらぎ配列及びC-末端ゆらぎ配列のいずれか又は両方を完全に省略することができる。更に、N-末端及びC-末端ゆらぎアミノ酸配列は、任意の所与の比率で任意の定義されたアミノ酸のグループを含み得る。例えば、ゆらぎアミノ酸配列は、3:1(Gly:Ser)の比率のグリシン及びセリン、又は20全ての標準アミノ酸のランダムな混合物を含み得る。
【0077】
工程204の一実施形態では、7のアミノ酸を有するコアヒットペプチドは、徹底的な単一及び二重アミノ酸スクリーニングを経、N-末端及びC-末端の両方のゆらぎアミノ酸配列を含む。この例では、N-末端配列及びC-末端配列のそれぞれが3つのアミノ酸(全てグリシン)を含む。他の実施形態では、成熟化プロセス中にアミノ酸の異なる混合物を使用することにより、異なる末端配列を追加することができる。任意の単一アミノ酸、又は2つ以上のアミノ酸からなる任意の混合物を使用することができる。更に他の実施形態では、3:1(Gly:Ser)の比率のGly及びSerの混合物が使用される。他の実施形態では、20全てのアミノ酸のランダム混合物からなる「ランダム混合物」が使用される。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸(例えば、6-アミノヘキサン酸)が使用される。更に、いくつかの実施形態は、非アミノ酸部分(例えば、ポリエチレングリコール)を含む。
【0078】
コアヒットペプチドの様々な置換、欠失、及び挿入の変異が調製されると(例えば、マイクロアレイ等の固体支持体上に固定化された方式で)、精製され、濃縮された標的タンパク質の結合の強度がアッセイされる。以下に提供される実施例に示されるように、ヒット成熟化のプロセスは、コアヒットペプチドをアミノ酸配列に精製することを可能にし、最高の親和性で標的タンパク質に結合するための最も好ましいアミノ酸配列を実証する。
【0079】
VI.ペプチド伸長(N-末端及びC-末端)
5-merアレイ実験で同定されたモチーフは、最適なタンパク質バインダーの短いバージョンのみを表す可能性がある。一態様では、本発明は、N-末端及びC-末端の一方又は両方からの1つ又は複数のアミノ酸によって5-merアレイ実験から選択された配列を伸長することによって、より長いモチーフを同定する戦略を含む。選択したペプチドから開始し、N-末端及びC-末端のそれぞれに1つ又は複数のアミノ酸を追加し、更なる選択のための伸長ライブラリを作製することができる。例えば、単一のペプチドから開始し、20の天然アミノ酸全てを使用して、160,000の特有のペプチドの伸長ライブラリを作製することができる。いくつかの実施形態では、伸長されたペプチドのそれぞれは、複製で合成される。
【0080】
ここで、図2のプロセス200の工程206を参照すると、工程204において、(コアヒットペプチドのより最適なアミノ酸配列を標的タンパク質に結合させるために同定されるように)コアヒットペプチドが成熟化すると、N-末端及びC-末端位置のいずれか又は両方が伸長工程を経、それにより、工程204からの成熟コアヒットペプチドの長さが、標的ペプチドに対する特異性及び親和性を増加させるために更に伸長される。
【0081】
本開示によるC-末端伸長の一例が図3に示されている。ペプチド伸長又は成熟アレイ300は、ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団を含む。ペプチド302a及びペプチド302bのそれぞれは、プロセス200(図2)の工程204の成熟化プロセスを通じて同定された成熟コアヒットペプチド304を含む。ペプチドバインダー探索の工程202からのプローブペプチドの集団から選択された特定のペプチドプローブ(例えば、図1の5-merプローブペプチド110)は、ペプチド302aの第1の集団の成熟コアヒットペプチド304のC-末端に付加される(又はその上に合成される)。このようにして、各ペプチド配列の最もN-末端のアミノ酸は、成熟コアヒットペプチド304の最もC-末端のアミノ酸に直接隣接して配置される。
【0082】
同様に、本開示のN-末端伸長の様々な実施形態によれば、図3を参照して、成熟コアヒットペプチド304の配列が成熟化プロセス(工程204、図2)によって同定されると、ペプチドバインダー探索の工程202からの集団102の5-merプローブペプチド110のそれぞれの特定の1つ(5-merプローブペプチド110、図1)は、ペプチド302bの第2の集団における成熟コアヒットペプチド304のN-末端に付加される。このようにして、各ペプチド配列の最もC-末端のアミノ酸(5-merプローブペプチド110、図1)が、成熟コアヒットペプチド304の最もN-末端のアミノ酸に直接隣接して付加される。
【0083】
本開示のいくつかの実施形態(図3)によれば、C-末端伸長及びN-末端伸長で使用される成熟コアヒットペプチド304の一方又は両方はまた、N-末端ゆらぎ配列(N-末端306)及びC-末端ゆらぎ配列(C-末端308)の一方又は両方を含み得る。図1のN-末端106及びC-末端108と同様に、N-末端306及びC-末端-308は、わずか1のアミノ酸又は15~20もの(又はそれを超える)アミノ酸を含み得、N-末端306は、C-末端308と同じ長さ、より長い、又はより短い可能性がある。更に、N-末端306及びC-末端308は、成熟化プロセス中にアミノ酸の異なる混合物を使用することによって付加することがすることができる。任意の単一アミノ酸、又は2つ以上のアミノ酸からなる任意の「ゆらぎミックス」を使用することができる。更に他の実施形態では、3:1(Gly:Ser)の比率のGly及びSerの混合物からなる「柔軟なゆらぎミックス」が使用される。他の実施形態では、20全てのアミノ酸のランダム混合物からなる「ランダムゆらぎミックス」が使用される。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸(例えば、6-アミノヘキサン酸)も使用することができる。いくつかの実施形態は、非アミノ酸部分(例えば、ポリエチレングリコール)を含み得る。
【0084】
図3では、C-末端伸長302aのペプチドの集団及びN-末端伸長302bのペプチドの集団を有するペプチド成熟アレイ300が示される。図示の実施形態では、ペプチド成熟アレイ300は、ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団が固定化された反応性表面314(例えば、反応性アミン層)を有する固体支持体312を含むアレイ基板310を含む。ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団のそれぞれは、ペプチドアレイ100からの5-merプローブペプチド110の完全な補助体を含むことができる(例えば、ペプチドバインダー探索の工程204で使用される)。更に示されるように、ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団の両方の各ペプチドは、それぞれが(ペプチドバインダー探索工程102からの5-merプローブペプチド110の集団(図1)の)異なる5-merプローブペプチド110を有する同じ成熟コアヒットペプチド304を含むことができる。また、図3に示されるように、ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団の各ペプチドは、N-末端306及びC-末端308にゆらぎアミノ酸配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、成熟アレイ300(ペプチド302a及びペプチド302bを含む)は、濃縮され、精製された目的のタンパク質又は別の同様の受容体(プロセス200の工程202のペプチドバインダー探索と同様に)に曝露され、それによってタンパク質は、ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団を含む他のペプチドとは無関係に、ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団のいずれかの任意のペプチドに結合し得る。目的のタンパク質への曝露後、ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団のペプチドへの目的のタンパク質の結合が、例えば、ペプチド302aの第1の集団、及びペプチド302bの第2の集団の個々のペプチド並びにタンパク質の複合体を、報告可能な標識(例えば、ペルオキシダーゼ)が付着している抗体(タンパク質に特異的)に曝露することによって、アッセイされる。別の実施形態では、目的のタンパク質は、レポータ分子で直接標識され得る。アレイ上の各位置についての5-merプローブペプチド110のそれぞれの配列は既知であるため、成熟コアヒットペプチド304を5-merプローブペプチド110のそれぞれの1つと共に含む、特定のプローブに対するタンパク質の結合の配列(及び結合強度)を図表化、定量化、比較、対比、又はそれらの組合わせが可能である。
【0086】
成熟コアヒットペプチド304及び5-merプローブペプチド110(ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団のいずれかを含む)の組合わせに結合する(目的の)タンパク質を比較する例示的な方法は、White et al.(Standardizing and Simplifying Analysis of Peptide Library Data,J Chem Inf Model,2013,53(2),pp493-499)に記載されているような、原則に基づく分析分布ベースクラスタリングにおける結合強度を検討することである。本明細書に例示されるように、原則に基づく分析分布ベースクラスタリングに示される(ペプチド302aの第1の集団及びペプチド302bの第2の集団の)それぞれのプローブに結合するタンパク質のクラスタリングは、重複するペプチド配列を有する5-merプローブペプチド110を示す。以下により詳細に示されるように、(各クラスターの)重複するペプチド配列から、成熟コアヒットペプチド304の配列を同定するか、又は少なくとも仮説を立て、更なる評価のために構築することができる。本出願のいくつかの実施形態では、伸長された成熟コアヒットペプチド304は、(本明細書に記載及び例示され、図2の工程204に示されるように)成熟化プロセスを経る。
【0087】
伸長ペプチドバインダーの最適化の追加ラウンドも可能である。例えば、バインダー最適化の第3ラウンドは、Glyアミノ酸を用いた伸長アレイ実験で同定された配列の伸長を含み得る。他の最適化は、参照配列の全ての可能な単一及び二重置換又は欠失変異体(すなわち、前の工程のいずれかで最適化及び選択されたペプチドバインダー)を含む、二重置換又は欠失ライブラリの作製を含み得る。
【0088】
VII.伸長された成熟コアヒットペプチドバインダーの特異性分析
伸長された成熟コアヒットペプチドの同定に続いて、特異性分析は、当技術分野で利用可能なペプチド親和性及び特異性を測定する任意の方法によって実施され得る。特異性分析の一例には、標的に指定された分子の相互作用、(「オン」、結合、及び「オフ」、分離の)運動速度及び親和性(結合強度)の観点から分子を特性決定するために使用される「BIACORE(商標)」システム分析が含まれる。BIACORE(商標)はGeneral Electric Companyの商標であり、会社のウェブサイトから入手可能である。
【0089】
図4は、新規なペプチドバインダー同定の方法400(例えば、図2のプロセス200)の簡潔な概略図である。示されるように、ペプチドバインダー探索のためのアレイ402は、アレイ基板404上でペプチドの集団を合成することによって(例えば、マスクレスアレイ合成を介して)調製される。図示のように、アレイ402内の各ペプチド406(又はペプチドフィーチャ)は、N-末端(N-末端408)及びC-末端(C-末端410)のそれぞれが5つのアミノ酸を含むように、N-末端における5サイクルのゆらぎ合成及びC-末端における5サイクルのゆらぎ合成を含む。N-末端408及びC-末端410のゆらぎ合成は、上記のような任意の組成物を含み得ることを理解されるべきである。例えば、ゆらぎ合成は、3:1(Gly:Ser)の比率のアミノ酸Gly及びSerのみ、又は20全てのアミノ酸のランダム混合物を含み得る。各ペプチド406はまた、5-merペプチドバインダー又はプローブペプチド412を含むものとして示され、これは、上記のように、ヒトプロテオーム全体が表されるように、最大290万の異なるペプチド配列を含み得る。更に、異なるプローブペプチド412は、特定の「規則」に従って合成され得ることに留意すべきである。非限定的な例示的規則には、1つ又は複数のアミノ酸(例えば、Cys、Met、又はそれらの組合わせ)の除外、連続した順序の同じアミノ酸の反復の除外、標的タンパク質に結合することがすでに知られているモチーフ(例えば、ストレプトアビジンに対するHis-Pro-Glnアミノ酸モチーフ)の除外、及びそれらの組合わせが含まれる。上記のように、目的のタンパク質標的(例えば、精製及び濃縮された形態)は、5-merプローブペプチド412に曝露され、(例えば、原則に基づくクラスタリング分析によって)結合がスコアリングされ、それによって「コアヒットペプチド」配列は、重複結合モチーフに基づいて同定される。
【0090】
いくつかの実施形態では、コアヒットペプチド配列の同定時に、成熟又は成熟アレイ414について示されるように、徹底的な成熟化プロセスが行われ得る。成熟アレイ414は、アレイ基板418に固定化されたペプチド416の集団を含む。いくつかの実施形態では、コアヒットペプチド(5-merコアヒットペプチド420として例示される)は、N-末端ゆらぎ配列(N-末端422)及びC-末端ゆらぎ配列(C-末端424)の両方を有するアレイ基板418上で合成される。図4に示される例では、ペプチド416のそれぞれは、アミノ酸GlyのみのN-末端及びC-末端ゆらぎ合成の3サイクルを含むが、ゆらぎアミノ酸は上記のように変化し得る。徹底的な成熟のいくつかの実施形態では、コアヒットペプチド416は、アレイ基板418上で合成され、ここでコアヒットペプチド416の全てのアミノ酸位置が、他の19のアミノ酸のそれぞれで置換されるか、又は二重アミノ酸置換(上述のもの)が、アレイ基板418上で合成されるか、又はアミノ酸欠失スキャンがアレイ基板418上で合成されるか、又はアミノ酸挿入スキャンがアレイ基板418上で合成される。場合によっては、上記の成熟化プロセスの全てが実行される(そして、アミノ酸欠失及び挿入スキャンの結果として生成された新しいペプチドについて、任意選択で上記のように繰り返される)。様々なペプチド(本明細書に記載の置換、欠失及び挿入を含む)を含む成熟アレイ414の合成時に、標的タンパク質は、成熟アレイ414上の修飾コアヒットペプチド420に曝露され、結合の強度がアッセイされ、それによって「成熟コアヒットペプチド」配列が同定される。
【0091】
更なる実施形態では、「成熟コアヒットペプチド」配列の同定後、伸長アレイ426について示されるように、N-末端及びC-末端伸長の一方又は両方を実施することができる。伸長アレイ426は、それぞれアレイ基板430に固定化されている、ペプチド428aの第1の集団及びペプチド428bの第2の集団を含む。ペプチド428bの第2の集団の選択されたペプチド432について示されるように、ペプチド428aの第1の集団及びペプチド428bの第2の集団のそれぞれは、N-末端(ペプチド428bの第2の集団の場合)又はC-末端(ペプチド428aの第1の集団の場合)のいずれかで伸長配列436に結合した成熟コアヒットペプチド434(M.C.ヒット)を含む。N-末端及びC-末端の伸長には、プローブペプチド412(この例では5-mer)の集団に隣接する成熟コアヒットペプチド434の合成が含まれる。プローブペプチド416は、成熟コアヒットペプチド434のN-末端又はC-末端のいずれかで合成される。ペプチド428aの第1の集団について示されるように、C-末端伸長は、C-末端ゆらぎ配列(C-末端438)及び成熟コアヒットペプチド434のC-末端で合成される伸長配列436を提供するための5ラウンドのゆらぎ合成を含み、続いて更に5サイクルのゆらぎ合成を行って、N-末端ゆらぎ配列(N-末端440)を提供する。同様に、ペプチド428bの第2の集団について示されるように、N-末端伸長は、(上記のように)5ラウンドのゆらぎ合成を含み、成熟コアヒットペプチド434のC-末端で合成されるC-末端438を生成し、次に、伸長配列436及びゆらぎ合成の別の5サイクルを得て、N-末端440を提供する。様々なC-末端及びN-末端伸長ペプチド(すなわち、ペプチド428aの第1の集団及びペプチド428bの第2の集団)を含む伸長アレイ426の合成時に、標的タンパク質は、伸長アレイ426に曝露され、結合はスコアリングされ(例えば、原則に基づくクラスタリング分析によって)、それによって、C-末端又はN-末端で伸長された成熟コアヒットペプチド434の配列が同定される。442で示される矢印によって表されるように、いくつかの実施形態によれば、伸長された成熟コアヒットペプチド(例えば、ペプチド432)が同定された後、伸長された成熟コアヒットペプチドの成熟化プロセスが繰り返され得、次いでそれから生じる変更されたペプチド配列についても伸長プロセスが繰り返され得る。
【0092】
VIII.特定の標的のバインダーペプチドの同定
本開示の実施形態によれば、ペプチドマイクロアレイは、標的タンパク質を含むサンプルと共にインキュベートされて、様々な受容体に特異的なバインダーが得られる。受容体の例には、ストレプトアビジン、Taqポリメラーゼ、前立腺特異抗原等のヒトタンパク質、トロンビン、腫瘍壊死因子アルファ、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ等が含まれる。前述の受容体のための方法及び例示的なペプチドバインダーは、Albert et al.(米国特許出願第2015/0185216及び米国仮特許第62/150,202号)によって記載されている。
【0093】
同定されたペプチドバインダーは、様々なバインダー特異的目的に使用できるが、一部の使用は全てのバインダーに共通である。例えば、本明細書に記載の標的のそれぞれについて、本技術のペプチドバインダーは、ペプチドのより広い集団の合成に含めるための(例えば、新しいペプチドバインダー配列の探索のためのペプチドアレイ上における使用のための)品質管理ペプチドとして使用され得る。
【0094】
図6A図6Cにおいて、ペプチドアレイ600は、アレイ基板604上に固定化されたペプチドフィーチャ602の集団を含む。ペプチドフィーチャ602のそれぞれは、同じアミノ酸配列を共有する複数の共局在化ペプチドを含む。使用される合成方法に応じて、ペプチドフィーチャは、異なるフットプリント又はフィーチャ密度を有し得る。一例では、ペプチドフィーチャは、約10μmx10μmの四角形のフットプリントを有し、最大約10の個々のペプチドを含む。しかし、一般的な当業者に認識されるように、他のフットプリント及びフィーチャ密度が可能である。本実施例では、ペプチドフィーチャ606は、それぞれが同じアミノ酸配列を有する複数のペプチドを含む。ペプチドアレイ600は、ペプチドフィーチャ606を含む配列とは異なる複数のペプチド配列を有するペプチドフィーチャ608を更に含む。特に、ペプチドアレイ600は、図5に表す実施形態に示されるフィーチャの数を超える多数のペプチドフィーチャを含むことができる。
【0095】
一態様では、ペプチドアレイ600上のペプチドフィーチャは、少なくとも1つの天然に存在するアミノ酸配列を集合的に定義することができる。例えば、ペプチドは、目的の部分的又は全長のタンパク質配列全体の長さに沿って、1アミノ酸の分解でタイリングすることができる(図6及び図7を参照)。他の例では、ペプチドは、目的の部分的又は全長のタンパク質配列全体の長さに沿って、4アミノ酸分解でタイリングすることができる(図6を参照)。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ヒトプロテオーム全体又は目的の別のプロテオームを集合的に表すアミノ酸配列を有することができる。本実施例では、ペプチドアレイ600は、ペプチドフィーチャ610、ペプチドフィーチャ612、及びペプチドフィーチャ614を含み、ここで、ペプチドフィーチャ610、ペプチドフィーチャ612、及びペプチドフィーチャ614のそれぞれは、それぞれが他の各ペプチドフィーチャと比較して異なるアミノ酸配列を有する複数のペプチドを含む。
【0096】
ペプチドアレイ600が図5Aに示されるように合成されると、選択されたペプチドバインダー配列と相互作用することが知られている複数の受容体分子を、ペプチドアレイ600に接触させて、受容体分子の存在下でペプチドフィーチャ602の集団を探索することができる(図5B)。多数の受容体分子616は、ペプチドフィーチャ606と相互作用するものとして示されている。受容体分子616とペプチドフィーチャ606との相互作用は、結合、ペプチドフィーチャ606内のペプチドを含む反応の触媒作用(又は関与)、フィーチャ606内のペプチドの消化、同等のもの、及びそれらの組合わせを含むことができる。図5A図5Cに示される本実施例では、受容体616は、フィーチャ606のペプチドによって表されるペプチドバインダー配列の同定に使用された。したがって、ペプチドフィーチャ606内のペプチドと受容体分子616との間の強い程度の相互作用は、フィーチャ606に関連する複数の受容体分子616によって表されるものと予想されるであろう。一態様では、受容体分子616とペプチドアレイ600上のペプチドフィーチャ602の集団との相互作用は、例えば、受容体分子616を検出可能なタグ618で標識することによって検出することができる(図5C)。図示の実施形態に示されるように、検出可能なタグ618は、受容体分子616を標的とすることに特異的な標識抗体である。しかし、他の検出スキームは、本開示の範囲内である。
【0097】
複数の受容体分子616が図5Bのフィーチャ606に関連しているのに対して、比較的少数の受容体分子616は、ペプチドフィーチャ608、ペプチドフィーチャ610、ペプチドフィーチャ612、及びペプチドフィーチャ614のいずれか1つに関連しているか、又はそれらに関連する受容体分子616は存在しない。一態様では、ペプチドフィーチャ608におけるペプチドの配列は、受容体分子616とペプチドフィーチャ608との相互作用をほとんどもたらさないか、又は全くもたらさなかった。別の態様では、ペプチドフィーチャ610、ペプチドフィーチャ612、及びペプチドフィーチャ614におけるペプチドの配列は、受容体分子616と前述のペプチドフィーチャとの相互作用をほとんどもたらさないか、又は全くもたらさなかった。結果として、フィーチャ606に表されるペプチド配列に対する受容体分子の優先性を推測することができる。同様に、受容体分子616とペプチドアレイ600上のペプチドフィーチャのいずれかとの相互作用の程度又は相互作用の程度の相対的変化を調査することができる。
【0098】
本技術の化合物又は塩、薬学的組成物、誘導体、溶媒和物、代謝産物、プロドラッグ、ラセミ混合物、又はその互変異性体の調製又は使用により、本技術の利点を示し、当業者を更に補助するために、本明細書において実施例が提供される。本技術の好ましい態様をより完全に示すために、本明細書において実施例も提示される。実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本技術の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。実施例は、上記の本技術の変形、態様又は態様(複数可)のいずれかを含むか、又は組み込むことができる。上記の変形、態様又は態様(複数可)は、更に各々、本技術のいずれか又は全ての他の変形、態様又は態様(複数可)の変形を含むか、又は組み込むこともできる。
【実施例
【0099】
実施例1:新規DsbA結合ペプチドのナイーブな探索
新規のDsbA結合ペプチドは、前述のように、増強及び改良されたペプチドライブラリを使用して探索された。簡潔には、ペプチドアレイは、以前に報告されたように、アミノ官能化基板を使用して、Roche NimbleGen Maskless Array Synthesizer(MAS)における光指向性アレイ合成によって合成した(Forsstrom,et al.,「Proteome-wide Epitope Mapping of Antibodies Using Ultra-dense Peptide Arrays,」Molecular&Cellular Proteomics 13:1585-1597(2014)及び Lyamichev,et al.,「Stepwise Evolution Improves Identification of Diverse Peptides Binding to a Protein Target,」Nature Scientific Reports 7:12116(2017)、双方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。L-アミノ酸はOrgentis Chemicals GmbHによって合成した。カスタムアミノ酸はLifeteinから購入した。Cy5(商標)-ストレプトアビジンは、GE Healthcare、PBS中Blocker(商標)BSA(10%)はThermoFisherから、及びSecureSeal(商標)ハイブリダイゼーションチャンバはGraceBio-Labsから購入した。最終的な側鎖の脱保護は、60mMのEDT及び95%TFA(v/v)中25mMのTIPSで、室温で30分間、マイクロアレイをインキュベートすることによって実行した。次に、マイクロアレイをメタノールで30秒間2回、1xTBSTで1分間1回、TBSで30秒間2回洗浄し、次いでアレイホルダを備えたマイクロ遠心機で回転乾燥させた。これらのペプチドのどれがDsbAに結合できたか、またどの程度まで結合したかを決定するために、DsbAをアレイ上にインキュベートした。ここでは、2.6μLのビオチン標識DsbA(1.5mg/mL、abcam)を、100mMのHEPES(pH7.3)、1%のBSA、250mMのNaCl、20mMのL-グルアチオン-還元、及び0.2mMのL-グルアチオン-酸化を含む49μLの結合緩衝液のアレイ上で、ハイブリダイゼーションチャンバ内で4℃で1晩インキュベートした。インキュベート後、アレイを水で15秒間洗浄し、ストレプトアビジン-Cy5検出浴に直接配置した。DsbAへの陽性結合は、ストレプトアビジン-Cy5の検出によって決定した。全てのアレイへのストレプトアビジン-Cy5の結合は、10mMのTris-HCl(pH7.4)、1%カゼイン、0.05%Tween-20を含む30mL結合緩衝液中の20μLストレプトアビジン-Cy5(1μg/mL)を使用して、30mLのパップジャー(pap jar)内で室温で1時間行った。インキュベート後、アレイを20mMのTris-HCl(pH7.8)、0.2MのNaCl、1%のSDSで30秒間洗浄した後、水で30秒間洗浄した。次に、アレイホルダを備えたマイクロ遠心機で回転させることにより、アレイを乾燥させた。Lyamichev,et al.(2017)に以前に記載されているように、アレイのCy5蛍光強度を測定し、データを抽出することによってデータを分析した。
【0100】
改良された特有のペプチドアレイライブラリを生成するために、約300万の特有の15-mer線形ペプチドの2つのペプチドライブラリを合成した。1つのライブラリは、ヒトプロテオームで見出され得るペプチドを含み、他方のライブラリは、Lアミノ酸からなる15-merペプチドを含んだ。両方のライブラリで可能な15-merペプチドの数を約300万ペプチドに絞り込むために、6-merペプチド配列の最大の多様性を選択するための計算を実行した。各15-mer配列は2回複製した。表3は、ビオチン標識DsbAに結合し、特異的に相互作用する、ヒト及び非ヒトの2つの特有な15-merペプチドライブラリから探索された20の最良のDsbA結合ペプチドのペプチド配列を示す。
【0101】
(表3)2つの特有な15-merペプチドライブラリから探索された20の最良のDsbA結合ペプチド
【0102】
表3に示すペプチド配列は、高い親和性及び特異性でDsbAに結合するペプチドを表す。例として、図8は、配列DFWHGDTCKVTQFDQ(配列番号85)を有するDsbA結合ペプチドのアレイのCy5蛍光強度を示す。表3からの他の全てのDsbA結合ペプチドについてデータを分析及び抽出した(データは示されていない)が、ここではDFWHGDTCKVTQFDQ(配列番号85)のみが示されている。図8は、DFWHGDTCKVTQFDQペプチド、DsbA_1_WT(配列番号85)の単一置換プロットを示す。各ペプチドの位置は、21本の棒(20のアミノ酸のそれぞれに対して1本の棒、及び欠失に対して1本の棒)で表される。各棒の高さは、シグナル強度の中央値を示す。
【0103】
実施例2:運動特性決定研究による探索され段階的に最適化された新規DsbA結合ペプチドの検証
探索され、段階的に最適化された新規DsbA結合ペプチドは、運動特性決定の対象となった。探索されたペプチドとDsbAとの間の相互作用の運動分析は、BiacoreXI00を使用して実行した。ビオチン標識DsbA(1uM)は、ストレプトアビジンコーティングチップ(GE Healthcare)上で、HBS-P+中で1,000応答単位の標的レベルに固定化した。典型的な固定化レベルは1,400であった。HBS-P+中の5000nM~0.6nMのペプチドの14希釈液を、120秒の接触時間及び600秒の分離時間で3回DsbAコーティングチップ上に流した。表4は、BiacoreXI00上の固定化ビオチン標識DsbAへの探索されたペプチドの結合に対する運動パラメータを示す。全てのペプチドはC-末端でアミド化した。
【0104】
(表4)BiocoreX100上の固定化ビオチン標識DsbAへの探索されたペプチドの結合に対する運動パラメータ
【0105】
図9は、(Biacore)SAチップ上に固定化されたビオチン標識DsbAへのDsbA_l_WT、DFWHGDTCKVTQFDQ-NH2(配列番号85)の結合を示す。ペプチドの濃度は1.2nM~1250nMの範囲である。
【0106】
図10は、蛍光シグナル強度及び結合親和性の比較を示す。蛍光シグナル強度はペプチドマイクロアレイによって測定し、KD値はBiacore又はITCによって決定した(Duprez,et al.(2015)を参照)。グラフの値は、上記の表10に見出された。Biacoreを介して試験されたペプチドは、C-末端でアミド化された。
【0107】
要約すると、このデータは、探索され、段階的に最適化されたペプチドが、DsbAに高い親和性及び特異性で結合することを示す。
【0108】
等価物
図に示されている概略フローチャートは、一般に論理フローチャート図として説明する。したがって、示された順序及び標識された工程は、提示された方法の一実施形態を示すものである。図示された方法の1つ又は複数の工程あるいはその一部に対して、機能、論理、又は効果が同等である他の工程及び方法が考えられ得る。更に、図で使用されているフォーマット及び記号は、方法の論理工程を説明するために提供されており、方法の範囲を制限するものではないと理解される。様々な矢印タイプ及び線タイプを使用することができるが、それらは、対応する方法の範囲を制限しないことが理解される。実際、いくつかの矢印又は他のコネクタは、方法の論理フローのみを示すために使用され得る。例えば、矢印は、描写された方法の列挙された工程間の不特定の期間の待機又はモニタリング期間を示し得る。更に、特定の方法が発生する順序は、示されている対応する工程の順序に厳密に従う場合と従わない場合がある。
【0109】
本発明は、図を参照して以下の説明においていくつかの様々な実施形態で提示され、同様の番号は、同じ又は類似の要素を表す。本明細書全体を通して「一実施形態」、「実施形態」、又は同様の言語表現への参照は、実施形態に関連して説明される特定のフィーチャ、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる「一実施形態では」、「実施形態では」、及び同様の言語表現の句の出現は、必ずしもそうではないが、全てが同じ実施形態を指し得る。
【0110】
本発明の記載されたフィーチャ、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本システムの実施形態の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が列挙される。しかし、関連技術の当業者は、システム及び方法の両方が、1つ又は複数の特定の詳細なしで、あるいは他の方法、構成要素、材料等を用いて実施され得ることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、又は操作は詳細に示されていないか、又は説明されていない。したがって、前述の説明は例示を意味するものであり、本発明の概念の範囲を限定するものではない。
【0111】
本技術はまた、本技術の個別の態様の単一の例示として意図される、本明細書に記載の特定の態様に関して限定されない。当業者には明らかであるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本技術の多くの修正及び変形が行われ得る。本技術の範囲内の機能的に同等の方法は、本明細書に列挙されたものに加えて、前述の説明から当業者に明らかとなる。そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、標識化合物、又は生物系に限定されず、これらは当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用する用語は、単に特定の態様を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲、その中の定義、及びそれらのいずれの等価物によってのみ示される本技術の広さ、範囲、及び趣旨によってのみ例示とみなされることが意図される。
【0112】
本明細書で実例として説明される実施形態は、本明細書に具体的には開示されていないいかなる要素(複数可)、制限(複数可)の不在下でも好適に実施され得る。したがって、例えば、「を含んでいる(comprising、including、containing)」等の用語は、広範にかつ制限なしで読まれるものとする。更に、本明細書で使用される用語及び表現は、説明の用語として使用されており、制限の用語として使用されてはおらず、このような用語及び表現の使用において、示され、説明される特徴又はその部分のいかなる等価物も除外することを意図するものではなく、特許請求された技術の範囲内で種々の変更が可能であることが認識される。更に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、具体的に引用される複数の要素、及び特許請求される技術の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しない追加の要素を含むよう理解されるものとする。「からなる(consisting of)」という語句は、指定されていないいかなる要素も除外する。
【0113】
更に、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループに関して記載されている場合、当業者は、本開示がまた、マーカッシュグループのメンバーの任意の個別のメンバー又はサブグループの観点から記載されることを認識するであろう。一般的な開示に含まれるより狭い種及び亜属のグループ分けの各々も、本発明の一部を形成する。これには、削除された材料が本明細書に具体的に列挙されているかどうかに関係なく、属から任意の対象を除去する条件又は否定的な制限を伴う本発明の一般的な説明が含まれる。
【0114】
当業者には理解されるように、いずれかの及び全ての目的のために、特に書面による説明を提供する観点から、本明細書に開示される全ての範囲は、いずれかの及び全ての可能な部分範囲及びその部分範囲の組合わせをも包含する。いかなる列挙された範囲も、少なくとも等しい半分、1/3、1/4、1/5、1/10等へと分解される同じ範囲を十分に説明及び可能にするものとして容易に認識することができる。非限定例として、本明細書で考察される各範囲は、下位の1/3、中間の1/3、及び上位の1/3等へと容易に分解されることができる。また、当業者によって理解されることになっているように、「最高」、「少なくとも」、「より大きな」、「より小さな」、及びこれらに類するもの等の言語表現は全て、列挙された数を含み、先に考察した下位範囲へと後に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は各々の個別のメンバーを含む。
【0115】
全ての刊行物、特許出願、発行された特許、及び本明細書で参照される他の文書(例えば、定期刊行物、記事、及び/又は教科書)は、各個別の刊行物、特許出願、発行された特許、又は他の文書が、具体的かつ個別的に示されて、その全体が参照によって組み込まれるように、参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれる本文に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する範囲で除外される。
【0116】
他の実施形態は、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と共に、以下の特許請求の範囲に記載される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
別の態様では、本技術は、ペプチドバインダーを同定するための方法に関し、方法は、第1のサンプルを本明細書に記載の操作されたペプチドライブラリと接触させることと、ペプチドの第1のサブセットから複数のペプチドのうちの少なくとも1つを選択することと、を含む。
[本発明1001]
複数のペプチドフィーチャであって、前記ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、前記少なくとも1つのペプチドが長さNのアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、前記複合領域がk個の異なる要素を表し、前記異なる要素のそれぞれが長さxのアミノ酸の定義された配列を有する、前記複数のペプチドフィーチャ
を含む、操作されたペプチドライブラリであって、
x、N、及びkは整数であり、
xはN未満であり、
kは少なくとも2であり、
前記操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数は、K Eng であり、
前記操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、
Eng はFより大きい、
前記操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1002]
kが方程式、k=N-x+1によって定義される、本発明1001の操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1003]
Eng が少なくとも0.8*k*Fである、本発明1001又は1002の操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1004]
Eng が少なくとも0.9*k*Fである、本発明1001~1003のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1005]
Eng が少なくとも0.95*k*Fである、本発明1001~1004のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1006]
Eng が少なくとも0.99*k*Fである、本発明1001~1005のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1007]
Eng が少なくとも10*Fである、本発明1001~1006のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1008]
Eng が少なくとも20*Fである、本発明1001~1007のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1009]
Eng が、F個のペプチドフィーチャを有するランダムペプチドライブラリによって表される長さxのアミノ酸の配列を有するランダム要素の総数K Rnd よりも大きく、前記ランダムペプチドライブラリの前記ペプチドフィーチャのそれぞれが、少なくとも1つのランダムペプチドを含み、前記少なくとも1つのランダムペプチドが長さNのアミノ酸のランダム配列を有する、本発明1001~1008のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1010]
前記複合領域のうちの選択された1つにおける前記要素のそれぞれが、前記複合領域内の隣接する各要素と少なくとも1アミノ酸重複している、本発明1001~1009のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1011]
前記複数のペプチドが標的プロテオームの少なくとも90%を表す、本発明1001~1010のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1012]
前記複数のペプチド中の前記ペプチドのそれぞれが12アミノ酸~16アミノ酸の長さである、本発明1001~1011のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1013]
Nが少なくとも7アミノ酸である、本発明1001~1012のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1014]
Nが少なくとも10アミノ酸である、本発明1001~1013のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1015]
Nが少なくとも15アミノ酸である、本発明1001~1014のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1016]
xが少なくとも5である、本発明1001~1015のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1017]
xが6である、本発明1001~1016のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1018]
ペプチドバインダーを同定するための方法であって、
本発明1001~1017のいずれかの操作されたペプチドライブラリと第1のサンプルを接触させることと、
ペプチドの第1のサブセットから前記複数のペプチドのうちの少なくとも1つを選択することと
を含む、前記ペプチドバインダーを同定するための方法。
[本発明1019]
前記操作されたペプチドライブラリとの前記第1の相互作用の第1のシグナル出力特性を検出することと、
前記第1のシグナル出力に基づいて前記少なくとも1つのペプチドを選択することと
を更に含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記第1のシグナル出力が、フルオロフォア励起発光を介して得られる蛍光強度であり、前記蛍光強度が、
i)第1の複数のペプチドに関連する第1のサンプル及び第2のサンプルのうちの一方の構成要素の存在量、並びに
ii)第1の複数のペプチドに対する、第1のサンプル及び第2のサンプルのうちの一方の前記構成要素の結合親和性
のうちの少なくとも1つを反映する、本発明1019の方法。
[本発明1021]
複数のペプチドフィーチャであって、前記ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、前記少なくとも1つのペプチドが少なくとも15のアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、前記複合領域が10の異なる要素を表し、前記異なる要素のそれぞれが6アミノ酸の定義された配列を有する、前記複数のペプチドフィーチャ
を含む、操作されたペプチドライブラリであって、
前記操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数は、K Eng であり、
前記操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、
Eng は少なくとも9.5*Fである、
前記操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1022]
前記ペプチドのそれぞれが固体支持体に結合している、本発明1001~1017又は1021のいずれかの操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1023]
前記固体支持体がビーズ及びチップのうちの一方である、本発明1022の操作されたペプチドライブラリ。
[本発明1024]
増強された部分配列多様性を有する操作されたペプチドライブラリであって、該操作されたペプチドライブラリが、
複数のペプチドフィーチャであって、前記ペプチドフィーチャのそれぞれが少なくとも1つのペプチドを含み、前記少なくとも1つのペプチドが長さNのアミノ酸の定義された配列を有する複合領域を含み、前記複合領域がk個の異なる要素を表し、前記異なる要素のそれぞれが長さxのアミノ酸の定義された配列を有する、前記複数のペプチドフィーチャ
を含み、
x、N、及びkは整数であり、
xはN未満であり、
kは少なくとも2であり、
前記操作されたペプチドライブラリによって表される異なる要素の総数は、K Eng であり、
前記操作されたペプチドライブラリに含まれるペプチドフィーチャの数はFであり、
KEngはFより大きく、
Fに対するKEngの比率は、部分配列多様性の尺度であり、
前記各複合領域内の前記k個の異なる要素のそれぞれは、同じ複合領域の他の異なる要素のそれぞれと比べて特有の配列を有し、
前記複合領域のそれぞれの前記定義された配列は、ランダム要素の総数KRndの平均部分配列多様性に対する最大の部分配列多様性のために選択され、
前記ランダム要素が、F個のペプチドフィーチャを有するランダムペプチドライブラリによって表される長さxのアミノ酸の配列を有し、前記ランダムペプチドライブラリの前記ペプチドフィーチャのそれぞれが、少なくとも1つのランダムペプチドを含み、前記少なくとも1つのランダムペプチドが長さNのアミノ酸のランダム配列を有する、
前記増強された部分列多様性を有する操作されたペプチドライブラリ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
図1図1は、ペプチドバインダー探索のためのペプチドアレイを表す概略図である。
図2図2は、本開示によるペプチドバインダーを同定するための方法の一例である。
図3図3は、固体支持体上に固定化されたペプチドの集団を含む成熟アレイの一実施形態を表す概略図であり、ここで、各ペプチドは、成熟コアヒットペプチド配列を含む。
図4図4は、ペプチドバインダーを同定するための方法の一実施形態を表す概略図である。
図5図5Aは、対照ペプチドの同定及び特性決定のためのペプチドフィーチャの集団を含むペプチドアレイの一実施形態を表す概略図である。図5Bは、複数の受容体分子に対するペプチドフィーチャの曝露後の図5Aのペプチドアレイの一実施形態を表す概略図である。図5Cは、受容体分子への検出可能なタグの結合後の図5Bのペプチドアレイの一実施形態を表す概略図である。
図6図6は、1アミノ酸分解又は4アミノ酸分解のいずれかでタイリングされた16-merペプチドを表す概略図であり、1アミノ酸分解でタイリングされた16-merペプチド(出現順にそれぞれ配列番号71~80)で表される、例示的なタンパク質配列EGVKLTALNDSSLDLSMDSDNSMSV(配列番号69)の一部のタイリングを示す表を含む。
図7図7は、1アミノ酸分解でタイリングされた15-merペプチドを表す概略図であり、複合15-merペプチドが10の6-mer要素又は部分配列をどのように表すことができるかを示している。
図8図8は、DFWHGDTCKVTQFDQペプチド、DsbA_1_WT(配列番号70)の単一置換プロットを示す。各ペプチドの位置は、21本の棒(20のアミノ酸のそれぞれに対して1本の棒、及び欠失(最後の棒))で表される。各棒の高さは、シグナル強度の中央値を示す。
図9図9は、(Biacore)SAチップ上に固定化されたビオチン標識DsbAに対する、DsbA_l_WT、DFWHGDTCKVTQFDQ-NH2(配列番号70)の結合を示す。
図10図10は、蛍光シグナル強度及び結合親和性の比較を示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
上記のように、受容体は、既知のバインダー配列又は親和性配列に結合するか、又はそうでなければ相互作用することができる。バインダー配列の一例は、定義されたアミノ酸配列又はモチーフである。定義されたアミノ酸配列は、合成ペプチド集団内の全長ペプチドの少なくとも一部を表すことができる。しかし、バインダー配列はそれ自体が全長ペプチドであり得る。例えば、「Strep-tag」として知られる8つのアミノ酸ペプチド配列Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys(配列番号1)は、タンパク質ストレプトアビジンの操作された形態に対して特有の親和性を示す。本開示によれば、Strep-tagは、所与のペプチドのN-末端又はC-末端のいずれかに組み込むことができ、あるいはペプチド内の中間点に組み込むことさえできる。その後、Strep-tagバインダー配列からなる(又はそれを含む)ペプチドを含むペプチド集団は、ストレプトアビジン受容体によって結合され得る。次に、ストレプトアビジンのStrep-tag配列への結合は、様々な技術を使用して検出することができる。バインダー配列の更なる例は、ヘキサヒスチジンタグ(Hisタグ)(配列番号2)、FLAGタグ、カルモジュリン結合ペプチド、共有結合であるが分離可能なペプチド、タンパク質Cタグの重鎖等を含む。代替(又は追加)のバインダー配列-受容体の対もまた、本開示の範囲内である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
本明細書に開示されるようなバインダー配列を引き続き参照すると、各バインダー配列は、特定の又は定義されたアミノ酸配列を有するであろう。バインダー配列は、少なくとも3つのアミノ酸を含むことができる。本明細書に開示される例示的なバインダー配列は、約5のアミノ酸~約12のアミノ酸を含む。しかし、5つ未満又は12を超えるアミノ酸を有するバインダー配列も使用することができる。特定のバインダー配列における各アミノ酸の位置は、N-末端([N])又はC-末端([C])のいずれかにおける開始を定義することができる。例えば、前述のStrep-tagバインダー配列におけるアミノ酸の位置は、[N]-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-[C](配列番号1)として定義することができる。したがって、アミノ酸ヒスチジン(His)の位置は、Strep-tagバインダー配列のN-末端から3番目のアミノ酸として定義される。特に、上記のように、Strep-tagバインダー配列は、N-末端及びC-末端のいずれか又は両方で1つ又は複数の追加のアミノ酸に隣接することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
ヒット成熟化又はペプチド成熟化204のプロセスを更に説明するために、例示的又は仮想コアヒットペプチドを、アミノ酸配列-M(配列番号3)を有する5-merペプチドからなるものとして説明する。本開示によれば、ヒット成熟化204は、位置1、2、3、4、及び5におけるアミノ酸置換、欠失、及び挿入のいずれか、あるいはいずれか又は全ての組合わせを含み得る。例えば、仮想コアヒットペプチド-M(配列番号3)に関して、本開示の実施形態は、位置1のアミノ酸Mが他の19のアミノ酸のそれぞれで置換されていることを含み得る(例えば、A(配列番号4)、P(配列番号5)、V(配列番号6)、Q(配列番号7)等)。各位置(2、3、4、及び5)はまた、他の19のアミノ酸のそれぞれで置換されたアミノ酸Mを有し得る(例えば、位置2での置換は、M(配列番号8)、M(配列番号9)、M(配列番号10)、M(配列番号11)等に類似するであろう)。(アレイ上に固定化された)ペプチドは、1つ又は複数の置換、欠失、挿入、又はそれらの組合わせを含むコアヒットペプチドを含むように作製されることを理解されたい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
プロセス200のいくつかの実施形態では、ペプチド成熟化の工程204は、二重アミノ酸置換ライブラリの調製を含む。二重アミノ酸置換は、他の19のアミノ酸のそれぞれによる第2の位置におけるアミノ酸の置換と組み合わせて、第1の位置のアミノ酸を変更することを含む。このプロセスは、第1及び第2の位置の全ての可能な組合わせが組み合わされるまで繰り返される。例として、アミノ酸配列-M(配列番号3)の5-merペプチドを有する仮想コアヒットペプチドに戻って参照すると、位置1及び2に関する二重アミノ酸置換は、例えば、位置1におけるM→P置換、次に位置2における20のアミノ酸全ての置換(例えば、-P(配列番号12)、-P(配列番号13)、-P(配列番号14)、-P(配列番号15)等)、位置1におけるM→V置換、次に位置2における20のアミノ酸全ての置換(例えば、-V(配列番号16)、-V(配列番号17)、-V(配列番号18)、-V(配列番号19)等)、位置1におけるM→A置換、次に位置2における20のアミノ酸全ての置換(例えば、-A(配列番号20)、-A(配列番号21)、-A(配列番号22)、-A(配列番号23)等)を含み得る。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
本開示によるペプチド成熟化の工程204のいくつかの実施形態では、コアヒットペプチドの各アミノ酸位置のアミノ酸欠失を実施することができる。アミノ酸の欠失には、コアヒットペプチド配列を含むペプチドの調製が含まれるが、コアヒットペプチド配列から単一のアミノ酸を削除することを含む(したがって、各位置のアミノ酸が削除されるペプチドが作製される)。例として、アミノ酸配列-M(配列番号3)の5-merペプチドを有する仮想コアヒットペプチドに戻って参照すると、アミノ酸欠失は、以下の配列、-M(配列番号24)、M(配列番号24)、-M(配列番号24)、-M(配列番号24)、及び-M(配列番号24)を有する一連のペプチドを調製することを含むであろう。仮想5-merのアミノ酸欠失に続いて、5つの新しい4-merが作製されることに留意する必要がある。本開示のいくつかの実施形態によれば、アミノ酸置換又は二重アミノ酸置換スキャンは、生成された新しい4-merそれぞれに対して実行することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
[0001]上記のアミノ酸欠失スキャンと同様に、本明細書に開示されるペプチド成熟化の工程204のいくつかの実施形態は、アミノ酸挿入スキャンを含み得、それにより、20のアミノ酸のそれぞれが、コアヒットペプチドの全ての位置の前後に挿入される。一例として、アミノ酸配列-M -(配列番号3)の5-merペプチドを有する仮想コアヒットペプチドに戻って参照すると、アミノ酸挿入スキャンは以下の配列、-XM(配列番号25)、-MXM(配列番号26)、-MXM(配列番号27)、-MXM(配列番号28)、-MXM(配列番号29)、及び-MX-(配列番号30)(Xは、20の天然アミノ酸又は特定の定義されたアミノ酸のサブセットから選択された個々のアミノを表し、これにより、ペプチド複製がそれぞれの20のアミノ酸又は定義されたアミノ酸のサブセットに対して作製される)。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
(表3)2つの特有な15-merペプチドライブラリから探索された20の最良のDsbA結合ペプチド
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
表3に示すペプチド配列は、高い親和性及び特異性でDsbAに結合するペプチドを表す。例として、図8は、配列DFWHGDTCKVTQFDQ(配列番号70)を有するDsbA結合ペプチドのアレイのCy5蛍光強度を示す。表3からの他の全てのDsbA結合ペプチドについてデータを分析及び抽出した(データは示されていない)が、ここではDFWHGDTCKVTQFDQ(配列番号70)のみが示されている。図8は、DFWHGDTCKVTQFDQペプチド、DsbA_1_WT(配列番号70)の単一置換プロットを示す。各ペプチドの位置は、21本の棒(20のアミノ酸のそれぞれに対して1本の棒、及び欠失に対して1本の棒)で表される。各棒の高さは、シグナル強度の中央値を示す。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
(表4)BiocoreX100上の固定化ビオチン標識DsbAへの探索されたペプチドの結合に対する運動パラメータ
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
図9は、(Biacore)SAチップ上に固定化されたビオチン標識DsbAへのDsbA_l_WT、DFWHGDTCKVTQFDQ-NH2(配列番号70)の結合を示す。ペプチドの濃度は1.2nM~1250nMの範囲である。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022538433000001.app
【国際調査報告】