(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】複数の送信チャネルおよび時間信号のプログレッシブ計算を有するOFDMレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20220826BHJP
G01S 7/35 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
H04L27/26 113
G01S7/35
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500556
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2020065470
(87)【国際公開番号】W WO2021004702
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】102019209968.8
(32)【優先日】2019-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】シンドラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ナブホルツ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ハシュ,ユルゲン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB10
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD05
5J070AH35
(57)【要約】
複数の送信チャネル(10)と、少なくとも1つの受信チャネル(12)とを有するOFDMレーダセンサ、およびそのようなOFDMレーダセンサの動作方法であって、この場合、少なくとも第1の送信チャネル(10.1)のためには、送信チャネル(10.1)ごとに、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボル(82)を含む信号形状が、プログレッシブに部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリ(18;20)が、信号形状の計算された各部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分はデジタル-アナログ変換されて送信され、信号形状のそれぞれの一部分は計算されて中間メモリの1つ(20)に格納され、その間に信号形状の先行する一部分は中間メモリの別の1つ(18)から既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル(10.1)で送信される、OFDMレーダセンサ、およびその動作方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信チャネル(10)と、少なくとも1つの受信チャネル(12)と、或る動作モードのために設計された制御および評価機構(16、34、38、40、42)とを有するOFDMレーダセンサであって、前記動作モードでは、複数の送信チャネル(10)がそれぞれの信号を送信し、それぞれの送信チャネル(10)の1つの信号が一連のOFDMシンボル(80)を含んでおり、かつ複数の送信チャネル(10)の信号が同時に送信され、
それぞれの送信チャネル(10)で送信されるOFDMシンボル(80)が、それぞれOFDMサブキャリア(90)を有しており、OFDMサブキャリア(90)が、複数の送信チャネル(10)のほかの送信チャネル(10)上で同時に送信されるOFDMシンボル(82、84)のOFDMサブキャリア(92、94)に対して直交しており、
少なくとも1つの受信チャネル(12)によって受信された受信信号に対し、受信信号の信号成分のスペクトル分離が行われ、その際、送信チャネル(10)上で同時に送信されたOFDMシンボル(80、82、84)内での、送信チャネル(10)へのOFDMサブキャリアの割り当てに対応した、信号成分へのOFDMサブキャリアの割り当てが行われ、かつ信号成分の評価が行われ、
OFDMレーダセンサが、少なくとも複数の送信チャネルの第1の送信チャネル(10.1)のためには、第1の送信チャネル(10.1)ごとに、送信チャネル(10.1)の送信すべき信号の信号形状の各部分のための複数の中間メモリ(18;20)を有しており、
前記動作モードでは、少なくとも第1の送信チャネル(10.1)のためには、送信チャネル(10.1)ごとに、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボル(82)を含む信号形状が、プログレッシブに一部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリ(18;20)が、信号形状の計算された一部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分がデジタル-アナログ変換されて送信され、
信号形状のそれぞれの一部分が計算されて中間メモリの1つ(20)に格納され、その間に信号形状の先行する一部分が中間メモリの別の1つ(18)から既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル(10.1)で送信されるOFDMレーダセンサ。
【請求項2】
複数の送信チャネル(10)の各々のために、送信チャネル(10)ごとに、送信チャネル(10)の送信すべき信号の信号形状の各部分のための複数の中間メモリ(18;20)を有しており、
前記動作モードでは、複数の送信チャネル(10)の各々のために、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボル(80)を含む信号形状が、プログレッシブに一部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリ(18;20)が、信号形状の計算された一部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分がデジタル-アナログ変換されて送信され、
信号形状のそれぞれの一部分が位相符号に基づいて計算され、位相符号が、信号の一連のOFDMシンボル(80)のそれぞれのOFDMシンボル(80)により、それぞれのOFDMサブキャリアに割り当てられており、
信号形状のそれぞれの一部分が計算されて中間メモリの1つ(20)に格納され、その間に信号形状の先行する一部分が中間メモリの別の1つ(18)から既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル(10)上で送信される、請求項1に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項3】
制御および評価機構(16、34、38、40、42)が、前記動作モードでは、前記第1の送信チャネル(10.1)のために、送信チャネル(10.1)の送信すべき信号の信号形状のそれぞれの一部分を、汎用信号の信号形状の対応する一部分から、または複数の送信チャネル(10)の少なくとも1つの第2の送信チャネル(10.2)のうちの1つの第2の送信チャネル(10.2)の1つの送信すべき信号の信号形状の対応する一部分から、OFDMサブキャリア間隔(Δf)のn倍に相当する周波数をもつ周期振動との乗算を使って計算するために設計されており、nはゼロではない整数であり、異なる第1の送信チャネル(10.1)に対して異なるnが使用される、請求項1に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項4】
少なくとも1つのOFDMシンボル(80)の少なくとも1つの信号形状が保存されるメモリ(60)を有しており、
前記動作モードでは、複数の送信チャネル(10)の少なくとも1つの第2の送信チャネル(10.2)に関し、それぞれの第2の送信チャネル(10.2)の信号の信号形状が複数の部分を含んでおり、複数の部分がそれぞれ少なくとも1つのOFDMシンボル(80)を含んでおり、かつ
前記複数の部分が提供されて、デジタル-アナログ変換されて、当該の第2の送信チャネル(10.2)で送信され、
これに関し、当該の第2の送信チャネル(10.2)の信号の信号形状の前記複数の部分のうちの各部分を提供するために、メモリ(60)内で保存された少なくとも1つの信号形状にアクセスされ、
第1の送信チャネル(10.1)のためには、それぞれの送信チャネル(10.1)の送信すべき信号の信号形状のそれぞれの部分が、複数の送信チャネル(10)の少なくとも1つの第2の送信チャネル(10.2)のうちの1つの第2の送信チャネル(10.2)の1つの送信すべき信号の信号形状に対応する部分から、OFDMサブキャリア間隔(Δf)のn倍に相当する周波数をもつ周期振動との乗算を使って計算され、nはゼロではない整数であり、異なる第1の送信チャネル(10.1)に対して異なるnが使用される、請求項3に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項5】
複数の送信チャネル(10)の少なくとも1つの第2の送信チャネル(10.2)のために、第2の送信チャネル(10.2)ごとに、送信チャネル(10.2)の送信すべき信号の信号形状の各部分のための複数の中間メモリ(18;20)を有しており、
前記動作モードでは、少なくとも1つの第2の送信チャネル(10.2)のために、送信チャネルごとに、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボル(80)を含む信号形状が、プログレッシブに一部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリ(18;20)が、信号形状の計算された一部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分がデジタル-アナログ変換されて送信され、
信号形状のそれぞれの一部分が計算されて中間メモリの1つ(20)に格納され、その間に信号形状の先行する一部分が中間メモリの別の1つ(18)から既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル(10.2)で送信され、
信号形状のそれぞれの一部分が位相符号に基づいて計算され、位相符号が、信号の一連のOFDMシンボル(80)のそれぞれのOFDMシンボル(80)により、それぞれのOFDMサブキャリア(90)に割り当てられており、かつ
第1の送信チャネル(10.1)のためには、それぞれの送信チャネルの送信すべき信号の信号形状のそれぞれの一部分が、複数の送信チャネルの少なくとも1つの第2の送信チャネルのうちの1つの第2の送信チャネル(10.2)の1つの送信すべき信号の信号形状に対応する一部分から、OFDMサブキャリア間隔(Δf)のn倍に相当する周波数をもつ周期振動との乗算を使って計算され、nはゼロではない整数であり、異なる第1の送信チャネル(10.1)に対して異なるnが使用される、請求項3に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項6】
制御および評価機構(16、34、38、40、42)が、前記動作モードでは、テーブルインデックス(I)に基づいてテーブルから振幅値(A)を読み出すことでそれぞれの周期振動の振幅値(A)を決定するように構成されており、テーブルインデックス(I)が位相角(s)に依存して決定され、位相角(s)が、振動の時間的に後の振幅値(A)のためにインクリメントされ、その際、異なる周波数の振動に対し、同じテーブルから振幅値(A)を読み出すための異なる位相増分(Δs)が使用される、請求項3から5のいずれか1項に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項7】
テーブルが、周期振動の4分の1周期しか含んでおらず、この場合、周期振動の第1または第2の半周期の第2の半分の振幅値(A)を読み出すには、テーブルインデックス(I)の逆の順番でテーブルにアクセスし、かつ周期振動の第2の半周期の振幅値(A)を読み出す際は、読み出された振幅値(A)の符号を逆にする、請求項6に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項8】
乗算が、複素数値調和振動との乗算として計算されている、請求項3から7のいずれか1項に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項9】
前記動作モードでは、複数の送信チャネルのそれぞれの送信チャネル(10)の信号のそれぞれのOFDMシンボル(80)が、非占有OFDMサブキャリアを有しており、
その際、送信チャネルのそれぞれの信号のそれぞれのOFDMシンボル(80)内での占有OFDMサブキャリア(90)が、OFDMサブキャリアスペクトル内で、同時に送信されるそれぞれほかの送信チャネル(10)の信号のOFDMシンボル(82;84)の占有OFDMサブキャリア(92;94)とインターリーブに配置されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項10】
デジタル-アナログ変換および/またはデジタル-アナログ変換のための信号の信号形状の一部分の読出が、クロック信号(23)によって制御され、このクロック信号(23)が、制御および評価機構(16、34、38、40、42)による、送信チャネルの信号のそれぞれの信号形状の計算または提供を制御するクロック信号(17)とは異なる、請求項1から9のいずれか1項に記載のOFDMレーダセンサ。
【請求項11】
複数の送信チャネル(10)と、少なくとも1つの受信チャネル(12)とを有するOFDMレーダセンサの動作方法であって、OFDMレーダセンサが、少なくとも複数の送信チャネルの第1の送信チャネル(10.1)のためには、第1の送信チャネル(10.1)ごとに、送信チャネル(10.1)の送信すべき信号の信号形状の各部分のための複数の中間メモリ(18;20)を有しており、
複数の送信チャネル(10)でそれぞれの信号を送信し、それぞれの送信チャネル(10)の1つの信号が一連のOFDMシンボル(80)を含んでおり、かつ複数の送信チャネル(10)の信号が同時に送信され、それぞれの送信チャネル(10)で送信されるOFDMシンボル(80)が、それぞれOFDMサブキャリア(90)を有しており、OFDMサブキャリア(90)が、複数の送信チャネル(10)のほかの送信チャネル(10)で同時に送信されるOFDMシンボル(82;84)のOFDMサブキャリア(92;94)に対して直交しているステップと、
少なくとも1つの受信チャネル(12)で受信信号を受信するステップと、
受信信号の信号成分をスペクトル分離し、その際、送信チャネル(10)で同時に送信されたOFDMシンボル(80;82;84)内での、送信チャネル(10)へのOFDMサブキャリアの割り当てに対応した、信号成分へのOFDMサブキャリアの割り当てが行われるステップと、
信号成分を評価するステップとを含み、
少なくとも第1の送信チャネル(10.1)のためには、送信チャネルごとに、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボル(82)を含む信号形状が、プログレッシブに一部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリ(18;20)が、信号形状の計算された一部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分がデジタル-アナログ変換されて送信され、
信号形状のそれぞれの一部分が計算されて中間メモリの1つ(20)に格納され、その間に信号形状の先行する一部分が中間メモリの別の1つ(18)から既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル(10.1)で送信される動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の送信チャネルおよび少なくとも1つの受信チャネルを有するOFDMレーダセンサに関する。さらに、本発明はそのようなOFDMレーダセンサの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDM(直交周波数分割多重)方法は、複数のキャリア周波数を用いたデジタル変調方法である。将来的に、OFDM方法はレーダシステムにとっての重要性を増すであろう。OFDM方法では、1つの周波数帯域が、それぞれのサブキャリアまたはsub-carrierの複数の直交するサブ帯域に分割され、かつOFDMシンボルがシーケンシャルに相次いで送信される。1つのOFDMシンボルの送信される信号は、このシンボルの変調方式に基づいて変調された互いに直交するサブキャリア信号(sub-carrier signal)から構成されており、これらのサブキャリア信号は、OFDMシンボル期間内に同時に送信される。このためにサブキャリア周波数は、周波数スペクトル内で、1つのサブキャリアの最大値がほかのサブキャリアのゼロ点上にあるように選択される。
【0003】
受信された信号では、OFDMシンボルの伝播時間に基づいてレーダオブジェクトの距離が推定でき、その一方で、ドップラー効果からもたらされる一連のOFDMシンボルにわたっての位相推移に基づいて速度推定が行われ得る。複数のレーダオブジェクトは、送信されたOFDM信号の、遅延およびドップラー偏移したエコーの和を生じさせる。シンボル期間の前のサイクルプレフィックス(Prefix)により、異なる伝播時間をもつ重なり合うレーダエコーが、後ろのOFDMシンボルのレーダエコーから分離され得る。
【0004】
米国特許出願公開第2016/0356885号明細書および独国特許出願公開第102015210454号明細書は、少なくとも2つの送信アンテナを備えたレーダ装置の動作方法を説明しており、この動作方法では、OFDMサブキャリアが、重ならずにおよび実質的に等距離でなく送信スペクトルに分割され、これらの送信スペクトルが送信アンテナによって同時に送信され、その際、各送信スペクトルが、少なくとも2つの直接隣接するOFDMサブキャリアを有する。送信スペクトルは、互いに対して等距離で直交しているOFDMサブキャリアの複素変調によって生成される。1つの受信信号から、送信スペクトルごとに1つの受信スペクトルが生成され、その際、OFDMサブキャリアの分割は、OFDMサブキャリアの送信スペクトルへの分割に対応して実施される。受信スペクトルから、送信スペクトルの送信された信号形状が除去され、かつ受信スペクトルごとに1つのレーダ画像が生成され、このレーダ画像が、間隔次元および速度次元で評価される。一例では、OFDMサブキャリアに対応する256本の等距離の周波数線が、2つの等距離でない部分スペクトルに疑似ランダムに分割される。
【0005】
「Stepped-Carrier OFDM-Radar Processing Scheme to Retrieve High-Resolution Range-Velocity Profile at Low Sampling Rate(低サンプリング速度での高分解能レンジ速度プロファイルを検索するためのステップキャリアOFDMレーダ処理方式)」、B.Schweizer、C.Knill、D.Schindler、C.Waldschmidt、IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES(マイクロ波の理論と技術に関するIEEEトランザクション)、VOL.66、NO.3、2018年3月、1610~1618頁は、ステップOFDMレーダ信号のための処理方法を説明している。各OFDMシンボルがサブシンボルに分割され、これらのサブシンボルは、ベースバンドの帯域幅を減らすため、それぞれ1ステップ高いキャリア周波数で送信される。ステップごとに送信されるサブシンボルに必要な、受信される信号の位相補正は、修正DFT(デジタルフーリエ変換)に組み込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、複数の送信チャネルの信号を生成するためのメモリコストおよび/もしくは計算コストが減少しているか、または送信チャネルの数の増加を、メモリコストを同程度に上昇させずに可能にするOFDMレーダセンサならびにそのようなOFDMレーダセンサの動作方法を提供することである。
【0007】
従来のOFDMレーダ方法では、個々の送信チャネルのそれぞれの時間信号は、それぞれのOFDMシンボルの、複素振幅によって変調されたOFDMサブキャリアから、逆フーリエ変換、とりわけIFFT(逆高速フーリエ変換)によって生成される。したがって時間信号のために必要なメモリは、送信チャネルの数と共に増加する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明により、複数の送信チャネルと、少なくとも1つの受信チャネルと、或る動作方式のために設計された制御および評価機構とを有するOFDMレーダセンサであって、この動作方式では、複数の送信チャネルがそれぞれの信号を送信し、それぞれの送信チャネルの1つの信号が一連のOFDMシンボルを含んでおり、かつ複数の送信チャネルの信号が同時に送信され、 それぞれの送信チャネル上で送信されるOFDMシンボルは、それぞれOFDMサブキャリアを有しており、これらのOFDMサブキャリアは、複数の送信チャネルのほかの送信チャネル上で同時に送信されるOFDMシンボルのOFDMサブキャリアに対して直交しており、
少なくとも1つの受信チャネルによって受信された受信信号に対し、この受信信号の信号成分のスペクトル分離が行われ、その際、送信チャネル上で同時に送信されたOFDMシンボル内での、送信チャネルへのOFDMサブキャリアの分割に対応した、信号成分へのOFDMサブキャリアの分割が行われ、かつ信号成分の評価が行われ、
OFDMレーダセンサは、少なくとも複数の送信チャネルの第1の送信チャネルのためには、第1の送信チャネルごとに、送信チャネルの送信すべき信号の信号形状の一部分のための複数の中間メモリを有しており、
上記動作方式では、少なくとも第1の送信チャネルのためには、送信チャネルごとに、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボルを含む信号形状が、プログレッシブに一部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリが、信号形状の計算された一部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分はデジタル-アナログ変換されて送信され、
信号形状のそれぞれの一部分は計算されて中間メモリの1つに格納され、その間に信号形状の先行する一部分は中間メモリの別の1つから既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル上で送信されるOFDMレーダセンサによって解決される。
【0009】
こうすることで、それぞれの送信チャネルのために、そのサブキャリアがほかの送信チャネルのシンボルのサブキャリアに対して直交するシンボルを使用でき、その一方で、少なくとも第1の送信チャネルのためには、一連のOFDMシンボル全体の信号形状の一部分のための中間メモリしか必要とされない。第1の送信チャネルの数は、少なくとも1(一つ)である。第1の送信チャネルの数は、例えば送信チャネルの数より小さくできる。
【0010】
信号形状とは時間信号のことであり、つまり1つの信号またはその一部分の、例えば1つのOFDMシンボルの時間的推移を表現する信号形状のことである。送信すべき信号の信号形状のプログレッシブ計算とは、時間信号の、つまり信号の時間的推移を表現する信号形状の一部分が、プログレッシブに相次いで(一つ一つ)生成されるということである。各一部分が、送信チャネルの信号の一連のOFDMシンボルの1つまたは複数のOFDMシンボルを含むことが好ましい。各中間メモリが、1つの一部分に対応する大きさを有することが好ましく、1つまたは2つのOFDMシンボルに対応する大きさを有することが好ましい。
【0011】
したがって、送信信号の信号形状の一部分のデジタル-アナログ変換のためのプログレッシブな格納および読出のために、それぞれの中間メモリが繰り返し、デジタル-アナログ変換のための格納および読出に使用される。例えば2つの中間メモリを交互に使用でき、または2つより多い中間メモリを循環的に使用できる。
【0012】
計算がプログレッシブに一部分ごとに行われることで、1つの第1の送信チャネルの一連のOFDMシンボル全体のために、信号形状全体のための対応のメモリを用意する必要がない。したがって第1の送信チャネルの数を増やすことが、その際に必要なメモリが大きく増えることなく可能である。送信チャネルごとに少なくとも2つの中間メモリを使用することは、1つのデジタル-アナログ変換器が、読み出してアナログ信号に直接変換するために1つの中間メモリにアクセスできる一方で、別の1つの中間メモリが、この信号の継目なく続く次の一部分のために書き込まれ得ることを可能にする。複数の中間メモリは、1つのメモリのそれぞれのメモリ領域であってよい。
【0013】
したがって信号形状に含まれる1つのOFDMシンボルとは、とりわけ、一連のOFDMシンボルの1つの期間の1つの信号形状のことであり、この信号形状は、時間領域に変換された1つのOFDMシンボルのシンボルスペクトルを含んでいる。シンボルスペクトルは、占有OFDMサブキャリアと、そのそれぞれの複素位相とによって定義されている。それぞれのOFDMシンボルのために、信号に対応する信号区間が、例えばOFDMシンボルの位相符号に基づいて計算され得る。その際、それぞれのシンボルスペクトルは、互いに対して直交するOFDMサブキャリアの複素位相符号による複素変調によって生成される。それぞれのシンボルスペクトルは時間領域へと例えばIFFTを使って変換され、それにより信号形状に対応する区間が得られる。したがって信号形状のそれぞれの一部分は、これらの区間の1つまたは複数を含んでおり、これらの区間はそれぞれ1つのOFDMシンボルに対応する。
【0014】
DA変換器(デジタル-アナログ変換器)によるデジタル-アナログ変換は、読み出すべき中間メモリから直接的に行われ得る。その代わりにDA変換器は、読み出すべき中間メモリからロードされる自前のバッファメモリを有し得る。
【0015】
それぞれの送信チャネルの信号を送信するために、デジタル-アナログ変換された信号の高周波変調が、とりわけ局部発振器のレーダ周波数で行われる。HF変調された信号の送信は、送信チャネルのそれぞれの送信アンテナを介して行われる。
【0016】
受信チャネル内では、受信された受信信号が復調されてデジタル化され、つまりアナログ-デジタル変換される。それぞれの送信チャネルの送信信号の前述の構造に基づき、つまり同時に送信されるOFDMシンボルのOFDMサブキャリアが送信チャネルへ分割されているということに基づき、レーダオブジェクトによって反射されて受信された信号内では、各OFDMサブキャリア周波数に関し、それが発せられた当該の送信チャネルへの割当てが行われ得る。それに応じて受信信号の信号成分のスペクトル分離が行われ、その際、OFDMサブキャリアの信号成分への分割は、送信された信号内でのOFDMサブキャリアの送信チャネルへの分割に対応して行われる。
【0017】
信号成分の各々に対し、対応する送信されたOFDMシンボルの除去が、とりわけ、送信されたOFDMシンボルによる、受信された信号成分の複素スペクトル分割によって行われる。これは、受信された信号成分の正規化とも呼ばれ得る。送信されたOFDMシンボルの除去によって得られたチャネル情報は、この場合、信号の伝播時間および場合によってはあり得る位相偏移についての情報を含んでおり、さらに、間隔情報および速度情報ならびに角度情報の取得のために評価され得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態および変形形態は従属請求項から明らかである。
本発明の第1の変形形態によれば、OFDMレーダセンサが、複数の送信チャネルの各々のために、送信チャネルごとに、送信チャネルの送信すべき信号の信号形状の一部分のための複数の中間メモリを有しており、
上記動作方式では、複数の送信チャネルの各々のために、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボルを含む信号形状が、プログレッシブに一部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリが、信号形状の計算された一部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分はデジタル-アナログ変換されて送信され、
信号形状のそれぞれの一部分は位相符号に基づいて計算され、位相符号は、信号の一連のOFDMシンボルのそれぞれのOFDMシンボルにより、それぞれのOFDMサブキャリアに割り当てられており、
信号形状のそれぞれの一部分は計算されて中間メモリの1つに格納され、その間に信号形状の先行する一部分は中間メモリの別の1つから既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル上で送信される。
【0019】
こうすることで、送信チャネルの時間信号を全体的に「live」で計算でき、これによりメモリ要求量が最小限に抑えられる。
【0020】
本発明の別の一変形形態によれば、制御および評価機構が、上記動作方式では、第1の送信チャネルのために、送信チャネルの送信すべき信号の信号形状のそれぞれの一部分を、汎用信号の信号形状に対応する一部分から、または複数の送信チャネルの少なくとも1つの第2の送信チャネルのうちの1つの第2の送信チャネルの1つの送信すべき信号の信号形状に対応する一部分から、OFDMサブキャリア間隔のn倍に相当する周波数をもつ周期振動との乗算を使って計算するために設計されており、これに関し、nはゼロではない整数であり、異なる第1の送信チャネルに対して異なるnが使用される。(最小の)OFDMサブキャリア間隔は、使用されるOFDM方式によって設定されている。
【0021】
こうすることで、第1の送信チャネルの信号形状のそれぞれ計算すべき一部分が、特に簡単かつ効率的に、第2の送信チャネルの信号形状に対応する一部分からまたは汎用信号の信号形状の一部分から、とりわけ汎用信号形状から計算され得る。その際に有利なのは、それぞれの送信チャネルのOFDMシンボルの位相符号の選択が自由に選択され得ることが活用されることである。言い換えれば、OFDMサブキャリア上に変調される位相符号が任意に選択され得る。これにより、第1の送信チャネルの信号形状の一部分が、第2の送信チャネルまたは汎用信号の信号形状に対応する一部分から、上記の周期振動との乗算によって計算される場合、OFDMシンボルのそれぞれのサブキャリアが、同時に送信されるほかのOFDMシンボルのサブキャリアに対して直交していることという意味で、第1の送信チャネルのそのように計算されたOFDMシンボルが、第2の送信チャネルまたはほかの第1の送信チャネルの同時に送信されるOFDMシンボルに対し直交していることは、振動の周波数の適切な選択により、つまりnの適切な選択により保証される。
【0022】
周期振動との単純乗算の実施は、OFDMサブキャリアの複素変調および時間領域への変換による信号形状の個別の計算に比べて計算コストのかなりの節減を意味する。加えて一部分ごとのプログレッシブ計算により、メモリが大幅に節減される。すなわち、第1の送信チャネルごとに、信号形状の一部分の計算のために、第2の送信チャネルのまたは汎用信号の信号形状に対応する一部分がメモリから読み出され、例えば第2の送信チャネルの信号の信号形状の一部分のための対応の中間メモリから読み出され、読み出された一部分が、時間領域で上記の周期振動を乗算され、かつ当該の第1の送信チャネルの信号の信号形状の計算された一部分として対応の中間メモリに格納される。
【0023】
乗算する周期振動が調和振動であることが好ましい。この調和振動とは、実数の正弦状の振動(それぞれの振幅をもつ正弦および余弦から成る線形結合を含む)であるか、または正弦状の実数部および正弦状の虚数部をもつ複素数値振動のことである(例えば表記Z exp(iωt)に対応し、ここでZは複素振幅、ωは角周波数、ω=2πf)。
【0024】
一実施形態によれば、OFDMレーダセンサが、少なくとも1つのOFDMシンボルの少なくとも1つの信号形状が保存されるメモリを有しており、
上記動作方式では、複数の送信チャネルの少なくとも1つの第2の送信チャネルに関し、それぞれの第2の送信チャネルの信号の信号形状は複数の一部分を含んでおり、複数の一部分はそれぞれ少なくとも1つのOFDMシンボルを含んでおり、かつ
一部分が提供されて、デジタル-アナログ変換されて、当該の第2の送信チャネル上で送信され、
これに関し、当該の第2の送信チャネルの信号の信号形状の上記一部分のうちの各一部分を提供するために、メモリ内で保存された少なくとも1つの信号形状にアクセスされる。この場合、信号配列の上記一部分は、デジタル-アナログ変換および送信のために提供される。
【0025】
第1の送信チャネルのためには、それぞれの送信チャネルの送信すべき信号の信号形状のそれぞれの一部分は、複数の送信チャネルの少なくとも1つの第2の送信チャネルのうちの1つの第2の送信チャネルの1つの送信すべき信号の信号形状に対応する一部分から、OFDMサブキャリア間隔のn倍に相当する周波数をもつ周期振動との乗算を使って計算されることが好ましく、これに関し、nはゼロではない整数であり、異なる第1の送信チャネルに対して異なるnが使用される。
【0026】
こうすることで、1つまたは複数の第2の送信チャネルのためにしか、一連のOFDMシンボル内で使用されるOFDMシンボルの信号形状のための、または一連のOFDMシンボル全体に対応する信号形状のためのメモリが必要ない。こうすることで、必要な計算能力を最小限に抑えることができ、その一方でそれにもかかわらず、1つの第2の送信チャネルの送信信号に対応する一部分からの、第1の送信チャネルの送信信号の一部分の計算により、第1の送信チャネルのためのメモリ要求量が最小限に抑えられ得る。例えば、当該の第2の送信チャネルの信号形状のすべての一部分のデジタル-アナログ変換および送信の間、メモリ内で保存された少なくとも1つのOFDMシンボルの信号形状は、メモリ内で維持される。
【0027】
例えば、一連のOFDMシンボルを含む、第2の送信チャネルの信号の信号形状が全体的に、メモリ内で保存され得る。しかしながら第2の送信チャネルの信号の信号形状が、メモリ内で保存された少なくとも1つのOFDMシンボルの信号形状から編成されてもよい。したがって、第2の送信チャネルの信号の信号形状の提供および送信の間、メモリ内容を変える必要がない。
【0028】
メモリは、例えば読み出し専用メモリであり得る。その代わりに上記動作方式では、例えば、1つの第2の送信チャネルの1つの信号全体の信号形状を計算してメモリに格納することができ、その際、それぞれのOFDMシンボルに対する信号形状は位相符号に基づいて計算され、位相符号は、それぞれのOFDMシンボルにより、それぞれのOFDMサブキャリアに割り当てられている。
【0029】
一実施形態によれば、OFDMレーダセンサが、複数の送信チャネルの少なくとも1つの第2の送信チャネルのために、第2の送信チャネルごとに、送信チャネルの送信すべき信号の信号形状の一部分のための複数の中間メモリを有しており、
上記動作方式では、少なくとも1つの第2の送信チャネルのために、送信チャネルごとに、送信すべき信号の、当該の一連のOFDMシンボルを含む信号形状が、プログレッシブに一部分ごとに計算され、その際、複数の中間メモリが、信号形状の計算された一部分の格納のために、および信号形状のその前に計算されて格納された先行する一部分の読出のために交替制で使用され、先行する一部分はデジタル-アナログ変換されて送信され、
信号形状のそれぞれの一部分は計算されて中間メモリの1つに格納され、その間に信号形状の先行する一部分は中間メモリの別の1つから既に読み出されており、デジタル-アナログ変換されて当該の送信チャネル上で送信され、
信号形状のそれぞれの一部分は位相符号に基づいて計算され、位相符号は、信号の一連のOFDMシンボルのそれぞれのOFDMシンボルにより、それぞれのOFDMサブキャリアに割り当てられている。
【0030】
第1の送信チャネルのためには、それぞれの送信チャネルの送信すべき信号の信号形状のそれぞれの一部分は、複数の送信チャネルの少なくとも1つの第2の送信チャネルのうちの1つの第2の送信チャネルの1つの送信すべき信号の信号形状に対応する一部分から、OFDMサブキャリア間隔のn倍に相当する周波数をもつ周期振動との乗算を使って計算されることが好ましく、これに関し、nはゼロではない整数であり、異なる第1の送信チャネルに対して異なるnが使用される。
【0031】
こうすることで、1つまたは複数の第2の送信チャネルのためにも、時間信号のためのメモリが中間メモリの形態でしか必要とされない。第2の送信チャネルの信号形状のそれぞれの一部分から、上記の周期振動との乗算により、当該の第1の送信チャネルの信号形状に対応する一部分が生成され得る。
【0032】
1つまたは複数の実施形態によれば、制御および評価機構が、上記動作方式では、テーブルインデックスに基づいてテーブルから振幅値を読み出すことでそれぞれの周期振動の振幅値を決定するために設計されており、テーブルインデックスは位相角に依存して決定され、位相角は、振動の時間的に後の振幅値のためにインクリメントされることが好ましく、その際、異なる周波数の振動に対し、同じテーブルから振幅値を読み出すための異なる位相増分が使用される。次第に増大するテーブルインデックスは、次第に増大する位相角に対応する。
【0033】
こうすることで、周期振動のそれぞれ必要な値を簡単にテーブルから読み出すことができ、これにより計算時間が節減される。とりわけ、それぞれの第1の送信チャネルのために使用される周期振動の異なる周波数のために同じテーブルが使用され得る。したがって、使用される最小の周波数のための1つのテーブルしか必要ない。
【0034】
すなわち位相角が位相増分でインクリメントされ、かつ位相角の新たな値からテーブルインデックスが計算される。この位相角の推移は、360°に相当する周期性で周期的であることが好ましい。例えば、インクリメントすることがモジュロ演算を含み得る。
テーブルが、周期振動の4分の1周期しか含んでいないことが特に好ましく、この場合、周期振動の第1または第2の半周期の第2の半分の振幅値を読み出すには、テーブルインデックスの逆の順番でテーブルにアクセスし、かつ周期振動の第2の半周期の振幅値を読み出す際は、読み出された振幅値の符号を逆にする。
【0035】
こうすることで、振動の全周期の推移のメモリに比べてテーブルの規模が4分の1に減らされ得る。周期振動の第1の半波の最初の半分の振幅値の読出は、直接的にテーブルから行われる。
【0036】
乗算が、複素数値調和振動との乗算として計算されることが好ましい。例えば、送信チャネル数がN個で、1つの第2の送信チャネルN-1の1つのOFDMシンボルが、2つの占有サブキャリアの間に非占有サブキャリアを内包する場合、時間領域で、n=1、...、N-1を乗算したサブキャリア間隔に対応する周波数をもつ複素調和振動との単純乗算により、1つの直交するシンボルが、N-1個の第1の送信チャネルによって生成され得る。
【0037】
OFDMレーダセンサが、複数の送信チャネルの送信チャネルごとに1つの単側波帯ミキサを有することが好ましく、この場合、信号形状の一部分のデジタル-アナログ変換は、信号形状のこの一部分の実数部のデジタル-アナログ変換および信号形状のこの一部分の虚数部のデジタル-アナログ変換を含み、かつ信号形状のこの一部分の送信は、送信チャネルの単側波帯ミキサによる、信号形状のこの一部分の実数部および虚数部と、局部発振器の(レーダ周波数の)レーダ信号との混合を含む。
【0038】
こうすることで、複素調和振動との乗算により、信号形状の当該の一部分の実際の周波数偏移が、HF変調された送信信号内で第2の側波帯が生成されることなく行われ得る。
【0039】
上記動作方式では、複数の送信チャネルのそれぞれの送信チャネルの信号のそれぞれのOFDMシンボルが、非占有OFDMサブキャリアを有することが好ましく、その際、送信チャネルのそれぞれの信号のそれぞれのOFDMシンボル内での占有OFDMサブキャリアは、OFDMサブキャリアスペクトル内で、同時に送信されるそれぞれほかの送信チャネルの信号のOFDMシンボルの占有OFDMサブキャリアとインターリーブに配置されている。インターリーブ配置は、とりわけ、送信チャネルのそれぞれの信号のそれぞれのOFDMシンボル内での占有OFDMサブキャリアが、同時に送信されるそれぞれほかの送信チャネルの信号のOFDMシンボル内では非占有であることを意味する。
【0040】
こうすることで、幾つもの送信チャネルが、それぞれの重なっている周波数範囲全体を使用し、その際、それぞれの送信チャネルの周波数は、ほかの送信チャネルの周波数ギャップ内に配置されている。とりわけ、すべての送信チャネルの信号が、同時に送信されるOFDMシンボルの占有OFDMサブキャリアの同等のスペクトル分布を有しており、したがってレーダ信号特性が非常に似ている。こうすることでさらに、第1の送信チャネルのための信号が、簡単かつ効率的に、1つの第2の送信チャネルの1つの信号から、周期振動との上記の乗算によって計算され得る。
【0041】
各OFDMシンボルが、隣接する占有OFDMサブキャリア群の間に、群の内容量を乗算した残りの送信チャネル数に対応する非占有OFDMサブキャリア数を有することが好ましい。例えば3つの送信チャネルの場合、占有OFDMサブキャリア2つの群と、非占有OFDMサブキャリア4つのギャップとが交互に入れ代わり得る(2つの残りの送信チャネル×群の内容量2)。
【0042】
デジタル-アナログ変換および/またはデジタル-アナログ変換のための信号の信号形状の一部分の読出が、クロック信号によって制御され、このクロック信号が、制御および評価機構による、送信チャネルの信号のそれぞれの信号形状の計算または提供を制御するクロック信号とは異なることが好ましい。特に好ましいのは、デジタル-アナログ変換および/またはデジタル-アナログ変換のための信号の信号形状の一部分の読出が、クロック信号によって制御され、このクロック信号が、制御および評価機構による、1つの第1の送信チャネルの信号のそれぞれの信号形状の計算を制御するクロック信号とは異なることである。つまり、デジタル-アナログ変換器のクロック信号は、とりわけ1つの第1の送信チャネルのそれぞれの信号形状の計算の際に制御および評価機構の動作を制御するクロック信号とは異なる。これは中間メモリによって可能にされる。
【0043】
さらに、請求項11に記載の方法によって課題が解決される。この方法は、前述のようなまたはほかの請求項の1つに提示されているようなOFDMレーダセンサの動作方法であることが好ましい。
【0044】
以下に、例示的実施形態を図面に基づいてより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図2】信号形状の計算の1つの方法の概略図である。
【
図4】信号形状の計算のさらなる一形態の概略図である。
【
図5】複数の送信チャネルのOFDMシンボル内の占有サブキャリアの概略図である。
【
図6】
図6.1は保存されたテーブルの振幅値の概略図である。
図6.2は保存されたテーブルの振幅値の概略図である。
図6.3は保存されたテーブルの振幅値の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、例えば4つの送信チャネル10と、例えば1つの受信チャネル12とを有するOFDMレーダセンサの原理回路図を示している。送信チャネル10はそれぞれ1つの送信アンテナ14を含んでいる。クロック信号17によって制御される制御および評価機構の第1の機構16は、個々の送信チャネル10のために、送信信号のそれぞれの信号形状を計算する。信号形状は、例えばプログレッシブに一部分ごとに計算される。送信チャネル10ごとに、信号形状の計算された一部分のための2つ以上の中間メモリ18、20が設けられており、この中間メモリ18、20に交替制で、第1の機構16により送信信号の信号形状の計算された一部分が格納される。
【0047】
クロック信号23によって制御されるデジタル-アナログ変換器22は、中間メモリ18、20に交替制でアクセスし、かつ信号形状の当該の読み出された一部分からアナログ信号を生成する。アナログ信号は変調器24によって高周波変調され、かつ送信アンテナ14によって放射される。放射された送信信号は、1つまたは複数のレーダオブジェクト26によって反射され、受信アンテナ28によって受信され、変調器30によって高周波復調され、かつ受信チャネル12内でアナログ-デジタル変換器32によってデジタル化される。
【0048】
個々の送信チャネル10の送信信号はそれぞれ、一連のOFDMシンボルに対応する信号形状を有する。この場合、異なる送信チャネル10上で同時に送信されるOFDMシンボルに関し、1つの送信チャネルの1つのOFDMシンボルの占有OFDMサブキャリアは、同時に送信されるほかの送信チャネルのOFDMシンボル内での占有OFDMサブキャリアに対して直交している。
【0049】
受信チャネル12内では次に、変換機構34による例えばFFTを使った周波数領域への変換が行われる。周波数領域では、得られたスペクトルに内包されており、送信チャネル10のOFDMサブキャリアの周波数に対応している周波数が、この内包されているOFDMサブキャリア周波数の、それぞれの送信チャネル10内での占有OFDMサブキャリアへの割当てに対応して、受信ブランチ36へ分割される。したがって、それぞれの受信ブランチ36内でさらに処理される信号成分は、送信チャネル10の1つの割り当てられた送信チャネル10に対応する。
【0050】
各受信ブランチ36内では、OFDM復調器38により、信号成分のOFDM復調が行われる。これによって得られたチャネル情報は、制御および評価ユニットのそれぞれの検出機構40によってさらに評価され、例えばレーダオブジェクト26の速度および/または間隔が検出される。制御および評価機構のさらなる機構42は、検出機構40によって得られた個々の受信ブランチ36のオブジェクト検出を評価する。
【0051】
図2は、例えば本発明の一実施形態において制御および評価機構の第1の機構16によって実施され得るような、送信チャネル10の送信信号の信号形状の計算の第1の形態を示している。この例では、第1の機構16は、各送信チャネル10のための位相符号メモリ50を含んでいる。1つの送信チャネル10の位相符号メモリ50は、例えば、1つの送信チャネルの1つのOFDMシンボルのために、このOFDMシンボルの占有されるべき各OFDMサブキャリアに対して1つの位相符号を保存する。位相符号として、例えば2ビットのQPSK(四位相偏移変調)符号が使用され得る。1つのOFDMシンボルの占有OFDMサブキャリア数は、例えば512であり得る。したがって、1つの送信チャネルのOFDMシンボルごとに、位相符号メモリ50は512×2ビットを含んでいる。
【0052】
保存された位相符号を用いた、それぞれの送信チャネルのために占有されるべきOFDMサブキャリアの複素変調により、OFDMシンボルの時間領域への例えばIFFT52を使った変換の実施の際に、幾つもの送信チャネル10の同時に送信されるOFDMシンボルの信号形状が、これらの送信チャネルに対して並列に計算される。1つのOFDMシンボルの各信号形状は、当該の送信チャネル上で送信すべき一連のOFDMシンボルの一部分である。1つのOFDMシンボルのそれぞれ計算された信号形状は、例えば中間メモリ18、20の1つに格納され、その間にデジタル-アナログ変換器22により中間メモリ18、20の別の1つから、その前に計算された先行するOFDMシンボルの信号形状が読み出されて変換される。
図2では、周波数領域54で実施される演算および時間領域56で実施される演算が、破線で示した領域54、56によって表されている。
【0053】
図示した計算は、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)内で実装され得る。ここで述べた計算は、動作中に、OFDMシンボルのための保存された位相符号に基づいて実施されるので、この計算は特に少ないメモリ要求量を特色とする。
【0054】
図3は、例えば一実施形態において制御および評価機構の第1の機構16によって実施され得るような、送信すべき信号の信号形状の計算の第2の形態を示している。この例では、OFDMレーダセンサが、1つまたは複数のOFDMシンボルに対応する時間信号(信号形状)が保存された時間信号メモリ60を含んでいる。時間信号メモリ60は、例えば1つのOFDMシンボルのために、2048のサンプル数を例えば16ビットの分解能で含み得る。
【0055】
これを基に、第1の送信チャネル10.1のために、複素調和振動exp(i2πnΔft)との乗算により、1つの送信信号に対応する一部分が生成される。その際、最も単純な場合にはΔfは使用したOFDM符号化のサブキャリア間の間隔であり、nはそれぞれの第1の送信チャネルの番号(n=1、...、3)であり、tは時間である。乗算は、第1の送信チャネル10.1内でそれぞれデジタルミキサ62によって実施される。複素信号形状と、実数部および虚数部を別々に変換するデジタル-アナログ変換器22(I/Q成分の変換に対応)とを使用することにより、簡単な計算で、実際の周波数偏移が達成され得る。
【0056】
第2の送信チャネル10.2のためには、時間信号メモリ60から読み出された時間信号が直接的に時間信号として、つまりミキサ62による乗算なしで提供される。
【0057】
この実施形態は、低い計算能力しか必要としないという利点を有する。時間信号メモリ60内で保存された信号に基づく計算は、
図3で破線で示しているように時間領域66で行われる。
【0058】
図4は、例えば一実施形態において制御および評価機構の第1の機構16内で実施され得るような、計算の第3の形態を示している。この例では、OFDMレーダセンサが、1つまたは複数のOFDMシンボルのための位相符号を保存する位相符号メモリ70を含んでいる。このOFDMシンボルは、汎用OFDMシンボルまたは第2の送信チャネル10.2のためのOFDMシンボルであり得る。例えば、
図2の形態に対応して、位相符号メモリ70内で保存された1つのOFDMシンボルの位相符号から、変換ユニット72により、位相符号に基づく位相変調を有するOFDMサブキャリアの変換を使って、第2の送信チャネル10.2のための時間信号が計算される。これは、
図2の形態の送信信号の計算に対応する。
【0059】
第1の送信チャネル10.1のためには、ミキサ74により、
図3の形態での乗算に対応する複素調和振動との乗算によって対応の時間信号が計算される。その際、n番目の第1の送信チャネル10.1には、周波数nΔfをもつ複素調和振動が使用される。
図4でもまた、計算のどの部分が周波数領域76で、どの部分が時間領域78で行われるかが表されている。
【0060】
したがってこの例では、第1および第2の形態の計算方法が有利に組み合わされており、これにより送信および評価ユニットの所望の設計が、その計算能力および必要なメモリに関して最適化され得る。
【0061】
図5は、上述の実施形態で規定され得るような、同時に送信される異なる送信チャネル10のOFDMシンボル80、82、84内のOFDMサブキャリアの占有に関する一例を概略的に示している。図の簡略化のため、1つの第2の送信チャネル10.2および2つの第1の送信チャネル10.1(n=1、n=2)を有する一例が示されている。異なる送信チャネル10.2、10.1の異なるOFDMシンボル80、82、84が、
図5では上下に配置されて示されている。第2の送信チャネル10.2は、1つのOFDMシンボル80内で占有されているOFDMサブキャリア90を有しており、これらのサブキャリア90の間では、それぞれ複数のOFDMサブキャリア(OFDMサブキャリア周波数)が非占有である。第1の送信チャネル10.1は、そのOFDMシンボル82、84内で占有されているOFDMサブキャリア92または94を有しており、これに関しては送信チャネル10.1ごとに、占有OFDMサブキャリア92または94の間でそれぞれ複数のOFDMサブキャリアが非占有である。占有OFDMサブキャリア90、92、94は、周波数fに対し、斜線で塗りつぶされた箱によって示されている。示した例では、各OFDMシンボル80、82、84が、隣接する占有OFDMサブキャリアの間に、残りの送信チャネル数に相当する数の非占有OFDMサブキャリアを有している。
【0062】
上で
図3および
図4の例に関して解説したように、時間領域での調和振動との単純乗算により、第2の送信チャネル10.2の時間信号から、それに対して直交するそれぞれの第1の送信チャネル10.1の時間信号が生成され得る。これによりこの例では、それぞれの送信チャネル10.1、10.2の占有OFDMサブキャリアが、OFDMサブキャリアスペクトル内で、それぞれほかの送信チャネル10の占有OFDMサブキャリアとインターリーブに配置されている。
【0063】
実際には例えば、333KHzのサブキャリア間隔Δfでの3000のOFDMサブキャリアのために、1GHzの帯域幅が利用され得る。
【0064】
図6は、例えば複素数値調和振動との乗算のために
図3、
図4、および
図5の例の1つで使用され得るような、OFDMレーダセンサの保存されたテーブルに含まれている周期振動の振幅値Aを概略的に示している。振幅値Aが、テーブルインデックスIに対して示されている。
【0065】
説明した例では、第1の送信チャネル10.1のためのそれぞれの乗算を実施する調和振動の周波数は、最小のこのような周波数Δfの倍数なので、テーブルは、調和振動の4分の1周期の振幅値だけを含めば十分である、これに関し、正弦と余弦の間の位相偏移に基づき、例えば実数の正弦波の4分の1で十分である。
【0066】
1つの第1の送信チャネル10.1の時間信号のサンプル値(Sample)と、上記の最小の周波数をもつ振動に対応する振幅値Aとの要素ごとの乗算には、
図6.1に示したように、連続している振幅値がテーブルから参照される。乗算すべき調和振動のより高い周波数に関しては、同じサンプリングレートの場合、n個につき1個の値が、要素ごとの乗算のためにテーブルから参照され、これは例えばn=2に関する
図6.2では、対応の振幅値に対して実施されたシンボルによって示されている。
図6.3は、n=3に関する対応の図を示しており、この場合、要素ごとの乗算のために、3個につき1個の値だけがテーブルから参照される。
【0067】
-1を乗算すること、および指定された値の順番を鏡面反射させることにより、調和振動の全周期を生成でき、これによりテーブルのための必要なメモリがさらに最小限に抑えられ得る。
【国際調査報告】