(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(54)【発明の名称】表面保護用化合物
(51)【国際特許分類】
C09D 1/02 20060101AFI20220826BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220826BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220826BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
C09D1/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526852
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 CZ2020000020
(87)【国際公開番号】W WO2021004557
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522006650
【氏名又は名称】ファースト ポイント エー.エス.
【氏名又は名称原語表記】FIRST POINT A.S.
【住所又は居所原語表記】Brnenska 4404/65a, 69501 Hodonin (CZ)
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】チャンドヴァ,ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル,ペトル
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038HA026
4J038HA216
4J038HA451
4J038JB11
4J038NA15
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
93~98重量%のケイ酸カリウム水溶液と、1~6重量%の水酸化アルミニウムと、0.5~1.5重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤とを含有するケイ酸塩水溶液を含有する、表面保護化合物、特に、木材、紙もしくは織物、またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
93~98重量%のケイ酸カリウム水溶液と、1~6重量%の水酸化アルミニウムと、0.5~1.5重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤とを含有することを特徴とする、ケイ酸塩水溶液を含有する、表面保護化合物、特に、木材、紙、織物、またはプラスチックの不燃性耐水性殺生物性表面保護用化合物。
【請求項2】
さらに1~3重量%のカーボンブラック水溶液を含むことを特徴とする請求項1に記載の表面保護化合物。
【請求項3】
前記ケイ酸カリウム水溶液が、1650~1670kg/m
3の範囲の密度を有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面保護化合物。
【請求項4】
前記ケイ酸カリウム水溶液において、酸化ケイ素の酸化カリウムに対するモル質量比が1.67~1.73の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面保護化合物。
【請求項5】
前記カーボンブラック水溶液が、25重量%のカーボンブラックを含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表面保護化合物。
【請求項6】
前記ケイ酸カリウム水溶液の安定剤が親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の表面保護化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面保護用化合物、特に、ケイ酸塩水溶液を含有する、木材、紙もしくは織物、またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の技術から、木材保護のための多くのコーティングが知られており、それらは組成物の意図される使用に関して異なっている。最も単純な化合物は、機械的および化学的影響に対してのみ保護し、装飾的美化に役立つ、木材の表面を仕上げるためだけのコーティングにおけるものである。より高品質のコーティングはまた、大気の影響、水、UV照射などからも保護する。包括的な木材保護を提供するコーティングはまた、殺生物剤、UV吸収剤、難燃剤などの追加の特別な添加剤も含有する。コーティング中の顔料の量はまた、透過される放射線の量において大きな役割も果たし、木材の黄変および褐変を引き起こし、水の影響と共に灰色化を引き起こす。
【0003】
特許文献韓国特許KR101905682から、二リン酸ナトリウム、尿素、リン酸、およびホウ砂を含有する、木材用の自己消火性化合物が知られている。これらの物質は水に可溶であるが、欠点は木材コーティングを水で洗浄する可能性や、周囲の金属材料または木材自体に対する腐食効果、毒性、比較的低い効率ならびに限られた耐用年数および困難な修復である。
【0004】
ウクライナ実用新案UA92979から、リン酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムおよびフッ化ナトリウムを含有する混合物が知られている。これらの物質もまた水に可溶であり、従って、先の化合物と同じ欠点を有する。
【0005】
特許文献チェコスロバキア特許出願公報CS111175から、防腐効果を有するポリアクリレート分散体をベースとする木材コーティングが知られている。その大きな欠点は、可燃性であることである。
【0006】
特許文献チェコスロバキア特許出願公報CS123593から公知の木材コーティングも可燃性である。このコーティングはカビ、真菌に対向することを意図しており、クロロナフタレンをベースとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公告特許第KR101905682号公報
【特許文献2】ウクライナ実用新案公報第UA92979号公報
【特許文献3】チェコスロバキア特許出願公報第CS111175号公報
【特許文献4】チェコスロバキア特許出願公報第CS123593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の現在の技術から、現在の技術の主な欠点は、難燃剤および他の可能な木材損傷、例えば、カビまたは真菌などに対する効果を有する薬剤は存在するが、これらの2つの特性を組み合わせ得る薬剤が存在しないことであることが明らかである。
【0009】
本発明の目的は木材の防火のための化合物の組成物であり、これはまた、その無害な殺生物性表面保護でもあり、そして紙もしくは織物、またはプラスチックの保護のための同様の保護特性を有する、組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の欠点は大幅に取り除かれ、本発明の目的は、表面保護化合物、特に木材、紙、織物またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護のための化合物であって、ケイ酸塩水溶液を含有し、93~98重量%のケイ酸カリウム水溶液と、1~6重量%の水酸化アルミニウムと、0.5~1.5重量%の水性ケイ酸カリウム安定剤とを含有することを特徴とする化合物によって達成される。その利点は、化合物で処理された表面が優れた耐火性を有すると同時に、優れた細胞増殖抑制性を有することである。別の利点は、この化合物が純粋に無機由来の成分を含んでおり、生態系および健康に無害であり、火災および高温の場合であっても長期間の暴露中に有害なガス状、液状または固体生成物を放出しないことである。
【0011】
表面保護化合物は、1~3重量%のカーボンブラック水溶液をさらに含み、一方、最大の利点として、水溶液が25重量%のカーボンブラックを含むことである。化合物中にカーボンブラックを使用する利点は、その表面が大気中の酸素に暴露されず、したがって、それらが可燃性粒子として挙動せず、逆に難燃剤として挙動することである。燃焼中に、それらは出現するフリーラジカルを捕捉し、それにより燃焼を著しく遅延させる。同時に、それらは炭化核剤として作用し、得られる灰を捕捉し、従って、連続的なカーボンクラストの形成を促進し、これは木材表面を火炎から保護し、同時に、フライアッシュ及びカーボンブラックからなる発生する煙の含有量を減少させる。
【0012】
ケイ酸カリウム水溶液が1650~1670kg/m3の範囲の密度を有し、酸化ケイ素の酸化カリウムに対するモル質量比が1.67~1.73の範囲内であれば、さらに非常に有利である。ケイ酸カリウム溶液のこの有利な濃度においては、優れた木材への吸収性を達成することができ、したがって、木材への化合物の浸透度は最大で6mmである。
【0013】
さらに、ケイ酸カリウム水溶液の安定剤が親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩であることも有利である。
【0014】
本発明による化合物の主な利点は、化合物で処理された表面が優れた耐火性を有し、同時に優れた細胞増殖抑制性を有することである。この化合物はまた、優れた接着効果および密封効果を有し、その結果、この化合物は、木材繊維を完全に包む。硬化後、その表面は蒸気透過性であり、木材に浸透し得る当初の残留水分または水分を除去する。硬化後、化合物も耐水性であり、完全に乾燥した木材上に塗布した後、物体の体積は変化しない。同時に、化合物が木材の多孔質物質を充填し、木材への有機体の浸透を防止するので、上記により優れた殺菌特性をもたらす。有利な特性はまた、湿気と共に木材の灰色化を引き起こすUV照射に対する非常に良好な保護である。生成された層はある程度の深さにおいてさえも消火剤として作用し、ここでは燃焼が起こらず熱分解の領域及びその下の領域において全ての分解プロセスを減速させる。それはまた、木材中において自由空間を持たないガスの形成を減衰させる。同時に、本発明による化合物の大きな利点は、吸収性プラスチック、例えば発泡体、ジオテキスタイルおよびフェルトを含浸させることができることである。このようにして処理された素材はさらに、例えば、火災から保護されなければならないケーブルやケーブル配線用配線パイプに巻き付けることができる。また、化合物処理された表面は木材の外観を保ち、劣化による色の変化を防止し、あらゆる種類の木材要素および木材建築要素およびOSBパネルに適用することができることも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例1
【0016】
木材の不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物は、93重量%のケイ酸カリウム水溶液と、6重量%の水酸化アルミニウムと、1重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤とを含有する。
【0017】
ケイ酸カリウム水溶液は、1670kg/m3の密度を有し、酸化ケイ素の酸化カリウムに対するモル質量比が1.73である。
【0018】
ケイ酸カリウム水溶液の安定剤は、N,N,N’,N’ーテトラキス(2ーヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0019】
得られた化合物は、不燃性の無色木材含浸のためのものである。
【0020】
実施例2
【0021】
木材の不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物は、95重量%のケイ酸カリウム水溶液と、1重量%の水酸化アルミニウムと、1重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤と、3重量%のカーボンブラック水溶液とを含有する。
【0022】
ケイ酸カリウム水溶液は、1650kg/m3の密度を有し、酸化ケイ素の酸化カリウムに対するモル質量比は1.67である。
【0023】
ケイ酸カリウム水溶液の安定剤は、N,N,N’,N’ーテトラキス(2ーヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0024】
得られた化合物は、木材の不燃性殺生物性含浸のためのものである。
【0025】
実施例3
【0026】
木材、紙、織物、またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物は、97重量%のケイ酸カリウム水溶液と、2重量%の水酸化アルミニウムと、1重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤とを含有する。
【0027】
ケイ酸カリウム水溶液の密度は1655kg/m3で、酸化ケイ素の酸化カリウムに対するモル質量比は1.70の範囲内である。
【0028】
ケイ酸カリウム水溶液の安定剤は、N,N,N’,N’ーテトラキス(2ーヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0029】
得られた化合物は特に、紙製品の不燃性無色殺生物性無色含浸のためのものである。
【0030】
実施例4
【0031】
織物またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物は、93重量%のケイ酸カリウム水溶液と、3重量%の水酸化アルミニウムと、1重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤と、3重量%のカーボンブラック水溶液とを含有する。
【0032】
ケイ酸カリウム水溶液の密度は1660kg/m3で、酸化ケイ素の酸化カリウムに対するモル質量比は1.71である。
【0033】
カーボンブラック水溶液は、25重量%のカーボンブラックを含有する。
【0034】
ケイ酸カリウム水溶液の安定剤は、N,N,N’,N’ーテトラキス(2ーヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0035】
得られた化合物は、織物およびプラスチックの不燃性含浸のためのものである。
【0036】
実施例5
【0037】
織物またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物は、97重量%のケイ酸カリウム水溶液と、1重量%の水酸化アルミニウムと、1重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤と、1重量%のカーボンブラック水溶液とを含有する。
【0038】
ケイ酸カリウム水溶液の密度は1650kg/m3で、酸化カリウムに対する酸化ケイ素のモル質量比は1.69である。
【0039】
カーボンブラック水溶液は、25重量%のカーボンブラックを含有する。
【0040】
ケイ酸カリウム水溶液の安定剤は、N,N,N’,N’ーテトラキス(2ーヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0041】
得られた化合物は、織物およびプラスチックの不燃性含浸のためのものである。
【0042】
実施例6
【0043】
織物またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護用化合物は、96重量%のケイ酸カリウム水溶液と、2重量%の水酸化アルミニウムと、1重量%のケイ酸カリウム水溶液の安定剤と、1重量%のカーボンブラック水溶液とを含有する。
【0044】
ケイ酸カリウム水溶液の密度は1660kg/m3で、酸化カリウムに対する酸化ケイ素のモル質量比は1.7である。
【0045】
カーボンブラック水溶液は、25重量%のカーボンブラックを含有する。
【0046】
ケイ酸カリウム水溶液の安定剤は、N,N,N’,N’ーテトラキス(2ーヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0047】
得られた化合物は、織物およびプラスチックの不燃性含浸のためのものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明による表面保護化合物は特に、軟質PUR発泡体、ゴムまたはジオテキスタイルであってもよい、木材、もしくは紙、もしくはテキスタイル、またはプラスチックの不燃性耐水性無害殺生物性表面保護のために使用することができる。
【国際調査報告】