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  • 特表-燃焼火格子用の火格子ブロック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】燃焼火格子用の火格子ブロック
(51)【国際特許分類】
   F23H 3/02 20060101AFI20220826BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20220826BHJP
   F23H 7/08 20060101ALN20220826BHJP
【FI】
F23H3/02 A
F23G5/00 109
F23H7/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500055
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2020059704
(87)【国際公開番号】W WO2021004664
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】19184559.3
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516042103
【氏名又は名称】ヒタチ ゾウセン イノバ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マウリセ ヘンリ バルトナー
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー ブレンバルト
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261BA03
3K261BA06
3K261BA11
(57)【要約】
本発明は、燃焼火格子のための火格子ブロック(10)であって、連続する火格子ブロックが階段状に互いに重なって配置されており、そして互いに相対的に実施されるスラスト運動によって、燃焼中の燃焼物を重ね直して搬送するように形成されている、燃焼火格子のための火格子ブロックに関する。火格子ブロック(10)はブロック本体(12)を有しており、ブロック本体は、支持面(16)を形成する上壁部(14)であって、上壁部に沿って燃焼物が搬送されるようになっている上壁部(14)と、スラスト面(22)を形成する前壁部(20)とを有しており、前壁部(20)はそれぞれ第1空気供給通路(27)によって燃焼火格子上へ空気を供給するために形成された第1空気供給口(25)と、スラスト方向Sで隣接する火格子ブロックの支持面と接触するように規定されている下側支持縁部(23)とを有している。上壁部(14)内及び前壁部(20)内には、貫通して延びる、第1空気供給通路の方向に対して斜めに方向付けられた他の空気供給通路(38)が、上壁部及び前壁部(20)を冷却するために形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼火格子用の火格子ブロック(10)であって、
連続する火格子ブロックが階段状に互いに重なって配置され、そして互いに相対的に実施されるスラスト運動によって、燃焼中の燃焼物を再構成して搬送するように形成され、前記火格子ブロック(10)が、上壁部(14)を有し、かつ長手方向軸Lを定めるブロック本体(12)を有し、前記上壁部(14)は支持面(16)を形成し、該支持面に沿って前記燃焼物が搬送され、前記支持面の最も前側の端部は、前記長手方向軸Lに対してほぼ平行に方向付けられたスラスト方向Sで見て縁部(19)を形成し、前記縁部を介して、前記支持面(16)は前壁部(20)によって形成されたスラスト面(22)の方に下降し、前記前壁部(20)は、それぞれ縦断面で見てスラスト面(22)に対して直角又は斜めに延びる第1空気供給通路(27)によって前記燃焼火格子上へ空気を供給するために形成された第1空気供給口(25)と、前記長手方向軸Lに対してほぼ直角に延びる平面E内に配置された下側支持縁部(23)と、を有し、前記下側支持縁部(23)は、スラスト方向Sで隣接する火格子ブロックの前記支持面と接触するように定められる、火格子ブロック(10)において、
前記上壁部(14)及び前記前壁部(20)を冷却するための他の空気供給通路(38)は、前記上壁部(14)内及び前記前壁部(20)内に貫通して延び、前記第1空気供給通路の方向に対して斜めに整列されている、ことを更に特徴とする火格子ブロック(10)。
【請求項2】
前記上壁部(14)と前記前壁部(20)とが、互いに当接する領域内で、縦断面で見て壁厚肉部(40)として厚肉化されて形成され、そして前記縁部(19)は、スラスト方向Sで見て、前記平面Eに対して前方に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項3】
前記他の空気供給通路(38)は壁厚肉部(40)内に配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項4】
前記他の空気供給通路(38)は、縦断面で見て、前記ブロック本体の長手方向軸Lに対して角度βを成して延びており、該角度βは、10°~60°、好ましくは15°~50°であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項5】
前記他の空気供給通路(38)の第1群は、前記ブロック本体の支持面に対して第1角度β1を成して延びる第1平面内に形成され、前記他の空気供給通路(38)の第2群が、前記ブロック本体の支持面に対して第2角度β2を成して延びる第2平面内に形成され、前記第1角度β1は、10°~35°、好ましくは10°~20°であり、そして第2β2は、35°~60°、好ましくは40°~50°であることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項6】
前記第1群の前記他の空気供給通路(38)は、互いに平行に、有利には支持面(16)に対して直角な縦断面Pに対して平行に形成され、そして第2群の前記他の空気供給通路(38)は、互いに平行に、有利には縦断面Pに対して平行に形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項7】
前記他の空気供給通路(38)は、前記第1平面内及び/又は前記第2平面内で、前記火格子ブロックの全幅にわたって、少なくともほぼ均一に互いに間隔を置いて配されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項8】
前記他の空気供給通路(38)は、前記支持面(16)に対して直角に延びる、前記火格子ブロック(10)の長手方向対称平面に対して対称的に配されている、ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項9】
前記他の空気供給通路(38)は、該他の空気供給通路(38)のほぼ全長にわたって一定の断面積を有し、該断面積が40mm~100mm、有利には80mmである、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項10】
前記他の空気供給通路(38)は、該他の空気供給通路(38)の全長にわたって、燃焼物側から冷却空気側へ連続的に拡大するように形成され、前記燃焼物側の前記他の空気供給通路(38)の断面積と前記冷却空気側の前記他の空気供給通路の断面積との比が1:1.2~1:2.5、有利には1:2.25である、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の火格子ブロック(10)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の少なくとも1つの火格子ブロック(10)を有する燃焼火格子。
【請求項12】
廃棄物の焼却のための請求項11に記載の燃焼火格子の使用。
【請求項13】
請求項11に記載の燃焼火格子を有する廃棄物焼却プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載された燃焼火格子のための火格子ブロックに関する。本発明はさらに、少なくとも1つのこのような火格子ブロックを有する燃焼火格子に関する。本発明はさらに、廃棄物の焼却のための上記燃焼火格子の使用、並びにこのような燃焼火格子を有する廃棄物焼却プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の工業的規模の焼却に用いる火格子は、当業者には長い間知られている。このような火格子は、例えばストーカー・ストロークを行うのに適した可動部を含む前進燃焼火格子の形態で存在し得る。燃焼物は火格子の入口端から出口端まで搬送されて、この間に燃やされる。燃焼に必要な酸素を火格子に供給するために、火格子を貫通する相応の空気供給部が設けられており、これを通して一次空気とも呼ばれる空気が導入される。
【0003】
頻繁に使用される火格子は、いわゆる階段火格子である。これは互いに並置されてそれぞれ格子列を形成する火格子ブロックを含む。火格子ブロック列は互いに上下に階段状に配置されており、いわゆる前進火格子の場合はスラスト方向に見て火格子ブロックの前端が、搬送方向で隣接する火格子ブロックの支持面上に載って、相応のスラスト運動でこの支持面上を移動する。
【0004】
いわゆる後退火格子の場合、火格子ブロックは前進火格子に対して、燃焼物の輸送方向で見てほぼ180°だけ回転して配置されている。したがって、後退火格子の場合には、スラスト方向で見て火格子ブロックの前端部は、それぞれ先行する火格子ブロックの支持面上に支持されている。前進火格子とは異なり、後退火格子の場合、スラスト方向はこれにより、後退火格子の傾斜によって生じる輸送方向とは逆となる。
【0005】
階段火格子として形成された燃焼火格子及びこのような燃焼火格子のための火格子ブロックが、たとえば特許文献1に記載されている。この文献は空冷式火格子ブロックに関連している。具体的には、特許文献1に記載された火格子ブロックは、被処理廃棄物のための支持面を形成する上壁部と、スラスト面を形成する前壁部とを有する、鋳造部分として形成されたブロック本体を有している。前壁部の下側領域内には基部が形成されており、この基部は、スラスト方向で隣接する火格子ブロックの支持面上に前進可能に支持されるように規定されており、これに対して前壁部内には空気を導入するための空気供給口が配置されている。
【0006】
火格子ブロックを介して搬送される燃焼物によって、火格子ブロックは一般には比較的大きな摩耗に晒されている。摩耗は正に、支持面の最も前側の端部の領域内で特に大きい。この場所では、燃焼物が火格子ブロックの支持面から相応の投下縁部を介して、後続の火格子ブロックの支持面へ投下される。このことは具体的には、縁部の下側に配置された空気供給口の腐食をも招く。このことは、燃焼火格子上に位置する燃焼床への制御された状態での空気供給を不都合に損なうおそれがある。
【0007】
火格子ブロックはさらに、とりわけ燃焼時もしくは火室内の温度が高いため、極めて強い熱負荷に晒されている。燃焼火格子の通常運転中には、このような熱負荷は具体的には支持面の領域内で高いものの、火格子ブロック上に位置する燃焼物はある程度までは分離するように作用する。
【0008】
燃焼物が燃焼火格子上に不均一に分配され、薄い分離層しか形成しないと、又はこのような分離層が全くないと、極めて高い負荷が発生する。熱負荷は摩耗による腐食を促進し、そして支持面をさらに損傷する、支持面で行われる化学反応を促進する。このことは最終的には、火格子ブロックの耐用寿命を短くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/198119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明に基づき解決しようとする課題は、長い耐用寿命を提供し、そして支持面の腐食、具体的には火格子ブロックの最も前側の端部の腐食が最小化される、冒頭で述べた形式の火格子ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題は、独立請求項1に定義された火格子ブロックによって解決される。
【0012】
本発明による火格子ブロックの有利な実施形態は、従属請求項に反映されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1によれば、本発明は、燃焼火格子のための火格子ブロックであって、連続する火格子ブロックが階段状に互いに重なって配置されており、そして互いに相対的に実施されるスラスト運動によって、すなわち火格子ブロック間の相対運動によって、燃焼中の燃焼物を再構成して搬送するように形成されている。このような燃焼火格子は冒頭で述べたように階段火格子とも呼ばれる。
【0014】
さらに、火格子ブロックは、有利には鋳造部分として形成されたブロック本体を有している。通常、ブロック本体は主として、長手方向軸Lを有する細長い直方体の形態で形成されている。
【0015】
ブロック本体は上壁部を有し、上壁部は長手方向軸Lに対して平行に延びる支持面を形成し、支持面に沿って燃焼物が搬送されるようになっており、支持面は上壁部の燃焼物側を定める。
【0016】
スラスト方向Sで見て、支持面の最も前側の端部が縁部を形成し、縁部を介して、支持面が前壁部によって形成されたスラスト面に下降している。したがって、縁部は上壁部と前壁部との間の移行部を形成する。
【0017】
上壁部の、支持面とは反対の側、及び前壁部の、スラスト面とは反対の側は、ブロック本体の冷却空気側を定める。
【0018】
スラスト方向Sは、燃焼物が火格子ブロックのスラスト面から押し動かされる方向を意味する。通常、スラスト方向Sは長手方向軸Lに対して平行である。
【0019】
輸送方向Tは、燃焼火格子の入口から出口までの燃焼物の運動方向を定める。輸送方向Tは、主として燃焼火格子の傾斜によって生じる。
【0020】
前壁部は第1空気供給口を有している。第1空気供給口は、縦断面で見てスラスト面に対して直角又は斜めに延びる第1空気供給通路によって燃焼火格子上へ空気を供給するために形成されている。
【0021】
次に、「空気」という概念はいわゆる一次空気を含む。一次空気は燃焼火格子もしくは燃焼火格子上の燃焼床に供給される。一次空気は先ず第一に燃焼物の燃焼するために貢献するが、しかし燃焼火格子の火格子ブロックを冷却するためにも貢献する。
【0022】
さらに、前壁部はその最も下側の領域内では、基部の形態で形成されている。基部は、スラスト方向で隣接する火格子ブロックの支持面上に支持されるように定められている。
【0023】
有利な実施形態によれば、第1空気供給通路は縦断面で見て、スラスト面のそれぞれの第1空気供給口と直接に境を接する領域に対して角度αを成して延びている。αは90°~135°、有利には95°~125°、特に有利には100°~120°、そして大抵の場合には有利には105°~115°である。角度αはそれぞれの第1空気供給通路の長手方向軸とスラスト面との間で反時計回り方向で測定される。これにより、燃焼火格子もしくは燃焼火格子上の燃焼床へ最適に空気が供給される。このことは、燃焼物の極めて高度な焼き尽くしのために貢献する。第1空気供給通路の、角度αを規定するために関連する区分は、前壁部からのそれぞれの第1空気供給通路の出口のすぐ前の区分である。
【0024】
本発明による火格子ブロックが前進火格子のために規定されている有利な実施形態の場合、基部はしたがって、燃焼物の輸送方向Tにおいて後続の火格子ブロック上もしくはその支持面上に支持されている。しかしながら、本発明による火格子ブロックが後退火格子のために規定されていることも考えられる。このような場合には、基部は燃焼物の輸送方向Tにおいて先行する火格子ブロック上もしくはその支持面上に支持されている。
【0025】
少なくともスラスト面の下側支持縁部は、長手方向軸Lに対してほぼ直角に延びる平面E内に配置されている。これに関しては、当該面の下端部が下側支持縁部によって形成される、前壁部の最も下側の領域内に配置された面が平面E内に配置されていることが考えられる。しかしながら、下側支持縁部によって描かれる線だけが平面E内に配置されていることも考えられる。
【0026】
本発明によれば、上壁部内及び前壁部内に貫通して延びる、第1空気供給通路の方向に対して斜めに方向付けられた他の空気供給通路が上壁部及び前壁部を冷却するために設けられている。他の空気供給通路は他の空気供給口を上壁部内、すなわち支持面内に形成し、且つ前壁部内、すなわちスラスト面内に形成する。これにより、上壁部及び前壁部を冷却するための空気の分布が最適化されるのを保証することができる。結果として、熱はより良好に導出されるので、上壁部及び前壁部が晒される腐食は低減される。
【0027】
有利な実施形態では、上壁部と下壁部とは、これらが互いに当接する領域内で、縦断面で見て壁厚肉部として厚肉化されて形成されている。火格子ブロックの、特に強い摩耗に晒される領域内の壁厚肉部によって、火格子ブロックの耐用寿命を高めることができる。それというのは著しく強い摩耗に耐えることができるからである。
【0028】
特に有利な実施形態では、壁厚肉部は縦断面で見て、縁部がスラスト方向Sで見て平面Eに対して前方にずらされるように形成されている。換言すれば、スラスト面の、第1空気供給口、及び場合によっては別の空気供給口が配置されている領域は、長手方向軸Lに沿って且つスラスト方向Sで見て縁部に対して後方にずらされている。縁部が長手方向軸Lに沿って且つスラスト方向Sで見て平面Eに対して前方にずらされているので、縁部の下方に形成された第1空気供給口及び場合によっては別の空気供給口は、少なくとも部分的に保護されている。このような配置の付加的な利点は、空気がより容易に第1空気供給口及び別の空気供給口を通って流出し得ることである。これにより、前壁部がより良好に冷却される。
【0029】
有利な実施形態では、壁厚肉部は縦断面で見て湾曲して、例えばビードの形態で形成されている。壁厚肉部を湾曲させて形成することによって、火格子ブロックを介して妨げられることなしに、すなわち角張った凹凸によって詰まることなしに燃焼物を輸送し得ることが保証される。
【0030】
上壁部もしくは前壁部の厚肉化という概念は、上壁部もしくは前壁部の、これらが厚肉化されて形成された領域内で、厚肉化部分のすぐ周りの領域よりも大きい壁厚を有することと理解することができる。
【0031】
壁厚肉部は、火格子ブロックの運転中、壁厚肉部を形成する付加的な材料量に基づき、付加的な熱を吸収することができる。一方では、結果として、壁厚肉部は火格子ブロックのより長い耐用寿命を可能にする。なぜならば、肉厚化された上壁部もしくは前壁部は腐食により長く耐えるからである。しかしながら他方では、壁厚肉部の腐食は強い熱負荷のために増大することがある。したがって火格子ブロックのさらなる最適化は、壁厚肉部の冷却を最適化することにある。
【0032】
有利な実施形態では、他の空気供給通路は壁厚肉部内に配置されており、すなわち他の空気供給通路は壁厚肉部を貫通して延びている。他の空気供給通路、及び対応する他の空気供給口のこのような配置によって、空気による壁厚肉部のより良好な冷却が保証され、ひいてはこの腐食が低減される。
【0033】
しかしながら、他の空気供給通路を上壁部内にだけ、すなわち上壁部の縁部の上部に配置することもできる。摩耗による腐食は主として支持面で生じるので、壁厚肉部は大部分が上壁部の、上壁部と前壁部とが互いに当接する領域内に形成されていると有利である。これにより、他の空気供給通路のこのような配置は壁厚肉部の最適化された冷却を可能にする。
【0034】
有利な実施形態では、他の空気供給通路が縦断面で見て、ブロック本体の長手方向軸Lに対して角度βを成して延びており、角度βは10°~60°である。角度βは長手方向軸Lに対して反時計回り方向で測定される。他の空気供給通路がブロック本体の長手方向軸Lに対して斜めに延びていることにより、他の空気供給通路は、これらが長手方向軸Lに対して平行に延びる場合よりも長い。結果として、他の空気供給通路を貫流する空気は効率的な冷却作用を生じさせることができる。
【0035】
角度βは15°~50°であると有利である。角度βは、燃焼物の燃焼により生じるスラグが、他の空気供給通路を通って落下し詰まりをもたらすのをできる限り僅かにするように選択される。これにより火格子ブロックの信頼性高い冷却が保証される。
【0036】
有利な実施形態では、他の空気供給通路の第1群が、ブロック本体の支持面に対して第1角度β1を成して延びる第1平面内に形成されている。さらに、他の空気供給通路の第2群が、ブロック本体の支持面に対して第2角度β2を成して延びる第2平面内に形成されている。第1角度β1は10°~35°、好ましくは10°~20°であり、そして第2角度β2は35°~60°、好ましくは40°~50°である。他の空気供給通路を複数の群に分割すること、そして他の空気供給通路を複数の平面内に分配することにより、他の空気供給通路を貫流する空気が、効率的に分配された冷却作用をこれらの平面の周りに生じさせることが保証される。これにより火格子ブロックの耐用寿命を長くすることができる。
【0037】
有利な実施形態では、第1群の他の空気供給通路及び第2群の他の空気供給通路が、互いに平行に形成されている。第1群の他の空気供給通路及び第2群の他の空気供給通路は、支持面に対して直角に長手方向軸Lを含む縦断面Pに対して平行に形成されていると有利である。このような配置の付加的な利点は、他の空気供給通路の製造が容易になることである。
【0038】
有利な実施形態では、他の空気供給通路が第1平面内及び/又は第2平面内で、火格子ブロックの全幅にわたって均一に互いに間隔を置いて分配されている。これにより、他の空気供給通路を貫流する空気が均質な冷却作用をこれらの平面の周りに生じさせることが保証される。したがって、熱分配によってもたらされた、火格子ブロックの運転中における応力の分布は、第1平面内及び第2平面内にやはり均質に分布され、そして火格子ブロックへの亀裂の形成がその全幅にわたって最小化される。このことは火格子ブロックの耐用寿命を長くする。
【0039】
有利な実施形態では、それぞれ1つの他の空気供給通路、場合によっては第1群の1つの他の空気供給通路及び第2群の1つの他の空気供給通路と、1つの第1空気供給通路とが1つの同一平面内に配置されており、この平面は縦断面Pに対して平行に延びている。第1空気供給通路と他の空気供給通路とのこのような配置により、火格子ブロックの運転中の応力が、縦断面で見てやはり均質に分配されることが保証される。これにより、亀裂の形成がその全幅にわたって最小化される。
【0040】
有利な実施形態では、他の空気供給通路が、支持面に対して直角に延びる、火格子ブロックの長手方向対称平面に対して対称的に分配されている。このような配置のさらなる利点は、他の空気供給通路の製造が容易になることである。
【0041】
空気供給通路及び他の空気供給通路の数は、火格子ブロックを最適に冷却するために、火格子ブロックの幅及び壁厚肉部の大きさに対して比例するように計算される。
【0042】
有利な実施形態では、他の空気供給通路が他の空気供給通路のほぼ全長にわたって一定の断面積を有しており、断面積は具体的には40mm~100mmである。直径は、燃焼物の燃焼により生じるスラグが、他の空気供給通路を通って落下し詰まりをもたらすのをできる限り僅かにするように選択される。これにより火格子ブロックの信頼性高い冷却が保証される。断面積は、最適な結果を得るために80mmであると有利である。
【0043】
有利な実施形態では、他の空気供給通路がこれらの全長にわたって、燃焼物側から冷却空気側へ連続的に拡大するように形成されており、燃焼物側の他の空気供給通路の断面積と冷却空気側の他の空気供給通路の断面積との比が1:1.2~1:2.5、有利には1:2.25である。燃焼物側の他の空気供給通路の断面積は、支持面内もしくはスラスト面内で測定され、他の空気供給口の断面積に相当する。他の空気供給通路の断面積は、冷却空気側に位置するその端部で測定される。他の空気供給通路をこのように形成することにより、他の空気供給通路内へ入った燃焼残留物を容易に導出することが可能になる。燃焼残留物はつまり、火格子ブロック上に位置する燃焼物によってさらに冷却空気側の方向に他の空気供給通路内に押し込まれ、そして他の空気供給通路が拡大しているので解放される。これにより空気供給の詰まりを回避することができる。
【0044】
さらなる態様によれば、本発明は加えて、上記火格子ブロックの少なくとも1つを有する燃焼火格子に関する。
【0045】
さらに、本発明は、廃棄物の焼却のための上記燃焼火格子の使用、並びにこのような燃焼火格子を有する廃棄物焼却プラントに関する。本発明は添付の図面により示される。図面は以下のことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は本発明による火格子ブロックを示す斜視図である。
図2図2は、図1の火格子ブロックを、図1に示された断面平面II-IIに沿って示す縦断面図である。
図3図3は、図1の火格子ブロックを、図2に示された断面平面III-IIIに沿って示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1から明らかなように、火格子ブロック10は鋳造部分として形成されたブロック本体12を有している。ブロック本体は実質的に、長手方向軸Lを有する細長い直方体の形態で形成されている。
【0048】
ブロック本体12は上壁部14を有している。上壁部14は、長手方向軸Lに対して平行に延びる支持面16を形成している。支持面に沿って燃焼物は搬送されるようになっており、支持面は上壁部14の燃焼物側を定めている。支持面16の、スラスト方向Sで見て最も前側の端部は縁部19を形成している。縁部を介して、支持面16は、前壁部20によって形成されたスラスト面22に向かって下降している。上壁部14の、支持面とは反対の側、及び前壁部20の、スラスト面22とは反対の側は、ブロック本体12の冷却空気側を定める。
【0049】
図示の実施形態では、支持面は第1支持面領域16aと第2支持面領域16bとを有している。しかし第1支持面領域16aは第2支持面領域16bに対して上方へ向かってずらされて配置されており、そして斜め面取りされた移行部17を介して第2支持面領域16bと結合されている。
【0050】
前壁部20に対向する側に、ブロック本体12は後壁部24を有している。後壁部は少なくとも1つのフック26を備えている。フックによって火格子ブロック10をブロック保持管内へ掛け入れることができる。火格子ブロック10の、支持面16とは反対側の下側には、さらに中央ウェブ29が配置されている。
【0051】
側方では、火格子ブロック10はそれぞれ、長手方向Lに延びる側壁部28a,28bによって仕切られている。
【0052】
燃焼火格子内部では、火格子ブロック10は、スラスト方向Sで見て後続の火格子ブロック上に支持されている。このために、前壁部20の最も下側の領域はブロック34の形態で形成されている。ブロック34は、スラスト方向Sで隣接する火格子ブロックの支持面上に支持されるように規定されている。最も下側の領域は、このような領域によって形成された、スラスト面の下側支持縁部23を含めて、長手方向軸Lに対してほぼ直角に延びる平面E内に配置されている。
【0053】
さらに、火格子ブロック10は、上壁部14と前壁部20とが互いに当接する領域内で、厚肉化されて形成されている。具体的には、壁厚肉部40は縦断面で見て上壁部14の燃焼物側で湾曲して形成されている。
【0054】
壁厚肉部40によって形成された縁部19は、図示の実施形態では、長手方向軸Lに沿って且つスラスト方向Sで見て平面Eに対して前方にずらされている。縁部19と平面Eとの間隔Dは約25mmである。
【0055】
したがって、第2支持面領域16bは図示の実施形態では先ず実質的に1つの平面内で延びており、続いて下降して、スラスト方向Sで見て支持面16の最も前側の端部まで延びる湾曲領域内で延びている。
【0056】
支持面16の最も前側の端部によって形成された縁部19は、ここでは第2支持面領域16bの平面の下方に位置している。縁部19を介してスラスト面22が始まる。スラスト面は縁部19に対して先ず後方にずらされて延び、そして続いて平面E内に延びている。
【0057】
図2及び3から明らかなように、前壁部20は2つの第1空気供給口25を有している。第1空気供給口はそれぞれ、前壁部20を貫通して延びる第1空気供給通路27によって形成されている。ここでは、第1空気供給通路27は、前壁部20の、壁厚肉部40と平面Eとによって形成された凹部内に開口している。第1空気供給口25は図1では、壁厚肉部40の下方に位置しており、見ることができない。第1空気供給通路27を通して、一次空気が燃焼火格子もしくは燃焼火格子上の燃焼床に供給される。
【0058】
さらに、第1空気供給口25は長手方向軸Lに沿って且つスラスト方向Sで見て縁部19に対して、具体的に図示された実施形態では約12mmの間隔dだけ後方にずらされている。
【0059】
図2に示された火格子ブロック内では、第1空気供給通路27は縦断面で見て、スラスト面22のそれぞれの第1空気供給口と直接に境を接する領域に対して約110°の角度αを成して延びている。
【0060】
さらに、火格子ブロック12は、上壁部14内に貫通して延びる、壁厚肉部40内に配置された、第1空気供給通路27の方向に対して斜めに方向付けられた他の空気供給通路38を、上壁部14を冷却するために有している。他の空気供給通路38は他の空気供給口35を壁厚肉部40内に形成している。
【0061】
図示された実施形態では、2つの他の空気供給通路38から成る第1群が、支持面16に対して第1角度β1を成して延びる第1平面G1内に形成されている。さらに、2つの他の空気供給通路38から成る第2群が、支持面16に対して第2角度β2を成して延びる第2平面G2内に形成されている。第1角度β1は15°であり、そして第2角度β2は45°である。明確にするために、図2の角度β1及びβ2は長手方向軸Lに対して示されている。長手方向軸Lは支持面16に対して延びている。
【0062】
図3に示されているように、2つの第1空気供給通路27、及び2つの他の空気供給通路38から成る2つの群はそれぞれ対を成して、支持面に対して直角に延びる、火格子ブロック12の長手方向対称平面Pに対して対称的に分配されている。
【0063】
さらに、2つの第1空気供給通路27、及び2つの他の空気供給通路38から成る2つの群は、火格子ブロック12の内部に向かって見て、連続的に拡大して形成されているので、第1空気供給通路27、又は他の空気供給通路38内に入った燃焼残留物をより容易に導出することができ、ひいては空気供給の詰まりを回避することができる。第1空気供給通路27、及び他の空気供給通路38の直径は、火格子ブロック10内部に向いた端部では15mmであり、他方の端部では10mmである。
【0064】
運転中、火格子ブロック10はブロック保持管によって互いに相対運動させられる。ブロック保持管は定置の火格子ブロックに配属されているか又は可動の火格子ブロックに配属されているかに応じて、火格子ブロックは定置のコンソールに固定されているか、又は可動の火格子キャリッジ内に配置されたコンソールに配置されている。駆動は液圧シリンダによって行われる。液圧シリンダは、ローラが火格子キャリッジを、ローラを介して相応の走行面上で前進後退運動させる。
【0065】
これにより得られる相対運動によって、第1の火格子ブロック10の足部34は、それぞれ後続の火格子ブロック10の支持面16上を前進・後退させられる。燃焼物は、これが縁部19を介して後続の火格子ブロック10の支持面16へ投下される前に、支持面16上を搬送される。
【符号の説明】
【0066】
10 火格子ブロック
12 ブロック本体
14 上壁部
16 支持面
16a,16b 支持面領域
17 移行部
19 縁部
20 前壁部
22 スラスト面
23 下側支持縁部
24 後壁部
25 第1空気供給口
26 フック
27 第1空気供給通路
28a,28b 側壁部
29 中央ウェブ
34 ブロック
35 他の空気供給口
38 他の空気供給通路
40 壁厚肉部
L 長手方向軸
S スラスト方向
E 平面
P 縦断面
d 空気供給口が長手方向軸Lに沿って且つスラスト方向Sで見て縁部に対して後方にずらされている、その間隔
D 縁部が長手方向軸Lに沿って且つスラスト方向Sで見て平面Eに対して前方にずらされている、その間隔
α 角度
β1,β2 角度
図1
図2
図3
【国際調査報告】