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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】医療用注射装置用の先端キャップ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20220826BHJP
   A61M 5/50 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
A61M5/31 502
A61M5/50 530
A61M5/31 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500031
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2020068189
(87)【国際公開番号】W WO2021001292
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19305897.1
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ウーヴラード
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066LL25
4C066NN03
4C066NN04
4C066QQ53
4C066QQ78
4C066QQ84
(57)【要約】
本発明は、-医療用注射装置の先端部と係合するように構成された先端コネクタ(100)であって、本体(100a)と、当該本体に、脆弱部(100c)によって接続された端部(100b)とを備える先端コネクタと、-先端部の遠位開口部を密閉するように構成されたクロージャーキャップ(101)であって、当該クロージャーキャップが先端コネクタ(100)に取り外し可能に接続されている、クロージャーキャップとを備える医療用注射装置用の先端キャップ(1)に関する。当該先端キャップは、先端コネクタ(100)と一体であり、チップ(20)及びアンテナ(21)を備えるRFIDタグ(2)を備える。当該チップは、本体及び端部の一方にオーバーモールドされ、アンテナは、本体及び端部の他方にオーバーモールドされ、チップ及びアンテナは、先端コネクタの脆性部(100c)を通って延在するブリッジ(22)によって電気的に接続され、ブリッジは、クロージャーキャップを先端コネクタから外すために、クロージャーキャップ及び先端コネクタに加えられる相対運動の下で破壊するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用注射装置用の先端キャップ(1)であって、
前記医療用注射装置の先端部と係合するように構成された先端コネクタ(100)であって、本体(100a)と、前記本体に脆弱部(100c)によって接続された端部(100b)とを備える先端コネクタ(100)と、
前記先端部の遠位開口部を密閉するように構成されたクロージャーキャップ(101)であって、前記クロージャーキャップは、相互に係合するねじ部(1002、1012)によって先端コネクタ(100)に取り外し可能に接続されている、クロージャーキャップ(101)と、
を備え、
先端キャップ(1)は、先端コネクタ(100)と一体であり、チップ(20)及びアンテナ(21)を備えるRFIDタグ(2)をさらに備え、
チップ(20)は、本体(100a)および端部(100b)の一方にオーバーモールドされ、アンテナ(21)は、本体(100a)および端部(100b)の他方にオーバーモールドされ、チップ(20)およびアンテナ(21)は、先端コネクタ(100)の脆弱部(100c)を通って延在するブリッジ(22)によって電気的に接続され、ブリッジ(22)は、クロージャーキャップを先端コネクタから外すために、クロージャーキャップ(101)および先端コネクタ(100)に加えられる相対運動の下で破壊するように構成される、医療用注射装置用の先端キャップ(1)。
【請求項2】
クロージャーキャップ(101)が、前記医療用注射装置の先端部(10)に当接するように構成された密封隔壁(102)を備える、請求項1に記載の先端キャップ。
【請求項3】
アンテナ(21)は、先端キャップ(1)の長手方向軸(X)を中心に広がるリング形状を呈する、請求項1または2に記載の先端キャップ。
【請求項4】
ブリッジ(22)は、前記先端キャップの長手方向軸(X)に平行である、請求項3に記載の先端キャップ。
【請求項5】
ブリッジ(22)は、前記先端キャップの長手方向軸(X)に直交する、請求項3に記載の先端キャップ。
【請求項6】
先端コネクタ(100)およびクロージャーキャップ(101)は、先端コネクタ(100)の端部(100b)をクロージャーキャップ(101)に回転可能に固定するように構成された、相互に係合する突起(1003)と、ノッチ(1013)とを備え、脆弱部(100c)は、クロージャーキャップ(101)を前記先端コネクタの本体(100a)から外すために、クロージャーキャップ(101)と先端コネクタ(100)とに加えられる相対的な回転運動の下で破壊するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の先端キャップ。
【請求項7】
バレルと、遠位開口部を備える先端部(10)と、前記先端部に取り付けられた請求項1から6のいずれか一項に記載の先端キャップ(1)とを備える、医療用注射装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の先端キャップの製造方法であって、
i)チップ(20)およびアンテナ(21)を備えるRFIDタグ(2)を提供する工程であって、チップ(20)およびアンテナ(21)は、ブリッジ(22)によって電気的に接続されている、工程と、
ii)先端コネクタ(100)の射出成形に適合した型に前記RFIDタグを配置する工程と、
iii)先端コネクタ(100)の少なくとも一部を形成するように第1のインサートを使用して、かつ、前記チップおよび前記アンテナをオーバーモールディングすることにより、少なくとも1種のプラスチック材料を前記型内に射出する工程であって、前記チップおよび前記アンテナが平らな表面を呈する、工程と、
iv)第2のインサートを使用して、工程iii)と同じプラスチック材料を射出し、RFIDタグ(2)がオーバーモールドされている先端コネクタ(100)を得る工程と、
v)クロージャーキャップ(101)を成形する工程と、
vi)先端キャップを得るために、前記クロージャーキャップを前記先端コネクタに取り外し可能に組み合わせる工程と、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用注射装置用の先端キャップ及びそのような先端キャップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注射器のような医療用注射装置は、典型的には、医薬組成物を収容するための容器を含み、該容器は、医薬組成物が放出される流路を画定する長手方向先端部の形態の端部片を有する。医療用注射装置は、取り扱いに注意を要し得る医薬組成物で予め充填され得る。
【0003】
製造工程から、少なくとも医療用容器の最終使用、典型的には医薬組成物の注射まで、医療用注射装置、典型的には医療用容器の個々のトレーサビリティに対するニーズが高まっている。実際、製造工程、充填工程及び/又は医療用注射装置の使用中に発生した全ての事象を記録するために、そのような医療用装置のトレーサビリティを可能にすることが望ましい。医療用注射装置は、通常、個別に処理されることはなく、複数の類似の医療用注射装置とともに、搬送又は梱包され得、トレーサビリティは、医療用注射装置のライフサイクルの間、いつでも医療用容器の状態をチェックできること、及びこの状態のチェックが医療用注射装置を開梱せずに実施できることを保証すべきである。
【0004】
さらに、医療用注射装置は、期待される医薬組成物を含有していること、および元の医薬組成物とは別の医薬組成物で再充填されていないことを確認する必要がある。また、医療用注射装置を使用する際には、当該医療用注射装置が以前に開封されていないことを確認する必要がある。従って、このような医療用注射装置にタンパーエビデンス手段を設けることが望ましいかもしれない。
【0005】
現在まで、医療用注射装置のトレーサビリティとタンパーエビデンスの両方を可能にする実用的な解決策は存在しない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、トレーサビリティおよびタンパーエビデンス手段を備える医療用注射装置を提供することである。
【0007】
この目的は、
-医療用注射装置の先端部と係合するように構成された先端コネクタと、
-先端部の遠位開口部を密閉するように構成されたクロージャーキャップであって、クロージャーキャップが先端コネクタに取り外し可能に接続されているクロージャーキャップと
を備え、
前記先端キャップは、チップおよびアンテナを備えるRFIDタグを備え、チップおよびアンテナは、先端コネクタおよびクロージャーキャップの少なくとも1つにオーバーモールドされ、チップおよびアンテナは、クロージャーキャップを先端コネクタから外すために、クロージャーキャップおよび先端コネクタに加えられる相対運動の下で破壊するように構成されたブリッジによって電気的に接続されていることを特徴とする、医療用注射装置用の先端キャップを提供することによって達成することができる。
【0008】
RFIDタグは、チップとアンテナとの間の電気的接続の破壊によってクロージャーキャップが開くときに不活性化されるので、クロージャーキャップが開くまでの医療用容器のトレーサビリティと、タンパーエビデンスとの両方を提供する。さらに、RFIDタグを先端キャップに一体化するために使用されるオーバーモールディングプロセスは、先端キャップの組立工程数および製造コストを最小化する。
【0009】
本明細書において、用語「遠位」および「近位」は、医薬組成物を患者の体内に注射するために医療用注射装置を携帯する使用者に対して、医薬組成物の注射軸に沿って、それぞれ、より遠い、より近い領域を定義する相対的用語である。例えば、医療用注射装置が、使用者の指と、患者の組織を刺して医薬組成物を注入するように構成された針に連結された先端部との間に保持されるように構成されたフランジを備える注射器である場合、フランジは近位とみなされ、先端部は遠位とみなされる。
【0010】
好ましい実施形態によれば、先端コネクタは、本体と、脆弱部によって本体に接続された端部とを備え、先端コネクタとクロージャーキャップとは、相互に係合するねじ部を備える。RFIDタグは、先端コネクタと一体化されている。チップは本体及び端部の一方にオーバーモールドされ、アンテナは本体及び端部の他方にオーバーモールドされる。ブリッジは、先端コネクタの脆弱部を通って延在し、したがって、クロージャーキャップを先端コネクタから外すためにクロージャーキャップと先端コネクタに加えられる相対的な螺合解除運動(relative unscrewing movement)の下で破壊するように構成される。
【0011】
有利であるが限定的ではない実施形態によれば、場合によっては、以下:
-クロージャーキャップは、医療用注射装置の先端部に当接するように構成された密封隔壁を備える;
-アンテナは、先端キャップの長手方向軸を中心に広がるリング形状を呈する;
-ブリッジは、先端キャップの長手方向軸に平行である;
-ブリッジは、先端キャップの長手方向軸に直交する;
-先端コネクタ及びクロージャーキャップは、先端コネクタの端部をクロージャーキャップに回転可能に固定するように構成された、相互に係合する突起及びノッチを備え、脆弱部は、クロージャーキャップを先端コネクタの本体から外すために、クロージャーキャップ及び先端コネクタに加えられる相対的な回転運動の下で破壊するように構成されている;
を組み合わせることができる。
【0012】
別の目的は、バレルと、遠位開口部を備える先端部と、前記先端部に取り付けられた上述の先端キャップとを備える医療用注射装置である。
【0013】
別の目的は、上述した、先端コネクタと、先端コネクタに取り外し可能に接続されたクロージャーキャップとを備える先端キャップを製造する方法であって、
i)チップおよびアンテナを備えるRFIDタグを提供する工程であって、チップとアンテナは、ブリッジによって電気的に接続されている、工程と、
ii)先端コネクタ及び/又はクロージャーキャップの射出成形に適合した型内にRFIDタグを配置する工程と、
iii)チップおよびアンテナをオーバーモールディングすることによって先端コネクタおよび/またはクロージャーキャップを形成するように、少なくとも1種のプラスチック材料を型に射出する工程と
を含む。
【0014】
前記方法の好ましい実施形態によれば、
-工程ii)では、RFIDタグを先端コネクタの射出成形に適した型内に配置し、
-工程iii)では、先端コネクタの少なくとも一部を形成するように第1のインサートを使用して、かつ、チップおよびアンテナをオーバーモールディングすることにより、プラスチック材料を型内に射出し、チップおよびアンテナが平らな表面を呈し、
および前記方法は、以下の工程:
iv)第2のインサートを使用して、工程iii)と同じプラスチック材料を射出し、RFIDタグがオーバーモールドされている先端コネクタを得る工程と、
v)クロージャーキャップを成形する工程と、
vi)先端キャップを得るために、クロージャーキャップを先端コネクタに取り外し可能に組み合わせる工程と
をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる特徴、実施形態および利点は、添付図面に基づく以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】第1の実施形態による先端キャップの断面図である。
図2】第1の実施形態による先端キャップのクロージャーキャップの斜視図である。
図3】第1の実施形態による先端キャップの先端コネクタの斜視図である。
図4】第1の実施形態による先端キャップのRFIDタグの斜視図である。
図5A】第1の実施形態によるクロージャーキャップの先端キャップへの螺合中のクロージャーキャップおよび先端コネクタの相対位置の図である。
図5B】第1の実施形態によるクロージャーキャップの先端キャップへの螺合完了後のクロージャーキャップおよび先端コネクタの相対位置の図である。
図6】クロージャーキャップを先端コネクタから外した後の第1の実施形態による先端キャップの断面図である。
図7】クロージャーキャップを先端コネクタに再度、螺合した後の図6の先端キャップの断面図である。
図8】第2の実施形態による先端キャップを有する医療用注射装置の斜視図である。
図9図8の先端キャップの拡大図である。
図10図8の先端キャップ内にオーバーモールドされたRFIDタグの拡大図である。
図11】先端コネクタ及びRFIDタグを示す、第2の実施形態による先端キャップの部分図である。
図12】クロージャーキャップおよびRFIDタグを示す、第2の実施形態による先端キャップの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の先端キャップは、医療用注射装置に取り付けられるように構成される。前記医療用注射装置は、長手方向軸を中心に広がるバレルと、バレルの遠位端から延びる遠位先端部とを備えてもよい。医療用注射装置の遠位先端部は、バレル内に収容され得る医薬組成物を放出するための長手方向貫通孔(longitudinal through hole)を備える。
【0017】
先端部は先端キャップで覆われてもよい。前記先端キャップは、先端部と係合するように構成された先端コネクタと、先端部の遠位開口部を密閉するように構成されたクロージャーキャップとを備える。クロージャーキャップは、医療用注射装置の先端部、特に前記医療用注射装置の先端部の遠位端に当接する密封隔壁を含んでもよい。
【0018】
クロージャーキャップは、先端コネクタに取り外し可能に接続してもよい。医療用注射装置を使用する前に、クロージャーキャップを先端コネクタに取り付けて、遠位先端部を衝撃および外部汚染から保護することができる。医療用注射装置を患者への医薬組成物の注射に使用する場合、医療用注射装置の先端部を露出させるために、クロージャーキャップを先端コネクタから取り外す。次いで、注射を行うために針を先端コネクタに接続してもよい。
【0019】
本発明によれば、先端キャップは、無線周波数識別タグ(RFIDタグ)を含む。
【0020】
それ自体公知の方法では、RFIDタグは、ブリッジによって電気的に接続されたチップおよびアンテナを備える。医療用容器に関する固有の識別データおよび医療用容器の処理に関するデータをチップに記録することができる。前記データは、適切なRFIDリーダーによって読み取ることができる。しかしながら、RFIDタグのいずれかの部分が破壊すると、RFIDタグの完全性が失われ、RFIDリーダーで読み取ることができなくなる。
【0021】
先端キャップのタンパーエビデンス機能を提供するために、チップおよびアンテナは、先端コネクタおよびクロージャーキャップの少なくとも1つにオーバーモールドされる。チップおよびアンテナは、クロージャーキャップを先端コネクタから外すために、クロージャーキャップおよび先端コネクタに加えられる相対運動中に、電気的に接続されたブリッジが破壊するように構成されるように、先端コネクタおよびクロージャーキャップに対して配置される。より具体的には、RFIDタグのある部分(例えばチップ)は、先端コネクタに固定されたままであり、RFIFタグの別の部分(例えばアンテナ)は、クロージャーキャップに固定されたままである。この運動により、RFIDタグの一部(例えばブリッジ)が破壊し、RFIDタグが非活性化される。
【0022】
このようにして、クロージャーキャップが開けられたときに、先端キャップの状態(既に開いているか又は元のままであるか)の明確な表示が、RFIDタグを読み取ろうとすることによって提供される。さらに、先端キャップが開けられない限り、先端キャップは、医療用注射装置メーカーでの組立てから、医薬ラボレベルでの薬物容器の2次包装まで、理想的にはクロージャーキャップが除去されるまで、製品トレーサビリティを可能にする、検出可能な固有の装置識別子(detectable unique device identifier)を特徴として備える。
【0023】
有利には、前記相対運動は、回転運動、並進運動、または回転運動と並進運動の組み合わせであり得る。
【0024】
好ましい実施形態では、相対運動は、螺合解除運動であってもよい。この目的のために、先端コネクタ及びクロージャーキャップは、相互に係合するねじ部を備える。
【0025】
アンテナは、有利には、医療用容器の長手方向軸と一致する、先端キャップの長手方向軸を中心に広がるリング形状を呈してもよい。
【0026】
一実施形態によれば、ブリッジは、前記長手方向軸に平行であってもよい。
【0027】
あるいは、ブリッジは、先端キャップの長手方向軸に直交していてもよい。
【0028】
図1図7は、先端キャップの第1の実施形態に関する。
【0029】
図1は、医療用注射装置を使用する前の先端キャップの断面図である。
【0030】
先端キャップは、医療用注射装置(図6~7に10として示される)の先端部に取り付けられるように構成された先端コネクタ100と、先端コネクタ100に取り外し可能に螺合されて、先端部の遠位開口部を密閉するクロージャーキャップ101とを備える。この目的のために、先端コネクタ100及びクロージャーキャップ101は、相互に係合するねじ部1002、1012(図2および図3参照)を備える。医療用注射装置が使用される場合には、クロージャーキャップ101は先端コネクタ100から外されて先端部へのアクセスを提供し、一方、先端コネクタは先端部に固定されたままである。従って、針は、ねじ部1002を介して先端コネクタに接続され得る。先端キャップは、医療用注射装置の長手方向軸Xを中心に広がる。本明細書中の「軸方向に」という用語は、軸Xを指す。
【0031】
図3によく見られるように、先端コネクタ100は、医療用注射装置の先端部に取り付けられるように構成された近位リング部1001を備える。一実施形態によると、先端コネクタは、ルアーロックアダプタ(LLA)である。リング部1001の内面は、医療用注射装置の先端部と摩擦係合可能な円錐台形状を有してもよい。
【0032】
先端コネクタ100は、クロージャーキャップ(図2参照)の近位雄ねじ部1012と協働するように構成された遠位雌ねじ部1002をさらに備える。
【0033】
図2に示すように、クロージャーキャップ101は、遠位ハンドリング部1011を備える。ハンドリング部は、特にクロージャーキャップを先端コネクタに螺合するか、または螺合を解除するために、使用者の指の間に容易に保持されるように構成された外面を備えるのが有利である。前記外面には、このような螺合動作または螺合解除動作中に指が滑らないようにするために溝が設けられてもよい。
【0034】
クロージャーキャップ101は、プラスチックなどの剛性材料で作られてもよい。クロージャーキャップ101は、ゴムまたは熱可塑性エラストマー(TPE)などの可撓性材料で作られた密封隔壁102を有利に備える。内側キャップは、例えば摩擦係合またはクリッピングによってクロージャーキャップに固定される。先端キャップが医療用注射装置に取り付けられると、内側可撓性キャップの近位端は先端部の遠位端と接触して、医療用注射装置の内容物を外部汚染から保護する密封を形成する。
【0035】
先端コネクタは、近位本体100aと、脆弱部100cによって本体に接続された遠位端部100bとを備える。脆弱部は、端部100b及び本体100aに加えられる軸Xを中心とする相対的な回転運動下で破壊するように構成されている。他の実施形態では、脆弱部は、相対的な並進運動、または端部100bおよび本体100aに加えられる軸Xの周りの相対的な回転運動および並進運動の組み合わせの下で破壊するように構成される。脆弱部100cは、先端コネクタの周囲に割り当てられた複数のリンクを備えることができる。前記リンクは、比較的小さい断面を有し、本体100aと端部100bとの間で軸方向に延びている。
【0036】
先端コネクタ100とクロージャーキャップ101は、先端コネクタの端部100bをクロージャーキャップ101に回転可能に固定するように構成された、相互に係合する突起1003とノッチ1013とを備える。
【0037】
図5Aに示すように、クロージャーキャップを先端コネクタ(矢印で示す方向)に螺合する間、突起1003はノッチ1013と一致しない。
【0038】
螺合が完了すると(図5Bを参照)、各突起1003は、それぞれのノッチ1013に係合する。
【0039】
各ノッチおよび対応する突起は、先端キャップの半径に対して非対称のプロファイルを有する。螺合方向では、突起1003の前側は略放射状に延び、突起1003の後側は斜めに延びている。あるいは、突起の前側は先端コネクタの内面から延びる急峻な段差を形成し、突起の後側は緩やかな傾斜を介して前記内面に接続されている。クロージャーキャップのノッチの形状は、突起の1つに相補的である。
【0040】
この突起およびノッチの形状により、過度の力を加えることなくクロージャーキャップを先端コネクタに螺合することができる。しかし、螺合解除方向では、クロージャーキャップ101のノッチが先端コネクタの遠位端部100bにトルクを与えて、脆弱部100cを形成する壊れやすいリンクを破壊させる。
【0041】
先端コネクタは、RFIDタグ2(図4の斜視図)を備える。RFIDタグは、RFIDチップ20およびアンテナ21を備え、RFIDチップは、ブリッジ22によってアンテナに結合される。アンテナ21は、軸Xを中心に広がる環状形状を呈することが好ましいが、他の任意の適切な形状を呈してもよい。RFIDタグの構成要素の1つ、特にブリッジ22が破損すると、RFIDタグが不活性化される。
【0042】
本発明によるこの第1の実施形態では、RFIDタグは、RFIDチップ20およびアンテナ21が、脆弱部100bに対して先端コネクタの異なる部分にあるように、先端コネクタ100に一体化され、好ましくは完全に一体化される。例えば、図3に示すように、チップ20は、本体100aに一体化され、アンテナは、端部100bに一体化され、ブリッジは、脆弱部100cを通って延びる。別の実施形態(図示せず)では、チップは、先端コネクタの端部に一体化され得、アンテナは、本体に一体化され得る。
【0043】
クロージャーキャップを先端コネクタから取り外すために、先端コネクタ及びクロージャーキャップに相対的な回転運動が加えられると、脆弱部100c及びブリッジ22の両方が破壊し、それにより、チップとアンテナとの間の電気的接続が遮断され、RFIDタグが不活性化される。
【0044】
その結果、図6に示すように、クロージャーキャップ101を先端コネクタ100から取り外すと、RFIDタグの遠位端部100b及びアンテナ21は、ノッチ及び突起の係合を介してクロージャーキャップ100に取り付けられたままであり、一方、RFIDタグのチップ20は、先端コネクタの本体100aに取り付けられたままである。
【0045】
クロージャーキャップ101が先端コネクタの本体100aに再び螺合されても、破壊したブリッジにより、もはやチップとアンテナとは電気的に接続しなくなるので、RFIDタグは作動しないままである。したがって、RFIDタグを読み取ることができなくなる。
【0046】
使用者が、先端キャップが開いているかどうかを確認するには、適切なRFIDリーダーでRFIDタグを読み取る試みがなされなければならない。RFIDリーダーがタグを検出しない場合は、先端キャップが開いていることを意味する。逆にRFIDリーダーがタグを検出した場合は、先端キャップが元のままであることを意味する。
【0047】
先端キャップは、以下のようにして製造してもよい。
【0048】
一方では、クロージャーキャップ101および密封隔壁102は、射出成形によって製造し、組み合わせることができる。クロージャーキャップ101のための適当な材料は、ポリプロピレン又は他の硬質プラスチック材料を含み、密封隔壁102のための適当な材料は、ゴム及び熱可塑性エラストマーを含む。
【0049】
他方では、RFIDタグ付き先端コネクタは、オーバーモールディング法によって製造することができる。
【0050】
そのために、RFIDタグは、先端コネクタの射出成形に適した型内に配置される。型は、RFIDタグを先端コネクタの本体及び遠位端部に対して意図された位置に保持するように構成された第1のインサートを含む。第1の射出工程では、チップおよびアンテナを部分的にオーバーモールドするように、プラスチック材料を型に射出する。この第1の射出工程の終了時に、チップおよびアンテナは、平らな表面を呈する。次に、第1の射出工程で得られた部品を取り外し、型の第2のインサート内に配置して、先端コネクタの残りの部分の形状を画定する。第2の射出工程では、第1の射出工程と同じプラスチック材料が型内に射出され、それによってRFIDタグが完全にオーバーモールディングされる。先端コネクタに適した材料には、ポリプロピレンまたは任意の他の硬質プラスチック材料が含まれる。
【0051】
次いで、クロージャーキャップは、先端コネクタの端部の突起がクロージャーキャップのノッチに係合するまで螺合することによって、先端コネクタに取り外し可能に組み合わせられ得る。
【0052】
図8図12は、先端キャップの第2の実施形態を示す。図1図7と同じ参照番号で識別される要素は、同一の機能を有する。
【0053】
第1の実施形態と同様に、先端キャップは、医療用注射装置の先端部10と係合するように構成された先端コネクタ100と、先端コネクタに取り外し可能に螺合され、先端部10の遠位開口部を密閉するように構成されたクロージャーキャップ101とを備える。
【0054】
この目的のために、先端コネクタ100及びクロージャーキャップ101は、相互に係合するねじ部1002を備えている。医療用注射装置が使用されるとき、クロージャーキャップ101は、先端部へのアクセスを提供するために先端コネクタ100から外されるが、先端コネクタは先端部に固定されたままである。従って、針は、ねじ部1002を介して先端コネクタに接続され得る。先端キャップは、医療用注射装置の長手方向軸Xを中心に広がる。
【0055】
先端コネクタ100は、医療用注射装置の先端部に取り付けられるように構成された近位リング部を備える。一実施形態によると、先端コネクタは、ルアーロックアダプタ(LLA)である。リング部の内面は、医療用注射装置の先端部と摩擦係合可能な円錐台形状を有していてもよい。
【0056】
図11及び図12によく示されているように、先端コネクタ100は、クロージャーキャップの近位雄ねじ部1012と協働するように構成された遠位雌ねじ部1002をさらに備える。
【0057】
クロージャーキャップ101は、遠位ハンドリング部1011を備える。ハンドリング部は、特に、クロージャーキャップを先端コネクタに螺合するか、または螺合を解除するために、使用者の指の間に容易に保持されるように構成された外面を備えるのが有利である。前記外面には、このような螺合動作または螺合解除動作中に指が滑らないようにするために溝が設けられてもよい。
【0058】
図9に見られるように、クロージャーキャップ101は、先端部の遠位端と接触して、外部汚染から医療用注射装置の内容物を保護する密封を形成するように構成された密封隔壁102を含む。この実施形態では、密封隔壁102は、クロージャーキャップ101と一体である。
【0059】
先端コネクタ100およびクロージャーキャップ101は、化学的に結合しない材料から作られる。「化学的に結合しない材料」とは、第1の材料が第2の材料の上に成形されるときに、互いの間で化学結合を有しない一対の材料を意味する。その結果、第2の材料で作られた部品が第1の材料で作られた部品にオーバーモールドされた場合、部品同士が結合されず、互いに移動し得る。
【0060】
一実施形態によると、先端コネクタはポリカーボネート(PC)で作られてもよく、クロージャーキャップは熱可塑性エラストマー(TPE)で作られてもよい。しかしながら、用途に適した化学的に結合しない他の対の材料を使用してもよい。
【0061】
先端キャップは、RFIDタグ2を備える。RFIDタグは、RFIDチップ20とアンテナ21とを備え、RFIDチップは、ブリッジ22によってアンテナに結合される。アンテナ21は、軸Xを中心に広がる環状形状を呈することが好ましいが、任意の他の適切な形状を呈してもよい。RFIDタグの構成要素の1つ、特にブリッジ22が破損すると、RFIDタグが不活性化される。
【0062】
RFIDタグは、RFIDチップ20およびアンテナ21が先端キャップの異なる部分にあるように、先端キャップ内に一体化される。図示の実施形態では、チップ20は先端コネクタ100内でオーバーモールドされ、アンテナ21はクロージャーキャップ101内でオーバーモールドされ、アンテナは先端コネクタとクロージャーキャップとの間の境界面(interface)に配置される。別の実施形態(図示せず)では、チップをクロージャーキャップ内に、アンテナを先端コネクタ内に一体化することができ、アンテナは依然として先端コネクタとクロージャーキャップとの間の境界面に位置する。
【0063】
したがって、先端キャップは、先端コネクタとクロージャーキャップがRFIDタグ上にオーバーモールドされた単一部品として作られる。先端コネクタとクロージャーキャップが化学的に結合しない材料で作られているという事実のために、クロージャーキャップは、クロージャーキャップを螺合解除することによって先端コネクタから外され得る。RFIDチップは、先端コネクタ内に埋め込まれ、アンテナは、クロージャーキャップ内に埋め込まれているので、クロージャーキャップに加えられる回転運動は、ブリッジ22を破壊し、それによってRFIDチップを不活性化する効果を有する。
【0064】
図10によく見られるように、好ましい実施形態では、アンテナ21は、クロージャーキャップの物質内に半径方向内側に延びる複数の突起210を備える。これらの突起は、アンテナ21とクロージャーキャップ101との回転係合を形成し、クロージャーキャップが先端コネクタから外されるときにアンテナがクロージャーキャップから外れることを回避する。
【0065】
本発明の第2の実施形態に係る先端キャップは、以下のようにして作製してもよい。
【0066】
先端コネクタ及びクロージャーキャップの2ショット射出成形に適した型を提供する。
【0067】
RFIDタグは、型内に配置され、アンテナは、先端コネクタを画定する型の一部とクロージャーキャップを画定する型の一部との間の境界面に位置するように配置される。
【0068】
第1の材料(例えばポリカーボネート)は、先端コネクタ100を形成するように型内に射出され、RFIDタグのチップ及びブリッジの第1の部分(すなわち、チップに隣接するブリッジの部分)は、前記第1の材料でオーバーモールドされる。次に、第1の材料と化学的に結合しない第2の材料(例えば熱可塑性エラストマー)は、クロージャーキャップ101を形成するように型内に射出され、アンテナ21およびブリッジの第2の部分(すなわち、アンテナに隣接するブリッジの部分)は前記第2の材料でオーバーモールドされる。
【0069】
このプロセスの利点は、先端キャップが、先端コネクタとクロージャーキャップとを取り外し可能に組み合わせた状態で直接得られることである。
【0070】
もちろん、添付の図面は例示のためにのみ提供されており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】