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  • 特表-黄斑色素の光安定性の模範 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】黄斑色素の光安定性の模範
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/28 20060101AFI20220829BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20220829BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220829BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C09B11/28 M CSP
G02C7/00
G02B1/04
C08F290/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020565833
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 IB2020055868
(87)【国際公開番号】W WO2020261091
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,968
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/898,638
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マハデバン・シブクマル
【テーマコード(参考)】
2H006
4J127
【Fターム(参考)】
2H006BA01
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB021
4J127BB032
4J127BB091
4J127BB112
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC151
4J127BC152
4J127BD291
4J127BD292
4J127BE341
4J127BE342
4J127BE34Y
4J127BF751
4J127BF752
4J127BF781
4J127BF782
4J127BG101
4J127BG102
4J127BG10Z
4J127BG171
4J127BG172
4J127BG17Z
4J127BG381
4J127BG382
4J127BG38X
4J127BG38Y
4J127BG38Z
4J127CB151
4J127CB162
4J127CB283
4J127CC091
4J127DA47
4J127EA13
4J127FA27
(57)【要約】
可視光吸収化合物が記載される。本化合物は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有し、本化合物は光安定性である。本化合物は、光安定性を維持しながら黄斑色素の可視光吸収特性を実質的に模倣する。本化合物は、眼科用装置を含む種々の物品に使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有する化合物であって、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)光安定性である、化合物。
【請求項2】
前記可視光吸光最大値が440nm~470nmである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記可視光吸収最大値における前記FWHMが、少なくとも40nmかつ最大95nmである、請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
光安定性が、前記可視光吸収最大値における20パーセント以下の吸光度の損失を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有する化合物であって、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)黄斑色素よりも一層光安定性である、化合物。
【請求項6】
発色団を含む化合物であって、前記発色団が式Iの下部構造を有し、
【化1】
式中、各存在におけるEWGは独立して電子求引基である、化合物。
【請求項7】
各存在におけるEWGが独立して、シアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
各存在におけるEWGがシアノである、請求項6~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式IIを持ち、
【化2】
式中、各存在におけるEWGは独立して電子求引基であり、nは1、2、又は3であり、Rは、各存在において独立して、H、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cチオアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR、ベンジル、SOH、若しくはSOM(Mは、ナトリウム又はカリウムなどの一価のカチオンである)、又は-Y-Pであり、R及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルであり、Yは連結基であり、Pは重合性基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)マロノニトリル、又は
2-((9-(ジシアノメチレン)-9H-チオキサンテン-2-イル)オキシ)エチルメタクリレートである、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有し、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)光安定性である、請求項6~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記可視光吸光最大値が440nm~470nmである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記可視光吸収最大値における前記FWHMが、少なくとも40nmかつ最大95nmである、請求項11~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
光安定性が、前記可視光吸収最大値における20パーセント以下の吸光度の損失を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有し、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)黄斑色素よりも一層光安定性である、請求項6~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物を含む眼科用装置。
【請求項17】
反応性混合物の重合反応生成物であるコンタクトレンズ又は眼内レンズであって、前記眼科用装置を作製するのに好適なモノマーと、(b)請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物と、を含む、コンタクトレンズ又は眼内レンズ。
【請求項18】
(a)鉱物材料若しくは有機材料又はこれらの組み合わせと、(b)請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物と、を含む、眼鏡又はサングラスレンズ。
【請求項19】
国に輸入される、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物、眼科用装置、又は眼鏡レンズ。
【請求項20】
前記国がアメリカ合衆国である、請求項19に記載の化合物、眼科用装置、又は眼鏡レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第16/898,638号(2020年6月11日出願)及び米国特許仮出願第62/867,968号(2019年6月28日出願)に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、可視光吸収剤に関する。より具体的には、本発明は、光安定性を維持しながら黄斑色素の可視光吸収特性を実質的に模倣する化合物に関する。本化合物は、眼科用装置を含む種々の物品に使用されてもよい。
【背景技術】
【0003】
ヒトの眼組織は、黄斑色素(MP)として一括して知られる、食物由来カロテノイド(カロチノイド)のルテイン(L)及びゼアキサンチン(Z)を含有する。例えば、短波長(青色光)フィルタとして、また強力な酸化防止剤として、MPの利点を記載しているいくつかの報告がなされてきた。MPはまた、年齢に関連した黄斑変性症(AMD)に対する保護的役割を担う、と考えられている(Bernstein,P.S.,Li,B.,Vachali,P.P.,Gorusupudi,A.,Shyam,R.,Henriksen,B.S.,Nolan,J.M.Prog.Retin.Eye Res. 2016,50,34-66; Beatty,S.,Boulton,M.,Koh,H-H.,Murray,I,J.Br.J.Ophthalmol 1999,83, 867-877)。黄斑色素は、光応力回復時間、視力低下グレアコントラスト閾値の低減、及び視覚的不快感の低減と著しく相関関係がある、と更に見出されてきた(Stringham,J.M.,Garcia.,P.V.,Smith,P.A.,McLin,L,N.,Foutch,B.K.IOVS, 2011,52(10)7406-7415)。
【0004】
黄斑色素に関連する化学物質は、広範な不飽和を有し、光励起時にオレフィン異性化及び酸化に非常に反応性であるカロチノイド誘導体である。カロチノイドが提供する酸化防止保護機構は本質的に犠牲的であり、pi系の励起は、その励起状態とトリプレット酸素との反応をもたらし、それによって、眼の環境におけるその他の感光性化合物の励起及び反応を保護/制限する。例えば、Ribeiroら、Food and Chemical Toxicology,Vol.120,pp.681-699(2018年)、Burtonら、Can.J.Chem.,Vol.92,pp.305-316(2014年)、Tyら、Journal of Oil Palm Research Vol.II No.1,pp.62-78(1999年6月); Johnstonら、Plos One,Vol.9(10),pp.1-10(2014年)、及びBoonら、Critical Reviews in Food Science and Nutrition,Vol.50,pp.515-532(2010年)を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
眼の保護を提供する目的で黄斑色素を製品に組み込むことが望ましいが、カロチノイドの安定性(熱、酸化、及び光化学)の全体的な欠如は、このような製品の開発に非常に高い障害をもたらす。したがって、黄斑色素の光吸収特性を模範する新たな安定性の材料が開発された場合には、有意な進歩であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、黄斑色素のスペクトルを実質的に模範する波長範囲である400nm~500nmの可視光吸光スペクトルを示す、化合物に関する。このような化合物はまた、例えば、ICH Q1Bに記載されているものと類似の条件に曝露された際に、吸収特性の変化/損失に関して測定される場合であっても光安定性である。なお、化合物は、400nm~500nmの所望の波長で高い吸光係数を示す場合があり、したがって、低濃度で使用されて、それらの光吸収効果を提供してよい。本明細書に記載された化合物は、例えば、眼科用装置において使用されて、例えば、着用者の黄斑色素光学密度(MPOD)を補うことができる。
【0007】
したがって、一態様では、本発明は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有する化合物を提供し、本化合物は光安定性である。
【0008】
別の態様では、本発明は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有する化合物を提供し、本化合物は黄斑色素よりも一層光安定性である。
【0009】
更なる態様では、本発明は、発色団を含む化合物を提供し、発色団は式Iの下部構造を有し、
【0010】
【化1】
式中、各存在におけるEWGは独立して電子求引基である。
【0011】
依然として更なる態様では、本発明は、本明細書に記載された化合物を含む眼科用装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の例示的な化合物Aの、0.2mMメタノール溶液のUV-VIS透過スペクトルを示す。
図2】黄斑色素の文献スペクトルに重ね合わせた本発明の化合物Aの、0.2mMメタノール溶液のUV-VIS吸光スペクトルを示す。
図3】最大40時間の光への曝露後の、化合物Aから調製されたコンタクトレンズの吸光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の説明に記載されている構造又はプロセス工程の詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明はその他の実施形態が可能であり、本明細書に記載の教示を用いた種々の方法によって実行又は実施することが可能である。
【0014】
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0015】
別段の定めがある場合を除き、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature, IUPAC Recommendations 2008, edited by: Richard G. Jones, Jaroslav Kahovec, Robert Stepto, Edward S. Wilks, Michael Hess, Tatsuki Kitayama, and W. Val Metanomskiに開示されている定義に一致する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は全て、参照として本明細書に組み込まれる。
【0016】
本発明で使用する場合、用語「(メタ)」とは、任意のメチル置換を意味する。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0017】
どこに化学構造が記載されていようと、構造における置換基について開示された選択肢を任意の組み合わせにて組み合わせてもよいことを、理解すべきである。したがって、構造が置換基R及びR**を含有しており、これらがそれぞれ3つの可能性のある基のリストを含んでいる場合、9とおりの組み合わせが開示される。特性の組み合わせについても同じことが当てはまる。
【0018】
一般式[***における「n」などの下付き文字が、ポリマーの化学式における反復単位の数を表示するために使用される場合、式は、高分子の数平均分子量を表すと解釈すべきである。
【0019】
用語「個体」は、ヒト及び脊椎動物を含む。
【0020】
用語「生物医学用装置」とは、哺乳類の組織又は体液の中又は上のいずれか、好ましくは、ヒトの組織又は体液の中又は上のいずれかにおいて用いられるように設計されている、任意の物品を意味する。これらの装置の例としては、創傷包帯、シーラント、組織補填体、薬物送達系、コーティング、癒着防止バリア、カテーテル、インプラント、ステント、並びに眼内レンズ及びコンタクトレンズなどの眼科用装置が挙げられるが、これらに限定されない。生物医学用装置は、眼科用装置、具体的にはコンタクトレンズ、最も具体的にはシリコンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルから作製されるコンタクトレンズであってもよい。
【0021】
用語「眼の表面」とは、角膜、結膜、涙腺、副涙腺、鼻涙管、及びマイボーム腺の表面及び腺上皮、並びにそれらの先端及び基部マトリクス、点、並びに神経支配による上皮の連続性と内分泌系及び免疫系との両方によって機能系として連結されている瞼を含む、隣接した又は関連する構造を含む。
【0022】
用語「眼科用装置」とは、眼若しくは眼の任意の一部(眼の表面を含む)の中又は上に存在する任意の光学装置を意味する。これらの装置は、光学補正、外見向上、視力強化、(例えば、包帯としての)治療効果、若しくは医薬成分及び栄養補助成分などの活性成分の供給、又は前述の任意の組み合わせを提供することができる。眼科用装置の例としては、レンズ、光学挿入物及び接眼挿入物(限定されるものではないが、涙点プラグを含む)などが挙げられるが、これらに限定されない。「レンズ」は、眼鏡レンズ、サングラスレンズ、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズ、眼内レンズ、及びオーバーレイレンズを含む。眼科用装置は、コンタクトレンズを含んでもよい。
【0023】
用語「コンタクトレンズ」とは、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用装置を意味する。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくはモニタリング、紫外線吸収、可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの任意の組み合わせを含む、矯正的、美容的、又は治療的な利益を提供し得る。コンタクトレンズは、当該技術分野で周知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水率、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理、機械、若しくは光学特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有する、ハイブリッドレンズであり得る。
【0024】
眼鏡レンズ又はサングラスは、例えば、ケイ酸塩に基づく鉱物材料から構成されてもよい、又はポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート/ポリカーボネートコポリマー、及び当該技術分野において周知の種々のその他の材料などの有機材料から作製されてもよい。
【0025】
本発明の生物医学用装置、眼科用装置、及びレンズは、シリコンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルで構成されてもよい。シリコンヒドロゲルは、典型的には、硬化された装置内で互いに共有結合した、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコン含有成分を含有する。
【0026】
「標的巨大分子」とは、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、希釈剤などを含む反応性モノマー混合物から合成されている巨大分子を意味する。
【0027】
用語「重合性化合物」とは、1つ以上の重合性基を含有する化合物を意味する。この用語は、例えば、モノマー、マクロマー、オリゴマー、プレポリマー、架橋剤などを包含する。
【0028】
「重合性基」は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合、例えばラジカル重合開始条件に曝された場合に重合することができる炭素-炭素二重結合などの、連鎖成長重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、及びその他のビニル基が挙げられる。好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、及びスチリル官能基、並びに前述のうちの任意の混合物を含む。より好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。重合性基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。例えば、(メタ)アクリルアミド中の窒素原子は、水素に結合されてもよい、又は水素は、アルキル若しくはシクロアルキル(それ自体が更に置換されてもよい)で置換されてもよい。
【0029】
限定されるものではないが、バルク、溶液、懸濁液、及びエマルションを含む、任意の種類のフリーラジカル重合、並びに、安定性フリーラジカル重合、窒素酸化物媒介リビング重合、原子移動ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、有機テルル媒介リビングラジカル重合などの、制御ラジカル重合法のいずれかを使用することができる。
【0030】
「モノマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に反復単位を作り出すことができる単官能性分子である。いくつかのモノマーは、架橋剤として作用することができる二官能性不純物を有する。「親水性モノマー」はまた、5重量%の濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合した場合に、透明な単相溶液が得られるモノマーである。「親水性成分」は、5重量%の濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合した場合に、透明な単相溶液が得られる、モノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。「疎水性成分」は、25℃で脱イオン水中でわずかに可溶性又は不溶性であるモノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。
【0031】
「巨大分子」は、1500を超える数平均分子量を有する有機化合物であり、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0032】
「マクロモノマー」又は「マクロマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に反復単位を作り出すことができる1つの基を有する巨大分子である。一般的に、マクロマーの化学構造は、標的ポリマーの化学構造とは異なる、即ち、マクロマーのペンダント基の反復単位は、標的ポリマー又はその主鎖の反復単位とは異なる。モノマーとマクロマーとの間の差は、ペンダント基の化学構造、分子量、及び分子量分布のうちの1つに過ぎない。結果として、かつ本発明で使用する場合、特許文献は、約1,500ダルトン以下の比較的低い分子量を有する重合性化合物としてモノマーを定義することがあり、これは、本質的にいくつかのマクロマーを含む。具体的には、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(mPDMS)及びモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(OH-mPDMS)は、モノマー又はマクロマーと呼ばれることもある。更に、特許文献は、1つ以上の重合性基を有するものとしてマクロマーを定義することがあり、マクロマーの一般的な定義を本質的に拡大してプレポリマーを含む。結果として、かつ本発明で使用する場合、二官能性及び多官能性マクロマー、プレポリマー、及び架橋剤は、互換的に使用されてもよい。
【0033】
「シリコン含有成分」は、通常は、シロキシ基、シロキサン基、カルボシロキサン基、及びこれらの混合物の形態で、少なくとも1つのケイ素-酸素結合を有する、反応性混合物中のモノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、又はポリマーである。
【0034】
本発明において有用なシリコン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,760,100号、同第5,849,811号、同第5,962,548号、同第5,965,631号、同第5,998,498号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,943,203号、同第6,951,894号、同第7,052,131号、同第7,247,692号、同第7,396,890号、同第7,461,937号、同第7,468,398号、同第7,538,146号、同第7,553,880号、同第7,572,841号、同第7,666,921号、同第7,691,916号、同第7,786,185号、同第7,825,170号、同第7,915,323号、同第7,994,356号、同第8,022,158号、同第8,163,206号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,415,404号、同第8,420,711号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,568,626号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第8,980,972号、同第9,056,878号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9,156,934号、同第9,170,349号、同第9,217,813号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、及び欧州特許第080539号に見出され得る。これらの特許は、それら全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0035】
「ポリマー」は、重合中に使用されるモノマーの反復単位で構成される標的巨大分子である。
【0036】
「ホモポリマー」は、1つのモノマーから作製したポリマーであり、「コポリマー」は、2つ又はそれ以上のモノマーから作製したポリマーであり、「ターポリマー」は、3つのモノマーから作製したポリマーである。「ブロックコポリマー」は、組成上異なるブロック又はセグメントからなる。ジブロックコポリマーは、2つのブロックを有する。トリブロックコポリマーは、3つのブロックを有する。「くし形又はグラフトコポリマー」は、少なくとも1つのマクロマーから作製される。
【0037】
「反復単位」は、特定のモノマー又はマクロマーの重合に対応する、ポリマー内の最小の基である。
【0038】
「開始剤」は、続いてモノマーと反応してフリーラジカル重合反応を開始することができるラジカルに、分解可能である分子である。熱反応開始剤は、温度に応じて特定の速度で分解し、典型例は、1,1’-アゾビスイソブチロニトリル及び4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムなどの過酸、並びに種々の酸化還元系である。光開始剤は、光化学プロセスにより分解し、典型例は、ベンジル、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、及びこれらの混合物の誘導体、並びに種々のモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシド、並びにこれらの組み合わせである。
【0039】
「架橋剤」は、分子上の2つ以上の位置でフリーラジカル重合を受け、それによって分岐点及びポリマー網状組織を作り出すことができる、二官能性又は多官能性モノマー又はマクロマーである。一般的な例は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレート等である。
【0040】
「プレポリマー」は、更に反応を受けてポリマーを形成可能な、残存している重合性基を含有するモノマーの反応生成物である。
【0041】
「ポリマー網状組織」は、膨潤し得るが溶媒中で溶解できない架橋巨大分子である。「ヒドロゲル」は、典型的には、少なくとも10重量%の水を吸収しながら、水又は水溶液中で膨潤するポリマー網状組織である。「シリコンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分と共に少なくとも1つのシリコン含有成分から作製されるヒドロゲルである。親水性成分はまた、非反応性ポリマーを含んでもよい。
【0042】
「従来のヒドロゲル」とは、いかなるシロキシ、シロキサン、又はカルボシロキサン基も有しない成分から作製されたポリマー網状組織を意味する。従来のヒドロゲルは、親水性モノマーを含む反応性混合物から調製される。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(「NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(「DMA」)、又は酢酸ビニルが挙げられる。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。市販の従来のヒドロゲルとしては、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(それらの変異型の全てを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「シリコンヒドロゲル」とは、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコン含有成分から作製されるポリマー網状組織を意味する。シリコンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変異型の全てを含む)に加えて、米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されるようなシリコンヒドロゲルが挙げられる。これらの特許は、それら全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0044】
「相互貫入ポリマー網状組織」は、分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合しておらず、制動化学結合なしに分離することができない、2つ以上の網状組織を含む。「半相互貫入ポリマー網状組織」は、1つ以上の網状組織と、少なくとも1つの網状組織と少なくとも1つのポリマーとの間の分子レベルで何らかの混合によって特徴付けられる1つ以上のポリマーと、を含む。異なるポリマーの混合物は、「ポリマーブレンド」である。半相互貫入ポリマー網状組織は、技術的にはポリマーブレンドであるが、場合によっては、ポリマーは、容易に除去することができないように絡まっている。
【0045】
「反応構成成分」とは、(以下で定義する)反応性混合物中の(モノマー、マクロマー、オリゴマー、プリポリマー、及び架橋剤などの)重合性化合物であり、同様に、重合後並びに全ての精密検査工程(抽出工程)及びパッキング工程が完了した後に、得られたポリマー網状組織中に実質的に残存することが意図される、反応性混合物中の任意のその他の構成成分である。反応構成成分は、共有結合、水素結合、静電相互作用、相互貫入ポリマー網状組織の形成、又は任意のその他の手段によって、ポリマー網状組織内に保持されてもよい。使用時にポリマー網状組織から放出することを意図した構成成分は、依然として「反応性成分」とみなされる。例えば、着用中に放出されることが意図されるコンタクトレンズ内の医薬成分又は栄養成分は、「反応性成分」とみなされる。希釈剤などの、製造プロセス中(例えば、抽出によって)ポリマー網状組織から除去されることが意図される構成成分は、「反応性成分」ではない。
【0046】
用語「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」とは、一緒に混合されて重合条件に曝された場合に、ポリマー網状組織(従来の又はシリコンヒドロゲルなど)、並びに生物医学的装置、眼科用装置、及びこれらから作製されるコンタクトレンズの形成をもたらす構成成分の混合物を意味する。反応性混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、及び開始剤などの反応性成分、湿潤剤、ポリマー、染料などの添加剤、UV吸収剤、顔料、光互変化合物などの光吸収化合物、薬剤化合物、及び/又は栄養補助化合物を含んでもよく、これらはいずれも重合性又は非重合性であってよいが、得られる生物医学用装置(例えば、コンタクトレンズ)内に保持されることが可能である。反応性混合物はまた、希釈剤などの、使用前に装置から除去されることが意図されるその他の成分を含有してもよい。製造されるコンタクトレンズ及びその意図する用途に応じて、広範囲の添加物が加えられる場合があることが理解されよう。反応性混合物の構成成分の濃度は、反応混合物中の全ての反応性成分の重量百分率として表され、したがって、希釈剤を除く。希釈剤が使用される場合、それらの濃度は、反応性混合物中の全ての構成成分(希釈剤を含む)の量に基づき重量百分率として表される。
【0047】
用語「シリコンヒドロゲルコンタクトレンズ」とは、少なくとも1つのシリコン含有成分から作製されるヒドロゲルコンタクトレンズを意味する。シリコンヒドロゲルコンタクトレンズは通常、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過性を有する。シリコンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を機能させて酸素を眼に送る。
【0048】
用語「多官能性」とは、2つ以上の重合性基を有する構成成分を意味する。用語「単官能性」とは、1つの重合性基を有する構成成分を意味する。
【0049】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を示す。
【0050】
「アルキル」とは、指定された数の炭素原子を含有する任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。数が指定されていない場合、アルキル(アルキル上の任意選択的な置換基を含む)は、1~16個の炭素原子を含有してもよい。好ましくは、アルキル基は、1~10個の炭素原子、あるいは1~8個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を含有する。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-、sec-及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、3-エチルブチルなどが挙げられる。アルキル上の置換基の例としては、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アルキレン」は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、及び-CHCHCHCH-などの、二価アルキル基を意味する。
【0051】
「ハロアルキル」は、1個以上のハロゲン原子で置換された上で定義されるアルキル基を意味し、各ハロゲンは、独立して、F、Cl、Br、又はIである。好ましいハロゲンは、Fである。好ましいハロアルキル基は、1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素、更により好ましくは1~2個の炭素を含有する。「ハロアルキル」は、-CF-又は-CFCF-などのペルハロアルキル基を含む。「ハロアルキレン」とは、-CHCF-などの二価ハロアルキル基を意味する。
【0052】
「シクロアルキル」とは、指定された数の環炭素原子を含有する任意選択的に置換された環状炭化水素を意味する。数が示されていない場合、シクロアルキルは、3~12個の環炭素原子を含有してもよい。好ましくは、C~Cシクロアルキル基、C~Cシクロアルキル、より好ましくはC~Cシクロアルキル、更により好ましくはC~Cシクロアルキルである。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「シクロアルキレン」とは、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、又は1,4-シクロヘキシレンなどの二価シクロアルキル基を意味する。
【0053】
「ヘテロシクロアルキル」とは、少なくとも1つの環炭素が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されている、上で定義されるシクロアルキル環又は環系を意味する。ヘテロシクロアルキル環は、任意選択的に、その他のヘテロシクロアルキル環及び/又は非芳香族炭化水素環及び/又はフェニル環に縮合している、又はその他の方法で結合される。好ましいヘテロシクロアルキル基は、5~7員を有する。より好ましいヘテロシクロアルキル基は、5又は6員を有する。ヘテロシクロアルキレンとは、二価ヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0054】
「アリール」とは、少なくとも1つの芳香環を含有する、任意選択的に置換された芳香族炭化水素環系を意味する。アリール基は、示された数の環炭素原子を含有する。数が示されていない場合、アリールは、6~14個の環炭素原子を含有してもよい。芳香環は、任意選択的に、その他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環に縮合していてもよい、又はその他の方法で結合されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルが挙げられる。アリール上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アリーレン」とは、二価アリール基、例えば1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、又は1,4-フェニレンを意味する。
【0055】
「ヘテロアリール」とは、上で定義したように、少なくとも1つの環炭素原子が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されているアリール環又は環系を意味する。ヘテロアリール環は、1つ以上のヘテロアリール環、芳香族若しくは非芳香族炭化水素環、又はヘテロシクロアルキル環に縮合していてもよく、又は別の方法で結合されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、及びチエニルが挙げられる。「ヘテロアリーレン」とは、二価ヘテロアリール基を意味する。
【0056】
「アルコキシ」とは、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びイソプロポキシが挙げられる。「チオアルキル」とは、硫黄架橋を介して親分子に結合しているアルキル基を意味する。チオアルキル基の例としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、及びイソプロピルチオが挙げられる。「アリールオキシ」とは、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアリール基を意味する。例としては、フェノキシが挙げられる。「環状アルコキシ」とは、酸素架橋を介して親部分に結合しているシクロアルキル基を意味する。
【0057】
「アルキルアミン」とは、-NH架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を意味する。アルキレンアミンとは、-CHCHNH-などの二価アルキルアミン基を意味する。
【0058】
「シロキサニル」とは、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造を意味する。したがって、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si基(即ち、シロキサン基)を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を意味する。「シロキサニル」は、モノマー(例えば、Si-O-Si)並びにオリゴマー/ポリマー構造(例えば、-[Si-O]-(式中、nは2以上である)を包含する。シロキサニル基中の各ケイ素原子は、それらの原子価を完全なものにするために、独立して選択されるR基(ここで、Rは、式Aの選択肢(b)~(i)で定義されるとおりである)で置換されている。
【0059】
「シリル」は、式RSi-の構造を意味し、「シロキシ」は、式RSi-O-の構造を意味し、ここで、シリル又はシロキシ中の各Rは、トリメチルシロキシ、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはエチル又はメチル)、及びC~Cシクロアルキルから独立して選択される。
【0060】
「アルキレンオキシ」は、一般式-(アルキレン-O)-又は-(O-アルキレン)-の基を意味し、ここで、アルキレンは、上で定義したとおりであり、pは、1~200、又は1~100、又は1~50、又は1~25、又は1~20、又は1~10であり、各アルキレンは、独立して、ヒドロキシル、ハロ(例えば、フルオロ)、アミノ、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ以上の基で、任意選択的に置換されている。pが1より大きい場合、各アルキレンは、同じであっても異なっていてもよく、アルキレンオキシは、ブロック又はランダム構成であってもよい。アルキレンオキシが分子中に末端基を形成する場合、アルキレンオキシの末端は、例えば、ヒドロキシ又はアルコキシ(例えば、HO-[CHCHO]-又はCHO-[CHCHO]-)であってもよい。アルキレンオキシの例としては、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、ポリブチレンオキシ、及びポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシ)が挙げられる。
【0061】
「オキサアルキレン」とは、1つ以上の非隣接CH基が、-CHCHOCH(CH)CH-などの酸素原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を意味する。「チアアルキレン」とは、1つ以上の非隣接CH基が、-CHCHSCH(CH)CH-などの硫黄原子で置換されている、上で定義されるようなアルキレン基を意味する。
【0062】
用語「連結基」とは、重合性基を親分子に連結させる部分を意味する。連結基は、当該連結基がその一部である化合物に適合し、化合物の重合を不所望に妨害せず、重合条件、更には最終生成物の加工及び保管の条件下で安定である任意の部分であってもよい。例えば、連結基は、結合であってもよく、又は1つ以上のアルキレン、ハロアルキレン、アミド、アミン、アルキレンアミン、カルバメート、エステル(-CO-)、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アルキレンオキシ、オキサアルキレン、チアアルキレン、ハロアルキレンオキシ(1つ以上のハロ基で置換されたアルキレンオキシ、例えば、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCH-)、シロキサニル、アルキレンシロキサニル、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。連結基は、1つ以上の置換基で任意選択的に置換されてもよい。好適な置換基としては、アルキル、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、HO-アルキレンオキシ、MeO-アルキレンオキシ、シロキサニル、シロキシ、シロキシ-アルキレンオキシ-、シロキシ-アルキレン-アルキレンオキシ-(2つ以上のアルキレンオキシ基が存在してもよく、アルキレン及びアルキレンオキシ中の各メチレンは、独立して、ヒドロキシルで任意選択的に置換されている)、エーテル、アミン、カルボニル、カルバメート、及びこれらの組み合わせから独立して選択されるものを挙げてもよい。連結基はまた、(連結基が連結している重合性基に加えて)(メタ)アクリレートなどの重合性基で置換されてもよい。
【0063】
好ましい連結基としては、C~Cアルキレン(好ましくは、C~Cアルキレン)及びC~Cオキサアルキレン(好ましくは、C~Cオキサアルキレン)が挙げられ、これらはそれぞれ、ヒドロキシル及びシロキシから独立して選択される1つ又は2つの基で任意選択的に置換されている。好ましい連結基としてはまた、カルボキシレート、アミド、C~Cアルキレン-カルボキシレート-C~Cアルキレン、又はC~Cアルキレン-アミドC~Cアルキレンが挙げられる。
【0064】
連結基が上記のような部分(例えば、アルキレン及びシクロアルキレン)の組み合わせからなる場合、部分は任意の順序で存在してもよい。例えば、下記の式Aにおいて、Lが、-アルキレン-シクロアルキレン-であると示されている場合、次に、Rg-Lは、Rg-アルキレン-シクロアルキレン-、又はRg-シクロアルキレン-アルキレン-のいずれかであってもよい。これにかかわらず、列記する順序は、連結基が結合している末端重合性基(Rg又はPg)から始まって、その部分が化合物中に現れる好ましい順序を表す。例えば、式Aにおいて、Lが、アルキレン-シクロアルキレンであると示されている場合、次に、Rg-Lは、好ましくはRg-アルキレン-シクロアルキレン-である。
【0065】
用語「電子求引基」(EWG)とは、電子求引基が結合している原子又は原子の群から電子密度を求引する化学基を意味する。EWGの例としては、シアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいEWGは、シアノ(CN)である。
【0066】
用語「光吸収化合物」とは、(例えば、380nm~780nmの範囲の)可視スペクトル内の光を吸収する化学物質を意味する。「高エネルギー放射線吸収剤」、「UV/HEV吸収剤」又は「高エネルギー光吸収化合物」とは、種々の波長の紫外線、高エネルギー可視光、又はその両方を吸収する化学物質である。ある材料が特定の波長の光を吸収する能力は、その紫外線/可視透過スペクトル又は吸光スペクトルを測定することによって決定することができる。
【0067】
本明細書に記載された化合物が、オレフィン二重結合又は幾何学的非対称性のその他の中心を含有する場合、特に指示がない限り、化合物は、シス、トランス、Z-、及びE-構成を含むことが意図される。同様に、全ての互変異性体及び塩形態もまた含まれることが意図される。
【0068】
用語「任意選択的置換基」とは、下層部分の水素原子が置換基によって任意選択的に置換されることを意味する。置換部位において立体的に実用的であり、合成的に実現可能な任意の置換基を使用してもよい。好適な任意選択的置換基の同定は、十分に当業者の能力の範囲内である。「任意選択的置換基」の例としては、限定するものではないが、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cチオアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR、ベンジル、SOH、SONa、又は-Y-Pが挙げられ、式中、R及びRは、独立してH又はC~Cアルキルであり、Yは連結基であり、Pは重合性基である。前述の置換基は、任意選択的な置換基で任意選択的に置換されてもよい(特に指示がない限り、好ましくは、更に置換されない)。例えば、アルキルは、(例えば、CFで得られる)ハロによって置換されてもよい。
【0069】
「下部構造」とは、(原子がその他の原子又は基に結合し得る)任意のその他の原子による1つ以上の水素原子の置換を介して、その化学構造に由来する任意の化合物の化学構造を意味する。置換は、例えば、独立して選択される任意選択的な置換基を有する1つ以上、好ましくは1又は2、より好ましくは1個の水素原子であってもよい。「下部構造」の定義に包含されるのは、下部構造体が、(例えば、1つ以上の重合性基を含有する)モノマー、ポリマー、又は巨大分子などの、より大きな化合物の断片を形成する材料である。
【0070】
「可視光吸収最大値」とは、光の吸光度が最大である可視光波長範囲(380nm~760nm)の波長を意味する。定義は、UV領域内などの可視光範囲外の吸収最大値を示す材料を包含する。
【0071】
用語「光安定性(photostable)」、「光安定性(photostability)」、又は類似の表現は、(測定された場合に、ヒドロゲルコンタクトレンズなどの眼科用装置に任意選択的に埋め込まれて、ブリスターパック又はバイアル瓶の内部又は外側のいずれかで任意選択的に測定されてもよい)化合物が、調和国際会議(International Conference on Harmonisation(ICH))のヒト用医薬品の登録ガイドラインに関する技術的要求事項(Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use guideline)であるQ1Bの、新規薬品物質の光安定性試験(Photostability Testing of New Drug Substances and Products,1996年11月公表)のようなものなどの条件下において、光への曝露後の可視光吸収最大値における吸光度の損失が20パーセント以下である、ということを示すことを意味する。好ましくは、曝露は、1.5192×10ルクス時の推定照度曝露(168.8時間の曝露時間)及び259.4ワット時/mの推定紫外線照射曝露(16.2時間の曝露時間)を有するOption2光源を使用して、好ましくは25℃/Amb RHで制御される光安定性チャンバ内、ICH光安定性ガイドラインの下で実施される。曝露後、試料の紫外線/可視スペクトルを収集し、曝露前の試料のスペクトルと比較する。例として、曝露前の可視光吸収最大値での吸光度が4吸光度単位であり、曝露後に2つの吸光度単位である場合、吸光度の損失は50パーセントである。本発明において、曝露後の吸光度の損失は、好ましくは15パーセント以下、又は10パーセント以下、又は5パーセント以下、又は4パーセント以下、又は3パーセント以下、又は2パーセント以下、又は1パーセント以下、又は0.5パーセント以下、又は0.1パーセント以下である。
【0072】
用語「黄斑色素よりも一層光安定性である」又は同様の表現は、(試験された場合に、ヒドロゲルコンタクトレンズなどの眼科用装置に任意選択的に埋め込まれて、ブリスターパックの内部又は外側のいずれかで任意選択的に測定されてもよい)化合物が、上記のようなICH光安定性ガイドラインの下で光に曝露した後、黄斑色素で観察されるよりも、可視光吸収最大値における吸光度の損失がより少ないということを示すことを意味する。
【0073】
半値全幅(FWHM)という用語は、その最大輝度の半分における吸光度ピークの幅を意味する。
【0074】
別途記載のない限り、比率、百分率、部などは重量当たりである。
【0075】
別途記載のない限り、例えば、「2~10(from 2 to 10)」、又は「2~10(between 2 and 10)」におけるような数字範囲は、その範囲を規定する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0076】
上記のように、一態様では、本発明は、黄斑色素の可視光吸収特性を実質的に模範する化合物を提供する。化合物は黄斑色素よりも一層光安定性であり、したがって、製品の製造に使用することができる。例えば、化合物は、眼科用装置に使用されてもよい。
【0077】
したがって、本発明の化合物は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有してもよい。化合物は、(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定された場合)光安定性であってもよい。化合物は、黄斑色素よりも一層光安定性である場合がある。
【0078】
化合物は、440nm~470nm、又は445nm~465nm、又は450nm~460nm、又は455nm~460nmの可視光吸収最大値を有してもよい。
【0079】
化合物は、可視光吸収最大値において、少なくとも35nm、又は少なくとも40nm、又は少なくとも45nm、又は少なくとも55nm、又は少なくとも60nm、又は少なくとも65nmのFWHMを示してもよい。化合物は、可視光吸収最大値において、最大95nm、又は最大90nm、又は最大85nm、又は最大80nm、又は最大75nm、又は最大70nmのFWHMを示してもよい。可視光吸収最大値におけるFWHMは、35nm~100nm、又は45nm~90nm、又は55nm~80nm、又は60nm~75nm、又は65nm~70nmの範囲であってもよい。
【0080】
本発明の化合物は、可視光吸収最大値において、少なくとも5000、又は少なくとも5500、又は少なくとも6000、又は少なくとも6500、又は少なくとも7000、又は少なくとも7500のモル吸光係数を示してもよい。
【0081】
本発明の化合物は、式Iの下部構造を有する発色団を含んでもよく、
【0082】
【化2】
式中、各存在におけるEWGは、独立して電子求引基であり、化合物は、440nm~480nmの範囲の可視光吸収度ピークを示す。
【0083】
EWGは、各存在において、独立して、シアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドであってもよい。好ましくは、EWGは、各存在においてシアノである。
【0084】
本発明の化合物は、式IIであってもよく、
【0085】
【化3】
式中、各存在においてEWGは独立して電子求引基であり、nは1、2、又は3であり、Rは、各存在において独立して、H、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cチオアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR、ベンジル、SOH、若しくはSOM(Mは、ナトリウム又はカリウムなどの一価のカチオンである)、又は-Y-Pであり、R及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルであり、Yは連結基であり、Pは重合性基である。好ましくは、化合物は、0、1、又は2-Y-P基(これは同じであってもなくてもよい)を含有する。式II中のnが2又は3である場合、R基は、任意の環置換可能な位置に位置してもよい。
【0086】
式IIの化合物は、各存在におけるRが、独立してH、又はC-Cアルキル(好ましくは、エチル又はメチル)である式IIの化合物である、式II-1の化合物を含んでもよい。
【0087】
式IIの発色団は、nが1であり、RがY-Pである式IIの化合物である、式II-2の化合物を含んでもよい。
【0088】
式II及びII-2の化合物は、各存在におけるP(重合性基)が、独立して、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む式II又はII-2の化合物である、式II-3の化合物を含んでもよい。好ましい重合性基としては、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。より好ましい重合性基は、メタクリレートである。
【0089】
式II、II-2、及びII-3の化合物は、各存在におけるY(連結基)が、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又は前述の基のいずれかの組み合わせであるII、II-2、又はII-3の化合物である、式II-4の化合物を含んでもよい。好ましい連結基としては、C~Cアルキレン(例えば、エチレン又はプロピレン)、C~Cオキサアルキレン、C~Cアルキレン-アミド-C~Cアルキレン、及びC~Cアルキレン-アミン-C~Cアルキレンが挙げられる。特に好ましいのは、C~Cオキサアルキレン、又はC~Cオキサアルキレン、又はオキサエチレン(-O-CHCH-)である。
【0090】
式II、II-1、II-2、II-3、及びII-4の化合物は、各存在におけるEWGが、独立して、シアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドである式II、II-1、II-2、II-3、又はII-4の化合物である、式II-5の化合物を含んでもよい。各存在におけるEWGは、シアノであってもよい。
【0091】
式II、II-1、II-2、II-3、II-4、及びII-5の化合物は、nが1又は2であり、好ましくはnが1である式II、II-1、II-2、II-3、II-4、又はII-5の化合物である、式II-6の化合物を含んでもよい。
【0092】
本発明の化合物は、式IIIのものであってよく、
【0093】
【化4】
式中、各存在におけるEWGは、独立して電子求引基であり、Rは、H、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cチオアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR、ベンジル、SOH、若しくはSOM(Mは、ナトリウム又はカリウムなどの一価カチオンである)、又はY-Pであり、R及びRは、独立してH、又はC~Cアルキルであり、Yは連結基であり、Pgは重合性基である。
【0094】
式IIIの化合物は、RがH、又はC~Cアルキル(好ましくは、エチル又はメチル)である式IIIの化合物である、式III-1の化合物を含んでもよい。
【0095】
式IIIの発色団は、RがY-Pである式IIIの化合物である、式III-2の化合物を含んでもよい。
【0096】
式III及びIII-2の化合物は、P(重合性基)が、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む式III又はIII-2の化合物である、式III-3の化合物を含んでもよい。好ましい重合性基としては、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。より好ましい重合性基は、メタクリレートである。
【0097】
式III、III-2、及びIII-3の化合物は、Y(連結基)が、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの基のいずれかの組み合わせである式III、III-2、又はIII-3の化合物である、式III-4の化合物を含んでもよい。好ましい連結基としては、C~Cアルキレン(例えば、エチレン又はプロピレン)、C~Cオキサアルキレン、C~Cアルキレン-アミド-C~Cアルキレン、及びC~Cアルキレン-アミン-C~Cアルキレンが挙げられる。特に好ましいのは、C~Cオキサアルキレン、又はC~Cオキサアルキレン、又はオキサエチレン(-O-CHCH-)である。
【0098】
式III、III-1、III-2、III-3、及びIII-4の化合物は、各存在におけるEWGが、独立して、シアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドである式III、III-1、III-2、III-3、又はIII-4の化合物である、式III-5の化合物を含んでもよい。各存在におけるEWGは、シアノであってもよい。
【0099】
本発明の化合物の具体例を表Aに示す。
【0100】
【表1】
【0101】
本発明の化合物は、望ましい吸収特性を提供するために、その他の光吸収化合物と組み合わせて使用することができる。例えば、好ましい組成物は、UV吸収化合物と共に上記のような化合物を含んでもよい。好適なUV吸収化合物は、当該技術分野において周知であり、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又はこれらの任意の混合物が挙げられるがこれらに限定されない、いくつかの部類に分類される。好ましい部類のUV吸収化合物は、Norbloc(2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール)などのベンゾトリアゾールである。
【0102】
本発明の化合物は、生物医学的装置及び眼科用装置を含む種々の製品を形成するために、反応性混合物中に含まれてもよい。化合物は、例えば、装置内に組み込まれてもよい、及び/又は装置の表面上にコーティングされてもよい。装置内に組み込まれる場合、化合物は、一般に、装置が作製される反応性混合物に添加されてもよく、それらの溶解度の限度までの任意の量で存在してもよい。例えば、化合物は、希釈剤を除く反応性混合物中の全ての構成成分の重量百分率に基づいて、少なくとも0.1パーセント、又は少なくとも2パーセント、かつ最大10パーセント又は最大5パーセントの濃度にて存在してよい。典型的な濃度は、1~5%の範囲であってよい。上限は、典型的には、反応性モノマー混合物中の化合物とその他のコモノマー及び又は希釈剤との溶解度によって決定される。
【0103】
好ましくは、本発明の化合物は、眼科用装置に含まれる。眼鏡、サングラス、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、角膜オンレー、角膜インレー、眼内レンズ、又はオーバーレイレンズを含む、種々の眼科用装置を作製してよい。好ましくは、眼科用装置は、眼内レンズ又はソフトコンタクトレンズである。ソフトコンタクトレンズは、従来の(非シリコン)ヒドロゲル又はシリコンヒドロゲルから作製されてもよい。
【0104】
本発明の眼科用装置は、所望の眼科用装置を作製するのに好適な1つ以上のモノマー(本明細書では、装置形成モノマー又はヒドロゲル形成モノマーとも呼ばれる)と、任意の構成成分とを含有する反応性混合物のフリーラジカル反応生成物を含んでもよい。重合された場合、反応性混合物は、眼科用装置が含まれてもよいポリマー網状組織の形成をもたらす。ポリマー網状組織は、例えば、ヒドロゲル(例えば、従来のヒドロゲル又はシリコンヒドロゲル)であってもよい。
【0105】
本発明の化合物は、反応性混合物中のその他の構成成分と共重合されてもよく、この場合、反応性混合物は、所望の眼科用装置(及び任意の構成成分)を作製するのに好適な1つ以上のモノマーに加えて、本発明の化合物のうちの1つ以上を含有してもよい。
【0106】
本発明の化合物が(例えば、モノマーとして)組み込まれ得るポリマー網状組織の非限定的な例は、上述されており、例えば、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、ビフィルコン(vifilcon)、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変異型の全てを含む)が挙げられる。
【0107】
更なる例として、ポリマー網状組織は、親水性成分、疎水性成分、シリコン含有成分、ポリアミド、架橋剤などの湿潤剤、及び希釈剤及び開始剤などの更なる構成成分のうちの1つ以上を含む反応性混合物から作製されてもよい。上述のように、反応性混合物はまた、1つ以上の本発明の化合物を含有してもよい。
【0108】
親水性成分
反応性混合物中に存在し得る親水性モノマーの好適な族の例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニル尿素、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、その他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0109】
親水性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーの非限定的な例としては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド)、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド)、N,N-ビス-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0110】
親水性モノマーはまた、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、ベタイン、及びこれらの混合物など、イオン性であってもよい。このような荷電モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドプロパン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩(CBT)、1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-,分子内塩(SBT)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム,4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-,分子内塩,4-オキシド(9CI)(PBT)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、及びメタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0111】
親水性N-ビニルラクタムモノマー及びN-ビニルアミドモノマーの非限定的な例としては、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド(NVA)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、1-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0112】
親水性O-ビニルカルバメートモノマー及びO-ビニルカーボネートモノマーの非限定的な例としては、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート及びN-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステルが挙げられる。親水性ビニルカーボネートモノマー又はビニルカルバメートモノマーの更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている。親水性オキサゾロンモノマーは、米国特許第4,910,277号に開示されている。
【0113】
その他の親水性ビニル化合物としては、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、アリルアルコール、及び2-エチルオキサゾリンが挙げられる。
【0114】
親水性モノマーはまた、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアミドなどの重合性部分を有する、直鎖若しくは分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの統計的ランダム若しくはブロックコポリマーのマクロマー又はプレポリマーであってもよい。これらのポリエーテルのマクロマーは、1つの重合性基を有し、プレポリマーは、2つ以上の重合性基を有してもよい。
【0115】
本発明の好ましい親水性モノマーは、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物である。好ましい親水性モノマーとしては、DMA及びHEMAの混合物が挙げられる。その他の好適な親水性モノマーが、当業者には明らかとなるであろう。
【0116】
一般に、反応性モノマー混合物中に存在する親水性モノマーの量に関して、特に制限はない。親水性モノマーの量は、含水量、透明性、湿潤性、タンパク質取り込みなどを含む、得られるヒドロゲルの所望の特性に基づいて選択されてもよい。湿潤性は、接触角によって測定されてもよく、望ましい接触角は、約100°未満、約80°未満、及び約60°未満である。親水性モノマーは、反応性モノマー混合物中の反応性成分の総重量に基づき、例えば、約0.1~約100重量パーセントの範囲、あるいは約1~約80重量パーセントの範囲、あるいは約5~約65重量パーセントの範囲、あるいは約40~約60重量パーセントの範囲、あるいは約55~約60重量パーセントの範囲の量で存在してもよい。
【0117】
シリコン含有成分
本発明での使用に好適なシリコン含有成分は、1つ以上の重合性化合物を含み、各化合物は、独立して、少なくとも1つの重合性基、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基(複数可)をシロキサン基(複数可)に接続する1つ以上の連結基を含む。シリコン含有成分は、例えば、下記に定義される基などの1~220個のシロキサン反復単位を含有してもよい。シリコン含有成分はまた、少なくとも1つのフッ素原子もまた含有してよい。
【0118】
シリコン含有成分は、上で定義された1つ以上の重合性基、1つ以上の任意選択的に反復するシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ以上の連結基を含んでもよい。シリコン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又はこれらの混合物である1つ以上の重合性基、1つ以上の任意選択的に反復するシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ以上の連結基を含んでもよい。
【0119】
シリコン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、スチリル、又は前述の混合物である1つ以上の重合性基、1つ以上の任意選択的に反復するシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ以上の連結基を含んでもよい。
【0120】
シリコン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又は前述の混合物である1つ以上の重合性基、1つ以上の任意選択的に反復するシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ以上の連結基を含んでもよい。
【0121】
シリコン含有成分は、式Aの1つ以上の重合性化合物を含んでもよく、
【0122】
【化5】
式中、
少なくとも1つのRは、式R-Lの基であり、ここで、Rは、重合性基であり、Lは、連結基であり、残りのRは、それぞれ独立して、
(a)R-L-、
(b)1つ以上のヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されているC~C16アルキル、
(c)1つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されているC~C12シクロアルキル、
(d)1つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されているC~C14アリール基、
(e)ハロ、
(f)アルコキシ、環状アルコキシ、又はアリールオキシ、
(g)シロキシ、
(h)ポリエチレンオキシアルキル、ポリプロピレンオキシアルキル、又はポリ(エチレンオキシ-co-プロピレンオキシアルキル)などのアルキレンオキシ-アルキル又はアルコキシ-アルキレンオキシ-アルキル、あるいは
(i)アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロ又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されている1~100個のシロキサン反復単位を含む一価シロキサン鎖であり、
nは、0~500、又は0~200、又は0~100、又は0~20であり、nが0以外である場合、nが表示値と同等のモードを有する分布である、と理解されている。Nが2以上である場合、SiO単位は、同じ又は異なるR置換基を担持してもよく、異なるR置換基が存在する場合、n基は、ランダム又はブロック構成であってもよい。
【0123】
式Aにおいて、3つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、代替的に2つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、又は代替的に1つのRは、重合性基を含んでもよい。
【0124】
本発明での使用に好適なシリコン含有成分の例としては、表Bに列挙される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。表Bの化合物がポリシロキサン基を含有する場合、このような化合物中のSiO反復単位の数は、別途記載のない限り、好ましくは3~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~20である。
【0125】
【表2-1】
【0126】
【表2-2】
【0127】
好適なシリコン含有成分の追加の非限定的な例を、表Cに列挙する。別途記載のない限り、適用可能な場合、j2は、好ましくは1~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。j1又はj2を含有する化合物において、j1とj2の合計は、好ましくは2~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。
【0128】
【表3-1】
【0129】
【表3-2】
【0130】
シリコン含有成分の混合物を使用してもよい。例として、好適な混合物としては、4個及び15個のSiO繰り返し単位を含有するOH-mPDMSの混合物などの、異なる分子量を有するモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピルオキシ)-プロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)の混合物、異なる分子量を有するOH-mPDMS(例えば、4個及び15個の繰り返しSiO繰り返し単位を含有する)と、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)などのシリコン系架橋剤との混合物、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)と、mPDMS1000などのモノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)との混合物を挙げてもよいが、これらに限定されない。
【0131】
本発明で使用するシリコン含有成分は、約400~約4000ダルトンの平均分子量を有してもよい。
【0132】
シリコン含有成分(複数可)は、反応性混合物(希釈剤を除く)の、全ての反応性成分に基づいて、最大約95重量%、又は約10~約80重量%、又は約20~約70重量%の量で存在してもよい。
【0133】
ポリアミド
反応性混合物は、少なくとも1つのポリアミドを含んでもよい。本発明で使用する場合、用語「ポリアミド」とは、アミド基を含有する反復単位を含むポリマー及びコポリマーを意味する。ポリアミドは、環状アミド基、非環状アミド基、及びこれらの組み合わせを含んでもよく、当業者に周知の任意のポリアミドであってもよい。非環状ポリアミドは、ペンダント非環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。環状ポリアミドは、環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。
【0134】
好適な非環状ポリアミドの例としては、式G1及びG2の反復単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0135】
【化6】
式中、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR44)-であり、式中、R44は、C~Cアルキル基であり、R40は、H、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換C~Cアルキル基であり、R41は、H、直鎖又は分岐鎖の、置換又は非置換C~Cアルキル基、最大2個の炭素原子を有するアミノ基、最大4個の炭素原子を有するアミド基、及び最大2個の炭素基を有するアルコキシ基から選択され、R42は、H、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換C~Cアルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R43は、H、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換C~Cアルキル基であり、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R40及びR41の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ未満を含む、8以下であり、R42及びR43の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ未満を含む、8以下である。R40及びR41の炭素原子の数は、合計で6以下又は4以下であってもよい。R42及びR43の炭素原子の数は、合計で6以下であってもよい。本発明で使用する場合、置換アルキル基は、アミン基、アミド基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、若しくはカルボキシル基、又はこれらの組み合わせで置換されているアルキル基を含む。
【0136】
40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択されてもよい。Xは、直接結合であってもよく、R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択されてもよい。R42及びR43は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基、メチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され得る。
【0137】
本発明の非環状ポリアミドは、式LV若しくは式LVIの反復単位の大部分を含んでもよい、又は非環状ポリアミドは、少なくとも約70モル%、及び少なくとも80モル%など、式G若しくは式G1の反復単位の少なくとも50モル%を含み得る。式G及び式G1の反復単位の具体的な例としては、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチル-プロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、並びに式G2及びG3の非環状アミド由来の反復単位が挙げられる。
【0138】
【化7】
【0139】
環状ポリアミドを形成するために使用され得る好適な環状アミドの例としては、α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、及びε-ラクタムが挙げられる。好適な環状ポリアミドの例としては、式G4の反復単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0140】
【化8】
式中、R45は、水素原子又はメチル基であり、fは、1~10の数であり、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR46)-であり、ここで、R46は、C~Cアルキル基である。式LIX中、fは、7、6、5、4、3、2、又は1を含む、8以下であってよい。式G4中、fは、5、4、3、2、又は1を含む、6以下であってよい。式G4中、fは、2、3、4、5、6、7、又は8を含む、2~8であってよい。式LIX中、fは、2又は3であってよい。Xが直接結合の場合、fは、2であってよい。このような場合、環状ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)であってもよい。
【0141】
本発明の環状ポリアミドは、式G4の反復単位の50モル%以上を含んでもよい、又は環状ポリアミドは、少なくとも70モル%、及び少なくとも80モル%など、式G4の反復単位の少なくとも50モル%を含んでもよい。
【0142】
ポリアミドはまた、環状アミド及び非環状アミドの両方の反復単位を含むコポリマーであってもよい。追加の反復単位は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、他の親水性モノマー、及びシロキサン置換(メタ)アクリレートから選択されるモノマーから形成されてもよい。好適な親水性モノマーとして列挙されるモノマーのいずれも、追加の繰り返し単位を形成するためにコモノマーとして使用されてよい。ポリアミドを形成するために使用されてもよい追加のモノマーの具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。イオン性モノマーもまた含まれてよい。イオン性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL、CAS#148969-96-4)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム、N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-、分子内塩(CBT、カルボキシベタイン、CAS 79704-35-1)、1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-、分子内塩(SBT、スルホベタイン、CAS 80293-60-3)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム、4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-、分子内塩、4-オキシド(9CI)(PBT、ホスホベタイン、CAS 163674-35-9、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0143】
反応性モノマー混合物は、非環状ポリアミド及び環状ポリアミドの両方又はそれらのコポリマーを含んでもよい。非環状ポリアミドは、本明細書に記載された非環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得、環状ポリアミドは、本明細書に記載された環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得る。ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide)(PVMA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリビニルアセトアミド(PNVA)、ポリ(ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリアクリルアミド、並びにこれらのコポリマー及び混合物の群から選択されてもよい。ポリアミドは、PVP(例えば、PVP K90)と、PVMA(例えば、約570KDaのMを有する)の混合物であってもよい。
【0144】
反応性混合物中の全てのポリアミドの総量は、あらゆる場合において、反応性モノマー混合物の反応性成分の総重量に基づいて、1重量%~約15重量%の範囲内、及び約5重量%~約15重量%の範囲内など、1重量%~約35重量%の範囲内であってもよい。
【0145】
理論に束縛されるものではないが、シリコンヒドロゲルと共に使用される場合、ポリアミドは内部湿潤剤として機能する。本発明のポリアミドは、非重合性であってもよく、この場合、半相互貫入ネットワークとしてシリコンヒドロゲル内に組み込まれる。ポリアミドは、シリコンヒドロゲル内に封入される、又は物理的に保持される。あるいは、本発明のポリアミドは、例えば、ポリアミドマクロマー又はプレポリマーとして重合性であってもよく、この場合、シリコンヒドロゲル内に共有結合的に組み込まれる。重合性及び非重合性のポリアミドの混合物もまた使用されてよい。
【0146】
ポリアミドが反応性モノマー混合物内に組み込まれている場合、ポリアミドは、少なくとも100,000ダルトン、約150,000ダルトン超、約150,000~約2,000,000ダルトン、約300,000ダルトン~約1,800,000ダルトンの重量平均分子量を有してもよい。反応性モノマー混合物と相溶性である場合、高分子量ポリアミドを使用してもよい。
【0147】
架橋剤
一般に、架橋モノマー、多官能性マクロマー、及びプレポリマーとも称される1つ以上の架橋剤を反応性混合物に添加することが望ましい。架橋剤は、二官能性架橋剤、三官能性架橋剤、四官能性架橋剤、及びこれらの混合物から選択されてもよく、これにはシリコン含有架橋剤及び非シリコン含有架橋剤が含まれる。非シリコン含有架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリアリルシアヌレート(TAC)、グリセロールトリメタクリレート、メタクリルオキシエチルビニルカーボネート(HEMAVc)、アリルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、及びポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられ、ポリエチレングリコールは、最大約5000ダルトンの分子量を有する。架橋剤は、通常の量、例えば、反応性製剤100グラム当たり約0.000415~約0.0156モルで反応性混合物中に用いられる。あるいは、親水性モノマー及び/又はシリコン含有成分が分子設計により、又は不純物のために多官能性である場合、反応性混合物への架橋剤の添加は、任意選択的である。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への追加の架橋剤の添加を必要としない親水性モノマー及びマクロマーの例としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドでエンドキャップされたポリエーテルが挙げられる。その他の架橋剤は当業者に周知となり、本発明のシリコンヒドロゲルを作製するために使用されてもよい。
【0148】
製剤中のその他の反応性成分のうちの1つ以上に対して同様の反応性を有する架橋剤を選択することが望ましい場合がある。場合によっては、得られるシリコンヒドロゲルのいくらかの物理的、機械的、又は生物学的特性を制御するために、異なる反応性を有する架橋剤の混合物を選択することが望ましい場合がある。シリコンヒドロゲルの構造及び形態は、使用される希釈剤(複数可)及び硬化条件によっても影響を受ける場合がある。
【0149】
弾性率を更に増加させ、引張強度を維持するために、マクロマー、架橋剤、及びプレポリマーを含む、多官能性シリコン含有成分もまた含まれてよい。シリコン含有架橋剤は、単独で、又はその他の架橋剤と組み合わせて使用されてもよい。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への架橋モノマーの添加を必要としないシリコン含有成分の例としては、α,ω-ビスメタクリロイルプロピル(bismethacryloxypropyl)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。別の例は、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)である。
【0150】
剛性化学構造、及びフリーラジカル重合を受ける重合性基を有する架橋剤もまた使用されてよい。好適な剛性構造の非限定的な例としては、1,4-フェニレンジアクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス[4-(2-アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、及び4-ビニルベンジルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせなど、フェニル及びベンジル環を含む架橋剤が挙げられる。剛性架橋剤は、全反応性成分の総重量に基づき、約0.5~約15、又は約2~10、3~7の量で含まれてもよい。本発明のシリコンヒドロゲルの物理的及び機械的特性は、反応性混合物中の構成成分を調整することによって特定の用途に最適化され得る。
【0151】
シリコン架橋剤の非限定的な例としては、上記表Dに記載の多官能性シリコン含有成分もまた挙げられる。
【0152】
更なる構成成分
反応性混合物は、希釈剤、開始剤、UV吸収剤、可視光吸収剤、光互変化合物、医薬品、栄養補助剤、抗菌物質、着色剤、顔料、共重合性染料、非重合性染料、離型剤、及びこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、追加の構成成分を含有してもよい。
【0153】
シリコンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類としては、2~20個の炭素原子を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。希釈剤は、一級、二級及び三級アルコールであってもよい。
【0154】
一般に、反応性成分は、希釈剤中で混合して、反応性混合物を形成する。好適な希釈剤は、当該技術分野において周知である。シリコンヒドロゲルについて、好適な希釈剤は、国際公開第03/022321号及び米国特許出願公開第6020445号に開示されており、その開示は、参考として本明細書に組み込まれている。
【0155】
シリコンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類としては、2~20個の炭素を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。一級及び三級アルコールが使用されてもよい。好ましい種類としては、5~20個の炭素を有するアルコール及び10~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。
【0156】
使用され得る具体的な希釈剤としては、1-エトキシ-2-プロパノール、ジイソプロピルアミノエタノール、イソプロパノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、2-エチル-1-ブタノール、(3-アセトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、tert-ブトキシエタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、これらの混合物などが挙げられる。アミド希釈剤の例としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド及びジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0157】
好ましい希釈剤としては、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、エタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0158】
より好ましい希釈剤としては、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、1-ドデカノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、これらの混合物などが挙げられる。
【0159】
希釈剤が存在する場合、一般に、希釈剤の存在量に関して特定の制限はない。希釈剤を使用する場合、希釈剤は、(反応性製剤及び非反応性製剤を含む)反応性混合物の総重量に基づいて、約5~約50重量パーセントの範囲及び約15~約40重量パーセントの範囲など、約2~約70重量パーセントの範囲の量で存在してもよい。希釈剤の混合物を使用してもよい。
【0160】
重合開始剤は、反応性混合物中で使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、イソ-プロピルペルカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどの、中程度の高温でフリーラジカルを発生させるもの、並びに芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び三級アミン+ジケトン、これらの混合物などの光開始剤系のうちの少なくとも1つを挙げてもよい。光開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホス-フィンオキシド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、並びにカンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。
【0161】
市販の((IGM Resins B. V.(オランダ)製の)可視光開始剤系としては、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1700、Irgacure(登録商標)1800、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1850、及びLucrin(登録商標)TPO開始剤が挙げられる。市販の(IGM Resins B. V.製の)UV光開始剤としては、Darocur(登録商標)1173及びDarocur(登録商標)2959が挙げられる。使用され得るこれらの及びその他の光反応開始剤は、Volume III, Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization, 2nd Edition by J. V. Crivello & K. Dietliker; edited by G. Bradley; John Wiley and Sons; New York; 1998年に記載されている。開始剤は、反応性混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応性モノマー混合物の100部当たり約0.1~約2重量部で、反応性混合物中で使用される。反応性混合物の重合は、使用する重合開始剤に応じて熱又は可視光若しくは紫外光又はその他の手段を適切に選択して使用して、開始することができる。あるいは、反応開始は、光開始剤なしで電子ビームを使用して実施され得る。しかし、光開始剤が使用される場合、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819)、又は1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせなどの、ビスアシルホスフィンオキシドである。
【0162】
本発明の眼科用装置を作製するための反応性混合物は、本発明の化合物に加えて、上記の重合性化合物及び任意の構成成分のいずれかを含んでもよい。
【0163】
反応性混合物は、式Iの化合物などの本発明の化合物、及び親水性成分を含んでよい。
【0164】
反応性混合物は、式Iの化合物などの本発明の化合物と、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、メタクリル酸、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、を含んでもよい。HEMA及びメタクリル酸の混合物が好ましい。
【0165】
反応性混合物は、式Iの化合物などの本発明の化合物、親水性成分、及びシリコン含有成分を含んでもよい。
【0166】
反応性混合物は、式Iの化合物などの本発明の化合物と、DMA、HEMA及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)、モノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの混合物から選択されるシリコン含有成分と、湿潤剤(好ましくはPVP又はPVMA)と、を含んでもよい。親水性成分については、DMAとHEMAとの混合物が好ましい。シリコン含有成分については、SiMAA及びmPDMSの混合物が好ましい。
【0167】
反応性混合物は、式Iの化合物などの本発明の化合物と、DMAとHEMAとの混合物を含む親水性成分と、2~20個の繰り返し単位を有するOH-mPDMSの混合物(好ましくは4個及び15個の繰り返し単位の混合物)を含むシリコン含有成分と、を含んでもよい。好ましくは、反応性混合物は、ac-PDMSなどのシリコン含有架橋剤を更に含む。また好ましくは、反応性混合物は、湿潤剤(好ましくはDMA、PVP、PVMA、又はこれらの混合物)を含有する。
【0168】
反応性混合物は、式Iの化合物などの本発明の化合物と、約1~約15重量%の少なくとも1つのポリアミド(例えば、非環状ポリアミド、環状ポリアミド、又はこれらの混合物)と、4~8個のシロキサン繰り返し単位を有する少なくとも1つの第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは4~8であり、好ましくはnは4である))と、10~200個、又は10~100個、又は10~50個、又は10~20個のシロキサン繰り返し単位を有する単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)である少なくとも1つの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは10~200、又は10~100、又は10~50、又は10~20であり、好ましくはnは15である)と、約5~約35重量%の少なくとも1つの親水性モノマーと、任意選択的に、10~200個又は10~100個のシロキサン繰り返し単位を有する多官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、ac-PDMS)と、を含んでもよい。好ましくは、第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)及び第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)は、0.4~1.3又は0.4~1.0の、第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントに対する比を提供するような濃度で存在する。
【0169】
前述の反応性混合物は、1つ以上の開始剤、内部湿潤剤、架橋剤、その他のUV又はHEV吸収剤、及び希釈剤などであるが、これらに限定されない任意の構成成分を含有していてもよい。
【0170】
ヒドロゲルの硬化及びレンズの製造
反応性混合物は、振盪又は撹拌などの当該技術分野で周知の方法のいずれかによって形成され、周知の方法によるポリマー物品又は装置の形成に使用されてもよい。反応性成分は、反応性混合物を形成するために、希釈剤を使用するか又は使用しないかのいずれかで、一緒に混合される。
【0171】
例えば、眼科用装置は、反応性成分及び任意選択的に希釈剤(複数可)を重合開始剤と混合し、適切な条件で硬化させて、後で旋盤加工、切削などによって適切な形状に成形され得る生成物を形成することによって、調製することができる。あるいは、反応性混合物は、成形型に入れた後に硬化させ、適切な物品にすることができる。
【0172】
シリコンヒドロゲルコンタクトレンズなどの成形眼科用装置を作製する方法は、反応性モノマー混合物を調製することと、反応性モノマー混合物を第1の成形型に移すことと、第2の成形型を、反応性モノマー混合物で充填された第1の成形型の上に配置することと、フリーラジカル共重合によって反応性モノマー混合物を硬化させて、コンタクトレンズの形状でシリコンヒドロゲルを形成することと、を含んでもよい。
【0173】
反応性混合物は、回転成形及び静的成形を含む、コンタクトレンズの作製において、反応性混合物を成形するための任意の周知のプロセスを介して硬化されてもよい。回転成形法は、米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示され、静的成形法は、米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。本発明のコンタクトレンズは、シリコンヒドロゲルの直接成型により形成してもよく、これは経済的であり、含水レンズの最終形状を正確に制御できる。本方法では、反応性混合物は、所望の最終シリコンヒドロゲルの形状を有する成形型内に配置され、反応性混合物は、モノマーが重合する条件に曝され、それにより所望の最終製品のおよその形状のポリマーを生成する。
【0174】
硬化後、レンズを抽出に曝して、未反応成分を除去し、レンズをレンズ成形型から取り外してもよい。抽出は、アルコールなどの有機溶媒など、従来の抽出流体を使用して行われてもよい、又は水溶液を使用して抽出してもよい。
【0175】
水溶液は、水を含む溶液である。本発明の水溶液は、少なくとも約20重量%の水、又は少なくとも約50重量%の水、又は少なくとも約70重量%の水、又は少なくとも約95重量%の水を含んでもよい。水溶液はまた、無機塩又は離型剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助剤、これらの組み合わせなどの追加の水溶性製剤を含んでもよい。離型剤は、化合物又は化合物の混合物であり、これは、水と組み合わせた場合に、離型剤を含まない水溶液を使用してコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間と比較した時に、成形型からコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間が減少する。水溶液は、精製、再利用又は特別な廃棄処理などの特別な取り扱いを必要としない場合がある。
【0176】
抽出は、例えば、水溶液中にこのレンズを浸漬すること、又は水溶液の流れにレンズを曝すことを介して行うことができる。抽出はまた、例えば、水溶液を加熱することと、水溶液を撹拌することと、水溶液の離型剤の濃度を、レンズの離型が生じるのに十分なレベルにまで増大させることと、レンズの機械的撹拌又は超音波撹拌と、少なくとも1種の濾過助剤又は抽出助剤を水溶液に取り入れて、未反応成分をレンズから適切に除去することを容易にするのに十分な濃度にすることと、のうちの1つ以上を含んでもよい。熱、振動又はその両方の追加の有無にかかわらず、前述は、バッチプロセス又は連続プロセスで行われてもよい。
【0177】
浸出及び離型を促進するために、物理的撹拌の適用が望ましい場合がある。例えば、レンズが付着しているレンズ成形型部分は、水溶液中で振動させるか又は前後運動させることができる。その他の方法には、超音波を水溶液に通すことが含まれてもよい。
【0178】
限定されないが高圧蒸気処理などの周知の手段によって、レンズを殺菌してもよい。
【0179】
上記のように、好ましい眼科用装置はコンタクトレンズであり、より好ましくはソフトヒドロゲルコンタクトレンズである。本明細書に記載された透過波長及び百分率は、例えば、実施例に記載されている方法を使用して、種々の厚さのレンズ上で測定されてもよい。例として、ソフトコンタクトレンズにおける透過スペクトルを測定するための好ましい中心厚は、80~100マイクロメートル、又は90~100マイクロメートル、又は90~95マイクロメートルであってもよい。典型的には、例えば、4nmの器具スリット幅を使用して、レンズの中心で測定を行ってもよい。
【0180】
本発明によるシリコンヒドロゲル眼科用装置(例えば、コンタクトレンズ)は、好ましくは、以下の特性を示す。全ての値の前には「約」が付き、この装置は、列挙する性質の任意の組み合わせを有することができる。特性は、例えば、参考として本明細書に組み込まれている米国特許付与前公開第20180037690号に記載されているように、当業者に周知の方法によって決定することができる。
水濃度%:少なくとも20%、又は少なくとも25%かつ最大80%、又は最大70%
ヘイズ:30%以下、又は10%以下
前進動的接触角(ウィルヘルミー(Wilhelmy)プレート法):100°以下、又は80°以下又は50°以下
引張弾性率(psi):120以下、又は80-120
酸素透過性(Dk、バーラー):少なくとも80、又は少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも200
破断伸び:少なくとも100
イオン性シリコンヒドロゲルに関しては、(上記で引用したものに加えて)以下の性質もまた好ましい場合がある:
リゾチーム取り込み(μg/レンズ):少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも500、又は少なくとも700
ポリクオタニウム1(PQ1)取り込み(%):15以下、又は10以下、又は5以下
本発明の化合物は、眼科用装置に加えて、その他の製品と共に使用してもよい。例えば、化合物は、窓部(例えば、車両若しくは建物の窓)、又は双眼鏡及びカメラ等の光学機器などに使用されてもよい。このような使用において、化合物は、例えば、装置の表面上にコーティングされてもよい。コーティングを容易にするために、化合物を溶媒中に溶解させてもよい。
【0181】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例にて詳細に記述する。
【実施例
【0182】
試験方法
溶液中の化合物の紫外線可視スペクトルは、Perkin Elmer Lambda 45、Agilent Cary 6000i、又はOcean Optics QE65 PRO(DH-2000-BAL光源)UV/VIS走査型分光計で測定した。使用に先立って、機器を少なくとも30分間熱平衡化した。Perkin Elmer機器では、走査範囲は200-800nmであり、走査速度は、毎分960nmであり、スリット幅は4nmであり、モードは透過又は吸光に設定し、ベースライン補正を選択した。Cary機器では、走査範囲は200-800nmであり、走査速度は600nm/分であり、スリット幅は2nmであり、モードは透過又は吸光に設定し、ベースライン補正を選択した。Ocean Optics機器では、走査範囲は200-800nmであり、スリット幅は10μmであり、モードは透過又は吸光に設定し、ベースライン補正を選択した。自動ゼロ関数を使用して試料を分析する前に、ベースライン補正を行った。
【0183】
請求された組成物から部分的に形成されたコンタクトレンズの紫外線可視スペクトルは、パッキング溶液を使用し、Perkin Elmer Lambda 45UV/VIS、Agilent Cary 6000i、又はOcean Optic UV/VIS走査型分光計で測定した。使用に先立って、機器を少なくとも30分間熱平衡化した。プラスチック2ピース型レンズホルダ及び同一溶剤を含むキュベットを使用して、ベースライン補正を実施した。入射光ビームが横断する位置にて試料を石英キュベット内に保持するように、これらの2ピース型コンタクトレンズホルダを設計した。参照キュベットはまた、2ピース型ホルダも収容していた。試料の厚さが一定であることを確実にするために、全てのレンズを同一の成形型を使用して作製した。コンタクトレンズの中心厚さは、電子式厚さ計を使用して測定した。報告された中心厚さ及び透過スペクトル率は、3つの個々のレンズデータを平均化することによって得られる。
【0184】
キュベットの外面が完全に清潔で乾燥し、キュベット内に気泡が存在しないことを確実にすることが重要である。参照キュベット及びそのレンズホルダが一定のままであり、全ての試料が同じ試料キュベット及びそのレンズホルダを使用する場合に、測定の再現性が改善され、キュベットの両方が機器に適切に挿入されることを確実にする。
【0185】
以下の略語は、実施例及び図面を通して使用され、以下の意味を有する。
L:リットル(複数形可)
mL:ミリリットル(複数形可)
Equiv.又はeq.:当量
kg:キログラム(複数形可)
g:グラム(複数形可)
mg:ミリグラム(複数形可)
mol:モル(複数形可)
mmol:ミリモル(複数形可)
Da:ダルトン又はg/モル
kDa:キロダルトン又は1,000ダルトンに等しい原子質量単位
min:分(複数形可)
μm:マイクロメートル(複数形可)
nm:ナノメートル(複数形可)
H NMR:プロトン核磁気共鳴分光法
UV-VIS:紫外線-可視光線分光法
TLC:薄層クロマトグラフィー
BC:バック又はベースカーブプラスチック成形型
FC:フロントカーブプラスチック成形型
PP:プロピレンのホモポリマーであるポリプロピレン
TT:水添スチレンブタジエンブロックコポリマーであるTuftec(Asahi Kasei Chemicals)
Z:ポリシクロオレフィン熱可塑性ポリマーであるZeonor(Nippon Zeon Co. Ltd)
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド(Jarchem)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Bimax)
PVP K90:ポリ(N-ビニルピロリドン)(ISP Ashland)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
TEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
Irgacure又はOmnirad1870:ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシドと1-ヒドロキ-シシクロヘキシル-フェニル-ケトンとのブレンド(IGM Resins又はBASF又はCiba Specialty Chemicals)
mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(M=800-1500ダルトン)(Gelest)
HO-mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(M=400-1500g/mol)(Ortec又はDSM-Polymer Technology Group)
HO-mPDMS(n=4):
【0186】
【化9】
HO-mPDMS(n=15):
【0187】
【化10】
nBu:n-ブチル
XLMA:ビス-3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(Mn=2000ダルトン、平均n=23 H NMR(CDCl、500MHz)(Shin Etsu)
【0188】
【化11】
SiMAA:2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(Toray)、又は3-(3-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)プロポキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
Norbloc:2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Janssen)
RB247:1,4-ビス[2-メタクリルオキシエチルアミノ]-9,10-アントラキノン
TL03光:Phillips TLK 40W/03電球
LED:発光ダイオード
D3O:3,7-ジメチル-3-オクタノール(Vigon)
3M3P:3-エチル-3-ペンタノール
DIW:脱イオン水
MeOH:メタノール
IPA:イソプロピルアルコール
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DCM又はCHCl:ジクロロメタン又は塩化メチレン
DCE:1,2-ジクロロエタン
CDCl:重水素可クロロホルム
PhOH:フェノール
SO:硫酸
HCl:塩酸
pTsOH:p-トルエンスルホン酸
AcO:無水酢酸
CsCO:炭酸セシウム
SOCl:塩化チオニル
NaH:水素化ナトリウム
CPTP:2-(3-クロロプロポキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン
NaI:ヨウ化ナトリウム
ホウ酸塩緩衝パッキング溶液:18.52グラム(300mmol)のホウ酸、3.7グラム(9.7mmol)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197mmol)の硫酸ナトリウムを、十分な脱イオン水中に溶解させて、2リットルのメスフラスコを充填した。
【0189】
実施例1-スキーム1に示すような2-((9-(ジシアノメチレン)-9H-チオキサンテン-2-イル)オキシ)エチルメタクリレート(化合物A)の合成
【0190】
【化12】
【0191】
チオサリチル酸(6.3g、~0.041モル)を、系を絶えず撹拌しながら、5分を超えて60mLの高濃度硫酸に加えた。フェノール(18.8グラム、約5当量)を、温度を60℃に上昇させた30分間にわたって、バッチ中の反応混合物に添加した。発熱が止まると、混合物を80℃に加熱し、次に、一定の撹拌をしながら2.5時間にわたってその温度に保持した。反応混合物を、溶液を撹拌しながら、600mLの沸騰水にゆっくりと添加した。希釈時に形成された明黄色の沈殿物、及び懸濁液を更に10分間加熱した後、室温まで冷却した。固体をフリットガラス漏斗で濾過した。黄色の固体を300mLの水で3回洗浄し、50℃の真空オーブン内で乾燥させ、次の工程で「そのまま」使用した。
【0192】
25mLの無水DMSO中の、2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(2.28g、0.01モル)、2.0グラムの2-クロロエチルメタクリレート(0.0135モル)、及び5.0グラムの炭酸セシウム(0.015モル)の懸濁液を、窒素雰囲気下、60℃で一晩撹拌した。混合物を室温まで冷まし、300mLのエチルアセテート中に注いだ。有機物を200mLの1%塩化ナトリウム水溶液で3回抽出した後、揮発物を減圧下で蒸発させた。残存固体をフリットガラス漏斗上でヘキサンを用いて洗浄し、50℃の真空オーブン内で乾燥させ、次の工程のために「そのまま」使用した。
【0193】
2.4グラムの粗2-(2-メタクリルオキシエトキシ)-9H-チオキサンテン-9-オン(0.007モル)を、電磁撹拌棒及び還流凝縮器を備えた丸底フラスコ内に充填した。この系を窒素雰囲気下に置き、塩化チオニル(8mL、13.12グラム、0.111モル)をフラスコに添加した。混合物を穏やかな還流で1時間加熱した後、塩化チオニルを減圧下で蒸発させた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、1.39グラムのマロノニトリル(約3当量)の溶液及び20mLのジクロロメタン中の5グラムのピリジンを添加し、混合物を穏やかな還流で更に2時間撹拌した。
【0194】
反応が完了したら、混合物を300mLのエチルアセテートで希釈し、有機物を0.2Nの塩酸で抽出し、続いて、300mLの水で2回洗浄した。この生成物を、シリカゲル上でのクロマトグラフィーの後、塩化メチレン及びアセトンを使用して、橙色固体として単離した。化合物A:H NMR(500MHz、CDCl)δ1.92(3H、bs、CH3)、4.31(1H、t、J=4.0Hz)、4.51(1H、t、4.5Hz)、5.56(1H、bs、ビニル性)、6.12(1H、bs、ビニル性)、7.13-8.11(6H、ArH)。
【0195】
化合物Aの、0.2mMのメタノール溶液のUV-VIS透過スペクトルを、図1に示す。黄斑色素の文献スペクトルに重ね合わせた化合物Aの、0.2mMのメタノール溶液のUV-VIS吸光スペクトルを、図2に示す。
【0196】
実施例2
77重量パーセントの表1に列記される配合物及び23重量パーセントの希釈剤D3Oで構成される反応性モノマー混合物を調製した。反応性モノマー混合物を、圧力下で、ステンレス鋼シリンジを使用して3μmのフィルタを通して濾過する。
【0197】
【表4】
【0198】
濾過した反応性モノマー混合物を、少なくとも約20分間真空(約40トル)を適用することによって、周囲温度で脱気する。次に、窒素ガス雰囲気かつ約0.1~0.2パーセント未満の酸素ガスの入ったグローブボックス内で、約75μLの反応性混合物を、室温でエッペンドルフピペットを使用して90:10(w/w)Zeonor/TTブレンドから製造されたFCに投入する。90:10(w/w)Zから製造されたBC:次に、TTブレンドをFC上に置く。成形型は、投入に先立ってグローブボックス内で最低12時間平衡化される。それぞれ8つの成形型組立体を収容するパレットを、65℃に維持された隣接するグローブボックス内へと移し、約1.5mW/cmの輝度を有する435nmの発光ダイオード光を使用して3分間、また次に、2.5mW/cmの輝度を有する435nmの発光ダイオード光を使用して7分間、最上部から底部までレンズを硬化させる。
【0199】
レンズを手で型から取り出し、レンズを約1リットルの70パーセントIPA中に約1時間浮かせることによって離型し、続いて、30分間新たな70パーセントIPAに2回、次に、15分間、新たなDIWに2回、次に、30分間、パッキング溶液に2回浸漬した。レンズを平衡化し、ホウ酸塩緩衝パッキング溶液中で保管する。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型工程の目的は、レンズの全てを損傷することなく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから包装溶液で膨潤したヒドロゲルに遷移させることである。
【0200】
実施例3
表2に列記される77重量パーセントの配合物及び23重量パーセントの希釈剤3M3Pで構成される反応性モノマー混合物を調製した。化合物Aを最初にDMAに中に溶解させ、次に、得られた溶液を、その他の構成成分及び希釈剤の全てを含有する別の溶液に添加した。反応性モノマー混合物を、圧力下で、ステンレス鋼シリンジを使用して3μmのフィルタに通して濾過した。反応性モノマー混合物を、少なくとも約20分間真空(約40トル)を適用することによって、周囲温度にて脱気させた。次に、窒素ガス雰囲気かつ約0.1~0.2パーセント未満の酸素ガスの入ったグローブボックス内で、約75μLの反応性混合物を、室温でエッペンドルフピペットを使用して90:10(w/w)Zeonor/TTブレンドから製造されたFCに投入した。90:10(w/w)Zから製造されたBC:次に、PPブレンドをFC上に置いた。成形型は、投入に先立ってグローブボックス内で最低12時間平衡化される。それぞれ8つの成形型組立体を収容するパレットを、65℃に維持された隣接するグローブボックス内へと移し、約1.5mW/cmの輝度を有する420nmの発光ダイオード光を使用して3分間、また次に、5mW/cmの輝度を有する420nmの発光ダイオード光を使用して5分間、最上部から底部までレンズを硬化させた。
【0201】
レンズを手で型から取り出し、レンズを約1リットルの70パーセントIPA中に約1時間浮かせることによって離型し、続いて、30分間新たな70パーセントIPAに2回、次に、15分間、新たなDIWに2回、次に、30分間、パッキング溶液に2回浸漬した。レンズを平衡化し、ホウ酸塩緩衝パッキング溶液中で保管する。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型工程の目的は、レンズの全てを損傷することなく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから包装溶液で膨潤したヒドロゲルに遷移させることである。レンズをバイアル瓶内で保管した。1日平衡化させた後、レンズを検査し、122℃で30分間オートクレービングして滅菌した。
【0202】
【表5】
【0203】
実施例4:光照射
実施例3に記載されているように実質的に調製したレンズを、周知の方法によって(パッキング溶液を含む)バイアル瓶で封止し、グローブボックス内の光条件に曝露させた。使用される光条件は、上記のICHガイドラインQ1Bと少なくとも同程度に過酷であると考えられている(したがって、本実施例で観察されたものと当量な又はそれよりも少ない光分解が、ICHガイドラインQ1B下で予想され得る)。条件は以下のとおりであった:それぞれ1個のレンズを含む10個のバイアル瓶を、ガラスステージ上で、約435±5nmのLEDパネルの約4インチ上に中心合わせし、室温で40時間、約20mW/cmの放射線に曝露させた。
【0204】
時間ゼロ(対照)及び40時間で収集されたレンズのUV/VIS吸光スペクトルを図3に示す。445nm~455nmの範囲の吸光度値、並びに対照に対する40時間の曝露後の吸光度のパーセント変化を表3に示す。図3及び表3から明らかなように、天然黄斑色素と同様の450nmの吸光度を示す試験化合物は、良好な光安定性を示す追加の利点を有する。
【0205】
【表6】
【0206】
〔実施の態様〕
(1) 430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有する化合物であって、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)光安定性である、化合物。
(2) 前記可視光吸光最大値が440nm~470nmである、実施態様1に記載の化合物。
(3) 前記可視光吸収最大値における前記FWHMが、少なくとも40nmかつ最大95nmである、実施態様1~2のいずれかに記載の化合物。
(4) 光安定性が、前記可視光吸収最大値における20パーセント以下の吸光度の損失を含む、実施態様1~3のいずれかに記載の化合物。
(5) 430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有する化合物であって、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)黄斑色素よりも一層光安定性である、化合物。
【0207】
(6) 発色団を含む化合物であって、前記発色団が式Iの下部構造を有し、
【化13】
式中、各存在におけるEWGは独立して電子求引基である、化合物。
(7) 各存在におけるEWGが独立して、シアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドである、実施態様6に記載の化合物。
(8) 各存在におけるEWGがシアノである、実施態様6~7のいずれかに記載の化合物。
(9) 式IIを持ち、
【化14】
式中、各存在におけるEWGは独立して電子求引基であり、nは1、2、又は3であり、Rは、各存在において独立して、H、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cチオアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR、ベンジル、SOH、若しくはSOM(Mは、ナトリウム又はカリウムなどの一価のカチオンである)、又は-Y-Pであり、R及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルであり、Yは連結基であり、Pは重合性基である、実施態様6に記載の化合物。
(10) 2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)マロノニトリル、又は
2-((9-(ジシアノメチレン)-9H-チオキサンテン-2-イル)オキシ)エチルメタクリレートである、実施態様6に記載の化合物。
【0208】
(11) 前記化合物は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有し、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)光安定性である、実施態様6~10のいずれかに記載の化合物。
(12) 前記可視光吸光最大値が440nm~470nmである、実施態様11に記載の化合物。
(13) 前記可視光吸収最大値における前記FWHMが、少なくとも40nmかつ最大95nmである、実施態様11~12のいずれかに記載の化合物。
(14) 光安定性が、前記可視光吸収最大値における20パーセント以下の吸光度の損失を含む、実施態様11~13のいずれかに記載の化合物。
(15) 前記化合物は、430nm~480nmの可視光吸収最大値、及び前記可視光吸収最大値において少なくとも35nmかつ最大100nmの半値全幅(FWHM)を有し、前記化合物は(例えば、ICHガイドラインQ1Bに従って測定した場合に)黄斑色素よりも一層光安定性である、実施態様6~14のいずれかに記載の化合物。
【0209】
(16) 実施態様1~15のいずれかに記載の化合物を含む眼科用装置。
(17) 反応性混合物の重合反応生成物であるコンタクトレンズ又は眼内レンズであって、前記眼科用装置を作製するのに好適なモノマーと、(b)実施態様1~15のいずれかに記載の化合物と、を含む、コンタクトレンズ又は眼内レンズ。
(18) (a)鉱物材料若しくは有機材料又はこれらの組み合わせと、(b)実施態様1~15のいずれかに記載の化合物と、を含む、眼鏡又はサングラスレンズ。
(19) 国に輸入される、実施態様1~18のいずれかに記載の化合物、眼科用装置、又は眼鏡レンズ。
(20) 前記国がアメリカ合衆国である、実施態様19に記載の化合物、眼科用装置、又は眼鏡レンズ。
図1
図2
図3
【国際調査報告】